久川颯「7人が行く・EX4・天上の調」

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1 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:08:14.31 ID:LpKpQWny0
あらすじ
正体の不明の音楽プロデューサー、その目的はいかに。

前話
辻野あかり「7人が行く・EX3・出郷りんご」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1629804897/


7人が行くシリーズの後日譚、その4。
設定はドラマ内のものです。

それでは投下していきます


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1666519693
2 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:10:15.65 ID:LpKpQWny0
メインキャスト

久川颯

望月聖

SDsメンバー
1・久川凪
2・白雪千夜
3・江上椿
4・夢見りあむ
5・日下部若葉
6・辻野あかり
7・砂塚あきら

クラリス
柳瀬美由紀
関裕美
速水奏
松永涼
依田芳乃
黒埼ちとせ
佐藤心

西川保奈美

川島瑞樹
アナスタシア
沢田麻理菜
棟方愛海
櫻井桃華
篠原礼
兵藤レナ
ヘレン
八神マキノ

西園寺琴歌

南条光

松山久美子
伊集院惠
太田優
財前時子

姫川友紀
3 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:11:30.79 ID:LpKpQWny0
・Hetero

接頭辞:異なったの意
例語:Heterojunction、Heterodox、Heterochromia、など
4 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:12:25.16 ID:LpKpQWny0


とある10月の日曜日

夕方

S大学・部室棟・SDs部室

SDs部室
夢見りあむが代表のサークル、SDsの部室。最近、勉強用の机が増えた。

辻野あかり「はいっ、わかりません!りあむさん、困ってるJKを助けるんご!」

辻野あかり
SDsメンバー。ただいま、お勉強中。歌はたまにカラオケに行くくらいで、音楽の成績も普通らしい。

夢見りあむ「……」

夢見りあむ
SDsの代表。こちらもお勉強中。地下アイドルなどニッチな方向に偏っていると思いきや、家族の影響で音楽の知識は広いらしい。

あかり「りあむさん?もしもーし、数学で聞きたいことがあるんご」

りあむ「うわーん、やっと終わった!なんで大学受験もとうに終わったのに、日曜のこんな時間にレポートを書いてるんだよぅ!んで、あかりんご、何か言った?」

あかり「りあむさんは立派です。数学で聞きたいことがあって」

りあむ「ぼくは終わったからね!いいよ!うんうん、これはこうだな!」

あかり「おー、りあむさんもちゃんと女子大生でした。普通の髪色のりあむさんも見慣れてきました」

りあむ「残念だけど女子大生以外の何者でもないぞ!実習の準備とレポートに追われる看護の学生!担当の患者さんまでいる!自分で言うのも何だけど、この事実がとんでもないな!」

あかり「りあむさん、最近元気ですね」

りあむ「そうかぁ?1年でこれだと2年以降はどうなるんだよぅ……ゆううつだ。リーダーちゃんにも迷惑を更にかけるぞ……」

あかり「リーダーちゃん?」

りあむ「実習はグループなんだよ。リーダーちゃんはりあむちゃん係のコミュ強ちゃんだよ。同い年とは思えない器のデカさ、どうせ負けるなら頼ってやる!」

あかり「そうなんですかー」

りあむ「何、その表情?ハムスターでも見るような」

砂塚あきら「慈愛の笑みデスね。りあむサン、大学で上手くやってるじゃないデスか」

砂塚あきら
SDsのメンバー。音楽はネットで配信してるのを聞いてますよ、とのこと。
5 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:14:55.86 ID:LpKpQWny0
りあむ「そんなわけないだろ!りあむちゃんのメンタルはいつもボロボロだよ!もっと患者のおばあちゃんにも色々できるはずなのに!むしろ、そのおばあちゃんにぼくが励まされてさ!りあむちゃんはりあむちゃんが情けないよ!」

