【安価・コンマ】皆で作る物語

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318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/03(月) 20:35:40.93 ID:Z/rceb9ao
肌を焦がす暑い日差しに、鼻にツンとくる潮の匂いを含んだ海風が吹き付ける。寄せては返すエメラルドブルーの波と陽光を反射して輝く白い砂浜。ビーチサイドには大勢の旅行客や、彼ら相手に商売をしている地元住人でごった返している。

人々がせわしなく行きかう中、クールキャットは石垣に腰掛けながら水平線を眺めていた。Tシャツにショートパンツという簡素な格好にもかかわらず、そのスタイルの良さもあって周囲の目を集めている。だが人殺しだからこそ滲み出るオーラと、サングラスによって表情が読み取りにくいこともあって誰も声をかけようとしない。

陽射しを遮るように太陽に手をかざしながら、クールキャットは水平線に目をやる。

そう言えばあまり口には出さないが妹が海に行きたがっていたことを思い出した。ダイヤモンドダストのゴタゴタが終われば連れて行くのもいいかもしれない。

そう思って頭によぎったのは妹の笑顔だったが、次に現れたのはレッドマーゾの姿だった。

「ちっ…」

舌打ちをした彼女に周囲の視線が一瞬集まる。胸の騒ぎを落ち着かせようと氷の弾丸を指で弄び始める。
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/03(月) 20:38:26.47 ID:mVEBn0/Oo
来てた
出た設定全部取り込んじゃうんだろうか?
パッと見難しそうにも思えるが
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/03(月) 20:44:11.65 ID:Z/rceb9ao
タイトル忘れてましました。

>>319
無理のない範囲でできる限り採用します。ただもちろん話の都合上改変等ありますし、出せる時期も不確実なのはご了承ください。


第5話 「会計士を追え」

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321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/03(月) 20:44:44.32 ID:Z/rceb9ao
肌を焦がす暑い日差しに、鼻にツンとくる潮の匂いを含んだ海風が吹き付ける。寄せては返すエメラルドブルーの波と陽光を反射して輝く白い砂浜。ビーチサイドには大勢の旅行客や、彼ら相手に商売をしている地元住人でごった返している。

人々がせわしなく行きかう中、クールキャットは石垣に腰掛けながら水平線を眺めていた。Tシャツにショートパンツという簡素な格好にもかかわらず、そのスタイルの良さもあって周囲の目を集めている。だが人殺しだからこそ滲み出るオーラと、サングラスによって表情が読み取りにくいこともあって誰も声をかけようとしない。

陽射しを遮るように太陽に手をかざしながら、クールキャットは水平線に目をやる。

そう言えばあまり口には出さないが妹が海に行きたがっていたことを思い出した。ダイヤモンドダストのゴタゴタが終われば連れて行くのもいいかもしれない。

そう思って頭によぎったのは妹の笑顔だったが、次に現れたのはレッドマーゾの姿だった。

「ちっ…」

舌打ちをした彼女に周囲の視線が一瞬集まる。胸の騒ぎを落ち着かせようと氷の弾丸を指で弄び始める。
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/03(月) 20:46:53.70 ID:Z/rceb9ao
彼女がこうしてハワイにいる理由は数日前まで遡る。

カチューシャは自宅のリビングテーブルで家計簿の計算を行いながら、ZATO52での出来事に思いを巡らせていた。ダイヤモンドダストによって危機に追い込まれたとき、記憶違いでなければレッドマーゾは命を懸けて自らを助けようとした。

その出来事が楔を打ち込まれたかのように心の中に残っている。だが彼女はこの感情がどのようなものであれ、捨て去るべきものだと理解していた。

その時丁度赤崎がエカチェリーナとともにカチューシャを訪れてきた。“訪れてきた”というのは、彼がカチューシャ宅での居候を止めてこちらでの仮住まいを見つけたからだ。理由としてはやけに詩音に説得されたこともあるが、それ以上に彼の実直な性格がある。いつまでも世話になるのは悪いと考えたのだ。

「やあ」

片手を挙げながら屈託なく笑顔を浮かべる赤崎。エカチェリーナは挨拶することなく目線だけを向けてきた。

「何の用」

家計簿の数字に目を戻しながらカチューシャが返事する。そんな態度も気にすることなくエカチェリーナが口を開く。

「私はアナタのお見舞いよ。一応ね」

すると赤崎が気まずそうに頭を掻きながら、それなんだが、ときりだした。

「俺は…その…ダイヤモンドダストのことなんだが…何か訳ありみたいだったからその事が気になって…」

「私は出たほうがいいかしら?」

その言葉を聞いてカチューシャは手に持っていたペンをテーブルに置いた。

「別に隠してるわけでもない。話してあげる」

思ったより肯定的な返事が返ってきて安心した赤崎はカチューシャの向かいに座った。特に否定もされなかったのでエカチェリーナも赤崎の横に座って耳を傾ける。カチューシャは無意識のうちに弾丸を弄りながら、話を始めた。
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/03(月) 20:50:32.70 ID:Z/rceb9ao
「ZATO52だけど、あそこはただの閉鎖都市じゃない。ヨーロッパにおける人身売買の中心地だった」

「人身売買!?」

思わぬ事実に赤崎は身を乗り出した。

「ええ。能力の有る無しの区別なくね。私とコールドキャットは数年間あそこに囚われていた」

「そ、そんな馬鹿な…」

狼狽える赤崎をよそに、エカチェリーナは二人に聞こえないほどの声で呟く。

「クズ共…」

混乱する赤崎の頭の中には様々な疑問が湧いて出てきた。だが一番始めに口をついて出たのは、何故能力を使って逃げなかったのか、だった。

「仕組みは分からない。だけど奴らは能力を無効化する何らかの装置を持っていた」

自分でそう言いながら、カチューシャは奇妙な共通点に気づいた。そういえば雷光は突然力が使えなくなったと言っていた。あの近辺にそれらしき装置はなかったはずだ。それに商人の姿もなかった。あの異様な3人組は居たが…

「そんな装置聞いたこともないぞ…」

「私もよ。ともかく、運のいいことに私と妹には長らく買い手がつかなかった。そしてある日、チャンスが訪れた。酔っ払った間抜けな見張りの一人が鍵を檻の目の前に落としていった。それを何とか手に入れて、後は妹を連れてあの下水道から逃げた」

「そうだったのか…」

今の時代に人身売買が都市ぐるみで行われていたという事実に驚くと同時に、クールキャットや他の人達が受けた苦しみを思うと赤崎の心に怒りが湧き出てきた。それは隣に座るヒーローも同じだった。

「だがそれがダイヤモンドダストとどう繋がる?」

「そうね。それが気になるわ」

「…おそらく彼女もあそこに囚われていた。私達が逃げ出したあと、見張りや罰則が厳しくなって、体罰や虐待がそれまで以上に横行したと聞いた。だからそれで私を恨んでいる、のだと思う」

「それは…」

おかしい、と否定したい気持ちはあったが、実際自分がその立場に立ったら恨まずにいられるだろうか。異常な環境の中にいれば、その恨みが歪んだ方向へ傾くことも当然じゃないか、そんな思いが赤崎にはあった。
どうやらエカチェリーナはそうでもなさそうだが。彼女の中には明確な線引きがある。それは殺しは悪、ということだ。

「とにかく!話してくれてありがとう!バディなんだ、悩みがあったら話してくれな」

その言葉がカチューシャの琴線に引っかかった。

「バディ?だから私を命を懸けて助けようとしたわけ?」

「別にバディだからって訳でもないが、まあ、そうだな」

さも当然のように語る赤崎。彼にとってヒーローは無私の奉仕者であり、目の前に助けられる命があるのなら迷うことなく助ける存在だ。

「はっきり言って、迷惑」

カチューシャは赤崎の瞳を正面から覗き込む。赤崎は思わず彼女と出会ったときのことを思い出した。

「迷惑って何がだ?」

赤崎は混乱しながらも、怒りではなく純粋な疑問をぶつけてきた。

「…とにかく、やめて」

氷の弾を握りつぶしながら答えるカチューシャ。

「でも──」

ちゃんと彼女の事を理解したい。そう思って話を続けようとした赤崎だったが、カチューシャは無言で出口を指差した。

「…分かった。とにかく、無事でよかったよ」

怒りはなく、だが寂しそうな背中で赤崎は部屋を出ていった。
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/03(月) 20:53:49.94 ID:Z/rceb9ao
「ふぅ…」

一息つくカチューシャにエカチェリーナが口を挟む。

「アナタ…コミュニケーションってものを学んだほうがいいわよ」

そんな助言はいらないとでも言いたげにカチューシャは話題を変える。

「ところで、貴女のパワーは絶対零度のはず」

「そうよ」

テーブルにおいてあったカチューシャのロシア帽を被りながらエカチェリーナが答える。

「なら弱点を教えて。ダイヤモンドダストを捕まえるために」

「そうね〜」

被っていた帽子を脱ぐとエカチェリーナはカチューシャにそれを被せた。彼女はそれをすぐに脱いで机の上に戻す。

「教えてあげたいのは山々だけど、同じ絶対零度と言っても、完全にパワーの条件や能力が同じってことはありえないの。だから、参考にはならないと思うわ。ま、一応教えておくと、私は範囲や物質その他諸々にほぼ関係なく温度を瞬時に絶対零度に下げられる。代わりにパワーが使えるのは5分間だけ。その後は24時間のインターバルが必要」

「ありがとう」

「別にいいのよ。アカレンジャーが来てからのアナタは少し…“マシ”になった」

椅子から立ち上がりながらエカチェリーナが僅かに口角を上げながら答える。といってもほぼ表情は変わっていないが。

「とにかく、ケンカするだけの元気はあるみたいだし、私はドロンと消えるわ」

玄関まで移動すると、カチューシャの方を振り返って口を開いた。

「いまアナタに必要なのは…心の修行かもね。彼と正面から向き合うっていう。ロシア1位のヒーローからのアドバイス」

そう言い残すとエカチェリーナはその場を去った。
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/03(月) 21:02:02.01 ID:Z/rceb9ao
「ケンカなんて安っぽいものじゃない…」

