くーちゃん「しょくぶつさんとおはなししてたらびょういんにつれていかれました」

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276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:35:32.08 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「何千年も、大楠さんは見てきたんですね」

くーちゃん「たくさんの植物さんとの出会いと別れ」

くーちゃん「土砂崩れで埋まってしまった、たくさんのお友達。

くーちゃん「そして」

くーちゃん「大楠さんを、切る、切らないかの人の争いです」

くーちゃん「くーちゃん、かみさまなんてしんじてません。でも」

くーちゃん「大楠さんは、神様にさせられてしまったのですね」


277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:37:18.75 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「ながくいきてたから、勝手にされたんです」

くーちゃん「とても、とても長い時間です」

くーちゃん「それは、きっとくーちゃんたち人間には、想像できないほど」

くーちゃん「くるしかったですよね。神様、しんどいです」

くーちゃん「いつも、勝手に期待されます。願い事なんて叶えられないのに、勝手に願われます」

くーちゃん「すごく、すごくわかります」

くーちゃん「くーちゃんたちは、よくにています」
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:39:33.54 ID:RYXcxsNH0
くーちゃんは、トンネルにいる意識の中

いつもならそこにとどまって、そのトンネルを全身に感じてました。

でも、同じ場所にとどまってては、大楠さんの芯に触れられません。

今まで知らなかったトンネルの深淵へ向かって、くーちゃんは進むことにしました。

足に力を入れてみました。

ぐっと、右足が踏み出せました。

続けて、左足も、踏み出します。

歩けば歩くほど、曖昧な体の感覚が、確かなものに変わってゆきました。

孤独の風のようなもの、トンネルを進むくーちゃんを包んでゆきます。

とても苦しくて、辛くて、頭が割れそうになりました。

でも、どこか帰ってきた感覚もあるんです。

居心地が悪いわけじゃないんです。

まるで、ずいぶん昔からのお友達と、再会した気分でした。
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 19:44:20.35 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「誰にも、わかってもらえないですね」

くーちゃん「人間に、あなたの言葉、聴こえませんもん」

くーちゃん「くーちゃんにも、大楠さんの言葉、わかりませんけど」

トンネルの奥まで、くーちゃんは進むことにしました。

一歩一歩、重たくて、苦しくて、その場で何度もうずくまりたくなりました。

くーちゃん「あの、大楠さん、もしかして」

くーちゃん「きてほしい、とゆうきもちと」

くーちゃん「誰もきてほしくないとゆう、二つのきもち、あるですか?」

280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:06:52.50 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

くーちゃん「そですよね。こたえられませんよね」

キラッ

ポチャ、ポチャッ

くーちゃん「なにかみえます」

くーちゃん「水たまり。でしょか」

くーちゃん「」ソッ

ピチャ

ドロッ

ズブッ

くーちゃん(冷たくて、どろりとしていて、指が奥まで沈んでしまいそうです)

くーちゃん「これは、水たまりでなく」

くーちゃん「沼、ですね」

281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:08:35.90 ID:RYXcxsNH0
くーちゃんは、沼に濡れた指先を見つめながら、顔を上げました。

その沼の中に、一本の木が生えています。

茶色くすすけてて、幹からいくつも、皮が剥がれています。

他には、茶色だったり緑色だったり、様々な葉っぱも、幹に張り付いてます。

胸の奥が切なくなるような、どことなく焦げた香りもしました。

くーちゃんはこの木が、あの大楠さんと、同じなんだと、直感しました。

どうなんでしょうね。トンネルの奥の奥まで入ったのは、初めてだったので。

少なくとも、くーちゃんは

今すぐ、大楠さんを抱きしめたくなりました。
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:11:16.86 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「大楠さん」

くーちゃん「くーちゃん、旅に出るとき、感じてました」

くーちゃん「この旅は片道切符です」

くーちゃん「この沼に入ったら、もう戻れません」

くーちゃん「でも、それでよいです」

くーちゃん「一緒に沼に入れる人間がくーちゃんだけなら」

くーちゃん「あなたにくーちゃんのすべてをささげましょう」
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:14:25.33 ID:RYXcxsNH0
 くーちゃんは、沼に、一歩足を踏み入れます。

冷たく、ぬめっとした感触が伝わり、今にも全身が飲み込まれてしまいそうです。

足もずぶずぶと、深く沈んでゆきます。

きっと、両足を突っ込んでしまえば、しばらくしないうちに、完全にくーちゃんは沈んでしまうでしょう。

一歩、一歩、歩きます。

大楠さんを抱きしめられるところにたどり着けるまで、沈み切るわけにはいきません。

十歩ほど、進んだところで

くーちゃんは思い切り沼を蹴るように前方へと体を放り出し

目の前の大楠さんにガバッと、抱き着きました。

森の香りと、焦げた香りと、海の香りがしました。
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:16:42.53 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「大楠さん。これで、さみしくないです」

ずぶずぶ

くーちゃん「…ちから、ぬけてきました」

くーちゃん「あ、大楠さんも沈んでますね」

くーちゃん「そですよねっと、沼から体を浮かし続けるのは、難しいですよね」

くーちゃん「あ」

くーちゃん「そうです。大楠さん、大切なこと、忘れてました」

くーちゃん「おともだち、しょうかいします」

くーちゃん「ハナちゃんです」

くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?」

くーちゃん「ハナちゃん?」
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:20:31.94 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん(そういえば、トンネルに入ってから)

くーちゃん(一度もハナちゃんの声、聴いてないです」

くーちゃん「ハナちゃん」

くーちゃん「ほったらかしてごめんなさい」

くーちゃん「一緒に沼の底、行きましょう」

クルッ

くーちゃん「あ」

くーちゃん「…ついてきてると思ったんですけど」

くーちゃん「あ、そうです」

くーちゃん「ハナちゃん、トンネルの絵、かいてましたけど」

くーちゃん「いっしょに、トンネルに行けるって」

くーちゃん「一度も言ってませんでしたね」
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:25:10.20 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん(…ずいぶん、ハナちゃん、振り回してしまいました)

くーちゃん(もうしわけないです)

