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ブルー「俺達は…」ルージュ「2人で1人、だよねっ!」『サガフロ IF】

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638 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/27(月) 08:50:52.51 ID:mJIdDNpPO
ルーファス生きてるよね……?
639 :サガフロリマスターおめでとう!!!!!ヒューズおめでとう!!!! [saga]:2020/12/12(土) 23:43:33.04 ID:yXoGn0ku0

投下前に、一つご訂正を…

>>636

>…こんなことならメイレンやフェイオン、あとまだ見ぬ妖魔の仲間2人が座ってるらしい後部座席の区画に座れば良かった

とありますが、メサ子はカジノの空気にあてられて体調不良を起こして
 ヌサカーン先生付き添いの元[オウミ]のホテルで療養中です、>>1の間違いです…申し訳ない



>>637でも


>例の藪医者を思い出しそうでなんかイヤだった上にそんな面倒臭そうな水妖や破産して金が欲しい指輪の持ち主に無慈悲な
>交渉を持ちかけるメイレンが居たりで後部座席に座るのは嫌だと、前の区画の席を取ったが失敗だったと
> 今更ながらにブルーは後悔した…

とありますが、これも単に破産してちょっとでも金銭が欲しい依頼人から支払金をハネようとしてるメイレンに引いてて
関わり合いになりたくないから後部座席を嫌ったという設定でお願いします…すいません

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640 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga!red_res]:2020/12/12(土) 23:44:16.31 ID:yXoGn0ku0





僕の朝は早い



自炊できる時は倹約の為に積極的に自炊した方がいいかな〜って僕は常々考えてるから朝ご飯を創る為に早起きになる




特に今日からはレッドが僕らと一緒に本格的に旅に加わってくれるから腕によりを掛けてたくさん作ってあげなきゃ!





僕達は[杯のカード]を手に入れたことで秘術の試練も折り返し地点に来たんだなって安心してる





その上、残ってる2つだってエミリアさんから[バカラ]に行けばいいこと

[盾のカード]だってキグナスで知り合ったヒューズさんが実は持っているから頼めばすぐだってレッドが言ってくれたから








行先も何をすればいいのかも心当たりがあるから少なくとも今回みたいな過酷な試練にはならないだろうなって安堵してる





だから少しだけ、そう…ほんの少しだけ僕達はまだ[ヨークランド]で束の間の平穏を楽しんでいたいんだ




不思議な事にあれからアセルスと白薔薇さんを狙う妖魔の追ってもまだ来ていない


警戒を怠らないのも大事だけど常に気を張り過ぎるのもきっと良くない、こんな時だからこそ心にゆとりを持つことが大切





新鮮な空気と美味しい野菜や果物、酪農も盛んだから心を休めるのにこの惑星<リージョン>は適している



試練から帰った僕達が宿を探していた所、ウチで泊っていけばいいと言う親切な人にも出会えたのだから幸運だ


641 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2020/12/12(土) 23:47:44.78 ID:yXoGn0ku0


 朝一番の水は冷え切っていて、比較的に暖かな気候たるこの惑星<リージョン>でも少しだけ悴みそうだった

 宿泊させて貰っているとある一件の民家、台所をお借りしたルージュは洗い終えた野菜の皮を剥き、程よいサイズに切る
大自然に恵まれた土地ならではの恩恵は他所の市場で見るよりも形や色艶がよく瑞々しい

 焦がさない様に弱火で熱をちょっぴりと加えた鍋底に落としたバターを木べらで小突けば滑りながら融けていき
続いて投入された地産鶏の胸肉を少しずつ狐色に変えていく


 食料品の買い出しに出かけたルージュは市場で見かけたオリーブオイルとバターのどちらを使うか最初迷いはしたが
長旅での長期保存を考慮した上で今日はバターを使う事に決めた
 世界を渡り歩く上で楽しむべきは文化や風習の違いだということはまだ日の浅い新米冒険者の彼にも理解できた
食文化は特に紅き魔術師とその仲間達にとって何よりも大きいもので惑星<リージョン>毎の特色ある食材や伝統の味は激戦で
日々疲弊していく心身に癒しを与えてくれる

[ヨークランド]産のオリーブから搾った油は次の調理でじっくり味わうとして、今回は地元の牧場で造られたバターにした


 次に玉ねぎを加えてこれも透き通る飴色になるまで炒めていく、火を通したことでじんわりと水分が出ては蒸発していく
基本的にルージュは野菜の水分を無駄にしたくないという考え方の持ち主だった
寮生活の時にもう居なくなってしまった先輩や先生から野菜の水分は栄養価も高く独特な旨味や甘味もある
できることなら味を逃がさない方がいいと教えられたからだ

ほんの少しだけ、蒸気となって逃げていく旨味を勿体ないなぁと内心苦笑しつつ他の材料も投下していく…



 バターの風味を利かせた鶏肉と野菜の煮汁から灰汁を取り除いて、パキッと小気味良く音を立てるシチュールーと
新鮮な牛乳を入れて後はクリームシチューが程よくなるまで待つだけだ



     ルージュ「さてっ、と弱火にして…じゃがいもが柔らかくなったらかな」


ガチャッ


     ニートの舎弟「ルージュさーん!コレここに置いときますねーっ」

    ルージュ「ああ、ありがとう助かるよサンダー!」



 エプロン姿で調理場に立つ紅き魔術師の所に人参やトマトと言った野菜がどっさりと入った籠を抱きかかえながら
随分と大柄なモンスターが入ってきた…外見は一言で言えば子供が泣いて逃げ出しそうな鬼で逞しい筋肉量とあらゆる物を
噛み砕きそうな牙と顎を持った[オーガ]種である

 しかし、その厳つい姿形に似合わずまるで小さな子供の様な純朴さを持った彼ことサンダーはニコニコと微笑みを携え
彼よりも一回りも二回りも小さい人間<ヒューマン>であるルージュに深々と頭を下げるのであった




 [杯のカード]を得てから帰ってきた魔術師御一行はどこかで身を休める場所を探していた
凶悪極まりない烏賊の襲撃もあってか帰ってくる時は満身創痍で怪我の手当て、BJ&Kの充電ができる場所も探していた
重い脚を引き摺って村の中を回った結果…



  『なんだいアンタ等、体中ボロボロじゃないかい…宿を探してる?
           それなら丁度ウチの馬鹿息子が上京して部屋が空いてるから泊まってきな』



っと、親切なおばさんに出会えたのは幸運だった

 案内された一軒家の戸を潜った時に『アニキ!?帰ってきたんスか!?』と大声で叫ばれて何事かと振り返った時に
血相を変えて走ってきたサンダーの姿が見えた、それが彼とルージュ達の出会いであった


 なんでもサンダーが"アニキ"と慕う人物はお世話になっているこのお宅の一人息子さんらしくゾロゾロと集団で家に
見知らぬ旅の一行が入っていくのが見えてもしや"アニキ"が何らかの理由で誰かと帰ってきたのか!?と勘違いしたらしい


血相を帰ってどすどす土煙を上げながら走ってくる強面のモンスターを見て、思わず臨戦態勢に入るレッドとアセルス
剣を構えられたことで『ひぃっ!!』と悲鳴を上げて土下座するサンダー…



一悶着はあったがどうにか誤解が解けて今はこうして打ち解けている………彼は見た目とは裏腹に憶病な性格らしい
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2020/12/12(土) 23:49:26.47 ID:yXoGn0ku0

 サンダーの事を知る近所の人曰く、腕っぷしは強いが気が弱い、よく野菜泥棒をしてウチの畑でトマトを丸かじりする
前に任務で巡回に来たとかいう[IRPO]の隊員を見て『ウワー!警察だー!』と慌てて崖下に飛び降り逃げる様に転がった等

 煙草を咥えた黒ジャケットのパトロール隊員もその光景に思わず口をあんぐりと開けて煙草を落としたそうな…
終始怯えるサンダーにたかだか野菜泥棒如きで逮捕しねぇから落ち着けよと諭されるまで逃げ続けるエピソードが印象強く
これにはルージュも思わず笑ってしまいそうになった


 さて、そんなサンダーだが今日は野菜泥棒ではなく畑仕事を手伝った対価として貰った野菜を持ち魔術師の所にきた
家主のおばさんに腕っぷしを買われて暫くはこの家でお手伝いさんとして働いているらしい、お客人のお手伝いも
彼の中ではその一環ということらしい


  ルージュ「サンダーはお皿の用意をしてくるかな?ちゃんとキミの分もあるからね」

  サンダー「俺の分も!?やった、やったー!」


 茄子、パプリカや人参を一口大に切って、ひよこ豆とざく切りにしたトマトを加えて
更にケチャップを投入して炒めて、そこにスパイスとしてほんの少しの唐辛子を入れたなんちゃってラタトゥイユ

 食卓に緑が足りないと感じてシンプルながらもご飯に合うほうれん草のソテー、まだ使い切っていないバターで
茸類のしめじ、えのき…それからベーコンとを炒めて[京]に立ち寄った時に買った醤油と黒胡椒を振って
フライパンから皿へと移す


そこに野菜サラダも加えて――――全体的に今日は野菜が多い過ぎたくらいかもしれない、けど…これでいいよねっ


エプロンを外しながら紅き魔術師は心の中でそう呟いた



―――
――



  レッド「ぐかー……ブラッククロスが修学旅行かよ…ムニャムニャ」

  BJ&K(充電中)「…。」




  ルージュ「気持ちよさそうに寝てるなぁ…」



 両手を上げて万歳の態勢で鼾<いびき>をかきながら、ついでに何の夢を見てるのか寝言まで言いながら眠っている仲間
朝食が出来たから起こしに来たのだがこうも熟睡されていると何だか目覚めさせるのに引け目を感じてしまう
 眉を八の字に困った笑みを浮かべつつ彼はレッド少年を起こした


  レッド「んあ?…ふわぁっ、なんだもう朝か?」ゴシゴシ

 ルージュ「そーそー、朝ご飯出来てるよ」


 シャツ一枚にパンツ一丁とラフな格好の少年はまだ重い瞼を擦りながら自分の着替えが入った鞄を漁る
魔術師はカーテンを開けて部屋に日光を取り込み、教わった通りに医療メカの起動スイッチを入れる

 稼働し始めたBJ&Kは人間<ヒューマン>よりも丁重に朝の挨拶を述べて自分でお借りした電源から自身の充電用コードを抜く
メカである彼に女性陣を起しに行ってもらえないかと頼み
まだ寝ぼけ眼で歯ブラシを咥えながら鏡に映った寝ぐせと睨めっこしているレッドに先に戻ってるねと一声掛けて台所へ…


―――
――



   レッド「うめぇ…っ…うめぇじゃねーかっ」ガツガツ

  アセルス「ええ!なんだろう…この優しい味っていうのかな、家庭の味って感じがする」



 外食で味わう旨さとはまた違う、一般家庭の手作りの味…白米もパンもありどちらにも合うようで[シュライク]組はお米
白薔薇姫とサンダー、そして家主のおばさんはパンを手に取っていた、ちなみに術士は気分的に今日は白米派のようで
 副菜のほうれん草ソテーもなんちゃってラタトゥイユも、なにより鍋一杯だったシチューも飛ぶように売れた事が
彼には嬉しかった料理当番冥利に尽きるという奴だ

643 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2020/12/12(土) 23:57:28.91 ID:yXoGn0ku0
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                  短いですが今日はここまで!


          まさか数年の時を経て、サガフロがリマスターされるとは…

      実装されずに終わった8人目主人公ヒューズ編まで搭載されて帰ってきた!!!

アセルスのパーティーにヌサカーン先生が居たりする辺りアセルス編の没イベントもちゃんと没じゃなくて実装されてるッ



 こんなに嬉しいことはない…ッ

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644 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/12/14(月) 00:23:22.09 ID:yuXxdgBFO
投下乙待ってた
リマスターするのか…めちゃくちゃ楽しみだな
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/01/24(日) 20:14:30.21 ID:FI1jYbhMO
リマスターにはシナリオ追加があるとか聞いてちょっと期待している俺がいる
646 :リマスターおめでとう!!!土日のどっちかで漸く纏まって書く時間できそうなんで1レスだけ [saga]:2021/04/15(木) 00:19:00.40 ID:fn0LG1a/0


  レッド「ふぅ、食った食ったごちそうさん」


 最後にコップ一杯の水を飲みほして満面の笑みを浮かべた少年は栄養補給も完璧だしこれで野良仕事もバッチリだぜ、と
腕捲りして力瘤を作って見せる、そんな明るい彼につられて思わずルージュも噴き出しそうになるのを堪えて
白薔薇姫と共に下膳を手伝うのであった


 「あんた達すまないねぇ、朝食を作ってもらうだけじゃなくてウチの畑仕事まで手伝ってくれるなんて」


 家主の女性がそう言ったのに対して、流し台で皿洗いに従事していたアセルスお嬢は当然のように答える


 アセルス「そんな一晩タダで泊めてもらったんですよ、これくらいのお手伝いは当たり前ですよ」


 「……」


 アセルス「? あのー…どうかされましたか?」


 家主は彼女の言葉を聞いてほんの少しだけ動きが止まった、驚愕も呆れとも違う感情の色が顔に出ていた
不思議に思った少女は固まった相手に思わず問いを投げかける
 問いに対して暫し目を細めて在りし日に想いを馳せるような顔を浮かべた後、家主は言った


 「…あんた達は術の資質を集めてるんだろ?さっきの言い方といい、なんだか亡くなった夫や古い知人を思い出してね」


 無自覚に触れてはいけない所に触れてしまったのだろうか?と半妖少女の顔に影が差し掛けたが直ぐに家主は
別に気にしないでいい、むしろこんな歳を食った女の思い出語りに付き合ってくれないか?と持ち掛けられる
 年長者として年若く見える娘への気遣いか、はたまた単にこの人自身が自分の話を誰かに聞いて欲しかったからなのか
ルージュには一瞬どちらなのか分からなかった



 「ウチの惑星<リージョン>はあんた達も行ってきた通り[杯のカード]が祭ってある祠があって、その手前には沼地がある」


 毎年時期にもよるが[ガイアトード]や[玄武]、そして昨日危うく全滅の危機に陥りかけた[クラーケン]など…
危険種とされるモンスターが大量に繁殖しより良い環境を、より強い力を感じられる場所を、と
 宛ら街灯の明かりに群がる蛾や地面に落ちた溶け掛けのドロップスに群がる蟻が如し
アルカナの祀られたパワースポットに引き寄せられる様にやってきてはそのまま住み着くのだ




 当然ながら近隣住民がその危険性に気付いていない訳もなく、そして調査の結果沼地からは出てこないのだから
此方から積極的に踏み込まない限りは生命の危険性は無いとしてそれほど危険視してはいないのだという



…人間とは次第に慣れていく生物だ、あんなにも人里近くに魔境があるにも関わらずいつしか住民は気に留める事を止めた


 どれほど前の世代から"伝統"と化したのかは知らないが、危険度ランク9相当のバケモンが遊泳する危険地帯を
日常にある当たり前の光景とし、更には男達の腕っぷしを鍛えるちょっとした肝試しの様な物にすらなっているのだという



  「イアン……ウチの亭主も、[杯のカード]を取りに行ったことがあるのさ、当時よくつるんでた3人でね」


 ルージュ「…よくつるんでた3人、といいますと?」


 人生の先輩から思い出話を聞くことになった紅き術士は思った疑問を口にした
いつの間にやら皿を全て洗い終えたアセルスも椅子に座った白薔薇姫やレッドも誰もが真剣に耳を傾けていた


 「亭主のイアンとその親友、ウェントとモンドさんの3人さ…あの頃はあたしも皆、若かった、誰もが夢を持ってたわ」

 「明日自分達がどうなるか、明日どんなことがあるか、先の先のずっと先なんてまったく考えずに走った事だってある」


 齢40を上回って顔に小皺を蓄えた女性の目は懐古の念を追う毎に輝いていた、人間誰しもが持つ煌めいていた時の心
初老を迎えつつある彼女はこの瞬間だけ少女時代に戻って楽し気に語る、いつも大騒ぎして馬鹿な事をやってた3人組を
遠目に眺めている事が好きだった事、ある日[杯のカード]の試練を乗り越えた3人組の内1人がその日の内に告白してきた事

 「丁度あんた達みたいな感じだったのさ血気盛んな若者集団でお人好しでねぇ…試練帰りのズタボロで求婚したり」クスッ
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/04/18(日) 22:12:32.93 ID:Lirpwszt0