あきら「りあむサンは、今はりあむサンなんて仕方ないデス」

あかり「少しずつ努力しましょう。りあむさんなら立派な白衣の天使になれるんご」

あきら「2人ともお疲れ様。でも、そろそろ時間」

りあむ「時間!時子サマがお訪ねになられる!はようはよう!」

あきら「何デスか、その言葉遣い。それに財前サンだけじゃないから」

りあむ「あかりんごも勉強は辞め!というか、S大学付属で真ん中なら、そこそこいいとこ行けるから安心だよ!さぁ、時子サマをお迎えするぞ!」

あかり「そうします。あきらちゃん、何をしましょうか」

あきら「とりあえずテーブルを綺麗にして、後は千夜サンに聞こう」

りあむ「白雪ちゃん、料理の準備は終わったの?」

あきら「そっちは大丈夫、千夜サンだし」

りあむ「ウワサをすれば白雪ちゃん!」

白雪千夜「ご心配はいりません。幾つかはテイクアウトで準備しましたから」

白雪千夜
SDsメンバー。音楽は聴きません、と本人談。あの子は楽しそうに歌うしとっても上手なんだよ、らしい。
6 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:16:31.28 ID:LpKpQWny0
あかり「ち、ち、ち、千夜さん……?」

りあむ「お疲れ様!手段は何でもコース料理を準備できるのは凄すぎるよ!」

千夜「お前に褒められても。財前さんの頼みですから、出来る限りは」

りあむ「まずは参考書を片付けないと。多いんだよ!ノートも信じられないくらい増えてくし!今時ノート提出とかあるんだよ!病院だから電子機器頼みできない文化なのは理解してるけどさ!最近は電波で狂わないのも知ってるからな!」

千夜「砂塚さん、食器を運んでください」

あかり「千夜さん!質問があるんご!」

千夜「辻野さんは、何か?」

あかり「そ、その恰好は何ですか?」

千夜「これは、給仕服です」

あきら「いわゆるメイド服。#エプロン付き」

りあむ「食事会があるから椿さんが用意してくれたよ!まずは形からだからね!椿さんのそういうところはキライじゃない!」

あきら「シックな感じで千夜サンによく似合ってる。コスプレ感も少ないし」

あかり「んごご〜、めんごすぎるんご!どうして2人ともそんな冷静なんですかっ!こんなカワイイものを見て!」

りあむ「だって、白雪ちゃんはいつだってカワイイだろ?それに、なんかいつもメイド服着てるような気もするし」

あきら「あー、メイド服感。#わかる」

あかり「はぁ〜、このありがたさをわかってないんご。華奢な女の子のメイド服姿はこんなに素晴らしいなんて……抱きしめたくなるのが当然ですっ」

千夜「衛生的ではないので抱き付くのはお辞めください。これからお客様も来ますので」

りあむ「うおぉ、メイドツッコミだ!ほら、白雪ちゃんは心にメイド服を着てるんだよ!」

あきら「メイドツッコミは#わからない。りあむサンもあかりも何言ってるんデスか」

あかり「はっ、正気を失ってました。あまりの可憐さに」

あきら「正気を失ってたんデスか……」

あかり「お触りは厳禁ですよね。脳に高画質で刻み付けないとっ」

あきら「これは戻ってない」

久川凪「千夜さん、凪の台所作業が終わりました」

久川凪
SDsメンバー。凪のマイクパフォーマンスは家族にも評判です、らしい。
7 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:17:36.09 ID:LpKpQWny0
千夜「ありがとうございます」

あかり「凪ちゃんは猫のエプロン、カワイイですね」

凪「はい。雑貨屋にてお小遣い残高を少なくしました。しかしながら、はーちゃんにも大好評なので良しとする」

あきら「千夜サンとの対応が大分違う」

りあむ「別カテゴリなんだよ、あかりんごの中では。ほら、神と天使は違うじゃん?」

あきら「いや、その例えはわからないから」

あかり「制服にエプロンの千夜さんもいいですけど、やっぱりメイド服ですね……んごんご」

りあむ「単に白雪ちゃん愛好家なだけか?ちとせとりあむちゃんに勝てると思うなよ!最初はナンバー3以降!」

凪「ここは凪もナンバー2を争いたいところですが、時間だと凪は思います」

あきら「うん。りあむサンもあかりも、集中して」

千夜「食器を並べたら段取りを説明します」

りあむ「わかった!あかりんご、手を洗って準備しよう!」

あかり「はっ!もしかして私達もメイド服を着るんですか!?」

あきら「違う。凪チャンも着てないし」

千夜「辻野さんも食事は楽しんでください。給仕は私がやりますので」
8 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:18:54.83 ID:LpKpQWny0


