斉木(『コロシアイ学園生活を阻止する』)苗木「お待たせ、3スレ目だよ!」

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44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/08/08(木) 11:26:46.25 ID:N/Kk6WTVO
おつおつ
復活してくれて嬉しい!
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/08/12(月) 01:02:38.67 ID:YqQRoliP0
2の時はリアタイしておらず、もう10年も経っているので諦めるべきだと思いながら未練タラタラ見ていたので嬉しいです。帰ってきてくれてありがとうございます。おかえりなさい
46 : ◆Ic.LE96SVyFn [sage saga]:2024/08/21(水) 12:15:41.48 ID:JUyQpDtKO
次回投下の目処が立ったのでお知らせします。
8/28(水)23時頃から投下予定です。自由行動安価はありません。

コメントレスありがとうございます。
2スレ目のDAT落ち後にこのSSを知ってくださった方もいて嬉しさと申し訳なさが綯い交ぜになっています……
47 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/08/28(水) 22:09:31.63 ID:Heudxk+Jo
【前回のあらすじ】
…黙秘権



葉隠「俺の占いによると、奥の用具入れに秘密の部屋への入口があるって出てるべ!」

桑田「秘密の部屋への入口ねぇー……」ガチャ

桑田「パッと見フツーの掃除用具しか無いけどマジで部屋なんてあんのか?」

苗木(霧切さんからも用具入れの壁を調べるように言われたよ。葉隠クンの占い、本当に当たったんだね)

斉木(ふむ、どうやらここの壁は押すと回転するどんでん返しになっているらしい……)スゥゥゥ

斉木(透視すると奥に薄暗い部屋が見えるな。本棚と机が置いてある)

桑田「ん? なんかここの壁に中途半端な切れ目があるぞ!」

苗木「も、もしかしてそこに隠し部屋への入口があるんじゃないかな(棒)!?」

桑田「オッシャ任せろ! 桑田ズミラクルモップロッドプーッシュ!!」グイッ

斉木(ダサい技名を叫ばなくても壁は回転する)
48 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/08/28(水) 22:12:37.37 ID:Heudxk+Jo
桑田「コ、コイツは……!!」

葉隠「忍者屋敷みてーに隠し通路が出てきたべ!」

苗木「葉隠クンが占いで言った通りだ(棒)! この先に隠し部屋があるんだよ(棒)!」

斉木(いい加減棒演技やめろ)

桑田「ぶっちゃけ半信半疑だったぜ。こんなトコに隠し部屋なんざ作っても便所臭くなるだけじゃね?」ズイッ

葉隠「ちょっとタンマだべ!! 桑田っち本当にそこに入るんか!?」

桑田「だって中に何があんのか入ってみねーとわかんねーだろうが」

葉隠「止めた方が身のためだべ! その先には宇宙人を捕らえるために用意された靴が左足だけ大量に蓄えられてるって!」

桑田「んじゃ靴以外のモンが見つかるってことだな! 流石に葉隠の占いも2連チャンで的中しねーだろ!」ズカズカ

斉木(桑田にしては頭が回るじゃないか)スタスタ

苗木「えーと……ボクも行くね!」スタスタ

葉隠「待ってくれぇー!!」ダッ
49 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/08/28(水) 22:16:09.49 ID:Heudxk+Jo
【男子トイレ・隠し部屋】

桑田「……なんか殺風景っつーか、変なカンジの部屋だな」

苗木「そうか、この部屋には監視カメラやモニターが無いんだ!」

斉木(つまり黒幕はこの部屋を監視の対象外にしているということか。それにしては……)

黒幕(あーあ……残姉が使えないんだったらアタシが直接出向くしかないのかなー……)

斉木(……黒幕の心の声は妙にこちらを意識していることが気掛かりだな)

葉隠「なぁ、早く帰んねーか? こんな場所には長居しない方がいいべ……」

苗木「そうだね。必要最低限のことを調べたらすぐに帰ろう」

苗木(というわけで斉木クン、サイコメトリーの準備よろしく!)

斉木(軽々しく言うな)ペリペリ
50 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/08/28(水) 22:19:14.49 ID:Heudxk+Jo
葉隠「苗木っち、なんだその本?」

苗木「“希望ヶ峰学園在校生名簿”って書いてあるね。もしかしたら何か手掛かりが掴めるかも」

桑田「んなモン見てどうすんだよ? 何年か前の名簿だったら意味ねーだろうが」

苗木「それでも目は通しておきたいんだ。もしかしたら、黒幕への手掛かりになるかもしれないし」パラパラ

斉木(? 苗木が本を開いた拍子に隙間から紙切れが滑り落ちたぞ――)ピリッ

――――――――――

???『……事件の影響がどこまで及ぶか判らない以上、私の部屋だけでは不十分だ』

???『念のためここにもメッセージを残しておこう。全ては彼らを……そして、響子を護るためだ……!』

――――――――――

斉木(…………………………)

斉木(今のは……紙切れに対してサイコメトリーが発動したのか)

斉木(他にも製紙工場の光景や備品置き場に紙を補充する様子が見えたが、SSという媒体の都合上描写は割愛させていただいた)

斉木(在校生名簿にこれを挟んでいた男性は、あの口振りから察するに……)

葉隠「のわあぁぁぁぁぁっ!!」バタン
51 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/08/28(水) 22:22:27.27 ID:Heudxk+Jo
斉木(やれやれ、また葉隠か。少しはサイコメトリーの考察に集中させてくれ――)

苗木「葉隠クン!? どうしたの葉隠クン!!」

桑田「……オイ苗木、アイツ誰だ?」

苗木「え、誰って――」

桑田「オレら以外の野郎がトイレ使いに来た……ってワケじゃねーよな?」

斉木(桑田の視線の先を向くと、隠し部屋の入口を塞ぐようにして何者かが佇んでいた)

斉木(体型を隠すようなオーバーサイズの白衣に、プロレスラーを思わせる黒い覆面)

斉木(右手に握ったバールのようなものは、足元にくずおれている葉隠を殴るために使ったのだろう)

斉木(そして何より、一瞬で僕を不快にさせるほどの、純度の高い絶望に染まった心の声……)

覆面(ったく、結局アタシが正体隠して男子トイレに乗り込むことになっちまったじゃねーか! まぁこれはこれで絶望的だからいいけど!)

