辻野あかり「7人が行く・EX3・出郷りんご」

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68 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 21:49:19.20 ID:lF0ws9bq0
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辻野家・あかりの自室

あきら「あかり、お風呂あがった……寝てる」

あかり「ぐーぐー」

あきら「意外と寝息が大きい……まっ、いいけど」

あかり「うーん、りんごの精よ、私に力を、うわぁ、こっちに寄ってこなくてください……」

あきら「凄い寝言……電気消そう」

あかり「ぐぅぐぅ」

あきら「お休み、あかり」
69 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 21:50:20.39 ID:lF0ws9bq0
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9月下旬のとある日曜日・旅行2日目

早朝

辻野家・台所

あかり「おはようございます」

若葉「おはようございます〜、よく寝れましたか〜?」

あかり「はい、黄色の若葉お姉さん。くんくん、炊き立てのご飯の匂いがするんご」

若葉「朝ごはんですよ〜、色々勝手に使ってるのは許してください」

あかり「もちろんです、たまに使ってくれると長持ちしますから。わぁ、小さなおにぎりがたくさんです、若葉お姉さんの手のサイズでカワイイんご」

若葉「いつでも食べられるように、おにぎりにしました〜。握りたて、どうですか?」

あかり「いただきますっ。お味噌が塗ったおにぎりなんですね、珍しい」

若葉「群馬以外だと珍しいみたいですね、お茶とお味噌汁も準備しておきました〜」

あかり「若葉お姉さん、料理出来るんですね」

若葉「独り暮らしの大人ですから、当然です」

あかり「美味しいですっ、他のは何ですか?」

若葉「左の列から、卵焼き、豚の焼肉、道の駅で買った佃煮、とかですよ〜」

あかり「独特なラインナップです、群馬の文化は興味深いんご」

若葉「群馬じゃなくて私の趣味です〜」

あかり「卵焼きのおにぎりを貰いますっ。千夜さんは担当じゃないんですか?」

若葉「まだ早朝も早朝ですから。あかりちゃんは早起きなんですね」

あかり「この家にいた時はいつも早起きだったから。うん、醤油味の卵焼きがおにぎりにあうんご」

若葉「せっかくなので、飲み物を畑に持って行ってくれますか?」

あかり「畑に?誰か農作業してるんですか?」

若葉「私が穴を掘ってるんですよ〜」

あかり「穴を掘る?入るためですか?」

若葉「調べてるんです〜、真ん中くらいにいるので話を聞いてみてください」

あかり「わかったんご。この麦茶とカップですか?」

若葉「はい、お願いします〜」
70 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 21:50:53.79 ID:lF0ws9bq0
42

辻野家・りんご畑の中央

奏「辻野さん、おはよう」

あかり「奏さん、おはようございますっ。体調に問題ありませんか?」

奏「問題ないわ。その麦茶、もらっていいかしら」

あかり「美しいお顔が変わらないから平気みたいですね。はいっ、どうぞ」

奏「ありがと。日下部さんは、そこよ」

あかり「こんなに深い穴掘ったんですか?いつの間に」

奏「私達は人じゃないもの。日下部さん、一旦戻ってきて。水分補給しましょう」

あかり「それ糸電話なんですね。ロープもあるんご」

若葉「はい〜」

あかり「戻ってくるのが早いです。麦茶を、どうぞ、どうぞ、どうぞ」

若葉「ありがとうございます〜」

若葉「汗かいちゃいました」

若葉「色々わかりましたよ〜」

若葉「深さごとに土を分けてみました」

若葉「私から説明します。続けてください」

若葉「麦茶、ありがとうございました〜」

あかり「緑の若葉お姉さん以外穴に戻っちゃいました」

奏「植物のことは植物がわかる人物に聞くのがいいわ。日下部さん、何がわかったのかしら」

若葉「穴を掘ったのは土地を調べるためです、まずは表面です〜」

奏「この山ね。ガーデニングには詳しくないけど、良い土に見えるわ」

若葉「それだけ、ですか?」

奏「私が一晩警戒していたものと似た気配がする」

あかり「封印されてる……何か」

若葉「あかりさんのお父さんは緑の手の人なんですね、健康なりんごが育つと思います〜」

あかり「でも、育ってないのは」

奏「相手の影響ね。正体は、まだわからないけれど」

あかり「やっぱり」

若葉「あかりちゃん、りんごは弱いと思いますか?」

あかり「え?そうは思わないんご。台風で落ちちゃうことはあるけど」

若葉「木は丈夫です。今も枯れてません、弱っているけれど」

奏「土も根こそぎ力を奪われているわけではない」

若葉「なのに実らないのは理由があるんです。奏ちゃん、2つ目の山はどうですか?」

奏「もう少し深いところね。悪い感じはしないけれど、豊かさも感じない」

あかり「うーん、確かにそんな気がするんご」

若葉「リンゴ畑を初めて何年ですか?」

あかり「おじいちゃんが土地を見つけて来て、父ちゃんが若い頃に始めたから、20年くらいです」

奏「そこまで歴史はないのね」

若葉「土に理解がある人が無茶なことをしていないのに、土地は痩せてます」
71 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 21:51:30.89 ID:lF0ws9bq0
あかり「この土地、そんなに良くないんですか?」

若葉「悪くないですけど、周りのりんご農家さんよりは良くないかも」

あかり「新参者だから、そこは仕方がないです」

若葉「あかりちゃん、もっと深いところは次です」

あかり「良い土な気がするんご」

奏「だけれど、同じ気配がするわ」

あかり「りんごが実らない、理由」

奏「昔も同じことがあったのかしら」

若葉「あかりちゃん、言ってもいいですか?」

奏「言いにくいことみたい。辻野さんには悪いこと」

あかり「言ってください」

若葉「アレがいなくなっても、戻らないと思います。数年か、それ以上にもっと」

奏「そうでなければ、耐えられたかもしれないように聞こえるわね」

若葉「はい。もう1度やり直しです」

あかり「若葉お姉さん、ありがとうございます。父ちゃんは、はじめた人だし、きっと大丈夫ですっ」

奏「そう言ってたわね」

若葉「今の所はこんなところです〜」

あかり「ありがとうございます、変に期待しちゃって裏切られなくて良かったんご」

若葉「もう少し調べてみます。奏ちゃん、後で山の方も調べてみましょう」

奏「わかったわ。辻野さん、飲み物ごちそうさま」
72 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 21:52:45.64 ID:lF0ws9bq0
44

辻野家・駐車場

あかり「直売所の軽トラです。あの車ですか?」

千夜「はい」

あかり「あれ?思ったより若い、しかも女の人です」

千夜「お待ちしておりました。小室千奈美さん、ですか」

小室千奈美「ええ。おはよう」

小室千奈美
愛知県出身の大学生。夏休みを利用して山形に来ている。麦わら帽子が似合う。

千奈美「紹介するわ。及川雫ちゃん、岩手から来てるの」

及川雫「おはようございますー」

及川雫
岩手県から学校の実習で滞在中。ツナギ姿。力持ちらしい。

千夜「私は白雪千夜です」

雫「電話の人ですねー、はじめましてー」

千夜「こちらは、辻野あかりさん。辻野さんの娘さんです」

あかり「はじめまして。若い人で驚きました」

千奈美「あなたがそう、大変だったわね」

あかり「いえ、そんなことないですっ。千夜さん達も良くしてくれるし、都会も楽しいですから。畑のお世話してくれて、ありがとうございますっ」

千奈美「雫も私もアルバイトよ、色んな人がお世話してくれてるの」

あかり「アルバイトなんですか?」

千奈美「大学の勉強とも関わるから一石二鳥よ。旅行も兼ねてるから、それ以上」

雫「私も実家は牧場ですけど、農業も楽しいですよー」

あかり「……若い人が増えたと思ったのに残念です。やっぱり、千夜さんをお嫁に……」

千夜「辻野さん、何か言いましたか」

あかり「なんでもないですっ」

千奈美「いつも通り掃除していくわ」

千夜「お願いします。家の方はこちらで」

千奈美「わかったわ。資料も持って来たわ、ちょっと持ってき過ぎたかも」

千夜「ありがとうございます」

千奈美「雫、家に運んであげて」

雫「わかりましたー、任せてくださいっ」

千夜「私達も資料を運びましょうか」

あかり「千夜さん、若葉お姉さんが畑にいるような」

千夜「移動してもらいました。事情はお2人には話していません」

あかり「安心しました」

雫「どうしたんですかー?」

あかり「いえ、何でも……わっ!本当に力持ちですっ」

千夜「充分な量の資料ですね、これならいけるでしょうか」

千奈美「そういえば」
73 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 21:53:50.47 ID:lF0ws9bq0
千夜「何か」

千奈美「行方不明の成宮由愛ちゃん、だったかしら。目撃情報があったらしいの。見たりしてない?」

千夜「いいえ、見ておりません」

千奈美「そうよね、地理感のない子供が1人で移動するには不便だもの。いちおう見回りはしておいた方がいいかしら?」

あかり「わ、私もそう思います」

千奈美「畑に行くわ。雫、後で合流ね」
74 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 21:54:36.99 ID:lF0ws9bq0
45

