俺の高校生活がこんなに急に桃色に染まるわけがないっ!

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2026/03/02(月) 19:38:10.41 ID:7M8zy6LSO
昼休み開始のチャイムが鳴った。あまりにも空虚な残響《リフレイン》を引きずってーー。

それを相図に、クラスメイトたちは示し合わせたかのように、そそくさと机を合わせはじめる。
みんなで楽しくお弁当を食べましょうって?
代わり映えもなく、昨日のアイドルの配信が良かっただの、恋愛リアリティショーでだれがカッコよかっただのを話すのか? 
メディアに踊らされるのは中学生までにしてほしい。

まず言っておくが、学校生活に友だちは必要ない。
重ねて言っておくが、これは友だちがいない人間の悔し紛れの逆張りじゃない。

実際そうだろ? 
多くの偉大な哲学者・文学者たちは孤独だった。孤独は知性の証だ。仮に群れることで幸せを感じたとしても、それは上半身におくられる電気信号に過ぎない。

俺はクラスの喧騒に背を向け、ただひとり屋上へ向かう。
職員室に保管されている屋上の鍵が容易くくすねられることを、クラスメイトたちは知らないのだ。

スロープをゆっくりと上り、建てつけの悪いドアを開いた。

どこまでも澄んだ茶褐色の空の下は、俺だけの特等席だーー。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1772447890
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2026/03/02(月) 19:39:30.16 ID:7M8zy6LSO
俺はおもむろにスクールバッグからランチボックスを取り出す。
さて、今日のランチは……。
蓋を開けた瞬間、独特の臭いが鼻を突いた。

ったく、母さんまた、あの肉を大量買いしたのか。
この肉だけは、どれだけ食べても抵抗がある。
なるべく買わないでくれって言ってたのに。ついに壊れちまったか?

まぁいい。いただきますーーと……。

「ちょっと、そこのあなた!」

口を開けた瞬間、ものすごい勢いで、誰かが屋上のドアを開いた。

「へ?」

俺は思わず肉を落としてしまった。
食糧不足が騒がれる昨今、こんなんでもただでさえ貴重な肉なんだが……。

ピューー

瞬く間に、ものすごいスピードで猫が肉をかっさらっていった。

「ああー! 俺のランチが!」

しかし、猫に文句は言ってられない。なんせ猫は、人間にとって大切な存在だからな。ご多分に漏れず、俺は猫を愛している。

「大事な話があるの。ランチなんてどうでもいいでしょ! どうしてもお腹がすいたっていうなら、校庭の草でも食べてなさい!」

誰だか知らないが、とにかくものすごく傍若無人な女が、上段から俺に言い放った。
一体なにごとだって言うんだ。

俺はゆっくりと顔を上げる。
ん……? クソ、ちょっとかわいいからって、調子に乗って生きてきたタイプのイタい女だな。

https://i.imgur.com/UcgiEZj.jpeg

「って、あんな汚染された草なんか食えるかよ!! 大体、誰だお前」

ランチを食べ損ねてイライラしていた俺は、即座に的確なツッコミをぶちかました。

「質問をする前に名乗るのが礼儀ってものでしょ! まったく、最近の若者は本当になってないんだから。同じ海王第三高校の最上級生として恥ずかしいわ」

「うわ、3年生なのか。まぁ良い、俺の名前は……」

「待った! 名乗らなくても知っているわ。あなたの名前は、海王第三高校二年生・鈴木永遠! 間違いないわね! そうであるならば、私たち超現実逃避礼賛《エスケープ》団に即刻入団しなさい! 異論は認めないから! 以上、団長・鈴木弥生からの命令よ」

弥生という女の高らかな、そして意味の分からない命令が、茶褐色の空に吸い込まれていく。
その様子を、俺は文字通りあんぐりと口を開けて見守っていた。

気が付けば、肉を咥えた猫があざ笑うかのように走り回っているーー。

         ※ ※ ※
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2026/03/02(月) 19:41:15.94 ID:7M8zy6LSO
「ここが私たちの城よ!」

弥生さん(先輩なので仕方なくさん付けしてやることにした)にゴロゴロと手を引かれてたどり着いたのは、薄暗い教室だった。というか、埃っぽい。陰鬱。気が滅入る。

見上げると、扉のうえに「社会科準備室」という札がかけられている。
いったい社会科の授業で何を準備するっていうんだーー。惑星模型でも磨いてるのかよ。

「弥生先輩! 新入部員ですか??」

部屋に足を踏み入れると、ツインテールのロリ系女子が、勢いよく弥生さんに飛びついてきた。
なんだこの子、めっちゃかわいいな。それにしても、昼間っから無邪気に抱き合うなんて……。この部活では百合が公認されているのか。

https://i.imgur.com/cggOq0b.jpeg

「早かったわね。もう勧誘してきたの? 弥生にしては御手柄よ」

ふと、上質なフレグランスが香って、黒髪ロングの清楚系女子が近づいてくる。
この人はめちゃくちゃスタイルが良いな。とくに胸のあたりが……ゴホンゴホン……18禁はやめておこう。

https://i.imgur.com/L0WSTYD.jpeg

「さて!」

引き続き状況が飲み込めないでいると、弥生さんが大きく手を叩いた。

「改めまして、鈴木永遠くん、我がエスケープ団へようこそ。我々は、このくだらない世界からの逃避を目的にした、意欲的かつ独創的、かつ可憐な頭脳派集団よ。学校の目を欺くため、一応『部活動』をしているということになってるわ」

