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都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…… Part13
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474 :
次世代ーズ 34 「帰る場所」 1/11
◆John//PW6.
[sage]:2022/01/27(木) 19:53:10.23 ID:MNOhVNoyo
「四月の中頃くらいかな? 昼休みに千十ちゃんを見かけて
校舎裏に座り込んでて。最初はイジメられてるのかなって不安になったんだ
四月の入学して間もない頃なのに、そういうのってあるのかなって不思議に思って
一応学校町でもおっきい中学だから小学生のときの人間関係がそのまま持ち上がってくることあるんだけど
でもほら、単にクラスに馴染めてないだけなのかもって思ってさ、どうしようか迷ってたら咲李が直ぐに声を掛けてね」
「そんなことが」
「それから暫くは昼休みを一緒に過ごすようになって
それでね、最初は咲李とわたしが話してたんだけど、千十ちゃんも自分のこと少しずつ話してくれてね
小中高一貫? そういう系の施設出身って教えてくれて。四月に引っ越してきたんだって。確か、ええと、山梨だっけ?」
「そうっす。北杜の、だいぶ山奥」
千十ちゃんと日向さんを見送った後、俺達はドーナツ屋に戻っていた
置きっぱなしになっていた手つかずのドリンクは半ば強引に俺が引き取り、奢りで新しく先輩のをもう一本注文した
これくらいしなきゃ悪い
先輩の話に相槌を打ちながら、ソーダっぽい味覚のドリンクを呷る
「にしても早渡後輩も千十ちゃんと同じ施設の出身だったとはねー、二人は幼馴染なんだ」
「いやまあ、……そう、なんだけど」
罪悪感めいたものが胃の底を刺激する
千十ちゃんと“再会”したあの日、「ラルム」で感じたものだ
彼女に言われるまで思い出せなかった俺に、幼馴染だなんて言える資格は、きっとない
475 :
次世代ーズ 34 「帰る場所」 2/11
◆John//PW6.
[sage]:2022/01/27(木) 19:53:58.25 ID:MNOhVNoyo
「それで、――千十ちゃんもだんだん明るくなっていったかなって
五月には同じクラスの子と一緒に来るようになってね。かやべーちゃん、元気にしてるかなー
咲李も大丈夫そうだねって安心したみたいで。それからも時々、昼休みはちょくちょく一緒に遊ぶようになって
あっ、咲李は色々忙しくてあんまり一緒に居られなかったけど、わたしと千十ちゃんたちで二年生のクラスでよく話したりね
それで……、一学期は大体そんな感じで……」
不意に先輩が押し黙った
俺はもう一口、ドリンクを含んだ
店内のBGMを耳にしながら、先輩の方を見やる
彼女は両手でドリンクのカップを包みながら、ほとんど減っていないソーダを見つめていた
「あのさ、早渡後輩。ごめん
『あの日』のことを聞きたいんなら、わたし、役に立てないよ
夏休み入る前の頃から、何があったかほとんど覚えてなくて」
「あ、いや。先輩、そういうんじゃない。俺は」
「――ごめん」
「先輩が謝ることじゃないよ。マジで
それ言うなら俺は今日、先輩に助けてもらったわけだし
……なんならこれで貸し借りチャラってことにしない?」
「なにそれ、全然足し引きになってないよ、それ」
先輩はようやく顔を上げて困ったように笑った
それを見て、思わず俺も頬が緩んだ
「もう遅いし送ってくよ。さっき話に出てた通り、危ないしな
そういや元々俺ん家に来ようとしてたんだっけ」
「あっ! そうだった! ……ねえ早渡こーはい、今から行ってもわたしは全然いいんだけど?
男子のお部屋ってどんな感じなのか気になるし
ベッドの下にどんないかがわしい雑誌とか隠してるのか気になるし!」
「はっははは、早速俺で遊ぶ気マンマンなのはやめろ?
いやでもほんと遅い時間だから! 俺ん家に来るのはまた今度にしない?」
「ふーん、早渡後輩がそう言うんなら、突撃するのは今度にしてあげてもいーかなー」
多分いよっち先輩の本来のノリはこっちだろう
若干元気が戻ったようで、少し安心した
「じゃあ、そろそろ出るか」
「早渡後輩、あのね」
うん? 先輩は何やらモジモジしてるが
「お願いしたいことがあるんだけど、いい?」
476 :
次世代ーズ 34 「帰る場所」 3/11
◆John//PW6.
