【モバマスSS】まゆ「大切な日を、大切な人と」

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47 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/14(日) 18:35:35.94 ID:q3m1PlvQ0
ちひろ「....」

ちひろ「よく『時間が悲しみを癒してくれる』なんて言いますが」

ちひろ「あれは半分嘘なんです」

P「嘘?」

ちひろ「癒してくれるのではなく」

ちひろ「時間の経過でその人の記憶を失い」

ちひろ「忘れていくだけ」

ちひろ「もしも世界が、それを『癒し』に含めるのだとしても」

ちひろ「癒しが終わる前に人の寿命は尽きていると思います」

ちひろ「気が遠くなるほど、長い道のりなんですよ」

ちひろ「別れは」

P「....」
48 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/14(日) 18:36:12.90 ID:q3m1PlvQ0
ちひろ「....この事務所にいる人たちはみんな、Pさんが亡くなってから」

ちひろ「必死で前を向いて、仕事に取り組んできました」

ちひろ「いえ、無理やり前を向くしかありませんでした」

P「....」

ちひろ「特にアイドルの子たちは、立ち止まっている暇なんてありません」

ちひろ「裏方の人間が1人いなくなっても、芸能界は止まりませんから」

P「ですよね....」

ちひろ「まゆちゃんもその1人です」

P「....」
49 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/14(日) 18:37:07.95 ID:q3m1PlvQ0
ちひろ「Pさんがどこかで見ていると信じて」

ちひろ「あなたがいた頃の彼女を、遥かに超える輝きを」

ちひろ「放っています」

P「一目見て驚かされましたよ」

P「まゆの成長には」

ちひろ「....」フッ

ちひろ「....」スッ

ジャラ
50 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/14(日) 18:38:26.84 ID:q3m1PlvQ0
P「これは?」

ちひろ「1年も見ていないと忘れてしまいましたか?」

ちひろ「社用車の鍵です」

P「?」

ちひろ「今日1日、使えるようにしておきました」

P「....でも俺はここから出ない方がいいって」

ちひろ「幸い今日は、たまたま事務所にいる人も少ないですし」

ちひろ「マスクに帽子に眼鏡、変装道具も持ってきました」

ちひろ「騒ぎにならないようにしてください」

P「....」

P「それは有り難いですけど、色々ありすぎて心ここに在らずというか」

P「正直、どこかへ行く気分じゃないんですよ」

ちひろ「....」
51 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/14(日) 18:39:02.04 ID:q3m1PlvQ0
ちひろ「....わかってますか」

ちひろ「今日はまゆちゃんの誕生日ですよ」

P「知ってますよ、丸1年経ってるんですから」

ちひろ「待っていてくださいって言われたんですよね?」

ちひろ「だったら、有事に備えて車くらい持っていてください!」

P「使うかなあ....」

ちひろ「知りませんよそんなこと」

P「....いいんですかね、こんなことしちゃって」

ちひろ「....」
52 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/14(日) 18:40:04.65 ID:q3m1PlvQ0
ちひろ「....そんなこと、私が聞きたいです」グッ

P「....?」

ちひろ「....なんでPさんが戻ってきたとかなんとか」

ちひろ「難しいことは明日に回しましょう!」

ちひろ「とにかく今日は、わかっていますよね?」

P「....はい」

ちひろ「お願いしますよ」

ガチャリ

ちひろ「....」

ちひろ「....はぁ」
53 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/14(日) 18:40:45.50 ID:q3m1PlvQ0
常識では考えられない、理解できない事象が起こっているのだから、
私の選択が正しいのかは、誰にもわかるはずがない。
それでも彼女の、佐久間まゆの1年間を見てきた私による、
これくらいの肩入れならば、神様は許してくれないだろうか。

ただのエゴなのだろうか。エゴならばそれでもかまわない。
明日、私がどれだけの責任を問われても、甘んじて受け入れよう。
だからどうか、17歳になった彼女を、救って欲しい。
54 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/14(日) 23:11:19.57 ID:q3m1PlvQ0
ガチャリ

