【咲-Saki-】京太郎「たのしい宮永一家」【微安価】

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113 : ◆copBIXhjP6 [sage]:2021/02/05(金) 00:49:39.29 ID:X723M1I10
今回はここまで
114 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2021/02/05(金) 03:01:50.40 ID:QsYuJMDk0
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115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/05(金) 06:11:07.24 ID:BFZcRVdP0

ドキドキする
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/05(金) 06:34:58.67 ID:mueKtIcOo
乙です
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/05(金) 13:56:09.79 ID:YTimJ26R0
奪略愛?おもちの大きい方が勝つ
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/06(土) 00:45:08.72 ID:8kWjEpEY0
アラフォー世代京照の義姉と義弟の生々しい関係
続きが気になる
119 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:31:43.02 ID:kMGUxpud0
オカルトやプロチームについての設定はでっちあげです。>>1の妄想です。
読んでるうちに分かるとは思いますけど念の為。

ということで投下ー
120 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:32:35.16 ID:kMGUxpud0
――― 清澄高校


京ちゃんから借りたバイクでしばらく坂を登ると、校舎へ続く道は冷たく閉ざされていた。
どうしたものかと一旦降りて立ち尽くしているうちに、こちらに気づいた守衛さんが鉄門を開けてくれる。

照「もしもし」

『あら、遅かったじゃない』

照「ちょっと実家に寄ってたから」

『そういうことなら仕方ないか。今どこにいるの?』

照「校門から入って駐車場に」

『ならまずは事務室に行って来客者証をもらって頂戴』

『駐車場から近くに新校舎の玄関が見えるでしょ?そこを入ったら受付があるからすぐに分かるわ』

『受け取ったら旧校舎の部室へ。手間かけさせちゃってごめんなさいね』

照「来たいって言ったのは私だから大丈夫。それじゃあ後で」

『はーい』

ツーという電子音が数回流れて通話の終了を知らせた。
121 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:33:29.07 ID:kMGUxpud0
言われた通り事務室に向かう。
『新校舎』とは言ったものの、建てられてから数十年が経過したであろう今では節々に年月の経過を垣間見ることが出来る。
玄関でスリッパに履き替えた私を出迎えてくれたのは、愛想の良い三十代くらいの女性だった。

照「来客者証をいただきたいんですけど」

受付「わかりました。お名前を伺ってもいいですか?」

照「宮永です」

受付「ミヤナガさんですね。竹井先生から話は通ってますよ」

受付「こちらが来客者証になります。お帰りの際はお手数ですけどこちらへ返却を」

照「ありがとうございます」

受付「............少しいいですか?」

照「なんですか?」

受付「宮永照さんですよね。プロ雀士の」

照「ええ、そうですけど」

受付「やっぱり!あぁどうしよう!困っちゃうなぁ」

受付「ごめんなさい。実は私、宮永プロのファンなんです」

受付「小さい頃インターハイを観てからずっと応援してて、ええっと、それで.........」

受付「......あの、頑張ってください!!」

照「............ありがとう」ニコッ
122 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:34:59.17 ID:kMGUxpud0
カードホルダーを首から下げつつ玄関を出て、先程通ってきた校門へ歩みを進めた。
清澄高校にはプロになってから一度コーチとして呼ばれており、この来訪が初めてというわけではない。
当然部室の位置は覚えているし、行き方だって............

照「すみません」

守衛「おや、さっきの方。どうなさいました?」

照「旧校舎にはどう行けばいいですか?」

守衛「それならここの坂をしばらく下って、次の角を左に曲がって道なりに歩けば着きますよ」

照「............」

守衛「............」

照「............」

守衛「...............あの」

照「............」

守衛「............よければお連れしましょうか」
123 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:36:09.85 ID:kMGUxpud0
――― 旧校舎 麻雀部室


「補修工事」と書かれた大きなボードと鉄骨の足場に囲まれた旧校舎に入り、軋む階段を一段ずつ踏みしめた先に麻雀部室はひっそりと存在する。
しかし扉を一度開ければその限りではなく、部屋は大勢の部員と対局の熱気に包まれていた。

照「お邪魔します」

「こんにちはー」

「うわっ、本物の宮永プロじゃん」

久「いらっしゃい。インハイぶりかしら」

照「それも最初のほうに何度かすれ違ったくらいだけど」

久「細かいこといいっこなしよ。ほら、ここで話すのもなんだし場所を変えましょうか」

久「染谷くーん!隣で話してるからお茶持ってきてねー!」

「わかりましたー......って、なんで俺が」

久「つべこべ言わずにさっさとやる!」

「理不尽じゃ......」

久「あの子のお茶が一番美味しいんだもの」

照「大会前日なのにちょっと悪い気がするな」

久「心配ご無用。彼なら大丈夫よ」
124 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:37:05.78 ID:kMGUxpud0
――― 準備室


久「汚い部屋でごめんなさいね。ささ、座って」

照「.........」

久「どうしたの?」

照「懐かしい形の椅子だなって思って」

久「へぇ、なんか新鮮な感想。でも確かに普段から学校に関わりがない人はそう思っても不思議じゃないかも」

私の目の前に座る女性は竹井久。二十六年前、清澄高校麻雀部をインターハイ初出場ながら優勝へ導いた当時の部長だ。
現在は母校で英語教師を務める傍らでこの部活の指導者として活躍している。

照「遅くなったけど優勝おめでとう。清澄のレジェンドさん」

久「懐かしい響きねぇ、それ」

照「この前の雑誌にも載ってたよ。『選手と監督、二回の優勝を手にした清澄の伝説』って」

久「それのお陰で生徒にもからかわれるし、赤土さんからも冷やかされるし......恥ずかしいったらありゃしないわ」

照「名前が売れるのは悪くないことだから」

久「意外。照はあんまりそういうの好きじゃないと思ってた」

照「ちょっとね」
125 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:37:45.20 ID:kMGUxpud0
ガチャッ

「どうぞ。この前焼いたクッキーが残っとったんでご自由に」

久「ありがと」

照「忙しいのにごめんなさい」

「慣れてますから別に大丈夫ですよ」

久「まこの英才教育の賜物ねー」

照「そっか、染谷さんの息子さんなんだっけ」

真嗣「はい。染谷真嗣っていいます」

訛りの入ったイントネーションで喋る彼はティーカップを二組机に置くと、頭を下げて再び廊下へと消えていった。
礼儀正しい良い子だ。

久「それで、麻雀界の大物がこんな所まで来てどうしたっての」

照「明のことで話がある」

久「明のこと?」

照「インターハイで彼女が打った麻雀はおかしかった。あなただって気づいてるはずでしょ」

久「ああ、それのことね......あれは私が言ったのよ」

照「久が?」

久「最初に異変が起こったのは県予選の最終日だったんだけど―――」
126 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:38:28.41 ID:kMGUxpud0
【6月下旬】


――― 長野県内 県予選会場


久「はーいみんな、県予選お疲れ様。今日は早く帰ってちゃんと寝ましょう」

久「明日は朝八時に部室集合でよろしくね」

「全然ゆっくりできないじゃないですか!」

「日曜なんだし休みにしてくださいよー」

久「バカ、反省会っていうのはすぐにやらないと効果半減なの」

久「てことで明日は試合の振り返りをします。遅くなるから親御さんには伝えておくように」

「打ち上げだと思ってたのに......」

「鬼!悪魔!年増!」

「清澄は休みを増やせー!」

久「年増って言った奴は明日覚えときなさい」

「げっ」

久「それじゃあここで解散にするけど.........明、少し残ってもらえるかしら」

明「わ、私ですか?」
127 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:40:17.79 ID:kMGUxpud0
生徒が三々五々に帰っていった後も、閉会式が終わった会場は誰とも知れない人々で溢れかえっていた。
自動販売機でコーヒーとジュースを買って、喧騒の隅にぽつんと取り残されたベンチに二人腰掛けた。

