都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…… Part13

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598 :保険仕込みと時間つぶしの雑談  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/07(月) 00:43:05.18 ID:7IqL4E0R0
 にこにこと、穏やかに。「先生」は脩寿を見つめる。若いなぁ、と。
 青少年の何かが危なかった気配がしたが、まぁ仕方ない。若いのだし。おっぱいにはそういう魔翌力が存在するものだ。
 まぁ、そんな微笑ましい様子は一旦さておき、だ。

「弾丸の特殊効果は、本日の茶がエリクサー仕様だった故に解毒は完了しとると思うが」
「聞けば聞くほど、世の錬金術師が卒倒しそうというか一杯辺りの値段想像すると怖い」
「何かあったら、都市伝説関連わかる医者にきちんと診てもらうようにするんだよ」

 エリクサーに関しては、「先生」は己の契約しているものの力でそこそこ気楽に生み出せるため、気にしていない。
 それくらいの材料は、もしもの場合に備えて用意しているしある程度取り込んでいる。
 いつでも、必要なものを錬金できるようにしておくぐらいはしてあるのだ。
 そうじゃなければ、いざと言うときの緊急治療時に困る。

「……に、しても、早渡後輩。また危ない目に遭いそうなら、「先生」の言う保険、やってもらいなよ!」
「えっ。あ、いや、でも……」
「もしもの時の備えは多い方が大事だよ。こう……切り札のさらに切り札、じゃないけど。保険のさらに保険!」

 ぷんすこした様子で、一葉が脩寿にそう告げている。
 備えが多い事に関しては、「先生」も同意するところだ。
 むしろ「先生」の場合、己が誰かが成し遂げようとする事柄の「保険」となる事が今の役目、と思っている節すら多少はある。
 それを口に出してしまうと、九割方苦言を呈されてしまい首をかしげる事にもなるが。

 脩寿は一葉に言われて、ぐぬぬぬ、と考え込んでいるようだった。
 一度断りはしたものの、彼女に強めに押されると弱いのだろうか。
 将来、女性の尻に敷かれていそうな気配を感じたが、そこは指摘せずとも良いだろう。

「……じゃ、じゃあ、一回分だけ」
「ふむ、わかった。では迷い子の少年、口開けて」
「?はい」

 言われた通りに口を開く脩寿。
 「先生」はぱちり、手元を赤く輝かせてそれを生み出すと、ぽい、と。
 生み出したそれを、脩寿の口の中に放り込んだ。

 あ、と脩寿は声を上げるよりも早く、小指の爪ほどの大きさのそれを飲み込んでしまう。

「良し、保険仕込み完了」
「早い!?」
「なんか、宝石みたいに赤いちっちゃなキャンディを口に放り込んだみたに見えた」
「一回きりだが、命にかかわる怪我、毒、病に対抗できる。一度きりの命のストック、と思うと良い。今風に言うと「残機が増える」?」

 かつて、「組織」のとある黒服にこっそり仕込まれていた物。
 「賢者の石」の劣化版。一度きりしか発動しない未完成の代物。
 それよりもう少し上等な……その「組織」の黒服が、「エクスカリバー」の契約者たる狂人との戦いに備え仕込んだほどのレベルの劣化版「賢者の石」となると、流石にここまで気楽には仕込めない。
 が、逆に言えば、一回きりの使い捨て性能のものであればこの程度気楽に仕込めるのだ。
 あの「黒服」が気付かれぬうちに仕込まれていたのもそのせいだろう…………それを行ったのは、「先生」の古い友人なのはさておく。

「さて、一応、馴染むまで拒絶反応出ないか少し待とうか。あ、服は着ていいよ」
「あ、はい」

 ごそごそと、脱いでいた上半身を着こんでいく脩寿。
 その様子を見つつ、さて、と「先生」は思案する。
 ただ待っているだけも暇だろう。何かしら、話題になりそうな事柄はあるか。
 考え、あぁそうだ、と、話題を向けることにした。

