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1 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/12/28(水) 01:57:04.58 ID:nd815OF9O
「……行き、最終電車が発車します。」
仕事。
納期、トラブル、無能、残業、残業。
休出、無能、正社、残業、残業。
ミス、自戒、周り、ヘラヘラ、残業、残業。
磨耗した心はつまらない事を文章で考えたりはしない。
圧縮して省スペースしたはずのゴミみたいな単語が、くずかごのように心の中に溜まっていた。
ま、金出るだけまだいいか。
しばらく心をガサガサ漁って、つまらなくない文章を探したらこんなものしか出てこなかった。
ギュムッ。
妥協。
そんな自分がつまらなくて、また圧縮した。
「閉まるドアに、ご注意ください。……」
忘年会、愚痴、陰口、下品、下卑、馬鹿騒ぎ、媚び、説教、仕事。
年の瀬、帰京、不安、顔出し、旧友、人生、値踏み。
「ふう……」
いつにも増して酷く散らかった、都心のくずかごみたいな俺。
誰もいない車両は、乗車賃さえ払えば温かい座席で俺を出迎えた。
2 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/12/28(水) 02:06:37.26 ID:nd815OF9O
「たまには帰ってきなさいよ、ってねえ……」
母の声が思い出される。
顔は浮かばない。
嫌いでもないが、疲れるので思い出したくない。
ギュムッ。
不肖の息子。
いや……。
ギュムッ。
愚息。
これでいいだろう。すっきり。
ライフワークというより、心の安寧を何とか保つための悪あがきが毎晩のように繰り返されていた。
終わりはあるのか、終わりはないのか。
俺の限界は来るのか、限界は来ないのか。
フタもカパカパ開き気味になったくずかごが、大きなレールの上を揺られていった。
ガタンゴトン……ガタンゴトン……
「最終電車が発車します。……」
3 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/12/28(水) 02:20:19.12 ID:nd815OF9O
各駅停車の繰り返されるアナウンス。
開くドアが運んでくる冷気と物音。
用意された音だけが響く静けさ。
……。
「ふふっ」
圧縮はしなかった。
しばらく揺られて2駅過ぎ、まだ少しかかる。
「……。お忘れ物のないよう、ご注意ください。」
また1駅、その駅。
「ドアが、開きます」
物語は、そこから始まる。
4 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/12/28(水) 02:40:00.71 ID:nd815OF9O
男「……ん?」
ドアの先には、ベンチに腰掛けた人がいた。
うなだれて、動かない。
○○行き、最終電車です。
お乗り過ごしのないよう、ご注意ください。
〜♪
男(寝てるか……!?)
もう鳴ってる。
泥酔?居眠り?終電逃してお前も独り?
寒いだろう。可哀想。
引きずる?起こす?声かける?
可能?不可能?俺しかいない?
間に合わない?俺が困る。見て見ぬ振り?俺が困る。
……急げ。悩むな。早くしろ!!
ダッ!
