私「学校さぼってみた」

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13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 07:50:16.66 ID:/fFN+dTR0
幼女「なれるとおいしいよ?」

私「なれないとおいしくない飴ってどうなの」

幼女「まあまあ」

ズボッ

私「ポケットに2本目をつっこむな」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 07:51:47.01 ID:/fFN+dTR0
幼女「たばこもなれたらおいしいらしいよ」

私「なんであんたがそんなこと知ってるの」

幼女「お兄ちゃんが言ってた」

私「お兄ちゃんいるんだ」

私「どんな人」

幼女「オセロすごく強い」

私(死ぬほどどうでもいい)
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 07:53:16.80 ID:/fFN+dTR0
私「そうなんだ…ま、まあオセロは私も強いけどね」

幼女「あと最近あんまり家にかえってこないの」

幼女「髪の毛金色だし」

私「クソヤンキーじゃん」

幼女「あとくつのひも結ばなくなった」

私「知らないよ」

幼女「かかともずっとふんでるの」

私「それはたしかに危ないけれど」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 07:54:46.76 ID:/fFN+dTR0
私(そういえば、幼馴染のあいつも、髪染めてたな)

私(靴紐も結んでないのやめてほしかった)

幼女「あとおうだんほどう、歩くとき手あげなくなった」

私「もういいよ」

私「あと横断歩道の時て上げるのなんか恥ずかしくなるもんなの」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 07:55:49.38 ID:/fFN+dTR0
幼女「そうなの?」

幼女「わたしのクラスではみんな手あげてるよ?」

幼女「いつから恥ずかしくなるの?」

私「さあ、誰かが手を挙げるのやめて」

私「誰かがそれを真似して」

私「それが続いてく感じ」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 07:56:58.38 ID:/fFN+dTR0
私「てかさ、あんた家出とか言ってたけど」

私「学校は?」

幼女「行かない」

私「なんで」

幼女「行かないの」

私「いじめられてるの?」

幼女「それはおねえちゃんでしょ」

私「今してるのあんたの話だから」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 07:58:07.90 ID:/fFN+dTR0
私「で、いじめられてるの?」

幼女「ちがう」

私「ちがうんだ」

幼女「せんせいがやめちゃうの」

私「せんせい?」

幼女「うん」

私「この時期に?」

幼女「うん」

私「……」

私「それはつらいね」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 07:59:37.65 ID:/fFN+dTR0
幼女「ちがうの、ちがうの」

私「なにがちがうの」

ベタベタ

私(急に落書き再開しだした)

ボチャン

私(今ペンキの容器に手突っ込んだし)

ベタベタ


私(すごい壁中に手形つけてる…)
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:01:02.86 ID:/fFN+dTR0
幼女「わたし、せんせいのこと」

幼女「きらいって言っちゃったの」

私「…なんで」

幼女「おやすみの日に、こうやってペンキであそんでたら」

幼女「くつに、ペンキがついちゃって」

私「ありゃ」

幼女「それが、すごいかっこいいなって思ったの」

私「ペンキがついたくつが?」

幼女「そうなの」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:02:21.76 ID:/fFN+dTR0
幼女「そしたら、せんせいそれをきたないって」

幼女「いってきて…」

私(まあ、綺麗好きならそう言うか…)

私(たぶん思ったこととか、はっきり言う人なんだろうなあ)

私(生徒にも、他の職員にも、娘にも)

私(すごく心当たりがある)

私(いつも誰かと喧嘩してたような、そんな人なんだろうな)
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:03:44.98 ID:/fFN+dTR0
私「それで、嫌いって返したんだ」

幼女「それからがっこう、来なくなっちゃって」

私「…その人さ」

私「もともと休みがちだった?」

幼女「え?」

幼女「…うん、よく休んでた」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:05:08.08 ID:/fFN+dTR0
幼女「なんで知ってるの?」

私「…いや」

私「なんとなくそう思ってさ」

幼女「でも…あんなこと、言わなきゃよかった」

私(何も気にすることないのに)

私(たぶん、辞めるのこの子のせいじゃないし)

