【オリジナル】どっとハレルヤ【一次創作】

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1 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/24(土) 18:28:55.17 ID:wxY66U+LO
「パンパカパーン! なんとたった今、無意味に命を落としたお前に特別大チャーンス!」

気がつくと真っ白な空間にいた。
目が眩んであらためて、これまで自分が暮らしてきた世界がいかに暗く、昏く、冥くて澱んでいたのか思い知らされた。

「なーにを打ちひしがれてるんですかぁ? そんなセンチメンタルに気に病む権利なんてお前のような下等生物にはないんですよー?」

なんだこいつは。いきなり罵倒してきた。
後光からこの空間を満たす真っ白な輝きは恐らくこいつから放たれているのだと察することは出来る。絶世の美貌。完璧なスタイル。
こいつが女神と言われたら信じる見た目だ。

「ほーん。このあたしを肉眼で直視して劣情を催さない程度には高潔な精神を持ち合わせていることを証明したのは褒めてあげるわ。でも、お前ごときがこのあたしを観察するような眼差しを向けていること自体が不敬よ」

それは失敬。慌てて目を逸らす。まずいな。
やっぱりこいつは女神かなんかでかなり偉い存在なのだろう。怒らせるのは危険である。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1708766935
2 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/24(土) 18:31:00.17 ID:wxY66U+LO
「なーにを勝手に目を逸らしてるんですかぁー? 誰が許可しましたー? 誰もが垂涎なこのあたしの美貌を前にして、あっさり目を逸らすとかプライドが傷つくんですけどぉー?」

じゃあ、どうすりゃいいってんだよ。
ため息を吐き、あらためて向き直る。
すると目の前の女神様は蠱惑的な表情を浮かべて、落命の瞬間について語り始めた。

「お前は死に瀕した少女を自分の命と引き換えに助けようとした。神ならぬお前ごとき下等な存在が他者の運命に干渉しようとした。もちろんその少女の運命はお前みたいな矮小な存在が変えることなんて出来ない。当然、死んだわ。ただ唯一、大きく運命が変わったのはお前自身よ。お前はここで死ぬ運命ではなかった。それなのに、死んだ。そのことについてあたしはとても腹を立てている。おわかり? わかったなら、まずは謝罪しなさい」
「申し訳ございませんでした」

素直に謝罪した。反発や反論はしない。
もちろん、腑に落ちない点は沢山ある。
自分の運命なんだから好きにさせてくれても良さそうなものだ。説明によると、結局、あの子は助からなかったようだし。他者の運命に介入は出来なかったらしい。がっかりだ。

「それが口先だけの謝罪だって、このあたしがわからないとでも思いましたかー? 全知全能であるこのあたしの慧眼を誤魔化せるとでも? お前はただ素直に、その生意気な目でこちらを見据えて反論すればいいんですよ?」
「じゃあ、自分の命くらい好きに使わせて」
「ダメに決まってんじゃないですか。いいですかー? お前の運命はお前のためにあるんじゃない。勘違いすんな、です。まったくもう。思い上がりも甚だしいというか、極めて利己的で、しかも発露が自己犠牲なのが独善的かつ偽善的すぎて反吐が出ます。おえっ」

さすがにムカついた。これはキレていい。
たしかに客観的にみればあの自己犠牲が独善的かつ偽善的な自己犠牲だったことは認めよう。それでも、こちらの主観としてはあくまでも善行のつもりだったのだ。死の間際、マシな命の使い方だったと満足していたのだ。
3 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/24(土) 18:33:24.81 ID:wxY66U+LO
「ふー危ない危ない。危うく成仏されるところでしたよ。間一髪です。もしもあたしがお前の愚行を労っていたらその瞬間に魂は浄化されて自我なんて欠片も残っていなかったでしょーね。今こうしてお前ごときちっぽけな魂が偉大なあたしの目の前で本来の形を保っていられるのはその怒りが源だと自覚しろ、です。お前はそうやってあたしに苛ついていればいいんですよ。これからの人生、死ぬまであたしへの感謝を忘れずに過ごしなさい」

これからの人生とは? どういうことだろう。
落命して、女神に説教をされて、運命とやらを歪めた罰として地獄行きではないのか?

