【艦これ】提督「鎮守府が罠だらけ?」ニコ「その4だよ」【×影牢】

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52 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:43:14.60 ID:Tmcr022Ro

 * 数日後 *

 * 墓場島沖 海軍巡視船内 会議室 *

金剛「ふへへ、テートク〜……」ダキツキスリスリ

提督「……なあ、金剛?」ダキツカレ

金剛「なんデスカ?」ニッコニコー

提督「さすがに示しがつかねえから、抱き着くのそろそろやめねえか」

長門「……」

潮「……」

礼提督「……えーと……」アハハ…

五月雨「まあ……その……」

X大佐「……さすがにね?」コホン

祥鳳「離れた方が良いと思います、はい」

金剛「しょうがないデスネ……Hey, Xテートク? いい加減、代わりになる司令官はいらっしゃらないんデスカー?」ジトォ…

X大佐「申し訳ない。方々に問い合わせているのだけれど、まだ任せられる人が見つかっていないんだ」

金剛「……こっちは、しょうがない、で片付けたくないデスネー……」ガックリ

提督「いくら金剛しか頼りにならないとはいえ、当人がこのナーバスっぷりじゃ、そろそろまずくねえか?」

提督「Q中将の奥さんだって単純に巻き込まれた民間人だろ、とっとと開放してやれよ」
53 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:43:59.20 ID:Tmcr022Ro

X大佐「僕もそうしたいよ。だけど、主要な提督候補や職員があちこちに引き抜かれて、まともな運営ができる人が誰もいない状態だ」

提督「だからQ中将の奥さんを鎮守府に縛りつけて金剛巻き添えにして運営していいのかよ。そんな鎮守府閉鎖してもいいんじゃねえの?」

提督「つうか、Q中将が亡くなってから何年経つと思ってんだ。それまで指揮執ってた奴がいるんだろ? そいつを呼び戻せよ」

X大佐「その人も今はほかの鎮守府で指揮を執っている。呼び戻せる状況にないから困っているんだ」

金剛「入れ替わりで新しく着任した人が、問題起こしたんデス。だから、私やQ中将の奥様に白羽の矢が立ったんデスヨー」

X大佐「とにかく、いまは引き継げる人材がいないんだ。今日ここに金剛を連れてきたのも、息抜きの意味合いが強い」

提督「ってことはまた戻らねえといけねえのか。勘弁してやれよ、比叡も金剛いなくて寂しがってんだぞ」

金剛「テートクも寂しいデスヨネ?」

提督「あ、そうだ、長門、お前ぬいぐるみ作れねえか? 金剛のぬいぐるみ作って比叡に預けてもらえねえかな」

金剛「テートク? 無視しないでくだサーイ」

長門「いや、それで済むならそうしたいが……」

金剛「私の話聞いてマスカー!?」

提督「なんか含みのある言い方してんな。なんかあったのか」

金剛「……」ガシッ

X大佐(無言で抱き着いてる……)
54 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:44:44.57 ID:Tmcr022Ro

長門「単純に、効果があるのかが疑問だ。逆に寂しさを募らせたりしないか、とも考えている」

提督「そうか?」

祥鳳(提督さんも長門さんも、全然金剛さんを気にしてませんね……)

礼提督「えーっと……あの、私の幼いころの話といいますか、体験談で恐縮なんですが」

礼提督「昔、私の両親が揃ってお仕事で忙しい時期があったときに、私がぬいぐるみを抱いて寝てた時期があったんです」

礼提督「それがなかなか慣れなくて、私が寝ながら泣いていた時期があったんですよ」

提督「それで逆効果かも、って話か?」

長門「ああ。ちょうどそれと似たような話が、彼女の父親である憲兵隊長の部下のところでも起きている」

長門「海軍も人手不足だが、陸も事情は同じらしい。その憲兵は、娘が起きている間に会うこともできず、どうしようかと悩んでいるそうだ」

長門「その時に私も、提督と同じように寂しさを紛らわせるためのもの……人形やぬいぐるみを与えることを提案したんだ」

礼提督「父にも相談したんですが、昔の私のことを持ち出されまして、」

提督「んー……独り立ちするいい機会だと思うしかねえんじゃねえか?」

長門「その子は未就学児なんだ。まだまだ寂しい時期だと思うぞ」

提督「ふーん。ま、どっちにしても、代わりになるような誰かはいねえんだろ? どっちかの親がどうにかするしかねえ」

礼提督「それで私のところに内緒で相談が来たんです。誰か手の空いてて信頼できる艦娘を、その子の寝かしつけ役にできないか、と」

提督「なんだそりゃ。艦娘をプライベートなことにレンタルさせろってことか」
55 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:45:29.35 ID:Tmcr022Ro

礼提督「さすがにお断りしました。もしその艦娘がその子に怪我をさせたりしたら責任を負えませんし、艦娘がそもそも機密情報の塊です」

礼提督「情報公開が許されたとはいえ、そのレベルの接触はできないと、父にもそう報告しましたし、それでいいと言っていました」

礼提督「それと、差し出がましいとは思いますが、その人のお休みを増やす方法を考えてほしいとも、私から父にお願いしました」

提督「マジで人手不足なんだな。つうか、そっちの鎮守府で子守できる艦娘なんているのか?」

五月雨「お願いされたのは長門さんです」

提督「長門?」

長門「ああ。そういう自覚はないのだが、私は無意識のうちに駆逐艦たちを甘やかしているらしい。それを見た憲兵の一人が私を頼りたいと」

長門「ここしばらく、駆逐艦たちの育成のために私が留守を預かっていたんだが、それが手が空いているように見えたらしい」

五月雨「前も言ったと思うんですが、長門さんって他の鎮守府にいる長門さんと比べると、すごく穏やかというか、雰囲気が全然違うんですよね」

五月雨「そのせいか、余所の鎮守府の提督さんから、長門さんをトレードしたいって申し出も、それなりの頻度で来るんですよ」

提督「その話はX大佐から聞いてる。それで長門と潮は、礼提督のところに転籍させず、うちの所属のままにした、って話だったな」

五月雨「はい。そのおかげで断り続けることもできているのですが、このままではいろいろ良くないと思いまして」

五月雨「長門さんと潮ちゃんは、この島に戻っていただいた方が良いんじゃないか、って話を、礼提督としていたんです」

五月雨「おふたりに来ていただいたのも、その話を提督と共有したいと考えたからです」

提督「戻って来る分には構わないが、礼提督の自前の艦隊は大丈夫なのか?」

礼提督「そこは、まだまだこれからだと思っています。長門さんや五月雨さんのご指導もあって、これまで大きな損害もなく進軍できていましたが」

礼提督「それだけに、ちょっと頼りすぎかな、と思うところはありますね」
56 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:46:14.59 ID:Tmcr022Ro

五月雨「若葉ちゃんからも、長門さんが礼提督や駆逐艦に対して過保護すぎると言われてるんですよ」

提督「ふーん。若葉の見立てなら、まあそういうことなんだろうな。で、長門も過保護の自覚がある、と」

長門「若葉にそう言われてから、だな。とくに潮を甘やかしすぎだと、苦言を呈されている」

潮「そ、そんなことありませんよ!?」

長門「潮はそう言うが、私もそれなりに思い当たることがある。眠れないからと枕を抱えて私の部屋に何度か来ているだろう?」

潮「あう……」セキメン

提督「そういう若葉は大丈夫なのか? 龍驤や雲龍も」

長門「若葉は特に変わっていないな。相変わらず頼もしいが、自分に負荷をかけまくっているところが問題なのも変わっていない」

提督「注意できる奴はいねえのかよ」

長門「それは私からも伝えているが、その若葉が度を越えて張り切る姿に触発されてやる気を出す者もいるから、あまり強く言うのも考えものでな」

五月雨「なので、私からも、くれぐれもやりすぎないようにと声をかけています」

長門「それから、雲龍と龍驤は、礼提督のもとではくっつきすぎないように自重しているな」

長門「雲龍が気を使って半歩下がるようになったせいか、距離というか壁ができたように思えて寂しく感じるようになったと、龍驤が言っていた」

提督「だとすると、雲龍や龍驤もこっちに戻りたいって感じか?」

長門「いや、二人は礼提督のもとで頑張りたいと言っている。ここに戻りたい、とまではなっていないな」

長門「これまでの距離感が近すぎたんだろう、という反省も感じているようだし、ふたりきりのときは話が別だ。だから心配ないはずだ」
57 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:46:59.21 ID:Tmcr022Ro

