シンジ「その日、セカイが変わった」

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577 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/21(木) 15:29:06.55 ID:oz+dgW4j0
【第壱中学校 昼休み】

マナ「シーンジくんっ」

シンジ「……」ぼー

マナ「あれ? おーい、もしもーし」

ケンスケ「シンジなら朝からずっとこの調子だよ」

マナ「そうなの?」

ケンスケ「霧島は遅刻ギリギリにきたからな」

マナ「今朝は寝坊しちゃって」

トウジ「センセ、飯やぞ。飯」

シンジ「……」

トウジ「なんや、電池でも切れとるんかいな。おいケンスケ、ゼンマイ貸せや」

ケンスケ「人間に使えるネジなんかあるわけないだろ」

マナ「なにかあったのかな? もしかして、昨日のアスカ?」

アスカ「はぁ……あんたねぇ、ことあるごとにあたしに対抗心だすのやめない?」

マナ「噂をすれば。耳がよろしいのね」

アスカ「地獄耳だって言いたいわけ?」

トウジ「まぁまぁ! そないな猿蟹合戦よりも霧島さま! 今日のお弁当は……」

ヒカリ「あの、鈴原、よかったら、これ」スッ

トウジ「あん? 委員長やないか。どないしたんや、これ」

ヒカリ「うち、お姉ちゃんと妹の分も作ってるからあまりすぎちゃって」

トウジ「委員長の料理かぁ〜。まずそう――」

マナ&アスカ「黙って食べなさいっ!」バチーン

トウジ「な、ナイスコンビネーション」パタリ

アスカ「シンジ。シンジ」ユサユサ

シンジ「……」ぼー

アスカ「ちっ! バカシンジっ!」ユサユサッ

シンジ「あ、うわ、うわぁっ⁉︎ あ、アスカ? み、みんなも? なに?」

ケンスケ「昼だよ」

シンジ「あぁ、そんな時間。トウジはなんで倒れてるの?」

マナ「気にしなくていいの。どうしたの? 体調、悪い?」

シンジ「(昨日、あれから気絶しちゃったし。力を使いすぎた影響なのかぼーっとしたままなんだよなぁ)」

ケンスケ「なんでもいいけど、さっさと食べちまおうぜ」
578 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/21(木) 15:58:13.74 ID:oz+dgW4j0
【夕方 ネルフ本部 ラボ】

シンジ「碇シンジです。失礼します」カシャ

シンジ「(マヤさんも?)」

リツコ「あら。シンジくん、いらっしゃい。呼び出された理由、察しがついたんじゃなくって? ここは監視されてないから、好きに発言してもらって大丈夫よ」

シンジ「はっ! まさか……!」

リツコ「まずはお掛けなさいな。飲むのはコーヒーしかないけど。いる?」

シンジ「いえ」

リツコ「そう。それじゃ、私も座らせてもらうわね」ギシ

シンジ「……」チラッ

リツコ「ここに呼びだした理由は、マヤに関係していること。だから同席させている。シンジくんはマヤに取り入ることに成功したみたいだけど、部下の暴走まではわからないわよね」

シンジ「取り入る? 僕はそんなんじゃ」

リツコ「命にかかわるわよ」

マヤ「説明したじゃないですか! 使徒を移植されたことしか知らないって!」

リツコ「シンジくんに直接聞きたいの。余計な口を挟まないように」

シンジ「……マヤさんが言ってる通りです」

リツコ「危険だと承知していたわね?」

シンジ「母さんを納得させるためでした。指示が降りていたので」

リツコ「犯せと? それも先ほどマヤから聞いてたけど」

シンジ「はい。合意のない行為を僕は許せませんでした。なので、余計なことを除いて話した上でなにか対策を練ろうと思ったんです。僕からも質問いいですか?」

リツコ「いいでしょう」

シンジ「リツコさんにじゃありません。マヤさん、どうして……」

マヤ「ご、ごめんなさい。最初は先輩に言うつもりなかったんだけど、きっとわかってくれるって」

シンジ「……」

リツコ「このデータ。あなたの内に秘めた衝動を抑えるのに役立てるつもり?」

シンジ「僕じゃありません。使徒です」

リツコ「いずれひとつになる。あなたのものといっても間違いではないわ。ふぅ……どうしたものかしらね」

シンジ「母さんはまだ知らない。そうですよね」

リツコ「自己保身よ。私も厳罰を言い渡されるもの」

シンジ「リツコさんは、なんで母さんに協力してるんですか?」

リツコ「あなたに協力しろと?」

シンジ「そうじゃありません。知りたいだけです」

リツコ「人類はいずれ滅びてしまうからよ。ノアの方舟たる補完計画。舵取りに協力しているに過ぎない。犠牲になるものが何人いようともね」

シンジ「それだけですか?」

リツコ「中学生が生意気な口をきくんじゃありません。あなたは全体像が見えていない子供。綺麗事を並べて個人の生死に翻弄されているだけ」

シンジ「そうかもしれません。でも、勘違いしないでください」

リツコ「よく喋るようになったわね」

シンジ「リツコさんと同じです。僕は僕のやりたいようにやろうって決めてるだけ。その目的意識が、どうなのか。そこに違いは必要ありますか?」

リツコ「ないわ。望むように生きようとする権利は誰にでもあるもの」

シンジ「母さんに協力することを悪いと言ってるわけじゃない。リツコさんが正義だと思う、大義名分がそこにあるんでしょうから。でも、本当にそれだけですか?」

リツコ「(この子……)」

シンジ「誰だって、弱い部分はある。リツコさんは、そんなに完璧なんですか?」

リツコ「シンジくん。あなた、もしや、私の、知ってるの?」

マヤ「シンジくん……?」
579 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/21(木) 16:20:31.86 ID:oz+dgW4j0
シンジ「ふっ、くっくっくっ」

リツコ「なにがおかしいの?」

シンジ「うろたえてるからですよ。誰にだって秘密は……触れられたくないことはある。そうじゃないんですか?」

リツコ「……」

シンジ「僕は、マヤさんを守りたい。リツコさんよりもです」

マヤ「し、シンジ……くん?」

シンジ「もし、マヤさんを殺せば、僕はたぶん抑えられなくてリツコさんを殺します。中学生ですから。ついうっかりってこともありますよね」

リツコ「年齢を言い訳にする気?」

シンジ「子供扱いしてるのはリツコさんの方です。対等に考えてください。僕に取り引き材料はないわけじゃありません」

リツコ「――脅し?」

シンジ「どう受け取ってもらっても結構です」

リツコ「(親に似てきたのかしら。いえ、短期間でそれはありえない。これはある程度の覚悟を持っているわね)」

シンジ「僕としてはゆっくり見守っていただきたいと思っています。マヤさんに危害を加えず」

リツコ「やけに思考が冴えているようね。それもアダムの影響?」

シンジ「いえ。そういうわけじゃありませんよ。僕はリツコさんがこわいので」

リツコ「私が?」

シンジ「はい。母さんの側近で、最も警戒すべき相手の一人だと考えています。そんな人と対峙している。どうなります?」

リツコ「ふふっ、なるほど。よくわかった。マヤは板挟みってわけ。私とシンジくんの」

シンジ「マヤさんは、なにも知らなくてよかったんです。僕達が巻き込んでしまった。そうでしょ? リツコさん」

リツコ「……そうね」

シンジ「今回だけは見逃してくれませんか。僕が使徒の力を自覚している件についても」

リツコ「口約束でしか保証しないわよ」

シンジ「契りは必要ありません。リツコさんを信じます」

リツコ「愚かだわ。大人を舐めると痛い目にあう」

シンジ「自分の都合の良いように振る舞うのが大人だっていうんですか?」

リツコ「それは一面よ。狡猾で、そういう生き方を知っているのも歳を重ねたものに多くなる」

シンジ「だったら、僕はリツコさんの人間性を信じます」

リツコ「あなたが、私を? 信じるという意味をわかってるの?」

シンジ「無条件にじゃありませんよ。マヤさんはリツコさんにとっても大切な部下でしょう」

リツコ「……」
580 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/21(木) 16:50:34.50 ID:oz+dgW4j0
シンジ「人情っていうんですか? こういうの。難しい言葉はよくわかりませんけど」

リツコ「よく言うわ。もしかしたら、あなた、化けるかもしれないわね」パサ

シンジ「これは……? なんですか?」

リツコ「ダミーとその計画書。適格者が存在せずとも、エヴァの起動を可能にするシステムよ。読んで理解できる?」

シンジ「……」ペラ

マヤ「わ、私にも」

リツコ「黙って」

シンジ「……ベースは綾波ですか?」

リツコ「驚いた。一見しただけでよくそこまで考えが辿り着けたわね。やはり、親の血は受け継いでいる、か」

シンジ「無人機にしてどうするつもりですか」

リツコ「その前に、あなたのやろうとしていることはなに?」

シンジ「リツコさんから見れば、駄々をこねてるように見えるかもしれませんが、僕は補完計画を発動させない別の道を模索したい」

リツコ「ナンセンスね。第三の選択肢なんてありえないわ。発動させなければ人類は滅びてしまう。“再生させるか”、“無に帰すのか”。シンジくんはこの二択で終焉を選ぼうというの?」

シンジ「道がなければ作れば良い。人類はそうやって進化してきました」

リツコ「それは何世代も紡いで学習してきた時間があったからだわ。今回は結論をだすまでに一年も……もっと短いかもしれない。そんなに猶予はないのよ」

シンジ「最後まで足掻いてみたいんです。人が人のせいで終わりを迎えるというのなら、それも自然の摂理のはず」

リツコ「私たちのしようとしていることは神の真似事ですものね」

シンジ「いくら大義名分を掲げようとも。困難を前に諦めるのを強要しないでください」

リツコ「では、シンジくんは司令ととことんやりあうつもり?」

シンジ「僕が望むのは現状維持です。母さんは変革を求めている。この国だって他国がしかけてきたら自己防衛するじゃないですか」

リツコ「しかけているのは私たちだと?」

シンジ「その通りです。人類補完計画の発動を止める。その上で計画性がないとしても、愚かだとしても、人類の未来は人類が決めるべきです」

リツコ「あなたに対する評価を改めましょう。見た目を抜きにすれば、中学生が発するとは思えないわね。青臭いだけと言えなくもないけど」

シンジ「母さんもそうですが、リツコさんもですか」

リツコ「……?」

シンジ「採点してる気になってる時点で、上から見てるんですよ。評価って、そういうものでしょう」

リツコ「これは失礼。取り引きに話を戻しましょう。シンジくん、あなたは私がマヤを救いたいと思っているのね?」

シンジ「少なからずは」

リツコ「そうね。でも切り捨てられないわけじゃない、と言ったら?」

マヤ「(先輩、なんだか、楽しそう?)」

シンジ「そうだとしたら困っちゃいます」

リツコ「ふふっ、可愛げ、身につけたの?」

シンジ「ありのままを言っただけですよ」
581 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/21(木) 18:40:27.69 ID:iBtBJlfuo
C
582 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/21(木) 20:09:52.99 ID:oz+dgW4j0
【リツコ宅 リビング】

シンジ「食材は自由に使わせてもらいますよ。それにしても意外でした、まさか、条件を飲む理由が」

リツコ「なにもなしじゃ遊び心がないわ。口実だけど、シンジくんの手料理はおいしいって評判だし、一度食べてみたかったの」

シンジ「みんなが過大評価しすぎです。レシピ通りにやれば誰だってできる」

リツコ「美味しいものは美味しい。それでかまいやしないわ」

シンジ「電気タイプなんですね。ここのコンロ」ピッ

リツコ「どこまで把握してるの?」

シンジ「言いたくありません」

リツコ「もしかして、夢の出来事も覚えてるんじゃ? タブリスになにか吹き込まれた?」

シンジ「カヲルくんですか?」キョトン

リツコ「(違うのね。タブリスではない、一体誰が……。アダム、使徒からの直接コンタクト?)」

シンジ「……なにを知ったとしてもやりたいと思ってることは言った通りです」

リツコ「特別に教えてあげる。先程渡した計画書。あれは古い物よ。変更される前のね」

シンジ「……」トントントン

リツコ「新しいダミーの研究は既にはじまっている。ベースは渚カヲル」

シンジ「そうですか。やっぱり、やることに変わりはないんですね」

リツコ「補完計画に必要不可欠ですものね。それは、あなたも同様に。……どう? 人類代表に選ばれた気分は」

シンジ「元々、そういう計画じゃなかったでしょう」

リツコ「鋭い。まるで知っているかのよう口ぶりに先程から鳥肌がたってしまう」

シンジ「褒めたってなにもしませんよ」

リツコ「私、おべっか使うの嫌いなのよ。もし本当にシンジくんがなにも知らないままに推察だけで発言しているとしたら、これほど興味深い話はない」

シンジ「そうですか」

リツコ「とっても不自然ですもの。一週間ほど前まで、事なかれ主義だっただけに、不気味だわ」

シンジ「そんな気がするだけです」

リツコ「ふっ、たしかにシンジくんのお父様が提唱していた補完計画は、初号機が中心にあった。なぜだと思う?」

シンジ「なんでもわかるわけじゃありませんから」ジュー

リツコ「想像でかまわないわ。言ってみて」

シンジ「母さんが現れるまでの父さんは僕に興味がなかった。自分の息子というよりも、道具。僕が必要だっわけじゃない。必要なのは、パイロットだったんでじゃないでしょうか」

リツコ「……」

シンジ「そう考えると、ダミー計画を読んでみて納得がいきます。初号機さえあればいいと思ってたんじゃないかって」

リツコ「そこまでは正解。でも、それは碇司令に初号機が必要な理由であって、私の質問に対しての答えではない。補完計画になぜ必要?」

シンジ「見当もつかないや。発動するまでにいくつか条件があるんじゃないんですか? 僕の手にあるアダムがまず第一。そして二番目には初号機とか。そういういくつものピースが重なってる」

リツコ「(おそろしい子なのかもしれない)」

シンジ「おそらくですけど、今は準備段階。その合間に使徒が来てる。準備ができれば、いつでも補完計画を発動したいと思ってる」コトコト

リツコ「そこは違うわ。私たちはタイムスケジュールに沿って準備、行動しているの」

シンジ「(裏死海文書。真実が書かれた予言書のことか)」

リツコ「莫大な国連費がかかっているのよ。億を飛び越えて兆単位の資金。この時点で何人死んでてもおかしくない」

シンジ「お金、ですか」

リツコ「欲をだして人が死ぬなんてしょっちゅうある話でしょう。一億あれば人殺しをする輩なんて万といるわよ。それがネルフにかかっているのは兆。規模の大きを実感できる?」

シンジ「いえ、あんまり」

リツコ「桁が大きすぎるのね」
583 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/21(木) 20:45:41.66 ID:oz+dgW4j0
リツコ「――ほんと。美味しい」

シンジ「どうも」

リツコ「これほどの腕前ならミサトじゃなく私が引き受け人になるべきだったかしら」

シンジ「今はマヤさんですけどね」

リツコ「シンジくん、マヤに頼るのはやめなさい」

シンジ「……」

リツコ「危険だわ。ユイ司令は、必要だと判断すれば容赦がなくなるわよ」

シンジ「わかってます。今は計画の中心にいるのが僕。それ以外は道具、でしょ」

リツコ「ご明察。そこまでわかってるのなら説明する必要はないわね」

シンジ「であれば、同居を解消するように働きかけてください。一緒に住んでいると否応にでも巻き込んでしまう」

リツコ「一理ある」

シンジ「衝動は時と場所を選んでくれません。僕の都合なんておかまいなし」

リツコ「それがマヤに向けられる。そう考えてるのね?」

シンジ「はい。そうなれば僕の望むところではありません。マヤさんに話をしたのはその対応策なんです」

リツコ「……シンジくんから?」

シンジ「そうです。マヤさんになにも非はありません」

リツコ「それはウソね。聞いただけじゃ、動こうとしないもの。あなたに惹かれるなにかがあったはず」

シンジ「曲がったことが許せないだけなんじゃないですか」

リツコ「かばってるつもり? お優しいこと」

シンジ「リツコさんのせいでもあります」

リツコ「私も?」

シンジ「憧れていた先輩が思っていた人ではなかった。現実と理想の違い」

リツコ「幻滅したのが?」

シンジ「気がつかないんですか。マヤさんにとって、リツコさんは心の支えだったんです。それがなくなってしまい、弱ってしまった」

リツコ「あの子、まだ子供ね」

シンジ「子供だとか関係ないと思います。むしろ、歳をとってるからこそ他人のありがたみがわかる。大事な人であればあるほど」

リツコ「あなた、まだ若いでしょう」

シンジ「この一週間、本当に密度が濃かったんですよ。自分の面と向き合うことを余儀なくされました。自分のしたいことで精一杯で、僕はまわりを見ていなかったと実感できるほどに」

リツコ「一時的なものね。人は忘れながらに生きているから」

シンジ「それでも、この出来事を僕は忘れないと思います」

リツコ「あなたの経験則から導きだされた答え。つまり、悟ったからみんなもそうであると?」

シンジ「違います。ただ、若さとは、無謀なことができる期間なんだと漠然と感じます」

リツコ「……」カチャ

シンジ「ワイン、飲まれますか?」

リツコ「シンジくん。将来はウェイターにでもなったら?」

シンジ「僕に将来なんてあるんですかね」

リツコ「自身の死についてまで悟りを開いたの?」

シンジ「いえ、よく、わかりません」

リツコ「もうこんな時間。話すぎたわね。帰っていいわよ」

シンジ「あ、はい」

リツコ「またいつでもいらっしゃい。敵といっても、私はお母様より融通が効くわよ」

584 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/21(木) 22:07:42.55 ID:oz+dgW4j0
【マヤ宅 リビング】

シンジ「ただい……わあっ⁉︎」

マヤ「お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください」

シンジ「ま、マヤさんっ⁉︎ なにやってるんですか⁉︎」

マヤ「あ、シンジくん、おかえり。ごめんね、いま、準備してるから」

シンジ「ロープから手を離して! そんなの一体どこから」

マヤ「帰りにホームセンターに寄って買ってきたの」

シンジ「いや、そうじゃなくて! 大丈夫ですよ!なにも心配しなくていいんです!」

マヤ「うふ、うふふ。私、失敗しちゃった。先輩ならわかってくれると思ったのに。また裏切られちゃったの」

シンジ「そ、それは……リツコさんもやりたいことがあって……!」

マヤ「私には仕事しかないもの。実家に帰るぐらいなら、生きてたって」

シンジ「そんなことありませんよ! 生きてればなんだってできます!」

マヤ「気力がなくなっちゃったの! シンジくんの力になりたかった、けど、逆に足を引っ張っちゃったね」

シンジ「一度失敗したぐらいでなんだっていうんですか!」

マヤ「取り返せるつまずきならまだいい。だけど、クビなら無理。やり直すにしても、ネルフとは別の場所」

シンジ「仕事が全てだなんて、そんな……」

マヤ「決めたの。先輩に見捨てられて、シンジくんにも迷惑をかけて。ボロボロだわ」ガタッ

シンジ「まって!」ダダダッ

マヤ「うっ」ガクッ ジタバタ

シンジ「くそっ!」ガシッ

マヤ「は、離してっ! シンジくん! 離してよっ!」

シンジ「暴れないでくださいよ! 持ちあげるのに力が……」

マヤ「死なせてよ! 死にたいの!」

シンジ「(こうなったら、力を使うしか……!)」

マヤ「え?」ヒョイ

シンジ「はぁ……。まさかそんなに張り詰めてたなんて」

マヤ「お、重くないの?」

シンジ「今は箸を持ちあげる重さぐらいですよ。使徒の力を使ってますから」

マヤ「そういう……あの、降ろして。お姫様抱っこされるような歳じゃ」

シンジ「もうしませんか? こういうこと」

マヤ「……」

シンジ「だったら、降ろせません」

マヤ「わかった。しないから」

シンジ「一瞬とはいえ苦しかったでしょ」スッ

マヤ「うっ……ぐすっ……」

シンジ「僕が止めたのは、マヤさんが死んだら悲しいからです。ここにいたっていいんですよ。ネルフにも」

マヤ「本当? 私、まだ、やり直せる?」

シンジ「リツコさんの了承は得られました。信じてもいいと思います。危険はありますが」

マヤ「ありがとう、シンジくん、ありがとう」ギュウ

シンジ「(女の人ってみんなこうなのかなぁ)」ポンポン
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/22(金) 19:13:10.23 ID:23+v/2wRo
C
586 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/22(金) 19:48:04.40 ID:WQoYycWcO
たまに見かけるCってなに?
587 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/22(金) 19:50:58.76 ID:g5r530lSO
支援
588 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/22(金) 22:21:24.44 ID:yBhD/MoW0
ちょいすんまへん
読み返すと>>576からセリフ回し荒くなってるんでレスしなおし
589 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/22(金) 22:37:21.93 ID:yBhD/MoW0
【ネルフ本部 ラボ】

リツコ「――療養の為、実家に戻りなさい」

マヤ「えっ⁉︎ そんなっ」

リツコ「命令よ。伊吹二尉。解雇予告だと思ってもらって結構です。休職期間が明けた後、技術局ニ課より……」

マヤ「せっ、先輩っ! 待ってください! どうしてですかっ⁉︎」

リツコ「ありのままの事実を伝えていたはず。身元保証人には私がなっていると。にもかかわらず、まだ調査しているわね。勝手な振る舞いに対する責任は負いきれない」

マヤ「ち、違うんです! これは、使徒の生態調査をしていただけで」

リツコ「使徒?」ピク

マヤ「これまでの使徒の襲来パターンから次の使徒に有効な分析や対策案を練ろうと」

リツコ「動機は?」

マヤ「あの、この前は先輩とあんな風に口論しちゃいましたし。落ち着かなかったので、なにか気持ちが落ち着くことをしようと思って。作業に没頭してれば考えなくて済むじゃないですか!」

リツコ「……」

マヤ「本当に、それだけなんです!」

リツコ「マヤ、見えすいた嘘はやめなさい」

マヤ「せ、先輩……」

リツコ「知り得た事実が負担になっている。これから起こるであろう出来事に耐えきれるように見えない」

マヤ「わからないじゃないですか! お願いします! 辞めたくはないんです!」

リツコ「……」

マヤ「先輩! お願いです!」

リツコ「なぜネルフにしがみつくの? ここで働いていたという実績があれば、引く手あまたよ」

マヤ「私の目標なんです。先輩が。……どういう性格だとしても、研究に対する姿勢や視点について学ぶべきことはたくさんあります。ウソじゃありません」

リツコ「パソコンを貸しなさい」

マヤ「はい」スッ

リツコ「……これは。使徒? いえ、誰のデータ?」

マヤ「シンジくん、です」

リツコ「あなた、やはり……!」

マヤ「どうしてですかっ⁉︎ 先輩はいつもフラットに物事を見極めていました! 科学者として証明するべきでしょう!」

リツコ「なにか聞いたのね?」

マヤ「少しだけ。彼はなにも知りません。私が自分の意思で話してることだからです!」

リツコ「……」

マヤ「先輩……! 目を覚ましてください! 私たちは、シンジくんにこそ協力をするべきです!」

リツコ「あなたを解雇する前にシンジくんに事情聴取しなくちゃ」

マヤ「先輩っ!!」

リツコ「黙りなさいっ! どれほどの危険に首をつっこんでいるかわかってるのっ⁉︎」バンッ

マヤ「わかってます! だけど、それでも私は! 先輩と……!」

リツコ「らちがあかないわ。通常業務に戻りなさい。シンジくんは学校にいるから、放課後ここにくるように指示する。あなたも同席するのよ」

マヤ「……」ギュウ

リツコ「中学生にほだされるなんて。恥を知ったらどう?」

マヤ「先輩こそ! やっていいことと悪いことに年齢は関係ありません!」
590 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/22(金) 22:47:04.38 ID:yBhD/MoW0
【第壱中学校 昼休み】

