咲「和ちゃんが男子になっていまいました」

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83 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 17:46:26.69 ID:IF7t6qkEO

日曜。駅前。


和♂「…はい? 行けなくなった? 3人ともですか?」

優希『そうそう。だから今日は、のどちゃんと咲ちゃんの二人きりだじぇ。しっかりアピールするのよー?』

和♂「!? な、何言ってるんですか…っ!」ドキッ

私が待ち合わせの5分前ギリギリに駅に着いたときには、既に和ちゃんが一人、改札の前で待っていた。

向こう側を向いてスマホ片手に、もう片方の手を腰に当てて仁王立ちしながら、息も絶え絶えにお喋りしている。


ーー

それから二分ほどして、和ちゃんの電話が終わったみたい。

携帯をポケットに滑らせてから、大きなため息を吐いて壁に寄り掛かる和ちゃんに、気後れしながらも、ゆっくりと近づいていく。

咲「和ちゃん」

声を掛けると、くるりとピンク髪の背が振り向いた。

和♂「……あ。咲さん……!」

咲「うん。おはよう、和ちゃん」ニコッ

和♂「はい。おはよう、ございます」フワッ

照れたような笑みを浮かべながら、ゆったりとこちらへ歩いてくる。

84 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 17:47:57.99 ID:IF7t6qkEO

和♂「私服……合宿やホテルで着ていたのと違いますね」

咲「う、うん。実はこの服、お出かけ用なの…」

和♂「そうなんですね。凄く、よく似合ってますよ、可愛いです…とっても」

和ちゃんが眩しそうに目を細めながら、熱心に私のことを褒めてくる。

なんだろう……こんなに服装を褒められるなんてこと初めてで、自分がにやけてないか、顔が赤くなってないか心配。


咲「うんっ。あ、ありがと…///」

和♂「いえ、いいんです。本当のことですし」

咲「もう…褒めすぎだよ。その、和ちゃんも、お、そういう私服は初めて見るなぁ。うんっ、格好いい!」

男の子の服――そう言おうとして、咄嗟に曖昧な表現で誤魔化した。

でも、細くて、そんなシルエットを十分に生かした服を綺麗に着こなしている。

惚れ惚れして、思わず嘆息してしまいそう。
85 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 17:49:20.25 ID:IF7t6qkEO

和♂「そ、そうですか…? メンズの服を着て出掛けたことがなかったので、心配だったんですけど…」

咲「え、あ…そうなの?」

和♂「はい……私は元々、女性ですし。その…変だと言われないか、不安でしたので…なかなか」

咲「あ…」

咲(そっか。和ちゃんは、自分に起きた現象だけでなく、そういった恐怖とも今まで戦ってきたんだ…)

自分に多大なコンプレックスを持つ人の、色眼鏡で見られることへの不安やストレスは、一体どれほどのものだろう。

少なくとも私には、想像もつかない。


咲「…ううん。全然、変なんかじゃないよ?皆、和ちゃんのことを男子だって思うくらい」

和♂「はい…」

咲「だ、大丈夫だよ! もし不安でも、私がずっと隣にいるから。だから怖くないよ!」

和♂「咲さん…」

咲「あはは…なんて、私なんかじゃ頼りないかな?あっ、なんなら手とか繋いでく?でもそしたら私達恋びt――」

私の言葉を遮るように、和ちゃんの右手が、私の左手を引いた。



和♂「――それでは、今日一日は、咲さんは私の恋人ってことですね」

咲「あ……う、うん」

和♂「…それじゃあ、そろそろ改札をくぐりましょう。そろそろ電車が来ますよ」

86 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 17:51:04.15 ID:IF7t6qkEO

早朝と言うにはのんびりし過ぎだし、お昼時と言うにはまだ気が早いような。

そんな微妙な時間帯だからか、私たちが乗車した電車内には、他の乗客は誰一人乗っていなかった。

そんな中で、私達は二人席に並んで、のんびり座っている。その間も和ちゃんは二人の間で握られた手を放すことはなかった。

時折和ちゃんは私から視線を外しながら「……ふふっ」と嬉しそうにほほ笑んでいた。
……お買い物を楽しみにしていてくれたみたい。なんだか嬉しい。


咲「そういえば、最初から二人で出掛けるのって初めてじゃない?」

和♂「そうでしたか?」

咲「あ……」

不思議そうに首を傾げる時の角度と、その可愛らしさは、女の子だった頃からまるで変わってない。

和ちゃんの変化を見つけて一つ一つ肯定し受け入れつつ、変わらないものを見つけては大事に心の中に仕舞っていく。


咲(――って、んんっ? 何か忘れてるような……二人……?)


咲「って、ああっ!今日はみんなで遊びに行くって話だったような!そういえば、他の皆は!?」

和♂「え? ああ。それなんですが…先程行けなくなったと、私の携帯に連絡がありまして」

咲「ええっ、三人とも!?」

和♂「はい…」

咲「そ、そっかぁ……急だったもんねぇ」

87 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 17:53:27.34 ID:IF7t6qkEO

和♂「もう、今更気付くなんて遅すぎですよ……電車だって発車してるのに。てっきり、咲さんの方にも連絡が入ってるものだとばかり…」

咲「えへへ……ごめん。あ、えっと…何の話だっけ?」

和♂「二人きりで出掛けるのは、これが初めてですね、という話ですよ」

咲「あ、そうそう!合宿中に二人で滝を見に行ったり、神社にお参りには行ったけど、最初から二人だけってなかったよね」

和♂「…言われてみると、確かにそうですね」

思い出すように、上向く視線。喉ぼとけが軽く突き出て見える。

咲「……なんだか、ちょっと不思議な感じ」

和♂「そうですね。あっ」

何か思いついたようで、今までずっと私と繋いでいた手を放した。
和ちゃんの両手が胸の前でポンッと合わさる


和♂「咲さんっ。記念に写真でも撮りませんか?」

咲「うんっ、いいよ!…でも、この車両誰もいないから取って貰えないね…」

和♂「いえ、いいですよ別に……自撮りできますし」

咲「自撮り機能なんてあるんだ…」

呟いた言葉に、和ちゃんはクスリと笑った。

88 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 17:58:08.35 ID:IF7t6qkEO

「スノー使おうかな……」と呟き数回唸ってから、私の脇腹に腕を回して軽く引き寄せる。

咲「きゃっ、和ちゃん! くすぐったいよ〜」

和♂「でも、もっとくっつかないと見切れてしまいますよ?」

私の反論は涼しい顔で躱され、和ちゃんの手が私の背中に軽くを添えられる。

和ちゃんの頭が揺れて、私の頭に凭れかかってきた。

気になって和ちゃんの顔を見上げると、目と鼻の先にあった彼女の顔と至近距離で見つめ合う体勢になる。

咲「あっ…」

和♂「……」

驚いて、咄嗟に顔を逸らして、そっぽを向いてしまった。
何でだろう。いま、凄く顔が熱い……


和♂「はい、チーズ」

パシャ、と和ちゃんの持っているスマホがシャッター音を響かせた。

和♂「撮れました!」

咲「うんっ」

和ちゃんが撮れた写真を見せてくる。

咲「……」カァァ

和♂「……」

頭をコツンとくっつけて撮った写真の中の、真っ赤になっている私たちは、どう見ても付き合いたてのカップルだった。

89 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 18:02:30.96 ID:IF7t6qkEO

和♂「……あと、咲さん。優希に教えてもらったんですけど、スノーっていうものがあるんです」

咲「スノー、雪?」

和♂「そうです。写真を撮ると可愛く加工できたりするアプリでして〜」

咲「アプリ……?」


首を傾げていると、前方に腕を伸ばして画面をこちらに向けたままスマホを構えつつ、再度私に身を寄せてきた。

するとスクリーンには、もちろん私と和ちゃんの姿……と思ったら、急に二人の頭にネコミミ、そして顔にはネコの鼻と髭が現れる。

咲「!? なにこれー!?」

和♂「ね? 可愛いでしょ?」

咲「うんっ」

電車内ではずっと、他に乗客がいないのをいいことに、ひたすら写真を撮ってはアプリで加工してはきゃーきゃー騒いで遊んでいた。
90 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 18:04:41.58 ID:IF7t6qkEO

大通り。


和♂「電車で少し出ると、こういう大きいお店も多いんですけどね」

咲「そうだねぇ。でも、ここが出来たのもわりと最近なんだよ?」

和♂「そうなんですか?」

咲「私は長野長いしね。まぁ、私も今の家には随分昔に引っ越してきたんだけど」

和♂「初耳ですね」

ショッピングモールを歩きながら、街について、そしてまだまだ知らなかったお互いの事について話す。

そんな日曜日のお昼時は流石に混んでいて。

けれどどれだけの人混みだったとしても、基本的に皆がすれすれで避け合って、実際に肩がぶつかるのは極稀だ。

日本人は忍者の末裔だって話も、あながち間違ってない気がする。

こんなこと言ったら、和ちゃんに笑われちゃうかな……


91 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 18:06:19.47 ID:IF7t6qkEO

いつもと変わらず隣を並んで歩いている。
でも身長差のせいで、和ちゃんの横顔が今までよりずっと遠いような感じ。

咲「ねぇねぇ和ちゃん」

和♂「はい、なんですか?」

咲「女の子だったときは、身長って何cmだったの?」

和♂「154cmですけど…」

咲「あ、1cm差だったんだ」

私の身長が155cmで。
そして今の和ちゃんの身長は確か174cmだから、そりゃ遠いわけだ。


和ちゃんが遠くに行ってしまった気がして、思わず手が強ばる。すると和ちゃんは、それに応えて力強く握り返してくれた。

和♂「咲さん、どうかしました?」

咲「うん。あのね……私達、隣を歩いているのに、顔、随分遠くなっちゃったなって」

和♂「え?」

キョトンとした顔で和ちゃんが小首をかしげると、午後の陽光の下、ピンクのショートヘアがきらきら流れる。

思わずため息の漏れる私に、和ちゃんは静かに笑いかけてきた。
92 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 18:08:48.72 ID:IF7t6qkEO

和♂「そうですね……こうして隣を歩いているだけなのに、前よりずっと咲さんが遠いです」

和♂「でも、どれだけ身体の距離が離れても、心の距離は変わりません。私たちは……友達、ですから」

はっきり友達を言い切ってくれたことに、笑みがこぼれる。

でも、そんなにやける頬に、冷たい思考が水を差す。



――『友達ですから』。

同性の友情なら、友達なら、理由なんて何もいらないけれど。

一応は子どもというほど子どもではなく、そして今は男女だから。一緒にいるためにはわかりやすい何かが必要なんだろう。

咲(京ちゃんに頼まれて、学食でレディースランチを注文した日のことを思い出す。)

咲(あの時はたしか、同級生に『いい嫁さんだなぁ』って言われて、咄嗟に『中学で同じクラスなだけ!』と言い返してたっけ?)

そう……京ちゃんの場合は『中学が一緒なだけ』。
本当にそれだけなんだけど、一緒に行動するにはその関係を言葉によって明確にしなければならないらしい。

誰が決めたのかはわからないけど、いつの間にか

93 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 18:10:49.37 ID:IF7t6qkEO

物事に白黒ハッキリさせることは、必ずしも正しいとは思えないけれど、それでもどうしてもグレーではいられない事だって、きっとあるんだ。

この前まで女の子で、でも今は男の子になっちゃって。でも、心の形なんてわかるはずもなく。

男の子なのか、女の子なのか。もやもやしてグレーゾーンで、私にも和ちゃん本人にだってきっと、よく分からない。

だから私は、彼女に対するセクハラ染みた白黒ハラスメントに対し、『友達』という彼女を説明する明確な枠組みを作る。

咲(これからも付き合っていくであろう彼女のコンプレックスを、私といる間は少しでも和らげられるように……)

今の和ちゃんは女の子であって、同時に男の子でもあるんだから。

だとするならば、『友達』という明確な関係であることは私達にとって、この関係を続けていくうえで不可欠であるような気さえしてきた。


咲「……うん。ずっと、友達だからね」

和ちゃんの顔が至近距離にある。

私の顔は前を向いたまま、視線だけがチラチラと横へ流れていた。
94 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 18:13:16.98 ID:IF7t6qkEO

私のカーディガンを見て、和ちゃんに似合いそうな服を想像しながら一緒にお店を巡って。

たまーに小物屋さんで、綺麗なアクセサリーなどを物色していると、あっという間に時間が過ぎ去っていく。

小腹が空いてクレープを食べながら、二人並んでアーケードを歩く。
不意に、和ちゃんの足が止まった。

咲「和ちゃん?どうしたの――」

快晴だった天気が少し曇ってきて、細々と雲の切れ目から差し込む一筋の光の下。

和ちゃんの視線を辿った先には、有名なロリィタ服のショップが店を構えていた。

咲「あ、」

和♂「えっ、あ、咲さん……何でもないんです、何でも」

愁いを含んだ微笑に、胸が少し高鳴る。


咲「私、和ちゃんが持ってるような服のお店って、初めて見たかも…」

和♂「そう、ですか?」

咲「ねぇ…せっかくだし、ちょっと見てかない?」

和♂「で、ですが…」

咲「今までのお店は大体中に入って見て来たのに、このお店だけ見て行かないのは逆に変だよ」

和♂「…そう、ですかね」

咲「そうそうっ。私も興味あるもん。さ、入ろっ」

もう一度手を引いて、ゆっくり脚を踏み出す。
すると和ちゃんは何の抵抗もなく、――どころか私よりも勇み足にショップに向かって行く。

95 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 18:15:37.01 ID:IF7t6qkEO

