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魔剣士「やはりフキノトウは最高だ」武闘家「えっ?」
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418 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/15(月) 23:54:27.06 ID:6VxWHCJAo
>>417
それお前じゃね?
よく読めよ
419 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/16(火) 00:49:45.59 ID:J6Z+t5r90
いや読んだからエリウスはアスペなのかなって
420 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/16(火) 00:51:09.56 ID:GEDbnQADO
乙
421 :
◆qj/KwVcV5s
[sage]:2016/08/16(火) 18:51:54.10 ID:il8m+4Q4o
書いてる人間が発達障害に詳しいわけじゃないので、作中では病名出してませんが
自閉症スペクトラム障害です
422 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/19(金) 00:26:25.63 ID:5eas+Xi40
コミュ障感あるもんな
意図せず相手を不快にさせること言ったり無神経だったり
423 :
◆qj/KwVcV5s
[sage]:2016/08/21(日) 16:56:04.50 ID:omgcFjbnO
ハブだかルーターだかの不具合でネット繋がらないので投下遅れます……
424 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/21(日) 20:03:07.09 ID:d4HsZSgq0
わかった
425 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:33:25.42 ID:oJgvoud0o
第十五株 奇跡の力は人を狂わせる
聖騎士「誓え! 絶対に彼女を守ると!」
魔剣士「え……仲間でいてくれる限りはできるだけ守るよそりゃ」
魔剣士「どうしても敵わない奴が出てきたらどうしようもねえけど……」
魔剣士「それはそっちも同じなんだっけ」
武闘家「……エリウス」
魔剣士「ん。何?」
武闘家「ううん。なんでもない」
微妙に気まずいけど、気にしてない体を装った。
426 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:34:19.07 ID:oJgvoud0o
魔剣士「……全員片付いたか」
オディウム教徒に襲われる頻度は減ったものの、
強い奴にばかり襲撃されるようになった。
重斧士「最近はその石使って戦ってんだな」
魔剣士「これで術を強化して魔力を節約しねえとやってらんねえからな」
武闘家「石に頼る気はないって言ってたけど、そうも言ってられなくなったものね」
魔剣士「琥珀は魔鉱石と同様の扱いをされることもあるが鉱物じゃなくて樹脂だし」
武闘家「あ、それもそうね」
魔剣士「まあ、これがなかったらそろそろ石買いに行ってたかもしれないのは確かだ」
重斧士「おまえいつまで旅するつもりなんだ?」
魔剣士「適当に気が済むまで……と思ってたんだが、」
魔剣士「植物に助けを求められている限りは終わんねえだろうな」
427 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:35:24.94 ID:oJgvoud0o
【森から天然の魔力を採取 精霊の怒りを買う】
【西の大剣豪 道場運営を再開】
【旭光の勇者ヘリオス 男爵位を授爵】
魔剣士「……ん?」
重斧士「どうした?」
魔剣士「ネットでニュース読んでたんだが……」
ネットの反応[もっと早くてよかっただろーのんびりしてんなぁあの国]
ネットの反応[目ぇ怖っ!]
青い石「魔王倒した時点で貴族になれてたら結婚する時身分差婚の手続き要らなかったのに」
重斧士「てことはおまえも貴族になんのか?」
魔剣士「俺は平民のままだよ。こういう時授爵されるのは一代貴族だし……って、あれ?」
[尚、一代貴族ではなく、世襲貴族である。
南の大陸において、新たな世襲貴族が増やされるのは実に二百年ぶりのことである]
魔剣士「マジかよ」
428 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:36:07.92 ID:oJgvoud0o
魔剣士「まあどちらにしろ俺は平民同然なんだけどな」
重斧士「長男だろ? 家督継ぐもんじゃねえの」
魔剣士「俺の地元、末子相続の風潮が強いんだよ」
魔剣士「絶対に末の男が継がなきゃいけないってわけではないけど」
魔剣士「もしもし父さん?」
戦士『どうした』
魔剣士「おめでとうロード・レグホニア」
戦士『祝ってくれるのは嬉しいがその呼び方はやめてくれ。恥ずかしいんだよ』
魔剣士「だーんしゃくぅー!」
戦士『やめんか! 俺は貴族なんてガラじゃない!!』
魔剣士「イエェスマイロォォォォドォ!!」
戦士『切るからな!』
魔剣士「あひゃひゃ。ちょっと待って」
魔剣士「世襲貴族ってデマじゃなくてマジ?」
429 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:37:01.41 ID:oJgvoud0o
戦士『……はあ』
戦士『子孫に『家を存続させなきゃいけない』ってプレッシャーがかかるから、』
戦士『正直世襲貴族になんてなりたくなかったんだがな……』
戦士『うちは代々平民オブ平民で、家が絶えたって誰も困らないってのに』
魔剣士「英雄の家系は残したいんじゃねえの、国的に」
戦士『かもしれんな……っと、上司に呼ばれた。じゃ、あんまり無理すんなよ』
プツッ
武闘家「よかったじゃない。特権で楽できるわよ」
魔剣士「俺の国はもう貴族の特権とかないんだよ」
武闘家「え? 上流階級の人間しか入れないようなスクールとか……」
魔剣士「ないよ。平民でも金と学力さえあればお上品な学校には入れる」
武闘家「あら……そうなの」
魔剣士「嫉妬で面倒なことになるだけだ」
430 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:38:15.79 ID:oJgvoud0o
魔剣士「ああ、そうだ」
魔剣士「わりいけど、ルルディブルクに行くの遅くなりそうだ」
魔剣士「あちこちの困ってる精霊を助けて回らなくちゃいけなくてさ」
武闘家「あたしが勝手にあなたについてきてるだけなんだから、謝らなくていいのよ」
武闘家「のんびり行きましょ」
――とある村
白旅人「通してくださーい……あのー……宿取りに行きたいんです……」
「どうか助けてください!」
「水道が詰まってしまいまして」
「電話が繋がらないのです!」
白旅人「申し訳ありませんが、業者さんに頼めば解決する頼み事はお断りさせていただいてるんです」
白旅人「お仕事を奪ってしまうわけにはいかないものですから……」
武闘家「人だかりができてるわね」
重斧士「あいつ、俺よりずっと若ぇだろうに頭真っ白だな」
重斧士「目に包帯巻いてるが前見えてんのか?」
魔剣士「あ? ああ、あれ多分魔適体質者だ」
魔剣士「普通の白髪じゃなくて、牛乳塗ったくったような色してるだろ」
431 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:39:20.59 ID:oJgvoud0o
白旅人「急いでますので……」
「愛用の鋏が見つからないんです!」
「夫が脱毛石鹸で頭を洗って悲惨なことになったのですが」
武闘家「困ってるみたいね。行ってくるわ」
武闘家「彼困ってるじゃないですかー!」
白旅人「ありがとうございます、助かりました」
武闘家「いえ」
武闘家「…………」
白旅人「あ、目のことはご心配なさらず。包帯越しに見えてますから」
重斧士「なんで巻いてんだ?」
白旅人「はは……虹彩が真っ白なので、不気味がられてしまうんですよ」
重斧士「目に色付けられねえのか?」
白旅人「染めるだけならば容易です」
白旅人「しかし、常に意識していないと色が抜けてしまうんです」
白旅人「僕の魔術はイメージ頼りの不安定なものなので」
432 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:44:08.02 ID:oJgvoud0o
白旅人「おや、あなたは……もしかしてエリウス・レグホニアでは」
魔剣士「そうだけど」
白旅人「申し遅れました。僕はメルク。旅人です」
白旅人「なんでも、あなたは植物を自在に操れるそうですね」
魔剣士「ああ。体内に入れた植物はな」
白旅人「……不思議ですね。あなたの魔適傾向は15ほど」
白旅人「それほど高度な術をイメージで使用できるとはとても考えられません」
魔剣士「調子のいい時でも20マジカルくらいだ」
魔剣士「特殊体質なんだと思って大して気にしたことはなかったが」
白旅人「どう考えても、最低でも80マジカルは必要なはず」
