都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…… Part13

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334 :次世代ーズ 前回 >>326-330 ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:12:52.12 ID:Qm5h1XQro
 




 この日の放課後も俺は東区を散策していた

 目的もなく単に歩き回っているだけかというとそれも違う

 理由あって大家さんが管理していた物件を片っ端から探し回っているんだが
 ネットで紹介されてる以外にも多数の物件を所有していたらしく、これが中々見つからない
 越して来てからというもの、歩き回ったり人づてに訊いたりして探索を続けてきたけど
 あんまり成果は上がっていない

 で、今探しているのは東区にあるという貸家だ
 「戸建ての物件」なことと、「大分前に、住んでた一家が全員失踪した」という怪しい曰くくらいしか情報がない
 いや特に二番目の、いかにも人の興味を引きそうな話題ならすぐに見つかるだろと思っていたが、甘かった
 同じクラスのダチ公曰く、東区にはそういう噂のある物件は意外と多い、らしい
 七月からずっと探し回っていたものの、色々あったおかげでまだ特定には至っていない


 まあ焦りは禁物だな
 前方を歩いている女子高生の背中をぼんやりと眺めながら、そんなことを考えていた
 あの制服は東区にある高校か、あの高校って確か自宅アパートに近かったような気もする
 正直なところ、商業高校に行く! って決めてなければ、東区の高校へ行くべきだった
 若干後悔してるところも少しあるが、まあそんなことはいいか


 「狐」の件も花房君達のおかげである程度情報を手に入れたし
 いよっち先輩の方も一段落ついたわけだし
 「狐」周りで大きな動きがあるまでは、しばらくこっちに専念してもいいかもだ

 にしても、さすがに最近はラルムに通い過ぎだったな
 足るを知るってやつだ。これからは週一、……いや週二にしよう
 というわけで今日はラルムへ行かないけど、大家さんのためにも探索は続けないとな
 それに地道に続けていけば、必ず手掛かりにも行き当たるはずだ


 角を曲がった


 しっかし最近は色々あってまともに東区を散策するのが本当に久し振りだ
 ここんとこずっと、いよっち先輩に会おうと中学辺りをうろついてたし



「ぎゃーっ!! 誰かーっ!!」



 色々考えていたところに
 割って入った絶叫


 俺の身体は身構えていた


 妙なのは、このとき脳裏を走ったのが
 「誰か襲われたのか?」ではなく、「なんだ今のは?」だったことだ

 声色がなんというか、わざとらしくなかったか
 演技っぽかったというか


 ていうか前にもあったな似たようなことが
 確かコトリーちゃんが赤マントに襲われてたときか



「誰かーっっ!! あ、赤マントがーっっ!!」



 「赤マント」!?
 野郎!! またか!?



 
335 :次世代ーズ 32 「エンカウント side.A」 2/9 ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:14:11.18 ID:Qm5h1XQro
 

 一瞬、躊躇した

 何故だ? 何をためらった?




 とにかく、声のする方向へと、走る




 いや、でもおかしい

 絶叫の響き方からして声の主はそう遠く離れていない

 この距離で何かANなり異常があっとしたら
 まず何か気配というか“波”を感知できるはずだ


 感覚なら既に押し広げている


 “波”は感じた
 でもこれは「赤マント」のものじゃない
 「赤マント」の“波”は、概ね共通して錆び付いたような鉄のニオイ
 だが付近から感じるのはむしろ、乾燥したような、灼け付くようなニオイだ
 「赤マント」のそれではない

 そんなことは現場に辿り着けば分かる


 なのに何かが腹の奥底に違和のように貼りついてる

 何だこれは? 誘い出されてる、そんな感覚なのか?




 迷いを振り切るように

 路地に躍り出た




 声は確かにこっちから響いてきたはず
 だがどうだ
 人影も、ANの姿もない

 いやでも“波”は強くなってる
 これは間違いない

 そして、嫌なことに
 “波”は前方にある電柱から放たれている


 さらに嫌なことに
 普通、人間なりANなりから発される“波”ってのは
 そもそもが生命的な何らかのエネルギーっつう、確かそんな話だった

 だがなんか、前方から感じる“波”はちょっと違う
 生命的な要素がこれっぽっちも感じられない
 まるで物か何かに、“波”だけが貼りついているかのような“感触”だ

 こんな譬えが当を得てんのか微妙だけど
 「人間だと思って近寄ってみたら人形でした」みたいな感じだ


 なにこのホラー展開






 
336 :次世代ーズ 32 「エンカウント side.A」 3/9 ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:14:54.36 ID:Qm5h1XQro
 

