【安価でゆゆゆ】久遠天乃は勇者である【データ11】

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102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/18(水) 23:23:10.41 ID:Z+HTOl8+o

まあこの段階にきて安価もらってもフレーバー的なやつ以外悩むしありがたい
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/18(水) 23:26:20.67 ID:336XY7AiO

久遠さん、ホントどうか死なないでくれよ…
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/18(水) 23:54:43.90 ID:is6fWh+6o
おつ
天乃大丈夫だろうか…
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/19(木) 18:07:23.75 ID:Zm023VYm0

とあるバイクアニメで「負けてたまるかぁー!!」のセリフ聞いたときこのスレの勇者の現在の状況思い出した
皆頑張れ!
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/19(木) 18:41:26.57 ID:Fp0cZ/MYo
久遠さんが生きて帰るって言ってんだ!
俺たちが信じなくて誰が信じるんだ!

とかいうヒロイン的達位置
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/19(木) 18:42:20.67 ID:Fp0cZ/MYo
たつ位置ぃ
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/19(木) 20:48:38.96 ID:A9Cr3vYUo
勢いで笑った
109 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 22:17:49.67 ID:w3sm25Fvo

では、初めて行きます
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/19(木) 22:20:52.26 ID:IsZ36DHzO
あいあいさ
111 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 22:28:35.40 ID:w3sm25Fvo

稲荷神が舞い始めてすぐ

樹海全体がパッっと明るさを増して、光り輝くと

侵食された部分

食い抜かれた部分

その全てが包み込まれ、修復されていき

その分だけ、天乃の体は汚染されていく

天乃「んっ」

急激かつ、大量に流れ込んでくる不快なものに

天乃は思わず呻いて、足を止める

体の底からじわっと広がっていく不快感

今までは一瞬だった

気づかないうちに穢れていた

それが、今は

じわじわと自分の体が穢れていっているのを感じさせられている

天乃はその初めての感覚に、体の冷たさを感じた
112 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 22:51:24.91 ID:w3sm25Fvo

天乃「ねぇ、九尾」

九尾「なんじゃ」

天乃「……死ぬのって、こういう感覚なのかな」

九尾「………………」

立ち尽くし

自分の震える手を見つめる主を見つめ、九尾は小さく息をつく

死ねない自分には、死ぬという感覚はわからない

どれだけの命を殺めようとも

死ぬという感覚だけは得ることができないからだ

しかし、今は

九尾「集中すべきことが、あるじゃろう。主様」

天乃「……そうね」

食い破ることに特化したバーテックスによって食い破られた結界の穴から

星屑が大挙して押し寄せてきている

通常のバーテックスに加え、星屑

その大群相手にはもはや、多勢に無勢

質と量で線よくて気に大幅に劣ることとなった勇者に、余裕はなかった
113 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 22:54:31.17 ID:w3sm25Fvo
>>112ミス


天乃「ねぇ、九尾」

九尾「なんじゃ」

天乃「……死ぬのって、こういう感覚なのかな」

体の芯から冷めていく感覚

力がスーっと抜け落ちて

膝から崩れ落ちてしまいそうな、感覚

九尾「………………」

立ち尽くし

自分の震える手を見つめる主を見つめ、九尾は小さく息をつく

死ねない自分には、死ぬという感覚はわからない

どれだけの命を殺めようとも

死ぬという感覚だけは得ることができないからだ

しかし、今は

九尾「集中すべきことが、あるじゃろう。主様」

天乃「……そうね」

食い破ることに特化したバーテックスによって食い破られた結界の穴から

星屑が大挙して押し寄せてきている

通常のバーテックスに加え、星屑

その大群相手にはもはや、多勢に無勢

質と量で戦力的に大幅に劣ることとなった勇者に、余裕はなかった
114 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 23:05:24.97 ID:w3sm25Fvo

銀「なんなんだ一体!」

波のように押し寄せる星屑を切り払いながら、

銀はいらだち混じりに声を荒らげた

バーテックスの中で最速を誇る双子座は

力がない分、その速度のみが武器といっても良くて

それを封じることができれば

ただの動く案山子でしかないにも関わらず

銀「くっ、邪魔だッ!」

星屑や他のバーテックスと移動速度を合わせ

単独での先行を絶対にしないように調節していた

そのせいで、双子座のバーテックスを狙い撃つことができず、

切り裂こうとすれば星屑に阻まれ

動きが止まった瞬間、他のバーテックスによる重い一撃が体を打つ

銀「はぁっ……はぁっ……っ」

出ることのない血と汗を拭くように額を拭い、

銀は迫り来る軍勢を睨む

銀「このままじゃまずい……っ」
115 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 23:10:15.53 ID:w3sm25Fvo

頑張りに頑張っても

通常の状態では手数に限界がある

さらに、

星屑を一撃で屠ることができるとしても

バーテックスはそんなにやわではない

バーテックスの相手をする分だけ星屑は横から抜けていき、

星屑を相手にした分だけ

バーテックスは傷を負うことなく、万全の状態

そして、容易に攻撃を仕掛けることができる

銀「園子!」

叫んでも、返事はない

だからと言って振り返る余裕もない

振り返った瞬間

致命的な一撃を貰いでもしたら

一時的にでも離脱しなければならなくなる

そうなるわけにはいかないからだ

銀「周りの状況がどうなってんのか……星屑が邪魔すぎるッ!」
116 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 23:17:13.09 ID:w3sm25Fvo

