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志希「〜激走〜アタシと鬼のアメリカ逃走記」
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248 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:25:10.50 ID:ZD0Y9woyo
1日目 暗闇がある中、神は光を作り、昼と夜が出来た。
2日目 神は天をつくった。
3日目 神は大地を作り、海が生まれ、地に植物をはえさせた。
4日目 神は太陽と月と星をつくった。
5日目 神は魚と鳥をつくった。
6日目 神は獣と家畜をつくり、神に似せた人をつくった。
7日目 神は休んだ。
天地創造に隠された真実。
海とは、女性。
大地とは、男。
ならば、生えてきた植物とは。
249 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:25:40.80 ID:ZD0Y9woyo
「ーーーー志希ッ!」
男は、吼えた。
女は、ピタリと動きを止めて、その崇高な姿に涙を流した。
神に近づき、そして倒れた人の『遺志』たる象徴が。
仁王に立ち、鬼がーーー笑う。
鬼の股間には、もはや二度と倒れることのない、『バベルの塔』が、誇り高く勃っていたのだ。
250 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:26:09.54 ID:ZD0Y9woyo
〈ヤりきれる武器を持っているのはーーーお前だけじゃないんだぜーーー〉
251 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:26:41.25 ID:ZD0Y9woyo
もはや、勝負は一瞬。
数秒の後に決着が訪れることを、鬼も、志希も、ちひろも。
その場に集う全てがそれを頭でなく、心で理解していた。
ビクッビクンッ!
倒れ伏していた黒スーツの、断続的な命の放出が、ゆっくりと終わりつつある。
「………」
「………志希、貴女には目覚めて貰わなければ困る」
これは、鬼の嗚咽だ。
生涯を一人で生きてきた鬼が、始めて他人を護りたいと思った。
252 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:27:37.35 ID:ZD0Y9woyo
「貴女のお陰で私は『痛み』を思い出した。 そして、『温もり』を」
弱肉強食。
いつしか自身に課した、生存の掟。
だがそれは、本当は誰かに対するサインだったのかもしれない。
「…………貴女は喧しいし、無礼で、不作法で、不様で、弱きに過ぎる」
強ければ生き。
弱ければ死ぬ。
だが、人は弱いからこそ人と生きるのだ。
誰かの弱さを、誰かが補って。
そうして無限の強さを作っていくのだ。
「だから、私に貴女を護らせてください。 私が私である、そのためにーーー」
ぶしゅう!
と、大きな噴出音をたてて、黒スーツの最後の命の煌めきが、赤く濁ったアーチを描いて、高々と舞った。
253 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:28:15.74 ID:ZD0Y9woyo
瞬間、志希が走り始めた。
互いの距離は遠くない。
刹那を、コマ送りにして流れる情景。
5,4,3,2,1。
弾丸のような突進。
迎え撃たねば致命傷は明らか。
だがしかし、鬼は動かず真正面から堂々と、志希の体当りを受け止めた。
「ぐっ……ふぅぅぅぅッッッ!」
肋骨、胸骨、右前腕、左大腿骨。
大小様々な骨が、めしめし、と軋む。
「ふしゃッッッ!」
志希のパイオツが頬を撃ち、脳を揺らす。
凄まじい衝撃。
視界が、暗転し、飛びそうになる。
それでもーーー倒れない。
志希の全てを鬼は受けとめる。
254 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:28:49.83 ID:ZD0Y9woyo
「先に謝っておきます志希。死ぬほど痛いですよーーー」
傷をつけず。
極大の痛みを与える。
不可能な命題。
だが、鬼になら叶う。
志希になら叶う。
二人のうちどちらが欠けても成立しない、そんな可逆反応式。
すべての人類が産まれたときより背負いし宿命、肉のカルマ。
「………ッ!?」
志希の体が、ビクッと、震える。
痛みでも、快楽でもない、ざわつき。
255 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:29:21.46 ID:ZD0Y9woyo
巨像がその鼻っ柱を、マリアナ海溝に擦り付けた、その感触。
未曾有の感覚に、志希の動きは停止する。
僅か瞬きほどの一瞬だが、男には充二分に過ぎた。
「喰らいなさいーーーーこれが私の、私達のドリルですッッッ!」
聖剣がーーーーーー楔を貫いた。
256 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:29:50.88 ID:ZD0Y9woyo
『お前の頭の上には、けして切れない。 私達のーーー』
ーーーーこの先を、いつからか忘れてしまった。
小さい頃は、パパと沢山お話した。
本を読み、内容をパパに伝えて、頭を撫でてもらう。
幼い志希にとっては、この上ないご褒美だった。
ずっと続くと思っていた、もう戻れない、割れてしまった結晶体。
鈴口が、秘口と口付けをかわす〈注:浜口流房中術書第七巻より抜粋〜三口責め〉。
257 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:30:22.26 ID:ZD0Y9woyo
「 」
ある時、パパからお下がりの白衣を貰った。
バースデーに欲を見せない子供に対し、パパとママは戸惑っていたのを覚えている。
でも、アタシは両親に認められたような、そんな子供じみた感傷を、ブカブカの白衣を着ながら思ってた。
軽いキスは終わり、亀頭がフレンチ・キスを求めて奥へ奥へ進んでいく。
258 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:30:50.70 ID:ZD0Y9woyo
「 」
ある日を境に、パパが頭を撫でてくれなくなった。
ママが、アタシにごめんなさいと謝った。
ギフテッドーーーーそう診断された日だ。
コツン、誰も今まで触れたことのない、一度きりの通過点に、肉棒が辿り着く。
259 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:31:19.83 ID:ZD0Y9woyo
「 」
賢いお馬鹿さんは、パパとママの笑顔を取り戻そうと必死になった。
本を読み漁り、報告。
その行為が、父を苦しめ、母に痛みが及ぶともしらずに。
すぅーーと、亀が頭を引っ込める。
呼吸を整え、溜めている。
260 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:31:49.94 ID:ZD0Y9woyo
「 」
限界がーーーー来た。
ダッドがアタシをぶった。
ママは、部屋の隅っこで泣いていて、ダッドは、何をか喚いていた。
たしか、嫉妬。
そんな感情だったと思う。
突撃兵が、容赦なく、薄い薄い防護膜を貫いた。
261 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:32:17.90 ID:ZD0Y9woyo
「ーーーーーーーー」
そうだ、アタシはあの時分かったんだ。
不可逆なんてこの世になくて。
それは切れてしまいそうな輪っかを繋ぐための方便なんだ。
兵は進む、密林の垣根を掻き分けて、奥へ奥へ。
破瓜の痛みの、その先へ。
262 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:32:50.18 ID:ZD0Y9woyo
「ーーーーーーーーーーあっ」
ここが、始まり。
総ての命。その原初。
後に、志希最大の性感体となる部位の初開発は、彼女の性誕とも言うべき日に、行われた。
鬼の鬼の手が、故=処女のボルチオに深々とーーーーーー突き刺さった。
263 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:33:30.27 ID:ZD0Y9woyo
『お前の頭の上には、けして切れない。 私達のーーー』
ーーーーこの先を、いつからか忘れてしまった。
けれど、違うのだ。
忘れてなんかいなかった。
あんまり苦しかったから。
鍵をかけて、棄てちゃった。
やめよう。