 試練帰りに求婚を申し込んだ男性というのが恐らくは今は亡き彼女の夫イアン氏なのだろう
夫とその友人達は3人で何か大きな事に挑んでいたという事は知っているが具体的に何をどうしようとしたのかまで
子細には知らないのだという…


 ただ一つ、これだけは言える


 妻である彼女が遠目から見てて妬けてしまうくらいには仲が良く、この3人が揃っていれば如何様な苦境も乗り越えると



  レッド「ん〜?」

  白薔薇「どうかなされましたか?」



  レッド「いや、"モンド"って名前なんか聞き覚えあるような…なんだったかな?」

  Bj&K「テレビや新聞で載ってましたね、新たに赴任したトリニティの執政官ですよ」



 機械仕掛けの医師が少年のうろ覚えな記憶に解を当てはめる、それを聞いて合点言ったのか両手を叩いて「それだ!」と
レッドは声をあげた、トリニティの中枢がある[マンハッタン]を初め各地を巡るシップに
機関士見習いとして乗っていただけある、社会情勢や政治には疎いが流石に執政官が変わったなんてビックニュースくらい
嫌でも耳にするというものだ



 「そうそう、風の噂には聞いてるよなんでも第七執政官になったとかねぇ…人の人生ってのはどうなるか分らんもんさ」


 同郷の人間がそんな大出世を果たした、喜ばしい話の筈だがどこか家主の言葉は他人事の様に聞こえた
ずっと近くに居た身近な人が遠い雲の上の存在になったようで、未だ信じられないのか
はたまた同姓同名の赤の他人だと思っているのか

いや、後者は無いだろう、口振りからして


 先程まで旦那さんとその友人達(当然モンド氏も含まれる)がよく組んでひたすら夢に向かって奔走した話を
綺麗な宝物でも自慢するように話してくれたのに、…過去のモンド氏ではなく現在のモンド執政官殿に対しては何処か
遠い存在を、名前も顔も知らない別人の事でも語っている感じがしてルージュには分からなくなった

 少なからず交友のあった人なのだろうに、こうも余所余所しいというか…"壁"を感じる言い方…


身近であった過去のモンドと、雲の上の存在になった今のモンド

 家主が語った青春時代の話と成りあがった知古の男性のサクセスストーリーとで温度差があるように感じたのだ



 三文小説でよくある展開だ「あんなにも親しかったのに」と周囲の人が嘆きの声を漏らす場面
幼少からの知り合いだったのに、十数年一度たりとて顔を合わせる機会が無くなり、交友関係が断たれて次第に
関係が希薄になってしまうお話


 ある日とある街角ですれ違ってもお互いに気づかず素通りして終わってしまう日

 声をかけても「すいません、どちら様でしたか?」と言われて終わってしまう時―――そんな切ない人間関係の話だ






…それこそ今しがた彼女が語った"人の人生ってのはどうなるか分らんもん"なのかもしれない


 会話から察するにモンド氏やウェント氏も決して付き合いの悪い間柄では無かったことが窺える、特に前者に関しては
なんなら家主に対して想う所があり、少なからず好意的に接してくる彼を毛嫌う理由がある筈もない


 そんな彼女からしてみれば過去の良い友人は、今や遠くに居る何処か知らない世界の顔も声も思い出せない住人なのだ




人間の縁や絆、そういうのひっくるめてどうなるかなんて分からない


648 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/04/18(日) 22:13:17.53 ID:Lirpwszt0

 この話は何もこの人に限った話じゃない、そう…自分達自身にだって言えることだ
だからこそルージュは家主の言葉には色々と感じる所や考えさせられることがある




 人の絆や縁はどうなるかなんてわからない、…もしも、もしも万が一にだが自分が双子の兄を殺したとしてその後
彼や彼女達は身内殺しの自分をいつもと変わらぬ態度で受け入れてくれるだろうか?

 表面上はそうであっても心の奥底では何かしらがあるのではないか?




 例えばありえん話だが、アセルスお嬢が自分の身に宿された妖魔の君の血に蝕まれ、高慢で我欲に走る暴虐の帝となった
そして世の美女を自分の寵姫に変え、全リージョン界を支配せんとしてレッド少年やルージュと敵対したら?

 …世界征服なんて目標を掲げて侵略戦争を始めたら当然こうやって仲良くバカ騒ぎはできないだろうな
世の中には悪の組織を潰そうとする正義のヒーローが実在する、つい最近知り合ったアルカイザーとは敵対するに違いない




 レッドが仇討ちの目標を終えたとして旅を続ける理由が無くなったら、いつまでも自分達の旅路に付き合う必要ある?
紅き魔術師には旅の最終的な目的はあるにはある、祖国から粛清されないように資質を集めつつ兄と対話をする予定だが
対話をしたところでその後どうなるというのだ?殺し合いを避けれるのか?

…百歩譲って避けても[ファシナトゥール]からの逃亡生活を送るアセルス同様に
彼もまた[マジックキングダム]の刺客から逃げ続ける日々が始まるだけではなかろうか?


 そうなってしまったとして本当に何一つ悪くない彼まで波乱万丈な人生につき合わせるのか
今はまだ良い、だが時が経てばやがて人は老いて逃げる力さえも無くなる

 今後の余生をヨボヨボの老人になってまで戦う日々を続けられるのかと真剣に問うたらどうだ?
迷わず彼は首を縦に振るか?理想や情熱、夢…大いに結構、それらは紛れもなく尊い物で何物にも代えがたい


 しかし、現実と理想はいつだって噛み合わない物



 熱に浮かされて勢いだけで夢に突っ走るのもまた人生だが、その後で後悔は無いのか
もっと別の道を選べば"幸せ"も有り得たのではないのかと走る前にほんのちょっぴりで良いから現実を見据えても良い筈









   いつまでもこの関係じゃ居られないかもしれない



 こうして術士と少女と少年、もちろん貴婦人や機械医師も一緒だが馬鹿騒ぎして笑って大冒険して…


 そんな関係が永遠と続けられるかと問われれば、そうもいかない…いつかは関係も今とは変わった物になるだろう




 ただ、願わくば関係や立場が変わっても交友だけは、絆だけは変えたくない…

偉い人になってもならなくても、いつもの様に変わらない集まり、いつもの日常会話、偶に喧嘩なんかもして笑って―――




  ふと、家主の語りを聴いていたルージュは自分の中に沸々とそんな沢山の考えが浮かんでいる事に気が付いた



  白薔薇「ルージュさん、随分と難しい顔をなされてますが…」

 ルージュ「あっ、いや…ちょっとね」

649 :続きは22日頃に [saga]:2021/04/18(日) 22:15:09.53 ID:Lirpwszt0

  レッド「おいおい、本当に大丈夫かよ?この後お前も俺と畑仕事やるんだぞ」

 ルージュ「あぁ、本当になんでもないんだ」

 俺が全部やるからお前は休んでても良いんだぞ?と気遣ってくれる親友になんでもないと笑いかける
流石にサンダーが居るとはいえ全部任せて自分だけ休むのは気が引けるし、年上の男として矜持ってのがある
 "年下の少年<レッド>"に任せていては自分のなけなしの誇りに傷が付くってもんだ

―――
――


  レッド「ふぅー、こりゃあ思ったよりキツイかもな…畑仕事ってのは腰に来るぜ」ザック!ザック!

 サンダー「そっスよねぇ、最近畑を拡張したもんだからノルマがきつくて…」


 どこぞの鉱夫みたいな台詞をぼやきながらサンダーが、鍬を持ったままレッドが手拭で汗を拭きながら青空を見上げる
[ヨークランド]の空は本日も晴天なり、収穫物で重くなったずた袋を荷車に乗せてルージュも農家の偉大さを知った


 ルージュ「はは…でもさ、しんどいけど…結構面白いかもねこの仕事」

 ルージュ「…。」


 ルージュ「ねぇ!レッド」

  レッド「ん?なんだよ」


 ルージュ「レッドはさ、組織を倒せたらその後どうするの?」



 唐突に、聞いてみたくなった。




  レッド「はぁ?突然どうしたんだよ」
 ルージュ「いいから!」



  レッド「どうったって、そうだな…正直そんなこと考えた事ねーんだよな」ポリポリ

 ルージュ「考えた事が、ない?」


  レッド「だってそうじゃねぇか、考えたってそん時そん時で考えた通りに100%なる保証が無いからな
                            なんでも事前に分かっちまったらそんなの預言者だ」

  レッド「そりゃある程度は未来予想図みてーなのは立てるかもしれねぇけど少しずつ想定図には"横槍"が入るさ」

  レッド「ブラッククロスをぶっ潰すっつー俺の人生計画には少なくとも
        アセルス姉ちゃんやお前と会って旅する予定は本来無かったんだぜ?でも今こうして旅してるだろ?」


  レッド「なんつーか、俺も難しい事は言えねぇけど臨機応変(?)って言葉があるだろ?
           目標に向かって歩いてる内にそれが終わったらやりたい別な目標が道中で出来るかもしれない」

  レッド「そんなのはその時にならないと分からない、人生ってのはそういうもんじゃねぇか?」

 ルージュ「…でも、ずーっと先で『あぁ、あの時慎重に考えればコレは回避できたかも』っていう嫌な事があったら?」


  レッド「う〜ん…そうだな、こいつぁ俺の持論になっちまうからお前には当て嵌まらないかもしれんが」ポリポリ

  レッド「起きた事を悔やむとかよりは、その時で次に何をすべきかを考えるかなぁ
        過去の俺が別の選択をすれば今よりは良くなった場合ってのはあるかもしれねぇけど、でもよ」




  レッド「その時の俺自身は間違いなく"これが正しい"って信じて突き進んだ選択な訳じゃねーか、だったら…よ」


  レッド「悔みはしても、"間違った"とは思いたくねぇな、その時の俺がその時で考えられるベストを出したんだぜ?」



  レッド「良い事も悪かった事も全部俺の人生なんだ、なら全部受け入れて前に突っ切るっきゃねぇさって話だ」ハハッ!
650 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/20(火) 18:05:02.63 ID:ZqIYzG6Bo

考えすぎて自縄自縛になりやすいルージュはもう少しレッドを見習って肩の力を抜いたほうがいいということなんだな

それはそれとしてリマスターすごいいい出来でマジファンなら買って損はないすごい
みんな買おう(迫真)
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/04/22(木) 15:01:07.23 ID:kPTXPL490


 十人十色、人間が10人そこに居れば思想や物事に対する捉え方もまた皆それぞれに違う
"紅"の前に立つ"赤"は確かに考え方が違うようだった、自分には無い考え方だ、純粋に思った


  ルージュ「…。」ポカーン


 呆気、ただ眼を丸くして立ち尽くす術士にレッドは眉を顰めた、何かそんなに変な事言っただろうか?
とりあえず無反応な彼の名前を呼んでみる


  レッド「あー、ルージュ聞いてたか?」

 ルージュ「ハッ!?……う、うん、にしても――――なんだよソレ要は行き当たりばったりって事じゃないか」フフッ

  レッド「あっ!?人が真剣に語ったってのに笑ったなこんにゃろう!」

 ルージュ「だって君らしいっちゃ君らしいんだもん!」ケラケラ



 苦笑しつつ、大袈裟に両手を広げて肩を竦めてみせる、少年もそんな術士の肩をポカポカと軽く冗談めかして小突く


  レッド「このこの!こいつめっ!」ポカポカ

 ルージュ「いててっ、あはは!降参降参!悪かったってば」ケラケラ





  レッド「まったく…」

 ルージュ「…はははっ」






  レッド「…。」

  レッド「なぁ、ルージュさっきも言ったけどな人生なんてのはどうなるかなんて誰にもわかんねぇんだ」


  レッド「最初っから後ろ向きに考えてても仕方がないんだと思う」







  レッド「その、お前のアニキのこと…とかさ」

 ルージュ「…うん」



 風が一陣吹いた、[ヨークランド]の香草の匂いと砂を含んだ乾いた風が野良仕事で汗をかいた身体には心地良かった
手にしていた鍬を肩に担いでレッドは何処までも続いてる遥かな青空を見上げた





  レッド「昨晩はさ、お前がいきなり重たい話をし出すから酔いが一瞬すっ飛んだぞ」

 ルージュ「ははっ、面目ない…」







 ルージュ御一行は[杯のカード]の試練を突破して家主の家に一晩お世話になることになった
…紅き術士は覚悟を決めていた[ワカツ]でゲンとも話をして決断していたんだ、アセルスや白薔薇にも打ち明けた様に


 ―――親友に、レッドに自分は身内<実の兄>を殺すという祖国の勅命を受けて旅を始めたのだとッッ…!!
652 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/04/22(木) 15:01:34.94 ID:kPTXPL490


 祖国たる魔法王国は原則として自国民に他国への外遊を禁じている、他所の惑星<リージョン>から見れば変な国家だな、と
誰しもが思う、理由を聞いても宗教上の掟がどうだとそんなことばかりで観光客は首を傾げるばかりであった
―――今にして思えばある種の情報統制だったのかもしれない


 …別に他国からの訪問者を拒むなど鎖国しているわけではない、寧ろウェルカムオープンなまであって
ショップで[魔術]を購入できたり、自国製の[ルーンソード]や[術酒]など特産品だって普通に販売している



 要は誰も困らないし、その国特有の宗教上の掟だからと言われれば「ああ、そうなんですね」の一言で済む



 だから誰も魔法王国の"暗部"については知らない、知る由もない




 まさか毎年卒業式を迎えた学生がこんな物騒な慣例やってるなんて普通の生活してる普通の一般人は知ってる訳がない
術関係者や国事情に詳しいトリニティ政府高官が良い所だろう






 必然、[シュライク]の一般的な家庭で生まれ育ったレッドにとっては耳を疑うような話だった




 少年はまだ術士の脳が酒に冒されていて、これは…そう!きっと悪酔いの延長で出た質<タチ>の悪い冗句だろう!と
そう思いたかった、だが悲しいかな嫌に全否定できない証拠が少年の記憶にはあるのだ






         - ブルー『貴様の名前が気に喰わん』 -





 先日、自分が働いていた職場に親友になった術士と瓜二つの顔した人間が居たのだ…っ!


