志希「〜激走〜アタシと鬼のアメリカ逃走記」

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332 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 21:34:52.92 ID:ZD0Y9woyo

「離れればいいだけだと、思うのだけれど」

「ちっちっちーそれで済めば志希ちゃんはいらないのだ〜。 あぁーダメになる〜。 奏ちゃん専属のハスハスマシーンになるぅ〜」

「ちくちくちくちく……。 あたっ! もー針が舌に刺さっちゃったよ〜。 カナデちゃん撫でて〜☆」

「任せなさい。この〈狂悦なる口蛇の魔性〉の舌技で、痛みなんて那由多の彼方へと吹き飛ばしてあげる 」

「あ、やっぱいいです。ウッス」

「あら残念」

お決まりのやり取り。
ほんの少しだけ違うのは、志希の頬がいつもより、ちょっぴり朱に染まっていることくらい。

そして、それに気づかぬ親友二人ではない。
333 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 21:35:26.07 ID:ZD0Y9woyo

「……志希、少し顔が赤いわよ?」

「ホントだ! いつもが林檎さんなら〜今日は蜜柑さんかも☆」

「んーそのココロは?」

「どちらもフレちゃんの大好物でしょう〜♪」

「美味いっ! 奏ちゃん、フレちゃんの座布団持ってって〜」

「あーれー! お許しくださいお代官さまー! と、見せかけてとりゃー!」

「あーれー!」

くるくるくると、ソファーの上で器用に回転する志希。

白衣をぽーんと、放り脱ぐ。
334 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 21:35:52.96 ID:ZD0Y9woyo
ベーブレードならぬシキブレードね、なんて思いつつ奏は志希に向き合った。

「それで、どうしたの? 風邪? ……熱は……ないようだけれど」

「わー奏ちゃんのお手てちべたーい。 手が冷たい人はココロが暖かいって通説、これで証明できたかも♪」

「えっ! ならフレちゃんは太陽さんさんだから、ハートは北極になっちゃう?!」

「フレちゃんは別〜♪ ココロもカラダもあったかでーふわふわ♪」

「私は仲間はずれなのね。 寂しいわ、しくしく」

「「ぎゅー!」」

左右両方から美女のサンドイッチ。
男なら誰しも夢見る、3Pの縮図だ。
335 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 21:36:20.67 ID:ZD0Y9woyo

「………っはぁー。 蜜柑といえば、柑橘系のフレグランスが嗅ぎたいにゃあ〜。 うぅー。 でも拙者動きたくないでござるぅ……」

「………? 柑橘系……酸っぱいもの………。 はっ! し、志希、まさかあなた……!」

天啓を受けた、大仙人のような沈痛な面持ちで、奏は志希の肩を掴む

「んー……発表はもう少し先の予定だったけど、二人には言ってもいいかにゃー。 そうなの、志希ちゃん実は………」

志希も真剣そのもの。
胸の緊張をそばだたせ、告白を決意する。
336 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 21:36:47.15 ID:ZD0Y9woyo

「……プロデューサーさんと喧嘩したのね!」

「そう、にんし……………ん?」

「うん。 フレちゃん知ってた」

真顔のフレデリカと、死んだ魚の目をした志希と、狼狽える奏。
三者三様。

みんな違ってみんないい。
337 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 21:37:16.12 ID:ZD0Y9woyo

「そうよね………私も喧嘩してしまった時は、沢山柑橘系を食べて、お花を摘みに行くわ。 それで黄金色の小水と共に、不安や苛立ちを水に流すのよ」

「うーん。 上手いんだけどなぁ。 上手いんだけど、今だけは、奏ちゃんの座ってた座布団には触りたくないかにゃー」

「カナデちゃん、黄色いもの食べたからって黄色いものが出ていくわけじゃないんだよ」

共に止まってしまった回遊魚の目をしつつ、速水処女を見つめる。

ーーーと、ここで事務所入り口から聞こえてくる靴音。
338 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 21:37:46.47 ID:ZD0Y9woyo

「にゃっ?! やば! プロデューサー来ちゃった! 奏ちゃん、フレちゃん! 一ノ瀬軍曹は、地下実験室へ退避します! えーっと、上手いことどやこや、しといて♪ ボンジュールマダム!」

「いえっサー♪ いてら〜☆ ボンマダ〜」

「またね、ボンマダ」

ぴゅーっ、とオノマトペの聞こえてきそうなくらい機敏に走り去る志希。

志希プロデューサーが入室する頃には、影も形もなくなっていた。
339 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 21:38:16.32 ID:ZD0Y9woyo

「はぁはぁはぁーーーふぅ。 おはようございます、お二人とも。 志希を見ませんでしたか?」

「「地下へ行ったわ(よ)」」

光の速度で崩壊する友情。
平素と異なる、志希プロデューサーの慌てぶりに、奏は疑問を口にする。

「そんなに息を切らしてどうしたの? 志希が逃げるのはいつものことだと思うのだけれど」

「ん? ーーーーあぁ、志希言ってませんでしたか?」

「志希がどうかしたの?」

緩んだネクタイを締めつつ、清潔を何より心がける志希プロデューサーは、思いがけずだらしのない笑顔で言ったのだ。
340 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 21:38:46.32 ID:ZD0Y9woyo








「妊娠したんですよ。 志希」







341 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 21:39:12.58 ID:ZD0Y9woyo
あっけらかんと、言ってのける志希プロデューサー。
奏は時を止め、フレデリカは目をぱちくり。

「………わーお。 おフランス並みに情熱的かも」

「ああ、それと。 近々結婚式を挙げますので、これ、招待状です。 あいつに渡せって言ったんですが、アレで恥ずかしがりやですからね。 意外と。 折角、親に会う口実作りだって言うのに……まったく」

