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プリキュア作るぞ part2【安価有】

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888 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/10/29(日) 01:02:00.68 ID:P9O2tPu4o
シキ「……みんな覚えてるです? 前に学校でツナミが襲ってきた時、桜野はライガと戦ってたのです」

雪菜「そ、そういえばそうです……あの時なにか……」

シキ「桜野、ライガになにか言われてたのです。話の中身までは聞こえなかったけど、なにか……」

透「なにかって……?」

シキ「分からないのです。でもはっきりしてるのは、敵の目的がウィッシュスターだってこと……」

朱「も、もしかしてウィッシュスターを持ってこいって脅されたんじゃ……!」

透「!」

シキ「……かもしれないのです」

シア「しかし桜野に限って言われた通り渡すなんて思えませんわ……」

雪菜「確かにそうです。だとしたら、桜野さんなら……あ、桜野さんもしかして……!」

シキ「……うん」

透「なに、なに!?」

シキ「………………ひとりで戦いに行ったのです」

透「え……」

シア「そ、そんな……!」

透「なんで……? なんでなんで……! だって桜野っ、そんなこと一言も言わなかったっ!!」

シキ「朱と雪菜なら、なんとなく分かると思うのです。桜野の暗い部分に少しでも触れた2人なら」

雪菜「はい……桜野さんならそれが1番って……」

朱「考えるでしょうね……」

透「……!」
889 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/10/29(日) 01:15:54.35 ID:P9O2tPu4o
透「な、なに…………なんなの……なんで……?」

透「朱も雪菜も……なに言ってるの……?」

透「暗い部分ってなに……! そんな桜野……私知らない……!」

シキ「透……」

透「わ、わたし……? わたしのせい、なの……?」

透「わたしがウィッシュスターあげちゃったから……? だからさくのいなくなっちゃったの……??」

シキ「……ちがうのです」

透「じゃあなんで! なんでよっ! なんで桜野いないのっ!!!」

シキ「……」

透「なんっ、ぅ、けふっ……! なんでっ……はぁっはぁっ……さくのっ、なんで……なんでよぉ……!」ガクガク

シア「透!」バッ

透「んくっ、はっ、はっ……! うぅぅ……!」

透「ふーっ、ふーっ……ちが、うもんっ……!」

透「さくの……いなくならないもん……なんにも言わずにかってにいなくなったりしないもん……!!!」

シキ「……透、聞いて」

透「やだ!」

シキ「ダメなのです。ちゃんと聞いて。桜野にはね……」

透「うぅぅううう……!!!」

シキ「……桜野には……多分もう、戦いしか残ってないのです」

透「………………ぇ」

シア「ど、どういうことですの……?」

雪菜「それって……!」

朱「シキちゃん……」

シキ「うん……」

シキ「話すのです、ぜんぶ。桜野のこと、桜野が話してくれたこと、シキが知ってること、ぜんぶ」

シキ「みんな、透、絶対耳を塞がないで……」
890 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/10/29(日) 01:16:25.95 ID:P9O2tPu4o
ここまで
ドロドロにします
891 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/10/29(日) 01:18:54.11 ID:gBurVn2To

ついに秘密が明かされるか
892 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/10/29(日) 02:00:22.05 ID:pKAcGazHo

食後に甘いものもください!
893 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/10/29(日) 02:15:23.58 ID:X7ux8oMo0

超濃厚ドロドロスープニンニクもりもり…
894 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/10/30(月) 23:43:58.57 ID:2/GKEhvRo
夜の街

タッタッタッタッ

桜野「……っ」タタタッ

桜野(……いわゆる虐待がはじまったのは、わたしがママの妹夫婦に引き取られたその日からだった。9さいになったばかりだった)

桜野(毎日殴られたし、毎日蹴られた)

桜野(叔父さんは、わたしのおなかを蹴り飛ばすのがお気に入りだった)

桜野(叔母さんは叔父さんほど力がないからか、灰皿で殴ったり、ベルトをムチみたいにしならせて体を叩いた)

桜野(2人ともタバコを吸うから、灰皿代わりにその火を体に押し当てられた)

桜野(全身が痣と火傷とミミズ腫れで埋め尽くされるまで、3日とかからなかった)

桜野(痛みから逃げるように気を失うようになった。それがわたしとっての睡眠だった)
895 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/10/30(月) 23:56:18.40 ID:2/GKEhvRo
桜野(当たり前だけど、わたしの分の食事が用意されることなんてなかった。だからわたしはいつも腹ぺこだ)

桜野(かといってなにか勝手につまみ食いしようものなら、せっかく薄くなって痛みが引いてきた痣がまた新しくなってしまう)

桜野(わたしはおなかが空かないように、できる限り動かずじっと耐えた)

桜野(それでもやがて限界はやってきて、意識が朦朧としてくる。平衡感覚が無くなって、気づいた時には床に倒れていたなんてことも珍しくなかった)

桜野(時おり叔母さんたちの気まぐれで目の前に残飯がぶちまけられる。手を使わずに食べろと言われた。言われたとおりにした)

桜野(叔母さんたちの機嫌を損ねるとせっかくの食べ物を吐き出すことになってしまうから、汁の一滴すら残さないように丁寧に床を舐めた。叔母さんたちは、そんなわたしの後頭部を踏んづけてゲラゲラ笑った)

桜野(口の中でぐちゃぐちゃの食べ物と床の苦さが混ざって酷い味だった。噛むたびに小さな砂粒が歯をこすった。機嫌を損ねずとも結局蹴られた)

桜野(それでも、なにも食べられないよりはマシだった)

桜野(どうしてこんなことをするんだろう。その答えは聞かずとも教えてくれた)

桜野(わたしが痛みに悶えたり、苦しそうに咳き込んだり嘔吐いたり、空っぽのおなかから胃液を吐き戻す姿が痛快なんだという)

桜野(じゃあしょうがないやって思った)
896 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/10/30(月) 23:58:07.66 ID:7D99fAlN0
これでなぜプリキュアになれるほどの光が
897 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/10/31(火) 00:10:25.44 ID:fERDBuF/o
桜野(幸いだったのは、叔母さんたちがとにかく世間体を気にする人たちだということだった)

桜野(どれだけ痣を作っても、硬い瓶や刃物が振り下ろされても、服で隠せない場所は怪我もなくきれいだった。だから学校には行けた)

桜野(年中長袖しか着れなかったとしても、せっかく終わらせた宿題のノートが登校直前にぐしゃぐしゃになったとしても、学校に行くことはできた)

桜野(わたしは学校が大好きだ)

桜野(だって学校に行けばごはんが食べられる。それに誰もわたしをぶたない)

桜野(できるだけ長く居られるように、毎日誰より早く登校して、誰より遅く下校した)

桜野(わたしはいつも家に入る前に深呼吸をする)

桜野(今日もまた気絶するまで嬲られ続ける、そう考えると体が震えてしまう。わたしが怯えると叔母さんたちはもっと面白がるから、そうならないように呼吸を整える)

桜野(気絶するまで嬲られるからといっても、すぐに眠ってはいけない。早くに気を失うと、殴り足りない叔母さんたちがものすごく痛いところを狙うかもしれないからだ)

桜野(起きている時も狙われるし同じくらい痛いけれど、身構えられる方がずっといい)

桜野(家の中でわたしが自由にできるのは、ゴミ箱の隣に置かれたぺちゃんこのクッションだけだ。そこに座ってぼーっとしたり、宿題をやったり、体を丸めて泣いたりした)

桜野(そんな生活は中学生になっても続いた。毎日が傷だらけで、痛みに怯える日々だった)
898 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/10/31(火) 00:20:09.90 ID:fERDBuF/o
シキ「……」

