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ブルー「俺達は…」ルージュ「2人で1人、だよねっ!」『サガフロ IF】
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502 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/06(水) 16:34:09.57 ID:rxG/DtiT0
アセルス「はい…っとと…本当危ないなぁ」ギシ…ギィ
アセルス「ちょっと足を乗せただけで軋むなんて…床板の腐食度合いが、うん?」
白薔薇「…」
アセルス「白薔薇、どうかしたのか」
白薔薇「いえ…ただ」チラッ
焼けた人形『 』
おかっぱ髪に、焦げてしまっているが辛うじて緋色の和服を着せた人形なのだろうなと推測できる
アセルスは人間だった頃、3月になれば家に飾られる雛人形を思い出した
これの創りもそれによく似ていて、きっと持主は人形を大切にしていた子供だったのだと…
ルージュ「…小さい子も、此処に居たんだよな」
2人が見ていた子供の人形を見てから辺りを見渡すように、空襲の跡地を紅き術士は目を配った
煤だらけの床に丁度、黒ずんでいない人型の綺麗な床が見えてその上には長い間、野晒しにされた白骨遺体が横たわる
折れた刀を持っていた右手は、今尚、柄を握って離さず…倒れた骨の視線の先には―――
ゲン「…俺達は、何もしちゃいなかったさ、政府に逆らうだのそんな気なんぞ無かった」
ゲン「誰が流したかも知らねぇ悪い噂、人の噂なんざ七十五日よ…」
ゲン「あの日だって普通にお月さんが出て、寝てりゃあお天道さんが上がる変わらない明日って奴が来るはずだった」
ゲン「だがよ、無数の爆撃機が隊を組んでこの城の上空に現れて俺達から"いつも通りの明日"を取っちまいやがった」
ゲン「みんな、必死だった…腰に脇差引っ提げて、刀抜いてドタバタ走ったぜ」
ゲン「敵は団体さんで空から爆弾落としてくるんだ、剣を振る俺達じゃあどうにもできなかった」
ゲン「…そこで眠ってるそいつも、城を守るより、家族を護る為に走ったのさ」
…――柄を握ったまま離すことなく倒れた白骨死体は、空洞となった目から口惜しさの涙さえ流して見えた
折れた刀身が転がった先は、大人1人と子供1人と思われる遺体の傍らだった
靄が掛かっていた空が一瞬だけ晴れ、空襲で空いた大穴から照らされた日光でその存在が漸く確認できた
カラァン、コロォン!
ガッシャ!ガッシャ!
ブロロロ…
テクテク…スタスタ…
ゲン、彼は暇さえあればいつだって酒を飲んでいた
酒は良い、嫌な事も思い出したくない光景も酔いが見せる優しい揺り籠で溶かしてくれるから…
嘗ては共に剣を磨き合った友、護るべき主君、…家族、それらが一夜にして火の海に飲まれた
ここにきて、彼はいつも持ち歩く酒瓶に口をつけることは無かった
無言で自身に蔦を伸ばして来た喰人植物のモンスターを一薙ぎ、屋根の上から彼目掛けて飛び掛かろうした獣を縦に両断
忍者を思わせる出で立ちの亡霊が気配を消し瓦礫の塹壕から飛び出し奇襲を掛けるも、見向きすらせずに首と胴体を裂いた
[ワカツ]の剣豪ゲンの精神は研ぎ澄まされていた…
503 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/06(水) 16:35:23.11 ID:rxG/DtiT0
ゲン「ここからなら、中に入れそうだな…」ガラッ
櫓門の道は塞がれていたものの、城壁の一部が崩れていて、瓦礫を少し手で退かせば大人でも
通れそうなくらいの大穴が渡り廊下の壁に空いていた
隙間風がカラカラと、赤い風車<かざぐるま>を回す、母親が吹いて赤子をあやす為に使っていた玩具は無造作に床に
突き刺さり、誰を笑顔にすることもなく悠久の時を空回りし続ける、[京]で見たような襖扉に生々しい赤を飛び散らせ
鉄臭さとそこから菌が繁殖したのか緑や黄の斑点模様で着飾った和紙の窓が切り裂かれていた
壁に東洋剣の破片が突き刺さっている、弓矢の矢も無造作に突き刺さりそれが何とも痛々しい
白骨『 』
白骨『 』
ゲン「この一番上の階が[剣聖の間]だ…そこで試練を受けれる、一息だ」
白骨『 』…ガタッ!
白薔薇「ゲン様!そこに―――」
ガッ、ズシュッ!
ゲン「…」チャキッ
屍で築かれた山に紛れてアンデッドが死者の脇差を抜き取り、ゲンへと切りかかる、白薔薇の警告と同時に相手の眉間に
一刺し、頭蓋骨は見事に前から後ろまでよく見える覗き穴をあけて屍の山へ帰った
ゲン「おう、姉ちゃんありがとうな」
自分の身は自分で守れ、と[京]の旅館で言ったゲンだが、道案内も兼ねて率先して前を征き背後にも警戒を怠らない
何だかんだ言いつつもルージュ等をしっかりと守る男であった
……この地で守れなかったモノがあったからこそ、なのかもしれない、[ワカツ]の剣豪として想う所があった
彼にとっての生まれ故郷、此処はゲンの"帰るべき場所"であった筈なのだ…育った大地を踏みしめて彼は何を"想う"か
コツッ、コツッ…
ゲン「…着いたぜ、此処がそうさ」
案内された[秘術]を求める者の巡礼地は、こじんまりとした一室で、中央に畳が三畳だけ敷かれていた
中央の畳を挟む程度に燭台が3つあった、ただルージュや白薔薇姫にはあまり馴染の無い形式の燭台だ
蝋燭の灯がかき消されないように、風除けの硝子が張られているオイル式の角燈<ランタン>に似てはいるが
風除けに使われている材質が紙だ、和紙を使われたソレが灯篭と呼ばれているのを知っているのは
ゲンと子供の頃テレビの時代劇で見た事があるアセルスお嬢、データベース内にある知識として記録しているメカ達だけだ
ゲン「まず、両方の蝋燭に火を灯すんだ、そうすると後ろの屏風…はもう無ぇな、後ろの壁に3つの影が浮き上がる」
ゲン「それぞれ、剣、兎、物の怪だ」
ゲン「3本の剣と兎と物の怪が交互に浮かび上がる、全ての影を『剣』に揃えるんだ…誰が一番初めに受ける?」
中央の畳に、座り意識を集中させて目を見開く、すると浮かび上がった影はその心に応じて止まる
随分と俗物的な言い方をするならカジノのスロットみたいなモンだ、絵柄を三つ揃えれば良い、違いがあるとすれば
試練を受ける術者の心次第で結果が出るということだが
504 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/06(水) 16:36:07.69 ID:rxG/DtiT0
ゲン「俺は、こいつ等と亡者共が階段駆けあがってこないように見張りをする…いいな、テメェら」チラッ
T-260「了解です」
特殊工作車「右に同じく」
ナカジマ零式「私たちにー、お任せあれー」
若き日に成人式のしきたりのようなモノでゲンも[剣のカード]は取得している
三畳一間で彼等が瞑想を始め、剣が描かれた札に認めてもらえることを祈りながら見守る、その間、ゲンの仕事は
試練の邪魔をする無粋な輩を排除することである
ルージュ「僕は、最後でいいよ先に二人からで」
アセルス「そう?なら白薔薇」
白薔薇「かしこまりました」スタスタ…スッ
ゲン「じゃあ、火を灯すぜ…休憩を挟みたい時はいつでも言ってくれて構わねぇからな」カチンッ!ボォッ
灯篭の中に赤々とした燈が点いて、影を浮かび上がらせる…この場所、[ワカツ]の天守閣は一種のパワースポットだ
術士であるルージュも妖魔の白薔薇姫も当然、半妖であるアセルスも薄々感づいていた
周りが穏やかな風の吹く草原なら、この場所だけピンポイントで渓谷や山岳地帯の岩々で一点に気流が集中する地点だ
力の流れで浮かび上がった三つの影は兎や交差する刀、バケモノの姿形を造り飛び回る
蝋燭の灯りは和紙一枚の壁を越え、障害物は何一つとて無い、であるにも関わらず、兎や二本の長物、大口開けた妖怪
光の屈折だとか目の錯覚だのと、そんな次元の話じゃない、科学的に説明不可能な変化を目まぐるしく繰り返す
白薔薇「…。」
白薔薇「…」
白薔薇「!」パチッ
【兎】 【兎】 【兎】
白薔薇「…失敗ですわ」シュン
ゲン「まだ、終わったわけじゃねぇ、何度でも挑戦はできる、心の目でよくみるんだ、耳を澄ませ…」
アセルス「良い線は行ってたんだ、白薔薇!もう一度…!」
ルージュ「白薔薇さんっ!」
白薔薇「 」コクッ
白薔薇(もう一度…)スゥ…
白薔薇「…。」
―――
――
―
505 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/06(水) 16:36:40.68 ID:rxG/DtiT0
*******************************************************
―――
――
―
【双子が旅立って5日目 午後 12時00分 [クーロン]】
ブルー「てぁぁぁぁっ!」ブンッ
アニー「もっと踏み込んできな!!」カキィン[ディフレクト]
暗黒街の惑星の裏通りを抜けた先、元は地下鉄であった地下空間に金属音が鳴り響く
廃線になった駅のプラットホームはそれなりに広く強盗殺人を生業とする浮浪者の棲家でもあった
生憎と、剣道道場なんてモンはこの街に無い…
犯罪者が大手振って歩く空気の澱んだこの空間を利用して、練度をあげる為に手にした得物を振るっていた
犯罪都市で日々を過ごす手練れの追剥も法を犯すことを余儀なくされる低所得者も流石に出て行こうとは思わなかった
情報が物を言う時代、それもこの都市ならば尚の事で、金髪の術士と裏組織の金髪女はヤバいと既に話が持ちっきりだ
双子が旅立つ数日前、エミリアがグラディウスに新人メンバーとして加入した際もアニーの指導の下
女二人でこの近辺から店まで帰って来るという実践訓練を行ったものだ
この街で長生きする奴は、自分と相手の力量差をよく分かっている奴だ
早死にする奴は無謀な戦いを挑むか、もう後に引けず強者でも良いから生活の足しになるモノを奪う為にと自棄を起こすか
大概、その二択である……指導の真っ最中で喧嘩を売りに来る低ランクモンスターが[鉄パイプ]持ったアニーに撲殺され
片手斧やナイフを構えて蛮勇を目に焼き付けながら突進する盗人はブルーの試し切りと魔術で感電させられ気絶していく
稀に、二人よりもランクが上の実力者が現れ、戦いを挑んでくることもあったが
そんな実力があるなら他所の惑星でも十分喰っていけるだろうに、と思いながらアニーが剣に不慣れな弟子をフォローし
二人掛で仕留めて行った
アニー「アンタの手に持ってるソレを自分の身体の一部と思え!」
アニー「自分の手であたしに触れようって気で掛かりな!先端から鞘までが含めてアンタの腕だ」
アニー「…"手首の先に棒状の武器がある"だからその分リーチがあって、間合いはそこまで詰めなくて良い」
アニー「そんな考えは糞喰らえだッ!そんなんだからさっきからアンタは一撃もあたしに当てれないんだよ!」ブンッ
ブルー「ぐぉっ…っ」ガキィィ…ギギギ!
ブルー「…な、めるなァぁぁぁ!!」グワンッ ダッ!
アニー「――っと!」バッ!
ブルー「踏み込めばいいのだろうッ![天地二段]!!」バッ!ダンッ!
アニー(やばっ!?調子乗り過ぎたッ)サッ!
蒼を纏った魔術師が鍔迫り合いから相手を上に押し上げる形で崩し、金髪少女が僅かによろめいたのを見て攻勢に出る
プラットホームの地を離れ、飛翔し勢いよく振り翳した鉄の棒を振り下ろす
遊び過ぎたか、と彼女はすかさず持っていたパイプを頭の上に掲げる
夏の浜辺で遊ぶ西瓜割りの様に縦に振られた得物を両手で横に構えた棒で防ぐ、何度目になるか分からない金属音と火花が
飛び散り、すぐさま、地に足をつけたブルーが着地と同時に胴体を薙ぐ一撃を放つ
――――カァン!!
アニー「…っ、そう簡単にやらせないっつーの!」グググッ
ブルー「くそ…!」ググッ
506 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/06(水) 16:37:45.56 ID:rxG/DtiT0
ピピピ…
持ってきていた手荷物からアラーム音がなる、100均ショップで購入できる簡単なタイマー時計だ
ブルーは目の前の講師に一振りたりとも掠ることなく終わったのか、と心底悔しそうな顔をしていた
アニー「12時丁度だ、ここまでのようね」
アニーは背伸びしてそこらへんで拾ってきた[鉄パイプ]を放り投げる
涼しい顔をしているが最後の[天地二段]は正直なところ焦った、対応が遅れれば胴に一本取られたかもしれない
アニー「ブルー、聞きたいんだけどさ子供の頃に剣とか習ってたの?」
ブルー「簡単な護身術なら学院の授業で習ったが、剣に関しては全く…」
知識だけはあった、若気の至りで学校を一日だけサボって顔は思い出せないが偶々気の合う子供と知り合って
色々あって、剣道に関する本を読んだ記憶はある…
金髪少女は一本も取れなかったことを悔しがった弟子を見て思う、筋は悪くない、と。
さっきブルーが使った[天地二段]でさえ"閃く"のにアニーは時間を掛けた、しかし昨日今日で剣の道を始めた彼は
もう自分の物にして彼女に放ったではないか
金髪少女と蒼の術士…"閃きの頻度"が、眠る才能の大きさが違う
今でこそ悔しがっているが、いつかは師である自分があの顔を教え子のブルーに晒すことになるかもしれない
そんな予感を彼女は感じていた
アニー(面白いわね、育て甲斐があるってもんよ!)フフッ
コイツは自分の指導で将来どんな奴に化けるのか?豊富な経験でまだまだ負ける気はしないが
目の前の原石を見て益々、ブルーを鍛えてやりたいという気が強まった
自分の持てる技術を叩き込んでどこまで高見に行くのか見届けてやりたいと…
ブルー「…貴様、何を笑っている」ジトーッ
アニー「うん?」
ブルー「確かに、今日の俺はお前に対して手も足も出なかった…だが見ていろ、いつの日か必ず打ち勝つからな!」
アニー「!」
アニー「あはは!いいよ、いいよ…楽しみに待っててやるって」ヒラヒラ
手をひらひらと振って、笑う彼女は施設に居る弟の姿を目の前の男に重ねた
負けず嫌いで、強がりで……
アニー(…、……ああ、こいつを鍛えたいって思うのはそういう所かなぁ)
―――
――
―
荷物を持って地下鉄を出る、お世辞にも良い環境とは言えないが、換気扇が碌に聞いちゃいない澱んだプラットホームで
ランチタイムに洒落込みたくないからだ
外は相変わらず雨が降っていた、背の高い建物同士の合間に出来た小さな隙間と誰が設置してそのままにしたのか
トタン屋根の恩恵を有難がるわけでもなく、当たり前のようにそこへ入り込み髪についた水滴を払うべく頭を振った
鞄から乾いたタオルを二つ取り出し手渡す
アニー「ほらよ」つ『タオル』
ブルー「ああ…すまないな、助かる」フキフキ
507 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/06(水) 16:38:25.02 ID:rxG/DtiT0
髪をさっと拭いて首にタオルを巻く、そのまま鞄から折り畳み式シートと[結界石]を取り出す
春先の公園にでもピクニックに来たなら広げるであろうレジャーシートを地面に敷き、横風で飛ばないように
重石の代わりとして砕いた[結界石]の破片を敷物の端々に置いておく
こうすることによって、シート上に乗っている人物は周りから知覚されず
またあらゆる攻撃にもある程度は耐える結界が貼られる、簡易シェルターの出来上がりである
ブルー「気前がいいな、[結界石]を使うなどと…」
アニー「んー?ああ、これね…なんだかんだで結局最後まで使わずに取っといてさ、いっつも終わるのよ」
これまで裏社会で様々な任務についてきたて、気が付いたら大量に手に入って大量に余っていた、という魔道具の1つだ
任務終盤で決戦を控えた時に術力、気力、生命力の回復の為にと温存したものの、最後まで使わずに任務を終わらせた
そんなことが多々あって、宝の持ち腐れとなった[結界石]がグラディウスの倉庫には山ほどある
アニー「こうやって敷いた物の上に乗っけとくだけで、特訓してたあたし達の体力も回復する、鬱陶しい敵は来ない」
アニー「それにさ、雨音も遠くなって、寒気もあんましないじゃん?…異臭もしないし」
砕いた魔石の破片を置いたピクニックシートに座った二人の疲労は既に吹き飛んでいた
鼠の死骸やゴミ袋を漁る鴉の匂い、蓋の開いたマンホールから漂う異臭もシャットアウトされていた
アニー「あとは、この洗濯紐をこうやってビルの雨樋や配管にうまいこと括りつけて…と」ゴソゴソ
アニー「店から持って来た毛布を紐にこうやって掛ければ、ほい!カーテンの出来上がり」
ブルー「ほう…[結界石]とは別で更に風除けにもなり、外を見ずに済む簡易テントになるか」
アニー「そ!どうせ、昼食にするならそっちのがいいでしょ?ルーファスも余ってるから持って行けって煩いのよね」
登山家ご用達のジェットボイルを取り出し、同じく持ってきていた2Lペットボトルの水を注いで沸騰させる
点火して直ぐにお湯になった水を見て、他所の惑星の科学文明の発達やら、やたら重い鞄に何が入ってたかと思えばだのと
ブルーは感心、呆れ、どちらも入り混じった感情で仲間の荷物を眺めた
アニー「あ、そうだ…ブルーはどっちにする?」つ『カップ麺』
名前を呼ばれ、目線を鞄からその持ち主へと向ける、彼女が手に持っていたのは以前、リュート等を交え
酒盛りをした日に一緒に行った"こんびにえんすすとあ"とやらで見かけた、確か…携帯保存食の一種だったと思うが…
ブルー「貴様、店を出るときにアンチョビサンドを作ってなかったか」
アニー「あれは任務で出かけた他の子の専用よ、あたし等はこれで済ませるの、で?どっち」
どっち、と問われて、両手の携帯保存食を見る……
正直に言って、"かっぷらぁめん"を見るのは生まれて初めてだった、味の違いなど分かるはずも無い
ブルーは、戸惑ったが…少し間を置いて、右手のシーフードと書かれたラベルの方を指さした、色も青だったから
アニー「決まりね」トポトポ…!
蓋を半分剥がして、お互いのカップ麺に沸騰したお湯を注ぎ、コンビニで貰った使い捨てのフォークと箸を乗せる
箸は使えなくないが、どちらかと言えば慣れない食器よりも慣れたモノを使いたい
リュートが面白半分におでん屋でのブルーの箸の使い方を見ていたのが幸いした
彼に『ブルーの奴、箸の使い方ヘタクソなんだぜ〜』と聞いてたから予め、割り箸の他にフォークも用意していた
お湯を入れて2分と約30秒近く、地下鉄内で訓練の時に使った安物のタイマーをセットしてアラームが鳴るまで待つ
508 :
今回は此処まで
[saga]:2019/03/06(水) 16:39:18.37 ID:rxG/DtiT0
待っている合間に缶コーヒーを2本、鮭入りおにぎりを同じく二つ取り出し手渡される
缶についてるプルタブの開け方は飲み会の時に学習した、手渡されたライスボールは丁寧なことに開け方が書かれていた
手順通りにやるならば三角の透明な包装の一番上を摘まんで洋服のジッパーを降ろすように破き、両サイドを引っ張ると…
ブルー「…」ビリッ
ブルー「…あぁっ!」クシャッ
アニー「あぁ、コンビニのおにぎりあるあるだわ、そんな感じで失敗して海苔がバラバラになったりするのよ」
引っ張ったら海苔もビニールと一緒に裂いてしまった、剥き出しの白いご飯と、取っ払った包装の中に未だある海苔
掌にペタペタとつく白米が物悲しい…
アニー「ふふんっ♪ブルーよく見てなよ、こういうのにはコツがあってね…ここはこうして…あっ」ビリッ、グシャ
ブルー「…フッ、中々素晴らしい手本だな、アニー」
アニー「…う、うっさい、今日は調子悪かっただけだし、ていうかアンタだって失敗したろ!?」
ピピピ…!
アニー「と、馬鹿なことやってる間に出来たわね…ほら、アンタのシーフードヌードル」スッ
ペリッ
乗せていたフォークを取り、底についていたシールも剥がして蓋を取る、[鉄パイプ]の打ち合いでカロリーは消耗していた
それに比例するかの如く、湯気と共に鼻をくすぐる匂いは食指をそそる
黄色いふわふわに蛸の脚をスライスした物なのだろうか…?蟹と思われる食材も一口サイズで浮いていて刻み葱の下には
最初見た時、『こんな硬そうなモノが湯を入れただけで美味くなるのか?』と訝しんだ乾麺がお湯を吸い解れていた
ナポリタンスパゲッティと同じ麺を用いた食事、東洋文化の麺類をフォークで掬って口に運ぶ…
ブルー「…美味い」
カップの淵に唇を寄せて、スープも啜ってみる…塩気が少し濃くそこに何かを煮詰めて取ったダシ汁を加えた濃厚な味
舌が火傷しそうになるが、ついついもう一口とカップの中の液体を飲み干してしまいそうになる
握り飯にも齧りつく白米の奥に見える紅色は珍しくはない魚のサーモンで塩漬けにでもされていたのか
これといって過剰な味付けを施されていない白飯としょっぱさを感じる魚肉のハーモニーが丁度いい具合になっていた
[結界石]と風除けの布があるとはいえ常雨の街は気温が寒い部類だ、身体を温めて少しだけボーっと食後の余韻に浸り
今日の戦績を振り返ってみる、アニーとの模擬戦で得た技や偶に突っ掛かって来る命知らずな野盗やモンスター
稀に危険度ランクが高い方に部類される[トレント]や[ユニコーン]、そこまでではないが凝視攻撃が厄介な[アンノウン]
ヌサカーンと共に[保護のルーン]を取りに来た頃と比べれば、敵も自身も強くなったものだ…
海星型モンスターの[ゼノ]や[ラバット]共を蹴散らした頃が遠い日々のように思える
結界石『 』シュゥゥン…
アニー「砕いた石の光が弱くなってきたね…そろそろ効果切れだ、準備しな」
ブルー「わかった」
250ml缶の中に半分程残ったカフェインを飲み干し立ち上がる、洗濯紐と毛布も回収して
シートをばさりと輝きの失せた石を吹き飛ばす、もはや只の石ころと変わらなくなった魔石は
路傍の石に紛れて分からなくなり荷物は全て収納した鞄を担いで再びブルーとアニーは地下へと潜っていった
小降りだった[クーロン]の雨はまた勢いを増し、大雨へと代わろうする頃合いであった…
―――
――
―
509 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage saga]:2019/03/06(水) 19:09:23.59 ID:D2BhFtRm0
お疲れ様でした
今回も楽しませていただきました
510 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/07(木) 00:47:22.32 ID:lIKKg1YM0
これはブルーさんとアニーによる巧妙な飯テロスレ
511 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/08(金) 08:06:00.25 ID:Nws5bfq30
乙十字剣
結界石ってそう使うんか・・・
512 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/09(土) 11:08:39.20 ID:eG9FNXt1O
乙乙
改めて文章で見るとリージョン間の文化の差が顕著で面白いな
513 :
少し書き溜め投下
[saga]:2019/03/11(月) 22:22:51.72 ID:g926szxQ0
【双子が旅立って5日目 午後 12時31分】
リュートは今日も今日とて、闇市場[クーロン]に物珍しい売り物が無いか、風の向くまま気の向くままに散策していた
珍しい獣の革、どこぞの軍隊からの横流し品、マニアなら泣いて喜ぶコレクション、眠らない常雨の街はいつだって活気に
満ちていて、怪しくも可笑しくもある空気を振りまいていた
宝石箱か、はたまた子供のおもちゃ箱かをひっくり返したようにちょっと見渡せば興味を引くものが転がっている
ボサボサ髪にちょこんと乗った民族帽は、ある一点を振り向き…視線を固定させた
一度見たら早々忘れられそうにない緑色の獣耳、ふさふさした尻尾のついた人間がトコトコと歩いていたからだ
リュート「クーン!クーンじゃないか!」オーイ!