辻野家・駐車場

凪「ありがとうございました」

あかり「ありがとうございましたっ」

凪「美麗な実習生は帰ってしまいました。残念」

あかり「作業着も似合ってました。本当に山形に定住してくれたり、しないか」

凪「凪は気に入りましたよ」

あかり「わかってます、旅行と定住は別ですから。凪ちゃん、朝ごはん食べましたか?」

凪「凪は食べました。お米がとても美味しい」

あかり「山形もお米どころなので、たくさん食べるんご」

凪「はい。凪も成長中。はーちゃんは更に」

あかり「凪ちゃんも、ありがとうございます」

凪「凪は凪が思う通りにしているだけです。ついでに褒められるのは悪くない」

あかり「たくさん資料があったから、整理しないとですね」

凪「ええ。せんせいが来る前に」

あかり「先生?」

凪「せんせいは先生です。昨日は温泉旅館で1泊しています」

あかり「その先生も協力してくれてる?」

凪「時子様は言いました。忙しい人物に頼むのが1番早い、癪だけど納得いかない事実だ、と」

あかり「はい?財前さんも協力してくれてるんですか?」

凪「せんせいは、ゆったり朝風呂。凪達は準備をして待ちます」
75 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 21:56:47.17 ID:lF0ws9bq0
46

辻野家・山の目の前のりんご畑

芳乃「……ご用がありましてー?」

奏「見るだけで、邪魔をするつもりはなかったの。せっかくだから聞くわ、準備はどうかしら」

芳乃「地の加護は受けられそうにありませぬ。大樹もなきゆえー」

奏「日下部さんから聞いたわ。それなら何を頼るのかしら」

芳乃「人の縁と、そなたを」

奏「なるほどね。少しだけよ」

芳乃「四方にヒトガタがありまして、お授けくださいませー」

奏「これね。さぁ、退魔師さんを助けてあげて」

芳乃「白き力を感じますー」

奏「4つとも出来たわ。昨日は出来なかったけど、引きはがすことは出来るかしら」

芳乃「最善はつくします」

奏「あの子の隠れ場所だけれど」

芳乃「奥の山に洞穴があるようですー」

奏「あら、知ってるのね」

芳乃「こちらのものとは思えませぬ」

奏「意図的に用意されたものかしら」

芳乃「はい、封印と故意につなげたと思われまして。今は近づかぬよう、引き込まれるゆえ」

奏「つまり、近くにいるのね」

芳乃「はい。強力な封印でして場所は特定できませぬー」

奏「わかったわ。日下部さんにも伝えておくわ」

芳乃「ひとつ、お伝えくださいませー」

奏「何をかしら」

芳乃「これまでの難敵、記録が残らぬ訳がありませぬ。きっと辿り付けましょうー」
76 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 21:57:49.79 ID:lF0ws9bq0
47

辻野家・リビング

椿「りあむさん、古い農地図みたいです」

りあむ「農地図は大事!あそこ!可能な限り年代順に並べて!若葉お姉さん、山形駅の時間な気がする!若葉お姉さんレッドとホワイトで迎えに行って!」

若葉「もうこんな時間に〜、わかりましたっ」

あかり「えっ、山形駅に誰か来るんですか?」

凪「これは民間伝承、古い怪談本です。明治かそれ以前か」

りあむ「凪ちゃん、読めるそれ?全部読まなくていいけど、関係しそうなページにメモ紙でも挟んでおいて!」

凪「りょ。全部は読めませんが、挿絵があります。凪アイで見つけられるはず」

千夜「先行した日下部さんの資料をお持ちしました」

りあむ「それもあったか、忘れてた!あかりんごに任せた!」

あかり「は、はいっ、わかりました!」

千夜「いいえ、小室さんが持って来た資料を見てもらうのが良いかと」

りあむ「それもそうだな、この土地のことだもんな。白雪ちゃん最高だよ!あきらちゃんと交替して!」

あきら「わかった。りあむさん、これは」

りあむ「それはあそこ!」

あきら「まだ何も言ってないデス。土地の譲渡契約書の多分コピー」

りあむ「結果的にあってるからオッケー!あかりんご、頼んだ!」

あかり「わかったんご!」

椿「この写真は50年前くらいでしょうか。でも、何の写真なんでしょう?」

りあむ「椿さん、わかんないなら年代別で!」

奏「てんやわんや、って言葉通りね」

りあむ「こういう時は猫の手も、天使サマの力も借りたい!けど、ここじゃないな!天使サマ、休んでていいよ!」

奏「その考えに従うわ。お礼をどうぞ、郵便よ」

りあむ「うわっ、また紙が増えた!分厚い封筒だよ!」

奏「残念、もう2つ封筒があるわ。ダンボールも2つ玄関に」

凪「せんせいはウワサ以上。凪が運びますか」
77 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 21:58:28.42 ID:lF0ws9bq0
りあむ「若葉お姉さんに力仕事はやってもらって!白雪ちゃんでもいいよ!」

若葉「まかせてください〜」

若葉「わかりました〜」

千夜「速水さん、客間でお休みください」

奏「それじゃあ、おやすみ。必要な時に起こして」

あかり「それにしてもたくさんです」

りあむ「たくさんなのはまとめた1冊がないから!あえて残さなかった可能性もある!」

芳乃「わたくしをお呼びでしてー?」

りあむ「退魔師サマ、待ってた!白雪ちゃん、あれを!」

千夜「依田様、こちらです」

あかり「すごく古い木箱です」

あきら「神社に保管されてた。中身を知ってる人は見つかってない、もういないのかも」

あかり「漢字が書いてあります、緑?」

千夜「緑ではなく縁。えん、あるいは、えにし、と読むのでしょう」

あかり「書いてあるから重要なのかな」

あきら「あるいは呪文かも」

りあむ「たぶん呪いも何もないんだろうけど、さすがに気が引ける!りあむちゃんも日本人だからね!祟られたくないんだ!」

あきら「だから、開けて欲しい」

芳乃「ご用命は承知いたしましてー。土間をお借りします」

あかり「はい、どうぞ!コンテナが邪魔だったらどかしてくださいっ」

芳乃「白雪さまー、お手をお貸しくださいませー」

千夜「かしこまりました。お運びします」

椿「連絡きました、あと30分くらいで到着するみたいです」

りあむ「よし、出来る限りやるぞ!あかりんご、覚悟するんだぞ!」

あかり「覚悟、ですか!?」

あきら「言い方が悪い。期待してて。きっと、ううん、絶対に解決するから」
78 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 21:59:22.77 ID:lF0ws9bq0
48

辻野家・玄関前

あかり「あのスポーツカーは、伊集院さんの車ですっ」

千夜「ご到着されたようです」

あかり「千夜さんは、持田さんにあったことはあるんですか?」

千夜「いいえ。お会いするのは初めてです」

あかり「財前さんのお友達です、きっとスーツが似合う美人です」

千夜「小学校や幼稚園の先生が天職そうな見た目らしいので、違うかと」

あかり「降りてきました。こっちに来るんご」

千夜「伊集院さんと」

あかり「あれが、せんせい?イメージと違うんご」

千夜「確かに、あの論文を書く人物とは思えません。小学1年生を担当している、そのイメージに近いですね」

伊集院惠「おはよう。紹介するわ、亜里沙よ」

伊集院惠
S大学の大学院生。出身は東京都。相変わらず実家暮らしとのこと。

持田亜里沙「持田亜里沙です、はじめまして♪」

持田亜里沙
故郷の長野県で小学校教諭となった。S大学教育学部出身。久しぶりにお出かけしたのでご機嫌なよう。

千夜「はじめまして。私は白雪千夜と申します。こちらは」

あかり「辻野あかりですっ」

亜里沙「あなたが、あかりちゃん?」

あかり「はい、あの私のことで協力してくれて……」

亜里沙「がんばりました。よしよし」

あかり「……ありがとうございます。抱きしめられて頭を撫でられるのは恥ずかしいんご」
79 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:00:08.96 ID:lF0ws9bq0
亜里沙「ありさせんせいに任せて。惠ちゃん、行きましょう」

惠「ええ。資料は?」

千夜「リビングに。可能な限り分類しました」

惠「さすが。神社の箱は」

あかり「はい、退魔師さんが調べてます」

亜里沙「ばっちりね。はじめちゃいましょう」

惠「ええ、温泉で充分に休んだもの」

亜里沙「昨日は連れまわしてごめんね、惠ちゃん」

惠「あれくらいなら問題ないわ。時子ちゃんの方が大変だったわ」

千夜「よろしくお願いします」

あかり「財前さんのお友達は行動が早いです」

千夜「ええ、見習うのは難しいですが……」

あかり「えへへ、撫でられちゃいました。あれ、おかしいな、私のキャラじゃないんご」

千夜「辻野さん、もしかして泣いてますか」

あかり「泣いてないです、あきらちゃんの前でも泣かなかったのに。違うんご」

千夜「……財前さんの言う通り、只者ではありませんか」

あかり「小学生だったら絶対好きになるんご。優しいしカワイイし良い匂いで神です」

千夜「あいつの悪影響が辻野さんに……気をつけねば」

あかり「何とかなる気がしてきました、千夜さん、私達も行きましょうっ」

千夜「はい」
80 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:00:54.18 ID:lF0ws9bq0
49

