【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その3だよ」【×影牢】

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898 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/18(月) 23:55:39.93 ID:Qx5bHHluo

提督「さて。俺は、何も難しいことは言っていないつもりだ」

提督「俺たちの身の安全のため、深海棲艦の連れ去りをやめさせろと、組織が何をしているかを見せろと」

提督「深海棲艦を鉄砲玉にして、或いは艦娘を深海棲艦に作り変えて、俺たちを殺す武器に作り変えるのをやめてくれと言っているだけなんだ」

提督「人間に例えて言えば、生きたままの人間の手足をぶった切って自由を奪い、砲弾のように大砲から打ち出すのと同じようなもんだ」

提督「もしどこかの国がそんなことをしていたら、やめさせようとするだろう? 俺はそれと同じことを訴えているだけだ」

将官たち「……」

提督「あんたたちが人命を守りたいと思うのと同じように、俺はうちの島の住人を守りたくて、俺はここに来た」

提督「組織に関係している海軍の人間を処断しろとか、責任取らせろとか、そういう話は一切していない」

提督「この場でここにいる誰かの命を脅かすような真似もしない。俺の要求を飲むのか、突っ撥ねるのか。俺は聞きたいのはそれだけだ」

将官たち「……」

将官2「黙って聞いていたが……目に見えて狼狽えている者がいる以上は、嘘やはったりを言っているわけではなさそうだな」

将官3「そもそも、何故こんな大事な話が共有されていないんだ。どうしてこんな事態になるまで放置しておいたんだね?」

H大将「まあ……そいつは仕方ないんだ、ふたりとも。その組織の話については、あまり迂闊なことも喋れなかったからな」

提督「……そっちのふたりは……大将か?」

H大将「ああ。まず、こちらは……」

将官2→宇大将「ん、宇大将だ。佐世保鎮守府を統括している」

宇大将「生憎、自分は貴様が欲している情報を提供できる状態にない。この場は聞き手に回るが、のちに詳しく話を聞かせてもらうぞ」

提督「……」
899 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/18(月) 23:56:23.18 ID:Qx5bHHluo

H大将「それから、こちらは大湊警備府の武大将だ。彼は、深海棲艦との休戦に肯定的な意見を出している将官の一人だ」

将官3→武大将「初めましてだね。よろしく頼むよ」ニヤッ

提督「ああ。大湊っつうと、N特尉の上官か」

武大将「うん。残念ながら彼は大湊に戻る暇もないようで、最近は私も彼の顔をあまり見ることができていないがね」

提督「そりゃ特警の仕事を押し付けてるあんたのせいじゃねえか。N特尉以外の誰か出張らせりゃいいだろうによ」

武大将「おや。そりゃ失礼」フフッ

提督「まあ、あいつがあんな仕事に就くことになったのは、あいつ自身の身から出た錆だけどな。あんなツールに手を出したのが悪い」

将官「ツール? ……艦娘洗脳ツールのことか?」

将官「そんなことまで知ってるのか……」

提督「……なんか、俺に関する情報が、本っ当に行き渡ってねえな? 俺って悪い意味で重要人物だろ?」

大将「これでも貴様の話題は俺や中将殿から出してはいるぞ。ただ、貴様に関わる話はどうにも盛り上がらなくてな……」

祢大将「大将は君のことをもっと話したいようだったが、いつも早々に切り上げられていたんだ。そうですね、元帥閣下」

元帥「……」

提督「へぇ……」

大将「むう……そういえば今更だが、元帥殿も貴様の話題に対してはことのほか反応が薄かったように思えるな?」

大将「あの島の関係者だからという理由で、皆が触れたがらなかったのも、理由のひとつだと思っていたが」

祢大将「それは和中将のことだな」

和中将「!?」ビクッ
900 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/18(月) 23:57:06.25 ID:Qx5bHHluo

武大将「そのことを抜きにしても、提督の情報は単に要注意人物、という話だけ回ってきていたんだよねえ」

祢大将「おかげで彼の話はいつも消化不良だった。詳細を武大将と話し合ってはいたものの、肝心な話は不明だとはぐらかされ続けてきた」

武大将「提督の話が本格的に持ち上がったのは、中将殿が大佐たちと一緒にあの島で泊地棲姫と交戦したあとだったかな」

武大将「その当時は中将殿も入院しておられたし、他に詳しい者と言えば、甥のX大佐経由で提督に接触していると噂の大将だけ」

武大将「その大将に詳しく聞こうと思っても、取り込み中だったり一人で先に突っ走っていたり……置いてきぼりにされてきた感はあるね」

大将「うぐ……」

祢大将「情報がまともに揃っていない状態で、彼のことを信用するもしないもないからな。宇大将もそうだったんではないかな」

宇大将「ああ」

H大将「まったく、大将も私より先にほかの大将に詳しく話をしておけば良かったものを」ハァ…

武大将「そうだよ、どうして私よりH大将のほうが彼と親し気なんだ? H大将はどちらかと言えば彼とは反対の立場だったじゃないか」

大将「し、仕方ないだろう! H大将が提督のことを疑っていて、それで俺に話を持ってきたんだ!」

H大将「……思えば、その話もJ少将からだったな。俺たちはあいつにいいように踊らされていたということか?」

提督「今更どっちでもいいけどよ。そんなことより、俺の用事は……元帥」ギラリ

元帥「……」

提督「あんたから、さっきの話の是非を問うことだけだ」

将官たち「……!」

艦娘たち「元帥閣下……!」
901 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/18(月) 23:57:52.06 ID:Qx5bHHluo

提督「黙ってたって進展しねえぜ。あんたが組織のトップなんだ、とっとと結論を寄越しな」

和中将「……ぐぬうう!! さっきから聞いていれば偉そうに、それが年長者に対する態度か!」

和中将「海軍の最高責任者だぞ!! 少しは態度を弁えろ若造が!!」

提督「ったく、さっきからうるせえな。んじゃ、お前に組織の調査を頼めばいいのか?」

和中将「貴様の世迷言など信じられるか! どうせ嘘八百を並べて海軍の内部崩壊を企んでいるんだろう!」

提督「うげ……参ったな。こいつ、他人の話を聞かねえタイプか。知ってたけど面倒臭え」

祢大将「……和中将」

和中将「!」ビクッ

H大将「提督、貴様もいちいち突っかかるな」

提督「それは出しゃばってくる和中将に言ってくれよ……もう相手にしねえけどよ」

提督「けどまあ、和中将の言い分もわかるんだよ。滑稽ではあるが、そこに悪気はねえ。本当に組織のことを知らねえからこその言い分だ」

祢大将「……」

提督「そういう和中将みたいな反論や弁明が、元帥の口からも一切出てこねえってのはどうなんだ?」

和中将「げ……元帥閣下がこのことを御存知ないからに決まっているだろう!?」

提督「知らないなら知らないなりに、わからないって一言否定してくれてもいいじゃねえか。それすらないのが、どうなんだって話だよ」

祢大将「……」

中将「元帥。提督の言う通りだ、黙っていても事態が好転するわけではないぞ……?」
902 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/18(月) 23:58:36.25 ID:Qx5bHHluo

提督「うーん……そうだな。しょうがねえ、もうひとつ嫌な話をしてやるか」

大将「ま、まだあるのか?」

提督「中将に伝えなきゃいけない話があるんだ。いまこの場で話してもいいか?」

中将「む……な、なにかね?」

提督「ここに来るとき与少将から聞いたんだが、ついさっき駐日イギリス大使から、俺たちにコンタクトを取りたいって話が来たんだと」

中将「! 本当かね」

提督「ああ、詳細はこの後で与少将に確認するが、ことの次第によっては、日本政府よりそっちを先に相手しないといけなくなるかもな」

大将「な、なんだと!?」ガタッ!

提督「俺たちは、組織の話がクリアにならない限りは、日本政府との話も保留にしたいんだよ」

提督「この話は、俺たちの身の安全を保証してもらう話なんだ。その話が進まない限りは、政府と話し合いなんかしてもしょうがねえ」

提督「仮に政府が組織の存続に一枚噛んでいたとしても、海軍が無関係ってわけでもないし、疎かにしていい話でもない」

提督「俺たちは話ができるほうに話をしに行く。普通だろ?」

大将「元帥殿! 提督がここまで来ているというのに、我らが足を引っ張ったとあっては、政府との信頼関係を疑われます!」

祢大将「数多くの艦娘を束ねる海軍をさておいて、他国が深海棲艦との交渉権を得たとなると、国家の権威失墜にもつながるな」

武大将「交渉決裂よりまずい結果になってしまうんじゃないか?」

和中将「そ、それはいかん……! げ、元帥閣下!!」
903 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/18(月) 23:59:21.19 ID:Qx5bHHluo

