【オリジナル】どっとハレルヤ【一次創作】

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

85 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/09(土) 19:58:41.04 ID:9ofacrlQO
「おやおや? 緊縛プレイとはあの人もなかなか趣味が良いね。ほっぺの火傷もすっかり良くなって、元気そうだねぇ……眷属くん?」
「……うっす」

偽物の女子中学生と入れ替わりに、今度は偽物の女子小学生が入ってきた。低身長に貧乳で童顔な白い子。何やら手に、不思議な形状の容器を提げている。いったいなんだろう?

「白、それはなんだい?」
「ふふ。これは尿瓶だよ」
「帰れ」

いくら僕が身動き取れないからってそんなもんを持ってくる女子小学生が居てたまるもんか。だいたい昨夜はヴァンパイアにいっぱい吸われたからこっちはもうカラカラなんだ。

「お願いっ! ちょっぴりでいいから!!」
「アホか。ていうかそろそろ朝食が……」
「ご飯出来たよー!」
「わあーい!」

キッチンからヴァンパイアの声が聞こえた途端、尿瓶をほったらかして白が部屋から出て行った。いや、持って帰ってくれ。呆れつつも恐らくは男女兼用で使えるであろうその独特な形状をしげしげと観察していると、ヴァンパイアがオムライスを持ってやってきた。
86 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/09(土) 19:59:12.18 ID:9ofacrlQO
「え、なにソレ。新しい如雨露?」
「ええ。まあ、そんなもんです」
「ふうん。あとでガーデニングに使おっと。それより、見なさい! 完璧な出来栄えよ?」

ヴァンパイアは尿瓶を如雨露と誤認したらしく、有効的に活用してくれるようだ。彼女が手に持つ皿にはオムライスが盛られており、自画自賛するに相応しいほどの完璧な形状と食欲を唆る香りだった。だがしかし妙だな。

「オムライスに何も描かないんですか?」
「え? 何か描いたほう良かった?」
「そりゃもちろん」

オムライスと言えばケチャップアート。ケチャップアートがなければ、ただのチキンライスに卵を巻いただけの料理でしかないのだ。

「ふうん。あんた意外と子供っぽいのね。ちなみにあたしにどんなのを描いて欲しい?」
「もちろんかわいいハートマークを……」
「は? なんで? え、キモいから無理」

にべもなく却下されて、ブチュッと無造作にケチャップをオムライスに垂らすヴァンパイア。勢いが良すぎて手に撥ねた赤いその液体を、ペロリと舌で舐め取ってから、命じる。
87 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/09(土) 19:59:45.72 ID:9ofacrlQO
「ほーら、餌だ。食え、我が眷属」
「……うっす」

顔の横に皿を置かれて、身動きが取れないなりに、必死に食べようとすると、口の周りどころか、鼻まで真っ赤に染まってしまった。

「美味しい?」
「……うっす」

本当は食べさせて貰いたい。そうしたらきっともっと美味しくなる筈。だけどヴァンパイアはそんなことしてくれない。ちょっとずつ皿を遠ざけて、舌を伸ばす僕を嘲笑うだけ。

「あたしの眷属になってこうして美味いものを食べられて、幸せだろー? わざわざこんな面倒臭い料理を作ってやったあたしに感謝しろよー? ほら、ありがとうございますは?」
「……ありがとうございます」
「犬みたいに手を使わずに餌を食うお前が、あたしを煩わせていいわけないよなー? もっとあたしのご機嫌を伺ってみ? ほら、早く」
「……ご主人様は今日も綺麗で美しいっす」
「よしよし。皿までしっかり舐めて綺麗にするんだぞー。残したらお仕置きだかんな?」

ご満悦なヴァンパイアの命令を、僕は破る。
88 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/09(土) 20:00:27.71 ID:9ofacrlQO
「お腹いっぱいなんで、もういらないっす」
「……は? な、なんで? あたし、上手にオムライス作ったじゃん。ていうかさっき言ったよね? 残したらお仕置きだって……それなのに、どういうつもりなの? おい、答えろよ」
「お仕置き、されてみたいなって……」
「っ……あーもうっ!!」

瞬間、顔面に残ったオムライスを押し付けられた。ぐちゃぐちゃになった僕を見下して、ヴァンパイアはちょっとだけ涙ぐんでいた。

「……せっかく作ったのに、台無しじゃん」
「……うっす」
「顔なんて、拭いてあげないから」
「別にいいっすよ……このままで」

ヴァンパイアに台無しと言われて、僕はそれが好きなのだと理解した。きっとスマ子や白も台無しにするのが好きだろう。ならば、僕のご主人様だってこんなシチュが大好物だ。

「あんたって、ほんっとーにかわいくない」
「よく言われます。小学生の頃、体育教師に体罰されたことがありましてね。女子をジロジロ眺めていた体育教師をジロジロ眺めていたら、その邪な視線が気に入らないってぶん殴られました。もちろん、その教師は懲戒免職になりましたけど。ははっ。あっはっは」
「あは。何それ……めっちゃウケる。ふふ」

邪な視線を女子に向けていた体育教師から、邪な視線を理由に暴力を振るわれるという、僕の小粋なジョークでヴァンパイアは笑う。

「もっといろんな話を聞かせて。どうせ、あんたはしばらくここから動けないんだしさ」
「うっす」

この汚くて醜く、くだらなくて、どうしようもない、暗い、昏い、冥い世界には笑える話が山ほどある。それを笑い飛ばすことで、僕たちは、明日も明後日も生きていけるのだ。


【どっとハレルヤ 15話】


FIN
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/09(土) 23:18:16.01 ID:bm5Hp/Ju0
久しぶりにここ来たけどスカトロスレ乱立おじさんまだ書き込んでるんだね
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/09(土) 23:57:32.17 ID:Xv0uzPFz0
読む汚物なのも相変わらずだよ
書いてる作者の中身よりマシなものは出てこんよ
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/10(日) 06:14:39.40 ID:YvsxlPmD0
これだけ1レス1レス同じ構成を続けられるのって
何も考えずにテンプレート使い回してる証拠だからなあ
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2024/03/10(日) 10:35:09.51 ID:YS9zXsM/0
結局やってることはスカトロで有名キャラ汚しまくってた頃と変わってないのよ
もっともこっちはオリキャラ(笑だからキャラに何の愛着も感じないし
そもそも読者にキャラや世界観を分からせる努力をしてないから物語としても成立してない
まさに怪文書だよ
93 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/10(日) 22:08:31.64 ID:l7tGjOFgO
「それで、その尊い女神様は堕天したのよ」
「ふむふむ」