辻野家・リビング

亜里沙「ふむふむ。惠ちゃん、明治頃の地図ある?」

惠「これかしら。何がわかるの?」

亜里沙「ありがと、それはお楽しみ♪」

りあむ「ぼくたちは眺めている、凄い勢いで資料に目を通すお姉さま方を」

あかり「ノートとペンがカワイイんご」

あきら「ヒヨコのボールペン、どこで売ってるんだろ?」

亜里沙「(欲しいならあげるウサー!)」

あきら「聞かれてた。うさちゃんもいつの間に」

あかり「欲しいんご!」

亜里沙「(あかりちゃんにプレゼントウサー!)」

あかり「ありがとうございます、メモ帳に使いますっ」

凪「あかりんごに構いつつも手も目も止めない。もはや左利きです」

千夜「お前、日下部さんからご連絡ありました」

りあむ「若葉お姉さん、駅で合流した?白雪ちゃんは何してたの?」

千夜「合流しました。私は家の掃除を」

亜里沙「よしっ」

惠「わかったかしら」

亜里沙「もう少し。あかりちゃん、お話を聞いていい?」

あかり「もちろんですっ、何でも話すんご」

亜里沙「りあむちゃん、皆を呼んでもらっていい?」

りあむ「わかった!せんせいの言うことはきちんと聞かないとね!やっとわかったよ!」

亜里沙「あかりちゃんに質問です」

あかり「はいっ」

亜里沙「お腹が減る夢、見てましたか?」

あかり「はい?」
81 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:02:13.40 ID:lF0ws9bq0
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辻野家・リビング

あきら「あかりの家は狭くないけど」

凪「りあむ、椿さん、あかりんご、あきらさん、若葉お姉さん緑、奏さん、依田様に伊集院さんと亜里沙せんせい。たくさんだ」

あかり「親戚の集まりより多いかも」

亜里沙「みんな、揃いましたか?」

りあむ「うん!若葉お姉さん緑以外は外だけど、他は全員集合!」

亜里沙「惠ちゃん、準備はできた?」

惠「ええ。年表を作る準備はできてる」

あかり「年表?」

亜里沙「りあむちゃん、まずはあかりちゃんに何があったか説明してね」

りあむ「わかった!あかりんご、黙っててごめん!」

あかり「昨日聞いたから謝らなくていいんご」

りあむ「でも、話してないことはいっぱいある。例えば、何でこの部屋にこんなにいるのかとか」

芳乃「そうでしてー」

凪「山形は辻野邸のリビングに、11人。わーお、摩訶不思議」

惠「隠し通せたのも凄いわね」

りあむ「天使サマが部室に来て、あかりんごが山形に行きたくないって言った日から、ぼくたちは調べ始めた。だけど、時間が足りない!」

奏「まずは旅行の日程が決まったわ」

あきら「りあむサンが大学に通うのがまず優先」

椿「大学の夏休みが終わる前にしました」

りあむ「ぼくのことはいいんだよ!って言ったけど、時子サマも同じ意見だった!」

凪「時子様に逆らうこと、それは出来ない」

椿「財前さんに相談に行きました」

あきら「すぐに」

凪「正しくは、最初の話し合いをした直後です」

あかり「最初の話し合い、何時だったんですか?」

椿「奏さんが旅行の相談に来た日ですよ」

あかり「動き出しが早いんご」

椿「私は同時に別の事も」
82 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:03:03.05 ID:lF0ws9bq0
りあむ「あかりんごの家がりんご農家なのは知ってる!家を出た理由はそこにあるに決まってる!だから、椿さんにお願いした!」

椿「はい。あかりさんのご両親に、お許しをいただきました」

凪「調べること、それと」

あきら「事情を、聞くこと」

あかり「父ちゃんに挨拶に来るのが早かったわけです」

りあむ「事情を聞いたから、これはただ事じゃないと思った!」

若葉「見切り発車でしたけど〜」

りあむ「時間もないなら人を使うしかない!時子サマも言ってた!それで、紹介してくれた!」

凪「それが、ありさせんせい。こちらではウワサの人物です」

亜里沙「はい♪」

椿「お忙しいところ、すみません。持田さん」

亜里沙「悩んでいる子がいたら放ってはおけませんから」

りあむ「神かよ。優しいしカワイイしイイ匂いもする、神だな」

千夜「やはり、お前の影響か。辻野さんがやむやむ言い始めないように気をつけないと……」
83 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:04:02.58 ID:lF0ws9bq0
椿「伊集院さんもありがとうございます」

惠「気にしなくてもいいわ。私は大したことはしてないから」

りあむ「資料集めとか手伝ってもらったよ!それと教会にも声をかけた!」

凪「凪からもお願いしました」

奏「大体は私から。退魔師さんには予定を繰り上げてもらったわ」

芳乃「構いませぬー。修行の成果を見せる時でしてー」

あかり「退魔師さんが一緒にいたのはどうしてですか?」

芳乃「土地の物は力をくれましてー」

奏「つまり、旅行がしたかったということよ」

あかり「そこはそんな理由なんですね」

亜里沙「私達も温泉を満喫しましたから」

あかり「いいえ、山形を満喫してくれたらなら嬉しいんご!」

りあむ「下調べも前乗りもしてるよ!若葉お姉さんが広範囲活動をしてくれた!」

あかり「え、そうなんですか?気づきませんでした」

あきら「意識してないと気づけないと思う」

椿「以前も若葉さんの正体に気づけた人はいませんでした」

惠「私達を除いて」

若葉「山形に1番いたのは私ですよ〜」

りあむ「移動費は夢見家持ちだよ!宿泊先は辻野家を使った!掃除も少しずつやってもらったよ!」

あかり「掃除が行き届いてるわけです。でも、若葉お姉さんは大丈夫なんですか?」

若葉「何がですか?」

あかり「自分の1部が、そんなに遠く長く離れて」

若葉「平気ですよ。前の日下部若葉は、東京にいたのは人間でいう1人でしたから」

惠「だから、間違ってしまったのかも」

亜里沙「一緒にいれて、せんせいも安心しました」

若葉「はい。それに今は寂しくありませんから〜」

あかり「りあむさん達に、教会に、山形に滞在してた若葉お姉さん、それと財前さんと一緒に不思議なことを調べてたお友達……もしかして、もう全部わかってるんですか?」

りあむ「ううん、わかってない!でも、一気に近づく手がかりが山形にいた若葉お姉さんから聞けた!」

亜里沙「あかりちゃん、わかる?」

あかり「もしかして、行方不明の女の子?」

あきら「そう」
84 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:04:57.87 ID:lF0ws9bq0
りあむ「行方不明になった場所はここから遠いけど、影響を及ぼすのは距離じゃないって、ちとせが言ってた!」

凪「距離ではなく、共振。あるいは共鳴。いや、チューニングというべきか」

千夜「久川姉妹の手法と同じです」

芳乃「偶然にも彼女と波長があったのでしょうー」

あきら「ラジオをあわせるように」

亜里沙「あかりちゃんもご家族も影響はなかったみたいですから」

あかり「お腹が空く夢は見てないんご」

凪「やはり重要なのは距離ではない。理由は、奏さん、どうでしょうか」

奏「理由はわからない。相性かあるいは、非現実に逃避したかったのかしらね。その思いが届いてしまった」

芳乃「届いてしまった者の言葉は重いのでしてー」

奏「……そうね」

あきら「行方不明の女の子、この辺りで目撃情報があった」

千夜「この土地へ執着はあるようでした」

芳乃「それを用いて導きましてー」

千夜「それに辻野さんを使わせていただきました」

あかり「私、ですか」

芳乃「少々見つけやすいようにしましてー」

あきら「理屈はわからないけど、本当に寄ってきた」

芳乃「必要な言葉は得られましてー」

あかり「何か、言ってましたっけ?あれ、いや、言ってたような?」

あきら「ヒントは、これまでにあった。あかりが言ったこと、気にしてること、思ってること……隠してること」

りあむ「何があったかはこんな感じだよ!ありさせんせい、これでいいかな!」

ありさ「はい、良く出来ました♪」

りあむ「ほめられた!りあむちゃんも小学生に戻りたい!ありさせんせいが担任で!」

千夜「また……お前は世迷い事を」

りあむ「ありさせんせい、お願いしていい?何があって、どうしたらいいか」

亜里沙「まかせて。それじゃあ、はじめましょ」
85 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:05:49.96 ID:lF0ws9bq0
51

