【モバマス時代劇】神谷奈緒 & 北条加蓮「凛ちゃんなう」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:17:12.23 ID:3tnS2gIH0
過去回想と百合エロ。

後半になにかくっついてるけど、
エロシーン以外は読み飛ばしていいよ。

第1作【モバマス時代劇】本田未央「憎悪剣 辻車」
第2作【モバマス時代劇】木村夏樹「美城剣法帖」_
第3作【モバマス時代劇】一ノ瀬志希「及川藩御家騒動」 
第4作【モバマス時代劇】桐生つかさ「杉のれん」
第5作【モバマス時代劇】ヘレン「エヴァーポップ ネヴァーダイ」
第6作【モバマス時代劇】向井拓海「美城忍法帖」
第7作【モバマス時代劇】依田芳乃「クロスハート」
第8作【モバマス時代劇】神谷奈緒 & 北条加蓮「凛ちゃんなう」
読み切り 
【デレマス時代劇】速水奏「狂愛剣 鬼蛭」
【デレマス時代劇】市原仁奈「友情剣 下弦の月」
【デレマス時代劇】池袋晶葉「活人剣 我者髑髏」 
【デレマス時代劇】塩見周子「おのろけ豆」
【デレマス時代劇】三村かな子「食い意地将軍」
【デレマス時代劇】二宮飛鳥「阿呆の一生」
【デレマス時代劇】緒方智絵里「三村様の通り道」
【デレマス時代劇】大原みちる「麦餅の母」
【デレマス時代劇】キャシー・グラハム「亜墨利加女」
【デレマス時代劇】メアリー・コクラン「トゥルーレリジョン」
【デレマス時代劇】島村卯月「忍耐剣 櫛風」
【デレマス銀河世紀】安部菜々「17歳の教科書」
【デレマス時代劇】土屋亜子「そろばん侍」
【デレマス近代劇】渋谷凛「Cad Keener Moon 」
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:17:33.37 ID:3tnS2gIH0
神谷家は裕福ではなかった。

貧困の極み、というほどでもないが、

奈緒が温かい飯を食えた回数は少なかった。

その苦しみをばねにして、彼女は懸命に

勉学と剣術に打ち込んだ。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:18:31.63 ID:3tnS2gIH0
元からの才気もあったのだろう。

藩士の花形、馬廻に勤めることが叶った。

ここで、奈緒は少々天狗になった。

彼女のほどの境遇から、馬廻になった者は

いなかったからだ。

周りを見渡せば、家柄がよく、

はじめから成功が約束されたような輩ばかり。

自分は違う。この身1つで成り上がったのだ。

近所では奈緒の名前を知らぬ者がいない。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:19:16.81 ID:3tnS2gIH0
しかし、勤めに出て数ヶ月した頃。

奈緒は強大な壁にぶつかった。

渋谷凛。

千川家につらなる家柄の生まれで、

文武両道。

同性の心もくすぐる怜悧な面は、

一見冷たい表情を浮かべているが、

思いやり深く、とても気がきく。

奈緒は凛のことが気に食わなかった。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/06/18(日) 00:20:26.26 ID:9i+yqaiD0
憎悪剣の前日譚?
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:20:32.19 ID:3tnS2gIH0
奈緒は凛のことが嫌いだった。

ある時、馬廻内で

「誰が一番強いのか、はっきりさせようぜ!!」

と誰かが言った。

奈緒は自分だ、と叫びたかった。

ぼんぼんが習っている新陰流のような、にわか剣術とはちがう。

奈緒は実戦式の稽古が基本の、一刀流の名手だ。

家柄で自分を見下してきた連中を見返す、よい機会だった。

奈緒は、一回戦目で凛とあたった。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:21:15.22 ID:3tnS2gIH0
>>5 
そう。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:22:03.44 ID:3tnS2gIH0
もとからいけすかない相手だった。

