前川みく「慌ただしい一日」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:25:00.66 ID:g2DVH8wF0
みくにゃん誕生日SSです。

当方エアP。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1771763099
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:25:53.31 ID:g2DVH8wF0
目が覚めた瞬間、胸の奥が少しだけそわそわしていた。
理由はわかっている。
枕元のスマホを手に取って、画面を点ける。
通知がずらりと並んでいた。

「……わぁ」

思わず声が漏れる。
メッセージアプリの未読件数が、とんでもない数字になっている。
今日は私の誕生日だ。

おめでとうのメッセージに一つずつ返信していく。
短い言葉ばかりなのに、ひとつひとつがちゃんと嬉しい。
胸の奥が、あったかくなる。
スクロールしていくと、見慣れた名前で指が止まった。

李衣菜ちゃん。

メッセージを開く。

『誕生日おめでと。帰ったら出かけよう』

それだけなのに、心臓が少し跳ねた。

「……うん」

小さく頷いて、すぐに返信する。

『ありがとう。うん、行こ』

送信ボタンを押してから、画面を見つめたまま、ちょっとだけ笑ってしまう。

何をするのかも聞いていない。
でも、約束があるってだけで、今日が特別になる気がした。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:26:54.25 ID:g2DVH8wF0
身支度を整えて廊下に出ると、まだ朝の空気が残っている。
スマホはポケットの中で時々震える。返信は、あとでまたまとめて返そう。
食堂に入ると、アーニャちゃんが先に座っていた。

「おはよう、アーニャチャン」
「おはようございます、みく」

向かいに腰を下ろす。
温かい匂いがして、少し落ち着く。

「今日は、なんだか嬉しそうですね」

そう言われて、思わず頬がゆるむ。

「……ちょっとね。メッセージ、いっぱい来てて」
「そう。みく、愛されていますね」

その言い方が、くすぐったい。

「大げさだよ」

そう言いながらも、否定する気にはなれない。

何気ない朝。
いつもの食堂。
でも、胸の奥だけが、いつもより少し軽い。
ポケットの中で、またスマホが震えた。
今日は、まだ始まったばかりだ。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:28:03.27 ID:g2DVH8wF0
部屋に戻って、ベッドの上に腰を下ろす。
スマホの画面には、まだ返信していない誕生日メッセージがずらりと並んでいた。
誕生日メッセージ。ひとつひとつに返信していく。
画面に集中していた、そのとき。

「何これ!」

突然、廊下から悲鳴が聞こえた。
続けて、何かがばさっと散らばる音。
指が止まる。

――なに?

さらに。

「待て、止まれ、今止めるから!」

晶葉チャンの声。
いつもの落ち着いた調子じゃない。
胸がざわっとして、みくは立ち上がる。
ドアを開けて、廊下に出た。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:28:45.22 ID:g2DVH8wF0
視界に入ったのは、床一面のゴミ。
紙くずや、ほこり、色んなものが散らばっている。
その間を、掃除ロボがふらふらと動き回っていた。

「……何にゃ、これ」

思わず声が漏れる。
ロボは一定の方向に進まず、少し進んでは向きを変え、また進む。
そのたびに、周囲のゴミが広がっていく。

晶葉チャンが端末を操作しながら追いかけている。
その周りで、何人かが様子を見ていた。

「急におかしくなったみたい」
「制御が効かないって」

声が耳に入る。
どうやら、掃除ロボが暴走しているらしい。
みくは状況を理解しきれないまま、ただ立ち尽くす。

――壊れたってこと?

ロボは煙を吹いているわけでも、何かにぶつかっているわけでもない。
でも、明らかにおかしい動きだ。
そのうち、自然と話がまとまっていく。

「みんなで掃除しよう」
「晶葉はロボを止めて」

みんな、迷いなく動き始める。
みくもほうきを持ってこようとした、その瞬間。

「みくちゃんはいいよ」

顔を上げる。

「今日は誕生日なんだから。こういうのは任せて」

え。
一瞬、言葉が出ない。
誕生日だからって、掃除くらい普通にやるのに。
そう思うけど、もうみんな動き出している。

「外でゆっくりしてきなよ」

軽く背中を押される。

――え、もう決まり?