長門「ただ……あの二人も気付いているのだろうが、やはり男性からの視線は気になるな」

長門「好奇の目で見られているというか……お互いの体形が違うのを比較して揶揄するような、聊か面白く思えない話も私の耳に入って来ている」

長門「そういう意味では私や潮もそうなのだが、やはり気分のいいものではないな」

提督「やれやれ……やっぱりそうなるか」

長門「それから、ここだけの話……礼提督もやはり若いだけに周囲に軽んじられているところがある」

礼提督「……!」

長門「父親が憲兵隊長であるおかげで大っぴらにはされていないが……」

提督「そりゃあ、いい歳した海軍の人間は面白くねえだろな、軍隊の経験もない年下の人間が自分たち飛び越して上に就くんだぜ?」

提督「仮に実力があっても、やっかみはあって当然だろ。実績もなけりゃ見た目も普通、憲兵隊長の身内ってだけの小娘、舐められて当然だ」

礼提督「……っ!」

長門「提督のストレートな物言いも相変わらずだな。少しは言葉を選べ」

提督「へいへい。言い方変えたって事実は変わりゃしねえけどな」

潮「で、でも、提督も、そういう経験をしてますよね? 嫌じゃないですか?」

提督「俺はそういうのには慣れきってるからなぁ。この手の話で助言するにしても、せいぜい、聞き流せ、図太くなれ、くらいしか言えねえぞ?」

提督「それに、俺は礼提督みたいに海軍に入るために特段努力してきたわけじゃねえ。手前の食い扶持のために海軍に入ったようなもんだ」

提督「大学も出てねえし、俺がスカウトされた時期は学力は二の次にして艦娘とコミュニケーションがとれるかどうかが重視されてた」
58 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:47:44.43 ID:Tmcr022Ro

提督「つうか、はっきり言って妖精と話せるっつう特技だけで海軍に入れられたようなもんだぞ? 俺の素の能力なんて礼提督よりずーっと下だ」

金剛「テートクはいつも、そうやって自分を必要以上に卑下してマスよネ?」ギュー

長門「自分の能力を隠したがっているように見えるな。そんなに目立ちたくないのか」

五月雨「いつも面倒に巻き込まれるのを嫌がってますよね?」

X大佐「みんな君のことはよくわかってるみたいだね」フフッ

提督「なんでだよ、学力に関しちゃ事実だろ? なんでそんなに持ち上げられてんだ俺」

五月雨「私、提督がお勉強ができないとは思っていませんよ? だって私たちの話をちゃんと聞いて、解決策を導き出してくださってましたし」

提督「悪知恵が働くってだけだろ?」

潮「あ、あの、提督は、提督が思っているほど、その……ひどい人じゃありませんから!」

提督「潮も無理に俺のフォローなんか入れなくていいぞ?」

金剛「ダーカーラー、テートクはそういう Self-denial 発言を控えてくだサイ! テートクは悪い人じゃありまセン!」プンスカ

提督「いや悪いだろ。これまでの話も、もとは俺が甘やかしたのが原因で悪化してんじゃねえか」

提督「リハビリって名目で潮と長門がくっつくのを俺は咎めるどころか黙認してきたし、雲龍と龍驤の関係にも良かれと思って口を出さなかった」

提督「それが今になって艦隊運営の障害になってる。これは俺の甘やかしが原因だろ」

金剛「hmm... そうは言いますケドぉ……」
59 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:48:29.52 ID:Tmcr022Ro

X大佐「難しいところだね。あの島の鎮守府の場合、そもそも轟沈経験艦も運用できる環境だった」

X大佐「特定の艦娘に厳しく接することができない条件があったとも言えるなら、結果論だとしても、それは適切な措置であったとも判断できる」

提督「そういうもんか?」

X大佐「そもそも、艦娘の指揮については、各鎮守府がやりやすいように運営してくれれば良いというのが本営の指針だ」

X大佐「提督が艦娘と良い仲になるケースもよく見受けられて、それによって戦果が上がることも少なくない」

X大佐「勿論、逆に下がる場合もあるし、そういう空気を憂いた本営や上官からの指示や叱責で鎮守府が正常に機能しなくなったこともある」

X大佐「だから、余程の過ちを起こさない限りは黙認し、各鎮守府の司令官に一任するようにしている、というのが現状だね」

X大佐「代わりに、特別警察隊や憲兵隊が各々取り締まっているけれど、彼らはあくまで法が遵守されない場合や国民に被害が及ぶ場合の抑止力」

X大佐「基本、各鎮守府の司令官の方針に口出しはできない。司令官が法を犯さない限りは、海軍の活動を阻害してはいけない立場にある」

五月雨「憲兵隊長さん……礼提督のお父さんも、艦隊を動かす決定権は礼提督にある、って仰ってましたね」

五月雨「アドバイスはできるが、それが正しいかは礼提督が判断し、決定しなければならない。責任の所在を見誤ってはいけない、って」

X大佐「民間出身者も多いからこその規則なんだけど、曽大佐のような強硬派が出てきたりもする。本当に難しいところなんだ」

提督「……仕方ねえ、ってか」

X大佐「今の時代の『提督』が特殊なんだ。その特殊な地位に民間人に就いてもらって、運営を協力してもらっている鎮守府がとても多い」

X大佐「深海棲艦が出現したばかりの当時、彼らによってあらゆるシーレーンが封鎖され、排除するためにたくさんの自衛官が負傷し、犠牲になった」
60 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:49:14.43 ID:Tmcr022Ro

X大佐「それ以前から自衛官不足は課題だ。戦力という意味では、艦娘がその役割を担い、徐々にその練度も上がってきているが……」

X大佐「戦力が充実する一方で、それを統率する『提督』の数は全然足りていない。十二分に戦力を活用できていない……頭の痛い問題だよ」

提督「その辺になると、俺が口を出していい問題じゃねえかもしれねえが……」

提督「それでもとにかく金剛のところはなんとかしろ。望まない人間にいつまでも艦娘の命を背負わせてんじゃねえよ」

金剛「テートク……!」ヒシッ

X大佐「そうだね……そこは、なんとかしたいところだ」ウーン

提督「それから、金剛はそろそろ離れてくれ。長時間拘束されてんのはつらい」

金剛「うぐぅ…… I see ...」ションボリ

潮(金剛型拘束戦艦……)クスッ

長門「?」

提督「で? 長門と潮は戻って来るっつう話だが、いつ戻ってきて、今後どうなるんだ」

X大佐「ふたりには、今日にも島に戻ってもらうよ。礼提督の鎮守府の状況を確認しつつ、問題が発生しなければそのままでいてもらうつもりだ」

提督「急だな!?」

X大佐「不意打ちのタイミングで引き渡さないと、外野がいろいろうるさくてね……」

提督「妨害されかねない程度に面倒臭えってか。まあ、いいけどよ……」

X大佐「勿論、礼提督鎮守府の運営に支障が出た場合は戻ってもらうつもりだ。そういう意味では、お試し期間的な意味もあるね」
61 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:49:59.32 ID:Tmcr022Ro

提督「……発生した問題の内容によっては、長門たちを向かわせるより俺が行ったほうがいいかもしれねえか?」

五月雨「えっ!? 提督が来てくださるんですか!?」

提督「あんまり首突っ込みたくねえけど、五月雨や若葉が困ってるってんなら、俺が出るのもやぶさかじゃねえ」

長門「……あまり無茶はしてくれるなよ?」

提督「そこは礼提督んとこの人間どもの態度次第だ。せいぜい俺が暴れないことを祈っとけ」

五月雨「礼提督、明日から長門さん不在の分だけ、ちょっとでも艦娘のみんなに強く出ましょう! せめて若葉ちゃんみたいに!」

礼提督「ほえぇ!? よ、よくわからないけど……う、うん、が、頑張ってみる!」

長門「……不安だ」アタマオサエ

提督「礼提督の地力が見られるいい機会だと思えよ。いずれは一人前になってもらわなきゃ困るんだからな」

長門「そ、そうだな。やはり私は過保護が過ぎるか……」

X大佐「さて提督。君にはほかにも伝えたいことがあるんだけど」

提督「なんだ?」

X大佐「大将たちが、今の島の現状を一目見たいそうだ」

提督「うーわ来やがった。面倒臭え」

X大佐「おそらく再来週以降になると思うけど、現状確認ということで島に……」

提督「断る。お前らが現場主義なのは理解はするが、一度そういう前例許しちまうと、また次も次も、ってなるのが見えてる」
62 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:50:44.69 ID:Tmcr022Ro