 走ってきた所為か鼓動が速まっているのを無理やり無視して
 俺は電柱に近づいていく


 電柱の裏に、なにか居た
 いや、あった


 緑色をした、細長いぬいるぐみだ
 珍妙なキャラクターだ
 身長は1メートルもないサイズだ


 そこは重要じゃない


 問題なのは
 このぬいぐるみの表面を這うように流れる
 無数の赤い光だ


 間違いない
 “波”の正体はこの赤い光だ


 ぬいぐるみの頭部は幾重にも巻きつけられるように
 さらに身体の表面も不規則な形で
 赤い糸のようなものが縛り付けてある


 糸の上を脈打つように
 赤い光が走っていく


 これは、“呪詛”ではない
 その判断はほぼ直観だった


 そして


 この時点でようやく気付いた


 このぬいぐるみ自体がANなのでは、ない


 ましてや、ぬいぐるみが生きているわけでも、ない


 単純に、ただの物に、“波”が、文字通り“貼りついて”いるだけだ


 つまりこれは罠だ




 咄嗟に振り返った

 “黒棒”を出すより前に、速く




 誰かが、居た










 
337 :次世代ーズ 32 「エンカウント side.A」 4/9 ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:15:38.82 ID:Qm5h1XQro
 

 考えるより先に手が動く
 “黒棒”を生成して叩き込もうと、標的をよく見て―― 一瞬、思考が停止した


 目の前に居るのは、女の子だった
 そしてこの子の格好が、なかなか強烈だった


 薄い生地のマントっぽいのを羽織っており
 その下からスクールな水着っぽいのを着ている


 視線が、泳ぐ


 やたら目を引く赤い髪の女の子は
 物凄い表情で俺を睨みつけている


 一拍遅れて、気付く

 彼女は白い長手袋で覆った手で
 俺の顔面に棒きれを突き付けている

 いや、これ棒きれとかそういうアレじゃない
 先程感知した“波”と同種の、しかしぬいぐるみから発されていたそれとは比にならない圧で
 俺に対して彼女の“波”が放たれている

 棒きれではない
 これは、彼女の、“杖”だ


 OK、落ち着け俺

 彼女の格好は世に言うところのコスプレってやつだ
 そこはいい、彼女のちょっと露出高めの容姿に呆気に取られたのはいいとしよう

 なんで俺はこの子に睨まれてるんだ

 なんで俺はこんなに緊張してるんだ?
 どうして鼓動がこうも速くなってるんだ?

 まあ待て、落ち着け俺
 とりあえずこういうときは話し合いだ
 何故に俺をこんなえらい表情で睨んでくるのか、理由を聞き出しても怒られはしないだろう




「観念しなさい、この変態クマ」




 俺が口を開くより前に、彼女が言い放ってきた

 ほぼ同時に、耳元を高熱の塊がかすめていった

 直後、背後から破裂音が響いた




「言っとくけど、余計な真似したら消し炭にするわよ」




 低い、冷たい声だった
 脅迫するかのような、というより脅迫そのものだ


 一体俺が何をした!?
 いや、俺は一体何をしてしまったんだ!?


 
338 :次世代ーズ 32 「エンカウント side.A」 5/9 ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:16:24.40 ID:Qm5h1XQro
 

 落ち着け、まずは整理しろ俺

 俺を罠に嵌めたのはまず間違いなくこの女の子だ
 だが罠を張って俺を待ち構えてたにしては、殺意や悪意の類はまったく感じない

 そうだな、これはなんというか
 純粋な、混じりっ気なしの、文字通りの怒り……だろう多分

 そう、彼女は俺に対して怒りを抱いている
 それも凄まじいほどの怒気だ

 そして彼女は確か、俺を「変態クマ」と呼んだ
 当然の話だがこんなワードに心当たりはない

 何かを勘違いされてる可能性が高い

 そして
 彼女が杖から放った灼熱の塊
 間違いなくこの女の子はANホルダーだ

 そして
 背後を振り返る余裕は勿論なかったものの
 灼熱の塊は、恐らくブロック塀だか何だかに直撃して破裂していた
 そのとき感知した“波”から推測するに、彼女のANは、十中八九炎熱系だ