元帥「……」

提督「まあ、元帥がなかなかうんと言わねえ理由もそれなりにわかってるんだ」

提督「一番は、艦娘を使った実験を行っていたこと。元帥も含めて知らない奴が多いようだが、実態が暴かれたら相当やばいと思ってる」

提督「これが明るみに出て、海軍が艦娘からの協力を取り付けられなくなったり、造反でもされたりしたら人類は終わりだ」

大将「ぬう……!」

提督「それから、深海棲艦に話が伝わった場合は、更に敵意をむき出しにして襲ってくるだろう。国内の拠点が攻撃される可能性も増えそうだ」

武大将「おや? 君が知っている、イコール深海棲艦たちも知っている、じゃないのかね?」

提督「悪いがそこは俺もわからない。深海棲艦は群れ同士での交流が少ないみたいで、聞いた感じ、余所は余所、ってとこが多いらしい」

提督「だから、実際にはこの話もあまり広まってはいないんじゃないかって推測してる。あの弾丸をあちこちで使っていたりしたら話は別だがな」

武大将「……君がその話を誰かに伝えたりはしていないのかい?」

提督「それはない。島の外にいる深海棲艦とは話す機会がまだねえんだ。調べるにしても、まさか白旗振りつつ訊きに行くわけにもいかねえよな?」

武大将「それはそうだねえ……」

提督「ほかには……そうだな、その拠点が国内に複数個所あるせいで、そのあちこちに俺を案内しなきゃいけなくなりそう、ってのもあるか?」

H大将「複数拠点あるだと……!?」

提督「ここに何人か協力者がいるんだ。全員が常々一か所に固まってるわけじゃねえはずだ」

提督「俺が把握してる拠点以外に、他にも何カ所かに研究施設がありそうだってのは俺の予想だが、ない話じゃないだろう」
904 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/19(火) 00:00:05.52 ID:12crbRCYo

提督「あとは、このネタにメディアがどういう反応を示すか、だな。ただでさえこういうスキャンダルはマスコミの大好物だ」

提督「あることないこと脚色されて事態の収集に追われそうだし、一部の人間からは非人道的だと批判を浴びるだろう」

提督「最後にもうひとつ。元帥……あんた、今更ながら、これの開発をよしとしたこと、後悔してんだろ?」

提督「艦娘の力を借りることなく、人間の手で深海棲艦を打ち倒せる力と言えば、確かに魅力的な話だからな」

元帥「……」

提督「おそらく、この話のトップはJ少将だ」

全員「「……!」」ザワ…!

提督「確かあいつは、それまで厳秘情報だった艦娘の存在を、世間に公表するときの会見の席にも座ってたよな?」

提督「そのくらい周囲からの評判が良かったJ少将からの強い進言とプレゼンがあったからこそ、元帥は信用してその口車に乗ったんだろう」

提督「ただ、元帥は、深海棲艦の武器化の話までは聞いてても、艦娘の深海化の話までは聞いていなかった。反応からして、そうなんだろ?」

元帥「……」

提督「ここからは俺の憶測にすぎないが、仮に艦娘が戦えなくなった時の次善の策とか、そういう感じで、J少将から提案されたんだろうな」

提督「深海棲艦の遺骸を使う、外法の技術だ。外に漏れれば間違いなく深海棲艦から恨みを買うだろうし」

提督「罰当たりな行為ゆえに賛同できない大将たちがいるからと、実用化できるまで極秘に研究を進めたい……そんな感じで提言されたと思ってる」

提督「効果も証明されているとあって、放棄するには惜しい技術。戦況など総合的に見て、J少将が責任を負う形で内密に進めさせたんだろう」

祢大将「……」

提督「だが、それでもあんたはこの計画に疑いを持っていた。迷い、躊躇っていた。J少将の望む通りに動こうとしなかった」
905 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/19(火) 00:00:51.26 ID:12crbRCYo

提督「だからJ少将はしびれを切らして、大将ふたりと俺を使って、あんたを動かそうとした……動かざるを得ない状況を作ろうとした」

H大井「……それが、その結果が、あの島で起こったことだって言うんですか!?」

提督「そうだ。俺が深海棲艦と通じていて、轟沈した艦娘とともに海軍に対するクーデターを企んでいる、ということにして……」

提督「J少将は俺に大将ふたりをけしかけ、俺がやったかのように見せかけてふたりを暗殺。あとは俺を始末して証拠を隠滅、捏造する」

提督「深海棲艦の武器化に反対するふたりを消し、俺が深海棲艦のスパイだったと危機感を持たせることで……」

提督「自分の推し進めている武器化の実用化こそが、今後進むべき最善の道だとアピールしたかったんだろう」

提督「島にいた艦娘の大半は轟沈経験艦。深海棲艦になる恐れのある艦娘なら、素材にしてしまえば口封じもできて一石二鳥」

提督「それが当初、J少将が思い描いていたシナリオだろうな」

H大井「……」ギリッ

提督「そういえば、H大将。あんた、あの時は大井を連れてきてなかったな。どうしてだ?」

H大将「大井はその時、遠征に向かわせていた。それで連れてくることができなかったんだ」

提督「なるほど。もしかしたら、秘書艦不在もJ少将が狙ってたのかもしれねえな。下手にかばわれて暗殺し損ねたら計画が台無しだ」

提督「大将とH大将両方の秘書艦が不在なんてないだろうから、戦場に向かいそうな大将の秘書艦の武蔵より、大井が不在の隙を狙うのも理にかなってるな」

大将「あいつは、そこまで考えて計画していたというのか?」

提督「考えてたと思うぜ? 誘導もえらく手際が良かっただろ? 相当入念に計画してたはずだ」

大将「むう……」
906 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/19(火) 00:01:36.16 ID:12crbRCYo

提督「……ま、そうやっていろいろ企んでたJ少将だが、結果的には、溶岩に飲まれて焼け死んだ」

提督「事情を知っているであろう直属の部下だったK大佐も、開発者の一人だったZ提督も、同じく火の海に消えた」

提督「そいつらの思惑とは無関係だったかもしれない海軍の人間を、大勢道連れにしてな」

将官たち「……」

提督「海底火山の噴火は自然現象だ。事故としか処理できねえ」

提督「ただ、その自然現象に巻き込まれた理由が、深海棲艦の武器化に賛同しない大将ふたりを暗殺するためだと知れたら、どう思う……?」

艦娘たち「……!!」

提督「J少将があれだけの大人数を引き連れて行ったのも、俺がふたりを殺した犯人だっていう証人になってもらうため」

提督「そしてJ少将自身が怪しまれないため、自分に後ろめたいことがないことを大勢にアピールしたかったためだな」

提督「そこに祢大将たちが巻き込まれなかったのは、こっちの大将たちと同調して動いてなかったからだろう」

祢大将「私たちが大将たちに詳しく話を聞けなかったのが、逆に良かったと?」

提督「単に人数が多いと騙すのが大変とか、誘う理由がなかったとか、都合が合わないとかいろいろ考えられるが、それも含めての話だと思ってる」

提督「あとは、仮に今回の暗殺がうまくいった場合、武大将みたいに深海棲艦との対話を肯定してる上官が、この事件を機に意見を変えたりもするだろう」

提督「そうなるようなら、当然、それに追随する者も多いはず。そういう狙いがあるなら、わざとふたりだけを狙うのも効果的だ」

提督「反発している人間を全員一気に始末したら、それはそれで怪しまれるだろうし」

武大将「なるほどねえ……」

提督「ま、それよりかは、さっき言った、深海棲艦の武器化に反対していたってところが、標的にされた一番の理由だと思ってるけどよ」

大将「……」
907 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/19(火) 00:02:21.88 ID:12crbRCYo

提督「それから、俺の情報がこの場に行き渡っていないのも、俺が死んだ後にいくらでも脚色できるから、ってのもあるだろうな」

提督「俺が不審人物であればあるほど、大将殺しの罪を擦り付けやすいし、悪い奴なら良心も痛まねえって意味でも利用しやすい」

提督「そもそもあの島自体、大佐が自分に都合よく邪魔者を隔離幽閉するために確保してた島だ」

提督「連絡手段を断って放置して、野垂れ死ねばそれでよし。死んだら深海棲艦に罪を擦り付けてしまえばいい」

提督「あの島の妖精たちが、島に来る人間はみんないがみ合ってたって憤ってたくらいだ。おかげで俺も最初は追い出してやるって言われたぜ」

中将「そういえば、大佐が君に責任を押し付け、儂もろともあの島で泊地棲姫に始末させようと企んでいたことがあったな」

提督「……中将、それを自分で言うなよ。切なくなるだろ?」

中将「フフ……それもそうだな」

将官たち「……」

艦娘たち「……」

提督「長話が過ぎたな。いい加減、話を戻すか。俺のふたつの要求を……」

元帥「良い」

提督「!」

将官たち「!」

艦娘たち「!」

元帥「提督。君の提案をすべて受け入れよう」

将官「元帥閣下!?」

和中将「組織の存在を、認めるというのですか!?」

将官「い、いけません閣下……!!」
908 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/19(火) 00:03:05.74 ID:12crbRCYo

元帥「詳細を調査するための日程は……明後日、○月○日までに連絡する。中将」

中将「はっ」

元帥「貴官がこれまで行っていた任務は、与少将……いや、与中将が引き継ぐ手筈だったな」

中将「はっ、その通りです」

元帥「では、期日までに彼女に連絡しよう。貴官の最後の仕事になるが、その旨、与中将に伝えてくれ」

中将「承知しました」ケイレイ

元帥「……」ウツムキ

提督(……観念したってか。こっちは一安心だな)

将官「なんでこんなことに……」

将官「も、もうだめだ……おしまいだ」ガクッ

艦娘「司令官!?」

 ザワザワ…

大将「おい、何人かうなだれているが……」

H大将「そいつらが、組織とつながりのある将官だったということか」

提督「その辺は推して知るべし、だな」

和中将「なんと……そんなことが、本当だったのか!?」
909 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/19(火) 00:03:51.06 ID:12crbRCYo