S大学・部室棟・SDs部室

りあむ「白雪ちゃん、テーブルはこれでいいかな!?りあむちゃんの記憶はうろ覚え過ぎて役に立たない!」

千夜「はい。問題ありません」

あかり「レストランで見る布もあるんご。これはどうしたんですか?」

あきら「黒埼家から借りて来た。食器も」

千夜「凪さん、メニューは」

凪「書けました。百円均一ショップで買ってきたミニ黒板、オシャレは工夫です」

りあむ「どこがいいかな?テーブル?」

あきら「テーブルかな、小さいから乗る」

千夜「ウェルカムカードを置きます。辻野さん、この紙の通りに置いてください」

あかり「わかりましたっ」

凪「凪が半分やります」

千夜「どうぞ」

あかり「時子様、望月聖ちゃんでしたっけ、颯ちゃんに、ん!?」

あきら「椿サンと若葉お姉サンはいないんデスか?」

りあむ「椿さんはバイトらしいよ。若葉お姉さんは卒論のフィールドワークがあるから今日から泊まり込みだって。椿さんからはカメラは預かってるよ!白雪ちゃんの写真は既に撮り始めた!」

あきら「あかり、カード眺めてどうしたの?名前しか書いてないと思うけど」

あかり「松山久美子さんが来るんですか?」

千夜「はい、私もお会いするのは今日が初めてですが。お知り合いでしたか?」

あかり「一方的に知ってるだけです。時子様の同級生の中でも一番の美人さんなんです、楽しみですっ」

凪「文化祭のホームページに記載があります。S大学1年生時にミスS大学。凪調べ」

千夜「そうだったのですね。知りませんでした」

あかり「でも、一番の推しは千夜さんです。心配しないでくださいっ」

あきら「また変な言葉を覚えて……りあむサンのせいデスよ」

りあむ「ええっ、ぼくぅ!?あかりんごには教えてない!たぶん!」

あかり「あっ、でも……」

あきら「あかりは、どうしてこっち見てるの?」

あかり「千夜さん、ごめんなさい!やっぱり1番はあきらちゃんにするんご!」

あきら「え?そういうのは……この流れで腕組んでくるのも恥ずかしいから……」

あかり「えへへ♪あきらちゃんは最初の友達で恩人ですからっ」

りあむ「え?もしかして、2人はぼくを尊死させようとしてんの?白雪ちゃん、どう思う!?」

千夜「お前の言葉は理解しかねる」

コンコン!
9 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:19:35.47 ID:LpKpQWny0
あかり「ノックの音がしました」

りあむ「約束の時間にはまだ早くない?誰か早めに来たのか?」

あかり「お出迎えするんご。はーい、ただいま!」

あきら「……意外とあっさり離れて行った」

りあむ「せっかくだから白雪ちゃんにお出迎えしてもらえばいいのに!ね、凪ちゃんもそう思うでしょ?」

凪「それは同感です。そして、何か聞こえました」

あきら「千夜サンのメイド服見た時と同じような声」

千夜「ということは、松山さんでしょうか」

あかり「みなさん、松山さんがいらっしゃいましたっ」

松山久美子「ごめんなさい、早かったけどいい?」

松山久美子
時子の同級生で同じサークルの一員だった。母はピアノ教師、自身もピアノが得意。

千夜「かまいません。お席へどうぞ」

あかり「あきらちゃん、あきらちゃん……」

あきら「何かあった?」

あかり「実物は写真よりも美人でした……都会は凄いんご」

あきら「あかり、そんなキャラでいいの?」

千夜「いましばらくお待ちください。辻野さん、松山さんの話し相手はいかがでしょうか」

あかり「喜んでお話しさせていただきますっ」
10 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:20:37.54 ID:LpKpQWny0


