マリオ「最近、テニスやパーティーにゴルフばかりで…何かを忘れているような」

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73 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/16(火) 21:58:26.12 ID:ibXpSCDs0










        マリオ「…前へは俺が行かせてもらう・・・」





栄光の1位へ舞い戻ったのは兄であった


ワルイージは(苦肉の策だか)記憶喪失であるマリオを前へ行かせた
本調子でない英雄など恐るるに足らない

いざとなれば加速装置で横に並ぶことはできる…


そこで彼は警戒すべき相手をルイージ一人と定める



ワルイージ「残念だったなァ!緑の弟よォ!!」


ルイージ「ぐっ・・・」


ルイージ(僕は……
        賭けに負けたのか…!)


奴はマリオの先行を許し、ルイージの行く手を阻む…

ルイージにとって皮肉な結末で終わったのだ…





マリオ「むっ!トンネルを抜けるか!」


暗いトンネルを抜け、初めに拝むのは日の光だ…
時間にして7〜8分だったのかもしれない
それでも闇に目を慣らしていた彼らの目を眩ませるには十分すぎる

マリオ「…今なら地中から飛び出すモグラが
        サングラスを掛ける理由も頷けるな」


穴だらけの地点で飛び出してきた"チョロプー"達の出で立ちを思い出す
彼らがサングラスを掛ける真の理由が何かは知らないが
マリオはそんな皮肉めいた事を呟き、機体の速度を上げる


此処から先は下り道だ…


―――
――



マリオ等が白熱とした戦いを繰り広げる頃、所変わってチョロプー群…


「あいたた…」ヨロ…


「…僕のマシーン、壊れちゃったなぁ…」


真っ白な頭に赤い斑点模様…機体が爆散する前に投げ飛ばされた
キノピオその人だった…

キノピオ「はぁ〜これで、僕もリタイアかぁ…」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/16(火) 22:26:47.75 ID:ibXpSCDs0



      「あらぁ…でも、恰好良かったわよん♪」



キノピオ「えへへ、そう言ってもらえるとすごく嬉しい…って!?」



がさっ・・・


茂みの奥から姿を現す声の主

頭に特徴的な大き目のリボン
トカゲ等の爬虫類に見られるような長い尻尾
ピンク…というよりかは小豆色に近い体色に真っ白なお腹
大き目な瞳と大きな口

そして長い睫にアイシャドーを塗った目元がチャームポイント


そう…彼女(?)は!



キノピオ「キャサリンさん!」


キャサリン「あらぁん、キャ・ッ・シ・ーって呼んで♪」


キノピオの機体の爆発に自機を巻き込まれワルイージとのトップ争いから
惜しくも身を引く事を余儀なくされた彼女(・・・彼?)であった


キャサリン「キノちゃんも中々恰好良かったわよ?
       ヨッシーちゃんには劣るけどね」


パチンっ、とウインクをしながらキノピオの健闘ぶりを讃える
キャサリンにキノピオは照れる


キノピオ「あはは…ありがとうございます!」

キャサリン「機体は壊れちゃったけど…お迎えって来るのかしら?」

キノピオ「ええ、こんな事になっちゃったし…たぶん医療スタッフの方も
     一緒に来てくれるとは思うんですけどね…」


ガス欠やタイヤのパンク等でリタイアするしかない参加者が出た時に備え
ある程度、国のスタッフが動けるようにはしている
 機体が爆発するというのは想定外だっただろうが…

まぁ、なんにしても迎えが来るまで二人は此処で
暇を持て余す事になるだろう


キノピオ「そういえばキャサリンさんは
      どうして大会に参加なさったんです?」

キャサリン「いやぁ〜ん、それを乙女に訊いちゃう?」クネクネ

彼女(オカマ…?)は体をくねらせて照れくさそうに語ってくれた
優勝は無理でも入賞入りを果たし
その賞金でヨッシーとデートに行こうとしていた、と…

キャサリン「ほらぁ、ヨッシーちゃんってモリモリ食べるじゃない?
      だからお金がたくさん欲しくて…」

キノピオ「はぁ…そうですねぇ」


つまるところ、この恐竜族は思い人(?)とのデートの資金稼ぎの為に
参加していたらしい、そして惚気(?)話を延々と暫く聴かされた後…



キャサリン「・・・あらん?何か聴こえるわね…エンジン音?」ピクッ

75 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/16(火) 22:41:19.23 ID:ibXpSCDs0


      roooo……


   キノピオ「…!キノコ王国の救護班ですかね!」





        rooooooo………!





   キャサリン「…いえ、ちょっと待ちなさい…これ…」







   キャサリン「普通の車のエンジン音じゃないわよ…」



  恐竜族のキャサリンは自慢の耳で音を聞き分ける

   キャサリンの口調は気づけばゆったりとした物では無くなっていた




    ROOOOOOOOOOO O O !  !  !   !





    遠い向こうから近づいてくる"車体"が見える…


    そして…その"車体"に掲げられている"旗"をキノピオは見るッ!





   キノピオ「あっ!? あの旗は…! あの"国旗"は…!」



   キャサリン「あれは…!車じゃないわ!あれは…!!」



GOROOOOOOOOOOO O O !  !  !   !




 キャサリン「あれは…! "戦車" だわッッ!!!」




通常のカートの何倍もの出力を持つエンジンが高らかに轟音を響かせ
【戦争の為の兵器】が地を走って行くッ!


 その機体は…!







          "旧"クッパ帝国軍の国旗を掲げて…ッッ!!


76 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/16(火) 22:52:28.98 ID:TUv+xrOS0
キャサリンのあれは意識していたものかよwwwww
77 :>>76 YES [saga]:2017/05/17(水) 00:38:55.36 ID:ScQ5jS2d0




            キノピオ「せ!?せせせ、戦車!?」





立ち上る土煙、辺りに唸る轟音…遠目に見えていたシルエットは徐々に
近く、大きく、より鮮明に見えてくる

鋼鉄製の車輪…ゴム製の履帯

しかし、装甲の殆どは木材…ベニヤ板のようなモノ
丸太を縄で括りつけて縛ったかのようなモノを使用しており
金属の光沢が目立つのは車両の先端に設備された砲塔を初め
上層部のハッチ等の一部の部分であった





 それは、まるで…"敗戦し大破した戦車"を乏しい資材で辛うじて
走行できるように応急処置をしたかのような…
 言ってしまえば急ごしらえな見てくれであった




キャサリン「な、なによ!なんなのよアレッ!」



肉眼で捉えられるだけでも10両…小型の戦車が6
残りは砲が2門以上の大型だ



キノピオ「わ、分かりません!!あ、いや、分かりますけど…
     でも理解できません!!」

キャサリン「キノちゃん、どういう事…!」


キノピオ「え、えっと…まず、あの戦車なんですが僕はアレが
     何処の軍のモノなのか分かるんです
        でも、それはありえない事で…」


突然の兵器の登場に驚きを隠せず、同様するキノピオ
彼にキャサリンは落ち着いて説明するように諭す


キノピオ「は、はい…まず、あれは"旧"クッパ軍のモノなんです」

キャサリン「クッパ軍…? じゃあアレってクッパ大王の戦車?
      協定条約はどうなってるのよぉ?」


キノピオ「…  "旧" クッパ軍です…」





 "旧"

 わざわざ、【旧】という所を強調するキノピオは話を続ける


キノピオ「あの武装…あれは今から【10年以上前の武装】なんですよ!」

キャサリン「?…??」

キノピオ「昔…ピーチ姫がクッパに攫われて、マリオさんが
     ルイージさんと共に姫を救出しに向かった時に使われた…

      今はもう、全て廃棄された筈の兵器なんです!」


キノピオ「ありえないんですよ!
     とっくの昔に全部スクラップになった筈なのに…!!」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 01:45:03.57 ID:ScQ5jS2d0

             …そうです


         これは【過去からの忘れ物】…





「前方に人影を確認ッ!キノコ王国の住人と…?恐竜族でしょうか?
 ピンク色のスーパードラゴンと思わしき者がッ!!」


「……ワシ等の前に現れるとは運がないのう」ハァ…




       かつて、戦う事を誰よりも生きがいとし

      闘争本能を誰よりも誇りとした者達が居た…




「如何いたしますか…?」


「…」



          そう、"彼ら"は帰って来た…




「…」


「ふむ、景気付けにはよいかもしれんのう…」











            「構わん、撃て」












  【過去からの贈り物】は…災厄"達"はキノコ王国に帰って来た…!









  ズ ド オ オ オ オ オ オ ォォ ォ ォ ォ  ォ ォン

79 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 01:46:32.47 ID:ScQ5jS2d0

―――
――



 BUROOOOOOOOOOO O O !  !  !   !



クリボー「な、なぁ、…もうちょい詰められないッスかねぇ?」

ノコノコ「無茶言わないでください、これでも詰めている方です」


キノコ王国の城門を抜ける事、数分…
機体から投げ出されたキノピオの元へ向かう3匹は
レースの実況モニターでも見た平坦な道を走っていた…


道中、此処からトップへ躍り出るのは無理だと悟り
リタイアする選手をちらほらと見かける…


最早、他に走る者が居ない車道はただっ広く、それでいて空いている
高速道路となんら変わらない


ノコノコ「元々、2人乗りの機体に無理矢理3人乗ってるんですよ?
     …それにレディに窮屈な思いをさせるのですか?」


テレサ「同士よ…我に気を遣う必要は無いぞ?」
   (あのぅ…私は別に大丈夫ですよ?)


クリボー「ぐっ…それを言われちゃあなぁ…男が廃るっつーか…」


ノコノコ「なら、我慢ですな」


クリボー「…ハァ、そうッスね」








 roooo……




クリボー「あん?」




 rooooooo………!




クリボー「なんか聴こえるような?」


ノコノコ「…?そうですか?私は何も…っ!?」



       キキィィー―――−ッ!!



クリボー「おわああぁぁぁぁー―――っ!?」
テレサ「!?何事!?」


80 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 01:56:42.41 ID:ScQ5jS2d0


 急ブレーキを掛けられた事で慣性の法則に従い乗っていた三匹は身体が
前のめりになり、シートベルトをしていたノコノコはともかく
 彼に捕まっていたクリボー、そしてテレサは
危うく車体から跳ね飛ばされそうになった



クリボー「なにすんスか!?あぶっねぇなぁ・・・」





ノコノコ「・・・」





ノコノコ「クリボー君、私は疲れているのかな?」


クリボー「ハァ?いきなり何を訳わかんない・・・―――」






青ざめた瞳、見つめる先には彼らクッパ軍にとって懐かしいモノがある





クリボー「・・・マジかよオイ」


テレサ「・・・戦車」





【7匹の子クッパ達】


その昔、クッパ帝国軍はピーチ姫を攫った後、子クッパ七人衆
すなわち【ラリー】【モートン】【ウェンディ】【イギー】【ロイ】
【レミー 】【ルドウィッグ】等が世界各国の国王から魔法の杖を奪い
王達の姿を動物に変え政府の動きを止めるなど本格的な世界侵攻を図った


もっともソレはマリオブラザーズの活躍により失敗に終わったのだが…




今、ノコノコ達の眼差しの先にはその時代の産物があるッッ!!



木製の装甲、スパナを投げる【プー】達の潜む鉄製のハッチ
コストパフォーマンスと生産性のみを重視し、旋回しない砲塔を用いた
自走砲に近い創りの戦車等は確かに過去のクッパ軍のモノであった!



クリボー「ど、どどどどいうことッスかぁ〜!?」




突如、目の前に現れた過去からの贈り物


さぞ混乱した事だろう、大戦時代の旧式戦車が平和な時代に出現する

戦車がタイムスリップでもしてきたかのようである

81 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 02:02:08.72 ID:ScQ5jS2d0


キリキリッ  ガシャンッ!


テレサ「! 砲が我等を狙っているぞ!」
    (せ、先輩!!砲門が私達に…っ!)


ノコノコ「ッ!」グッ



GYUROOOOOOOOoooooooo…!!!!!



予測不可能な事態に陥り、呆けていた彼は後輩の声でハッと我に返り
アクセルを強く踏み込む

刹那…! 機体のマフラーは排気ガスを噴出し
車輪は土埃を上げてその場から発つ



クリボー「のわあああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」

ノコノコ「くっ!振り落とされないようにしっかり掴まってください!」

クリボー「む、無茶言うなああああぁぁぁあああぎゃあああああ!?」


テレサ「うっ…」グッ



彼らがその場から直ぐに発った後だった…







 先程までノコノコ達が居た場に砲弾が着弾し
       黒煙立ち上るクレーターを築き上げたのは…



クリボー「うううううう撃ってキタアァァァァ!?」


一発目の砲弾が放たれ、それを合図としたかのように二発目、三発目と
矢継ぎ早に戦車の群れは砲弾を打ち始める



クリボー「何!何!なんなの!なんなワケ!?何で俺等狙われてんの!」

ノコノコ「そんな事、私だって知りませんよ!!」


跳んでくる火薬の塊を避ける為にブレーキ、アクセルを交互に踏み分け
ハンドルを大航海時代の船長が面舵、取り舵と舵を取るように
命一杯に動かしていく…

故に彼らはジェットコースターの比ではない強力なGに晒される



       ズドオオオオオォォォォン!!



クリボー「ぎにゃああああああああぁぁぁぁぁ!? 今当たりかけた!
     死ぬ死ぬ!誰かヘルプウウウウウウゥゥ!?」


ノコノコ「煩いですよ!!黙ってください!」

82 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 02:08:45.96 ID:ScQ5jS2d0
*********************************


           今回は此処まで!



            [前にも書いた事]



 今回出た【戦車】


>木製の装甲、スパナを投げる【プー】達の潜む鉄製のハッチ
>コストパフォーマンスと生産性のみを重視し、旋回しない砲塔を用いた
>自走砲に近い創りの戦車等は確かに過去のクッパ軍のモノであった!



    SFC時代のゲーム【マリオ3】のworld8

    つまり暗黒の国に登場した戦車ですね…



 砲から火が出るタイプや砲弾、キラー、ボム兵など
 バリュエーション豊富(?)な戦車が多く出てきますね

*********************************
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/17(水) 04:07:43.83 ID:AV5ENM1A0

前のにも書いたけどSFのマリオカートとかマリオコレクションぐらいしかマリオをやったことないのでこの戦車は本当にストライク
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/17(水) 17:56:42.14 ID:qRNGb5B5o
こっちに引っ越してたのね乙
85 :>>83 ありがとうございます [saga]:2017/05/17(水) 21:09:03.42 ID:ScQ5jS2d0




     ズドオオオオオォォォォン!!



                ズドオオオオオォォォォン!!




轟音唸り、黒煙が立ち上る大地

自分達目掛けて向こうに敵意があるのは明らかだった




クリボー「どうすんの!?どうするんよコレ!?
      このまんまじゃ俺達いつか吹っ飛ばされるっスよ!!」

ノコノコ「くっ…それは分かりますがっ!」グッ



フットペダルを交互に踏み分けハンドルを切る
この動作のみで飛んでくる砲弾を避け続けるノコノコは友人の言葉に
"この後をどうするか"答えを返せずにいる


向こうは戦闘を想定して創られた兵器

対して此方は非武装の競技用の車両…避ける以外に何ができようか?
こういう時に「ジリ貧」という言葉が浮ぶのだろう



ノコノコ「…相手は事もあろうに旧クッパ軍の戦車を使っています」

ノコノコ「問題は…アレを使っている連中が何者かです」



可能性として考えられるのは3点

・自分達は知らされていないが上層部の判断



 クッパが協定で「お互い仲良くしましょうね」と油断させ
その間にキノコ王国を攻め落とすという策を練っていた


個人的にこれはありえないと彼は考える

まず、ピーチ姫を攫っていない…
彼女を捕らえる前に行動を起こすのはクッパらしくない

マリオブラザーズを頼みの綱とし、国防能力があまり高くは無いとはいえ
そんな事をすれば国が警戒態勢を敷く筈だ

攫う前に姫は厳重警備体制の中へ避難させる
(屈強な兵隊揃いのクッパ軍団ならわけなく蹴散らせるが)そこまで
何も考えない程、彼等の使える主君は無能ではない


クッパは内政はともかく戦<イクサ>に関しては頭が回る御仁だ


それにクッパ軍である自分達を攻撃する意図が掴めない…


とすれば消去法で残り2点である可能性がある

すなわち…
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 21:16:43.49 ID:ScQ5jS2d0




   ノコノコ「…テロリスト、ですかねっ!」キッ!




