咲「和ちゃんが男子になっていまいました」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/07/10(日) 17:23:31.78 ID:7bRb4P01O

――森林限界を超えた山の頂にも、花が咲いた。

光の速さで駆け抜けた、あの夏休みが終わりを迎えた。




9月、新学期
夏休み明けの通学路は、休暇から気分が切り替えられずどこも浮足立っていた
休暇中の楽しい思い出ではじけてる人、心配ごとで沈んでる人
インターハイ団体戦優勝という輝かしい成績を修めた私たちは、後者だった

咲「和ちゃん、今日学校来るかなぁ」

優希「わかんないじぇ……」

私を励ましてくれる優希ちゃんの声にも、覇気がない。


咲「私、東京から帰ってきてから携帯電話ずっと肌身離さず持ってて。……でも、夏休み中一度も連絡来なかったよ?」

優希「私もメールとかしたけど、返信とか全然だじぇ」

優希ちゃんはそっとため息


夏休み中でだいぶ触り慣れたスマホ。
和ちゃんからの電話がいつ掛かってきても絶対取る!という目標も果たせないまま、今日も寡黙な態度を保ってポケットの中。


朝から気落ちしたムードの中、優希ちゃんと二人で通学路を歩いていく。
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/07/10(日) 18:23:16.98 ID:HPVkbKXjO

咲「部長たちも連絡くれたけど、やっぱり何も分からないって」

優希「のどちゃんが一週間くらい前に退院したって聞いて、何回か家にも訪ねてみたけどなー」

咲「うん」

うなだれた様子で優希ちゃんが切り出す。


優希「いつ行っても、のどちゃんは寝てるって言われて。もう門前払いだったじょ……」

咲「そうだったんだ…」

パパさん堅物なんだじぇ、とは優希ちゃん談
和ちゃんが聞いたら怒りそう


咲「優希ちゃん、和ちゃんと同じ中学だもんね。ご家族とも知り合いなんだ」

優希「まあなー。咲ちゃんも、今度のどちゃんのお見舞いついでに行ってみるかー?」

咲「ついで……?」

優希「間違ったじょ。お見舞いで行くんだじぇ!」

落ち込んではいても、やはり優希ちゃんは明るい。
可笑しくてつい笑っていると、優希ちゃんも安心したみたいにふんわり微笑んだ。


それにしても、しっかりしててマメな和ちゃんが、一度も私達に連絡してこないなんて。

不安だ。凄く。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/07/10(日) 18:41:02.09 ID:HPVkbKXjO


……和ちゃんが倒れたのは、インターハイ団体戦決勝の後。



………

……

…



久『団体戦お疲れ様でした、一晩ホテルで休んで。明日の個人戦も頑張りましょうっ」

--でーも!

久『――戦果は上々!今夜はこれくらい、許されるわよね?』

嬉々とした部長の乙女なはにかみ。可愛い人。


まこ『お主。そんな経費ないじゃろうに……』

久『大丈夫よ、私たちは地元の期待に応えたんだもの。これくらいいいじゃないっ』

和『夏休み明けてみたら、麻雀部は大幅な予算オーバーで廃部に……』

和『なーんてことないよう、きちんとお願いしますよ……部長?』

久『わ、わかってるわよ……』


透華『こんなめでたい日にそんな微細な問題気にするものではありませんわっ!』

透華『今夜は長野県代表、清澄高校の祝勝会ですもの。お代はうちが受け持ちますので、目一杯楽しみましょう!』

ゆみ『まあ、そうだな。明日からはまた個人戦が始まるが……』

ゆみ『とはいえ、今日くらい美味しいものを食べたって罰は当たらないさ』

ゆみ『ところで龍門渕、その宴会だが、当然鶴賀も参加可能なのだろう?』

透華『当然ですわっ!清澄の勝利を祝いたい気持ちのある方でしたら、どなたでも大歓迎です!』



靖子『ほう、なら私も参加させてもらおうか』

純『おい、プロのくせに学生にたかんなよ……』

靖子『久とは長い付き合いだからな。そういう席が設けられているなら、参加したいと思うのは当然だろう?』

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/07/10(日) 19:45:20.84 ID:R18BqZWMO