白旅人「ううむ……」
魔剣士「……あー、そういや、この能力は前世が関係しているのかもって」
魔剣士「昔母さんが言ってたような気がする」
433 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:45:55.47 ID:oJgvoud0o
魔剣士「魂がうんたらかんたら」
白旅人「種族は……普通の人間ですから、そう考えるのが妥当でしょうね」
魔剣士「そういやあんた、従者は?」
魔剣士「魔適体質者が一人で旅できるわけないだろ」
熟練度次第だが、魔適体質者は通常の魔術師では起こせない奇跡を実現させることができる。
故に、道を踏み外したり、力を悪用されたりしないよう、
自国の武官が護衛を務めることとなっている。
白旅人「それが……少し前に、オディウム教と名乗る怪しい宗教に引き込まれてしまいまして」
魔剣士「難儀な……」
魔剣士「壁になってくれる奴がいなかったら頼られ過ぎて大変だろ」
白旅人「ええ……本当に」
白旅人「それに、それ以来オディウム教の方々に入信するよう脅されることが続いてまして」
魔剣士「!」
白旅人「この頃は武器を向けられることもありますね。この体質の人間が欲しいようです」
魔剣士「実は俺達も別の理由で狙われてんだ」
434 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:46:23.53 ID:oJgvoud0o
宿を確保して村をうろついた。
婆「爺さんや、スズランは強心剤になるそうじゃ」
爺「煎じてみるかの……」
魔剣士「ちょ、ストップストップ!」
魔剣士「強心剤ってのは心臓毒同然なんだ。使い方を間違えたら死んじまう」
魔剣士「もし心臓が悪いのなら病院行ってくれ!!」
魔剣士「危なかった……」
流石に冷や汗が出た。ああいうのは事故の元なんだ。
素人が下手に草を利用しようとすると取り返しのつかないことになりかねない。
武闘家「可愛い見た目なのに怖いのね、スズランって」
魔剣士「身近な植物も意外と強力な毒草だったりすんだよ」
魔剣士「だが、扱いようによっては薬にもなる」
魔剣士「毒と薬は紙一重なんだ」
435 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:46:54.03 ID:oJgvoud0o
おっさん「あ、あの……もしや、あなたは魔適体質者のメルク様では」
白旅人「ええ」
おっさん「実は、愛娘が不治の病にかかってしまったのです」
おっさん「どうか、どうか治療していただけないでしょうか……!」
白旅人「いいですよ」
おっさん「これが私の愛娘です」
金魚「……ぷくぷく」
重斧士「金魚じゃねえか」
武闘家「金魚だわ」
魔剣士「こりゃ見事な転覆病だな」
白旅人「すぐに治療できますよ」
ぽわわ
436 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:47:35.64 ID:oJgvoud0o
金魚「!」
金魚「〜〜〜♪」
武闘家「わあ! すごい!」
魔剣士「科学的に治療法が確立されてない病気は、普通の魔術じゃあ手の施しようがないからな」
魔剣士「これはすげえ」
おっさん「ありがとうございます、ありがとうございます!」
おっさん「流石、どんな難病でも治す奇跡の力を持った魔適体質者様です!」
おっさん「ぜひお礼をさせてください」
白旅人「お礼なんて、いいですよ。お役に立ててよかったです」
白旅人「……どんな難病でも……か」
437 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:48:14.39 ID:oJgvoud0o
武闘家「ねえねえ、他人の魔適傾向を上げることってできるの?」
白旅人「それはとても特殊な術ですからね」
白旅人「そのようなことができる魔適体質者は長いこと生まれていないそうですし、」
白旅人「可能だったとしても、今は国際法で禁じられています」
白旅人「この世界のバランスを壊してしまう行為ですからね」
武闘家「ふうん。確かに問題の元にはなっちゃうかもしれないわ」
重斧士「それができる奴とできねえ奴って、どう違うんだろうな」
438 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:50:50.49 ID:oJgvoud0o
魔剣士「おまえの頭見てたら牛乳飲みたくなってきた」
白旅人「はは、よく言われます」
魔剣士「半ば冗談だったんだが……そうか、よく言われるのか」
武闘家「……珍しいわね。あなたが初対面の人とこんなに早く打ち解けるなんて」
魔剣士「すぐに親しくなっても大丈夫な奴はなんか本能でわかるんだ」
――夜、宿
魔剣士「……頼られ過ぎる人生は、やっぱ生きづらいか?」
白旅人「そうですね。だから各地を転々としているんです」
白旅人「一箇所に留まっていると、どうしても人々の人間性が変わってしまうんです」
魔剣士「他力本願になるんだろ」
白旅人「はい。よくおわかりで」
白旅人「僕は人の笑顔が好きです。人の役に立つことが生きがいです」
白旅人「僕のような魔適体質者でなければ助けられない人がいたら、」
白旅人「自ら進んで助けたいと思います」
白旅人「しかし、僕の存在によって、人々の心が歪んていくことが悲しくて仕方がありません」
白旅人「だから、彼女は僕を救おうと……」
白旅人「あなたこそ、苦労してきたんじゃないですか」
439 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:53:54.56 ID:oJgvoud0o
魔剣士「俺は自分の好きなように生きることしか考えてねえからな」
魔剣士「植物関係の頼み事をされることは多いが、そう苦に思ったことはないんだ」
魔剣士「ただ……末の妹が心配でさ」
魔剣士「魔適傾向が80くらいあって、目の色が魔力に染まってるんだ」
白旅人「ほう。どんな色なんです?」
魔剣士「柔らかいラベンダーだ」
白旅人「いいですね。思慮深き慈愛の色です」
魔剣士「見る人によっちゃあ、目の色が魔力の影響受けてるってわかっちまうみたいでさ」
魔剣士「母さんもそのくらい魔適傾向が高くて、面倒な頼み事をされることが時々あるし」
魔適傾向が100マジカルを越している魔適体質者でなくとも、
80もあれば虹彩が魔力の色に染まり、常人よりはイメージで発動できる魔術の種類が増え、
威力も大きくなる。
50ほどだと、魔力容量次第ではそこそこ強力な術を扱えるようになるが、
属性や威力は限定される。父さんがそうだ。
魔剣士「周囲と違うところがあるせいで、寂しい思いをしちまったら可哀想だなって」
白旅人「妹思いの、優しいお兄さんなんですね」
魔剣士「えっ……あ、んー……どうだろうな」
青い石「すーなーおーじゃーなーいー」
(黙ってろ!)
440 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:54:27.59 ID:oJgvoud0o
白旅人「どんな人であれ、誰もが悩みを抱えるものです」
白旅人「そして、悩むからこそ、答えを見つけた時に強くなれるんです」
白旅人「あなたのようなお兄さんがいるなら、きっと大丈夫ですよ」
魔剣士「う……」
なんか調子狂うな……。
魔剣士「えっと……ありがとな」
白旅人「いえ」
白旅人「悩んでいる時、人の心には弱みができます」
白旅人「自分で悩みを解決したり、誰かの助けを得られたりできればいいのですが、」
白旅人「時に、その弱さを利用して、思いのままに人を操ろうとする者が現れます」
白旅人「僕の従者は、心を弱らせていたために悪人の手を取ってしまいました」
魔剣士「…………」
白旅人「……オディウム教に限った話ではありませんが、」
白旅人「新興宗教や自己啓発セミナーの中には、何かしらの悩みを抱えて弱っている人や、」
白旅人「社会的弱者ばかりを狙って悪事を働こうとしているものが少なくありません」
白旅人「もちろん全てが悪いとは言いません」
白旅人「真に人を導きうるものも存在するでしょう」
441 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:54:55.30 ID:oJgvoud0o
白旅人「救いを求めている人の前に立つ、救世主の仮面を被った悪人を僕は許すことができません」
白旅人「ああ、すみません、僕ばかり喋ってしまって」
白旅人「いつもは聞き役に回っているのですが」
魔剣士「聞き上手な奴ほど、自分の欲求抑え込みがちだからな」
魔剣士「吐き出せるだけ吐き出しとけ」
白旅人「あはは……ありがとうございます」
白旅人「不思議ですね。あなたにとても親近感が沸くんです」
魔剣士「……お互い、孤独を感じて生きている時間が長かったんじゃないか」
白旅人「そうですね。その通りなのでしょう」
魔剣士「……なあ、俺達と一緒に来ないか」
白旅人「ありがたいお申し出ですが……今回はお断りさせていただきます」
魔剣士「え……」
白旅人「あまり大人数で行動するのに慣れていないものでして」
魔剣士「ああ……そっか」
442 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:55:42.80 ID:oJgvoud0o
翌日。