私(…まあ、想像するには小さすぎるか)
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:06:27.95 ID:/fFN+dTR0
私(嫌い…か)

私(自分の意にそぐわない時、そう言っちゃうよね)

私(…昔の自分を思い出すな…)

私「ねえ、聞いてもいい?」

幼女「?」

私「本当はなんて言いたかったの?」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:08:08.52 ID:/fFN+dTR0
幼女「…がっこうで、いつもきれいにそうじするの」

幼女「わたしだけだったの」

私(質問に答えてねえけど、まあいいか。話させとこ)

幼女「みんなよごすのすきだったけど」

幼女「わたしはきれいなのがすきだったの」

幼女「わたしと、掃除してくれてたの」

幼女「せんせいだけだった」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:09:19.75 ID:/fFN+dTR0
幼女「だいすきだったのに、きたないって…言われちゃって…」

幼女「せんせいなんかに、会わなかったらよかった」

私「なんでそうなるの」

幼女「会わなかったら、こんなに、かなしくならないでしょ?」

私(…それも…そうかもしれないけど)

私(…うまい返しが見つからない)
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:10:44.91 ID:/fFN+dTR0
私(昔幼馴染に、私も嫌いって言っちゃったことあるし)

私(まあ、それから疎遠なんだけど)

私(…ううむ)

私「ねえ」

幼女「なに?」

私「暗くなる前に帰ろっか」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:11:33.09 ID:/fFN+dTR0
幼女「やだ、ぜったいおこられる」

私「心配してるよ。かえってあげな」

私「誘拐されたり、無差別殺人に巻きこまれたらどうするの?」

幼女「それはいやだ」

私「よし、帰ろう」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:12:54.25 ID:/fFN+dTR0
帰り道

幼女「あっ!」

私「どしたの」

ダッ

私「ちょ、信号赤だから!」

私「危ないよ!」

幼女「だめなの!」

私「なにが!?」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:14:01.34 ID:/fFN+dTR0
ガッ

私(横断歩道になんか落ちてたのつかんでる)

タッタッタッ

私(戻ってきた)


幼女「…あぶなかった」

ウネウネ

私「なにこれ」

幼女「スズメガの幼虫」

私「…へえ」

私「助けてあげたんだ」

私「やるじゃん」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:15:24.93 ID:/fFN+dTR0
私「虫、こわくないの?」

幼女「こわくないよ」

幼女「お兄ちゃんが、よく生き物は大切にしろって言ってたから」

私「へえ」

幼女「スズメガってね、すごいかっこいいんだよ」

幼女「はねのもよう、ドラゴンみたいなの!」

私「うん」

私「知ってる」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:16:38.52 ID:/fFN+dTR0
幼女「どうして!?」

私「幼馴染が詳しくてね」

私「歩くウィキみたいなやつだった」

幼女「うぃき?」

私「なんでもない」

幼女「かわいいなあ」うっとり

私「超わかる」

私(クラスの子が見たら、みんな逃げ出すんだろうなあ)
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:18:06.32 ID:/fFN+dTR0
私(この子の目、あいつに似てる)

私(好きなもので頭がいっぱいになって)

私(もう無我夢中みたいな)

私(あいつに、嫌いって言ったきっかけ、たしかこんな時だったな)
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:18:45.31 ID:/fFN+dTR0
2年前

私「気持ち悪いからもうやめたら?」

私「虫とか、植物とかさ」

私「あんたのそういうところ、嫌いなの」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:20:16.09 ID:/fFN+dTR0
私(中1のころか)

私(遠足でみんなからはぐれて)

私(トカゲ捕まえに行ったあいつにそう言っちゃって)

私(たしか、あれが最後の会話か)

私(てか、会話ですらないか)

私(私の、一方的で、わがままな暴言だ)

幼女「どうしたの?」

私「ううん、なんでもない」
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:21:21.92 ID:/fFN+dTR0
私「どっか踏まれないところに逃がしてあげようか」

私「ほら、あそこのススキみたいなの生えてるところとか」

幼女「うん、そうする」

幼女「よしよし」

私「いや早く逃がしなよ」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:22:48.42 ID:/fFN+dTR0
幼女「ねえ、ここに生えてる草、なんだっけ」