知りたくても知ることができない周りの状況

そして、

時々轟く爆発音や、重く揺れる樹海の木々が

銀の不安を煽っていく

銀「少なくとも、すぐ近くに若葉がいるのはわかるけど……」

合流は出来そうにない。と

強く唇を噛み、

銀は力強くバックステップを踏み

着地の瞬間、地を蹴り弾丸のような速度で水瓶座のバーテックスを突き飛ばし――一回転

水瓶座の体を切り裂くと

銀「どけぇッ!」

そのまま投擲し、周囲の星屑を刻む



片手の武器が消えた隙間を縫って

銀「っぐ――」

双子座が銀の体に突っ込み、

銀「っあ゛!」

樹海の木へとぶつかって、押しつぶした
117 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/19(木) 23:21:57.98 ID:w3sm25Fvo
では、此処までとさせて頂きます
普通に終わりません、失礼しました
あすもできれば通常時間から



↓現在の戦況(マップ)↓
http://i.imgur.com/DsQRotD.png


118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/19(木) 23:27:53.28 ID:A9Cr3vYUo

ヒエッ〜wwwwwwwwwwww
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 04:36:44.45 ID:UzcJMhYrO
おつ
これは数がすさまじい…
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 11:10:54.54 ID:2A9P/U9/0
ゲームだったら攻略wiki見るレベル
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 13:53:50.60 ID:hxWub2Nso
イデオンガンかPDMもってこい!
122 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 22:14:34.37 ID:/gqzZLSRo

では、初めて行きます
123 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 22:16:59.64 ID:/gqzZLSRo

園子「数が多すぎて捌ききれない……」

この苦しい戦況は

園子にでさえ、余裕を与えることはなかった

いつもの間の抜けた声ではなく

不安のある声で、園子は言う

園子「天さんが大きいの二つに射手座を相手してくれてなかったら……全滅。してるかも」

広範囲攻撃を可能としている射手座

他のバーテックスを凌ぐ巨体と力を持つ獅子座

その獅子座ですらも凌駕する獅子座の進化系

それに加えて無数の星屑を相手にしてくれている天乃の存在

それが、

バーテックスにとっても、園子達にとっても一番大きなものだった

124 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 22:25:09.61 ID:/gqzZLSRo

久遠天乃を討ち取ることができれば

バーテックス側の勝利は確定したと言っても過言ではないし

久遠天乃さえ討ち取られることがなければ

樹海やこの世界は少なくとも守り通してもらえるからだ

園子「……やっぱり、天さんは要だね〜」

園子も決して弱くない

それは、

勇者チームの最終防衛ラインとしての役目を

ギリギリとは言えしっかりと守れていることからも伺い知ることができる

星屑の数には遥かに劣る遠隔式の槍

それでもなお、

各星屑の進行速度などから防衛ライン最接近を推測したりすることで

水際での完全撃退を行うそれはそうそう真似できることではない
125 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 22:30:34.33 ID:/gqzZLSRo

園子「でも、いずれ押し切られる……」

いくら園子でも

樹海全域をカバーできるほどの力は持ち合わせていない

だからこそ、

天乃のチーム、勇者部チームで

右と左に分かれている

もちろん、信頼していないわけではないが

それでも、厳しいと、園子は思い、首を振る

園子「私が気落ちしてたら――ダメだよねっ!」

穂先一つで星屑数匹を刺し貫き、消し去って

園子はなお迫る大群を眺める

園子「時間は稼ぐよ〜」

満開をしていいと言われるまで

その時間まで、園子は絶対に保ってみせると、足に力を込め

槍を振るった
126 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 22:44:09.71 ID:/gqzZLSRo

樹「久遠さん……」

星屑や

樹海の木々のせいで、天乃の姿は見えない

それでも

その方角に天乃を感じ、樹が目を向けると

樹海に阻まれようと

星屑に阻まれようと

絶対に視界に入ってくる規格外の巨体

その体の一部が切り崩されていくのが、見えた

樹「久遠さんっ」

見えなくても、聞こえなくても

久遠さんの一つ一つの行動が、勇気をくれる。力をくれる

樹「あんなに大きいバーテックス二体を相手にして。それでも、負けずに立ちふさがって……」

恋人がそんな頑張っているのに

自分は無数の雑兵ごときで手間取っていていいのかと、考え

樹「良いわけないッ!」

樹は叫ぶ
127 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 22:55:44.17 ID:/gqzZLSRo

樹「っ!」

右手から伸ばした光り輝く鶴で周囲の星屑を一掃し、

何層にも組み上げた光の罠を設置して、まるごと握りつぶす

樹「!」

それでも、油断はできない

倒した瞬間

どこからともなく星屑が湧き出てきたのだ

締め潰す?

防御?

それじゃ遅いっ!

瞬時に判断した樹が慌てて身を翻すと、星屑は通過して、

ドゴンッっと、

乙女座の爆弾が直撃して弾け飛ぶ

樹「っ……」

もしも回避できなかったら

そう思うと、樹は恐怖に手が震えて……唇を噛み締めた
128 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 23:07:31.25 ID:/gqzZLSRo

九尾「主様」

天乃「なによっ!」

怒鳴るように言い、跳躍した瞬間

さっきまでいた足場が弾けとんだ天乃は

次の足場に着地した瞬間、蹴り出して

目の前の星屑を切り伏せ、

隣の星屑を蹴り飛ばして後ろに飛び

もう一度勢いよく駆け抜け、獅子座のバーテックスの体の一部を切り崩す

天乃「はぁっはぁ……もうっ、用事があるなら手短にね」

いくら天乃であろうと、勇者であろうと

体力の限界というものがある」

たとえかすっただけでも、重傷足り得る天乃は

常に全力でいなければならず

相手のレベルも高いがために、もうすでに息が上がり始めていた

そんな中、九尾は言う

九尾「そろそろ満開をする。準備せい、我が愛しの主様」
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 23:08:50.62 ID:MnWlUpRvo
ついに九尾の策が
っていうかこれ戦力さきつ過ぎてリスクの有無以前にこの策とってなきゃ詰んでたな
130 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/20(金) 23:10:01.04 ID:/gqzZLSRo

