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ブルー「俺達は…」ルージュ「2人で1人、だよねっ!」『サガフロ IF】

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402 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/17(日) 02:35:29.39 ID:HGQPydB/0
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                 今 回 は 此 処 ま で !




   ルージュ、アセルス、白薔薇はレッド(あとBJ&K)の乗るキグナスに乗ってそのまま[京]へ向かいます













  森の従騎士「カウンターフィアー!」

  アルカイザー「あ、自分…原作のゲームシステム的に【混乱】とか状態異常効かないッス」

  森の従騎士「\(^o^)/」


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403 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/17(日) 03:40:43.28 ID:9z34UB780
乙
いつも楽しみにしています
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/17(日) 11:53:09.86 ID:RTp4rglWO
乙でした
ところがどっこい、レッドはレッド編でしか登場しないから、残念ながらこのSSみたいな展開にはならないんだよなぁ…
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/18(月) 14:25:06.69 ID:PacNkGlNO
乙乙
こういうゲームではできない展開が熱くて面白い
406 :少し投下 [saga]:2019/02/19(火) 04:54:20.20 ID:T2Ou5U2b0

―――
――
―

時間は少し遡る、ルージュ一行が森の従騎士を撃破する数分前の事――




【双子が旅立ってから3日目 午後21時12分(アセルス、[ファイナルストライク]発動直前)】





リュート「げへへぇ、ブル〜ぅ、もう一件くらい"はしご"しに行こうぜ、いい店知ってるんだ」


ブルー「やかましいッ!このへべれけ男がっ!…梯子酒がしたいなら一人で行け俺を巻き込むな」チッ


リュート「へべれけってなぁ〜俺酒は強い方なんだぜぇ、酔ってなんかいねぇよ[ヨークランド]魂なめんなよぉ」


スライム「(・ω・)ぶくぶくぶー」リュート ノ ニモツ ハコビチュウ




リュート「大体、お前こんな時間から何処行くんだよ…どう見ても安宿の方角じゃないだろう」

ブルー「…」スタスタ


ブルー「…力」


リュート「あい〜?」
スライム「(。´・ω・)ぶく〜?」キョトン?



ブルー「…力をつけたいんだ、今以上の力を」


リュート「…」
スライム「…」



ブルー「術が使えない局面とやらを想定したとき俺が生存できる可能性は絶望的になる」

 ブルー「…何が何でも俺は生き延びる、ルージュを殺して、俺が故郷に帰る為にも…っ」



 リュート「…あー、お前さ」ポリポリ

 リュート「なに、他所の国の風習だとか、ルールだかにあんま干渉する気はねぇけども」


 リュート「一つの事に囚われ過ぎなんじゃねーの?」



  ブルー「なんだと…?」


  リュート「お前見てるとそう思うんだよなぁ、良くも悪くもストイックでこう疲れねぇか?」


  リュート「……まぁ部外者の俺がとやかく言うのもあれだけどさ」


  ブルー「貴様はさっきから何が言いたいんだ」




   リュート「人生ってのはいつだってギャンブルなんだぜ?どんだけ万全を期したって100%成功するなんて」

   リュート「そんなモンは何処の誰が決めたんだい?」

407 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/19(火) 04:55:44.32 ID:T2Ou5U2b0

  リュート「完璧にしたつもりでも失敗する時は失敗するし、逆に中途半端な奴が人生の成功者になることだってある」


  リュート「そりゃ準備しときゃ確率は上がったかもしれねぇけど…どうせ運なら最後の大勝負が来るまでの間に」

  リュート「人生たーっぷりと甘い蜜吸っときたいって思わねぇか?」

  リュート「ん〜、よくある子供向けの質問なんかであるだお、もし明日世界が滅ぶなら貴方は何したいですか〜的な」


  ブルー「…くだらん」


  ブルー「本当にくだらんな、ああ、餓鬼向けの莫迦な問答だ」クルッ、スタスタ…



  リュート「あっ、オイ!待てってよぉ〜!」タッタッタ…!


  ブルー「…酔っ払いとの無意味な会話に付き合う程暇じゃない」スタスタ


  リュート「だ〜か〜ら!酔ってねぇよォ!!なんか、なんかよ…その、アレだよ!アレなんだよ!!!」ハァハァ…!

















   リュート「――"お前の人生"、それでいいのかよ…!」



      ブルー「…」スタスタ…ピタッ










  リュート「俺は、なんだその、基本的に自分が楽しいことやって好きな事やって
               んでもってソレで食っていけたら最高の人生だなってのが俺の自論なんだ」


  リュート「お前のその、双子の弟さん…ルージュって奴とそう遠くない未来で殺し合うん…だ…ろ?」


  リュート「さっきも言ったが人生ってのはいつ何が起きるか分からない、それこそマジに運否天賦のギャンブルだ」


  リュート「…ルーレットを回して球っころが赤に入るか青に入るかみたいなモンなんだ」


  リュート「お前が強いのはそりゃ一緒に[タンザー]で暴れた仲だからわかっけど」


  リュート「万が一にだって負けちまう場合もある、そん時の走馬燈って奴が楽しい思い出の1つも無かったら―――」




   ブルー「 黙 れ ッ !!俺が負けるだと!?俺がアイツより劣っているとでもいうのかっ!!」



リュート/スライム「「!!」」ビクッ
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/19(火) 04:56:12.24 ID:T2Ou5U2b0


     ブルー「…ハァ…ハァ…っ」ハッ!


<ザワザワ…
<ナニナニ、喧嘩?イヤネェ
<でけぇ声だなァ


    ブルー「―――くっ!」ダッ!


   リュート「あ、待てって!」
   スライム「(;´・ω・)ぶくぶー!」


 …らしくない、このちゃらんぽらんな男に対しては怒声を浴びせることも多々あるが此処まで感情的に怒鳴るのは
自分らしくない、蒼き術士は自己嫌悪を覚えつつも人の大海を掻き分け突き進む


   ブルー「くそ…なんだっていうんだ!人生はギャンブルだの万が一にも俺が負けるだのと…ッ」ブツブツ



   ブルー「………俺が、負ける?」ブツブツ、ピタッ

   ブルー「俺が"死ぬ"、というのか…この俺が、……」



   ブルー「……」



   ブルー「…はっ!はははっ、なにを馬鹿げた事を…」

   ブルー(そうとも俺が負ける筈が無い、小さい頃からずっと鍛錬に打ち込んで来たんだ…)

   ブルー(周りの奴らの妬みや僻み、…陰口だってそんなものは聞き流して来た、できない奴らとは違う)

   ブルー(……ずっとそうしてきたじゃないか、寝る間も惜しんで血反吐を吐いてでも修練に明け暮れて)

   ブルー(それで…―――)





     - 『…おい、見ろよ、ブルーだぜ』 -

     - 『学院の成績トップ、首席は揺るがないってあの…』 -

     - 『アイツ気に喰わないよな、あのお高くとまった態度…ちょっと勉強できるからって』 -

     - 『なんでアイツに勝てないんだよ、俺達だって必死で勉強してんのに』 -

     - 『あいつ、死なねぇかな…』 -





   ブルー(……)





- リュート『俺は、なんだその、基本的に自分が楽しいことやって好きな事やって
               んでもってソレで食っていけたら最高の人生だなってのが俺の自論なんだ』 -


- リュート『万が一にだって負けちまう場合もある、そん時の走馬燈って奴が楽しい思い出の1つも無かったら―――』-






  ブルー(………)

  ブルー(くだらない、努力した奴は報われる筈だ、対価を払うからこそ見返りがある…俺は、勝てる筈なんだ)

409 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/19(火) 04:58:11.42 ID:T2Ou5U2b0



「おおっ、なんだ雷かぁ〜?裏通りの方が一瞬光ったなぁオイ」グビグビ、ウィック
「へぇー雨ならともかく雷たぁこの街じゃあ珍しいぜ、ぎゃははwww」



  ブルー(…うん?)チラッ、ジーッ





一瞬光った[クーロン]裏通りの方角『 』…シーン



  ブルー「…今、強い力の暴走があったな、ヌサカーンの家の方だ……」

  ブルー「いや、俺には関係の無い話か…」テクテク




 時を同じくして抹殺対象であるルージュの旅の同行者が放った[ファイナルストライク]の閃光を背にブルーは歩き出す
向かうべき先はこの数日既に何度も足を運んだ店先、緑白赤の三色旗<トリコローレ>だ


―――
――
―



  エミリア「うおらあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!![ジャイアントスイング]ぅぅぅぅ!!!」ブゥンブゥン!

  ルーファス「 」グルンッグルンッ!




  ブルー「 」




 『close』ではなく普通に『open』の札が掛かっていた、蜂蜜色の結った髪を持ち蒼の法衣に包まれたブルーは普通に
飲食店の店を開けました、そして思う『あれ、俺間違ってファイトクラブのドア開けちゃった?』と



剣術を教えてくれそうな知り合いを訪ねてイタリアンカフェレストランの戸を開けば、レスリング大会が行われていた

な、なにを言ってるのかわからねーと思うが催眠術とか超スピードじゃあry



  エミリア「睡眠薬盛られて直後にヤルートのハーレムに送り込まれた恨みぃぃ!!忘れてないわよぉ!!」ブゥンブゥン!

  ルーファス「 」グルンッグルンッ!



  エミリア「キグナス号じゃ海賊騒動のドタバタでこの"お礼"をしてやれなかったけどね!」

  エミリア「この機に乗じて有耶無耶になんてさせないんだからぁぁ!」

  エミリア「喰らいなさいぃライザ直伝怒りのプロレス技ぁぁぁ!!」キィーーーッ




   ドゴンッ! ボッゴンッ!! ゴシャァァ! メメタァ! ゴシカァン!



  ブルー「 」ボーゼン


 アニー「ヒュー♪ヒュー♪いいぞぉ!エミリアぁ!やっちまいなぁ!グラサンなんて叩き割っちゃえ」イエーイ

 ライザ「良い機会だから、女心を理解しない男はそうなるって叩き込んでやりなさい」

410 :ここまで [saga]:2019/02/19(火) 04:59:18.73 ID:T2Ou5U2b0

<オトコ ナンテー!![スープレックス]!!
<エ、エミリ――ゴボッ!?


  アニー「あっはっはっはww―――ん?」チラッ


  ブルー「 」ドンビキ


  アニー「あっ!なんだよブルーじゃないの!今ウチの上司と同僚が武闘会やってるとこなのよ」
  ライザ「あら、噂の術士さんね話は聞いているわ」ペコッ


  ブルー「あ、あぁ…」


引き攣った顔で奥の惨状を見ながら美人二人に返事を返す、妖艶な大人の色香を魅せる紫髪を持つライザ
 溌剌とした活力にあふれる魅惑的な女のアニー…そして元スーパーモデルの美女エミリア

男であれば誰もが脚を運びたがる甘い蜜蜂の巣のような店なのだが――



  エミリア「でぃぃいいいいえええええぃ!!!   [ D  S  C ]!!!」豆電球ピコン!



ズサァァーーーーーッ!! ガッ! ガシッ!ギュルンッ!ヒューッ ズッッッゴンッ!グッ! ドッッッゴンッ! グルンッグルンッ!ブンッ! タンッ!ガッ!


                 ゴッッッッッッッッッッ ッ  ッ ッ  ッ ッッ!




  アニー「き、決まったァ!!エミリアの[DSC<デンジャラス・スープレックス・コンボ>]だぁ〜!」ガッツポーズ!グッ!

  ライザ「ええっ!!ルーファスがそこそこの実力者だったから閃いたのね!!!おめでとう!!!」



ルーファス「 」ダメージ11243… - LP2



  エミリア「や、やったわッ!ライザ、アニー!遂に…遂に[DSC]をマスターしたわッ!!」


  エミリア「こんなに、こんなに…嬉しいなんて…グスッ、アニー、私少し泣く」
  アニー「うん…私でよければ胸くらい貸すって」


  エミリア「―――ふぅ、泣いてすっきしたわ、ライザ!次の技は!」


ルーファス「 」ドクドク…


  ライザ「もういいわ、貴女は免許皆伝よ…」フフッ

  エミリア「ライザ…」

  ライザ「これ以上何かを背負う必要はないわ」

  アニー「こんな時に変な言い方だけど、楽しかったよ、エミリア」


  エミリア「アニー…みんな、みんなのこと忘れないからっ!!」



ルーファス「」


  ブルー(……)

  ブルー(……え、これは…なんなんだ?)アゼン


 イタリアンレストランの室内でちょっとしたコント劇場が繰り広げられている様を見せつけられてブルーは困惑した
何故か[ヨークランド]の片隅にある小さな教会が背景に見えて、エンディングテーマが流れてる気さえする

411 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/19(火) 10:33:16.79 ID:e3wAcppJO
やだ…なにこれ…
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/19(火) 18:23:05.58 ID:Gjy/T36D0
ジョーカー撃ち殺しエンドの方じゃないですかやだー
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 00:45:30.13 ID:omphqAj60

――−
――
―


【双子が旅立ってから3日目 午後22時11分】



アニー「悪いわね客のアンタにまで手伝ってもらっちゃって」

ブルー「いや、構わん…(なんで俺がこんなことを)」


小劇場後の店内は―――局地的なハリケーンでも到来したかのような惨状だった、お洒落なパイン材の円卓は綺麗な半月に
 四脚の椅子は三脚だったり二脚に早変わりで、しかも[ジャイアントスイング]の余波で椅子やらテーブルの木片
更には硝子コップや純銀製の食器<カラトリー>が東洋文化の手裏剣の様に壁や天井に突き刺さているのであった


…今更ながら蒼き術士は背筋に嫌な汗が伝うのを感じた


 見物人二人と同じく出入口付近に居たから良かったものの数歩先――例えば料金でも払ってどっかの席に着き
暢気にディナータイムでも過ごしてたら額にスプーンの一本でも突き刺さっていたやもしれん



ブルー「こっちの破片は箒で全部掃いたぞ、…この店いつもこんななのか?」

アニー「サンキュー、まぁ客居なくて暇なときとかね…大丈夫よ、ちゃんと一般客巻きこまないように加減してるから」


ブルー「……」ジトーッ


アニー「…いや、そんなジト目で見ないでよね、マジだからさ」



ブルー(…あの頭の悪そうな女といい、こいつといい…それにサングラスの男を介抱しているライザという女)

ブルー(こいつ等、相当戦い慣れてるな……この実力者揃いが単なるウェイトレスの訳が無い、何なんだこの店)ジトーッ





妖艶な大人の色香を魅せる紫髪を持つライザ

溌剌とした活力にあふれる魅惑的な女のアニー

そして元スーパーモデルの美女エミリア





男であれば誰もが脚を運びたがる甘い蜜蜂の巣のような店なのだが――


        ――――――暗黒街[クーロン]にある法律で裁けぬ者にも鉄槌を下す裏組織…"グラディウス"の支部…




それこそが妖香漂う蜜蜂の巣の実態なのだ…

言葉通り"蜜蜂の巣"だ…拾った小石を投げたり、枝で突くような真似をすれば泣きっ面を見る事になる



  アニー「でさ、アンタ此処へ何しに来たのよ…あ、もしかして[ディスペア]潜入の用意はできたかって催促?」

  アニー「まだ作業員に変装する為の一式やIDカードできてないんだから待っててよね」


  ブルー「いや、それもあるが…」



 …術が使えなくても、戦いたい…[剣術]や[体術]…いや最悪[銃技]に詳しい奴を教えて欲しかった訳だが

この店に来たのは本当に彼にとって"大当たり"だったかもしれない、それぞれの分野に特化した人材が居るのだから
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 00:46:47.49 ID:omphqAj60



  ブルー「貴様に借りを作るのは癪だがアニー、貴様に剣術を教わりたい」

  アニー「わーお、上から目線だなこの野郎」



しれっと言い放った言葉に、いらっと来るがこの男はこういう奴だと出掛けた言葉を飲み込んだ…
 この無礼極まりない大層ご立派な術士様がどんな心境の変化で剣術を学びたいかくらい聞いてやろうじゃないか、と



  アニー「一応聞いとくわ、理由は?」

  ブルー「……」









  ――自分の弟を殺す為





  アニー「…ん?なによアンタ理由も言えないワケ?そんな奴には教えたくないわね〜?借り作るの癪らしいしぃ〜?」




ワザとらしく人差し指を右頬につけてお道化てみせる守銭奴に術士は言った



  ブルー「……同郷の者でな、どうしても勝ちたい競い相手が居るんだ、そいつとの試合に勝つためだ」


  アニー「…? 故郷の競い相手と試合??? なによアンタ…熱血スポ根物の少年漫画みたいな事やってんのね」


  ブルー「報酬は弾む、頼む」




 帰って来た返事に「へぇ、以外だわ…」と目を丸くしてアニーは呟く
この冷血男は誰だか知らんが故郷に居る知人と試合をするために力をつけているのかと…

よくある不良が夕暮れの河川敷げ殴り合うアレか、とそう解釈した





『同郷の者』『競い相手』、『試合』――まぁ嘘は言ってない


ただ"詳細説明"……そして最終的に"敗者の末路"に関してを省いただけだ、訊かれなかったから答えなかった、それだけ



  アニー「まっ!金払ってくれるっていうならみっちり!アタシがしごいてやるわ!」フフンッ♪

  ブルー「ああ、それと剣術の他に体術にも詳しそうな奴が居ると思うのだが…」チラッ


  アニー「あ〜、アンタが見てる従業員以外立ち入り禁止ドアの先に居る2人ね」


  アニー「ライザは体術専門だけど、さっきルーファスをヤったエミリアは寧ろ[銃技]専よ」


  ブルー「…エミリア、か…そういえばリュート達と蟹鍋を囲んだ時にチラッと話してたな…あの女が」

  アニー「体術習うならライザだし、銃のプロなら彼女ね」


  ブルー「…今は[剣術]だけでいい、余裕を持てそうなら他の分野にも手を伸ばす」
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 00:47:21.00 ID:omphqAj60

ガチャッ、パタン…


  ライザ「アニー片づけは終わったようね?それとブルーさん、でしたねお見苦しい所をお見せして申し訳ありません」

  アニー「あのグラサンどうだった?流石にやりすぎたかもってエミリアと介抱したんでしょ」

  ライザ「1日寝てれば何事も無かったかのように復帰してるわよ」



 従業員以外お断り、そう書かれた扉の向こうからライザと呼ばれた紫髪の女性が戻って来た
身内にお恥ずかしい場面を見せて申し訳ないと頭を下げた彼女に蒼き術士も首を振って返す


   「アニー、ライザ、お客さんまだ居る〜?なんか私が荒しちゃった店内の片づけ手伝ってくれたってお礼とか――」



最近、"グラディウス"に加入したブロンドの美女エミリアもまた扉の向こうから姿を見せた―――そして…









      エミリア「………っ!  ―――ぇ、ぁ、なんで?」



      ブルー「?」






金髪美人は一瞬、時でも止まった様に彼の顔を、蜂蜜色の髪を持つ端麗な顔を見て息を呑んだ




     アニー「あぁ、そう言えばキグナス号の時は紹介できなかったわね」

     アニー「ほら?アタシさ言ってたじゃんか、食べ放題ビュッフェのあの席で―――」























      エミリア「ルージュ!こんなところで何をしているのよ!アセルス達は一体どうし―――」



       ブルー「―――――――――――――――――――――――――――――――」







416 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 00:48:15.75 ID:omphqAj60





  逆鱗に触れる、という言葉が世には在る、もしも触れたならば身を以て知るだろう祟り神に容易に手を出したことを





 電光石化の動きだった、破損していない椅子に腰かけていた蒼き術士が"名前"を耳に入れると同時に勢いよく立ち上がる

毛を逆立てる山豹、青筋を立てた悪鬼、血走った眼を向ける殺人鬼、荒れ狂う妖怪…もののけ




 端麗なその顔立ちは一変、おぞましいバケモノと見紛う程であった…



対面して座っていたアニー、ライザでさえ、ぞわりと身の毛がよだつ敵意




     ブルー「貴様ぁぁッ!!ルージュを見たのかッ!どこだ!?何処にいるッッ!言えぇぇぇッッ!!」ガシッ

     エミリア「キャアっ」ビクッ!




  アニー「ちょ!?ば、何やってんだブルー!!」ガタッ!

  ライザ「これは流石に止めないとマズイわ!」バッ!



     エミリア「い、痛いっ、やめ――っ!やめてってばっ…ほんとう、や、、め …ぁぁ!」



      アニー「っっ!いい加減にしろ!!なんだってんだ…このぉ!!」
      ライザ「手を離しなさいっ!」





         リュート「スライムッ!!いっけぇぇぇぇ!!」ブンッ!

         スライム「(`・ω・´)ぶくぶーーーーーっ」ヒューーン






        ブルー「なにィ!?ぐ―――がぼっ、ごぼっ!?」(顔面にスライム命中)




   リュート「そのままブルーの顔に引っ付けッ!呼吸できなくて気ぃ失っちまうまでだっ!!!」

   スライム「(; ・`д・´) ぶ!? ぶくぶ!」ガッ!グッグッ!




     ブルー「――! 〜〜〜っ!? −−!  −−−」 ジタバタ!ジタバタ!……バタッ!




  リュート「…や、やったか!?……ふ、ふぃーーーマジに焦ったぜぇ」ヘナヘナ…

  リュート「心配でスライムと二人で夜の町中探し回ったらまさかの修羅場とか…ビビったぞ」ハァ…


―――
――
―
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 00:49:04.61 ID:omphqAj60



     ロープぐるぐる簀巻きブルー「 」


  アニー「エミリア…本当ごめん、あたしの連れが…」

  エミリア「ううん、いいのよ何処か怪我した訳じゃないし…」


  アニー「……いきなり飛び掛かったこの馬鹿には後で事情聞いたり、みっちりと言い聞かせとくから、本当ごめんっ」

  アニー「暴れないようにロープで縛ったから目が醒めるまで奥の倉庫にでもぶち込んでくるわ」



  グッ…ズルズル…



 アニーはそう言うと騒ぎを起こした連れを『従業員以外立ち入り禁止』の奥…
この店の裏の顔の1つへと向かって引き摺っていく、そんな姿を見送り完全に姿が見えなくなったのを確認してから



   ライザ「さて、色々説明してもらおうかしら」

   エミリア「ライザ?」



   ライザ「リュート…彼と面識があるのでしょう、まぁその前にエミリアからね」

   ライザ「さっき貴女はブルーの顔を見て『ルージュ』と呼んだ、それからよ?何事も無かった彼が血相を変えたの」



   エミリア「あっ、その…なんていうか、よく見たら"人違い"だったっていうか…そのぉ」


   ライザ「人違い、というのはどういうことかしら」



支部とはいえ組織のトップであるルーファスの片腕を任される鉄の女はエミリアの発言が齎した変化に関して指摘を挙げる
 歯切れの悪い彼女の情報を整理すると、偶然知り合った魔術師のルージュなる人物とブルーの顔が瓜二つだった、と


ただ、髪色が違うし服装、細かい装飾も…なにより雰囲気だ






【銀髪の紅き術士】は温和で人懐っこい印象を受ける好青年だったが――

『金髪の蒼き術士』は冷たく気難しい感じのする何処か近寄りがたい人物だったように思える――



    ライザ「…無関係、では無いわよね、名前を耳にしてあの取り乱しようなのだから」



    リュート「…あー、そのことなんだが、よぉ…」ポリポリ



おずおず、と弦楽器を背負ったニートが話に割って入る
 エミリアが知り得る情報は顔が瓜二つの人物が居て蒼き術士は紅い方を知っていて…只ならぬ関係だと

それ以上の事は一切知らず、進展が無いと踏み…次いでブルーの知り合いであるリュートの話を聞くことにした



    ライザ「なにかしら、その切り出し方からして事情を知っているということでよろしくて?」

    リュート「ん、まぁな…これはアイツの人生に関わる個人的な問題だからあんま話すべきじゃないが…」


418 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 00:49:32.74 ID:omphqAj60

【双子が旅立ってから3日目 午後22時29分】



店内は嫌に静まり返っていた

 面白可笑しく生きるのがモットーである男の口から告げられたのは
何処よりも優れた魔法王国を謳う国家に生まれた双子の宿命であった―――



  エミリア「っ!」キュッ

   ライザ「…」



  リュート「―――と、これが俺の知る限り全てさ顔も見た事が無い、名前しか知らない血縁者を殺す」

  リュート「アイツはその為だけに術を究めようと世界各地を渡ってるってワケだ」





  エミリア「そんなのっ!!――残酷過ぎるわッ!」バンッ!


  ライザ「…エミリア机叩かないで頂戴、数少ない無事だった物なんだから」


  エミリア「でもっ、そんな…兄弟同士で命を奪い合うだなんてそんなの…!…あの、ルージュが…」ギュッ…!