提督「上陸に関しては例外は作りたくねえ。今後上陸できるのは、窓口になってもらってるあんたと与中将くらいに限定しておきたい」

X大佐「大将の上陸は望ましくないと?」

提督「先に条件として示した通り、上陸できる人間はうちの鎮守府に所属していた艦娘を連れている者だけにしたい。大将も例外にはしたくねえ」

提督「あんたに暁たちを頼んだのも、その縛りを作って守らせたい意図があったからだ。H大将はともかく、ほかの大将たちはそうじゃねえだろ」

提督「そのH大将も、俺たちに好意的ってわけでもねえからな。そういう意味では交渉役に適してはいるが、島への上陸の許可はなあ……」

祥鳳「それでは、私が向かうのではいかがでしょうか」

X大佐「祥鳳?」

祥鳳「最近はリモートでの会議も増えています。大将の皆さんには、沖合の船の中で待機していただいて」

祥鳳「私がカメラを持って、テレビ会議で島の中をリアルタイムでリポートする、という方法もとれるかと思います」

X大佐「……」

提督「……」

祥鳳「提督、いかがでしょう」

提督「……まあ、悪くねえかな?」

X大佐「!」

提督「俺が危惧しているのは、人間が入ってきて深海棲艦やメディウムがおとなしくしてくれるか、って点と」

提督「大勢押しかけた人間がこっちの指示も聞かず勝手に行動しないか、って点だ」
63 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:51:31.03 ID:Tmcr022Ro

提督「艦娘が一人代表として来て島の中をリポートするなら、こっちとしても御しやすいし、メディウムが危害を加える恐れも減る」

提督「深海棲艦たちがどう思うか、って課題は残るが、そこも俺が事前に話しておけば何とかなるか。必要があれば退避もさせられる」

祥鳳「それでは……!」

提督「祥鳳がカメラを持つって言ってたが、その役割は以前うちにいた青葉にやらせたほうがいいな。画面に映ってた方がX大佐も安心できるだろ」

X大佐「……!」

提督「それから、撮影時には暁か川内のどちらかを一緒に連れてきてくれ。一応は祥鳳のボディガード役だ」

提督「その二人のどちらか、もしくは両方と祥鳳を、青葉が撮影しつつ俺たちが案内する。それが一番いいと思うが、どうだ?」

X大佐「そうだね……うん、そのほうがいいな」

提督「よし。んじゃあ、青葉と暁たちには事前に一度島に入ってもらうか。島の中が新しくなってからの施設をちゃんと見たことがないはずだ」

提督「都合が合うなら、与中将のところに行った武蔵と那智も呼んで……せっかくだし、祥鳳も一緒に事前の説明会をした方がいいよな?」

長門「是非そうしてくれ。私も島が新しくなってから一度訪れているが、目新しく感じる部分も多い。初見では、どこを見ていいかわからなくなるはずだ」

提督「大将たちの説明はそのあとだな。あとは青葉の都合がわからねえ。与中将にも連絡して段取りしてくれ」

X大佐「了解だ。祥鳳、悪いけどこの件は君にお願いするよ」

祥鳳「はいっ!」

提督「そうなると、沖合にまた海軍の船が停泊するわけだな。護衛つけておかねえと……」
64 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:52:14.80 ID:Tmcr022Ro

X大佐「それから最後にもうひとつ」

提督「ん?」

X大佐「報道関係のメディアも君に取材を申し込みたいそうだ」

提督「……」ウヘェ

五月雨「提督、あからさまに顔に出すぎですよ?」メッ!

X大佐「勿論、嫌なら断るよ。ただ、彼らの書く記事が、あまり放っておいていいと思えなくてね……」ゴソゴソ パサ…

提督「ああ? 週刊誌か?」

週刊誌『特集! 日本政府が深海棲艦と急接近 裏で手を引いていたのは逮捕された野党議員の息子たち!?』

提督「……なんだこの見出し」イラッ

X大佐「この週刊誌には、君があの議員の息子であることや、離縁のため分籍したことも書いてある」

礼提督「えっ、議員さんの息子さんなんですか!?」

提督「あっちの都合で縁切り済みだけどな。つうかよりによって表紙に『息子たち』かよ。あれと一括りにすんじゃねえよ、くそが」

提督「そもそも奴とはもう親子でもなんでもねえってのによ……!」チッ

礼提督「うーん、でも、単純に戸籍の話で言うと、分籍したとしても親子関係自体は法律上変わらないですよ?」

提督「そうなのか? いっそ死亡届でも出しといたほうが、縁切るためには良かったか」

X大佐「それだと君の給料の振込先がなくなるよ。海軍は君をタダ働きさせたいわけじゃないし、そもそも君を死人扱いしたくない」

提督「生きてる人間死んだ扱いにして給料出さなかったら海軍の問題になるってか。まあ、それはいいとして……」
65 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:52:59.30 ID:Tmcr022Ro

提督「こいつを書いた連中が、俺から直で話を聞きたいとかほざいてんのか」

X大佐「そういうことだね。これについても断ってもいいし、やるにしても大将たちの調査日とは別途予定するよ」

提督「……まあ、来てもいいが……くだらねえこと訊いてくるようなら、命の保証はできねえぞ」

礼提督「ふえっ!?」ギョッ

金剛「テ、テートク!?」アセアセ

提督「俺たちは、信用できない人間は容赦なく排除する。それがたとえ善良な一般人と言われててもだ」

提督「こっちは深海棲艦引き連れているんだ。普通に無礼を働いて顔を潰されて、無事に帰れると思ってもらっちゃ困る」

X大佐「……わかった。先方には、君の言葉をそのまま伝えることにするよ?」

提督「ああ、ついでに、俺たちに関して根も葉もない作り話を流布するようなら容赦なく潰す、とも伝えてくれよ」

礼提督「!?」アングリ

X大佐「……本気かい?」

提督「あんまり舐めたこと書かれて黙っていられるほど俺も寛大じゃねえし、そもそも深海棲艦がおとなしくしてくれると思うか?」

X大佐「……」

提督「書かれた記事の中身によっては、深海棲艦たちが怒り出すかもしれねえし、俺だって不愉快に思うかもしれねえ」

提督「仮に深海棲艦たちが怒りに任せて襲撃を計画したとして、俺がそれを制止しないで見過ごすことだって、決してないとは言えねえぞ?」
66 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:53:44.30 ID:Tmcr022Ro

提督「ついでに言えば、メディウムたちの十八番(おはこ)は暗殺だ」

礼提督「あん……っ!?」

提督「怒り心頭のあいつらがまとめてそっちに向かったらどうなるか……考えるまでもねえだろ」

X大佐「……深海棲艦たちの機嫌を損ねないよう気をつけろ、と伝えた方が良さそうだね」フゥ…

礼提督「さ、五月雨さん……私、もしかして、とんでもない人と話してますか?」ガタガタ

五月雨「そんなに怯えなくても大丈夫ですよ! 礼提督は、提督に危害を加えてるわけじゃないんですから!」

提督「そういうことだ。あんたは俺たちに対して敵意がないこともわかってるし、こうやってまともに話し合えてる」

提督「話が通じてないわけじゃねえだろ? ちゃんと分かり合えてるなら怯えなくてもいいぜ、今の時点ではな」

礼提督「そ、そうですか……」ヒヤアセ

金剛「そうは仰いますケドー、テートクはもう少し言動に気を付けた方が良いと思いマスヨー?」

金剛「今も誰彼構わず脅しをかけてるみたいで、悪者になりたがるところが治ってないみたいデース」

提督「いいんだよそれで。俺たちが恐ろしい存在である方が、お前たちを守るのに都合がいい。現にそれで長門たちも横取りされなかったんだし」

提督「それに、俺たちのことを舐めくさった海賊もどきが、未だに出没しては島の海域に侵入してきてる」

提督「俺たちが弱い存在じゃないってことをちゃんとアピールしとかねえと、これからもそういう馬鹿を相手してやらなきゃならねえ」

提督「だからX大佐も、下手に人間が島に近寄らないために、わざわざ大げさに警告して、協力してくれてんだ。だよな?」

X大佐「そうだね」
67 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:54:29.43 ID:Tmcr022Ro

長門「礼提督、あなたは艦娘たちを大事にしてくれる人物であることがわかっている。提督に敵視される理由はないのだから、安心して欲しい」

礼提督「そ、そうですか……な、なら、安心、かな?」オドオド

提督「まあ、そんな風に怖がってくれててもいいんだけどな。普段からそうなら、俺が怖い奴だっつう信憑性が増すし」

提督「一部の連中にはちょっと馴れ馴れしくしすぎたからな……あんまり、どうでもいい他人とは関わりたくねえし、侮られたくもねえ」

潮「提督、人間嫌いですもんね……」

提督「まあそういうわけでだ、大将たちにしてもマスコミにしても、あまり慣れあいたくはねえんだ」

提督「特にマスコミは平気でこっちの立ち入ってもらいたくないところにズケズケ入って来るからな。心情的にも物理的にも」

潮「そういえば、昔テレビ局の人たちが島に来た時も、そうでしたね……」

礼提督「え、そんなことがあったんですか!?」

長門「ああ。島を訪ねてきたテレビスタッフが、勝手に鎮守府内を探索しようとしたり、夜中外に出歩いたり……」

X大佐「死亡事故も起きたんだよね? 喧嘩して海に落ちたって聞いているけど」

礼提督「ええ!? お、おおごとじゃないですか!?」

長門「彼らの勝手な行動のために、いろいろまずいことが起こっていたんだ。前例があるからこそ、提督は島に人間を入れたくないんだろうな」

五月雨「礼提督は島に入ってもいいですよね?」

提督「まあ、入る資格はあるけどよ。ただ、その必要はあるか?」

礼提督「うーん……あんまり、ないと思います。私が行って何ができるか……そもそも、何をしに行くのか、目的がありませんし」
68 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:55:16.09 ID:Tmcr022Ro