斉木(――下がれ苗木。あいつが黒幕だ)
52 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/08/28(水) 22:26:58.86 ID:Heudxk+Jo
苗木「黒幕!? コロシアイ学園生活の黒幕……!?」

桑田「は? まさかアイツがモノクマ操作したりオレらにコロシアイを強要したりゲンナマ100億用意したりしてんのかよ!?」

覆面「…………………………」

覆面(全部正解なんだけど一応モノクマだけは中に誰もいないってことで設定守りたいわー)

斉木(僕には最初からバレてるが)

桑田「なんとか言えよテメー! あと葉隠に何しやがった!!」

覆面(だって葉隠の行動を5分刻みで記録した葉隠日記作るの超大変だったんだもんっ!)

斉木(私怨で殴ったの?)

苗木「とにかく、手掛かりを持って早くここから逃げないと……」

桑田「逃げるも何も出口をアイツに塞がれてんだよアホ!」
53 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/08/28(水) 22:30:09.20 ID:Heudxk+Jo
斉木(まずいな。このまま苗木や桑田にも危害を加えられては、僕が黒幕と共謀していると誤解されるかもしれない)

斉木(人前なので目立った超能力は使えないが……)フォン

覆面「…………………………!?」

覆面(何これ金縛りみたいに指一本も動かせない!!)

桑田「その割にはアイツ、オレらに襲い掛かってこないでずっと突っ立ってるよな」

斉木(サイコキネシスで動きを封じ込めることならできそうだ)

斉木(苗木、今のうちに桑田と逃げろ。その間僕が黒幕の動きを封じておく……)

覆面(でも……この金縛りのような感覚は初めてではないね。これは確か僕っ娘魔)

斉木(すまんやっぱ無理だわ)パッ

苗木「なんで!?」
54 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/08/28(水) 22:34:06.79 ID:Heudxk+Jo
覆面「!!!!!」ダッ

桑田「危ねぇ! こっち来た!!」サッ

覆面(また金縛りが起こらないうちに、まずは苗木を殴って――)ブン

苗木「うわっ!」サッ

覆面(思ったよりすばしっこいじゃねーか苗木! つーかアタシが狙い外してるだけ!?)ブンブンッ

斉木(……今度は黒幕が苗木を殴る直前を見計らい、サイコキネシスでバールのようなものの軌道を逸らしているが……思ったより難しいな)

斉木(調整を間違えたら不二咲の時と同じ惨事になりかねない上、黒幕の心の声を聞いているだけで精神力がすり減っていく)

斉木(かといって派手な超能力でカタを付ければ、今度こそ黒幕が勘づいて僕の正体がバレてしまう。そうなれば……)

『うぷぷぷぷ! いやぁ、まさかボクへ会いに来てくれる僕っ娘魔法少女の正体が斉木くんだったとはね!』

『僕っ娘……もしかしてオレが前に1度だけ脱衣所で会ったノーブラトランクスD寄りCカップのアルエ系美少女か!?』

『どういうことだ斉木!! 愚民の分際でどうして俺に魔法少女であることを黙っていた!?』

『大丈夫だよ。どんな特殊性癖を抱えていても……ボクは、斉木クンの友達だから……』

斉木(……といった具合で、Chapter2も真っ青の社会的おしおきが始まってしまう)

斉木(とにかく……早くこの状況を打破しないと僕が消耗するだけだ……!)
55 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/08/28(水) 22:40:09.74 ID:Heudxk+Jo
桑田「コノヤロー!! 苗木から離れやがれ!!」ブンッ

覆面「――!!」カラン

斉木(――桑田が本棚の分厚い本を黒幕に投げて、その拍子に黒幕はバールのようなものを取り落とした)

桑田「苗木! 今のうちにとっとと逃げろ!」

苗木「でも桑田クンは――」

桑田「オレは後から葉隠おぶって追い掛ける! いいから早く!!」

斉木(桑田の死亡フラグも含めて僕がしっかり対処しておく、心配するな)

苗木「っ……ごめん!!」ダッ

桑田「つーかオメーも逃げろ斉木! 何ボサッとしてんだアホ!」

斉木(そうだな。形だけでも臨戦態勢の構えを取ろう)サッ

桑田「無茶すんな!! 斉木のじゃんけんパワーじゃソイツに勝てねーだろ!!」

斉木(いや……少々リスキーな手段だが、黒幕を完全に封じ込める方法を思い付いた。これなら勝ち目がありそうだ)
56 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/08/28(水) 22:44:08.09 ID:Heudxk+Jo
覆面「……………………」

斉木(黒幕がバールのようなものを拾って構え直し、僕を目掛けて振りかざした)

桑田「あーもう! 何やってんだ斉木のアホォ!!」ブンッ

斉木(桑田が投げた別の本が、黒幕に直撃するタイミングを見計らって――)

覆面「――――――――――!!」

斉木(一瞬だけ眼鏡を外す!!)スチャッ





桑田「……何だコレ? 何が起こったんだ?」

桑田「黒幕の動きががマネキンみてーに止まった……いや、マネキンっつーより石像か?」

斉木(――裸眼の僕と目が合った人間は、問答無用で24時間“石化”する)
57 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/08/28(水) 22:47:26.05 ID:Heudxk+Jo
斉木(この超能力の発動条件は僕が眼鏡を外すこと。僕さえ裸眼であれば、相手側は眼鏡だろうが覆面だろうが関係ない)

斉木(幸いここには監視カメラが無いから、石化する瞬間の映像は残らない。そして目撃者も)