一人つぶやくカチューシャ。すると今の出来事に思いを巡らせる暇もなく携帯の呼び出し音が鳴る。

「はい」

「私だ」

冷たく低い声、シルバーナイトだ。

「なんの用?」

「情報だ、2つ。1つは例の薬について。君たちが連れ帰った博士の話と薬の分析結果から考えるに、あれは人々のヒーロー遺伝子を活性化させる類のもののようだ」

「やっぱりね」

「だがどうにも副作用があるようで、個人差はあるが使用の後、激しい体調不良や能力の暴走を引き起こすらしい」

そう言えば雷光の時は能力の制御が失われていた。

「…アルティメット・ワンの連中はその薬を使って全知全能を得るつもり?」

「さあな。そこまでは聞き出せなかった」

「聞き出す?」

「ああ。尋問だ」

カチューシャの疑問を聞いて、シルバーナイトはそれに淡々と答えた。

「喋るとは思わなかった」

「まあ、ヘル・オーガの名前を出せば、博士もアイスエイジも気が変わったみたいだ」

ヘル・オーガは聞き覚えのある名前だ。確かシルバーナイトの友人だとか。ドイツ警察の“苛烈”なヒーロー兼捜査官だと聞き覚えがある。

「とはいえ奴らも情報を小出しにしてるようだ。全て吐けば自らに価値がなくなるとでも考えているのだろう。ハッ、如何にもヴィランらしい利己的な考え方だ」

その声色には嘲笑の念がこもっていることをカチューシャは聞き逃さなかった。

「あるいは奴らも組織の全貌は知らないのか…」

「それで2つめの情報は?」

「ああ。どうやら二人の話を総合するに、奴らは物資の移動等にあるダミーの配送会社を使っているらしい。その金の流れを追えば何か分かる、と」

「それで、追えと?」

「いや。追跡それ自体はコミューンの監査部門が行ってる。君に頼みたいのはエージェントのサポートだ」

「サポート、ね」

「ああ。その会社の会計士がハワイで仕事をするらしい。捜査自体はエージェントにやってもらうが、君にも念の為現地に赴いて万一の自体に備えてほしい」

「ヴィランが現れると?」

「さあな。とはいえ可能性がゼロではない。頼めるかな?」

「…分かった」

「よろしい。これはアルティメット・ワンの核心に迫り得る一件だ。ヴィランによる連合などと唾棄すべきものは必ず壊滅させなくてはならない。責任は重いがよろしく頼むよ。では」

電話がプツリと切れる。携帯をテーブルの上に置くとカチューシャはそれを見つめる。

しばらく考えて赤崎は連れて行かないことに決めた。少なくとも今は、一緒に行動しないほうがいいと思ったからだ。

そういう訳でクールなキャットは年がら年中ホットなハワイに赴いている、と言うわけだ。
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/03(月) 21:03:49.03 ID:Z/rceb9ao
ちょっと思いついたので軽く安価します。

↓1
1監査部門のエージェントをネームドにする
2モブのままで行く

ちなみに今後もエージェントに出番があるかは不明です。

327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/03(月) 21:05:40.02 ID:6bIc0tuzo
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/03(月) 21:12:56.63 ID:Z/rceb9ao
ではモブのままで。

今日はかなり短いですがここまで。

それと軽く募集しときます。募集内容はハワイかダミー会社に関する設定とします。
今でも結構設定が渋滞してる感はあるので様子見で少なめに↓2までとしときます。
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/03(月) 21:58:18.86 ID:qXtgZwz9o
ハワイというかアメリカは国連と世界戦隊連盟がどっちの勢力がアメリカ1位のヒーローを輩出するかバチバチに勢力争いをしている場所であり、少しでもうちが手柄を立てようとヒーロー同士の手柄上げ競争が盛ん。今回は、ダミー企業を両勢力が追っている。
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/05(水) 09:27:55.82 ID:o5CeuukqO
なんか今とんでもないものがダミー会社で運搬されているらしい
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/08(土) 19:22:00.45 ID:nGz3tClMo
大筋には関係ないし重要でもないけどふと思いついたので少し設定の変更します。会計士の捜査を担当するのはコミューンじゃなくて世界戦隊連盟のマーケティング部と言うことにします。そしてその来歴は以下の通り。

名前:世界戦隊連盟マーケティング部
来歴:その名の通りヒーローのイメージ戦略等を担う重要な部署。というのも国連と違いあくまでも民間の有志によって設立された組織であるため、運営資金の獲得は最優先課題の1つであり、どうすればヒーローのイメージが向上するかあるいはグッズがよく売れるかを追求していた。やがて彼らはヒーローのイメージ作りのためにどのヒーローがどのヴィランや悪党と対峙すると人々からの人気が得られるのかという戦略を考えるようにもなっていた。その過程において彼らはヴィランの行動や性格、繋がりや潜伏場所を調査し、最もそれに適切──戦術的にも営利的にも──なヒーローを策定するという諜報機関的な役割をも担うようになった。彼らのネットワークは国家に縛られない組織の特性を活かした脅威的な柔軟性、網羅性を誇っているため、諸国家の諜報機関にも警戒されるほどである。




思考の海に潜っていたクールキャットの意識が携帯の着信音で引き揚げられる。

番号はシルバーナイトから教えられたエージェントのものだ。連絡の時間にはまだ早い。

「もしもし?」

「クールキャットさん?」

聞こえてきたのは息を切らしながら話す女性の声だった。

「ええ。どうかした?」

「実はその…厄介な状況で…」

↓1
厄介な状況とは?
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/08(土) 19:26:24.72 ID:4oyVK0aao
個人情報が入ってるものをどっかに落とした
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/08(土) 20:15:38.17 ID:nGz3tClMo
諜報員的な仕事をしてるのに荷物を落とすのか(困惑)

「す、すいません、実は大切な物を落としちゃって!」

「大切な物って?」

「え、えーと…ヒーローの皆さんやヴィランの情報が記載された書類です…」

「書類…」

別に怒りを顕にしたつもりはないが、クールキャットの冷たい口調に勘違いしたのか、エージェントは慌てて取り繕う。

「ああ、いや、書類自体はロック付きのケースに入ってるんで、そう簡単に中を見られるってことはないと思うんですが…。ただ、今は会計士の尾行で手が離せなくて…お願いできますか?」

「…ええ」

これもシルバーナイトに頼まれた“サポート”の範疇だろう、しかたない。

「ありがとうございます!それで落とした場所なんですが、国連のヒーロー事務所の近くです!」

名目上は協力体制にあるとはいえ、よりにもよって国連事務所の前で重要な書類を落とした事には驚きを隠せない。

世界戦隊連盟もアルティメット・ワンという脅威については国連との連携が必要だと考え、情報共有が先日なされた。とはいえこれによって両組織の対立が解消されるわけではない。むしろこの件について手柄を上げたほうが今後の情勢をリードし得る可能性すらある。場合によっては“スーパーヒーロー”の失踪以来空席だったアメリカランキング1位──それは同時に世界一を意味する──のヒーローを輩出するかもしれない。
だからこそシルバーナイトは会計士については国連にその情報を提供しなかった。とはいえ国連もある程度こちらの動きは掴んでいるようで、ハワイで手がかりを探そうとしているらしい。

「分かった。それじゃあ会計士の尾行はしっかりと」

「も、勿論デス!」

大声に驚いて携帯を耳から離す。そのままポケットに入れるとクールキャットは国連事務所に向かって移動し始めた。
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/08(土) 21:14:19.48 ID:nGz3tClMo
「お嬢ちゃん!チアシード入りのスムージーはどうだい?」

露店の店主の呼び込みを無視してクールキャットは通りを歩く。しばらくすると国連のロゴが刻まれた建物についた。辺りを見回してみるがそれらしい物は見当たらない。通行人や国連の職員にも質問してみたが特にめぼしい返事は得られなかった。

しばらく探し回っていると近くの路地裏から声が聞こえてきた。

「てめぇには関係ねぇだろう!」

声のする方に足を進めると、ガラの悪い3人組の男と、彼らと同じくらいガラの悪そうな格好をした男が対峙していた。フラミンゴのような色の逆だった髪に、額のサングラス、耳につけたいくつかのピアスが目を引く。青っぽいアロハシャツに短パンと、いかにも軟派な男だ。

「いーや、関係あんだよなぁ。それ、アンタらのじゃないだろ?」

「だったらなんだ?3人相手にやろうってのか!」

その言葉を聞いてピンク髪の男はニヤリと笑った。クールキャットに気づいてそちらを見るとウインクをする。

すると正面に立っていた男が手に持っていたケースでウインクした男の頭を思いきり殴った。

「な、どういうことだ!?」

男は倒れるどころか微動だにしていない。むしろスーツケースの塗装が禿げている。

「ちょっと待っててくれよな、レディー」

白い歯を見せて笑うと、彼は正面で驚いていた男の鼻っ柱を殴る。目を回しながら男が倒れるのを見て、左右にいた二人が動こうとする。

左にいた男がナイフを取り出すと、両手でしっかりと柄を握って相手の腹に突き刺す。

「こしょばいな」

そう呟くと男の手からナイフを取り上げて、鳩尾に1発喰らわせた。それを見た最期の一人は後ずさりながら拳銃を取り出した。

引き金が引かれ、弾が発射される。だが光を宝石のように反射して輝くピンク髪の男の肌に当たっても、甲高い音と共に一瞬火花が散るだけで、血が吹き出ることはない。

それを見て男はいよいよ逃げ出す。クールキャットの横を通って大通りに出ようとするが、彼女の回し蹴りを側頭部にくらって壁に叩きつけられた。

「ハハハ!俺の見せ場、取られたな?」

男は笑いながらスーツケースを拾うとクールキャットに跪きながら差し出した。

「はい、どうぞ」

「ありがとう。…早く立てば?」

クールキャットの冷たい反応に動じることもなく男は立ち上がる。

「俺はジュエルブレイブ、ヨロシクね。にしてもまさかここでクールキャットに会えるなんてね」

ジュエルブレイブは身体をダイヤモンドに変化させるパワーを持ったヒーローだ。出身はロシアだが主にアメリカで活動しており、市民からの人気も高いと聞いている。

「私の事を?」

「もちろん!あの性格のひん曲がった博士を捕まえてくれたんだ、嫌でも覚えるよ!」

「そう」

「ああ、勿論君に会えたのは嫌じゃないよ?ところでそれ何だい?」

ジュエルブレイブがケースを指差す。

「…機密書類」

「へえ〜。ま、俺は政治には興味ないし別に良いんだけど」

「それじゃあ私はこれで」

「あっ、待って!」

「なに?」

「絶対皇女にヨロシク言っといてくれ!それと、困った事があったらいつでも連絡してくれな!」

そう言うとジュエルブレイブは名刺を投げ渡してきた。

「…どうも」

それだけ伝えるとクールキャットはその場を去った。

「…警察に連れてくか」

三人の男を見ながらジュエルブレイブが呟いた。
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/08(土) 22:07:26.29 ID:nGz3tClMo
一方その頃、キーウのヒーロー・コミューンではコールドキャットとレッドマーゾが机を挟んで話していた。