祢大将「……」

武大将「ショックなのはわかるが、祢大将が押し黙ってると怖いからやめて欲しいんだがねえ」

宇大将「やれやれ……ここまでの話を俺が知らされていないとは。どうやって隠し通していたんだ?」

武大将「宇大将は仕方ないんじゃないか? 南西海域の深海棲艦の鎮圧で手一杯だったんだろう? なかなかこちらに身を向けられなかったと聞いてるよ」

H大将「南西海域?」

宇大将「ああ、某国の空母が深海棲艦に沈められて以来、深海棲艦がますます活発に動き始めているのでな」

提督「空母……? もしかしてあいつら、まだ懲りてねえのか?」

武大将「うん? 何か、心当たりがあるのかい?」

提督「東アジアか東南アジアの海賊やらが、うちの領海っつうか島に攻めてきてたんだよ。それでその辺の深海棲艦が刺激されてんじゃねえのか?」

提督「俺たちの島は、日本とパラオを線で結んで中間地点あたりにある。そいつらがうちの島を侵略目的で目指せば、ちょうどその辺通るはずなんだ」

提督「泊地棲姫に攻め込まれたあたりから、海軍内のスパイの活動も活発化してただろ。この島に手を出そうって考えてる奴らがいるせいだろうな」

宇大将「……それが事実なら、お前たちと因果関係がないとは言えんか」アタマオサエ

武大将「一気に無関係ではなくなったねえ……」

H大井「あの、それはそれとして、提督? くだんの組織が危険であることは理解できますが、さすがに少し、荒療治が過ぎたのではないかと」

提督「そうか? この空気を見る限り、このくらい言わなきゃずーっとなあなあになってたとしか思えねえんだけど」

提督「それに、研究を続けさせたいなら、深海棲艦とは徹底的に敵対するって言えばいいんだよ。それならあいつらも落ち込まずに済んだろ」

大将「そんな判断できるわけがなかろう! そうなったらそうなったで、お前たちが世界中に今の話をばらまく気でいたんだろう!?」
910 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/19(火) 00:04:35.09 ID:12crbRCYo

提督「まあな。俺たちも死にたくねえし、だったら俺たちが何を考えてるかを知らせるのは大事だろ?」

武大将「そんなことされたら、世界中からクレームやらが殺到して、海軍の面子は丸潰れになるだろうねえ……」

武大将「きみは最初から、選択しようのない選択肢を押し付ける気だったんだね?」

提督「俺が悪いみたいな言い方するなよ。こうやって付け込まれる原因を作ったのは海軍だろ」

提督「武器化の話も、洗脳ツールのときみたいに発覚した時点で根っこからがっつり潰してりゃ良かったんだ」

大将「ぐ……それはそうだが」

提督「ま、今回の話は、J少将が計画したクーデターみたいなもんだったから、防ぎようもねえのは俺もわかってるさ」

提督「それでも俺に文句を言うのは筋が違うだろ」

武大将「……もしかして、他にもこの手の情報を持ってたりするのかな、きみは」

提督「それはどうだかな? 俺たちはうちにちょっかい出してきた連中のことくらいしか話せないんだ。俺しか知らない話なんて、ほかにあるか?」

武大将「イギリス大使が動いてたという話も、都合が良すぎないか?」

提督「それは俺も知らねえよ。単純にあっちの間諜が優秀なだけじゃねえの?」

H大将「……」

大将「……おい、H大将もどうした。何を悩んでいるんだ?」

H大将「ん? ああ。あいつらが……あの組織とつながっていた者たちが、どうしてそうしていたのかを考えていた」

提督「んなもん、だいたいは金か昇進のためだろ?」

H大将「ほかは知らんが、J少将は自分の仕事にプライドを持っていた。金銭や名誉欲で動くような男には思えなくてな」

提督「……」
911 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/19(火) 00:05:21.67 ID:12crbRCYo

H大将「それで以前、J少将が酒の席で言っていたことを思い返していたんだ」

H大将「あいつは、本来、海を守るべく結成された我々が、深海棲艦相手に手も足も出ないのが悔しいと言っていてな」

H大将「艦娘に生かされている今の状況に、忸怩たる思いしかない、と」

提督「……ああ、確かにそういう話もあったな」

H大将「おそらく、J少将が、深海棲艦の武器化を研究させたのも、艦娘に頼らずに自分たちが戦える手段を欲しがったからだろう」

H大将「その思いが強かったからこそ、俺や大将といった深海棲艦の武器化を批判する者を、始末しようと考えた……」

大将「あの行動が、あいつの正義からくるものだったと?」

H大将「私はそう思っている。艦娘と協力する道を取った俺たちのことも憂いていたとしたら、そうなってしまったのも合点がいく」

H大将「この戦争が、艦娘と深海棲艦との自作自演である可能性はないのか、とも疑っていたくらいだ」

H大将「あいつは、その頃から艦娘に不信感を抱いていたのかもしれん」

提督「じゃあ、J少将の理想は、艦娘が現れる以前の、人間が海を守る世界だった、ってことか?」

H大将「……そうかもしれんな」

大将「そんなことを言っても、人間は深海棲艦と戦えないんだぞ? 艦娘がいなくなったらどうなるか、あいつだってわかっているはずだ!」

提督「だとすると、マジで時雨の言う通りだってことか」

H大将「? どういう意味だ?」

提督「艦娘を深海棲艦に作り変える研究の本来の目的が、海軍から艦娘を追い出すため、って話だ」

大将たち「!?」

艦娘たち「!?」
912 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/19(火) 00:06:06.29 ID:12crbRCYo

大将「ま、待て待て! どういう意味だ!? 海軍から、艦娘を追い出すだと!?」

提督「J少将は自分の活躍の場を奪った艦娘が邪魔だった。だから艦娘を海軍で扱えない理由を作りたかった」

提督「例えばだが、一般人の目の前で艦娘が深海棲艦へ変異するようなことがあれば、艦娘は危険だから運用するな、って話になるよな?」

提督「海軍の訓話にも、轟沈した艦娘は深海棲艦になるから運用するなって話がくらいだ。深海棲艦がどれだけ恐ろしいかは語るまでもない」

提督「それをどうにか人為的に引き起こして、艦娘の運用をやめろ、艦娘を追放しろ、という世論に持っていきたかったんじゃねえか?」

将官「そ、そんなことは考えていないぞ!!」

提督「お前らのことじゃねえよ、J少将の話だ」

大将「……J少将は、それほどまでに艦娘の存在を疎んでいたということか」

提督「ここまでやったんだ、そうとしか思えねえ。自分が戦えないことが嫌だったって話で、それで艦娘を逆恨みしたとしたら辻褄も合う」

提督「そもそも、深海棲艦の武器化を調査、開発していたのはZ提督や大佐の一味で、J少将はそんな考えを持っていなかった」

提督「J少将が関与していたその組織では、艦娘の深海化しか研究していなかったんだ」

提督「深海棲艦の武器化の話を大佐から引き継いだのも、艦娘と深海棲艦双方の数を減らすことができて都合がいいからとも考えられるし」

提督「そもそも深海棲艦の鹵獲も普通にリスクが高すぎる。J少将がやってた研究が有効活用できるって点でも丁度良かったんだろう」

大将「ではもし、深海棲艦の武器化の話がなかったら、どこかで艦娘の深海棲艦化を引き起こそうとしていたということか……?」

提督「多分な。海軍が艦娘を運用できないようにして、海を自分たちの仕事場に……海軍以前の海上自衛隊に戻りたかったんだろうさ」

大将「それほど艦娘の存在を疎んでいたということか」

提督「そういうことだと俺は思ってる。自作自演を疑ってたってのも、艦娘が深海棲艦と変わらない存在だと思っていたからだろ?」
913 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/19(火) 00:06:51.79 ID:12crbRCYo

提督「それに、あいつほど極端じゃなくても、深海棲艦との戦いが艦娘に頼りっきりの現状を良くないと思ってる人間は、少なからずいるよな」

H大将「……ああ。確かに、今の艦娘に依存した戦況は健全とはいいがたい。それは私も同意する」

H大井「H提督!?」

H大将「提督の言う通り、深海棲艦との戦いに関しては艦娘に任せっきりだ。深海棲艦の前に立つのも、迎撃するのも、傷付いて帰ってくるのも艦娘だ」

H大将「果たしてこの現状を協力と呼んでいいものだろうか? 本来、奴らのような外敵の矢面に立つのは我々ではなかったか?」

H大将「ここにいる人間はみな、自らの手で海と人を守ろうと、志を持って、誇りを持って、この制服に袖を通したんではないのか?」

全員「……」

H大将「もっとも、艦娘を指揮する提督となり得る人材が枯渇した状況にある最近では、残念ながら全員がその限りではないようだが……」

H大将「そういった民間や艦娘に頼らざるを得ない現状も含めて、J少将は、今の状況がたまらなく嫌で、恥ずかしいと思っていたんだろう」

艦娘たち「……」

H大将「しかしだ。だからと言って、艦娘を追放しようなどと言う考えは肯定されるべきではない」

H大将「艦娘は人間ではないのだろうが、間違いなく人の心を持っている。人間ではないからと人間ではない扱いをすれば……」

H大将「艦娘は人間を疑い、人間を恐れ、人間を嫌う存在になるだろう。たとえ艦娘の前でなくても、我々が人の心を失ってはいかんのだ」

H大井「H提督……!」

H大将「現に、最初は人間であったとしても、人扱いされず蔑ろにされたがために、人間の味方を辞めてしまった存在もここにいるしな」

提督「……」

和中将「この男が、ですか……?」
914 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/19(火) 00:07:36.23 ID:12crbRCYo