男「あのっ!!」
肩を掴み、大声とは裏腹に軽く揺すった。
ビクンと震えた全身。持ち上がる顎。見開かれる眼。
コートに包まれていたのは女性だった。
女「ん、……えっ」
音楽の調子が上がる。
まずい、荷物ば電車の中だ。
男「早くッ! あんた、もう出ますよ!!」
女「あ、ちょ」
男「荷物! それ! 早く!」
女「は、はい!」
プシュー……
男「はー、はー……」
動悸、ときめき、逃避行。
そう見えるようなワンシーン。
息切れ、緊張、安堵感。
ふう、よし、オッケー、間に合った。
5 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/12/28(水) 02:56:14.26 ID:AA8aIQAq0
期待
6 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/12/28(水) 03:22:57.65 ID:nd815OF9O
とりあえずさっきまで座っていた座席に腰かけると、連れ込むようにして引き込んだ女性も横に座った。
ボリュームのあるマフラーで、口元が少し隠れている。
男「平気ですか?」
女「はい……すいません」
男「これ……この電車、乗るつもりで合ってましたよね」
女「……はい。」
ガタンゴトン……ガタンゴトン……
動き出した電車にふたり。
定員何十人の車両で隣り合わせ。
女「助かりました」
身体を少し斜めにすると、女性もようやくこちらを向いてそう言った。
こちらに向けて笑おうとしたのだろうが、緊張がいまだ収まっていないようで変な顔になっている。
不器用そうな女性だった。
男「いえ……寝てましたか」
女「はい。終電、逃すところでした」
男「終電じゃなかったら俺も助けてませんでしたよ。はは」
女「あ……ごめんなさい」
男「あ、いや、嫌々したわけじゃないです、その。すいません」
人の事を言えない。ぎこちない。
女「今日は遅くて、疲れてて……それで、つい」
弁明するように、申し訳なさそうに言う。
そんな眉毛して欲しくない。
男「忘年会ですか?」
女「え。……は、はい。そうです」
なんで分かるの?という顔。
いやいや仕事納めの時期じゃないか。
男「俺もだからですよ。2軒目の帰りです」
女「あ……」
彼女のほほが緩む。
女「あなたも、ですか?」
ようやく、同類と認めたような安堵を見せてくれた。
遅いよ。もう。
7 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2016/12/28(水) 03:28:05.94 ID:nd815OF9O
妄想乙とか言わないで、死ねる
おやすみ
8 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/12/28(水) 04:34:30.50 ID:CULm+cjnO
おつ
愚痴しかないよ全く
9 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/12/28(水) 04:34:40.84 ID:jm0ZStaVO
良いんじゃないかな
10 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/12/28(水) 15:37:57.09 ID:nd815OF9O
男「そうですよ」
俺と彼女を同じと見なすにはあまりに情報が足りなすぎた。
しかし、互いに何となく疲弊したような様子が一体感をくれた。
女「私も、酔った方に2軒目まで付き合わされて……終電までちょっと余裕ありましたけど、先に失礼しました」
男「その方と一緒じゃなかったんですか?」
女「え。あ……はい」
彼女の顔がこわばった。
野暮か。
男「ま、道中何もなくて良かったです」
年末は変な人も多い。
男「ふう」
この話はおしまいがいい。
わざとらしくお茶を飲む。
女「……」
彼女は、そんな俺の様子を控え目に伺っていた。
マフラーをつまんだ手を、口元に当てる仕草で。
男「どうしました」
女「あの、最寄りは、どちらですか」
男「え?」
意外な質問だった。
女「あ、その、どこで降りるんですか」
男「○○。その、終点の○○駅です」
つい答えてしまった……いや、危ない事はないよな?
女「あ……」
彼女がいっそうマフラーをつまみ上げ、顔を隠している。
困った眉をして、縮こまっている。
女「私も、同じ。同じなんです」
男「……。あら」
女「その、はい」
出た返事が「そうなんですか」で無いあたり、俺は彼女に興味を抱き始めていたんだと思う。
ガタンゴトン……
11 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/12/28(水) 22:55:30.83 ID:zTK2mWKQO
「まもなく終点、○○、○○ です。……」
プシュー……
電車からは3人ほど人が出てくるばかり。
ぶつかる影もないのに、彼女は俺の後ろを小さく歩いていた。
男「酔いとか、眠気とか、平気ですか? なんか飲みます?」
女「あ、その、いえっ」
……?
