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都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…… Part13
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736 :
次世代ーズ 37 「事前準備」 4/5
◆John//PW6.
[sage]:2023/11/15(水) 21:46:34.87 ID:/8cLRL+Ao
さらには、初期の頃は「高木から降りれなくなった猫ちゃんを救助するために樹木を縦に断裂する」程度で済んでいたのだが
「害性の都市伝説を討伐しようとアスファルトを深々と抉り取る」、「しかも人払いの結界を破るレベルの能力を市街地でぶっ放す」
「制止させようとした研修担当者に『こっちの方がはるかに効率的でしょォ!? 人命が懸かってるんスよ!?』と盾突く言動ばかり取る」
「修繕や隠蔽に駆り出される『組織』スタッフのことを軽視したような被害を起こす」……といった形で問題行動がエスカレートしていったのだ
当然ながら現場で起こしたトラブルは大問題として取り沙汰された
メイプル自身も研修担当者から「一体どうなってるんだこの新人は!?」「上司であるお前はこの責任、どう感じてるんだ!?」と盛大にキレ散らかされた
正直、上司とはいえ自分が研修に直接関与しているわけではないので自分に怒りが向くのは理不尽そのものだが、研修担当には反論しなかった。だって怖いし
そして久慈の問題行動は、Pナンバー管理者でもある一桁ナンバーの耳にも入ることになった
P-No.1は「とってもいいと思うわぁ♥ 花丸をあげちゃいます♥ 久慈ちゃんは次世代を担う新星になるわぁ♥♥」と評していたようだが
「現場に迷惑かけまくりの問題児を飼うことになって今どんな気持ち? ねえ今どんな気持ち?」とP-No.6から直接絡まれた日には胃に穴が開くかと思った
てかあの人、ことあるごとにアタシにパワハラじみた発言してないか? あれ出るとこ出たらアタシ勝てるか? 勝てるんじゃないか?
……話が逸れた
とにかく、佐川久慈のトラブルメーカーじみた一連の問題行動が解消されない限り新人研修修了程度とは認めない、という決定が下った
この決定の裏では件の新人研修担当者がかなり張り切っていたらしく、再教育の徹底が必要ということで新人研修期間が延長されてしまった
そこから現在に至るまで、つまり久慈は三年経った現在も「新人」のままである
そのうえ「こちらでやれることはもう無い」、「あとは君の裁量で何とかしろ」と、久慈は教育部門からも弾き出されメイプルに押し付けられる羽目になった
一応この四月からは久慈と比較的相性のいいキルトのチーム「応援部隊」に(仮)配属する形で無期限の現場研修に組み込みつつ
様子を見ながら現在研修中の新人黒服と混ざる形で新人研修の“補習”を掛けている状況なのだが
正直なところ現場の負担が増えている、メイプルはそう判断している。たとえキルトや応援部隊の面倒見が良いとしても、だ
そしてこちらが気を揉んでいるのを知ってか知らずか、とうとう久慈も未だ自分が新人扱いされる処遇について不満を表し始めたのだ
なにが「俺、いつまで新人扱いなんスか? もうこれで四年目っスよ?」だ、お前の自爆特攻する傾向を改めない限り若葉マークが外れるわけないだろうが
飲みの席で説教を飛ばしたりもしたが、響いているのかそうでないのか非常に微妙なところだ
(久慈を∂ナンバーへ一時的に移籍させるというのはどうだ?)
このタイミングで上司からの助言を思い出した
(キルトのいる応援部隊だって同じPナンバーなわけだから、良くも悪くも久慈は慣れてしまっている
奴の視野を広げて実力を養成するために、問題行動を改善するためにも、一度Pナンバーとは異なる環境に置くのがいいんじゃないか?)
