妖狐の国の座椅子あふたー

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336 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/22(木) 09:44:56.05 ID:hvZr6CaRO
女装男の娘はご褒美。
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/23(金) 00:49:00.66 ID:QuU0+F7jo
338 : ◆hs5MwVGbLE [saga]:2017/07/05(水) 03:46:37.58 ID:bMRps9Kk0
妖狐姫「うにゅも中々座椅子の心得が分かってきたのう」

てんこ「光栄でございます姫様」

妖狐姫「あの日の夜にあやつからいろいろ学んだのかの?」

てんこ「あの日とは?」

妖狐姫「うにゅに座椅子を貸してやった日のことじゃ」

てんこ「え……?あ、えーっと……ですね……あの日の夜は……」

妖狐姫「む、なんじゃ急に心地が悪くなったの」

てんこ「も、申し訳ございません」
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:47:41.25 ID:bMRps9Kk0
妖狐姫「やはりあやつが恋しいのぅ……はよう帰ってこぬのか」

てんこ「……そうですね。私も早く旦那様とくぅこの顔を見て安心したいものです」

妖狐姫「ぬぅ、なんとかしてあやつの方からもわらわから離れがたいようにできぬものじゃろうか」

妖狐姫「やはりコウノトリとやらに認められるほど仲を深めなくては……」

てんこ「あ……はい。そうでございますね」

妖狐姫「む……?」
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:48:11.71 ID:bMRps9Kk0
妖狐姫「のうてんこ」

てんこ「はい。どうなされましたか」

妖狐姫「前にコウノトリとやらの話を座椅子にしたときにあやつからあわれむような視線を送られたのじゃが……」

てんこ「は、はぁ」

妖狐姫「何故か今のうにゅも同じような顔をしておるのじゃ」

てんこ「そ、そんなことは」

妖狐姫「うにゅの言っておったこと……はたして本当なのかの……?」

てんこ「う……」
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:48:52.27 ID:bMRps9Kk0
………………………………

男「う、うえぇ……」

くぅこ「くろこ殿、助かったでごじゃるよ」

くろこ「はいまいどあり。兄ちゃんもまたね〜」

くろこ式ジェットコースターを降りた俺は彼女の巻き起す土煙を背中で浴びながら一人えづいていた。
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:49:24.50 ID:bMRps9Kk0
男「ゴホッ!!ゴホッ!!うぇ……」

男(だからかかってんだよ。帰るときくらい歩け!!)

くぅこ「主殿……大丈夫でごじゃるか……?」

地に膝を着く俺の背中をくぅこが優しくさすってくれた。

……少し救われた気がする。

男「はぁ、さっきの土煙もそうだが道中も酷かったしおかげで全身ドロドロだ。こりゃ屋敷に上がったら一番に風呂だな」

くぅこ「それがいいでごじゃるな。せっしゃ主殿の背中を流させてもらうでごじゃるよ」

男(マジで?)

かなり救われた気がする。
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:49:59.31 ID:bMRps9Kk0
くぅこ「てんこ殿に戻ったと伝えてくるでごじゃる」

くぅこはそう言い残し、屋敷の塀をひとっ飛びで越えて行った。

男(あれじゃあ他の忍者も楽勝で進入できそうだな)

あまりの屋敷の警備のザルさに少し心配しながらも門の前で待機していると内側から門が開き始めた。
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:50:34.01 ID:bMRps9Kk0
男「ただい……」

門が開き、見えてきたてんこさんの姿に挨拶する前に俺の懐に弾丸のように妖狐姫が飛び込んできた。

男「うわぁ!!」

妖狐姫「座椅子っ!!」

男「あはは……ただいま……」

てんこ「おかえりなさいませ旦那様。姫様は夕方からずっと落ち着かない様子でな。大変だったのだぞ?」

妖狐姫「ぐしゅ……座椅子ぅ……」

男「なんで泣いてんだよ」

妖狐姫「うにゅにもしものことがあったら……わらわは……わらわは……」

男「おおげさだな。戦地から帰ってきたわけでもあるまいし」

男(いやちょっとした戦地だったか?)

まあそんなこと口が裂けても言えない。
多分もう二度と隣街へ行けなくなる。
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:51:16.60 ID:bMRps9Kk0
男「というか今俺にそんなにひっついたら泥つくぞ」

てんこ「たしかに酷い格好だな」

男「車屋をえらばないとこうなった」

てんこ「その車屋は儲かってるのか……?」

男「ははっ……どうでしょうか」

あれで儲かってるならこの世に車酔いという言葉は存在しなさそうだな。
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:51:46.44 ID:bMRps9Kk0
男「とりあえず風呂入っていいですか?」