提督「だよな。礼提督は下手に俺たちに関わらずにいた方がいい。経験の浅い礼提督が、うちに出入りしてる場合でもねえしな」

X大佐「そうだね。礼提督は引き続き現状の任務を遂行して、艦隊の練度向上を最優先に努めて欲しい」

礼提督「は、はいっ! わかりました!」ビシッ

提督「ああ、それから、興味本位で俺たちのことを訊きに来る奴らもいると思うんだが、まともに取り合わなくていいからな?」

提督「しつこいようなら俺に連絡しな。俺のことを質問してきたら必ず報告する決めになってる、って脅してやってもいい」

五月雨「わかりました。そのようにさせていただきます」

金剛「ヘーイ、テートク? そろそろお話は終わりデスカー?」ニジリヨリ

長門「金剛はまだ抱き着き足りないのか」アタマカカエ

提督「ちょっとはこらえ性ってのがねえのかよ」アタマカカエ

 扉<コンコンコン!

択捉「失礼いたします! 礼提督、お話は終わりましたでしょうか!」ガチャ!

提督「うん? 誰だ、このちっこいの。こいつも艦娘か?」

礼提督「あ、私の鎮守府の海防艦娘です! 今日は秘書艦を務めてもらってるんですよ!」

提督「かいぼうかん……? お前、どっかで……」
69 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:55:59.48 ID:Tmcr022Ro

択捉「失礼ですが、私があなたにお会いするのはは初めてではないでしょうか? 申し遅れました、私、択捉と申します!」ビシッ

提督「択捉? ……ああ、あれか、思い出した。あの時のテレビ局の奴と一緒に写ってた艦娘だ」

択捉「てれびきょく?」クビカシゲ

提督「そういえば、あいつ今も艦娘に関わってるって言ってたな……」ウーン

提督「なあX大佐、以前、L少佐が翻訳の仕事をしてる男を連れてきたことがあったよな? そいつと連絡取れないか?」

X大佐「? 彼を呼ぶのかい?」

提督「そいつ、昔、テレビ局の人間と一緒に仕事したことがあって、あの島に来たことがあるんだよ」

提督「で、そいつがその時一緒に仕事してたテレビ局の人間と連絡取り合ってるみたいで、今も艦娘が絡む仕事によく呼ばれてるらしい」

提督「でだ。可能ならその二人を事前に呼び出して、俺のことをメディアの連中がどこまで知っているのか、先に聞き出しておきたいんだ」

X大佐「なるほど、メディアにも提督のことを知っている人間がいるんだね。L少佐に確認させるよ」

礼提督「ところで、択捉ちゃんのご用は何だったの?」

択捉「あ、はい! 礼提督、申し訳ありませんが、少しだけお時間いただけますか?」

提督「ん? なんだ、内緒話か」

択捉「はい! あ、いえ、内緒というわけでは……」

提督「まあいいや、急ぎなら早く伝えてやれ」
70 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:56:44.41 ID:Tmcr022Ro

択捉「は、はい、申し訳ございません。礼提督、ちょっとこちらにお願いします」

 (択捉に連れられて礼提督が部屋を出ていく)

提督「……俺が部屋を出れば良かったか?」

長門「そんなことはないだろう」

提督「けど、俺たちの用事はほぼ終わりだぞ? そのまま帰っても……ん? なんか揉めてるっぽいな?」

金剛「揉めている? 誰がデース?」

提督「いま出て行った二人だよ。なんかわちゃわちゃしてんぜ?」

金剛「???」クビカシゲ

X大佐「もしかして、二人の様子が見えるのかい?」

五月雨「私、話を聞きに行ってきます!」タッ

長門「提督、部屋の外なのに、何が起きているのかがわかるのか……?」

提督「……あ。そういえばそうだな」ハッ

潮「すごく自然に扉の向こうの様子を話してましたよね?」

提督「マジで人間離れしていってるなあ、俺」ウーン
71 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/05/31(日) 20:57:29.36 ID:Tmcr022Ro
ということで、今回はここまで。

>43-44
お待たせしててすみません。
しばらくは、最後の場面へ持っていくための足掛かりになると思います。
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2026/06/03(水) 17:10:37.60 ID:8YpJIS7U0
> 71
まだまだ楽しめるということですね!
更新待ってます!
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2026/06/03(水) 17:11:28.42 ID:8YpJIS7U0
> 71
まだまだ楽しめるということですね!
更新待ってます!
74 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:36:14.17 ID:XhwbKQBIo
それでは続きです。
75 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:37:00.20 ID:XhwbKQBIo

 * *

五月雨「ある鎮守府から、緊急で艦娘の捜索依頼が届いたそうです。ただ、それが内容がちょっと不明瞭でして」

提督「捜索依頼? 轟沈でもさせたのか」

択捉「いえ、その部分については明らかにしてもらってないんです。ただ単に、行方が分からないので探してほしい、とだけ」

X大佐「どこの鎮守府からの要請かな」

択捉「えーと……礼提督、詳細を申し上げてよろしいですか?」

礼提督「えっ? あ、そ、それは私が言うね? ええと、そのぉ……良提督鎮守府からです。駆逐艦の秋雲、って子が、行方不明だと……」

潮「良提督……」ビク

長門「行方不明、だと?」マユヒソメ

提督「ほーん」

X大佐「祥鳳、その艦娘の轟沈の記録がないか、確認とってもらえるかな?」

祥鳳「はい!」

提督「ああ待て待て。行方不明なんだろ? 轟沈した、とは言ってきてないわけだよな?」

礼提督「そ、そうですね。メールの文面にも、轟沈とは書いてありませんでした」

提督「で、択捉は俺たちから離れてこそこそ伝えてきたわけだが、内緒にしたい理由があるんじゃねえかと思ってる。どうだ?」

長門「良提督が何らかの失態を犯し、それを隠したがっているということか?」
76 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:38:00.02 ID:XhwbKQBIo

提督「つうか、さっきから礼提督の顔の引き攣り具合が面白えことになってんだよな。なんか嫌なことでも書いてあったか?」ニヤッ

礼提督「え、いや! そんなことは!」

五月雨「……あの、提督。礼提督は、良提督が苦手なんです」

礼提督「さ、五月雨さん!?」

五月雨「私も良提督には何度かお会いしてますが、すごく丁寧なのに、なんとなく見下した言い方をする方でして」

五月雨「なんていうんでしょう、ねちっこいっていうか、余計なプレッシャーをかけてくる、っていうか。私はあまりいい印象がない方です」

提督「だろうと思ったぜ。良提督の名前が出たときの長門や潮の反応見ても、あんまり評判いい奴じゃなさそうだったし」

長門「……よく見ているな、貴様は」

五月雨「それから今回の連絡を受けた後で択捉ちゃんが電話を受けたときも、くれぐれも上の人たちには報告するな、と言われたみたいで」

択捉「さ、五月雨さん!? そこまで言っていいんですか!?」

五月雨「択捉ちゃんも、礼提督の立場が悪くなるのを恐れて、今の話もしないつもりだったんでしょう?」

択捉「う……」

X大佐「それは、良提督が礼提督の立場を悪くできる、という認識でいいのかな?」

択捉「……はい。良提督に近しい提督の皆さんの間で、何度か礼提督を辱めるような物言いをされたことがありまして」

択捉「直接的な悪口ではないので、言い返すと『別に礼提督のことじゃないよ』とはぐらかされてしまうんです。それで反論もできなくて……!」
77 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:38:45.94 ID:XhwbKQBIo

択捉「礼提督は波風を立たせないようにと、私たちにも気にしないようにと仰っておられますが……!」

提督「へっ、典型的な陰湿系のいじめっ子じゃねえか。根腐れ起こしてやがるぜ」ククッ

X大佐「そのようだね」

提督「とりあえずだ、どんな文面で捜索依頼が来てんだ? 文書で来たんなら、俺にも見せてもらいてえな」

礼提督「よ、よろしいんでしょうか……一応、海軍の内部的な連絡なんですが」

X大佐「轟沈している恐れがあるなら、提督に相談したほうがいいと思うけどね。それでも不安だというのなら、僕が見て判断しようじゃないか」

礼提督「……で、では、恐縮ですが、よろしくお願いします」タブレットサシダシ

X大佐「うん。さて……」タブレットウケトリ

五月雨「あの、提督? もしその秋雲さんが轟沈していたとしたら、提督のところに流れ着いたりしてないでしょうか?」

提督「おう、轟沈じゃねえけど来てるぞ」

礼提督「え」

択捉「え」

五月雨「来てる!? ……って、そうなんですか!?」

金剛「Hmm... やっぱり、そうデシタカ……」アタマオサエ

X大佐「……相変わらずだね」
78 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:39:29.48 ID:XhwbKQBIo