 つまり、俺の、天敵だ
 直撃したら、大変なことになる
 最悪、死ぬ



「覚悟なさい、アンタが今までやってきたことを後悔させてやるわ」



 今まで誠実に生きてきましたと胸張って言えるわけじゃないが
 でも少なくとも目の前のこの子をここまで怒らせるような真似はした覚えがない
 というか、そもそもこの子とは初対面のはず

 クソッ、心臓が滅茶苦茶ドコドコ鳴ってやがる
 これはアレだ、「僕はやってません」とか「何のことだか分からないなあHAHAHA」とか
 迂闊な言い方したら大変なことになっちゃうやつだ
 落ち着け、慎重に言葉を選ぶんだ俺



「ごめん、あの、身に覚えがないんだけど」

「覚えがない。へえ、そんなこと言うの
 一言目がよりによってそれ? ふざけてるの?
 今まであれだけやりたい放題やって、身に覚えがないっていうわけ?」



 うわあ、めっちゃ怒ってる
 口振りが冷静な分、怒りがこっちに突き刺さってくる



「そう、とぼけるつもりなのね
 あらそう、なら数日前に東区の中学校で
 『学校の怪談』の女の子相手を追い詰めて
 いやらしいことをしようとしていたのも、身に覚えがないって言うのね?
 あの日一緒だった『人面犬』達はお仲間かしら? 今日は独りだから弱腰なわけ? 違うわよねえ?」



 待て
 今の話は、なんだ?
 まさかいよっち先輩のことか?
 だとしたら待て、何だその「いやらしいこと」ってのは!?
 人面犬ってのは半井さん達のことだよな? どういうことだ!? 身に覚えがないんだけど!?


 
339 :次世代ーズ 32 「エンカウント side.A」 6/9 ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:17:08.29 ID:Qm5h1XQro
 

「独りでもあれだけやりたい放題やってたわよねえ
 知らないとでも言うの? いい加減になさいよこの変態!
 アンタが私の体を、その、アンタのいやらしい触手で、私のおし、その、……体を撫で回したことも知らないって言うの!?
 ヌルヌルのベチョベチョにするって言い放って、エロ……くっ……、あっ、や、やらしいことしようと迫ってきたこともとぼける気ね!?」

「待って本当に身に覚えがないんだけど!?」



 OK、誓っていい
 かつてセクハラ大魔王などと不名誉な仇名で呼ばれていた暗黒時代ならともかく
 「七つ星」を経て学校町へやって来た俺は、誓ってそんな罰当たりなことはしていない
 ついでに言っておくとセクハラ大魔王な七尾時代だって、セクハラに及んだのは年上の女性職員だけだ!
 というわけで俺ではない!!
 完全に人違いじゃねえか!? とばっちりもいいとこだよ!!
 とにかくこの女の子にそこんとこを理解してもらわないと



「そう、しらばっくれる気ね。いいわ、いいわよ。そっちがその気なら――!!」



 物凄い圧が、俺を叩きつけた

 一瞬、体が吹っ飛んだと錯覚するほどの圧だ

 ヤバい、呼吸ができない

 落ち着け俺、向こうはちょっと話が通じない感じだ

 こういうときは一旦逃げないと危ない



「――こっちにも考えがあるわ
 あくまでシラを切り続けるつもりなら
 本当のことを話したくなるまで、体 の 端 か ら 灰 に し て い っ て や る わ 」



 逃げ切れるのか、これ

 体が、動かない

 金縛りに、掛かったかのように

 完全に、“波”の圧に、射竦められた

 ヤバイ

 逃げないと、この女の子に、殺される



「逃げられるなんて思っちゃいないでしょうね?
 言っておくけど、前の私と同じだなんて思ってたら、死ぬほど後悔させてやるわよ」



 足が動かない


 目を見張る


 動けないならせめて、この状況を、どうにかして凌がねえと



「アアヴ・エ・ファイ、ヴァスヴォーシュ・アント          (炎の鎖、私の戦意)
 アルヴィル・ノッド・アルヴィル――          (強く、より強く――)」




 
340 :次世代ーズ 32 「エンカウント side.A」 7/9 ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:17:59.31 ID:Qm5h1XQro
 

 やべえぞ呪文まで唱え始めた

 これは脅しでも何でもない

 証拠に、女の子の杖を起点に、“波”の圧が増している


 このままだと


 やられる


 殺される


 どうする、どうする俺!?