まゆ「お待たせしました」

P「お疲れ、どうだった?」

まゆ「特に問題なく、先方の期待に応えられたと思います」

P「さっすが」

まゆ「ありがとうございます」

P「で、どうする?」

P「ちひろさんから社用車を使っていいって言われたんだけど」

まゆ「....?」
55 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/14(日) 23:12:07.36 ID:q3m1PlvQ0
まゆ「それは大丈夫なんですか?」

P「うーん、俺もそう思ったんだけどな」

P「あった方が便利だから持ってけって」

まゆ「....」

P「ま、ちひろさんもこう言ってるわけだし」

P「この後は付き合うぞ」

P「まゆの行きたいとこやりたいことがあるなら」

P「なんでもするよ」

まゆ「....」
56 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/14(日) 23:12:50.35 ID:q3m1PlvQ0
まゆ「....それなら」

まゆ「ご飯、食べませんか」

P「飯?そういやもうそんな時間か」

P「どこ行く?」

まゆ「....まゆのお家で」

P「まゆの!?」

P「さ、さすがにそれはマズくないか....?」

まゆ「でも、外で食べるわけにはいきませんし....?」

まゆ「まゆの家なら誰にも見られず、気兼ねなく過ごせると思います」

P「それはそうかもしれないが

まゆ「お願いします」

P「ああ....」
57 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/14(日) 23:13:20.02 ID:q3m1PlvQ0
P「....」

まゆ「....」

まゆ「....こうしてプロデューサーさんに運転をしてもらうの」

まゆ「凄く久しぶりで、不思議な感覚です」

P「そうか、まゆにとっては久しぶりなんだよな」

P「俺はつい昨日もまゆを乗せた感覚なんだが....」

P「このギャップにはしばらく慣れそうにないな」ハハハ

まゆ「....そうですね」
58 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/14(日) 23:14:19.13 ID:q3m1PlvQ0
プロデューサーさんの背中を見ながら会話をするのは、1年ぶり。
こうすれば前のように話せていたので、お仕事に行く前、正面に座って顔を見つめながら話したのは失敗でした。
時間が経つにつれて緊張は解け、今までのように戻れたつもりでいましたが、
どうしても身体のどこかは強張っていて、気が付いたら手をぎゅっと握りしめているんです。

プロデューサーさんが亡くなってから、私は脇目も振らず、周囲の雑音が紛れ込まないように、
アイドル活動を続けました。気力の源はもちろん、プロデューサーさん。
死後の世界があるかはわかりませんが、それでもあの人なら絶対に見てくれている。
むしろ身体を失ってしまった分、どの現場もどのお仕事も見られているような気になってしまって....。
成長したと言ってくれたのは、以前よりもさらに努力を重ねたからなのかもしれません。
59 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/14(日) 23:16:16.59 ID:q3m1PlvQ0
そうして私はこれまで以上に、プロデューサーさんのために頑張りました。
瞼を閉じるたびに、二度と会えないあなたを思い浮かべて。
瞼を開けるたびに、どこかで見ているあなたを探して。
1日が過ぎれば、心の中のあなたに語りかける。

だからこの1年、忘れた日なんてありませんでした。
でもこれは未練ではなく、別れを受け入れるために必要なこと。
私は今、あなたが亡くなったことをゆっくりゆっくり消化していっているんだと、信じて。
60 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/14(日) 23:22:22.33 ID:q3m1PlvQ0
そのはずだったんです。だけど実際に再会してしまうと、どこも違わないはずなのに、
何かが違うような、気持ちの悪い感情を抱きました。それで気づいてしまったんです。
私は、思い出の中のプロデューサーさんと時を重ねているつもりだったのに、
いつの間にか、私の中にしかいない新たなプロデューサーさんを生み出していたことに。

忘れていないと思っていた本物のあなたは、もう私の中にはいないのかもしれない。
そう思うと、一切相違のない本物として帰ってきたあなたの言葉に、私は応える資格があるのかがわからなくなってしまって。