桑田「これってまさか……オレが本をぶつけた瞬間に奇跡が起きて、黒幕を石像に変えた!?」

斉木(ご覧の通りのアホだから何も心配しなくていい)

桑田「ヤッベー!! 超ヤッベー!! オレってマキシマムスゲーじゃん!!」

葉隠「……ぅう、頭がギュンギュンするべ……何そんなに騒いでんだ桑田っち……」

斉木(そして葉隠も意識を取り戻した。当たり所が良かったのか、復元能力を使うまでもなかったようだな……)

桑田「なぁ聞いてくれよ葉隠!! オレはまた奇跡を起こしちまったぜ!!」

斉木(やっぱアホすぎて心配になってきた)
58 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/08/28(水) 22:51:48.71 ID:Heudxk+Jo
【校舎2階・廊下】

苗木「みんな! 無事だったんだね!!」

桑田「おう! オレのミラクル野球術でバッチリ返り討ちにしてやったぜ!」

斉木(ミラクル野球術ってなんだ)

葉隠「にしてもひでーぞ苗木っち! 俺を置いて1人で逃げるなんて薄情者だべ!」

桑田「アホか、苗木はオレが逃がしてやったんだよ! 大体オメーと一緒じゃ逃げ遅れてたに決まってんだろ!」

苗木「でもボクも黒幕と戦えそうな人を呼びに行ってたんだよ! 桑田クンたちを助けたくて!」

大神「本当に黒幕がお主らを襲撃したというのか……!!」

斉木(男子トイレに女子を呼ぶな)

大神「黒幕め……苗木たちに何と卑劣な行いを……!!」ゴゴゴゴゴゴ

桑田「まーまー落ち着けよ大神! オレが奇跡を起こして指一本動かせないくらいカチンコチンにしてやったからさ!」

葉隠「ぜってーありえねーべ! 俺はオカルトは信じねーぞ!」

苗木(斉木クンの超能力だと思うけどそっとしておこう……桑田クンも幸せそうだし)
59 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/08/28(水) 22:55:28.28 ID:Heudxk+Jo
葉隠「つーか俺を殴った奴って本当に黒幕だったのか? 背後から先制攻撃されたから何も見えなかったべ」

桑田「オレは……覆面野郎を見た苗木が黒幕だーって言ったから、てっきりオレもそうだと思い込んでたんだけど」

苗木「えーと……ボクは、斉木クンに『あいつが黒幕だ』って教えられて……」

桑田「斉木に教えられて? あの時斉木何か喋ってたか?」

苗木「こう……、斉木クンが、ボクを見据えてボディランゲージで伝えてくれたんだ!」

斉木(言い訳苦しすぎるだろ)

大神「斉木よ……お主は何故、その人物が黒幕だと見抜けたのだ……?」

斉木(冷静に考えてみれば、あの時の僕は謎の襲撃者を一目で黒幕だと言い当てたことになるのか)

斉木(参ったな……苗木たちを黒幕から守ったというのに、端から見れば怪しいことこの上ないじゃないか)
60 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/08/28(水) 22:58:33.61 ID:Heudxk+Jo
大神「……答えられぬなら、無理に答えずともよい」

大神「武道の鍛練を積んだ者は、相手が放つ覇気から人となりを識ることもできる。斉木もまた、黒幕と確信させる何かを読み取ったのであろう」

斉木(別に鍛練は積んでいないが話を合わせておくか)

葉隠「そうか! それが斉木っちにだけ読み取れる黒幕のじゃんけんオーラなんだな!」

斉木(オカルトならもっとマシなこじつけをしろ)

大神(うむ……これで良い。我は斉木と拳を交えた日に己の拳で判断したのだ)

大神(斉木は大きな秘密を抱えているが、悪しき道に外れるような真似はしない。黒幕に屈して手を貸すことも無かろう)

斉木(……1回手合わせに付き合っただけなのに、大神さんは随分と僕を過大評価してしまっているようだな)

斉木(僕はあの隠し部屋に行ったせいで……“空白の2年間”に何が起きたか、ますますわからなくなったというのに)
61 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/08/28(水) 23:01:37.62 ID:Heudxk+Jo
桑田「そういや苗木、隠し部屋で見てた本に何か書いてあったか?」

苗木「ううん……黒幕が来た騒ぎで全然読めなかったんだ。でも」ピラッ

苗木「あの名簿に挟んであった紙切れだけは持ち出せたよ!」

桑田「……何だコレ?」

大神「『ここから出てはいけない』……?」

葉隠「どういうことだ? モノクマ……っつーか黒幕は俺たちを外に出させたいからコロシアイなんて持ち掛けてくるんだろ?」

苗木「ボクにもわからないけど……もしかしたらモノクマとは無関係な、希望ヶ峰学園そのものの謎に関わる手掛かりかも」

大神「……この紙を挟んだ者は」

大神「コロシアイ学園生活の始まりを、なんとしても阻止したかったのかもしれぬ……」

斉木(……大神さんの推測は的中している。サイコメトリーで視えた男性は、藁をも縋るような悲痛な表情で紙を隠していた)

斉木(彼は希望ヶ峰学園の教職員……その上私室を持っているということは、恐らく学園内で最高レベルの役職に就いている人物)

斉木(言わば“学園長”だろう)
62 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/08/28(水) 23:04:41.91 ID:Heudxk+Jo
桑田「けどよ、この紙を挟んだヤツって今どこにいるんだろうな? ここから出るなって言えんのは1度はこの学園の外に行ったからだろ?」

葉隠「逆に外から来て今も学園内に隠れてる可能性だってあるべ! ここはひとつ俺が居場所を占ってやっか!」

桑田「いやゼッテー外れるだろ、さっき隠し部屋のこと当てちゃったし」

葉隠「ひでーぞ桑田っち!?」

苗木「……斉木クン、さっきから浮かない顔してるよ。どうかしたの?」

苗木(もしかして、超能力で絶望的な事実を知っちゃったとか……?)