キノコ王国でもクッパ軍団でも無い全くの第3勢力
それが何処で拾ったかしらないが戦車の残骸を回収して
戦闘行為を行っている…



そう考えたッ!




…いや、…本当は"そう思いたかっただけ"

2点の内、ノコノコは可能性の低い方を選びたかった



―――信じたくなかったんだ…




お互い信頼しあっていたと思っていた同じクッパ軍団の仲間が
謀反を起こし、あまつさえ苦楽を共にした仲間の自分達を
吹っ飛ばそうとしているなどと考えたくなかったのだ…



…テロリストである可能性が低い事には当然理由がある

戦車の残骸はマリオ達と闘争を繰り広げた古戦場にあった残骸
ゴミ捨て場の瓦礫を10年分掘り起こしていくなどすれば幾つかは見つかる



それだけならまだ第3勢力の存在と決め付けられるが
あれを修復したとなれば、"旧クッパ軍"時代から所属している技術士
もしくは設計図等のどちらかが必要だ


少なくとも、あの現役時代から現代までのそのままの状態で来たような
復元を見る限りには…




そして如何に簡単な創りとは言え、運用方法を熟知するとなれば
それなりに訓練期間も要する

戦車等が何年前に復元されたか、はたまた昨日今日で直されたかは
知らないが、砲弾を数発撃てるぐらいには
乗りなれた乗員が乗っているのは間違いない


クリボー「…な、なぁ…テロリストって…言うけどよ…ありゃあ…」


テレサ「…同士よ、我等は思考を止めるべきにあらず
    我等の前に立ちはだかる者は何人たりても敵である筈なのだが」
    (ノコノコ先輩…考えたくはありませんが
      あの戦車に乗っている人達は…クッパ軍の人なのでは?)


ノコノコ「…」



ノコノコ(分かっていますよ…、分かってはいるんですよ)


 可能性の低い方とは別の可能性…この協定中に
我らが仕える主君の意に背き、あまつさえ苦楽を共にした同志さえも討つ

 どのような事情か何がどうしてそうなったかさえ分からない
だが、襲ってきたのは紛れも無い"仲間"達…一番否定したい可能性だった
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 21:24:33.95 ID:ScQ5jS2d0


ノコノコ「…クリボー君、君とは長い付き合いだから訊いて置きたい」



ノコノコ「私達は今、旧クッパ軍の兵器を使いクッパ様の名誉を
      貶めようとしている"テロリスト"達に狙われています」


ノコノコ「私達の取れる選択は2つ」




―――"テロリスト"
       半ば家族同然のような同胞達が襲ってきたとは言わない




ノコノコ「このまま、砲弾をどうにか避け続け
             この場から撤退…もしくは」






   ドドドドドドドドド…!

             ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!











   ノコノコ「私達とクッパ様の名誉の為…っ!
                アレを大破する事ですっ!」







クリボー「た、戦うっていうのかよ…ッ!相手は戦車だぜオイ!」


ノコノコ「…君が嫌だというなら私は全力で君達を安全地帯まで逃がす」




ノコノコ「そして、再び戻ってアレを止めます」



クリボー「…ノコノコ」



後輩のテレサ、そして自分と違いサボることなく門番として勤務した
旧知の友を見る…


   ――目には決意の色が見えた

   一度、この目をすると相手がマリオだろうとルイージだろうと
   問題無く吶喊していくのは彼がよく知っていた…







クリボー「…汚ねぇッスよ」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/17(水) 21:25:59.22 ID:mDCUrmtw0
かっこいいけど、見た目を想像すると……
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 21:26:23.08 ID:ScQ5jS2d0


クリボー「あんたぁ、マジに汚ねぇ…」



クリボー「マジで卑怯過ぎッス」



ノコノコ「…」

テレサ「……っ!」オロオロ



クリボー「仲間を逃がして、自分だけ戻って突撃とか…」

クリボー「そんなんモン
      ベタな少年漫画ならそいつぁ死亡フラグじゃねーッスか」




クリボー「俺、自分でも酷いヘタレだって自覚はあるッス」

クリボー「けどよ、そんな事言われて『はい、逃げます』って
      なんつーか、"男が廃る"っつーか…」










クリボー「俺はヘタレッスよ…でもね、ダチ公見捨てて尻尾巻く程
      糞野郎じゃねーッスよ!!!」












ノコノコ「そう言ってくれると思ってました」ニッコリ


クリボー「うわぁ…最高に汚ねぇ…」


ノコノコ「それで、テレサ君、君はどうする?
      レディーは逃げても良いと思いますよ?」



テレサ「わ、我とて誇り高き軍の一員!それに隣国の遣いを見ずに
     帰るなど片腹痛いわ!」
    (わ、私もお手伝いしますっ!キ、キノピオさんだって
      見つけていませんしっ!)




ノコノコ「ふふ、では行きましょうか…!」



 ズ ド オ オ オ オ オ オ ォォ ォ ォ ォ  ォ ォン !



戦車の発砲音を背景に彼等はお互いの顔を見る


ああ、自分達は良い友人に恵まれた…

久しく忘れていた感覚、共に力を合わせ共通の強敵へと立ち向かう感触
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 21:43:26.23 ID:ScQ5jS2d0



    【クッパ軍門番3人衆 VS "旧"クッパ軍】・・・ッ!




ノコノコ「ふんっ!」グッッ!


GYUROOOOOOOOoooooooo…!!!!!



クリボー「ぬおおおおぉぉぉぉっ!?」ガクンッ!


勢いよく踏みつけるアクセル
もう何度体験したか…急加速で身体が後ろへと仰け反りそうになるのを
堪え、3匹の門番を乗せた機体が突っ込んでいく






―ノコノコ『良いですか?作戦は大まかに言ってしまえば
       一台でも構いませんので戦車の無力化、奪取です』


―クリボー『簡単に言ってくれますねぇオイ!?』


―テレサ『…どうするのだ?』


―ノコノコ『知っての通り、あの戦車は【プー】がマリオさんを
       迎撃する為のハッチがついています』


―ノコノコ『あそこから内部へ入り込み一台奪う
       その為にはクリボー君、君が要となります』


―クリボー『のわっ!?あっぶねぇ…!また砲弾が真横に落ちたっ…って
      俺ッスかぁ〜!?』


―ノコノコ『ある条件が揃ったらあの戦車のすぐ傍まで接近します
       そしたらこの中で身軽な君が戦車へ飛び乗る事』


―ノコノコ『浮遊が可能なテレサ君が適任では?と
       考えるかもしれませんが
       君でなければ駄目な理由がある、それは――』







クリボー「マジにこんなん巧くやれるんですかねぇ…」



自他認めるヘタレ筆頭の彼…ノコノコにああは言ったモノの
やはり怖いモノは怖い…


自然と身体は震えだす…


クリボー(今、相当な速度で走ってるよな…)


クリボー(こんで飛び乗るのに失敗したら俺…)…ゴクッ!


母なる大地にその身を打ち、全身打撲程度では
済まない怪我を負うのは間違いない

91 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 22:15:57.00 ID:ScQ5jS2d0


クリボー「ええいっ!ままよ!!」


涙を堪え、唾を飲み込み覚悟を決める
  腐っても彼はクッパ軍の一員だ…っ!


―――
――


「戦車長!向こう側が此方に突っ込んできます!」

「なんだと…!? おい、指揮官殿はなんと!?」

「少々お待ちください…!……電報が届きました!
  『ワシ等は本隊と合流しキノコ城へ向かう、1両残してはいく
     おぬし等で確実に仕留めよ』との伝令であります!」


「そうか!ならば撃てぃっ!」


「「「「了解<サー! イエッサー!>」」」」


―――
――


  GOROOOOOOOOOOO O O !  !  !   !



ノコノコ(…! 2両残して殆どが…っ!)


丁度、自分達が目掛けている車両とそのすぐ傍の1両を残し
散開するように道をそれてこの場を離れる戦車部隊

ノコノコ等を無視し、そのまま整備の行き届いた道から王国への突撃
そしてあえて迂回させ、反対側やまた別の方面から国へ攻め込む進み方


一点から攻めるではなく、東西南北あらゆる方面から攻める事で
国民ならびピーチ姫の脱出ルート防ぎつつ四方八方から侵攻するにより
相手国家を混乱させる一種の心理戦である…



キリキリッ  ガシャンッ!


テレサ「せ、先輩!!ノコノコ先輩!砲が!!」


距離を詰め、その状態で砲門が此方を向く
これにはテレサが素を出してしまう程だ




ノコノコ「まだです!まだ!距離を詰めて…っ!」



ノコノコ(後少し…っ!)

92 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 22:21:07.47 ID:ScQ5jS2d0


小型戦車6両の内の2両が残るハイウェイ…

自軍の兵器だったからこそ欠点は分かる、あの砲門は旋回しない砲塔を
用いた 自走砲に近い創り…

故に戦車には攻撃パターンが2、3点しかない
敵に接近し、そのまま相手を轢殺…
上部ハッチから【プー】がスパナを投げる、砲塔による発砲…


欠点とはすなわち、機体の懐に潜り込む事である…!

履帯で踏み潰される事さえ注意していれば、真正面でなく真横に居れば
然程、脅威でもないし
 その位置でなら砲に狙い撃ちされる事はなく、車両のすぐ下では
【プー】達にとっても死角となり、仮に気付かれていても
スパナを当てづらいのだ


それに…





―――
――


「せ、戦車長殿!奴等、此方に接近してきます!」

「うろたえるな!非武装の機体に何ができる!」

「で、ですがこれ以上接近されては同士も援護ができなくなります!」

「ぐ、ならば早く撃て!この距離では外すまい!」

―――
――





それに…

    懐に接近すればもう1両の戦車に撃たれる事もなくなる
 同士討ちで戦車を破壊してしまう事になりえるからだ




  ズ ド オ オ オ オ オ オ ォォ ォ ォ ォ  ォ ォン !








   ノコノコ「来たッ!今です!テレサ君!」



     テレサ「…っ!はぁあっ!!!」




 放たれた砲弾は真っ直ぐノコノコたちへと向かっていく、そう!
この至近距離では外しようが無い!直撃は確実であったァ!!!


  だが…!






   スウゥゥゥゥ…・ ・ ―― ‐
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 22:25:37.70 ID:ScQ5jS2d0



「せ、戦車長!あ、相手が…!」

「ば、馬鹿な…!」

「き、き、き…」パクパク…











  「 消 え た だ と お お おお オォ ォォ!?!?」











【アイテム:テレサ】

 一定時間、ライバルに姿を認識できなくさせ、なおかつ
 緑甲羅、赤甲羅、バナナの皮、その他の攻撃を受け付けない









  ドオオオオオオオォォォォォン!!

放たれた砲弾は門番3人衆に直撃する筈だった…ッ!!


しかし、直撃の寸前で3人は姿を消す…否ッッッ!




  テレサの念力により彼等に当たる筈だった砲弾は透過したのだッ!

後方で黒煙を上げ地にクレーターを創る!しかし門番3人衆は生きている

 姿は見えずともエンジン音が聞こえるのだッ!



「お、落ち着け!テレサだ!テレサの力を使っているだけに過ぎん!
  砲弾を用意しろ!奴等が現れたらぶち込め!」

「せ、戦車長!砲弾が1つ無くなってます!」

「な、なにィ!?」



【アイテム:テレサ】

 追加効果としてライバルの持っているアイテムを奪う効果がある



テレサ「…ぁ、ぅ」グッタリ
ノコノコ「…お疲れ様です、後は彼に任せましょう…」



ノコノコは友人を見据える、今、敵から奪った
     火薬の塊を持ち飛び移らんとする勇姿を…ッ!
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/17(水) 22:27:19.87 ID:ScQ5jS2d0
*********************************


           今回は此処まで!



           [前にも書いた事]



>懐に入れば大丈夫

戦車は実際車輪に触れててもダメージを受けませんからね…

横スクロールのステージだから放置してればゲームオーバー(轢殺)
それを注意すれば真っ直ぐにしか飛ばない砲弾や【プー】は脅威じゃない

精々、たまに戦車から飛び出すボム兵くらいですね…あのステージ





  マリオカートで赤甲羅3つをテレサに奪われた時の悔しさは異常

*********************************
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2017/05/19(金) 08:42:38.55 ID:h6ok4AZjO
お疲れ
どういう意図があってこっちに移ったかは分からんが(グロ描写?)これからも応援してる
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 21:21:53.13 ID:vVU7xdY70


 徐々に3人の乗った機体は戦車へと近づく

この時、既にノコノコの策通り戦車からの砲撃は無くなっていた!



唯でさえ姿を認識できなくなった3人(仮に位置を特定できても透過…)
姿を現した頃には相手の懐に飛び込んだ状態、同士討ちを恐れ
もう1両からの援護射撃は来ないだろう






   クリボー「…つ、ついに来ちまった…」ゴクッ




生唾を飲み込む

武者震いが止らない

冷汗が滝のように流れ出す





ノコノコ「クリボー君!飛び移るんだ!」

テレサ「せ、せんぱい…」コホッ



クリボー「…っ! う、うおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」ダッ!



かつてクッパ軍団がある男に乗っ取られた事があった
【マメーリア王国】で暗躍し、後に姿を眩ませていた人物
自称天才科学者【ゲラコビッツ】の手によって…


その時に彼も捕らえられ【エクボンの森】の牢へ幽閉された



クリボー(や、やってやる!俺だってクッパ軍なんだ!)



半ば野ざらし、誰の目にも止らぬ森の奥深くで救いを待った時に
主君が解放してくれた事、共に戦った日々は今だって忘れない…そう!




     あの時のように!彼は奮い立ち跳んだッ!




クリボー「うああああああぁぁぁぁ!やっぱ怖えええぇぇぇぇぇ!!」



以前ならば主君が発破をかける為に背中に火炎を吹きかけた事だろう
あの時は本当によく跳んだものだ…



       ヒュウウゥゥゥ…


            ガ ン  ッッ  !!




クリボー「あでっ!?」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 21:26:11.55 ID:vVU7xdY70


クリボー「いっつ〜…でも、なんとか飛び乗れたッス」


 敵から奪った火薬の塊も落としてはいない
彼の姿はテレサの効力でまだ敵には見えない…きっと戦車内部では
見えない何かが降ってきたと騒いでいるだろう




―――
――


「なんだ!今の音は!」

「て、敵です!敵が飛び乗ってきました!」


「総員!武器を持――」



戦車長が乗組員に指示を出した頃にはもう遅い
上部ハッチが開かれクリボーが突入する!