店員「いらっしゃいませ〜」

カランコロン、という鈴の音と共に、店員さんの声が聞こえて来た。
目の前に広がるフリルの嵐に卒倒する。


店員「どんなのお探しですか?」

咲「あの、こういったお洋服って、私たち初めてで。大きめのサイズとかも置いてたりしますか?」

店員さんは「大きめ…」と呟きながら和ちゃんに目を配り、ちょっと考え込む。

店員「どうでしょう…ロリィタってサイズ小さめに作られてるブランドもありますから。身長はおいくつですか?」

和♂「174cmです…」

店員「すごーい、おっきいねぇ。でも細身だから身長のわりに華奢に見えちゃいます。うーん、どういった服が着たいとかって、好みは決まってます?」

和♂「色は白の…そうですね、クラシック系とか」

店員「なら大丈夫だと思いますよ? あ、スリーサイズは測り直します?」

和♂「あ、いえ、結構です」

適当にこちらに話を振りながら、私たちを連れてショップ全体を巡回しつつ、服が並べられたエリアの紹介をしてくれる。


店員さんがいくつかのエリアから集めたロリィタ服が、空いていたラックに敷き詰められて、私たちの前に移動されてきた。

店員「これくらいかな〜。もしかしたら小さいかもって商品も、一応出してみました〜」

和♂「ありがとうございます」

店員「いいえ、全然大丈夫ですよ〜。サイズ合わなくてもデザインが気に入った服あったら、取り寄せも出来るし。下見だけでも楽しいだろうから、店内色々見てみてください」

和♂「はい…ありがとうございます……」

店員「……いい彼女さんねっ♪」ボソッ

和♂「っ……ぁ、はぃ……」カァァ

ニコ、とフランクに軽く会釈をした店員さんは、私たちの傍を離れ、カウンターの方に戻って行った。

96 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 18:18:23.00 ID:IF7t6qkEO

咲「じゃあ、ちょっと合わせてみようよ」

和♂「えっ、ですが…私じゃ、きっと似合いませんよ…」

咲「いいから、ね?ちょっと鏡で合わせるだけでも!」

和♂「……咲さんが、そこまで言うなら…」

嫌なものは、嫌。

態度がいつも徹頭徹尾、一貫しているはずの和ちゃんらしからぬ態度に、彼女の本音を見た気がする。


咲「じゃあ、まずどれからにするー?」

和♂「では…この白のレースのを…」

ディティールが満載の可愛い服の両肩を摘まんで、鏡の前で自分に合わせている和ちゃんの顔は、女の子の頃とまるで変わってなかった。

惚けた表情に、キラキラした目。嬉しそうに緩む口元。

咲(和ちゃん……。やっぱり、ロリィタ服がまだ大好きなんだ……)

言葉にならない態度は、より顕著に彼女の本音を表している。


咲「うんっ、すごく可愛い!」

和♂「はいっ、凄くいいです、これっ」

興奮気味に答える和ちゃんは、合わせていた服をラックに戻し、別の黒の服を手に取った。

鏡の前で合わせて、ラックに戻す。それを何度も繰り返して。

今度は気に入ったのであろう数着を持って、今度は試着室に向かっていく。

気に入った物が多すぎたようで、嬉しそうに頭を抱える和ちゃんの表情は、入店前とは打って変わって、終始笑顔だった。

97 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 18:24:06.20 ID:IF7t6qkEO

和♂「結局、一着買ってしまいました」

咲「でも似合ってるんだし、欲しいんだからいいと思うよ? 出会いは一期一会だし」

和♂「そうですね…」

咲「和ちゃん頭いいから、きっと色々考えちゃうと思うけどさ……。好きな事をしてた方がきっと楽しいよ」

和♂「……はい…」

気付けば私達を照らす影の輪郭は、薄くオレンジを含んでいた。

私の足元から伸びる影の、その隣の影が、ぐっ、と伸びをする。


和♂「ん〜っ…はぁ。私、もうくたくたです…」

咲「あ、ごめん。流石に歩き疲れちゃった?」

和♂「いえ、大丈夫ですよ。疲れはしましたけど、幸せ疲れですから」

咲「あははっ、なぁに、それ。幸せ太りみたい」

和♂「似たようなものですよ…幸せすぎて、疲れてしまったというか。咲さんとの時間が、とても楽しかったので」

咲「えへへ。やっと和ちゃんの本音が聞けたんだもん…張り切っちゃうよっ」

和ちゃんの服を見てあげたくて、今日は優希ちゃんや染谷先輩、そして男の子目線担当で京ちゃんの意見も聞く目論見だったんだけど。

でも、今回ばかりは二人きりで良かったのかもしれない。

98 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 18:25:31.64 ID:IF7t6qkEO

二人で両手にいくつかの紙袋を下げながら、ゆっくり駅の帰り道を歩く。

和♂「やっぱり、お買い物って楽しいですね。これから増えていく男子との交流では、あまりないでしょうし」

咲「ねっ、確かに。男子だけで休日にショッピングしてる場面って、あんまり想像できないかも」

……改めて考えてみても、男子の生態ってよくわからない。

私の場合、お父さんと京ちゃんくらいしかサンプルが居ないせいかもしれないけど。

そういえば男子って、普段何やってるんだろ…


和♂「…公園で、鬼ごっこ、とか?」

咲「あっ、河川敷でエッチな本とかは?」

二人で顔を見合わせて笑う。

和♂「ふふっ…もう、咲さんったら。今時小学生だってそれはないですよ」

咲「あははっ…和ちゃんこそ、鬼ごっこって。小学生だよそれじゃあ〜」


和ちゃんの安心したような笑顔。

夕日に照らされ、顔が真っ赤になる。

唇を尖らせそっぽを向く和ちゃんだって、きっと、私と同じく――






和♂「……私は、ちゃんと男子になることができるんでしょうか…?」

99 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 18:47:05.60 ID:IF7t6qkEO

赤信号。
足を止め、夕暮れをぼうっと見上げる。

咲「……やっぱり不安、なの?」

和♂「え?…ん。不安というか、不満っていうか。ごめんなさい。自分でもよく分からないんです」

信号待ちで道行く人が止まり、私達の周囲にも足を止めた人たちがどんどん増えていく。
お揃いのリュックを背負う大学生の集団。スマホをいじる若い女性。じっと遠くを見つめるサラリーマン。

咲(周りから見た私たちは、どんな風に見られているんだろう。周囲に違和感なく混じることができているのだろうか……)



和♂「ねぇ、咲さん」

咲「ん?」

和♂「今までと違う生き方って、どうすればいいんでしょうね…」

咲「へ――。そ、それは……今までの生活とは、周囲からの見られ方が違うから……」

和♂「今まで普通にしていた事が、普通じゃなくなったり、ですか?」

咲「う、うん…」

和ちゃんは前を向いたまま立ちすくむ


和♂「でも……周りが私の見方をどう変えようと、これが私の普通なんです…」

咲「和ちゃん――」


青信号。
周りが一斉に歩き出す。

周りの人に合わせて和ちゃんも歩き始める。周りに置いていかれないように。
迷いなく真っ直ぐに、けれど迷子みたいな足取りでゆっくりと。

それに少し遅れて、私も速足で追いかける。

100 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 18:52:57.17 ID:IF7t6qkEO

和♂「……やっぱり私、変なんですよ…」

咲「……え?」

和♂「この姿も、こんなメンズの服を着てるのも、髪だってこんなに短くて」

和♂「なのに、こういったロリータ服も好きなまま……」


振り返って立ち止まる。

たくさんの人が行き交うスクランブル交差点の真ん中。人の流れが、和ちゃんを置き去りにしてすっと分かれる。

少し周りと逸れて流れを乱せば、もうそこに流れはなくなって。そこにいるのはただの迷子。

もう一度その流れに加わろうとすればいいのか、それとも自分の目の前を真っ直ぐ歩いていけばいいのか。


和♂「ほんと。私はいったい―――」

咲「―――」

言葉を打ち消すように、電車のブゥォォォ―ンという音が鳴り響く。


消え入る雑踏のなか。

全ての神経が和ちゃんを認識するのに集中し、その他全ての音が遠退くーー


その答えは誰も知らない。稀代の哲学者すら、人生を掛けてもわからなかった難題。

迷子どころの話じゃない。
ひとりだった。
出口の見えない迷宮に迷い込んだ、一人の女の子。

咲(でも。ああ、そっか、違った。そうだったんだね――)

一つ、私は盛大な勘違いをしていたらしい。

……和ちゃんは別に、男子になったわけじゃないんだ


咲(何故だろう……)

ふっ、と笑みが零れた。

101 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 18:58:20.63 ID:IF7t6qkEO

咲「和ちゃん。……別に、無理しなくてもいいんだよ?」

和♂「え……?」

咲「大丈夫。変なんかじゃないよ」

大きくなった和ちゃんの、その小さな背中の真後ろに立つ。
そっと和ちゃんの背中に手を回し、元の方向を向かせた。

咲「大丈夫、大丈夫……」

つぶやきながら空を仰ぐ。


咲「私ね、楽しみなんだ」

和♂「え――」

咲「今日買った服を和ちゃんが着てくれるの、私凄く楽しみなのっ」

和♂「――咲さん…」

僅かにクレープの甘味の混じる唾液を呑み込み、前を向く。


咲「今度和ちゃんの家で、二人でファッションショーしようよ。だってこの服は、私と和ちゃんの二人で選んだんだから…」

和♂「……」

咲「身体が男性になっただけで、……和ちゃんは、和ちゃんだよ」


咲(そして和ちゃんは何も変わってない、女の子なんだ……)

102 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 19:02:40.96 ID:IF7t6qkEO

咲「……私ね、和ちゃん。別に、和ちゃんが女の子だから友達になったわけじゃないよ」

和ちゃんが男の子だったとしても、女の子だったとしても。
私達はきっと、いつだって、数ヵ月前のあの日と同じ出会い方をして。そして、こうして今みたいな関係なったんじゃないかな、って思う。

咲「和ちゃんだから、友達になったんだよ…?」

和♂「―――…」

自分で声に出してみて、うん、私の中にしっくり馴染む。
男女とか、関係ないんだよ。

……どうせなら私だけじゃなくて、この気持ちが世界中の人達に浸透してくれればいいのに。


咲「あの、えっと……だからね? だから……うん、」

コクリ、一回だけ、一人で納得したみたいに頷いてみる。

インターハイでの和ちゃんの言葉一つ一つが私の勇気になったように、
私の言葉にもそういった力が宿るように。

咲「私はね、心配しても不安がってもいいと思うんだ。だって、その……私だって色々悩みとかあるし」

咲「大事なのは、迷子になった時に手を引いてくれる人。…だから、和ちゃんだって、嫌になったら逃げてもいいし、逸れてもいいんだよ」

103 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 19:07:43.40 ID:IF7t6qkEO

一歩、和ちゃんの隣に歩み出る。
小さく俯く顔。
その力なく垂れさがる手を、ぎゅ、と握り締めた。

咲「大丈夫。その時も必ず、和ちゃんのすぐ隣を私も一緒に歩いてるから」

咲「和ちゃんが迷子になっても、私が必ず手を引いてあげる。迷っているなら、背中を押してあげる」

咲「すぐ傍にちゃんと、私がついてる……」

和♂「はい……ありがとう、ございます、咲さん……」

握った大きな手が、力強く力を込めてくる。
潤む瞳は、夕日の照らされる顔の紅と相まってとても色っぽい。


和♂「やっぱり、咲さん。私っ……あなたのことが――ぅっ」

私の言葉にゆっくりと頷いてくれた和ちゃんの涙声は、途中乱暴なノイズが入ったように小さく途切れる。

俯いたまま震える背中を、後ろから抱きつくような体勢で支えながら、点滅する信号機に急かされて、ゆっくりと足を進めていく。


そしてようやく、アスファルトの上を真っ直ぐ伸びる梯子を模した、長い横断歩道を渡り切った。

気づけばまた、私たちは歩行者の波の中にいた。横断歩道を渡りきった人たちと、次の青信号を待つ人たち。

でも、よく見ればお互い、みんな全然違う人ばかり

104 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 19:18:16.57 ID:IF7t6qkEO

和♂「ん――すみません。ぐすっ、ちょっと、元気出てきたかも、です」ニコッ

咲「…そっか、うん。いいよ」

一歩前に出て、結ばれた手を固く握り、振り返る。
すぐそこには、唇に手をやり、うっとり目を細めながら涙ぐむ天使の笑顔。

どうしたらいいのか判断できず、それでも遠慮がち且つ強固に結ばれた手は、迷える和ちゃんから私への信頼の証だ。


咲「さ、じゃあ帰ろっか」

ではまず手始めに、私が和ちゃんの手を引いて地元まで帰ろう。

ぐぃ、と和ちゃんの手を引き寄せて、真っ直ぐに歩き出すーー

和♂「あの、咲さん……」

咲「ん? なぁに、和ちゃん?」

私が、和ちゃんを導いてあげられるようにーー







和♂「駅はそっち方面ではありませんけど…」

咲「ええ!?」

咲(……幸先よくないせいで、先行きちょっと不安です)