やり場のない虚しさを抱えたまま、お家に誘ってしまったのはなぜなんでしょう。
こんなことをしても、罪悪感が深まっていくばかりで、幸せになれるとは思えません。
けれどもどこかで、プロデューサーさんと一緒なら答えを見つけられるかもしれないなんて、
無責任な夢物語も浮かんでいました。

『成長した』と言ってくれた私は、結局あなたに助けてもらおうとしているんです。
61 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:34:33.71 ID:RXzrGcDR0
まゆ「あと15分くらいでできますから」

P「はーい」

まゆ「....」ショリショリ

まゆ「....」サッサッ

P「....」

P「....運転中とは逆になっちゃったな」

まゆ「え?」

P「俺がまゆの背中を見て話してる」

まゆ「....ふふ」

P「なんだよ」

まゆ「いえいえ」
62 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:35:12.92 ID:RXzrGcDR0
P「....」パク

P「....」モグモグ

まゆ「....」ジー

P「....」ゴクン

P「そんなに見られると食べづらいな」

まゆ「すみません、気になってしまって....」

P「や、でも本当に美味いよ」

P「1年ぶりの食事には贅沢過ぎるくらいだ」

まゆ「プロデューサーさんにとっては昨日ぶりなんですよね?」

P「なんとなく言ってみたかっただけ」

まゆ「もう....」
63 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:35:54.84 ID:RXzrGcDR0
P「なんかまゆの誕生日だってのに、俺が祝われてるみたいで悪いな」

まゆ「昔から復活祭というものがありますし」

P「それはまた違うが」

まゆ「それに、毎年来るまゆの誕生日よりも」

まゆ「プロデューサーさんが帰って来てくれたことを祝いたいです」

P「それは嬉しいな」

まゆ「....」

P「....」
64 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:36:38.82 ID:RXzrGcDR0
P「....表情はお祝いって感じじゃないな」

まゆ「!」

まゆ「これは、違いますよ....」エヘ

P「....大丈夫か?」

まゆ「....大丈夫です」

P「....」

P「まゆから誘ってくれたから、もういいのかなって思ってたけど」

P「....やっぱり怖いかな」

P「それとも気持ち悪いとか」

まゆ「それは違います!」
65 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:37:27.19 ID:RXzrGcDR0
まゆ「プロデューサーさんだとわかってからは、絶対に思っていません....」

P「....悪い」

まゆ「....いえ」

P「もし俺が聞けることがあるなら、話してくれないか」

P「今は違うかもしれないが、一応俺の中ではまだ」

P「まゆのプロデューサーなんだ」

まゆ「....」

まゆ「....」

まゆ「....」
66 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:38:12.45 ID:RXzrGcDR0
まゆ「....プロデューサーさんが帰ってきたとわかった時」

まゆ「....すごくうれしかった」

まゆ「....でも、能天気に喜べたのは最初のうちだけでした」

P「....」

まゆ「帰ってきたプロデューサーさんが怖いわけではないんです」

まゆ「幽霊でもゾンビでも、そんなこと問題ではありませんから....」

まゆ「....まゆは」
67 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:38:56.14 ID:RXzrGcDR0
まゆ「亡くなったことを静かに受け入れて」

まゆ「自覚のないまま、あなたを」

まゆ「思い出の中だけの存在にしてしまっていたこと」

まゆ「そして」

まゆ「そんな悍ましいことを平気でやっていた自分自身が」

まゆ「....たまらなく、恐ろしい」

P「....」

まゆ「なのに、まゆはこうして」

まゆ「プロデューサーさんに、縋ろうとしているんです」

まゆ「....本当にごめんなさい」

P「....」
68 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:40:37.28 ID:RXzrGcDR0
P「....まゆが苦しんでるのは、結局俺のせいでもあるよ」

まゆ「....違います」

P「違わない」

P「お前が抱いてる気持ちは、人の死と対峙した時」

P「誰もが持つものだ」

P「だから問題は、理由もなく帰ってきてしまった俺の方にあるわけさ」

P「俺、イレギュラー、まゆ、レギュラー、OK?」

まゆ「....」
69 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:41:14.96 ID:RXzrGcDR0
まゆ「....プロデューサーさんはそうやって、まゆの欲しい言葉しかかけてくれません」