てんこ「ああ、それは全然構わないが」

妖狐姫「ならわらわも一緒じゃ!!」

男「え」

てんこ「なっ!?姫様は先ほど私と入浴を済ませたばかりではありませんか」

男「そ、それに俺と一緒にだなんて……なぁ……?」

くぅこと背中を流し合うという俺の天国計画に若干の支障が出るではないか。

それは一大事だ。
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:52:26.43 ID:bMRps9Kk0
くぅこ「てんこ殿、良いでごじゃろう。たまには夫婦水入らずで裸の付き合いというのも」

てんこ「くぅこ……」

くぅこがそんなことを言いながらてんこさんの後ろから歩いてきた。

男「え?じゃあくぅこは……」

くぅこ「せっしゃは後で一人ゆっくりつからせてもらうとするでごじゃるよ」

男(そ、そんなにこにこした顔でこの世の終わりみたいなこと言わないでくれよ……)
348 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:53:12.09 ID:bMRps9Kk0
妖狐姫「座椅子、忘れたわけではあるまいな」

男「何をだよ」

妖狐姫「帰ってきたらいつもの百倍わらわを愛でるという約束じゃ」

妖狐姫「百倍というのは片時も離れることのないということじゃ」

男「え、そういう意味だったのか」

妖狐姫「うむ。今晩は風呂も寝るときも共に過ごすのじゃ」

くぅこ「それがいいでごじゃるよ」

男「ちょっと待っていやその……」

妖狐姫「そうと決まればさっさとゆくぞ!!専用の座椅子がいつまでも汚れていては座るに座れんからな」

俺の背後へと回り込んだ妖狐姫が両手で俺の背中をぐいぐいと押し、屋敷へ上げていった。

男「あの……俺のうはうは天国は……」

妖狐姫「何をわけのわからんことを言っておるのじゃ。さっさと歩かんか」

男「……はい」

こうして俺の救われたような気持ちは風に舞う灰のようして消えたのであった。

泣きそう。
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:53:52.30 ID:bMRps9Kk0
てんこ「……大丈夫なのだろうか」

くぅこ「てんこ殿?」

てんこ(……今の姫様は)

(少し、危険かもしれん)
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:54:23.85 ID:bMRps9Kk0






妖狐姫百倍の夜






351 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/05(水) 03:55:07.12 ID:bMRps9Kk0
なうろうでぃんぐ……

(-ω-)
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/05(水) 07:36:04.81 ID:Ta8cq8g5o
期待
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/05(水) 08:50:48.16 ID:NKQlC4rXo

これは気になる展開
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/05(水) 19:23:59.56 ID:BP1E/1LA0
妖狐と言うぐらいだから変化すんのかな?
百倍に…
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/07(金) 02:58:42.42 ID:o9YtV6MYo
コウノトリに認められるのか
356 : ◆hs5MwVGbLE [saga]:2017/07/08(土) 01:49:34.51 ID:m4Ar2j/P0
妖狐姫「極楽極楽なのじゃ」

だだっ広い湯船の中、長い金髪を短く留めた妖狐姫は俺にもたれかかってご満悦だ。

男(これ広いの意味ないよな)

これならあっちの世界の俺の家でもできそうなくらいだ。
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:50:07.41 ID:m4Ar2j/P0
妖狐姫「やはりわらわにはうにゅのおらん日なぞ考えられぬな」

男「あー、そのことなんだけどな」

妖狐姫「む?」

男「俺、いろいろあってしらこと友達になったんだ。んでまぁこれからも隣街に遊びに行くことにしたんだよ」

男「だからこれからも一月に一回は俺のいない日があるんだ」

これくらいの報告は前もってしとかなければ……何も言わずに行こうとして妖狐姫に引き止められて隣街に行けないとなるとしらこが可哀想だ。

妖狐姫「な……」

男「ごめんな」
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:52:07.47 ID:m4Ar2j/P0
先ほどまで上機嫌だった妖狐姫の顔はしょんぼりとした表情になり、今にも泣きそうな顔で俺をじっと見つめてきた。

男(さすがにそうなっちゃうか)

男「じゃ、じゃあさ、こんなのはどうだ?俺が隣街から帰ってきた日は必ずいつもの百倍お前の相手になるってのは」

男(まあ一緒に風呂入って寝るくらいなら……)

妖狐姫「っ……」

男(……あれ?)

十秒ほど、風呂場は沈黙の中を水音が泳ぐだけとなった。

やがて妖狐姫は身体をくるりとこちらへ向け、俺を見上げると口を開いた。
359 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:53:19.31 ID:m4Ar2j/P0
妖狐姫「うにゅは……この街に飽きてしもうたのかの?」

男「え?」

妖狐姫「わらわと寄り添うことに、飽きてしもうたのかの?」

男「そ、そんなわけ」

妖狐姫「なら何故そんなことを言うのじゃ!!」

妖狐姫は俺の首に腕を回すとそのまま抱きついてきた。

彼女の身体に巻いてあった布は水を吸って重くなったせいか彼女が軽く立ち上がると同時にずるりと落ちて湯のなかに取り残された。

妖狐姫「わらわはこんなにも……うにゅと離れがたいというのに」
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:53:57.32 ID:m4Ar2j/P0
妖狐姫は一糸まとわぬしっとりと濡れた柔肌を俺の全身に押し付けてその言葉を体現した。