ご丁重に火気厳禁の砲弾まで抱え込んで――




クリボー「動くんじゃねーッスよ!!
      動いたらコイツをブン投げる!っしたらドカンだぞ!」





「ぐっ…!」



クリボー「っ…あんた…!」



乗員を彼は当然見た、どれも全て見知った顔だった…
予測はしていたが"やはりそうだった"、と認識し
彼は内心で落胆する



そして彼等を指揮する【戦車長】の顔を見る



クリボー「どういうことだよ?なんでこんな事すんだよ!」



クリボー「【ブーメランブロス】…!」



ブーメランブロス「…」


クリボー「おい!黙んなよ!なんだってこんなワケわかんねぇ事…!」



ブーメランブロス「栄光のクッパ軍を再興するためだ!」

クリボー「ハァ!?再興!?お前何言ってんだよ!」



ブーメランブロス「我々は覇気を失くしてしまわれた
          クッパ様の目を覚ます為に"指揮官殿"に従った!」


ブーメランブロス「全ては栄光を取り戻す為だ!」
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 21:38:33.93 ID:vVU7xdY70

 【戦車長】こと、ブーメランブロスは沈黙を破り、語り出す
徐々に語気を荒げ、雄々しく…息巻くように言葉を紡ぐのだ



ブーメランブロス「なぁ!お前だって同じクッパ軍団なら分かるだろ!」


ブーメランブロス「かつてマリオ達と戦っていた俺達は輝いていた!」


ブーメランブロス「なのにッ!…なのに、だ…ッ!」




彼は…『過ぎ去った栄光』を思い出しながら唇を噛み締める
そしてクリボーへ言うのだった


ブーメランブロス「時が経つにつれて、俺達は…戦場へ出なくなった」


ブーメランブロス「俺だけじゃないッ!俺の仲間も!みんな、みんな!
          戦いを誇りに想い、日々闘争していた俺達がだ!」


ある時は雪と氷に覆われた地で
  ある時は照り付く太陽の下、砂漠のど真ん中でだって戦った


互いに傷つけあい、痛み、苦しみもした



だが…そんなモノは後になって「良い思い出だった」と笑い飛ばせる程
その"瞬間が誇らしかった"…


 自分達は尊敬すべき漢の為に戦い、好敵手と呼べる強者と戦った

そんな"誇り"を持っていた…




ブーメランブロス「俺が最後に戦ったのが何時だか分かるか?」


ブーメランブロス「ルドウィック様達と共に各国を攻めた時を最後に
          俺は戦場から姿を消した…」



ブーメランブロス「兵舎の隅で新人達に在りし日の武勇伝を語り
          またいつかクッパ様の為に戦える、そう信じて
          長い月日を待ち続けて!」








ブーメランブロス「気付けば俺はいい歳したジジイだ…
           自慢の武器はカビ臭い武器庫で埃にまみれ…」







ブーメランブロス「俺は!俺達は"埃"にまみれたかったんじゃない!
           "誇り"の中で生きて居たかったんだ!」

ブーメランブロス「お前なら分かるだろ!?なぁ!?」




クリボー「…わかんねぇッスよ」
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 21:42:05.75 ID:vVU7xdY70

 初めてクリボーが戦場に出た時は青臭い小僧と周りに言われた
中でも目の前のブーメランブロスは自分の何倍も生きてた年長者で
自分が馬鹿やるたびに自分を叱ってくれた


ある種の親心みたいなモノだったのかもしれない…


他の兵もいい歳したオッサンばっかで
 青二才だった彼は同僚のノコノコとくだらない話をしてよく笑っていた


クリボー「俺よォ、いつも説教ばっかのあんた等は好きじゃなかったッス
     けど…"いつかはこうなりてぇ"って思える男だと思ってた」


クリボー「矛盾してんのはわぁってる
      先輩面して、聴く側にしちゃ迷惑な…でもちゃんと後輩の事
      考えてくれるオッサンになりてぇって…」



クリボー「それが…なんでこんなテロ紛いな事すんだよ…」




クリボー「栄光? 誇り? そりゃ確かに良いもんだよ…
     けど、こんな風に今の平和をぶっ壊してまで欲しいのかよ…」





      ブーメランブロス「…俺にとっては今の世界は生き辛いんだ」





ブーメランブロス「毎日、テニスやゴルフにパーティばかり…          
         ああ、そうさ!誰もが手を繋いで平和を謳歌する!」


ブーメランブロス「そりゃ、最高に幸せだろうよ、誰一人傷つかないんだ
          でも…そんな世界がやって来て
          暗い物陰の隅に押しやられる奴等はどうだ?」



ブーメランブロス「初めは【アイツは強かった】と敵の心に
         印象を残せる程、華々しく戦った
         だが、時代が流れてしだいに誰からも忘れ去られて」




ブーメランブロス「俺は…そんなの嫌だ、誰だって良いから
          俺達が居た事を記録して欲しいんだ
          俺達の名前を覚えていて欲しいんだよ!」





なんとも言えない気持ちだった…


目の前の口うるさい年上は、クリボーの憧れだ

…確かに気持ちは分からなくなかった、時が経つにつれて彼等が
前線に立たされなくなって、落ちぶれていく姿

もし自分がそんな立場なら認められただろうか?


ブーメランブロス達の"指揮官殿"とやらが
何を考えて行動しているかは分からない…その指揮官も同じなのだろうか

100 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 21:45:26.28 ID:vVU7xdY70


クリボー「おっさん…もうやめようぜ、な?」



ブーメランブロス「…」



クリボー「こいつぁ…この戦車はまだ何処も襲ってないわけじゃん?
      いや、確かに俺らに向かって発砲はしたけどよォ」


クリボー「でもよ? まだキノコ王国には侵攻してねぇじゃんか!
      まだ引き返せるッスよ!!」




彼が目の前の元上司…そしてどれもこれも見知った顔ばかりの乗組員を
見渡しながら言う




クリボー「今なら!今ならまだ引き返せる!俺らだって
      此処であった事を黙ってっから!
       無かった事にすっから!だからさァ!」






 「クリボー君、それは流石に厳しいかと思いますよ」カンカン…





クリボー「…ノコノコ」




ノコノコ「…っと、ご無沙汰しておりますブーメランブロス教官殿」



戦車のハッチが開き、鉄梯子を降りてくる友人は次のように口を開く



ノコノコ「…仮に我々が口を閉じていても
      "指揮官殿"とやらが教官殿達が今作戦に参加していたと
      口を開けば懲罰は免れません…」


ブーメランブロス「あぁ…わかってるよ」


ノコノコ「このままでは、どうあがいても何かしらの罰は免れません」



ノコノコ「…そこで私からある提案、いえ交渉をしたいのです」

ブーメランブロス「言ってみろ」










ノコノコ「今作戦の最大責任者たる"指揮官殿"とやらが
      どのような人物なのか」


ノコノコ「私たちに"その情報を売って"いただけませんか?」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 21:51:54.42 ID:vVU7xdY70

クリボー「おいおい…」
ブーメランブロス「…ほう?」


  ザワザワ…
               オイオイ…



ノコノコ「先も申し上げたように…どの道、教官殿
     ひいてはこの車両の乗組員皆さんの罰は免れません…」


ノコノコ「ですが、此処で起死回生の策です」




ノコノコ「簡単に言ってしまえば…」



・ クッパ軍内部に元から怪しい動きを働く一派が居た

・ "クッパに誰よりも誠実な忠臣"であるブーメランブロス等が気付く

・ 反クッパ勢力のテロリストに"加入するフリ"をして情報を探っていた


と、言う筋書きを作ってしまえば良いとの事だった




初めからクーデターなど起こす気は更々無く、むしろ阻止すべく動いた
という事にして自分達はそれを裏付ける証人になれば良いと

 相手が何か喚きだしたり証拠を突きつけようとも
全ては欺く為の発言でした!とでも言い後は知らぬ存ぜぬを通す



ノコノコ「悪くない提案だと思いますが?
       元より、軍内部の不審な動きは噂されてましたし
      その一派を見破ったと言っても多少は信憑性もあるかと」



クッパ軍内部に不審な動きがあるという噂は以前からあった
 事実としてクッパがノコヤン等、信頼の置ける腹心達に動きを探らせ
疑わしきを見張るように指示を出していた程だ

 尤も…時代が進むに連れ、人員の増加に伴い
最古参から新人兵までの生活の保障など

気がつけばクッパ一個人だけでは
手に余る程の軍勢に"なり過ぎて"しまったが故に
全員の動きまでは把握しきれなかった

(今でこそエリート3人組と呼ばれる親衛隊も
   過去にゲラコビッツに寝返る事態があった程だ…)




ブーメランブロス「…俺に"指揮官殿"を
         今の俺たちを導いてくれた御方を売れと言うか?」



ノコノコ「…教官殿自身は良いかもしれません、ですが」




ノコノコ「この車両の乗組員はどうなさるおつもりで?」チラッ



「せ、戦車長」
「…ぅ、うぁ…」
「っ!」
「…お、俺たちの処遇…!!」
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 22:10:40.59 ID:vVU7xdY70

 それは半ば脅迫に近い強請りだ
この武人然とした壮年の男は情に厚い

だからこそ効果的な言霊をノコノコは選んだ



ノコノコ「人質を取るような形で卑怯とは分っていますが
               その上で言わせていただきます」


ノコノコ「教官殿の個人的なご意見で部下を危険に晒しますか?」






ノコノコ「貴方の仰る【"栄光"のクッパ軍団】とは
              このような軍隊でしたか?」



ノコノコ「それが貴方の"誇り"だと言いますか…!」




ブーメランブロス「…ぐっ」











クリボー「おっさん…俺からも頼む」


クリボー「おっさん達はまだ誰も傷つけてねーじゃん
            だからよォ…まだやり直せるッス」





クリボー「頼むから…こんなこと、もう止めよ?頼むわ本当…」


それは心からの訴えだった


人一倍ヘタレと自負し、戦<イクサ>になることを嫌って
マリオの記憶が戻らなければ良いとさえ言うクリボーの本心







クリボー「俺よ、アンタみてーに誇りとかねぇし
       ノコノコみてーに頭も良くねぇ…
      なんかテレサみたいにスゲェ力もねぇ弱いやつだから」



クリボー「だから戦いなんかやってるより、皆でワイワイ集まって
     パーティーやってるような今が良いって思うのかもしんねぇ」


クリボー「でも、こんだけは言える
      誰も傷つかねーなら、それが一番良い事だ」





クリボー「俺のこの考え、これだけは絶っ対に間違ってないッス」
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 22:17:12.63 ID:vVU7xdY70

ノコノコ「…教官殿、お願い致します」ペコッ
クリボー「おっさん!マジ頼む」



ブーメランブロス「俺の先の主張は聴いただろ、二度も言わせるのか」

ブーメランブロス「埃にまみれ、いつしか大事な誇りさえも忘れ
                     抜け殻のように生きる」


ブーメランブロス「生き地獄から救済の手を
             伸べてくださった大恩ある御方を…」



ブーメランブロス「…」




【戦車長は】周りを見た…

再びあの戦地へ…

まるで長年夢にまで見た愛人に逢いに行くが如く恋焦がれた輝かしい戦場



その地を今一度、踏みしめたい、手に汗を握らざるを得ないあの熱を
もう一度だけ掴みたい…ッ!


そんな個人的な感情で動いた自分に
黙ってついてきてくれた【愛すべき乗組員達を】彼は見た






     ブーメランブロス「…お前達の要求は呑めん」






クリボー「…っ、んでだよ!」

ノコノコ「左様ですか…」



 ブーメランブロス「お前達に指揮官殿を売ることはできんっ!
            そして!貴様等に言うことがある!」









 ブーメランブロス「…此処に居る、搭乗員は…
          こいつ等は全員【俺に脅されて仕方なくやった】」






「せ、戦車長!!」「まっ、待ってくだせぇ!!」「違う!俺達は!」






 ブーメランブロス「こいつ等は俺に脅されて強制的に働かされた!
                  罰を受けるのは俺だけだッ!!」
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/19(金) 22:36:38.83 ID:vVU7xdY70


俺がやった…ッ!そう主張する戦車長

その一方で真逆の証言を矢継ぎ早に口にしていく乗組員達…



どちらの言い分が事実かは最早言うまい



ノコノコ「…分りました、この件はそう報告させていただきます」



ブーメランブロス「…恩に着る」



一人の兵として、一人の"漢"として導いてくれた人は売りたくなかった
そして、忠義を誓うべきクッパへの謀反でもあると心のどこかで
理解し切っている…だから罰も甘んじて受ける



だが…ッ!



部下だけは…ッ! 部下だけは巻き込まない…ッ!


彼の心はそのような結論へとたどり着いた




クリボー「…こっからどうすんだよ」


ノコノコ「まずは…キノコ王国とクッパ様…
         そしてマリオ殿に事を伝えます」


ノコノコ「このような事態ではレース大会も何も
            あったもんじゃありませんからね」



 身柄を拘束させて貰いますと…ノコノコが戦車長の身動きを
取れぬようにする、同じように他の乗組員も…


ノコノコ「さ、もう一両の車両も動きを封じましょう?
      外で見張って貰ってるテレサさんにも悪いですしお早めに」




彼等にとって優に10年以上前の懐かしの車両
当時自分達も乗り組んだ戦車の動力キーを外し、完全に無力化した車両を
二人は後にしようとする…




ブーメランブロス「おい」



そして、呼び止められる


ブーメランブロス「ちょっと見ない内に成長したなお前ら」


ノコノコ「お褒めの言葉として頂きます」

クリボー「おっさん…部下想いな所とか変わってなくてよォ
     やっぱアンタかっけぇって思ったわ」


ブーメランブロス「…ふん」
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 00:34:43.37 ID:PLxa+cbT0

クッパ城の門番3人衆が戦車部隊と戦う少し前に時間は戻る…









  ズ ド オ オ オ オ オ オ ォォ ォ ォ ォ  ォ ォン






キノピオ「う、うわあああああぁぁぁ!?」




突如として現れた10年も昔の兵器そして、放たれた弾頭
後、数刻もしない内に自分は爆炎に巻き込まれ焼けてしまうかと覚悟した




 しかし…ッ!!






キャサリン「ふんっっ!」ボンッッ






 キノピオのすぐ近くで【何か】が風を切る音がした


そしてその【何か】は…っ!
 戦車隊とキノピオ等を結ぶ中心線上で弾頭と衝突し
大気を震わせて爆散したッッ!!




キャサリン「…ったく、どこの誰だか知んないけど
           ちょぉっと物騒なんじゃあな〜い?」




キノコ王国の住人はほとんどが戦いを経験した事がない


が…


このキノピオは別である…

彼はかつてマリオ、ルイージ、そして自国の姫と共に
【夢の世界】を冒険した事があった



そして今のはその時の冒険で幾度となく目にしたもの…
キャサリンの【タマゴ】砲撃である!!



キャサリン「キノちゃん、立てる?」

キノピオ「は、はい…なんとか」

106 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 00:38:37.94 ID:PLxa+cbT0


キャサリン「それじゃあさ、ちょっと悪いんだけどお願いがあるのよね」



キャサリンは空を…目を細め、遠い向こうの先にある場所を見据える



キャサリン「なぁ〜んか緊急事態みたいだし、ヨッシーちゃん達に
       この事を知らせてほしいのよ」


キノピオ「知らせる…どうやってですか?」





目の前の軍機は明らかに攻撃の意志を持っている
向こうは乗り物、此方は徒歩…

亀とチーターを同時によーいどん!で走らせたらどちらが早いかは明確で
まだ多少距離があろうとも逃げ切れるか否かと言えば…それは…



キャサリン「んもぅ!やぁね!忘れちゃったの?」


キャサリンがそんなキノピオの考えに気が付いたのか次のように言うのだ





キャサリン「思い出して?彼方達が私と戦った時の事を…」



キノピオ「…!!まさか!」


キャサリン「そっ!その、ま・さ・か!彼方くらいの子なら小さいから
      よーく飛んでいくわよ?」クスッ




キノピオ「で、でもそしたらキャサリンさ――」



キャサリン「良いから、行きなさい、ちょっと気になる事があるのよ」チラッ


 鮮やかな体色を持つ竜人は火を噴いた戦車を見据えて口にした
その時だけ、声のトーンが落ちていた事にキノピオは気づかなかった


キノピオ「……わかりました、でも無事で居てくださいね?」


―――
――


「?なんじゃ、あいつ等はなにをしとるんじゃ?」

「…!? ま、まずいぜ!おい指揮官さんよォ!早いとこアイツ等
  ふっ飛ばしちまわないと不味いぜ!キノコ王国まで高跳びされちまう!」

「なにぃ?それはどういう事じゃ?」

―――
――



キャサリン「風よおーし、距離よおーし、方向よおーし
       キノちゃん!準備良いわね?」

キノピオ「はいっ!」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:12:01.51 ID:PLxa+cbT0

キャサリンの頭部の上にキノピオが乗っていた…

戦車に搭乗していた"旧"クッパ軍の指揮官はそれを見て
何が狙いかと訝しむ


そして、指揮官に協力する一人の男が相手の思惑に気が付くのだ!



キャサリン「ふんッッッッッ!!!」




大きく息を吸い込んだ後に吐き出すブレスのように
筒状の大きな口から複数の卵を吐き出す!

瞬きすら惜しい一瞬の間に打ち出された卵<ダンガン>の数は優に7つ!
戦車砲と同等の威力を持つソレは放たれたァ…ッ!!



―――
――


「彼奴等がなにを企んでおるかは知らぬだが
  数の上ではワシ等が有利じゃ、撃ち落とせぃ!」

「はっ!!」

―――
――



  戦争が始まった!

まるでそうとしか言いようの無い光景
方や飛ばすものはタマゴ、もう片方は無機質な火薬の塊

 それはSF映画のように全弾空中で衝突しあい
辺り一面を爆炎と薬莢の匂いに包ませる
赤黒い煙がお互いの姿を見せなくさせ、狙いも次第に定まらなくなる




それこそがキャサリンの狙いだった!!



