くーちゃん「しょくぶつさんとおはなししてたらびょういんにつれていかれました」

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223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/11(日) 14:10:16.31 ID:wbWh4z17o
ハナちゃんでっかい声出せるんだ……
224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:07:11.29 ID:IQVafa730
TRACK9 海の男

ハナ「いやああああああああ! ぎゃあああああああ!」

くーちゃん「だいじょぶですハナちゃん! 流木ちゃんと! 浮いてくれます!」

ハナ「ぎゃあああああああ!」

くーちゃん「だいじょぶです、ハナちゃん!」

バチャバチャ

くーちゃん「バタ足すれば! 少し早くなります!」

ハナ「いやああああああああああ!」
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:09:28.55 ID:IQVafa730
そんな、くーちゃんとハナちゃんが、たのしい海の旅をしている時でした

ブロロロロ

くーちゃん(…なんでしょう、なつかしい音です)

くーちゃん(たしか、これは)

?「おいなにしてんだお前ら!!」

?「はやくあがってこい!」

くーちゃん(ふねのおとです)
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:10:51.91 ID:IQVafa730
赤い船の上

ハナ「はあ…はあ…」

?「なにしてんだお前ら」

くーちゃん「お前らじゃないです、くーちゃんとハナちゃんです」

くーちゃん「おじさんはだれですか?」

?「…まあ、そうだな」」

?「俺は海の男だよ」
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:13:32.95 ID:IQVafa730
海の男「で、説明してもらおうか。なんであんなことしてたんだ?」

くーちゃん「あの島にいきたいのです」

くーちゃん「そのために、ハナちゃんのリュックもあったので」

くーちゃん「流木につかまったままなら、リュックを背負ってでもいけると考えました」

くーちゃん「くーちゃんの頭脳は天才的なのです」

海の男「溺れ死にてえのか」

くーちゃん「…いけると、おもったです」

海の男「無理に決まってるだろ」

くーちゃん「若さゆえの過ちです」
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:14:42.79 ID:IQVafa730
海の男「でだ、お前さんたちはどうしてあの島に」

くーちゃん「なんで船にギターおいてるですか? 弾くんですか?」

海の男「今それ関係ねえだろ」

カーカー

くーちゃん「カラスさんいるです! かわいいです!!」

海の男「聞けよ」
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:16:24.59 ID:IQVafa730
くーちゃん「あの島に、なまえがなかったので、いくのです」

くーちゃん「ハナちゃんのふるさと近くの島、探したです」

くーちゃん「そしたら、一つだけ、名前なかったからです。それが理由です。だから一つ目、あの島です」

海の男「一つ目?」

くーちゃん「はい。一つ目です。トンネル探すためです。呼ばれたので、向かってるです」

海の男「トンネル……ねえ」ジーッ
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:18:04.96 ID:IQVafa730
くーちゃん「わからなくてだいじょうぶです。とにかくあの島までくーちゃんたちは」

海の男「正解だ」

くーちゃん「?」

くーちゃん「なにがですか? くーちゃんたち、いつのまにクイズしてたのですか?」

海の男「クイズじゃねえよ」

海の男「トンネルだなんだっていうのは、俺にはわからねえが」

海の男「嬢ちゃんたちのゴールはあの島で正解だってことだよ」

くーちゃん「おじょうちゃんじゃないです。くーちゃんです」

くーちゃん「それに、なんでわかるですか?」

海の男「俺が海の男だからだ」
231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:19:41.09 ID:IQVafa730
くーちゃん「いみわからないです」

海の男「とにかくだ」

海の男「嬢ちゃん、どこかで見たことあると思ったら」

海の男「植物と話ができる巫女さんじゃねえか」

くーちゃん「」

海の男「ずいぶんと髪を切ったんだな。テレビや雑誌にも取り上げられてただろ」

くーちゃん(いやな情報、もりだくさんです)

くーちゃん(それに、くーちゃんの変装、あっさりばれてるとゆうことです)

くーちゃん(ですが、海の男とここで敵対してしまっても、よいことはありません)
232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:20:52.43 ID:IQVafa730
海の男「「そんでだ。なんでそのトンネルを目指しているのか、詳しく聞かせてくれ」

くーちゃん「海の男でもわからないですか?」

海の男「なんでもわかっちまえば、宝くじの当選番号や、競馬の勝つ馬がどれかなんてのもわかるだろ?」

海の男「つまり海の男にも限界があるんだよ。教えてくれ」
 
海の男とゆう言葉、あまり便利じゃなさそうです。

買いかぶりすぎてました。

そんな怖い顔しないでください。余計老けて見えますよ。

233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:22:42.53 ID:IQVafa730
くーちゃん「ことばどおりです。トンネル探してるです」

くーちゃん「くーちゃんは、ハナちゃんが絵にかいた、トンネルに続いてる」

くーちゃん「植物さんの世界、行きたいです」

くーちゃん「呼ばれてるです。必要とされてるです」

くーちゃん「だからさがしてるです」

海の男「・・・・・・・ほう」ジー

ハナ「」ビクッ

くーちゃん「なんでハナちゃんのことみてるですか」

海の男「……どこかで見たことあると思えば」

海の男「お前さん、あいつの娘か」

ハナ「」
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:24:26.43 ID:IQVafa730
ハナ「かはっ、は、はあ…」

くーちゃん「海の男、ハナちゃんを、知ってるですか?」

海の男「知り合いの娘だ。何回かこの船にも乗せてたんだがな」

海の男「ずいぶんとでかくなったもんだ」

ハナ「」ガタガタ
 
くーちゃん「ハナちゃん、怖いですか? 寒いですか?」

ハナ「」

くーちゃん(…どっちにしろ楽しくお話できる状況ではなさそうですね)
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:28:14.62 ID:IQVafa730
海の男「で、こいつが描いたトンネルの絵とやらは、どんな絵なんだ。みせてみろ」

くーちゃん「こいつちがいます。ハナちゃんです」

くーちゃん「知り合いなら名前、呼んであげてください」

海の男「お前さんは初対面の人間に対して、ずいぶんと言うんだな」

くーちゃん「おたがい様です。あとお前ちがいます。くーちゃんです」

236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:29:54.55 ID:IQVafa730
くーちゃん「とにかく、ハナちゃんの絵、すてきな絵です」

