久川颯「7人が行く・EX4・天上の調」

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121 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 20:55:35.24 ID:LpKpQWny0
68

M市民文化会館・大ホール・舞台上

颯「どうかな?」

桃華「お上手ですわ」

アナスタシア「ダー。ハヤテ、よく練習しています」

颯「聖ちゃんほどじゃないけどね。聖ちゃんはどうしてそんな上手なんだろう?」

アナスタシア「私も気になります」

聖「えっと……好き、だからかな……」

颯「好きなだけで上手になったら苦労しないよー」

アナスタシア「はい。きっと何度も何度も歌っていたのですね」

桃華「聖さん、以前からお聞きしたかったのですけれど」

聖「なんでしょうか……」

桃華「お体はお強くありませんの?」

聖「うん……入院してた時期も長いから……」

桃華「今の状態はどのくらいですの?なんだか、無理をしているように感じますの」

颯「……」

聖「今は……まだ」

桃華「聖さんの才能は確かですわ。でも、お体を治してからですわね」

聖「うん……」

アナスタシア「ヒジリ、無理はいけません。頼ってくださいね」

聖「ありがとう……でも、がんばりたいから……」

桃華「その気持ちは受け取りましたわ。でも、無理はなさらずに」

颯「そろそろ休憩終わりかな、次もがんばろ!」
122 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 20:56:18.30 ID:LpKpQWny0
69

S大学・部室棟・SDs部室

あきら「よいしょっ、っと。また箱が来たよ」

りあむ「また増えた!データで送ってくれてもいいのに、どうして紙にしてくれるんだ!」

あかり「西園寺のサービスでしょうか?」

若葉「あきらちゃん、運びますよ〜」

あきら「若葉お姉サン、ありがと」

凪「はーちゃんから続報はなし。SDsは7人が勢ぞろい」

椿「わっ、ここも西園寺の関係だったのですか」

りあむ「ぼくの想像以上に手広いぞ!直接間接投資にいろいろやりすぎてる!」

凪「しかし、大量だ」

あかり「全部調べるのは無理ですっ」

若葉「そうですね〜」

あきら「りあむサン、どうする?」

りあむ「芸能、いや、音楽関係に絞ろう!あと、今回の関係者が出てたら!」

あきら「了解。これは、音響機器メーカーか。西園寺の会社と取引あり」

千夜「まずは分類することから」

りあむ「塊が見えれば、何かが見える!はず!きっと!」

凪「否定することはありません。やります」
123 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 20:57:06.18 ID:LpKpQWny0
70

S大学・部室棟・SDs部室

りあむ「白雪ちゃん、これ本当!?」

千夜「確証はわかりません。ですが、調べる価値はあるかと」

りあむ「じゃあ、調べる!若葉お姉さん!調査を頼んだ!」

若葉「わかりました、雑居ビルですか?」 

りあむ「ビルの地下!」

千夜「兵藤レナとヘレンが出入りしたか、お願いします」

りあむ「あとついでに、こことここも!近くにあるから!」

若葉「急いで行ってきます〜」

あきら「そこも西園寺の関係なんデスか?」

千夜「はい。ビルのオーナーは西園寺の不動産会社です」

りあむ「別のところでも関係ありそう!だって、あそこレコーディングスタジオだぞ!?」

あきら「うーん、また西園寺か」

千夜「砂塚さん、気になったことでもあるのですか」

あきら「妙に西園寺ばっかり」

あかり「よいしょ。これは西園寺の傍流が作った楽器製造の会社でした」

凪「つまり、こう言いたいのです。コーヒーはいかがですか」

りあむ「ありがと!凪ちゃんが淹れたの?」

凪「はい。休憩がてら」

千夜「凪さん、こう言いたい、とは」

凪「支援を受けているのに、西園寺に偏りすぎている」

あきら「そう、それ」

あかり「西園寺と櫻井に協力してもらってるのに偏りすぎ?」

りあむ「うーん?なんでだろう?西園寺も櫻井も避けるのは難しいのに」

椿「お邪魔していいですか?」

りあむ「もちろん!椿さん、どうしたの!?アンノウンプロデューサーが誰かわかった?」

椿「そこまでは行ってません。ビデオの映像が再生できそうなので、見てみますね」

りあむ「ありがとう!倍速くらいで見るのがいいぞ!映像の情報伝達速度は速くないからな!」

凪「椿さんもコーヒーをどうぞ」

椿「ありがとうございます。苦そうで良いですね」

凪「りあむ、凪も伝えたいことが」

りあむ「いいぞ!どんとこいだ!あかりんごもわかったことあるなら言えよ!」

あかり「残念ながらありません!芸能界は奥深すぎるんご」

りあむ「それで、凪ちゃんの分かったことは?」

凪「凪は思いつきました。関係者を見つける方法を」

あきら「方法デスか?」

凪「やはりアンノウンプロデューサーを辿るのがよい」

あかり「それが難しいんご」

あきら「いや、今なら違う?」
124 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 20:58:17.91 ID:LpKpQWny0
千夜「隠し通せる理由を見つけた」

凪「西園寺に偏りすぎている」

あかり「なるほど!だから、あきらちゃんの言いたいことがわかったんですねっ」

りあむ「西園寺の影響力で抑え込んでるのか!ん?でも、違うな」

千夜「はい。肝心なところに西園寺の関係者はいません」

あきら「あの中にいない」

りあむ「西園寺の親族でもいたらわかりやすかったのに!そう簡単じゃないな!」

千夜「しかし、その手法を使っているのなら」

凪「調べる範囲は狭まった。アンノウンプロデューサーが見いだせる。かもしれない」

千夜「もしくは、密接に関係している人物が」

椿「りあむさーん!気になる映像が始まりました!」

りあむ「……」

あきら「りあむサン、負荷が大きくてフリーズした?」

あかり「りあむさん、おきるんご」

りあむ「起きてる。りあむちゃんは仮説を思いついた。よし、ぼくは椿さんと映像を見よう!白雪ちゃんは凪ちゃんの言ったことを手伝って!」

千夜「わかりました」

りあむ「あきらちゃんとあかりんごは資料整理続けて!あと、若葉お姉さんの連絡待ち!頼んだぞ!」

あきら「わかった」

りあむ「はじめるぞ!きっとわかると信じる!」

125 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 20:58:47.15 ID:LpKpQWny0
71

数時間後

S大学・部室棟・SDs部室

あかり「がんばりすぎました。甘いものを食べて回復しましょう。はい、お饅頭をどうぞっ」

千夜「辻野さん、ありがとうございます。はい、素朴な甘さで美味しいです」

あかり「千夜さんの小さい口、かわいいんご」

りあむ「あかりんご、ぼくにもちょうだい!」

あかり「はい、どうぞ。美味しいのにあんまり売れなくて困ってるんです」

りあむ「手作り感バリバリのモリモリだからなぁ。あえて箱に入れるとか?試食もいい気がする!」

あかり「まさか、りあむさんから使えそうな意見が出てくるなんて」

凪「凪も頭も休める。名前の通りに」

椿「りあむさん、録音できました。あかりさん、お饅頭くださいな」

あかり「はーい」

りあむ「椿さん、録音したやつちょうだい」

椿「どうぞ。活用してください」

あきら「若葉お姉サンから連絡。やっぱり、そうだって。兵藤レナとヘレン、あと何人かいる」

りあむ「椿さん、追加!若葉お姉さんにもデータ送ってあげて!」

椿「わかりました」

千夜「フムン」

あかり「千夜さんにはお饅頭をもう1つです」

千夜「いただきます。こちらも美味しいです」

凪「疲れた。そして、りあむの仮説は正しそうだ」

あかり「あとは本人から聞くのが1番?」

椿「そう思います」

凪「同時に追加のこともわかり、真実に近づいている」

千夜「間に合いましたが、時間に余裕があるとは言えません」

あきら「どうする、りあむサン?」
126 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 20:59:40.80 ID:LpKpQWny0
りあむ「やるしかない。白雪ちゃん、凪ちゃん、行こう」

千夜「文化会館ですか」

りあむ「そう。椿さん、教会にも連絡しておいて」

椿「わかりました」

りあむ「凪ちゃん、許せ。颯ちゃんを使うぞ」

凪「凪は覚悟しています。はーちゃんはあちら側に踏み入れたので」

りあむ「もちろん危険は少ないようにするぞ!」

凪「当然です」

あかり「これから何をしでかすつもりなんですか?」

りあむ「今から説明する!作戦名は、ずばり!」

千夜「作戦名、とは」

りあむ「全部さらけだして夜におびき寄せる作戦!」

あきら「#わからない」
127 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:00:27.15 ID:LpKpQWny0
72

17時頃

M市民文化会館・大ホール・舞台上

愛海「集められたけど、何するんだろう?」

アナスタシア「わかりません。新曲のこと、でしょうか」

聖「……」

桃華「アンノウンプロデューサー様が集合させましたの?」

スピーカー『集めたのは私だが、目的を持っている人物は私ではない』

保奈美「それなら、どなたが?」

レナ「私も違うわよ」

ヘレン「同じく」

桃華「篠原もマネージャー様方も客席にはいらっしゃいますのね」

愛海「まだいないのは、マキノさんと颯ちゃん」

保奈美「2人とも入ってきたわ」

マキノ「集まってるわね」

アナスタシア「はい」

桃華「お伝えしたいことでもありますの?」

マキノ「ええ。彼女から」

保奈美「颯ちゃん、から?」

颯「うん。練習中に集まってもらってありがとう」

聖「……」
128 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:01:16.92 ID:LpKpQWny0
颯「伝えたいことがあるんだ」