雪菜「っ……!」カタカタ

朱「うそ……でしょ……!」

シキ「……ぜんぶ本当のことなのです」

雪菜「そんっ……なのっ……!」カタカタ

シキ「……桜野はそんな状態でも、シキのことを一番に考えてくれたのです」

朱「うぅ……」

シキ「……食べ物を分ける時も、シキにはできるだけきれいなところをくれたのです」

シキ「……きれいなところがない時は、少ないお金でシキの分だけ何か買ってくれたのです」

シキ「遠慮すると、桜野の目が真っ黒になるのです。怖いくらい真っ黒に……」

透「………………」

シキ「みんな覚えてるです? 前に桜野が学校おやすみした時のこと……」

雪菜「……おみっ、お見舞いっ……みんなで行った……」

シキ「風邪ってことになってたけど……あれ本当は全然違う理由だったのです……」

朱「じゃあやっぱり……!」

シキ「あの時ね……」
899 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/10/31(火) 00:22:17.63 ID:fERDBuF/o
ここまで

実はコスモスさんは「1番幸せな世界線の岸波桜野」です
桜野が出会ったのがたまたまシキだったからプリキュアになってますが、余裕で逆だったかもしれねェです
余談ですが光と闇どちらの勢力も介入しなかった場合、桜野もコスモスもほぼ同時期に自殺します
900 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/10/31(火) 00:24:53.65 ID:NSH0ke4ko

ど、どういうことだってばよ…
プリキュアにならなきゃ死んでたしプリキュアになるのが早すぎてもバッドエンドらしいし
901 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/10/31(火) 00:32:06.36 ID:yM+MhsDp0

一番弱い透ちゃんは突然何かの力か存在にドラフト指名されて一番強い桜野さんは偶然がなきゃプリキュアになれなかったかもしれないのは何か意味が
902 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/10/31(火) 00:48:17.77 ID:fERDBuF/o
>>900
早すぎ√は桜野さんが1人で戦い続けて闇落ちする√です この場合透ちゃんと仲良くならないので闇落ちからの救済がない

プリキュアにならなくても初手闇堕ちすると光堕ち→追加キュアで生存√爆誕します
何気にコスモスさん主役、桜野さん追加キュアの並びがポジション的には一番本家感出る ただしコスモスさんの性格に目を瞑る

>>901
そのうち書きます 多分書くと思う 書くんじゃないかな?
903 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/10/31(火) 01:18:02.52 ID:q5VoaUzbo
おつおつ
土曜深夜36:30かな?
コスモス主役はチームがバラバラじゃねえか!になるの見える見える
904 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/10/31(火) 01:49:59.65 ID:PAyFgtPPo
世間体は気にしてる叔母さんをヤバいやつと見抜けた雪菜ちゃんは洞察力通り越してニュータイプだ
905 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/10/31(火) 09:19:50.84 ID:587UR+IB0
おつ
食べ物は気まぐれでしか与えられない割に学校で倒れたりして気づかれたりはしてないみたいだし
身体測定とか夏服・体操服とか色々どうしてたんだ…?
906 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/10/31(火) 09:59:44.22 ID:6D8Hd3fZO
>>905
以下、没台詞です あくまで没台詞です

─────

だから中学校の校長先生と紹介された人がいつもわたしを乱暴に虐めるお客さんだと気づいた時は、もうどこにも逃げ場はないんだなって思った

─────

再三申し上げますが没台詞です
907 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/10/31(火) 10:32:43.80 ID:vL44l2cWo
透ちゃんみたいに異世界へ誘拐された方がまだマシそうな
908 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/10/31(火) 10:48:13.57 ID:3QSE8O9f0
環境変えても心はもうダメらしいし
おいおい詰んだわ
909 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/10/31(火) 11:34:12.11 ID:j4OLrcN90
ラストバトル最終回がもうすぐっぽくて悲しい
いつもの50話近くあるプリキュアなら園児時代の透ちゃんの友達が未だに透ちゃんを男子だと思い込んでて恋してるとかみんなの両親出てくるとか季節イベントとかゲストキャラ絡む単発回的な話かありそう
910 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/01(水) 23:36:15.30 ID:REWyui95o
桜野(不定期だが、叔母さんの機嫌がものすごく悪くなる日がある)

桜野(理由はわからない。もしかしたらそんなものないのかもしれない)

桜野(それでもたったひとつ明らかなことがあるとすれば、数時間後には全身の傷痕が真新しくなっているということだけだ)

桜野(帰ってくるなり叔母さんは苛立ちを隠そうともせず、いろんなものに手当たり次第に当たり散らす)

桜野(その中で一番殴り心地が良くて面白い音が出るのがわたしだ。わたしは、叔母さんが鬱憤を晴らすのにうってつけのサンドバッグなのだ)

桜野(気を失うまで殴られ続ける。硬いもの、鋭いもの、いろんなもので殴られる。普段よりも容赦がない)

桜野(どれだけ痛くても、苦しくても、止めてほしくても、少しでも反抗しようものなら火に油を注ぐ結果になる。だからひたすら黙って耐える)

桜野(痛みで思考が鈍化すると、1秒が恐ろしいくらいに長く感じる。永遠に終わらないんじゃないかとさえ思う。そんな思考も、背中に振り下ろされたガラス瓶と一緒にはじけ飛ぶ)

桜野(そして大抵は叔母さんのイライラが収まるよりも先に、わたしの方が力尽きる)

桜野(意識は完全に飛び、目は虚ろになり焦点が合わず、『あ』と『う』以外なにも喋れなくなる)

桜野(そうなってしまえば、わたしにサンドバッグとしての価値は無い。どれだけ痛めつけても、小さなうめき声を上げるのが精一杯な退屈なおもちゃじゃストレス発散にはならない)

桜野(だから標的が移る)

桜野(近くにあって目につくもの、わたしのスクールバッグをひっくり返すのだ)
911 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/01(水) 23:39:54.21 ID:LV9Gz7jL0
よく生きてんな桜野さん
912 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/01(水) 23:44:29.22 ID:REWyui95o
桜野(そもそもわたしは持ち物が少ない)

桜野(教科書や制服など学校関連のもの以外は、せいぜい着替えが数着あるくらいだ)

桜野(叔母さんたちの目につく場所にあると気まぐれに破られたり汚されたりしてしまうから、視界に入らないように物置のすみっこに押し込めている)

桜野(それでもたまに癇癪を起こした叔母さんが、腹いせに物置をめちゃめちゃにすることがある)

桜野(だからわたしは、本当に大事なものだけはスクールバッグに入れて常に持ち歩いている。例えばそれは、ほんの少しのお金とか食べ物とかだ)

桜野(でも叔母さんの機嫌が悪い日は、そういうものにまで被害が及ぶ)

桜野(取られたり捨てられたりして、ただでさえ少ない持ち物がすっからかんになる。さながらリセットだ)

桜野(運が悪かったと割り切るしかない。今までだってそうしてきた)

桜野(でもあの日は……)
913 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/01(水) 23:58:50.64 ID:REWyui95o
桜野(あの日はたまたまそういう日だった。帰った途端、叔母さんに突き飛ばされた)

桜野(咳き込んでいるところ髪を掴まれ引っ張り上げられて、そのまま何度もおなかを蹴られた)

桜野(迂闊だった。もっと気をつけなければいけなかった。考えるにはもう遅かった。あっという間に意識が飛んだ)

桜野(そして気がついた時、ぼやける視界の先で、叔母さんがスクールバッグをひっくり返していた)

桜野(中身が床に散乱した。教科書、筆記用具、ぺちゃんこのお財布、半分に欠けた飴玉……)

桜野(叔母さんはその中から、ふたつのぬいぐるみを鷲掴みにした)

桜野(ひとつは前に透ちゃんがUFOキャッチャーでとってくれたもの。そしてもうひとつは、シキだった)

桜野(シキにはあらかじめ、見つかってしまったらぬいぐるみのフリをするように言っておいた。そうすれば大丈夫だからと。シキはわたしの言った通りにした)

桜野(叔母さんはぬいぐるみをわたしに突きつけ、どこで盗んできたと怒鳴った。答えなんて何でも良かったんだと思う。ストレス発散ができればそれで)

桜野(わたしはひたすらごめんなさいだけを続けた。下手に言い訳するよりただ謝り続けた方がいいことは、これまでの経験でわかっていた)

桜野(どうにかしてシキを離してもらわなきゃいけない。なんとかチャンスを作ろうと必死だった)

桜野(でもあの日の叔母さんは、本当に機嫌が悪かった)

桜野(叔母さんはハサミを持ち出してきて、透ちゃんがくれたぬいぐるみに刃先を向けた)

桜野(あちこちから綿が飛び出た。腕も足も、目玉も千切れた)

桜野(あの日からずっと肌身離さず持っていたもの。大切にするって透ちゃんに約束したもの。わたしの宝物)

桜野(それはあまりにもあっけなく、無惨な姿に成り果てた)

桜野(次はシキの番だった)

桜野(わたしはその日、人生で初めて、叔母さんに反抗した)
914 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/02(木) 00:01:47.16 ID:8djY/Coyo
おいおいまさか
915 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/02(木) 10:34:16.53 ID:TVbcBb5L0
なぜこの子がプリキュアになれたのか
なぜ今まで隠し通せていたのか
なぜ生きていられたのか ←NEW!