双子同士で殺し合う、あながち酔った勢いで口から飛び出した出鱈目な妄想話と切り捨てられるモンじゃない








   レッド「あいつが…そうだったんだろうな」

  ルージュ「僕も、君から聞かされて驚いたよ偶然同じ船に乗り合わせてたんだって」



 術士はまだ見ぬ兄の事を当然レッドに問うた、どんな顔をしてたのか、やっぱり同じなのか
どんな声だったのか、どんな術を使う人なのか、どんな服装だったのか、やっぱり同じなのか




――――…自分<弟>を、どんな風に思っていたのか



 気づけばルージュは両肩を掴んで激しく揺さぶって問い詰めていた、僅かな邂逅であった上に非協力的で
そんなに身の上話をしてくれた訳じゃないんだから解らないと引き剥がされて
 それから…揺さぶったり質問責めしてごめん、とだけ謝罪したのは記憶に新しい



   レッド「お前は殺し合いじゃなくて会話がしたいんだろ?…なら、今は頭空っぽにしてそれだけ考えればいいさ」

653 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/04/22(木) 15:02:36.09 ID:kPTXPL490


   レッド「先の事なんてわからねぇ、でもお前自身はやりたいことが決まってるんだ」

   レッド「『自分の兄弟と会って話をする』ってな!」


   レッド「ならそれだけを"今の"最終目標にしてればそれでいいさ、そん先の事はそん時に考えればいい」

  ルージュ「…。」

   レッド「話し合った後で事が起きたんなら、…そん時に逃げたければ逃げたっていい、戦えるなら戦う」



   レッド「おっと、勘違いするなよ?戦うっても殺すんじゃねぇ
            蹴ったり殴ったりしてボコボコにしてふん縛って、その後で向こうが折れるまで説得する」





 説得だって立派な戦いだぜ?と少年は笑ってみせる


 魔術士は心の底から思った、嗚呼…打ち明けて良かった


真直に自分の運命についてどうすればいいのか、途中から話声が聞こえたと部屋に入ってきたアセルスや白薔薇姫を含めて
4人(…あとメカ1機も入れて)は夜遅くまでああでもない、こうでもないと語り合った



 祖国から命令されたから"戦う=殺す"という考え方がどうにも定着していた…



 固定概念に囚われない考え方というのは大事な物で、三人寄らば文殊の知恵というのもまた真理なのだろう
アセルス、白薔薇、レッドの三人(それとBJ&K)は教えてくれた



 別にブルーを絶対的に殺す必要性が無い



 話し合った結果、和解に失敗して相手が一方的に襲ってきたのであれば当然こちらも戦いはする
然して相手を絶命させる為の武力行使ではない、相手から武器を取り上げ術を使用不可能にして無力化させてやればいい



 当然ながら祖国からの刺客だとかブルー自身が無力化から立ち直って再び襲ってくる等々、根本的な解決策ではないけど
それでも家族を、唯一の肉親を自らの手で殺めずに済むかもしれないのだ




  - ルージュ独りでは決して辿り着けなかったかもしれない、たった一つの冴えたやり方 -



 …100%成功するなんて保証は誰にもできない、力加減を間違えば最悪の展開が起こりうるし逆に力不足であるならば
それすらも成し得ない可能性もある、極めて細い小さな糸口、だけど今この段階で彼ら彼女らが考え得る最適解の解決口



 気乗りしない術の資質集めも、【殺す為】ではなく『無力化する為、自衛の為』と考えて取り組めば幾分も気は楽になる


  ルージュ「そう…だね、そうだよね」

   レッド「ああ、そうさ」









 アセルス「おーい!!三人ともーっ、お昼のお弁当持ってきたよーっ」手フリフリ

  白薔薇「アセルス様、走っては転びますよ」
654 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/04/22(木) 15:03:23.86 ID:kPTXPL490

 ランチボックスを引っ提げて緑髪の少女と妖魔の貴婦人がこちらにやってくる
それを見て腹の虫が鳴り始めた[オーガ]種と少年はガッツポーズを取る


   サンダー「お昼ご飯だー!やったー!やったー!」バンザーイ

    レッド「へへっ!待ちくたびれちまったぜ!働いた分しっかり食わねぇとな!」



 女性陣がピクニックシートを[ヨークランド]の芝生の上に敷き準備をしている間に
野良仕事用の軍手を外して近くの水場で手を洗ってくる、戻ってきた時には豪華なお昼御飯がシートの上には陳列していた



    レッド「うめぇぇ!!やっぱり握り飯はこういう青空の下で食うもんだよなぁ…」

   アセルス「あっ、分かる!私も小学校の行事で古墳近くまで遠足に行って――そこで食べたおにぎりが美味しくて」

    レッド「学校行事かぁ、そういやそうだったな〜、そういや俺がガキん時は姉ちゃんが手製の弁当を―――」



   白薔薇「ルージュさん何かいいことでもありましたか?」


 ライスボールを片手に晴れやかな顔をしている紅き術士に貴婦人は尋ねた

…先程まで暗い気持ちだった術士はもう居ない、陰鬱な悩みは霧がごとく四散して[ヨークランド]の空の彼方に消えていた




  ルージュ「いいことですか、確かにありました」


  ルージュ「白薔薇さん、僕は…貴女達に、皆に会えて本当に良かったって改めて思えたんです」



  ルージュ「アセルスや貴女に、エミリアさんやヒューズさん達、レッドやゲンさん達とも…」


  ルージュ「[マジックキングダム]の外に出て、出逢って、知れて、色んな事を教えてもらって―――」


  ルージュ「きっと僕一人じゃ色んな物に圧し潰されてたかもしれない」






  ルージュ「皆が居たから、ここまで来れた、双子の兄をもしかしたら殺さなくても済む手立てにも気づけたんです」



   白薔薇「ルージュさん…」


  ルージュ「皆それぞれ旅の目的があって、今は道中が一緒だから旅路を共にできる」

  ルージュ「先の事なんてわからないけれど、今こうして居られるこの時が、この瞬間が、この時間が」


  ルージュ「何気ない"今"が幸せなんだって思ったんです」

   白薔薇「ふふっ、今ここにあることこそが幸福ですか、確かにそうかもしれませんわね」クスッ

   白薔薇「どう転ぶか分らず不確定な未来よりも実感できる幸せがあり、それを手にしている、確約された幸せな今」


  ルージュ「ええ、…感謝してもしきれませんよ、こんなにも心が晴れ晴れとしていて」


   白薔薇「そういう事、ずっと続くと良いですよね」

  ルージュ「はいっ!」


ずっと続けばいい、ずーっと、ずーーっと続いて欲しい、ルージュは自分が刹那に見出した幸福論を切に願った――――


655 :次、土日のどちらか [saga]:2021/04/22(木) 15:04:30.87 ID:kPTXPL490
************************************




            今回は此処まで!



           ※ - 第5章 - ※



   〜 資質を得る、という事…A 今ここにある幸福論と旅路 〜


                              〜 完 〜

************************************
656 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/04/28(水) 08:03:23.45 ID:NyBaG+MBO

リマスターで追加されたヒューズ編には各主人公毎のIFストーリーがあってその中にはブルー編だけじゃなくルージュ編もあるらしいね
657 :速報復活したようですね!!これ含めての導入部2レスだけですが…置いておきます、続きは日曜日 [saga]:2021/04/30(金) 02:55:53.58 ID:3OMBWUHI0






           ※ - 第6章 - ※



        〜 蒼月に祈りを、暁月に誓いを 〜



658 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga!蒼_res]:2021/04/30(金) 02:56:24.74 ID:3OMBWUHI0


 その日は、一際暑い一日だった


 暑月特有の気温とは裏腹に見上げた蒼穹は涼々とした印象を受けた
あの大空は海原で流れる雲は漣<さざなみ>なのではなかろうか差し詰め飛んでく練雲雀は鴎か
 天地がもしもひっくり返るのなら…、空を地として海を仰ぐ
そんな馬鹿げた空想を浮かべて暑気払いを試みるが効果など知れたことだった



 石畳をじんわりと焼く強い日差しは遠く浮かぶ夏空に聳え立つ山が如し積乱雲を創り出す
手を繋いだ仲の良さそうな少年二人が入道雲の頂を眺めていた



 暑い中、二人のよく似た少年…整った顔立ちと長く伸びた髪から少女にも見えたかもしれない





 無限の広がりと可能性を秘め、また限界という言葉を知らぬは若気の特権で

 蒼を身に纏った金髪と、紅を身に纏った銀髪が空想の世界を空に描いていた





 【こうやって両腕を横に伸ばしてさ、お空だけを唯見上げながら走るんだ】

 『前を見ないと危ないぞ、転ぶかもしれないだろ?』



 【こうしてると僕もなんだか鳥やお魚になったみたいであの青の中を――――わわっ!?』

 『だから危ないって言っただろう?もう少しで人にぶつかる所だったぞ?』


 【てへへ…ごめんごめん、でもさ楽しいんだもん、あの空だけを見上げて自由になれてるもん】

 『…確かに楽しいな、でも空だけ見てて前を見ないと躓いたり、転んだりぶつかったり』



 【前を見るのも大事かぁ…】

 『そうさ、大事なんだ』





 【あっ、いいこと閃いたよ!!なら二人でお互いに前と上を"代わり番こ"に見ればいいんだよ】

 『変わり番こ?二人でか?』

 【片方がお空を見て、もう片方が前を見てお互いに助け合うの!時間になったら交代だよ!】

 『…なるほど、前を見て危険が無いかを確認して同時に時計の方も見ておけば代われるか』

 【うんうん!今まで僕がお空をびゅーんっ!ってしてたから次はキミの番!楽しいからやってみなよ】

 『…こ、こうか?こんな風に腕を広げて』



 【そうそう!鳥さんとかになったみたいで何だか楽しい気分でしょ?】

 『うーむ、確かに』

 【キミが前に図書館の本で見たっていうお菓子とおもちゃだらけでお馬さんの王様が居る世界見えるかもよ】

 『むぅ…見えるだろうか、…そっちは人にぶつからないように知らせてくれよ?あと交代の時間』

 【おっとっと、そうだった、…わぁ!!あの時計屋さんたくさん時計が並んでる!!あの砂時計いいなぁ】

 『…おい、真面目にやってくれよ』

―――
――
659 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga!蒼_res]:2021/05/02(日) 22:36:02.42 ID:2L6pWzyP0












パチッ…


         …今何時だ? 【15時36分】…いかんな軽い仮眠を取るつもりが思ったより深い眠りに落ちていた








[バカラ]騒動の疲れが抜けきっていなかったのとアニーからの剣術指南がそこそこにハードだったのもあるな






ジョーカーとやらの一件が終わるまでは午後4時から10時までの営業時間


6時間の合間だがやるからにはキッチリと仕事はこなさなくてはな






身支度を整えて店の方へ向かうとするか…




660 :※ 昨晩(>>637)の回想 [saga]:2021/05/02(日) 22:39:01.34 ID:2L6pWzyP0

【双子が旅立って8日目 午後 15時49分】


 蒼の術士がエプロンを着用して厨房に入ろうとしたところで肩を掴まれ引き留められた
無言で掴まれた為、最初それが誰であったのか気付かずエミリアかアニー辺りだろうと勘繰って振り返ればそこには――




     リュート「よっ!相棒、可愛いピンクのエプロン着てんな!」ナッハッハ!




 ゴベシャッ!!


 …う〜ん、ナイスヒットだな、我ながら今のは百点満点と言わざるを得ない素晴らしい[裏拳]だった
なんで開店前のイタ飯屋の厨房に入り込んでんだ貴様とか、色々喉から声が出るより先に拳が出た
腕に蚊が止まってたのを見て反射的に叩き潰すのと同じくらいの間隔で[パンチ]を繰り出そうとしたら
流れる様に[裏拳]になった、脳裏に光る豆電球まで過った




    ブルー「なんで開店前のイタ飯屋の厨房に入り込んでんだ貴様、部外者だろうが」

   リュート「ほ、ほはへ…いひひゃひひへぇじゃへぇは!!」
       (訳:お、おまえ…いきなりひでぇじゃねぇか!!)



 拳に遅れて漸く言いたかった言葉が出た、だらだらと鼻血が流れる鼻っ面を抑えながら何かプー太郎が言ってる
床に垂れた鼻血は何処から持ってきたのか濡れた雑巾でスライムが忙しなく拭いてくれている、飲食店は清潔が大事っ!


   リュート「あ〜…ったく、お前やっぱり話聞いてなかったんじゃねぇかよ」

   スライム「ぶくぶー…('ω')」


    ブルー「? なんの話だ」



   リュート「いや、何って今日丸一日お前レンタルするぞって話だよ…」






                ブルー「は?」






   エミリア「あっ、リュートじゃん!もう来たんだ」トテトテ

   リュート「おーっすエミリア〜!相棒を引き取りに来たぜ」


    ブルー「待て待て待て!!いやちょっと待て!本当に何の話だ!?俺は知らんぞ!!」


   エミリア「えっ、昨日[クーロン]から帰ってきた時に話し合ってブルーに許可取ったらいいぞって言ったわよ?」



    ブルー「意味が解らんぞ!?俺が今日丸一日このニートと行動するだと!?しかも俺が許可を出した覚えなぞ…」


―――
――


      -早くイタ飯屋に帰って自分に割り当てられた部屋のベッドで泥の様に眠りたい -
      -後ろで仲間達がなんか言ってるが、適当に空返事だけしながら彼はヨロヨロと帰路に着いた-

       - リュート『ありゃりゃ…ブルーの奴行っちまったよ、アイツ話聞いてたのかね?』-

661 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/02(日) 22:40:08.10 ID:2L6pWzyP0


      -後ろで仲間達がなんか言ってるが、適当に空返事だけしながら彼はヨロヨロと帰路に着いた-

      - 【後ろで仲間達がなんか言ってるが、適当に空返事だけしながら】 彼はヨロヨロと帰路に着いた-





 言葉に、ならない


 覚えなぞない!そう主張しようとして言葉を固唾と共に飲み込んだ
心労を抱えるとどうしても人間は集中力が途切れ思考もおざなりになってしまう、情報処理能力の低下それに伴う視野狭窄
 一晩経って余裕が出始めた頃で振り返ってみればハッと気が付くのだ、何故あのような事を口走ったのかと


 嫌な汗がタラリと伝う、言葉に詰まったということは言ってしまえば心当たりがあるということで…
当然ながら馬鹿だが処世術だけは一級の無職が動揺から生まれた一瞬の隙を見逃す訳もなく



  リュート「なぁんだ、お前ちゃんと覚えてんじゃんかよぉ〜」ガシッ

   ブルー「ハッ!馬鹿やめろ肩を組むな!!俺は今から―――そう!店員だ!店員としてここでの仕事が――」



  エミリア「あら、大丈夫よ?全部ライザ達に話したら快くOK貰ったもの」



 何してくれてんだこの女ァ!!とブロンド美女を睨みつける、…そういえば自分が寝台で横になった辺りで
イタ飯屋に遅れて帰ってきたエミリアの声が響いたなと自分の嫌に冷静な部分が分析する
 恐らくあの後彼女がグラサンの指導者を囲んで私刑にしてた女性陣にも事を話していたのだろうな


  エミリア「リュートの提案はグラディウスにとっても益になるってあの後ルーファスが横から口出して来たのよ…」


 文句の一つでも言いたそうな不満げな顔で美女はそう呟く
黙って話を聞いてみれば万年無職が今回持ち掛けてきた話は割と真面目な話らしい…



    リュート「いっぺん[ワカツ]に行ってみようと思ってさ、戦力的にもお前が必要なんだって頼むよぉ〜」



 さて、ブルーは昨晩話半分にしか聞いておらず、空返事で適当に返していたのもありイマイチ話の全容がわからず仕舞い
なので本筋をここで語ろう…



 昨晩、双子が旅立った7日目の23時に差し掛かろうという所でリュートは前々から考えていたことがあった
それは以前、ブロンド美女と蒼き魔術師が共に飲みに行った[ネルソン]での一件だ

 リュートの父親イアン氏と現トリニティ執政官に成り上がったモンド氏の件である


 気高い理想を胸に立ち上がった若き3人の革命家、その1人だったモンド氏が活動に限界を感じて"外"からではなく
"内"に入り込んで政府のやり方を変えようと動いて数十年

 当初の気高い理念すら忘れてしまいそうな莫大な権力を前にして野心家と変わり果てて政府の転覆を密かに狙っている
そんな話をリュートは[ネルソン]の"艦長"から聞かされた



 全く知らない仲ではなく、地元から旅立つ折に軍船に乗せて[マンハッタン]に降ろしてもらった等の恩義がある
何よりも死んでしまった父親の友人だというのだ、そんな人と討つ気にはどうにもならない


 …どうにもならないが、同時にこうも想う、「父ちゃんの友人だった人にそんなことさせていいのか?」と


 政府の転覆ともなれば秩序の破壊、それに伴う法治または経済活動の麻痺など社会的な混乱も大きい筈だ
仮に、仮にの話だが父が生きていたとしてそれを良しとするのか?




―――父親の親友だった人にそんなことはして欲しくない、リュート個人の考え方としてはこうだった

662 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/02(日) 22:41:11.68 ID:2L6pWzyP0


 リージョン界の統括行政機関を転覆させる気なのだからそれなりに規模の大きな秘密基地があって然るべきだ
噂としてこれは有名だが[ワカツ]がトリニティ政府に爆撃されたのは実はモンド執政官の工作があり
 廃墟とかしたあの"惑星<リージョン>"の何処かに秘密基地が存在するとその筋では囁かれているのだ



 攻め込む訳じゃない、ただ…そう!これはただ調べに行くだけだ!そんな物はもしかしたら根も葉もない噂で嘘っぱち!