私「だから早く逃がしてあげなって」

幼女「きになるの」

私「ススキじゃないの?」

幼女「たぶんちがう」

私「なんでわかるの」

幼女「おにいちゃんが前に言ってくれてて…」

幼女「パンダなんとか」

私「絶対そんな草…いや、あったかな?」

幼女「あったはず」

私「私の幼馴染なら、すぐに答えられるんだけどな」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:23:33.86 ID:/fFN+dTR0
幼女「ねえおねえちゃん」

私「なに」

幼女「家出やめる」

幼女「明日は学校にいく」

私「なんでそうなったの」

幼女「なんとなく」

私「気まぐれかよ」

40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:24:32.14 ID:/fFN+dTR0
私「まあいいや。がんばってね」

幼女「うん。ばいばい」

そう言って私たちは
それぞれの帰路を進んだ。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:25:19.39 ID:/fFN+dTR0
テクテク

私「あれ、なんかいる」

ノソノソ

私「…亀か」

私「今日はいろんな生き物によく会うな」

私「踏まないように気を付けよ」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:26:14.07 ID:/fFN+dTR0
自宅

私「ただいま」

私「……」

私「誰もいないか」

私「郵便受けは…」

ガシャン

私「今年はなにもなしか」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:27:06.71 ID:/fFN+dTR0
私(毎年誕生日に、誰かが花突っ込んでくれてたんだよね)

私(ちょっと期待してたんだけどな)

私(さて…)

私(手紙でも読み返すか)
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:28:40.85 ID:/fFN+dTR0
リビング

私(静かだなあ)

私(誰もいないってこんな感じなんだ)

私(机の上に朝同様、手紙があるってことは)

私(夢じゃなかったんだな)
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:30:33.34 ID:/fFN+dTR0
娘へ

私はもう疲れました。

多分、色々限界だったんだと思います。

働いても、きっと私は何の役にも立てないし

生きてても仕方がないんです。

こんな私と暮らしていても

あなたは不幸になるばかり。

だから、こういう結論を出すことにしました。

転校手続きはもう済んでいます。

おばあちゃんの家までの旅費は置いておくので、それを使ってお引っ越ししておいてね。

それじゃあね。

誕生日、おめでとう。
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:31:06.44 ID:/fFN+dTR0
私「……はあ」

私「どんな誕生日プレゼントよ」


続く
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/11(日) 08:31:35.95 ID:/fFN+dTR0
それではまた明日ノシ
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 07:45:41.81 ID:vybebkbR0
あんまりいい母親ではなかった。

というか最悪だった。

仕事も休みがちになって、家のことも何もできなくなって。

ほとんど私が介護しているようなもので

たまに動くときは酒飲んで仕事の愚痴ばかり言うようになっていた
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 07:46:46.85 ID:vybebkbR0
私(でも、生徒には好かれてたんだな)

私(たぶん、あの女の子の嫌いっていった先生は)

私(私の母親だ)

私(休みがちなくせに行ったら行ったら仕事はきっちりしてたんだな)

私(なんか意外)
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 07:47:31.97 ID:vybebkbR0
私(嫌なら辞めろとか、母親らしくしろとか)

私(結構散々なこと言ってきたな)

私(…最悪)

私「なんかのも」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 07:48:12.55 ID:vybebkbR0
コポポポ

私(ブラックコーヒーとか初めて飲むな)

ズズッ

私「にがっ!」

私「まずっ!」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 07:48:53.15 ID:vybebkbR0
私(今度はワインでも飲んでやろう)

コポポポポ

グビッ


私「まっず!!!」

私「もっと甘いもんじゃないの!?」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 07:49:36.17 ID:vybebkbR0
私(まあいいや。勿体ないし、全部のもう)

ぐびぐび

私(なんかふわふわしてきた)

ポロポロ

私(涙まで出てきた)
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 07:50:44.13 ID:vybebkbR0
私(もういいや、寝よ)

私(ベッド入って、起きたら、全部夢だったらいいのに)

私(部屋に戻ろう)

ガラッ

私「え」

ドンドン!