桜野さんの謎は深まるばかりだな…
916 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/03(金) 19:57:59.10 ID:Oo0q9vcPo
生まれた瞬間から人生詰んでるかのような人生
917 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/03(金) 23:05:45.21 ID:HsgaOwuKo
桜野(それからのことはあまり覚えていない)

桜野(ただ、叔母さんがすごく驚いてて、すごく怒ってて……それから今までで一番痛かったのは覚えてる)

桜野(気絶するまで殴れたし、気絶してからも殴られた。もはやどこが痛いのかすらわからなかった)

桜野(痛みで気を失い、痛みで目が覚める。何度も繰り返した)

桜野(気づいた時には、いつも使っているクッションが胃液や血を吸って酷い臭いになっていた。それでも体は動かなかった)

桜野(力の入れ方すら分からなかったし、世界がなに色ともつかない変な色をしていた)

桜野(それなのにいやに頭がスッキリしていて、こういう風に終わるのかなぁって思った。その感覚に体を預けて、少し眠ろうと思った)

桜野(でも、シキがいた)

桜野(今眠ったら、シキとの約束が果たせなくなる)

桜野(それはダメだ。約束は守らなきゃだめなんだ。絶対)

桜野(シキだけじゃない。透ちゃんとの約束も守れなくなってしまう)

桜野(わたしはもう少し頑張らなきゃいけない)

桜野(約束も守れないわたしに生きる価値なんてない)

桜野(頼まれたら最後までやり遂げなきゃいけない)

桜野(役に立たなきゃ)

桜野(またいらない子になっちゃう)

桜野(役に立たなきゃ)

桜野(それだけがわたしの存在理由なんだから)

桜野(役に立たなきゃ)

桜野(わたしにあるのはそれだけだった)
918 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/03(金) 23:08:07.97 ID:Lkkf6SKMo
プリキュアの力で遂にやっちまったかと思った…
ここまでされても命に別状はない生命力…
919 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/03(金) 23:20:43.73 ID:HsgaOwuKo
シキ「……桜野はシキを必死で守ってくれたのです。シキを抱きしめて、体を丸めて、何をされても絶対動かなかったのです」

シキ「シキが今ここにいられるのは、間違いなく桜野のおかげなのです。でもそのせいで桜野が……」

シキ「……酷かったのです、本当に」

シキ「ずっとうめき声を上げていたのです。気を失ったままずっと。殴られるのが終わってからもずっと」

シキ「一瞬意識が戻って、痛みから逃げるみたいに体が跳ねたかと思うと、すぐに糸が切れたみたいに倒れるのです。またそれを繰り返すのです」

シキ「何度も繰り返すうち、ついにピクリとも動かなくなったのです」

シキ「声をかけてもゆすっても、なんの反応も無かったのです」

シキ「叔父さんも叔母さんも気絶してる桜野にはあんまり興味を示さなかったのです。でも学校の日が近づくと、無理やり叩き起こそうとするのです」

シキ「蹴っ飛ばされた桜野が気絶したままもどして、汚いってまた蹴られたのです」

シキ「結局その週はお休みになったけど、その間シキは何度も見たのです」

シキ「気を失った桜野の口から黄色い液体が溢れるのを何度も、何度も何度も、何度も何度も何度も何度も」

シキ「そこに赤色が混じり始めた時は本当にもうダメかと思ったのです」

シキ「怖くて、なにかしなきゃって思って。とにかくなにか食べさせなきゃって、無くなっても気づかれないようなものを持ってきて桜野の口にねじ込んで、でもすぐにもどしちゃって……」

シキ「水だけでもって思って、台所を往復して水を運んで飲ませて……」

シキ「不安で不安でたまらなかったのです。もうダメだって何度も思ったのです。なにをしていいか、なにをしちゃいけないか分からなかったのです。あの時ほど、人間に生まれなかったことを呪ったことはないのです」

シキ「それでも、いつか目を覚ますって信じたのです。そうするしかなかったのです」

シキ「それで、それでね、桜野、目を覚ましたのです。完全に気を失ってから、まる1週間経ってたのです」
920 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/03(金) 23:22:37.49 ID:Lkkf6SKMo
そら雪菜ちゃんも一目見ただけで今までで一番怖かったと感じるわ
921 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/03(金) 23:26:53.00 ID:HsgaOwuKo
>>918
一応そのルートは考えたんですけど、それができる子ならこんなにこじれてない気がして
いざやっちまったとしたら闇落ち直行しちゃうし

余談ですが、お泊まりイベの募集で透ちゃんが日常的にプリキュアの力使ってるみたいなのを採用しなかったのは、それ許容すると桜野さんがやっちまう可能性が出てきちゃって闇落ち直行どころか闇落ち済みになりそうだったので
922 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/03(金) 23:29:17.20 ID:gtqTi8TZ0
敵勢力についてないとはいえこれでまだ闇じゃないんだ…
923 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/03(金) 23:41:27.52 ID:HsgaOwuKo
シキ「桜野の目がふらふらって泳いで、シキを見つけて。そしたら桜野、なにか言おうとして、でも声が枯れてなにもしゃべれなくて」

シキ「何も言わなくていいのですって言ったけど、それでも何かしゃべろうとして。桜野が伝えたがってること、聞き逃しちゃダメだと思って」

シキ「それで桜野、なんて言ったと思う?」

シキ「桜野ね……」

『………………ごめんね』

シキ「桜野が一番辛いはずなのです。苦しいはずなのです。なのにごめんねごめんねって何度も……」

シキ「なんで桜野が謝らなきゃいけないのです……桜野はいったいなにを謝っているのです……」

シキ「シキにはもう、何も分からなかったのです。だからその時は、とにかく桜野が起きてくれたことを喜ぼうと思ったのです」

シキ「シキね、できるだけ楽しい話をすることにしたのです。その方が桜野も元気になってくれると思ったのです」

シキ「みんながお見舞いに来てくれた話をしたらね、すっごい動揺してたのです。でも結果的に門前払いになっちゃったことを話したら少し落ち着いたのです」

シキ「持ってきてくれたゼリーの話もしたのです。桜野が起きた時にはもう食べられちゃった後だったけど、気持ちは本物だって話したのです」

シキ「シキの話を聞くあいだ、桜野はうんうんって相槌を打っていたのです。でもその声も、だんだん小さくなっていったのです」

シキ「また眠るのかなって思ったのです。休めるなら休んだ方がいいのです。でももしかしたら、次眠ったら今度はほんとに目を覚まさないんじゃないかって思っちゃって……」

シキ「桜野の声が聞きたくて、相槌を打ってほしくて、くだらない話をいつまでも続けていたのです。いつまでもいつまでも……」

シキ「…………気づいた時には、1人でしゃべってたのです」
924 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/03(金) 23:54:24.25 ID:HsgaOwuKo
シキ「不安だったけど、少し眠ったらちゃんと起きてくれたのです。ひとまずほっとしたのです」