拘禁生活にも慣れてきた今日この頃。明け方に掛け持ちしている高級クラブから帰宅してお風呂上がりのヴァンパイアは、僕に髪を乾かして貰いながら上機嫌に物語を語って聞かせてくれた。彼女曰く、人間が知性を保ち、善悪の概念が生まれてから今日まで、善性を司る主神と悪性を司る女神様の間で熾烈な争いが繰り広げられているとのこと。良い人間だけを救済しようとする主神の意向とは裏腹に、悪い人間は増え続け、主神のフラストレーションは溜まる一方らしい。人類の歴史において、大きな戦争が起きる瞬間というのは決まって主神がブチギレた時のようで、そこで悪い人間を間引こうとするのだが、良い人間ばかり真っ先に死んでいくので、あまり効果はないらしい。その事実を突きつけて癇癪を起こすのをやめろと説得するも、喧嘩となり、堕天した悪性を司る女神様は、下界の人々を陰ながら見守る有難い存在のようだ。

「その悪い邪神がいなくなったら……」
「悪い邪神って言うな」
「失敬。じゃあ、その尊い女神様がいなくなったら、悪い人間も減って、この暗くて昏くて冥い下界も少しはマシになるんすかね?」
「悪い人間は基本的に神の存在を信じてないし、その加護を受け取ることが出来ないから女神がいてもいなくても変わらない。いと尊き地上の女神様は奇跡の安売りはしないし」
「つまり、救いようがないんですね」

この下界は救いようがない。これからも、時折ブチギレる天界の主神様のご機嫌によって翻弄されて、同族同士で争い続けるらしい。
94 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/10(日) 22:09:19.85 ID:l7tGjOFgO
「でもね、ものすごい悪党で、信仰に厚い使徒がいれば、天界の主神の癇癪に対抗することが出来るかもしれない。その子はきっと、他の悪い人間とは違い、この一寸先も闇の暗い、昏い、冥い、澱んだ世界を導いてくれる救世主になってくれるとあたしは信じてる」
「ほーん……救世主、ねぇ」

胡散臭いと思いつつも、ヴァンパイアの赤い瞳がキラキラ輝いているので口に出せない。
どうやら僕という眷属がありながら存在すら疑わしい救世主とやらに憧れているらしい。

「その救世主とやらは、具体的にどう他の悪党と違うんですか? 結局、クズなんでしょ」
「全然違うわ。まず女神様への圧倒的な忠誠心。そして厚い信仰。あとは女神様が惚れちゃうくらいの偉業を成し遂げる必要がある」
「偉業って、たとえば?」
「世界規模の戦争を止める」

くだらない。そんなのは、ただの偽善者だ。

「あんたも悪の眷属の末席を連ねるなら救世主になることを目指してこれから励めば?」
「僕が? 冗談じゃないっす。僕はきっと、世界規模の戦争を眺めて、ゲラゲラ笑ってますよ。それを止めようとする奴をみたら舌打ちをするでしょうね。僕のご主人様ならそれくらい察してくださいよ。ほら乾きましたよ」

辟易してドライヤーを止めると、鏡に映らないヴァンパイアはこちらを振り向いて、まるで言葉の真意を探るように。見つめてきた。

「なんすか?」
「別に。あたしはあんたのことを理解してるつもりだけど、あんたはあたしが思った通りに動かない。それはどうしてかと思ってさ」
「ご要望通りに髪の毛を乾かして差し上げたじゃないっすか。まだ何か足りませんか?」

僕はそれほど、このヴァンパイアについてなんでも知っているわけじゃないけれど、なんとなくこの人が僕に過度な期待を寄せていることはわかる。そういうプレッシャーは嫌いなので、僕はこれてからも、期待はずれのことをして、ハードルを下げていこうと思う。
95 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/10(日) 22:10:03.66 ID:l7tGjOFgO
「ねえ、僕のご主人様」
「なに?」
「仮に救世主様とやらが世界規模の戦争を止めたとして、その動機が女神様のためじゃないならなんの意味もなくないですか? あくまでも自分の目的のためにその偉業とやらを成し遂げないとその人は救世主でもなんでもなく、ただの空っぽの人形で人間ですらない。人間以外に救われた世界は、虚しいだけだと思いますし、そうなって欲しくありません」
「ふふっ……あんたらしい見解ね」

キッパリ告げると、ヴァンパイアは微笑み。

「あんたはあたしの眷属なんだから、これからもあたしのためだけに尽くしてればいい」
「うっす」
「そろそろその枷も邪魔でしょ。外出禁止は解除するから、思う存分、暴れてきなさい」
「仰せのままに」

もしも僕が女神様だったら、偉業を成し遂げたからって惚れない。自分のために偉業を成し遂げてくれたからこそ、素敵なのだ。そういう奴こそ救世主であって然るべきなのだ。

「ご主人様、手を出してくれませんか?」
「ん? 手がどうかしたの?」
「ほーら捕まえた」
「あっ!? あ、あんた、なんのつもり!?」
「似合ってますよ? あはっ! あっはっはっ」

そんなロマンチックな僕が鍵を貰って手錠を外したあとに何をしたかと言うと、ヴァンパイアにその手錠を嵌めて仕返しをした。もちろん怒られた。それでも泣き喚く緊縛ヴァンパイアにごめんなさいを言わせることは、僕にとって世界を救うよりも達成感があった。