[sage]:2022/01/27(木) 19:54:34.84 ID:MNOhVNoyo
ドーナツ屋を出た後
俺は先輩の後を付いていく
帰路である南区方面じゃない
位置的に、恐らくこの町の中央、中央高校に近づいてる気がする
「帰る前に付き合ってほしいところがあるんだ」
いよっち先輩にそう告げられ、彼女に従うことにした
俺達は今、住宅街の只中に歩を進めていた
速足だった先輩のスピードが、やや上がった
その先にあるのは――ごく普通のアパートだ
なんとなく、察した
先輩に従い、アパートの外階段を昇る
先輩も俺も無言だ
やがて三階の踊り場まで上がって、先輩は立ち止まった
「変わってないな」
彼女の背中越しに、囁き声めいた一言を聞く
足音を立てないように廊下を進み
そして、とある一室の前で再び立ち止まった
『奥上野』
「やっぱり……」
先輩の声は俺にも分かるほど沈んでいた
振り返った先輩は、どこか固い面持ちだ
「ごめんね、付き合ってもらって。――もう帰ろう」
「ここが先輩の実家なんすね」
正確には実家“だった”と言うべきだろう
既に表札は別人のそれへと変わっているのだから
しばらくの沈黙の後、先輩は頷いた
外階段へと戻り、静かに階下へと向かう
「わたし、ずっと東中に居たとき、悪夢のなかに居た感じだったんだよね。前話したっけ」
先輩は振り返らず、囁き声で教えてくれた
「そのとき、東さん家は引っ越しちゃった、みたいな話を誰かしてるの、聞いてさ
確かめたかったけど、一人で来るのが怖くて」
477 :
次世代ーズ 34 「帰る場所」 4/11
[sage]:2022/01/27(木) 19:55:17.28 ID:MNOhVNoyo
何と応えればいいのか、分からない
「でも、仮にね。引っ越してなくても
死んだ子どもが戻ってきたら、……やっぱ怖いよね、親だとしても、ね」
そんなことはない、と言いたい
でも言えなかった
先輩の置かれた状況は先輩しか分からない
先輩の今感じてる辛さは先輩にしか分からない
俺は何と言えばいい
一階に着いた
お互い何を言うでもなく、アパートから出る
「あら、こんばんは」
出し抜けに横合いから声が掛かった、年配の女性の声だ
視界の端でいよっち先輩がビクッと揺れるのが分かった
「どうも」
俺は声の主に会釈で応じる
杖をついた、セーター姿のお婆さんだった
そのまますれ違うように歩を進め、ブロック塀の死角へと回り込む
この間、いよっち先輩は俺の影に隠れるように身を縮めていた
「さっきの、知り合い?」
「アパートの大家さん」
なるほど、理解した
「先輩、ちょっとここで待ってて」
「えっ? あっ、なんで?」
踵を返し、アパートへと戻る
お婆さんは、背中を向けているがまだ居た
「すいません、少しいいですか? 此処の大家さんですよね?」
「あら。ええそうよ、どうしたのかしら?」
「此処に、……三年前は、東さんという方が住んでらっしゃったと思います
娘さん、一葉さんのことで、どうしても挨拶したくて伺ったんですが」
「ああ、東さんを尋ねに来たのね。見ない顔だと思ったわ」
彼女は曇った表情のままだ
「東さんは、一葉ちゃんを亡くしてから直ぐに此処を引っ越したの
ごめんなさい、これ以上は話せないわ」
「無理を言ってすいません。ですが、一葉さんにはどうしても挨拶したかったんです
俺……自分の先輩だったんで
せめて、何処へ引っ越されたのか、それさえ分かれば」
478 :
次世代ーズ 34 「帰る場所」 5/11
◆John//PW6.