もう逃げずに向かい合おう。
こんなにも強く、カラダの奥から強くノックする人がいる。
アタシはここにいてもーーーーいいんだ、
閉じられていた扉が、子を成す宮の入り口がーーーー開いた。
恐れていたドアの外には、大事な想い出が、手を広げて待っていた。
264 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:33:57.07 ID:ZD0Y9woyo
『ーーーー天使の輪っかがあるんだから』
265 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:34:26.54 ID:ZD0Y9woyo
こうして、志希の中の、鍵穴すらも存在しなかった、がんじがらめの楔は、エクスカリバーによって、断ち切られたのだ。
266 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:35:14.52 ID:ZD0Y9woyo
ゆっくりと、志希のカラダを地面へ下ろす。
慈愛に満ちたその表情は、もはや『鬼』ではない。
ただの、一人の、恋する男だ。
「………志希……」
ーーーと、喜びも束の間、志希の体が痙攣し始める。
上原亜衣がごとく、過剰な細動を伴って、震える。
「な、なんだ!? 志希! しっかりしなさい! 志希!」
「ーーーー始まってしまいましたね」
「ちひろーーー」
志希の体を抱き締める男の側に、いつの間にかちひろが立っていた。
片手に志希の父を雑巾を持つようにつまみつつ。
その表情は物憂げで、これからの未来を予感させた。
267 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:35:57.74 ID:ZD0Y9woyo
「志希ちゃんは、もう………」
「う、嘘だ……! そんなバカなことがありますか?! これから、これからなんですこいつは……!」
やっと始まるというのに。
あんまりじゃあないか。
男は大粒の涙をこぼし、叫んだ。
「なにか、なにか、ないのか! 貴女ならなにか……!」
「いいえ、私ではどうすることもできません……。 けれどあなたなら……」
一筋の光。
先走りにも吸い付く思いで、男は懇願する。
「教えてくれーーー私は志希を、彼女を救いたいんです。 お願いだーーー母さんーーー」
268 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:36:24.17 ID:ZD0Y9woyo
「………わかりました。 そこまで覚悟があるのなら、教えましょう。 ただし、死ぬほど辛いですよ?」
「……」
無言で頷く。
例え、神に挑めと言われようが今の彼ならにべもなく肯定するだろう。
深い、マリアナ海溝よりなおも深いーーーー『愛』。
そして、ちひろの口から出た言葉は。
269 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:36:55.74 ID:ZD0Y9woyo
「志希ちゃんに、貴方の精液を飲ませてください」
「わかりまし……………え、なんだって?」
悪魔の一言だった。
270 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:37:30.68 ID:ZD0Y9woyo
「精液を飲ませてあげてください。 スペルマ、男汁、赤ちゃんの種、子種」
「ば、ばかにしているのか母さん!?」
「そんなわけないでしょう! 時は一刻を争うんですよ!」
「いやいやいやいやいやいやいや。おかしい。 何もかも間違ってます。 普通ここは、眠り姫を起こす口付けとか、私の血をあげるーとか、そういう場面ですよ」
「はっ。 ファンタジーやメルヘンじゃないんですから。というか、発想がかわいいわね、お母さんびっくり」
「〜〜〜〜〜ッッ! せめて説明してください! 納得のいく!」
「志希ちゃんが作って自分に投与したクスリは、自身の体を健康にするクスリなの。 けれど試作だったために、過剰な力と副作用が起きたんです。 ゴリラじみた腕力と、グラップラーばりの身体能力と代償に、志希ちゃんは、異常なくらいエネルギーを必要とする体になった。 覚えがあるでしょう? 女の子と思えないくらい食べてたもの」
「ほ、ホンとに説明しやがったこのアマ……」
271 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:38:27.89 ID:ZD0Y9woyo
その通りだ。
志希と過ごした期間中、食費で財布の中身が吹っ飛んだ。
「暴走は、逃げた時にエネルギーを使いすぎたのと、監禁されたせいで食べれなかったから。 あのままだと多分、皆殺しにしてカニバルしてたでしょうね」
あの野獣のような変わり様はそのため。
だが、まだ解せない。
彼は志希が匂いを嗅ぐために、股間を狙ってきたのだと思っていたが、それでは話が合わない。
匂いで腹はふくれない。
272 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:38:58.07 ID:ZD0Y9woyo
「その通りよ。 だから志希ちゃんが狙っていたのは、貴方の股間のその先、ゆえに精液」
ここで、ちひろは頭を振り、物憂げな表情をつくる。
「なんの因果なんでしょうね……偶然出会った二人。 なのに、彼女の体は貴方の肉体から発せられる匂いに魅了された。 恐らくクスリの効果も相まって。 もうわかったでしょ? 貴方の精液が、匂いの塊が、彼女にとっては最大のエネルギーなのよ」
「そ、そんな………」
273 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:39:35.86 ID:ZD0Y9woyo
痛みを伴わない教訓には意義がない。
人は何かの犠牲なしに何も得ることはできないのだから。
等価交換の原則。
命を救うためには、命を犠牲にしなければならない。
犠牲になるのは、男の命〈子種〉と、そして何より尊厳〈命〉だった。
「貴方に、できるかしら……?」
「くっ………!」
走馬灯のように志希と過ごした日々が流れる。
『にゃはは♪ キミ、ほんとにいい匂いがするね……何だか、安心する、カモ』
迷いは、一瞬だった。
274 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:40:12.05 ID:ZD0Y9woyo
「……やってやる! やってやりますよ畜生め! たかが、私のプライドくらい、溝のネズミに食わせてやればいいんでしょう!」
ーーーーだが、男の決意とは裏腹に、
バベルは再び倒れていた。
275 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:40:42.88 ID:ZD0Y9woyo
「くそっくそっくそ……! 勃て!勃て! 勃ってよ! 今勃たなきゃ、今ヤらなきゃ、志希が死んじゃうんだよ……!」
活動停止。
エントリープラグは動きもしない。
「はぁはぁはぁはぁ……」
ナニか、オカズを。
まとまらない思考。
ーーー見つけた。
既にはだけた、志希の胸だ。
276 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:41:11.03 ID:ZD0Y9woyo
「どうして……」
ホテルではあれほど興奮した志希の裸に、今はぴくりとも動かない。
当たり前だ、母親と相手の父親に見られる状況。
特殊な性的嗜好を持たねば、勃てるはずもなく。
「う、うわぁぁあぁぁぁあ!」
一心不乱に子象をしごく。
だが痛いだけで〈注:存在が〉勃たない。
「うぅ………。 あれ、これって……」
と、男は気付く。
自身の象さんにまとわりつく赤いもの。
277 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:41:51.14 ID:ZD0Y9woyo
「これは………」
それは志希の分身。
命の流脈が、男の魔羅を支えていた。
「志希………貴女なんですね………」
男の♂が硬さを取り戻していく。
一人ではない。
潤滑液のように、彼のペニスを護っていた。
守るではなくーーー護るーーー。
志希はついに、弱肉強食の理すらも越えたのだ。
278 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:42:25.42 ID:ZD0Y9woyo
「イキましょう……。 貴女とならどこででもイケる……!」
それは二人の始めての共同作業。
上下する彼の手が速度を増していく。
幻覚か。
いや、違う。
彼と志希、二人の手が、シゴいているのだーーー!