保奈美「伝えたいこと?」

颯「はー、アンノウンプロデューサーが誰かわわかっちゃった」
129 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:02:02.78 ID:LpKpQWny0
73

M市民文化会館・大ホール・舞台上

愛海「ねぇ、颯ちゃん」

颯「なに?」

愛海「自称情報通としては知りたいよ。でも、みんなの前で明らかにすること?」

颯「うん。そっちのほうがいいって思うな」

マキノ「私は自分の秘密にして、ことを優位に進めたいのだけれど」

颯「マキノさんの気持ちもわかるよ。それじゃあ、ダメ」

アナスタシア「ダメ、とはどういうことでしょう?」

颯「隠し事をしたら、歌にも影響すると思うんだ。モヤモヤしてたら、気をとられちゃう。はー、そんなに集中力ないし」

聖「そうかも……」

颯「音楽とか舞台とか、よくわからないよ。でも、隠し事はキライ。隠し事が成功につながることとは思わない。だから、この中で秘密を共有したい」

保奈美「音楽のため……」

颯「聖ちゃんは言ってた、本当に聴いてるって。近くにいるなら、画面の向こうの人をはさんで言ってもらう必要とかない。はー、絶対にそっちのほうがいいと信じてる」

アナスタシア「ハヤテの言いたいこと、わかりました。アーニャも、そう思います」

聖「私も……保奈美さんは」

保奈美「私も音楽のためになるのなら」

桃華「颯さんの気持ちは伝わりましてよ」

愛海「あたしもそっちから否定できないなー」

聖「でも、認めるかな……」

愛海「アンノウンプロデューサーは秘密主義だからね」

マキノ「根拠はあるのかしら?」

颯「あると思う」

レナ「そこまで自信がなさそうね」

ヘレン「それも一興。颯、話してみなさい。ヘレンは許可するわ」

レナ「アンノウンプロデューサー、どう?」

スピーカー『知恵比べを楽しむとしよう』

レナ「だそうよ。私が止める理由もなくなった」

聖「颯……」

颯「うん。えっと、それじゃあ、どこから話そうかな。たくさんあるんだ」
130 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:02:39.53 ID:LpKpQWny0
74

M市民文化会館・大ホール・舞台上

颯「最初は、うんうん、レナさんに質問しよう」

レナ「どうぞ」

颯「レナさん、アンノウンプロデューサーが誰か知ってるよね?」

レナ「もちろん」

愛海「もちろん!?」

レナ「なぜなら、私がアンノウンプロデューサーだから」

聖「それはウソ……あなたは曲を作れない……」

レナ「これを押し通すのは無理か。ええ、ただの舞台監督よ」

マキノ「あなたについては調べてある。アンノウンプロデューサーが活動をはじめた時期に日本にいなかった、同一人物とは思えない」

レナ「そういうこと。正体も知らずにこの仕事はできないし、正体を隠す役割を担ってるの」

保奈美「それなら、教えてくれますか?」

レナ「私がウソを言ったら、それで終わり。契約で話せないし、本人から聞いて」

愛海「そう簡単にはいかないか」

颯「ヘレンさんは知らないんだよね?」

ヘレン「イエス。不要なことは頭にいれない主義よ」

颯「でも、そこの人は知ってる」

アナスタシア「そこは、スピーカーです」

颯「向こうにいる人に、会ったことある?」

スピーカー『……』

ヘレン「ええ」

颯「レナさんも?」

レナ「そうね。でも、どうしてそう思うの?」

桃華「あら?」

聖「モニターが映った……どこだろう……」

愛海「部屋に見えるよ。スタジオ?」

スピーカー『こんにちは〜』

保奈美「女の子、いえ、女性のみたいですけど、どなたでしょうか……?」

愛海「髪の毛がもしゃもしゃだ」

アナスタシア「アンノウンプロデューサーですか?」

スピーカー『はじめまして、日下部若葉です〜』

レナ「颯ちゃんのお友達?」

颯「うん。一緒に調べてるんだ」

ヘレン「論より証拠。隠しようがないわね」

レナ「ええ。そこがどこか説明してくれる?」

スピーカー『レコーディングスタジオです。宿泊施設もあるんですよ、豪華ですね〜』

保奈美「颯ちゃんのお友達……どういうことかしら」

スピーカー『そこは置いておいてください〜』
131 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:03:28.93 ID:LpKpQWny0
颯「この場所は……」

ヘレン「颯をわずらわせることはない。いいわね、レナ」

レナ「ええ。日下部さん、と名乗る人物がいる場所が私達の拠点よ」

ヘレン「アンノウンプロデューサーの指示を受け、曲を作成している」

レナ「アンノウンプロデューサーを代弁している、彼と打ち合わせもしてるわ」

ヘレン「代弁者とはいえレッスンを行う人物として必要」

レナ「要はトレーナーとしてのレッスンね。出てきたら?」

聖「映像が消えた……」

スピーカー『すまん、ばれちった。顔出しはNGなんでさーせん』

愛海「口調が軽い!」

保奈美「声もお若いですわね。なんとなく違和感があって」

アナスタシア「ダー。カンロクを出そうと大変そう、でした」

聖「うん……やっぱり……」

スピーカー『耳もいいタレントに騙しとおすのは無理だって。あー、楽になった』

レナ「彼を採用した理由は無名だから」

ヘレン「今後も役者として精進なさい」

スピーカー『あざっす』

アナスタシア「あなたは、アンノウンプロデューサーを知っていますか?」

スピーカー『もち。でも、それは約束だし言わない。このお姉さんにあとは任せていい?』

颯「うん。ありがとう」

スピーカー『1度皆と直接会いたかったなぁ。ま、役者を続けてればいつかみんなと会えるか。じゃあねー』

愛海「しゃべってたのは偽物か。どうやってたの?」

レナ「事前に打ち合わせしてアドリブ」

ヘレン「彼に音楽の素養もあって助かったわ」

レナ「大事なのは態度。堂々としていれば違和感があっても、確信はしきれない」

聖「そう……声だけは若い人なのかもって……」

アナスタシア「ディスプレイが映りました。クサカベさん、がいます」

スピーカー『もどりました〜』

颯「若葉お姉さん、そっちは他にも誰かいるの?」

スピーカー『はい。音楽スタッフさんが何人かいますよ〜』

レナ「明日、あなたたちに渡す曲を作業中だもの」

保奈美「独りじゃ無理よね、やっぱり」

颯「アンノウンプロデューサーが誰か、話してくれた?」
132 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:03:59.90 ID:LpKpQWny0
スピーカー『それは契約なので、言ってくれません。無理に聞き出すのも違います〜』

マキノ「そうね」

颯「うんうん。若葉お姉さん、その場所について詳しく教えてくれる?」

スピーカー『西園寺と関係が深いらしいですよ〜』

愛海「西園寺、ここを支援してくれてるよね」

マキノ「ええ」

スピーカー『スタッフの皆さんも西園寺に関係したところで普段は働いているそうですよ〜』

マキノ「私のところに話が来る前から、西園寺の支援は決まっていたわ」

愛海「アンノウンプロデューサーも仕事も手伝ってる。ずいぶんと太っ腹だね」

スピーカー『調べても調べても西園寺の関係している人や会社ばかりなんですよ〜』

聖「それは気になる……」

スピーカー『なので、西園寺の人から昔の動画をいただきました〜。聞いてください〜』

保奈美「これはピアノの……」

愛海「人の声もする。なんかの打ち上げとかで演奏してたのかな?」

アナスタシア「聞いたことがある、気がします」
133 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:05:01.86 ID:LpKpQWny0
聖「音楽は別人にはなりきれない……これは同じ人が作ったもの……」

レナ「ヘレン、聞いたことある?」

ヘレン「ノー。しかし、聖と同じ意見。作った人物は同一だと感じるわ」

スピーカー『これは2年ほど前のものらしいですよ〜。それから、彼女は人前で演奏してないみたいです〜』

愛海「2年前?」

マキノ「アンノウンプロデューサーが世に出始める前」

聖「想いがある……音楽への想い……その人が音楽をやめるはずがない……」

颯「アンノウンプロデューサーは西園寺が秘密を守る理由がある人。2年前から人前で演奏してない人」

聖「きっと聴いてる……この場所で」

颯「ここに必ずいられる人。どんなことがあっても」

保奈美「……」

桃華「黙って聞いているのも飽きてきましたわ。日下部様、その録音には映像もあるのでしょう?映しても構いませんわ」

スピーカー『それでは、遠慮なく〜』

愛海「あっ!」

アナスタシア「モモカ、です」

桃華「あらためてご挨拶しますわ。プロデューサーを務めます、櫻井桃華ですわ」
134 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:05:36.67 ID:LpKpQWny0
75