男「ちょっ……落ち着けって……」

多分、落ち着いてないのは俺の方だが……

いつも膝に乗せている妖狐姫といえど、全裸でこうされると落ち着いていられるわけがない。

いや、俺が幼女好きかどうかなんてのはこの際関係ないだろう。

男(そうだろう!?くぅこ)

……近くにくぅこの気配はない。

男(マジで夫婦水入らずにしてくれたのかよ)

今はその気遣いが逆に憎い。

男(主殿が幼き姫様を襲ったりしたらどうするのって!!)
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:54:25.35 ID:m4Ar2j/P0
男「この街に飽きたとか、お前が嫌になったとかじゃないから……本当だって……」

妖狐姫「……ならその証明をするのじゃ」

男(前にもこんなことがあったような)

………………………………

『じゃっ、じゃが…そうじゃな。やはりしらこもほざいていた通り言葉だけというのは信用ならんな』

『行動で示してみせよ』

………………………………

男(そういえばこいつはそんなやつだったな)
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:54:59.85 ID:m4Ar2j/P0
そのことを思い出し軽く深呼吸すると俺は妖狐姫を抱きしめた。

男(……柔らかい)

彼女と初めて会ったときのことを思い出す。
服の無い彼女はあのときの何倍も柔らかかった。

……それこそ、百倍。

全身の肌が吸い付くように俺と密着する。
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:55:51.92 ID:m4Ar2j/P0
男「これでいいか?」

妖狐姫「まだじゃ」

男(駄目か)

これ以上を求められると本当にいろいろ危ないことになりそうだけど。

男「せ、せっぷん?」

……しないと駄目ですかね?やっぱり。

妖狐姫「そうではない」

男「ん?」

あれ、違うのか。



妖狐姫「……わらわと、子をなすのじゃ」




364 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:56:33.81 ID:m4Ar2j/P0
男「へ?」

男(妖狐姫と……え……?)

頭の中で次々と犯罪的な妄想が膨らんでいく。

あと妄想と一緒にいろいろ膨らんで

男(いや、ちょっと待て落ち着け俺!!)

重要なことを忘れていた。
それは彼女がまだ赤ちゃんはコウノトリさんが運んできてくれるものだと思っていることだ。

つまり彼女の言う『子を成す』ということはそれすなわちコウノトリさんが認めてくれるくらい彼女とイチャイチャすることだ。

それならなんともない。
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:57:02.53 ID:m4Ar2j/P0
男「あはは……いやでももう夜だしコウノトリさんは今寝てるかもしれないぞ?だからいっぱい仲良くするのは明日からでも……」

妖狐姫「てんこから聞いたのじゃ」

男「ん?何を?」

妖狐姫「しょの……正しい子のなし方じゃ……」

男(てんこさんおい)
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:57:39.76 ID:m4Ar2j/P0
妖狐姫「だからの?もしうにゅもわらわから離れがたいと思ってくれておるのなら……それを示してほしいのじゃ」

妖狐姫「……わらわと」

妖狐姫は上半身だけでなくじりじりと下半身も浮かせて近づけてきた。

妖狐姫「……血を混ぜあって」

男(あれ……?)

何かが変だ。

もくもくと白い湯気が立ち込める風呂場、しかしその湯気は次第に桃色に染められていった。

まるで湯気じゃない何かになるように。

それに伴い俺の頭も靄に包まれるように意識が朦朧としてくる。
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:58:16.16 ID:m4Ar2j/P0
上目遣いで俺を見上げる妖狐姫が目を瞑って顔を寄せてきた。

妖狐姫「ん……ちゅ……」

彼女の舌が俺の口内を舐めとるように這う。

その感触が、死ぬ程気持ちいい。

妖狐姫「ちゅっ……れろ……ちゅっ……」

男(なんだ……これ……)
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:59:07.58 ID:m4Ar2j/P0



幻覚を見た。




大口を開けた狐の化け物が、俺の頭を丸呑みにする。




……そんな幻覚。



369 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 01:59:41.98 ID:m4Ar2j/P0
男(駄目だ。なんかよく分からないけど、これは駄目だ!!)