「なんてこと……」
常人の域に留めておいた男の嗜好が本来の姿を取り戻していく
ちひろのかけた呪縛を解いて常人を超えたヘンタイオトナに近い存在へと変わっていく
精と愛と液を紡ぎ相補性の巨大なうねり魔蘿の中で、自らエネルギーの疑縮体を生産していく
純粋に、シコって出す
ただそれだけのために!
279 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:43:03.59 ID:ZD0Y9woyo
「う、うぉぉぉぉぉおお!」
自身の母親と、愛しき人の父親その両方に見られながら、自慰するという、地獄の中の地獄で遂に彼は成した。
新たな性的嗜好を開花させながら。
「志希、飲め! 飲みなさい! 最後の一滴まで!」
意識のない17歳の口に、体のいい大人がちんこを突っ込む倫理を欠如した場面。
ちひろは真顔で、志希パパは顔を背けながら。
彼は志希の口からあふれ出るまで、精の全て、その一滴までをイラマチオした。
280 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:43:31.59 ID:ZD0Y9woyo
「………うっ………ふぅ……」
抜く時に、再びヌき、志希の小さな顔が白濁に染まった。
「…………志希、目覚めてください……お願いですから……!」
涙を浮かべつつ、男は志希の髪を撫でる。
と、志希の口が動き、精命体を舌でねぶり咀嚼し、味わいながら、下品な音をたてて、嚥下した。
その時、奇跡が起こった。
281 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:43:57.85 ID:ZD0Y9woyo
「綺麗……」
誰からともなく発せられた言葉。
志希の体から天使が降臨したかのような光があふれでる。
そして、ゆっくりと。
ゆっくりと、形のいい眼が開いていく。
眼は真っ直ぐに男を見つめ、そしていつもの通りに、猫のように細められ、笑った。
282 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:44:27.29 ID:ZD0Y9woyo
「ーーーーイカくさい」
顔に白パックを張り付けた、眠り姫は、そう、言ってのけた。
新しい、『白衣』を身につけて、力強く抱きしめ撫でられて。
大団円の幕が、下りた。
283 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:45:18.16 ID:ZD0Y9woyo
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これは、幕間。
降りきるその前のほんのわずかな時間。
志希のための別れの儀式。
「ねぇ、ダッド。 もう昔に戻れるなんて思ってない。 ううん、元々戻れるわけないんだよね。 だって過去は『if』だから」
「………」
志希の目も見ず、俯いて。
研究者は娘の述懐をただだだ聴く。
だから、志希はそんな彼にさよならを言うために。
最後は自分で環をほどくために、震える拳を握りしめ、問うたのだ。
284 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:45:53.83 ID:ZD0Y9woyo
「ーーーねぇ、『パパ』。 今でもアタシの頭の上には、『天使の輪っか』が切れずに、あるのかな……?」
そこで、二人の目と目が合う。
様々な想いが交差する。
しかし、結局。
研究者は、『父親』は、目線を切った。
そして、志希は。
285 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:46:23.01 ID:ZD0Y9woyo
「そっか。 そうだよね………。
ーーーーーとりゃあっ!」
思いっきり振りかぶって、全力で父親を殴り飛ばした。
十メートル以上もぶっ飛んで、父親は動かなくなった。
志希はもう、そちらは見ない。
振り返り、新たな居場所へと歩いていく。
286 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:46:51.80 ID:ZD0Y9woyo
「おめでとうございます。 いいパンチでしたよ志希」
「にゃはは……まだお手てじんじんしてるかも……」
「それが、いいんですよ」
男が志希の拳に手を添える。
痛いけど、温かい。
「……んふふ。 そういえば、なんでキミ全裸なの? あたしは全裸に白衣だけどさ」
「あーそれは貴女を助けるために、色々と。 まぁおいおい、ね」
「ふーん………」
何となく見つめ合う二人。
どちらからともなく、距離が狭まって、そして唇と唇がーーーー
287 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:47:21.45 ID:ZD0Y9woyo
「ーーーはいはい。 私を忘れないでくださいね。 甘い空気はしっしっ」
ちひろがいた。
初々しい二人は顔を真っ赤に茹であげて、一気に距離をとる。
「あ、貴女まだいたんですか?!」
「えーえー。いましたとも。 息子と彼女のらぶらぶ見せつけられてお母さんはぷりぷりですよー」
「ふぇ? ちひろさん、キミのお母さんなの?」
「そうですよー、アイドル事務所の事務員を務める千川ちひろ、不肖の息子のお母さんです♪」
「んー? アイドル? アイドルってなに?」
ぴかっと、ちひろの目が金色に輝く。
288 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:47:51.47 ID:ZD0Y9woyo
「あら、あら! 志希ちゃんアイドルに興味あります? いいですよ〜志希ちゃんの可愛さなら日本一、ううん世界一も間違いなし!」
「なに、勝手に進めてるんですか!」
「えっなにそれ面白そう。 うんうんあたしアイドルになっちゃう」
「貴女もなに勝手に決めてるんです?!」
女性二人に振り回される、『元』鬼。
289 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:48:25.97 ID:ZD0Y9woyo
「あ、それとあなたは志希ちゃんのプロデューサーですよ」
「何でですか?! 説明を?!」
「助けるとは言いましたけど、タダじゃないって言いましたよね〜♪」
「こ、この悪魔……!」
「あ、そだ。 プロデューサー。 さっき飲んだのまた頂戴。 あたしのカラダ、あれなしじゃ生きていけなくなったっぽい。 特効薬も作れないし、よろしく♪」
「さらっと重大なこと言わないでくれます?! あぁもう! どいつもこいつも……!」
290 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:49:11.51 ID:ZD0Y9woyo
ハチャメチャで、無茶苦茶な、逃走記が終わりを告げる。
ここは、Los Angeles。
天使が翼を無くした街。
けれど、そんな街だからこそ。
かつて、翼を失った天使は、新たな翼を手にいれて、輝く世界へ飛び出していくのだった。
291 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:49:38.76 ID:ZD0Y9woyo
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
292 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:50:17.05 ID:ZD0Y9woyo