クーン「? あっ!リュートだー!メイレン!リュートだよ!」
メイレン「まぁ、元気にしてたかしら?」
リュート「へへっ!俺はいつだって元気だぜ!…けど、あん時は勝手にパーティー抜けてごめんな」
メイレン「いいわよ、そんなこと」
リュート「それでさ、"指輪"集めの方はどうだい?例の全部集めると何でも願いが叶う指輪」
クーン「えへへ!あの後ね!僕達2つも手に入れたんだよ!」ピョンピョン!
元々クーンが旅立った際に故郷の長老から渡された指輪、リュート、ゲン、T-260とクーン等で街を仕切るヤクザ者達と
戦い勝ち取った指輪で2つ、そして[タンザー]で宇宙海賊ノーマッドから手にした物で3つだった
つまり現在5つの指輪が揃ったことになる
メイレン「ここまで順調だったのも全部メサルティムと先生のおかげね!」
リュート「先生と、メサルティム?」キョトン
知らない人物の名が挙がり、弦楽器を背負った無職は首を傾げた
ヌサカーン「くくくっ、私としてはタダで病魔を観察できたのだ礼金を払いたいほどだよ」ヌッ!
リュート「うっひゃぅ!?」ビクッ
[クーロン]の裏通りに住む闇医者にして上級妖魔の医者、ヌサカーンはリュートの影からぬるりと出て来た
突然背後から声がしたと思えば、眼鏡を掛けた病的なまでに肌の白い白衣の医者が立っていた
死神か何かと一瞬勘違いするほどである
メイレン「先生、あんまり驚かせないでいただけますかしら?」ヤレヤレ
ヌサカーン「くくっ!いや、失敬…キミの驚き方は素晴らしい、その心拍数、健康な心臓だ」
リュート「は、はぁ…、どうも」
肌の色が黒い人魚「あ、あのー、高貴な御方…いえ、ヌサカーン様それは誉め言葉になってないのでは」フヨフヨ
ヌサカーン「ん?そうだったかね?それは失礼したなメサルティム」
メサルティム「ひぃぃぃっ!?すすす、すみません下等な下級妖魔の分際で上級妖魔の貴方にお言葉を…!」フヨフヨ
メサルティム「出過ぎた真似をして申し訳ありません!どうかお許しを…!」ガタガタ ビクビク
ヌサカーン(……怯えさせるつもりは無いのだがね…彼女には困ったものだ)ポリポリ
514 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/11(月) 22:23:21.62 ID:g926szxQ0
メサルティムというのはどうやら、この宙に浮遊してる気弱そうな人魚の名前らしい
美しく長い銀髪で角が生えている人魚…話によれば、最初[マンハッタン]で売られている指輪を買いに行ったら
既に[オウミ]の領主が買っていて、それを譲ってもらいに行ったらなんやかんやで落とし穴に落ちたり
巨大な烏賊<イカ>と戦ったり、領主が実は偽物だったりと…紆余曲折があって苦労したらしい
それでその道中で偶然知り合って、力を貸して貰い今現在、クーン達と行動を共にしていると
リュート「いやぁ、こりゃまた別嬪さんだなぁ」ジーッ
メサルティム「?」キョトン
メサ子の胸『装備:☆』
―――スパァン!!
メイレン「リュートぉ?そういうのはね、セクハラっていうのよ?田舎者のアンタでもわかるでしょ」
リュート「は、はび、ずびばぜん…」ヒリヒリ
訳(は、はい、すみません…)
メサルティム、彼女は男性から見れば実に魅力的な膨らみをお持ちの女性型妖魔だ…ただ、その…
なんというか…所謂、"ゾズマ・ファッション"なのが少々目に毒である
メイレン「メサルティム!基本的に人目の多い場所ではこれを羽織ってと言ったでしょ!はいっ!」つ『白いローブ』
メサルティム「あ、すいません…ついうっかりと」スッ、ゴソゴソ
人魚だから下半身にスカートだのズボンなんて物は当然ながら無理なので、それは百歩譲って良いとして
せめて上半身は隠さねば…!いや、胸にお星さまつけるのは妖魔の正装なのかもしれないが…
だが、そう考えると白衣を着た闇医者も白衣の下はお星さまかもしれない、…なんかヤダなそれ
リュートは目の前の白衣を着た男も胸部にお星さまを二つ付けてるかもしれないと想像して、ちょっと顔色を悪くした
ヌサカーン「うん?どうかしたかね?顔色が優れない様だが…数刻の合間とは言え、自宅の診療所付近に帰ったのだ」
ヌサカーン「無償でキミの具合をみてあげるがどうする?」ズイッ
リュート「い、いや〜俺は何処も悪くないんで、あと顔近いです、はい」
ヌサカーン「キミはあのブルー君の友人であろう?彼には借りがある、また会えたら遠慮せず言うといい」
リュート「ありゃ?あんた、ブルーの知り合いなのか?」
ヌサカーン「ああ、以前[保護のルーン]を取りに行くのに少し同行した仲なのだよ」
リュート「ふぅん…」
ヌサカーン「……時に、ブルー君のその後はどうかね?」
リュート「?」
ヌサカーン「いや、なに、気難しい性格をしてるであろう?」
リュート「あぁ、アイツ、すぐに仲間と喧嘩したりするんで困るぜ!」ハッハッハ!
ヌサカーン「ほう、そうか"仲間と喧嘩"か……それは素晴らしい、良い傾向だ」
ヌサカーン「人間はどんな小さな繋がりであれ、それが時として大きな強みになり、強い心を育む」
ヌサカーン「最初、手の付けられない狼とも思えたが、孤立せず、共に過ごせる相手が居るならそれは良いことだ」
515 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/11(月) 22:23:51.97 ID:g926szxQ0
ヌサカーン「近い将来、彼は絶望の淵に落とされるような真実を知るかもしれない」
リュート「! おい、アンタ…それはどういう」
ヌサカーン「そうなった時、彼の心に芽吹く病魔を殺せるのは心から支えてくれる友という特効薬だろう」
ヌサカーン「医者としての忠告だよ…」スゥ!
リュート「あっ、ちょっと待て…って消えちまった…」
クーン「ヌサカーン先生って偶によく分からないこと言うんだよね、なんだか難しいの!」
メイレン「…事情を知らない私には何の話かさっぱりだけど、要約するとその知人を支えてくれって事かしら?」
フェイオン「メイレーン!」タッタッタ…!
影に消えた、妖魔医師の謎めいた発言に頭を抱える一同の下に、ネオンの光を綺麗に反射させる美しい頭皮を持つ
武闘家フェイオンが駆けて来る、チャイナドレスの女は「遅い!」と腕を組み頬を膨らませ、クーンは陽気に手を振った
リュート(…んあ?あの弁髪の人[タンザー]で見たような気が?)ハテ
フェイオン「君が言ってた人物が指輪を売りたいと交渉を持ちかけたぞ!早速[バカラ]に…っと、取込み中か?」
メイレン「ああ、気にしないで、ちょっと知り合いと再会したから世間話してただけよ」
メイレンの知人ということで、頭皮が眩しい弁髪の男性とボサボサ髪のニートは握手を交わし簡単な自己紹介を済ませた
クーン等はこの街で指輪の所有者と取引できるかもしれないという話で一度戻って来たらしい
本来なら[シュライク]にある古代の王の墓へ行く予定だったが、その間に指輪が誰かの手に買い取られては不味いと
優先度を変え、先に[バカラ]へ行く事に決めたらしい
リュート「他には手にしなきゃならない指輪って何々あるんだい」
メイレン「そうね、それ以外だと[ムスペルニヴル]の妖魔が所有しているもの、あとは刑期100万年の男の指輪ね」
メイレン「前者はいつでも船で行けるとして問題は、後者よ、[ディスペア]の牢獄に居る男にどうやって会うか」
メイレン「どうにかして[ディスぺア]に潜入したいのだけど…どうしたものだか…」ハァ
リュート「…。」
リュート「なぁ、それひょっとすっと何とかなっかもしんねぇよ?」
フェイオン「なに!?それは本当か!」
メイレン「どきなさいハゲ!!――リュート、それはどういうこと、詳細を!」ズイッ
フェイオンを押し退け、リュートに詰め寄るメイレンを制しながら彼は口を開く、フェイオンがシクシク泣いてる…
リュート「あぁ、それなんだが、イタ飯屋に行ってみてくれないか?丁度[ディスペア]に行きたがってる奴が居てさ」
リュート「今から頼み込めば準備とかなんとか間に合うかもしれないんだ」
丁度、蒼い法衣の魔術師がお金にがめつい金髪娘に潜入の手助けを依頼しているから、なんとかなるだろうと彼は思った
516 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/11(月) 22:24:25.78 ID:g926szxQ0
*******************************************************
―――
――
―
【双子が旅立って 5日目 午後 15時35分 [ワカツ]の天守閣】
ルージュ「…っ」
【兎】【剣】【怪】
ルージュは悪戦苦闘していた。
あの後、白薔薇は2度目の挑戦で成功させ、天から舞い降りて来た一枚の札を手にした
術士は拍手喝采を送り、緑髪の少女は喜びを伝えるべく白薔薇姫に抱き付き、それを眺めていた剣豪もよくやった、と
労いの言葉で祝福して背後のメカ達はサウンドプログラムで派手なファンファーレを鳴らす
二番手としてアセルスが[剣のカード]を得る試練に挑み、計4回目で見事に揃えた
ここまでは順風だった、問題はルージュで最初は魔術師だからこそこの手の試練には一番向いているだろうと仲間達は
誰しもが考えたが、以外にも紅き術士は何度挑んでも、影を揃えることができなかったのだ
アセルスも白薔薇も固唾を飲んで見守る中、ゲンは目を細めてルージュを見ていた
ルージュ「ま、まだだ…もう一度…っ」スゥゥ…
ルージュ「あっ!?」
【怪】【怪】【怪】
影は三つ揃った、妖<あやかし>達が牙を剥く様…物の怪を3体揃えてしまった…っっ!
3つの影『――――!』ドジュウウウゥゥ
ゲン「全員、武器を手に取れ!」チャキッ
影 が モンスター の 形 に 変貌 していく !
ヘルハウンド「グルルルル…」
モンキーライダーA「ウキキッ!ウキャッ!」
モンキーライダーB「ウキキッ!ウキャッ!」
焔色の吐息を漏らす口部は獄炎の園に続いているのか、大型犬の魔物は唸る度に高熱を吐き出し
生意気にも一輪車に乗った白猿は2匹で仲良く一行を嘲っていた、武器を構えだした一行よりも先に
片方の猿はペダルを漕ぎ、[暴走]するッ!
モンキーライダーA「キャキャキャキャ―――ッッ!」ギュゥゥン!!
517 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/11(月) 22:24:57.98 ID:g926szxQ0
一輪車『 』ギュラララララララララララララ―――ッッッ!
白薔薇「あ、アセルス様!伏せてくださ あ"ぁっ!?」ドギャンッ
獣系の魔物[モンキーライダー]はその愉快な見た目に反して相当なパワータイプであり、彼奴の駆る一輪車を
舐めて掛かってはならない、細い脚の何処にそんな筋力があって、何で一輪車が出来ているのか
過去に冒険者の成人男性がこの白猿が操る車輪で轢かれ、腹の贓物が見事にミンチ肉にされたなどという事案があった
トリニティ政府はこの一件から、このモンスターを【危険度ランク4】相当の危険生物として認定した
ルージュ「白薔薇さん!?っ――こ、こいつぅ!!」チャキッ BANNG!
三畳の畳で座していたルージュは立ち上がり、持っていた拳銃の引鉄を引くが―――
ヒュンッ!
モンキーライダーB「ウキャキャキャキャキャキャ!」ゲラゲラ…!
ルージュ「だ、駄目だ…!早すぎて当たらな――」
ドゴォッ、グシャッ
ルージュ「……。」
ルージュ「ぇ」
ゴロッ…ボトッ…ドクドク…
ルージュの左手首『 』ドクドク…
ルージュ「――――ッ、う か” あ””"あぁ"ぁ"――」
左手は火が点いた様に熱くなった、宙に浮かぶような夢心地を一瞬感じで、身体が自然と後方へと倒れていく
ごつん!と後頭部を畳へ打ち付けて、何が起きたのか辺りを見渡した…
"何か"が倒れた自分に続く様にワンテンポ遅れて床に落っこちてきた、それは見覚えのある左手首で誰のだったか
脳がそれを理解した瞬間に、熱の灯った左手首の付け根が熱さから激痛へと変わった、それがルージュが気を失う前の光景
ゲン「 [ 二 刀 烈 風 剣 ] !! 」ヒュッ!シュバン!シュバン!シュバンッ!
―――
――
―
518 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga!nasu_res]:2019/03/11(月) 22:25:34.13 ID:g926szxQ0
ルージュ「…うっ、ここは、…何処だ!?」
「けけけっ!だから言ったろう!そんな豆鉄砲じゃ鳩だって堕とせやしないぜ!クケーッ!」
ルージュ「…お前は!」
ハーピー「そうともよ![心術]の試練じゃよくも術で殺してくれたな!けけ…でも許してやるよ!」
ハーピー「お前は今から俺と同じトコに行くからサ!仲よくしようや!兄弟!ケケケッ!」
ルージュ「兄弟!?ふざけるな誰がお前みたいな奴と…待て、なんだって、僕がお前と同じトコに…」
ガシッ
気が付けば、ルージュは[ハーピー]の鉤爪に掴まれていた―――
―――いや、鉤爪じゃなかった、それは人の手だった、さっきまで拳銃を握っていたルージュの手と同じ人の…
ハーピ?「聞こえなかったのか?お前はこれから俺と同じトコに行くんだよ」グニャァ…
目の前の半人半鳥の化け物の顔が粘土のようにぐにゃぐにゃと代わる
ハー?ー「お前はこれから血塗られた運命に従って悪行を重ねる、そんな奴が一丁前に銃を持ち友達を守る?」
?ルー「笑わせるな」
ブ??「友を守るというのも建前だ、"資質"を得て俺を殺す為、いいや、違うな」
??ー「おまえは結局の所、反逆罪で殺されたくないから、その為に何かにつけて理由を述べ」
ブル?「そして、資質を得て、自分が助かりたいから武器を手にしているだけだ…力を手にして俺を殺す為に」
ルージュ「…ぁ、ぁあ…ま、まさか…君は」ガタガタ
519 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga!nasu_res]:2019/03/11(月) 22:26:22.08 ID:g926szxQ0
[ハーピー]の顔が誰かの顔に変わっていく…それは、朝起きて顔を洗う為に鏡を見ればいつでも会える顔…
ブルー「なぁ?そうだろう"兄弟"」
ルージュ「ち、違うッ!」
ブルー「いいや、違わないさ、なら何故お前は仲間に旅の目的を打ち明けない?」
ブルー「エミリアと[マンハッタン]で話をしていた時だってそうだ、あの4人での昼食時の時にでも言えれた筈だ」
ブルー「『僕は国命令で実の兄弟を殺す為、修行の旅に出たんです』と、な」
ブルー「言わないのは、お前が仲間を心の底から信じていないから…―――利用するのが目的だからだろう?」
ルージュ「ッ!―――そんな訳が」
ブルー「 な ら ッ ! 何 故 言 わ な い ! 答 え ろ ル ー ジ ュ !!」
ルージュ「っ」ビクッ!
ブルー「…。」
ブルー「だんまりか?自分に都合が悪い事だとお前は誰にも何も口を出さないな、仲間にも真実を打ち明けない」
ブルー「そんな迷いを抱えている様な、情けない男が…試練を1つだって乗り越えられる訳もないだろうに…」
ルージュ「……ブルー…?」
ブルー「貴様の仲間とやらは、お前の真相を知れば掌を返して突き放すような軽薄な人間か?」
ブルー「ならこれまでの旅はとんだ"うわべっ面だけの友情ごっこ"だったな、貴様には似合いだ」
ルージュ「…!」
ブルー「まぁ、俺もお前も同じ所、……地獄に落ちるのだ、今更どうでもいい話だな」スゥゥゥ…
520 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/11(月) 22:27:02.91 ID:g926szxQ0
ルージュ「き、キミ…身体が透けて…」
ブルー「先に地獄で待ってるぞ」シュゥゥゥ…
ルージュ「ま、待て!ブルー!ブルー…っっ!! 兄さん!」
ゴォォォ!
ルージュ「えっ、あ、うわああああああああああああああああああぁぁぁぁ!!」
ゴオオオオオオオオオォォォォォ!ボォォォ! メラメラメラ… バチバチ!
―――
――
―
【双子が旅立って 5日目 16時27分 [ワカツ]の天守閣】
ルージュ「――ぃ、いやだ、いやだ…」う〜ん
ゲン「おい!しっかりしろ!兄ちゃん!起きろって!」ペチペチ
ルージュ「…。」
ルージュ「ハッ!?こ、ここは…さっきのは?」
ゲン「兄ちゃん、白薔薇の姉ちゃんに感謝しろよな?妖魔だから比較的軽傷だったって、んで[克己]で完全回復して」
ゲン「そっから気ぃ失っちまった兄ちゃんに付きっきりで看病してたんだぜ?[陽術]の使い手で助かったな」
ゲン「なんの夢見てたんだか知らねぇがよ、…俺から一言言わせてもらうぜ」
ゲンの目が細くなる、さっきまでのルージュの試練を終止見ていた時の眼だ
ゲン「[剣のカード]は心の試練だ、[心術]の修行と似てはいるが、微妙に異なる試練でな」
ゲン「迷いがある奴は影を三つ揃えることはできねぇ……兄ちゃんを途中から見てて思ったのさ」
ルージュ「迷い…」
ゲン「ああ、…[心術]の修行ってのは聞くところによれば自分の心の奥底にある不安や怖れがバケモンの形で出る」
ゲン「で、そいつに勝ちゃあ合格ってもんだがな、俺が思うにそれは"切欠"なんだわ」
紅き術士は「それはどういう意味ですか」と尋ねようとした、ゲンは腕を組み静かにルージュへと語る
521 :
今回此処まで
[saga]:2019/03/11(月) 22:27:42.81 ID:g926szxQ0
ゲン「そうだな、…俺は精神科のお医者様じゃあねぇからあんましどうのこうのと言えやしねぇけど」
ゲン「人間の心には自分にしか分からない側面と、他人にしか分からない側面、自分にも他人にすら分からない面」
ゲン「そういうのがあるって聞いた事ねぇか?」
ルージュ「それは、あります…確か人間心理学におけるジョハリの窓でしたか…」
ゲン「いやぁ、俺は専門家じゃねえからそんなもんの名称なんざどうでもいいんだ」
ゲン「重要なのは、そこだ、【自分で気が付いていない不安や見つめなきゃならない問題】を気づかせる」
ゲン「それが[心術]の修行における真の目的で、夢の中で魔物倒して資質を貰うのはあくまでオマケじゃないかって」
ゲン「俺はそう思う、実際はどうだか知らねぇけどよ」
ルージュ「……」
-『へひゃひゃ!へたくそぉ!そんな豆鉄砲の腕じゃあ鳩だって堕とせねぇーぜ、ケヒッ』-
-『けけけっ!だから言ったろう!そんな豆鉄砲じゃ鳩だって堕とせやしないぜ!クケーッ!』-
-『おまえは結局の所、反逆罪で殺されたくないから、その為に何かにつけて理由を述べ』-
-『そして、資質を得て、自分が助かりたいから武器を手にしているだけだ…力を手にして俺を殺す為に』-
-『いいや、違わないさ、なら何故お前は仲間に旅の目的を打ち明けない?』-
-『 な ら ッ ! 何 故 言 わ な い ! 答 え ろ ル ー ジ ュ !!』-
-『だんまりか?自分に都合が悪い事だとお前は誰にも何も口を出さないな、仲間にも真実を打ち明けない』-
…[心術]の試練で、心の中に出て来た化け物と1対1で戦った
仲間は誰も居ない、その土俵でルージュと、"目の前の人物"と1対1で、決闘をしたんだ
そいつは、夢に出て来て、自分の行動を指摘した…なぜ旅を共にする友人に真実を打ち明けないのだ、と
心の底にそんな重荷がある奴が試練を達成できるものか!と…見た事も会った事も無い兄に叱られた
自分自身が気づいてない深層心理の奥底、本当は勇気をだして見つめなきゃいけない問題に気付かせる…
それが[心術]の資質を得た物が最初に開く学び舎の門であり、探求し続けなければならない課題
ゲンに言われルージュはそうなのかもしれない、と思った、本当の意味で[心術]の"裏試験"を合格してないのかもな、と
ルージュ「…ゲンさん、ご迷惑をおかけしました、自分の中で少しだけ答えが見えた気がします」
術士は、決意を宿した…帰ったら、アセルスお嬢にも白薔薇姫にも後に再開するレッド少年もだ
自分の…"親友"に、僕の旅の目的―――兄殺し――を告白しよう、と
522 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/12(火) 16:30:28.40 ID:2xkBbZl7O
乙
523 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/13(水) 07:03:00.11 ID:aZm8qjWJO
乙
心術の資質を会得出来たこととも絡めてくるとは
524 :
少し投下
[saga]:2019/03/16(土) 01:27:47.02 ID:5vLt6XnI0
ルージュ「もう一度だけ、…カードの試練を受けさせてください」ジッ
ゲン「……ふむ」
ゲン「…兄ちゃんの眼にゃ未だ迷いや戸惑いの色が見えるな」
ゲン「だがその奥に強い意志の色も見える、腹括った野郎にしかできない目だわな」
[京]の旅館でも見た、瞳の奥にある力強い"何か"…、まだ20そこらしか歳を喰っちゃいない男がそんな重い目をできるのは
相当の理由がある、剣豪はだからこそこの魔術師を見守ってやろうと思った、一体腹にどんなモンを抱えてんのか、と
ゲン「俺は護衛だ、兄ちゃんが折れるまでは何度でも傍に居てバケモン共を斬り捨ててやるさ、好きなだけやんな」
ルージュ「…感謝します」ペコッ
ゲン「おっと、礼はいらねぇぜ、それよか」
ルージュ「はい、他に言うべき人が居る、ですよね」
ゲン「わぁってんじゃねぇかよ、ほら、女は待たせちゃいけねぇんだ、とっとと行けって」
白薔薇姫とアセルスお嬢に心配かけてすまないと謝りに行こう、その思いを胸に彼は下の階層へと駆けて行った
ゲン「やれやれ…、まだ危うさはあるが、あの分だとアイツは試練に合格するだろうな」ゴソゴソ
剣豪はその場に胡坐をかき、一升瓶を取り出す…彼は考える、ああいう目をした奴はこの惑星<リージョン>が
世界最強の剣術家たちの憧れであった頃によく見た
目の奥に宿る、命と命の奪い合い、生と死、自分の命を護る為に目の前にいる敵を斬り殺そうとする戦士の眼だ
合戦場で足軽から武将まで、全員が光らせる命を諦めまいとする眼差しとほぼ同じだ
ゲン「―――」グビグビ、プハァ
ゲン「かぁーっ!うめぇ!!」ダンッ
ゲン「…」
ゲン(心の迷い、かぁ…)
酒瓶を床に、置きゲンは一人ボロボロの天守閣の天井を見上げた、優しい酔いが逃げ出したくなるような惨状を暈した
ぐにゃぐにゃと鍋の中で加熱し過ぎて煮崩れを起こした煮物の様に浮かんでくる情景も形を変える
そんな中、彼の頭に一つだけ鮮明な形をした一室が浮かんで来た、この城の地下にある…
…強き者に最強の剣を授ける神をまつる部屋が―――
ゲンは首を大きく振った、何を考えているんだ自分は、と何処か彼らしくない自嘲めいた顔で浮かんだ景色を振り払った
ゲン「今の俺じゃ[剣神の間]に行った所でなにも……ハンッ、俺の方があの兄ちゃんより迷いありまくりじゃねぇか」
そう独り言ちり、酒瓶に彼は再び口をつけた
525 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/16(土) 01:28:23.71 ID:5vLt6XnI0
*******************************************************
―――
――
―
【双子が旅立って 5日目 午後 17時08分 [クーロン]】
犯罪都市の裏通りに存在する小さな病院、消毒液のアルコール臭さと棚に並べられた怪しげな薬瓶から漂う異様な匂いと
塵埃が交じり合ったこの物件に家主が帰って来た、折角立ち寄ったのだからと自宅で寛ぎながら診断書<カルテ>でも
書き上げてしまおうかと考えたからだ
1時間そこらしたら、すぐに切り上げて現在所属しているパーティーの元へ戻ろうと玄関口を開くことなく妖魔医師の影が
エントランスの中央に現れ、自分の影から、薄暗い水底からダイバーが浮上するようにヌサカーンは現れた
ヌサカーン「ふぅ…、おや?…」スンスン
帰宅した医者は、戻って来るや否や鼻をひくつかせた、留守の間に変わった客人が来ていたようだ…
砂漠に咲き乱れる一輪の白薔薇の様な香り、それに茨の園にある蕾に近い香り
"香り"とは言ったがそれはあくまで比喩表現だ
妖魔は、同族の気配を特有の感覚で察知することができる
留守の合間に来ていた妖魔の置き土産である妖気は、強い芯を持っているがまだ咲ききれない蕾の様な物と
ハッキリとした品位を持った気高い存在だと窺い知れた、裏通りで観光客目当てに追剥紛いなことをして生計を立てる
溝鼠以下の下級妖魔のソレとはまた違う
ヌサカーン「ゾズマ…ではないな、かといって私に治療を求めて来た浮浪者の妖魔でもないか」
奇病フェチとしてその界隈で名が通る変人のヌサカーンは、患者から代金を取らない
いや、病院の設備維持費の為にも最低限は必要とするが
普通の病院なら人間が生涯を終身まで延々と労働時間に当て、それで築いた莫大な資金を全額はたいてようやくという
法外な金額の医療費も、ヌサカーンなら『自分の知的好奇心を満たしてくれた』『趣味でやってるから金銭はいらんよ』と
世間一般的な欲望とは他の妖魔以上にあまりにも無縁な人格なのだ
そんな彼の下に、金は無いが同族の誼、あるいは気まぐれで自分を治療してくれないかと
淡い期待で群がってくる妖魔は少なくない、本当に彼の気分で治して貰えた者以外は門前払いだったが…
神出鬼没の友人であるゾズマではないなら、留守中に忍び込んだ下級妖魔か?
