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都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…… Part13
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621 :
一年前のバレンタイン
◆7JHcQOyXBMim
[sage saga]:2022/02/11(金) 17:19:36.61 ID:C4k9hCEW0
バレンタイン。
それは、乙女の愛とかチョコとかなんか色々と飛び交う季節である。
愛が飛び交うという事は、つまり。
人の想いが飛び交うという事。
――すなわち、都市伝説もまた、蔓延りやすい時期と言う事。
だから、普段よりも警戒をしておくべきなのだ。
「あの、荒神君。今日バレンタインだから、こr「受け取るつもりはない」ぁ……」
ばっさりと言い放って、灰人はそのまま校舎に入っていく。
通学路を歩いている最中も、同じ学校の生徒から声をかけられ渡されそうになったが。灰人はそれらを全て断って受け取っていなかった。
しつこく渡そうとしてきた者もいたにはいたのだが。
「受け取ったとしても、俺の口には入らないからな」
と告げられてまで押し付けてくる猛者は流石にいなかったという事だ。
校舎に入ってからもそこそこ声をかけられチョコを渡されそうになるが、ばさばさと断って受け取ろうとしない。
「一つくらいは受け取ってやったらどうだ」
「いらん。手作りらしい物は殊更いらん」
友人からからかうように言われても、その姿勢は崩れない。
教室に入ったところで、やっと鬱陶しいものから解放されたというように肩の力を抜く。
クラスメイト達は、灰人がチョコを受け取らない事をわかりきっているからか。女子もチョコを持っては来ない。
「勿体ないよなー。受け取ればいいじゃん」
「いらん。好きでもない相手の好意を受け取るつもりもない」
「まぁ、普段から告白も全て断っているお前らしいと言えばらしいか」
こちとらもらえてすらいないのにと悔し涙を流すクラスメイトが多い中、全科目満点での学年トップの友人は笑って灰人の様子を見ていた。
おおよそ色恋沙汰に関して、灰人が関心が薄い事をわかりきっているのだ。
いや、他のクラスメイトもわかっているのだろうが。もらえるチャンスが多いのに受け取ろうとすらしないその様子はある種僻みの対象なのだろう。
「手作りがいらない、ってのはわからなくもないけどな……変な物入ってることもあるだろうし」
「そういう事だ」
理解してもらえて何よりだ、と灰人は小さく笑った。
悪意のあるなし関わらず、そういうことはある。
……だから、余計に受け取るつもりはない。
「ただ、灰人。受け取ったとして自分の口には入らないって言ってたようだけど。じゃあ、誰の口に入るんだ」
「入るかどうかはさておき、診療所の「先生」に引き渡すだけだ」
「処分押し付けてるのか」
「……押し付けている訳でもないんだが」
押し付けている訳ではなく、請け負ってもらっているだけだ。
妙な物が入っているかどうかも、あの「先生」なら食べる前から鑑定できる。
当人もそのうえで「怪しい物渡されたなら持ってきなさい」と言ってくれているのだから、何も問題はない。
「……と、言うか。お前らも、他人から妙な物は受け取るなよ。自分の身は自分で守れ」
「くそっ!これだから日頃からモテ慣れている奴は!」
「謝れ!生まれてこの方母親以外から受け取った事ない奴に謝れ!!!」
知るか、と冷たく言い捨てさっさと一時限目の用意を始める。
友人も、怨嗟の声を吐き出すクラスメイト達を眺めつつ、自分にはさほど関係ないというように授業の用意を始めていた。
色恋に興味のない友人と言うものは、こういう時実に助かる。
「今日の授業全部終わるまで、断り続けるの頑張れよ。無断で机に入れようとする奴見かけたら阻止くらいはしてやるから」
「……頼んだ」
物分かりが良くて協力的なのでさらに助かる。
自分は幼馴染達以外にも良い友人を持てたものだと、改めて実感してこの日は始まった。
622 :
一年前のバレンタイン