少しだけ戸惑いながらも、強く断る理由が見つからない。

「じゃあ、行ってくるね」

そう言って、みくは廊下を離れる。
後ろでは、ゴミを拾う音と、ロボの駆動音が続いている。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:29:28.38 ID:g2DVH8wF0
女子寮の玄関を出ると、朝の空気がひんやりと頬に触れた。
さっきまで廊下で聞こえていた騒がしさが嘘みたいに、外は静かだ。
今日は外でゆっくりしてきていいと言われたばかりだ。行き先は決まっていないけれど、特に困ることもない。そんなことを考えながら、敷地の外へ歩き出す。

「おっはよー、みくちゃん!」

少し離れたところから、聞き慣れた明るい声が飛んできた。
振り向くと、駐車場の端で友紀チャンが手を振っている。

「友紀チャン? どうしたの、こんなところで」
「いやー、たまたま見かけてさ。ちょうど出てくるのが見えたから」

そう言いながら、友紀チャンは軽い足取りで近づいてくる。

「それよりさ、誕生日でしょ。おめでとう!」
「ありがとう。朝からちょっとバタバタしてたけど」

そう答えると、自然と口元が緩んだ。改めて言われると、やっぱり少し照れる。

「実はね、茄子さんに用事があって寮に来たんだけど」

友紀チャンは建物の方を親指で示した。

「仕事でいないって言われちゃってさ。完全に空振り!」
「そっか。今日は朝から出てたみたいだね」
「だよねー。じゃあさ」

そこで、友紀チャンはぱっと表情を変える。

「このまま帰るのもなんだし、どっか行かない?」
「どっかって?」
「それはこれから決める!」

あまりにも即決な言い方に、一瞬だけ考えてから頷いた。

「まあ、いいかな。今日は特に予定ないし」
「よし、決まり!」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:30:06.47 ID:g2DVH8wF0
そのまま助手席に乗り込み、シートベルトを締める。
エンジンがかかり、車はゆっくりと動き出した。

「そういえばさ」

信号待ちのタイミングで、友紀チャンがちらっとこちらを見る。

「今日のみくちゃん、なんか雰囲気違わない?」
「そう?」
「……あ、ネコミミつけてないんだ」
「ああ、今日はオフだから。目立たないようにしてるにゃ。『にゃ』も使わないって決めてて……アレ?」

 二人で軽く笑い合う。
 行き先はまだ決まっていない。
 けれど、車はそのまま前へ進んでいった。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:31:02.64 ID:g2DVH8wF0
「でさー、せっかく時間あるし、バッティングセンターとかどう?」

ハンドルを握ったまま、友紀チャンが軽い調子で言う。

「……それ、友紀チャンが行きたいだけでしょ」
「えー、ダメ? バット当たったときの感触、気持ちいいよ?」
「今日はちょっと……そういう気分じゃないかな」

正直に言うと、今は汗をかいたり叫んだりする気分じゃない。
友紀チャンは少しだけ前を見たまま考えて、それからすぐに切り替えた。

「じゃあさ、猫カフェは?」
「え?」

思わず、変な声が出た。

「みくちゃん、猫好きでしょ? オススメのとことか、ある?」
「あるに決まってるにゃ! 今から行こ! えっと猫カフェにも色々あるんだけど、ちゃんと猫チャンの事を考えてくれてるお店がいいところにゃ。無理に抱っこしたりとか猫チャンがケンカしないようにとか、オヤツのあげすぎとかを店員さんが見てくれて、その中でも人懐っこい子が多くて――」

……と。

「あ」

言葉が、ふっと落ちた。

「どうしたの?」
「その……このお店……今改装中にゃ……」
「そっか。じゃ、ダメだね」
「うん……ごめん。ちゃんと確認してればよかった」

さっきまで勢いよく話していたぶん、急に力が抜ける。
楽しい想像をしていた反動で、余計に落差を感じてしまう。

「いや、みくちゃんが悪いわけじゃないでしょ」
「でも……」

友紀チャンはウインカーを出しながら、軽く言った。

「じゃあ別のとこ行こ。まだ時間あるし」

車は、そのまま次の交差点へ向かっていく。
窓の外を眺めながら、少しだけ息を整えた。

(まあ……今日は成り行きでも、いいか)

そう思うことにして、スマホを膝の上に戻した。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:32:01.41 ID:g2DVH8wF0
次の行き先をどうするか考えていた車内で、友紀チャンが前を向いたまま言った。