白旅人「では、僕はこれで」
魔剣士「気をつけてな」
武闘家「あら……あれ、何かしら?」
村の近くの岩壁に巨大な扉があった。
司祭「……困りました」
村民「どうしましょう、これでは祭りができません」
巫女「うう……ごめんなさいごめんなさい」
武闘家「どうしたんですか?」
司祭「この洞窟の中は神殿になっていて、祭りを行うための神具が収められているのですが……」
巫女「私が五回扉を開くための言霊を間違えてしまったので、ロックがかかってしまったんです……」
ああ……パスワードを間違えすぎてログインできなくなったのと同じ状態か。
443 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:56:56.69 ID:oJgvoud0o
司祭「ロックを解除するための条件はそこに彫られているのですが、」
司祭「特殊な暗号なものですから……」
村民「昔は解読法を記した本があったのですが、」
村民「魔族の襲撃を受けた際に失われてしまったそうなんです」
武闘家「そうなんですか……困りましたね」
村民「祭りを行い、野菜や草花の精霊に感謝を伝えなければ、」
村民「この村は実りを失ってしまいます……」
精霊に気持ちを伝える手段が失われるのはまずい。
武闘家「……メルク君ならどうにかできそうだけれど」
重斧士「もう行っちまったしな。追いかけるか?」
魔剣士「魔適体質者に頼る癖がつくのはよくない。他の方法を考えないか」
重斧士「力づくで扉を破壊するか?」
司祭「なりません! この扉も歴史的な文化遺産なのです」
武闘家「横からトンネルを掘るとか……」
司祭「内部も芸術的な装飾が施されていますので……」
魔剣士「……こういうの得意な知り合いがいるんだ」
魔剣士「そいつならこれを解読できるかもしれねえ」
444 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:57:52.65 ID:oJgvoud0o
ただ、あまり頼りたくない相手である。
歌姫『連絡してくるなんて珍しいじゃなぁい』
魔剣士「解読してほしい古代遺跡の暗号があるんだが」
歌姫『まあ! あなたがあたくしを頼るなんて!』
歌姫『天地がひっくり返ったかと思いましたわ』
魔剣士「うっせ。メッセンジャーに画像送るからな」
歌姫『普段なら依頼料を要求するところですけれど、』
歌姫『幼馴染のよしみで特別にタダでやってさしあげますわ!』
魔剣士「と言いつつどうせ恩着せがましくしてくるんだろ」
魔剣士「礼をさせてくれた方がありがてえんだがな」
歌姫『では、今度会った時お買い物に付き合ってくださいます?』
魔剣士「あーあー男避けになりゃいんだろ。わかったよ」
ピッ
武闘家「男避け?」
魔剣士「あの女見た目だけはいいからな」
魔剣士「男の付き添いなしで外出するとナンパされ過ぎて大変だそうだ」
性格は凄まじく面倒なんだがな。プライドの高い高慢ちきだ。
ちなみに幼馴染と言えるほど親しいわけじゃないし仲も悪い。
445 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 00:59:16.14 ID:oJgvoud0o
翌日。
歌姫「わざわざ出向いて差し上げましたわ!」
魔剣士「いやいやいやなんでここにいるんだよ」
普段は俺と同じ大学の文学部に通っている。
俺と同い年だが、こいつも飛び級しており、今は学部四年だったか修士一年だったか……。
考古学専攻の歴史オタクだ。
歌姫「たまたまこの国の城下町の大学に寄る用事があって、近くまで来ていましたの」
魔剣士「はあ……」
歌姫「相変わらずヒョロいくせに背ばかり高くてキモいですわね」
歌姫「アンバランスですわー」
魔剣士「うるせえしばくぞ」
歌姫「まあ! うら若き乙女に対してなんて乱暴なのでしょう」
重斧士「すげえ美女だな……」
武闘家「あの子、見たことあるわ」
武闘家「確か、インテリ系カリスマ歌姫の……」
446 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 01:00:06.07 ID:oJgvoud0o
歌姫「お初にお目にかかります。あたくし、クレイオーと申します」
歌姫「またの名を、麗しき彗星☆ハルモニアですわ!」
歌手としての芸名らしい。
歌姫「さあ、早く案内なさいヒョロガリウス!」
魔剣士「誰がヒョロガリウスだこの高飛車女」
腕を引っ張られた。強引な奴め。
重斧士「あいつら仲良いな」
武闘家「…………」
歌姫「このあたくしが解読して差し上げたのだからありがたく思いなさぁい!」
魔剣士「あーはいはいありがとうございますう!」
文学部のアポロン先生と同じ黄金色の髪が風になびいた。
447 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/22(月) 01:02:05.98 ID:oJgvoud0o
kokomade
不具合は意外とすぐ直りました
448 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/22(月) 01:37:22.82 ID:SH7G+V12o
アポロン君、結婚したのか
449 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/22(月) 01:38:39.88 ID:7Vw4A8Zq0
ガラハドさんがさりげなくフサフサになってるぞ
450 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/22(月) 03:33:36.58 ID:0I81zj5XO
乙
451 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/22(月) 12:48:48.75 ID:ZxPorYqs0
アポロン結婚出来たのか(困惑
452 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/22(月) 12:59:03.81 ID:K0G1IGTrO
>>451
君つけないと般若顔で睨まれるぞ
453 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:39:43.76 ID:2eCgujgHo
第十六株 マジナイ―呪い―ノロイ
歌姫「これは二千年程昔にこの地方の魔術師の間で流行していた暗号ですのよぉ」
歌姫「少々製作者のオリジナリティが入っているようですけれど、」
歌姫「解読に大した時間は要しませんでしたわぁ! ぉおーっほっほっほっほっ!」
いちいち上がる語尾がなんとも耳障りだ。
司祭「助かりました……ありがとうございます」
巫女「よかったです……ふぇぇぇ……」
司祭「こちらは村で採れた野菜です。どうぞ」
歌姫「エリウス! 久々にあなたの料理を頂いて差し上げますわ!」
魔剣士「言われなくても作るっての……」
454 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:40:42.11 ID:2eCgujgHo
武闘家「……首を突っ込んだのはあたしだったのに、また何も手伝えなかった」
重斧士「まああいつ色々できるし、なんだかんだで人脈あるみてえだからな」
武闘家「なんだか情けないわ」
歌姫「ふう。美味ですわ」
魔剣士「そりゃどうも」
歌姫「あなたから料理の腕を取ったら顔と学力と地位と名誉と財力と謎の能力しか残りませんものね」
重斧士「充分じゃねえか……?」
武闘家「…………」
歌姫「ご馳走様でした。ヴォイストレーニングをして参りますわ」
歌姫「あ・あ・あぁ〜〜」
重斧士「なあ、女装してた時のおまえとあの子の話し方、そっくりじゃねえか?」
魔剣士「そりゃあいつをモデルにしたからな」
魔剣士「あいつみたいに高慢に振る舞うことでストレスを発散したかったんだ」
重斧士「なるほど」
武闘家「ふうん……」
455 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:41:28.71 ID:2eCgujgHo
魔剣士「……別にあいつとは何もないからな」
魔剣士「あいつの親父さんと俺の母さんが仲良くて、顔を合わせる機会が多かっただけだ」
歌姫「ああ、そうですわ」
歌姫「城下町まで送ってくださります?」
魔剣士「元々行くつもりだったからいいけど、俺達と一緒だとあぶねえよ」
魔剣士「オディウム教の連中にたまによく襲われてっから」
歌姫「それならお役に立てると思いますわよ」
歌姫「しばらく前、古代の文献に記された不思議な術を発見しましたの」
歌姫「音楽と魔導が融合した“魔奏術”」
歌姫「己の魔力により、音楽の持つ“心を動かす力”を大幅に増幅することができますわ」
歌姫「音を楽しむ感受性がある者の心はあたくしの思うがまま! おおーっほっほ」
歌姫「敵の戦意なんて地の底に沈めて差し上げますわぁ!」
魔剣士「下手な洗脳術より恐ろしいな」
歌姫「あなたには効かなさそうですわね」
魔剣士「うっせ」
魔剣士「つかおまえ、事務所のボディガード連れてこなかったのか?」
456 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:42:02.68 ID:2eCgujgHo