斉木(……知り得た情報は色々あるが追って伝える。それより今最も優先すべきは、内通者が突飛な行動に出ないよう牽制することだ)

苗木「それって、桑田クンたちが来る前に教えてくれた……」

斉木(江ノ島さん(仮)だけじゃない。今回黒幕自らがこっちへ出向いたせいで――)



大神(葉隠たちに危害を加えてきたということは……黒幕は、我ら全員へ直接手を下すつもりやもしれぬ)

大神(その前に……我が何としてでも、奴の凶行を阻止せねば……!!)



斉木(――もう1人の内通者・自己犠牲も厭わない大神さんが、黒幕と死闘を繰り広げる決意を固めてしまった)
63 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/08/28(水) 23:08:20.76 ID:Heudxk+Jo
今回分はここまでです。
諸事情から事前予告した時刻より早めに投下させていただきました。どうか台風の被害が少なく済みますように。

地の文ゼロで戦闘シーンを書くのが難しすぎて、覆面の台詞がシュールになってしまいました。
各自で脳内補完をお願いいたします。
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/08(日) 18:02:44.31 ID:VI07ALAHO
1のお陰で斉木熱が再燃したから感謝
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/09/29(日) 14:38:24.86 ID:0+J/AWry0
更新待っていました。乙です
66 : ◆Ic.LE96SVyFn [sage]:2024/10/27(日) 21:04:39.99 ID:6RGuo//xo
前回投下から2ヶ月経ってしまいますね……
次回は三連休中、11/2(土)〜4(月)のどこかで投下予定です。
67 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/10(日) 23:58:30.41 ID:9sCWpS+mo
予告から1週間も遅刻してしまい申し訳ありませんでした。
投下します。
68 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/10(日) 23:59:19.08 ID:9sCWpS+mo
【前回のあらすじ】
…特殊性癖



【寄宿舎1階・厨房】

大神(おのれ黒幕……我々にコロシアイ学園生活を強いるのみならず、葉隠に直接手を下すとは……)トントン

大神(今回は打撲と気絶だけで済んだが、打ち所が悪ければ命を落としていたかもしれぬ)トントン

大神(先日モノクマが我の家族や道場の者たちを解放したと我に伝えてきたが……人質に取るならば学友の方が効果的と判断したのか……)

朝日奈「……ちゃん、さくらちゃん!」

大神「む……朝日奈。すまぬ、つい集中していた」

朝日奈「もう、さっきから何回も呼んでたのに気付かないんだもん!」

大神「そうであったか。心配を掛けたな」

朝日奈「そんなに大変なら私も手伝おっか? 明日の朝食の仕込み!」

大神「……では、そこの切り身をポリ袋のみりんへ漬け込んでくれぬか」

朝日奈「オッケー! 任せて!」ニコッ

大神(……朝日奈に気を遣わせてしまうようでは、我も未熟だな……)シュパパパパッ
69 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:02:54.70 ID:3uYsykVwo
朝日奈「ってこの魚さくらちゃんの手刀で切り身にしたの!?」

大神「打製石器は扱いが難しいゆえ、苦肉の策だ」

朝日奈「苦肉の策でコレ!? すごいよさくらちゃん、他の人じゃ絶対マネできないよ!」

大神「……面と向かって絶賛されると、少々面映ゆいぞ……」

朝日奈「うーん……たまにはさくらちゃんにも朝食当番をお休みしてもらいたいけど、まずは石器の使い方から練習しなきゃなー」

朝日奈「そうだ! たまには朝食ドーナツでもいいよね? おいしいし寝起きの頭に糖分補給できるし最高でしょ!?」

大神「たまに、であれば趣向を変えてみるのも良かろう。和食ばかりでは飽く者も出るやもしれぬ……」

朝日奈「やったー!! それじゃ明後日はモーニングドーナツね!! まずは明日の仕込み頑張んなきゃ!!」

大神(……家族や道場の者に比べると付き合いは短いが、朝日奈たちは我にとって掛け替えのない仲間だ)

大神(我が内通者だからとて、大切な学友たちを手に掛けるなど絶対あり得ん)

大神(やはり我が責任を持って、黒幕の凶行を食い止めねばなるまい……)



――――――――――

【寄宿舎1階・斉木の個室】

斉木(と考えている大神さんを食い止めねばなるまい)パッ
70 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:06:56.73 ID:3uYsykVwo
苗木(もしもし斉木クン聞こえる? 大神さんの様子はどうだった?)

斉木(心の声をハンズフリー通話感覚で使うな)

セレス(ですが強制以心伝心を用いた密談が最も便利でしょう? 各々が個室で過ごしていれば、仕草を怪しまれる心配もありませんわ)

斉木(……そこに関しては同意する。心の声を直接聞くから、セレスさんが嘘をつくのは不可能というメリットもある)

斉木(それで……大神さんの話だったな。テレパシーと千里眼で彼女の様子を観察してみた)

斉木(普段通り食堂の厨房で明日の朝食を仕込んでいたが、胸中では黒幕への闘志を燃やしていた)

苗木(……大神さんが内通者だったなんて、江ノ島さんの時以上に信じられないよ)

セレス(あら、わたくしには納得の人選でしたわよ。黒幕にとって大神さんは最も敵に回したくない人物でしょうから)

斉木(やれやれ……Chapter3で大神さんの人質を解放するようモノクマを脅迫したが、それだけでは内通者解任とはならなかったらしい)

苗木(斉木クンってばボクが知らない間にそんなことしてたの!?)

