都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…… Part13

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197 :次世代ーズ 前回 >>178-186 ◆John//PW6. [sage]:2018/03/08(木) 22:30:52.85 ID:nPXwulCpo
 




「ぎゃぁぁぁぁあああああああああああああああああすっっっ!!!!!!!」


 闇夜をつんざく、絶叫
 歯を食いしばりながら頭上の声の主を仰いだ

 東一葉
 「三年前」の事件の犠牲者にして都市伝説「繰り返す飛び降り」と化した女の子

 原話(オリジナル)に“取り込まれ”かけていた所に俺達が割り込んだ
 何かって言うと、彼女が飛び降りようとしたところで邪魔をしたんだ
 もっと具体的に言うと、飛び降りた直後に俺の“尾”で受け止めた
 “取り込まれ”を阻止して彼女を正気に戻す方法をこれしか知らなかったからな

 で、だ


「いやだあああああああっっ!! 離してええええええええっっっ!!!!」
「ちょっ! おいぃぃっ!? あああ暴れんじゃねえって!!! おいぃぃっ!!!」


 正気に戻ったのか分からないが、めっちゃ暴れてる

 状況を乱暴なほど簡単に説明すると現在彼女は宙高く浮いている
 東ちゃんが飛び降りた瞬間に、生やした“尾”を飛ばすように引き伸ばして
 “尾”の先端で彼女の体を掴んで止めたような格好だ
 そして東ちゃんはなんでか“尾”から逃れようと死にもの狂いで暴れている

 そうだな、ついでに言うと、俺が“尾”を生やしたのは本当に久し振りだ
 少なくとも学校町に越してきてから“尾”を使ったことなんて――余計なこと考えてる場合か!?


「離しっ、やだあ、やだああああっ!!! 離さないでぇぇぇぇぇっ!! いやああああああっっっ!!!!」
「だからっっっ!!!!!!! 暴れんなってっっっ!!!!!!!」
「おい早渡!! 上だ!! 屋上に押し上げろっ!!!」
「出来るなら最初からそうしてらあああっ!!! クソっ! お、“尾”の感覚がっっ!! クソぁあっっ!!!」
「いやだああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!!」


 久し振り過ぎて上手く制御出来ないだなんて笑い話にもならねえぞ!?
 兎に角、東ちゃんをホールドしたままゆっくり地面に下ろさないと!!
 だが持つか? 持つのか俺の“尾”っぽ!? 持ってくれよ!!

 途中から東ちゃんのパンツが見えたまんまになっちゃったが構ってる余裕はない

 先程までの彼女の様子とは大違いな絶叫に半ば耳が麻痺したまま
 “尾”がバラけないように全神経を制御に集中するしかない!


「おおっっ……!!! おあああっっ!!!」
「あとチョイだ、あとチョイっ! 早渡ィっ、踏ん張れぇぇっ!!!」

「離さないでええええええっっっっ!!!!! やだあああああああうお゛っっ、げほっっ、ごほっ」


「うおおおおおっ……!!! おあああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっっ!!!!!」

















 
198 :次世代ーズ 29 「空より来りて」 2/7 ◆John//PW6. [sage]:2018/03/08(木) 22:32:12.57 ID:nPXwulCpo
 


 その後
 軽く一時間くらい経過したんじゃないかと思う

 “尾”を使った所為か
 全身から力が抜けるような脱力感に襲われながらだったので
 その間のことは、もう記憶も飛び飛びだ


 まず、東ちゃんを無事地面に降ろすことには成功した
 “尾”を使うのが余りにも久し振りだった為か全身をくすぐられたような感覚だ
 膝がガクガク笑いながらもどうにか気合で立っていたが

 次に、東ちゃんは悲鳴を上げてその場から逃げ出した
 「人面犬がいるううう!!」とか絶叫してたんで半井のおっさん見てビックリしたんだろう
 今更だろって話だが半狂乱になって飛び出した東ちゃんを慌てて追い掛けたものの
 東ちゃんを探し出すのに滅茶苦茶時間が掛かってしまったんだ

 最終的に校舎と校舎の隙間部分の更に奥に隠れた東ちゃんを見つけ出して
 何とか説得して出てきてもらったんだが、具体的に何を言って説得できたのかは
 ほぼ何も考えずに喋ってた所為か、あまり覚えていない