キャサリン「げほっ…あー、久しぶりにやったから結構キツイわねコレ」

キャサリン「タマゴ連射撃ちなんて…これ以上できないかも」

キノピオ「キャサリンさん…」

キャサリン「大丈夫よぉ、ちゃーんと最後の一発分は残してるから」



キャサリン「しっかり頼むわよ!」

キノピオ「…ご無事で!」



煙でお互いの姿が見えにくいこの状況で最後に打ち出すタマゴ
それは…!!





   キャサリン「キノコ王国上空行〜発射しまぁす!!」




キノピオをタマゴの上に乗せての砲撃!
【確実】にこの事態を報告できる人物を逃す最後の一手であった!!
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:14:54.81 ID:PLxa+cbT0


キノピオ「うぐぅっ!?」


 撃ち出された卵には小さな少年、彼は数年前の出来事を思い出す
マリオブラザーズと姫…その護衛としてピクニックへ行き
見知らぬ洞窟の奥にある扉を開けた事


そして夢の世界"サブコン"へ誘われた日の事を…



キノピオ(…ははっ、そういえばあの時もこんな感じでしたっけね!)



背後からは激しい轟音と煙が絶え間なく上がり続ける…
あれはもう戦争と呼んでも差し支えない戦闘と化していた




キノピオ(…キャサリンさん、必ず王国に事の次第をお伝えしますっ
      どうかご無事で!)


風を切る音と大気の中を突っ切りながらも彼は振り返る
己を命掛けで逃してくれた恩人が居た地を‥っ!



もう…戦車の影すら豆粒のように見えてしまう程
              遠ざかっていくというのに









 さて、読者諸氏よッッッ!!

キノピオは…キャサリンの無事を強く祈った…っ!


先も述べた通り、彼は多くのキノコ王国国民の中で最も"戦闘"を経験した
住民であり、その初陣とも言うべき舞台が夢の国サブコンであり

そして初めて苦戦した相手もまたキャサリンであった…っ!


ゆえに彼女(オカマ?)の実力の程は嫌という程に理解している


 そう…


 あっけなく…あまりにもあっさり敗北するはずが無いと信じているのだ





「…ちと早いが…造ったブツを使うとするかのう」

「…まさか、アレがオリジナルとはなぁ…確かに見れば面影あるな…」




 だが…






  そんなキノピオの予感は…  あっさりと崩れ去る…

109 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:16:53.30 ID:PLxa+cbT0

キャサリン「ん、んん?」



ぱたり、と鳴り止んだ砲撃…
 未だ黒煙に覆われた視界はお互いの姿を認識させず
何がどうなっているのか理解させてはくれない

これにキャサリンは首を傾げた




キャサリン(…妙ね?砲撃が止んだ?)


キャサリン「もしかして私を狙うのを諦めちゃったのぉ?」


一人に構ってられないと判断し
戦闘の中断、本来の目的通り王都へ侵攻を再開したか、はたまた
闇雲に撃った卵が幸運にも命中し沈黙させたのか?



キャサリン「けほっ…けほっ…どっちにしても私も早いとこ
       此処から逃げた方が良いかしらね…」



キノピオの前で強がりはしたものの…状況は著しく良くない
長年平和という名のぬるま湯に浸かり鈍った身体
本調子とは言い難いコンディションで卵の連射を繰り出した身だ

 芝や地表の焼け焦げた匂い…チリチリと身を焦がす熱気と舞う火の粉
人より頑丈なドラゴンの身とはいえそれは厳しいモノであった







                        キュルキュル…







キャサリン「っ!」ピクッ



キャサリン(違うッ!まだ健在だわ!)バッ



直ぐに身構え機械音のする方角目掛けて渾身の一撃を放つ…だがっ!







      ゴ オオ オ オ ォォ ッ!


                      べしゃっ!!!!



キャサリン「な、に!?」



自分が撃ち出した卵は何かに衝突し砕ける音がした

 そして煙のベールを突き破り
自分に飛んでくるのは…【巨大な卵】であった
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:27:45.07 ID:PLxa+cbT0

   キュロキュロ…キュルキュル‥‥




 【巨大な卵】が煙のカーテンを突き破りできたのぞき穴から見えた
メタリックなボディー…まだ塗装はされていない肉体は地面でパチパチと
燃え盛る炎に照らされていて、"ソレ"の回りを踊るように火の粉が舞う


無機質な鉄の塊…そして命の光を灯さない不気味な信号を発する目玉
恐らくあの砲塔が二門の大型戦車の中にでも収納されてたのだろう

自分がドンパチしてた戦車よりかは一回り小さめな
だが大の大人の3〜4人分はある背丈…



 塗装されていない敵側のその"新兵器"とやらはキュルキュルと車輪を
動かしながらそのシルエットを露わにするのだ…っ!




キャサリン「…何の冗談かしら?笑えないわね」






 そいつの…全容が明らかになり、キャサリンはキノピオに言った
 【気になる事】が確信へ変わる事を悟る…





















       メカキャサリン「…ガガッ ――ピピッ」キュルキュル










自分の撃ち出した卵を粉みじんに粉砕したのは紛れも無くヤツだッッッ!!


無機質な目は命ある此方の姿を認識するや否や紅く輝く…
あたかも『お前の身体も自身の血で紅く染めてやろう』と言うように
 機械の瞳は狂気の紅を彩らせた……ッッ!!




      【 キャサリン  VS メカキャサリン !!!】



          戦  闘  開  始  !!

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:35:50.58 ID:PLxa+cbT0


 - かつて、夢の国サブコンを支配しようとしたモノが居た -


多くの配下を従え、次々と世界を侵攻していく悪夢の軍勢…
連中は文字通り夢の世界の住人で、夢の世界でしか活動はできなかった…



 が…



例外はあった、侵攻を受ける住人が現実の世界から4人の男女に救援を
求めたように侵略者達も現実世界から『儂と共に来い』と

所謂スカウトというモノだ…

その呼びかけに応じたのがキャサリン含めヘイホー達だった…





そして…









    メカキャサリン「… ――ピピッ」キュルキュル…





   メカキャサリン「… ギイイイイイイイイィィィ」ギュンッッッッ!!!!







キャサリン「来たッ!」





自分を模した鉄屑はその世界で創られたモノ
キャサリンが"気になっていた事"というのは……




    "火薬の匂い"だった…





人間ではなくドラゴン族である彼女(彼?)は鼻が人一倍利く
だから"懐かしい火薬の匂い"をずっと感じていた


あの戦車の撃ち出す砲弾が爆散する度に立ち込める焦げ臭さから


   
   メカキャサリン「… ッッッ」ボゥッ‼


今度はタマゴじゃない、真っ黒な砲弾それも
クッパ軍の【マグナムキラー】級のモノが撃ち出される
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:39:11.10 ID:PLxa+cbT0


キャサリン「ぅ、うわああああぁぁぁぁぁ!!」


"本来なら【マグナムキラー】級の火力を
     打ち出せる程の性能は備わっていない"兵器からの高火力


想定外の攻撃だ、当然それに対抗すべく全力で迎撃を図るモノの…




  ズ ド オ オ オ オ オ オ ォォ ォ ォ ォ  ォ ォン






キャサリン「――――――ッ」




【キラー】砲の中でも【マグナムキラー】は元々拠点攻撃用として
開発された超弩級の火力を誇る、それをいともたやすく落せるのは精々
マリオブラザースくらいが良い所で…面白いくらいに当たる卵の弾雨で
 多少、速力は落ちたもの勢いを完全に殺す事はできなかった




結果はご覧のありさま…真っ赤なリボン諸共に黒コゲになったドラゴンが
一匹宙に舞う結果となった…



キャサリン「ぅぐッ――――かはっ!」



投げ出されるように宙を舞った身体は固い地面に打ち付けられ
バスケットボールのように2、3回バウンドする…






――眩暈がする、吐き気もする、脚に立ち上がれるだけの力が入らない



キャサリン(…っ、ったく身体中の骨にヒビでも入ったんじゃないのぉ‥
        もうちょっと筋トレでもしとくんだったかしらねぇ)




「よう、カマ野郎!久しぶりだな!」


キャサリン「…」


「んだよ、俺の顔忘れたのか?それとも何か?今のでお陀仏か?」


キャサリン「っさいわねぇ、クソ鼠」




瞼を開くのも正直しんどいわぁ…、っと内心で愚痴を零しながら
薄らと…今回のクーデター騒動に加担した男を

そして、メカキャサリンの製作に関わったソイツを見て
"気になっていた火薬の匂い"は揺るぎない確信になっていた


キャサリン「いつから、クッパ軍に就職したのよ
                 ドン・チュルゲ……!」
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 01:55:40.08 ID:PLxa+cbT0


 サブコンの侵略者達がキャサリンやヘイホー達に呼びかけ
同じくして現実の世界より導かれし男


灰色の体毛と大きな丸い耳、ミミズの様にうねる尻尾
紫色のグローブをはめた手でサングラスをクイッと上に少しあげて
ソイツはキャサリンを見下ろす…



チュルゲ「別にクッパ軍に就職した訳じゃねーよ
      ここ数年、俺は一度も可愛い息子共を使ってねぇ」


チュルゲ「それがもう…退屈で退屈でよぉ
               死にそうなくらいだったんだぜ」チュッ



 手に持った可愛い可愛い"息子"に父親は真心を込めて唇を落す

爆弾魔として名高い彼奴の"息子"は日光に照らされて鈍い輝きを放つ

丸くて黒い鉄の塊に一本の長い導火線…実にシンプルなデザインだ




キャサリン「知ったこっちゃないわよ…で、その可愛い可愛いガラクタを
      世間様に自慢したいからテロ紛いな事でもやってんの?」



チュルゲ「だな、丁度暇してた時に面白い話を小耳に挟んだ
       んで俺は"指揮官さん"に雇ってもらったつー訳だ」



チュルゲ「良い経験だったぜ?クッパ軍の【キラー】とか
      設計図見せてもらったり、戦車砲に火薬つめたり…」


チュルゲ「俺の理想の生活って奴さ」


チュルゲ「それはそうとあのチビをよくも高跳びさせやがったなオイ」


チュルゲ「面倒な事させやがって…平和ボケした連中が
      驚く顔見れっと思ったのによォ、あ〜ちくしょう」グイッ



キャサリン「…レディーの肩掴んでどうする気よ変態」


チュルゲ「変態はテメェだ、テメェは此処に放置してても構わねぇが
     念の為に連れてくぜ、いざとなりゃ人質にゃあ使えっからな」



キャサリン「クソ鼠」ボソ

チュルゲ「うるせぇカマ野郎」






      【 キャサリン  VS メカキャサリン 】


 全く想定外かつ、キャサリン以上の火力を持つ武装での攻撃に屈し…

  キャサリンの敗北…






キャサリン(…キノちゃん…ヨッシーちゃん達に伝えて頂戴ね…)
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 02:03:45.59 ID:PLxa+cbT0
―――
――

【キノコ王国 〜国道〜】


ブロロロロロ…

…十数年前はコンクリートで舗装された車道と言う物は存在しなかった
 だが、時代が進むにつれて近代化は進み、キノコ王国でも
ガソリンエンジンを搭載した機械が道を走るようになった

 カートレースという催し、娯楽が世に広く出回った事もあり
比較的裕福な市民層は貯蓄をはたいて車を購入するようになった

さて、此処で実際に運転を試みた多くの国民が
『でこぼこだらけの砂砂利の上は走りにくい』と王国政府に要望を出した

 国の代表として何度かカートレースに参加した経験を持つピーチ姫は
国民の声を聴いて、確かに…と納得し



  道路の舗装工事、今までなかった"国道"という政策を実地した‥



市民の不満の声の解消もさることながら、流通や国営バスなどの運営面を
考えればやって損のある政策ではないと説き、政治家達を納得させた




こうして、誕生したのがこの国道である



ヨッシー「いやぁ〜、わざわざすいませんねぇワリオさん」

ワリオ「へっ!早い完売だったからな急ぎで原料を仕入れるだけだ」




レース会場として工事された道とは違う車道
中央分離帯には紫陽花が植えられていて、梅雨の時期にバスの窓から
それを見るのを楽しむ老人には人気であるそうな…


さて、そんな国道の右車線を一大のバイクが走り抜ける


イエローの塗装に全長2.7m、チタンレスのマフラーは豪快な音をたて
搭乗者はゴーグル付きのヘルメット着用でワイドハンドルを握り
お世辞にも長いと言えない脚をペダルに乗せて走るのであった


ヨッシー「今さらですけど僕達交通違反じゃないですかねー」


ワリオ「あぁん?良いんだよッ!
     どうせニケツなんざ誰だってやってんだろうしよォ」


ワリオ「それより事故らねぇように捕まってろよ!」

ヨッシー「はいはい」



フルーツジュースを販売していた彼らは
原料となる果実の買い出しに向かっていた、本日は雲一つ無い日本晴れ
降り注ぐ日光はさながら真夏日の酷暑に匹敵する暑さで思いのほか
バカ売れしたという訳だ


ヨッシー「しっかし、やっぱりワリオさんはツンデレですねぇ
     原料の買い出しと称して交通事故にあったキノピオ君の安否を
      確認しようとするんですもん」


ワリオ「うるせー!そんなじゃねぇっつってんだろォ!!!」

ヨッシー「はいはい…――おや?」
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/20(土) 02:12:32.27 ID:PLxa+cbT0


ワリオ「ったく…国道の途中から車線変更すりゃ近道になる…
     たまたまだ、偶然此処を通るから
        様子見ついでにからかってやろうとだな…」





ヨッシー「何か聴こえませんか?」






ワリオ「あぁ?」







―――――――ン







ヨッシー「何か…こう、風を切るような音…いや、これは…」










―――――――――ゥゥゥゥゥゥン…






      ヨッシー「これは…"落下音"ですかね?」






―――――ヒュウウウウウウウウウウゥゥゥゥン!





ワリオ「!?!?ななななな、なんだありゃあっ!?
                なんか落ちてくるぞオイ!?」
















キノピオ(onタマゴ)「ワリオさーーーん!!ヨッシーさぁぁぁん!!」
116 :>>95 "R" に別の意味を持たせたいと思ったからです [saga]:2017/05/20(土) 02:33:14.12 ID:PLxa+cbT0
*********************************


           今回は此処まで!





           [前にも書いた事]


どうでもいい補足:【ワリオバイク】

 メイドインワリオに出て来るあのバイク、スマブラでも乗ってたりする
 任天堂ホームページで調べて見ましたが製作者曰く
 ワリオは短足で腕も長くないから身体のサイズに合わせた
 バイクを創るのが非常に難しかったとかなんとか…




*********************************
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/20(土) 02:56:23.70 ID:VDrMXzsA0

前の時もだけどキノピオの卵移動、USAでキャサリンの卵に乗らないと進めないとこ思い出した
…最初キャサリン倒してしまって進めなくなったわ
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/21(日) 14:54:59.53 ID:3WPXyjdH0
このクリボー好きだわ、力を持たない雑魚キャラだからこそ言える台詞だよなぁ。
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 21:12:36.58 ID:9rj2nJGi0


 僅かな…本当に僅かな"刻"が過ぎ去っていった
彼らが機体の心臓部に熱を灯し走り出しどれ程経っただろうか

 開幕当時は満タンだった化石燃料もその減り具合から
どれだけの排出量で走り続けたか、長距離運転手なら想像に難しくない





マリオ「…?きのせいか?」チラッ



岩、岩、岩…見渡す限りが全て無骨と言って世界
峠のトンネルから飛び出したトップの視界はずっと草木一本生えない
峡谷<キャニオン>を走り続けていた


人工的に拓かれた道、アスファルトの黒と中央に見える一本の白線
それ以外は焦げ茶色の無機質な岩、後は精々空の青さくらいが見えるモノ



 人工的な建物は全く無く、あえて言うなら
今彼らの走る道そのものが人工物と呼べる
それ以外は自然が創造した芸術的な岩の表面だ
 長い年月を雨風が砂塵の一粒一粒を削った至高の一品









マリオが視線を周囲にちらつかせたのは何も
        芸術を堪能したいと思ったからではない







"英雄"の…彼の潜在的に"眠りつづけている"超人的な身体能力が…っ!

彼の聴覚が遠くで"爆発音"のようなモノを感じ取ったからである!





マリオ「…いかんいかん、集中せねば!」グッ



つい先ほども慢心こそが最大の敵だと彼は思い出した
此処で如何に2位、3位と距離を離したとて顔を背けるのは
 今戦っている相手への不敬でもある、そう思いハンドルを強く握る








ワルイージ (ッん畜生がッ!!本当に何の仕掛けもねぇのかよ!!
          あのマシンはよォ!!!!!)