「じゃあさ、映画とかどう?」

その言葉を聞いた瞬間、頭の中で、さっきまでの猫カフェの余韻がすっと引っ込んだ。
映画、という単語自体は嫌いじゃないけれど、今日はそこまで想定していなかった。

「映画?」
「うん。この近くにシネコンあるし。今からでも入れそうなのがあってさ」

そう言いながら、友紀チャンは特に迷う様子もなくハンドルを切る。
深く考えている感じはなくて、思いついたから言ってみただけ、という印象だった。
駐車場に車を停めて、エンジンが止まる。
友紀チャンがスマホを取り出して操作し、画面をこちらに向けてきた。

「これなんだけど」

表示されていたタイトルを見て、一瞬だけ言葉を失う。

『マクラノネコン』

カタカナの並びが、どこか力が抜けていて、少し間の抜けた響きに見えた。
ポスターも、ぱっと見では内容が想像しにくい。

(……ちょっとB級っぽいにゃ)

正直な感想は、それだった。
嫌ではないけれど、期待していたわけでもない。
けれど、その感想をそのまま口に出すほどの理由も見当たらなかった。

友紀チャンは上映時間を確認しながら、「時間もちょうどいいし」と軽く言う。
その調子だと、絶対にそれが見たいというわけでもなさそうだ。

「……いいんじゃない?」
そう答えると、友紀チャンはすぐに表情を明るくした。

「よし、決まり!」

決断が早い。
もう少し悩む余地はあった気もするけれど、今さら言うほどでもない。
車を降りて、並んで歩き出す。
映画館の入口が近づくにつれて、外の明るさが少しずつ遠ざかっていく。
自動ドアの向こうに、独特の静けさと、ひんやりした空気が待っていた。
そのまま流れに身を任せるように、館内へ足を踏み入れる。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:33:00.10 ID:g2DVH8wF0
映画館を出て、外の明るさに目を細める。
少し歩いてから、友紀チャンが口を開いた。

「面白かったね」
「うん、面白かった」

そのまま終わるかと思ったけれど、自然に話は続いた。

「あと、レタスの煮っころがし」
「やっぱり、あそこだよね」
「あんな伏線になってるなんて思わないよね」

そこまで話したところで、ポケットの中が震えた。
スマホを取り出すと、表示されている名前に一瞬だけ視線が止まる。

――李衣菜ちゃん。

通話に出る前に、友紀に軽く合図する。

「もしもし?」
『みくちゃん?』
『高速で事故があってさ。ちょっと渋滞に巻き込まれちゃって』
「えっ……大丈夫なの?」

思わず声が強くなる。

『うん、大丈夫。事故に巻き込まれたわけじゃないから』
「……ほんと?」
『ほんとほんと』

少し間があって、続けて声が届く。

『午前中には戻るつもりだったんだけど、遅れそうで』
『帰ったら出かけようって言ってたのに、ごめん』

「そんなの気にしなくていいよ」
「無理しないで。ほんとに」

自分でも、少し急いで言ったと思う。

『ありがとう。正直、何時に戻れるかもわからなくて』
「そっか……」
「安全第一だよ」
『うん。また連絡する』

通話が切れる。
スマホを下ろして、ひと息ついた。

「……事故だって」

友紀チャンがすぐに反応する。

「大丈夫そう?」
「うん。李衣菜ちゃんは平気。でも、戻る時間はわからないって」
「心配だね」
「うん。でも、大丈夫って言ってたから」

少し歩いてから、友紀チャンが言った。

「じゃあさ」
「なに?」
「お昼にしよ。ちょうどいい時間だし」

空を見上げて、頷く。

「……うん、そうだね」

そうして、二人で駐車場の方へ向かった。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:33:40.03 ID:g2DVH8wF0
昼どきのファミレスは混んでいて、少し待ってから二人席に案内された。
向かいに座り、メニューを見て、どちらも無難なセットを選ぶ。
料理を食べ終えたころ、友紀チャンが何気なく言った。

「このあと、ちょっと買い物頼まれててさ。つきあってもらっていい?」

一瞬だけ考えてから、頷く。
特に理由を聞くこともなく、「いいよ」と答えた。
会計を済ませて店を出て、そのまま次の目的地へ向かった。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:35:40.06 ID:g2DVH8wF0
ファミレスを出たあと、車で商店街まで来た。
駐車場に停めて、そこからは歩き。
友紀チャンはスマホを見ながら進んでいて、私はそれについていくだけだ。
しばらくして足を止めた友紀チャンが、ひとり言みたいに言った。