「それで、話って?」

「お姉さまのことです」

不機嫌そうな表情でコールドキャットが答える。

「クールキャットの?」

「はい。お姉さまはあなたのせいで心を乱されています。…こんな事をあなたに言うのは癪ですが」

自分に向けられた妙な敵意は無視してレッドマーゾはコールドキャットに問いかける。

「そうはいっても…向こうは話もしたくなさそうだぞ?」

「そうですね。正直、わたくしもどうすればいいかなど分かりません。ただある話ならしてあげられます」

「話?」

「はい」

コールドキャットは遠い目をしながら窓の景色を眺める。

「お姉さまからZATO52の話は聞きましたよね?」

「ああ。人身売買、だろ?」

「ええ。ただ、お姉さまにはもう1つ辛い思い出があります」

人身売買を経験する以上に辛いことなどあるのだろうか、レッドマーゾはそう思った。

「お姉さまは、雪原で一人倒れている所をわたくしの村の人間が見つけたのです」

「そうだったのか。…ん、待てよ。ってことは2人は本当の姉妹じゃないのか?」

「“本当の”姉妹が何を指すかによりますわ。まぁ、世間一般的に言えばそうなります」

「それじゃあなんだ…その事実を知ったことが辛いことだったのか?」

「いいえ。…拾われてからお姉さまはわたくしの家族と共に住むようになりました」

家族という言葉と共に、コールドキャットは苦虫を噛み潰したような顔になった。

「毎日温かい食事を食べて、キチンと毛布をかぶって寝て。お姉さまはきっと自分達が愛されていると感じたことでしょう。…わたくしもそうでした」

レッドマーゾは静かに彼女の話を聞き続ける。

「ですが違います。もともとわたくしの村は幼い子どもを攫い、人売り共に引き渡すことで生活の糧を得ていたのです。当然、わたくしとお姉さまもやがて売られました」

レッドマーゾは思わず絶句する。

「その時にお姉さまは心に傷を負ったのでしょう。…おそらくは、もう誰も心から信じないと。信じて、裏切られたら…つらいから」

「で、でも俺はそんな事しない!」

「でしょうね、あなたみたいな熱血バカは。でもそれが絶対という保証はありません。何せお姉さまは、この世界に生まれて、初めて所属する家族という共同体に真っ先に裏切られたのです。それ以上の友人や国家を、信じられるはずがありません」

レッドマーゾは口を閉ざす。クールキャットのその不安を自分なら取り除けるという確信などなかったからだ。その時、ふと彼は気づいた。

「そういうコールドキャットはどうなんだ?辛くないのか?」

「わたくしにはお姉さまが居ますから。それだけで充分です」

「…そうか」

コールドキャットは咳払いをすると、いくらか声の調子を上げて話を続ける。

「とにかく、このままじゃお姉さまの調子が戻りません。絶対に、何とかしてください」

そう強く告げると、レッドマーゾをジト目で睨みつける。

「わ、わかったよ。少し、考えてみる」

そう言いながらそそくさと部屋を出たレッドマーゾだったが、どうすればいいかなど全く思い浮かばない。

「俺に…何ができる?」
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/08(土) 22:10:22.31 ID:nGz3tClMo
今日はここまで。
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/08(土) 22:11:25.07 ID:pte2yVlmo
乙乙
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/08(土) 22:13:59.62 ID:bUj4LXr1o
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/08(土) 22:26:49.99 ID:sXXDsxd2o
おつ
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/15(土) 20:26:50.57 ID:oEcPk3vHo
「ほら」

「ありがとうございます!」

エージェントは双眼鏡を覗きながら、差し出されたスーツケースを受け取る。街なかの尾行で双眼鏡なんて使うものなのだろうか、そんな疑問をいだきながらクールキャットは話しかける。

「それで、状況は?」

「ホシはあの埠頭で輸送の責任者と会っているみたいです!」

わざとらしくエネルギーゼリーを流し込みながらエージェントが答える。クールキャットは彼女の手から双眼鏡をひったくるとそれを覗きこんだ。

「見張りは……」

入り口に2人、奥に3人。多いどころか少ないくらいだ。それにアルティメット・ワンの人間、というよりは地元のチンピラだろうか?

「ここで間違いない?」

「勿論ですよ!ずっと瞬きすることなく追ってましたから!」

「そう…」

「んー、でも確かに警備が緩いですよね?もしかして私達、博士に騙されたんでしょうか!?」

コロコロと表情を変えながらエージェントは狼狽える。

「どうかな、奴らもそんなことをすればどうなるかは分かっているはず」

「ですよね…?」

いずれにせよここで引き下がるという選択肢は無い。この程度の警備なら仮に見つかったとしても充分対処可能だ。

双眼鏡を返すと、クールキャットは氷の弾丸を出現させる。

「それじゃあ、ここで待ってて」

「はい!」

エージェントの敬礼に見送られながら、クールキャットは埠頭の入り口へと近づいていく。

↓1コンマ
41以上で制圧
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/15(土) 20:30:09.15 ID:q4j2/4qj0
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/15(土) 20:31:33.42 ID:WbWbgkWSo
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/15(土) 21:24:10.77 ID:oEcPk3vHo
入り口の見張りは拳銃を片手に周囲を警戒している。

「さて…」

氷の弾丸を作り出すと、彼らの近くにあったコンテナに飛ばして注意を逸らす。

2人が背中を見せている間に忍び寄り、見張りの首を絞める。男もはじめは抵抗していたがやがて力が抜け意識を失った。クールキャットは男をゆっくり地面に降ろす。

「気のせいみたいだ」

そう言いながら振り返った見張りの頭にしなやかなハイキックが直撃する。男はうめき声を上げながら仰向けに倒れ込む。

男たちの手から拳銃を拾うと、クールキャットはそれを海に投げた。続けてコンテナの陰に隠れながら奥に進む。

「それじゃあ帳簿上の操作はこっちでやっておくから、積み荷はきちんと運んで下さいね」

「分かった。到着予定時間だが─」

どうやら会計士と輸送責任者が詳細について話し合っているようだ。2人の手前には3人の見張り。2人は拳銃、1人はサブマシンガンを手にしている。

クールキャットは再び弾丸、というよりは氷の塊を展開する。狙いは見張りの頭だ。スピードも少し緩めて当てれば、少なくとも死にはしないだろう。

意識を集中させながら、クールキャットは氷を飛ばす。だが見張りに届く前にそれは砕けちった。

「──!?」

突如として地面の中から現れた死神のような男が大きな鎌を振るったのだ。かなり着古したと思われるフード付きのボロボロの黒衣を身に纏っている。フードを深く被っており、前髪が目にかかるほど長いこともあって表情は捉えにくい。

「敵です」

黒衣の男がかろうじて聞き取れるほどの声で呟く。それを聞いた会計士は彼を指差すと大声で喚き散らし始めた。

「こういう時のために我々はあなたを雇っているんですよ、シャドウ!仕事を果たしてください!」

「あー、分かりました」

↓1コンマ
81~ 戦局有利(次の判定緩和)
46~80 戦局有利
26~45 膠着
11~25 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)


今更ですけど戦闘の難易度ってちょうどいい感じですかね?
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/15(土) 21:26:15.96 ID:BzAZsoe8o
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/15(土) 21:38:48.00 ID:WuoW2+8NO
戦闘の難易度自体は問題ないけど、全部反転コンマにした方が完全な運任せって感じするのでそうして欲しいかなあとか。もしくはクリティカルとファンブルはゾロ目時限定にするとか
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/15(土) 21:39:49.85 ID:ke31f6DTO
個人的に「46-80戦局有利」のコンマをもう少し縮めてもいいと思う逆に「11-25戦局不利」のコンマを広げた方が難易度もいいかな思う。
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/15(土) 22:16:36.51 ID:oEcPk3vHo
シャドウと呼ばれた男が動く前に、まずは見張り達がクールキャットに向けて銃を乱射してきた。近くに置いてあったフォークリフトの裏に飛び込んで弾丸を避ける。

しばらくすると弾丸の雨が止んだ。どうやら装填中のようだ。フォークリフトの陰から頭を出して彼らの位置を確認する。シャドウがどこにもいないのが気にかかったが、ひとまずクールキャットは見張りの男たちに氷をぶつけた。

「よし…」

見張りは無力化したが、シャドウの姿が見当たらない。彼の姿を探して周りを確認するクールキャット。すると目の前の地面から、より正確に言えばクレーンの影の中からシャドウの上半身と鎌が出てきた。

銀色に光る鎌がクールキャットの胴を切り裂こうとするが、華麗な側転で彼女はそれを躱した。

(今のと名前で分かった。あいつは影に関するパワーを持ったヴィラン。恐らくは影の中を移動する力)

それならばと、クールキャットは周りに影のない場所まで移動する。もちろん自身の影から出てくる可能性はあるが、それは同時にシャドウの現れる位置を容易に予測できることも意味する。

↓1反転コンマ
36~ 戦局有利
26~35 膠着
01~25 戦局不利

それでは意見を参考にシャドウ以降の戦闘では少し弄りたいと思います。ただクリティカルとファンブルはとりあえず今のままにしときます。もしかしたらあとから変えるかもしれません。
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/15(土) 22:17:36.39 ID:BzAZsoe8o
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/15(土) 22:51:21.11 ID:oEcPk3vHo
クールキャットが影のない場所に移動したのを見て、シャドウはクレーンの影の中から這い上がって全身を晒した。

(出てきた…。影と影が繋がっていないと移動できない?)

するとシャドウはクールキャットに向かって走り始めた。すかさず氷の弾丸が襲いかかるが、彼はそれを全て手にした鎌で防ぐ。するとシャドウは手のひらサイズの鎌を投げてきた。

身体をひねって避けたクールキャットだったが、気付けばすぐ目の前にまでシャドウが迫ってきている。袈裟斬りにするように振るわれた鎌を間一髪で避けると、クールキャットは足技による連撃を御見舞する。

しかしシャドウはそれを鎌の刃と持ち手で器用に捌く。それを見たクールキャットは蹴りによる攻撃を続けながらその合間に弾丸を放つ。

「──!?」

シャドウは歯を食いしばりながら、肩を狙った弾丸を小さな鎌で防ぐ。この展開は彼の予想外だった。というのもクールキャットはその能力から遠距離主体のヒーローだと思っていたからだ。
だが彼女はいつでも、そして360°どこからでも展開できる弾丸と蹴りを組み合わせた独自の格闘術を用いる。実際、彼女の強みはそこにある。前方の人間に対処しながら後方の弾丸を避けるなどそうそうできることではない。赤崎と出会う前の殺しを躊躇わない彼女ならその脅威はなおさらだ。

シャドウはその場で円を描くように鎌を振りかぶると、バックステップで距離を取った。

「っ…」

脇腹に鈍い痛みを感じるシャドウ。どうやらすべての弾は避けられなかったようだ。

↓1反転コンマ
81~ 戦局有利(次の判定緩和)
46~80 戦局有利
26~45 膠着
11~25 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)

今日はここまで。多分明日もやります。
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/15(土) 22:53:24.02 ID:XIL7mpGdO
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/15(土) 23:29:55.02 ID:WbWbgkWSo
おつ
おっと
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/16(日) 20:22:04.98 ID:JbeUYnZAo
後ろにひいたシャドウはその場から再び小さな鎌を3つ投げてくる。クールキャットは捻りを加えたバク宙でこちらに飛んできた全てを回避する。

視線を前に戻したとき、シャドウの姿は消えていた。その時、自分の足元に小さな影が落ちていることに気づく。シャドウが真上に放り投げた4つ目の鎌のものだ。

瞬時に危険を察したクールキャットはその影から離れようとする。しかし、影の中から飛び上がって現れたシャドウが振るった鎌が左肩に命中する。

「っ…」

思ったよりも深く入ったようで、押さえた右手に血がこびりついている。

(訂正。影が繋がっている必要はないみたい)

↓1反転コンマ
81~ 戦局有利(次の判定緩和)
46~80 戦局有利
26~45 膠着
11~25 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/16(日) 20:22:29.16 ID:FDrDTvtLo
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/16(日) 20:43:22.90 ID:JbeUYnZAo
シャドウは続けて痛手を与えようと動き出す。しかしクールキャットもそうはさせまいと、大量の弾丸を展開するとそれを放った。

(あいつの力量を考慮すれば、致命傷には至らないはず)

彼女の予想通り、シャドウは鎌を回転させて弾を防ぐ。しかし全てを捌けているようではなく、ところどころ手足から出血している。

(次で決める…)

↓1反転コンマ
81~ 戦局有利(次の判定緩和)
46~80 戦局有利
26~45 膠着
11~25 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/16(日) 20:44:18.34 ID:DLosWoqso
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/16(日) 20:52:16.07 ID:JbeUYnZAo
シャドウは弾の嵐を防ぎながら後退すると、コンテナの影の中に沈んで消えた。

(いったい何のつもり…?)