[sage]:2022/01/27(木) 19:56:31.71 ID:MNOhVNoyo
大家さんが酷く困っているのは嫌でも伝わってくる
だが、此処で折れるわけにはいかない
せめて先輩のためにできることをやらないと
「ごめんなさいね、守秘義務を抜きにしても
東さんが何処に越していったのかは私にも分からないのよ」
ややあって、溜息とともに大家さんは状況を教えてくれた
一葉さん――いよっち先輩を亡くした東夫妻は傍目にも不安になるほど憔悴しきっていたらしい
大家さんにも「娘が死んだこの町に居るのが辛い」と零し、ある晩、まるで夜逃げするかのように此処を引き払っていったという
「すいません、こんな無理を言って」
「貴方、東区の中学出身かしら? 中学校へはもう行った?」
「自分は――別の中学です。でも、東中には行きました。黙祷してきました」
「そう……、きっと一葉ちゃんも喜んでると思うわ
思えば。あの夏からずっと辛いことばっかりね
私のお友達も行方不明になったの。去年の冬にね
親しい人が居なくなるのは、幾つになっても堪えるものよ」
大家さんは遠い眼をして、夜空の彼方へ目を向けていた
俺もいよっち先輩も、黙ったまま歩道を渡った
今度こそ南区に向けて帰途に着いた
「早渡後輩」
前を進むいよっち先輩に、急に声を掛けられ思わず息を呑んだ
先輩は変わらず前を向いたままだ
「ありがとね、付き合ってくれて」
そう言う先輩の背中は、酷く虚ろに見える
このまま消えてしまうんじゃないかという程に
「実はさ、親が引っ越したこと一度確かめたんだよ」
出来ることなら、先輩に並びたい
横顔だけでもいい、一目見たい
「わたしも、甘く考えたんだ
やろうと思えば、親に直ぐ連絡できるんじゃないかって
わたし、携帯もってるし
でもね」
でもそれは無理だ
歩道が細く、人が一人通れるだけの幅しかない
今は先輩の背中越しに、声を聞くしかできない
479 :
次世代ーズ 34 「帰る場所」 6/11
◆John//PW6.
[sage]:2022/01/27(木) 19:57:03.89 ID:MNOhVNoyo
「登録してた連絡先、使えなくなっちゃってたんだ
そんな電話番号は存在しませんって
電話だけじゃなくて、チャットも、メールも無効になっててさ
お母さんのも、お父さんのも。こんなことある? って感じだったよ、もう」
誰かがいてくれればいいのに
こういうときに限って俺達以外に人影は見当たらなかった
おまけに車の往来もないときてる
確かにこの辺りは普段から人気は少ないだろうけど
「あーあ、なんかもうね。あんまり考えたくなかったけど
本格的にひとりぼっちになっちゃったみたい」
先輩のおどけたような調子の言葉を聞き、胸が詰まった
その声は、今にも泣きそうなほど、震えていたからだ
「中学にずっと居続けてたときからずっと思ってんだけど
なんでわたしだけ戻って来ちゃったんだろ、って」
前方の横断歩道
その向こうに見える歩道は、幅が広がっている
もうじきだ、先輩の横に並ぼう
「わたしが戻って来ても、しょうがないって、ずっと考えててさ
みんなも、咲李も一緒に戻って来たら、良かったのにって」
横断歩道を、渡る
俺は、先輩の横へと歩を速めた
そっと、先輩の腕に自分の腕を回した
俺達は立ち止まった
「先輩」
いよっち先輩は泣いていた
そして、そのまま俺の顔に目を向けた
「わたしね、お母さんたちが引っ越したの、なんかの間違いで
アパートにまだちゃんと居て、それで、わたしが会いに行ったら、どんな顔するんだろうって
もし、お母さんに拒絶されちゃったら、どうしようって、そんな怖いことばっか、ずっと考えてて」
「……」
「わたし、結局戻って来なかったほうが、良かったんじゃないかって、ずっと思ってて
そのまま消えていなくなった方が、みんなも、『あの日』のこと、思い出さずに済んだのに
わたし、わたしね。でも、でもね……!!」
俺は、ただ黙ったまま、先輩の嗚咽を聞く
「千十ちゃんが、千十ちゃんがね、帰り際に、言ったの
『私もずっと怖かったです』って、『一葉さんにまた会えて良かったです』って……
『また会って、お話してもいいですか?』って……! わたしさ、そのときは頭いっぱいで、考える暇、なかったけど
今になって、今になってね、あんな風に言ってくれて……、わたしのこと、怖がらずに、抱きしめてくれて……! ……うれしくって!!」
480 :
次世代ーズ 34 「帰る場所」 7/11
◆John//PW6.
[sage]:2022/01/27(木) 19:58:59.22 ID:MNOhVNoyo
先輩は俺の顔を見つめたままだった
「さわたり、こうはい
わ、わたしは、此処に居ていいんだよね?