場所は、現実へと。
プロダクション地下研究室へと舞い戻る。
プロデューサーの拘束具は既にはずれ、眼をあけて回りを見れば、傍らにはによによと、にやつく志希。
「『私に護らせてください』『私は志希を救いたいんです』ーーーーいっやーん♪ 志希ちゃんったら愛されてるうぅぅぅう! あ、思い出したら濡れてきちゃった。 プロデューサー、志希ちゃんのカラダに栓してー?」
「…………」
プロデューサーの大切な思い出。
現在では、スタイリッシュ痴女にワープ暗黒進化してしまった彼女との出会いが、まさに本人に絶賛踏みにじられ中。
293 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:51:06.10 ID:ZD0Y9woyo
「んー? どしたの? あっ、そっか。 やーらしいんだぁプロデューサー♪ おほんっ。 ……ねぇ、お兄さん、志希ちゃん寂しいの……頭、撫でて欲しいな……?」
記憶の中のしおらしい一ノ瀬そのままに、瞳をうるうる、上目をつかつか。
ぶちぃ。
プロデューサーの中のナニかが切れる音がした。
「があぁぁぁぁぁぁぁぁ?! こ、コロす! 貴女はぶちころがす! 許さない! 鬼や悪魔が許しても、この私が許さないぃぃぃぃぃぃいいいいい!」
「ふんにゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ?! ま、曲がらない! 人体はそっちには曲がらないからぁぁぁぁぁあ?! あっ、やばっ、これマジでヤバっ! かわいくないどころか、スゴいの出ちゃう! ………あっ、でもなんかキモチヨク……」
プロデューサーの怒りすら、瞬間に新たな性癖へと転換する、聖なる性天使
一ノ瀬志希。
存分にお仕置きか御褒美かもはやわからない痛みを与え、プロデューサーは志希を離した。
294 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:52:04.92 ID:ZD0Y9woyo
「はぁーはぁーはぁー……。 べンキに吐かれたタンカスよりも邪悪で醜悪ですよ貴女……」
乱れた衣服を正し、心を律するプロデューサー。
快感に逝っていた志希も、足を震わせながら立ち上がる。
「あたたた……イタキモチい新感覚でしたぜ………んふふ。 でも、あれだよ? 一応ちゃんと実験にはなってるから、プロデューサーの恥ずかしい本音とか、実は童貞だったこととか、志希ちゃんは知っちゃったけど。
まあまあ、いたしたかないコラテラルダメージということで」
「私の受ける被害が大きすぎるでしょうが……この雌猫」
「ふふん、あたしは年中発情してるから、猫じゃなくて兎だもーん。 リサーチ不足だよ、プロデューサー?」
「仕置き足りないようですね……!」
指をわきわきさせるプロデューサーから、逃げるように距離をとる志希。
と、その手に握られたハート型のフラスコに気がつく。
295 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:52:58.68 ID:ZD0Y9woyo
「……? 何ですか、そのクスリ?」
「あぁ、これ? これが実験結果」
「はい? 実験はあくまで精神分析だとーーー」
「………実はね〜志希ちゃん嘘ついちゃった。 ホントは精神分析なんかじゃないの。 ホントの目的は、コレ」
赤紫。
志希の艶やかな髪と同色の液体が浮かぶ、ハート型のフラスコ。
催眠の前、志希が掌で弄んでいた試作の秘薬。
296 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:53:39.17 ID:ZD0Y9woyo
「エリクシールを造るときに必要なのは、心トリップしちゃうような興奮。 もしくは、それと同等の緊張。 いゃあ〜、キミの本音はどっちもたっっぷり! ファッキントッポ! 志希ちゃん、ドキがむねむねしちゃった♪ それに、夢から新しい成分も取れて、もうココロ大爆発!」
つまるところ、催眠状態から引き出される、記憶の事象分析など真っ赤なウソ。
けれど、きっとそれだけではない。
稀代のジーニアスが、『特異性』を求めたのなら、まだ先があるはずだ。
297 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:54:15.01 ID:ZD0Y9woyo
「ねぇ、プロデューサー? あたし言ったよね、特効薬はないって」
その通りだ。
志希とプロデューサーをがんじがらめに縛り付ける、性なる鎖。
そこに鍵穴はない。
かつて、彼女はそう言った。
「だけど……デキちゃった。 にゃはは。 志希ちゃんの頭脳とプロデューサーのカラダ。 二人の赤ちゃん、なんてね。 男女の交わりが、奇跡を起こすーーー」
志希は喋り続ける。
止まらない。止められない。
一瞬の停滞が、致命的なナニカを引き起こすとでも云うように。
「ーーーにゃは。そんな非科学的なことを言うつもりはないけれど」
ちゃぷん。ちゃぷん。
揺りかごを揺らすように、フラスコを、振る。
298 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:54:44.89 ID:ZD0Y9woyo
「プロデューサーとアタシ。 『被験者』で『実験者』。 だけど。だけどさぁ………別にプロデューサーが望んだワケじゃ、にゃいんだよね〜」
それはいつも彼女が口にする言葉。
あの日、プロデューサーが志希に億千もの命を奉じた時から始まった、解けない『呪文』。
『魔法』なんかじゃ、ない。
「あ、コレあたしが飲むんじゃないよ? キミが経口摂取することによって〜、キミの匂いが変わるの」
「つまり……私のスペルマでの補給が必要なくなる。 そういう話ですか」
パチンッと、指をならして実験者は被験者を褒め称える。
299 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:55:12.01 ID:ZD0Y9woyo
「ぶっちゃけちゃうと、アタシ。
今でも別にキミの精液摂取しないでも、ミートやシュガーたっくさん摂れば問題ないんだよねー。 キミにラリっちゃって中毒症状発症してるだけでさ〜」
「……節度の話では、ないようですね」
「そんな簡単ならよかったんだけどね〜♪ アタシがキメたお薬はー死にゆくアタシのカラダに入ってきた、キミの命をあたしの奥のおーっくまで。 丁寧に刷り込んじゃったんだよ〜」
鶏やアヒルの子供が産まれた時、一番最初に見たものを親と思う。
チンと言えばマンと言う。
それは本能レベルでの、抗うことの出来ない、刷り込み。
300 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:55:44.35 ID:ZD0Y9woyo
「知ってた? あたしのカラダはキミが同じ空気を吸うだけで、視界に入って、匂いがするだけで、ぐっちゅぐちゅのとーろとろになっちゃうんだよ」
「ええ、勿論。 だから極限まで我慢出来なくなった時にだけ、私に襲いかかるんでしょう」
当然と言うように、あっけらかんと。
悪びれない相棒に志希は破顔した。
「あっははは! ほんとキミって優しくないよね♪ 女の子からアクションさせるなんて! もっと紳士にならなきゃモテないぞ〜♪」
「お生憎さま。 私は似非紳士とは違いますから……。 酸いも甘いも噛み締めた、大人ですので」
「ひっどいオトナ♪ ………でさ」
301 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:56:19.21 ID:ZD0Y9woyo