いいや、違う…少し前に此処を訪れた白薔薇姫とアセルスお嬢だ
ヌサカーン「…まぁいい、誰かは知らんが今は他の患者に付きっきりだからな」テクテク
彼はクーン等との旅で、時間を見繕っては見つけて来た古い書物の束から一冊
古き時代のリージョン界に関する記述に書かれた本を手に取った
ヌサカーン「その昔、数多く存在したリージョンが滅んだ、…星さえも破壊する人類の機械兵器」ペラペラ…
ヌサカーン「これは、確かなんという名だったかな…? あーるびー、スリー…だったかな?」ペラッ
ヌサカーン「破壊されたリージョンの中に古代の技術がある、星と共に破壊され永久に失われた技術」ペラッ、ペラッ
ヌサカーン「…ふむ? 最後の皇帝… 麗しの、帝国、 七人の英雄、同化の力と継承の力……ダメだな」ペラッ、パタン
ヌサカーン「失われた古代時代の情報だ、この本も殆ど掠れて読めんな」
ヌサカーン「ブルー君の身体も弟の方も恐らくは、これの応用技術が使われている筈…」
ヌサカーン「恐らく、双子が対面し、片方が片割れの命を奪った時、同化と継承の力が働き――」ブツブツ
526 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/16(土) 01:29:02.86 ID:5vLt6XnI0
ヌサカーン「何れにしても資料が足りん、となれば…[マジックキングダム]…[フルド]の奴か」ハァ…
ヌサカーン「気が進まんな、あるいは裏であの魔法大国と黒い繋がりのある[シュライク]の[生命科学研究所]か」
闇医師は、そう言って再び影に沈み彼は仲間の元へと帰って行った…
―――
――
―
ライザ「…。」テクテク…
日が暮れて、一般家庭から繁華街の飲食店までどこもかしこも食指を刺激する匂いを漂わせる時間帯
当然ながら裏組織"グラディウス"のアジトたるイタリアンレストランも『open』の札を玄関口に掛けて、従業員一同が
店内でせかせかと働いている頃合いであった
そんな中、彼女は一人で雑踏が昼間以上に騒がしくなり始めた中心街を歩いていた、知り合いのニートの頼みだからだ
一見すればただの買い物帰りにしか見えないパンの入った紙袋を抱えて歩くライザはターゲットの集団へ近づく
緑色のケモミミ少年と、チャイナ衣装の男女
白いローブを羽織った人魚、…よくウチへ来てルーファスの料理を食べにくる怪しい医者、知り合いから聞かされた通りだ
ライザ「よろしければどうぞ」スッ
メイレン「あら、どうも」スッ
イタリアンレストランの割引券『 』
一枚のクーポン券だ、ただし…"ワケありのお客"にしか手渡されない特別なソレ
普通の席に座り飯を食いに来ただけの一般客と特等席での会食を希望する者を区別する為のパスチケットの様なものだ
他に客の居ない静かな個室で従業員とビジネスの話をしながらの食事だ、カタギの奴らに聞かれたらダメな内容の奴の
メイレン(彼から事前に聞いた話じゃ[ディスペア]には定期的にパイプや電装関係の修理工が入る)
メイレン(このお店に行けば、潜入に手を貸してくれるプロが居るってわけね)
クーン「ねぇ、メイレン…」
メイレン「うん?」
クーン「ボク、修理なんてできないよぉ」シュン
メイレン「…あまり、大きい声で言わないで頂戴、大丈夫よ振りだけでいいのよ」ナデナデ
獣耳がペタンと垂れ気味で落ち込んだ幼子の頭を撫でながら小声でメイレンは囁いた、フェイオンだってできないし
妖魔のヌサカーン先生…はわからないけど、メサルティムだってできないわ、と元気づけるように
メイレン「上手くいけたら、刑期100万年の男に会いに行きましょう、ね?」
メイレン「英気を養うために今晩はこのお店で美味しい物たくさん食べることにするし」クスッ
一枚のクーポン、特別客専用の、50%OFFチケットをひらひらとさせながら笑いかける
食欲旺盛な緑の獣っ子は顔にパッと花を咲かせて喜び、小動物とも歳相応な幼子ともどちらとも受け取れる行動で
感情を体現した、メイレンの周りを雪が降った後に庭駆けまわる子犬の如くぐるぐる駆け回った
ヌサカーン「あの店か、サングラスの店長が作るグラタンは絶品だからな、テイクアウトも頼もう」
メサルティム「…で、では…私はシーフードサラダを…」
527 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/16(土) 01:29:46.27 ID:5vLt6XnI0
メイレン「ええ!なんだってじゃんじゃん注文しちゃっていいわよ!全額フェイオン持ちだから」ニコッ
フェイオン「えっ」
メイレン「そうね、私も…あっ、このスープオムライスとか美味しそうじゃない?」
メイレン「あの紙袋の人、メニュー表まで渡してくれたのよね〜」
フェイオン「め、メイレン…あの、そのクーポン、一品しか割引されないんだが…それに俺の財布」
メイレン「冗談よ、全く本気にしないでよね…ほら?『[ヨークランド]で手に入った資金』がそのままじゃない」
フェイオン「そ、そうか!冗談か!ははは…キミも人が悪い…はは」
メサルティム「あのー…私は[オウミ]で皆さんの旅に加わったので、詳しく経緯を知らないのですが…」
なにがあったんです?とか、失礼ですが皆さんそんなにお金に裕福そうには見えませんでした、とオドオドしながら
人魚が説明を求める
フェイオン「あぁ…あれは、なんというか、悲しい事件だったというか…その」ゴニョゴニョ
メイレン「必要な犠牲だったのよ、[マンハッタン]で売りに出されてた指輪が超高額だったのが悪いわ」
明後日の方角を見始めるメイレンと気まずそうに口籠るフェイオンにメサルティムの不安げな顔色が更に増した
いつでも笑顔のクーンと金銭感覚が可笑しい妖魔医師の方に顔を向けると二人は訳を語ってくれた
クーン「えっとね、"豪富さんに貰った"んだよ!」ニコニコ
ヌサカーン「私は別に治療費などいらなかったのだがなぁ……」フム
〜 回想 [ヨークランド] 〜
病魔モール「ぎえええええええぃぃぃ!!…おのれぇ!この人間の命は私の物!邪魔をスルナ!!」
[生命の指輪]をつけた幼女「ハァハァ…たす、けて…おねえちゃん…」ツーッ、ポロポロ
ヌサカーン「来たぞ!先に説明した手順通りだ、奴は今、患者に憑りついている…これで逃げられん状態だ」
ヌサカーン「だが、同時に患者から生命力を吸い尽くし憑り殺そうとする、このままでは患者の生命力が持たん」
病魔モール「ぎひひっ、そうさ!小娘の命を吸い上げて殺してやるさ!未発育の少女の肉体ほど甘美な生命力は――」
メイレン「気持ち悪っ!女の敵だわ…先生こいつはさっさと退治しましょう!!」
ヌサカーン「よろしいならば早期決着だ、 こ れ よ り 手 術<オペ> を 開 始 す る ッッ!」
病魔モール「エ、あの、チョット―――」
<[シルフィード][超風][短勁][妖魔の剣]
<あぎゃーーーーーっ!
528 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/16(土) 01:30:33.01 ID:5vLt6XnI0
病魔モール「ゲボ!」ドジャア
メイレン「くっ、まだ息があるわね!!こうなったら連携技を決めるわよ!各自!連携しやすい技と術を!」(銃構え)
ズドンッ! バッ、ドゲシャァ! ヒュンヒュンッ!バチチチ…ゴォォ!
フェイオン「…既に虫の息だった気もしたが、やったな!」
クーン「うんっ!これであの子も助かるよね!」
[生命の指輪]をつけた幼女「う、う〜ん…」
豪富さん「せ、先生!ウチの娘の容態は!?」ガチャッ、バッ!
ヌサカーン「安心したまえ、見ての通りだ」
[生命の指輪]をつけた幼女「おとうさん!」
豪富さん「お、おぉ…、良かった、良かった…」ポロポロ
豪富さん「先生!皆さん!本当にありがとうございます!なんとお礼を申し上げて良い事か」
ヌサカーン「いや、中々興味深い病原体を観察できたし寧ろ私がお礼を「あー!はいはい先生は少し黙ってくださる」
豪富さん「皆さんにはできる限りのお礼を…」
[生命の指輪]をつけた幼女「あ、おとうさん、少しだけ待って……よいしょっと」ベットから起きて歩き出す
アニーの実妹の幼女「ハイ!これ」つ【生命の指輪】
クーン「くれるの!?」
豪富さん「お、お前!?それを渡してはお前の身体が…」
アニーの実妹の幼女「ううん、もう大丈夫よ!それにね、夢の中で指輪が兄弟に会いたいって言ったの」
アニーの実妹の幼女「クーン君が持ってるんだよね?だからあげるっ!」
クーン「わーい!ありがとう!」ダキッ
アニーの実妹の幼女「あっ、…うん、頑張ってね///」
―――
――
―
ヌサカーン「とまぁ、このように童女趣味という変わった病原体を観察できて私としては中々愉快な時間だった」
クーン「あの子元気かなぁ、旅に出る前に教えてくれたけど豪富さんの養子になる前は[クーロン]に居たんだって」
メサルティム「は、はぁ…そうですか…」
529 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/16(土) 01:31:00.60 ID:5vLt6XnI0
メサルティムは話が大分脇道に逸れそうなのを察して、軌道を修正しようと考えた
緑の獣っ子は見ての通り、他者への説明が上手とは言えない…幼子特有の本題から脱線して別の話にすり替わるアレだ
医者の方は、医者の方で完全に趣味の世界に生きてる妖魔だからこのままだと自分が治療してきた珍しい奇病や
某珍百景を紹介するテレビ番組の如く世界どっきり患者特集なんていうトークショーに発展しかねない
メサルティム「そのー、結局の所どうやって大金を得たんでしょうか…」
クーン「んっとね、豪富さんから沢山もらったの!」
〜 回想 [ヨークランド] 〜
豪富さん「娘はああいってますが、これは私からです、どうか受け取ってください」つ『500クレジット』
フェイオン「なんと!?このような大金を…」
ヌサカーン「私は別に金など要らないのだが…」
メイレン「二人共シャラップ、コホン…豪富さん、ありがとうございます…ですが、その…」
メイレン「たいへん厚かましいとは思いですがもう少し頂いてもよろしいでしょうか?」ニコッ
豪富さん「え、あ、あぁ…申し訳ない、娘の不治の病を治して頂いたのに」
豪富さん「命の値段がたかが500とは確かに少なすぎましたね…今持って参りますので少々お待ちを」
フェイオン「お、おい、メイレン…」
メイレン「フェイオン!忘れたの!?[マンハッタン]で売られている指輪の金額を!」
メイレン「3000クレジットよ!?わかる! 3・0・0・0、クレジット!!公務員レベルの月給いくらだと!?」ガシッ
フェイオン「ぐえっ…わ、わかった首が閉まるから…ぎ、ギブギブ!」
メイレン「[IRPO]の隊員みたいな高給の社員がねぇ!一世を風靡する女性モデルに婚約指輪代わりで贈る様な
[パールハート]でさえ1500クレジットもするのよ!?3000なんてその2倍よ!わかっての!?ええっ!」
フェイオン「ゎ、わかったから、やめ…あ、意識が遠く…」ガクガク
ヌサカーン「まぁまぁ、その辺にしたまえ、酸欠になりかけているからな」
バッ
フェイオン「げっほぇぇ…!!」ゴロゴロ
豪富さん「お待たせいたしました!もう500クレジットです!…?どうかなさいましたか?」
フェイオン「い、いえ…お気になさら「豪富さん!」
豪富さん「は、はい!」
メイレン「豪富さん…彼、私の恋人のフェイオンは先程の治療で病魔から受けた傷が痛むそうなんです」
豪富さん「な、なんと…」
メイレン「娘さんの命を奪われまいと、必死に戦い一歩間違えば此方が死ぬかもしれない激闘でしたわ…」グスッ
ヌサカーン「いや別にそうでも無かっ「先生、シャラップ」
メイレン「コホン、豪富さん…非常に申し訳ありませんが、もう500クレジット工面できませんか」
530 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/16(土) 01:32:18.87 ID:5vLt6XnI0
豪富さん「そ、そうでしたか…確かに皆さんのお命も危険にさらしてしまったのですね…しょ、少々お待ちを!」
ドタバタドタバタ…
豪富さん「こ、こちらになります、これで合わせて1500クレジットです!」
メイレン「豪富さん」ニコッ
豪富さん「ぇ、ぇ、…あ、あの…」ゾクッ
メイレン「お金はまた稼げば手に出来ます、でも命に替えはききませんよね?」
豪富さん「…う、ウチの金庫にあったのはそれで全部で」
メイレン「 」ニコニコ
豪富さん「 」
豪富さん「…ぎ、銀行の預金口座からお金をおろしてきます」
メイレン「豪富さん!」
豪富さん「!」クルッ
メイレン「私達は一旦この家を出ます、…"次、私達がこの家に入ってきて話し掛けた時は"…わかりますね?」ニッコリ
豪富さん「……は、はぃ…」
―――
――
―
ヌサカーン「こうして我々は1時間おきに彼の家に出入りを繰り返し、3000クレジットを入手した」
メサルティム「…うわぁ」
ヌサカーン「……。」
ヌサカーン「…最後はな、『もう勘弁してください』と涙と鼻水を垂らして顔色が真っ青でな」
ヌサカーン「2階に居た患者の少女も吹き抜け手摺の所から眺めていてな」
ヌサカーン「身体は健康体になった筈で何処も痛みは無いだろうにな、…泣いていた」
ヌサカーン「不思議なモノだ、私自身は病に侵された事はないが、心臓部が締め付けられる様に痛くなったよ」
メサルティム「そ、そうですか…それは、その…なんともうしますか…」
クーン「んとね、次の日、ボク別のリージョンに旅に出ちゃうからあの子にお別れ言おうとしたんだ」
クーン「でも、お引越ししちゃったんだって、近所の人が言ってたんだ『豪富さん夜逃げしちゃったよ』って」
メサルティム「 」
クーン「せんせー!"よにげ"ってお引越しのことなんだよね?」
ヌサカーン「…うむ、それで合ってる、キミは賢いな、うむ」ナデナデ
531 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/16(土) 01:53:55.10 ID:5vLt6XnI0
*******************************************************
今 回 は 此 処 ま で !
豪富さん夜逃げしちゃったよ…、について、少々解説
25歳の無職ことリュートの生まれ故郷である[ヨークランド]に住む豪富さんがクーン(プレイヤー)によって全財産を
毟り取られ、養子であるアニーの妹を連れて泣く泣く夜逃げする様子である
病魔モール撃破後に豪富さんに話しかけることで500クレジットを頂戴でき、更にもう一度話し掛けることで
500クレジットの追加、更に話し掛けてでもう500せしめられるのであった
記憶違いで無いなら、一度に3回までで、一度豪富さんの家を出てMAP切り替えをする、再び豪富さんの家に入り
もう一度話し掛ける事で500クレジットを巻き上げる、そしてもう一度話すことで…以下ループ
と、無限に金を奪えるように見えて、実は上限があり…この辺りイベント条件を忘れてしまい調べましたが
この繰り返しで1500×2…計3000クレジットという大金を毟り取る事が可能だそうです
(記憶違いでしたか4回話し掛けるとマップ切り替え後にもう一度貰うが出来なくなったような気がしましたが…)
未確認情報ですが、パーティーを強化しまくってヌサカーン先生を仲間にせず、病魔モールを初回で逃がさず倒すと
更にもう500クレジット手に入れて 3500クレジット入手可能になるそうです
……大抵のサガフロプレイヤーはマンハッタンで売りに出される指輪の為に豪富さんを破産に追い詰めたことでしょう
なお、小説版『ヒューズのクレイジー捜査日誌』においては、クーンに大金せしめられて夜逃げするのが正史らしく
その豪富さんとアニーの妹は[シュライク]の[済王の古墳]近くで木の実を拾って食べたり
ひもじいホームレス生活をしている…
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532 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/16(土) 07:47:55.89 ID:Bpp/IQrco
悲惨すぎる・・・
533 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/16(土) 17:50:39.25 ID:rlcIrsbyO
ヨークランドの富豪さん野子とは……嫌な事件だったね
534 :
少し投下
[saga]:2019/03/19(火) 22:33:43.39 ID:RPhB0ynO0
メサルティムは今更ながらこの人達の御供として着いて来て本当に良かったのか、と不安を抱き始めた
高貴な上級妖魔の気配を感じ、ひょっとしたら自分を以前救ってくれたアセルス様が来たのでは!?と期待を胸に
水面から顔を出したのが運の尽きであった
見知らぬ御方とは言え上級妖魔、機嫌を損ねてはならぬと声をお掛けした結果が旅についてこいだったのだから仕方ない
ヌサカーン「メサルティム、やはり顔色が優れないようだな」
メサルティム「! い、いえ、そのようなことは…!!」アワワワ
ヌサカーン「…何度も言うが、私は別に君を取って食おうとは思っていない落ち着き給え」ハァ…
ヌサカーン「話しながら歩いていたからか、メイレン達と距離が空いてしまったな、少し早歩きで行くとしよう」
クーン「はーい!」テクテク
メサルティム「あぁ!お待ちください!!」フヨフヨ
―――
――
―
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―――
――
―
【双子が旅立って 5日目 20時07分 [マンハッタン]シップ発着場】
<4番ゲートより、間もなく[シュライク]行きの便が出ます、ご利用のお客様はお急ぎください
ガヤガヤ…ザワザワ…
ゲン「…なんてこった」パサッ
剣豪は小銭を出して購読した新聞紙を無造作に可燃ごみの籠に放り捨てた
遡る事、数刻前…ルージュは、旅の同行者であるアセルス、白薔薇姫、そしてゲン達に自身の秘密を打ち明けた
その時の会話はこうだ
ルージュ『―――という訳で、僕は…兄さん、ブルーを殺す為に国を出ることになったんだ、黙ってて、…ごめん』
アセルス『…そんな』
白薔薇『血を分けた兄弟で…』
アセルス『…でも、話を聞く分には、嫌なんでしょ!?だったら…』
ルージュ『うん、僕もどうにかして断ち切りたい、国に定められた宿命の闘いなんてまっぴらだ』
ゲン『―――頭じゃ分かっちゃいるが今は、資質を集める、それしかねぇんだろ?』
ルージュ『…はい、国が何処で監視してるのかは分かりませんが、資質集めの旅をしていないなら僕はきっと……』
ゲン『そうか、……すまねぇが俺にはいい知恵を出せそうに無い』
ルージュ『いえ、いいんです、寧ろここまでよくしてもらったんですから』
ゲン『…うっし、なら俺から旅の途中で聞いた情報をやるぜ、カードの資質で[杯のカード]に関してだ』
535 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/19(火) 22:34:18.22 ID:RPhB0ynO0
ゲン『俺は見ての通り、無類の酒好きって奴でよ、酒造の聖地とも呼ばれる[ヨークランド]に寄ったのさ』
ゲン『そこで、[杯のカード]に関する話を小耳に挟んだんだ、酒蔵の奴らがカードに詳しいってな』
ゲン『…だから、次は"英気を養うために数日経ってから"[ヨークランド]に迎え』
ルージュ『えっ?』
ゲン『旅をしなきゃ、反逆罪だっけか?なんかよくわかんねー理由でお前が処刑されるんだろ』
ゲン『でもよ、厳しい試練なら当然、身体の調子を整えるのは重要だ…』
ゲン『ここで[剣のカード]を得たら、数日休め、宿泊代は俺が出してやる…』
ルージュ『…!ゲンさん』
白薔薇『うふふ!そうですわね、試練に備えてベストコンディションにするのは重要ですわ』
白薔薇『断じて、それはおサボりではありませんわね』クスクス
アセルス『現状を打開する方法、考える時間はあるなら、たくさんあった方がいいものね』
ゲン『俺にはこんな事しかしてやれねぇがよ…お前も気ぃ張ってばっかだと疲れるだろ?』
ゲン『気にすんな、お前の国の奴らが来て兄ちゃんが怠けてるとか喚いたら俺が片っ端から叩きのめしてやらぁ』
T-260『協力致します』
ナカジマ零式『わーお、過激で面白そー、じゃないですかー!』
特殊工作車『不安はありますが、きっと何とかなりますよ』
ルージュ『…みんな…』
嘘も方便、物は言い様、……何かしらの方法でルージュもブルーも、片割れが殺し合いを放棄しない様にと常に
見張る必要性がある、その手段はわからないが、数日程の休養を取る分には"向こう側"も文句は言わない筈だ
必要な事だから仕方ないのだ、と
実際問題ブルーでさえ、[ディスペア]潜入で数日足止めを喰らうわ、剣術の修行を始めるわと
試練に挑まず下準備の期間を設けている
なら、この言い分だって多少は通ると信じたい
それで何か上のお偉方から御叱りを受けるようなら『ブルーを殺す為に拳銃片手に射撃訓練してました』と
でも適当な口実を言えば良かろう
そう考えれば多少は気も楽になるというものだ…
そこから先は影を三つ揃える修行に戻ったルージュが嘘の様に精神を研ぎ澄ませて見事に交差する剣を三つ揃え
天に認められて[剣のカード]を取得した
一行は[ワカツ]を出て、レッド少年と連絡が取れるように機械文明の発達した惑星で携帯電話を調達しようと
[マンハッタン]に向かった
―――と、ここまでが今現在、機械都市にゲン達が居る経緯である
536 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/19(火) 22:34:49.99 ID:RPhB0ynO0
ゲン「まさか俺達が[シンロウ]だの[京]や[ワカツ]に行ってた間に…レオナルドさんが死んじまってたなんてな」
ルージュ達との[ワカツ]でのやり取り、カード取得までの流れを振り返りながら剣豪は再び、自分が投げ捨てた新聞紙を
睨む様に眺めた、政治経済に関する見出しでヤルート執政官が失脚しモンドという男が執政官になった内容から最近起きた
爆破テロ事件でT-260とゲンに協力してくれたレオナルド博士が死亡したという文面までハッキリと見える
レオナルド・バナロッティ・エデューソン…
近所のバーガーショップで安いハンバーガー齧りながらT-260の独創的なデザインと構造に興味を持ち
特に深く理由を聞くことすらも無く、高い地位にある天才科学者の彼は無償でコアの解析やメモリ容量を増やしたり
助言をくれた話の分かる人物だった、…変人ではあったが
トリニティ関連の人間は、少し前のゲンからすれば故郷を奪った目の仇だったが今は少しだけ見方が変わっていた
少なからず交流があったから、もう赤の他人じゃないから…顔見知りだから、とも言える
レオナルド博士の様な御人好しのロボットオタクなど風変りな奴もトリニティには居る
政府の人間全員が悪人では無いと実際に腹を割って話したからというのもある
それだけに、知り合って数日の間に命を落とされたというのは……何とも言えない複雑な心境だ
ルージュ「ゲンさん…」
ゲン「あ?なんだい、兄ちゃんかよ驚かすなって、で?どうだった電話は買えたのか」
ルージュ「それはバッチリです」
ゲン「へへ、なら良かったじゃねぇか」
ゲン「だがよ、今日含めて2泊で良いのかよ、もっとゆっくり時間作った方がいいんじゃねぇのか」
ルージュ「二人共話し合ったんです、それなら2日後にレッドと合流して僕の事を打ち明けて」
ルージュ「それからまた休んだ方がいいかなって」
ゲン「あぁ、あのサボテン頭の坊主か…電話では言いたくないか?」
ルージュ「ええ、こればかりは…面と向き合って僕の口から伝えたいんです」
凛とした紅き術士の声に「そうか」とだけ剣豪は返した、受話器越しじゃない、本当に大事な事だからこそ
顔を合わせて生の声で伝えたい、その気持ちはゲンにもよくわかる
ゲン「…『友達』は大事にしろよ、人ってのは何時会えなくなっちまうか分からねぇんだ」
ルージュ「えっ…」
それは、果たして誰を指していたのか一瞬ルージュには分からなかった
[ワカツ]で死に別れた戦友だったのか、それとも数日だけ顔を合わせなかっただけで死んだレオナルドだったのか
何れにしても、これだけは共通だ―――"人は何時会えなくなるから分からない"…
537 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/19(火) 22:35:33.37 ID:RPhB0ynO0
―――
――
―
機械都市の夜は穏やかだった、同じ夜でも日中と変わらぬ活気を見せた暗黒街とはまるで違う
全ての生命が寝息を立て、メカでさえもスリープ機能をONにして静寂に沈む
唯一の灯りは夜間でも出歩く者の為にと灯った街灯や無人パトカーのライトくらいだ
シャワーを浴び、バスローブ一枚姿のルージュは白い布タオルで湯水滴る銀髪を拭きながらホテルのカーテンを少しだけ
隙間から覗いてみる様に夜景を眺めた、[クーロン]とはまた違って建築基準法に則った規則的な並びの高層ビルディング
背の高い企業やマンションの輪郭に所々赤く光る航空障害灯のランプが見え
丁度その真上をヘリコプターが飛ぶのが見えた…
自分の知らない世界だ
僕はあと、何回この光景を見れるんだろう、どれだけ同じ景色を見ながら明日を迎えられるんだろうか
急に、心細くなった。
彼が居る部屋の隣室には、兄殺しの勅令を受けたことを正直に打ち明けた仲間の女性が二人寛いでいる頃だろう
仲間に自分の抱える闇を自白した、それでふと、重荷から解放されたような気分はあったが…それでもやっぱり
1人になると堪らなく不安な気持ちになる
明日、目が醒めたら自分を軽蔑する仲間の顔があるんじゃないのか、身内殺しと一緒に居られるかと言葉を吐き捨てられて
そのままルージュは捨てられてしまうんじゃないか
旅立った時と同じ、独りになるんじゃなかろうか
…、背筋が震えた、湯冷めしたのかもしれないな、ちゃんとタオルで紙を拭かなかったからだ
バスローブ姿のルージュは室内空調機のリモコンを手に取り、『暖房』の部分を指で押す
そのまま、椅子に崩れ落ちるようにドサリと座り、新品の携帯電話を手に取った
ルージュ「…今頃は[シンロウ]かな」
慣れないタブレット操作で、登録した電話番号から今はこの場に居ない友達の名前を見る
正義感の強い彼ならどんな反応を示すだろうか、受け入れてくれるだろうか……、それとも拒絶か
携帯電話を置いて次は掌を天井に翳してみる、意識を集中させる―――暗闇、何も無い真っ暗な空間を思い描く
影の海に自分が飲み込まれたと考え、その黒一色の世界に一枚の白い紙札を連想し構築させる
暗闇に自由な発想力が生み出したカードがひらりと現れ、表に双剣の模様が浮かんでくるイメージを創る
剣のカード『 』ポゥゥ…
ルージュ「……」パシッ
想像は、現実に。
連想は、構築へ。
538 :
ここまで
[saga]:2019/03/19(火) 22:36:25.89 ID:RPhB0ynO0
ルージュ「……僕が、手に入れたカード、…資質の欠片、か」
ルージュ「どう、したらいいんだろうな……」
ルージュ「僕がブルーなら、…兄さんならどうするんだろう」
髪を乾かして、手入れの行き届いた布団に潜りルージュは、目を閉じた……
―――
――
―
*******************************************************
【双子が旅立って 6日目 午前7時21分 [クーロン]】
ブルー「ふっ!はぁっ!!」ブンッ!ブンッ!