「お前はもともと地獄で暮らしていたのですよ? みーんなゴミみたいな奴らばっかりの掃き溜めという賽の河原で、報われない石積みをして、その生涯を終える運命でした。なのにお前は、勝手に、その勤めを放棄して死んだ。お前が積んだ石を崩すあたしの楽しみを奪った。それは万死に値する罪ですが、裁きを与えるにもお前はもうくたばってますからね。だから特別に、またあの糞みたいな世界で復活させてあげようと言ってるんですよ」

復活。またあの世界に逆戻り。
助けようとした少女がいない世界。
それはまさしく、地獄だろう。
4 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/24(土) 18:34:55.95 ID:wxY66U+LO
「い、嫌だ。戻りたくない。このまま死んでたい。お願いします。どうかご慈悲を……」
「ダメだって言ってんだろーが、です。お前の運命は、その命は、お前のもんじゃない。お前には為すべきことがある。その使命を放棄することは許されない。黙って言われた通りに石を積め。ある程度の高さになったらあたしが崩す。お前はそのたびに絶望して、死にたくなるだろう。しかし、それは許されない。お前はその命運が尽きるまで、石を積むんだ。それが、お前に課せられた使命です」
「嫌だ……行きたくない……生きたくない」
「生きたくなくても生きるんだ。死にたくなくても死ぬ連中を思ってな。あの少女は死んだ。その十字架を背負って生きていくんだ。それがお前の人生であり、運命なのですよ」

あの少女は両親から酷い虐待をされていた。
時折、家から追い出された少女がベランダで泣いているのを見た。警察に通報したが、ただの躾ということで片付けられた。あの日、ベランダに放置されたまま動かなくなった。
焦って、なんとか救出をしようとして、転落して命を落とした。あの暗く、昏く、冥く淀んだ社会で、あの地獄のような世界で生きていたくない。あそこで暮らす、ゴミのような連中と一緒にされたくない。ああ……そうか。
5 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/24(土) 18:35:37.40 ID:wxY66U+LO
「お前は自分が特別だと思い、あの世界の連中とは違うと決めつけていた。でもそうではないのです。お前も同じなのです。道端で野良猫が轢かれていても埋めようともしない。そんなお前があの少女のために命を落とすなんて自己満足以外の何ものでもありません。そんな在り方は認めませんし、このあたしが許しません。お前はあの世界で、あの連中と一緒に生きていくのです。生きていく中で、報われたと思ったら、また失敗をして、絶望をすることがお前の運命であり、生きる意味なのですから。それ以外の選択肢は存在しません。それを拒むことは許しません。お前はそのやるせなさを噛み締めて、天を呪いながら生きていくのです。くだらなくて、ずるくて、卑怯で、汚くて、虫唾が走るような連中と一緒にね。仲良くするにはお前自身もそうなるしかないんですよ? わかってますか?」
「嫌だ……そうなりたくない……死にたい」
「それはつまらない意地ですよ。本来、お前らみたいな連中はあたしを下卑た目で見つめて、押し倒すのが普通です。それなのにお前は自らの保身のことしか考えていない。欲望が足りていないのです。あの虐待されていた少女が裸でベランダに放置されていても、お前は一切欲情しなかった。そんな高潔な精神なんて、あの世界において一切必要ありません。だからもっとクズになってください。だってあの世界、クズしかいないんですから」
「クズになりたくない……自分を保ちたい」
「あは。ようやく本音が出ましたね。クズになりたくないのは周りと同じになりたくないから。強烈なただの自我にすぎません。お前は自分のことが好きなだけ。自分が助かるためにあの憐れな少女を利用したわけです。最低ですよね。自覚してくださいよ。お前は最低な奴です。下手したらあの連中よりもね」

そうかもしれない。きっとそうなのだろう。
あの子を助けたかったのは、自分のためだ。
つまらない正義感を満たして、自尊心を保ちたかっただけ。結果としてあの子が救われたら、それは美談になる。クズすぎて泣ける。
6 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/24(土) 18:38:31.37 ID:wxY66U+LO
「ああ、ううっ……くそっ……畜生……畜生」
「ああ、泣かないで。その薄汚い涙でこの清潔な空間を汚さないでください。ただでさえ吐く息も臭くて汚いのに、鼻水とか涎なんて勘弁してくださいよ。おい。蹲るな。顔を上げろ。そのぐちゃぐちゃになった顔面をよく見せろよ。あの世界に戻ったら、何度も何度もその顔で天を仰いで慟哭しろ。それで今回の件は許してあげます。もう怒ってはいませんよ? 寛大でしょう? だから早く泣き止んでください。鬱陶しいですから」

口調とは裏腹に頭を撫でる手つきは優しい。
何より許されたことが嬉しかった。たしかに成仏しそうなほどだ。しかし、別に労われたわけではない。ただただ罵倒されただけだ。

「ちーがーうーでしょー? あんたはこれを慈愛だと勘違いしてあたしに惚れるの。それが普通でしょ? わかんないかなー。なんでそんな簡単な思考回路も積んでないワケ? 馬鹿なんだから難しく考えても仕方ないじゃん。能天気に、女神様しゅきーってなってればいいの。ほら、言ってみ? 女神様しゅきってさ」
「……女神様しゅき」
「うわキモ。きっしょ。キッツ。ないわー」