くーちゃん「大楠さん。しゃべりたいこと、あります」

くーちゃん「くーちゃん、ここまで来るのに、いろいろな人、助けてくれました」
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:26:27.05 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「くーちゃんのこと、最初にわかってくれた校長先生だったり」

くーちゃん「木で鹿さん、作る変わったお兄さんだったり」

くーちゃん「海の男、自称してる変わった人だったり」

くーちゃん「そんな人たちの力、なかったら、大楠さんに出会えなかったと思います」

くーちゃん「でも、ずっとずっと一緒に来てくれたハナちゃんとゆう友達、いるです」

くーちゃん「ハナちゃんは、あなたの思い、聴いてくれてた思ったんです」

くーちゃん「だからくーちゃん、ここまで来れたです」
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:28:49.87 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「でも、くーちゃんだけでも、よいですよね」

くーちゃん「もう一人いたほうが、にぎやかだったかもしれませんが」

くーちゃん「沼に沈めるの、くーちゃんだけみたいですし」

気が付けば体はずぶずぶと沈んでて、沼の水はあごまで迫ってました。

どうせならハナちゃんも一緒がよかったですけど、だいぶ振り回してしまいましたからね。

くーちゃんの勘違いが悪いんです。

何も言わないことが、イエスとは限らないんです。

いつだってくーちゃんは、早とちりなんですよ。
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:31:18.99 ID:RYXcxsNH0
くーちゃん「それに、ハナちゃんは元の世界に残った方がよいです」

くーちゃん「大楠さん、ハナちゃんは、とても絵が上手です」

くーちゃん「きっと、世界中に絵を見てもらったほうがよいです」

くーちゃん「あと、ハナちゃん、めちゃくちゃかわいいんです」

くーちゃん「きっと素敵な人と出会って、愛し合うこともあるかもしれません」

くーちゃん「あ、でもくーちゃんには、愛とか恋はよくわかりません」

くーちゃん「ですが、愛し合う二人は幸せだと、聞いたことあります」

くーちゃん「もちろん、ハナちゃんと沈めたら幸せですけど」

くーちゃん「それよりもっともっと、すごい幸せになる権利が、ハナちゃんにもあります」

くーちゃん「ハナちゃんの幸せの方が、ずっとずっとたいせつです」

だってくーちゃん、ハナちゃんのこと、大好きなんですから。
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:32:42.99 ID:RYXcxsNH0
だから、沼に一人で沈む決心がつきました。

気が付けば頭の先まで沼に沈んでて、

目の前はどんどん茶色く染まってゆきます。

体のどこもいたくなかったです。苦しかったはずの冷たさは、心地よさにかわってました。



291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:34:37.36 ID:RYXcxsNH0
この沼で永遠の時、刻んだりして、
いつしか人間だったこと、忘れて、
自分の
手とか
足とか
体とか
頭とか
血液とか
骨とか
神経とか
心臓とか
脳みそとか
爪とか
鼻とか
目とか
口とか
そういうくーちゃん構成するすべて、曖昧な世界、溶けてって、
そうしたら、このたった一人で何千年も、孤独な時間に耐え続けてた大楠さん
幸せなんじゃないかとか、そういうこと考えてたりして
そして、そして、そして、そしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそして
くーちゃんは、くーちゃんはくーちゃんはくーちゃんはくーちゃんはくーちゃんはくーちゃんはくーちゃんはくーちゃんはくーちゃんは
、、、、、、えっと、、、、

あ             
れ、

   、なん 、、、、
                、、でしたっけ。



292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/13(火) 20:35:14.47 ID:RYXcxsNH0
また明日ノシ
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/13(火) 20:54:18.63 ID:fDCpKnGDO
うわああああ…
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/14(水) 08:14:53.20 ID:q35FvgRoo
おつおつ
大楠様よそれでいいのか……?
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:16:30.55 ID:Lds9YMgP0
ムグ



むぐ



じわあ…



?????


あれそうだ、、
そうだ、、、
そうだ。。。。

ひろがってきたです

じんわり、じんわり
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:17:48.89 ID:Lds9YMgP0
あたまのなかやら

からだやらが、すべてふわふわでどろどろ、なりつつあったとき、

くちのなか、なにかが、ひろがったです

すごくすごく、すっっっごく

あまかったです。

なつかしいです。

あのおかし、えっと、そです

あれです

TRACK12 チョコレート
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:19:39.83 ID:Lds9YMgP0
むぐむぐ

くーちゃん(チョコレートです、おいしいです)

ポタ、ポタ

くーちゃん(なんか、おちてきてます)

くーちゃん(あめ、ですかね)

くーちゃん(たしか、げんじつで、あめ、ふってました)

くーちゃん(あれ、でも)

くーちゃん(しょっぱいです)
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:25:15.81 ID:Lds9YMgP0
くーちゃん(うみ、でしょか)

くーちゃん(もしかしてくーちゃんしらないうちに)

くーちゃん(くーちゃん、ぬまの、そこのそこまでしずんでて)

くーちゃん(そこがうみとつながってて)

くーちゃん(くーちゃんも、おおくすさんも)

くーちゃん(うみのいちぶに)

くーちゃん(なったのですかね)

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さん」

くーちゃん「?」

299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:26:24.21 ID:Lds9YMgP0
「・・・・・・・・・・・・・・・ま、さん」

「・・の・・・・・・・・・・・・・・・ん」

くーちゃん(きこえます)

くーちゃん(すごく、かわいいこえ)



「あまのさん!!!!!!!!!!!!!!!!」

300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:28:25.36 ID:Lds9YMgP0
しょっぱかったの、雨でも海でもなかったです。

ハナちゃんが泣いてるだけでした。

くーちゃんの口にお菓子、詰め込まれてるだけでした。

チョコレートです。それがチョコレートだったです。

おいしかった。

おいしかった。

おいしい。

おいしい。

ああ、そうです。

くーちゃんはそのとき、人間の世界に戻ってこれたんです。
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:31:04.41 ID:Lds9YMgP0
ハナ「だめ! だめ!」

ハナ「だめなの! だめなの!」

くーちゃん(なにが、だめですか?)