  ライザ「ええ、倫理に反してるわね」










       ライザ「けどね、果たしてそれを"私達<裏社会の人間>"がどうこう言える立場かしら?」


       エミリア「っ」ハッ





   ライザ「私達はね…正義の味方じゃないの、法で裁く事のできない屑を違法を以て潰すわ」


   エミリア「……うん」


   ライザ「私は、他人が"そういう事"をしたとしてもとやかくは言わない」

   ライザ「誰かが誰かに対して"ソレ"をするのは、そこに抗えない理由や当人にしか理解できない葛藤があるから」


   ライザ「もしも、もしもの話よ?エミリア…」




  ライザ「貴女が自分の婚約者を殺したあの仮面の男、[ジョーカー]への復讐心を綺麗さっぱり忘れろ、と」


  ライザ「そう言われたら『はい、わかりました、シャバでのうのうと笑顔で生きてる仇は忘れます』と言い切れて?」




  エミリア「……」



…ブロンドの美女は口を開かない、否定ではなく沈黙で応じた

419 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 00:50:25.72 ID:omphqAj60


 エミリア「でも、それとこれとは話が」
  ライザ「違わないわよ、人間一人殺すのに必要な動機<エピソード>なんてものは精々、刑罰を軽くできるかどうか」

  ライザ「法廷でお高いスーツを着た人が書類片手に読み上げて情状酌量の材料にするかしないか程度の話でしかない」



   ライザ「殺人を犯したという"結果"はね…"人間よりも上の人"から見たら大差ないわ…」





どこか、…どこか疲れたような顔で裏組織に属する鉄の女は天を仰ぐように見つめた



モデルとしてスポットライトの光を浴びて来たエミリアとはまるで違う
 半生を薬莢と血生臭い世界を駆けて"知りたくも無かった醜悪なモノ"を数多く見て来た女性が言うのだ…



  ライザ「ブルーにはブルーでそうまでしなきゃならない理由がある、国からの命令だからする、そういうものよ」



  リュート「エミリア、俺ぁなんだ…裏社会の人間じゃねぇけどよ国によって独自の文化、風習とか掟だとかさ…」

  リュート「そういうのってある、とは思うんだわ」


  リュート「そこに干渉し過ぎちまうのも…やっぱマズイかな〜って、いや誰も死なないならそれが良いけどよぉ」


  エミリア「…リュートも"そっち側"、なのね」ハァ



   ライザ「勘違いだけはしないで頂戴、貴女の気持ちだって分かる…」

   ライザ「ただ、世の中には知っていて止められない流れや安易に首を突っ込むべきじゃない物事もあるって話よ」




  ライザ「……私は貴女に"ミイラ取り"になってほしくないの、お願いだからわかって」

  エミリア「…わかったわよ」ハァ




 5年分の歳月しか変わらない年上の、しかしその5年が自分以上に多くの物事を観て来た人生の先輩から助言を受け
エミリアは不満げに叩いた机に頬杖をつく、ライザとて『倫理に反している』と自身で言う様に"正しい事"とは思わない
ただ全否定をしないだけ、全肯定もしないだけなのだ




コインに裏と表があるのと同じ、元は同じ物質なのに角度を変えれば見解、見識が180℃グルリと変わる


戦争で"正義"の名の元に戦う軍隊があるとすれば敵は悪ではなく、単純に"別の正義"だったというだけの話





  ライザ「……」

  ライザ「でも、そう、ね…アニーにはこの事を隠しておいた方がいいかもしれないわ」


 エミリア「え?」



 簀巻きにされたブルーをアニーが奥へ連れ完全に見えなくなったのを見届けてからライザはこの話を切り出した
双子の兄弟で殺し合うとまでは流石に想像できなかったが、エミリアの知り合いの名前を聞いて激昂する辺り
何か面倒な事になるのであろうと…

冷静に分析し敢えてあのタイミングでライザは切り出したのだ
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 00:51:40.57 ID:omphqAj60


  リュート「ほ〜ん?なんでまたアニーにゃ黙っとくんだい」

   ライザ「あの子の性格を考えると一悶着ありそうなのよ…」ハァ



   ライザ「アニーも…このグラディウスのメンバーとして"裏"には長い事居るわ…」

   ライザ「大雑把で開放的な見た目に反して幼い頃から厳しい環境で育ったから自己保存と自己防衛本能が強い」

   ライザ「二人には前に話したけどこの仕事向きの"能力"ではあるわ…でも"性格"までそうかと言われると、ね」






   ライザ「昔、こんなことがあったのよ…家族を皆殺しにされた客が仇を討ちたいからアジトへ案内してくれって」


   ライザ「アニーは報酬の代金を受け取って契約通り案内を済ませた、後はそのまま帰って来るだけ、でも―――」





   エミリア「…帰らずに、その依頼人について行った?」


   ライザ「ご名答、頼まれたのは"道案内"だけであって一緒に戦うなんて契約には無い、無論お駄賃だってない」


   ライザ「『ここからは"ビジネス"じゃなくて"ボランティア"だからカネなんていらないわ』」

   ライザ「そういって依頼人の仇討に加担したのよ…無償で」ハァ…



   ライザ「能力は間違いなく裏社会での仕事向きよ、能力は、ね…」



   リュート「実は双子の弟殺す為に修行してまーすっ!、なんてブルーの目的知ったら…」


   ライザ「…」ハァ…



 本日何度目になるか分からない溜息をライザは吐き出した…、義理堅い、情に熱いというのは美徳だ
闇の中でも失われない光を持つのが手の掛かる妹分の美徳だと感じていて同時に危うくも思う


―――長所と短所は表裏一体だ、浅くない付き合いだから分かるエミリア以上にきっと



バタンッ!


  エミリア/リュート/ライザ「「「!?」」」ビクッ、ガタッ!




  アニー「ただいまー!あの馬鹿とりあえず適当に―――って何よ?どうしたの?」キョトン?


  エミリア「え、あぁ…ホラ?あれよ、アレ…あの人なんで怒ってたのか分かったわー」(目逸らし)

  リュート「お、おう話し合い終わったとこで急に来るもんだからな、心臓飛ぶかと思ったわ」


  リュート「あ、俺急用あったんだ!――ほら、スライム起きろ!行くぞ!」ユサユサ

  スライム「ぶくぶ…zzz……ぶくっ!?Σ(゚□゚;)」スヤァ……ハッ!?


  リュート「じ、じゃ!俺はこれで…さいなら!」ダダッ!

  アニー「えっ、ちょっとぉ!!」

421 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 00:52:19.61 ID:omphqAj60

ドタバタ…



  アニー「…なんだってのよ、…ってか事情分かったって?」クルッ


 慌ただしく出て行った知人とゲル状のモンスターから同僚に顔を向け、問いただす


  エミリア「ええ、そうよ…コホン、いいアニーよく聞いて頂戴…」

   アニー「いいけど」


―――
――
―

【グラディウス倉庫】



  ブルー「…うぐっ、…こ、ここは…」キョロキョロ

  ブルー(段々思い出して来たぞ…確かリュートにスライムを投げつけられて…)





  アニー「…どうやら気が付いたようね」ガチャッ!

  ブルー「!」バッ!




 古い木板の匂いがする床の上で目覚めた彼は最初暗がりに慣れず、何も分からなかった
立ち上がろうにも両脚の自由が利かず、また腕も拘束されている事に気づくのはすぐだった声は出せる辺り
口は封じられていない…

ボサボサ頭に民族帽を被った無職とゲル状生物の所為で失神さえられたこと、その件に対する怒りが込み上げるよりも先に
彼の心にまだ見ぬ弟との邂逅があったと思しき女の存在が入り込んだ


 なんとか此処から脱出してエミリアと呼ばれていた女に問い詰めねばッ!
そう思った矢先で部屋に廊下から漏れる灯りが雪崩れ込む、木製のドアを背凭れ代わりに
見知った顔が腕を組んで此方に睨みを利かせていた



   アニー「なんで縛られてるか、わかるわよね?」

   ブルー「…」プイッ



顔を背ける、言われるまでも無い



  アニー「はぁ〜〜〜、餓鬼かアンタは、…そうやって都合悪いと拗ねる辺りあたしの悪ガキの弟と同じだわ」スタスタ

  アニー「縄解いてやるわよ…ただし!エミリアにはちゃんと謝る事、そしてアタシのいう事にも従う事良いわね?」



  ブルー「…拘束を解く、だと?」



  アニー「別に怪我した訳じゃない、大事じゃなかったからいいってさエミリアも御人好しよね〜」スタスタ…ガシッ

  アニー「…」シュルッ…スルスル



  アニー「…ルージュって奴の事、エミリアから聴いたわ」

  ブルー「ッッ!?」

422 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 00:54:45.54 ID:omphqAj60


  ブルー「…そう、か…聞いたんだなっ」ワナワナ…!


知らず知らずのうちに術士は震えていた…

胃の底から込み上げてきそうな何かを抑え、溢れそうな部分を言葉に変化して出すように確認を取る


  アニー「ええ、…あたしがアンタを此処に運んでる間にリュートからも詳細を聞いたって」






    アニー「ブルー…あんた…」ジッ

    ブルー「…っ」ギリッ





 廊下から差し込むLEDライトの照明を背に伸びる彼女の影が歯軋りをしながら彼女を見返すブルーの顔を丁度隠す
逆光の中に入る女と、影で表情を窺い辛い男…二人の間に沈黙が流れ、そして…






   アニー「…ぷっww――いや、確かにアンタ見たまんま"エリート坊ちゃん"って感じの性格だからね」

   アニー「そりゃあ弟の方が優秀でスポーツ万能、性格良しとかじゃ敵意剥き出しにするわけだわ…ぷぷっ、くくっ」






   ブルー「……」


   ブルー「は?」




 呆気

 思わず間の抜けた声を漏らしてしまった、パチンッ、倉庫の照明をOFFからONへ操作して未だ小馬鹿にしたような笑いを
絶やさぬ女がイマイチ状況の飲み込めない男に言い続ける



  アニー「いやいや、あたしに報酬払うから剣を教えてくれーとかキャラに似合わないことすんなぁ〜とか思ったわ」


  アニー「故郷の競争相手ってのはブルーの弟なんだろ、学生時代の自分より成績が上で」

  アニー「しかもコミュ力高くてリア充しまくってた弟の鼻を明かしてやろうって努力してるんだろう?全部聞いた」



  ブルー「お、おい、ちょっと待て…貴様さっきから何を――」



  アニー「…あー、うん分かってる、わかってるから"兄より優れた弟なんて存在しない"、だろ?うんうん」肩ポンポン

  アニー「しっかし、アンタさ…くくっw 澄ました顔しちゃってさ」

  アニー「そ〜んなコンプレックスの塊だなんて可愛いとこあんじゃんww」プッ…


  ブルー「 」


 この女は黙って聞いてれば何を頓珍漢な事をほざいているのだろうか、オイなんだその顔はやめろ!
その微笑ましいものを見るような慈愛に満ちた笑顔はやめろ!肩をポンポン叩くなァ!

ブルーはそう言いたかった
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 00:55:18.42 ID:omphqAj60


  アニー「あたしだって姉弟の中で一番上だしさ、情けない姿見せちゃあ面目が立たないとか気持ちは分かるわよ」

  アニー「けどさぁ、エミリアに掴みかかった時みたいなああいうのは良くないわよ?」


  アニー「ほらほら!向こうは許してやるって言ってんだ、ちゃちゃっと謝りに行くよ」スタスタ





  ブルー「お、おいィ!!……あ、あの女言いたい事だけ言って…ふ、ふざおってからにッ!!」プルプル




  ブルー「〜〜っ」プルプル

  ブルー「…」


  ブルー「リュートからも聞いただと?…だがあいつの口ぶり
           どうも【"決闘"】でなく『"ただの試合"』としか思ってないような」




"試合"と"死合"


 妙に緊張感の無い言い方、恐らく彼女は双子の闘いを学生がよくやるような剣道大会の試合
要はスポーツ感覚のソレと勘違いしているのだろう


 実際に行われるのは中世の騎士が立会人の下、どちらかが命尽き果てるまでに斬り合う決闘<デュエル>だ
魂の尊厳、何より自分自身の"生"の為に西部劇のガンマンが早さ比べをする様式とも取れるソレであって
 間違っても負けたら「いいファイトだったぜ、またやろう」みたいな爽やかな笑顔で握手し合う交流試合のノリじゃない



弱肉強食、負けた方が勝った方に生存の権利を譲る―――そういうモノであるはずなのだ




  ブルー「何をどう聞かされたのか、確認を取るか、ルージュの件もある」スッ、スタスタ…




 少し頭に血が昇り過ぎていたな、…蒼き術士は幾らかクールダウンした脳で先刻の接触は悪手だったと今更後悔した


初対面の人間に対する"猫かぶりの対応"を思わず忘れる程の激情、蒼は紅を体現した人物名でその彩に染まっていた
 どうにも故郷を発ってからこういう事が多い、情緒不安定な所が際立つ





 普段、名の通りの男と故郷で言われたが実際は違う、彼とて人の子だ……世間を知らず箱の中で育ち

外界など古臭い書物の紙面に乗った洋墨でしか知らない、鳥籠で産まれ、鳥籠で死ぬ小鳥と何が違うというのだ…



山も、川も、雲さえ知らない鳥がある日、飼い主の身勝手な都合で籠から追い出され野に放たれたも同然だ



見た目だけが成人を迎えた子供<お坊ちゃま>……ただの22歳児でしかない



コツコツッ……ピタッ



  アニー「エミリア、連れて来たわ」

  ブルー「……」

424 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 00:55:59.27 ID:omphqAj60


  エミリア「…貴方がブルー、ね…ふぅん確かによく見ると色々違うわね」ジーッ



   ブルー「…」



 ポーチ付きのベルトに紺色のスカート、春先の若葉を連想させる明るい緑色のジャケットを着た女は目を細める
親友に倉庫から拘束を解き放ちここまで連行して貰った男と記憶の中にある戦友の容姿を見比べた

 一点を凝視してみたり、離れて全身を軽く見まわしたり
彼に近づいて一本の大樹を中心にぐるぐる回る様に様々な角度から覗き込んで見たり


 観察対象の彼はその行為にじれったさを覚えた、何がしたいんだ、言いたい事があるならさっさと言え、失礼な奴だ、等


心中は投げつけたい文句が浮かぶが、立場上ブルーは"今現在は加害者であるが故"に強くは出れない




 双子が旅立ってから三日目の晩、遡って二日前だった―――丁度このリージョンでブルーが[保護のルーン]を手にする為
暗黒街の地下にある[自然洞窟]でアニーと出会った、その時に彼は確かに言った




 - ブルー『こちらに非があるならば謝罪の一つでもいれるのが筋だ、…顔に出てるぞ貴様』ジロッ -




 目の前の女はまるで自分を舐めるように観察してくる…こうなった発端は元を正せば後先考えずに行動したブルー自身だ
"自分に非がある"と認めてるからこそ咎めない、許容範囲を軽く越した蛮行でもせん限りは様子見に徹している



  エミリア「ん、んっ〜!ハイ、わかった、確かに違うわ、うん!アニー!ちょっと二人っきりでお話したいのよね〜」

  エミリア「ちょーっとだけこのカレ借りちゃっていい?」ガシッ


  ブルー「お、おい…」

  アニー「OK」ビシッ




 悪戯を思いついた、そんな顔で猫なで声で妹分に許可をねだる元モデル

 何か面白そうなんで、と了承の二つ返事を姉貴分に敬礼つきで出す仕事人



 反論を口しようとする彼はその場から連れ去らんとする腕に黙殺される、そして終止ニコニコ笑顔のブロンド髪で
誰もが見返る魅惑的な美女に誰も居ない深夜の厨房まで引き摺り込まれてそして―――






       エミリア「リュートから話は全て聞いたわ、"身内殺し"をしようとしてるってこと」





分厚い扉は重々しい音と共に締まる、外部に音声を漏らすことはないだろう


突然の隙間風、季節風の様に何の前触れもなく吹いた風が蝋燭の灯火を消していったように、ニコニコ笑顔はふっと消えた




術士の肩に、細く白い綺麗な指が沈み込む、霊獣の毛皮を剥いで創った肩掛けにギュッと強く…桜色の爪化粧が喰い込む


425 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 00:57:10.49 ID:omphqAj60

 静寂の中で石窯の傍に掛けられた木製の振り子時計が無言の睨み合い、緊迫した空気も読まずにただ己の役割を果たす
一瞬、驚いた顔をしたが何か合点が行った顔で肩を掴まれたままの男は目を細める、今度は自分が女を観察する番だ


  ブルー「……」

 エミリア「…っ」キッ!



  ブルー「まず、先程の件で詫びをさせてもらう、あれは全面的に俺が悪かったな」

  ブルー「他人に教えを乞う態度にしては乱暴が過ぎた、それは認める」スッ




  ブルー「そして、この先は別件だ、リュートから俺の目的を聞いた上で
            あの頭の悪い捏造シナリオを奴に吹き込んだのはお前か、何が目的だ?意図が読めん」


 エミリア「っ」キュッ!



 小さく頭を下げ、自分に非があったと睨みつけて来る女性に淡々と伝える
誠意の欠片も見当たらない謝罪後は一呼吸置いて、何が目的か問い始める


…元モデルというのが彼女の経歴だが
 一世を風靡する程のプロモーションと表現力を兼ねた彼女なら舞台女優でも通用することだろう

 ライザを交えてリュートから"家族殺し"をさせる狂った国家の話を聞いた時と全く同じ様に、目の前の男の言葉を聞き
彼女は下唇を噛んだ、行き場の無い怒りの行先だ




戦友ルージュの背負った理不尽な使命という悲運

目の前に居る戦友の兄ブルーはそれに何も感じないのかッ!という怒り

この双子にそのような命令を下す国家の残忍さ



あらゆるモノに対する腹立たしさが渦を巻いて胸の奥に燻っていた、よくもまぁアニーの前であんな上機嫌な女を演じたな



 エミリア「…意図、ですって?」

 エミリア「あなたねぇ、自分の弟を殺すのよ…何も思わないの、悲しいとか嫌だとか、…っ、辛いとか、感情は無いの」







  ブルー「無いな」






 そんなモノは無い、彼は正直に答えた



 エミリア「―――ッ!このっ」グッ!片手振り上げ


 エミリア「……っ」

 エミリア「…」

 エミリア「…。」


 エミリア「…ない、のね」スッ

426 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 00:57:49.28 ID:omphqAj60

 振り上げられた手は、エミリアの落胆した声と同じく、だらりと重力のままに降りていく
初めから期待していた訳じゃない、[ヨークランド]出身の友人が語った通り冷徹さを印象付ける色の彼は
弟に"勝つ気"でいるのだ


そこに、罪悪感だとか、嫌悪感、本当は嫌だけど仕方なく国の命令に従っているだとか、そういう淡い"救い"を求めた


…初めから期待していた訳じゃない、のだけれど





  ブルー「…」





 無いな、弟を殺すという事柄に対して悪感情はあるのかという質問にこの男は即答したが…


本当に無いのだ、いや、"考え方そのものが違う"




 彼とルージュが旅立つ初日、国家の元首でもある魔法学院の長はなんと言った事か
強き術士となる為であらば『自分の目的を果たす為ならばあらゆる手段を用いてよい』と…


倫理、道徳…必要最低限の"普通の"モラルを学ぶ子供ならば忌諱となるだろう行いを『国家の為だからソレは正義です』と
ブルーの場合は特にその傾向が強い教育だった



資質を手にする為なら、相手から奪う、殺人さえ許可する、と



必要な行為だから、する
良くも悪くも考え方が"国家に忠実な兵隊さん"思想な所がある、もっと言えば隔離されて育ったからこそ兄弟の実感が無い



殺らなきゃ自分が殺される、そういう意味じゃお互い様
ただの抹殺対象、それ以上でもそれ以下でもない、だから情がどうこう以前の話








…とどのつまり、エミリアに対して言った「無いな」に込められた"ニュアンス"は微妙に違う


辛いとか、悲しいとか、嫌だ、ではないが
 逆に…殺せて清々するとか、大っ嫌いだからボコボコにしたいでも、嬉々として倒したかった、とかですらもなく



家族という実感そのものがイマイチ、ピンと来てない




強いて言えば、"自分を育ててくれた里親である国家に親孝行をする"が動機





  ブルー「お前はその確認をしたいが為だけにあんな創り話を考えたのか?」


  エミリア「…それ、もあったけど違う」

  エミリア「……アニーにあなたの旅の目的、真相を知って欲しくないからよ」


427 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 00:58:56.77 ID:omphqAj60

  ブルー「なぜだ」


  エミリア「あの子、見た目はあんなふうだけどすごくいい子よ、家族思いで」

  エミリア「知ればきっと、あなたの事を止めようと食って掛かるわ…」


 ライザが危惧した内容をそのままエミリアはブルーに告げた、もしも、今この厨房に居るのが自分でなく
どんな会話が行われているのかも知らずに外で眠たげに欠伸でもしているアニーだったら



落胆の色を浮かべ振り上げた手を下げた自分とは違った行動を取ったことだろう

激怒の色を浮かべ勢いをつけ手をあげたに違いない



その後も、ブルーが白旗をあげるまで延々と彼の耳元で喚き続ける
 兄弟同士で殺し合うなんて間違ってる、長男が自分の下を傷つけるな!…姉弟で生きる為、頑張って来た長女なら言った



  エミリア「私の他にもう一人ライザって女性が居たでしょ、彼女もこのことは知ってる」

  エミリア「私もライザもあなたのことは止めたりはしないだから、これだけは約束して欲しい」


  エミリア「せめて、アニーにだけはそんなことを、残酷なことを教えたりしないで頂戴」キッ!



家族で殺し合う為の手助けをしてしまった

自分の知り合いが友達の戦友を殺させる切欠を作ってしまった


 事が終わった後にせよ、起こる前にしても、アニーはもう、ブルーに既に手を貸してしまっている
自分達家族が生きる為に報酬のカネを受け取った、仕事で仕方なくやった、としてもそれが少なからず小さな影を造る


こんな業界に居るから、いつかは…いや、エミリアが知らないだけで過去に似たような経験をアニーはしたかもしれない


…どちらにしても、そんなモノは無いなら、その方が断然いい

言ってしまえば気持ちの問題だ


  ブルー「…ふむ、言いたい事は分かった」


  エミリア「それで、約束は? YESかNO、決めてもらえないかしら」


  ブルー「アイツの性格はまだ知り合って日も浅いが大体わかる、[ディスペア]潜入や剣術の指南」

  ブルー「今後の予定に支障が出る不具合もある、良いだろう飲んでやる、あの馬鹿な脚本に従ってやろう」


  エミリア「…私、あなたのこと苦手、ううん、嫌いだわ…ルーファスとどっちがマシって言われたら悩むくらいよ」


  エミリア「正直、妹みたいに思ってるアニーに近づいて欲しくないくらいに、泣かせたら承知しないわよ」


   ブルー「そうか、それは結構、ところで…そちらから一方的に約束事を持ち出して虫が良いとは思わんか?」

  エミリア「…。」

  エミリア「…私が行動を共にしてた間のルージュの人柄や旅の様子を話す、前払いの契約金よ」スッ


   ブルー「そこまで"頼まれては"仕方ないな、約束を守るように善処しよう」ニコッ、スッ




…ガシッ、ギュッ

…金髪の美女はハッキリと嫌いだと物申した相手――満点の笑みを浮かべる金髪の男性と"仲直りの握手"をした

428 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 01:00:28.10 ID:omphqAj60
―――
――
―



  アニー「ふわぁ…二人で何話してんだろ…」脚ぷらんぷらん



 暇を持て余した彼女は樽の上に腰掛け足をぷらぷらとさせていた、この惑星の気候は肌寒く特に豪雨の夜は一層冷える
店の雰囲気重視を謳う少し薄暗い照明と合わせて暖房をつけていない…というのは建前で単に"ケチ"なだけなのだ


眠たげな彼女の服装はいつものデニムパンツに、ブラジャーの上から緑色のジャケットを羽織っただけのラフな格好だった

 夜風に晒されてまで自宅に戻って厚着して帰って来る気にもサラサラなれず
店内にあったブランケットを適当に引っ張り出して来てポンチョの様に身体に巻いていた



スッ


  アニー「…はれ?ライザ」

  ライザ「今夜はまた、一段と冷えるわね…ホットチョコレートよ、飲みなさい」

  アニー「へへっ!サンキュー!」


白いマグカップが4つ、白の陶器は湯気立つ茶色と溶け合うミルクの色が渦を描く、手渡されたカップの淵に口をつけ一口


  ライザ「お味はいかがかしら、お客さん」フフッ

  アニー「うーむ、くるしゅうないぞ!っなんてね」ハハッ


紫髪の女性も樽に腰掛ける金髪少女の傍に立ち、カカオの香りを嗜む


  アニー「あの二人さぁ、何話してんのかなー?」

  ライザ「さぁ、気になるの」


  アニー「そりゃ気になるわ、エミリア美人だし男と厨房で二人っきりとかさぁ」

  アニー「よく言うじゃん?男はオオカミなのよ、気を付けなさい〜♪って」

  ライザ「あら、懐かしい歌のフレーズね」


  ライザ「でも、大丈夫よ彼女はそんなヤワじゃない、そうでしょう」

  アニー「んー、それもそっか、ズズッ 温かくておいしい」


バタンッ!