どこか違和感があって彼女の顔付近を覗き込む。
男「……耳」
女「えっ、な」
男「耳がだいぶ赤いです。さっきので、風邪でも引きましたかね」
女「え……! それは、その」
男「無理しない方がいいですよ」
自販機に電子マネーをかざす。
彼女が両耳をグニグニ握って冷やしている隙に、冷たいお茶と温かいレモネードを買った。
女「あ、あの……?」
男「冷たいのと、あったかいの。どっちなら飲めそうです?」
女「ぁえ!?」
ふたつ差し出すと素っ頓狂な声をあげた。
男「俺ふたつも飲めないんで、早くもらってください」
我ながら強引でいやらしい。でも、もらってくれなさそうな人への常套手段でもある。
女「そ、そんな。そうとは言っても、う……」
……
改札への階段を登る間、彼女は黄色のボトルを両手にギュッとおさめていた。
12 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/12/28(水) 23:23:38.95 ID:zTK2mWKQO
男「……」
ピッ。
女「……」
ピッ。
終電後特有の、各所から漂う「おしまい」の雰囲気。
発車予定のない電光掲示板、シャッターの降りた店、酒をコンビニ袋に入れてゆっくり歩く人、仲間たちと夜にたたずむ人。
各所からは「お気を付けて」「良いお年を」なんて声も聞こえてきて、普段よりいっそうその空気は強い。
同僚とも上司ともそうしてきたばかりなのだ。
後ろの影とて例外ではない。
男「さて、」
女「あのっ」
振り返って声をかけようとすれば、マフラーから顔を出した彼女がこちらをまっすぐ見上げていた。
……。長い睫毛と、光っている瞳。
射抜くとまではいかなくても、男の視線を磔にするには充分な何かが漂っていた。
女「その……ありがとうございました。色々」
見とれていた俺は話を譲ることになる。
視線はお互い外れないままだ。
女「その、なんと言っていいのか、なんてお礼をしたらいいのか」
男「ちょ、ちょっと。ほとんど大したことしてないでしょう。気にしないでください」
女「でも……」
でも、の先に続く言葉は、何となくわかる。
その言葉は、まず他人に出てこないだけで。
モノじゃなくて、気持ちが嬉しいとか。
偶然であっても、何となく親しみを感じたとか。
繋ぐ道理がなくても、少し名残惜しいとか。
わかる。
でもまず言えない。照れて恥ずかしくて難しくて。
女「んん、でも……」
そこからは続かないようだ。
俺の話をさせてもらおう。
男「よかったら、送って行きましょうか? 夜道、危ないですから」
女「……えっ。」
男「いや、その、迎えに来てくれる方や、自転車があるんであれば、いい、んでしょうけど、その」
俺は途中から何を言っているのやら。
一緒に帰ろう、だなんて学生以来なのに、サラッと言う力はどんどん退化している。
女「それは、その、えーっと、はう……」
また口がマフラーの中に隠れてしまう。
かわいらしいが、見るからに彼女は困っていた。
仕方ない、か……。
男「……分かりました。お家知られるのも怖いですもんね。くれぐれもお気を付けて」
13 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/12/28(水) 23:51:49.01 ID:zTK2mWKQO
男「では、失礼します」
女「あっ……!」
この30分ほどの出来事。
ギュムッ。
所詮。
あ、あれ。ギュムッ。
失恋。
ち、違う違う。ギュムッ。
失望。
いやいや。ギュムッ……。
ぜんぜん潰せない。くそ。
グイッ!
女「あ、のっ……!」
コートが急に引っ張られた!