では、ここまでとさせて頂きます
あすもできれば通常時間から


満開、無双……そして……
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/20(金) 23:15:13.55 ID:zurs3h1KO

樹ちゃん以外はこの満開の事は知らないんだよな…
状況が状況だし仕方ないとはいえみんながトラウマにならないといいけど…
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/20(金) 23:15:21.41 ID:MnWlUpRvo

とりあえず反撃だ!
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/21(土) 00:48:15.42 ID:zQffQBq40

久遠さん頑張って!みんなも!
にしてもここで溜め込んだ穢れも子供に受け継がれるのかな
だとしたら相当凄い存在になりそう
134 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 22:22:48.38 ID:+fhtI+ZDo

では、初めて行きます
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/21(土) 22:26:50.44 ID:ImIEFLCTO
来てた
136 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 22:33:30.44 ID:+fhtI+ZDo

天乃「……ッ」

九尾の言葉を聞き取ったのと同時に

周囲が強く輝きを放ち、天高くに大きな花が咲き誇る

結城友奈、東郷美森、犬吠埼風、犬吠埼樹、三好夏凜、乃木園子

現存している勇者達の、満開

そして

九尾「乃木若葉、土居球子、郡千景、伊予島杏、高嶋友奈、三ノ輪銀、久遠陽乃、白鳥歌野の分じゃ」

九尾は自分の胸元に手を充てがうと

八つの光を取り出して、空に咲く花へと登らせていく

天乃「貴女、まさか」

九尾「……否定するつもりはない。が、それを悪行であると認めるつもりはない」

九尾が持つ八つ

それに通ずるものを天乃は知っていて

だからこその言葉に、九尾はそれだけしか言わなかった

いや、それだけしか言えなかった

謝る気はなかった

悪いと想うつもりもなかった

全ては

九尾「我が、愛しき主の世界のために」

ただ、それだけだ
137 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 22:44:45.02 ID:+fhtI+ZDo

ここまでに、いくつのモノを犠牲にしてきただろう

どれだけのものが犠牲になってしまったのだろう

誰も知らないだけで

誰も気づかないだけで

みんなが見て見ぬふりをしているだけで

足元が屍の山であることに、変わりない

天乃「……………」

何かを守るためには、何かを犠牲にしなければいけない

それは、絶対に変えることのできない理だ

理不尽な等価交換だ

天乃「罪は、私も背負うわ」

九尾「主さ――」

天乃「となると。犠牲にしたくせに。死ぬなんて罪深いことは出来なくなっちゃうわね」

天乃はくすくすと、笑う

多勢に無勢の状況で

圧倒的に不利な状況で

久遠天乃は、笑って――言う

天乃「見せてあげるわ。私の力を」

その力は全てを飲み込み、

全てに寄生して、全てを吸い上げていく
138 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 22:52:59.57 ID:+fhtI+ZDo

天乃「私の満開は、とても毒々しい」

色の抜けた樹海

落下しながら砂となって消えていく星屑

身動きができなくなって倒れ伏すバーテックス

それらを眺める天乃は、

右手に握る刀を構えて、息をつく

天乃「…………………」

神樹様からではなく、

自分から繋いだせいか

次から次へと、自分の中の何かが吸い上げられていくのを感じる

気を抜いたら倒れるかも知れない

気づいたら、白い天井を見上げているかもしれない

気づいたら、お婆ちゃんになっているかもしれない

そんなことを考えながら、

この子は無事に生まれてきてくれるのかな。と

まだ妊娠すら確定してないお腹を撫でて、苦笑する
139 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 23:08:58.80 ID:+fhtI+ZDo

天乃「ねぇ、九尾」

九尾「?」

天乃「私。ちゃんと帰って来れるのかしら」

九尾「………………」

目の前に広がる色の失われた世界

樹海も、自分の手も、刀も、何もかもが、色がない

そんな世界を見つめる天乃は

感じる不安の一片を、急日に訊ねる

けれど、九尾は答えてくれなくて

だから、もう一度言う

天乃「わた           」

九尾「確証はない」

耳が聞こえないから、きっと気づいてはいない

でも、天乃は耳だけでなく、声までもなくしていて

けれど、きっと同じことが言いたかったのだろう。と

天乃の声無き声に、

九尾は非情にもそう答えて首を振る

九尾「主様が抜かねば、誰も抜かぬまま。ただ抜かれていく」

天乃「             」

九尾「だからこそ。抜かねばならない。その手で」
140 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 23:25:12.89 ID:+fhtI+ZDo

九尾の言葉は、

私が言ったはずの疑問への答えではなくて

声も出なくなっちゃったのかな。と、思って笑う

樹に迷惑をかけると思う

みんなに心配をさせると思う

でも、だけど

今いるみんなを守るために

失ったモノを奪われたモノを

取り返すために必要なことなのなら……と

天乃は軽く頷いて、刀を構えた

これは正真正銘の神の一撃

様々なものを犠牲にした上での一撃

現行の、とてつもなく大きな戦いへのピリオドを打つ一刀

天乃「         」

頑張ってくるね

頑張って、帰ってくるね

誰にも届かず聞こえないことを知りながら

天乃はそう思い、そう口にし

天乃は刀を――振るった
141 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/21(土) 23:26:48.13 ID:+fhtI+ZDo

では、此処までとさせて頂きます
あとは、樹視点でのエピローグになるかと思います



大赦職員八人の魂=死んだ勇者の代用
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/21(土) 23:27:18.73 ID:PvaXDDoWo
自己犠牲の権化だったクオンサンがこのメンタルなの見ると本当に今までの交流が良かったなあ
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/21(土) 23:27:46.18 ID:PvaXDDoWo
あ、乙です
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/21(土) 23:34:14.20 ID:ImIEFLCTO