   エミリア「二人共おまたせ〜」スタスタ

    ブルー「ああ、遅くなって済まない和解は成立した」スタスタ


  アニー「おっ!や〜っときたか、…まったく、ちゃんと反省してるわけ?」ヤレヤレ



    ブルー「あぁ、すまなかったな、ルージュのことになるとどうも頭に血が昇ってな」

    ブルー「エミリアも話してみれば大分話の分かる奴でな、…しっかりと"仲直りの握手"もできたくらいだ」

   エミリア「…ええっ!そうね!」ニコッ

    ライザ「……」

    アニー「えっマジ?なんか意外、アンタとエミリア絶対反りが合わないと思ったけど世の中わかんないものね」


    ライザ(仲直りの握手、…ねぇ)

429 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 01:01:03.89 ID:omphqAj60

エミリアがアニーに近づいて小声で耳打ちする、そんな姿には目もくれずにブルーは得たアドバンテージを考える


 握手には広義の意味がある、単純に仲直りの為であったり、挨拶代わり……政治家のやり取り、商談成立の合図にも



  ブルー(ルージュがどの術の資質を得ようとしているのか、試練の進行状況はどうか
         アイツのペースを知る事で鍛錬の積み方、休息のタイミングも図りやすくなる筈だ)


  ブルー(はは、運気の流れは確実に俺に吹いてきてい―――)ツンツン



ふと、肩を指で突かれる感触に水を差され「なんだ?」と振り返る、すると…

















    アニー「はい、んじゃ今日からビシバシ行くからヨロシクな新人アルバイト!」つ『ピンクのエプロン』








           ブルー「…。 えっ」








 アニー「エミリアに謝ったら、罰として暫く住み込みでウチのイタ飯屋手伝ってもらうつもりだったのよ」

 -アニー『縄解いてやるわよ…ただし!エミリアにはちゃんと謝る事、そしてアタシのいう事にも従う事良いわね?』-




 アニー「あの時、悪戯っぽい顔で連れてくから何かと思ったけど、ピンクのエプロン着せる為だったとは恐れ入ったわ」

 アニー「エミリアが耳元で教えてくれた、厨房で話し合ったんだろ?ピンクのエプロンで良いって」



  エミリア「そうよねぇ、ごめんなさいねぇ〜ピンクのフリフリが用意できなくてぇ、それで我慢してね」ニッコリ
  エミリア(タダでやられっぱなしなんてごめんよ、…フン!ざまぁみなさい陰湿男)



           ブルー「」


           ブルー「」



           ブルー( こ の ク ソ ア マぁ ぁ ぁ  ぁ   ぁぁぁぁ ぁ! ! !!!)




…笑顔の素敵な女優さんの心の声が彼には確かに見えた、エプロン渡され放心状態の彼の怒りの叫びが彼女には聞こえた
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 01:18:42.20 ID:omphqAj60
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                 今 回 は 此 処 ま で !


                   △インフォメーション!▲


  現在経過日数 旅立ちから三日経過



 〜 資質修得状況 〜

『陰陽】

・陽術(従騎士との乱闘騒ぎで現在取得不可)
・陰術(従騎士との乱闘騒ぎで現在取得不可)


【秘印』

・秘術(ルージュ、試練開始 4枚の何も書かれていないタロットカードを貰う)
・印術(ブルー、試練開始 4個の何も刻まれていないルーン文字の小石を貰う)


『時空】

・時術(現状どちらも手がかりをつかんでいない)
・空術(現状どちらも手がかりをつかんでいない)



<心術>
・心術([京]にあるらしいのでルージュが試練を受ける予定)


状況

ルージュ 資質0 試練進行度 0/4 (エミリアから金のカードの情報を貰った)

ブルー 資質0 試練進行度 2/4(既に2つ攻略済み、残りの在処もアニー、ルーファスから知る)




 『パーティーメンバー】

-ブルー組-

・ブルー

・アニー(通常仲間キャラ)

・リュート(主人公級キャラ)

・スライム(通常仲間キャラ)

・ルーファス(通常仲間キャラ)

・エミリア(主人公級キャラ)

・ライザ(通常仲間キャラ)

※ヌサカーン先生はクーンのパーティーに入りました

-ルージュ組-

・ルージュ

・アセルス(主人公級キャラ)

・白薔薇(通常仲間キャラ)

・レッド(主人公級キャラ)

・BJ&K(通常仲間キャラ)




▼…ブルーがエミリアからルージュの情報を聞き出してしまった…、まだ余裕がある事を知り暫く自己鍛錬ができると知る

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431 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/21(木) 22:39:06.44 ID:GtSfa+fT0
更新来てたのか、乙
ルージュが本編で実現不可能なドリームパーティーじゃないか
432 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/21(木) 22:43:15.71 ID:UkF5UJuX0
全員のシナリオを同時進行するサガフロとか見てみたいと思ってた
433 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/22(金) 11:48:21.39 ID:qWc/sLQpO
乙乙
続きがめちゃめちゃ気になる
434 :書き溜め少し投下 [saga!red_res]:2019/02/22(金) 17:38:45.23 ID:EOANnSFz0










ペラッ…カキカキ


         僕は[クーロン]で一夜を明かして[キグナス号]へ二度目の乗船をしている








朝一番の始発で『7時27分』に僕は仲間と共に暗黒街の惑星から飛び立った、日記が書けそうな今の内に書いておく


黒一色の死の大空を飛ぶ船の展望エリアから矢の様に流れていく星々の灯りに目を奪われていた





外界に来て僕は友達がたくさんできたかもしれない、アセルス、白薔薇さん、エミリアさんやヒューズさん

それにルーファスさん、この船に一緒に乗っててさっき出逢ったレッドとBJ&Kもだ

本当に色んな人と出逢えて…良かったと思う、僕はきっとこの旅を忘れない。


    もうじき、[京]に着陸するらしい…ペンを置いて、船を降りる準備をすることにしておくよ


435 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/22(金) 17:40:32.77 ID:EOANnSFz0

【双子が旅立ってから4日目 午前9時14分】

 紅き術士は、その美しさに目を奪われた




  ルージュ「……すっげぇ…」



多種多様な惑星<リージョン>が存在する広大な宇域でも、この[京]というのは独特な文化を誇っていた
 旅行ガイドに簡単な紹介文は載っていたが実際に見るモノは違う、まず驚いたのは発着場だ
船を降りてターミナルの待合室に着いたが[マンハッタン]や[クーロン]、[マジックキングダム]とも全然違った


"お座敷"という見た事もないモノがある…


見れば他所の惑星から来た観光客がなんと靴を脱いでその上に上がり座り込むのだ!!


畳…タタミ、と呼ばれる床材でなんでも藺草<イグサ>という単子葉植物で作った独自の文化らしい

この惑星<リージョン>の人はその上で座ったり、寝っ転がって休んだりするそうな
 ちなみ、ルージュが眺めていた観光客たちは「オー、ジャパネーズ ブンカ デース!」と口にしていた
何言ってるのか意味はよく理解できなかったが"ブンカ"…文化と言ってる辺りカルチャーショックでも受けていたのだろう


 旅行鞄を持ったアセルスお嬢、白薔薇姫と合流し、術士は発着場を出て肌で感じ取った、空気が違う…

鼻孔を掠める紅葉と竹林の心穏やかにさせる香り、せせらぐ水と木造りの水車が回る音
 銀杏の実を蓄えた枝の先々には金色のイチョウの葉、今まで見た事も無い浴衣、着物……"和服"という民族衣装
靴だってそうだ、自分達が履いてるような動物の革や布のブーツではない

木の板に紐を通したような不思議な靴、アセルスが後に教えてくれたが草履や下駄という名前らしい


何もかもが新鮮、何もかもがルージュにとって見た事の無い未知だった



 彼は目を丸くして、キラキラと夜空の一番星のように輝かせた…齢22歳の好奇心旺盛な少年心を刺激するには十分過ぎた



  白薔薇「まぁ…!なんて綺麗な街並みなのでしょう!」


  ルージュ「! あ、あ、アセルス!!ねぇ!あれは!?アレは何!?あれって『寿司』って書いてあるよ!?」ソワソワ

  ルージュ「『天ぷら』とか薄らとだけど小耳に挟んだことあるよ!なんかその、食べ物なんでしょ!」ワクワク


  アセルス「もうっ!ルージュは落ち着いてってば、あぁ!!白薔薇勝手に景色を見に行かないで!迷子になるって!」



      「おーい!アセルス姉ちゃん!ルージュ!!」タッタッタ!!



  ルージュ「あっ、レッド!お仕事終わったんだね!」


  レッド「おう!遅れてすまねぇ…ユリアにお土産とか色々頼まれてよ…」

 アセルス「烈人君ごめんね、わざわざ忙しいのに時間見つけて私達の観光に付き合ってもらって」

  レッド「気に擦んなって!姉ちゃんにゃ昔っから世話になりっぱなしだからな!…所で、気になってたんだけど」


  レッド「白薔薇さんは一緒じゃないのかい?」ユビサシ



  ルージュ/アセルス「「…えっ」」クルッ


  アセルス「し、白薔薇ぁぁぁぁぁぁ!!!」

  ルージュ「う、うわぁぁぁぁちょっと目を離した隙に白薔薇さんが迷子になったぁぁぁぁ!?どうしよう!?」

436 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/22(金) 17:41:19.12 ID:EOANnSFz0
―――
――
―

【[京]の庭園】



  白薔薇「 」ポツーン

  白薔薇「あら、あらあら?…どうしましょう…いつの間にかアセルス様たちとはぐれてしまいましたわ…」オロオロ



 [ファシナトゥール]とは全く違った芸術美に思わず蜜のかかった林檎に誘われる蟻の様に釣られてしまった
薔薇飾りを頭に乗せた何処かおっとりとした妖魔の貴婦人が途方に暮れだした、そんな時だった―――






   Tシャツに鉢巻姿の酔っ払い「…うぃーっく!…くぅぅ、やっぱ酒飲むならこういう日本庭園だよなぁ!」グビグビ

      記憶喪失のロボット「ゲン様、飲みすぎです、タイム隊長達に怒られます」


 "ゲン"、焼酎という酒が入った瓶を片手に豪快に笑う男の名前だ、顔を赤くしてバシバシと隣居るロボットの肩を叩く



   ゲン「わぁーってるって、そうケチケチすんなって!ガハハハハ!それによぉ
                こいつぁお前の記憶の手がかりが見つかった祝いみてーなモンだろ?」ハッハッハ!



   記憶喪失のロボット「はい、間もなく[シンロウ]で"仮面武闘会"が開催されます」

   記憶喪失のロボット「その間遺跡の探索は禁じられますから、[古代のシップ]でヒントを得たのは大きな収穫です」


   記憶喪失のロボット「HQの存在確認と私の任務が"RB3型"の破壊であること」

   記憶喪失のロボット「もっと詳細を知る為に一度レオナルド様にお会いしましょう」



   ゲン「の前に、あのでけぇコウモリにやられちまった、ナカジマと特殊工作車を治すことだろ」

   ゲン「遺跡の中で蝙蝠倒しまくってたらいきなり出てきやがって流石に俺もヤバいかと思ったぜ、たく」



   ゲン「ん?T-260G、何見てんだ?」



   T-260「…認識完了、メモリ内と100%合致、ゲン様、以前[マンハッタン]で見かけた女性です」


   ゲン「あん?」チラッ





   白薔薇「どうすれば…」オロオロ




   ゲン「ありゃ、本当だな…こりゃまた奇妙な縁だな……」


   ゲン「なんかあの姉ちゃん前見かけた時も困った顔してたな、どうすっかね…」う〜ん

   ゲン「…」


   ゲン「うっしゃ!決めた、これも何かの縁だろう、ちょっくらお節介焼きに行くぞ!」

   T-260「了解です」ウィーン

437 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/22(金) 17:41:55.30 ID:EOANnSFz0

 この惑星の観光スポットとして名高い庭園でしなやかに揺れる柳の幕を潜り向けお節介を焼きに来た中年の男と
古臭いデザインのロボットは妖魔の貴婦人に声を掛けた


  ゲン「おーい、そこの姉ちゃんアンタなんかお困りかい?」テクテク


  白薔薇「あ、はい…知り合いとはぐれてしまいまして…失礼ですがどちら様で」


  ゲン「んあ?あぁ…わりぃわりぃ、俺ぁゲンってんだ、隣に居るのが」

  T-260「制式形式番号T260 認識ID7074−878「こいつぁT-260だ見ての通りロボで小難しい事を言う」


  白薔薇「ゲン様に…?てぃーにーろくまる…様?」


  ゲン「おう、この辺ぶらぶらしてたらなんか困り顔の女が居たもんだからついお節介焼きたくなっちまったんだ」

  ゲン「人間困った時はお互いさまっていうだろ」ガッハッハ!


 彼は人情溢れる人間という奴なのだろう、酒瓶を持ったまま豪快に笑い隣に居るロボットの肩をバシバシ叩く
そんな様子につい思わず白薔薇も釣られて笑ってしまう、見知らぬ土地で独りというのは不安がある

話し相手の一人や二人いるだけで、その不安の根は大きく取り払われるモノだ

 初めて来たリージョンに知り合いなどいる筈もなく、右も左も分からない白薔薇はご厚意に甘えることにした



  ゲン「だったら、シップ発着場の方に行きゃいいってことだろ?降りてすぐにこの庭園に来たっつーことは…」フム



  T-260「我々もここから南東の道を通って向かうべきです」

  T-260「白薔薇様の御知り合いが発着場から土産屋方面に向かったのなら、都度、通行人に確認を取り後を追います」


  ゲン「だな、向こうが姉ちゃん探してこっちに来てんなら途中でばったり鉢合わせだろうし」

  ゲン「逆に変に反対方向に行って行き違いになっちまうよりかはその方がいいな」


  白薔薇「ありがとうございます」ペコッ


…テクテク…スタスタ…ウィーン!


  T-260「時に白薔薇様は人間<ヒューマン>でなく妖魔でしょうか?検知された生体エネルギーが人間では無かったもので」

  ゲン「おい、ポンコツ!失礼だろがっ!…すまねぇ」

  白薔薇「ふふ…お気になさらずに、T-260様の仰る通り[ファシナトゥール]から来た妖魔にございます」クスクス1

  ゲン「[ファシナトゥール]…んー、俺ぁ妖魔についてあんまし詳しくねぇからそのリージョンはよく知らねぇや」


  白薔薇「T-260様とゲン様はどちらからお越しで?」



 道中、知り合ったばかりの3人…いや、2人と1機は退屈しのぎも兼ねた他愛もない世間話に花を咲かせていた
会話のキャッチボールが続く中でT-260が発した何気ない一言から何処からこの地へ観光に?という話題に移った…



    ゲン「…」ピタッ


   T-260「ゲン様」

    ゲン「いや、いいんだ……そうだな、だんまりも失礼だわな」ポリポリ


   白薔薇「…?」


    ゲン「俺は…[ワカツ]ってトコの生まれでな」

438 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/22(金) 17:42:20.80 ID:EOANnSFz0



  白薔薇「[ワカツ]…ですか?」



   ゲン「ああ、サムライの惑星<リージョン>、なんて他所の奴らはよく言ってたもんさ」

   ゲン「腕っぷしに自信のある奴が技を磨くために訪れたり、[剣のカード]目当てで来る修行者もいた」


   ゲン「俺も、故郷でそこそこ腕のある剣豪だったんだが、色々あって今は放浪の身って奴さ」



  白薔薇「"色々"ですか…」


   ゲン「ああ…"色々"な」



妖魔の貴婦人はつい最近になって時が止まった様な鎖国リージョンから出た、それゆえに世捨て人の如く世間に疎い

彼の言う"色々"というのは新聞やニュースを観ない者でもよく知っている事件なのだが
……あるいは妖魔だからこそ詳しくないと踏んで彼は話したのかもしれない


何か、話辛い失礼な事を聞いてしまったのではないか…、ゲンの横顔を見て白薔薇は少し居た堪れない気持ちになった
 この話題にはあまり深く踏み込むのは良くないと判断し話題を変える事にした


  白薔薇「あの、ゲン様は剣にお詳しいのですか?」


   ゲン「うん?剣かい?そらぁ、まぁな…」




  白薔薇「でしたら、女性でも扱いやすい強い剣をご存じありませんか?」




[クーロン]で自分達を助けてくれたアルカイザーは言っていた、此処には様々な人が集まる
 旅人も疲れを癒すために寄ることが多いのだから優れた剣、装備品に関する情報も聞けるだろうと


アセルスの[フィーンロッド]の代わりとなる武器、[幻魔]を扱えるようになるその日まで…!彼女の実力に見合った剣を!


  ゲン「…そうだな、女でも振りやすいか」


顎に手を当て、剣豪を目を細める、東洋剣を専門とする彼はふと思い当たる節を口にした



  ゲン「………女でも振りやすいかは兎も角だ、嘘か真か[シュライク]に名刀が眠ってるって話なら聞いたな」


  白薔薇「…![シュライク]に」


…シュライク、アセルスの故郷だ
12年間姿の変わらぬままで育ての親の元へ帰り、怖れられた…あまりいい思い出の無い土地


  ゲン「ああ、なんつったかな、昔の偉い奴を埋葬した古墳があって[草薙の剣]ってのが一緒にあるとか」

  ゲン「なんで強い剣を求めてるかは知らねーが墓荒しなんて碌な目に合わねぇからよ、あんまオススメはしないぜ」


  ゲン「店売りの剣になっちまうから金もかかるし威力もずば抜けて高い訳じゃねぇが[ゼロソード]くらいだな」


   白薔薇「いえ、それだけでも十分ですわ」ペコリッ


―――タッタッタ…!

 アセルス「し、白薔薇ぁぁぁぁ!!よかったぁやっとみつけたぁ…っ!」ゼェゼェ
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/22(金) 17:43:02.03 ID:EOANnSFz0
―――
――
―

【双子が旅立ってから4日目 午前10時20分】 [京]の旅館前


    特殊工作車「」HP0

    ナカジマ零式「」HP0




   レッド「この回路をこうして…んで[インスタントキット]を取り付けてっと」カチャカチャ

  ルージュ「あ、あれぇ〜?…れ、レッド!もしかして僕コード間違えちゃってる??」

   レッド「ん?…あー、そこはだな…」


    BJ&K「損傷がひどいですね、…所々に強い磁気を浴びたような形跡が」



  ゲン「わりぃな坊主たち、俺の仲間達を治すの手伝ってもらって」

  ゲン「最近の若い奴らは機械につえぇからなぁ、俺ぁそのインスタントなんちゃらは苦手だぜ…」ポリポリ


  ルージュ「いえいえ!白薔薇さんと僕達を探すの手伝ってくれたんです!このくらいお安い御用です」コード カラマリ


身体中にケーブルが絡まったルージュが胸を張っていい、それが可笑しいのかレッドが苦笑する


  レッド「ま、俺もBJ&Kの整備でメカ専用の回復道具の使い方は慣れてるしな!…しかし凄いなこのメカ」ジーッ

   ナカジマ零式「 」

  ゲン「そいつは[シュライク]で仲間になったんだ、中島製作所って所で縁があってなそこの社長から連れいけってな」

  レッド「へぇ!奇遇だなー、俺[シュライク]出身だからさ、故郷のメカって思うと尚更…」ジーッ


  ルージュ「れ、レッドぉ!たすけてぇ〜!」コード グルグルマキ ミイラ


  レッド「おまっ、何器用な絡まり方してんだよ!?」


―――
――
―


   ナカジマ零式「いやぁ〜、助かりました〜」

    特殊工作車「感謝いたします。」


    ゲン「おう、おめぇ等やっと目が醒めたか明日になったらレオナルドさんトコに行くからな!」


    T-260「私達は明日まではこのリージョンに滞在します、何か要件があればご相談ください」ウィーン


   アセルス「ありがとう!ゲンさん、T-260、私達は行ってくるからね!」


    ゲン「おう!お嬢ちゃん達も観光楽しんで来いよ!!」手ひらひら



[京]の情趣溢れた旅館で鉢巻をつけた一人の人間が、個性豊かな三機のメカが一行を送り出す
 旅の魅力は初めて行った土地での"出会い"にもある、その土地柄、独特な文化…行き交う人々の民族衣装、料理、方言
それに人柄だってそうだ、今回の旅で彼等の様な人情深い人達と出会い
ちょっとした世間話やお互い知らぬ土地の話題に花を咲かせる…それはきっとすばらしいことなのだろう

 勿論、出会う人全てが"いい人"とは限らないが、それも踏まえた上で他者とのふれあいが異国情緒を楽しむことに繋がる


旅人4人+1機が[京]の街を観光し始めたころ、陽はもうじき一番高い位置に上がろうとしていた

440 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/22(金) 17:43:40.43 ID:EOANnSFz0


     ぐぅぅぅぅ〜〜…



  アセルス/レッド/白薔薇「「「えっ」」」クルッ





     ルージュ「ぁ…///」カァ///


 BJ&K「胃が強く収縮された時に生じる音を確認、空腹期収縮ですね、腹の虫が鳴くとも言われています」ピピッ



 ピタリと、歩みを止めて赤らめた顔をする紅き術士、と一歩先で振り返りそれを確認する面々、…冷静に分析するメカ
誰が一番に笑いを堪え切れなくなったのか、噴き出した声に一層照れくさそうにするルージュ


  アセルス「ふ、ふふ、し、白薔薇を探すのに夢中でまだご飯食べてなかったものね!」クスッ

   レッド「お、おう…くくっ、そうだな、もうじき昼メシ時だし…」ククッ


  ルージュ「わ、笑わないでくれよ!…しかたないじゃんか//」



  \ アハハハッ! /  \ ウフフッ! /    \ ヤ、ヤメテヨネ! /



  白薔薇「まぁまぁ、元はと言えば私の所為でもありますし…心術の試練より先にお昼に致しませんか?」

  ルージュ「そ、そうとも腹が減ってはなんとやらでしょ!ここはお昼が先だって!」



 豪華客船キグナス号は[京]で一泊二日の観光ツアー客を降ろし、翌日には[シンロウ]へ向かうスケジュールだった
この機を利用して乗務員も羽休めを許されている為、緊急に呼び出しでもない限りレッドも時間はある

旧知の仲であるアセルスお嬢、妙に意気投合できる気の置けない友人のルージュ、何か放っておけない白薔薇姫

三人に付き合って名所巡りや一緒に[心術]の資質を得る修行に挑戦するのも悪くないと思った


予定通りならば先に[心術]の修行場に行き"資質"修得に挑戦だったが…





   ルージュ「す、寿司ッ!…い、いよいよ僕はSUSHIとやらを食べるのか…」ドキドキ、ワクワク




    レッド「いや、あれは刺身だよ」
   アセルス「うん、寿司はそっちのお米の上にネタが乗ってる奴の事をいうんだよ」




まず、修行よりも腹の虫を鎮める方が大事である

 旅行者に優しい写真付きのメニュー看板を見て
『刺身』を『寿司』だと勘違いする異国人に指摘を入れる[シュライク]人二人、その後に続く妖魔の貴婦人


 BJ&K「…私は入口で店員さんにお願いしてバッテリー繋いで貰います」


物質を飲食できないメカは充電モードで待機してもらう事となった、メカだからね仕方ないね



   ルージュ「お、おぉ………!」キョロキョロ

    白薔薇「あらまぁ……」パチクリ

441 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/22(金) 17:45:19.19 ID:EOANnSFz0

 [京]の建築物は木と紙、あとは土を焼いたモノ…屋根に使われている瓦だったり、基本的に自然と共存している印象を
紅き術士と妖魔の貴婦人は受け取った、木造建築の内装でよく見かける畳という床材に、"襖"という紙で出来た横扉だ

 どこの異世界<リージョン>でも料理人の正装は白一色と決まっているのか、"板前"と呼ばれるシェフは白い服に帽子という
姿で、手にした包丁で綺麗に魚を捌いていた



   レッド「二人共こっちの席に座ってくれ」


   ルージュ「ハッ! あ、うんっ!」トテトテ…

    白薔薇「ただいま其方に…」



"おてもと"とリージョン共通語で書かれた紙の入れ物に入った竹製の割り箸、陶器製のコップ――湯呑み、というらしい

 郷に入れば郷に従え、この惑星<リージョン>が発祥の諺らしい、生憎とルージュはこの地での作法を知らぬ
ふんわりとした長い銀髪を揺らしながら彼は目線をレッドとアセルスに向ける、どうやら座布団と呼ばれるクッションに
術の精神統一に行う座禅の体勢で座り込むようだ



  ルージュ(本当に僕の知らない世界だなぁ…っと、こうかな?)ちょこんっ



 白薔薇姫がアセルスお嬢に教えられ、別に正座でなくても掘り炬燵式なのだから楽な姿勢で良いと言葉通りに座る
そして、お品書きを手渡される



   レッド「今日は俺の奢りだ、なんでも頼んでくれよな!…あっ、でもめちゃくちゃ高いのはカンベンな」



 安月給の機関士見習いレッド少年が当店のおすすめ、という部分を開いて渡してくれたので術士はそれをジッと見た
どうやらお寿司、以外にも先の刺身や…天ぷら、どんぶり、という物が在るらしい

 和食は食べた事が無いから、何が美味しいのか分からない
向かいに座る少年曰く「なんでもうまいぜ!」との事だった……アバウトだなぁ、とルージュは内心で困ったように笑う

 値段もお手頃(?)で少し食べたい人向けの寿司を注文してからすぐに運ばれてきた木の板…下駄のような皿の上には
小さな長方形のライスボールの様な物があり、その上には魚肉を切って乗せたモノがあった