 それを証明するための調査になるかもしれない!!そんな淡い期待ももしかしたらあったのかもしれない
だから[ワカツ]に行ってみたいと弦楽器の名を冠する彼は考えた

 当然ながら戦力は居る、万が一に…噂が、―――噂が本当だったのだとして囲まれて逃げ場が無くなってしまった時
保険として[ゲート]が使えるブルーに同行して貰いたいという話だったのだ


 エミリア経由で話を聞かされたルーファスも、右腕を務めるライザもコレには快く承諾
元よりモンド氏とは因縁がある、執政官に成り上がってくる前の警察組織のトップだった頃モンド氏は敏腕を振るい
グラディウスの面々を窮地に追いやる事も多々あった、下手に腰の重い政府組織じゃない市井の分、苛烈を極めたらしい



…それだけでも何かと縁があるお相手で、政府の転覆を狙う反乱分子だ

 グラディウスとしても警戒はする、動向を探る事自体にも意味がある
[ネルソン]の"噂の艦長"殿と太いパイプを持つのも吝かではないという話だ








   ブルー「…俺には、まったく関係の無い話ではないか」ムスッ



 未だ拘束された術士にとっては憤慨モノだ、自分は関係ないじゃないか!仏頂面がそう物語る


 リュート個人と彼の父親の因縁、グラディウスにとっての益、もっと広義に渡って拡大解釈するのであれば
全リージョン界に暮らす者にとっても無関係とは言い切れないが
 魔術師にとっては勝手にやってろと悪態も吐きたい所であった、彼にとっては利となる物が何もない


   アニー「行ってやればいいじゃないのケチ臭いわねぇ」テクテク…


 渋る術士を見兼ねてか此方に近づいてきた黄金色の髪が声をかける、その後ろからサングラスを掛けた男性が続ける


 ルーファス「[ワカツ]は嘗て剣豪達の手によって栄えた地だ、キミは[剣技]を鍛えているのだろう?」

 ルーファス「"倒すべき者"が居るのであればより強力な力、技術が必要となる良き経験になるのではないかね」


   ブルー「むぅ…」


 …彼らは自分を巧い事言いくるめて利用しようとしているのだとは分かり切っている、分かってはいるのだが
言ってる事自体には然程間違いがない、ルージュを抹殺する為に術と技を磨いている身としては一理ある
 予定ではあるが自分は[ルミナス]で[陽術]の資質を得ようと考えている
高位の術には[光の剣]なる物が存在していて、卓越された剣術家が振るう事で何者をも切り裂けるという
光り輝く魔法剣を召喚する術だ


 折角得た術も使いこなせないのであれば意味がない、究極の魔法剣を召喚できても持っているのがド素人では
精々がちょっと[ディフレクト]できて身体の動きがよくなる程度でその辺の[ボーイナイフ]と変わらん



 [体術]しかできない奴が銃を持っても腐らせるし、剣しか握る気のない奴が資質を得ても使わんのなら無意味でしかない



    ブルー「…言い分は、理解したが、肝心の[ワカツ]にどうやって向かうというのだ?」


[ゲート]の術は一度行った事のある場所にしか飛べないのだぞ?と険しい顔をする魔術師に
無職の男は然も待ってました!と謂わんばかりの笑みを浮かべた
663 :続きは水曜日 [saga]:2021/05/02(日) 22:42:35.18 ID:2L6pWzyP0


   リュート「へへっ!だよなぁ〜!そこが肝心で無理って思うよなァ、けど日頃の行いって奴だぜ!」ドヤァ

    ブルー「勿体ぶってないでさっさっと言え」イラッ



   リュート「んんっ!ごほん!……実はな、一昨日の夜、ほら?お前のイタ飯屋就職パーティーやっただろ?」


 未だに職に就けない無職が一昨日の華やかな記憶を語り始める
日付も変わりかける頃合いまでドンチャン騒ぎのイタ飯屋でほぼ全員が大の字になって酔い潰れる中
比較的に酒に強いリュートは店を出て帰路に着く、するとどうだろうか
ネオン煌めく飲み屋の屋台で自分と同じく飲んだっくれて看板を抱いて寝てる男がいた

 頭にハチマキ巻いてシャツ一枚に、その周りに見覚えのあるスクラップで作ったボディ―――と周りに新顔のメカ複数
指輪騒動で大冒険を共にしたクーン等と少しの間リュートは[スクラップ]にてその男と共闘したのだッ!!


  リュート「[ワカツ]の剣豪、ゲンさんに再会してさ、いや〜人の縁<えにし>ってのはどこでどうなるやらだ」

  リュート「こんな所でなにしてんのか聞いたらT-260の記憶を探る手掛かりの場所に潜るのに戦力が必要でな?
          なんかこの街のどっかに新顔のメカ―――レオナルドさん?だっけ―その人の知り合いが居るって」




  ルーファス「…。」


 少し見なかった間にゲンとT-260の間に新顔が3人、…否、3機居たそうだ
[シュライク]の製作所で知り合ったメカ修理担当の特殊工作車と同製作所で作られたらしいナカジマ零式とやら
 そして、見た事も無い"型番<タイプ>"のメカ、レオナルドという新人が居た…一応は特殊工作車と同じタイプ6だが
それにしては妙に人型で変わっている


 何れにしても[クーロン]に戦力となりうるメカが居るからそれをスカウトに来たと






 サングラスの男性にはその名前に聞き覚えがあった

 裏社会の情報網は伊達じゃない、今回のモンド氏が起こした事件は[ワカツ]だけではない数日前に[マンハッタン]で
テロリストによるビルの爆破があったが外部勢力の仕業に見せかけた内部の抗争だ


 モンド執政官がトリニティ政府の邪魔な勢力を排除するに当たって裏でテロを起させ、そのとばっちりで
レオナルド博士は亡くなったのだから…


…何の因果か、モンドによって滅ぼされた"惑星<リージョン>"の生き残りが同じくモンドの策動の犠牲者と行動している



 それは置いておいて、この情報が入ってきた時ルーファスは焦りを感じた、何故なら対ジョーカー包囲網の対規模作戦で
使用する予定の火器に関しては["さる秘密の横流し店"]をあてにしているからだ

 犯罪都市の裏通りにトリニティ政府からの横流し品を売る違法店がある、法外な値段だが破壊力は折り紙付きの重火器
それを売り払うメカが居て、グラディウスも彼には中々"御懇意"にさせてもらっているのだ


 重火器の利点はライザやアニーの様に身体を鍛えていない、それこそ初期のエミリアよりも身体能力が劣る一般人でも
連携を組むことで強者を撃破することが可能になることだ
 そんな物を売ってくれる店の店主がジョーカーとの決戦を控えた重大な局面でよりにもよってポッと出の集団に横から
スカウトされるかもしれないのだから頭痛もしてくる



 だからこの転がり込んできた"伝手"は渡りに船、畑に翠雨が如しだ




 知ってる間柄のリュートからゲン達へのモンドの一件を交えたアプローチ、"店主の恩人"であるレオナルドとのコネで
可及可能な限り店を畳まれる前にあらゆる重火器を貰えないか?という算段をルーファスは立てた

 グラディウスの今後の為にもコレは必要な事で、こちらからエミリアとアニーを派遣するとして
組織の部外者だが実力もありリージョンを自由に行き来する[ゲート]の術が使えるブルーも巻き込めるなら是非もない

 早い話が使える者はなんでも使おうという腹積もりなのだ
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/05(水) 04:57:19.82 ID:H9cv8V7D0
最近リマスター漬けでサガフロ熱高まってたところにこれはいいスレを見つけた
とても面白くて一気読みしました
665 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/05(水) 23:30:12.97 ID:U1gqCs3B0

 少考、自分にとって利と損の比率をまず考える

 剣豪が住んでいた亡国ともすればこの街のマンホール下で売られている[刀]よりは切れ味のいい業物が拾えそうではある
墓荒らし紛いな行い自体に嫌悪が無いと言えば嘘になるのだが自分はそう遠くない未来で己と瓜二つの顔をした男と死合う
 我が身の為、自分が生のチケットを手にする為にも勝率は上げたい


 武具の類も然ることながら間近で[ワカツ]の剣術とやらを見れるのも良い、人間が磨き上げてきた技術の髄の一端だ
祖国が誇る魔術とは異なるがソレも確かに人間が長い歴史の中で手ずから鍛え蓄え築き上げてきた…そんな至高の文化だ


 身に着けたい戦闘術としても学術的な観点からみた歴史的な遺物としてもお目には掛かってみたいという所は正直あった



 損があるとすれば自分には関係が無い点だ

 別に[秘術]の資質を得ようとしているわけではない、しかもエミリアからの話だと
ルージュの同行者が[金]をいくつか持ってるから[印術]よりは[秘術]の方を選択しようとしてる傾向にあるらしい
 尚更、カード集めをやる気になどなれない

 次に"敵"と出くわした際の場合だ…







    ブルー「…ひとつ、確認を取りたい」


   リュート「おろ?」

  ルーファス「なんだね」




  ブルー「話を一通り確認させてもらったが、[ワカツ]に行きそこでモンドとやらの基地があるかどうかの"調査"」

  ブルー「それがお前の目的であり、基地に直接侵入して政府の転覆を狙う…いや狙えるだけの勢力を倒す、ではない」

  ブルー「認識としてはソレで合っているのだな?」




 "敵"…モンドとかいうトリニティの執政官が隠し持つ私兵や基地兵器の類と殴り合う、そういう場合だ

 自惚れのつもりはないが自分は戦える人間だと自負している、しかしながら相手の規模が規模だ
祖国の命令でもなく自分の生死が直接関わる案件でもない、全く以て無関係な立場の自分がゴタゴタに巻き込まれて
要らんことに不必要な労力を注ぐ、というのは聊か割に合わんと思わないだろうか?


 あくまで"調査"が主目的であり、…"敵の総大将<モンド>"の首を撥ねてこい、というのではないな?と念を押して訊く



   リュート「ああ、本当にそんなもんがあるか調べるだけだぜ、ヤバくなったら逃げたっていいさ」

  ルーファス「キミは部外者だからな、いざとなれば[ゲート]の術で撤退するのは当たり前の権利だ」


 なるほど、部外者だから逃げるのは当たり前の権利、か…、「その割には俺をやたら行かせたがっているようだが?」と
サングラスの男を薄目で睨んでやればこの男「キミの経験になるだろうというのは嘘ではない、キミの為を思ってだ」って
いけしゃあしゃあと正論でも言うかの如く何でもない顔して言い切ったのだ、よくもまぁ口の回る



  ルーファス「ああ、言い忘れていたが臨時給金は出そう本来なら閉店時間までウェイターとして働いてもらった筈だ」

  ルーファス「一応は当店からの派遣、出先での買い出し等の雑務に従事してもらう体になるのでね、有給もつける」


    ブルー「むぅ…」



 臨時給金、蒼き魔術師はクレジットには今の所困ってはいないが有給という言葉には惹かれた
皿洗いだの注文取りなんぞに時間を浪費せずに術の修行や読書に割ける時間ができるというのは魅力的だったから
 元々住み込みアルバイトになった経緯も感情任せでエミリアに掴みかかった事からの…まぁ懲罰みたいなモンだった
望んでイタ飯屋の店員になった訳ではない
666 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/05(水) 23:30:58.49 ID:U1gqCs3B0


 自分がやるのは簡単なお使い、危険地帯となっている[ワカツ]には赴くが腕利き戦士が最低でも3人以上はつく
無論自分も多少の戦闘行為に参加する可能性はあるがこちら側の人数規模からして負担も小さい
 敵の総大将とは戦わない、危険を感じたら直ぐに撤退が可能で周りが勝手に特攻し出したら我関せずでそそくさと
モンドに突撃噛まそうとしてる同行者を有無を言わさず見捨てて帰っても文句を言われる筋合いも無い


 得られるものは戦闘技術と店のバイトから逃れて自由に好き勝手できる時間を貰える事


 これらを損得鑑定で計算した結果、天秤は利の方がずっしりと沈みだした



  ブルー「…いいだろう、その話乗ってやる」



 本当なら今から午後22時まで延々と店の従業員として束縛されるのだ
それが外で多少暴れられて有給も付くなら是非もない、今朝やったルーンの文字占いでもまだ[活力のルーン]の逆さが出る
 主たる目的に向かって急いては事を仕損ずる、回り道や関係ないこと、ゆったりと落ち着くことで何かを得られる暗示だ
自分が得ようとしてる資質とは関係無いより道をする、重い戦闘はしない
あくまで軽い肩慣らし程度に戦って修行の成果を確かめ、得られる技術は見て盗む
 くどい様だが危険地帯に踏み込んだならすぐ逃げる、それだけで良いのだ



  ブルー「貴様にも言っておくが俺は自分が潮時だと判断したら即刻帰還する、置いて行かれたくなければ従え」チラッ

 リュート「おう!付き合ってくれてありがとな!」ニィッ



 念の為に、今の話の流れで理解できてるか分からない馬鹿に再度確認の意味も込めて言ってやる




  ルーファス「決まりだな、ではこれを持って行くといい」つ『カメラ』

    ブルー「これは…写真機か?」ヒョイ


  ルーファス「何も無ければそれはそれで構わない、だがもし何かを発見したなら撮影してくるといい」



 グラディウスにとって益となる情報であればあるほど相応の対価を払おう、と付け加えられ初めて目にする文明の利器を
手渡される……この男はどこまで単なる飲食店アルバイトの人間にやらせる気だ?人手が足りんのかこの地下組織は?
 言いたいことは色々あったが成果を出せば褒賞も多く出る、頑張りに応じて店番せずに済むと考えれば俄然やる気も出る


―――
――




 イタ飯屋を出て魔術師達は屋台広場へと向かう、[ゲート]の転移先として登録された場所だ
弦楽器を背負った無職と初めて出会ったのも丁度この辺だったなと考えながら歩いていれば目標の集団が一つの屋台に居た





    ゲン「ういーっ!おやじ!酒だ酒!あと味の染みた卵と竹輪」ガッハッハ

    T-260「ゲン様、もうじきリュート様がお見えになられる時間ですが」

 レオナルド「まぁ良いじゃないか、結局ボク達はこの街の地理に詳しい案内の人が来るまで待つしかできないんだ」

 レオナルド「裏路地がタダでさえ迷路の様に入り組んでいるんだから土地勘の無いボク達じゃ目当ての場所に行けない」

 レオナルド「特に制限時間がある旅でもないんだから多少時間が掛かっても良い筈だよ」


    T-260「任務遂行の速度よりも安全性を優先とした進軍の為の準備、了解致しました」



 レオナルド(…それにしても驚いたなぁ、[マンハッタン]のバーガー屋であった彼、リュート君とこの街で再会とは)

 レオナルド(流石にメカになったから向こうはボクだって気付いてなかったみたいだけど)
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/05(水) 23:32:07.84 ID:U1gqCs3B0


  リュート「おーい!ゲンさーん!」

    ゲン「おっ!来たかぁ、そっちの連れ達がこの街に詳しいっていう――――」ピタッ


 酒気を帯びた真っ赤な顔が一瞬、色を失ったようだった
知り合いに瓜二つの顔がそこにあったからだ、……ただ、その知り合いとは何もかもが違い過ぎた
 知人の魔術師を人懐っこい犬、あるいは朗らかな太陽と印象付けるならば目の前の知り合いそっくりな魔術師は対極だ


 ほんの少し前に[ワカツ]城への案内を頼まれ、そして…背負っている重苦しい運命<さだめ>を打ち明けてもらった
だから顔を一目見てピンと来た





   ブルー「……あなたがゲンか?」

    ゲン「ああ?俺に用か、にいちゃん…まぁ飲めよ」スッ


   ブルー「[ワカツ]城への案内をたのm「ちょっとタンマ!?その台詞まだ早いだろっ!!」



 ルージュに瓜二つの顔を見て呆気に取られた剣豪を前にずいっと蒼き術士が前へ出て「……あなたがゲンか?」と問うた
彼らはリュートからの話では迷宮の様な暗黒街を案内してくれる水先人の筈だが1人だけ明らかに違う雰囲気で迫られた
更に言えば剣豪からすると色々と事情通な事もあってどんな言葉が飛び出すか内心で予測しつつ乱れたペースを整えようと
これまでも酒場で見知らぬ相手と友好的に接してきたように酒をまず勧めてみた




…開幕いきなり「[ワカツ]城への案内を」と来たのには色んな意味で変化球すぎた

ガイドを頼んだのは自分達の筈だが?いつガイドを頼まれる側になったのだ?



   リュート「その台詞は色々早いだろって!?…ああ、わりぃ実はちょっとワケありでさ…ちゃんと道案内はするよ」

   リュート「ただ、それが終わった後でどうしても…どうしても俺達を[ワカツ]に連れてって欲しいんだ!!」バッ!