「迷い子の少年。君は、君が探している少女の契約都市伝説が真に「ソドムを滅ぼす神の怒り」であるかどうか。その辺りの会話をしていたね?」
「…………はい」

 脩寿としては、そこは考え込んでしまう案件なのだろう。
 ぐつぐつ、ぐつぐつと、考え込みすぎて内で煮えたぎり、その思考そのものが毒と化してしまいかねない程に。
 思考は止めるべきではなく、立ち止まるべきではなく、とどまってしまえば最悪濁り腐り何もわからなくなる。
 そうではないだろう、と断言して否定するつもりはないが。
 少しばかり、濃度を薄める程度ならいいだろう。
599 :保険仕込みと時間つぶしの雑談  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/07(月) 00:46:46.10 ID:7IqL4E0R0
「我が助手の従弟が疑問を呈したのは、あの子の情報網的には当然といえば当然であろ。あの子が通う「教会」の支部には、凍れる悪魔の御仁もおるしな」
「凍れる悪魔……あれ?教会なのに、悪魔?」

 「先生」の言葉に、疑問符を浮かべたのは一葉だ。
 まぁ、そうだろう。通常、「教会」と言う名称を聞けば、そこに悪魔がいるというのはあまりイメージにはあわない。

「そうだよ。かつて、幾百年もの間、雹と霰の天使「バルディエル」に成りすましていた凍れる悪魔。ソロモンの悪魔の一体にして四十八の軍団を指揮する侯爵。天使の姿をもって現れる、かつては竜でもあった者。「クローセル」。二十年程前のごたごたで正体がばれても、幾重もの策略と保険と誰かさんの情けにて。今なお「教会」に所属したままだ」
「成りすます、ですか……」
「うむ。当人が策を巡らせたせいもあるが。そもそも、成りすましていた天使が司るは雹と霰。凍れる悪魔であれば、装うのは難しくなかろうて」
「似たような感じだから、バレにくかったって事、かな……?」

 そうだ、と一葉に対して「先生」は頷いて見せた。
 似たような存在。故に誤認しやすく、正体はバレにくい。

「「通り悪魔」の御仁が、「悪魔の囁き」と間違われやすいというある種似たような例もあるな。当人は成りすましているつもり等ないが、能力が似ているが故、間違われやすい」
「あぁ、聞いたことあります。そのせいで面倒な事に巻き込まれた事もあるとか」
「あの御仁の場合、人型とっとる「悪魔の囁き」系統の知り合いもいるしねぇ。当人にしてみれば、自分の能力の方が扱いにくいとの事だが。他者から見れば似たようなものだろう」

 「先生」は、脩寿を見つめる。
 診察前に、保険を仕込むかと問いかけた時の誘いかけるような艶やかさは今はなく。穏やかに人を教え導かんとする教師の笑顔。
 ……もっとも、あの問いかけをしていた際、己がある種の艶やかさを帯びていた自覚は「先生」にはない。
 かつて、己の心に入り込み染め上げ「愛」を植え込み操ってきた女を、逆に本気で惚れさせ結果的に死に至らしめた人の心を誘う天性の毒を。毒を知り尽くしたはずの男は自覚すらしていないのだ。

「……その都市伝説にもよるが。誤魔化し、偽る事はできる。誤認してしまう事はある…………思い込みは、時として猛毒にもなりえる」
「それは…………」
「人は、時として己の記憶にすら、己の感情にすら嘘をつく。正直、私も過去に思い切り経験がある。他者によって感じた印象すら操作される事もある…………我が助手の従弟が言うていたように。最悪、別のものである可能性も視野に入れた方が良いかもしれん」
「……でも。人を塩に変えちゃう、とか。そんないかにも特徴的な事、他の都市伝説で装えるのかな……?」