アニー「無駄に力を入れるなっ!…肩に力を入れればそれだけ大振りのスイングになる」
アニー「繰り出す剣技や敵の部位によっては意味のある行動になるけど、"大振りになればそれだけ隙ができるわ"」
ブルー「くっ、わかっている!!」
アニー「…その癖を直してやりたいけど、いい加減炊き出しやらないとね、メシを食わせろって皆が騒ぐから」
早朝から店の裏手で稽古に精を出す魔術師と指導する金髪少女は鍛錬を中断し、店へと戻っていく
蛇口を捻り流した汗を洗い落としてタオルで拭く、ブルーが洗面所から戻ると既に起きていたルーファスが新聞紙片手に
白いコーヒーカップを傾けていて…隣に居たライザと何かを話し合っていた
その横を通り過ぎ、自分の席に着いて魔術書を取り出して修得したルーン文字を書き込もうと万年筆を取り出す
故郷に居た頃は馬毛の筆に墨汁を浸して使ったものだが、初めからインクを内蔵したペンという物は便利だ
何も無い、まっさらな紙。
そこが世界だ。
白に、黒をつける
眼を瞑り意識を集中させる、自分がこの瞬間…筆先を付けている"白"が世界であり全て
頭の中を空にする、白、何も存在しない、"無"
脳は腕の筋肉に電気信号を送らない、何も考えない、だが腕は自分の意志とは別で動く
流れに従う様に握られた万年筆もまた紙面上を滑り、先端から滲む洋墨の粒雫が線を創る
ブルー「…。」スッ
活力のルーン『 』ポゥ…
幻想は、現世に。
思念は、真理へ。
539 :
少し投下
[saga]:2019/03/24(日) 22:58:57.43 ID:JO3QRXYu0
蒼き魔術師は閉じた瞼をゆっくりと、劇場舞台の幕開けの如く静かに開く自分が無意識に
描いた文字は生命の遺志、生きようとする力を象徴する証
ブルー「……どういうことだ」
彼は、無意識の自分がルーンの導きの儘に描いた文字を凝視した
"逆位置"に描かれた[活力のルーン]を。
情熱、活力、学び、意欲…前へ進もうとする意志、育ち次第に増していく物事の暗示
蒼い法衣の魔術師は神妙な顔をして占いの結果が何を意味するのか暫し考えを巡らせた
このルーン文字における一般的な解釈としては向かうべき暗闇の先に明光が射しており
照らされた道を積極的に進むことで道が拓けるというモノ
だが、彼が…いや、彼の霊感が導き出した一文字は反転させた結果
逆位置における意味は、強すぎる意欲、溢れんばかりの"活力"が水の溜った器に更に注がれて零れ
無駄な労力を使ってしまう、成果を得られずに失敗に終わる
即ち、"急いては事を仕損じる"という奴だ
ブルー(現状では凶、手を休めて心身共に休養を取るのが吉、とでもいうのか)
頭を抱えたくなった、自分は来るべき果し合いの為に力を得ねばならぬというのに
この占い結果を導き出したのが赤の他人であれば鼻で嗤って、無視するところではあったが
引き当てたのは他でもないブルー自身の霊感だ
魔術師としての矜持、血反吐を吐くほどの努力と鍛錬の積み重ねで築き上げた確固たる自分という
決して揺るがない自分自身の能力だ
そう易々と、こんなもの当てになるわけないだろ、とは言えない
アニー「アンタ、なに変な顔してんのよ、一人睨めっこでもやってんの?」
ブルー「…なんの用だ」
ボールペンと手帳を片手に、一人で百面相を試みている可笑しな男の元へ来たアニーは不審な者を
見る様な眼差しで問いかけた
対してブルーは素っ気なく『何の用だ』と返したが…朝食は何を食べたいのかリサーチを
取りに来たのだろうと持ってる道具から容易に見当はついた
いつの間にか来ていたエミリアを始め、ルーファスやライザにも既に確認を取っていて
一番、端の席に座っていた自分にも注文を聞きに来た
アニー「何って、見りゃ普通にわかるじゃん」
540 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/24(日) 22:59:49.98 ID:JO3QRXYu0
ああ、そうだったな、我ながらくだらん返し方をした
彼は彼自身の出した気に喰わない占いの結果に腹を立てていた、その虫の居所の悪さも加担して
声に出す事こそはしなかったが顔に言いたい事が出ていたらしい
アニー「なにさ、そのムッとした顔は…ったく、朝から何にイラついてんのか知らないけどね」
ブルー「……悪かったな」プイッ
アニー「…はぁ〜、今日は折角稽古休んでエミリア達にも協力してもらうってのに」
アニー「これじゃ先が思いやられるわ…」
ブルー「は?おい、どういうことだ…」
アニー「あっ」
アニー「…いや、稽古ばっかじゃなくてさ
偶にはエミリアやリュートと一緒にアンタを連れ回そうって話になったのよ」
アニー「ちょっとした親睦を深め合いって奴よ、4人で街をぶらっと回るの、お分かり?」
胡散臭いなコイツ、それが彼の思ったことだった、大体なんだ今の間の抜けた『あっ』って
絶対4人で街中を散策する以外に何か企みの一つ二つあるだろう
ブルー「街をぶらりと、か…」
得た力を試すついでで何となしにやってみた印占いが示した易によれば攻め時に非ず
それこそ、今日の稽古でアニーに指摘された剣筋と同じだ、無駄に力を入れ過ぎてもそれが仇になる
ブルー「いいだろう、だが何時出掛けるんだ?その話は経った今されたばかりだ」
ブルー「準備も何もできてはいないが」
アニー「あー…10時くらいね」
アニー「それまでは適当に時間でも潰しといてよ」
それより、何食うのか教えなよ、と急かす相手にトースト一枚に昨日と同じで半熟目玉焼きを乗せ
ミックスジュースを一杯頂こうと答えた
去り際に注文を承った彼女が『あ、[ディスペア]行きなんだけどさ、ちょっと同行者が増えるから』
そんな一言を言われ、思わず椅子から転げ落ちそうになった
貴様ァ!何を勝手に――と口から飛び出す前に『邪魔はしないから、ただ入るまでよ』と
付け加えられ、ブルーは『それだけならば…まぁ、よかろう』と渋々ながら承諾した
自分の邪魔さえしないのであれば、何でも良い…
541 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/24(日) 23:00:21.56 ID:JO3QRXYu0
―――
――
―
【双子が旅立って 10日目 午前時49分 [クーロン]繁華街】
エミリア「わぁぁ!!なにこれ可愛いっ!」ギュッ
アニー「んー、そうね、確かに可愛いんだけどねぇ…」
アニー「あたしはその手の可愛さを売りにした愛玩動物ってのは好きじゃないのよね」
リュート「およ?そうだったか…じゃクーンと会った時は?」
アニー「正直言うと苦手だったけど、金を落としてくれる客は別物よ」
<キャッキャ!ワイワイ
ブルー「……。」
ブルー( 買 い 物 が 長 い ッ !!)
女の買い物は長く、男は待ちぼうけを喰らう…というのは流石に偏見だろう
単純にこれは商店の棚に乗ったモノに興味を抱けるか否かの話だ、自分にとって興味関心を抱ける
掘り出し物であったならば人はそれを何時間でも眺められる
逆に興味が無い、見てても退屈だ…そういう感想しか抱けない人間が見てて面白くも何ともない
時間が延々と続くだけ
楽しいことなら時間は早く過ぎるが、つまらない時間は長ったらしく思うモノ、体感時間の違い
実際、リュートは女子二人に混じってショッピングを楽しんでいた
ブルー(…これであれば、部屋に帰って書物でも読み漁っていた方が有意義だったか)
腕を組んで騒ぐ3人を眺めながら彼は溜息を吐いた、これが彼にとって興味の欠片でもあるか
さもなくば、彼自身の物を見る価値観がガラっと変わりでもしたならばあるいは3人に混ざり
売り物を手に取って良し悪しを語り合いでもしただろう、時間の流れも忘れるほどに
ツンツン
ブルー「…。」
スライム「(´・ω・)ぶくぶくぶー」ノソノソ
ブルー「……」
スライム「(-ω-)ぶー」ピトッ
ブルー「貴様は行かないのか、あと俺に引っ付くな裾が湿る」
スライム「…(´;ω;`)」ブワッ
脚にぴたりとくっつくゲル状の所為で右脚の裾が濡れる
542 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/24(日) 23:00:51.96 ID:JO3QRXYu0
相も変わらず『ぶ』と『く』しか発音できないミネラル豊富な生物はブルーにべったりだった
何の因果でこんなワケの分からん生命体に好かれたのか知らないが彼は半ば諦めに近い感情を
持ち始めていた、いくら邪険に扱おうとも蹴り飛ばしても罵ってもコイツは自分についてくる
まともに相手をするだけ無駄で気力と体力を消耗するだけだと割り切った
ブルー「大体、俺と居て何が楽しい?貴様に何のメリットがあるというのだ」
スライム「(´・ω・`)…! ぶくぶー!」ピョンピョン、フルフル!
飛び跳ねて、地面に落ちる…身体の破片がベチョ!と音を立てて床を濡らす
首(?)を大きく振り何かを否定する
ブルー「ええいっ!!だから何だというのだ俺はリュートとは違う!解るわけないだろっ!」
スライム「(゚Д゚;)!!」ビクゥ
スライム「……(;´・ω・)」ウーン
スライム「(; ・`д・´) !?」マメデンキュウ ピコン
その時、スライムに電球灯る…っ!
スライム「( `・ω・´)ぶくぶーーーーーっ!!」ピョン!ズザザザザザザッ―――z_______!
ブルー「…なんだ?自分の身体を撒き散らしながら地面をはいずり回って…」
蝸牛<カタツムリ>なんかが通った後には粘液で跡が残る、突然自身の水分を撒き散らしながら
地面を高速移動するゲル状に魔術師は顔を顰めた
なんだこいつは気色の悪い奴め、と言おうとして気が付いた
スライムの通った跡『 』ヌメヌメ
ブルー「…喋れないから文章にするということか、単細胞生物にしては考えたな」
これは"文字"だ、自分の身体の破片(後で回収可能)をポロポロと零しながら走る…
数刻前に白紙の上に万年筆で文字を書いていたブルーと同じだ、人間の言語を話せないからこそ
そういう手段で会話を図ろうとしたのだ
ブルー「何々『違う、メリットどうこうじゃない、損得関係なく居たい』…だと?」
スライム「(・ω・)ノ ぶくっ!」コクコクッ
身体の破片を回収しながら器用に鳴き声を上げるスライムにますます彼は首を傾げたくなった
損得関係なく居たい?なんだそれは…
以前、リュートは『お前に一目惚れしたらしくスライムプールから出て来てお前についてきた』と
勝手についてきた動機をそう通訳したが
その件に関して言えばブルーは冗談か何かのつもりで言っているのだと思った
543 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/24(日) 23:01:23.61 ID:JO3QRXYu0
ブルー「仮にアイツの言う通りだとして、何故、常に一緒に居たがる…」
ブルー「もう一度言うが"貴様には何のメリットも無い"のだぞ?」
ブルー「俺が傍に居るだけで空から札束が降って来る訳でも無い、力を得られるわけでもない」
"モンスター族"は"人間<ヒューマン>"や"メカ"それに"妖魔"とも違う…人は戦いを通して強くなり
妖魔もまた戦いや敵の力を奪い取る事で強くなる、メカならパーツの付け替えで強化が可能だ
モンスターだけは違う、元々の個体差で生命力が違うことも然ることながら
戦いで倒したモンスターの細胞を吸収し違う種族の魔物に"姿だけ"変貌して強くなる
人間と四六時中一緒に居たら強くなったという話は聞いた事が無い
ブルー「金銭的な幸福が訪れる訳でも、力を得て他種族より優位に立てるという事も無い」
ブルー「損得関係なくだと?俺にはまるでお前の考えが理解できない」
心の底から、ブルーは不思議がった
本当に、本当に心の奥底から理解できない
生物は常に他者を蹴落とすことで常に前へ進む、一言で簡単に説明づけてしまうなら『弱肉強食』
人間が朝、起きてその日を生きるためには、元は生きていた何かを食す
それは水中を泳いでた者かもしれないし、空を飛んでたかもしれない
野を駆け群れでくらしていた者だったかもしれないければ…畑の土から産まれて生きていた者も
何かしら生あるものが、その生を奪われ他者を生かす為の踏み台になる
……この兄弟―――"兄<ブルー>"と "弟<ルージュ>"の関係性と同じだ
どっちか片方が、片方の命を奪い、明日を生きる権利を得られる
この話に限ったことじゃない、喩えばギャンブル…儲かる人間が幸福を噛みしめられるのは偏に
【敗者となった誰か】が存在して初めて成立する
若い子供なら誰だって通う学校の成績…そこから繋がる進学や就職、更に先を言えば
企業における地位<ポスト>だってそう
人は他者を蹴落とすことで日々、前へ進む…
双子同士での殺し合いを促進させる故郷の歪んだ教育の賜物もあってか
それが真理であり世の中の全てというモノだとブルーは想う
だからこそ、損得抜きで誰かと一緒に居たいと考えるスライムの考えが心底不思議に思えるのだ
544 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/24(日) 23:01:51.53 ID:JO3QRXYu0
スライムは、人の言葉を話せない……でも『心』はある
人間が産まれた時、親から子へと授かる、子から親へと返してあげたいと思う感情も理解する
巨大生物[タンザー]の体内にあるスライムプールという場所は生命の鼓動である[活力のルーン]を
刻んだ巨石があった、それに触れる為にブルー達は訪れた
"保護"の力に護られた犯罪都市は治安が悪く、また不衛生なスラム化した裏通りが
存在するにも関わらず市場で数万人規模の使者が出る大規模なテロが起きることも疫病さえも無い
寧ろ最近のテロ関連で言えば、最先端技術による治安の良さが売りの[マンハッタン]の方が危険だ
ルーンの印が刻まれた場所は何かと力の流れがある、スライムプールと呼ばれる特異点で
大量の[スライム]が誕生するのもそれが関係している
あの日、一匹の[スライム]が産まれた
その一匹はだけは他と違い、多感な感受性を持っていた、人間と変わらぬ『心』と
何が『良識』とされるかを分別できるだけの道徳は持っていた
言ってみれば、人間とさして変わらないのだ
その一匹は一人の人間を見た…身体の色は…"青"だった、頭には蜂蜜色の綺麗な髪
産まればかりのそれは、卵から孵ったばかりの雛鳥が初めて親鳥を見る、刷り込みと同じ様に
蒼と金糸雀の人間を、一目見て好きになった
"自分という自我が初めて出来た時"真っ先に見た一番最初の生命だったから
ある意味でそれは"一目惚れ"で間違ってはいないのだろう
スライムはその日、ブルーに『愛』を抱いた
リュートはスライムの言った言葉を解釈し、ブルーに大まかに説明した
ふわふわとした感覚…この人が好きだ、堪らなく愛おしい、ずっと一緒に居たい人と
――――その感情はまさしく『愛』だ、…でも『愛』には種類がある
545 :
今回ここまで
[saga]:2019/03/24(日) 23:03:14.96 ID:JO3QRXYu0
親から子へと授かる、子から親へ返したいと思う感情…
『愛』だ。
損得勘定、打算がどうこう…そんなモノはどうだっていい、無償で贈り贈られる『愛』
とどのつまり、このスライムはブルーに対して
『親子の愛』を…子供が親に対して持つ情愛を抱いているのだ……
ブルー「…わからん、俺にはお前の考えが一切理解できないな」
ブルー「損得関係なく、ただ一緒に居たいだなどと…ナンセンスだ」
スライム「(・д・)……!?」
スライム「(´;ω;`)……ぶくっ」ジワッ
ブルー「……なんなんだよ、一体」ハァ…
ブルー(人の身体にすり寄って、引っ付いて来て、四六時中俺にべったりで)
ブルー(何の利点も無いのに一緒の時間を過ごしたい…それでいて突然泣き出す)
ブルー(意味が分からん)ハァ…
ブルー「 」チラッ
スライム「(´;ω;`)…」ウゥゥ、グスッ
ブルー「……チッ、おいゲル状生物ついて来い」
546 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/25(月) 06:59:38.41 ID:dG+sN7ADo
スライムあわれ
547 :
少し投下
[saga]:2019/03/26(火) 22:08:45.37 ID:lJEgZ43R0
舌を打ち、面倒臭いと言った表情のまま、彼は水分をダボダボと流すスライムに手招きをする
それを見て未だ泣きべそかきながら地面に潤いを与え続けるアメーバーは
ぷるぷる震えながら彼の後を追いかける
見様によっては、デパートのおもちゃ売り場コーナーで駄々こねる子供が愚図りながらも
親の後をついてくソレに見えなくも無い
ブルー「そこの店員、すまないが――――」
「はい?…―――あぁ!そうですか、その商品でしたら―――」
スライム「(。´;ω;)? …ぶく?」グスンッ
「毎度ありがとうございます!今後とも御贔屓を〜!」
ブルー「ほら…特殊な素材でできた手帳とペンだ」スッ
ブルー「風呂の湯水に投げ入れたとしても破けず、インクが滲んで読めなくなることも無い」
ブルー「少しばかり値は張ったが、これで多少はお前との意思疎通も巧くいくはずだ」
ブルー「筆を咥えて動かすことはできるであろう?奴らと同じ釜の飯を食ってた時も
お前が器用に色々使いこなしたのは見たんだ、できんとは言わせんぞ」
曰く、身体の95%が水分のゼラチン質が持ったとしても大丈夫だと謳う店員から購入したものだ
多種多様な種族が銀河の海を渡航する時代なのだからコレくらいの代物も普通にあるらしい
スライム「(*'ω'*) ぶくぶくぶくーーーーっ!!」パァァァ…!ピョンピョン
ブルー「ふっ、そうかそうか、嬉しいか」
相変わらず何言ってるか理解できないが、自分の手渡した手帳を頭に乗っけたまま
野兎並みに飛び跳ねてグルグル回る動作を見るに喜びを表しているのだろう
そう思えば満更でもないな、と静かに魔術師は微笑んだ
リュート「あっれ?ブルーってばいつの間にスライムとそんな仲良くなったんだ?」
エミリア「あの手帳ってブルーが買ってあげたの?へぇ〜優しいトコあるのね」
ブルー「なっ!?貴様ら…いつの間に」
背後からの声に驚き、振り返ると同時にババッと飛び退く仕草に思わず笑いだす3人
一番最初に噴き出したアニーが『なによアンタ、ビビり過ぎでしょ!あははっ!』と
腹を抱えながら指差してくるものだから遅れて彼は顔を真っ赤にした
その反応が怒りから来るモノだったのか、はたまた羞恥からだったのかはブルーのみぞ知る
スライム「(´・ω・) ぶ、ぶく、ぶー!」ピョーン音符ピョーン♪
ワナワナと震えるブルーの背後では陽気にスライムが飛び跳ねる、そんな一幕のあと
4人と1匹は劇場街へと歩みを進めた
―――
――
―
548 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 22:09:29.56 ID:lJEgZ43R0
リュート「なぁなぁ、まだ根に持ってのかよぉ〜」
ブルー「…別に、気にしてない」プイッ
エミリア「持ってるわよねぇ?」
アニー「アイツ、結構顔に出るタイプなんだよねー」
プライドの高い人間というのは総じて何処かしら"精神的に幼い一面"というモノがある
そもそも、他人からの評価や体裁を気にしたり、意地を張ろうとする時点で
その鱗片が出ていると言えよう
隣をへらへら笑いながら歩く無職、声を押し殺してるつもりなのか笑い声も丸聴こえな女性組
真横を跳ねるアメーバー、誰に顔を合わせる訳もなくブルーは劇場街を見渡していた
古めかしく錆びついた鉄筋アーチは地元民から観光客まで分け隔てなく歓迎する一文が掲げられ
環の下を潜り抜けて見返してみれば、これまた何時取り換えられたのか
識別できないような年代物の照明が通りすがる大勢の通行人の頭数を数えている
さて、[クーロン]を訪れた人間は財布の紐が緩むと言われている
大概、7割は窃盗被害に遭い、スリの常連達の豪勢なディナーに消え、無事だった者の中身は
この街で最も銭の動きが活発な上位ランキングに消えていくのが関の山だ
人の夢は終わらない。
闇市場で取引される他所では手に入り辛いブツ、男と女の情緒が複雑に絡み合う娼館通り
物欲や色情を満たす為の代価として紙幣が飛び、そして上位3として挙げられるのは―――
ブルー「…随分と賑わうのだな」
アニー「おっ、わかっちゃう?人間は夢を追う生き物だからね」
アニー「ルーファスじゃないけど、ロマンって奴に資金をつぎ込むカモが多いのさ」
その昔、一人の経営者は有名な言葉を残していった、それは経理学の分野というよりも
人間心理学における哲学・思想に近しい言葉であった
利益を追うなら、夢を追え、と
何時の時代でも如何なる世であったとしても大衆は"夢"を捨てきれない
それを追い求め掴もうとする為であらば投資を惜しまない
子供から大人まで、揺り籠から墓場まで。
誰よりも益を手に出来るのは、夢を本当に理解してる経営者だ
アミューズメント、エンターテイナー…大金を抱き込んだ成功者は、その中でも理解できた者だ
そして、この劇場街は謂わば、そんな未来の成功者たちの卵とそれを応援する出資者達の集いだ
549 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 22:10:01.82 ID:lJEgZ43R0
小規模なミュージカル劇場から、華々しい装飾のオペラ座…小さな屋台で人形劇をやってる奴ら
皆が皆、でっかい夢を狙ってる、ゼロから始めて誰の手も届かないような"星"にのし上がってやる
どこまでも貧欲に高みを目指す努力の化け物、憧れだけで夢を語り夢に手を伸ばせる天才肌
未来の大スターを発掘しようと目を光らせる利益よりも夢を追おうとするエンターテイナーの卵
そこかしこに希望を抱いた人間や打ちひしがれた他山の石達がうろついていた
一世を風靡した絶世の美女はその空気に一抹の懐かしさを感じていた
エミリア「…何処のリージョンもこういうのって変わらないものよね、新人時代を思い出すわ」
リュート「あぁ、そういやエミリアってモデルさんだったんだよな」
エミリア「そっ!ファッションモデル雑誌からハリウッド映画までなんでも来いってね!」
エミリア「エミリアちゃんがテレビに映ってなかったことなんてないくらいだったんだからね」
ふふっ、と婚約者殺害事件の犯人として無実の罪でヒューズに逮捕される前を振り返る
明るい笑顔を振りまく彼女を見てリュートはふと思い出した
リュート(そういや[スクラップ]でメイレンと会った時もエミリアが載った雑誌見てたっけな)
メイレンがエミリアと出会って事情を知ったらジョーカー討伐に全力で協力しそうだなー
なんとなくそんな光景が頭の中に浮かんでくる
ついでにメイレンの隣に座るクーンを可愛いっ!とか言ってそのままエミリアが持ち帰ろうとして
獣耳ショタっ子も仲間入りしそうなまである
エミリア「そうそう、ハリウッド映画で思い出したわ…今から上映されてる話題の奴よね?」
アニー「ええ、これから見に行くのはソレよ、ジョーカーとケリつける任務前だし」
アニー「景気づけってことで見に行っちゃおうって話になったのよ」
ブルー「映画…か」
ずっと景色だけを眺めていたブルーが単語に反応して復唱するかの様にポツリと呟いた
ここ数日の付き合いで大体この不愛想な男がどういう人物かは読めた気でいた
恐らく文化圏の違いや彼自身の人生そのものが"映画"に縁の無いモノだったのではなかろうか、と
リュート「ブルー、お前さんもしかして映画って見たこと無い?」
ブルー「…見る必要性が無かったからな」
一応、彼の国にも小さいながら映画館というモノはあるが、殆どが術士見習いの修行者や
勤勉な学生諸君で溢れかえった国だ、あるにはあるが娯楽というよりも教材寄りの内容で…
要するに退屈で眠くなる奴が多い、夏休み前の学生が体育館で聞かされるながーいお話系のアレだ
そんなモンを眺めるくらいなら教科書を開いて自主勉してた方が効率が良いと宣うのがブルーで
彼にとっての映画とはそういう認識でしかない
エミリア「えぇ…、それはちょっと勿体ないわよ?人生なんて楽しまなきゃ損じゃない」
エミリア「これを機に楽しむってことを覚えなさいよ」
550 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 22:11:02.96 ID:lJEgZ43R0
思わず口に出してから余計な御節介だったかしら?と自分の発言がこの男に有効だったか考えた
蒼い魔術師に『…考えておこう』と小さく返され、てっきり不機嫌な顔で辛辣な言葉の機関銃を
撃ち返されるかと後悔が立ちかけたエミリアは意外そうに眼を丸くしたがブルー本人が
そういう思考を持ってくれたなら悪い事では無いだろうと思い『ええ、それが良いわ』と声にした
劇場街の中心にある映画館では今シーズンの話題作のポスター看板が貼られ、ショップでは
グッズ商品が売られていた、作中の人物をモチーフにした紙カップに入ったポップコーン等
リュート「何味にする、キャラメルとか塩バター醤油、いろいろあるぜ!」
アニー「あたしは止めとくよ、それ食べた後って歯に挟まったりするし」
エミリア「私もパス」
リュート「わかってねーなぁ、映画っていえばポップコーンだろ、ブルーお前は?」
ブルー「俺か?…そうだな、じゃあそのキャラメルとやらを」
スライム「(´・ω・)ぶくぶー」
リュート「OK、キャラメル2つと塩バター醤油1つな!」
こういうレジャー施設は飲食物は持ち込み禁止で、中にある店で買わされるのがお決まりだ
しかも、この手の奴は"客の足元を見て来る"ものだ……一杯のジュースが他所で買うより圧倒的に
お高いお値段なのだからな
仲間達から手渡された一枚のチケットを持って番号が書かれたシアターホールへと入る
薄暗く広々とした部屋の中で半券に書かれた番号とアルファベットの席を探し
大人4人とモンスター1匹の入場者は席に着き、スクリーン映像が始まるのを待った
話題の上映作『鋼の13世 -時代を開拓者-』とかいう名前だ
なんでも実在のリージョンがモデルだとかいう話だ
――――
―――
――
―
『王家の者が術の力を引き出せぬなど…!あれには失望させられた、あれは石ころ以下だ!』
『あなた、あれとはなんです?私達の息子のことですか』
『あんなものは私達の子ではない、お前もあれを忘れろ』
『術の才など無くともあの子は私の子です
私に宿り、私が乳を与え、私が育ててきました…私にとっては命を分け合った息子です』
『ならば石ころ共々、この城を出て行け!!』
『さぁ、行きましょう…大丈夫よ』
『おかあさま…』
ザワザワ…
『術が使えない王子様とそのお母さんだー』
『こら、指をさしてはいけません』
『出来損ないめー』
『王家の者が術も使えぬとは…本当に国王との間の子なのやら』
『薄汚い貧民街の者と不貞を働いたやもしれんな』
551 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 22:11:35.87 ID:lJEgZ43R0
――
――
――
『このこのっ!』ゲシッゲシッ
『ギュ、ギュス様…やめようよ』
『あっ、見てよあの二人…術が使えない王子と取り巻きの子だわ』
『やだ、花を蹴ったり、鳥に小石投げてる…行こう、行こう、あんなの見てちゃ駄目よ』
『へへっ、ほらお前もやれよ』
『で、でも…』
『なにをしているのですか!!』
『げっ、かあさま…っ』
『抵抗できない弱い者をいじめるなど、恥ずべき行いです』
『フン、どうせ僕なんか術の才能がない人間のクズなんだ』
パシィィ…!