「このへんのはず……あ、あった。葵ちゃんに頼まれてる魚屋さん」

――魚屋。
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が少しだけ重くなる。
店の前に立っただけで、鼻に魚の匂いが届いた。
もう逃げ場はない。そう思いながら、仕方なく中に入る。

「いらっしゃい! 今日はいいの入ってるよ!」

声が大きい。
それと同時に、匂いも一段階強くなった気がする。
できれば長居はしたくない。早く出たい。それが正直な気持ちだ。

「今日のオススメは真鱈!」
「寒ブリもいいし、イワシも今は脂が乗ってるよ」
「時間あるなら三枚おろし、サービスしちゃうから!」

止まらない。
魚の名前が次々に出てくるけど、頭にはあまり入ってこない。
匂いのほうが気になって、それどころじゃない。
「へぇー」「おいしそうだね」と、友紀チャンは素直に相槌を打っている。

(……本当に楽しそう)
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:36:06.80 ID:g2DVH8wF0
店主さんはさらに調子に乗る。
「ビールに合わせるならこれだね」
「焼くだけでいいし、間違いないよ!」

(色々話は聞いてるけど……)

ふと、疑問が浮かんだ。

(そもそも、何を買いに来たんだっけ?)

「ねえ」
「うん?」
「何を買いに来たの?」
「あ、そうだった。アジの干物ください」
「はいよっ!」
「……魚屋で干物?」

思わず、そのまま口に出していた。
さっきまで店員さんの話を聞いていたのは何だったのか。

会計はすぐに終わった。
干物は袋に入れられて、はいどうも、で終わり。

店を出た瞬間、外の空気を吸って、私はほっとする。

(魚屋は、やっぱりイヤだな……)

それだけが、はっきりと残った感想だった。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:36:44.56 ID:g2DVH8wF0
魚屋を出た瞬間、鼻につく魚の匂いが薄れていく。
それだけで、少し肩の力が抜けた。
そのまま商店街を歩いていき、最初に入ったのは八百屋さんだった。

「リンゴ、山形県産でお願いします」

はっきりした指定。思わず顔を見る。

「……あかりチャンから?」
「うん」

短いやり取り。
袋に入れられたリンゴが手渡されるのを見て、みくは小さく頷くだけだった。
次は和菓子屋。
豆大福とお団子。

(周子チャンかな……いや、菜帆チャンかも)

せんべいの専門店では歌舞伎揚げ。
袋が増えるたび、腕にかかる重みが確実に増していく。

(……芳乃チャン、だよね)

商店街を抜けて、車に戻る。
休む間もなく、また次のお店へ。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:37:38.49 ID:g2DVH8wF0
ホビーショップで、ぴにゃこら太。
ドラッグストアで、栄養ドリンクとスポーツドリンク、それから湿布。

(まだ、あるんだ……)

友紀チャンはメモを見ながら、次々と買い物を進めていく。
迷っている様子はなく、淡々としているように見えた。

(お人好しすぎるよ)

最初は、それだけの感想だった。
頼まれたら断れないんだろうな、という程度。

でも――。

(いつまで続くの)

終わりが見えない。
一つ済めば、また次。
「これで最後」という雰囲気が、どこにもない。

大勢から、少しずつ、細切れに頼まれて。
それを全部、引き受けて。

理由はわかっているつもりだった。
でも、回る店が増えるたび、胸の奥に溜まるものが確実に増えていく。

「えーっと、次はフルボッコちゃんグッズを買いに――アルファルファってお店だね」

その言葉を聞いた瞬間、みくの中で何かが弾けた。

「それ、さっきぴにゃこら太を買ったお店にゃ!さっき買えばよかったのに!」

自分でも驚くほど強い声だった。
友紀チャンがこちらを見る。
その表情を見て、言いすぎたかもしれない、という思いが一瞬だけ浮かぶ。
でも、口は閉じたままだった。
今、何か言えば、もっと荒れてしまいそうだったから。
視線を窓の外に向ける。
知らない街並みが、ただ流れていく。
車内は静かだった。
エンジン音だけが、一定の調子で続いている。
そのまま、車は来た道を戻り始めた。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:38:17.01 ID:g2DVH8wF0
車内は時間が止まったみたいだった。
怒りはもう残っていない。ただ、さっきまでの空気が、そのまま沈殿しているだけだった。
謝るほどでもない。
でも、何事もなかった顔で話しかけるのも、違う気がする。