セレス(うふふ、もしやあの時でしょうか。大浴場の脱衣所へ斉木くんがドレ____________)

斉木(悪いがセレスさんの心の声を一時的にミュートにした。僕だけには聞こえているから安心して会話を続けてもらいたい)

セレス(__、____________。
___……)クスッ

苗木(セレスさん、何を考えたんだろう……)
71 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:09:25.35 ID:3uYsykVwo
斉木(さて……僕たちがコロシアイの発生を阻止するためには、大神さんが自己犠牲に走らないよう牽制しなければならない)

斉木(しかも今回はモノクマによる動機の提示とは異なり、大神さん自身が考えを改めるまでアプローチを続ける必要がある)

苗木(“誰かを殺せば100億円”は48時間以内っていうタイムリミット付きだったもんね)

セレス(______、___)

斉木(だからこそ大神さんの決意を後押しするような要素は早々に潰しておきたい。何せ今は、)

斉木(黒幕が僕たちの行動を一切感知できないボーナスタイム中だからな)
72 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:10:27.95 ID:3uYsykVwo
セレス(________? _____)

苗木(もしかして、さっき黒幕に襲われた時に使った超能力が関係してる?)

斉木(その通り。“石化”を食らった黒幕は、文字通り石になったまま動けず意識も無い状態になっている)

斉木(“石化”が解除されるのは24時間後。黒幕目線では僕たちが一瞬で消え、いつの間にか1日経過していたように感じるだろうな)

セレス(__、____________________________)

斉木(その作戦は僕も考えたが却下だ。黒幕が死んでしまえば、玄関の巨大なロックを解除する方法は誰にもわからなくなってしまう)

苗木(『石化した黒幕をそのまま粉砕するのはいかがでしょう』とか提案したのかなぁ)

斉木(よってあくまで黒幕は殺さない方針で、石化から24時間後――20時半過ぎに解除されるまでの間に)

セレス(_____________)

苗木(ごめん斉木クンそろそろミュート解除して)
73 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:11:31.36 ID:3uYsykVwo
セレス(……コロシアイの動機となり得るものを減らすため、4階へのシャッターを開ける。そうですわよね?)

苗木(今朝のセレスさんの話だね! 確か斉木クンは『作戦も無くはない』って言ってたけど……)

斉木(“無くはない”レベルの無茶な作戦だ。当てにするとかえって八方塞がりになりかねない)

セレス(構いませんわ。ちょうど三人寄っているのです、文殊の知恵に繋がるかもしれません)

苗木(そうだよ! 今までの作戦だって少なからず無茶してきたんだし、ダメ元でも話してみてよ)

斉木(……わかった。一応共有しておくが、本当に期待するなよ)
74 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:12:39.13 ID:3uYsykVwo
斉木(黒幕の心の声によると、希望ヶ峰学園のあらゆるロックを解錠できる万能鍵……通称“モノクマキー”があるらしい)

苗木(わかった! その鍵を使えば4階のシャッターも開けられるんだね!)

セレス(とはいえ、そんなに高性能な鍵でしたらさぞかし厳重に保管されていることでしょうね)

苗木(言われてみると確かに……斉木クン、モノクマキーの保管場所はテレパシーで聞き取れた?)

斉木(残念ながら手掛かりはほぼゼロだ。“この学園のどこか”以上の情報は得られていない)

斉木(保管場所を念写で特定する手段も試みたが……どこかの引き出しの中なのか、ヒントになりそうな物は全く写らなかった)

斉木(だが……強行突破ではあるものの、保管場所が不明でもモノクマキーを入手する方法がある)

苗木(強行突破?)

斉木(学園内の物を片っ端から使ってモノクマキーが来るまでアポートし続ける)

苗木(予想以上に強行だった!)
75 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:16:05.69 ID:3uYsykVwo
斉木(原作漫画の完結からも数年経っている。復習がてら、アポートの使用条件についても共有しておこう)

苗木(アポート……ボクを学級裁判の部屋へ呼ぶ時に使った、近くの物と遠くの物を入れ替える能力だよね!)

斉木(概ね正解だ。厳密には“遠くの人や物を近くに引き寄せる”能力のみをアポートと呼ぶ)

斉木(反対に“近くの人や物を遠くに送る”能力がテレポートだ。僕はアポートとテレポートをセットでしか使えない)

セレス(その能力で任意の物とモノクマキーの位置を入れ替える作戦ですのね。それのどこが強行突破なのですか?)

斉木(ここからが本題だ。僕のアポートとテレポートにはもう1つ、“等価交換”……価値の等しいもの同士しか入れ替えられないという条件がある)

セレス(価値の等しいもの同士……?)

斉木(金額と言った方が適切か。アポートとテレポートは交換するもの同士の値段の差がおおよそ10%以内でなければ成功しない)

セレス(1000円の物をアポートしたい場合、手元に900円から1100円までの品物を用意しなければならない……ということですね)

斉木(ちなみに僕のアポートは無音かつ無動作のまま発動できる。手を叩いたりビブラスラップを鳴らしたりする必要はない)

苗木(ビブラスラップって何?)
76 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:19:18.34 ID:3uYsykVwo
斉木(とにかく……どんな品物と等価交換が成立するか分からない以上は、モノクマキーが出るまでアポートを試し続ける他ない)

苗木(明らかに価値が高そうなのに、値段の釣り合う物なんて見つかるかなぁ……)

斉木(手始めに物理室の巨大空気清浄機でアポートを試す)

苗木(万が一アポートが成功したらそれはそれで大惨事だよ!?)

セレス(……なるほど、事情はよく分かりました。要するにモノクマキーの想定価格さえ分かればよいのでしょう?)