みんなの為にも絶対に戻ってきてくれよ、久遠さん
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/22(日) 00:13:51.09 ID:m5DK1w4BO

8人の職員はそういうことだったのか…ってか歌野さんってニコ生観てたのか

歌野 天乃

うたの あまの

似てるなぁ
146 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 20:15:17.41 ID:7GetCZbGo

遅くなりましたが、進めていきます
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/22(日) 20:22:34.56 ID:3dksHwOiO
おお、待ってたぜ
148 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 20:30:30.53 ID:7GetCZbGo

樹「ぁ……」

捌ききれないほど溢れ出てくる星屑

その中に紛れて、少しずつ進行してくるバーテックスの軍勢

その全てが

何かに気づいて一点に群がっていく

平原に咲き誇る、たった一輪の花めがけてミツバチが集うように

全ては、そこに収束していく

そして、

空に咲き誇った光の花がその中央に、降りていく

樹「久遠さん……っ」

負けるとは、思っていなかった

世界が壊されちゃうとは、思ってなかった

不安はなかった

信じるとか、信じないとかじゃなくて

人が好きで、世界が好き

それなのに、世界に嫌われてきた人が

それでもなお、世界を守ると、みんなを守ると言ったから

その時の笑顔がこの圧倒的に不利な戦況でさえも

希望として、頭の中に、心の中にずっとあったから

私は、この戦いが絶対に勝利できるものであると、

信じるんじゃなく、安心していた
149 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 20:42:57.26 ID:7GetCZbGo

それでも、

怖くないかと聞かれたら

怖くないです。と

大丈夫かと聞かれたら

大丈夫です。と

不安じゃないかと聞かれたら

不安なんかじゃないですよ。と

本当に、そう言えるだろうか

本当に、そう思ってるだろうか

樹「ぁ……く……」

目の前で全てが終わっていく

世界に虐げられて

多くの人に蔑まれ、強要され、翻弄され

それでも、人を愛していて、世界を愛している

そのたった一人が全ての責任を背負って、長い戦いに終止符を打つ
150 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 20:55:34.60 ID:7GetCZbGo

それを、私は認めた。許した

死んでしまうかもしれないその行いを

大好きな人がしようとしているのを知りながら、

樹「だから……」

つーっと頬を何かが伝っていく

認めたはずなのに

許したはずなのに

それでいいと、覚悟は決めてあったはずなのに

帰ってくるといったから

それを信じて……信……

樹「っ」

どれだけ信じていても

樹「ゃ……」

どれだけ強く、覚悟を決めても

樹「……行かないで」

私は、私の心は

不安で、怖くて、悲しくて、辛くて、苦しくて、悲しくて

樹「行かないでくださいッ!」

心から強く、拒絶する

でも

樹「ずっと、ずっと一緒に、そばにい――」

その声は、その思いは届くことはなくて

世界にとっての希望の光が世界を――切り拓いてしまった
151 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 21:05:25.10 ID:7GetCZbGo

樹「ぁ……久遠さんっ!」

驚異が跡形もなく消え去って

世界を祝福するかのように、光の雨が降り注ぐ中

一心不乱に、駆け出す

樹「っ……」

途中で変身が解けても

体力が切れかかっても

久遠さんがいるであろう場所に、駆けていく

樹「久遠さん……久遠さんっ!」

樹海の根をよじ登って

滑り降りて

制服を汚し、足に怪我しながらも、ただ、走って

樹「はぁっ……はっ……けほっ……」

天乃「…………」

樹「見つけ、ましたっ」

久遠さんの元に、たどり着いた
152 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 21:23:29.70 ID:7GetCZbGo

樹「一人で、こんなところに行くから……時間、かかっちゃいました」

元々、耳が聞こえていなかった久遠さんに

そんなことを言っても無駄だと分かっていても

言葉を投げかける

一瞬で帰ってきてくれてないかな。なんて

淡い期待をして

でも

樹「………………」

わかってるんです

わかってるんですよ。久遠さん

そんな簡単な話じゃないって

直ぐに終わる話なわけがないって

でも

樹「っ」

抱きしめても

体を揺さぶっても

なんの反応も示してくれないことが

凄く……悲しかった
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/22(日) 21:29:03.26 ID:uQOmjjfFo
あばばばばば
154 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 21:54:54.79 ID:7GetCZbGo

風「樹っ、天乃っ!」

樹「お姉ちゃん……」

戦いが終わって、時間が経ったからか

樹海化が解けて学校の屋上に戻されると

お姉ちゃんがすぐに声をかけてきて

でも、私と私が抱き抱える久遠さんを見て

すぐに、喜んでいた表情が曇った

風「樹……?」

夏凜「なによ、どうし……」

友奈「園ちゃんも今は動けなくなっちゃったし。同じ状態になっちゃったの?」

東郷「ただの力の使いすぎ。なら、目を覚ますと思うけれど……」

園子さんを背負った友奈さんと

それを見守る東郷先輩は不安そうに言って

目をつむったままの久遠さんを見つめる

夏凜「と、とにかく。医療班を呼ばないと話にならないわ」

風「そ、そうね」
155 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 22:17:43.51 ID:7GetCZbGo

お姉ちゃんが呼んでくれた医療班の人たちは

久遠さんと園子さんを丁寧にストレッチャーに乗せると

私たちも検査が必要だからと、乗るように指示してきた

樹「私は、久遠さんの方に乗りたいです」

「しかし」

樹「一緒が、いいんです」

医療班の人たちが顔を見合わせて、困った顔をする

きっと、久遠さんと園子さん

特に、久遠さんは私たちとは別の病院に連れて行くつもりだったんだと思う

でも、私がもう一度願い出ると

「分かりました。仕方がありませんね」

と、渋々許可を出してくれた

断られたら車の屋根上にしがみつくつもりだった。とは

言わないでおいた

風「樹、天乃のこと。悪いけどよろしくね」

夏凜「何言ってんのよ。樹が言うならともかく。あんたがいうことじゃないでしょ」

風「それはそうかもしれないけどさ」

樹「大丈夫だよ。お姉ちゃん」

そう言って、笑顔を見せる

久遠さんが戻ってこない可能性を知っているという不安を

お姉ちゃん達にまで――感じさせないために
156 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 22:35:50.32 ID:7GetCZbGo