海の男「全然わからん」

くーちゃん「海の男でもわからないですか?」

海の男「言っただろ。同じことを何度も言わさないでくれ」

海の男「海の男もな、見たことがないものはわからねえんだよ」

ハナ「…はあ…はあ…」ごそごそ

くーちゃん「ハナちゃん、もうだいじょぶですか?」

ハナ「」バサッ

海の男「なるほど、こいつか」

くーちゃん(リュックの防水性、すばらしくてよかったです)
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:33:51.61 ID:IQVafa730
海の男「ふむ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん(ずいぶん考え込んでます(

くーちゃん(てっきり、絵についてわからないこと、ハナちゃんに尋ねると思ったのですが)

くーちゃん(もしかしたら海の男、ハナちゃんが気持ちを言葉にするの)

くーちゃん(苦手なこと、知ってたのかもです)

くーちゃん(海の男はそれくらいのはいりょ、できるということでしょう)

海の男「お嬢ちゃん」

くーちゃん「くーちゃんです」
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:38:07.40 ID:IQVafa730
くーちゃん「くーちゃん、おじょうちゃんなんて呼ばれるの、好きじゃありません」

くーちゃん「くーちゃんにはくーちゃんとゆう、かわいい名前があるですから」

海の男「さっきからいやにその名前にこだわるな」

くーちゃん「大切な名前です。だからちゃんと、くーちゃん、呼んでください」

海の男「クウ……クウ、か……ふむ」

海の男「もしかして、空のクウか?」

くーちゃん「なんでわかるですか?」

海の男「俺は海の男だからな」

くーちゃん「わかる範囲とわからない範囲がわからないです」
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:40:04.06 ID:IQVafa730
海の男「なあ、一つききたい」

くーちゃん「はい、なんですか?」

海の男「本気で行くのか?」

くーちゃん「……どういう意味ですか?」

海の男「この絵はすごい絵だ」

海の男「このトンネルの奥深さ。ハナの描いた世界を、俺は素直に尊敬する」

海の男「美しい」

海の男「だが、俺には荷が重い」

海の男「俺には、耐えられない」

240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:41:21.54 ID:IQVafa730
くーちゃん「海の男でもですか?」

海の男「ああ、俺が海の男でもだ」

海の男「海の男にも、耐えがたいものだ」

くーちゃん「なんですか、それは。なにが、重たいですか?」


海の男「孤独だよ」

241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:43:19.49 ID:IQVafa730
くーちゃん「こどく」

くーちゃん「くーちゃんはこのトンネルに少しだけ、つめたさ、かんじてました」

くーちゃん「けれども、感情より、居心地の良さがあったです」

海の男「あの島に行けば、きっとわかる」

海の男「ハナには、あの島のこと、伝えたことはないはずなんだがな。どこで知ったんだか…」

海の男「まあとにかくだ、それは俺が言葉でこうだって言ったところでわかるもんじゃねえし」

海の男「わかってもらいたいとも思わない」

242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:44:49.65 ID:IQVafa730
くーちゃん「なるほど。よいことと思います」

海の男「なんだ。じれったいとか思わねえのか」

くーちゃん「いわないことば、大切な思いだったりします」

くーちゃん「大切なもの、しまっておくの、変なことじゃないです」

海の男「わかってくれて何よりだよ」

海の男「お前さんのことはむかつくガキだと思ってたが、案外筋は通ってるんだな」

くーちゃん「どもです」

海の男「だがな、お前さんの旅には、一つだけ大きな問題がある」

くーちゃん「問題、ですか?」
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:46:07.96 ID:IQVafa730
海の男「この旅は、ここいらで潮時ってことだよ」

海の男はお尻のポケットから、くしゃくしゃになった紙を取り出して、広げました。

そこには、行方不明の中学生、探してますと書かれてて

写真がプリントされていました。

そして、そこに写ってたのは、どうみてもくーちゃんとハナちゃんでした。
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/11(日) 21:46:46.46 ID:IQVafa730
また明日ノシ
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/12(月) 19:41:47.47 ID:VR/JrcnGo
おつー
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:27:02.23 ID:yG3666Uy0
くーちゃん「…ずっと、気づいてたですか」

海の男「ご丁寧に経緯まで説明してくれたしな。もう自白も同然だ。誤魔化せねえだろ?」

海の男「なあクウ。そしてハナ」

くーちゃん「ちゃんをつけてください。くーちゃんの名前、ちゃん、つけてなんぼです」

くーちゃん「ちゃんがないの、かわいくないです」

海の男「海の男はな、ちゃんをつけて人を呼ばないんだよ」

くーちゃん「それなら海の男、やめて、ふつうの男になってください」

くーちゃん「くーちゃんはくーちゃんです」

海の男「海の男はそれほど簡単に辞められねえんだよ」

247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:29:35.52 ID:yG3666Uy0
海の男「ま、とにかくお前らの旅は、もうやめるべきだ」

海の男「ハナ、お前の親から連絡が入ってたんだよ」

海の男「だいぶ前に会ったきりで、お前さんは覚えてないかもしれねえが」

海の男「海の男の目は誤魔化せねえ」

海の男「まあとにかく、奇妙な偶然もあるもんだな…いや、必然か?」

海の男「子どものためなら、ここまでするのが親だわな」

くーちゃん(…さすがのハナちゃんも、遠く離れた地元に)

くーちゃん(手配書が配られてるなんて思わなかったのでしょう)

くーちゃん(ハナちゃんを責めるわけにはいきません)

くーちゃん(なんにせよこの旅は、そんな簡単にまとめられていいものじゃありません)

くーちゃん(こんなところで戻れるわけがないんです)

くーちゃん(となると、くーちゃんの必殺奥義しかありません)
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:31:04.55 ID:yG3666Uy0
くーちゃん「このお金で、みのがしてください。100万円くらいあるとおもいます」

くしゃくしゃ

海の男「くしゃくしゃじゃねえか」

くーちゃん「海に入ったので許してください。乾けば使えます」

海の男「いや、中学生に買収されるような、馬鹿な大人だと思ったか?」

くーちゃん「買収させてくれたおじさん、いました」 

失敬、お兄さんでした。ですがこの時訂正してくる本人はいなかったので、許してください。

くーちゃんは嘘、苦手なんです。

249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:32:14.24 ID:yG3666Uy0
海の男「そいつはたぶん馬鹿な大人だ」