クールキャットは改めて周囲を見渡す。自分の周りに影はない。シャドウが何かを投げていたわけでもない。

先程までとは打って変わって、静寂だけがその場を支配している。

↓1反転コンマ
81~ 戦局有利(次の判定緩和)
46~80 戦局有利
26~45 膠着
11~25 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/16(日) 20:53:59.04 ID:+Cb6QGwG0
よい
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/16(日) 20:54:00.90 ID:DLosWoqso
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/16(日) 21:05:33.55 ID:JbeUYnZAo
シャドウはまだ現れない。クールキャットは周囲を観察するが、異常はない。

一方遠くから戦いを眺めていた会計士と輸送責任者は、シャドウが仕事を放棄したのではないかと気が気でない。

↓1反転コンマ
81~ 戦局有利(次の判定緩和)
46~80 戦局有利
26~45 膠着
11~25 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/16(日) 21:05:50.28 ID:FDrDTvtLo
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/16(日) 22:44:10.32 ID:JbeUYnZAo
穏やかな波風の音だけが埠頭に響く。だがその時、流れてきた雲が太陽を覆い隠した。

シャドウはずっとこの時を待っていた。ようやく訪れた好機を逃すまいと、クールキャットの近くに現れようとしたその時。

「─くっ!?」

埠頭の夜間作業用に置いてあったワークライトが起動し、影を打ち消した。シャドウが潜っている間に、クールキャットが目をつけていたのだ。シャドウは強制的に影の中から引きずり出され、無防備な姿でクールキャットの目の前に現れた。

そこからの流れは早かった。クールキャットの足払いによってシャドウは体勢を崩す。鎌の持ち手でバランスを取ろうとするがそれも崩されてしまい、シャドウは仰向けに倒れ込んだ。

倒れながらもシャドウは黒衣の内側から小さな鎌を取り出そうとするが、クールキャットは彼の右足を踏みつけてそれを防ぐ。そのまま流れるように彼の鼻っ柱に右ストレートが叩き込まれる。

「っ!?」

声にならないうめき声を上げながらシャドウは意識を失った。

ヴィランを無力化したのを確認すると、クールキャットは会計士の方へ向かおうとする。

「しまった!」

だが彼と輸送責任者は一足先に船に乗り込んでその場から離れていた。ここからでは操舵手を狙うこともできない。会計士の男は船上で冷や汗を拭いながら、勝ち誇ったように笑う。

すると頭上からプロペラのけたたましい回転音が鳴り響いた。数台のヘリコプターと巡視艇が海上に現れる。

「今すぐ止まってくれるかな?」

扉を開け放ったヘリコプターの後部座席にはジュエルブレイブが居た。彼はクールキャットの方を見ると、シャカのハンドサインを送ってきた。
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/16(日) 22:58:39.42 ID:JbeUYnZAo
───────

「それで、本当に会計士の身柄はこちらで預かっていいの?」

「もちろんだよ!」

クールキャットの疑問にジュエルブレイブは笑顔で答えた。もっとも彼の背後に控えている国連の補佐官は鬼のような形相をしていたが。

それもそのはず、国連は独自の情報網によってダミー会社が何か特別なものを運んでいる事を掴んでいたからだ。これを国連のヒーローが押さえれば、アメリカ1位のヒーロー輩出も夢ではない。
だから何としても会計士を世界戦隊連盟には渡したくない。しかし同時に悩みもあった。それはジュエルブレイブである。彼はアメリカでも高い人気を誇っており、仮に国連側からアメリカ1位ヒーローを出すとしたら、彼が一番手堅い。だが一方で、既にわかっているように彼自身はそう言った事柄には興味がない。もっともそんな性格も人気の理由でもあるのだが。
もちろんジュエルブレイブを無視して国連が独自に確保してもいいが、そうすればヒーローの支援者達からの突き上げは避けられない。というのも国連はヒーローを監督しているとはいえ、あくまでそれは彼らの行動を支援するため、という名目だからである。にも関わらずヒーローの意思を無視するような行動を取れば非難は避けられない。

そんな訳で補佐官は上司の人選ミスを恨んでいた。加えてこのあと自分が行わなければならないであろう報告会のことを考えると、胃が酷く痛むのは当然のことだった。

「俺は埠頭の騒ぎを確認しに来ただけだからね。それに君の手柄を奪うのも気分が悪いし」

「まあ、そちらに文句がないならいいけど」

クールキャットはそのままその場を去ろうと思ったが、ふと思いついた事をジュエルブレイブに尋ねることにした。

「あなたは、自分の中にうずまく“何か”と向き合ったことはある?」

「何か?それって何さ?」

ジュエルブレイブの疑問はもっともだったが、クールキャットにはそれを言い当てる言葉が見つからなかった。

「…わからない」

それを聞いてジュエルブレイブは少し考え込んだかと思うと、両手を頭の後ろに回して笑いかけた。

「いやー、俺ってポジティブ人間だからそんな経験はないな」

「…そう」

「でも、そういう事ならケイレブと話すといいかもね。彼はまさにそんな経験をした男だからね」
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/16(日) 23:00:38.20 ID:JbeUYnZAo
そう言うとジュエルブレイブは、船舶を調査していた集団の中から一人を呼び寄せた。

そうしてクールキャットの前までやってきたのはヘルメットと防弾チョッキを身に着けた青年だった。彼はクールキャットを見るなり、目を輝かせた。

「は、はじめまして、クールキャットさん!僕は特別支援局のケイレブと申します!」

特別支援局──Special Support Agency──は国連の下部組織の1つである。主にヒーロー達の活動の支援や調整を行っている。今回のように武装した上で取締に同行する事もある。

「どうも」

「実はずっとお会いしたいと思っていたんです!」

頬を紅潮させながらケイレブは嬉しそうに話す。

「会いたかった?」

「はい!何せクールキャットさんは僕の人生を変えてくれた人ですから!」

興奮した様子でケイレブは話を続ける。

「実は、僕もZATO52で捕まっていたんですよ!」

それを聞いてクールキャットの表情が僅かに揺らぐ。

「当時、僕は逃げることはおろか生きることすらも諦めていました。でも、あなたが脱走したって聞いて衝撃を受けたんです!あんな状況下にあってまだ希望を捨てない、強い人が居たんだって!」

彼の言葉はクールキャットにとって驚きだった。なんせ、当時の彼女はただ目の前に転がり出たチャンスを必死につかもうとしただけだったからだ。

「それで僕も勇気をもらって、何とか逃げ出したんですよ!それでその後どうしようかと考えた時に、僕もあなたみたいに誰かに希望を与えられるヒーローになろうと思ったんです!ただ僕にはパワーがなかったので…」

ケイレブは少し俯いて口ごもったが、すぐに顔を上げて続きを話し始めた。

「それならせめてヒーローの手助けをしようとSSAに入局したんです!まあ、クールキャットさんが世界戦隊連盟に所属してるって聞いたときは少しショックでしたが…」

熱のこもった長話に若干圧倒されながらも、クールキャットは気になった事を尋ねようとする。

「私のせいで、ZATO52の体制は厳しくなったはずだけどそのことは恨んでないの?」

「まあ、それは事実ですけど、でも僕にとってあなたの行動は勇気をくれたんです。そりゃ、恨む人もいるかもしれませんが…。結局は捉え方次第だと思います」

あっけからんとした調子でケイレブは答えた。

「捉え方次第…」

するとケイレブがおずおずと右手を差し出した。

「あのー、握手していただいてもいいですか?」

「ええ」

赤崎との事も、捉え方次第なのだろうか。そんな思いが頭をよぎりながら、クールキャットは握手に応じたのだった。

第5話 終
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/16(日) 23:01:21.96 ID:JbeUYnZAo
では第6話のキーワードを募集します。↓3まで
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/16(日) 23:04:41.86 ID:Jsr0fdSXo
最高権力
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/16(日) 23:04:51.44 ID:bUUJb4+DO
愛と友情
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/16(日) 23:05:19.98 ID:+Cb6QGwG0
破滅
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/16(日) 23:05:40.73 ID:WIF5qy6i0
孤児
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/16(日) 23:05:42.18 ID:QBFobOFeO
解散
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/16(日) 23:09:18.81 ID:JbeUYnZAo
ではちょっとした試みですが、こういうエピソードあるいは絡みが見たいというものを募集してみます。例えば国連の内幕が見てみたいとかそんな感じです。幕間的な感じにするか、本編に組み込むかはまだ分かりません。

テストなので少なめに↓2まで

今日はここまで。
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/16(日) 23:13:04.04 ID:WIF5qy6i0
前日談みたいな感じで赤崎と詩音の過去のヒーロー活動について
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/16(日) 23:20:21.62 ID:YK+cPy3bO
各組織の黒幕たちのフフフな暗躍劇
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/16(日) 23:20:41.68 ID:WIF5qy6i0
文章ちょっと抜けてた
可能なら>>371は赤崎と詩音の出会いや本編前の過去のヒーロー活動についてに訂正できますか?
更新乙
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/16(日) 23:22:14.97 ID:YK+cPy3bO
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/17(月) 00:14:03.86 ID:K/QzLom1o
おつー
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/22(土) 23:11:30.65 ID:I2FAhYGmo
暗躍劇は多分6話で描きます。


5.5話 「私のヒーロー」

これは本編より前の時期、赤崎がレッドマーゾとしての活動を始めたばかりの、そして彼とスカイウイングの出会いを描いた話である。

東京の某区、スカイウイングは夕焼けをバックに住宅街の上を飛んでいた。日課である放課後のパトロールである。だが彼女はある課題を抱えていた。

「あっ、お婆さんが困ってる!で、でも、私が手伝いに行っても余計なお世話じゃないかな…」

そうこう悩んでいるうちに他の一般人がおばあさんの手伝いを始めた。

「こ、今度は迷子の子供が泣いてる!どうしよう…。あっ──」

もたもたしている間に母親が子供を見つけたようだ。

そう、彼女の課題とはその内気な性格のことだ。ヒーローとして人々を助けたいという意識はあっても、内気な性格が災いして率先して声をかけたり手伝ったりすることができないのだ。