男「ぷはっ……!!」

幻覚のせいか、それとも俺の最後の理性がそうさせたのか、一瞬恐怖にも似た感情を抱いた俺は妖狐姫の両肩を持って彼女を突き放した。

男「はぁ……はぁ……」

妖狐姫「座椅子……?」

俺に拒絶されたかのように感じてしまったのか、彼女はまたも涙目で俺を見た。

男(な、なにかフォローを)

男「ちょっとのぼせそうになった……そろそろ上がろうぜ」

俺は彼女の手を引いて風呂場を出た。
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:00:24.24 ID:m4Ar2j/P0


男「ほら、身体拭いてやる」

乾いた手ぬぐいで彼女の全身を拭いていく。

上から順番に、肩、胸、背、腹、尻、太もも

妖狐姫「んっ……」

男(……すべすべだ)

最後に別の手ぬぐいで彼女の髪をわしゃわしゃと包んだ。
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:01:10.99 ID:m4Ar2j/P0

男「はい終わり」

妖狐姫「……座椅子」

男「ん〜?」

妖狐姫「今日は、寝るときも一緒じゃぞ?」

『今日は寝るときも一緒』帰ってきたときにも聞いたその言葉の意味は全く違うものとなって脳に認識された。

男「う、うん。分かってる」

やっぱり、何かが変だ。

今日は彼女の上目遣いを見るといつもより妙にどきどきしてしまう。

『可愛い』を超えた感情を抱きそうになってしまう。

誰もが一度は思ったことがあるであろう、あの風呂上がりに鏡を見たら『あれ?俺って結構イケメンじゃね?』と思ってしまうアレ。

アレがもし女の子にも適用されるならそれのせいかもしれない。

……とか?

男(ないか)
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:01:44.30 ID:m4Ar2j/P0
白い襦袢を羽織った妖狐姫は風呂場の脱衣所の戸に手をかけると最後にもう一度だけこちらを向いた。

妖狐姫「……先に部屋で待っておるぞ」

そう言い残し彼女は脱衣所を後にした。

男「はぁ……」

男(どうしよう。妖狐姫が百倍可愛い)

頭を抱えていると外側から誰かが戸を叩いた。

男「はい?」

男(くぅこかな?)

「旦那様、少しお話が……」

男「あれ?あ、はい!!ちょっと待っててください」
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:02:29.87 ID:m4Ar2j/P0
……………………

男「で、話とは」

服を着た俺は妖狐姫の部屋へ行く前にてんこさんの部屋へ寄っていた。

男「さ、先に言っときますけど!!別にあいつには何もしてませんからっ!!」

もしそのことで俺を叱ろうというのなら止めてほしい。
むしろ何もしなかった俺を褒めてほしいくらいだ。
374 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:03:03.28 ID:m4Ar2j/P0
てんこ「その逆だ。私は旦那様の心配をしていたのだ」

男「え?俺の、心配を?」

てんこ「そうだ」

てんこさんは湯飲みに淹れた茶を一口すすると話し始めた。

てんこ「……実は、領地主の血筋を持つものは年頃になるとその子孫を残すために無意識に異性を引き寄せるための妖気を出すのだ。後継者を確実に作るためにな」

てんこ「旦那様がそれに当てられてないか心配になったのだ」

男(なるほど、あの変な感じや桃色に見えた湯気はその妖気が原因か)
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:04:01.15 ID:m4Ar2j/P0
男「正直……当てられてました」

原因がはっきりしているならてんこさんも怒るまい。

てんこ「はぁ、やはりか」

男「あの、やっぱり腹くくれってことですか……?」

てんこ「まぁ、たしかに姫様ももう子どもを産めないわけではないし、街のためを思うならそういうことも早いに越したことではないのだが……」

てんこ「姫様ほどの幼い身体で子を産むとなるとそれだけで姫様の命の危機に繋がる」

てんこさんの言葉は何処か尋常じゃない重みを感じた。
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:04:31.53 ID:m4Ar2j/P0
男(まるでそういうことがあったかのようだな)

………………………………


『実は姫様の母上は姫様をお産になったさいに他界されて…』

………………………………

男「っ!!まさか……」

てんこ「ああ、そのまさかだ。姫様の母上は姫様ほどの歳で亡くなっておられる」

男(お、お義父さん……あんたって人は……)

英雄、色を好みすぎた。
377 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:05:08.21 ID:m4Ar2j/P0
てんこ「だから姫様にはまだご自身の成長を待ってほしかったのだ……それは叶わぬことではなかったはずだったのだが……」

てんこ「今回の件で姫様の中の旦那様への想いが爆発してしまったようなのだ」

てんこ「旦那様!!どうにかして姫様のお気持ちを落ち着かせてほしいのだ!!」

男「ど、どうやって……」

てんこ「それはもう……いつもの百倍姫様のお相手をするしか……」

もう百倍ってなんだよ。
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:05:52.15 ID:m4Ar2j/P0
てんこ「しかしやはり旦那様も殿方……血筋の妖気に当てられてずっと劣情を抑えていろというのは酷だろう」

男「……まぁ」

てんこ「だから」

てんこ「ど、どうしても我慢できなくなったときは……またこの部屋へ来てほしい。私が旦那様の……を……介抱しよう……」
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:06:34.49 ID:m4Ar2j/P0
男「え……」

てんこ「う、嘘じゃないぞ!!これも姫様のため……私は本気だ!!」

本気だと分かってもらうためだろうか。
てんこさんは顔をずいと寄せて俺に迫った。

絶対無理してる。

男「あ、あの……分かりました。分かりましたから」
380 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:07:03.98 ID:m4Ar2j/P0
男「じゃ、じゃあ万が一のことがあったときは……よろしくお願いします」