久「今日はお疲れ様。頭を使った後はちゃんと糖分補給しないとね」

明「ありがとうございます」

久「ねぇ明、決勝はどうしたの?準決勝まで普通に打ってたのに、不調だったってことでもないでしょう」

久「打ち筋も支離滅裂だし、あれじゃあまるで初心者みたいな.........ごめん。ちょっと言い過ぎたかも」

明「ううん、メチャクチャな打ち方だったのは本当のことですから」

久「無自覚ってわけでもないのか。何かあったのよ」

明「......牌が来なくなりました」

明「ツモるのは欲しいのと全然違う牌で、全然思ったとおりに手が進まなくて」

明「こんなこと初めてなんです。それで私、どうすればいいのか........」

これだ。あたかも自分の望んだ牌が来ることは約束されていて、当然の摂理であるかのような表現。
強力なオカルトを持った人間―――牌に愛された子。彼女たちがそれを失った時、得てしてこういった言い方をする。


私には『悪待ち』がある。
三面張より辺張の方がツモれたり、地獄単騎は字牌より中張牌の方が和了れたり、何年も待ち続けてようやくインハイに出場できたり。
いざという時、あえて希望の薄い選択肢を選んだほうが却って成功しやすい......ような気がする。
実際データを見れば正しいことは分かるんだけど、普通に失敗することも多いから体感的には確信できるほどじゃない。
でも麻雀ってそんなもので、結局最後に残るのが運否天賦だからこそ面白いんだ。元々ギャンブルだしね。
もしこの瞬間にオカルトが消えてなくなったとしても、私が雀士として為すべきことは何も変わらないだろう。
128 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:40:53.21 ID:kMGUxpud0
なら彼女たちは?
オカルトが絶対的なものであればあるほど、牌が見えれば見えるほど、彼女たちにとって麻雀は確定された―――囲碁や将棋と同質のものになっていく。
そこに偶然性はなくて、オカルトという『力』への依存は過剰なまでに強まっていくのだ。
そして今、明はその拠り所を失っていた。

久(仕方ないか......)

久「ねえ。悪いんだけど、この後ってまだ大丈夫?」

明「これからですか?でももう遅いし、晩ご飯だって食べてないし......」

久「私の奢りで良いわよ。時間が気になるなら家まで送って行くわ」

明「.........お父さんに電話してきてもいいですか」

久「もちろん」
129 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:41:52.06 ID:kMGUxpud0
――― roof-top


カランカラン

まこ「らっしゃーい.........って、珍しい客が来よったわ」

久「おひさ〜」

まこ「誰かさんのせいでこんな季節なのに寒いのぉ」

久「べ、別にそういう意味じゃないわよ!」

まこ「冗談。そんで、こんな夜遅くにどういう風の吹き回しじゃ?」

久「ちょっと野暮用でね。顔見知りだけで卓囲みたいんだけど出来るかしら」

まこ「ははーん、訳ありっちゅーことか」

久「そゆこと」

まこ「わかった。ちと待っとれ」

内線に手を伸ばし、慣れた手つきでボタンを押す。

まこ「真嗣、今すぐ降りてきんさい」

真嗣『んなこと言われても......帰ってきたばかりなんじゃけぇゆっくりさせてーな』

まこ「われ試合もなんもなかったじゃろうが。三分で来い」

真嗣『へーい』ガチャッ

まこ「.........さて。二人とも、何か飲むか?」

二分も経たないうちに染谷くんは店の奥から姿を現した。
先程まで制服を纏っていたその身も今ではポロシャツにジーンズという出で立ちで、雀荘らしいエプロンの紐を後ろ手で括っているところだ。
130 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:42:26.91 ID:kMGUxpud0
真嗣「母ちゃん、今日はバイトさん足りよるんと違かったんか?」

まこ「ちぃと別件でな。顔見知りがええんじゃと」

真嗣「はぁ......それでこの面子ってことですか、先生」

久「休んでるところ悪かったわ」

明「染谷くん、呼び出しちゃってごめんね」

真嗣「それはいいんだけどさ。宮永まで揃って一体何の騒ぎなんだ」

まこ「ええから取り敢えず座りんさい」

真嗣「??」

腑に落ちない表情の少年を差し置いて場決めの通り席に着く。起家の明から順番に染谷くん、まこ、そして私だ。
ちょうどバイトの子が持ってきてくれたウーロン茶をストローで吸うと、梅雨の蒸し暑さが少しだけ和らいだ気がした。
131 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:43:28.02 ID:kMGUxpud0
正直言って、明がこの調子では全国なんて到底戦えない。
今の麻雀部は私が部長だったあの頃と違う。人数もそこそこ増えた上に二年生や三年生の練度は高く、トップ層ともなればかなりの実力者揃いである。
それにも拘わらず一年生の明が大将を任されているのは、彼女が『強い』ということを全員が認めているからだ。
彼女のオカルトへ依存しているのは彼女自身だけではない。部員のみんなも同じだった。
不安がチーム内に伝播させないためにも、何としてでもこの問題は今日中に解決しなければ。

久「染谷くん。これから何半荘か打ってもらうことになると思うけど、最初に言っておくことがあるわ」

久「今夜見聞きしたことは決して口外しないこと―――特に、一軍の他の子たちには」

真嗣「んなこと言ったって、そもそも何のためにこんなことしようっていうんですか?」

真嗣「それが分からないことにはどうにも......」

久「麻雀部の為なの。あなただって事情が気になるのは分かるけどね」

久「監督命令ってことでここは一つ引いて頂戴」

真嗣「.........まあ、そういうことなら」
132 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:45:37.42 ID:kMGUxpud0
まこ「ルールはどうする?」

久「今年の大会規定通りにお願い」

久「アリアリの一発赤裏あり。私たちの時と何も変わらないから安心して」

まこ「嶺上の責任払いも?」

久「もちろん」

まこ「あれに助けられたのはわしらの世代くらいじゃろうなぁ」ハハハ

久「言わなくても分かってるだろうけど、少しは手加減してよね」

まこ「はいよ」

久「染谷くんは全力で打ちなさい。多分それで丁度いいくらいだから」

真嗣「わかりました」

まこ「京太郎んとこの娘、明とかいったか。真嗣より上手いんか?」

久「そうねぇ。上手下手で言えば当然染谷くんの方が上手いけど」

久「強いのは.........」チラッ

まこ「......なるほど。そういうタイプか」

『上手さ』と『強さ』は必ずしも一致するものではない。
実家が雀荘という環境に置かれた染谷くんは、幼い頃から数え切れない程の対局を見て、そして体験してきた。
明だって宮永家の娘だしそれなりに揉まれてはいるだろうけど、それでも対局数で言えば染谷くんとは到底比べ物にならない。
多くの場数を踏んだ彼の打ち筋は手練そのものだ。
133 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:46:18.97 ID:kMGUxpud0
でも上手いだけじゃ麻雀は勝てない―――強い者は上手い者ではなく勝った者だ。
経験に裏打ちされた技術や技巧をも超越し、力によって卓上を支配する。それがオカルト。

明は俯き、落ち着かなさそうに何度も指を組み直していた。

久「明」

明「は、はい!」

久「最初は自然に打ってみましょうか。落ち着いて、普段みたいにね」
134 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:48:32.43 ID:kMGUxpud0
【東三局】


まこ「聴牌」

久「聴牌」

明「不聴です」

真嗣「聴牌」

明「うわぁ、和了れないから聴牌料が痛いよ......」

まこ「しかしおぬし、凄い河じゃのう」

明の河には中盤まで暗刻三つに対子二つ、しかも殆どが使いやすい中頃の牌だ。
私が立直を掛けた後はオリたのだろうか一転して安牌が並んでいる。

久「手牌を少し見せてもらえる?」

明「いいですけど」パタッ


ドラ:4m

78m2668s23789p南南


至って普通の二向聴。
途中まで頑張ってチャンタ三色を狙っていた形跡はあるものの、結局は無理筋だったらしい。

久「ふーん」
135 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:49:12.64 ID:kMGUxpud0
【南四局 一本場】


まこ「どれどれ......」ニヤリ

明「.........」

久(まこが聴牌か。明との一騎打ちね)

久(それにしてもこの感覚.........ずっと昔にどこかで)

まこ「リーチ!」タンッ

明「ロン」パタッ

まこ「げっ、もう張っとったんか。いくらじゃ?」


ドラ:東

11s111999s東東 【西西西→】 ロン:1s


明「えーっと、一本場だから12000は12300です」

まこ「はいよ」チャラッ
136 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:49:52.17 ID:kMGUxpud0
真嗣「ホンロートイトイか。派手だなぁ」