 ああ、ただ東ちゃんも正気に戻って前のことを思い出したのか
 俺のことを記憶してくれてたようで、それが幸いした
 こうして俺達は半べその東ちゃんになんとか出てきてもらったんだ

 それで、だ
 今の俺が何をしているかというと、
 半井のおっちゃんの提案で何か飲み物を買いに行く所だ
 この中学、高校とは違って自販機が設置されていないらしい
 お陰で一旦校外に出た上で自販機を探さなくちゃならなくなった

 正直まだフラフラしてるんだけどね













 
199 :次世代ーズ 29 「空より来りて」 3/7 ◆John//PW6. [sage]:2018/03/08(木) 22:32:51.12 ID:nPXwulCpo
 











 そう、故に早渡達は知り得ない
 東一葉と合流を果たした彼らを遠方より観察する人影があったことに


「もうちょっと近づいた方がよくないのー?」
「駄目よ、これ以上距離を詰めて勘付かれたらまずいでしょ」


 その者達は双眼鏡で早渡達の動向を監視していたのだ


「やっぱりあの人、犯人じゃ無さそうな感じなのー」
「何言ってんのよ!? 今見てたでしょ!? アイツが『学校の怪談』の子を追い詰めてるの!!」
「でもぉー……なんだか、助けようとしてる風に見えたなのー……」
「いいメリー? これだけ状況証拠が揃いつつあるのに容疑から外すなんて考えられないわ!」
「あれ、でも……、あの『怪談』の女の子は……」
「上手く逃げ出せたみたいね。それにしてもあの子、なんで今夜は屋外に居たのかしら?」


 早渡が自販機を探すために校外に出た所も、その者達は把握していた


「まさか人間のみならず都市伝説まで襲ってるなんて……、とんだ見境無しね」
「どうするのー……? 今から追い掛けてやっつけるのー?」
「いえ、今夜はあくまで様子見、でも尻尾は掴んだわ。あの男、絶対に――」


 片割れの声に、敵意が滲む


「――ぶっ[ピーーー]してやる……!」


 その者達がどのように早渡と関わるのか
 彼らはまだ、知る由も無い











 
200 :次世代ーズ 29 「空より来りて」 4/7 ◆John//PW6. [sage]:2018/03/08(木) 22:33:28.75 ID:nPXwulCpo
 



          ●



「その、ありがと」


 東ちゃんはおずおずとコーンポタージュの缶を受け取った

 結局自販機を見つけるのに手間取って時間を使ってしまった
 買ったのは手に持てる量の問題で俺と東ちゃんとれおんの分だけだ


「まあ、俺達の分は無いよね」
「新谷ぃ、そういうナマはテメエでプルタブ開けれるようになってから言えや」
「悪い、今度改めて奢るからさ」


 れおんにみかんジュースのボトルを渡し、俺はスポドリのプルタブを開けた
 喉の奥へと一気に流し込む。冷たさが体に沁みるのが妙に心地よい
 少しは先程の疲れも紛れたかもしれない


「それで、さ。君は、わたしの心配して見にきてくれたの?」
「嬢ちゃん、キモいんならキモいってはっきり言ってやれよ。早渡の奴は喜ぶからよ」
「俺を変態みたいに言うのはやめろ?」


 取りあえず余計なおっちゃんの一言に突っ込んで、東ちゃんに向き直る


「ほら。花房君から『三年前』の真相を聞くってときにさ
 東ちゃんも一緒だったら事件の『再現』にも付き合う、って答えたじゃん
 なんつーか、俺の都合で勝手に東ちゃんを巻き込んだわけだし」