     ゲン「お、おい…にいちゃん街ん中でいきなり頭下げんなって」


  リュート「利用するみたいで悪いとは思ってるけど、どうしても父ちゃんの親友の為に確認しないといけないんだ」

  リュート「コイツ、術士で瞬間移動できる術が使えるんだ!!だから一度入口まで通してもらえればそれでいいから」



 現在[ワカツ]への"宇宙船<リージョン・シップ>"は運航していないくもないが亡霊が蔓延る為に
最低でも地元民が一人いない団体は通してくれないという規定になっている、だから彼の存在は必要不可欠なのだ


  ゲン「……」ポリポリ

  ゲン「はぁ…なんだか知らねぇけど漢が頭下げるってのは相応なモンだぜ?知らねぇ仲じゃねぇしな」



  ゲン「すまねぇがレオナルドさんも、お前らもちょっと寄り道してもいいか?」





  レオナルド「ボクは構わないよ?さっきも言ったけど別に急ぐ旅じゃない[タルタロス]にはいつでも潜り込めるもの」

     T-260「戦力増強の手段を確保する過程で必要な対価ならば必要な行動です」




   特殊工作車「仕事ができるなら正直どこでもいいです」

  ナカジマ零式「なんか面白そうですし私も賛成ですー」

668 :続きは金曜日 [saga]:2021/05/05(水) 23:33:14.92 ID:U1gqCs3B0

<ワーワー!
<おっしゃっ!決まりだ!!



  「なんだ?隣のおでん屋の屋台今日は偉く賑わってるなぁ…」


 IRPO女性隊員「……」


  「しかもよく見ると向こう金髪の綺麗なお嬢さんが3人も、いいねぇ〜…あっ、お客さんも別嬪さんですよ」


 IRPO女性隊員「ラーメンご馳走様、お代はここに置いていきますから」チャリンッ

  「あっ、へ、へい!!またのお越しを!!」


コツコツ…

 靴のヒール音が不夜城を謳う街の雑踏に紛れていく、これから仕事で"犯罪組織の一端"が居るという"惑星<リージョン>"に
向かう彼女は右手を額に当てて小さくため息を吐いた
 偶には一人で静かに屋台のラーメンでもと思ったのがいけなかったのか、思いの外お隣のおでん屋が騒がしくて
ゆっくりと食事を取ることも叶わなかった




  IRPO女性隊員「はぁ…シップに乗る前に頭痛薬でも買うべきかしら」コツコツ…

  IRPO女性隊員「サイレンスは[ルミナス]で起きた戦闘行為の調査で長引くのが確定だし…」コツコツ…

  IRPO女性隊員「コットンは何故か音信不通、ラビットは[京]に置き去りにされてるらしいし…ヒューズの奴全く!!」



 女性は蟀谷<こめかみ>を一層強く抑えた、元より一人で静かにラーメン屋の屋台で食べるタイプじゃなかったが
職場の同僚(特に約1名)がこれでもかと言うほど毎回問題を起こす所為で誰もいない静かな場所でストレスを感じずに
食を取りたいと思うことがあるのだ

 歩きながらついつい独り言、大体がクレイジーな同僚の愚痴になるがソレを口にして
更に頭痛を覚えるという悪循環であった



コツコツ…ピタッ



  IRPO女性隊員「…ヒューズか、そういえばアイツ興味深い事を言ってたわね」

  IRPO女性隊員「サボテンみたいな髪型をした少年とその仲間達についていけばクロに当たる、か」



  IRPO女性隊員「…アイツ、本当どうしようもない奴だけど嗅覚だけは優れてるのよね」



 そう独り言ちて頭痛薬を購入した後、彼女は[シンロウ]行きのシップへと乗り込んだ


―――
――



【双子が旅立って8日目 午後 18時20分】


  ゲン「ほう!そんじゃにいちゃんは[ワカツ]流剣術に興味あるってか」

 ブルー「ああ、幼少時代に本で少しだけ目にしたこともあってな」


 大所帯となった蒼い術士達は裏路地を歩いていた、道中性懲りもなく浮浪者やモンスター、暴走したメカが無謀にも
襲い掛かってくるが特殊工作車の[機関砲]やナカジマ零式の[レールガン]が容赦なく相手の身体に大穴を開けて
レオナルド博士の[ビームソード]による袈裟切りが相手を切る――というより蒸発させた――

 銃弾の補充やエネルギーの補充中という僅かな隙の襲撃さえもグラディウスの面子達とで余裕の撃破であった
戦闘面においての問題は初めから無いに等しく、唯一問題視されていた下水道や階段、梯子、屋根の間に架かる板切れの橋
そういった複雑な道順も水先案内人を任された彼ら彼女らによって難なく進んで行けた
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/07(金) 23:36:45.03 ID:SIaEYkWJ0

 "九龍<クーロン>"の名に相応しい暗黒街の夜は早い、高層ビルに囲まれているが故に地表から見上げても空が見える場所は
ほぼ無いに等しく、また無法が罷り通る街だからこそ所謂、日影規制をまるで無視した土地開発が行われてき
建築基準法違反なんて言葉はこの"惑星<リージョン>"には存在しないのだろうな

 さて、そんな訳で日光が全く射さない裏通りの廃線跡――昔はちゃんと電車が通っていたのかさえ不明――の近く
崩れた地下鉄トンネルの近くに彼の根城はあった


 切れかけの灯りが頼りなさげに自身の存在を主張していて、辛うじて住人が居る住居だと解る紅い扉を開く
床には赤や黒の電源コードが伸びきっていて天井の飾りやネオン看板、箱型テレビやその他機器に電力を供給していた
 そんな店奥から店の主こと"pzkwX"は来客者たちに背を向けたまま、ある種定型文とも言える言葉を発したのであった





    pzkwX「よくこの店を見つけたな、トリニティからの横流し品がどっさりだぜ!」クルッ




 自慢げ(?)にメカである彼は振り返り、珍しく大所帯な客の顔を一瞥した…
[ヨーク綿の帽子]を被った糸目の一見客、同じく見知らぬ蒼い法衣を纏った術士風の人間
それに常連のイタ飯屋の女2人と重火器とは無縁そうな鉢巻にTシャツ一枚の中年男性と後ろに控えたメカ達―――




         pzkwX「!?!?!?!? 先生っ!?」



 一瞥していた横流し店の店主は驚愕した、背後に控えたメカ集団の内1機には見覚えがあった
生前、と評していいのか判断に困るが人間だった頃のレオナルド博士の面影があったからだ、だからこそ注視した
 機械であるがゆえに波長や脳波の読み取りも多少はできなくもない某豪華客船の医療用のメカが
体温検査や生体反応を検知できるのと理屈としては同じである

 目の前のメカからは確かに自身の"恩人"と同じ脳波パターンが検出されるのだ、疑い様が無く彼は命の恩人
レオナルド・バナロッティ・エデューソンその人なのだと


       レオナルド「やあ、元気?」


 久しぶりだね!と気さくに声を掛ける博士に密売店主は困惑した、一体どうして何があった!?
人間だった筈の博士が何故メカになどなっているのだ、と


       pzkwX「先生!?メカに商売替えですか!?」

     レオナルド「んー、説明すると長くなるけど色々と事情があってね」


 博士が自分がテロリストの起こした爆破事件…に見せかけたモンド一派の内部粛清にとばっちりで巻き込まれた事
こんなこともあろうかとオリジナルの自分に何かあった時様に人格マトリックスをメカに移しておいたこと
T-260達の為に[タルタロス]に降りるという趣旨を伝えている傍らでグラディウス組は物品の目利きを始めていた




1880クレジット[火炎放射器]
1110クレジット[ソニックブラスター]
1110クレジット[電撃砲]
4020クレジット[対装甲ロケット]
3200クレジット[キラーバウンド]
3300クレジット[粒子加速砲]
1550クレジット[マシンバルカン]
4020クレジット[破壊光線銃]





   アニー「んー、やっぱりさ弾数多い方が良いわよね?」

  エミリア「だったら[マシンバルカン]とか?これでジョーカーの頭をハチの巣に…」


 弾数多くても一度に使う弾が多いから凡そ8回分しか撃てないだの
なら連携に組み込む上で威力も重視して[粒子加速砲]にしようとか、物騒な話が飛び交ているが気にしてはいけない


           pzkwX「先生!ぜひ私にもついて来いと言ってください!!!」ガタッ
670 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/07(金) 23:37:25.28 ID:SIaEYkWJ0


  レオナルド「という事らしいけどどうする?よく働く良い奴だよ」


 敢えてそんな一択しかないような事を訊いてくる、元々戦力強化の為にここに来たのだからスカウトは当たり前だろうに
…が、博士のそんな一言でガタイの良いメカが双肩をビクッと震わせるのが見えた

 心なしか、顔に不安の色が見え隠れする……いや、メカに顔色も何も無いのだが


 自分も連れてってくれと息巻いていたのに、強行しないのは命令に背かないメカの性質ゆえか
恩人レオナルドの命令を頑なに遵守しようとする意志を感じる、来いと言われれば絶対的に忠義を近い
来るな、と言われれば行きたくとも「仕方ないな」と博士の言霊に服従する、そんな気配があるのだ





      pzkwX「せ、先生…っ」オロオロ



  レオナルド「んー、どうしたもんかなぁ、ボクとしては連れて行きたいけどこの人数だし皆の意見は尊重したいなぁ」






……それにしてもこの博士、愉しんでらっしゃる


 初めっからスカウトする気満々の癖して敢えてここでどうするか訊いて、密売店主の狼狽えっぷりを愉快そうに見ている
蒼き魔術師達は出逢って日も浅いからこの人物の性格がイマイチ掴み切れていないがゲンやT-260は比較的に
付き合い長い所為か「ああ、またか…」と呆れ始めていた


 最初レオナルドを探していた時も[マンハッタン]のバーガーショップでレオナルド博士を知ってますか?と尋ねたら
自分がそうだと直ぐに明かさずにラボまで連れてきてから実はボクが君たちの探してた人物でしたー!と言い出したり
そもそも自分が事故死したときの為にメカ化する仕掛けを用意したり、割と茶目っ気の強い人物ではあった


     ゲン「あー、俺ぁ良いと思うぜ、なぁ?」チラッ

     T-260「戦力増強はこちらとしても願っています」

   リュート「旅は多い方が楽しいぜ!!」



   レオナルド「だってさ、ついて来い!」グッ

     pzkwX「うおおおおおおおおおおおおおおーーーーっ!!先生!一生ついていきますぜ!」ガッツポーズ





   ブルー(なんだこの茶番は…)


 メカの癖に妙に暑苦しくて恩人への義理堅い密売人という…
ワーカーホリックの特殊工作車とも自由人のナカジマ零式ともまた違った意味で癖の強いメカが仲間になったものだ


     pzkwX「これは手土産だ受け取ってく「あぁ、待った待った」


 持参品として店の商品を一つもって加入しようとするのをレオナルドが一旦止める



   レオナルド「さて、ここで道案内までの契約報酬の半分を支払うんだろう?」チラッ

     アニー「そうそう、わかってるじゃん」


   レオナルド「ボク達について来るってことはこの店は畳めちゃうんだよね?そこでこの店の商品なんだけどさ…」


 閉店セールスってことで半額でいいからこっちの人達に譲っちゃくれないかな?とグラディウスの面々を指して
恩人は言った、常連客のアニーと最近購入の為にお使いで来ることが多くなったエミリアの顔を見て店主は考え込んだ

671 :続きは明後日 日曜日 [saga]:2021/05/07(金) 23:38:10.27 ID:SIaEYkWJ0


    pzkwX「おい、ネーちゃん達先生の御知り合いなんだよな!?」

   エミリア「知り合いっていうかついさっき知り合ったばかりなのよね…」



    pzkwX「先生の御顔もある、半額なんて言わないタダでこの店の商品は全部くれてやるぜ!」


    アニー「マジで!?店主太っ腹じゃん」ヒューッ


 思わぬ大収穫である、恩人の顔パス利用でジョーカー包囲網に向けて兵器を安く購入するというのが
ルーファスの算段だったがまさかタダでくれるとまでは思っていなかった、アニーも思わず口笛を吹く程
 グラディウスの女子陣が飛び跳ねて両手を合わせて喜び合っている中で店主が何か秘蔵の品を持ち出しているが
そこは目を瞑っておこう



    pzkwX「へへっ、コイツと私がありゃあ負けなしですよ!」つ[ハイペリオン]


 
 方に物騒な実弾兵器を担いだメカが豪気に語る、それだけではない、"身体<ボディ>"の至る所に備わっている火器
そのどれもこれもが前に立ちはだかる者を粉砕するのは想像に難しくなかった


―――
――



【双子が旅立って8日目 午後 21時12分】

【クーロン:屋台広場】



   リュート「あぁ…疲れたぁ、めっちゃ働いたぞ…」グッタリ

    ブルー「確かあの店にあった武器を全部グラディウスに運ぶのは中々に重労働だったな…」


 兵器の運搬作業は優に裏通りを4往復するに至った、道中襲ってくる敵は大したことはなくとも何度も
足場の悪い順路とグラディウスとをシャトルランするには骨の折れる作業である

 こんな街だから何があっても不思議ではないとはいえ表向きただの飲食店にそう何度も軍の横流し武器が搬送されたら
流石にあらぬ噂が立ってしまう、だからこそ一度に持ち出せる武器の数にも限りがあるし人目に付くのもあまり好くない
 気が付けば後1時間しない内にイタ飯屋も『clause』の札を出す時間にまで差し掛かってしまった


 …剣や術の実戦訓練になるとはいえ、皿洗いの方が良かったかもしれないと若干ブルーは思い始めていた


 ラーメン屋の屋台で前よりは上達した箸使いで麺を啜り、一息つく
これから[ワカツ]への行軍を果たすのだから中々に濃いスケジュールだ



     ゲン「おう、お前らもお疲れさん頑張ったな」


 剣豪が隣の席に座る、リュートを間に挟んで蒼い魔術師はゲンに声を掛ける



    ブルー「ああ、全くだ…大分遅れたが今度こそ[ワカツ]への案内を頼むぞ」

     ゲン「わぁってらぁい、しかしなんだってにいちゃん達はあそこに行こうってんだ?」

     ゲン「そっちの青い方のにいちゃんは剣術や使ってた武器、文化に興味があるからって言ってるがよ」


     ゲン「お前さんはどうなんだ?なんか親父さんの親友がどうだとか言ってたが?」



  リュート「ああ、実は…俺の父ちゃんの親友、モンドって言う人なんだけどさその人の事で[ワカツ]を調べたいんだ」



 "モンド"、その名を耳にした途端、ゲンの目が据わった…横目に見ていた術士はそう感じ取った
672 :短いですが2レス [saga]:2021/05/09(日) 23:05:44.50 ID:eAQpa41A0


  ゲン「モンド…モンドねぇ」


 隣席の男が発した名前を復唱しながら御猪口の安酒をゲンは喉へ押し込んだ、いつもよりも早いペースで
不思議と喉が渇いていた、大声をあげて怒鳴り散らした訳でもないのに、全力疾走した後でもないのに喉奥がチリチリした
 いつかの昔、どこかの"惑星<リージョン>"で似たような経験が彼にはあった、ある日何の前触れもなく
自分の日常が崩れ去っていく様、何かしようと奔走した挙句何も成し得ずみすみす護るべきモノが焼けて廃塵と化した記憶


    リュート「ゲンさん、頼む…モンドさんのやった事は多分アンタも知ってると思う、…承知の上でお願いだ」

    リュート「俺は真実を知っときたいんだ、人伝じゃなくて俺自身の足で現地に行って見聞きして知りたいんだよ」


 噂の域でさえもトリニティによって[ワカツ]は滅ぼされたと情報通の一般人に広まっている
表向きは原因不明の疫病の蔓延だの、人間に憑依する悪霊達の封印が解けて観光客や他国への被害が出るからと
よく分からない有耶無耶な理由付きで"苦肉の決断の末"に爆撃したという話になっているが

 事を始める前からトリニティ政府に反抗的な国家だとある事ない事を垂れ流して反乱分子だとも吹聴していたのだ
どっちにせよ何者かが意図的に滅ぼす気があったのは明確で

 当時、被害にあった出身者のゲンが一番その辺の事を知っていて当然な訳だ
自分が住んでた"惑星<リージョン>"がトリニティへの反乱など企てていないことも
疫病や悪霊だとかいう物が蔓延してるっていうのも嘘っぱちで単に攻撃する為の適当な口実に過ぎない事も…!