怒らないでください。くーちゃんはお兄さんを馬鹿だと、思ったことありません。

だってくーちゃんたちを助けてくれたじゃないですか。

海の男「ふう」カチッ フーッ

くーちゃん「タバコ、からだにわるいです」

海の男「…喫煙者にしかわからない魅力があるんだよ」
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:33:36.38 ID:yG3666Uy0
海の男「俺は海の男だ」

海の男「だけど、一人の大人でもある」

海の男「大人ってのは、子どもを守るのが仕事なんだよ」

くーちゃん「なら守ってください」

くーちゃん「くーちゃんを守るなら、島、連れてってください」

海の男「そういうわけにはいかないんだよ」

海の男「クウ。そしてハナ。お前さんたちは」

くーちゃん「ちゃん、つけてください」

海の男「お前さんたちは楽しいかもしれない」

くーちゃん「むししないでください」

海の男「大人っていうのは、お前さんたちが想像している以上に」

海の男「お前さんたちを大切に思っているもんなんだ」

251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:35:24.15 ID:yG3666Uy0
海の男「まあ、もちろん例外はあるが」

海の男「少なくとも、お前さんたちは大切に育てられているんじゃないか?」

くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんで」

くーちゃん「なんで、そんなことわかるですか」

くーちゃん「もちろん、ハナちゃんのご両親から連絡受けて」

くーちゃん「どれだけ心配しているか、聞いてたんでしょう」

くーちゃん「でも、くーちゃんのことも、ハナちゃんのことも」

くーちゃん「海の男は、何も知らないです」

海の男「わかるさ」

くーちゃん「なんでですか」

海の男「俺が海の男だからだよ」

くーちゃん「おわれないんです!!!!!!!!!!!!!!!!!」
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:37:06.43 ID:yG3666Uy0
くーちゃん「くーちゃん、嘘、嫌いです!!」

くーちゃん「嘘だらけの毎日なんです!! ずっとずっとそんなまいにちでした!!」

くーちゃん「海の男に何がわかるですか!!!!!」

くーちゃん「くーちゃんの生き地獄を! なにもしらないのに!!」

くーちゃん「勝手なこと! いわないでください!」


海の男「勝手はどっちだこのクソガキ!」

くーちゃん「クソガキじゃないです! くーちゃんです!!」
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:39:07.22 ID:yG3666Uy0
くーちゃん(もうよいです)

くーちゃん(今すぐ海に飛び込んで、バタ足で島まで行ってしまえば…)

ドン!

くーちゃん「え」

ハナ「」

海の男「ぬわあああああああああああああああああああああああああああああ!」

ザパーン!!!!

くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・ハナちゃん?」

ハナ「…はあ…はあ…はあ…」

くーちゃん「…ないすきっく、です」
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:42:06.26 ID:yG3666Uy0
海の男「おいこら! 何考えてる!!」バチャバチャ

くーちゃん「ハナちゃん、たしかにくーちゃんたちは逃亡の身です」

くーちゃん「なので軽犯罪の一つや二つ、重ねたところで特にくーちゃんは何も思いません」

くーちゃん「正しいことだけが人生のすべてじゃないですから」

くーちゃん「でも、どうやって島までいくですか?」

ブロロロロロ

ハナ「」

くーちゃん「…ハナちゃん」

くーちゃん「…うんてん、できるのですね」

ハナ「」こくり
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/12(月) 20:42:41.13 ID:yG3666Uy0
また明日ノシ
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/12(月) 23:02:28.32 ID:RCh8UAYv0
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/12(月) 23:03:15.33 ID:VR/JrcnGo
おつー
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/13(火) 12:45:29.99 ID:fDCpKnGDO
見方を変えればいじめられてるでもなく恵まれてるのに自分で勝手に絶望して親不孝してる子供ってなるのかも
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 18:50:53.37 ID:RYXcxsNH0
ブロロロロロ

くーちゃん「…うまいですね、うんてん」

ハナ「えへへ」

海の男「まてえええええ!」ばちゃばちゃばちゃ

くーちゃん「ハナちゃん、なんで運転できるですか?」

ハナ「…おぼえてた、から」

ハナ「あの人の、運転」

くーちゃん「すごすぎます、ハナちゃん」

260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 18:51:53.83 ID:RYXcxsNH0
ハナちゃんは、真剣な顔で船の舵を切って、前進してゆきます。

行き先の島までぐんぐん近づいていました。

途中、飛んでるカモメさんや、海を泳ぐ魚さんたちは、

まるでくーちゃんとハナちゃんを応援しているみたいでした。

縦にぐわんぐわん揺れる船は、空を飛んでるみたいでした。
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 18:52:41.26 ID:RYXcxsNH0
くーちゃんは、船の先端部へ、好奇心で向かってみました。

揺れているので少し動きにくかったですが、島の方をよく見たかったので、足を止めませんでした。
 
不安定で、まっすぐ立つのは難しかったのですが、

勇気を出して、体を起こして、両手を思い切り広げました。
 
最高に気持ちのいい海風が、くーちゃんの体を吹き抜けていきました。

冷たかったですけど、それがくーちゃんの火照った体を優しく包んでくれたんです。

抱きしめられてるみたいでした。

くーちゃん「ハナちゃん! 最高です! 最高です! すごいですハナちゃん‼」

ハナ「///」
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 18:58:59.91 ID:RYXcxsNH0
TRACK10 島

くーちゃん「ハナちゃん、島、みえてきましたけど」

くーちゃん「どこにとめるですか?」

ハナ「………砂」

くーちゃん「…すな?」

ザザザザザザザザーーーーーー!!