それから、一ヶ月が経過した10月

夏服も完全に終わって、冬服に衣替えをして

お姉ちゃん達三年生が受験だと、大慌てになり始める時期

樹「……久遠さん、受験はしないんですか?」

勇者部に仮入部している三年生のはずの久遠さんは

余裕綽々といった様子で、だんまりのままだった

樹「久遠さんなら一夜漬けでなんとか出来そうですけどね」

冗談ぽく、笑ってみせると

誰も、笑わず

私がしゃべるのを止めると、部屋は静まり返って

外の音が鮮明に聴こえてくる

樹「……っ」

もう一ヶ月

まだ一ヶ月

頭の中は、【まだですか?】と、催促していて

辛い気持ちが、手のひらに爪痕を残して痛みが走る
157 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 22:48:34.61 ID:7GetCZbGo

言いたいことは山ほどある

ぶつけたい気持ちがたくさんある

その全てを押し殺して、私は久遠さんにあるものを見せた

樹「見てください。検査結果が出たんですよ」

久遠さんは何も言わない

何も見ない

それでも、続ける

樹「久遠さん、ちゃんと妊娠。できてるんですよっ」

それでも……久遠さんは何も反応してくれない

樹「流石です。春信さんは。本当に、凄い人です」

少し前から、久遠さんの体温が

以前入院していた時の通常の体温よりも高い状態が続いていることを気にした看護師さんに

春信さんがもしかしたら。と、言ったことで検査をしてなければ。多分。まだ分かってなかった

その状態が続いてると妊娠してる可能性が高いなんて

私でも知らなかったのに

樹「凄く良く、勉強してて……負けられないなって思いました」
158 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 22:55:01.44 ID:7GetCZbGo

今はその話じゃないですよね。と

笑って話を区切らせて、久遠さんの手を握る

樹「もう一ヶ月……妊娠周期で言うと、六週目だそうで。胎嚢も確認できたそうです」

当たり前なことだけど

それは春信さんの子供だから

私にとってものすごく嬉しいことかと聞かれたら複雑ではあるけど

久遠さんが生きてる証だと考えれば

何よりの吉報だった

樹「このままだと、目を覚ましたら大きいお腹。ですよ?」

その驚くさまを見て

申し訳ないと思いつつ、苦笑する

きっと、とても可愛い驚き方、慌て方をするに違いない

赤ちゃんが危ないから、ちゃんと冷静にさせなきゃいけないよね。と

責任を感じて、息をつく
159 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 23:06:13.58 ID:7GetCZbGo

樹「久遠さん、文化祭がもう少ししたらあるんです」

三年生に関しては

受験もあるということで自由参加になってるけど

少なくともお姉ちゃんは参加する気マンマン

といっても、

一応受験の合間で、息抜きは必要で

中学生最後の文化祭ということもあって

三年生全員が、やる気に満ち溢れてたりするんだけど……

樹「……私達は劇をやります。しかも、私が主役のお姫様をやるんです」

そう言って

お姉ちゃんと園子さんが協力して作り上げた台本を

久遠さんに見せる

樹「勇者様を待つお姫様役です。本当は、友奈さんが主役の勇者のお話の予定だったんですけど」

お姉ちゃん達が私を気遣ってくれたのかもしれない

その友奈さんが主役のお話の別視点を、新しく書き出してくれた物語

樹「……私も、ちゃんと待ってます。ずっと。待ってます」

久遠さんの頬をそっと撫でて、キスをしようとして……離れて

樹「面会時間も終わりだと思うので、また明日来ます。久遠さん、また、明日です」

そう言い残して、何度も振り返りながら病室を後にした
160 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/22(日) 23:07:44.29 ID:7GetCZbGo

では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば、通常時間からとなります


月単位で飛ばしたりなんだりでやっていく予定ですので
うまくいけば今週中には終わるかと思います
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/22(日) 23:11:43.26 ID:qVorNigk0
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/22(日) 23:13:49.88 ID:vYfI2xTMo

そういや九尾はどうしたんだろ
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/22(日) 23:16:44.85 ID:3dksHwOiO

もしかして久遠さんの子供の誕生までいくのだろうか

それにしても二周目もついに本当に終わりが近いんだな…
最後まで見届けねば
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/23(月) 09:38:46.76 ID:EX6ZW/j7o
春信が勉強してる分>>1も勉強してるってことなんだよな
セックスだったり妊娠だったり神様関連だったり
俺なんか妊娠周期とか一ヶ月でなんで6週なんだよって感じだし


次週あるんだろか
今さら久遠さん以外のキャラって辛いとこあるけど…
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/23(月) 13:40:32.67 ID:XpK2fUa9o
いきなり次っていうか結構長いことやったしキリもいいから

・天乃と東郷さんのわすゆ時代
・春信さんの子育て奮闘記
・陽乃ののわゆ時代
・青年バット続き
・九尾周りの設定の話

みたいな細かい短編集が見たい
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/23(月) 14:41:00.05 ID:EX6ZW/j7o
久遠さんと東郷さんは鷲尾編
陽乃さんのわゆ時代と九尾周りはのわゆ編をやるしかないんじゃない?