華菜『キャプテン!私たちも行きましょうよ!』

美穂子『ああ、華菜……でもいいのかしら…』

久保『何を躊躇う理由がある』

美穂子『こ、コーチ…!』

久保『同郷が立派な成績を残したんだ。祝ってやんのが仲間ってもんだろうが……違うか?』

華菜『コーチ…ッ!』


久保『オイ池田ァッ!ここで足踏みしてる福路も連れていってこい!腹いっぱいになるまで帰ってくんじゃねぇぞ!!』

華菜『はいっ、コーチ!!ほらキャプテン、コーチもこう言ってますし!』

美穂子『待って、華菜……。コーチ、よろしければ一緒にいらっしゃいませんか?』

久保『……なに?』

美穂子『清澄と風越女子である私達が同郷であるなら、私たちを指導し共に戦っているコーチもまた、同郷ですよね?』

久保『福路……』


美穂子『それに……まだ私の個人戦が残っています。ですが今夜は、風越女子の団体戦の区切れとして、同じ長野を背負った彼女たちの功績に敬意を表し、祝いの席に並ぶというのはどうでしょう?』

美穂子『もちろん、来年の優勝は風越女子のものですけどね……フフフ』

華菜『キ、キャプテン……』


久保『……ん、んんっ。チッ、わかったよ……ったく、人の気遣いを無下にしやがって。福治ッ!帰ったらきっちりミーティングだからなっ!』

美穂子『ええ、付いていきます!』

華菜『……キャプテンとコーチ越しに夕日が見えるじぇ』

未春『華菜ちゃん落ち着いて!口調っ、口調間違ってるよ……!』

5 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/07/10(日) 19:56:27.50 ID:R18BqZWMO

ノリノリの加治木さんたち鶴賀や、遠慮がちな久保コーチを引っ張ってくる風越。

参加者を募りつつ、『アレが食べたい、コレが食べたい』と店を相談する部長と龍門渕さん。

『衣も麻雀打ちたい!』嬉しそうに抱き付いてくる衣ちゃん。

騒がしく、そしてとても心地良い空間。
……紛れもなく、自分達が仲間と努力して勝ち取ったものだ。

成し遂げた優勝を称えるトロフィーを抱えながら、感動を噛み締めていた。




宴会も無事終わり。部長の悪戯っぽいウインクがミーティングを締めくくった後。

そして、その帰りに和ちゃんが倒れた。

6 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/10(日) 21:35:20.48 ID:jPwsS4dxO
巨根なのかな
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/07/10(日) 21:58:50.32 ID:xZB/hCGiO

…

……

………


咲「……」

幸せの絶頂の中での、唐突な。
和ちゃんの突然の体調不良と共に幕を閉じた、私たちのインターハイ。

和ちゃんは個人戦当日も入院先で意識が戻らず棄権。
私も、個人戦は棄権してしまった。

薄れていく非日常の熱気。
新学期が始まれば、原村和も普段通り登校してくるだろうと、皆が信じていた。


咲「……あれ」

優希「ん?どうしたー、咲ちゃん」

咲「なんか校門の前、人だかりができてない…?」

優希「登校時間なんだから当たり前だじょ」

咲「あはは、それもそっか」

いつもの登校日。
秋を間近に控えたものの、まだまだ暑いコンクリートの舗装道。

夏休み前みたいに、道端に蜃気楼が見えたりはしないけど。

どこか懐かしい面影を残したピンク髪の男子生徒が、リュックを後ろ手に持ちながら校門に凭れている。

8 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/07/10(日) 22:16:50.26 ID:x2FQIJQa0

「え、誰あれヤバ」
「ちょ、話しかけてみなって」
「えーっなんであたし〜!?」

その男子生徒を遠巻きに眺めながら横を通り過ぎる女子生徒の集団からは、僅かに黄色い声が聞こえてくる。


その男子生徒は居心地悪そうに、髪の毛を弄ったり、右腕に付けた腕時計を気にするような仕草でやり過ごしている。

周りを気にしていて、しきりに周囲を見回していた。


咲(だれか人でも待ってるのかな……?)