くーちゃん(あ、くち、うごきません)

くーちゃん(そういえば、くーちゃん)

くーちゃん(このたびで、ずっと、おみず、のんでません)

くーちゃん(たべものも、なにもです)

くーちゃん(おにいさんのくれただがしも、すぐに吐いてました)

くーちゃん(わすれてました、くーちゃん)

くーちゃん(そだちざかりでした)

くーちゃん(くーちゃんは、もう、ガソリン切れでしたか)

実際、大楠さんのトンネルにいたくーちゃんの呼吸は、

止まってたとハナちゃんが後から教えてくれました。

302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:31:29.57 ID:Lds9YMgP0
くーちゃんの肌に

ぽろぽろとハナちゃんの涙が伝います。

とてもしょっぱくて、チョコで甘くなった口の中には

ちょうどよかったです。

だからハナちゃんが泣いてるのは、全然悪い気分じゃなかったですよ。大丈夫です。

そこから、ハナちゃんはこんなことを言ってくれました。

今でもよく覚えてます。
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:34:58.89 ID:Lds9YMgP0
ハナ「天野さん、天野さん、ごめんなさい」
   トンネルなんてわからないの。
   トンネルなんてよくわかんなかったし、
   どういうことなのか全然わかんないの! 
   植物の声も聞こえてないし、聞き届けたわけでもないの。
   描いちゃったの。
   描きたかったの。
   描いたら、近づけると思ったの。
   天野さんはね、すごく素敵なの。
   天野さんのインタビュー、全部読んだ。
   テレビの録画も全部見た。
   本当に本当に、すごくかっこよかった! 
   私の知らない世界。感じられない世界。
   
   私はふつうの人だから。天野さんみたいにすごくないから!
   
    学校に行けなくなって、それでも天野さんみたいな素敵な人がいるなら
    学校行けそうだって思って、
            それで天野さんの学校に転校したの! 



   天野さんと同じ学校なら、生きていけそうだって思ったの! 


               天野さんの世界を絵にして、
 
                              そしたら天野さんに

少しでも近づけるんじゃないかって、




ずっと描いてた! 


天野さんが見てるトンネルってこんなのかなって、

  きっと天野さん気に入ってくれるって! 

 でも見せる勇気なくて。いつか見てもらえるんじゃないかって
 
、ずっとずっと描いてて、
                  そしたら、たまたま見てくれて、

  すごくうれしくて。まさか一緒に旅までしてくれるなんて思ってなかった!


 すごくうれしかったの! 



世界で一番幸せだった! 



私も、天野さんと一緒に、トンネルの向こう側に行きたかった。



もっともっと面白い世界が見れて、わたしだってすごい素敵な人間になれるんじゃないかって。

みんなとうまくやれない私でも、



幸せになれるって思った! 

それで死ねるんなら、それでよかった!

 でも、だめ! だめ! だめなの! 

えっと、
   えっと、
       えっと

 だって、
         だって、

                  ここまで、わたし、



                         わたし、」
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:35:53.41 ID:Lds9YMgP0
そこからハナちゃん、ずっと泣いてました。

なにがどう、だめなのか、それをくーちゃんは聞きたかったですけど、

きっとハナちゃんには泣く時間が必要でしたし、

くーちゃんもいつの間にか泣いてたので、

二人ともそういう気分だったんです。

くーちゃんたち、ふたりとも泣き虫ですね。

305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:37:59.52 ID:Lds9YMgP0
くーちゃん(けっきょく、げんじつのせかいです)

くーちゃん(ゴール、ちかかったんですけどね)

くーちゃん(このまま目、閉じれば、きっと戻れます)

くーちゃん(くーちゃんの、いきたかった、ゴールです)

くーちゃん(げんじつなんかより、おおくすさんとの沼、よいなと思ってたんですけど)

くーちゃん(でも、なんだか)

くーちゃん(ハナちゃんとの時間が終わるの、さみしいですね)
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:39:09.29 ID:Lds9YMgP0
お母さんの顔が浮かびました。

あんなに必死でくーちゃんが行くのを止めてて。

きっと、くーちゃんにとってのハナちゃんみたいに、

ほんとにくーちゃんを大切にしてくれてたんだなと、今更ながら思いました。

校長先生の顔が浮かびました。

くーちゃんの大切にしてたことを、一番最初にわかってくれて。

誰かに分かってもらえることの幸せを知りました。

おいしゃさんの顔もうかびました。

なんだかんだ、ずっと話を聞いてくれました。

お仕事とはいえ、すごいこととおもいます。
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:39:51.92 ID:Lds9YMgP0
鹿のお兄さんの顔が浮かびました。

自信をもって何かを続けること

それが何につながるか、そんな大層なことを考えるのは横に置いておいて

ただ続けること。

きっとそれが大切だって、伝えてくれました。

ほんとに、素敵な人です。

海の男の顔が浮かびました。

くーちゃんも誰かに大切にされてることを、思い出させてくれました。

あのときくーちゃん、反発したですけど、今なら、なんとなくわかります。

海の男も、くーちゃんを大切にしてくれてただけだったです。

そして、誰かの手の温もりを思い出しました。
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:42:40.93 ID:Lds9YMgP0
くーちゃん(あれ、さいごの、だれのことでしょう)

くーちゃん(顔も思い出せません)

くーちゃん(でも、そのぬくもりがあったから)

くーちゃん(くーちゃんは、くーちゃんな気がします)

くーちゃん(沼の底にいったら、おわかれです)

くーちゃん(みんなと、おわかれです。もうあえなくなります)

くーちゃん(大楠さんの孤独、癒したいと思ってたんですけどね)

くーちゃん(もしかしたら、くーちゃん)

くーちゃん(とても、はくじょうな人間かもです)

くーちゃん(ごめんなさい、大楠さん)

くーちゃん(大楠さんのいた沼より)

くーちゃん(ハナちゃんの涙で溺れてしまう方が、気持ちよさそうです)
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:43:38.16 ID:Lds9YMgP0
くーちゃん「ハナちゃん」