辻野家・リビング

亜里沙「先に答えを言ってもいいけれど、丁寧に進めましょう。惠ちゃん?」

惠「ええ、準備はいいわ」

亜里沙「あかりちゃん、もう1度聞かせて。りんご畑を始めたのは何時?」

あかり「父ちゃんが学生の時です」

惠「ええ。これは土地を借りる契約書。辻野さんのおじい様の名前よ」

亜里沙「あかりちゃんの聞いてた通りね。おじいさんが探してきた土地でした」

あかり「父ちゃんが働き始めたくらいで本格的にりんごが取れ始めた、って聞いてます」

惠「年表だと、このあたり」

凪「おやおや随分と右寄りに貼られました。左、つまり過去に何があるのか」

あきら「歴史ある農園とかじゃなかったんだ」

あかり「ずっと農家ですよ?りんご農家になったのは父ちゃんからですけど」

亜里沙「その通りです。あかりちゃんのお父さんが学生時代から手をつけはじめ、自ら軌道に乗せたんです。惠ちゃん、これを」

惠「土地の借用書から譲渡書へ」

亜里沙「それまでにお嫁さんが来たり家が建ったり色々ありました。これはあかりちゃんのご両親の結婚式写真です」

あかり「いつの間に」

椿「まぁ、素敵です」

亜里沙「カワイイ女の子にも恵まれました♪」

あかり「いつの間に!」

凪「わーお、オールヌード」

千夜「産まれてまもない写真でしょうか」

椿「ちょっとピントがずれてて、撮った人の感情がわかる良い写真です♪」

亜里沙「お写真はたくさん見せてもらいました」

りあむ「髪型昔から変わってない!全然変わってないね!ロりんごもカワイイぞ!」

あきら「その呼び方は、ちょっと」

あかり「父ちゃんもお母ちゃんも娘の情報を渡しすぎです」

亜里沙「幸せなりんご農家の転機は去年でした」

惠「亜里沙ちゃん」

亜里沙「そうね、ここからは皆で話してね。私が話すのは」

奏「過去」

りあむ「なんで、りんご農園の一家が東京に出て来たのか」

あきら「りんごが実らなくなった理由」
86 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:06:49.83 ID:lF0ws9bq0
52

辻野家・リビング

あかり「成宮由愛ちゃんに憑いてる存在が原因なんですか」

亜里沙「焦らないで。惠ちゃん、地図を」

惠「ええ」

亜里沙「今の地図はこれ。地図記号は何でしょう?」

凪「凪は学校で習いました。果樹園です」

亜里沙「よくできました。それじゃあ、少し前は」

惠「これよ」

りあむ「何もない?ただの雑草畑だった?そういうことか?」

あかり「父ちゃんはそう言ってました」

惠「何もなかった場所。だけれど、土地の所有者が変わるわ」

りあむ「あかりんごのお父さん、その前はあかりんごのおじいちゃん、その前は?」

あかり「この辺では地主さんと呼ばれてる人、だった気がするんご。もう少し平地でお米を育ててる、とか聞いたような」

亜里沙「そう。お米農家の地主さん」

あきら「お米を育てる、のは向かない気がする。ここは果物向きの土地だよね」

若葉「そう思いますよ〜」

凪「それならば、譲り受けた理由は別にある」

亜里沙「前の地主さんが手放したから、ですね。譲り受けることをお願いしたんです」

惠「更に前の地主は、神社よ」

あかり「あれ、いつも行く近所の神社じゃない?」

惠「その通り。別の神社よ」

あかり「こんな神社あったかな……?」

奏「辻野家が氏子となっている神社に、残ってるわ」

芳乃「土地や建物はありませぬが、意思は受け継がれていましてー」

りあむ「農家の前は神社が持ってたのか、どれくらい?」

亜里沙「150年前くらいです」

あかり「一気に昔になりました」

凪「時は江戸時代か」

惠「幕末から明治にかけて。神社が出来た日付はわかるけど、土地を収めた時期はわからない」

あきら「むしろ、そこはわかるんだ」

芳乃「設立の碑が残っていましてー」

あかり「設立の碑?見たことないです」
87 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:07:40.65 ID:lF0ws9bq0
凪「どこにあるのですか?」

亜里沙「惠ちゃん、明治時代の地図を見せてあげて」

惠「ええ。どこかわかるかしら」

千夜「土地の形は変わっていませんね」

りあむ「ここが入口、この辺があかりんごの農園、ここが裏山」

あかり「この辺りの地図です」

惠「神社があるのは、ここよ」

りあむ「え、そんなところにあんの?裏山の更に裏の山の中腹より上じゃん!」

亜里沙「ええ、不便だからもっと行きやすいところに移動したの」

りあむ「なくなった神社は移動した方か」

惠「設立の碑は山の中腹に残されたまま」

あきら「知ってる人、いるのかな」

芳乃「ほぼ知らぬようでしてー」
88 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:08:23.05 ID:lF0ws9bq0
凪「不思議だ。何故そのような場所に」

りあむ「まだりんご畑もないし家もあんまない。なんでだろ?」

亜里沙「惠ちゃん」

惠「ええ。更に古い地図よ」

りあむ「大雑把になった。でも、ここなのはわかる」

あかり「あれ……?」

惠「変化した場所があるわ」

亜里沙「あかりちゃん、わかる?」

あかり「わかります……裏山が、ない」
89 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:09:31.76 ID:lF0ws9bq0
53

辻野家・リビング

りあむ「あれ、畑だったの?野菜?」

惠「ええ。何を育てていたかはわからないけれど」

凪「しかし、裏山が出来た地図では何もない。はて?」

あかり「もしかして……同じことがあった、から」

亜里沙「はい」

千夜「同じ相手ですか」

亜里沙「その通りです。当然現れた怪物が地の恵を奪っていきました」

りあむ「ん?怪物?そんなこと書いてあるの見てないよ!」

奏「それを見たのは退魔師さんよ」

あきら「ということは、神社から」

りあむ「あの開けたらいけなさそうな箱か!縁って書いてあいたやつ!」

惠「悪い気配はなかったから平気よ」

凪「怪物の資料は神社。土地は神社のものに。裏山を見るような位置の神社。凪はわかりました」

千夜「ええ、関係はありそうです」

あかり「言ってました、東洋の魔術って」

亜里沙「とっても重要な人が1人」

凪「東洋の魔術を操る」

惠「かつてあった神社を建てた人物」

奏「土地も預かったみたいね」

芳乃「封印した人物でしてー」

亜里沙「怪物を」

りあむ「めちゃくちゃ重要な人物が出て来た!割と都合の良い人物だぞ!」

惠「残念だけど、都合よく通りがかった人物ではないみたい」

亜里沙「必死に探した人が私を使命へと導いてくれた、そうよ」

芳乃「神宿る山で厳しい修行を行っていた人物のようでしてー」

りあむ「神宿る山?白神山地とか?」

惠「ええ。真偽は不明だけれど、山の神々とも拳を交わしたらしいわ」

凪「もののけ。鹿の姿をしていそうだ」

りあむ「交わすのは拳かよ。割と武闘派なの、その人?いや、武闘派か。怪物と戦ってんだもんな」

亜里沙「身長は6尺、体重は22貫を越していた立派な人物だそうですよ」

りあむ「ろくしゃく?にじゅうにかん?どれくらいなの?」

芳乃「身長は185せんちめーとる、体重は85きろぐらむ、といったところでしょうー」

りあむ「その時代にBMI25越え!アスリートかよ!修行僧とは思えないぞ!その時代なら幕内力士でもいける!間違いなく山の神々をタンパク源にしてるだろ!」

凪「ネットで調べると、スペインの有名なテニス選手が出てきました。これです」

あかり「凄いマッチョです。動く金剛力士像んご」

亜里沙「ふふっ、ほとんど同じことが書いてありましたよ」

惠「決着は早かった、そうよ」
90 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:10:43.39 ID:lF0ws9bq0
芳乃「彼の方は、山籠もりで備えた技術、鍛えられた肉体、そして強力な法術で打ち破りましてー」

りあむ「やっぱり野生動物を捕まえてるじゃないか!」

芳乃「しかしながら、現実は想像を越えるのが常でしてー」

亜里沙「相手の油断もあったのか、あっという間に怪物は捉えられ衰弱しました」

奏「捉えられたけど、そこから先」

芳乃「断ち消すことはできぬ存在」

りあむ「殺せなかったってこと?どれだけ怪物なんだよ」

惠「少しでもエネルギーを吸収できれば体が再生した、ようね」

凪「フムン、凪は聞き覚えがあります。そんな存在を」

芳乃「故に彼の方は対策を変え、封じ込めることにしたのでしてー。石の中へ法術と共に封じ込めたのですー」

亜里沙「更に封じ込めるために土地から隔絶し重く重く土と砂と石を盛りました」

あかり「それが、あの裏山」

惠「記録を見てると、その後の50年くらいは徐々に土を盛っていたようね」

あきら「今は、引き継がれてない?」

芳乃「ごくわずかな1部の方のみが口伝していたようでして」

りあむ「怪物の話なんか信じないもんな。知ってたら来ないし、引っ越してきた後に知ったらどうしようもない」

千夜「神社は、そこを見守るためのものということですね」

亜里沙「神社の土地として、畑を作らなかったのも、そのためかな」

あかり「それじゃあ、りんご畑を作ったから復活したんじゃ……」

りあむ「いや、石に詰められて、山を上に盛られて、魔法で封印されて、それで今更復活する奴がオカシイだけだよ!どんな執念だよ!食欲旺盛すぎだろ!」

芳乃「その通りでしてー」

奏「微かな隙が積み重なって復活しただけ。正直、偶然だと思うわ」

亜里沙「でも、復活はしていません。間に合いました」

凪「ありさせんせい、凪は質問があります」

亜里沙「凪ちゃん、どうしました?」

凪「ヒントはありました。ただ、どんな怪物だったのでしょう。凪は気になります」

亜里沙「そうね、正体について記録してるものもあるわ」

芳乃「こちらでしてー。当て字で書かれておりますー」

りあむ「達筆すぎてよめない!なんて書いてあるのさ!?」

亜里沙「破、阿、非、伊。怪物の名前はおそらく」

芳乃「はあぴい、でしてー」
91 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:11:53.42 ID:lF0ws9bq0
54