「あ、なんだ。部活の勧誘だったんですね。でも、世界からの逃避ってのは、とどのつまり……」

「待った! 質問は最後に受けるわ。まず部員たちの紹介をしないとはじまらないわね」

嗚呼、なんという強引さだ。俺は抵抗を諦めた。

「このツインテールのかわいい子は、あなたと同じ2年生の佐藤めいちゃん。小さいけどしっかり者よ」

「よろしくお願いします。でも、あんまり弥生先輩と馴れ馴れしくしないでくださいね……」

めいがキッと猫のような目つきで睨んできた。すっかり敵意がむき出しだ。
やっぱり弥生さんとデキてるのか? 

「そして、このナイスバディの黒髪美女は、私とおなじ3年で副団長の鈴木皐月」

「ちょっと弥生、余計なこと言わないで……。永遠くんね。よろしくどうぞ」

皐月さんに上目遣いで目礼をされて、俺は思わずドギマギしてしまった。
おいおい、俺は童貞じゃないっつうの。

「という素敵な部員たちが勢ぞろいなのにも関わらず、我々エスケープ団は、なぜか入部希望者に恵まれないの。だから、永遠くんに入ってもらわないと、廃部になってしまうって話。あなた、毎日屋上でぼーっとしてるでしょ。どうせ暇なんだから付き合いなさいよ」

「だから強引に勧誘したんですね。でも、部員が集まらない理由は、部長が傍若無人だからな気が……?」

「なんですってえ!?」

弥生さんが腰に手を当てて、鬼のような形相をした。角まで生えてきそうな勢いだ。

「いや、なんでもないです。あ、そうだ。ええと、特に可憐のところ、いやいや活動内容がよく分からないので説明して欲しいんですが」

俺はむかしからヤンキーのような好戦的な人間が苦手だ。というか、あえて反論しないふりをしている。ここは、とりあえず話を合わせておくのが吉だろう。

「エスケープ団の活動は高尚だから、ひとことで言うのは難しいのよね……」

弥生さんが腕を組んで考え込んだ。

「要するに、クラスに馴染めない人たちが集まった仲良しサークルよ」

すると、皐月さんが静かに水を差した。この人も別のベクトルで傍若無人なんだな。

「皐月は身もふたもない言い方をするわね……。そんな簡単なものじゃなくて、学校という残酷かつ無慈悲なシステムのなかをサヴァイブするための相互扶助団体なのよ。分かった? 合理的で魅力的でしょ? 分かったなら、いますぐ入団しなさい」

弥生さんの人差し指が、ピッと俺の眉間を差している。

「まぁ、名前を貸すくらいならいいですけど」

これも俺の処世術。多少の理不尽は、雨に降られたくらいの気持ちで耐えるのが正解なのだ。やまない雨はない。

「やったー!!」 

俺がそう答えると、3人が飛び跳ねて抱き合った。

なんだ、この人たちも、かわいいところがあるんだなーー。

やっぱりこの部活では百合が公認……いや、なんでもない。聞かなかったことにしてくれ。
 
         ※ ※ ※
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2026/03/02(月) 19:42:45.75 ID:7M8zy6LSO
「そうと決まれば、入部申請書に記入を……」

弥生さんがタブレットを差し出した瞬間、突然大きな音を立てて扉が開いた。

「あなたたち、まだこの部屋を占領しているんですか!」

「……!! きょ、教頭先生?」

現れたのはロマンスグレーの頭髪を丁寧に撫でつけた痩せぎすの男だった。
海王第三高校の教頭にして、その激しい風紀の取り締まり方針から「鬼」と恐れられる佐藤誠也だ。

あまりに激しすぎる登場に、俺は言葉を失ってしまった。

教頭は唖然とする俺たちを傍目に、ずんずんとこちらに進んでくる。
そして咳払いをすると、死刑宣告をするかのように厳かに口を開いた。

「えー、皆さんにお話があります。えーとエス……なに団でしたっけ?」 

「エスケープ団よ!」

こんな状況でも、弥生さんは一切ひるまない。俺が間違っていた。あんたはすげえよ。

「ああ、そうですか。その、皆さんの部の活動内容が不明瞭ということで、学校から廃部の決断が下りました」

「え……」

だれしもが事態を飲み込めず、息を飲んだ。静寂が部屋を包み込む。

「そんな! ようやく新入部員を確保したばっかりなのに」

沈黙を破るかのように、めいが叫んだ。泣きそうな顔をして萌え袖を握りしめている。
この意味の分からない美少女集団にはまだ感情移入できないが、こんなかわいい子を泣かせてはいけないことだけは分かる。