  ルージュ「この黒いソースにつけて食べるのかい?」

  アセルス「醤油だね、ちょこんとつけるといいわよ……っ、う〜ん!!久しぶりの和食だわぁぁ…」ホロリ



[ファシナトゥール]から[マンハッタン]…そして[クーロン]と旅してきた少女が久方ぶりの和テイストに感涙する
 隣に居る白薔薇も箸で一つまみ、お刺身を一口齧り「まぁ…!」と思わず頬肉を綻ばした




   ルージュ「いただきます、…ちょっと"ショーユ"つけて…もぐっ」パクッ






     ――――ポタッ

            ――――――ポタッ






      ルージュ「……」ポロポロ


      ルージュ「………感動したッ!」ポロポロ…(´;ω;`)ブワッ


泣きました。
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/22(金) 17:45:57.02 ID:EOANnSFz0


  レッド「なんだよお前大袈裟だなぁー」







  ルージュ「大袈裟なんかじゃないよ、お米についてるこの味、酢<ビネガー>かな…それにショーユのしょっぱさと」


  ルージュ「魚の甘み――魚って生で食べる機会無かった分かんなかったけど甘いんだね、あぁ、脱線しちゃったけど」


  ルージュ「それ等と別に何かピリッとしたモノがあって…っ!」




  ルージュ「そのスパイスが絶妙なハーモニーを生み出してるんだぁっっ!」ドンッ☆


<ハーモニーを生み出してるんだぁっっ!
<生み出してるんだぁ
<ウミダシテルンダァ



 ドン!っと漫画なら擬音でも出てそうな力説をかます紅き術士に「お、おう、そうか…」とレッドが気圧されかける
心なしか台詞にエコーでも掛かってそうなまである…まぁ気に入って貰えたなら何よりである



  アセルス「…というかルージュさ、何気にアレだったりするの?ほら…えっと、食通っていうの?」


湯呑みのグリーンティーを啜りながらアセルスお嬢が口を挟む、それにパチクリと目を瞬かせる


  アセルス「いや、酢飯を食べて酢<ビネガー>がどうとかさ初めて見る料理で何使ってるか一々分かる訳じゃないのに」

  アセルス「だから、思っただけ……味にもうるさそうだったし」



  ルージュ「んー、一応旅に出る前は僕が料理当番になること多かったからかな」


  レッド「うん?当番……あ、よくある家族で「今日は○○がお風呂洗い当番なー」みたいな?」



今日はお兄ちゃんが夕飯の夕飯のおつかい行く日ねー、あたしお料理当番だからー、みたいな感じかとレッドは尋ねる
 その答えはある意味近いと言えば近かったが…





    ルージュ「家族?……いや、"家族"、じゃないかな…僕、さ…物心ついた時から親居なくて国の施設に居たから」






  レッド「えっ」
 アセルス「えっ」


  白薔薇「施設、ですか…」



  ルージュ「そそ、[マジックキングダム]の魔法学院でずっと小さい頃から寮生活なんだよねー」

  ルージュ「みんな、僕が当番になると、やったー!ルージュの飯だーって喜んでくれてさ〜」ハハッ



……あっれれー?なんか重いハナシになっちゃったぞー、レッド少年とアセルスお嬢はお互いに顔を見合わせたが
当事者のルージュは笑い上戸か何かのように明るく話すので地雷踏んだワケじゃなかったかと一息である
443 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/22(金) 17:46:28.15 ID:EOANnSFz0



  レッド「そうかぁ…しかし魔法学院の寮かぁ、なんか意外だったなぁ」



  ルージュ「意外ってなにが?あっ!僕が料理できるってこと!?ひっどいなぁ…」

  ルージュ「そりゃあ最初は魔法学院風味を利かせた精進料理もできなかったけど少しずつ腕をあげて」



  レッド「いや、そっちじゃなくて学院の寮ってとこのくだりだよ…なんつーか意外なモンだなぁって」

 アセルス「うん、…言われて見れば私も白薔薇も、ルージュが術の資質を得る修行の旅をしてることしか知らないわ」

  白薔薇「そうですわね、アセルス様が12年間眠り続けて、オルロワージュ様から現在逃げている事や
       レッドさんが犯罪組織の陰謀でご家族を亡くし"通りすがりの人"に病院に運ばれキグナスで働いている等」


  白薔薇「…私達お互いに深い所は知る関係になりましたが、考えてみればルージュさんの事は何も知りませんね」



アセルスと白薔薇は言わずもがな

レッドは……ヒーローの事は伏せるように、組織の幹部に殺されかけた時に"通りすがりの人"に病院に搬送され助かったと
 流石に『広大な宇宙の何処かにあるヒーローの惑星<リージョン>から来た正義の味方アルカールに救われました』などと
馬鹿正直には言えない、言えば記憶を抹消されてしまう








 ルージュは、良くも悪くも世俗に囚われない…知らなすぎる節がある




単なる世間知らず、というには見る者全てに「なんかそういうんじゃねーなコイツ」と思わせる浮世離れした雰囲気がある


見る"モノ"全てが初めて


建物、人物、文化、土地の風習…それもだが、誰もが知ってる当たり前の常識でさえも何処か抜けてて

歳相応じゃない、22歳にしては純粋過ぎる、…人懐っこい犬みたいに誰にでもホイホイついていくその感性だ
 世の中は善人だけではない、"そういう人間"を利用して利潤を得ようとする者も残念ながら居るのだ



――――だが、[ルミナス]で旅人をぼんやりと道行く旅人を見つめていた時といい
                         見ず知らずの旅人でさえあっさり信じる危うさがある



[マジックキングダム]は名の通り、魔法大国として栄えたリージョンだ

 だから出身地を聞いた時、…ああ、裕福なお家で箱入り坊ちゃんとして育ったのか?ともその世間知らずな所で思ったが
それとも違うのだ






  ルージュは、隔離されて育った。



王国の闇、影の部分である問題のある子供を極秘裏に育てる"影の学院"で

いつか、来るべき日…兄弟同士で殺し合いをさせるという御国のプロジェクトの為

他所の惑星から見れば国のお偉いさんは倫理に反している!!と非難殺到間違いなし
 世論が国家を滅多滅多に叩きまくって惑星間を跨ぐネット上で炎上しまくるのが確実な魔法大国の"暗部"


その片割れを隠しながら育てる為に、だ……ルージュが何処か、現世の人間とは違った雰囲気なのもそれが原因である
444 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/22(金) 17:47:02.18 ID:EOANnSFz0
―――
――
―

【双子が旅立ってから4日目 午後12時15分】



  レッド「…」トボトボ

  レッドのお財布『200クレジット』チャリン…




  レッド「…くっ!男児たるもの泣くもんかよっ」




  BJ&K「涙腺のゆるみを確認、感情の我慢は毒です」ピピッ

  レッド「うるせぇよ!」




 昼食を取り、[心術]の修行場へ赴くがてらに土産屋へ寄った、お祭りに使われる"提灯"という風変わりなランタンがあり
お菓子やお弁当の他に木刀や竹刀なんかも売ってたりする


  レッド「トホホ…ユリアが欲しがってたモンがこんな高いなんてなぁ、ん?」

  ルージュ「…」ジーッ



  インスタントカメラ『 』



  レッド「なんだルージュ、カメラが珍しいのかよ」トテトテ

  ルージュ「あっ、うん…ちょっとね」



 [京]と言えば、学生が修学旅行に遊びに来たいリージョンNo.1に選ばれる星だ、ちなみ次点はカジノの星[バカラ]
レッド少年も、アセルスお嬢も学校の行事で此処へは来た事があった

その時も、学生の旅の思い出にとよくカメラが売りに出されていたのは記憶に残っている



  ルージュ「これさ、いんすたんとかめら、っていうんだろ、上のボタンを押すと写真が出る」

   レッド「ああ、…良けりゃ買ってやろうか?安売りしてるみたいだし」


  ルージュ「えっ!いいの…!」パァァ…!



 気になる職場仲間の女の子への土産は買ったんだ、ならたかが時代遅れになりつつある消耗品のカメラの一つ二つ…
そんな気持ちで安売りされていたカメラを友人に気前よくくれてやった



  ルージュ「レッド!ありがとうっ!…これがカメラで、こっちの筒に入ってるのが替えフィルムかぁ…へへっ」トテトテ



   レッド「やれやれ、アイツ俺より本当に3歳年上なんだか」ハハッ

  アセルス「あっ、烈人君…ガールフレンドへの贈り物は決まったんだね」ヌッ


   レッド「おわっ!?ね、姉ちゃん!?」ビクッ



本来なら12歳年上の17歳女子高生が19歳男子の後ろからヌッと現れた、アセルス姉さんじゅうななさい

445 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/22(金) 17:47:37.17 ID:EOANnSFz0


  レッド「あぁ…姉ちゃんは、その紙袋の中身は?」

  アセルス「ふふっ、あれだよ」スッ



 緑髪の少女が指差す方角は衣服が売りに出されている一角だった
浴衣や着物もそうだが宇宙開拓<フロンティア>が進むにつれ客層もグローバル化が進みつつある…何処の惑星でも通用する
カジュアル服も当然ながらある、物価の高い[マンハッタン]、そこよりかは安く済む[クーロン]よりもなるべくなら
資金を消耗せずに済ませたい、…次の目的地が[京]と決まった時に買うならこっちの方がよいと判断したのだ



  アセルス「ずーっとこの貴族服だからね…」クルッ


  レッド「あ、そっか…姉ちゃん追われてるんだよな…」


  アセルス「うん…服を作ってくれたジーナ…あ、友達のいい子なんだ、そこの子には悪いけどこの服は鞄に仕舞って」

  アセルス「こっちの、人間だった頃によく着てた奴を着ようかと」ゴソゴソ




 アセルス編OP時の歩行グラフィック水色パーカー『 』ピラッ




  レッド「うわっ、懐かしい…」

  アセルス「あはは…私からしたら懐かしい、って感覚じゃないんだけどね…」ポリポリ



レッドから見れば12年ぶりの服装、最近目覚めたアセルスからすれば実に数日前の服装である
 追われる身であるのならばせめて中世ファンタジーの王子様ファッションから目立たない恰好にしておきたい

 …尤も妖魔は特有のオーラで何処にいるか大体わかるから多種多様な人種入り乱れるリージョンで人混み
特に妖魔系のグループが大勢いる辺りに紛れてる時ぐらいしか役に立たないかもしれないが


ちなみ彼女曰くジーナから貰った大事な服は間違っても捨てたりしない、らしい




  白薔薇「まぁ…色鮮やかで綺麗ですわ、…こ、こんぺーとー?」

  ルージュ「へぇ、これお菓子なのかぁ」ヒョイッ



金平糖<コンペイトウ>、白、赤、緑、黄…透明な瓶の中にはお星さまが沢山入っている
 土産屋のカウンターから老婆が顔を出し、茶菓子に如何か?と尋ねて来る
紅き術士と妖魔の出で立ちから、他所から来た人ならお一つご試食を、とご丁寧に広げた和紙の上に乗った星をくれたのだ



  ルージュ「…おぉ!あまーい!」パァァ…!

   白薔薇「ええ、口の中で少しづつ溶けていく…飴細工のようですわ」

  ルージュ「おばあちゃん、ひとつ貰うよ!」つ【お財布】


  「おんや、まぁ…そんなに気に入ってくれたかえ?」



  白薔薇「あら?こちらにもありますね…?いえ、これは―――」



  「ああ、それは[京]で精製した[精霊石]じゃよ」


  ルージュ「[精霊石]?…へぇ、[マジックキングダム]以外でも売ってるんだ」

446 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/22(金) 17:48:10.63 ID:EOANnSFz0

 土産屋の老婆が言うに、[京]の風水師や陰陽師が清めた魔道具や消耗品が特産品の1つでこの石もそうだという
投げれば、砕け散った破片が敵意を向けて来る者に刺さり自身を守ってくれると



  「ほっほっほ、それだけじゃないぞ、この[ラッキーコイン]や[アンラッキーコイン]やお守り各種も…」


  ルージュ「んー、ならコインを幾つかと[精霊石]を貰おうかな」



綺麗だし、旅の思い出ってことで良いかなと、故郷でも手に入る石をコインと一緒に購入した…



――――後に、この[精霊石]がブルーと出逢った時に役立つのだがそれはまだ先のお話




―――
――
―


  レッド「つーわけで、人間3人此処で修行したいんだ」

 アセルス「よろしくお願いしますっ!」

 ルージュ「頑張ります!」


  「うむ、では奥の部屋で座禅を組み、精神を集中させなされ…試練に挑戦できるのは一度のみじゃ」


 白薔薇「皆さん、頑張ってくださいね!」←見学

  BJ&K「応援してます」←見学



受付で[心術]の資質を得るべく、手続きを済ます…手続きと言っても特に変わったことをするでもなく
 ただ、受けたいからやらせてくれと言うだけである


 蝋燭の頼りない灯り、お香の独特な匂い…奥の広間で来客のルージュ等三人を出迎えたのは仏像という
変わった様式の彫像だった…物珍しいソレを眺める術士、「懐かしいなぁ学校行事で来た時はお試しコースだった」と
少女が言い、「こいつと睨めっこすればいいのか」と少年が頷く


赤の名を持つ少年が仏像の前に正座して目を閉じる、その隣に紫の血を持つ少女が、そんな二人に倣って紅き術士も




      ルージュ(二人と同じように眼を閉じてればいいのか…)パチッ

      ルージュ(……)

      ルージュ(…う、ん?)グニャァァ



―――
  ―――
      ―――
        ――…



      ルージュ「あれ?なんで草原みたいな所に…」

          「きぃぃぃぃーーーっ」     


      ルージュ「モンスター![ハーピー]か…ッ」シュタッ!



        「けけけっ! 血肉を寄越せェェ!!」グォンッ!

447 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/22(金) 18:04:45.07 ID:EOANnSFz0

 視界に広がるグリーンの絨毯に影がある、背中に生えた翼をはためかせた半鳥半人の化け物が陽光を遮って作った物だ

小さな豆粒ほどであったそれはルージュ目掛けて高度を落とすに連れて、…地表へ近づくことを示すように大きくなる
 両脚の鋭い爪が銀髪の垂れ下がる両腕の付け根を刺し、そのまま千切り取ってやろうと降りて来るも
彼は自分と地表の影が重なるタイミングを見計らい、それを[見切る]…っ!


頭上に豆電球でも灯った様な感覚だ、どうすれば避けられるか身体が自然と閃いたままに動く



    「ケェー!!、ちょこまかと…!」ガッ!


農夫が柔らかい土塊に渾身の力で鍬を振るったかのように[ハーピー]の両脚は突き刺さる、すぐに足を引き抜いて
 地の利を生かそうとホームグラウンドの蒼穹へ飛び立とうとするが…



    ルージュ「先に仕掛けて来たのはキミなんだ、…恨んでくれるなよっ!」カチャッ!BANG!


        「ゲゥ、…この餓鬼ぃぃ!よくも俺様の顔を…ケェエエエエエエエエェケッ」グォンッ


    ルージュ「エミリアさんみたく上手くはいかない!1発じゃ仕留めきれないかっ!」ダァンッ!ダァンッ!



    「へひゃひゃ!へたくそぉ!そんな豆鉄砲の腕じゃあ鳩だって堕とせねぇーぜ、ケヒッ」ゴォォォ…

    ルージュ「それはもう見切った――「甘ぇぇよ!!」ガッ! ボッコンッ



  同じ動作で再び紅き術士に爪を突き立てようとしたのか、否、人間の皮膚を切り裂くのが目的ではない
次はそのまま、土を掻っ攫うように地面に突き立てたまま前進し、地中の硬い大岩を踵爪に引っ掛ける
 土木建築のクレーン重機が持ち上げてみせるのと違わない動きを器用に熟して人の頭部を二周り以上大きくした岩を
ぐるぐると回転して遠心力付きでルージュに投げつける



    ルージュ「あく"ぅ―――っ」ガッ


     「いひゃひゃ!ヤッター、メイチュー、ストライクー、くひゃひゃ!」


 片脚に命中した大岩、衣服に広がる鮮血、尻餅をつき、片手で負傷した脚を引き摺ろうとするルージュを見て
モンスターは舌なめずりをする、狩りは鮮度の高い肉を喰えるから良いのだ


薄い桜色の脂、それを多く赤黒い体液、鉄の味がするワインに酔い、勝利の末に得た極上の肉を舌の上で溶かす


動きの鈍った獲物目掛けて[ハーピー]は今度こそトドメを刺そうと次は両脚をルージュの胸――心臓に狙いをつけて





        「心臓もーらいィ!それで俺様の顔の傷は許してヤルよ!あーひゃひゃひゃひゃ」


       ルージュ「…っ、[インプロージョン]!」キュィィン







            ボジュッ

                        ボトッ ベチャッ…ゴロゴロ…    バサッ…




笑った顔のまま、モンスターの"生首だけ"墜ちて転がった。

釣り上がった目元も舌を出して品性の欠片も無く哂った顔のまま、少し遅れて背中に生えていた筈の翼もバサっと墜ちた

448 :今回はここまで [saga]:2019/02/22(金) 18:05:54.79 ID:EOANnSFz0

―――
  ―――
      ―――
        ――…


     「おい、ルージュ。 起きろよ!ルージュ…!!」ユサユサ



  ルージュ「うっ、…あれ、…ここ、さっきの」




    レッド「お、やっと起きたな寝坊助め…どうだ?夢に出て来た魔物倒せたか?」

   アセルス「どういう理屈か知らないけど、自分の中の不安とかが形になって出る来るから倒せたら成功だって」


  ルージュ「え、そうなの…それならなんとか…」


  ルージュ「…」



   -ルージュ『エミリアさんみたく上手くはいかない!1発じゃ仕留めきれないかっ!』ダァンッ!ダァンッ!-

    -『へひゃひゃ!へたくそぉ!そんな豆鉄砲の腕じゃあ鳩だって堕とせねぇーぜ、ケヒッ』ゴォォォ…-


  ルージュ「…。」

  ルージュ「自分の不安、か」




  ルージュ(結局最後は僕、術で倒したんだ…術が使えなくなった時、足手まといになる、僕が仲間の脚を引き摺る…)



目を片脚に向ければ大岩をぶつけられた痕も、衣服の血汚れもそこには無かった



   レッド「俺は、なんか変な腕が出て来たな…いきなり[空気投げ]喰らってな、そのあと巻き返したけど」

  アセルス「私は蝙蝠が襲ってきたわ……昨日苦しめられた[スクリーム]を使ってくる敵よ」グッ!



それぞれ魔法生物系モンスターの[ダガーグラブ]と巨大蝙蝠の[ソニックバット]が襲って来たらしい
 結論から言うと友人達もルージュ同様に撃退に成功し試練に打ち勝ったと

―――
――
―

   「うむ、合格じゃ…これでそなたらは[心術の資質]を得た」


  レッド「…なぁ、資質って言われて姉ちゃんはなんか実感あるか?」ヒソヒソ

 アセルス「えぇぇ!?…いや、言われて見れば心がスッキリしてるような、ないような…」ボソボソ



  ルージュ「いや…あるよ、ハッキリわかる」




  ルージュ「あの大仏の部屋を出た辺りから何か、目覚めそうな気がするんだ…今まで分からなかった事が分かる」


  レッド「ほ、本当か?俺は…あんましそういうのピンと来ねぇぞ?」ヒソヒソ

  ルージュ「…ううん、戦いの最中で、自分の生命を賭す局面で[心術]を使えば、明光のように突然パーって…」


えらく抽象的で感覚的な事を言われるな、とレッドは思う、だが…不思議と"妙な説得力がある"のだ…否定できない
 自身の心が何処かでソレを"納得"しているのだ…っ!…これが資質を得ている、ということなのだろうか
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/23(土) 21:26:54.59 ID:/iBvLIu90


  レッド「ま、俺は術の事はてんで素人だからな、術士のお前が言うならきっとそういうことなんだろうよ」

  レッド「そうと決まりゃ何か一つ基礎術のスクロール…で良いんだよな?」


  ルージュ「そうだね、お金で魔術書…スクロールを買って基礎術を教えて貰う、後は自分でモノにしてく感じだよ」

  アセルス「…だったらさ、全部買う必要ないんじゃない?頻繁に使いそうなの一つ買ってあとは節約するとか」


  レッド「おっ!いいなソレ!おーい受付の人、早速売ってる術見せてくれよー」




 「はい。」デンッ

・[克己] 料金300クレジット

・[呪縛] 料金300クレジット

・[隠行] 料金300クレジット





  レッド「 」


レッドのお財布『170クレジット』




  アセルス「へぇ〜!色んな術があるのね【麻痺】効果の[呪縛]に、自身の怪我を完全治癒する[克己]…良いわね!」

  アセルス「烈人君はどれにする?やっぱり[克己]?」


  レッド「エッ、アァ、ソレガイイヨナ、ジツヨウテキ ダヨナ。」



目が点だ。


試練に打ち勝ち、資質を得た…試練には勝てたが現実には勝てなかった、世の中は金という天下が回っているのだ



ここでアセルスに泣きついて、姉ちゃん!必ず返すから金貸してくれぇぇ!と泣きつくのは容易い
 男としての矜持をかなぐり捨てるだけで借用書が一枚できあがりだ


…おそらくアセルスならレッド、否、烈人君でなかったとしても利子無しで貸してくれるのだろう
女から小銭を借りる男、ヒーローの男児のプライドに罅が入りそうでそれは嫌だ




 ツンツン


  レッド「ぁ?」チラッ

  ルージュ「…」腕ツンツン


  ルージュ「レッド、これ…僕から」つ『300クレジット』

  レッド「!? お、お、お前ぇ…」プルプル



ひそひそ声で300クレジットこっそり渡してくれる友人に目頭が熱くなる、「カメラのお礼だよ」と人差し指を口に当てて
これ内緒ね?と…声には出さないが仕草で伝える、男の誇りを理解する者同士、言葉はなくとも分かり合ったのであった

持つべきモノは友だなぁ…

450 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/23(土) 21:27:21.19 ID:/iBvLIu90

―――
――
―

【双子が旅立ってから4日目 午後14時32分】



このリージョンでの目的は最早果たしたも同然であった、…いやアセルスの武器はまだだが


 あの[森の従騎士]の様な一人で複数人を一斉に攻撃する範囲、又は全体攻撃の手段を所有する敵と対峙し
且つ回復が間に合わない状況下に陥ったとしても最低限、自身の傷は完治できる

それだけでも十分全滅の憂いを避けることができる…そして、ルージュにとって初の"資質"の入手だ…



       ちゃぷん…


                 カポーン!



  ルージュ(…資質、か)




国の命令を聞かなければ国家反逆罪で祖国の魔術兵が群れを成してルージュを追い回す
 それこそ大昔に何処ぞの惑星で実地された悪しき風習の魔女狩りを彷彿させる恐ろしさだ
最悪、紅き術士の身柄を拘束して洗脳や麻薬による狂戦士化状態でブルーと邂逅すらあり得る…馬鹿馬鹿しいと思う話だが
本当にその莫迦げた真似を実行するヤバさがあるからルージュにはどうしようも出来ない


自意識の無い幼子の頃から子供をどっちか死ぬまでの対決させるだけの為に施設に入れて国ぐるみで養育する狂気

しかも、ルージュの他に"裏の学院"には彼以外の子供の沢山いた、つまりそれだけ【そういうこと専用の候補生】が居た


出来ればそんな運命はまっぴら御免で、逃げられるなら何処へなりとも逃亡したい…

何処でどんな方法で監視か何かされてるのかさえ知らないが、体裁だけでも資質を集めている風に見せる必要がある




資質が手に入ったのは…純粋に今居る仲間の力になってあげれるから嬉しいがその反面で

自分の自由が終わる、兄弟同志で殺し合う為の舞台が整いつつある、そんな嬉しいとは真逆の相反する感情も孕んでいる




  ルージュ(…)ちゃぷっ!ちゃぷっ!


  ルージュ(…。旅してる内に解決策、何か考えないとイケナイ、わかってるけど何も思いつかないよ…)





        ザバァァァ!!




  ルージュ「うわっぷ!?」ばしゃぁぁあ!


  レッド「あっはっは!吃驚したか!」ハッハッハ!


  ルージュ「むぅ…!やったなレッド!」バシャァァ

   レッド「おっ!やるかぁ!」



……ちなみに彼等は今、[京]の日帰り温泉の露天風呂に居る、思いの外、手早く目的を果たせた、とお遊びモードだった

451 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/23(土) 21:28:08.20 ID:/iBvLIu90

 頭に乗っけた白いタオルがお湯を吸いずっしりと重くなる、おでんのはんぺんみたいになった布は銀髪の上で
しんどそうにだらけてて、お返しとばかりにお湯を掛けたサボテンヘアーの上のタオルも似たような状態になった

お風呂にタオルを入れてはいけない、と幸い他に客はいなく迷惑にはならないがマナーだからしないようにと言われた



…騒いだりお湯を飛ばすのは良いのかと問われれば首を傾げる所だがそこは触れないでおこう



  レッド「いやぁ、タダで入れる風呂っていいよなぁ…やっぱ[京]はいいなぁ」フゥ

  ルージュ「お湯の出が良いからなんだっけ?」


  レッド「そーそー、もっと広々として色んな効能ある湯に浸かりたきゃ値の張る宿だけどよぉ」

  レッド「俺もアセルス姉ちゃんもさ、学生やってた頃は学校行事でみんな一度は来るのさ」


  レッド「なんつったって[京]だからな!温泉入って仏像拝んで、んで帰りに土産屋で木刀とか買ってくんだよ」




  ルージュ「……。」



  ルージュ「機会があれば聞こうと思ったんだけど、度々聞く"シューガクリョコウ"っていうのがソレ、だよね?」


  レッド「ん?まぁ…そうなるな、ってかお前その言い方」

  ルージュ「そっか、これがシューガクリョコウなのか」


  レッド「お、おいおい…お前嘘だろ、修学旅行したことないのかよ」


  ルージュ「本で読んだことはあるよ、学生が自分達のリージョンから他所のリージョンへ遊びに行くんだろ?」

  ルージュ「僕は、一度だけ術の座学で[ルミナス]と[ドゥヴァン]に先生の術で数分くらい連れられたくらいかな」



人生で他所の国に遊びに行ったことがない

どころか魔法王国の学院生徒であった彼は修学旅行なんてもの一度も経験してない


基本的に[マジックキングダム]の民は他所への外遊を許可されていないのだから…





  ルージュ「…?レッド、震えてるけど、どうかしたの」


  レッド「〜〜〜っ!」ガシッ!

