都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…… Part13

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555 :「日常」の過ごし方と守り方  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/01(火) 20:51:25.69 ID:CYmlSjjO0
 非日常を知っているが故、日常を過ごすにしても多少の警戒はどうしてもある。
 それでも、全く警戒しないよりはましであろうと日常を過ごす。
 それでなんとかなっているのならば、まずはそれでいいのだろう。

(中央高校よりは、都市伝説の出没頻度低いしな……)

 それでも昔よりは出没頻度は減っている、とは聞くのだが。
 周囲から聞いた話では、まだそこそこ出没するというのだからあちらは忙しそうだ。
 父親の勤務先だからと言う理由であちらへの進学は止めた訳だが、そういう意味でも正解だったのかもしれない。

「――――み。荒神ー?聞いてるか?」
「ん?……あぁ、悪い。聞いてなかった」
「お前なぁ。「ヴァンパイアCATS」ではどの子が一番可愛いかって話してたろ」
「前から言っているが、俺はアイドル関連は興味がない」
「「FOXGIRLS」のリーダーは知ってるじゃん」
「あれはアイドルとしてじゃなくてアクション女優として認識してるだけだ」

 クラスメイトとの日常の会話は悪いものではないしなるべく行った方がいいというのはわかっているのだが。
 それでも、興味のない話題はどうしても流れやすい。アイドルにも人の美醜にもそこまで興味がない自分に、今回の話題は難易度が高い。
 こんな自分と、それでも会話してくれるクラスメイトにはいい加減感謝すべきか。

「あ、いたいた、荒神くーん、はい、預かりもの」

 と、クラスの女子が一人駆けてきて、何やら封筒の形に折りたたまれた紙を渡してきた。
 ハートのシールで封がされている。おそらく、便箋か何かをレターセットの封筒のように可愛らしく折りたたんだものか。

「何それ、ラブレター?」
「そうじゃない?どこの学年でどこのクラスの子かわからないけど、荒神君に渡してほしいって預かってきたの」
「…………深川。せめて、そういうもん預かるなら名前くらいは確認しとけ」

 中学の頃からの知り合いのその女子は、「ごめーん」等と軽い調子で謝罪してくるが。
 せめて、預かりものは預けてきた相手の名前くらい把握していてほしい。

 覗き込んでくる周囲を軽く払いながら、折りたたまれたそれを広げて確認する。
 大事な話があるから、放課後に校舎裏に来てほしいという短い一文が丸っこい文字で書かれていた。

「やはりラブレターか……」
「くそ、いつも灰人ばかり……!おこぼれは来ないのか!」
「今年入ってから何回目だ?」
「八回目だな……そして、こいつはそれを全て断っている」
「その気もないのに告白承諾したら、それこそ相手に失礼だろうが」

 もっともな事を告げたつもりなのだが、なぜか嫉妬の類が混じっていると思わしき視線が突き刺さる。
 付き合う気もないのに承諾する方が、相手に失礼だろう。
 手紙を、元の折り目を無視して適当に折りたたんでポケットに放り込む。

「ほら、次の数学、小テストあんだろ。そろそろ準備しとけ」
「あっ」
「っく、その事実から目をそらしていたというのに……おに!きちく!!」
「現実から目をそらす暇あったら勉強しろ。岸立を見習え」

 こちらの会話に耳は傾けていたようだが、会話には加わらず予習していたクラスメイトをちらりと見る。
 視線に気づいたあちらは、軽く笑ってきた。
 学年一位を去年からずっとキープしている彼は、がり勉と言う訳ではないが日々の努力は怠っていない。

 半分唸りながら席に戻っていく連中を見送りながら、適当にポケットに突っ込んだ手紙を思う。
 今日は、診療所に行くのは遅れそうだ。

556 :「日常」の過ごし方と守り方  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/01(火) 20:52:42.80 ID:CYmlSjjO0



 放課後、人気のない校舎裏に向かう。
 誰かにつけられている、という事はない。
 手紙に書かれていた通りと言うべきか、一人の女子生徒の姿がそこにあった。
 あまり、血色のいい顔ではない。

「あ……来てくれたんですね」
「呼び出されたからな。で、何の用だ」

 さっさとすませたい。
 用件を切り出すように言えば、その女子生徒は物憂げに俯いた。

「その……私、あなたに、一目惚れを」
「俺は興味ない」

 即答する。
 色恋の沙汰には、今のところ興味はない。
 一目惚れというものが、よほどの事でもない限りただの思い違いだという事も知っている。

「用件がそれだけなら、帰るぞ」
「あ、ま、待って……」

 背を向けて歩き出そうとすれば、腕を掴まれた。
 女子生徒とは思えぬ強い力で、束縛される。

「酷い人」

 薄く笑う声。
 首元に、牙が、伸びて。



「あら?」

 間の抜けた声がした。
557 :「日常」の過ごし方と守り方  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/01(火) 20:54:08.00 ID:CYmlSjjO0
 こちらが束縛を抜け、振り返りざまに首を斬りつけたのがよほど不思議だったらしい。
 ほんの一瞬だったし、相手はどうにもこちらの首筋しか見ていなかった。どうやって束縛を抜けたのか気づいてすらいまい。
 「切り裂きジャック」の、犯人は医者であったという説。それによって手元に生み出されるメスは、いつでも鋭さを保っている。

「ギ……!?きさ、ま、気づいて」
「お前の顔の生徒はこの学校にはいない。転入生が来るという話もない」

 学校の生徒と教員の顔は全て記憶している。
 目の前の相手が、学校の生徒ではない事くらいはわかる……たとえ、この学校の制服を着ていようとも、だ。

「三年の特進科で、行方不明になった生徒が出ていたな。成績が伸び悩んでの失踪、と噂されてはいたが。お前が殺したか」
「ギ、ギギギ……」

 ずる……と、体から首が、抜けた。
 その生首から食道が繋がっていて、内臓がぶらりとぶら下がる。
 「ペナンガラン」。マレー半島とかあちらの伝承の存在だったはず。
 女の生首から内臓垂らして飛び回る吸血鬼。

「殺して、体を奪ったか。首はどこへやった」
「ギ………っ、キキキキッ。さてね。そこらの犬コロに、くれてやったさ」

 牙が伸びる。
 こちらを、獲物と見定めている。

「アタシは、お前みたいな、契約者の血が好きなんだよねぇ……!吸わせろぉ!!」

 正体を見破られた時点で、こちらを生かすつもりもないのだろう。
 内臓が、うねる。
 こちらを束縛せんとうねり伸びてきたそれへとメスを突き立て、そのまま切り裂きながら一気に本体たる生首へと近づく。

「ギギャ……ッ」
「「狐」の勢力でもなさそうだ。もう聞き出す事もない」

 ぐるりと、唇を、鼻を、眉間を。
 一閃し、さらに、見開かれた目に突き立てる。

「この時期に、余計な手間を焼かせるな。鬱陶しい」

 悲鳴をあげる事もなく、ぼとり、「ペナンガラン」は地に落ちて、そのままさらさらとその生首が、内臓が、塵のように崩れていく。
 あとに残されたのは、使われていた犠牲者の体。
 ため息をついて、携帯端末を取りだす。

「……あぁ、お袋?……「ペナンガラン」を討伐した。それが使ってた体が残ってる…………わかった。悪いけど、任せた」

 「レジスタンス」経由で、始末は任せる異にして。
 いつも通り、メスを消すと、さっさと診療所へと向かう事にした。


 非日常はいつでもすぐそばにある。
 それに対処できるように日常を過ごす。
 ……それが、自分の変わらぬ日常なのだろう。



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