シンジ「その日、セカイが変わった」

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628 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 00:33:35.05 ID:MW53ChTl0
ムサシ「なんでそんな肩入れしてんだよ。別任務で離れてるって聞いたが、そいつと一緒だったし」

マナ「必要? その話が今」

ムサシ「なんだよ」

マナ「ねぇ、ムサシ。優しかったあの頃に戻ってよ。おかしいのよ。ここも。私たちも」

ムサシ「はぁ……」

マナ「これしかないって思わされてるだけ! 隊を抜けても、貧しくても、笑い合ってたあの頃に……!」

ムサシ「物乞いみたいなマネしろってのか!」

マナ「仕事ならきっとあるよ!」

ムサシ「俺は嫌だ! あんな生活! 二度とごめんだ!」

マナ「ムサシ……」

少年兵A「おう、ムサシ。先に行くぞ」

ムサシ「ああ、俺もすぐ行く」

マナ「ねぇ、考えなおして? 私も協力するから」グイッ

ムサシ「うるさいっ! ここには家族がいるんだ! 見捨てられるわけないだろっ!」バシッ

マナ「きゃっ」

ケイタ「ムサシっ!」

ムサシ「あっ……くそっ」

ケイタ「大丈夫? マナ」スッ

マナ「私たちはずっと三人一緒だったじゃない。ここの人たちは、みんな、仕方なく一緒にいるだけよ。命令違反をしたら守ってくれるっ⁉︎」

ムサシ「……」

マナ「もしそうなれば、みんなが牙を剥くわよ! そう教育されてるから!」

ムサシ「そんなことにはならない。命令違反なんてありえないからだ」

マナ「気がついてよ! 洗脳されてるの!」

ムサシ「――うるさいっ! うるさいうるさいっ! 命令は絶対だ! 守るべきものだっ!」

シンジ「ほんとにそう?」

ムサシ「なに……?」

マナ「し、シンジくん?」

シンジ「自分の考え、ないの?」

ムサシ「俺の考えがそうなんだ! 命令と常に同じだ!」

シンジ「マナや浅利くんとだったら、どっちを選ぶんだよ」

ムサシ「そ、それは……。お前には関係ないだろう! 気安く呼ぶな!」

ケイタ「……」

シンジ「このままここにいると、戦場にいっちゃうんだろう。浅利くん、死んじゃうかもしれないよ」

ムサシ「俺たちがやらなきゃ、どうせ誰かは死んでるんだ!」

シンジ「だったら、なんでキミ達が行く必要があるんだよ」

ムサシ「な、なに言ってんだ、お前」

シンジ「僕は、逃げたらいいと思う」

ムサシ「このっ! パイロットのお前がそれを言うのかっ⁉︎ 戦うべきだって言うべきだろ! じゃなきゃ死んでいったやつが――」

シンジ「僕が戦うよ。使徒とは」

ムサシ「……くっ、あっはっはっ。雑巾投げつけられたのにか? 頭おかしいんじゃないのかお前」

マナ「なにがおかしいのよっ! 立派じゃない!」
629 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 00:56:26.23 ID:MW53ChTl0
ムサシ「できもしないことを口にするのが立派なもんかっ!」

シンジ「……たしかに、今のは軽はずみだったかもしれない。けど、キミだって苦しいんだろ」

ムサシ「俺が苦しい?」

シンジ「最初は、ご飯が食べられればよかった。こんなつもりじゃなかったんじゃないの」

ムサシ「お前になにがわかる!」

シンジ「素直、なんだね。だから、こうやって受け止めてしまう」

ムサシ「ロボットがあるやつには永遠にわからない! 歩兵部隊のこわさも! 苦しみも!」

シンジ「……いい。わかった。僕がトイレ掃除しとくよ」

マナ「無理よ。時間に間に合わなかったら隊の全員が処罰対象になる。そうなったら、もっと……!」

シンジ「大丈夫。できることからやっていけばいい」

ムサシ「……」

ケイタ「……あの、碇隊員」

ムサシ「やめとけ、ケイタ。どうせできっこねぇ。そしたらまた風当たりが強くなるだけだ」

ケイタ「ムサシ」

ムサシ「行くぞ」スタスタ

ケイタ「ま、待ってよ、ムサシ!」タタタッ

シンジ「ふぅ……よっと」パンパンッ

マナ「シンジくん、私、手伝う」

シンジ「いいよ。ここは男子トイレなんだし」

マナ「ムサシ、あんな人じゃなかったのっぐすっ」ポロポロ

シンジ「あ……」

マナ「どんどん変わっていっちゃって。ケイタも、なにも言えなくて」

シンジ「そうなんだ、うん、大丈夫」

マナ「できれば、恨まないであげてほしい。私が勝手なこといってるってわかってるけど」

シンジ「平気だよ。これぐらい」

マナ「ごめんね」

シンジ「いいんだ。それよりもマナも戻った方が」

マナ「私、シンジくんに近づけって言われてるから」

シンジ「え? まだ続いてるの?」

マナ「うん、だからここに来れたの。きっと、シンジくんが辛い思いをしてる時に手を差し伸べさせたいんじゃないかな。離れられなくなるように」

シンジ「いろいろ考えるんだね」

マナ「汚いよね、大人って。利用して、利用されて。あるのは打算ばっかり」

シンジ「……そうかもしれない」

マナ「掃除、しよっか」

シンジ「いや、そこは僕ひとりでやる。マナは見てていいよ」

マナ「え? でも」

シンジ「僕がやらなきゃ意味がないんだ」

マナ「……うん、わかった」






630 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/26(火) 01:24:35.36 ID:xjXiNuolo
>>627
まあ神経ブロックはできるし、エヴァの中が一番安全って言っちゃってるからなあ。

にしてもあんまりゲスに書きすぎると助ける必要性というか、蓋然性がなくならないか?
631 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 18:47:47.00 ID:MW53ChTl0
構成はこれまでの流れの中で無理のないように組み立てているつもりです
たいしたものではないですが戦自パートの導入部位みたいな感じですかね
632 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/26(火) 18:52:24.62 ID:Xk8i3Od9o
>>630
ゲスになりすぎないようにマナが必死にフォローしてるんだろう
633 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 19:54:28.31 ID:MW53ChTl0
【数十分後 男子トイレ】

マナ「掃除の効率いいのね。あ、そのタオルは最後にここ。手洗い場で浸しておくの」

シンジ「なんとなく毎日してたら自然とこうなってた。洗剤使うの?」

マナ「うん。水がたまったら洗剤を少量いれて、タオルはこうやって伸ばして浮かせて」トプン

シンジ「へぇ、こんな洗濯法なんだ」

マナ「シンジくんって、ほんと、変わってる。普通かと思えば、そうじゃない思う瞬間もあって……。戦いとかそういう争い事に遠そうな存在に見える」

シンジ「エヴァがなかったら普通に暮らしてただろうからねぇ」

マナ「楽しい? 毎日が。自分のしたいことしてるの?」

シンジ「してるよ。選べる中からだけど。僕は自分の中で満足できればいいんだ」

マナ「やっぱり、戦自は似合わないよ。シンジくんには――」

ムサシ「おいっ! パイロット!」

シンジ「あぁ、おかえり」

ムサシ「ちゃんと掃除は……あ、あ?」

ケイタ「わぁ、すごい。これひとりで? マナも手伝ったの?」

マナ「私はぼーっと眺めてただけ」

ムサシ「ウソつけ! こんな短時間でそんなの無理に決まってるだろう!」

マナ「本当の話。なによ、自分たちだけどっかいっちゃったくせに。疑うなら最初から監視しとけばいいじゃない」

シンジ「疲れはしたよ。ただ、家事全般はもともと慣れてたし」

ムサシ「家事が得意な戦自だと⁉︎ お前は配膳係か!いちいちイラつく! 間の抜けた返事しやがって! まだ訓練メニューは残ってるぞ!」

シンジ「はぁ……ちょっと、聞いてほしいんだけど」

ムサシ「新兵の話なんぞ――」

シンジ「聞けって言ってるだろっ!!」ビターン

ムサシ「な、なん……?」

シンジ「まず、僕が新入りだってのはその通り。ここのルール、習慣なんて知らない。だから覚えるまでの間、こんなことがあっても納得はできる」

ケイタ「……」ポカーン

シンジ「問題は“このやりとりがいつまで続くのか”って話なんだ。ムサシ、くんの話を聞いてると僕がパイロットなのが気にくわないようと言ってるように思える」

ムサシ「当たり前だろ、お前みたいな軟弱者が」

シンジ「キミが僕を認めることはあるの? 今聞いてもないと即答で――」

ムサシ「ないっ!!」

シンジ「……だよね。それは嫌なんだ。僕はネルフの人間でパイロットだけど、そうじゃないと思ってもらえない?」

ケイタ「そんなの、無理だよ……」

シンジ「どうして?ここが戦自で、キミたちは隊員だから? でも、今は僕もそうだよ」

ムサシ「一定期間だけなんだろ! すぐに帰っちまうくせに!」

シンジ「いつかはネルフに戻るとは思う。でも、所属機関を間に挟まなければ、キミたちと僕の間になにもないじゃないか」

ムサシ「お前、頭のネジが一本はずれちまってんじゃねぇのか! そんなのがまかり通るわけねぇだろ!」

シンジ「だったら、どうしたらいい?」

ムサシ「そりゃ聞くまでもねぇだろ、体力テストで良い成績を残せば」

シンジ「(あぁ、やっぱりそうなのか、アスカの言う通り。ここで力を使ったら母さんの思惑通りなんだろうし……うぅーん)」

ムサシ「――それか、俺にタイマンで勝ったら認めてやる」

ケイタ「無茶言うなよ、ムサシ」

シンジ「ん? タイマン? それって負けても誰にも言わない?」

ムサシ「お前がか? いや、言いふらす!」
634 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 20:32:56.04 ID:MW53ChTl0
【昨夜 マヤ宅 リビング】

マヤ「プレゼントがあるの。はい、どうぞ」トン

シンジ「嬉しいな。僕、誕生日じゃないですよ?」

マヤ「いいからいいから」ニコニコ

シンジ「……?」

マヤ「開けてみて?」

シンジ「なんだろう……? え、これって」ガサガサ

マヤ「驚いた? カラーコンタクト。シンジくんには必要でしょ?」

シンジ「あ、瞳の色を隠すために?」

マヤ「外見的な特徴はただひとつ、やっぱりその瞳。普段は黒色なのに、力を使う時だけ赤い色に変化する」

シンジ「なんで今まで見落としてたんだろう」

マヤ「簡単なことほどね。灯台下暗しって言うじゃない」

シンジ「マヤさん……ありがとう」

マヤ「実験してた私が言うのもなんだけど、その力はあまり使わない方針がいいと思うの。特に戦自にいる間は」

シンジ「……?」

マヤ「もし、常人ではありえない身体能力してるってわかれば、とんでもない騒ぎになるはず。だから、力を誇示したいが為になんてしちゃだめ」

シンジ「はい」

マヤ「司令はまだ探ってるのかもしれない。シンジくんのその力について。……言ってないのならだけど」

シンジ「リツコさんは言ってませんよ。そう確信できます」

マヤ「とにかく、その力はここぞって時に使うのよ? 約束、ね?」
635 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/26(火) 21:02:44.03 ID:MW53ChTl0
【再び 同男子トイレ】

シンジ「(カラーコンタクトはバックの中だったはず、いや、やっぱり……ここで力を使ったら軽率すぎるか)」

ムサシ「どうした! 怖気づいたのか!」

マヤ「もうやめてよっ!」

ケイタ「そうだよ、ムサシ。やるわけないさ」

シンジ「うぅーん」

ムサシ「とんだ腰抜け野郎だな」

シンジ「……うん、言いふらされると困るからやっぱりやらない」

ムサシ「負けるのがこわいのかっ⁉︎」

シンジ「そんな感じ」ポリポリ

ムサシ「はぁ、さっきまでの威勢はなんなんだよ。なぁ、マナ。なんでこんなやつにまとわりついてんだ?」

マナ「ムサシには関係ないでしょ?」

ムサシ「珍しいだけだろ。珍獣みたいな扱いか?」

マナ「なに? ヤキモチ?」

ムサシ「ばっ⁉︎ 俺がなんでっ⁉︎」アタフタ

マナ「悪いけど、ムサシはそういう対象じゃないから」

ムサシ「……っ⁉︎」

ケイタ「告白する前からフラれるってきついね、ははっ」

ムサシ「ケイタッ!! この野郎っ!」バシッ

ケイタ「いたっ」

シンジ「そろそろ集合時間じゃない?」

ムサシ「マイペースすぎんだろ。お前は結局なにがしたかったんだ?」

シンジ「うーん、僕もね、探ってる感じ」

ケイタ「探るってなにを?」

シンジ「なにが一番いいのか」

マナ「……?」

シンジ「遅れちゃうよ。急ごう」タタタッ

ムサシ「勝手に仕切るなっ!」

ケイタ「あぁ、行っちゃった。マナ、僕たちも隊に」

マナ「ねえ……ケイタ」

ケイタ「なに?」

マナ「なんか、不自然じゃない?」

ケイタ「え? なにが?」

マナ「あのさ、シンジくんってこれまでなにしてたの?」

ケイタ「トイレ掃除でしょ?」

マナ「その前」

ケイタ「ええと、ランニングとダッシュ……合間に腕立てと」

マナ「吐いた? それとも倒れた?」

ケイタ「そういえば、まだ……あれ? なんであんなに普通なんだろう? 最中は、かなり遅めのペースでひいひぃ言ってたのに」

マナ「普通ならだるくて死んだ魚の目をしてるはずでしょ? もう回復したってこと?」

ケイタ「う、うぅん。でも、今日はご飯は食べれないと思うよ。飯が喉を通らないくらい、疲れてる、はず……」
636 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/27(水) 19:31:57.95 ID:A0IdrlUO0
【厚木基地 参謀本部】

総長「陸上軽巡洋艦トライデント級か。この作戦計画の立案者は例の?」

軍曹「はっ、我が軍に取り入る為、設計図を持参したかと」

総長「実現できるのか?」

軍曹「本人は必ずや実現できると信じているようです。熱の入りようは生半可ではありませんでしたよ」

総長「――時田シロウ。ジェットアローン(JA)計画の落ちこぼれか。日本重化学工業、通産省、防衛庁の共同計画を頓挫させた男」

軍曹「こちらから質問したら、陰謀だとまくしたてたそうです」

総長「ふん、例えそうだとしても失敗は失敗だ」

軍曹「仰る通りです」

総長「完成までどれぐらいかかると言っている?」

シロウ「失礼しますよ」

総長「お前は……なぜここに入れた?」チラッ

軍曹「し、失礼しました。至急、確認に」

シロウ「その必要はありません。防衛庁の者だと表に立っている衛兵に伝えたらすんなり入れてくれました。この身分証を提示してね」

総長「貴様は解雇されているはずだろう。なぜ持っている」

シロウ「必要だったからですよ……。再就職先に」

総長「ここがそうだと言いたいのか? 早計な」

シロウ「6年です」

総長「なに?」

シロウ「そのトライデントが完成するまでの月日の回答になります」

総長「6年もかかるのか?」

シロウ「なに、最初の使徒が現れたのは今から十数年前ではありませんか」

総長「ペースが早まっている」

シロウ「今が異常なんですよ。いつ現れるのかわからないのなら、次もまた十数年後かもしれない」

総長「だめだ。時間がかかりすぎる」

シロウ「タネを蒔いておかないのですか? やはり、あなた方は無能だ。ネルフの下働きが似合っている」

軍曹「き、貴様っ!!」

シロウ「あなた方が辛酸を舐めているのは、なにもしてこなかったからでしょう? 対人である戦争に明け暮れて、宇宙外生命体に対しての準備をね」

総長「……」

シロウ「このままでは、ずっとやつらに先を越されてしまいますよ? いいんですか?」

総長「口の減らないやつだ。ネルフに赤っ恥をかかされた恨みを晴らしたいだけだろう」

シロウ「はい、もちろんです。それのなにが問題で?」にっこり

総長「……」

シロウ「“ネルフを潰したい”。私達の利害は一致している。そうじゃないのですか?」

総長「……実現できると過程した場合の予算はいくら計上する目算だ?」

シロウ「軽く見積もって1兆ほど」

総長「……っ⁉︎ ば、ばかなっ! そんな財源がどこにある!」

シロウ「税率をあげるなりなんなり手はあるでしょう。この国に住まうものならば当然の義務。嫌なら国から出ていけばいい」
637 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/27(水) 19:52:19.68 ID:A0IdrlUO0
総長「政府の認可が降りるわけないだろう!」

シロウ「そこはあなた方、軍上層部の腕の見せ所というわけです。私は出資を求めているのですから」

総長「話にならん」

シロウ「ふっ、よろしいですか。ネルフはそもそも、世界各国政府容認の元、治外法権化しています。法律的にいえば日本領土内に在りながらひとつの国家なのです」

総長「それぐらいは承知している」

シロウ「無尽蔵とも思える資金もまた、日本だけではない各国の後ろ盾があって成り立っている」

総長「……なにがいいたい?」

シロウ「潰す相手は“世界そのもの”だと言っているのです。1兆で買えるとなれば安いものでしょう? 世界のリーダーになりたくないのですか?」

総長「使徒は本当に現れないのか? 信用できん」

シロウ「その点についての確証は持てませんがね。そういうことではない。芽がでるタネの話なんです」

総長「規模が大きすぎる。提督の前でプランを話せ」

シロウ「では、私を紹介していただけますか? それと、6年後を見据えてパイロットの選定にもご協力いただきたい。もちろん、戦自出身者をね」

総長「話は通してやる。ただし、その後のことは自分でなんとかしろ。軍曹」

軍曹「はっ! 年齢に適齢期はあるか?」

シロウ「そうですね、20歳ぐらいがちょうどいいでしょう。サンプルの時間も大いにとれますし」

軍曹「リストアップする」

シロウ「ああ、勘違いしないでくださいよ。6年後にハタチですからね」

軍曹「……了解した。ということは少年兵からの選抜になるか。ちょうど活きの良いのがいる。次期主席候補でいいだろう」

シロウ「野心は必要ありません」

軍曹「心配するな。扱いやすいガキだ。透明性や言論性の自由も求めない」

シロウ「それはそれは。うってつけですね。モルモットにふさわしい。予備も一名ほしいんですが」

軍曹「問題ない。いつも一緒にツルんでいるやつがいる。そいつをつけよう」

シロウ「これで、パイロット候補生は話がつきましたね。早くて助かります」

総長「まだなにか具体的に決まったわけではない」

シロウ「ええ、ええ。もちろんですとも」

総長「先方の都合もある。日時はおって通達し――」

シロウ「今がいいですねぇ、鮮度が落ちてしまいますので。そこにおいてある衛星電話機を使えば一瞬で繋がるでしょう?」

総長「承認できん。有事の際以外は使用することを禁じられている」

シロウ「今がその時なんですよ。参謀総長」
638 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/27(水) 20:21:13.18 ID:A0IdrlUO0
【夕方 食堂】

シンジ「うん、おいしい。雑かと思ってたんだけど、普通の料理なんだね」もぐもぐ

マナ&ケイタ「……」ぽかーん

ムサシ「それも全部国民の税金なんだ。役立たずのくせに申し訳ないとか思わないのか?」

ケイタ「あの。よく、食べれるね」

シンジ「え?」

マナ「食欲旺盛なんだ?」

シンジ「あぁ、うん、まぁ? どうしたの? なんかおかしい?」

ケイタ「いや、そういうわけじゃないけど……。どうだった? 今日一日終えてみて」

ムサシ「まだ終わってないだろ。これから点検とかやることが山積みだ」

シンジ「部活の合宿みたいな感じなのかな。僕は運動部に入った経験がないから想像だけど」

ケイタ「ぶ、部活の延長上……ね」

マナ「シンジくん、訓練についていけなかったんでしょう?」

シンジ「そうだね。やっぱり、やる量っていう密度が濃いのはそう思った」

ムサシ「当たり前だ。なんていったってここは――」

マナ「ムサシ、ちょっとうるさい。持てないものとか、あった?」

シンジ「いや? 途中で背負ったリュックは重かったな」

マナ「あぁ、装備一式を積んだバックパックのこと? 銃も携行したの?」

シンジ「うん、なんだっけ? M16? 銃も重くて驚いたよ」

ケイタ「そういえば、たしかに。後半はなんなくこなしてたような……」

シンジ「あれをいつも背負ったまま移動するんだよね? 大変だ」

マナ「ねぇ、ケイタ。今日は水泳訓練なかったの?」

ケイタ「なかった。そのかわり、地獄のトンボかけがあったけど」チラ

シンジ「このトンカツもちゃんと揚がってる」もぐもぐ

マナ「な、なんで?」

ケイタ「さぁ……?」

ムサシ「おい! そのカツ俺にも一切れくれ!」

シンジ「自分のあるじゃないか」

ムサシ「やかましい! 俺とお前で貢献してる度合いが違うんだ!」

シンジ「お断りだね」

ムサシ「な、なんだとっ! お前やっぱり!」

シンジ「その漬物、いらないの?」

ムサシ「あ? いや、これは最後に」

シンジ「僕のキャベツとトレードしよう」

ムサシ「なっ⁉︎ 馬鹿言ってんじゃねぇ! 俺は漬け物が好物なんだ!」

シンジ「し、渋いね」

ムサシ「ばあちゃんっ子だったからな、俺は。……ってそうじゃねぇだろ!」

シンジ「そういうことなら、漬け物あげるよ。少し箸つけちゃったけど」ヒョイ

ムサシ「お? お、おう」

マナ「ぷっ」

ムサシ「……っ! なんなんだよお前はっ!」
639 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/27(水) 21:32:23.91 ID:A0IdrlUO0
【夜 戦闘機格納庫】

ケイタ「長いだろ。この階段。運搬用のエレベーターとかつけてくれたらいいのに」

シンジ「うん、これ、どこに? 戦闘機の銃弾って、重い、な」

ケイタ「まとまった数は梱包されてフォークリフトやクレーンをつかって運ぶんだけど。端数は、こうやって、人力でっ、よっと」

シンジ「スピードを要求されるんだね、こういう作業って」

ケイタ「“戦場じゃ敵は待ってくれない”が教官の口癖。出撃にしてもそう、使徒が襲来した時に、誰よりもはやく準備を終えていなきゃいない」

シンジ「……」

ケイタ「ネルフがもっと、僕たちに敬意を払ってくれてたら……。キミは陰でこんな仕事してるって知らなかっただろう?」

シンジ「うん」

ケイタ「魔法じゃないんだ。勝手に出てくるわけじゃないし、色んな人が動いて、ひとつの形になってる」

シンジ「そうだね……」

ケイタ「いつも汚れ仕事さ。華のあるキミみたいなパイロットと違って……雑草は、人のやりたがらない仕事を引き受ける」

シンジ「……」

ケイタ「誰だってできるってみんなそう思うのもわかるよ。肉体労働っていうのは、体が資本で、作業そのものは単純だから。でもやる人がいないと出撃すらままならないってことだけは理解しておくべきなんだ」

シンジ「うん。言い返す言葉もないや」

ケイタ「まぁ、それと組織の体質とは話しが繋がらないんだけど」

シンジ「そこまでわかってるのに、戦自じゃないとダメなの? 別の生き方が」

ケイタ「いったろ? 誰かがやらなきゃいけないんだって。僕は食いっぱぐれがなさそうだからっていう動機だけど、ムサシはそう考えてる」

シンジ「浅利くんは? やっぱりマナやムサシくんと一緒にいたいから?」

ケイタ「そうだよ。いつかは、離れ離れになるかもしれない。そういうことを考えないわけじゃない、だけど、今はみんなで一緒にいたいんだ。死ぬことになってもさ」

シンジ「……」

ケイタ「境遇なんてものはきっかけ。人は平等じゃないんだ。パイロットに選ばれる強運があればな。……のたれ死ぬやつもいるのに、僕なんて友達がいるだけマシな方だよ」

シンジ「……」

ケイタ「急ぐよ。遅れるとまた追加で懲罰が待ってる」カンカン

シンジ「わかった、よいしょっと」
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/27(水) 23:28:26.25 ID:kMpDJk9Jo
時田さん…
人を巻き込まないためにJAを作ったんじゃないのか
641 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 01:46:17.96 ID:LMhSvhxyo
おつ
642 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/28(木) 18:50:06.02 ID:NayB0tUw0
【射撃訓練場】

教官「皆聞け! 今回の座学では、兵站(へいたん)部の者に向けてのものとなる。貴様らは戦自陸軍の配属になる予定であるから、知識もまた重要である!」

少年兵一同「はいっ!!」

シンジ「うっ、重っ。ねぇ、聞くだけなのにわざわざ装備一式を担ぐ必要あるの?」

ケイタ「シッ。静かに」

教官「お前たちが身につけているものは、継戦能力を維持するのに必要な“最低限”の装備だ。ムサシ隊員!」

ムサシ「はっ!」ザッ ビシッ

教官「重いか⁉︎ 陸路を闊歩する場合に困難かっ⁉︎」

ムサシ「問題ありませんっ!!」

教官「よしっ! 各隊員よく聞け。注目すべきは銃弾や軽機関銃ではない。これが標準の総装備だということだ。海に投げ出されたらどうなる!」

ムサシ「重量が増すはずであります!」

教官「その通りだ! 水分を多量に含めば、衣服、火器、防具にいたるまで重さは今の三倍になる……」

少年兵一同「……」ゴクリ

教官「そうなればどうなる! 助かるための命綱ともいえる武器を手放すのか⁉︎ 」

少年兵一同「……」ドヨドヨ

教官「――否ッ! それは自殺行為である! 例え助かったとしても、浮上すれば敵が待っているからだ! 絶対に捨てるな!」

少年兵一同「はいっ!!」

教官「貴様らの誰が死んでも、必ずや突撃し、制圧し、仇をうってくれる! 武器に魂をこめるんだ! 上下一心!」

少年兵一同「上下一心ッ!!」

教官「碇隊員! 前へ!」

シンジ「あっ、はいっ!」スッ

教官「諸君、彼の姿をよく見ろ。……まるで似合っていない。孫にも衣装じゃないか? これでは装備が歩いているようなものだ」

少年兵一同「はははっ」

教官「誰が笑っていいと言った!」ピーッ

少年兵一同「……!」ピタッ

シンジ「(たしかに、厳しいかもしれない。でも、ここまで統率をとれるなんて……ネルフって結構自由なんだな)」

教官「貴様らもまだひよっ子にすぎん!」ドンッ

シンジ「うっ」ドサッ

少年兵一同「……」シーン

教官「どうした! 今のは笑っていいぞ!」

少年兵一同「は、ははっ」

教官「貴様がネルフでどんな鍛え方をしたか知らんが、ここにはここのルールがある! それを現時刻より身をもって体感してもらう!浅利隊員!」

ケイタ「はっ!」ザッ ビシッ

教官「痛めつけてやれ」ポン

シンジ「なっ、なんでっ⁉︎」

教官「他の者もだ! 各員列を作れ。……碇隊員を仲間に迎える儀式だ!」

シンジ「ぎ、儀式っ⁉︎ こんなのがっ⁉︎」

教官「口答えをしたな⁉︎ 軍規の乱れを見過ごすわけにはいかん! 笛の合図で代わり番で鉄拳制裁だ!」ピーッ

ケイタ「誰も味方じゃないって言ったよ。……恨まないでね」ボソ ブンッ

シンジ「グッ……っ⁉︎」ドサッ

教官「よしっ! 次ッ――」
643 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/28(木) 19:56:11.17 ID:NayB0tUw0
【ネルフ本部 執務室】

冬月「時田シロウ。行方を眩ましていたかと思えば、まさかこんな形で再浮上してくるとはな」

ユイ「内通者からの定時報告によれば、海軍提督に直訴したようですね」

冬月「我々のシナリオにはないぞ」

ユイ「置き土産がまさかこんなところにもあるとは。JA計画潰しは夫の指示で先生も関与されていたんでしたね」

冬月「……」

ユイ「内閣府はどうでると見ますか」

冬月「一度失敗した者に対し、この国は甘くない。しかし、それは国民に信を問うた場合――」

ユイ「利権が絡めば、その限りではなくなりますね。企業体質といいますか、動く可能性はおおいにある」

冬月「然り。政府の連中も金の匂いには敏感だ。投資分以上の金額を回収すると確約できれば銀行も重い腰をあげるだろう」

ユイ「6年という気の長い月日……。黙認してもいいですが、調子づかせるのは嫌な予感がします。消しますか」

冬月「いいのか? つけいる隙を与えるやもしれんぞ」

ユイ「厄介なのは“執念”です。彼は当初の理念を忘れ、復讐という炎を燃やしている。よほどくやしかったのでしょうね」

冬月「輝かしい人生(レール)の汚点だからな。エリートとはえてしてそういうものだ。崇高な理想を掲げても、一度の挫折でこうなる者もいる」

ユイ「ふぅ……」

冬月「時田はいつ暗[ピーーー]る腹づもりだ」

ユイ「タイミングは見極めなければなりません。それによって開く穴は大きく、また、小さくなる」

冬月「研究中の事故となるよう工作するか」

ユイ「焦る必要はありません、障害になれば即座に」

冬月「承知した。決行に必要な準備は済ませるよう連絡しておこう」

オペレーター「司令。内通者より秘守回線が。なにやら変化があっているようです」

ユイ「繋いで」

軍曹『ご子息の件でご報告があります。現在、射撃訓練場にて隊員による集団暴行を目視確認いたしました。いかがいたしますか?』

ユイ「シンジの身体に変化は?」

軍曹『お待ちください。――……だめですね、双眼鏡を使っているのですが、不自然な点は』

ユイ「他には。なんでもいい」

軍曹『し、失礼しました。ここからだと、特になにか……』

ユイ「もう結構よ。怪しまれない程度に仲裁してちょうだい。深夜の監視は充分に警戒して」プツッ

冬月「ふむ。判断をつけずらいな」

ユイ「確認のための行為が覚醒を促すようなことがあってもいけませんし……」

冬月「どちらにせよ、手が出せん、か」
644 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/28(木) 20:50:32.85 ID:NayB0tUw0
【再び 射撃訓練場】

シンジ「――ぐっ!」ドサァッ

軍曹「貴様ら! なにをしているかッ!」

マナ「シンジくんっ!!」タタタッ

ケイタ「マナ? どうしてここに」

教官「こ、これは、軍曹殿」

軍曹「消灯時間が近いゆえ、見回りだ」

教官「そうでしたか。新入りに軍規を叩きこんでいたところであります!」

軍曹「その辺にしておけ」

教官「まだ一巡しておりませんが」

軍曹「骨を折ってはいないな?」

教官「ムサシ隊員! 確認しろ!」

ムサシ「はっ! おい、立て」グイッ

シンジ「うっ、いつっ」ボロ

ムサシ「打ち身は数箇所ありますが、骨は無事なようです」

軍曹「解散しろ。霧島隊員。医務室まで連れていってやれ」

マナ「大丈夫っ⁉︎」

教官「よーしっ! 皆聞こえたな! 速やかに解散だ!」

少年兵一同「はいっ!!」

軍曹「そこのお前」

ムサシ「はっ!」ビシッ

軍曹「女手ひとつは大変だろう。同行を許可する」

ムサシ「了解! ……肩を貸してやる、捕まれ」

シンジ「うっ、うぅっ」

ケイタ「ムサシ! 僕もついていくよ!」

軍曹「明日のスケジュールはどうなっている」

教官「空挺部隊との合流訓練になっております!」ビシッ

軍曹「ということは、朝が早いな。本日の当直は俺が担当してやる」

教官「よろしいのですか?」

軍曹「たまにはな。デスクにウィスキーを置いてあるはずだ」ポン

教官「あ、ありがとうございます!」ビシッ
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/28(木) 22:04:51.01 ID:eL9SI/8No
軍曹やったんかい
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/29(金) 14:10:09.40 ID:1KvikAdgO
支援
https://youtu.be/Anq4Q21_jTg
647 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/09/29(金) 15:43:13.48 ID:J/eMFMqO0
【医務室】

医師「うん、頑丈な骨をしているな。湿布薬を貼っておけば腫れは引くだろう。……明日の訓練は見学させるよう私から話をしておいてやる。ではな」ポン コツコツ

マナ「なんで止めてくれなかったの⁉︎」キッ

ムサシ「なんだ、なぜ睨む? これは儀式だと教官は――」

マナ「わかってるはず! なんのために必要なのか!」

ケイタ「ま、マナ……」

マナ「洗脳の手順になってる! こうやって、痛めつけて、精神的に追いやることで次第になにも考えられなくなるわ! 自分の考えを持てなくなってしまうの!」

ムサシ「俺たちは命令を遂行すればいい。自分で判断することは輪を乱す行為だ」

マナ「どうしてよ! おかしいと思わないの⁉︎ 一般人がこんな目にあう場所なのに⁉︎」

ムサシ「命令だからだ。しきたりがある」

マナ「話にならない……。ねぇ、ケイタ。なんとか言ってやってよ」

ケイタ「ぼ、僕が?」

マナ「一度脱走しかけたなら私と同じこと思ってるはずでしょう? なんで口に出してくれないの……?」

ケイタ「だ、だって……」

マナ「黙ってついていくだけが友達じゃないのよ! ムサシを大切に想うなら……!」

ムサシ「黙れッ!! 俺たちは、俺はこれでいいんだ! 望んでここにいる!」

マナ「ぐすっ、うっ」ポロポロ

シンジ「うっ」

マナ「……っ! シンジくん⁉︎ 気がついた⁉︎」ガタッ

シンジ「声で、目が覚めた。いててっ、よく、喧嘩するんだね。三人とも」ムク

ムサシ「お前には関係のないことだ」

シンジ「さっきのパンチ、効いたよ。さすが鍛えてるだけはあるんだと思った。身体の芯に響くみたいな」

ムサシ「当たり前だ。そんじょそこらのゴロツキとは違う、腰の入ったモノだからな」

ケイタ「僕らは空手をやってるから、必修科目で。みんな帯持ちなんだ」

シンジ「やっぱり、努力してるんだね」

ムサシ「悔しいとかないのか、男なら誰だって」

シンジ「これまでの生活とあまりに乖離しすぎてて、実感が沸かないんだ。……痛くないわけじゃないよ」

ムサシ「そういうものか。本当にネルフで訓練してなかったんだな。抵抗もできないとは」

シンジ「普通はするの?」

ムサシ「黙って殴られるバカはお前ぐらいのもんだ。最初は全員にアレが行われる。反発すればするほど制裁はきつくなるが」

シンジ「自分の無力さをしらしめる行為ってことか」

ムサシ「はぁ……。たしかに、その通りだろう。あれをやる意味は、どんなに優れていようと、限界があり、数が束になれば、個なんてものはあっというまに蹂躙されると伝えることにある」

ケイタ「――最強は、強力な個じゃない。情報に基づいた戦略と、数による暴力」

マナ「想像より、実体験は身体に染みこんでしまう。だって、それが現実だから。でも、それは表向きよ。本当の意味は洗脳で……!」

ムサシ「くだらない妄想はやめろ」

マナ「なんで、どうして……」

ムサシ「使徒とかいうバケモンにはいくら束になってもデタラメな盾がある以上、なす術なしだが。……あれは人外だからノーカンだ。俺たちはあくまで対人を想定した部隊」

シンジ「……」

ムサシ「マナ……。俺たちはこの中で生きていくしかないんだ」

マナ「できるよ! 貧しくたっていい! 慎ましく暮らせばそれで……!」

ムサシ「俺は嫌だ。ケイタ、行くぞ」クルッ コツコツ

ケイタ「マナ……ごめん」タタタッ

マナ「ばか……。二人とも、ばかなんだから……うっ、うっ」ポロポロ
648 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/29(金) 16:15:17.44 ID:J/eMFMqO0
【通路】

ケイタ「……なんでマナの為だって言ってあげないの? そうすればきっと」

ムサシ「そんなのは押しつけだよ」

ケイタ「でも! 伝えないよりは!」

ムサシ「マナの性格を考えればわかるんじゃないか。自分のせいだって知れば、自分を許せなくなる」

ケイタ「……っ!」

ムサシ「なにも知らなくていいんだ」

ケイタ「このままじゃ、僕たちの心が離れてしまうよ。ずっと三人一緒だったのに……」

ムサシ「どうせ成人すれば戦地に送りこまれて死ぬんだ。だったら、一人ぐらい幸せになったっていいじゃないか」

ケイタ「なにも知らないままで?」

ムサシ「痛みを分かち合うのが幸せなもんか。嫌われたっていい」

ケイタ「報われなくて、それでいいの」

ムサシ「想いを伝えるだけじゃない。陰ながら支えるのに、相手が気がつく必要なんか……」

ケイタ「ムサシ……」

ムサシ「これでいいんだ」

ケイタ「……」

ムサシ「いつかは、ネルフに帰る。マナを連れていってくれれば。ケイタもそう思うだろ?」

ケイタ「そ、それは」

ムサシ「マナはここに似合わない、やっていけないんだ」

ケイタ「そう、だね……」

ムサシ「だが、あれじゃいくらなんでも軟弱すぎる。やってやろうっていう気概が見えない。俺たちでいっちょ鍛えなきゃな」

ケイタ「うん」

ムサシ「ケイタにも、嫌な役を引き受けさせちまうことになる」

ケイタ「水臭いな。僕は、二人の為になれるならなんだってしてきたじゃないか」

ムサシ「一度逃げだそうとしたやつが言うかぁ?」

ケイタ「あ、あれはっ! その、あんまりにも辛くて……」

ムサシ「毎日だもんな。この暮らしが」

ケイタ「うん、ずっと続くと想像すると、耐えられなくてさ」

ムサシ「せいぜい怪我や病気に気をつけようぜ。除隊されてしまえばなにもできなくなる」

ケイタ「そうだね。その後の生活は保障されないし」

ムサシ「ああ……いっけね、就寝前に点呼があるの忘れてた!」

ケイタ「え? 今日は、別の当番のはずじゃ」

ムサシ「代わったんだよ! 走るぞ!」タタタッ

ケイタ「わっ、ま、待ってよっ! ムサシっ!」
649 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/29(金) 22:05:59.54 ID:J/eMFMqO0
【再び 医務室】

マナ「うっ、うっ、ぐすっ」

シンジ「マナ……」

マナ「あっ、ご、ごめんねっ。見苦しいとこみせちゃって」

シンジ「いや、そんな風には思わないよ」

マナ「ありがとう……痛む? 平気?」

シンジ「平気だよ。そろそろ僕たちも戻らないといけないね」

マナ「ネルフにいつ帰る予定だとか、まだわからないの?」

シンジ「うん。初日だし、なにも連絡がない」

マナ「そっか……そうだよね」

シンジ「あのさ、マナ――」

マナ「うん?」

シンジ「黙ってこうしてるつもりはないんだ。協力、お願いできないかな?」

マナ「……? なにをするつもり?」

シンジ「情報がほしい。戦自の」

マナ「なにが知りたいの?」

シンジ「まず、ネルフと戦自のいがみ合いについての関係性はだいたい理解した。隊員達がどう思ってるのか」

マナ「うん」

シンジ「ただ、ネルフにとっては……悪く思わないでほしいんだけど。戦自ってそんなに重要じゃないんだ。相手にしてないと言ってもいいぐらいだと思う」

マナ「あ……うん」

シンジ「戦自は余計に気にくわないんじゃないかな。それでね、ここって国内の基地だとどれぐらいの規模なの?」

マナ「うーん、そうね、日本で三本の指に入るぐらいは」

シンジ「だったら、重要拠点のはず。戦自はネルフをどうしたいんだろう?」

マナ「えっと、あわよくば潰したい、んだと思うよ」

シンジ「そこまでになると気にくわないだけじゃないよね?」

マナ「……お金。ネルフって莫大な資本をバックボーンにしてるでしょ? それこそ、世界からかき集めてるぐらい。だから、それが狙い。直接掌握も視野にいれてる」

シンジ「ちょ、直接掌握? それって、攻めこんでくるってことだよね。でも、そんなことしちゃ各国政府が黙っていないんじゃ」

マナ「理由があれば、大義名分は作ることができるもの。たとえば、そう……ネルフの私物化とか」

シンジ「――そうか、だから僕と母さんの関係を調べてたんだね?」

マナ「私も全てがわかるわけじゃないけど、そんなところなんだと思う」

シンジ「ここの責任者、ええと、一番偉い人は?」

マナ「参謀総長じゃない、かな。さらに上に陸軍将軍がいるけど、国会議事堂に出頭してるはずだから」

シンジ「マナのここでの任務って?」

マナ「私は、通信士。管制塔の業務もたまにする感じ」

シンジ「さっきの軍曹は? マナと一緒にきたのはどうして?」

マナ「あの人は、いろんなところを兼任してるの。私が廊下を歩いてたら、たまたま呼ばれて。シンジくんに近づけさせようする任務の一環」

シンジ「……なにか行動を起こさなくちゃいけない」

マナ「えっ?」

シンジ「もうすぐ消灯時間だって言ってたよね」

マナ「うん、そうだけど……?」

シンジ「軍曹は今どこに?」

マナ「えっと、当直を代わるって言ってたから、宿直室じゃない?」

シンジ「案内してもらえる?」
650 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/29(金) 22:44:26.98 ID:J/eMFMqO0
【宿直室】

軍曹「おっ、もうこんな時間か。どれ、様子を見に――……お前は、サードチル、ごほん、なんだ?」

シンジ「さっき止めてくれたお礼が言いたくて」

軍曹「気にせんでいい。身体の具合はどうか。なにか変わったところがあったら申告しろ」

シンジ「節々が痛むくらいです。あのままだったら、どうなってたか」

軍曹「霧島隊員はどうした? 一緒じゃないのか?」

マナ「あ、すいません、夜分遅くに」

軍曹「なんだ、いるじゃないか。大丈夫ならそれぞれの宿舎に戻れ」

シンジ「ちょっと話を聞いていただきたいんですけど」

軍曹「話? なんだ?」

シンジ「ネルフに関することです。正直、僕もあの組織には嫌気がさしてまして」

軍曹「はぁ?」

マナ「し、シンジくん?」

シンジ「情報、ほしいんじゃないですか?」

軍曹「なに言ってるのかわかってるのか?」

シンジ「タダでとは言いません。そのかわりなんですけど、軍曹殿に僕の身の安全を保障してもらえませんか」

軍曹「……つまり、その引き換えに?」

シンジ「はい。こわいんです、このままエスカレートするとどうなってしまうかわからなくて」

軍曹「(ふむ、保身に走ったか……どうしたものか。ここで俺が断れば次の取り引き相手を探すだろうな。そうなれば、ネルフの情報が戦自の手に……)」

シンジ「どうですか? だめですか?」

軍曹「いや、分かった。交換条件に応じよう」

シンジ「ほんとですか? 助かったぁ」

軍曹「それで、情報というのは?」

シンジ「なにが知りたいんですか?」

軍曹「そうだな。我々が探っている本丸は碇ゲンドウ、そしてその妻である碇ユイ。この夫婦と上層組織である国連に癒着がないかどうかだ」

シンジ「戦自ではどこまで掴んでるんです?」

軍曹「教える意味はない。まず貴様が持っているカードを切る番だ」

シンジ「いえ、重要なことなんです。お互いに有益にしたい」

軍曹「……しかたない、サービスだぞ。まだろくに証拠をつかめていない。公式発表のあった異動についてな」

シンジ「どうしてですか? 父さんはアラスカに行っていると知ってるんでしょ。会いにいけばいいのに」

軍曹「詳しい所在は極秘扱いになっていてな。国連でも一部のゼーレの名のつく代表団しか知りはしない。しかし、そのいずれもが安全面を理由に硬く口を閉ざしているのだよ」

シンジ「……」

軍曹「さぁ、話せ。なにを知っている?」

シンジ「僕は、あなた方がほしがっている答えを知っています」

軍曹「なに……? それは、つまり」

シンジ「ただし、教えるには僕の安全だけは釣り合わないと判断しました」

軍曹「たしかな証拠があるのか?」

シンジ「はい。あります」

マナ「し、シンジくん、ネルフと戦自の開戦の火種になる、よ」

軍曹「(こいつ、なにを考えてる? ネルフを売って寝返るつもりか?)」
651 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/09/29(金) 23:16:32.68 ID:J/eMFMqO0
シンジ「戦自はエヴァに勝てるつもりでいるんですか?」