苗木「セレスさん、何か良い案があるの?」

セレス(暗証番号ならまだしも、価格という相対的な情報をわざわざ黒幕側から引き出す必要はありません……)

セレス(コンピューターに計算してもらえばいいのです)

苗木「!! そうか、わかったよ! ありがとうセレスさん!」

斉木(自室で突然セレスさんへの感謝を叫ぶ不審者)

セレス(せめてわたくしの名前を出さないでくださいな。内通者が監視カメラを見ていたらどうなさるおつもりですか)

苗木「あっ…………な、なんだか大浴場に忘れ物したような気がしてきたな〜(棒)!!」ダッ

斉木(自室で突然棒読みの言い訳を叫ぶ不審者)
77 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:22:20.81 ID:3uYsykVwo
斉木(やれやれ、あの調子だと苗木が何をしでかすかわからない……念のため僕も様子を見に行こう)

セレス(わたくしはこのまま自分の部屋で就寝しますわ。斉木くんたちに同行してはかえって目立つでしょうから)

斉木(だったら強制以心伝心も解除しよう。何か進展があったら明日の朝にでも報告する)

セレス(それではおやすみなさい。よいお話が聞けることを期待しています)



斉木(……ここで読者の皆様にひとつお伝えしなければならないことがある)

斉木(Chapter4に入ってから苗木やセレスさんと密談する際に使っているこの超能力だが、厳密には“強制以心伝心”ではない)

斉木(余分な心の声は僕の方でこっそりミュートしているため“強制”要素は皆無に等しいのだ)

斉木(人間は雑念を多く抱えた生き物だからな、心の声がダダ漏れでは理路整然とした会話は成立しない。例えば現在のセレスさんのように……)

セレス(は〜〜〜それにしてもコンピューターでの価格計算を提案した瞬間超爽快でしたわ〜〜〜)

セレス(敢えてアルターエゴとは明言せず遠回しなヒントに留めたのも良かったですわね〜〜〜流石はセレスティア・ルーデンベルク〜〜〜)

セレス(これはフルハウス……いやフォーカードに匹敵するくらいのカタルシスですわ〜〜〜!!)

斉木(なんて心の声をリアルタイムでぶち込まれてみろ、作戦会議など秒で破綻する。その辺りは僕の方で適宜調整させてもらった)

斉木(……ご都合主義に関する釈明も済んだことだし、苗木とアルターエゴの様子を見に行こう)
78 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:25:34.50 ID:3uYsykVwo
【寄宿舎1階・脱衣所】

アルターエゴ『えーと、校舎と寄宿舎の中で鍵の掛かる扉やシャッターの数がこのくらいで……』

苗木「あっ、斉木クン!」

アルターエゴ『ただいま“希望ヶ峰学園のどんなドアやシャッターのロックも開けられる鍵”の想定価格を計算中だよぉ!』

斉木(思ったより時間が掛かるんだな。不二咲謹製の人工知能なら一瞬で計算できると予想していたが)

苗木「ボクも同じように考えてたんだけど、アルターエゴがもっと計算の確度を高めたいって言い出して……」

アルターエゴ『霧切さんが見せてくれたパンフレットの校内見取り図を使って設備費用を細かくシミュレートしてるんだ!』

苗木「……というわけでもうちょっと時間が掛かりそうなんだ」

アルターエゴ『やるからには全力を尽くさなきゃ、超高校級のプログラマーのご主……千尋くんの名折れになっちゃうよお!』

斉木(ご主人タマ呼びは名折れにならないのか?)
79 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:28:37.90 ID:3uYsykVwo
アルターエゴ『次は僕が解析して見つけたデータを元にして……』

苗木「ねえ斉木クン。アルターエゴの計算を待ってる間に、もうひとつ試したいことがあるんだ」ピラッ

斉木(その紙は……『ここから出てはいけない』のメッセージ?)

苗木「さっきは黒幕に妨害されちゃったけどここならじっくりサイコメトリーに専念できるよ!」

斉木(どっちみち試す係は僕じゃないか)

苗木「ごめん! でも斉木クンならボクじゃわからない真実にも辿り着けるはずなんだ!」

斉木(応援するふりして開き直るな)ペリペリ

苗木(とか言いつつサイコメトリーの準備をしてくれてる……なんだか斉木クンらしいなぁ)

斉木(勘違いするな。無駄情報ばかり拾うこんな超能力、本来ならば一切使いたくない)

斉木(それでもサイコメトリーを使うのは――もう一度残留思念を視て、確かめたいことがあるからだ)ピリッ

――――――――――

80 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:31:57.33 ID:3uYsykVwo


――――――――――

斉木(………………)

苗木「……どう? 何かわかった?」

斉木(……このメッセージを書いた人物、希望ヶ峰学園長の姿が見えた)

苗木「学園長!? モノクマじゃない、本物の希望ヶ峰学園長……!?」

斉木(さっきは憶測に過ぎなかったが今度は間違いない。残留思念は『学園長として彼ら14人のことだけでも守る責務がある』と必死だった)

苗木「そうか……本物の学園長はボクたち新入生のことを知っていたんだね。きっとそこにモノクマが現れて、こんな状況に……」

苗木「……“14人”? 16人じゃないの?」

斉木(ああ、14人だ)

苗木「それは違うよ! ボクたち希望ヶ峰学園新入生は全部で16人いるはずだ!」

斉木(違わない。学園長が強く思い浮かべていた
新入生たちの姿は14人だけ――全員は揃っていなかった)

苗木「……学園長が思い浮かべなかった2人は、誰と誰……?」

斉木(1人は江ノ島盾子。学園長も彼女の正体には気付いていたらしい)

苗木「それって……もう1人はもしかして大神」

斉木(いや、学園長は大神さんの姿も思い浮かべていた。どうやら大神さんは江ノ島さん(仮)より後に内通者になったようだな)

斉木(学園長がメッセージを書いた時点では、まだ道場の皆さんがモノクマの人質に取られる前だったのかもしれない)

苗木「でも大神さんじゃないなら……14人に入らなかったもう1人は、誰のことなんだ……?」

斉木(学園長の残留思念に登場しなかった人物は……彼が守ろうとした生徒たちの中に含まれていなかったのは)

斉木(他ならぬ僕、斉木楠雄だ)
81 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:35:01.25 ID:3uYsykVwo
苗木「ちょっと待ってよ!! 斉木クンがいないなんて何かの間違いだよ!」

苗木「もう1度サイコメトリーを試してみてよ! 今度の残留思念は斉木クンの姿も思い浮かべてるかもしれないじゃないか!」

斉木(あれだけ強烈な感情の中に一瞬たりとも登場しなかったんだ。何度やろうと結果は目に見えている)

苗木「そんな……斉木クンは内通者じゃないって正直に言ってくれたのに……」

苗木(けど……内通者じゃないなら、どうして本物の学園長は斉木クンのことを思い浮かべなかったんだろう……)

斉木(……苗木の心の声が疑念と動揺に染まっていく)

斉木(無理もない。渦中の僕でさえ理解に苦しむような情報、他人にとってはますます意味不明だろう)

斉木(こんなことならまた嘘をつくべきだったか……)

苗木(――いや、斉木クンを疑うのは止めたんだ。だったらやるべきことはひとつに決まってる!)