辻野家・リビング

あかり「はあぴい?」

椿「ハーピー、でしょうか」

凪「そっち方面だとは。予想外」

りあむ「え?ハーピーってさ、鳥みたいな怪物だよね?」

芳乃「はい、こちらに覚書もありましてー」

凪「作風は浮世絵風」

惠「醜い頭部を持ち、腕は羽根が生え、下半身は鷹のような怪物、だそうよ」

あきら「ネットで調べたのと同じだ。食欲旺盛で不浄な存在、か」

凪「主な登場はギリシャ神話」

あかり「なんで、そんなものが山形に?」

亜里沙「ギリシャと山形は緯度が同じくらいですから」

凪「ギリシャ神話イコール山形昔話。完璧な公式だ」

りあむ「なるほど!いや、そうはならない!ガバガバにもほどがあるよ!」

芳乃「はぁぴぃの生命力は侮れませぬ、幾つもの理由が考えられましてー」

りあむ「小さい状態で運ばれてきて、ここで育ったとか?そもそも別の物に封印されてたとかもあるか」

凪「まるで召喚獣」

奏「あるいは、突然現れたのかもしれない。誰かに導かれて」

芳乃「ほーるはありませぬー、少なくとも現在には」

奏「……それならいいのだけれど」

亜里沙「どうやって来たか、それはわかりません」

芳乃「書のほとんどは彼の方によって綴られたものゆえ」

あきら「理由はわからない、か」

あかり「でも、原因ははっきりしました!ハーピーをもう1度封印すれば、りんご畑も戻るんご」

亜里沙「……」

りあむ「あれ、違う?封印するのは厳しい?退魔師サマ!」

芳乃「言葉を発すべきはわたくしではありませぬ」

若葉「えっと……」

奏「日下部さんからよ」

あかり「若葉お姉さん?」

亜里沙「どうぞ、言ってください」

若葉「それだけでは、戻らないと思います」
92 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:13:05.27 ID:lF0ws9bq0
55

辻野家・リビング

あかり「さっきも聞きました。来年じゃなくても実るまでがんばります」

若葉「更にわかったことがあるんです。裏山は人の手で盛られました」

あきら「それは記録通り」

りあむ「今考えると良く見たら気づけるような感じもする。やたらに綺麗だし」

若葉「裏山は土というよりは砂利と石がたくさんでした」

千夜「封印のための重りだから、でしょうか」

若葉「草は生えていますけど、木は生えていません」

亜里沙「時間は多くあったのに」

奏「本当は、崩れていてもおかしくないくらい」

芳乃「封印がつなぎとめているようでしてー」

あかり「根がはってるわけではないんですね」

りあむ「つなぎとめてるのはおまじないか。しめ縄とかお札とかたくさん埋まってそう。うん、気持ち悪いな」

若葉「根がつなぎとめてるのは、土だけじゃありません」

あかり「わかります」

若葉「森は実りです。水を貯め、空を形に変え、落ちた葉が次の葉を育てます」

りあむ「空を形に変える……光合成のことかな」

若葉「土地はそんなに弱くないはずなんです、封印も解けてない怪物なんかに負けません」

千夜「……けれど、そうではない」

あきら「弱い理由がある」

若葉「封印は土地の力も使ってるみたいです」

椿「農地として使わせなかったのは、そのためでしょうか」

奏「そうかもしれないわ」

亜里沙「どこまで考えていたのでしょう、聞いてみたいわね♪」

あきら「いずれにせよ結論は」

あかり「封印してるだけじゃ、だめです」

あきら「それじゃ、変わらない。何時かまた起きる」

若葉「畑も戻らないかもしれません」

りあむ「人間の命は短いんだよ!そんな解決策はだめだよ!そもそも、封印すら引き継がれてないじゃないか!」

亜里沙「その通りです」

あかり「……だから、別の方法が必要です」

亜里沙「あかりちゃん、どうぞ」

あかり「ハーピーを倒して、封印もなくさないといけないです」

亜里沙「どうして?」

あかり「父ちゃんとお母ちゃんと、ここに戻るためです」

亜里沙「よくできました♪惠ちゃん〜」
93 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:14:28.84 ID:lF0ws9bq0
惠「亜里沙ちゃん、何かしら」

亜里沙「帰りましょう」

りあむ「えっ!もう帰っちゃうの!?」

惠「わかったわ」

りあむ「そこはすぐに同意するんだ!ツーカーだな!」

亜里沙「私達に出来るのはここまで」

惠「ええ」

亜里沙「美味しいものを食べて帰りましょ♪」

惠「退魔師さん、任せたわ」

芳乃「任せれましたー」

あかり「本当に行っちゃいました。山形の美味しいもの食べてくださーい!」

凪「むっ!むむ?むーむ……?」

あかり「凪ちゃん、どうしました?」

凪「凪の数少ないスキルが発揮されたような。名付けてとてもすごい凪のチカラ。言い過ぎました。そして、気のせいでしょうか」

奏「助っ人は去ってしまったけれど」

あきら「終わらせるしかない」

りあむ「あかりんご、それに必要なことは!?」

あかり「憑かれてる成宮由愛ちゃんを助けることですっ!」

芳乃「素晴らしき心がけでしてー」

りあむ「あかりんごの実は冷静なところいいぞ!ぼくも同意する!」

あきら「うん。優先しないといけないのはそれ」

凪「車の音がしたような。来客でしょうか」

若葉「山形駅まで迎えが帰ってきました〜」

りあむ「準備は出来た!退魔師サマ、行けるよね!」

芳乃「ええー、昨夜のりべんじを果たす時でしてー」

りあむ「おっけー、やるぞ!リンゴ畑を助けて、150年分の宿題も終わらせる!」
94 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:15:16.67 ID:lF0ws9bq0
56

辻野家・裏山の目の前のりんご畑

芳乃「……」

奏「……」

りあむ「あかりんご、平気?りあむちゃんは吐きそうだよ……」

あかり「平気です、父ちゃんの代わりをするんご」

りあむ「天使サマと退魔師サマ、あかりんごとぼくだけ!緊張するよ!」

奏「不安なら離れてもいいわよ。問題ないわ」

りあむ「今さら逃げないよ!逃げないのは言いって清良さんも言ってたし!ぼくは代表だから、いないと」

あかり「ふー……よしっ」

奏「来たわ」

芳乃「呼びかけに応じてくれたことに、感謝を」

由愛「こんにちは」

りあむ「目の動きに違和感がある、人間の目に慣れてない感じだぞ」

由愛「南国の退魔師さんは手のお札を降ろしてください」

芳乃「かまいませぬー」

あかり「小さな手のどこにそんな数を」

由愛「銀のアクセサリーもです」

あかり「ばれてました。わかりました、ポケットにしまいます」

由愛「呼び出したからには用事があるんですよね?坊主の仲間もいないので」

奏「ええ、まずはプレゼントを。夢見さん」

りあむ「これだ、えいっ!」

由愛「食べ物を投げるとお母さんに怒られますよ。りんご、ですか?」

りあむ「辻野家で作ったやつじゃないけど!剝いてくれたから食べるといいよ!」

由愛「遠慮なくいただきます。うん、美味しいです」

奏「食べ方は、憑いている側なのね。むいておいてよかったわ」

りあむ「あかりんご、任せた。この権利があるのは、あかりんごだけだから」

あかり「はい。聞いてください、ハーピーさん」

由愛「ハーピーはそちらが決めた種族の名です。今この時にその名で呼ばれるとは」

あかり「それなら、何と呼びましょうか」

由愛「名前は……ないですけど」

あかり「わかりました。あなたと交渉したいんです」

由愛「交渉ですか、辻野の娘」

りあむ「あかりんご、落ち着いて、ゆっくり……」

あかり「りあむさんは心配し過ぎです。そう、交渉です」
95 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:16:03.39 ID:lF0ws9bq0
芳乃「りんごを駄賃として聞いて欲しくー」