幼馴染「おーい!」

私「…なんで来てるの」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 07:51:50.54 ID:vybebkbR0
私「寝よ」

幼馴染「いや寝るなよ! 窓開けてくれよ!」

私「ここ二階だよ、どうやってきたの」

幼馴染「昇ってきたんだよ」

私「サイコすぎでしょ」

私「普通に玄関からきなよ」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 07:53:20.17 ID:vybebkbR0
幼馴染「サプライズだよ」

私(金髪だっさ)

私(靴紐結べよ)

幼馴染「今年はプレゼント、手渡しがいいと思ってな」

私「プレゼント?」

幼馴染「毎年ポストに花とかつっこんでたんだけどな」

私「あれあんただったんだ」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 07:54:17.41 ID:vybebkbR0
私「通報していい?」

幼馴染「……」

幼馴染「それは勘弁してくれ」

幼馴染「それよりこれが今年のだ。」

ワサッ

私「ススキ?」

幼馴染「違う、パンパスグラスだ」

幼馴染「別名お化けススキ」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 07:55:23.02 ID:vybebkbR0
私(また始まった)

幼馴染「でかいやつは2メートル超えるんだよ」

幼馴染「原産はアルゼンチンでな、生態については」

私「わかったわかった。もういいから」

私「あんt何も変わらないんだね」

幼馴染「…ごめん、また喋りすぎた」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 07:56:38.90 ID:vybebkbR0
私「ていうか、毎年ああいうの持って来てたの何気に引く」

私「ごんぎつねかよ」

幼馴染「それ最期撃ち殺されるじゃねえか」

私「どうせなら食べ物持ってきなよ、うなぎとか」

幼馴染「だからごんぎつねじゃねえか」

幼馴染「てかお前、酒くさいぞ。飲んでるな」

私「悪い? 大人だからいいでしょ」

幼馴染「うるせえよ未成年」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 07:57:37.40 ID:vybebkbR0
幼馴染「俺にも一杯くれよ」

私「未成年が酒飲むな」

私「体に悪いんだよ、知らないの?」

幼馴染「お前もだろうが」

私「あと家中のボトル全部飲んだからもうないよ」

幼馴染「酒豪じゃねえか」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 07:58:39.66 ID:vybebkbR0
幼馴染「てか、母ちゃんどうした? 寝たのか?」

私「出てった」

幼馴染「まじか」

私「うん。学校の先生してたんだけど」

私「すごいブラックで、パワハラもあったからね」

私「最後の方泣いて酒飲んでばかりだった」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 07:59:43.81 ID:vybebkbR0
私「どっかで彼氏でも作って幸せになってたらいいかな」

幼馴染「まじか…」

私「だから私引っ越すから」

幼馴染「え!!!」

幼馴染「じゃ、じゃあお前、もういじめとか、されなくて…」

私「…そういうことだけは知ってるんだ」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 08:01:27.63 ID:vybebkbR0
幼馴染「もう、あの変な友達とかに絡まれなくて、すむってことかよ」

私「まあ、そうなるね」

私(カースト上位の人達と、最初はつるんでたけど)

私(好みとか全部合わせてたらすごい疲れたんだよね)

私(家ではお母さんの機嫌伺って)

私(学校ではそんな友達もどきのご機嫌取り)

私(地獄だった)
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 08:02:53.62 ID:vybebkbR0
幼馴染「なあ、俺さ」

幼馴染「もう、生き物とか興味ねえから」

私「パンパスグラス持ってくるやつが何言ってるの」

幼馴染「髪も染めてタバコも吸ってる」

幼馴染「もう、ださくねえだろ? 変じゃねえだろ?」

私(誰もそうしろなんて言ってない)

幼馴染「やばい連中とも絡んでるし」

幼馴染「お前、そういう男が好きだろ?」

私(誰もそうしろなんて言ってない)
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 08:04:04.75 ID:vybebkbR0
私(尻尾を振ってる犬みたいなやつだ)

私(こいつは何も知らない)