マナ「シ〜ンジくんっ」

シンジ「……」ぼー

マナ「あれ? おーい、もしもーし」

ケンスケ「シンジならずっとこの調子だよ」

マナ「そういえば、授業中もそうだったね?」

ケンスケ「めずらしーね。霧島がシンジのチェックを怠るなんてさ」

マナ「はぁ、緑化委員になんか立候補しなきゃよかった」

トウジ「センセ、飯やぞ。飯」ポン

シンジ「……」カクン

トウジ「なんや、電池でも切れとるんかいな。おいケンスケ、ゼンマイ貸せや」

ケンスケ「人間に使えるネジなんかあるわけないだろ」

マナ「なにかあったのかな? もしかして、昨日のアスカ?」

アスカ「はぁ……あんたねぇ、ことあるごとにあたしに対抗心燃やすのやめない?」

マナ「噂をすれば。耳がよろしいのね」

アスカ「へぇ、地獄耳だって言いたいわけ?」

トウジ「まぁまぁ! そないな猿蟹合戦よりも霧島さま! 今日のお弁当は……」

ヒカリ「あの、鈴原、よかったら、これ」スッ

トウジ「あん? 委員長やないか。どないしたんや、これ」

ヒカリ「うち、お姉ちゃんと妹の分も作ってるからあまりすぎちゃって」

トウジ「委員長の料理かぁ〜。まずそう――」

マナ&アスカ「黙って食べなさいっ!」バチーン

トウジ「な、ナイスコンビネーション」パタリ

アスカ「シンジ。シンジ」ユサユサ

シンジ「……」ぼー

アスカ「ちっ! バカシンジっ!」ユサユサッ

シンジ「あ、うわ、うわぁっ⁉︎ あ、アスカ? み、みんなも? なに?」

ケンスケ「とっくに昼だよ」

シンジ「あぁ、そんな時間。トウジはなんで倒れてるの?」

マナ「体調、悪い? 保健室いく?」

ケンスケ「当たり前のようにスルーするなぁ」

シンジ「(昨日、あれから気絶しちゃったし。その影響なのか倦怠感が凄いんだよなぁ)」

ヒカリ「あの〜、鈴原?」チョンチョン

ケンスケ「なんでもいいけど、さっさと食べちまおうぜ。残り時間短くなっちゃうよ」
591 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/22(金) 23:03:17.60 ID:yBhD/MoW0
【夕方 ネルフ本部 ラボ】

シンジ「碇シンジです。失礼しま……す」アングリ

リツコ「いらっしゃい。シンジくん」

シンジ「マヤさんが、どうしてここに? そんな……⁉︎」

リツコ「まずはお掛けなさいな。飲めるのはインスタントコーヒーしかないけど。淹れましょうか?」

シンジ「いえ」

リツコ「そう。それじゃ、私も座らせてもらうわね」ギシ

シンジ「……」チラッ

リツコ「ここに呼びだした理由について、察しがついたんじゃなくって? なぜ同席させているのかも。シンジくんはマヤを従わせるまで成功したみたいだけど、部下の暴走はわからなかったようね」

シンジ「僕はそんなつもりじゃ」

リツコ「言葉を選びなさい? そうしないと、命にかかわる」

マヤ「何度も説明したじゃないですか! 使徒を移植されたことしか知らないって!」

リツコ「彼に直接聞きたいの。余計な口を挟むのは慎んでちょうだい」

シンジ「……マヤさんが言ってる通りです」

リツコ「そう。喋ったら危険だと承知していたわね?」コト

シンジ「母さんを納得させるためでした。指示が降りていたので」

リツコ「犯せと? それも先ほどマヤから聞いてたけど」

シンジ「はい。合意のない行為を僕は許せませんでした。なので、余計な部分を除いて話をした。時間稼ぎをして対策を練ろうと思ったんです。僕からも質問いいですか?」

リツコ「発言を許可します」

シンジ「リツコさんにじゃありません。マヤさん、どうして……」

マヤ「ご、ごめんなさい。先輩に言うつもりなかったんだけど、きっとわかってくれる、希望を捨てきれなくて」

シンジ「……」

リツコ「このデータ。内に秘めた衝動を抑えるのに役立てるつもり?」

シンジ「僕のじゃありません。使徒です」

リツコ「いずれひとつになるでしょう。過程と結果が違うだけであなたのものといっても過言ではないわ。ふぅ……どうしたものかしらね」

シンジ「母さんはこのことをまだ知らない。そうですよね」

リツコ「自己保身よ。私も厳罰を言い渡されるもの」

シンジ「リツコさんは、どうして母さんに協力してるんですか?」

リツコ「質問に質問を返すようだけど、あなたに協力しろと?」

シンジ「そうじゃありません。知りたいだけです」

リツコ「人はそう遠くない未来に滅びてしまうからよ。ノアの方舟たる補完計画。舵取りに協力しているに過ぎない。犠牲になるものが何人いようともね」

シンジ「それだけですか?」

リツコ「中学生が生意気な口をきくんじゃありません。あなたは全体像が見えていない子供。綺麗事を並べて個人の生死に翻弄されているだけ」

シンジ「そうかもしれません。でも、勘違いしないでください」

リツコ「よく、喋るようになったわね」

シンジ「リツコさんと同じです。僕は僕のやりたいようにやろうって決めてるだけ。その目的意識が、どうなのか。そこに違いは必要ありますか?」

リツコ「ないわ。望むように生きたいと願う権利は誰にしもに与えられる」

シンジ「母さんに協力することを悪いと言ってるわけじゃない。リツコさんが正義だと思う、大義名分がそこにあるんでしょうから。でも、本当にそれだけですか?」

リツコ「(この子……)」

シンジ「誰だって、弱い部分はあるんじゃないの。リツコさんは、そんなに完璧なんですか?」

リツコ「シンジくん。あなた、まさか……私の、知ってるの?」

マヤ「……?」
592 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/22(金) 23:14:49.11 ID:yBhD/MoW0
シンジ「ぷっ、くっくっくっ」

リツコ「なにがおかしいの?」

シンジ「可笑しいですよ、うろたえてるのが。誰にだって秘密は……触れられたくない部分はある。そうリツコさんが言ってるのと同じじゃないんですか?」

リツコ「……」

シンジ「僕は、マヤさんを守りたい。リツコさんよりもです」

マヤ「し、シンジ……くん?」

シンジ「もし、マヤさんを殺せば……僕はたぶん抑えられなくてリツコさんを殺します。中学生ですから。ついうっかり弾みでってことが起こるかもしれない」

リツコ「年齢を言い訳にする気?」

シンジ「子供扱いしてるのはリツコさんです。対等に考えてください。僕に取り引き材料がないわけじゃありません」

リツコ「――脅し?」

シンジ「どう受け取ってもらっても結構です」

リツコ「(親に似てきた? ……不自然ね、これはある種の覚悟からきているのかもしれない)」

シンジ「僕としてはゆっくり見守っていただきたいと思っています。マヤさんに危害を与えず」

リツコ「やけに思考が冴えているみたいね。アダムの影響?」

シンジ「そういうわけじゃありませんよ。僕はリツコさんがこわいので」

リツコ「私が?」

シンジ「はい。母さんの側近で、最も警戒すべき相手の一人だと考えています。そんな人と対峙している。どうなります?」

リツコ「ふふっ、なるほど。よくわかった。マヤは板挟みってわけ。私とシンジくんの」

シンジ「マヤさんは、なにも知らなくてよかったんです。僕達が巻き込んでしまった。そうでしょ? リツコさん」

リツコ「そうね」

シンジ「今回だけは見逃してくれませんか。僕が使徒の力を自覚している件についても」

リツコ「口約束でしか保証しないわよ」

シンジ「契りは必要ありません。リツコさんを信じます」

リツコ「愚かだわ。大人を舐めると痛い目にあう」

シンジ「自分の都合の良いように振る舞うのが大人だっていうんですか?」

リツコ「それは一面にしかすぎない。ずる賢く、狡猾で、そういう生き方を正当化する方法を知っているのも大人なのよ」

シンジ「だったら、僕はリツコさんの人間性を信じます」

リツコ「信じるという意味をわかってるの?」

シンジ「無条件にじゃありませんよ。リツコさんにとっても大切な部下ですよね」
593 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/22(金) 23:55:45.87 ID:yBhD/MoW0
シンジ「人情っていうんですか? こういうの。難しい言葉はよくわかりませんけど」

リツコ「よくもまぁぬけぬけと。……もしかしたら、化けるかも。試してみる価値はある」パサ

シンジ「これは……? なんですか?」

リツコ「ダミーとその計画書。適格者が存在せずとも、エヴァの起動を可能にするシステムよ。理解できる?」

シンジ「……」ペラ

マヤ「わ、私にも」

リツコ「黙って」

シンジ「――ベースは綾波ですか?」パサ

リツコ「驚きね。一読したかと思えば瞬時に辿り着いた。やはり、親の血は受け継いでいる、か」

シンジ「無人機にしてどうするつもりですか」

リツコ「その前に、あなたが計画していることはなに?」

シンジ「リツコさんから見れば、駄々をこねてるように感じるかもしれませんが、僕は補完計画を発動させない別の道を模索したい」

リツコ「ナンセンスよ。第三の選択肢なんてありえないわ。発動させなければ人類は滅びてしまう。“再生させるか”、“無に帰すのか”。シンジくんはこの二択で終焉を選ぼうというの?」

シンジ「道がなければ作れば良い。人類はそうやって進化してきました」

リツコ「それは数千年もの間、生命を紡いで反省と学習をできた期間があったから。今は結論をだすまでに一年……もっと短いかもしれない。猶予はない」

シンジ「最後まで足掻いてみたいんです。人が人のせいで終わりを迎えるというのなら、それだって自然の摂理のはず」

リツコ「私たちのしようとしていることに対して弾糾するつもり?」

シンジ「いくら大義名分を掲げようたって。知的生命体である人の可能性がある。どうしてやる前から諦めなくちゃいけないんだよ」

リツコ「ことのなりゆきを見守るだけでは99%の人が死ぬとMAGIの試算がでてる。果てしない暴力が終わった後、石器時代まで文明は退化するわよ」

シンジ「……僕が望むのは現状維持です。母さんは変革を求めている。この国だって他国がしかけてきたら自己防衛するのと一緒です」

リツコ「保守的ね。しかけているのはこちら?」

シンジ「補完計画の発動を止める。その後に計画性がない、愚かな選択だとしても、人類の未来は人という種が決めるべきです」

リツコ「評価を改めるべきかしら。見た目を抜きにすれば、中学生が発している意見と思えない。言葉に酔ってるだけと受け取れなくもないけど」

シンジ「母さんもそうでしたけど、リツコさんもですか」

リツコ「……?」

シンジ「採点してる気になってる時点で、上から見てるんですよ。評価って、そういうものでしょう」

リツコ「これは失礼。取り引きに話を戻しましょう。シンジくん、あなたは私がマヤを救いたいと思っているのね?」

シンジ「少なからずは」

リツコ「切り捨てられないわけじゃない」

マヤ「(先輩? なんだか、楽しそう?)」

シンジ「そうだとしたら困っちゃいます」

リツコ「ふふっ、可愛げ、身につけたの?」
594 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 00:20:10.14 ID:Nz14Uu3d0
【リツコ宅 リビング】

シンジ「食材は自由に使わせてもらいますよ。それにしても意外でした、まさか、条件を飲む理由が」

リツコ「なにもなしじゃ遊び心がないわ。口実になるけど、シンジくんの手料理はおいしいって評判だし、一度食べてみたかったの」

シンジ「みんな、過大評価しすぎなだけです。レシピ通りにやれば誰だってできるのに」

リツコ「料理人に失礼よ。美味しいものは美味しい。それでかまいやしないわ」

シンジ「電気タイプなんですね。ここのコンロ」ピッ

リツコ「どこまで把握してるの?」

シンジ「また続きですか……言いたくありません」

リツコ「もしかして、昏睡状態の出来事を覚えてるんじゃ? タブリスになにか吹き込まれた?」

シンジ「カヲルくんですか?」キョトン

リツコ「(違う、タブリスではない。だとしたら、一体誰がここまでの変貌に導いたのかしら……。外的要因をくわえなければ不可能なはず)」

シンジ「……なにを知ったとしてもやりたいと思っているのは言った通りです」

リツコ「特別に答えををあげるわ。先程渡した計画書。あれは古い書類よ。変更される前のね」

シンジ「……」トントントン

リツコ「新しいダミーの研究は既にはじまっている。被験体は渚カヲル。進捗状況までは教えない」

シンジ「構いませんよ。やっぱり、やることに変わりはないんですね」

リツコ「補完計画に必要不可欠ですものね。それは、あなたも同様に。……どう? 人類代表に選ばれた気分は」

シンジ「元々、そういう計画じゃなかったでしょう」

リツコ「鋭い。まるで知っているかのよう口ぶりに先程から鳥肌がたちっぱなし」

シンジ「褒めたってなにもしませんよ」

リツコ「私、おべっか使うの嫌いなのよ。もし本当になにも知らないままに推察だけで発言しているとしたら、これほど興味深い話はない」

シンジ「そうですか」

リツコ「とっても不自然ですもの。一週間ほど前まで、事なかれ主義だっただけに、不気味」

シンジ「そんな気がするだけです」

リツコ「シンジくんのお父様が提唱していた補完計画は、初号機が中心にあった。なぜだと思う?」

シンジ「なんでもわかるわけじゃありませんから」ジュー

リツコ「想像でかまわないわ。言ってみて」

シンジ「母さんが現れるまでの父さんは僕に興味がなかった。自分の息子というよりも、道具。僕が必要だっわけじゃない。必要なのは、パイロットだったんでじゃないでしょうか」

リツコ「ガッカリした?」

シンジ「いえ。そう考えると、ダミー計画を読んでみると納得がいきます。初号機さえあればいいと思ってたんじゃないかって」

リツコ「そこまでは正解。でも、それは碇司令に初号機が必要な理由であって、私の質問に対しての答えではない。補完計画にはなぜ?」

シンジ「見当もつかないや。発動するまでにいくつか条件があるんじゃないんですか? 僕の手にあるアダムがまず第一。そして二番目には初号機とか。そういういくつものピースが重なってる」

リツコ「(他人事のようね。冷静に分析してる)」

シンジ「おそらくですけど、今は準備段階。その合間に使徒が来てるのかな。……準備ができれば、いつでも補完計画を発動したいと思ってる」コトコト

リツコ「そこは違うわ。私たちはタイムスケジュールに沿って準備、行動しているの」

シンジ「(裏死海文書。真実が書かれた予言書か)」

リツコ「莫大な国連費で補っているのよ。億を飛び越えて兆の運用金。この時点で何人死んでてもおかしくない」

シンジ「お金、ですか」

リツコ「欲をかいて人殺しなんてしょっちゅうある話でしょう? それが一連の計画にかかっている単位が兆。規模の大きを実感できる?」

シンジ「いえ、あんまり」

リツコ「碇前司令も幾度となく手を汚しているわよ」
595 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 00:34:03.46 ID:Nz14Uu3d0
シンジ「驚きはありません。やってても不思議じゃないと思います。できましたよ、冷めないうちにどうぞ」コト

リツコ「あら、本当に美味しい。これほどの腕前ならミサトじゃなく私が引き受け人になるべきだったかしら」

シンジ「今はマヤさんですけどね」

リツコ「シンジくん、マヤに頼るのはやめなさい」

シンジ「……」

リツコ「危険だわ。ユイ司令は、冷酷になれば容赦がなくなるわよ」

シンジ「わかってます。今は計画の中心にいるのが僕。それ以外は道具、でしょ」

リツコ「ご明察。そこまでわかってるのなら説明する必要はないわね」

シンジ「同居を解消するように働きかけてください。一緒に住んでいると否応にでも巻き込んでしまう」

リツコ「ふぅん、一理ある」

シンジ「衝動は時と場所を選んでは……。僕の都合なんておかまいなし」

リツコ「それがマヤに向けられる。そう考えてるのね?」

シンジ「僕の望むところではありません。マヤさんに話をしたのは対応策の一環なんです」

リツコ「……シンジくんから?」

シンジ「そうです。マヤさんになにも非はありません」

リツコ「それはウソね。聞いただけじゃ、動こうとしないもの。あなたに惹きつけられるなにかがあったはず」

シンジ「曲がったことが許せないだけなんじゃないですか」

リツコ「かばってるつもり? お優しいこと」

シンジ「リツコさんのせいでもあります」

リツコ「私も?」

シンジ「憧れていた先輩が思っていた人ではなかった。現実と理想の違い」

リツコ「あの子のかかえる問題点は理解しているわ」

シンジ「気がついてないんですよ。マヤさんにとって、リツコさんは心の支えだったんです。それがなくなってしまい、弱ってしまった」

リツコ「(シンジくんのデータ、早急に書き換えなければ……)」

シンジ「この一週間、本当に密度が濃かったんですよ。自分の色んな面と向き合なくちゃいけなくなってました。したいことで精一杯で、僕はまわりを見ていなかったと実感できるほどに」

リツコ「一時的なものよ。人は忘れながらに生きているから」

シンジ「それでも、これまでの出来事を僕は忘れないと思います」

リツコ「経験則から導きだされた答え? 悟ったからみんなもそうであると?」

シンジ「違います。ただ、若さとは、無謀なことができる期間なんだと漠然と感じます」

リツコ「……」カチャ

シンジ「ワイン、飲まれますか?」

リツコ「シンジくん。将来はウェイターにでもなったら?」

シンジ「僕に将来なんてあるんですかね」

リツコ「自身の死についてまで悟りを開いたの?」

シンジ「いえ、よく、わかりません」

リツコ「もうこんな時間。話すぎたわね。ごちそうさま」

シンジ「あ、はい。でも、少し手をつけただけじゃ」

リツコ「料理自体に不満はない、頭の回転が鈍くなるから、少食なのよ。満腹感はどうしても受け付けたくないというだけ。またいつでもいらっしゃい。歓迎するわ」

シンジ「……」

リツコ「(今のあなたなら、ね)」
596 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/23(土) 00:43:03.41 ID:ub4QE0yxo
リツコの考えがよくわかんないんだよな。冬月は毒を喰らわば皿までって
感じなんだろうけど、リツコはどうなんだろう。本当に人類のためなのかな?
597 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 00:46:54.89 ID:Nz14Uu3d0
【マヤ宅 リビング】

シンジ「ただいま。あれ? マヤさん、なにして――わあっ⁉︎」

マヤ「お父さん、お母さん、先立つ不孝をお許しください」

シンジ「ちょっとっ⁉︎ なにしようとしてるんですか⁉︎ なに考えてるんですかっ⁉︎」

マヤ「あ、おかえり。ごめんね、いま、準備してるから」

シンジ「ロープから手を離して! そんなの一体どこから」

マヤ「帰りにホームセンターに寄って買ってきたの」

シンジ「いや、そうじゃなくて! 大丈夫ですよ!なにも心配しなくていいんです!」

マヤ「うふ、うふふ。私、墓穴掘っちゃった。先輩ならわかってくれると思ったのに。また裏切られちゃったの」

シンジ「そ、それは……リツコさんもやりたいことがあって……!」

マヤ「私には仕事しかないもの。実家に帰るぐらいなら、生きてたって」

シンジ「そんなことありませんよ! 生きてればなんだってできます!」

マヤ「気力がなくなっちゃったの! シンジくんの力になりたかった、けど、逆に足を引っ張っちゃったね」

シンジ「一度失敗したぐらいでなんだっていうんですか!」

マヤ「取り返せるつまずきならまだいい。だけど、クビなら無理。やり直すにしても、ネルフとは別の場所」ツゥー

シンジ「マヤさん、泣いて……仕事が全てなんて、そんな……別の幸せが」

マヤ「決めたの。先輩に見捨てられて、シンジくんにも迷惑をかけて。もう、ボロボロだわ」ガタッ

シンジ「まってっ!」ダダダッ

マヤ「うっ」ガクッ ジタバタ

シンジ「くそっ!」ガシッ

マヤ「は、離してっ! シンジくん! 離してよっ!」

シンジ「暴れないでくださいよ! 持ちあげるのにきつくなる……」

マヤ「死なせてよ! 死にたいのっ!」

シンジ「(こうなったら、使徒の力に頼るしか……! こんなに使ったら、母さんに絶対にバレるきっかけを与えてしまう! けど!)