死んだのに、も、戻ってきて、こうやって、居てもいいんだよね……!?」
「先輩」
震えそうになる吸気を、気合で抑え込み
ぐっと息を止めた
そして力を抜く
「先輩、『此処に居ちゃだめ』なんて俺にそんなことは言えないよ
いいじゃん、居ても。三年前に先輩が死んだのも、先輩の所為じゃないし
都市伝説になって戻って来ちまったのも、先輩の所為じゃない
居ちゃだめなんて理由があるかよ、先輩は此処に、学校町に居てもいいんだ」
「うん……っ!!」
答えになってるだろうか
今は俺に言えることを言った、それしかできない
「それに俺は、俺も先輩に会えて良かったって思ってるよ
第一先輩と会わなけりゃ三年前の事件の真相なんて知ることもなかったし」
「えっ? さわたり、こうはいは、事件のこと、調べてたんじゃ、ないの?」
「いやあ、ね。確かに調べてたけどさ
東中で花房君たちに会ったとき、正直に言うけど
いきなり話し掛けられたもんだから胡散臭さが半端なかったんだよな
正直今でもなんであそこまで教えてもらえたのか、色々疑いだすとキリないんだけど
でも、事件の再現に付き合ったのも、先輩がいてくれたおかげだし、感謝してる」
「……そっか」
いや、教えてもらえた理由も、彼ら自身が話していたし、実際その通りだろう
『お前が情報を知る事が、こっちにとっての情報料なんだからさ』
『中途半端にわかってる状態で「狐」やら別の事やらに巻き込まれて敵になられても、鬱陶しいし邪魔なだけだからな』
特に栗井戸君、言い方は若干キツいけど、しかしその物言いはもっともだ
俺はもう学校町に渦巻く状況に足を突っ込んでいる
いずれ、より深みに足を踏み込むことになる
彼らが与えようとした手がかりを、俺はもう少しで無下にするところだった
そうならずに済んだのは他ならぬいよっち先輩の存在に因るところが大きい
――確かに俺は花房君の様子をうかがうために先輩を利用した、という下心があった。そこは認める
でもこの場でそこまで言っちゃうのは野暮だろ、流石に
「それに今日も、色々ヤバい状況だった俺を助けてくれたのはいよっち先輩だしな
先輩は俺の恩人だよ。だから、頼む」
ブレザーのポケットに手を突っ込む
シワになっちゃいないだろうな、それはちょっとあんまりなオチだぞ
うん、問題なさそうだ
引っ張り出したハンカチを、先輩に差し出す
「涙、拭いてくれ。一葉先輩」
先輩は黙って受け取り、ハンカチに顔を埋めた
481 :
次世代ーズ 34 「帰る場所」 8/11
◆John//PW6.
[sage]:2022/01/27(木) 19:59:35.89 ID:MNOhVNoyo
「ごめん、洗って返すね」
「俺は急がないからな、ゆっくりでいいよ
それにモテる男を目指すなら常に清潔なハンカチを懐に忍ばせておくべし、ってな
ストックは大量にあるんだよ」
「なにそれ、身だしなみは大事だけど自慢するようなとこじゃないよー? それは」
「うるせ! いいじゃん別に! いいじゃん別に」
俺達は再び歩き出していた
南区の繁華街近辺に差し掛かったおかげか明かりも人気も増えていた
そのまま進んでいけば隣町、辺湖市新町に辿り着く
「ねえ早渡後輩、わたし……いつかお母さん達に会えるかな」
「会えるよ、絶対」
先輩がぽつりと漏らした問いを即答で肯定した
勿論手放しで答えられるようなことじゃない
一度死んだ人間が都市伝説化して戻って来た、となったら
基本的にその手の治安当局が黙っちゃいないだろう、『組織』とか『西呪連』とか主にあの辺が
だからと言って
先輩の思いを否定するような応じ方は、できなかった
そうだな、正直色々思うところはあるけど
今伝えるべきことじゃない。機会を改めないとだな
「お金貯めてお母さんたちを探そうって考えててね
もう夜にはお願いしてあるんだけど。お仕事を手伝うことになったんだ」
いよっち先輩の話だと、高奈先輩はネット上で店を構えており
オーダーを受けて服を製作する本格的な仕事をやってるらしい
なんでも海外ではちょっとした人気の店だそうだ
「夜ん家に置いてもらってるわけだし、それにほら、働かざる者食うべからずって言うじゃない?