俺は畳に手をついて立ち上がると決意した。

男(てんこさんの手を煩わせるわけにはいかない)

耐えねば。

てんこ「旦那様……」

男「失礼します」
381 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:07:54.18 ID:m4Ar2j/P0
…………………………

廊下に出た俺は両手で自らの頬を挟むように叩いた。

男(……ちょっとてんこさんもいつもより可愛いなって思っちまったじゃねーか)

男(あーあーくそ!!一日屋敷を離れただけでみんながこんなにも愛おしく感じるなんて)

ホームシックも百倍だ。

男「はぁ……さて、どうしたもんかね」

男「……そういやくぅこは今頃風呂場か」

男(ちょっと、脱衣所に戻るか)
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/08(土) 02:08:27.87 ID:m4Ar2j/P0
なうろうでぃんぐ……

(-ω-)
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/08(土) 08:38:37.25 ID:IzdVSt+Go
384 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/08(土) 13:31:21.43 ID:0w4sEvN1O
これはツライ状態ですね(ゲス
385 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/08(土) 17:08:07.51 ID:C8dfoMaA0
こうのとりさん来るのかな?
くぅこの所にww
386 : ◆hs5MwVGbLE [saga]:2017/07/10(月) 02:52:07.59 ID:0qMfg27A0
…………………………

妖狐姫「座椅子、遅かったではないか」

男「あー、ちょっとな。てんこさんと話してた」

妖狐姫「むぅ」

妖狐姫は少し頬を膨らませてから、布団の中に入った。

妖狐姫「はよう!!」

敷き布団に俺が横になれるスペースを作ると彼女は急かすようにその場所をバシバシと叩く。

男「はいはい」

妖狐姫「はーよーう!!」

男「ちょっとくらい待てよ。よっこいしょっと」
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:52:48.29 ID:0qMfg27A0
俺が布団に入ると妖狐姫はいの一番に俺に抱きついた。

それに応じるように俺も彼女の頭を撫でる。

妖狐姫「まふっ……」

男(あれ?)

これではいつもと同じだ。

男(なら)

そう。このまま頭、そして尻尾を撫でていれば妖狐姫は確実に寝るはずだ。

そして彼女が寝た後に俺も無事就寝。
俺が戻ってきたことによって血筋の妖気も治まって明日にはいつも通り。

男(なんだ簡単じゃないか)

どうやら無理矢理魂を賢者にジョブチェンジさせるまでもなさそうだ。
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:53:37.08 ID:0qMfg27A0
俺はいつものように左右に揺れる妖狐姫の尻尾に触れた。

そのときだった。

妖狐姫「んっ、ひゃっ……」

男(ん?)

何故かいつもと反応が違う。
389 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:54:17.29 ID:0qMfg27A0
男(触り方が悪かったか?)

さらに『いつも通り』を強く意識して尻尾を撫でる。

妖狐姫「……んぁ」

またいつもとは違う反応。
しかし妖狐姫はくすぐったそうな反応を見せながらも俺の服を掴んだまま離そうとしない。

男(な、なんで……)
390 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:54:59.46 ID:0qMfg27A0
妖狐姫「座椅しゅ……」

男「妖狐姫……?」

妖狐姫「今日はいつもの百倍じゃ。その、頭と尻尾以外も……触ってほしぃ……のじゃ……」

妖狐姫が襦袢の袖を軽く引いて見せると先ほども脱衣所で触れた真っ白な肩が露出する。

彼女は自身の頭の上に置かれた俺の手を持ち上げるとそっとその肩に置いた。

男(まただ……)

視界が桃色の妖気ではっきりしなくなる。

手は俺の意思に関係なく勝手に動き出すと彼女の肩を撫で始めた。
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:55:36.06 ID:0qMfg27A0
妖狐姫「んむっ……」

またも無抵抗に彼女の口づけを許してしまう。

妖狐姫「ちゅっ……」

そしてさっきまで肩で止まっていた手は彼女の服に侵入しその小さくも熱のある鼓動を感じ取っていた。

妖狐姫「ちゅぅ……んはっ……」
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:56:07.52 ID:0qMfg27A0
妖狐姫は俺から顔を話すと勢いよく俺の胸に顔を埋めて

妖狐姫「……しゅき」

そう呟いた。
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:56:49.74 ID:0qMfg27A0



また、大きな狐の化け物が大口を開けた。




男(ああ……)




そして、ついに俺を頭から丸呑みにした。



394 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:57:31.47 ID:0qMfg27A0
男「妖狐姫」

俺は身体を起こすと彼女に覆いかぶさった。

目を潤ませ、服のはだけた妖狐姫が俺をまっすぐに見つめる。

妖狐姫「男」

妖狐姫「うにゅと血を混ぜ合う覚悟は、とおにできておるぞ……」
395 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:58:15.05 ID:0qMfg27A0