男「のわっ。あ」
女「ごめんなさい、そのっ」
振り返ると、慌てた様子の彼女がいる。
……やはり不安は不安だったのだろうか? 悪いことをした。
男「……。すいません、やっぱりご一緒しますか」
女「いえ、あの、その」
女「その、でも、うう」
女「私が、そのぅ……」
ごにょごにょした呟きはどんどん先細って消えていってしまった。
俺は、彼女のそれを聞き取りたくて耳を寄せる。
女「私を、泊めてください……」
その瞬間。
ゼロ距離から、すごい甘いのが耳から脳をブチ抜いていった。
14 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/12/29(木) 09:01:16.63 ID:GOAuNCibO
駅から、徒歩で10分。
我ながら、割といい場所を借りられたとは思う。
ただ、女の人を泊めるのに充分な広さであるとか、距離であるとかなんて全く考えた事はなかった。
男「……」
女「……」
同様に、今日それが起こりうる事であったなんて。
少し前。
女『ご、ごめんなさい不躾なのは分かってますが、その、お願いします!』
俺から寄せた耳にとんでもない不意打ちを返した彼女は、知ってか知らずか性的なニュアンスから遠く離れたお辞儀をした。
逆に、その意図も無くいきなり男の家に泊めてもらうというのも少し世間知らずなのかとも思った。
女『やっぱり……ダメですかね』
断る理由は何個でも浮かぶ。冷たいものから柔らかいものまで、なんなら連絡先を聞き出しながら別れる事だって出来なくもないと。
しかし、彼女にその気がなくとも俺はその仕草、その声、その縁を手放しがたいと思っていたのも事実であった。
男『……』
女『う。ごめんなさい』
男『謝らないでくださいよ。分かりました、ワケは聞きませんから』
今年はもう仕事も無い。
彼女の忘年会がそうとは分からないが、今日が金曜日で無いあたり明日仕事なんて非常識な事はありえないと思う。
女『あ……』
女『ありがとうございます!』
こんなかわいらしい笑顔を見せてくれる女性が、こんな事で微笑んでくれるというのなら。
……
女「ふふ」
駅のホームで歩いていた時より、半歩くらい近くをついてくる彼女であった。
15 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/12/29(木) 09:31:28.20 ID:GOAuNCibO
……ガチャ。
男「どうぞ。ちょっと散らかってますけど」
女「お、お邪魔します……」
テーブルを見ると出がけに慌てて食べていったカップ麺の残骸が転がっていて、今朝の自分を激しく後悔した。
暖房を入れ、コートをかけるハンガーを探す。
男「荷物、ソファにでも置いてください。お茶入れてきますか?」
女「さっきもいただきました、大丈夫です」
男「はは、そうでした」
とりあえず大きなハンガーを彼女に渡し、先にくつろいでもらった。
もう日付が変わる。
手早く部屋を片付けた後、風呂に湯を張った。
幸いにしてシャンプー類は刺激の強くないものが揃っている。
部屋に戻ると彼女は縮こまっていた。
男「お湯、先にどうぞ」
女「あ……いただきます」
男「ところで着替え、どうするつもりです?」
女「あ」
彼女の口癖は「あ」とか、「その」とか、そういうのらしい。
男「……あまり着てないシャツでよければ」
女「ごめんなさい、お借りします……」
無防備すぎやしないかと、少し心配になった。
16 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/12/29(木) 13:43:30.01 ID:GOAuNCibO
シャワーを浴びる音が聞こえる。
出てきた時の事を考えると、やはり緊張してならない。
そもそも、なんで彼女は泊まらなければならなかったのか?
その必要性がなかったのなら……なら、こう、そこまで縮こまる事も無いのではないか?