私(こんな今に、たどり着きたくなかったな)

私「ねえ」

幼馴染「なんだよ」

私「オセロでもしよっか」

私(今だけは、そんなしがらみから)

私(少しでも抜け出したかった)
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 08:04:53.91 ID:vybebkbR0
幼馴染「負けてもなくなよ?」

私「泣かないから」

私「じゃんけんぽん」

幼馴染「おりゃ」

私「私の勝ち」

幼馴染「じゃあお前先攻な」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 08:05:45.72 ID:vybebkbR0
窓から差し込む月の光は

気まぐれに雲で隠れて

電気のついていない部屋を暗転させる。

オセロの白と黒は

夜の闇に溶けていった。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 08:07:16.14 ID:vybebkbR0
私(勝ち負けなんてどっちでもいいな)

私(なんか、このままずっと続けばいいのに)

幼馴染「おい、そこひっくり返し忘れてるぞ」

私「わかってるよ。うるさいなあ」

私(まあわかってないけど)

私(たぶん酒で何もわかってないな私)

私(未成年が酒なんて飲むもんじゃない
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 08:13:41.93 ID:vybebkbR0
パチン

私「おいそこ、角とられちゃうでしょ」

幼馴染「そうだな」

私「手加減してるでしょ!」

幼馴染「してねえよ」

私「嘘だ、置きなおせ」

幼馴染「嫌だね」

ファンファンファン

私「なにこれ、パトカー?」

幼馴染「…みたいだな」
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 08:14:47.59 ID:vybebkbR0
私「こんな時間に物騒だね」

幼馴染「…そうだな」

ガラッ

私「ちょ、どこ行くの」

幼馴染「わり、帰るわ」

私「待って待って」

サッ

私「…まだオセロ終わってないのに」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 08:15:48.18 ID:vybebkbR0
私「片付けもしてないじゃん」

ピンポーン

私「…こんな時間に誰…」

テクテク

ガチャ

警察「警察です。夜分遅くにすいません」

警察「この辺でちょっと人を探しておりまして」

私「…はあ」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 08:16:44.03 ID:vybebkbR0
警察「…ていう感じで、心当たりは」

私「…まじすか」

ダッ

私「探してきます」

警察「ちょっ!」

73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 08:17:48.53 ID:vybebkbR0
私(こんなに走るの久しぶり)

私(あいつが逃げそうなところ…)

私(あ、鍵かけ忘れた)

私(まあいや。今大切な物、家には何もないし)

私(あいつとのオセロの決着の方が大切だ)
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 08:19:26.09 ID:vybebkbR0
数十分後

私(たしかこの用水路、昔あいつと遊んでたな)

私(まさかここに)

チラッ

幼馴染「……」

私「何してんの」

幼馴染「寝てたんだよ」

ジタバタ

私「なにそれ」

幼馴染「亀だよ」

彼は、足首ほどの水位の用水路の中で

亀を抱きかかえて、頭から血を流していた。
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 08:20:26.59 ID:vybebkbR0
私「寝るならベッドで寝なよ」

幼馴染「ベッドで寝るのは子供のすることだよ」

私「大人もベッドで寝るわ」

私「オセロも途中で放り出しといてさ」

バチャッ

76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 08:21:32.70 ID:vybebkbR0
彼の軽口に応えながら

用水路に裸足のままゆっくりと降りた。

私(つめたっ!)


それでも、水流に逆らいながら、一歩ずつ

彼に近づく。
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 08:22:50.64 ID:vybebkbR0
私「私さ」

幼馴染「なんだよ」

私「靴の紐はきちんと結んでいた方がいいと思う」

彼の前にたどり着き、しゃがみこむ。

びしょびしょでよれよれになった靴紐を握る。

私「あと、かかとも踏まない方がいいと思う」

78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 08:24:12.40 ID:vybebkbR0
幼馴染「まじか」

幼馴染「お前、ちょっと悪い男子好きなんだと思ってた」

私「それ私がみんなに合わせてでっちあげたやつだから」

私「あと、オセロは本気できて」

幼馴染「だから手加減してねえって」

私「負けたら私が切れると思ったんでしょ」

幼馴染「思ってねえよ」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 08:25:19.22 ID:vybebkbR0
ヌルヌルになった靴紐を