【どっとハレルヤ 16話】


FIN
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/10(日) 23:33:09.98 ID:GzYjy7cHO
流水が駄目な吸血鬼を風呂に入れることに疑問を持てよ
日焼け対策も散々使われているネタのパクりだし
臭いだけで天敵レベルのニンニクを身体に取り込む自殺行為を
口臭対策しただけで克服できるわけないだろ馬鹿なの?
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/11(月) 09:43:26.13 ID:pezVIZ7C0
こいつのインプットはエロゲやラノベや漫画を「消費した」だけで終わってるから
吸血鬼に対する知識なんて忍野忍ぐらいしかないだろうからな
吸血鬼の弱点とされる流水も、中世では吸血鬼と思われていた狂犬病患者が
水を恐れるってところから来てるなんて事も調べてすらいないと思う
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/11(月) 21:22:09.48 ID:S9FftDKE0
風呂なら水が流れている訳ではないから大丈夫とか言い訳すんなよ?
前のパートで思い切りシャワーまで浴びてるんだからな
99 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/11(月) 21:46:47.57 ID:p7bl7o/ZO
「ううっ……奥様……ぐすっ……」
「おやおや……どうしたんだい?」

あたしはこれまで、悪魔に願ったことが2回ある。1度目は中学の頃、周囲に馴染めずに浮いていたあたしは理解者を求めていた。するとあの新月の晩に"あいつ"が現れて、あたしの額に消えない傷を残した。そして2度目は今回。街へと向かう橋の上であたしが泣いていると、やたら車高の低いスポーツカーが路肩に停まり、窓を開けて、"そいつ"が声をかけてきた。見計らったようなタイミングだ。

「寒いから、乗りな」

なんでお前がとか、誰が乗るかなんて台詞が頭の中に浮かぶも、言葉にならない。まるで悪魔の誘いに乗るように、あたしはやたら車高の低いスポーツカーの助手席に収まった。

「良い車でしょ。RX-7っていうんだけど知ってる? 知るわけないか。あっはっはっはっ」

こちらの気持ちなど関係なしに、自分の車の自慢をしてきたのでイラっとした。すると、止めどない涙が引っ込んで頭が冷えてくる。

「無理しなくていいんだよ。君はまだガキなんだから、泣きたい時に泣いておかないと人生損するよ。大人になったら、自然と泣けなくなるんだから。今のうちに泣いておきな」
「ふん……余計なお世話だっての」

こいつもそうだったのだろうか。あたしが出会った時にこいつは高校生くらいで、今のあたしよりも大人びていた。あの時にはもう、涙の流し方なんて忘れていたのだろう。というか、こいつが泣くところを想像出来ない。
100 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/11(月) 21:47:31.53 ID:p7bl7o/ZO
「君の泣いてる顔を見ると僕は胸が温かくなるんだよ。どうしてだろうね。君が美人だからだろうか。いいや。きっと、ざまあみろって気持ちになるからだ。君みたいに恵まれた存在にも平等に降りかかる不幸が、僕はたまらなく嬉しいんだ。だからもっと泣き喚け」

そんな理不尽な物言いにすら、今のあたしは何も言い返せなかった。こいつはきっと、あたしの涙に含まれる後悔や懺悔を察して、責めてくれているんだ。そんなことは、あたしの周りの良い人間には出来ない。だからあたしは、こいつを求めてあの橋で泣いていた。

「君みたいなガキが、なんでもかんでも解決出来るわけないだろう? 僕みたいな大人にだって、どうしようもないことがある。だから君の涙は極めて傲慢で鼻持ちならないのさ」
「……てめーならきっと奥様を救えただろ」

根拠はないけど、この悪魔に不可能はない気がした。到底、倫理的にしてはいけない手法や、道徳的にやってはいけない手段で、奥様の命を救うことが出来た筈だ。それなのに。

「そうかもしれない。だけど僕は救わない。だって、その奥様とやらは僕なんかに助けて欲しいなんて思ってないから。あの奥さんはね、そういう運命を受け入れていた。あの旦那さんに命を拾って貰ったその日から、分不相応な愛情を注がれて、場違いなお屋敷で飼われながら、少しずつ善意に蝕まれて、衰弱していったのさ。それは彼女の意思で、だから君や僕が気に病む必要なんてないんだよ」

慰められているのだろうか? こんなやつに。
101 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/11(月) 21:48:38.80 ID:p7bl7o/ZO
「旦那さんはなんか言ってた?」
「旦那様は……仕方がなかった、と」
「だろうね。どんなに無意味でも、それがあの人の使命だからね。あの人は必死に石を積んで、そして崩れた。ただそれだけの話さ」
「お前にっ! いったい何がわかるんだ!!」

気づくと怒鳴っていた。ただの八つ当たりという自覚はある。でもきっと、こいつならあたしの行き場のない怒りや虚しさを受け止めてくれると思った。いや、そう信じていた。
その為にこいつとの再会を願ったのだから。

「君とあの奥さんとの関係は知らないけど、あの由緒正しいお屋敷の中で、あの奥さんが馴染めなかっただろうってことはわかるよ。きっと君は、そんな奥さんに仲間意識を持ったんじゃないか? 学校では作れなかった友達みたいに接していた奥さんが亡くなって、君はまたあのお屋敷で独りぼっちになってしまった。だからその涙は途方に暮れてるんだ」

こいつの言う通りだった。屋敷を出て、様々な企業の研究室でスマホや自動車のような革新的な発明を生み出し、この国を急速に発展させた旦那様が、ある日、ふらりと屋敷に戻ってきて連れてきた妻子。当然、その存在は公に認められるものではなかった。半ば軟禁される形でのお屋敷暮らし。そんな奥様の境遇は、あたしと似ていた。たまたま家令の娘として生まれてずっと息が詰まるような暮らしを強いられてきたあたしはようやく、同じ立場の存在と出会えた。仲間意識を持った。
そんなかけがえのない奥様が亡くなってしまったからあたしは喪失感を抱いているのだ。

「でもさ、よーく考えてみなよ? まだ居るじゃないか。君と同じく、喪失感に打ちひしがれている子供がさ。その子のほうがよっぽど気の毒だと、僕は思うよ。そうじゃない?」

言われて胸が押しつぶされそうになる。奥様が遺したお嬢様。葬儀のあと、口をきかなくなって、笑うこともなくなった。可哀想だ。
102 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/11(月) 21:49:35.00 ID:p7bl7o/ZO
「君は今、自分のことで精一杯なんだろう。でもいずれ、その子を放って置けなくなる。旦那さんと一緒に、奥さんの面影が残るその子を育てることこそが、建設的じゃない?」