くーちゃん「…すな、はままで言ってください」

くーちゃん「さすがのくーちゃんでもおどろきました」

ハナ「ごめん」
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:01:28.20 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「なにはともあれ、つきました」

くーちゃん「ここであってるのでしょか」

なんとなく、島とゆうのは、一つの生き物に近い感じがして、

どこからでもトンネルにつながってるような気がしたんです。

じゃりっとした、一粒一粒砂が、くーちゃんのほっぺにふれます。

生臭さや、お日さまの香りが混じった匂いでした。
 

くーちゃんの想像は当たりました。

目を閉じてると、トンネルを感じられました。

暗くて、深くて、風が遠くへ吸い込まれてるような暗いトンネルです。
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:03:00.31 ID:RYXcxsNH0
ですが、ハナちゃんの描いたようなトンネルと、少し、違います。

とゆうより、まだ距離が空いているような、そんな感じです。

けれど、違うトンネルとも言いきれません。

砂浜から感じたトンネルの奥。

底の底から、微かに香りました。

ハナちゃんの絵から感じた少ししょっぱくて、冷たくも、

なにかを求めてるような、来てほしい、という

言葉に近い何かが。

くーちゃん「海の男の、言ってた通りです。ここです。この島です」

265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:04:22.15 ID:RYXcxsNH0
くーちゃんは目を開きます。

いつの間にか船から降りていたハナちゃんが、トンネルの絵を畳んで、手に持ったまま隣に立ってました。

くーちゃんは体を起こします。

ほっぺについていた砂が、ぱらぱらと落ちましたが、まだ何粒かくっついたままです。

でもかまいません。

ほっぺにいくら砂がついてようと、くーちゃんの目的に関係ありませんから。

そして、その小さな島の全貌を確認します。

驚きました。

島の中央から、大きな幹と葉が見えたんです。

枝葉は、島全体を覆うほど広がってました。

くーちゃん「きっとあります」

くーちゃん「この島の中央に、とても大きな木が」

くーちゃん「そこが、ごーるです」
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:06:57.10 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「ハナちゃん、ききたいこと、あります」

くーちゃん「その絵、どうして描いたですか?」

くーちゃん「どうして、描けたですか?」

ハナ「・・・・・・・・・・・」

くーちゃん「大丈夫です。変なこと、ちがいます」

くーちゃん「ハナちゃん、にんげんじゃない存在の気持ち、わかる人なんですね」

くーちゃん「だからハナちゃん、この木の思い、受け取ったです」

くーちゃん「この島、見える町で住んでて」

くーちゃん「海の男の船に乗って、あの島、見て、受け取ったんじゃないですか?」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん「ごめんなさいハナちゃん」

くーちゃん「無理に言葉、しなくて大丈夫です」

ハナ「」ぶんぶん

くーちゃん「じゃあ」

くーちゃん「行きましょう」
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:10:01.17 ID:RYXcxsNH0
島の中

くーちゃん「しょくぶつ、ずいぶんのびてますね」

ペタペタ

くーちゃん「虫さんもたくさんです」

くーちゃん「秋にこれなら、夏はもっとすごそうです」

くーちゃん「…ハナちゃん?」

ハナ「はあ…はあ…」

くーちゃん(運転でくたくたになってしまったでしょか)

くーちゃん(さすがにペース、おそめです)
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:11:17.29 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「ハナちゃん、だいじょぶですか!」

ハナ「…大丈夫、おい、つく」

くーちゃん(…ハナちゃんも、必死です)

くーちゃん(きっとハナちゃんも、くーちゃんと同じように、トンネルの呼び声に応えたいのでしょう)

くーちゃん(あの絵を描いて、ここまでついてきてくれたです)

くーちゃん(きっとこの旅の終着に、ハナちゃんは必要なのです)

くーちゃんはそう信じて、ハナちゃんに手を伸ばしました。

くーちゃん「行きましょう! 一緒に!」
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:12:32.49 ID:RYXcxsNH0
ハナ「」プルプル

ガシッ

ハナちゃんを引っぱりながら、くーちゃんはずんずん、島の中を進んでゆきます。

途中でぼろぼろになった木造のお家や、昔使われた階段のようなものがありました。

もしかしたらこの島も、昔、人でにぎわってたのかもしれません。

小さなお墓みたいなものも、たくさん埋められてました。

くーちゃんもこの島で生まれて、生きて見たかったです。

そしたら、もっと早く、大きな植物さんの気持ちに、気づけたかもしれないのに。

270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:13:52.87 ID:RYXcxsNH0
一歩一歩、踏みしめてると、森の香りが強くなってきます。

時折、くーちゃんは地面にまた顔をすりつけ、トンネルの片鱗を感じました。

くーちゃん「もう、ちょっとです」

長い長い階段を登って、今度は下りに差し掛かりました。

階段を一段、一段と降りてると、違和感がありました。

あんなににぎわっていた植物さんたちの気配が、一気に消えてしまったんです。

まるで、人ごみから抜け出したような感覚で、とても心細くなりました。

ハナ「あ、あれ、?」
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:14:28.12 ID:RYXcxsNH0
ハナちゃんが久しぶりに声をだして、指をさしました。その方向にそれはありました。

 
大きな木でした。ただ、大きいだけじゃありません

見上げると首が痛くなるほど、とても、とてもとてもとても

高く、静かに、そびえたっていました。
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:15:59.21 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「…ハナちゃん、しゃべりたいこと、あります」

ハナ「」コクリ

くーちゃん「今までくーちゃんはいろいろな御神木さんで感じたことを、歌や舞にしてました」

くーちゃん「ですが、この木は、今までの御神木さんとは全く違います」

くーちゃん「楠だと思います。大きな楠なので、大楠さんです」

くーちゃん「この、方です。きっと、この方です」

273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:17:25.99 ID:RYXcxsNH0
くーちゃんは走って近づきました。

とても太い幹は、蜘蛛の足みたいに枝分かれしてます。

柔らかい地面には、深く深く、長い根っこが伸びていることでしょう。

大楠さんの伸びてしまった枝を支えるため、古びた鳥居が何個か作られています。

くーちゃん「…大楠さんだけで、体、支える、たいへんです」

くーちゃん「骨が弱くなったおじいちゃんやおばあちゃんが、杖や車いすを使うのと同じです。

土の奥から匂いがしました。

木の匂いです。大楠さんと似てますが、

少し違います。それに、たくさんです。

たくさんの木の香りがするんです。

もしかしたら、土の中には、大楠さん以外の誰か、まだいるのかもしれません。
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:18:59.03 ID:RYXcxsNH0
ゴロゴロ

ポツンポツン

くーちゃん「…あめ、ですね」

くーちゃん「別にもう関係ありません」

くーちゃん「くーちゃんの目的に、天気なんてどうでもよいです」

くーちゃん「トンネルの中に、雨も晴れもありません。

くーちゃんは、幹を手で触れながら、ゆっくりとお腹を。頭を。ほっぺをぺたりと、くっつけます。

全身で、大楠さんの息吹を感じました。

大楠さんが、やさしいのか、さみしいのか、それもわかりません

目を閉じてくーちゃんは、いつものように、トンネルの中へ入ってゆきました。

275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:19:57.06 ID:RYXcxsNH0
じんわり、じんわり、暗闇だらけの瞼の裏に、うっすらと世界が広がってゆきます。

