都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…… Part13

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12 :大王の契約者 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/06/06(火) 20:28:45.45 ID:vGbnNWGAO
けふっ。予告通り、上げますよ〜

●前回
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1483444899/992-995
このスレの、「「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」という設定をシェア」した作品。
都市伝説に関する様々な設定を引き継ぎながら、学校町とは異なる発展を遂げた世界。

前回は、異形たる存在に襲われ、その同類である異形【メリーさん】と契約を交わした男の物語。
彼らは名乗る、人間と契約して仕える『伝説使徒(アーバント)』と。その存在とは、いったい?

今回は、伝説使徒【こっくりさん】と契約したサッカー少年の物語。
はたして、少年はどのような運命を紡ぐのか……。
13 :大王の契約者 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/06/06(火) 20:30:39.03 ID:vGbnNWGAO


 人は噂した、「硬貨と五十音表を使った降霊術により現れる、【こっくりさん】がいる」と。

 人は噂した、「人を襲うため風と共に現れる、【鎌鼬】がいる」と。


 『Meme(ミーム)』。それは人類が進化の過程で獲得した遺伝情報の一種。
 ミームは『文化』『技術』『情報』として人類の生存のために繁栄し、時に姿かたちを変えた。

 そのミームのひとつに、『幽霊』というものがあった。
 それらは未知の現象・事件……情報を理解するために生まれ、情報としての生存能力に長けていた。

 だが、幽霊も『科学』の進歩により不要となった。
 科学が、あらゆる未知の情報を解析してしまったのだ。


「へへへ、今日のテストも100点満点だね。」


 さて、質問である。
 もし仮に……「ミームが意思を持っていたら」、彼らはどのような行動に出るだろうか?

 例えば……『科学のミーム』でも解析できない現象を『幽霊のミーム』が起こす……かもしれない。


「分かってるよ、これもお前のおかげだ。」


 『妖怪のミーム』は、進化の時を迎えていたのだ。


「な、こっくりさん。」


 下校中、ぶつぶつと呟きながら少年が振り向くと、そこには半透明の子どもが居た。
 【こっくりさん】と呼ばれた子どもは、少年に言葉を返す。

「ボクの力を、チャチな事に使わないでほしいな。主様。」
「『あるじさま』なんてカタ苦しい呼び方、やめてよ」

 煙たがる少年に対し、【こっくりさん】は肩をすくめた。

「わざとだよ。たまには『契約者』だって事、思い出してほしいからね。」
「だって、分からないんだもん。けーやくとか、アーバントとか。」

 【こっくりさん】は『伝説使徒(アーバント)』の一種である。

 『伝説使徒』とは、情報によって生まれた生命体である。
 物理的な肉体を持たず、自らの素となる情報と謎の根拠でそこに存在する。
 そのため、人間によっては視認困難な場合もある。

 しかし、媒体も無しにその体と精神を保つのは困難である。
 情報は、時間と人間の手で常に変化し、それは伝説使徒にも影響を与える。
 外見だけでなく、性格や能力さえも、ミームの加減で変化してしまうのだ。

 安定を求める伝説使徒は、人間に契約を持ちかける。
 『人間の脳を、自らのミームを保存する媒体として扱う』契約だ。
14 :大王の契約者 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/06/06(火) 20:32:38.52 ID:vGbnNWGAO
「主は、ボクのミーム……つまり記憶を覚えていてくれる。それだけで良いんだ。
 キミが生きている限り、ボクはボクのまま生きていけるからね。」

 媒体があれば、体と精神は安定する。
 ただし、媒体である人間―契約者―の死は自らの破滅に繋がる。
 契約者の吟味は『伝説使徒』の死活を別ける問題である。

 【こっくりさん】は、自分の運命を少年に託した。
 人間であれば、小学生レベルの知能でも契約できるらしい。

「そう言われても……忘れる方が、難しいし。
 オレだって、こっくりさんが居て、うれしいし。」

 少年にとって、契約は苦痛でも負担でもなかった。
 人間の脳はかくも複雑で、1体程度の伝説使徒なら保存できてしまうようだ。
 当然ながら個人差はある。脳の状態や伝説使徒の情報量によっては、命の危険すら考えられる。
 だが、リスクを冒す価値が『契約』にはある。