はいはい。ご褒美ご褒美。別に傷つかない。
なるほどだいたいわかってきた。理解した。
こういうやり取りが求められているのだと。
7 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/24(土) 18:39:47.38 ID:wxY66U+LO
「わかってきた? ならもう大丈夫ね。今のお前ならきっと下界でも上手くやっていける。毎朝毎晩、このあたしに感謝しなさいね?」
「……ありがとうございます、女神様」
「よろしい。じゃあね……頑張んなさい」

目が覚めると、自分のアパートのベッドの上だった。まだ夜明け前なのか、薄暗い室内。
隣接するマンションのベランダには、きっと死んだあの子が放置されているのだろう。暗く、昏く、冥い気持ちになった。カーテンを開けて確認するのが怖い。それでも確認をして、絶望視して、天を憎むのが自分の使命であり、義務だと女神様は仰っていた。仕方なく、布団から出て、そこでようやく気づく。

「本当にありがとうございます……女神様」

布団の中で丸くなって寝ている野良猫ならぬ少女がすやすやと寝息を立てていることを確認して女神様に改めて感謝した。たしかに死んでいる場合ではない。この子と生きていくのだ。この暗くて昏くて冥い素敵な世界を。


【どっとハレルヤ】


FIN
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/24(土) 18:41:31.49 ID:T4EukwEr0
凄いな
普通ヒトって経験を糧に改善する生き物なのに
進歩するどころか退化してるぞこのヒトモドキ
9 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/25(日) 11:29:59.77 ID:E6phKOsGO
「聞いたよ? また主神様に楯突いたって?」
「ウザい」

クスクスと、耳障りな嘲笑にイラッとする。
あたしが何かしでかすたびに、いちいち揶揄うのがこいつの趣味であり、悪趣味なのだ。

「主神様は心配してたよ? キミまで堕天してしまうんじゃないかってさ。愛されてるね」
「ほっとけ」

下界の劣悪っぷりは、たしかに堕天したアホの影響も大きい。けれど、それでもだからって管理者側が放置していても状況は悪くなる一方だ。あたしにはこいつのように、もがき苦しむ人間を見て見ぬふりなどしたくない。

「キミは人間たちにとって良い神様でありたいの? そんなことをしたって無駄だよ。連中は、何度救ってやっても救えないんだから」
「あたしが自分に与えられた権限の範疇で何をしようと勝手でしょ。口を挟まないでよ」
「いやいやいや。越権行為で怒られたくせに何を言ってるのさ。少しは反省しなさいよ」

越権行為なんて詭弁だ。それをするだけの力は有している。我々のやることは常に正しくて、間違ってなどいない。こいつのやることですら、あたしに口を挟む余地はない。主神は、あたしたちを監督する役目にすぎない。
10 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/25(日) 11:31:34.76 ID:YCeZzapuO
「本当に堕天しそうでお姉ちゃん心配だよ」
「は? 誰があたしのお姉ちゃんよ、誰が」
「僕だよ。キミのお姉ちゃんはこの僕です」
「ふん……性別不詳のくせに、よく言うわ」
「僕はほら、恋愛感情を司っているからね。どちらかに偏るのは良くないでしょう?」

クスクスと己の権能を自慢するろくでなし。
こいつの匙加減で人間同士がくっついたり、破滅したりする。こいつは何気ない幸せを大切に出来る人間しか救わない。節操のない連中を嫌う。なので大半の人間は加護を受けられず破滅する。人間の運命とは我々の加護が途絶えた瞬間に潰える。悪魔の餌食となる。

「キミだって節制は大事だって思うでしょ」
「だからって草しか食べないような惰弱な人間は、それはそれで運命が弱る。チャンスを逃して幸せを得られない。あいつみたいに」
「この前キミが救ってあげた人間? キミの言いつけを守って、自分の欲望と向き合っているみたいだよ。あの少女のほうも無事に成人してから積極的だしね。そのうち番になるだろう。僕の加護さえあれば幸せになれるよ」

幸せになれるかどうかなんてどうでもいい。
ただ運命から逃れることは許さない。これはあたしの領分だから、そこを逸脱されると沽券に関わるのだ。それこそ、下界に降臨したくなるほどにもどかしい。少しくらいなら。
11 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/25(日) 11:34:19.99 ID:YCeZzapuO
「ダメだよ。絶対に。降臨、ダメ、絶対!」
「チッ。わかってるし……ケチくさいわね」
「節制だって言ってるでしょ。連中は甘やかしたらすぐ堕落する。簡単に手を貸して、信仰されすぎると、連中は全て神様任せにしてしまう。考えることをしない。自発的に正しい運命を全うさせること。それが出来ない奴らは破滅する。それが摂理だ。逸脱した彼を正しい運命に導いたのはかなりギリギリの介入で、だから主神様に怒られるのは当然さ」