真嗣「チャンタ系って意味では宮永らしいのかもしれないけど」

明「それって褒めてるの?」

真嗣「褒めてるよ。一応」


<終局>

明 :25400
真嗣:22300
まこ:21400
久 :30900


〜〜〜〜〜
137 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:51:04.63 ID:kMGUxpud0
久「オーラスの跳満、よくあそこまで役作りしたわね」

明「実はあの和了は手なりだったんです」

久「えっ?でもオカルトは......」

明「牌は見えてなかったんですけど、それなのに何故か対子や刻子がいっぱい入ってきて」

明「それで、気がついたら聴牌してました」

久「.........ちょっと失礼」

幸いなことに卓上は誰も動かさないままで保たれたままだ。
最後がまこだったから対面の明が次にツモるのは.........これか。壁牌の端を少し崩すと一枚の西が顔を出す。

「まさか」と思いながらも、私の指は王牌へと伸びた。


まこ「久、何かあったんか」

久「ううん.........なんでもない」


嶺上牌は東。
もしもまこが切った一索をロンせずに西を加槓すれば、嶺上開花で和了っていたことになる。


久「次からは対子手を意識して打ってみなさい」

明「対子手ですか?」

久「そうよ。チャンタのことは一旦忘れるの」

久(流れに身を任せさえすれば、今のあなたならきっと―――)
138 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:52:39.40 ID:kMGUxpud0
【数時間後】


――― 車中


明「疲れたぁ......何も閉店まで続けなくてもいいじゃないですか」

久「付き合わせちゃって本当にごめんなさい。でも、その代わり収穫も十分あったわ」

あれ以降の数半荘の中で明の打ち筋はガラリと変わった。
普段の役作り中心の麻雀からは一転して、立直や断么以外に役が付かないことが増えたのだ。暗刻がよくできるので平和も減った。
そうやって安い和了を重ねつつドラや三暗刻で満貫以上の手を作ることも多いのだが、それも彼女に言わせてみれば「手なり」に過ぎないらしい。

明「それで、結局私のチャンタが消えちゃったのって何なんですか」

久「簡単に言えば遺伝の影響よ。あなたがお母さんから受け継いだオカルトが発現しつつあるってこと」

明「遺伝......?」

久「大抵の場合、オカルトはその人に関連する形で発現するわ。生まれた環境とか幼い頃の体験とか、あとは生まれながらの素質とか」

久「でも、母親の持つオカルトに近いものを子供が備えていることが稀にあるの。まるで遺伝みたいに」

それが何代にも続いて行われている例が龍門渕家だ。
天江衣の『海底』と龍門渕透華の『治水』のように、水に関連するそれは最早家系そのものであるといえる。
龍門渕には過去にもそういった雀士がいたのだろうし、今後もそういった雀士が生まれるのだろう。
139 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:54:18.94 ID:kMGUxpud0
久「もっとも、どちらか一方なら別に心配はなくてね」

久「問題はたった一人の人間が素質タイプと遺伝タイプ、二つのオカルトを持ち合わせてしまった場合よ」

久「それが両方とも発現した時に本人がどうなるかは分からない」

明「分からない?」

久「個人によるとしか言いようがないの」

久「そしてあなたの身には、今まさにそれが起きている」

こういった事例は中高生くらいの子にいくつも報告されていて、大昔に高麻連がまとめた調査結果を読んだことがある。
二つとも使いこなせるようになるケース、どちらか片方だけが残ってもう片方は消滅してしまうケース、合体して新たな能力になるケース。
一体どのような要因が分岐を生むのかは未だ判明していない。

久「お母さんの―――咲の麻雀は見たことある?」

明「ネットで何度かは」

久「なら知ってると思うけど、彼女は嶺上開花の使い手だったわ」

久「王牌を支配し、集めた槓材を使って劇的な和了を魅せるのが咲のオカルト。それがあなたに宿りつつある」

久「暗刻が出来やすいのはその兆候じゃないかしら」

明「つまり、これからはチャンタじゃなくて嶺上開花を狙えばいいってことですか?」

久「だから分からないんだってば。チャンタも嶺上も残るのかもしれないし、どっちかだけになっちゃうかもしれない」

久「幸い健康に影響があるようなモノでもないからね。長い目で経過観察していくしかないわ」

明「.........そうですか」
140 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:54:57.85 ID:kMGUxpud0
久「でも、だからといってインハイは待ってはくれない。今現在あなたがチャンタを使えなくて、代わりに暗刻が出来やすいのは事実よ」

久「取り敢えず使えるものはどんどん使っていきましょう」

明「わかりました」

久「咲の対局記録を観ると勉強になると思うんだけどねぇ。家に残ってない?」

明「それが、お父さんがほとんど捨てちゃったんです」

久「なら優希から借りてこようか。公式戦の録画は全部残してたはずだから」

喋り続けて喉がカラカラだ。赤信号に足止めされ、ちょうどいいと思ってコーヒーを一口含む。
予選会場からドリンクホルダーに入ったままのスチール缶はすっかり冷めきっていた。
141 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:56:14.31 ID:kMGUxpud0
【現在】


久「―――その後の戦績は周知の通り。上手くハマってくれて助かったわ」

久「やっぱ私って策士よねー」アハハ

照「......それって本当にオカルトの遺伝なのかな」

照「遺伝の場合でも母親と完全に同じ性質になるわけじゃないんでしょ」

久「勿論。さっき挙げた龍門渕の例もそうだけど、同系統でも差異は生まれるのが普通じゃないかしら」

照「なら不自然すぎるよ。明のそれは咲と一緒だもの」

久「そうかしら?咲のオカルトは王牌支配だったけど、明にはそこまでの様子は見られない」

久「まだ『暗刻ができやすい』ってレベルの話。汎用性も高いからこれからどう発展していくかは分からないわ」

久「チャンタが使える日もあるみたいだし、完全に同じだって断言するにはまだ早いでしょう」

照「でも、決勝戦のオーラスは―――」

久「なら他に何があるって言うの?」

久「彼女の状況を説明するものなんて、遺伝以外に何もないじゃない」

照「それは...............」

久の弁に対して私は返す言葉を持ち合わせていなかった。
実際、私が明へ抱いている違和感の原因は私自身にさえ未だに分かっていない。
こうして父親や指導者に探って回っているのもそれを知るためであって、あの日の違和感と恐怖だけが私を突き動かしていた。
142 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:56:43.73 ID:kMGUxpud0
照「とにかく参考になった。大会前なのに時間を作ってくれてありがとう」

久「もう帰るの?」

照「うん。訊きたいことは全部訊けたから」

久「へぇ.........ところで、これは関係ない話なんだけどさ」

久「最近は学校も厳しくてね。休日に部外者が入れるようにするのも色々と面倒なのよ」

久「あなたが昨日の夜になって突然来たいなんて言うから、わざわざ早起きして開庁ギリギリに出勤して」

久「教頭に頭下げて許可貰って.........はぁ」

照「............何をすればいい?」

久「決まってるじゃない。あなたは麻雀のトッププロで、ここは高校の麻雀部室よ?」ニヤリ

久「照に教えてもらいたい部員なんて山ほどいるわ」

照「別にいいよ。仕方ないから」

久「さっすが〜!」

照「実際に卓を囲んで気になった所を指摘する以上のことはできないけど」

久「それでいいのよ。じゃあ早速行きましょうか」
143 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 04:59:48.03 ID:kMGUxpud0
カップに残った紅茶を一気に飲み干してから底冷えする廊下へと出ると、私をまんまと言いくるめた悪女が古めかしい木のドアを開いた。
瞬間、あれだけざわめいていた室内は一斉に静まり返り、二十余人の目線が私達を貫く。