(結局今日もこうやって無駄に1日を過ごすのかなぁ…。ほんと、駄目なヒーローだな、わたし)

俯きながら空を飛んでいるスカイウイングだったが、4人の青年が目に入った。何か話し合っているようだが、距離が遠いこともあって途切れ途切れにしか聞こえない。

「今日も──って言われたぜ」

「相変わらずだな。大体───能力養成学校だって───活躍できるはずだ!」

「だな。ところで──するのにいい場所を見つけた。ここから西の倉庫だ」

「ああ、あの特訓に───だな。そしたら────いつか俺達も認められるさ」

すると青年の1人がスカイウイングに気づいて空を見上げた。それに続いて残りの3人も顔を上げる。空に漂うヒーローの姿を見て、4人の青年はその場を立ち去った。

「あっ、行っちゃった…。随分落ち込んだ顔をしてたから困ってるのかと思ったんだけど…」

結局、今回も声をかけることはできなかった。

(毎日毎日おんなじことして…。ただメモが増えていくばかりだよ…)

彼女は行動できなかった自分を戒めるために、自らの行動と見聞きしたものを丁寧にノートにまとめているのである。ここ1ヶ月で行動できたのは15件の内、2件だけだ。大半が迷子猫の捜索だか、お年寄りが困ってただかで大したものではないのだが、スカイウイングにとっては何よりも行動できない自分が歯がゆかった。

今日のところは大人しく家に帰ろう、そう思ってスカイウイングが帰路につこうとしたその時、1人のヒーローが目に入った。

「あれは確か──」

朝にやっている戦隊もののテレビに出てくるような、赤いコスチュームを身に着けたヒーロー、レッドマーゾだ。

(そう言えば最近よく見かけるなぁ。私なんかと違って、あの人はいつも誰かを助けてる…)

その時スカイウイングは妙案──少なくとも彼女自身はそう考えた──を思いついた。彼の1日を追えば、自分に足りない積極性に必要なものが分かるかもしれない、と。

だが今日はもう遅い、明日にしよう。そう思い至ったスカイウイングは自宅への帰路についたのだった。
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/22(土) 23:14:19.47 ID:I2FAhYGmo
そして翌日、レッドマーゾはいつものように街の見回りを行っていた。転んだけが人を自宅まで送ったり、壊れたバイクを修理屋まで運んだり、落とし物を探したりと彼の1日は忙しい。

「いやー、本当にありがとうね」

「これもヒーローの務めさ!」

お礼を言いながら去りゆく老人に、レッドマーゾは笑いかけながら手を振る。

「さて…」

レッドマーゾはふと空を見上げた。視界の端に映った黒い影が慌てて電柱の後ろに隠れる。

「何が目的か知らないが、いつまで付け回すつもりだ?」

すると電柱の陰から女性が顔を出した。

「なあ!何か話したいことがあるなら降りてきてくれないか?」

女性はしばらくレッドマーゾをじっと見つめていたがやがて赤い翼を広げると、正面にゆっくりと降りてきた。

「は、は、はじめまして。わた、わたしはスカイウイング、です」

手を後ろで組んで、顔を背けてもじもじしながら女性は答えた。

「俺はレッドマーゾだ。よろしくな」

スカイウイングは躊躇いがちに、レッドマーゾが差し出した手を握った。

「それで、何のようだ?」

「えと、何ていうか、コツ?を聞きたくて…」

「コツ?」

「は、はい。どうしたら…そんなに自信が持てるのかなって」

スカイウイングは伏し目がちにレッドマーゾを見る。しかし彼の表情はマスクのせいで読み取れない。

「自信、か。うーん、自信とは少し違うけど、俺を突き動かしているのはヒーローへの憧れと誇り、かな」

「憧れと誇り?」

「ああ!」

レッドマーゾは拳を天高く掲げながら話を続ける。

「ずっと幼い頃からヒーローになるのが夢だった。今、ようやくスタートラインに立てた。そしてヒーローを名乗る以上、それを汚しちゃならいない!つまり、困ってる人は助ける、だ!」

「な、なるほど…」

スカイウイングはレッドマーゾの熱意に若干押されて後ずさる。とはいえ彼の言っていることは理解できる。彼女自身、ヒーローになったのは困った人を助けたいからだ。

(根っこはきっとおんなじなんだ。…なのにわたしは──)
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/22(土) 23:15:00.48 ID:I2FAhYGmo
「あんたら、ヒーローか?」

スカイウイングの思考は突然聞こえた声によって中断される。声の主はフードを被った青年だ。

「ああ。何か困りごとか?」

「けっ、何がヒーローだ。何であんたらは尊敬されて、俺達は…」

レッドマーゾに答えることなく青年はブツブツと呟く。

「おい?」

レッドマーゾの言葉を無視して、男は片手をスカイウイングにかざす。次の瞬間、スカイウイングは空を見上げていた。

「へ?」

どうやらコケたらしい。それを見た青年はポケットからナイフを取り出すとレッドマーゾに襲いかかる。

「な、なんだ!?」

「死ねっ!特権階級の偽善者共が!!」

そう喚き散らしながらナイフを振り回す青年をレッドマーゾは何とか取り押さえようとする。だがかなり錯乱しており、とてもじゃないが手加減はできない。そう考えたレッドマーゾは諦らめて彼を気絶させることにした。

「ガハッ…!」

正拳を喰らった青年はナイフを落としながら倒れ込む。

「ふぅ…。大丈夫か?」

レッドマーゾが地面に倒れ込むスカイウイングに手を差し伸べた。

「──っ!」

だが彼女はその手を払うとその場から走って立ち去った。恐怖からではない、自分の不甲斐なさからだ。転んだあと、青年がナイフを振り回してる間、立とうと思えば立てたはずだ。

にもかかわらず自分は立ち上がらなかった。いや、立ち上がれなかった。挙げ句の果てにヒーローのくせして他のヒーローに守られている。そんな自分が情けなかった。

(わたしなんてっ…!!わたしなんてっ!!)

自分が飛べることも忘れて、ただひたすらに走る。流れる涙も鼻水も無視しながらただ走る、情けない自分を置き去りにするかのように。

一方、レッドマーゾは事態に困惑していた。突然襲われたかと思えば、スカイウイングは立ち去ってしまった。

「ん、これは?」

彼は近くに手帳が落ちているのを見つけた。

「中を見るのは…」

悪いと思いながらも持ち主を特定するためにページを開く。おそらくスカイウイングのものではないかと推測してはいたが。

「ふむ…」

中にはびっしりとメモが書いてある。

「やっぱり彼女のか。…とりあえずコイツを警察に運んで、それから彼女に届けよう。…でもどこに行けば会えるんだ?」
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/22(土) 23:16:48.70 ID:I2FAhYGmo
レッドマーゾはそれから数日間スカイウイングを探し続けたが、ついに見つけることはできなかった。というのもあの一件以来、ヒーローとしての自信をすっかり失った彼女は自宅にひきこもっていたからだ。

「はぁ〜」

布団の中に引き篭もって、勇気を出すきっかけにとヒーローの話題を見ては自分に嫌気が差すという負のスパイラルに陥っていた。

その時ふと、街がいつもより騒がしいことに気がついた。

「何だか今日はやけにサイレンがなってるなぁ」

丸まった布団から頭だけを出して呟く。すると携帯の通知が鳴った。

「あれ、国連からの連絡だ。えーと…ゆ、誘拐!?」

能力養成学校──パワーを持った人物の全員がヒーローかヴィランになる訳ではない。能力を持ちながらも普通に働く人々、あるいはヒーローになれるほどの能力ではないがその扱い方を学び、制御したいと望む人のための学校だ──の生徒が何者かに誘拐されたらしい。

「捜索にあたっていたレッドマーゾの行方もわからず…!」

報せを聞いて、ようやく詩音は布団から這い出て立ち上がった。もっとも彼女は無我夢中だったので、自分が遂に1歩を踏み出したことには気づいていなかったが。

「誘拐…そうだ!いつもパトロールしてた時に、危険そうな場所や人通りの少ない場所はメモしてたんだった!」

慌てて手帳を探し出す。だが机の上を探しても、収納箱をひっくり返しても、ポケットを探っても手帳は見つからない。

「な、なくした…!?」

再び、自分なんて、という言葉が頭に浮かびそうになる。だが彼女はそれを振り払った。

「落ち着け…。あのメモは何度も何度も読み返した。だから…うん!憶えてる!!」

スカイウイングは窓を開け放つと、躊躇うことなく飛び立った。そうして子供とレッドマーゾを探しに、街を飛び回る。
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/22(土) 23:19:02.28 ID:I2FAhYGmo
散々探し回って、いよいよ最後の候補である倉庫があるあたりまでやってきた。

「あれ、何か聞こえる…」

耳を澄ましてみると誰かのうめき声と怒声、そして鈍い音が聞こえる。屋根の上にそっと降り立つと、天窓から様子を窺う。

「──っ!」

中ではレッドマーゾが2人の青年にタコ殴りにされていた。彼が反撃しないのは、残る1人が子供にナイフを突きつけているからだ。

「レッドマーゾさん…」

スカイウイングは天窓から視線を外すと、自分の両手を見つめる。

「…やる。助けないと!」

力を込めて両手を握り、そして手のひらを開いて力を解放する。手はまだ震えている。だが彼女は顔を上げて、天窓に近づく。

翼を硬質化させると叩き割るようにして中に飛び込む。中にいた全ての人物が彼女を見る。

「クソッ!」

子供を人質に取った男が動く前に羽根を飛ばして無力化、流れるように残りの2人にも羽根を飛ばす。

泣くのを我慢している子供を確保すると、レッドマーゾのそばに近寄る。

「だ、大丈夫ですか?」

「─っ!あ、ああ」

脇腹をさすりながら返事をすると、レッドマーゾは手を伸ばした。

「悪いけど起こしてくれないか?」

「は、はい!」

手を掴んで引っ張り上げると、レッドマーゾは膝に手をつきながら息を吸う。

「はは、“今度は”掴んでくれたな?」

「あ……は、はい」

スカイウイングが笑いかけると、レッドマーゾはヘルメットを脱いだ。何だか突然気恥ずかしくなったスカイウイングは目線を反らす。
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/22(土) 23:21:21.99 ID:I2FAhYGmo
「え、えと、警察にはもう通報しました」