たしかにお嬢様は奥様に似ていた。というかあの子は奥様の真似をするのが好きだった。
子供が誰かを真似て成長するのは自然なことだ。なら、これからはあたしが、あの子の手本として導いてあげよう。尊敬なんかされなくたっていい。もっと気楽に、友達感覚で。
そう。今まさにこいつに唆されてるように。
そうやってあの屋敷の中で仲間を作るんだ。
あの子が成長して、恋をして、恋バナをするようになったら、あたしは缶ビールを片手に聞いてあげよう。親身にではなく、気楽に。
そんな未来を想像するだけで楽しくなった。

「ほーら、もう寂しくないだろう?」
「うん……もう寂しくない」
「君のそういうワクワクした顔や、キラキラ輝く瞳を見てると、昔、君に殴られた頬がうずくんだ。ヒリヒリして、ズキズキ痛むよ」
「あたしも……暗くて、昏くて、どうしようもなく冥い気分になると、額の傷がうずく」
「あはっはっはっはっはぁー。かわいいね」

ゴシゴシと額を擦ると奴は笑った。恥ずい。
103 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/11(月) 21:50:24.62 ID:p7bl7o/ZO
「そろそろ目的地だよ」
「どこに向かってんだ?」
「とっても良いところさ」

まさかホテルじゃないだろーな。でもあたしはまだ高校生だし。葬儀の後で制服だし。そもそも喪中だし。今日の下着は自信ないし。

「はい、美容室に到着」
「はあ? なんで美容室なんだよ」
「バッサリ髪を切ると、吹っ切れるからね」

知ったようなことを。でもまあ、悪くないかも知れない。そう言えば、髪を切りたい気分だった。シートベルトを外して、乗るのも降りるの大変な車から出る間際に、囁かれた。

「そう言えば、随分胸が大きくなったね?」
「う、うっせ!!」

バタンッ!と思いっきりドアを閉めて、美容室で髪を切った。鏡で向き合う自分の顔が赤くて恥ずかしい。だけどそのおかげか、大人っぽくなれた気がする。胸だってそれなりにあるし、あたしは大人だ。その後、戻ると。

「あのヤロー……待ってろっての……もぉ」

やたら低い車は消えていて、肩を落とすあたしを嘲笑う、あの男の耳障りな哄笑の残響だけがその場に残っていて、額の傷が疼いた。


【どっとハレルヤ 17話】


FIN
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/11(月) 22:23:56.96 ID:tf0xh0IPO
タイトルの時点でやるとは思ったけど
聖書と神話の違いを全く理解してないよなこのバカ
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/11(月) 23:55:14.85 ID:pezVIZ7C0
普通は少し調べてから書くもんなんだがな
第一そんな適当なものを衆目に晒すのが恥ずかしくならんのかな?
「自分はろくに勉強もしてないバカです」と自己紹介してるようなもんだぞ
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/12(火) 21:07:08.65 ID:SLbSZTgn0
これが欲求不満の真っ盛りで常識のない中坊が書いたものなら「イタタタタ」で済むんだけどねぇ…
言い回しのクドさから手遅れな加齢臭が漂ってきとるからなぁ
107 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/12(火) 21:38:49.36 ID:1wMBIVbSO
undefined
108 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/12(火) 21:41:11.64 ID:1wMBIVbSO
「遅い!」
「……うっす」

掛け持ちしてる高級クラブへ出勤する際に、眷属が遅刻した。ご主人様の送迎は眷属の仕事なのに、たるんでる。マンションの前に停まったやたら低くて乗り心地の悪いスポーツカーのドアを開けて、喝を入れてやった瞬間に、車内に充満したメスガキ臭に悶絶した。

「クッサ!? メスガキクサッ!!」
「あー……やっぱわかりますか?」
「何考えてんのよ!? 消臭しろこのアホ!」

メスガキ臭が目に染みて涙目のあたしを見てヘラヘラしてる眷属にブチギレた。鞄から香水を取り出して助手席にふりかける。タクシーで出勤しようかと思ったけどこのアホ眷属に臭いの元を問いたださなければならない。

「あんたまさか女子高生でもナンパしてきたんじゃないでしょーね!? 説明しなさい!」
「まあ、女子高生は女子高生ですけど……」
「やっぱりそうか!? お前はいつかやると思ってた!! 山に埋めてないでしょーね!?」
「落ち着いてくださいよ……女子高生は女子高生でも、相手はあの正義の使徒ですから」

正義の使徒。そんな、まさか。ありえない。
109 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/12(火) 21:41:54.44 ID:1wMBIVbSO
「正義の使徒が、こんな発情したメスネコみたいな臭いするわけないでしょーがぁ!!」
「そんなの知らないっすよ……はい、ちゃんとシートベルトつけてね。出発しますから」

喚くあたしをよそに眷属は身を乗り出してシートベルトをかけて、悪びれもせずに発進した。特に隠し事をしてる様子はなく、いつも通りの平常運転だ。ジト目で睨みつつ訊く。

「正義の使徒が座っていたわりには、お尻がピリピリしないけど……どういうことよ?」
「あー今日は"曇って"ましたからね」
「なによそれ。詳しく説明しなさい」
「いやー、じつはかくかくしかじかで……」

その説明を受けてようやく納得した。けど。

「だからって発情してんのおかしくない?」
「たぶん、正義の使徒もお年頃なんですよ」
「あたしは絶対、あんたの悪影響だと思う」
「まあ、よくわかんないですけど、もしもあの正義の使徒が僕と同級生だったらワンチャンあったかも知れませんね。あっはっはっ」

冗談のつもりかも知れないけど、あたしは思わず想像してしまう。もしかしたら、この暗い、昏い、冥い、夜の世界よりも、この眷属なら明るい世界を満喫出来たかも知れない。
110 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/12(火) 21:42:49.46 ID:1wMBIVbSO
「……後悔してるの?」
「はい?」
「あたしの眷属になったこと……」
「え。いやいや、なんですか急に」

キッと路肩に停まって、こちらを見つめる。

「いつ誰がそんなことを言ったんですか?」
「だって、正義の使徒と良い感じだし……」
「あのね、僕のご主人様……僕の目を見て」

イジイジするあたしの手を取ってこう語る。

「僕は眷属になったことを後悔してません。これからもあなたのためだけに尽くします」
「そ、そう……それなら、まあ……いいけど」

だめだ。嬉しさが抑えきれない。好き好き。

「……ご主人様。僕は今回の件で気づいたというか、そろそろ認めざるを得ないと思うんですけど……答えて貰ってもいいですか?」
「えっ!? そ、そんな急に!? ちょ、ちょっと待って……あたしにも、心の準備が……!」