P「別に媚びへつらってるわけじゃない」

P「俺が伝えたい言葉を、自分で選んで発してるだけだ」

まゆ「あなたのことを忘れようとしていたんですよ!」

P「それでいいんだよ」

P「あえて辛いことや苦しいことを直視し続ける必要なんてない」

まゆ「他の人にとってはそうかもしれません....」

まゆ「でもまゆにとってのプロデューサーさんはっ!」ウルウル

まゆ「プロデューサーさんは....」ポロ

P「....」
70 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:41:43.70 ID:RXzrGcDR0
歳の割には大人びていて、露骨に顔を歪めたり、感情を昂らせたりすることは極めて稀なまゆが、
目の前で涙を流している。

ならば、すべきことは決まっている。
何年この世界でやってきたと思っているんだ。
どれだけまゆと共に歩いてきたかわかっているのか。

俺がまゆの担当プロデューサーだぞ。覚えとけ。
71 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:42:16.16 ID:RXzrGcDR0
P「....」ガサゴソ

P「まゆ!これを見てくれ!」スッ

まゆ「....?」

P「誕生日プレゼントだ!」

まゆ「プレゼント....?」

まゆ「いつの間に用意してくれたんですか....?」

P「まあそれはいいじゃないか」

P「(1年前一緒に轢かれたはずなのに、なぜかポケットに入ったままだったってのは伏せておこう)」
72 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:43:23.71 ID:RXzrGcDR0
まゆ「....開けてもいいですか」

P「どんどん開けてくれ」

まゆ「....」ハラ

まゆ「....」ヒラ

まゆ「....これ」

まゆ「リボン....?」

P「そうそう、リボンとシュシュなんだ」

P「シュシュで結んで、その上からリボンについたフックを差すだけで簡単に....らしい」

P「めちゃくちゃ受け売りなんだが」

まゆ「....」
73 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:43:56.18 ID:RXzrGcDR0
P「....俺もいろいろ考えたんだが」

P「まゆに渡すとなるとこれしか思いつかなくてな....」

まゆ「....これ」

まゆ「中身はリボンなのに、入っていた箱もリボンで包んであったんですね」クスリ

P「しょ、しょうがないだろ!?

P「プレゼント用のラッピング頼んだらこうなったんだ!」

まゆ「....ありがとうございます」

まゆ「本当に、何よりも嬉しいです....」ニコ

P「....よかった」
74 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:45:11.04 ID:RXzrGcDR0
P「....」

P「....なあ、まゆ」

まゆ「....?」

P「忘れることは悪じゃないと思うんだ、俺は」

まゆ「....それがどんなに大切な人であっても、ですか」

P「そうだ」

P「今まであったことも、今まで出会った人も」

P「その全てを1つとして忘れないで生きていたら」

P「いつかパンクしちゃうだろ?」

P「なのに、忘れることを悪だなんて言ってたら、辛いじゃないか」
75 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:46:14.19 ID:RXzrGcDR0
まゆ「....プロデューサーさんのことを忘れたくはありませんでした」

P「別に全部忘れたわけじゃないだろ?」

P「記憶ってのは時と共に薄れゆくものさ」

P「1年も会わなかったら尚更さ」

まゆ「....」

P「まゆはそれでも自分を責めるんだろうけど」

P「俺は逆に、まゆがどれだけ俺のことを想っていてくれたかが伝わったよ」

まゆ「....」

まゆ「どういう、ことですか....?」
76 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:47:04.95 ID:RXzrGcDR0
P「忘れるっていうのは、人間の持つ防衛本能の1つなんだ」

P「強いストレスを感じると、脳が勝手にその体験を忘れようとするんだよ」

まゆ「勝手に....」

P「だからさ」

P「まゆの中で、俺がほんの少し薄れてしまったのは」

P「それだけまゆが、俺を大切に想ってくれていた証明」

P「こう考えてみたらどうだ?」

まゆ「....愛の証明になるんですか?」

P「愛....」

P「捉えようによってはそう言えるかもしれないな」

まゆ「....」
77 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:48:29.65 ID:RXzrGcDR0
P「忘れたいくらい辛いことなのに」