歌姫「事務所とは喧嘩いたしました」
魔剣士「え、なんで?」
歌姫「魔奏術を芸能活動に使えと言われましたの」
魔剣士「使えば人気上げ放題だろうな」
歌姫「あたくし、歌には誇りを持ってますのよ」
歌姫「枕営業などは一切行わず、実力で輝いてきました」
歌姫「特殊な術を用いたインチキなんてプライドが許しませんわ」
歌姫「これからはフリーランスで活躍してみせます」
高慢ちきの酷い性格の女ではあるが、実力はあるし努力家であることは確かだ。
――森の中
物騒な恰好をした連中が現れた。
歌姫「鎮静の旋律<クワイエット・メロディ>」
歌姫「〜〜〜〜〜〜♪」
クレイオーは術を発動した状態で歌った。
457 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:42:35.42 ID:2eCgujgHo
「何故俺は武器なんて持ってるんだろう……?」
「なんか……眠いな……」
「襲おうとしてごめんなさい……!」
武闘家「綺麗な歌声……」
大男「何攻撃やめてんだゴルァアアアア!」
歌姫「まあ」
魔剣士「はっ!」
近くの木に魔力を与え、枝で大男を殴ってもらった。
歌姫「やっぱり音楽を嗜まない粗暴な人間には効きませんのね。残念ですわ」
重斧士「敵の数を大幅に削ってくれるだけでもありがてえよ」
歌姫「エリウス、あなた食べたわけでもない植物も操れるようになりましたのね」
魔剣士「操ってるわけじゃない。お願いを聞いてもらってるだけだ」
458 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:44:54.87 ID:2eCgujgHo
生命の結晶との融合率が上がり、精霊に与えることのできる力の種類が随分増えた。
精霊が俺の代わりに魔術を発動してくれるおかげで攻撃範囲が大幅に広くなったし、
植物本体を動かしてもらうこともできる。
ただし魔力の消費量は多い。
――城下町
歌姫「では約束通りお買い物に付き合っていただきます」
魔剣士「こいつらも一緒でいいか?」
魔剣士「二人きりだとそれはそれで面倒なんだよ」
歌姫「あら。せえっかくこのあたくしとでぇとする好機ですのにぃ?」
魔剣士「冗談もほどほどにしろよおまえ」
459 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:45:46.36 ID:2eCgujgHo
魔剣士「おまえと一緒に歩いたせいであらぬ噂を立てられたり」
魔剣士「パパラッチに写真取られたりゴシップ誌にとんでもねえこと書かれたり」
魔剣士「俺が散々な目に遭わされてきたのを忘れたか」
歌姫「あなたこそ女避けができて好都合でしたでしょ」
魔剣士「それもそうだが……」
歌姫「仕方ありませんわね」
魔剣士「俺が非力なの知っててこんだけ荷物持たせるとはおまえほんと鬼畜だよな」
歌姫「鍛えて差し上げてますのよ。感謝なさい……って」
歌姫「あらあらあら?」
歌姫「以前よりは逞しくなったようですわね?」
ぺたぺた体を触られた。
歌姫「……あら? 女性化乳房なら病院に行くことをお勧めいたしますわよ……」
魔剣士「ほっとけ!!」
歌姫「ヤバい病気だったらどうしますの」
歌姫「肝機能の低下か乳がんか精巣腫瘍が原因かもしれなくてよ」
魔剣士「ホルモンバランスが崩れてるだけだから!!」
距離感が近過ぎて嫌になるが、あまり拒絶し過ぎて怒らせても面倒なことになる。
武闘家「……いくら幼馴染でも、付き合っていないのにこんなに触るものかしら」
重斧士「ま、まあ、兄妹みたいな感覚なんじゃねえか?」
460 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:46:55.47 ID:2eCgujgHo
歌姫「胸筋かと思ったら脂肪だったなんてとんだ詐欺ですわー」
テストステロンを増やすために筋トレは欠かさず行っているが、
鍛えられた胸筋によって脂肪が底上げされてしまった。
筋トレしたところで胸の脂肪が落ちるわけではなかったのだ。
完全にミスった。当分腕立て伏せはやらんぞ。
一応服を着ていれば目立たない程度ではある。
歌姫「次のお店に行きますわよおっぱい男」
魔剣士「て、てめえ……」
殴りてえ……。
おもしろキャラとして愛されているアポロン先生とは違い、
こいつはただただ性格が悪い。
「おい……あれハルモニアじゃないか?」
「ち、近くで見るとほんと美人だな……」
「すげえぼんっきゅっぼんだぞ」
「くそっ、声かけたいのにでけえ男が二人も傍に……」
記者「すみませ〜ん、わたくし、月刊ファッション誌FUNFUNの記者なんですけど、」
記者「今、美男美女カップルにインタビューをお願いしてまして〜」
461 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:47:24.66 ID:2eCgujgHo
歌姫「あら」
記者「お二人はいつからお付き合いなさってるんです?」
魔剣士「付き合ってねえよ」
歌姫「この男はただの召使いでしてよ! おぉ〜っほっほっほ」
武闘家「……ちょっと、あなたエリウスのこと馬鹿にしすぎじゃない!?」
武闘家「それに、周囲の人から誤解されないようにもうちょっと離れて歩いたら!?」
歌姫「んっふ……あなた、もしかして……こいつに気がありますの?」
武闘家「なっ……」
魔剣士「ちょっ」
記者「あ、いいですね〜この修羅場……記事にはできませんけど……」
クレイオーに腕を組まれた。
こいつ、カナリアを挑発してやがる。
歌姫「やめときなさいなぁ、こんなド変態」
歌姫「大学では毎年残念なイケメンランキング一位に輝いているような男なんですのよ?」
462 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:48:02.27 ID:2eCgujgHo
武闘家「べ、べ、別にあたしはっ……」
歌姫「あら……もしかして本当に?」
武闘家「……エリウスは、いいところだって、いっぱいあるしっ……」
歌姫「知ってますわよ? お・さ・な・な・じ・みですもの」
歌姫「他人との意思の疎通が極端に下手なせいで捻くれちゃってますけれど、」
歌姫「根は優しいですわ、この男」
歌姫「で・もぉ」
歌姫「昔馴染みでもないとぉ、エリウスは操縦しきれませんわぁ!」
魔剣士「いい加減にしろクレイオー! おふざけが過ぎるぞ」
武闘家「操縦って……人を乗り物みたいに……!」
歌姫「『夫を操縦する』って、言いますでしょ? おぉ〜っほっほ」
魔剣士「っだーもう! ほら、さっさと行くぞ!」
こんなことを言っているが、クレイオーは決して俺に気があるわけではない。
カナリアを嫉妬させて楽しんでいるだけだ。
それはとんでもない地雷だってのに。
重斧士「……やれやれだな、まったく」
463 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:48:54.96 ID:2eCgujgHo
歌姫「この服、似合いますかしら」
魔剣士「あーうんそのくらい派手なのがおまえには似合ってるよ」
店員「彼氏さんはこちらの服いかがです?」
魔剣士「だから彼氏じゃねえって。それに俺そういうV系の服着ねえから……」
店員「似合いそうですのに」
歌姫「試着するだけしてみなさい」
めんどくせえ……。
魔剣士「おらどうだ」
店員「まあ! メイクまでバッチリ!」
V系メイクを携帯で検索し、短時間で仕上げた。
目元から頬にかけてはヴィンテージなアートメイクを施してある。
歌姫「ふっ……ふふっ……」
歌姫「似合いすぎて笑ってしまいますわ……あははは……!」
魔剣士「どうだガウェイン。いつにも増して美しいだろう」
重斧士「デビューしちまえよもう」
武闘家「……ノリノリじゃない」
464 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:49:31.73 ID:2eCgujgHo
結局V系の服は着たまま購入した。
歌姫「この街には、自由にストリートライブを行っていい区画がありますの」
歌姫「久々にやりますわよ」
魔剣士「買い物に付き合ったんだからもういいだろ……」
魔剣士「つうかこの恰好で俺にオカリナを吹けと」
V系のスタイルでオカリナは……アリなのだろうか? ミスマッチすぎないか?
歌姫「……ギターか何かできませんの?」
魔剣士「俺がオカリナとリコーダーしかできねえのは知ってんだろ」
歌姫「…………」
魔剣士「どうしても俺に伴奏やらせてえなら女装してきていいか?」
魔剣士「やっぱ男女二人組の状態で目立ちたくねえし」
歌姫「……いいですわよ。精々あたくしの引き立て役になってくださいな」
465 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:50:14.36 ID:2eCgujgHo
濃いものの静かそうな印象を与えるメイクに変え、長髪のウィッグを被った。
ドレスは清楚な青系だ。
クレイオーが高飛車系お嬢様だからキャラを分けた方がいいだろう。
そう思っておしとやか系お嬢様キャラになってみることにしたのだ。
魔剣士♀「どうかしら」
歌姫「!?」
歌姫「……ヒョロガリウスのくせに生意気ですわ」
何故俺がオカリナを吹けるか?