トンネル独特の風の音。土の香り。

トンネルの中のくーちゃんは、トンネルを見るために、ゆっくりと目を開きました。

そこは、ハナちゃんが描いていた世界に、とても似てました。

少しだけ違いはありますが、匂いや温度は、とても近いです。

そして、そこで感じたのは

確かな孤独でした。

276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:35:32.08 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「何千年も、大楠さんは見てきたんですね」

くーちゃん「たくさんの植物さんとの出会いと別れ」

くーちゃん「土砂崩れで埋まってしまった、たくさんのお友達。

くーちゃん「そして」

くーちゃん「大楠さんを、切る、切らないかの人の争いです」

くーちゃん「くーちゃん、かみさまなんてしんじてません。でも」

くーちゃん「大楠さんは、神様にさせられてしまったのですね」


277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:37:18.75 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「ながくいきてたから、勝手にされたんです」

くーちゃん「とても、とても長い時間です」

くーちゃん「それは、きっとくーちゃんたち人間には、想像できないほど」

くーちゃん「くるしかったですよね。神様、しんどいです」

くーちゃん「いつも、勝手に期待されます。願い事なんて叶えられないのに、勝手に願われます」

くーちゃん「すごく、すごくわかります」

くーちゃん「くーちゃんたちは、よくにています」
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:39:33.54 ID:RYXcxsNH0
くーちゃんは、トンネルにいる意識の中

いつもならそこにとどまって、そのトンネルを全身に感じてました。

でも、同じ場所にとどまってては、大楠さんの芯に触れられません。

今まで知らなかったトンネルの深淵へ向かって、くーちゃんは進むことにしました。

足に力を入れてみました。

ぐっと、右足が踏み出せました。

続けて、左足も、踏み出します。

歩けば歩くほど、曖昧な体の感覚が、確かなものに変わってゆきました。

孤独の風のようなもの、トンネルを進むくーちゃんを包んでゆきます。

とても苦しくて、辛くて、頭が割れそうになりました。

でも、どこか帰ってきた感覚もあるんです。

居心地が悪いわけじゃないんです。

まるで、ずいぶん昔からのお友達と、再会した気分でした。
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:44:20.35 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「誰にも、わかってもらえないですね」

くーちゃん「人間に、あなたの言葉、聴こえませんもん」

くーちゃん「くーちゃんにも、大楠さんの言葉、わかりませんけど」

トンネルの奥まで、くーちゃんは進むことにしました。

一歩一歩、重たくて、苦しくて、その場で何度もうずくまりたくなりました。

くーちゃん「あの、大楠さん、もしかして」

くーちゃん「きてほしい、とゆうきもちと」

くーちゃん「誰もきてほしくないとゆう、二つのきもち、あるですか?」

280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:06:52.50 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん「そですよね。こたえられませんよね」

キラッ

ポチャ、ポチャッ

くーちゃん「なにかみえます」

くーちゃん「水たまり。でしょか」

くーちゃん「」ソッ

ピチャ

ドロッ

ズブッ

くーちゃん(冷たくて、どろりとしていて、指が奥まで沈んでしまいそうです)

くーちゃん「これは、水たまりでなく」

くーちゃん「沼、ですね」

281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:08:35.90 ID:RYXcxsNH0
くーちゃんは、沼に濡れた指先を見つめながら、顔を上げました。

その沼の中に、一本の木が生えています。

茶色くすすけてて、幹からいくつも、皮が剥がれています。

他には、茶色だったり緑色だったり、様々な葉っぱも、幹に張り付いてます。

胸の奥が切なくなるような、どことなく焦げた香りもしました。

くーちゃんはこの木が、あの大楠さんと、同じなんだと、直感しました。

どうなんでしょうね。トンネルの奥の奥まで入ったのは、初めてだったので。

少なくとも、くーちゃんは

今すぐ、大楠さんを抱きしめたくなりました。
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:11:16.86 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「大楠さん」

くーちゃん「くーちゃん、旅に出るとき、感じてました」

くーちゃん「この旅は片道切符です」

くーちゃん「この沼に入ったら、もう戻れません」

くーちゃん「でも、それでよいです」

くーちゃん「一緒に沼に入れる人間がくーちゃんだけなら」

くーちゃん「あなたにくーちゃんのすべてをささげましょう」
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:14:25.33 ID:RYXcxsNH0
 くーちゃんは、沼に、一歩足を踏み入れます。

冷たく、ぬめっとした感触が伝わり、今にも全身が飲み込まれてしまいそうです。

足もずぶずぶと、深く沈んでゆきます。

きっと、両足を突っ込んでしまえば、しばらくしないうちに、完全にくーちゃんは沈んでしまうでしょう。

一歩、一歩、歩きます。

大楠さんを抱きしめられるところにたどり着けるまで、沈み切るわけにはいきません。

十歩ほど、進んだところで

くーちゃんは思い切り沼を蹴るように前方へと体を放り出し

目の前の大楠さんにガバッと、抱き着きました。

森の香りと、焦げた香りと、海の香りがしました。
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:16:42.53 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「大楠さん。これで、さみしくないです」

ずぶずぶ

くーちゃん「…ちから、ぬけてきました」

くーちゃん「あ、大楠さんも沈んでますね」

くーちゃん「そですよねっと、沼から体を浮かし続けるのは、難しいですよね」

くーちゃん「あ」

くーちゃん「そうです。大楠さん、大切なこと、忘れてました」

くーちゃん「おともだち、しょうかいします」

くーちゃん「ハナちゃんです」

くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?」

くーちゃん「ハナちゃん?」
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:20:31.94 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん(そういえば、トンネルに入ってから)

くーちゃん(一度もハナちゃんの声、聴いてないです」

くーちゃん「ハナちゃん」

くーちゃん「ほったらかしてごめんなさい」

くーちゃん「一緒に沼の底、行きましょう」

クルッ

くーちゃん「あ」

くーちゃん「…ついてきてると思ったんですけど」

くーちゃん「あ、そうです」

くーちゃん「ハナちゃん、トンネルの絵、かいてましたけど」

くーちゃん「いっしょに、トンネルに行けるって」

くーちゃん「一度も言ってませんでしたね」
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:25:10.20 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん(…ずいぶん、ハナちゃん、振り回してしまいました)