マヤ「え?」ヒョイ

シンジ「はぁ……。まさかそんなに張り詰めてたなんて」

マヤ「お、重くないの?」

シンジ「箸を持ちあげる重さぐらい。これが身体能力の強化です」

マヤ「今の状態が……あの、わかったから降ろして。お姫様抱っこされるような歳じゃないし」

シンジ「もうしませんか? こういうこと」

マヤ「……」

シンジ「答えを聞くまで降ろせません」

マヤ「しないから」

シンジ「一瞬とはいえ苦しかったでしょ」スッ

マヤ「うっ……ぐすっ……」

シンジ「僕が止めたのは、マヤさんが死んだら悲しいからです。ここにいたっていいんですよ。ネルフにも」

マヤ「本当? 私、まだ、やり直せる?」

シンジ「リツコさんの了承は得られました。信じてもいいと思います。危険はありますけど、納得、してるんでしょう?」

マヤ「ありがとう、シンジくん、ありが、とうぅっ……うっ、うああぁっ」ポロポロ

シンジ「(女の人ってみんなこうなのかなぁ?)」ポンポン
598 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/23(土) 16:45:13.43 ID:Nz14Uu3d0
【ネルフ本部 執務室】

ユイ「これで何度目?」

諜報部「伊吹二尉のお宅に、ご子息が移られてからですか? 電磁波発生の頻度は――」

ユイ「バカな質問をしたわ。ほぼ毎日ね」

諜報部「いかがいたしますか? その、リユース品ではありませんし、あまりにも」

ユイ「こちらで検討します。疑問を抱かなくていい」

諜報部「はっ! 失礼いたします!」ビシッ

ユイ「シンジったら、もう。安直な手段を選ぶのはよろしくない。あの人に似たのかしら」

冬月「早計すぎるのではないか。やつが意図的に制御できているとなぜ言い切れはしまい。あるいは、垂れ流しているだけとも」

ユイ「魂の同化が促進されている点を憂慮すべきですね。アダムに振り回されているのか、意図的に行使できるようになっているのか」

冬月「直接問いただしてもいいが、素直に口を開くとも思えん。穏便に事を進めるのは難しいやもしれんな」

ユイ「……」

冬月「なに、割り出すのにそれほど難儀はせんだろう。こうまであからさまになっていては」

ユイ「豊富なサンプルを元に科学に頼るとしますか」

冬月「MAGIか。我々もラクな手段を選んでいるのだからサードチルドレンを笑えんな。便利な道具は人を腐らせもする。……おい」

リツコ「ごようでしょうか?」スッ

ユイ「一度帰宅したのに悪かったわね。行き違いだったとはいえ、残るよう通達するのを怠って」

リツコ「お気になさらず。やりかけの仕事を思い出していたので丁度良いぐらいです」

ユイ「データを洗い出してほしい。主に行動記録」

リツコ「承知いたしました」

ユイ「それと、伊吹二尉はどうするつもり? なにか知ったはずよね?」

リツコ「なんのことでしょうか」

ユイ「使徒の能力を使える状態にまで移行してるわ。同居人である彼女が無事な以上――」

リツコ「無用な詮索をやめるようきつく言い含めております。問題ありません」

ユイ「以前に言ったわよね?」

リツコ「はい。いかなる場合を以てしても責任は私が負います」

冬月「おい、それぐらいでよかろう。作業に必要な質問があれば聞こう」

リツコ「日付けはいつまで遡りますか?」

冬月「全てだ。幼少期から今日(こんにち)に至るまでMAGIの演算能力で総当たりにしろ。やつの分析も忘れるなよ」

リツコ「おまかせください。変異点を見つけ次第、逐一報告いたします」

ユイ「ねぇ、赤木博士」

リツコ「なんでしょうか?」

ユイ「どうしたら私に心を許す?」

リツコ「ご質問の意図を計りかねます」

ユイ「わからないから聞いてみたのよ。夫の真実を知って、私の存在を知って……あなたの心は死んだまま。ゾンビみたいに」

リツコ「安い挑発でなにか釣ろうとなさっているのですか。それもまた、以前と同様に」

ユイ「失敗という教訓を活かし鉄仮面を被ったってわけ。……以上です、取り掛かって」
599 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 16:48:49.28 ID:Nz14Uu3d0
あらら、ちょっとレスしなおし
600 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 16:50:43.88 ID:Nz14Uu3d0
【ネルフ本部 執務室】

ユイ「これで何度目?」

諜報部「伊吹二尉のお宅に、ご子息が移られてからですか? 電磁波発生の頻度は――」

ユイ「バカな質問をしたわ。ほぼ毎日ね」

諜報部「いかがいたしますか? その、リユース品ではありませんし、あまりにも」

ユイ「こちらで検討します。疑問を抱かなくていい」

諜報部「はっ! 失礼いたします!」ビシッ

ユイ「シンジったら、もう。安直な手段を選ぶのはよろしくない。あの人に似たのかしら」

冬月「早計すぎるのではないか。やつが意図的に制御できていると言い切れはしまい。あるいは、垂れ流しているだけとも」

ユイ「魂の同化が促進されている点を憂慮すべきですね。アダムに振り回されているのか、意図的に行使できるようになっているのか」

冬月「直接問いただしてもいいが、素直に口を開くとも思えん。穏便に事を進ようとする前提にこだわれば、ちと厄介だな」

ユイ「……」

冬月「なに、割り出すのにそれほど難儀はせんだろう。こうまであからさまになっていては」

ユイ「豊富なサンプルを元に科学に頼るとしますか」

冬月「MAGIか。我々もラクな手段を選んでいるのだからサードチルドレンを笑えんな。便利な道具は人を腐らせもする。……おい」

リツコ「ごようでしょうか?」スッ

ユイ「一度帰宅したのに悪かったわね。行き違いだったとはいえ、残るよう通達するのを怠って」

リツコ「お気になさらず。やりかけの仕事を思い出していたので丁度良いぐらいです」

ユイ「データを洗い出してほしい。主に行動記録」

リツコ「承知いたしました」

ユイ「それと、伊吹二尉はどうするつもり? なにか知ったはずよね?」

リツコ「なんのことでしょうか」

ユイ「使徒の能力を使える状態にまで移行してるわ。同居人である彼女が無事な以上――」

リツコ「無用な詮索をやめるようきつく言い含めております。問題ありません」

ユイ「以前に言ったわよね?」

リツコ「はい。いかなる場合を以てしても責任は私が負います」

冬月「おい、それぐらいでよかろう。作業に必要な質問があれば聞こう」

リツコ「日付けはいつまで遡りますか?」

冬月「全てだ。幼少期から今日(こんにち)に至るまでMAGIの演算能力で総当たりにしろ。やつの分析も忘れるなよ」

リツコ「おまかせください。変異点を見つけ次第、逐一報告いたします」

ユイ「ねぇ、赤木博士」

リツコ「なんでしょうか?」

ユイ「どうしたら私に心を許す?」

リツコ「ご質問の意図を計りかねます」

ユイ「わからないから聞いてみたのよ。夫の真実を知って、私の存在を知って……あなたの心は死んだまま。ゾンビみたいに」

リツコ「安い挑発でなにか釣ろうとなさっているのですか。それもまた、以前と同様に」

ユイ「失敗という教訓を活かし鉄仮面を被ったってわけ。……以上です、取り掛かって」
601 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 17:42:19.47 ID:Nz14Uu3d0
【翌日 ネルフ本部】

リツコ「ミサト、ちょっといい?」

ミサト「ふぁ〜ぁ。なぁにぃ? デスクワークが溜まりまくっててさぁ、あんまり寝れてないのよぉ〜」

リツコ「髪ぐらい整えたらどう? 監査近いんだから」

ミサト「へいへい。ありがたぁ〜いお小言なら耳にタコができるほど――」

リツコ「生活態度があまりにだらしないから逸れてしまったわ。用件は別にある」

ミサト「なんでしょーか」

リツコ「特別プログラムの企画書を用意したの。見てくれない?」パサ

ミサト「文字読みたくないのに〜。……わかりましたぁ! 睨まないでよ」

リツコ「現時点での成績はアスカが頭一つ抜きん出ている。誤差を約10パーセントほど離してね」

ミサト「ちょっと、なにこれ? なんでシンジくんがエースパイロットに? 成績からいってアスカでしょ⁉︎」

リツコ「チルドレン達にはまとめ役の人間が必要だわ。いわゆる中間管理職的な」

ミサト「だったら別個でそういうポジションを設ければいいだけなんじゃないの? シンクロ率で上回っているならまだしも」

リツコ「これまでの働きを多角的に分析し、判断しました。まず最初に太平洋上に出現した使徒は同乗。後半に驚異的な伸びを見せているから彼のおかげね」

ミサト「……」

リツコ「次に、日本でのデビュー戦においては、ミサトの命令を無視し、独断専行。無様にも撤退。その数日後、共同作戦を展開しての撃破」

ミサト「ふぅ〜ん」

リツコ「いずれのケースもアスカの働きだけでと言える? 実戦においてどちらがエースにふさわしいかしらね?」

ミサト「プライドの高いアスカが認められると考えてるの? 到底ありえないわ。反発は必至よ」

リツコ「シンジくんには積み上げた“努力”という下地がない。それぐらいはわかっています」

ミサト「納得させる手を考えてるってこと?」

リツコ「そうではないわ。危機感を煽る為の競争意識」

ミサト「たしかに、そっかぁ。今のあの子はシンクロ率トップという肩書きの上にあぐらをかいてるものね」

リツコ「チームリーダー、そしてエースパイロットは必ず一致する必要はない。指摘には同意する。パイロット達がだらけきっているのも事実だけどね」

ミサト「それなら――……いっ⁉︎ ぺ、ページめくったらとんでもないこと書いてあるじゃない! こ、これって……シンジくんが耐えられる?」

リツコ「あくまで適正を診断する検証。承認はいかがいたしますか? 作戦司令」

ミサト「う、うぅ〜ん。いや、でも、これはさすがに……大丈夫?」

リツコ「案ずるより生むが易しよ。試してみてだめだったら、引き上げればいい」
602 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 18:19:34.21 ID:Nz14Uu3d0
【ネルフ本部 執務室】

冬月「企画書は既に目を通してある。正気かね、サードチルドレンを」

ユイ「――戦自へ訓練生として入隊させるとはね」パサ

リツコ「不都合はありません」

ユイ「水面下で対立関係にあるのを知らないわけではないでしょう。そんなことを頼んだ覚えはないんだけど」

リツコ「戦自はネルフに鬱憤が溜まっています。国民ではない、うさんくさい組織の下働き。都合の良い召使い的な存在に成り下がっているのですから」

ユイ「言われなくともわかっています。ガス抜きに使う気?」

リツコ「特別扱いをさせては余計に不満を噴出させます。他の隊員同様の扱いであればあるほど望ましいかと」

ユイ「同じ扱い? 不可能よ」

リツコ「葛城一尉からは精神力を鍛えるのに適した環境だと同意を得ています。加えて、アダムの能力を使えるかの検証にも良い兆候を見出せるはず」

ユイ「電磁波だけでなく、身体能力強化、ね」

リツコ「昨夜のMAGIの結果は、賛成1、反対2でサードチルドレンにアダムの自覚はないとの結論がくだされました」

冬月「なに? ならば使徒が暴走しているということか?」

リツコ「賛成が1あります。限りなく0に近い数字ではあるものの、微妙な結果となってしまいました」

冬月「ううむ」

リツコ「つきましては、伊吹二尉との同居解除を提言いたします。戦自への入隊が決まれば、不要になりますので」

ユイ「肉体的、精神的に慣れない環境、追いつめてからの反応……」

リツコ「いかがでしょうか?」

ユイ「悪くない提案です。期間は設けないように」

リツコ「元よりそのつもりです。短い期間になるのは間違いありませんが、本人に告げると“その間だけ耐えればいい”と思わせてしまう。意味がなくなってしまいます」

ユイ「よろしい。承認します」

冬月「ええい、少し落ち着きたまえ。勇足すぎる。やつはこちらの核となる存在だぞ。あの線の細い身体に軍隊訓練なぞ」

ユイ「無理だと判断したらすぐに呼び戻します。ネルフから戦自へ何名か潜伏しているわね」

リツコ「はい」

ユイ「大至急、連絡をとってちょうだい。私は午後の予定をキャンセルしてあちらの責任者と会食を行います」

冬月「ネルフ総司令がアポもなしに突然の来訪か。てんやわんやする姿が目にうかぶよ。またヘイトを溜めるだろうな」

リツコ「(ここまでは順調。変わりようが本物かどうか。働きに期待してるわよ、シンジくん)」
603 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 18:59:09.75 ID:Nz14Uu3d0
【第壱中学校 昼休み 屋上】

マナ「サードチルドレンが部隊に⁉︎」

上官「こちらも突然の申し出で混乱している。実戦に就くわけではないが」

マナ「配属されるのってどこですか?」

上官「貴様の友人二人と同じ歩兵部隊になる予定だ」

マナ「まさか、そんな偶然……」

上官「我々が慌てふためる事態にならないよう、それを調べるのが貴様の任務なんだがな」

マナ「す、すみません」

上官「まぁいい。任務もとりあえずは解除という形になる」

マナ「えっ? あの、それって、ムサシとケイタを情報室に」

上官「満足に結果を出していないのにか? 考えが甘すぎるぞ、霧島隊員」

マナ「それじゃあ、これまでの話は」

上官「気を急かすな。キミが部隊に帰還した後、サードチルドレンの近くに身を寄せてもらう。解任されるのは潜入であって、情報の引き出し役は引き続きという運びになる」

マナ「あの、いつから?」

上官「明日だ」

マナ「あしたぁっ⁉︎」

上官「いちいちうるさい。電話越しとは言え頭が痛くなる」

マナ「失礼いたしました。急ですね、本当に」

上官「こちらとしても暇なわけでない上にお坊ちゃんのお守りとは。明日から部隊に復帰しろ。学校への必要な申請は済ませておく」

マナ「サードチルドレンは知っているんでしょうか?」

上官「こちらが預かり知るところではない。なにか聞いていないのか?」

マナ「いえ、なにも」

上官「報告について疑問視せざるをえない。本当に距離が近づいていたのか? 良いようにあしらわれていたんじゃないか」

マナ「そんなはずは。まだ知らないだけって可能性もありますし」

上官「至急、確認をとれ。それと、身分を隠す必要もないぞ。どうせ明日になればわかるからな」

マナ「しかし、ネルフに調査していた実態を把握されてしまうのでは」

上官「うまくやれ」

マナ「そんな。どうやって――」

上官「貴様が“女”を使うなりどうとでもしろ。以上だ」ブツッ

マナ「一体、なにがどうなってるの……。シンジくん」
604 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 20:23:21.10 ID:Nz14Uu3d0
【ネルフ本部 ラボ】

リツコ「今頃職員室で聞いてるんじゃないかしら。断らないと思うわよ、彼」

マヤ「パイロットなのに、どうして……! 使徒が来たらどうするつもりですか⁉︎」

リツコ「使徒は来ない。まだね」

マヤ「先輩……昨日の件ですか? その当てつけに」

リツコ「私情を挟んでいるわけないでしょう。彼も同じよ。マヤの為に行くわけではない」

マヤ「なんでこんなマネしなくちゃいけないんですかっ⁉︎ 相手は中学生なんですよ! なのに、いい大人がよってたかって」

リツコ「年齢は関係ないと言ったのはあなたもなのよ」

マヤ「正しい行動に対してです! 本来ならば、自分の意思を貫くのも難しい年齢なのに」

リツコ「才能あるものの義務よ。スポーツ選手など様々な分野で突出した活躍を見せている子供達は見てごらんなさい。取材の受け答えとか機会はあるでしょう?」

マヤ「シンジくんは普通の子供でしょう! 年相応の!」

リツコ「それはあなたが枠を決め、限界だと見ているから。行き過ぎた心配は若人の可能性を潰す結果になりかねない」

マヤ「詭弁です!」

リツコ「たしかにほんの少し前までの彼ならば、私はこの発案を思いつきもしなかったでしょう。なぜならば、あまりにもイメージと反り合わないから」

マヤ「……!」ギリッ

リツコ「この一週間、ユニゾンの時と日数はそう変わらないけれど、成長は眼を見張るものがある。そう思わない? あの子が化けるなんて誰が予想できた?」

マヤ「そ、それは……」

リツコ「シンジくんを男として見てるのね。中学生と自分に言い聞かせながら、倫理と恋心との狭間で揺れている。世間一般的な常識では認められない、しかし、着実に胸にある情熱を育みつつある」

マヤ「わ、私はそんなつもり」

リツコ「そう? 大事に、大切にしまっているその想い。もし、と考えた経験があるはず。シンジくんの年齢があと数歳違かったら――」

マヤ「やめて、私の想いを汚さないでっ!」

リツコ「そんなつもりはないわ。四十と二十の結婚なんて世にありふれているのだから」

マヤ「先輩……っ!」

リツコ「(恨まれたかしらね。やはり、まだひよ子)」

マヤ「私をネルフに残していただいたことには感謝しています。ですが、もう、先輩を師とは仰ぎません」

リツコ「それでかまわないわ」

マヤ「どうでもいいんですか⁉︎ 私は、先輩以上にシンジくんに感謝しているからです」

リツコ「たった数日で? 私との数年はなんだったの?」

マヤ「こんな扱いをうけて黙っていられますか⁉︎ あの子は誠実に、私に対して真摯に接してくれます」

リツコ「また勝手なイメージで固定化するつもり?」

マヤ「私の想いを馬鹿にしないでください。たとえ数日しかなくても、あの子の為に尽力してみせます」

リツコ「技術サポートしか能のないあなたになにができると言うの?」

マヤ「結構です。先輩に……あなたに言われる筋合いはありません」

リツコ「私の気を引きたいの? なぜわざわざ宣言する必要が?」

マヤ「……っ!」ギリッ

リツコ「仕事に戻りなさい。伊吹二尉。あなたの居場所はここではなく、デスクのはず」

マヤ「この……っ!」

リツコ「言葉でなく能力で示しなさい。それが最後の教え。以上よ」
605 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/23(土) 21:09:15.54 ID:cB2Fxzbro
大事なパイロットだし無理だったらちゃんと戻すのに過保護だぜマヤちゃん
中学生でも男の意地を見せてきたからリツコだって提案したんだし
606 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/23(土) 21:44:35.04 ID:Nz14Uu3d0
【ネルフ本部 執務室】

加持「これはこれは、お早いおかえりで。戦自に、わざわざ敵陣の中に放り込むとは。崖から突き落とす獅子のようなマネをされますね」

ユイ「潜りこめる?」

加持「厳しいでしょう。俺は政府にツラが割れてるもんで」

ユイ「先に潜伏している者達だけでは心許ないわ」

加持「壮絶なイジメが待っているかもしれませんよ。寝食を共に過ごす団体生活な上、シンジくんが厳しい訓練についていけるはずもない」

ユイ「寝込みを襲われる危険性がある。相手は血気盛んな年齢だし、一歩間違えれば殺されるかもしれない」

加持「そいつぁ、ちとすぎると思いますが。辛い状況に陥るのに変わりありませんけど」

ユイ「あの子はパイロットとして行くことになるのよ」

加持「身の丈に合わない玩具を与えられ、ちやほやされていると傍目には見えるでしょうな。……妬み、僻みの対象か。醜いっすね。人間というものは」

ユイ「死んでしまうのは避けなけれれば」

加持「ま、コンタクトを試みますよ。政府の権限を使いこちらからも数名潜伏させておきます」

ユイ「注目度は予想の倍を想定して。鳴り物入りで入ってくる大型新人以上だと」

加持「なにせ、人類を守る英雄ですしね。ところで、そろそろ俺にも餌がほしいんですが」

ユイ「構造の断面図の件? 先生」

冬月「どうせ催促されるだろうと予見していた。既に用意してある」スッ

加持「準備がはやくて助かります。このUSBメモリの中身は?」

冬月「半分正確で、半分は偽のシロモノだ。ハリボテに過ぎんよ」

加持「なるほど。政府に渡すのは、肝心なところを伏せた部分ですか」

冬月「なにもなしではキミの安全が危うくなるからな。譲歩した結果だと思え」

加持「俺を使えると評価してくれてるんでしょ。甘んじて受けますよ」カチャ

ユイ「信じさせるには充分なデータのはずよ」

加持「了解。ご子息の件もこれで動きやすくなるでしょう」

ユイ「明日、シンジは入隊する。急いで」
607 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 22:08:17.39 ID:Nz14Uu3d0
【第壱中学校 校長室前】

シンジ「失礼しました」

マナ「はぁっ、はぁっ、ようやく見つかった、職員室に行っても、答えられないって言うからっ」

シンジ「マナ? ……なにか連絡があったんだね」

マナ「ほん、となの? ……ふぅ」

シンジ「今聞いたところなんだ。明日、戦自に入隊することになった。期間は設けられてない」

マナ「どうして? なんでいきなり?」

シンジ「僕にもなにがなんだか。思い当たる節がないわけじゃないけど」

マナ「……あるの?」

シンジ「たぶん、母さんが僕が使ってる力に気がついたんだと思う。隠し通ないとは思っていたんだ。でも、僕に直接確認せず、こうくるとはねぇ」

マナ「なんのこと言ってるかわからないけど、他人事みたいな感想を呑気に! 戦自じゃネルフはっ!」

シンジ「訓練ってきつい?」

マナ「こわがらせるかもしれないけど、正直に言うね。身体を鍛えるのが好きな人でも、夜中に逃げ出すぐらい」

シンジ「そんなに?」

マナ「装備って重い物だと数十キロの重量があるの。だから基礎訓練は徹底的に行われる。筋肉痛なんて当たり前、むしろ毎日。入隊間も無く行われるのは、体力作りと仲間意識のイロハ」

シンジ「そう、なんだ」

マナ「撤回できないの? その、貶してるわけじゃないんだけど、シンジくんの身体つきじゃ。……本当につらいと、思う」チラッ

シンジ「うぅん」

マナ「いじめられるかもしれない。四六時中一緒にいるわけじゃないし、かばいきれるかどうか」

シンジ「一緒って?」

マナ「あぁ、そっか。私も明日付けで部隊に復帰するように通達があって。上官、すごく不機嫌だったけど」

シンジ「聞いてないからか。ごめんね、伝えることできなくて」

マナ「私を気遣ってる場合じゃないんだよ!」

シンジ「それなら、マナの友達とも会えるかもしれないね」

マナ「す、すぐに会えると思うけど。なにしろ、同じ部隊だし、って、そうじゃなくって」

シンジ「トウジたちにも伝えよう。別れの挨拶はちゃんとしなくちゃ」スタスタ

マナ「ちょ、シンジくんってばぁ!」
608 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/23(土) 22:53:56.21 ID:Nz14Uu3d0
【教室】

トウジ「な、なななななんやとぉっ⁉︎ シンジが、明日っから戦自に入隊っ⁉︎ おまけに霧島までっ⁉︎」

シンジ「うん」

ケンスケ「ふ、二人一緒にって。まさか、駆け落ちなんじゃ」

マナ「そんなわけないでしょ⁉︎」

トウジ「いつ決まったんや!」

アスカ「まじで言ってんの?」

シンジ「ちょっと落ち着いて。決まったことに慌てても仕方ないよ。質問は一人ずつ答えるから。まず、トウジ、さっき」

トウジ「さっきて⁉︎ ネルフはどないするんや⁉︎」

アスカ「ミサトは?」

シンジ「今のところはなにも連絡がない。待ってたらくるんじゃないかな」

アスカ「シンジ、ちょっと」

ケンスケ「お、おい。僕たちの質問がまだ」

アスカ「マナだって戦自に行くんでしょ? 質問したいこと済ませといて。あたしはこいつに大事な用があんの」

シンジ「わかった、いいよ。アスカ」スタスタ

アスカ「……」スタスタ

シンジ「教室の隅でいいんじゃないかな。声は潜めるし、カヲルくんのことだよね」

アスカ「そーよ! どうすんのよ、なんでいきなりこんな事態になってるわけ!」

シンジ「母さんがなにか手引きしてるのは間違いない。わかるのはこれだけ。もしかしたら力を使ったのがバレたのかも」

アスカ「はぁ……やっぱり体育館でのこと、誤魔化しきれなかったの」

シンジ「いや、それだけじゃないよ」

アスカ「他にもなにかあんのぉ? 期限はいつまで?」

シンジ「いや、特に言われなかった」

アスカ「パイロットは続けるの?」

シンジ「うん、そうだね。ただ、アスカと会えるのはこれまで通りとはいかないんじゃないかな」

アスカ「フォースはどうする気?」

シンジ「カヲルくんは僕が手を出せない状況では、たぶん、襲ってこないよ」

アスカ「根拠は?」

シンジ「可能性を見せてくれって言ってた。だから、僕がどう打開するかを試したいんだと思う」

アスカ「不安の残る話だわ。ま、あんな馬鹿力発揮できるんだから余裕でしょ。とどのつまり、筋肉バカの集まりよ。首席とれる成績残してさっさと帰ってきてよね」

シンジ「使徒の力は、使わない」

アスカ「ボリュームが小さくて聞き間違えしたのかしらぁ? もう一回言ってくれる?」

シンジ「正確には、使えないんだ。母さんにバレてるという確証を持てないから」

アスカ「軍隊舐めてない? 米海軍の話してるの聞いたことあるけど、戦自はクレイジーっつってたわよ」

シンジ「そういうことじゃないよ。繰り返しになるけど、入隊よりも母さんがこわいんだ」

アスカ「あんた、これまでろくに身体を鍛えた経験ないんでしょ? あの瞳の色してないときは普通の人間と同じなのよね?」

シンジ「うん」

アスカ「血反吐はくわよ」

シンジ「まぁ、やるしかないね」
609 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/24(日) 03:30:54.83 ID:23pHQwepO
戻ってきたらリっちゃん落ちるな
610 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/24(日) 11:33:44.29 ID:dhs52MB4O
すげー面白いこれ
展開がゲーム化しててもおかしくないぐらいじゃんというかしたい
611 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/25(月) 03:13:03.62 ID:mnK7Tb5ko
遅いな、シンジくん
612 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/25(月) 16:12:30.59 ID:ttRCl0Z50
【夜 ミサト宅 リビング】