あ! そだ、そう言えば早渡後輩もバイトしてたり、するの?」
「お? ああ、まあ……うん」
先輩の話を聞いてたら思わぬ質問が飛んできた
いやまあこの会話の流れだし、普通か
「どんなバイトなの? 接客とか? 学校町のお店? だったら教えて!! 行くから!!」
「いや接客じゃないよ、職場も学校町じゃないし。表の言葉だと……工事従事者、みたいな?」
「なにそれ? ちょっと、勿体ぶらずに教えてよ! ねえ!」
「なんつーか説明が難しいんだよ、ざっくり言うと異界の拡張工事のバイトなんだけど」
「なにそれ……?」
482 :
次世代ーズ 34 「帰る場所」 9/11
◆John//PW6.
[sage]:2022/01/27(木) 20:00:12.85 ID:MNOhVNoyo
「異界ってアレだよ、都市伝説とかそういうので……ほら、異次元とか異空間とかあるでしょ?
ああいうとこを開拓して、現世の人間なり都市伝説なり古い怪さんなりが安全に居住できるような空間を作る、そういう仕事
異界はほら、色んな瘴気が噴き出したり変なのが定期的にうろついたりするから、そのまま進入すると結構危ない場所だからそういう作業が必要で」
「ふー……ん???」
いまいちピンとこない、いよっち先輩はそんな表情だ
確かに自分のバイト内容を一から説明するとなるとまあ結構長く複雑になりそうだ
俺も分かりやすく説明する自信が、正直ない
携帯を引っ張り出して、アルバムを開く
画像を指で掻き分け、……あった
「これ、バイト先の仲間」
「あっ! 美人さんじゃん!!えっこれ角生えてるの!?」
「真ん中は梅枝さんでうちのリーダー。呪術も使える凄い人だよ」
「こっちは早渡後輩でしょ? こっちの人は? ……ちょっとタイプかも」
「おっ? いよっち先輩、マコトみたいなヤツがタイプなの? こいつは同じ『七尾』出身の幼馴染」
俺含めた三人が映った画像を先輩に見せた
去年職場で撮ったやつで、バイトの休憩中だったので皆仕事着のままだ
真ん中で笑顔なのが梅枝さん、「鬼」の血筋。そして彼女に腕を回され両脇で苦しそうにしてるのが俺と真琴だ
梅枝さんが首に腕回してきて思いっきり引き寄せたタイミングで撮られてるので、主に俺の顔面が凄いことになってる
しっかし、いよっち先輩の好みなタイプは真琴みたいなヤツか
いやまあ分かるぞ、俺が言うのもアレだけどなんてたって真面目を絵に描いたような好青年だしな
だが残念だったな、いよっち先輩。そいつは既に婚約者が居て、しかも両想いときたもんだ。残念だったな!
「楽しそうな職場だね、いいなー」
「肉体労働系の仕事だからまあまあハードだけど、でも楽しいよ
一年半くらい前だっけ、それくらいから始めたんだけど時間の流れ方が明らかにおかしい場所とかあって
どうなってんだこれって、なってさ。ぶっ続けで一日くらい潜って監督に止められたり、そんな感じだったよ」
「へー、中学行きながらバイトしてたんだ。あれ、でも法律的にどうなのそれ?」
「あ、いや。俺は中学行ってないんだ」
さっき大家さんと話したときの返答は、実は嘘だ
あの場で正直に話すわけにもいかないし便宜上の理由ってやつだ
「えっ!? でも、えっ? 『七尾』って小中高一貫なんでしょ!? だって、えっ!? 義務教育だよ!?」
「ふっふふふ、そこの事情を説明するとそれこそめっちゃ長くなるし色々複雑な事情とか話さなきゃなんだけど」
「七尾」のANクラス出身者はEカリとJカリの内容を強制的に脳みそに書き込まれ
E5修了の時点で中等教育まで履修したのと同レベルの学力を習得することが必須になってて
S1に上がった時点で高認の証書が交付される――んだが、こうした制度にも言うまでもなく色々事情がある
まず脳みそに書き込みを施す「学習装置」なる設備は当然AN、都市伝説能力に由来するシロモノだし
高認に合格したことにするという措置も「七尾」が裏で政府や教育系の行政機関と繋がってるからこそ出来る行為であって
グレーというより真っ黒だ、色々
「えーっ!? じゃあ早渡後輩ってやろうと思えば大学に飛び級できるってこと!?」
「飛び級っつーか飛び入学っつーか、でも許可する大学はまだまだ少ないし、基本は18歳なるまで大学入学はできないって話だぜ」
「へー、ちょっと俄かには信じがたい話ですねー! でもなんで『七尾』から出ることになったの?」
「……“上”の都合で閉鎖しちゃったんだ、施設が」
流石に以前高奈先輩にした話を繰り返すと更に長くなるので止めておく
あといよっち先輩には空七との一件を隠したい。絶対突かれそうだし
「じゃあじゃあ! 早渡後輩の『七尾』と『七つ星』? の頃のこと、今度教えてね!」
「うん、今度な」
483 :
次世代ーズ 34 「帰る場所」 10/11
◆John//PW6.