潮「って、いうことは、もしかして……その秋雲さんの提督さんのことも、もう調べたりしてるんじゃないですか?」

長門「どうなんだ、提督」

提督「いや、そいつに関しちゃ俺は調べてねえ。つうか、与中将が調べてるかもしれねえな」

X大佐「は……? 与中将殿が知っているのか?」

提督「秋雲が流れ着いたのが、ちょうど中将が乗った輸送船が沈められたときでな。与中将もその場にいて、秋雲の話を直接聞いてんだ」

提督「で、与中将が秋雲の話は他言しない方が良さそうだって言ってくれてな。だからこの件に関しちゃ、俺がやったのは秋雲の保護だけだ」

提督「そういう事情で話題に出さなかったんだが……せっかくだ、今度大将たちを島に呼ぶときに、良提督も一緒に連れてきてもらうか?」

X大佐「……大将に良提督の処分をお願いしたい、ってことかい?」

提督「いや、奴がどんな言い訳するかを秋雲に聞かせたい。それで秋雲が戻る気になるならそれでいいって話だ」

提督「とはいえ、ここにいる面々の反応を見る限り、そうはならねえだろうけどよ」

X大佐「秋雲は島で保護してる、ってことでいいのかな?」

提督「ああ。今のところ、秋雲は良提督のいる鎮守府に戻る気はないようだ。そもそも秋雲が出奔した原因を作ったのも良提督だしな」

X大佐「では、何があったのか後で個人的に聞かせてもらうよ。提督、時間はあるかな?」

提督「俺が喋ってもいいが、できれば与中将から聞いてくれるか? 秋雲から事情を聞いて以降、こっちじゃ特に新しい話はないんだ」
79 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:40:14.55 ID:XhwbKQBIo

提督「良提督の処遇に関する話にもなるだろうし、そこは俺が口を出す領分でもねえ」

X大佐「……では、この件は与中将殿と情報共有しよう」

提督「そうしてくれ。一応、俺の私見だが……秋雲からの話を聞いた感じ、そいつは自分より下の人間を見下したがるタイプらしい」

提督「正直、見目若いあんたや与中将から叱責されて、まともに反省するかは疑わしい」

提督「そういう意味でも、上の誰かを呼んでおいたほうがいいかもしれねえな」

X大佐「なるほど。ありがとう、伝えておくよ」

提督「っつうわけで五月雨、そいつから来た捜索の件は何もしなくていいぞ。適当に時間潰してから見つかりませんでしたって返しとけ」

五月雨「はい、わかりました」

礼提督「い、いいんですか? 何もしなくて……」

X大佐「良提督の配下の艦娘が行方不明になったことについて、礼提督に落ち度はないんだ。君が委縮する必要はないよ」

提督「だな。ついでに、良提督の嫌がらせの証拠も集めて整理しとけ」

礼提督「そ、それこそいいんですか……?」

提督「いいに決まってんだろ、なにを奴隷根性出してんだ。我慢するのは美徳でもなんでもねえぞ。敵に遠慮なんかしてんじゃねえ」

長門「提督。さすがに『敵』はちょっと言いすぎだ」

提督「別にいいだろ、俺は俺のスタンスで好き勝手に物申してるだけだ。海軍として、人としての正しいことは、X大佐が言えばいい」

提督「俺みたいな『人でなし』が正しいことなんか言っても説得力ねえからよ」

X大佐「……よく言うよ」フフッ
80 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:40:58.68 ID:XhwbKQBIo

提督「さてと。話は一通り終わりだな? んじゃ五月雨、後のことは任せたぜ」

五月雨「はいっ! おまかせください!」ケイレイ

提督「X大佐もいろいろ任せて悪いが、まあ面倒みてくれや。金剛のことも、くれぐれも頼んだぜ」

X大佐「わかった。難しいが善処しよう」

金剛「うぅぅう〜……テートクゥゥ〜!」

提督「お前を無理矢理連れ帰っても、あっちの問題は解決しねえだろうし、中将夫人のこともある、お前自身も納得はできねえだろ?」

提督「俺も文句は言い続けるからよ」

 チュ

提督「おでこで悪いが、今はこれで勘弁してくれ」

金剛「」

提督「さて、戻るか。長門、潮、先行くぞ」スタスタ…

潮「は、はいっ!」

長門「あ、ああ……では、私たちはこれで失礼する」ケイレイ

礼提督「はいっ! これまでありがとうございました!」ケイレイ

択捉「ありがとうございました!」ケイレイ

X大佐「さてと、まずは日程調整だね。大将たちの予定を確保しないと……それから礼提督」

礼提督「は、はい!」
81 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:41:45.19 ID:XhwbKQBIo

X大佐「提督も言っていたけど、良提督が過去に何をしていたか、情報を集めてもらえるかな。僕と、そちらの鎮守府の憲兵隊とで共有したい」

礼提督「わ、わかりました! その……お手数おかけして申し訳ありません」

X大佐「こういうのも僕たちの仕事だよ。気にしなくていいんだ」

五月雨「提督も、困ってた私たちをたくさん助けてくださいましたから、きっといい方向に向かいますよ!」

礼提督「うん……!」コクッ

X大佐「……彼は、こういう問題とも、何度も付き合ってきたのかな」

五月雨「はい! ただ、やり方が容赦ないと言いますか、もうちょっと穏便にというか。ああいう態度じゃないと誤解も減るんですが……」

祥鳳「なんていうか、ツンデレな方なんでしょうか」

X大佐「ツンデレ……って言うのかな、彼は」

択捉「あ、あの、すみません! こちらの金剛さんはどうしたんでしょう、と言いますか……どうしましょう?」

金剛「///」カオマッカ

五月雨「金剛さん?」

金剛「は、初めて、テートクの方から、キスしてもらいまシタ……」ミミマデマッカ

五月雨「え?」

金剛「し、しばらく顔を洗えまセン……」カオヲオオッテユゲボシューー

全員「「……」」

礼提督「い、意外と、純情な方なんですね……?」
82 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:42:29.36 ID:XhwbKQBIo

 * *

長門「……」

潮「……」セキメン

提督「……どうかしたか?」

長門「いや、まさか貴様が金剛のおでこにキスをするなんて思わなかったからな」

潮「ど、どきどきしちゃいました……!」コクコク

提督「まあ、良くも悪くも、島の奴らに鍛えられてるんでな……金剛も随分長いこと外に出てる。頑張ってんだから、あのくらいはな」

潮「そ、そうなんですか……」セキメン

長門「私が知るかつての貴様なら絶対にしないと思っていたから、余計に驚いたぞ。鍛えられたとはいえ、どういう鍛えられ方をしたんだ?」

長門「この調子だと、島に戻ったらいろいろ様変わりしていそうだな」

提督「そこまでじゃねえよ。この前お前たちが戻ったときからは、たいして人員は変わってねえ」

提督「多少、人か増えたり……あとは、姿が変わってたりしてるって程度だな」

潮「それでイ級が人型になってたりしましたよね……普通に驚きますよ?」

提督「そうか?」

長門「提督は慣れてしまって感覚が麻痺しているな」
83 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:43:14.48 ID:XhwbKQBIo

 * 墓場島鎮守府 埠頭 *

明石「あ、おかえりなさい、提督。ちょうど遠征組が戻ってきましたよ」

提督「お、そうか」

長門「……」

潮「あ、あの、また、人型の深海棲艦が増えてませんか? 増えてますよね?」

提督「まあまあ、増えたかな」

吹雪型っぽい深海棲艦「ア、シレイカンダ!」

長良型っぽい深海棲艦「テートクー」フリフリ

朝潮型っぽい深海棲艦「オ仕事、終ワッタワヨー」

提督「おう、お疲れさん。後で報告書頼むぜ」

吹雪型っぽい深海棲艦「リョウカイデース!」

長門「あれは吹雪型か? どこか見覚えのある顔なんだが……吹雪型の誰でもないのだな」

明石「提督が言うには、深海棲艦の魂は混ぜこぜなんだそうです。似たような魂が集まって、結果としてあの子だと吹雪型に見えるみたいですね」

潮「それで……あんな風に姿が変わったのは、みんな提督と何かしらのお話をしたから、ってことですか?」

提督「まあな。島にいる深海棲艦とは、だいたい個人面談した」
84 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:43:59.23 ID:XhwbKQBIo