『――――っ!』ヒリヒリ
『よく御覧なさい、樹々が花を咲かすのが術の力ですか』
『鳥が空を飛ぶのは術があるからですか』
『才能も自分の生まれも関係ありません、…あなたは人間なの、人間なのよ!』
――
――
――
『こんにちは鍛冶屋の親方』
『おお!これはこれはギュス坊じゃないか、そんなに鍛冶が面白いかい?』
『うん、……あのさ、鋼で剣を創るのに術なんて使わないだろ?』
『へ?そりゃあそうだけど』
『俺に作り方を教えてくれ、自分の持ってる力でできること、探したいんだ』
―――
――
―
【双子が旅立って 6日目 午後15時38分 [クーロン]】
リュート「良い話だったなぁ…」グスッ
アニー「うん、正直予想以上にいい映画だったよ…あのあと病気の母親との別れとか」グスン
エミリア「ええ…焼き討ちで消息不明になった後の世界での最後の演説なんてもうね」ウルッ
スライム「(´;ω;`)」ブワッ
552 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/03/26(火) 22:12:17.54 ID:lJEgZ43R0
大まかな物語の流れやテーマを簡単に説明するなら
一人の人間人生を描いた内容で
生まれや才能ではなく自分自身の意志でどう生きていくかを人は選び決めることができるという話
リュート「なっ、良かったよなブルー!…あり?」
ブルー「…。」
リュート「どうしたんだ、難しい顔しちゃって」
ブルー「うん?あぁ…映画か、確かに素晴らしかった、本心から認めよう」
ブルー「少し今は考え事をしててな…」
リュート「そうか?」
今日は記念日になった、彼の中でつまらない物だと思っていた存在の価値観が180℃変わった
そして、同時に【自分の在り方】を少しだけ考えさせられる日だった
ブルー(もしも、自分が産まれた時から術の才能も無い人間だったら、か)
あれは全くのノンフィクション映画という訳ではない、どこぞの辺境の惑星<リージョン>が舞台で
実在した話だとは小耳に挟んだ
高貴な身分に産まれながら才能に恵まれずに周囲から蔑まれ、疎まれ…そんな人間が自分の手で
運命を切り拓けた物語、術社会主義の[マジックキングダム]とあの作品の世界に置ける術の観点は
少しだけ似ている、だからこそより一層感情移入できたのかもしれない
術こそが全てで、育ての親に敷かれたレールを走るだけの人生…
―――もしも、レールが初めから存在しなかったならば
あの主人公は最初、父親が最初から敷いたレールに乗って親の後を継ぐ運命だった
それが全くの想定外で人生のレールから弾かれ、定められた将来のスケジュール表は消え失せた
しかし、どうだ?その後、主人公は暗闇の荒野に、自らの手で進むべきレールを築いた
自分の生き方を自分の意志で決めなければならないのだとしたらば
そう考えてブルーは自分には"何も無い事に改めて気が付いた"…
それ以外の生き方なんて知らない
それ以外を彼は考えたことも想像…いや創造することさえも叶わないのだ
今ある価値観を全て捨てること、今持っている常識が180℃ひっくり返ったら
自分は何を想って行動できるのだろうか
感情を持たないロボットや歯車と同じだ
誰かが何かをプログラミングしなければブルーは前へ進まない
"自分の意志"があるようで結局は"国家の為"、"育ての親への恩返しだから"と…口にする
自分の意志と言いながらそれは『自分』じゃない、行動や思想事体が既に他者への献身や貢献…
本当の意味で"自分"を持っていない。
553 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/27(水) 06:38:17.16 ID:X6iT2jM4o
この映画三時間で収まってたんだろうか……
554 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/27(水) 18:57:35.23 ID:DSguIDn8o
風と共に去りぬが4時間越えてたなぁ
555 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/03/29(金) 11:34:42.06 ID:y90zi1F1O
まさかのサガフロ2
556 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/02(火) 21:23:25.76 ID:GDcAS2XD0
アニー「エミリア、ちょいと耳貸して」ヒソヒソ
エミリア「えっ、……うん、あぁ、わかったわ、此処から手筈通りね」ヒソヒソ
アニー「おーい!新入りぃーー!そこボーっとした面で歩いてるアンタだよ新人バイト」
ブルー「その呼び方はやめろ」
アニー「なら早く皿洗い以外の作業を覚えるんだね、…さて、そんなアンタに昇進チャンスだ」
アニー「映画の帰りに買い物してけって言われてんだ」つ『メモ』
アニー「お使いが出来たら、新人バイトから普通のバイトって事にしてやるよ」
ブルー「まるで意味が分からんぞ!?」
結局はただのアルバイト呼びじゃないか、呼び名の頭から新人を取っ払っただけだろ、と
眉間に手をやる蒼き術士には決定権など無い、破天荒な女上司からの命令なら仕方ない
職場における縦社会は誰しもが抗えない
それは尊大な態度を取ることの多いブルー自身も例外に非ず、都会に揉まれて多少は角が取れたか
これでも一週間近く前よりかは大分、人間性が丸くなったと思われる
半ば押し付けられるようにグイっと寄越された紙切れには、住所が記されていて一緒に
代金支払い済みの受け取り用の伝票まで添付されていた…
ブルー「4件、しかもそれぞれ店舗の距離が結構あるじゃないか」
アニー「アンタそんなナリでも男でしょ、これも筋力トレーニングの一環と思いなさい」
ブルー「あぁ、くそ!…行けばいいのだろう!」クルッ!スタスタ…
懐に剥き出しの感情の儘に紙の束を突っ込み、踵を翻して足早に最寄りの店舗に向かう
そんな魔術師の後ろ姿を眺め、やがて小さくなって揺れる蜂蜜色の結った髪さえも特徴的な蒼も
彼の存在を示す色彩が一切見えなくなってからアニーがエミリアとリュートの方へ向き返り
アニー「うまいこと行ったみたいね」
エミリア「今朝は内心焦ったわよ?アニーってばうっかりボロだしちゃうんじゃないかって」
アニー「まぁまぁ!結果オーライだからいいじゃん」
リュート「そんじゃ、俺も店の方に行って飾りつけでも手伝うとしますかね〜」
スライム「(。´・ω・)?」キョトン
リュート「ん?あぁ、お前は何も知らないんだったな」
エミリア「リュート、手伝ってもらって悪いわね」
リュート「いいんだよ!俺だって暇だしタダで騒げて美味いメシと酒にありつけるしな」タハハ
アニー「リュートが無職の暇人で助かったわ」
エミリア「ええ、でもいい加減に就職先見つけなさいよ、イイ歳なんだし」
リュート「君ら、ナチュラルに俺の心抉ってくれるなぁ」
557 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/02(火) 21:23:57.99 ID:GDcAS2XD0
―――
――
―
ブルー「1件目は古い家電を修理して売りさばく、所謂リサイクルショップ」
ブルー「そこで渡されたのがこのレコードか…」
-『はいはい、…あぁ!ルーファスさんトコの店の人かい』-
-『ほら!頼まれてたレコードだよ、なるだけ当時の音源が出る様に修復したんだ』-
ブルー「随分と、古びた物だな…」スッ
昔懐かしの蓄音機に添えて使うレコードが数枚
イタ飯屋の倉庫奥に埃被った布で覆われて眠っている置物に添えて使う気なのだろう
ブルーは眼を細めて、作曲者の名前を読もうとしたが如何せん古い物で文字が掠れて読めない
ブルー「イ…ト……、駄目だな、読めん」
レコードケースに辛うじて読める曲名がある『情熱の旋律』という名で、その横に小さくスペルで
minstrel<ミンストレル>と書かれていた
ブルー「…minstrel、…吟遊詩人か」
作曲者の本名は不明、アーティスト芸名か何かなのか、ただ吟遊詩人と気取った横文字だけ
年代も何時のかは判明していないが、リサイクルショップの店主が修復がどうのと言っていた辺り
相当な古い時代の詩<ものがたり>なのだろう
……嘗て、この世界には―――いや、無限に広がる銀河の海には多くのリージョンがあった
とあるリージョンは『塔』のような形だったかもしれない
とあるリージョンは秘宝の眠る宝庫の様な世界や時空さえも廻れる世界だったかもしれない
その昔、トリニティの上層部しか知らない秘められた歴史がリージョン界にはある
人の英知が創り出した【惑星を破壊する無人機】とそれに対抗するリージョンシップ等の闘い
その戦争の余波、あるいは指輪を集めるクーン少年の故郷[マーグメル]の様に惑星の寿命で
消滅してしまったリージョンは数知れない
今、ブルーが何気なく持っているレコードも何時かの時代で誰かが見て来た冒険譚をそのまま
歌詞にした…そんな"SAGA<ものがたり>"なのかもしれない
558 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/02(火) 21:24:34.75 ID:GDcAS2XD0
人の数だけ物語はある
生命の数だけ音が、詞が存在する
邪神に立ち向かう勇敢な戦士たちの詩もあれば、麗しの帝国の歴史を語った唄もある
皆既日食の刻に運命の子供がリージョンを平面から球体に変えたなんて御伽噺だって存在する
他にも幾つもの『物語』がある
どこかの惑星から、何時、何処で、誰が、誰に、それを伝えたかは知らない
だけど、確かにそれは語り継がれ、今を生きてる人の胸の内で生き続ける、長い歴史の末に
多少の曲解や間違った伝わり方をしたものもあるかもしれないが
それでも伝わったのだ…
これらの物語の舞台になった惑星は、かの[マーグメル]の様に星の寿命で滅んだかもしれない
あるいは古代の戦争で惑星破壊兵器に粉々にされたかもしれない
…そんなことはなく、今もこの時代で普通に銀河に煌めく星の1つとして輝き続け
誰も見た事のない"その後"の物語を、その世界は創り続けているのかもしれない
―――
――
―
ブルー「2件目は花屋で、3件目は酒屋…そして最後は…」
花屋で受け取ったブーケと酒瓶、奇しくも、受けとった花の香りと色合いは
自分にとって好ましいと思える物で、酒瓶もここ数日の酒盛りで味わった中では一番好きな銘柄だ
少し重たく感じる荷物を抱えた腕も好きな物だからか然程、苦には感じなかった
最後に訪れた店はこの犯罪都市にあるのが不思議なくらいに小奇麗な店で
白塗りの壁についている可愛らしい小窓から漏れているのか、小麦粉と砂糖の焼ける匂いがした
木戸を押し開けて、入店すると籠の中にショコラやクッキーが並べられていて奥のガラスケースに
大きなお祝い用のケーキ達が自分の引取りてをまだか、まだか、と待ちわびている
ブルー「すまない、頼まれていた品を引き取りにきたのだが」スッ『受け取り用伝票』
「は〜い、ルーファス様ですね、ありがとうございます」スッ
大きな紙箱に入れられたケーキを持って、ブルーは店員に一礼し自分の住み込み先の職場へと
歩き出す、これを無事に持ち帰ればおつかいは終了だ
ブルー「やれやれだ、誰かの誕生日祝いだとでも言うのか…」
帰路にて彼は、ふと自分が手にしている包みを見て思った
ケーキに花束…加えて音楽レコードに数本の酒瓶、これではまるで絵に描いた様な祝いの下準備だ
重たい荷物を持ったままブルーは職場まで戻ってくる
見慣れた道、イタリアンレストランの緑、白、赤のTricolore<トリコローレ>と扉に掲げられた看板
…ここでブルーは眉を顰めた、戸に掛かった看板の文字が『open』ではなく【close】である事に
559 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/02(火) 21:25:17.72 ID:GDcAS2XD0
昨朝、睡眠不足だったブルー当人が目玉焼きの乗ったトーストを齧りながらが呟いた事だ
この店は午後4時から午後10時までの営業時間だと、あの日はアニーにも確認を取った
裏稼業の方が山場だから準備のために時間を割いていて
午前中の営業は無い分、午後はしっかりやるのだと…だがこれは一体どうしたことか
店の看板に綴られた英文は、本日は営業を終了したと知らせる一文ではないか…
ブルー「誰が当番だったか知らんが、札の裏表を間違えたか?」
ならば早く戻って、店主であるルーファスに間違って【close】になっているぞ、と報告しよう
そう思い立って彼はドアに手を掛けたが…
時刻はとっくに16時を過ぎていて、開店時間になっているはずだった、であるにも関わらず
カーテンは閉め切っていて、明りも点いていないことが外からでもよく分かった
意図的に【close】の札にされているのか?
その思考に至ったのが戸を開いて足を暗闇の中へと進めた瞬間だった
「サプラァァァーーーーィイイイズ!!」パァァァァン
ブルー「な、なんだ!?」ビクッ
ぱんっ、ぱんっ!弾ける音が聞こえたと思えば、灯りがついて、彼の視界に飛び込んでくるのは
色彩鮮やかな紙吹雪と紐の波
中身を放ったクラッカーを手にしたリュートが悪戯の成功に喜ぶ無邪気な子供じみた笑みで
こちらに歩み寄って来る
ただ、一点いつもと違うのは、ボサボサ髪にちょこんと乗っているのが彼の地元の民族帽ではなく
パーティー用のトンガリ帽子であることに付け加え、デカいお鼻と黒ひげ付きの渦巻き模様の眼鏡
所謂、鼻眼鏡スタイルであったことだ
アニー「おっ、ちゃんと"おつかい"やれたじゃん!」
同じくトンガリ帽子被ってクラッカー持ったアニーが、スライムが、ライザが居て
後ろにはルーファスも何故かバニーガール姿のエミリアも居る
ライザ「アルバイトも正社員も関係ないわ、私達の所は新人には歓迎会を開く事にしてるの」
エミリア「私はレストランじゃなくて"裏"の方だから無かったけどね…」ジロッ
ルーファス「当たり前だ」
ブルー「 」ポカーン
人は理解が追い付かないと脳がフリーズするという、魔術師は処理が追い付かず暫し固まっていた
560 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/02(火) 21:25:47.21 ID:GDcAS2XD0
ブルー「…」ハッ!?
