【剣神】姫「疲れた、おんぶしてよ」勇者「はいはい」【DQ】

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3 : ◆3Jh764FmrU [sage saga]:2022/07/04(月) 14:49:51.94 ID:o3VB3Yg00



「……それは、確かなのか?」


「間違いなく。精霊ルビス様の加護が途絶えたのを妻だけでなく、三賢者の老師たちも確かめております」


「そんな馬鹿な」


 それは夜の帳が未だ降りたままなのかと見紛うほどに暗く、嵐の音が城内にまで響き渡る最中に開かれた会合にて告げられた。

 ラダトーム現王ラルス16世と対面する赤いローブを纏った男女の内、ドレスアーマーを下に着込んだ女性は古くからラダトーム王家に身を置いている勇者の末裔だ。

 彼女達はこの嵐の最中、不穏な気配がラダトーム城から南下した海から感じると訴えて来ていた。

 そして同時に南の孤島──アレフガルドにおいて信仰されている『精霊ルビス』が祀られた神殿が、嵐が発生して間もなく聖なる加護を感じさせなくなったという。

 現王ラルスは真剣な表情で『アレフ』とその妻、勇者の子孫である『レシュ』の二人を見遣る。


「至急、事の真相をあらためねばなるまい。だがこの嵐だ。かの島に辿り着く術はあるのか?」


 ローブの下に細かな表情を隠したまま、頭を振るようにレシュが王の問いに応えた。


「夫の魔法ならば船を進ませる事は可能です……けれど王の懸念通り、嵐に影響されて荒れ狂う波ばかりはどうにもならないでしょう」


「ムゥ……ではやはり……」


「ではこうしよう、三賢者の御三方に協力を願うんだ。彼等は精霊に働きかける力に長けている、この嵐の中でも船を沈ませない方法があるかもしれない」


 雨が打ちつける窓の外へ視線を移しながらアレフが言った。

 精霊ルビスの神殿があるのは海上に浮かぶ小さな孤島、嵐の中を往く方法が無ければこの異常事態の最中に立ち往生する羽目になってしまう。

 他に方法が無い。

 現王ラルスは深い溜め息と共に逸る気持ちを落ち着かせ、アレフとレシュ両名に強く頷いて見せた。


「移動の足はあるか? 無ければ緊急として我が兵団の中から三賢者の祠へと向かわせよう。

 お前達にはこの未曽有の事態に対処すべく気力を温存して貰いたい、もし万が一の事があれば……」


「…… " 陛下 " 」


「その心配には及びません。それに──私達夫婦が倒れようとも、あの子がいますもの」


「止さないかお前達、縁起でもない……!

 二人とは私がまだ乳母の乳を吸っていた頃からの付き合いだ、今さら天災や魔物に後れを取るなど微塵も思っておらん。

 だが……そなた達に大事があれば姫が悲しむ。忘れてくれるなよ?」


 現王ラルスの言葉を杞憂だと裏付けるように不敵に笑って見せた夫婦はそれ以上何も言わず、玉座の間を後にした。


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