アスカ「はぁ? まだシンジに言ってないの?」

ミサト「うん、まぁ……その、ね。通達は既に。だから、連絡してない」

アスカ「歯切れ悪いわねぇ。あたしたちの上官にあたるミサトが伝えなくて業務連絡だけなんて」

ミサト「なんか、言ってた?」

アスカ「自分で確認したらいいじゃない。そういうところばっかり。ずるいわよ、そんなの」

ミサト「悪いとは思ってるわ。ただ、シンジくんの為になることだとも思うのよ」

アスカ「そういうことを言ってるんじゃないの! ミサト一言、声をかけるべきでしょって!」

ミサト「たまに、何考えてるのかわからないところがあるのよ、あの子。最近は、特にその傾向が強くて」

アスカ「だから逃げるの?」

ミサト「帰ってきたら、ちゃんと話をするわ。だめでも褒めてあげるつもり。行くって即決しただけでもたいしたものよ」

アスカ「はぁ……戦自からネルフに通うようになるの?」

ミサト「いえ、ここからだと距離が離れすぎてるし、レイにサポートしてもらうけど弐号機の出番が多くなる。新兵器のテストもあるし」

アスカ「ってことは、あたし?」

ミサト「そうよ。ちょっち、これ見て」パサ

アスカ「……? なに、これ?」

ミサト「リツコが発案した、パイロットの役割分担」

アスカ「シンジがエースっ⁉︎ なんで⁉︎」バンッ

ミサト「彼が不在の間は、アスカの試験運用期間でもあるの」

アスカ「私の? そんな必要ないでしょ! シンクロ率はトップで」

ミサト「だからよ。いくらテストで成績が良かったとしても実戦で役にたたなければ――」

アスカ「あたしは使徒を二体も撃破してるでしょっ!!」

ミサト「いずれも、シンジくんのサポートがあってよね」

アスカ「……っ!」

ミサト「大きな枠でいえば、私達は全体がチームなんだし、助け合うのは間違いじゃない。むしろ良い傾向だと思うわ。だけど、作戦を立案するにあたり実力差が明確に把握できている方が都合がいいのよ」

アスカ「適材適所って言いたいの? エースも、チームリーダーも」

ミサト「あなたの実力で黙らせればいいだけよ。自信、ないの?」

アスカ「あるに決まってるわっ! あたしは、やるしかないんだもの」

ミサト「私だけじゃない、ネルフ上層部、赤木博士を唸らせる結果を求めます」

アスカ「……」ギュウ

ミサト「(やはり、競争は良い刺激になるみたいね。さすがリツコってわけか)」

アスカ「わかった。シンジよりもあたしがエースにふさわしいって証明してみせる」

ミサト「その意気よ。あたしも期待してるわ」

アスカ「(フォースのことは、とりあえず忘れなくちゃ。シンジのことも)」
613 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 16:35:47.27 ID:ttRCl0Z50
【マヤ宅 リビング】

シンジ「あの、マヤさん。お通夜みたいな暗い表情はやめてください。僕なら平気ですから」

マヤ「シンジくん。本当に脅されてるわけじゃないの? 私が、昨日、ポカしたから」

シンジ「違います」

マヤ「今の戦自は、ネルフに良い顔はしないわよ。この前、日向くんが行った時だって、嫌がらせされたって言ってた」

シンジ「……」

マヤ「エヴァが出撃する前、まず軍事力を使って使徒の持つ能力、正しくは戦力を計るの。その為に、戦自は、得体の知れない組織の下働きとして……時間稼ぎをする戦死者を毎回だしてる」

シンジ「そうですね」

マヤ「ネルフの要請が悪いわけじゃないの。高官達は、自分達のメンツを守るために無理だとわかっていても人材を投入してるから」

シンジ「……」

マヤ「でも、当事者である戦自内部はそう思っちゃくれないわ。全部、私達のせい。一番悪いのは使徒がもちろんだけど、ぶつけるところがそこしかないの」

シンジ「はい」

マヤ「……そういった恨みや遺恨がある場所に訓練生として送りこまれる。私、心配だわ」

シンジ「心配してくれて、ありがとうございます」

マヤ「なにかないか、考えたんだけど。オペレーターが主業務の私にできることなんて、明日の準備ぐらいしか」

シンジ「気持ちだけで充分ですよ。マヤさんが感謝して、心配してくれるだけで。僕は間違ってない、そう思えるから」

マヤ「シンジくんっ!」ギュウ

シンジ「わっ! あ、あのっ」

マヤ「無事に帰ってきてね。待ってるから」

シンジ「……はい」

マヤ「帰ってきたら、私の気持ちも、きっち地に足がついてると思う。そしたら、シンジくんに……」

シンジ「え?」

マヤ「今はまだ、天秤がどっちに傾いてるのか見定められない。でも、なにがあっても私はあなたの力になってみせる。ずっと味方よ。約束します」

シンジ「……ありがとうございます」

マヤ「立派よね、本当に。中学生とは思えない」

シンジ「いや、そんな」

マヤ「よーしっ、今夜は腕によりをかけて料理作っちゃうねっ!」
614 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 16:58:18.87 ID:ttRCl0Z50
【翌日 オスプレイ内 移動中】

戦自パイロット「今のうちに第三新東京市の景色をせいぜい楽しんでおけよ!」

シンジ「え? なんですか? プロペラとエンジン音がうるさくて」

戦自パイロット「外だよ! 外! しばらくはこいつが見納めになるだろからな!」

シンジ「あぁ」ぼんやり

戦自パイロット「なにをやらかしたか知らないがそんな華奢な身体つきで戦自への訓練生とはな! パイロットなんだろ? お前!」

シンジ「はい」

戦自パイロット「お坊ちゃんのくせしてパイロットに選ばれたんだろ? 俺たちの中からじゃなく! なんでお前みたいなナヨっちいガキが選ばれたんだ?」

シンジ「わかりません」

戦自パイロット「ふん、なんにせよもうすぐ到着する! 覚悟しとけよ小僧! 訓練はきついぞ!」

シンジ「はい」

戦自パイロット「声を張り上げろ! ボソボソと喋ってんじゃねえっ!!」

シンジ「あ……は、はいっ!」

戦自パイロット「(ネルフで使えないからこったきたのか? ちっ)」

マナ「私語は謹んでください! 到着までの予定は?」

戦自「ヒトヒトマルマルだ!」

マナ「シンジくん。ついたら、上官か分隊長から挨拶を求められると思うから」

シンジ「うん、わかった」

マナ「いい? 声は小さくしちゃだめよ? 腹筋にしっかり力いれて。恥ずかしいなんてもっての他。声を枯らす気持ちで」

シンジ「うん」

マナ「慣れてないから、気後れしちゃうと思うけど。できるだけ、理由を与えたくないの」

シンジ「理由?」

マナ「懲罰を与える理由。はぁ、無事に済めばいいけど」
615 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 18:23:48.27 ID:ttRCl0Z50
【厚木基地 滑走路】

分隊長「配置につけ!」

ムサシ&ケイタ「はっ!」ザッ ザッ

マナ「シンジくん、手」

シンジ「ありがとう」

ムサシ「ぷっ、なんだあいつ。女に手を引かれてんか」

マナ「ムサシ! 聞こえたわよ!」キッ

ムサシ「久しぶりなのに随分とご挨拶じゃないか」

ケイタ「やめろよ、二人とも」

分隊長「休めッ! 玩具のパイロットというのはキミか?」

シンジ「はい」

分隊長「声が小さい! もう一度ッ!」

シンジ「は、はいっ!」

分隊長「軍曹からはえこひいきをするなとの命令だ。メディカルチェックをまず受けてもらう。おい。奴を敷地内にある施設に連れていってやれ」

ムサシ「こんなやつがパイロットだったのか……いつっ! いってぇなぁっ! 頭叩くなよ!」

マナ「なに威張ってるのよ。ムサシだって入隊間もない頃はビクビクしてたくせに」

ムサシ「俺はこの隊の有望株だからな」

マナ「虎の威を借る狐みたいなこといっちゃって、一人じゃなんにもできないくせに」

ムサシ「こいつよりはできると思うけどねぇ」

マナ「前はそんなこと言わなかったのに。変わったわね」

ムサシ「ふん」

マナ「いい加減にしてよ! みっともない!」

ケイタ「はぁ……それじゃ行こうか。ネルフのパイロットくん」

シンジ「シンジ。碇シンジ」

ケイタ「ん? あぁ、自己紹介か。浅利ケイタ。キミと同じ隊の少年兵だよ。そんで、あっちで威張ってるのがムサシ・リー・ストラスバーグ。僕とマナはムサシって呼んでる」

シンジ「そっか」

ケイタ「でも、本当に大丈夫なの? 訓練に耐えられるように見えないけど」

ムサシ「おいケイタ! はやく済ませてこいよ! しごけると思うとワクワクしてるんだ!」

マナ「ムサシぃっ!」

ムサシ「なんだよ! 人を踏み潰すためにあのロボットに乗ってるんだろ! お前!」

マナ「なんてこと言うのよ!」

ムサシ「宇宙からくる怪獣と戦うって言われてちやほれされてるんだろどーせ!」

マナ「……っ! 」ブンッ

ムサシ「おっと」パシッ

マナ「くっ」

ムサシ「担当は情報室だろ、さっさと行けよ」

分隊長「そこまでにしておけ。焦る必要はない」

ムサシ「はっ!」ビシッ

分隊長「地獄を見せてやる。浅利隊員、なにをぼさっと突っ立っている。腕立てさせられたいのか」

ケイタ「は、はっ!」ビシッ

シンジ「ふぅ……」ポリポリ
616 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 18:42:52.60 ID:ttRCl0Z50
【軍事病院】

ケイタ「あ、検査終わった?」

シンジ「うん、これからどうすればいいの?」

ケイタ「僕たちが寝泊まりする場所を紹介するよ。歩きながらでいいからいくつか聞いてもいい?」

シンジ「いいよ」

ケイタ「ここに来るのこわくなかったの?」

シンジ「特には。なにをするのかもわからないし」

ケイタ「へぇ、戦自って海外からも過酷だって評されてるんだけど。ちっとも知らなかったのか」

シンジ「すこし、話を聞いたぐらいかな」

ケイタ「楽しいとこじゃないよ、ここは。すぐに他のことなんか考えられなくなる。きつい、それだけ。ははっ」

シンジ「長いの? ここ」

ケイタ「僕たちはまだそんなに。……数年ぐらいかな。夜中に逃げ出した経験あるんだ、僕。あ、もしかしてネルフじゃもっときつかったりするのかな」

シンジ「肉体を鍛えたりはしないよ」

ケイタ「そっか。それじゃ覚悟しておいたほうがいいよ。予想の三倍、もっとかな。身体が慣れるまで。……あと心も」

シンジ「キミはネルフに対してなにも思ってないの?」

ケイタ「どうだろう。キミがあまりにも普通すぎたから、なんだか拍子抜けしちゃって」

シンジ「……」

ケイタ「ただ、ここには味方なんていない。そう思って間違いないと思うよ。僕も含めてね」

シンジ「……わかった」

ケイタ「どうやってロボットのパイロットに選ばれたの? なにか試験があったの?」

シンジ「なにも。ただ乗れって」

ケイタ「ええっ⁉︎ 技術訓練で良い成績だったからとか、なにか」

シンジ「なにもない」

ケイタ「へ、へぇ」

シンジ「マナとは幼馴染だって聞いてるけど」

ケイタ「よく知ってるね」

シンジ「うん、まぁ」

ケイタ「マナとは小さい頃から一緒だったよ。戦自に入ろうって決めたのはムサシだけど。僕とマナはムサシについてきたんだ」

シンジ「さっきの?」

ケイタ「あいつも昔はこんな感じじゃない気さくなやつだったんだ。世の中が悪いよ。満足に飯も食えない」

シンジ「……」

ケイタ「マナはね、内臓が悪いだ」

シンジ「えっ? そうなの?」

ケイタ「うん、これは本人に言っちゃだめだよ。僕が“また”口が軽いって責められるから。だから、ムサシは余計はりきっちゃって」
617 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 18:59:56.13 ID:ttRCl0Z50
シンジ「内臓ってどうして?」

ケイタ「最初はマナもね、実務部隊にいたんだ。僕たちと離れたくない、たっての希望で」

シンジ「……」

ケイタ「でも、訓練の内容が過酷すぎた。連日、吐いちゃって、胃に負担がかかっちゃったんだ。騙し騙し、繰り返しているうちに倒れてしまった」

シンジ「病院に?」

ケイタ「うん、ここだよ。担ぎこまれて精密検査をしたら軍医からストップがかかった。不謹慎だけど、僕はすこしうらやましいと思ったな。もうきつい思いしなくて済むんだから」

シンジ「……」

ケイタ「国のため、国民のため、家族のため、僕はそんな大義があって入隊したわけじゃない。でも、死ななくちゃいけないんだろうね、ここにいる以上は」

シンジ「覚悟、できてるの?」

ケイタ「うん。できてる。僕には、ムサシとマナしかいないから。逃げ出したこともあったけど、今では、そう思うよ」

シンジ「そっか」

ケイタ「ムサシ、最近、暴走してるんだよな」

シンジ「……?」

ケイタ「あぁ、今のは独り言みたいなもん。上官の言うことを間に受けすぎるっていうか、戦地に出たがってるんだよね」

シンジ「戦地って、生身で出ちゃ死んじゃうじゃないか」

ケイタ「感覚がね、麻痺しているんだよ。ここにいると。そういう無謀なのが、勇猛だって思えてくる。キミはも数年過ごしたらわかるようになるよ」

シンジ「……」

ケイタ「さ、敷地内は広いから、この建物をでたらジープが止めてある。他の隊員と相乗りになっちゃうけど……」

シンジ「うん、わかった」

ケイタ「僕は、かばわないからね」ボソ

シンジ「え? なにか言った?」

ケイタ「なにも。碇隊員。戦自へようこそ」
618 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/25(月) 19:02:45.95 ID:0Jt/Jhb1o
トウジとケンスケみたいな二人組なんだな
619 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 19:18:05.51 ID:ttRCl0Z50
ムサシ、マナ、ケイタの知り合った時期や関係性などは鋼鉄のガールフレンドと似通ったところもありますが当SSではけっこう違ってるんでそこは一応書いときます。
特にケイタはゲーム中でもセリフらしいものがないので背景設定を元に創作してます。
620 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 20:01:44.46 ID:ttRCl0Z50
【ネルフ本部 ラボ】

リツコ「ミサトがきてるのかと思えば、アスカじゃない。ずっと待ってたの? 学校は?」

アスカ「今日は昼まで」

リツコ「そういえば土曜日だったわね。それで、なんのごよう?」

アスカ「ミサトから聞いた。新兵器テストあるんでしょ?」

リツコ「必要になればこちらから声をかけます」

アスカ「焦れったい。なにかないの?」

リツコ「功を焦っても同じことよ。自然体でいるのが一番」

アスカ「負けらんないのよ。シンジなんかに」

リツコ「ふぅ、あなた頭がいいのに」

アスカ「褒めてんの? 貶してんの?」

リツコ「この場合は残念に思っている」

アスカ「ぐっ」

リツコ「試験期間の話、ミサトから聞いたのね」

アスカ「……」コクリ

リツコ「私達は、なにもアスカに失望しているわけではない。ただ、小さなコミュニティの中にも役割が必要でしょう。円滑にことを運びやすくなる」

アスカ「それは理解してる。だからこうしてるんじゃない」

リツコ「わかってないわ。待ちなさい、と言ってるのよ。来るべき時がきたら、最高の結果をだせばいい。小さなポイント稼ぎなんてせこい真似しないで」

アスカ「……っ!」

リツコ「パイロットなのよ。技術部の仕事を手伝えるとおもってるの?」

アスカ「思って、ないけど」

リツコ「回れ右する準備は済んだ?」

アスカ「どうして、ファーストじゃなく、あたしでもなく、シンジなの」

リツコ「一番結果を残してるから。シンクロテストだけではない、実戦も含めてね」

アスカ「シンジだって! 報告書を読んだらヤシマ作戦はファーストと一緒にっ!」

リツコ「その前の二体はシンジくんが一人でやってるわ。特に最初に乗った場合なんて、レイでさえ不可能だったことを成し遂げてる」

アスカ「……」

リツコ「信じられる? レイもアスカも、エヴァに乗るためだけに準備をしてきた。長い間ね。ところが――彼ははじめて乗って、シンクロ率40パーセント。起動指数を叩きだした」

アスカ「……」ギリッ

リツコ「その後の活躍。性格のことはおいておくと、シンジくんこそが、エースにふさわしい」

アスカ「それ、本気で言ってんの? チームリーダーも?」

リツコ「ぐいぐい引っ張っていくタイプではないけれど、面倒見が悪くないところを着目しました」

アスカ「はぁ? そんなんでまとめられると」

リツコ「あなたならできると言うの? レイやシンジくんを頭から抑えつけるだけではなくって? 手柄は全部独り占め」

アスカ「あたしが一番うまくできるんだからその方がいいでしょ!」

リツコ「駄目よ。それじゃ、実力以上を引き出してもらわないと。リーダーは消去法です。彼以外にまかせられる人がいないと言えば正しいかしらね」

アスカ「な、なんですってぇ」

リツコ「この際だからはっきりと言ってあげる。エースに捕らわれているアスカでは、リーダーたる資格はない」

アスカ「ぐっ! もういいっ!!」バァンッ クルッ スタスタ
621 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 22:36:57.65 ID:ttRCl0Z50
【ネルフ本部 発令所】

マヤ「たしかなの?」

シゲル「あぁ、葛城一尉が話してるのをちらっと聞いたんだ。なんでも、シンジくんをオフェンスにして後の二人はサポートに回すらしいぜ」

マコト「ケースバイケースなんじゃないのか? エヴァが三体もいるんだし」

マヤ「そうよ。それにエースなんて聞こえはいいけどオフェンスって……。一番危険な役割じゃない」

シゲル「たしかに。先陣、切り込み隊長的な扱いに思えるよな」

マコト「次にくる使徒の能力や戦力がわかってるなら決まったフォーメーションで対応できるけどなぁ。そうじゃないし」

シゲル「競争心を駆り立てようとしてんのかねぇ」

マコト「なるほど。それはありえる」

マヤ「アスカは、反発するでしょうね」

マコト「違いない」

シゲル「当のシンジくんは戦自だっけ。今日から」

マコト「そっちのが驚きだよ。まさか戦自とは。うぅ、想像しただけで震えちまう」プルプル

シゲル「マコトは最近行ったんだろ? 視察」

マコト「物資の点検に。まぁ、陰湿だったよ」

シゲル「あーらま。体育会系ってそういうとこあるよな。さっぱりしてそうで」

マコト「ネルフの関係者ってだけで疎ましい存在なんだろ」

マヤ「……」

シゲル「どったの? 急に深刻な顔して。お通じが悪いの?」

マヤ「ねぇ、日向くん。次に行くのっていつ?」

マコト「どこに……戦自? ちょうどライフルの予備部品を確認しなくちゃいけないから三日後だけど」

マヤ「代わってくれない? なにかおごるから」

マコト「いや、こっちとしてはむしろ……なにか見たい兵器でもあるのか?」

マヤ「そんなとこ。気分転換にもなるかなって」
622 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 23:03:56.50 ID:ttRCl0Z50
【厚木基地】

シンジ「はぁっ、はあっ、はぁっ」タッタッタッ

ムサシ「どうしたパイロット! 二周遅れだぞ!」バンッ

シンジ「うっ、はあ、はぁっ」

ムサシ「5キロ走っただけでへばっちまったのか? やっぱりたいしことねーな!」

シンジ「む、胸がっ」

ムサシ「心臓が苦しいだろ? そりゃそーだ! 心拍数が上がってるからな! 自分で脈はかってみな! でも足は止めるなよ!」

シンジ「ちょ、ちょっと、少し、歩かせて」

ムサシ「駄目だ! きついときこそ根性を見せろ! 吐くまで走れ! 吐き終わったらまた走れ!」

シンジ「こっ、これって、オーバーワークじゃ」

ムサシ「甘ったれたことを言うな! 休みたいだけだろうが!」

教官「なにを喋っとるか貴様らぁッ! その場で停止!!」

ムサシ「失礼いたしましたっ!」ビシッ

シンジ「よ、ようやく、止まれ――」

教官「懲罰! 腕立て! 100回!!」

シンジ「……っ⁉︎」ギョ

ムサシ「了解ッ! いち、に、さん、し――」

シンジ「はぁ、はぁっ……」

教官「なにをしとるか碇隊員! 命令が聞こえなかったのかッ!」

シンジ「す、すいません」スッ

教官「なんだそのへっぴり腰は! まだ追加されたいのか!」

シンジ「ぐっ、やります。ちゃんと、やります」ググッ

教官「しっかりと顎先をつけて持ち上げるんだ! 笛吹いてやるから合わせてやれ!」ピッピッピッ

ムサシ「――じゅうはち、じゅうきゅう」

シンジ「ご、ろく、なな」

教官「腕が震えとる!!」

シンジ「そ、それはしかたな――」

教官「つべこべ言うな!! まだ喋る余裕があるのか!」

シンジ「(やっぱり、生身じゃ、きついな)」

教官「どうしたどうしたぁっ! 動きが遅いぞ! 隣を見てみろ!!」

ムサシ「にじゅうきゅう、さんじゅう」

シンジ「(下向いてれば瞳の色に気がつかれないはずだし、少し、頼るか……というか、もう限界……)」

教官「こんなやつがあの紫色の機体のパイロットだったとは、まったく。……ん?」

ムサシ「さんじゅうご、さんじゅろく」

シンジ「10、11、12、13、14、15、16、17、18」

教官「お?」

ムサシ「さんじゅうはち……?」

シンジ「19、20、21」

ムサシ「な、なんだこいつ。急に」

シンジ「(いけない、やりすぎたか)」

教官「な、なんだぁ? 今度はまたプルプル腕が震えだして」

シンジ「に、にじゅうにぃ」プルプル

教官「火事場の馬鹿力か」
623 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/25(月) 23:37:49.30 ID:ttRCl0Z50
【一時間後】