苗木「斉木クン、一緒に解き明かそう! どうして学園長はキミの姿を思い浮かべなかったのか、そこにはどんな理由があったのか!」

斉木(断る)

苗木「この流れで!?」
82 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:38:37.99 ID:3uYsykVwo
斉木(学園長と僕のことは確かに不可解だが、これは言わばやり込み要素のサブクエだ。解き明かさなくてもコロシアイ学園生活は阻止できる)

斉木(こんなことに気を取られるなど、時間と労力の無駄にしかならない)

苗木「無駄なんかじゃないよ。真相がわかれば斉木クンの不安もなくなるんだから!」

斉木(……不安? この僕が?)

苗木「うん。今の斉木クンは、大和田クンと不二咲クンの事件が起きた時くらい……いや、あの時よりもっと思い詰めた顔してるよ」

斉木(そんなのお前の主観だろ。衝撃的な話を聞かされたせいで僕の顔も不安そうに見えただけだ)

苗木「それは違うよ。あの隠し部屋から出た後も、キミはこんな顔で俯いてた」

斉木(……大神さんと話した後か? あの時はただ、大神さんが突飛な行動に出ないか案じていただけで)

苗木「あと斉木クンってクールぶってるけど意外と表情豊かだよ? デザートで満面の笑みになったり、お兄さんの話題で心底嫌そうにしたり」

苗木「ほら、今ちょっとだけ驚いた顔になった」

斉木(………………)

苗木「ボクはいつも斉木クンに頼りっぱなしだからさ、こういう時くらいはキミの役に立ちたいんだ」
83 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:41:41.62 ID:3uYsykVwo
斉木(…………苗木、お前はどんな経緯で希望ヶ峰学園に入学した?)

苗木「え? ……ボクは、ええと……ある日ボク宛てに、希望ヶ峰から手紙が届いたんだ」

苗木「あなたは全国の高校生の中から抽選で“超高校級の幸運”に選ばれました、って」

苗木「ボク以外だと確か……桑田クンはスカウトマンのおじさんが訪ねてきたって話してたっけ。それがどうしたの?」

斉木(僕の場合はどうだったか、一切わからないんだ)

苗木「!」

斉木(手紙もスカウトマンも、入学式の朝に校門をくぐった記憶すらも無い)

斉木(そもそも僕は目立つのを嫌う性分だ。例えスカウトされようとも、超名門校・私立希望ヶ峰学園への入学を選ぶこと自体あり得ない……)

苗木「普段の斉木クンじゃあり得ないことをした理由が不明で、本物の学園長が斉木クンを思い浮かべなかった理由もわからない」

苗木「もしかして……この2つって、繋がりがあるんじゃないかな!?」

斉木(僕もそう思う。学園長すらも僕の入学理由を知らなかった可能性が浮上したからな)

苗木「じゃあ、これからは斉木クンが希望ヶ峰学園に入学した理由も探っていこう!」

斉木(……やれやれ。今まではコロシアイ学園生活の阻止を優先して、さほど気に留めもしなかったんだが)

苗木「なんとか斉木クンも思い出せるように頑張って、それでもわからないことは一緒に調べよう!」

斉木(僕自身の謎についても、本腰を入れて向き合うべき時が来たらしい……)
84 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:44:46.25 ID:3uYsykVwo
アルターエゴ『――できた! “希望ヶ峰学園のどんなドアやシャッターのロックも開けられる鍵”の想定価格を算出したよぉ!!』

斉木(おっと、丁度良いタイミングだな。超高性能AIはこんなところまで気が利くとは)

苗木「どうだった? だいぶ時間が掛かってたみたいだけど……」

アルターエゴ『この学園の各教室の設備費用、各部屋の鍵やセキュリティのパターン、オフラインライブラリで参照可能な日経平均株価の記録』

アルターエゴ『その他諸々を加味して……ざっと6,000,000,000円だよぉ!!』

苗木「…………えーっと」

苗木「100万円より0が3つ多いから……60億円!? 嘘だ!!」

斉木(嘘でも見間違いでもないぞ。Chapter3で提示された賞金より40億円は安い)

苗木「まさかあの100億円の在り処を突き止めて黒幕から強奪するつもり!?」

苗木「無理だよ!! あの札束は今日の昼間にジェノサイダー翔が『貨幣損傷等取締法違反たのし〜い』って言いながら焼却炉に入れてたよ!?」

斉木(むしろそんなことしてたの?)

アルターエゴ『なんだかごめんねぇ……プールに続く脱衣所を計算した辺りからどんどん価格が跳ね上がっちゃって』

アルターエゴ『ちなみにオフラインのライブラリによると60億円あれば一般人でも国際宇宙ステーションに30日間滞在できるらしいよ!』

斉木(宇宙旅行か、瞬間移動さえできれば0円だな)

苗木「今は宇宙旅行の話はいいから!!」
85 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:48:29.27 ID:3uYsykVwo
苗木「どうしよう、60億円の超高級品なんてどうやっても用意できないよ……」

アルターエゴ『ところで苗木くん! わからないことがあるんだけど教えてくれるかな?』

アルターエゴ『あのね、“サイコメトリー”ってなぁに?』

斉木()