105 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 19:22:22.76 ID:IF7t6qkEO

和♂「…ぷっ、ふふっ、なんか…咲さんは咲さんで、ちょっと安心しました」

咲「んなっ! なにそれー!和ちゃんひどーいっ!!」

和♂「だって…今日の咲さん格好良くて。でもよく考えると、迂闊に咲さんを頼りに付いていくと、逆に迷子になりそうで。ちょっと…いえ、かなり怖いですし」

咲「ちょっと! かなり!? そんなぁ…」

和♂「適材適所……考えた人は天才だと思いませんか?」

咲「どういう意味かなぁ!?」

和ちゃんが笑顔でブラックジョークを吐きながら、ふらふらと機嫌良さげにスキップして、二、三歩先に行く。



和♂「……大丈夫ですよ、咲さん」

和♂「私の隣にいてください。それだけで、私は頑張れますから」

――振り向き際の天使。
残滓のように儚く、夕日のオレンジに色素の薄いピンク色の髪の毛が白く、きらきらと光って。

和♂(男としての生活を、未だ受け止められずにいた。でも、女として生きることにも抵抗があった)

和♂(私は、咲さんが好き。あなたの傍にいたい……特別になりたい……)


和(この気持ちのためなら、いっそ女くらい捨てられる)

106 :私の友達は、変わらず女の子でした ◆jPpg5.obl6 [sage saga]:2016/08/09(火) 19:25:45.69 ID:IF7t6qkEO

そんな夕日の逆行越しの彼女に目を細めながら、ひとり呟いた。

咲「手を取り合える人と探せば……どんなに険しい深山幽谷の嶺の上にも、花は咲く。それを私に教えてくれたのは、紛れもなく和ちゃんなんだよ――?」

胸の前で左手の拳をきゅっと握って、それからゆっくりと開いた。

甘やかな痺れが胸を満たし、頬の内側が萎むみたいに僅かに酸味が滲む。


咲「って、待って〜!! 置いてかないでよぉ――っ!?」

顔を上げ直して、和ちゃんの後をそっと追いかける。
目の前を歩く逞しいその背中越しに、少女の影を重ねながら。


咲「今まで通り、何も変わらないよ。…私はずっと、変わらず和ちゃんの傍にいるから」


願わくば―――和ちゃんにとってのその役目が、私でありますように。

107 :いつもの日常 ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 19:32:31.75 ID:IF7t6qkEO

テスト週間を終えた翌翌週。

優希ちゃんが、答案用紙と成績表がはみ出たクリアファイルを胸に抱えながら、屍の様にうなだれている。

……なんだか、テスト前もこんな光景を見たことがあるような気がしないでもない。


優希「うぅ……死にたいじょ……」

咲「ええっ!?」

不穏な呟きが聞こえてきたかと思うと、周囲の温度がサァッと低くなり心臓を掴まれたような感覚に陥る。


心細くなって周囲を見渡すと、部室の端に私と優希ちゃん以外の女子勢がこちらをキツイ眼差しで見つめてきた。

久「っ…! っ…!」コクコクッ

竹井先輩が、顎を使ってクイクイッと指示を与えてくる。

咲(えっ、なに? これは……私に事情を訊けってことなの!?)

あまりの無茶ぶりに、思わずめまいがした。


108 :いつもの日常 ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 19:36:10.49 ID:IF7t6qkEO

ーー


咲「あ、あの……優希ちゃんどうかした?」

優希「ああ、咲ちゃんか……。うん、実はな」

咲「う、うん……」

優希「実は私……この一週間で」














優希「ちょっとだけ、太ったんだじぇ……」

咲「へっ?」


咲(なんか、予想してた答えと違った。)


109 :いつもの日常 ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 19:37:38.23 ID:IF7t6qkEO

優希「太ったんだ、じぇ……」ガクッ

優希ちゃんはもう一度そう呟いて、再度成績表を見返してからまた机に突っ伏す。

咲(成績表って、点数と平均点、学年順位くらいしか書かれてなくない……?)

咲(なのにそれを見ながら太ったなんて。ま、まさか優希ちゃんの成績表……)


優希「今朝なー。なんか体重いなって思って、勇気出して……一か月振りに体重計ってみたら、なんと5キロも……」

咲「ご、5キ…ッ!? それっ、全然ちょっとじゃないよねぇ!?」

想像以上の増量っぷりに、思わず数値をそのまま復唱してしまった。

けど……

咲「でも、なんだ……。てっきり私……優希ちゃんの成績表だけ、体重が載ってたのかと思っちゃった……」アハハ…

優希「ぷっ、そんなわけないじぇ〜」キャッキャッ

咲「だ、だよねぇ〜……」

咲(よかった……咄嗟に思いついたギャグだけど、優希ちゃん笑ってくれた……)ホッ




優希「そんなことになってたら、窓から飛び降りてたじょ……」ズーン

咲「ご、ごめっ……ウソウソ! お願いそれだけはやめてッ!?」アワアワ

咲(人をいじるのって、案外難しいなぁ……)


110 :いつもの日常 ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 19:39:36.29 ID:IF7t6qkEO

咲「でも、どうしていきなり? テスト期間甘いものでも食べ過ぎた?」

優希「今回のテストは、京太郎が泊まり込みで付きっ切りで勉強を見てくれて。それで頑張ったご褒美に、夜中にいっぱい夜食作ってくれてたんだじぇ……そしたら」

咲「ああ……なるほどぉ〜。食べてすぐ寝ちゃったんだ?」

優希「……まぁ。何日かは、食べた後寝る前にちょっとした運動をしたんだけど……」

咲「へぇ〜、運動? ストレッチ的な?」

優希「うーん、まあ確かに腰と股関節にはかなりきたじぇ……」モジモジ

咲「……? えっ、股関節?」

咲「それから腰って……えっ」

優希「……っ」カァァ

咲「……っ!?」

咲「えっ…ええっ!? えええええ〜〜〜っ!?」

咲「優希ちゃんウソッ! えっ? ええっ!?? まじ?? 本当っ!?」

優希「……」コクリ

咲「ひゃああああ〜〜〜っ!! 優希ちゃんおめでと〜〜っ! えっ、どうだった? あ、聞いてもいいのかな? 気持ちよかったっ!?」

優希「……ま、まぁ。京太郎は……その、ずっと私のこと気遣ってくれて、優しかったじょ……」

咲「へぇ〜! も〜っいいなぁ〜! 優希ちゃんすっごく幸せそうな顔してるっ!」

優希「そ、そうか〜?」

咲「うんっ! だって、京ちゃんの名前呼ぶとき、すっごく顔緩んでるもんっ」

優希「えへへ……。あっ、それから、京太郎に教えてもらったおかげでテストの成績も良かったんだじぇ」

胸に抱えていたファイルから答案用紙を出してくる。

どの科目も70点以上の点数ばかりで、ちらほら80点台の点数も。相当の努力が窺える内容だった。

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/09(火) 19:40:08.81 ID:IF7t6qkEO

咲「やったね! もう、京ちゃんのおかげで優希ちゃん、幸せ尽くしだねっ!」グッ

優希「う、うん……」

咲「そうだ、今日京ちゃんはちょっと遅れるみたいだけど、ちゃんと部活来るって」ミミウチ

優希「あ……。そうなんだ」カァァ

咲「あ〜、照れてる〜」ウフフ

ポンッと肩を軽めに叩くと、優希ちゃんは恥ずかしそうに内股の間に手を挟み込んで、きゅっと肩を窄める。

優希「えっと、それと……体重のことは、京太郎には言わないで欲しいんだじぇ……」

咲「え〜そんなの言わないよ〜。だってそれ、きっと食生活の乱れと睡眠不足からだもん。ま、まぁ……今回の場合は、幸せ税じゃないかな〜?」

優希「し、幸せ税……そ、そうかもな〜っ!」

咲「うふふ、優希ちゃんおめでと! お幸せにっ」

優希「あ……、ありがとう」

咲「ひゃあ〜〜っ! 優希ちゃんが照れてる〜〜っ!可愛い〜!」パシンッ

優希「い、痛っ……咲ちゃん肩叩かないで、痛いっ」


変化は、必ずしも悪いことばかりじゃない。

仲のいい友達の幸せな変化は、私にとっても幸せなことだった。


ーー

優希ちゃんは憂鬱げにつぶやいた。

優希「……太った」

まこ「……は?」

和♂「何ですか……、それ」

優希「京太郎のせいで、太ったんだじょ……」

久「紛らわしいわねぇ……、てっきり全科目赤点でも取ったのかと思ったじゃない……」

まこ「お前さんの場合、まったくありえないことではないからのぅ……」

優希「先輩たちからの評価が思った以上に低くて、正直泣きたい気分だじぇ」

ーー
112 :いつもの日常 ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 19:41:52.68 ID:IF7t6qkEO

お昼休み。
いつものように麻雀部のみんなで、いつもの座席順になってお弁当を広げている。

優希「おい、京太郎、タコス買ってこい!」

京太郎「ふざけんなよ、自分で行けや、このタコス娘!」

優希「私は今、タコス食べるのに忙しいんだじぇ」

京太郎「そうかそうか。なら、そのタコスを食い終わってから自分で行け!」

優希「横暴だぞ、京太郎!犬なら犬らしく、馬車馬の如く働けぇ!」

京太郎「犬なのに馬車馬の如くって、明らかに間違ってるだろ!」


毎度飽きもせず、京ちゃんと優希ちゃんの夫婦漫才が始まる。

いや、本人たちからしたら至って真面目……でもないのかな。京ちゃんも笑ってるし、優希ちゃんも京ちゃんの膝枕から動こうとしないし。

ひょっとすると、京ちゃんが本当に買いに行こうとしたら、今度は真逆の攻防戦の開幕か、もしくは優希ちゃんも一緒に付いて行っちゃうかもしれない。

ただじゃれて、相手を感じて。

京太郎「そもそも俺はお前の犬じゃねえよ。……彼氏、だろ?」

優希「っっお、おう……わ、わかってるなら、いいんだじぇ…」




咲「…………」

なんか、いいなぁ……

113 :いつもの日常 ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 19:43:13.01 ID:IF7t6qkEO

咲「……ねえ、和ちゃん」

和♂「はい、なんですか?」

咲「優希ちゃん、幸せそうだね」

和♂「ええ、そうですね。最近の優希は身嗜みにも気を遣うようになって、少し垢抜けてきたと言いますか……本当に毎日が楽しそうで」

咲「そうなんだぁ。好きな人ができると人が変わるって、やっぱり本当なんだねー」

和♂「はい。……好きな人と結ばれることは、とても幸せなことなのでしょうね。最近の優希を見ていると、そう思えます」

咲「うん……。私もいつか、彼氏とああいう風にするのかなぁ……」

和♂「……」


咲(彼氏……。私に、彼氏……)

いまいち想像がつかなくて、感慨深げに空を見上げる。

眩しく照らす太陽。
私の心を熱くする。焦がれる想い。――お姉ちゃん


……お姉ちゃんはいま、学校で何してるのかな。
白糸台高校も、この時間は昼休みで、たぶんお姉ちゃんも私みたいにお弁当を食べている頃だろうか。


咲「和ちゃんも……やっぱり彼氏欲しい? 優希ちゃん達みたいな関係に憧れちゃう?」


「彼氏」という言葉から「実姉」を連想してくる辺り、私はきっと頭がおかしい。

114 :いつもの日常 ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 19:44:29.37 ID:IF7t6qkEO

和♂「……そうですね。“恋人”は欲しいと思います」

咲「えへへ……そっかぁ。やっぱり憧れるよねぇ」

和♂「……はい…」

和♂「……」

和♂「咲さんは、好みのタイプはいますか……?」

咲「好みのタイプ?」

和♂「はい。恋人に憧れる、と言っていたので…誰か意中の方でも、と」

咲「うーん…」


「好み」と言われてぱっと出てくるものはない。

でも思い浮かぶもの。

辺り一面に広がる草木。
私たちを温かく照らす灼熱の星。
遥か向こうに君臨する山脈。

――私の原点。


咲「ん……好みとは、ちょっと違うかもしれないけど」

咲「お姉ちゃん。…みたいな人が、いいのかなぁ……」

和♂「―――やっぱり……お姉さん、なんですか」


咲「あはは…やっぱり私、なんか変だよね。訳わかんないよね、ごめんねっ」

和♂「いえ、そんな…。人を好きになるのに、正解なんてありませんから…」

和ちゃんが悲し気に微笑んで、髪を耳に掛ける。


咲「……うん、ありがと。優しいね、和ちゃんは」

和♂「……」

115 :いつもの日常 ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 19:45:40.30 ID:IF7t6qkEO

咲「……お姉ちゃんはね、私の道しるべなの」

和♂「?」

咲「昔はお姉ちゃんに手を引かれて、いつもくっ付いて行って、同じことをして…」

咲「そうやって私を構成する世界の一部はきっと、お姉ちゃんでできてるんだ」


咲「……熱い人が好き。私の耐熱性の肉体を焼き切って、私の中の情熱まで燃やしてくれそうな気がするから」


和♂「咲さん……」

咲「……はは、なんか恥ずかしいね、こういうのって」

咲「和ちゃんはどう? どういう人が好きとか」

和♂「私ですか。そうですね……」

116 :いつもの日常 ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 19:47:02.10 ID:IF7t6qkEO