「…………」

血の通わぬ、真顔で受け取る奏。
フレデリカは招待状に、きらきらと宝石を見るような、輝いた目を向けている。
342 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 21:39:51.41 ID:ZD0Y9woyo

「妊娠したんだから安静にしろって言ってるんですが……利かん坊のお転婆で困ります」

苦笑いの中に、隠しきれぬ喜びを。
今まで見たことのない、鬼の暖かな笑顔に、フレデリカはどきりとする。

思わず志希に嫉妬しそうになるくらい、彼は幸せそうだった。

「ねぇねぇカナデちゃん。 見て見て志希プロデューサーの顔。 にへぇとして、ゆるゆるったらないよ」

「………」

「……? カナデちゃん?」
343 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 21:40:28.91 ID:ZD0Y9woyo

「………おかしい。おかしいわ。〈狂悦なる口蛇の魔性〉たるこの私が、未だに彼とまともにキスも出来ていないのに志希が妊娠? なんのジョーク? いいえ、嬉しいのよ? だって親友の幸せだもの。 だけど、だけどおかしいわ。 コウノトリさんは人を選ぶとでも言うの……? ………そうよ。 わかった。 この世界の私はきっと並行世界の私なんだわ。 きっと基本世界の私は今ごろ、19人の子供がいて、マタニティーアイドルとして、世界を席巻しているんだわ。 そうよ。でなければこんなの。 いともたやすくえげつない行為が行われ過ぎよ。 ふふ。 決めたわ。 今夜こそ彼を骨抜きにしてあげる。 覚悟なさいあなた……!」

「………」

ぶつぶつと、呪詛を言い聞かせるように呟く処女。
344 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 21:41:02.57 ID:ZD0Y9woyo
やはり本日も奏プロデューサーが床で寝ることが確定しつつ、それを横目にフレデリカはぼやいた。

「いいなぁ……シキちゃん。 アタシもプロデューサーにお願いしよっかなぁ。 …………裸エプロンにつけ毛つけたら、理性飛ばせるかなぁ……」

『元』紳士プロデューサーによって、若干の性的思考の偏執が見られつつも、幸せ一杯のフレデリカ。

と、地下へ向かおうとする志希プロデューサーへ、思い出したように声をかける。

「あ、プロデューサー。 シキちゃん白衣忘れて行っちゃったから届けてあげると喜ぶかもかも」

「おや、ありがとうございます。 ところで奏さんの調子が悪いようですがいかがしました?」

「んーー? まあ、なんというか。 次回にご期待しるぶぷれって感じかな?」

「………はぁ……そうですか……?」

不承不承といった様子で白衣を受けとる。
345 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 21:41:30.37 ID:ZD0Y9woyo
その時、異世界から帰ってきた奏が、絞り出すように声をあげた。

「…………プロデューサーさん。志希をよろしくね。 あの子は例えるなら猫。 気まぐれで、寂しがりやなんだから」

「シキにゃん、だもんね〜? ファイト! プロデューサー♪」

多くの者は、志希を猫だという。
それは掴み所がなく、自由の象徴で。
それ以外、例える先を知らぬがゆえ。

けれど。
こんなとき、プロデューサーはいつもの通りに、こう返すのだ。
346 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 21:42:51.00 ID:ZD0Y9woyo

「志希を譬られるとしたら、志希だけです。 あんなお転婆………猫には荷が勝ちすぎる。私くらいの者ですよ。 あんな女性に首輪をつけられるのは。
ふふっ……」

この世でただ一人の、『被験者たる実験者』は、お転婆娘が置き忘れていったお気に入りの『白衣』を優しく抱えて。

今日もまた、追走を始めるのであった。






これで本当におしまいです。ふふ。
347 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 21:55:58.12 ID:ZD0Y9woyo
出しきりました!

似非格闘はーとふるえろすを目指したのですがいかがでしたでしょうか?

志希女史以外はこんなお話にならないと思うので、これからもお付き合いいただけたら勃起ものです。

次回は予告通り
奏 「赤ちゃんはコウノトリが運んでくるんでしょ?」 です。

できればLIPPS全員ヤりきりたい。


余談ですが、『いいなーいいなーLIPPSっていいーなー』の作者は天才だと思うんですが、なに食ったらあんなの思い付くんですかね(白目)

今回も紳士淑女の皆様、ありがとうございました


348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/13(月) 21:57:44.23 ID:ZjBA04f+o
おつ
俺もあんたの食ってるものを知りたいよ……(白目)
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/13(月) 22:02:13.70 ID:yfQQGqVn0
乙、です〜
>>1の作品を読むのはこれが初めてですけどもう病みつきですね!
良ければ>>1の過去作品を教えてください。他の作品も読みたくなってきた…
350 : ◆4C4xQZIWw7k3 [saga]:2016/06/13(月) 23:54:39.50 ID:ZD0Y9woyo
>>348
つ http://i.imgur.com/uYpJ3Fx.jpg


>>349 ありがてぇ……ありがてぇ!
フレデリカ「アタシPンコツアンドロイド」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1464904631/

です。
もっとキマッて、是非オートロック式のすりガラスドアがある部屋に来てくださいね。
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/15(水) 02:50:00.57 ID:O3fxAv7qO
おつ
お前もあの作者も危険な臭い放ってそう
352 :真真真・スレッドムーバー :移転
この度この板に移転することになりますた。よろしくおながいします。ニヤリ・・・( ̄ー ̄)
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2023/07/07(金) 21:34:03.61 ID:OygWPrZnO
ん
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2025/10/26(日) 07:53:48.64 ID:CRGhUNYrO
ん
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