軍曹「あんなものは対使徒に特化しているだけの欠陥品だ。電源ケーブルを狙い撃ちしてしまえば五分で活動限界ではないか」

シンジ「……そうか、それはたしかに」

軍曹「永久機関である使徒と違い、やりようはいくらでもある。本部の直接掌握をしてもいいしな」

シンジ「(やっぱり、そういうことか……ん? あれって、どっかで見たような)」

軍曹「ん? なんだ? どこを見ている?」

シンジ「あっ、いえ。別に……」

軍曹「もったいぶらずにはやく教えろ。証拠とはなんだ」

シンジ「(うぅーん、どこで……はっ、そうだ。たしか加持さんがカフスにしてたボタンと同じ……?)」

軍曹「おい、もしやなにもなしではあるまいな?」

シンジ「あの、その机の上に置いてあるバッジは?」

軍曹「ん? ……あ、あぁっ、これか。ネルフに行った時に記念品として頂いてな」

シンジ「記念品?」

軍曹「そうだ。珍しくもないだろう」

シンジ「……いつ、ネルフに?」

軍曹「先日だ。それよりも、具体的な提示はまだか?」

シンジ「気が変わりました」

軍曹「なに……? 貴様、俺を舐めてるのか?」

シンジ「いえ、迂闊だったんです。母さんが送りこんでたスパイの可能性を考えずに。とんでもない墓穴を掘るところでした」

軍曹「す、スパイ? なにを」

マナ「え……?」

シンジ「それは――記念品なんかじゃないっ!」

軍曹「そ、そうだったか? いや、これはだな」

シンジ「僕に正体がバレたと母さんがわかれば、どうなるかわかりますね」

軍曹「……」グッ

シンジ「お互いにこの話はなかったことに。マナ、行こう」

マナ「えっ? いいの?」

シンジ「なにもせずに見送ろうとしてるじゃないか。それが答えだよ」

軍曹「小僧……。図に乗るなよ」

シンジ「諜報部の人ですか。それとも、保安部からの特殊部隊? どちらでもかまいません、もし、母さんにこの顛末を報告するつもりなら、一言伝えおいてほしい」

軍曹「俺がしないと高を括ってるのか?」

シンジ「そうじゃありませんよ。まだ、はっきりとは伝えてなかったから。僕は、母さんのやろうとしてることを認められないって」

軍曹「なにをするつもりだ? こちらを裏切るつもりか?」

マナ「そ、そんな。うそ……? 軍曹殿が、ネルフからの内通者だなんて……!」

軍曹「ちっ」
652 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/09/30(土) 01:10:36.16 ID:Qcw5UgHuo
スパイと知らなかった上での交渉ならマジで売るつもりだったのか
653 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/01(日) 21:36:35.01 ID:zpVr/23no
今日は来ない系?
654 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/10/02(月) 01:39:09.06 ID:IBAdFOvk0
【通路】

マナ「待ってよ!」タタタッ

シンジ「(先走りすぎた。まさか、ネルフから潜入工作員がいたなんて……)」スタスタ

マナ「シンジくんってば!」グィッ

シンジ「僕がバカだったんだ。マナの情報が筒抜けだったのも、そう考えればわかったはずなのに」

マナ「えっ? ……あっ、軍曹が流出させてたってこと?」

シンジ「誰がとかそうじゃないんだよ、マナ。一人とは限らない。もっといるかもしれない」

マナ「ごめん、よくわからないんだけど」

シンジ「中学校に転校してきた時、マナの正体は即座に見破られていたよね」

マナ「うん、だから、その犯人が軍曹って話じゃないの?」

シンジ「どうしてあの人だと思うの?」

マナ「だって、ネルフからの工作員って判明したじゃない」

シンジ「なんで一人だけだって決めつけるんだよ。判明したのは、軍曹はネルフから潜入してるのが確定したってことだけ。複数いるかもしれないだろ」

マナ「そっか……二人いたら、もう一人がってこともあるかもしれないものね」

シンジ「……」

マナ「シンジくん? なに、考えてるの?」

シンジ「嘘の情報を渡すつもりだったんだ。次に、母さんを混乱させたらと思った」

マナ「それじゃあ、取り引きを持ちかけたのはフェイクだった?」

シンジ「形だけのね。驚いた?」

マナ「驚くに決まってるじゃない。本当に戦争になっちゃうんじゃないかって思った」

シンジ「ごめん。突発的に思いついたから打ち合わせをしなかったね」

マナ「いいよ。でも、これからは? 軍曹に口止めしなきゃ困らないの?」

シンジ「どうやって? 弱みを握るとしても方法は……」

マナ「ねぇ、シンジくんは何を隠して……ネルフとどうなりたいの?」

シンジ「僕は、ある計画を止めたいんだ。その為に動こうと決めてる」

マナ「ある、計画?」

シンジ「詳しくは話せない」

マナ「……それって、母親と敵対しなきゃいけないの? 総司令だよ?」

シンジ「出たとこ勝負なところだってある。だけど、そうなったとしてもおかしくはない」

マナ「わかった。それ以上は聞かない……軍曹はどうする?」
655 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/02(月) 02:03:24.03 ID:IBAdFOvk0
シンジ「……」

マナ「脅す?」

シンジ「脅すって、脅迫? 材料がどこに――」

マナ「まだろくに調べてないからなんとも言えないけど。家族をネタにするとか」

シンジ「そんな……それに、そうなったら逆に母さんに告げ口をされるきっかけを与えてしまうかもしれない」

マナ「でも、方法を見つけて対等の立場にならないと……シンジくんだけが不利になってしまってるのよ」

シンジ「わかってる」

マナ「時には汚いと思う手段だって必要だよ。すべてが順調なら頼る必要はないけど。失敗した分は取り戻さなくちゃ」

シンジ「落ち着いて考えなきゃいけない。明確なミスをしたのは一度だけなんだ。慌てて判断間違いを繰り返せば取り返せなくなる」

マナ「だけど……っ! 迅速に状況判断をして決断しないと……!」

シンジ「わかってるっ! わかってるよ、もしかしたら、今ごろ母さんに」ギリッ

マナ「……」

シンジ「――……ひと騒動起こすよ」

マナ「えっ?」

シンジ「カラーコンタクトを取りに行ってる暇はないから、範囲がどこまで有効か試したことないけど……力を限界まで使う」

マナ「力って……? なにするつもり?」

シンジ「基地に張り巡らされている電波を丸ごと妨害する。機器を一時的に使えない状態に」

マナ「そんなの不可能よ。軍事施設はサイバーテロのに対する備えだってあるんだから。予備の電源が……」

シンジ「僕がやろうとしてることは停電にするわけじゃないんだ。ただよってる電波に強力な上書きをするだけ。正常に働けないほどのね」

マナ「可能だとして、そんなことしてどうするの?」

シンジ「説明してる猶予はない。はじめるよ」

マナ「は、はじめるって……? どうやって?」

シンジ「ふぅ……」スッ

マナ「シンジくん……? 目を瞑ってなにを」

シンジ「……」キィーンッ

マナ「え、な、なに? これ。突然、耳鳴りが」
656 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/02(月) 16:05:53.47 ID:IBAdFOvk0
【ネルフ本部 初号機格納庫】

カヲル「我慢できなかったのか、シンジくん……」

レイ「……」スタスタ

カヲル「キミは……。やはり行くんだね」

レイ「この初号機は仮初めのもの」

カヲル「……」ジー

レイ「要(かなめ)となるコアはないわ」

カヲル「そうか、そういうことか」

レイ「碇くんが呼んでる。行かなくちゃ」

カヲル「方法は?」

レイ「エントリー、手伝って」

カヲル「向こうにある赤い機体を使ったら?」

レイ「こっちの方がいい。碇くんの匂いがするもの」

カヲル「……わかった。ハッチはボクが開けてあげるよ」

レイ「時間がない。司令が発令をだす前に、行動を開始」

カヲル「やれやれ、人使いが荒いな」

レイ「あなた、ヒトじゃないでしょ」

カヲル「比喩表現さ。太陽のように明るい日差しが指すのか……それとも。ボクはまだシンジくんに希望の光を見出せていないのだけど」

レイ「またひとつの分岐点に到達した。選ぶのは私たちじゃない。見守り、そして、助力する」

カヲル「(この先にあるセカイは、果たして福音をもたらすに値するのか……)」

放送「緊急自体発生! 緊急自体発生! 使徒の反応を感知! 場所は厚木基地方面! 職員は速やかに――」

レイ「エマージェンシーコールが開始された」

カヲル「……」

作業班「ったく! いきなりは勘弁しろって! ……キミたちは、こんなところでやって?」

カヲル「こんばんは」スッ ドンッ

作業班「なんだ? ……か、体に宙にっ⁉︎ がはっ⁉︎」ドサッ

カヲル「急ぐんだ。ヒトが集まってくる前に」

レイ「ええ」タタタッ
657 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/02(月) 19:16:55.50 ID:IBAdFOvk0
【ネルフ本部 発令所】

シゲル「厚木基地方面より半径10キロ範囲にて強力なジャミング波をキャッチ!」

冬月「衛星からの映像は?」

マコト「光波、粒子を遮断してる……す、すごいぞ、これは」

冬月「ろくにモニタリングできんか……ユイくん」

ユイ「暴走か、あるいは――」

冬月「意図的に力を発動しているかだな。……葛城一尉の所在は?」

マヤ「こちらに向かっているはずですが、まだ」

冬月「やむをえんな。到着するまでの間、陣頭指揮は司令部で執る」

マコト「まっ、待ってください! 初号機にエントリー反応!」

冬月「なに? 誰が乗っている?」

シゲル「こちらからの信号を拒絶! 内部をモニターできません!」

冬月「ケイジ周辺の映像を出せ」

マコト「そんな、どうなってるんだ。作業員たちが」

冬月「気絶? 死んでいるのか? 大至急、録画データを解析! 今より30分前にまで遡り怪しい映像がないかチェックしろ!」

シゲル「りょ、了解!」

冬月「現時刻を以って、第一種戦闘配備に移行だ! チルドレン達への通達も忘れるなよ!」

オペレーター「了解! 緊急発令! これより第一種戦闘配備へ移行!ただちに指定の配置につけ!」

マヤ「映像の巻き戻し作業を完了! ……これはっ⁉︎ ダメですっ! ノイズがひどくて!」

冬月「やはりタブリスが裏で暗躍していたか」

ユイ「初号機はどうなってる?」

マコト「独力で第三ロックボルトまで解除した模様!」

ユイ「出撃するつもりね。全カタパルト射出盤にロック。急いで」

マコト「了解! ――第二までのカタパルトロック作業、完了! 続いて第三……っ⁉︎」

ユイ「どうしたの? なにか問題が?」

マコト「ぱ、パターン青っ⁉︎ 第三カタパルト付近で使徒の反応を確認!」

シゲル「本部内部に使徒っ⁉︎ いつのまに!」

ユイ「技術班を至急現地に向かわせて。命を賭(と)して初号機の出撃を阻止するのよ」

ミサト「ぜぇっ……ぜぇっ。だぁ……っ、おくれ、ました」

マコト「葛城さん!」

ミサト「ふぅ、ふぅっ、んっ、日向くん、どうなってるの? なんの騒ぎ?」

リツコ「使徒みたいね」

ミサト「リツコ? あんたも今来たの?」

リツコ「マヤ、信号をキャッチした場所は?」

マヤ「あ、厚木基地方面です。現在、広範囲に渡り電波妨害が行われており、発生源の特定を急いでいます」

リツコ「(シンジくんったら、若いわね。我慢しきれなかったのかしら)」

ミサト「えっ、ちょっと待って。初号機がでてるの? パイロットは?」

マコト「不明です!」

ミサト「不明って……? 誰が乗ってるかわからないの⁉︎ レイとアスカはっ⁉︎」

リツコ「寝ぼけてるの? アスカは一緒に連れてきているのではなくて?」

ミサト「あぁっ、そうだった! セカンドチルドレンの弐号機へのエントリー急いで!」

ユイ「零号機の凍結も現時刻をもって解除。以降の指揮は葛城一尉に一任します」

ミサト「了解! さぁ、みんな、久々の使徒戦になりそうよ! 平和ボケしてんじゃないでしょーね⁉︎」
658 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/02(月) 19:41:35.44 ID:IBAdFOvk0
【厚木基地 宿舎】

ムサシ「――なんだ? やけに静かだな」

軍曹「はぁ、はぁっ」

ムサシ「軍曹殿? 見回りの時間はまだ」

軍曹「全隊員、整列ッ!」ピーーーーッ

少年兵一同「……っ⁉︎」ガタガタッ

軍曹「さっさとせんかっ!!」

ムサシ「――隊員以下23名! 整列を終えましたっ!」

軍曹「現在、参謀本部が何者かにサイバー攻撃を受けている!」

少年兵一同「……」ドヨドヨ

軍曹「静かに! 従って全ての電子機器が使用不可能だ! 発生源の割り出しを急いでいるが、あらゆる可能性を想定して動かなければならない! 出撃準備!」

ムサシ「しゅ、出撃でありますか? しかし、どうやって?」

軍曹「人力に決まっておろう! ヤシマ作戦を思い出せ! さいわい、ガソリンで動くものはかろうじて起動ができる!」

ケイタ「ねぇ、ムサシ。EMP攻撃を受けてるのかな?」

ムサシ「電磁パルスか。ありえる。となると、隣国の嫌がらせか」

ケイタ「人間同士で争ってる場合じゃないのにさぁ」

軍曹「私語は慎め! 作業開始!」ピーーーーッ

少年兵一同「了解っ!!」

シロウ「ちょっと待ってもらえませんか」

軍曹「き、貴様は。まだこの基地に滞在したのか?」

シロウ「そう邪険にしないでくださいよ。面白いイベントに鉢合わせできたようだ」

軍曹「見ての通り急いでいる。引き止めた理由を簡潔に述べろ」

シロウ「ムサシ、くん。でしたか、彼とお友達を拝借したい」

軍曹「なんの為にだ?」

シロウ「急いでいるのでは? 詳しく話をすると余計な手間をとらせてしまいますが」

軍曹「ちっ、おい、ムサシ隊員! 浅利隊員!」

ムサシ&ケイタ「はっ!」ザッ ビシ

軍曹「時田博士に同行しろ。……のこりの物は各担当区域に急げ!」
659 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/10/03(火) 22:38:08.54 ID:J0McYcGp0
【厚木基地 執務室】

シンジ「だめだ、これも違う。そっちは――」

マナ「こんなところに忍びこんでもし見つかったら……。それにその瞳の色」

シンジ「悪いけど、まだやる事があるんだ。急がなくちゃいけない。詳しい説明はあとで」

マナ「でも、基地の凄い騒ぎになってるし、シンジくんがなにかしたんだよね?」

シンジ「だから、今は……――あった」ガタガタ

マナ「なに? ……えっ、それって、ネルフの報告書?」

シンジ「……戦自はネルフを調べてるって言ってたよね。だから、調査報告書がどこかにあるはずだと思ったんだ。当てずっぽうでここに来たけど、運がよかった」パサ

マナ「入手してどうするつもり?」

シンジ「あるはずなんだ、きっと、アレが」

マナ「あれって? ねぇ、なんのことだかわからないっ」

シンジ「ここまで大規模に力を使ったら母さんは僕を怪しむ。いや、もう怪しんでいるんだろうけど」ペラ

マナ「それとその書類になんの関係が? 今は軍曹の口封じが先決なんじゃないの?」

シンジ「使い捨ての駒のひとつなんだよ。チェスでいうポーン。僕たちに彼を止める手立てはない。方法は殺すしか――」

マナ「こ、殺さなくてもっ! それなら脅迫する方がまだっ!」

シンジ「僕だってそんなつもりは毛頭ない。かといって、脅迫するつもりもね」

マナ「だったら、どういう?」

シンジ「僕はね、ずっと糸を頼りにその上を歩いてきた。ロープの上を歩く綱渡りの人生とかって言うじゃない?」

マナ「うん」

シンジ「僕の力の正体を隠すには、なにもしないのが一番いいんだ。誰かが困っていても、見て見ぬふりをしてやり過ごす。そう――……“行動”しなければ“起”は生まれない」

マナ「う、うん?」

シンジ「それだけじゃ嫌だったんだ。僕は、自分自信が好きじゃなくてキライだったから。……父さんにも、捨てられたくなくて。必死にこっちを見て、頑張ってる僕を見てってわめいてるだけの子供だった」

マナ「……」

シンジ「やっとそれが理解できそうになった時、父さんは帰らぬ人になってしまった。だから、自分を好きになれるように、父さんに褒めてもらえるように、みんなを守りたいんだ。自分の為にね」

マナ「……」

シンジ「――……あった」

マナ「なにが、あったの?」

シンジ「極秘ファイル。戦自が企んでいて僕たち知らないモノ」

マナ「交渉テーブルの材料に使うつもり?」

シンジ「決断の時がきてる。全てを母さんに曝け出すその時が」

マナ「シンジくん……?」
660 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/03(火) 22:44:20.16 ID:ek8WwxBlo
戸棚か引き出しかわからないけど重要書類の場所に鍵もかけてないのか…
661 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/03(火) 23:08:25.95 ID:J0McYcGp0
【ネルフ本部 発令所】

シゲル「安全盤のロックが解除されています! こちらからの制御は不能!」

ミサト「第三カタパルトから強引に上がるつもりか。……本部内における使徒の位置は?」

マコト「同区画にて停止中っ……――ま、待ってくださいっ! 反応ロスト! 消失しました!」

ミサト「消えたっ⁉︎ 使徒がっ⁉︎」

マヤ「初号機は依然として進行中! 技術班の車両と接触……このままじゃ、地上に出られてしまいますっ!」

ミサト「アスカっ! 聞こえる⁉︎」

アスカ『はいはい』

ミサト「準備が済み次第、目標である初号機を追いかけて」

アスカ『追いかけるって。すぐに活動限界になるんじゃないの? アンビリカルケーブルだって繋いでないみたいだし』

ミサト「目的が不透明よ。例え数分でも市街地をむちゃくちゃに破壊しまくられたら被害は甚大だわ」

アスカ『そもそもエヴァってチルドレンしか乗れなあんじゃないの?』

リツコ「そのはず。私たちが知らないだけでなければね」

アスカ『んなアバウトな』

リツコ「パイロットの正体は活動停止してから拝めばいい」

ミサト「使徒の動きに警戒して。消えたなんてありえないわ、どこかに潜伏しているのよ」

冬月「エヴァの存在意義は使徒に対する防御にこそある。人災になることは許されん」

ミサト「はい。とにかく今は初号機停止を最優先――……アスカ? 準備はいい?」

アスカ『このあたしに任せておけばお茶の子さいさいよ。誰がパイロットでも止めてみせる』

ミサト「レイに連絡がつかないから、今はアスカだけよ。頼りにしてる」

アスカ『ふふーんっ! エースとしての腕の見せ所ってわけね! 意外にすぐに機会が訪れたわ!』

マヤ「弐号機、主電源通電! 起動します!」

ミサト「たのんだわよ。エヴァンゲリオン弐号機、発進……!」
662 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/03(火) 23:43:44.85 ID:J0McYcGp0
【弐号機 プラグ内】

アスカ「――うんと、初号機はぁ〜っと。あれ? 地上に出てもいないじゃない。ミサト、どうなってんの?」

シゲル『目標、加速開始! 国道50号線をまっすぐ北上しています!』

アスカ「げぇっ⁉︎ ええっ、ちょっと、それって」

リツコ『追跡するには、弐号機もアンビリカルケーブル接続を切るしかない』

アスカ「ちっ、向こうの電池切れを待ってりゃいいと思ったのにさぁ」

ミサト『市街地の破壊が目的ではないだけ良しとしましょう。ここから北上するにあたり主要な都市は?』

マコト『ほとんど海の底ですよ。あるといったら、軍事拠点の厚木基地ぐらいしか』

ユイ『すぐに追跡を開始』

ミサト『えっ? し、しかし、長距離の移動は。通過するころにはほとんど残り時間が』

ユイ『国外に持ち出されたらとは思わないの?』

ミサト『そうか、そういうパターンもあるのか。失礼致しました。聞こえたわね、アスカ?』

アスカ「たくもーっ! なんで追いかけっこしなくちゃなんないのよぉ!」

リツコ『急いで加速状態にはいって。シンクロ率で速度は上下するけど、マックスで音速を超える』

アスカ「すごいGがきたりすんじゃないでしょうね?」

リツコ『心配いらないわ。プラグ内を満たしているL.C.Lが衝撃を吸収してくれるから』

アスカ「はぁ……よっと」ガコンッ

ミサト『なにやってるの』

アスカ「スプリンターみたくクラウチングスタートした方がかっこいいじゃない。気分よ、き・ぶ・ん」

ミサト『遊びじゃないのよ。スタート』

アスカ「あー、やだやだ、これだから大人ってのは。言われなくても、行くわよっ!」ダンッ ダンッ ダンッ

マヤ『弐号機加速状態に移行!』

アスカ「……ほんとだ。中は全然変わりないんだ」ダンッ ダンッ ダンッ

リツコ『集中して。走ることだけをイメージするのよ。マヤ、アンビリカルケーブルの有効範囲は?』

マヤ『間も無く切れます』

リツコ『初号機と弐号機のタイム差の算出、急いで』

ミサト『追いつける?』

リツコ『ざっとみた感じ、厳しいわね』

ミサト『アスカっ! 真面目にやってる⁉︎ 目標を抑え込んで停止させなくちゃいけないのよ!』

アスカ「やってるわよ! 最高速に移行するまで加速ギアってもんがあるでしょーが!」

リツコ『シンジくんなら、どうするかしらね』

アスカ「……っ⁉︎ なんで今あのバカシンジが出てくんのっ⁉︎」

リツコ『彼はいつも私たちの期待した結果を残してくれたもの。過程は右往左往することはあっても』

アスカ「私じゃ無理って言いたいわけっ⁉︎」

リツコ『ほしいのは結果なのよ。おわかり?」

アスカ「くっ! この……っ!」

マヤ『弐号機、シンクロ率が5パーセント上昇!」

シゲル『――さらに加速! ケーブルの断線を確認! 内部電源に切り替わります!』

ミサト『五分が勝負の分かれ道ね。とにかく全速力で走って! 急ぐのよ!』
663 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/04(水) 00:18:48.65 ID:EZgE3ZWW0
【ネルフ本部 発令所】

マコト「内閣府よりホットライン入電。戦自司令室と日本政府が回線に割り込んできています。どうやら、状況の説明を求めているようですが……」

冬月「ハゲタカどもめ。やはり見過ごしはせんか」

ユイ「……」

冬月「どうする? 人為的ミスだと応答するわけにはいかんぞ」

ユイ「全てキャンセル。ネルフ特権十五項を発動して。後に報告すると伝えなさい」

シゲル「了解。そのように返信いたします」

マヤ「到着時刻の解析が終了! 切断後、およそ3分で初号機に追いつけます!」

リツコ「サブタスクで予定時刻を表示」

マヤ「了解!」

ミサト「いい感じよ!そのまま加速を続けて!」

アスカ『ぬぅぅぅおおぅりやぁあああっ!!』

冬月「初号機の目的地はもしや、サードチルドレンではあるまいな?」

ユイ「パイロットがタブリスなら……」

冬月「奴はなにを考えているんだ。こちらとしてもこれ以上、野放しにするわけにはいかんだろう」

マコト「目標、神奈川方面に向け進行中」

シゲル「軍の総合観測所から入電。エヴァを停止するよう言ってきています。……関連施設からの回線が入り乱れてるな、こりゃあ」

ユイ「一時的でかまわない。作戦行動に支障をきたすようであればシャットアウトして」

シゲル「りょ、了解!」

マヤ「目標、活動限界を残り2分を切りました!」

ミサト「弐号機は⁉︎」

マヤ「タイムラグがありますので、残り3分30秒!」

ミサト「アスカ! 追いつければこちらが有利よ、足止めするだけでいい! 待ってれば勝手に自滅するわ!」

アスカ『くっ! もっとラクショーだと思ったのにぃぃっ!』

マヤ「……っ⁉︎ 初号機、さらに加速っ!」

シゲル「音速の壁を突き破ります!」

ミサト「まずいわよ……! とんでもない突風がくる! 近隣に住宅地はっ⁉︎」

マコト「付近半径5キロメートル四方は山に囲まれています!」

ミサト「ほっ、助かった――」

リツコ「安心するのはまだはやい! 弐号機の加速数値はっ⁉︎」

マヤ「初号機の加速率が想定の遥か上になってしまっています!」

リツコ「計算外だわっ! アスカ! もっと速く! 追いつけなくなるっ!」

アスカ『んなくそぉおおおおっ!!』

マコト「ダメです! 弐号機、速度あがりませんっ!」

リツコ「初号機に停止信号を送信!」

マヤ「送信、やはりだめです! 受け付けません!」

リツコ「何度でもトライし続けなさい!」

ミサト「間に合わないか……! アスカっ! 作戦を変更! 初号機が停止した地点に急いで向かって!」
664 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/04(水) 00:49:14.27 ID:EZgE3ZWW0
【厚木基地】

マナ「大丈夫? すごい汗かいてる」

シンジ「ちょっと、力を使いすぎちゃって。マナもそろそろ宿舎に戻って。僕に拉致されてたって言えばいいよ」

マナ「えっ? なんでそんなこと」

シンジ「基地内が大騒ぎになってるんだ。そんな時に不在じゃ、理由が必要だろ」

マナ「でも、それじゃシンジくんが……」

シンジ「僕はもうすぐここからいなくなる。綾波がここに来るだろうから」

マナ「綾波、さん?」

シンジ「まだ賭けの途中なんだ。このファイルを手に入れられたことはラッキーだったとしか言いようがないけど、今は良い方向に向かってる」

マナ「……」

シンジ「――だけど、次がどう転ぶかはわからない。こんなに都合よくことが運ぶとは思えないし……。これ以上、マナを巻き込みたくないんだ」

マナ「そんな……そんな、寂しいこと言わないでよ。たしかに、私たち知り合って間もないけど、友達じゃない」

シンジ「友達だから、そう思うんだ。ごめん、僕は自分勝手だよね」

マナ「また、会える?」

シンジ「いつか、生きてたら会えるよ」

マナ「死んじゃうみたいなこと言うのね」

シンジ「……」

マナ「シンジくんと一緒に行きたい気持ちが半分。でも、残り半分はムサシとケイタを残していけない」

シンジ「うん」

マナ「自分勝手なのは私だよ。助けてもらってばかりで、正体がバレた瞬間に……本当なら殺されてもおかしくなかった。今、選ぶことができるのはシンジくんのおかげ」

シンジ「……」

マナ「なにもしてあげられなくて、ごめんね」

シンジ「いいよ」

マナ「シンジくんが抱えてる色んなことを、一緒に分かち合ってくれる人、いる……?」

シンジ「どう、かな……」

マナ「もし、その相手が女の子だったら。自分から話さなくちゃだめだよ」

シンジ「でも、僕は」

マナ「甘えたっていいの。弱さを受け入れてくれると信じなくちゃ」

シンジ「……」

マナ「きっと、その子も待ってるはずだから。絶対、ね? 約束して?」

シンジ「――……わかった」

マナ「うんっ! ぐすっ……色々とごめんなさい。私……っ」

シンジ「マナ……」

マナ「本当に平気? 綾波さんがここに来られるの?」

シンジ「たぶん。力を発動した時点で気がついてると思うから」

マナ「そっか……わかった。私、戻るね?」

シンジ「うん」

マナ「本当に、また、会えるよね?」

シンジ「いつか、きっと」

マナ「デートする約束も守ってもらってないんだからね! きっとだよ……!」ポロポロ
665 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 08:05:35.37 ID:cMo7lRx9O
重要書類が段ボールの中で保存してるかのような描写だな……
しかも最重要系でしょ無人の場所に保存しないでしょ
666 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 11:09:18.98 ID:lSownb/vO
想像力が足りんやつらばかりだな
突然の騒動で慌てて席を外したとか考えんのかね
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 11:38:36.90 ID:2ft8E2cyO
シンジがくる前に書類見てた

騒動おきる

誰かが呼びにきたor急いでどっかに向かわなけれいけなかった

書類を引き出しか棚に閉まったけど鍵かけ忘れた

でいいじゃん
ヘルパーの件もそうだけど重箱の隅をつつけばいいってもんじゃないだろ
気にするようなとこか?
668 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 11:55:46.21 ID:8TQu/XDeO
話がしっかりしてるからそういうところでしか揚げ足取れないんだろ
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/04(水) 12:08:46.94 ID:rFRCORg0o
超人パワーで開けたでええやん
670 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/04(水) 22:05:44.31 ID:EZgE3ZWW0
【通路】

ケイタ「あれ、歩いてきてるのは、マナ……? 管制塔はこっちじゃ」

シロウ「お友達かい?」

ムサシ「左様でありますが――……」

マナ「ムサシ、ケイタ」トボトボ

ムサシ「あいつはどうした? そばについていたはずじゃ? 目が腫れて……泣いてたのか?」

ケイタ「なにかされたの?」

マナ「……」

ムサシ「あの野郎……っ!」

シロウ「あいつというのも同じ隊員か?」

ケイタ「あ、いえ、違います。ネルフから訓練生できている奴のことで」

マナ「ち、違うの。シンジくんは……」

ムサシ「……? 違うのか?」

マナ「その、違わないけど」

ケイタ「マナ……?」

シロウ「面白い。実に興味深い反応をしている。キミも我々に同行してもらおうか」

マナ「えっ? あの、なにかするんですか?」

シロウ「実験だよ。簡単な適性審査というべきか」

ムサシ「待ってください! 霧島隊員は情報管理部に所属しており――」

シロウ「発言の許可を許していない。ムサシ隊員は私から質問された場合にのみ答えたら良い」

ムサシ「……っ!」

シロウ「戦自に所属する者ならば理解しているだろう。命令系統の厳しさを」

ケイタ「し、しかし」

シロウ「キミまで口を挟む気か? よほど大切な者のようだな。私にとって些事にすぎんのが悩みどころだ」

ムサシ「……」

シロウ「そうだ、それでいい。霧島隊員といわれていたか? 行くぞ」

マナ「あの、私には任務が」

シロウ「その任務とやらは基地で起きている騒動を無視して許されることか?」

マナ「事情があったんです!」

シロウ「裁定を下せる権限はない。しかし、報告することはできるのだぞ……例えば、サボタージュしていたとかな」

ムサシ「でっち上げでしょう! そんなの!」

シロウ「ウソか真実か。重要な指摘はそこではないのだよ。キミらと私。……どちらが信用するに値するかだ」

ケイタ「(こ、この人……ムサシ)」チラ

ムサシ「……」コクリ
671 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/04(水) 22:08:44.43 ID:EZgE3ZWW0
シロウ「アイコンタクトでイカれたやつだと確認しあっているのか? 子供にもわかりやすいよう説明しているだけのことだよ」

ムサシ「発令は絶対です。上官がご所望するのであれば俺たちは兵として、応えざるをえません」

シロウ「なにやら引っかかる言い方だな?」

ムサシ「――ひとつ問題が。博士が所属なされている機関は戦自ではありません」

シロウ「なぜキミにわかる?」

ムサシ「隊がつけているバッジを身につけておられないからであります」キラン

ケイタ「必ず着用するように義務づけられています」キラン

シロウ「んん〜?」ジー

ムサシ「したがって、戦自機関でない者からの命令に従う義務は――」

シロウ「これのことかな?」スッ

ムサシ&ケイタ「……っ⁉︎」ギョ

シロウ「すまないね。そのままポケットにしまったままだった」

マナ「当所属の博士殿でありましたか」

シロウ「いかにも。といっても、着任したばかりだが。……あぁ、そういえばまだろくに自己紹介をしていかなったな。本日付けで戦自科学研究室に配属となった、時田シロウだ。以降、お見知りおきを」ニヤリ

ムサシ「(くそっ……なんてこった!)」

ケイタ「む、ムサシ……!」

シロウ「さて――……これで、キミたちが私に従う道理ができてしまったわけになるが、他に気になるところは?」

ムサシ「くっ!」

シロウ「ここに配属となれば悪いようにはせんよ。人類の……いや、日本国の未来に貢献できると約束しよう」ニヤニヤ

ケイタ「マナっ! あいつはどこに行ったのっ⁉︎」

マナ「シンジくんなら――」ズズーンッ!

ケイタ「うわっ⁉︎ 地震? ……違う」

ムサシ「ちくしょう、今度はなんだって言うんだっ!」

ケイタ「滑走路の方角だ! 南!」
672 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/04(水) 22:41:34.62 ID:EZgE3ZWW0
【滑走路】

シンジ「はぁっはぁっ」タッタッタッ

レイ『碇くん』

シンジ「綾波ぃっ! ここだっ!!」キッ

初号機「……!」ドンッ ドンッ ダンッ

シンジ「うわっ⁉︎」

初号機「……」プシューッ

レイ「碇くん、スピーカーに切り替えた。どうしたらいいの?」

シンジ「稼働時間が残り少ない! プラグをイジェクトして!」

レイ「了解」ピッピッ

戦自隊員「おーいっ! こっちだ……っ⁉︎ こ、こいつは、エヴァじゃないか⁉︎ なぜ厚木基地にっ⁉︎」

シンジ「(よし、人が集まってきてる)」

初号機「……」ガコンッ

シンジ「僕もそっちと合流する」カチ ピッ

レイ「……」シュー

シンジ「ありがとう、来てくれて。綾波なら、きっと気がついてくれると思ってた」

レイ「トラックが集まってきてる」

シンジ「うん。いいんだ、これで」

レイ「そう」

シンジ「母さんが窮地に立たされるから。結局頼ってしまって、ごめん」

レイ「かまわないわ」

シンジ「ミサトさんたちは?」

レイ「回線を切ってたから」

シンジ「そっか。今頃はネルフ本部も大騒動になってるだろうね」

レイ「弐号機が追走してきた」

シンジ「アスカが? それで、現在地は?」

レイ「わからない。途中で私が速度を上げたから」

弐号機「……!」ビュ シュバッ

戦自隊員「おい! そこの二人! 両手を上げて――な、なんだぁっ⁉︎」

弐号機「……」ズーーーンッ プシューッ

シンジ「なるほど……来たね」

アスカ「やっと追いついた……っ⁉︎ ふぁ、ファーストぉっ⁉︎ なんでここにっ⁉︎ 初号機が暴走してた犯人ってあんただったのぉっ⁉︎」

レイ「よく追いつけたわね。あの速度ではここまで辿り着けないと思ったのに」

アスカ「はっ! あれからすぐにあたしだってマッハに突入したわよ!」

レイ「……」

シンジ「アスカ。一日ぶり」

アスカ「シンジ……? って、今はあんたにかまってる暇ないわよ! そこの人形!」ビシッ

レイ「……」

アスカ「どういうつもりっ⁉︎ あんた自分がなにしでかしたかわかってんの⁉︎」

ミサト『アスカっ! 現状を報告して!』

アスカ「あぁん、もう、ごちゃごちゃうっさいわねぇ! 弐号機のカメラを繋いであげるから自分の目で確認したらっ⁉︎」
673 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/04(水) 23:12:55.05 ID:EZgE3ZWW0
【ネルフ本部 発令所】

ネルフ職員一同「……」ドヨドヨ

シゲル「あれって、綾波レイじゃないか?」

マコト「それに、シンジくんも?」

マヤ「シンジくん……」

ミサト「レイが初号機を操ってたってわけ? ……でも、どうして」

リツコ「(焦ったわけでなかった? 企んでたのね、あの子)」

冬月「当てが外れたな」

ユイ「タブリスが協力しているのはまず間違いないでしょう。でなければ、本部内における使徒の反応の説明がつかない」

冬月「まったくの的外れというわけでもないか。……しかし、これは困った事態になったぞ」

ユイ「……」

冬月「ネルフに所属するパイロットがエヴァを私的な理由で使用したのだ。映像で確認できる限り、目撃者の数が多すぎる」

ユイ「もみ消そうにも、相手が悪すぎる。いがみ合う関係にある戦自と政府には都合の良い材料となりました」

冬月「これを機に、キミの責任問題まで発展させ国会で論じるだろうな」

ユイ「葛城一尉」

ミサト「は、はい?」

ユイ「初号機と弐号機を速やかに回収。以降はネルフに帰還させて。パイロット達も」

ミサト「サードチルドレンはいかがなされますか?」

ユイ「事情聴取しなければならない。もちろん帰還よ」

ミサト「はっ!」ビシッ

冬月「これで疑念の余地はなくなったか。やつは力を自覚し、意図的に使用して今回の事態を引き起こした」

ユイ「やはり私に対し牙を剥くようですね」

冬月「ここまで大胆な行動にでられるとは。子供相手だと思って甘く見過ぎていたか」

ユイ「ふぅ……対応が後手後手にまわっていたと認めざるをえません。一本とられました」

冬月「……」

ユイ「ですが、行動には結果がつきものです。これで勝ったなどと思わせるべきではないし、また、そうはなりません」

冬月「報復を与えるか」

ユイ「力関係と立場はなにも変わっていないのです。軽はずみに動けばどうなるか、シンジに身をもって経験させましょう」

リツコ「……」チラ

ミサト「あんた、やけに落ち着いてるわね」

リツコ「驚いてるわよ? 表にだしてないだけで」

ミサト「レイは初号機とのシンクロ率の融和性がそんなに高くないはずでしょ? どうなってるの?」

リツコ「A10神経で接続している以上、体調、気分の高まりによってシンクロ率は上下すると考えられます。一概に低い高いの基準は定められないのよ」

ミサト「つまり、今回だけってこともありうるの?」

リツコ「なくはないわね。今回、高い数値を計測して速度をマックスにまで加速できたのは、レイが強く願ったからじゃないかしら」

ミサト「シンジくんの元に向かうために?」

リツコ「でなければ、初号機を無断で使用なんてすると思う?」

ミサト「……」

リツコ「始末書と抗議文の山が待ってるわよ。仕事ができてよかったじゃない。あなた、いつも暇そうだから」

ミサト「デスクワークが増えるのはかまわないけど。……レイはどうなるの?」

リツコ「(それはシンジくんの交渉次第ってところかしらね)」

ミサト「リツコ?」

リツコ「それよりも今は、回収が最優先事項だわ。事の経緯については、自ずと明らかになるでしょう」
674 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 02:09:06.24 ID:aNINHIXTo
金庫?なら腕力でこじ開けたと思ったけど
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 08:58:35.46 ID:csTyPW5AO
どうでも良すぎる
台本SSはキャラの個性があまりにも崩壊してなきゃどうだっていいよ
まぁこれはガチで話作りがしっかりしてるだけに気になってしまうてのならわからんでもないが
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 09:48:17.40 ID:q7Cfo4Eao
普段しっかり話が練られているからこそ、そこだけご都合主義に感じたって所はある
綾波召喚だけでユイの責任は問われるしハッタリで乗りきって欲しかったかも
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 09:50:22.00 ID:kBqS9txMo
で、これ何時映画化するの?
678 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/10/05(木) 13:09:51.46 ID:QClrwTCL0
【厚木基地 研究室】

シロウ「薄汚い売国奴どもめ。国に対し背信行為を……得られた資金で好き勝手に研究しやがって。連中、特に赤木リツコに必ず目にものを見せてやる、なにがエヴァだ。欠陥品だ」ブツブツ

ケイタ「博士」

シロウ「――……ん? 失礼。外で騒いでる連中を見て嫌な記憶を思い出してしまった。なにかな?」

マナ「なんの機材ですか?」

シロウ「キミたちが座っている椅子は、ジェットアローン計画の技術を流用して作成した。これから開発基盤を作る上で最初の一歩となる試作品だ」

ムサシ「この椅子が?」

シロウ「正確にはコックピットに設置予定となる。私が立案し戦自に持ち込んだものだよ」

ケイタ「コックピットって? なにを?」

シロウ「私と戦自の共通項は“対使徒”兵器完成。つまり、ネルフにとってかわる役割を担いたいと考えている」

マナ「エヴァみたいなロボットを作るんですか?」

シロウ「そうだよ。キミたちがその栄えある候補生に選出されるかもしれないという話だ。適性の結果次第になってしまうが」

ムサシ「お、俺たちがっ⁉︎」

シロウ「二言はない。俄然やる気が湧いてきたかな?」

ムサシ「(パイロットになれれば、エリートだ。マナとケイタに不自由な暮らしをさせなくて済むかも……!)」

マナ「(ロボット……それって使徒と戦のよね。私が頑張れば、ムサシやケイタはもちろん。シンジくんの助けになれるかも)」

ケイタ「(こ、こわいけど。生身で戦地に行くよりは安全なのかな……)」

シロウ「目に力が宿ってきたな。いいぞ、やはり子供はそうでなくてはいかん」

ムサシ「さ、先ほどは失礼いたしました」

シロウ「なに、気にしていない。私達は知り合ったばかりじゃないか。お互いに知らないことだらけで誤解も生まれよう」

ケイタ「座ってればいいんですか?」

シロウ「ああ。器具をセットするからそのままでいてくれ、まずは浅利隊員から」カポッ カチャカチャ

マナ「いつ頃完成予定なんですか、その、ロボットって」

シロウ「なんとも言えないなぁ。だが、できるだけ急ぐとは約束するよ。次、ムサシくん」カポッ カチャカチャ

ムサシ「ロボットができればネルフに頼らなくても使徒を倒すことが可能でありますか?」

シロウ「もちろんだ。その為に資金を投入するのだから。最後に、霧島くん」カポッ カチャカチャ

マナ「……」

シロウ「――時にキミは、なにか重要な任務を帯びていたそうだな?」

マナ「えっ?」

シロウ「自分で言ったじゃないか。事情があった、と。なにをしていたのか聞かせてくれないか?」

マナ「守秘義務に反します」

シロウ「当てようか。ネルフからきたという訓練生に関連するんじゃないか?」

マナ「いえ、それは違います」

シロウ「嘘はよくない。キミが見せている顔色が物語っている」

ムサシ&ケイタ「……」

シロウ「お友達も興味津々のようだぞ? なぁ、誰にも言わないと約束するから教えてくれないか?」

マナ「できません。例え死んでもお答えするわけには――」

シロウ「おいおい、聞いたかね。やはり興味深い。私は“教えてくれ”としか尋ねていないのに、わざわざ自分から命を賭けるといいだした。重要な機密だと自白しているようなものだ」スタスタ

マナ「……っ⁉︎」

ケイタ「博士、それぐらいで。パイロットの適性テストには関係ないでしょうし」

シロウ「判断するのはキミじゃない、この私だ」ピッ
679 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/05(木) 13:22:54.19 ID:QClrwTCL0
ケイタ「……? ――……ぎゃああああああっ⁉︎」バチバチバチッ