吠え面かかしてやる。

ちょっとした広場に、枝木で円陣を描いただけの

舞台で、奈緒は凛と対峙した。

まずは両者一礼。剣士の習いである。

そこから構え。

奈緒は大上段に構える。

誰から見ても、振り下ろすのだとわかる。

躱すのは容易だろうか。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:22:37.77 ID:3tnS2gIH0
否。

奈緒の振り下ろしは、“伸びる”。

足運びの迅速さで、すぐさま相手を間合いに

引き摺り込み、一撃を加えるのだ。

そして、このこの技を防いだ者は、

その時までは誰もいなかった。

凛の構えは八相。

突きか、それとも柔軟に

手首をかえし、水平斬りでくるか。

奈緒には分からぬ。

分からぬから、相手が動くより早く仕留める。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:23:31.65 ID:3tnS2gIH0
「ええいッ!!」

奈緒が踏み出した。周囲は驚嘆した。

歩法というよりは、もはや縮地の領域。

あまりにも速い。

だが、それを全く危なげなく

受けた凛には、さらに驚愕した。

「速さと力を追うあまり、体が乱れてる」

迫る木刀を、一寸の震えもなく止めながら、凛は言った。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:24:18.01 ID:3tnS2gIH0
「凛殿の慧眼には恐れ入ります…なあ!!」

奈緒は相手の腹を蹴り上げた。

上品な武家様には、防げない攻撃。

凛は身体をくの字に曲げて、後ろへ下がった。

周囲は面白くなってきたと、盛り上がった。

元々剣術だけで食っていきたいと

思うような連中であるから、

多少の外法も歓迎する。

体勢を崩した凛に、奈緒は容赦なく迫り、

彼女の木刀を打ち払った。

そして、私の勝ちだと宣言しようとした時。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:24:45.82 ID:3tnS2gIH0
奈緒の意識が、ぷっつり途切れた。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:25:17.56 ID:3tnS2gIH0
井戸の水をぶっかけられ目を冷ました時には、

勝負は決していた。

油断した奈緒の水月と烏兎に、

凛が拳を叩き込んだのだという。

刀の勝負を拳で決するとは。

自分が先に蹴っておきながら、奈緒は憤った。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:25:49.23 ID:3tnS2gIH0
転機が訪れたのは、

山に現れる賊を討伐した時だった。

凛に負けてなるものか、と奈緒は

仲間の制止を振り切って敵陣に踏み込んだ。

そこで、賊を1人で皆殺しにした。

だが、皆と合流する時、

かすかに息があった者によって、毒の吹き矢を当てられた。

それが胸に刺さった。
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:26:20.75 ID:3tnS2gIH0
まっすぐに駆け寄ったのは、凛であった。

奈緒は、服を脱がされるのを嫌がった。

傷のあたりに小さな黒子があって、

それを人に見せたくないのだ。

だが凛は、引き裂くように衣を剥ぎ取ると、

矢を引き抜き、傷口に唇を当てた。
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:27:22.24 ID:3tnS2gIH0
ひゃっと、奈緒はくすぐったい声を出した。

凛のやわらかくて、ふにふにとした唇が、

肌に吸い付いて毒を吸い出す。

ちろちろと、かすかに舌があたって、それが

奈緒の背筋に電流を走らせた。彼女の陰部から、少し尿が漏れた。

そして、手当てが終わった頃、凛が倒れた。

聞くところによれば、隠していた虫歯があって、

そこから毒が入ってしまったのだという。

17 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:28:21.67 ID:3tnS2gIH0
奈緒は悟った。

凛は承知していただろう。

つまり、彼女は身を呈して自分を救ってくれたのだ。

奈緒は床に伏せる凛のもとへ見舞いに行った。

そこで彼女に詫びた。

自分の勝手のせいで、このようなことになってしまったと。

凛は少し身体を起こして、

奈緒の髪をくしゃっと撫でて、微笑んだ。

その時から、奈緒は凛に心酔した。

だから、向井拓海らと袂を分かち、千川派についた。

東郷派の人間を何人も斬った。

18 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:28:50.40 ID:3tnS2gIH0
だが、ただ1人、凛を守ることはできなかった。