  ルージュ「えっ?えっ?えっ?」



  レッド「 よ く わ か っ た !  ! !! 俺に任せろ!!」


  ルージュ「ま、任せるってなにを?」


  レッド「ばっかやろう!お前22歳になって修学旅行の1つも行ったこと無いとか人生損じゃねーか!」

  レッド「ダチとワイワイ騒いで、遊んでって青春の一頁だぞ!無いなんて悲しいだろ!俺に任せろ!」




何かわからんが心に火が灯ったらしいレッド少年の気迫に負け、とりあえず術士は頷いた…

452 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/23(土) 21:28:35.02 ID:/iBvLIu90
―――
――
―


  ルージュ「それで、どうするんだい?」

   レッド「へっ!温泉に来たんだぜ!男が温泉に来たらやることなんて決まってらぁ!」ニヤリ




―――
――
―

【露天風呂:女湯】



  アセルス「…」ちゃぷん


  アセルス(水面に映る私の姿……この、緑色の髪の毛)スッ




 アセルスお嬢は、陽気立つ水面が映す自身の顔を見た、生前――人間だった頃――と変わらない顔立ち
17歳で成長の止まった身体、それに合わせた歳相応のあどけなさが今の表情にはあった

どうすればいいのか、途方に暮れそうな、捨てられた子犬のような顔


戦地に一度立ち剣を振るわば、花を愛でる少女よりも勇ましく軍旗を振るう戦乙女の如し麗人さよ


そんなボーイッシュな彼女は自分の変色した髪色に溜息をつく
 以前は赤みの掛かった茶髪だったそれは人間じゃない生物に変貌した事を強く主張する…綺麗なエメラルドの美しさだが
当の本人はその鮮やかな色を好まなかった


 自分が人間を辞めさせられたことを強く実感するから……



 ちゃぷっ



  アセルス「っ!誰!?」ビクッ


  白薔薇「アセルス様…私です、お背中、お流し致しますよ」ペコッ


  アセルス「なんだ…白薔薇か、――って背中!?いいよ!私もう子供じゃないんだから///」

  白薔薇「ふふ、そう仰らずに」スッ



  アセルス「あっ……もうっ!」プイッ

   白薔薇「…ふふ、拗ねないでください」


  アセルス「……こそばゆいよ、まったく//」


  アセルス「……。」


  アセルス「ねぇ、私…もう一生、人間には戻れないのかな」



 白薔薇姫の手がその一言で一瞬止まった、だが…それは一瞬だ、何事も無かったように続ける

…少女に不安を感じさせまいと


   白薔薇「可能性が無いとは言い切れませんわ…」

453 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/23(土) 21:29:24.85 ID:/iBvLIu90



  アセルス「…私、怖いんだ」

   白薔薇「…」





  アセルス「寝てて、怖い夢を見たんだ…私が、オルロワージュを倒す夢」








 ―――手が止まった、今度は一瞬ではない


白く健康的な肩肌を震わせた少女はポツリ、ポツリ、と"悪夢"の内容を語る



自分を半妖にした原因たる人物、妖魔の頂点に立つ者、…魅惑の君[オルロワージュ]、白薔薇姫の主でもある人





   アセルス「私が、赤紫のお姫様が着る様なドレスを着てたんだ、鏡に映ってる私は……頭に角が生えてて」


   アセルス「すごく綺麗なんだけど悲しそうな顔をしたジーナがその夢に出るんだ、私の顔をみて怯えたような顔で」


   アセルス「…それで、夢に出てくる私は言うんだ『君は私にとって特別な人だ。私の最初の姫だからな。』って」




  白薔薇「…」




   アセルス「その後ラスタバンやイルドゥン…色んな妖魔が来て、思い思いに自分の感情を吐き出して」


   アセルス「私は、そんな彼等を切り捨てた、夢の私は…夢に出てくるアイツは…っオルロワージュと同じ、ううん」


   アセルス「刻の流れの止まったリージョンから外にも手を伸ばして全てを跪かせようとした、それ以上の悪魔だ!」






   アセルス「白薔薇…っ、怖いんだよ…その夢には何故か白薔薇が居なくて、誰も止めてくれなくて…怖くて…っ!」




   白薔薇「アセルス様、それは夢です…現実ではございません」ギュッ

   アセルス「…〜っ」


   白薔薇「…少し、湯冷めしてしまいそうですわね…このままお湯に浸かりましょう?」ニコッ

   アセルス「…。」

   アセルス「はは、後ろから抱きすくめられたままの入浴って変だよ…」


   アセルス「……ありがとう」ギュッ



 アセルスお嬢は…自分を抱きしめる腕にそっと手を添え優しく握り返した、嗚呼、今は怖い夢の中じゃないんだな、と
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/23(土) 21:29:57.39 ID:/iBvLIu90
























一方その頃…



ガチャッ!


    レッド「ぐ、ぐおおおおぉぉぉぉ…!!  ぉ 」ドサッ

   ルージュ「…… も、   む り」バタッ




   ルージュ「ね レッド 、これが きみのいう おとこが来たら温泉で すること な  の?」

    レッド「さ、サウナ我慢大会は おとこの ロマン なんだ よ ガクッ」


―――
――
―


  コーヒー牛乳『 』フタ ポンッ!
  コーヒー牛乳『 』フタ ポンッ!


   レッド「ゴクゴクゴク…」
  ルージュ「ゴクゴクゴク…」


  レッド「くぅ〜、汗思いっ切りかいたら、洗ってから冷たいコレだぜーっ!」プハァ

 ルージュ「美味しいね!これ!」



  レッド「な?我慢した甲斐があったろ?あの後だからこそ冷たいのがうめぇんだよ」


 ルージュ「ああ、いいものだ……、今度来る機会あったら僕が勝つからな」ニィ!

  レッド「いいや、次も俺が勝つね」ハハッ

<アハハハ!


  アセルス「あ、二人共…上がってたんだね」ホカホカ

  白薔薇「お待たせしてしまいましたか?」ホカホカ


  レッド「いや、そんなことはなかったぜ」
  ルージュ「うんっ!」



 充電させてもらってるBJ&K「……私はメカですので羨ましくありませんよ、ええ…放置されるのは慣れてます、ハイ」

455 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/23(土) 21:30:25.02 ID:/iBvLIu90



  ルージュ「このリージョン…本当いいとこだよね、紅葉が綺麗でさ…水の上に舞い降りて浮かんでるのがまたね」



 温泉の暖簾を潜り、湯上りの術士は親友達に語り掛けながら畔へと目を向ける

水面の青に、舞い降りる赤。


そこには調和がある



 枝からはらり、と巣立った葉は水鏡を征く小舟となる…自然の生み出すどこか儚く、切ない自然美だ

相反する色合いだからこそ、見映える…赤と青だからこそ重なり合った時にそれを美しいと思う、ただ反発するんじゃない



   ルージュ「……。」



正反対だから争う、ではない…相手とは違う方向性に秀でているからこそ足りないモノを補い合えればいい
 だが不思議な事に人間って奴はその発想に至れない、他者を見てそれに優劣をつけ競い、争い、蹴落とすという
徹底して相手を容認しない選択肢を取りたがるのだ


勿論、理屈では分かる、人と人が何故手を握りたがらないか、人間は動物とは違う…知性がある、それが何を意味するか


如何なる環境であれ、己の生存圏の拡大や権利の為に弱肉強食の闘争を繰り広げる行為も知性云々関わらずに在ることも




だが、どうせ"知性"を得た生物になったのなら、弱肉強食とは違った形で生きてみようと思わないのか、術士は度々想う





  レッド「だよな〜、今言った通りここはその時期にそういう祭りもあるし」

  アセルス「うんうん!」



  ルージュ「……え!?あ、ごめん聞いてなかった!」



  レッド「なんだよ、景色に見とれてたのか?」

  ルージュ「まぁね、あっ、そうだ」ゴソゴソ




  さっきレッドに買ってもらったカメラ『 』バァーン!





  ルージュ「あのさ!みんなで記念写真撮らない?シューガク…コホン、修学旅行ってこういうことするんでしょ?」



  アセルス「あっ、それ良いわね!」

   白薔薇「写真ですか、…噂には聞いてますが、その小さな機械で時を切り取り絵画を生み出すのですね」



  レッド「いいじゃんか!いよいよらしくなってきたぞ!…あ、でもそれだと誰か一人写真に入れねぇ…」

  レッド「…うーん」

  レッド「そうだ、地元の人に頼んで撮ってもらおうぜ!」

456 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/23(土) 21:31:02.33 ID:/iBvLIu90


   ルージュ「そうか!僕、人を探してくるね!!」ダッ!


  アセルス「私達は此処で待ってるからねー!……白薔薇は私と手を握っててよ迷子になるといけないから」ガシッ

   白薔薇「は、はい…」



―――
――
―

タッタッタ…


  ルージュ(……今日で国を出て4日、か)ハァハァ…



  ルージュ(………不安しかなかった旅の始まりだった、決して旅の理由も素敵なモノなんかじゃないけれど)ハァハァ…










      それでも、それでも――今、自分が外の世界で出会えた人との巡り合わせ、"友達"と呼べる人ができたこと




     …それだけは自分の22年の人生で、きっと一番誇っていい、輝いてる宝物だと思う






       どんなに辛かろうとも旅路を思い返せば、嗚呼、いい旅だった…まるで夢のような時間だった、と



     きっと、そう言えると思う、―――いい夢だ、悪夢なんかじゃない







    "家族を殺す為"の旅…そんな呪われた因果の資質集めだけど






       ルージュ(綺麗な景色をたくさん見た、トラブルにも巻き込まれて…女装させられた時もあったっけ)


       ルージュ(見たことない食べ物を食べたり、温泉に入ってサウナ我慢大会したり…)


       ルージュ(……この"楽しい"って感情が、僕にとっての修学旅行なのかな)




 魔法学院を出て初めて祖国から出る許可を貰った、人生で最初にして"最期"になるかもしれない旅行


この旅は、殺し合いを控えてる彼にとって"本当の意味で最期かもしれない旅行"でもあるのだ


ならば…せめて夢心地で居たい、楽しい事をたくさん経験して、ぶらりと色んな所を見て回って…いい旅夢気分でありたい


457 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/23(土) 21:31:28.65 ID:/iBvLIu90







  ――――−今だけは夢気分、嫌な事も…近い未来の事も忘れてパーッと楽しもう、ううん、楽しみたいんだ







   ルージュ「…!あんなとこに人影が!おーい!そこのひとぉーーー!」手フリフリ





写真を撮ってくれそうな地元民を探し、すぐの事、息を切らせたルージュはその人影に向けて手を振った
 その出で立ちは正しく[京]にお誂え向きな鎧武者と言った具合であった











       通りすがりの悪の秘密組織の幹部「む?私に何か用か、若者よ」クルッ






   ルージュ「わっ、すごい鎧…かっこいい、あっ、じゃなくて、すいません地元の人(?)ですか?」





 振り返ってくれた地元民(?)は人間<ヒューマン>では無かった、メカだった、スゴイ和風ロボットである




 通りすがりの悪の秘密組織の幹部「地元民、か…生まれた地は違えど、この土地に住んでいる者ではある」



聞くに、このサムライロボットは[京]の書院に住み込みで働いているらしい、友達と観光記念写真を撮りたいから
 シャッターを頼めるかと聞けば快く引き受けてくれた、良い人(?)だ



―――
――
―
【双子が旅立ってから4日目 午後16時11分】



 悪の秘密組織の幹部「そこの貴婦人、もう少し連れのお嬢の方に寄って頂きたい、さすれば写真の良さが増す」


  白薔薇「はい、アセルス様、失礼します」ソソッ

 アセルス「う、うん…こう密着されると恥ずかしいけどね//」 


 悪の秘密組織の幹部「術士の若者よ、角度を右方向に少し曲げてピースサインを頼む」


 ルージュ「こうかな」ピース!


 悪の秘密組織の幹部「うむ、いい画になる…では、いざ参るっ!参、弐、壱!」カメラ パシャッ!

458 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/23(土) 21:31:55.91 ID:/iBvLIu90


  悪の秘密組織の幹部「…うむ、良い出来だ、現像を楽しみにされよ」

        レッド「ははっ!そうさせてもらうぜ!アンタいいメカだな!」


      ルージュ「いやぁ、本当すいませんね道すがら声をかけて、いきなり写真を撮って貰っちゃって」



  悪の秘密組織の幹部「気になさるな、…私もこの土地が好きでな、旅の者が良き思いでを土産にしてくれればと思う」



   レッド「…。」

   レッド(なんか、えらく人間味のあるメカだな…)ポリポリ



 メカ族は、コア…人間でいうところの心臓、脳にあたる大事なパーツを中心に構築される
疑似的な人格こそあれどそこに"感情"があるかと問われれば首振る所である


それは…バイオメカニクスの権威、小此木博士の息子であったレッドならよくわかる、科学者の父から言われた事だから


 実際レッドの隣に居るBJ&Kも多少感情的な動きをしている様に見えるが
それだって元となった人格モデルの行動パターンに過ぎない、心無い言い方になってしまうが…



…このサムライロボットはまるで、本当に心が備わってるのではないかと疑いたくなる程に―――



       アセルス「そういえばあなたのお名前は?」

  悪の秘密組織の幹部「おっと、名乗りが遅れ失礼致した…私は、メタルブラック、父は私にそう名付けた」



"父"…このロボットを開発した人物なのだろう、…本当に心があるようなメカ、さぞ素晴らしい科学者なのだろうな


      アセルス「メタルブラック…ここまで色々してもらって申し訳ないけど[京]にいい剣ってないかな?」

      アセルス「その、土産屋さんにあるような木刀とか竹刀じゃない奴…」



    メタルブラック「…刀をご所望か」



 [京]には武器を売ってる店が無い、装飾品や魔道具はあったが本格的なモノは無い
…[クーロン]の方がまだ良かったまである


 学生の為の木刀や竹刀でまさかモンスターと戦う訳にも行くまい、駄目元で地元民の機械に尋ねたお嬢に対し
メタルブラックは暫し、顎に手を当てて夕焼け空を見上げる、小考、…そしてアセルスに向き返り


  メタルブラック「すまないが、時間はあるだろうか?其方が良ければ[書院]まで来れぬか」

  メタルブラック「私が随分前まで愛用していた刀がある…決して良いモノとは言えぬが無いよりは幾分か良い筈だ」



願っても無いお申し出だった、丸腰か未熟な腕で[幻魔]解禁かの二択だった所に剣を頂けるのだから行かない手が無い

夕焼けの朱に照らされ[京]が一際美しさを増す時間帯、4人と2機は…[書院]への坂道を登り始めた


   レッド「なぁなぁ、ルージュ、カメラ貸してくれよ、夕陽に照らされた街並みがすげぇ綺麗なんだ」

   レッド「俺がベストショット撮ってやるからさ!」

  ルージュ「元々はキミが買ってくれたものだからね、断る理由はないよ」スッ


   レッド「へへっ!サンキュー!俺もカメラ買えば良かったかなぁ…待ってろよ〜撮った奴はコピー機で――」

459 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/23(土) 21:32:56.07 ID:/iBvLIu90

 赤い少年が紅き術士からカメラを受け取り、坂道の先にレンズを向ける…赤焼けの瓦屋根の輝き、樹々の揺れる葉
そして[京]の[書院]という最高の風景写真を撮ってやろうと彼は思っていた



が、被写体は風景から人物へと変わる



 宇宙進出の技術が発展し、開拓<フロンティア>が進むこの御時世、最近のインスタントカメラも小馬鹿にはできない
画質の良さ、フラッシュ機能…そして遠くを写す遠望レンズ


 自分達が現在進行形で登る坂道に先客が居る、カメラ越しにその姿を見てレッド少年は目を見開いた
すぐに遠望モードに切り替え、その服装確認する





       レッド(あ、あいつは…間違いねぇ!!麻薬を売ってた巡礼者じゃねぇかッ!?)カメラ ノゾキ





パシャッ!


カメラのシャッターを切る、


パシャッ!

もう一度カメラのシャッターを切る、


パシャッ!


この先にある[書院]へ入っていくことをしっかりと捉えたカメラのシャッターを切る。







    アセルス「烈人君どう、いい写真は撮れたの?」

     レッド「…ああ、撮れたよ、すっげぇいいのが」

    ルージュ「本当かい、楽しみだなぁ〜へへっ」



     白薔薇「…あら」


    メタルブラック「どうかされたか貴婦人殿?」ピタッ



     白薔薇「……、いえ、きっと気のせいですわね」

     白薔薇(ええ、そうですわ…今、感じた妖魔の気配…すぐに消えたからきっと……)スタスタ



―――
――
―
【双子が旅立ってから4日目 同時刻:[京]の庭園】


   「…おお、なんと美しい景色だろうか、[ファシナトゥール]から出て久しいが…いやはや…」スタッ

   「―――景色に見惚れている場合では無いな、あの御方の為にも…なんとしても私の妹姫、白薔薇に会わねば」



   金獅子「あの御方、オルロワージュ様に逆らう意図を…この私、金獅子が見定めてみせましょう…!!」

460 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2019/02/23(土) 21:34:10.59 ID:0gnXiJw50
えらいこっちゃ
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/23(土) 21:36:28.35 ID:/iBvLIu90
*******************************************************




                     ※ - 第3章 - ※



            〜 資質を得る、という事…ぶらり、いい旅夢気分 〜

                                              -完








 現在の[京]

・ワカツの剣豪 ゲンさん

・誰よりも勇ましく強かった寵姫、金獅子姫

・ブラッククロス幹部、武士<もののふ>の心を持つメタルブラック


京に強者集まり過ぎ問題






※サガフロはとある事情でブルーは[心術]の資質を得る事が出来ない

同様の理由で双子のルージュも本来なら得られませんが、人間<ヒューマン>は試練受けるのOKというゲームシステムの所為で
ルージュも資質を得られるという製作スタッフ側の設定ミスで彼も心術の資質を得られるという…

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462 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/24(日) 02:25:51.92 ID:UgyrRc4eo
乙
システムの都合丸出しなゲームとは違うだろうからルージュも心術の資質取れないよくらい言われるかと思ってたぜ
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/24(日) 21:58:45.46 ID:kA6y9cuuO
乙乙、最近更新多くて嬉しい
閃きシステムは面白かったなあ
464 :書き溜め投下 [saga]:2019/02/24(日) 23:11:36.39 ID:KgqZGLId0






           ※ - 第4章 - ※



   〜 想うこと、思うこと。 帰るべき場所、帰れる居場所。 〜



465 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga!蒼_res]:2019/02/24(日) 23:12:44.56 ID:KgqZGLId0


 その日は、一際暑い一日だった


 石畳をじんわりと焼く強い日差しは遠く浮かぶ夏空に聳え立つ山が如し積乱雲を創り出す
手を繋いだ仲の良さそうな少年二人が入道雲の頂を眺めていた



 暑い中、二人のよく似た少年…整った顔立ちと長く伸びた髪から少女にも見えたかもしれない





 蒼を身に纏った金髪と、紅を身に纏った銀髪が石畳の噴水広場で生き物の様な形の雲を探して遊んでいた




【見て見て!でっかい怪獣の雲だよ!きっと周りの雲をお洋服みたいに着て飛んでるんだ】

『はははっ!いーや、違うな!あれは空飛ぶ居城に違いない、見た目雲だが突っ込めば亜空間に繋がってるんだ』



【えー、なにそれ〜】

『前に図書館の本で読んだんだ、お菓子とおもちゃ、子供だらけの世界でデカい馬がその空間の王様なんだよ』



【へんなのー】

『ああ、俺も莫迦げた御伽噺だと思う、そんなふざけた空間あって堪るか』



【ふふ、そう思うのにあの雲を見てキミはその空間に繋がってるんだって言っちゃうんだ?あははっ】

『ああ、信じてない癖になんでだろうな…ははっ…』



『……誰かと、ふざけあったり、馬鹿な事を言って大笑いしたかっただけなのかもな』

【そっか、…。】





【なら、ひとつキミのお願い事が叶ったんだよ!イイ事じゃないか、もっと笑っちゃおうよ!こんな風にさ】
『そうだな』




【…。】
『…。』


【おっきい雲だよね…本当、アレに乗ってお昼ねできたらきっと気持ちいいんだろうね】
『…雲の上でお昼ね、か…そうだな、それこそ夢物語の楽園…"天国"だな』


【天国かぁ…どんなとこなんだろうね】

『…そう、だな、先生に少しだけ聞いた事がある…』

【えっ!?ほんとう!教えて教えてー、どんなとこなの!!】








  『天使…と呼ばれる羽の生えた人がたくさんいるところ、だそうだ』

  【へぇ天使かぁ…どんなところなんだろう、きっと綺麗なんだろうなぁ】

466 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/24(日) 23:13:25.26 ID:KgqZGLId0
【双子が旅立ってから4日目 午後16時37分 [クーロン]のイタ飯屋】


  ライザ「ありがとうございました」ペコッ

  ライザ「さて、今日は早いけどレストランの方は店仕舞いよ」クルッ


  アニー「OK、こっからは裏のお仕事だね」ニヒヒッ

  アニー「…エミリア、大丈夫よね」


 小さく笑った後にウェイトレス姿のアニーが此処に居ない同僚を気遣う
今朝から長いブロンド美女は店を留守にしていた
 何故なら彼女は今頃、軍人コスチュームで絶賛[ラムダ基地]に潜入中だからだ、[リーサルコマンドー]を身に纏い
全身包帯ぐるぐる巻きのミイラと化したルーファスに皮肉を投げつけた後、単身で基地へ二度目の潜入へ赴いた


ある程度、彼女が基地内部をひっかきまわした後でルーファス、アニー、ライザの3人が忍び込み合流


グラディウスの任務である古代文明時代の無限エネルギー発生装置…通称"キューブ"の在処を探るという手筈だ



  アニー「こんな時間帯まで何食わぬ顔で、何処にでもいる一般人の飲食店従業員やってたんだ」

  アニー「裏稼業ってバレない為とはいえエミリア一人なんて危なっかしくて心配にもなるわ」スタスタ…



  アニー「おーい!新人アルバイト!今日はもう終わりだから皿全部洗ったら終わりだ!」ガチャッ



  ブルー「やっとか…」シャカシャカ


  アニー「昨日試しにソースの仕込みとかやらせたけど、吃驚したわよ…フライパンが爆発したんだから」

  アニー「今日一日はずっと厨房で皿洗いオンリーだったけど、そんでも助かったわ、ありがとね」


  ブルー「…ふん、約束だからな」シャカシャカ


エミリアが居ない、その分人手が減るのは必然で表の仕事は忙しくなる
 空いた欠員を早速バイト術士で埋めようと、昨日の段階でもう考えていた、誤算があるとすればこの蒼い魔術師は
料理がとんでもなく下手だったということだ


フライパンで簡単なミートソースを作れと手本を見せながらやったら何をどう間違えたのか調理器具が爆発した

ただの鉄板が何の化学反応で吹っ飛んだのか、見ていた誰にも分からなかった…あれこそ魔術であった



金髪の少女は「こいつは剣術以外に基本的な自炊のやり方を教えた方がいいかもわかんねぇ…」と頭を抱えた程である




  ブルー「おい…忘れてはいないだろうな、貴様は他の奴らと何処かに行くと聞いたが?」

  アニー「ん?あぁ、エミリアの援軍に行くまでには2時間あるからね、その間は稽古に付き合うわよ」


  ブルー「なら良いのだがな」コトッ


洗った大皿を拭き、それを水切りラックに乗せる、剣の稽古の約束事を忘れていないならそれでいい
 彼女にも彼女の都合がある為、片手間になるかもとは言われたがそれも承知の上だ


ブルーがエプロンを脱ぎ、早速厨房を出ようとした時だった

ガチャッ…!