和♂「……」

和♂「…こうして隣にいて、傍に居られるだけで幸せだと思える…ような」

咲「あぁー…、なるほど。なんかいいねぇ、なんていうの……何気ない幸せ? みたいな」

和♂「はい。なので私の好みのタイプは……咲さん、です」

咲「もうっ、和ちゃんってば〜。あんまりそういう事言ってると、本気にしちゃうよ?」

和♂「……はい」

咲「もう〜、冗談だって。でも、言いたいことは凄くよく分かるんだけど……なんだか抽象的過ぎて。あはは……どんな相手か全然分かんないや」

和♂「……ふふ、すみませんっ」

嬉しそうな謝罪。
木漏れ日に煌めく幸福感溢れる微笑。
私も、自然と笑みが零れる。

優しい眼差しが静かに私を見つめながら、そっと、するりと身体を寄せて来た。


和♂「――きです、……咲さん……」

咲「え……?」

隣から小さく漏らすような声が聞こえてきたかと思うと、和ちゃんの頭がそっと、私の肩にもたれ掛かってくる。


117 :いつもの日常 ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 19:48:03.32 ID:IF7t6qkEO

和♂「……咲さんの表現を借りるなら、私の世界の一部は咲さんで出来ています…」

和♂(咲さんの世界の、ほんの片隅にでも、私の居場所はあるんでしょうか……)


和♂「私はただ、咲さんが傍に居てくれればそれで幸せですから……。ですからどうか、このままでいさせてください」

咲「……も、もうっ! 和ちゃん、からかわないでってば…!」

和♂「うふふっ、別にからかってなんて。至って真面目ですよ?」

咲「真面目に言ってる人がそんなにやけてる訳ないでしょー!?」

和♂「あはははっ」

口元を手で押さえながらも、声を上げて笑う和ちゃんの姿は、とても新鮮だった。

少なくとも、私の傍で幸せ――かは判らないけど、楽しそうにしてくれる様子に、私の胸も自然と高鳴る。

118 :いつもの日常 [sage saga]:2016/08/09(火) 20:06:28.23 ID:IF7t6qkEO


夏のインターハイ。高一の夏。

お姉ちゃんが私の隣に戻ってきてくれる未来は、もう来ないのかもしれない。

結局、麻雀を通して伝えたかったことが、何か一つでも伝わったのかどうかすら判らないまま。

けれどそれに何となく納得して、現に受けとめられている自分がいる。


夏を越えるまでは、私の進むべき道を照らす道標だったお姉ちゃん。

じゃあ、今の私にとってのお姉ちゃんは、いったいどういう存在なのだろうか。

恋い焦がれる人。

お姉ちゃんに会いたい… 声が聞きたい…


―――でも。

何故だろう――いま、私は。

あんなに大事だったお姉ちゃんよりも……和ちゃんの隣に居たい。そう思ってる。

119 :いつもの日常 ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 20:08:39.86 ID:IF7t6qkEO

咲「……わ、わたしもね? 和ちゃんと、ずっと一緒に居たいなって……思ってるよ?」

和♂「――えっ。咲さん……?」


咲「ずっと、一緒に居られるよね……? だってわたし達、ずっと友達だもんね」

和♂「っ……」

私達の上で生い茂る木葉の影が、太陽の位置の変化で僅かに角度がずれる。

逸れた影が和ちゃんの顔に真っ直ぐ伸びて掛かり、少し暗くなる。


和♂「――はい…勿論ですよ。わたし達はずっと、友達ですから」ニコッ

和♂(そんな目で見ないでください……勘違いしてしまいそうになります)

満面の笑みで、和ちゃんが応えてくれた。

でも、その笑みが少し陰って見えたのは、きっと、ちょうど顔が日陰に隠れていたせい……

120 :いつもの日常 ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 20:11:14.58 ID:IF7t6qkEO

帰り道。


咲「ねぇねぇ、いつにする?」

和♂「…? はい、何がでしょうか?」

咲「だから、和ちゃんちで遊ぶって話でしょ?」

一緒に帰り道を歩いて早15分。

さっきから同じ話題なのに、注意散漫な和ちゃんが私の話を聞き返すのは、これでもう5度目。


咲「ねぇ、どうしたの?なんか調子悪い?」

和♂「い、いえ…そういうわけでは」


咲「……もしかして、迷惑だったかな…?」

和♂「え?」

咲「なんか、ごめんね…私ばかりはしゃいじゃって。和ちゃん、あんまりノリ気じゃないなら、別に無理しなくても…」

和♂「い、いえそんなっ、とんでもないです!凄く楽しみにしてるんです!」

咲「……だったら、どうしてさっきから……」

何コレ…… 何イライラしてんの 私……? 
ダメ。落ち着いて、落ち着いて……

和♂「そ、それは…」

咲「大丈夫、私別に怒ってないから。だから教えて? 私の声も聞こえないくらい夢中になって、他に何を考えてるの?」

和♂「いや、明らかに怒ってますよね……」

咲「別に怒ってないもん」ムスー

隣で会話してても一切意識が私に向かないくらい夢中になられるのは、悔しい。

重苦しい空気の中、静かな無風の音だけが、辺りに響き渡る。

121 :いつもの日常 ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 20:12:47.38 ID:IF7t6qkEO

和♂「あの……すみません、気を遣わせてしまって」

咲「う、ううん、こっちこそごめんっ。そんなに気にしてたって程でもなかったのに、…ごめん」

音のなかった世界に、私の声と、和ちゃんの声が低く響く。

和♂「いいえ。でも、私の態度にも問題があったのは本当ですし、咲さんは悪くありませんよ」

咲「……うん」

こんなふうに傍にいてくれて、庇われて、構ってもらって。
少しでも周りが離れて行くと、我儘に駄々をこねて……私って、ダメだなぁ。


和♂「その、遊ぶ計画を立てるよりも、今は咲さんのことを見ていたかったんです…」

咲「……へ?」

――頭の中が、真っ白になった。

和♂「だって、咲さん……綺麗で、可愛くて」

咲「――」

顔がかぁっと熱くなるのを感じた。


咲「な、ななな何言ってるの!? もう、和ちゃんの馬鹿!」

和♂「す、すみません…」

恥ずかしそうに頬を掻く和ちゃんは、月夜に照らされて、なんだか凄く神秘的。

存在そのものが特別なのだと、世界が肯定しているみたいに。

咲(私って、ほんと現金……)

122 :いつもの日常 ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 20:14:26.46 ID:IF7t6qkEO

咲「……あのさ?それで、お洋服着せ合いっこするの、今週の土曜日でもいいかな?」

和♂「ええ、構いませんよ」

咲「もぅ〜!さっきまで何度も聞き返してきたのに、なんで今度はそんなにあっさりなの〜!? ちゃんと考えてる?」

和♂「か、考えてますけど…?」

咲「なにその顔〜、なんかてきとーみたいで嫌!」

和♂「えっ、待ってください、咲さん…!そんな、てきとーな顔ってどんな顔ですか!てきとーに返事なんてしてませんよ!」


ごめんなさい、和ちゃん。

今は恥ずかしくて、和ちゃんに理不尽なこと言っちゃいます。

でも、本気じゃないから……じゃれて、構って貰えるのが嬉しくて。

二人で、ずっと仲良くしたい心の表れです。

ずっと、友達でいようね――



和♂「あ、流れ星ですよ!」

咲「えっ、どこ? どこ!?」

和♂「あそこです!す―って!」

咲「ええ〜。もう、見えないよ〜…和ちゃんのいじわる!」

和♂「何なんですか、さっきからっ!理不尽すぎます。咲さん、流石の私も怒りますよっ?」



それにしても、星空に溶けていった一筋の流れ星が

和ちゃんの元に現れたのは……

私には見えなかったのは、偶然なのだろうか――

123 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/09(火) 21:27:32.20 ID:9eP8z6p+O
ああ、二人とも可愛い……
多分周りははよくっつけと思ってるんだろうな
124 : ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/09(火) 22:12:12.54 ID:IF7t6qkEO
>>123 レスありがとうございます

また明日投稿します
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/09(火) 22:55:24.42 ID:BowjK/v2o
126 : ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/10(水) 23:44:05.15 ID:lLiR9XQxO
こんばんは。

再開します。

※今回からエロが入っていきます。なので、苦手な方はお気をつけください。
127 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [saga]:2016/08/10(水) 23:47:07.00 ID:lLiR9XQxO



週末。


和ちゃんのお父さんが休日だから家で遊ぶことはできないとのことで、急遽私の家で遊ぶことになった。


うちは、お父さんが夜まで仕事らしいので、目一杯遊べるし。

和ちゃんのお父さんが車で送ってくれるそうで、『服も持って行けます』というメールをくれたのが今朝のこと。




ピンポーン

咲「はーい」


ガチャ

咲「いらっしゃい、和ちゃん!」

和♂「はい、お邪魔します!」

汗を拭きながら爽やかに笑った。

咲「さ、入って?」

大きな黒いスーツケースを抱えながら、玄関に入ってくる。

128 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/10(水) 23:51:02.19 ID:lLiR9XQxO

咲「これ、抱えて来たの?」

和♂「はい……咲さんのお部屋の中まで持っていきますので、車輪を汚すのが申し訳なくって…」

咲「もぅ〜、雑巾くらい貸すのにー。でも、優しいね……ありがとう、和ちゃん」

和♂「いえ、気にしないでください」

和ちゃんと会話をしていると、少し遅れて、中年の男性がドアから入ってきた。


恵「どうも、お初にお目に掛かります。和の父の、原村恵と申します」

恭しい挨拶。厳格な雰囲気。礼儀正しい作法。 言われるまでもなく、和ちゃんのお父さんだと分かった。

咲「こんにちは。宮永咲です」ペコリン

恵「はい、存じております。うちの和がたまに話題に」

和♂「あの、お父さん、あんまり身内の恥は…」

顔を紅くした和ちゃんが、お父さんの袖を掴む。
普段見えない、子どもらしい和ちゃんの様子に、思わず頬が緩んだ。


咲「なんで? 私は嬉しいよ?」

和♂「もう…では私、スーツケースを運んじゃいますねっ!」プイッ

恥ずかしそうにそっぽを向いた和ちゃんは、力こぶを作りながら荷物を持ち上げて中に入っていった。

129 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/10(水) 23:53:06.20 ID:lLiR9XQxO

恵「うちの娘と仲良くして頂いて、ありがとうございます…」

咲「いえいえそんな。私たち友達ですし…まぁ、高校に入ってからですけどね」

恵「良き友に恵まれて、和も幸せです。こちら、つまらないものですが…」

懐から、何やら上質そうな包装紙の箱を取り出し、手渡された。


咲「ええっ!? そんな、受け取れませんよ!」

恵「いえ、地方に出張した際に持ち帰ったお菓子ですから。どうぞご家族で召し上がってください」

咲「そ、そうですか…? でも、私、和ちゃんが大好きだから一緒にいるんです。ですから…今後はこういった事はなしにしましょう?」

恵「はい…ありがとうございます。今後とも、和を宜しくお願いします」

咲「いえいえこちらこそ、いつも和ちゃんに迷惑おかけしまして」


お互いに――私は相手に釣られてだけど、深々と頭を下げあって。

和ちゃんのお父さんは、振り向き際にもう一度頭を下げてから、玄関から出ていった。

130 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/10(水) 23:55:52.49 ID:lLiR9XQxO

二階に上がって、自室に戻る。

すると、座るでもなく、かといって何かしている訳でもなく。和ちゃんは手持無沙汰にドアのすぐ近くに立っていた。

咲「どうしたの、和ちゃん?」

和♂「いえ、その、どこに座っていいものかと…」

咲「えっ、そんなに散らかってる!?」

和♂「そうではなくて、……ここが咲さんの部屋なんだと思ったら、感慨深くて…」

咲「もう〜、和ちゃん訳わかんないよ〜」

思わず笑ってしまった私に、「ですよね…」と和ちゃんも小さく笑っていた。


咲「飲み物持ってこ……あ、いっか。服着るのに、濡れたら嫌だもんね」

私の言葉に頷いた和ちゃんは、丁寧にスーツケースを開いた。

中にはロリィタファッションの服が、丁寧に畳まれた状態で数着入っている。


和♂「すみません、うちならもっと沢山あるのですが。あいにく父が休日だったようで」

咲「ううん、全然! あーでも私、こういう服って、染谷先輩の喫茶店で着たメイド服以来だな〜」

和♂「あぁ……そういえば、そんなこともありましたね」フフッ

咲「ねっ。あ、この真っ白の可愛い〜!」パァァ

純白の、フリルのディテールが印象的な、ドレスみたいな服が目に留まった。

和♂「はい、可愛いですよね。それ、私のお気に入りだったんです」ニコッ

咲「着てみたいなぁ〜、いいかな?」

和♂「ええ、勿論です。お手伝いしましょうか?」

咲「うん、じゃあお願い」

131 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/10(水) 23:58:23.06 ID:lLiR9XQxO

わざわざ向かい合って着替えることもないので、和ちゃんから胸を隠すように反対側を向いて着替え始めた。

とりあえず、着ていたトレーナーを脱ぐ。

そろそろ十月下旬に差し掛かっているせいか、外気にさらされて肌がひんやりとした。


和♂「……ごくっ」

続いてスカートのファスナーを下ろすと、僅かに息を呑む音がした。

真後ろに視線を移すと、和ちゃんがお腹の辺りに手を添えながら、真っ赤になって俯いている。


咲(……緊張してるのかな?)