19 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:29:35.00 ID:3tnS2gIH0
北条加蓮は病弱であった。

しかし、彼女の母は厳しかった。

精神が弱いから身体も弱いのだと、

頭ごなしに加蓮を叱りつけた。

腰がうまく立たない彼女を、

新陰流の道場に叩き込み、稽古に従事させた。

木刀を握るには、あまりにも弱々しい腕。

体を維持するには、細すぎる足腰。

加蓮は稽古から置いていかれた。

20 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:30:51.28 ID:3tnS2gIH0
はやく帰ると母から叱られるので、

彼女は最後まで道場に残って、修錬に励むようになった。

ある時、ふらふらになるまで木刀を振っていると、

髪の長い、怜悧な少女が加蓮に声をかけた。

渋谷凛。

道場、いや美城藩きっての天才剣士。

21 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:31:27.42 ID:3tnS2gIH0
「あ、う…」

加蓮は口ごもった。

自分の情けない姿を見られるのが、ひどく恥ずかしかった。

顔を赤くしてうつむく彼女の手を、凛はそっと握った。

「加蓮は弱くないよ。
 
 膂力だとか段位じゃなくて、

 強くなろうって思うことが大事なんだから」

「で、でもアタシ、構えもうまく取れないし…」

 加蓮がそう言うと、凛は彼女の身体にぴったりと寄り添った。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:31:58.35 ID:3tnS2gIH0
「そのまま、足を、そう。それで、腕を前に伸ばして…」

凛が言うままに、身体を動かした。

心臓がものすごい速さで高鳴っていた。

凛の身体には、加蓮と違って、

ほどよく筋肉と脂肪がついている。

かすかにふくらんだ胸、なやましいくびれが、

この時間だけは、加蓮1人のものだった。

「そう、これで完璧」

きちんとした構えが取れた直後、

加蓮はきゅう、と倒れてしまった。


23 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:32:30.56 ID:3tnS2gIH0
彼女が自慰を覚えたのは、この数日後のことであった。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:33:18.95 ID:3tnS2gIH0
【デレマス近未来】南条光「二足歩行の幽霊」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:34:54.25 ID:3tnS2gIH0
 平和な世が遠い過去になり、

 地球の大気が汚染し尽くされた頃。

 人々は生身の身体を捨てる代わりに、楽園を手に入れた。

 意識を電子空間に転送し、そこで享楽の限りを尽くす。

 喜び、楽しみ、気持ちいい。

 それが際限なくリピートされる、歪な幸福。

 程度の差こそあれ、

 誰しもがそれにあやかることができた。


 皆があまねく快楽を手にし、

 老い、病 怪我そして死からも解放されたように見えた。。

 「人類は、楽園への復帰を果たした」

 メディアなどはそう囃し立てた。

 しかし神は、人間を許してなどいなかった。
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:35:23.38 ID:3tnS2gIH0
 電子空間は、容量の限界を迎えた。

 新たな技術を生み出すような、気骨のある人間は、

 数世紀前に絶滅していた。

 研究者の教育カリキュラムも形骸化していた。

 それならば、どうする?
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:37:58.03 ID:3tnS2gIH0
南条光は、高性能フィルターのついたガスマスクを付けた。

さらに、特殊繊維で編まれた、

厚手のレインコートを羽織る。

部屋から出る準備だ。

彼女は、現実空間に生身で存在している、

極めて珍しい人間だった。

空は吐き気がするような真っ黄色。

雲はまるで泥のようだ。

降る雨は、数時間で石畳に小さなくぼみを作る。

最悪の環境。

いくら上品に表現しても、

地獄という以上にふさわしい言葉が見つからない。

それでも光が現実世界にとどまるのには、理由がある。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:38:54.03 ID:3tnS2gIH0
彼女はA級ロケーター、電子の世界の掃除人である。