カッチカッチと鳴るハザードランプの音と共に鼓動が跳ねる。とうとう気づかれてしまったか。認めざるを得ないか。あたしの想い。

「どうもこの流れ……運命の女神様の一人勝ちなんじゃないですか? どう思いますか?」
「そっちかー……」
「え? ご主人様もそう思いませんか?」

ダメだこの眷属。いや、期待したあたしがバカだった。切り替えよう。運命の女神の一人勝ちか。なるほど。たしかに言い得て妙だ。
111 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/12(火) 21:43:30.17 ID:1wMBIVbSO
「あんたの言う通り、主観的に見たらそうなるでしょうね。まるで全てが運命に従っているように見える。運命の使徒の奥さんが亡くなったことも含めて、全てが運命の女神の手のひらの上の出来事。その認識に間違いはないわ。運命は主観で見ると絶対的に感じる。でも、実際のところ運命というのは選択の連続だから、こうならなかった可能性もある」
「ええ。奥さんがこっち側に来て、悪党になれば長生き出来たって理屈はなんとなくわかります。旦那が聖人、使用人が正義の使徒じゃあ、僕だって息が詰まって早死にするでしょうから。たとえヴァンパイアの眷属じゃなくたって、潜在的な悪と嫌でも向き合わされる毎日なんて地獄です。もともと身体が弱くて長生き出来なかったのは間違いないでしょうけど、僕らと一緒に居れば、もう少し伸び伸びと、延命出来た筈です。ですけど……」
「それを本人が望まないなら意味がない。どれだけ悪魔が囁こうとも、手を差し伸べようとも彼女の運命は彼女にしか決められない。主観的に見れば、やはりどうしようもない」

どうやら正義の使徒は悔いていたらしいが、眷属はそのあたりを割り切っている。その見解には異論はないけど捉え方は間違ってる。

「運命の女神はね、もっと強かなやつよ」
「なんすかそれ。どういう意味ですか?」
「奥さんを救うために、運命の使徒は善処した筈。それこそ、画期的な医療技術を開発したでしょうね。そうじゃなくたって、運命の使徒の閃きは脅威だし。どうしたって思いつけないようなアイディアをある日突然、思いついてしまう。この感覚を想像するのは難しいかもね。決して良いことばかりじゃない」

世のため人のため、そして愛する奥さんのために様々な技術や発明を生み出したのに、何故全て無意味な石積みになるのか。それは。

「便利なスマホを使って愛する人と連絡を取り合う一方で、誹謗中傷が飛び交う。便利な車で愛する人に会いに行く一方で、交通事故が発生する。だから運命の使徒が生み出す全ては、結局、無意味な石積みでしかないの」

それで救われた人よりも、犠牲になったり傷つく人のほうが遥かに多い。運命の使徒は、そうした虚しさを背負って生きていくのだ。
112 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/12(火) 21:44:07.36 ID:1wMBIVbSO
undefined
113 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/12(火) 21:45:21.09 ID:1wMBIVbSO
「その辺はわかってます。だから僕は死んでもあんな生き方はごめんだって思ってます。僕が言いたいのはそんなことじゃなくて、そうしたデメリット以上に致命的な問題です」
「もちろんわかってる。あんたが言いたいのはこういうことでしょ? このままだと救世主は誕生しない。その理由は何故かわかる?」
「この国が発展しすぎて、敵がいないから」
「その通りよ。さすがは、あたしの眷属ね」

せっかく褒めたのに、眷属は浮かない表情。

「ねえ、僕のご主人様」
「なによ、そんな顔をして」
「ご主人様は救世主に憧れてるんでしょ?」

たしかに以前そんな話をしたことがあった。
114 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/12(火) 21:45:53.41 ID:1wMBIVbSO
「大きな戦争が発生しない、暗い、昏い、冥い、この平和な世界で、もしも救世主がいるんだとしたらそれは運命の使徒に他ならないと僕は思う。コツコツと石を積んできたあいつに、僕のヴァンパイアが憧れ、惚れてしまうんだとしたら、とてもとても悲しい……」

しょぼくれて俯いた眷属の額を中指で弾く。

「そんなことあるわけないでしょ。たとえこの世界の救世主が運命の使徒だとしても、あたしの眷属にしたいとは思わない。それはもちろん正義の使徒にも言える。あんたが救世主じゃなくたって関係ない。何度も言わせないで。あたしがあんたを眷属に選んだんだから、もっと自信を持ちなさい。わかった?」
「……うっす!」

眷属の暗い、昏い、冥い、澱んだ瞳に映るあたしは、どういうわけか必死に彼を励まそうとしていて、思わず笑ってしまう。救世主なんかよりも、目の前の眷属のほうがよっぽど魅力的で、手放したくない。天界で現状に満足しているであろう運命の女神にはわからないだろう。下界で人間に恋する気分なんて。

「ああそう言えば、これ、本人にも思わず言っちゃったんですけど……正義の使徒の胸がデカいのはどうしてなんですかね? もしかして、正義の女神様も胸がデカいんですか?」
「どうでもいいでしょそんなこと!? さっさと車出してよ!! 遅刻するでしょーが!!」
「うっすうっす」

脳みその栄養が全部胸にいったようなあんな単細胞バカ乳女神のことなんか知らん。知ってても教えるつもりはなんてない。眷属は眷属らしく、そのあたりに興味持つなよアホ。


【どっとハレルヤ 18話】


FIN
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/12(火) 22:11:25.79 ID:kPp76dCV0
18歳未満がプレイすることを禁じられているエロゲを16歳と明言させたキャラに平然とやらせるような展開とか
そこからどんな持論や主張述べようが「うるせーよ最低限のルールやマナーも知らない池沼」ってなるだけだと理解しろよ負け組
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/12(火) 23:00:17.82 ID:/Pr+S+jNO
ルール以前に社会の常識ないからな
今までどんな世界で生きてきたのか心配になるレベル
117 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/13(水) 21:08:46.27 ID:hsvBzJkXO
「たらいま〜」
「うっす」