咲「もう、なに俯いてるの〜?手伝ってくれるんじゃなかったの?」

和♂「えっ…あ、はい。そう、でしたね…」モジモジ

落ち着かない様子で、ゆっくりと近寄ってくる。


和♂「…手伝うとは言っても、最後に背中のファスナーを上げるくらいですけどね」

和ちゃんは、苦笑した。

咲(そういえば、着替えに手伝いが必要なのって、ウェデングドレスや着物くらいじゃない?)

下着姿の上からドレスを模した純白の服を脚から通し、袖に腕を通す。

ファスナーが髪を巻き込まないように、うなじを見せるみたいに襟足を纏めて持ち上げると、また息を呑む音がした。


ジィィィィ―。


背中が開いた感触が、ファスナーを上げる音と共に消えていく。

咲「――ん、ありがと」ニコニコ

和♂「いえ」

短く言葉を交えてから、今度は和ちゃんの着替えだ。

132 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/10(水) 23:59:48.27 ID:lLiR9XQxO

咲「手伝おっか?」

和♂「――っ…では、お願い、できますか?」

咲「うん!」


和ちゃんも同じように、私に背を向けて服を脱ぎ始める。

Vネックカーディガンを脱いで、ズボンを下ろしてから、ゴスロリの服に足先を入れる。

すっと持ち上げてから、慣れたように袖に腕を通した。


その状態で、私に呼び掛けて来て。

和♂「咲さん、ファスナーをお願いします」

咲「うん」

髪を巻き込まないように僅かに頭を前に倒していて、普段は学ランのカラーで見えなかったうなじが見える。

きゅっと唇を結んで俯く顔は、凄くキュートだった。

133 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 00:04:11.78 ID:JeB2AmVTO

咲「あ、そうだ!お化粧もしてみない?」

和♂「えっ、そんなもの持ってるんですか?」

咲「もうっ、私だって女子だもん。それくらい持ってるよ!」

和♂「あ、いや、別に馬鹿にしたわけでは…」

咲「馬鹿にしたとまでは言ってないでしょ! もう怒った、私だってお化粧くらい出来るんだから。和ちゃんにやってあげる」

和♂「えっ…」


普段は使わないタンスの上から二番目の引き出し。

そこから、高校入学時に若気の至りで買って、数えるほどしか使ってない化粧品を出してみる。

とは言っても、マスカラとかファンデとか、唇にグロスを塗るくらいだけど……


咲「はい。和ちゃん、座って」

勉強机の椅子をポンポンと叩くと、不安気に首を傾げてくる。

和♂「はい…あ、あの、本当に大丈夫なんですか?」

咲「どういう意味かな…」

今度ばかりは、流石にちょっとドスがきいていたのかもしれない。

和ちゃんはしゅんとなって、「何でもないです…」と呟いてから、静かに私の前に置かれた椅子に着席した。

134 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 00:07:18.89 ID:JeB2AmVTO

座った和ちゃんと顔を合わせるため、正面に移動してから中腰になる。

肌質なんかを確認しようと、顔を近づける。 すると、なんだか所在なさげに飛び交う和ちゃんの視線。

咲「和ちゃん?」

和♂「……っ、あ、はい…」

呼び掛けると、ようやく視線がかみ合った。
唇は少しだけ開いていて。瞳は少しだけ濡れている。

和ちゃんは緊張した面持ちでこくりと頷いて、ピンクのショートヘアがさらりと揺れた。


咲「じゃあまず日焼け止め落としちゃうね、目瞑っててー」

コットンに化粧水を湿らせて、和ちゃんの肌の上に軽く跳ねるように押し当てていく。

咲「この化粧水おすすめなんだー」

和♂「…いい匂いですね…」

咲「でしょー?」

「咲さんの匂い…」恥ずかしい言葉と共に、和ちゃんは目を閉じた。

和ちゃんの表情が、段々と解けて、柔らかくなってくる。

135 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 00:09:19.21 ID:JeB2AmVTO

咲「目開けていいよー。うーん、和ちゃん肌綺麗だからファンデ要らないかなぁ…」

静かに目を開けた和ちゃんと、目が合った。


咲「…?」

和♂「ありがとうございます…咲さん」ニコッ

咲「んーん、私がしたくてしてるんだもん。絶対すっぴんより可愛くしてみせるからっ」グッ

私の当り前過ぎる宣言に、表情だけ笑った和ちゃん。

和♂「はい…お願いしますね」

咲「うんっ、あ、マスカラ軽めにしとくね。ちょっと目を伏せてね〜」

私の言葉に合わせて、また、静かに目が伏せられる。

咲「わっ、和ちゃん、やっぱりまつ毛長っ。すご〜い!」


感想をちょこちょこ口に出しながら作業していると、ちょっとだけ、目尻に涙が浮かんだような気がした。

咲「…? 和ちゃん、ごめんね、目に入っちゃった?」アセアセ

私の言葉に、和ちゃんは唇を三日月に変えて返事をしてくる。

咲「そっか、良かった!もうちょっと待ってね?」


136 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 00:13:10.17 ID:JeB2AmVTO

物静かな和ちゃんは、まるで本当のお人形みたいで、化粧をするたびにどんどん可愛くなっていく。

咲「――最後に、透明グロスを重ねて。完成〜♪ どう? どうかなっ?」

今回はわりと自信作。
いや、素材のおかげと言われるとそこまでなんだけど、それでも結構いい感じじゃないかな?


手鏡を手渡すと、ほぅ、と和ちゃんの息を吐く音が聞こえてきた。

和♂「……なんだか、目が大きく見えます…」ポー

咲「うんっ、アイラインは入れてないんだけど、和ちゃん元々目はおっきいから」

鏡の中の自分を見つめながら、「ありがとう…」と和ちゃんは小さく呟いた。


咲(和ちゃん、可愛いなぁ……)ウフフ

咲(これだけで十分私なんかより可愛いんだけど、もっと可愛くなる方法とか…)


咲「あ、そうだ。和ちゃん、好きな人とかっている?」

和♂「――えっ、す…好きな人…ですか?」

咲「うん。好きな人のことを考えて浮かべる笑顔は、何より素敵な顔なんだって!」

あっけにとられた顔の和ちゃん。
次第に、小さく俯いて…

和♂「――はい。いま…す、けど…」

咲「えっ、いるのぉー!?」

驚愕の事実に、テンションがうなぎ登りな私。

137 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 00:17:21.53 ID:JeB2AmVTO

咲「じゃあさじゃあさっ、その人のこと考えながら笑ってみてよ。大丈夫、和ちゃん絶対可愛いもん!」

和♂「そ、そうでしょうか…」

咲「うんっ。ほら、私の顔を、好きな人だと思って。ねっ」

俯いた顔を上げて、和ちゃんが私の顔を見た。

和♂「っ…」

一度、思案顔で小さく俯く。

その、どこか儚げな表情に、胸の奥のどこかがドキリと痛んだ。


和ちゃんは、意を決したように口元を結んでから、私に向かって微笑み掛けてくる。

和♂「……っ」ニコッ

そうして、歪むように表情に映し出された笑顔は、いつもの笑顔で――


咲「もう…和ちゃん、それじゃいつもと変わんないよ〜」

和♂「っ〜〜」

和ちゃんの口が、息が詰まるように唇を引き結ぶ。
その途端、何かが決壊したように、目尻からは涙が溢れて、こぼれた。


咲「えっ、あ……。どうしたの、和ちゃん?」

和♂「うっ、うっ、ごめんなさい、咲さん……友達って言ってくれたのに、笑顔を変えられなくて、ごめんなさい…っ」

咲「ううんっ、そんな! 全然いいよ! 大丈夫だから、ね? 落ち着いて…」

小刻みに震える背中にそっと手を添えると、改めて身体がかっちりしていることに気付かされる。


でも、口元を押さえる左手。 そして俯いた顔をさらに庇うように、右手の甲で涙を拭う仕草は、なんとなく女の子だなって思う。

138 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 00:22:16.96 ID:JeB2AmVTO

咲「でも、和ちゃんに好かれる人ってどんな人なんだろう。きっと、凄く素敵な人なんだろうなぁ」

和♂「……ええ。世界で一番、素敵なひとです…」

きっと、素敵な人のはずだ。
だれの目から見ても、和ちゃんに相応しい、素晴らしい男の人。

あんなに男っ気の無かったはずの和ちゃんまで、迷いなく保証してしまうような。


咲「その人は幸せ者だねぇ。そんなに和ちゃんに想って貰えるんだもん」クスッ

和♂「そうでしょうか…私にとっては、咲さんに想って貰える人の方が、よほど幸せ者だと思いますよ」

涙に濡れた瞳が、真っ直ぐ、控えめに私を見つめてくる。


咲「えへへ…そうかな?」

和♂「はい…。少なくとも私は、その人が羨ましいです…嫉妬してしまいます、とても」

咲「ありがとっ」ニコッ

和♂「いえ…」

私は、照れを誤魔化すように満面の笑みを浮かべる。

和ちゃんは、涙ながらにはにかんだ。

139 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 00:25:05.98 ID:JeB2AmVTO

咲「和ちゃんは…その人に、告白〜とか、考えたことないの?」

和♂「――…ええ、はい、そうですね。ありえませんよ」

咲「どうして?」

何気ない質問。
人生初と言ってもいい本格派恋バナに、私は随分と浮かれているみたい。


和ちゃんが再度、今度は視線を横にずらして、私から視線を逸らした。

和♂「だって…それは、そんな。…想いを伝えても、きっと困らせてしまいますし」

和♂「それに、上手くなんていくはず、ありませんから…」

引きつった顔に浮かぶ、穏やかな目元。

あの瞳の奥は今、告白したときのことを綿密にシミュレーションしているのだろうか。

そしてその時の眼差しが、これなんだ。

咲(――ああ、なんて……優しい視線)ズキッ


咲「…和ちゃんは、本当にその人のことが好きなんだね…。相手のことばかり心配してる」

和♂「そうですね……大切なひとですから……。これ以上迷惑は掛けたくありません」

和ちゃんの気持ち、なんとなく判る気がする。

自分の行動で相手が不幸になるくらいなら、身を引きたいってことなんだろう。

自分の考え得る選択肢の中で、自分にできる最大限の幸福を相手にあげたいって気持ち。


咲(お姉ちゃんに相手にもされなかった夏、その瞬間、自分でも驚くほど簡単に引き下がっていた)

相手を困らせるかも知れないこと、私もきっとできない。

140 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 00:29:37.18 ID:JeB2AmVTO

咲「…そっか」

咲「……でも。それでもね? 私は、和ちゃんなら大丈夫だと思うんだ」

沈黙。

咲「だって和ちゃん、真面目で真っ直ぐで、格好よくて、頭も良くて。麻雀だって上手で……」

咲「あと、あ、でもね。一番の魅力はね……。私は、いつも周りをよく見てくれてる所、だと思うんだよね」アハハ


和♂「周りを……?」

咲「うん。…だって、私が辛くてピンチの時、いつだって和ちゃんは全力で走って来てくれて、勇気をくれたじゃない?」

和♂「そ、それは…」

胸に灯る温かい気持ち。
その奥に感じた、じわりと滲む痛みを無視して、再度……ダメ押し。


咲「私は、和ちゃんの好きなその人がどんな人か知らないよ……」

咲「でも、大丈夫だよ。和ちゃんの好きな人も、きっと和ちゃんのこと好きになってくれるよ」

咲「だって、こんなに素敵な人っ……ほかに、いないもん……」グスッ

和♂「咲、さん……?」

目の前の彼女が驚いたように、少しだけ目を見開く。


咲(やだ… 私、なに泣いて……)ゴシゴシッ


141 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 00:34:28.58 ID:JeB2AmVTO

一緒に居ると心が落ち着くし、何をしていても楽しく感じる。

咲(あ……そっか。私、和ちゃんのことが大好きだったんだ)

咲(傍にいて欲しい時に居てくれて……、いつも私を励ましてくれる)

咲(私の好み、そのまんまなんだ……)


咲「私にとって……和ちゃんは、王子様みたいな人なの」

咲「ほんとに、和ちゃんが本当にお―――」

咲(――男の人だったら、和ちゃんみたいな人を好きになってたのかな……)

咲(……そう言おうとして、直前で止めた)

咲(――だって、和ちゃんは、女の子なんだから……)

142 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 00:35:42.79 ID:JeB2AmVTO

咲「……わ、私が男の人だったら、絶対に和ちゃんに恋してるはずだから…」

和♂「っ……」

和ちゃんが俯く。

咲「だから、きっと大丈夫だよ……。私、応援、してる……もん」ギュッ

和ちゃんの恋を応援している。
これはとても嬉しい気持ちのはずなのに、喉が渇いて、息が苦しい。

自分の部屋なのに、とても居心地が悪い。


咲(胸が痛い……。ここに居たくない……)ズキズキ


唐突に沸き起こる鬱な気分を払拭すべく、無理やり笑顔を作り、意識して明るい声を出す。


咲「なっ、なーんて……こんな事、私に言われても――っ」








………ドサッ

突如、力強く肩を掴まれたか思うと、一瞬にして世界が反転した。
143 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 00:37:28.42 ID:JeB2AmVTO



――え?