すぅーーーと、志希の表情から色が失せる。
百面相の一ノ瀬から、そのどれもが抜け落ちて。
原始的な。
例えるならば、赤子のような。
そんな透明な色〈シキ〉。
302 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:56:45.58 ID:ZD0Y9woyo
「飲む? 飲まない? 志希ちゃんのココロ。 キミが。 決めてよ」
303 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:57:32.30 ID:ZD0Y9woyo
飲むのか。
飲まないのか。
『飲むのかいっ! 飲まないのかいっ! どっちなんだいっ?!』
『どちらにしても』心は割れる。
どちらがより、『マシ』か。
これはそういう類いの問題だ。
志希から手渡されたフラスコを見つめる。
ハートに形どられた、ココロみたいなフラスコ。
中で揺れる液体のせいで、屈曲し歪んで見えるその形は。
今にも不定形に変わりそうな、天に二物を与えられし乙女のようだった。
304 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:58:04.53 ID:ZD0Y9woyo
プロデューサーは思い出す。
一年前から始まった、飼育の日々を。
道端で出会った猫。
薄ピンクのニップルと、無毛の割れ目。
追走する黒服共。
幸せそうに食べていた、どどめいろのビックマック。
狂える科学者との対峙、そして別れ。
ーーーーー互いを結びつけた、精約の射精。
志希が見ている。
瞬き一つせず、ギフテッドが鬼の一挙手一投足を観測する。
305 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:58:53.10 ID:ZD0Y9woyo
「……………」
チクタクチクタクチクタクチクタク。
メトロノームの駆動音が、今はこんなにも喧しい。
しかし、これはもはや夢ではない。
甘い夢想でなく、苛烈な超現実。
選択するしか、ないのだ。
あの時のように。
あの時選んだからこその。
ーーーかぽっ。
おもむろに、プロデューサーはフラスコの栓を抜き、そして口元へその先を近づけた。
志希の目に、形容しがたい淀み。
アルコールを飲んだ男が、いつまでたっても射せない、そんな不感。
そして。解答が、提出された。
ーーーーー結果的に、それは二択のそのどちらでもなかったけれど。
306 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:59:25.00 ID:ZD0Y9woyo
「…………どういうつもりかな?」
「………」
プロデューサーは栓を抜き、そしてその中身を勢いよく床へぶちまけたのだ。
「どういうつもりかって、聞いてるんだけど?」
「わかりませんか? こういうつもりですーーーよ」
ハートのフラスコが落ちていく。
緩慢に、ゆっくりと。
あっけなく、当然のようにーーーーーココロは割れた。
志希は酷く冷めた目で、他人事のようにその様を眺めていた。
307 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 07:59:52.50 ID:ZD0Y9woyo
「まだ終わりではありませんよ。 解答は最後まで受けとるものです、先生」
ぐしゃり。
ふぐりが勢いよく潰された時に似た、嫌悪を催す音。
フラスコを跡形もなく踏みつけて、プロデューサーは肩をすくめた。
「そっか。 それがキミの答えなんだ。 ふうん。 オモシロイよ。 今まででいっとう」
「それはどうも……おや、どこへいくつもりです?」
「決まってるでしょ。 答え合わせ終わったんだから、帰るの」
「どこに?」
「……キミには、カンケー、ない」
308 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 08:00:27.62 ID:ZD0Y9woyo
踵を返し、逃げるように出ていこうとする志希を、プロデューサーが後ろから抱く。
「離して。キミの匂いを嗅いでたらアタマがおかしくなりそう」
「………私に震える女の子をほっぽりだす趣味はありませんよ。 また、失踪するつもりですか? それに言ったでしょう。 解答は最後まで受けとるものです」
初めてあがったステージの時のように、志希の小さなカラダは震えていた。
抱きしめれば、抱きしめるほどそれはプロデューサーに伝わっていく。
309 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 08:01:00.88 ID:ZD0Y9woyo
「似非紳士がここにいれば、女を泣かせる男なんて、人間ですらない。 ーーーなぁんてのたまうんでしょうねぇ。 けれど、私は鬼なので。 んー鬼と悪魔のハイブリットだからそれ以上でしょうか?」
大真面目な顔をしてそんなことを呟いて。
がっちりと後ろから抱かれた志希は身じろぎもせず、鬼の述懐を受け止める。
「ふん。 どうせ貴女のことだ。
飲めば、『キミもアタシと離れたいんだ』。
飲まなければ、『あぁ、アタシのココロを受け止めてはくれないんだ』ーーーなぁんて」
志希の声真似をしながら、プロデューサーは鼻で笑う。
一ノ瀬の出した問は二択ですらない。
はなから解答の存在しない、神の不在証明と同じ。
310 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 08:01:33.90 ID:ZD0Y9woyo
「フェルマーの最終定理よりも質が悪い。 前提として、詰んでいる。 一ノ瀬の最終定理とでも言うつもりですか? ………その癖、自分は勝手に傷ついて」
志希の表情は見えない。
ぽた、ぽた、と。
滴の落下音だけが、彼女を主張する。
「ギフテッドなんて大層な冠被ってる癖に、臆病で情けない大バカさんですよねぇ貴女は」
「…………」
天才にだって、わからないものはある。
それは、何だろう。
アイドルを続けて少しずつわかってはきたけれど。
そう、思っていたのだけれど。
311 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 08:02:05.08 ID:ZD0Y9woyo
「ーーーーココロが壊された気分はどうです、『被験者』さん?」
床に落ちてバラバラになって。
もう元の形もわからないくらい砕けて散らばったハートのフラスコ。
ハートの乙女は、ぽつりぽつりと、こぼし出す。
312 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 08:02:32.61 ID:ZD0Y9woyo
「…………傷ついた」
「それで?」
「気分サイアク。 今すぐ世界中かき混ぜて、ぐちゃぐちゃにしたい」
「他には?」
「キミ、キライ。 だいっきらい。 墓場に埋まって、地獄に堕ちても、隣で恨み言言ってやる」
「それは悲しい。 嫌われるのは苦手なもので」
「………砕けちゃった乙女心。 責任、とってよね」
この場で壊れたのは何だろう。
ココロというよりそれは。
志希を蝕んできた『呪い』のような。
313 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 08:03:07.47 ID:ZD0Y9woyo
「そうですねぇ。 入れ物が壊れた以上、新しい『器』が必要ですね」
「そうだよ。 割れた一ノ瀬ハート、キミの手で整えなきゃ、許さない」
と、そこでプロデューサーの動きが鈍る。