久「はい、一回ちゅうもーく!さっきチラ見せしちゃったけど改めて紹介するわね」

久「こちら麻雀プロの宮永照さんよ」

照「......立川ブルーセーラーズの宮永照です。よろしく」

「「「よろしくお願いします!」」」

久「今日は宮永プロに指導していただけることになりました。貴重な機会だから全員集中して取り組むこと」

「なんで大会前日なんですかー」

「どうせなら別の日にしてくれればよかったのに」

久「うっさい!無いよりマシでしょ!」

久「えー、そしたら次は具体的な練習内容について。まずは宮永プロを入れて四人で.........」

それからは対局の連続だった。
次々にやってくる三人の相手を注意深く観察し、その打ち筋から個人の性質を見抜き、問題点を指摘する。観察は私の得意分野だ。
そんなことを昼食を挟みながら続けていき、時計が三時を過ぎた頃ついに―――
144 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 05:02:13.20 ID:kMGUxpud0
照「......だから、あなたは字牌の読み方をもう少し見直したほうがいい。そんなところかな」

部員「ありがとうございます!失礼します!」タッタッタ

照「ふぅ......最後は明か」

明「はい」

照「正直、私から言えることは殆どないんだけど......」

照「技術的な面は概ね良かったよ。東ラスのリャンカンをチーした後の切り方が気になったくらいで、他は全部及第点」

照「あとは経験さえ積んでいけば読みの精度も上がるはず」

照「よく頑張ってるね」

明「ふふっ、そうかな」テレッ

照「オカルトについても竹井先生の方が今の明の状況には詳しいから。私、遺伝とかよくわからないし」

照「今までどおり先生の指導で打ってれば間違いないと思う」

明「私のオカルトの話知ってるの?お盆に帰ってきたときは何も話さなかったのに」

照「さっき竹井先生から聞いたんだよ。インハイの打ち筋が不自然だと思ってたんだけど、やっと合点がいった」

明「へぇ、お姉ちゃんもなんだ」

照「私『も』?」

明「うん、淡さんも気にしてたらしくて。それで同じような話をしたら納得してくれたみたい」

照「......そっか」

照「そしたらこれでおしまい。次の人を呼んできてもらえる?」

明「はーい」スッ
145 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 05:03:33.06 ID:kMGUxpud0
半荘を通して見た明の打ち筋は終始『普通』の一言に尽きる。
技量的にはいつもの彼女だったし、オカルトも原理は分からないなりにそこそこ使いこなしている様子。
でも結局その程度で、咲の影が映り込むようなことは一度たりとも無かった。


―――ひょっとしてあれは本当に私の気のせいだったんじゃないだろうか?
京ちゃんにあんなことを言っておきながら、真に咲から縛られているのは私なのだ。
だから私だけが、ありもしない咲の亡霊を明の中に見てしまって.........そのようにすら思えてしまう。


それでも私の脳裏にはあの夜の情景が、あの恐怖がこびりついて離れない。
私は明が怖いのだ。不気味なまでに母親の姿を伺わせる宮永明という人物が。


あなたの家族失格だ。ごめんなさい。
雀卓から立ち去る明の後ろ姿を見て、私は心のうちに懺悔した。
146 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/02/10(水) 05:05:01.30 ID:kMGUxpud0
今回はここまで

次回あたり恐らく安価あります
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/10(水) 13:41:35.49 ID:VsAJEYSxo
乙です
148 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/10(水) 21:15:27.21 ID:kMGUxpud0
訂正です
>>135の牌姿は、正しくは以下の通りになります


ドラ:東

11s111999p東東 【西西西→】 ロン:1s
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/11(木) 00:07:11.67 ID:/q9Adf2go
乙ー
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/11(木) 10:27:41.11 ID:LbIis2hu0
乙です
明が照を「お姉ちゃん」って呼んでいるのがルートによっては咲が乗り移って言うための伏線になってそうで怖い
151 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/18(木) 20:56:22.03 ID:Lgjy4hQ60
投下でござる
152 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/18(木) 20:57:16.64 ID:Lgjy4hQ60
【夕方】


久「―――ってことで明日は朝八時に現地集合。詳細はさっき配ったしおりを見てね」

久「私からは以上です」

部長「きょーつけー、礼!」

「「「ありがとうございましたー」」」

久「おつかれさま〜」


ガヤガヤ

「ねえねえ、あの店行ってみない?飯田の駅前に出来たやつ」

「今から?電車なくなっちゃうよ」

「そんなに長居しなきゃ大丈夫でしょ」

久「いいから早く帰んなさい!」

「ひーっ!すみませんでしたー!」

「さようならー!」ダッ


わらわらと固まっていた女子部員が久の一喝で蜘蛛の子を散らすように部室を去っていく。
それでもなお多くの生徒が室内に残り、他愛もない世間話に花を咲かせていた。
153 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/18(木) 20:58:02.13 ID:Lgjy4hQ60
久「まったく......どうせ私がこんなこと言ったって結局遊びに行くのよねぇ、あの子達は」

久「それにしても今日は助かったわ。あの子達にもいい刺激になっただろうし」

照「ならいいんだけど」

久「東京にはいつ帰るの?」

照「明日の夜くらいかな。試合は見に行くつもり」

久「そう.........あの」

照「?」

久「昨日って咲の十三回忌だったのよね」

照「そうだよ」

久「ごめんなさい。私ったらすっかり忘れてて」

照「大丈夫、咲はその程度で怒るような子じゃないから」

照「会える時に会いに行けばいい」

しばらく会話を交わしてから部室を見渡すと、明の姿は既に無かった。
せっかくバイクで来たのだから後ろに乗せていくこともできたが、もう帰ってしまったなら仕方ない。追うように旧校舎を後にする。
おっと、事務室に寄るのを忘れないようにしないと。
154 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/18(木) 20:59:10.95 ID:Lgjy4hQ60
――― 宮永邸


照「ただいま」

シーン

照(......誰も居ない?)

時刻は間もなく七時台へと差し掛かろうとしている。太陽はとっくに沈んだし、そろそろ京ちゃんが夕飯の支度をしていてもおかしくない頃合である。
しかし見る限り私が今いる玄関以外の照明は全て落とされたままで、台所はおろか家中から物音の一つも聞こえないのだ。

とはいえ休日だし京ちゃんや淡が何処か出掛けていてもおかしくはない。
「連絡の一つくらいはしてくれてもいいのに」とも内心に浮かべる私のそうした推測は、リビングの扉を明けた瞬間に棄却された。


淡「Zzz.........」

京太郎「......ムガッ.........Zzz.........」


壁のスイッチに手を掛けた途端、向かい合って座ったまま突っ伏す二人が照らし出される。それから食卓には累々たるビールやカクテルの空き缶。
彼らが白昼堂々―――何時からかは知る由もないにしても、少なくとも日が落ちるよりずっと前から酒盛りに興じていたことは火を見るより明らかだった。
155 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/18(木) 21:00:00.97 ID:Lgjy4hQ60
1. 京ちゃんを起こす

2. 淡を起こす

3. そっとしておく


↓3まで多数決、無効下
156 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 21:01:36.43 ID:e38vM5ID0
3
157 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 21:36:17.82 ID:OxFH8l9FO
2
158 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 21:38:39.71 ID:qTzdrVJp0
1
159 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/18(木) 21:49:02.40 ID:Lgjy4hQ60
うわ、マジか...再安価

↓1から最初に2回選択された選択肢
もし日付跨いだらリセットで
160 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 22:19:53.94 ID:OxFH8l9FO
2
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 22:40:12.24 ID:zSFZSBWR0
2
162 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 00:55:27.32 ID:huUF1py00
2. 淡を起こす


無駄だろうなとは思いつつも淡の肩を両手で揺する。
すると意外にも彼女はその眠たげな顔を私の方へ向けてきて、

淡「あれ、テルーじゃん............うぅぅ、いててて......」ズキズキ

照「おそよう。どうしてこんなことに?」

淡「えーっと.........朝起きたらキョータローと私しかいなくて、特にすることもなかったから」

淡「それで久々に二人で飲むことになって、それから............!」サーッ

照「......淡?」

淡「飲みすぎて覚えてない......です。はい」

アルコールが回って真っ赤になっていた淡の顔から一気に血の気が引く。青どころか行き過ぎて土気色になりそうな勢いだ。

照「とりあえず京ちゃんを起こすの手伝ってよ」

淡「えーっと、キョータローはゆっくりさせてあげようよ」

照「なんで?」

淡「なんでも!」

照「......まあいいか」

淡「あー......頭痛いから私は布団で寝ようかな」

照「晩ご飯はどうするの?」

淡「いらなーい......」スタスタ
163 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 00:56:53.95 ID:huUF1py00
そう言って淡がヨロヨロと階段を二階へと昇っていくと、リビングにはどうすれば良いかも分からず呆然とするだけの私が取り残された。
差し当たっての重要事項はこれから食べる夕飯だが、朝方「昨晩の出費が痛いんで今日は俺が作ります!」と言い切った男は目の前でいびきをかきながら眠り続けている。


