【シャニマス 】果穂(16)「普通って、なんですか?」

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64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/05/25(火) 18:06:59.16 ID:Xm+5a+vV0
>>63
困ったような

困ったように
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/05/25(火) 18:08:19.02 ID:Xm+5a+vV0
「何々、何の話?」
「わっ」

 ちょこ先輩が後ろから抱きついてきた。しっかり拭いてるとはいえ、レッスンの後なのに。
 ちょっと身じろぎしながら目線を上げると、みんなあたしの方を見ていた。

「え……なんですか」
「果穂にもそういう時期ってくるのね」
「ええ……もう子供ではございませんから……」
「ませちゃって〜」
「いや、なんですか」
「プロデューサーさん寂しがってるよ?」

 普段はあまりこういうこと言われないのに、さっきのあたしの態度が露骨すぎたのか、みんなちょっと楽しそうにあたしに話しかける。もう少し優しくしてあげてもよかったかな。
 みんなの視線が別に嫌ではないけど、なんだかむず痒くて、あたしはソファの後ろからあたしを抱いているちょこ先輩の腕をパシパシと叩いた。
 机の上のコーヒーカップに目をやる。
 みんながあたしのことを可愛がってくれてるのはわかる。でもそれと同じように、みんなはプロデューサーさんのことも違った意味でかわいがっているのも何となくわかる。それはベクトルが違うけど、あの人の性格がなせる信頼関係だなと思う。
 そういう生きる上手さも、なんだかたまに気に食わなくなる。別に嫌いではないけど、今はちょっと目を合わせたくない。
 でも今はそれで支障はないし、たぶん、いつかはまた楽しく話せる日が来ると思う。あたしは落ち着かなくて、ペットボトルの水を一口飲んだ。さっきプロデューサーさんに貰ったやつ。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/05/25(火) 18:09:49.62 ID:Xm+5a+vV0

「果穂はホワイトソーダでよかった?」
「はい! ありがとうございます」

 凛世さんたちがドリンクバーから帰ってきて、器用に3つグラスを持ったちょこ先輩があたしの前に氷が入ったグラスを置いた。
 ホワイトソーダをカルピスで薄めたやつ。炭酸は飲みたいけど、喉に悪いからレッスンの後は薄めて飲んでる。ちょこ先輩、覚えていてくれたんだ。
 夏葉さんは真夏なのにあったかいコーヒーを啜っていて、一段と大人に見えた。

「ファミレスのコーヒーってある程度美味しいのよね」
「ある程度って大事だよねぇ」

 ちょこ先輩があたしの隣に座りながら、グラスにたっぷり入ったいちごオレをこぼさないように慎重にテーブルに置いていた。

「樹里さんには……こちらを……」
「なんだよこれ」

 凛世さんはおぞましい色のジュースを樹里さんに渡していた。

「本日のドリンクです」
「あってたまるか」

 文句を言いながらも、樹里ちゃんは黒ずんだ液体を普通に飲んでいた。凛世さんはドリンクバーで遊ぶけど、ちゃんと美味しいものを持ってくる。でも樹里ちゃんが黒ずんだ液体を飲んでいる絵面は変だった。

「いちごオレってゴクゴク飲んじゃうから勿体無いけど、ファミレスだといくらでも飲めるからいいよね〜」

 ちょこ先輩はもう半分くらい減ったいちごオレを嬉しそうにテッシュの上に置いていた。夏場の冷たいグラスには、もう結露ができている。

「でもちょこ先輩もご飯注文したんですよね?」
「うん? そうだけど」
「いちごオレってご飯に合うんですか?」

 ちょこ先輩は水を取りに行った。

「アタシも水取りにいく」
「いえ……お手を煩わせるなど……凛世が新しいものをお作りいたしますので……」
「今度は普通で頼むぞ」

 樹里ちゃんを奥に押しやった凛世さんが、また嬉しそうにグラスを持ってちょこ先輩を追いかけた。
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/05/25(火) 18:12:43.81 ID:Xm+5a+vV0
 楽しいな。
 放クラで集まるのも久しぶりだけど、お友達とこうして何でもない時間を過ごすのも久しぶりな気がする。最近は誰か1人と会うことはあっても、数人で会話するなんてことがあまりなかった。
 あたしにとっては普通の時間だけど、よく考えると、この歳の差で遊ぶような集団って、あまり想像できない。自分達以外だとどういう関係で集まるんだろう。
 あたしが16歳で、夏葉さんが24歳。その間の年齢もバラバラで、同じ地区に住んでいたとしても、ランドセルを背負っていた時期すら被らない人だっている。こうしてここにいるのが不思議だ。特別な関係だと思う。
 でも、あたしの人生にとっては普通の関係だ。あたしはこの人たちと出会う人生しか知らないし、当たりだと思う。
 いつかのアイスの棒を思い出す。そういえばまだ交換していない。この後、解散する前にみんなでコンビニに寄ろうかな。

「そうえば、果穂、文化祭でライブするんだって?」
「はい! まだ何歌うかは決めてないんですけど」
「それ、私たちも放課後クライマックスガールズとして出られないかしら!」
「え?」
「マジで?」

 樹里ちゃんとは何となくそんな話をした覚えがあるけど、真面目に考えたことはなかった。そうか。曲を使っていいなら、ちょっとくらい5人で出てもいいのかもしれない。

「もちろんサプライズ登場にはなると思うけど」
「事前に公表してたら文化祭が大変なことになっちまうよ」
「どうかしら!」
「楽しそうです……!」

 プロデューサーさんに相談してみて、許可をもらえたら生徒会の子に相談してみよう。今頃何してるかな。もしかしたら同級生とファミレスでお喋りしているかもしれない。
 羨ましくはない。だってあたしも今、ユニットメンバーとファミレスでお喋りしている。あたしなりの普通の時間がある。あたしはこれでいい。これがいい。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/05/25(火) 18:17:11.75 ID:Xm+5a+vV0
「お待たせ……いたしました……」

 ちょこ先輩と凛世さんが帰ってきた。ちょこ先輩は水だけど、凛世さんはまた変な色の飲み物を持っている。

「また真っ黒じゃねぇか」

 普通のジュースでいいって言ったのに、と樹里ちゃんがテッシュで作ったコースターの上に黒い液体を置く。

「いえ……今回はコーヒーは混ざっていないので……」
「さっきのは混ざってたのかよ」

 コーヒーとジュースって合うんだ。あたしは自分のジュースを一口飲んで、普通にホワイトソーダを入れてもらってよかったと安心した。

「ですので……これは普通のジュースです」
「普通ではないだろ、この色は」

 あたしが見つめていたことに気づいたのか、凛世さんがはっとこちらをみた。

「果穂さんもご所望でしたら……」

 いや、別にいいです、と笑って、あたしは樹里さんをみた。見た目は変だけど、それを飲んでる表情は別に平気そうだ。中身は美味しいのだろう。
 ニコニコしてる凛世さんに、あたしは笑いながらツッコんだ。

「普通って、なんですか?」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/05/25(火) 18:18:42.89 ID:Xm+5a+vV0
おしまい。
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/05/26(水) 01:23:33.35 ID:MYafgEVzO
おつ
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/05/26(水) 07:43:35.01 ID:nfOvkMDZ0
非常に良き
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