 伝説使徒を保存した人間の脳は、進化する。
 全ての伝説使徒を知覚しやすくなり、超感覚を獲得する例もある。
 また、契約した伝説使徒の力を多少コントロールしたり、時間をかけてミームを書き換える事もできる。
 そもそもとして、伝説使徒の命を預かるものとして、従者のように使役できるのだ。

 もっとも、少年にとって【こっくりさん】は『友達』でしかない。
 少し不思議な存在であるが、自分と変わりない友として、ただ受け入れていた。

「……ありがとう。」
「じゃあ、帰るとするか―――」
「おーい!」

 ふと、遠くから少年を呼ぶ声が聞こえた。
 声の方からクラスメイトの姿が見えると、【こっくりさん】はその姿を消した。

「なぁ、今から、裏山に行かないか?」
「なんだ? ヤブから棒に。」

 少年のクラスメイトが提案したのは、裏山の探索だった。
 クラスメイトが言うには、裏山には『遭難者の霊』が今も彷徨っているらしい。
 それが最近になって、裏山で遊ぶ子ども達を襲っている……そんな噂が流れているのだ。

「そのウワサが本当か、確かめに行こうぜ?」
「……ふーん。」

 きっと遊びのつもりだったのだろう。だが、少年は知っている。
 【幽霊】というものが実在し、時に、人を襲う事を。

「悪いけど、今日は用事があるからパス。明日にしようぜ。」
「じゃあ、帰って退治するための、準備でもするか。またなー!」

 そう言ってクラスメイトを帰らせたが、少年はひとり呟く。

「悪い、こっくりさん。今日は用事ができた。」
15 :大王の契約者 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/06/06(火) 20:33:19.50 ID:vGbnNWGAO






―――裏山


 ある程度整備された道に従えば、ハイキングコースとして利用できる場所である。
 だが少し外れると、獣道ぐらいしかない迷路と化す。
 子ども達にとっては、探検ごっこや秘密基地造りといった、有名な遊び場にもなっている。

 そんな場所に、人を襲う【幽霊】がいる。
 誰かが退治するなら良いが、きっと大人は信じない。
 ……なら、退治できるのは自分だけだ。

「ここら辺かな?」
「うん。気を付けてね。」

 少年と【こっくりさん】は、獣道を進んでいた。
 噂となっている【遭難者の幽霊】がいる場所を目指して。

 しかし、見当はついていた。【こっくりさん】の能力である。
 【こっくりさん】は、十円玉を介して質問することで、あらゆる質問に答える事が可能となる。
 その能力で、事前に居場所を突き止めていたのだ。

「よっと……ふぅ。」
「あっ、危ない!」

 少年を【こっくりさん】が突き飛ばすと、その真上を何かが通過した。
 生き物ではない……『伝説使徒』だ。

《ククク……ボウヤ、コンナ所で、何シテル?》

 ボロ切れを纏った大人の女性に見えたが、その姿はうっすら透けている。
 その声も、少年の頭に直接響くように聞こえた。
 間違いない、彼女が【遭難者の幽霊】だ。

 少年は、思わず手に取った木の棒を投げつける。しかし、木の棒は幽霊をすり抜けてしまった。

「あっ!?」
《オヤオヤ……オイタが、スギルわ……》

 慌てる少年の元へと、ゆっくり、ふわりと、【遭難者の幽霊】は向かって行く。

「主! 実体がない伝説使徒に、そんなのは効かないよ!」

 【こっくりさん】の叫びを聞き、少年は冷静になった。
 すぐさまポケットから手袋を取り出し、両手に取り付ける。

「こっくりさん、こっくりさん……鳥居へ!」

 少年がそう呟くと、【こっくりさん】は吸い込まれるように、手袋の中に入った。
16 :大王の契約者 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/06/06(火) 20:34:04.12 ID:vGbnNWGAO
《ボウヤ、アタシが……躾けて、アゲル!》