ガチャッ

明「ただいまー......ってお酒臭っ!」

照「あ、おかえり」

明「何これ?!あーもうお父さんったら、何処にこんなにビール隠してたんだろ」

明「買い置きすると飲みすぎるからダメって言ったのに」ハァ

照「暇だったから淡とずっと飲んでたらしいよ」

明「淡さんまで......それより、この調子だと晩ご飯はできてないってことだよね」

明「お米も炊けてないし材料も買ってないし.........スパゲッティでもいい?」

照「私は食べられれば何でもいいけど」

明「ならすぐ作るからちょっと待っててね」

照「疲れてるでしょ?私がやるよ」

明「だいじょーぶ。お姉ちゃんに任せるとなんか危なそうだから」

照「」

些細な一言に傷ついた私には見向きもせず、コートを脱いだ明は椅子に引っ掛けられたエプロンを前からかけた。
何というか、年上としての威厳というものはどうやら私にはないらしい。
164 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 00:57:42.26 ID:huUF1py00
明「お父さん、邪魔だからどいてよー......ダメだ、揺らしても全然起きないや」

照「淡が京ちゃんは起こさないであげてって言ってた」

明「えー?しょうがないなぁ」

明「お姉ちゃん、適当に床に転がしといて」

照「床に転がす......?」

次の朝、京ちゃんが寝違えた首を痛そうに抱えていたのは別の話である。
165 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 00:58:32.67 ID:huUF1py00
【翌朝】


――― 長野県内 市街地


二日酔いの京ちゃんと淡に押し付けられる形でハンドルを握り、清澄から走ること一時間半。
城下町の面影を残す町並みの外れ、繁華街の喧騒から少し離れた公園の隣に到着する。
ごく薄く積もった雪の上でスタットレスタイヤが動きを停め、車のドアを開けて外に出ると、会場は観戦に来たらしい人々で込み入っていた。

淡「うぅ、寒い......」

京太郎「よーし、そしたら一丁応援行きますか!」

淡「キョータローは元気だねー」

京太郎「俺だって寒いしな。無理にでも元気出さないとやってられん」

淡「ふーん.........」

照「ほら、早く入ろうよ」


『長野県高等学校麻雀連盟 冬季選手権大会』


大きく看板の立ったホールの中は着ているコートが暑苦しいほどの暖かさだった。暖房が強いせいかもしれないし、ここに集まる人々の熱気のせいかもしれない。
受付で実行委員会の腕章を付けた男性からパンフレットを受け取り、目が痛くなるほど細かい字の対戦表を読みながら観戦室へ向かった。
最前面に取り付けられた大きなスクリーンへ牌が次々に写し出されている。ちょうど一回戦の東ラスが流局に終わり、これから南入しようというところだ。
166 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:00:03.46 ID:huUF1py00
【南一局 一本場】


東家・龍門渕:41000
南家・宮永 :28800
西家・滝沢 :23100
北家・岡田 :1100


京太郎「おいおい......東場に何があったんだ」

照「龍門渕って、あの衣ちゃん親戚?」

京太郎「十中八九そうだと思いますよ」

淡「それならこうなってもおかしくないかも」


南家:宮永(清澄) 一巡目
ドラ:中

147m3478p15s東東南發


明の配牌は凡庸な五向聴。ここから和了りに行くのはかなり厳しいように思える。
そんな彼女が不可解な行動を見せたのは十一巡目、捨て牌が三段目に差し掛かろうという頃のことだった。


明『カン』パラッ

【東東東東→】
167 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:01:13.08 ID:huUF1py00
淡「......!」

照「カン?どうしてここで......」

数巡前にリーチが―――しかも断ラスの北家から掛かっている。
なら嶺上開花狙い?そんなはずはない。そもそも彼女の手牌はまだ二向聴だ。
王牌の前に座る北家の指がゆっくりと槓ドラをめくると、新たに九索が顔を出した。


東家『......』カチャッ


東家:龍門渕(龍門渕) 十一巡目
ドラ:中

45678m135p788s東西 ツモ:南


淡「うわー、掴まされた」

京太郎「もう現物も無いしな。これは俺でも出すわ」

河は断么模様、至って普通の捨て牌だった。
既に二枚切れの南が止まるはずもなく......
168 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:02:11.60 ID:huUF1py00
→打南


北家『ロン』パタッ



北家:岡田(裾花) 十一巡目
ドラ:中 1s

11m227788p33s中中南 ロン:南



北家『リーチ七対子ドラ4......』ペラッ

裏ドラ:1m 8p

北家『......裏4。24000の一本場は24300』

東家『くっ.........はい』チャラッ
169 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:03:07.42 ID:huUF1py00
【南四局】


東家・岡田 :22700
南家・龍門渕:21300
西家・宮永 :27400
北家・滝沢 :28600


淡「ずいぶん平たくなったね」

京太郎「明は二着だな。トップとはたった1200点差か」



西家:宮永(清澄) 七巡目
ドラ:3p

112334m12p12349s ツモ:9s



→打4m


照「......もう一向聴」

京太郎「しかも両面捨てて純チャン三色ですか。相変わらず無茶な打ち方するなぁ」

照「京ちゃんはあの手牌だったら同じことする?」

京太郎「するわけないでしょ。何でもいいから四十符か二翻つけて和了れば勝ち抜けのオーラスですよ?」

京太郎「もしこれが東パツなら狙うとは思いますけど」
170 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:04:13.23 ID:huUF1py00
淡「そんなに難しく考えないで、テキトーに打っちゃえばいいじゃん」

京太郎「お前は考えなしにダブリーしすぎなんだよ!先月くらいのリーグ戦でも―――」


 淡(よし、次のツモ番で西をカンして......)

 北家「ロン。1000」パタッ

 西家「はい」チャラッ

 淡(.........あれっ?)

 実況『萩原が瀬戸熊から發のみ1000点の和了!これにてオーラス終了です』

 実況『しかし瀬戸熊は不自然な放銃でしたが、やはり差し込みでしょうか?』

 実況『そうですねぇ。二着と400差のトップだった大星がリーチ棒分で黒沢の下に沈みましたから』

 実況『せっかくなら大星に一着を取らせない事の方が重要だと思ったんでしょうねぇ』


京太郎「―――って感じで順位点逃してただろ。せっかくダブ南暗刻だったのに」

淡「ぐぬぬ」

照「京ちゃん、プロの試合観てるんだ」

京太郎「あー......まあ、嗜む程度には」

照「そう」

スクリーンに再度注目を移す。
171 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:05:21.40 ID:huUF1py00
南家:龍門渕(龍門渕) 九巡目
ドラ:3p

45666m5678p45(5)6s ツモ:4p



南家のツモ番で平和赤、高目断么三色の聴牌。
彼女が二回戦進出―――つまりトップになるためは跳満ツモが必要だ。となれば当然、


南家『リーチですわ!』タンッ!