シキ「それから桜野は短い睡眠を何度も繰り返すようになったのです」

シキ「いくらか落ち着いたけど、それでも元気とは程遠かったのです」

シキ「それでも叔母さんたちはお構い無しで、週明けには学校に行けって言うのです。そろそろ友だちに会いたいだろって……」

シキ「そんなの無理に決まってるって思ったのです。休めてもせいぜいあと1日だけ。それだけで回復するわけないのです」

シキ「それどころか、シキが話しかけても返事すらままならない状態なのです。シキはもう少し休んでいてほしかったのです」

シキ「でもね、桜野ね、叔母さんの言葉に『はい』って返事したのです。短いけど、確かにはっきり」

シキ「悔しいのか、悲しいのか、腹が立つのか、もうなんだかぐちゃぐちゃだったのです」

シキ「だって死んでしまうところだったのです。もしかしたら本当にダメだったかもしれないのです」

シキ「それなのに、それだけのことがあったのに、桜野はなにも……変わらなかった……」
925 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/04(土) 00:04:33.80 ID:rVbSwJEoo
透「……」

朱「……」

雪菜「ひくっ……ひぅ……!」ポロポロ

朱「じゃああたしたちがお見舞いに行った時に会ったのが……」

シキ「うん……叔母さんなのです……」

朱「もしあの時、雪菜ちゃんが止めてくれなかったら……」

シキ「きっと……酷いことになってたのです……」

雪菜「うぐっ……ぅぅ……!」

朱「休み明け、桜野ちゃんが透ちゃんにたくさん謝ってたのは……」

シキ「ぬいぐるみのことなのです……」

透「……」

朱「あの日の桜野ちゃん……いつも通りとはいかないけど、明らかにおかしいとまでは思えなかった……」

シキ「すごく無理してたのです。本当は立つのもやっとだったのです……」

朱「そんな状態だったのに気づけなかったなんて……」

シキ「無理もないのです……桜野は強い。強すぎるのです。だから大丈夫なフリして、ボロボロの体でもまっすぐ歩いて……」

雪菜「ひぐ……」

シキ「それでもごはんはもう、まともに食べれなくなってるのです……」

朱「ごはん……? でも……」

シキ「食べたあとこっそり吐いてるのです……」

朱「え……」

シキ「学校でも、この前の遊園地でも、昨日みんなで食べたお夕飯だって……」

朱「そん、な……」

シキ「桜野はもう限界なのです。それは桜野自身も気づいてる……それにあれ以来、叔母さんたちがピリピリしてていつまた……」

雪菜「うぅぅ……」

シキ「桜野にはもう選択肢がない。だからひとりで……」

透「……」
926 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/04(土) 00:09:42.51 ID:XaT4znkeo
詰んだ…
927 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/04(土) 00:14:33.11 ID:rVbSwJEoo
透「……」

シキ「……」

朱「……っ」

雪菜「うっ……ぅ……」

透「……シキ」

シキ「……うん」

透「……それでぜんぶ?」

シキ「……シキの知ってることは」

透「……なんで」

シキ「……」

透「なんで今まで黙ってたの……!!!」

シキ「それは……」

透「ずっと一緒にいたんでしょ……! ずっと見てきたんでしょ……!」

シキ「で、でも……!」

透「なんでなにも言ってくれなかったの……! 教えてくれたらできることがあったかもしれないのに……! こうなる前になにかできたかもしれないのに……!!」

シキ「だって……だって!」

透「なのになんでっ……!!!」

シキ「約束なのですっ……!!!」

透「!」

シキ「……っ」
928 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/04(土) 00:17:04.73 ID:KX3uZJ9X0
桜野さん殺しかけてるの敵勢力じゃなくてただの人間って
929 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/04(土) 00:28:11.36 ID:rVbSwJEoo
透「……やく、そく?」

シキ「……桜野はシキの、いろんなお願いを聞いてくれたのです」

シキ「プリキュアになって戦うこと、透を助けること、シーズンランドを元通りにすること、他にもいろんなわがままを言ったのです。桜野はそれぜんぶ、嫌な顔ひとつしないで『まかせて』って言ってくれた」

シキ「そんな桜野が、シキにお願いした唯一のことなのです……!」

『あのねシキ、ひとつだけ約束してほしいことがあるの』

シキ「絶対に守ってほしい約束だって!」

『うちでのこと、絶対誰にも言わないでね』

シキ「言えなかった……! 言ったら桜野を裏切ることになるんじゃないかって……!」

透「で、でも! そんな領域とっくに超えてる! だったら……」

シキ「誰かに話して、それを桜野や叔母さんたちに気づかれたらどうなってたです!!?」

透「!」

シキ「ねえ透! 透ならどうしてた!? 桜野のこと知ったらなにしてた!? 何もしないでいられた!?」

透「そ、そんなこと……」

シキ「できるわけないのです! ほっとくなんてありえないのです! でもそれじゃ誰かが気づくに決まってるのです!!」

透「き、気づいたなら……!」

シキ「もしそうなったら桜野どうなると思う!?」

透「それは……」

シキ「叔母さんたちに殺されるか、ひとりで無茶な戦いをして死ぬか!! どっちにしても桜野はいなくなってた!!!」

透「っ!!!」

シキ「はぁっはぁっ……ひくっ、うぅ……!」

シキ「だからっ……だか、らっ……ずっと……話せなかったのです……!」ポロポロ

シキ「ごめん……ごめんなさいなのです……ごめんなさい……!」ボロボロ

透「……! で、でも、でもっ……!」

シア「透、シキを責めるのは筋違いですわよ」

透「分かってるけど!! でもっ、だったら……! どう、すればっ……私っ、どうすればいいのっ……!!」カタカタ

シア「……」ギュ
930 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/04(土) 00:28:42.27 ID:rVbSwJEoo
ここまで
ムズカシイヨ-
931 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/04(土) 00:30:04.76 ID:7+1uNKdMo

もうだめだぁ…おしまいだぁ…
932 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/04(土) 01:19:00.33 ID:TpE5+5Ez0
戦いの結末関係なく主人公どのみち死ぬ…
933 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/04(土) 20:56:23.23 ID:BNUhmMq90
前世で悪行重ねたってこんな詰み人生にはならんぞ…
934 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/04(土) 23:09:47.79 ID:DAlMZf6go
プリキュアSSの姿か、これが…?
子供泣くでこんなん

まぁ桜野はスピリットピース取り上げて病院送りなりで緊急避難が妥当かな?
全身の傷や跡を見れば誰でも保護が必要とわかるだろうから、叔母と引き離すのは難しくなさそう
935 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/09(木) 23:50:25.45 ID:SFx0dI1Po
まだまだ忙しい?
936 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/09(木) 23:52:21.67 ID:YZkuxC4Vo
町はずれの森

桜野「ふぅ、着いたけど……」

桜野「んー……」キョロキョロ

桜野「とりあえず歩いてみるか……」

ザワザワザワッ

桜野「っ!!!」ゾクッ

桜野「コスモスっ!?」バッ

桜野「っ……!」

桜野「……」

桜野「………………じゃない」

桜野「一瞬似てる気がしたけど全然違う……」

桜野「これがサイカか……」

桜野「……」

桜野「…………ムカつくなぁ」ザッ
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/09(木) 23:53:19.13 ID:SFx0dI1Po
きたか
938 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/10(金) 00:10:30.21 ID:N3BJJsRVo
雪菜「……っ」

透「はーっ……うぅぅ……!」カタカタ

シア「透……」

雪菜「透さん……シアさん……」

シキ「ひっ、うっ……ひぐ……!」ポロポロ

朱「シキちゃんも辛かったわよね……」ギュ

シキ「あがね゛ぇ……!」

朱「気づいてあげられなくてごめんね……シキちゃんにばかり背負わせちゃってごめんね……」ナデナデ

シキ「う゛んっ……」

雪菜「朱さん……シキちゃん……」

雪菜「………………」

雪菜「…………これからどうしたらいいんでしょう」

朱「…………そうね。シキちゃんの話で桜野ちゃんの状況は分かったけど……」

雪菜「桜野さんを追いかけて、追いついたとして、なんて声をかければいいんでしょう……なんて言えば連れ戻せるんでしょう……」

透「さくのぉ……」

シキ「すん、ぅ……今の、桜野は……自分ひとりの犠牲で戦いが終わるなら、それが一番だって考えてるのです……それが桜野が考えた、一番誰かの役に立てること……」

透「なんでそんなっ……」

雪菜「『なんの役にも立たないわたしに生きてる価値なんてないもん』」

透「え……」

雪菜「ですね……」

シキ「うん……」

透「なに、それ……!」

雪菜「……前に私、桜野さんの本心が知りたくて強引に聞き出そうとしたんです……その時に桜野さんが……」

透「そんなことを……」

朱「それが、いつ壊れてもおかしくない環境で桜野ちゃんの支えになっていたものなのね……」

雪菜「歪んだ環境に歪んだ希望……桜野さんを取り巻くすべてが桜野さんを歪曲させている……」

シキ「誰かの役に立つことが桜野の生きる意味になってるのです……」

透「そんな……そんなの……!」

雪菜「そして、それを見出すきっかけになったのが……」

透「え……」

朱「10さいごろって言ってたわね……」

透「……!」
939 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/10(金) 00:12:39.91 ID:fiY5DLHT0
心から何とかしないとどのみち自殺か
940 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/10(金) 00:27:10.52 ID:N3BJJsRVo
町はずれの森