というかあるなら久遠さんが良いってだけで
次週はあるか解らないよ
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/23(月) 17:01:38.52 ID:OFpx7bho0
ちょっと特殊な設定のストーリーも短編でいいから読んでみたい
テレビ本編その後の世界に飛ばされる久遠さん...みたいな
共に過ごした記憶は久遠さんにしか無いけど、戦いの無い世界でどう付き合っていくのか
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/23(月) 17:40:45.60 ID:ntJbpVmyO
久遠さんオリキャラながらホント愛されてるなあ

とはいえまずは完結が最優先、後できるか否かは>>1の予定次第だぞ
169 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 22:03:11.76 ID:QkCN6ve0o

では初めて行きます
170 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 22:12:45.93 ID:QkCN6ve0o

そのお見舞いの日から、一週間くらい経った日のことだった

いつも通り久遠さんの所に行くと

珍しく、春信さんとお医者さんがいて

何か、真剣な話をしていて

春信「犬吠埼さんか……丁度いい所に。とは、言えないかもしれないが……」

樹「?」

春信さんは私に気がつくと、

少し複雑な表情でそう言って

お医者さんに一礼して、席を外すように言うと

「では、また後ほど」

樹「ありがとうございます」

「ううん。貴女も。いつもご苦労様」

産婦人科のお医者さんは笑顔で私に挨拶して

そのまま病室を出ていく
171 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 22:20:59.85 ID:QkCN6ve0o

樹「何か、あったんですか?」

春信「……そうだな」

樹「?」

春信「……………」

春信さんはとても言いにくそうで

その表情は、私を不安にさせるような

ちょっと、怖い表情で

私が一歩近づくと、春信さんは息をついて首を振って

春信「黙っていても仕方がないな。犬吠埼さん。驚かないでくれ。とは言わないが。落ち着いて聞いてくれ」

樹「え?」

春信「彼女をさらに詳しく検査した結果、心音が二つ確認できた」

樹「ふた……つ?」

春信「そうだ。彼女の場合一卵性双生児を……解りやすく言えば、現段階で。彼女は双子を身篭っている」

凄く、衝撃的なことを言った
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/23(月) 22:26:35.02 ID:61wD9OEMO
なん…だと…?
173 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 22:28:00.83 ID:QkCN6ve0o

樹「双子って、双子。ですか?」

春信「そうだ。先ほどの医師によればそれは確定事項だということだ」

樹「……………」

春信さんは

この先何か不幸なことが起きない限り

久遠さんは双子を産むことになる。と言う

信じがたいことだったけれど

春信さんがそんなウソをつかないことと

お医者さんの診断書を見せられては、信じるしかなくて

春信「……双子の場合、一人よりも母体への負担は大きくなる」

樹「それくらいは、知ってます」

春信「だが、彼女は。久遠さんはきっと。それでも、と、言うだろう」

樹「久遠さんも、子供も。無事に出産を終えられる可能性はどのくらいなんですか?」
174 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 22:42:23.97 ID:QkCN6ve0o

春信さんの言葉を無視するような形で、

当たり前の疑問を尋ねると、

春信さんは少し暗い表情で首を振ると

久遠さんを一目見て、私へと向き直った

春信「健常な母体であっても……ハイリスクな出産だ」

樹「はい」

春信「彼女の場合、絶対安静という条件はクリアできるだろうが、この状態だ」

樹「春信さ――」

春信「っ」

春信さんの握りしめた拳の音が聞こえて

私の、答えを催促する声は押し込まれて消える

その音が、春信さんの辛さを、苦しさを

そんな事を考えるのなんて嫌なんだという気持ちを伝えてきた

春信「母体のことを考えなければ、帝王切開を施したりすることで。100%ではないが、子供を無事に摘出できる可能性は高い」

樹「久遠さんは……」

春信「今の彼女に麻酔を使えば、二度と目を覚まさなくなる可能性は格段に上がるだろう」

樹「………………」

春信「残念だが、彼女が目を覚まさないまま出産時期に入った場合。久遠さんは諦めるしかなくなる」
175 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 22:56:38.26 ID:QkCN6ve0o

樹「あ……諦める?」

諦めるって、なんですか?

諦めるって、どういうことですか?

頭の中、心の中

湧き上がる強い感情が、口元から響いたブチッっという音で一気に引いて

ポタッと……病院の白い床に、赤いシミが一つ。ついた

春信「……私は。君と同じ気持ちだと並べることはできないと思っている。だが、私も彼女を諦めたくはない」

樹「………………」

春信「まだまだ、出産の時期は遠い。それまでに彼女が戻ってくる事を願おう」

春信さんはそういうと

手持ちのカバンの中から、白い箱を取り出して

私の手に、持たせた

春信「妊婦用のケアクリームだ。彼女が自分で行えない代わりに、君がやってあげると良い」

私には、荷が重い。と

春信さんは少しだけ笑って私の方を叩いた

春信「君だけで難しいのなら、いくらでも。私たちが手を貸そう」

樹「…………」

春信「だから、君はできる限りのことしてあげてくれ。それができるのは私ではなく、君なのだから」

そう言い残して、春信さんは病室を去って

私と、久遠さんだけが取り残された
176 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 23:14:38.35 ID:QkCN6ve0o

樹「……久遠さん、双子だそうです」

多分、春信さんたちの話を聞いていたなら、

わかってるかもしれないけど。と、笑ってみせる

でも、笑顔よりも涙が先に来た

喜ぼうとしても

このまま失ってしまうかもしれないという悲しさが前に出た

樹「久遠さんっ!」

ギュッと、

痛いと言われそうなくらいに強く。手を握る

それでも、久遠さんはなんの反応も示さなかった

ピクリとも動かなかった

それでも、体は温かくて……

泣いたらダメだと押さえ込む私の心を強く、揺さぶる

それでも。私は

樹「元気な双子の赤ちゃん。産んでくださいね」

泣くまいと唇を噛み締めて、笑ってみせた
177 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/23(月) 23:22:48.35 ID:QkCN6ve0o