→打5s


京太郎「うわっ、ド高目の三筒って全山かよ」

照「六筒二枚、九筒三枚.........全部で九枚残り」

淡「これは厳しいかもねー」

上手くオリることができたとしても南家が自力でツモるのは時間の問題だ。
そう考えれば、既に役牌と嵌張を鳴いている親に何とか和了らせて連荘を狙うのが今の明にとっては得策。
少なくとも彼女の視点にはそう映るはずだけど.........
172 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:06:06.24 ID:huUF1py00
西家:宮永(清澄) 九巡目
ドラ:3p

11233m12p123499s ツモ:南



明『.........』スッ

→打9s


京太郎「九索!?スジすら通ってねえじゃねーか」

淡「ツモ切りしないなんて......やるね、メイ」



東家『.........』チラッ


東家:岡田(裾花) 九巡目
ドラ:3p

(5)55m4(5)6p南【↑東東東】【←435s】



東・赤赤の南単騎、符ハネして7700。
これの直撃を喰らえば一気に逆転して親がトップに浮上し、その時点で試合は終わっていた。
173 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:07:47.46 ID:huUF1py00
親の河には高打点の気配は全くしないが、確かに万が一ということはあり得る。
しかしそうであったとしてもオリるのであればわざわざ九索を切る必要はなく、既に他家へ通っている一二筒から落としていけば良いのだ。
彼女は和了るつもりだ。その上で南を押さずに手元へ残し、九索から回していく選択を取ったのだろう。

明にしては冴えすぎなくらいの場読みだった。



明『ツモ』パラッ


西家:宮永明(清澄) 十六巡目
ドラ:3p

112233m12p123s南南 ツモ:3p


明『3000-6000です』



<終局>

龍門渕:18300
宮永 :39400
滝沢 :25600
岡田 :16700


〜〜〜〜〜
174 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:09:10.12 ID:huUF1py00
明による海底直前の跳満ツモが一回戦へ終わりを告げた。
どよめいていた人々もやがて落ち着くと次々に席を立ち、その流れに従って私達もおもむろに腰を上げて出口へと向かう。

京太郎「次の試合は三十分後だな。二回戦B卓」

照「その後の予定は?」

京太郎「昼休憩挟んで一時半から三回戦、そこから準決勝決勝と順調にいけば六時に終わる予定です」

照「五試合ってことは......六十人くらいか。参加者、結構少ないんだね」

京太郎「先週あたりに予選があったらしいですよ」

照「そうだったんだ」

淡「.........」

京太郎「淡、具合でも悪いのか?」

淡「ううん、全然そんなことないんだけど......」

淡「.........さっきの試合、やっぱり不思議だったなって思ってさ」

京太郎「何がだよ。女子の麻雀がブッ飛んでるのはいつものことだろ」

淡「そーゆー話じゃないって。メイのこと!」
175 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:10:38.01 ID:huUF1py00
淡「南一局にあった謎の大明槓、あれってラスの子に和了らせてりゅーもんぶちを削ろうとしたんでしょ」

京太郎「満貫手が一気に三倍満に化けたアレか。まさか、偶然だろ」

淡「偶然じゃないよ。そもそもメイは理由もなくカンなんてしないはずだし」

京太郎「自分のカンで北家に槓ドラと槓裏が乗って、しかもトップ目が当たり牌を掴むのを分かってたってことか?」

京太郎「んなアホな話があるかっての!第一、明にはドラなんて見えないだろ」

淡「サキのオカルトだよ。キョータローはメイのオカルトのこと知らないの?」

京太郎「えっ!?えーっと.........」チラッ

照「.........」
176 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:11:09.15 ID:huUF1py00
淡「昨日メイは『暗刻が出来るときには牌は見えない』って言ってた」

淡「それなのにあの場面では、まるで王牌を全部見透かしてるみたいに―――」

照「淡、落ち着こう」

淡「テル?」

照「いいから。ほら、一回そこに座ろうか」

照「京ちゃんも少し席を外して」

京太郎「あー......俺、ちょっと外で一服してきます」

照「そうしてくれると助かる」

周囲では何人かの通行人が遠巻きにこちらを伺っていた。
正直、あまり目立ちたくはない。

照「............」

淡「テルー......?」


その後も大会は恙無く進んでいったが、決勝戦が終わる頃にはタイムリミットが迫ってきていた。
結果は第二位。優勝はどちらも強豪校の三年生だったから、十分に健闘したと言えるだろう。
表彰式が終わるのを待つことはできず、明にも会わないうちに私達は駅へと向かった。
177 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:15:05.57 ID:huUF1py00
【夜】


――― 特急 車内


戸惑いを隠せない。昼間にホールのロビーで起こった出来事以来、私とテルの間には何とも形容し難い気まずい雰囲気が漂っていた。
私があんなことを口走ってしまったからだろうか?ひょっとして気が触れてるとか思われてしまったんじゃないだろうか?
でもテルの態度はそういった様子ではなかった。何か言いたいけど抑えているかのような、そんな様子だ。

そもそもテルやキョータローは私と同じように、メイに対して違和感を覚えているのだろうか。
少なくとも金曜日にキョータローの家へ着いてからの三日間に彼女がメイに向ける眼は明らかにおかしかった。
怯えているのか、蔑視しているのか、まるでそれ自体を遠ざけるような眼。少なくとも可愛い姪っ子を見つめるものじゃない。

一昨日の夕方―――テルがキョータローを呼び止めて墓地で交わした密談。
私はてっきり彼女もメイの異変について察知していて、それに関する話をしていたのだと思っていた。


 淡「サキのオカルトだよ。キョータローはメイのオカルトのこと知らないの?」

 京太郎「えっ!?えーっと.........」チラッ

 照「.........」


数時間前の記憶が掘り起こされる。キョータローの反応からしてもそのことに間違いはないだろう。
178 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:15:47.24 ID:huUF1py00
だが同時に、ここには別の問題も存在するのだ。


 京太郎「......俺、照さんに求婚されてさ」

 淡「―――それ、いつの話......?」

 京太郎「......昨日の夕方だ。最初は冗談かと思ったけど本気らしい」


詳しく聞いておけば良かったと後悔している。
もっとも当の本人がすぐ隣に座っているわけではあるが、彼女自身に尋ねるの度胸はない。


時刻は午後八時半を少し回り、列車が山梨県境に差し掛かった頃のことだった。
日曜の夜だというのに乗客の姿は殆どなく、このグリーン車も私とその隣に座るテルのたった二人きり。
駅弁を平らげたばかりの私に対し、テルは淡々とこう切り出した。
179 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:16:35.53 ID:huUF1py00
照「淡」

淡「んー?」

照「明のオカルトの事。淡も色々と気になってるみたいだから一つだけ」

照「これ以上この話に関わらないで」


沈黙。
手元の文庫本に落とした目線を少しも動かすことなく、確かにそう言い放ったのだ。
180 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:17:15.41 ID:huUF1py00
淡「え?」

照「淡は明の問題には触れないで欲しい」

淡「ちょ、ちょっと待ってよ!テルの言ってること全然わかんないんだけど!?」

照「何度でも言うよ。明の問題には―――」

淡「そういうことじゃなくて、えーっと、その.........どうして?」

照「宮永家の問題だから」

照「これは私と京ちゃんが解決すること。あなたには関係ない」

淡「............つまり、テルは私にこう言いたいんだね」

淡「『お前は部外者だから首を突っ込むな』って」

照「乱暴な言い方をすればそういうことになる」
181 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:18:14.76 ID:huUF1py00
私の中で何かが崩れ去る音がした。

テルとは高校のときからの仲だし、キョータローは大学で四年間を共にした親友だ。
プロとして契約したチームでは高校時代から因縁の相手だったサキと仲間になり、八年間も一緒に戦った。
咲がこの世を去ってからも私はずっとキョータローやメイの隣に寄り添い、彼らとかけがえのない関係を築いてきた。

彼女は―――宮永照は、私が積み上げてきたモノを否定したのだ。
宮永家の人間である彼女自身が。
182 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:20:44.44 ID:huUF1py00
淡「へぇ......それにしては、まるでカイさんとアイさんも関係ないみたいな口ぶりだったけど」

淡「あの二人も部外者みたいじゃん。同じ宮永家なのに」

照「違う。お父さんとお母さんに心配かけたくないだけ」

淡「だいたいさぁ。偉そうに言うけど、そもそもテルって本当にメイの家族なの?」

照「.........どういうこと?」

淡「遠く離れた東京に住んで、一年に何回か会うだけ。伯母さんと姪っ子なんて家族っていうより親戚でしょ」

照「そんなことない。私は明の家族だし京ちゃんの家族」

淡「そもそもキョータローに抱かれたからって勘違いしちゃってさ」

淡「アイツは自分で自分を誤魔化してるみたいだけど、結局キョータローが必要としてるのはサキなんだよ」

淡「たまたまサキのお姉ちゃんだったってだけでテルそのものを愛してるわけじゃない」

照「違う」

淡「メイのお母さんもサキだけだよ。そのサキも今は......かわいそうなメイ」

淡「テルだってわかってるんでしょ?だから今更キョータローと結婚したがってるんだ。必死に彼女の代わりになろうとして」

淡「健気だね、テルは」

照「違う!」

淡「でもキョータローにとっての家族はメイだけだし、メイにとっての家族はキョータローだけ」

淡「それが二人にとっての『宮永家』だよ」

照「違うって言ってるでしょ!!」


文庫本はとっくにテルの手を離れて床へと落ちていた。
何も怖くない。たとえ彼女の顔が見たことのない形相へと変わり、声色が強張り、爪が食い込み血が出るほどにその右手を握りしめていたとしても。
183 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:22:16.71 ID:huUF1py00
照「.........仮にそうだったとして、だからどうしたっていうの」