S大学・部室棟・SDs部室

千夜「お待ちしていました、財前さん」

財前時子「……形から入るタイプなのね、貴方」

財前時子
S大学の職員。綺麗な声で歌えるのよ、とのこと。本日は何やらボトルを持参。

千夜「私ではなく江上さんです」

時子「江上椿は相変わらずね。他は揃っているのかしら」

千夜「はい。望月聖さんもいらっしゃいました」

時子「そう。いつまでも心配しているわけにはいかないもの、安心したわ」

千夜「そのお荷物はお預かりしましょうか」

時子「シャンメリーよ。未成年に出してあげなさい」

千夜「お気遣いありがとうございます。お嬢さまからワインをいただきましたので、財前さんと松山さんにはそちらを」

時子「受け取っておくわ」

千夜「こちらにどうぞ」

りあむ「時子サマ!待ってたよ!その服、似合い過ぎてる!」

時子「静かになさい」

りあむ「あっ、はい」

久美子「時子ちゃん、久しぶりー」

時子「先週会ったばっかりでしょうに」

久美子「ちゃんと正装してるのね。私もした方が良かった?」

時子「今日は構わないわ。久美子にも近いうちにしてもらうことになるかもしれないわ」

久美子「えっ?」

時子「飲み物だけ準備してちょうだい」

千夜「わかりました。凪さん、お手伝いください」

凪「りょ……おっと失礼、わかりました」

時子「紹介と説明をするわ。夢見りあむ」

りあむ「なに?時子サマ、何でも言ってよ!」

時子「戸締りとカーテンはしっかりとなさい」
11 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:21:21.81 ID:LpKpQWny0


S大学・部室棟・SDs部室

りあむ「何これ、旨いぞ!」

あかり「美味しいんご……」

あきら「子供の飲み物だと思ってたのに」

時子「貴方達も座りなさい」

凪「はい。遠慮はしません。シャンメリーもいただく」

千夜「お言葉に甘えます」

時子「紹介するわ。久美子は、いいかしら」

久美子「ええ。時子ちゃんが来る前に話したもの」

時子「この通りの姿よ。協力してもらうわ」

あかり「美人だから出来ることがあるんでしょうか?」

あきら「それはわからない」

久美子「やっぱり頼みごとがあるのね……」

凪「時子様、なーちゃんはご存知ですか」

時子「ええ。聖と先に会ってるわ」

久川颯「えっと、どう挨拶すればいいのかな?」

久川颯
久川凪の双子の妹。カラオケで楽しそうに歌う姿はまさに久川家のアイドルです、らしい。
12 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:22:03.89 ID:LpKpQWny0
時子「気張らなくて平気よ。久美子以外は知ってるわね」

凪「もち」

時子「『捕食者』のことも」

あきら「うん」

あかり「久美子さんは知ってる……んですか?」

久美子「時子ちゃんから事前に聞いてるわ。楓さんも知ってるし、顛末も聞いた」

時子「それと、もう1人。夢見りあむはこの子と会ってるわね」

りあむ「うん。確か、病院で会ったよ」

時子「聖、挨拶なさい」

望月聖「うん……望月聖、です……こんばんは」

望月聖
赤い瞳、金髪、白い肌と幻想めいた出で立ちの少女。歌は、時子との約束らしい。

あかり「えっと」

時子「辻野あかり、聞きたいことでもあるかしら」

あかり「颯ちゃんの秘密も話してるし、もしかして、あちら側なんですか」

時子「今はそうよ」

あかり「やっぱり。こんな神秘的な美少女が人間なわけないんご」

時子「聖の風貌は生まれつきよ」

あきら「その言い方だと、人間から変わったの?」

時子「違うわ。久川颯、わかるかしら」

颯「うん。わかるよ。深く、なんだか、別の所から顔を出してるみたい」

聖「そう……まだ、つながってる……」

久美子「前みたいなことにはならなそう?」

聖「うん……ほとんど聞こえないから……」

時子「聖にも協力してもらうわ。今回は教会も既に動いている」

あきら「りあむサン、そうなんデスか?」

りあむ「ぼくも詳しくは聞いてない」

時子「慌てないでいいわ、今から話すもの」

千夜「コース料理を準備した理由も聞いておりませんので」

時子「聖もいるから一言自己紹介してちょうだい。貴方から」
13 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:23:03.31 ID:LpKpQWny0
あかり「わかりましたっ。辻野あかり、山形出身の高校1年生です!実家のリンゴ農園をハーピーに荒らされちゃったから復活させるためにお勉強してるんご」

聖「ハーピー……気になる」

あかり「後でお話するんご、次はあきらちゃんです」

あきら「砂塚あきら、よろしくデス。あかりと同じクラス、何か特殊なことはないかな。次、どうぞ」

凪「凪は久川凪です。はーちゃんの姉です。どうやら霊感はないようです。おわり」

りあむ「夢見りあむ!S大学の1年生!看護学科!」

聖「ナースさんになるの……?」

りあむ「え?え、えっと、なりたい……んだと思う」

あきら「そこは自信持っていえばいいのに」

りあむ「それと、何か知らんけどこの集まりの代表やってる!次は、白雪ちゃん!」

千夜「白雪千夜です」

りあむ「それだけ!?もっとアピールしなよ!」

千夜「特にありません。望月さん、何かあったらお声がけください」

聖「メイドさん……カワイイ……」

りあむ「気に入ってるみたいだから、いいか!」

千夜「財前さん、本題に入りますか」

時子「ええ。聞いてちょうだい」
14 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:25:11.74 ID:LpKpQWny0