ムサシ&マナ「ケイタっ⁉︎」

シロウ「あぁ、またうっかり言い忘れていた。ロボットの操縦士になるには過酷な環境に耐えてもらわねばならん。なにしろ、生身の体で戦闘機よりも速い箱に搭乗することになる」

マナ「博士っ!! なにをしてるんですかっ⁉︎」

シロウ「なにを慌てている? 必要なテストだよ。どこまで痛みに耐えられるかの。椅子には電流が流れる仕組みになっている」ピッ

ケイタ「」プスプス シュー ガクン

ムサシ「ケイタっ⁉︎ おいっ!! しっかりしろ! ケイタぁ!!」ガタガタ

シロウ「ふむ。気絶したか。皮膚が少々焦げているな、やりすぎてしまったようだ。はじめてで加減を間違ってしまった」

マナ「ケイタっ!! ケイタぁっ!!」ガタガタ

シロウ「では、質問を再開しようか。キミはあそこでなにをしていたんだね?」

マナ「……っ⁉︎ 申し上げられません!」

シロウ「それは誰のためにだ? 軍かね? それとも――」ピッ

ムサシ「ケイタっ! ケイっ⁉︎ ぐあああああああっ!!」バチバチバチッ

マナ「ムサシっ⁉︎」

シロウ「電圧は浅利隊員より低めに設定してある。かといってつらくないわけではないぞ」

マナ「ムサシっ!! ムサシぃっ!!」ガタガタ

シロウ「訓練生だろう? 関係しているのは」ピッ

ムサシ「うっ」シュー ガクン

マナ「ムサシ!! しっかりして!!」

ムサシ「こ、この野郎ぉっ!!」ガタガタ

シロウ「暴れたところで無駄無駄。その器具は人間の力では破壊できないからな。どうする? 霧島隊員。彼らの命運はキミが握っているぞ?」

マナ「こんなのが適性検査なんてっ! 人体実験じゃないですか!! 上官を呼んでください!」

シロウ「ふむ……まだ理解していないと」ピッ

ムサシ「まっ⁉︎ ぐううううああああっ!!」バチバチバチッ

マナ「ムサシ⁉︎ ムサシぃっ!!」

シロウ「そろそろ喚くのにも飽きてこないか? 私はとっくに飽きてる。まるで作業だ」ピッ

ムサシ「はぁ、はぁっ」シュー

マナ「なんで? なんでそこまで知りたいんですか?」

シロウ「キミが隠そうとするのが悪いのだ。興味が湧いてしまうだろう?」スッ

マナ「わかりました、言います、言いますから」

シロウ「どうぞ」

マナ「私が受けていた任務は、碇シンジくんの身の回りの世話をすることです」

シロウ「それだけか?」

マナ「はい」

シロウ「手間をとらせないでくれないか。ウソはよくない」ピッ

ムサシ「ぐあああああっ!!」バチバチバチッ

マナ「……っ! なんで、こんなひどいこと!!」
680 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/05(木) 13:53:55.40 ID:QClrwTCL0
シロウ「私はね、科学が好きなんだ。人生を捧げてもいいほどに、文字通り研究だけのために生きてきた」

マナ「(どうしよう、どうしたらいいの)」

ムサシ「くっ、マナ……」

シロウ「だが、ある計画を不意にしてしまってね。みんなが私を責めた。政治的理由、責任問題。それだけ莫大な資金がかかっていたから致し方ないことだが。私はものの見事にスケープゴートにされた」

マナ「(話を引き出して時間を稼がなきゃ。でも、稼いだとしてどうしたら……考えるのよ、マナ)」

シロウ「あんまりだとは思わないかね? ひとつの失敗だけで、この国はそっぽを向いてしまうに及ばず徹底的に叩き潰す傾向にある」

マナ「博士は戦自の為に働くのではありませんか?」

シロウ「勘違いさせてしまったかな? 悪いのは国民性じゃない。ネルフなのだ。やつらさえいなければ、私は失敗する要素がなかったし、人為的被害をださずに済んだ」

マナ「エヴァがなければ使徒は倒せません。有効兵器が。かろうじて通じるのはN2のみで、それでも足止め程度の効果だけです」

シロウ「あの規格外のバケモノどもか。科学が超えるには高すぎるほどに厄介だよ」

マナ「だったら、博士だって必要性を」

シロウ「だからこそ、人類の英知を集結しなければならんのだ」

マナ「エヴァだって科学の力です!」

シロウ「その場しのぎの紛い物。あんなもの。正しい方法でやらねばその後の発展はない」

マナ「あなたは、私利私欲のために。戦自を利用するつもりですか……?」

シロウ「目的と合致していると言ってくれないか? 出資者と開発者。私と戦自の関係はイーブンだ」

マナ「研究達成のためならば、隊員は、モルモットですか?」

シロウ「私とてやりたくてやっているわけじゃないんだよ。これは早期開発にあたり、サンプルを収集するためのデータ。“不慮の事故”がおこったとしても、貢献される。安心したまえ」

マナ「そんな……っ! 上官は⁉︎ ご存知なんですかっ⁉︎」

シロウ「過酷なものになるやもしれないとは伝えてある。内容は……事後報告になるが、まぁ、問題ないだろう」

マナ「いいわけないでしょう⁉︎」

シロウ「キミは自身の価値を過大評価しているようだな。戦地で死ぬのと実験で死ぬのを比べた時、“死”という概念に違いはあるか?」

マナ「(く、狂ってる。この人)」

シロウ「答えは否。大衆が着目するのは、キミたちが志願したという動機と国のためという大義名分だ」

マナ「降ります! 私たち3名はこの任務から!」

シロウ「そうか。それは残念だ」スッ

マナ「……っ⁉︎ ま、待ってくださいっ!! なにをするつもりですか⁉︎」

シロウ「……? なにって、わかってるんじゃないか? 命令を辞退したものには罰が必要だ。戦自の規律だろう?」

ムサシ「はぁ、はぁ、な、なにをしたら、助けてくれますか……?」

シロウ「おお、まだ意識があったのか。さすが主席候補生。耐久力があるな」

ムサシ「おねがい、します……助けて、ください」

マナ「ムサシっ!!」ガタ

シロウ「ふむ、どうやらキミは物分かりも良いらしい。隣の娘に喋らせることは可能か?」

ムサシ「……マナ、頼む。ここで死ぬわけにはいかないんだ」

マナ「だめよ、ムサシ……! こんな人に屈しちゃだめ!」

ムサシ「俺一人なら我慢できる。ケイタの反応がないんだ」

マナ「……っ⁉︎」

ムサシ「俺は、俺は……! マナもケイタも守りたい! けど、今はどうすることもできない」
681 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/05(木) 14:39:04.15 ID:QClrwTCL0
マナ「……」

ムサシ「安心しろ。俺がこのサイコ野郎を必ず黙らしてやる」

シロウ「それは私がいないところで発言すべきだが、聞いていないことにしてやろう。気骨がないと面白くないしな」

ムサシ「今は機会を待つべきだ。頼む……! 俺を信じてくれ……!」

マナ「で、でも……」

ムサシ「ケイタが死んじまってもいいのかよ!! なんの任務か知らないが、ケイタよりもあいつが大事なのかっ⁉︎」

マナ「……っ⁉︎」チラ

ケイタ「」

マナ「ケイタぁ……っ」

シロウ「火傷を甘く考えない方がいいぞ。手遅れになる可能性だってある」

マナ「(シンジくん、私、どうしたら……)」

ムサシ「マナっ! 頼む! ケイタを助けてやってくれ! 守秘義務を破った処罰なら俺が受けてやるから!」

シロウ「その点については心配ない。喋るつもりはないと言ったろう?」

ムサシ「こんな真似してるあんたを信用できるわけねぇよ!!」

シロウ「いやいや、約束は守る。ルールというのが私にはあるんだ」

ムサシ「ちっ、なぁっ、頼むよ、マナ……!」

マナ「……」ギュウ

シロウ「なんと薄情な娘か。友達が瀕死の状態かもしれないのに、まだ迷っているらしい」ピッ

ムサシ「ま、マナあああああああっ!!」バチバチバチッ

マナ「――……わかったっ!! 喋る!! 喋りますからもうやめてぇっ!!」ポロポロ

シロウ「(やはり、心とはたやすく折れるものだ)」スッ

ムサシ「ぐっ、はぁ、はぁ」

シロウ「なんの任務に服役していた?」

マナ「うっ、うっ、ぐすっ、潜入っ、任務、です」

シロウ「ほう。それはネルフにかね?」

マナ「学校っでしだ。サードチルドレンに、近づけって」

シロウ「なぜ?」

マナ「人事に、うっ、うっ、不審な点はないかと」

シゲル「泣きながらだと声が聞き取りずらいな。もっと普通に喋れんのかね?」ピッ

ムサシ「ぐあああああああっ!!」バチバチバチッ

マナ「……っ⁉︎ しゃ、しゃべりまず! 喋るからぁっ!」

ムサシ「」プシュー ガクン

シロウ「それで?」

マナ「サードチルドレンに対しての、潜入調査でした。目的は、人事異動に不審な点はないか調べること」

シロウ「ああ、そういえば親子だったかな。なにを掴んだ?」

マナ「な、なにも……」

シロウ「いい加減にしろ! そんなわけがあるか!」パァンッ

マナ「いつっ!」

シロウ「まだ頬を叩かれたいのか?」

マナ「……!」キッ
682 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/05(木) 14:56:24.18 ID:QClrwTCL0
シロウ「口の端を切ったか、血が滲んでいるな。……これが最後の機会となる。本当のことを喋るんだ」スッ

マナ「……」

シロウ「隣の友達を目に焼き付けたか?」

マナ「私の正体は、すぐに、バレました」

シロウ「それは困ったな。どうやって乗り切った?」

マナ「サードチルドレンが尽力してくれたお陰です。私の命は彼に救われました」

シロウ「方法はどうした?」

マナ「詳しいことはわかりません……本当ですっ!! 僕にまかせてって言って、一夜明けると、もう大丈夫だよって言ってくれて」

シロウ「漫画の主人公みたいだな」

マナ「変わらず潜入を続けられました」

シロウ「ふん、身分が明らかになっているのに潜入もクソもあるまい。要するにネルフと結託して戦自を欺いてたのか?」

マナ「違います、そんなつもりは」

シロウ「サードチルドレン、か。中学生の子供だと聞き及んでいるが、やつは母親にそこまでの影響力を持っているのか?」

マナ「……わかりません、ただ、嫌っているっていうか」

シロウ「なんだ?」

マナ「立ち向かうみたいな意思を感じました」

シロウ「ほうほう。そいつは、またなんとも興味深い話だ。ウソじゃないだろうな?」

マナ「はい。誓ってウソじゃありません」

シロウ「ふむ……。ところで、キミは命を救われて、はいそうですかで終わったのかね?」

マナ「……はい?」

シロウ「なにか対価を要求されなかったのかと聞いている」

マナ「シンジくんがそんなことするわけないでしょう⁉︎」キッ

シロウ「どうやらとても紳士的な少年のようだ。キミはどう思った?」

マナ「どうって……いい人だなって」

シロウ「チッチッチッ。いい人なんて表現は適切じゃない。どうでもいい人なわけないだろう? 命を救う活躍をした同年代に対して思春期にありがちな恋心を抱いたのではないか?」

マナ「あなたにっ……! なにがわかるっていうのよ……!」

シロウ「キミが守りたい秘密だったはずだ。そこでぐったりしてる友達と天秤にかけてまで」

マナ「……」ギュウ

シロウ「くっ、くっはっはっはっはっ! まいったな、こりゃ傑作だ。キミは友達を裏切って尚、恋心を抱く相手までをも裏切ったのか?」

マナ「し、仕方なくてっ」

シロウ「中途半端が一番よろしくない。“仕方ない”を使う時は、決まって納得するための言い訳だ」

マナ「……」ポロポロ

シロウ「あぁ、これだ。女は泣けばいいと思っている。お前が裏切ったんだぞ? 友達も! サードチルドレンもっ!!」バンッ

マナ「ち、ちがうっ、私はっ、そんなつもりじゃっ」
683 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 14:59:45.54 ID:g66CSPvMo
もっと早くしゃべっておけば何も掴めませんでしたで済んだのに
変にもったいつけるから勘繰られてしまった
684 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/05(木) 15:43:39.94 ID:QClrwTCL0
シロウ「とんだ茶番だな。寸劇を見ていたような気分だ……あえて聞こう。今だとサードチルドレンと大切な友達。どちらを選ぶ?」

マナ「む、むりですっ、どちらかなんて」チラ

ムサシ&ケイタ「」グッタリ

シロウ「(そうだ、いいぞ。よくみろ。目の前にあるのはリアルだ。……直面している現実だ。選択の余地などない。友達を選ばなければ死んでしまう)」

マナ「ムサシと、ケイタ、です」

シロウ「サードチルドレンを目の前にしても言えるか?」

マナ「はい……」

シロウ「では、霧島隊員。貴様に任務を言い渡す」

マナ「任務……?」

シロウ「これも言い忘れていたんだが、パイロットは一人で足りていてね。浅利隊員は予備でムサシ隊員が本命なのだよ。キミは最初から頭数に入っていなかったんだ」

マナ「それって、ケイタを最初にしたのは……っ⁉︎」

シロウ「もちろん“予備”にふさわしい扱いだ」

マナ「誰かを憎むのは嫌いです。だって、そんなことしたってなんにも生まれないから。だけど、あなたは違うっ!」

シロウ「殺したいか? 私を」

マナ「友達を傷つけるなんて許せないっ!!」

シロウ「力のない者が吠えるな。負け犬の雑草如きが」

マナ「このっ……!」ガタガタ

シロウ「出世街道を突き進んでいた私に敵うわけないだろう。権力も、知恵も、人脈も足りないお前になにができる? ん〜?」

マナ「――……殺してやるわっ!!」

シロウ「いい殺意だ。大事に大事にとっておけ。そうなると……やはり、キミは任務を遂行しなければならない。機会を得るためにだ」

マナ「なにをさせるつもり」

シロウ「サードチルドレンをここに連れてこい。私の元へ」

マナ「放送聞いてなかったんですか? 機体の回収作業に入っています。パイロットは先に――」

シロウ「学校に行けば会えるだろう?」

マナ「えっ、また転校させるつもりですか?」

シロウ「バカかね、キミは。目的は潜入じゃないんだ。そんな回りくどいやり方はしなくていい。街中で会ってこい」

マナ「……」

シロウ「これは任務であって任務ではない。人質がいるということをゆめゆめ忘れるなよ」

マナ「シンジくんと会ったら、なにをするつもり?」

シロウ「行動の予測はついている。サードチルドレンに助けてもらえたらと希望的観測を抱いているな?」

マナ「……」ギュウ

シロウ「私をこれまで会ったどの大人よりも有能だと思え。出しぬこうなど見え透いた思惑などお見通しだ。つまり、友達を殺したくないな?」

マナ「は、い……」

シロウ「よろしい。拘束を解いてやろう……っと。その前にいきなり襲われでもしたら大変だ。これを見たまえ」スッ

マナ「そ、それは?チョーカー?」

シロウ「これはね、遠隔操作可能な超小型爆弾だ。火薬を使わず化学反応により誘爆を促すシロモノで、首から上を吹き飛ばす程度の威力はある。……キミたち三人への贈り物としよう」

マナ「いらないっ! そんなのっ!」ガタガタ

シロウ「スイッチはどこにあるだろうな?」

マナ「……!」

シロウ「ここだ。奥歯に仕掛けてある。力をいれてひと噛みすれば――……ボンッ!! だ。……ああ、食事の心配はしないでくれ。私はサプリと流動食しか口にしない。必要な栄養が補給できさえすればいいんだ」カシュ

マナ「そ、そんな……」

シロウ「一度裏切ったんだ。二度目は気が楽だろう? 任務、頑張ってくれたまえ」ポンッ
685 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/10/05(木) 18:02:15.23 ID:QClrwTCL0
【ネルフ本部 執務室】

冬月「たいそうなコトをしでかしてくれたな。揉み消せないようご丁寧に大量の目撃者まで。これではメンツが丸潰れだ!」

シンジ「……」

冬月「だんまりでは済まされんぞっ!」バンッ

ユイ「――……シンジ。よく考えついたわね」

シンジ「やめてよ。母さんに褒められる為にやってるわけじゃないんだ」

ユイ「私だって親なんだけど?」

シンジ「……」プイッ

ユイ「副司令。今回の損害は?」

冬月「死傷者はでていないから外部処理的なものだ。各方面から苦情の電話が鳴りっぱなしだよ」

ユイ「世間体が悪くなり、総司令である私の責任能力にまで追求の余波は及ぶ。これがやりたかったこと?」

シンジ「……」

ユイ「狙いは達成できたんじゃないかしら。たしかに私はネルフの代表者で、なにか不都合が起きた場合、真っ先に矢面に立たされる」

冬月「我々がなにもせずただ眺めていたらの話。“トカゲの尻尾切り”をしなかった場合だがな」

ユイ「どう思う? シンジ。想定外の不始末が起こったとして……私は保身のためになにもしない?」

シンジ「わかってるよ、メンツを潰されたことに怒ってるんじゃない。余計な手間をとらせることに怒ってるんだって」

冬月「両方だ。雑務は増えるし金も使う」

シンジ「たいしてダメージじゃないんでしょ?」

ユイ「これといって。転んで擦りむいたぐらいかしら……こういう事件が何回も続けば司令交代を通達されるでしょうけど」

冬月「無策でのこのこと出頭するほどマヌケではあるまい。貴様の到達点は“この場所”ではないだろうからな」

シンジ「はい」

ユイ「当然まだなにか隠してる。どうするつもり……?」

シンジ「綾波の身の安全を保障してください」

ユイ「たしか、戦自の……名前忘れちゃったけど、あの子と伊吹二尉。そこにレイも含めると三人目よ?」

シンジ「綾波は理由が違います」

冬月「なに?」

シンジ「彼女は必要だからです。補完計画の依り代として」

ユイ「……」

シンジ「僕は夢の出来事を覚えているんだ。そして、全てを知った。父さんの死も……!」

冬月「もしやとは思っていたが……我々に告白する理由はなんだ?」

シンジ「意思表示をしっかりとしていなかったからです。僕は、計画の片棒を担ぎたくない」

ユイ「代替え案の提示なしに認められません。あなたは中心なのよ? 守りたい人がいるのならば、協力しないと」

シンジ「人質みたいなことじゃないか……いや、いいんだ。母さんはゴールまで辿り着ければ手段なんてどうでもいいんだろうから。僕はアダムの力を使える」

冬月「どの程度までだ?」

シンジ「そうですね、長い時間は無理ですが電波妨害と肉体強化は」

冬月「アダムの性質が持つ衝動については?」

シンジ「発作みたいなものです。自分ではどうすることもできません」

ユイ「そこまで私たちに教えるにあたって、何か得はあるの?」

シンジ「さっき言ったじゃないか。はっきりとした意思表示したい、それだけだよ」

ユイ「話は終わりなら、周囲にいる親しい者たちの中から何人か殺すわよ?」

シンジ「殺せない」

冬月「えらくもったいぶるな。話をしても大丈夫だと判断しているわけかね」
686 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/05(木) 18:52:55.26 ID:QClrwTCL0
シンジ「騒動を起こしたきっかけは、僕の失敗に起因しています」

ユイ「シンジの? そこそこ立ち回れていたと思うけど」

シンジ「どこかでアクションを起こさなければいけないとずっと伺ってたんだ。僕の目的と母さんの目的が相入れない以上は」

ユイ「……そのせいでこの騒動が?」

シンジ「軍曹殿、彼に取り引きを持ちかけたんだ。……結果は急ぎすぎだった。見落としを警戒して、慎重に動くべきだったのに」

冬月「肩書きのまま疑うことをせず、ネルフの内通者である奴にまんまと情報提供を持ちかけたのか」

シンジ「内心、焦りました。報告される」

ユイ「口封じをすればもう暫くは時を稼げたでしょうけど、シンジはできないわよね」

シンジ「……隠すのが無理ならいっそバラしてしまえばいい。咄嗟に“ある計画”を思いついたんです」

冬月「欠損した部分には変わりとなる機能。つまり、補填が必要だ」

シンジ「僕はそれを探すため、力を使う賭けにでることとしました。母さんを窮地に立たせられるもの」

冬月「……? エヴァ出動とまた別件か?」

シンジ「そうですよ。騒動は基地内を混乱の渦に巻き込む状況を作るためのものでした。そして、この場所に立つための」

冬月「なに……?」

シンジ「これまで、“母さんに協力するしかなかった”。でも、これからは“僕に手出しをできない”状況になる」ゴソゴソ

ユイ「対等の関係にできる?」

シンジ「僕が探していたのは――」パサ

冬月「なんだ? 一枚の紙切れか?」

シンジ「母さんの個人ファイルだよ」

冬月「どんな極秘ファイルがでてくるかと思えば。個人情報は機密扱いだが優先度は低い」

シンジ「そうですね、最初に行った部屋であっさりと見つけられました」

冬月「ましてや、戦自が握っている情報などタカがしれている」

シンジ「どうして?」

冬月「改竄しているものをダミーとして流しているからだ」

シンジ「本当にそうですか? 言われなきゃ気がつかない?」

ユイ「……?」

シンジ「戦自が探しているものはなんですか?」

冬月「我々とゼーレの癒着だろう」

シンジ「じゃあ、父さんの旧姓、六分儀については」

ユイ「し、シンジっ⁉︎」ガタッ

シンジ「(よし、さすがの母さんも驚いてるな。でも、まだ油断しちゃだめだ)」
687 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/05(木) 19:14:52.44 ID:QClrwTCL0
冬月「……なんだ? どうした?」

シンジ「改竄されたダミーだと仰いましたね。母さんの経歴について偽の情報が記載されたもの」

冬月「そう言った」

シンジ「でも、改竄しようのないものもあるんです。それは先に情報が公開されていた場合。後付けで訂正してしまうと整合性がとれず疑念を招いてしまう」

冬月「それと碇の旧姓が……そうか、六分儀の性だった頃、碇はユイくんの所へ婿養子としてはいった」

シンジ「どうしてだと思います?」

ユイ「なぜ? なぜシンジがそれを知って……?」

シンジ「答えは言わないでおくよ。もう伝わったみたいだから」

冬月「……? 待て、俺はまだ理解できていない」

シンジ「戦自が知っていて、母さんが知らないもの……気がついていないものがあったんです」

冬月「しかし、碇の旧姓がわかったところで」

シンジ「どんなに情報を改竄しようと、証明できるものがそこにある。戦自や政府に言われたくなければ、手を出さないこと。これが僕の条件です」

ユイ「……ふっ、ふっふっ。なるほど。使徒の力を使い腕力に頼るかと思えば、よく気がつけたわね」

シンジ「ずっと不思議だったんだ。父さんから母さんの話を聞いた機会はないけど」

ユイ「そう」

シンジ「本当に賭けだった」

ユイ「見事、勝ったわけね。二分の一の賭けに。……戦自の訓練はどうだった?」

シンジ「きつかったよ。一日だけだったけど」

ユイ「しばらくは戦自にいたら?」

シンジ「それでもいいけど、向こうよりこっちが心配だし」

ユイ「これからは対等の立場でやっていくんでしょう?」

シンジ「とりあえずはね。でも、抜けがないわけじゃないから」

ユイ「みるみる成長してるわね。ほんと、短い期間なのに」

シンジ「糸が張り詰めてるだけ。切れたらどうなるか……」

ユイ「切れるきっかけとしては誰かの死に直面することが望ましい? やはり殺しておくべきかしら」

シンジ「そうなったら、母さんの計画も」

ユイ「ご破算ね。……わかった」

シンジ「もう帰っていい?」

ユイ「ええ、と言いたいところだけど、部屋がないのよ。どこにする?」

シンジ「コンテナでかまわないよ」

ユイ「好きな区画のものを使いなさい」

シンジ「それじゃ」クルッ

ユイ「待って」

シンジ「……」ピタ

ユイ「シンジ、よく頑張ったわね」

シンジ「……」スタスタ





688 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 20:49:27.73 ID:qTU4ZFzPo
ゾルディック家かよ
689 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 21:01:02.50 ID:RI4yCkwco
へえー、調べたがユイってゼーレ関係者の娘だったのか
知らなかったわ
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 21:27:26.60 ID:t+eUZiR3O
ゾクゾクきた。つづきたのしみ!
691 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/05(木) 23:02:39.00 ID:3k9zShi+O
極秘ファイルをあっさり見つけられたのはミスリードだったってわけね
692 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/06(金) 09:36:40.62 ID:lb79a/P8o
オレ「「……? 待て、俺はまだ理解できていない」」
693 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/06(金) 10:18:27.29 ID:O450V/nBO
察するに今後SS中に入れてくるんじゃないか
考えてみればゼーレとユイの協力関係に深く触れてなかったからなぁ
書類と六分儀は見事な伏線だったは
694 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/06(金) 20:31:00.00 ID:DDuz9gSI0
ゾルディック家吹いた
695 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/06(金) 21:01:25.76 ID:DDuz9gSI0
【数十分後 同執務室】

キール「今回の事件の当事者であるリリスの器への直接尋問を拒否したそうだな、碇ユイ博士」

ユイ「はい。その必要はありません」

ゼーレ03「では聞こう、ネルフ総司令碇ユイ」

ゼーレ05「先の事件、エヴァを使用した理由についての見当はついているのかね」

ユイ「綾波レイを呼んだのはシンジのようです。イレギュラーな事件だと、推定されます」

ゼーレ06「なぜだ?」

ユイ「過酷な訓練に音をあげてしまったようです。我が子ながら情けない限りで……お恥ずかしい話ですが」

ゼーレ04「たったそれだけの理由でエヴァを無断で出撃させたのか? 度し難い」

ユイ「ご存知の通り、綾波レイに喜怒哀楽といった感情はございません。頼まれて仕方なくといったところでしょうか」

ゼーレ06「命令違反についての認識さえなかったというのか?」

ユイ「いえ、そこまでは。赤木リツコからの報告によると、調整不足で情緒不安定なタイミングが重なっていたのが要因として考えられます」

ゼーレ02「証明するものは?」

キール「エヴァのACレコーダーは作動していなかった。確認はとれまい」

ゼーレ05「綾波、レイか。キミの亡き夫の置き土産品である模造品」

ユイ「……」

ゼーレ03「人形が精神、心に興味を持つことなど本当にありえんのだろうな? 周囲の多干渉がリンクする可能性は?」

ユイ「ないと断言できます。なぜならば、魂の概念がリリスの借り物であり、成長の余地がないからです」

ゼーレ05「目撃者が多すぎる。予測されうるは戦略自衛隊と政府が連携して行う組織的動作。……日本国内の騒動について国連から助力は期待するな」

ゼーレ03「さよう。内政干渉になってしまうことはあきらかだ」

ユイ「存じております」

キール「計画に遅延はないか?」

ユイ「はい」

キール「タブリスの動向は」

ユイ「好きに動かせています。操作可能です」

キール「よかろう……。キミに期待するのは補完計画の完遂、その一点だ」

ユイ「御意に。確実に我々は歩を進めています。残された段階は――」

キール「後わずか、と言うことか」

ゼーレ03「明日、そちらの本部に三号機が到着する。色々あって予定より遅れてしまったが」

ユイ「承知いたしました。しっかりと整備、管理をさせていただきますわ」

キール「忌むべきエヴァシリーズ。“約束の時”に備えしかるべき運用を望むぞ」

ユイ「はい、全てはゼーレの皆様方のシナリオ通りに」
696 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/06(金) 21:22:54.24 ID:DDuz9gSI0
ユイ「ふぅ……老人たちの相手は気疲れしますね」

冬月「その枠には俺も含まれていやしまいな?」

ユイ「ご冗談を」

冬月「ゼーレめ。その気になれば外部から圧力をかけるぐらいできるだろうに……キミへの嫌がらせだよ。アレは」

ユイ「かまいません。むしろ深くつつかれなかっただけ好都合です」

冬月「レイに手出しをしないのは、やはり先ほどあった息子とのやりとりが原因か? 器を入れ替える作業自体に問題はなかろう」

ユイ「それもありますが、ご褒美といった感じでしょうか」

冬月「我々がゼーレを欺くのと同じように、サードチルドレンもか。騙し、騙され……人間不信になってしまうよ」

ユイ「先生はこれまで嫌というほど体現なさってきているでしょう」

冬月「だからだ。慣れてしまえば、自分を保てなくなる」

ユイ「ゆっくりと心を蝕んでいきますか」

冬月「常識人とは言い難いよ。キミも、俺もな」

ユイ「所詮、ヒトの作ったルールです。型にはめる、社会を成形するための」

冬月「人間臭さを捨てきれないことを否定したくはない」

ユイ「……」

冬月「私は最後まで看取ると決めている。理想とは程遠い、人の織り成す狂想曲の行く末を――」
697 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/06(金) 22:50:54.63 ID:DDuz9gSI0
【ネルフ本部 作戦課】

ミサト「……」ヒク ヒク

マヤ「よいしょっと」ドサッ

ミサト「まだあんの……?」

マヤ「あとダンボール三つ分ほど。国土交通省、農林水産省から東部電力などの民間企業と」

ミサト「わぁ〜かった! わかった!」

マヤ「た、大変ですね。今回は事前に申請されていなかった出撃でしたので」

ミサト「ったく! これだからお役所仕事やってる連中なんか嫌いなのよ! ちょぉっと違うだけで融通なんかききやしないんだから!」

マヤ「向こうも、仕事、ですから」

ミサト「だいたいねぇ! 使徒が絡んだ出撃じゃないからって……はぁ、マヤちゃんに愚痴っても仕方ないわよねぇ」

マヤ「いえ、私なら大丈夫です」

ミサト「そうもいかないのよ。上司が部下に甘えるなんて体面がね、この場合上官が下級の官職にだけどぉ」

マヤ「よかったら、手伝いましょうか?」

ミサト「いいの? 自分の仕事は?」

マヤ「先輩は自分でやった方が能率が上がるからって」

ミサト「あちゃ〜閉め出されちゃったか」

マヤ「……」

ミサト「あぁ、リツコだし! 落ち込まないで平気よ」ポンッ

マヤ「気にしてませんよ」

ミサト「そう? それはそれでなんだか肩透かしね。直属の上司から……はは〜ん。慣れた?」

マヤ「そう、ですね」

ミサト「……? ま、いっか。手が空いてるようなら手伝い頼める?」

マヤ「私から申し出たことですし、なんなりと」

ミサト「たっすかるぅ〜! リツコに話して私の部下にしちゃおっかなぁ〜」

マヤ「もう、軽口を叩いてないでとりかかりましょう」

ミサト「はいはいっ、口ぶりがリツコに似てきたんだから。やっぱり弟子は師匠に似るもんね」

マヤ「そうでしょうか」

ミサト「一緒に過ごす時間が長くなるのはもちろんだけど。お手本とするべき相手でしょ?」

マヤ「……」

ミサト「嫌な面も見えてくるもんだけどね。親と同じで」

マヤ「(たまに鋭いのよね、この人)」

ミサト「えーっと、まずはぁ〜っと」カサ

マヤ「あの、本部内に現れた使徒の行方は」

ミサト「それがぜぇ〜んぜん」

マヤ「技術部から多数の死傷者が出たって聞きました」ペラ

ミサト「そうね。でも、覚悟はしてたはずだから」

マヤ「そんな簡単に割り切れますか?」

ミサト「そうするしかないのよ。ここにいる以上は……いいえ、使徒という災厄が訪れるこの時代にはね」

マヤ「……」

ミサト「人間死ぬときゃ死ぬんだから! どーんと構えましょ!」
698 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/06(金) 23:19:56.94 ID:DDuz9gSI0
【ネルフ本部 女子ロッカー室】

アスカ「どーゆーつもりっ⁉︎ なんであそこに行ったの⁉︎」バンッ

レイ「……」

アスカ「エヴァの無断使用は重罪よ! パイロットだからって許されるわけない!」

レイ「なぜ、あなたに責められなければいけないの」

アスカ「おかしいからよ! 普通の行動じゃない!」

レイ「質問の答えになってないわ」

アスカ「いい? 人形のあんたにもわかるように教えてあげる! 出撃してる間に使徒が本部内で出現してた!」

レイ「……」

アスカ「反応はすぐに消えたらしいけど、唯一の対抗手段である私たちの出番だったでしょ!」

レイ「私たちじゃないわ、エヴァの」

アスカ「どっちでも一緒! パイロットがいなきゃ動かないじゃない!」

レイ「……」

アスカ「私は、有事の際に不在でしたなんてお粗末な結果になりたくないのよ……! 役立たずなんてごめんだわ!」

レイ「……」

アスカ「今度このあたしの足を引っ張ったら、あんたのことパイロットだと認めない」

レイ「そう」

アスカ「シンジに会いに行ったの?」

レイ「……」シュルシュル パサッ

アスカ「シカトはやめなさいよ。あたしだって、シンジから話を少し聞いて――」

レイ「あなたに言う必要はないわ」カチャ

アスカ「……っ⁉︎ いい加減にしろ、この人形っ!!」

レイ「私は、人形じゃない」

アスカ「人形よ! あんたなんか!」

レイ「なぜ、そんなこと言うの」

アスカ「見るからにそのまんまじゃない! 無表情、無感情! 悲しい、楽しい、なんでもいい! 表現方法が他になんかないの⁉︎」

レイ「……」

アスカ「あぁ〜イライラする! 会話のキャッチボールがままならないなんてもんじゃない、あんたのその纏ってる空気がムカムカする」

レイ「……」スッ

アスカ「……? なによ……? うつむいてどうかした」

レイ(少女)「私もあなたが嫌い」

アスカ「えっ」

レイ(少女)「本当は寂しくて寂しくてたまらないだけのくせに。強がり。あまのじゃく。わがまま」

アスカ「ふぁ、ファースト……?」
699 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/06(金) 23:48:35.71 ID:DDuz9gSI0
レイ(少女)「背伸びをしているのだって大人達に自分を褒めてもらいたいから」

アスカ「……!」

レイ(少女)「――存在を認めさせたいから。見てもらいたいから。承認欲求」

アスカ「なに言ってるの、よ」

レイ(少女)「脆く、弱い人間。縋っているプライドと虚構を頼りにギリギリの自分を取り繕っている。あの人が言ってたわ」

アスカ「あの人……? 誰?」

レイ(少女)「加持特別監査官」

アスカ「加持さんがっ⁉︎」

レイ(少女)「色々聞いたわ。あなたのこと。……なにも知らない子供だって。背伸びをしている子供。いけすかないガキ」

アスカ「嘘よ! 加持さんがそんなこと言うわけないっ!」

レイ(少女)「本当よ? 話をしてくれた。仕事じゃなければ面倒を見ない、見たくない。うんざりしてるって」

アスカ「デタラメよ、そんなの!」ズリ ズリ

レイ(少女)「どうして後ずさるの? こわいの?」

アスカ「えっ?」

レイ(少女)「自分がいらなくなるのがこわいんでしょう? こわくてたまらないんでしょう?」

アスカ「ち、違うわ、あんたが、不気味で」

レイ(少女)「褒めてもらいたいのも結局はそう。やっとできた自分の居場所を守りたいから。母親と父親がくれなかった、その代わり」

アスカ「なっ⁉︎ な、なんでママのことを⁉︎」

レイ(少女)「全部教えてくれたのよ。加持さんが。あなたはいらないって言ってた。これからは碇くんがいればいいって。用済みなのよ、あなた」

アスカ「そんなわけ」

レイ(少女)「なんで私が知ってるの? 碇くんでさえ知らないのに」

アスカ「そ、それは……」

レイ(少女)「認められない、認めたくない。現実は残酷」

アスカ「加持さんに確認する……! 嘘だったら、どこで知ったか洗いざらい喋ってもらうからね。覚えときなさいよ」タンッ タタタッ

レイ(少女)「ええ」

レイ「もういいの?」

レイ(少女)「ネルフにいないから捕まらない」

レイ「……」

レイ(少女)「赤木ナオコと同じ手段で。少しずつ壊していく。あの女の支えているものが崩壊して死にたくなるように」
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/07(土) 01:03:29.21 ID:3OCczf/5o
こわい
701 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/10/08(日) 15:03:30.32 ID:gha0/1FZ0
【ネルフ本部 中央作戦司令室前】

アスカ「はぁっはぁっ、んっ、くっ」

リツコ「あら、アスカじゃない。そんなに息を乱して」

アスカ「ぜぇ、ぜぇ。か、加持さんの居場所知らない?」

リツコ「彼なら今、出張に出てるはずだけど」

アスカ「それなら……ねぇ、あたしの個人データって第三者が閲覧できる?」

リツコ「当たり前の話だけど権限を持つものに限られる」

アスカ「ファーストは?」

リツコ「レイ? あの子の持っている解除権限はあなたやシンジくんと同じ範囲までだからできない」

アスカ「……」

リツコ「なにかあったの?」

アスカ「いい、なんでもない」

リツコ「加持くんに依存しすぎるのはおやめなさいな」

アスカ「確認したいことがあったの」

リツコ「あなた、いつもそういって加持くんを探してはまとわりついてるじゃない」

アスカ「違うの! 本当に――」

リツコ「今回の出撃データ。後半の伸びはよかったけれど、レイにシンクロ率が負けてたのよ」

アスカ「……っ!」

リツコ「ふぅ、こんなんじゃエースなんてとてもじゃないけど任せられない。男にうつつをぬかしてる場合?」

アスカ「なんで、なんで、ファーストの名前を出すの」

リツコ「なんでって……競争相手でもあり比較対象だからよ。危機感を持ってるの? なぜ最初から本気でやらないの?」

アスカ「やってるわよっ!!」

リツコ「他パイロットと比べられると対抗意識をむき出しているけど、優越感に浸っているんではなくて?」

アスカ「あ、あたしのどこが」

リツコ「あなたは、自信がありすぎる。土台にこれまでの努力があるのは結構だけど、レイやシンジくんが自分より劣っていると見下している節があると思わない?」

アスカ「それのなにが悪いのよ⁉︎?