 ブルー「…俺も外界に出てから情報誌や"いんたぁねっと"とやらに触れては来たが[ワカツ]の件は不明瞭な点が多い」

 ブルー「情報が錯綜していて結局爆撃された理由がいまひとつ納得できんと感じたな」



 独自に発展した国家の文明やその風土を生かした文化遺産と呼べる物を遠慮なく破壊することは快く思えない
もしもコレが敬愛する祖国[マジックキングダム]だったら?と考えたら蒼き術士にはゾッとする話だ
美しい街並み、ポプラの木が並ぶ通りと中央の噴水広場、荘厳たる魔術学院や三女神に祈り信仰を捧げる聖堂…
それら全てがある日突然、何の前触れもなく理不尽な力によって蹂躙されたら?…考えたくもない


 珍しく術士は目の前の郷土愛のある剣豪に、他者に対しての共感を持っていた、なまじ興味のある剣の国だったから尚更



    ゲン「真実を知りてぇ、か…」


  リュート「…。」コクッ

    ゲン「…いいぜ、お前たちにも聞かせてやるよ[ワカツ]の同胞達の無念と、その想い、声をな」

  リュート「すまねぇ、俺の我儘で…ゲンさんだって辛いのは分かってるのに」


    ゲン「へっ、よせやい![ワカツ]の事を知ってくれる奴がちょっとでも増えるってぇならそれで十分だ」




    ゲン「真実を探したいんだろ?なら…俺だって、な」



 そう言って破顔する剣豪を見て弦楽器の男も漸くいつもの能天気な笑みを浮かべて麺を啜り出した
彼ら2人の成り行きを見届けたブルーも止めていた箸を再び進める、麺はすっかり伸び切っていてスープも冷めていたが
今この時この3人で食したラーメンの味は決して悪くはなかった


 腹も膨れた頃、[ワカツ]行きの便が出るのも丁度いい時間帯となり団体はシップ発着場へと向かう
道中、リュートの悪知恵で一山当てた例の金券ショップ前を通り掛った所、客が騒いでるのかこっちまで声が聞こえる




 「ええぇぇぇ!?!?[金]ってこんな高いのかよ!?…とほほ、俺がキグナスで働いてた頃の何カ月分だよ」

 「白薔薇の手持ちで2つだから、あともう2つか…昼の内に[クーロン]で求人広告探したけど収入良くないし怪しいし」

 「参ったなぁ、僕たちの手持ちのクレジットじゃ足りないしお金を稼ぐ手段が……!!そうだ確か[シンロウ]って――」



 …騒がしい客が居るものだな、まぁこんな街では然して珍しくも無いか、と蒼い術士は仲間達と発着場の自動扉を潜った
673 :続きは水曜日 [saga]:2021/05/09(日) 23:06:56.71 ID:eAQpa41A0

【双子が旅立って8日目 午後 23時00分】

 午後11時、日付変更線が自分達の真上を通過するまで一刻という折に彼らはその地へ降り立った
桟橋の上に死して尚、舟渡として客を延々と待ち続ける骸骨に背中越しに声を掛ける、帰ってきたのは「船を待ちな」と
簡潔な一言だけだった…程なくして一隻の小舟がやってきてメカ集団は後からで
先に"人間<ヒューマン>"組が乗り込み向こう岸で待つという流れになった


 波風立たぬ水面に舟渡が櫂<かい>を入れる


 澄んだ水面は夜空を映しぼんやりと青白く光る月の写し身もそこにはあった、切り込む様に櫂がそれを乱し
星も月も揺らいでは消えて、後には水底の泥が浮かんでくる
 透き通った水が反射した宵の光は沈殿物の浮上に消えて、いつしか浮かんだ物はまた沈み、星光を映す


 人の栄華にも似ているな、と近付きつつある向こう岸を捉えてブルーは思った


古城、半分雲隠れした蒼月に照らされた[ワカツ]城の独特な意匠を見て亡ぶ前はさぞ栄えたのだろうなと
同時に今の荒廃ぶりに一種の哀れみに似た感情を抱いていた
 人世は何時だって如何様な事があるか分からない、時代が進めば進むだけ進化はあり、順応できなければ取り残されて
廃れていく、だから栄華にはいつしか終わりがやってくるのだが、そこから伝統を守りつつも新しい風を吹き込む事で
文化、文明という物は成長を続ける


 砂上の楼閣の如き一時の夢であったとしても、崩れた跡に崩れ去った物を超える素晴らしい物を造ればいい
当然ながら過去の教訓を踏まえて次は簡単に崩れ去らない様にと




 だが、目の前の[ワカツ]城を見ていると、"次"なんてモノは果たしてあるのだろうか?と思わされてしまう



 復興という言葉は無関係な人間ほど軽々しく口にするが、現地へ赴き見ればわかる
何から手を付ければいいのか分からない混沌としたソレ、目の前に立つだけで呆然とただ気が遠くなっていく感覚
 する側からすれば諦めの二文字を叩きつけられるだろうな


  ブルー「これは…」ザッ

 エミリア「酷いわね」


 [ワカツ]への渡航は制限されている、最低でも現地の出身者1人がいないと通せないという話だが
その唯一の生き残りの存在自体が絶望的でゲン以外に居るのかどうかさえ分からない
 実質トリニティ政府による航路閉鎖の様な物で記者やカメラマンが立ち入れる場所じゃない

 情報誌やマスメディアによる報道、ネット情報でもその惨状は視覚で知ることは不可能である


 エミリア(ブローチをくれたあの人が、ね…なんだか複雑な心境)キョロキョロ
 リュート(……。)


   ゲン「それで何処に行くんだ、言っておくが剣聖の間―――城の天守閣の方には基地なんて大層なモンはねぇぜ」

   ゲン「つい最近ワケありの若人共を連れてったからよ」


 本当につい最近[剣のカード]を求めてきた集団を連れて行ったから知っている、上の方にはモンドの基地なんて無い


  リュート「んー、ならあっちの方とか?」


 無職は"天守閣のような高い所には無い"と言われたので、なんとなくで本丸から少しずれた位置を指さした
何気なく指し示した方角を見て剣豪は渋い顔をする


  ゲン「…あそこは、…確かにあっちの方は俺も前回行かなかったな…」

 ブルー「おい、あっちには剣聖の間とか言うのとは別で何かあるのか?」


 丁度メカ集団を迎えに行った舟渡が帰ってくるのを背景に不思議な力の流れを感じた術士が渋い顔を作った剣豪に問う




       ゲン「…あぁ、あそこは城の地下―――"剣神の間"へと続いてるのさ」
674 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 07:31:57.44 ID:7S8V41ap0

あの船渡しの骸骨好き
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 01:42:37.70 ID:EoSARVvs0
成程そうかブルーが滅ぼされたリージョンを見るの何気に相当意味出るんだな…
676 :ちょっと予定変更で金曜日に投下 [saga]:2021/05/12(水) 23:07:00.56 ID:ZN1uTtP90


  ブルー「剣神の間?なんだそこは…」

   ゲン「道すがら説明してやるよ、ついてきな」


 そう言って歩き出した剣豪の後について行く、曰く城の地下に剣神を祀っており優れた剣豪は剣神より刀を授かるとか…
聞き手に回っていた弦楽器の男は興味交じりで「神様がくれるってんなら凄い剣なんだな」と茶々を入れる
 その発言に対してゲンは生憎見た事が無いからわからないなと苦笑する、彼程の男であっても生きてる内に
見る機会が無かったとのことらしい

―――
――




    pzkwX「ッらおらおらァ!!どけってんだ!!」ジャコッ


   陽子ロケット弾『』ジュゴーッ!




  バッグォンッッッッ!!



 \ あぎぃぃぃぃぃ!!! /



 [ヘルハウンド]の群れ目掛けて放たれた弾薬は見事に群れ中心に居た一匹に直撃した、密売店主の秘蔵っこ品なだけある
四足歩行の魔物が火球へと変貌するのはあっという間で、炭化して生体活動を秒で停止させた個体を中心に炎の幕が広がる
"円形状<サークル>"に広がった熱の波は憐れにも近くに居た個体も巻き込み、本来熱に対して耐性を有していた種を焼く
 身体に纏った火を消そうと跳ねまわり、地を転げまわる獣にエミリアの[精密射撃]が入りそれも仕留められる
離れていた為無事であった群れも既に[刀]を振り下ろし終えたゲンとアニーの手によって切り伏せられていた



   T-260「危険生物の沈黙を確認、進軍を再開します」

 レオナルド「ふぅ、今ので会敵で何回目だい?」

   T-260「通算8回目になります」

 レオナルド「入口から歩いてまだそんなに経っていないんだけどねぇ、繁殖しすぎでしょ」



 名は体を表すとは言うが、地獄の犬にとっては死骸が無造作に放置されていたこの地は絶好の餌場だったのだろう
死者の弔、火葬にせよ埋葬でもなんでもされずにずっと野晒にされていた人間の躯<むくろ>はこの地を狩場として
屯っている犬共には丁度いい栄養源であったと言える


 外に腐敗した死体が殆ど無いのは、おそらくそういうことなのだろう


 "迷惑極まりない移民者"の血肉と成らなかったモノは骨だけの[スケルトン]種や
魂だけが一人歩きしてやがて[リッチ]と言った厄介なモンスターにもなっていたことだろう


 痛々しい崩落跡や階段や通路があった場所に走る亀裂、どうしても遠回りせねばならない道は多々あった
特に本来、剣神の間に続く地下への道は完全に表からは行けないようで裏手から回り込んで
櫓の中にある階段を降る必要があった

 裏手に行くための道を探すことがまた大変で前回そこを目指さなかった剣豪もまた崩れ通行が
不可能になった道には舌を打った


   リュート「おわっ!?今度はでけぇ蛾まで飛んできたぞ!?」チャキッ


 [グルームモス]を御供に連れた[ナイトスケルトン]が塀の上から剣を構えてこちらに飛び降りてくる
両手で柄を握りしめ膝を曲げて大地に劔の刃先を突き刺すように降り立ってくる骸骨騎士に応戦しようと
リュートは剣を構えるが、彼の後方から青い影が飛び出して彼と骨騎士の間に割って入った


     ブルー「ボサっとするな!」パリィ!![ディフレクト]

    リュート「ありがてぇ!![ベアクラッシュ]!!」ブンッ!

677 :明日明後日も少しずつ投下 [saga]:2021/05/14(金) 23:34:32.44 ID:PFmBWCuC0

 攻め手を防がれた上にそのまま押し退けられて仰け反った形の骸骨騎士に容赦の無い熊殺しの一撃が決まる
飛び上がってから落下の勢いを加味した渾身の叩き割りが骨騎士の頭部を両断したカボチャの様にして黙らせる

 毒々しい色合いをした蛾の怪物が[ペインパウダー]を放とうと翼を広げて羽ばたくも
蛾の巻き起こす風に逆らって飛んでくる機影が1つ、向かい風の形でナカジマ零式が[加速装置]を起動させた超スピードで
敵方の片翼をぶち抜く、バランスを失えば必然[グルームモス]は覚束ない飛行を始める
 機動力が低下した蟲を切り捨てるのは難しいことでもなくリュートを庇っていた術士が
その場から飛翔して唐竹割からの横凪一閃、[天地二段]を決めた


  ナカジマ零式「おっとっと…少しエネルギー不足ですね〜、WPの補充をお願いしますね〜」

   レオナルド「はいはい、キミはもう少し[神威クラッシュ]の使用は控えてほしいなぁ…WP容量は30までなんだから」

   レオナルド「よいしょっと、補給完了だよ」

  ナカジマ零式「おぉ、ありがとうございまーす!でもでもぉコレばっかりは浪漫ですから仕方ないですね〜」

  ナカジマ零式「敵がこんなにわんさか出る環境ですもん致し方無しって奴〜?」



 敵がわんさか出る、確かに間違ってはいない

 倒しても倒してもキリが無いのは事実だ、突如何もない虚無から忍者服の人影が現れたかと思えばアンデットが出る
此処ではそれが常であった、目視できるならば走り抜けて無用な戦闘自体を避けようとできるのだが
突然現れるのだから半ば事故の様な会敵だ



  ブルー「ゲン、この辺りで休めそうな場所はあるか?少しばかり術力を回復させたい」


 戦闘が多く術の消費も多かった彼は小休止できる場所は無いかと尋ねた
忍者の風貌した亡霊もそうだが、トリニティが爆撃していった後の名残なのだろうメカ系の敵が嫌に多い
地上掃討に使われたと思式[メカドック]が今も普通に稼働していて生きている者を誰彼構わずに襲ってくるのだ
 それらの対応をしてきた結果術力は空っぽでさっきから剣を振るって戦っていたのだ
[クーロン]の裏通りとは規模が違い過ぎる数の襲撃が頻繁にある、人数が多いとは言えゆっくり[術酒]を飲んでる暇もない



   ゲン「なら、ちぃと道はズレるが天守閣の方だな、前に剣聖の間に向かおうとして入った場所の入り口だが」

   ゲン「あそこなら奥に行かない限りは敵も見当たらなかったからな」


 剣聖の間の力に寄せられてか、城内にモンスターは陣取る様に身構えて、出入口には何故か彷徨っていなかったからなと
彼は付け加えて言った、分岐路となる場所を本来なら北上するのだが敢えて南下して進んでいく奇しくもルージュ達が
歩んだ道と同じ道をブルーは進み一息つけそうな所までやってきた


 荷物を置いて、[術酒]の小瓶を一本開けて飲み干す
アルコール特有のほろ苦さとは別の独特な味に舌がヒリヒリしていくのを感じ取る、旅を始めたばかりの頃とは違って
自分の術力も随分と増えた、小瓶1本分では足りないなと2本目を開けて飲もうとした時
いまだにシャッターを一回も切っていないカメラが目に入る



  ブルー「……。」


 悲惨な有様の[ワカツ]を知る者はいない、世界の誰一人としてだ


 そういう用途で渡された物ではないが写真に剣豪達の惑星で起きた真実を写しておきたい、少しだけそう思った


  ブルー「柄にもないことだな…」スッ


 ポケットに小型カメラを入れて、彼は2本目の酒を胃に流し込んだ



―――――ウケケッ!ハハハッ、ヒヒヒッ


  ブルー「!」ハッ!?


 頭の中に直接響く声の様な物を感じ取る、機械音声のエコーが掛かったような3人分の声を…
野営地としている此処から南方の方から変わった力――術の力を感じた
 魔物の中にも術を扱える素養がある者が存在する、おそらくこれは[邪術]の力だ
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 01:13:37.66 ID:L6lvClOc0

言われてみればワカツにメカ系うろついてるのそういう事だったんか
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/15(土) 22:27:01.39 ID:7nNE/mTO0

 ふらりと立ち上がり、声に導かれ―――いや、誘われたのだろうか、彼は歩き出した
そんな彼に気が付いたのはいつも一番近くに居たスライムであった


   スライム「( ゚Д゚)ぶくっ!?」

   スライム「(;´・ω・)ぶくぶくぶー」オロオロ


 名前通りの青い瞳は空虚を映していて、見ていて危なっかしい足取りでどうみても正常ではない、だというのに…
"誰一人"として仲間が気づかない、いや気づけないのだ
 異常事態だと悟ったスライムは直ぐに前ブルーに買ってもらった防水仕様の特殊手帳に同じく特殊な筆で書き込む



  スライム「ぶくくぶー!(; ・`д・´)」イソイソ



  エミリア「あら?どうしたの」


 一番近くに居た地下組織の二人組に声を掛ける、ブロンドの美女は身を屈めてゲル状生物と同じ目線(?)になり
話を聞いてみる……とはいえ、向こうで剣豪と何か話をしている無職と違って魔物の言葉は分からないのだが


  アニー「んー?なんか持ってるわね、…これって皆で映画見に行った日にブルーが買ってた奴じゃん」


 防水仕様手帳のページに急ぎ殴り書きで書いた文字に気が付き2人は目を細めた
術士がふらふらと虚ろな目をして野営地から出て行ってしまったという旨が書かれていたのだから…!


  アニー「はっ!?アイツが勝手に出歩いたって…―――!!本当だわ、居ないいつの間に…」キョロキョロ
 エミリア「そんな、どうして誰も気が付かなったのかしら…」キョロキョロ


 仲間内での話し合いに夢中になっていた、なんて言葉で片づけるにしては不自然だ
確かに天守閣に入れそうな横穴の出入り口付近を野営地にもした、周辺には霧が出ても居たが人間1人が外に出れば
直ぐにでも気が付く筈なのだ

 これだけの人数が居て誰一人としてその現場に気が付かないのは明らかにおかしい…ッ!