シンジ「はぁっ、はぁっ」

教官「ちっ、もう時間だ。碇隊員、止まれ」

シンジ「よ、ようやく休憩」

教官「勘違いするなよ。残ったメニューは全て、今日中に終わらせる。いいな? 全てだ。それまでは眠れないと覚えとけ」

シンジ「(残り、15キロか)」

教官「第壱隊集合!!」ピーーーーーッ

シンジ「ふぅ、ふうっ」

教官「整列しろ!」

ムサシ「おら、チンタラすんな。さっさと並べ」

ケイタ「……」

シンジ「わ、わかりました」

教官「遅いっ! もっと早く並べ! 戦場でも貴様らはらそんな動きをするのかッ!」

ムサシ「申し訳ありません教官っ! 点呼開始しますっ!」

教官「あぁ、点呼は省略する。なにせお坊ちゃんのせいで時間をおしてるからな」

ムサシ「はっ!」ビシッ

教官「各員、隣にいるやつの顔をよく見ておけ。そいつが貴様らの戦友になる。弾から守り、また敵を倒してくれる」

ムサシ「お前には無理だよな」

シンジ「はぁ、はぁっ、ふぅー」

教官「我々は家族だ! 仲間だ! 最も強い絆で結ばれてなくてはならない! 信用できないものに命を預けられるか⁉︎」

少年兵一同「できませんっ!」

教官「そうだっ! 全員が仲間だ! 志しをひとつにしろ! 一致団結!」

少年兵一同「一致団結っ!!」

教官「我々に倒せない敵はいないっ! 死んでも倒せ! 仲間のために! 家族のためにっ!!」

シンジ「(うわぁ、すごい、な)」

教官「今日から諸君に新しい家族が加わった。紹介しよう。……碇隊員っ! 前へ!」

シンジ「うっ、は、はい」

教官「声が小さいっ!!」

少年兵A「なんだよ、あいつ。あんなのかよ」

シンジ「はいっ!」

教官「手短に挨拶を済ませろ」

シンジ「碇シンジです! よろしくお願いします!」

少年兵B「なんでこんなやつが?」

ムサシ「……」ニヤニヤ

教官「さがれ、碇隊員。貴様らもゆくゆくは一個師団に合流し編成される。そうなったら、この日々がまだマシだと思える戦場が待っている。敵は容赦などかけてくれない」

少年兵一同「……」

教官「この日々を己の糧にしろ! 血にしろ! 肉にしろ! 学んだことが自分を守ってくれる! 家族を守ってくれる!」

少年兵一同「はいっ!!」

教官「一人でも多くの敵を道連れにしろ! 一人一殺で満足するな!! 気合いを叫べ!!」

少年兵一同「うおおおおおっ!!」

教官「よぉーし! 100メートルダッシュだ! 10セットッ!!」

シンジ「(な、なんなんだよ、これ)」
624 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 00:03:50.57 ID:MW53ChTl0
【夕方 トイレ】

少年兵A「おい、新入り!」ブンッ

シンジ「え? うっぷ」ベチョ

少年兵A「トイレ掃除ひとりでやっとけや。できるだろ?」

シンジ「でも、命令では、みんなで」

少年兵B「うるせえ! できるだろって聞いたんだよ!」

ケイタ「……」ゴシゴシ

少年兵A「生意気だな、お前。どうせ体験だとか甘い考え抱いてきたんだろ?」

シンジ「いや、そんなつもりは」

少年兵B「ほらよ、モップ」カラン

少年兵A「浅利、行くぞ」

ケイタ「うん、わかった」

シンジ「えっ、ちょっと待ってよ。集合時間までに僕が全部?」

少年兵A「きちんと磨きあげろよ! あとで教官のチェックがはいるからな!」

シンジ「そんなっ! 終わりっこないよ!」

少年兵B「終わらせるんだろうが!」

ムサシ「おい、お前らなにやって――」

少年兵A「新入りにここのルールを教えてやってたんだ」

ムサシ「ははぁん。俺も仲間に入れてくれよ」ニヤニヤ

少年兵B「なぁ? ホントなのか? 黙認してくれるって」

ムサシ「間違いない。上官たちはこいつを好きにしていいって言ってたぞ。徹底的にやってやれって」

ケイタ「む、ムサシ……」

ムサシ「行くぞ、ケイタ。パイロット、ちゃぁ〜んと掃除しとけよ?」

シンジ「(そうか、そういう感じね)」

ムサシ「なんだぁ? その反抗的な目つきは」

シンジ「命令なんだろ。だったら、みんなでしなくちゃ」

ムサシ「ぷっ、おいおい聞こえたかよみんな」

少年兵A「お前が俺たちの仲間に数えられてると思ってるのか? ネルフの犬っころが!」

少年兵B「帰りたくなったんでちゅかぁ?」

シンジ「……そうじゃない。与えられた命令に責任を――ぐっ!」ドサッ

少年兵A「ロボットに乗ってるやつが俺たちに説教するな! 守られた環境で戦ってヒーロー気取りかよっ!!」

シンジ「やったことないくせに」

ムサシ「あ?」

シンジ「乗ったことないくせによくそんなこと言えるね」

ムサシ「乗れねーんだよ! 俺たちはなぁ! 地面這いつくばって生きてくしかねぇ! 雑草の気持ちがわかんのか! 踏みつけてるやつに!!」

マナ「あんたたちっ⁉︎」タタタッ

ムサシ「ちっ、うるさいのがきた」

マナ「――シンジくんっ⁉︎ 大丈夫っ⁉︎」

ムサシ「マナ。そいつに近づくな。雑巾で濡れてるからきたな……」

マナ「汚いのはあんた達の心でしょ⁉︎ 恥ずかしいと思わないの⁉︎ 彼だって国民の為に戦ってるのよ! ムサシ……! どこまで変わっちゃったの⁉︎」

ムサシ「俺はなにも変わっちゃいない!」

マナ「人を[ピーーー]なんて嫌だって言ってたムサシは、どこに。こんな、いじめみたいな真似して」
625 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 00:07:02.72 ID:MW53ChTl0
あらら、saga忘れたんでレスしなおし
626 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/26(火) 00:07:34.67 ID:MW53ChTl0
【夕方 トイレ】

少年兵A「おい、新入り!」ブンッ

シンジ「え? うっぷ」ベチョ

少年兵A「トイレ掃除ひとりでやっとけや。できるだろ?」

シンジ「でも、命令では、みんなで」

少年兵B「うるせえ! できるだろって聞いたんだよ!」

ケイタ「……」ゴシゴシ

少年兵A「生意気だな、お前。どうせ体験だとか甘い考え抱いてきたんだろ?」

シンジ「いや、そんなつもりは」

少年兵B「ほらよ、モップ」カラン

少年兵A「浅利、行くぞ」

ケイタ「うん、わかった」

シンジ「えっ、ちょっと待ってよ。集合時間までに僕が全部?」

少年兵A「きちんと磨きあげろよ! あとで教官のチェックがはいるからな!」

シンジ「そんなっ! 終わりっこないよ!」

少年兵B「終わらせるんだろうが!」

ムサシ「おい、お前らなにやって――」

少年兵A「新入りにここのルールを教えてやってたんだ」

ムサシ「ははぁん。俺も仲間に入れてくれよ」ニヤニヤ

少年兵B「なぁ? ホントなのか? 黙認してくれるって」

ムサシ「間違いない。上官たちはこいつを好きにしていいって言ってたぞ。徹底的にやってやれって」

ケイタ「む、ムサシ……」

ムサシ「行くぞ、ケイタ。パイロット、ちゃぁ〜んと掃除しとけよ?」

シンジ「(そうか、そういう感じね)」

ムサシ「なんだぁ? その反抗的な目つきは」

シンジ「命令なんだろ。だったら、みんなでしなくちゃ」

ムサシ「ぷっ、おいおい聞こえたかよみんな」

少年兵A「お前が俺たちの仲間に数えられてると思ってるのか? ネルフの犬っころが!」

少年兵B「帰りたくなったんでちゅかぁ?」

シンジ「……そうじゃない。与えられた命令に責任を――ぐっ!」ドサッ

少年兵A「ロボットに乗ってるやつが俺たちに説教するな! 守られた環境で戦ってヒーロー気取りかよっ!!」

シンジ「やったことないくせに」

ムサシ「あ?」

シンジ「乗ったことないくせによくそんなこと言えるね」

ムサシ「乗れねーんだよ! 俺たちはなぁ! 地面這いつくばって生きてくしかねぇ! 雑草の気持ちがわかんのか! 踏みつけてるやつに!!」

マナ「あんたたちっ⁉︎」タタタッ

ムサシ「ちっ、うるさいのがきた」

マナ「――シンジくんっ⁉︎ 大丈夫っ⁉︎」

ムサシ「マナ。そいつに近づくな。雑巾で濡れてるからきたな……」

マナ「汚いのはあんた達の心でしょ⁉︎ 恥ずかしいと思わないの⁉︎ 彼だって国民の為に戦ってるのよ! ムサシ……! どこまで変わっちゃったの⁉︎」

ムサシ「俺はなにも変わっちゃいない!」

マナ「人を殺すなんて嫌だって言ってたムサシは、どこに。こんな、いじめみたいな真似して」
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/26(火) 00:07:52.69 ID:fgaE3H0Uo
こいつらパイロットがエヴァと神経接続してるって知らないしな
ロボット乗ってりゃ安全だろ程度に思ってんだろうな…
628 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 00:33:35.05 ID:MW53ChTl0
ムサシ「なんでそんな肩入れしてんだよ。別任務で離れてるって聞いたが、そいつと一緒だったし」

マナ「必要? その話が今」

ムサシ「なんだよ」

マナ「ねぇ、ムサシ。優しかったあの頃に戻ってよ。おかしいのよ。ここも。私たちも」

ムサシ「はぁ……」

マナ「これしかないって思わされてるだけ! 隊を抜けても、貧しくても、笑い合ってたあの頃に……!」

ムサシ「物乞いみたいなマネしろってのか!」

マナ「仕事ならきっとあるよ!」

ムサシ「俺は嫌だ! あんな生活! 二度とごめんだ!」

マナ「ムサシ……」

少年兵A「おう、ムサシ。先に行くぞ」

ムサシ「ああ、俺もすぐ行く」

マナ「ねぇ、考えなおして? 私も協力するから」グイッ

ムサシ「うるさいっ! ここには家族がいるんだ! 見捨てられるわけないだろっ!」バシッ

マナ「きゃっ」

ケイタ「ムサシっ!」

ムサシ「あっ……くそっ」

ケイタ「大丈夫? マナ」スッ

マナ「私たちはずっと三人一緒だったじゃない。ここの人たちは、みんな、仕方なく一緒にいるだけよ。命令違反をしたら守ってくれるっ⁉︎」

ムサシ「……」

マナ「もしそうなれば、みんなが牙を剥くわよ! そう教育されてるから!」

ムサシ「そんなことにはならない。命令違反なんてありえないからだ」

マナ「気がついてよ! 洗脳されてるの!」

ムサシ「――うるさいっ! うるさいうるさいっ! 命令は絶対だ! 守るべきものだっ!」

シンジ「ほんとにそう?」

ムサシ「なに……?」

マナ「し、シンジくん?」

シンジ「自分の考え、ないの?」

ムサシ「俺の考えがそうなんだ! 命令と常に同じだ!」

シンジ「マナや浅利くんとだったら、どっちを選ぶんだよ」

ムサシ「そ、それは……。お前には関係ないだろう! 気安く呼ぶな!」

ケイタ「……」

シンジ「このままここにいると、戦場にいっちゃうんだろう。浅利くん、死んじゃうかもしれないよ」

ムサシ「俺たちがやらなきゃ、どうせ誰かは死んでるんだ!」

シンジ「だったら、なんでキミ達が行く必要があるんだよ」

ムサシ「な、なに言ってんだ、お前」

シンジ「僕は、逃げたらいいと思う」

ムサシ「このっ! パイロットのお前がそれを言うのかっ⁉︎ 戦うべきだって言うべきだろ! じゃなきゃ死んでいったやつが――」

シンジ「僕が戦うよ。使徒とは」

ムサシ「……くっ、あっはっはっ。雑巾投げつけられたのにか? 頭おかしいんじゃないのかお前」

マナ「なにがおかしいのよっ! 立派じゃない!」
629 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 00:56:26.23 ID:MW53ChTl0
ムサシ「できもしないことを口にするのが立派なもんかっ!」

シンジ「……たしかに、今のは軽はずみだったかもしれない。けど、キミだって苦しいんだろ」

ムサシ「俺が苦しい?」

シンジ「最初は、ご飯が食べられればよかった。こんなつもりじゃなかったんじゃないの」

ムサシ「お前になにがわかる!」

シンジ「素直、なんだね。だから、こうやって受け止めてしまう」

ムサシ「ロボットがあるやつには永遠にわからない! 歩兵部隊のこわさも! 苦しみも!」

シンジ「……いい。わかった。僕がトイレ掃除しとくよ」

マナ「無理よ。時間に間に合わなかったら隊の全員が処罰対象になる。そうなったら、もっと……!」

シンジ「大丈夫。できることからやっていけばいい」

ムサシ「……」

ケイタ「……あの、碇隊員」

ムサシ「やめとけ、ケイタ。どうせできっこねぇ。そしたらまた風当たりが強くなるだけだ」

ケイタ「ムサシ」

ムサシ「行くぞ」スタスタ

ケイタ「ま、待ってよ、ムサシ!」タタタッ

シンジ「ふぅ……よっと」パンパンッ

マナ「シンジくん、私、手伝う」

シンジ「いいよ。ここは男子トイレなんだし」

マナ「ムサシ、あんな人じゃなかったのっぐすっ」ポロポロ

シンジ「あ……」

マナ「どんどん変わっていっちゃって。ケイタも、なにも言えなくて」

シンジ「そうなんだ、うん、大丈夫」

マナ「できれば、恨まないであげてほしい。私が勝手なこといってるってわかってるけど」

シンジ「平気だよ。これぐらい」

マナ「ごめんね」

シンジ「いいんだ。それよりもマナも戻った方が」

マナ「私、シンジくんに近づけって言われてるから」

シンジ「え? まだ続いてるの?」

マナ「うん、だからここに来れたの。きっと、シンジくんが辛い思いをしてる時に手を差し伸べさせたいんじゃないかな。離れられなくなるように」

シンジ「いろいろ考えるんだね」

マナ「汚いよね、大人って。利用して、利用されて。あるのは打算ばっかり」

シンジ「……そうかもしれない」

マナ「掃除、しよっか」

シンジ「いや、そこは僕ひとりでやる。マナは見てていいよ」

マナ「え? でも」

シンジ「僕がやらなきゃ意味がないんだ」

マナ「……うん、わかった」






630 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/26(火) 01:24:35.36 ID:xjXiNuolo
>>627
まあ神経ブロックはできるし、エヴァの中が一番安全って言っちゃってるからなあ。

にしてもあんまりゲスに書きすぎると助ける必要性というか、蓋然性がなくならないか?
631 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 18:47:47.00 ID:MW53ChTl0
構成はこれまでの流れの中で無理のないように組み立てているつもりです
たいしたものではないですが戦自パートの導入部位みたいな感じですかね
632 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/26(火) 18:52:24.62 ID:Xk8i3Od9o
>>630
ゲスになりすぎないようにマナが必死にフォローしてるんだろう
633 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 19:54:28.31 ID:MW53ChTl0
【数十分後 男子トイレ】

マナ「掃除の効率いいのね。あ、そのタオルは最後にここ。手洗い場で浸しておくの」

シンジ「なんとなく毎日してたら自然とこうなってた。洗剤使うの?」

マナ「うん。水がたまったら洗剤を少量いれて、タオルはこうやって伸ばして浮かせて」トプン

シンジ「へぇ、こんな洗濯法なんだ」

マナ「シンジくんって、ほんと、変わってる。普通かと思えば、そうじゃない思う瞬間もあって……。戦いとかそういう争い事に遠そうな存在に見える」

シンジ「エヴァがなかったら普通に暮らしてただろうからねぇ」

マナ「楽しい? 毎日が。自分のしたいことしてるの?」

シンジ「してるよ。選べる中からだけど。僕は自分の中で満足できればいいんだ」

マナ「やっぱり、戦自は似合わないよ。シンジくんには――」

ムサシ「おいっ! パイロット!」

シンジ「あぁ、おかえり」

ムサシ「ちゃんと掃除は……あ、あ?」

ケイタ「わぁ、すごい。これひとりで? マナも手伝ったの?」

マナ「私はぼーっと眺めてただけ」

ムサシ「ウソつけ! こんな短時間でそんなの無理に決まってるだろう!」

マナ「本当の話。なによ、自分たちだけどっかいっちゃったくせに。疑うなら最初から監視しとけばいいじゃない」

シンジ「疲れはしたよ。ただ、家事全般はもともと慣れてたし」

ムサシ「家事が得意な戦自だと⁉︎ お前は配膳係か!いちいちイラつく! 間の抜けた返事しやがって! まだ訓練メニューは残ってるぞ!」

シンジ「はぁ……ちょっと、聞いてほしいんだけど」

ムサシ「新兵の話なんぞ――」

シンジ「聞けって言ってるだろっ!!」ビターン

ムサシ「な、なん……?」

シンジ「まず、僕が新入りだってのはその通り。ここのルール、習慣なんて知らない。だから覚えるまでの間、こんなことがあっても納得はできる」

ケイタ「……」ポカーン

シンジ「問題は“このやりとりがいつまで続くのか”って話なんだ。ムサシ、くんの話を聞いてると僕がパイロットなのが気にくわないようと言ってるように思える」

ムサシ「当たり前だろ、お前みたいな軟弱者が」

シンジ「キミが僕を認めることはあるの? 今聞いてもないと即答で――」

ムサシ「ないっ!!」

シンジ「……だよね。それは嫌なんだ。僕はネルフの人間でパイロットだけど、そうじゃないと思ってもらえない?」

ケイタ「そんなの、無理だよ……」

シンジ「どうして?ここが戦自で、キミたちは隊員だから? でも、今は僕もそうだよ」

ムサシ「一定期間だけなんだろ! すぐに帰っちまうくせに!」

シンジ「いつかはネルフに戻るとは思う。でも、所属機関を間に挟まなければ、キミたちと僕の間になにもないじゃないか」

ムサシ「お前、頭のネジが一本はずれちまってんじゃねぇのか! そんなのがまかり通るわけねぇだろ!」

シンジ「だったら、どうしたらいい?」

ムサシ「そりゃ聞くまでもねぇだろ、体力テストで良い成績を残せば」

シンジ「(あぁ、やっぱりそうなのか、アスカの言う通り。ここで力を使ったら母さんの思惑通りなんだろうし……うぅーん)」

ムサシ「――それか、俺にタイマンで勝ったら認めてやる」

ケイタ「無茶言うなよ、ムサシ」

シンジ「ん? タイマン? それって負けても誰にも言わない?」

ムサシ「お前がか? いや、言いふらす!」
634 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 20:32:56.04 ID:MW53ChTl0
【昨夜 マヤ宅 リビング】

マヤ「プレゼントがあるの。はい、どうぞ」トン

シンジ「嬉しいな。僕、誕生日じゃないですよ?」

マヤ「いいからいいから」ニコニコ

シンジ「……?」

マヤ「開けてみて?」

シンジ「なんだろう……? え、これって」ガサガサ

マヤ「驚いた? カラーコンタクト。シンジくんには必要でしょ?」

シンジ「あ、瞳の色を隠すために?」

マヤ「外見的な特徴はただひとつ、やっぱりその瞳。普段は黒色なのに、力を使う時だけ赤い色に変化する」

シンジ「なんで今まで見落としてたんだろう」

マヤ「簡単なことほどね。灯台下暗しって言うじゃない」

シンジ「マヤさん……ありがとう」

マヤ「実験してた私が言うのもなんだけど、その力はあまり使わない方針がいいと思うの。特に戦自にいる間は」

シンジ「……?」

マヤ「もし、常人ではありえない身体能力してるってわかれば、とんでもない騒ぎになるはず。だから、力を誇示したいが為になんてしちゃだめ」

シンジ「はい」

マヤ「司令はまだ探ってるのかもしれない。シンジくんのその力について。……言ってないのならだけど」

シンジ「リツコさんは言ってませんよ。そう確信できます」

マヤ「とにかく、その力はここぞって時に使うのよ? 約束、ね?」
635 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 21:02:44.03 ID:MW53ChTl0
【再び 同男子トイレ】

シンジ「(カラーコンタクトはバックの中だったはず、いや、やっぱり……ここで力を使ったら軽率すぎるか)」

ムサシ「どうした! 怖気づいたのか!」

マヤ「もうやめてよっ!」

ケイタ「そうだよ、ムサシ。やるわけないさ」

シンジ「うぅーん」

ムサシ「とんだ腰抜け野郎だな」

シンジ「……うん、言いふらされると困るからやっぱりやらない」

ムサシ「負けるのがこわいのかっ⁉︎」

シンジ「そんな感じ」ポリポリ

ムサシ「はぁ、さっきまでの威勢はなんなんだよ。なぁ、マナ。なんでこんなやつにまとわりついてんだ?」

マナ「ムサシには関係ないでしょ?」

ムサシ「珍しいだけだろ。珍獣みたいな扱いか?」

マナ「なに? ヤキモチ?」

ムサシ「ばっ⁉︎ 俺がなんでっ⁉︎」アタフタ

マナ「悪いけど、ムサシはそういう対象じゃないから」

ムサシ「……っ⁉︎」

ケイタ「告白する前からフラれるってきついね、ははっ」

ムサシ「ケイタッ!! この野郎っ!」バシッ

ケイタ「いたっ」

シンジ「そろそろ集合時間じゃない?」

ムサシ「マイペースすぎんだろ。お前は結局なにがしたかったんだ?」

シンジ「うーん、僕もね、探ってる感じ」

ケイタ「探るってなにを?」

シンジ「なにが一番いいのか」

マナ「……?」

シンジ「遅れちゃうよ。急ごう」タタタッ

ムサシ「勝手に仕切るなっ!」

ケイタ「あぁ、行っちゃった。マナ、僕たちも隊に」

マナ「ねえ……ケイタ」

ケイタ「なに?」

マナ「なんか、不自然じゃない?」

ケイタ「え? なにが?」

マナ「あのさ、シンジくんってこれまでなにしてたの?」

ケイタ「トイレ掃除でしょ?」

マナ「その前」

ケイタ「ええと、ランニングとダッシュ……合間に腕立てと」

マナ「吐いた? それとも倒れた?」

ケイタ「そういえば、まだ……あれ? なんであんなに普通なんだろう? 最中は、かなり遅めのペースでひいひぃ言ってたのに」

マナ「普通ならだるくて死んだ魚の目をしてるはずでしょ? もう回復したってこと?」

ケイタ「う、うぅん。でも、今日はご飯は食べれないと思うよ。飯が喉を通らないくらい、疲れてる、はず……」
636 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/27(水) 19:31:57.95 ID:A0IdrlUO0
【厚木基地 参謀本部】