紫のイメージカラーは前方を走る、赤を見つめて心中で悪態つく
彼は虎の子である加速装置を使うタイミングを見計らっていたが‥


ワルイージ(…野郎、まるで隙を見せやがらねェ…!)
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 21:15:43.76 ID:9rj2nJGi0


先述した通り、ワルイージが特注でチェーンナップした加速装置は
【ダッシュキノコ】3つ分に相当する超加速を発揮する…ッ!


 だが…これは一時的にエンジンを暴走させる諸刃の剣

 この曲がりくねった道で後先も考えずに使おうモノなら
1位の横をぶち抜けるどころかガードレールをぶち抜けて谷底行きだ

如何に命知らずな彼とてそんなアホはやらかさない

彼の夢は対抗心を燃やすマリオブラザーズに自身の優位性を見せつける事




表彰台の天辺で自分より低い位置で悔しそうな顔する兄弟を見下しながら
金ぴかトロフィーに口づけをする事…



粉々になった機体の残骸に埋もれながら硬い地面とキスする事では無い…




ワルイージ(しかも、【ダッシュキノコ】を普通に使うよりも燃費が悪ぃ
       通常の4倍は燃料を消費しちまう…)



何度も連続して使用して、エンジンがお釈迦にならずとも
この一台だけが燃料切れでゴールテープを切れませんでした!なんて事も
有り得るのだ…




だからこそ、十二分に性能を発揮できるタイミングを計りたいのだが

目の前の"赤"は見事な走行テクニックでそれを阻止する…!



相手は此方の切り札が加速装置とは知らないだろうが
もしかしたら何処かで予測…あるいは直感的に感じ取っているのだろう

だから直線状の道に出られそうな時でさえ
ワルイージの加速が殺されるような走り方をするのだ…ッ!







日進月歩、そんなやり取りをする"赤"と"紫"を…"緑"は不快に思った



そのやり取りは正しく"真のライバル"と呼べる漢同士の戦い‥ッ



英雄…マリオとその位置で戦うべきは顎長男ではなく自分だっただろう!
そんな怒りを3位のルイージは思わされた



ルイージ「…くっ!僕じゃ足元にすら及ばないっていうのかッ!」


ご自慢の機体はマフラーからCO2と僅かな水を排出する…
まるで彼の悔恨の情を代弁し涙するようにも思えてくる



ルイージ「…情けないのはドライバーの腕そのもの、か…っ!」


オヤ・マー博士…が特別に造った機体を生かせぬまま、終わるのか?
それを想い、ネガティブな彼が口からポツリと出した言葉
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 21:19:35.48 ID:9rj2nJGi0






 オヤ・マー『フェッ、フェッ、フェッ!
         しかし君はいつだって謙虚じゃのう?』




  ルイージ『謙虚?僕がですか?』




 オヤ・マー『そうじゃ、君は自分を過少評価し過ぎ取る…』フム



 オヤ・マー『君はいつだって【永遠の2番手】【緑の日陰者】
        そう呼ばれても怒る事無く、それを甘んじておる』



  ルイージ『はははっ、まぁ事実ですよ…!
            実際僕ぁ兄さんと比べれば――』


























        オヤ・マー『それじゃよ…』









 オヤ・マー『何が "兄さんと比べれば" なんじゃ?ん?』




 オヤ・マー『…わしはのぅ、ご覧のとおり研究第一の学者馬鹿じゃ』


オヤ・マー『じゃから、君とあのお化け騒動で初めて出会うまで
      君ら"英雄兄弟"の活躍を知らんかったわい!』フェッフェッフェッ!


 オヤ・マー『新聞も読まずに日々研究じゃからなぁ!』



 オヤ・マー『…じゃからの、わしは
          "捕まった兄を助けに来た勇敢な君"しか知らん』
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 21:22:09.53 ID:9rj2nJGi0



 オヤ・マー『世間一般ではお兄さんの方が取り上げられとるよ』



 オヤ・マー『新聞の一面で写真に大きく映るのはいつも赤い帽子の彼』


 オヤ・マー『君はいつだってその隣で小さく映る、目立たんようにな』






 オヤ・マー『陰口のようで言いたくないが‥国民の評判も
         お兄さんと比べれば"頼りない"、"影が薄い"と言う』


 オヤ・マー『じゃから思うのじゃよ…皆
         本当に君を理解しとるか?とのぅ…』フェッフェッフェッ!





  ルイージ『…博士』




 オヤ・マー『マリオくんがキングテレサに捕まり
         絵の中に閉じ込められた、あの事件を知る人物は』

 オヤ・マー『わしと君、そして当のマリオくん…
          あ、後キノピオ君じゃな、あの女の子にモテとる』





 オヤ・マー『…"無敵の英雄"を救った、"それ以上の英雄"…
          新聞にもニュースでも報道されない
         わしが初めて出会った"英雄兄弟"は君じゃ』













 オヤ・マー『本当の君はお兄さんより劣った人間なんかじゃない』

 オヤ・マー『君は "強く勇敢で優しい人間" なんじゃよ』

 オヤ・マー『本当なら一対一で戦えば十分お兄さんと互角…
        いや、もしかしたらそれ以上かもしれんのじゃ』




  ルイージ『買いかぶりすぎですよ…』



 オヤ・マー『…君が、そういうのなら多くは言わん
         じゃが君は心の中で思うとるじゃろう?
        いつかは兄さんを越えたい、強くなりたい、と…』







 オヤ・マー『自信を持て、君は勝てる人間なんだ』
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 21:24:14.36 ID:9rj2nJGi0


BUROOOOOOOOOOO O O !  !  !   !



渓谷<キャニオン>に3台のエンジン音が響く…

ルイージは…今、自分が搭乗している機体を
手掛けてくれた老人の激励を思い出していた




ルイージ「…博士、僕は…」




――フェッフェッフェッ!
    君の機体にはあのバキューム同様の特別機能がある…!



―――バキューム…の事は君がよく知っとるじゃろう?
            じゃから、使い方はあえて言わん
                さぁ!今日はレース開催日じゃ!






―――存分に暴れて行け!









ルイージ「……ごめん」



ルイージ「どうも僕はネガティブで
      いつも悪い方悪い方に考えちゃうんだ」







ルイージ「こんなにも最高の機体に乗ってるのに…
      なのにドライバーの僕がこれじゃあ、悪いよな…っ!!」









 ルイージ「博士…僕は…あえて!あえて!
       あなたの特別機能は使いません!実力で倒しますッ!」







このレースでは…!この試合では決して兄に特別な何かでは勝たないッ!

本当の自分だけで勝負するんだ!!

ルイージは消えかけた闘志を再び燃やしだしたッ!


124 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 21:26:27.28 ID:9rj2nJGi0

















          ウィン…!  …ウィン!









――それは過去からの贈り物だった









マリオ(…ん?)

ワルイージ(あん?なんだぁ、突然空が暗くなりやがったぞ?)


ルイージ(?今日の天気予報じゃ雨は降らない筈…?)




走路が濡れているか乾いているか、それもドライバーとして
重要な判断基準だ

故に彼ら3人は当然テレビの前で降水確率は確認していた

全国的な晴れ模様…、多少外れることはあろうと
空気に湿った匂いも混じらず、雲の流れも悪くない

そんな天候だった





ワルイージ「!?!?!?!お、オイ!ありゃあ何の冗談だっ!?」




 日光を遮るのは白雲では無かった
人工物など一切無い、無骨な岩の芸術品しかない世界
 そこで見たメタリックな人工物が…青空を切り裂くように飛んでいたのだ











      ゲドンコ星人「「「ゲヒャヒャヒャヒャヒャ…ッ!」」」


125 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:00:22.27 ID:9rj2nJGi0


 それを見て真っ先に叫んだのはワルイージだった

"何の冗談だ?"まさしく言い得て妙である



既製の航空技術を何世紀分も飛び越した科学技術だ
プロペラ機だとかジェットエンジン、そんなレベルじゃない

レトロなSF映画でお決まりのように宇宙人が乗ってる"空飛ぶ円盤"
それに使われているような反重力装置と言っていいだろう



ルイージ「な、な…なっ!」パクパク




 思わずハンドルを握る手が震えた
唐突に飛来して来た"空飛ぶ円盤"

 これといって彼らは歴史のお勉強は大好きという訳ではない
あくまで世間一般レベルの常識さえ学べば良いだけであって
それ以上の知識を求むのは考古学者志望くらいのモノである


今、目にしてるものはそんな世間一般レベルで学べるモノだ
ハイスクールの教科書にそのシルエットはデカデカと記載されている

十数年前、過去のキノコ王国にやって来た"災厄達"であるッ!!




まるで理解が追い付かないッ!!とでも言ったようにワルイージは呆然と
そして…それ以上の衝撃を受けるルイージ!







ルイージ「ば、馬鹿な…!あり得ない!アイツ等は過去の世界で
                    僕達が倒した筈だっ!!!」








かつて…!【ゲドンコ姫】と【ゲドンコ姫の姉】が住みやすい惑星を求め
遠い宇宙の彼方からキノコ王国へとやって来たのだ

首都や近辺の村、非武装の民間施設、軍事施設問わずに侵攻を初め
一般市民を捕まえては生命力を奪い取り兵器群のエネルギーにするなど

言って見れば旧世紀の非人道的な植民地支配と似たような事を始めた訳だ


決して風化させてはならない恐怖の時代として義務教育で習う歴史の一頁
その象徴が目の前を我が物顔で飛んでいるのだ…冗談にしては度が過ぎる













        マリオ「ぅぁ…あ、頭が…ッ!?」ズキッ



126 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:20:34.35 ID:9rj2nJGi0


ルイージ「ハッ!に、兄さんッ!」バッ!



まるで自分達を見下すかのように平行して
3人の頭上を飛ぶ忌々しいフォルムから視線を外す…!



あまりにも突飛した出来事…ッ!

故に反応が遅れた…ッ!





マリオ「あ」

















マリオ「うおあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァ――」










ルイージ(っ!な、なんてこった!!)




今の今まで彼らはマリオには事実を隠し続けていた
直ぐに記憶を戻してやるべきだ、戻さない方が良い

これは賛否評論だ

元からルイージ等は命に関わる程の無理をしてほしくないという事も
確かにあった、それに記憶喪失には様々な種類がある

一例だが本人が自身を護る為、無意識に事故に遭った記憶に蓋をする
解離性健忘の場合など
無理に思い出させる事で脳に大きな負担が掛かる場合がある


戻してやるにしてもゆっくりと時間を掛けて戻すように便宜を図るのが
正しいのだ、あのクッパでさえ思い出して欲しいという本心を抑え
好敵手の完全復活の為、協定を結んでいたくらいだ…




だが、これで今までの苦労も水の泡…




キイイイイイイィィ―――ッ ギャギャギャッ!!


ワルイージ「オイオイ!!マリオの野郎…!
        ガードレールに擦りながら走ってやがんぞオイ!」

127 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:21:36.52 ID:9rj2nJGi0


―――いつだったか誰かが言ってた気がする



悪い事というモノは一度起きてしまえば
     ドミノ倒しのように立て続けに起きる、と






ルイージ(…なんだよコレ)




刹那、ルイージの目には世界が白黒<モノクロ>に映った



友人のヨッシーと自宅のソファーに座って
世間話でもしながらプレイするゲームボーイの画面のように…


世界が白と黒だけで構築されたように思えた






時が長い







一分一秒が長い、永い




音が聴こえない








よく自分達兄弟をライバル視する顎長男が兄に向って何か叫んでる

でも内容が聴こえない




兄が…ハンドルから手を離して頭を抱えている
        目の前の道なんて一切見やしない、手放し運転





兄のカートが真っ白なガードレールに擦る度に火花が出ていく




音は聴こえない、でも"何か"が見ろと叫んでいる気がした


ゆっくりと上空の円盤に視線を向けようとする…

思考回路は通常の速度なのに、首…いや、身体の動きがスローだ


揺れ動く視界もスローだった
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:22:23.38 ID:9rj2nJGi0







































           ゲドンコ星人「…ゲヒャッ」ニタァ…


























 毒々しい紫色キノコに手足が生えたような
一度見たら、忘れたくても忘れられない気色悪い生物が
開かれたハッチから顔を覗かせていた


八重歯のような二本の歯と笑みを浮かべるように歪んだ赤紫色の目

奴は…枯れ木みたいな細長い腕に銃を構えていて…


その銃口は地上に向けられていた


射線の先は僕でも、顎長男でもない…ずっとずっとその先…


  今、一番狙いやすい標的と化した人だった

129 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:24:37.35 ID:9rj2nJGi0




       ルイージ「止めろおおおおおおおおおぉぉぉッ!!!」









――僕が声を発したと同時だったッ!



奴の手に持つ光線銃が地上目掛けて熱線を放ったのは…っ!





ジイィィィ――――ッ! ジュウウウウゥゥ…!



文字通り、光の速さで降り注いだレーザー光線はいともたやすく
                兄さんの機体の前半分を"溶断"した


熱線で溶断された機体の前半分はそのまま後方へ吹っ飛び
高温で真っ赤になった断面図を見せつけながら走行する僕らの後ろへ
ド派手な音を立てながらこの下り坂を豪快に転げ落ちていく








前輪が無くなった事で嫌な音を立てて前のめりになる機体と
むき出しになった動力部…











奴はそこに無慈悲にも2発目をぶち当てたッッ!














ワルイージ「……マリオの機体が…」

ルイージ「 」





ワルイージ「…粉々にぶっ飛んじまった」


その日、渓谷にガソリンエンジンの爆発による黒煙が立ち上った

130 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:29:29.19 ID:9rj2nJGi0



キキッーッ!




ルイージ「…」スタッ



ワルイージ「んなっ!?お、オイ!何、カートから降りてんだよォ!?」






ルイージ「」チラッ





【炎上したマリオの機体】ボォォォォォ…!




ブレーキを掛けて、機体を停めて彼は大地の上に降り立つ
逃げるように走行を続ける顎長男がルイージに向かって叫ぶ


が、無視する








ワルイージ「っ…!そ、そりゃあよォ!!

        【マリオが"ぶっ殺されんだ"!】

           動揺すんのはわかっけど逃げねぇと―!」









この時、彼は見た…ッ!



遠い向こうから…更に飛んでくる数機の円盤をッ!


さしずめ、"援軍"という奴なのだろう



ワルイージ「じょ、冗談じゃねぇぞ!流石の俺だって…こんなっ!
                  …死んじまったら元も子もねぇ…っ!」



 命知らずと評される彼でさえ慄く程の大群

 命とは勝算があってこそ賭ける価値がある
初めから犬死が確定している事ならばさしもの彼だって引け腰になる



ワルイージ「お、オイ!!言っとくが俺は警告したかんなっ!!!
          わりぃ事言わねぇからテメェも早く逃げやがれ!」


131 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:43:57.82 ID:9rj2nJGi0


 別に彼、ワルイージを非難するつもりはない
彼の行動は"人間"として正しい




『死んじまったら元も子もない』その通りである



彼は努力家にして慎重な男だ

 英雄兄弟よりも自分が優れた人間だと世間にアピールしたい
そういう願望を持ちながらも彼がマリオ達と競うのは
『テニス大会』や『サイコロを振るパーティ』…といった具合の
命知らずの癖に本気で命を賭けない闘いだ


必要最低限は賭ける、が

本当に"『常人』には渡れないヤバい橋を渡る"事だけは避けるのだ!


人間なら自分の命を誰よりも大切に想う、当たり前の感情だ

 此処で彼が逃げたとして誰も咎められないし
むしろ賢明な判断と評価できよう








もしも、此処で彼が逃げてなかったとしよう…








それならば彼は間違いなく…





          "叩きのめされた"だろう…ッッッ!














         ルイージ「…」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!





英雄兄弟<マリオブラザーズ>の片割れ…ッ!


その闘いはまさしく鬼神の如しッ!!

見てしまえば彼は叩きのめされた…ッ!


そう…決して努力だけでは勝てない…っ! 圧倒的才能…っ!


 英雄達を越えたいッ!そんな彼の夢、目標は粉々になっただろうッ!
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:45:23.71 ID:9rj2nJGi0



  ゲドンコ星人A「ゲーヒャヒャッwwww!」

  ゲドンコ星人B「ζ†ζΘ§ζ――!!」ゲラゲラ

  ゲドンコ星人C「ケケッ!!」ビシッ!