◆7JHcQOyXBMim
[sage saga]:2022/02/11(金) 17:22:02.82 ID:C4k9hCEW0
何故、人は靴箱にまでチョコを入れておくのか。
包装紙に包まれているとはいえ、どうなのか。
しかも十六個もぎっちぎちに詰まっていた。何故だ。
なんとか取り出して、全て不審物として職員室に投げて学校を後にした。
元から受け取るつもりもなかったのだ。それを、直接私にすら来ない者からの物等受け取るはずがない。
それくらいは、理解できると思うのだが。できないものなのだろうか。
ため息つきつつ、診療所まで到着した。
流石に、放課後の診療所に向かうまでの間に渡そうとしてくる者はいなかった。
もう、今日中にチョコの襲撃はない、はずだろう。多分。多分。
「手伝いに来ました」
診療所に入る。かすかに甘い香り。
……近所の住人辺りからでもチョコをもらったのだろうか。
「先生」当人宛てと、娘がいるからとそちらが食べる事前提で渡された物と双方だろう。
あの男は見てくれがある程度良いのと、外面の装いが辛うじて出来て……いや、あんまり出来ていないというのに、多分外人だからと言う事で許されているので近所の住人からはある程度人気がある。
こちらが入ってきたのに気づいて、ぱたぱた、小さな足音。
「こんにち、は」
「あぁ、こんにちは、リア。……「先生」は?」
姿を見せた、六歳程度の幼子相手に、屈んで目線を合わせながら問う。
「先生」によく似た、しかしそれよりは艶のある白銀の長い髪と、赤い瞳。眠たげな眼差しが、じぃと見上げてくる。
「おとーさん、奥。鑑定中」
「わかった。ありがとうな」
奥にいるなら、一声かけてから手伝いに移ればいいだろう。
「先生」の娘であるリアに礼を言うと、診療所の奥、住居スペースへと向かう。
そこで、「先生」はチョコレートを軽く調べているようだった。貰い物の鑑定中だろうか。
「こんにちは、「先生」。鑑定、手伝う必要はあるか?」
「うん?…………おや、我が助手。てっきり今日は、まぜこぜの子のところに直行かと思うておった」
声をかけると、調べている最中だったらしい、手作りと思わしきチョコレートから視線を外して顔を上げてきた。
そのついでに口にしてきたその内容に眉を顰める。
「……なんで、先輩のとこに直行なんだよ」
「君は、あの子の事をなんだかんだ言いつつこまめに面倒見に行ってるからだよ」
向けられてくる表情は、からかっているような、見守っているような。どちらともとれる表情だ。
確かに、あの先輩は色んな意味で放っておくべきではないので様子を見るようにはしているが。
「別に、今日、先輩のところに直行する理由はない」
「おや?…………ん、もしかして。今日はあの子、学校に行っておらんのか?」
「あの人、大学は推薦で受かったしな。出席日数足りなくならない程度にしか来てない」
進路が決まった高校三年生なんて、そんなものだろう。
実際、今日、学校に来ていなかったのは確認済だ。
こちらの言葉に、はて、と「先生」は考え込み始める。
「と、なると。あの子、どこでこれを受け取ってきたやら。学校で受け取ったなら、我が助手の知識もあって絞り込みやすいというのに」
「…………は?」
「先生」が調べていたチョコを見る。
どう見ても市製品ではなく、誰かの手作り。
「…………おい。そのチョコレート」
「まぜこぜの子が誰かかしらから受け取った物だよ。診察終わった後につまんでいたのだが。チョコに「手作りチョコを作る際に自分の血を混ぜて作ると両想いになれる」と思わしき都市伝説の効果が働いていてね。そこまで強い効果でなし、拒絶反応もそこまで強くでなかったが確実に具合は悪くなって。でもまぁ君がまっすぐあの子の家に行くだろうと思ってそのまま帰らせ」
「今日の手伝いはなしだ!!」
おろしかけていた鞄をひっつかんで、診療所を後にする。
ひらひらと、「先生」が楽しげに手を振って見送ってきた気配がしたので、後日殴っておこう、と誓った。
623 :
一年前のバレンタイン
◆7JHcQOyXBMim
[sage saga]:2022/02/11(金) 17:24:21.20 ID:C4k9hCEW0