(……気まずいな)

それだけ思って、みくはそれ以上考えるのをやめた。
友紀チャンも、何も言わない。ラジオもつけないまま、車は淡々と進んでいく。

気づけば、もう女子寮の前だった。

「着いたよ」
「……うん」
「あたしも寄っていくね。頼まれた買い物を渡すし」

短いやり取りだけで車を降りる。
それ以上、何かを言う必要はなかった。
エントランスを抜けたところで、聞き慣れた声がした。
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:38:44.89 ID:g2DVH8wF0
「みくちゃん、おかえり」

美波チャンだった。その隣に、未央チャンがいる。

「おかえりー、みくにゃん! ちょっと来てほしいんだけど!」
「え? なに?」
「いいからいいから。ほら、こっち!」

未央チャンが、ぐいっと腕を引く。
美波チャンは苦笑いしるだけで、説明してくれない。

「食堂のほうなんだけどね」
「食堂?」

意味がわからないまま、みくは二人に挟まれて進む。
廊下の景色はいつも通りで、特別なことなんて、何も見えない。
食堂の前で2人が立ち止まった。

「はい、じゃあ――」

言い終わる前に、扉が開く。
その瞬間。

「……え?」

目の前いっぱいに広がった光景に、言葉が出なかった。

(……なに、これ……?)
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:40:02.39 ID:g2DVH8wF0
食堂に足を踏み入れた瞬間、目に飛び込んできた光景に言葉を失った。
飾り付け。テーブルの上の料理。見慣れた顔ぶれが、揃ってこちらを見ている。

「……え?」

頭が、追いつかない。
さっきまでの沈黙も、気まずさも、一気に置き去りにされた。

「サプライズ、成功……かな」

そう言って、前に出てきたのは李衣菜ちゃんだった。

「みくの誕生日パーティー。企画したの、私」

一瞬、息が止まる。
誕生日――そうだ。今日は私の誕生日だった。

「え、じゃあ……」

視線が、自然と晶葉に向く。

「掃除ロボは壊れてないぞ。あれは、わざとだ」
「ゴミを散らかすように、ちょっと挙動をおかしくしただけだ」
「みくが出かけたあとで元に戻して、掃除はロボがやった」
「……」

朝の混乱が、頭の中で組み替えられていく。

「じゃあ……寮を出たとこで会ったのも……?」

みくの問いに、友紀チャンは苦笑して頷いた。

「たまたま、じゃないよ。最初から予定通り」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:40:32.60 ID:g2DVH8wF0
「午前中は友紀さんと一緒にいてもらって、その間に準備するつもりだったんだ」
「私もお昼前には戻れる予定だったんだけど……渋滞で帰れなくなっちゃって」
「それで、友紀さんは追加の時間稼ぎをお願いしたってわけ」
「買い物に付き合ってもらって、ってリスト送られてね」
「正直、参ったよ」

胸の奥で、カチリと音がした気がした。

「じゃあ……魚屋に行ったのも?」
「買い物で、あんなにアチコチ回ったのも?」
「全部、頼まれた通り。時間稼ぎ」
「……最後に、アルファルファに戻ろうとしたのも?」

一拍置いて。

「ごめん、それはただのミス」

思わず、力が抜けた。
イライラして、怒って、ちょっと後悔して。
全部が、今になって、ひとつの線につながる。

「……そっか」

小さくそう呟いたとき、李衣菜ちゃんがはっとしたように周囲を見回した。

「……あ、話してばっかりで始まらないじゃん」

そして、ぱん、と手を叩く。

「じゃあ、改めて――」
「前川みく、誕生日おめでとう!」

その宣言と同時に、パーティーが始まった。
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:42:49.44 ID:g2DVH8wF0
以上です。

みくにゃん誕生日おめでとうございます。
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2026/02/22(日) 21:55:00.85 ID:g2DVH8wF0
私には文章力がないので、このSSには生成AIを使用しています
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