「気にしないでよ、あのとき言った通りだから
 わたしもあのときのこと、『飛び降り事件』のこと、知りたかったし」


 彼女は両手でポタージュ缶を握ったままで答えた
 その顔は外灯があるとはいえ、校舎の陰に紛れてよく見えない


「そっか、わたし都市伝説になっちゃったんだ
 なんかまだよく信じらんないよ、死んだ人間が都市伝説になるってあるの?
 ていうかさ、都市伝説って実在するんだ?」

「現に目の前に居るだろ、人面犬の俺や『コロポックル』のガキがよ。それに早渡は『契約者』だ」
「契約者?」
「都市伝説と契約を結んだ人間のことだよ」


 おっちゃんの説明を一応補足しとく
 とはいえ、今の東ちゃんにとって必要な説明では無い気もするが


「死んだ人間が都市伝説になるかは、珍しいことだけど前例が無いわけじゃ無いしな」
「そっかー……」


 東ちゃんの声は何処か困惑気味だ
 仕方がない、いきなり理解しろってのが無理な話だ


「それで『再現』見終わった後、東ちゃんが急に居なくなったけど」

「ごめん、実はあの後のことも、あんまりはっきりと思い出せないんだ
 なんて言えばいいんだろ、この姿になってからさ、今日屋上から飛び降りるまで、ずーっと悪夢見てたみたいな気分
 悪夢の中にいた、って言った方がいいのかな」


 花房君が花選びのセンス無いってとこはハッキリ覚えてるんだけどね
 東ちゃんはそう困ったように笑ったようだった

 
201 :次世代ーズ 29 「空より来りて」 5/7 ◆John//PW6. [sage]:2018/03/08(木) 22:34:07.90 ID:nPXwulCpo
 


「あと、あー。あの、さ
 出来れば、さっきわたしが、飛び降りる前に話してたこと
 あの、全部忘れてくれると嬉しいな、って、ダメ? ダメかな?
 さっきのって、なんかうわ言みたいな感じだから。もう、恥ずいから
 わたし、すっごい冷たいこと言ってたよね、あれ本心じゃないからね? だから忘れてね?」

「ん、OK。今夜限りで後はさっぱり忘れるよ」

「あと、さ。そろそろ名前教えてよ!
 いつまでも君呼びは嫌だし、それにそっちはわたしの名前知ってるのに
 わたしが知らないって気持ち悪いじゃん! だから名前教えて!」


 おん?
 まだ自己紹介してなかったか


「俺は早渡脩寿。高一だよ」
「むー、高一なら、ええと、うーん、多分わたしより一個下だよね?」


 当然そうなる
 花房君の一つ年上って話だったからな


「じゃあ、あの! 東ちゃんって呼び方はやめよーね!
 一応わたし、君より先輩だし! 敬っていいんだぞ!? ていうか、あの、敬って!!」


 あら
 ひょっとして東ちゃん、改め東先輩は意外と上下関係を重んじるタイプなのか
 これは意外だな


「じゃあこれからは東先輩と呼ぶことにするっす」

「あっ、ちがっ、待って! そうじゃなくて! 東ちゃんなんて呼ばれ方が嫌なだけだから!
 あの、ほら! いよっちって呼んでよ! わたしのあだ名だから!」

「いよっち先輩」

「そ――そうそう!!」


 なんだ、いよっち先輩
 握りこぶしな両手をポタージュ缶ごとぶんぶん振ってるが
 そんなに先輩呼びが嬉しかったのか
 てかリアクションが一々面白いな


「それで、青春タイムの最中悪いが、俺達も自己紹介がまだだったよな?」


 半井のおっさんの声にいよっち先輩が固まった
 どうもおっさん達の存在を殆ど忘れてたんじゃないだろうか


「俺が半井、『人面犬』な? で、こいつが俺と同じく新谷だ
 で、こっちのチビが『コロポックル』のれおんだ」


「いよっちちゃん、よろしくね」
「いよっちせんぱい」
「へ、あ、あー、ちっちゃい子にそう呼ばれると、なんかその、恥ずいよー!」


 れおんの奴、さっきからずっと黙ってたのに
 澄ました顔でいよっち先輩呼びとは中々やるな


「でも何だかこうやって人と話するのって久し振りだよ!
 前に花房君達と話したけどさ、そう言えば話し掛けてくる人なんて今まで居なかったなーって
 自分のこと、ずっと幽霊だと思ってたから、中学の子もみんなわたしが見えないみたいで――」


 
202 :次世代ーズ 29 「空より来りて」 6/7 ◆John//PW6. [sage]:2018/03/08(木) 22:34:42.86 ID:nPXwulCpo
 