醜いエイリアン共が母星の語源で何かを言い合っている

 一匹は腹を抱えて大笑い、別の円盤から此方を見る奴も
同じように大口開けて嘲笑う

 そして、先程熱線を命中させた奴は恐らく上官と
思われる奴に何か言われてるのだろう…地上からでは見え辛いが
宇宙船内部に居る何者かに敬礼のポーズをしている


だがッ!そんな事はどうだって良い!!!




  ルイージ「ふぅ…いつだって勝てなかったなぁ」スタスタ

  ルイージ「永遠の2番手、日陰者…」スタスタ


  ルイージ「僕だって人間さ、そうだよ"欲望"はあった」スタスタ



  ルイージ「いつか"勝ちたい"、追い抜きたい目標だった」スクッ




  ルイージ「僕も…あの顎長男と同じで勝ちたいって夢があったさ」





  ルイージ「……僕の、いつか乗り越えてゆく真の目標でもあった」スッ




ルイージは上空に見える円盤目掛けてゆっくりと歩み出す手には今拾った
人間の拳程度の大きさの石ころを抱えて…



奴らが何を話そうがどうでも良い…っ!

連中が何を想おうとどうだって良い…っ!


何故ならばッ!



ゲドンコ星人D「ケヒャ?」ユビサシ


ゲドンコ星人「「「イーーーッ!!!」」」ゲラゲラ!



一匹の宇宙人が歩み寄るルイージに気が付き指を射す
多くの同胞がそれを見て大笑いだ

そして一匹が先ほど、マリオの機体を壊した銃口を向けてッ!





           ゲドンコ星人C「キイイィィツ!!!」ガチャ!


133 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga!red_res]:2017/05/23(火) 22:46:04.66 ID:9rj2nJGi0























           ブ ン ッ ッ ッ ッ‼!!





                     ――――ゴスッ!!






















  ゲドンコ星人「「「「ケケケケケケケ!!………ケ ケッ…?」」」」







   ゲドンコ星人C「…ケ、ヒャ?」チラッ












134 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:49:26.39 ID:9rj2nJGi0




ゲドンコ星人の宇宙船は地上に居るマリオ等を的確に撃つべく
可能な限りの低空飛行を試みていた






   円盤と地表との距離…高さにしておおよそ20m<メートル>ッッッ!!
           (※約マンション6〜7階建てに相当)







ゲドンコ星人が熱線を放つ事は無かった…

引鉄を引く前に自分の真横を何がすっ飛んできたからだ



渓谷のゴツゴツとした岩肌にもその音が反響するかのようだった

目にもとまらぬ速さですっ飛んできたそれは…











  ゲドンコ星人C「!!!!!キ、キイイイイイイイイ!?!?!?!?!」







彼らの宇宙船に大穴をブチ開けていたのだからなッ!!




高さ20m<メートル>も離れた地表からプロ野球選手が全力のストレートを
ブチ込んだ時と同じ態勢のルイージが宇宙船を睨みつけていた…ッッ!!




ルイージ「…うん、兄さんの【ハンマー ナゲール】だったら
               宇宙船の装甲を余裕で貫通してたなぁ」



開かれたハッチのすぐ横…にデカデカと開いた大穴からは
すぐさま火が噴き出す、その後は…簡単だ




 ゲドンコ星人「「「ΣζΠζΠ△▼Θ!!!!」」」



 制御不能となった機体はすぐさま、煙を巻き上げながらゴツゴツとした
岩肌にぶつかりながら谷底へ滑り落ちていく


煙をあげて墜落していく宇宙船
その様は…かつて【ゲドンコ姫の姉】との最終決戦で
                    見た光景を思い出させる

135 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:50:32.29 ID:9rj2nJGi0







――――奴らが何を話そうがどうでも良い…っ!



―――――連中が何を想おうとどうだって良い…っ!










――――――――何故ならばッ!









  ルイージ「さて…正直、自分で言うのもなんだけど
                 僕はあんま怒らないタチさ」




  ルイージ「…キミ達が一体どうして蘇っただとか
                  何を考えてるだとか」


  ルイージ「そんなモンはどうだって良いさ…重要な事は、そうだね」
















   ルイージ「キミ達は僕に"もう一度倒される"、ただそれだけだよ」










         ルイージ「掛かって来い…ッ!」








………数分後、数機の宇宙船の残骸とクレーターが渓谷にできたそうだ




136 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/23(火) 22:56:02.43 ID:9rj2nJGi0
―――――――――
――――――
――――

 ヒュウウウゥゥゥゥ…




 ― ……ッ!! うぉ…、身体…痛い、な… ―




           キョロキョロ…




 ― 俺…どう なったんだ? 死んだのか どこ見ても真っ暗だ ―



  ― 俺は たしか … … っ 頭 が 痛いっ …ぐっ ―




― た しか   空に 変なのが 飛んできて 光が 俺の機体 ―




 ― ……そう、だ  爆発して 俺の身体は 谷底に 落ちて行って―





 ― っ、身体中 あちこち 痛い  …? 『痛い』? ―


 ―痛み を感じる…? まだ 死んでない? ―




   『ヘイ!マリオ!そろそろ夢から目を覚ましたらどうだい?』


           ―…だ れだ? ―


   『やれやれ…僕達を忘れちゃったのかい?酷いなぁ…
        キミの取り柄は身体の頑丈さだけじゃないだろう?』


      ― 俺 が 知ってる 奴 な、のか?  …


 『そうさ! 僕、いや、僕だけじゃない…
           キミの中に居るたくさんの人さ!』



        ― "俺の中のたくさんの人?" ―



  『ああ!キミの思い出の中に居るよ、僕達はいつだって、ずっと』


   『……おっと、手は貸さないよ?
                 "自分の力"で思い出すんだ!』






『ずっと忘れられたまんまじゃ僕もフカフカ君も寂しいからね!』


137 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 01:22:10.01 ID:xz4SbWjD0





           声の主は誰かわからない

       懸命に記憶を辿ろうとするも顔が分からない



  頭の中に靄が掛かったようにその"誰か"を思い出す事ができない
















             だけど…





      ― 俺は…お前を知っている…気がする ―







   胸の奥で熱く、何かが込み上げ来る、何かが叫びをあげる




『焦る必要はないさ!キミは…そうだな少し頑張り過ぎただけなんだ』

『たまには落ち着いてよーく周りを見る事だって大切なんだぜ?』





  『だから焦らないで思い出すんだ…キミならできるさ』







 涙が出そうだった…年甲斐もなく

 いい歳した男が大粒の涙を流しそうになる…


 理由も何も分かりはしない…だが
    思い出してやれない事が無性に悔しく思えた




 遠い昔に忘れてきた大切な何か…


 平和を謳歌する世界の何処かで見失った"落とし物"…



138 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 01:38:06.96 ID:xz4SbWjD0



[もう大丈夫です すみません う〜ん!泣いた後って すっきり!]



           − っ!  −



 靄が掛かった記憶の片隅に一瞬誰かの姿が見えた気がした…

 見慣れた王国で自分が一人の少年と出会っている






 [キミが助けてくれたのかい! ありがとう!助かったよ!]

 [キミの噂は天空まで届いているよ]



 深い森の奥で自分が一本の弓矢を叩き落とし誰かを救っている


   − …あ、あぁ…お、俺は…!!俺は…!! ―






 靄は次々と消え去り…彼は声の主達の顔を思い出していく…っ!










  − お、俺は…   お前たちを 知っているッ! −










 『…フフッ、やっと思い出してくれたのかい?やれやれだよ…』


 『ぼく達だけじゃないですよ…
   もっと もーっとたくさんの人が貴方の中に居るんです!』


 『キミの強さは…人と人との繋がりさ!
   キミが誰かを護ろうとする想い、そして
         皆が心からキミの事を覚えていようとする想い』



 『昔は小さな子供、今は大きくなってもう大人かもしれない』


 『けどね…"皆"は大人になった今も子供の頃に
    強く憧れたスーパーヒーローを今だって覚えてるんだぜ』


 『誰かを想うからこそ、キミ自身も誰かに強く想われている…』


 『それこそがキミ自身の"誰かの為に頑張ろう"っていう
              力強い意志の源…そうだろう?』

139 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 01:40:58.31 ID:xz4SbWjD0


『今は大人で、かつて子供だった…そんなたくさんの"誰か"達』



『キミと一緒に胸躍る大冒険を夢見た子供たちは
   …一緒に冒険した仲間は
     キミの勇姿を決して忘れてなんかいないんだよ』



 − …なのに、俺が忘れてたら、恰好つかないよな…すまん −



 『…さぁ、もう夢から醒める時間だ、行くんだっ!』


 『皆が貴方の帰りを待ってるんですよ!行きましょう!』




 − …! 待ってくれ!!!『−−−』『−−』! −





  記憶の奥に掛かっていた霧は今っ!散り散りになって消えたッ!

 それと同時に声の主は彼の見える所から消えていく…




 ようやく顔を思い出せたのに…



 『うふふ!あの二人だけじゃないわよ!英雄さん!』


           − !! −


 『くすっ!貴方…ちゃんと自分の名前を言えるかしら?』




      − ああ…言えるさ…俺は…っ! −





 マリオ「俺はマリオ…いやッ "スーパーマリオ"なんだ…!」



『…うふっ!安心したわよ?…マリオ、帰り道分かる?
 もしも分からなかったら私が杖で叩いて誘導してあげちゃうわよ♪』



マリオ「…大丈夫だ、昔みたいにバケツを頭から被ってないからな」ニィ



『そっ!安心したわ!なら早く帰りなさい、ルイージ君が一人寂しく
 ゴールで待ってるわよ?』


 真っ暗な世界…見渡す限り闇しかない空間で目の前の人物が
 指し示す方角は光り輝いていていた、そして…


『マリオ!』『マリオさん!』『頑張れ!マリオ』『マリオ、サン!』



 彼の思い出の中に居るたくさんの人が道を切り拓いていく…
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 01:42:46.57 ID:xz4SbWjD0


一歩、彼は歩み出す


白いグローブをはめた手で帽子の鍔を摘まむように持ち、少しだけ
深く被りなおす



 『たまには会いに来いよ!』
 『僕らのトコに時々で良いから顔を見せなよ!』



二歩目を踏み出す

焦げ茶色の年季の入ったブーツ、すり減った厚底が靴音を鳴らし
彼の身体を光の方へと進ませる



 『マリオサン!もし疲れたらまたバカンスにでも来てくだサイ!』
 『私の所にも遊びに来てよねっ!待ってるんだから!』



ゆったりと歩き出した初歩から少し早めの駆け足気味に

3歩目、4歩目…5歩、6歩、次々とペースを速めていく



 『おーい!オイラ達だっているんだぜ!』
 『ゴンザレス!また闘技場に来い!今度こそ俺が勝ってやるからな』



歩く速度から駆け足に、そして彼は走り出す


何物にも代えることのできない友人達の顔を見渡しながら…


 『アニキ!頑張れよ!』
 『マリオちん!がんばるでしゅ!』


 『マリオ!』
 『マリオさん!』
 『マリオ!!』
 『マリオくん!!』


 誰も彼もがその顔に微笑みを浮かべる


 長らく待ちわびた英雄の帰還を…っ!


 記憶の中の存在である彼等はマリオに次々と激励の言葉を掛け
 腕を伸ばし、勇気を分け与えるかの様に
 ハイタッチをしようとする者も居た


 思い出の彼等に触れる事はできない、その腕は全てすり抜けてしまう


 だが…




     マリオ「ああ、行ってくるさ…っ!」


 決して触れる事は叶わなくとも、"燃え上がるような熱き何か"が
 彼には伝わって来るような気がした




 それが…今は何よりも誇らしかった

141 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 01:49:48.37 ID:xz4SbWjD0
―――
――



【渓谷:奈落の底】



…パチッ




マリオ「……」ムクッ



彼は長い眠りから目を醒まし、ゆっくりと身体を起こす



マリオ「…いっ…あたた…落ちた時に腰を思いっ切り打ったか…?」

マリオ「…歳は取りたくないもんだなぁ…」チラッ




        ヒュウウウウゥゥ…




上を見上げる、光はほんの小さな一点のみ、それほどまでに空は遠く
如何に今居る場所が地上からほど遠い場所かを思い知らされる




マリオ「…ゲドンコ星人め…やれやれ
     なんでこの時代に連中が居るんだか…」フゥ…



自機の爆破で奈落の底へと投げ飛ばされ、高さにして
おおよそ高層ビル15階からの飛び降り自殺のようなモノだった

常人なら"腰が痛い"程度で済むレベルでは無い




マリオ「ふぅ…マントや尻尾で空飛んでた時は彼方上空から落下しても
    ビクともしなかったがな…足腰が弱るとコレだもんな」


さも何事でも無いかのように軽い屈伸運動を済ませ、数歩後ずさる




そしてそこから助走をつけて…っ!







  マリオ「…フンッ!」バッ!






  彼は…"飛んだ"


  もはや"跳んだ"ではない、"飛んだ"のだ…ッッッ!!

142 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 01:59:37.62 ID:xz4SbWjD0
―――
――


ワルイージ「ひ、ひぃぃぃ…!!!た、たすけてくれぇ!!!」


  ゲドンコ星人「「「ギィィィィ!!!」」」



ワルイージ「ち、ぢぐじょうううう!!なんで俺を追ってくんだよォ」


自慢の【ダッシュキノコ】3つ分相当の加速が可能なエンジンを
フル活用して彼は上空から今も執拗に追い続ける異星人から逃れようと
必死で車体を走らせていた


ワルイージ「クソ!クソ!クソォ!!俺が何したってんだよ!!」


ただカートレースに出てただけなのにこの理不尽なアクシデント
どうこうなる訳でも無いのに叫ばずには居られなかった



ジイィィィ――――ッ! ジュウウウウゥゥ…!


ワルイージ「う、うわぁっ!…あ、あぶねぇ…ッ!」


すぐ真横でアスファルトが煙を発し液状化する…
上空の空飛ぶ円盤から放たれる凶悪な熱線がいつ己の身を焼き滅ぼすか

彼はそれを想像するだけで今にも泣き出してしまいそうだった…


ワルイージ「あぁ!神様でも悪魔でも何でも
           良いから誰か助けてくれぇぃ!!」


マリオ「よっ!ワルイージ、随分困ってそうだな?」シュタッ


ワルイージ「はぁああん!?………っ!?で、でたァ!?」


マリオ「わっ!…っとと、前見て運転しろよ」グラッ


ワルイージ「ま、マリオのお化けがががが…!」ガクガクガク

マリオ「…あー、気持ちは分かるが俺は死んでない
       ほら見ろ、脚だってちゃんとあるだろ?」


ワルイージ「ほ、ほほほ、本当にマリオか!?生きてんのかよォ!?」

マリオ「ああ…壁キックなんて久しぶりにやったよ」


今しがたほぼ垂直な絶壁と言っても差し支えない岩肌を昇り切り
丁度目の前を走ってた彼のマシンへと飛び乗った自慢の剛脚を指さす


マリオ「なぁ、ワルイージ…お前はまだ死にたかないよな?」

ワルイージ「んなモンあたりめーだろボケッ!」



マリオ「…ならこの機体を俺に預けてみないか?
     それで俺が後ろのアレ潰して来てやるぜ」ニィ

久しく忘れていた闘志が彼の中を血液のように廻っていく…


 最近、テニスやゴルフにパーティばかりで忘れていた彼の生きがい…




         冒険の始まりだ…っ!
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/24(水) 02:29:25.22 ID:xz4SbWjD0
*********************************


           今回は此処まで!


           マリオついに覚醒ッ!!