くーちゃん(もうしわけないです)

くーちゃん「大楠さん。しゃべりたいこと、あります」

くーちゃん「くーちゃん、ここまで来るのに、いろいろな人、助けてくれました」
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:26:27.05 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「くーちゃんのこと、最初にわかってくれた校長先生だったり」

くーちゃん「木で鹿さん、作る変わったお兄さんだったり」

くーちゃん「海の男、自称してる変わった人だったり」

くーちゃん「そんな人たちの力、なかったら、大楠さんに出会えなかったと思います」

くーちゃん「でも、ずっとずっと一緒に来てくれたハナちゃんとゆう友達、いるです」

くーちゃん「ハナちゃんは、あなたの思い、聴いてくれてた思ったんです」

くーちゃん「だからくーちゃん、ここまで来れたです」
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:28:49.87 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「でも、くーちゃんだけでも、よいですよね」

くーちゃん「もう一人いたほうが、にぎやかだったかもしれませんが」

くーちゃん「沼に沈めるの、くーちゃんだけみたいですし」

気が付けば体はずぶずぶと沈んでて、沼の水はあごまで迫ってました。

どうせならハナちゃんも一緒がよかったですけど、だいぶ振り回してしまいましたからね。

くーちゃんの勘違いが悪いんです。

何も言わないことが、イエスとは限らないんです。

いつだってくーちゃんは、早とちりなんですよ。
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:31:18.99 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「それに、ハナちゃんは元の世界に残った方がよいです」

くーちゃん「大楠さん、ハナちゃんは、とても絵が上手です」

くーちゃん「きっと、世界中に絵を見てもらったほうがよいです」

くーちゃん「あと、ハナちゃん、めちゃくちゃかわいいんです」

くーちゃん「きっと素敵な人と出会って、愛し合うこともあるかもしれません」

くーちゃん「あ、でもくーちゃんには、愛とか恋はよくわかりません」

くーちゃん「ですが、愛し合う二人は幸せだと、聞いたことあります」

くーちゃん「もちろん、ハナちゃんと沈めたら幸せですけど」

くーちゃん「それよりもっともっと、すごい幸せになる権利が、ハナちゃんにもあります」

くーちゃん「ハナちゃんの幸せの方が、ずっとずっとたいせつです」

だってくーちゃん、ハナちゃんのこと、大好きなんですから。
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:32:42.99 ID:RYXcxsNH0
だから、沼に一人で沈む決心がつきました。

気が付けば頭の先まで沼に沈んでて、

目の前はどんどん茶色く染まってゆきます。

体のどこもいたくなかったです。苦しかったはずの冷たさは、心地よさにかわってました。



291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:34:37.36 ID:RYXcxsNH0
この沼で永遠の時、刻んだりして、
いつしか人間だったこと、忘れて、
自分の
手とか
足とか
体とか
頭とか
血液とか
骨とか
神経とか
心臓とか
脳みそとか
爪とか
鼻とか
目とか
口とか
そういうくーちゃん構成するすべて、曖昧な世界、溶けてって、
そうしたら、このたった一人で何千年も、孤独な時間に耐え続けてた大楠さん
幸せなんじゃないかとか、そういうこと考えてたりして
そして、そして、そして、そしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそして
くーちゃんは、くーちゃんはくーちゃんはくーちゃんはくーちゃんはくーちゃんはくーちゃんはくーちゃんはくーちゃんはくーちゃんは
、、、、、、えっと、、、、

あ             
れ、

   、なん 、、、、
                、、でしたっけ。



292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:35:14.47 ID:RYXcxsNH0
また明日ノシ
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/13(火) 20:54:18.63 ID:fDCpKnGDO
うわああああ…
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/14(水) 08:14:53.20 ID:q35FvgRoo
おつおつ
大楠様よそれでいいのか……?
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:16:30.55 ID:Lds9YMgP0
ムグ



むぐ



じわあ…



?????


あれそうだ、、
そうだ、、、
そうだ。。。。

ひろがってきたです

じんわり、じんわり
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:17:48.89 ID:Lds9YMgP0
あたまのなかやら

からだやらが、すべてふわふわでどろどろ、なりつつあったとき、

くちのなか、なにかが、ひろがったです

すごくすごく、すっっっごく

あまかったです。

なつかしいです。

あのおかし、えっと、そです

あれです

TRACK12 チョコレート
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:19:39.83 ID:Lds9YMgP0
むぐむぐ

くーちゃん(チョコレートです、おいしいです)

ポタ、ポタ

くーちゃん(なんか、おちてきてます)

くーちゃん(あめ、ですかね)

くーちゃん(たしか、げんじつで、あめ、ふってました)

くーちゃん(あれ、でも)

くーちゃん(しょっぱいです)
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:25:15.81 ID:Lds9YMgP0
くーちゃん(うみ、でしょか)

くーちゃん(もしかしてくーちゃんしらないうちに)

くーちゃん(くーちゃん、ぬまの、そこのそこまでしずんでて)

くーちゃん(そこがうみとつながってて)

くーちゃん(くーちゃんも、おおくすさんも)

くーちゃん(うみのいちぶに)

くーちゃん(なったのですかね)

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さん」

くーちゃん「?」

299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:26:24.21 ID:Lds9YMgP0
「・・・・・・・・・・・・・・・ま、さん」

「・・の・・・・・・・・・・・・・・・ん」

くーちゃん(きこえます)

くーちゃん(すごく、かわいいこえ)



「あまのさん!!!!!!!!!!!!!!!!」

300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:28:25.36 ID:Lds9YMgP0
しょっぱかったの、雨でも海でもなかったです。

ハナちゃんが泣いてるだけでした。

くーちゃんの口にお菓子、詰め込まれてるだけでした。

チョコレートです。それがチョコレートだったです。

おいしかった。

おいしかった。

おいしい。

おいしい。

ああ、そうです。

くーちゃんはそのとき、人間の世界に戻ってこれたんです。
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:31:04.41 ID:Lds9YMgP0
ハナ「だめ! だめ!」

ハナ「だめなの! だめなの!」

くーちゃん(なにが、だめですか?)