M市民文化会館・大ホール・舞台上

保奈美「桃華ちゃんが、アンノウンプロデューサー……」

愛海「ええ!ずいぶんと妹みたいな扱い方しちゃった!」

桃華「それは構いませんわ。年下なのは事実ですもの」

レナ「意外とあっさり認めるのね」

桃華「この状況を覆そうとは思いませんわ。レナ、貴方には感謝しますわ」

レナ「どういたしまして。楽しんだから、それで十分」

聖「本当に聴いていると……信じてた」

桃華「聴かせていただきましたわ。聖さんには、心配をおかけしましたわね」」

聖「ううん……平気」

桃華「颯さんは、アンノウンがここにいるとどうしてわかりましたの?」

愛海「この中の誰かなんて決まってないよね?」

桃華「色々とお調べになったのなら、可能性はいくらでも思いつくはずですわ」

ヘレン「私とレナを除いたのなら、学生しかない。気になるわ」

桃華「それでもなお、アンノウンがここにいると推測した理由はなんですの?」

颯「それは、信じてたから」

アナスタシア「信じる、ですか」

颯「聖ちゃんを信じた。アンノウンプロデューサーは絶対にここで聴いてる、って言ってたのも信じた」

桃華「それだけですの?」

颯「えっと、自分で説明できるのはそれだけ」

ヘレン「エクセレント。颯、あなたの信念は称賛に値するわ」

桃華「その素直さにはかないませんわね。やはり貴方は特別な存在ですわ」

颯「え、特別?はー、そんなんじゃないと思うな」

桃華「もう少しお聞きしていいかしら、颯さん?」

颯「うん」
135 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:06:08.29 ID:LpKpQWny0
桃華「わたくしは存在を秘匿してきましたわ。お父様のお口添えで、あえて櫻井ではなく西園寺に協力を求めたのもそのためですわ」

颯「うん。桃華ちゃんがここにいるから櫻井の関わりがあるけど、調べても調べても前は西園寺ばっかりだった」

愛海「警備員さん、桃華ちゃんの知ってる人?」

桃華「そうですわ。お父様も心配性が過ぎましてよ」

愛海「やっぱりそうか。ロイヤルな感じがしたよ」

聖「お茶会は、桃華ちゃんの趣味……?」

桃華「ええ。話がそれましたわね。西園寺を使ったのに、わたくしにどうしてたどり着きましたの?」

颯「えっと、それは色々あって。例えば、桃華ちゃんの曲とか」

保奈美「曲?」

颯「ピアノで作曲してるみたいだった、って」

桃華「どなたがおっしゃってましたの?」

颯「それは久美子さん……あっ、松山先生!」

桃華「あの方も知り合いだったのですわね。意外と抜け目ありませんわ」

颯「あはは……それと、桃華ちゃんのおうちすごい大きいところでしょ?」

桃華「ええ」

愛海「天下にとどろく櫻井だからね、いつの間にか関わってるよね」

颯「そう、それ!」

愛海「それ?どれ?」

颯「どんなに調べても櫻井を避けてるみたいだった。考えてないと避けるのは難しいのに」

桃華「やりすぎましたわね。不自然なほどに関わりを絶てるのは、櫻井を熟知したものだけですわね」

マキノ「こう聞くとヒントはあったのね」

桃華「これをヒントというには論理の飛躍が過ぎますわ。これらはあくまでも予想。確信を持った証拠は、わたくしがかつて演奏していた映像ですわ」

聖「そう……前も根本は同じ……」

桃華「あの映像は、どこから手に入れましたの?」

颯「えっと、うん、西園寺琴歌さんに探してもらった」

桃華「琴歌様?西園寺当代のご息女様ですわね。次期当主の弟君と違って、表舞台に出てきませんのに。どこでお知り合いになりましたの?」

颯「知り合いの友達だった」

桃華「聞くほどに颯さんの信念が引き寄せた偶然のように思えますわね」

聖「偶然……かな」

颯「それは、ノーコメントで」

保奈美「偶然じゃないの……?」

アナスタシア「ホナミ、聞くのはヤボというやつです」

桃華「さて、颯さんの気持ちを尊重しますわ」

聖「それって……」
136 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:07:32.87 ID:LpKpQWny0
76

M市民文化会館・大ホール・舞台上

桃華「考えていたことがありますの。アンノウンではなく櫻井桃華としてお伝えしますわ。このオーディションも終わりにしますわ。一言ずつ、お伝えしてもよろしいかしら」

颯「なんだろう?」

保奈美「……はい。準備はできてます」

桃華「保奈美さんはそこまで緊張しなくてよろしいのに。まずは、レナ」

レナ「私?」

桃華「わたくしの妙な依頼に応えていただきましたわ。感謝しますわ」

レナ「それほどでも。隠し事は得意だもの」

桃華「ヘレン、実力はわかりましたわ。貴方はまだ表舞台にいるべきですわね、影に潜むことを望んで申し訳ありませんわ」

ヘレン「ノープロブレム。ヘレンはヘレン、何をしていても存在が傷つくことはない」

桃華「そう言っていただけると救われますわ。さて、八神さん?」

マキノ「言ってくだされば、私は協力しました。口は堅い方だもの」

桃華「もちろん選択肢にはありましたわ。ですが、貴方に隠せるかどうか試そうと思いまして」

マキノ「何故?」

桃華「それも一興、ですわ」

マキノ「ロジカルじゃないけれど、気持ちはわかる。今後も、私はアンノウンプロデューサーを支援します」

桃華「お言葉とお気持ちだけ受け取りますわ」

颯「……」

桃華「篠原、いつも助かりますわ。川島様、沢田様。思いやる気持ちはさすがですわ。ただし、そちらからは踏み入れない領域もありましてよ。そこは、覚えておいてくださいまし」

レナ「踏み入れない領域、ねぇ……」

桃華「聖さん」

聖「……はい」

桃華「同年代の素晴らしい才能と出会えたことは幸運でしたわ。お伝えした通り、お体を治してからですわね」

聖「うん……」

桃華「誰かの支えを求めている、いいえ、寄りかかったような印象を受けますわ。お体のせいなのかもしれませんけれど、自らの足で立てた時にお会いしましょう?その時を楽しみしていますわ」

聖「もしかして……わかってるのかな……」

桃華「それでは、棟方さん」

愛海「はいっ。なんか、緊張する」

137 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:08:07.51 ID:LpKpQWny0
桃華「貴方自身のこと、もう1度考えてみてくださいな」

愛海「あたしのこと?」

桃華「情報通で縁の下の力持ち、棟方愛海が目指す未来はそちらですの?」

愛海「えっと、それは……」

桃華「まだ先は長いですわ。目先の欲に囚われて、己を失ってもよいことなんてありませんわよ。わたくしが偉そうに言える立場ではありませんけれど」

愛海「……はい」

レナ「お嬢様は、厳しいわねぇ」

桃華「あら、わたくしは厳しいとは思っていませんわ。アナスタシアさん、よろしいかしら?」

アナスタシア「ダー」

桃華「本気でやっていまして?」

アナスタシア「……」

桃華「そこは言葉を止めずに、嘘でもいいから肯定すべきでしたわね。原因のすべてが貴方にあるとは言いませんけれど、がっかりしましたわ」

保奈美「……」

桃華「結果は見えていても、全力を尽くすべきですわ。予定された未来を覆すのが怖いのなら、傲慢ですわね。自身が特別な存在であることに、心のどこかで過信してますのよ」

愛海「え、厳しい、言い過ぎだよ」

アナスタシア「いえ、大丈夫です。ホナミ、ごめんなさい」

保奈美「私に謝ることなんて……」

桃華「優しいことは悪いことではありませんわ。ご両親を誇りに思うのなら、この世界で生きると決めたのなら、その優しさは不要ですわ」

アナスタシア「はい」

桃華「沢田さんとご相談なさって。それからでも、遅くありませんわ」

アナスタシア「ダー。ホナミ、次はきっと」

保奈美「……」
138 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:08:46.23 ID:LpKpQWny0
桃華「西川保奈美さん」

保奈美「……はい」

桃華「才能も努力も明らかですわ。最初にご挨拶した時に、オーディションの
結末が分かった方も多かったと思いますわ」

聖「……うん」

アナスタシア「ダー……」

愛海「って、ことは……」

桃華「わたくし、思いましたの。だからこそ、それだけではいけませんわ」

颯「……」

桃華「保奈美さん、答えてくださいまし」

保奈美「……はい」

桃華「あなたは何に怯えていますの?」

保奈美「えっと……」

桃華「結構。質問を変えますわ。何故そんなに急いでらっしゃるの?」

保奈美「急いで、ますか」

桃華「ええ。貴方の夢は歌姫。若さが絶対とは思えませんわ。何故、待てませんの」

保奈美「……」

桃華「はぁ、わたくしにも運が回ってきたと思いましたのに。最初に会った時は西川保奈美という歌手に感嘆したものですわ。ですが、ライバルは既に白旗をあげていて、貴方は本来の実力を出し切れていない。少々興ざめですわ」

颯「桃華ちゃん、言い過ぎじゃ……」

桃華「颯さん?」

颯「あ、はい」

桃華「わたくしはアンノウンプロデューサーでもありますの。つまり、ここの全権者ですのよ。そして、年端もいかないご令嬢なことも認めますわ」

颯「えっと……」

桃華「気分が変わりましたわ。正体も明らかになってしまったことですし」

保奈美「……」

愛海「ちょっと、ちょっと待った!桃華ちゃん、冷静になろう!間違いなく今の気分だと飛んでもないこと決めちゃうよ!?」
139 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:09:32.56 ID:LpKpQWny0
桃華「棟方さん、わたくし言いましたわ。ワガママな金持ちの子供が親の金で好き勝手やっているだけですの」

愛海「そこまでは言ってない!それに、違うでしょ!」

アナスタシア「いいえ、モモカはそんな人ではありません!アーニャは、知っています」

桃華「つい先ほどまで、アンノウンプロデューサーの正体を知らなかった人物が何を言ってますの」

保奈美「……愛海ちゃん、アーニャちゃん、もういいの」

アナスタシア「ホナミ、あきらめてはいけません!」

愛海「そうだよ!どう考えても、中止とかもってのほかだし、主役は保奈美ちゃん以外ありえないんだよ!」

桃華「そうですわね。中止にするのはやめますわ。貴方達の意思も尊重しますわ」

愛海「ほっ、気品あふれる桃華ちゃんが戻ってきたよ」

聖「そうかな……」

桃華「颯さん、いいかしら?」

颯「えっ、何?」

桃華「今回、わたくしのお姫様は貴方にしようと思いますわ」

愛海「いっ……」

颯「え、ええっ!」
140 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:10:05.89 ID:LpKpQWny0
77