「わかった、ありがとう」

レッドマーゾは子供のそばによってしゃがみこむと頭を撫でた。

「よく頑張ったな」

「う、うん!」

子供に笑いかけると、レッドマーゾは立ち上がって誘拐犯のそばによった。

「どうして、こんな事を?」

地面に倒れ込みながら腹を押さえた男がレッドマーゾを睨みつける。

「あんたらにはわからねえよ…。俺達ミスフィットの境遇はな」

ミスフィット。これは本来の意味では、パワーを持っているにもかかわらずそれを活かす場所を見つけられない人々を指す言葉だ。しかし現在では中途半端なパワーを持った人々を指す差別用語となっている。

彼らはヒーローに、そしてヴィランになれるほどの力もない。しかし一般人にしてみれば、仮に犯罪に手を染めたならば普通の犯罪者よりも遥かにたちが悪い相手となる。そういった恐怖から、中途半端な能力を持った人物、特に特定の職についていない人物に用いられる。

「全くふざけた話だ。そこのガキどもは…俺らと大して変わんねえ癖に、親が金持ちだから能力養成学校に通える。んで、職を得て、みんなに尊敬される」

痛みで顔を苦痛に歪ませながら青年は語る。

「一方俺らはどうだ?親がミスフィットのせいで金がねえ。だから学校にも通えねえ。んで、なんだ?ミスフィットと呼ばれバカにされる。……本質的にはそこのガキと同じなのによぉ!!」

青年は拳を地面に叩きつける。

「だからガキを誘拐して、金を得て、俺は無理でも弟たちは学校に通えるようにしようとしたんだよ!」

「そう…だったのか」

「ま、てめぇら正義ぶったヒーローに阻止されたがな」

彼らの話を聞いて2人のヒーローの顔色が暗くなる。

「クソッ…。ようやく翼女の監視がなくなったから、実行したってのにこのザマなんてな…」

すると落ち着きを取り戻した子供がスカイウイングの袖を引っ張った。

「お姉さん、助けてくれてありがとう!それに、いつも見守ってくれて!」

「え?」

「いつもお空から僕達のこと、見ててくれてるでしょ?だからいつも安心なんだ!」

子供は無垢な笑顔を見せる。心の底から彼女を信頼しているようだ。

「え、えと…」

スカイウィングが動揺していると、警察が倉庫に到着した。彼らは誘拐犯と子供を外へと連れ出して行った。
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/10/22(土) 23:24:14.22 ID:I2FAhYGmo
スカイウイングはその様子を見ながら呆然としていた。するとレッドマーゾがそばによってきて、肩に手を置いた。

「スカイウイング、君は自信が無いって言ってたよな?」

「は、はい」

「でも今回のことで分かったじゃないか。君は立派なヒーローだ。いつも空から人々に安心を与えて、犯罪を抑止していた。そして、真っ先に俺と子供を助け出した。これでヒーローじゃないって言うなら、何なんだ?」

「私が…ヒーロー…」

子供から向けられた笑顔が頭に思い浮かぶ。

レッドマーゾは笑いかけながら、ゆっくりとその場に座り込む。それに釣られてスカイウィングも翼をそっと降りたたんで座る。

「良かったな、スカイウィング!」

「はい…」

彼女は隣に座って屈託なく笑うヒーローの顔を見る。

「…詩音です」

「え?」

「私の名前、詩音って言います」

「……そうか!俺は赤崎灯だ、よろしくな!」

改めて差し出された手を、スカイウイングは握った。

「はい。あか…さき君」

その日からずっと、彼女にとってのヒーローは赤崎灯、その人だ。

5.5話 終

今日はこれだけで終わりです。
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/22(土) 23:28:32.72 ID:ubaiD0DIo
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/22(土) 23:43:37.69 ID:tOqpmMtN0
乙です
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/23(日) 00:49:01.72 ID:xwzF/VGDO

主人公のカチューシャいるから恋愛面では厳しそうだけど詩音頑張れ
386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/11/15(火) 21:28:48.34 ID:Wm2kcwQSo
間が空きすぎて人いるかわからないけど投下。


第6話 「会合」

窓もない狭い取調室の中、アイスエイジは両足を机の上にのせながら両腕を組んでいる。その傲慢な態度、シルクハットのつばから見え隠れする鋭い眼差しは、拘束されている人物のものとは思えない。

「なら、本当にこの製薬会社については何も知らないんだな?」

抑揚をつけず淡々と話すシルバーナイトに萎縮することもなく、アイスエイジは笑い飛ばした。

「どうだったかなぁ?最近、物覚えが悪くてね」

「…ふん」

アイスエイジの軽薄な態度に呆れながら、シルバーナイトは自分の後ろに控えていたクールキャットの所へ移動する。

「どうやら話すつもりはないようだ」

「みたいね。博士の方も空振りだったし」

二人はハワイで得た情報をもとに、アイスエイジと博士に尋問を行っているところだった。

得られた肝心の情報というのはある製薬会社が、例の配送会社に血液サンプルの輸送を依頼した、ということだった。

しかし肝心の血液サンプルは既に数日前に輸送済みであり、今からそれを差し押さえるのは法的にも難しいとのことだ。配送会社にしても護衛にヴィランを雇っていたことは、会計士および輸送責任者の独断ということにされ、本格的な調査を行うのも厳しい。

マーケティング部が秘密裏に調査を行っているが、しばらくは時間がかかりそうだ。

「ヘル・オーガを呼べば?前回は名前を出しただけで話したんでしょ」

「こっちに来るには時間がかかる。それに──」

するとシルバーナイトの携帯が鳴った。

「その電話、出たほうがいいと思うけどなぁ」

ニヤつきながら指を指すアイスエイジを一瞥すると、シルバーナイトは電話に出た。

「ああ、そうだ。…なに?」

シルバーナイトの眉がピクリと動く。

「本気で言っているのか?……ああ。ひとまずそちらに連れて行く。だが決めるのは話をよく聞いてからだ。ああ」

ため息をつきながら、シルバーナイトは携帯をポケットにしまう。クールキャットは話の内容を聞こうとしたが、アイスエイジを見る、彼の刃物のように冷たい眼差しがそれを躊躇わせた。

「だから言ったろ?」

口の端を上げながらアイスエイジが楽しそうに呟く。そんな彼を無視して、シルバーナイトは口を開いた。

「用事ができた、今からニューヨークの国連本部まで行く」

「そう。なら私はここで──」

「いや。君も一緒だ、それとアイスエイジと博士もな」
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/11/15(火) 21:30:46.51 ID:Wm2kcwQSo
──────

眼下に広がるは摩天楼。人類の進歩を体現するように上へ上へと伸びるビル群。それらの頂上には黒い影が落ちている。

世界戦隊連盟の空中機動戦艦のブリッジに居たクールキャットはぼんやりと外を眺ていた。

「どうかしましたか?」

声が聞こえた方を肩越しに見ると、スカイウィングが両手を後ろに組んで立っていた。

「……なにも」

彼女のつっけんどんな態度にもいよいよ慣れてきたスカイウィングは横まで来ると、一緒にニューヨークを見下ろした。

「たまに国連本部に来たときはいつも下から戦艦を眺める側だったんですけど、こうやって乗ってみるとすごい良い眺めですね」

ガラスのギリギリまで近づいて、手を双眼鏡のようにしながら外を見回す。

「でもビックリです。まさかこうして国連と世界戦隊連盟の会合に私達も参加するなんて」

そう呟いた彼女の肩は小さく震えていた。彼女の性格だ、この後ヒーロー界の大物と会うということで緊張しているのだろう。

「そうね。けど、私達の出る幕は恐らくない」

「どういうことですか?」

目を瞬かせながらスカイウィングが問いかける。

「今回の会合、シルバーナイトによればインナーサークルの連中も承認済みらしい」

インナーサークル──彼らは世界戦隊連盟の運営陣を支援する各界の有力者、つまり影の支配者だ。

「インナーサークルの手回しに加えて、国連の中央理事会じきじきの要請。ヒーロー業界の運営における最高権力者たちが決めたことに、今更シルバーナイトや私達の意見が通るとは思えない」

「そう言われると…そうですね。私も噂で今回のことは理事長のリエル・ロスチャイルドさんが提案したとかなんとか」

「リエル・ロスチャイルド…」

国連の中央理事会の理事長だ。彼女は大財閥ロスチャイルド家の首領でもあり、世界戦隊連盟に多額の出資をしているとの噂もある。それが事実なら今回の急な流れにも納得がいく。

「でも理事会はどうしてアイスエイジと博士の引き渡しを要請したんでしょうか?」

「私は知らないけど。国連に所属するあなたにも連絡はなかったの?」

「私は末端のぺーぺーヒーローなので……」

恥ずかしげに頭をポリポリとかきながら答える。

「けどそれならシルバーナイトさんがわざわざ私達も連れてきたのはどうしてでしょうか?」

「……」

その点についてはクールキャットも引っかかっていた。彼らを捕まえたとはいえたった3人の、ランキングトップ10に入っているわけでもないヒーローを連れていくことに意味があるとは思えない。だが、彼は意味のないことはしない。
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/11/15(火) 21:33:17.32 ID:Wm2kcwQSo
「ところで…」

押し黙ってしまったクールキャットを見て、話題を変えようとスカイウィングが口を開いた。

「赤崎くんと仲直りはしないんですか?」

「仲直り?」

虚を突かれたクールキャットの声が若干うわずる。

「あれ、えと、喧嘩したんじゃないんですか?」

「違う。ただ…ちょっとした行き違いがあっただけ」

それを聞いたスカイウィングは胸をなでおろす。

「なら良かったです。二人とも私の好きな人たちですから」

「…好き?」

「はい!私、クールキャットさんのこと、頼れる年上のお姉さんみたいに思ってて──」

するとクールキャットの少し驚いた表情を見たスカイウィングが目を伏せた。

「ご、ごめんなさい。私が一方的にそんな風な友達になれたらって思ってるだけで…」

「いえ。……別に嫌というわけではない。けど、レッドマーゾも同じように友人として好きということ?私はてっきり──」

すると突然スカイウィングがクールキャットの口を両手で押さえた。

「わ、わー!な、何のことですかー?」

クールキャットは顔を動かすことなく、赤面しているスカイウィングに目線を向ける。すると彼女はがっくりと項垂れると小さく呟いた。

「……はい、男の子として好きです……」

スカイウィングは勢い良く顔を上げると、クールキャットを真正面から見据えた。

「そ、そう言うクールキャットさんはどうなんですか?」

彼女はすぐに答えようとして口を開いたが言葉に詰まる。

「…分からない。友人とは少し違うし、好きというわけでもないと思う」

「じゃ、じゃあ何なんでしょう?」

「…今は答えられない。けど、いつかは答えを見つけられると思う」

自分に言い聞かせるようにそう呟いた。

─────

スカイウィングとしばらく話した後、会談までまだ少し時間があったのでクールキャットは艦内を見回ることにした。そうしていると、ある人物と顔を合わせた。

↓1
出会ったのは誰?登場済みのキャラ、もしくは既出のキャラ案からお願いします。ただスカイウィングはさっき話したので無しで。
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/15(火) 21:37:54.08 ID:1Lssai5/o
艦内に誰がいる設定なのか分からんが
>>57
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/11/15(火) 22:32:04.21 ID:Wm2kcwQSo
不破くんのヒーローネームはこっちで適当に決めました。ちなみに所属は世界戦隊連盟ということにしました。