「――あ、ふ
 っと、ごめん。安心しちゃったのかな。ちょっと眠くなってきちゃったよ」


 眠気が? そりゃいい兆候だ
 睡眠や食事はANには必ずしも必要の無い要素だ
 そもそもコードに忠実な個体になると欲求は全く必要なくなる
 こうした欲求は“取り込まれ”から脱して自我を維持していく上で重要だそうだ
 まあ全部彦さんからの受け売りだけどな!
 というわけで俺がコーンポタージュをチョイスしたのも決して気まぐれからじゃない


「ところで嬢ちゃん、今夜は何処で寝るんだ?」
「え、あ。それ考えてなかったや」
「でも今まで中学に居たんだよな?」

「うん。でも、さっきも言ったけど半分悪夢見てたような感覚だし
 学校で寝てた覚えが正直無いっていうか、ていうか夜の学校で眠るなんて怖いしやだよ!?」

「どうする? 早渡」
「いよっち先輩。……うち、来る?」
「え? それって早渡後輩の、お家? え、うーん」

「まあまあ待て待て早渡、いくら都市伝説とはいえ年頃の嬢ちゃんだ
 オメーのような野郎と一つ屋根の下ってのはちょっち憚られるだろ」

「まあそりゃそうなんだけど、他にベターな案が無くってさ」


 流石に高奈先輩に頼るってのはまずい
 いきなり女の子を連れてきて泊めて貰うよう頼むなんて、向こうからすれば困惑モノ過ぎるだろ


「おっさん、そっちに伝手はあるか?」
「無いわけじゃねえが、ちょっち話つける必要がある。久し振りに会う相手だからな」


 成程、ならばおっさんに任せよう
 一応当初の手段として用意していた、いよっち先輩を「七つ星」に連れて行くって手もある
 学校町から向かうとしたら結構手間な手続きを踏むことになるが、何も考えなかったわけじゃない


「そういや肝心なことを忘れてたんだけどよ
 嬢ちゃん、お前都市伝説になってから中学の外に出たことあるかい?」

「え? ううん、無いと思う。考えもしなかったから」
「何だおっさん、何か引っ掛かる所があったのか?」

「いやよ、『繰り返す飛び降り』が地縛霊みたいなもんだったら
 そもそも嬢ちゃんが学校から離れられっか怪しいぜ」

「えー、いくら何でもこれ以上夜の学校に居るのはやだよ!!」



 
203 :次世代ーズ 29 「空より来りて」 7/7 ◆John//PW6. [sage]:2018/03/08(木) 22:35:22.86 ID:nPXwulCpo
 


 いよっち先輩はやや涙声だ
 半べそになる程にここが嫌なのか
 いや、気持ちは分かる。この中学、妙に雰囲気が不穏だし


「大丈夫、策は用意してある」
「ほんと!?」


 今夜中学にやって来たのは確かにいよっち先輩の様子を確かめるためだった
 だが、以前の状況から彼女が“取り込まれ”かけていることも考慮に入れて計画は立てていた
 万が一いよっち先輩を保護するとなった場合のことも一応は考えてたんだ
 何も考えずにのこのこ中学に来たわけじゃ無いぜ


「おし、用は済んだしとっとと帰ろうぜ
 何だか静か過ぎる夜でよ、薄気味悪いもんだ――」



 全身が総毛だったのはこの瞬間だ
 途轍もない“波の先触れ”が脊髄を撫でた感覚

 口より先に体が動いていた

 いよっち先輩とれおんを掴むように、奥へと押しやった



「物陰に隠れて!! 速く!!」



 直後、後方で爆破音

 何かが地面に直撃したような振動が脚伝いに奔った



「うひゃい!! 何? 何なの!?」
「クッソ、このタイミングで来たのかよ!? 新谷ィ! れおんの傍、離れんな!!」
「いよっち先輩、姿勢低くしてて!」



 遠い外灯の光を受けて、地面に突き刺さったそれが鈍い輝きを放っている
 玉虫色のような不気味な反射光だ



「早渡やべーぞ! ありゃピンポイントでこっち狙ってやがる!!」



 校舎が死角となって現時点では襲撃者に直視はされていないようだが

 動きを悟らせないよう、僅かに足をずらして校舎の縁から空を睨んだ



 不気味な低音の唸りを上げながら、「奴」が滞空している





 俺達はたった今、「モスマン」の標的にされた








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