総長「陸上軽巡洋艦トライデント級か。この作戦計画の立案者は例の?」

軍曹「はっ、我が軍に取り入る為、設計図を持参したかと」

総長「実現できるのか?」

軍曹「本人は必ずや実現できると信じているようです。熱の入りようは生半可ではありませんでしたよ」

総長「――時田シロウ。ジェットアローン(JA)計画の落ちこぼれか。日本重化学工業、通産省、防衛庁の共同計画を頓挫させた男」

軍曹「こちらから質問したら、陰謀だとまくしたてたそうです」

総長「ふん、例えそうだとしても失敗は失敗だ」

軍曹「仰る通りです」

総長「完成までどれぐらいかかると言っている?」

シロウ「失礼しますよ」

総長「お前は……なぜここに入れた?」チラッ

軍曹「し、失礼しました。至急、確認に」

シロウ「その必要はありません。防衛庁の者だと表に立っている衛兵に伝えたらすんなり入れてくれました。この身分証を提示してね」

総長「貴様は解雇されているはずだろう。なぜ持っている」

シロウ「必要だったからですよ……。再就職先に」

総長「ここがそうだと言いたいのか? 早計な」

シロウ「6年です」

総長「なに?」

シロウ「そのトライデントが完成するまでの月日の回答になります」

総長「6年もかかるのか?」

シロウ「なに、最初の使徒が現れたのは今から十数年前ではありませんか」

総長「ペースが早まっている」

シロウ「今が異常なんですよ。いつ現れるのかわからないのなら、次もまた十数年後かもしれない」

総長「だめだ。時間がかかりすぎる」

シロウ「タネを蒔いておかないのですか? やはり、あなた方は無能だ。ネルフの下働きが似合っている」

軍曹「き、貴様っ!!」

シロウ「あなた方が辛酸を舐めているのは、なにもしてこなかったからでしょう? 対人である戦争に明け暮れて、宇宙外生命体に対しての準備をね」

総長「……」

シロウ「このままでは、ずっとやつらに先を越されてしまいますよ? いいんですか?」

総長「口の減らないやつだ。ネルフに赤っ恥をかかされた恨みを晴らしたいだけだろう」

シロウ「はい、もちろんです。それのなにが問題で?」にっこり

総長「……」

シロウ「“ネルフを潰したい”。私達の利害は一致している。そうじゃないのですか?」

総長「……実現できると過程した場合の予算はいくら計上する目算だ?」

シロウ「軽く見積もって1兆ほど」

総長「……っ⁉︎ ば、ばかなっ! そんな財源がどこにある!」

シロウ「税率をあげるなりなんなり手はあるでしょう。この国に住まうものならば当然の義務。嫌なら国から出ていけばいい」
637 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/27(水) 19:52:19.68 ID:A0IdrlUO0
総長「政府の認可が降りるわけないだろう!」

シロウ「そこはあなた方、軍上層部の腕の見せ所というわけです。私は出資を求めているのですから」

総長「話にならん」

シロウ「ふっ、よろしいですか。ネルフはそもそも、世界各国政府容認の元、治外法権化しています。法律的にいえば日本領土内に在りながらひとつの国家なのです」

総長「それぐらいは承知している」

シロウ「無尽蔵とも思える資金もまた、日本だけではない各国の後ろ盾があって成り立っている」

総長「……なにがいいたい?」

シロウ「潰す相手は“世界そのもの”だと言っているのです。1兆で買えるとなれば安いものでしょう? 世界のリーダーになりたくないのですか?」

総長「使徒は本当に現れないのか? 信用できん」

シロウ「その点についての確証は持てませんがね。そういうことではない。芽がでるタネの話なんです」

総長「規模が大きすぎる。提督の前でプランを話せ」

シロウ「では、私を紹介していただけますか? それと、6年後を見据えてパイロットの選定にもご協力いただきたい。もちろん、戦自出身者をね」

総長「話は通してやる。ただし、その後のことは自分でなんとかしろ。軍曹」

軍曹「はっ! 年齢に適齢期はあるか?」

シロウ「そうですね、20歳ぐらいがちょうどいいでしょう。サンプルの時間も大いにとれますし」

軍曹「リストアップする」

シロウ「ああ、勘違いしないでくださいよ。6年後にハタチですからね」

軍曹「……了解した。ということは少年兵からの選抜になるか。ちょうど活きの良いのがいる。次期主席候補でいいだろう」

シロウ「野心は必要ありません」

軍曹「心配するな。扱いやすいガキだ。透明性や言論性の自由も求めない」

シロウ「それはそれは。うってつけですね。モルモットにふさわしい。予備も一名ほしいんですが」

軍曹「問題ない。いつも一緒にツルんでいるやつがいる。そいつをつけよう」

シロウ「これで、パイロット候補生は話がつきましたね。早くて助かります」

総長「まだなにか具体的に決まったわけではない」

シロウ「ええ、ええ。もちろんですとも」

総長「先方の都合もある。日時はおって通達し――」

シロウ「今がいいですねぇ、鮮度が落ちてしまいますので。そこにおいてある衛星電話機を使えば一瞬で繋がるでしょう?」

総長「承認できん。有事の際以外は使用することを禁じられている」

シロウ「今がその時なんですよ。参謀総長」
638 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/27(水) 20:21:13.18 ID:A0IdrlUO0
【夕方 食堂】

シンジ「うん、おいしい。雑かと思ってたんだけど、普通の料理なんだね」もぐもぐ

マナ&ケイタ「……」ぽかーん

ムサシ「それも全部国民の税金なんだ。役立たずのくせに申し訳ないとか思わないのか?」

ケイタ「あの。よく、食べれるね」

シンジ「え?」

マナ「食欲旺盛なんだ?」

シンジ「あぁ、うん、まぁ? どうしたの? なんかおかしい?」

ケイタ「いや、そういうわけじゃないけど……。どうだった? 今日一日終えてみて」

ムサシ「まだ終わってないだろ。これから点検とかやることが山積みだ」

シンジ「部活の合宿みたいな感じなのかな。僕は運動部に入った経験がないから想像だけど」

ケイタ「ぶ、部活の延長上……ね」

マナ「シンジくん、訓練についていけなかったんでしょう?」

シンジ「そうだね。やっぱり、やる量っていう密度が濃いのはそう思った」

ムサシ「当たり前だ。なんていったってここは――」

マナ「ムサシ、ちょっとうるさい。持てないものとか、あった?」

シンジ「いや? 途中で背負ったリュックは重かったな」

マナ「あぁ、装備一式を積んだバックパックのこと? 銃も携行したの?」

シンジ「うん、なんだっけ? M16? 銃も重くて驚いたよ」

ケイタ「そういえば、たしかに。後半はなんなくこなしてたような……」

シンジ「あれをいつも背負ったまま移動するんだよね? 大変だ」

マナ「ねぇ、ケイタ。今日は水泳訓練なかったの?」

ケイタ「なかった。そのかわり、地獄のトンボかけがあったけど」チラ

シンジ「このトンカツもちゃんと揚がってる」もぐもぐ

マナ「な、なんで?」

ケイタ「さぁ……?」

ムサシ「おい! そのカツ俺にも一切れくれ!」

シンジ「自分のあるじゃないか」

ムサシ「やかましい! 俺とお前で貢献してる度合いが違うんだ!」

シンジ「お断りだね」

ムサシ「な、なんだとっ! お前やっぱり!」

シンジ「その漬物、いらないの?」

ムサシ「あ? いや、これは最後に」

シンジ「僕のキャベツとトレードしよう」

ムサシ「なっ⁉︎ 馬鹿言ってんじゃねぇ! 俺は漬け物が好物なんだ!」

シンジ「し、渋いね」

ムサシ「ばあちゃんっ子だったからな、俺は。……ってそうじゃねぇだろ!」

シンジ「そういうことなら、漬け物あげるよ。少し箸つけちゃったけど」ヒョイ

ムサシ「お? お、おう」

マナ「ぷっ」

ムサシ「……っ! なんなんだよお前はっ!」
639 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/27(水) 21:32:23.91 ID:A0IdrlUO0
【夜 戦闘機格納庫】

ケイタ「長いだろ。この階段。運搬用のエレベーターとかつけてくれたらいいのに」

シンジ「うん、これ、どこに? 戦闘機の銃弾って、重い、な」

ケイタ「まとまった数は梱包されてフォークリフトやクレーンをつかって運ぶんだけど。端数は、こうやって、人力でっ、よっと」

シンジ「スピードを要求されるんだね、こういう作業って」

ケイタ「“戦場じゃ敵は待ってくれない”が教官の口癖。出撃にしてもそう、使徒が襲来した時に、誰よりもはやく準備を終えていなきゃいない」

シンジ「……」

ケイタ「ネルフがもっと、僕たちに敬意を払ってくれてたら……。キミは陰でこんな仕事してるって知らなかっただろう?」

シンジ「うん」

ケイタ「魔法じゃないんだ。勝手に出てくるわけじゃないし、色んな人が動いて、ひとつの形になってる」

シンジ「そうだね……」

ケイタ「いつも汚れ仕事さ。華のあるキミみたいなパイロットと違って……雑草は、人のやりたがらない仕事を引き受ける」

シンジ「……」

ケイタ「誰だってできるってみんなそう思うのもわかるよ。肉体労働っていうのは、体が資本で、作業そのものは単純だから。でもやる人がいないと出撃すらままならないってことだけは理解しておくべきなんだ」

シンジ「うん。言い返す言葉もないや」

ケイタ「まぁ、それと組織の体質とは話しが繋がらないんだけど」

シンジ「そこまでわかってるのに、戦自じゃないとダメなの? 別の生き方が」

ケイタ「いったろ? 誰かがやらなきゃいけないんだって。僕は食いっぱぐれがなさそうだからっていう動機だけど、ムサシはそう考えてる」

シンジ「浅利くんは? やっぱりマナやムサシくんと一緒にいたいから?」

ケイタ「そうだよ。いつかは、離れ離れになるかもしれない。そういうことを考えないわけじゃない、だけど、今はみんなで一緒にいたいんだ。死ぬことになってもさ」

シンジ「……」

ケイタ「境遇なんてものはきっかけ。人は平等じゃないんだ。パイロットに選ばれる強運があればな。……のたれ死ぬやつもいるのに、僕なんて友達がいるだけマシな方だよ」

シンジ「……」

ケイタ「急ぐよ。遅れるとまた追加で懲罰が待ってる」カンカン

シンジ「わかった、よいしょっと」
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 23:28:26.25 ID:kMpDJk9Jo
時田さん…
人を巻き込まないためにJAを作ったんじゃないのか
641 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 01:46:17.96 ID:LMhSvhxyo
おつ
642 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/28(木) 18:50:06.02 ID:NayB0tUw0
【射撃訓練場】

教官「皆聞け! 今回の座学では、兵站(へいたん)部の者に向けてのものとなる。貴様らは戦自陸軍の配属になる予定であるから、知識もまた重要である!」

少年兵一同「はいっ!!」

シンジ「うっ、重っ。ねぇ、聞くだけなのにわざわざ装備一式を担ぐ必要あるの?」

ケイタ「シッ。静かに」

教官「お前たちが身につけているものは、継戦能力を維持するのに必要な“最低限”の装備だ。ムサシ隊員!」

ムサシ「はっ!」ザッ ビシッ

教官「重いか⁉︎ 陸路を闊歩する場合に困難かっ⁉︎」

ムサシ「問題ありませんっ!!」

教官「よしっ! 各隊員よく聞け。注目すべきは銃弾や軽機関銃ではない。これが標準の総装備だということだ。海に投げ出されたらどうなる!」

ムサシ「重量が増すはずであります!」

教官「その通りだ! 水分を多量に含めば、衣服、火器、防具にいたるまで重さは今の三倍になる……」

少年兵一同「……」ゴクリ

教官「そうなればどうなる! 助かるための命綱ともいえる武器を手放すのか⁉︎ 」

少年兵一同「……」ドヨドヨ

教官「――否ッ! それは自殺行為である! 例え助かったとしても、浮上すれば敵が待っているからだ! 絶対に捨てるな!」

少年兵一同「はいっ!!」

教官「貴様らの誰が死んでも、必ずや突撃し、制圧し、仇をうってくれる! 武器に魂をこめるんだ! 上下一心!」

少年兵一同「上下一心ッ!!」

教官「碇隊員! 前へ!」

シンジ「あっ、はいっ!」スッ

教官「諸君、彼の姿をよく見ろ。……まるで似合っていない。孫にも衣装じゃないか? これでは装備が歩いているようなものだ」

少年兵一同「はははっ」

教官「誰が笑っていいと言った!」ピーッ

少年兵一同「……!」ピタッ

シンジ「(たしかに、厳しいかもしれない。でも、ここまで統率をとれるなんて……ネルフって結構自由なんだな)」

教官「貴様らもまだひよっ子にすぎん!」ドンッ

シンジ「うっ」ドサッ

少年兵一同「……」シーン

教官「どうした! 今のは笑っていいぞ!」

少年兵一同「は、ははっ」

教官「貴様がネルフでどんな鍛え方をしたか知らんが、ここにはここのルールがある! それを現時刻より身をもって体感してもらう!浅利隊員!」

ケイタ「はっ!」ザッ ビシッ

教官「痛めつけてやれ」ポン

シンジ「なっ、なんでっ⁉︎」

教官「他の者もだ! 各員列を作れ。……碇隊員を仲間に迎える儀式だ!」

シンジ「ぎ、儀式っ⁉︎ こんなのがっ⁉︎」

教官「口答えをしたな⁉︎ 軍規の乱れを見過ごすわけにはいかん! 笛の合図で代わり番で鉄拳制裁だ!」ピーッ

ケイタ「誰も味方じゃないって言ったよ。……恨まないでね」ボソ ブンッ

シンジ「グッ……っ⁉︎」ドサッ

教官「よしっ! 次ッ――」
643 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/28(木) 19:56:11.17 ID:NayB0tUw0
【ネルフ本部 執務室】

冬月「時田シロウ。行方を眩ましていたかと思えば、まさかこんな形で再浮上してくるとはな」

ユイ「内通者からの定時報告によれば、海軍提督に直訴したようですね」

冬月「我々のシナリオにはないぞ」

ユイ「置き土産がまさかこんなところにもあるとは。JA計画潰しは夫の指示で先生も関与されていたんでしたね」

冬月「……」

ユイ「内閣府はどうでると見ますか」

冬月「一度失敗した者に対し、この国は甘くない。しかし、それは国民に信を問うた場合――」

ユイ「利権が絡めば、その限りではなくなりますね。企業体質といいますか、動く可能性はおおいにある」

冬月「然り。政府の連中も金の匂いには敏感だ。投資分以上の金額を回収すると確約できれば銀行も重い腰をあげるだろう」

ユイ「6年という気の長い月日……。黙認してもいいですが、調子づかせるのは嫌な予感がします。消しますか」

冬月「いいのか? つけいる隙を与えるやもしれんぞ」

ユイ「厄介なのは“執念”です。彼は当初の理念を忘れ、復讐という炎を燃やしている。よほどくやしかったのでしょうね」

冬月「輝かしい人生(レール)の汚点だからな。エリートとはえてしてそういうものだ。崇高な理想を掲げても、一度の挫折でこうなる者もいる」

ユイ「ふぅ……」

冬月「時田はいつ暗[ピーーー]る腹づもりだ」

ユイ「タイミングは見極めなければなりません。それによって開く穴は大きく、また、小さくなる」

冬月「研究中の事故となるよう工作するか」

ユイ「焦る必要はありません、障害になれば即座に」

冬月「承知した。決行に必要な準備は済ませるよう連絡しておこう」

オペレーター「司令。内通者より秘守回線が。なにやら変化があっているようです」

ユイ「繋いで」

軍曹『ご子息の件でご報告があります。現在、射撃訓練場にて隊員による集団暴行を目視確認いたしました。いかがいたしますか?』

ユイ「シンジの身体に変化は?」

軍曹『お待ちください。――……だめですね、双眼鏡を使っているのですが、不自然な点は』

ユイ「他には。なんでもいい」

軍曹『し、失礼しました。ここからだと、特になにか……』

ユイ「もう結構よ。怪しまれない程度に仲裁してちょうだい。深夜の監視は充分に警戒して」プツッ

冬月「ふむ。判断をつけずらいな」

ユイ「確認のための行為が覚醒を促すようなことがあってもいけませんし……」

冬月「どちらにせよ、手が出せん、か」
644 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/28(木) 20:50:32.85 ID:NayB0tUw0
【再び 射撃訓練場】

シンジ「――ぐっ!」ドサァッ

軍曹「貴様ら! なにをしているかッ!」

マナ「シンジくんっ!!」タタタッ

ケイタ「マナ? どうしてここに」

教官「こ、これは、軍曹殿」

軍曹「消灯時間が近いゆえ、見回りだ」

教官「そうでしたか。新入りに軍規を叩きこんでいたところであります!」

軍曹「その辺にしておけ」

教官「まだ一巡しておりませんが」

軍曹「骨を折ってはいないな?」

教官「ムサシ隊員! 確認しろ!」

ムサシ「はっ! おい、立て」グイッ

シンジ「うっ、いつっ」ボロ

ムサシ「打ち身は数箇所ありますが、骨は無事なようです」

軍曹「解散しろ。霧島隊員。医務室まで連れていってやれ」

マナ「大丈夫っ⁉︎」

教官「よーしっ! 皆聞こえたな! 速やかに解散だ!」

少年兵一同「はいっ!!」

軍曹「そこのお前」

ムサシ「はっ!」ビシッ

軍曹「女手ひとつは大変だろう。同行を許可する」

ムサシ「了解! ……肩を貸してやる、捕まれ」

シンジ「うっ、うぅっ」

ケイタ「ムサシ! 僕もついていくよ!」

軍曹「明日のスケジュールはどうなっている」

教官「空挺部隊との合流訓練になっております!」ビシッ

軍曹「ということは、朝が早いな。本日の当直は俺が担当してやる」

教官「よろしいのですか?」

軍曹「たまにはな。デスクにウィスキーを置いてあるはずだ」ポン

教官「あ、ありがとうございます!」ビシッ
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 22:04:51.01 ID:eL9SI/8No
軍曹やったんかい
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 14:10:09.40 ID:1KvikAdgO
支援
https://youtu.be/Anq4Q21_jTg
647 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/29(金) 15:43:13.48 ID:J/eMFMqO0
【医務室】

医師「うん、頑丈な骨をしているな。湿布薬を貼っておけば腫れは引くだろう。……明日の訓練は見学させるよう私から話をしておいてやる。ではな」ポン コツコツ

マナ「なんで止めてくれなかったの⁉︎」キッ

ムサシ「なんだ、なぜ睨む? これは儀式だと教官は――」

マナ「わかってるはず! なんのために必要なのか!」

ケイタ「ま、マナ……」

マナ「洗脳の手順になってる! こうやって、痛めつけて、精神的に追いやることで次第になにも考えられなくなるわ! 自分の考えを持てなくなってしまうの!」

ムサシ「俺たちは命令を遂行すればいい。自分で判断することは輪を乱す行為だ」

マナ「どうしてよ! おかしいと思わないの⁉︎ 一般人がこんな目にあう場所なのに⁉︎」

ムサシ「命令だからだ。しきたりがある」

マナ「話にならない……。ねぇ、ケイタ。なんとか言ってやってよ」

ケイタ「ぼ、僕が?」

マナ「一度脱走しかけたなら私と同じこと思ってるはずでしょう? なんで口に出してくれないの……?」

ケイタ「だ、だって……」

マナ「黙ってついていくだけが友達じゃないのよ! ムサシを大切に想うなら……!」

ムサシ「黙れッ!! 俺たちは、俺はこれでいいんだ! 望んでここにいる!」

マナ「ぐすっ、うっ」ポロポロ

シンジ「うっ」

マナ「……っ! シンジくん⁉︎ 気がついた⁉︎」ガタッ

シンジ「声で、目が覚めた。いててっ、よく、喧嘩するんだね。三人とも」ムク

ムサシ「お前には関係のないことだ」

シンジ「さっきのパンチ、効いたよ。さすが鍛えてるだけはあるんだと思った。身体の芯に響くみたいな」

ムサシ「当たり前だ。そんじょそこらのゴロツキとは違う、腰の入ったモノだからな」

ケイタ「僕らは空手をやってるから、必修科目で。みんな帯持ちなんだ」

シンジ「やっぱり、努力してるんだね」

ムサシ「悔しいとかないのか、男なら誰だって」

シンジ「これまでの生活とあまりに乖離しすぎてて、実感が沸かないんだ。……痛くないわけじゃないよ」

ムサシ「そういうものか。本当にネルフで訓練してなかったんだな。抵抗もできないとは」

シンジ「普通はするの?」

ムサシ「黙って殴られるバカはお前ぐらいのもんだ。最初は全員にアレが行われる。反発すればするほど制裁はきつくなるが」

シンジ「自分の無力さをしらしめる行為ってことか」

ムサシ「はぁ……。たしかに、その通りだろう。あれをやる意味は、どんなに優れていようと、限界があり、数が束になれば、個なんてものはあっというまに蹂躙されると伝えることにある」

ケイタ「――最強は、強力な個じゃない。情報に基づいた戦略と、数による暴力」

マナ「想像より、実体験は身体に染みこんでしまう。だって、それが現実だから。でも、それは表向きよ。本当の意味は洗脳で……!」

ムサシ「くだらない妄想はやめろ」

マナ「なんで、どうして……」

ムサシ「使徒とかいうバケモンにはいくら束になってもデタラメな盾がある以上、なす術なしだが。……あれは人外だからノーカンだ。俺たちはあくまで対人を想定した部隊」

シンジ「……」

ムサシ「マナ……。俺たちはこの中で生きていくしかないんだ」

マナ「できるよ! 貧しくたっていい! 慎ましく暮らせばそれで……!」

ムサシ「俺は嫌だ。ケイタ、行くぞ」クルッ コツコツ

ケイタ「マナ……ごめん」タタタッ

マナ「ばか……。二人とも、ばかなんだから……うっ、うっ」ポロポロ
648 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/29(金) 16:15:17.44 ID:J/eMFMqO0
【通路】

ケイタ「……なんでマナの為だって言ってあげないの? そうすればきっと」

ムサシ「そんなのは押しつけだよ」

ケイタ「でも! 伝えないよりは!」

ムサシ「マナの性格を考えればわかるんじゃないか。自分のせいだって知れば、自分を許せなくなる」

ケイタ「……っ!」

ムサシ「なにも知らなくていいんだ」

ケイタ「このままじゃ、僕たちの心が離れてしまうよ。ずっと三人一緒だったのに……」

ムサシ「どうせ成人すれば戦地に送りこまれて死ぬんだ。だったら、一人ぐらい幸せになったっていいじゃないか」

ケイタ「なにも知らないままで?」

ムサシ「痛みを分かち合うのが幸せなもんか。嫌われたっていい」

ケイタ「報われなくて、それでいいの」

ムサシ「想いを伝えるだけじゃない。陰ながら支えるのに、相手が気がつく必要なんか……」

ケイタ「ムサシ……」

ムサシ「これでいいんだ」

ケイタ「……」

ムサシ「いつかは、ネルフに帰る。マナを連れていってくれれば。ケイタもそう思うだろ?」

ケイタ「そ、それは」

ムサシ「マナはここに似合わない、やっていけないんだ」

ケイタ「そう、だね……」

ムサシ「だが、あれじゃいくらなんでも軟弱すぎる。やってやろうっていう気概が見えない。俺たちでいっちょ鍛えなきゃな」

ケイタ「うん」

ムサシ「ケイタにも、嫌な役を引き受けさせちまうことになる」

ケイタ「水臭いな。僕は、二人の為になれるならなんだってしてきたじゃないか」

ムサシ「一度逃げだそうとしたやつが言うかぁ?」

ケイタ「あ、あれはっ! その、あんまりにも辛くて……」

ムサシ「毎日だもんな。この暮らしが」

ケイタ「うん、ずっと続くと想像すると、耐えられなくてさ」

ムサシ「せいぜい怪我や病気に気をつけようぜ。除隊されてしまえばなにもできなくなる」

ケイタ「そうだね。その後の生活は保障されないし」

ムサシ「ああ……いっけね、就寝前に点呼があるの忘れてた!」

ケイタ「え? 今日は、別の当番のはずじゃ」

ムサシ「代わったんだよ! 走るぞ!」タタタッ

ケイタ「わっ、ま、待ってよっ! ムサシっ!」
649 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/29(金) 22:05:59.54 ID:J/eMFMqO0
【再び 医務室】