こういう時、合鍵を所持しているのは実に便利だ。
一応呼び鈴鳴らしたのと携帯端末に連絡は入れたが反応なかったので、遠慮なく合鍵で中に入った。
「先輩…………つくね先輩」
「…………ぅ」
先輩がいつもつけている乳香の香水の香りが、普段より強く感じる。
その理由を察して、ため息をつきながら寝台の上で丸くなっている先輩に近づいた。
こちらの気配が近づけば、具合悪そうな顔が毛布から出てくる。
う〜、と、獣の唸り声のような声が漏れ出していた。
「タチの悪い都市伝説の効果が発動しているチョコを食べたそうですね?」
「う…………「先生」に、すぐ解毒されたし、平気……」
「どこで、誰から受け取った物だ」
見下ろす。
バツが悪そうに視線をそらしてくるが、その程度でこちらが引かない事などわかっているのだろう。
うぅうう、と、唸り声をあげてから答えてくる。
「……バイト先の女……」
「…………そうか」
都市伝説効果に関して意図的だったかどうかはともかく。
他人に食わせる物に自分の血を入れるような女に関しては、調べておく必要がある。
意図的だったなら、ある程度処す必要もある。意図的でなくともある程度処すが。
「人から渡されたもん、うかつに食うなといつも言ってたよな?」
「……ごめんなさい」
もぞもぞと、先輩が起き上がる。
書類上では二つ年上の。五年前の……「先生」が本格的に正気に戻るに至った件の頃に知り合った人。あの連中が行っていたろくでもない事の被害者の一人。その結果の混ざりもの。「薔薇十字団」の保護対象にして、「組織」の監視対象。
先輩に関するいくつかの情報を、頭に思い浮かべて目の前のその人を見つめる。
具合悪そうにしょんぼりしているその姿は、ただの未成年の少年にしか見えないが。
己はその正体を知っていて。それを承知で先輩後輩の間柄でいるつもりだ。
……なぜか、世話番みたいに思われている節があって、解せない。
「本当に、体の状態は大丈夫なんです?」
「……うん、解毒されたし。その方面は平気だ…………その。昨日からちょうど、はじまって。それと重なったから過剰に具合悪くなっただけ」
「いっちばん、体調悪くなりやすい時期じゃねぇか馬鹿野郎。なおさら、人から渡されたもんうかつに食うな」
小腹がすいていたからとかそういう理由でつまんだのだろうけれど。そもそも、受け取らないでおいてほしい。
「…………食欲はあるか?」
「軽いもんなら、入ると思う」
「わかった。夕食は何か軽く食える物作っておくし、明日の朝食分、温めれば食えるもん作って冷蔵庫入れとく」
他にやる事は、と考えていたら服の裾を引かれた。
ひとまず、起き上がれるくらいの状態ではあるのだなと判断した。
乳香の香りがする。するりと腕が絡みついてくる。
「先輩?」
「今日、泊まってけばいいのに」
「駄目です。そこまで面倒見る気はないんで」
「……今日バレンタインだから。帰ったらお前の両親と従弟の両親、ダブルでイチャついてるとこなんじゃ」
「…………………………涼さんのフェリシテさん相手のはともかく、親父達の方はまだ鬱陶しくない」
「今、すげぇ悩んだよな?」
確かに、二組同時にいちゃつかれると鬱陶しさは倍どころか二乗レベルだが。
だからと言って、あれの対処を従弟兄弟に任せるわけにもいかない。凜の方は色々わかっていないかむしろ面白がっていそうだがそれでもだ。
軽く視線を動かせば、じ、と見つめてくる視線とぶつかる。
見た目は年上の男だが、実際はまだ十年も生きていない、獣の目。
ため息、一つ。
あまり甘やかすものではない、とわかってはいるのだが。
「…………どうせ、体中の血流も悪くなってんだろ。後で肩も揉んでやるから。夕食までですよ」
「ん……ありがとう、灰人」
手間のかかる大きな子供に懐かれている気分になる。
それでもまぁ、今日くらいはいいのだろう。
当人に自覚はないのだろうが、こちらはこちらでこの人に救われている事は自覚している。
日頃の感謝を伝える日でもあるのだから。
素直に伝えてやるつもりはないが、恩を返すくらいは、許されるだろう。
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