夜遅く、日を跨いでから2人が帰ってきた。
酔っ払ってへべれけのご主人様を半ば担ぐようにして帰宅した眷属。彼のご主人様はお酒が大好きだけど、決して、酔うことはない。
酔っ払ったふりをして、甘えているだけだ。

「靴、脱がせて〜」
「うっす……さて、今日はどんな具合かな」
「ふふん。今日の足の匂いはどう?」
「正直、メスガキより強烈っすね」
「あはっはぁ! 負けてらんないもんね〜!」
「あっはぁーはははっはっはぁーははっ!」

あたしは何を見せつけられているのだろう。
この倒錯した主従関係にご満悦なご主人様は完全にこの眷属に感覚を狂わされていた。足の匂いを嗅がせることへの恥じらいはもうないようだ。まったく。はしたないなぁもう。

「いつまで嗅いでんのよ、この変態眷属!」
「あ、スマ子。起きてたのか……ただいま」
「お帰りなさい。今日は随分遅かったわね」
「うっす」
「疲れてるみたいだけど……何かあった?」
「大丈夫。ご主人様を寝かしつけてくるよ」
「あたしは夜の王だぞ〜寝かせないぞ〜!」
「はいはい。そろそろ吸血の時間ですねー」

珍しく疲れた顔をしている眷属くんの様子を伺うも、気丈に振舞ってご主人様を抱えて寝室へと向かった。たっぷり30分ほどしてからリビングに戻ってきて、正義の使徒と遭遇したことや運命の女神について話してくれた。
118 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/13(水) 21:09:45.67 ID:hsvBzJkXO
「というわけで運命の女神の一人勝ちだよ」
「そうとも言い切れないんじゃないの? なにせ、あの人があれだけご満悦なわけだから、きっとこちらにも利があった筈よ。あんたの影響で正義の使徒はだいぶ様変わりしてるみたいだし、それに"あの子"の件も間違いなく運命の女神の思惑通りではないでしょうし」
「あー……"あの子"は今日、どうしてた?」
「今はもう眠ってる。子供のお世話なんて、最初はどうなることかと思ったけど、もう慣れたもんよ。あんたと遊びたがってるわよ」
「うーむ……それにしても今更、あんなに歳の離れた弟が出来るなんて思わなかったよ」

この数年で、別れと新たな出会いがあった。
もう何度聞いたかわからないその嘆きの原因は白いのにある。同居人であった彼女は眷属くんの父親と関係を持ち、妊娠した。そして子供を産んですぐに消滅した。眷属くんのご両親を道連れに。もうあの白いのはいない。
その代わりに小さな同居人が誕生したのだ。

「スマ子が面倒を見てくれて、助かってる」
「ふん。別にいいわよ。嫌じゃないし……」

あたしとあの白いのは、あの人の血肉から生み出された存在だ。創造の際に、あたしは運命の女神を模して、そしてあの白いのは慈愛の女神を模して生み出された。スマホを通じて他者の運命を弄ぶあたしと、パパ活を通じて万人に愛される博愛主義の白いの。その性質は、本物の女神よりも醜悪で歪んでいる。
白いのは魅了されない眷属くんの代わりに父親に手を出し、その子供を産むことで役目を全うしたらしい。満ち足りて、成し遂げた。そうして、すっかりその存在感を失って、抜け殻になったあと、堪忍袋の緒が切れた慈愛の女神の天罰によって、消滅したのである。
逆鱗に触れるほどに、この暗い、昏い、冥い世界においても許されざる冒涜だったのだ。
119 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/13(水) 21:10:28.12 ID:hsvBzJkXO

「それにしてもまだ愛情が残っていたとは、最後までよくわからない両親だったよ……」
「夫婦って、そんなものなんじゃないの?」
「そう言われると納得するしかないけどさ」

眷属くんのご両親は、すっかり冷めていたように見えてそうでもなかった。今回は父親が浮気相手を孕ませたことによって、母親が激怒して、破滅した。しかし恐らく、もしも立場が逆であったとしても、父親が激怒して破滅したと思う。最後の一線だったのだろう。
お互いの命を奪い合って一緒に死ぬくらい、そこだけは超えていけない一線だったのだ。

「頼みもしないのに遺産だけはあんなに遺すんだもんな。生まれてこのかた、あの親たちからはお詫びの金しか受け取っていないよ」

眷属くんは心中した両親の葬儀の際にも淡々としていた。莫大な遺産を喜ぶわけでもなく相続したあとも変わらず生活している。だけどあたしは知っている。眷属くんなりに思うところはあったのだろう。でなければ、物欲のない彼が、あんなやたらと低い、真っ白なスポーツカーなんてわざわざ買うわけない。
良い機会だからそれについて訊いてみよう。
120 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/13(水) 21:11:35.05 ID:hsvBzJkXO

「あの車には、どんな思い入れがあるの?」
「昔、父親が乗ってたんだよ。まあ、浮気相手を乗せるために買ったんだろうけどさ。それでも、今になっても、良い車だと思うよ」

眷属くんはまるで冗談みたいにそう語っているけど、あたしは悲しくなった。車の色が白い理由に関しては聞かなくともわかる。哀しかったのであたしは眷属くんを抱きしめた。

「あ。いま抱かれて気づいたんだけど……」
「ん? なによ突然、どうしたの?」
「正義の使徒、お前よりも胸がデカかった」
「はあっ!? それ、いま言うこと!?」

この男。ひとの胸の中で他の女の胸と比べやがった。やはり血は争えない。浮気性の両親の性癖を受け継いでいる。こんなやつに子育てなんて無理だ。そうでなくとも"あの子"は白いのと同じく可愛らしい。もう男の子か女の子かわかんないくらい可憐で、かわいい。

「あんたもあの子の父親役としての自覚を持ちなさい! 懐かれてんだから! あの子に悪影響を与えたらあたしが許さないからね!?」
「……うっす」

まずはご主人様の足の匂いを嗅ぐのをやめさせないと。あの子が真似したら困る。まあ、あたしの足なら……って、いけないいけない。
天罰が下らないように、子育てに勤しもう。


【どっとハレルヤ 19話】


FIN
121 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/14(木) 21:03:51.98 ID:nvUlkyHhO
「さあ、立って。早く逃げるんだ」