……今から送り届ける事も考えたが、野暮なのか。
普段寝ている温かい布団に消臭剤を吹き、乾け乾けとバサバサバサ。
とりあえずコタツ周りのクッションを枕に見繕って、俺の寝床は確保した。
ガチャ。
女「……」
身体を抱くようにして、Yシャツの彼女が出てきた。
白い生脚と対照的な赤い顔を、どうにか隠すようにして。
男「……」
俺は正直惚けていた。
彼女の細腕で身体を隠そうと、あまりに逆効果だ。
煽ってるのかと言いたいくらい。
女「あき、ました……」
男「は、はい」
薄い唇、締まったふくらはぎ、浮き上がる腰のライン。
あちこちに意識が振られて、ガン見も凝視も、ホント失礼も良いところ。
しかしまあ身長はあって、それを薄く包む女らしい丸みと危うさを孕んだ細いくびれ。
そのスタイルの良さとは裏腹に、過度な自信を宿していない瞳、淑やかかつ遠慮がちな仕草。
「女」だとか「オンナ」だとか、「女の子」や「女の人」だとか。
そういう形容の似合わない、「女性」らしい魅力的な……危ない、人。
もっと言うと、男好きしすぎる。
女「あ、の……なんか、その、見てます?」
男「あっ、すいません!」
ガラガラ……ピシャ。
男「かわ、いい」
逃げこむように入り込んだシャワーの中でも、先の肢体を反芻する事からは逃れられなかった。
17 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/12/29(木) 17:51:21.51 ID:T09Ch1eEo
わあテクニシャン
期待
18 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/12/30(金) 01:12:06.00 ID:bhHfu1Q50
……ピシャ。
男「戻りましたよ」
女「あ……はい。こたつ、借りてます」
男「どうぞどうぞ。そうしてください」
戻ると、彼女はある程度落ち着いた表情をしていた。
身体をこたつの中に隠しているからかもしれない。
男「もう日付変わっちゃいましたね」
女「そうですね」
男「……休みましょうか。俺こたつで寝るんで、布団使ってください」
女「あ……」
女「寝たら、明日が来ちゃいます」
ふと彼女は印象的な言葉を言った。
日付が変わったと言った矢先の事だから尚の事……言わんとする事はよく分かる。
男「……そうですね。起きてたいですか?」
女「ごめんなさい」
男「いえ。俺も、分かります、そういうの」
男「早く休まないと明日に差し障ると分かっていても、寝たら明日が一瞬で来ちゃいますから」
女「はい。そうですよね」
男「でも、ずっと今日を過ごそうとしても明日からは逃げられない……」
女「……。私、小さい頃は今日と明日が繋がってるなんて信じてませんでしたもん。寝てる間はもっと特別な何かがあるんだって」
男「うーん。じゃあ今日のうちに、話したい事なんかあります?」
俺も寒いのでこたつの対面にご一緒する。
女「……。無くはないです」
男「何でもとは言わないですけど、遠慮しないでいいと思いますよ」
女「その前に……です。何で、いきなり泊めてほしいだなんて言葉が出てきたのか、知りたくないですか?」
男「ワケは聞かない、とは言いましたけどね。お話ししたいなら聞きますよ」
既にぬくもった彼女の足が、ちょんと触れた。
女「私もなんで……その……そんな、大胆というか、おかしな事思い付いたのかよく分かってなかったんですよ」
男「……自覚あったんですか」
女「ちょっと、変な人と思わないでくださいよ。いや、変ですけど、いきなり男の人の部屋に泊めてもらうなんてどんな事なのか分かってます!」
19 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/12/30(金) 01:51:23.43 ID:bhHfu1Q50
女「でも、この人はそんな人じゃないって、すぐに分かりましたから」
男「……今、釘を刺されたんですかね?」
女「ふふ。そんな事する必要ないと思いますけど」
男「どうだか」
女「顔を見れば分かります」
自信を持って言われてしまうと、あまりに無害そうと言われているようで微妙な気分。
でも、正しい。
女「で、それが前提として、ですね。お願いしたい事があります」
男「……。なんでしょう」
少し緊張する。
女「私と寝てもらえませんか」
おい。
男「流石に、アウトでしょう」
女「ダメですか……? ってのは、ナシですかね」
男「ナシです。どう寝るにしても、どっちの意味にもなりかねません」
女「ともねですよ」