クールキャットはアイスエイジ達の様子でも確認しようと監房エリアに向かった。するとアイスエイジ達の監房の前に見知った顔が一人いた。

黒髪で仏頂面、刀を手にした若者だ。右眉のあたりにある傷痕のせいで18という年齢の割に威圧的な印象を与える。

「シャドウソード、ここで何を?」

「クールキャット。見張りだ。この悪党たちが逃げないようにな」

シャドウソードのことだ、命令された訳でもないが、内から湧き出る使命感とやらに突き動かされているのだろう。

シャドウソードは見た目のせいで冷徹な人間という印象を与えがちだが、実際にはヴィランを捕まえ、人々を守る事に情熱を注ぐ熱い人間だ。

詳しい事情は知らないが、テロで父親以外の家族を失ったらしい。彼の性格はそれが影響しているのかもしれない。その後父親と共にウクライナに移り住んで、現地で出会った継母との関係も良いらしい。

「ご苦労なことで」

「万が一があってはいけないからな。それに…アンタが彼らを殺さないとも限らないだろう」

「──そう」

そんな性格をしているので、殺しを躊躇わないクールキャットのことを彼は警戒しているのである。軽蔑とまではいかないが、快くは思われていない。とはいえこんな態度は慣れたものだ。

そんな彼の仏頂面を見ていると、クールキャットはふとレッドマーゾの事を思い出した。

シャドウソードとレッドマーゾは少し似ている。例えばその情熱的な性格なんかがそうだ。けど思い返してみれば、レッドマーゾは殺しを行うクールキャットの事を否定はしなかった。

彼のように理解を示してくれるヒーローはそう多くない。そう考えると、彼は少しズレているのかもしれない。

そんなことを思いながら、クールキャットはふと気づいた。レッドマーゾに対する葛藤が和らいでいる。

(──捉え方次第…)

↓1
シャドウナイトと話したい事があればどうぞ。なしと書いていただければそのまま進みます。
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/15(火) 22:36:54.97 ID:UzyWe9DMo
なんとなく友人や恋人いるのか聞いた
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/11/15(火) 23:15:32.81 ID:Wm2kcwQSo
「ところでシャドウソード、あなた、友人や恋人はいる?」

突然の質問にシャドウソードは面食らった。といっても右眉がピクリと動いた程度だったが。

「これは…いったいどういう心境の変化だ?アンタはそういったものに興味はないと思っていたが」

「別に、なんとなく」

「なんとなく?それこそおかしいな。俺の知るアンタは“なんとなく”で動いたり話したりしないが」

「それは…」

その通りかもしれない。今までクールキャットがヒーローと会話をするのは事務的なもののみだった。他人のプライベートなどどうでもよい。

「──折り合いをつけるべき感情がある。その参考にしようと思っただけ」

シャドウソードは目を細めてクールキャットを見る。

「まあいいか。友人はいる。ヴィランを追ってブラジルに行ったとき、面白い少年と会った。ルシャっていう名前で、今でも時々連絡を取ってる。後は、キーウの柔道教室の連中とはよく話す」

「恋人は?」

「…いない」

少しの沈黙の後、シャドウソードが口を開く。

「今はヒーロー活動に専念したいからな」

そう告げた彼の言葉は、いつもより少し早口だった。

「満足か?」

「後ひとつ聞かせて」

シャドウソードは大きくため息をつくと、目線を送ってクールキャットに話すよう促した。

「あなたにとって友人はなに?」

真剣な表情で尋ねるクールキャットを見て、シャドウソードは目を瞑る。やがて目と口を開いた。

「友人は…そいつらと一緒にいると楽しくなれる相手だ、互いにな」

「楽しく……」

なら、やはりレッドマーゾは友人ではない。一緒にいて楽しいとは特段思わない。それならまだスカイウィングの方が当てはまる。彼女の姿は、性格も見た目も違うがどこか妹を思い出させるもので、共にいると微かに楽しいという気持ちが湧き出なくもない。

しかし、それならレッドマーゾの存在はいったい自分にとって何だろうか。

「おい?」

シャドウソードの呼びかけで、クールキャットはまぶたをゆっくり開けて我にかえる。

「なんでもない。参考になった」

「ならいいが。さて、俺も暇じゃないんだ。用が済んだらもう行け」

「ええ」

そう言って立ち去るクールキャットの背中をシャドウソードは見つめる。

「ったく、調子狂う態度だったな……。大体、年下に何聞いてんだよ…」

今日はここまで。
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/15(火) 23:18:22.10 ID:UzyWe9DMo
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/15(火) 23:24:03.48 ID:bdbww7gxo
乙乙
ゆったり待ってるから問題ない
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/16(水) 00:28:07.18 ID:1sC+MK/Z0
乙 
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/11/21(月) 22:09:44.77 ID:UV8ftYFFo
「通信室、ね」

そろそろ会合が始まるとのことで、クールキャットはシルバーナイトに通信室に来るように呼び出されていた。

彼女が近づくと、扉を守っていた警備員が道を空ける。薄暗い室内にはシルバーナイト、炎帝、ブラックがいた。

炎帝、ブラックどちらとも面識はないが二人のことはよく知っている。どちらも世界戦隊連盟に7人しかいない星5ヒーロの一員だ。

「来たか」

「この二人は?」

シルバーナイトは炎帝とブラックに目をやると、ため息まじりに呟く。

「勝手についてきた」

「勝手に?」

「ああ。この会合、できる限り関係者は減らしたかったが…この二人は諭すだけ無駄だろうな」

どうやらシルバーナイトの秘密主義はこの会合においても鳴りを潜めてはいないようだ。しかし何を警戒しているのだろうか?

すると真紅のドレスを纏った炎帝がクールキャットに詰め寄る。身長がかなり高い上に、ハイヒールを履いているのでクールキャットを見下ろす形になっている。

「こんなちんまいのが、アイスエイジと博士を捕らえたって?マジなのか?」

「ま、シルバーナイトさんが目を掛けてるだけはあるってことですね」

気づく間もなく背後に回ったブラックがクールキャットの肩に手を置く。19歳とは思えないほど黒スーツの似合う彼は、クールキャットの目を見ると微笑した。

「それで、なぜここに?」

「僕はただの野次馬です」

ブラックは笑顔を崩さないまま炎帝の横に移動すると、彼女を指差した。

「で、炎帝さんは──」

彼女はニヤリと笑うと、胸の前で右手を固く握った。

「国連の野郎に売られた喧嘩は買わないとな!」

真顔でふたりを見るクールキャットとは異なり、シルバーナイトの表情はどこかいつもよりぎこちなかった。

「今、少し話しただけでも分かっただろう?」

「ええ」

背後から炎帝とブラックの騒ぐ声が聞こえるが、無視して話を進める。

「ところでレッドマーゾとスカイウィングは?」

「彼らは国連所属だからな。ついてきてもらったが、会合には参加しない」

「ならどうしてふたりを?」

クールキャットの疑問に答えることなくしばらく黙ったかと思うと、シルバーナイトは目線を部屋の中央に向けた。

「……そろそろ会合が始まる」
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/11/21(月) 22:11:57.91 ID:UV8ftYFFo
すると薄暗い部屋が青白い光で満たされた。部屋の中央には国連の中央理事会の面々、そして理事長のリエル・ロスチャイルドがいた。

「ごきげんよう、みなさん」

リエルはただでさえ糸のように細い目を更に細めて微笑みながら礼をした。顔を上げて、後ろで一本にまとめた艶やなや髪を肩に垂らすと、続けて口を開く。

「世界戦隊連盟の星5ヒーローに3人も参加していただいて光栄です」

「そっちは理事会のみか…。ヒーローはいいのか?絶対皇女はともかく、てっきりジュエルブレイブあたりが来ると思ったが」

「それについては──」

「彼らなど必要ありません」

とある理事の言葉を、強い口調でリエルが遮る。遮られた理事は不満と苛立ちを思わせる表情で、リエルを横目に見ていた。

「そもそも今回の会合には、あなた達も含めてヒーローなど不要なのです。既に決まったことなのですから」

その言葉を聞いて、炎帝とブラックが笑みを浮かべる。もっとも炎帝は挑発的な、一方ブラックは心底楽しそうな笑み、という違いはあったが。

「決まっているからと言って、話を聞かない理由にはならない」

冷静なシルバーナイトに続いて、炎帝が輝くブロンドの髪を揺らしながら口を開く。

「そうだ!なんならそっちに行って無理に話を聞かせてもイイんだぜ?」

「そんな事をすればインナーサークルの方々が黙っていないでしょう。除籍処分が下されますよ?」

余裕綽々、笑みを崩すことなくリエルが答える。

「ハッ、上等だ!アタイは別にアイツらに認められたくてヒーローやってるわけじゃないんでね!」

鼻息荒くまくし立てる炎帝をシルバーナイトが片手で制止する。

「炎帝、ここは抑えろ」

「僕も、シルバーナイトさんの言う事に従ったほうがいいと思いますよ」

炎帝は二人を交互に見ると大人しく下がった。

「それで、アイスエイジと博士を連行する理由はお聞かせいただけるのかな?」

「勿論です。彼らは国連の機密情報を握っている可能性があります。それ故、彼らは私たちで拘束させていただきます」

「機密情報……?」

シルバーナイトは黙ってしまうと、考え込み始めた。

「ようはそっちの落ち度だろ?なんでアタイたちが──」

「まあまあ」

ブラックが炎帝の口を押さえる。彼女は手を無理に引き剥がそうとするが、ブラックは意にも介していないようだ。

クールキャットが周囲の様子を眺めていると、ふとリエルと目があった。

「クールキャットさん、あなたはずっと黙っていますが何も言いたいことはないのですか?」

相変わらず笑顔のままリエルが問いかけてくる。

↓1
リエルに何か聞きたいことor言いたいこと
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/21(月) 23:06:10.10 ID:cRYttcgro
アイスエイジと博士の処遇について
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/21(月) 23:13:35.88 ID:olprkfnCo
なぜこんな秘匿の会合に自分たち末端も呼んだのか
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/11/21(月) 23:36:52.12 ID:WZQfLHNEo
ちょっとだけですが今日はここまで。
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/21(月) 23:45:20.21 ID:uxvcFX73o
おつ
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/11/21(月) 23:48:07.80 ID:olprkfnCo
乙乙
続き待ってる
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/12/02(金) 19:47:00.56 ID:RHGLFZLGo
「二人の処遇はどうするつもり?」

クールキャットの言葉を聞いたリエルは軽く首を傾げた。

「そんなこと聞いてどうなさるおつもりですか?」

「理由が必要?」

「──いえ」

リエルがクールキャットを凝視する。彼女の微かに見える瞳はどこか虚ろで、自分ではない誰かを見ているかのようだった。

「では教えて差し上げましょう。まずは両名から“じっくり”とお話を聞かせていただきます。その後は彼ら次第。我々に協力するか、残る一生を日の届かない暗闇で過ごすか…。納得頂けました?」