リツコ「学歴やテストの結果が社会に出て通用するとは限らない。アスカが培ってきたモノは、“これぐらいは最低できます”という指標程度でしかないとわかってるの?」

アスカ「……」

リツコ「優越感に浸ってないで。あなた達はチームなのよ。一歩引いて物事を見極められるように、違う方面の努力も惜しまないで」

アスカ「――うるさい、うるさいうるさいっ! もぉ! あたしは今そんなお説教をされる為に走ってたんじゃないのっ!」

リツコ「反省点を振り返る気すらないの?」

アスカ「細かいことはほっといてよ! エヴァに乗って結果を出せばいいんでしょ⁉︎」

リツコ「伴ってないから言っているのよ。私が好きで言うとでも? 命令という形でなければできないのならはっきりと言います」

アスカ「……」ギュウ

リツコ「改善を要求します。でなければ、司令と協議してパイロットから降ろす案も含めて視野にいれる」

アスカ「……っ⁉︎」

リツコ「すぐにとは言わないわ。よく、考えて行動しなさい」
702 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/09(月) 18:19:52.84 ID:qxXH+gib0
ちょい雑になってきてるんでレスしなおし
703 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/09(月) 18:42:55.42 ID:qxXH+gib0
【ネルフ本部 中央作戦司令室前】

アスカ「はぁっはぁっ、んっ、くっ」

リツコ「あら、アスカじゃない。ちょうどよかった。フィードバックの検証結果を」

アスカ「ぜぇ、ぜぇ。か、加持さんの居場所知らない?」

リツコ「彼なら出張で松代のはずだけど」

アスカ「それなら……ねぇ、あたしの個人データって第三者が閲覧できる?」

リツコ「権限を持つものに限られる」

アスカ「ファーストは?」

リツコ「レイ? あの子の持っている解除権限はあなたやシンジくんと同じよ」

アスカ「……」

リツコ「なにかあったの?」

アスカ「いい、なんでもない」

リツコ「加持くんに依存しすぎるのはおやめなさいな」

アスカ「確認したいことがあったの」

リツコ「いつもそういって加持くんを探してはまとわりついてるじゃない」

アスカ「違うの! 本当に――」

リツコ「今回の出撃データ。最後の伸びはよかったけれど、レイにシンクロ率が負けてたのよ」

アスカ「……っ!」

リツコ「こんなんじゃエースなんてとてもじゃないけど任せられない。男にうつつをぬかしてる場合?」

アスカ「なんで……なんで、ファーストの名前を出すの」

リツコ「なぜって……比較対象だからよ。危機感を持ってるの? なぜ最初から本気でやらないの?」

アスカ「やってるわよっ!!」

リツコ「他パイロットと比べられると対抗意識をむき出しているけど、優越感に浸っているのではなくて?」

アスカ「あ、あたしのどこが」

リツコ「いつも言っているでしょう。あなたは、自信がありすぎると。土台にこれまでの努力があるのは結構だけど、レイやシンジくんが自分より劣っていると見下している節があると自覚しているはずよね?」

アスカ「それのなにが悪いっていうの⁉︎」

リツコ「学歴やテストの結果が社会に出て通用するとは限らない。アスカが培ってきたモノは、“これぐらいは最低できます”という指標程度でしかないとわかってるの?」

アスカ「……」

リツコ「足りない部分を見つけて優越感に浸ってないで、チームで補い合う必要がある。一歩引いて物事を見極められるように、違う方面の努力も惜しまないで」

アスカ「――うるさい、うるさいうるさいっ! もぉ、そんなお説教をされてる場合じゃないの! そのために走ってたんじゃないのよっ!」トンッ

リツコ「あ、こら。待ちなさい」パシッ

アスカ「まだ続ける気ぃ?」

リツコ「反省点を振り返る気すらないの」

アスカ「細かいことはほっといて! エヴァに乗って結果を出せばいいんでしょ⁉︎」

リツコ「伴ってないから……はぁ、私が好きで言っているとでも? 命令されるのがお望みならはっきりと伝えます」

アスカ「……」ギュウ

リツコ「改善を要求するわ。でなければ、司令と協議してパイロットからの降格案を含めて視野にいれる」

アスカ「……っ⁉︎」

リツコ「すぐにとは言わない。よく、考えて行動しなさい」
704 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/09(月) 18:43:54.93 ID:qxXH+gib0
あらら、日本語がおかしい部分があるので再度レスしなおし
705 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/09(月) 18:45:18.53 ID:qxXH+gib0
【ネルフ本部 中央作戦司令室前】

アスカ「はぁっはぁっ、んっ、くっ」

リツコ「あら、アスカじゃない。ちょうどよかった。フィードバックの検証結果を」

アスカ「ぜぇ、ぜぇ。か、加持さんの居場所知らない?」

リツコ「彼なら出張で松代のはずだけど」

アスカ「それなら……ねぇ、あたしの個人データって第三者が閲覧できる?」

リツコ「権限を持つものに限られる」

アスカ「ファーストは?」

リツコ「レイ? あの子の持っている解除権限はあなたやシンジくんと同じよ」

アスカ「……」

リツコ「なにかあったの?」

アスカ「いい、なんでもない」

リツコ「加持くんに依存しすぎるのはおやめなさいな」

アスカ「確認したいことがあったの」

リツコ「いつもそういって加持くんを探してはまとわりついてるじゃない」

アスカ「違うの! 本当に――」

リツコ「今回の出撃データ。最後の伸びはよかったけれど、レイにシンクロ率が負けてたのよ」

アスカ「……っ!」

リツコ「こんなんじゃエースなんてとてもじゃないけど任せられない。男にうつつをぬかしてる場合?」

アスカ「なんで……なんで、ファーストの名前を出すの」

リツコ「なぜって……比較対象だからよ。危機感を持ってるの? なぜ最初から本気でやらないの?」

アスカ「やってるわよっ!!」

リツコ「他パイロットと比べられると対抗意識をむき出しているけど、優越感に浸っているのではなくて?」

アスカ「あ、あたしのどこが」

リツコ「いつも言っているでしょう。あなたは、自信がありすぎると。土台にこれまでの努力があるのは結構だけど、レイやシンジくんが自分より劣っていると見下した節の自覚があるはずよね?」

アスカ「それのなにが悪いっていうの⁉︎」

リツコ「学歴やテストの結果が社会に出て通用するとは限らない。アスカが培ってきたモノは、“これぐらいは最低できます”という指標程度でしかないとわかってるの?」

アスカ「……」

リツコ「足りない部分を見つけて優越感に浸ってないで、チームで補い合う必要がある。一歩引いて物事を見極められるように、違う方面の努力も惜しまないで」

アスカ「――うるさい、うるさいうるさいっ! もぉ、そんなお説教をされてる場合じゃないの! そのために走ってたんじゃないのよっ!」トンッ

リツコ「あ、こら。待ちなさい」パシッ

アスカ「まだ続ける気ぃ?」

リツコ「反省点を振り返る気すらないの」

アスカ「細かいことはほっといて! エヴァに乗って結果を出せばいいんでしょ⁉︎」

リツコ「伴ってないから……はぁ、私が好きで言っているとでも? 命令されるのがお望みならはっきりと伝えます」

アスカ「……」ギュウ

リツコ「改善を要求するわ。でなければ、司令と協議してパイロットからの降格案を含めて視野にいれる」

アスカ「……っ⁉︎」

リツコ「すぐにとは言わない。よく、考えて行動しなさい」
706 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/09(月) 19:13:35.02 ID:qxXH+gib0
【ネルフ本部 コンテナ】

シゲル「シンジくーん。いるかぁ?」ガチャ

シンジ「青葉さん……」

シゲル「今度はコンテナか。遊牧民みたいな生活してていいねぇ、これ、寝袋な」

シンジ「ありがとうございます」

シゲル「しっかしまぁ、こんな不自由なとこに泊まらなくても。職員の仮眠室だったらすぐ先に」

シンジ「いいんです、僕はここで」

シゲル「……そうか。よっと」ドサッ

シンジ「あの、さっき通路で話てるの聞こえたんですけど。初号機が出撃するときに死傷者がでたって」

シゲル「あぁ、そうみたいだな」

シンジ「何人ぐらい……?」

シゲル「そんなこと知ってどうしたいんだ? 自分のせいだって謝りにいくのか?」

シンジ「いえ、知っておきたくて」

シゲル「はぁん? なんでも二十数人死んだって話だぜ?」

シンジ「そ、そんなに」

シゲル「人間死ぬときゃ死ぬんだし、あいつらは運がなかっただけさ。使徒のせいだしな」

シンジ「……」

シゲル「初号機が出撃しなきゃ無駄な犠牲は少なく済んだかもしれないけどよぉ、俺たちは砦として従事してるんだ」

シンジ「……」

シゲル「戦自の訓練に音をあげたからって誰も責めやしないさ」

シンジ「えっ?」

シゲル「シンジくんがレイを呼んだんだろ? 迎えに来てくれって……ぷっ、だからと言ってエヴァを使うのはありえないんじゃね?」

シンジ「(そういうシナリオにしたのか)」

シゲル「今度からは無理な時は無理ってはっきり言えよ?」

シンジ「そう、ですよね。そうします、すいません」

シゲル「俺は別になにか被害受けてるわけじゃねーし、これが仕事。気楽にやれや」ポンッ

シンジ「はい」

シゲル「寝袋かぁ、またバイクで日本一周でもしてぇなぁ。それじゃあ、俺は」

アスカ「――シンジっ!!」バァンッ

シゲル「うっ⁉︎」ゴチーンッ

シンジ「あっ」

シゲル「」ドサッ

アスカ「あれ……? な、なんでここに?」

シンジ「……扉はそっと開けようよ」
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/10(火) 03:07:44.36 ID:VT506d6fo
訓練に音を上げて、エヴァ呼んでその場(下?)にいた技術者を踏み潰したって。
味方からも刺されるんじゃね?少なくとも整備人員は総入れ替えしないとボイコットが起きそう
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/10(火) 08:16:11.84 ID:PlsEXHUUo
一週間くらい耐えたならまだしも1日だしな…
相当恨まれると思うわ
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/10(火) 10:46:51.26 ID:JNDP47g8O
心配になるぐらい読解力がないな
エヴァが踏み潰したんじゃなく使徒の仕業みたいなこと書いてるだろ
710 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/10(火) 12:25:23.82 ID:DKW/YuiX0
ここは少し補足いれておきます

初号機は誰かを踏み潰したり殺したりはしていません
発進の際、カヲルが職員を邪魔にならないよう殺害してまわっていたのです
なぜ足止めではなく[ピーーー]必要があったのかというと自分が使徒だというのを隠すためです
目撃者を生かすという選択肢はありません

なので青葉シゲルは使徒のせいだと言っています
シンジが初号機を呼んだことにより、使徒の対処に遅れが生じ、結果としてろくに迎撃できない状態で取り逃がしていますが
使徒の反応を感知できた時点ですでに多数の職員殺害後で、しかもすぐに反応をロストしています
したがって事前に防ぐことも、対応の遅れを責めることもできないというわけです

※重要
ただし、これらは職員が抱いている一連の出来事への感想であり、シンジが責任を感じていないというわけじゃありません


おわり
711 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/10(火) 12:35:34.37 ID:8U289tGjO
これまでの流れを読みゃわかる
バカの相手はせんでいい
712 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/10/10(火) 14:56:35.26 ID:DKW/YuiX0
ちょと書くモチベがダウンしてるので次回レスまでしばらく時間おきます
713 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/10(火) 15:09:05.74 ID:oTF4wfa9O
把握。再開楽しみにしてるやで。
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/10(火) 19:38:34.95 ID:L87mp+0Vo
待ってる
715 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/10/30(月) 22:42:26.63 ID:D2RrSDpb0
そろそろ三週間か…
716 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/02(木) 17:58:56.04 ID:e1rMDpjd0
【厚木基地】

加持「言っておくが、陣頭指揮にあたっていたのは葛城じゃなく碇ユイ司令だ」

軍曹「だろうな。お前はいつもそう言い訳を」

加持「言い訳じゃなく……事実だ。時田シロウはどうやって政府に取り入った」

軍曹「国の為と言っちゃいるが、ありゃ私怨だよ。こじらせただけ。ネルフと戦自は近々なにかあるぞ」

加持「わかっている。俺の知人も二人消された。潜入中だった」

軍曹「俺もその件は聞いた。上層部の動きが慌ただしい。奴が発案したトライデント級が出来上がる前に、行動するつもりかもしれん」

加持「だが、こういう時だからこそ俺たちが必要とされる」

軍曹「火事が起こらなければ消防は商売あがったりだしな」

加持「……」カチ シュボ

軍曹「サードチルドレンは、なにを隠している?」

加持「知ってるか。好奇心は猫をも殺すということわざを」

軍曹「からかうのはやめろ。この特別任務に就く際に要件は満たしてる。お前とは対等だ」

加持「これは失礼。軍曹殿。なにか気になることでも?」

軍曹「あいつは――……なにか重要な秘密を握っている。取り引きを持ちかけてきた時の目つきが自信に満ち溢れていた。根拠のないモノじゃない」

加持「取り繕ってるだけかもしれないじゃないか」

軍曹「よせ。さっきから言ってるだろう、俺だってこの道のプロだ」

加持「具体的なところをお聞かせ願いたいね」

軍曹「推測の域をでないが、上層部にやつは抵抗しようとしてるんじゃないのか」

加持「……」フゥー

軍曹「動機はこの際どうでもいい。だが……気がついた。司令が知られてはまずいなにかに」

加持「なにか、とは?」

軍曹「そこがわからない、肝心なところで下手をこいてしまってね。ほら、これだよ」カシャ

加持「カフスか」

軍曹「外すのを忘れていた。まさか、お前のを見ていたとは。警戒心の強いガキだ」

加持「ふっ、侮ったお前が悪い」

軍曹「そうかもな」

加持「これからどうする? サードチルドレンにお前の顔は割れてしまっているだろ」

軍曹「とんずらさせてもらうよ。適当な理由をつけて。命はなによりも大事だ」

加持「てことは、ここでお別れか」

軍曹「短い付き合いだったな」

加持「俺たちにとっちゃ日常茶飯事の光景さ」

軍曹「ああ」

加持「ひとつ聞きたい。この後は、どうする?」

軍曹「……? いや、だから」

加持「お前は秘密の片鱗を除いてしまったんだ」スッ カチャ

軍曹「……け、拳銃っ⁉︎ そ、そんなっ! ま、まてっ!」ギョ

加持「警戒心を持つべきはお前だったようだ。プロなら、与えられた仕事をきちんと最後までやり遂げるんだな」パァンッ
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/02(木) 18:18:21.76 ID:+8G9/Nr0O
ktkr
718 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/02(木) 18:25:24.12 ID:e1rMDpjd0
【再び コンテナ内】

アスカ「……」ジトー

シゲル「」ピク ピク

シンジ「あの……?」

アスカ「あんたに聞きたいことがあんのよ」

シンジ「(青葉さんこのままでいいのかなぁ)」

アスカ「……」

シンジ「なに? どしたの?」

アスカ「ファースト……あいつって、加持さんと、ううんと、あんたってファーストとのことどう思う?」

シンジ「へ……?」

アスカ「なんかないのぉ? 気味が悪いとか、変なやつだなとか」

シンジ「えっと……綾波は、綾波だけど」

アスカ「だからぁっ! そうじゃなくって! あんたはさぁ、あいつとはあたし以前に知り合ってるんだし! なにか情報ないの⁉︎」

シンジ「情報。情報、ねぇ」

アスカ「……」イライラ

シンジ「あぁ、そういえば」

アスカ「なに?」

シンジ「窓拭きが上手――」

アスカ「ふんっ!!」スパーンッ

シンジ「いったぁ! なにするんだよ、いきなり頭はたいて!」

アスカ「あんたねぇ、どうしてそう察しが悪いのよ! あたしが改めて聞くってなったらなにか理由があるってもんでしょ!」

シンジ「はぁ」

アスカ「聞きたいのはそんなどーでもいいことじゃないのぉ! 来歴とかさぁ!」

シンジ「そんなの知ってどうするのさ」

アスカ「“彼を知り己を知れば百戦殆うからず”!! 敵についても味方についても情勢をしっかり把握していれば、幾度戦っても敗れることはないじゃない!」

シンジ「綾波が敵みたいな」

アスカ「少なくとも味方ではないことはたしかね。このあたしにとっては!」

シンジ「ええ? なにかあったの?」

アスカ「それは……」

シンジ「……?」

アスカ「なんであんたにそんなこと話さなくちゃいけないのよ!」

シンジ「言いたくないなら別に」

アスカ「聞きもしないわけ!」

シンジ「どっちなんだよ、もう……」

アスカ「あいつが加持さんと話してるとこ、見たことある?」

シンジ「加持さん……うぅーん、ないと思うけど」

アスカ「……」ギュウ

シンジ「アスカ……? 本当に、なにがあったの?」






719 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/02(木) 18:43:36.93 ID:e1rMDpjd0
アスカ「――……やっぱり、いい」

シンジ「え?」

アスカ「こんなの、あたしらしくない。バカシンジに頼ろうとするなんてどーかしてる」クルッ

シンジ「ま、待って!」パシッ

アスカ「離してよ」

シンジ「ためこまない方がいいよ。解決策は提示できない、かもしれないけど、誰かに話てラクになれるかもしれない」

アスカ「そう、すっかりチームリーダーのつもり?」

シンジ「……?」

アスカ「あたしは、あんたにだって負けられないのよ。弱味を見せたくない」

シンジ「なんの話をしてるのか、わけが」

アスカ「知らないからなんてことは責任の放棄よ(違う、そうじゃない)」

シンジ「……」

アスカ「あんたも一緒だわ。人に踏み込む勇気なんてないくせに……!(違うの、私が言いたいのはこうじゃない)」

シンジ「アスカ……?」

アスカ「ヒーロー気取り? エース? 自分がちやほやされたいだけでしょ! みんな、みんな自分のため!(違う、それは、私)」ツゥー

シンジ「涙、泣いてるの?」

アスカ「……っ⁉︎」ゴシゴシ

シンジ「あ、あのっ!」

アスカ「ほっといて。一人になりたい」パシッ

シンジ「……」

アスカ「もう行く。また、あした」
720 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/02(木) 19:27:31.93 ID:e1rMDpjd0
【ネルフ本部 第三通路】

リツコ「あら。シンジくん、ちょうどよかった。これからコンテナに伺おうと思っていたのよ」

シンジ「あの、綾波を見ませんでした?」

リツコ「あの子なら先程帰宅させたけど。心配してるのね」

シンジ「……」

リツコ「大丈夫よ。司令からはあなたの要求に応える形でなにも通達が降りてきてない」

シンジ「いえ、そうじゃなくて、アスカが……」

リツコ「……あぁ、そっちだったの。大方予想はついた。チームリーダーとエースの件ね」

シンジ「まさか、また僕の知らないところで」

リツコ「報告する義務はありません。指揮系統での立場でいうとシンジくんと私はこれまでと何ら変化はかいのよ」

シンジ「詳しく教えてください」

リツコ「ええ。いずれあなたにもわかることだし……私もあなたに聞きたいことがあったしね。ついてきて」

シンジ「どこにいくんですか」

リツコ「ここじゃ他の職員の目につく。安全な、私の研究室に」
721 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/02(木) 19:42:52.73 ID:e1rMDpjd0
【ネルフ本部 ラボ】

シンジ「僕達は、チームですか?」

リツコ「つまるところ、競争意識の表面化よ。エヴァはそれぞれ個として強力な力を持つ兵器だけど、戦術的運用を考慮すれば協調性が必要になります」

シンジ「だけど、これまでだってアスカは協力してきました」

リツコ「協力とはいわないわ。従っているというの」

シンジ「それのなにが違うんですか。母さんやリツコさんが好きな結果重視ですよ」

リツコ「完璧ではない。パイロットたち自らが積極的な姿勢を見せるようにするためのテコ入れ」

シンジ「アスカは、エヴァに乗ることにプライドをかけてます」

リツコ「理解してる。だからこそ、あの子は殻を破らなければならない」

シンジ「……」

リツコ「シンジくんにも言えることだけど……あなたの最近の行動を見る限り、余計なことを言う必要はなさそうだから」

シンジ「いい加減にしてくださいよ!!」

リツコ「……」

シンジ「人権をなんだと思ってるんですかっ!! 僕だけじゃなくアスカまで自分達の都合の良い駒として動かすつもりですか!!」

リツコ「当たり前よ」コト

シンジ「……っ!」ギリッ

リツコ「人情なんて生易しいものでは生き残っていけないのよ。合理主義、いらないものは容赦なく切り捨てる。私たちはその渦の中に身を投じているのですもの」

シンジ「……」

リツコ「必要ないと思うものを大なり小なり切り捨てて、取捨選択をしているはず。シンジくんは立派な偽善者ね」

シンジ「そうですよ。僕は」

リツコ「開き直るのが子供だと言ってるのがわからないの……! あなただって綱渡りしているでしょう」

シンジ「……」
722 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/02(木) 20:15:56.70 ID:e1rMDpjd0
リツコ「交渉の材料は?」

シンジ「……言いたくありません」

リツコ「忙しいから余計な時間をとりたくない。司令をうなずかせるに足る提示をした」

シンジ「……」

リツコ「問題は、その“中身”よ。それがわからない」

シンジ「リツコさんはどうしたいんですか。母さんを脅したいんですか」

リツコ「そんなことをすればたちまち私は消されてしまうでしょう。私が今すべきことは、じっと身を潜めて待つ。敵だと認識されることではない」

シンジ「……?」

リツコ「ただし、あなたの味方でもない。伝えるべきはそれだけ」

シンジ「(なんだ? 母さんとなにかあるのか……?)」

リツコ「ヒントは差し出した。次はあなたの番よ」

シンジ「僕はリツコさんと取り引きすると一言もいってません」

リツコ「つれないわね。自分だけ女の秘密を知るつもり?」

シンジ「……」

リツコ「慎重になるのもわからないでもないわ。シンジくんがエヴァ以外ではじめて有利になったであろう情報。ベラベラと喋ってしまっては価値が暴落する」

シンジ「……」

リツコ「けれど、あなたは今も選択しているのよ。私という駒を使うのか、それともこのまま放っておくのか。言っている意味が、おわかり?」

シンジ「協力するかもしれないということですか」

リツコ「状況次第ではね。確約はできない」

シンジ「コーヒー、もらってもいいですか」

リツコ「ええ、インスタントだけど」
723 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/02(木) 21:49:04.51 ID:Df9fmtuyO
メリットが全くねえな
724 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/02(木) 22:01:34.38 ID:amq/g5vco
言ったタイミングが最悪だったのとアスカのメンタル弱すぎるだけで
リツコが言ったこと自体は間違ってないと思う。自信家ですぐ周りとぶつかるのは問題だし
725 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/03(金) 01:05:54.88 ID:Q20Wp4R70
シンジ「お互いの手の内を曝け出す、得られるモノはリツコさん、ですか」

リツコ「全てなんて傲慢なお願いをしているわけじゃない。形としてぼんやりと、どれほどのモノかを知りたいだけ。どうぞ」スッ

シンジ「……」

リツコ「証明は、レイを保護し手出しをさせなかった。それだけで重要度を計り知れなくもないといったところかしらね」

シンジ「僕が察することができるなんてたかがしれてますよ。情報の提供をしてほしいと遠回しに言ってるのと同じじゃないですか」

リツコ「機転は利く。このやりとりはあなたがどこまで成長しているのか、その確認でもある」

シンジ「……」

リツコ「心理学の観点から見極めているといえばわかりやすい?」

シンジ「テストを兼ねてるんですね」

リツコ「あまりにも期間が短すぎて、見定めきれないから。中学生として扱うべきか、それとも、対等の相手として見るか……私としても半信半疑なの」

シンジ「わかるような気がします」

リツコ「そう?」ギシ

シンジ「だって、年齢差を考えれば仕方のないことですから。ただ、僕は、子供のままじゃいられないだけで」

リツコ「まわりが許さないし、また、過酷な環境での成長を余儀なくしている。かわいそうね」

シンジ「心にもないことを言わないでください」

リツコ「あなたが冷静でいるのは上っ面だけ? それとも……ホンモノなの?」

シンジ「どうだろう」

リツコ「抗おうとしている流れ。それはユイ司令だけではない、背後にあるゼーレ……ひいては世界そのものを敵にまわす。シンジくんが仕切れる?」

シンジ「……」

リツコ「アスカ、レイ、ミサト、身近な存在が、いつ、誰が死んでもおかしくない状況になろうとしている。そうなったら、守るという行動理念は崩れる。最初から無理なものに挑戦しようとしているのよ、今のあなたは」
726 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/03(金) 01:37:44.89 ID:Q20Wp4R70
シンジ「無理だとは思ってません。やれるだけやってみよう、そう思ってます」

リツコ「巨大な資本に蹂躙された後に、同じセリフを吐ける? “よく頑張った”なんて誰も褒めてくれないわよ」

シンジ「僕は父さんや母さんとは違う。徹底した合理主義者になれないんです」

リツコ「……」

シンジ「個の主張という意味じゃありませんよ。……それが僕なんだ」

リツコ「若さは言い訳にならない。求められているものが違うのならば臨機応変に合わせるべきではなくて?」

シンジ「できないこと無理にをやろうとしていても、できない。またイチからのスタートになります。スポンジのように吸収する天才肌じゃないんです、僕は」

リツコ「……」

シンジ「――ただ、巻き込まれただけの凡人」

リツコ「(自己評価は適正。おごりはない、か)」

シンジ「言っている意味はわかります。必要とされている要素も。だけど、それを実現しようと考えると、残された時間がたりないし、経験値もない」

リツコ「……」

シンジ「だったら、僕はルール無用の殴りあいをしたらどうだろうって」

リツコ「なんですって……?」

シンジ「正攻法じゃ無理。さっき、最初から無理な挑戦をしようとしている、そう言いましたよね」

リツコ「……」

シンジ「でも、それは型にハメてるからだと思うんです」

リツコ「計画があると?」

シンジ「いえ、なにかするのは僕じゃありません。まわりです」

リツコ「あなた、いったい……」

シンジ「流れに一石を投じれば、水は濁るんですよ。小石では一瞬だけで、すぐにまた戻ってしまう。でも、そうじゃない、大きな石だったら……?」

リツコ「流れは、止まる」

シンジ「行き着く先が決まった流れているものに抗おうとするから、大変なんです。外部から圧力を加えるか、変化を待てばいい」

リツコ「その準備があるというの……?」

シンジ「綱渡りしてる、その指摘自体は間違っていません」

リツコ「……」

シンジ「リツコさんの目的と、母さんの目的が相反するものであり、僕の目的と近いものならば、協力はできるかもしれない」

リツコ「それで?」

シンジ「取り引きはこれだけで済むんですよ。お互いに有益になるのは、なにも対価交換のみじゃない、と思います」

リツコ「……」

シンジ「話は終わりです。僕からなにかを差し出す必要はない。もちろん、リツコさんからも。コーヒー、ごちそうさまでした」

リツコ「口ぐらいつけたら?」
727 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/03(金) 19:42:33.35 ID:Q20Wp4R70
【翌日 第壱中学校 校門前】

ケンスケ「ふぁ〜ぁ……」

トウジ「おはよーさん」ポン

ケンスケ「ああ、おはよ」

トウジ「朝っぱらからクマ作って。まぁ〜た徹夜でカメラいじりか?」

ケンスケ「違うよ」

トウジ「あん?」

ケンスケ「理由を聞いたな? ならば教えよう! これだよ! これこれ!」バッ

トウジ「なんや? かま、コレ?」ピラ

ケンスケ「そう! 今や様々なメディアで取り上げれている大人気コンテンツ!」

トウジ「ちびっこ向けか?」

ケンスケ「はぁ、これだから。いいか? 最近はこういった擬人化が常識になってきてるんだよ!」

トウジ「擬人、化? なんやリュックみたいなの背負ってるだけやないか」

ケンスケ「ノンノン! これはバックパック! このゲームは実在の艦隊がもし女の子だったらっていう設定なのさ!」

トウジ「……」

ケンスケ「僕の趣味とピッタリなゲームがこの世で流行ることがあるなんて! あぁ……生きててよかった……!」ポロリ

トウジ「なぁ、ケンスケ」

ケンスケ「ん?」

トウジ「お前なぁ、もちっと趣味を変えたらどうや? パーっと外で遊んだり」

ケンスケ「時間の浪費先は僕の勝手だろ!」

トウジ「わしはお前と友達でいられる自信がなくなってきた」

ケンスケ「またはじまったよ、いいか、だいたい……あれ?」

マナ「……」ジー

トウジ「こんな女が実在するわけないやろ。どこがええんやこんなん」

ケンスケ「霧島……?」

トウジ「霧島みたいな戦艦女が……あ? 霧島?」

運転手「ばっきゃろー! あぶねぇだろ!」ププーッ

トウジ「うわぁっ⁉︎」

ケンスケ「わぁっ⁉︎」

トウジ「うひー、あぶな……。パンフレット見ながら歩くもんやないな。おい、ケンスケ、信号変わったんならいうてくれや」

ケンスケ「……」キョロキョロ

トウジ「……?」

ケンスケ「(いない。たしかに、霧島が向かいの歩道にいたと思うんだけど)」

トウジ「誰か探しとるんか?」

ケンスケ「い、いや。なんでも」
728 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 05:11:04.67 ID:7RK3hDVxO
もうシンジの一物でリツコを雌奴隷にしたら解決するやろ
729 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/04(土) 09:09:35.12 ID:FoRL1iTro
それやっちゃうと前回の二の舞だから
730 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/04(土) 17:44:22.76 ID:s+2GFAAK0
新劇だと時折向こう見ずな行動力を見せるシンジくんですがあくまでTVシリーズや旧劇場版を参考にして
突飛な行動をさせる予定はありません

ただしそっくりそのままだと原作をなぞるだけになってしまい面白くないので、創作特有の各キャラらしからぬ行動も挟んでいると思います

当二次SSではその点にできるだけ無理がでないように気をつけて書いているつもりです
731 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/04(土) 19:16:44.19 ID:s+2GFAAK0
【厚木基地 管制塔】

オペレーター「ECTA 6-4 NEO PAN 4-0-0。応答せよ。こちら厚木基地管制塔。飛行経路上の天候状況は快晴だ」

輸送機「こちらPAN 4-0-0。確認した。気圧計は危険性がないことを示している。コースをこのまま維持する、予定どおりに到着する」

オペレーター「了解した。長旅お疲れさん。通信をアウト」

参謀官「また玩具が増えるのか。おい、そこの。窓のそばでなにをしてる」

加持「失敬。新鮮な空気を吸いたかったもので」

参謀官「お前もみない顔だな。最近のここは、やたらと人の出入りが激しくて困る」

加持「秘書官に許可はいただいておりますが……。三号機に関する渡航書類を受け取りにきました」

参謀官「二重スパイ。個人資料は読んだ」

オペレーター「す、スパイ?」

加持「衆目に晒すような真似は勘弁していただきたいのですがね」

参謀官「ふん。それで、ネルフ総司令の使いパシリで君を寄越したと」

加持「仰る通りです。よろしければ、承認の判子をいただければ」

参謀官「軍曹はどうした? まだ出頭せんのか?」

オペレーター「はい。飲み過ぎですかね」

加持「……」

参謀官「宿舎に向かい叩き起こしてこい」

オペレーター「はっ」

参謀官「時に、加持監察官」

加持「はい?」

参謀官「ネルフにはどう偽ってここにきている?」

加持「松代でライフルの試験運用が行われる予定になっています。名目はその出張です」

参謀官「兵器実験か。我らが開発した陽電子砲。やつらの研究部が改良を加えて小型化の目処がたったと聞き及んでいるが、たしか……」

シロウ「赤木リツコでしょう?」コツコツ

加持「失礼ですが、こちらは?」

シロウ「これはこれは。自己紹介が遅れて申し訳ございません。この度、戦略自衛隊兵器開発部の特別顧問に就任いたしました。……時田シロウと申します」

加持「お初にお目にかかります。光栄ですよ」

シロウ「これは異な事をおっしゃる。それは皮肉ですか?」

加持「とんでもない。あなたの輝かしい功績を考えれば礼節を欠けません」

シロウ「輝かしい……? ふむ」

加持「……」

シロウ「なるほど。あなたは賢いようだ。尻尾を掴ませまいとするように見えるのは、私の気のせいか、はたまた……」

加持「仕事柄勘ぐられるのは珍しくありませんが、どうです? 今度一杯」

シロウ「良いですね。私もこちらに着任したばかりで話し相手に困っていたところです。上等なコニャックがありますよ」
732 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/04(土) 19:48:55.14 ID:s+2GFAAK0
【第壱中学校 下駄箱】

シンジ「おはよう、トウジ、ケンスケ」

トウジ「あー……おまっシンジやないか⁉︎」

ケンスケ「なんで碇がここにいるんだぁ?」

シンジ「色々あってなくなったんだ」

トウジ「はぁ、なんやそら」

ケンスケ「てことは、霧島も?」

シンジ「マナは……戦自に残った」

ケンスケ「帰ってきてるわけじゃないのか。やっぱり見間違いなのかなぁ……?」

シンジ「……?」

トウジ「まぁ、ネルフ都合っちゅーやつやろ、いつもの。センセも振り回されてばっかやのお」

ケンスケ「これからまた元どおりなのか?」

シンジ「うん、たぶんだけど。しばらくはないと思う」

トウジ「それならまたつるめるな!」ガシッ

シンジ「わっ」

トウジ「なんやかんやわしら三人一緒のがしっくりくるわ」ワシャワシャ

シンジ「ちょっと、トウジ。犬じゃないんだから、頭撫ですぎだよ」

レイ「……」カタ

シンジ「あ。……綾波!」

レイ「……なに?」チラ

シンジ「あの、後で少し話たいんだけど。いいかな?」

レイ「ええ」

ケンスケ「ははぁ〜ん。やっぱりシンジの意中の相手は綾波なのかぁ〜?」

シンジ「ケンスケ。そんなんじゃないから」

ケンスケ「でもさぁ、霧島だって」

アスカ「……」バンッ!!

トウジ「おっ? なんや」

アスカ「朝からギャーギャーうっさいのよ、この三馬鹿!」

ケンスケ「こりゃまた、ご機嫌ナナメですな」

アスカ「ふんっ!」プイッ

ヒカリ「アスカ、おはよう」

アスカ「おはよー」

ヒカリ「あれ……? 碇くん? 戦自に入隊したはずなんじゃ……?」

アスカ「ヒカリぃ〜! 聞いてよぉ〜、シンジったら1日で逃げ帰ってきたんですってえ〜!」

トウジ「あ?」

ヒカリ「へ? そうなの?」チラ

シンジ「……」ポリポリ

アスカ「きつくてもういやだぁーって! とんだ根性なしよねぇ〜!」

トウジ「おい! ゴリラ女!」

アスカ「あぁん?」
733 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/04(土) 20:04:45.52 ID:s+2GFAAK0
トウジ「前々から思っとったが今回ばっかりははっきりと言わせてもらう!」

アスカ「最悪。ツバ飛ばすとか汚いわねぇ」

トウジ「お前男を舐めとるやろ!」ビシッ

アスカ「はぁ?」

ケンスケ「トウジ」

トウジ「だぁっとれ! こないな調子づいた女にはガツンと言ってやらなわからんのや!」

シンジ「僕はいいから」

トウジ「シンジもビシッと言ったらんかい! 甘くした結果がこれやないか!」

アスカ「舐めてるのどっち。男尊女卑」

トウジ「な、なにをぉぅ⁉︎ わしはお前限定で」

アスカ「前時代的。日本が世界からガラパコスだと言われてるのはあんたみたいなのがいるからよ」

トウジ「なんでわしが!」

アスカ「女と男に能力差なんてない。あんた達の行動があまりにガキだから言ってるだけ。言われたくなかったら言動に注意しなさいよ」

ヒカリ「あ、アスカ……」

トウジ「ぐぬぬ、この」

アスカ「ほら、言葉がでなくなりそうになったら罵倒することだけ考えてる。マウントとるのが目的なの? チンパンジー以下ね」

トウジ「ぬぬぬぬっ!」

ケンスケ「頭使うの苦手なんだからやめろって。顔真っ赤になってるぞ」

アスカ「はっ………ゴミ」

ヒカリ「(うわぁ、人を見下した目線させたらすごいな)」

トウジ「ぐ、ぐっ!」

シンジ「アスカ、言い過ぎだよ」スッ

アスカ「……なぁにぃ? 今度はシンジ様が相手になってくれるのかしらぁ? エースで無敵のシンジさまぁ〜!」クルクル

ケンスケ&ヒカリ「……?」

シンジ「そんなんじゃないってわかってるだろ」

アスカ「なによ」キッ

シンジ「僕は、エースもチームリーダーも興味は」

アスカ「命令されたら辞退すんの⁉︎」

シンジ「……」

アスカ「しないの……? へぇ、やっぱりあんただって野心持ってんじゃない」
734 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/07(火) 01:18:51.21 ID:fKwDZQ4C0
シンジ「ひとつ、ゲームをしない?」

アスカ「あんた……っ! ちょぉ〜っと運動神経よくなったからって上から見下してんじゃないでしょうねぇ⁉︎」

トウジ「どの口が言うとるんや! 見下してるのはおまえの――」

ケンスケ「……シンジの運動神経がよくなった?」

シンジ「話がこじれるから。そんなひねくれた捉え方をしないで、ただの遊びだよ」

ヒカリ「あの、碇くん。言いにくいんだけど、この状況は遊びって雰囲気じゃ」

シンジ「負けた方が勝った方の言うことをひとつ聞く」

アスカ「前々からファースト同様、あんたも変なやつだと思った時はあったけど。いや、シンジの場合はバカか。……ヒカリの言う通りよ、遊びに誘うなら状況を」

シンジ「逃げるの?」

アスカ「な、なななぁっ?」

シンジ「勝負事に対して論点をズラすなんてするはずないと思ったんだけど」

アスカ「あ、あんたバカぁっ? あたしはドイツ語じゃなく日本語を話してるつもりなんだけど!」

シンジ「やっぱり逃げてる。負けるのがこわいから乗りたくないんじゃないの」

アスカ「い、いい加減にっ……!」

シンジ「言いたいことがある、不満があるのなら勝負に勝って聞かせればいい。簡単な話じゃないか」

ケンスケ「(おぉ……)」

トウジ「(こいつシンジの言うことはある程度聞くみたいなとこあるな)」

アスカ「……いいわ。そこまで言うならやってあげる。ただし、条件はイーブンになる勝負にすること」

ヒカリ「アスカ」

アスカ「平気。そうね、例えばあたしに有利なのは学力。あんたに有利なのは運動関連。そのどちらも除外したものにしなさい」

シンジ「うん、もちろんだよ。お互いの“素の能力”が試されるゲームにする」

ケンスケ「やったことないテレビゲームにするのか?」

シンジ「ううん、それじゃコントローラーを操作してたことがあるかで有利不利があるから。キー配列だってあるし」

アスカ「あたしならそんぐらい瞬時に覚えるに決まって」

シンジ「まぁ落ち着いて。ゲームの内容は思いついてるんだ。みんなにも参加してほしい」

ケンスケ&トウジ&ヒカリ「わし(私)(僕)たちも?」
735 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/07(火) 01:46:21.46 ID:fKwDZQ4C0
【第壱中学校教室 昼休み】

ケンスケ「碇、紙はくばったぞ……なにするんだ? これ」スッ

シンジ「あぁ、まだ見ちゃだめだよ」

トウジ「トランプでもない、ウノでもない……」

ヒカリ「なにかの推理ゲーム?」

シンジ「これは、人狼ゲームっていう嘘つきを暴く遊びだよ」

トウジ「どゆことや?」

シンジ「僕が書いた紙をケンスケにシャッフルをお願いして配ってもらったのはオオカミを誰が所有してるかわからなくする為だったんだ」

ヒカリ「う〜ん、それってババ抜きみたいなこと?」

シンジ「ババ抜きは最後にババを持っていたら負け。このゲームはババ=オオカミを言い当てられたら負け」

ケンスケ「つまり、オオカミの所持者は自分が知ってる状態からスタートするのか?」

シンジ「みんな見れるよ。自分の持ち札は」

トウジ「なんや、全員見れるなら誰が持っとるか一発で」

シンジ「だから、“オオカミはウソをつく”」

ヒカリ「あっ、そっかぁ。自分が持っていないって言い張るしかないもんね」

シンジ「そう。僕がこの中に紛れさせた人狼は一枚だけ。その一枚の嘘つきは誰か。それを当てるゲーム」

ケンスケ「ふ〜ん」

シンジ「本当はほかのカードにも役割があるんだけど、今回は割愛するよ。説明がめんどうだし」

アスカ「くだらない。あんたとあたしの勝負じゃないわよ、こんなの」

シンジ「一回のゲームにたいして時間はかからないんだ。こうしようよ。もし、僕かアスカに狼のカードがあった場合、言い当てられなかったら勝ちってことで」

アスカ「まだるっこしい方法ねぇ」

シンジ「とりあえず一度やってみよう。ルールを確認しながらでかまわない」

アスカ「初回は説明だったから〜なんてのはなしよね?」

シンジ「アスカはどっちがいい? 僕はテレビで見たからルールは把握してる。選んでいいよ」

アスカ「……初回から勝負」

シンジ「うん。わかった。みんなもわからないことがあったらその都度聞いて。それじゃ、持ち札を確認、あぁ、もちろんだけど、隣に見えないように」
736 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/07(火) 02:08:45.47 ID:fKwDZQ4C0
シンジ「みんな、確認し終えたね? この中にオオカミがいるのは絶対だ。他のカードは村人と書いてある。これからその一人を炙り出す質疑応答の時間だよ」

ケンスケ「制限時間はあったりするんだろ?」

シンジ「5分にしておこうか。長すぎても意味はないし」

トウジ「わしはかまわへんで、村人やし、あっ」

ヒカリ「もう、言っちゃだめなんじゃない?」

シンジ「いや、言ってもかまわないよ。言わないのもありだけど。ここからは狼だけがウソをついてる。もし、トウジが狼だったら、ウソの申告をしたことになるね」

ケンスケ「なぁ〜るほど。だいたい飲み込めてきたぞ」

ヒカリ「えっ、鈴原、ウソつきなの?」

トウジ「わ、わしがウソなんかつくかぁっ! 男のすることやあらへん!」

ヒカリ「なんでどもるのよ」

シンジ「ケンスケはどう?」

ケンスケ「僕も村人と書かれてたよ。ウソをつく理由なんかないからね」

ヒカリ「私も、村人だった」

ケンスケ「てことは……」

トウジ「おいおい、いきなりかいな」

シンジ「まだ慌てる時間じゃないよ。繰り返しになるけどみんなの誰かがウソを可能性がある。そうだよね? アスカ」

アスカ「……」

ヒカリ「あ、アスカ……? まさか、アスカが」

アスカ「質問があるんだけど」

シンジ「うん?」

アスカ「最後に選ぶのは誰?」

シンジ「えっと、指名するのはってこと? それなら多数決だよ」

ケンスケ「えっ」

シンジ「全員で狼だと思う人を指差して多数決で決定される。選ばれた人が村人だった場合はオオカミの勝ち」

アスカ「ふーん。なんだ、簡単なゲームじゃない。あんたの負けよ。バカシンジ」

シンジ「どうして?」

アスカ「だって、私も村人だもの。他の連中がウソをつくとは到底思えないし」

トウジ「なんやそら、ならシンジで決まり」

シンジ「僕も持ってないよ。村人だった」

トウジ「あぁ?」

ヒカリ「えっ、ちょっと待って」

ケンスケ「委員長もトウジもにぶいなぁ。だから、今がまさにウソをついてる状態なんだろ? オオカミが」

ヒカリ「そーなんだ……。でも、それなら誰が」

アスカ「それを当てるゲーム。バカシンジに決まってるわ」

シンジ「根拠がない」

アスカ「あんたはこのゲームのルールを事前に知ってたわよね。それにさっきあんたはこう言ったじゃない。“本来なら他のカードにも役割がある”……それって自分の都合の良いようにルールを改変できるってわけでしょ」
737 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/07(火) 02:27:28.23 ID:fKwDZQ4C0
トウジ「うぅ〜む、たしかにそれは」

ケンスケ「けど、シンジがオオカミって理由じゃないよな?」

シンジ「僕はただみんなが遊びやすいようにと思って。さっき言ったけど説明が手間だったんだ」

アスカ「どぉ〜かしらねぇ? オオカミを炙り出すというのが根幹にあるゲームなら、その他の役割というのがオオカミにとって不利になることだってあるんじゃない?」

ヒカリ「……?」

アスカ「それに、このカードを書いたのは? シャッフルした相田は配り終えるまでゲームの趣旨さえ理解してなかった。こいつは知ってたのよ。自分がオオカミだって」

トウジ「な、なんやとぉっ⁉︎」

アスカ「だから、余計な手間なんて言い訳をして紛れたんでしょ?」

シンジ「さすがだね、アスカ」

ヒカリ「ってことは碇くんが……!」

シンジ「はやとちりしないでよ。ウソをつくのがうまいと思ったんだ。僕はアスカがオオカミだと思う」

アスカ「……シンジ、ルールの変更をしない?」

シンジ「え?」

アスカ「これは元々あんたとあたしの勝負でしょ。ヒカリ達はなんの関係もない」

シンジ「まぁ……」ポリポリ

アスカ「だったら、他の三人には今、カードをオープンにしてもらう」

シンジ「え、えぇっ?」

アスカ「そして、他の三人が村人だった場合、あたしかあんたのどちらがオオカミか決めてもらうってのはどう?」

シンジ「そ、それじゃこのゲーム本来の楽しみ方が」

アスカ「他の役割とかなんらかの要素を削ってるんでしょ? だったらいいじゃない。それとも、自分がオオカミだから乗れない?」

シンジ「はぁ、わかったよ。乗る」

アスカ「聞こえたわよね? カード、オープン」
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/07(火) 03:27:28.08 ID:3TTAEropo
ごめん、俺おっさんだからシンジに「ゲームの時間だ」とか言われるとクるものがある
739 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/07(火) 07:25:32.09 ID:W0ydGzMmO
すでにシンジが上手いこと手のひらコロコロしている…
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/07(火) 13:20:20.89 ID:qzpqxPIUO
>>738
声優ネタ?
741 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/07(火) 14:44:56.67 ID:fKwDZQ4C0
トウジ「わしは言った通り、村人や」ペラッ

ヒカリ「私も……」

ケンスケ「僕も、と言いたいところだけど――」

トウジ「あ? お前さっきまで村人やってゆうとったやないか」

ケンスケ「このゲームは決められた配役にのっとって全員参加型のテーブルトークRPGだろ。よーするに、腹の探り合いをするゲームってわけ」

シンジ「うん、正解」

ケンスケ「僕は村人だけど、あえて伏せておくよ。じゃないと見ていて面白くないから」

アスカ「あんたが村人かどうか決定すれば、あたしとシンジの一騎打ちを高みの見物できのよ?」

ケンスケ「そうじゃないんだよなぁ。見た目的にはアスカとシンジの一騎打ちに見えるけど。“腹の探り合い”から“聴衆をいかに騙すか”に変化する」

アスカ「……」

ケンスケ「だって、選ぶのは僕たちなんだぜ? 舞台で演技をしている二人の内のどちらかを」

シンジ「ケンスケは、あえて自分に可能性を残したいってこと?」

ケンスケ「ああ、そうすることでアスカもシンジも疑念を抱くんじゃないかと思ってさ。僕がオオカミである可能性……最初のルールから大きく外れないんじゃないか」

アスカ「同じことよ、あたしに迷いなんかない。シンジだと当たりをつけてるんだから」

ケンスケ「なら、伏せていてもなにも問題ないだろ?」

アスカ「……わかった。あんたと相田ってグルなの? 最初から仕込んでた?」

ケンスケ「いや?」

アスカ「小賢しい真似してくれちゃって。シンジの友達だからって」

シンジ「僕はなにも」

ケンスケ「待てよ、碇。アスカが勝手に疑ってるだけだ」

アスカ「相田も引き続き参加するってことね?」

ケンスケ「このカードを伏せておくだけ。あとは黙っておくよ。だって、僕は村人だから」

トウジ「ややこしいやっちゃなぁ。わしらには教えてくれんのか?」

ケンスケ「ゲームを楽しんでるだけ。トウジや委員長にも伏せておくよ」

ヒカリ「えっと……じゃあ、村人だって判明したのはは……現時点で私と鈴原だけ、なのね」

シンジ「僕が気になってるのは、ひとつあるんだ」

トウジ「……?」

シンジ「ケンスケは普段からゲームが好きだから。ルールを尊重した遊び心を持つのはわかる。そうだよね? トウジ」

トウジ「まぁ、こいつはなぁ」

アスカ「(シンジのやつ。まわりを巻き込むつもりね。まずはバカな鈴原からか)」

ヒカリ「そうなんだ……」

アスカ「(ヒカリはこのテの騙し合いに慣れてない。頭は悪くないけど、純粋……まわりに引っ張られる)」

シンジ「なんで、アスカってここまで必死なんだろう? 村人なら、どんと構えてればいいのに」

トウジ「言われてみれば、たしかに。んー? もしかしてお前がオオカミなんか?」

アスカ「判断力の低さに呆れるわ。シンジは今、誘導しようとしてる。友達だからクセを掴んでるのは当たり前でしょ」

ヒカリ「そっか。そうよね」

シンジ「(僕とアスカを除けば、有効票は3票。満場一致の場合、最後の1票が鍵を握る)」

アスカ「(相田が余計な茶々をいれてきたけど、獲得するべき1票の重みは変わりない)」

シンジ「(僕にとって重要なのは――)」

アスカ「(あたしにとって重要なのは――)」

シンジ&アスカ「(委員長(ヒカリ)が持つ1票……!)」
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/07(火) 15:13:22.49 ID:kj3HP5m0o
この勝負でシンジが勝っちゃったらますますアスカが追い詰められそう
唯一シンジにはっきり勝ててるの頭脳だけなんだしそれで負けたらもう頼るものがない
743 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/07(火) 17:58:42.88 ID:fKwDZQ4C0
アスカ「ねぇ、時間の延長をしない?」