生け花と同じ理由で母さんに習わさせられていたからだ。
最初は真面目にやるつもりが全くなかったのだが、
父さんが木製のオカリナを買ってくれてからは練習するようになった。
魔剣士♀「学際の時に演奏した曲でいいかしら?」
歌姫「ええ」
歌姫「さあ皆様! 注目なさぁい! 麗しき彗星☆ハルモニアの歌が響きますわよ!」
「なんだなんだ?」
「うっわすごい美女二人組だぞ」
「ハルモニアたんは知ってるけど後ろの子は何者だ?」
466 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:52:31.50 ID:2eCgujgHo
感受性はどうか知らんがテクニックだけは身についた。
上手いけど気持ちが籠ってないのよねえと先生には言われたっけな。
流石に伴奏がオカリナだけじゃ弱いから、ピアノの録音を再生する。
歌姫「あさーつーゆーに映えーる閃光〜♪」
魔剣士「……〜〜〜〜〜〜〜〜♪」
重斧士「あいつのオカリナテクすげえな」
武闘家「息、ぴったりだわ」
重斧士「ええと…………」
武闘家「……あたし、そこのお店見てくるわね」
重斧士「俺も一緒に行くぞ!」
重斧士「カナリア…………!」
重斧士「…………おかしいな。一瞬で見失っちまった」
――――――――
あれ? ここ、何処……?
人混みに押されて、気づかない内に変なところに迷い込んじゃったのかしら。
武闘家「…………はあ」
わかってる。あの二人は別に好きあってるわけじゃない。
でも、嫉妬心は抑えようがなかった。
467 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:53:39.03 ID:2eCgujgHo
あの子はあたしよりもずっと美人だ。スタイルもいい。
筋肉で引き締まった硬いこの体と違って、女の子らしい柔らかさがある。
気まずくなっちゃったあたしと違って、あいつに好きなだけ近づいて好きなだけ会話してる。
あたしの知らないあいつのことをたくさん知ってる。
あたしとあいつが過ごした時間よりも、
あの子とあいつが過ごした時間の方が、ずっと長い。
……はっきり振られている以上、あたしにはもう何もできることなんてないのに。
振られても、それでも一緒にいたかった。
だから、ついてきた。
でも、この頃なかなか会話が噛み合わないし、
話しかけても、まともに話せる自信がなくて引いてしまうことも多い。
告白してすっきりするはずだったのに、おかしいな。
苦しいよ。
占い師「そこのあなた」
武闘家「……あたし?」
468 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:54:35.96 ID:2eCgujgHo
占い師「恋の悩みを抱えているようですね」
武闘家「…………」
占い師「失恋の色が出ています」
占い師「状況を好転させたくはありませんか?」
武闘家「そりゃ、そうだけれど……」
あたしはあまり占いなんかには頼らない方だ。
でも今は、なんの確実性もないものに対しても縋りたくて堪らない。そんな気分だ。
気休めが欲しい。
占い師「深呼吸をして、気持ちを落ち着けてください」
占い師「あなたの好きな方は、どんな方ですか」
武闘家「……器用なのに不器用で、あたしに異性としての興味は全くなくて、」
武闘家「でも、友達としては大事にしてくれる人」
占い師「あなたは、彼を振り向かせるために、どのような努力をしてきましたか?」
武闘家「っ……」
武闘家「努力したって、無駄だもの」
武闘家「あいつのために料理したり、あいつのしたいことを手伝ったりはしたけど……」
469 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:55:10.36 ID:2eCgujgHo
占い師「ふむ」
占い師「恋愛は駆け引きです。“押し”と“引き”の加減が重要なのですよ」
武闘家「もう何やったって駄目よ。告白して振られてるんだもの」
占い師「告白してからが勝負ですよ!」
占い師「気持ちを伝えられたら、相手はあなたのことを意識せずにはいられなくなるものです」
占い師「これからのあなたの行動次第で、彼はあなたに好意を寄せるようになります」
武闘家「そう……かしら」
占い師「これから、あなたにまじないをかけましょう」
占い師「まじないが、“押すべき時”と“引くべき時”をあなたに教えてくれるのです」
武闘家「でも、あたし、この気持ち……早く忘れたいの」
武闘家「ただ、友達としてあいつと付き合っていけたら、って……」
占い師「でも、まだ好きなのでしょう?」
占い師「このまじないは、“引くべき時”に完全に気持ちを抑えてくれます」
占い師「普段は恋の苦しみを感じずに済むようになるのですよ」
武闘家「本当に……?」
470 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:56:29.06 ID:2eCgujgHo
占い師「目を閉じて。魔力を解放し、心を無にしてください」
武闘家「…………」
占い師「そうです。儀式が終わるまで、その目を開けてはなりませんよ」
占い師「くくく……」
占い師「もう大丈夫ですよ。あなたに、この愛の箱をお渡しします」
占い師「“押すべき時”に、あなたは自ずとこの箱を開けるでしょう」
重斧士「カナリア! ここにいたのか」
重斧士「こんなに近くにいたのになんで気づかなかったんだろうな……まあいいか」
武闘家「…………」
重斧士「……大丈夫か?」
武闘家「ごめんなさい。ちょっとぼうっとしちゃって。平気よ」
471 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:57:13.14 ID:2eCgujgHo
――――――――
魔剣士♀「大丈夫ですか?」
占い師「う……」
占い師「あれ……私は一体……」
魔剣士♀「ここで気を失っていたのですよ」
魔剣士♀「病院までお送りしましょうか?」
占い師「い、いえ! だだだ大丈夫です!」
占い師「こんなに美しい女性のお手を煩わせるわけには参りません!!」
魔剣士♀「まあ」
歌姫「キモいですわ」
歌姫「では、あたくしはここで」
魔剣士「じゃあな。……疲れた」
472 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:57:50.22 ID:2eCgujgHo
武闘家「エリウス!」
重斧士「おーいたいた」
魔剣士「何処行ってたんだよおまえら。心配したじゃねえか」
カナリアがガウェインとくっついてくれたら気が楽になるんだけどな。
歌姫「あ、カナリアさん。ちょっといいかしら」
武闘家「なあに?」
歌姫「さっきは意地悪なことをたくさん言ってしまってごめんなさいね」
歌姫「あんまりにもあなたがウブくて可愛らしかったから、」
歌姫「ついついいじめたくなってしまいましたの」
武闘家「いいのよ。もう気にしてないから」
歌姫「!? ず、随分さばさばしてますのね」
歌姫「これはお詫びの品ですわ」
歌姫「運命の相手を引き寄せてくれる、魔法のブレスレットですのよ」
武闘家「ありがとう。あたし、絶対に幸せになるわ」
歌姫「素直な子ですこと……」
473 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 17:58:16.56 ID:2eCgujgHo
魔剣士「おまえ、なんか魔力に違和感あんだけど……」
武闘家「そう? うふふ。不思議な魔法にでもかかっちゃったのかしら」
微妙だけどなんか混じってるような……まあ気のせいか。
しかし妙に機嫌がいいな。
魔剣士「カナリアと何やってたんだ?」
重斧士「ちょっとこの辺歩いてただけだぞ」
魔剣士「ふうん」
携帯にメールが届いた。
プライベート用のでも仕事用のでもなく、大学のアドレス宛だ。
474 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 18:01:13.52 ID:2eCgujgHo
送信者:アポロン教授 “apollon.classic@uni-sunrise.ac.south”
うちの長女の婿になる気はないかね?