 【遭難者の幽霊】が、少年に向けてその腕を振り上げる。
 しかし少年はわずかな動きで避け、カウンターの拳を振るう。

「たぁ!」
《ゴフゥ!? ナ、何故……? タダの、パンチで……。》

 その拳は、実体がないはずの幽霊に当たった。

「ふふん、ただのパンチじゃない……『ボク』のパンチ、だよ。」

 少年の口から、【こっくりさん】の声が響いた。

「憑依さ。実体を持つ人間に、ミームであるボクが憑依したら……。
 より強いミームを持つ、伝説使徒のように戦える!」
《ソ、ソンナ……》

 少年が付けている手袋には、十円玉が仕込まれている。
 その十円玉により、【こっくりさん】の第2の能力、『十円玉に触れている者に憑依』が可能となったのだ。
 憑依された人間は、伝説使徒と一心同体となり、より強い力を振るえるようになる。

 少年に憑依した【こっくりさん】は、殴る・蹴るを繰り返す。
 女性の幽霊は、その殴打に圧倒されていた。

《コ、コドモ、如き……。》
「に、圧倒されているのは、誰?」

 そう嘲笑して殴りつけた時、【遭難者の幽霊】は怯まなかった。
 そのまま少年の首を掴み、押し倒す。

《コドモ如きが、アーバントを、ナメルなァッ……!》
「ぐっ、しまっ……!」

 【遭難者の幽霊】は、ギリギリと少年の首を絞める。これは、憑依の弊害ではない。
 幽霊タイプの伝説使徒は、物理的には触れないが、一方的に人間を攻撃できるのだ。
 むしろ憑依のおかげで、少しは丈夫になっているが……。

「(このままでは、主が……)」
《クカカ……サァ、ヒトリで、何が、デキル!》

 抵抗する【こっくりさん】に構わず、女性の幽霊はその力を強めた。
 【こっくりさん】に、なす術はなかった。



「(つまり、『オレ』の番だな。)」



「こっ、くり、さん……こっくり、さん……。」
《ホザけッ……!》

 少年に憑依した【こっくりさん】は、女性の幽霊に抵抗しながら、何かを呟く。

「チェックマークへ……!」
《ナッ、グワァ!?》

 そう呟いた瞬間、手袋から飛び出した【こっくりさん】が、女性の幽霊を頭突きで突き飛ばす。
 そしてそのまま靴の方へを入っていくと、少年は立ち上がった。
17 :大王の契約者 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/06/06(火) 20:34:43.72 ID:vGbnNWGAO
《コザカ、シイ……》
「いいか、『ひとり』じゃない……『オレたち』だ!」

 今度は、少年の声に戻っていた。しかし少年が纏う雰囲気は、先ほどのままだ。

《違いナド、ナイ……! マトメテ……!》
「“フリーキック”。」

 少年が呟くと、その両手の間から、黒い球体が現れた。
 それを使い、少年はリフティングを始める。

《……急ニ、アソビ、始めた……?》
「さっきまでは、こっくりさんの番だったが……選手交代さ。」

 リフティングを重ねる毎に、球体はそのエネルギーを高めていく……。
 【遭難者の幽霊】は、そう感じ取った。
 しかし気づいた次の瞬間、球体は自分へ目掛けて、飛んで来ようとしていた。

「カウント10、シュート!」
《クゥッ!? グヌヌ……!》

 とっさに【遭難者の幽霊】は、その球体を掴んだ。しかし今にも弾き飛ばされそうだ。

《コンナ、モノデ……!》
「“ハンド”ォ!」

 少年がそう叫んだ瞬間、球体が爆発し、【遭難者の幽霊】を吹き飛ばした。

《カ……ハッ……?》
「サッカーだよ。オレはただの人間だから、オレの得意なルールで、戦わせてもらう。」

 これは、契約の履行である。伝説使徒は『契約者に力を貸す』、それは伝説使徒の枷とも言える。
 【こっくりさん】は、少年へ一方的に憑依したままにはなれない。
 少年が、【こっくりさん】の力を使う状態に、いつでもシフトできるのだ。