シンジ「えっ、また後付けで変えるの?」

アスカ「これは提案。オープンのルール改変でようやくイーブン」

シンジ「そうだね……そろそろ5分になるから承諾する」

アスカ「時間はシンジが決めていい」

シンジ「なら、昼休みが終わるまで。具体的には投票の時間を省くとして15分の延長にしよう」

アスカ「それは5分を含める?」

シンジ「うん、昼休みは45分しかないんだよ。それまでに決着をつけよう」

アスカ「(なら、あと10分。余裕ね)」

ヒカリ「な、なんか思ってた以上に真剣な雰囲気になってる?」

アスカ「……ごほん、それはそーとシンジ。なんでいきなり勝負なんて持ちかけてきたの?」

シンジ「アスカのハナをへし折るためだよ」

アスカ「聞き違いよねぇ? あんた、いまなんっつたの?」キッ

シンジ「アスカには敵わない。実際、すごいと尊敬することがたくさんあるんだ。僕ができないことを当たり前のようにやってのけるから」

アスカ「……」

シンジ「だけど、アスカは驕りがある。いつだって勝負に絶対はない。簡単に足元をすくわれることもあるんだって、一人の限界と協力する必要性を教えてやるよ」

トウジ「お、おう」

ケンスケ「ひゅ〜」

アスカ「頼もしい限りねぇ。男なら、一度吐いたセリフ、のむんじゃないわよ。負けたら罰ゲームしない?」

シンジ「いいよ」

アスカ「あんたが負けたらエヴァから降りる。二度と乗んな」

シンジ「……」

トウジ「お、おい。そらぁいくらなんでも」

アスカ「外野は黙ってて。できる? できないの?」

シンジ「うん、わかった。そのかわりアスカが負けたら僕も条件を出す」

アスカ「なに?」

シンジ「まわりを、信頼するってのはどうかな」

アスカ「はぁ?」

シンジ「僕から見た印象だけど、アスカは、その、張り詰めた時があるように感じるから」

ヒカリ「……」

アスカ「……わかった。あんたを信頼すればいいってことね」

シンジ「命令じゃないよ。自分からそう思うこと。僕は、罰ゲームなんて手段でそうしたいわけじゃないから」

ヒカリ「碇くん……」

ケンスケ「泣かせるねぇ。それに比べてアスカの血も涙もない要求って」

トウジ「シンジを勝たせた方がええんちゃうか」

アスカ「これは勝負なのよ。そんなくだらない理由で公平な審判を覆えさないでくれる?」

シンジ「アスカが正しい。僕たちはゲームをしてる。だから、みんなはあくまでどちらがオオカミかを見定めるべきだ」

アスカ「ふん、感情に訴えだしたってわけ。あんたがオオカミだから」

シンジ「本心だよ。ウソは言ってない」

アスカ「……」






744 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/07(火) 18:31:10.31 ID:fKwDZQ4C0
ヒカリ「……」ソワソワ

アスカ「(ちっ、ヒカリが動揺してる。シンジがあたしのためだっていうテイできてるから……鈴原や相田はただでさえシンジ寄りだっていうのに……!)」

シンジ「僕は村人だよ。みんなはもう気がついてるんじゃない?」

トウジ「なんかあったか?」

シンジ「アスカの目的に」

ヒカリ「目的……?」

シンジ「罰ゲームにしてもそう、これまでのやりとりにしてもそう。アスカの目的は、オオカミを暴くことじゃない。僕を負かすことなんだって」

ケンスケ「そう見えるな?」

シンジ「僕が負ける条件ってなにかな」

トウジ「あー、うーん、シンジがオオカミで、ちゃうか。惣流がオオカミで、シンジを指名させた場合や! それだとオオカミの一人勝ちやもんな!」

シンジ「さすがトウジ」

トウジ「どないや! わしも捨てたもんやないやろ!」

ヒカリ「それなら、アスカが……?」

アスカ「待ってよ。あたしは最初から一貫してシンジが持つ可能性について言及してるだけ」

シンジ「おかしいよ。今もそうだけど、ケンスケだって可能性があるじゃないか。どうして僕に目星をつけたの?」

アスカ「うっ。それは……あんたと相田が最初からグルだって可能性があるから」

シンジ「僕は信じられない。アスカは僕を負かす為に計画してるんだと思う」

アスカ「(こ、こいつ……っ!)」

シンジ「ワンマンプレイなら場を支配できる。だけど、今はそうじゃないんだ。個の力は通用しない」

アスカ「待って待って。勇み足だったのは悪かったと認める」

シンジ「……どういう意味?」

アスカ「さっきあんたが言ったでしょ。驕りがあるって。その自覚は少ならからずある。だからといって、修正しないかとそうじゃないでしょ?」

シンジ「……」

アスカ「もう一度言うわ。あたしは認める。シンジの命令はこのあたしのペースを考えてない、単なる押し付け。そんなのはい・やっ!」

トウジ「こいつはほんま……」

アスカ「なんだって本音は自分のやりたいようにしたいでしょ。それで評価されたい。シンジはサイテーなことをしてるのよ。偽善者」

シンジ「(わかってるよ)」

ケンスケ「うぅ〜ん」

ヒカリ「で、でも、それがその人のためになるなら……」

アスカ「抑えつけてもいいって? こいつが今言ったのは、あたしそのものの否定なのよ? 変われっていってるのと同義。望んでないのに。てきるのに」

ヒカリ「……」

アスカ「ふぅ、ゲームから話が逸れたわね。結局、今のでますます確信を持った。こいつはみんなを騙そうとしてる。仮面を被って」
745 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/07(火) 22:27:03.12 ID:fKwDZQ4C0
シンジ「(しかたない、こうなったら)」

アスカ「……」ジトー

シンジ「ケンスケ」

ケンスケ「ん?」

シンジ「ケンスケは村人なんだよね?」

ケンスケ「ああ、そうだけど」

シンジ「アスカがケンスケと僕を疑って、天秤の比重が僕に傾いてるのは見ての通りだと思うんだけど、どう?」

ケンスケ「ん? んー」

アスカ「(だいたい読めてきたわ。シンジはどーやってか知らないけど周囲の人間を使う方法を覚えはじめてる)」

シンジ「当人なら僕と口裏合わせしてないって断言できるんじゃないの?」

ケンスケ「あぁ、それなら断言できる。僕は碇と結託してない。だってこれはゲームだからさ、談合なんかしちゃつまらないじゃないか」

トウジ「ケンスケは、せやろな」

アスカ「(……普段の行動からして、この状況はあたしに数的不利。だけど、弱点がないわけじゃない)」

シンジ「その上で、僕もオオカミじゃないんだ。ウソじゃないよ」

トウジ「シンジがそう言うなら……」

ヒカリ「一度整理させて。アスカは、碇くんがオオカミだと思ってる?」

アスカ「可能性は高いわよね」

ヒカリ「碇くんも?」

シンジ「僕もこれまでの発言を考慮したらその可能性は高いと思う」

ヒカリ「あのね、碇くん。疑問なんだけどこれって碇くんにとって有利じゃない?」

シンジ「……?」

ヒカリ「あたしは、アスカぐらいしかよくわからないし。その、普段あまり話さないから。碇くんが一番接点があると思うの」

ケンスケ「ふーん、なるほど」

シンジ「……そうだね」

ヒカリ「あっ、その、碇くんがオオカミだって言ってるわけじゃないのよ? だけど、私以外の性格を熟知してるのって碇くんぐらいじゃないかって」

アスカ「(ちゃぁ〜んす)」ニヤ

シンジ「洞木さんぐらいだもんね。ここにいる輪で僕とあまり接点がないの」
746 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/07(火) 22:54:53.69 ID:fKwDZQ4C0
アスカ「姑息なやつよね。実は勝負を持ちかけた段階で自分に有利な状況を作り終えてたんじゃない?」

シンジ「……」

アスカ「(否定はなし、か。なら)……沈黙? 肯定と受け取ってもかまわないのかしらぁ〜?」

シンジ「そうじゃないよ」

アスカ「(あっさりかかってくれたわね、あんたの弱点は、経験の無さよ! この機に乗じて……!)」チラッ

ヒカリ&トウジ&ケンスケ「……」

アスカ「(オーディエンスに見せつけてやればいい! それで形勢逆転よ!)いいえ! そうよ! そうじゃないならどうして即答できなかったの⁉︎」バンッ

シンジ「……」

アスカ「無実の人間はまずやってないとはっきりと言うわ。躊躇した時点であんたに対する疑いは晴れなくなった」

シンジ「僕は……」

アスカ「言い訳なんてかっこわるぅ〜い。自分から素直に認めた方がまだ潔くていいんじゃない? 相田、シンジと結託してるなんて言って悪かったわね」

ケンスケ「いや、別に」

アスカ「これでシンジは私たちをひとつ騙してたのが決定づけられた。それは、勝負が最初からイーブンじゃなくて――」

シンジ「でも、それは僕が勝てるという条件があった場合」

アスカ「……」ピクッ

シンジ「有利=勝利にはならない。そりゃ可能性としては高まるけど、もし自分で有利な状況を作れるなら、僕はそうしないな」

ヒカリ「もっと確実に勝てるようにする?」

シンジ「うん、これまでの流れを整理すると、僕に有利な点は“ルールを事前に知っていた”“みんなとの接点が一番多く性格をある程度掴んでる”、この二点だよね?」

アスカ「ルールの改変ができたってこともね」

シンジ「そこも含めての二点だけど、僕はアスカと公平になるように変更を受け入れてるんだ」

ヒカリ「それも、そうね……」

シンジ「余裕を見せてるって受けとれるかもしれないけど。でもそれは、勝利を確信しないと僕はできない。相手は、アスカだから」

アスカ「当然! あたしはあんたなんかに……」

トウジ「つまり、シンジはそんなつもりなかったってことを言いたいんやな?」

シンジ「うん、このゲームはこうして誰かに疑いの目を向けさせるのが目的なんだ。だから、アスカの行動は正しいといえる。オオカミならね」

ケンスケ「ふぅん」

シンジ「僕は、どうしてここまで必死なのか。それだけが気になって。プライド?」

アスカ「っ⁉︎」

シンジ「プライドにさわったの? 下に見てる僕に負けるのが気に入らなくて」

アスカ「……っ!」

シンジ「支えてるものだろうから。エヴァも。だから負けたら僕に乗るなって条件を出してきたんだろ」

アスカ「(落ち着いて、こいつは今、煽ってるだけ。あたしが平静でいなきゃ)」

シンジ「――僕に負けるのが、こわいんだろ? アスカ」
747 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 06:02:01.98 ID:Ixj1GpkaO
急激につまんなくなってきた
748 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 07:16:10.25 ID:m62ahNhro
俺は楽しいよ
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 10:23:55.84 ID:rb2aenujO
俺は好きやな、この手の心理戦は読んでてゾクゾクする。
750 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 15:46:24.46 ID:FKmr+F0do
基本ゲームのルールって読まれないからね。
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/08(水) 16:47:26.87 ID:ww9LfPvjo
最近ちょっとシンジが強すぎる
752 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/08(水) 22:55:04.44 ID:edcYsnIa0
アスカ「な、ななな、ぬぁんですってぇっ⁉︎」バンッ

シンジ「最初から僕に目星をつけてたんだ。どんなに論点をズラそうともそれは明白」チラッ

ヒカリ&トウジ&ケンスケ「……」

シンジ「全員、最初をまず思い出してみてほしい。勝負の内容を切り出したとき、アスカは僕との一騎打ちだと思ってた。それが蓋を開けてみれば全員参加型のテーブルトーク」

アスカ「……」

シンジ「想定外だったろうね。だから、アスカの目的が“僕を負かすこと”になんの不思議もないはずなんだよ。発端を考えれば」

ヒカリ「たしかに……」

シンジ「だけど、アスカはそれを必死に否定してる。それはなぜ? どうしてなんだろう、僕はずっと観察してた。答えはやっぱり、アスカがオオカミに辿り着く」

ケンスケ「いや、でも、それじゃあ」

シンジ「ケンスケが言いたいことはわかってる。場にオープンにされてるカードは洞木さんとトウジの二枚だけ。僕も村人だから、僕にとって可能性があるとすれば、ケンスケかアスカの二択になる」

ケンスケ「あ……」

シンジ「以上のことから、ケンスケは可能性が低い。選ぶとすれば――」

トウジ「惣流っちゅーわけか? ええい、もう誰かわかるよーに説明してくれ!」ボリボリ

アスカ「(まずい、このままじゃ……! 残り時間は……うそっ⁉︎)」

シンジ「残り5分を切ってるよ。時計を気にしてるようだけど?」

ヒカリ「アスカ? あの、アスカがオオカミなの……?」

アスカ「ひ、ヒカリ? そんなわけないじゃない! どうしてそんな目で見るの?」

ヒカリ「えっ、ご、ごめんね、でも、辻褄が合ってるように思えて」

シンジ「(人を操作して、誘導する。必要だからやらなくちゃいけない。たとえ、やりたくなくても必要なら……――父さんも、そう、だったのかな)」

アスカ「違うわよ!あたしはオオカミじゃない! 信じて! ヒカリ!」

ヒカリ「う、うん……」

ケンスケ「私情を挟んじゃ公平性が崩れるんじゃなかったのか? さっき自分で僕を友達だからって理由で疑っておいて」

アスカ「くっ……!」

トウジ「せやせやっ! 筋の通ったことをせなあかんぞ!」

ケンスケ「こりゃ、アスカがオオカミっぽい。な?」

シンジ「(父さんにも、こうやって、友達と遊んでる日々があったんだろうか……。必要なもの、必要じゃないと思うものを切り捨てて、いつしか、あんな風に――)」

ケンスケ「……シンジ?」

シンジ「あ、ええと、なに?」

トウジ「満場一致で惣流がオオカミで決まりそうや」

アスカ「……こんなの、こんなの……」プルプル

シンジ「……」チラ

ヒカリ「あ、アスカ……」ギュウ

シンジ「(やっぱり、満場一致でも鍵を握るのは洞木さんだ。これは僕の予想の範囲内、感情に流されてアスカを指名しないよね)」

トウジ「ちぃーとばかし時間があまったみたいやけど、投票するか?」

シンジ「まだだよ」

ケンスケ「え?」

シンジ「委員長。誰を指名するつもり?」

ヒカリ「えっ? い、碇くん? それって事前に申告するルールなの?」
753 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/08(水) 23:18:57.32 ID:edcYsnIa0
シンジ「違う。聞き方が悪かったね、正直に指名してほしいんだ」

ヒカリ「でも……ねぇ、これってゲームなんでしょ? そろそろ、やめない? なんだか可哀想よ」

ケンスケ「まぁ……」ポリポリ

ヒカリ「碇くんの勝ちでいいじゃない。相田くんと鈴原がアスカに投票して、そこに碇くんも加われば3票が集まる。多数決はそれで決まり」

トウジ「それもそうやが……」

シンジ「遊びじゃないんだ。これは」

アスカ「……」ピクッ

シンジ「そうじゃなくしたのはアスカだ。僕に負けたらエヴァを降りるという条件を突きつけた」

アスカ「……」

シンジ「自信があったんだろうね」

ヒカリ「碇くん! あんまりよ!」

シンジ「(エゴでもいい。偽善でもいい。僕はやると決めたらやなくちゃいけない。どんな結果でも受け止める……それが僕の背負った責任だから)」

ヒカリ「ねぇっ! もういいじゃないっ!」

トウジ「……」

シンジ「アスカ、逃げるの?」

アスカ「……なに?」

シンジ「完璧な負け。現実から」

アスカ「……!」ギリッ

トウジ「なるほど! そうか! そーゆうことやったんかいな!」

ケンスケ「トウジ……? なんだぁ?」

トウジ「ワシの天才的な閃きでピーンときたんや!」

ケンスケ「いやぁ〜な予感」

トウジ「つまりや! センセは惣流にこれまでの憂さ晴らしをしたいっちゅーことやろ!」どーん

シンジ「……え?」

トウジ「いやぁ、尻に敷かれとると思う時もあったが、なかなかどーして」

ケンスケ「おい、トウジ。今は黙っとこうぜ」

トウジ「あ? 違うっちゅーんかいな! 見てみい! 惣流のうつむき加減! こらぁスカッとするで!」

シンジ「……」

アスカ「もう、いい」ぼそ

ヒカリ「アスカ……? ねぇ、大丈夫?」

アスカ「あんたなんかきらい、嫌いっ、大っ嫌いっ!!」バンッ タタタッ

シンジ「逃げられないよ!」

アスカ「……っ!」ピタッ

シンジ「向き合わなくちゃいけない、自分のしたいようにしたいなら。僕はアスカはそのままでいいと思ってるんだ!」

ヒカリ「……」ゴクリ

シンジ「なにを選んで、なにを捨てるのか。アスカが決めなくちゃいけない。それだけ」

アスカ「……」タタタッ

トウジ「あ〜あ。止まったかと思えばまた走っていきおった。変な昼休みやったな」

ヒカリ「碇くん、追いかけてあげ……」

シンジ「いいんだ。アスカにだって自分と向き合う時間は必要だから」ペラッ

ケンスケ「え……っ⁉︎」ギョ

トウジ「そ、そのカードわぁっ⁉︎」

ヒカリ「碇くんが、オオカミだったの……」
754 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/08(水) 23:32:52.17 ID:edcYsnIa0
【第壱中学校 屋上】

アスカ「……はあっ、はぁっ……はぁっ」

シンジ『逃げるの? 完璧な負け。現実から』

アスカ「……っ!」ガンッ

シンジ『逃げられないよ!』

アスカ「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうっ!」ガンッ ガンッ ガンッ

シンジ『向き合わなくちゃいけない』

アスカ「えっらそーにっ!! バカシンジのくせにっ!!」ガンッ ガンッ

シンジ『アスカ……』

アスカ「あたしはエリートなのよ! なんで……なんでなんの才能もないナナヒカリに負けなくちゃいけないの……」ずる、ずるずる ヘタリ

アスカ父『アスカ。また一番だったのか? えらいね』

アスカ「私は一番が好き! 褒められるから! みんなが私をかまってくれるからっ!」

キョウコ『アスカちゃん……』

アスカ「まま……ママぁ。なんでぇ、どうしてよぉ……」ぽろ ポロポロ
755 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/09(木) 00:02:35.87 ID:BDiPzZt70
【放課後 教室】

ヒカリ「アスカ……戻ってこなかったね」

トウジ「まぁなぁ」ポリポリ

ケンスケ「シンジに負けたのがよっぽどショックだったんだろ。下に見てたのは事実だろうからな。それに、碇とはパイロット同士だし」

ヒカリ「まだ校内に残ってるんじゃないかしら」

シンジ「僕は帰るよ」トントン

ヒカリ「ねぇ、碇くん。気にならないの? 心が痛くならない?」

シンジ「(決まってるじゃないか。だけど、表には出しちゃいけない)」

トウジ「ほっとけほっとけ! 死ぬわけじゃあるまいし、おーげさなやっちゃ」

ヒカリ「そんな言い方って……!」

ケンスケ「ああいうエリート志向は打たれ弱いからな」

トウジ「このっ、わかったよーな口をっ。ケンスケのはアニメ知識やろ」グリグリ

ケンスケ「いで、いででっ、離せよ! ……ごほん、インテリとはぁ、些細なきっかけで転げおちるものだよ! きみぃ!」ビシッ

ヒカリ「ひどい……茶化すなんて……鈴原、そんな人だと思わなかった。もっと優しい人だと思ってたのに」

トウジ「ちっ、時にはお灸も必要やろが」

ヒカリ「でもっ!」

シンジ「アスカなら、大丈夫だって友達なら信じてあげないと」

ヒカリ「……」

シンジ「数日様子を見て、それでも立ち直れないようなら声をかけるでいいんじゃない?」

ヒカリ「冷たいのね、碇くん」

トウジ「甘やかすだけが友達やないぞ!」

ヒカリ「私、やっぱり、アスカ探してくる!」タタタッ

ケンスケ「女の連帯感ってやつなのかね。ああいう時々の感情だけで動くのはどーも苦手だな」

トウジ「さっすが、わかっとるのー!」

ケンスケ「ま、だから僕らはモテないんだろうけどさ」

トウジ「うっ」タジ

ケンスケ「シンジ。本当によかったのか?」

シンジ「……うん」

ケンスケ「そっか。だったら僕から何も言わない」

トウジ「はぁ」

レイ「……碇くん」

シンジ「ん? どしたの、綾波」

レイ「朝、話があるって言ってたから」

シンジ「あ、あぁ。ごめん、忘れてた」

レイ「明日でも平気?」

シンジ「これからネルフじゃないの?」

レイ「今日は三号機の納品作業に追われているから直帰していいって」

シンジ「メール見てなかったや」

ケンスケ「三号機がきたのかっ⁉︎」ガバッ

シンジ「あ、うん」

ケンスケ「くぅ〜っ! いいなぁ! どんなやつがパイロットに選ばれるんだろ! 機体を見てみたいなぁ〜っ!」

シンジ「(ミサトさん、今頃忙しいんだろうな)」

756 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 03:49:23.11 ID:T1Bk5i7Xo
続きはまだか
757 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 04:54:53.72 ID:VDRJzr0yO
シンジがなんか無双しすぎてなんだかなぁって感じになってきた

精神的に追い詰められたアスカが屋上から飛び降りしてシンジを追い詰めて欲しいレベル
758 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 05:18:48.03 ID:da20Z2RwO
シンジもゲンドウの死とか乗り越えてる流れ見るに無双ししすぎって感じしないけどな
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 08:39:53.74 ID:qHSP6m5bo
アスカワガママだしそんなに好きじゃないけど背負ってるものが重いし
追い詰められると可哀想に感じちゃうな。まだ子供だし

あとシンジは変われっていったくせに今のままでいいとか言ってどっちやねんと
760 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 12:04:36.12 ID:MEX0Z0EmO
>>759
自分のしたいようにするなら変わらなきゃいけないってこと
エヴァとかなんもかんも関係ないならそのままでいいってことよ
バカすぎる
761 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 15:08:17.32 ID:W6MDQPyDO
使徒に心折られて壊れるよりは多少傷ついてもシンジに鼻っ柱折られて自分の心を見つめ直すきっかけになる方が何倍もマシだと思うけど
エヴァに乗らないなら年を重ねて精神面の成長を待てばいいけど、使徒はアスカの心の成長を待ってはくれないしな
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 16:30:20.83 ID:ZjnPuwRaO
シンジはアニメ版でアスカが廃人になる出来事を知らないしエースとかチームリーダーの話を聞いて改善点を突きつけてるんだろ
問題はシンジはレイとアスカのやりとりを聞いてなくて既にアスカが追いつめられはじめてるのを知らないしトラウマについても知らない
さらに追いこむマネをしてしまった
どうなることやら続きが楽しみ
763 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 17:29:45.28 ID:ZFG3BMqso
現時点でラスボス母ちゃんの顔したよくわからん生き物の上に
いつ誰が消されるかわからん以上腹くくったホラー映画の主人公見たくなるのはしょうがないかと
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 17:54:47.34 ID:GCCS5CQco
リツコが追い込んだこと知ってるんだからシンジがやったのは単に傷口に塩塗る行為だよ
変わらなきゃいけないことはアスカだってわかってるしみんなの前で赤っ恥かかせる必要はなかった

>>760
アスカからエヴァを取るなんてあり得ないし実質追い込んだ張本人が
今のままでいいなんておかしいってこと。わかんない?バカなの?
765 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 18:17:38.25 ID:olpXLoC5O
>>764
シンジはアスカからエヴァを取らなくて済むように言ってるんだよ
ニートと一緒
すこしわかってるぐらいじゃ明日から本気だす止まり
シンジはこれまでの自分がそうだったから余計に何をしなくちゃいけないのかわかるんだろ
766 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 19:08:18.14 ID:AKGCK+Y7o
なかよし!
767 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/09(木) 22:46:09.35 ID:BDiPzZt70
これはひどい
768 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/09(木) 22:57:09.76 ID:BDiPzZt70
とりあえず今日は書きません眠いんで
769 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/09(木) 23:08:34.09 ID:cwaWsxCo0
ドンマイ乙
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 00:59:47.92 ID:RP9bV8HWO
どっちが正しいかのレスバトルになってるやんガキかよ
自分で書けな
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 03:23:43.07 ID:4MXjTpuTo
シンジが能力手にいれてから調子乗りすぎってことだけ分かる
自分の考えが全て正しいと思って強制させようっていうね
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 03:50:58.49 ID:W2tPtK6sO
先の展開まだわからないのに過剰に反応しすぎだろw
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 09:38:39.03 ID:N9Ulfpsjo
あのプライドの塊みたいなアスカが泣いたりしてあからさまに弱ってるのわかってるんだから
ここぞとばかりに優しくして懐柔路線で軟化させた方が良かった気はする

追い詰められたアスカが無理な特攻して廃人になってシンジも追い詰められたら面白いけど
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 10:55:11.69 ID:1cTwK8Eko
キミタチいい加減にしマサイ
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 14:31:17.89 ID:Ng8IBrptO
>>773
いい加減にしろガイジ
そう思うんなら自分で書けよ
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 16:00:02.94 ID:UkFGiINQO
>>773
すげえつまんなそう

777 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 16:24:08.46 ID:ZGNfSf0bO
アスカに優しくした方がとかシンジが強すぎるとか言ってるやついるけどさ
シンジだって中学生なんだから必要だろこれは
弱点は経験のなさだって書かれてるし完璧なわけじゃない
つじつま合ってるじゃん
778 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 18:31:42.96 ID:nBNHhKf9o
そうね
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/10(金) 23:09:58.88 ID:RP9bV8HWO
同じトリで涼宮ハルヒ書いてるの見つけたんですけどあっちはもう書かないんですか?
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 15:30:05.73 ID:MVBw2EvBO
支援
https://youtu.be/kLrSHTdVfgM

ここまで一気読みしました
原作リスペクトに溢れていてとても素晴らしいです
シンジくんが幸せになれますように
781 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 19:12:53.16 ID:IV99q457o
ただ現実として主人公なのにここまで不人気なキャラもいないよな公式すらシンジ排除して代わりにカヲルが入ってたりするからな
後からきたマリにすら人気抜かれるゴミなんだよな……
782 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 22:03:48.20 ID:bCjX0MYRo
新劇って観るべき?俺の中ではTEoEで完結してるんだけど…
783 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/11(土) 23:28:29.94 ID:xKV7Ro82o
>>782
見れるなら見たほうが良いと思いますよ見ないことには自分が楽しめるのかどうかなど色々わかりませんからね

私は好きです特に林原さんの不安定な状態のままの歌
784 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 01:50:19.64 ID:wS4ymQ+1O
>>781
そら仕方ない
庵野も公式に言ってるけど「カヲルは対をなす完璧なシンジ」で本来ならカヲルこそ好かれる主人公像
けどエヴァの醍醐味はそんなナヨナヨしてるシンジに共感できるのがミソやから
785 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 02:19:54.15 ID:e0j3MkSSO
冷静に考えればカヲル君も電波入ってるというか
かなりの不思議ちゃんだからキツイけどな
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 02:49:36.47 ID:cz3Qzrpx0
シンジは視聴者の自己投影キャラなんだから人気出るわけないじゃん
観客はシンジを気持ち悪いと思いながら自分の過去と照らし合わせてしまう
だから人気でたんだろエヴァというコンテンツは
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 03:01:46.85 ID:D3pc/rejo
私はそれと違って熱い男の主人公がずっといなかったのが悲しかった
マジンガーやゲッターみたいな燃える男がいなくてそれがナデシコでガイに出会ってキターと思ったよそしたら…(T_T)
788 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 03:27:46.28 ID:qwssxgigO
ハルヒのやつて読んできたがあっちもクオリティ高くてびびった
完走がんばってくれい
789 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/13(月) 01:15:17.32 ID:+pObHRzO0
たまにどこかでガス抜きしないとモチベが保てないのでハルヒはそういう理由ではじめたものです
今の所はこちらを書いてる方が楽しいのでそのまま進めます
790 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/13(月) 01:56:59.06 ID:+pObHRzO0
【ネルフ本部 発令所】

マヤ「スキャン完了。まもなく三号機の搬入作業の項目を満了します。戦自から出向している隊員が帰投を求めてきています」

ミサト「見落としはない?」

リツコ「やけに慎重ね」

ミサト「そりゃーね。……三号機はまだ試作段階でしょ? 起動実験を行う前に引き継ぎをされたし、何が起こっても不思議じゃないわ」

リツコ「考えすぎよ。肝心のパイロットすらまだですもの」

マヤ「ネルフ技術部と戦自、連合軍のトリプルチェックがはいっていますので。その、あまり慎重になりすぎてもメンツを潰しかねない恐れが」

ミサト「それで無駄な犠牲をださないで済むのなら安いもんよ」

リツコ「体面を軽視しないほうがいいわよ。そこに命をかける人種だっているのだから」

ミサト「プロならば妥協は許されないわ。ポジティブに捉えてほしいものね」

リツコ「技術部の人間なら可能。けれど、外部から派遣されてきてる者は意識が違う」

ミサト「慎重にならざるをえないのは我々の管轄内だからです。石橋を叩いて渡る必要がある。もう一度、チェック」

マヤ「了解。発令所より通達。作業員並びに戦自隊員は――」

リツコ「ミサト。あなた、戦自がうちを良く思ってないの重々承知のはずよね」

ミサト「……」

リツコ「こき使いすぎると上にチクられるわよ」

ミサト「不満は発令する者からすれば常につきまとう問題。必要な処置であれば実行するべき。でしょ?」

リツコ「……」

ミサト「私たちはわけのわからないモノに頼っているというのを忘れたの? 惨事を回避するため……起こってしまってからでは遅いのよ」

リツコ「人は、ロジックではないわ」

ミサト「意識の違いがあるのはわかってる。だからこそ仕事でもあり、任務なの」

シゲル「戦自車両より通信。三号機の予備部品を運搬中。……どうやら途中の高速道路で事故があったようで定刻より遅れそうです」

ミサト「そうらきた。伊吹二尉、リストアップは全て問題ないんじゃなかったの?」

マヤ「す、すみません。書類上は承認の判子が押してあったもので」

ミサト「ケアレスミスは注意していれば必ず防げる。もう一度、最初から。二度手間なんていう輩がいたらクビにしてかまわない」

マコト「気合いはいってますね、葛城さん」

ミサト「ええ……そうね」

リツコ「本当にそれだけ?」

ミサト「(違うわ、怯えてる。……こわいのね、わたし)」
791 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/13(月) 02:34:11.65 ID:+pObHRzO0
【第三新東京都市 繁華街】

シンジ「(誰かにつけられてる……。母さんが監視をつけたのかな。どうしよう、このまま放っておいてもいいけど)」

カヲル「やぁ、碇シンジくん」ポン

シンジ「……? キミは……カヲルくん?」

カヲル「アダムとの融合は順調のようだね。周囲の気配を察知できるようになっているなんて」

シンジ「カヲルくんだったの?」

カヲル「まだ大雑把にしか使えていないのかい? 神経をよく研ぎ澄ましてごらん。もうひとつ、かわいいネズミがいるはずだ」

シンジ「……たしかに、意識がこっちに向いてるのがまだ」

カヲル「話かけようと迷っていたみたいだね。あんまりにもじれったいから、ボクの用件を先に済ませようと思って」

シンジ「用件?」

カヲル「そう。ボクはボクでずっとキミの起こすアクションに注視していたのさ。キミがなにをしようとして、どう行動し、どんな結果がでるのか」

シンジ「……そう、それで何の用」

カヲル「あまりボクを失望させないでくれないか」

シンジ「えっ……?」

カヲル「ヒトは殻を破る時、吹っ切れたように行動することがある。良いか悪いかは別にして迷いがなくなる」

シンジ「……」

カヲル「本当に正しいことをしていると、胸をはって言えるかい?」

シンジ「わからない。僕だってなにが正解なんて。だけど、失敗をこわがってちゃなにもできないんだ」

カヲル「お父さんに囚われだしているのでは?」

シンジ「父さん……? 父さんは、いない。死んだんだ」

カヲル「だからこそだよ。死んだ人間は、時に美化される。記憶の中では変化が起こらないから」

シンジ「やめてよ、そんなんじゃないんだ。僕は自分の意思で」

カヲル「……ウソはいけない。キミは、お父さんに認められたがっていたじゃないか」

シンジ「なんで、カヲルくんがそれを」

カヲル「本音で話してほしいんだ。キミが思うことを」

シンジ「本当に、そんなんじゃないんだ」

カヲル「父親もこうだったんじゃないか。そう考えた試しが一度もないと?」

シンジ「あるわけないじゃないか。父さんは、僕とは違う」

カヲル「碇ゲンドウはネルフのトップだった。キミは権力も経験もなにもかもが足りない」

シンジ「そうだよ、だから迷って」

カヲル「でも、キミとゲンドウには共通する項目ができてしまった」

シンジ「父さんが、僕と……?」

カヲル「“孤独”だよ。シンジくん」

シンジ「……孤独?」

カヲル「彼は組織のリーダーとして、補完計画遂行の代理人としてただひとつの目的のために生きてきた。抱えていた孤独が解消されると信じて」

シンジ「母さんのこと? でも、僕は、別に」

カヲル「キミも意識せずその道に向かって歩きだしている。アダムという人知を超えた力を手に入れたことによって」

シンジ「……」

カヲル「求めるモノはなんだい? 人類の救済?」

シンジ「そんな大それた話……」
792 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/13(月) 02:58:11.74 ID:+pObHRzO0
カヲル「これからキミを襲うのは誰であろう、キミ自身だ」

シンジ「……」

カヲル「“行動には結果が伴う”。言うは容易いが、受け入れるのは難しいよ」

シンジ「わかってるよ、そんなこと。僕だってわかってるんだ」

カヲル「……」

シンジ「なにかするつもりなの? まさか、アスカのところに」

カヲル「いや、まだその時じゃないみたいだ。心配せずとも今は手出しをしない」

シンジ「カヲルくんって、使徒、なんだよね」

カヲル「正確には僕も、だよ。リリンはヒトだけど、使徒だから。シンジくんは存在がその理から離れつつある」

シンジ「……なんだろう、話してると落ち着く」

カヲル「それは僕とキミが魂レベルで双子の兄弟に近いからじゃないかな。見た目は違っても」

シンジ「もし、アダムが僕に移植されてなかったらまた違った印象なんだろうか」

カヲル「どうだろうね。そういう場合もあったかもしれない。今はそれすら不毛だ」

シンジ「カヲルくんの目的って一体。……そういえば、ひとつ、嘘をついてた」

カヲル「……」

シンジ「昼間にアスカとゲームをしたんだけど。僕はやらなくちゃいけないことだって思ったんだ。その時、父さんもこうだったのかなって少し、思った」

カヲル「ふふ」

シンジ「笑わないでよ。アスカは僕なんかよりよっぽど強いから。アスカは……」

カヲル「コンプレックスの塊のような人間なんだね、キミは」

シンジ「そ、そうかな」ポリポリ

カヲル「ヒトは、そんなに強くない。僕から見れば、儚く脆い花みたいな生物だ」

シンジ「だって、カヲルくんは」モゴモゴ

カヲル「イメージの固定化はしないほうがいい。キミがそう思っていても、他人の秘密……内面を全てわかり合うなんて不可能だろう?」

シンジ「そりゃ、そうだけど」

カヲル「あの子の魂も殻に閉じこもったままだからね。赤い機体と同じで」

シンジ「……? どういう」

カヲル「聞きたいことは聞けた。またね、シンジくん」スタスタ

シンジ「えっ、ちょ、ちょっと待ってよ! 行っちゃうの⁉︎ カヲルくん!」
793 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/13(月) 03:26:16.28 ID:+pObHRzO0
マナ「あのっ! シンジくん!」ガシッ

シンジ「えっ……? ま、マナっ⁉︎ さっきの感覚って」

マナ「誰かと話してたみたいだけど、私も、話があって。ずっとタイミングを伺ってたの」

シンジ「迷ってるって言ってたのはやっぱり。カヲルくんは……」キョロキョロ

マナ「まだ終わってなかったの? 一人で歩きだしたからてっきり」

シンジ「……いや、いいよ。きっとまた会うことになるだろうから」

マナ「ご、ごめんね」

シンジ「それより、なんでここに? 戦自は大丈夫なの?」

マナ「そのことで、折り入って話たいことが」

シンジ「……? なにか、困りごと?」

マナ「……うん」ギュウ

シンジ「どうしたの? もしかして、僕と内通してるのがバレたとか」

マナ「うっ、ぐすっ、うっ」ポロポロ

シンジ「マナ……? 大丈夫?」

マナ「どうしたらいいのか、どうしたらいいのかわからないの!」

シンジ「なにが、あったんだよ」

マナ「お願い! もう一度私と戦自に来て!!」

シンジ「えっ? 戦自って、いや、でも」

マナ「引き合わせなきゃいけない人がいるの。そうしないと、そうしないと」

シンジ「まずは事情を聞かせてよ。近くの喫茶店にはいろう」

マナ「(ごめんなさい、シンジくん。私、わたし、今からあなたを騙さなきゃいけない)」
794 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/13(月) 09:20:29.13 ID:MRiDkf+JO
乙乙
795 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/13(月) 17:54:39.61 ID:+pObHRzO0
【繁華街 喫茶店】

シンジ「(席についてもう30分か。ずっと黙ったままだし、僕から切り出した方がいいのかな)」チラ

マナ「……」ギュウ

シンジ「昨日は、大変だったね」

マナ「知ってるの⁉︎」

シンジ「いや、えっと。僕のために色々協力してもらったこと」

マナ「あっ、そ、そうよね。うん、いいの」

シンジ「あれから、僕はネルフに帰ったからマナがどうしてたか知らない。軍曹さんからなにか問い詰められた?」

マナ「ううん、軍曹殿は、見てない」

シンジ「(違うのか……)」

マナ「シンジくんにお願いしたいことは」

シンジ「うん?」コト

マナ「会いたいって言ってる人がいるの」

シンジ「理由を聞いてもいい?」

マナ「ムサシとケイタが。短い付き合いだったけど」

シンジ「え? 僕に?」

マナ「当たりがきつかったんじゃないかって気にしてて。シンジくんは気にするような人じゃないって言ったんだけど」

シンジ「それで、さっき泣いたの?」

マナ「うぅんと、その、け、喧嘩しちゃって。あんまり、うまくいってないのは知ってるでしょう?」

シンジ「まぁ。ムサシくんが戦自に傾倒しすぎてることだよね」

マナ「そうなの。だから、それがきっかけでぶつかっちゃって。びっくり、したよね、いきなり泣き出して。えへへ」

シンジ「(おかしいような気がする。そんな理由で取り乱すだろうか)」

マナ「でね、もしよかったらなんだけど、シンジくんに仲を取り持つ橋渡しをしてもらえたらなって」

シンジ「(なにかを隠してるのか、言えないのかもしれない。だったら……)」

マナ「だめ、かな?」

シンジ「……わかった。場所は厚木基地がいいの?」

マナ「う、うんっ! よかった、断られるんじゃないかと思ってた。まさか、こんなにすんなり了承してくれるなんて」

シンジ「僕はマナを信じてるから」

マナ「……っ!」ギュウ

シンジ「(ウソでもかまわない。ウソじゃなくてもそれでいい)」

マナ「う、うん。ありがとう」

シンジ「ただ、すぐにってわけにはいかないと思う。場所が遠いし、時間もかかるだろうし」

マナ「都合、聞いてみる! あの、ごめん」

シンジ「謝らなくていいよ。僕ももっと話してみたいと思ってたから」

マナ「きっと! きっと、ムサシもケイタも感謝するよ。そしたら、いつだって仲良くなれると思うの」

シンジ「……うん、そうだね。あまり長居するとネルフの諜報部に報告されるかもしれない。連絡手段はどうする?」

マナ「シンジくんってこのルートをよく使う?」

シンジ「ネルフに通う時は。あぁ、言ってなかったけどしばらくは本部内にあるコンテナで寝泊まりするようになったんだ」

マナ「そうなんだ。パイロットなのに、大変だね。もっと待遇よくしてくれそうだけど」

シンジ「僕から希望したんだ」

マナ「……携帯電話だと盗聴されてるかもしれないから、用がある時、近くの広場で待ってる」

シンジ「了解。登下校する時は僕も気にかけておくよ」
796 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/13(月) 22:19:12.62 ID:+pObHRzO0
【洞木宅 部屋】

ヒカリ「お茶、持ってきたよ」

アスカ「……」ピコピコ

ヒカリ「あの、そろそろテレビゲームやめない? 妹が帰ってきちゃうから、私、お話の方が」

アスカ「ヒカリ、今日、泊まってもいい?」バキューンバキューン

ヒカリ「えっ……うちは大丈夫だけど、平気なの?」

アスカ「……」ズドーン ゲームオーバー

ヒカリ「……葛城さんには連絡しようね?」コト

アスカ「ねぇ、あたしらしいってなに?」

ヒカリ「……? 突然、どうしたの」

アスカ「あたしってどんな人間?」

ヒカリ「アスカは、ハキハキしてて、元気があって。ちゃんと自分の考えをもってて」

アスカ「そっか」

ヒカリ「碇くんに負けたの、そんなにショックだった? ごめんね……なんだか、イマイチ実感がわかなくて。だって、今やってるテレビゲームみたいなものでしょう?」

アスカ「自分自身にイラついてるだけ」

ヒカリ「……」

アスカ「みんな、嘘つき。ヒカリはどうしてあたしに優しくしてくれるの」

ヒカリ「それは、友達、だから」

アスカ「いい子よね、ヒカリって。委員長だし、面倒見いいし」

ヒカリ「そ、そう?」

アスカ「(そんなんだから、都合良く扱われるのよ)」

ヒカリ「碇くんも、きっと、心配してないわけじゃないんだと思う。むしろ、心配だから――」

アスカ「シンジの話は聞きたくない」

ヒカリ「でも……ボタンのかけ違いをしてるだけなんじゃないの」

アスカ「あいつはただのガキ。それ以上でも以下でもない」

ヒカリ「そこは、変わらないんだね」

アスカ「ん」

ヒカリ「(今は、なにも言わない方がいいのかな)」

アスカ「お腹、すいた」

ヒカリ「うん、そうだよね、待ってて。もうすぐみんな揃うと思うから。そしたら夕飯にしましょ」
797 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/16(木) 04:02:04.98 ID:BfhMC4C10
【ネルフ本部 執務室】