くーちゃん(あ、くち、うごきません)

くーちゃん(そういえば、くーちゃん)

くーちゃん(このたびで、ずっと、おみず、のんでません)

くーちゃん(たべものも、なにもです)

くーちゃん(おにいさんのくれただがしも、すぐに吐いてました)

くーちゃん(わすれてました、くーちゃん)

くーちゃん(そだちざかりでした)

くーちゃん(くーちゃんは、もう、ガソリン切れでしたか)

実際、大楠さんのトンネルにいたくーちゃんの呼吸は、

止まってたとハナちゃんが後から教えてくれました。

302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:31:29.57 ID:Lds9YMgP0
くーちゃんの肌に

ぽろぽろとハナちゃんの涙が伝います。

とてもしょっぱくて、チョコで甘くなった口の中には

ちょうどよかったです。

だからハナちゃんが泣いてるのは、全然悪い気分じゃなかったですよ。大丈夫です。

そこから、ハナちゃんはこんなことを言ってくれました。

今でもよく覚えてます。
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:34:58.89 ID:Lds9YMgP0
ハナ「天野さん、天野さん、ごめんなさい」
   トンネルなんてわからないの。
   トンネルなんてよくわかんなかったし、
   どういうことなのか全然わかんないの! 
   植物の声も聞こえてないし、聞き届けたわけでもないの。
   描いちゃったの。
   描きたかったの。
   描いたら、近づけると思ったの。
   天野さんはね、すごく素敵なの。
   天野さんのインタビュー、全部読んだ。
   テレビの録画も全部見た。
   本当に本当に、すごくかっこよかった! 
   私の知らない世界。感じられない世界。
   
   私はふつうの人だから。天野さんみたいにすごくないから!
   
    学校に行けなくなって、それでも天野さんみたいな素敵な人がいるなら
    学校行けそうだって思って、
            それで天野さんの学校に転校したの! 



   天野さんと同じ学校なら、生きていけそうだって思ったの! 


               天野さんの世界を絵にして、
 
                              そしたら天野さんに

少しでも近づけるんじゃないかって、




ずっと描いてた! 


天野さんが見てるトンネルってこんなのかなって、

  きっと天野さん気に入ってくれるって! 

 でも見せる勇気なくて。いつか見てもらえるんじゃないかって
 
、ずっとずっと描いてて、
                  そしたら、たまたま見てくれて、

  すごくうれしくて。まさか一緒に旅までしてくれるなんて思ってなかった!


 すごくうれしかったの! 



世界で一番幸せだった! 



私も、天野さんと一緒に、トンネルの向こう側に行きたかった。



もっともっと面白い世界が見れて、わたしだってすごい素敵な人間になれるんじゃないかって。

みんなとうまくやれない私でも、



幸せになれるって思った! 

それで死ねるんなら、それでよかった!

 でも、だめ! だめ! だめなの! 

えっと、
   えっと、
       えっと

 だって、
         だって、

                  ここまで、わたし、



                         わたし、」
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:35:53.41 ID:Lds9YMgP0
そこからハナちゃん、ずっと泣いてました。

なにがどう、だめなのか、それをくーちゃんは聞きたかったですけど、

きっとハナちゃんには泣く時間が必要でしたし、

くーちゃんもいつの間にか泣いてたので、

二人ともそういう気分だったんです。

くーちゃんたち、ふたりとも泣き虫ですね。

305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:37:59.52 ID:Lds9YMgP0
くーちゃん(けっきょく、げんじつのせかいです)

くーちゃん(ゴール、ちかかったんですけどね)

くーちゃん(このまま目、閉じれば、きっと戻れます)

くーちゃん(くーちゃんの、いきたかった、ゴールです)

くーちゃん(げんじつなんかより、おおくすさんとの沼、よいなと思ってたんですけど)

くーちゃん(でも、なんだか)

くーちゃん(ハナちゃんとの時間が終わるの、さみしいですね)
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:39:09.29 ID:Lds9YMgP0
お母さんの顔が浮かびました。

あんなに必死でくーちゃんが行くのを止めてて。

きっと、くーちゃんにとってのハナちゃんみたいに、

ほんとにくーちゃんを大切にしてくれてたんだなと、今更ながら思いました。

校長先生の顔が浮かびました。

くーちゃんの大切にしてたことを、一番最初にわかってくれて。

誰かに分かってもらえることの幸せを知りました。

おいしゃさんの顔もうかびました。

なんだかんだ、ずっと話を聞いてくれました。

お仕事とはいえ、すごいこととおもいます。
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:39:51.92 ID:Lds9YMgP0
鹿のお兄さんの顔が浮かびました。

自信をもって何かを続けること

それが何につながるか、そんな大層なことを考えるのは横に置いておいて

ただ続けること。

きっとそれが大切だって、伝えてくれました。

ほんとに、素敵な人です。

海の男の顔が浮かびました。

くーちゃんも誰かに大切にされてることを、思い出させてくれました。

あのときくーちゃん、反発したですけど、今なら、なんとなくわかります。

海の男も、くーちゃんを大切にしてくれてただけだったです。

そして、誰かの手の温もりを思い出しました。
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:42:40.93 ID:Lds9YMgP0
くーちゃん(あれ、さいごの、だれのことでしょう)

くーちゃん(顔も思い出せません)

くーちゃん(でも、そのぬくもりがあったから)

くーちゃん(くーちゃんは、くーちゃんな気がします)

くーちゃん(沼の底にいったら、おわかれです)

くーちゃん(みんなと、おわかれです。もうあえなくなります)

くーちゃん(大楠さんの孤独、癒したいと思ってたんですけどね)

くーちゃん(もしかしたら、くーちゃん)

くーちゃん(とても、はくじょうな人間かもです)

くーちゃん(ごめんなさい、大楠さん)

くーちゃん(大楠さんのいた沼より)

くーちゃん(ハナちゃんの涙で溺れてしまう方が、気持ちよさそうです)
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:43:38.16 ID:Lds9YMgP0
くーちゃん「ハナちゃん」

ハナ「……天野さん?」

くーちゃん「ちがいます」

くーちゃん「くーちゃんです。ハナちゃん」

くーちゃん「それが、くーちゃんの名前です」

くーちゃん「くーちゃんの世界一かわいい名前です。

ハナ「くーちゃん、くーちゃん」
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:44:24.36 ID:Lds9YMgP0
何度も何かを確かめるように、ハナちゃんはくーちゃんの名前を呼びました。