桜野「……っ」ザッザッ

桜野(叔母さんたちに引き取られてすぐの頃のわたしは、自分がなぜ生きているのか分からずにいた)

桜野(目が覚めるたび、ここは天国かな地獄かなって考えた。どれだけ考えても答えは出なかった)

桜野(生きていることと死んでいること、どちらが天国でどちらが地獄か分からなかった)

桜野(分からないままにわたしは生きた。図々しくも生き続けた)

桜野(どうしても生きていたかったわけじゃない。死にたいと思ったことは何度もある)

桜野(今日も思った。昨日も思った。きっと明日も思うだろう。そんな毎日だった)

桜野(でもわたしは、生と死の境界に立ちながら自分の足元すらままならないわたしには、どちらに転べば死ねるかなんて分かりようもなかった)

桜野(逃げ出すこともできず、踏み切ることもできず、醜く生き続けるしかなかった)

桜野(生きる意味も、生きてる価値も、存在理由すらない)

桜野(ママもいない。パパもいない。からっぽ。わたしはなんのために生きているんだろう)

桜野(ずっと答えを探していた。あの子に出会ったのはそんな時だった)

桜野(まいごのおんなのこ。あの日のコスモスに)
941 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/10(金) 00:29:24.17 ID:33TJgxFMo
コスモスとのエピソードはちゃんと真実だったのね
妄想か記憶違いの類いかと
942 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/10(金) 00:37:06.95 ID:N3BJJsRVo
桜野(コスモスにあげたいちごみるくの飴は、あの日のわたしが口にできる唯一の食べ物だった)

桜野(それを手放したとき、わたしは生きる意味を見つけた)

桜野(コスモスが喜んでくれた。コスモスのお母さんも、たくさんのありがとうをくれた。それだけで十分だった)

桜野(わたしにもできることがあった。こんなわたしでも誰かの力になれた。生きてていいんだって言われた気がした)

桜野(その瞬間から、コスモスはわたしの生きる意味そのものになった)

桜野(誰かの役に立つ。それだけがわたしの存在理由だった)

桜野(求められるままに応えた。なんでもやった。本当に、なんでもやった)
943 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/10(金) 00:37:45.55 ID:fiY5DLHT0
アンパンマン?
944 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/10(金) 00:52:35.49 ID:N3BJJsRVo
雪菜「それが……桜井コスモスさんが生きる意味そのものの理由……」

シキ「そしてあの子は、今も桜野の中で生きてるのです……」

透「そんなのっ……どうしようも……!」

透「どうしようも、ない……」

透「っ……」ギュ

シア「……」

朱「……」

雪菜「……」

シキ「……」

朱「………………本当はどう思ってるのかしらね」

透「……!」

シキ「……どうって?」

朱「桜野ちゃん、自分ひとりで戦いを終わらせられるならそれでいいって、自分はどうなってもいいって、本気で思ってるのかな……」

透「……っ」

雪菜「それは……」

朱「誰かの役に立つってだけならそう考えちゃうかもしれないけど……それって桜野ちゃんの本心なのかしら……」

雪菜「それ、は……」

シキ「……」

透「わかんないよっ……!」

朱「……」

透「だってずっとなにも言ってくれなかったんだよ!? ずっと隠してたんだよ!? そんな酷い状況なんてぜんぜんわかんなくてっ、だっていっつものん気でおめでたい顔して笑ってて! 私っ、ずっと気づかなくて! 急にいなくなっちゃって……! 本当の気持ちなんてわかんないよっ! 朱だってそうでしょ!? みんなそう! 桜野の本心なんてっ、そんなの誰にもわかるわけないっ!!」

朱「……うん」
945 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/10(金) 01:05:36.20 ID:N3BJJsRVo
朱「……」

透「はぁっはぁっ……うぅぅ……!」

シア「透……」

朱「…………そうよね……うん、やっぱりそうよね」スクッ

シキ「朱……?」

朱「桜野ちゃんの気持ちだものね……桜野ちゃん以外に分かるわけないわよね……」

雪菜「朱さん……? なにを……」

朱「だったらここで話してたって仕方ないわよね」

シキ「そ、それは……そうかもですけど……」

朱「分かんないなら直接聞くしかないわよね」

シキ「!」

雪菜「直接って……!」

朱「大丈夫、この時のためにいっぱい準備してきたんだもの。シミュレーションはバッチリよ」

雪菜「し、シミュレーション……」

シキ「なにする気なのです……?」

朱「なにって、決まってるでしょ?」クルッ

透「!」

朱「誘拐っ」ニコッ
946 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/10(金) 01:06:18.47 ID:N3BJJsRVo
ここまで
おてんばなお姫様を攫いに行こう
947 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/10(金) 01:07:49.07 ID:HBRZKZ16o

ずっと言い続けてきたことを遂に…
948 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/10(金) 01:10:46.15 ID:fiY5DLHT0

台詞だけだと犯罪者だ
949 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/10(金) 11:26:57.55 ID:eFEAcg4i0

いやそれより叔母という脅威の排除の方が確じ(ry
950 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/10(金) 11:52:39.16 ID:14JchaDco
上手くやって環境変えるルートは強制バッドエンドと言ってたが桜野自身の問題は解決できるのか
951 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/10(金) 15:52:10.25 ID:dYblx+xpo
お姫様(戦闘ではゴリラ)
952 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/11(土) 00:19:33.57 ID:KlTU4nzSo
シキ「え……」

雪菜「あ……」

シキ「こ、こんな時になに言ってるのです……」

朱「あら、あたしは本気よ?」

シキ「本気って……」

朱「だってここでどれだけ考えても、結局なにも分からないでしょ? 本人がいないんだもの」

シキ「そ、そうだけど……!」

朱「だから聞きに行くの」

シキ「でも……」

朱「シキちゃんは反対?」

シキ「そうじゃ……ないけど……」

朱「うん」

シキ「でも……でもね、話聞いてくれるか分かんないのです……」

朱「分かってる。素直に聞いてくれるなら、こんなことになってないもんね」

シキ「……シキはね、桜野が泣いているところ、見たことないのです」

シキ「少しくらい弱さを見せてほしかったのです。でもいつだって、大丈夫って言われるのです。たまには泣いてもいいのですって言っても、実はこっそり泣いてるんだって笑ってごまかされたのです」

シキ「あんな環境にいても桜野はずっと強かった。不安すら通り越して、もしかしたら本当に大丈夫なんじゃないかって思っちゃうくらい……」

シキ「だからシキは分からなくなった」

シキ「何をしたらいいか、桜野が本心でなにを望んでるのか、本当に助けを必要としてるのか……シキにはもうなにも分からないのです」

シキ「もしかしたら、もしかしたらだよ? 桜野に追いついたとしても、助けなんかいらないって拒まれるかもしれないのです」

朱「……そうね」

シキ「それでも行くの?」
953 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/11(土) 00:34:40.71 ID:KlTU4nzSo
朱「……」