H大将「そうだ。今の提督は、艦娘と深海棲艦の味方だろう?」

提督「おい、妖精が抜けてるぞ?」ニヤリ

H大将「……ああ、そうだったな」フフッ

和中将「待て。提督は……お前は人間の味方を辞めたのなら、人間の敵だというのだろう? それなのに、人間と和平交渉するのか……?」

提督「ああ。艦娘や深海棲艦、妖精たちの今後のためにな。文句あんのか」

和中将「……わからん。なぜ、お前はそんな平和的な解決を望むんだ? 深海棲艦は人間の敵ではないのか?」

提督「敵対しなくていいって奴もいるんだよ。人間だって、友好的な国だけじゃなく敵対してる国もあるだろが」

和中将「いや、そもそも深海棲艦とは話が通じるのか?」

提督「……おいおい、理解が周回遅れにもほどがあるぞ」アタマオサエ

和中将「曽大佐は話ができないと判断したから、その報復に年寄りにされたのだろう!?」

提督「……」

和中将「どうやって年寄りにしたんだ。それも深海棲艦の力か!?」

提督「……」ウンザリ

祢大将「和中将。君の話は後にしたまえ」

和中将「は、はっ……! 申し訳ありません」

提督「……ったく、今更俺に興味持つなっつうの。島に近づきすらしたくねえくせによ」

中将「彼は確か、あの島の昔話も知っていたはずだな?」

祢大将「はい。だからこそ彼のことを蛇蝎のごとく忌み嫌って、関わらないようにしていました」
915 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/19(火) 00:08:21.21 ID:12crbRCYo

祢大将「それに、彼は自らが艦長を務めていた護衛艦を深海棲艦に沈められています。深海棲艦には恨み骨髄であったのは間違いありません」

提督「それでかよ。ったく……面倒臭え」

祢大将「提督、和中将に関しては私が面倒を見よう。しかし、海軍全体の君に関する情報の欠落度合いは見過ごせない」

祢大将「一度、君にはこれまでの経緯と、君の目的を改めて海軍の上層部に説明して欲しいものだが……」

提督「本当に面倒臭え……」ゲンナリ

祢大将「君が海軍の信用を得るためには必要なことだと思うが?」

提督「それを面倒だと思うくらいは俺の自由だろ。何も知らない相手にうちの連中の事情を説明するとなると、本っ当に面倒なんだからよ……」

祢大将「それほど面倒なことしか起きていないということかね?」

提督「そうだな。うちの艦娘、まともに着任した奴のほうが少ねえし……多分きっと、これからもそうなんだろうな」

提督「あの島は、轟沈した艦娘が流れ着く島だ。人の世界の悪いもんばっかり引き寄せてる、人の世の業の吹き溜まりみたいな場所だ」

提督「そんな場所に住んでる俺がこの場に出てきて文句言ってんのは、人間が艦娘や深海棲艦に対して調子に乗り過ぎたせいだとでも思ってくれ」

祢大将「……まるで自分を災厄の塊のように言うのだな」

提督「俺はそうだと思ってるけどな。そもそも、あんたたちは俺が人間どころかまともな生物じゃないって知ってんだろ?」

祢大将「……」

秘書「……」

中将「君は、少し自分を卑下しすぎではないかね?」

提督「ん?」

中将「君は、君自身を悪者にしたがっているようだが、君がいたから助かった艦娘がいる。君がいたから深海棲艦との対話ができているのだ」

中将「君が過去に何を企んでいたかは我々にはわからないし、君の判断の良し悪しを裁くことも儂にはできん」

中将「だが、儂は君がこうして我々に手を貸してくれていたことに、感謝しているよ。君が何者であってもな」ニコ…

提督「……そんな大層なもんじゃねえけどな」アタマガリガリ

中将「さて。大事なのはこれからだな。約束は、果たされなければならん」

大将たち「「……」」
916 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/08/19(火) 00:09:06.00 ID:12crbRCYo
ということで、今回はここまで。
917 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2025/09/20(土) 15:00:39.17 ID:PCtJLIteO
ほしゅ
918 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:32:45.88 ID:40fJ2Uhko
保守ありがとうございます。
お待たせしました、続きです。
919 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:33:31.03 ID:40fJ2Uhko

 * 散会後 中将たちの控え室 *

与少将「では、提督の希望は受け入れられたということじゃな。これは艦娘たちにとっても朗報じゃのぉ!」

大将「朗報と言っていいのか? 艦娘が行方不明になる話自体が秘匿されていたんだ、何も知らない艦娘たちには衝撃的なニュースでしかないぞ」

大将「特に心配なのは、例の組織に加担していた将官の秘書艦娘たちだ。自分が補佐していた将官が関係者であったらどう思う?」

大将「逆に知っていたとしても、それはそれで問題だ。どの程度まで知っているかにもよるが、何の処分もなしと言うわけにはいかんな!」

提督「……」

大将「なんだ?」

提督「いや……あんた、結構身勝手でゴリ押しな性格だったよな? 随分、人の話を聞くようになったな」

大将「んぬ!?」

H大将「あの船の上の一件以来だな。甥のX大佐に事あるごとに説教されて、今ではだいぶ人の話を聞くようになったぞ」

大将「おい!?」

提督「力関係逆転してやがんな。X大佐も随分逞しくなったもんだ……」

大将「……俺はにこにこと優しかった甥っ子君が気難しくなって、少々残念な気分になってるぞ?」

武大将「とはいえ、彼がそこまで成長したのも、提督のおかげだって認めていたんじゃなかったかい?」

大将「確かにそうは言ったな。いつまでも弱いままでいられないのは確かだし、提督に刺激されて甥っ子君が成長したのは違いない」
920 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:34:16.06 ID:40fJ2Uhko

大将「とはいえ、甥っ子君はあの愛想の良さが、俺にとっては癒しだったからな……寂しいもんだ」

赤城「完全に伯父さんの目線になっていますね」フフッ

大将「それはそれとして、だ。まさか提督がこの会議に姿を現すとは思ってもみなかったぞ」

提督「俺は俺の望むことをやっただけだぞ」

大将「それでもだ。結果として俺たちが突き止められなかった組織の存在とその危険性を、まずは海軍将校たちに知らしめてくれた」

大将「やはり俺が睨んだ通り、提督は有能な人材だ。深海棲艦たちと暮らすのはまだいい。できれば、海軍を離れて欲しくはなかったんだが」

中将「彼が元帥を説得できたのは、深海棲艦を率いているという特殊性もさることながら、海軍に所属していない第三者だからこそ、ではないかね」

大将「……それはその通りではあります。しかし……」

H大将「仮に戻ってこいと言っても無理だろうな。提督の身内が海軍に従うとは思えん」

大将「うむぅ……」

祢大将「身内?」

H大将「提督には艦娘や深海棲艦以外の味方がいる。提督を日本に連れていけない理由のひとつがそれだ」

武大将「そうなのかい? それならやっぱり一度詳しく……」

提督「帰っていいか?」

武大将「いやいや待ってくれ、本当に詳しく聞かせてもらいたいんだよ、この二人の大将以外は君のこれまでのことを詳しく知らないんだから」
921 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:35:16.23 ID:40fJ2Uhko

提督「今日でなくてもいいだろ。せめて大将たちが持ってる情報を共有してから、要点絞って訊いてくれ」

提督「俺はもう、あの組織が何やってるか以外に首を突っ込みたくねえ。ここにいるのも場違いだと思ってるんだ、とっとと帰らせてくれよ……」

中将「そういえば、帰りの船を手配しなくて良いという話だったが、この後、どこか回る場所でもあるのかね」

提督「いや。帰る分には、船を使わなくていい、ってだけさ」

H大井「もしかして、あれですか」

H大将「ああ、あれだな」

大将「あれ?」

提督「こっちの壁、ちょっと使わせてもらうぜ」スッ

 神殿の扉<パッ!

大将「うお!?」

武大将「いきなり扉が!?」

H大将「提督は、こいつを使ってすぐあの島に帰れるらしいんだ」

武大将「まるで『どこ○もドア』みたいだねえ……」

大将「こ、こんなものがあるなら、日本にもすぐ来ることができるんじゃないのか?」

提督「逆は無理なんだよ。この力は、俺が拠点と定めたところと、俺の居場所を結ぶものでしかない」
922 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:36:00.75 ID:40fJ2Uhko

提督「そもそも、深海棲艦と近しい奴が、いきなり海軍本営に不法侵入できるのは問題だろ?」

大将「むむ……そいつはそうだな」

祢大将「彼自身が扉を開く力を持つ、と言うことになるのかね?」

秘書「おそらく。もしくは、彼が起点になって力を使っている、ということではないかと」

提督(神殿にあるような魔神の力を込めた祭壇を置くとかすれば、ここも拠点にはできるが……余計なことは言わない方がいいな)

中将「提督はもう帰るのかね」

提督「ああ。一応、目的は果たしたしな。帰りを待ってる奴らもいるし、早く帰ってこの話をして、安心させてやらねえと……」

 神殿の扉<ガチャ

如月「司令官!」バッ!

軽巡棲姫「提督ー!」バッ!

大和「提督!」バッ!