ハナ「……天野さん?」

くーちゃん「ちがいます」

くーちゃん「くーちゃんです。ハナちゃん」

くーちゃん「それが、くーちゃんの名前です」

くーちゃん「くーちゃんの世界一かわいい名前です。

ハナ「くーちゃん、くーちゃん」
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:44:24.36 ID:Lds9YMgP0
何度も何かを確かめるように、ハナちゃんはくーちゃんの名前を呼びました。

呼ぶたびに、ハナちゃんの両腕が、くーちゃんを強く、強く、

ぎゅうううっと、抱きしめてくれます。

くーちゃんはハナちゃんが大好きでしたが、

どうやらハナちゃんもくーちゃんのこと、好きだったみたいです。誰かにこんなにも好かれるなんて思ってませんでした。嘘ばかりついて、くーちゃんは自分のことを嫌いになりそうだったですけど。どうやらハナちゃんだけは何があってもくーちゃんのこと、嫌いにならなさそうです。

くーちゃんという変な人間も、そんなに捨てたもんじゃないなって、思えました。

それに






大好きな子に名前を呼んでもらえるの、最高の気分です。
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/14(水) 21:45:06.96 ID:Lds9YMgP0
また明日ノシ

だいぶ冒険も終盤です。

みなさんしばらくお付き合いください。
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:15:13.46 ID:DcOEz2F40
海の男「なに寝転んでんだクソガキども」

くーちゃん「あ」

くーちゃん「びちょびちょですね」

海の男「そりゃ、泳いできたからな」

くーちゃん「さすがです、海の男」

海の男「まず謝れクソガキ」

ハナ「…ごめんなさい」

くーちゃん「たしかに、この件の過失はハナちゃんです」

海の男「ちょっとはお前も悪びれろ」
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:24:46.37 ID:DcOEz2F40
海の男「で、トンネルは見つかったのか?」

パンパン

くーちゃん(大楠さんに、合掌してます)

くーちゃん(てっきりさっさと連れ戻されるかと思いました)

くーちゃん「はい、みつかりました」

くーちゃん「この島の、大楠さんのトンネルです」

くーちゃん「海の男の言う通りでした」
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:25:27.53 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「とても長い間、さみしがってました」

くーちゃん「ただ、そこに生えてただけなのに、いろいろ勘違いされて」

くーちゃん「持ち上げられて、勝手に絶望されて、もううんざりしてる感じがしました」

海の男「お前のトンネルに入る力ってのは、眉唾じゃねえみたいだな」

海の男「お前の言う通りだよ」
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:27:14.85 ID:DcOEz2F40
海の男「大昔は、この島にも人がいた」

海の男「この大楠も、御神木として崇められた」

海の男「たくさんの人が崇拝したよ。だけどな」

海の男「土砂崩れで、木の半分や、島民の家やらが埋まっちまった」

海の男「言われちまったよ。大楠の祟りだってな」

くーちゃん「そんなのありえません」

くーちゃん「祟りなんて、起こせるものじゃないです」

海の男「神様ってのは祟りを起こすらしいぞ」

くーちゃん「そんなの神様じゃありません」

海の男「ああ」

海の男「俺もそう思うよ」
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:38:37.76 ID:DcOEz2F40
海の男「で、だ」

海の男「満足したか?」

くーちゃん「微妙です」

くーちゃん「もう1回いってきます」

海の男「」

ハナ「いやいやいやいやいや!」

ハナ「く、くーちゃんだめ! まじで死んじゃう!」

ハナ「呼吸とまってたんだよ!」

海の男「どこまでもやべえやつだなお前」

くーちゃん「だいじょうぶです」

くーちゃん「ちゃんと戻ってきますから」

317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:39:04.41 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「あとハナちゃん」

くーちゃん「ちょっと雰囲気変わりましたね」

ハナ「え、そう?」

くーちゃん「では」

くーちゃん「いってきます」

くーちゃんはそう言うと、大楠さんの幹に再び近寄り、目を閉じます。

現実の世界の音と空気が遠くなり、またさみしい風と冷たい香りが漂い始めます。

くーちゃんは、さっきまでいたトンネルに降りてゆきました。
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:46:18.66 ID:DcOEz2F40
くーちゃん(…しずかですね)

くーちゃん(あ、でも、そんなにさむくないです)

くーちゃん(あったかいです)

くーちゃん(沼も、こんなに近くなかったです)

くーちゃん(それに)

くーちゃん(ずいぶんと小さくなりました)
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:47:26.56 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「大楠さん。呼んでくれてうれしかったです」

くーちゃん「でもくーちゃん、もう少しあっち側、います」

大楠さんは何も言いません

引き留めても来ませんし、応援もしてません。

でもそれでよいんです。

くーちゃん「でも、約束します」

くーちゃん「また来ます」
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:48:36.53 ID:DcOEz2F40
このトンネルでは、何も聞こえません。

他のトンネルなら、不思議な音がたくさん響いてて、メロディになってることが多いんです。

トンネルの植物さんが歌いたいから、きっとそんな音が流れてたんです。

だからきっと大楠さんは、歌いたい気分じゃなかったんでしょう。

でもくーちゃんは、歌いたくてたまりませんでした。

歌わないと、頭の中の何かがはじけ飛びそうだったので。

だから歌いました。

くーちゃんの感じた音を、言葉を、口にして。

大楠さんは、相変わらず何も言いません。

でも、それでよいんじゃないかって思いました。
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:49:23.27 ID:DcOEz2F40
気が付けばくーちゃんは、トンネルから現実に戻ってました。

沼の香り、さみしい風は、もうありません。

お日さまの光、気持ちよかったです。

そして、歌の続きを寝そべったまま歌います。

空に溶けてくみたいに、歌は、高く高く響き渡ります。

それがくーちゃんの耳から全身に広がっていって、とても気持ちよかったです。

嘘の歌は嫌いでしたが、誰かのための歌なら、好きになれそうだなって。そう思いました。

ハナちゃんも海の男もそんなくーちゃんの歌を、じっくり聴いてくれました。

322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:50:23.28 ID:DcOEz2F40
すると、ハナちゃんは、地面に落ちている枝を、突然手に持ちました。