奏「欲しいのならもう少し持ってくるけれど。日下部さんのお手製おにぎりでも」

あかり「そんなに長い話じゃありません」

りあむ「交渉が上手くいけば、お腹いっぱい食べられるかもしれないよ!」

由愛「それなら聞きます」

あかり「私は辻野あかり、このりんご畑を営む辻野家の娘です。私の願いは、もう一度父ちゃんとお母ちゃんがここでりんご農家として暮らすことです」

奏「あなたの願いは?」

由愛「私の願いは、復活です。それと、満足するまでの食事を」

りあむ「そのどっちもの障害になってる、あの裏山が」

あかり「私の願いは、あなたの願いが叶えば叶います」

芳乃「その通りでしてー」

あかり「私からは封印の解放と食事を。あなたへのお願いは……」

りあむ「……」

あかり「ここから去ってください」

由愛「なるほど」

あかり「調べました、あなたは倒せません」

由愛「その通りです。坊主の書き物でも残ってましたか?」

あかり「あなたを出します。どうですか?」

芳乃「……」

由愛「賢いですね。いいでしょう、私もこんな土地にはいたくありませんから」

あかり「……」

由愛「温かい土地。かつていた、あの海辺のような場所がいい」

あかり「でも、山を壊すのは大変です。色々と聞いていいですか?」

芳乃「こちらも労力は使いたくないゆえ」

あかり「どこから、どうやって来たんですか?」

由愛「どこかは覚えていません。どうやってもわからない。石と鉄に押し込められ、何時の間にかここにいました」

あかり「どうして、押し込められちゃったんですか?」

由愛「私はたくさん食べて暮らしていただけなのに。酷いです」

りあむ「思いっきり前科があるじゃん……」

あかり「小さくなっても、大丈夫なんですか?」

由愛「うん。私たる核から復活できるから」

りあむ「実体はあるのか、コアみたいなので動いてる?本当に地球の生き物的じゃないな」

由愛「その核も石の中。息苦しい」
96 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:16:48.05 ID:lF0ws9bq0
あかり「ふー……あの、どの辺りにいますか」

由愛「あの山、左右だと真ん中です。そうですね、目線の高さくらいです」

りあむ「地下じゃないのか?なんでだ?」

由愛「私の足元は強い結界があるので。結界を崩すなら上斜めがいいです、できますよね?南国の退魔師さん?」

芳乃「可能でしてー」

奏「それを崩すとどうなるの?」

由愛「私の力を広げます」

りあむ「どういうこと?」

奏「実体でない部分を広げられる、ということかしら」

由愛「はい。私の羽根、足が、体が戻れば、それは私になります」

りあむ「結界を解けば何か出てくるって、ことか。今でも畑に影響があったり、女の子に憑いてたりするのに」

あかり「……」

りあむ「あかりんご」

あかり「お話はわかりました。あなたは、あそこにいるんですね」

由愛「はい」

あかり「あなたは食欲旺盛です」

由愛「1つだけ特徴をあげるなら、そうかな」

あかり「世界は繋がってるはずなんです。牛さんが草を食べたらお肉ができて、糞は肥料になります。肥料で育った植物は、空の二酸化炭素を形にしてあるべきところに。枯れた植物は土になります」

由愛「何が言いたいんですか?」

あかり「あなたがいると止まっちゃうんです。あなたは奪うだけ。地を不浄にしてしまうだけ。今の時代ならすぐに調べられます。あなたが、昔々いた場所の行く末も。だから……」

由愛「誰ですか!」

りあむ「たくさん食べる存在だよ。そっちと違って、あるべき場所に戻してくれる存在」

颯「こんにちは」

あかり「颯ちゃん、来てくれてありがとう」

颯「平気、選んだから。楓さんと約束したから。『捕食者』さん、準備して」

由愛「『捕食者』、傲慢な名前じゃないですか。みんな捕食者なのに」

あかり「……だから」

由愛「だから、何ですか」

芳乃「そなたを封印し彼の方は書き残しておりましてー、何時か『縁』の力があまねく光をもたらすと」
97 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:17:58.37 ID:lF0ws9bq0
あかり「あなたのせいでここにいれなくなりました。私には何もできませんでした。でも、だから、辻野あかりを見つけてくれた、私の代わりに悩んでくれる、私の大切な人達に会えました」

りあむ「あかりんごが来てくれただけだよ。全部あかりんごのおかげ。きっとそう、ぼくのおかげじゃない」

奏「もう歴史は残らない。あなたの話はここでは伝わらない」

あかり「誰にも同じ思いはさせません、歴史ごと消えてください」

芳乃「さて、成宮様のお体をお返しくださいませー」

由愛「騙したんですか!」

奏「あら、騙してなんかいないわ。封印は解くし、あなたをどこかに行かせるわ。その先が、虚無なだけよ」

芳乃「お力をお貸しください」

奏「ええ、ヒトガタにも込めたけど助力を」

芳乃「我が名は依田は芳乃。我が命に応じ、離せ」

由愛「なっ、まだ余力……を……」

芳乃「わたくし、様々な方策を修行していまして。成果を見せましょう」

奏「この子は返してもらうわ。じゃあね、ハーピー」

由愛「……」

りあむ「倒れた!その子、大丈夫!?」

奏「意識はないわ。家で寝かせるから、颯さん、お願い」

颯「わかった。何か、漂ってるの『捕食者』さんが捉えたよ」

りあむ「動きが早いな!有能なのはいいぞ!ハーピーは分身が寄生してる感じだったのか!」

あかり「退魔師さん!」

芳乃「辻野家を囲いし守りは動かしましたゆえー。存分にどうぞー」

りあむ「颯ちゃん、準備できた!?這い出てくるかも!」

颯「うん、任せて」

芳乃「光に飲まれぬように下がりましょうー」

りあむ「みんな、視界から離れたな!あかりんご!」

あかり「お願いします、シスタークラリス!」
98 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:20:11.11 ID:lF0ws9bq0
57

辻野家・かつて裏山があった場所

あかり「りあむさん、裏山が消えたんご」

りあむ「あかりんご、見ればわかる。説明は聞いてた。能力はわかってた。ちょっと、想像以上だっただけ。ヤバイ能力だな、本当に見たものを消すのか。比喩じゃなくて」

あかり「シスターは怒らせないようにしないと」

美由紀「颯ちゃん、もう大丈夫かな?」

颯「うん。ふわふわしてたのは『捕食者』さんが食べたよ。すっごい苦かったって」

美由紀「おっけー、クラリスさん、待っててねー」

りあむ「あかりんご、笛!」

あかり「はいっ」ピー!

りあむ「若葉お姉さん、集合だよ!シスターを任せた!」

若葉「わかりました〜」

若葉「穴からシスターを引き上げます〜」

若葉「残った地面が気になりますね〜」

芳乃「わたくしは残された結界をほどきましょうー」

颯「あっ、なー!」

凪「はーちゃん、無事ですね。よしよし」

颯「うん。急いでどうしたの?」

凪「姉に秘密でお出かけとは。不良になってしまいましたか」

颯「あれ、言ってなかった?」

凪「はい。凪は許しますが、ゆーこちゃんはどうでしょうか。言っていますか?」

颯「うん。それに、シスターがお願いしてくれたよ」

凪「ならば安心です。はーちゃん、ここはお任せしましょう。あかりんご邸でお茶をごちそうします」

颯「わかった。お腹すいたー」

凪「おにぎりもあります。りあむ、ここは任せた」

りあむ「任せるようなこともない!凪ちゃん、妹は大事にするんだぞ!」
99 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:21:21.78 ID:lF0ws9bq0
あかり「あっ、シスターが穴から救出されたんご」

りあむ「いつもの眼帯もしてる。もう平気かな?」

あかり「お礼をしないと」

美由紀「クラリスさん、手をどうぞ」

クラリス「美由紀さん、ありがとうございます」

美由紀「穴の中、平気だった?狭くなかった?」

クラリス「暗い世界には慣れていますから」

あかり「あ、あの」

クラリス「辻野さん、どうされましたか」

あかり「ありがとうございました!それと、穴の中にいてもらってすみませんでした!」

クラリス「感謝の言葉はお受け取りします。しかし、謝罪の言葉は不要です。空へと視線が動かせないと他を傷つけてしまいますから」

りあむ「裏山だけ消えて、更に奥の山は無傷!メガ粒子砲が炸裂したみたいに!いや、それよりもキレイだな!」

クラリス「日下部さんもありがとうございました」

若葉「穴掘りなら任せてください〜」

若葉「裏山の残りも平らにしちゃいます」

若葉「お姉さんは力持ちですから〜」

クラリス「心強いことです」

あかり「シスタークラリス、ハーピーのコアを見ましたか」

クラリス「はい。幾重の封印の先、石像の奥に確かに。辻野さん、お手を」

美由紀「あかりちゃん、手を出して。クラリスさん、ここだよ」

クラリス「やはり力強さを感じます。されど、自然と戦うのにはか細い」

あかり「……」

クラリス「私の視線は導かれるようにハーピーへと辿り着きました。まるで、このことを予見したかのように。辻野さん」

あかり「はい」

クラリス「偉大な僧に見守られた土地です。耐え忍ばずとも、時が流れれば必ず幸運が訪れることでしょう。あなたとあなたのご家族に光あらんことを」

あかり「神頼みは好きじゃないけど、信じます」

クラリス「少しお休みします。美由紀さん」

美由紀「うん、あかりちゃんの家に案内するねー」

りあむ「ありがとう、シスタークラリス!ゆっくりしていって!」

あかり「……」

りあむ「あかりんご?」

あかり「あの、りあむさん」

りあむ「どうしたの?言いたいことがあるなら言った方がいいよ。たぶん。りあむちゃんは聞くだけならできるから」

あかり「ハーピーは一瞬で倒せたけど、これからが長いんです。そう思うと、何か、そんなに嬉しくなくて」

りあむ「ぼくはりんごのことがわからないから、その、あかりんごはわかるからそうなんだと思う!えっと、つまり、あかりんごが凄い!」

あかり「りあむさんの言うことはよくわかんないです」

若葉「あかりちゃん〜、こっちに来てください〜」

りあむ「若葉お姉さん?どうしたの?シスターが作ったクレーターになんかあった?」

あかり「待っててください、今行きますっ」

りあむ「躊躇せずに降りて行った!あかりんご、意外と身軽なんだな。初めて知った!待ってよ!おいてくなようぅ!結構深い!」
100 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:22:20.66 ID:lF0ws9bq0
若葉「私が降ろしますよ〜」