P「忘れたくないって想ってくれてわけだしな」

まゆ「....」コクリ

P「ま、まゆを悩ませた諸悪の根源である俺は帰ってきたわけだから」

P「色々と思うところはあるだろうけど」

P「悩み事はこっからゆっくり考えていけばいいんじゃないか?」

まゆ「....そうですね」
78 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:49:12.27 ID:RXzrGcDR0
P「まゆより俺の方が大変だけどな....」

P「死んだ人間が生き返るとか政府の研究機関に拉致されないか心配だ....」

P「戸籍も貯金も家も車もないし....」

P「俺はどうなるんだ....」

まゆ「....」

まゆ「....プロデューサーさん」ツンツン

P「?」
79 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:49:39.92 ID:RXzrGcDR0
まゆ「....その時は」

まゆ「まゆが助けます!」

P「まゆが?」

まゆ「だって、今日だけでたくさん助けてもらいましたから」ニッコリ

P「....」

P「自分の担当アイドルに頼るのはちょっと....」

まゆ「....」ジー

P「わかったわかった、にっちもさっちも行かなくなったらな!」

まゆ「はい♪」
80 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:50:16.14 ID:RXzrGcDR0
P「それじゃあそろそろ」

まゆ「....プロデューサーさん」

P「どした?」

まゆ「....去年の誕生日、あんなことがあってから」

まゆ「1日ずつ誕生日が近づいてくるのが、すごく怖くて....」

P「....」

まゆ「そしたら、あなたが助けに来てくれました」

P「....」
81 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:51:06.51 ID:RXzrGcDR0
まゆ「大切な日に、大切な人と」

まゆ「同じ時を過ごせたこと」

まゆ「一生忘れません、絶対に」

P「....来年は」

P「もっとすげえことやって上書きしてやるよ!」

まゆ「!!!」

まゆ「約束ですよ....?」ジィッ

P「任せとけ」

P「じゃ、また」

まゆ「はい」ニコニコ
82 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:52:15.57 ID:RXzrGcDR0
そう言ってお別れした後、鏡の前で貰ったプレゼントを髪につけてみました。
今の私の髪には少し大きすぎるリボンだったので、これが似合う長さまで伸ばしてみましょう。
そしてとっておきの日に、プロデューサーさんに見せるんです。
きっと、喜んでくれるはずです。
83 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:52:58.35 ID:RXzrGcDR0
ちひろ「....」カタカタ

ちひろ「....」カタカタ

ガチャリ

P「ふぃ〜」

P「あ、ちひろさん、遅くまでご苦労様です」

ちひろ「....なんで帰ってきてるんですか?」ジッ

ちひろ「まゆちゃんはどうしたんですか!!」

P「え?もう時間も遅いので解散ですよ解散」

P「当たり前じゃないですか、未成年ですよ?」

ちひろ「....」
84 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:53:48.24 ID:RXzrGcDR0
P「社用車、助かりました」スッ

ちひろ「....どういたしまして」

P「俺、家も金もないんで事務所に泊まりますね」

ちひろ「ホテル代くらい貸しますよ?」

P「いいですよ、事務所泊もなんだかんだ落ち着くんで」

ちひろ「末期ですねー」

P「ちひろさんに言われたくないです」

ちひろ「はいはい、失礼しました」

P「明日からが忙しそうですね」

ちひろ「前代未聞過ぎてどうなることやらです....」

P「大騒ぎに備えて早く寝ます」
85 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:55:49.78 ID:RXzrGcDR0
ちひろ「....あの」

P「はい?」

ちひろ「....まゆちゃんとは、どうでしたか」

P「....」

P「....本当にかわいいやつですよ、あいつは」

ちひろ「それだけですか!?」

P「それくらいです」スタスタ

ちひろ「もう!」

ちひろ「....」

ちひろ「....おやすみなさい」ニコ

P「早く帰ってくださいよ、寝づらいですから」

ガチャリ

ちひろ「....」

ちひろ「....本当にまゆちゃんを救ってくれたんですかね」クスクス
86 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:56:30.52 ID:RXzrGcDR0
翌朝、事務所のどこにもプロデューサーさんはいなくなっていました。
昨日のことなんてなかったみたいに、きれいさっぱりと。
87 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/16(火) 23:59:45.49 ID:RXzrGcDR0
ちひろ「....」