なめらかな足が、こたつの中ですねを撫ぜる。
男「……勘弁してください」
女「あはは……ごめんなさい。つい」
女「今日、私、独りになりたくなかったんです」
女「独りになったら……いろいろと、壊れてしまいそうで」
男「嫌な事、あったんですね」
女「はい……ありました。」
女「飲み会で疲れて、それで悩みでも疲れて……その折にあなたが来て、優しくしてくれて」
女「知ってて仲の良い人達でも悲しい事嫌な事があって、……名も何も知らないあなたはうれしい気持ちにしてくれて」
女「女性の集まりみたいに親身じゃなくても……それでも心から共感してくれて」
女「なんというか、その、無意識に……この人のもとで休みたい、この人のもとで目を覚ましたいなんて、思ってしまいまして」
女「つい」
女「つい……なんです。ごめんなさい。で、でもこんな事まさか、ついついしないですよ? はじめてしますよ、こんなことっ」
女「うう」
20 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/12/30(金) 02:19:08.49 ID:bhHfu1Q50
女「私、最寄りも、○○駅じゃないんです。離れがたいなって、最悪タクシーで良いかなって。」
な……
ガワは落ち着いてるようで、この人結構とんでもない人だ。
男「そうだったんですか!? 俺が冷たい奴で、タクシーも捕まらなかったらどうするつもりだったんですか!」
女「あ、その……でも」
女「……いえ。ごめんなさい」
男「済んだことでも、心配しますよ。もう」
女「私、人を見るのは得意みたいで……あなたは大丈夫って確信があったんです」
男「分かりました、分かりましたよ、終わりにします。……俺もさっきから気恥ずかしいんですからね」
男「……」
女「それで、ですね」
男「寝ましょう。すいません、こたつ切ってください」
女「え、あ……」
男「枕とクッション、どっちがいいですか」
女「あっ……! ク、クッションください!」
真っ正面から嬉しそうな笑みが、いい加減奥手な俺の中の俺を吹っ切らせた。
自分の中でまで抑えて嘘ついてどうすんだ。
男「冷えますから。早く、入りましょう」
女「お隣、失礼します。……えへへ」
この人良い。
この人、ホントかわいい。
21 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2016/12/30(金) 14:27:58.55 ID:sJB+NUjyo
かわいい
22 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2016/12/31(土) 18:35:37.43 ID:tQYfl9SJO
女「ごめんなさい……狭いですよね」
男「いえ、その……布団、ちゃんと掛けてください」
理性を保とうとする時。
人を苦しめるのはムラムラではなくドキドキなのだと初めて知った。
もぞ、もぞ……。
ぴくん!
女「っ……」
男「……ぅ」
自分のふくらはぎが、彼女のつま先に触れる。
背中合わせであるとはいえ、同じ布に体温を閉じ込めるということ、自分以外の体温が感じられるということ。
それが異性のものであるということ。
長らく渇きと孤独に晒されていた心は、思春期のごとく高鳴っていた。
女「寝れそう、ですか?」
男「ちょっと……緊張が、はい」
女「……わたしもです」
女「でも……いいですよね。なんか、こう」
男「はい。別に悪く、ないです」
女「わたしは……良いです」
ゴロン。
彼女のお尻が……俺の腰に触れる。
ぐいっ、と身を寄せてくる彼女の肉は心地よく、遠慮がない。
温かさ、柔らかさ、なめらかさ、加えて重みまで感じてしまったら、たぶん、本能的に全身で抱き締めてしまう気がする。
期待する身体が、ピリピリ敏感になっていた。
男「ダメですよ」
女「嫌ですか」
男「いえ、ダメというか、その、もうダメですから」
女「ごめんなさい。あなたは、優しいから……甘えてしまいます」
少し、身体が退いた。助かった。
温もりが遠ざかり……残念な心地がするのは、仕方ないか。
女「でも、良い人です」
男「……良い人じゃなくなったら、嫌な人ですか?」
女「……。そんな事ないですよ。わたしそんなわがままに見えますか」
23 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/01/01(日) 10:07:23.49 ID:voHu90LoO
男「……」
誘ってるんですかと口にしそうになり、つぐむ。
ぴと。
男「っ……!」