びしょ濡れの手で握り、結ぼうとする。

輪っかを作るのが水流で何度も駄目になる。

かじかみ、アルコールにやられた指先は、不格好にしか動かない。

私「あとさ」

幼馴染「なんだよ」

私「人は殺しちゃだめなんだよ」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/12(月) 08:26:09.93 ID:vybebkbR0
続く

また明日。

ノシ
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/12(月) 08:54:43.89 ID:+vQjNr0DO
おつ
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/13(火) 07:27:07.86 ID:2p2LuwdCo
おつおつ
いい雰囲気だわ
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/13(火) 07:31:13.18 ID:UQCEEq9P0
幼馴染「………」

私「もう、全部聞いたから」

私「金髪の中学生が、塾帰りの女子中学生さしたって」

幼馴染「……」

私「…なんか言ってよ」

幼馴染「……」

幼馴染「この亀、ミシシッピアカミミガメって言うんだよ」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/13(火) 07:32:34.72 ID:UQCEEq9P0
幼馴染「小さなころは、ミドリガメとかいう名前で」

幼馴染「昔はペットショップで売られてたんだけど」

幼馴染「異臭問題とか捨てられる問題とかもあって」

幼馴染「今は売られてない」

私「……へえ」

私「かわいそうだね」

私「家の近くにいたやつだわこいつ。今日見たよ」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/13(火) 07:33:33.19 ID:UQCEEq9P0
幼馴染「メスでも探してたんだろうな」

幼馴染「でも、あそこだとたぶん車に轢かれるから」

幼馴染「だから用水路に逃がそうかなって思って」

私「だから頭打ったんだ」

私「間抜けの極みじゃん」

幼馴染「うるせえよ」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/13(火) 07:36:01.76 ID:UQCEEq9P0
彼は苦笑して、亀の甲羅をそっと撫でる。

私「生き物は卒業したとか言ってなかった?」

結びかけの靴ひもから手を離し、私も亀の甲羅に手を乗せる。

雲が月を再び隠す。

訪れた闇は、すべてを黒で包み込む。

世界の境界線が失われたみたいだった。

幼馴染「危ないところにいる生き物は放って置けねえよ」

幼馴染「みんなそんなもんだろ?」

私「あんたくらいだよ」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/13(火) 07:37:26.98 ID:UQCEEq9P0
私(ああ、なんかほっとする)

私(こいつ、なにも変わってないんだ)

私(好きなもののためなら、なんでもする)

私(何よりも尊くて、美しい)

私(それが、こいつなんだ)

なでなで

私「いやべちゃべちゃの手で撫でないでよ気持ち悪い」

幼馴染「泣いてた気がしたから」

私「泣いてないから」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/13(火) 07:39:15.36 ID:UQCEEq9P0
私「私、変わっちゃったね」

幼馴染「何も変わってねえよ。大丈夫だ」

私(ああ、本当に泣きそうだ)

私(靴紐どこだろ)

私(まだ、結べてない)

私(いや、でも、結べなくてもいいのか)

私(結んだら、この夜が終わるかもしれないし)

私(いやそんなわけはないんだけど)
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/13(火) 07:40:35.61 ID:UQCEEq9P0
幼馴染「すげえ煙草今吸いたい」

私「あんなまずいのよく欲しがるね」

幼馴染「お前も吸ったのかよ」

私「ひどい味だった」

幼馴染「かっこつけるために吸ってたんだよ」

私「全然カッコよくないから」

私「こっちの方がいいよ」

ズボッ

幼馴染「からっ! まずっ!」

私「わさび飴だよ」
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/13(火) 07:41:51.59 ID:UQCEEq9P0
私「慣れたらおいしいらしいよ」

幼馴染「妹がこの飴好きだわ、たしか」

私「たぶん、今日会ったよ、妹さん」

私「いい子だね。芸術家タイプだ」

幼馴染「ただの生意気なクソガキだよ」

私「あんたによく似てる」
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/13(火) 07:43:17.10 ID:UQCEEq9P0
私「じゃあさ、話し戻すけど」