S大学・部室棟・SDs部室

あかり「えっと?」

りあむ「『チアー』の力で儲けてる奴がいる、違うな、いるかも!」

千夜「『チアー』は誰かわかっていません」

あきら「目的も。能力は……どうかな」

凪「凪達は見ました。蝶々の集まりへと変貌した人物を」

颯「……うん」

りあむ「それより先に、筋力が上がるだけのも見た!」

久美子「つまり、『チアー』の能力はどれくらいかわからないのね」

聖「そう……シスターも言ってた……」

りあむ「歌が上手くなるだけかも!」

あかり「変身させるより、音楽の才能を目覚めさせる方が簡単ですよねっ」

あきら「問題は」

久美子「全然手掛かりがないってこと?」

千夜「だから、動き始めた」

時子「浮かび上がった人物が『チアー』である確証はない」

りあむ「うーん、仕方がない!わからないものはわからない!」

あかり「『チアー』かもしれないのが、その音楽プロデューサーさんなんですね」

あきら「うん」

久美子「名前は聞いたことはあるかな」

聖「人前に姿を見せないんだって……」

あきら「名前は『庵野雲』、なんて正しく読むんだろ?」

りあむ「読み方はあんの、うん。だけど、どう考えてもアンノウンが由来だろ!安直が過ぎるぞ!」

あかり「自分で謎だ、って名乗る人をドラマ以外で初めて聞いたんご」

凪「フムン。つまり、『チアー』も音楽プロデューサーも正体不明と」

千夜「疑いを持つには十分です」

時子「そんな音楽プロデューサーが企画を立てたわ」

颯「新たな才能をお披露目するため、って」

あきら「それが、強化合宿を兼ねたオーディション」

あかり「場所は、M市民文化会館?」

りあむ「歩いてすぐそこじゃん!めちゃちかだよ!」

凪「張り込むのは簡単です」

千夜「目の前に図書館もあります」

凪「何人かでやれば怪しまれることも少ないと考えます」

時子「ええ、だから協力してもらうわ」

りあむ「それなら出来るよ!時子サマのためがんばるぞ!」

凪「おー」
15 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:27:02.03 ID:LpKpQWny0
あきら「こっちは外側から」

あかり「内側からは颯ちゃんと聖ちゃんが探るんですねっ」

時子「ええ。『チアー』の影がつかめていないこの状況、協力をお願いするわ」

久美子「うーん、私もそう思うけど……時子ちゃん?」

時子「何かしら」

久美子「それだけじゃないでしょ?」

凪「それだけではない、とは?」

久美子「確証が持てないわりには、事が大きすぎるわ。時子ちゃんらしくない」

りあむ「確かに、颯ちゃんに聖ちゃんを送り込んでるのは大がかり過ぎるか?時子サマだからそれくらいやると思ってた!」

久美子「時子ちゃんもただの大学職員で、教会とは違うもの。どうなの?」

聖「時子……言ってもいいよ」

時子「わかったわ。そもそも、教会にこの件を紹介したのは私よ」

颯「そうなんだ」

時子「芸能事務所と伝手があるのは知ってるわね」

久美子「恵磨ちゃんのポスターが貼ってあるから、わかりやすいわね。見やすいところにありがとう」

凪「どういたしまして」

千夜「それならば何故この件を知っていたのか、というところも気になるところです」

りあむ「時子サマがアンノウン音楽プロデューサーのことを知ってて、何かオーディションがあることも先に知ってた理由?」

あきら「偶然調べてた、とか」

時子「もっと簡単よ」

颯「時子さんがアンノウン音楽プロデューサーとか」

時子「それは大胆すぎる仮説ね、違うわ。発想力は褒めるわ、大切になさい」

あかり「ずっと調べてた、かな?」

凪「何度も調べるのは大変です」

りあむ「時子サマも暇じゃないもんね!いつもありがとう!りあむちゃんみたいな面倒な学生を助けてくれて!」

千夜「常に情報が入るようにしていた」

聖「……」

凪「聖さんの顔を眺めて凪は閃きました」

久美子「凪ちゃん、教えてくれるかしら?」

凪「時子様は伝手を使って情報を収集していました。それは何のためか、歌の才能を示す場を与えるため」

聖「……そう、あってる」
16 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:28:20.56 ID:LpKpQWny0
凪「凪もはーちゃんが気にしていることを調べたりしていました。いわゆる先読みです」