M市民文化会館・大ホール・舞台上

桃華「ずっと考えていましたの。颯さんを主役にすることが、もっともよいのではないのかと」

颯「いやいや、そうはならないよ。おかしいよ」

聖「……」

桃華「ええ。わたくしの思いつきで入れた地元枠ですから、経験もありませんし、歌と踊りの才能も並みですわ。とてもかわいらしいですが、容姿も突出はしておりませんわね」

颯「それはそうなんだけど、言われなくてもわかってるし」

桃華「ですが、この方には魅力がありますわ。使い古された評価基準など関係ない、人を引き付ける力が」

保奈美「……」

桃華「まっとうでない選考だとはわかっていますわ。それでも、この思いは止められませんの。久川颯さん、わたくしのワガママをお聞きになって」

颯「えぇ、そんなこと言われても」

愛海「うーん、じゃあ、レナさんはいいの?」

レナ「私の答えは決まってるから。ヘレンもでしょ?」

ヘレン「ええ」

レナ「イエス、マイロード。櫻井桃華の仰せのままに」

ヘレン「あえて困難な道を行くことで世界レベルに到達する。それもまた芸の道。いいでしょう」

アナスタシア「アー、レナもヘレンもノリがいい、ということですね」

愛海「よく考えたら、こんな隠し事に協力するような人達だった……」

颯「えっと、じゃあ、マキノさんは?」

マキノ「中止にならなければいいわ」

桃華「どのような結末になろうとも、埋め合わせは櫻井がしますわ」

マキノ「損がなくなると、意地でも進めたい動機を失うわね。組織勤めのサガね」

聖「颯ちゃんなら……大丈夫」

颯「励まされても困るよ……」
141 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:10:37.92 ID:LpKpQWny0
桃華「今すぐに答えをとは言いませんわ。颯さん、1時間差し上げますわ」

保奈美「……」

桃華「貴方の意思でお決めになって。ただし、貴方一人で決めてくださいな」

颯「うーん、何も聞いてくれなさそう……」

愛海「颯ちゃん、ごめん。お願い」

アナスタシア「ハヤテが決めたことに従います」

聖「颯ちゃん……がんばって」

桃華「決まりましたわね。小ホールを颯さんはお使いくださいな」

颯「わかった。考える。その、良い答えが出ないかもしれないけど」

桃華「ええ。どんな意見を聞いてもかまいませんが、最後は貴方の意思で決めること。それだけは約束ですわよ」
142 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:11:14.25 ID:LpKpQWny0
78

M市民文化会館・小ホール・舞台上

M市民文化会館・小ホール
地元の講演会や発表会で使われることが多い。今回は特に使用されておらず、舞台上に用意されたものはない。

颯「今度は川島さんだ」

瑞樹「今度は、ってことは誰か来たのかしら」

颯「うん。さっきまでは聖ちゃんが来たよ。帰ったけど」

瑞樹「颯ちゃんのこと、心配だもの」

颯「独りは寂しいな。でも、決めたんだ」

瑞樹「決めた、のね」

颯「桃華ちゃんは選択肢をくれなかった。でも、道は2つくらいしかないよね」

瑞樹「……」

颯「保奈美ちゃんを信じるか、桃華ちゃんのために自分でやるか、どちらか」

瑞樹「どっちにしたか、聞いてもいい?」

颯「もう決めたから。いいよ」

瑞樹「決意は固い?」

颯「うん」

瑞樹「そう……」

颯「はー、自分でやる。桃華ちゃんのためにも」

瑞樹「私は保奈美ちゃんにやらせたいの。その答えは変わらないのね」

颯「うん」

瑞樹「それなら」

颯「川島さん、近づいてきてどうしたの?」

瑞樹「ごめんなさい。変えさせてもらうわ」

颯「……」

瑞樹「じっと私の目を見て。目を閉じて。いい子ね」

颯「……」

瑞樹「もう目を開けていいわ。颯ちゃん、答えを聞いていいかしら」

颯「……」

瑞樹「颯ちゃん?」

颯「謝るのはこっちなんだ。ごめんね」

瑞樹「え、あなた、その目……オッドアイじゃなかったわよね」

颯「『捕食者』さん、ありがとう。はー、干渉されなかったよ。ねぇ、川島さん」

瑞樹「ま、待って。あなた、どうなってるの……?」

颯「川島さんは少しだけ『こちら側』になってる。今なら『捕食者』さんの栄養になるよ」

瑞樹「効いてない、そんな」

颯「どうしようかな」

凪「はーちゃん!」
143 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:11:55.49 ID:LpKpQWny0
颯「なーの声がする」

瑞樹「あなた、どこから!」

凪「最初から部屋にいました。あと3人います。はーちゃん、それはすべきことではありません」

颯「うん」

凪「戻ってきてください。オッドアイでなく優しい青色の瞳のはーちゃんに」

颯「えいっ、戻ったかな?」

凪「戻りました。おかえりなさい」

瑞樹「聞かれたからには……」

りあむ「待った!そうはさせないぞ!」

千夜「こちらですよ」

瑞樹「今度は誰よ!?」

りあむ「説明は後!」

千夜「その能力を封じさせていただきます」

りあむ「もう色々失敗してるけど、最大の失敗を教えてあげよう!それはもう夜なことだよ!ちとせ!」

ちとせ「はーい。こんばんは」

瑞樹「今度はどこから!?」

ちとせ「上から。はい、目を閉じて。そこに座って」

瑞樹「そんなことに従うわけ……えっ、どうして」

りあむ「強い、強いぞ、ちとせ」

凪「声で命令するだけで暗示をかけられるとは」

颯「裕美ちゃんよりずっと上手だって言ってた」

ちとせ「アナタの能力は意識や思考の強制的な上書き。発現のキーは、瞳。これでもう安心。あっ、無理しないでね。アナタの意思では絶対に目を開けられないから」

颯「能力はあっても、耐性はないんだ」

ちとせ「能力以外はただの人間みたいね」

瑞樹「な、なにこれ、あなたは何者なの」

ちとせ「お話を聞いてくれたら、答えてあげる。りあむ、この人はどうしてここにいるの?」

りあむ「颯ちゃんの意思を変えようとノコノコやってきた!」

ちとせ「そうね。でも、颯ちゃんに返り討ちにあい、私達に待ち伏せされた。どうしてか、わかる?」

瑞樹「……まさか」

千夜「わかったようです。この状況でも頭は回るのですね」

凪「これが社会人のスキル」

ちとせ「そう、罠だったの。すべて、アナタの能力を使った現場を抑えるため。久川颯の気持ちを変えさせるように」

りあむ「颯ちゃん、餌にしてごめん!」

凪「許す。相手の能力を見極めたうえでの判断は適切であるため」

ちとせ「颯ちゃんの演技は上手じゃなかったねー」

颯「急に無理だよー。イヤホンはしてたけど上手くできなくて。アンノウンプロデューサーを演じてた人ってすごいんだね」

千夜「しかしながら、あなたは気づかない」
144 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:12:21.61 ID:LpKpQWny0
凪「心の中は大荒れ。違和感は些細でわかりにくい」

ちとせ「心が乱れてくると、落ち着いた判断ができなくなるの」

りあむ「アンノウンプロデューサーを探すのに、その力を使ってなかった!その慎ましさを失ってしまった」

千夜「そして、ここに来た。狙い通りに」

ちとせ「答えて。それに必要な協力者は誰?」

瑞樹「……アンノウンプロデューサー」

颯「そう、桃華ちゃん」

千夜「この状況を作れるのは、彼女だけです」

りあむ「川島さんを怒らせるにはこれしかなかった!西川保奈美ちゃんにはちゃんと謝るから!」

瑞樹「保奈美ちゃんを傷つけるのは、ダメよ」

颯「……それは」

ちとせ「颯ちゃん、もう少し待ってね」

凪「しかしながら、疑問が残りませんか」

りあむ「ぼくたちの詰め方は甘かった!あんなんシラを切ろうと思えばいくらでもできるよ!荒い推理にもほどがある!」

颯「最後の音楽もなんか似てるくらいだったよねー」

ちとせ「何が言いたいかわかるかな?」

瑞樹「……」

ちとせ「アナタのせい、ってこと」

千夜「私達は望月聖さんの感覚を信じました」

凪「先ほど言ったのは、アンノウンプロデューサーはこの中にいること」

ちとせ「でも、聖ちゃんが言っていたことはもう1つ」

颯「桃華ちゃんは天才音楽家じゃない、って」

千夜「ここで疑問が生じます」

りあむ「聖ちゃんの感覚と評価が違う!なんでだろう、そう、みんなとりあむちゃんは考えた!」

千夜「私達は望月聖さんを信じています」

凪「聖さんにゼンガケです」

りあむ「だから、結論はこうだ!聖ちゃんがあってる!間違っているのは、評価した方!」

颯「さっき聞いた時も思ったけど、すごい考え方だよね」

りあむ「そして、これはアンノウンプロデューサーが正体をげろる理由でもある!」

千夜「櫻井桃華様は、櫻井の誇りを持った方です」

ちとせ「そんな女の子が、捻じ曲げられた評価なんて許すわけないの」

凪「いわゆる激怒です。いや、態度に出たわけではありませんが」

颯「さっきはちょっと出てたかなー」

ちとせ「アナタが捻じ曲げたのね、川島瑞樹さん?」

瑞樹「……」

ちとせ「もう少し根拠を言ってみようか」
145 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:13:02.73 ID:LpKpQWny0
りあむ「西園寺もそうだけど、どこもかしこも森芸能事務所が関わってた!」