今までいついかなるときも、志希の前でだけは、緊張や苦悩を見せなかった鬼が、初めて悩む。
親のプロレス現場に直面した翌日の、母と息子のような。
そんなきまりが悪い表情。
「あーーーー。 こほん。 あのですね。 志希さん。 うん」
「………? なに?」
「あーーーー………」
間抜けた声を飛び散らせて、プロデューサーは言った。
314 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 08:04:12.80 ID:ZD0Y9woyo
「ーーーー作りましょうか。 二人の、ココロの結晶体」
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ふぇ?」
315 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 08:04:42.93 ID:ZD0Y9woyo
社会人が18歳に対して、お前のボルチオに欲望を吐き出して孕ませる宣言。
倫理観の欠片もなく、ムードもへったくれもないが、二人にはとても相応しく思えた。
「だから、言葉や行動でもわからない、才能の欠片もない大馬鹿さんにも、目で見てわかる、いやカラダとココロの両方で感じられる証を作ろう、そう言ってるんです」
プロデューサーは矢継ぎ早に、早口でどんどん言葉を生産する。
彼女にアブノーマルなエロ本を見つかった青少年のような、必死で、たまらなく滑稽な姿が重なった。
316 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 08:05:12.92 ID:ZD0Y9woyo
「いや、私が欲しいってわけじゃないんですよ? いつまでたってもギフテッドだ才能だほざく小娘に、女なら誰でも同じ部分があるということを、フツウの女だと教え込むためにですね。 そう、これはけっして未成年に興奮するような変態的な思考ではなく、いわばココロのケア。 そう! 迷える若者を導くための大人として正しい姿なのです。 けして、自分の子を孕んだマタニティーアイドルが見たいというわけではないのです」
かつてないほど弾丸のように言葉を撃ちまくる鬼。
あんまり必死なその姿に、さっきまでの空気もどこへ行ってしまったのやら。
317 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 08:05:45.49 ID:ZD0Y9woyo
「………ぷっ……ふふ、あっははははは! ーーーーハァ。 ホント、予想不可能な化学変化ってカンジ♪ どんな素敵なエリクシールもキミには敵わないかも♪」
志希は笑う。
18歳の、等身大の女の子の表情で。
綺麗な綺麗な、ビビットピンクに色めいて。
溢れた色の分は、プロデューサーの腕を、ゴリラめいた力で一杯掴んじゃって。
乙女の恥じらいでプロデューサーの腕の骨が軋むが、今この場では関係ないことだろう。
「あーあ。 悔しいなぁ。 こんな楽チンにココロトリップさせられちゃうんだ……♪ 志希ちゃん、ヘリウムより軽い女の子かもかも。 比重が限界突破〜」
「…………それは、了承と、受け取っても構わないんですか?」
ホンの少し見せた鬼の弱みを察知し、志希がプロデューサーの母親めいた笑みをつくる。
318 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 08:06:13.55 ID:ZD0Y9woyo
「ふっふっふー♪ 言葉と行動でわからないプロデューサーには、ココロとカラダで教えてあげなきゃダメかにゃあ? にゃはは♪」
にやにやと、未だ赤い目を細めつつ、志希はプロデューサーを見上げる。
反撃には、鉄槌を。
プロデューサーの進撃が始まる。
「………志希、貴女今日、排卵日でしょう」
「ふにゃっ?!」
予想外の反撃。
ピンクからレッドへ、レッドからルビーへ。
どんどん赤みを増していく、百面相志希。
319 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 08:06:40.33 ID:ZD0Y9woyo
「排卵日にこんなことして、本当は私に期待していたんでしょう? 唯一の『被験者』と『実験者』ですからね。 私たちは」
「き、キライ! キミ、ほんとキライ! ぎにゃあぁぁぁぁ! こ、このヘンタイ! ヘンタイごっこじゃなくて、ヘンタイ! ヘンタイオトナ!」
「はっはっはっはっは。 だまらっしゃい小娘が。 犯しますよ」
バシバシと、制御不能の剛力でプロデューサーの腹に肘をぶちこむ。
ゴフッゴフッと、口の端から血が漏れて、もれなく病院搬送必須なのだが、プロデューサーの腕が緩むことはない。
320 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 08:07:13.12 ID:ZD0Y9woyo
「フーッフーッフーッ………ふふ♪ ほんとに良いのぉ? ちひろさんに怒られちゃうかもだよ?」
「何を今さら。 それに私に貴女を丸投げしたのはあの女の方です。 とやかく言われるいわれはありませんね」
「………志希ちゃん、式は盛大にやりたいにゃあ」
「勿論。 事務所総出、あの女にも懐からたんまり吐き出させます。 育児放棄したお返しです」
「にゃは♪ そしたら、ちひろさんを『お母さん』って呼ばなきゃ、だね♪」
「………やっぱり考え直しても」
「イワセナーイ♪」
321 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 08:07:55.92 ID:ZD0Y9woyo
スルッと腕を抜けて、プロデューサーに向き直り、志希は飛びついた。
胸に顔をうづめ、存分に匂いを吸い込んで、にへら、と緩んだ微笑みを見せる。
「ーーーねぇ、プロデューサー。 この可逆反応、不可逆なんかにしないでね♪ もしキョーミなくしたら、志希ちゃん失踪しちゃうから♪」
「ええ、二度と輪っかがきれないように、しっかり繋いであげますよ」
等身大の女の子。
一ノ瀬、志希。
一杯、多くのものを授かって。
一杯、多くのものを失って。
322 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 08:08:42.84 ID:ZD0Y9woyo
「ずっと見ててね、プロデューサー。 昔なんて思い出しちゃわないくらい。 四六時中、24時間、365日。 アタシをプロデューサーのフレグランスで、溺れさせて欲しいのです」
「当たり前です。 私は貴女のプロデューサー。 貴女が欲しがる全て与え。 貴女を遠ざける全てを払い。 病めるときも健やかなるときも。 貴女を愛します」
そうしてこれから、当たり前のように、いっとう幸せになるのです。
323 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 08:09:17.97 ID:ZD0Y9woyo
「んふふ♪ ーーーーそれじゃ、産まれたての志希ちゃんが一番欲しいもの、アタシのココロとカラダを満たして頂戴………あなた?」
「お安いご用ですよ、お前さん」
こうして、ただの女の子とただの男の子のココロとカラダが、純白の部屋の中で、一つに溶けて混ざりあったのでした。
おしまい♪ にゃはっ♪
324 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 08:11:21.89 ID:ZD0Y9woyo
ここまで。
なんだこの文字量……いやほんま疲れました……
後は、前作同様後日単を投稿しておしまい!