∂ナンバー、比較的歴史の浅い新設の部署だ
成立の経緯からして穏健派だけではなく、過激派や強硬派の出身者も混在している
とはいえPナンバーを始めとした古株の穏健派からモニタリングを受けており、仮に暗部の者が潜伏していたとしても表立った行動は取りにくいだろう
加えて、ボスである∂-No.0は元Pナンバーでもある羽金夏李(はがね なつり)さんだ。メイプル自身も新人の頃は羽金さんに面倒を見てもらった頃がある
佐川久慈を新たな環境に投入するとすれば、これほどお誂え向きな部署もそうないだろう……なのだが
これで久慈が∂ナンバーに多大な迷惑を掛けて、∂ナンバーとPナンバーの良好な関係が悪化してしまったとしたら
いや、それ以前に
あの優しい羽金さんから「Pナンバーの問題児をこちらに押し付けてどんな気持ちですか? さぞかし清々したでしょうね」などと冷えた眼差しで言われてしまったら
……耐えられない!! 羽金さんにそんなこと言われたら立ち直れない!! まだP-No.6の陰湿パワハラの方が百倍マシだ!!
いかん落ち着けアタシ、今は目の前にある案件に集中しろ
……その案件の所為でこうも掻き乱されてるんだ、どうすればいいんだ
「どうすればいいんだ……!!」
何か、何か自分を助けてくれるものはないか
縋るように視線を彷徨わせた先に、業務用のタブレット端末
数秒間凝視した後、メイプルはそれに手を伸ばした
737 :
次世代ーズ 37 「事前準備」 5/5
◆John//PW6.
[sage]:2023/11/15(水) 21:50:06.17 ID:/8cLRL+Ao
『クジっちと千十は仲良いですよ、多分千十は自分よりクジっちに懐いてんじゃないかと思いますね』
「マジか」
『最初は千十が怖がってるんじゃないかって不安だったんですが、相性的には抜群だと思います』
「マジか」
『それにクジっちも千十の前だと、なんというかお姉さんっぽくなるんですよね。普段より落ち着いた雰囲気になるというか』
「マジか……!!」
部下であるキルトに相談してみたところ、意外な反応が返ってきた
遠倉千十と久慈は相性が良いらしい
これを聞いたとき、メイプルは安堵感で泣きそうになっていた
もうこれは答え出たようなもんじゃないかまったく! あれこれ悩まずキルトに確認するべきだった!
「妙案を思いついた。遠倉千十の担当黒服を久慈にしよう」
『えっ!? 新人研修が修了してないスタッフって、確か契約者を担当できないんじゃ?』
「そこは管理者権限でなんとかするつもり。そもそも新人“四年目”ってのが前代未聞なわけだしな」
『でもそれが可能なら、多分今のところ一番理想的じゃないかなと思いますよ』
「キルトもそう思うか!」
現場の意見には耳を傾けるに限る
メイプル自身も上司から「現場の黒服や所属契約者とは会話したり直接様子を見たりした方が良い」と言われていたが
普段の業務の多忙さにかまけて、なかなか現場の様子を直接見に行くことをやっていなかった
その結果として数時間もこの案件で悩む羽目になったわけだから、次回以降は必ず現場の視察に行こう。ついでに遠倉千十とも直接会話しよう
メイプルはそう反省しつつ、キルトとの会話で自身の判断を整理していった
『それで、千十は引き続きPナンバーで面倒見ることになりますか? それなら是非久慈を自分らの応援部隊に正式配属してほしいんですけど』
「いや、実は∂ナンバーに移籍させようと思ってる。部長からも久慈をPナンバーに置きっぱにするのは良くないって言われたからな」
『あー……、そうなっちゃうんですか?』
「そうなっちゃうな、個人的には∂ナンバーに迷惑掛けないかとても不安だが」
『実は先日羽金さんと会話する機会があって、何となく「クジっちが∂ナンバーに移籍したいって申告したらどうするか?」みたいな話になったんですよ』
「……羽金さんの反応はどんな感じだった?」
『「できることなら是非ともうちに来てほしい」って話してました。思った以上にクジっちの面倒を見たい様子で。なのでそういう心配は不要じゃないかと』
「これはいいぞ!!」
これはいいことを聞いた。やはり現場の声には耳を傾けるに限る!