そして、湿った土を、絵具みたいにつけて、

地面に置かれたトンネルの絵に、枝をふれさせて、

そのまま何かを描き始めました。

丸、三角、不思議に枝分かれした線、ぐるぐるうずまき、

何、描いてるのか、今一つピンときません。

それはくーちゃんだったのでしょうか。

それとも大楠さんだったのでしょうか。

それとも、ハナちゃん自身だったのでしょうか。

きっと、ハナちゃんにしかわかりませんし、言葉にするのは何か違うから、絵にしたんでしょう。

ずっとずっと見てたくなりました。

別に本人に確認したわけじゃないですけど、

ハナちゃんは、最高の絵描きさんになる。

そう思いました。
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:52:28.37 ID:DcOEz2F40
海の男「ほら、お前らロクなもん食ってねえんだろ」

海の男「これでも食え」ごそごそ

くーちゃん「おにぎり」

くーちゃん「手作りですか?」

海の男「ああ、海の男特性おにぎりだ」

むぐむぐ

くーちゃん「ちょっと塩が多いです」

海の男「文句言うんじゃねえよクソガキ」

ハナ「」にこにこ もぐもぐ

くーちゃん「ハナちゃん、ほっぺたついてるです」

ハナ「えへへ」

海の男「…お気楽な奴らだ」
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:56:15.86 ID:DcOEz2F40


海の男「ったく、砂浜にこんな雑に乗り上げやがって…」

海の男「運転できるんなら上陸の仕方も勉強しとけ」

ズザザザザ

ハナ「ごめんなさい…操縦してるとこしか、見たことなくて」

カーカー

海の男「だまれクソガラス!」

くーちゃん「海の男、カラスさんのことば、わかるですか?」

海の男「ああ、海の男だからな」

くーちゃん「いみわかりません」

海の男「おまえさんのトンネルの力とおなじだよ」
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 19:59:54.75 ID:DcOEz2F40
海上

くーちゃん(…さすがに、ちょっとつかれましたね)

ハナ「眠いの? くーちゃん」

くーちゃん「かもしれません」

くーちゃん「くーちゃん、食べてないだけじゃなかったです。夜、眠ってなかったです」

ハナ「ちゃんと寝なきゃだめだよ」

くーちゃん(大楠さんの前で、たくさん喋ってから)

くーちゃん(ハナちゃん、別人みたいに、喋ってます)

くーちゃん(でも、明日には無口なハナちゃんに戻ってしまう可能性、ありますね)
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:01:04.03 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「ハナちゃん」

ハナ「なに? くーちゃん」

くーちゃん「しゃべりたいこと、あります」

ハナ「なに?」

くーちゃん「ハナちゃん、素敵な人です」

ハナ「…え?」
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:02:04.45 ID:DcOEz2F40
ハナ「ど、どうしたの、急に」

くーちゃん「無口なハナちゃん、素敵です。絵を描くハナちゃん、素敵です」

ハナ「えへへ、ありがとう」

くーちゃん「だから、学校に行けなくなるほど、ハナちゃん、つらい思いをしてたのだとしたら」

くーちゃん「なんだか、くーちゃん、悲しくなりました」

くーちゃん「くーちゃんには友達がいません」

くーちゃん「普通のフリをしてるとき、遊んでくれる人はいました」

くーちゃん「でも、それは友達じゃなかったです」

くーちゃん「だって、その時のくーちゃんを、くーちゃんは好きじゃなかったですから。
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:03:10.38 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「くーちゃん、学校、嫌いです」

くーちゃん「みんな、楽しいと思えるお話、遠足、修学旅行」

くーちゃん「お休みに遊ぶ、全部全部、くーちゃん、楽しめません」

くーちゃん「楽しいフリする、うんざりする時間でした」

ハナ「うん」

ハナちゃんは、そっとくーちゃんの手を握ってくれました。

とても暖かかったです。

ほんのりチョコレートの香りがしました。

329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:04:35.03 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「学校に行けなくなったハナちゃん、きっと間違ってないです」

くーちゃん「何があったのか知りませんけど、ハナちゃんがそうしたの、きっと間違ってないです」

ハナ「うん」

くーちゃん「えっと、だから、なんだって、話なんですけど」

くーちゃん「くーちゃんと、巻き込まれたハナちゃん」

くーちゃん「警察とか、先生とか、家族に、とても怒られます」

くーちゃん「学校、また通うことなります」

くーちゃん「それはくーちゃんにとっても、ハナちゃんにとっても」

くーちゃん「あまり楽しい時間じゃないとか、思ったですけど」

くーちゃん「でも、くーちゃんは」

ハナ「私ね」
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:38:46.78 ID:DcOEz2F40
ハナ「私、くーちゃんとなら」

ハナ「一緒に遠足とか、修学旅行とか、文化祭とか、お休みの日に、一緒に遊んだりとか」

ハナ「すっごく、楽しい気がする」

船のエンジンの音、カラスの鳴き声、海のばしゃばしゃとゆう音が混じります。

とてもきれいな音でした。

もしかしたらハナちゃんには、その音に色がついて見えるのでしょうか。

とてもキラキラした目で、空や海を見つめてました。

そのハナちゃんの笑顔が眩しくて、まるで太陽みたいでした。
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:39:38.09 ID:DcOEz2F40
くーちゃん「ハナちゃん、くーちゃんのこと」


くーちゃん「素敵とか、すごいとか言ってましたけど」

くーちゃん「少なくとも、ハナちゃん、くーちゃんの何倍も素敵と思います」

くーちゃんがそう言うと、ハナちゃんはいつもみたいに顔を赤くして、うつむきました。

やっぱりハナちゃんは、こうでなくっちゃです。

TRACK13 旅の終わり
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/15(木) 20:42:42.86 ID:DcOEz2F40
また明日ノシ
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/15(木) 21:16:16.96 ID:fmHj17xDO
おつ
大人になったらどんな感じになってるんだろう
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/15(木) 21:25:29.05 ID:QuHQtw7lo
おつおつ
百合ですねっっっ!!
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:17:09.45 ID:Ppk08Rtz0