そうしていると、彼女の掌が、俺のわき腹に置かれた。
後ろ手に……足先などとは違った、明確な触れる意思を持った感触。
女「がまん、してますか」
彼女の声はだいぶ甘い。
またトクトク ドクドク バクバクと早くなっていく。
男「……ずっと、してます」
女「ごめんなさい。はっきり、言います」
女「さわっていいですよ」
女「さわって、ください」
女「さみしいです」
女「……もっと、いわないと、だめですか」
男「いえ、その、すいません」
きゅ。
男「これで」
女「……はい」
少しだけ体勢を変えて、同じく後ろ手に彼女の手を取った。
指は絡めないで、なるべく優しく。
24 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2017/01/01(日) 19:38:24.17 ID:1KFC0qFi0
雰囲気好き
25 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/01/01(日) 21:34:21.59 ID:6J1Wuc580
彼女の指を上から包むようにして、その感触を確かめる。
細くて、小さい。
触れた指の節は自分の手より少しひんやりとしたが、ぐっと押し付けるようにすると、しばらくして優しい体温を取り戻す。
女「……あったかいです」
男「よかったです」
甘い声が、より嬉しそうに囁く。
嫌な事は忘れてしまえとも、逃げてしまえとも、すぐに片付けてしまえとも言わないけど。
男「指……失礼します」
女「え。んっ!?」
休んで、融けて。
この温もりにほどけてしまえばいい。
ゆっくり、眠くなるような時間をかけて。
女「……声。」
男「はい?」
女「恥ずかしいです。変な、声……」
男「ぴくってしましたね」
行き止まりまで抱き締めた指のまたが、確認するように、くい、くいと引き寄せてくる。
恋人つなぎ……いや、なんだろう? 互いの手のひらが1つの面になるような、直列恋人つなぎ。
指の肉と温もりが、男の俺からして未知なほど柔らかい。
それはきっと、女なら誰でもというわけではなく……今の彼女の指だから。
女「……。あなただって、指の間すごいですよ。分かりませんか、どく、どくって」
男「えっ。脈って、そんなとこから分かりましたっけ」
女「きこえてますよ。ほら」
ぎゅうっ。
女「どく」
どく。
女「どく」
どく。
女「どく。……でしょう?」
どく。
男「う、わ。ホントだ」
どく。
女「ふふ」
どく。
どく。
女「あ、またすこーし、早くなりましたよ」
26 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/01/01(日) 22:01:30.02 ID:6J1Wuc580
男「……言わないでください」
女「あっ」
色々と、彼女が紡ぐ囁きが良くない。腰や、ソコに。
恥ずかしくて、ジョイントを少しゆるめる。
隙間が空いて、その間を通る空気は……寂しいものと思いきや、ほこほこと温かい。
女「えい」
またも引き寄せられた手は、きゅっと固く締められてしまった。
抵抗できない。
女「中指、つかまえました」
女「……あ。さっきより、よく、わかっちゃいます」
そんなの、俺が一番感じてる。
どく どく どく どく って。
漫画みたいに、心臓は激しく叩いてるわけでもないのに、心地よく早く、押さえられた血管がどくどくと。
男「……」
女「……」
不思議な高揚感。
雲に巻かれるような気持ち。
ささやかで切実な欲求。
眠りたい。
この人と、眠りたい。
男「ねむれそう……ですか……」
女「……」
きゅむっ。
気持ちいい。
気持ちいい……
きもちいい…………
男「おやすみ……」
女「ぅん……」
……………………
27 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2017/01/01(日) 22:25:49.38 ID:6J1Wuc580
眠りの時は長い。
しかし、その間の意識はごくごく短い時間。
なだらかに与えられる安心と心地良さと癒しが、眠りに落ちる一瞬へと煮詰められて。
誰もがとろける、快楽の味になる。
つまらない明日に出会うためのおやすみじゃない……自分から求めてしまいたくなる、最高のおやすみ。
男「……んっ」
ぴくん。
女「ん、……ぅー。んふっ……」
夢も見れないほどに脳が融けたまま……部屋に差す陽が昨日の終わりを告げた。
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