冗談じゃねえ。つか大学のメールで変なもん送ってくんなっての。
「非常に申し訳ございませんが俺好きな子いるんでお断りさせていただきます」
と送って携帯をスリープ状態にした。
武闘家「ねえエリウス」
魔剣士「ん?」
武闘家「んふ。なんでもないわ」
475 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/24(水) 18:01:43.82 ID:2eCgujgHo
kokomade
476 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/24(水) 22:43:52.19 ID:lCHMviqbO
乙
477 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/24(水) 22:49:12.79 ID:r5LlNh2jo
丸太とか馬鹿にされてるけど木の枝で殴ったら大質量攻撃だからかなり強いよね
478 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/25(木) 00:01:26.93 ID:/w0d41Fa0
アポロン先生の嫁どんな人なんだろうな
てか嫌な予感しかしない
479 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/25(木) 18:59:03.72 ID:u00JsKfPO
雄っぱい
480 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:32:18.16 ID:tIICa6pJo
第十七株 恋しいのは樹木の体温
――――――――
副官「隊長〜見てくださいよこのニュース〜」
そう言ってキャロルは俺にパソコンの画面を見せた。
リポーター『このアルテの町にハルモニア嬢が流星の如く現れました!』
リポーター『そして、彼女の傍らには……な、なんと! オカリナを操る謎の美女が!』
魔剣士♀『エリシアと申しますわ』
ブフォッ
昼飯のラーメンを吹いた。
戦士「げほっげほっ……何をやってるんだあいつは」
化粧をしていていつもと雰囲気が違うが、あのオカリナは確かに俺が買ってやったものだ。
副官「やっぱりエリウス君なんですね! 美人ですよね〜」
戦士「……息子が娘になってしまった」
副官「うふふ。あの子が国に帰ってきたら一緒にショッピングにでも行きたいです」
戦士「……なあ、おまえはいつからそうなんだ?」
副官「え?」
481 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:33:03.55 ID:tIICa6pJo
戦士「いつから女のように振る舞うようになったんだ?」
キャロルは何処からどう見ても線の細い女性なのだが、妻子持ちのれっきとした男だ。
副官「隊長ったらも〜! 私は生まれつきこうですよ〜」
戦士「……はあ」
エリウスがアキレスと同じ道を進んでしまわないか、俺はひどく心配になった。
――――――――
――とある町
オウム「コーンニッチハッ」
武闘家「きゃっ! オウムだわ。お喋り上手ね〜」
飼い主「とても賢いんですよ」
オウム「アァー! オマエ、見タコトアル〜ッ!」
魔剣士「え、俺?」
オウム「若鳥ダッタ頃〜ッ! ナハト、ナハト〜ッ!」
オウム「髪変ワッタ〜ッ! アァー!」
魔剣士「ええと……何年前の話だよ……?」
482 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:33:41.98 ID:tIICa6pJo
飼い主「この子、26歳なんです」
飼い主「もしかしたら、勇者ナハトを見たことがあったのかもしれませんね」
武闘家「長生きするのね……」
魔剣士「しかし、そんな昔のこと覚えてるもんか……?」
飼い主「この子、とんでもなく記憶力がいいんです。ふふ」
オウム「アァーーーー!」
重斧士「……なあ、もやし」
重斧士「オウムの舌って……アレに似てないか?」
魔剣士「あ? ……ああ」
飼い主「もしかしてアレのこと言ってます?」
重斧士「先端とか完全にカメさんみてえじゃねえか?」
魔剣士「そうだがおまえの発想なかなかお下品だな」
重斧士「だってそうだろ。どう見てもアレなんだからよ」
飼い主「禁句ですよ〜」
武闘家「なんの話してるの?」
魔剣士「男にだけぶら下がってるブツの話」
武闘家「……男の子ってどうしようもないわねー」
483 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:34:15.76 ID:tIICa6pJo
武闘家「ちょっとお花摘んでくるわね」
重斧士「花摘んで一体どうすんだ?」
魔剣士「遠回しにトイレに行くっつってんだよ」
重斧士「ああ……なるほどな」
通りすがり1「あぁー美女に逆レイプされてぇー」
通りすがり2「触ってくれるえっちな子いねえかなぁ〜」
通りすがり1「結界のおかげで性犯罪なんて都市伝説だしな〜……」
魔剣士「…………」
魔剣士「なあ、男って女にエロいことされたら絶対嬉しいもんなの?」
重斧士「逆レイプから生まれてきて見事にグレた俺に聞くのかそれ」
魔剣士「あっ……ごめん」
重斧士「まあ喜ぶ奴はいるだろうが、犯された側であるにも拘らず責任取らされて、」
重斧士「好きでもねえ女と結婚……なんてことになったら悲惨だよな」
重斧士「そこまで行かなくても、養育費要求されたりとかよ」
魔剣士「怖っ……」
484 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:34:44.46 ID:tIICa6pJo
重斧士「暴走族の仲間で、女がトラウマになってる奴がいるんだが」
重斧士「色々苦労したみてえだ」
魔剣士「……そうか。てっきり、俺がおかしいのかなって思っちまってたんだ」
重斧士「…………」
魔剣士「あ、いや、昔女に襲われそうになったことがあってさ」
魔剣士「衛兵沙汰になったんだが、親以外は誰も俺が嫌だったのを理解してくれなかったんだよ」
魔剣士「『美少年だから仕方ないのよ』だの、『お姉さんにサービスしてもらえてよかったね』だのと」
魔剣士「そんなんばっかだった」
性犯罪防止結界にはデメリットもある。
自動的に通報されるため、嫌でも被害に遭ったことが表沙汰になるのである。
……過保護な母さんが泣き喚いて暴れまくったのは説明するまでもない。
重斧士「ひでぇ目に遭ったな」
武闘家「おまたせ。行こっか」
485 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:35:36.54 ID:tIICa6pJo
魔剣士「この辺、ネジバナがたくさん咲いてるな」
可愛らしくてもうたまらない。萌え。
重斧士「俺の故郷じゃ見ねえ花だな」
武闘家「よく見たら、1つ1つがランの花みたいな形をしてるのね」
魔剣士「実際ラン科だしな」
魔剣士「雑草としてはたくさん生えてるが、栽培しようとすると意外と難しいんだ」
魔剣士「菌類と共生しててさ。菌との関係を壊すと枯れちまう」
植物は菌類と共生関係にある。
俺がモノによっては菌類を操ることができる理由がこれである。
操ることはできなくとも、ある程度耐性ができている菌類もある。
致死量の毒キノコを食べても多分死にはしないだろう。やはり種類によるが。
武闘家「エリウスって、植物のお話をしてる時はすごく楽しそうよね」
武闘家「いっぱい聞かせて?」
魔剣士「え……語っていいなら語るけど」
486 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:36:14.42 ID:tIICa6pJo
武闘家「これはなんて名前の草なの?」
魔剣士「ムラサキだ。来月には白い花を咲かせてるだろうな」
武闘家「ムラサキなのに、花は白いの?」
魔剣士「根っこが紫なんだよ。染料の原料だ。火傷の薬にもなる」
俺には語り始めたら止まらなくなる癖がある。
だが、カナリアが何故だか楽しそうに聞いてくれるものだから、三時間ほど語り続けてしまった。
とんでもなく喉は疲れたが気分はすっきりした。
気まずさはどっか行った。……楽しく会話できて正直嬉しい。仲間っていいもんだな。
魔術の類を使わないガウェインにも薬草のことをたくさん教えた。
武闘家「やっぱりすごいわね。こんなにたくさんのこと知ってて」
魔剣士「ま、まあ……俺には植物しかないからな」
頭も疲れた。ブドウ糖が足りてない感がある。
体から雑草を生やして光合成を行った。
重斧士「ある意味植物人間だよな」
487 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:37:59.20 ID:tIICa6pJo
植物は太陽光からエネルギーを得ている。
植物以外もこのエネルギーを利用できたらな……。
魔剣士「あ…………」
どうしてこんなに簡単なことに気がつかなかったのだろう。