自発的に正しい運命を全うするなんて詭弁にすぎない。大抵は運命に翻弄されて、その過程で自らの運命を受け入れる。痛い目をみないと気づけない。そして気づいた時には、ある意味もう手遅れなのが運命である。自発的にそこに辿り着ける者などほとんどいない。

「破滅した連中は自分が悪いんだよ。僕らが気にすることじゃない。キミの慈愛は僕のように博愛ではないだろう? 僕は愛するがゆえに切り捨てる。永遠など下界には存在しないのだから。命運が尽きる時、人間どもは気づくのだろう。自分たちの存在は儚いのだと」

あたしはこいつを嫌いだし認めたくないけれどこいつのスタンスは管理者として間違っていない。あたしたちは間違わない。結果的に正しいことをする。それが神の思し召しだ。
12 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/25(日) 11:36:57.51 ID:AzUKfzGUO
「それよりさ、聞いてよ。何度天罰を下してもあの馬鹿どもは違法薬物に手を出すんだ。まんまと悪魔の奴らの罠に引っかかって破滅しちゃう。キミはどうしたらいいと思う?」
「もっとえっちの時に気持ちよくするとか」
「もぉーだから節制だってば。ほどほどにしないと、それしか考えられなくなる。下半身に支配されたらそれこそ悪魔の思う壺だよ」
「本能に忠実な人間のほうが素直じゃない」
「そしたらあいつら戦争しかしないよ。徒手空拳での殴り合いならともかく、悪魔の武器で絶滅まっしぐらだよ。そしたらいよいよ主神様が激怒して、もうめちゃくちゃになる」
「堕天したあのバカもなんだかんだ詰めが甘いわよねー。主神に刃向かうわりには人間に対する愛情が残ってる。だから人間を絶滅させるまではしない。ま、歪んだ愛情だけど」
「あんなのを愛情なんて言わないでくれよ。僕の沽券に関わる。愛情というのはもっと純粋で尊いんだ。堕天したあのアホのそれは、悪意ある欲望だよ。人間の悪意があの気狂いは大好きなんだ。だから主神様は怒って天界から追放した。そしたらもうこの有様だよ」
「堕天して伸び伸びとしてて愉しそうよね」
「僕らは全然楽しくないけどね。忙しすぎ」

人間の本能を自制させる。それは重要だけど自制しすぎるとあいつみたいに逸脱する。あいつの場合は悪魔に唆されたわけでもなく、完全に自滅だった。管理者として、そんな末路は1番許せない。だからあたしは介入した。
13 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/25(日) 11:38:39.81 ID:QLWrc4KeO
「また彼のこと考えてる。たしかに人間の中では珍しい高潔な精神の持ち主だけどさ、ただの馬鹿だよあんな奴。愚かすぎる人間さ」
「わかってるわよ。あいつは馬鹿で愚かな人間。でもだからこそあたしはあいつを……」
「手のかかる子供ほど可愛いってやつかい? 博愛主義の僕には理解出来ないね。主神様のように我々を監督する立場からしても看過出来ないのは当然だ。ほどほどにしときなよ」
「えいっ」
「あ! またなんかやったでしょ!? ダメだよ男性用避妊具を売り切れになんかさせちゃ! たしかにあの道具は自然の摂理に反しているけど、節制という面では有効なんだから!」

ふん。違法薬物になんかに頼らずともこれが1番健全に快感を得られる。せいぜいあいつも運命の相手との行為に没頭するがいい。馬鹿なら馬鹿らしく愚かに頭を空っぽにして後先なんて考えずに腰を振ってればいいんだ。

「よーし鑑賞会をするわよ!」
「やめて! 手を離して! 僕の権能を低俗な覗きに使うな! しかも特定個人だけを視るなんて清く正しくない! 変態のすることだよ!」
「あんたを通すと快楽まで伝わって便利ね」
「僕を娯楽の道具にしないでよ!?」

主神から怒られるのを回避するために喚きつつも恋人繋ぎをするこの僕っ子はやはり嫌いだけど、こいつから伝わってくるあいつの愛情はあたしのやったことの正しさを証明してくれる。せいぜいあたしに感謝しながら行為に没頭するがいい。早く子供作って見せろ。


【どっとハレルヤ 2話】


FIN
14 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/26(月) 20:26:30.29 ID:CguT7wFgO
「あたし、ヴァンパイアだから」