明石「それで姿の変わったのが、駆逐艦や軽巡洋艦の皆さんですね」

長門「ということは、殆どの駆逐艦たちが人型になったのか?」

提督「殆どと言うか、全員そうなったな。軽巡も、ヘ級は脚が生えたし、マスクしてたツ級とかも素顔出すようになったし……」

明石「雷巡や重巡以上の深海棲艦は、もともと人型だったこともあって外見的な変化は見られなかったんですが、個性が出てきてましたね」

提督「リ級やネ級あたりがそうだな。髪を伸ばし始めた奴もいるし、服を着始めた奴もいる」

提督「で、面談してていろいろ分かったんだが、この島にいる深海棲艦は大きく分けて2つのグループがあってな」

潮「グループ……ですか?」

提督「例えば、さっき見た3人はこの辺で轟沈した艦娘っぽいんだよな。それとは別に……」

??「アラ、提督。オツカレサマデス」

長門「! この深海棲艦はもしや……!」

明石「はい、フレッチャー級駆逐艦です。米艦隊の」

F級深海棲艦「ソチラノフタリハ……初メテ、オ会イシマスネ?」

提督「ああ。長門と潮だ、後で紹介する」

F級深海棲艦「カシコマリマシタ。デハ、ノチホド」ペコリ
85 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:44:44.44 ID:XhwbKQBIo

長門「泊地棲姫の配下の姫級に米軍艦が多いのは知っていたが、駆逐艦もそうだったということか」

提督「そういうこった。ただ、俺はまだ米軍艦の駆逐艦娘を見たことがねえから、そいつらに似てるかどうか自体わかってねえ」

提督「それから、あいつと似た顔が15人くらいいるんだよ。名前がわからねえんで便宜上番号で呼んでるけどよ」

潮「それって、艦だったころの名前とかがわからない、ってことです、よね?」

提督「ああ。全員が全員、よく覚えてないって言ってた。名前が名乗れるならそれで呼んでやりてえが、わからねえんじゃしょうがねえし」

提督「艦娘も同じ艦娘が複数人いるだろ? もとの艦が全員同じだったらどうしようかとも思ってる」

提督「ひとりだけ名前呼ぶのも変だし、そうなるとやっぱり番号呼びになっちまうんだよなあ」

長門「そういえば、最近発見された深海駆逐艦、駆逐ラ級も、個体差があるせいで、ギリシア文字を識別のために付与していたな」

提督「ラ級? また新しいやつが出てきたのか?」

長門「ああ。人型の駆逐艦なんだが、ラ級α、ラ級βというように呼ばれている」

提督「番号呼びと変わらねえ気がするが……新しい人型か。いまいちよろしくねえな」

長門「? どういう意味だ?」

提督「深海棲艦で人型の駆逐艦って、これまで発見されてたのが駆逐棲姫とか駆逐古姫とか、強い部類に入る深海棲艦が多かったろ?」
86 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:45:29.57 ID:XhwbKQBIo

提督「うちの深海の駆逐艦も人型になっていれば、警戒されていきなり攻撃されることが減るんじゃないかって考えてたんだよ」

提督「できる限り戦闘は避けたいっつうか被害を受けたくないから、擬態するって意味でも少しは効果があってほしいと思ってたんだ」

提督「それが、人型が珍しくもないとなると、うちの深海棲艦たちも初見で攻撃を受ける可能性が高くなりそうだな……」

明石「とはいえ、仮に警戒されても、例えば十分な戦力を持つ艦娘からは普通に攻撃されるかもしれないですよ」

明石「深海棲艦もいくつかの勢力に分かれて対立してるみたいですから、外海に出れば余所の深海棲艦から攻撃されることもあるでしょう」

明石「私は、提督のその考えは最初からあまりあてにならないと思ってますけど?」

長門「ふむ……海軍もあの組織の件で混乱はしているものの、全体の戦力そのものは上がっている。提督の望む効果は期待できないかもしれないな」

提督「そうか。ま、いいか……人型になってた方が、生活するうえでいろいろ都合がいいことに変わりはねえ」

提督「手足があれば飯も一緒に食えるし、服も選べる。陸も歩けるし、一緒に行動するにも便利だからな」

長門「そちらのほうが重要そうだな。ところで、さっきの深海棲艦、長良型……由良に似ていたが、軽巡か?」

明石「はい、軽巡ト級だった深海棲艦ですね」

長門「ト級……あの口がふたつついているあの軽巡か」

潮「み、みんな、人型になってるんですね……!」

明石「最近は、食堂がカフェとしても機能してるからね。賑わってるんじゃないかな?」
87 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:46:14.48 ID:XhwbKQBIo

 * 墓場島鎮守府 食堂内 *

長門「深海棲艦たちも来るようになったと聞いていたが、今日は人がいないな?」

泊地棲姫「営業時間外ダカラヨ。提督ガ、オ前タチヲ連レテクルト言ウカラ、休ミニシタンダ」

潮「そ、そうだったんですね……お休みの時にコーヒーまで出していただいて、すみません」ペコリ

泊地棲姫「気ニスルナ、私モ休ミタカッタトコロダ。ソウ思ウクライニハ、繁盛シテイル」

長門「そうか。充実しているようでなによりだな」

泊地棲姫「ソレカラ、提督。今後ハ、厨房ニ入ラナクテイイゾ?」

提督「ん? 邪魔だったか?」

泊地棲姫「ソウジャナイ。オ前ガイルト忙シクナルンダ」

泊地棲姫「普段ハソレホド寄リ付カナイ者デモ、オ前ガ厨房ニイルト、話ガ変ワッテクル」

提督「マジか」

明石「提督ってば、まーた何かやったんですか?」

提督「お前はいつも俺が何かやらかした前提で話を進めんじゃねえよ……つか、なんでそうなるんだよ」

泊地棲姫「コレハ私モ予想シテイナカッタコトダガ……」

泊地棲姫「実ハ、人型ノ姿ニナッテ、口カラ言葉ヲ発シタリ、陸上ヲ自由ニ歩キ回レルヨウニナレタコトヲ、ホボ全員ガ喜ンデイルノヨ」

泊地棲姫「ホカニモ、フォークトナイフヲ持ッテ、アタタカイ食事ヲ楽シムコトガ、デキルヨウニナッタリ、人型ノ生活を満喫シテイルヨウデネ」

長門「確かに、食べる楽しみが増えた、というのはなかなか大きいな」
88 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:46:59.33 ID:XhwbKQBIo

潮「深海棲艦って、ご飯を食べること自体、なかったんでしたっけ?」

提督「ほぼなかったらしいな。普段は海底資源から燃料補給しかなかったっつうし」

提督「あってもせいぜい生魚をそのまま食うとかで、それだとエネルギーの変換効率が悪いとか、そんな理由でやってこなかったはずだ」

明石「料理の概念もなかったらしいですから、食堂ができた当時も、ヲ級さんたちが興味深そうに厨房を覗き込んでいましたねえ」

泊地棲姫「ソンナ楽シミヲ与エテクレタ男ガ、ドンナ料理ヲ作ッテイルノカ、興味ヲ持ツノモ当然ダロウ?」

潮「提督って、お料理上手なんですか?」

明石「少なくとも下手ではないですよね? 以前、お蕎麦とかご馳走になりましたけど」

提督「ありゃ乾麺を茹でただけだぞ。一応は自炊してたから、簡単なものは作れるけどよ」

泊地棲姫「ソウ言ウ割リニハ、手際ガ良カッタゾ? 駆逐艦タチモ、興味深ソウニ厨房ヲ覗キ見シテイタダロウ」

提督「ん? そういう意味だったのか? 俺はてっきり腹減ってて待ちきれなかったのかと思ってたんだが」

明石「っかぁーー! 相っ変わらずですねえ、そういうところは! あーやだやだこの人はもう!」

潮「明石さん……」タラリ

泊地棲姫「自分ノ影響力ヲ自覚シテイナイ、トイウノハ、考エモノダナ」

泊地棲姫「私ハ心配ダゾ? オ前ノ部屋ニ行コウトスル深海棲艦ガ、コレ以上、増エタリシナイカ……私ヨリ、親密ニナッタリシナイカ、トナ?」ズイ

提督「……」
89 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:47:44.45 ID:XhwbKQBIo