違法に作られた電子空間(チャネル)を消し、

中にいる人間も根こそぎ抹消する。

こうしなければ、あっという間に容量の限界がきてしまう。

“掃除”は必要悪なのだ。

だが、死にたくないと泣き叫ぶ人間を

シャットダウンするのは、深刻な精神的苦痛を伴う。

なので光や、他のロケーター達も、

あえて現実世界で生きる。

“あれは、モニターの中の虚像に過ぎない”

そう考えるために。
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:39:36.43 ID:3tnS2gIH0

『CRISIS』とペンキで

雑に書かれた5階建てのビル。

これがロケーター達の拠点であった。

外観はどこにでもある雑居ビルだが、

中は高度な空気清浄システムが作動しており、

さらに蛇口をひねれば綺麗な水が出る。

また、地下にある巨大な発電機で、

屋内の電気を全てまかなっている。

人々が電子世界にいるおかげで、

食料を除けば、資源にあまり困らない。

ロケーター達は、拠点でそこそこの

暮らしができるようになっていた。

30 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:40:18.23 ID:3tnS2gIH0
モニタールームの扉の前。

光は室内で、猛烈な音量のパンク音楽が

流れていることに気づいた。

犯人は分かっている。

部屋に入ると、燻んだ金髪をトサカのように

逆立てて、ソファーでくつろいでいる女を見つけた。

音源はコンパクトプレイヤーと、

彼女のつけているヘッドフォンだった。

どんな耳してるんだ。

光は、プレイヤーの電源を落とした。
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:40:57.87 ID:3tnS2gIH0
「………斬新な演奏法だな。聞いたこともない」

木村夏樹は、ヘッドフォンを外して光を見た。

別に怒った様子はない。

「よお、光。今日も生きてるな」

夏樹が尋ねる。

彼女がこんな質問をするのは、現在ロケーターが

相次いで殺されているためであった。

犯人は不明。証拠もあがらない。

死体だけが、足跡として残っている。

ロケーター達は、相手と自分達を皮肉って、

犯人を『二足歩行の幽霊』と呼んでいた。

32 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:41:52.97 ID:3tnS2gIH0
「まだ捕まってないんだな」

光は呟いた。

恨まれる仕事だ。犯人の当ては膨大。

地道に捜索していたら、おそらく天から…

いや、奈落の底からお迎えが来てしまう。

「逆にぶっ殺すしかないわけだ!」

夏樹はからからと笑った。

物騒なセリフだが、まったくそうは感じさせない。

どこか達観した様子のある女だった。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:45:00.02 ID:3tnS2gIH0
「今日の掃除は、誰と組むんだ」

「アタシと、例の“漫才師(コメディアン)”」

「難波さんか…」

 仲間内でも、悪名高い女だった。

 しかし上の決定だ。文句は言えない。

「ダイブはきっかり15分後、

 それまでまあ、リラックスしてな」

 虐殺をする覚悟を決めておけ。

 光にはそう聞こえた。


「やあやあ、お2人さん!!」

馬鹿でかい声で挨拶をする女がいた。

鳶色の髪にゆるいパーマをかけて、おでこを出す髪型。

表情は、ロケーターの中で浮くほどの笑顔。

そして、この時世では珍しいスーツ、それも男性物。

極め付けに、それはピンク色であった。

「今日はウチの“公演”に付き合ってくれて、ありがとうな!」

笑美の言葉に

光は眉をひそめ、夏樹は苦笑した。
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:45:33.87 ID:3tnS2gIH0

ロケーターは誰しもがなれるわけではない。

特殊な才能が必要だった。

生身の身体を、そのまま電子空間にダイブさせる才能だ。

特殊な薬剤を用いるのが、A級“ウィザード/ウィッチ”。

単身でダイブできるのが、S級“タイタン”

さらに、自分以外も潜らせるのが、SS級“アルティメット”だった。

この中では、夏樹がSSで、笑美がSである。
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:46:57.77 ID:3tnS2gIH0
3人は手をつないだ。