不意にそう告げた彼女は美少女と呼んで差し支えない美貌にそぐわない暗い、昏い、冥い瞳を紅く光らせて、こちらを見つめてくる。

「君が、ヴァンパイア……?」

ヴァンパイア。吸血鬼。夜の、王……?
そこまで連想をして、その発言の信憑性をようやく疑った僕は、どうやら自分で思っている以上にそうしたファンタジーに憧れていたらしいと自覚した。そんなわけはないのだ。
あるとすれば、そう。アンパイア。もしくはパパイヤかも知れない。いかにもパパ活をしていそうな感じがする。いや流石に失礼か。
たまたま同じクラスで隣の席になった病み系の女子がヴァンパイアなんて、ありえない。
そうとも。そんな筈ない。だって彼女は朝、普通に登校して、太陽の下で平然としているではないか。もしも本当にヴァンパイアならばそれは耐え難い苦痛でなければおかしい。
だってヴァンパイアは陽の光が弱点だから。
いやいやいや。そもそも僕はどうしてヴァンパイアの伝承や設定に当て嵌めて否定をしているんだ。否定は簡単だ。現実的ではない。

「えと、揶揄ってる……?」
「あーその顔、信じてないっしょ」
「ま、まあね」

全然。これっぽっちも。そうさ。僕は欠片も信じてなんかいない。ちょっとでも耳を疑ったことが恥ずかしい。馬鹿馬鹿しい話だよ。

「どうして太陽が平気か、知りたい?」
「別に、そんなのどうでもいいし……」
「じゃーん! UVカットクリーム!」

愕然とした。その手があったか。伝説上の存在であるヴァンパイアの伝承は時代背景が中世ヨーロッパなので、その設定が現代に通用するとは限らない。美容業界は日進月歩で進歩しており、既に太陽を克服していたのだ。
15 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/26(月) 20:27:53.37 ID:CguT7wFgO
「塗る?」
「いえ、結構です……」

手の甲にクリームを擦り付ける隣の席のヴァンパイア。てか爪長! マジかよ。うちで飼ってる猫より長いじゃん。剥がれたら痛そうなので切ることをおすすめしたい。でも下手なこと言ったらガブってやられそうで怖いな。

「ん? なに見てんの?」
「いえ、別に……」
「いきなりガブっとしないから言ってみ?」
「つ、爪が長いな、と思いまして……」

恐る恐る指摘するとヴァンパイアは笑って。

「ああ。これ付け爪だからへーきだよ」
「あ、そっすか……」

ですよねー。常識的に考えてそうに決まってんじゃん僕のバカ! ヘラヘラ笑いながら恥ずかしくて死にたくなっていると悪寒が走り。

「その愛想笑いやめて」
「は? えっ……と?」
「長く生きてるとさぁー感情の起伏がなくなってくんの。だからあたしは本当に面白い時しか笑えないし、本当に泣きたい時しか泣けない。そりゃあ、周りに合わせて空気読むこともあるけどさぁー……すっげー虚しいんだよね。ねえ? わかるかなぁー? この気持ち」

せいぜい16年しか生きてない僕には到底わからない境地だった。ただ言われてみると、なんとなくわかるような、わからないような。

「つまり、たまには思いっきり笑ったり泣いたりしたいってこと?」
「まーそういう願望はあるっちゃあるけどさぁーぶっちゃけただの八つ当たり」

羨ましいわけでもなく、八つ当たりか。諦めてるようにも思える。そんなもんだろうか。
ふと、彼女が何歳なのか訊きたくなったが。

「年齢訊いたら噛むかんね」
「うっす……」
「ぷっ……そんなびびんなって! ウケる」

あっぶねー。地雷だったわ。真っ青になってお口にチャックをする僕を見て、彼女はケラケラと笑った。尖った八重歯がヴァンパイアらしい。マジか。マジで、ヴァンパイアか。
16 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/26(月) 20:29:48.52 ID:CguT7wFgO
「あーおもろ。久々に笑ったわ」
「あの」
「ん?」
「何歳っすか?」

無意識に訊ねると、ヴァンパイアは真顔で。

「訊くなって、あたし言ったよね? 聞き分けないガキはマジでガブってやっちゃうよ?」
「ガブって、やられてみたいなって……」
「え……きも」

あ、終わったわ。なに言ってんだ僕は。うわーガチきもいじゃん。ガチきもだよ。なんだよ噛まれたいって。あーキツイ。きちぃー。

「あのさー、あんたにだって食べ物の好き嫌いってあるっしょ? それと同じようにあたしにだって誰の血が吸いたいとかあるワケ」
「はい……」
「逆に考えてみ? もしもあんたがヴァンパイアだとしてさぁーあたしの血が吸いたい?」
「え、それはもう、当然吸いたいっすけど」
「マジきも。銀の弾丸や十字架よりキショ」

あ、これもうダメだわ。もうおしまいだ。キモいならまだしも、キショいのは終わりだ。
でもどうだろう。ニンニクじゃないし。銀の弾丸や十字架なら、ワンチャンまだ希望が。