りあむ「若葉お姉さんレッド、ありがと!運動不足のりあむちゃんには厳しかった!」

若葉「実習も始まるから運動しないとですね〜、お姉さんも付き合いますよ〜」

あかり「若葉お姉さん、座り込んでどうしたんですか?」

若葉「あかりちゃん、ハーピーが言ってたことで気になったことがあったんです〜」

あかり「あれ、聞こえてたんですか?耳もいいんですね」

若葉「結界の位置です」

りあむ「追いついた!結界がどうしたの?」

若葉「りあむちゃん、ハーピーの下に封印があると言ってましたよね?」

りあむ「言ってた!足元に強い結界があるって!ん?確かに気になるな」

若葉「地面しかないのに不思議ですよね〜」

りあむ「地面の方向に行っても仕方がない、土しかない、ん?そうか、土か!」

若葉「その通りです〜、土を守ってたんですよ〜」

あかり「土……」

若葉「ハーピーに汚されてないで、ずっと、ここに保存されてました」

りあむ「シスタークラリスに上側だけ吹き飛ばされて、出て来た」

若葉「こうなった時に、再び始められるように」

りあむ「うん、やっぱりあの坊さんヤバイよ。打つ手が先を行きすぎてる!」

若葉「すっごく力も感じます。あかりちゃん、わかりますか?」

あかり「うーん、それもわからないんご。普通の人間だから」

若葉「そうですよね〜」

あかり「力は、若葉お姉さんの言うことだから信じるんご。でも、わからないことは他にも」

りあむ「わからないこと?」

あかり「この土がりんごに良い土なのかも、わからない」

りあむ「そりゃそうでしょ、あかりんご、まだJKだし。家のお手伝いしたことがあるくらいの。しかたない」

あかり「りあむさん……」
101 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:23:11.93 ID:lF0ws9bq0
りあむ「あれ、ぼくまた失言した!?まずいよ!あかりんごに嫌われるなんかりんごにつく害虫レベルってことじゃん!」

あかり「あはっ、その通りですっ」

りあむ「りあむちゃんは害虫ってこと!?」

若葉「違いますよ〜」

あかり「そうですよ、お勉強すればいいんご!」

りあむ「へっ、お勉強?なんの?とりあえずぼくは嫌われてない?」

あかり「りあむさんは良いところもあるから好きですよ。えへへ、緊張したから喉が渇いちゃいました。若葉お姉さん、りあむさん、戻るんご♪」
102 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:24:39.21 ID:lF0ws9bq0
58

辻野家・あかりの自室

あかり「これでよしっ」

あきら「あかり、ここにいたんだ」

あかり「あきらちゃん、帰り支度はできました?」

あきら「自分は出来た。もう少しゆっくりしてもいいのに」

あかり「食べ物がなくなっちゃったから仕方ないです。それに、学校もありますし」

あきら「颯ちゃんもだけど、シスターも結構食べるのは予想外」

あかり「シスター達は帰りましたか?」

あきら「うん。若葉お姉さん、白だったかな、が送って行った」

あかり「落ち着いたら相談に行かないと、どう今日のことを父ちゃんに話せばいいのかわからないんご」

あきら「確かに、難しいね」

あかり「他の人はどうですか?」

あきら「出発する準備はできてる。裏山も事故が起こらないようにした、らしいから」

あかり「シスターが何とかする、ってどういう意味なんでしょう?」

あきら「いきなり裏山が消える理由はつけてくれるみたい」

あかり「うん、あまり考えないようにしますっ」

あきら「あかりは何をしてたの?」

あかり「お部屋の整理をしてました。帰れないかもって、適当だったから」

あきら「……山形に、帰っちゃうの」
103 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:25:53.89 ID:lF0ws9bq0
あかり「すぐじゃないですよ。アンテナショップも困っちゃうんご。制服も勿体ないですから」

あきら「そっか」

あかり「それに、せっかく都会に出れたから楽しまないと。エンジョイするんご」

あきら「うん、あかりはそうでないと」

あかり「お勉強もして、今度は女子大生になろうかな。S大学に進学すればりあむさんの後輩になれますから」

あきら「りあむサンの後輩、そんなに価値あるかな」

あかり「学部は農学部にするんご」

あきら「あー、S大学に農学部ないよ」

あかり「あれ?そうでしたっけ?人生設計をやり直すんご……」

あきら「農学部のある大学は近くにあるから。決めるの手伝うよ」

あかり「あきらちゃん、ありがとう!持つべきものはハイソな友達ですねっ」

あきら「ハイソって、そういうわけじゃないから」

あかり「色々と知らないと。テストにでるお勉強だけが重要じゃないのも、わかりましたから」

あきら「あかりなら大丈夫。どんな道でも応援してる」

あかり「あきらちゃんは、何か決めてますか?」

あきら「ううん、何にも」

あかり「まだ高校1年生ですから当然ですっ。私も気が変わって帰らないかもしれないですから」

あきら「あっ、それでいいんだ」

あかり「自然と同じで何が起こるかわかりませんから。あかりんごは、しなやかに生きるんご」

あきら「そうだね、あかり」

あかり「あきらちゃん、もう1度言います。ありがとうございます」

あきら「りあむサン風に言うなら、何もしてない」

あかり「山形から出てきて不安でした。友達になってくれて、そうしたら今日がありました。感謝しきれないです」

あきら「恥ずかしいけど……あかりの、友達のためなら当然だから」

あかり「私もあきらちゃんのために何かします、きっと大事な時に」

あきら「うん。ありがと、あかり」

あかり「それで、あきらちゃん」

あきら「なに?」

あかり「そこのクリアファイルを見ましたか……?」
104 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:27:02.04 ID:lF0ws9bq0
あきら「ごめん、りあむサンと見た。ラーメンコレクションのやつ」

あかり「およよ、袋を集めるほどラーメン好きがばれてしまいました……お嫁に行けないんご」

あきら「今更だし、今時ラーメン好きに偏見ないでしょ」

あかり「はっ、嫁に行けないなら嫁を貰えばいいのでは?」

あきら「え、お婿さんじゃなくて、そっち?」

あかり「うん、やっぱり千夜さんがいいんご。山形に来てくれるかな?」

あきら「冗談だよね、あかり?」

凪「凪がノックをします。こんこん。お腹が空く前に出発です。どうでしょうか」

あかり「はい、あきらちゃん、行きましょう」

あきら「うん」

あかり「先のことは考え過ぎても仕方ないんご。まずはお昼を食べて幸せになるんご、お店は決めてあります」

凪「それは心強い」

あかり「行きたかったラーメン屋さんがあるんです」

あきら「わかった。お嫁に行けないから全部冗談だ」
105 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:28:14.13 ID:lF0ws9bq0
59

辻野家・玄関前

りあむ「みんな、いるな!いるよね?」

椿「点呼でも取りますか?」

あきら「とりあえず、退魔師さんがいないデス」

凪「やることがあるので別行動、だそうです」

あかり「お気遣いなく、だそうです。護符をもらいました」

りあむ「退魔師サマはどこに行ったの?修行?」

奏「巡礼だからそんなところね。見た目は華奢だけど、心配ないわ」

あきら「あかり、その護符はどうする?」

あかり「手帳に挟んでおきます。畑を守るのと同じ護符だって言ってました」

りあむ「シスターは?大丈夫かな?」

若葉「美由紀ちゃんと颯ちゃんと一緒に駅まで送り届けました〜」

若葉「どこかで合流しましょう〜」

あかり「凪ちゃんは颯ちゃんと一緒じゃなくて良かったんですか?」

凪「同じ場所に帰りますが別の道、これも一興かと」

千夜「成宮由愛さんについては」

奏「私が暗示をかけて、最近のことは忘れてもらったわ」

あかり「今どこにいるんですか?」

奏「バス停の東屋に。そろそろ、あの実習生が見つける頃かしら」

千夜「見回りをすると言っていましたから、おそらく」

あかり「あの人なら上手くやってくれる気がするんご」

りあむ「天使サマの暗示って、とけちゃうんじゃなかった?平気?」

奏「いつか思い出した方がいいことだもの。とけるような状況であれば、その方がいいわ」

千夜「結局、ハーピーに憑りつかれた理由はわかりませんが」

あかり「逃げるとか、押し込められるとか、そういう感情があったのかな」

りあむ「あれこれ想像できるけど、してもしょうがない!ぼくたちが出来るのはここまで!」

椿「はい。時には自分で解決しないといけませんから」

りあむ「それじゃあ帰るぞ!白雪ちゃん、確認!」
106 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:29:41.84 ID:lF0ws9bq0
千夜「お前、辻野さん、砂塚さん、凪さん、椿さん」