与少将「な、なんじゃあ!?」

H大井「ちょっ、け、軽巡棲姫!?」

如月「司令官、お仕事お疲れ様!」マエカラダキツキー

軽巡棲姫「ダイジョウブ? 怪我トカ、シテナイワネ?」ミギカラダキツキー

大和「さあ、早く帰りましょう!」ヒダリカラダキツキー

提督「……お前たち、場所は弁えてくれねえかな」セキメン
923 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:37:00.93 ID:40fJ2Uhko

赤城「みなさん落ち着いて。一応ここは海軍の本営ですよ」

軽巡棲姫「場所?」クビカシゲ

如月「海軍の本営ですって……?」キョロキョロ

大和「では、こちらにいらっしゃる方々は……大将ですか!?」

戦艦水鬼改「ゴメンナサイネ? コノ子タチ、待ッテイラレナクテ」スタスタ

武大将「今度は戦艦水鬼か!?」

中将「おお、君か。提督を迎えに来てくれたのかね」

戦艦水鬼改「アラ、アナタ……コノ前ノ。ココハ、アナタノ、オ部屋ナノ?」

中将「いいや、この部屋は借り物だ。本来の儂の机は、別のところにある」

中将「もっとも、今日限りでその部屋も机も、こちらの与中将に引き継ぐことになっているがね」

戦艦水鬼改「フゥン。コノ娘デ、大丈夫ナノ?」

中将「ああ、大丈夫だとも。よろしくお願いするよ」

秘書「あの……すみません、こちらが大丈夫ではなさそうなのですが」

中将&戦艦水鬼改「?」フリムキ

提督「だから誰彼構わず喧嘩ふっかけんなっつってんだろうが!」アイアンクロー

軽巡棲姫「痛イ痛イ痛イ助ケテェェェエエ!!」メキメキメキ

戦艦水鬼改「……何シテルノヨ、アノ子ハ……」
924 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:37:46.06 ID:40fJ2Uhko

大和「大将の皆さんは大丈夫でしたか?」

祢大将「あ、ああ……少しびっくりしたが」

H大井「そっちこそ大丈夫なの? あの姫級、すっごい痛がってるけど」

如月「通過儀礼みたいなものだから、大丈夫ですよ」ニコッ

中将「そういうものなのかね」タラリ

戦艦水鬼改「軽巡棲姫ハ、何ヲシタノ?」

大和「こちらの大将の皆さんが驚いて身構えたのを、軽巡棲姫さんが敵意を向けられたと勘違いしたみたいですね」

大和「ほかに何か仰っていたみたいですが、それに反応した軽巡棲姫さんが睨んだところを、提督に捕まっておしおきされているんですよ」

武大将「わ、我々はただ見てただけなんだけどねえ」

戦艦水鬼改「アノ子、敵愾心ガ強イノヨ。コレダカラ、オ留守番シテナサイ、ッテ言ッタンダケド」カタスクメ

H大将「あの姫級は、かつて組織に捕まって弾丸に作り変えられていたんだろう?」

武大将「あの姫級は被害者なのかい!?」

H大将「ああ。なんでも、提督が撃たれて、そのとき一緒に弾丸の姿から蘇ったらしい。理屈はわからんが提督の力のおかげだと言っていたな」

武大将「それで、彼にべたべたしていたわけか……」

大将「あの姫級の前で迂闊なことは言うなよ。さっきみたいに、ものすごい殺意を向けてくるからな?」ヒソヒソ

武大将「だそうだよ、祢大将?」ヒソッ

祢大将「……」
925 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:38:31.00 ID:40fJ2Uhko

戦艦水鬼改「アノ子ニ、ナンテ言ッタノ?」

如月「ええっと、節操がないのか? って言ってたかしら」

戦艦水鬼改「フゥン……ワタシタチニ、ソンナモノヲ要求サレテモネェ? ソモソモ提督ニ、遠慮ナンテイラナイダロウシ?」

武大将「それはそれでどうなのかねえ……」タラリ

戦艦水鬼改「ソレヨリモ、今ノ話、如月ヤ大和モソウダッテ言ワレテルンジャナイノ?」

大和「大和は気にしていません!」

如月「司令官が怒ってないんだから、別に構わないと思ってるわ」

戦艦水鬼改「ソレモソウネ」

祢大将「……いいのか。いいのかそれで」アタマオサエ

中将「彼らには彼らのルールがあるのだ、我々の常識や規律と同じと決めつけるべきではない」

中将「提督が駄目だと言えば皆それに従うのだから、それで良しとすべきだよ」

祢大将「左様ですか……」

戦艦水鬼改「コッチノ人間ハ、オカタイノネエ」

中将「うむ。我々は、他の者の模範にならねばならん。ゆえに、上に立つ者は常に己を律しておかねばならんと考えているのだよ」

与少将「深海棲艦たちは、力のあるものが上に立つ世界じゃと聞いちょるけえ、そのような規律の保ち方は難しいじゃろうな」
926 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:39:16.00 ID:40fJ2Uhko

大和「そうですね。そういう意味でも、水鬼さんも提督以外に従う気はないでしょうし」

戦艦水鬼改「マァネ。話ハ聞クケド、従ウカドウカノ話ハ別ネ」

武大将「ど、どういうことだい? その理屈だと、提督が深海棲艦より強いことになるんだが……」

大和「実際にお強いですよ。先ほども軽巡棲姫さんが頭を掴まれて痛がっていたのをご覧になったと思いますが」

祢大将「提督は、深海棲艦に触れても平気なのかね」

H大将「あいつはもう普通の人間じゃないんだ。だから、ここにもひとりで乗り込んできたんだろう?」

戦艦水鬼改「ヒトリクライハ、提督ト一緒ニ行ッタホウガイイト思ッテタノヨ?」

如月「それを、今回はひとりで海軍本営に向かうなんて言うから……いくら赤城さんがいるとはいえ、心配したんですよ? 司令官?」

提督「この場は俺の身ひとつで良かったんだよ。艦娘や深海棲艦連れて来て、脅迫されたみたいな難癖つけられても面白くねえし」

提督「俺を暗殺しようなんて考えの奴も、あの場にはいなかったからな」

提督「もっとも、あの場に俺が来るなんて誰も予想してなかったからこそ、ってのもあるけどよ」

軽巡棲姫「ナニカアッタラ、私ガ、タダデハ済マサナイケドネェ……?」テイトクノセナカニダキツキ

提督「……まあ、心配してくれるのはありがてえけど」

祢大将「べったりだな……提督、君はそれで良いのかね」

提督「こうしてりゃあ、人に危害を加えようとしないんだから、いいんじゃねえの。人前では少し自重しろ、とは俺も伝えてるが……」
927 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:40:00.84 ID:40fJ2Uhko

赤城「無理に引き剥がして不機嫌になられても困りますからね」フフッ

祢大将「……」アタマオサエ

提督「とにかく、こうやって迎えにも来てるわけだし、俺は島に戻るぞ。聞きたいことがあるなら、それなりにまとめてから……」

赤城「提督。この話は、書面にまとめたほうがやりやすいのではないですか? よろしければ、私がヒアリングしてから島に持参しましょう」

提督「……そのほうが楽だな。任せていいか?」

赤城「はい。お任せください」

提督「助かる、ありがとな。よし、それじゃ、島に帰るぞ」

大和「はいっ!」

戦艦水鬼改「早ク帰リマショ」

如月「それでは、失礼しますね」ペコリ

中将「うむ。島の皆にもよろしく伝えてくれたまえ」

 神殿の扉<パタン

 神殿の扉<スゥ…

大将「消えた……」

武大将「完全に『どこ○もドア』だねえ……」

H大将「ああ。俺もこうして目にするのは2度目だが、未だに夢でも見ているかのようだ」

H大井「どう考えても、この世界の技術じゃありませんからね。仕方ありませんよ」
928 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:40:46.37 ID:40fJ2Uhko

赤城「さて、提督もお帰りになられたことですし、これから何をするか決めましょうか」

赤城「まず、元帥閣下の指示では、2日後にくだんの組織の調査日程が決められるとの話でしたが」

大将「海軍全体の認識として、組織の存在が認められた。情報公開が元帥殿からの決定事項である以上、それらは粛々と進められることになるが」

大将「組織の動向は引き続き警戒せねばならんだろうな。連中がおとなしく従うかは、正直期待できん」

H大将「俺たちに対する工作が完全に止まったわけではないしな」

中将「それから、今回の件で動揺していた者たちは、見る限り主に横須賀と舞鶴にいる者たちだ」

中将「武大将のいる大湊や、祢大将のいる呉、宇大将の佐世保までは組織の関与は薄いと考えても良いと思うかね?」

武大将「おそらく。ただ、我々が知る限りでは、の話ですので、早急に確認は必要です」

祢大将「特に佐世保の宇大将殿に至っては、何の情報もない状況です。説明に関しては急ぎたいところかと」

赤城「それでは彼らへの説明のためにも、なおのこと提督への質問状を手早く作らなければいけませんね」

中将「赤城は提督からいろいろ事情を教えてもらっているのだろう? まずはその部分を共有しつつ、まとめてもらいたい」

赤城「承知いたしました」

大将「……せっかくだ、この場に宇大将も呼ぼう。我々が一堂に会する機会は今日を逃せばまた3か月後だ」スマホトリダシ

H大将「あいつはこの後、予定があるとか言ってなかったか? だからここに来なかったんだろう?」

大将「断られてもかまわんよ、少なくとも今起きたこのことはあいつの耳にも入れておくべきだ……ああ、もしもし?」

 * * *

 * *

 *
929 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:41:30.78 ID:40fJ2Uhko