和♂「……それでも、男になったのは私なんですよ……咲さん」

和♂「私じゃ、ダメですか? 男になった私は…そんなにダメですか……?」

両手首を抑えられ、背中には床に敷かれた温かい電気カーペット。

そして目の前には……


咲「え…の、和ちゃん…?」

彼女を褒めた言葉は期待した効果を発揮してくれず、むしろ逆に傷ついた表情をさせてしまっている。

和♂「――それと、ごめんなさい……誰にでもじゃないんです」

咲「え…?」

和♂「他の誰が困ってようと……そんなのどうでもいいんです……」


和♂「……咲さんだから、ほっとけないんです」ジィッ


咲「あ……っ」ジュンッ

和ちゃんの真っ直ぐな言葉に、胸がキュッと締め付けられる。

下腹部が熱くて、ウズウズしてくる。

腕に掛かる力強さに、顔が熱くて、気持ちがぜんぜん落ち着かない。

144 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 00:39:20.28 ID:JeB2AmVTO

和♂「……っ。ほんと……咲さんが言ってくれた長所もこれじゃあ、咲さんに好かれるはずないですよね…」ポロポロ


和ちゃんの顔は丁度逆光で、あまりよく見えないけれど。

倒れ込んでくる顔の距離が、そのまま徐々に縮まっていって…

咲「え、えっ、の、まっ――」

ついに、静かに重ねられた唇の、濡れた柔らかい感触が、私の言葉を根元から遮った。


和♂「んっ…」

咲「ん――…」

いつの間にか左頬に添えられた指先の感触。至近距離から、初めて見る和ちゃんの表情。

ふと、唇が離れる。

唇に押し当てるだけの音もないキスが、最後まで音もなく

ただ、数滴の雫だけを私の頬に溢して、終わった。


頬を撫でる和ちゃんの指先が、私の顔を撫でながらゆっくり下りてきた。

私の唇の表面を、薄く擦る。
拭い去るようにも、刷り込んでるようにも思える…それくらいの力加減。

145 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 00:42:44.28 ID:JeB2AmVTO

和♂「私、ずっと咲さんのことが好きだったんです」ポツリ

咲「え……」

遠い目。まるで罪を告白するような雰囲気。


和♂「そんなに、意外ですかね…」

和♂「今だって、咲さんに欲情して、私……」

和ちゃんの手に導かれ、私の手が彼女のズボンの股間部を軽く撫でる。

すると――ズボン越しにムクムクと隆起して、その存在を、形を浮かび上がらせて主張する和ちゃんの、お、おち、おちちっ……んっ///


咲「……っ」ドキドキ

咲「だ、ダメだよ……和ちゃん女の子なんだから、そんな」ドキドキ

和♂「私は、女性だった頃から、あなたのことが好きでした」

和♂「そして今の私は――、僕は、男ですっ」

咲「そんなわけ……」

咲(――ないじゃん……。何故か最後まで、言葉を紬ぐことができなかった)

自分で目の前の彼女の言葉を否定しながら、心がずきずきと抉られていく。


咲(でも、和ちゃんが私を好きになんて、そんなわけない。だって私は……)

146 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 00:45:46.78 ID:JeB2AmVTO

咲「私……でも、私、和ちゃんが知ってるだけが私じゃないよ?」

咲「今までだって、頑張って迷惑かけないように、格好いいとこ見せようって……」

咲「和ちゃんは、私のことを好きって言ってくれてるけど。私には、そんな和ちゃんにも言ってないこと……あるの」

咲「だから、本当の私を知ったら……きっと幻滅される自信ある……」

和♂「……」

私の言葉に、和ちゃんは押し黙ってしまう。


和♂「……だったら、言ってみてください」

咲「え」

和♂「大丈夫ですよ……。たとえ、どんなに咲さんが最低で無能の根性無しでも、私が咲さんを肯定しますから」ニコッ

咲「和ちゃん……」

咲(でも、嬉しいけど、さすがにそこまでじゃないよ……)フフッ

そんな言葉に解かされ、私はポツリと自分の弱さ、コンプレックスを紐解く。

147 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 00:50:29.65 ID:JeB2AmVTO

咲「その、私ね……」モジモジ

和♂「あ、ちょっと待ってください」

咲「え? あ、うん…」

和♂「すー……はー……、すー……はー……」

和ちゃんは私に跨がったまま、ゆっくり深呼吸をしてから、再度私に向き合う。


和♂「……はい。聞かせてください、私の知らない、本当の咲さんのことを」

咲「うん……」ドキドキ

今度は私が深呼吸をして、泣きそうな気持ちを落ち着かせる。


咲「その……前から、自分に対して色々思うところがあって……」

咲「それで、そんなわけないのに……それでも最近ちょっと思うの……」

咲「私ってもしかして、ポンコツなのかな……って」

和♂「え? あ、はい……」




和♂「…………えっ?」

148 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 00:54:48.40 ID:JeB2AmVTO

咲「実は私、和ちゃんは知らないだろうけど、その……」

咲「と、とっても、厄介な迷子癖があるの…っ!」

和♂「…………」

和♂「……?」キョトン

和♂「……はぁ……そうですか」

案の定、和ちゃんは黙ってしまう。


咲「そうなの……昔から、歩いてるといつも全然知らない所にいて。今でもそれが、全然直らなくて……」

咲「どう? 私のこと、嫌いになっちゃった?」

和♂「いえ、別に……」

咲「えっ、あれ……そう? あ、じゃあえっと、他には……」


咲「私、けっこう抜けてるところがあって……」

咲「おトイレ行きたいのに……たまに忘れて、危ない時があるの」

咲「県大会決勝では、そのせいで……もう聞いてよっ、本当に漏れそうで大変だったんだからっ!」

和♂「ああ、あの時ですか……」

咲「彼女がデート中にお漏らしなんて嫌でしょ? ヘ、ヘンタイみたいじゃん……」

和♂「そんな、むしろ……。ぁ、いえ、何でもありません」

149 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 00:59:49.56 ID:JeB2AmVTO

咲「それに私、独占欲っていうのかな…? 我儘なの……」

和♂「我儘。……そうですか?」

咲「この間の……和ちゃんと遊ぶ約束してるのに、私に全然構ってくれなかった時ね…?」

咲「あの時私……『怒ってない』って言い張ってたけど、本当は怒ってて」

咲「私のこと見てくれなくて……ヤキモチ、妬いてたの…」

和♂「っ……ふ、ふーん…?」

咲「束縛強そうっていうか、なんかアレじゃない…? 面倒臭くない?」

和♂「そうですか?」

咲「そうだよ! もうっ、なんなの!? ちゃんと私の話聞いてるのっ!?」

和♂「いや、だから聞いてますって」オロオロ


咲「それに私……凄く寂しがり屋で、けっこう一つのことに執着しちゃうところがあるっていうか」

咲「最近振り返ってみて、なんか私ってちょっと重いかなー……なんて」

和♂「は、はあ……」

150 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:04:56.02 ID:JeB2AmVTO


咲「……ね?」


和♂「え?」

咲「だから……それで、どう思うかって訊いてるんだけど…」

和♂「……まあ、概ねその通りなんじゃないですか?」

咲「全肯定されちゃった……っ!?」


咲(『どんなにダメな咲さんでも肯定します』って言ってくれた「肯定」って、まさかその肯定だったの!?)ガーン

咲(なによそれ……、本当に和ちゃん、私のこと好きなの?)

咲(ちょっとくらい、否定してくれたっていいじゃない……)プクー



和♂「……なに怒ってるんですか…」

咲「……別に、怒ってないもん」ムスー

和♂「も、もう……」ハァ

151 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:07:44.41 ID:JeB2AmVTO

和♂「というか、なにを今更……」

和♂「咲さんに迷子癖があるのは、前から知ってます。この私が、何回あなたを探しに会場内を走り回ったと?」

咲「うぅ…っ、す、すみません……」ショボン


和♂「それから、トイレが近いことも知っています。あの時咲さんをお手洗いへ連れて行ったのは、私ですので」

咲「あ、うん……」ズーン


和♂「執念深いことも知ってます。一つのことに賢明に、一生懸命に努力を続ける熱い姿を、とても好ましく思っていました」

咲「あ、えっと、ありがと……?」テレテレ


和♂「我儘なところがあるのも、わかっています……。それだけ一つのことを大切に思えるあなたを、尊敬していますから」


和♂「そして、そんな手の掛かるあなただからこそ、私は咲さんが好きなんです……」

咲「あ……」キュン


和ちゃんの一言に一喜一憂してる。

苛ついたり、ショボくれたり、喜んだり。感情がぐるぐる回って忙しくて、それがとても幸せ。

152 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:09:49.95 ID:JeB2AmVTO

和♂「さあ……言い返してみてください」

和♂「たとえ咲さんであろうとも、私の気持ちを否定することは許しません。全て返り討ちにしてみせます」

和♂「私はあなたが好きです、あなたと共に戦うと誓ったあの瞬間から、私は…」

和♂「咲さんのことが、好きなんです」

咲「うぅ…///」

何度聞かされても、心の奥の無防備にされた場所に、その言葉は痛みと喜びをもって突き刺さる。


そっと、もう一度肩に触れられ、頭上に影が落ちた瞬間、もう手遅れなんだという予感に身がすくんだ。

和♂「……咲さん――」

和♂「好きなんです、本当に――」

 ジュワッ

咲「あぁ……っ」ビクンッ

身体の奥の方から、熱いものが下りてくる。


和♂「んっ……は……」チュウ

咲「っ……あ……んっ」ビクッ

なんの技巧もなく、舌を絡めるでもないキスに、カラダが火照って声が漏れる。

先ほどのただ押し付けるだけのキスよりも、強く。

夢中で求めてくる唇は、ほとんどぶつけるような勢いで、何度も何度も重ねられた。 そうすることで、私のこだわる頑なさを打ち壊したいのだというように。

153 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:13:22.82 ID:JeB2AmVTO

咲(ダメ、ダメ……これ、好きぃ…)グイッ

弱々しい手つきで、硬い胸板を押し返す。柔らかくて温かな素肌が布越しに、手の平を求めるように受け入れた。

和ちゃんの胸は平らで、堅かった。その硬さに体が火照る。当たり前ではあるんだけど、それでもやっぱりーー

それに気づいた和ちゃんが顔を放したと思った瞬間、体重をかけて押し倒された。

髪が、床の上にざっと広がる。


咲「っ……待って、和ちゃん……」

和♂「嫌です。待ちません」

和♂「好きです、咲さん……」

和♂「あなたのことが……誰よりも好きなんです」

咲「っ……!」

和♂「んっ……」


苦し気に囁いた唇が、今度は喉元に落とされる。

首筋の薄い皮膚を舐めとられた。

咲「ぁあっ……」ピクッ

鎖骨に歯が当たって、肩がびくんと震えた。

154 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:16:05.26 ID:JeB2AmVTO

いつの間にか背中に回された左手に、背中のファスナーを開かれながらも、快感に邪魔され抵抗できない。

咲(和ちゃん…っ、和ちゃん……っ)

桜のように可憐な美貌の内に、こんなにも激しい熱情が秘められていたのかと、圧倒されて怖くなる。

咲「お願い、和ちゃん……お願いだから」グイッ

のしかかる彼女を撥ねのけようともがいても、なんの抵抗にもならなかった。

細くて華奢に見えた体は予想外に重く、籠ったような熱を帯びて、生身の男であることをいやでも意識させられてしまう。


和♂「……逃げないで、お願いですから」スッ

私の両手首を片手でまとめられ、いとも簡単に頭上で縫いとめられてしまった。

和♂「どうしても……諦められません」

和♂「こんなふうに思ったのは、後にも先にも、あなただけなんです……」

狂おしい瞳に射抜かれて、胸の奥がずくんと疼いた。

一人からこれほどまでに、全身全霊に恋われたことなんて、ない。

155 :初めてのキス、そして…… ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:17:51.63 ID:JeB2AmVTO

和♂「女性同士だから、なんて理由でフラれたくありません。気持ちを否定されたくありません」

和♂「私をよく見てください。聞いてください。……何度でも言います」

和♂「あなたが好きです」


和♂「そして私は……男ですよ、咲さん」



本心では、和ちゃんに想うまま抱いてほしい。とは思う。

ただ一人の女として、彼女の思いに応えたい――でもそれは、女であった和ちゃんを否定してしまうことにはならない?