シキ「……」

朱「それだって聞いてみなきゃ分からない」

シキ「……!」

朱「なんて言われるかは分からないけど、それは言われてから考える。今はとにかく近くにいなきゃ」

シキ「……」

朱「もし本当に助けを必要としているなら、いつでも助けられるくらい近くに。本当は何か話したいことがあるなら、声が聞こえるように近くに」

シキ「……」

朱「もし何も聞いてもらえなかったらその時は、こっちだって何も聞いてあげない。無理やりにでも一旦こっち側に連れ戻す。だって誘拐だもの」

シキ「うん……」

朱「桜野ちゃんは今、とっても暗くて息苦しい場所にいる。そんなところじゃ、まともな話なんてできないもの」

シキ「うん……」

朱「だから攫いに行くの。攫って、桜野ちゃんの顔がよく見えるくらい明るいところまで連れ出す」

シキ「うん……」

朱「おはなしはそれから。いっぱいいっぱいおはなしするわ。聞きたいことが山ほどあるもの」

シキ「うん……!」

朱「シキちゃんもあるんじゃない? 聞きたいこと」

シキ「うんっ……!!」

朱「桜野ちゃんを追いかけるのに、あなたの力は必要不可欠なの」

シキ「うん!」

朱「だからお願いシキちゃん、共犯になって?」

シキ「きょう、はん……ふふっ、ふふふっ……いどい誘い方なのですっ」

朱「でも魅力的でしょ?」

シキ「報酬は山分けなのです」ニコッ

朱「うん」ニコッ
954 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/11(土) 00:35:49.16 ID:G+cFlIbKo
お姫様をさらいにいく王子様か怪盗か
955 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/11(土) 00:54:57.82 ID:KlTU4nzSo
雪菜「あのっ……私も……!」

シキ「雪菜……!」

朱「共犯志望ね。歓迎よ!」

雪菜「いやあの、言い方がちょっとアレですけど……」

朱「そうかしら」

シキ「弁解の余地は無いのです」

雪菜「でも、でも……私、ずっと後悔してるんです。あの時、遊園地でのこと……」

シキ「雪菜……」

雪菜「私は桜野さんに救われました。怖がりで泣き虫な私の初めての勇気は、桜野さんがいたからです。今の私があるのは桜野さんのおかげです」

雪菜「だからあの時、今度は私が桜野さんの力になろうって焦ってしまいました……」

雪菜「ずっと何かあるとは思っていました。それがどんなものだったとしても、受け止めるつもりでいました……」

雪菜「でも桜野さんの言葉を聞くたび、真っ暗で、ぜんぜん底が見えなくて……どうしようもないくらい怖くなっちゃって……」

シキ「うん……」

雪菜「今でも思うんです。あの時、桜野さんの背中を追いかけられていたら、何か変わったのかなって」

雪菜「私、もう後悔したくありません。桜野さんがいなくなるなんて嫌です。その想いは、初めて変身した時から変わりません」

雪菜「今度こそ追いかけて、追いついて、桜野さんの手を取ります。そしたらきっと怖いものなんてありません」

シキ「うん……!」

雪菜「だから私も……!」

朱「共犯ね!」

雪菜「あー……もうそれでいいです」

シキ「朱ぇ……」

雪菜「大丈夫! 報酬は山分けよ!」

雪菜「報酬ってなんなんです……」

朱「えーっと……何が欲しい?」

雪菜「なにって……あ、じゃあじゃあ私、桜野さんの笑顔が見たいです。本当の、心の底からの笑顔」

朱「あ、いいわね!」

シキ「シキも見たいのです!」

朱「あたしたちでめいっぱい笑わせちゃいましょ!」

シキ「うん!」

雪菜「はい!」ニコッ
956 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/11(土) 01:01:43.50 ID:cIxbY25x0
どんな犯行の手口か
957 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/11(土) 01:04:11.07 ID:KlTU4nzSo
雪菜「そうと決まれば、どうやったら笑ってくれるか考えなきゃです」

シキ「シキも考えるのです!」

朱「2人は大丈夫そうね……」

雪菜「どういうのがいいでしょう……」

シキ「桜野は手強いのです。シキ渾身の一発ギャグはことごとく愛想笑いされたのです」

雪菜「え、一発ギャグ……?」

シキ「しかも愛想笑いが完璧すぎて、ほんとに笑ってるみたいなのです。しばらくは、少しでも笑顔にできたってぬか喜びしてたのです」

雪菜「う、うん……」

シキ「愛想笑いだって気づいた時はおなか痛くなって寝込んだのです……そのせいで心配かけちゃって罪悪感でまたおなかが……」

雪菜「えーっと、ずっと気づけなくてごめんね……いやあの本当にごめんなさい……」

シキ「過ぎたことなのです……桜野が喜んでくれること、一緒に考えるのです」

雪菜「はい……」

朱「大丈夫……よね?」
958 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/11(土) 01:14:20.80 ID:KlTU4nzSo
朱「と、とにかく大丈夫ってことにして。あとは……」チラッ

透「!」ビクッ

透「……っ……!」

透「……っ」フイッ

朱「……透ちゃん」

透「……!」

朱「あたしたちは桜野ちゃんを追いかける」

透「……っ」

朱「透ちゃんも一緒に行こ?」

透「……っ!」

透「……っ……ぁ、わた、し……!」

透「わたしっ……! 私、は……!」カタカタ

朱「うん……」

透「……ぅ……!」ギュ

透「………………っ」

透「……」

透「…………」

透「………………無理だよ」
959 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/11(土) 01:15:09.88 ID:KlTU4nzSo
ここまで
お姫様の前にへなちょこメン弱王子様なんとかせにゃならんかった
960 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/11(土) 01:17:55.78 ID:cIxbY25x0

誰だよこんなか弱き生き物プリキュアにドラフト指名したの
961 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/11(土) 01:21:41.95 ID:iE1+UXaH0
962 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/11(土) 22:16:31.67 ID:mEjWzNS3o

覚醒とか成長イベント的なのあんまなかったなこの子
963 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/13(月) 00:17:38.02 ID:7yOM5Tlto
透「……っ」

朱「透ちゃん……」

透「だ、って……桜野がいないんだよ……?」

透「私が今まで頑張ってこれたのは桜野のおかげ……桜野がいたから進んでこれた……!」

透「でもっ……いないんだよ……! いなくなっちゃったんだよ……!!」

朱「だから追いかけるの。透ちゃんだって桜野ちゃんに会いたいでしょ……?」

透「会いたいよっ!! 会いたいに決まってるっ……!!!」

透「でも……無理なの……!」

透「もうずっと……震えが止まらないの……!」カタカタ

シア「透……」ギュ

透「こんなんじゃ無理だよ……私じゃ無理だよ……桜野がいなきゃ戦えないよ……!!!」
964 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/13(月) 00:29:18.39 ID:7yOM5Tlto
朱「……」

シキ「透……」

透「ふーっ……ふーっ……」カタカタ

雪菜「……」スクッ

シキ「雪菜……?」

雪菜「……透さん」

透「ゆ、きな……」

雪菜「……怖いですか?」

透「っ……!」

透「怖いよ……!」

透「怖いよ! 怖いに決まってる!! だってずっと一緒だって思ってたのに……なのに……!!」

雪菜「……私も前に戦えなくなったことがありました」

透「!」

雪菜「怖くなってしまったんです。失うことが怖くて、傷つくことが怖くて、初めて変身したときの気持ちも忘れて、戦う理由も分からなくなって……」

透「……」

雪菜「でも霰が思い出させてくれました。私には、守りたい人がいたんです」

透「守りたい……」

雪菜「みんなです。本当にみんな。桜野さんのことも、もちろん透さんも。欲張りですけど、守りたいんです。その気持ちが勇気になったんです」

透「でも……私は……っ」

朱「あたしは初めて変身したときね」

透「朱……」

朱「あの時は覚悟が足りなくて、そのせいで透ちゃんに怪我させちゃって……あたしには戦う資格なんて無いって思った」

透「……」

朱「でも桜野ちゃんと透ちゃんのおかげで覚悟が決まった。戦う覚悟と、守る覚悟」

透「守る……」

朱「あたしの大切なものを守ろうとしてくれた桜野ちゃんを守りたかった。それにあなたのことも放っておけなかったもの」

透「私……私は……」
965 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/13(月) 00:37:49.55 ID:7yOM5Tlto
透「……」