僕の家庭環境は変わっている。パパは実は僕のお兄ちゃんで、ママは実は僕の叔母さんみたいなもので、そしてパパには何故かご主人様がいて、僕は男子なのに女装をして小学校に通っている。そのせいなのかは定かではないけれど、何事にも動じない精神力が身についたらしく、どうにも小学校低学年のノリにはついていけなかった。騒がしい同級生を冷めた目で観察していると、自分の背後がやたら静かなことに気づいて振り返る。するとそこには澄んだ瞳でこちらを見つめる美人さんが座っていて、挨拶がてら声をかけてみるも無反応だった。ただ興味深そうにこちらを見つめるだけで、何も言わない。その青い瞳を見るからに外国人のようなので、もしかしたら言葉が通じないのかも知れないと思い、無視されたわけではないと自己完結した。簡単すぎて退屈な授業を聞き流しているうちに放課後となり、校門付近でパパの迎えを待っていると、後ろの席のあの子が僕の前を通り過ぎて、こちらに向けて微笑みながらひらひらと片手を振っていた。僕も手を振って応じると次の瞬間、路肩に停車した真っ黒なバンの扉が開いてその子が攫われかけた。いきなり腕を引かれて転んでしまった彼女をなんとか車に乗せようとする誘拐犯を観察していると目が合い、用意していた札束を出してみせるとターゲットは無事、僕へと移った。膝が擦りむけて赤くなっている後ろの席の女の子に逃げるように告げてから、僕は真っ黒いバンに自分から乗り込んだ。以上、回想終わり。
122 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/14(木) 21:04:57.97 ID:nvUlkyHhO
「チッ。全然、進まねえ……何してやがる」

僕が普段から持ち歩いている大金を受け取っても誘拐を続行したということは人身売買が目的なのだろう。中央大陸では未だに奴隷制度が残っている国が存在している。車もしばらくは国境に向かって走っていたのだけど、スクランブル交差点付近で渋滞にはまってしまった。一向に進まない苛つきから、誘拐犯が懐からタバコを取り出して火をつけた。そうしていると、少しずつ進み始めた。どうやら前に並ぶ車がUターンして引き返しているらしい。かなり前に進んで原因が判明した。

「ああん? エンストか? なんつーところで停まってやがる。ふざけんな! 早くどけろ!」

男が悪態を吐きながらクラクションを鳴らすも車道を塞ぐ車は動かない。ドアが開き、見覚えのあるその白いスポーツカーから降りてきた優男は、紛れもなく僕のパパであり、誘拐犯が丁度タバコを吸い終わるタイミングだったので全てを察した僕は後部座席でシートベルトを閉めて、衝撃に備えることにした。

「なんだ、あの野郎……ぶっ飛ばしてやる」

ニヤニヤしながらこちらにやってくるパパに業を煮やした誘拐犯が車から降りて、吸い終わったタバコを足元へと捨てる。その吸い殻は転がって、あらかじめパパがズラしていたマンホールの中へとホールインワン。充満していた可燃性ガスに引火して、周辺一帯の地面が捲り上がった。見事、僕が乗っている黒いバンは誘拐犯を下敷きにして、横転した。

「はっ! はっはぁー! あはっはははぁっ!」

横倒しになった車内に響き渡る悲鳴と絶叫とそしてパパの笑い声。倒れたバン飛び乗って何度かジャンプしているようだ。ひとしきり蹂躙して満足したのか、ひょこっと窓からこちらの様子を伺いつつ手を差し伸べてくる。
123 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/14(木) 21:06:18.58 ID:nvUlkyHhO
「さあ、そろそろ帰ろうか」
「うん。待ちくたびれたよ」

割れたガラスで怪我をしないように気をつけながら脱出して、エンストなんかしてなかったパパの車に乗って僕は帰路についた。車内でパパは学校でのことについて訊いてきた。

「学校、どうだった?」
「退屈だったけど、帰り道は楽しかったよ」
「いやー誘拐されたってママに知らされてからあのスクランブル交差点でエンストしたふりをして待ってたんだけどさ、どいつもこいつも助けようともしないんだよね。仕舞いには怒りだす始末だし。Uターンした奴らは許してやるけど、スマホいじったり鬼クラクションを鳴らしてきやがった連中は良い気味だね。そもそもマンホールに可燃性ガスを検知する仕組みが備わっていないことが大問題なわけで、改善する機会を作ってやったことを感謝して欲しいくらいだよ。まったくもう」

文句を言ってるように見えて、パパはまったく怒っていない。僕はパパが怒っているところを見たことない。ママやご主人様はしょっちゅう怒っているけど、パパはあらゆる出来事を受け入れた上で笑い飛ばす。そうして、この暗い、昏い、冥い世界を謳歌している。

「ねえ、パパ」
「ん? どした? てかパパじゃないし。パパって呼ばれるとパパ活みたいで嫌なんだけど」
「助けに来てくれてありがとう。すっごくかっこよかったよ。僕、お兄ちゃんが大好き」
「うっす!」

僕のパパは変わっていて、実はお兄ちゃんで悪党だけど、そこらのチンピラや誘拐犯なんかよりはずっとずっと魅力的で素敵な人だ。


【どっとハレルヤ 19話】


FIN
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2024/03/14(木) 21:48:28.94 ID:8TnisFm80
目下の相手を聞き手に回して30秒以上喋り続ける池沼とか
想像するだけで痛々しいしゾッとする
スカトロマンが普段他人と会話していないことがホンマ良く分かるわ
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/14(木) 22:25:52.39 ID:2EVrubRL0
>>28あたりを読んでみなよ
万引き犯見つけては口止めに金もらってるとか、両親の不倫の口止めに両親から金もらってるとか
それを札束にしてポケットに入れて持ち歩いてるとか
強盗をやりそうな人を見つけてはその金をあげているとかさぁ…
おっさんらしいけど、まともな社会人じゃないよコイツ
たぶん隔離施設みたいなところでエロゲーばっかやって暮らしてる特殊な人
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/15(金) 04:36:57.35 ID:vn4pDGcp0
こういうこじらせた中年の童貞にありがちな
女は簡単に落ちるチョロい生き物みたいな歪んだ価値観も実に痛々しい
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/15(金) 13:08:36.62 ID:/JPFUE/AO
>>129
やってる内容が犯罪まみれで正義マンそのものなのに
直後に身内がそれをスルーして正義マンについて語り出す池沼ムーブ凄いわ
自分が正しいと思い込んでる三流の小悪党を作り出す能力だけはあるのかもな
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/15(金) 13:12:02.99 ID:/JPFUE/AO
>>127
安価ミス。>>129>>125の間違い
129 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/15(金) 21:19:28.35 ID:+H5Yy4WcO
「もうどうしたらいいかわからなくて……」
「お気持ちお察し致します。どうぞご安心してお任せください。全て上手くいきますよ」