咲(でも、体が火照って……。女子だった時から好きって言ってくれたし……)

咲(私も和ちゃんのことが大好きで……)

咲(それで、和ちゃんは、和ちゃんなんだから……)

咲「…………」

そして私は、なし崩しの泥沼に沈み込んでいく。

156 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:25:24.84 ID:JeB2AmVTO

心を決め、目の前で必死な表情の和ちゃんの首に、ゆっくり腕を回した。


和♂「……っ! 咲さん……」

咲「あ……んぅ……ふっ……」

和♂「……は……あむ…」

和ちゃんはまたも唇に吸い付き、そうしながら、片手だけでロリータ服を脱がせていく。

唇を味わいながら、合間合間に見える上気した目元と、切迫した眼差しに、鳩尾が細い糸で締め付けられるような心地になる。


バサッ

咲「あ……」

そしてついに、ロリータ服が脱がされ、上半身が肌けた。

手馴れた手つきでブラジャーを外されると、まろやかな輪郭を描く乳房が飛び出した。

和ちゃんは短く息を呑み、その光景に釘づけになる。


咲(見られてる――……)ドキドキ

まじまじとした凝視に耐え切れず、思わず顔を背けると同時に、彼女は胸に両手で触れてきた。

丸みを確かめるように輪郭をなぞり、力を込めてくる。

まるで強く握りすぎたら、あっけなく潰れてしまうとでも思っているかのように。

157 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:27:21.13 ID:JeB2AmVTO

―Side 和―


咲さんの胸元に手の平を押し当てると、ビクンと体をくすませた。

咲「……〜っ」ジュワッ

和♂(……あんがい硬いんですね……もっと柔らかいと思っていました…)

直に触れる最愛の人の乳房。その感触は、硬いゴムマリみたいだった。内部に硬い芯があり、その奥で心臓の鼓動がドクドクしてる。

熟す前の青さを残した若い乳房と、目を背けて恥ずかしそうにする表情がたまらない。

普段の表情が比較的あどけないというか、ピュアなイメージの強い咲さんの恥じらっている表情はとても艶っぽかった。


咲「さ、触るじゃなくて、揉んでもいいんだよ?」

和♂(咲さんのおっぱい、咲さんのおっぱい、咲さんのおっぱい、咲さんのおっぱい、咲さんのおっぱい、咲さんのおっぱい、咲さんのおっぱい、咲さんのおっぱい―――)

思わず思考停止して荒ぶっている私に、心細そうに咲さんの湿った声が誘う。

咲「あ、でも、揉むほどなんて、私……」シュン

和♂「咲さんは素敵です! 誰よりも綺麗で……自信を持ってください」

和♂「もっと、もっと。そんな後ろ向きにならないで……」

力を入れて揉んでみる。ぷりぷりっとした手ごたえは、他の何とも違う感触。

一番近いのは……、硬く作ったババロア?

和♂(硬めに作ったババロアって何ですか、他に例えないんですか……。と、自分にツッコミを入れる)


咲「くっ……つっ……い、痛っ」

和♂「あ、す、すみません…っ」

咲「いいの、気持ち、いい、っから……揉んで……和ちゃん……」

見慣れた咲さんの顔が、苦痛と快感に歪む。

そういえば、「若い乳房は少しの刺激でも凄く痛む」と話しを聞いたことがある。

痛くさせてしまうのではないかと思うと、触る手に力が入らない。

158 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:28:32.54 ID:JeB2AmVTO

ふと、甘い体臭がふわっと立ち上った。脇の下の酸っぱい匂いと、さわやかな汗の香り。

乳首は興奮して赤く尖り、乳輪も色を増して濃いピンクになっている。

和♂「咲さん、素敵です。可愛いくて、エッチで」

咲「最後のは、余計だってばぁ……んんっ」

片手で乳房を揉みながら、そっと唇を重ねた。舌先で歯をねぶると、かみ合わせが緩む。

そっと舌先を差し入れ、咲さんの舌を絡めとる。
体がビクンと震えた。


咲「んっ、んっ……はぅっ……ちゅぱ……ん、んちゅ、ちゅっ」

胸乳が、お湯を入れた風船のようにたぷんたぷんと弾みながら、ぷりぷりとした手応えを返してくる。

手のひら全体を使って揉むと、乳首のポチッと硬い感触が心地よくて、もっと触りたくなってしまった。
揉む手に、つい力が入ってしまう。

唇を離すと、咲さんは甘い声をあげて悶えた。


咲「んっ……い、痛いっ。んんっ……はぁ……の、和ちゃぁん……」

和♂「す、すみません」

咲「いいの、触って。もっと触って。痛いのが気持ちいいの……ね、和ちゃん」

咲さんはその場に仰向けになり、来て、と手を広げる。

159 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:29:40.43 ID:JeB2AmVTO

―Side 咲―


咲「んっ……い、痛いっ。んんっ……はぁ……の、和ちゃぁん……」

胸を揉む手に力が入り、息がとまりそうな痛さに襲われる。

痺れるようなその苦痛は、電撃のように身体の芯を走り抜け、かすかな甘さを伴いながら、下腹と脳髄をふるわせる。

自分にしか聞こえない音が下腹部でドクンと鳴り、秘唇がドッと蜜を吐く。

ショーツの奥が気持ち悪く濡れた。

身体をガクガクさせると、もう耐えきれないとばかりに横座りになり、胸を抱えてはあはあと息をつく。


和♂「す、すみません」

咲「いいの、触って。もっと触って。痛いのが気持ちいいの……ね、和ちゃん」

キスをして、おっぱいを触られただけ。
なのに、自分でもおかしいほど体の芯が熱くなり、下腹と二つの乳房の奥が疼いて苦しい。

咲「いいの、触って。もっと触って。痛いのが気持ちいいの……ね、和ちゃん」

来て、と手を広げると、和ちゃんは素直に胸に倒れ込んでくる。

生温かいため息が、深い胸の谷間にかかった。

160 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:31:13.86 ID:JeB2AmVTO

少しだけ理性の戻った瞳が、それでもやっぱりのぼせた表情で話しけてくる。

和♂「咲さんは色白だと思っていましたが、ここはもっと白いですよね……」

咲「んっ……あ、ん……」

また、ぎこちなく両手で撫でる動きが、次第にやんわりと揉みしだくようなものになっていく。

たっぷりとした乳肉が、和ちゃんの指の望むままに、形を変えて卑猥にたわむ。

体の芯からじわりとした快感が広がり、胸の先端が独りでに固くしこった。


和♂「もっと、触ってもいいですか?」

咲「訊かないで……んっ……」

親指と人差し指が、左右の乳首を同時に摘んだ。

和♂「ここ……硬い……」

和♂「胸は、こんなに柔らかいのに……」

咲「はっ……あ……」

きゅっきゅっと何度も押し込めるように刺激されて、息が浅くなってしまう。

和♂「んっ……は、ぁ……」

和ちゃんが顔を伏せ、右乳首を唐突に舐めた。
ほんのそれだけで、腰全体が一気に甘ったるい重さに痺れる。

161 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:35:40.78 ID:JeB2AmVTO

咲「あぁ、あっ……」

私の声に滲む快感を感じ取ったのか、次第にしたを大胆に絡ませ、尖ったそこを弾くように揺らした。

和♂「咲さんのここ、んっ、なんだか、甘く……」

咲「う、んっ……うそっ、は、ぁ……」

咲「っ……は、あぁっ……」

乳輪ごと頬張られ、ちゅくちゅくと大胆に吸われる。逆の胸もまた忙しなく手の平に抱かれ、いいようにされてしまっている。


咲「あ……ぁ、ぁあっ…」

じんじんする場所をじゅっと強く吸引されて、たまらず腰が浮いた。
オナニー経験もない自分にとって、その快感はあまりに深すぎて怖くなる。


和♂「……ずっと、こんなふうにしたかった」

和♂「咲さんを抱きしめて……キスして、胸を、その先も……」

和♂「……あの日からずっと、想像して……何度も何度も自慰に耽る、そんな毎日でした……」


咲「和ちゃん……///」

赤裸々にも程がある言葉に、頬が染まるのが自分でもわかった。

でも……

162 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:38:16.98 ID:JeB2AmVTO


咲(「あの日」って、何時からなの?――とは、さすがに聞けなかった……)

咲(何故か、聞いてはいけないと心が叫んでいる)


反応を窺うように、和ちゃんが小声で尋ねる。

和♂「……怒りました?」

咲「う、ううん……恥ずかしい、けど、でも……」

咲「大丈夫だよ、和ちゃんの、してみたいように、していいよ……」


和ちゃんの喉が、ゴクリと鳴った。


163 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:43:00.07 ID:JeB2AmVTO








「もう……入れたいです」





思いがけなく、でも予想できた答えが少し間をおいて返ってきた。

いよいよという所まで来たという実感に、途端に怖くなってしまう。

そんな思考を見透かしたようなタイミングで、また唇が重ねられる。安心する。和ちゃんとくっつくだけで、こんなにも……


咲「んっ、うん、いいよ……しよっか?」

和♂「はい…」

今まで、たくさん話をしてきた。

でも、本当に伝えたい事っていうのは、短いたった数言で伝わってしまうんだ。


以心伝心―――初めてカラダがつながる時、心もまたつながる。

そんな前兆なようなものがあるのかもしれない。……わからないけど、そうだったらいいな。

164 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:45:53.04 ID:JeB2AmVTO

和ちゃんが前かがみのまま膝立ちになって、衣服を脱ぎ始める。

ズボン、下着と順々に脱いでいき、そして遂にナナメ上に突っ張ったペニスを取り出そうとしている……みたい。

でも下着に引っ掛かり、なかなかうまくいかない様子。

四苦八苦して、ちょっと泣きそうな和ちゃんを見ながらちょっと応援したくなってしまった。


でも、口に出すのはどうかと思い、心の中でささやかにエールを送る

咲(頑張れ、頑張れ……)ドキドキ

内側から押し上げられてなんだか凄い形になっている下着から、視線が離れない。


和♂「……っ」ググッ…

和♂「え、えいっ」





ズ…… ズ………………… ズルッ



ボロンッ



咲「わぁ…っ」

和♂「ふぅ…」





ボッキーンッ

165 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:47:09.61 ID:JeB2AmVTO

和♂「あの――」

咲「……う、うん…なに?」

和♂「あ、あの、それで……」

和♂「コンドーム、持ってます?」

咲「え、ないけど……なんで?」

和♂「なんでって、だって、私もないですし……」

咲「あ、そういえばそんなのあったっけ?」


避妊具……それは妊娠を予防するものであって、だから……

咲(えっと……、たしか――)

比較的安定している自分の周期から逆算して、日数を計算していく。

咲(うん……大丈夫。今日はたとえ何があったとしてもほぼ絶対にデキない……ハズ)

咲「……和ちゃん、耳貸して?」

和♂「え? はい」


不思議そうに、四つん這いでにじり寄ってくる和ちゃんの耳元で、そっと囁く。

故意なのか、太股に押し付けられた怒張の先端がぬちょりと濡れていて、これからする行為がどれだけ生々しいものかを思い知らされる。

そして私は、今からそれを、より生々しいものにしようとしている――







咲「な、ナマでも、いいよ……?」

和♂「 」

166 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:49:15.75 ID:JeB2AmVTO

和ちゃんは絶句していた。
そして和ちゃんの代わりに、私の太股に押し当てられたペニスが嬉しそうに跳ねた。

咲「う、嬉しい?」

和♂「……嬉しいですけど、その、いいんですか?」

咲「素直になりなさい。こっちはもう、こんなに涎垂らして喜んでるよ?」

指先で先端をつんつんと突っつく。そして、またぬるぬるしたものが溢れて、それをくりくりと満遍なく広げていく。

なんか私、少し大胆になってる気がする……


和ちゃんの息が上がってくる。

和♂「――さわって、いいですか?」

咲「……うん。お願い…」

お腹を辿って、腰へ。そして茂みを潜り抜け、私の中心部へと、ゆっくりゆっくり指先がなぞっていく。くすぐったくて、なんだか……

その間もずっと和ちゃんは私の顔を見つめてきて、敏感な自分がいたたまれなくなってくる。

そして、今の二人きりの空気に、すごく興奮してる。

167 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:52:05.31 ID:JeB2AmVTO

手はさらに進んで、そのまま太股の付け根、そしてその合わせ目に。

 ―――クチュッ

咲「―――っ」

小さな音が鳴った。

和ちゃんの瞳孔が少しだけ開く。
それでも、まるで何かを争うように、二人とも決してお互いから目を離そうとしない。


和♂「今の、痛かったですか?」

咲「ううん。違くて、ちょっと…」

和♂「そうですか……。痛かったら、言ってください」

咲「うん…」

そう言って右手で頭を撫でられる。そして左手にはまた、秘部をじっくり労るように弄られる。


私も、太股の当たるギンギンになったモノに手を這わせる。和ちゃんの腰が少しだけ震えた。

咲「私も……いい、かな?」

和♂「はい。お願いします…」

お互いに相手の大事な部分に手を這わせながら、何となく見つめ合う。


和ちゃんの唇が少しだけ開いている。瞳が少しだけ濡れている。

……ペニスだけが、ダラダラと、ドロドロに濡れていた。

168 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:53:59.54 ID:JeB2AmVTO

和♂「咲さん」

咲「うん……」

再度、唇を重ねた。
ぎこちなかったけど、それでも気持ちよくて手は休めずに。

咲「んっ、あ……んぅっ」

キスは幸せな味だけど、この時初めて気持ちいいということを知った。

柔らかい唇をこすり合わせていると、そこからお互い融け合っていくように感じる。もう一度舌を少し出して、絡めてみる。

すると和ちゃんもおずおずと舌を出してくれた。先端が突き合うだけで頭がクラクラしてくる。


咲「ちゅ……は、あ……ぅ……んっ」

お互いに、まだ絡めるというのがよくわからない。全然上手くいかなくて、そのうち息もうまくできずに疲れてしまう。

和♂「ふはぁっ、はあ……はぁ……」

咲「ぁ、はぁ……、ん……。あははっ、なんか、ダメダメだねっ」

和♂「ふふっ、そうですね。キスって難しいです」

二人して笑い合った。


お互い汗だくのまま、正面から抱き合う。

169 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:55:34.77 ID:JeB2AmVTO

咲「和ちゃん、汗の匂い」

和♂「咲さんは、いつもいい香りですね」

咲「硬いカラダ、力強さ」

和♂「男子ですから」

咲「……うん、そっか。男の子だもんね」

和♂「これから咲さんと一緒に、オトナになります」


和♂「男に、なりますよ」


咲「うん……」

そんなやり取りに少ししんみりして、しばらく見つめ合う。

そして、完全に忘れられていたお互いへの愛撫が、また唐突に再開された。いまいち思考も朧げなまま、なんとなく手を動かし合いながら。

それでもお互いの芯の部分の体温を感じていく。


 ―――クチッ

咲「んっ」

 ―――くちゅ。ぬぷ…ぐちゅっ

咲「ぁあっ……」

声が漏れる。

気持ちいい。心地いい。ずっとこうしていられたら幸せかもしれない。このままここに停滞していたい。

170 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 01:59:30.15 ID:JeB2AmVTO