夜にでもだしに来ます。
325 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/13(月) 10:30:11.05 ID:/g+VRYIqO
濃い話でした
おっつん
そしてギリギリアウトだ
326 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/13(月) 13:01:09.65 ID:rEnUYBsTO
おつおつ
スレッドムーバーも気圧されてたわ
327 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/13(月) 13:08:09.04 ID:ZjBA04f+o
この二人の子供とかろくな性格とスペックしてなさそう
乙
328 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2016/06/13(月) 16:24:53.39 ID:yfQQGqVn0
乙、です〜
何とも濃厚な話でしたな
329 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:33:06.37 ID:ZD0Y9woyo
これからは濃いのは汁だけにしたいと思いました(フレP感)
アウトかなぁ……次も紳士度高いけど大丈夫か……
後日単が書いてて一番楽しいのは内緒
出汁ます!
330 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:33:35.91 ID:ZD0Y9woyo
夕暮れ、事務所の中が朱に染まる時刻。
珍しくも、事務所にプロデューサーはいない。
ちひろさんもいない。
多くのアイドルも出払って。
たまたま示し合わせたように3人のアイドルがソファーで隣り合っていた。
フレデリカ、奏、志希。
デジャブでジャメブ。
奏に寄りかかるようにしながら仲良く3人並んでいたのだ。
331 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:34:20.78 ID:ZD0Y9woyo
「志希ちゃんクーイズ♪」
「いっえーい☆ ぱふぱふーどんどん! どんがらがっしゃーん!」
「何故志希ちゃんは、憂鬱うつうつガス欠さんなのでしょうか〜?」
「ちくたく! ちくたく? ちくちく……ちくちく!」
「プロデューサーさんが居ないからでしょう?」
「ぶっぶー。 正解は、プロデューサーから逃げ出して、事務所に来たはいいものの。 奏ちゃんのフレグランスに捕まって逃げられなくなった、でした〜♪ ハスハスハスハス、ふにゃ〜」
332 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:34:52.92 ID:ZD0Y9woyo
「離れればいいだけだと、思うのだけれど」
「ちっちっちーそれで済めば志希ちゃんはいらないのだ〜。 あぁーダメになる〜。 奏ちゃん専属のハスハスマシーンになるぅ〜」
「ちくちくちくちく……。 あたっ! もー針が舌に刺さっちゃったよ〜。 カナデちゃん撫でて〜☆」
「任せなさい。この〈狂悦なる口蛇の魔性〉の舌技で、痛みなんて那由多の彼方へと吹き飛ばしてあげる 」
「あ、やっぱいいです。ウッス」
「あら残念」
お決まりのやり取り。
ほんの少しだけ違うのは、志希の頬がいつもより、ちょっぴり朱に染まっていることくらい。
そして、それに気づかぬ親友二人ではない。
333 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:35:26.07 ID:ZD0Y9woyo
「……志希、少し顔が赤いわよ?」
「ホントだ! いつもが林檎さんなら〜今日は蜜柑さんかも☆」
「んーそのココロは?」
「どちらもフレちゃんの大好物でしょう〜♪」
「美味いっ! 奏ちゃん、フレちゃんの座布団持ってって〜」
「あーれー! お許しくださいお代官さまー! と、見せかけてとりゃー!」
「あーれー!」
くるくるくると、ソファーの上で器用に回転する志希。
白衣をぽーんと、放り脱ぐ。
334 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:35:52.96 ID:ZD0Y9woyo
ベーブレードならぬシキブレードね、なんて思いつつ奏は志希に向き合った。
「それで、どうしたの? 風邪? ……熱は……ないようだけれど」
「わー奏ちゃんのお手てちべたーい。 手が冷たい人はココロが暖かいって通説、これで証明できたかも♪」
「えっ! ならフレちゃんは太陽さんさんだから、ハートは北極になっちゃう?!」
「フレちゃんは別〜♪ ココロもカラダもあったかでーふわふわ♪」
「私は仲間はずれなのね。 寂しいわ、しくしく」
「「ぎゅー!」」
左右両方から美女のサンドイッチ。
男なら誰しも夢見る、3Pの縮図だ。
335 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:36:20.67 ID:ZD0Y9woyo
「………っはぁー。 蜜柑といえば、柑橘系のフレグランスが嗅ぎたいにゃあ〜。 うぅー。 でも拙者動きたくないでござるぅ……」
「………? 柑橘系……酸っぱいもの………。 はっ! し、志希、まさかあなた……!」
天啓を受けた、大仙人のような沈痛な面持ちで、奏は志希の肩を掴む
「んー……発表はもう少し先の予定だったけど、二人には言ってもいいかにゃー。 そうなの、志希ちゃん実は………」
志希も真剣そのもの。
胸の緊張をそばだたせ、告白を決意する。
336 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:36:47.15 ID:ZD0Y9woyo
「……プロデューサーさんと喧嘩したのね!」
「そう、にんし……………ん?」
「うん。 フレちゃん知ってた」
真顔のフレデリカと、死んだ魚の目をした志希と、狼狽える奏。
三者三様。
みんな違ってみんないい。
337 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:37:16.12 ID:ZD0Y9woyo
「そうよね………私も喧嘩してしまった時は、沢山柑橘系を食べて、お花を摘みに行くわ。 それで黄金色の小水と共に、不安や苛立ちを水に流すのよ」
「うーん。 上手いんだけどなぁ。 上手いんだけど、今だけは、奏ちゃんの座ってた座布団には触りたくないかにゃー」
「カナデちゃん、黄色いもの食べたからって黄色いものが出ていくわけじゃないんだよ」
共に止まってしまった回遊魚の目をしつつ、速水処女を見つめる。
ーーーと、ここで事務所入り口から聞こえてくる靴音。
338 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:37:46.47 ID:ZD0Y9woyo