颯「なー、そうだったの?」

凪「その話はおいおいです」

久美子「本当に聖ちゃんには甘いのね」

時子「久美子はその理由は知っているでしょう」

久美子「クリスマスのことはよく知ってる」

りあむ「クリスマス?何の話?」

時子「サンタクロースに会うことがあったら聞きなさい」

あかり「サンタクロースに会う?サンタってホンモノがいるんですか?」

時子「聖と約束していたの、雪が降るクリスマスに」

聖「ステージから歌うのを時子に聞かせる……って」 

時子「それは私の希望でもあるわ」

聖「退院する前から……時子は教えてくれた」

時子「久川凪、正解よ」

凪「やりました。メモリー獲得間違いなし」

時子「聖の舞台を探していたわ。端役とはいえステップアップには相応しい」

りあむ「でも、気づいちゃった。最近の変なことにつながるような!」

時子「ええ。杞憂ならば良いのだけれど」

久美子「聖ちゃんは期待通りにオーディションは通った」

凪「なるほど、不安になったのですか。分かりますよ、その気持ち」

時子「急に親近感を持たれた気がするわ」

凪「用心に越したことはありません。はーちゃんのためにも」

颯「はー?大丈夫だよ、『捕食者』さんもいるから」

千夜「事情はわかりました」

りあむ「協力するぞ!最初からこの結論は変わってないけど!」

あきら「うん。自分達が役に立てそうなこと」

あかり「困ったら若葉お姉さんに相談しましょう」

時子「助かるわ。颯、聖」

颯「はいっ」

時子「まずは歌を真剣にやりなさい。いいかしら」

聖「うん……」

颯「わかった!はー、舞台にも興味あったんだー」

凪「やはり、そうでしたか。凪も勉強開始です」

久美子「時子ちゃん、もう1つ質問」

時子「何かしら。秘密にしていることはないと思うけれど」

久美子「どうして、コース料理の席が用意されてるの?」

颯「それは、あるから」

久美子「ある?何かしら」

聖「ディナーがあって……マナーとかそういうの知らないから……」

時子「何故かディナーが組み込まれてるのよ。誰の趣味なのかしら」
17 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:29:05.34 ID:LpKpQWny0
りあむ「ディナー、なんで?」

時子「私に聞かないでちょうだい。白雪千夜、礼儀作法はわかるかしら」

千夜「基本的なことは」

時子「良かったわ。貴方からも教えてあげてちょうだい」

千夜「かしこまりました」

時子「それもあるけれど、話がしたかったのも事実よ」

久美子「そうなんだー」

時子「……久美子」

久美子「ふふっ、わかってる。さ、はじめよっか」

千夜「付き出しから順にお出しします。凪さん、ご協力を」
18 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:30:11.86 ID:LpKpQWny0