魔力は波動だ。そして、光も波動だ。どちらも電磁波の一種である。
太陽光を他のエネルギーに変換し、
利用することができれば……魔力の大量消費社会を変えることができるかもしれない。
そうすれば、魔力不足の弊害を受けている植物は助けることができるだろう。
人は不便な生活には戻れない。
だから、植物から魔力を吸おうとしたり、
遠方から木材を運搬するのに必要な魔力が足りないために、近場の森を過剰に伐採したりしている。
だが、魔力不足が解消することにより更に工業化が進み、
環境破壊が行われてしまう可能性も否めない。
……俺一人で考えてもどうしようもない。とりあえずは大学にいる人間に話をしよう。
魔剣士「もしもしセド? おまえまだ大学にいるよな?」
学部生の頃に一般教養で同じ授業を取っていた魔導工学オタクのショタコン紳士に連絡を取った。
当時十二歳だった俺は気持ち悪いほどこいつに可愛がられた。
そのためあまり関わりたくはないのだが、他に連絡先を持っている工学部の知り合いはいないし、
頭脳は確かだ。
488 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:39:06.68 ID:tIICa6pJo
工学院生『久しぶりじゃないか。僕も君と同じ博士課程一年だよ。どうした?』
魔剣士「……っての思いついたんだが」
工学院生『君はやはり天才だな。面白いじゃないか。博士論文のネタはそれでいくよ』
この世界に生きる、あらゆる生物は共生関係にある。
上手く共存していく生き方を、人間は探さなければならない。
知能が高く、急激に社会を変化させ、環境に影響を与える存在だからこそ責任は重いんだ。
首に下げた琥珀を木漏れ日にかざした。
……日光で褪色しないよう、ちゃんと魔法で保護している。
こいつはどれほど昔の木だったのだろう。
人とは仲良くできていたのだろうか。どんな精霊が宿っていたのだろうか。
鉱物と同様、樹脂の化石である琥珀にも記憶が刻まれている。
この石の記憶、見てみてえな。
そう思った瞬間だった。
一瞬視界がホワイトアウトし、超古代時代の服を着た人間達が見えた。
――人間達よ…………この私を斬り払え!――
頭の中に響いたその言葉は、明らかに古い言語だったものの何故だか意味がわかった。
人間達はひどく戸惑っている様子だった。
489 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:39:33.26 ID:tIICa6pJo
……石の記憶を見ている時とは、やはり少し感覚が違った。
気のせいかもしれないのだが……。
武闘家「エリウス? 大丈夫?」
魔剣士「……ちょっと立ち眩みしちまっただけだ。平気」
なんだか、胸が苦しい。
ユキ、今頃どうしてるのかな。この前会った時はなんで泣いたのだろう。
俺が失言したからってわけではないようだったし……。
――――――――
――
数日後、森の中。
魔剣士「……あ、精霊に呼ばれた。ちょっとここで待機していてくれ」
桜精霊「ここの近くに建てられた工場から有毒ガスが出てて迷惑してるのよ」
桜精霊「だから、クレームをつけるために人との干渉能力が欲しいの」
桜精霊「……でも、あたし、元々持ってる力が小さいから、」
桜精霊「けっこうたくさんの質のいい魔力が欲しくて……」
魔剣士「……俺がそこに警告出すんじゃ駄目か?」
桜精霊「助かるけど、やっぱり精霊が直接文句言った方が人間ってビビッてくれるし……」
490 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:40:00.54 ID:tIICa6pJo
……犯された。相変わらず勃たねえから主に尻穴を。
朝立ちはあるのに、犯される時はほとんど反応しないあたりやはり心因性なのだろう。
偉そうな奴じゃなかったからそう腹は立たなかったが屈辱は屈辱だ。
魔剣士「……待たせたな」
重斧士「お疲れさん」
武闘家「……エリウス」
カナリアに押されて、木に追い詰められた。
魔剣士「お、おい……どうした?」
重斧士「っ……」
武闘家「あ……ごめんなさい」
武闘家「なんだか、あんまりにも色っぽくて、クラッときちゃって……」
魔剣士「……い、いくら俺が美しくても、理性は保てよ」
武闘家「どうしちゃったのかしら、あたし……」
重斧士「……疲れてるんじゃねえか? 今夜はゆっくり休めよ」
武闘家「…………うん」
ま、まあ、思春期は女も性欲ヤバいらしいしな……そういう時もあるだろう。
491 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:40:28.33 ID:tIICa6pJo
――――――――
――
数日後。
山を進むと、ガウェインの携帯が鳴った。
重斧士「……妹からだ」
重斧士「どうした」
重斧士「…………そうか。まあよろしく伝えといてくれ。まだ帰るつもりねえから」
魔剣士「なんだって?」
重斧士「親父が俺に会いたがってるんだとよ」
武闘家「帰らなくていいの?」
重斧士「おまえらを放って帰れるかよ」
魔剣士「……なんか申し訳ねえな。もう随分守ってもらってるし」
武闘家「ありがとね、ガウィ。でも、無理はしなくていいから」
重斧士「恩人と好きな女に何かあったら一生悔んじまうよ」
武闘家「あはは。……あたしのことは諦めてくれるとありがたいんだけど」
武闘家「そんなすぐに気持ちを切り替えるのなんて難しいわよね」
492 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:41:09.78 ID:tIICa6pJo
魔剣士「山小屋があって助かったな」
重斧士「看板立ってるぞ」
「
この小屋は2つの性犯罪防止結界の狭間に位置しており、
階段、2階B部屋、C部屋は結界外となっております。
この部屋をご利用になる際は、携帯型結界等の自衛手段をお持ちください。
管理人 」
魔剣士「まあ街道っつっても山中だしな」
2階B部屋以外には先客がいた。
間違いが起こることはないだろう。いつも通り三人で寝るだけだ。
武闘家「厨房、自由に使っていいみたい。晩御飯作ってくるね」
青い石「一日中お喋りしたら疲れちゃった」
俺が車を運転している間、モルはよくカナリアと喋っている。
事故りそうな道で、俺がカナリアと話す余裕がない時は特にそうだ。
でも、今日はいつも以上にたくさん喋ってたな。
魔剣士「起きすぎだ。寝ろよ」
青い石「そうするー。力を使いすぎるとこの世にいられなくなっちゃうし」
493 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:42:31.77 ID:tIICa6pJo
魔剣士「おまえ、料理の腕上げたよな」
武闘家「そう? よかったわ」
重斧士「いい嫁さんになれるぞ」
武闘家「んふふ」
魔剣士「じゃあもう寝るか。魔石灯消すぞ」
重斧士「ぐごが」
魔剣士「……えらい寝つきがいいな」
俺も寝台に横たわって眠りに落ちた。
494 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:43:27.36 ID:tIICa6pJo
違和感で目を覚ました。
俺の右膝に何かが激しく擦りつけられている。
武闘家「んっ……はぁっ……あっ……」
魔剣士「……!?」
……カナリアが、己の股を下着越しに俺の膝に擦りつけていた。
湿った熱が伝わってくる。
魔剣士「ななな何やってんだよ!!」
明らかに様子がおかしい。
武闘家「う……はあ…………好きな人とえっちなことしたいって思うのって、」
武闘家「別におかしいことじゃないでしょ?」
魔剣士「い、いや待てよちょっと」
カナリアは腰を止めた。
武闘家「あなた、植物と……やらしいことしてるんじゃない?」
魔剣士「え……」
495 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/25(木) 20:45:19.41 ID:tIICa6pJo
武闘家「ガウィが言ってたこと、気になるのよね」
武闘家「カマ掘られた人の歩き方がどうとか、体が女性化していった人のこととか……」
魔剣士「…………」
武闘家「ねえ……どうなの?」
魔剣士「……好きでやってるわけじゃない」
武闘家「でも、どうせ喜んでるんでしょ?」
魔剣士「っ……」
あいつらは加減を知らない。
悪気がないにしても、乱暴にされるし、強く触られすぎてすげえ苦しかったりするし……。
ナチュラルに人間を見下してる奴や、気が立ってる奴なんかに犯される時なんて最悪だ。
死んでもおかしくないくらい激しくされちまう。
精霊との行為を嬉しいと思える余裕なんてない。
496 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:46:50.58 ID:tIICa6pJo
武闘家「あたしだってあなたと気持ちよくなりたいの」
魔剣士「でも、こんなの、駄目だって」
どうにかして逃げないと……っ!?