マナ「うっ、うっ、ぐすっ」

シンジ「マナ……」

マナ「あっ、ご、ごめんねっ。見苦しいとこみせちゃって」

シンジ「いや、そんな風には思わないよ」

マナ「ありがとう……痛む? 平気?」

シンジ「平気だよ。そろそろ僕たちも戻らないといけないね」

マナ「ネルフにいつ帰る予定だとか、まだわからないの?」

シンジ「うん。初日だし、なにも連絡がない」

マナ「そっか……そうだよね」

シンジ「あのさ、マナ――」

マナ「うん?」

シンジ「黙ってこうしてるつもりはないんだ。協力、お願いできないかな?」

マナ「……? なにをするつもり?」

シンジ「情報がほしい。戦自の」

マナ「なにが知りたいの?」

シンジ「まず、ネルフと戦自のいがみ合いについての関係性はだいたい理解した。隊員達がどう思ってるのか」

マナ「うん」

シンジ「ただ、ネルフにとっては……悪く思わないでほしいんだけど。戦自ってそんなに重要じゃないんだ。相手にしてないと言ってもいいぐらいだと思う」

マナ「あ……うん」

シンジ「戦自は余計に気にくわないんじゃないかな。それでね、ここって国内の基地だとどれぐらいの規模なの?」

マナ「うーん、そうね、日本で三本の指に入るぐらいは」

シンジ「だったら、重要拠点のはず。戦自はネルフをどうしたいんだろう?」

マナ「えっと、あわよくば潰したい、んだと思うよ」

シンジ「そこまでになると気にくわないだけじゃないよね?」

マナ「……お金。ネルフって莫大な資本をバックボーンにしてるでしょ? それこそ、世界からかき集めてるぐらい。だから、それが狙い。直接掌握も視野にいれてる」

シンジ「ちょ、直接掌握? それって、攻めこんでくるってことだよね。でも、そんなことしちゃ各国政府が黙っていないんじゃ」

マナ「理由があれば、大義名分は作ることができるもの。たとえば、そう……ネルフの私物化とか」

シンジ「――そうか、だから僕と母さんの関係を調べてたんだね?」

マナ「私も全てがわかるわけじゃないけど、そんなところなんだと思う」

シンジ「ここの責任者、ええと、一番偉い人は?」

マナ「参謀総長じゃない、かな。さらに上に陸軍将軍がいるけど、国会議事堂に出頭してるはずだから」

シンジ「マナのここでの任務って?」

マナ「私は、通信士。管制塔の業務もたまにする感じ」

シンジ「さっきの軍曹は? マナと一緒にきたのはどうして?」

マナ「あの人は、いろんなところを兼任してるの。私が廊下を歩いてたら、たまたま呼ばれて。シンジくんに近づけさせようする任務の一環」

シンジ「……なにか行動を起こさなくちゃいけない」

マナ「えっ?」

シンジ「もうすぐ消灯時間だって言ってたよね」

マナ「うん、そうだけど……?」

シンジ「軍曹は今どこに?」

マナ「えっと、当直を代わるって言ってたから、宿直室じゃない?」

シンジ「案内してもらえる?」
650 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/29(金) 22:44:26.98 ID:J/eMFMqO0
【宿直室】

軍曹「おっ、もうこんな時間か。どれ、様子を見に――……お前は、サードチル、ごほん、なんだ?」

シンジ「さっき止めてくれたお礼が言いたくて」

軍曹「気にせんでいい。身体の具合はどうか。なにか変わったところがあったら申告しろ」

シンジ「節々が痛むくらいです。あのままだったら、どうなってたか」

軍曹「霧島隊員はどうした? 一緒じゃないのか?」

マナ「あ、すいません、夜分遅くに」

軍曹「なんだ、いるじゃないか。大丈夫ならそれぞれの宿舎に戻れ」

シンジ「ちょっと話を聞いていただきたいんですけど」

軍曹「話? なんだ?」

シンジ「ネルフに関することです。正直、僕もあの組織には嫌気がさしてまして」

軍曹「はぁ?」

マナ「し、シンジくん?」

シンジ「情報、ほしいんじゃないですか?」

軍曹「なに言ってるのかわかってるのか?」

シンジ「タダでとは言いません。そのかわりなんですけど、軍曹殿に僕の身の安全を保障してもらえませんか」

軍曹「……つまり、その引き換えに?」

シンジ「はい。こわいんです、このままエスカレートするとどうなってしまうかわからなくて」

軍曹「(ふむ、保身に走ったか……どうしたものか。ここで俺が断れば次の取り引き相手を探すだろうな。そうなれば、ネルフの情報が戦自の手に……)」

シンジ「どうですか? だめですか?」

軍曹「いや、分かった。交換条件に応じよう」

シンジ「ほんとですか? 助かったぁ」

軍曹「それで、情報というのは?」

シンジ「なにが知りたいんですか?」

軍曹「そうだな。我々が探っている本丸は碇ゲンドウ、そしてその妻である碇ユイ。この夫婦と上層組織である国連に癒着がないかどうかだ」

シンジ「戦自ではどこまで掴んでるんです?」

軍曹「教える意味はない。まず貴様が持っているカードを切る番だ」

シンジ「いえ、重要なことなんです。お互いに有益にしたい」

軍曹「……しかたない、サービスだぞ。まだろくに証拠をつかめていない。公式発表のあった異動についてな」

シンジ「どうしてですか? 父さんはアラスカに行っていると知ってるんでしょ。会いにいけばいいのに」

軍曹「詳しい所在は極秘扱いになっていてな。国連でも一部のゼーレの名のつく代表団しか知りはしない。しかし、そのいずれもが安全面を理由に硬く口を閉ざしているのだよ」

シンジ「……」

軍曹「さぁ、話せ。なにを知っている?」

シンジ「僕は、あなた方がほしがっている答えを知っています」

軍曹「なに……? それは、つまり」

シンジ「ただし、教えるには僕の安全だけは釣り合わないと判断しました」

軍曹「たしかな証拠があるのか?」

シンジ「はい。あります」

マナ「し、シンジくん、ネルフと戦自の開戦の火種になる、よ」

軍曹「(こいつ、なにを考えてる? ネルフを売って寝返るつもりか?)」
651 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/29(金) 23:16:32.68 ID:J/eMFMqO0
シンジ「戦自はエヴァに勝てるつもりでいるんですか?」

軍曹「あんなものは対使徒に特化しているだけの欠陥品だ。電源ケーブルを狙い撃ちしてしまえば五分で活動限界ではないか」

シンジ「……そうか、それはたしかに」

軍曹「永久機関である使徒と違い、やりようはいくらでもある。本部の直接掌握をしてもいいしな」

シンジ「(やっぱり、そういうことか……ん? あれって、どっかで見たような)」

軍曹「ん? なんだ? どこを見ている?」

シンジ「あっ、いえ。別に……」

軍曹「もったいぶらずにはやく教えろ。証拠とはなんだ」

シンジ「(うぅーん、どこで……はっ、そうだ。たしか加持さんがカフスにしてたボタンと同じ……?)」

軍曹「おい、もしやなにもなしではあるまいな?」

シンジ「あの、その机の上に置いてあるバッジは?」

軍曹「ん? ……あ、あぁっ、これか。ネルフに行った時に記念品として頂いてな」

シンジ「記念品?」

軍曹「そうだ。珍しくもないだろう」

シンジ「……いつ、ネルフに?」

軍曹「先日だ。それよりも、具体的な提示はまだか?」

シンジ「気が変わりました」

軍曹「なに……? 貴様、俺を舐めてるのか?」

シンジ「いえ、迂闊だったんです。母さんが送りこんでたスパイの可能性を考えずに。とんでもない墓穴を掘るところでした」

軍曹「す、スパイ? なにを」

マナ「え……?」

シンジ「それは――記念品なんかじゃないっ!」

軍曹「そ、そうだったか? いや、これはだな」

シンジ「僕に正体がバレたと母さんがわかれば、どうなるかわかりますね」

軍曹「……」グッ

シンジ「お互いにこの話はなかったことに。マナ、行こう」

マナ「えっ? いいの?」

シンジ「なにもせずに見送ろうとしてるじゃないか。それが答えだよ」

軍曹「小僧……。図に乗るなよ」

シンジ「諜報部の人ですか。それとも、保安部からの特殊部隊? どちらでもかまいません、もし、母さんにこの顛末を報告するつもりなら、一言伝えおいてほしい」

軍曹「俺がしないと高を括ってるのか?」

シンジ「そうじゃありませんよ。まだ、はっきりとは伝えてなかったから。僕は、母さんのやろうとしてることを認められないって」

軍曹「なにをするつもりだ? こちらを裏切るつもりか?」

マナ「そ、そんな。うそ……? 軍曹殿が、ネルフからの内通者だなんて……!」

軍曹「ちっ」
652 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/30(土) 01:10:36.16 ID:Qcw5UgHuo
スパイと知らなかった上での交渉ならマジで売るつもりだったのか
653 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/01(日) 21:36:35.01 ID:zpVr/23no
今日は来ない系?
654 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/10/02(月) 01:39:09.06 ID:IBAdFOvk0
【通路】

マナ「待ってよ!」タタタッ

シンジ「(先走りすぎた。まさか、ネルフから潜入工作員がいたなんて……)」スタスタ

マナ「シンジくんってば!」グィッ

シンジ「僕がバカだったんだ。マナの情報が筒抜けだったのも、そう考えればわかったはずなのに」

マナ「えっ? ……あっ、軍曹が流出させてたってこと?」

シンジ「誰がとかそうじゃないんだよ、マナ。一人とは限らない。もっといるかもしれない」

マナ「ごめん、よくわからないんだけど」

シンジ「中学校に転校してきた時、マナの正体は即座に見破られていたよね」

マナ「うん、だから、その犯人が軍曹って話じゃないの?」

シンジ「どうしてあの人だと思うの?」

マナ「だって、ネルフからの工作員って判明したじゃない」

シンジ「なんで一人だけだって決めつけるんだよ。判明したのは、軍曹はネルフから潜入してるのが確定したってことだけ。複数いるかもしれないだろ」

マナ「そっか……二人いたら、もう一人がってこともあるかもしれないものね」

シンジ「……」

マナ「シンジくん? なに、考えてるの?」

シンジ「嘘の情報を渡すつもりだったんだ。次に、母さんを混乱させたらと思った」

マナ「それじゃあ、取り引きを持ちかけたのはフェイクだった?」

シンジ「形だけのね。驚いた?」

マナ「驚くに決まってるじゃない。本当に戦争になっちゃうんじゃないかって思った」

シンジ「ごめん。突発的に思いついたから打ち合わせをしなかったね」

マナ「いいよ。でも、これからは? 軍曹に口止めしなきゃ困らないの?」

シンジ「どうやって? 弱みを握るとしても方法は……」

マナ「ねぇ、シンジくんは何を隠して……ネルフとどうなりたいの?」

シンジ「僕は、ある計画を止めたいんだ。その為に動こうと決めてる」

マナ「ある、計画?」

シンジ「詳しくは話せない」

マナ「……それって、母親と敵対しなきゃいけないの? 総司令だよ?」

シンジ「出たとこ勝負なところだってある。だけど、そうなったとしてもおかしくはない」

マナ「わかった。それ以上は聞かない……軍曹はどうする?」
655 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/02(月) 02:03:24.03 ID:IBAdFOvk0
シンジ「……」

マナ「脅す?」

シンジ「脅すって、脅迫? 材料がどこに――」

マナ「まだろくに調べてないからなんとも言えないけど。家族をネタにするとか」

シンジ「そんな……それに、そうなったら逆に母さんに告げ口をされるきっかけを与えてしまうかもしれない」

マナ「でも、方法を見つけて対等の立場にならないと……シンジくんだけが不利になってしまってるのよ」

シンジ「わかってる」

マナ「時には汚いと思う手段だって必要だよ。すべてが順調なら頼る必要はないけど。失敗した分は取り戻さなくちゃ」

シンジ「落ち着いて考えなきゃいけない。明確なミスをしたのは一度だけなんだ。慌てて判断間違いを繰り返せば取り返せなくなる」

マナ「だけど……っ! 迅速に状況判断をして決断しないと……!」

シンジ「わかってるっ! わかってるよ、もしかしたら、今ごろ母さんに」ギリッ

マナ「……」

シンジ「――……ひと騒動起こすよ」

マナ「えっ?」

シンジ「カラーコンタクトを取りに行ってる暇はないから、範囲がどこまで有効か試したことないけど……力を限界まで使う」

マナ「力って……? なにするつもり?」

シンジ「基地に張り巡らされている電波を丸ごと妨害する。機器を一時的に使えない状態に」

マナ「そんなの不可能よ。軍事施設はサイバーテロのに対する備えだってあるんだから。予備の電源が……」

シンジ「僕がやろうとしてることは停電にするわけじゃないんだ。ただよってる電波に強力な上書きをするだけ。正常に働けないほどのね」

マナ「可能だとして、そんなことしてどうするの?」

シンジ「説明してる猶予はない。はじめるよ」

マナ「は、はじめるって……? どうやって?」

シンジ「ふぅ……」スッ

マナ「シンジくん……? 目を瞑ってなにを」

シンジ「……」キィーンッ

マナ「え、な、なに? これ。突然、耳鳴りが」
656 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/02(月) 16:05:53.47 ID:IBAdFOvk0
【ネルフ本部 初号機格納庫】

カヲル「我慢できなかったのか、シンジくん……」

レイ「……」スタスタ

カヲル「キミは……。やはり行くんだね」

レイ「この初号機は仮初めのもの」

カヲル「……」ジー

レイ「要(かなめ)となるコアはないわ」

カヲル「そうか、そういうことか」

レイ「碇くんが呼んでる。行かなくちゃ」

カヲル「方法は?」

レイ「エントリー、手伝って」

カヲル「向こうにある赤い機体を使ったら?」

レイ「こっちの方がいい。碇くんの匂いがするもの」

カヲル「……わかった。ハッチはボクが開けてあげるよ」

レイ「時間がない。司令が発令をだす前に、行動を開始」

カヲル「やれやれ、人使いが荒いな」

レイ「あなた、ヒトじゃないでしょ」

カヲル「比喩表現さ。太陽のように明るい日差しが指すのか……それとも。ボクはまだシンジくんに希望の光を見出せていないのだけど」

レイ「またひとつの分岐点に到達した。選ぶのは私たちじゃない。見守り、そして、助力する」

カヲル「(この先にあるセカイは、果たして福音をもたらすに値するのか……)」

放送「緊急自体発生! 緊急自体発生! 使徒の反応を感知! 場所は厚木基地方面! 職員は速やかに――」

レイ「エマージェンシーコールが開始された」

カヲル「……」

作業班「ったく! いきなりは勘弁しろって! ……キミたちは、こんなところでやって?」

カヲル「こんばんは」スッ ドンッ

作業班「なんだ? ……か、体に宙にっ⁉︎ がはっ⁉︎」ドサッ

カヲル「急ぐんだ。ヒトが集まってくる前に」

レイ「ええ」タタタッ
657 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/02(月) 19:16:55.50 ID:IBAdFOvk0
【ネルフ本部 発令所】

シゲル「厚木基地方面より半径10キロ範囲にて強力なジャミング波をキャッチ!」

冬月「衛星からの映像は?」

マコト「光波、粒子を遮断してる……す、すごいぞ、これは」

冬月「ろくにモニタリングできんか……ユイくん」

ユイ「暴走か、あるいは――」

冬月「意図的に力を発動しているかだな。……葛城一尉の所在は?」

マヤ「こちらに向かっているはずですが、まだ」

冬月「やむをえんな。到着するまでの間、陣頭指揮は司令部で執る」

マコト「まっ、待ってください! 初号機にエントリー反応!」

冬月「なに? 誰が乗っている?」

シゲル「こちらからの信号を拒絶! 内部をモニターできません!」

冬月「ケイジ周辺の映像を出せ」

マコト「そんな、どうなってるんだ。作業員たちが」

冬月「気絶? 死んでいるのか? 大至急、録画データを解析! 今より30分前にまで遡り怪しい映像がないかチェックしろ!」

シゲル「りょ、了解!」

冬月「現時刻を以って、第一種戦闘配備に移行だ! チルドレン達への通達も忘れるなよ!」

オペレーター「了解! 緊急発令! これより第一種戦闘配備へ移行!ただちに指定の配置につけ!」

マヤ「映像の巻き戻し作業を完了! ……これはっ⁉︎ ダメですっ! ノイズがひどくて!」

冬月「やはりタブリスが裏で暗躍していたか」

ユイ「初号機はどうなってる?」

マコト「独力で第三ロックボルトまで解除した模様!」

ユイ「出撃するつもりね。全カタパルト射出盤にロック。急いで」

マコト「了解! ――第二までのカタパルトロック作業、完了! 続いて第三……っ⁉︎」

ユイ「どうしたの? なにか問題が?」

マコト「ぱ、パターン青っ⁉︎ 第三カタパルト付近で使徒の反応を確認!」

シゲル「本部内部に使徒っ⁉︎ いつのまに!」

ユイ「技術班を至急現地に向かわせて。命を賭(と)して初号機の出撃を阻止するのよ」

ミサト「ぜぇっ……ぜぇっ。だぁ……っ、おくれ、ました」

マコト「葛城さん!」

ミサト「ふぅ、ふぅっ、んっ、日向くん、どうなってるの? なんの騒ぎ?」

リツコ「使徒みたいね」

ミサト「リツコ? あんたも今来たの?」

リツコ「マヤ、信号をキャッチした場所は?」

マヤ「あ、厚木基地方面です。現在、広範囲に渡り電波妨害が行われており、発生源の特定を急いでいます」

リツコ「(シンジくんったら、若いわね。我慢しきれなかったのかしら)」

ミサト「えっ、ちょっと待って。初号機がでてるの? パイロットは?」

マコト「不明です!」

ミサト「不明って……? 誰が乗ってるかわからないの⁉︎ レイとアスカはっ⁉︎」

リツコ「寝ぼけてるの? アスカは一緒に連れてきているのではなくて?」

ミサト「あぁっ、そうだった! セカンドチルドレンの弐号機へのエントリー急いで!」

ユイ「零号機の凍結も現時刻をもって解除。以降の指揮は葛城一尉に一任します」

ミサト「了解! さぁ、みんな、久々の使徒戦になりそうよ! 平和ボケしてんじゃないでしょーね⁉︎」
658 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/02(月) 19:41:35.44 ID:IBAdFOvk0
【厚木基地 宿舎】

ムサシ「――なんだ? やけに静かだな」

軍曹「はぁ、はぁっ」

ムサシ「軍曹殿? 見回りの時間はまだ」

軍曹「全隊員、整列ッ!」ピーーーーッ

少年兵一同「……っ⁉︎」ガタガタッ

軍曹「さっさとせんかっ!!」

ムサシ「――隊員以下23名! 整列を終えましたっ!」

軍曹「現在、参謀本部が何者かにサイバー攻撃を受けている!」

少年兵一同「……」ドヨドヨ

軍曹「静かに! 従って全ての電子機器が使用不可能だ! 発生源の割り出しを急いでいるが、あらゆる可能性を想定して動かなければならない! 出撃準備!」

ムサシ「しゅ、出撃でありますか? しかし、どうやって?」

軍曹「人力に決まっておろう! ヤシマ作戦を思い出せ! さいわい、ガソリンで動くものはかろうじて起動ができる!」

ケイタ「ねぇ、ムサシ。EMP攻撃を受けてるのかな?」

ムサシ「電磁パルスか。ありえる。となると、隣国の嫌がらせか」

ケイタ「人間同士で争ってる場合じゃないのにさぁ」

軍曹「私語は慎め! 作業開始!」ピーーーーッ

少年兵一同「了解っ!!」

シロウ「ちょっと待ってもらえませんか」

軍曹「き、貴様は。まだこの基地に滞在したのか?」

シロウ「そう邪険にしないでくださいよ。面白いイベントに鉢合わせできたようだ」

軍曹「見ての通り急いでいる。引き止めた理由を簡潔に述べろ」

シロウ「ムサシ、くん。でしたか、彼とお友達を拝借したい」

軍曹「なんの為にだ?」

シロウ「急いでいるのでは? 詳しく話をすると余計な手間をとらせてしまいますが」

軍曹「ちっ、おい、ムサシ隊員! 浅利隊員!」

ムサシ&ケイタ「はっ!」ザッ ビシ

軍曹「時田博士に同行しろ。……のこりの物は各担当区域に急げ!」
659 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/10/03(火) 22:38:08.54 ID:J0McYcGp0
【厚木基地 執務室】

シンジ「だめだ、これも違う。そっちは――」

マナ「こんなところに忍びこんでもし見つかったら……。それにその瞳の色」

シンジ「悪いけど、まだやる事があるんだ。急がなくちゃいけない。詳しい説明はあとで」

マナ「でも、基地の凄い騒ぎになってるし、シンジくんがなにかしたんだよね?」

シンジ「だから、今は……――あった」ガタガタ

マナ「なに? ……えっ、それって、ネルフの報告書?」

シンジ「……戦自はネルフを調べてるって言ってたよね。だから、調査報告書がどこかにあるはずだと思ったんだ。当てずっぽうでここに来たけど、運がよかった」パサ

マナ「入手してどうするつもり?」

シンジ「あるはずなんだ、きっと、アレが」

マナ「あれって? ねぇ、なんのことだかわからないっ」

シンジ「ここまで大規模に力を使ったら母さんは僕を怪しむ。いや、もう怪しんでいるんだろうけど」ペラ

マナ「それとその書類になんの関係が? 今は軍曹の口封じが先決なんじゃないの?」

シンジ「使い捨ての駒のひとつなんだよ。チェスでいうポーン。僕たちに彼を止める手立てはない。方法は殺すしか――」

マナ「こ、殺さなくてもっ! それなら脅迫する方がまだっ!」

シンジ「僕だってそんなつもりは毛頭ない。かといって、脅迫するつもりもね」

マナ「だったら、どういう?」

シンジ「僕はね、ずっと糸を頼りにその上を歩いてきた。ロープの上を歩く綱渡りの人生とかって言うじゃない?」

マナ「うん」

シンジ「僕の力の正体を隠すには、なにもしないのが一番いいんだ。誰かが困っていても、見て見ぬふりをしてやり過ごす。そう――……“行動”しなければ“起”は生まれない」

