都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…… Part13

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189 :冬のかき氷 [sage]:2018/02/14(水) 00:24:51.39 ID:aqE6A8qeo
ある冬の週末のこと。ちらちらと降り始めた雪を見て
日本全国寒波襲来!という報道を思い返しつつも
男は馴染みの店に入るとカウンター前の列に並んで
何を頼むか考え始めた。

「今日はイチゴスペシャルか……いや、あんこ抹茶も捨てがたい……」

男が呟きながら悩んでいるのはそう、かき氷の注文であった。
大学の友人には揃ってこんな寒い日にバカだのアホだの言われた男だが
かき氷が好きなのだからしょうがない。いや、大好きなのだからしょうがない。

「待てよ両方…………2ついけ……いけるか?」
「……いけますよ」

男が振り向くと、女の子がグッと手を握り締めてこちらを見つめていた。
目と目が合ったことにほんの少し驚いて反射的に視線を下げると
寒い日にも関わらず露出した、白く眩い肌の見える首元には雪の結晶のネックレス。
そのまま視線が胸元に留まりそうになるのをこらえて顔をあげ、口を開く。

「ならイチゴスペシャルとあんこ抹茶を一つずつ」
「かしこまりました!」

名前は知らないが顔馴染みの店員に、常連権限で注文を済ませて席に座る。
窓の外を見れば雪の勢いがほんの少し増したように思えて
早く暖かくなってほしいと、男は今度こそ心の中で呟いた。
190 :冬のかき氷 [sage]:2018/02/14(水) 00:25:28.69 ID:aqE6A8qeo
そんな日常から数日後のある日の夕方……すっかり日も没した時分
人通りの少ない住宅街の道で薄く積もった雪を踏みしめながら
男は馴染みのあの店、つまりかき氷のことを考えていた

「来月から始まる謎の新メニュー、気になりすぎる……」

そんなことを呟いていると、前方から物音が聞こえた気がした。
いやこれは物音ではない――――戦闘音だ。
男は舌打ちすると走り出し、ファスナーを下ろしてコートを脱ぎ捨てる。
続いて靴を脱ぎ捨てシャツを放り、ベルトを外してズボンを置いていく……
もちろん男が狂った訳ではない。こうしなければ戦いに障りがあるだけのこと。
ようやく見えた現場では、和服の女性が大きな車輪の猛突進をかろうじて避けていた。

「大丈夫、パンツは……また買える!ウオオオオオオオオオ!!!!」

雄叫びと共に男の体が炎に包まれる。
その背からさらにロケットのごとく炎が吹き上がったかと思うと
男は弾丸のように前へ前へと加速し、ほんの一瞬で現場にたどり着き
車輪の横腹で目を見開く髭面のおっさんの顔に、容赦なく右ストレートを叩き込んだ。
こうして住宅街に現れた都市伝説『輪入道』は、あっけない最期を迎えた。

「なんとか倒せたか……あの、大丈夫で「きゃああああ?!!」……あっ、と、クション!」

悲鳴をあげ長い黒髪を振り乱して脱兎のごとく逃げ出した
顔も知らない和装美女(推定)を見送ると、男はクシャミをして服を回収し始めた。
冬の夜空の下で、契約都市伝説『人体発火現象』が鎮火し全裸になった彼の背は
寒さ以外のなにかで縮こまっているようであった。
191 :冬のかき氷 [sage]:2018/02/14(水) 00:25:58.21 ID:aqE6A8qeo
ある冬の日のこと。男が馴染みの店で列に並んでいると

「あの……ちょっといいですか?」

男が横を向くと、名前は知らない顔馴染みの店員が手招きしている。
案内されるがままに奥の席に座ると、店で見覚えのないかき氷が運ばれてきた。
チョコレート色のかき氷にかけられたチョコレートシロップ
さらに振りかけられているのはチョコチップとこれは……砕いたビスケットか
ふとそこで今が何月なのかを思い出した。

「これは……まさか?」
「その、新メニューは本当だと来週からなんですけど……試食してくれる人が少なくて」

なのでよかったら、お礼に……いつも来てくれてますし……
黒いポニーテールを揺らしながら、どことなく恥ずかしげに言う彼女の前で
男はスプーンを持ちゆっくりとかき氷を食べ始めた。
常連特権、素晴らしい。そう心の中で呟きながら……

二月も半ば、寒い冬の日のことだった――――
192 :冬のかき氷 ◆MERRY/qJUk [sage]:2018/02/14(水) 00:32:58.32 ID:aqE6A8qeo
この寒い時期にかき氷好きが高じて店で若い女の子と盛り上がった……
という話を道端で小耳に挟んだので突貫で書きました

この物語はフィクションです
危険なので冬の夜に全裸徘徊はやめましょう
あとチョコのやけ食いもやめましょう
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