 * 2日後 *

 * 墓場島鎮守府 執務室 *

赤城「あの元帥閣下への説得は、如月さんたちの件で大佐をやり込めた時を思い出しましたよ。ふふふっ、懐かしいですね」

提督「……あー、確かに似たような感じだな」

ニコ「なにがあったの?」

赤城「かつて、Z提督と大佐が協力して深海棲艦の武器化を研究していたのですが、その実験施設から如月さんが逃げて提督に助けを求めたのです」

赤城「提督は、中将閣下に書面で助けを求めた際、Z提督の元から逃げた如月さんを、大佐と協力して匿おうとしているように装ったのですよ」

赤城「結果、Z提督は営倉送り。大佐は信頼していたZ提督に裏切られた悲劇の主人公に仕立てられ、引き続き艦隊の指揮を執ることになったのです」

提督「初歩の離間工作だろ?」

赤城「フフッ、相変わらず謙遜が過ぎますね。あなたのおかげで、私が辻褄合わせにどれほど苦心したことか」ヨヨヨ…

提督「嘘泣きすんな」

山城「……それ、いつ頃の話?」

赤城「この島の鎮守府が鎮守府として機能し始めるより以前ですね。3年以上前でしょうか。初期艦となる如月さんが着任する前の話です」

山城「そんなころから上官と化かし合いしてたの? 大概ね……」

赤城「当時の提督は島に一人暮らしで艦娘も不在でしたからね。私も含めて、本営の人間をどう利用してやろうかと考えていたはずです」フフッ
930 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:42:30.80 ID:40fJ2Uhko

ニコ「それで、そのゲンスイ? は、どうやって泣き落とししたの?」

提督「海軍将校が集まる会議に乱入して、組織が艦娘に何をやってたかを盛大にぶちまけて……」

提督「で、その組織を統括管理していたのが多分J少将は死んじまったから、J少将の代わりの組織の関係者に、責任取れって迫ったんだよ」

山城「元帥がその組織に関与してたってこと?」

赤城「ええ、そうです。ただ、J少将から差し障りのないところだけ掻い摘んで話を聞いていただけのようで、深いかかわりではなかったらしく」

提督「とはいえ、その組織に関わってた海軍の人間の中ではトップに位置する人間だ。責任追及するならそいつだよな?」

山城「元帥をそいつ呼ばわりするの、あなたくらいよ?」ヒキッ

提督「そうか? まあとにかく、連中のやってた悪事を突き付けて、J少将がやってたことをきっちり清算しろ、と言ってきたんだ」

提督「実働部隊はJ少将。あいつの指示が全部悪かったんだから、大目に見てやるぜ、ってな」

赤城「そうして、元帥閣下から、組織の調査と活動停止の確約を勝ち取ったのです」

ニコ「そういうことか。あの島で死んだ人間に罪をかぶせたんだね」

提督「ま、元帥は実際にちょっと話を聞いてただけみたいなんだけどな。艦娘の深海化の件も真面目に知らなかったっぽいし」

赤城「おや。そこは大佐のときとは事情が違いますか」

提督「なんにしてもだ。元帥にしてみりゃ、ちょっと相談受けて保留してただけで死者何百人分かの責任取れって迫られたようなもんだ」

提督「首謀者も関係者も死んじまって、本音で言えばさぞかしいい迷惑だったろうよ」
931 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:43:15.90 ID:40fJ2Uhko

赤城「さすがの提督も同情を禁じえませんか」

提督「いいや? その組織の研究をやめさせるって言わせるのにはちょうどいいなと思ってたぜ」

提督「仮にJ少将のほかに組織に関与してる重要なポストの奴がいて、そいつが組織の責任者を引き継ごうとしてたとしても……」

提督「それを言い出しづらい状況にして、海軍トップである元帥に活動方針を全部決めさて押さえつける形にしたかったんだ」

赤城「確かに、あの場で誰かが名乗り出ていたら、その場で大将たちから尋問が始まったことでしょうね」フフッ

提督「元帥が、海軍トップとしてあの組織に対して言ってしまえば、他の誰かにどんな権限があろうと、下っ端どもの出る幕はない」

提督「だから、何としてもあの場で元帥に取引を応じさせたかったんだ」

ニコ「ふーん。それじゃ、魔神様の企みは達成されたってことかな?」

提督「その場の分はな。で、今日のうちにその組織についての資料やらをまとめる日程を、こっちに寄越すって話だったんだが……」

赤城「そちらの連絡はまだですね。代わりに、海軍大将たちからの質問状を預かっていますよ」バサッ

提督「とんでもねえ量だな。200枚くらいあんじゃねえの、これ」ウヘェ

赤城「惜しいですね、180ページあります」

提督「溜息しか出ねえ」

ニコ「これを全部魔神様が書いて答えるの?」

赤城「わかる範囲でですが、半分以上は私が回答を予測して記入しています。提督には、内容についてご精査いただきたく」
932 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:44:00.78 ID:40fJ2Uhko

提督「で、未記入の部分は俺が書けと」

赤城「はい。本件にはほぼ無関係と思われる佐世保の大将殿も、大変興味を持っておられます。できるだけお早めに回答いただけますと助かります」

提督「……面倒臭え……」ペラリ

赤城「と言いつつも、早速取り掛かろうとしているあたり、相変わらずの天邪鬼っぷりですね」ウフフ

ニコ「魔神様、大丈夫?」

提督「大丈夫とは言いたかねえが……こいつは俺が見なきゃしょうがねえだろうからな。山城、悪いがしばらく通常業務は任せるぞ」

山城「は? ……まったくもう、本っ当に不幸だわ。どうして私が秘書艦のときに限って、雑務を全部任されなきゃいけないのよ」ゲンナリ

時雨「そう思ってお手伝いに来たよ」ドアガチャー

山城「!?」

ニコ「タイミングが良すぎないかな?」タラリ

提督「わけわかんねえほど良いタイミングで入って来るよな、お前たち」タラリ

時雨「提督、山城のことは任せておいて。僕が手取り足取りで山城をお手伝いしてあげるからね」ワキワキ

山城「手つきがいかがわしいわよッ!?」

時雨「そんなことないよ?」ニマァ…

山城「説得力皆無な悪い顔で言わないでくれる?」ヒキッ

時雨「もう、心配性だなあ……山城、大丈夫? おっぱい揉んでいい?」

山城「いいわけないでしょーがッ!」
933 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:44:45.88 ID:40fJ2Uhko

提督「……」アタマオサエ

赤城「……」アタマオサエ

ニコ「……」アタマオサエ

時雨「うーん、山城はともかく、この手の冗談の通じない人しかいないね。失敗したかな?」

提督「お前の望むようなリアクションはできねえな。つうか、お前そこまで明け透けだったか? それなりに節度はあったろ」

時雨「そこは猫を被ってた自覚もあるよ。でも、山城にならその必要もないかなって」

提督「山城限定かよ」

時雨「うん。山城の部屋にお邪魔する機会もその逆も増えたし」

時雨「僕がこんな冗談を言えるのも、山城と気が置けない関係になれたからだと思うよ」ニコ

山城「……」セキメン

提督「ま、仲良くしてくれてるなら悪くはねえか」

時雨「そう? そう言ってくれると安心するよ」ヤマシロノヒザノウエニチャクセキ

山城「ひょっ!?」ミミマデマッカ

提督「どこに座ってんだよ……あまり山城をからかってやるな。手伝いに来たって言うなら、なおさらだ」

時雨「ちょっと甘えたくなっただけだよ。少しくらいは許して欲しいな。ね? 山城?」ピトッ

山城「〜〜っ!」プイッ
934 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:45:31.15 ID:40fJ2Uhko

提督「で、なんでニコは俺に抱き着いてんだ?」

ニコ「……ちょ、ちょっと甘やかしてあげたくなっただけじゃないか。ぼくは魔神様のお姉ちゃんだよ?」ヒシッ

赤城「提督も隅に置けませんね」フフッ

提督「これでも仕事中だ。あんまり気が抜けてるのは、よろしくねえと思うけどな」

 扉<コンコン ガチャッ

秋雲「そうだね〜、ほどほどにして欲しいとは思うけど……この島の事情を聞いた感じだと、それも難しそうかな?」スタスタ

南太平洋空母棲姫「オ邪魔スルワネ。今朝ノ見回リ、終ワッタワ」

提督「おう、秋雲とホーネットか。悪いな、お前たちが真面目に仕事してんのに示しがつかなくて」

山城「私はふざけたくてふざけてるわけじゃないんですけど!?」

提督「わかってるよ。とにかく、秋雲が自分から見回りに参加するって言ってくれて助かるぜ」

秋雲「普段から出撃しておかないと、いざってときに体が動かなくなっちゃいそうだからねー」

南太平洋空母棲姫「私タチモ、ナカバ習慣ニナッテイタカラネ。イキナリヤメテ、ナニカアッタラ嫌ダカラ」

提督「なんにしても助かる。島も一回り広くなって、見回り大変になっただろ?」

秋雲「そうなの? そこはよくわかんないけど、外洋に出るわけでもないし、そこまで負担じゃないよね?」

南太平洋空母棲姫「ソウネ、タイシタコトハナイワ。ソレニ、今回ハ私タチダケジャナカッタシ」チラッ
935 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:46:16.01 ID:40fJ2Uhko