ユイ「機体がようやく届いた。三号機は弐号機同様、アダムがベース」パサ

カヲル「……」スッ

ユイ「興味ないの?」

カヲル「喪失した心。それがまた次の飢餓を産み出す。リリンはずっと同じ過ちを繰り返すんだね」

ユイ「エヴァシリーズは道具よ」

カヲル「の割には、心の空白を埋めたがっているように見えるけど」

ユイ「明日に行われるシンクロ率のテスト。実行数値を抑えるように」

カヲル「……」

ユイ「……そんなに不思議? つじつまが合わないだらけで行動することが。合理性だけではつまらないでいいじゃない」

カヲル「リリンは感情の振り幅が激しいからね……A.Tフィールドは、強い“拒絶”。誰もが持っている心の壁。シンジくんはまだ使えないようだけど」

ユイ「可視化できるほどのエネルギーを発生させるには熱量を要する」

カヲル「物理の法則に反するほどの……念じるという行為に限界があるのかな」

ユイ「ヒトは群れなくしては弱いから。組織が力だと考えているシンジではまだ気がつけていないのも仕方ない」

カヲル「融合が進めばどんなにヒトが抗おうとしても不可侵の存在になる」

ユイ「皮肉よね。ヒトの持つ特権、強みである“群れ”を制御するためには優秀な指導者が必要だなんて。結局、個に頼るのと変わらない」

カヲル「……」

ユイ「人類の歴史は、優秀な統治者の歴史でもある。世代交代をして、親から子へ引き継がれる折に、時には文明が退化することすらあった」

カヲル「……」

ユイ「古代から天文学や錬金術などで撒いてきた学問という種が突然変異をし、科学……人類には早すぎる変化、革命をもたらした」

カヲル「世の中はここ百年余りで急速に便利になった。だが、ヒトの心は、群れに必要性を見いだせなくなっていく」

ユイ「IT産業革命はとどまるところを知らず、ネットインフラは進みに進んだ。情報化社会は形を変えて心の隙間を生み出したわ」

カヲル「……」

ユイ「そうした小さな積み重ねが、大きな過ちとなり破綻しようとしている。“流れの変化に人類が追いついていない”。ヒトの限界」

カヲル「便利な道具。知恵の実を手にしたのはリリンだ」

ユイ「過ぎた力は傲慢を招く。自分のセカイの中でなんでもできると勘違いしてしまった。ヒトの犯した罪は断罪しなければならない」

カヲル「淘汰への道を捨ててまで滅びの道を選ぶというのか」

ユイ「夫が生きてたら同じことを言うでしょう。……“人類にとっての救済”よ。あなたには理解できないでしょう」

カヲル「ピースが揃わぬ内に計画を実行するおつもりですか」

ユイ「シンジが真に覚醒すれば、人類など“無”と同じよ。量産機も含めてね」
798 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/19(日) 00:04:53.36 ID:1aLi8bu90
【ネルフ本部 ラボ】

冬月「将棋には凡夫と鬼才と揶揄される打ち筋がある。一見、捨て駒と見える表に、よも言わぬ裏を持ち合わせている場合」

リツコ「……」コト

冬月「キミは凡夫なのか、はたまた鬼才なのか。それを見定めにきた」

リツコ「驚いております。まさか、静観なさっていた副司令が自らご足労いただけるとは」

冬月「早計がすぎるぞ、動くと決まったわけではない。先に言った通り、見極め、それだけのことだ」

リツコ「いいえ、山を動かしたのです。私一人の力では到底不可能だった」

冬月「フォースの少年、ゼーレが直接送りこんできたというこの内部資料。私にもちかけたのはなぜかね?」

リツコ「碇ユイ司令の行動です」

冬月「……」

リツコ「――ここまで言えばお察しいただけるでしょう。司令は私達を、ゼーレを、セカイですら欺こうとしている」

冬月「どうでも良いことだ」

リツコ「……」

冬月「もはや、亡き者となった碇ゲンドウ。その抹殺に加担した時点で俺は、いかなる結果になろうとも見届けると決めた」

リツコ「愛、ですか」

冬月「ふっ、そんな薄っぺらいものでもあるまいよ。ここに至るまで、十三年間歩んできた道のりは、決して平坦なものではなかった」

リツコ「セカンドインパクト、人類を襲った未曾有の危機」

冬月「左様。我々、真実を知る者にとっては“災害”は“自然発生”ではない。“故意”によるものだと知っている」

リツコ「……」

冬月「いわば、“回避できたかもしれない未来”に他ならない。諦めてしまったのだ。もしかしたら……他にあったはずの道を」

リツコ「自責の念をお持ちになっていたのでしょうか」

冬月「なかったと言えば嘘になる。それすら慣れてしまった。人は与えられた環境でしか生きることを許されないからな」

リツコ「……」

冬月「私は間違えてしまったのだ。とるべき方法を。愛し方を。ユイくんが生還していることを碇に告げなかった。醜い嫉妬心で」

リツコ「……」

冬月「三度の裏切りは許されん。これが私の生きる枷。……罪なのだから」

リツコ「それで満足ですか?」

冬月「ああ、どちらにせよ終わりの時は近い。人類全体を巻き込んだ審判の時になるだろう」

リツコ「もうひとつ、活路があるのだとしたら?」

冬月「なに……?」

リツコ「我々が選べるのは二択です。“再生”か“破滅”か。手を加えすぎてしまい、色が色となりたたなくなってしまった絵画をもう一度真っ白に戻すか、それとも更に手を加える」

冬月「無理だな」

リツコ「でも、まだ手は残されています。もう一枚、画用紙を用意すればいいのです」

冬月「……」

リツコ「シンジくんを主軸として新たな補完を発動する。そうなれば、なにも碇ユイ博士やゼーレの既定路線に乗る必要はなくなります」
799 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/19(日) 00:27:34.70 ID:1aLi8bu90
冬月「問おう。キミと碇が不倫関係にあるのを私が知らなかったと思うかね?」

リツコ「いえ」

冬月「碇がもつ孤独、空虚、悲しみ。その隙間を埋めようと女の温もりを求めキミに、面影を求めレイに逃げた」

リツコ「……」

冬月「キミは碇に利用されていることを知ってなお、ありもしない希望に縋っていた。女の喜びを甘受していた」

リツコ「おっしゃる通りです」

冬月「ユイくんの生存で音を立てて破綻した。キミは碇に牙を剥いた。裏切られたと自分勝手な思い違いだが、俺と根は一緒の嫉妬。憎悪の炎に身を焦がした」

リツコ「……」

冬月「キミも碇抹殺に関与している一角なのだよ。それが済めば、次はユイくんへの復讐かね?」

リツコ「ふ、ふふ」

冬月「……」

リツコ「失礼。あまりにも思い違いをされているので笑いがこみ上げてまいりました」

冬月「そうは思えんがな」

リツコ「私が望むべきはたったひとつ。それは、あるべき姿に還すことです」

冬月「くだらない御託はよせ。そんな崇高な理想を掲げる理由があるまい」

リツコ「いいえ、これもひとつの愛し方だと考えていただきたい」

冬月「……」

リツコ「私は碇ゲンドウを愛していました。傾倒していると言ってもいい。復讐にかられ幾度でも殺したいと願うほどに」

冬月「……」

リツコ「虚しい、と、考える暇がなかったのです。ですが、ゲンドウが死に、ユイ博士の元に着いても私の心は満たされませんでした。もう終わったはずなのに」

冬月「……」

リツコ「ユイ博士に復讐しようかと一時は考えましたが、頭によぎったのはそれよりも母さんでした」

冬月「母とは、赤木ナオコのことかね?」

リツコ「はい。母さんはある夢を託してMAGIを設計しました。女であることを死ぬまで辞めなかった母さん……私にはなにも残っていない。であるならば、亡き母の夢を叶えよう」

冬月「……その夢とは?」

リツコ「科学者にありがちな、理論だけの、荒唐無稽な産物です」
800 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/19(日) 22:57:48.47 ID:1aLi8bu90
【深夜 ネルフ本部 コンテナ内】

シンジ「んうぅ、喉が、乾いた」ムク

ゲンドウ「シンジ。久しぶりだな」

シンジ「誰……?」

ゲンドウ「俺だ。お前の父親だったモノだ」

シンジ「と、父さんっ⁉︎ な、ななっ、なんでっ⁉︎ ど、どうして……?」

ゲンドウ「何を迷っている、シンジ」

シンジ「迷って……? そ、そんなことより、生きてたのっ⁉︎ そんな、たしかに綾波からは」

ゲンドウ「お前が為すべきことはなんだ」

シンジ「(……違う、この父さんは……)」

ゲンドウ「答えろ、シンジ」

シンジ「僕が作り出した、幻なんだね」スッ

ゲンドウ「コタえロ、シンジ」

シンジ「父さんも……孤独を抱えながら生きていたの?」

ゲンドウ「……」

シンジ「母さんがいなくて寂しかったんだね」

ゲンドウ「俺に縛られずお前の生き方を選べ。俺のように不器用にはなるな」

シンジ「たとえ、幻覚か夢でも父さんが僕にそんな言葉をかけてくれるなんて」

ゲンドウ「お前の意思は何人にも侵害されることのない、自分だけのものだ。それが自由なのだ」

シンジ「……」

ゲンドウ「間違っていてもいい。犯した過ちから目を背けさえしなければ」

シンジ「父さん……」

ゲンドウ「シンジ、逃げてはいかん。逃げるのは、全てを諦めたときだ」

シンジ「うん」

ゲンドウ「お前のやるべきことはなんだ⁉︎ 答えろっ!」

シンジ「僕の、やるべき、こと……」

ゲンドウ「受け取れ」スッ

シンジ「なに、これ」

ゲンドウ「USBメモリだ。中身は見ればわかる」

シンジ「は、ははっ。きっと、これは夢かなにかなのに、こんなもの渡されてもどうしろって」

ゲンドウ「お前は一人ではない。それを今一度よく思い返してみろ」

シンジ「……わかったよ、ありがとう。夢でも会えて嬉しかった」

ゲンドウ「ああ」

シンジ「父さんっ!! 13年前のあの日、父さんが僕の前から消えたのは、なにか別に理由があったのっ⁉︎」

ゲンドウ「……」スゥー

シンジ「待って! まだ消えないで! ねぇっ、答えてよっ!! 夢なら、僕に都合の良い答えを言ってよ……! ……うっぐすっ……」ポロポロ

801 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 03:26:07.04 ID:fUyd7immo
ゲンドウのシンジヘの感情って未だに整理できてないんだよなあ。
10年以上経ってんのに
802 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/20(月) 08:14:27.50 ID:mYoi0VB/0
13年前ではなく3年前のミス
803 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/20(月) 08:16:10.57 ID:mYoi0VB/0
ちょいレス投稿しなおしときます
804 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/20(月) 08:18:05.62 ID:mYoi0VB/0
【深夜 ネルフ本部 コンテナ内】

シンジ「んうぅ、喉が、乾いた」ムク

ゲンドウ「シンジ。久しぶりだな」

シンジ「誰……?」

ゲンドウ「俺だ。お前の父親だったモノだ」

シンジ「と、父さんっ⁉︎ な、ななっ、なんでっ⁉︎ ど、どうして……?」

ゲンドウ「何を迷っている、シンジ」

シンジ「迷って……? そ、そんなことより、生きてたのっ⁉︎ そんな、たしかに綾波からは」

ゲンドウ「お前が為すべきことはなんだ」

シンジ「(……違う、この父さんは……)」

ゲンドウ「答えろ、シンジ」

シンジ「僕が作り出した、幻なんだね」スッ

ゲンドウ「コタえロ、シンジ」

シンジ「父さんも……孤独を抱えながら生きていたの?」

ゲンドウ「……」

シンジ「母さんがいなくて寂しかったんだね」

ゲンドウ「俺に縛られずお前の生き方を選べ。俺のように不器用にはなるな」

シンジ「たとえ、幻覚か夢でも父さんが僕にそんな言葉をかけてくれるなんて」

ゲンドウ「お前の意思は何人にも侵害されることのない、自分だけのものだ。それが自由なのだ」

シンジ「……」

ゲンドウ「間違っていてもいい。犯した過ちから目を背けさえしなければ」

シンジ「父さん……」

ゲンドウ「シンジ、逃げてはいかん。逃げるのは、全てを諦めたときだ」

シンジ「うん」

ゲンドウ「お前のやるべきことはなんだ⁉︎ 答えろっ!」

シンジ「僕の、やるべき、こと……」

ゲンドウ「受け取れ」スッ

シンジ「なに、これ」

ゲンドウ「USBメモリだ。中身は見ればわかる」

シンジ「は、ははっ。きっと、これは夢かなにかなのに、こんなもの渡されてもどうしろって」

ゲンドウ「お前は一人ではない。それを今一度よく思い返してみろ」

シンジ「……わかったよ、ありがとう。夢でも会えて嬉しかった」

ゲンドウ「ああ」

シンジ「父さんっ!! 三年前、父さんが僕の前からいなくなったのは、なにか他に理由があったのっ⁉︎」

ゲンドウ「……」スゥー

シンジ「待って! まだ消えないで! ねぇっ、答えてよっ!! 夢なら、僕に都合の良い答えを言ってよぉ……っ! ……うっうっ……」ポロポロ
805 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/20(月) 08:59:06.18 ID:mYoi0VB/0
【洞木宅 ヒカリ部屋】

アスカ「ねぇ、寝た……?」

ヒカリ「……」スヤァ

アスカ「はぁ、寝ちゃったか。ごめんね、ヒカリ。優しさにつけこんで。イヤな女よね、あたしって」

ヒカリ「ん、アスカ……?」

アスカ「なんだ、起きてたの……?」

ヒカリ「んん、寝てたけどなんだか話しかけられてる気がして。ねれないの?」

アスカ「……ちょっとだけ」

ヒカリ「そっか。それじゃお話する?」

アスカ「いいわよ、寝てたんでしょ」

ヒカリ「いいの。えへへ、友達同士で、こうして夜中にお話するのって楽しいよね」

アスカ「ノリが修学旅行のそれと同じね」

ヒカリ「なかなかお泊まりする機会がないんだもの」

アスカ「これからあたしが話しをすることはただのひとり言」

ヒカリ「ん……?」

アスカ「いままで、ほしいものはすべて手に入ってきたし、困ったことなんかなかった。同年代のオトコなんて、みんなあたしが右と言えば右に歩いた」

ヒカリ「すごいね」

アスカ「自慢じゃなくてトーゼンでしょ。あたしはかわいいもの。見た目的な話ね、それは理解してる」

ヒカリ「う、うん」

アスカ「だけどさぁ、同年代って……なんていうか、自分のことで手一杯なのよ。精神年齢が低くてまわりが見えてないっていうか」

ヒカリ「子供っぽいところあるよね」

アスカ「そういうのって指摘されても直せるってわけにもいかないのよねぇ。経験がものをいうっていうか、言ってわかる部分とは違う」

ヒカリ「私は、少年みたいな人、いいかな、なんて」

アスカ「まじで言ってんの?」

ヒカリ「え、えっと……。独り言してたんじゃなかったの?」
806 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/20(月) 09:00:58.60 ID:mYoi0VB/0
アスカ「……あたしは、大人の人がいい。あたしの言うことを笑って受け流してくれる人、真面目にならない人」

ヒカリ「……」

アスカ「こわいのよ。自分がキズつくのが、嫌なの」

ヒカリ「だから、適度な距離を保ってくれる人……?」

アスカ「ガキ相手にしてちゃ、あたしのワガママに振り回されちゃうでしょ。なんでも本気にしちゃうしさ。……自分の素直な気持ちは、他人のせいにできない」

ヒカリ「アスカ……」

アスカ「あたしだけのものだから。エヴァに乗ってる時は解放を求めてるの。でも……本当は、ちっとも楽しくない。プレッシャーばかり感じる」

ヒカリ「私、エヴァのことはわからないけど、碇くんや綾波さんをもっと頼ったら?」

アスカ「ファーストは論外。あんなのに頼るぐらいならいっそ……シンジは……」

ヒカリ「ねぇ、アスカ」

アスカ「なに?」

ヒカリ「アスカが体育館倉庫前で暴漢に襲われて、碇くんにキスしたこと覚えてる? ほら、保健室で」

アスカ「あぁ……」

ヒカリ「あぁって、そんな程度なんだ……」

アスカ「で? それがなに?」

ヒカリ「あのね、アスカと碇くんって喧嘩しないわけじゃないけど、うまく付き合えるんじゃないかなって」

アスカ「……」

ヒカリ「やっぱり、その、私じゃわからないことも多いし。パイロット同士なら……もっと助け合えると思うの」

アスカ「……」ゴロン

ヒカリ「碇くん、アスカのこと、心配なんだよ」

アスカ「気に入らない」

ヒカリ「どうして? 誰かが誰かを心配するのって相手を想ってなくちゃ」

アスカ「いつも弱い犬みたいな目をしてたやつが、あたしを心配するなんて」

ヒカリ「……」

アスカ「あいつがどういうつもりなのか、あたしに、本気で踏みこむつもりか確かめる」

ヒカリ「え? 踏みこむって?」

アスカ「……眠くなってきちゃった。そろそろ寝よ」

ヒカリ「え? えっ?」

アスカ「独り言よ。おやすみ、ヒカリ」
807 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/20(月) 23:15:04.30 ID:u4jWflIBo
C
808 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/21(火) 04:25:53.40 ID:nvFT2UcNo
大体どの媒体でもシンジに覚悟を問う段階って墜ちる寸前だよな
809 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/21(火) 05:04:45.09 ID:PV2FPMf80
最終的なヒロイン誰になるんだろうなこれ
マヤちゃんは影薄くなっててマナとアスカが最近出番多いね
810 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/11/25(土) 22:15:01.50 ID:1C4FbM22O
【第三新東京都市 ビジネスホテル】

マナ「――というわけで、サードチルドレンの了承を得られました」

シロウ「随分とあっさりだな。怪しむ、警戒すらなかった……?」

マナ「シンジくんは、その、とても素直っていうか」

シロウ「いい、いい。子供のなまっちょろい分析など聞くだけ時間の無駄だ」

マナ「そんな言い方……」

シロウ「ふむ。本当に、下心があるわけではないのか?」

マナ「失礼です」

シロウ「キミは容姿がいいじゃないか。同学年からしてみれば、だが。アイドルの卵といって差し支えない」

マナ「……」

シロウ「そんなメスに、14歳のオスが頼られていい気がしないわけがあるまい? 保護欲が働いているのかもしれんな」

マナ「なにが言いたいんですか」

シロウ「“かよわい女性を傷つけてはならない”という倫理観なのか、という話だよ」

マナ「素敵なことだと思います」

シロウ「ナイト気取りがか? ふん、鼻で笑ってしまう。独りよがりの行動パターンだ」

マナ「……」

シロウ「碇シンジという少年。本当に漫画の主人公なのか……はたまた年相応の“男”なのか。試してみたくなった」

マナ「無駄ですよ」

シロウ「キミに彼のなにがわかる? その絶対的な自信は虚構ではないか?」

マナ「虚構……私が自分で作りあげたイメージってことですよね? 違います。シンジくんは、そんなんじゃ」

シロウ「……いずれにせよ、私の目で確かめる」

マナ「会えばきっとわかります」

シロウ「ネルフに気がつかれてもかまないから都合をつかせろ」

マナ「えっ? ネルフからマークされますよ?」

シロウ「奴らの情報網を甘く見すぎだ。とっくに気がつかれてるよ。私が戦自にいることは」

マナ「了解。いつと伝えましょうか?」

シロウ「こちらから迎えに行くとしよう」
811 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/11/25(土) 22:35:19.08 ID:1C4FbM22O
【翌日 第壱中学校】

トウジ「ふぁ〜ぁ。おはよーさん」

シンジ「おはよう」パカッ パサ

トウジ「センセ、下駄箱からなにか落ち……て、それわぁっ⁉︎」

シンジ「手紙……?」ヒョイ

トウジ「ま、まさかラヴレターってやつじゃ⁉︎ なんでや! なんでこいつばっかりにおいしいロマンスが転がりこんでくんねんっ!」

ケンスケ「気持ちはわかる……そういうものなんだよ。この世界は理不尽のかたまりさ」

シンジ「あ、ケンスケ。おはよ」

トウジ「シンジっ! 中身をはよあけて確認せんかい!」

シンジ「えっ、トウジも見るの?」

トウジ「……あぁ〜、うぅ〜ん、みたいところやが、そんなんは男のすることやないな」

シンジ「(たぶん、カヲルくんじゃないかな)」ペラ

トウジ「どうや⁉︎ どんなんが書いてあんねや⁉︎ 甘酸っぱい文字が散りばめられとるんか⁉︎」

シンジ「……」

ケンスケ「あちらから歩いてくるのが見えますのはアスカじゃないか? こりゃ朝っぱらから修羅場かぁ」

トウジ「げっ! ほんまや! シンジ! はよ手紙隠せ」

シンジ「トウジ、ケンスケ。悪いんだけど、ちょっと用事ができた。先生に伝えておいてもらえないかな」

ケンスケ&トウジ「は?」

シンジ「それじゃ」タタタッ

ケンスケ「お、おいっ!」

トウジ「……くぅ〜〜っ! うらやましい! うらやましすぎる青春!」

アスカ「ちょっと、そこのバカ二人。もう一人のバカは? 走ってどっかいったみたいだけど」

ケンスケ「あ、あぁ、えっと」

トウジ「残念やったのー。一足遅かったよーで」

アスカ「もうすぐHRはじまるってのに。どこほっつき歩きに行ったの?」

トウジ「ほっとけ。お前には関係――」

アスカ「あたし、昨日からずっと機嫌が悪いのよ。素直にゲロった方がいいわよ」グイッ

トウジ「〜〜ッ! こ、この、暴力女め! お前にシンジの恋路の邪魔はさせへんぞ!」

ケンスケ「あっ!」

アスカ「……恋路?」

ケンスケ「はぁ……」

トウジ「し、しまったぁ……!」

アスカ「どういうわけ?」ギリギリ

トウジ「く、首がっ、えり締められると首があかんて」
812 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/01(金) 13:25:39.48 ID:aCOv88FMO
【第壱中学校 校舎前】

黒服「碇シンジだな」

シンジ「(黒いスーツ? ネルフ……?)」

黒服「ここから五十メートル歩き、十字路を右に曲がったところに貨物車が停まっている。鍵は空いてる。そのまま乗れ」

シンジ「随分、まわりくどいやり方をするんですね。また母さんの差し金ですか」

黒服「質問は受け付けない」

シンジ「そうですか、だったら帰らせてもらいます」クル

黒服「少女の身柄を確保している」

シンジ「……」ピタ

黒服「同行はあくまで任意だ。しかし、帰ればその少女の安全は保証しない」

シンジ「誰かわからない相手の為に残ると思いますか」

黒服「興味ない。伝えるように命令をくだされているだけだ。帰った場合の処置も」

シンジ「(選択肢は残されてる、試されてるみたいなこの感じ……やっぱり、母さんなのか? いや、でも、母さんとは話がついてるはずだし)」

黒服「今すぐに結論をだせ」

シンジ「ついていった場合は、僕の安全はどうなります?」

黒服「質問は受け付けないと言ったはずだ」

シンジ「(ということは、不確定な材料のまま選ばせるつもりなのか。人質がウソという可能性もある)」

黒服「……」

シンジ「(後悔だけはしたくない。もし、ウソだとしてもアダムの力がある僕なら、簡単に抜け出せるはず……考えるよりまず行動しなくちゃ)」

黒服「行かないのか? なら、そう報告する」スッ

シンジ「待ってください。……行きます」
813 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/12/01(金) 14:07:48.51 ID:IDBUiKQy0
【第壱中学校付近 車内】

シンジ「マナ……?」

マナ「し、シンジくん……」

シンジ「この手紙は、マナがいれたの? “校舎前に来て欲しい”だけ書かれてたからてっきり……」

マナ「ご、ごめんね。朝早くから、それに、突然になっちゃって」

シンジ「まずいよ。いきなりは」

シロウ「ようこそ、サードチルドレン。声だけで失礼するよ。そちらの姿はモニター越しによく確認できる。私の名前は時田シロウだ」

シンジ「(時田シロウ? 誰だ……?」

シロウ「聞いたことがないという表情を浮かべているな。無理もない。実際に会うのはお互いにこれがはじめてになる」

シンジ「あなたが、僕に会いたいと?」

シロウ「できれば直に会いたかったのだかね。なにしろ私は用心深い。顔が割れることじゃないぞ、そこにいたらネルフの働きアリに殺されかねんからな」

シンジ「(母さんじゃない。戦自か)」

シロウ「さて、碇シンジくん。私はキミに興味がある。なにに対してのコンタクトか、予想はついているかな?」

シンジ「戦自の人たちが興味を持つといったら母さんの情報を僕から聞き出したい」

シロウ「違う。エヴァという玩具を私的理由で持ち出したキミがのうのうと普段通りの生活をおくっている。なぜだ?」

シンジ「……」

シロウ「キミはどれほどの影響力を総司令たる母に持っている? 例えば、“ほしい”といえばなんでも与えられるほどの――」

黒服「お話中、失礼します」ガチャ

シロウ「チッ。なんだ」

黒服「校舎前でもう一名確保しました」

シロウ「そんな命令はしていない」

黒服「申し訳ありません。やり過ごそうと思ったのですが、どこの所属かしつこかったもので。ネルフ関係者のようです」

シロウ「なに……?」

黒服「訓練経験者の動きをしていました。今は布を口に詰め騒がれない対策していますが、いかがいたしますか?」

シロウ「仕方ない。そいつも乗せろ」

シンジ「(嫌な予感がする)」

黒服「開けるぞ」コンコン ガチャ

アスカ「んーっ! んー!」ジタバタ

シンジ「(や、やっぱり……)」

マナ「あ、アスカぁっ⁉︎」ギョ

黒服「いてっ、この、蹴るな! 大人しくしてろ」ドサッ

アスカ「んっ⁉︎ んんっ⁉︎ ふんふ! ふーっ!」

シロウ「そいつは……どこかで見覚えが。そうだ。たしか……セカンドチルドレンではないか? 霧島隊員?」

マナ「は、はい……。どうして、アスカが……」

シロウ「キミが呼んだのかね? 碇シンジくん」

シンジ「違いますよ」

シロウ「ふん……。面白い。霧島隊員。隣に座らせてやれ」

アスカ「んっ!」ギロッ

マナ「アスカ、なんで来ちゃったの。……ごめんね、ちょっと抱えるよ」

アスカ「んー! んーんー!」クイクイ

マナ「布をとってほしいの? あの、時田博士……」

シロウ「そのままだ。サードチルドレンと違い気が強そうだからな。余計な手間と時間は省きたい」
814 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/01(金) 14:38:04.35 ID:AargV2fOO
アスカwww
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/01(金) 15:03:23.95 ID:vFaSH14So
盛り上がってまいった
816 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/01(金) 22:49:53.35 ID:/5KUEloro
パイロットが子供ってのは業界では知れ渡ってるよな確か。
自殺でもしたいのかシロウさん
817 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/02(土) 17:10:03.37 ID:RT4oISfi0
シンジ「(目的は、あくまで僕か。母さんへの影響力。エヴァの私的利用について猜疑心を持ってる。でも、それだと好都合だ)」チラ

アスカ「んふーっ」モゾモゾ

シンジ「(アスカには悪いけど……変に喋るよりはこのままの方がいい。僕に注目を集められる)」

シロウ「……なにを考えている?」

シンジ「え?」

シロウ「セカンドチルドレンを見てなにやら思索していたな?」

シンジ「あぁ、なんでここにいるんだろうって」

シロウ「ふむ。それは私も気になるところではあるが……キミが呼んだのが本当だとしたら教室を出て追いかけてきたか。まぁ、どうでもいい。それよりも――」

シンジ「(よし)」

シロウ「先ほどの質問の答えをいただけるかな?」

シンジ「母さんが僕を特別扱いしてるんじゃないかって質問ですか」

シロウ「そうだな、似たようなものだ」

シンジ「答えるのを拒否したら?」

シロウ「霧島隊員を殺す」

アスカ「むぅ……っ⁉︎」ギョ

マナ「……っ⁉︎ どういうことですか⁉︎」

シロウ「なにを驚いてる。私がどういう人間かの片鱗はムサシ隊員達に行った所業で見えているだろう。同じだよ、キミも」

マナ「連れてくるだけだって言ったじゃないっ!」ギュウ

シンジ「(そうか、マナはこの人に命令されて仕方なく)」

シロウ「彼女の首にあるチョーカーが確認できるだろう? それは、小型爆弾だ。遠隔操作ももちろん可能なシロモノだよ」

シンジ「じゃあ、僕が答えなかったら」

シロウ「即座に起爆する。彼女の役目はキミを呼び出すことにあったのでね。今後使えなくもないが、他でことたりる」

シンジ「(用済みの駒は切り捨て。また、またなのか。どいつもこいつも……みんな、みんな、なんで人の命を軽く扱うんだよ)」

マナ「し、シンジくん……」チラッ

シンジ「心配しないで、僕はマナを見捨てたりはしない」

シロウ「……」

シンジ「僕からの質問は?」

シロウ「質問に質問で返すのは無礼だ。終わってから聞こうか」

シンジ「選べる環境にないのに無礼だなんて。よくそんなこと言えますね」

シロウ「選べなくしているのはキミ自身だ。私は“見捨てる”という選択肢を与えているよ。簡単だ。彼女が死ぬという現実を認めればいいのだから」

シンジ「僕がそうしないとタカをくくってるんじゃないんですか」

シロウ「いいや? 私はキミとはじめての面識になるのだよ。そこも含めてどういう人間か知り合っているところだ。……くっくっ、お互いにね」

シンジ「……ふぅ、わかりました。僕はマナの死を認められない。そういう人間です。だから、答えます」

シロウ「よく考えての答えかね? キミはネルフにとって、母親にとって不利な発言をするかもしれない。それとも、不利になりえないのが真実なのかな?」

シンジ「その通り、簡単ですよ。母さんにとって僕は特別扱いされてる」

シロウ「エヴァの無断使用においても?」

シンジ「場所が場所だから理解を示してくれたんです。ネルフを目の上のタンコブと捉える戦自相手だから」

シロウ「たった1日だ。根をあげるにははやすぎるんじゃないか?」

シンジ「(やっぱり、こんな理由じゃだめか)」

シロウ「どうした? 本当にそれだけか?」
818 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/02(土) 17:37:52.71 ID:RT4oISfi0
シンジ「それだけ、と言ったら信じてもらえますか?」

シロウ「……」

シンジ「僕にはまだ余裕がある。マナの命を人質にとられてるとはいえ、“僕自身が”切羽詰まっているんけじゃない。そんな状況で話したことを信じられるんですか」

シロウ「ふむ」

シンジ「あなたは自分のことを“用心深い”。そうおっしゃいましたね。それは、安全なモニター越しから眺めているのを考えるとたしかにそうなんだと思います」

シロウ「続けろ」

シンジ「確証を得たいと考えるはずだ。それか、僕を拷問にでもかけて追い詰めてから吐かせますか。“信じられる”と、そう思えるまで」

シロウ「なるほど。さすがは碇夫妻のご子息だ。親のDNAはしっかりと受け継いでるようじゃないか」

シンジ「あなたは、臆病なんですね」

シロウ「なに……?」

シンジ「そうじゃないですか。そんな影に隠れてこそこそと。そんなのは臆病者のすることです」

シロウ「無謀と勇敢は違う。ノコノコと敵地に赴き調べるのは専門外なんでね。私の本職は科学者だ」

シンジ「でも、そんな“守られている環境にいる”あなただからこそ、残虐になる。ためらいなくマナを殺すでしょう。気まぐれでも、もしかしたらあるのかもしれない」

シロウ「……」

シンジ「だからこそ、僕はこれだけは言う必要があります。マナを殺したら、僕があなたを殺す」

マナ「……!」ギュウ

アスカ「……」モゾモゾ

シロウ「く、くっくっ、はは、あーっはっはっはっ! こりゃいい! なんだこの茶番は! まさに漫画の主人公じゃないか!」

マナ「いい加減にしてよっ!!」バンッ

シロウ「うく、くっくっくっ」

マナ「どこがおかしいの⁉︎ どこに人を笑う資格があるって言うのっ⁉︎ 私たちに起こっていることは“リアル”なのよ! 同じ状況になった時に、そんな選択できないくせに!!」

シロウ「ふぅー……黙れ。殺すぞ」

マナ「やれるもんならやってみなさいよっ!!」

シンジ「えっ、ちょ、マナ」

マナ「シンジくん、私のためにこんなやつの言うこと聞く必要ない!」

シロウ「ムサシ隊員達のことを忘れてたのか?」

マナ「……っ!」ギリッ

シロウ「わかったら黙っていなさい。お前はまだ生かしておいてやる」

シンジ「(ムサシくん達も人質にとられてるのか)」

シロウ「さてさて、碇シンジくん。驚いたよ。なかなかに頭がキレるじゃないか、そして、勇敢だ。私と違ってね」

シンジ「……」

シロウ「キミが言ったことも的外れじゃない。私は、自身で確証をもてるまで相手を追い込む。当然だな、真実、つまり、本当のことではないと意味なんかない。嘘だったと気がついてまた尋問するようでは二度手間だ」

シンジ「……」

シロウ「そんなのは時間の無駄だよ。では、どうするか? こうする」

シンジ「……?」

シロウ「彼女のチョーカーを見たまえ」

シンジ「……っ! なんだ?」
819 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/12/02(土) 18:45:45.91 ID:RT4oISfi0
シロウ「キミがウソの証言をすることを織り込み済みでないとでも?」

マナ「えっ?」ピピッ カシュ

シロウ「そのチョーカーには機能が二つついていてね。一つは科学反応による爆破。もうひとつは――」

マナ「うっ、かはっ」

シロウ「物理的な締め付けだよ。原始的方法だが、精密機器に組みこむとなるとこれぐらいしかできなくてね」

シンジ「マナっ!!」ガバッ

マナ「うっ、ごほっ!」

シンジ「……くっ!」

シロウ「キミに特別な感情を抱いているのを知っていたか。踏まえて、もがき、苦しむサマを見ているがいい。なに、どうせ他人事だ」

シンジ「(ここで僕がウソをついても、きっと信じてもらえない。だから出し渋らなきゃ、待たなきゃ。僕が追い詰められてると思わせるまで)」ギリッ

マナ「し、んじくん……だ、いじょ、うぶ」ニコ

シロウ「(この状況で気遣って笑うか、いいぞ。相手を思いやっての行動が、圧迫感を強くする)」

アスカ「ぷはっ! ちょっとシンジっ!!」ガバッ

シンジ「アスカ、布とれたの? 小言なら後で」

アスカ「聞きなさいっつーの! この状況もう詰んでんのよ!」

シンジ「詰んでるって?」

アスカ「そのチョーカー! 電子制御なんでしょ!」

シンジ「そうみたいだけど……?」

アスカ「あんたバカァ? ここまで言われてまだわからないの⁉︎ アレがあんでしょーが!」

シンジ「……っ! そ、そうか! さすがアスカ!」

シロウ「なにを言ってる?」

マナ「うっ」ギリギリ

シンジ「マナ、じっとしてて」キーンッ

シロウ「な……だ。――……こ……は」ザ、ザザー

アスカ「はっ、こいつは電波を妨害できんのよ! って、聞こえてないだろうけど。ねぇ、シンジ、そのチョーカー外せないの?」

シンジ「ど、どうしたらいいかわからないんだ。方法が」

アスカ「あんたって機器に干渉できるんでしょ? だったら遠隔操作されてるそれだって」

シンジ「とにかく、やってみる!」キーンッ

マナ「うっ」ピピッ カシャン

シンジ「と、とれた。こんなあっさりうまくいくなんて」

アスカ「考えればすぐわかることじゃないの。あんたのもつその特性……なんか人間に使うかは疑問符がでてくるけど。それを使ってたり、とっくに打開できてたのにさぁ」

マナ「けほっ、けほっ」

アスカ「さて、人質に意味がなくなったらこんな場所に用はないわ。逃げる……ちっ、外から鍵閉められてる。シンジ」

シンジ「……?」

アスカ「ふんっ!」パコーン

シンジ「いたぁっ! な、なんで叩くんだよ!」

アスカ「キョトンとしてるあんたが悪いっの、よっ! とんでもない腕力使ってさっさとドア開けちゃって!」

シンジ「あ……! そ、そうか! っと!」バコンッ

マナ「う、うそ? け、蹴っただけでドアが。ふ、吹っ飛んだ」ポカーン

アスカ「あいかわらず、インチキね。……そいつ、どうすんの?」

シンジ「マナ、一緒に行こう」

マナ「で、でも! ムサシとケイタが!」

シンジ「僕がなんとかする! 僕を信じて!」
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/02(土) 21:01:17.41 ID:reOQIuUho
続けたまえ
821 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/02(土) 22:16:02.55 ID:RT4oISfi0
【第三新東京都市 公園】

アスカ「そんで、どうすんの? 安請け合いしちゃってさ」キィ キィ

シンジ「ブランコ立ち漕ぎしてたら危ないよ」

アスカ「こんぐらい平気よ。今ごろ、あの音声のやつが血なまこになってマナを探してるわよ」

マナ「……」キィ キィ

アスカ「ま、要するに使いパシリの挙句、捨て駒にされたっていうだけの話でしょっと」トンッ

シンジ「……」

アスカ「あたしは同情なんかしない。人に使われたくないんだったら、それ相応の意識を持ってなくちゃ。自業自得な面もある」

マナ「……なにがわかるっていうの……」

アスカ「個人的な事情なんか知らないわよ。ただ、使う者と使われる者。その二者択一において、使われる側にいる。わかるのはそこ」

マナ「アスカだって! パイロットなんて言ってるけどネルフの犬じゃない!」

アスカ「あたしは自分の才能と努力でこの場所を勝ち取ったのよ! だから、あんたみたいに捨て駒みたいな扱いをされない! 代えがきかないから!」

マナ「……っ」

アスカ「歩兵部隊? そんな有象無象の隊員が一人死んでもまた補填されるだけでしょ? いい? あんた達はね、“個”が優遇されない、“集団”としてはじめて機能する。死ぬのが前提なのよ」

シンジ「アスカ、もうそのへんで」

アスカ「こいつわかってないんじゃないの。それが現実だってこと」

マナ「わかってる! ……わかってるもん! でも、どうしようもなくて……這い上がれない人だっているんだよ……」

アスカ「ふん」

シンジ「マナ、大丈夫だから」スッ

マナ「うっ、うっ」ポロポロ

アスカ「ナイトのシンジ様? これからどうするおつもりぃ?」

シンジ「マナはネルフで保護してもらう」

アスカ「簡単に言うけど、総司令が許すと思うの? あんた、弱みを握られるってわかってないのぉ?」

シンジ「……」

アスカ「戦自がネルフに変わるだけよ。人質の意味が」

シンジ「ミサト、さんはどうかな?」

アスカ「ぶっ、み、ミサトぉっ? ちょっと、あんた、気でもくるった?」

シンジ「相談ぐらいなら。ミサトさんがだめなら、どっちみち、母さんに頼むしかない……いや、もう一人いた」

アスカ「あ、あたしはいやよっ!」

シンジ「……」スッ ピピピッ

アスカ「どこにかけてんだか」



822 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/03(日) 03:42:05.22 ID:7ssU+dLYo
リッチャンハウスが難民キャンプに
823 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/04(月) 14:43:28.42 ID:KFKkr6wu0
【第三新東京市 工業マンション地帯】

シンジ「よかった。まだ、学校に行ってなかったんだね」

レイ「午前中は検査があったから。一度、帰宅したところ」シュルシュル パサッ

シンジ「実は、お願いがあるんだ」

マナ「……」

レイ「聞いてる」

シンジ「……よかったら、なんだけど。しばらくマナを預かってくれないかな」

レイ「なぜ?」

シンジ「最悪、母さんに預けるとまた道具として扱われそうで。マヤさんか、消去法でリツコさんに頼もうかと考えたけど、それもできれば避けたい」

レイ「……」ガララ

マナ「あ、あの。こんにちは。学校では、あまり話す機会なかったけど――」

レイ「そこ、どいて」

マナ「え?」

レイ「靴下」

マナ「あっ! ご、ごめんなさい。ベッドに置いてあったのね」

シンジ「だめ、かな?」

レイ「いつまで?」

シンジ「僕はこれから厚木基地に向かう。マナが姿を絡ませた以上、真っ先に疑われるのは僕、ひいてはネルフになってしまう。戦自、ネルフの双方からマナを探すような事態は避けたい」

レイ「隠しとおせる?」

シンジ「綾波が、申告しなければ。幸い、この部屋には誰も来ない。マナも悪いんだけど、外出はできないよ」

マナ「私は、それぐらい平気」

レイ「そう。碇くん」

シンジ「ん?」

レイ「基地に行ってなにするの?」

シンジ「……ムサシくんと浅利くんをなんとかしなきゃいけないんだ。拘束されてるんだよね?」

マナ「たぶん、会ってないけど。ねぇ、やっぱり私も一緒に行こうか? 基地施設にも詳しいし」

シンジ「大丈夫だよ。僕ひとりなら、なんとかなると思う」
824 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/12/04(月) 15:08:22.20 ID:KFKkr6wu0
アスカ「はぁ……なるわけないでしょ」

シンジ「アスカ? 外で待ってるって言ってたのにって、玄関先でなにしてるの?」

アスカ「ドアを開けてたから声が聞こえただけ。あたしはこの部屋には上がらない」

レイ「あなたもいたのね」

アスカ「いちゃ悪い⁉︎ 誰が好きこのんであんたの部屋になんかくるもんですか! あたしはシンジに用があんのよ!」

シンジ「ちょ、ちょっと、揉めるのはよそうよ」

アスカ「あのさぁ、マナの友達? か知らないせど連れだしてどーするつもり?」

シンジ「どうって……」

アスカ「脱走兵扱いになんじゃないのってこと。ずっとレッテルはついてまわるし、戦自から追っかけられる」

シンジ「……」

マナ「……」ギュウ

シンジ「でも、助けなくちゃ」

アスカ「責任、とる気でいんでしょーね? ガキのあんたにできんの? 中途半端に手を差し伸べるのは、なにより残酷ってもんよ」ジトー

シンジ「やるよ……最後まで諦めない」

アスカ「……」

シンジ「まずは安全な場所まで、身柄を確保する。そこから交渉のテーブルにつくにはどうするか、打開策を考える」

アスカ「行き当たりばったりね。もうちょいマシなプラン用意すべきよ」

シンジ「結果良ければ全て良し、だろ? アスカ」

アスカ「……ふん、言うようになったじゃない。以前にあたしが言ったの覚えてる?」

シンジ「覚えてるよ、全部……綾波?」

レイ「……」スッ

アスカ「……? なによ?」

レイ「あなた、やっぱり不快だわ」

アスカ「……! 人形のくせしちゃって、あたしのなにが気に入らないっていうのよ!」キッ

レイ「私は人形じゃない。私はここにいる」

アスカ「ははーん、さては……ヤキモチ? 加持さんから言われたっていうのも嘘なんでしょ?」

シンジ「加持さんって……?」
825 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/12/04(月) 15:19:35.88 ID:KFKkr6wu0
アスカ「ファースト、シンジのこと好きなの?」