S大学・部室棟・SDs部室

りあむ「……美味であった」

あかり「りあむさん、静かにしようとして美食家みたいになってるんご」

りあむ「ぼくの問題は口だからね、マナーを守り、炎上しないためには黙るしかない」

あきら「りあむサン、マナーは身についてた。口はともかく」

あかり「意外です」

聖「時子……これでいいのかな……」

時子「問題ないわ。必要以上に畏まるのだけは避けなさい」

颯「フォークとナイフでムニエルなんかはじめて食べたよ」

久美子「うん、颯ちゃんも上手」

颯「千夜さんに教えてもらったから」

千夜「どういたしまして。魚料理のお皿をおさげします」

りあむ「これは白雪ちゃんのお手製な気がする……旨い白身魚のムニエルだった」

あかり「付きだし、オードブル、ポタージュ、魚料理が出てきました」

あきら「コーンポタージュはレトルトだって。それ以外は千夜サン手作り」

あかり「そうなんですか?」

りあむ「あのクッキー手作りだったか……そんな感じの売り物じゃなかったのか」

あかり「オードブルなんて高いスーパーで売ってるのだと思ったんご」

あきら「パテもサラダも、アボカドとエビを混ぜたやつも手作りだって」

あかり「千夜さんは凄いんご」

聖「メイドさんは……すごい……すごいんご?」

あきら「聖チャン、真似しない方がいいデス」

颯「次はなんだろう?」

凪「お口直しの飲み物です。凪がオーダーをお聞きします」

千夜「財前さんと松山様にはワインをお出しします。お嬢さまからの頂き物です」

久美子「なら、遠慮なく」

凪「未成年にはノンアルコールです。サイダーか飲むヨーグルトをお選びください」

あかり「アンテナショップで仕入れた、山形産の飲むヨーグルトがオススメですっ」

颯「それなら、飲むヨーグルトで!」

あきら「自分もそれで」

聖「わたしも……」

凪「はい。りあむさんは」

りあむ「サイダーにする。あかりんごは?」

あかり「私もサイダーにするんご」

颯「えっ、そこは飲むヨーグルトじゃないの?」

あかり「サイダーの気分なので」

凪「あかりんごとはそういう人物です。お持ちしますのでお待ちください」
19 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:30:47.60 ID:LpKpQWny0


S大学・部室棟・SDs部室

久美子「時子ちゃん」

時子「何かしら」

久美子「このワインおいそれと飲んじゃいけない味がするわ」

時子「気のせいよ」

久美子「いいえ、美味しすぎるわ。メイドさん、聞いていい?」

千夜「松山さん、何かご用でしょうか」

聖「美味しそう……」

颯「おっきいローストビーフだー」

千夜「凪さん、お任せします」

凪「りょ。先ほどの練習の成果を見せましょう」

久美子「このワイン、どこの?」

千夜「黒埼家が保有する西欧の古城を改造したワインセラーに保存されていたもの、とのことです」

颯「西欧の?古城を改造した?ワインセラー?」

あきら「スケールが大きいデスね……」

久美子「時子ちゃん、本当に大丈夫なの?」

時子「いつか飲まれるものよ。それなら、久美子に飲まれて光栄でしょう」

千夜「遠慮は不要です。私にはワインの価値はわかりませんが」

久美子「そうするわ。だから、もう一杯ちょうだい」

千夜「かしこまりました。凪さん、そちらは問題はありませんか」

凪「はい。時子様、ローストビーフを献上します」

時子「ありがとう。盛り付けも上手よ」

凪「時子様に褒められました。なんと喜ばしい」

りあむ「うむ、わかるぞ」

あきら「わかるんだ……」

千夜「ワインをお持ちしました。どうぞ」

久美子「ありがと。いただくわ」

千夜「ごゆるりと。凪さん、お手伝いします」

凪「では、こちらを久美子姉様に」

千夜「かしこまりました」
20 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 19:31:40.61 ID:LpKpQWny0


S大学・部室棟・SDs部室

颯「あー、美味しかったー♪」

凪「凪も同じ感想です。ローストビーフを、固唾をのんで見守った甲斐がありました」

颯「チーズも美味しかったよっ」

あかり「ありがとうございますっ、今後も山形をよろしくんご。でも、やっぱり、デザートのタルトタタンが美味しかったんご〜」

あきら「千夜サン、リンゴのデザート得意だよね」

あかり「そうですっ、前に食べたアップルパイも最高でしたっ」

千夜「お褒めに預かり光栄です。紅茶と焼き菓子をお持ちしました」

聖「美味しそう……」

千夜「砂糖とミルクはお使いになりますか」

颯「うん!あれ?こういう時は使っちゃダメなんだっけ?」

時子「そんなことはないわ」

久美子「元は砂糖を飲むための飲み物、とか優ちゃんが言ってたかしら」

千夜「では、ご自由にお使いください。スプーンで音は立てませんように」

りあむ「心が落ち着く、いや、これは……」

あかり「りあむさん、もしかしておねむですか?」

りあむ「かもしれない、黙ってたら眠くなってきたのか」

聖「看護師さんは朝早いから……うん、紅茶が美味しい……」

りあむ「せっかく明日休みなのに、まぁ、いいか。どうせ授業はいつも朝早いし」

久美子「ふーん」

あかり「久美子さん、りあむさん見ても何も面白くないですよ?」

りあむ「それ、あかりんごが決めること?まぁ、面白くはないけど」

久美子「時子ちゃん、この子については一安心?」

時子「私に聞かないで」

颯「紅茶もクッキーも美味しい!千夜さん、マナーも教えてくれてありがとう」

千夜「いえ。楽しく食事をしていただけるなら、何よりです」

時子「ええ。聖も食欲は問題なさそうね」

聖「うん……」

時子「これで準備はいいわね。ディナーで緊張しないこと」

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