両腕を掴まれた。腕力ではカナリアに敵わない。
魔剣士「おい!」
隣で寝ているガウェインに目をやった。
武闘家「ガウィなら起きないわよ。一服盛っちゃったもの」
魔剣士「モル! 起きろ!」
武闘家「……起きないようにするために、いっぱいいっぱいお喋りしたのよ」
武闘家「万が一、あなたの魔力で叩き起こされないようカバーも被せてあるし」
窓際に置いたアウィナイトは、薄く青い透明な物で覆われていた。
魔剣士「や……やめろ……」
武闘家「ふぅ、んっ……あはは……」
首筋を吸われた。
涙が滲んでくる。
魔剣士「……今、やめてくれたら、ま、だ、なかったことにしてやれる」
魔剣士「だから、やめっ……」
武闘家「やめるわけないでしょ?」
497 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:48:03.46 ID:tIICa6pJo
魔術でどうにか抵抗を……駄目だ、性的快楽に魔力の流れを阻害されて発動できない。
精神も乱れている。
性犯罪防止結界は……そうだ、適用範囲外なんだ。
魔剣士「うっ……」
武闘家「乳首、元からこんなに敏感だったの?」
武闘家「それとも、精霊に触られて感じやすくなっちゃった?」
乳首が目立たないように貼っていた絆創膏を剥がされ、少し強めに抓まれた。
魔剣士「かな、りあ」
武闘家「……男の子らしさを取り戻すのを手伝ってあげたのに、」
武闘家「あなた、女装なんてしてくれちゃったわよね」
武闘家「……そういえば、あなた、男の子でいる意味あるの?」
武闘家「人間は愛せないんでしょ」
武闘家「どうせ一生独り身なんでしょ」
武闘家「……ねえ、エリウス」
武闘家「あなた、いっそのこと……別に女の子になっちゃっても、いいわよね?」
嫌だ。
ユキが純粋な女の子だから、俺は男でありたい。
女装はしたけど別に本当に女になりたいわけじゃない。
ただ、自分じゃない何かになりきって現実逃避をしたくなる時があるだけなんだ。
498 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:49:12.24 ID:tIICa6pJo
武闘家「あたしの男の子になってくれないのなら、」
武闘家「女の子として玩具にしてあげるわ」
怖くてもう言葉が喉につっかえて出てこない。
やだよ。
武闘家「豊胸マッサージでもしてあげようか?」
ニヤニヤ笑いながら、カナリアは俺の胸を揉みしだいた。
嫌だ。これ以上でかくなったら服を着てても完全に目立っちまう。
やめてくれ。
拒絶の言葉を吐き出したくても、俺の口から漏れ出てくるのは、
快楽に反応する嬌声だけだ。
武闘家「あ、もし逃げようとしたら」
玉をガシッと捕まれた。
武闘家「容赦しないから」
息子を人質にとられて抵抗できるはずがない。
499 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:50:58.96 ID:tIICa6pJo
声、抑えねえと他の部屋に泊まっている客に聞こえちまう。
武闘家「あはっ……我慢してるの、すっごく可愛い」
武闘家「男の子の乳首でも、こんなに硬くなるものなのね。びっくりしちゃった」
勃起しきった俺の乳首を、こいつは舌で転がしながら股間を俺の体に再び擦りつけた。
そしてしばらくすると、自分の下着を下ろし、直に俺の膝に当てる。
武闘家「あっん、はあっ……」
何十回も腰を振り続ける。俺の脚がこいつの愛液で穢される。
樹液塗れにされる方がよっぽどマシだ。
武闘家「あっ……!」
大きく体を反らせ、絶頂したようだ。
武闘家「ふう、はあ……」
乳首責めを再開された。
あ、駄目だ、イくっ……。
武闘家「え、嘘……今、もしかしてイッちゃった?」
精霊達にとって、俺が絶頂しやすい身体の方が都合がいい。
すっかりイキ癖をつけられてしまった。ディープキスだけでも絶頂することがある。
500 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:52:18.44 ID:tIICa6pJo
下着ごと半ズボンを下された。
武闘家「ここ、寝てる間はおっきくなってたのにな」
武闘家「やっぱりあたし相手じゃ勃たない?」
今は誰に対しても勃たねえんだよ。
武闘家「……あたし、人間の女の子としては綺麗な方よね」
武闘家「大抵の男の子なら喜んでくれると思うんだけどなあ」
武闘家「……それなのに、これ、使い物にならないんじゃ、」
竿を握られた。痛い。
武闘家「あなた、本当に男失格よね」
尊厳が圧し折られる痛みが脳内で鳴ったような気がした。
思いっきり頭を殴られた気分だ。
武闘家「やっぱりあなたは、女の子みたいにされるのがお似合いよ」
一瞬の内に腰を持ち上げられ、腰と寝台の間に枕を挟まれた。
何する気だこいつ。
501 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:52:52.50 ID:tIICa6pJo
武闘家「さあ……もっと気持ちよくしてあげるわ」
カナリアは小瓶の蓋を開けた。……ローションだ。なんでそんなもん持ってんだ。
俺は現実から目を背けようと、壁に視線を向けた。
……怪しい箱が床に置かれている。
中には、たくさんの淫具や得体のしれない薬が詰め込まれていた。
武闘家「占い師さんからもらったのよ」
嘘だろ……。
玉の後ろから肛門にかけて、たっぷりと液を垂らされた。
そしてこいつは、しっかり医療用手袋をはめて指を突っ込んできた。
魔剣士「んぐっ……」
強烈な違和感に襲われる。
魔剣士「あっ、ぐ……ゃ、め……ぉ…………」
502 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:53:21.76 ID:tIICa6pJo
武闘家「ここ、いつも犯されてるんでしょ?」
武闘家「減るもんじゃなし。あたしだって好きにしていいじゃない」
一本一本、侵入する指を増やされる。
武闘家「あははは、感じちゃう?」
嫌でも反応してしまう自分の身体を許せない。
魔剣士「あぁ……あああぁぁぁぁ……」
前立腺をゴリゴリ押された。
武闘家「お魚みたいに跳ねちゃって」
脚がガクガクする。
503 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:53:47.56 ID:tIICa6pJo
カナリアは歪な形をした張り型を取り出すと、俺の穴にあてがった。
武闘家「力抜かないと、痛いかもよ?」
嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!
張り型が中に押し入ってくる。
武闘家「わ……すごい。全部入っちゃった」
カチッと、スイッチを入れる音がした。
張り型が複雑にうねっているらしい。あまりにも強い甘さに大きな声が漏れた。
激しく腸壁を押されたら、もう……何も考えられなくなる。
ありえないほどの快楽に見舞われる。
脊髄がゾクゾクする。
衝撃が脳天を突き抜ける。
504 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:54:21.40 ID:tIICa6pJo
魔剣士「んぅー! んぐっああああああああああ!!!!」
武闘家「ああ、エリウス……あたしに犯されてそんなに感じてるのね……嬉しいわ」
カナリアは何度も張り型を出し入れし、俺の体内を突き続けた。
魔剣士「あああぁぁっ! くっ……!」
魔剣士「ユキ、ユキぃ…………!」
武闘家「……なんで、他の女の子の名前を呼ぶの?」
武闘家「今!! あなたとしてるのは!! あたし!!!!」
突きを強くされた。もう死んじまいそうだ。
武闘家「……ああ、そっか。快楽が足りないのね」
武闘家「もっとすごいやつに替えてあげるわ」
一気に今まで這入っていた張り型を引き抜かれ、
更に大きくて……形もエグいやつを突っ込まれた。
もうずっとイッてんのに。
武闘家「……こんなにおっきいのを簡単に飲み込んじゃうなんて、」
武闘家「今までどんなことされてきたの? ねえ??」
505 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:55:01.33 ID:tIICa6pJo
強い振動に内臓を揺らされる。
もう、俺、俺…………。
イキすぎて、おかしくなっちまう。
俺が悲鳴のような喘ぎ声を上げ、大きく絶頂して漸く行為は終わった。
武闘家「これで、あなたはあたしのもの……!」
武闘家「あはは……うふふふ……はははははははは……!!」
徐にカナリアは俺に覆いかぶさった。
人間の体温は、俺には熱すぎる。
人間としての尊厳も、男としての自尊心も、何もかも壊された。
仲間だったはずの女に。
力なく見上げる天井は、ひどくぼやけていた。
506 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/25(木) 20:55:34.67 ID:tIICa6pJo
kokomade
507 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/25(木) 21:15:08.00 ID:JC81syhl0
乙!
508 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/26(金) 02:00:44.35 ID:CKaO/v9rO
乙
509 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/26(金) 02:06:09.26 ID:BDB1eJRQo
乙
箱の中身が爆発物じゃなくて良かったと言うべきか……
510 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/26(金) 16:06:31.16 ID:QkbooA1z0
アルカが来たら大変なことに
511 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/26(金) 18:17:34.71 ID:d0eT23je0
実際美少女(好きではない)に襲われたらどんな気持ちになるの?
S男がアナル犯されたらプライドが傷ついて悦ぶどころじゃなくなるとは聞いたことあるけど
512 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2016/08/27(土) 16:52:23.41 ID:hq7pLtwCO
読んでて苦しい…助けてくれ父さん!
513 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/27(土) 19:46:28.65 ID:opGZAilnO
>>512
うるせぇsageろks
514 :
◆qj/KwVcV5s
[sage]:2016/08/27(土) 22:17:50.36 ID:ymyf3kvXo
明日から二週間多忙で来れないかもしれません
515 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/08/28(日) 22:21:39.34 ID:IM4L+nPdo
メイルレイプで調べるとセカンドレイプがやばいことがわかる
516 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/30(火) 20:40:44.27 ID:GtURHtWlo
第十八株 心身一如
俺がシャワーを終えると、カナリアは俺が寝ていた寝台で眠りに落ちていた。
モルを回収して外に出た。
まだ夜は明けていない。静かだ。
車のエンジン音がよく耳に響く。
カナリアを置いていくこと、アーさんやヴィーザルには憤慨されるだろうな。
父さんもアキレスさんから信用を失ってしまうかもしれない。
やっぱり、俺駄目な奴だ。
でも、こんなことになって、もう一緒にいられるわけなんかないだろ。
ガウェインには「探さないでくれ」とだけメールを打って、アドレスを変更した。
電話番号を変えるのは流石に面倒だからそっちは着信拒否だ。
517 :
◆qj/KwVcV5s
[saga]:2016/08/30(火) 20:44:02.41 ID:GtURHtWlo
振った振られたの関係の男女が友達付き合いを続けるなんて、無理があったんだ。
すぐ近くにいるのに好きな相手が自分のものにならなかったらそりゃ苦しいだろう。
空が白み始めた。
あー、誰とも関わらずに山奥にでも引きこもりてえ。
人間と植物の共生のことを考える以前に、俺が人間と共生できてねえよ。
物心ついた頃から他人と関わることは苦手なんだ。めんどくさくてたまらない。
……カナリアと仲良くできていた頃が懐かしい。
あいつらとの旅はなんだかんだで楽しかったな。
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