なるほどな

男(これが代々伝わる血筋の力、か……)

ありがとよ。
大きな化け狐さん。

あんたの力に背中押されたおかげで、もっと妖狐姫のことを好きになれた気がするよ。
396 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:58:55.62 ID:0qMfg27A0
でも本気で好きになったなら……




………………………………

『姫様ほどの幼い身体で子を産むとなるとそれだけで姫様の命の危機に繋がる』

『旦那様!!どうにかして姫様のお気持ちを落ち着かせてほしいのだ!!』

………………………………




男(守らなくちゃ、だろ)





397 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 02:59:42.44 ID:0qMfg27A0
決意と共に取り戻したほんの少しの意識の中、俺はズボンのポケットを上から握りしめた。

中に忍ばせておいた手裏剣の四つ角がズボン越しに手のひらに食い込む。

男「ってぇ!!」

妖狐姫「座椅子!?」

男(さっきくぅこの持ち物から持ってきといてよかった……後で返しとかないとな……)
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:00:43.88 ID:0qMfg27A0
俺は布団から飛び出すと部屋の隅にある柱の方向へ全力で走り出した。

男「らぁっ!!」

さぁ、逃げよう。

男(腰抜けなんでっ!!)
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:01:47.77 ID:0qMfg27A0


妖狐姫「何処へ行くのじゃ!!」

目には見えないが、狐の化け物の姿をした妖気は確実に俺をもう一度飲み込もうと追ってきていた。


その大口を広げて……
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:02:23.00 ID:0qMfg27A0
男(なーにが眠らせたらいいだ)

男(てめぇが先に眠ってろ!!このっ!!)

柱に手をついて頭を後ろに引く。

男(ロリコン座椅子野郎!!)
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:02:58.11 ID:0qMfg27A0





俺が頭を前へ降ったその後、部屋には鈍い音が響きわると共に、百倍の夜は終わりを告げた。





402 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:03:34.77 ID:0qMfg27A0
………………………………

てんこ(もし本当に旦那様が私を頼ってきたらどうしよう……)

てんこ(ひ、姫様を差し置いて旦那様と……)

てんこ「いやいやいや!!気をしっかり持ててんこ!!」

てんこ「これも姫様のため姫様のため姫様のため……ぶつぶつ……」

妖狐姫「てんこ!!」

てんこ「ひぁ!?だ、旦那様!?す、少し心の準備をする時間を……」

妖狐姫「寝ぼけておる場合か!!座椅子が……座椅子が……!!」

てんこ「ひめ、さま……?」
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:04:29.18 ID:0qMfg27A0
……………………………

男「うっ……うん……?」

目を覚ますと、日差しの眩しい朝が来ていた。

俺を覗き込むてんこさんの顔が見える。

てんこ「はぁ……確かになんとかして姫様を落ち着かせて欲しいと頼んだのは私だが……もう少しやり方はなんとかならなかったのか?」

てんこ「深夜にいきなり部屋の戸が開いたから旦那様かと思ったら青ざめた顔で姫様が私を頼ってきたのだ」

男「すみません。……いっつ!!」

謝りながら身体を起こすと頭痛が走った。

てんこ「冷やしてだいぶマシにはなったが額にはコブができていたんだぞ」
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:05:17.79 ID:0qMfg27A0
男「あの……妖狐姫はどこに?」

てんこ「姫様ならそこに」

てんこさんが俺の方を指差したので反対側を向くと妖狐姫がふてくされたように背を向けて丸くなっていた。

てんこ「……私は新しい氷を取ってくるよ」

「その間になんとかしておけ」声としては聞こえなかったが、部屋から出て行くてんこさんが俺を横目で見たとき、俺にはそう言っているように見えた。
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:05:56.52 ID:0qMfg27A0
戸が閉まる音と共に俺は布団から出た。

男「妖狐姫」

妖狐姫「……なんじゃ」

口こそ聞いてくれたがさすがに視線まではまだ合わせてくれなかった。

男(そりゃそうか)

女の子に恥かかせたんだ。
当たり前だ。

男「てんこさんから聞いたりした?」

男「俺がお前とその……こ、子づくりしなかった理由……」

妖狐姫「別に、理由なぞどうでもよいわ。血を持ってしてもわらわにはうにゅを惹きつける魅力がなかった。それだけの話じゃ」

血の話も聞いたのか。
ショックが大きいわけだ。
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:06:24.23 ID:0qMfg27A0
男「いや、その逆だよ」

妖狐姫を後ろから両腕で優しく抱いた。

妖狐姫「はぅ……?」

男「お前のこと、もっと好きになったから……守りたくなったんだ」

妖狐姫「む、むぅ……ならうにゅは、わらわのどういうところが好きなのじゃ?」

男「うーん?そうだなー……」
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:07:06.36 ID:0qMfg27A0