照「私が家族を......宮永家を守るんだ」

照「淡、お願いだから私の家族を壊さないで」

淡「そんなことしないよ。私だってみんなが大好きだもん」

照「淡が?.........ふふっ、冗談言わないでよ。あなたが好きなのは私たちじゃない」


照「京ちゃんでしょ」

淡「.........!」


照「彼にいい格好をしたいから明の面倒も甲斐甲斐しく見てる。彼が聞いたらきっと幻滅するよ」

淡「違っ、そういうつもりじゃ―――」

照「ほら。都合が悪くなると『違う』としか言えなくなる」

照「さっきまでの私と今の淡、何も変わらないでしょ」

照「ずっと横恋慕ばかり引き摺ってないで大人になればよかったのに......バカな娘」

淡「.........」

照「あなただって咲にはなれない。それは絶対的な事実なんだよ」

淡「......そんなこと知ってる。別にサキにもサキの代わりにもなるつもりなんてないもの」

淡「私は大星淡だから」
184 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:23:04.46 ID:huUF1py00
確かに私は宮永.........いや、須賀京太郎のことが好き。アイツのことを男として見てるし、私のことを女として見てもらいたい。
でも宮永咲の代替品として扱われるなんて絶対に嫌で、『大星淡』として彼に愛してもらいたい。

テルは『宮永家』に執着している。だから自分がサキになって、既に壊れてしまったものを直そうとしてるんだ。
そんなこと、もう絶対にできないのに。

懐から出したティッシュペーパーを黙ってテルに渡すと、彼女は右手に滲んだ血を丁寧に拭き取った。
血。宮永家の血統。何故彼女をこれほどまでに駆り立てるのだろうか。
185 : ◆copBIXhjP6 [saga]:2021/02/19(金) 01:24:01.51 ID:huUF1py00
一時間以上してようやく特急が見慣れた駅へ入構していく。
キャリーケースを持ってプラットホームに降り立った瞬間、束の間の平穏から氾濫する人の群れへと帰ってきたのを感じた。
改札を出て別々の方向へ歩き始めるまで、私と彼女の間にはたった一つの会話しかなかった。


淡「じゃあね。また明日」

照「おやすみ」
186 : ◆copBIXhjP6 [sage]:2021/02/19(金) 01:26:26.85 ID:huUF1py00
今回はここまで

しばらくお休みします。
最短で来月2週目くらい、遅くて4月頭から更新再開です。
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 03:29:18.31 ID:kOjpuZNno
乙ー
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 09:32:33.34 ID:PJUifc430
乙です
二人とも互いの痛いところついていて怖ーいドロドロしてきましたね
でも続きが気になる
189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 10:41:01.03 ID:pC5RwsIYo
乙です
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/19(金) 16:49:32.02 ID:oegDByE40
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/25(木) 14:30:18.97 ID:keTR0CZT0
192 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/03/10(水) 07:28:58.59 ID:ruMXd7oE0
高校時代、麻雀のためにわざわざ上京してきた同級生は言っていた。

「東京ってどこもビルばっかりだと思ってたけど、案外そうでもないんだね」

当たり前だ。山手線の内側ならまだしも、こんな郊外まで超高層建築で埋め尽くされては息が詰まって堪らないだろう。
緑は程々に多いし空は広い。学校の近くを少し歩けば畑だって幾らでも見つかる。
三年間を麻雀に費やした私がプロ入りを蹴って進学した大学も、そんな閑静な街並みに溶け込んでいた。
193 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/03/10(水) 07:29:37.82 ID:ruMXd7oE0
麻雀が嫌いになったとか将来の目標が別にできたとか、断じてそういう理由ではない。
ただ、もう少しだけ時間が欲しかっただけなのだ。
このまま社会に出て一人前になるには不満足だった。
私の人生―――私の青春には何かが欠けていて、せめてそれを探し出さなくてはならないような気がしていた。
194 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/03/10(水) 07:31:03.32 ID:ruMXd7oE0
敷地の一番北端に建つ、部外者が通れば半ば打ち捨てられているのだと勘違いしてしまうような講義棟。
あまり人通りのない廊下を右往左往し、やっとの思いで辿り着いた扉を数回ノックする。中から男の声が聞こえてきた。


「どうぞー」


扉が自身を支える蝶番を軋ませながらゆっくりと開く。
声の主は夕日が差し込む部屋の窓際に立っていたが、にこやかに私の方へ振り向き、

???「いらっしゃい」

淡「あのー......ここって麻雀部室だよね?私、入部したくて来たんだけど」

???「悪い、俺も最近入部したばかりでさ。勝手が分からないんだ」

???「そのうち先輩が来ると思うから適当に座っててくれ」

男はどうやらお茶を入れてくれるつもりらしく、電気ケトルに水を入れて沸騰するのを呑気に待っている。
一方で雀卓の椅子に座るや否や早速暇を持て余してしまった私は、そんな彼の観察をすることにした。
195 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/03/10(水) 07:32:44.85 ID:ruMXd7oE0
身長はかなり高い。普段から周囲に比較対象がいないからよくわからないけど180cmくらいはありそうだ。
言葉には訛りが少し混じっていた。さっきの会話からして新入生だろうから、地方出身で最近上京してきたのかもしれない。
服装はいかにも普通に見える。新宿あたりを歩いていれば数分に一度くらいのペースで見かけそうな量産型の衣類を身にまとっており、奇抜な要素は全く見当たらない。

東京に腐るほど闊歩する、特に面白みのない至って平凡な田舎者の大学生。
そんな彼の持ち物のうちたった一つ―――私と同じ綺麗な金髪だけが、一際目を引いていた。


???「はいよ」コトッ

淡「ありがと」

???「なあ、君って白糸台高校の大星選手だろ?」

淡「......そうだけど」


またか。
三年間インターハイに出場し続け、常に注目を集めてきた。数え切れないくらい取材も受けたし、自分がこの業界で有名になったという自覚はある。
こうして初対面の相手に顔が知られていることも、話しかけられることだって全く珍しいことじゃない。
だからこのチャラそうな男が話をそう切り出した時、こいつも所詮は有象無象の一人なんだろうかと思った。つまんない。
196 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/03/10(水) 07:34:11.51 ID:ruMXd7oE0
淡「だから何?」

???「いや、どうってわけじゃないんだ」

淡「なら聞かないでよ」

???「なんだよ。冷たいやつだな」

淡「初対面の女の子から個人情報聞き出そうとする男なんて不審者じゃん」

???「なんつー言い草だ!そもそもお前の方が勝手に来たんだろうが」

淡「だからって、誰かも知らない相手に優しくする必要なんてないでしょ」

???「へーへーそうですかい......ま、そういうことなら自己紹介くらいしとくか」

京太郎「俺は清澄高校出身の須賀京太郎だ。よろしく」

淡「うそっ、清澄!?」
197 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/03/10(水) 07:35:27.86 ID:ruMXd7oE0
清澄高校―――東場の片岡優希にデジタル打ちの原村和、そして嶺上使いの宮永咲。私たちにとっては少なからぬ因縁を持つ相手だ。
そんな彼女達と同門であるこの人物、須賀京太郎.........