マナ「えっ……?」

レイ「好き? よく、わからない」

アスカ「そんなんじゃ生きてるって実感できてるかどうかすら疑わしいわねぇ」

レイ「……碇くんは絆だから」

アスカ「シンジが? なんの?」

レイ「ヒトとの絆。偽りの身体、偽りの魂。無に還りたかった私に生を与えてくれ、理想のセカイを実現するヒト」

アスカ「はぁ?」

レイ「あなたにはわからないわ。可能性に秘めた道が」

アスカ「わかりたくもないわ。なんで無理してわかり合わなくちゃいけないのよ」

レイ「……脆いだけのくせに」

アスカ「なんか言った?」

レイ「碇くんは知らないのね。あなたの過去」

アスカ「それ以上、喋ったら――」

レイ「母親が自殺した現場を目撃したこと」

シンジ「え……?」

アスカ「……っ!」ダダダッ ブンッ バチンッ

レイ「……」

マナ「あ、綾波さん。アスカ……」

アスカ「あんた……! 人には土足で踏み込まれたくない部分があるって、なんでわからないのよっ!!」

レイ「どうでもいいもの」

アスカ「わかってるってことね! あっそっ!」ブンッ

シンジ「待って!」パシッ

アスカ「シンジ、ちっ、離して、離せってばぁ! もう百発ぐらいビンタしないあたしの気がおさまんないでしょ!」ジタバタ

シンジ「綾波……。今のは、綾波が悪い」

レイ「……」

シンジ「アスカ、僕も聞かなかったことにする。忘れるって約束するよ。だから……」

アスカ「だから? だからなに? かわりに気が晴れるまでサンドバッグになんの? お優しいナイト様ぁ〜!」

シンジ「それは……」

アスカ「どいて……! 引っ込んでなさいよ! しゃしゃりでてくんな!」
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 17:04:08.11 ID:5vnc7rcMO
アスカも綾波にたいして土足処かボロクソにいってる自分に対してはなにも思わないのか
827 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 17:17:55.46 ID:sZ6t3yxDo
まさか相手がクローンだとは夢にも思わないだろうしなぁ…
アスカもそのこと知ってたら流石に人形呼ばわりはしないと思うし
828 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 19:52:14.37 ID:+FTyUnFBO
そりゃ拗らせてハッと気付くのがアスカだしなぁ……
829 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/12/04(月) 21:35:19.32 ID:KFKkr6wu0
シンジ「やめようよ。いがみ合う必要なんかどこにもないじゃないか」

アスカ「あたしには現在進行形でできてんのよ! こいつとは、“水と脂”! 見てわかんない⁉︎」ビシッ

レイ「……」

シンジ「綾波、悪いと思ったら、ちゃんと謝らないと」

レイ「必要ない。事実を言っただけですもの」

アスカ「事実? あたしが脆いっていうのが⁉︎」

レイ「母親の死も、たくさんある事実。その中のひとつ」

アスカ「ママを引き合いにださないで! あたしのどこをどー見たらそう思えるのってぇのっ⁉︎ 勝手なイメージの産物よ!」

レイ「いいえ。それはあなたのセカイ。あなたが殻にこもってる証拠」

アスカ「ばっかばかしい! わけわかんない!」

レイ「なぜ、怒るの?」

アスカ「……っ!」

レイ「なぜ、イラつくの? なぜ?」

アスカ「あんたが言われなきゃわからないからよ!!」

レイ「あなたが怒っているのは、あなた自身の心――」

シンジ「綾波っ!!」

レイ「……」

シンジ「もう、やめようよ……。僕たちは、誰でも色んな過去を抱えて生きてる。それぞれ嫌な思い出があって当たり前なんじゃないの」

レイ「……そうね」

シンジ「それに、今は、人の命がかかってるのかもしれない」

アスカ「さっさと行っちゃえば? この話に無関係なんだしさ」

シンジ「心配、なんだ。アスカも、綾波のことも」

マナ「……あ、あの! よくわからないけど、ご飯、食べない?」

アスカ「よくわかんないなら黙ってりゃいいのに。この雰囲気でご飯? 場を和ませるなんて無理だっちゅーの。はぁ……帰る」

シンジ「えっ、あの、学校は? 午後から行かないの?」

アスカ「あんた、あたしの親ぁ? いちいちうるさい! ……そういう気分じゃないってだけ」

シンジ「……」

アスカ「行くならとっとと行って今日中に帰ってこないと、マナの保護とネルフ、色々面倒なことになるわよ」

シンジ「わかってる。行って、速攻でカタをつけるよ」

レイ「力の乱用はバランスを崩すわ」

シンジ「バランス?」

レイ「急激に侵食される。そうなったら、碇くんの自分が保てなくなり、消える」

シンジ「それって、衝動とは別の話?」

レイ「衝動が表面化する内はまだ抑えようとしてる証拠」

シンジ「(そ、それは、初耳だよ……)」ゴクリ

マナ「消える……? それってさっきのドアを蹴破った時の力? シンジくんって一体……」

アスカ「なんでファーストがそんなの知ってんのよ」ボソッ
830 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/12/04(月) 22:20:36.48 ID:KFKkr6wu0
マナ「綾波さん、それって碇くんが、命を削ってるってこと?」

レイ「違う。バランスが崩れる」

マナ「……わかるように説明してほしいんだけど」

アスカ「ようするに、体に埋め込まれたっていう使徒が乗っ取るってことでしょ。シンジを」

マナ「し、使徒っ⁉︎ シンジくんの身体に使徒がいるのっ⁉︎」

アスカ「……言ってなかったんだ。助けに行くぐらいだから知ってると思ったけど」

シンジ「……はぁ」

アスカ「悪かったわよ」

マナ「そんなの可能なの⁉︎ え? ……ってことは、使徒の力が使える……そっか、それで」

レイ「これまでも、なにか思い当たる節はない?」

シンジ「いや、特には」

アスカ「(カヲルって言ったっけ……フォースと対峙した体育館裏の時も、そういう状態だったと考えれば辻褄が合うかも)」

レイ「衝動はかならず発散させなければいけない。我慢は身体に毒、いつでも言ってくれていい。私なら、碇くんの要求に応えられる」

アスカ「ちょっ! あんた! 衝動がなにか知ってて言ってんのっ⁉︎」

レイ「あなたも聞いてるのね。知ってるわ」

マナ「なにか、あるの? 協力できるなら、私も」

アスカ「マナは黙ってて!」

マナ「私のために碇くんが消えちゃうかもしれないんでしょう⁉︎ 黙ってなんかいられないよ!」

アスカ「うっ。だ、だって、その方法がぁ」

マナ「ねぇ、碇くん! 私にも協力させて! なにかできるなら、ぜひやりたい!」

シンジ「いや、あの……」

マナ「綾波さん! 抑える方法ってなに⁉︎ 教えて! お願い!」

レイ「……性欲解消」

アスカ「だ、だから言ったじゃないの!」

マナ「へ? へ? だ、だって、綾波さんも協力するって言ってるから」ボッ

アスカ「こいつのはね、衝動がくるとところかまわず女に襲いかかるような代物なのよ! あたしだって襲われかけたんだから!」

シンジ「……」シュン

マナ「ほ、ほんとなの? シンジくん」

シンジ「うそじゃ、ないよ」

マナ「そ、そんな……これまでどうやってたの? 綾波さんに?」

シンジ「いや! 綾波にはお願いしたことは、一度も。アスカに襲いかかった時は、その、返り討ちにされて」

アスカ「当然よ! 正当防衛だわ!」

シンジ「それ以降は、表立った衝動は、まだ」

マナ「た、大変だよね……。男の子、だもんね」

シンジ「ち、ちちちっ違うよ! あくまで、僕のは使徒の衝動で!」

アスカ「怪しい」

シンジ「な、なに言い出すんだよ! 事情知ってるだろ!」

アスカ「ほんのちょびっとでもそういう気がないんだったら不能じゃない。男として」

シンジ「だから! そういう話じゃ!」

レイ「今から、する?」

シンジ「するわけないだろ! もう、僕行くよ! なんなんだよ、喧嘩してると思ったら、まったく!」ドテドテ

マナ「あ、あはは」
831 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/12/04(月) 23:15:30.25 ID:KFKkr6wu0
【ネルフ本部 擬似テスト室】

マコト「フォースチルドレン。到着して間もないというのに、すぐにシンクロテストとは。こりゃ大物ですね」

ミサト「シンジくんだってやってのけたわ。しかも、初陣で。彼の個人情報は全て非公開だって?」

マコト「確認してみたところ、生年月日だけは公開されてました。セカンドインパクトと同一日です」

ミサト「偶然にしちゃできすぎてる気がしないでもないわね」

マコト「誕生日は、深読みしすぎじゃないですか? ただ、まぁ、マルドゥックの報告書も、フォースの件は非公開となっています。その点に関しては、うさんくさい臭いプンプンしてますけど」

ミサト「今日のところは勘ぐるのをやめて、素直に彼の実力、見せてもらいましょ。赤木博士、準備は?」

リツコ「いつでもいけるわよ」

マヤ「こちら制御室。聞こえますか?」

カヲル『聞こえてるよ』

マヤ「通電を確認。システム、オールグリーン。シンクロテスト、開始します」

シゲル「全ての計測システムは、正常に作動。問題ありません」

マヤ「MAGIによるデータ誤差、認められません」

ミサト「(実態のない組織、マルドゥック。そこから送り込まれたという少年。こりゃゼーレが絡んでると見て間違いないわね)」

リツコ「深度は?」

マヤ「1.05。侵食、認められません。バイタルも正常値」

リツコ「これは、すさまじいわね」

マコト「こんなことって、ありえるんですか?」

ミサト「なに? なんなの?」

リツコ「通常、シンクロはエヴァ本体にどこまで近づけるかで計測されます。本来は別々の存在である、エヴァとヒト。それぞれがひとつになることで高い数値を叩き出す」

ミサト「それは説明されなくてもわかるわよ」

リツコ「フォースの彼、その気になればどこまでも潜れるみたいよ」

ミサト「なんですって……?」

マヤ「し、しかし、あまりやりすぎると取り込まれる恐れも」

リツコ「(コアがあればの話だけどね)」

ミサト「原因は? 彼が特別ってこと?」

リツコ「あえてあるとすれば、エヴァとの間に壁がない」

ミサト「壁……?」

リツコ「例えば、ミサトがいきなり私とひとつになったとして違和感、もしくは抵抗感がない? ありえないわ。私たちは個人として確立しているし、成立している。異物が混入すればバランスに支障をきたす」

ミサト「……」

リツコ「“完全なる調和”。方法があるなら、こっちが聞きたいぐらいよ」

マヤ「こんなの、生物的に……。システム上、ありえないです」

リツコ「目の前にあるのが現実というものなのでしょうね。私達計算で動く科学者にとって、最大の敵といえなくもない」

ミサト「……異常性についてはよくわかったわ。事実をまず受け止めてから、原因を探ってみて」
832 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 02:47:41.99 ID:Z6nLDr1so
喧嘩中のギャグが実にいい味だしてる
833 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/05(火) 08:58:55.58 ID:NbRSBwJhO
そろそろマヤとシンジの営みの時間やないんか
834 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/05(火) 19:20:32.93 ID:+lKQ54ac0
【電車内】

シンジ「なんなんだよ。ああいう時ばっかり息があっちゃってさ」

アナウンス「次は、さがみ野駅。さがみ野駅です。厚木基地ゲートにご用のある方は、こちらです」

シンジ「ついたのか。やっぱり、少し時間かかっちゃったな。はやく済ませないと……あれ?」

シンジ(少年)「……」

シンジ「なんだ……? 乗客が誰も……僕?」

シンジ(少年)「こんにちは」

シンジ「君は……?」

シンジ(少年)「僕だよ。キミも僕。僕はキミの中で生まれた」

シンジ「夢? 夢を見てるのか?」

シンジ(少年)「違う。話をしてみたかったんだ」

シンジ「夢じゃない……なんの? まさか、君は、アダム?」

シンジ(少年)「ヒトは心を失いつつある。機械文明が繁栄を迎える一方で、合理性、無駄なことを切り捨てるのが美徳になってきている。群れを放棄しだした。その枠からは逃れられないのに」

シンジ「……」

シンジ(少年)「個性の尊重。多様性の認可。聞こえはいいかもしれない。でも、失うものは大きい」

シンジ「キミは……」

シンジ(少年)「心と魂をひとつにした先に、キミは何を望むの?」

シンジ「……僕は、そんな大それたこと考えられない。ただ、自然の流れがあるのなら、そうなっていけばいいと思う」

シンジ(少年)「結果、ヒトが滅んでしまっても?」

シンジ「過去は変えられないのと同じように、今も、選べる中から迷いながらでも、最善を選択して生きている。みんなそうじゃないか。それで、滅ぶのなら……」

シンジ(少年)「なぜ、エヴァに乗るの?」

シンジ「……」

シンジ(少年)「身をまかせるだけなら、乗らなければいいのに。結果は変わらない」

シンジ「抗ってみたいんだ。リセットじゃなくて、このまま」

シンジ(少年)「例えこの困難を乗り越えても、数百年、数千年という歴史を人類は紡げない。破滅へと進む」

シンジ「どうしてそう決めつけるんだよ! やってみなくちゃわからないじゃないかっ! 未来は、自分で作るものだろう⁉︎」

シンジ(少年)「キミは言ったよ。過去があり今があり、未来がある。過去を変えられないように、未来も不変的な部分がある」

シンジ「……っ!」

シンジ(少年)「自己犠牲。キミが頑張れば“今”はなんとかなるかもしれない。でも数十年後は、環境が変われば、不確定になる。過去が忍び寄ってくる」

シンジ「……」

シンジ(少年)「ヒトは誰しも心の闇をおそれ、孤独が不安になり、ぬくもりを求め彷徨う」

シンジ「……んだよ」

シンジ(少年)「他人に干渉されてエヴァに乗り出したくせに。コンプレックスに苛まれているくせに」

シンジ「なんなんだよ! なにしに出てきたんだよ!」

シンジ(少年)「お父さんが、恋しい? もっと褒められたかった? 捨てられた嫌な思い出を忘れられるまで」

シンジ「聞きたくない! やめてよっ!!」

シンジ(少年)「なにが怖いの?」

シンジ「自分が、こわ……なんだ、口が勝手に……!」

シンジ(少年)「何が怖いの?」

シンジ「うぐっ! 嫌われる、のが、こわい」

シンジ(少年)「なにガ、こわいの?」

シンジ「父さん……父さんに、捨てられるのが、嫌だ」
835 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/12/05(火) 19:41:31.54 ID:+lKQ54ac0
シンジ(少年)「なぜ、エヴァに乗ったの?」

シンジ「……だって、ミサトさんが、父さんが乗れって言ったんだ」

ミサト『シンジくん、乗りなさい』

ゲンドウ『乗れ。でなければ帰れ!』

シンジ「せっかく忘れかけてたのに……! どうして思い出させるんだよ!」

シンジ(少年)「なぜ、守ろうとするの? 価値はあるの?」

マナ『シンジくん!』

シンジ「価値は……ある! 僕を頼って、必要としてくれるのなら」

シンジ(少年)「彼女は幻想に恋をしている」

シンジ「僕は変わろうとしたんだ! 変わろうと頑張ってるんだよ!」

シンジ(少年)「過去のキミを知れば幻滅するよ」

シンジ『嫌だ! 乗りたくない! ……なんで僕が、こわいんだ……本当は乗りたくない』

シンジ「これは、また、僕?」

シンジ(少年)「キミの過去。キミの一部。自分を受け入れられ、認められない者に変化は起こりえない。うわべだけ」

シンジ「……」

シンジ(少年)「君のそのコンプレックス。劣っている、逃げ出した過去への自責の念、自信のなさ。それらもすべて認められる? 自分の姿なのだと」

シンジ「それは……」

アスカ『ちっとも変わってない! うまくいってるからって調子のってるだけでしょ!』

シンジ「アスカ、なんで、そんなこというんだよ」

アスカ『あんたがガキだからよ!』

シンジ「自分だって棚に上げてばかりじゃないかっ! アスカはいつもそうだ!」

アスカ『ほら! また他人のせい! あたしがそうだとしても指摘に間違いはあんの⁉︎」

シンジ「……」

シンジ(少年)「言い訳。自分への甘え。誰しも持ってる。言いたくなる」

シンジ「どうしたらいいかわからないんだ! 僕だって一生懸命やってるんだ! 認めてよ!!」

シンジ(少年)「……」

シンジ「なんで急に黙るんだよ……」
836 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2017/12/05(火) 20:04:15.21 ID:+lKQ54ac0
シンジ(少年)「始まりの福音。鐘がなるべき時は間も無く訪れる」

シンジ「どういう意味……?」

シンジ(少年)「急激な変化には反動が伴う。それもまた、自然の摂理」

シンジ「……」

シンジ(少年)「覚悟たる想いを胸に、契約の時は近い」

シンジ「意味が、わからないよ」

シンジ(少年)「死ぬのがこわくないの?」

シンジ「……」

シンジ(少年)「こわいでしょ?」

シンジ「こわい」

シンジ(少年)「死んだらそこで終わりだから。みんなの心の中で単なる思い出になってしまう」

シンジ「嫌だ、そんなのは」

シンジ(少年)「キミは死ぬ。消えてなくなるんだ」

シンジ「嫌だ!」

シンジ(少年)「誰かの為に。自己犠牲の行き着く先はそこだと理解しなくちゃ」

シンジ「……」

シンジ(少年)「刹那的な勢いに流されているキミの終わり」

シンジ「いやだ、いやだ、僕を思い出にしないで。僕を、捨てないで……」

シンジ(少年)「うつむいてないで顔をあげて。僕がついてる」
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/06(水) 09:51:14.53 ID:3QHn8Mt0o
C
838 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/06(水) 21:06:14.89 ID:bsNJyaW30
【厚木基地 研究施設】

シロウ「キレイに外されてるな。無理やりこじあけようとした痕跡もない」コト

黒服「瞬時に解析に成功したのでしょうか?」

シロウ「まさか。そんな芸当、できるはずがあるまい。このハイテク技術の結晶の前では、プロのクラッカーだとしても対応できない」

黒服「では、一体どうやって……」

シロウ「通信を遮断したのは、磁場が発生によるもの」

黒服「……」

シロウ「ふむ……。わかるのは、意図的に発生させたであろう電磁波があり、その間にこれを無効化したというだけ……EMPか?」

黒服「EMP……電磁パルス、ですか?」

シロウ「実用段階にある中で思いつくのはこれぐらいかな」

黒服「しかし、だとしても少年達は丸腰でした。隠し持てるとしたらポケットぐらいしか。小型化にまで成功していると?」

シロウ「……」

黒服「常識で考えれば小型化に成功するにはまず落としこみが必要不可欠です。技術がこなれてきた頃に、小型化に成功するのがセオリー」

シロウ「言わんとしていることはわかるよ。技術の進歩を一足か二足、飛び越えていると言いたいのだろう?」

黒服「……」

シロウ「だがね、現に我々の目の前でそのありえないことが起こったのだよ。証明するにあたり、もっとも確率の高いものを導き出しているにすぎない」

ムサシ「う、うぅ……」

シロウ「ん……? おや、目が覚めたか?」

ムサシ「な、にをした。ケイタは? マナは、どこだ」

シロウ「浅利隊員なら集中治療室にいるよ。霧島隊員は……まぁいい。キミが本命なのだから」

ムサシ「マナを、どこにやった⁉︎」ガシャン

シロウ「安心したまえ。今はひと時の逃亡生活だ。ネルフにいるはず」

ムサシ「ネルフっ⁉︎ そうか……逃げられたのか」

シロウ「希望は捨てろ。戦自からの要求があればネルフは霧島隊員をこちらに引き渡すだろう」

ムサシ「なっ」

シロウ「たかが一兵士扱いを保護して何の得になる? それよりも、損をする分が大きい」

ムサシ「……」

シロウ「彼女は必ずこちらに帰ってくる。その時に、迎える居場所があるかどうかはキミ次第というわけだ。わかるかね?」

ムサシ「俺は、なにをすればいい」

シロウ「そうだ。お前は友の為、それしか選択肢がない」スッ

黒服「はっ」カチャカチャ

ムサシ「……」

シロウ「トライデント級の開発にあたり、懸念がいくつかある。そのさしたる例が、搭乗者が耐えられるかどうか、だ」

黒服「……」シュシュ

シロウ「何度試算しても、生身の身体では耐えられないという解に行き着く。人間が耐えられる上限は鍛え、適正があったと仮定しても青天井ではないからな」

ムサシ「……」

シロウ「では、耐えられるマシンスペックに落とすか? そんなことをしてエヴァに勝てなくなってしまっては意味がない。となれば……人間のスペックをあげるのはどうか?」

ムサシ「なんだ? ステロイドでも注射しようってのか?」

シロウ「いやいや。そんな付け焼き刃では如何ともしがたいのが現実でね。もっと、気持ちいいものだよ」

黒服「おとなしくしてろよ。暴れると針が折れる」

ムサシ「なんだ……⁉︎ この注射器にはいってる液体はなんだ⁉︎」
839 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/07(木) 17:27:06.81 ID:LlOxtw3c0
シロウ「液体……そう見えなくもないか。ゲル状だからな」

ムサシ「くっ……!」ガタガタ

シロウ「いやぁハハ。そう怯えなくていい」スッ

黒服「……」ぴた

シロウ「これは、ナノマシンだよ。0.1mm〜の極小サイズの集合体。本来は医療に使われる」

ムサシ「俺の体を治すってことはなさそうだな」

シロウ「当たり前だ。非常に人体に負荷をかけるが、本来は持ち得ない能力を引き出す。“スーパーソルジャー”。映画などで耳にしたことがあるんじゃないか?」

ムサシ「……」

シロウ「改良と研究を繰り返した結果、DNAの書き換えに成功した」

ムサシ「DNA? 書き換えだと?」

シロウ「説明するのが面倒だ。寄生虫のようなものだと思いたまえ」

ムサシ「人間に試したことは?」

シロウ「ない。ラットならある」

ムサシ「試作品もいいところじゃねぇかっ!」

シロウ「そうだよ」

ムサシ「くそ、だからどうしたと言う顔しやがって! サイコ野郎が!」

シロウ「戦自に所属する隊員数をキミは把握しているか? むろん、陸、海、空を含めてだ」

ムサシ「知るか!」

シロウ「幹部、非戦闘員を含めるとおよそ30万人にのぼる」

ムサシ「……」

シロウ「多いか少ないかではない。問題は30万人もいるということだ。それだけ多ければ序列もできる。大尉などの階級で枝分かれするようにな」

ムサシ「わかってるよ、んなこと」

シロウ「お前は自分の立ち位置を理解してるか。少年兵の中で主席候補だとしても、せいぜい100人たらずの中の上位。全体からすれば枠自体が最下層。まさにお山の大将てところだ」

ムサシ「……」

シロウ「なにが言いたいか察していただけたかな? 私のように科学者など長所となる肩書きがない者は、地道な努力で這い上がっていくしかない。機会を与えているのだ」

ムサシ「……」

シロウ「戦場にでるか? 裸同然の装備で、弾除けにすらならないヘルメットを被り……運に自分の命をかける」

ムサシ「だから、お前のモルモットして納得しろってのか」

シロウ「いい機会だ。キミに選択権を与えよう。なににも守れられない一兵卒扱いに戻るか、それとも、パイロットとして特別待遇を望むか。このナノマシンは対価と考えるんだな」

ムサシ「(ちくしょう、マナとケイタを守るつもりが……なんのために血反吐はいてまで……)」

シロウ「……どうするね?」
840 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/12(火) 21:45:46.17 ID:4WmIGSmTo
まだかい
841 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/12/19(火) 17:58:42.87 ID:80Pr2IQK0
はよせい!!
842 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/30(土) 01:42:50.87 ID:A4pz6nuu0
【ネルフ本部 執務室】

ユイ「タブリスの様子はいかが?」

リツコ「皆が顔色を変える程度です」

ユイ「ふふ、やはり加減を知らない」

リツコ「悪びれた様子もなく。当たり前のことを当たり前にやっているだけなのでしょう。日本人が箸を使い料理を食べるのと同じで」

ユイ「彼は我々の常識とはかけ離れたところにいる。それもまた然り」

リツコ「葛城一尉にはどう説明いたしましょう」

ユイ「コアとの親和性が高いとだけ伝えればいいわ」

リツコ「ならば、シンクロにおけるメカニズムの根拠が必要になるやもしれません」

ユイ「やむなしね。判断はまかせる」

リツコ「かしこまりました。では、こちらで処理します」

ユイ「タブリスへは私から注意しておく。聞きはしないだろうけど」

リツコ「彼……あの少年は、アダムがベースであれば自在にシンクロ率を操れる」

ユイ「もちろん。だって、彼もまた、アダムに限りなく近いのだから」

リツコ「オリジナルはご子息の中にあるはず。では、あの少年は一体……」

ユイ「レイと似たような感じと思ってもらってかまわない。彼にも与えられた役割が存在する」

リツコ「それは、“少年”? それとも、“アダム”?」

ユイ「やけに質問が多いじゃない。あなたも真相に辿りつきたくなったクチ?」

リツコ「……」

ユイ「彼は彼です。アダムではなく、“彼に”、役割が存在する」

リツコ「(で、あるならば……)」

ユイ「通常、エヴァ本体のコアにはチルドレンの肉親が埋め込まれています。それはアダムやリリスをベースに作られているせい」

リツコ「存じております。ヒトとエヴァに共依存性、すなわち、本来全く関係のないモノ同士を結ぶパイプライン」

ユイ「“絆”ね。それを頼りに深く潜り、数値を高める。では、零号機は?」

リツコ「レイの期待? 彼女の機体には……」

ユイ「器であるあの子に肉親は存在しない。コアはないの。それでもエヴァは動く。ここで今発言したことへの矛盾が生じる」

リツコ「……」

ユイ「“コアは必ずしも必要ではない”。あくまで、親和性を高めるもの」

リツコ「初号機の中には……まさか……」
843 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/30(土) 02:13:33.03 ID:A4pz6nuu0
ユイ「……まず、私がここにいる時点で初号機のコア内部は私じゃないわ」

リツコ「ダミーは既に実現していたのですか?」

ユイ「正確にはデッドコピーに等しい」

リツコ「……」

ユイ「私の計画は、夫が補完計画を発動し、初号機が依り代になることによって生命の源に還る。初号機に取り込まれた時点で完遂していたの」

リツコ「生命の源……」

ユイ「新約聖書に記された生命の樹ともいう。全ての誕生が母なる海からはじまったと同じく、私の一部が細胞より微細なモノとして大地に、草木に、酸素となって星に息づく。そっと隣合わせで」

リツコ「……」

ユイ「後は夫に任せれば、私に会いたいが為の執念で必ず補完計画を実現する。そう確信していた」

リツコ「恐ろしい人」

ユイ「落とし穴はいつだってあるものよ。私がコアに取り込まれてからしばらくして、初号機を介してリリスの思考が流れこんできた」

リツコ「リリスの? まさか」

ユイ「途方もない情報量と共に。私は母の助力を得て、人知れずこちらに帰ってきた。別の目的ができたから」

リツコ「(意思を持って生きてる? 地下のリリスが……?)」

ユイ「デッドコピーと言った意味がわかった? 初号機のコアにあるのはリリスの協力のもと実現した魂のコピーなのよ。私のね」

リツコ「そんな、ありえない」

ユイ「でも、それも限界。初号機の力を真に解放するにはやはりコアは必要」

リツコ「……?」

ユイ「なぜ、私がここまで話してあげたのかわからない? あなたに早急にコアの書き換えをしてほしいから。私から――」

リツコ「……っ⁉︎ ま、まさかっ⁉︎」

ユイ「――そう。碇ゲンドウ。あの人を初号機のコアへと組み込むの」
844 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/30(土) 02:20:51.40 ID:rcIw01i1o
微妙に加齢臭しそう
845 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/30(土) 02:43:49.79 ID:jTh8Skqko
妲己となるはずが、リリスに乗っ取られた可能性が微レ存?
846 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/30(土) 02:51:52.47 ID:A4pz6nuu0
加持「そいつはまた、驚天動地たるや、ですな」

リツコ「加持くん?」

ユイ「……遅かったわね」

加持「色々と手間どりましてね。時田シロウ、やつの調査はちぃとばかし骨が折れそうっすよ」

ユイ「使えない駒に用はないのだけど?」

加持「できないと言っちゃいません。ただ、しばらく時間をいただけたら助かります」

ユイ「具体的にどれくらい?」

加持「三日もあれば。目的はネルフへの復讐。それ自体ははっきりしてます。時間を頂きたいのは、トライデント級と……」パサ

ユイ「……」ペラ

加持「ここにきて政府と戦自が連携して支援に動きだしているのはよろしくないかと。ネルフがいくら圧力の及ばない治外法権とはいえ、日本に拠点を構える以上は――」

ユイ「ネルフにおける実行雑務は戦自が担当しているケースが多い。その点ね」

加持「ええ。例えば、戦自が担当している案件のひとつ、物資の補給ラインをストップさせれば……ここは陸の孤島と同じになります」

ユイ「国連(ゼーレ)が許さないわ。逆に日本政府に圧力をかける」

加持「そこですよ、問題は。政府の高官連中もバカじゃない。その上、臆病ときてます。保身に長けた人種の集まりですからな」

ユイ「……」

加持「国連に怯えている連中が、重い腰を上げた。それほど美味しいと感じる提案だったんでしょう。欲に目が眩んだ人間は、恐怖を忘れます」

ユイ「……ここを直接掌握するつもりね」

加持「どこまでの人間が絡んでいるのやら。おそらく……」

ユイ「時間を与える。あなたには期待しているわ」

加持「なにかわかり次第ご報告します。リッちゃん」

リツコ「……え? な、なに?」

加持「ぼーっとしてるなんてらしくないじゃないか」

ユイ「……話は以上です。赤木博士も。頼んだわよ」
847 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/30(土) 10:32:07.93 ID:WsK5MBM8o
C
848 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/30(土) 13:04:11.83 ID:A4pz6nuu0
【ネルフ本部 ラボ】

加持「本当にらしくないな。ずっと黙りこくるなんて」

リツコ「……私はミサトみたいにベラベラ喋ったりしないわ」

加持「その点は同意するが。会話のキャッチボールが困難になるほど無口だとも思ってなかったよ」

リツコ「あの人、なにをやろうとしてるの……」

加持「……」

リツコ「リリスからの協力? 異常だわ。なにもかもが常軌を逸してる」

加持「何を話したんだろうな」

リツコ「会話が成立するかどうかでさえわからない。わからないのよ、神と対話できたなんて……」

加持「だが、そう証明できるだけの状況証拠は揃っている。初号機にとりこまれ、そして生還は見落とせない」

リツコ「ひょっとしたら……あの人は……」

加持「なにか思いついたことでも?」

リツコ「いいえ、まさか、そんな」ブツブツ

加持「おい、リッちゃん」

リツコ「……加持くんは、どう思う?」

加持「現時点で言えることは……彼女が真実に最も近く、そして動かしている。打ち明けると俺にゼーレから打診がきた」

リツコ「ゼーレから?」

加持「トリプルスパイにならないかとね」

リツコ「つまり、彼女をよく思っていない派閥が存在する?」

加持「キール議長以外は」

リツコ「どうするつもり」

加持「悩みどころだな。勝ち馬に乗るのが妥当な判断だと理解しちゃいるが、オッズの予想をしずらいのが現状さ」

リツコ「身の振り方を間違えば、死ぬわよ」

加持「そうだな」カチ シュボ

リツコ「相変わらずね。まるで他人事みたい」

加持「無関係なやつなんていやしないよ。根っこでは繋がってる。だからこじれるんだろうな、人は」

リツコ「リスキーね」

加持「人生はいつだってギャンブルじゃないか」

リツコ「……」

加持「石橋を叩いて渡ってみたところで、そこが割れない可能性はゼロではない。だろ?」

リツコ「死ぬ気?」

加持「今からメシでもどうだい?」

リツコ「行くならミサトと行ってきたら?」

加持「リッちゃんだって昔馴染みじゃないか。思い残しはないようにしときたい」

リツコ「では、全てのカタがついたら付き合ってあげる。夢見が悪いのは嫌だから」

加持「……こいつは、一本とられちまったな」フゥー
849 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/30(土) 13:49:27.12 ID:A4pz6nuu0
【人類補完計画 特別召集会議】

ゼーレ03「なんだね、このふざけた報告書は」

ゼーレ04「碇ゲンドウを初号機のコアにインプットするだと⁉︎」

ユイ「はい」

ゼーレ04「なぜだ。パーソナルパターンをイジれば今のままでも計画に支障はあるまい」

ユイ「あくまでも予備。使徒襲来に向けての準備は必要です」

キール「既に死海文書には大幅な加筆が加えられている」

ユイ「今回の変更は微々たるものです。私だからこそわかりますが、覚醒する心配もありません」

キール「無論だ。初号機の覚醒及び解放は我々のスケジュールにはない」

ゼーレ06「裏切り者をコアにするのは反対だ」

ユイ「なぜでしょうか。感情論を抜きにして発言を」

ゼーレ03「覚醒の可能性が……」

ユイ「心配はないと断言致しました。限りなくゼロに近いものです。元々、親子の関係が気薄なのは皆様方もご承知のはず」

ゼーレ05「質問を戻す。なぜ、キミのダミーではいけないのかね」

ユイ「“肉入りとそうでないか”の違いです。エントリープラグはいうなれば魂の座。ですが、きちんとしたコアを用意すればまだ伸びる可能性が」

ゼーレ03「伸びすぎても困るのだよ」

ユイ「あくびがでてしまいますわ。そんなに恐ろしいですか? あの人が」

ゼーレ03「なんだと! 貴様ぁ……っ! 創設者の一族だからと調子にのりおって! お前が“碇”ではないのなら……!」

キール「やめよ。此度の変更、背信行為ではないと断言できるか」

ユイ「はい」

キール「信じよう」

ゼーレ03「しかし、それではあまりにも。力を与えすぎでは」

キール「だが、次はない。キミの一族に敬意を評したまで。我々は常に監視していると忘れるなよ」

ユイ「誓って。皆様方のご期待を裏切るようなマネは致しません。我が悲願達成でもあるとご理解していただきたい」

キール「キミが新たなシナリオを作ることには感心しない。保険としてターミナルドグマにある槍は、我々の管理下におく。これを条件にコアの書き換えを承認しよう」

ユイ「ご随意に」

ゼーレ03「……」

ゼーレ05「身分をわきまえ我々の手足となって計画を実行したまえ。そのまま総司令でいたいのならな」

ユイ「発言がすぎました。無礼をお詫び致します」ペコ

キール「近く、ロンギヌスの槍を回収させる」

ユイ「……かしこまりました」ニタァ
850 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/30(土) 21:08:55.48 ID:kJWdbLq4o
こわい
851 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/31(日) 20:30:37.34 ID:gBOc3jaB0
【厚木基地 研究所】

シロウ「投与してからどれくらい経った」

黒服「一時間ほど」

シロウ「なにか変化は?」

黒服「おい」ドン

ムサシ「う、うぅ」ダラン

黒服「目は虚ろ、意識はかろうじて保っているようですが、我々を認識できているかどうか」

シロウ「血液サンプルはどうなっている」

黒服「解析が終わったところです。こちらをご覧ください」ピッ

シロウ「……ふむ。この数値は……細胞内の組織がうまく混ざり合っていないな」

黒服「やはりまだ人体に使うとなると、その、早すぎたのでは。ナノマシンは再生を試みていますが、白血球に阻止されています」

シロウ「分裂と再生を繰り返すか。まるでいたちごっこ状態だな」

黒服「少年兵の体内でも同様の現象が起こっているはずです。疲労、意識昏倒はそのせいだと推測されます」

シロウ「友のためと決心したはいいが、最後の壁を超えられないとは。つくづく、稚魚は稚魚か。……ペンライトを」

黒服「はっ」カタ

シロウ「……」カチ

黒服「あの、なにを?」

シロウ「おい、ムサシくん。聞こえるかな? 聞こえているだろう?」カチ カチ

ムサシ「う、うぅっ……ぐっ」ピク

黒服「光に反応しているだけです」

シロウ「少し黙っていなさい。……ムサシ。いいか、よく聞け。お前が死ねば友も死ぬ」

ムサシ「……う」
852 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2017/12/31(日) 20:49:09.08 ID:gBOc3jaB0
シロウ「このまま終わってもいいのか? 何のためにお前は生きてきた。最後くらい世の中の役に立って死ね」

ムサシ「ぐっ、う、うぅ」

シロウ「スラム街で育ち、貧困な環境でろくな教育を受ける権利すら許されず、“普通”と“当たり前”を欲していた悔しさはないのか」

ムサシ「う、うるせぇ」

シロウ「なんと言った? 聞こえないな。お前みたいなゴロツキが街のゴミを漁っている頃、普通の子達は暖かい家庭で、ごく当たり前に食卓についていた」

ムサシ「だ、からっ、どうしたぁ」

シロウ「倉庫での生活、そんな暮らしから抜け出そうと戦自にはいったんだろう。友二人を巻き込んでまで」

ムサシ「……」

シロウ「世の中にお前を認めさせるんだ。社会に、“当たり前”を甘受している、クソったれな奴らに崇めてもらえ。これはその機会だ」

ムサシ「……るせぇ」

シロウ「吠えるな」ガシッ

ムサシ「うっ」

シロウ「もう一度、伝えよう。お前が死ねば、浅利隊員を焼き殺し、霧島隊員を拷問した後に殺す」

ムサシ「やめ、ろ」

シロウ「根性論などというスポ根はナンセンスだが、“細胞の働き”にかかっている。あらがえ、立ち向かえ、社会に! 友のために!」

ムサシ「う、うぅ……!」

シロウ「ナノマシンを従えてみせろ! 今を生きない者に未来はない!」ガンッ

黒服「……! は、博士! 心拍数が」

ムサシ「う、うぅ……うがあああああぁぁっ!!」ガクガク

シロウ「どうなっている」

黒服「興奮により心拍数があがり、心臓のポンプが血液を大量に送りこんでいます。ナノマシンが暴走を」

ムサシ「うああああっ!!」ガクガク

シロウ「脳への負担は?」

黒服「……計り知れません。こいつは、もう」

シロウ「そうか」スッ チャカ

黒服「な、なにを? 射殺なさるんですか?」

シロウ「使えないのならば用はない。ここで終わりということだ」カチリ

ムサシ「……」ダラン

シロウ「短い付き合いだったが、最後くらい世の中の役にたってから死ねばいいものを」パァンッ
853 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/01(月) 02:34:54.47 ID:DD2LXSDeo
JAの高潔な理念はどこいった…
854 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/01(月) 11:52:44.53 ID:n6AmVhba0
全部ネルフとか言う悪の組織が悪いんや
855 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/01/01(月) 13:50:30.65 ID:j3+R/CSk0
ムサシ「」

黒服「……脈、ありません。絶命いたしました」

シロウ「ふん」

黒服「優秀なサンプルであると共に、パイロット候補生でしたが」

シロウ「モルモットなど代わりがいくらでもきく。主目的はあくまでパイロットとして機能するか否か。こいつは使えなかった」

黒服「……」

シロウ「我々がやっているのは実験でありショーではない。映画のように乗り越えたりはしなかった、あったのは“あっけない終わり”。ただの現実だ。それだけのこと」

黒服「では、次の候補生を」

シロウ「いや、試してみたいことがある」

黒服「なんでしょう」

シロウ「ムサシ隊員は身体能力、タフネス。反骨心。その点についてはたしかに優秀だった。やりすぎないようにと手心を加えていたとはいえな」

黒服「……」

シロウ「今しがた判明したのは、“活きが良すぎても逆効果”。むしろ、もっと弱らせてから試した方がよかったのかとすら思える」

黒服「……理由は?」

シロウ「細胞の抵抗だよ。ラット(ねずみのこと)では得られない結果だが、人体に投与すると拒絶反応が強い。免疫力を薄くすればうまくいくのではないか?」

黒服「つまり、風邪を引きやすい状態というわけでしょうか」

シロウ「もっとだ。死にかけであれば望ましい」

黒服「ならば、癌末期患者を手配いたします」

シロウ「病原菌に蝕まれている者ではなく、有力な被験者がいるだろう」

黒服「……?」

シロウ「浅利ケイタ隊員を集中治療室から連れてこい」
856 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/01/01(月) 14:20:02.75 ID:j3+R/CSk0
【厚木病院 集中治療室】

ケイタ「……」シュコー シュコー

黒服「よし」ガタ ブチン

ケイタ「うっ」ピクッ

看護師「浅利くん、回診の時間……きゃあ⁉︎ あなた、なにしてるんですか⁉︎」

黒服「こいつは退院する。機器の補助は必要なくなった」ガタガタ ブチン

看護師「ふざけたこと言わないで! はやく呼吸器を元に戻してください!」

黒服「ふざけてなどいない」ガシッ

ケイタ「……」ダラン

看護師「せ、先生! 誰か!」

黒服「騒ぐな、本件は軍事機密に該当する。軍医のはしくれだろう、貴様も理解しろ」スッ

看護師「特殊任務辞令書……」

黒服「ここで起こったことの一切の他言を禁ずる。担当医にも改めて通達が降りる」

看護師「その子、ケアしないと死にますよ」キッ

黒服「俺もお前も、そしてこいつも与えられた任務がある」

看護師「わたしは命を護るのが任務であり、誇りを持っています。むざむざ死なせるなんて」

黒服「違う」

看護師「えっ」

黒服「俺たち末端の任務は時々によって変わる。やりたくないことでも請け負わねばならない。役職に求められるのは役割、任務とは……お上の都合だよ。こいつは連れて行く」

看護師「待ってーー」

黒服「邪魔するものがいれば粛清対象として良いとの許可も得ている」

看護師「しゅ、粛清?」

黒服「黙っていろ。いいな?」
857 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/01(月) 16:51:34.98 ID:F/qiECkko
ラットでオーケーだからって人間に近い犬や猿でクリアしてないものを
バンバン投与するって無駄に決まってる。頭おかしいわこいつ
858 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/01/01(月) 18:59:18.08 ID:Biri8mVR0
極めて自己中心的で自己陶酔しながら自分の欲望の追求しかしない大人ができた子供を食い物にする
比較的まともな大人は無力で何もできないし何もしない

エヴァンゲリオンって庵野の人間性を遺憾なく反映しているせいか
酷く胸くそ悪い話だし
このSSもらしさは出てるけどそれゆえにしんどい
859 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/01(月) 19:18:38.87 ID:8PkUIP+nO
明るい話題は育成計画の方で
860 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/01/01(月) 19:33:34.41 ID:Biri8mVR0
やべえ書いちまった
やっぱり自分超アンチだ
でも偽らざる本音だから隠し通せるわけもなかったね

うっかり書いちゃったついでに付け足しとくけど

ゴジラも暴れたい放題暴れて完全敗北しなくても許される都合のいいキャラだから
開幕やり逃げあとは知らねヤシマパターンで話を進めつつ
思う存分にゴジラに自己投影して外見通りキモくよがってただろあの人を人とも思わぬ屑オヤジは