くーちゃん「結構警察来てますね…」

海の男「まあ、それだけのことしたんだからな」

ハナ「…あ」

ハナ「おかあさん」

くーちゃん「くーちゃんのお母さんも来てます」
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:19:29.57 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん(ハナちゃん、もうおかあさんのところ走っていきました)

くーちゃん(海の男とも何か話してますね)

くーちゃん(やさしそうな、家族です)

ガバッ

くーちゃん「…おかあさん、くるしいです」

お母さん「…ねえ、くーちゃん」

お母さん「…痛かった? 腕」

くーちゃん「だいじょぶです、お母さん。もう全然いたくないです」

くーちゃん「腕のことより、くーちゃんは喋りたいこと、あります」
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:21:05.99 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「大げさかもしれませんが、くーちゃん、人生で最高の旅、しました」

ぎゅっ

くーちゃん(汗の香りがします。海みたいです)

くーちゃん(くーちゃんの好きな香りです)

くーちゃん「それで、思ったです」

くーちゃん「いろいろ嫌なこともありましたけど、やっぱりくーちゃん、お母さん大好きです」

くーちゃん「お母さん、心配かけたくなくて、色々頑張ってました」

くーちゃん「でも、くーちゃん、もう嘘、嫌です」

お母さん「…そう」

お母さん「…わかったわ」

くーちゃん「しんぱいかけて、ごめんなさい。おかあさん」
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:23:10.10 ID:Ppk08Rtz0
お母さん「心配かけたのは、わたしだけじゃないわよ」

くーちゃん「誰ですか?」

?「心当たりは、ありませんか?」

くーちゃん「あ」

くーちゃん「校長先生」

校長先生「山に行くとは聞いていましたが、大冒険に出るとは聞いていませんでしたよ」

339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:24:18.79 ID:Ppk08Rtz0
校長先生「まあ、なにはともあれ、長旅お疲れさまでした」

くーちゃん「おこらないですか?」

校長先生「それは別の人の仕事です」

校長先生「あとでたっぷり、怒られてください」

くーちゃん「わかりました」

くーちゃん「ところで校長先生」

校長先生「はい、なんでしょう」

くーちゃん「しゃべりたいこと、あります」
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:27:57.47 ID:Ppk08Rtz0
校長先生「はい、どうぞ」

くーちゃん「ハナちゃんは、島にある大楠さんの言葉、聴こえたわけじゃありません」

くーちゃん「でも、島の大楠さんのトンネル、ハナちゃんの絵、そっくりでした」

くーちゃん「呼んでいることも、伝わってきたです。なぜでしょう」

校長先生「ふむ」

校長先生「校長先生の意見よりも」

校長先生「この旅を続けたあなたの方が、いい答えをもってそうです」

校長先生「先に、あなたのお話を聞かせてもらえませんか? くーちゃん」

くーちゃん(くーちゃんとよんでくれました)

くーちゃん(うれしいです)
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:31:49.01 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「多分なんですけど、たまたま、同じだったから、呼ばれたと感じただけだと思います」

校長先生「同じ?」

くーちゃん「ハナちゃんも、大楠さんも。くーちゃんも」

くーちゃん「みんなつぶされそうで、誰かに来てほしかったのかもしれません」

校長先生「なるほど。続けてください」

くーちゃん「きっと、くーちゃん、ハナちゃん、大楠さん、似た者同士です」

くーちゃん「似た者同士、集まるんです」

くーちゃん「類は友を呼んだ。ただそれだけの話じゃないでしょか」

校長先生「ふふふ」

校長先生「素敵な答えですね、くーちゃん」

くーちゃん「あたりまえです。くーちゃんの頭脳は、天才的なのです」
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:33:02.40 ID:Ppk08Rtz0
お母さん「くーちゃん、そろそろ行くわよ」

お母さん「警察の人が、お話をしましょうだって」

くーちゃん「楽しくはなさそうですね」

お母さん「あたりまえでしょうが」

海の男「まあ、そう言ってやんな」

お母さん「あ…」

海の男「よう」

海の男「久しぶりだな」
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 22:34:35.12 ID:Ppk08Rtz0
海の男「でかくなったじゃねえか、この子も」

お母さん「…そうですね、おかげさまで」

海の男「なんの心配することはねえよ」

海の男「ふつうの、いい子だよ」

お母さん「………」

お母さん「ありがとうございます」

くーちゃん(…知り合い、だったのでしょうか)

くーちゃん(まあよいです)

くーちゃん(海の男にも、お母さんにも)

くーちゃん(それぞれ、物語があるだけです)
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:04:40.67 ID:Ppk08Rtz0
5年後、病院

くーちゃん「といった感じです」

医師「…ハードすぎるね、いろいろと」

くーちゃん「ありがとうございます」

医師「褒めてないよ」

医師「戻ってからは、どんな感じ?」

くーちゃん「まあ、普通の毎日です」

くーちゃん「でも植物さんとの時間は、堂々と過ごすようになりました」

くーちゃん「道端の植物さんにもくーちゃんは挨拶します」

くーちゃん「素敵なお花さんがいたら、トンネルを感じたいので寝そべります」

くーちゃん「周りの人も、くーちゃんがそんなことをするの」

くーちゃん「当たり前のこととわかってくれてるので、注目されることもありません」

医師「…そっか。仕事にはせず、自分の時間として、過ごすようにしたんだね」

くーちゃん「正直助かりました。おかしいも、日常になれば普通なんです」
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:05:54.60 ID:Ppk08Rtz0
医師「ハナちゃんの方は、どうなったの?」

くーちゃん「無口ですね」

医師「…なるほど」

くーちゃん「あ、でも、たまに笑うよになりました」

くーちゃん「あと、堂々と絵を教室で描くようになりました」

346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:12:06.07 ID:Ppk08Rtz0
医師「周りからはどんなリアクション?」

くーちゃん「ハナちゃんの絵、すごいので」

くーちゃん「注目浴びること、ありましたけど、ハナちゃんはあまり気にしていません」

医師「…彼女も変わったんだね」

くーちゃん「しいて言えば」

くーちゃん「一度だけ、「変な絵」って言ってきたクラスメイトに」

くーちゃん「思い切り回し蹴りを喰らわせてました」

医師「バイオレンスすぎない?」

くーちゃん「さすがくーちゃんの大好きなハナちゃんです」
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:15:06.49 ID:Ppk08Rtz0
医師「でも、たしかに彼女の絵は、評価されてたみたいだね」