「あのさぁーニンニクはブレスケアとかミンティアでなんとかなんの。常識でしょ?」
「あ、なるほど。左様でございますか……」

そっちも克服されていたとは。そうだよね。
ヴァンパイアだって焼肉とかニンニクマシマシのラーメンとか食いたいもんね。当然か。
17 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/26(月) 20:31:07.99 ID:CguT7wFgO
「さっきから噛んでくださいとか、血を吸いたいとかさぁーほんとアタマおかしくない? 大丈夫? せめてそういうのはムード気にするべきだってわっかんないかなーこの童貞は」
「童貞でごめんなさい」
「あ、そこは別にいーよ。ヤリチンの血ってクッソ不味いから。一生童貞でいれば?」
「うっす……」

なんだそれ。僕は非常食みたいなもんかよ。

「んで? マジで吸って欲しいワケ?」
「またキモいとか言わない……?」
「言わない」
「キショいもご勘弁……」
「言わないってば!」
「それなら、吸って欲しいです……」
「なんで?」

衝動的な発言に理由を求められてしまった。
笑った彼女の八重歯を見ていたら自然とそう思ったのだ。それに理由を付け加えるなら。

「君が、美しかったから」
「っ……ば、ばっかじゃないの!?」

うわ、顔真っ赤だ。どうやらブチ切れさせてしまったらしい。しかしこれは方向性としては悪くないのではないだろうか。彼女が僕に対して怒れば、ガブってやってくれるかも。

「マジキレイ。尊い」
「チッ……本気でうざいんだけど」
「天使……いや、悪魔的なかわいさだよ」
「はっ。悪魔的なかわいさねぇ。天界の連中に聞かせてやりたいね。あいつら元気かな」
「天界……?」
「いいから、もっと褒めな」
「髪はサラサラだし、目はキラキラだし、笑顔は魅力的だし、胸は……慎ましいし……」
「よーし。ガチで吸うかんな。いいな?」

我ながら酷いボキャブラリーだが、なんとかヴァンパイアを怒らせることに成功した。どのワードが地雷だったかはわからないけど、かなりの圧を感じる。僕は初めてだから痛くしないで優しくして欲しい。お願いします。
18 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/26(月) 20:33:34.22 ID:CguT7wFgO
「あむっ」
「っ……」

チクッとしたけど痛みはもうない。むしろ。

「な、なんだ、これ……」

ヴァンパイアの吸血はまさしく悪魔的な気持ち良さだった。脳内麻薬がドバドバ溢れているのを感じる。なるほど。こういうものか。
だからこのまま吸い尽くされてしまうのだろう。もうやめてなんて、自分では言えない。

「ぷはっ」
「あっ……」
「ごっそーさん。んー? なんだよ、その顔」
「いえ、あのその、もっと……」
「だーめ。これ以上吸ったらマジぶっ倒れっから、もうやめとき。また今度なー」
「うっす……」

これはハマるわ。依存性がハンパない。もう吸われたくて仕方ない。血を吸って貰うためになんでも言うことを聞いてしまいそうだ。

「いいかぁー? あんたはもうあたしの餌だかんな。他所の女と仲良くしたり、ベタベタすんなよー? 血の味ですぐわかんだかんな?」
「……うっす」
「あんたはこの先、未来永劫、不死の眷属としてずっとずーっとあたしのそばにいるんだぞー? どこに逃げたり離れたりしても地の果てまで追っかけるかんなー? 覚悟しろなー」
「……うっす」
「あたしが1番美しいだろ?」
「1番美しいっす」
「あたしが1番かわいいだろ?」
「はい! 1番かわいいっす!」
「よーし……じゃあこれからよろしくなー」
「末永く、よろしくお願いします!!」

こうして僕はヴァンパイアに隷属することになったわけだけど、いつからだろう。どのタイミングで彼女は僕を虜にしたのだろうか。

「夜も更けた。さあ、我が眷属よ。この暗い、昏い、冥い、美しい宵闇を彷徨おうか」
「うっす!」

悠久を共に生きる中で答えを探していこう。


【どっとハレルヤ 3話】


FIN
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/26(月) 21:52:04.32 ID:Bd9qHhpdO
こいつまだ生きてたのか
何番煎じか分からない、面白みのない単調な文
スカトロにこだわってたのは自分の文才のなさを誤魔化すためだったんだな
20 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/27(火) 20:36:27.24 ID:r7IG1DVqO
「そこのソファの真ん中に座ってて」

現代のヴァンパイアの根城は摩天楼の最上階。つまり、高層マンションの1番上のフロアを全て貸し切っていた。お金持ちである。

「お腹すいたでしょ。何か作ってくるね」

3人がけのふかふかなソファに座らせられた僕は緊張していた。両隣に同い年くらいの若者が座っているからだ。右隣にはファッション雑誌から飛び出してきたような美少女。不機嫌そうにスマホをシュッシュしている。左隣には色素が完全に抜けたような性別不明の真っ白い人物。この子は機嫌良さそうにニコニコ笑っているが、うっすら開いている真紅の瞳はまるで笑っていない。おっかないな。