ちとせ「アンノウンプロデューサーを評価した人達は、接点があった」

凪「由緒ある事務所です。コネクションがあるのは不思議でない」

千夜「川島瑞樹さんが関係していることも把握しています」

ちとせ「人の出入りは西園寺の関係者は記録を残していた。そういう伝統なのかしら」

りあむ「それに、色々とできすぎなんだよ!あんなに一本線ならりあむちゃんでもわかるよ!」

凪「いいえ、普通の人にはわかりません」

颯「はーたちだから、わかること」

ちとせ「人の意見を捻じ曲げられる存在がいること」

千夜「それを知らなければ、あなたにたどり着きません」

ちとせ「アナタが、やったのね」

瑞樹「……」

ちとせ「無理やり答えさせることもできるけれど、どうする?」

瑞樹「そうよ、私がやったの!すべてはあの子のため!」

颯「……」

瑞樹「世の中おかしいわ!本当の実力を見ないで顔も知らない評論家の意見で決まっていくなんて!西川保奈美は、絶対に成功すべき歌手なのよ!」

千夜「……」

瑞樹「これもあの子のため、使えるものはなんだって使うわ!いきなりこんなことができるようになっても、あの子のことだけを考えてた!だから……」

颯「だったら!」

凪「……はーちゃん」

颯「だったら、なんで保奈美ちゃんのことを信じてないの?川島さんが1番信じてくれてると保奈美ちゃんは、思ってるのに」

ちとせ「アナタは本当は信じてない」

颯「期待に応えようとして、必死にがんばってるのに、どうして」

千夜「彼女の中で、まだその時でない、という思いがあったのでしょう」

りあむ「それも変に評判が高くなってたから!櫻井桃華ちゃんの今の実力ならよかった、かも!」

凪「凪も経験がありますが、お膳立てのしすぎはよくない」

りあむ「アンノウンプロデューサーならこういうことをやれるのによさそうと目をつけたのかもしれないけど!現に今までばれてないけど!」

ちとせ「影に潜むのなら、覚悟が必要なの。アナタに覚悟があるとは思えない」

颯「……どうして、待ってあげないの」

瑞樹「……」

颯「……そっか」
146 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:14:13.86 ID:LpKpQWny0
りあむ「芸能界なんて目立ってなんぼだからな!隠れきれるわけないんだよ!」

千夜「ええ。私はアンノウンプロデューサーの正体に興味はありません」

ちとせ「最初から、アナタを探していた」

凪「『チアー』ではなさそうです」

千夜「人の思考を捻じ曲げるだけの能力」

ちとせ「深く反省してもらうわ」

颯「ちとせさん、どうするの?」

ちとせ「眷属にするのもいいけれど、アナタは変質の要件を満たさなそうだから」

千夜「自身の変化ではなく」

りあむ「誰かの変化を願った!ワガママなやつだな!」

瑞樹「……だって」

ちとせ「りあむ?」

りあむ「うん。あのさ、前もそんなこと思ってなかった?たとえば、アナウンサーを辞めた時とか」

瑞樹「それは……」

りあむ「まぁ、もう調べてるから知ってる。世の中が悪い悪い叫んでも、何も変わらないよ。変えられるのは、なんとかなるのは、自分だけ。いや、自分もそんなに思い通りにいかないけど」

凪「『チアー』に付加される力は、自身の希望と関係するらしい」

千夜「西川保奈美さんへの想いではなく、自身の身勝手な望みが、その能力を産んだのです」

凪「怒る理由も自分自身から」

ちとせ「西川保奈美ちゃんでアナタ自身の復讐を果たすべきではない。そうでしょ?」

瑞樹「……」

ちとせ「颯ちゃん、これでもう自分で反省するよ。だから、食べなくてもいいの」

颯「うん」

凪「凪は芸能界から去ることもオススメします」

千夜「あの世界は、反省するには騒がしすぎる」

ちとせ「でも、罰を与えちゃおうかな。私は怒ってるんだ」
147 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:15:02.26 ID:LpKpQWny0
りあむ「ちとせ、やりすぎるなよ?ぼくが知りたいことを聞くだけだぞ。必要以上の恐怖もいらないからね?」

ちとせ「わかってる。さぁ、目を開けて」

瑞樹「いっ……」

ちとせ「あはっ、わかるんだ。さぁ、引っ張り出してあげる。アナタは、何時その力を手に入れたの?」

瑞樹「いつ、そんなのわからない……」

ちとせ「いいえ、思い出すの。人間は簡単には忘れないから」

瑞樹「ま、待って!が、あああ!」

りあむ「ちとせ、ストップ!明らかに頭が割れそうなくらい苦しんでる!」

ちとせ「わかった。ごめんなさい、手加減を間違えちゃった」

瑞樹「は、はぁ、忘れてる……頭の中に空白が、ある……」

凪「強い忘却術でしょうか」

千夜「堀さんも同じ症状でした。『チアー』が使えるのかもしれません」

りあむ「『チアー』が使えるの?んんん、そうなの?」

ちとせ「アナタ、『チアー』と呼ばれる存在って知ってる?」

瑞樹「知らないわ、あなた達が何者かもわからないのに」

ちとせ「そう。それなら、ずっとそのままにしてあげる。でも、アナタに吸血鬼という恐怖は叩き込んであげる。罰は受けてね」

瑞樹「うっ……」

凪「おっと」

千夜「意識を失いました。お嬢さま、なにを」

ちとせ「眠らせただけ。『こちら側』の記憶と自分の能力は封じ込めたから、もう平気」

りあむ「これ、起きるの?」

凪「寝る姿勢としました。これで寝て起きても痛くない」

ちとせ「しばらくしたら起きるよ」
148 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:15:35.75 ID:LpKpQWny0
千夜「私達の目的は果たしました」

颯「うん。はー、壊してはいけないものを守れたと思う」

凪「はい。はーちゃんが言うので、その通りです」

千夜「努力や想いは、アンノウンプロデューサーが拵えた茶番でも本物です」

りあむ「それを壊す必要はない!でも、『チアー』の影も形もない!」

ちとせ「ちょっと不思議。これまでは『こちら側』と関係あったのに」

りあむ「確かに!スーパーレッドも『蝶』も『あちら側』の存在と対立してたよね!?」

凪「はい」

颯「そうだよね。はーも聖ちゃんもいたのに」

千夜「気づいていた様子もありません」

りあむ「標的にしてた様子もない!探してた感じもしない!探してたのはアンノウンプロデューサーだけ!」

凪「はて、何故でしょうか」

ちとせ「さぁ?この人に飽きちゃったとか」

りあむ「ぼくは『チアー』じゃないからわからない!よし、帰ろう!もう考えなくて済む!」

ちとせ「そうね。千夜ちゃん、お食事の準備をしてくれる?」

千夜「もちろんです、お嬢さま」

颯「川島さん、このままで大丈夫?」

りあむ「風邪ひくような気温じゃないし大丈夫!それに、桃華サマがなんとかしてくれる!」

颯「そういえば、桃華ちゃんに『こちら側』のこと話したけど平気なの?」

ちとせ「それは平気」

りあむ「シスタークラリスのお墨付きがあるから。なんでかは知らないけど」

凪「さて、帰りましょう。はーちゃん、お腹は空いていませんか?」

颯「なれないことしたから、ペコペコだよっ」

りあむ「うんうん。颯ちゃんは正直者であるべきだよ」

ちとせ「聖ちゃんをお迎えして、帰ろう。部室でいいかな?」

千夜「はい。帰りましょう」
149 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:16:14.32 ID:LpKpQWny0
79

幕間・地上の調

M市民文化会館・大ホール・舞台上

保奈美「あら……」

桃華「お待ちしておりましたわ」

保奈美「桃華ちゃんだけなのかしら」

桃華「そうですわ。他の方は帰らせましたわ」

保奈美「警備員さんはいたけど、あの人は桃華ちゃんが手配した人なの?」

桃華「はい。普段は櫻井の邸宅にいらっしゃいますわ」

保奈美「やっぱり」

桃華「気づいてましたの?」

保奈美「はい。雰囲気がよかったから」

桃華「時期に貴方にも気づかれたということですわね。お話したくて、保奈美さんをお呼びしましたの」

保奈美「私と……」

桃華「まずはお伝えしたいことから。今回の話は全てなかったことにしますわ」

保奈美「……ええ」

桃華「八神さんが空いた会場は活用してくれますわ。そんなに心配な顔しないでくださいな」

保奈美「……」

桃華「次は、謝らせてほしいですわ。先ほどは言いすぎましたわ」

保奈美「いいえ、そんな。図星だったから。それに時間も経って冷静になったから、平気よ」

桃華「真実でもあのような場で言うことではありませんわ。そして、もう1つ聞いてほしいことがありますの」

保奈美「ええ、もう時間は大丈夫だから」

桃華「わたくしのピアノ、どう思いまして?」

保奈美「上手だったわよ」

桃華「ピアニストにはなれそうかしら?」

保奈美「それは、難しいかも。でも、努力すれば」

桃華「わかりましたわ。以前同じことを言われましたの」

保奈美「どなたに、ですか」

桃華「音楽の先生ですわ。更に、作詞と作曲も別の方に習っていましたのよ」

保奈美「幼い時からずっと?すごいわね」

桃華「わたくしも儚い希望は抱いていましたわ。いつか、その世界でも成功できるのではないかと」

保奈美「……」

桃華「残念ながら叶う望みの低い夢のようですわ。わたくしは櫻井として生きる者、きっと先生もそう思っていたからこそ言ったのでしょう」

保奈美「そんな、まだ決まったことじゃないのに」
150 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:16:44.74 ID:LpKpQWny0
桃華「ええ、その通りですわ。だから、櫻井桃華はアンノウンプロデューサーという名で活動を始めましたの」