医師「17歳にて、多くの賞を取っている」

くーちゃん「そうなんです。なんだかすごいコンテストで、なんだかすごい賞、とってました」

くーちゃん「くーちゃんもその展示会に行きました」

くーちゃん「色んな人、ハナちゃんの絵を見て、感動してました」

くーちゃん「新参者がなに安っぽい涙を流してるんだと思いました」

医師「新規のファンに厳しすぎるよ」

348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:16:23.47 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「あれですよ。好きなミュージシャンが、売れ始めてから急に熱が冷めるあれです」

くーちゃん「それ言ったら、ハナちゃん、また照れくさそうにうつむくだけでした」

くーちゃん「肝心な時に何も言わないんです。それがハナちゃんのよいところです」

医師「なるほどね」

医師「他にはまだあるかい?」

くーちゃん「はい、まだまだあります」
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:19:12.88 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「ハナちゃんとの学校生活、とても楽しかったです」

くーちゃん「はい、あの船でお話した通り、たくさんの思い出、作りました」

くーちゃん「遠足だって、休み時間だって、お休みの日だって、修学旅行だって、全部楽しかったです」

くーちゃん「でも、くーちゃんが修学旅行先の沖縄で海を見て」

くーちゃん「また丸太に乗ろうとすると全力で止めてきました」

医師「そりゃ止めるよ」

くーちゃん「ハナちゃんは心配性なんです」

医師「僕でも止めるよ」
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:19:59.54 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「まあでも、そろそろゆきます」

くーちゃん「最後になりますので、今度こそ」

くーちゃん「ハナちゃんと、やくそくしてます」

医師「やくそく?」

くーちゃん「くーちゃん、そろそろお引越しするので」
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:22:00.50 ID:Ppk08Rtz0


ハナ「小型船舶の免許って、難しかった?」

くーちゃん「まあ、ぼちぼちです」

ハナ「でも、上手だね、くーちゃんの操縦」

ハナ「ダンさんよりうまいかも」

くーちゃん「ダンさん?」

ハナ「海のおじさん」

ハナ「海野男って、書いて、ウミノダンさん」

くーちゃん「本当に海の男だったんですね」

くーちゃん「ただの変なおじさんだと思ってました」

ハナ「くーちゃんに言われたくないと思うよ」
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:24:01.45 ID:Ppk08Rtz0
ハナ「運転免許は?」

くーちゃん「落ちました」

ハナ「なんかごめん」

くーちゃん「12かいおちたので、やめました」

ハナ「わざわざ言わなくていいよ、大丈夫だから」

くーちゃん「くーちゃんは陸より海の方が向いてるようです」

くーちゃん「それに自動車免許、引っ掛け問題が多すぎます」

くーちゃん「なんですか、夜は気を付けて運転をしなければいけないとゆう問題で」

くーちゃん「答えがバツだなんて。ふざけてます」

くーちゃん「昼も夜も気を付けて運転しなければいけないなんて」

くーちゃん「くーちゃんは一休さんじゃありません」

ハナ「その問題は私も理不尽だと思う」
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:25:37.46 ID:Ppk08Rtz0
ハナ「くーちゃんは、本当に、島で、暮らすの?」

くーちゃん「はい。大楠さんとの約束です」

くーちゃん「畑とか、漁については、色々準備をしています」

くーちゃん「自給自足とゆうのは、結構大変らしいので」

ハナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そっか」

354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:26:45.99 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「ハナちゃんは、卒業してどうするか、決めたですか?」

ハナ「…そうだな…」














ハナ「私も、島、行こうかな」

355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:28:29.85 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「だめです」

ハナ「え、だ、だめ?」

くーちゃん「全然だめです。一緒に島なんて、ありえません」

ハナ「ど、どうして? 一緒に、旅だって、したし」

くーちゃん「一緒に旅、したからです」

くーちゃん「くーちゃんは大楠さんとの約束、交わせました」

くーちゃん「くーちゃんは、自分の人生、決めたんです」

くーちゃん「ハナちゃんも、ちゃんと自分で決められるはずです」
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:30:39.36 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「ハナちゃんの喋る量、少しだけ増えました」

くーちゃん「でも、言葉にしない情報の方が、ハナちゃんのことがわかります」

くーちゃん「苦しそうな顔の人と、島で一緒に暮らすことはできません」

くーちゃん「ハナちゃん。本当にやりたいこと、ないですか?」

 ちゃぷん



                    ちゃぷん


          ちゃぷん

ハナ「くーちゃん」

くーちゃん「はい、なんでしょう」

ハナ「喋りたいことがあるの」
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:32:14.46 ID:Ppk08Rtz0
ハナ「旅に出たいの」

くーちゃん「…とてもすてきです」

くーちゃん「くーちゃんは、ハナちゃんの旅を応援してます」

ハナちゃんの旅の目的は、特に尋ねませんでした。

もちろん興味はありました。

でも、ここで深堀して、言葉にさせてしまうと

せっかくのハナちゃんの持ち味が台無しになるって思ったんです。

言葉にする大切さがあれば、言葉にしない大切さを知ってるハナちゃんには、よい配慮と思いませんか?