           [前にも書いた事]

 ※普通の人間なら高層ビル15階程度の高さから落ちたら死にます

  が……しっぽマリオやらマントやら風船やらで普通に
  雲より上ぐらいまで飛んで落下しても死なないのがマリオですね



 しかし3D系からはちょっとライフが減るようになってしまった(死ぬとは言ってない)




 【渓谷:奈落の底】からの帰還
 ※プロのロッククライマーでも匙を投げる断崖絶壁から壁キックで登ってきました

*********************************
>>117 >>118 ありがとうございます!
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 03:21:17.57 ID:LZaBQCbMo
着地の直前にヒップドロップで何故かノーダメージの64マリオさんすき
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 05:06:17.29 ID:p9pFDgIMo
移動前もそうだったけどRPGの彼は本当に涙腺にくる…
乙です
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 07:30:46.26 ID:agqJ1GrJo
マリオオールスターで感動した
ペイントを出してくるとか...
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 10:06:55.79 ID:C+lqcoIaO
前のスレでも思ったけど、マリオ復活のシーン読むとマリオやりたくなってくる
148 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 17:58:52.97 ID:ZumxGm4AO
>>144
当時あらゆる壁を貫通して跳ね回っていた尻が落下程度でダメージを受けるわけが無いんだなあ

149 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/24(水) 21:11:47.00 ID:Zhw0TPmI0
ペイントとはなんぞやと読み返したがマリオとワリオか
マリオペイントといったらハエ叩きの断末魔やら犬が吠えて一手前のことを全てなかったことにする機能やらが出てきたのかと
150 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:21:13.98 ID:Ofd+FNnE0


ワルイージ「ハァ!?俺のマシンを寄越せだとォ!?」

マリオ「ああ、頼む」





ワルイージ「ぐっ…こ、この野郎…こいつは特注製なんだぞ
            滅多糞に金が掛かったってのにィ〜!」

マリオ「金じゃ命は買えないだろう?」ニィ


ワルイージ「そ、そりゃあ、そうだが…」




"金じゃ命は買えない"

 全くのド正論だが、この男がそう言うと何故か
説得力が欠けるように思えるので不思議である
 命知らずの冒険野郎がッ!と自分は棚に上げて彼は内心で悪態を吐いた



ワルイージ「良いかッ!"貸すだけ"だからな!!壊すんじゃねぇぞ!」

マリオ「ああ、十分さ!」




―――
――






ゲドンコ星人D「ギッ?」





一匹の異星人は奇妙なモノを見た

彼等が乗り込んだ機体は未だ"狩り"の真っ最中だった



空想物語によくありがちなシンプルな形状の飛行物体は
依然変わらず高度20m<メートル>を維持、速度は地表を走る自動車に合せる

 航空機特有の翼に掛かる揚力もプロペラも何もあったもんじゃない
現代航空工学を完全に無視したソレに乗り込んでいたパイロット達も
その奇妙なモノに首を傾げた



ゲドンコ星人E「ギギィ?」

ゲドンコ星人F「ウケキャ!!」


 空飛ぶ円盤内部は人間が見れば思わず目を背けたくなるような
毒々しい色合いの電子光で彩られていた


我々、人類が…脳が生理的に嫌悪する、否定したくなるような心理の色

異星人たる彼等には心落ち着くような色合いなのだろうが…


さて、そんな異色な色彩を放つ計器達
【高度計】から【磁気コンパス】…etc、その中で人類が未だ見る事の
叶わないだろう未知の測定器もある

そして…その一つ、テレビ画面のような小さな画面を彼等は凝視する
151 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:22:27.47 ID:Ofd+FNnE0

 小さな窓枠のような正方形のモニタリング
そこから溢れだす色合いだけは人類にとって救いであり
彼等にとっては"ゲドンコ流のテラフォーミング"したくて堪らない光景


愛すべきこの惑星の景色が映し出されていた…



ゲドンコ星人F「ギィィ?」チラッ

ゲドンコ星人E「!…!ケヒャッ!」


ゲドンコ星人F「!!…キヒャヒャッ」ニタァ



モニターに映し出されたのは母なる大地
そして先程まで彼等が執拗に追い回していた一台の"原始的な乗り物"


技術の発達した彼等から見て、あの乗り物は"原始的"なモノだ
そう結論付け、見下していた

その様を象徴するかのように上空から…!



そうッ!まるで…!無邪気な子供が道端で蟻の巣を見つけ
   "お遊び感覚"で潰してやろうとでも言うかのようにッッ!!





 追い回す円盤とそれに乗り込む仲間達と通信機で話していた
誰が一番にアレを壊せるか遊ぼうぜ、っと…



もう一度言う、彼等は正しく"狩り"の真っ最中だった





"狩り"の対象は車輪を停め、その場に留まった

それを画面越しに見て彼らは仲間の顔を見やり笑った




  『ああ、ついにコイツは観念したんだな』っと






ゲドンコ星人F「キッキッ!」ゲラゲラ

ゲドンコ星人E「キャキャキャ!」ゲラゲラ





ゲドンコ星人たちは高らかに笑い、そして獲物を嗤った
低速飛行ゆえに風圧を物ともせず開いたハッチから顔を覗かせていた
同胞に戻って来いと合図を送り…、そして



 ゲドンコ星人D「キーッ!キキキッ!」

 ゲドンコ星人「「「キキッー!」」」


 絶望し、諦めたのであろう相手を完膚無きまでに蹂躙し尽くしてやる
そう考えた残虐な異星人共はあえて破壊力の高い機体に備え付けらえた
熱線銃の方を使い盛大な花火にしてやろうとコンソールを弄る
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:23:39.11 ID:Ofd+FNnE0














    読者諸氏よッッッ!!!あえてもう一度言おうッッ!!



 彼等、ゲドンコ星人は……まさしく"狩り"の真っ最中だったッ!








  そう…! "狩り"の真っ最中…『だった』…ッ!























           バシュンッ!ジイィィィ――――ッ!


           ギュィイィィィ――――ッ!










―――指先に掛けられた引鉄は引かれた

―――破滅への光は放たれた



―――フットペダルは強く踏みつけられた

―――急停止からの急加速、エンジンの魂は勢いよく燃え始めた




  ―――――光は放たれ、熱線は砂利をガラス状にするほどに焼き
              地表は爆炎と赤黒い煙を天へと昇らせる


破滅への光は放たれた、そして今ッ!
       "彼等"を殲滅せんとする序章の狼煙が上がったのだッ!
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:24:54.63 ID:Ofd+FNnE0

ワルイージ「ぎにゃああああああああああああ!?!?!?」ガクンッ!


【ダッシュキノコ】3つ分相当の超加速に加え背後で起きた爆風を
推力にした常識外れな機動


言葉通り"爆発的な"加速を見せたそれは一気に彼等との距離を稼いだ



元より円盤とワルイージのカートは相当距離を詰められており
遅かれ早かれ、あの状態ではいつ追いつかれてもおかしくなかった

 いくらドライバーの運転テクニックが良かろうと機体性能に差が
有り過ぎるのだ、向こうは障害物もコーナーサイトも無視した
航空機、こっちはそれらを無視できない四輪車









 そこで運転を変わった英雄は特注製のエンジンを最大限に
生かす方法を瞬時に察したのだ

機体性能の特徴を簡潔に言われた彼は考えた

エンジンを意図的に暴走させる急加速も一度使えば暫くの間
クールタイムが必要となる

更に先述の通り、敵は障害物も何も関係なく飛んでくるのだ


このままいけばジリ貧なのは分かり切っていた





だから"一度の加速"で数回分の差を開くことにしたのだッ!




 GYUROOOOOOOOoooooooo―――−!!!!!


どの道追いつかれる程に詰められた距離を逆に利用する

 マリオはワザと機体を停車させ、相手が打ち込んでくる事を狙った
何度も戦い抜いた相手ゆえ諦めた素振りを見せればタチの悪い彼等は
最大火力で殺しにかかって来ると分かっていた


彼等をギリギリの位置まで引きつけ、打ち込んでくる武装の火力による
爆風すらも推進剤の代わりにしてぶっ飛ばすッ!


・停車した事で慢心した敵方は的中させるべく減速する

・宇宙船の主砲を避ける為の急加速で距離を開く

・それに付け加え、背後で起きるであろう爆風でぶっ飛ぶ


通常の【ダッシュキノコ】一回では不可能な距離の取り方が完成である




……当たり前の事だが、ビーム砲は"光の速さ"で跳んでくるのだ
      ちょっとでも加速のタイミングが遅れれば機体は爆散

コンマ0.1秒の遅れも許さない機械のような精密性が必要とされる作業



この赤い帽子の男……ブランクがあるだろうに平然とやってのけた…!

154 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:29:16.24 ID:Ofd+FNnE0

ワルイージ「ヒッ、ヒィィィィ!!ばっきゃろォ!!!
       こんなとこでそんなん使ったらァぁぁあああ!!!!」


曲がりくねった道の多い渓谷の車道

ワルイージも逃れる為とはいえ、ほぼ直進しかない場面でしか
加速装置を使用しなかったのだが…






ワルイージ「あばばばばばば!ぶつかるゥゥゥ!?」

マリオ「大丈夫だ、人間この程度じゃ死なんさ!」ギュィィン!!


そう言って更にペダルを踏みしめ速度を上げる命知らず馬鹿
 ハナっからぶつかる事が前提の発言である


ワルイージは…、今にも失神しそうな彼は薄れゆく意識の中で思った



   ‐ワルイージ『あぁ!神様でも悪魔でも何でも
              良いから誰か助けてくれぇぃ!!』‐



 …確かに神様でも悪魔でも何でも良いから助けろと叫びはしたが

 何故よりによって自分以上の命知らずな冒険馬鹿野郎に縋ったのか…

 過去に戻れるなら数刻前の自分をぶん殴ってやりたい、と思った

















  マリオ「…すまんな、壊しはせんが傷は付きそうだ
            心配するな、修理費は俺持ちだから、な?」




 申し訳なさそうに言う英雄の言葉が耳から入り

 集中線が見えるような気のする視界が前方に白いガードレール

 そして…その先に広がる青空とゴツゴツの岩肌、谷底の奈落




  ワルイージは思った


 「あっ、オレ、これ死んだわ」



 ズバッ、ベキャッ、ゴシャバキィィィ―――ッ!



 赤い帽子の英雄は大空を飛ぶ鳥の気持ちになった

 顎長男は目を剥いて精神が大空を飛んでいった
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:38:04.01 ID:Ofd+FNnE0



ゲドンコ星人はその有様を見て硬直した




彼等は残虐非道な宇宙生物である




が、…同時に彼等にも【感情】と呼べるモノはある


指導者の名の元に結託し合い、同胞が倒されれば怒り狂う事もあるし

余りにも強大な敵を前にすれば怯える事も無くは無い




今、彼等が抱いた感情は呆れとも、驚愕とも言えない



四輪車が空を飛んだのだ、しかも…










ダンッ‼! ダダンッ!! ―――ズドンッ!ギャギャギャッ!ギュルッ!


BUROOOOOOOOoooooooo…!!



子供がよく河原で遊ぶ際に水切りと呼ばれる遊びがある

 拾った小石を水面に回転を掛けながら投げる遊びで
小石が遠心力によって如何に遠く、何回飛んでいけるかを競うお遊戯



 ガードレールをぶち破った鉄の塊はそのまま奈落の底から
突き出るように生えたタケノコ岩を踏み台にしてバウンド…




かつて…英雄兄弟<マリオ・ブラザーズ>達が【レインボーロード】で
幾度となく魅せ続けてきた大ジャンプであった…




ズドンッ!と一際大きな音を渓谷中に響かせ、"向こう側"の車道に着地

着地と同時横滑りしながらスピンした機体を何処にもぶつけることなく
平然とした大道芸をやってのけたマシンは走り出した





   ゲドンコ星人F「ヽ§ヽΘζ…」



   ――――冗談だろ…おい‥


語源は誰にも理解できないが、恐らくそう言ったのだろうな…

156 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:39:51.50 ID:Ofd+FNnE0


マリオ「ふぅ…!いやぁ…!久しぶりにやったなぁ!」ハッハッハ!


マリオ「…あー、やっぱり機体に傷ついちまったか…
     すまんな、…事が終わったらちゃんと修理費は―」クルッ









ワルイージ「」ブクブクブクブク




マリオ「……」


マリオ「……これからはもうちょい安全運転をすべきか…」ポリポリ



口から泡を吹いて気絶している彼を見て
後ろ頭をポリポリとかくマリオ…





  ズドォォォォン!!!




マリオ「むっ!」バッ!



遠くで爆発音、そして黒煙が上がるを見て何事かと身構えた
だが、その正体がなんであるか彼は察した



マリオ「……そうか、あっち側には確かルイージが居たんだったな」


 ズドォォォン!!  ドガシャァァァァン!!  ゴォォォォ…!



岩肌が赤い閃光に照らされ、一瞬、焦げ茶色に見えてる

 鳴り止まない破壊音、上がる黒煙
遠目にチラッと見える火を噴きながらどうにか逃げようとジグザグに
飛行し…あと一歩の所で最終的に地表からすっ飛んできた投石で
撃沈される宇宙船の影


今頃、向こう側はクレーターと残骸だらけなんだろうな…




マリオ「…さて、コイツも此処まで避難させとけば安全だろう」


目を醒ます様子が一向に見受けられない気絶者に背を向け

マリオはサンセット色に染まる向こう側へと歩き出した



彼は…『完全に記憶を取り戻した』のだッ!


―――
――

157 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:55:57.58 ID:Ofd+FNnE0


ボコンッ!!


革靴の底が叩き出したのは金属がめり込んだ音

立ち昇るのは黒煙と聴きなれない言語と金切声

天へ昇る悲鳴と煙、対を成すのは地の底へ堕ち征く歪んだ円盤だ







―――チュドオオオオオオオォォォン!



墜落と同時それらから噴き出していた焔は更に勢いをあげ
終いには機体そのモノが一つの火球と化す



     「ギィィィイイイイイii」「アギィィィャァァaa――」ボジュゥ…



 パチパチと焚き木が出す音のようなソレと金属製の塊が崩れ落ちる音
そしてド派手な爆発音のハーモニーの中に紛れる生き物のような声は
炎に包まれかき消される…




一匹のゲドンコ星人が機体の窓からソレを見て2頭身を震わせる


異星人の目には空を駆ける一人の悪魔…否ッ!死神の姿が目に映るッ!








   ルイージ「ッらああああぁぁぁ!!」メシャァアアアアッッ!





猛々しく咆えた漢はまたひとつ…!またひとつ!と強靭な足腰で
外来の科学技術を鉄屑へと変えていくッ!

鼯鼠<ムササビ>が木から木へと飛び移るように彼は跳ぶのだ


文字通り鉄骨並み…いや、それ以上の規格外骨格と
超人の域である筋力が円盤のウイング部に当たる部分を踏み抜く





…脆い

なんと脆いものか…っ!


それを比喩するならば正しく
『冬の初め頃にできたちっぽけな
 凍った水溜りを長靴の子供がお遊び感覚で踏んで砕く』それに等しい




外宇宙からやって来た金属は薄い氷の膜のようにぶち割られる…


158 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 00:58:56.08 ID:Ofd+FNnE0


"普段、温和な人間ほどキレた時の恐ろしさは破格である"




現代人なら誰しもが一度は小耳に挟むこの思想を説いた人物は
どのような実体験からそう言い広めたのやら…



頼りない髭、永遠の2番手、気苦労の絶えない凡夫…




前線で戦う彼の姿を見ぬ一般人の率直な感想だ



今の姿を見ればその認識は上書きされるだろう…


次々と鉄屑に変わる宇宙船と業火の渦に悲鳴諸共飲まれ炭化する同胞
窓から空と地獄絵図に変わる地を交互に見て居た1匹のゲドンコは…
思わず悲鳴を上げた



…? 何故悲鳴をあげたかって? 理由は至って単純だ…















           "次は自分達の番だから"









シュタッ! ボコンッッッ




飛来してきた"人間兵器"

直後、安定性抜群の機体が大きく傾き
異常を知らせるアラームのけたたましさが彼等の命運を物語る


幼子を護る揺り籠のような優しい揺れは嵐に遭い転覆寸前の船を…
けたたましさは搭乗員の命のリミットを…

それぞれよく表現していた…



【窓ガラスの向こうに映るルイージ】「…」ギロッ


ゲドンコ星人「キ キィィィィ!!!!!!! ! ! ! ! 」ビクッ


兄を殺された

その感情を持って飛来してきた漢と目が逢った…
異星人はその瞳に確かに鎌を持った髑髏が映るように錯覚する
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 01:01:13.76 ID:Ofd+FNnE0

ゲドンコ星人の宇宙船は実に頑丈な創りであった

窓ガラスはクッパ軍の【キラー】砲ですら傷一つつかない程の物質で
出来ている…この星の強化硝子なんぞとは強度が段違いだ


彼等の星の光線銃でさえ、防ぎきる



【窓ガラスの向こうに映るルイージ】「…」グググッ!