…………………………


『わらわの座椅子となるのじゃ』

『ええい!うるさいうるさい!うるさいぞ!てんことくぅこは今すぐ出て行くのじゃあ!』

…………………………



男「何もかもが突然でわがままだけど」




408 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:07:48.92 ID:0qMfg27A0



…………………………


『うむうむ。よいぞよいぞ!思った通りじゃ。うにゅと初めて出会ったとき、確信したのじゃ。うにゅはわらわにぴったりの座椅子になるとな』


『だからある日、本当にせっしゃなんかで良かったでごじゃるのかと主様に聞いたら『うにゅはわらわの目が節穴だと言いたいのか』と怒られてしまったでごじゃる』


…………………………




男「他人の長所をしっかり見る目があって」





409 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:08:23.41 ID:0qMfg27A0



…………………………

『はしたないものを見せてしまって申し訳ない…ですが…これでお分かり頂けましたか?少なくとも、わらわはこの者に愛情を抱いています』

…………………………



男「一度決め切ったことは絶対に曲げなくて」




410 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:08:57.64 ID:0qMfg27A0


…………………………

『ならぬ!くぅこが勝てなかった相手がまた攻めてきたらどうするのじゃ?怪我人が増えるだけじゃ…それどころか死人すらでるぞ…』


『まあそう下手に出るでない。そこでじゃな…うにゅには普段の感謝の気持ちも込めて本日は休暇を取ってもらいたいのじゃ』

……………………………




男「仲間想いなところが好きかな」




411 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:09:46.34 ID:0qMfg27A0
妖狐姫「わ、わがままは余計じゃ!!」

男「わがままも含めてお前だろ?」

妖狐姫「……それだけかの?」

男「いいや?そして何より」

これはきっと、俺が彼女の中で一番好きなところに違いない。
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:10:29.67 ID:0qMfg27A0



男「そんなにも芯が強くて立派な領地主なのに、なぜか俺にだけは……」




………………………………

『このわらわの美しい髪と尾を、この世で最も愛しいものに捧げる愛を持って撫でるのじゃ』

『んっ…あぁ…おい…撫でる手を止めるでない…揺籠から落とされた赤子の気分になる…』

『浮気した罪はその都度たっぷりとわらわに還元してもらうからな』

『座椅子…わ、わらわは…うにゅこと、愛しておるからの…』

『の〜座椅子ぅ〜…やはり仕事中もうにゅに座ってはいかんのか?もともとそのためにうにゅを連れてきたのじゃが…』

『帰ってきたらいつもの百倍わらわを愛でるのじゃ〜!!!』

………………………………


413 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:11:28.63 ID:0qMfg27A0







男「超がつくほど甘えん坊なお前が、俺は好きだよ」







414 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:12:34.29 ID:0qMfg27A0
妖狐姫「ざ、座椅子……」

やっと、振り向いてくれた妖狐姫は目に大粒の涙をためて俺に抱きついた。

妖狐姫「ざいしゅ〜!!」

男「おっとっと」

勢いに押されて思わず畳に尻餅をつく。

妖狐姫「わらわも……わらわもうにゅのことが……」

男「知ってる。知ってるから……」

妖狐姫「ぐすっ……ひっく……うぅ……」

男(多分俺も、お前といるときはこうしてるのが一番幸せなんだよ)

男(だってさ、俺はお前の)





座椅子、だもんな……




415 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:13:32.52 ID:0qMfg27A0
………………………………

妖狐姫「のう座椅子」

男「どしたー?」

妖狐姫「やはりわらわにはうにゅを魅了する力がまだまだ足りぬと思うのじゃ」

男「まぁ……その辺は今はまだ気にしなくていいだろ」

今だって十分可愛いのだ。
数年後にはとんでもないことになってそうだ。

今の百倍……いや、もしかしたら千倍くらいかもな。
416 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:14:38.00 ID:0qMfg27A0
妖狐姫「そこでの?今日からは寝室を共にしようぞ!!」

男「え、えぇ」

それって下手したら毎日妖気との戦いになるんじゃ……

妖狐姫「なんじゃその顔は、うにゅとわらわはめおとなのじゃ。それくらい普通じゃろ」

妖狐姫「そ、それに……うにゅはうにゅにすがるわらわが好きなのじゃろ……?」

妖狐姫「ならもう遠慮はせん!!本日からでも毎晩仲を深めるのが良い。少しずつでもわらわの虜にしてやろう」
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:15:15.00 ID:0qMfg27A0
男「で、でもてんこさんが許すかどうか……」

妖狐姫「そこはわらわの意思を突き通すまでじゃ」

妖狐姫「わがままも含めてわらわ……なのじゃろ?」

やられた。
まさか逆手に取られるとは。

男(わがままは駄目な部分として指摘しておくべきだったな……)
418 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:16:14.47 ID:0qMfg27A0
男(はぁ……貴重なくぅことの二人きりの時間が……)

妖狐姫「……そんなにもくぅこが好きか」

男「うぇ!?」

男(か、顔に出てたか!?)