呼ぶたびに、ハナちゃんの両腕が、くーちゃんを強く、強く、

ぎゅうううっと、抱きしめてくれます。

くーちゃんはハナちゃんが大好きでしたが、

どうやらハナちゃんもくーちゃんのこと、好きだったみたいです。誰かにこんなにも好かれるなんて思ってませんでした。嘘ばかりついて、くーちゃんは自分のことを嫌いになりそうだったですけど。どうやらハナちゃんだけは何があってもくーちゃんのこと、嫌いにならなさそうです。

くーちゃんという変な人間も、そんなに捨てたもんじゃないなって、思えました。

それに






大好きな子に名前を呼んでもらえるの、最高の気分です。
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:45:06.96 ID:Lds9YMgP0
また明日ノシ

だいぶ冒険も終盤です。

みなさんしばらくお付き合いください。
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:15:13.46 ID:DcOEz2F40
海の男「なに寝転んでんだクソガキども」

くーちゃん「あ」

くーちゃん「びちょびちょですね」

海の男「そりゃ、泳いできたからな」

くーちゃん「さすがです、海の男」

海の男「まず謝れクソガキ」

ハナ「…ごめんなさい」

くーちゃん「たしかに、この件の過失はハナちゃんです」

海の男「ちょっとはお前も悪びれろ」
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:24:46.37 ID:DcOEz2F40
海の男「で、トンネルは見つかったのか?」

パンパン

くーちゃん(大楠さんに、合掌してます)

くーちゃん(てっきりさっさと連れ戻されるかと思いました)

くーちゃん「はい、みつかりました」

くーちゃん「この島の、大楠さんのトンネルです」

くーちゃん「海の男の言う通りでした」
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:25:27.53 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「とても長い間、さみしがってました」

くーちゃん「ただ、そこに生えてただけなのに、いろいろ勘違いされて」

くーちゃん「持ち上げられて、勝手に絶望されて、もううんざりしてる感じがしました」

海の男「お前のトンネルに入る力ってのは、眉唾じゃねえみたいだな」

海の男「お前の言う通りだよ」
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:27:14.85 ID:DcOEz2F40
海の男「大昔は、この島にも人がいた」

海の男「この大楠も、御神木として崇められた」

海の男「たくさんの人が崇拝したよ。だけどな」

海の男「土砂崩れで、木の半分や、島民の家やらが埋まっちまった」

海の男「言われちまったよ。大楠の祟りだってな」

くーちゃん「そんなのありえません」

くーちゃん「祟りなんて、起こせるものじゃないです」

海の男「神様ってのは祟りを起こすらしいぞ」

くーちゃん「そんなの神様じゃありません」

海の男「ああ」

海の男「俺もそう思うよ」
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:38:37.76 ID:DcOEz2F40
海の男「で、だ」

海の男「満足したか?」

くーちゃん「微妙です」

くーちゃん「もう1回いってきます」

海の男「」

ハナ「いやいやいやいやいや!」

ハナ「く、くーちゃんだめ! まじで死んじゃう!」

ハナ「呼吸とまってたんだよ!」

海の男「どこまでもやべえやつだなお前」

くーちゃん「だいじょうぶです」

くーちゃん「ちゃんと戻ってきますから」

317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:39:04.41 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「あとハナちゃん」

くーちゃん「ちょっと雰囲気変わりましたね」

ハナ「え、そう?」

くーちゃん「では」

くーちゃん「いってきます」

くーちゃんはそう言うと、大楠さんの幹に再び近寄り、目を閉じます。

現実の世界の音と空気が遠くなり、またさみしい風と冷たい香りが漂い始めます。

くーちゃんは、さっきまでいたトンネルに降りてゆきました。
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:46:18.66 ID:DcOEz2F40
くーちゃん(…しずかですね)

くーちゃん(あ、でも、そんなにさむくないです)

くーちゃん(あったかいです)

くーちゃん(沼も、こんなに近くなかったです)

くーちゃん(それに)

くーちゃん(ずいぶんと小さくなりました)
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:47:26.56 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「大楠さん。呼んでくれてうれしかったです」

くーちゃん「でもくーちゃん、もう少しあっち側、います」

大楠さんは何も言いません

引き留めても来ませんし、応援もしてません。

でもそれでよいんです。

くーちゃん「でも、約束します」

くーちゃん「また来ます」
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:48:36.53 ID:DcOEz2F40
このトンネルでは、何も聞こえません。

他のトンネルなら、不思議な音がたくさん響いてて、メロディになってることが多いんです。

トンネルの植物さんが歌いたいから、きっとそんな音が流れてたんです。

だからきっと大楠さんは、歌いたい気分じゃなかったんでしょう。

でもくーちゃんは、歌いたくてたまりませんでした。

歌わないと、頭の中の何かがはじけ飛びそうだったので。

だから歌いました。

くーちゃんの感じた音を、言葉を、口にして。

大楠さんは、相変わらず何も言いません。

でも、それでよいんじゃないかって思いました。
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:49:23.27 ID:DcOEz2F40
気が付けばくーちゃんは、トンネルから現実に戻ってました。

沼の香り、さみしい風は、もうありません。

お日さまの光、気持ちよかったです。

そして、歌の続きを寝そべったまま歌います。

空に溶けてくみたいに、歌は、高く高く響き渡ります。

それがくーちゃんの耳から全身に広がっていって、とても気持ちよかったです。

嘘の歌は嫌いでしたが、誰かのための歌なら、好きになれそうだなって。そう思いました。

ハナちゃんも海の男もそんなくーちゃんの歌を、じっくり聴いてくれました。

322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:50:23.28 ID:DcOEz2F40
すると、ハナちゃんは、地面に落ちている枝を、突然手に持ちました。

そして、湿った土を、絵具みたいにつけて、

地面に置かれたトンネルの絵に、枝をふれさせて、

そのまま何かを描き始めました。

丸、三角、不思議に枝分かれした線、ぐるぐるうずまき、

何、描いてるのか、今一つピンときません。

それはくーちゃんだったのでしょうか。

それとも大楠さんだったのでしょうか。

それとも、ハナちゃん自身だったのでしょうか。

きっと、ハナちゃんにしかわかりませんし、言葉にするのは何か違うから、絵にしたんでしょう。

ずっとずっと見てたくなりました。

別に本人に確認したわけじゃないですけど、

ハナちゃんは、最高の絵描きさんになる。

そう思いました。
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