では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば通常時間から

エピローグの最中ですが今後はまだ未定です
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/23(月) 23:24:07.38 ID:XpK2fUa9o

まさかの双子
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/23(月) 23:28:41.84 ID:61wD9OEMO

久遠さんのみならず樹ちゃんにも厳しい世界だなあ
なんとか報われて欲しいものだ

それにまさかの双子とは…久遠さんの力が強かったのか春信さんがよほど濃いのを出したのか

180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/24(火) 00:37:11.53 ID:l/ZQdodm0

何気に勇者であるシリーズにいないんだよな双子
名前はどうなる久遠さん家の双子ちゃん...あと女の子なのか男の子なのか
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/24(火) 03:26:19.79 ID:Sxokxaw4o
おつ
双子とはまた…
勇者になったらコンビネーションと母親譲りの戦闘力でとんでもなく強そう
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/24(火) 13:08:14.44 ID:ImVAaWpco
双子とは予想外だった…良い意味で驚かせてくれるな
ただ双子で殺し会うとか
双子を産んで久遠さん死ぬとかは無しで頼む
マジで
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/24(火) 19:01:26.90 ID:qTv773Xoo
まだエピローグあるから焦るなよwwww
184 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/24(火) 22:15:16.53 ID:WOCcOyNKo

では、進めていきます
185 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/24(火) 22:32:37.36 ID:WOCcOyNKo

樹「もう、大丈夫そうですね」

時間が経つのは、あっという間で

気づけばカレンダーにつけたバッテン11月の半ばに差し掛かっていて

常に誰かが付き添っていなければいけないほど酷かったつわりも

段々と、収まってきていて

お見舞いに来たら口から吐瀉物が溢れかけてる。なんていうことも

なくなった

樹「……でも」

そっと手を握ると

あれだけ温かかった体温は下がっていて

このまま完全に冷え切ってしまうんじゃないか。と不安にさせる

ううん、不安にさせられることはない

だってずっと……

元から。私は不安なんですから
186 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/24(火) 22:42:33.93 ID:WOCcOyNKo

久遠さんのおなかの中には双子がいる

まだ、性別が分かる段階にまでは来てないけれど

でも、晴海さんたちが言うには、女の子の双子らしい

片方は神樹……様由来の女の子

片方は戦いによる穢れを担った女の子

相反する二つの力を共存させるのではなく

分け合い、そして手を取り合う形へと

何かの力が働いて、変化した可能性があるらしいです

難しいことは、私にはわかりません

でも

樹「これはきっと、世界にとって私達にとって。とっても大きな分岐点なんだと思います」

久遠さんなら双子だけに? と、茶化してくれるかも知れない

でも、そんなことを言ってくれる人のいない寂しさが

我慢に我慢を重ねる心を、撫でる

樹「っ………」

泣かないと決めた久遠さんの前で。私は

もう、泣きそうだった

泣きたかった

泣けば叱ってくれるんじゃないかというなんの根拠もないちっぽけな希望が

私の疲れた心を、押し出そうとしていた
187 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/24(火) 22:51:19.73 ID:WOCcOyNKo

夏凜「別に、我慢する必要なんて。ないんじゃないの?」

樹「!」

不意にかけられた声にハッとして手を離し、

声のした方へと振り向くと

夏凜さんが困った様子で、息をついた

夏凜「天乃だって、あんたが無理するよりは泣いてくれた方が良いっていうと思うけど」

樹「……泣いたら、久遠さんが責任感じちゃいます」

夏凜「あるんだから、仕方がないじゃない」

樹「………………」

私が咄嗟に答えられずにいると

夏凜さんは深々とため息をつき、私のことを……抱きしめた

樹「は、放してくださいっ」

夏凜「疚しい気持ちなんかないわよ。ただ、さ」

樹「夏凜さ……」

夏凜「樹にはこういうのが、足りてないんじゃないかって。思うのよ」
188 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/24(火) 22:57:36.22 ID:WOCcOyNKo

夏凜「私も、天乃達に会う前まではそうだった」

厳密には少し違うけど。と

夏凜さんは付け加えて、続ける

夏凜「そんなのは要らないとか。大丈夫だとか。言い聞かせて。結局、全然大丈夫じゃなかった」

樹「……………」

夏凜「天乃の担当になって、嫌だ何だ言いながら。私何してたか覚えてる?」

樹「それは……」

夏凜「手話よ。手話。さんざん嫌味言っときながら、話し相手が、関わることのできる相手ができて。私は嬉しかったのよ」

自分のことを話しているのに

夏凜さんは呆れ混じりに話し続けて

困ったように笑う

夏凜「強がってた頃の私に今の樹は似てんのよ」

樹「…………」

夏凜「……無理すんな。強がんな。樹は一人じゃない。みんながいるから。だから、辛かったら。ちゃんと泣け」
189 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/24(火) 23:10:42.41 ID:WOCcOyNKo

夏凜「あんたと同じくらい。天乃を好きだって自負はあんのよ。私だって」

夏凜さんはそう言って

抱きしめる腕の力を少しだけ強くした

それは凄く痛かった

凄く苦しかった。凄く辛かった。

体がじゃなくて……心が

樹「っ」

一ヶ月や二ヶ月経っても

目を覚ますどころか体の反応は全くなくて

それどころか

生きているのか死んでいるのかわからなくなりそうで

このまま死んでしまうんじゃないかと不安にさせるような状態の久遠さんの手を、強く握り締めた

樹「私にいろんなことがしたいって、言ったじゃないですかっ!」

なのに

なのに……っ

樹「ぅぅっグスッ」

溜め込んでいた涙が溢れていく

耐えてきた言葉が抜け出していく

樹「私だって……したいことたくさんあるのにッ!」

けれど

泣いても、叫んでも

久遠さんは……目を覚ましてはくれなかった
190 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/24(火) 23:24:08.89 ID:WOCcOyNKo