  ヒューズ「おーい!ルーファス〜、一緒に[京]で[心術]の修行した仲だろ〜メシ喰わせてくれよぉ」


…『close』と書かれた札看板が見えてないのか、迷惑な客がやって来た
467 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/24(日) 23:14:36.48 ID:KgqZGLId0

 その声を聞きつけ、店内の奥からサングラスを掛けたミイラ男が現れた…ルーファスだ
目元のトレードマークが無ければ恐らく誰か識別できなかっただろう彼は、…包帯とグラサンで分からないが
ゴミを見る目で傍迷惑な客を見ているのだろう


  ルーファス「…アニー、ライザ、すまないがオーダーが入った、こいつは一度来ると梃子でも動かん」

  ルーファス「店の外に叩き出してもすぐ戻ってくる、手早く喰わせてお帰り願おう」


 経験則から分かる、殴ろうが蹴ろうが切ろうが撃とうがタダ飯の為だけに何度でも来る
無駄な時間と労力の消耗より、一皿パパっと作って帰ってもらった方が圧倒的に安く済むと…


  ヒューズ「ひゅーっ!さっすがだぜ!」


   ライザ「という訳で悪いけど、サービス残業よ…」ハァ

   ブルー「…アニー」チラッ


   アニー「諦めなさい、運が無かったってことよ」


  ブルー(……)


   俺は一体、こんな所で何をしてるんだろうか…



 国の勅令で双子の片割れを抹殺する、その為にも鍛錬に明け暮れねばならないというのに…

こんなとこで、…店の中で乱闘するようなこんな連中と、ふざけた配色のエプロンをつけて皿洗い


   本当に何やってるんだ、俺は…



魔術師は心の中でずっとそう呟いていた

蒼き術士は、想定外で事が重なり上手く運ばないことへの苛立ち…焦燥感が少なからずあった
 本来ならこの事態にも怒りを覚えたかもしれない、だが…


昨晩ちょっとした契約があった、エミリアから抹殺対象の動向を知る限り教えて貰う、という事であった


 聞けば、向こうは自分と違い、[秘術]の試練を受けるらしいがルーン文字を既に2つ集めたブルーと比べ相手は何一つと
手つかずの状態であり、しかも何処にあるのかさえ詳細を知らないと…

エミリアが教えた金のカード以外は知らずと来た、進行度も情報も全てにおいて遅れている



それを聞いて、ブルーは拍子抜けした。



命を奪い合う、決戦の決め手にすらなり得る資質集めに対して意欲が無いのかと?…いや、そんな馬鹿な…


 疑問が浮かんだが、それはナンセンスだと振り払う。
向こうだって此方を殺す気でいるのだ、殺られる前に殺る、弟<ルージュ>は自分より劣っていた、それだけなのだ



彼はそう結論付けた、だから本来なら苛立ちを覚える、想定外の来客ヒューズ襲来にも怒りより呆れの感情が先行した


自分がハイペースで突っ走り過ぎただけだった、と少しだけ焦燥感から解放された





―――…ブルー自身は自分でも気づいていない、ルージュが自分より進展が無い事に安堵していること

      それは言い換えれば、無意識に恐れを抱いていることに繋がっている、相手が自分より優秀だったなら?

         自分の生命が脅かされるのではないかと危惧していて、その不安が薄れたから焦燥感から解放されたと
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/24(日) 23:15:06.90 ID:KgqZGLId0


1つ、エミリアは知らない情報がある、知らぬが故にブルーにも伝わってない情報…





―――"ルージュは、初めから兄弟で殺し合いをすることに嫌悪感を持っている"という事実




行動を共にした時、[マンハッタン]のカフェレストランで話をしていた時に
 ルージュはエミリアに資質集めの旅をしていると語った、双子対決の事は伏せて、だ


だからそれに対するルージュの想いを…葛藤を聴いていない、知らない

だから国家反逆罪で追われたくなくて今のところ体裁だけの資質集めだと、知らない



 戦いたくなんてない、殺したい訳じゃない




  ブルーに、ルージュの本心が伝わらない、という…





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―――
――
―

【双子が旅立ってから4日目 午後16時44分 [京]の書院】



 メタルブラックが住み込みで働いているらしい書院に招かれ、待つ事数分…彼はやって来た
その手に一本の[サムライソード]を抱えて




  メタルブラック「名刀とは言えない、何処にでもある武器だが持っていくといい、私には不要の長物だ」スッ

    アセルス「メタルブラック…」



  メタルブラック「そして術士の若者よ、ルージュと言いましたな…もしも資質を集めているのなら情報がある」

    ルージュ「それは…?」


  メタルブラック「私が知るのは秘術のカードの内1つ、[剣のカード]について」

  メタルブラック「かつて、侍のリージョンと呼ばれた[ワカツ]そこに剣のカードがあるのだが…」

  メタルブラック「[ワカツ]は今や亡者蔓延る魔城と化し、宇宙船<リージョンシップ>の便も閉鎖されている」


  メタルブラック「小耳に挟んだ情報だが、現地人の生き残りが居れば特例で船を出すという話だ」


     白薔薇「…あぁっ! そうですわ!大事な事でしたのに!!私としたことが、うっかりと…」ハッ!

     白薔薇「[剣のカード]目当てで人が来ると確かにゲン様は仰られておりました!」

   ルージュ「えっ、それってどういう…」

     白薔薇「今日、ご縁があってお近づきになったゲン様は[ワカツ]で剣豪をなさっていた御方ですわ」



   メタルブラック「ほう?…なんと数奇な命運か」

   メタルブラック「この広い宇宙で壊滅した惑星の生き残りを探す手間が省けるとは…[ワカツ]に行けますなぁ」

469 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/24(日) 23:16:13.73 ID:KgqZGLId0

  レッド「…待てよ?そういやルージュお前、印術じゃなくて秘術を求めてるのか?」

  ルージュ「え、うん…あれ?言ってなかったっけ」


  レッド「言われてねぇよ、けどカードか……だとしたら…」

  アセルス「烈人君、何か心当たりがあるとか?」



  レッド「いやさ、キグナス号で海賊騒ぎがあった時にヒューズのおっさんと二人で歩いてた時、ぼやいてたような…」


  レッド「なんか[盾のカード]がどうたらこうたら…」




世界は広い、然して世間は狭かった


自分の周りに秘術の試練のヒントやら関係者がポンポン出てくるではないか


アセルス等のとばっちりで誘拐され、偶然[ラムダ基地]で"金のカード"について知るエミリアに出会い

ここでメタルブラックから"剣のカード"の所在を聞き、驚くことにその土地への足掛かりとなる人物ゲンと白薔薇が出会う
 カードの話をしていたら芋づる式にパーティーメンバーの一人レッドが実は"盾のカード"を持ってる人を知ってると



  レッド「今度ヒューズのおっさんに会ったらカードの事聞いといてやるよ」

  レッド「それから…」クルッ


  レッド「メタルブラック、この書院に住み込みで働いてるんだよな
             教えてくれ…ここに巡礼者とかはよく出入りするのか?」


 [京]に巡礼者がやって来る、それは別に可笑しなことじゃない仏像の前で座禅組んで瞑想なんて旅行者なら誰でもやる
似たような恰好した団体様がツアーで来る事だってざらにある

 昨日、逃がしたあの麻薬密売人は旅行者ツアーに紛れてしまった、皆が同じ巡礼者の服装だったからこそ
レッドは追跡を断念せざるをえなかった、木を隠すなら森の中、まんまとしてやれた


そう思ったていたのがさっきまでだ、何の巡りあわせか、ルージュから借りたカメラにツアー客の団体から外れて単独で
この書院に向かう巡礼が1人だけ目撃できた


  レッド「どうなんだ?」


  メタルブラック「巡礼者だと?…ふむ、彼等は自らの心の不安を求めてこのリージョンへやって来る」

  メタルブラック「彼等の目的地は常に心の中にあるのだ」


  レッド「…。」

  レッド「つまり?どういうこと」クルッ


  アセルス「えっ、私!?えっとぉ…みんな一人ひとりが行きたい所に行くから
             誰が何処に出入りしててもおかしくない的な意味かな?たぶん」



要するに『温泉目当てで来る奴も居るし、仏像を観賞したいだけの奴も居るし、書物を漁りに書院に出入りする奴も居る』
随分と回りくどく曖昧な回答だ

レッドが見た巡礼者も偶々、この書院に関心があった無関係な一般人だったかもしれない、とそういう意味にもなる


  レッド「メカの癖にえらく哲学的なことを言うなぁ、俺が聞きたいのはそういうんじゃないんだけど」ポリポリ


…このメカは何も知らない、失礼だが聞くだけ無駄だったかもしれない、とレッドは肩を落とす

470 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/24(日) 23:16:50.71 ID:KgqZGLId0

 夕焼け空に赤蜻蛉<あかとんぼ>が飛んでいる、鎧武者のロボットは自分の羽で飛ぶ命を眺めて言葉を続ける


  メタルブラック「古人は言った、石には石の心があると、ならばメカにもメカの心があって然るべきだと」

 BJ&K「わかります」コクッ

 レッド「お、おう?」


  メタルブラック「だが、メカである私には自分の心が見えてこないのだ」

  メタルブラック「心を求めれば求める程に己の中に心が無い事を確信するのだ…それは虚しい」


 レッド「お、おう?」←全然分かってない顔

 BJ&K「感動しました」



 ルージュ「???」キョトン


 ルージュ「ねぇアセルス、僕は機械に詳しくないから良く分からないんだけどさ…」ボソボソ

 ルージュ「あれは心が無いって言えるのかな?」


紅き術士は、目を丸くして少し考え……ますますわからなくなった


赤焼け空の色を帯びて、黒鉄のボディーに赤みがついた侍を見ていた…彼は確かに人間<ヒューマン>ではない
 コアと呼ばれるパーツに予めプログラミングされた疑似人格パターンから思考し行動に移していく



風情溢れる都の空、儚い命の飛来を眺めて『"自分の心について考えるロボット"』を【心無い機械人形】とは思えなかった



  アセルス「いや、私もそういうのはちょっと…ロボット工学とか苦手だったし…」ボソボソ



自分に心が無い、と彼は言ったが、同時にこうも言った、求めれば求める程に無い事知ると


自分にとって嫌なことがあれば、生物はそれを避けようと必死になったり、時には意欲を失う場合すらある



だが、メカなら目の前に勝ち目が0%に等しい敵が居たとしても任務だから立ち向かおうとする
そこに情という起爆剤が無くともだ


 与えられた仕事をこなす、それだけが意義であり、それ以外を考えはしない
今日出逢ったゲンと共に居たT-260とてそうだ、任務を全うすることが全てであると





何かを求める、という行為は生物が生きる上で必要な"感情"だ



喩えば、勝ちたいライバルが居て倒すために力を求めるのだって勝ちたいという闘争心や意欲心から来る

喩えば、孤独が寂しいから人を求める、それだって愛されたい愛したいと、損得を顧みず無償の愛を配る行動だ




敬愛、友愛、親愛…恋慕

敵意、競争心、時として自分自身の誇り護る為、そんな自尊心…etc




…このメカは もう既に 心を"求める"という行動をしているではないか、そして無いと知り『虚しいと脳が判断した』

471 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/24(日) 23:17:43.99 ID:KgqZGLId0





    ルージュ(もう既に心があるって事なんじゃあないかなソレ、単純に当人がそれに気が付いてないだけで)



 石にも石の心がある、ある日突然、無機物に心が宿ったという神話やおとぎ話は世界に幾つもある

 鼻が伸びる糸無しの操り人形の童話だってそうだ、ただの木偶人形が自分を作った父親を探し求め
最終的に鯨の腹から逃げ出して人間として生きれるようになったという有名な話


  レッド「あー、なんか眠くなってきたな」ゴシゴシ

  レッド「姉ちゃんの剣やルージュに術の事教えてくれたり、巡礼の事とかさ、色々ありがとな!」


じゃ!先を急ぐんで、と手をあげてこれ以上小難しいハナシになる前にこの場を経とうとレッドが声を掛ける






   メタルブラック「待ちたまえ、レッドよ―――君はブラッククロスの事を知りたいのではないか」




レッドの脚は止まった。




   レッド「 何 か 知 っ て い る の か ッ ! 」カッ


   レッド「……。」

   レッド「いや、何故わかったんだ」


声を張り上げた仲間にメカを除いた全員がびくりと肩を震わす



  メタルブラック「自分自身の心は見えずとも、他者の心は読みやすい物だ」

  メタルブラック「あの組織には4人の幹部が居る、…ブラッククロス四天王と呼ばれ、己を見失った愚か者揃いだ」



  レッド「もっと詳しく教えてく――」pipipi


  レッド「っ、こんな時にキグナス号から従業員に戻れって連絡ぅぅ!?くっそー!」クルッ



  アセルス「れ、烈人君!」


  レッド「すまねぇ、姉ちゃんたち、俺緊急の呼び出し喰らっちまった!観光はここまでだ!」

  レッド「あとアンタ!必ず戻ってくるから四天王の事そんとき教えてくれ!」ダッ!

   BJ&K「…帰還します」ウィーン


タッタッタ…

ウィーン…


   白薔薇「…行ってしまわれましたね」

   白薔薇「…。メタルブラック様、御聞かせ願えますか?何故、その組織の幹部について存じているのですか」


凛とした[京]の空気が少しだけ変わった、肌寒い突き刺さるようなそれに

472 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/24(日) 23:18:28.71 ID:KgqZGLId0


  メタルブラック「この惑星には外来客が多く訪ねて来る、それで小耳に挟んだだけのこと…」



     白薔薇「…そうですか」

    アセルス「白薔薇、下がってくれ……メタルブラック、あなたから貰った剣の事は本当に感謝してるよ」

    アセルス「ルージュにも役に立つ情報を教えて貰ったからね」

    アセルス「私達は今日はもう帰らせてもらう、それでいいでしょ」


  メタルブラック「ああ」



―――
――
―


  白薔薇/ルージュ「「……」」テクテク


少しだけ俯いて足元を見ながら歩く白薔薇姫、その隣を何とも言えない複雑そうな顔で空を見上げる術士

あの時ブラッククロスの名、そして四天王と呼ばれる存在の情報を出され冷静さを欠いたレッドは黒鉄の侍が
犯罪組織の幹部という情報をどうやって知ったかまで気が回っていなかった


だから白薔薇はメタルブラックに問うた、何故知っているのだと、帰って来たあんな返答を流石に鵜呑みにはできないが
世話になった身だから今日は帰らせてもらう、と…それで良しとしたのであった




   白薔薇「…関係者、ですよね」テクテク

   ルージュ「…良い人、いや、いいメカだけど…そうだろうね」テクテク



 世の中、全ての人物が善人とは限らない

人の良さそうな顔をした人間、それこそ付き合いの良かったエミリアでさえ裏社会の人間なのだから…



 紅い魔術師はポケットに手を突っ込んだ、思い出の写真を撮ったカメラが入ったポケットに



  ルージュ「まださ、ヒューズさんみたいに極秘任務か何かで正体を伏せてるパトロール隊員かもしれないよ」

  ルージュ「メタルブラックが裏社会の人って決まったわけじゃないし」


  ルージュ「それにさ、エミリアさんやルーファスさんみたいな組織の人かもしれないもの」

  白薔薇「そう、ですわね…」


  アセルス「…」


並んで歩く二人の前を行くアセルスは何も言わない、二人からは影を作る少女の背中だけしか見えない、表情は窺えない



…きっと、アセルスお嬢も同じことを考えている




今日出逢った彼がレッドの家族の仇である犯罪組織の手の者だったら…いつか刃を交えることになるのだろうか、と




願わくば、その予測は的外れな妄想であってほしいと切に願った
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/24(日) 23:18:57.58 ID:KgqZGLId0
―――
――
―

【双子が旅立ってから4日目 午後17時37分 [京]の旅館】



  ゲン「わっはっは!いいぞぉ!」


  ナカジマ零式「はいは〜い!ナカジマまわりまーす、空中パフォーマンスー」グールグル


  T-260「ゲン様、飲みすぎです」

  ゲン「いいんだって、ほれ、お前も飲め」ヒック!

  T-260「物理的に飲めません」



   特殊工作車「みなさん、お客様です」ウィーン

   ゲン「あん?お客だぁ、誰だよ、通せ通せ、なんなら宴会に参加してもらえって」ガッハッハ



ガラッ


襖は開かれ、そこに立っていた綺麗な銀髪を見据える



  ゲン「ん〜、うぃーっく、なんだぁ銀髪の綺麗な姉ちゃんだな…旅館の中居さんかい?」ヒック

  T-260「ゲン様、ルージュ様です…水をお持ちしますので酔いを醒ましてください」



水を湯呑みに注ぎながら『過度のアルコール摂取による幻影を見ている模様』と音声を発する丸っこいフォルムのメカを
尻目に、ゲンは目を擦る…確かによく見れば銀髪美少女ではなく男だ



    ゲン「おっと、わりぃ…ルージュの兄ちゃんだったか!」

  ルージュ「あはは、どうぞお気になさらずに慣れてますから」


何処か引き攣った笑いを浮かべてルージュは本題に入ろうとする


   ゲン「で、何の用だい、俺が手伝えることなら手伝ってやるよもう顔馴染だしな!ほれ!お前さん等も飲め」


気さくに茶碗を差し出し、手招きする酔っ払いおじさんにルージュは意を決して言った





   ルージュ「僕達、[ワカツ]に行きたいんです、案内してください」スッ

     ゲン「…」ピクッ




両手をついて、膝を曲げて頭を下げる、畳の上でよく似合う土下座だ



     ゲン「…[ワカツ]か、1つ聞くがお前等正気か?」



 この時、ゲンはただの酔っ払いではなくなっていた、酒気を帯びていた顔は歴戦の武人の顔になっていて
達人級の者であればその闘気を瞬時に察する程であった


  [ワカツ]の剣豪ゲンは静かに3人の顔を見渡した

474 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/25(月) 12:44:26.63 ID:fMNlpLFdO
読めば読むほどサガフロがやりたくなってくるぜ…
475 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/26(火) 01:32:20.71 ID:ajo86uV90
メタルブラックさん優しいな、地味にエミリア編がラスボス手前ぐらいまで進んでるのな
476 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/26(火) 01:55:58.12 ID:v1mvfdon0
最近更新多くて嬉しい
477 :書き溜め少し投下 [saga]:2019/02/27(水) 16:30:34.48 ID:sVXTGC7+0


  ゲン「[ワカツ]はなぁ…亡者が犇めく修羅の城と化している、てめぇの身はてめぇで守る覚悟があるってのかい」

  ルージュ「はいっ!」


 資質を集めねば、国家反逆罪で追われる

 退けど地獄、進むは未知…旅を続ける内に現状をどうにかする打開策は見つかるかもしれない、限りなく0に近くとも
可能性があるのならば彼に選ばぬ道はない、強いて言うなら進むレールの先にある終着点が奈落の底でないことを祈るのみ



  ルージュ「僕には、行かなきゃならない理由がありますから」



  ゲン「……」ジッ


  ゲン「兄ちゃん、若いな」

  ゲン「若いのに重たい目をしてんじゃねぇか、…いいだろう知り合いの誼みてやつだ、護衛を引き受けよう」


  ゲン「で?そっちの姉ちゃんたちはどうなんだい」


  アセルス「私達もだ!」

  白薔薇「お願いします」ペコッ



  ゲン「……」

  ゲン「わりぃな、レオナルドさんとこ行くのは後日になっちまうが、構わねぇか?」クルッ


  T-260「了解です」



  ゲン「明朝、[ワカツ]へ向かう…今の内に英気を養うんだな、いいな」

  ルージュ「はいっ!」



 術士、半妖、妖魔の貴婦人は礼を述べ、一泊このリージョンで宿を取り剣豪と連れのロボット達と共に[ワカツ]へ赴く
キグナス号職員全員に通達された緊急の呼び出しで別れたレッドにその事を告げたのは星の瞬くPM9時を越えた頃だった

 ゲンのご厚意で旅館の宿泊費まで出して貰い、そこのフロントにあった昔懐かしのダイヤル式黒電話から
レッド少年に通話して主旨を述べた

【双子が旅立ってから4日目 午後21時07分 [京]の旅館フロント】



  ルージュ「という訳なんだ、ごめん…」

  レッド『いいって!いいって!気にすんなって!』


  ルージュ「レッド」

  レッド『なんだ?』


  ルージュ「僕達さ、旅をしてたらまた会えるかな?ここで別れたらなんだかもう旅先で会えない気がして…」

  ルージュ「キミだって折角アセルスにも会えたんだろ?…だから、尚更さ」


死んだと思っていた幼馴染の女性との再会…、きっとレッドは身内の仇である秘密結社を壊滅するまで厳しい旅を続ける
 もう二度と旅路で交わることのない、そんな運命なのではないだろうか…そんな印象が脳裏に過ったのだ


  レッド『……』

  レッド『へっ!バッカだなぁお前は、…今生の別れじゃねーんだ、生きてりゃどっかでまた会えるさ!』ニィ


昔懐かしの受話器の向こうから聴こえる声は彼らしい爽快さがあった、生きてさえいればまた何処かで出会える、と
478 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/27(水) 16:31:15.27 ID:sVXTGC7+0

 ルージュ「! ははっ!そうだな!」

 レッド『ああ、そうさ、遠くない内にまた会えるさ』



――そこには信頼があった、初め会った時から気の合う友人<ダチ>になれる、そんな気はしていた

受話器の向こうで術士の言葉を否定し、生きていればまた会えると、確かに"親友"はそう言ってくれた



 レッド『…てか、お前普通に携帯持てばいいじゃねぇか、俺がヒューズのおっさんに[盾のカード]を聞くって言ったろ」

 ルージュ「へ? けーたい?」



 紅き術士が今使っている通話機器は、自国の文明には無い物だ…術力を介して念話する道具という似たようなモノはある
現在使っているダイヤル式の黒電話も見た目こそ一昔前だが、中身は別の惑星まで通話可能な"カジュアルだけのお古"だ


話そうと思えば銀河を越えて話せるこの御時世だ



 レッド『ああ、安い奴ならそんなクレジットかかんねぇしよ…それで集合場所とか決めれば』



……よくよく考えてみればそうだった
レッドはキグナス号からの呼び出しで、書院から別れたんだった、普通に連絡用の端末持ってる




なんか、神妙な顔して「もう今後会えない気がして」とかシリアスな雰囲気で言ってたのが急に恥ずかしくなった




その後、レッドに携帯電話のアドレスを教えて貰いそれをメモに書き留めた…無論、キグナス号乗務員が支給される
呼び出し用のポケベルではなく、ちゃんとレッド個人の電話番号だ


ルージュ(でも僕は携帯電話持ってないんだよなぁ…)


外界に旅立ってまだ4日、ルージュは携帯を持ってなかった…番号は知ったがまずは通話機器を得なくては話にならない
[ワカツ]から帰ってきたら機械文明の発達してそうなリージョンで買おう、そう決めた


なお関係ない話しだが、今、ルージュと代わって受話器を持ちレッドと通話中のアセルスに携帯の事を尋ねたら
『携帯?ああ!知ってるわガラケーのことでしょ!私も持ってたわ』と楽しげに語ってくれた



機械文明に疎い魔術の国出身の青年、機械音痴の種族妖魔、12年間眠り姫状態だった女子高生…


再度、代わって携帯の説明を求めたルージュの話を聞き、受話器の向こうでレッド少年が項垂れたとかなんとか…


―――
――
―

【双子が旅立ってから4日目 午後21時21分 [京] 庭園】


  ヒュゥゥゥゥ…
            ザワザワ…


 メタルブラック「……」


黒鉄の鎧武者は、湿った空気を帯びた風を鉄の身に受けたまま立っていた
 彼がメカではなく五感のある生身の人間であれば内臓されたセンサーではなく、鼻で雨の匂いを理解しただろう


 メタルブラック「……何奴だ、姿を見せるがよい」

479 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/27(水) 16:31:45.38 ID:sVXTGC7+0

 夜深の庭園に武士<もののふ>が一人、"問われた者"は木葉の桟橋を渡り、影の湖から月明りの陸へと歩み寄る
鋼鉄の侍はツインアイでその姿を捉えて感嘆の声をあげた、日に焼けた褐色の肌、百獣の王を連想させる美しい髪は月光に
照らされていた、その女性の瞳は力強い光に溢れていて見る側からすれば一種の美術品のような美しさであった


妖魔特有の気配を殺した佇まい、存在感を虚無へ置き去り、動く彼女は久方振りの外界にて物珍しい鎧武者を見た
 妹姫を探す使命を帯びた身でありながらその存在につい目線が映り、興味本位で観察をしたつもりだった



見破られるとは思いもしなかった





  金獅子「夜分失礼致しますわ、…驚かせてしまいましたか?」

  メタルブラック「いや、結構…貴婦人は妖魔とお見受けする」


 生体反応が人間<ヒューマン>の基準値を遥かに超えた数値を検出する、彼は初め金獅子姫を見た時、感嘆の声をあげたが
それは何も女性として肉体美に見惚れたわけではない


人ならざる生命力、鍛え抜かれた強靭な肉体、対峙して分かる剣気


戦闘メカとして開発された者の性<サガ>か…メタルブラックは彼女を一目見た時、鋼の心臓部が高鳴った




  メタルブラック「自分は名をメタルブラックと申す、願わくば名を教えては頂けますかな」

   金獅子「これは私としたことが名乗らずにご無礼を…、金獅子と申しますわ」



  メタルブラック「金獅子…金獅子殿、このような夜更けに何用で」

  金獅子「人を探しておりますわ、確かにこの地で彼女の気配を感じたのですが…」


  金獅子「外界は久しいもので、どうにも思うように探ることが叶わないのです」


 メタルブラック「左様か、時に貴女は相当な剣の手練れと見受けます、突然の申し出だと思われるかもしれませぬが…」





 メタルブラック「ひとつ、武人として手合わせを願いたい…!」




 漆黒の侍は、父たる開発者に"心を持った戦闘メカ"として開発された

どこの世界の科学者の知能も未だかつて成し得なかった、『人間<ヒューマン>と寸分たがわぬ本物の感情』を持った人工知能


目立つ事はするべきでない、と…自分が所属する組織の上から下された命令でもあった


心を持ったAIは現世に生まれて初めて、親の命令以外で、"自分が自身の意志でこの様にしたい"と、考え実行した




  金獅子「!…ふふっ、いいでしょう、旅はこれだから面白い…っ!挑まれた戦いに背を向けるは武人の恥も同然っ!」

  金獅子「オルロワージュ様、今暫し、使命を忘れて我で戦うことのお許しを……ッ!」



チャキッ!