決まりだ、久慈には∂ナンバーで修行してもらうとしよう
それにキルトの話によると、久慈も遠倉千十の前では多少落ち着くようだ。彼女も守る者ができればやたら自爆を繰り返す悪癖が矯正されるかもしれない
それに不安要素のあるPナンバー内より、立ち上げ間もないとはいえ比較的安全な∂ナンバーの方が、遠倉千十の安全も確保できるだろう
いざとなったら久慈に体を張って守ってもらおう! それに応援部隊はじめPナンバーが∂ナンバーと関わる機会を増やせばさらに安心だ!
我ながらいい案じゃないか! これで決まりだな!
『それで、クジっちの∂ナンバー移籍ってすぐ実施されるんですか?』
「ん? ああ、いや。こっちも色々別件で忙しいし、それが落ち着いてからになると思う。多分11月か12月くらいになるんじゃないかな」
『ということはそれまでの間は引き続き、応援部隊に籍を置きつつ新人研修修了を目指す……って感じですかね』
「まあそうなるな……、現場の負担はもう少し続くだろうけど、悪いが辛抱してほしい」
『いえ! 負担なんて全然! それにクジっちも自分のクセをようやく自覚してきたのか、突撃グセを改善できそうな感じですよ』
「そりゃいいな、できれば∂ナンバー在籍までに若葉マークが取れると最高だよ」
『話は変わるんですが、実はぷーたんが千十と会ってみたい様子なんですよ。友達になりたいって言ってて。会わせても問題ないですかね?』
「ん? 全然問題ないよ。それに久慈が∂ナンバーに移籍したら応援部隊も∂ナンバーと合同で動いたりする機会を増やそうと考えてるし」
『本当ですか!? やったぜ!! ∂ナンバーの子たちと交流する機会が増えればアクアの仏頂面も多少はマシになると思うんですよ!!』
意外とキルトも嬉しそうだな、アタシもようやくこの案件から解放される
そんなことを思いつつ、部下のはしゃぐ様子をタブレット越しに眺めながらメイプルはコーヒーを啜る
回答提出までまだ時間的余裕はあるな、よし
「後はそうだな……、久慈の現場で暴走する悪癖を抑える、とどめの一手があれば良いんだけど」
『実は秘策があるんですよね、クジっちは嫌がりそうだけど。興味あります?』
「ほう?」
キルトには久慈を抑える手があるという
その詳細を聞き出したメイプルの表情は、やがて薄気味悪いほど満面の笑みへと変貌した
方針は決定した。あとは実行あるのみだ!
□□■
738 :
次世代ーズ
◆John//PW6.
[sage]:2023/11/15(水) 21:50:55.55 ID:/8cLRL+Ao
メイプル
「組織」Pナンバー所属の黒服、キルトや佐川久慈の上司にあたる
現世代編(20年前)より後になって「組織」に加わったので、そこまで古株な人員ではない
個性豊かな上司と個性豊かな部下に挟まれストレスにまみれながらも日々戦う下位管理職
遠倉千十(とおくら せと)
「組織」所属契約者、東区の高校に在籍する高校一年生
学校の怪談「トイレの花子さん」(現象型)と契約しているようだが、本人は最近までその自覚がなかった
「先天性能力発現不良」により都市伝説の気配や契約者の力を知覚できても彼女自身は能力を発動できない難儀な状況にある
佐川久慈(さがわ くじ)
「組織」Pナンバー所属の黒服、元「飯綱使い」(「管狐」の契約者)
「組織」加入は大体四年くらい前だが、未だに新人研修を修了していない若葉マークの女子
いろいろあって一応この年の春にキルトら「応援部隊」の配属になった(正式なメンバーではない)
キルト
Pナンバー所属の黒服、「応援部隊」のリーダー
褐色肌にエルフ耳という明らかに日本人離れした容姿で、仕事がデキる雰囲気のお姉さん
新人研修の頃から後輩である久慈の面倒を見つつ可愛がっている
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