 もっともな疑問を一葉が口に出し。
 「先生」は、即座に答える。

「できるよ。ものすごく頑張れば私でもできる」
「「えっ」」
「やらんけどね。「姫君」から踏みつけられるどころかいっそ半殺し……いや、私は簡単には[ピーーー]ない故いっそ生殺し?にされる勢いで怒られる事確実であるし」

 むしろ、やる必要もないのだが。
 その結果を引き起こすことは、幾重にも能力を積み重ね使えばできるが。
 そこまでの労力をかけてやる事ではない。
 シンプルに毒をばらまいた方がずっと早い。それはそれで怒られるのでやらないが。

「他にも、かの「魔法」の契約者。「天災」たる魔法使いカラミティ・ルーンもできるだろうな。あの御仁はもっと派手に愉快で残虐なやり方を好むから、好き好んではやらんだろうけど」
「「魔法」……」
「あぁ言う万能一歩手前の力は、その気になれば誤認させやすいしされやすい。多種多様な事を行える者が、その一部だけをもって偽ると実に厄介だよ」

 あの魔法使いの活動圏内は主にヨーロッパ……この学校町に甥っ子がいたり友人と認識した者がいたりでそこそこの頻度でやってくるが一旦それはさておく……、例で出されてもピンと来ないか。
 ついでに、と。おそらく脩寿なら知っているであろう人物を、「先生」は例にあげる事にした。
600 :保険仕込みと時間つぶしの雑談  ◆7JHcQOyXBMim [sage]:2022/02/07(月) 00:48:22.10 ID:7IqL4E0R0

「迷い子の少年。「刀狩り」の青年は知っているかい?「獄門寺組」に所属しとる契約者なんだが」
「刀狩り?…………「刀狩り」の鉄(くろがね)さんですか?「獄門寺組」幹部の?「獄門寺組」に手を出そうとしたよからぬ集団を、たった一人でたいして時間もかけずに壊滅させたって言う?」

 やはり知っていたか。
 当人は「自分はフリー契約者!どこにも所属してないから!!」と言い張っていたが、やはり他からは「獄門寺組」所属認識だった。

「君は、「刀狩り」の青年が、どんな都市伝説と契約しているのか知っているかい?」
「「数珠丸恒次」や「蜥蜴丸」を使って戦ってた、って話を聞いたので刀剣類の都市伝説複数の契約、でしょうか」
「ふむ。やはり、よそからはそう認識されとるか」
「その言い方だと、早渡後輩の予想、外れてる……?」
「うん、違うね。実際は何であるのかは、「獄門寺組」所属ではない私が言うと角が立つ故、あとで「通り悪魔」の御仁辺りに聞くと良いとして、だ」

 あれは、その能力によって「奪い取った」刀剣だけ扱って戦っているところしか見られていないと見破られにくい。
 鬼灯は、獄門寺家に出入りしていて幼い頃の彼に剣の稽古つけてやった事もあるとかで「弱点狙い打ちされると一撃だったからな」と明確な弱点に気付いたが故に契約都市伝説を見破っていた。今は流石にその弱点をやすやすと狙わせてはくれないから稽古相手するのは無理と言っていたが。

「あれも、能力の一部だけ活用している現場しか見せていないと、見破るのは難しかろう。迷い子の少年のように、誤認してしまっても仕方ない」
「能力の一部…………」
「ただたまたま、能力の一部だけを見られたが故の誤認ならば良いが。意図して誤認させてくる場合は殊更、見破るのは難しくなろうて」

 …………ましてや。

「……そこに、悪意と言う毒が混じれば。余計に、ね」

 果たして、意図して誤認させたのか。
 それとも、たまたまだったのか。
 そこに、悪意と言う毒はあったのか。

(もしも、「言霊」だったりしたら実に厄介な猛毒。せめて、それではないと祈ろうか。祈る神などないが)

 口に出してしまえば、それこそ疑念と言う強すぎる毒になりかねないそこは、今は口に出す事なく。
 警告の一種として、伝えるべき事を伝えるに、とどめた。





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