長門「そうは言うが、この島の深海棲艦のほとんどは、泊地棲姫の配下だろう? お前を差し置いて提督に手を出したりするのか?」

泊地棲姫「アリ得ルゾ。軽巡棲姫ハ言ウニオヨバズ、戦艦ヤ重巡タチモ、ソレナリニ自我ガアル」

泊地棲姫「人ノ言葉ヲ発スルヨウニナッタ駆逐艦タチモ、人並ノ考エヲ持ツヨウニナッタ。私ニ向カッテ、我儘ヲ言ウヨウニモナッタ」

泊地棲姫「ソレコソ姫級ニナッタ奴ラハ、調子ニ乗ッテ提督トスキンシップスルクライニハ、生意気ニナッタゾ。ナァ?」チラリ

明石「艦娘たらしなだけじゃなく、深海棲艦たらしですもんねえ、提督って」

提督「たらしこんでるつもりはねえんだが……」アタマガリガリ

泊地棲姫「マズ、オ前ガ人間カドウカヲ別ニシテモ、深海棲艦ニ触レラレル男、トイウノガ珍シイ」

提督「ああ……そういや戦艦棲姫たちもそんなこと言ってたな」

泊地棲姫「ソレカラ、オ前ノ性格ヤ存在ガ、私タチニトッテ都合ガ良スギル。ブッキラボウデハアルモノノ、誰ニ対シテモ分ケ隔テナク接スルシ」

泊地棲姫「クチデハ面倒面倒ト言イナガラ、面倒見モ良イ。チカラモ弱クハナイシ、顔モ悪クナイ……」

潮「むしろ、いいほうですよね……」ボソッ

明石「んん?」ニチャァ…

潮「ひっ」

泊地棲姫「ソシテ、頼メバ押シ倒サレテクレルヨウナ、オ人好シダ」ペロリ

潮(舌なめずりしてる……)タラリ
90 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:48:29.55 ID:XhwbKQBIo

明石「ほらほら、言われてますよ提督? ちょっと頼めばなんでもお願いを聞いてくれる都合のいい男って見られてますよー?」

提督「なんでもじゃねえよ」

明石「えー? なんでもやってるじゃないですかー!」

長門「明石、あまり提督を困らせてやるな。提督は、深海棲艦たちがこの島で生活できるように心を砕いてくれているんだ」

長門「だからこそ、深海棲艦が私たちの生活に合わせてくれているようにも思える。メディウムたちもそうなんじゃないか?」

明石「わかってますよぅ。もう、長門さんったら堅苦しいですね〜、ちょっとしたお茶目ですよ、お茶目」

潮「ところで……そのメディウムのみんなの姿が見えないんですが」

提督「ああ、あいつらは今、あっちの世界の神殿の侵入者討伐に出向いてる」

長門「なんだ、メディウムたちがいた世界も大変な状況なのか?」

提督「いや、今は大したことはねえ。何日か前、そこそこ大規模な一団に神殿を取り囲まれてたんだが……」

提督「その中にいた敵方の中心人物を何人か潰したら、パニック起こしてとんぼ返りしていったからな」

提督「今は今で散発的に偵察が来てるっつうから、神殿に近づいた人間をとっ捕まえて連中が何を企んでるか聞き出せないか……」

提督「ニコたちと相談して、いろいろやってもらってるとこだ」

長門「我々が手伝えることはないのか?」

提督「今はないな。人間から身を潜める必要があるから、メディウムたちだけで行動したほうが良さそうだって判断してる」
91 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:49:16.40 ID:XhwbKQBIo

提督「敵陣にも大きな動きがないみたいだし、いまは深海棲艦や艦娘の手を借りるまでもねえ、って感じだな」

潮「長引きそうなんですか?」

提督「いいや、早いうちに戻れるんじゃねえかな。戦闘狂のコーネリアも腰抜けばかりだって嘆いてたくらいだし……ん?」

泊地棲姫「ドウシタ?」

提督「ニコがこっちに戻ってきたみたいだ」

ニコ「ただいま、魔神様」ニュッ

潮「うひゃああ!?」ドキーッ

長門「ど、どこから出てきた!? 提督の背後に急に表れたようだが……!」

明石「ニコさんって、提督の体を媒体にして、転移できるみたいなんですよ。どういう原理なのか、よくわかりませんけど」

ニコ「魔神様の魔力を辿れば、ぼくはどこにでも現れるんだよ」ドヤッ

提督「事情を知らない奴が見ると毎回驚かれて説明を求められて面倒臭いから、ほどほどにな」

ニコ「面倒臭いって……もう、しょうがないなあ」

泊地棲姫「ソレデ、ナニカ、アッタノカ?」

ニコ「神殿周辺の人間の掃討がほぼ完了したから、その話をしに来たんだ」

ニコ「この前、ぼくたちの神殿に攻め込んできた人間たちは、ぼくたちが逆にあいつらの住処に攻め込んでこないかを警戒していたみたいだね」
92 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:49:59.20 ID:XhwbKQBIo

泊地棲姫「報復ヲ恐レテイタ、トカ?」

ニコ「そうだね。魔神様が人間の親玉を撃退してくれたおかげだよ」

長門「ん? 提督も戦闘に参加したのか?」

提督「ああ。どんな連中なのか見ておきたくて、ちょっとだけ出張っていったんだ」

提督「そうしたら、あっちの人間は完全にこっちを敵視しててな。言葉は通じても話が通じねえ。なにもかも全否定で、取り付く島もなかったぜ」

潮「て、提督は、大丈夫だったんですか?」

ニコ「すごかったよ。魔神様がメディウムに命じて、次々と人間たちを狩っていったんだ。鮮やかだったなあ……」ウットリ

潮「い、いえ、活躍したかどうかって意味じゃなかったんですけど……」

提督「まあ、怪我はしなかったな。つうか、あっちの親玉を早々に始末できたもんで、まともに攻撃もらってねえや」

泊地棲姫「ナンダ、楽勝ダッタノカ?」

提督「結果的にだけどな」

ニコ「攻めてきた人間の中に教団の大司教がいて、そいつが『魔神を退ける加護を信者に授けている』って触れ込みだったんだけど……」

ニコ「そいつを魔神様があっさり殺しちゃってね。それを見た人間たちが慌てふためいて、あっという間に総崩れになったんだよ」

ニコ「一部の人間は、周りの人間を鼓舞して立ち向かわせようとしたんだけど、魔神様がそういう人間を優先的に狩り取ってくれたからね」

長門「なるほど、相手方は統率を取る者を真っ先に失ったのか」
93 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:50:44.29 ID:XhwbKQBIo

ニコ「教団は劣勢の状況を悟られないように、間断なく神殿に人間を送り込んで、ぼくたちを神殿から動けないようにした……」

ニコ「その攪乱のついでに、魔神様やメディウムの能力を調べるため、神殿の中のものを盗み出そうとしてたみたいだね」

潮「えええ!?」

ニコ「一応、理にはかなってるんだよ。罠そのものを持っていくようなら、その分だけこちらの防衛手段が減るわけだし……」

ニコ「罠に限らず、神殿の装飾にも魔力が宿っているから、それがなくなれば、その分だけぼくたちが使える魔力の総量や、魔力の回復量が減る」

ニコ「ただ、魔神様が目覚めた今は、魔力の大半をぼくと魔神様が分けて持っている状態だから、罠を運び出されて被る魔力の損失は微々たるもの」

ニコ「侵入者の能力も大したことはなかったし、不届き者は全員、持ち出そうとした罠の餌食にしてあげたよ」

長門「……」

提督「全員始末した、ってことに長門は気に入らないみたいだが、やらなきゃ俺たちが滅ぼされるからな。あっちの世界の人間には手加減なしだ」

長門「……わかっている。わかってはいるが……気に入らないな」

長門「その理屈で言えば、その教団は自分たちを守るために、誰かを神殿に向かわせた……捨て石にしたのと同じじゃないのか」

提督「仕方ねえよ、あいつらは現代人とは違う。神殿に向かってきたのも熱心な信者や金で雇われた傭兵だ、連中に都合よく使われてんだろうよ」

ニコ「そいつらを唆していた人間どもも、捕らえて始末してるから、安心して欲しいな」

長門「いや……それはそれで安心していい話じゃないんだが」タラリ
94 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:51:30.52 ID:XhwbKQBIo

潮「と、とりあえず、何かを盗まれたりしたわけじゃないんですね……?」

ニコ「そうだね。何も盗まれてないし、何も与えてない……あえて言うなら、ぼくたちの魔神様の恐ろしさを教えてあげた、ってところかな」フフッ

長門「それでおとなしくなってくれればいいんだが」

提督「まあ、当分の間は神殿が攻められることはなさそうだな」

泊地棲姫「コノ機ニ乗ジテ叩キ潰シニ行クノナラ、手ヲ貸ソウカ? 最近ハ、コノ島ニ入ッテクル不審船モ減ッテキタ」

泊地棲姫「今ナラ、ココヲ離レテモ、大勢ニ影響シナイダロウ。ソレニ、敵ノ都ハ、海ガ近イラシイナ?」

ニコ「うん、そうしたいのはやまやまなんだけど。ねえ魔神様?」

提督「申し出はありがたいが、おそらくその必要はなさそうだ。っつうか、当分は様子見しようと思ってる」

泊地棲姫「? 向コウノ世界ノ、制海権ヲ取ル気ハ、ナイノカ?」

ニコ「欲しくないわけじゃないよ。ただ、都はアルス教団が幅を利かせてるから抵抗は激しいだろうし」

ニコ「都を攻める前に、都と神殿の中間にある街を攻め落とす必要があるんだ」

泊地棲姫「大キイ街ナノカ?」

ニコ「それなりにね。海に通じる川沿いにある街で、ぼくたちの神殿の調査のために、都から派遣された戦士や傭兵が駐留してるんだ」

ニコ「怪我をした戦士の治療をする医者や魔導士も滞在してるせいで、攻め落とすのは難しいと思う」

ニコ「ただ、そこを落とせば、神殿へ攻めてくる人間の数は確実に減らせるし、海へ出るために川を下ることもできるようになる」
95 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:52:14.16 ID:XhwbKQBIo