 異常性を察した二人が直ぐに剣豪と無職に声を掛け、またこれを機に各メカ達をメンテナンスしてたレオナルド博士にも
まだ整備中で動けない人員はこの場に待機、動ける者だけで捜索に出ると決めて直ぐに術士を探しに出かけた

―――
――




 コッチダ、コッチ



  ブルー(誰だ…俺を呼んでいるのは)フラフラ

  ブルー(こっちか?こっちにくればいいのか…)フラフラ



 遠くを見つめて見えざる何かの声を聴き彼は1人階段を降りていく、天守閣から南方…激しい戦闘があったのか
古戦場の痛々しい跡が目に付く中で彼はソレを見た


  宝箱『 』


  ブルー「……。」ボーッ
  ブルー「…。」



  ブルー「!?」ハッ!

  ブルー「な、なんだ!?俺は何故こんな所まで来ているんだ!?」バッ


 "色"を失っていた蒼い瞳は"色"を取り戻した、今の声はなんだったんだ!?何故自分は野営地からこんな所まで!?
敵対生物や暴走機械に亡霊が蔓延る危険地域で単身で歩くなど自殺行為ではないか!?

 白昼夢でも見ていたとでもいうのか、自分の行動に驚愕した彼は落ち着こうと息を整える…冷静にならねば
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/15(土) 22:28:26.85 ID:7nNE/mTO0

 深呼吸をして不可解な自らの行動とその前後を考える、自分は…そう声だ!何者かの声に導かれて此処に来たのだ
声を聴いて術の気配を感じた、それから頭の中が靄にでも包まれた様にボーっとして

 そこまで考えて彼は"まだぼんやりと『させられた』頭"で目の前を見る


  ブルー「…。」

  宝箱『 』


 この"惑星<リージョン>"特有の宝箱、紫色の紐でしっかりと縛られた漆塗りの刀箱がそこにあった
焼け落ち煤に塗れて倒壊した城の中にあるにも関わらず綺麗な状態で残った箱が…


 彼は双子の片割れと同様に術士として幼い頃よりあらゆる教養を施された上に生まれつきの天性があった
弟と同じく感受性は強い方だが時として感受性が強いという事は災いをも齎す、何事も表裏一体で長所も短所もある


 だからこそブルーは"彼奴ら"の呼び声を受信してしまったのだろう…

 彼はその刀箱に…






    銘刀―――[双龍刀]―――の入った刀箱に近づいてしまった








―――クハハハハハハ!!!
―――キタゾ、キタゾ!!
―――サァ、ワレラ ノ ナカマ ニ ナレ!!



     ブルー「っっ! [ゴースト]だと!?」



 ゴーストA「ぐふ、ぐふふ…来たナ」
 ゴーストB「いひひ…」
 ゴーストC「つよい 力をもったセイジャ、ワレラの同志となれ」


 トリニティ政府の指定認定危険度、通称【敵ランク2】相応のアンデッド…[ゴースト]
薄汚い茶色のローブに羽が生えた存在が蒼き魔術師の周りを囲むようにぐるぐると飛び回る
 フード奥の闇から覗かせる妖しい赤眼はまるで彼の存在を、命の価値を値踏みでもしているようで
それは魔術師の癪に障った


  ブルー「貴様らか…っ、下等種のアンデッド風情が俺を誘導するとは…」ギリッ


 奥歯を噛みしめて苛立ちをそのままぶつけるように指先を飛び回る亡者に向ける


  ブルー「冥府に還れ死にぞこない共がッッ!![エナジーチェイン]ッ!」


 指先から迸る翠色の思念波が空を舞う襤褸布<ボロぬの>を捕らえる、耳障りな笑いが呻く様な声に変わり
汚れた布切れは魔術の鎖に焼かれて煙を上げ始める


 敵ランク2程度の塵芥であるならばこれで絶命―――いや、昇天しただろうとブルーは鼻を鳴らして術を解除する
こんな奴に折角回復した術力を使い続けるのも勿体ないと内心で呟いて直ぐに残り2体も滅してやろうと態勢を変えるが…


  ゴーストA「…」ジュゥゥゥ、プスプス




  ゴーストA「…ケケケッ」ニタァ

   ブルー「なっ、馬鹿な…」
681 :次明日 [saga]:2021/05/15(土) 22:32:02.63 ID:7nNE/mTO0

 今までも[ゴースト]とは戦ったことがある、更に上位種に位置する敵ランクの怪物とも渡り合った事がある
故に、目の前の下等種が自分の術で仕留めきれなかった事に驚きを隠せなかった



 この時、漸くブルーは"頭の中に送られた靄"を振り払うことができた




 ―――…考えてみればずっとおかしかったのだ、彼1人が野営地から出て誰一人として"気づかなかった事"も
感受性の高い術士の頭の中に声を直接送れた事だってそうだし[邪術]を扱えるという時点で
並みのモンスターにはない知性がある



 もっと言えば魔法王国の誇る優秀な術使いの"意識を鈍らせた"くらいには普通じゃないのだ




   ゴーストC「うけけっ 悶え苦しメ…」スッ



――――[激痛]!



 襤褸布の裾から人の物とは思えぬ青白い皮膚にも似た手袋が出てきてその指先が天を指す
赤眼が上弦の月を描く、唇は見えないが呪いの言葉を吐き出す


 ぴしっ、みしっ


 神聖な酒で満たした術力の無駄遣いだ、節約がどうと言ってる場合じゃないと[ヴァーミリオンサンズ]で蹴散らそうと
詠唱を始めるよりも先に相手は動いた、戦場に立つ何者の追従も許さぬ"最速行動<ファストトリック>"で紡がれた呪文
 聞き取ったと同時にブルーは自身の身から罅割れ、圧を加えられて折られる様な痛みを錯覚する



  ブルー「う" ぐッ っっ!!」



 実際、身体には内外共に損傷は無い、ダメージなど負っていないのだが身体の神経が痛みを"錯覚"する
プラシーボ効果の様な脳の思い込みから成る現象、一種の催眠術に近いソレを意図的に引き起こす[邪術]の効力で
在りもしない痛みに思わず膝をつく、詠唱も途切れて術の発動も失敗に終わり完全にスタン状態に陥ってしまった…っ!



  ゴーストB「はははハはは、苦シめ」
  ゴーストA「お前も我らノ仲間となレ」


 強き力を宿した人間が死に、その魂が同志となることを望む悪霊は笑いながら宙を踊る、両腕を広げてその場で大回転
空気が渦を巻いて霊の身体から瘴気が放たれる、毒々しい紫色の強風―――[イルストーム]が剣豪の故国に吹き荒れる
 生命を冒す暴風を風任せに流れて先の思念波で焼いた亡霊が術士に両腕を伸ばす



 それはまるで新たな仲間を抱擁するように、慈愛に満ちた、それでいて残酷な黄泉の国の手引きのようであった





           「ぶくぶーーーっ!」ドゥッッッ



――――ゴッッッ!!


  ゴーストA「ぐギャ!?」バキッ


 敵ランク2相応の下位アンデッドが得意とした[ゴーストタッチ]とは天と地ほどの差がある
相手の生命を削り取る[ライフスティール]を仕掛けようとした矢先、何者かに邪魔された…っ!

 亡霊共は超スピードで[突進]してきたソイツに目を向ける
紫色の鬣<たてがみ>に立派な一本角、本来その種の個体より一回り小さい馬型モンスターを…っ!
682 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/16(日) 23:55:24.75 ID:5aIbr/8D0

 本来の個体よりも一回り小さな一角獣―――[ユニコーン]は倒れた術士の前に出て蹄を鳴らす
生命の象徴、治癒を司る聖獣が死者達を前に立ち塞がった


   ブルー「…お前、スライム、か…?」


 身体を蝕む存在しない[激痛]が収まりつつあった彼はゆっくりと顔を上げる
自分の前に立つ獣はその身に似つかわしくない「ぶ」と「く」だけの発音で答え、角を天に掲げる様に大きく首を振るう



   キラキラ…!


  ブルー「…むっ、これは」ポワァァァ…


 吹き荒れた瘴気を肺に取り込んだ事で感じていた身体の不調が浄化されていくのがわかる
[マジカルヒール]による奇跡の輝きに包まれたのだと魔術師は解った



  アニー「そいつに感謝しなさいよねっ!いの一番でアンタが居ないのに気づいたんだ!!」


 雷光一閃、稲光が走ったかと勘違いするような速さで剣を構えた金髪が一直線上に居た亡者を突き刺す、突き飛ばす
心の臓があった場所を全力疾走の勢い付きで一突きから背部周り込みで打ち上げ、喉首を搔っ切り脳天を勝ち割る動き

 [神速三段突き]の動きで有毒の気体を発生させた個体を打上げられた際に銃声が2発
夜闇を裂くように紫電を帯びた弾丸がいくつもの線を描いた後にアニーが最後の一太刀を脳天に振り下ろすタイミングで
ぴたりとフード部分から覗かせた赤眼に寸分違わずに直撃した



 [二丁拳銃]からの[跳弾]によるダブルパンチと[神速三段突き]が織りなすダメージに耐え切れず霊が掻き消えたと同時に
ホルスターから銃を引き抜いた状態のエミリアが上の階段から飛び降りてくる…っ!



   リュート「いたいた!!心配したんだぞ〜!勝手に居なくなるなよなぁ」タッタッタッ!

     ゲン「魑魅魍魎<ちみもうりょう>共か…っ!にいちゃん無事か!?」タッタッタッ!



 抜刀した状態の剣豪、新調した[サムライソード]を両手にそれぞれ1本持った自称相棒がその後に続いて駆け降りてくる
呑気な口調でいながらも中段まで降った所から狙いをつけての[二刀烈風剣]を放ち牽制して
本命の剣豪による[飛燕剣]が襤褸布お化けを切り裂いていく








  ブルー「お、お前達まで…」




 増援の到来と同胞を喪った事に襤褸布は憤怒する、そして[ユニコーン]の姿に変化したスライムを一瞥した
"魔物<モンスター>"という種族は同じ魔物を倒し吸収することでその力を取り込み徐々に強くなる種族だ
 "人間<ヒューマン>"と異なり閃き、成長といった物には縁の無い性質上…術という存在にもそこまで関わってはこないのだ


…普通の術であれば、だ




 例外的に[邪術]は違う、術というカテゴリーにありながら"人間<ヒューマン>"や並の"妖魔"にさえ扱えない異質な術系統

"魔物<モンスター>"だけが扱える術だからこそ、同じ"魔物<モンスター>"種のスライムは気付いたのだ




  ゴーストA「オノレ…おのレ、許さンゾ怪馬よ」グググッ
  ゴーストC「そのチカラを吸わせろ、それで贖うガいい」コォォォォ

683 :次木曜日 [saga]:2021/05/16(日) 23:56:47.79 ID:5aIbr/8D0

 襤褸布の怪は同胞を喪った怨嗟の声を歌として響かせる、崩落した城の瓦礫に呪歌が反響して力場を築く
耳障りで聞いているだけで気力が捥がれていく嫌な音だ


  アニー「きゃっ、な、なに…」STR DOWN×3

 エミリア「頭割れそ―――なんなのよ!銃の狙いが定まらないじゃないの!」WIL DOWN×3


 リュート「うおっ、なんちゅうド下手糞な音程だ、力がへなへな抜けてくぞ…」ガクッ
   ゲン「グッ、上等じゃねぇか化け物!!」ブンッ


 憎悪の声は[サッドソング]となって自軍を蝕んでいく、剣の柄を握る握力も振るう肩の筋力さえ著しく落ちていて
それでも負けじとゲンが一太刀振るい後にリュートとアニーも続くのだが決定打を与えきれない
 頭の中で嫌な音の濁流と戦うエミリアの銃口も火線が定まらず、急所への狙いが大きく狂いズレて
相手の身体をギリギリ掠める程度にしか傷を負わせられないままだ…っ!


 彼奴等の産み出した力場というのはそれ程までに厄介極まり無いのだ、本来ならば先程一体仕留めたのと同じ様に
亡者共を消滅させられる筈なのだが、威力の低下に加えて[ライフスティール]でこちら側の生命力は着実に削りつつ
向こうは吸い取った生命力で大幅に回復するのだから溜まった冗談ではない
 このまま膠着状態が続けば自分達が先に根を上げる持久戦になるのは間違いない



  ゴーストC「くはハは、[激痛]に悶エるがいい」

  ブルー「い、いかん…アレは気をつけろ!!」



 不利な力場環境を作られた状態で弱体化させられた集中力を使う、どうにか全身の霊感を高めることで初見よりかは
大分身体の自由を利かせられるが、それでも術や技の発動までには至れない

 他の仲間達もまた少し前のブルーと同じように激痛に顔を歪めてその場に蹲る、唯一ゲンだけは気合で[激痛]を振り切り
濁流が如く敵を切りつけに行こうとしたのだが


  ゴーストA「分霊ヨ、[雑霊撃]!!」


     ゴースト『』スゥゥゥ…

ゴースト『』スゥゥゥ…  ゴースト『』スゥゥゥ…


 亡霊の身から現身の様な存在が3体現れ、半透明なソレ等が剣豪に付きまとい取り押さえる
この世成らざる者の魂に触れて全身に突き刺さるような痛みを感じたかと思えば足が止まる
 麻痺――というには凶悪な物でもない痺れが全身に回り、物理的にその動きを止めたのであった


  リュート「く、くっそ〜…なんだって[ゴースト]の癖にこんなにつえぇんだよ…っ」ヨロッ

   ブルー「…。」ググッ



   ブルー「俺に、―――俺に考えがある」ボソッ

  スライム「ぶ、ぶく…?」


 幻覚の痛みでふらつきつつあるスライムを始め他の仲間達が術士の顔を見る、誰も彼もが辛そうな顔で―――だけど


  リュート「なんだよなんだよ!起死回生の策があるってのかよ、こりゃあ俺達もまだ助かりそうだなっ」ニィ
  エミリア「もう!それなら早く言いなさいよね…口も性格も悪いけど実力は確かだって認めてるんだからね」フッ


―――だけど、誰一人として諦めてはいない、口角を釣り上げて希望を見た様に誰も彼もが目を向けてくる


    ゲン「おう、にいちゃんその策ってのはどうすりゃいいんだい、俺は何をやりゃあいい?」
   アニー「アンタの策ってヤツに乗っかってやるさ、だからあたし等に指示を出してよ」


    ブルー「…助かる、俺の考えは――――」




 ……大勢の仲間と戦うのも、悪くないな、 蒼の魔術師はそう思った
684 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/20(木) 14:53:12.81 ID:8LDl/Jlh0


    ゴーストC「苦痛を味ワえ、[激痛]よ!」

    ゴーストA「コォォォォ…ばあ"あ"ああ"""あ"」カパッ、ブォォォォォォァァァ――!!


 "最速行動<ファストトリック>"で発動する偽りの痛みは身体を通る神経に浸透し、強者の精神さえも蝕む苦痛の枷となる
搦め手に溺れた6人の真上目掛けて襤褸布の怪はフード越しに見えぬ口を開き冥府の吐息――[デッドリーパウダー]を吐く
 黴の胞子にも似たソレが真冬に舞い降りる雪が如く降り注ぐ、地に落ちる同時に弾け飛び肉を腐らせる毒をまき散らす

―――
――



 戦局を覆す場合、用兵術の一説に"攻撃三倍の法則"というものがある、曰く牙城を崩したくば敵勢力に対して
3倍相当の兵を揃えよという理だ

 古来の合戦上で雑兵1人を3人の雑兵で囲い確実に仕留める戦法、武人が目の前の相手と鍔迫り合いをしてるところで
左右から横槍が飛んできて脇腹を貫く単純明快な話だ
 当然、数の暴力を物ともしない一騎当千というイレギュラーや相手の優れた策を用いた手痛い反撃で
三倍の法則も破られることはあるのだが…



 祖国の学院でも当たり前だが用兵術に関しては多少なりに学んでいた、今の状況が正しくそれにあたる


 修羅場を潜り抜けてきた実戦経験豊富な地下組織の構成員2人、[ワカツ]の剣豪1人、なんやかんやで生き残る無職
決して弱くはないモンスターに変化したゲル状生物、魔法王国から勅令を受けた術士

 単純に数を見ても6対2、であるのに何故苦戦しているか



 自軍が身動きを取れない状態になることで無力化されるから、戦力としてカウントできない"案山子状態"であるなら
それは6対2とは呼べない、ではどうするか?