 “黒棒”や“尾”では歯が立たない、ならどうする!?


 どうする!?




「――って、待って!!」



 ほぼ、思考停止しかかっていた俺の頭に

 聞き慣れた声が、飛び込んできた



「待って!! ありすちゃん!! 駄目!!」



 思わず

 その声の主を、目で追った

 その子は東区の高校の制服を着ていた



「あり……ソレイユちゃん! 駄目! 待って!!」



 その女の子は、俺に杖を向けていた子と俺との間に割って入った

 コスプレの子の前に、立ちはだかるかのように両手を広げた

 コスプレの子から、俺を守るように



「千十ちゃん!?」
「千十ぉ!!??」



 俺と、コスプレの子の声がほぼ重なった
 間に入ったのは千十ちゃんだった

 でも、なんで千十ちゃんがここに?






 
341 :次世代ーズ 32 「エンカウント side.A」 8/9 ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:19:00.53 ID:Qm5h1XQro
 

「ちょっ、千十!! 何やってるのよ、こっちに来て!!」
「待ってあり、……ソレイユちゃん、脩寿くんと何かあったの!?」
「千十!! ソイツから離れて!! ソイツが変態クマよ!! 早くこっち来て!!」
「変態クマって……」



 千十ちゃんは言い掛け、振り返った
 俺と目が合う

 心臓が、凍り付きそうになった

 千十ちゃんの顔は、蒼ざめていた
 感覚が押し拡がった今、千十ちゃんの感情が突き刺さるほどこちらに伝わってきた

 千十ちゃんが抱いているのは、強い恐怖だ

 彼女は、俺から目を背け

 コスプレの子へと向き直った



「変態クマって、前に話してた痴漢してくるクマのぬいぐるみのこと?」
「そうよ! だから、早くソイツから離れて!!」



 息が、詰まりそうになった



「違うよ、脩寿くんじゃないよ! そんなことをするような人じゃないよ!!」



 千十ちゃんの言葉に
 一拍遅れて、理解が追いついた
 彼女は、俺を庇っているのか



「そうだよね脩寿くん、そんなことやってないよね」



 指が、手が、僅かに震える
 動ける、もう動ける



 千十ちゃんは俺の方を向いていた
 その顔にはまだ恐怖が刻まれているし
 今にも泣き出しそうな表情だった



 俺は、千十ちゃんに応えた



「本当に身に覚えがないんだ、俺はそんなこと、やってない」
「ほら! 脩寿くんじゃないよ! だから……ソレイユちゃん、お願い。杖を下ろして?」



 ソレイユ、そう呼ばれたコスプレの子を見た

 彼女は千十ちゃんに困惑に満ちた眼差しを向けていたが



 やがて、ゆっくりと、俺に突き付けていた杖を、下ろした



 
342 :次世代ーズ 32 「エンカウント side.A」 9/9 ◆John//PW6. [sage]:2019/02/06(水) 00:19:39.21 ID:Qm5h1XQro
 

「千十、とにかくこっちに来て。早く」



 千十ちゃんは躊躇しているのか、再び俺に顔を向けた



 喉がカラカラだ
 心臓が早鐘のように収縮を繰り返してる



「俺は大丈夫、千十ちゃん。ありがと」



 それだけを搾り出した



 千十ちゃんは俺の方を見たまま二、三歩踏み出した
 それより先にコスプレの子が早足で千十ちゃんに歩み寄った
 依然、俺を睨みつけている



「ソレイユちゃん」
「ダメ、まだ信用できない」



 杖の代わりに取り出したのは携帯だった

 俺は口を強く結んだ
 そうでもしないと、全身から力が抜け落ちそうだったからだ

 コスプレの子はどこかに電話していた



「メリー」



 彼女は俺を睨んだまま
 それだけを通話先へ告げると



 千十ちゃんごと消失した



「は、あ」



 今度こそ本当に、力が抜けた
 辛うじて踏みとどまった

 完全にあの子の怒気に圧されていた



 助かった
 千十ちゃんに、助けられた



 それを理解するのに、どれくらいの時間が経ったろう



 俺はその場に坐りこんでしまった






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