シャキンッ!


     ―――――――月夜の晩に、武士と武人が相見えた
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/27(水) 16:32:22.32 ID:sVXTGC7+0


ガキィン! キンッ、カァン!


 金獅子「ぜぇいぃぃ―――っ!」ヒュッ

 メタルブラック「遅いッ」ジュゴォォォ


 獅子の振り下ろす剣が地を叩き割る、一撃が重い、それに対して鋼の侍は機械である身を最大に生かした速度戦で掛かる
背中部位のバーニアから火を噴き、重剣が金属の肉体を斬り捨てる前にその場から退避する


力量と技で言うならば金獅子姫に分配が上がるだろう

対して速力と無機物だからこその耐久性で向こうは補う



 金獅子「むっ…これはっ!」ガキィン

 メタルブラック「うぐ…は、はは!なるほど!!」ザンッ



シュバッ!キィィン!!


 メタルブラック(体内からのあの反応、恐らく火炎や冷気などのブレス攻撃を持つか!)

   金獅子(この者相手に長期戦はいただけないな、短期決戦で!)




  金獅子「[払車剣]!」シュバッ! ギュララララララ!

 メタルブラック「なにっ!」



 一撃は重いが当たらなければ何の意味もない、[スマッシュ]を打つよりも広範囲に及ぶ、剣気の乱気流で相手を絡め捕る
金獅子姫が月の下に舞う、劔の刀身もまた持ち手と同じく黄金に光り風を飛ばす

秋の木枯らしに似た、[京]に似合いの色合いをした剣気が鋼の肉体を刻む…っ!



 弾け飛ぶ金属片、裂かれたパーツの表面から飛び出した配線と火花
ずしゃり、重い鋼鉄の膝を庭園の水辺近い泥濘に沈める


  金獅子「これで終いとさせていただきましょう…![払車剣]」


膝をついた、とはいえ脅威の機動性を持つメタルブラックに近づいてトドメを刺すのは賢い戦いとは言えない
 一度見られた技であっても、この戦闘メカを倒すならばこれしかあるまいと、二度目の[払車剣]を放った


 刹那、風が吹いた


     ゴォォォォォオオオオオオォォォォ――――!



黒鉄の武士が持つスピードは金獅子も戦い続ける内に徐々に慣れては来ていた…
生物である自分、そして無機物である相手、それが最大の違いだ


背中部位は今まで"火"を吐き出して来たが、たった今噴き出したのは"爆発"だ


これまでの速度が10%だったとするならば、この瞬間に生み出した文字通り爆発的な加速はメタルブラック100%の出力だ




          メタルブラック「[ムーンスクレイパー]!」



黒鋼の武士<もののふ>は月影の下に弦月を描いた
481 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/27(水) 16:33:08.26 ID:sVXTGC7+0


黒鉄は閃光になった、光は直進してくる木枯らしを大きく迂回するように回り込み風の発生源へと奔る


雷光一閃…ッ!



         シュバァァァァ!



 金獅子「う、ぐあああぁぁぁぁぁあ!!…っ、…は、はは!」ブシュッ










 金獅子「素晴らしい手並み!見事だ!メタルブラック殿!」

 メタルブラック「その言葉、そのまま返そうぞ金獅子殿!」






 同時に思った、以心伝心というのだろう、お互いに相手の思惑が読めたのは…戦いに身を置く戦士だったからか
それとも、それ以上に似通った何かがあったからか




――――次に放つ一撃で決着がつく






        金獅子「メタルブラック殿、私は敢えて攻撃に出向きはしません」チャキッ


      メタルブラック「なに!?……むっ、その構えは…」




 獅子の如く気高い心を持った姫騎士は、これまで鋼の侍の剣捌きを防いできた片腕の盾を投げ捨てた
そして、劔を天に浮かぶ三日月の船底に向ける

その構えを見て、メタルブラックは相手の構えがなんであるか察した



   メタルブラック「面白い…[かすみ青眼]か!」



 剣術に置ける反撃技のひとつだ、[かすみ青眼]はその場を軸に正月遊びの独楽<コマ>の様に剣を構えて回転し
自分に向かってきた相手の勢いを利用し切り刻む変則カウンターだ


…当たり前のことだが、これは何も知らずに飛び込んで来た相手を狩る技であり、事前に放つと宣言していいモノではない


だが、金獅子は"敢えて"[かすみ青眼]を放つと宣言し、片腕につけた立派な盾を放り捨てた…それが意味するところは



      メタルブラック「…フッ、面白き剣士だ、此度、相見えたこと幸運に思うっ!」



メタルブラックは己の背部に推進剤を収束させる、再び爆発的な加速を産み敵に切りかかるあの技を!…突撃の構えを!

カウンター、反撃の布陣で待ち構える金獅子に対して放つために!!

482 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/27(水) 16:34:03.09 ID:sVXTGC7+0



  金獅子(見極めろ、心眼を開けっ、一点の曇りさえ無い蒼穹を思い描け、澄み渡る空に飛び込む敵意を…!)


 メタルブラック「エネルギー転換率120%オーバー、装甲パーツの損傷度合いに比例した自壊の警告・緊急停止OFF設定」







  金獅子(全ての敵意を避け、切り裂け…―――私に断てぬモノは、ないっ!)カッ


  メタルブラック「スラスター方位修正完了、対象物への進路障害物無し……全力全開だ…!!」コォォォ








            金獅子/メタルブラック「「いざ、尋常に勝負!!」」








黒鉄が何者をも貫く"最強の矛"となったッッッ!

獅子が何者をも防ぐ"最強の盾"となったッッッ!






               メタルブラック「[ムーンスクレイパー]!!」

                 金獅子「[かすみ青眼]!!」






    ―――矛と盾のぶつかり合いッッッッ!





    ヒュゴッッ!

    ギュルッッ!





    ズジャジャジャジャジャッッ!シュバッ!



―――
――
―



ヒュウゥゥゥ…

      ザワザワッ…


風が吹いた…

そして、止んだ、もう樹々の騒めきは鳴り止んだ、剣同士の打ちあう音も鳴り止んだ
483 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/27(水) 16:34:35.56 ID:sVXTGC7+0





         メタルブラック「 」バチッ…バチチチッ

             金獅子「 」ドサッ







戦場に立っていた者は…勝利者は居なかった。






矛と盾のぶつかり合い、月が角燈<ランタン>を持ち審判を務めた一夜の戦記


最強の攻、最強の守、古来より語られてきた物語と同じく今宵も"矛盾"した


両者共に大の字になって月夜を見上げていた


火花を激しく散らしたままのメタルブラック、青い血を皮膚から喉から吐き出す金獅子姫


鎧武者と獅子姫の試合はかくして幕を閉じたのだ…








 どれほど、そうしていたのだろう、メタルブラックは自身の内臓時計の計器が異常をきたしていないなら
30分近くはずっと倒れていたのだろうと推測した

 深手を負ったがメカの魂が宿る"心臓部<コア>"は無事だ、時間はかかったが生きてるプログラムが
動かなくなった手足のショートした回路を繋ぎ合わせる、ふらつくがどうにか立ち上がれそうだ…


   メタルブラック「……」スクッ

   メタルブラック「ふっ、私の完敗ですな金獅子殿」


   金獅子「何故そう仰るのですか」ヨロッ…



ふらつく頭を支えるように額に手を当てた姫騎士がゆっくりと遅れて立ち上がる…人間なら昏睡状態でも可笑しくない
 妖魔の尋常ならざる生命力が成せる回復力である



  メタルブラック「その気になればブレス攻撃、いや、それ以外の攻撃手段もありましたでしょうな」



金獅子姫はこの一戦、一度たりとも[火炎]や[冷気]を吐き出さなかったどころか[落雷]さえも撃たなかった
 あくまで"剣術"でのみ戦ったのだ


  メタルブラック「これを完敗と言わずしてなんと呼べましょうか」

   金獅子「そのようなものは幼子<おさなご>の屁理屈です、剣士として剣と剣、対等な戦いをしました」

   金獅子「同じ条件下で戦い、持てる力で真っ向からぶつかってお互いに倒れ、貴殿が先に立ち上がったのですわ」


  メタルブラック「…ふっ、そうですか」

    金獅子「ええ、そうです」


484 :今回ここまで [saga]:2019/02/27(水) 16:35:50.26 ID:sVXTGC7+0


 メタルブラック「今宵は良き出会いに恵まれた、忘れませぬぞ金獅子殿」

 金獅子「それはこちらの台詞でもあります、尋ね人の事、主の事さえも一時とはいえ忘れて戦いに興じるとは」



獅子姫は、まだ口元に残る血を拭いながらも笑った、こころなしか機械であるはずの侍も顔が笑って見えた


 メタルブラック「誠に、楽しい時間であった感謝致す、……もしまた出会う事があれば再び剣を交えたく思う」

  金獅子「奇遇ですね、私も同じ事を思いましたわ」




笑い声が二つ、深夜の庭園に重なった




  メタルブラック「時に、金獅子殿…尋ね人とは如何様な御方だ」

     金獅子「…」




自身が認める程の実力者であった、とはいえ無関係な部外者に言うべきかどうか金獅子は少考したがすぐに答えを出した



 金獅子「私と同じ妖魔で、名を白薔薇と申します…」

 メタルブラック「なんと…あの貴婦人か」


 金獅子「ご存じなのですか?」

 メタルブラック「少々面識が…とはいえ、もうこのリージョンには居ないやもしれませぬ」


 金獅子「そうなのですか…」

 メタルブラック「行先を聞かないのですか」


 金獅子「…彼女は私自身の手で探し出会いたいのです」

 メタルブラック「…では何も言うまい、せめて武運を祈りましょう」スッ


 金獅子「ありがとうございます、……またいつか組手を致しましょう」スッ




その晩、激闘の末に負った傷を癒す為にも金獅子は[京]を去った…

 まだアセルス等が滞在していたことも知らずに



誰よりも強く、誰よりも気高い寵姫、金獅子は影に沈み、そのまま泡のように去り


残された武士<もののふ>の心を宿した戦闘メカは周囲の気配を探り、誰に見られること無くこの地の地下にある居城へ…




知られざる対決…これを知るのは唯一人、立会人となった月だけ知っている



【双子が旅立って4日目 午後22時28分】


―――
――
―
485 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/27(水) 19:18:08.90 ID:q0yr4SxE0
まさかの金獅子VSメタルブラック
486 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/28(木) 00:38:03.37 ID:4qTTMpYbo
レッド永久離脱かと思ったら文明の利器ってすげー!してたら金獅子とメタルブラックがバトルだと……
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/28(木) 10:16:11.63 ID:La9N+jA2O
知られざる熱い戦い
488 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/28(木) 19:44:51.12 ID:07wKLK0f0
武士道と騎士道の戦いかっけぇ、乙
489 :少し書き溜め投下 [saga]:2019/03/02(土) 10:39:41.53 ID:NuKycUZ20
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――
―――
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[京]で様々な物語が交差する最中、時間は少し巻き戻るが…あの暗黒街[クーロン]では…



【双子が旅立って4日目 午後 21時48分 [クーロン]イタ飯屋:エミリアの自室】



  エミリア「あ"あ"あぁぁ"ぁぁーーー、疲れたぁぁぁぁ!」バタンッ!足バタバタ!



 帰って来るや否やベッドのシーツにダイブして足をばたつかせるエミリアの姿があった…、コスプレ衣装から普段着に
着替え、メイクも落とすあたり元モデルの矜持なのだろうか


前回、アセルスの知り合いであるゾズマという妖魔の介入で失敗に終わった任務のリベンジだ


[ラムダ基地]に単身乗り込み、女を囲っていたあの醜夫、ヤルート執政官を締め上げて情報を聞き出す気でいたが
 敵を銃で撃ち抜きながら辿り着いた室内に居た人物は眼鏡を掛けた初老の男だった

彼曰く、ヤルートは執政官の座を降ろされ、代わりに自分が執政官として就任したとのことだった



  エミリア「……モンド、執政官か…」スッ、キラッ…



 今日出逢った人物は、不思議と嫌な感じはしなかった、気の許せる人物ではないことは確かだが
"幸運のお守り"だと言って渡された天使を模った装飾品を摘まみ照明に翳してみる



基地でのモンド執政官との会話を彼女は顧みる



  -モンド『これを君にあげよう。盗聴器などついていないから安心しろ』-

  -エミリア『なに…この、羽の生えた人?』-

  -モンド『それは私の故郷のリージョンに伝わる伝説に出てくるんだ、天使という』-

  -エミリア『天使…、どうしてこれを私に』



  -モンド『昔、まだ私が若かった頃、私もキミらと同じように多くの仲間と共に一つの目標に向かって戦った』

  -モンド『特に仲の良いのが二人居てね、私とその二人でよく三人でつるんだものだ』


  -モンド『私達三人には憧れの女性が居た、清らかな人だったよ、その人に贈るつもりのブローチだった』-

  -エミリア『…どうして渡さなかったの?』-



  -モンド『そう、だな…彼女は三人の内の一人と結婚してね、私は彼を友として尊敬していた、だから渡せなかった』-

  -モンド『だがね、この天使は私に幸運を授けてくれたようだ、こうしてトリニティの執政官まで上り詰めたのだ』-


  -モンド『これは君のような人が持つのが似合いだろう、受け取ってくれたまえ』-


  -エミリア『いいの?そんな大事なモノを…』-


  -エミリア『…』-

  -エミリア『分かったわ、大事にするわね、この…えっと』-

  -モンド『天使だ』-

  -エミリア『そう、天使ね!天使のブローチ、有難くいただくわ!』-

490 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/02(土) 10:40:17.06 ID:NuKycUZ20


人生はいつだって"一期一会"…人と人の出会いは未知で、誰彼の間柄も、人の縁も分からない



 名前を聞けなかった初老の野心家は後に包帯ぐるぐる巻きのルーファスからモンドという名で、執政官になる前は
ヤルートの部下で情報・警察部門の実質的な責任者であったと知った



 そして、冷酷無情にしてカミソリのように切れる男だと、警察部門のトップから執政官に昇格してくれてホッとしたと
あのルーファスにさえ言わしめる程の敏腕だった



エミリアは、サングラスの上司から聴いた話と受けた印象が違って思ったが、どちらが本当の顔なのだろうか…


 少し前にテレビのニュースで[ワカツ]がリージョン界を束ねるトリニティ政府に対してテロ活動を行おうとしたと報道が
あって、その後、原因不明の爆発でその惑星に封印されていた悪霊が目覚めて惑星を滅ぼしただとか…


 表向きの報道は悪霊によって亡者の巣窟になりアンデッド系モンスターが屯っているとのことだが
エミリア達、裏社会の人間…いや、"黒い噂話"として表にも流れているが警察部門が独断で大々的な空襲を行い
[ワカツ]を一夜にして火の海にして滅ぼしたと…


一時期は大騒ぎになったが、時間の流れと共に新聞の大見出しを飾った惨事もいつしか人々の記憶から"過去の出来事"扱い


ベッドに寝転んでブローチを眺める彼女とてそうだ、当事者でもなんでもないのだから深くは考えない事にした


それより、そんな黒い噂のある男の心情が気になった
 …グラサン上司曰く冷徹無情の執政官の素顔を少しだけ垣間見た、そんな気がしたのだ





<リュート!!貴様いい加減帰れ!!

<なはは!かてぇこというなよぉ〜!



  エミリア「ん?店の方がなんか騒がしいわね…ってかこの声」スタッ



与えられた自室にまで届く怒声とお気楽な声に、金髪美女は革のロングブーツを履いて自室を出る
 記憶違いでないなら既に『close』の札は掛けてあるはずだが
この店はそんなモン無視して入店してくる客が如何せん多いのだ、昼間の刑事といい…今来てる客といい



スタスタ…ガチャッ



       ブルー「掃除の邪魔だから去れと言っているだろうがァ!!」つ『清掃用モップ』ブォン

          リュート「どわっ、あぶねっ!?」ガシッ




真剣白羽取りィーッッッ!



まだ齧り程度とはいえ、アニー先生に打ち込みのイロハを教わったブルーがモップブラシを振り上げ唐竹割りを放つ
 それを間一髪、両手で受け止める弦楽器を背負ったニートことリュート

反応が遅れれば頭にデカいタンコブを作る所だったと肝を冷やしていた彼は、先日のスライム投げの一件もあって
ブルーにはしこたま怒鳴り散らされていた


  リュート「悪かったって!でもあれは俺だけじゃなくお前も悪かったろ!?
                          …あっごめんなさい調子乗りました、やめてお願い」


…このまま眺めてるのも悪くないが、そろそろ仲裁に入ってあげるべきかしら、とエミリアは歩み寄った
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/02(土) 10:40:43.70 ID:NuKycUZ20

  エミリア「はいはい、二人共ストップ、モップで遊ばないの掃除は終わったの?」


  リュート「へへっ!ブルーってば怒られてらぁ!」ヘラヘラ

  ブルー(ぐっ…この野郎)ギリッ


  エミリア「それにしてもリュート久しぶりね、ライザから暫くこの街に滞在してるって聞きはしたけど」

  リュート「ああ!今は宿泊先に留守番させてるけど仲間になった[スライム]も居てな、今度会わせてやるよ!」


  リュート「うん?…エミリア、そいつぁ…」



  天使のブローチ『 』キラッ


 ふと、リュートは彼女が身に着けていた装飾品に目が行った、とても精巧な創りで素人目にも値の張る逸品だと分かる
元は表の世界で老若男女問わずに魅了した女だ、どこぞの金払いのイイ男にでも贈られたのか、彼は気になって聞いてみた

彼女も指差されたそれに、「ああ、これ?潜入先に居た人がくれたのよ」とだけ伝えた



  リュート「へぇ、"天使"かぁ…」

  ブルー「…」ピクッ


  エミリア「あら?リュートは知ってるのこの天使って羽の生えた人のこと」



エミリアの故郷の惑星には"天使"という存在に関する記述は無かったのか、元からそういう知識に疎かったのかはさておき
掃除用具を持つ手を動かしていた蒼き術士がその単語に作業の手を止め、耳を傾けた
 弦楽器を背負った無職の青年を見て、彼女はリュートがブローチの送り主と同郷であったことを思い出す




  エミリア「そうだったわね…ライザが言ってたっけ、"天使"って[ヨークランド]に伝わる御伽噺なのよね」

  リュート「そうそう!ウチの母ちゃんがよく枕元で子守唄代わりに話してくれる伝説だったんだ、懐かしいぜ!」




……エミリアは知る由も無い事である

 実はその[天使のブローチ]はモンド執政官がリュートの母親の為にオーダーメイドしたモノだということを…




人の出会いは一期一会、どこで誰と誰が何の縁で結ばれているか分からない、人間関係と因果は実に数奇な運命の下にある





  リュート「えーっと、なんだったかな、確か天使ってのはだな、えっと何処に住んでたんだっけ?」ハテ

  エミリア「なによ、全然覚えてないじゃないの…」



   ブルー「"天国"だ」



  エミリア「えっ」



   ブルー「人がいつか行ける極楽と安息の楽園…人々に幸福を齎す女神が住まい」

   ブルー「古代の王が授けられた"指輪"によって、その楽園に続く幸福の坂道を切り拓き」

   ブルー「貧困と絶望の底に居た多くの民を救うべく先導した……[マジックキングダム]に語り継がれる伝承だ」

492 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/02(土) 10:41:13.46 ID:NuKycUZ20


 子供の頃からずっと学院の教師に教えられてきた内容
勿論、ブルーとてその伝説がまるっきりそのまんまの話とは思ってはいない


語り継がれてきた伝承、つまりは永きに渡って人伝で語られてきた内容


 …簡単な例を挙げようか、"伝言ゲーム"という言葉は誰しもが知っていることだろう、その遊びは決まって
途中から聴く側が上手く聞き取れなかった、言う側の活舌が悪かった、中には訳の分からない独自解釈をし
そのまま間違った伝令を次の相手に伝えるというのがお約束だ


伝承というのもまた同じモノ、本当に最初期の内容は……いつしか歪曲され、捻じ曲がった偽りの真実として受け継がれる


 学生時代に歴史の授業で習ったけど、後年になって新しい発掘技術と解明で授業で習った歴史は実は間違いでした、等と
そのような発表だって今の御時世幾らでもある


 所々何らかの差異はあるのだろうが、[マジックキングダム]で大昔の指導者か何かが
貧困で困り果てた民を救う為に"天国"とやらの道を開いて、民を導いた…ということなのだろう、たぶん


ブルーはそう解釈した、ルージュも…あの国で育った子供は皆である




  エミリア「なんか意外ね、あなたってそういうの興味無さそうな人だと思ったけど」

  リュート「わかるー、ブルーだし『貴様ら御伽噺なんぞを信じるのか?おめでたい奴め』くらい言いそうだしなぁ」


  エミリア「あははっ!その声真似すごく似てるわよ!」


  ブルー「お前等なぁ…」



 呆れた顔で何か言おうとしたが、関わる時間を労力に費やした方が良いと判断したのか
彼は口を閉ざし作業の手を再び動かし始めた

ヒューズ刑事が帰った後、店内清掃は引き受けるから先に剣術指南をしてくれと、無理言ってやってもらったが…



  ブルー(他に客が居ないせいか、嫌でも二人の会話が耳に入るな)



やれ、故郷がどうだ、家族がどうだと…アニー担当だった床のモップ掛けを一人黙々とやりながら彼は
術の力こそが全てである祖国のことを思い浮かべた

 親孝行、育ての親である国家への奉仕、それこそが自分の使命であり、生きる意味なのだと


 それだけがブルーの人生観であって、それ以外の事を考える必要はなかった…というよりもだ
彼の場合は考えさせる人生の転機が与えられなかったと言っていいだろう


子供の成長と同じだ、壁に突き当たれば子供はそこで考える、目の前の壁をどうしたいか


登って乗り越えるか、発想を変え砕いて前へ進むか、壁そのものを迂回して進むか、そもそも壁を越える理由があるのか?