リエルは顔の正面辺りで両手を合わせると、クールキャットに向かって微笑んだ。

「わかった」

クールキャットの返事を確認すると、リエルは咳払いをして注目を集める。

「それでは──」

その後は国連側から二人の引き渡しの予定についての説明など、実務的な話が続いた。

やがて話も纏まり──といっても世界戦隊連盟は殆ど話を聞いていただけだが──リエルが会合の終了を宣言した。

ホログラムが消えると、通信室の照明が点いた。暗闇に目が慣れていたせいで少し目眩がする。

「そんで、どうすんだ、シルバーナイトのダンナ。殴り込みに行ってもいいぜ?」

会合の中身がつまらなかったのか、ぶっきらぼうに炎帝が呟いた。彼女の横ではブラックが退屈そうにアクビをしている。彼の興味をひいたのは会合の前半部分のみだったようだ。

「…やめておいたほうがいい」

シルバーナイトの様子を見て炎帝があからさまに溜息をつく。

「ビビってんのか?随分腑抜けになったんだな」

「どうとでも言え。だが、まだ終わりではない」

「あぁ?それってどういう……。ま、イイや。ダンナがそう言うならなんかあんだろ。それを楽しみに待つとするよ」

すると炎帝の視線がシルバーナイトからクールキャットに移った。

「そういやちんまいのは絶対皇女と同じウクライナに居るんだったな。なら伝えといてくれ」

「いいけど、何を?」

「バーカってな!」

そう言いながらはにかんだ彼女は、まるでイタズラを楽しむ子供のようだった。大人っぽいドレス姿にはとても不釣り合いな笑顔なのに、それがどこか独特の魅力を生んでいる。

炎帝が通信室を後にしたのを見て、ブラックもそれに続こうとする。

「それじゃあ、僕もここらへんで失礼しますね〜」

ブラックは大きなアクビをしながら通信室を出ていった。

「…?」

「どうした?」

「……何も」

シルバーナイトに目を向けることなく呟く。

(部屋を出る瞬間、ブラックが笑っていた?)

それも今までに見た笑顔とは少し違ったような気がした。
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/12/02(金) 19:50:02.36 ID:RHGLFZLGo
─────

通信室を出たクールキャットは割り当てられた艦内の自室で考え事に耽っていた。

リエルの話によれば──すべてを信じるならば、だが──博士とアイスエイジは国連に関する何らかの情報を握っている事になる。

状況を整理しよう。そもそもアイスエイジを捕らえることになったのはシルバーナイトに協力してもらうためだった。アイスエイジは世界各地を転々としていたようだが、数ヶ月前にウクライナにやってきて何かをしていた。そして丁度レッドマーゾがウクライナを訪れたのと同時期に日本へ訪れ、銃器を密輸した。
素直に考えるなら日本同様、各地で銃器を密売していたのだろう。しかし問題は2つある。1つは、アルティメット・ワンは何の為にそれを指示したのか、だ。活動資金の為、というのがもっともらしいが……。2つ目は銃器の密輸、その過程で果たして国連の機密情報を知る機会があるのか、ということだ。仮にあるとすれば銃器、あるいは何らかの密輸に国連が何らかの関わりを持っている、だろうか?

博士の方はというと、ダイヤモンドダストを捕まえる為にZATO52に行った際に偶然捕らえた。彼は研究の自由と引き換えに、アルティメット・ワンの為にヒーロー遺伝子を人為的に活性化させるための薬を製作している。
研究優先の性格からして出歩くことはそうないはずだ。だとすると国連の情報を得る機会は限られる。推測に過ぎないが、アメリカの学会に所属していた頃に何らかの接触があったのかもしれない。

色々考えてはみたが、やはりどうも二人と国連をつなぐ線どころか、点すらも怪しい。シルバーナイトの警戒もここにあるのだろうか?

少し頭を落ち着かせようとロシアンティーを淹れようとしたその時、強い揺れでティーポットが倒れた。

「っ!!」

すぐさま身をかがめると同時に、入り口の方に視線を移す。

揺れは一度で収まった。

「乱気流…?」

だが部屋の外から聞こえてくる騒ぎを聞くに、そうではなさそうだ。

警戒しながら外に出ると、黒ずくめの武装した二人組に出くわした。

「くそっ、予定より早いが仕方ない!」

そう吐き捨てると二人は自らの首筋に青い液体が入った注射を射した。

(あれは博士の薬……)

手に持ったサブマシンガンを使うことなくクールキャット目掛けて蹴りを放つ。しかし側転をして避けた彼女に当たることはなく、蹴りはドアに当たった。

(速い…)

素早くドアの方に視線を移すと大きなへこみができている。

(薬でパワーとスピードが増してる…)

↓1反転コンマ
81~ 戦局有利(次の判定緩和)
41~80 戦局有利
31~40 膠着
11~30 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/12/02(金) 19:51:34.72 ID:xkG470uto
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/12/02(金) 20:04:57.48 ID:RHGLFZLGo
蹴りを放った巨躯の男はその大きさとは不釣り合いな速さでパンチを2発繰り出してくる。顔面を狙った拳を軽く躱したクールキャットは男の次の動きを確認しようと視線を移す。

再び拳を振るう素振りを見せた男だったが、突然しゃがみこむとその背後からもう一人の男がナイフを投げてきた。

「っ……」

回避はあと少しのところで間に合わず、神経は逸れたようだが肩から血が流れている。

↓1反転コンマ
81~ 戦局有利(次の判定緩和)
41~80 戦局有利
31~40 膠着
11~30 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/12/02(金) 20:05:45.15 ID:taBlsnpj0
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/12/02(金) 20:18:15.38 ID:RHGLFZLGo
肩に刺さったナイフの柄を握るクールキャットに、巨漢がじりじりと近づいてくる。

(フェイント…それとも……ならこっちから!)

刺さったナイフを引き抜くと目前の男に投げる。クールキャットの血をまき散らしながら飛んでいくナイフは前の男にも後ろの男にも当たることはなかった。回避の動作で反応が遅れた巨漢の側面に蹴りを入れる。

「ぐっ…」

うめき声を上げながらも蹴りを受け止めた男がニヤつく。

(本命はあなたじゃない…)

クールキャットの蹴りで態勢が崩れた男の肩越しに銀色に光るナイフが見えた。

それを投げ飛ばそうと腕を振り上げた男は小さなうめき声をあげたかと思うと、うつ伏せに倒れた。彼の背中には氷の弾丸による傷跡が見えた。

「クソッ!」

前にいた男は振り返ることなく悪態をついた。

↓1反転コンマ
81~ 戦局有利(次の判定緩和)
41~80 戦局有利
31~40 膠着
11~30 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/12/02(金) 20:18:23.85 ID:k5lJP+CUo
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/12/02(金) 20:29:31.54 ID:RHGLFZLGo
相手が一人なら後は楽だ。右足に氷の弾丸を撃ち込むと、男はそのまま片膝をついて崩れ落ちる。

そのまま回し蹴りを頭に当てると、男は黒目をぐるりと1回転させたかと思うと、白目をむいてしゃがみこんだ姿勢のまま気絶した。

クールキャットはハンカチを取り出して肩の止血を行うと男たちの服を探る。

(身分証はなし…。博士の薬を使っていたことから考えると、おそらくはアルティメット・ワン…)

しかしどのようにして世界戦隊連盟の戦艦に入り込んだのだろうか?

(なんであれ状況を把握しないと。シルバーナイトはおそらくは船首にいる。スカイウィングとレッドマーゾは…分からない。それとも監房の様子を見に行くべき?)

↓1
1:シルバーナイトのもとへ行く
2:監房へ行く
3:その他(自由安価)
411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/12/02(金) 20:30:44.47 ID:4C+7UInFo
2
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/12/02(金) 20:51:14.49 ID:RHGLFZLGo
(シルバーナイトは星5ヒーロー。それに艦首には他にも警備部隊がいる。それよりも監房に行くべき。もし他にもさっきの連中が居るとしたら、普通の人間では分が悪い。シャドウソードが持ちこたえてるといいけど…)

即座に呼吸を整えるとクールキャットは船尾の監房エリアを目指して駆け出した。

艦内には警報を知らせるサイレンが鳴り響いているが、今の所誰にも遭遇していない。が、時折叫び声や争うような音が聞こえてくるので侵入者は他にもいるようだ。

地上の国連本部も襲撃を受けているのだろうか?そんな事を考えながら走っていると監房エリアまであともう少しだ。通路の角を曲がると廊下は襲撃の影響か、照明が点滅していた。

光と闇の世界に交互に移り変わる廊下を駆けながら、クールキャットはある異変に気づいた。廊下の壁に爪痕のような傷が多数残っている。

「っ…」

思わず足を止めたのは、暗闇の先に異様な気配を感じたからだ。吸い込まれそうな闇の中、2つの光がゆらりと動く。ゆっくりと姿を現したのは獅子の頭と胴体、竜の翼、尻尾の代わりに蛇がついた異形だった。

クールキャットを認めると、その異形は口に加えていた警備員の上半身を投げ捨て、咆哮する。

↓1反転コンマ
86~ 戦局有利(次の判定緩和)
56~85 戦局有利
36~55 膠着
11~35 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/12/02(金) 20:54:43.68 ID:VuT01yWoo
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/12/02(金) 20:54:44.48 ID:lJ/q6lHDO
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/12/02(金) 21:10:40.20 ID:RHGLFZLGo
その異様な姿に僅かに怯んだクールキャットだったが、人ではない化け物相手に容赦する必要はないことに気づいた。素早く氷の弾丸を化け物に浴びせる。

異形は身を守るように翼を広げる。爬虫類の体表のような見た目に反して、鋭い金属音のような音と共に弾は弾かれた。

(なるほど…)

翼で身を守ったと言う事は、おそらく獅子の胴体はそこまで打たれ強くはないのだろう。翼が防げるのは正面のみ、ならば側面から弾を浴びせればいいだけのこと。

予期せぬ方向からの攻撃に、獅子の頭は耳をつんざくような雄叫びを上げた。

↓1反転コンマ
46~ 戦局有利
31~45 膠着
01~30 戦局不利
416 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/12/02(金) 21:14:08.08 ID:4C+7UInFo
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/12/02(金) 21:18:48.85 ID:RHGLFZLGo
異形もこのままでは命が危ういと感じたのか素早い動きで爪を振るう。

しかしもとから離れていた位置にクールキャットが居たことに加え、痛みで動きが若干鈍っているようで、それを回避するのは余裕だった。

その間も変わらず氷の弾は獅子の胴体を傷つけ続ける。

↓1反転コンマ
86~ 戦局有利(次の判定緩和)
56~85 戦局有利
36~55 膠着
11~35 戦局不利
01~10 戦局不利(次の判定悪化)
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