誰だって喋りたいことを喋ればよいんです。

喋りたくないことなんて、喋らなくてよいんですよ。
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:33:12.84 ID:Ppk08Rtz0
くーちゃん「反対されても気にしなくてよいです」

くーちゃん「だって、海の男、突き落として」

くーちゃん「船、ジャックしたです」

くーちゃん「ハナちゃん、なんだってできますよ」

ハナ「それ言うのやめてくれない⁉」

そう言ってハナちゃんとくーちゃんは、笑いあいました。

そして、卒業してからくーちゃんとハナちゃんは

離れ離れになりました。
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/16(金) 23:34:17.24 ID:Ppk08Rtz0
また明日ノシ
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/17(土) 10:06:10.62 ID:gTinn2ZxO
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/17(土) 23:47:12.35 ID:KdntX8IL0
TRACK14 沼の底

くーちゃんとハナちゃんは、それからずっと、長い間会うことはありませんでした。

お互いその頃携帯電話は持ってませんでしたし、手紙を書く習慣もなかったので

繋がる手段が、なかったんです。 

くーちゃんは島での暮らしを始めました。

慣れない畑作業や、海の男の漁の手伝いをしながら

くーちゃんは毎日、大楠さんのところへ行ってました。

そして、くーちゃんは大楠さんに抱き着いて、あのトンネルの世界の奥へ進んでいました。

相変わらず暗くて大きくて、さみしくて、でもどこか居心地のよい、不思議な場所でした。
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/17(土) 23:52:49.05 ID:KdntX8IL0
くーちゃん「…沼、もっと大きかったはずなんですけど」

くーちゃん「小さな水たまりになってますね」

ぴちょん

くーちゃん「沈むほど、深かったはずですけど」

くーちゃん「においも、なくなりました」

くーちゃん「でも」

くーちゃん「あなたは変わらずいるのですね、大楠さん」


363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/17(土) 23:53:59.54 ID:KdntX8IL0
くーちゃん「ねてるのですか? おきてるのですか?」

くーちゃん「前みたいに、何かを求める感じでもないですね」

くーちゃん「どうしてでしょう。なにもわかりません」

くーちゃん「ただそこにいるだけって感じですね」

くーちゃん「…あの、よかったら」

くーちゃん「歌でも、歌いましょうか?」
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/17(土) 23:56:28.18 ID:KdntX8IL0
くーちゃん「これから、毎日うたいます」

くーちゃん「毎日、違う歌です」

くーちゃん「くーちゃん、きっと大楠さんより早く死んでしまいます」

くーちゃん「大楠さん、これからも、とても長く長く、生きてゆくことでしょう」

くーちゃん「だから、毎日、たくさん歌を届ければ」

くーちゃん「大楠さん、当分の間、退屈しないでしょ?」

くーちゃん「それくらいなら、くーちゃんでもできそうです」

くーちゃん「大げさかもしれませんが、くーちゃんのトンネルを感じられる力」

くーちゃん「このためにあったんですね」
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/17(土) 23:59:20.99 ID:KdntX8IL0
毎日毎日

そんなことを続けていたのです。

たまに海の男の漁、手伝って

食料やお金をもらったり、畑の作業、しながらですけど。

それでも、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、
毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、
毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、毎日、
何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も
何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も
何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も何か月も

ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと







くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はあ」














くーちゃん「なんか」

くーちゃん「トンネルの外、出るの、めんどくさくなりましたね」

366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:00:37.04 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「大楠さん、しゃべりたいことあります」

くーちゃん「くーちゃんが島で暮らし始めたのは、あなたに歌を届けるためでした」

くーちゃん「とゆうことは、このトンネルから出ても」

くーちゃん「よいことはありません」

くーちゃん「もともとくーちゃんの、あの旅は」

くーちゃん「あなたの呼び声にこたえて、現実に見切りをつけるのが目的でした」

367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:02:10.44 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「でも、ハナちゃんの言葉や、チョコレートで」

くーちゃん「沼に沈むのはやめて」

くーちゃん「現実であと少し、生きようと思ったんです」

くーちゃん「でも、今、ハナちゃんいません、どこにいるのか知りません」

くーちゃん「きっと、ハナちゃん、くーちゃんのことなんかすっかり忘れて」

くーちゃん「幸せな人生、歩んでます」

くーちゃん「そこに、くーちゃん、もういらないのです」

368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:04:46.59 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「離れ離れになった時、思いました」

くーちゃん「心のどこかは、離れてても、つながってるって」

くーちゃん「でも、わからないのです」

くーちゃん「植物さんのトンネルだと、いろいろと感じられるので、ほっとするのですが」

くーちゃん「人間にはトンネルがないのです」

くーちゃん「心、見えないんです」

くーちゃん「お話をして、顔を見ないと、感じられないんです」

くーちゃん「だから、くーちゃんはにんげんがこわいのです」

くーちゃん「きらいとゆうより、こわかったんです」

 
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:06:44.29 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「それに、現実に戻らず、ここにずっといたほうが、大楠さんもうれしいはずです」

くーちゃん「ずっとここにいれば、あなたに毎日、思いついた時に、いつだって歌を歌えます」

くーちゃん「別に、沼の底に沈むなんて大げさな話じゃありません」

くーちゃん「ようするに、このトンネルで、ずっとずっといれば」

くーちゃん「現実のこと、全部全部忘れて」

くーちゃん「あなたのことだけ考えられます」
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:08:15.34 ID:BXJMuESK0
くーちゃん「大楠さん、二転三転しましたが」

くーちゃん「こういうのはどうでしょう」

くーちゃん「一緒に沈まないと言いましたが」

くーちゃん「くーちゃん、ここにずっと、いても、差支えないでしょうか?」

水たまりから生えてる大楠さんに、くーちゃんは抱き着きました。

湿った木の空気が、くーちゃんの乾いた肺を満たしてゆきます。

あの時の、沼の底の懐かしいにおいが、漂ってきました。

気が付けば抱き着いているくーちゃんの体を、ぬめぬめした液体が沈めてゆきます。


くーちゃん「…あ」

それは、あの時の沼でした。

371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:09:01.12 ID:BXJMuESK0
もう沈むことはないと思っていた沼に、くーちゃんはまた沈み始めてたんです。

あの旅の果てで、くーちゃんは沼の底を望んでいました。

あの時選ばなかった、沼の底への道をたどる。

理想の世界の扉を開けられる。

ああ


素晴らしい人生です。
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:09:49.03 ID:BXJMuESK0































くー





















あっ

















373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/02/18(日) 00:10:32.33 ID:BXJMuESK0
あと2回

また明日

ノシ
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/18(日) 11:55:50.11 ID:5Tz9o532o
おつ
くーちゃん一人にしたら駄目な子だ
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/18(日) 14:19:45.85 ID:WJ0HkjWDO
何歳くらいになったんだろう
でも喋り方は変わらない
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