保奈美「桃華ちゃんも反抗するのね」

桃華「わたくしだって子供ですもの。貴方もですのよ?」

保奈美「……そうね」

桃華「必死にがんばりましたわ。結果もそれなりに。今回は、貴方達と触れ合い、実力を見極め、深く知ることで企画の価値を上げようとしましたの。成功したと思いましたわ」

保奈美「……」

桃華「残念なことに、これまでが偽りでしたわ。アンノウンプロデューサーの力は作られた評判により押し上げられたもの。知る人が増えれば、正当な評価が下されますわ」

保奈美「そんな」

桃華「地上ではなく天上に響くような歌を、貴方によって響かせたかったですわ。だけれど、わたくしも貴方も未熟過ぎましたの」

保奈美「……ええ」

桃華「怯え急ぐ理由をわたくしは問いましたわ。それはわたくしも感じていることですわ、聞かれる道理などありませんわね」

保奈美「その質問は、答えがあるの」

桃華「言わなくて結構ですわ。わたくしと、きっと同じですわ」

保奈美「……」

桃華「……自身を大きく見せたくて、背伸びしているだけですの」

保奈美「ありがとう、桃華ちゃん。ずっと思っていたことがあって」

桃華「いいですわ、言ってくださいまし」

保奈美「私はそんなに裕福な家庭出身ではないけれど、似ていると感じていたの。はじめて会った時に」

桃華「そうかもしれませんわね。それならば、貴方も誇り高く生きますのよ」

保奈美「ええ。自分だけはそう思えるように」

桃華「アンノウンは消えますわ。消える前に、アンノウンとしての言葉を」

保奈美「はい」
151 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:17:38.48 ID:LpKpQWny0
桃華「申し訳ありませんけれど、貴方の順調ともいえる芸能界のキャリアはしばらく停滞しますわ。理由は……すぐにわかりますわ」

保奈美「……そうかと、感じてた」

桃華「ですけれど、これから訪れる時間が西川保奈美にとって大切な時間になりますわ」

保奈美「……」

桃華「たゆまぬ修練に必要な時間が与えられますわ。進んでいないように見えるかもしれませんわ。それでも、貴方の夢は必ず近づいていることを信じてくださいな」

保奈美「はい」

桃華「自分自身と向き合うことですわ。そうすれば輝きますわ、今以上に西川保奈美として」

保奈美「それは、信じていいの?」

桃華「櫻井桃華はウソをつきませんわ……あら?」

保奈美「ずっと正体を隠してたのに?」

桃華「語弊がありますわね、撤回します。もうウソはつきませんわ」

保奈美「ありがとう、信じるわ」

桃華「よろしい」

保奈美「何も隠さずに、堂々としている桃華ちゃんの方が素敵よ」

桃華「その言葉は受け取りますわ」

保奈美「あのね、桃華ちゃん」

桃華「どうかなさいまして?」

保奈美「どうして、みんなを集めて桃華ちゃんも参加したのか、考えていたの。もしかして、放課後に集まってこういうことをしたかったの?」

桃華「それもわかってますのね。そうですわ」

保奈美「お茶会なんて、桃華ちゃんの好きなことだものね。ふふっ」

桃華「やはり、保奈美さんは年相応に笑う時が魅力的ですわ」

保奈美「えっ」
152 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:18:11.77 ID:LpKpQWny0
桃華「私に言い聞かせる言葉でしたけれど、貴方にもお伝えしますわ」

保奈美「なにかしら?」

桃華「未熟で幼い時期が、そのような時期だからこそ、将来の糧になりますわ。今を楽しむことが貴方の夢を引き寄せると思いますわ」

保奈美「……うん」

桃華「わたくしは世間一般の女子高生が何をするかは知りませんけれど、放課後に遊んでみたらいかがかしら。例えば……例えも出てきませんけれど」

保奈美「ふふっ。それは私で探すわ、ありがとう。桃華ちゃんも、きっとたくさんのできないことがあると思うけれど、楽しんでね」

桃華「はい。わたくしは櫻井桃華。使命は果たしますわ」

保奈美「使命?」

桃華「これは貴方にお伝えすることではありませんの。そうですわ!演奏いたしますから歌ってくださいな、保奈美さん?」

保奈美「うーん、一緒に歌いましょう?独りで歌うのも寂しいわ」

桃華「まぁ、ワガママですのね。構いませんわ。曲は、こちらにしますわ」

保奈美「この曲は、学校でよく練習してる……」

桃華「どうぞ、保奈美さん。歌ってくださいな。怯えることも慌てることもなく」

保奈美「ええ、精一杯で。すぅ……」

桃華「……最初からこのように歌ってくれれば、わたくしも意地を通しましたのに」

保奈美「桃華ちゃん!」

桃華「いいえ、後悔することなんてありませんわ。もう、待ってくださいな!」

幕間・地上の調 了
153 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:19:35.22 ID:LpKpQWny0
80

数日後

とある10月の土曜日

あかり「こんにちはっ」

あきら「あかり、来たんだ。コーヒーあるけど、飲む?」

あかり「飲みます。凪ちゃん、お隣失礼するんご」

凪「構わない」

あかり「あっ、マグカップ買ったんですね!カワイイですっ」

凪「はい。買ったのではなくて貰い物ですが」

あきら「あかりの分もあるよ。どれにする?」

凪「凪はウナギの絵が描いているものにしました」

あかり「ウナギもかわいいけど、ウサギのにします。なんで時計を持ってるんでしょう?」

あきら「わかった」

千夜「辻野さん、来てたのですね」

あかり「千夜さん、こんにちは。それは?」

千夜「パウンドケーキを焼いてみました」

凪「オヤツにします」

あかり「わー、食べるんご!」

あきら「千夜サンもコーヒーいる?」

千夜「はい」

凪「座ってください」

あきら「マグカップは……」

千夜「緑色の珍妙なやつが描いてあるものです。選ぶ人もいないでしょうから」

あかり「味があるデザインですね。あきらちゃんは?」

あきら「自分は白雪姫っぽいやつ。りあむサンは小人」

あかり「セットなんですねっ。りあむさんのは、ん、りあむさんそのものは?」
154 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:20:09.95 ID:LpKpQWny0
凪「そちらです」

りあむ「……」

あかり「寝てるんご。あれ、部室にロッキングチェアなんてありました?」

千夜「財前さんからいただきました」

あきら「適度に揺れるから眠気を誘う、だって」

凪「ちなみに、マグカップも同じく」

あきら「聖チャンのお世話したから、だって。そんなにしてないけど」

あかり「ほー。そういえば、舞台はどうなったんですか?」

凪「中止ではなく、演目が変わるそうです」

千夜「はい。八神さんが尽力されたようです」

あきら「ヘレンさんが主役らしいよ」

千夜「ほかに、兵藤レナが集めたアーティストが出演するようです」

凪「なんとも珍妙な結末です。はーちゃんの出番はなくなりました」

千夜「オーディションメンバーについてはどなたも出演はないようです。もちろん、櫻井桃華さんも関わりはありません」

あかり「そっか。颯ちゃんは残念そうでした?」

凪「いいえ。『捕食者』の力を上手に使えたので、それで満足しているようです。今もきっと修行中です」

あかり「元気ならいいんご」

あきら「1番残念そうだったのは、時子サマらしいよ。りあむサンが言ってた」

あかり「そうなんですか?」
155 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:21:15.39 ID:LpKpQWny0
千夜「望月さんが表舞台に出ることは叶いませんでしたから」

あかり「へー、時子様はストレスがあると買い物をするタイプなんですか?マグカップも買ってくれましたし」

あきら「そうじゃないと思う」

凪「人情派なだけと推測する」

あきら「聖チャンも体を治すのを優先するって」

凪「まだつながっている何か、を切り離すと言っていました。凪にはよくわかりません」

あかり「焦ってもいいことはないですよね。聖ちゃんのデビューは楽しみに待ってるんご」

あきら「うん」

凪「はーちゃんからSNSのリンクが送られてきました。おやおや」

あかり「千夜さんのパウンドケーキは美味しいです。優しい味がするんご」

千夜「ありがとうございます」

凪「凪は見てもらいたいものがあります。こちらです」

あかり「こちら?凪ちゃんのケータイに映ってるのは……」

千夜「どなたかのSNSですか」

凪「これはアナスタシアさんの投稿です」

あきら「自分には、アナスタシアさん、西川保奈美さん、あと櫻井桃華さんが映ってるように見えるけど」

あかり「その3人ですね。何か食べてる?」

千夜「明石焼きのようです」

あきら「よくわからないけど、楽しそう」

あかり「3人でお出かけしてる理由はわからないけど、楽しそうだから理由はなんでも良いです」

凪「凪も同感です。雨降って地固まる、としましょう」

あきら「結局、ティータイムもディナーもお嬢サマの趣味だったんだよね?」

千夜「そのようです」

あかり「面倒なことはしないで、遊びに誘えばいいんですっ」

りあむ「あかりんごはそういうけどさ、色々あるんだよ。たぶん。ぼくは軽率に誘えないし」

あかり「りあむさんが起きました。おはようございますっ」

りあむ「おはよう!時子サマがくれた椅子はすごいぞ!ずっと座っていたくなる!」

あかり「疲れてるわけじゃないみたいで安心したんご」

りあむ「あかりんご、人には時には回りくどいことも必要なんだよ」

あかり「りあむさんがそういうなら、そういうことにするんご」

りあむ「でも、次の被害者は出なかったし、人間関係にヒビも入らなかったし、ぼくとしては上出来だと思うよ!」

あきら「そうデスね」
156 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:22:21.04 ID:LpKpQWny0
凪「その言い方は懸念があることを示します」