 そのスイッチは、手袋と靴に仕込まれた、十円玉だ。
 鳥居マークが書かれた手袋へ入った時は、格闘する『少年に憑依した【こっくりさん】』
 チェックマークが刻まれた靴へ入った時は、サッカーで戦う『【こっくりさん】を憑依した少年』となる。

《クゥ、クソォ……!》
「待て、逃げるな!……“キックオフ”!」

 少年は、ポケットから取り出した十円玉を指で弾いて、また黒い球体を作る。
 弾いた十円玉が球体に入ると、球体は地面に落ちた。少年はそのまま、獣道でドリブルを始める。

《クソォ、クソォ……!》
「(くっそ、坂でサッカーするのは、つらいな……。)」
「(主、見失わないようにね。『あそこ』に誘導するよ。)」

 【遭難者の幽霊】は、木々をすり抜けて、ただひたすらに逃げていく。
 【こっくりさん】の能力と、遊び場としての記憶から、少年は追跡しつつドリブルする。



《ハァ……ハァ……。》

 【遭難者の幽霊】が辿り着いたのは、ピクニックができる広場であった。
 見晴らしこそいいが、幸いな事にガキ共はいない。音を頼りに、木のそばへ隠れた。

 ……無駄とも知らずに。
18 :sample02-01 ◆dj8.X64csA [sage saga]:2017/06/06(火) 20:36:36.60 ID:vGbnNWGAO
「(主、あの木の後ろ!)」
「よっしゃあ!」

 【こっくりさん】の誘導により、その場所は分かった。
 あとはこの足場で、あそこへ的確にシュートするのみ。

 ならば……憑依による身体能力向上を利用した、あれを使う。

「オーバーヘッド……シュート!」

 蹴り上げた球体と共に飛び上がり、宙返りして球体を蹴り飛ばす。
 球体は、すさまじいエネルギーを纏いながら高速で飛び―――【遭難者の幽霊】が居る木を通り過ぎた。

《……バーカ。》

「こっくりさん!」


 はたして、彼女はそれに気づいたのだろうか―――


 彼女の後ろを通り過ぎた球体は―――


 【こっくりさん】が受け止め、今にも炸裂せんと光っていた事に―――


「 “サドンデス” 」


 【遭難者の幽霊】は、跡形もなく消え去った。






―――帰路


「へへへ、今日も快勝だったね。」
「快勝じゃないでしょ、何度かピンチだったし。」

 【遭難者の幽霊】を倒し、少年達は帰路に着いていた。

「あれはオレじゃないしー、こっくりさんだしー。」
「うっ……ごめん。主の身体なのに、調子に乗って。」
「あぁ、そうじゃなくてだな。もっと作戦とかレンケイを考えようぜ。サッカーみたいにさ。」

 契約者と従者という関係でありながら、少年は【こっくりさん】を友と見ていた。
 それが、【こっくりさん】にとっては、たまらないほど嬉しかった。

「……うん! でも、主も無茶はしないでね。オーバーヘッドは危険だから。」
「……あはは。やったオレでもヒヤッとしたぜ。」

 特に、誰に言われたでもないが。少年達はこれからも、伝説使徒と戦っていくだろう。
 自分の世界を、守っていくために。

 さぁ、明日は休みだ。『幽霊なんていない裏山』を探検しよう。



 人は噂した、「『伝説使徒』と契約すれば、その力を行使できる」と。

 人は噂した、「『伝説使徒』は、契約者が得たミームによって、時に進化する」と。



 ―――これは、『伝説使徒』と契約し、『伝説使徒』と戦う者達の物語―――
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