マナ「う、うん?」

シンジ「それだけじゃ嫌だったんだ。僕は、自分自信が好きじゃなくてキライだったから。……父さんにも、捨てられたくなくて。必死にこっちを見て、頑張ってる僕を見てってわめいてるだけの子供だった」

マナ「……」

シンジ「やっとそれが理解できそうになった時、父さんは帰らぬ人になってしまった。だから、自分を好きになれるように、父さんに褒めてもらえるように、みんなを守りたいんだ。自分の為にね」

マナ「……」

シンジ「――……あった」

マナ「なにが、あったの?」

シンジ「極秘ファイル。戦自が企んでいて僕たち知らないモノ」

マナ「交渉テーブルの材料に使うつもり?」

シンジ「決断の時がきてる。全てを母さんに曝け出すその時が」

マナ「シンジくん……?」
660 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/03(火) 22:44:20.16 ID:ek8WwxBlo
戸棚か引き出しかわからないけど重要書類の場所に鍵もかけてないのか…
661 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/03(火) 23:08:25.95 ID:J0McYcGp0
【ネルフ本部 発令所】

シゲル「安全盤のロックが解除されています! こちらからの制御は不能!」

ミサト「第三カタパルトから強引に上がるつもりか。……本部内における使徒の位置は?」

マコト「同区画にて停止中っ……――ま、待ってくださいっ! 反応ロスト! 消失しました!」

ミサト「消えたっ⁉︎ 使徒がっ⁉︎」

マヤ「初号機は依然として進行中! 技術班の車両と接触……このままじゃ、地上に出られてしまいますっ!」

ミサト「アスカっ! 聞こえる⁉︎」

アスカ『はいはい』

ミサト「準備が済み次第、目標である初号機を追いかけて」

アスカ『追いかけるって。すぐに活動限界になるんじゃないの? アンビリカルケーブルだって繋いでないみたいだし』

ミサト「目的が不透明よ。例え数分でも市街地をむちゃくちゃに破壊しまくられたら被害は甚大だわ」

アスカ『そもそもエヴァってチルドレンしか乗れなあんじゃないの?』

リツコ「そのはず。私たちが知らないだけでなければね」

アスカ『んなアバウトな』

リツコ「パイロットの正体は活動停止してから拝めばいい」

ミサト「使徒の動きに警戒して。消えたなんてありえないわ、どこかに潜伏しているのよ」

冬月「エヴァの存在意義は使徒に対する防御にこそある。人災になることは許されん」

ミサト「はい。とにかく今は初号機停止を最優先――……アスカ? 準備はいい?」

アスカ『このあたしに任せておけばお茶の子さいさいよ。誰がパイロットでも止めてみせる』

ミサト「レイに連絡がつかないから、今はアスカだけよ。頼りにしてる」

アスカ『ふふーんっ! エースとしての腕の見せ所ってわけね! 意外にすぐに機会が訪れたわ!』

マヤ「弐号機、主電源通電! 起動します!」

ミサト「たのんだわよ。エヴァンゲリオン弐号機、発進……!」
662 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/03(火) 23:43:44.85 ID:J0McYcGp0
【弐号機 プラグ内】

アスカ「――うんと、初号機はぁ〜っと。あれ? 地上に出てもいないじゃない。ミサト、どうなってんの?」

シゲル『目標、加速開始! 国道50号線をまっすぐ北上しています!』

アスカ「げぇっ⁉︎ ええっ、ちょっと、それって」

リツコ『追跡するには、弐号機もアンビリカルケーブル接続を切るしかない』

アスカ「ちっ、向こうの電池切れを待ってりゃいいと思ったのにさぁ」

ミサト『市街地の破壊が目的ではないだけ良しとしましょう。ここから北上するにあたり主要な都市は?』

マコト『ほとんど海の底ですよ。あるといったら、軍事拠点の厚木基地ぐらいしか』

ユイ『すぐに追跡を開始』

ミサト『えっ? し、しかし、長距離の移動は。通過するころにはほとんど残り時間が』

ユイ『国外に持ち出されたらとは思わないの?』

ミサト『そうか、そういうパターンもあるのか。失礼致しました。聞こえたわね、アスカ?』

アスカ「たくもーっ! なんで追いかけっこしなくちゃなんないのよぉ!」

リツコ『急いで加速状態にはいって。シンクロ率で速度は上下するけど、マックスで音速を超える』

アスカ「すごいGがきたりすんじゃないでしょうね?」

リツコ『心配いらないわ。プラグ内を満たしているL.C.Lが衝撃を吸収してくれるから』

アスカ「はぁ……よっと」ガコンッ

ミサト『なにやってるの』

アスカ「スプリンターみたくクラウチングスタートした方がかっこいいじゃない。気分よ、き・ぶ・ん」

ミサト『遊びじゃないのよ。スタート』

アスカ「あー、やだやだ、これだから大人ってのは。言われなくても、行くわよっ!」ダンッ ダンッ ダンッ

マヤ『弐号機加速状態に移行!』

アスカ「……ほんとだ。中は全然変わりないんだ」ダンッ ダンッ ダンッ

リツコ『集中して。走ることだけをイメージするのよ。マヤ、アンビリカルケーブルの有効範囲は?』

マヤ『間も無く切れます』

リツコ『初号機と弐号機のタイム差の算出、急いで』

ミサト『追いつける?』

リツコ『ざっとみた感じ、厳しいわね』

ミサト『アスカっ! 真面目にやってる⁉︎ 目標を抑え込んで停止させなくちゃいけないのよ!』

アスカ「やってるわよ! 最高速に移行するまで加速ギアってもんがあるでしょーが!」

リツコ『シンジくんなら、どうするかしらね』

アスカ「……っ⁉︎ なんで今あのバカシンジが出てくんのっ⁉︎」

リツコ『彼はいつも私たちの期待した結果を残してくれたもの。過程は右往左往することはあっても』

アスカ「私じゃ無理って言いたいわけっ⁉︎」

リツコ『ほしいのは結果なのよ。おわかり?」

アスカ「くっ! この……っ!」

マヤ『弐号機、シンクロ率が5パーセント上昇!」

シゲル『――さらに加速! ケーブルの断線を確認! 内部電源に切り替わります!』

ミサト『五分が勝負の分かれ道ね。とにかく全速力で走って! 急ぐのよ!』
663 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/04(水) 00:18:48.65 ID:EZgE3ZWW0
【ネルフ本部 発令所】

マコト「内閣府よりホットライン入電。戦自司令室と日本政府が回線に割り込んできています。どうやら、状況の説明を求めているようですが……」

冬月「ハゲタカどもめ。やはり見過ごしはせんか」

ユイ「……」

冬月「どうする? 人為的ミスだと応答するわけにはいかんぞ」

ユイ「全てキャンセル。ネルフ特権十五項を発動して。後に報告すると伝えなさい」

シゲル「了解。そのように返信いたします」

マヤ「到着時刻の解析が終了! 切断後、およそ3分で初号機に追いつけます!」

リツコ「サブタスクで予定時刻を表示」

マヤ「了解!」

ミサト「いい感じよ!そのまま加速を続けて!」

アスカ『ぬぅぅぅおおぅりやぁあああっ!!』

冬月「初号機の目的地はもしや、サードチルドレンではあるまいな?」

ユイ「パイロットがタブリスなら……」

冬月「奴はなにを考えているんだ。こちらとしてもこれ以上、野放しにするわけにはいかんだろう」

マコト「目標、神奈川方面に向け進行中」

シゲル「軍の総合観測所から入電。エヴァを停止するよう言ってきています。……関連施設からの回線が入り乱れてるな、こりゃあ」

ユイ「一時的でかまわない。作戦行動に支障をきたすようであればシャットアウトして」

シゲル「りょ、了解!」

マヤ「目標、活動限界を残り2分を切りました!」

ミサト「弐号機は⁉︎」

マヤ「タイムラグがありますので、残り3分30秒!」

ミサト「アスカ! 追いつければこちらが有利よ、足止めするだけでいい! 待ってれば勝手に自滅するわ!」

アスカ『くっ! もっとラクショーだと思ったのにぃぃっ!』

マヤ「……っ⁉︎ 初号機、さらに加速っ!」

シゲル「音速の壁を突き破ります!」

ミサト「まずいわよ……! とんでもない突風がくる! 近隣に住宅地はっ⁉︎」

マコト「付近半径5キロメートル四方は山に囲まれています!」

ミサト「ほっ、助かった――」

リツコ「安心するのはまだはやい! 弐号機の加速数値はっ⁉︎」

マヤ「初号機の加速率が想定の遥か上になってしまっています!」

リツコ「計算外だわっ! アスカ! もっと速く! 追いつけなくなるっ!」

アスカ『んなくそぉおおおおっ!!』

マコト「ダメです! 弐号機、速度あがりませんっ!」

リツコ「初号機に停止信号を送信!」

マヤ「送信、やはりだめです! 受け付けません!」

リツコ「何度でもトライし続けなさい!」

ミサト「間に合わないか……! アスカっ! 作戦を変更! 初号機が停止した地点に急いで向かって!」
664 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/04(水) 00:49:14.27 ID:EZgE3ZWW0
【厚木基地】

マナ「大丈夫? すごい汗かいてる」

シンジ「ちょっと、力を使いすぎちゃって。マナもそろそろ宿舎に戻って。僕に拉致されてたって言えばいいよ」

マナ「えっ? なんでそんなこと」

シンジ「基地内が大騒ぎになってるんだ。そんな時に不在じゃ、理由が必要だろ」

マナ「でも、それじゃシンジくんが……」

シンジ「僕はもうすぐここからいなくなる。綾波がここに来るだろうから」

マナ「綾波、さん?」

シンジ「まだ賭けの途中なんだ。このファイルを手に入れられたことはラッキーだったとしか言いようがないけど、今は良い方向に向かってる」

マナ「……」

シンジ「――だけど、次がどう転ぶかはわからない。こんなに都合よくことが運ぶとは思えないし……。これ以上、マナを巻き込みたくないんだ」

マナ「そんな……そんな、寂しいこと言わないでよ。たしかに、私たち知り合って間もないけど、友達じゃない」

シンジ「友達だから、そう思うんだ。ごめん、僕は自分勝手だよね」

マナ「また、会える?」

シンジ「いつか、生きてたら会えるよ」

マナ「死んじゃうみたいなこと言うのね」

シンジ「……」

マナ「シンジくんと一緒に行きたい気持ちが半分。でも、残り半分はムサシとケイタを残していけない」

シンジ「うん」

マナ「自分勝手なのは私だよ。助けてもらってばかりで、正体がバレた瞬間に……本当なら殺されてもおかしくなかった。今、選ぶことができるのはシンジくんのおかげ」

シンジ「……」

マナ「なにもしてあげられなくて、ごめんね」

シンジ「いいよ」

マナ「シンジくんが抱えてる色んなことを、一緒に分かち合ってくれる人、いる……?」

シンジ「どう、かな……」

マナ「もし、その相手が女の子だったら。自分から話さなくちゃだめだよ」

シンジ「でも、僕は」

マナ「甘えたっていいの。弱さを受け入れてくれると信じなくちゃ」

シンジ「……」

マナ「きっと、その子も待ってるはずだから。絶対、ね? 約束して?」

シンジ「――……わかった」

マナ「うんっ! ぐすっ……色々とごめんなさい。私……っ」

シンジ「マナ……」

マナ「本当に平気? 綾波さんがここに来られるの?」

シンジ「たぶん。力を発動した時点で気がついてると思うから」

マナ「そっか……わかった。私、戻るね?」

シンジ「うん」

マナ「本当に、また、会えるよね?」

シンジ「いつか、きっと」

マナ「デートする約束も守ってもらってないんだからね! きっとだよ……!」ポロポロ
665 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 08:05:35.37 ID:cMo7lRx9O
重要書類が段ボールの中で保存してるかのような描写だな……
しかも最重要系でしょ無人の場所に保存しないでしょ
666 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 11:09:18.98 ID:lSownb/vO
想像力が足りんやつらばかりだな
突然の騒動で慌てて席を外したとか考えんのかね
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 11:38:36.90 ID:2ft8E2cyO
シンジがくる前に書類見てた

騒動おきる

誰かが呼びにきたor急いでどっかに向かわなけれいけなかった

書類を引き出しか棚に閉まったけど鍵かけ忘れた

でいいじゃん
ヘルパーの件もそうだけど重箱の隅をつつけばいいってもんじゃないだろ
気にするようなとこか?
668 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 11:55:46.21 ID:8TQu/XDeO
話がしっかりしてるからそういうところでしか揚げ足取れないんだろ
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 12:08:46.94 ID:rFRCORg0o
超人パワーで開けたでええやん
670 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/04(水) 22:05:44.31 ID:EZgE3ZWW0
【通路】

ケイタ「あれ、歩いてきてるのは、マナ……? 管制塔はこっちじゃ」

シロウ「お友達かい?」

ムサシ「左様でありますが――……」

マナ「ムサシ、ケイタ」トボトボ

ムサシ「あいつはどうした? そばについていたはずじゃ? 目が腫れて……泣いてたのか?」

ケイタ「なにかされたの?」

マナ「……」

ムサシ「あの野郎……っ!」

シロウ「あいつというのも同じ隊員か?」

ケイタ「あ、いえ、違います。ネルフから訓練生できている奴のことで」

マナ「ち、違うの。シンジくんは……」

ムサシ「……? 違うのか?」

マナ「その、違わないけど」

ケイタ「マナ……?」

シロウ「面白い。実に興味深い反応をしている。キミも我々に同行してもらおうか」

マナ「えっ? あの、なにかするんですか?」

シロウ「実験だよ。簡単な適性審査というべきか」

ムサシ「待ってください! 霧島隊員は情報管理部に所属しており――」

シロウ「発言の許可を許していない。ムサシ隊員は私から質問された場合にのみ答えたら良い」

ムサシ「……っ!」

シロウ「戦自に所属する者ならば理解しているだろう。命令系統の厳しさを」

ケイタ「し、しかし」

シロウ「キミまで口を挟む気か? よほど大切な者のようだな。私にとって些事にすぎんのが悩みどころだ」

ムサシ「……」

シロウ「そうだ、それでいい。霧島隊員といわれていたか? 行くぞ」

マナ「あの、私には任務が」

シロウ「その任務とやらは基地で起きている騒動を無視して許されることか?」

マナ「事情があったんです!」

シロウ「裁定を下せる権限はない。しかし、報告することはできるのだぞ……例えば、サボタージュしていたとかな」

ムサシ「でっち上げでしょう! そんなの!」

シロウ「ウソか真実か。重要な指摘はそこではないのだよ。キミらと私。……どちらが信用するに値するかだ」

ケイタ「(こ、この人……ムサシ)」チラ

ムサシ「……」コクリ
671 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/04(水) 22:08:44.43 ID:EZgE3ZWW0
シロウ「アイコンタクトでイカれたやつだと確認しあっているのか? 子供にもわかりやすいよう説明しているだけのことだよ」

ムサシ「発令は絶対です。上官がご所望するのであれば俺たちは兵として、応えざるをえません」

シロウ「なにやら引っかかる言い方だな?」

ムサシ「――ひとつ問題が。博士が所属なされている機関は戦自ではありません」

シロウ「なぜキミにわかる?」

ムサシ「隊がつけているバッジを身につけておられないからであります」キラン

ケイタ「必ず着用するように義務づけられています」キラン

シロウ「んん〜?」ジー

ムサシ「したがって、戦自機関でない者からの命令に従う義務は――」

シロウ「これのことかな?」スッ

ムサシ&ケイタ「……っ⁉︎」ギョ

シロウ「すまないね。そのままポケットにしまったままだった」

マナ「当所属の博士殿でありましたか」

シロウ「いかにも。といっても、着任したばかりだが。……あぁ、そういえばまだろくに自己紹介をしていかなったな。本日付けで戦自科学研究室に配属となった、時田シロウだ。以降、お見知りおきを」ニヤリ

ムサシ「(くそっ……なんてこった!)」

ケイタ「む、ムサシ……!」

シロウ「さて――……これで、キミたちが私に従う道理ができてしまったわけになるが、他に気になるところは?」

ムサシ「くっ!」

シロウ「ここに配属となれば悪いようにはせんよ。人類の……いや、日本国の未来に貢献できると約束しよう」ニヤニヤ

ケイタ「マナっ! あいつはどこに行ったのっ⁉︎」

マナ「シンジくんなら――」ズズーンッ!

ケイタ「うわっ⁉︎ 地震? ……違う」

ムサシ「ちくしょう、今度はなんだって言うんだっ!」

ケイタ「滑走路の方角だ! 南!」
672 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/04(水) 22:41:34.62 ID:EZgE3ZWW0
【滑走路】

シンジ「はぁっはぁっ」タッタッタッ

レイ『碇くん』

シンジ「綾波ぃっ! ここだっ!!」キッ

初号機「……!」ドンッ ドンッ ダンッ

シンジ「うわっ⁉︎」

初号機「……」プシューッ

レイ「碇くん、スピーカーに切り替えた。どうしたらいいの?」

シンジ「稼働時間が残り少ない! プラグをイジェクトして!」

レイ「了解」ピッピッ

戦自隊員「おーいっ! こっちだ……っ⁉︎ こ、こいつは、エヴァじゃないか⁉︎ なぜ厚木基地にっ⁉︎」

シンジ「(よし、人が集まってきてる)」

初号機「……」ガコンッ

シンジ「僕もそっちと合流する」カチ ピッ

レイ「……」シュー

シンジ「ありがとう、来てくれて。綾波なら、きっと気がついてくれると思ってた」

レイ「トラックが集まってきてる」

シンジ「うん。いいんだ、これで」

レイ「そう」

シンジ「母さんが窮地に立たされるから。結局頼ってしまって、ごめん」

レイ「かまわないわ」

シンジ「ミサトさんたちは?」

レイ「回線を切ってたから」

シンジ「そっか。今頃はネルフ本部も大騒動になってるだろうね」

レイ「弐号機が追走してきた」

シンジ「アスカが? それで、現在地は?」

レイ「わからない。途中で私が速度を上げたから」

弐号機「……!」ビュ シュバッ

戦自隊員「おい! そこの二人! 両手を上げて――な、なんだぁっ⁉︎」

弐号機「……」ズーーーンッ プシューッ

シンジ「なるほど……来たね」

アスカ「やっと追いついた……っ⁉︎ ふぁ、ファーストぉっ⁉︎ なんでここにっ⁉︎ 初号機が暴走してた犯人ってあんただったのぉっ⁉︎」

レイ「よく追いつけたわね。あの速度ではここまで辿り着けないと思ったのに」

アスカ「はっ! あれからすぐにあたしだってマッハに突入したわよ!」

レイ「……」

シンジ「アスカ。一日ぶり」

アスカ「シンジ……? って、今はあんたにかまってる暇ないわよ! そこの人形!」ビシッ

レイ「……」

アスカ「どういうつもりっ⁉︎ あんた自分がなにしでかしたかわかってんの⁉︎」

ミサト『アスカっ! 現状を報告して!』

アスカ「あぁん、もう、ごちゃごちゃうっさいわねぇ! 弐号機のカメラを繋いであげるから自分の目で確認したらっ⁉︎」
673 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/04(水) 23:12:55.05 ID:EZgE3ZWW0
【ネルフ本部 発令所】

ネルフ職員一同「……」ドヨドヨ

シゲル「あれって、綾波レイじゃないか?」

マコト「それに、シンジくんも?」

マヤ「シンジくん……」

ミサト「レイが初号機を操ってたってわけ? ……でも、どうして」

リツコ「(焦ったわけでなかった? 企んでたのね、あの子)」

冬月「当てが外れたな」

ユイ「タブリスが協力しているのはまず間違いないでしょう。でなければ、本部内における使徒の反応の説明がつかない」

冬月「まったくの的外れというわけでもないか。……しかし、これは困った事態になったぞ」

ユイ「……」

冬月「ネルフに所属するパイロットがエヴァを私的な理由で使用したのだ。映像で確認できる限り、目撃者の数が多すぎる」

ユイ「もみ消そうにも、相手が悪すぎる。いがみ合う関係にある戦自と政府には都合の良い材料となりました」

冬月「これを機に、キミの責任問題まで発展させ国会で論じるだろうな」

ユイ「葛城一尉」

ミサト「は、はい?」

ユイ「初号機と弐号機を速やかに回収。以降はネルフに帰還させて。パイロット達も」

ミサト「サードチルドレンはいかがなされますか?」

ユイ「事情聴取しなければならない。もちろん帰還よ」

ミサト「はっ!」ビシッ

冬月「これで疑念の余地はなくなったか。やつは力を自覚し、意図的に使用して今回の事態を引き起こした」

ユイ「やはり私に対し牙を剥くようですね」

冬月「ここまで大胆な行動にでられるとは。子供相手だと思って甘く見過ぎていたか」

ユイ「ふぅ……対応が後手後手にまわっていたと認めざるをえません。一本とられました」

冬月「……」

ユイ「ですが、行動には結果がつきものです。これで勝ったなどと思わせるべきではないし、また、そうはなりません」

冬月「報復を与えるか」

ユイ「力関係と立場はなにも変わっていないのです。軽はずみに動けばどうなるか、シンジに身をもって経験させましょう」

リツコ「……」チラ

ミサト「あんた、やけに落ち着いてるわね」

リツコ「驚いてるわよ? 表にだしてないだけで」

ミサト「レイは初号機とのシンクロ率の融和性がそんなに高くないはずでしょ? どうなってるの?」

リツコ「A10神経で接続している以上、体調、気分の高まりによってシンクロ率は上下すると考えられます。一概に低い高いの基準は定められないのよ」

ミサト「つまり、今回だけってこともありうるの?」

リツコ「なくはないわね。今回、高い数値を計測して速度をマックスにまで加速できたのは、レイが強く願ったからじゃないかしら」

ミサト「シンジくんの元に向かうために?」

リツコ「でなければ、初号機を無断で使用なんてすると思う?」

ミサト「……」

リツコ「始末書と抗議文の山が待ってるわよ。仕事ができてよかったじゃない。あなた、いつも暇そうだから」

ミサト「デスクワークが増えるのはかまわないけど。……レイはどうなるの?」

リツコ「(それはシンジくんの交渉次第ってところかしらね)」

ミサト「リツコ?」

リツコ「それよりも今は、回収が最優先事項だわ。事の経緯については、自ずと明らかになるでしょう」
674 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 02:09:06.24 ID:aNINHIXTo
金庫?なら腕力でこじ開けたと思ったけど
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 08:58:35.46 ID:csTyPW5AO
どうでも良すぎる
台本SSはキャラの個性があまりにも崩壊してなきゃどうだっていいよ
まぁこれはガチで話作りがしっかりしてるだけに気になってしまうてのならわからんでもないが
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 09:48:17.40 ID:q7Cfo4Eao
普段しっかり話が練られているからこそ、そこだけご都合主義に感じたって所はある
綾波召喚だけでユイの責任は問われるしハッタリで乗りきって欲しかったかも
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