「まったく、手を変え品を変え、難癖をつけて来るのね。学校ってよっぽどやることがないのかしら」

「憎まれ口は結構。とにかく、もう決定事項なので、大人しく部屋を受け渡しなさい」

ああ、弥生さん。あなたは勇敢だった。(マジで)少しのあいだだったけど、あんたとの付き合いも面白かったよ。

「っ……」

さしもの弥生さんも権力には逆らえないのか、ついに黙り込んでしまった。あんたがやり込められるなんて、俺は悲しいぜ。

「先生は、民主主義に賛成ですか……?」

と思ったら、うつむいていた弥生さんがぽそりと口を開いた。
俺には、その声が小さなゴングに聞こえたんだ。

「はい? なんですか?」

「先生は、民主主義に賛成なのかと聞いています」

弥生さんの声が、いくらか大きくなった。俺は確信する。なにかが始まると。

「当たり前でしょう。私は社会科の教員ですからね。民主主義は私たちがこの地にやってくるはるか昔から社会の基盤……」

「だったら!」

ついに、弥生さんが叫んだ。可愛らしい耳が、興奮のせいかピンと上を向いている。

「学校のみんなが認めてくれたら、エスケープ団の活動を継続して良いってことですよね! その証明に、わたしたちは1ヶ月以内に、この町の海王ホールを超満員にしてライブを成功させてみせます!」

「何を言い出すのかと思えば、海王ホールはキャパ3000人の大ホールですよ。あなたたちみたいな高校生に、そんなことができるわけないでしょ」

俺が止めに入る間もなく、弥生さんはスタスタと教頭に詰め寄る。こうなったら手が付けられないことくらい、俺にもよく分かった。

「できるわけないと思うなら約束してください。成功すれば、エスケープ団を存続させてもよいとーー」

「ふん、できるものならやってみなさい」

俺はすっかり言葉を失っていた。いったい何に巻き込まれているんだろうか。よく分からないが、なにやらとんでもないことが起ころうとしているだけはたしかだ。

教頭が去ると、部室(最前、不法占拠していることが白日の下にさらされた)は沈黙に包まれた。

俺は耐えかねて口を開く。

「弥生さん、海王ホールでなにをするつもりなんですか?」

「そうね、思い付きで言ってみたんだけど、アイドルなんてどう?? あ、永遠くんはプロデューサーね」

弥生さん、やっぱりあんたはこの惑星のナンバーワンだ。

廊下を見ると、俺の数奇な運命をあざ笑うかのように、さきほどの猫が駆け回っていた。
         ※ ※ ※
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2026/03/02(月) 19:43:26.26 ID:7M8zy6LSO
あれから1ヶ月、いろいろなことがあった。
涙だけでは済まされない思い出の数々ーー。

すべては今日のための伏線に過ぎなかったのだ。

舞台袖に立った俺は、ちらりと会場の方を見る。

超満員の会場は、すさまじい熱気に包まれていた。
すし詰めになった観客たちから発せられた期待感が、熱気となって迫ってくる。

「っつーーー」

その様子を見ていた俺は、思わず息を飲んでしまった。

こんなどでかい舞台《ハコ》でのライブを、アイドル活動を始めたばかりのエスケープ団が成功させられるのか? 
いや、あり得ないだろーー?

正直に言ってしまおう。この期に及んで、俺はビビり散らかしている。

「あんたは情けないわね。ここまで来たらやるしかないのよ!」

弥生さんの人差し指が、ピッと俺の眉間を差している。
あんたの傍若無人っぷりには、逆に安心させられるよ。

「そうそう。永遠くんが不安がってどうするのよ??」

めいも声をかけてきた。このロリっ娘も、いつも通り小うるさいな。
ガキ扱いするんじゃねえって。

「永遠さん、もう引き返せないんですよ。賽は投げられたって言いますからね。私たちはルビコン川を渡り切ったんです」

ふとフレグランスが香った。皐月さんのやさしい雰囲気は、上ずった俺の気持ちを落ち着かせてくれる。

思えば、こんなやり取りも、もうすっかりおなじみのものだ。

「さて!」

弥生さんが、いつものように大きく手を叩いた。

「グダグダおしゃべりをしている暇はないのよ。みんな、覚悟を決めなさい。これは団長命令なんだから!!!」

「そうそう、先輩の言う通り。私たちの部活を守るために失敗するわけにはいかないのよ」

「さっさと成功させて、受験勉強に専念したいですしね。光陰矢の如しって言いますから」

3人のかけあいに、思わず笑みがこぼれた。
こんな活動がいつまでも続けば良いなんて、ガラにもなく感傷的なことを考えてしまう。

「ったく、みんな相変わらずですね。じゃあ、いつも通りいきましょう。かましてやりましょうや、俺たちの存在の証明(=音楽)を」

そうだ。腹をくくろう、やるしかないのだ。

いざ、夢の戦場《ステージ》へ……!!

薄暗い舞台袖が、俺には不思議と輝いて見えた。

(了)
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2026/03/02(月) 19:50:30.17 ID:7M8zy6LSO
名作だなこりゃ
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2026/03/03(火) 21:18:41.07 ID:sICV48um0
けいおんとハルヒ混ぜただけのゴミやん
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