りあむ「凪ちゃん、するどいな」

あかり「自白するんご。楽になりますから」

りあむ「そんな取り調べみたいな言い方する必要ある?まぁ、言うけど」

千夜「『チアー』に関係することですか」

りあむ「そう!それも2つ!1つは、今回の動機!」

凪「残念ながら、今回は影も形もありません」

りあむ「前は『あちら側』に危害を加えようとしてたけど、そういうのがない!つまり!」

あきら「つまり?」

りあむ「『チアー』は適当に能力を付加してる時がある!」

凪「ならば、ただの愉快犯だ」

あかり「能力を使うだけ使って、あとは放置」

千夜「厄介な奴ですね」

りあむ「まぁ、今回の件に興味なかっただけかもしれないけど。2つ目は忘却術!」

千夜「お嬢さまが何度か試みたようですが、川島瑞樹さんからは何も得られていません」

あかり「ちとせさん、何回か川島さんに会いに行ってる……恐怖でしかないんご」

あきら「トラウマになるかな。でも、自業自得」

りあむ「つまり、『チアー』も使えるってことだよ!」

千夜「堀さんも覚えていませんでした。高森さんも同じようです」

凪「忘却術、あるいは洗脳する能力が使えるということは」

あかり「『チアー』はもともと人間じゃない、とか」

千夜「吸血鬼や日下部さんのような存在が『チアー』になった、と」

あきら「それなら教会が把握してる気がする」

凪「はい。あくまで人間が力を得て、人間に力を与えているからこそ、見つけにくい」

あかり「シスタークラリスは目ざといんご。いや、目は見えないので比喩ですけど」

りあむ「今回のでわかった!『チアー』で与えられる力には、洗脳みたいなのもある!」

凪「『蝶』が存在するので、もはや何があっても驚かない」

千夜「……なるほど。お前が言いたいことが読めました」

あかり「『チアー』も忘れる力が使える、『チアー』は忘れる力を与えられる……あっ」

千夜「『チアー』は自身に能力を付加している、と」
157 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:23:07.50 ID:LpKpQWny0
りあむ「そう!あくまで、ぼくの想像だけどな!」

凪「『チアー』という能力だけではない、そうなれば」

あきら「どんな能力を積み重ねた存在か、わからない」

あかり「とっても危ないんご」

凪「もとから危険な存在であることはわかっています」

りあむ「今まで通り気を付ける!でも、見つける!」

千夜「はい。様々な報いは受けていただきます」

あきら『チアー』がいなければ、捻じ曲がった評価はなかった」

凪「はーちゃんの舞台デビューもあったかもしれない」

りあむ「時子サマが無駄にがっかりすることもなかった!櫻井桃華ちゃんが不機嫌になることも!」

あかり「なにごとも正直が1番です」

りあむ「ひとまずは解決!『チアー』の手掛かりはまた無くなったけど、時子サマのお願いでも聞きながらやっていくぞ!おつかれ!」

凪「はい、凪も引き続き協力しま……はーちゃんからの連絡です」

りあむ「颯ちゃんから?なになに?急用?」

凪「櫻井桃華さんが教会を訪れるので、はーちゃんも教会に行くと」

りあむ「なんで?どういう経緯でそうなるのさ?」

凪「お土産は明石焼きだそうです」
158 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:23:59.79 ID:LpKpQWny0
81

出渕教会・地下1階

美由紀「おいしい、こっちでも食べられるんだー」

桃華「喜んでいただいたようで何よりですわ」

颯「はー、明石焼きは初めて食べた」

桃華「シスターのご自宅は兵庫にあると聞いておりますわ」

クラリス「はい」

美由紀「そうだよー。西のおうちは近くにたこ焼き屋さんも明石焼き屋さんもあるんだ。どっちも美味しいんだよ」

颯「へー」

桃華「わたくしも産まれは神戸ですの。物心つく前にこちらに移りましたわ」

颯「保奈美ちゃんも兵庫だったなー」

桃華「颯さんは、よく食べますのね」

颯「うん。お腹空くし、人より食べないとだから」

桃華「休憩時間にお菓子を際限なく食べていましたけれど、食欲旺盛だけが理由ではありませんのね」

颯「桃華ちゃんが教会の地下にいるってことは、話したの?」

クラリス「いいえ。そちらはお話しておりません」

桃華「颯さんには魅力を、いつもと違う不思議な感覚を、覚えましたわ」

美由紀「桃華ちゃんは分かる人なのかも」

クラリス「櫻井の方ですから」

桃華「お人柄も才覚でもなく、颯さんが抱えているモノを勘違いしていたようですわ」

颯「そう。はー、『捕食者』さんとつながってるんだ」

桃華「わたくしを守るために来てくださいましたのね。感謝しますわ」

颯「ううん。だって、それを引き継いだから」

桃華「わたくしが思っている以上にお強い方でしたのね」

美由紀「うんうん。颯ちゃんは強いんだよー」

桃華「シスタークラリス、本題に移ってもよろしいかしら」

クラリス「かまいません」
159 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:24:44.80 ID:LpKpQWny0
桃華「わたくしは『あちら側』の存在を把握しておりませんでしたわ」

颯「……」

桃華「しかしながら、自らの存在を明かし、わたくしの正体を探していた目的も教えてくださいましたわ」

颯「本当は、『こちら側』みたいな力を使う人を探してるのも言ったよ」

クラリス「私が許可をしました」

桃華「それが疑問でしたの。もしかして、わたくしがアンノウンプロデューサーということを知っていましたの?」

颯「えっ、そうなの?」

美由紀「違うよ?」

クラリス「申し訳ありませんが、把握しておりませんでした」

美由紀「もし悪いことがあったら、桃華ちゃんに助けてもらおうとは話してたよー」

桃華「わたくしとシスターに面識はありませんわ。音楽活動のことも知らないようですわね。それならば、理由は1つしかありませんわ」

クラリス「ご想像の通りかと」

桃華「わたくしが櫻井の者だから、ですわね」

クラリス「はい」

美由紀「桃を名前につけるのすごいよねー」

颯「櫻井の人だと何で言っていいの?あと、桃?」

クラリス「お話しましょうか」

桃華「いいえ、結構ですわ」

颯「聞かないんだ」

桃華「これは櫻井の問題ですわ。わたくしで答えは見つけないといけませんの」

颯「……凄いおうちに大変なんだね」

美由紀「大変なことも良いこともたくさんあると思うなー」

桃華「わたくしに恥をかかせた報いは受けさせるつもりですわ。完全なる私情ということは理解しておりますわ」

クラリス「はい」

桃華「お時間をくださいまし。今何事も決めてしまうには拙速ですわ」

クラリス「こちらはかまいません。吉報を待っています」

桃華「感謝しますわ。颯さん?」

颯「なに?」
160 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:25:21.14 ID:LpKpQWny0
桃華「颯さんはずっと堂々としていましたわ。あの中で歌うことは大変でしたのに、怯む様子はありませんでした。あの世界、いえ、どの世界でも、自身を特別に見せたくて虚栄をはるものですのよ」

颯「だって、聖ちゃんみたいに歌も上手くないのは本当だもん」

桃華「使命を負った、人と違う存在だからこそ、あのように振舞えたのですのね」

颯「ううん、それは違う」

桃華「違いますの?」

颯「はー、何でもそこそこだったけど、最初から特別な女の子なんだ。みんな、誰かの子供に産まれてきたから、なーもずっと一緒にいたし、なーがいなかったとしても、そうなんだよ」

クラリス「その心境にたどり着くことは、難しいことなのですよ」

桃華「わたくしも同じですわ。わたくしは櫻井桃華。特別な存在ですわ、最初からずっと」

美由紀「産まれてきてありがとう、でいいんだよー」

桃華「次は、その力をお借りしますわ」

颯「うん」

桃華「篠原を待たせているから、失礼しますわ」

クラリス「いつも扉は開いています。あなたのこれからに光あらんことを」

桃華「颯さん、楽しい時間をありがとうございましたわ。また、お会いしましょう」

EDテーマ
Twilight Sky


フォー・ピース
161 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:31:48.39 ID:LpKpQWny0
82

時は過ぎて

12月25日・クリスマス



夢見りあむの自室

夢見りあむの自室
ちとせを招くために千夜に掃除してもらったので整理されている。今のところは。

りあむ「りあむちゃんはクリぼっち……現役JDのクリスマスとは思えぬ虚しい夜……」

りあむ「……」

りあむ「まぁ、そんな悲惨じゃないけどな!教会のクリスマスイベントを誘われたけど行ってないだけだし!行ってない理由も授業で遅くなるからだし!クリスマスプレゼントも今年はもらえた!冷蔵庫には白雪ちゃんがくれた保存食もある!授業も今日で終わり!最高だ!」