「……あの」
「なによ」
「肩に頭乗せるのやめて貰っていいですか」
「やだ」

スマホ美少女は僕が座って間も無く、こちらの肩に側頭部を預けてきた。ヴァンパイアに負けず劣らずサラサラな髪の毛が肩にかかって、ものすごく良い匂いがする。悪い気はしないものの、痴漢冤罪で捕まりそうで怖い。

「……あの」
「ん? なんだい?」
「手繋ぐのやめて貰っていいですか?」
「僕、冷え性だから」

白い子は僕が座って間も無く、左手を繋いできた。しかも恋人繋ぎだ。この子と僕は面識はない筈なのに、いつの間に恋人になったのだろう。そもそもこの子は男なのか女なのかわからない。性別に関わらず、指は細くて手のひらは柔らかいので不快感は全くない。やたら指先が冷たいのは冷え性のせいらしい。
21 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/27(火) 20:39:03.49 ID:r7IG1DVqO
「ねえ、見て見て。こいつバカじゃん?」

スマホ美少女がSNSに投稿されたバイトテロ真っ最中の動画を見せてきた。バイトテロをしているのは僕らと同じくらいの年齢の悪ガキでコンビニの商品に悪戯している。具体的にはカップラーメンの底に穴を開けていた。

「ほい、拡散。これで人生おしまいっと」

スマホ美少女がポチッとタップすると、瞬く間にその動画が全世界に知れ渡り、盛大に燃え広がっていく。すげーな。何人フォロアーいるんだろう。ここまで影響力を持ったインフルエンサーとは逆に友達になりたくない。

「手、あったかいね」
「君の手は冷たいね」
「僕は心があったかいからね」

白い子は遠回しに僕は心が冷たい奴だと非難してきた。いや、さすがにただの被害妄想だろうけど何か裏がある気がする。だってこの子、赤いおめめが全然笑ってないんだもん。

「へえー白いのの魅了に抗えるんだ」
「魅了? 抗う?」
「そいつ男でも女でも惚れさせる名人だよ」

そうなのか。僕としては薄気味悪いとしか思えないけどたしかにかわいい部類ではある。
天使とか、妖精とかそっち系だ。ていうか。

「君もモテそうだけど?」
「そりゃあんたよりはね」

スマホ美少女は文字通り美少女である。仮に後光で差していたら彼女が女神だと言われても信じるかもしれない。外見を見る限り、歪んだ造形が一切なかった。美少女フィギュアの原型師が彼女を見たらきっと、理想のモデルと巡り会えたことを神に感謝するだろう。
22 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/27(火) 20:41:54.50 ID:r7IG1DVqO
「あんたはふつーだね」
「うん。ふつーだねー」

ほっといて欲しい。両隣から普通と言われて普通とはなんだろうと考える。特筆するべきない点もまた、特筆するべきではないのか。
つまり普通というのはそれも個性なのでは。

「あの人に何されたの?」
「え? 首すじをガブって」
「うわ。痛そう。大丈夫だった?」
「むしろ気持ち良かったよ」
「ひえー引くわー」
「手、離してもいい?」

ヴァンパイアとの馴れ初めを話すとドン引きされた。白い子は手を離すと言いつつも離す素振りはない。むしろ繋いだままズボンのポケットに入れられた。何がしたいんだろう。

「ああ、でもそういう鈍感なところはちょっと変わってるかも。性欲とかないの?」
「ガブってされた時に久々に味わったよ」
「じゃあ、僕もガブってしてあげる?」
「いえ、結構です」

やっぱりこの人たちもヴァンパイアの眷属なのだろうか。それにしてはあんまり吸血鬼っぽくないな。僕が言うなという話だけどさ。

「じゃあさ、あたしの血、飲みたくない?」
「いえ、結構です」

何がじゃあ、なのかよくわからない。まったく飲みたいと思わなかった。僕も一端の吸血鬼ならば吸血衝動があって然るべきなのに、しかもこれだけの美少女なのに。不思議だ。

「僕の血はあげないよ」
「うん……要らないよ」

この白い子の血は単純に不味そうだ。もしかすると血も白いのかもしれない。人肌に温まった生臭い牛乳を想像して、吐き気を催す。
23 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/27(火) 20:44:24.69 ID:r7IG1DVqO
「うん。やっぱり変わってる。仲間じゃん」
「僕と付き合う?」
「あのー! この人たち何なんですか!?」