あかり「若葉お姉さんはここには4色。駅で合流するんでした」

奏「それと私」

千夜「揃いました。お腹が空いて来ましたので出発しましょう」

あかり「千夜さんを腹ペコにするわけにはいかないんご!ラーメン屋さんへ急ぎましょう!」

りあむ「あかりんご、本当にラーメン好きだな。ぼくも好きだからいいけど。あかりんご、戸締りもよろしく!」

凪「それでは出発。凪は奏さんと同じ車に乗ります」

あきら「それじゃ、自分も違う車に乗ろうかな」

あかり「戸締りしました。今は帰ってくると言えるから……行ってきます」

EDテーマ
Twilight Sky


フォー・ピース
107 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:32:08.33 ID:lF0ws9bq0
60

後日

出渕教会・地下1階

芳乃「これが今回の顛末でしてー」

松永涼「フムン。何時か誰かなら、今で良かったのかもな」

松永涼
死神。出身は東京都。家族は平穏に暮らしているらしい。

芳乃「わたくしも同じ気持ちでして。修行の成果を活かすことができて満足ですー」

涼「それにしても、裏山を吹き飛ばすのはド派手だな。ニュースにならないか?」

クラリス「ニュースになっているのは行方不明の女の子が見つかったことだけです」

奏「少しだけ農業実習生が有名になったくらい」

クラリス「気づいた時に何らかの理由がつけられるでしょう」

美由紀「あっ、ちとせさん達来たよー」

ちとせ「おはよ」

裕美「シスタークラリス、おはよう」

クラリス「おはようございます。お揃いですね」

美由紀「皆揃ってるよー。颯ちゃんもいる」

颯「うん、聞いてるよ」

クラリス「それと、望月聖さん」

望月聖「……うん」

望月聖
S大学病院の入院患者だったが先日退院した。産まれは長野の雪深く静かなところだとか。
108 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:33:31.77 ID:lF0ws9bq0
クラリス「ご協力ありがとうございます」

聖「大丈夫……時子と約束もしたから」

クラリス「涼さん、調査に進展は」

涼「残念だが、ない。わかっていること以上は、見つけられなかった」

颯「凄い音楽プロデューサーがいるんだよね」

奏「短時間の間に多くの才能が育った」

ちとせ「CDもたくさん出てる」

芳乃「業界内での評価は更に高いようでしてー」

聖「確かに……素敵な歌だと思う……」

ちとせ「だけど、ちょっと異常かな」

奏「涼はどう思うかしら」

涼「優秀な指導者で見違えるように変わるのは良くあることだ。だが、ここまでは変わらない」

ちとせ「練習とかでは変えられないものってあるでしょ、そういうものが変化している」

涼「売れたり評価されるのは更に大変なはずだ。ましてや、頭の固いお偉いさんの意見を変えてる。この雑誌とかな」

奏「絶賛が多数。多数に入らない人物も次々と意見を変えてるわ」

涼「どんな力を使ったのやら」

聖「歌に何かしてる……?」

涼「そことは言い切れないが」

奏「作為があるのは間違いない」

クラリス「ええ。それ故に、関与を疑っています」

裕美「『チアー』の能力を持った人間の」

クラリス「はい。『チアー』が何故関与しているかの理由は未だ見当もつきません」

涼「だが、『チアー』はアタシ達と敵対するような行動はこれまでしてる」

裕美「用心に越したことはないよね」

ちとせ「望まずに、私みたいになっちゃう人を増やしたくはないもの」

颯「……うん」

クラリス「そして、チャンスでもあります」

裕美「先に動いて、捕まえる」

クラリス「正体も所在も未だにわかっておりません」

ちとせ「そんな相手を待ってられないね」

奏「私は賛成。でも、その方法は?」

聖「……それで、来たの」

涼「聖と颯に協力してもらう」
109 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:35:32.32 ID:lF0ws9bq0
クラリス「渦中の音楽プロデューサーが人を集めています。新たな才能をお披露目するために」

ちとせ「演奏会があるんだっけ?」

クラリス「はい。その中で中学生のコーラスを募集していました、利用させていただきます」

ちとせ「潜入捜査ね、楽しそう♪」

裕美「危険はあるけど」

涼「先に動かなければ、大きな危険に襲われる未来になるだけだ」

芳乃「備えは万全にご協力しましょうー」

クラリス「聖さんはオーディションに合格しています」

涼「聖、凄いじゃないか」

聖「歌は好きだから……」

涼「颯もか?」

颯「そんなに凄くないよ、オーディション通るなんてムリだよー」

クラリス「地元枠がありましたので、颯さんだけを推薦し受理されました。ちとせさん、ご協力ありがとうございます」

ちとせ「推薦者は『チアー』と関係ないみたい。簡単に意見を変えられたよ」

颯「歌の練習もしてるし、聖ちゃんと一緒にがんばるよ」

奏「嘘の基本は、本当を混ぜること」

美由紀「お歌もがんばってねー」

聖「うん……がんばる」

クラリス「私達のわかっていることは多くはありません」

裕美「『チアー』が本当に関係してるか、まだわからない」

ちとせ「『チアー』と関係なく誰が不思議な力をつかっているかも」

涼「音楽プロデューサーが、その人物とは限らないな」

芳乃「何が起こるかもわかりませぬー」

涼「颯も聖も力を頼り過ぎるな。普通の中学生だと思って、自分を守るんだ」

颯「わかってる」

クラリス「お話は以上です。ご協力を」

聖「……はい」

颯「やってみる。なーに心配かけないように」

……第4話に続く


製作・ブーブーエス
110 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:36:18.15 ID:lF0ws9bq0

次回

久川颯「7人が行く・EX4・天上の調」
111 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:37:33.56 ID:lF0ws9bq0
オマケ

P達の視聴後

PaP「山形ロケ羨ましいな。僕も行きたかったよ」

CoP「辻野家以外は山形ロケでしたが、仕事ですから。旅行ではないので」

PaP「むしろ、そこは山形じゃないのか」

CuP「ちょうど良い場所がなかったので。あかりちゃんには文句を言われました」

PaP「そこはオール山形ロケと言いたいよなぁ。まっ、里帰りかねてで許してもらおう」

CuP「ところで、お2人はどちら出身なんですか?」

CoP「東京です」

PaP「僕は神奈川、高校も大学も所在地は東京だったけど」

CuP「何とも面白くない回答ですね」

PaP「そっちも千葉だろ、五十歩百歩だ」

CoP「ずっと東京在住ですが、望郷はわかります。昔の居場所を懐かしむことは私にもあります」

CuP「……何かあったんですか?」

CoP「要するに、夢破れて会社員になっただけです。お気遣いなく」

おしまい
112 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:39:09.24 ID:lF0ws9bq0
あとがき

こんなご時世なので山形に取材は行ってないのであしからず。
行ったことがある場所をモデルにしてるけど記憶が古い……。

オープンセットネタは勇者ヨシヒコだけで結構書けると思うけど、これくらいで。

あかりんごの立ち振る舞いは、絶妙なバランスだと思う。故郷も何も絶対的な寄る辺にしてないけど、素直な愛情も持ってる。
ゲーム中と7人が行くでは状況も気持ちも違うけど、上手く書けた、かもしれない。

次回は、
久川颯「7人が行く・EX4・天上の調」
です。はーちゃん回は潜入捜査ミステリーもの。

次回も気長にお待ちください。
更新情報は、ツイッター@AtarukaPで。

それでは。
113 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2021/08/24(火) 22:39:52.26 ID:lF0ws9bq0
7人が行く・EXシリーズリスト

第1話 夢見りあむ「7人が行く・EX1・エクストライニング」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1558865876/
第2話 久川凪「7人が行く・EX2・トクベツなフツウ」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1607170950/
第3話 辻野あかり「7人が行く・EX3・出郷りんご」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1629804897/
第4話 久川颯「7人が行く・EX4・天上の調」
(題名は仮題)
第5話 白雪千夜「7人が行く・EX5・燃えよ銀刃」
(題名は仮題)
第6話 黒埼ちとせ「7人が行く・EX6・ぼくじゃだめなんだ」
(題名は仮題)
第7話 砂塚あきら「7人が行く・EX7・鬼」
(題名は仮題)
第8話 白雪千夜「7人が行く・EX8・もしもあの日に戻れたら」
(題名は仮題)
最終話 夢見りあむ「7人が行く・EX9・だからぼくらは夢を見る」
(題名は仮題)
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/24(火) 23:59:18.18 ID:BPfPW68wO
みん.なもドミ+ノ言うだけでドミ+ノガイジになれるんやで

これコピペし.て貼るだけで運良くなるで

やらな.かったら運下がるで

末尾.d限定や
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/24(火) 23:59:31.27 ID:2Dhtq/DcO
htp://shimage.net/domino/
やるかい?
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/25(水) 07:12:49.92 ID:dFskZFaVo
お久しぶり
変わらない作風にちょっと安心したり
あかりんごはアイドルなんてやってるのに
超がつくほどのリアリストなのが面白い。
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/08/26(木) 01:33:31.73 ID:irctKMx3O
今回も楽しかった次回も首を長くしてお待ちしてます
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