かえすがえすもマジろくでもねえ
とっとと死んどけクソが

こういうことを書かれてムカついて許せないエヴァ好きは怒りのままにこの投稿をメールに貼り付けたりプリントアウトしたりして
屑オヤジ関係とか嫁のモヨコ関係とかに送りつけてくれても別にいいよ
861 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/01(月) 22:18:48.86 ID:Ep3D0Uyko
酔ってるみたいだから勘弁したって
862 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/01(月) 22:26:14.97 ID:F/qiECkko
まあ、言いたいことはわかるけどもアンチスレに書こう
ここSSのスレだしね
863 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/02(火) 10:37:38.38 ID:LVnesKUPO
マダ男もロクに試さずダミーを初号機に使ってたっけ
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/03(水) 02:33:14.49 ID:o3nVvpj1O
このSSの良いとこは原作キャラの設定を守りつつ未登場キャラに焦点を当ててるとこ
「もしユイが生きてたら」「もしマナがゲームじゃなく原作中に登場していたら」などをうまく取り入れてる
スパロボみたいな安易な熱血シンジとかスーパーシンジにいかないのもifルートっぽくていい
>>860みたいなアンチが書くものはすぐにシンジを強化しまくって終わるから底が浅い読み物になる
ユイをはじめ戦自組をここまで引っ張れるとは思わなんだ
シロウを悪役?にしてるのもアニメでめちゃくちゃ影がうすいかませ犬だったから丁度いいわ
865 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/01/03(水) 20:47:38.39 ID:avQrzt6a0
【ネルフ付属病院】

トウジ「センセ! 手術はうまくいったんやなかったんですか⁉︎」

医師「うまくいったよ」

トウジ「せやったらどないなって!……眼帯とってみぃ」

サクラ「うん」スッ

トウジ「見てみぃ! 片目だけ赤くなっとるやないですか! 充血なんてもんちゃうぞ!」

医師「施術自体に問題があったわけじゃないんだ」

トウジ「問題がないって、そんなわけ」

医師「アルビノ。メラニン色素が薄くなる先天性の疾患があるが、肌の色も髪の色も元のまま、しかも赤くなったのは片目だけ……。キミ、眼科のカルテを」ペラ

看護師「両目ともに差異はないそうです。極端な低下というわけでもありませんでした」

医師「色盲の検査は?」

看護師「それは、まだ……。しかし、血管に異常はなく」

医師「サクラちゃん、片目を手で隠して折り紙の鶴をを見てくれないか」コト

サクラ「はい」

医師「何色に見える?」

サクラ「青です」

医師「もっと、具体的に。濃い青? 薄い青?」

サクラ「真っ青に見えますけど」

医師「では、こっちの鶴は?」

サクラ「赤です」

医師「……色の判別もできている、か」

トウジ「サクラ、目が見えにくいとかないんか?」

サクラ「ぜんぜん。ねぇ、兄ちゃん、あんまり先生を責めんといて?」

トウジ「う……せ、せやけど、後遺症っちゅーんなら」

サクラ「私が怪我してたんは目と関係ない」

トウジ「そんなん、わからんやないか。もしかしたら、目も傷ついて」

サクラ「今までなにもなかったんよ?」

トウジ「そ、それは、そうやが」

医師「ふっ、サクラちゃんは頭がいい子だね。でも、お兄さんが心配しているのも可能性としてある」

サクラ「そうなんですか?」

医師「人体は複雑で、それまで問題のなかった部分が、突然ひょっこり顔をだすケースが往々にしてあるんだ。こういうことを言うのは医師としてどうかと思うが、我々とて限界があって、隠れていたら見過ごしてしまうことも」

サクラ「……」

医師「なにか要因があるはずだ。それを解明できるまで、私も眼科の先生と連携して全力を尽くそう」

看護師「鈴原くん。先生もこう言ってますから」

トウジ「……たのんます。まさか、一生このままなんて」

サクラ「もう、兄ちゃんは大袈裟やなぁ。見た目だけやったら別にええやないの」

トウジ「おまっ、それでええっちゅうんか」

サクラ「うちは気にして……いたっ」ピクッ

トウジ「……っ! やっぱり痛むんか! せ、先生!」

医師「目が痛むのかい?」

サクラ「あ……シンジさん?」

トウジ「シンジ……? なんでシンジが」

サクラ「兄ちゃん、どないしよ。シンジさんが、泣いてる」
866 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/01/03(水) 21:30:51.46 ID:avQrzt6a0
【ネルフ本部 三号機 格納庫】

放送「三号機は第3次冷却に入ります。第6ケイジ内は、フェーズ3(スリー)までの各システムを落としてください」

マヤ「先のフォースチルドレンのハーモニクス、およびシンクロテストは異常無し、数値目標をすべてクリア」

シゲル「了解。結果報告は、BALTHASARへ」

マヤ「了解」

マコト「エントリープラグのパーソナルデータは、オールレンジにてMELCHIORへコピー。データ、送ります」

オペレーター「MELCHIOR了解、回路接続。第3次冷却、スタートします」

マヤ「CBL、循環を開始」

シゲル「廃液は、第2浄水システムへ」

マコト「各蛋白壁の状態は、良好。各部、問題なし」

オペレーター「三号機の再起動実験まで、-1500分です」

リツコ「……」

マコト「なぁ、マヤちゃん」コソ

マヤ「え、なに?」

マコト「赤木博士、戻ってきてからずっと上の空って感じだけど。なにかあったのか?」

マヤ「さぁ」

シゲル「聞いてないのか? いつも先輩先輩ってべったりのくせに」

マヤ「やめてよ、そんな言い方」

マコト「めずらしいよな。ぼーっとしてるの」

マヤ「そうね……」

シゲル「あの日かな?」

マヤ「最低」

シゲル「なんだよ、男にはわからないからそう思うゆだろう。生理の悩みってのは」

マヤ「あの人は、そんなことで動じる人じゃない」

マコト「……あの人?」

マヤ「なんだっていいでしょ。私たちは自分の業務に集中していればいいのよ」

シゲル「へーへー。あいかわらずお堅いこって」

リツコ「……マヤ」

マヤ「……」ピク

マコト「おい、呼ばれてるぞ」

シゲル「……? なんで返事しないんだ?」

マヤ「……なんでしょうか?」

リツコ「あとで私の研究室にいらっしゃい。話がある」

マヤ「……はい」
867 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/04(木) 01:04:25.84 ID:1S9jEfq0o
ネルフはわりとジェンダーを差別ではなく個性と捉える節はあるが、それでもこのシゲルは粛正されそう

あとオペレーターのセリフって難しくない?考えるの
868 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2018/01/04(木) 12:41:56.13 ID:KQQxGVAh0
SF映画とか小説にありふれてるセリフ回しなんで難しいとかはないですよ
エヴァの雰囲気を演出する為、合間に導入してる感じで実際にアニメで使用されているやりとりも含まれてます
869 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/04(木) 13:16:31.63 ID:3Od4BWj3O
ストーリー考えるのは難しそう
870 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2018/01/04(木) 16:30:43.48 ID:KQQxGVAh0
難しいのはモチベ維持ですね
871 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/04(木) 20:04:10.19 ID:tvB/EAb+o
待っとる人が居るんやで
872 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2018/01/04(木) 20:34:32.47 ID:KQQxGVAh0
飽きたとかではなく、きちんと書ききることは約束します
873 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/01/04(木) 21:14:15.88 ID:KQQxGVAh0
【工業団地 マンション】

レイ「……」ギィー バタン

マナ「えっと、おかえりなさい。学校、どう? 鈴原くんたち元気にしてる?」

レイ「……」スタスタ

マナ「あ……」

レイ「……」シュルシュル

マナ「あの、お世話になるから床の拭き掃除しておいたんだ」

レイ「そう」パサ

マナ「好きな食べ物ある? よかったら、私」

レイ「なぜ、まだここにいるの?」

マナ「えっ、だ、だって」

レイ「碇くんにいつまで甘える気?」

マナ「……っ」

レイ「とっくにいなくなってたと思ってた」

マナ「そんな、私が勝手な行動をして、シンジくんの足手まといに」

レイ「あなたは碇くんを利用してるだけ」

マナ「ち、違うもん! そんなつもり……!」

レイ「なにも違わない。助けてもらって、縋るだけ。待つだけの選択しかしてない」

マナ「それが最善だと、思うから」

レイ「……」スタスタ

マナ「なによ……いきなりそんな」

レイ「……?」ピク

マナ「シンジくんの前では引き受けたくせに」

レイ「だめ。まだアダムの声に耳を傾けちゃ」

マナ「……どうしたの?」

レイ「どいて」ドン

マナ「きゃ」ドサ

レイ「……」ゴソゴソ

マナ「いったたぁ〜。ねぇ、どうしたの? 突然。なに探してるの?」

レイ「あなたには関係ない」

マナ「……そうやっていつも私ばっかり! 除け者にして、私だってシンジくんの力になりたい気持ちはあるんだから!」

レイ「……鍵、置いておくから」

マナ「待ってよ!」ガシッ

レイ「なに?」

マナ「わかるように説明して! シンジくんになにかあったの⁉︎ ムサシは⁉︎ ケイタも⁉︎」

レイ「……」グィ

マナ「行かせないよ! ちゃんと説明してくれるまで離すもんですか!」

レイ「碇くんが危険」

マナ「だからどうして!」

レイ「アダムの覚醒がはじまった。干渉を受けてる」

マナ「アダムってなに⁉︎」
874 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2018/01/04(木) 21:59:22.13 ID:KQQxGVAh0
レイ「どいてくれる?」グィ

マナ「お願い! 私だって力になりたいの!」ギュ

レイ「……」キッ

マナ「睨んだって……きゃあっ⁉︎ ……なに、今の。見えない、壁?」ペタン

レイ「……」クルッ

マナ「どうして⁉︎ どうして、私だけ! アスカだって知ってるんでしょう⁉︎」

レイ「知りたいのなら碇くんから聞いて」

マナ「私もついていく!」

レイ「……」

マナ「ムサシやケイタが心配なのよ。お願い、綾波さん」

レイ「何があっても碇くんを裏切らないと約束できる?」

マナ「それって、どういう意味……」

レイ「あなたは、敵?」

マナ「敵なんかじゃないよ! そんなわけない!」ブンブン

レイ「状況は変わるわ。仲間と碇くんだったらどっちをとるの?」

マナ「え……」

レイ「今、決めて」

マナ「仲間って……そんなの、選べないよ」

レイ「だったら、一緒にはいけない」

マナ「……っ。ねぇ、なんでそういうこと聞くの? 私には、わからない」

レイ「……」

マナ「向こうにつくまでに結論を出すんじゃだめ?」

レイ「先延ばしにしても意味はない」

マナ「……どっちも。だって、ムサシもケイタも、シンジくんだって大切な人だもん」

レイ「大切? 希望なのよ、あなたにとっての碇くんという存在は」

マナ「え……?」

レイ「現実を打開してくれる人。自分じゃできもしない、ということの」

マナ「……」

レイ「期待が最悪の形で裏切られた時、どうするの?」

マナ「最悪の、形?」

レイ「生は死のはじまり、死は現実の続き。残された者は悲しみを背負って生きなければならない」

マナ「やめてよ、さっきから不吉な感じがする。ムサシは? ケイタは? ねぇ、綾波さんはなにがわかるの……?」
875 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/06(土) 20:54:14.20 ID:zrLqAQt+O
全力支援
https://youtu.be/bQvTw2E_Z2c
876 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/01/07(日) 21:28:13.17 ID:gIyv0lw+0
【厚木基地 ゲート駅前】

放送「2番線に、第三新東京方面行き、特急リニアが参ります。危ないですから、黄色い線の内側までお下がりください」

駅員「電車は、4時20分発、厚木行きの最終列車です。工事のため、ダイヤ改正にご理解をいただき……ん?」

シンジ「……」

駅員「キミ、そろそろ最終列車が」

シンジ「はい」スッ

駅員「ちょ、おい、どこに行くんだ、ゲートはもう閉まって」

シンジ「いいんです」

駅員「いいって、帰れなくなるぞ? ……中学生か?」

シンジ「ほっといてくれませんか」

駅員「まいったな……。いいかい? 次の電車が今日の最終電車なんだ。これを乗り逃すと第三新東京都市行きはない」

シンジ「……」スタスタ

駅員「お、おい! だから待てって!」ガシ

シンジ「離してください。急いでいるので」

駅員「いや、だからだね……あぁ、ひょっとして、厚木基地に親御さんがいらっしゃるのか?」

シンジ「……」

駅員「そういうことか。すまない、早とちりして取り乱してしまった」

シンジ「いえ。それじゃ、僕はこれで」スタスタ

駅員「ゲートはしまってるからな! 電話して迎えに来てもらえよ! じゃなきゃ守衛に……ありゃ、無視して行っちまった。ったく、なんだよ、人が親切に」ブツブツ
877 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2018/01/07(日) 21:50:45.43 ID:gIyv0lw+0
シンジ「う、うぅ」ヨロヨロ

シンジ(少年)「大丈夫? 目的地はすぐそこだよ」

シンジ「気分が、悪いんだ。悪い夢を見ているみたいで」

シンジ(少年)「理性を保てないの? そうか、脆いんだね」

シンジ「さっきの駅員さんに隠すのが、精一杯だった。どうしたらいいの?」

シンジ(少年)「我慢は辛いものね。それだけでストレスになる、解放されたいと願う」

シンジ「さっき、僕の力になってくれるって言ったじゃないか。なんでもいいから教えてよ」

シンジ(少年)「クスクス。気分が悪いってどんな?」

シンジ「なんだか、モヤモヤする。なにが原因かわからなくて、でも、気分は晴れなくて。言葉ではうまく説明できない」

シンジ(少年)「あそこにカラーコーンが置いてあるよ。試しに蹴ってみたら?」

シンジ「なんで、そんな」

シンジ(少年)「抑えつけようとするから晴れないし、ストレスになるんだ。やっちゃいけないって倫理観が働いてしまうから。“衝動”に身をゆだねて」

シンジ「う……」

シンジ(少年)「ほら、解放は気持ちいいよ? 精を解放するのだって気持ち良かったでしょ?」

シンジ「なに、言って」

シンジ(少年)「ボクはキミで、キミはボク。マヤさんとの情事は気持ち良かった」

シンジ「……っ!」ゾワッ

シンジ(少年)「またしたいなぁ。なんにせよ、解き放つというのは自己の解放でもあるんだ。“したいようにする”。これほどの自由はないし、縛り付けられるいわれもない」

シンジ「だめだ、そんなの」

シンジ(少年)「どうしてヒトは我慢して生きようとするの? 社会に必要だから?」

シンジ「……」

シンジ(少年)「ルールは弱者のためにあるんだ。ボクとキミには必要ない」

シンジ「キミは、まだ産まれたばかりだからわからないんだね。人の気持ちが」

シンジ(少年)「気持ち?」

シンジ「もしかしたら、綾波もそうなのかもしれない。でも、わからないままじゃ」

シンジ(少年)「キミの目標は把握してる。だからボクが力を貸すよ」

シンジ「な、なんだ……っ? 身体が⁉︎」

シンジ(少年)「魂は溶けて混ざり合う」
878 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/08(月) 03:03:44.79 ID:ROkW8DWho
C
879 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/01/08(月) 11:40:43.94 ID:XRFGUtRT0
【ネルフ本部 ターミナルドグマ】

リリス「……」

ユイ「母さん。もうすぐ、もうすぐよ。私の息子が新しいセカイの創造主となる」

カヲル「自分を憎むなんて憐れな生き物はリリンぐらいだ」スッ

ユイ「……」キッ

カヲル「大げさだね。聖域に踏み入られ怒っているのかい? 形だけの容れ物に対して」

ユイ「元がアダムスだからよ」

カヲル「初号機にコアを用意した。あなたの計画通りに」

リリス「……」

ユイ「ヒトは誰しもA.T.フィールドを持ってる」

カヲル「自分の居場所を守るため、拒絶しながら生きているから。呼び方を変えただけ。A.T.フィールドとは“心の壁”。だからこそヒトの形を保てる」

ユイ「産声をあげた瞬間、すでに孤独と拒絶のはじまり。他人と同じはありえない。リリス、アダム、始祖と呼ばれるこのヒト達は数億年、いいえ、もっと長い間、悠久の時を孤独と隣合わせに生きてきた」

カヲル「……」

ユイ「自己の確立……寂しいものよね。希望を信じて終わらない小石を積み上げ続ける。サイの河原のように」

カヲル「そこに幸せを見い出すヒトもいる」

ユイ「“知らなければ”、ね。無知とは罪であり、幸福。知ればすべてが色褪せてしまうから。タブリス、頼みごとがあるの」

カヲル「なに?」

ユイ「シンジの為に死んでくれない?」

カヲル「改めてお願いしているの? 元々ボクの役割はそうだった。シンジくんを完全にアダムとひとつにするため。その先に、リリスとの禁じられた融合がある。委員会の思惑とは別に」

ユイ「全ての使徒と、18番目の使徒(人類)を真の姿に。老人達が求めているのは安らぎ。魂の平穏は与えられるわ……死をもって」

カヲル「シンジくんに“聖痕”を刻む……その時がきたということか……」ピク

ユイ「……?」

カヲル「これは……! 覚醒が、はじまっている⁉︎」

ユイ「そう」

カヲル「なぜ……! まだボクはここに……はっ、ま、まさか」

ユイ「気がつくのはもっとはやくなければ」スッ カチャ

カヲル「ーー……ボクを、19番目の使徒に堕としたのか」

ユイ「あなたはこの為に生まれてきた」パァン

カヲル「うっ」ヨロヨロ

ユイ「化学の力はいかが? 銃弾すら防げない脆弱な序列に成り下がった感想は?」

カヲル「ぐっ、うぅ」ドサ

ユイ「アダムの殻へと還りなさい」パァン パァン
880 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/01/08(月) 12:38:28.28 ID:XRFGUtRT0
【ネルフ本部 執務室】

ユイ「……」フキフキ

冬月「ここにいたのかね? 探したぞ」

ユイ「すみません、席をはずしておりました」

冬月「日本政府と戦自に関する追加情報だ。目論見は、こちらの心臓部ともいえるMAGIの摂収だな」パサ

ユイ「……無駄なことを」

冬月「加持リョウジに掴ませた抜け道はダミー。この時点で足元から崩壊している。容易に防衛戦を突破できはすまいよ」

ユイ「……」

冬月「とはいえ、松代にMAGIの二号機がある。そちらを占拠されたら厄介だ。ゼーレに報告を」

ユイ「我々で処理した後に」

冬月「こちらの戦力は非戦闘員が多いのだぞ。MAGIは前哨戦に過ぎん。奴らの狙いは本部施設及び残るエヴァ2体。戦自が本気になれば一個大隊の投入も……」

ユイ「シンジひとりで充分です」

冬月「初号機を使うのか?」

ユイ「覚醒したばかりのあの子にはちょうどいい憂さ晴らしになるでしょう」

冬月「覚醒しただと⁉︎ ……先程拭いていたのは、もしや、血か?」

ユイ「タブリスのものです」

冬月「殺したのだな? 俺はなにも聞いちゃいないぞ」

ユイ「今、言いましたので」

冬月「……」

ユイ「先手を打ったのです。どちらにせよ、このままだとアダムは覚醒していました」

冬月「取り込まれるという話は?」

ユイ「なくはありません。ですが、私は信じています」

冬月「信じる? 息子をかね?」

ユイ「子供のもつ可能性を」

冬月「確信がもてないままに渡るには危険すぎる橋だ。まだ、なにかあるのだろう」

ユイ「槍で封印されていたリリスも解放されます」

冬月「なに? こちらのやっていることがバレたのか?」

ユイ「まさか。そうであれば中国と米国から真っ先に潰されてますよ」

冬月「……ふぅ。では、別件か」

ユイ「とりいそいで隠す必要があるのは……もうおわかりですね?」

冬月「隠蔽工作をするか」

ユイ「葛城一尉に連絡を。こちらからシンジのサポートをします」
881 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/01/22(月) 01:19:43.09 ID:QTHP7/SWo
まだなん?
882 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/23(火) 03:02:53.98 ID:q5TXU/7B0
一気に読んだ。これは凄いわ。完結してほしい
883 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/23(火) 12:45:12.76 ID:zvCJfZt/O
これ一気読みはすごいな
数時間かかっただろう
884 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/01/24(水) 00:25:28.16 ID:x+rQUtIDo
もう来ないのか
885 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2018/01/26(金) 11:45:50.76 ID:Q9lti6yr0
ボチボチやってきます
886 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/01/26(金) 12:09:58.01 ID:Q9lti6yr0
【戦自 厚木基地】

シンジ?「……クッ」テクテク

戦自隊員A「なんだお前。今日の一般開放の時間は――」

シンジ?「クックックッ」スッ

戦自隊員A「あ……?」ゴキンッ

シンジ?「人は脆い。首を一回転させただけで、こんなにも簡単にコワレてシマウ」

戦自隊員A「」ドサッ

シンジ『や、やめてよっ! なんてことするんだよ!』

シンジ?「僕の内側から見ていればいい。君の願いをボクが叶えてあげる、クッ、クックックッ」

シンジ『僕の身体を返してっ!! くそっ! どうなってるんだよ、これっ!!』

戦自隊員B「お疲れー、交代の時間だぞー」ガチャ

シンジ?「……」スッ

戦自隊員B「お前、誰だ……? お、おい。そこで倒れてるのって」

シンジ?「邪魔だよ」シュ

戦自隊員B「な、なんだっ⁉︎ き、消えっ、あ、がっ⁉︎」

シンジ?「アハ、アハハハッ!」ググッ

戦自隊員B「がっ、ぎぎっ⁉︎」ジタバタ

シンジ『ちくしょうっ! ちくしょうっ! 動いて! 僕の意思通りに動いて! 僕の身体なのに……っ! なんで⁉︎』

戦自隊員B「……うっ」ダラン

シンジ『……っ! ちょ、ちょっとまってよ。本当に、なにしてくれちゃってるんだよ……。ふ、二人も、首を』

シンジ?「障害物だから」パッ

戦自隊員B「」ドサッ

シンジ『やめてって言ってるだろうっ!! なんでこんなマネをするんだよっ!!!』

シンジ?「僕と君は二人でひとつなんだよ。それが、導かれてきた道」

シンジ『だったら僕の言うこと聞いてよっ!!』

シンジ?「聞いてるじゃないか、こうして」

戦自隊員B「……くっ、く、そ」カチ

「緊急警報! 緊急警報! 非常警戒が発動されました! 隊員は速やかに――」ビィィィィィィィ

シンジ?「まだ息があったんだ?」

戦自隊員B「このっ、ボタンはぁ、当直に、渡されてるもんだ。押したら、瞬時に、警報が発動される……」

シンジ?「あいかわらず、群れだね」

戦自隊員B「ざまぁ、みろ」

シンジ?「ふふ、中指を立てるのが遺言かい?」ゴシャ

戦自隊員B「」ベチャ

シンジ『うっ! うっ、おぇ、おぇぇっ!』

シンジ?「血の赤。頭に穴が開いてしまったね。まだ返事はできる?」グィ

戦自隊員B「」ダラン

シンジ『おぇぇっ!』

シンジ?「意識の中で吐くなんて器用なことをするね、もう一人のボクは。大丈夫、キミがやりたくないと思うのなら――」

戦自隊員C「な、なにがあった⁉︎ 大丈夫か⁉︎」バタンッ

シンジ?「全部、やってあげるよ」ニタァ
887 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/01/26(金) 12:28:43.25 ID:Q9lti6yr0
【数分後 厚木基地 第四区画】

戦自隊員(伍長)「撃てっ! 撃てーっ!!」

戦自隊員達「くそったれがぁぁっ!」ババババッ

シンジ?「クッ、クックックッ」パキーン

戦自隊員D「だ、ダメです。銃弾は無効! 見えない壁に遮断されています! 伍長! このままでは!」

戦自隊員E「――……そのをどけっ」カチャ

戦自隊員(伍長)「間に合ったか」

戦自隊員E「グレネードランチャー。通路にまで被害が及びますが、本当にぶっぱなしちまっていいんですね」

戦自隊員(伍長)「かまわん、やれ」

戦自隊員E「アイサー。見た目はガキだが……バケモノめ! コイツで終わりだ!」カチッ バシュゥ〜

シンジ?「……クックッ」テクテク

ドォォォンッ

戦自隊員(伍長)「やったか」ホッ

戦自隊員E「ひとたまりもありませんって。バラバラですよ」

戦自隊員(伍長)「通信室に繋げ。この区画の換気扇をフルパワー動作させろと伝えろ」

戦自隊員D「は、はいっ!」カチ

戦自隊員(伍長)「……しかし、やつはなんだったんだ? 何者なんだ?」

戦自隊員E「子供、でしたね。どこかで見た気はするんですが」

戦自隊員D「こちら第四区画、第零小隊。応答を乞う。伍長の指示により電力を……?」ポロッ

戦自隊員E「どうした?」

戦自隊員D「そ、そ、んな、ウソ、だろ。こんなこと、あっていいのか」ガタガタ

戦自隊員E「……?」

戦自隊員D「あ、あれぇっ! あれ見えないのかよ! ひ、ひぃ! こっちに、歩いてきてるじゃないかぁっ!!」

シンジ?「……」ニタァ

戦自隊員達「……っ⁉︎」ギョッ

シンジ?「やるべきことは済んだのかい?」テクテク

戦自隊員(伍長)「ば、バカなっ⁉︎ そんなっ⁉︎」

シンジ?「リリンに還れ」シュタッ
888 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/01/26(金) 12:39:19.93 ID:Q9lti6yr0
戦自隊員D「――ごえっ⁉︎」グシャ

シンジ『動け、動け動け動け動け動けッ!! 動け動け動け動け動け動けッ!!』

戦自隊員E「助けっ、たすけてっ」ゴシャ

シンジ『動け動け動け動けッ!! 僕の意思通りに、動いてよぉ……』

戦自隊員(伍長)「ほ、本部にもっと応援をッ、ぐぁっ」ドサッ

シンジ『なんでだよ……なんでこんなこと……! もう、やめてよぉ……』

シンジ?「アッハッハッハッハッ!!」ゴシャ

シンジ『やめてって言ってるのに……みんな、逃げてよ……僕は、もう、使徒なんだ』

戦自隊員F「こ、こっちだ! うっ、ひ、ひどいなこりゃ。全隊発砲開始っ!!」ピィィィィッ
889 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/01/26(金) 17:30:11.73 ID:Q9lti6yr0
シンジ『もう誰かが死ぬのはたくさんなんだっ! 見たくないって言ってるだろっ!!』

シンジ?「そう……」ダラン

戦自隊員F「怯むなっ! 撃てっ! 撃てーっ!!」バババッ

シンジ?「うっ」チュンッ

戦自隊員F「お、当たった……? いや、かすめたのか?」

シンジ『や、やめてくれるの……?』

シンジ?「賽は投げられた。あのヒトたちはボクを殺しにくる。躊躇なんかしない。仲間を、家族といっても過言ではない同僚を殺されてるから」

シンジ『……それが……』

シンジ?「生きたい……そう願わないの?」チュンッ チュンッ

シンジ『誰かを殺してまで生きたいなんて……!』

シンジ?「なら、ここで終わりだね」スッ

戦自隊員F「……? な、なんだ? 目の錯覚か? 見えない壁が消えたような……撃てっ!」

シンジ?「ぐはっ」ドサッ

戦自隊員達「あ……当たった」ドヨドヨ

シンジ?「う、うぅ」プルプル

シンジ『ぐっ! お腹? お腹を撃たれてたの? 僕も痛い』

戦自隊員F「なんだってんだ。一体……こりゃあ。見えない壁が消えたと思えば、普通に撃たれて倒れる」

シンジ?「ぐぅ、感覚はリンクしてる、から」ゴロン

シンジ『……そうか、死ぬの? 僕は、僕たちは……』

シンジ?「クックッ、そう言ったっ、じゃないか」

シンジ『そうか……』
890 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/01/26(金) 17:31:33.55 ID:Q9lti6yr0
戦自隊員N「こ、この野郎! よくも仲間を!」グイッ

シンジ?「うっ」ダラン

戦自隊員N「ちゅ、中学生か? この悪魔めっ!! 化け物野郎っ!!」ゴスッ ゴスッ

シンジ?「うっ、がはっ」

シンジ『うっ、痛っ、ごめんなさい、ごめんなさい。僕のせいで、ごめんなさい』

シンジ?「キミは……どうして、生に対して執着がないの?」

戦自隊員N「……なんだ、こいつ? なに言ってるんだ?」

シンジ『僕がいたら、迷惑をかける。だったらいない方がいいんだ。僕がいなければ……』

シンジ?「くっ、クックッ……他人へ迷惑をかけないのが、優しいとでも思っているのかい?」

シンジ『みんな同じなんだっ! だからっ……僕のせいになりたくない』

シンジ?「ようやくわかった。キミは生に執着がないんじゃない。守る手段がそれなんだ。他人へのコンプレックス。自分を卑下して見てる」

戦自隊員N「イかれてるのか……」

シロウ「そこまでだ」コツコツ

戦自隊員F「あなたは、なぜ……時田博士の管轄下ではないでしょう⁉︎」

シロウ「ドンパチと花火をしているから見に来たのだよ。見物にね」

シンジ『……もう、いいんだ。僕が死ぬのなら、死んで終わるのなら、それで』

シロウ「倒れている子を私は知っている。どうだろう? 身柄をこちらに預けてほしいのだが」

戦自隊員F「ばっ、ばかなことを言うなぁっ!! こいつに何十人ヤラられたと思ってやがるっ!!」カチャ

シロウ「このまま殺してしまうのは簡単だが、裏に誰がついてるのか明らかにできないのではないか?」

戦自隊員F「裏だと?」

シロウ「そいつはネルフ所属のサードチルドレンだよ」

戦自隊員F「な、なにっ⁉︎」バッ

戦自隊員N「こ、こいつが……? たしか、この前、ここに来てたっていう」

シロウ「一日しかいなかったからねぇ。顔を知らないままだった隊員も多いだろう」ゴツン

シンジ?「うっ、はぁっ、はぁっ」ゴロン

シロウ「ふむ……。実に興味深い。さき程まではどうなって銃弾を防いでいた?」ゴソゴソ

シンジ『もう、殺してよ……』
891 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/01/26(金) 20:02:28.07 ID:Q9lti6yr0
【シンジ 意識の中】

シンジ「……ハッ! ここは……まただ。また、電車の中……」

レイ『碇くん』

シンジ「綾波っ!!」グィ

レイ『』ドサッ

シンジ「ひっ⁉︎ し、死んで……」

アスカ『シンジ』スッ

シンジ「あ、アスカっ! よ、よかった! ここはどこ? ……なんで僕はここにいるの!」

アスカ『……』チラ

レイ『』

シンジ「か、帰りたいんだ! ここにはいたくない! ねぇ、アスカなら知ってるんだろう⁉︎ なんでもできるアスカならっ!」

アスカ『ぷっ、必死ね』ボソ

シンジ「……っ!」ビクゥ

アスカ『そうやって、いつもいつもいつもっ! 自分のやりたいことばっかり! なんで私がここにいるか考えないの?』

シンジ「い、いやなんだ。とにかく、ここには、いたくなくて」

アスカ『あたしを考えないやつに、どうして優しくしなくちゃいけないの……?』

シンジ「そっ、そんなこと言わないでよっ!! 今はいたくないんだっ!! どうしてわかってくれないんだよっ!!!」グィ
892 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/01/26(金) 20:04:09.79 ID:Q9lti6yr0
アスカ『気持ち悪い』

シンジ「……!」

アスカ『気持ち悪い、気持ち悪い……気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い』

シンジ「ひっ、や、やめてよっ、お願いだから」

アスカ『気持ち悪い……かはっ』

シンジ「やめろって言ってるだろっ!!」ググッ

アスカ『かはっ、い、息が……』

シンジ「……クッ……クックッ」ギリギリ

アスカ『うっ、がっ』キンッ

シンジ「……はぁっ、はあっ……」

アスカ『』ダラン

シンジ「……は、あ、アスカ……? アスカってば、どうしたの? ね、ねぇっ!」

アスカ『』

シンジ「な、なんでっ、首が、折れてるんじゃ……誰がこんなこと……」

シンジ(少年)「キミだよ」

シンジ「ち、違う、僕はそんなことしない。できるわけがないっ!」

ミサト『どうして?』

シンジ「だ、だってっ、僕はただの中学生で、ただの一般人で」

ミサト『一般人だったら、人殺しはできないの?』

シンジ「ち、違うんだっ! そんなつもりじゃ!」

リツコ『犯罪者はみんなそう言うわ。言い訳?』

シンジ「帰りたかっただけなんだ!!」

ミサト『人殺し』

リツコ『人殺し』

マヤ『私のことも利用してたのね! 人でなし!』

シンジ「ど、どうして、マヤさんまでそんなこと」

シンジ(少年)「ねぇ、なぜキミはヒトの常識、社会のルール、道徳観念に囚われているの?」

シンジ「だって、やっちゃいけないことだって」

シンジ(少年)「それはヒトだからでしょ? 群れからはみ出さないための」

シンジ「もう、イヤだ。ジブンが、わからなクなる」

シンジ(少年)「生物としての願いは、もっと単純なんだよ」

シンジ「いやだ、いやだ、誰か、助けてっ、僕に優しくして」

シンジ(少年)「ダメだ」ギロッ

ゲンドウ『シンジ』

シンジ「と、父さん……?」

ゲンドウ『……』

シンジ「な、なにか言ってよ。心細いんだ、もう、僕を置いていかないで。僕を、捨てないで……ね、ねぇっ、父さんっ!!」グィ

ゲンドウ『』ドサッ

シンジ「う、うわぁあああああああッ!!!」
893 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/01/29(月) 09:01:33.71 ID:CVsS5H4ko
まなかな
894 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/02/05(月) 11:44:31.25 ID:lupUU+ScO
【アデル城 玉座】

大臣「また夜分遅くにこんなところで。歳も歳なんですからご自愛くださいといつも申しておりますにた

王様「ふぉっふぉっ。また、あの時の夢を見てしもうての。ワインを飲み気を紛らわせておったところじゃ」

大臣「もうお忘れなさい。あれは、あの“事件”は仕方ないことだったのです」

王様「悔やんでも悔やみきれなんだ。あれから……勇者は、両親に、ワシに……いや、人間に対する目つきが変わってしまった」

大臣「普段おちゃらけてますのは、その反動でしょうな」

王様「理解者は少ないがおる。アイーダの酒場の店主、城内の兵士達の一部。だが、ワシも含めて、目の奥に宿った恐怖は、ぬぐいされるものではない」

大臣「……」

王様「恥ずべきことよの。王が、たった一人の人間に恐怖し持て余すとは。大臣よ、勇者とはなにか? そう聞かれた時になんと答える?」

大臣「人類の代表であり、女神の代弁者です」

王様「違う、違うのだ。勇者とは“孤高”であり“孤独”である。てっぺんのいただきに立つ瀬に見る景色は、そこに立たなければわからぬ」

大臣「陛下のような……?」

王様「王とはいうなれば、民達の親である。ワシもワシで孤独を感じることに否定はしない。勇者の抱えるものは、それよりもっと、異質なのだ」

大臣「人は、誰しもが心に孤独を感じて生きております。繊細であればあるほど過敏になりましょうが」

王様「だからじゃよ。あの子に対して普通の子と同じように接するべきじゃった。勇者として利用するのではなく」

大臣「……」

王様「(ワシは信じる。おぬしの帰るべき場所を用意して待っておるぞ。勇者よ)」
895 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 11:50:23.43 ID:vcUJzIXHO
おいおいおい
896 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 16:55:41.07 ID:QfJGAQtFo
守備範囲、広いね。w
897 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 19:12:49.92 ID:UprbQukGo
!?
898 : ◆y7//w4A.QY [sage]:2018/02/05(月) 20:07:19.39 ID:bVQN2+RkO
誤爆です。見なかったことに。。
899 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/02/05(月) 20:46:56.96 ID:e1klTmGa0
あなただったのか
うまいはずだわ
900 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/02/08(木) 14:50:22.17 ID:8J56SXBv0
一気読みさせてもらったけど本当に凄い
ここまで引き込ませるエヴァssはほんとうに久しぶりだ
設定を網羅しキャラを自分のシナリオで動かしてる
楽しみにしてます。
901 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/02/20(火) 01:59:47.32 ID:iJMxVNDQ0
めちゃくちゃ完成度高いんだけどなこれ
エヴァSSを読む人が少なすぎて作者のモチベ保つまではいかんか
902 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/02/25(日) 09:41:46.01 ID:ISlcM/D8o
はよ
903 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/04/05(木) 14:41:56.17 ID:WXlLJbKb0
先にこちらの更新を再開します
904 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/04/05(木) 14:46:51.94 ID:WXlLJbKb0
シンジ「いやだ。……いやだ、ここにいたくない。僕を、だれか助けて。助けてよ……」

ゲンドウ『シンジ』

シンジ「偽りの父さんなんていらない」

ゲンドウ『なぜだ』

シンジ「アナタは僕が望んだ父さん。本当の父さんは違うから」

ゲンドウ『お前に俺のなにがわかる』

シンジ「わからない。わかるはずもない」

ゲンドウ『では、違うと至るまでの経緯はなんだ』

シンジ「ふ……ふ、ふふっ、あははっ。やだなぁ、笑わせないでよ。僕の気が狂ったのかと思うじゃないか」

ゲンドウ『質問に答えろ』

シンジ「白々しいマネだって言ってるでしょッ!! 父さんが……父さんが、笑顔で……っ! そうやって僕に微笑みかけるわけがないじゃないかッ!!」バンッ

ゲンドウ『……』

シンジ「ヤシマ作戦決行の少し前、父さんが綾波と談笑してる姿をエスカレーター前で見かけたことがあるんだ」

ゲンドウ『……』

シンジ「羨ましい。そう思った。どうして父さんは綾波にそういう表情で話しかけるのか、疑問だった。……でも、それ以上に、父さんでも笑うことあるんだって驚いたんだ」

ゲンドウ『……』

シンジ「僕たちは親子なのに……おかしいよね。日常会話はおろか、笑っているところさえ記憶にない」

ゲンドウ『俺に認めてもらいたかったのか』

シンジ「わからない。ぼくは、僕は、アスカが言うように子供で、まわりなんかなにも見えてなくて……」

ゲンドウ『……』

シンジ「頑張ろうと、背伸びはした。でもうまくいってるか不安で、自信もなくて」

ゲンドウ『人は皆、失敗と過ち(あやまち)を繰り返し、学習する』

シンジ「自分が傷つくのがこわかったんだ。だから、傷つくことから逃げちゃだめだと思った」

ゲンドウ『鈴原トウジの妹を転院させる折、お前は俺に土下座をしたな』

シンジ「……うん、覚えてる」

ゲンドウ『今一度問おう。エヴァに乗り戦い続ける限り、犠牲はつきものだ』

シンジ「……」
905 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/04/05(木) 15:09:50.07 ID:WXlLJbKb0
ミサト『シンジくん。あなたがエヴァに乗るのよ。あたしに言われたからではダメなの?』

シンジ「ミサトさん……」

ミサト『人類を救うパイロット。希望なの……ごらんなさい。あなたが守った生活を、人々の都市を』

シンジ「……違うッ!!」

ゲンドウ『なにが違う?』

シンジ「人類とか、そんな大それたもののためじゃない! 大義なんて僕にはないッ!」

ゲンドウ『親しい者の為か。それ以外はどうなってもいいか』

シンジ「……」

ゲンドウ『この世に悪行も善行もないと、まだ理解できないのか。強者と弱者がいるのみだ』

シンジ「僕は……僕は……」

ゲンドウ『搾取される側に回ると、他人に利用される。お前の望みを、理想の手段で叶えるなど不可能だ』

シンジ「……」

リツコ『生物。その本能に従えば、“自分”という存在が最上位にくる。余計な倫理観など捨てて、正直にすればいいのに』

ミサト『リツコの言う通りよ、シンちゃん。みぃ〜んな、自分が可愛いもの』

レイ『……人でありたい?』

アスカ『あんたの身体の中にはアダムがあるんでしょ? だったらとっくに人じゃないじゃぁ〜ん!」
906 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/04/05(木) 23:31:27.98 ID:WXlLJbKb0
【シンジ 深層意識の中 校舎】

カヲル「……やぁ、また会えたね。シンジくん」

シンジ「君は……カヲルくん……。ここは、景色が……学校……?」

カヲル「魂の部屋で再開するとは思わなかったけど、こうなるのが運命(さだめ)なのかもしれない」

シンジ「父さんっ! ミサトさん! リツコさんっ!」

カヲル「無駄だよ。ここにいるのはボクとキミだけ」

シンジ「うっ……ぐすっ」

カヲル「ガラスのように脆いね。人は。……生命だけじゃない。心が、形作るに値するもの」

シンジ「だれか、だれか……」

カヲル「縋れる他人を探しているのかい? 安心するために。不安をぬぐいさってくれる」

シンジ「そうだよ! それのなにが悪いの⁉︎ 別にいいじゃないかっ!!」

カヲル「そうやって、他人を警戒して攻撃的になる。こわいから」

シンジ「うるさいッ! 僕のことなんかほっといてくれよ!」

カヲル「そうもいかない」

シンジ「なんでだよ、どうして……ミサトさんも、リツコさんも、母さんも……」

カヲル「キミは補完計画の要(かなめ)たるトリガーだから。碇シンジくん」

シンジ「……」

カヲル「さぁ……ボクとひとつになろう。ボクの肉体は碇ユイによって破棄された。シナリオは進んだんだ」

シンジ「ひとつに……? だって、カヲルくんは……まさかっ‼︎」

カヲル「気がついたかい? ボクはアダムの半身たる容れ物。それこそが母君の狙い。さまよえる魂の還るべき場所は、元あるカタチ」

シンジ(少年)『……おかえり』

カヲル「ただいま」

シンジ「そ、そんなっ‼︎ カヲルくんっ! 待って!!」

カヲル「大丈夫。なにも怖がらなくていい。僕たちはこれからずっと一緒にいられる。キミは僕となり、僕はキミなのさ」スゥー
907 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/06(金) 08:13:21.45 ID:mvKYyX/7o
おお、生きてたか。また再開するんだな?
宜しく
908 : ◆y7//w4A.QY [saga]:2018/04/07(土) 00:11:57.52 ID:KqWZk56X0
シンジ「ぐ……っ!」ドサ

シンジ(少年)「僕たちはひとつになる」スッ

シンジ「うぷっ、うぇっ、おぇぇっ」

シンジ(少年)「産みの苦しみ、誕生は苦痛を伴う。それは過去を解体し、処分し、新しい息吹に再生」

シンジ「はぁっ……はぁっ」

シンジ(少年)「渚カヲルは肉体という枷から解放され“魂”という不定義な概念へと進化した。還るべきは元あるカタチ」

シンジ「ぐぅっ」

シンジ(少年)「……僕の中にだよ。カヲルくんは、僕。僕たちはキミなんだ」

シンジ「やめ……てっ、なんで、僕の中にっ……はいって……くるんだよっ! 出ていってよ!」

シンジ(少年)「それは違う。入ってきたんじゃない。最初からひとつだったんだよ」

シンジ「そんなのっ、知らないっ」

シンジ(少年)「人は世代を紡ぎ生きている。その過程で“伝説”になり、“神話”として語り継がれ余計な尾ひれまでついてしまった」

シンジ「ぐあぁっ」ドサッ

シンジ(少年)「死海文書に記されていた原典は、神話でも、おとぎ話でもない。太古の昔、数億年前に“実際に起きた出来事”なんだ。その証拠が僕であり、使徒であり、リリス」
909 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/26(火) 00:50:52.82 ID:6NtLBNR7o
まーだかなっ
910 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/23(火) 11:38:22.63 ID:fqzTChWi0
復活してるぞ
911 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/04(月) 22:02:51.89 ID:WG+cNZ4A0
待ってるぞ
 
912 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/28(土) 14:45:09.08 ID:POpJmQ500
まだ待ってるぞ!
913 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2021/08/13(金) 21:40:41.06 ID:tNrvFyy80
これ1番好き...もう1回書いて欲しいなぁ...
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