「にゃっ?! やば! プロデューサー来ちゃった! 奏ちゃん、フレちゃん! 一ノ瀬軍曹は、地下実験室へ退避します! えーっと、上手いことどやこや、しといて♪ ボンジュールマダム!」
「いえっサー♪ いてら〜☆ ボンマダ〜」
「またね、ボンマダ」
ぴゅーっ、とオノマトペの聞こえてきそうなくらい機敏に走り去る志希。
志希プロデューサーが入室する頃には、影も形もなくなっていた。
339 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:38:16.32 ID:ZD0Y9woyo
「はぁはぁはぁーーーふぅ。 おはようございます、お二人とも。 志希を見ませんでしたか?」
「「地下へ行ったわ(よ)」」
光の速度で崩壊する友情。
平素と異なる、志希プロデューサーの慌てぶりに、奏は疑問を口にする。
「そんなに息を切らしてどうしたの? 志希が逃げるのはいつものことだと思うのだけれど」
「ん? ーーーーあぁ、志希言ってませんでしたか?」
「志希がどうかしたの?」
緩んだネクタイを締めつつ、清潔を何より心がける志希プロデューサーは、思いがけずだらしのない笑顔で言ったのだ。
340 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:38:46.32 ID:ZD0Y9woyo
「妊娠したんですよ。 志希」
341 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:39:12.58 ID:ZD0Y9woyo
あっけらかんと、言ってのける志希プロデューサー。
奏は時を止め、フレデリカは目をぱちくり。
「………わーお。 おフランス並みに情熱的かも」
「ああ、それと。 近々結婚式を挙げますので、これ、招待状です。 あいつに渡せって言ったんですが、アレで恥ずかしがりやですからね。 意外と。 折角、親に会う口実作りだって言うのに……まったく」
「…………」
血の通わぬ、真顔で受け取る奏。
フレデリカは招待状に、きらきらと宝石を見るような、輝いた目を向けている。
342 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:39:51.41 ID:ZD0Y9woyo
「妊娠したんだから安静にしろって言ってるんですが……利かん坊のお転婆で困ります」
苦笑いの中に、隠しきれぬ喜びを。
今まで見たことのない、鬼の暖かな笑顔に、フレデリカはどきりとする。
思わず志希に嫉妬しそうになるくらい、彼は幸せそうだった。
「ねぇねぇカナデちゃん。 見て見て志希プロデューサーの顔。 にへぇとして、ゆるゆるったらないよ」
「………」
「……? カナデちゃん?」
343 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:40:28.91 ID:ZD0Y9woyo
「………おかしい。おかしいわ。〈狂悦なる口蛇の魔性〉たるこの私が、未だに彼とまともにキスも出来ていないのに志希が妊娠? なんのジョーク? いいえ、嬉しいのよ? だって親友の幸せだもの。 だけど、だけどおかしいわ。 コウノトリさんは人を選ぶとでも言うの……? ………そうよ。 わかった。 この世界の私はきっと並行世界の私なんだわ。 きっと基本世界の私は今ごろ、19人の子供がいて、マタニティーアイドルとして、世界を席巻しているんだわ。 そうよ。でなければこんなの。 いともたやすくえげつない行為が行われ過ぎよ。 ふふ。 決めたわ。 今夜こそ彼を骨抜きにしてあげる。 覚悟なさいあなた……!」
「………」
ぶつぶつと、呪詛を言い聞かせるように呟く処女。
344 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:41:02.57 ID:ZD0Y9woyo
やはり本日も奏プロデューサーが床で寝ることが確定しつつ、それを横目にフレデリカはぼやいた。
「いいなぁ……シキちゃん。 アタシもプロデューサーにお願いしよっかなぁ。 …………裸エプロンにつけ毛つけたら、理性飛ばせるかなぁ……」
『元』紳士プロデューサーによって、若干の性的思考の偏執が見られつつも、幸せ一杯のフレデリカ。
と、地下へ向かおうとする志希プロデューサーへ、思い出したように声をかける。
「あ、プロデューサー。 シキちゃん白衣忘れて行っちゃったから届けてあげると喜ぶかもかも」
「おや、ありがとうございます。 ところで奏さんの調子が悪いようですがいかがしました?」
「んーー? まあ、なんというか。 次回にご期待しるぶぷれって感じかな?」
「………はぁ……そうですか……?」
不承不承といった様子で白衣を受けとる。
345 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:41:30.37 ID:ZD0Y9woyo
その時、異世界から帰ってきた奏が、絞り出すように声をあげた。
「…………プロデューサーさん。志希をよろしくね。 あの子は例えるなら猫。 気まぐれで、寂しがりやなんだから」
「シキにゃん、だもんね〜? ファイト! プロデューサー♪」
多くの者は、志希を猫だという。
それは掴み所がなく、自由の象徴で。
それ以外、例える先を知らぬがゆえ。
けれど。
こんなとき、プロデューサーはいつもの通りに、こう返すのだ。
346 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:42:51.00 ID:ZD0Y9woyo
「志希を譬られるとしたら、志希だけです。 あんなお転婆………猫には荷が勝ちすぎる。私くらいの者ですよ。 あんな女性に首輪をつけられるのは。
ふふっ……」
この世でただ一人の、『被験者たる実験者』は、お転婆娘が置き忘れていったお気に入りの『白衣』を優しく抱えて。
今日もまた、追走を始めるのであった。
これで本当におしまいです。ふふ。
347 :
◆4C4xQZIWw7k3
[saga]:2016/06/13(月) 21:55:58.12 ID:ZD0Y9woyo
出しきりました!
似非格闘はーとふるえろすを目指したのですがいかがでしたでしょうか?
志希女史以外はこんなお話にならないと思うので、これからもお付き合いいただけたら勃起ものです。
次回は予告通り
奏 「赤ちゃんはコウノトリが運んでくるんでしょ?」 です。
できればLIPPS全員ヤりきりたい。
余談ですが、『いいなーいいなーLIPPSっていいーなー』の作者は天才だと思うんですが、なに食ったらあんなの思い付くんですかね(白目)
今回も紳士淑女の皆様、ありがとうございました
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