私「なんで殺したの?」

幼馴染「……」

私「なんでこういう時はだまるかなあ、めんどくさい」

私「あの子はたしかに嫌な奴だよ」

私「靴に画びょう入れてくるし、教科書やぶってくるし、給食に洗剤混ぜてくるし」

私(たぶん、きっかけなんてなんでもよかったんだろう)

私(いじめなんてそんなもんだ)
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/13(火) 07:45:22.38 ID:UQCEEq9P0
私(テストで私だけが満点とってたりとか)

私(あの子の片思いの男子からチョコをもらったこととか)

私(うちの父親が不倫して母子家庭だったりとか)

私(まあ、とにかくなんでもよかったんだ)

私(お母さんが、職場でパワハラされてたから)

私(同じ道を歩まないために、色々合わせて、ギャルっぽくしたりとかがんばったんだけど)

私(全部裏目に出た)

幼馴染「……そうか」

私「言い訳くらいしろよ」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/13(火) 07:47:23.10 ID:UQCEEq9P0
私「人殺すんだよ?」

私「死体隠すとか、こっそりやるとかさ」

私「もっとやりようあるでしょ」

私「脅すつもりで包丁つきつけて」

私「軽いはずみで深く刺さったとか、そういうパターンでしょ?」

私「だとしても、人の命を奪ったのなんかに変わりはないしさ」

私(ああ、もう何が言いたいんだろ)

私(彼をこんな風にさせてしまったのは、誰のせいだ)

私(…私のせいか)
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/13(火) 07:50:06.45 ID:UQCEEq9P0
私(彼を拒絶して、変に空回りしている私を見たこいつが)

私(こんなにこじらせてしまうなんて)

私(…まあ、頭がおかしいのはこいつなんだけどさ)

私「でも、殺しちゃだめなんだよ」

私(理論上の問題を突きつけるしかない)

私(彼をひっぱたくべきだんだろうけど)

私(靴紐がまだ結べてないから手が離せないし)

私(この人殺しとか言って、彼を軽蔑すべきなんだろうけど)

私(その代り今、こいつを抱きしめたいとか)

私(そういうことを考えている私は、こいつと同じくらい頭がおかしい)

私(たぶん、アルコールのせいだろう)

私(そういうことに、しておこう)

95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/13(火) 07:51:43.78 ID:UQCEEq9P0
タッタッタッ


警察の声「いました! 容疑者と女性、たぶん中学生くらいです!」

警察の声「確保します!」

若い警官は、私と彼と、亀をライトで照らす。

満月が注いでくれた、優しい魔法を打ち消すのには

その光は十分なくらいに眩しくて、冷たかった。

96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/13(火) 07:52:45.03 ID:UQCEEq9P0
彼はおとなしく両手を上げる。

亀は光におびえ、彼の膝から滑り落ちる。

私は何もできず、ただ下をうつむくだけだった。
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/13(火) 07:53:43.12 ID:UQCEEq9P0
数年後

私「……ふわあ」

祖母「あんた、ベッドで寝なさいよ」

私は、祖母の家で暮らしていた。
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/13(火) 07:55:13.97 ID:UQCEEq9P0
続く。

また明日ノシ

>>81
>>82
読んでくれてありがとうございます!
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/07/13(火) 10:53:06.19 ID:EDBrMO4OO
おつおつ
テンポよくていいね
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/14(水) 08:13:00.58 ID:/jrdr4ol0
私「また寝てたか」

私「何時?」

祖母「夜中の1時よ」

私「また中途覚醒か」

私「眠剤全然効かないなあ」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/14(水) 08:13:51.61 ID:/jrdr4ol0
私「夢見てた」

祖母「どんな夢?」

私「あいつの夢」

祖母「またかい」

私「オセロの続きしてた」

祖母「どっちが勝ったんだい?」

私「忘れた」

私「でもワイン飲んでた」

102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/14(水) 08:15:18.88 ID:/jrdr4ol0
私「どうせならあいつの分残して一緒に飲めばよかったな」