樹「ぐすっ……うっ……なんでっ」

夏凜「……………」

樹「なんで何も……言ってくれないんですかっ!」

自分の気持ちを投げつけたのに

久遠さんはいつもと変わらず、目を閉じたままで

夏凜さんは何も言わないで

ただじっと久遠さんを見つめて首を振ると、振り返って出口へと向かう

夏凜「今日は帰るわよ。樹」

樹「嫌です」

夏凜「明日も学校でしょうが」

樹「学校なんて――」

夏凜「樹!」

樹「っ……」
191 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/24(火) 23:27:15.55 ID:WOCcOyNKo


夏凜「天乃の為に看護師になるんじゃなかったの? 学校のテストが近いんじゃなかったっけ?」

夏凜さんの抑揚のない冷たさの感じる声に耳を傾け

目では久遠さんを見て、目をギュッと瞑って席を立つ

樹「また来ます……テストで100点を一科目ででも出して見せますっ」

一人で勝手に作った約束

久遠さんは何も言わなかったし反応もなかったけれど

病室を出ようとした瞬間、「期待してる」と、言われたような気がして振り向く

夏凜「樹?」

樹「……何でもないです」

九尾さんは言った

神樹様に完全に同調してしまう可能性があるって

そして

園子さんは言う

時々、天さんを近くに感じるんだ。と

最悪の結果は

現状で最も可能性の高い……結末だった
192 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/24(火) 23:28:44.61 ID:WOCcOyNKo

では、此処までとさせて頂きます
あすもできれば似たような時間から


今週中目標
乃木若葉の続きが出る前に。なんとかできればな。と
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/24(火) 23:30:30.58 ID:qTv773Xoo

クオンサンだおうなってしまうのか……
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2016/05/24(火) 23:34:50.14 ID:Q8XR9Xt7O

樹ちゃんがこんなになるまで待っているんだ
久遠さん頼む、目を開けてくれ!
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/25(水) 00:26:48.08 ID:+lgfI6230
久遠さん...成せば大体なんとかなるよね!?いっつんの為にも帰ってきておくれ
196 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/25(水) 22:13:22.29 ID:VkhdN3oto

では、初めて行きます
197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/25(水) 22:14:50.74 ID:+IrQLCWRo
おk
198 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/25(水) 22:24:59.79 ID:VkhdN3oto

友奈「樹ちゃん」

樹「っ」

友奈「今日も……久遠さんのところに行くの?」

学校が終わってすぐ、

下駄箱に来たはずなのに、

友奈さんは私のところに駆け寄って、声をかけてきた

でも

そんな会話は必要ないと思った

だって

行くのは、当たり前のことだ

樹「行きますよ。友奈さんも行きますか?」

友奈「う、うん。行く……というか」

樹「?」

友奈「私が行くから……たまには。その。部室に顔を出そう?」
199 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/25(水) 22:35:46.22 ID:VkhdN3oto

樹「……もう、12月の中盤なんです」

友奈「それは分かってるよっ。えへへ……テストがあるし」

友奈さんはおとぼけた様子で笑うと

あんまり自信ないんだよねーと、明るい声で言う

無理してポジティブな考え方をしようとしてるのか

それとも

私のために無理をしてくれてるのか

友奈さんの声も、雰囲気も

どこか……影が差していた

樹「3ヶ月以上経ってるんです……だからきっと。もう起きてくれるはずなんです」

友奈「………………」

樹「だから、ごめんなさい」

自分が友奈さん達に気を使わせているんだって自覚はある

でも、

今日こそは、今日こそはと

時間が経つたびに、そんな際限のない希望が頭の中で産まれては消えて

産まれては消えて

また……産まれていた
200 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/25(水) 22:43:10.02 ID:VkhdN3oto

友奈「じゃ、じゃぁ私も一緒に行くっ!」

樹「無理しなくてもいいんですよ?」

友奈「無理はしてないよ。私も。久遠さんのことは気になるからね」

友奈さんはそう言うと

すぐに履き替えるからね。と言って

友奈「お待たせっ!」

私が靴を履き帰るよりも早く、回り込んできた

そんなに急がなくても

そんなに慌てなくても

いなくなったりは……しませんよ。友奈さん

樹「早いですね、下着が見えかけましたけど」

友奈「ぇっ!?」

樹「嘘です」

友奈「え……ぁ、だ、だよねっ!」

恥ずかしそうに笑う友奈さんも、可愛いと思う

でも

私の頭の中、記憶の中の久遠さんの照れ笑いには

やっぱり勝てないと、思って笑った
201 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2016/05/25(水) 23:11:58.80 ID:VkhdN3oto

樹「こんばんは、久遠さん」

友奈「こんばんはーっ」

がらっと、病室に入ると

看護師さんが私たちを見て笑みを浮かべて

何かあったら呼んでね。と、病室を出ていく

友奈「どっか行っちゃったよ?」

樹「私と入れ替わりでいてくれる担当の看護師さんです。久遠さんを一人にはできませんから」

友奈「へー……そう考えると。樹ちゃんは看護師さんだねっ」

樹「まだまだ勉強不足ですけど、そうなるのが夢ですっ」

友奈さんの嬉しい言葉に

いつかぶりかの明るい返事を返して、久遠さんの体に負担をかけないように気を遣いながら

少しだけ、寝巻きをはだけさせる

友奈「久遠さん、今どのくらいなんだっけ?」

樹「22-23週ですね。双子なので。もうちょっぴりお腹が出てきてるんですよ」

友奈「もう、そんななんだね……」

樹「そうなんですよ」

友奈さんの疑問に答えながら

久遠さんの体にクリームを優しく塗り、足や腕のマッサージを負担が掛からない程度に行った
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