淡「って誰?」

京太郎「おい」


これが、私とキョータローの出会いだった。
198 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/03/10(水) 07:36:42.26 ID:ruMXd7oE0


<大星淡の回想>

199 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/03/10(水) 07:38:24.27 ID:ruMXd7oE0
今回はここまで

色々あって幸運にも最短で戻ってこれました
こんな感じでしばらくは過去編になります
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/10(水) 10:19:20.50 ID:ziDSbvnu0
更新きたああああああああ
乙です
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/10(水) 10:35:29.16 ID:y0dtlDjso
待ってた
あわあわかわいい
202 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/03/10(水) 13:50:49.89 ID:ruMXd7oE0
【19歳 4月】


――― 麻雀部室


不快な金属音が再び部屋に響き渡る。誰かが部屋へ入ってきたらしい。
椅子を回して背後に向き直ると、凛とした女性が丁度ドアノブから手を離したところだった。

ゆみ「須賀か。今日は早かったんだな」

洋榎「おーっす!」

京太郎「加治木部長、こんちわっす」

洋榎「なんや須賀、ゆみだけに挨拶しよってからにうちには何もナシか?」ゲシッ

京太郎「こ、言葉の綾ですって!愛宕先輩!」

ゆみ「ところでそこに白糸台の大星淡が座ってるように見えるんだが、私の気のせいかな」

京太郎「別に人違いじゃないですよ。入部希望だとか」

洋榎「なるほどなぁ......プロ入りの話も全然聞かへん思うとったら、まさかこんな所におるなんてな」

淡「私がここにいるのってそんなに変?」

ゆみ「ははっ、まさか」

洋榎「うちらのダチでもっと変な奴なんて山ほどおるで」ケラケラ

京太郎「そういえばモモは来てないんですか?」

ゆみ「ああ、モモなら―――」

モモ「私はここっすよ」スッ

淡「うわぁっ!?」
203 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/03/10(水) 13:51:30.00 ID:ruMXd7oE0
驚きの声を一瞬上げた後、私はしばらく何も発することができなかった。
この部長らしき人物の隣―――確実に何もない空間からヒトが突如として立ち現れたのだ。
手品とかオカルトとかそういう話ではない。そもそも生きた人類とは思えないし、たぶん幽霊だろう。
口があんぐりとしたまま塞がらないの見た彷徨える魂(暫定)は実に心外そうな顔をして、

モモ「失礼っすね!人をオバケみたいに」

京太郎「モモが面白がってそういうことばっかりするからだろ」

モモ「だからって普通ここまで驚くっすか?」

淡「――――――!」

京太郎「誰だって最初はこうなるに決まってる」

モモ「まあ確かに、初めて会った時のキンパツさんなんて......」

洋榎「なんや楽しそうな話しとるやん。須賀がどんなアホ面晒したって?」

京太郎「あー分かった分かった、俺が悪かったからこの話はもう終わり!」

京太郎「それ以上言わなくていいからな!?」

淡「.........」ポカーン

ゆみ「二人とも静かにしてくれ。洋榎も一々乗るな」

洋榎「ゆみはマジメちゃんやなぁ」
204 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/03/10(水) 13:52:02.42 ID:ruMXd7oE0
ゆみ「せっかくの新入部員だっていうのに......まったく、来てくれて早々騒がしくて済まなかった」

ゆみ「私の名前は加治木ゆみ、三年生だ。一応ここの部長をしている」

モモ「私は東横桃子、一年生っす」

京太郎「須賀京太郎だ。改めてよろしく」

洋榎「うちは三年の愛宕洋榎や!よろしゅーなー」

淡「よ、よろしく.........」


あまりにも賑やかな面々に一抹の不安を覚えはしたものの、こうして私は麻雀部へと迎え入れられた。
もっとも、数日後の私が馴染むどころか部内を更に騒がしくしていたのは言うまでもない。
205 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/03/10(水) 13:52:38.47 ID:ruMXd7oE0
先走って尻切れトンボだったので少し追加
暇すぎて書くくらいしかやることないんじゃ
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/10(水) 16:42:33.25 ID:ziDSbvnu0
あわあわかわいい
乙です
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 00:08:35.09 ID:EuQrluB8o
乙!
208 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/03/11(木) 08:45:21.44 ID:xzi4dPFd0
投下に候
209 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/03/11(木) 08:45:55.97 ID:xzi4dPFd0
【19歳 6月】


大学生活にも慣れ、花粉症の時期が終わり、梅雨もおおよそ半ばまで過ぎ去った初夏の季節。
新たな麻雀部は高校時代のそれと比べれば遥かに温いものだったが、そもそもこれは団体戦よりも圧倒的に個人戦へ傾倒しているインターカレッジの特徴に起因するものだ。
部活動は普段の対局練習や大会出場の調整が主な仕事で、普通は同じ大学に所属する雀士の持つ寄り合い程度の存在でしかない。
不真面目というわけではなくそういう風土、そういう風潮なのである。
あの頃の規律ある雰囲気や目的意識とかけ離れた環境にいくらかの戸惑いや不満を抱えつつも、私は講義が終わる度に足繁く部室へ通っていた。

そんな数ヶ月間のお陰だろうか、私はこの環境を取り巻くいくつかの事柄を知ることが出来た。
この建物に出入りする人物の顔ぶれは大方決まりきっていて、居を構える研究室の住人や映研の部員たちが主たる面子であるということ。
隙間風や雨漏りが酷いのは建物が古いせいで、何とか応急処置しながら当局に訴え続けるしかないということ。
それから、この部活には全然人が集まらないということだ。
210 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/03/11(木) 08:46:38.22 ID:xzi4dPFd0
――― 麻雀部室


タンッ!

京太郎「ロンッ!」パタッ

淡「げっ」

京太郎「裏は......乗らずか」

京太郎「1500の一本場は1800」

淡「やっす!」

ゆみ「大星、和了りは和了りだ」

淡「はーい......」チャラッ


<終局>


東横 :24300
大星 :20900
加治木:26200
須賀 :28600


麻雀部は書面上十数名の部員を抱えていることになっている。しかし四年生は就活で忙しい上、私の後に入部した数人の新入生はすっかり顔を見せなくなっていた。
そうして卓を囲む面子が固定化されるにつれて次第に明瞭になってくるのが実力差だ―――端的に言えば、私が一番上でキョータローが一番下。
しかしこの日に限ってはお約束通りに事は進まず、私は珍しく彼の後塵を拝していた。
211 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/03/11(木) 08:47:55.78 ID:xzi4dPFd0
淡「その手ならもうちょっと育てればよかったじゃん」

京太郎「俺は堅実に生きる方が性に合ってるんだよ」ガラガラ

モモ「トップだし間違いじゃないと思うっすよ」ポチッ ウィーン

ゆみ「さて、どうしようか?このままもう半荘やってもいいが......」

淡「疲れたから一回休もうよ。洋榎先輩が居ないから抜け番作れないし」

京太郎「あの人、こんな時間までどこで油売ってんだか」

ゆみ「洋榎か.........はぁ」チラッ

モモ「携帯?」


Date:20XX/7/9 12:48
From:愛宕洋榎
Sub: Re:

今起きた
ゆみから借りたDVDのせいやわ
経史の代返頼んだで


京太郎「また自主休講か。あの人、こんなんで卒業単位足りるのかよ」

淡「教授がちゃんと出席取る講義は休まないんだってさ」

モモ「へぇ......なるほど」

ゆみ「......モモ、絶対にそこは真似するなよ」

モモ「そ、そういうつもりじゃないっすよ!」

ゆみ「言っておくけどフリじゃないからな。冗談抜きに」
212 : ◆copBIXhjP6 [sage saga]:2021/03/11(木) 08:49:11.85 ID:xzi4dPFd0
その時、どこか遠くの防災無線から『七つの子』が聞こえてきた。
アルミサッシが切り取る雨降りの風景は朝起きた時と同じような灰色のままで、時間の移り変わりを読み取ることは到底出来そうにない。こんな空が何週間も続いている。
私は背後の壁に掛けられた時計を見ることでようやく、現在の時刻が既に夕方の六時を回っていることに気がついた。

京太郎「もうこんな時間か。そろそろお暇しようかな」ガタッ

モモ「何か予定でもあるっすか?」

京太郎「ああ、ちょっと野暮用で」

モモ「結局今日はキンパツさんの独壇場だったっすねー」

淡「ま、待ってよ!私一回も勝ててないんだけど!?」

京太郎「そりゃ俺が全部勝ってるしな」

淡「あと一半荘だけ!」

京太郎「えー.........半荘は無理だけど、東風くらいなら」

淡「ゆみ先輩!いつもの使っちゃダメ?」

ゆみ「ダメだ。全局ダブリーじゃあ練習にならないから今日は禁止にしてるんだろう」
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