妖狐姫「図星かの。うにゅは本当にくぅこ好きじゃのう……さすがにわらわでも嫉妬するぞ」

妖狐姫「まぁよい。うにゅがどうしてもというのならくぅこの寝室もわらわの部屋にすればよかろう。一人増えたところで狭くはならんわ」

男(いや二人きりというところに意味が……)
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:16:54.25 ID:0qMfg27A0
くぅこ「それは妙案でごじゃるな」

ぽんと手を打ちながら天井裏からくぅこが降りてきた。

男「え」

くぅこ「主殿と姫様が同じ場所にいれば夜の見回りも容易になるでごじゃるよ。せっしゃの寝室も移してもらえるなら一石二鳥でごじゃる。さすが姫様は考えることが違うでごじゃるな」

妖狐姫「じゃろうじゃろう?」

くぅこの言葉が追い風となって妖狐姫はすっかり誇らしげだ。
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:17:32.04 ID:0qMfg27A0
男(ま、まじかよ)

いや、でもしっかり者のてんこさんさえこの案を却下してくれればそちらに加担してまだ希望は……

てんこ「わ、私は反対だぞ!!」

男(おお!!)

新しい氷を持って戻ってきたてんこさんはまさにメシアに見えた。

妖狐姫「むぅ……てんこよ、夫婦の仲に水をさすものではないぞ」

てんこ「しかし何か間違いが起こってしまっては取り返しがつきませんので」

男(そうそう)
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:18:11.98 ID:0qMfg27A0
くぅこ「てんこ殿、それもせっしゃが見張っていればよいでごじゃろう」

男(くっ!!)

てんこ「くぅこ!!い、今まで黙っていたが旦那様に関しては貴様は信用ならんのだ!!貴様と旦那様の仲には何やら不純な空気が漂っているぞ!!」

くぅこ「しょっ!?しょしょしょしょんなことはないでごじゃるよっ!?」

妖狐姫「む……?」

男(ちょっ、ちょっと話がマズイ方向に向かっている気もするが……てんこさんいいぞ!!)
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:19:01.11 ID:0qMfg27A0
てんこ「……こ、これはもう私が見張りにつくしかなさそうだな!!私も姫様のお部屋で共に寝ることにしよう」

男「は!?」

妖狐姫「ぬぅ……しょうがないのぅ。それで手打ちとするかの」

妖狐姫「じゃがまぁ、食事もみなで共にしてきたのじゃ。そちらの方が賑やかでよいかもしれんの」

どうやら俺の意見は通せそうにない。

男「はぁ……」

男(……もうどうにでもなれ)
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:19:32.89 ID:0qMfg27A0

妖狐姫「座椅子」

男「ん?」

妖狐の国のお姫様は、絶対に断れないような眩しい笑顔を俺に向けて言った。
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/07/10(月) 03:20:29.24 ID:0qMfg27A0




「これからも、わらわの背もたれをたのんだぞ!!」



「……はいはい」






妖狐姫百倍の夜

おわり






425 : ◆hs5MwVGbLE [saga]:2017/07/10(月) 03:24:09.14 ID:0qMfg27A0


『妖狐の国の座椅子あふたー』

はとりあえずこれにておしまいです。


約4カ月飽きもせずに読んでいただいた皆さんは本当にありがとうございました。
エタらなかったのもそんな皆さんのおかげです。


またどこかでお会いしましょう。
(-ω-)
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/10(月) 03:25:10.40 ID:cNPfSYjzo
終わり…だと…?


こんなに周りの人メロメロにさせまくる座椅子なら俺も座ってみたい
427 : ◆hs5MwVGbLE [saga]:2017/07/10(月) 03:29:25.85 ID:0qMfg27A0
書けば書くほどR要素の蛇足感。

もしかしたらいらなかったかもしれない。

でもこれ自体が元々蛇足なので……まぁ……

(´-ω-`;)
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/10(月) 10:57:32.71 ID:R/mJ7b82O
『妖狐の国の孕みあふたー』はよ
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/10(月) 13:35:52.46 ID:+wTBOffx0
Ten years laterを頼む
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/10(月) 14:31:03.50 ID:mm5Fe+WqO
これは姫とてんこ(しらこ)の絡み入りの「孕みアフター」を読みたいですなあ。
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/10(月) 16:08:18.50 ID:tAamiC7so
>>425

R指定版も楽しみにしてるやで
432 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/10(月) 17:40:41.25 ID:MwPzWw4Uo
ええぇ
蛇足どころかナイス要素だったろ
てんこさんとかも楽しみだったんだが

まあでも完結乙
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/10(月) 22:14:59.94 ID:UCGJUHaA0
蛇足ではないぞ
てんこが残っているしな
434 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/10(月) 22:50:58.45 ID:FpVv136LO
しらこも残ってるしな
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/07/11(火) 06:47:27.17 ID:8PEHHxkXO
俺も残ってるしな
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