伊8「はっちゃん、戻りました」ペタペタ

ジェニー「ハァイ、リーダー……って、なんでニコはリーダーに抱き着いてるのよ」

ニコ「え? こ、これは、そっちの時雨が……」

時雨「この書類はここをチェックするといいのかな」ヤマシロノトナリデカリカリ

山城「ええ。ここは提督が書くから、この手前まで確認して」カリカリ

ジェニー「普通に仕事してるみたいだけど?」

ニコ「……イツノマニ」

提督「はっちゃんも見回りに出てたのか?」

伊8「はい。海底の見回りも、最近は深海棲艦の潜水艦たちに任せっきりでしたから」

ジェニー「そのついでに、彼女に乗せてもらって海の中を案内してもらったの。私が海自体よく知らなかったからね」

提督「そうだったのか。初めての海底はどうだった?」

ジェニー「とっても新鮮だったわ、あんな大きな魚が泳いでるところも初めて見たし。一部はちょっと残念な景色だったけど」

提督「……もしかして、轟沈した艦娘が海底にまだ残ってるのか?」

伊8「数隻ですけどね。溶岩が固まった岩に挟まってて、無理矢理引き抜くと手足とか取れちゃいそうなので、そのままにしてます」

提督「そうか。だったらそのままにしてやるしかねえかな」

南太平洋空母棲姫「ソウイウ艦娘ガ、深海棲艦ニナルノカシラ?」

提督「かもしれない、ってのが、今のところの俺たちの見立てだな」
936 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:47:01.04 ID:40fJ2Uhko

提督「これまで、轟沈した海底の艦娘を観察し続けたこともなかったし、なるとしたらそういうことじゃねえかなって思ってるんだが」

ジェニー「うーん、あの艦娘の死体は、もう魂の入っていない抜け殻だと思うんだけどなあ」

提督「? じゃあ、そいつが深海棲艦にはなりそうにないってことか?」

ジェニー「たぶんね? もしかしたら、すでに魂だけ抜け出して、深海棲艦になってたりしてるかもよ?」

提督「あー、そうか、埋葬された艦娘の中にも、体から魂が抜けてて深海化してる奴がいるかもしれないってか。そういう解釈もありそうだな」

赤城「ホーネットさん? あなたが連れていた駆逐艦たちは、この島の近海で見つけたのでしたね。いつごろ邂逅したか覚えていますか?」

南太平洋空母棲姫「泊地棲姫ト一緒ニ、島ニ駐留シテイタコロヨ」

赤城「なるほど。では、かつて沈んで漂着した艦娘であっても不思議ではなさそうですね。ちなみに、最近ではどうです?」

南太平洋空母棲姫「……最近ハ、アマリ見ツケテイナイワネ?」

秋雲「今日、見つけたのは外海から迷い込んできた、はぐれ駆逐艦だったんだっけ?」

南太平洋空母棲姫「ソウネ。北方カラ、潮ニ流サレテキタッテ話ダッタワ」

提督「そいつはどうしたんだ?」

南太平洋空母棲姫「北ノ海ニ帰リタガッテイタカラ、目指ス方角ヲ伝エタワヨ」

秋雲「ただ、ここからだと日本近海も通りそうだから、そのまま北上すると国内の艦娘と遭遇して危ないと思うんだけどねえ」

秋雲「とはいえ、私たちが護衛していくわけにもいかないし? 冷たいようだけど、そのまま見送ったのよ」

提督「それは当人がそうしたいっつってんだから、そうするしかねえな。とにかく、この辺で深海棲艦が生まれてるわけじゃねえんだな?」

南太平洋空母棲姫「見ツケテイナイカラ、ソウ言エソウネ」
937 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:48:00.61 ID:40fJ2Uhko

赤城「近年、海軍では艦娘の運用が見直され、轟沈する艦娘自体が減少しています」

赤城「この島に漂着してくる艦娘が減少しているのであれば、近海での深海棲艦の発生が落ち着くのは当然の帰結なのかもしれませんね」

秋雲「とはいえ、それで全部の深海棲艦が生まれてこなくなるわけじゃないんでしょ?」

提督「そこは海域によって違う、って話だったな」

秋雲「海域?」

提督「海軍が特別海域と呼ぶ海域のように、強力な深海棲艦が発生しやすい海域があるのは知ってるか?」

提督「過去にそういう特別海域になった海域は、何かしらの大きな戦闘や、国のその後の運命を左右するような海戦の舞台になった場所が多い」

提督「そういう因縁のある戦いが起きた海域ほど、深海棲艦が発生しやすく、かつ艦娘が深海棲艦になりやすい、と、推測されている」

提督「阿賀野が深海化したのも、そういう海域に流れていったから、じゃないかと思ってる」

提督「そうでなければ、長期間海底にいたからとか、或いはその両方、ってのが、俺と泊地棲姫の見解だな」

時雨「ということは、いまこの島で深海棲艦が生まれてない、見つかっていないのは、そういう海域じゃなくなったから、ってことかな?」

提督「何をもって、そういう海域じゃなくなった、って言えるかは不確定だけどな」

ニコ「……あの光の柱の影響とは考えられないかな?」

提督「光?」

時雨「もしかして、女神妖精の光のこと?」

ニコ「うん。ぼくたちとは異質の、魂を守る力。ぼくたちは、殺した人間の魂を糧にするんだけど」
938 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:48:48.42 ID:40fJ2Uhko

ニコ「あの光は、轟沈した艦娘を救ったり、深海棲艦を弱らせたりする力があって、ぼくたちの望む力とは全く違う力を持ってたんだよ」

時雨「つまり、女神妖精のおかげで、この島周辺の彷徨える魂が天国へ行ったりして消えちゃった、ってことになるのかな?」

伊8「それじゃ、もしかしてあの海底の艦娘の魂は、もう成仏しちゃってるかもしれないと?」

ニコ「十分考えられるね。島が広くなってからは、この島での魔力の回復が少ししづらくなったし。彷徨える魂が減ってるのかもしれない」

ジェニー「それじゃ、ニコは魔力が足りなくてあっちの神殿のほうに引き籠ってたの?」

ニコ「それは違うよ。このところ、神殿に侵入してくる人間が増えてたから、撃退に回ってたんだ」

提督「それに加えて、俺からエフェメラ絡みで調べものもお願いしてるしな」

ジェニー「ふーん、それじゃリーダーもみんなが神殿によくいる話は理解してるのね」

秋雲「???」

赤城「秋雲さんは来たばかりですから、メディウムの事情までは分からなくても仕方ありませんよ」

伊8「知りたいときは、時間あるときに教えてあげるね」

秋雲「あ、ありがとーございます。それにしても、つくづくすっごいところに流れ着いたんだなあ、私……」

伊8「着任したての頃は、みんなそう言いますね」

赤城「今のここは海軍ですらなくなりましたからね。艦娘の考える普通とは違っていて当然です」

秋雲「うーん……私って、ここで好きにしてて、本当に大丈夫なんだよね……?」

提督「そこは心配いらねえよ。今のお前は、俺の判断で俺たちが保護してるって状態だ」
939 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:49:30.88 ID:40fJ2Uhko

提督「仮に海軍が突っかかってきたとしても、その文句を受けるのは俺であってお前じゃねえし」

提督「第一に秋雲がここに来た原因を作った良提督をどうにかしてもらわねえと、秋雲も海軍に戻る気にはなれねえだろ」

提督「もちろん、お前の気が変わって今すぐ戻りたいとか言うなら見送ってやるが?」

秋雲「うーん……元の鎮守府が心配っちゃー心配ですけど、そもそも戦力外扱いされてるから……このまま戻っても、いいことなさそうだな〜」

南太平洋空母棲姫「私タチハ、仕事ヲ手伝ッテモラッテルカラ、助カッテルワ。ナンナラ、ズット居テモイイノヨ?」

秋雲「真面目にそれも捨てがたいかも。ちゃんとお仕事してて、絵も描けて、充実してる感あるから、悩むなあ……」

山城「ここに残るかは自由だけれど、その時はこの男にくれぐれも気をつけなさいよ?」

秋雲「へ? どういう意味?」

山城「この男が毎夜毎晩、誰かしら部屋に連れ込んで一緒に寝てるのよ」

秋雲「えええええ!?」セキメン

ジェニー「ああ、その話かあ」

秋雲「ちょっ、その反応だと、本当なのっ!? うわぁ……!」

伊8「連れ込んでるなんて人聞きの悪いこと言わないでください。はっちゃんたちが提督のお部屋にお邪魔してるんです」キリッ

山城「どっちにして問題でしょーが」
940 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:50:16.19 ID:40fJ2Uhko

秋雲「え? なに? どゆこと? 艦娘を連れ込んでるんじゃなくて、艦娘が自主的に提督のお部屋に行ってるってこと?」

時雨「そういうことだね」

山城「同じでしょ」フンッ

秋雲「だいぶ意味合い違うんですけど?」タラリ

南太平洋空母棲姫「居住スペースニ貼ッテアル、カレンダーハ見タデショ?」

秋雲「え、あれがそうなの? てっきり掃除の順番かと思ってたんだけど……うわー」ヒキッ

南太平洋空母棲姫「希望者以外ハ、名前ヲ書カナイワヨ?」

秋雲「……ってことは、あんなに大勢に押しかけられてるってこと?」

赤城「提督は、あなたのように島に流れ着いてきた艦娘たちの保護に努めてきました。その中で彼に命を救われている艦娘も少なくありません」

赤城「そのため、多くの艦娘たちが提督を慕っていて、なおかつ深海棲艦たちの中にも提督のことを好ましく思う者が多く……まあ、その……」ポ

ジェニー「そういう子たちの間で、誰がいつリーダーの部屋に行くか、順番を決めてるのよ」

秋雲「……マジで?」

提督「マジだ。昔は部屋に鍵をかけてたんだが、どういうわけか、それも意味なくてな……」アタマガリガリ

提督「どうしようもないから、俺の睡眠を邪魔しない条件で俺の布団に入ってくるのを許可してたんだ」

秋雲「えー……? い、いいの?」

提督「普通はよくねえよ。ただ、轟沈して精神的に不安定になってて厳しく言えねえこともあって、そのころは同衾まで許してたんだ」
941 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:51:02.71 ID:40fJ2Uhko