咲(……でも、「本能に導かれて」なんてことが、本当にあるんだろう)

現に私が今必死になってペニスを握っていることが、何よりも証拠になってる


きっと私は女で、そして和ちゃんは男で。こうして好き合ってるから。だからこんなところで止まってることはできないんだと思う。

……違った。止まっていることはできても、そうじゃなくて、ちゃんと前に進むべきなんだろう。


咲(和ちゃんが男になったその瞬間から、決まっていたことなんだ……)

今までの私みたいに、いつだって後ろ向きに、変化を恐れて逃げているだけじゃダメ。

いつだって手を引いてくれた和ちゃんが、目の前にいるんだから。今だってきっとできるはずだから。


和ちゃんと繋がるこの儀式は、きっとただのセックスではなくて。うまく言えないけど、私にとってとても重要なモノになるような気がする。予感がしてる。

171 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 02:10:49.04 ID:JeB2AmVTO

何かを確かめるようにゆっくり、的確に。

和ちゃんが私のカラダを弄って、秘裂を探っていた指を、粘膜のヘコミに入れてくる。

咲「んぁ…っ、んんっ、は…ぁあっ」

和♂「ぁ……ここ、ですか?」

愛液のぬめりを指で掬うように膣の淵を薄くなぞったり、浅く引っ掻くように穿られ始める。

その度に大きくなる水音と、ぬるぬるになっていく指に反応して、勝手にお腹の奥がムズムズしていく。切ない。

咲(気持ちいい。もっと触ってほしい。でももう少しそのまま触り続けていて欲しいような気もする。とにかく気持ちいい…)


和♂「そろそろ……いいですか?」

咲「はい、お願いします…」

何故か敬語な私に、和ちゃんは軽くはにかんで、短い口づけをくれた。

肩を支えられ、押されて。そしてゆっくりとベッドに仰向けに寝かされた。後を追うように、和ちゃんも緊張した面持ちで、近寄ってくる。

172 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 02:13:41.06 ID:JeB2AmVTO

和ちゃんの手が竿をぎゅっと握っている。

和♂「ぅあ……」

そして僅かに浮く腰。和ちゃんが、さっきよりも近くに来ている。

くちゅ、と淫らな水音が妙に大きく部屋のなかに響いたように感じた。和ちゃんの先端が、私のソコに触れているのがわかる。

――だって私の腰が、今にもその先端を呑み込みたいと小刻みに揺れているから。

――和ちゃんのモノが、びっくりするくらい熱くてたっぷり濡れていたから。


和♂「咲さん、凄い……温かくて、ぐしょぐしょで」

咲「あは、恥ずかし……たった数十分触れ合っただけでこんなに、わたし、すごいね」

和♂「嬉しいです、咲さん」

咲「うん……」

和ちゃんが今考えていることがわかるし、私の考えていることもきっと筒抜けなんだろう。

173 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 02:15:50.68 ID:JeB2AmVTO

緊張がどんどん高まっていく。和ちゃんが多少不器用にペニスの位置を調整して、合う場所を探している。

咲「あ――」

ぐにぐにとした経験したことのない弾力が、私の入り口を少しずつ慣らすように擦りつけられ、途中どこかひっかかるような感触があった。

なんとなく目が合う。

緊張は最高潮に達して心臓が破れ鐘のように響く。


つぷ、と音がして温かい異物が侵入してくる。でも、和ちゃんがそこから動かない。


咲「和ちゃん……?」

和♂「咲さん」

咲「うん」

和♂「咲さん……」

名前を呼んだけど、その言葉の直接の意味でないことをお互いに確認ながら、そっと息を吐く。

つながる直前、私達の間に会話はいらなかった。


腰のくびれのところを掴まれ、ぐっと下から押し込まれた。

咲「あ、ん――」

和♂「咲さん――」

咲「んっっ――」

お互いの短い声が重なる。和ちゃんはそのまま押し進んで、抵抗をする私の中を無理やり押し拡げていく。

咲(痛いっ、痛いっ、痛い…っ)
174 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 02:17:10.60 ID:JeB2AmVTO

和「咲さん、もう少しで……」

咲「うん……、ん。和ちゃん男に、なっちゃうねっ」グスッ

私が辛うじて何か言葉を返すと、嬉しいのか、悲しいのか、恥ずかしいのか、我慢しているのか、色んな感情の入り混じったような顔をしている。

和ちゃんが何を考えているか、全然わからなかった。でも、確かに繋がっていることを実感する。


和「あ、はあ、ああ……!」

咲「……っ!」

たっぷりと時間をかけて、和ちゃんはのそのそと動いている。

彼が軽く前後すると、ひたすら私の中の異物感も移動するみたい。大きな息をしながら少しずつ腰を揺り動かし始める。

175 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 02:18:45.84 ID:JeB2AmVTO

咲「はぁ、はぁっ、、入った?」

和「まだ、もう少し……」

咲「ん、ぅ……。あ、ああ……ぐっ!」


ぐいっ

ひっかかっていたところが抜けると、異物感が一気に膣中を突き進んできて、お腹の奥に突き刺さり激痛が走る。

咲「―――あ、が、ぁっ」

和「す、すみません…! 力を入れたら急に、一気に奥まで……大丈夫ですか?」

咲「全然っ、大丈夫じゃない、けどっ、大丈夫……っ」

和「どっち……」

咲「いいから、きて……!」


痛みと異物感に苛まれて、今にも拒絶してしまいそうだった。

身体に鞭打って、和ちゃんを受け入れる。

176 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 02:21:26.53 ID:JeB2AmVTO

和「んっ……ふぅ、はぁ、はぁ……っ」

和「好きです、咲さん……好き、好き! 咲さん、咲さん、気持ちいい……」

和「はぁっ、はぁ、あぁっ…気持ちいいっ!好きっ、好き、好き……好きなんです咲さん、咲さん…っ」

背中に伝わる震えた指先。耳にこもる甘い吐息。
気持ちは自ずと伝わってくる。


「好き」と「気持ちいい」の連鎖。

その二つがゲシュタルト崩壊して、何だか同じ意味のようにも聞こえてくる。

「好き」だから「気持ちいい」。「気持ちいい」から「好き」。

全然違うような気もするけど、同じような気もする。


ただ一つはっきり分かるのは、和ちゃんが私に、必死に「気持ち」を伝えてようとしてくれているということ――。

177 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 02:24:48.84 ID:JeB2AmVTO


咲(伝えたいって気持ちがこんなにも尊いと知ったのは、高一の夏――)


姉に再会して、言葉にできなかった――麻雀を通して伝えたかったことは結局、届いたのかさえわからない。

成功とも、失敗とも結果を残さず。それでも静かに時間は流れていく。

悩んだ日々も、悲しさに泣かせてしまった日もある。

色んなものを二人で乗り越えてきた半泣きの彼の、目の前の、世界の特別でもなんでもなかった私は今どんな顔をしているのだろう?


咲(誰かのように幸せな笑みを浮かべているのだろうか……)

咲(それともいつかのように精一杯の、伝えることしか考えてなかった独りよがりな表情?)


じっと私を見つめていた彼の胸の中に抱かれ、縋るように飛び込んだ。膣内の快感が強まる。

涙が伝う頬を誤魔化すように、彼の頬にイヤイヤと頬擦りする。

…また、私たちの重なる表面積が広がっていく。

それが直接快感の幅に繋がって。意思のない体液までもが絡み合って、お互いにお互いの触覚と体温を感じ合う。


失くしたくないものに囲まれた場所から、不安でも一歩前に進む勇気をくれる――


咲「……和ちゃん、大好き。」

178 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 02:26:39.57 ID:JeB2AmVTO

―Side 和―



強い性感にわけのわからないまま腰を引き、また奥に進めた。その度に愛液が亀頭にまぶされて滑りがよくなる。咲さんの眉根がきゅっと寄せられていて、とても可憐だった。見たことのない顔。

咲「は、ぁ……う、ん……っ」

肩で息をしている。苦しそう。抱きしめてやることしか思い浮かばず、そのまま咲さんの頭を胸に抱いた。

一瞬肉襞がきゅっと締め付けてきたのは、偶然?


咲さんの頬は上気して赤い。迷うように視線を左右させていたが、やがて――私の目をじっと上目遣いで見つめ返してきた。

何もかもが繋がっている気がして、笑みがこぼれる。

すると――咲さんは下唇を噛んでいた口を僅かに開き、嬉しいのか苦しいのか、そんなどこか困ったように笑った。

膣内がぐにっと蠢いて、痛いくらいに強く締め付けてくる。

179 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 02:29:22.27 ID:JeB2AmVTO

咲「ん、はぁ、はぁ……」

どれくらい時間が経ったかわからない。けれど、吐息はやがて落ち着いたものになっていて、咲さんが私の肩を甘く抱き直してくれた。


咲「ひとつに、なってる」

和「……はい」

咲「っ、ぁは……。なんか、なんか感動…」

ふぅー、と涙を滲ませ、咲さんはゆっくりと息を吐いた。それだけで意外なほど締め付けられる感触が変化して、驚いてしまう。

和「すごいです、これ」

咲「それは、そうだけど……。なに、いきなり?」

和「咲さんのなか、いまちょっと動いたみたいで」

咲「え……。そうなの?」

和「はい」

咲「あはは……。お腹が動いたって、まるで赤ちゃんできたみた――ぁ」

和「ぁ……」


咲さんの「赤ちゃん」というフレーズに、二人して固まる。

この行為がまさに、その赤ちゃんを作る予行演習みたいなもので、しかも今はナマで繋がってて。だからつまり、その赤ちゃんを作るにはこの先何回も咲さんとこうして―――。


和「……」ムクムク

咲「ひゃっ、和ちゃんがなかで跳ねたっ」

和「す、すみません……でも咲さんだって、さっきからうねってて」

咲「そ、そう……。自分じゃ動かすとそういうの制御できなくて」

180 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 02:34:27.75 ID:JeB2AmVTO

咲さんが、再度深呼吸をする。

咲「これも?」

和「はい。とても気持ちいいですよ…」

咲「そ、そっか……。今、ちょっと楽になってきた感じがして。深呼吸したらね、あ、和ちゃんのが入ってる、わかるなー、って」

そんな言葉や呼気に合わせてまた膣襞が動いている。入れたばかりの時よりもずっと、私を受け入れてくれているように感じる。


咲「想像していたより、ずっといいかも。お腹のね、この感じ……好き、かも……?」エヘヘ

好きって言うわりには、口調は疑問形みたい。

たぶん何となく気に入ってはいるんだけど、たぶん確証は持てていなくて、でも十中八九そうなんだろうみたいな予感がしている。

和(そんな感じ。わからないけど、わかる。たぶん、そういうこと。)

和(きっと好きになれると、受け入れてもらえている)

そしてそんな可愛いことを言われて黙っていられるほど、私は理性的な人間ではなかった。


咲さんの体をゆるく抱き直して、再度腰を揺すり始める。

じゅっ、じゅぶっ、ぐちゅっ、

咲「ふぁ、あ……!」

和「痛くない?」

咲「うん……っ、もう、けっこう、慣れてきた、ような……っ」

その台詞の真偽を確かめる余裕ももうなかった。

本当だったらいいな、という都合いい方へ思考を推し進めて、咲さんに押し付けて、腰を動かし続けてしまう。

181 :初めて ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 02:41:28.98 ID:JeB2AmVTO

咲「ぅ、あ、はぁ……! ぞくぞく、する……。あの和ちゃんが、男のコのカオ、してるよお……?」

汗がにじむ。ナマの感触は圧倒的で、すぐにでも達してしまいそうになった。柔らかくうねって、けれど強く締め付けてくる。

たとえ咲さんを想ってだとしても、独りで慰めるのとは比べものにならない。


じゅぷっ!じゅぷっ!

和「すげぇ気持ちいい……っ」

咲「ほんとう? よかったぁ……っ」

眉を寄せながらも咲さんは必死にほほ笑んでくれて、怖気にも似た満足感が訪れた。

大好きな仲間。 素直で迷子癖があって、可愛くて、いつも私のことを想ってくれる一生ものの友達。

そんな咲さんにこんなに女の子な表情をさせているんだと思うと、まるで太陽に向かって咲く花を手折るような背徳感を感じる。


――この咲さんを、自分のものにしたいという欲求が高まってくる。

182 : ◆uFgKAeBDKs [sage saga]:2016/08/11(木) 02:48:44.35 ID:JeB2AmVTO

>>181

ハートが、?になっちゃいました。
気にしないでください
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