田井中律誕生日記念SS2016(must was the 2014)

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328 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:20:41.78 ID:RygLztCIo
 そこで、窓の一つを人が通れるよう、
六つあった小窓を一つの窓に統合して、片開き窓とした経緯がある。
緊急時にはここから救助袋を降ろして避難する、という構造となった。
この避難用の出口の周辺に物を置いては法規違反となる為、
予め家具・調度類が側に置かれてない窓が選定の規準となったらしい。

 それが、律が今見つめている、この窓だ。
避難用である事の表れで、足元には赤いビニールテープで縁取られている。
この範囲内に物を置いてはいけないというサインだった。

 この窓なら、運動場に居る者からも見える事だろう。
噴水のある正門の方向は人が少なかったが、運動場には部活に勤しむ多くの生徒が居る。
来る途中に一応目視で確認はしていたが、
一昨日までの経験則に照らしても容易に推測できた。

「ねぇ、りっちゃん。本当に今、部室の前に居るの?」

 傍らの唯が声を掛けてきた。

「うん、居るよ」

 窓から唯へと意識を転じて、律は短く答えた。
合図さえすればすぐにでも入ってくる。だが、まだ準備が整っていない。
昨夜、澪から指示された内容を今一度、律は頭の中で反芻した。
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:21:46.83 ID:RygLztCIo
 思い返した後には覚悟も固まっていた。

「ねぇ、りっちゃん。りっちゃんっ?」

 唯は焦れたように律の名を呼んで、直後には驚いた声音で律の名を呼び直していた。

「えっ、律先輩、何を?」

「りっちゃん?えっ?」

 唯の声に只事ではない様子を感じ取ったのか、梓と紬が相次いで律を振り返る。
そして揃って、驚愕に目を見開いていた。

 無理もない。
彼女達の目には、裸になろうとしている律が映っているのだから。

 ファスナーを下ろしたチャイナドレスから、律は身体を抜いた。
腕輪と脚環は外さないが、これでも充分に全裸と言えるだろう。
乳房も、性器も、全て晒してしまっているのだから。

 服を脱いでも、胸部のバラは抜けなかった。
肉に食い込む棘が、錨のように繋ぎ止めている。

「りっ、律先輩?急に、どうしちゃったんですか?」

 問い掛ける梓の声は、動揺故か震えていた。

「だって、私は何も着ない格好が一番綺麗だって、彼が言うから。
見せ付けろって。
それにっ、私、脱ぐと凄いって言ったでしょ?
だから、実際に脱いでるのっ。うー」

 律も羞恥で声が震え、顔が茹だった。
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:23:04.98 ID:RygLztCIo
 唯も紬も、声を忘れたかのように律の裸体に魅入っている。
梓も、もう反論はしてこなかった。

「もう、何さ、凝視しちゃってぇ。皆エッチなんだから。
さ、約束通り、彼氏を紹介するからね」

 まだ、澪から受けた指示を完遂した訳ではない。
呼ぶ前にもう一つ、やっておく事がある。

「本当に彼氏が来てるの?女子校なのに?
しかも何で紹介するのに脱いでるの?
まさかここで、挿したり抜いたり射ったりを始める訳じゃないよね?」

 律の裸体を無遠慮に眺めていた唯が、我に返ったように反応した。
律の裸体に関心を引かれはしたが、
律の恋人を見るという本来の望みも忘れてはいないらしい。

「それはしないよ。あ、分かんない
その予定はないってだけか」

 ここでの性交までは、澪から訊いたプランには入っていない。
だが、迫られれば断り切れまいと、避難用の窓を開け放ちながら律は思った。

「ちょっと、りっちゃん?
そんな格好でそこの窓を開けたりしたら、外の人にも見られちゃうわよ」

 紬が制止の声を上げたが、間違いなくそれが目的の指示だ。
外の人に見せ付ける、その為にこの窓を指定したのだ。
人が避難できる、即ち、人が身を乗り出せるサイズの窓を。

 準備は出来た。いよいよ、唯達に恋人を紹介する時が来た。
思えばこの時を、自分も相手も、ずっと待っていた。
その本願を邪魔していたジレンマが昨日、氷解したのだ。
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:23:55.87 ID:RygLztCIo
 律は息を吸ってから、叫んだ。

「私の彼氏は、みぃおだよっ。
入ってきて、私に空を飛ばせてっ」

 それが、合図だった。後方で、音を立てて勢いよく扉が開く。
律は振り返らず桟を踏み、開け放った窓へと身を乗り出した。
後方から、大股に歩く澪の足音が聞こえてくる。
向かってくるショートヘアの澪を、唯達も視認しているだろう。

 その唯達は混乱しているのか、何も言い出せていなかった。
何から口に出せば良いのか、整理も付いていまい。
それでも、律の澪が彼氏であるとする告白と、
短くなった澪の髪型が事実としてあるのだから、
サングの正体は言わずとも分かってくれるだろう。
今はただ、律と澪が付き合っている事だけ見届けてくれればいい。
細かい説明は、その後だ。
昨日、澪がベッドの上でそうしたように。

「りっちゃん、危ないわよ」

 窓に身を乗り出した律へ向けて、紬が叫んだ。
言いたい事、訊きたい事の山を脇に置いて、
喫緊のものとして律の身を案じてくれているらしい。
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:24:48.49 ID:RygLztCIo
「危なくなんかないさ」

 紬に応える澪の声が、近くから聞こえる。
直後、律は腰部を澪の両手で支えられていた。
絶対に落ちないよう、力強く掴んでくれている。
律は安心して身を前傾させ、両手を左右へ向け水平に広げた。
十字架へと磔にされた受難者のように。
或いは、タイタニックのローズのように。

 その時、ロサ・ブランコが胸部から落ちた。
両手を左右水平に伸ばした事で胸が開き、棘も抜けてしまったのだろう。
真っ赤な花弁を携えたバラが、地に向けて落下してゆく。
澪もパフォーマンスの一環か、ロサ・ブランコを幾度となく高所から落としている。
だが、その花弁はいずれも白いままだった。
花弁の色の変化は、自分が交わった証に他ならない。
これからも澪が欲するのならば、彼女のお気に入りの品種に色を添えよう。
自分の王である澪の、お気に召すままに。

「I'm the king of the World!」

 全校の生徒の注目を一気に引くような声量で、澪が咆哮した。

「りーっ」

 応えて、律も嬌声を添えた。

<FIN>
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:30:10.93 ID:RygLztCIo
>>320-332
 以上になります。
それでは皆様、長きに渡り有難うございました。
田井中律の誕生日である今日が実り多い一日となる願いを、
結びの挨拶に添えさせて頂きます
 失礼致しました。
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2016/08/21(日) 14:05:36.19 ID:MLx6Jxbno
乙
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/22(月) 15:24:24.19 ID:yZytBvyf0
乙
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