祖母「未成年が飲むもんじゃないでしょうが」

私「夢ならセーフ」

私「それよりさ、何度も考えちゃうんだよね」

祖母「うん」

私「あいつをさ、あのまま用水路から手を引いて」

私「逃げて、警察降り切ってたら」

私「どうなってたかな、とか」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/14(水) 08:16:54.67 ID:/jrdr4ol0
祖母「あんたはどう思うの?」

私(この人はいつも答えより質問を返してくる)

私(時々難しい質問をしてくるから頭が痛くなる)

私「お母さんのくれた交通費使って、それで遠くに逃げて」

私「働いて…」

私「あ、でも仕事どうしよ」

私「キャバ嬢とか向いてるかな」

祖母「やめときな」

私「失礼な」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/14(水) 08:18:44.80 ID:/jrdr4ol0
私「そもそもさ、あいつとの関係悪くしたの、中学の時の一言じゃん?」

私「もっと私がましなこと言ってれば」

私「いやそもそも、私がギャルっぽい路線で架空の自分なんて作らなきゃ」

私「あいつがこじらせなかったかもしれないし」

私「いやそもそも最初からいじめられてなかったら」

私「あいつも暴走しなくて済んだかもしれないし」

私「いやそもそも」

祖母「そもそもが多いわねあんたは」

私「」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/14(水) 08:20:06.71 ID:/jrdr4ol0
祖母「楽になりたいのはわかるけど」

祖母「それ、続けてて楽になる?」

私「…もしもを考えてたら」

私「現実から逃げられるし」

私「こんな苦しみもいつかは終わるかもしれないじゃん」


祖母「なるほどね」

祖母「なんか飲むかい?」

私「コーヒーちょうだい」

祖母「はいはい」
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/14(水) 08:21:05.99 ID:/jrdr4ol0
祖母「余計眠れなくなるのに、あんたは変わってるわね」

私「別にいいでしょ」

ズズ

私「相変わらずまずいね!」

祖母「いれてもらっておいてよく言うねこの子は」

祖母「もうわかってて飲んでるだろ」

私「まあね」

私「ブラックも少しずつ慣れてきたんだよ」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/14(水) 08:22:38.06 ID:/jrdr4ol0
祖母「一つききたいんだけど」

私「なに?」

祖母「彼は人の命を奪ってるわけだろ?」

祖母「そのところあんたはどう思ってるの?」

私(倫理的な正しさとか)

私(宗教的な正しさとか)


私(今それは重要じゃない)

私(私がどうとらえているか)

私「まあうん、なんていうか」

私「よくわかんないね」
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/14(水) 08:23:24.44 ID:/jrdr4ol0
私「現実感ないというか、なんというかさ」

祖母「そうかい」

私「じゃ、散歩行くから」

祖母「はいはい、気を付けてね」

109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/14(水) 08:24:46.33 ID:/jrdr4ol0
最近買い替えたランニングシューズを履いて

私の深夜徘徊は始まった。

私(車全然走ってないな)

私(ど田舎最高)

私(風涼しい)

私(やさしさと切なさが混じった匂い)

ノソノソ

私(田舎特有の亀とか虫がめっちゃいるんだよね、こういうとき)
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/14(水) 08:25:38.10 ID:/jrdr4ol0
ソッ

私「危ないから避けとくね」

私(彼のまねごとみないなことを続けてる)

私(恩返しも、お礼の言葉もない)

私(ただの、願掛けだ)
111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/14(水) 08:26:25.33 ID:/jrdr4ol0
私(コンビについた)

ウィン

私「37番1つ」

店員「未成年には売れないよ」

私「吸わないです。かっこつけるために買うんです」

店員「いや駄目なものは駄目だから」
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2021/07/14(水) 08:27:17.63 ID:/jrdr4ol0
私「じゃあこれでいいです」

ソッ

店員「なんでわさび飴?」

店員「これ、美味しいかい?」

私「まずいです」

店員「だよね」

私「慣れればいけます」

店員「慣れがいるんだね」
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