優希「さ、あんまりのんびりしてると遅刻しちゃうじぇ」

咲「あ、うんっ」

優希「そういえば一緒に登校して思った。咲ちゃんって方向音痴だけど、意外と通学路はちゃんと覚えてるんだなー」

咲「もうっ、そんなの当り前でしょーっ!」

優希ちゃんの笑い声。

咲(からかわれただけだったのかな……)

でも私も、ちょっと大きめに声を出して気合が入った。

生粋の文科系の私が、なぜか若干運動部のノリ。
今日はなんだか、変なことが起きそう










「咲さんっ、優希……!」



9 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/07/10(日) 22:38:41.27 ID:xZB/hCGiO

……名前を呼ばれた気がした。

咲「?」

優希「な、なんだじょ……?」

目の前には、息切れしながら走り寄ってくるピンク髪の男子。

そんな知り合いかもしれない男子は、私にとっては間違いなく名前も知らない人だった。


「あ、あの!私……えっと。その……咲さん…」

咲「……?」

優希「誰だじぇ?」

覚えのない縋るような視線に、私達はただ戸惑うばかり

でも私たち以上に、目の前のピンク髪の男子の方が切羽詰まっている様子。

理由は、まだよくわからない。ただ必死な眼差しに、只事でない予感はひしひしと伝わってくる。

そんな空気を感じ取ったのか、それとも興味本位か。通りすがる他の生徒たちも何事かとちらちら私たちの方を見てくる。

咲「あ、あの…な、なんでしょう…」

咲(恥ずかしい…)


できれば早く終わってくれないかな…、と内心願いつつ、顔を見上げる。

私と目前の彼の間にはだいぶ身長差があり、向かい合っていると上向くだけで顔を覗き込めてしまう。

眉に少し掛かるサラサラなピンクの前髪。
走ったせいで少し着崩れた、何故か第一ボタンまで締められた夏服。
苦しそうに歪んだ中性的で整った顔。

入学仕立ての中学生みたいなあどけなさに、ちょっと可愛いかも…なんて思った。

10 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/07/10(日) 22:45:22.02 ID:xZB/hCGiO

優希「え……あの、ほんと誰…ですか?」

優希ちゃんが居心地悪そうに身じろぎ。珍しく気後れ気味に、敬語で話しはじめる。

咲(あ、なんか優希ちゃんの敬語、いま初めて聞いたかも)

その隣で私はつい咄嗟の現実逃避。

咲「……優希ちゃん、敬語使えたんだねぇ」

優希「咲ちゃんしっかりしてッ!ダメだじぇ目の前のことから目を逸らしちゃ」

咲「はっ!う、うん……」

だってこんな男子知らない。

男友達の人数なんて、それこそ片手で数えても余る
というか、京ちゃんくらいしか思い浮かばない

……のだけど


 和『―――咲さんっ』


私を『咲さん』と呼ぶ人はこの長野において一人しかいない。

その人は私の大好きな親友であり、ライバルであり、大事な仲間。


けれど、彼女はきっと今も体調を崩しているはず。だって昨日まで音信不通だったし。

どう考えても校門前で遭遇するなんてありえないもん。


目の前にいる人物が男性という時点で、そもそもこんな回答、的外れにも程があって欲しいくらいなんだけど

11 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/07/10(日) 22:55:54.72 ID:xZB/hCGiO

咲「でも、なんか……」

たしかに顔のパーツとか似てるし、懐かしい面影は感じられる。

ここ二週間ほど会えていなかったけど、それでも私は彼女を覚えている。


咲「……もしかして、和ちゃん?」

「……!……!」

弾かれたように、男子が頷く。

荒唐無稽な質問をする私に、呆れた様子の優希ちゃん。

優希「はぁっ。咲ちゃん……のどちゃんは女子だじょ」

咲「でも彼、頷いてるよ?」

優希「オレオレ詐欺と同じ手口だじぇ」

咲「ああ、なるほどねぇ」


「そ、そこで納得しないでくださいよっ!」


咲「ひゃあっ!?」

するどいツッコミ

全力で食いついてきたピンク男子は、さっと姿勢を正して。


和♂「――お久しぶりです。優希、咲さん。その、私……原村和です……」


優希「えっ……」

咲「うそ……」



東京で倒れて搬送された和ちゃん。

夏休みを経て、今まで通りに、元気に登校してきてくれると。誰もがそう信じていた。

そんな私達の予想は、願いは――思わぬ形で破られることとなった。

12 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/07/10(日) 22:57:59.63 ID:xZB/hCGiO



夏休み数週間会わないうちに

私の友達が

男の子になってしまいました



ある意味、夏休みデビュー……?


13 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/07/10(日) 23:06:21.20 ID:xZB/hCGiO

今日はここまでです

14 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/07/10(日) 23:31:09.16 ID:wnWcj0VWo
乙
続き気になる
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