ブルー「ま、待て、では…これは…」
アニー「見ての通りアンタの歓迎パーティーよ」
アニー「ウチの店で住み込みで働くんだから当然でしょ?」
グラディウスモブ男「そうだぜ、新人歓迎の為に今日だけは特別に飲食店は休業さ!」
グラディウスモブ女「その分明日はモーレツに忙しくなるから思いっ切り騒いじゃおうっ♪」
リュート「へへっ、俺は一緒に金儲けした仲だしお前の相棒だろぉ〜?ゴチになるぜ!」
スライム「(/・ω・)/ ぶっくぶくっぶ〜!」
ライザ「あなたが手に持っている品はあなたの為の物よ」
ルーファス「祝いの席の主役におつかいに店まで取りに行かせるのも可笑しな話かと思うが」
ルーファス「内装の下準備やサプライズ用ということでな」
エミリア「今朝の連れ回しから映画館まで、全部が時間稼ぎだったのよね〜」
いつもなら客が座る飲食店のテーブルや椅子は宴会仕様に変わっていて
丁度ブルーが帰って来る時間帯を見計らってか美味しそうな香りと熱を放つ出来て間もない
料理のフルコースが主役を待ちかねていたようだ
レジが置いてある位置には倉庫で眠っていた蓄音機が居座り、花が飾られていない花瓶が
薄い空色のテーブルクロスの中央に乗っている
皆が持ち寄った少しお高い酒瓶から希少な銘酒、安物の缶ビールが山積みになっていて
まだ数本酒瓶を置けそうなスペースが空いている
そのすぐ傍には大きなホールケーキを置くのにぴったりな空の大皿とナイフ、取り皿が数枚
魔術師は困惑した。
この状況よりも、自分の心の中に沸いた"知らない熱"に
- 『…おい、見ろよ、ブルーだぜ』 -
- 『学院の成績トップ、首席は揺るがないってあの…』 -
- 『アイツ気に喰わないよな、あのお高くとまった態度…ちょっと勉強できるからって』 -
- 『なんでアイツに勝てないんだよ、俺達だって必死で勉強してんのに』 -
- 『あいつ、死なねぇかな…』 -
リュート「ん〜、どうしたんだよブルー、パーティーの主役のお前がそんな棒立ちで」
グラディウスモブ女「あっ!わかりましたよ、ブルーさんきっと照れてるんですよ!」
グラディウスモブ男「なんだそんなことかよ、俺達は同じ職場で働く仲間だしそんな必要ねぇ」
ルーファス「ああ、同感だ、短期アルバイトであろうと正社員も関係ない」
アニー「むしろ、ウチの店に住み込みなのだから家族みたいなものと思ってくれていいわ」
ライザ「そういうことよ、折角の料理も冷めてしまうわ、いらっしゃい」
スライム「(`・ω・´)ぶくぶくぶー」
エミリア「…まっ、色々問題はあるけどさ、…慣れて見ればアットホームな職場なのよね〜」
561 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/02(火) 21:26:14.72 ID:GDcAS2XD0
胸の奥が、急に熱くなった
そこに突然沸いた熱が膨れ上がって、小さな器から溢れてしまいそうで
-ヌサカーン『キミ、気づいていないのかもしれんがね
彼等の声に耳を傾けていた時何処となく楽しそうに見えていたよ』-
-ヌサカーン『中々にイイ傾向だ、他者との交流、会話は自分の感情に彩をつける』-
-ヌサカーン『現にキミは【呆れ】や【驚き】時に【怒り】そして
……相手の思考が読めない事から【戸惑い】や【疑問】』-
-ヌサカーン『様々な『感情』を抱き始めているではないか
交流の無い者は次第に心を閉ざしていく』-
-ヌサカーン『キミの心に巣食い始める病の予防薬になるだろう』-
数日前に、ヌサカーン医師に言われた言葉が不意に甦った
【呆れ】でも【怒り】でもない感情…
確かに今の自分が感じている『何か』に【驚き】や【戸惑い】を隠せない
ずっと冷え切っていた、蒼く、冷たく…閉じきっていた胸の奥に
向けられた沢山の悪感情から、奥にあるソレを守る様に閉じていたそれがゆっくりと開かれ
温かい物が見ていく感じ…久しくブルーが忘れかけていた『何か』だ
その何か、が何なのか思い出せない、名前を、名称を彼は口にできない
エミリア「えっ、ちょ、どうしたのよ…」
ブルー「……?」ツーッ
ブルー(…!これは…なんだ、俺の目から…)スッ
目元に触れる、指先が水分を認識する…何故、それが零れたのかはわからなかった
ブルー「なんでもない、ゴミが入っただけだ、それよりもライザの言う通りだな…行こう」
『※※※』という名の感情を言葉にして言えなかった、ただ目にゴミが入ったから泣いたと
彼は言って、荷物を持って待っていてくれた仲間達の元へと歩き出した
562 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/02(火) 21:27:02.54 ID:GDcAS2XD0
言葉では、表現しなかったかもしれない
しかし彼は確かにそれを感じた、だから身体が表現した、目から鱗が一枚落ちた
――――紛れもなく、彼の心はそれを感じたのだ…嘘偽りなく
酒瓶のコルクが飛び交い、気泡立つ液体がグラスに注がれて
温かな料理を味わいながら、音楽や内装の雰囲気にそのまま身を委ねる…不愉快とは思わない時間
祖国から使命を受けた身でありながら、もう少しだけこのままで居たいと思ってしまった一時だ
アニー「あっ、そうだ言い忘れてたブルー!」
ブルー「?」
自作の人参と玉蜀黍のポタージュスープを飲んでいたアニーがふと思い出した様に
彼の方に声を掛けて、一言、次の言葉を発した
アニー「おかえり!」
ブルー「…。」キョトン
アニー「いや、そんな顔されても困るでしょ…普通に考えて」
アニー「さっきも言ったけどさぁ、ウチの店に住み込みなんだから」
アニー「エミリアやライザと同じ家族みたいなモンだって言ったろ?」
アニー「家に帰ったんだから『おかえり』っつわれたら『ただいま』って返すパターンじゃん」
ブルー「……。」
ブルー「た、ただいま…」ボソ
アニー「そー、そー、言えたじゃない」ヤレヤレ
ブルー「そ、それだけの為に声を掛けたのか…くだらん…」
アニー「くらだん、ってなによ大事なことよ!」
―――
――
―
563 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/02(火) 21:27:55.07 ID:GDcAS2XD0
[クーロン]のイタ飯屋はその晩、遅くまで宴会が開かれ
酔いつぶれて床に大の字になって倒れる者もいた
後片付けを終えて、日付が変わろうとする間際に蒼は自室で自分の帰るべき場所を考えていた
時を同じくして、紅もホテル内の自分に割り当てられた部屋で自分が居られる居場所を…
ブルー「…『ただいま』か…」
ブルー「そんな言葉を次に使うのは俺がルージュを殺し祖国に戻った時に使うモノだと思った」
全ては、自分の育ての親の為に
華々しい戦果を挙げ、勝利の栄冠を手にして[マジックキングダム]に名誉と誇りの凱旋を果たす
その時、彼は"初めて『ただいま』を言えるのだと"…
自分が本来居るべき場所、帰るべき場所に『ああ、俺は故郷に帰って来れたんだな』と感じられる
心の底から安心できる筈なんだと信じて止まない
今日、この店に帰って来て、騒がしいアイツ等の顔を見て…『悪くないな』と思っている自分が
少しだけ心の何処かに居るのを薄々気付き始めてしまった
帰れる場所、帰るべき居場所… ブルーにとっての居場所は何処なのだろうか
―――
―――
―――
ルージュ「…結局、今日も何も思い浮かばなかった…」
ルージュ「殺し合いなんてせずとも生きられる方法が、…思い浮かばなかったなぁ」
全ては、自由と自分自身が求める幸せの為に
人間誰しもが幸せになる権利と追い求める自由を与えられる
だが無情にも彼の祖国たる[マジックキングダム]と運命はそれを与えてはくれなかった…
ルージュは考える、今自分が居る、居場所を…仲間達と共に過ごす時間、一緒に居られる場所
それこそが彼にとっての帰れる居場所なのかもしれない
帰るべき場所は、…そこに帰る時は
きっと自分の手は血染めになっていて、背に兄殺しの十字架を背負う事となる
もしも、このまま何の妙案も浮かばねば
帰れる居場所から帰るべき場所に帰るなんてことにもなりかねない…
帰れる居場所、帰るべき場所…ルージュが向かうべき運命の終着駅は何処なのだろうか
―――
―――
家族や、仲間、故郷、今あるべき場所、これまで旅立った世界の景色、今視える風景、未来
思う事、想う事……双子はその晩、その意味をずっと考えさせられた――――
564 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/02(火) 21:31:30.47 ID:GDcAS2XD0
************************************
今回は此処まで!
※ - 第4章 - ※
〜 想うこと、思うこと。 帰るべき場所、帰れる居場所。 〜
〜 完 〜
************************************
565 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/04/03(水) 15:53:15.34 ID:mcVAfog1o
乙
実際のところ逃亡したらマジックキングダムはどれだけ本腰入れて捜索するんだろうな
放置してさっさと次の双子に移行するような気がしなくもないが……
566 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/04/03(水) 22:22:13.83 ID:p4DyODK+O
乙乙
少なくとも「お前たちは本当の…」だから他の双子より執着してそう
567 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/04/03(水) 23:21:00.36 ID:U2bl1dDqo
乙
568 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/09(火) 22:28:00.17 ID:OunG5xPt0
※ - 第5章 - ※
〜 資質を得る、という事…�A 今ここにある幸福論と旅路 〜
569 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga!red_res]:2019/04/09(火) 22:28:41.80 ID:OunG5xPt0
その日は、一際暑い一日だった
東風が熱を帯びた身で忙しなく巡る人々の肌を焼く、日傘をさして歩く者も在らば麦わら帽子を被る者
露店で売られている飲料を透き通るグラスに一杯注ぎ氷をひとつまみ入れる
額に浮き出る玉汗をハンカチで拭いながらも聖堂へ脚を運び、修士として勤行に励む者のあらば
快晴からのさして嬉しくも無い贈り物に根をあげ、ポプラ並木の木陰で涼を取る住民…
暑い中、二人のよく似た少年…整った顔立ちと長く伸びた髪から少女にも見えたかもしれない
そこに聳え立つは国家の象徴と呼べる女神像は広場から少し進んだ先の自然公園で彫られた
蒼を身に纏った金髪と、紅を身に纏った銀髪が授業で習った歴史を確かめ合う様に語らった
『嘘か誠か、この女神像はこの国の長い歴史を見届けて来た妖魔が創ったらしいな』
【あぁ!知ってる知ってる、そこの…えっと、なんて名前だっけ?フ、フ、フランクフルト?】
『フルドな』
【そうそう!確かそんな名前だったよね!フルドって名前の人が創った女神様の像でしょ】
『いつの時代からか知らないが噴水広場から下った所にその妖魔の名を冠した工房がある』
【…そこって誰か住んでるのかな】
『知らんな、そもそも子供は国の掟に従い出入り禁止だ…』
『ただ、偉そうな恰好の大人達が入るのは目にするからな、稼働はしてるのかもしれん』
【ふぅん…大人ってズルいよねー、いっつも子供には何でもダメダメ言ってさー】
『フッ、同感だな…だがこれを口にすれば大人はいつだって決まり文句を言うさ』
【内緒にできるのは大人の特権ですよー、みたいな?】
『そしていつか大人になったら今度は貴方達が次世代の子供から秘密を独り占めしなさい、と』
【だよねー…やっぱり皆言わるんだねぇ】
『話は戻るが新年度になると新しい女神の彫刻像が学院に運ばれるんだ』
【確か、三つくらいだよね】
『あぁ、学院の何処に運ばれてるのかは不明だが、女神像が三つ…な』
『子供の間じゃちょっとした七不思議扱いだ』
【学校の七不思議、腕輪をつけた女神様の像が何処かにあるだよね…】
『お前は信じるか?そんな話』
【んー、どうかなぁ、そういうキミは?】
『さてな、証拠でもあるなら信じてやるさ』
【ハハハ、つまりは信じてないってことか】
―――
――
―
570 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/09(火) 22:29:12.39 ID:OunG5xPt0
********************************************
―――
――
―
ルージュ「ハッ!…なんだ夢か」ガバッ
身体が痛い、服装はバスローブ姿で彼はどうやら椅子に座ったまま寝落ちしていたらしい
本来なら微睡みに沈む前に味わっていただろう身体がよく沈むマッドレスではなく
夜景が良く見える窓際の椅子に座り、シックな黒塗りの机に広げた日記帳を枕にしていたらしい
猫の様に折り曲げた背中は椅子の背凭れからは遠く、授業中に居眠りする学生の宛らの恰好で
広げたページに涎の跡なんかも残してしまったのが妙に恥ずかしい
そのページだけ綺麗に切り取って丸めて屑籠目掛けてロングシュートを決める
ゲンが支払ってくれたホテルでの宿泊でゆったりとした休養を送り
入浴後に長い艶のある銀髪をルージュは乾かしていた、濡れた髪が渇いた後まだ眠る気がしなくて
バスローブ姿のまま、日記帳に冒険の記録を残していた辺りで
コックリ、コックリと夢の浅瀬へ向けて彼の意識は櫂<かい>を漕ぎだしていたのであった
着替えもせずに、そのまんまの姿で寝てて風邪を拗らせなかったのは室温調整が完璧な
お高いホテルだったからだろうか…、そんなことを考えながら紅き魔術師は再びシャワーを浴び
眠気をすっ飛ばして後で普段着に着替えた
ルージュ「…あっ、涎垂らしたページだけ破って捨てたから昨日の分、丸々書き直しだ」ガーン
今から急ぎで書けば白薔薇さん達が起床するまでに間に合うだろうか?
そう考えながらペンを握った彼は時計を一瞥してから急ぎで作業に取り掛かった
【双子が旅立って 7日目 午前5時12分 [マンハッタン]:ホテル(ルージュの部屋)】
―――
――
―
ゲン「おう、起きてたのか兄ちゃん」ブンッ!ブンッ!
ルージュ「ゲンさん、おはようございます!朝の素振り練習って奴ですか?」
ゲン「ああ、…しっかし、世の中何があるか分かんねぇモンだな」
ルージュ「えぇ、まぁ…昨日は色々度肝を抜かされたといいますか何というか」
ゲンとT-260はこのリージョンへ知り合いだったらしい博士を訪ねてやって来た
数日会わなかった合間に故人となった彼にせめて追悼の言葉でもとレオナルド博士の職場に
通して貰えないか、以前博士から渡された許可書を見せて役人にゲートを開いて貰い研究所の中へ
彼等は入れて貰える事となった、丁度、携帯電話の契約を済ませたルージュ等も同行して
…まさか、その博士が自分が死んだ時の事を想定して、脳をコピーしてロボットに移植してた
そんなこと誰に予測できようか
571 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/09(火) 22:29:40.75 ID:OunG5xPt0
―――
――
―
【時間は遡り 双子が旅立って 6日目 午後14時24分 [マンハッタン]レオナルド・ラボ】
-『今そこに居るのはT-260G君だね、済まないがそのスイッチを押してくれ』-
ゲン「な、なんだぁ!?死んだはずのレオナルドさんの声がするぞ!?」バッ
ルージュ「えええぇぇぇぇぇ!?まさか、お、お化け!?」
ゲン「なんてこったい!!レオナルドさん成仏できずに…」
アセルス「いやいや、二人共落ち着きなってコレどうみてもあそこのスピーカー音声だから」
白薔薇「とりあえず、声に従い、"すいっち"とやらを押すべきでは…」
T-260「了解」ポチッ
ゴゴゴゴゴゴ…!ウィーン!パカッ
謎のロボット「…ふぅ、いやぁ〜君達が来てくれなければ何時までもこのままだったよ」
ゲン「…。」アゼン
ゲン「もしかして…アンタぁ、レオナルドさんなのかい?」
ルージュ/白薔薇/アセルス「「「えっ」」」
三人は頭に疑問符を浮かべた、彼の言う人物はこの研究所の一番偉い人で数日前の爆破テロで
お亡くなりになった故人で、目の前のロボットがその故人だそうな
ま る で 意 味 が 分 か ら ん ぞ !!!
レオナルド「こういう事態に備えてボクは自分の人格マトリックスをこのメカに移していたんだ」
ルージュ「ええっと…つまり?」
レオナルド「T-260G君の新しいお友だちかな?初めましてボクがこのラボラトリーの主人」
レオナルド「レオナルド・バナロッティ・エデューソンさ、簡単に言うと自分の脳をコピーして」
レオナルド「人間のボクの身に何かあったら、このロボットの身体で生きれる様になるってコト」
メカになったからこそ分かる、生命力が異常値を検出する妖魔が複数いるから
機械文明に疎い人にも分かりやすい簡単な説明が必要とされると
肉体は機械になってしまったがそれ以外は以前と何ら変わらないと、寧ろメカになった事で
病気にもならず、疲れ知らずで働けるので便利だと…
唯一の残念なのは自分が好きだったバーガーショップでハンバーガーが食べれない事だと言ったが
それもロボット化した自分の肉体に味覚機能と食物消化機構を取りつければ良いと発言した
…ルージュ等は何となく、ゲンが言っていた"変わり者"の意味を理解した気がした
―――
――
―
572 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/09(火) 22:30:08.99 ID:OunG5xPt0
【そして、現在…】
ゲン「…まぁ、元気そう(?)で何よりだったな」
ルージュ「あっ、はい、ソウデスネー」
二人はこれ以上考えることを止めた…とりあえず生きてて(?)良かったそれでこの話はやめよう
ルージュ「でも、そうなるとゲンさん達ももう出発するんですか」
ゲン「おう、アイツの無くなった記憶の手がかりがあるかもって言ってたしよぉ」
昨日、復活を果たしたレオナルド博士にT-260は自分達の調査結果を話した
[シンロウ]にあった古代のリージョン・シップの残骸から幾つかの要になり得るキーワードを入手
そして、それを解析する為に博士の協力が必要で…[マンハッタン]に帰って来る道中で[京]に居た
ルージュ達と知り合いになったことなどを説明した
博士の方は、事故に遭う直前までしっかりとT-260の失われた記憶を取り戻すために
古人で調査を続けてくれたのだが、曰く、トリニティの調査セキュリティーに引っ掛かり
それ以上先へ情報を得る事ができないとこのこと
そこで、準備が整ったらトリニティの中枢部―――通称[タルタロス]と呼ばれる場所の内部にある
中央情報室に向かうという方針になった
銀河全体を統治する政治機関トリニティの重要機密を保管している場であり、やはり警備も厳重で
博士程の権限を持つ上層の人物でもそう簡単には閲覧ができない
だから、博士のラボにあるコンテナに入って、こっそり忍び込んでしまおうと
これまた危ないお話になったのである、世話になった身だし手伝おうかと妖魔女性組も赤き術士も
名乗り出たのだが、これは自分達の問題から気持ちだけ受け取っておくと断られた
結局、ゲン、T-260、そしてレオナルド博士と特殊工作車、ナカジマ零式の人間1人(?)と
メカ4機(?)のパーティー構成で武具を揃えてから突き進むという事らしい…
ルージュ「ゲンさん、本当にお世話になりました…お気をつけて」ペコッ
ゲン「へっ、気にすんなよ、それよりあの逆立った髪型の坊主に会いに行くんだろ?」
ゲン「ダチは大事にしろよな」肩ポン
ルージュ「はいっ!」
午前7時を少し過ぎた辺りで起床し既に一通りの身支度を終えていたアセルスお嬢と白薔薇姫と
ホテルでの朝食を口にし、シップ発着場へと向かった…
3人が手にしたチケットには自然豊かな畑と酪農…そして酒造の聖地と呼ばれる田舎の地名があり
それを持って、宇宙船<リージョン・シップ>に乗り込んでいく姿を見送る剣豪とロボット達
宇宙<ソラ>へと飛び立つ船を見上げ「達者でな、元気でやれよ」と
鉢巻を巻いた剣豪は胸の内でそっと呟いた
ゲン「さぁて、俺達も準備すんぞ!!レオナルドさんよ!戦力強化の当てがあるんだって?」
レオナルド「うん、まず[クーロン]へ行こうか、裏通りにちょっとした知り合いが居るんだ」
573 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/09(火) 22:30:56.93 ID:OunG5xPt0
―――
――
―
ヒュゥゥゥ…
スタスタ…
レッド「…遂に、船を降りちまったなぁ…」
【双子が旅立って 7日目 午前11時28分 [ヨークランド]】
歳は19でまだ成人式さえ迎えていない少年が一人、肩に紐を通したナップサックを背負い
そのまま手首には古い革トランクを持ち、先程まで自分が乗船していた"白鳥"が去っていく姿を
歩きながら眺めていた
少しカラカラとした乾いた風が吹き、砂埃が舞う
この時期、[ヨークランド]は特に乾燥が著しく、また湿度が少ない所為か喉がパサつく
だからこそ自然の恵みたる水と果実が美味く感じるのだと住民達は朗らかに笑うのだが
そんな土地に彼――レッド少年が降り立った事の経緯を簡単に説明しよう
ルージュ、アセルス、白薔薇の3人と別行動を取る事になった彼はその後も
キグナス号の乗務員として働き古代遺跡探索ツアーと武術に覚えのある猛者が集まる仮面武闘会で
有名な惑星<リージョン>…[シンロウ]へとやって来た
船の燃料や、食料品等の必要物資の積み込み作業が終わるまでクルーは自由行動を言い渡され
レッド少年もまた観光がてらに武闘会を観戦しに行こうと[シンロウ王宮]へ赴いた
-『今大会も強者揃いだな!』-
-『前回のあのピンクタイガーとか言う女性レスラー以上の奴はいないだろ』-
-『あぁ、居たのぅ、そんな娘さんが…身体つきがイイ女じゃったなぁ…イデデ!?』-
-『爺さんや、浮気はゆるさんぞ』-
レッド『へぇ〜…賑わってんなァ』キョロキョロ
BJ&K『参加なさらないんですか?』ウィーン
レッド『俺?…そうだなぁ、出る理由が―――!? 隠れろ』バッ!
BJ&K『――へ』ガシッ
レッド『…あの後ろ姿、間違いねぇ…父さんの親友だったDr.クライン…っ!』
レッド『ブラッククロスで改造怪人を創る悪の科学者となり果てた野郎がなんで此処にッ!』
悪の組織の科学者として、多くの怪人を誕生させた狂気のマッドサイエンティストを何の偶然か
彼はそこで見つけ、家族の仇の情報を得ようとレッドは大会に出場することを決意する
この大会の裏、主催者側ともDr.クラインは何らかの繋がりを持っている事を調査で知ったから
574 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/09(火) 22:31:38.20 ID:OunG5xPt0
レッド『…すまねぇ、急用ができた、此処で少し待っててくれないか?』
BJ&K『了解しました、でもすぐに戻ってきてくださいね』
タッタッタ…!
レッド『この曲がり角なら丁度、人が居ない…変身ッ!アルカイザー!!』ペカーッ!!
アルカイザー『…よし』タッタッタ…!
受付『大会出場ですか?ではお名前を…』
アルカイザー(名前…レッドなんて馬鹿正直には言えねぇよな…?)
アルカイザー『レ…レ、レ』
受付『レレレ、様ですね!わかりましたリングネーム<レレレ>様、ご登録完了です』
アルカイザー『えっ、ちょ』
―――
――
―
アルカイザー『ぐあぁぁっ!』
図体のデカい悪の組織の幹部『フハハハハ!中々やるようだがこの[仮面の巨人]様は無敵だ』
図体のデカい悪の組織の幹部『中々骨のある大会参加者だが試合の相手が俺様とは運の無い』
図体のデカい悪の組織の幹部『何度、拳を打とうとも見切ってみせるわぁぁ!!』[スウェイバック]
順調に試合を勝ち抜いていくアルカイザー、いやレッド少年…!
しかし、ここにきて何故か妙に強い巨人系統のモンスター族の参加者と決勝試合をすることになる
その対戦相手は何とッ!!レッドの格闘技を見切り、全て回避していく…ッ!
馬鹿な!ヒーローアルカイザーの筋力を以てしてもこうも躱される等と…一体何者なんだッ!?
図体のデカい悪の組織の幹部『ハーッハハハ!ゆくぞ!喰らぇい必殺[雷炎パワーボム]ゥゥ』
アルカイザー『くっ!…俺はこんなトコで負ける訳には行かないんだァァァァ!!』ピコン!
仮面をつけた正体不明の謎の参加者相手に滅多打ちにされるレッド少年…
自分はこんな所で正体不明の一般人相手に倒されてしまうというのか…ッ レッドは負けられない
ここで優勝することで家族の仇に手が届くかもしれないからだ
彼の闘志は、暗闇の荒野に灯りを灯す
明光が射した、真っ暗闇な脳裏に豆電球でもついたかの様に、気づけば拳を前に突きだし叫んでた
アルカイザー『射抜けぇぇ[アルブラスター]−――ッ!』
光り輝く拳――[ブライトナックル]が再び来るかと正体不明の大会参加者は身構えていた
だが、放たれた輝く拳は明らかに自分には届かない、空虚を殴りつけるだけの動作でしかなく
ついにレッドが相手と自分の距離感すら掴む程ダメージを負い過ぎたのかと最初は思ったらしい
575 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/09(火) 22:32:08.70 ID:OunG5xPt0
刹那、彼は自分の思い違いを思い知らされた
レッドが今までの殴打技とは全く違う技名を叫んだからだ、何も無い空間を殴りつけた拳の光は
一層強まり、輝きが最高潮に達したかと思えば暴発するように腕の先からそれは飛び出した
名は体を表す。
彼の迸る闘志、生命エネルギーがそのまま放出され目の前の正体不明の参加者を射抜いた
アルブラスター『 』ビュンッ!
アルブラスター『 』ビュンッ!
アルブラスター『 』ビュンッ!
図体のデカい悪の組織の幹部の腹『 』ボコォォォッ!
図体のデカい悪の組織の幹部の仮面『 』バキッ!パリーン
図体のデカい悪の組織の幹部『ぐ、ぼっ…お、おぉ…』ドサッ
図体のデカい悪の組織の幹部(し、しまった…俺の仮面に罅が――クソッ)
図体のデカい悪の組織の幹部『飛び道具とは…油断した』サッ
巨人タイプのモンスター特有の巨大な掌で[仮面の巨人]は罅の入った仮面を、素顔を晒すまいと
顔を覆い隠した、仮面武闘大会だから素顔を晒す事はタブーであるが、この男の場合はもっと違う
この巨人は故あって他者に自身の顔を見られたくないのだ、特に警察関係者に…
だから不必要に顔が世間に割れる様な事は厳禁だ
それも『強者との闘いが趣味で武闘会に遊びに来て油断しまくった結果バレました』では
冗談にすらならないのである
図体のデカい悪の組織の幹部『ふっ、だいたい見切らせてもらったぞ』ニタァ
図体のデカい悪の組織の幹部『悔しいが降参だ!』バッ!ササッ…!