シア「……透」

透「……」

シア「透にもあるでしょう? 戦う理由が」

透「……違うよ……私は……違う……!」

シア「そんなことありませんわ。透だって……!」

透「ぜんぜん違うよ! だって私は! 私はただシーズンランドのみんなにまた会いたかっただけだもん! 守りたかったのに守れなかったから! ぜんぶ取り戻したかっただけだもん!!」

シア「それだけじゃありませんわ。確かに過去のあなたは本当にそれだけで、失うことを恐れて孤独に戦っていました。でも今は違うじゃありませんか!」

透「……そう、だけど……桜野に出会ったから変われたんだよ……! 失うのが怖かった……! あんな思い、もう二度としたくなかったし、誰にもさせたくなかったから……!」

シア「そうですわよね。もうなにも失わないことも、あなたの戦う理由だったはずでしょ? 今まさに桜野がいなくなろうとしているんですのよ? だったら追いかけなきゃ……!」

透「そんなこと分かってるよ……!! でも私は朱とは違う! 雪菜とも違う! だって私は! 私は……! 桜野がいないと頑張れないもん……! 桜野がいなきゃダメなんだもん……!!」ウルッ

シア「それはみんな同じですわ! だから助けに行くんですのよ!! みんなで桜野を迎えに行くんですのよ!!」

透「分かってるけど……でも……!!」ポロポロ

シア「ここで泣いてたって桜野は帰ってこないんですのよ!? もしかしたらもう二度と会えなくなってしまうかもしれないんですのよ!? それでも……」

透「でも、だって……桜野は……」

シア「……!」
966 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/13(月) 00:38:53.93 ID:3fyAs5+eo
これは弱くなったと言われても
967 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/13(月) 00:46:10.24 ID:7yOM5Tlto
シア「透!」ガシッ

透「っ……!」

雪菜「シアさ……!」

朱「雪菜ちゃん……」ソッ

雪菜「っ……」

シア「透……あなた……!」

透「……!」

シア「この期に及んでまだ! 桜野なら大丈夫かもしれないなんて思っているんじゃありませんわよね!?」

透「!!!」

シア「心のどこかで! 桜野だったらひょっこり帰ってくるって! それでいつもみたいに笑っていられるなんて! そんなこと考えてるんじゃありませんわよね!?」

透「ち、ちが……!」

シア「あなただって分かっているはずでしょ!? 本当に大丈夫ならこんなことになっていないんですのよ!?」

透「わか、ってるよ……! けど……!!」

シア「ずっと大丈夫そうに見えていたのは、桜野がそれだけ無理をしてきたからなんですのよ!?」

透「分かってるけど分かんないっ!! だって私知らないもんっ!! 強い桜野しか見たことないもんっ!!」

透「朱や雪菜みたいに桜野を守るために変身したわけじゃないもん!! そんな必要無かったもんっ!!」

透「私は今まで! たったの一度だって! 桜野のために戦ったことないもんっ!!!」

シア「!」

透「はあっはあっ……! うっ、ぅぅぅ……!!」

シア「透……」
968 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/13(月) 00:48:25.54 ID:ZZL6rsvb0
確かに…
969 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/13(月) 00:54:15.98 ID:7yOM5Tlto
シア「……」

透「うっ……うぅ……!」

シア「確かにそうかもしれません……あなたはいつも桜野に頼って、縋って、支えてもらってきました。自分の足では立てなくなってしまうくらい、寄りかかっていました」

透「……っ」

シア「でも、だったらこれから変わればいいじゃありませんか。今から桜野のために戦えばいいじゃありませんか」

透「これ、から……っ」

シア「ええ」

透「…………っ」

透「……やっぱり……無理だよ……っ!」

透「だって……強い桜野しか知らないもん……急に言われたって分かんないもん……桜野を守ろうと思ったことなんて……一度も……ないもん……!」

シア「あら、それは違いますわ」

透「え……」

シア「あの頃は確かに、桜野のために戦っていたとは違うかもしれません。でもあなたは確かに、桜野のことを守ろうとしていたじゃありませんか」

透「あの頃って……」

シア「ワタクシ、散々愚痴を聞かされましたわよ?」

透「!」

シキ「あー……そういえばシキもよく怒られてたのです……」ポリポリ

透「ぇ……あ……」

朱「あたしも結構キツイこと言われたわね……」

透「いや、あの……」

雪菜「私泣かされました!」ハイ

透「うっ……」
970 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/13(月) 01:02:56.18 ID:7yOM5Tlto
シア「ふふっ、桜野だけじゃありませんでしたわね」

透「あ、あの頃は余裕なくて……」

シア「でもそれはみんなを危険なことに巻き込まないためでしょう? 少し乱暴だったかもしれませんが、みんなを守るためにやったことですわ」

透「……んぅ」

シア「桜野のことも、そうやって守ろうとしていたでしょう?」

透「……!」

シア「ね?」

透「……そうだ……そうだった……私いつの間にか、桜野は強くて傷つかなくて負けなくて、絶対大丈夫だって思い込んでた……」

シア「あなたの中で桜野の存在が大きくなりすぎてしまったんですのね」

透「でも違ったんだよね。本当は桜野が誰より苦しんでた」

シア「はい。しかもそれをずっと隠していた。それは今も同じ」

透「うん」

シア「桜野は出会った頃からちっとも変わっていません。いい意味でも、悪い意味でも」

透「放っておいたらすぐに危ないことするよね」

シア「はい」

透「誰かが助けてあげなきゃだよね」

シア「はい」

透「すぐに無茶するから、誰かが止めてあげなきゃだよね」

シア「はい」

透「行き過ぎたら誰かが手を引いてあげなきゃだよね」

シア「はい」

透「ずっと隣にいて支え合う誰かが必要だよね」

シア「はい」

透「……その誰かが……私だったらいいな」

シア「はい」ニコッ
971 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/13(月) 01:06:23.91 ID:1g9Jr9I5o
守るために戦えてた「出会った頃の眼ぇ」してた頃の方が本当にまだ強かったのか
972 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/13(月) 01:08:01.64 ID:7yOM5Tlto
シア「思い出しました? 桜野に出会った頃、どんなことを思っていたか」

透「うん。毎日気が気じゃなかった」

シア「あの子のこと、どんな風に思ってました?」

透「え……えっと……」

透「なんにも出来ないくせになんにでも首突っ込んでくるし危ないって忠告も全く聞かないしわざわざ変身できないようにしたのにそれでも平然と敵に立ち向かっていこうとする無茶で無謀で無鉄砲な…………」

透「ばか」

シア「……」

朱「……」

雪菜「……」

シキ「……ぷふっ」

朱「ふふふっ……あははっ……!」

雪菜「ちょ、ちょっと朱さっ、ふふっ……笑っちゃダメですっ……!」

シキ「雪菜もっ……笑ってるのですっ……!」

雪菜「だってその通りなんですもんっ……!」

朱「ふふっ、そうよねっ……桜野ちゃん、ほんとに大ばかだわっ……!」

シア「そうなってしまうだけの環境ではあったと思いますけれど……」

透「でもなにも話してくれなかったのは、やっぱりちょっとショック。秘密が多すぎる。1人で抱え込みすぎ」

シア「ですわね」
973 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/13(月) 01:16:52.80 ID:7yOM5Tlto
透「思い出したら腹立ってきた。最近の桜野、危ないことしすぎ」

雪菜「確かにそうです。ちょっとは相談してほしいです」

シア「では、どうします?」

透「文句言いに行く」

朱「文句……! ふふふっ、そうよね。聞きたいことだけじゃなくて、言いたいことも山ほどあるわよね!」

透「うん。お家のこともそうだし、ひとりで戦いに行ったこともそう。あ、それにあの約束のこと」

雪菜「約束?」

シキ「あ、桜野が初めてプリキュアになった時のやつです?」

透「うん。桜野ね、約束してくれたの。死なないよって、突然いなくなったりしないって、ずっとそばにいるって……」

雪菜「な、なんかプロポーズみたいですね……」

シア「あら? でもいなくなっちゃってますわよね?」

シキ「約束破ってるのです」

透「怒ってもいいかな?」

シキ「もちろんなのです!」

透「私、桜野とちゃんと話したい。私の気持ちぜんぶ聞いてほしいし、桜野の気持ちもぜんぶ聞きたい」

シキ「うん」

透「もしかしたら気持ちがぶつかって、ケンカになっちゃうかもしれない。でもそれでいいの。ちゃんとケンカして、ちゃんと仲直りするの」

シキ「うんっ!」
974 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/13(月) 01:26:18.92 ID:7yOM5Tlto
朱「ケンカか……」