握り拳を創った白いグローブを彼はこれ見よがしに見せつける
腕を思いっ切り引き延ばし、一発の右ストレートを繰り出す




瞬間ッッッ!拳は音速を超えたッ!!



強化硝子をぶち抜き、金縛りにあったゲドンコの鼻先で
寸止めされた握り拳と割れた硝子の音に搭乗員は一斉に見る




ゆっくりと…



ゆっくりと……



ゆっくりと………っ




ゆっくりと……………ッッッ!




ビデオテープに録画された植物の蕾が花を咲かせるまでを
早送り再生で見せるように…握り拳は開かれる…




――――――――ポゥ…




 パーの状態になった掌中心部に緑色の粒子のような何かが集まる!




 目と鼻の先で開かれた白いグローブ付きの手に集まる美しい緑の輝き

それは…翡翠<ヒスイ>の如し美しさ…彼は畏怖の念さえ忘れ、思わず見惚れ






          ルイージ「【ファイアボール】」




―――ジュウゥゥゥ!!!!



           彼は世を去った

160 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 01:05:54.13 ID:Ofd+FNnE0



後方へと仰向けになるように倒れ込む姿は実にスローモーションだった


倒れ込む同胞の顔が見え始めて彼等は絶句する


焼け爛れた顔、眼球も唇も2本だけの歯も何もかも…紫色の肌も
こんがりウェルダン状態だ


キノコステーキの芳ばしい香りが船室に漂う




…ドサッ!



1、2回床にバウンドした時彼等は漸く我に返る





何を呆けているのだッッッッ!!!



次は誰の番だ!?次は"自分"なのだぞッッ!!




「「「―――――――――ッッッ!!」」」



恐怖の波は彼等の心のダムを決壊させる

完全に恐慌状態に陥り、反撃も動くことも忘れ竦みあがる


次は誰だ…ッ!

自分なのか…ッ!それとも隣の仲間か!?後ろの仲間なのか!?


緑の悪魔が次に指先を向けるのは"誰"なのか、僅かな寿命と
隙さえあらば逃れられるか、という淡い希望を抱く
彼等の予測はどれでも外れだ





ジュボォォォオオオ!!


生命活動を終え、大の字で倒れた仲間の身体全身が二度目の火球で
完全に燃え上がり炎の塊と化す



ルイージ「たあああああぁぁ―――ッ」ゲシャッッ‼



彼は力の限り右脚を使って緑炎の塊を蹴り飛ばした

燃える塊からゲシャッ!と骨が砕け散る音が聴こえたが
 そんなことはどうだって良い、何ら躊躇いの無い死体蹴り

 ボウリング場でストライクを取った時のような爽快感だった
燃える焼死体は"残りのピン"を巻き込んで
宇宙船内のメインコンピューターに突っ込む


誰が次に死ぬか、ではない、彼等の予測は全て大外れ


正解は全員が同時に命を落とす、である
161 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 01:16:28.26 ID:Ofd+FNnE0



―――チュドオオオオオオオォォォン!



…こうして、また一機、黒煙を上げて墜落していく

墜落の間際に鼯鼠<ムササビ>のように他の機体に飛び移る姿が
また別の誰かの目に止まっていく




―――ドオオオオオオオォォォン!

――――――ドゴシャアアアアァァァン!!


<ギッ! ギィィィ―――!
<アギャアアアアアァァ!!



―――バッグオォォォォン!!

―――――ズガシャァァァン!!



 ズドォォォン!!  ドガシャァァァァン!!  ゴォォォォ…!







渓谷にクレーターと宇宙船の残骸が幾つも積み重なる
大穴が空いた地面、それを埋め尽くし新たな山を築く鋼鉄製のガラクタ





ルイージ「もう終わりかい…?」シュタッ





 ゴゴゴゴゴゴゴ…!


  ドドドドドドド…!






ルイージ「キミ達は僕の兄さん、越えるべき壁を壊した"強敵"だ」


ルイージ「誰もが認める英雄を倒した強者なんだ」





ルイージ「そんな強敵が"僕如き"に
           あっさり負けるのかい?」ゴゴゴ…!


ルイージ「そんなんじゃあ、僕の気が収まらないよ」ゴゴゴ…!

ルイージ「その程度じゃないだろうッ!
        掛かって来いッッッッ!!!!!!」ゴゴゴ…!




       「…その辺にしとけよ、ルイージ」シュタッ!
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/27(土) 03:21:57.08 ID:Ofd+FNnE0
*********************************


           今回は此処まで!



    もうすぐ、前スレ分は全て此方にもって来れそうですね

*********************************
163 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/27(土) 14:48:44.91 ID:7aMyv1tqO
留慰ー次声ぇぇぇ!
164 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/29(月) 08:04:43.64 ID:uR2yMxzko
乙ですよー
前スレの時からこのルイージ無双のところほんと好きだわ
165 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/30(火) 21:09:47.21 ID:sckCzWUw0


ルイージは思わず息を飲んだ


 まだ目前には浮遊する異星の兵器達がある、が…そんなことさえも
忘れてしまう程に彼は眼を見開いて、背後を振り返る



「らしくないぞ、お前がそんなに青筋立ててキレるなんて」



ルイージ「…っ!…!」パクパク



金魚の物真似か?と目の前の男は声も出せない彼を見て肩を竦める


トレードマークの赤い帽子にオーバーオールと白いグローブ…
年季の入った革靴で砂埃舞う渓谷の地を踏みしめる姿







ルイージ「にい…さん…!」

マリオ「おっと、ワルイージにも言ったが俺は幽霊じゃあないぞ?
    この通り脚だってある」ポンポン



ほら、見て見ろよ?と右手で片足を叩くリアクションを見せる




ルイージ「っ…な、なんだよ…心配、させやがって!!」

ルイージ「本気で死んだかと…思ったじゃんかよっ!」



――生きていた、"生きててくれた"

―――声は震えてたし、涙は無意識に流れる


かつて、キングテレサに囚われていたマリオを救い出した時と
同じように彼は身内の無事に心から涙した…!



マリオ「ははっ!まさか!俺の不死身さはお前が一番知ってるだろう」

マリオ「ルイージ…」フッ…



彼は此方に歩み寄り、小さく握り拳を創る、そして…





  マリオ「オラァッ!」バキィィ

 ルイージ「ぶべらっ!?」ベキョッ




思いっ切り弟の顔面をぶん殴った



ルイージ「ぐ…あ、あがが…な、なにふふんだひょ!!」
   訳(ぐ…あ、あがが…な、何するんだよ!!」

166 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/30(火) 21:14:50.38 ID:sckCzWUw0


マリオ「ふぅーっ」コキコキ!


手首を鳴らして、彼は一呼吸、そして弟に言い放つ


マリオ「今、なんで俺がぶん殴ったか分かるか?ルイージ」


ルイージ「いっつぅ〜…なんでだよ」ヒリヒリ






マリオ「…この一年近くお前は
      俺に記憶の事を黙ってた今の一発はソレな」



記憶喪失のマリオに要らんお節介を焼いた事での一撃



ルイージ「そ、それは…!」


マリオ「で、だ!」グッ


再び拳を創る英雄……その強靭たる肉体の鉄拳は…ッ!



              バキィィ!!!



ルイージ「に、兄さん!?」

マリオ「っ…ったた…結構痛いもんだな、コレ」





今、弟の顔面を殴りつけた拳はそれ以上の強さで
マリオ自身を殴りつけた…


これには弟も困惑した、兄は何を考えたのか?やはり頭か何処か
後遺症でも残っているのでは!?と


マリオ「おう…今、失礼な事でも考えなかったか?」


ルイージ「(ギクッ)ま、まっさかぁ〜…」




マリオ「…」

マリオ「今の一発は……」




マリオ「お前やヨッシー…姫…それに国の色んな人達に
      心配ばっか掛けた自分勝手な修行馬鹿への怒りだ」



マリオ「今の今まで…お前たちの僅かな気遣いや、何が何でも
    俺に過度なトレーニングをさせないために色々してきた事…」

マリオ「色々と、な…思い出すと
      同時に客観的にも視えるようになったからな」

マリオ「…すまん、今までお前にも迷惑を掛けた」
167 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/05/30(火) 21:22:24.41 ID:g/NpJ/aSO
He's one gigantic motherfucker.
168 :>>167 いえーす、むきむきまっちょめーん [saga]:2017/05/30(火) 21:24:50.98 ID:sckCzWUw0






――――…渓谷は静まり返っていた、ただただ…そこには静寂があった





いや、厳密に言えば廃材と化した宇宙船が燃える音や未だ浮かぶ
ゲドンコ星人の機体の浮遊音もあっただろう




だが…この兄弟の周囲には入り込める音など無かった…



片や、思いっ切り腫れた頬を抑え
片や血が滲み出ている口元なんて気にせず頭<コウベ>を垂れる







…今、ルイージの目の前にはマリオが居る…


そう…かつて、幾多モノ"冒険"を経験した真の英雄が帰って来た






 -今、実に1年振りに"本当の意味で"この兄弟は…邂逅できたのだ-




 悟られぬ為に…そんな想いからの真の意味で本心を語らず、明かさず
血の繋がった兄弟だというにも関わらずどことなく余所余所しい


見ようによっては上辺っ面だけの家族関係
そんな冷めた見方にもなり得るモノとは違う…


おおよそ365日近く間の開いた本音の同士の語り合い…ッ!それが!
目の前に在るのだッ!





マリオ「…本当に大事なモノを俺は見失ってたさ」





『焦る必要はないさ!キミは…そうだな少し頑張り過ぎただけなんだ』

『たまには落ち着いてよーく周りを見る事だって大切なんだぜ?』





マリオ「夢ん中で…友達に教えられたよ」


マリオ「…英雄<ヒーロー>たるモノが
      こんな大事なモン見落としてたんだ、笑っちまうぜ」


ルイージ「…兄さん…」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/30(火) 21:27:04.52 ID:sckCzWUw0

 マリオは天を仰ぐように…そして遠い何処かに居る友人の姿を視る
かつて【カジオー軍団】との闘いで、共に在りし日を駆け抜けた友を…




 マリオ(今ならお前たちの名前を呼んでも良いだろう…?
                 なぁ、"ジーノ"…"マロ"…)






 マリオ「俺を殴れ、ルイージ、今まで姫や国民…そして―――」



 ―――そして…俺の好敵手<ライバル>達に





マリオ「―――…色んな人に迷惑を掛けたこの俺をッ!!」

マリオ「童話の走れメロスのラストシーンみたいに思いっ切り
     音が出るくらいぶん殴れッ!」






ルイージ「…っぷ!」

ルイージ「ぷっはははははははっ!」



ルイージ「ようやく記憶が戻ったと思えば…くっく…!」

ルイージ「弟を思いっ切りぶん殴ってしまいにゃ
      次に自分も殴れ、か…やっぱり変わらないな…」



ああ、これだ

これでこそ、あの"英雄"なんだ
自分が憧れ、そしていつの日にか追い抜くべき高み…っ!





ルイージ「オーケーだ!歯ぁ食いしばりなよッ!
      さっきの仕返し込みで喝を入れるからさッ!」グッ!



―――――ベキィィ!!



マリオ「おごッ!?…」ヨロッ


マリオ「…なんだよ、俺が筋トレを怠けてた間に鍛えてたのか?」


ルイージ「ふふんっ!これがスーパールイージさんの実力さ!」





マリオ・ルイージ「「…」」


     「「…っぷ! あっはっはっは!!!!」」

170 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/30(火) 22:50:17.82 ID:sckCzWUw0


マリオ「は、はは…あっ!、久しぶりに大笑いしたから
                   くく!腹が痛いな」



ルイージ「本当だよね、…僕等がどんだけ兄さんを遊びに連れてっても
      此処まで笑ってくんなかったのにさ〜」




マリオ「俺には…やはりこの生き方が性に合ってるようなんでな」スッ

ルイージ「そっか…それが兄さんにとって
             幸せな人生なら…仕方ない、か」スッ




邂逅の末に大笑いした英雄兄弟は…ゆっくりと同じ方角を見据えて
目つきを細めた



マリオ「なぁ、久しぶりに勝負しないか?」


ルイージ「勝負だって?奇遇だね、僕も記憶が戻った記念で
      ちょいとばかし兄さんと競いたい事があったんだよ」



マリオ「そりゃ奇遇だ…なら勝負事の内容はこんなのでどうだ?」



マリオ「今、現在進行形でキノコ王国内に現れたゲドンコの宇宙船を
     どっちが多くぶっ潰すか?」






2人は同じ方角を見る、同じ空の同じ空間の同じ機体共を



ルイージ「なら、この事態の引鉄は何か?黒幕は居るのか?何者か?
      それも調べ上げて事件を解決したらボーナス得点付きに
      しようぜ、その方が燃えるだろ?」





マリオ「よく分かってるじゃないか」ニヤリ

ルイージ「伊達にアンタの弟やってないからね」ニィ!





マリオ「…ド派手に…」

ルイージ「ああ、やってやろうぜ…!」











    -  英雄兄弟<マリオブラザーズ>の復活だッ!   -


171 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/30(火) 23:24:21.67 ID:sckCzWUw0
―――
――



渓谷にて紅と碧が天を駈け始めるとほぼ同時刻…




         【キノコ王国 〜城下町〜】




「うわああぁぁ!!!テロだァ!!テロリストが攻めて来るぞッ!」

「は、早く逃がして!!!」

「うぇ〜ん!ママ〜!」



        ワー! ワー! キャー! キャー!



ヨッシー「はいはい!そこの人!ちゃんと避難指示を出してる方に
      従ってくださいね〜!」

ワリオ「おうコラ!!そこのテメェ!列を乱してじゃんあねぇぞ!」



キノピオ「こっちです!皆さん!指示に従って避難施設へ!」







ワリオ「チッ!こいつぁ不味ぃぞ!
         …どいつもこいつもパニックってらぁ」

ヨッシー「そりゃそうですよ、此処長い事平和が続いてたって時に
      突然『戦車に搭乗した武装テロリストが攻めて来た』!
      なんて報告が来れば国内大騒ぎですよ」



キノピオ「すいませんっ!お二人共、お手伝い頂いて」


ワリオ「へっ!とんだゴタゴタに巻き込まれたモンだがよォ〜!」

ワリオ「ちゃんとお国から
    お手伝いの恩賞金っつーモンが貰えんだろォ!」


ワリオ「期待しとくからな!…おい!そこの老夫婦!
        早く避難所へ…あぁん!?孫が居ねぇだァ!?」





<クソガ!ショーガネー オレガサガシテキテヤルゼ!





ヨッシー「それにしても"旧クッパ軍"…ですか」


ヨッシー「やれやれ、平和なご時世とやらが
        よっぽどお嫌いなんでしょうかねぇ」



キノピオ「はい…この目で見たんです!間違いありません!」

172 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/05/31(水) 01:44:58.68 ID:MRuYfKl50


ヨッシー(ふむ…クッパ軍団の人員が今回のお祭り屋台に
                全員出払ってたわけでない)

ヨッシー(…クリボーくん言ってましたねぇ…なるほど…
         クッパ軍全員ではなく…一部の人員ですか)

ヨッシー(ノコノコさんとはよく文通してましたし…大体
      キナ臭い話も小耳に挟みはするんですよね、私)




ヨッシー「もうそろそろ、この辺りの避難は
        完了と言ったところでしょうね」


キノピオ「はいっ!」







ヨッシー「…ワリオさんが戻って来次第、私は
      この非常識なお客様方を見てきますね」


キノピオ「そ、それって…」



ヨッシー「折角のお祭りで、マリオさんとルイージさんの一騎打ちが
     見れそうだったのに、それが台無しですよ?」


ヨッシー「この有事が臨時ニュースで国内に報道
      おかげでレース中継も屋台のご馳走もおじゃんです」


ヨッシー「怒ってますよ?私」



ペロン…っ!と舌を出す仕草を見せる緑の友達に
キノピオは何と声を掛けていいか分からない


あえて言うなら…





キノピオ「あのぅ…できれば穏便に…」



ヨッシー「…まぁ、手加減はしますよ?多分ですけど」トテトテ…





そういう彼の手にはタマゴがしっかりと抱えられていた…






その昔、コウノトリが落とした双子の赤子を守り抜いたという
伝説的な卵の狙撃手の腕は未だ健在である…



ズルズル…


トテトテと靴を履いたトカゲが歩いて征く、その背を5個の卵が
追いかけて行く…ッ!
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