かくして仮面をつけた正体不明の妙に強い大会参加者を倒したレッドは、優勝を果たし
Dr.クラインの後を追跡したのだが…肝心な所で逃げられた挙句
まるで狙いすましたかの様な絶妙なタイミングでキグナス号から帰還命令が出された
――――それもあって、彼は決断した
自分は、このままキグナス号の乗務員として働いていては何時まで経って仇が討てない
…船を降りよう、と
576 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/09(火) 22:32:49.63 ID:OunG5xPt0
元より、親友達の旅路を手伝うことも頭の中にはあった
だから"有給休暇届け"を出すのではなく、"退職届け"を出すことに決めた
両親を亡くしてから、ずっと世話になった上司であり恩人の機関士ホークに
礼と、船を降りる事を告げて彼はこの日、[ヨークランド]の地に降り立ったのであった
―――
――
―
そして冒頭へ戻る…
レッド「…遂に、船を降りちまったなぁ…」
ヒュゥゥ…
レッド「暖かい風なのにな、少し寒いって思うのは寂しさのせいかな」
BJ&K「でしたら、生姜の湯を精製しお出ししますか?」ウィーン
BJ&K「私の体内機械構造なら簡易漢方薬くらいは直ぐ作れますよ、体温が上昇します」
レッド「お前なぁ〜…」
BJ&K「冗談です、ロボット冗句です」ウィーン
レッド「…やれやれ、…着いて来てくれてありがとよ」
BJ&K「命令されましたからね『俺の傍から離れても壊す』と、だからついて行きます」
BJ&K「自分の為、また貴方の健康をお守りする為、レッド…貴方について行きます」
レッド「…あん時はちょっと荒っぽい口調で悪かったよ」
レッド「改めて着いて来てくれてありがとう、おかげ独りじゃなくなったからさ」ポリポリ
レッド「コホン、と、とにかくアセルス姉ちゃん達探そうぜ!!もう着いてるっぽいしな」
急に気恥ずかしくなった、ロボット相手とはいえ、柄にもない事言ったなと顔を赤らめ彼は
明後日の方角を見ながらわざとらしく声を大きくして言った
自分がこの惑星に降り立つ数刻前に、3人は既に到着して[杯のカード]に関する情報を得ようと
駆けまわっているらしい
そう広くない村なのだから、すぐに見つかるとは思うが…
とりあえず、それらしい人を見かけなかったか、住民達に聞き込みに行こう
紅い法衣を着込んだ魔術師と緑髪の少女、後は頭に花飾り付けた貴婦人は居ないかと
レッド少年と医療メカはそう決めて、早速第一村人に声を掛けようと村の入り口へ脚を運んだ
「あっそ〜れ!イッキ!イッキ!」
「ひゅー!いい飲みっぷりだよぉ!」
「そらそら、酒はたーんとあるぞォ」
ルージュ「んぐっ、んぐっ!ぷはぁ〜…美味い//」トローン
レッド「って早速居たァァァ!!!普通に居やがったァァァ!?」ガビーン
577 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/09(火) 22:33:34.49 ID:OunG5xPt0
第一村人発見ッ!からの聞き込み調査ドコロの話で無かった、村に足踏み入れて2秒で遭遇だった
アセルス「…んっ、はぁぅ…///」トローン
アセルス「うふふ、なんだか少し酔いが回って来たのかも…」
レッド「うぉい!?姉ちゃん17歳!未成年だから―――あ、でも姉ちゃんは…いいのか?」ハテ
レッド「ってそこじゃねぇ!カードはどうなったんだよ…」
この時期、[ヨークランド]の空気は乾燥していて喉がパサつく
…がレッドのこの喉の渇きは気候の所為ではない
レッド「ぜぇ…ぜぇ…喉乾いてきた」
白薔薇「まぁ…レッドさん、でしたら此方はいかがでしょうか」つ『果物酒』
レッド「…」
とりあえず、柔らかな聖母の様な微笑みを携えて酒の入ったグラスを手渡した白薔薇から受け取り
それを飲み干すことなく、説明を求めた
ルージュ「んと、ね…ここでカードの試練について聞いたんだ…そしたら〜」
―――
――
―
レッド「…つまり、話をまとめるとだ」
レッド「[杯のカード]を得る為には酒蔵の人に話を聞かなきゃいけなくて…」
レッド「そこで一番度数の高いアルコールを全部飲み干さなきゃ住民は情報を一切教えない」
レッド「そういう掟があるから、それに沿って皆でこうして陽の高い内から飲んでるのか」
ルージュ「そーそー、…ゲンさん居れば楽勝だったなぁ〜」フラフラ
若干呂律が廻らなくなりかけているルージュと、千鳥足気味になっているアセルス
そして何も無い空間に向かって「あらあら〜、うふふ」と気品溢れるお喋りを嗜む白薔薇姫
レッドは思った、キグナスに帰りたい。
レッド「…まぁ、それが試練だってぇならしゃーねぇよな」ポリポリ
「んん〜、坊主も試練を受けるのかい?」
「そういうことならウチの酒蔵に寄って来な、そこでたーんと酒飲んでもらうぞえ」
「儂らの自信作じゃ!飲まん奴にはカードの事は教えてやらん」
レッド「うっ…」
「言っとくが若いの、ズルはよくないぞ、ちゃーんと皆酔っぱらうまで飲むんじゃ」
578 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/09(火) 22:34:09.41 ID:OunG5xPt0
それから……
【双子が旅立って 7日目 午後11時58分】
レッド「う"っ…気持ちわりぃぃ…」
ルージュ「レッドってばお酒弱いんだねぇ〜」アハハ
酒蔵を数軒、廻り一体何杯飲まされたことか、[マジックキングダム]の術士ゆえに
術力回復の[術酒]を慣れるまで飲まされたルージュや妖魔になった事で体質が強くなったのか
はたまた、人間だった頃から耐性があったのか酒に強かったアセルスと比べレッド少年は
酒蔵巡りを半分終える前からグロッキー状態であった
…気合でなんとか最後まで飲み切ったが
詳細をまだ聞かされていないから試練内容の実態が掴めないが、どうやらここでの修行は
酒を飲んで酔うことに意味があるらしい
耐性を持っていた三人でさえ、ぐでんぐでんになるまで何度も飲ませ
逆にレッドは"酔ったことさえちゃんと確認できれば"それで良いと言わんばかりに少な目の酒
明らかに個人個人で飲ませる量が違ったのだ
「いやぁ、イイ飲みっぷりだね、今すぐ酒神さんの祠さ、行ってみるだよ」
覚束ない足取りと、情報を整理できない頭で、4人は"祠"とやらを目指す事になった
BJ&K「私が集めた情報によりますと、この先にある沼地の奥に祠があるそうです」ウィーン
…酔う、酔わない以前の問題であるロボットがパーティーに居て良かった
背中を押されながら、どうにか4人は鬱蒼とした森の先にある沼地へと辿り着く…
[ヨークランド]の天然水が山から流れ、その水が地下の水脈を巡り、この湿地帯へと辿り着く
水そのものは美しく、また身体に優しい成分に溢れておりペットボトルにでも入れて
売り捌けば銭儲けにすらなる、暑く、寝苦しい夜に素足を浸けて涼を取るにも最適なのではと
そう思える程の良い場所とも思えるだろう―――…一見すれば
では、何故このような暑い日に村人は沼地に近づかないのか、試練の場だから?
神聖な場所扱いして誰も来ないとかいう理由だろうか?
いいや、違う
誰も来ない理由を4人と1機はすぐ知る事となった
579 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/09(火) 22:34:38.76 ID:OunG5xPt0
沼地、というだけはある鬱蒼と生い茂った寒枯蘭<カンガレイ>や黄色い花を咲かせた河骨を見かける
一帯が寿樹のサークルに囲われているのも関係しているのか、水草と水面の色、日光の当たり具合
それらが絶妙なバランスで成り立ち花萌葱の絨毯が視界一杯に広がっていた
一歩、片足を前に差し出す…ぬちゃり、と泥濘を踏んだ時特有の音がして、靴底越しに
心地よいとは言い難い感触を覚えるところだ、幸か不幸か酔っぱらっているが故に4人の感覚は
嘗てないほどに鈍っていて、うっかり沼水に勢いよく突っ込み靴が完全に浸水しても気に止めない
…靴下までびっしょりとずぶ濡れでそのまんま、浸水した靴を履いて歩き続ける
素面に戻ったら女性陣が悲鳴をあげそうな状態ではある
水虫・水ぶくれの主原因となる白癬菌にとってこれほど喜ばしい事があるものか
はてさて、そんな未来の心配はさて置き、4人は沼地の奥にある祠を目指してふらつく足取りで
丸太橋を渡ろうとしていた、雑木林の抜け道を越えてそこから地続きで途中までは行けたものの
道中で道が完全に水没している箇所がある…山岳部から低地まで下って来る湧き水を初め
雨季の例年と比べ予想外に多い降水量などあらゆる要因はあった
何れにしても、脚の脛までなら我慢したとして腰までざっぷりと水に浸かる気はない
元は流木だったのだろう、太い丸太が丁度良く渡り橋の様になっていてくれた
ルージュ「うっ…脚が、真っすぐ進まないよ…おえっ」グラグラ
アセルス「ちょ、揺らさないでよ!…あぅ…私まで気持ち悪く…」ヨロッ
白薔薇「あ、アセルス様…!」ガシッ
アセルス「うぁ!?た、助かった…ありがとう」
白薔薇「いえ、置きになさら―――うぅ、すみません私も」フラッ
アセルス「えっ」
バッシャーン!!
ふらつきかけたアセルスに手を伸ばし、白薔薇は彼女を支える事に成功した―――のは束の間で
その直後に少女の身体を支えた筈の彼女がそのまま足を踏み外して丸太橋からあわや転落
ガッチリと緑髪の少女を掴む手は最後まで離さなかった…、つまり"そういうこと"である
レッド「やべぇ!二人が落ちた!! うおえぇぇ…やべっ、吐きそ―――」グラッ、バッシャーン
ルージュ「レッド!アセルス、白薔薇さ―――ばべっ!?」ツルッ、バッシャーン
後ろを振り返り、クルリと回った瞬間に落ちて行った赤の後を紅が追って落ちた
一層綺麗な美様式か何かのようなシーンである
BJ&K「…。」ウィーン
BJ&K「あー、お助けしましょうか?」
落下原因:酔っぱらない
そんなこんなで芋づる式に落ちて行った生命体4人を無機質な機械が眺めながら答えた
若干、音声に呆れが混じっている気がするが、きっと気のせいだ
580 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/09(火) 22:35:13.61 ID:OunG5xPt0
アセルス「…。」(泥んこ状態)
アセルス「うえぇぇぇ……」グズグズ
白薔薇「アセルス様、泣かないでくださいませ…そんな私まで、うっ、ううぅ…」グスンッ
レッド「うっ、おげえぇぇぇ…き、気分わりぃ…」
レッド「BJ&K〜、引き揚げてくれぇ…」グデー
ルージュ「…」(頭から水面に突っ込んで未だ起き上がらない)ブクブク
酒臭い匂いがプンプンする男女4人が沼に落ちて全員びっしょ、びっしょに濡れた
泥だらけのお嬢ちゃんは泣き上戸か何かの様にワンワン泣いて、隣の従者も同じく
お酒に耐性の無かった坊ちゃんも込み上げる吐き気と気怠さに悲鳴を上げ
紅き術士に至っては水面から上がってすら来ないという…
こ の 始 末 で あ る ッッ!!
BJ&K「……」ピピッ
レッド「ぁんだよぉ、早く引き上げ…うげぇぇぁぁあ…」
アセルス「うえぇぇ…やだぁ、もうやだぁ!お家帰りたい…」ポロポロ
白薔薇「うぅ…ひっぐ、…」
ルージュ「 」ブクブク
………
………『何か』…『何か』が"奇妙"だ…
レッド「う"っ―――おぇっ…た、頼む、マジで早く…苦しい」ハァハァ…
アセルス「どうし、て…私、人間じゃなくなったから…おばさんも皆も私が怖いの…」ポロポロ
白薔薇「…涙が、涙が止まりません…あぁ!目が、…視界が涙で…何も見えない…っ」グスッ
ルージュ「 」ブクブク…
ルージュ「 」ブクブ…
ルージュ「 」
…………何かが…ッ! これは、『何かが"おかしい"…ッ!』この事態は良くない
…何かよくわからんが『異常』だッッ!!
581 :
今回は此処まで
[saga]:2019/04/09(火) 22:35:55.48 ID:OunG5xPt0
チャプン…
水音がした。
少女も貴婦人も少年と術士もそうだ、皆が水中に居て抜け出すことが叶わずに居る
その様子を丸太橋の上から不動の医療メカが眺めている
では、今の水音は"誰"の物だ?
比較的症状がマシなレッド少年は背筋に冷たい物が這う感覚を覚えた
酒気に狂わされ愚鈍となった一行の中で、この瞬間に限り彼の感覚は鋭さを取り戻した
脳が警鐘を鳴らす、このままではよくない事が起こると…
―――レッド少年が背後で蠢く一本の"触手"を目視すると同時であった
BJ&K「ピピッ―――確認完了、【状態異常】を検知、【毒】【混乱】【暗闇】【睡眠】」
BJ&K「また強い敵対生物の存在を確認!直ちに退避を――――」
ザッバァァァン!!
突如、水面が割れた…っ!薄いボール紙の蓋を破るかの如く"ソイツ"は無数の触手をうねらせ
身動きが取れない4人と1機の前にその全貌を露わにした
【 酔いが回る…! 】キィィィン!!
頭の中に、一文の文字が浮かび上がる、世界がぐにゃりと歪み虹色の輪郭がブレる
レッドは"戦闘"が始まって早々に膝をつき吐き気と気怠さに苛みッ
白薔薇は武器を構え仲間を守るべく立ち上がるも剣先は敵の姿を全く捉えていない…っ!
アセルスに至っては、頭を抱えて蹲り、まるで数日前の[カウンターフィアー]を受けた時と同じ
ルージュは…水底に沈んだまま、浮かび上がってすらこない…まさかそのまま溺れたのか!?
獲物がやってきた…
にやりと顔を歪め…[ヨークランド]の沼地"名物"――[クラーケン]は笑った
582 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/04/10(水) 12:45:34.59 ID:UuatjkrWO
沼地はマジできついんだよなあ…水耐性つけてからいかないと
583 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/04/11(木) 14:02:22.45 ID:ZuuHve1NO
沼地はロボ揃えて無理矢理突破するわ
584 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/04/12(金) 01:55:23.08 ID:IxZuFk9XO
イカ出る前に序盤で突破やろな
585 :
少し投下
[saga]:2019/04/20(土) 01:43:43.73 ID:WzuKBuWT0
北欧神話に語り継がれる帆船の舵を取る船乗り達から畏怖の念を送られら大海の怪物
その名前を冠した巨大烏賊の魔物に目玉が飛び出そうな程の衝撃を受けた
何せ[クラーケン]は【危険度ランク9】――トリニティ政府が定める危険生物認定の最上位種だ
近隣住人が沼地に近づかない理由はこれである
[ワカツ]でもの天守閣でも経験したが、"カード"がある場所というのは一種のパワースポットと
なり得る、酒神を祀るという祠も力が収束される特異点の1つであり
必然、スポットに近いこの沼地は強いモンスターが自然と集まるようになっている
水棲系モンスターで[ガイアトード]運が悪ければ[玄武]がよく出没するという魔境である
…尤も、今回の場合は余程の"引きの悪さ"だったのか、ババ抜きで言う所のジョーカーを引いた
滅多な事では現れない[クラーケン]をよりにもよって引き当てたのだ
レッド「マジかよっ!…うぶっ!?」オエェ…
試練、それは何も知らされていない彼等は祠に行ってから何かがあるものだと考えた
タダでそう易々とカードが手に入る筈が無い[ワカツ]で影を揃えた時と同じ何かしらはある物と
そう身構えては居たがこれは完全な想定外だ
『辿り着いてから試練が始まる』……ではない、『辿り着くことそのものが既に試練』なのだ
二つの意味で溺れる程の酒を飲み、千鳥足で更に体調も絶不調
道中凶悪極まりないモンスターの巣窟を、それこそ彼奴等の縄張りに足を踏み入れてはならない
その条件付きで一つの目的地に向かうというのが"[杯のカード]の試練"なのだ
…考えうる限りの最低最悪のコンディションで地雷源をタップダンスしながら進め、と
クラーケン「〜〜〜〜〜」スッ、ザバァァ
巨大烏賊はゆっくりと10本ある触手を水中から引き揚げ天へと振り上げ
そのままの姿勢を維持した
白薔薇(…?襲ってきませんの…)
涙が止まらなくて、武器の先端が未だ烏賊から若干逸れた所を狙う白薔薇姫は酔いで
碌に回らない頭で必死に考えようとした、潤んだ瞳は巨大烏賊の姿を薄らと捉えては居る
また、耳に異常はない為、触手が水底から帆船の錨の如く引き上がった音も聞こえた為
相手が今どのような状態でいるかも何となしに分かるのだ
…分からない、いや、"解"らない事があるとすれば、何故その態勢で止まるのか
普通腕を振り上げたのなら敵に向かって殴りかかるなり振り下ろすなり何かしらの行動に出るもの
対して目の前の[クラーケン]は一切動こうとしない、"まるで何かを待っている"様に
白薔薇「あぁぁ!?いけません!!みなさん、何かに掴まりながら身を守ってくだ――」
白薔薇とレッドには違いがあった、倒したモンスターを吸収する妖魔という種族は
それなりにモンスターに対する知識を持つ必要がある
力を吸うことで自らの強化へと繋ぐからこそ最低限、対処方法などを学ぶものだ
当然、貴婦人はこの【危険度タンク9】と認定される災害クラスの怪物が持つ特徴を知っている
この巨体が触手を振り上げた時、それは――
586 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/20(土) 01:44:35.70 ID:WzuKBuWT0
クラーケン「ギュブブブ!ブゲゲェ!」
何とも形容しがたい奇怪な声を上げた化け物に突如として沼の水が集まりだす
風呂桶の底についてる栓を抜いて、そこから水が流れ出す時を想像して欲しい…ある一点に向かい
そこにある液体が集結するように流れ出すイメージを…っ!
[クラーケン] を ちゅうしん に みず が あつまりだした !
――――【メイルシュトローム】ッッッッ!!
ズボォォォ"ォォ""ォ"ォ""" ォ""――― ザッバァァァァァァァァン!!
彼奴に吸い寄せられた水は巨大軟体動物の身体に這い上がる様にくっつき、やがては埋め尽くす
道端に落ちた苺味のキャンディーに蟻が押し寄せあっという間に全体を赤から黒一色に染め上げる
ソレに似ていて水は[クラーケン]の身を覆い隠す程の壁になった
巨大な円柱状の水柱、天辺からは振り上げたままの触手が10本そのまま露わになっていて
傍から見れば水色の胴体と吸盤付きの触手が生えた磯巾着と見間違うことだろう
白薔薇の何かに掴まり身を守れ!という咄嗟の警告も虚しく、磯巾着、否、巨大烏賊は
うねうねとした触手を10本同時に振り下ろした
彼奴の胴体を中心に傘の受骨と同じで中心から廻りまでぐるりと四方八方に均等な位置にあった
触手が鞭打った音を叩きだしながら水面を叩き付ける、するとそれを合図に身にまとった
沼水が一斉に流れ出した
付近の丸太や、水底に沈んだ大岩、色んなモノを抱き込んで暴力的な水流が全域を襲う
―――当然、4人と1機にも
ドゴォ!バキャッ!メシャシャァァァ―――!!
そのまま水圧を直に受けて身体が悲鳴を上げる、流されて大層樹齢のありそうな寿樹に
身体を叩き付けられてそのまま水流に押しつぶされそうになる痛みと飛んでくる流木や土砂が
容赦なく生身を痛めつけて来る
…やがて、水が引いたかと思う頃には
レッド「ぐ、は……はぁはぁ、クソ、いきなりピンチかよ……!」
アセルス「」(戦闘不能)
白薔薇「」(戦闘不能)
587 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/20(土) 01:45:14.53 ID:WzuKBuWT0
額から血をどくどくと流しているアセルスお嬢――おそらく流れて来た偽礫岩に当たり
少し離れた先に白薔薇姫が見え、膨らみのある胸に尖った枝が深々と刺さり血を流していた
…この時だけ彼女等が、人間<ヒューマン>でなくて良かったと思える
胸部――心臓を深々と棘枝で串刺し、それと頭部を勢いのついた岩による強打
普通に考えてこんなモン並みの人間なら間違いなく即死レベルである
レッド(ぐっ、身体は…まだ動かせる…ルージュは…BJ&K…!)チラッ
へし折れた雑木林の樹々、澄んだ水に土砂が混じり濁り切った沼、倒れた太い丸太の裏に黒煙
耳を傾ければ機械の電気系統がショートしたような音が聞こえて来る
おそらくBJ&Kはあそこにいるのだろう…この惑星に来る前に装備させた防具で耐久は増してる
煙こそ上がっているがまだ動ける筈だ
問題はルージュだ、目をきょろきょろ動かして見える範囲に彼の姿が無い
まさか流されたのか、それとも…
レッド(いや、アイツに限ってそんなことあるもんか!それよりコイツをどうにかしねぇと)
嫌な想像が頭を過ったがそれを打ち消す、大技【メイルシュトローム】の反動で烏賊も隙ができた
考えろ、ここで優先すべきは何だ…!
ここで判断を誤れば全員の死に直結しかねない
攻めるべきか、それともありったけの回復薬をつぎ込んで態勢を立て直すか…!
レッド「迷って、る時間は…ゴホッ、ねぇ…っ!―――スゥゥゥ [克己]!!」シュィィン!
眼を瞑り、心を落ち着かせる
息を整え自分の体内にある"気"の流れを掴み、生命力を巡らせる…!
あの日、友人達と共に観光がてらで取った[心術]の資質も無駄ではなかった
内臓から皮膚の表面まで、内から外、漲る生命力が彼を瀕死の状態から万全まで戻す
BJ&K「ピピッ!状況判断完了…、みなさんは最悪意識さえ取り戻せば[克己]で回復可能」
BJ&K「私は私のボディーを治します…!」スッ
[インスタントキット]を取り出し、器用に自己修復を行うメカ…いくら数の上で有利とはいえ
そんなアドバンテージ軽く吹っ飛ぶ力量差というモノがある
深手を負ったままの自分が考え無しで無謀にも突っ込んで返り討ちでは笑い話にもならない
攻勢に打って出るよりも守りに徹した
クラーケン「グゲゲ!ケェー―−ッ!」ジャッバァ!!
沼地の怪物は水上を滑る様に動き襲い掛かる…っ!
588 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/20(土) 01:45:44.60 ID:WzuKBuWT0
10本の触手を伸ばし、それを鞭として扱う、厄介な事に得物は本物とは違い生物の体の一部
叩き付けるべく振り下ろせば上下に動き、薙げば慣性に従い弧を描く動きをしてくれる訳ではない
それこそ変幻自在に動かせるから対処に困るのだ
クラーケン「ギュベゲッ!」ヒュッ!
触手『』ブンッ!
触手『』シュルッ!バッ!
―――ドッバァァァン!!
何もいない、水面目掛けて触手を振り下ろした、その動作に完治した彼等は疑問を抱いたが
直ぐに分かった―――ルージュだ、水中に彼が居て彼奴は何らかの理由で浮かんでこない彼に
更なる追い打ちを仕掛けたのだと
答え合わせだと言わんばかりに、ほどなくしてルージュの姿が目についた
水面に浮かんだ彼が来ていた紅い魔術師の法衣の裾が少し破けていて
更に彼の丁度真横に浮かび上がった"根っこ"だ
マングローブの根っこに似た沼地に自生し、水底に根を這わせる植物の根に
見覚えのある布がついていた…彼がさっきから浮かんでこなかった理由が漸く分かった
ふらりと落ちた彼は【睡眠】状態になった上に服の裾が木の根に刺さったんだか
引っ掛かったのか不運の重なり合いで動きを取られ眠ったまま水面に浮かぶことすらできずにいた
そこへ【メイルシュトローム】が来て、水中の紅き術士を容赦なく襲い
現在進行形で今も触手に嬲られているということだ
クラーケン「ギュィギュィィィ!!」ブンッ
触手『』ブンッ!ゴスッ!
ゴシャァ!
ルージュ(戦闘不能)「 」LP-1
クラーケン「ギュバァァァ――ァァァッ!!」ズババッ!
触手『 』グルッ
ギチギチ…!ミリミリ!
アセルス「ぅ、…」LP-1
レッド「っ、クソイカ野郎!!BJ&Kはルージュを頼む!俺は――白薔薇さんを救う!」
視界に入れるだけで苛立ちを覚える顔を蹴りつけてそのまま脳天に剣をぶっ刺してやりたい
餓鬼の頃さんざん世話してもらった恩人の少女を苦しめる敵に怒りを抱かない筈がない
激昂した、こいつは俺がぶちのめしてやりたい、とそして同時に彼の理性が何を優先すべきかを
煩いくらいに自身の心に訴えかけるのだ
アルカイザーになりたての頃のレッド少年なら、有無を言わずにアセルスを救うべく突撃した
今は経験を積み、感情だけで動けばそれが時に周囲を危険に晒す事を彼は学び成長していった
この闘いは判断を誤れば、全滅する…!自分含めて味方が倒れればそれこそアセルスを救えない!
歯痒い、力を持っていながら彼女を救えない現状に耐えろというのだ…レッド少年にとって
これほどまでに辛酸を舐めさせられる思いがあるだろうか
589 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/20(土) 01:46:15.24 ID:WzuKBuWT0
触手『』ギリギリ…!