効率的なダイブを行うためである。

夏樹はまたヘッドフォンからパンクを垂れ流していた。

かなり集中力を要するはずだが、

彼女にとっては音楽こそがトリガーのようだ。

「1,2…1234」

独特のリズムで夏樹がカウントをした後、

光の身体は頭が痛くなるような、

文字化けした言葉が羅列された滝を

落ちていった。
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:48:21.94 ID:3tnS2gIH0
光が降り立ったのは、

なぜか現実世界と同じように汚らしい空間だった。

打ち壊されたビル、濁った水たまり…歪む大気。

これも人々の趣向だろうか。

3人は、肩に下げた機関銃を構えながら、

電子の町を歩く。

探すのはプロパイダー。

チャネルの開設を行う能力者だ。

それを抹殺すれば、この空間は消滅する。

とはいえ、顔に書かれているわけでもないので、

3人がやるのは片っ端から住民を撃つことである。

音も反動もなく、銃弾がばらまかれる。

人々がばったばったと倒れていく。

弾丸にはウィルスコードが仕込まれており、

当たった人間の意識構造体は、

ただの数字となるまで破壊される。
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:48:53.48 ID:3tnS2gIH0
「待ってくれ! 投降する!!」

そう言って、人々がぞろぞろと出てきた。

一応、3人は銃を下げた。

「話を聞いてやろう」

木村が音楽に合わせて身体を揺らした。

周囲の音は聞こえていない。

「プロパイダーは差し出すから……!」

ぼろぼろになった男が、

縛られた状態で突き出された。

これまで住民のために空間を維持してきたのに。

そんな、悲しげな目をしていた。

光は、さっと彼から顔を背けた。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:49:23.30 ID:3tnS2gIH0
「まあまあ、みんな!

 落ち着いてくれや!!」

 笑美が両手を振りながら、人々の前にでた。

「ちょい、ウチの話を聞いてくれ。

 ウチの父ちゃんと母ちゃんな、最近な、猫飼い始めて。

 あー……知っとる? 猫わかる?」

 笑美は笑顔で、再び銃を上げた。

「……猫、わかるよなあ?」

 問いかけに、人々はすくみながらも頷いた。
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:50:18.61 ID:3tnS2gIH0
「でな、ウチは両親と別居してるから、

 ときど〜き、メールくるねん。

 猫の写真付きでな。

 それでな、この前は、母ちゃんが猫だっこした

 写真が送られて来て」

 笑美はべらべらと話した。

“住民とは極力コミュニケーションは避けろ”

それがロケーターの鉄則であるにも関わらず。

「ウチ聞いたんよ。“今何ヶ月なんや”って。

 したらな、父ちゃんから“555ヶ月や”って。

 それ、それ…母ちゃんの年齢やないかーいっ!!」

 ぎゃははははと、笑美は笑った。

 住民達の中からも、小さく、くすくすと聞こえた。
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:51:19.33 ID:3tnS2gIH0
「それでな…」

 笑美が話を続けようとうすると、住民の中から、

 1人の女が現れた。

「私には幼い息子がいるんです!

 どうか、どうか……」
 
 同情的なロケーターだと思ったのか、

その女は笑美に懇願した。

 「息子…?」

 笑美が、呟いた。

 「そうです、まだ5歳の息子が」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:51:47.58 ID:3tnS2gIH0
言葉を続けようとした女の頭が、弾け飛んだ。

「いま、ウチが話しとったやろ?

 なあ自分、耳ついとらんのか。

 耳……頭ごとないやんけ!!」

 笑美はぎゃはははと笑いながら、機関銃で住民達を撃った。

 同時に、夏樹がプロパイダーの男を始末した。
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/06/18(日) 00:52:53.63 ID:3tnS2gIH0
 3人が戻ると、モニタールームの

 機器が血まみれだった。

 チャネルを消去した際に起こる

 怪奇現象の1つだったが、

 今では皆が慣れてしまった。

 「それじゃあ…解散」
 
 伸びをしながら、けだるそうに夏樹が言う。

 笑美は興奮がさめやらないのか、

 スーツをがりがり掻きむしっていた。
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