ちひろ「....なんだったんですかね」

まゆ「....誰にもわかりませんよ」フフ

ちひろ「....幽霊、だったんでしょうか」

ちひろ「それとも私たちだけが見た幻覚....?」

まゆ「プロデューサーさんですよ」ニコ

ちひろ「....うん」
88 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/17(水) 00:00:20.46 ID:827xgcym0
ちひろ「....まゆちゃんは大丈夫?」

まゆ「え?」

ちひろ「....Pさんがまたいなくなってしまったこと」

まゆ「....悲しいです」

まゆ「でも」

まゆ「たくさんの時間をかけて、乗り越えてみせます」

ちひろ「まゆちゃん....」ウルッ

まゆ「これがまゆの、愛の証明ですから」

ちひろ「まゆちゃん....?」
89 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/17(水) 00:01:05.65 ID:827xgcym0
まゆ「....それに」

ちひろ「?」

まゆ「プロデューサーさんとは」

まゆ「来年もまゆの誕生日を祝うって約束をしちゃいました♪」

ちひろ「な、なるほど....」

まゆ「2人の約束を反故に出来る人なんていません」ニッコリ

ちひろ「....そうかもしれません」ニコ

まゆ「はい」
90 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/17(水) 00:01:41.84 ID:827xgcym0
目を覚ますと、そこはふかふかのベッド....ではなく、
事務所の応接室に鎮座している、堅いソファだった。
若いころなら多少は効いたであろう無茶が、年を重ねるごとに難しくなっているのを痛感させられる。
いや、今の俺に歳というものはあるんだろうか。生き返った場合の年齢ってどうなるんだ?
享年で固定されるのか?前例がなさそうだし想像ができないな。

妙に長く眠ってしまった感覚があり、環境も合わさって全身が痺れている。
寝起きの気怠さから回復する時間を稼ぐように、スマホを取りだす。
だが今の俺はスマホを持っていない。それどころか、時間を稼ぐ術を一切持ち合わせていない。
仕方なく、ひたすらに天井でも眺めてみようか。
91 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/17(水) 00:02:23.19 ID:827xgcym0
まゆ「おはようございます」

P「....?」

まゆ「おはようございます」

P「....なんで?」

まゆ「こちらにいらっしゃると思ったので」

まゆ「待っていました」ニッコリ

P「えぇ....?」
92 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/17(水) 00:03:21.03 ID:827xgcym0
P「ってあれ?」

P「それ昨日あげたやつじゃ〜ん!」

まゆ「はい、どうでしょうか....////」

P「めっちゃいい!」

P「....ん?」

P「なんか、一晩で髪伸びてない?」

まゆ「気合で伸ばしました」

P「やっば....」
93 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/17(水) 00:05:47.75 ID:827xgcym0
まゆ「冗談です♪」

P「冗談か....」ホッ

まゆ「行きましょうか」

P「どこに!?」

まゆ「まゆ、今日がお誕生日なんです」

P「2日連続!?」

まゆ「説明は後にしますね」グイグイ

P「」

まゆ「....約束、楽しみです」ニッコリ

【完】
94 : ◆bL5b7ovQmQ [saga]:2021/02/17(水) 00:08:44.86 ID:827xgcym0
最後までお付き合いいただきありがとうございました
真面目な話は久しぶりに書きました
次はまたギャグSSにしたいです

過去作次回作共によろしくお願いします

このSSが読者の方の人生の糧に少しでもなれば幸いです
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/17(水) 06:04:39.35 ID:VGBVZlhDO




まゆ18歳……つまり合法

……既成事実のチャンス
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/02/18(木) 21:37:31.36 ID:dVSFIyZgO
二人だけの愛の結晶を作るんだよあくしろよ
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