都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…… Part13

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488 :見つけた=見つけられた=見つかった  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/01/27(木) 21:48:14.31 ID:U8kVXGly0
 甘い香りがする。
 甘い、甘い、甘い、甘い、甘い、あまい、あまい、あまい、あまい…………

 くすくすと笑う声がする。女の笑う声。
 稲穂色の長い髪を持つ、気崩して肌を露わにした装束の美しい女子(おなご)は、ゆっくりとそこに踏み込んできた。

 アァ、甘い、甘い。甘い香りがそこに満ちていく。
 頭がぼうとしてくるような、芯までとろけていくような香りだった。
 思考を奪い去り、その甘みにだけ夢中にさせてくるような、中毒性のある香りだった。

 くすくすくす……と、女が艶やかに微笑む。
 微笑みながら、歩み寄る、甘い香りをまき散らす。思考がとろけていく。
 何も、考えられなくなるような……思考を丸ごととろかされ、この女子の事しか、考えられなくなるような……

「…………あぁ、可愛い子達」

 女子が口を開く。甘い声。
 その声が耳に届くと、さらに思考がとろける。
 女子に、狐の尾が生えている。美しい純白の尾が、全部で九本。
 ゆらゆらと揺れる尾は美しい。揺らめくその動きから目を逸らせそうにもない。

 彼ら、「朱の匪賊」が四番隊の「トンカラトン」達は、その女子から目をそらせずにいた。
 香りを感じた時点で、もう遅かったのかもしれない。姿を見てしまえば、そして、声を聞いてしまえば。
 さらにさらに、精神への「汚染」は進む。心を犯す誘惑の、魅惑の力に侵食される。

 あぁ、あぁ……この香りは、姿は、声は。

「…………「十六夜の君」…………」

 女子の笑みが深まる。
 すらりとした指が、伸びてくる、触れてくる。
 甘さが、直接溶け込んでくるような錯覚。

 あぁ。忘れもしない仔の御威光。
 天にも昇るかのような心地よさ。

 今、自分達の前に姿を現したこの女子は、間違いなく……自分達が探していた「十六夜の君」。
 「白面金毛九尾の狐」。
 町が面妖な仮装をした道化師によって騒がしいこの夜に。彼らはとうとう、探し人を見つけ出して。

 そして、その甘い香りは、彼らに一気に広がっていった。
489 :見つけた=見つけられた=見つかった  ◆7JHcQOyXBMim [sage !nasu_res]:2022/01/27(木) 21:49:50.33 ID:U8kVXGly0



 この甘い誘惑を逃れることができた者が、果たして、「朱の匪賊」の中にいただろうか?
 それは、彼らのみぞ知る事であり。

 このタイミングで、彼らがついに彼女を見つけてしまった事が。
 彼女がついに、姿を現した事が。
 彼らの運命を決定づける事になるであろう事が。
 果たして彼らは理解できたかどうか。

 もう。
 わからない。





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