[sage]:2022/01/27(木) 20:00:40.55 ID:MNOhVNoyo
先輩とそうこう話をしているうちに目的地に近づいてきた
高奈先輩の住むアパート、今はいよっち先輩の帰る場所でもある
「いよっちせんぱーい!!」
「ん?」
「あっ、れおん君。半井さんも」
聞き覚えのある声だ
前方を見遣れば、「人面犬」の半井さんに乗ってれおんがこっちにやって来る
「へっ、デートは楽しんできたかよ」
「そんなんじゃねえよ」
「今日はもう色々あったよー、ねー後輩?」
「うんまあ、……まあ色々あったね」
「しっぽりヤったか?」
「ナチュラルにセクハラかますのやめろ半井さん」
「あ、そだ。れおん! ドーナツ買ってきたよー、ほら」
「え! わーいやったー!」
「おっし、戦利品は頂いた! 戻るぞれおん」
いよっち先輩から大きい方の手提げ袋を受け取ると
れおんと半井さんは猛ダッシュでアパートへと戻っていく
ふと気配を感じ、もう一度前を見る
れおんと半井さんと入れ替わるように、私服姿の高奈先輩がこちらに向かってきた
高奈先輩の横には眼鏡を掛けた女性も一緒だった
「ひさし、ぶりね。早渡、君」
「どうも」
「え、な、なんで? みんなして、ど、どうしたの?」
先輩に軽く会釈で応じると同時、いよっち先輩が慌てたように高奈先輩に尋ねていた
「そろそろ、帰ってくる、頃合いだと。思ったのよ」
「夕飯の支度もできて、一葉ちゃん帰ってくるの待ってたの」
勘ね、高奈先輩は微笑みながらそんなことを言う
眼鏡の女性と目が合った。先輩のお母さんだろうか
484 :
次世代ーズ 34 「帰る場所」 11/11
◆John//PW6.
[sage]:2022/01/27(木) 20:01:18.28 ID:MNOhVNoyo
「この方は、西野さん。お手伝いに、来てくれる、ご近所、さん。なの」
「貴方が早渡君ね、夜ちゃんから聞いてる。どうかな? 折角だし貴方も一緒に夕飯食べていかない?」
「あいや、そういうわけには! 自分もちょっと早く帰りたいんで! すいません、次の機会は是非!」
「そんな、遠慮しなくてもいいのよ?」
眼鏡の女性の提案を、思わず両手で制する
なんというか悪い、そこまで世話になるわけにもいかない
バツが悪い、横に居るいよっち先輩を見た
手厚い出迎えじゃないか、先輩
そろそろ俺もこの辺で引き上げた方がいいだろう
「先輩、今日はありがとな」
「こっちこそ。早渡後輩のお家に突撃できなかったのが心残りだけどね!」
「それは次の機会ってことで、マジで」
「あと、これ。冷めちゃってるけど」
先輩から小さい方の手提げ袋を受け取る
ドーナツ屋で買った、元は俺の家に持って行く用だったものだろう
「それから、改めましてだけどさ」
いよっち先輩は、おもむろに片手を差し出してきた
「今日は……今日も色々、みっともないとこ見せたけど。これからもよろしくね」
「こっちこそ」
先輩の手を、握り返す
僅かながら、先輩の“波”を腕伝いに感じる
それは甘いキャンディのような、優しいニオイだった
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