ニコ「都を攻めるときも、その街をそのままにしておくと背後から挟み撃ちにあいそうだから、攻め落とさないわけにもいかないね」

泊地棲姫「……重要ソウナ街ダナ。攻メ落トシタトシテモ、人間ドモガ取リ返シニ来ルカ?」

ニコ「ぼくもそれが心配なんだ。同じ理由で、王都を攻めるのも慎重になった方がいいかも、って考えてるんだよ」

ニコ「都は大都市で、他国と通じる街道が多い。都を壊滅させても奪還を考える人間は多そうだし」

ニコ「交戦中に、他国の人間の大軍が押し寄せてくるかもしれない。だから最初にやるべきことは、王都を孤立させることなんだけど……」

ニコ「そうなると、広い街道を何本も封鎖しなくちゃいけなくて。結構、途方もない計画になりそうなんだよね」ウーン

提督「仮に深海棲艦や艦娘の手を借りるにしても、この鎮守府の防衛の話もあるから、向こうの世界に長期間滞在させたくねえしな」

長門「今の話だと、現状維持が一番都合がよさそうだ、ということか」

ニコ「うん。それに、中間の街があるおかげで、人間が神殿にどんなルートで攻めてくるかが特定しやすい、って利点もあるんだよね」

提督「だから、神殿に人間が近づこうとしない、近づけない絶対的な理由を作る、ってのが命題だな」

潮「……絶対的な理由……近づけないよう、物理的に塞ぐ、とかですか?」

提督「いや、メディウムも外出はするからな。出歩いても人間に遭遇しないように、人間たちが神殿に寄り付かない理由を作りたい」

明石「そんなの作れますかね? 法で縛っても、いくらでも屁理屈は通せますし、知ったこっちゃない、って人もいるでしょうに」

提督「まあな。そもそも人間てのは、どこの世界でも自分の都合のいいように、自然でも世界でも作り替えようとする傲慢な生き物だ」
96 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:52:59.31 ID:XhwbKQBIo

提督「神様だって例外じゃねえ。いっそ、あっちの人類全部滅ぼして、人の歴史そのものを作り直すくらいしないと駄目じゃねえかって思ってる」

泊地棲姫「本気デ、ソコマデスルノカ?」

提督「本当にどうしようもないときは、だな。前も言ったが、恐怖政治を敷けば、いずれ不満を持った人間が反乱を起こす」

提督「俺の前身である封印前の魔神が昔そういう政治を敷いたおかげで、向こうの世界では魔神は人間と相容れない存在として認識されちまってる」

提督「向こうの世界で俺たちが今後領土を広げようと考えるなら、俺たちの言うことを喜んで聞く人間だけ残して世界を滅ぼしリセットするか……」

提督「人間の中に俺たちの信奉者というか、味方を多く作って俺たちを守らせねえと、俺たち……魔神とメディウムの存続は難しいだろう」

ニコ「……人間の味方、か……」

泊地棲姫「案トシテハ、悪クナイナ。我々ヲ味方スル人間ガ現レレバ、敵対スル人間ノ動揺ヲ誘ッテ、ツケ入ル隙モ生マレルカモネ」

長門「その前に、まず、我々の話を聞いてくれるような人間がいればいいんだが」

提督「そういう人間を探すのも必要かもしれねえな」

ニコ「……」

明石「提督、ニコさんはあんまり乗り気じゃないみたいですよ?」

提督「わかってるよ。向こうの世界の人間は、艦娘から見ても嫌悪感を抱きそうな連中ばかりだ」
97 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:53:44.69 ID:XhwbKQBIo

提督「俺たちに対して敵意のない人間が見つかったら儲けもの、って気構えで行くしかねえ」

提督「幸いにして、いまは都の連中が怯えて引き籠ってる。色眼鏡のかかってない人間が神殿に近づく可能性があるのは、今くらいじゃねえか?」

明石「そんなに都合よく行きますかね?」

提督「あくまで希望的観測だ。向こうの世界で魔神を悪く思っていない人間自体ほぼいないだろうが、可能性があるなら機会を潰したくねえ」

泊地棲姫「可能性、アルカシラ? コチラノ世界トハ、歴史モ辿ッテキタ経緯モ違ウハズ……」

提督「とはいえ、ここまでうまく行ってんだ。万が一も大いにあり得るなら、藁でもなんでも掴まなきゃな」

提督「こっちの世界で人間との共存がうまくいきそうなのも、俺が海軍に表面上だけでも協力してきたからだし」

潮「表面上……そ、そんなことないと思いますよ?」タラリ

提督「まあとにかくだ。ニコやメディウムたちは人間と協力するなんて嫌だろうが、少しだけ我慢してくれ。お前たちを守るためにもな」

ニコ「……魔神様が、そう言うなら……」

泊地棲姫「我慢サセルノハ構ワナイガ、イツマデモ我慢シテクレルトハ、思ワナイホウガイイゾ?」

泊地棲姫「確カニ、我慢スレバ、現代ノ文明ノ恩恵ヲ享受デキルシ、戦イニ明ケ暮レ、身ヲ焦ガスコトモナイ」

泊地棲姫「ダガ、果タシテソレデ、人間ドモニ煮エ湯ヲ飲マサレテキタ、コノ娘ノ気ハスムノカ?」

ニコ「……」
98 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:54:29.28 ID:XhwbKQBIo

提督「そりゃあ簡単にはいかねえだろうな。だからこそ、こっちの世界も早いとこ条約結んで人間と疎遠になりたいんだが」

泊地棲姫「ソレダケジャナイ。私タチハ、提督ガ私タチニ、相応ノ見返リヲ、タノシミヲ与エテクレテイルカラコソ、従ッテイル」

提督「ん? 俺は、お前が俺たちに協力してくれてるから、俺がお前たちの安全を保証するって認識してんだけどな。順番が違わないか?」

泊地棲姫「ソウナノ?」クビカシゲ

提督「火山が噴火したときだって俺を助けるように指示出したって聞いてるし、島の復興だって率先してやってくれてたじゃねえか」

泊地棲姫「ソレハ……マア、ソウネ」

提督「ニコもニコで、あんなことがあった後でも俺に協力してくれてる。我慢させるようなことがないようにはしたいさ」

ニコ「……それなら」

提督「!」

ニコ「それなら、せめて、無理はしないで欲しいな。魔神様は、ぼくたちの希望なんだ。ぼくたちは、何百年もきみに会うことを夢見てきたんだ」

泊地棲姫「ナンダ? 提督ガ生キテイレバ、イイノカ?」

ニコ「……そ、そうだよ?」

泊地棲姫「ソレデイイナラ、多クハ言ワナイガ」

ニコ「な、なにが言いたいの?」

泊地棲姫「私ナラ、提督ニ、モット情熱的ナ夜戦ヲ要求シテイルゾ?」ニヤリ

ニコ「」
99 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:55:14.44 ID:XhwbKQBIo

長門「ん? 夜戦?」

潮「やせ……って、ええええ!?」カオマッカ

ニコ「……魔神様?」ハイライトオフ

提督「……」プイス

ニコ「駄目だよ魔神様、こっち見て?」

提督「なんだよ……俺は要求されたものを差し出してるだけの話で……」

ニコ「だからと言って自分をあまり安売りしないで欲しいんだけど? ねえ魔神様?」ゴゴゴゴ…

泊地棲姫「ソンナ説教ヲ垂レテナイデ、オマエモ提督ニ抱カレレバイイジャナイノ」

ニコ「なっ!? そ、それは、その……」モジモジ

潮「はわわわ……」

長門「そういうことか。まあ、その、なんだ……ほどほどにな?」ポ

提督「……まあ、そうだな……」

明石「ほーんと、罪づくりですよねえ、提督って」ニヤニヤ

長門「明らかに面白がってるな……」
100 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2026/06/28(日) 21:56:05.85 ID:XhwbKQBIo
というわけで、今回はここまで。
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2026/07/02(木) 01:34:51.05 ID:MlwRLw3b0
掲載開始から10年!…で、合ってるよね?<2016/6/29だったかなぁ
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