提督「それがまあ、最近じゃ俺もあいつらに助けられたりしてるし、部屋に来るのを拒否する理由も今更見つからなくてなぁ」

提督「あいつらの気持ちに応えないほうが不義理に思えてもきたところもあるし……それで、まあ、好きにさせることにしたんだ」ハァ…

秋雲「ほえ〜……え、ちょっと待って。それが毎晩? 提督の体力は大丈夫なの?」

赤城「一度それで敷波さんが激怒していましたね。提督に無理をさせるなと」

秋雲「あ、怒ってくれる艦娘もいるんだね……って、駆逐艦!?」

提督「まあ、俺の体力くらいはどうでもいいんだけどよ」

秋雲「いいの!?」

提督「それより俺としては、複数の女性とそういう関係を持つことの方が余程不誠実だと思ってんだけどな。いいのか? こんな爛れた関係で」

秋雲「そう思うんなら誰か一人を正妻にすれば? って思うけど……」

南太平洋空母棲姫「ソンナコトシタラ、戦イガ起コリソウ、トシカ、思エナイワヨ」

伊8「仮に正妻なんて枠を作っても、すぐに形骸化するんじゃないかなあ?」

秋雲「やっぱり?」

南太平洋空母棲姫「アラ、理解シテテ、提案シタノ?」

秋雲「うん。提督に鎮守府の施設を案内してもらった時、みんなウッキウキのニッコニコで提督に話しかけてたから、まあ無理そうだよね〜って」
942 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:51:45.38 ID:40fJ2Uhko

時雨「それ以前に、へたれの提督にそんな決断は無理だと思うけどね」

伊8「提督は、へたれじゃありません。ちょっと欲張りなだけです」デロリ

秋雲「ヒエッ」ビクッ

時雨「う、うん、そういうことにしておこうか」タジッ

山城「案外、欲張りで間違ってないんじゃないの。全員お世話して満足させようとする、見境なしの節操なしの八方美人。強欲の極みよ」

秋雲「……言い方きつくない?」

山城「褒めてんのよ。一応」フン

秋雲「言い方が雑すぎて、とても褒めてるように思えないんだけど?」タラリ

ジェニー「でも、私たちのことを全部助けようとするあたり、強欲ってところは当たってるかもね」ウフフッ

ジェニー「そういえば、いまはニコも、リーダーのお部屋に入るローテーションに入ってるんでしょ?」

ニコ「ぼ、ぼくは魔神様のお姉ちゃんとして、寝かしつけてあげてるだけだよ!」

伊8「え? まだヤってないんですか?」

ニコ「ちょ」

ジェニー「あんなディープなキスやっておいて、まだそこまでしか行ってないの? それじゃキャロラインに先を越されるわよ?」

ニコ「そ、そうは言ってもさ……順番ってものがあるじゃないか」カオマッカ

赤城「……」カオマッカ
943 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:52:31.05 ID:40fJ2Uhko

提督「とりあえずその話はその辺にしとけ。つうか、そういう話がしたかったら、早霜のいるバーに行け」カリカリ

秋雲「無視して仕事してる提督の場慣れ感が半端ないわ……」

提督「仕事をする時間だから仕事してるだけだ」

山城「ほんと、変なとこが真面目なのよね……面倒臭い男だわ」

時雨「山城と一緒だね」フフッ

山城「」ピキッ

南太平洋空母棲姫「赤城ハ、ソノ手ノ話ニ慣レテナイノネ」

赤城「え、ええ、恥ずかしながら……」

ジェニー「あれ、アカギってニコのキスシーンに居合わせてなかったっけ?」

ジェニー「ニコが動けなくなったリーダーに覆いかぶさってキスしてたとこ、見てたでしょ?」

赤城「それは、まあ、見ていましたけれど……」ミミマデマッカ

伊8「ニコさんなにやってるんですか」ジトッ

ニコ「ふ、不可抗力だよ!? あれはジェニーのせいなんだから!」

伊8「ジェニーさんもなにやってるんですか」グリッ

ジェニー「えー、だってニコったら、動けないリーダーにキスしようとしてた艦娘に嫉妬してたのよ? もう見ていられなくってさ」
944 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:53:15.84 ID:40fJ2Uhko

ジェニー「で、ニコがリーダーのところに駆け寄ったときに、ほらやっちゃえーってちょっと背中を押したら、ぶちゅー、って」テヘペロー

秋雲「なにそのマンガみたいな展開」

ニコ「……」ミミマデマッカ

提督「あー、面倒臭え。いくつあるんだこの設問」カリカリ

秋雲「提督は完全に他人事だし!?」

提督「仕事してえんだよ俺は。ったく、こういう面倒なもんはとっとと片しちまうに限る。長引かせたっていいことはねえ」

赤城「……こほん。それにしても、元帥閣下も思い切りましたね。たった2日で、あの組織の調査の日程を組むなんて」

提督「元帥自身も、あの組織のことははっきりさせたがってたみたいだったからな。ここで間が空くと、連中に情報を隠蔽する隙を与えちまう」

提督「そうさせないために、わざと今日までで予定を立てさせようとしたっぽいぞ」

赤城「おや。では元帥閣下も、あの組織の面倒を見るのが面倒になったと?」

提督「それもあるし、全容を把握してないから、このまま放置していたら海軍っつうか、自分の手に余るかも、とも判断したんだろう」

提督「この機会に俺に全部見せてしまって、やばい部分を全部潰させようとも考えてるようだし」

提督「ついでにそこの研究員に恨まれる役目も、俺におっ被せようって腹じゃねえかな?」

赤城「なるほど。抜け目ないですね」

提督「憎まれるのには慣れてるが、面倒な連中を相手したくねえ。ま、なにかとっておきのカウンターパンチでも用意しておくさ」

伊8「提督、厭そうな顔してますね」

提督「何を見せられるか、わかったもんじゃねえからな。ブチ切れて施設をぶっ壊したりしないように、最悪の事態も想定しとかねえと……」
945 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:54:00.86 ID:40fJ2Uhko

ニコ「我慢する必要なんかないよ。気に入らないなら、いつでもぼくたちを呼んでもらっていいんだからね?」ズイ

提督「……」

ニコ「魔神様が苦悩する姿なんて、ぼくたちは見たくないんだ。ぼくたちならいつでも、魔神様の手足になって、いくらでも人間を滅ぼせる」

提督「……その場その場で衝動的にあいつらを潰してたら非効率的だろ。そういうのは親玉を見つけて逃げられなくしてからにしようぜ」

ニコ「!」

提督「ニコの気遣いはありがたいが、手出しはすんなよ。殺るのはちゃんとこっちに手が出せないことを見極めてからにしたいからな」

ニコ「……はあ、しょうがないなあ。魔神様のお考えだもの、従うよ」

提督「悪いな」ナデ

ニコ「あっ……も、もう、今回だけだからね?」モジモジ

時雨「……提督って、割とたらしだよね」

提督「そうか? 気ぃ遣ってもらってんだから、礼を言うのは普通だろ?」

ジェニー「それが普通じゃないから、みんな浮かれてるんだよね」

秋雲「え、普通じゃないの?」

ジェニー「魔神様は残忍なお方だから、くれぐれも粗相のないように〜、って、ずっとニコに言われてたのよ?」

秋雲「え、残忍だったの?」

赤城「いえいえ、残忍というほどではありませんでしたよ。抜き身の刀のような危うさはありましたが」

秋雲「んんんん? どっちみち危ないんじゃない?」クビカシゲ
946 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:54:46.06 ID:40fJ2Uhko

山城「あまり難しく考えなくていいわよ。この男、艦娘とかには極甘で、人間には容赦しない、ってだけだから」

秋雲「……余計によくわかんないんだけど」

時雨「あまり深く考えなくていいと思うよ。普通に接してさえいれば、提督は怖くないからね」

秋雲「うーん……とりあえず、昔は荒れてた、ってくらいの認識でいいのかな?」

伊8「はい、それでいいと思います」

南太平洋空母棲姫「……トコロデ提督?」ズイ

提督「ん?」

南太平洋空母棲姫「イマハ忙シソウダカラ、御褒美ハ、アトデ戴コウカシラ」

提督「そうしてもらえると助かるな。ゆっくり休んでてくれ」

南太平洋空母棲姫「ジャ、アトデネ」クルリ スタスタ…

時雨「……やっぱりたらしじゃないか」

伊8「ごほうび? って、なんですか?」

提督「労ってほしいんだと。まあ、変なことはしてねえから、安心しな」

山城「ふん、どうだか」

ジェニー「ヤマシロは何かとリーダーに突っかかるわね?」

時雨「山城は素直じゃないんだよ。可愛いでしょ?」ニコニコ

秋雲「めんどくさかわいいってやつ?」

ジェニー「ちょっと何言ってるかわかんないんだけど」タラリ

 扉<コンコン チャッ

大淀「失礼します。提督、赤城さん、海軍から日程表のFAXが届きましたよ」

提督「!」

赤城「!」
947 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2025/09/28(日) 21:55:41.02 ID:40fJ2Uhko
今回はここまで。
このスレで納めるつもりだったのに……続きはまた後日。
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