ピンポーン……

りあむ「来客?ピザは頼んでない。あきらちゃんとあかりんごは勤労中で、椿さんもバイトだっけ。若葉お姉さんも卒論がんばり中だし、凪ちゃんは家だよな。白雪ちゃんは、りあむちゃんに何も言わずに会いに来るわけないか……よし、でない!」

ピンポーン……

りあむ「もう1回鳴らしたぞ?急用か?いやいや」

……ガチャ

りあむ「入ってきた!?玄関のカギしめわすれてたか!?い、いま、いきますから!玄関までで頼む!」
162 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:32:32.25 ID:LpKpQWny0
83

夢見家の玄関

りあむ「はいはい!どちら様ですか!?」

イヴ・サンタクロース「メリークリスマス!」

イヴ・サンタクロース
サンタクロース。わかりやすくサンタクロースの衣装を着ている。ありとあらゆる言語のクリスマスソングが歌えるらしい。

りあむ「いや、本当に誰だよ!なんかモフモフしたのもいるし!」

イヴ「こちらはブリッツェンですぉ、ご挨拶してください〜」

ブリッツェン「ブモッ!」

ブリッツェン
トナカイ。イヴのパートナー。言葉はほぼ理解しているらしい。

りあむ「トナカイだ。いや本当にトナカイか?言葉を理解してるぞ、こいつ」

イヴ「夢見りあむさん、会えてうれしいです〜」

りあむ「結構でかい!顔がいい!目が魔力を持ってそう!なんで、名前を知ってるのさ!」

イヴ「サンタクロースなので。クリスマスプレゼントを持ってきました〜」

りあむ「クリスマスプレゼントは、今年はまにあってる!突然のサンタクロースは不要!」

イヴ「そうなんですか〜?」

りあむ「あきらちゃんがクリームとかくれた!手洗いが多くて手荒れしてるの気づいてくれたんだぞ!」

イヴ「へぇ〜」

りあむ「時子サマから新しいシューズもらった!若葉お姉さんと椿さんから、教科書代になる図書券も貰ったし、あかりんごはいつも通り色々くれたし、凪ちゃんから変な置物も貰った!」

イヴ「フムフム」

りあむ「ちとせと白雪ちゃんから高そうなチョコレートも貰ったし、今日はリーダーちゃんからクッキーもいただいた!どうだ、りあむちゃんからは想像できないくらい充実してるだろ!」

イヴ「それは知ってます〜」

りあむ「教会の方面の知り合いだと思うけど、帰ってもらって……えっ、知ってる?」
163 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:33:37.92 ID:LpKpQWny0
イヴ「別のものですよ〜。まずは、ご家族からのクリスマスレターです」

りあむ「そういう手紙はいらねぇ!そうじゃないって、いつも言ってんのに!」

イヴ「そう言うと思っていたので、本当はこちらですよ〜」

りあむ「見るからにラッピングされた箱だ。あと、手紙本物?」

イヴ「手紙は本物ですよ。どちらも、どうぞ」

りあむ「いや、受け取るのは……」

イヴ「時子さんは喜んでくれたのに〜」

りあむ「受け取っていい気がしてきた。時子サマと知り合いなのか」

イヴ「素直で良い子です、どうぞ〜」

りあむ「ありがと、中身何なの?」

イヴ「お風呂セットですよ〜。実習中に汗をかくのが気になるんですよね。汗の臭いには、ゆっくりお風呂で汗をかくといいですよ〜」

りあむ「ええ、それ、何で知ってるの?時子サマにも言ったことないぞ!」

イヴ「臭ってないので大丈夫なのに〜」

りあむ「それは信じていいのか?まぁ、いいや。ありがと。もらっておく。今日はゆっくりお風呂入ってみる」

ブリッツェン「ブモッ、ブモモッ!」

りあむ「なんだよぉ!トナカイがぶつかってきたぞ!プレゼントを置くだけだよ!まだ、何かあるの?いや、ありそうだな」

イヴ「そちらはオマケです。本当のプレゼントを差し上げます」

りあむ「本当の?」

イヴ「あなたの生き方に大切なものをあげます。さぁ、空の旅へ!」

ブリッツェン「ブモモッ!」

りあむ「えっ、なんか、眠く……」

イヴ「グッドナイト、アンド、ハブアナイスフライト!」
164 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:34:33.91 ID:LpKpQWny0
84

某所

りあむ「……うわぁ!どこだ、ここ!?」

千夜「おはようございます」

りあむ「白雪ちゃん!?なんで、ここにいるのさ!?」

千夜「わかりません。私も先ほど起きたばかりです」

りあむ「そう、サンタクロースだ!サンタに会った!?」

千夜「ええ。サンタクロースを名乗る人物に眠る前は会っていたような気がするのですが……」

りあむ「プレゼントもらった?何ここ!?お寺かなにか!?」

千夜「プレゼントはいただきました。お前は落ち着け」

りあむ「落ち着くか、落ち着け、夢見りあむ。和室だ。布団だ。外は雪景色の竹林だ……どこだここ!?白雪ちゃん知ってる?黒埼の別荘とか!?」

千夜「私もどこかはわかりません。黒埼の別荘ではないかと」

りあむ「そうだ、ケータイ!圏外!どんな山奥だよ!?今時圏外になる山なんて日本ではほぼないぞ!日本じゃないのか!?」

千夜「日本の山のように見えるのですが……」

りあむ「どこなんだよ?なんのために連れてこられたんだ?わからない!?」

脇山珠美「はっはっはっ、今回の客人は騒がしいですなぁ。茄子殿、客人が起きましたぞ!」

鷹富士茄子「はいはーい。それでは、ご挨拶しないとですねー」

脇山珠美
剣士。羽織姿に脇差を携えている。人を見かけで侮ってはいけませんぞ、らしい。

鷹富士茄子
彫綴師、スペリングマン。紫単色で染め上げられた着物は質素ながら高級感が漂う。茄子じゃなくて茄子ですよー、らしい。

りあむ「いや、誰だ?純和風だから日本かここは?とりあえず、只者じゃない気はするな……」

千夜「珍しくお前と同じ感想です……」

第5話に続く


製作・ブーブーエス
165 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:36:13.47 ID:LpKpQWny0
次回予告

千夜「その高橋礼子と名乗るヴァンパイアハンターから、お嬢さまと関さんを守るためなのですか」

次回
白雪千夜「7人が行く・EX5・吸血鬼殺し」
166 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:38:36.26 ID:LpKpQWny0
オマケ

P達の視聴後

CuP「Coさん、大学は音大でしたよね?」

CoP「そうだよ」

PaP「しかも、声楽だ」

CoP「自分は歌で稼げそうもなくて離れたので、保奈美ちゃんには本当にがんばって欲しい」

CuP「でも、芸能界の仕事にしたのは思い入れですか?」

CoP「それは成り行き。卒業して務めてたのは、文房具メーカーだったので」

CuP「そうなんですか、知らなかった」

PaP「こいつは入社後も色々あったぞ、今でこそ落ち着いてるけど」

CoP「まぁ、それは認めます」

CuP「Paさんはなんでこの仕事を?」

PaP「せっかくだから芸能界で働きたかったからだよ。入れたのが芸能事務所だっただけのこと」

CoP「そこの上司が今の社長」

PaP「そうそう。Cuはどうなんだ?」

CuP「僕は就職活動中に誘われたので。コネってやつです」

PaP「ははは、そんなもんの方がいいんだよ」

CoP「その感覚は、わかります」

PaP「そんなこっちからすれば、みんな特別すぎる女の子よ」

CoP「本当にそう思いますよ」

PaP「まぁ、それだけじゃ売れないもんな」

CuP「だから、自分達の存在が必要だと信じることにします」

PaP「ああ。微力な存在だけど、精一杯がんばるとしようじゃないか」

おしまい
167 : ◆ty.IaxZULXr/ [saga]:2022/10/23(日) 21:44:59.12 ID:LpKpQWny0
あとがき

だいぶお待たせしました

傍から見れば特別な存在も、本当に特別であるかどうか悩んでたりするよね
7人が行くのはーちゃんは特別な存在であると最初から思い込んでいるのであまり悩まない

次回は、
白雪千夜「7人が行く・EX5・吸血鬼殺し」
です。強キャラが出るよ

次回も気長にお待ちください
更新情報は、ツイッター@AtarukaPで

それでは
168 : ◆ty.IaxZULXr/ [sage saga]:2022/10/23(日) 21:48:48.80 ID:LpKpQWny0
7人が行く・EXシリーズリスト

第1話 夢見りあむ「7人が行く・EX1・エクストライニング」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1558865876/
第2話 久川凪「7人が行く・EX2・トクベツなフツウ」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1607170950/
第3話 辻野あかり「7人が行く・EX3・出郷りんご」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1629804897/
第4話 久川颯「7人が行く・EX4・天上の調」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1666519693/
第5話 白雪千夜「7人が行く・EX5・吸血鬼殺し」
(題名は仮題)
第6話 黒埼ちとせ「7人が行く・EX6・ぼくじゃだめなんだ」
(題名は仮題)
第7話 砂塚あきら「7人が行く・EX7・鬼」
(題名は仮題)
第8話 白雪千夜「7人が行く・EX8・もしもあの日に戻れたら」
(題名は仮題)
最終話 夢見りあむ「7人が行く・EX9・だからぼくらは夢を見る」
(題名は仮題)
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/10/23(日) 23:29:29.14 ID:OEJKrFCS0
おつおつ
1年半ぶりぐらいか
170 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/01/02(月) 23:55:11.35 ID:HuUEla+Ho
トラベラーは悪質だったが、チアーはそこまで悪人でもない?
続き待ってるよ
254.67 KB Speed:0.3   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
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