 何か問題にぶつかれば、そこで多くの事を考えるし
工夫を凝らそうとするものだ―――だがしかし"大層ご立派な御国の英才教育"とやらは道を一つに絞る


 自分は大人になったら国<親>の言いつけ通り自分の兄弟を殺して国<家>に帰って来るんだな、と
それ以外の選択権を与えない、実際問題ルージュも進む以外の道を今は選べない状況下にある


ブルーとて同じだ、ただ現状に疑問を持ったか持っていないかの違いだけ


  ブルー「モップ掛けもこれで終わりか」スッ

  リュート「おっ、ブルー終わったのかよ、ならお前時間空いてたりする?ちょいと[ネルソン]まで連れってくれよ」

493 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/02(土) 10:41:44.37 ID:NuKycUZ20


   ブルー「[ネルソン]だと…?お前もう金塊で得た金銭を使い切ったのか」

  リュート「いやいや、そうじゃねぇよ、ちょっと知り合いに会って話を聞いてみたいって思ったのさ」


  エミリア「なになに?何の話」ズイッ



反トリニティ政権の惑星<リージョン>…[ネルソン]、世間一般ではそう囁かれる磯の香り漂う夜海の星だ
 資金繰りで困った術士が無職の男と出会い、一儲けでお世話になった土地でもある

そしてノリの良さに定評のあるお姉さんエミリアが男二人の会話に身を乗り出して割り込む


 婚約者が死んで塞ぎこんでるかと思ったら、変な所で割り切りの良い持ち前の明るさが彼女の良さでもある

仮面武闘会を仮面舞踏会と勘違いしたり、[バカラ]のカジノ潜入作戦で一人だけバニーガール衣装であることを抗議した所
ライザとアニーに『似合ってるよ』『流石、元スーパーモデル』と褒められてノリノリで任務に戻る即堕ち2コマだったり



 リュート「ああ、エミリアと出会う前に俺一人旅してた時期あっただろ?そん時にまぁ、知り合った船の艦長が居てさ」

 リュート「自分の人生とか、いろいろどうなんだろうなって考えたらちょっとだけ、本当にちょっとだけな」

 リュート「話聞いてみたくなったんだ、その人は俺の父ちゃんの事知ってるからどんな人だったかって」



 ブルー「…お前は自分の親を知らないのか?」


 リュート「父ちゃんの事は俺もよく知らねぇんだ、母ちゃん何も言ってくれなかったからよ」



 今まで考えたこともなかった、知りたいとも思ったことがなかった、気づいた時には初めから居ない人で
ただお気楽に、自分が好きな事やって楽しい人生を送ってハッピーエンドが彼の人生観であった


    -リュート『――"お前の人生"、それでいいのかよ…!』-


昨日、彼がモップ持った術士に彼自身が言ってやった言葉だ

好きな事やって楽しい日々を送るというリュートの人生論は変える気は毛頭も無い、…でも気になるモノは気になる
 荒っぽいことは嫌いだし、 平和に済むならそれが何よりだ

――――…ただ、父親の事を何も知らないで一生を終える、というのは何か釈然としない

母親も多くは語ってくれない父親の事を知らない生涯、それこそ、"お前の人生"それでいいのかよ、である




英雄になりたい訳じゃない、革命家の象徴として祀られたい訳でもない、ただ自由気ままな雲のように好きに生きたいだけ




だからトリニティ…というよりもモンド執政官が[ワカツ]に造ったという秘密の軍事基地に戦争紛いな事を吹っ掛けよう等
そんなことは全く思わないのだ…




  ブルー(…自分の親をよく知らない、か)



  ブルー「……。」

  ブルー「いいだろう、偶には貴様に振り回されてやろう」


親孝行、育ての親に従い、尽くし、奉仕し続けることこそが産まれて来た人生の全てと"教育されてきた"ブルーは
なにやら思うところがあったのかリュートの都合に付き合ってやろうと承諾した


 エミリア「ねっ、私も行っちゃ駄目かしら?」

494 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/02(土) 10:42:25.40 ID:NuKycUZ20

 ここで視線がエミリアに注がれる、片方は『何故貴様までついて来る』と言いたげなジト目の視線
もう片方は『おっ、来るのか!綺麗な女が居ると賑やかでいいねぇ!』と歓迎の眼差し


  エミリア「[ネルソン]と言えば綺麗な夜景と独特な風味のお酒を出すカクテルBARがあるでしょ」

  エミリア「今日の任務はかなりの重労働だったのよ…ねっ!いいでしょ!この通りよ」


  ブルー「…ルーファスと同じくらい嫌いだと言ったのは何処の誰だ」


 溜息を吐いて、彼女を見る術士、ブロンド美女は胸を張って『それはそれ、これはこれよ!』とか
『今なら嫌いからちょっと嫌いにランクアップよ!わかったらレッツゴー!』などと宣う


変な所で割り切りのイイ前向きさに定評のあるエミリアお姉さんであった


―――
――
―


【双子が旅立って4日目 午後 21時57分 [ネルソン]】


 海原にある巨大な岩を削り、築き上げた岩窟―――そこに港を造り古き伝統を重んじる海賊の隠れ家と言った具合の港町
それが[ネルソン]というリージョンであった、その為、帆船が出港する穴から朝日が射しこんだとしても常時薄闇に包まれ
24時間街灯の火が消えることは無い


暗黒街から海賊の入り江へ、[ゲート]の術で早速降り立った三人はシップ発着場へと向かう


 リュートの目当ての女性は大概[オウミ]のレストランで此処とは違う味付けのシーフードに舌を巻いているのだが
生憎とこの時間帯ではその人は職務があるから自分の船に戻っているだろう


シップ発着場に行き、リュートは『ハミルトンさんは居るかい』と受付に尋ねた

少し待っていてくれと言われ、数分後、独立戦艦ビクトリアの艦長ことハミルトンが姿を現した




  艦長「やぁ、来てくれたんだね、キミの父上の遺志を裏切ってトリニティへ奔ったモンドの基地へ突入する気は?」

  リュート「悪いけど、そういうのはパスだ、俺は今日はそういうことの為に来たんじゃないんだ」


  艦長「む、そうか……無理強いはせんが、キミが一声かけてくれれば我々はいつでも[ワカツ]へ戦艦を飛ばす」

  艦長「しかし、そうでないならば何の用で来たんだ?」


  リュート「俺は、父ちゃんの事を色々知りたいなって思ったんだ…母ちゃんはあんまし喋ってくれねぇからさ」

  リュート「忙しい中わりぃとは思うんだけど…ダメ?」


  艦長「そうか、父上イアン殿ことについてだな…ウチの自慢のBARで酒でも飲み交わしながら話そう、私のおごりだ」


お連れさんもどうぞ、と口を挟まずに居た術士と美女もご厚意に甘えることになった


 ハミルトン艦長の紹介でやって来たのは以前にも金塊の売買で世話になった酒場で
顔馴染の客にしか出さない秘蔵の一本を開けてグラスに注いでもらった

 徐々に酔いが回り始めた頃、艦長は昔話を懐かしむようにリュートに活動家としてのこれまでを語りだす
リュートの父イアン、その友であったウェント、…同じく友であったモンドのこと


反トリニティの活動中にモンドが兵隊に追い詰められ、死を覚悟した後にイアンが自分の命を投げ売ってモンドを救った事


その後、モンドが何を想ったのか、突然、革命家を辞めてトリニティ政府で働くようになり最近じゃ執政官になったこと

[ワカツ]を爆撃機で空襲した後に秘密裏に軍事基地の建設、[シュライク]の街工場で人型兵器の開発禁止を言い渡す等
影で誰にも分からぬ怪しげな動きをしているということ…

495 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/02(土) 10:42:56.70 ID:NuKycUZ20


  ブルー(こいつの父親がそんな大物とはな…)


 透明なグラスを傾け小さく波打った強めのカクテルを眺めながら感想を浮かべた
このニートの父親がそんな大人物だとは



   エミリア「うっ…うぅ…っ」



一通り話を聞いて、むせび泣くような声がし、横を振り向くとなにやたエミリアが机に突っ伏している
顔は見えないが今の話で泣きでもしたのだろうかと声を掛けようか迷っていると…




   エミリア「う、うぅぅぅ、も、もうだめぇ…き、気持ち悪いぃ…」ウップ

   エミリア「ブルー、この際あなたでいい、トイレ連れてって…」グスッ


   ブルー「 」



この日知った、エミリアは酒に弱い。


 えっ、なのにお前酒飲みたいから[ネルソン]のBAR行こうとか言いだしたの?出かけた声を出せずにいるブルーの肩に
エミリアの白い手が触れる


  エミリア「や、やばいって…ほんと、は、はきそ」

  ブルー「おいぃぃぃ!?バカやめろぉぉ!!た、耐えろ、今連れてくから、おい!お、俺の方を向くなァァァ!!」





                 〜 しばらくお待ちください  〜




  ブルー「ぜぇ…ぜぇ…」

  エミリア「あぁ…飲みすぎたわぁ…うぅ」グスッ


危うく大惨事になる所だった、疲弊しきったブルーは今度こそ文句を言わずに居られなかった


  ブルー「だったら…ゼェ、何故、酒を飲むっ!ゼェ…馬鹿なのか貴様は!?」

  エミリア「だってぇ、疲れた時は嗜む程度に飲みたいじゃない!まさかこんな強いカクテルなんて思わなかったの…」


法衣を嘔吐物塗れにされては堪ったものではない、全速力で走って来た術士は息を切らした息を整えながら席へと返る
すると、なにやら話は終わっていたのかリュートは立ち上がっていた


  リュート「ありがとよ!ハミルトンさん…俺さ、やっぱそういうことに手はまだ貸したくないや」

   艦長「そうか…わかったよ、今晩は良い酒が飲めたよ」


  ブルー「リュート」

  リュート「お、戻って来たのか」



  ブルー「貴様、父親の遺志を継ごうとは思わないのか…」

  リュート「んあ?父ちゃんの遺志?」

  ブルー「お前の産みの親であろう、…志半ばで仲間の為に命を落とした」

  ブルー「なら息子であるお前は成してやりたいとは思わないのか…?」
496 :今回此処まで [saga]:2019/03/02(土) 10:46:33.23 ID:NuKycUZ20





              リュート「いんや、全く」





即答だった


子は親の物、その考えが常であったブルーにとって興味深い返答だった、だから聞いた



   ブルー「…何故、だ」


  リュート「いやよ、なんつーか、父ちゃんは父ちゃんだし、俺は俺っていうのかな…」

  リュート「親の為に自分の生き方を全部捧げるってなんか違うんじゃねぇのって」


   ブルー「…。」


  リュート「お前には前言ったじゃん?俺は自分が好きなことやって楽しけりゃ人生万々歳ってさ」

  リュート「父ちゃんの遺志を継いで〜、とか今の政府を転覆させて革命家の英雄だ〜、とか」

  リュート「別にそういうんじゃ無いんだよ、俺は」



  リュート「本当に自分がやりたいって心で想ったことを、心が命ずる儘にやってこそ人生楽しいのさ」



  ブルー「自分の心が命ずる儘に……」


  リュート「まっ!めんどくせぇことが嫌いで気楽に生きていたいってだけなんだけどなww」

  ブルー(…)

  ブルー「お前は偶にただの馬鹿なのかそうでないのか分からなくなるな」フッ

  リュート「おろ?」



子は親の物、なら……親が初めから居なかったら?

親という自分を繋ぎとめてくれる存在が何らかの理由で無くなってしまったら―――



  ―――育ての親が、[マジックキングダム]国家が、万が一にもあり得ないが何らかの理由で滅びたとしたら?



そこまで考えて、ブルーは自分を嗤った

何を馬鹿な事を…所詮は万が一、あり得もしない"もしも"の話だろうに、こんな事を真剣に考えるなんてどうかしてる



その先の答えは考える事を止めた、…いや無意識にブルーは【逃げた】のだろうな


自分は本当は空っぽの人間だ、それが無かったら…心の在り所を失ってしまったら、――自分の"帰れる居場所"を失ったら



きっと、もうその時点でブルーという名前の人間は瞬間、存在価値が無くなる、生きる理由も何も無くなってしまうのだと





  存在意義を失くして、【世界中の誰からも必要とされない人間】になる、と…その答えに行き着きたくないから
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/06(水) 16:29:54.08 ID:rxG/DtiT0


 まだ酔いが抜けきらないエミリアとリュートを連れブルーは暗黒街へと帰った
早朝から叩き起こされて、皿洗いのバイトをしながら守銭奴の金髪娘に[鉄パイプ]を持たされてお稽古の時間
それが終われば、店内のモップ掛けをして夜遅くにやってきた馬鹿な知人と先輩のブロンド髪と一緒に酒盛りだ

そこそこに多忙な一日だったとは思うが、ブルーがこの晩、寝付く事が出来なかった


 三日近く世話になった貧乏臭い安宿の枕が恋しくなったわけではない
住み込みバイトとして与えられた個室が長らく使われてなかったから黴臭くてそれが眠気を妨げるということもない


 胸の奥に理由も分からないのに蟠りがある、エミリアの持ってたブローチや彼女とリュートの会話で芋づる式に天使
それに故郷の話になったり、飲みに行った潮の香りに包まれたBARで普段馬鹿だと思っていた男が語る人生観を聞いた所為



子供の頃、…これは今、寝具の上で眼を開けたまま寝がえりを打ち続ける彼に限らず誰にでもあることだろう



ひとつ気になる事があると、ついつい、それを考えて睡眠が取れなくなる

好奇心盛んな少年心が身に着く年頃になれば、哲学に手を伸ばす
それよりも少し若い頃にさえ誰でも一度は『人は死んだらどうなるんだろう?』そうなったら
今ここで考えてる僕の意識はどうなるのか、死んだ次の瞬間、今までの自分の記憶や自我は消えて別人になってるのか?等

出せるはずの無い答えを探そうと頭を捻ったり、あるいは極度にその妄想を怖れたり


そうしている間に時間だけが刻一刻と過ぎていく





ブルーは、まさしくその状態に陥っていると言っていいだろう



自分の人生、自分とは違う人間の人生、価値観、世間一般から見た弟殺しの見解




ルージュを殺す事に何も思わないのかと感情を爆発させた前日のエミリアの顔

弟と妹、自分の身内を養うために命を賭け金に綱渡りをするアニー

身内殺し事体を全否定はしないが、その時が来るまでの人生それで良いのかと問うリュート



ぐるぐる、ぐるぐる…頭の中で、色んな顔が、声が、次々と浮かんでは交じり合って消えていく
[ドゥヴァン]のコーヒー占いが自慢の喫茶店で飲んだ甘いカフェイン入りの液体の様に、渦を巻いて消えていく





  ブルー(今宵の自分は何処か変だ、エミリアの悪酔いがうつりでもしたのか)





病原菌じゃあるまい、何を馬鹿な、と考えて首を振った

天井ばかり眺めていた顔はその動作で木組みの机の上にあるデジタル表記の時計を見据えた、暗闇に視界が慣れたのだろう
ぼんやりとだがPMからAM、午後から午前へと日付を跨いだことが分かってしまった



嗚呼、眠れない、寝付けない


声が頭の中で煩い、蛇が脳髄でのたうつように五月蠅い、自分の声がうるさい




蒼き術士が意識を手放すのは明方間近であった…

498 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/06(水) 16:30:41.75 ID:rxG/DtiT0

【双子が旅立って5日目 午前 10時02分】




 ブルー(目元に隈つき)「…」シャコシャコ

 ライザ「あら、寝坊助さんおはよう」



 歯ブラシに歯磨き粉をつけて、目元に天然物の暗色メイクを施したブルーが鏡をぼんやりと見つめながら歯を磨く
後ろから紫髪の女性がくすくすと笑いながら挨拶をして来るモノだから彼は朝から血圧が上がった
プライドが無駄に高い男は何か言いたげだったが、グッと押し込みマグカップの中身で口を濯いで顔を洗った



 アニー「はいはい!両面焼きのハムエッグ追加だよ!」トンッ☆

 エミリア「お先に!」パシッ



 グラディウスモブ男「もうじき、デカい作戦だからそっちに準備割くんですか?」モグモグ

 ルーファス「ああ、[ヨークランド]の山奥にある[忘れられし聖堂]だ、そこにジョーカーは来るらしいが」パクッ



朝食担当の作った半熟の目玉焼きが乗っかったトーストを頬張りながら完治したルーファスが予定を仲間に話していた
 こんがりと焼けたパン生地のサクサク感と黄身を噛んだ時に広がるとろりとした半熟の卵が広がりそれがまた美味いのだ


 ルーファス「エミリアがモンドから聞き出した情報によれば、暗号の解読には時間が掛かる」

 ルーファス「奴の動向を探っていた[マンハッタン]支部からの情報網によれば、アイツを切ろうとしてる勢力も多い」

 ルーファス「例えば、[シンロウ]で秘密裏に取引していた"ブラッククロス"だ、奴らもジョーカーに見切りをつけ」

 ルーファス「獲物を横取りしようとしてるらしくてな、ジョーカーが[ヨークランド]に行けるのは当分先だ」


 グラディウスモブ子「それまでに私達が準備を万全にして、先回りからの罠を張り巡らせる、ですね!」


 サングラスを掛けた男は「そうだ」と頷いて、ドレッシングの容器を手に取る
透明な深皿に盛りつけられた薄緑色のレタスや色彩豊かなトマト、花野菜にぷりぷりとした海老を施設や軍勢に見立てる
アニーお手製ドレッシングで「我々はこのように、周辺を固め、敵対勢力をこのように絡め捕る」とトマトや花野菜に
味付けをしながら説明する


  バコンッッッ!



 ライザ「ルーファス、作戦の説明は構わないけど食べ物で遊ばないでくださる」ニッコリ

  ルーファス「 」



 ブルーを引き連れた鉄の女ライザが笑顔で上司の頭に拳を叩き込んだ
折角、包帯ぐるぐる巻きミイラから復帰したのに、また頭部に包帯を巻きそうだ、この男本当に組織のトップなのだろうか
後ろで引き攣った顔をして見ていた蒼き術士は何度思ったか分からない感想を浮かべた


 エミリア「ライザ、おはよう!あとブルーも」

 アニー「お、二人共やっと来たわね!で、何にする?」


 持ち運べる携帯食としてアンチョビサンドの仕込みで鰯<イワシ>の塩漬けをオリーブオイルに浸していたアニーは
遅れてやってきた男女に気が付いた、食べたいモノはあるか?注文のリサーチを始める


 ライザ「なら、私もルーファスと同じモノが食べたいわね」チラッ

 ルーファス「」チーン


自ら気絶させた男と同じ食事を注文して、彼女はデカいタンコブ作った男の隣にそっと座った、心なしか顔が赤い気もする
ブルーはソレを見て何か関わったらダメな世界な気がして、目を背けながら半熟目玉焼きを乗っけたトーストを頼んで
極力ルーファスとライザから離れた席に座る事にした
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/06(水) 16:31:41.12 ID:rxG/DtiT0


 ブルー「…午後4時から午後10時までとはな、そんな営業時間で大丈夫かこの店」サクッ


 胃にあまり物を詰め込む気にはなれず、一枚のトーストと目玉焼きで丁度良い
白い皿の上に置かれたパンを手に取り角から頬張る、…悪くない


コトッ


 ブルー「ん?」

 アニー「ほら、やるよ」つ『ミックスジュース』


 柑橘系の果汁をブレンドした朝の一杯、剣術指南の師範曰く仕事が始まるまでみっちりしごいてやるからサービスだ、と
渡されたついでに、この店は午前は開業しなくて良いのかと尋ねてみた、すると


 アニー「ん、そこだけど…ちょーっと裏のお仕事がね、今デカい山場なのよ」カチャッ、スッ


 パセリを添えた、焦げ目の無いチーズオムレットの腹をフォークで裂く
とろり、ふわっとした半熟の卵から熱々のチーズが流れ出す、それを口元に運びながら金髪の少女は言う


 アニー「あたし達が追ってる敵との決戦って奴を控えててね、総力戦になりそうなんだ」

 アニー「これがややこしい事に、その敵ってのは色んなとこに手を出してる奴でさ」

 アニー「ある時は麻薬売りと人攫いで有名なブラッククロスとの取引」

 アニー「[バカラ]の地下に居るノーム達から財をふんだくったり、トリニティの上層と繋がりを持ったり」

 アニー「その所為で、そいつを出し抜いてお宝をゲットしちゃおうって奴が多いのよ」


 ブルー「その話ならさっきそこでルーファスも言ってたな」


 アニー「ああ、なら話が早いわね、大掛かりなトラップを周辺にばら撒いて誰も邪魔できないようにするってワケ」


 ブルー「その準備に追われるから飲食店の方は短時間営業ということか」


 アニー「そっ!んでもってあたしやエミリアみたいな戦闘員は英気を養って、非戦闘員のみんなに頑張ってもらうの」

 アニー「つまりアンタの剣の腕を磨く時間があるってわけ、お分かり?」ニィ


 覚悟しとけよぉ?とニヤニヤ笑う女に不敵な笑いで返してやる、寝不足で肩に見えない重りが乗っていたが
そんな物は吹き飛んだ、漸く本腰入れて、鍛錬に打ち込めるのかと、グラスの中で揺れる甘酸っぱいビタミンを喉に流して
気を引き締める、盗める技術は盗む、使える技はなんであれ、自分の物としてみせる


残り一口になった焼けたパンを口に入れて噛みしめる
そんなやる気に満ちた門下生の横顔を金髪少女は面白い奴を見る様な目で眺めていた


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―――
――
―



 ゲン「…帰って来ちまったなあ」

 ルージュ「ここが、[ワカツ]…」


 早朝、ルージュ一行はゲン達と共に、4人と3機で[ワカツ]へとやってきた…
目指すはカードを得る為の部屋[剣聖の間]だ…沼の向こうに聳え立つ和風の城、[ワカツ]城に向かう為
茂みを掻き分け、桟橋へと向かった―――その桟橋には先客が居た、その者は皮膚はおろか、肉すらない



 アセルス「なっ、モンスター!?」チャキッ

 ゲン「剣を降ろせ、ソイツはモンスターじゃねぇよ……よう、俺達を向こう岸、城門前まで頼むわ」

500 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/06(水) 16:32:27.10 ID:rxG/DtiT0

[スケルトン]系のモンスターとしか思えない人骨は何を見つめるでもなく、自分達を見据えてポツリと一言



      「船を待ちな」



ゲンは、その骨を何処か懐かしむような、それでいて憐れむような眼で見つめていた
 [ワカツ]は亡霊の巣窟と化した惑星、目の前の橋渡しは生前は彼と知り合いだったのだろうか…


そんなことを考えている内に、ザザァと誰も乗っていない無人の小舟が不自然な流れ方をしてピタリと桟橋の先に停泊した


人骨は何も言わずに、道を開けて、乗れと首を船へ振るう


 剣豪は、黙って船に乗り込み腰を落として胡坐をかく、それに従うようにロボたちが小舟に乗り込み
後に案内を頼んだルージュ等も乗った

 船は鉄の塊である、T-260や特殊工作車、常に浮遊しているナカジマ零式は別として、その他に大の大人が数人乗って尚
重荷など何も無いかの如くスイスイと見えない力で沼を漕ぎだした


向こう岸に辿り着くのはあっという間の出来事で…全員が上陸すると示し合わせたのではと思う程綺麗な動きで船は去った



      ヒュッ!  ヒュッ!


  ルージュ「んんっ!?」



紅き術士は目を疑った、疑って自分の眼をごしごしと擦った


 白塗りの壁に一瞬、本のページの様に捲れてその裏側に人が居た様に見えたからだ…
もっと言えば櫓屋根の上を高速で走る人影がちらほら見える、その恰好は彼が学院に居た頃、文献で読んだことがある





  ルージュ「ニ、ニ…ニン」プルプル



  ルージュ「忍者だぁぁぁぁぁぁぁ!?」ガビーン!




アイエエエエ!?ニンジャ!?ナンデニンジャ!?

両手を頬にあて美術館に飾られたムンクの叫びめいたポーズで絶叫するルージュ=サン



 ゲン「ありゃあ[ワカツ]の亡霊だ…死んでも死に切れぬ魂がああして出て来ては生者を仲間に引き入れようとするのさ」

 ゲン「お前等も気を付けろよ、連中に追いつかれたら死ぬ気で抵抗しろ」スタスタ


この惑星に迷い込んだ旅人を殺しその血肉を喰らおうする悪しきニンジャソウル、それこそが[ワカツ]の亡霊であり
トリニティの連中が空襲をした際、爆撃が地下にあった封印を解いたことで[ワカツ]の亡者が溢れかえったとのことだった



 アセルス(…悪しき亡霊で忍者って…昔ウチにそんな漫画あったなぁ)テクテク



[シュライク]で実家が本屋だったアセルスはそんなことを思い出しながら皆の後を追った…


 至る所に死の痕跡が落ちていた道程を鉄の蹄が進軍していく、T-260、特殊工作車、[鉄下駄]を履いたゲン
靄が掛かった城を、まるで死者たちの鎮魂歌だと主張するような高らかな金属音、征く手を阻もうとする魔物でさえ
道を開けたくなるような果敢な行進曲<マーチ>

501 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/06(水) 16:33:20.87 ID:rxG/DtiT0


――――中には向かってくる命知らずな、"命なき者"もいた


  ゴーストA「けけけけっ!」フワァ

  ゴーストB「きひひひっ!」フヨフヨ

  ゾンビ「うばあ"ああ"あ"あ"あ""あ"」


  ライダーゴースト「ヒャッハー!オンナダァ!オレノモンダァ!」パラリラ!パラリラ!

  ナイトスケルトン「我、汝の命欲す…っ!」チャキッ










   特殊工作車「標準よし、撃ちます[電束放射器]」ビーーー、バチバチ!

     ゴーストA&B「「ぶべらっ」」チュドーン!!




   T-260「[剣闘マスタリー]ON、[多段斬り]発動!」ズジャジャジャジャジャ

     ゾンビ(みじん切り)「ウボァー」ザジュッ



  ナカジマ零式「へーい、そんなスピードじゃあ私にー、おいつけませーん、[神威クラッシュ]」ドゴッ

  ライダースケルトン「ちにゃッッ!?」ボコォ



  ゲン「[三花仙]」ヒュバッ!

  ナイトスケルトン「!…みごと、なり」ドサッ…シュゥゥゥ






  ルージュ「 」ポカーン

  アセルス「す、すごい…私達全然手をだす必要が無いわ」

  白薔薇「あっという間の出来事でしたわね…」




特殊工作車のアーム部分に取り付けられた重火器が電流を放ち、目の前にいた[ゴースト]2体を(物理的に)昇天させ
 T-260に至っては達人級の剣士の動きをトレースしたプログラムを発動させ、壱秒間に数十回動く屍を斬りつけて
玉葱のみじん切りより細かくバラバラにしてやった、断末魔をあげた[ゾンビ]は二度と蘇ることのできないレベルで
肉体を細切れにされ、その横をマッハ越えの速度でナカジマ零式が突き抜けて、やんちゃな幽霊にお灸を据えてやった

ぼっこりと、腹を突き破ってぐるっと宙返りしながら戻ってくるナカジマ零式の機影が[刀]を構えたゲンの真上を過ぎ去る

それを合図に、[鉄下駄]を履いて尚、骨騎士を上回る瞬発性で敵を切り裂く


その艶やかな一連の動きに、花が咲き乱れるような美さえ幻視した…


―――
――
―

   ゲン「…こっちは、床が完全に抜けてやがるな、オイ兄ちゃん、他の道行くぞ姉ちゃん達も足元に気を付けな」


どれくらい歩き続けたか、時刻は【午前11時49分】…早朝に来たはずだったが、思った以上に時間が経っていたようだ
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