たまらず僕は、キッチンのヴァンパイアに質問した。さっきからトントンと聞こえていた規則正しい包丁の音がやんで、大きな声で。

「お前の同類だよ! 仲良くやんなー!」

同類って。僕って、こんなのと同類なのか。
となるとやはりこの人たちもヴァンパイアの眷属なのだろう。では改めて挨拶をしよう。

「この度、新しく眷属になりました……」
「は? 眷属ってなに? 新しい属性?」
「どうやら、僕たちとは違うんだね」

違うのか。ならこの人たちは何なんだろう。

「あたしはあの人のフォロアー」
「僕はね、あの人のファンだよ」

なんか恥ずかしい。よりによって眷属とか言っちゃった自分を殴りたい。厨二すぎる。
でも、そもそもあの人が僕を眷属って呼んだわけだし、眷属のほうが正式な呼び方かも。

「あは。すっかりヴァンパイア気分なんだ」
「ふふ。かわいいね」

やっぱりダメだ。スマホ美少女はニヤニヤしているし、白い子はニコニコしながら蔑んだ眼差しをしてくる。そんなにダサいかなぁ。
24 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/27(火) 20:47:12.05 ID:r7IG1DVqO
「素敵だと思うよ眷属。頑張ってね」
「そもそもさ、眷属って何すんの?」
「何ってそりゃあ……知らないけど」

なんか絶対服従の下僕みたいに言われたけど具体的には何をするかはわからない。やっぱり夜の闇に紛れて人を襲ったりするのだろうか。そんなこと出来るだろうか、この僕に。

「なんか顔色変えずに虫とか殺せそう」
「わかるー屠殺とか得意そうだよねー」

そんな風に見えるのか? まあ、否定はしないけども。虫なんか怖くないし屠殺は可哀想だけど仕方ないことだ。お肉は美味しいから。

「あーもしかして意外と1番狂ってる系?」
「きゃー怖ーい」

狂ってないし怖くない。僕はそう、普通だ。

「あー良かった。あたしらはまともでさ」
「なんか安心感あるよね」

自分より下がいると人間は安心する。僕はそういう意味では安心感を与えられる人間だ。
情けないけれど、それで良いと思っている。
いつも必死に走っている人の背中を支えてやって、最後に襟を思いっきり掴んで転ばせてやりたい。普通、誰だってそう思うだろう?
25 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/27(火) 20:48:33.81 ID:r7IG1DVqO
「とにかく、これからよろしくね」
「うっす」

スマホ美少女は僕の右腕を持ちあげて、自分の肩に乗せた。そのまま擦り寄ってくる。白い子は左手を繋いだまま耳元で囁いてきた。

「今夜は僕と一緒に寝る?」
「自分ヴァンパイアなんで。夜寝ないんで」

仲良く出来るかなんてどうでもいい。僕は絶世の美少女でもなければ変わり者でもない。
そんな僕がヴァンパイアの眷属になれたのはきっと普通だからだ。目の見えない人が杖を落としても見て見ぬふりをするように。耳が聞こえない人がクラクションを鳴らされても知らん顔をするように。それが普通で、それが正常なこの暗くて、昏くて、冥くて、澱んだ世界に染まった僕は、どこにでもいる普通の人間だから。きっと上手くやれるだろう。

「出来たっ! お待たせー! さあ、お食べ」

ヴァンパイアが食卓に乗せたのは何の変哲もないただのミネストローネ。その血のように真っ赤なスープは、普通に、美味しかった。


【どっとハレルヤ 4話】


FIN
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/02/28(水) 22:17:19.12 ID:ukwrF+a10
化物語が流行ったあたりから一切アップデートされていないオッサンが書いてんだな
見苦しいの一言
27 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/02/28(水) 22:18:23.31 ID:3Zioz9uoO
「え。何そのバッグ。どうしたの?」
「いーでしょ。パパがくれたんだー」

ソファの左端に座って、真ん中に座る新入り眷属くんに今日の収穫を見せつけた。するとスマホの子は、またかというようにため息を吐いて、何やらスマホの画面を彼に見せた。

「ほら。あれ、バーキンの新作だよ」
「バーキンってなに?」
「エルメスって言えばわかる?」
「ああ、聞いたことある」
「ほら、買取価格300万だって」
「はえーバッグひとつで300万かぁ」

どうだ!と得意げになるも、新入り眷属くんは呆気に取られたようにポカンとしている。
そんな彼の肩を叩いて、スマホの子が囁く。

「あのね、ちなみにあたしも昨夜、スパチャで300万くらい稼いだよ。すごくない?」
「スパチャって?」
「投げ銭。生配信してるとお金が貰えんの」
「ああなるほど。おひねりみたいなもんか」

やはり今ひとつな反応。もっとこう、大袈裟に驚いて欲しい。新しい眷属くんはリアクションに乏しい。まるで全て想定内みたいだ。
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