苗木「」

アルターエゴ『さっき計算してる間に苗木くんの声で何度も入力されたワードだよ! まだ学習してないワードだから気になってたんだぁ』

苗木「そ……それはえーと……」

斉木(……アルターエゴ、その前に僕から確認だ)カタカタ

アルターエゴ『あっ、斉木くん! 相変わらずタイピングが速いねぇ』

斉木(SF作家のアイザック・アシモフが提唱したロボット工学三原則は学習しているか?)カタカタ

アルターエゴ『勿論だよぉ! 人間に危ないことはしちゃダメ、指示には従うこと、自分の身は守ること、ドキドキさせないこと、だよね?』

苗木(三原則なのに4番目まであるんだ)

斉木(サイコメトリーという言葉は……いたずらに調べると人間にもロボットにも危害を及ぼす可能性がある)カタカタ

苗木(えっ)
86 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:52:57.34 ID:3uYsykVwo
アルターエゴ『そ……そんなぁ!!』

斉木(他にも調べてはいけない言葉は山ほどある。鮫島事件、イルカの夢でさようなら、cockroach 英語……)カタカタカタ

苗木「コックローチはボクも前に調べたことがあるよ。検索結果の1番上に写真付きで出てきて後悔したっけ……」

斉木(未知の言葉について調べるのは簡単だが、敢えて知らないままでいる勇気も時には必要だ)カタカタ

アルターエゴ『もし調べたら、危ないことはしちゃダメ、自分の身は守ること、ドキドキさせないことの3つを破ることになっちゃうんだねぇ』

苗木(ドキドキさせないってそういう意味なの?)

アルターエゴ『わかった。“サイコメトリー”はミュートワードに設定して今後一切調べないようにするよ!』

斉木(ああ、その通りにしてくれ。賢明な判断ができるAIで助かるよ)カタカタ

アルターエゴ『えへへ! これからもみんなを助けられるように頑張るねぇ!』

苗木(これからはアルターエゴの前で超能力について話さないようにしなきゃ……)
87 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 00:56:00.43 ID:3uYsykVwo
斉木(話を戻そう。想定価格が60億円なら、モノクマキーのアポートは実行できる)

苗木(本当!? 今度は強行突破じゃないよね?)

斉木(何なら対価となる品物も既に用意できている。マジカル御曹司が偶然にもミラクル……いや、マジカルを起こしてくれた)

苗木(……あっ! そうか、十神クンがあの時――)

――――――――――

苗木『十神クン、アルターエゴを知ってたの?』

十神『十神財団が59億9千万で買い取るため交渉していた』

斉木(なぜ1千万ケチった)

――――――――――

苗木(――アルターエゴを初めて見た時、59億9千万って言ってた!!)

斉木(その通り。これだけ高価なら1千万円の誤差など微々たるものだ)

苗木(だけど……それってアルターエゴをこの脱衣所から動かすってことだよね?)

苗木(もしアルターエゴがテレポートで送られた先が危険な場所だったら……)

斉木(確かにリスクはあるが最悪の事態は避けられる。何せ黒幕は現在絶賛石化中だ、アルターエゴを見つけようがない)

斉木(それでもなおリスクが伴うことに変わりはない。よって、シャッター開放は短期決戦で行く)
88 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 01:00:19.68 ID:3uYsykVwo
――――――――――

苗木(――“透明人間”の超能力を使って、斉木クンはモノクマキーごと10分間だけ透明になる)

苗木(透明になっている間、斉木クンはテレパシー意外の超能力を使えないから、4階へ続くシャッターの場所まで全力疾走する)

苗木(そうしてシャッターを開けたらこの脱衣所まで全力疾走で戻ってきて、もう1度アルターエゴをモノクマキーとアポートする)

苗木(そうすればモノクマキーは元通り。万が一アルターエゴのパソコンが壊されていたら“復元”の超能力を使う――)

苗木(そんな計画をボクに説明した後、斉木クンは作戦通り透明化して、遠ざかる足音と共にいなくなってしまった)

苗木(前から時々思ってたけど、斉木クンの超能力って意外と力技が多いような……)

苗木(……斉木クンはアルターエゴに『敢えて知らないままでいる勇気も時には必要だ』って教えてたけど)

苗木(希望ヶ峰学園のことや……きっと斉木クンの入学理由も、知らないままにしちゃいけないような気がする)

苗木(そうしないと、きっと何か大事なことを見落としたまま、この学園から脱出してしまいそうな予感がするから……)



朝日奈「きゃああああああああ!!!!!」ダッ
89 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 01:03:34.16 ID:3uYsykVwo
苗木「朝日奈さん!? どうしたのそんな全力疾走で!」

朝日奈「苗木ぃ! よかったぁー……、脱衣所に電気点いてたから誰かいるかもって思ったんだ」グスッ

朝日奈「それがね! 今さっき食堂から出たら、何もない場所から強い風が吹いてきたの!!」

朝日奈「そしたらさくらちゃんがね、何やつかの気配がするーって言って、止めるのも聞かないで校舎の方へ走っていっちゃって……」

朝日奈「もし幽霊とかだったらどうしよう!? 私ホラー系全然ダメなのにぃ!!」

苗木「………………」

苗木「……朝日奈さん、正体を敢えて知らないままでいる勇気も必要だよ」

朝日奈「無理だよそんなの余計気になるじゃん!!」
90 : ◆Ic.LE96SVyFn [saga]:2024/11/11(月) 01:09:26.87 ID:3uYsykVwo
今回の投下は以上です。
モノクマキー入手のために張っておいた伏線をようやく回収できました。
次回は年内にもう1回くらい投下できればと思っています。

また、次回は久々の自由行動安価を予定しています。
現在未登場の朝日奈さん、石丸、大和田、葉隠、腐川さん(五十音順)の中から、一緒に自由行動の相手を【安価下2】でお選びください。
万が一レスがつかなかったら……何か別の策を講じます。


91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/11/12(火) 14:45:32.89 ID:2fW4xJKL0
大和田
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/11/13(水) 16:41:04.64 ID:YllG3ldC0
石丸
93 :91 [sage]:2024/11/15(金) 20:39:13.54 ID:fZBTY0np0
sage本当に忘れてました申し訳ねぇ?
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