雪菜「そういえばしたことなかったですね」

朱「ただ仲が良かったからってだけじゃないわよね」

朱「あたしたちは桜野ちゃんがいたから友だちになれた。この絆は桜野ちゃんが繋いだ絆」

朱「なのに肝心の桜野ちゃんが全然心を開いてくれてなかったんだもの。まともなケンカなんてできないわよね」

透「うん。だから本当の桜野に会いに行く。でも私ひとりじゃ辿り着けない」

シキ「じゃあ……!」

透「私も共犯」

雪菜「透さん!」

朱「歓迎よ!」

シア「決心がついたみたいですわね」

透「うん。ありがと、シア。もう迷わないよ」

シア「ええ」ニコッ

シキ「そうと決まればすぐに出発なのです!」

「「「おー!!!」」」

透「……」グッ

透(ねぇ桜野……私ね、あなたの笑顔を見る度、ほんの少し不思議に思ってたよ)

透(ほんとはもっと、はやく聞いてあげられればよかった)

透(どうしていつも笑顔なの? なんでそんなに笑っていられるの?)

透(あなたの心はどこにあるの?)

透(ちゃんと見つけるから……)

透「……待ってて、桜野」
975 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/13(月) 01:36:04.58 ID:7yOM5Tlto
町はずれの森

ザッザッ

桜野「……ん? なにあれ……」

桜野「空間に……裂け目? あれか……」ザッ

桜野「……」

桜野(わたしはなんのために、この瞬間を生きているのだろう)

桜野(答えは明白。シキやみんなの願いを叶えるためだ)

桜野(そのためだけに生きている。もしシキに出会っていなければ、わたしはとっくに死んでいる)

桜野(だったらやることはひとつだ。それがわたしの存在理由)

桜野(それにわたしにはもう時間が無い)

桜野(叔母さんに反抗したことで、ただでさえ短いわたしの寿命はさらに縮まった)

桜野(あれ以来、暴力がさらに酷くなった。わたしがまだ生きているのは、無抵抗にぶたれ続けているからだろう)

桜野(多分、あと一回だ。あと一回でもシキが叔母さんの視界に入れば、その時はいよいよ殺されてしまう)

桜野(いやもしかしたら、わたしが話しかけるだけで、目が合うだけで、ほんの些細なきっかけでそれは起こるかもしれない。だからもう、あの家には戻れない)

桜野(そもそもこのお泊まりだって無断外泊だ。ただじゃすまないのは間違いない。今この瞬間も、わたしのことを血眼で探しているかもしれない)

桜野(でも透ちゃんの誘いに頷いた時点で覚悟はできている)

桜野(どうせ死ぬんだ。それならせめて約束だけは果たしたい。誰の役にも立てずに死ぬくらいなら、せめて世界くらいは救いたい)

桜野(きっとこの先には敵が待ち構えている)

桜野(罠なのは間違いない。苦しい戦いになるだろう。もしかしたら約束を果たせず殺されてしまうかもしれない。一寸先は闇だ)

桜野(それでも、もしそうだったとしても、振り返ればそこにある帰り道に比べれば、ずっと明るく輝いて見える)

桜野(この道程はわたしにとって)

桜野「……」ザッ

桜野(希望そのものだ)
976 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/13(月) 01:38:51.26 ID:c5PH0plN0
もう死んでるはずなのに精神が肉体を凌駕しておる
977 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/13(月) 01:41:11.11 ID:7yOM5Tlto
透母「ごめんね、残り物で」

透父「いや……」モグモグ

透母「あ、それおいしいでしょ? 朱ちゃんが作ってくれたのよ」

透父「おお……」モグモグ

透母「ねえ」

透父「ん……?」モグモグ

透母「透のお友だち、やっぱり気になる?」

透父「……」

透母「……」

透父「別に……」モグモグ

透母「またそんなこと言って」ニコニコ

透父「……」モグモグ

透母「桜野ちゃんも来てるわよ?」

透父「そうか……」モグモグ

透母「桜野ちゃんと話す時は、ちょっとでも愛想良くしてよね?」

透父「むぅ……」

透母「おかわりいる?」

透父「ん……」コク

ガタガタッ

透父「……?」

透母「なにかしら……」
978 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/13(月) 01:43:21.91 ID:CWk7UVZgo
あぁ…お父さん似か…
979 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/13(月) 01:49:39.45 ID:7yOM5Tlto
ドタドタッ

雪菜「も、もうちょっと静かに……!」

朱「あ、お義母さま……お義父さまっ!?」

雪菜「え!? あ、えと! 初めまして! あのそのいまそのあのあれで!!?」ワタワタ

朱「ご、ご挨拶はまたのちほどっ……!」ワタワタ

透母「どうしたの? こんな朝はやくに……」

朱「え、えっとこれには退っ引きならねえ事情ってもんが……!」

雪菜「テンパりすぎて江戸っ子みたいになっです!」

透「2人ともなにしてるの! はやく……!」トタタッ

透母「あ、透! なんの騒ぎ……ってあれ? 桜野ちゃんは……?」

透「ごめん! 詳しく話してる時間ない! 行くよ!」

朱「う、うん!」

雪菜「はい!」

透母「え、ちょ……! 透、待ちなさ……! 待って、お願い待って! 透!!」

透「ごめん……後でちゃんと話すから……!」

透母「と、透……!」

透「……っ、はやく……!」

透父「透」

透「ああもうなに! お父さんと話してる時間は……!」

透父「桜野ちゃん来てるんだろ?」

透「だから今……!」

透父「俺にも挨拶させてくれ」

透「!!!」

透父「頼むよ」ニコッ

透「…………うん」コク

透「絶対連れてくる!」タタッ

朱「あ……し、失礼します!」タタッ

雪菜「しますっ!」タタッ

透母「あ……き、気をつけ、て…………行っちゃった……」
980 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/13(月) 01:55:06.67 ID:7yOM5Tlto
透父「……」モグモグ

透母「だ、大丈夫かしらあの子たち……」

透父「なあ……」

透母「……ん?」

透父「おかわり」

透母「……うん」

透父「……」

透母「……」ヨソイヨソイ

透父「なあ……」

透母「……」

透父「大丈夫だよ」

透母「!」

透父「……」モグモグ

透母「うん……!」
981 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/13(月) 01:59:39.59 ID:7yOM5Tlto
勝ったッ!第3部完!(勝ってない)
長くなりましたが、以上で第3部おしまいです 次が最終章になると思います
このスレちょっとだけ残ってますが、キリがいいので続きは次スレ行こうかなと思います このスレの残りは本編中に書けなかったことの補完とかできたらいいかな?

ともあれ2スレ目終了ありがとうございました
埋めもかねてご質問等あればお気軽にどうぞ

それと次の更新は最速でも水曜日だ思います ご容赦

お疲れ様でした
982 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/13(月) 02:00:44.23 ID:3+RiDRhho
983 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/13(月) 02:03:10.36 ID:ZZL6rsvb0

もうすぐ終わりか
次回作でも新しいプリキュアssやる?
984 : ◆15vHdNAAAEr/ [sage saga]:2023/11/13(月) 02:08:29.06 ID:7yOM5Tlto
次スレたてました
スレタイは、プリキュア作るぞ オールスターズF……



冗談です

プリキュア作るぞ part3【安価有】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1699808651/
985 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/13(月) 08:21:51.90 ID:PJdb44qjo
20:30投下開始出来なくなったのはなんか仕事内容変わったからとか?
986 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/13(月) 10:02:39.39 ID:gQj4gIwHo
おつおつたておつ
987 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/13(月) 11:09:40.46 ID:9g/XTziV0

あまり人のプライベートを詮索しすぎないようにしような
仕事じゃないんだから投稿時間くらいズレても何もおかしくないんだし
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