闇の眷属の朝は早い。とはいえ、眷属になってからほとんど寝ていないのだけど。おもむろに台所に立ったご主人様であるヴァンパイアが昨晩作り置きしてくれたエビチリとトマトのサラダを小さなお弁当に詰める。余ったぶんは朝食にするために皿に盛り付けた。準備が出来たらノックもせずに同居人であるスマ子の部屋に入って、布団を剥ぎ取る。すると小さな児童を抱き枕にして半裸で寝ているスマ子が飛び起きた。自分の寝相の悪さを棚に上げてギャーギャー喚くスマ子を無視しつつ、抱き枕にされた児童に朝ごはんを食べさせて、食べている間に白と黒のツートンの髪の毛をとかし、おさげにしてあげる。ヘアメイクを終えて「今日もかわいい」と眷属が言うと、モノクロな児童は嬉しそうと微笑みを返した。その後、顔を洗わせ歯を磨かせたらスマ子がお洒落な子供服を着せて、小学校へと車で送り届ける。眷属はそのまま今日の仕事場である閑静な住宅街に佇むとある一軒家へと赴き、疲れた顔をしたその家の夫人から話を聞いて、仕事に取り掛かる。保健所から業務委託の要請を受けた眷属は『正義マン』の駆除に勤しみ今日も社会貢献をしていた。
130 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/15(金) 21:20:52.87 ID:+H5Yy4WcO
「危険ですから、商店街の入り口にある喫茶店でお待ちください。すぐ終わりますから」
「はい……どうか、よろしくお願いします」

『正義マン』は基本的に引きこもりが多い。
自立せずに大人になった大きな子供ばかり。
自分で勝手に作り上げた価値観を他人に押し付ける精神疾患を抱えているため、社会に適合出来ないのだ。この暗い、昏い、冥い世界の汚さやルールを理解出来ない彼らは、ヒキニートになって自分の親にまで迷惑をかけて生きている。試算によると、『正義マン』1匹あたりの経済的損失額は最低1億円。大学まで通わせた『正義マン』の損失額はさらに大きなものになる。つまり、『正義マン』を100匹駆除するだけで100億以上の経済効果が得られるのである。それが判明してから、各地方自治体はこぞって駆除に乗り出した。
131 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/15(金) 21:22:09.25 ID:+H5Yy4WcO
「さて、まずはブレーカーを落としてっと」

眷属は素人ではない。玄人であり、正義マンを駆除する名人である。プロフェッショナルの彼はまず、家のブレーカーを落とした。すると2階から豚のような鳴き声と、床をドンドン叩く音がし始める。それらに一切反応せずに放置していると、肥えた大きな子供が転がるように階段を降りてきて、ブレーカーを探し始める。もちろんヒキニートは自分の家のブレーカーの位置なんて知らないので、時間がかかる。その間に正義マンの部屋を家宅捜索して、スマホやタブレットを押収し、重量のあるデスクトップPCなどにはあらかじめコップに汲んでおいたお水をたっぷりとかけておく。そのまま待機して、正義マンがブレーカーを発見したら窓から脱出して、発見出来ずに諦めるようなクズの場合は、仕方なくブレーカーを上げてやる。電気が戻ってすぐに正義マンはスマホがないことに気づき、パソコンの電源を入れる。水浸しのPCは火花を散らしてショートして、豚の断末魔が閑静な住宅街へと響き渡り、眷属は哄笑した。

「はぁーははっはっ! あっははっははっ!」

こうして、また1匹正義マンを駆除した。仕事の完了を喫茶店に待つ夫人に伝えると、泣いて喜ばれた。夫人の辛さを汲み取り、しばらく落ち着くのを待ってから店を出て、押収したスマホとタブレットを鑑識へと回して余罪がないか調べる。だいたいの正義マンは叩くと埃だらけなので犯罪者として裁かれる。
裁かれて初めて、自分の正義の嘘に気づく。
潔白は幻想。自らの罪深さに懺悔するのだ。
132 : ◆dudxOFJ8aA [saga]:2024/03/15(金) 21:22:42.88 ID:+H5Yy4WcO
「ただいまー」
「お帰りなさい。今日もお疲れ様」
「うっす」

そうして本日の社会貢献を終えた眷属は帰り道にモノクロの小学生の迎えに行き、棲家である摩天楼の最上階へと帰還する。心地よい疲労と満足感に浸りながら、再び夜通し正義マンを煽り、新たなターゲットを探す日々。
まるで刈っても刈っても増える雑草を毟っているようだが、この世界は基本的に無意味なことで占められているので徒労感は少ない。

「スマ子」
「ん? なに?」
「疲れた夫人ってなんで色っぽいのかな?」
「知るか、そんなこと!」

たまに連絡先を渡してくる欲求不満な夫人もいらっしゃるので、そんな時は飢えた性獣どもを掲示板で募ってカップリングさせる。適材適所で性犯罪も減る。この暗くて、昏い、冥すぎる世界で眷属は社会に貢献している。


【どっとハレルヤ 21話】


FIN
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2024/03/15(金) 22:09:30.67 ID:k8LDyVrvO
1円にもならないうんこを量産している奴がなーに言ってだ(笑)
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/15(金) 22:23:24.36 ID:AHXqT2gn0
たぶんこのバカはもう自分は出来上がってると思ってるんだよね
だから作品の質を改善しようとか工夫しようとか考えていない
ただこの怪文書を投下したって事実だけがプライドなんだよ

かと言って1年も2年も投下を毎日続けるような根気もないんだよな
そういう意味ではキチガイとしても中途半端
134.29 KB Speed:2   VIP Service SS速報VIP 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)