アセルス「――、や ぁ ぁ、 ぁぁ っ」ギリギリ
クラーケン「キィィー!ギュゲッ!ギュゲッ!」
強く身体を締め上げられ、唇から苦悶の声が漏れる、思わず止めそうになる脚に喝を入れる
烏賊は少女の身体を10本の部位で締め上げて嬲る事に夢中でレッドとBJ&Kの姿が
眼には入っていなかった、無邪気な赤子が買ってもらったばかりの女の子のお人形さんで遊ぶ様に
彼女を締め上げながら持ち上げる
赤ん坊を抱っこして『たかいたかーい』とあやしてるそれに見えなくもない
尤も、この巨大烏賊のやってることはそんな優しい内容ではなく17歳の女の子を雁字搦めにして
握力を少しずつ加え、腸<はらわた>が飛び出すまで苦痛に満ちた表情を眺めながら
時間をかけて遊ぼうという悪趣味極まりない、吐き気を催す邪悪そのものなのだが…
レッド「…」ゴゴゴゴゴゴ…
おもちゃに夢中の[クラーケン]は背後をゆっくりと通過した少年と
同時にルージュに辿り着いた医療メカの存在に気が付かずにいた…
何を優先すべきか、レッドは仲間を復帰させることを一番と考えた、そして中でも優先順序を
感情を押し殺して『ルージュ』『白薔薇』に絞った…
力量差があまりにもあり過ぎる…だからこそルージュの爆裂魔法[インプロージョン]に
[妖魔の剣]の扱いはアセルスよりも長けている白薔薇姫に託すしかなかったのだ
レッド少年はモンスターの知識に明るくはない、だからこれは全くの偶然だが
(後に教養がある白薔薇姫から知らされる)[クラーケン]という奴は即死耐性が無い
…結果論だが、アセルスお嬢を後回しにしたのは最適解であった
水辺に現れては【メイルシュトローム】で津波を起こし船を沈没させる自然災害を齎す為に
【危険度ランク9】認定されているがそういう意味では比較的に倒しやすい方だ
ルージュが術を使うか、確率は低いが白薔薇姫が剣を振るいさえすれば
一発で命を刈り取ることが十分可能であると
ザブ…!ザブ…!
アセルス「ぁ、ぁぁ… ぁ」LP-1
レッド(…くそっ、後少しで白薔薇さんに手が届くってのに)フラッ
視界が霞む、吐き気がする…![克己]には状態異常を消し去る効果がある為、酔いの所為でなった
【毒】は完全に身体から消えた筈だった…
【毒】が消せるからといって体内のアルコールを消せるわけではない
再び、このタイミングで彼等を酔いが襲い始めた―――!!
590 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/20(土) 01:46:54.10 ID:WzuKBuWT0
BJ&K「完治完了!ルージュさんが意識を取り戻したました!!」
クラーケン「グモッ!?」バッ
触手『』パッ
アセルス「うっ」バシャッ
BJ&Kの音声に巨大烏賊は思わず振り向き、そして遊んでたお人形を水面に取りこぼしてしまう
レッド「あんにゃろう…声出さねぇでいればそっから回復したルージュの術で不意つけただろ」
レッド「…へっ!けどよくやったぜ!!!今のでアセルス姉ちゃんも解放されたんだ!」
レッド「俺ももう白薔薇さんに手が届く、ルージュ聞こえてんなら!やっちまええぇぇ!!」
[傷薬]を取り出したレッドが血を流し意識を失っている白薔薇の手を掴んだ!
込み上げる酔いの吐き気を押し込めてレッドが叫ぶ、アセルス姉ちゃんがやられた分やってくれと
―――ゆらり、紅き術士は立ち上がった
流れる銀髪からは雫が滴り、その眼は目の前の敵を見据えた、大切な仲間、友を苦しめた…っ!
憎むべき巨大烏賊の姿を…!そしてルージュはゆっくりと口を開き声を発したのだ!
ルージュ「………。」スゥ…
ルージュ「い、イカちゃん可愛いいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!」
レッド「へ?」
クラーケン「ファッ」
ルージュ「その気持ち悪いお目目がキモ可愛くて、うねうねの触手も愛らしい///」
ルージュ「あぁ…この気持ち、間違いない、この気持ち愛だぁぁぁぁぁ!」
レッド「」
クラーケン「」
591 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/20(土) 01:47:24.58 ID:WzuKBuWT0
レッド「お、お前…こんな時に何をふざけた―――…」
ゾワッ
―――刹那、レッドの警鐘が再び鳴った
思えばもっと早くに気が付けた、[克己]は状態異常も回復できる
彼に掛かった【毒】という異常は解除された筈だ…
ではなぜ、また吐き気が込み上げてくるのか…苦しいと感じるのか
ルージュ「あぁぁ…抱きしめてキスしたいくらいだよぉ///」
頬を染め、蕩けた顔をする…顔立ちが女性の様に美しいからいっそタチが悪い…あぁ本当に
今のルージュは恋する女性の顔そのものであった、この仲間が死にかけの非常事態に
こんな…こんな、"異常" としか言い様の無い発言…
レッド「…ま、まさか…」
[杯のカード]の試練、それは酔った状態で祠まで辿り着くことこそが試練である
その試練における最大の障害物は道中で襲ってくるモンスターか?
答えはNOだ
この試練最大の障害物は…【危険度ランク9】のモンスターでも何でもなく
【 酔いが回る…! 】
BJ&K「…pipi 状態異常を検出 【毒】と【魅了】です」
ルージュ(魅了)「あっはっは!よぉーし!一番強い術をつかっちゃうぞー☆」
最大の障害物は酔いそのものであり、酔ったパーティーメンバーなのであった
592 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/20(土) 02:09:21.06 ID:WzuKBuWT0
********************************************
今回は此処まで!
【解説 ヨークランドの試練】
杯のカードを入手する為の試練として[ヨークランド]では酒を飲んだ状態で沼地の祠を目指す
多くのサガフロプレイヤーにとって印象に残るイベントがあります
まず、主人公操作ですが、何も押してないのに勝手にランダムで移動する仕様になっていて
それが原因で敵シンボルにあたり戦闘に移ることがあります
沼地の敵は通常の敵の2ランク上が必ず出るため、少なからず苦戦は強いられます…
いえ、此処に至っては何処よりも一番苦戦確定です
まず戦闘に入ると【酔いが回る】というメッセージが出て
【暗闇】【毒】【睡眠】【麻痺】【混乱】【魅了】【バーサーカー】何れかの状態異常になる
特に厄介なのは敵に有利な行動を取ろうとする魅了です
ルージュが魅了状態で味方に[ヴァーミリオンサンズ]を撃ったり、ゲンさんが[二刀烈風剣]を
撃って味方全体が4桁ダメージで全滅という光景は恐らく多くの人が経験したことでしょう
サガフロのプレイヤー側はHP上限が999でカンストになる為
4桁ダメージはどうあがいても即死です、全体攻撃で4桁余裕の魔術や剣術を放たれたら終了です
対策としてですが、パーティーを酔わないメカで統一するか妖魔系を入れておくこと
(ただしアセルスは妖魔化しないと状態異常耐性が人間<ヒューマン>と同じ扱いらしいので注意)
********************************************
593 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/04/22(月) 11:52:57.41 ID:Bk9XWMxBO
乙乙
594 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/04/23(火) 12:51:02.70 ID:i3cZ02nSO
乙
烈風剣がこれほど怖かったことはない
595 :
少し書き溜め投下
[saga]:2019/04/24(水) 23:42:26.58 ID:IyNB7RIv0
あからさまに正気では無かった、魔法大国出身の術士という奴は総じて酒に強いと評される
それもその筈だ、彼等の最大の武器にして十八番<オハコ>である魔術は当たり前だが術力を使う
消耗した力を回復させるには特殊な製法で酒造された[術酒]や霊薬としても名高い[神酒]を
飲み干す事で失った術力を取り戻すことができる
子供の頃から勤勉な学士は術の鍛錬に励み、必然的に霊力を秘めた酒をそれこそ日常的に飲む
だから、村で酒蔵を巡りながら聞き込み調査をしていた時も並みの人間にしては
アセルスお嬢達妖魔組に負けず劣らずの酒豪ではあった…
普通の酒ならそうそう自分を見失う程に溺酔いはしなかっただろう、が…
"試練を受けに来た者専用"に調整された酒は話が別だ
[ヨークランド]の住民は代々、酒造に関しては古い歴史と伝統
職人としては神業に到達している技巧を皆が持つ
妖魔だろうと酒慣れしてる魔術師だろうと関係なく【状態異常】を引き起こす禁断の美酒を
軽々と作り出せるのだ、それこそ東洋の伝記に登場する八つ首竜の八岐大蛇<ヤマタノオロチ>とやらを
酔わせてトドメを刺すという神話に綴られた化け物退治の酒だって造れる程の技術力がある
ルージュ「ふ、へへぇ〜// いっくぞぉ〜☆」
へらへらとした笑い顔、名前通り赤らめた顔、くるっと踊りながら全身に術力を滾らせ
ゴゴゴゴゴゴ…! ビシャビシャ
紅き魔術師を中心に沼地の水面が波打つ、大地が揺れる…っ!
陽気で無邪気な子供染みた言動とはミスマッチした凶悪極まりないエネルギーの収束ッッッ!!
レッド「ば、馬鹿!や、やめろォ!!」
ルージュ「いっけぇ!」クルリンッ☆
ルージュ「ヴァ」クルッ、ピョーン☆
ルージュ「−」クルクルリン
ルージュ「ミ」シュピッ☆
ルージュ「リオ〜ン…サーン」クルッ、クルッ
レッド「うわああああああああああああぁぁぁぁぁっっ!?!?変身アルカイザーッッ!」ペカーッ
ルージュ「ズ!」キラッ☆
紅き魔術師は最大級の破壊と殺傷を生み出す宝玉の嵐を呼び出した
596 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga!red_res]:2019/04/24(水) 23:42:57.18 ID:IyNB7RIv0
―――――――――[ヴァーミリオンサンズ]!
/:l\
/|/ソ´::\
_ ./、:::/::ヽ::::::::/\
/:l\ /::|:::::Y::::::;:ヽ、ノ::::::::\
/|/ソ´::\ /ヽ、/ヾ:::| /::::::;ヽ、::::::::::,ヘ
./、:::/::ヽ::::::::/\ /:::::::;ヘ:::::`√:\/:::/:|::::::/::::,ヘ .
/::|:::::Y::::::;:ヽ、ノ::::::::\ |:_/:::ヽ/:iヽ_/ヽヘ::|:::/\:::|::|
/ヽ、/ヾ:::| /::::::;ヽ、::::::::::,ヘ l::/::::::::|::::::|:::::l/:/::l::::|:::;;;;;V:l
/:::::::;ヘ:::::`√:\/:::/:|::::::/::::,ヘ l::::;ヘ:::/:Y::::::/:::::/::/:T::::::::l
|:_/:::ヽ/:iヽ_/ヽヘ::|:::/\:::|::| l:::::::::::l/:::/ヘ:::::::K:::::::\::l
l::/::::::::|::::::|:::::l/:/::l::::|:::;;;;;V:l l:::::::/::::y´、::::ヽ::l::|:::::::::/l
l::::;ヘ:::/:Y::::::/:::::/::/:T::::::::l l:::/Y::ノ::::丶,:::/::::\;/::l
l:::::::::::l/:::/ヘ:::::::K:::::::\::l l/:::`ヽ,:::::/:V\/´:::::l
l:::::::/::::y´、::::ヽ::l::|:::::::::/l ヽ::::::/::Y::::X::::/:::::::/
l:::/Y::ノ::::丶,:::/::::\;/::l ヽ/::::::|:/::::ソ:\:/ 人
l/:::`ヽ,:::::/:V\/´:::::l ヽ、;ノ:::::/::::::/ `Y´
ヽ::::::/::Y::::X::::/:::::::/ ヽ:::::::|:::::/
i ヽ/::::::|:/::::ソ:\:/ 十 ヽ:::::ソ i
__人__ ヽ、;ノ:::::/::::::/ ヽ/ __人__
`Y´ ヽ:::::::|:::::/ `Y´
! ヽ:::::ソ 人 _j|_ !
ヽ/ `Y´  ̄|! ̄
_j|_ * | +
+  ̄|! ̄ +. __j|__
.|  ̄|「 ̄
__j|__ * |!
 ̄|「 ̄ |
|! 人 __j!__
十 | `Y´  ̄|! ̄ i *
__j!__ i __人__
 ̄|! ̄ __人__ `Y´
+ `Y´ !
. + * ! *
597 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga!red_res]:2019/04/24(水) 23:43:26.22 ID:IyNB7RIv0
+ | | .| / / +
__j|__ | | / / * / /
人  ̄|「 ̄ 人 | | / / | / / .人
`Y´ |! . `Y´ .| | / / .__j|__ / / `Y´
* \ \ || _ / /  ̄|「 ̄ / /
\ \ + _ ‖ /:l\ / / |! / / .|
人 \ \ /l丶‖::/ソ´:::\ / / .| ./ / __j|__
_j|_ `Y´ \ \ /|/.::./、:::/::ヽ::::::::/\/ / /  ̄|「 ̄
 ̄|! ̄ i \\ /、:::::./::|:::::Y::::::;:ヽ、ノ::::::::\ / / |!
__人__ \\:::::::::./ヽ、/ヾ:::| /::::::;ヽ、::::::::::,ヘ / / |
*. | `Y´ 人 /::\\/:::::::;ヘ:::::`√:\/:::/:|::::::/::::,ヘ/ / 人 +
__j|__ ! `Y´ /:::::::;ヘ\|:_/:::ヽ/:iヽ_/ヽヘ::|:::/\::|::|/ `Y´
 ̄|「 ̄ |:_/:::ヽ..l::/::::::::|::::::|:::::l/:/::l::::|:::;;;;;V::l i _j|_
________________ l::/::::::::|:::.l::::;ヘ:::/:Y::::::/:::::/::/:T:::::::::l __人__  ̄|! ̄
______二ニニ==l:::::::::::l/:::/ヘ:::::::K:::::::\:::l `Y´
---ー―─ ´ ̄ ̄ l:::::::::::l/.:l:::::::/::::y´、::::ヽ::l::|:::::::::/:l * ! *
人 l:::::::/::::y.:.l:::/Y::ノ::::丶,:::/::::\;/:::l ________ , .... -- ──────
`Y´ l:::/Y::ノ:::::.l/:::`ヽ,:::::/:V\/´::::::l二_
+ l/:::`//ヽ::::::/::Y::::X::::/:::::::/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
* l://::Y:::.ヽ/::::::|:/::::ソ:\:/
///::::::|:/::::.ヽ、;ノ:::::/::::::/\ *
* .// ヽ、;ノ::::::::://ヽ::::::|:::::/ \\ *
// .ヽ::::::|:://:/ ヽ:::::ソ \ \
/ / ヽ::://::ノ .ヽ/ \ \
+ / / / // \ \ +
* / / / / \ \
/ / / /
キィィン!キラキラ…ゴッッッ!
598 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga!red_res]:2019/04/24(水) 23:43:53.15 ID:IyNB7RIv0
..___, .、 `''ー ,,,, ゝ l `''-..、 `'-、 人 \ l .'、.! | |./ .〃 .rシ 〃 .,ノ./
.| ` .| `''ー ..,、 ゙゙'-、、 `'-、 `Y´ \゙''-./ .l |: /l゙.〃 .〃 ,r゙/
.`'''ー- ..,,,,゙.... xi;;imニ"''^゙゙´ `'''ー. ." `'-、 ヽ. .!./ .;".|゙/ ./ / .' /
_、 * `゙''''´゙''ii,,;;.,,,、 __j!__ : !ヽ、 .`'=i、 .\ .!∵ .".. ./ " /
`゙''“'┴- ..,,,,,_  ̄|! ̄ `''′ .゙ヘ `'. − : .゛ ._,,..ィニ. _...
,,,,___ . ゙゙゙̄''''''―- ....,,,_、 _. 丶 . / ...-.,i彡‐″.,.
'''¬ー`-`-ニニニ';;';;ー-.- 、...,,., ,.,,......二ニ==;;- ....,,_ + `'ミ>、 ./ ,..‐'彡'´ ''"゙
_j|_ ´`.""' ゙''ー ..,,,'''ー..゙_;;, .  ̄''''―-....,,.、 `゛ ゙‐''"゛
 ̄|! ̄ `゙゙゙´ i
_,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,、_,,..、、 ._ _,,,,_. __人__ * 、 .....、
--ー‐ー人 ‐''''"''''''''“ "'" ` ... ,,, -''゙´ッ--_./ `Y´ -亠
`Y´ __,,.... .;;;;,,ッ-一゛''+ _j|_ `'''''''''''''"゙´ ,..-" _,, ! .
. _,,,,.. -;;ニニ`-ー'''"゙´  ̄|! ̄ _..-'" ./ / 人
二`-‐'''"゙´ _,,,.. -''ツ . _..-'" ./ / `Y´ + ゙.'.‐
. _.....-,―''''''"゙゙゙゙゙´ / ,..-'" ,r'"フ ″ ‐ . , _,
_._..ぃー''"´._/゛ .. -'''゙" / ./ ,..-'" _.. l彡./ : ., へ、 .l │  ̄´`'
゙~ .r'" ゛,/ ._..-'" . / ,/ ゝ│ ...l |,
./ .".''''' ._,, -'″.,..-'" . / ' ./ i' .! 十 ヽ .ヽ '、,.゛
./ " _..-'"゛ ._..-'" ,/゛ ,丶 , / / 1 / │ ヽ .\ ヽ
_二''''''''''''''''''''″ ,..-'" ,, ‐゛ / ,/、゛ ! / ! .! ヽ .、ヽ
‐'″ i . _..-'" .,/゛ _j|_ ,i彡.、 / ゛ l " ,,. l . ヽ '、゙'‐
__人__..-'" .,..‐"  ̄|! ̄ .-'"゛ .!/‐ l '‐ ゛ ,i'} / .,,,、 .ヽ ヽ
,..`Y´,,,,.... --┐" / .、 .l l / l .l .|゛ `''-、ヽ
...-彡'''゙/! .! / ./ │ .`゙″ .,! | .l .ヽ ..l l
'" .,;;,゙... / .,! + / ./ .,.. / ! | .l ! .lヽ
-''゙´ / .l / / .'i ″ / ! : : | .l ! '、 ! ゝ
――――
―――
――
―
599 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2019/04/24(水) 23:44:36.81 ID:IyNB7RIv0
ルージュ(戦闘不能)「」チーン
アセルス(戦闘不能)「」チーン
白薔薇(戦闘不能)「」チーン
BJ&K(戦闘不能)「」プシュー…
アルカイザー(瀕死)「ぐ、ほ"がぁ!?―――ぜぇぜぇ、ゲホッ、はぁはぁ……」
アルカイザー(瀕死)「し、死ぬかと思ったぁぁぁ――っ!」ウォォォ!!
正体がバレたらヒーロー教会に抹消されてしまう、があの場で[変身]しなければどの道
レッド少年は此処で仲間と仲良く沼地の藻屑となって消えるところであった
アルカイザーでなければ即死だった…危ない危ない
酔った仲間が放った大技[ヴァーミリオンサンズ]は、彼の双子の片割れである蒼き術士ブルーが
初日で"保護のルーン"を探しに来た時に蟲の群れに撃ち込んだり、巨大生物[タンザー]の体内で
放った最大級の火力を持つ術である
無から生じた規格外のデカさの紅玉が2つ現れ、ぶつかり合い…砕け散った破片が熱を持つ棘
いや、棘というよりも槍というべきだろう
無数の槍と化した宝玉の破片が荒れ狂う嵐の中を乱れ飛び、敵は熱と槍が乱反射する暴風圏の
真っ只中で串刺し刑に処されるという恐ろしい術なのだ
仲間は唱えた筈のルージュ含めて、BJ&Kも倒れた…朱色の太陽が大暴れする爆心地に居たのだ
術者の紅き魔術師にも直撃する位置だったのだから彼を介抱した医療ロボも当然範囲内である
1つだけ、幸運があるとすれば、[ヴァーミリオンサンズ]は先の説明通りの大火力であり
同時に"派手な見た目"の魔術だ、宝石の破片が大量に飛び交うからこそ視界を遮られる…つまり
アルカイザー「…紅玉の破片はもうすぐ消える、これを背にしてどうにか目を誤魔化したが」
アルカイザー「い"っ…」ズキッ
アルカイザー「…と、とにかく、今は[克己]で完全回復しねぇと…」
ヒーローに変身した少年は、間もなく消える紅玉の破片と激戦で暴力的に伐採された雑木林の樹々
濁った水面への潜伏、未だ健在な[クラーケン]から身を隠して生き延びる術は幾つもあった
巨大烏賊の眼を欺き傷を癒したら今度こそ仲間を復帰させて烏賊を倒す
人間一人身を隠すには丁度いい丸太の裏に泳ぎついたレッドはそう考えて
静かに2度目の[克己]を唱え始めた
レッドは冷汗が止まらなかった
今しがた人生に幕を下ろすか否かの瀬戸際だったのもあるが、今も心臓が2倍速で動いてる
"自分の正体がルージュ達にバレたのではないか?"…そう思うとこの戦闘を終えた後自分は
正義のヒーローの掟を破ったとして協会から抹消されてしまうのではと思わずに居られない
…女性二人は気絶してたから恐らく大丈夫だろうが
願わくば、酔ってたルージュが何も覚えていないことを祈ろう
―――
――
―
600 :
今回此処まで
[saga]:2019/04/24(水) 23:45:33.45 ID:IyNB7RIv0
ルージュ「ほんっっと!すいませんでしたぁぁ」(土下座)
レッド「気にすんなって…全員無事だったから」ヨロッ
アセルス「そ、そうだよ…白薔薇も強くなれたことだし結果オーライってね」ボロッ
結論から言おう、あの後[クラーケン]との死闘は辛勝を収めたと
パーティーメンバーの中で最後に気絶から復帰したルージュは事の顛末を聞かされた
瀕死状態だがどうにか意識を保っていたレッドは物陰に隠れ本日[克己]で回復しようとした
するとなんという僥倖…っ!通りすがりのアルカイザーが偶然にもとある事件の調査で
偶々この惑星<リージョン>に来ていたのだという!!
その事件というのが何かは極秘任務の為、詳細は教えてくれなかったが、沼地の雑木林から
樹々がなぎ倒される音や[ヴァーミリオンサンズ]の紅玉が暴れまくった音を聞きつけ
全身鎧のヒーローが駆けつけ、窮地に居たレッド達を救ったとのことだ
レッドに此処で休んでいてくれと言い残し、アルカイザーが交代するように途中参戦…ッ!
(……という設定でレッドは話した)
だから、レッドの姿は無かったが代わりにアルカイザーが居て助けてくれたのだと
全員が烏賊に触手で叩かれる最中、アルカイザーがBJ&Kを修理し、その後、身を挺して
[クラーケン]の連続攻撃から仲間達を守りながらアセルスを、その隙に医療メカが白薔薇姫を
癒して、最終的に白薔薇姫が[妖魔の剣]で烏賊を吸収して事を終えた…!
何か、酔っぱらったか様に妙に足取りの悪いアルカイザーが「私は任務があるのでこれで」と
言い残して、飛び去り…彼が去った後、ふらふらと千鳥足のレッドが帰って来た、とのことだ
白薔薇「私も[タイガーランページ]を修得できましたから、気にしてはいませんよ」ニッコリ
女神様がおられる…っ!
気絶中も何度も触手やら津波やらでLPが削られたというのに、その分得られるモノがあったから
良いではありませんか、と微笑んでくれる
別の意味で、目の前の貴婦人には頭が上がらない…頭を下げた魔術師は思った
レッド「ほら、こういってるしよ、早い所行こうぜ…うおぇっ」ヨロッ
少年は少し急かす様に促した、いつまでもメソメソしたところで過去はどうにもならない
というのもあるのだが…何より、この場所に留まり続けるのが好ましくない
まだ、全員…アルコールが抜けきっていないのだ
強敵にこれ以上襲われては堪ったものではない
また【状態異常】に陥りそうな気がしてならないのも事実だ
こうして、既にボロボロになりつつある一行は、最善の注意を払いつつも
やっぱりふらついてモンスターの縄張りに片足突っ込んだりと
苦しい旅路で沼地の祠へ脚を運んでいくのであった…
白薔薇「どうにか、着きましたね…うぅ…」ヨロッ
アセルス「ここは、敵が寄ってこないみたいだし…酔いが抜けきるまで帰るのは止めよう」フラッ
―――
――
―
601 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2019/04/27(土) 00:40:05.04 ID:YWmICnE60
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