  - ブルー『…助かる、俺の考えは――――"1度だけ俺が隙を作る" その際に迅速に片方だけ落として欲しい』 -




 筋力、集中力が著しく低下して個々の戦闘パフォーマンスも落ちている、その状態でも全員で片方に対して集中攻撃を
掛けさえすれば攻め落せる計算だ、元より最初に倒せた奴も2人居れば勝てたのだ
 なら能力低下を加味しても5人総出で1対に集中砲火を当てれば撃破も可能、残るのはラスト1体…

 如何に動きを封じる[激痛]があろうと意味がない
動きを封じたはいいもののその間に攻撃を仕掛ける役割を担う者が居ないのだから



   - ブルー『連中の定石は相方が居るからこそ成立する戦い方だ、片方が動きを止めてもう片方が攻める』 -



 鍔迫り合いに持ち込んで身動き取れない敵を真横からバッサリと討ち取る、それと変わりない


 強いて言うならば封じ込めの影響範囲が1人ではなく6人全体に広がるという違いでしかないのだ


 - ブルー『この中で一番霊感を高められるのは恐らく俺だ、此処に呼び寄せられたり彼奴等の術中も味わった』-

 - ブルー『だから高めた霊感を身に纏い護りに転ずれば一度だけは耐えきれる、その後直ぐに――――』-

―――
――


    ゴーストC「くかかカカかかか……クカ?」
    ゴーストA「んンん〜?」



   ゲン「…へ、へへっ、まだ死ねねぇなぁ…」ヨロッ
 スライム「ぶくっ!」


 剣を突き立てて杖代わりにまだ立ち上がる剣豪、すぐ傍に一角獣の姿をしたスライムが居る
685 :続き土日のどっちか [saga]:2021/05/20(木) 14:54:48.91 ID:8LDl/Jlh0


  アニー「ここが正念場ってね…っ」チャキンッ
 リュート「そうなるみてぇだな」スッ


 剣の切っ先を真っすぐ向けていつでもスタートを切れる状態のアニーと二刀流の構えでいるリュートが後ろに居る
そしてその背後で銃を構えたエミリアが、未だ膝をついたままのブルーが居る


 亡霊達は闘志を絶やすことなくこちらを見つめる生者達をせせら笑った、まだ諦めないのかと
搦め手に嵌まっている以上、チェックメイトからは抜け出せないのがわかっていないと
 よしんば[激痛]に耐えれる者が1人2人居たとしてその人数では自分達に致命傷を与えられない
受けたダメージも[ライフスティール]で相手から命を奪いつつ自己回復も図れるから負ける通りなど無いと


  だから、これまでもそうしてきたように呪いの言葉を紡ぎ出した

 動きを封じてその隙に少し前までは2体居た同志が無抵抗な者を甚振り殺していくセオリー通りの動きだ







    ゴーストC「かかかカカカかッ、愚かナ者達には相応しイ痛みを―――」





 [激痛]、今まさにそう言おうとした瞬間だった



































       ブルー「その力の奔流に飲まれ自らを滅せよ![サイキックプリズン]…!!!」キュイィィン!!








 蒼き術士が呟く様な声で詠唱を始めて印を切り始めたのは[デッドリーパウダー]が降りしきる中であった
一行の中で一番霊感が高いが故に[激痛]の呪術に耐えきった、仲間がスタン状態に陥るその中で敵に向けて密かに
魔力の檻を用意しておいた…っ!

 相手を爆殺する[インプロージョン]によく似た変形二十二面体の牢獄…っ!"科学的超能力<サイオニック>"の高位術が
亡霊の今まさに放たんとする[邪術]の力に反応して橙色の防壁へと変色していく…っ!!

686 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/21(金) 10:45:24.06 ID:qcWIB+rgO
そういや術だからバックファイア有効なのか
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/22(土) 01:50:09.98 ID:1BYRLjE00
ほんとにやたら強いんよなあのゴースト
688 :続き火曜日 [saga]:2021/05/23(日) 22:20:12.42 ID:ysoEIPa80


                [ バ ッ ク フ ァ イ ア ]



 変形二十二面体からジジジッと高圧電流でも流れた音がする、檻の中で暴発した術力がピンボールよろしく跳ね返り
術者たる襤褸切れお化けの身を焼いていくのは誰の目から見ても明らかだった

 敵方の定石は先述の説明通り片方が動きを止めてその隙に相方達が身動き取れない相手を甚振り殺すことだ
拘束する役割を担っていた片方は御覧の有様、とすればもう一方の動きはどう出るか…いや元からどうだったのか



  ゴーストA「な、なニィ!!!」

  ゲン「うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ――――っ!!!」ダッ



 堰き止められていた川が氾濫するように、彼らは駆けだす…っ!剣豪が、一角獣が、金髪の女が…っ!
その背後からは二丁の銃声が響き、烈風の剣気を飛ばす影も見える

 焼けた同胞が魔封じの檻から漸く開放された所を亡霊は目にするも今からでは到底[激痛]は間に合わない
自分が詠唱を始めたとしても走り出した連中を食い止めるより先に我が身に一撃が入りそこからは畳みかけられてしまう
 詠唱に時間の掛らぬ[雑霊撃]は?…対象が1人だけに限定されて1人止めても他が雪崩れ込む…っ!



   ゴーストA「ぐ、ぐぐグぐ…ぐそおおおお"おお"お"おぉぉぉ""ぉぉ!!!」カパッ、ゴォォォォォォ!!



 物の怪は一か八かの賭けに出たッッ!!

 呪詛を呟く為の口を大きく開き"声"を解き放つ――――音波攻撃に属する[スクリーム]を前方に目掛けて打ち出す
もはや動きを封じ込めるのは不可能と知り、ならば一人でも多く自分が叩き出せる最大火力の範囲攻撃で迎撃するしかない

 大気を震わす衝撃波は最前線に居る剣豪の身を襲う、次は幻覚でもない本物の痛みだ…しかしゲンは止まらない
衝撃波の勢いは先頭の男が壁となることで落ちていき、その真後ろには人よりも身が大きい一角獣が居て
それもまた後方への負担を和らげる緩和材となっているのだ


    ゴーストA「な、なぜダ!!!なぜ直撃で平然ト…ハッ!?」



   スライム「ぶくぶくぶーーーーーっ!!」キラキラ



 ゲンの真後ろにぴったりとくっつくように追従してくる[スライム]の一本角から七色の光が漏れていた
それは蒼き術士の毒を消し去った癒しの光[マジカルヒール]の輝きだ

―――
――


 - ブルー『その後直ぐに―――奴の拘束術を無効化する反撃の術を唱える、そこから一気に攻勢に出るが…』-

 - ブルー『彼奴等とて黙ってこちらの反撃を見過ごす間抜けではない、当然迎撃してくるだろうよ』 -

 - ブルー『そこでゲン、すまんがお前には弾避けの役を担ってもらう』-

 - ブルー『俺の見立てではこの面子で頑丈なのはお前と次いで[ユニコーン]に変身したスライムだ』

  - ゲン『なるほどね、所謂タンク奴っちゅー奴か…いいぜ引き受けてやらぁ』-


 - ブルー『スライム、お前はゲンをサポートしながら前進だ俺にやったのと同じ奴をできるな?』-

- スライム『ぶくっ!!』-

―――
――



 満身創痍だったゲンの体力を回復させつつ、先の[雑霊撃]の様なスタン作用を持つ何かしらの攻撃が来ても即時復帰で
敵への猛進を遮らせない手段…っ!最前線に立ち誰よりも早く前へ前へと進むことで相手方からすれば迫るゲンこそが
優先順位の大きい敵兵となる、到達順を考えれば遠くに居る敵よりも一番自分に近い敵を落とそうとするのが心理という物

 こうすることで後方に居るエミリアやリュートは勿論、まだ回復していないアニーにも攻撃ヘイトが向き辛い
[マジカルヒール]は生憎と1度に1人しか回復できないのだ、そこまで踏まえてのこの布陣である
689 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/25(火) 23:56:52.90 ID:5fq+83BG0

 円環状の振動波を化した魔声を一身に浴びつつも剣豪は止まらない、止められない
生命の象徴に擬態した仲間の助力を得て"音撃波<ソニックウェーブ>"を真っ向から裂いて進んでいく
その様は荒れ狂う濁流が如し…ッッ!!



   スライム「ぶ、ぶくぶくぅ…」ヨロッ

   ゲン「…おう、ここまで付き合ってくれてありがとよ、ここまでくりゃあ十分だぜッ!!」ジャキッ



 とっておきの一撃を喰らわせられる射程範囲に魑魅魍魎を捉えた、ずっと傷を癒しながら背にぴたりと並んで走り続けた
小さな聖獣に労いの言葉を一つかける、後は物の怪を黄泉へと送り返すのは…っ!



   アニー「あたし等の仕事だっ!!」


 スライムの脚が徐々に速度を落とし、反対に剣豪は速度を上げる…っ!あまりの速さ故に残像さえも視える
韋駄天の域に達した侍の残像が彼自身の闘気を纏い、宛ら質量を持った残像と言うべき存在に変わる
 1人だったゲンが4〜5人に分裂したと見紛う光景を見てスライムは安堵する、嗚呼、自分はやり切ったのだと
親愛なる術使いの期待に応えられたのだな、と…

 縺れそうになる脚、よろけそうになった身体の真横を一直線にアニーが通り抜ける
「後は自分達が引き受けるから安心しな」、すれ違い様に見せた清涼感のある笑みは功労者のスライムにそう語っていた


 一切合切の迷いが無い、直線的な走りでありながら静かに流れる様にも見える動き…それは小川に流れる清流が如くッ!



 キュィィン!キュィィン!!


            2連携 [ 濁 流 清 流 剣 ]





 瞬く間の出来事ッ!!

 質量を感じさせるゲンの残像が散開して気が付けば襤褸布を取り囲んでいた本体含めた5人分の人影が一斉に構え
同じタイミングで同じ動きで切り抜け碧色の闘気の線が5条流れ――――そこに蒼白の道が現れる
まだ闘気の余韻残るそこに…っ!濁流の流れで築かれた力の淀みへ清流が流れ込むッ!!


 碧の闘気に蒼白を上塗りして剣気を余すことなく敵方へと注いでやる、できたばかりの傷口に容赦なく塩を塗り込む様に



   ゴーストA「ぎぃぃ"ぃぃぃ"ゃああ"あ"ああ"あ"あああああ――――っ」ズバァァァ!!



 小さな羽の生えた茶色のローブは2人分の剣気に裂かれて物の数分せぬ内にバラバラになっていく
頭部のフード、左右の裾腕、上半身と下半身、五つのパーツに切り分けられ、その上で身体の中心線から左右へと
清流によって縦一文字に切り開かれた



   ゴーストC「わガ同胞ヨ…!」

   ゴーストA「お、ノれ」


 キュィィン!キュィィン!!

  バシュンッ!ダダンッ!

            2連携 [ 二 刀 烈 風 跳 弾 ]


 剣豪が放った闘気によく似た翠色の烈風が二撃、散り散りになっていく亡霊の身体を細かく分解して
それが元は着物であったことが分からぬ程に細切れにした後に飛んできた跳弾で紙吹雪をばらまいたみたいに空に舞った


 暴発した術力の乱反射から解放されたソイツは掻き消された同族を見て手を伸ばす

 だが、もうそこに生者の魂を求める悪霊は居ない

690 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/25(火) 23:57:36.82 ID:5fq+83BG0

 勝敗は決まった、これまで数の不利を覆せたのも倒した亡者がこちらの大半を機能不全にしていたからに過ぎない
役割を担う者が潰えた今、詰みの一手を指し迫られた盤上を引っ繰り返す事なぞ不可能だ


       ゴーストC「ハッ!?」バッ!


 手負いの悪霊は己を取り囲む者達を見た


 いつの間にやら至近距離まで詰めてきてこちらに銃口を向ける元モデル
柄を握りしめて何時でも天高く跳び上がる用意が出来ている黄金色の髪をした女、いつでも術を発動できる魔術師
抜刀の構えで下から上へと切り抜く気の満々の剣豪、功労者のスライムに[傷薬]を与えながらも逃げさ無い様に囲む無職





    ゲン「還りやがれってんだ!―――ここは"死者<てめぇ等>"の住む世界じゃあねぇんだよ…っ」チャキッ




            3連携 [ 十 字 逆 風 の 二 段 ]






 闘気を込めた銃弾が5発、頭部、心臓部、下腹部、両腕と十字架を刻む様に放たれて直ぐ様[逆風の太刀]が入り
飛翔したアニーの振り下ろし、着地と同時の横凪で最後に残った亡霊もまた黄泉の国へと送られていく…



   ゴーストC「グ、し"ぃぃぃああああああ"あかか"かあ"ぁあぁぁ"ぁ"」ボジュウウゥゥ…


 死者が最期に上げる声を断末魔と評していいのかは分からないがソレさえも無くなりタダの襤褸布切れとなったソレは
術士の爆裂術によって完全に灰となる


―――
――






   ブルー「…終わった、か」


  リュート「ふぃーっ、いやぁ今のは正直ヤバかったぜ〜…なんにしても危機は脱したし一件落着ってトコかね」


 印を切って、襤褸布を火葬した術士のすぐ傍でリュートが弦楽器を取り出し陽気に歌い出す
さっきまでの緊迫した空気はどこへやら、そんな糸目な彼につられて思わず最初にエミリアが噴き出す


  エミリア「ふふっ、一件落着ってまだ調査も終わった訳じゃないのに」


 結果だけ見れば偶々思わぬアクシデントに遭遇して要らぬ疲労を得た、モンドの基地とやらの調査自体は完了してないが
呆れを通り越してなんだおかしくて、それが緊張の糸を解いてくれたのだろうな


  エミリア「それとブルー、今度からは気を付けてよね?」


   ブルー「それは…その、なんというか本当にすまなかった」

   ブルー「今回の件は間違いなく俺に非があった」ペコッ


 リュート「おおっ、ブルーが頭を下げたぞ!いつもこれくらい素直にデレてくれるなら相棒として俺も――いてて!?」


   ブルー「誰が相棒だ、誰が」グイーッ

 リュート「痛い!?ちょっ、耳伸びるからやめて!?調子に乗ってすんませんって!!ねぇブルーさん!?」

691 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/25(火) 23:58:03.84 ID:5fq+83BG0


  スライム「ぶ、ぶくぶー…(´・ω・)」ノソノソ

    ブルー「ん?」チラッ


 むず痒さを紛らわす為、都合よく調子のいい事を言ったリュートの耳を引っ張っていた魔術師は背後に居るゲル状生物に
気が付いた、もう[ユニコーン]の姿から元の[スライム]に戻っている
 蜂蜜色の髪を揺らしながら彼はスライムに近づきそっと身を屈めて…



   スライム「('ω')…ぶ? ぶく?」

    ブルー「…。」スッ










              ブルー「お前のおかげで俺は死なずに済んだ、ありがとう」


                      スライム「(´・ω・)!?」





 フッ、と柔らかい微笑みを浮かべて蒼い術士はそう告げた

 これにはスライムも……いや、ブルーという人物をよく知る無職とグラディウスの面々は目を丸くして驚いた
明日は天変地異が起こるかもしれない、リージョン界が滅亡するのでは?



   アニー「う、うそぉ…」
  エミリア「あのブルーがお礼を言うなんて…不吉だわ」
  リュート「マジか!?明日は雪、いやいやリージョン破壊兵器が表れて世界の終わりが来てもおかしくないぜ!」


  ブルー「貴様ら言いたいことがあるならハッキリ言え」





   スライム「(´・ω・)…」


   スライム「(*'ω'*)…っぶく!」パァァァァァ…!キラキラ






   スライム「(*‘ω‘ *))))=((((*'ω'*) ぶくぶくぶー!!ぶくぶくぶー!」ピョンピョン!ササッ





 ブルーに褒められた。

 それが嬉しくて彼の周りをぴょんぴょん跳ねながら、ぐるぐると回るスライム…宛ら親に褒められた子供のようだった


 ゲン「ははっ、コイツにいちゃんに褒められて嬉しいみたいだな、けどそんなに走り回ってると危ないぞ―――」


  スライム「(*‘ω‘ *)ぶくぶく――――」



 床に落ちてた宝箱『 』ドカッ!!

 スライム「( ゚ω゚)ぶくっ!?」ドンッ、ポテッ
692 :次、木曜日か金曜日 [saga]:2021/05/25(火) 23:58:48.44 ID:5fq+83BG0


  ゲン「ああっ、ほら言わんこっちゃね…ぇ?」キョトン



 はしゃいでたスライムが何かに躓いて(というかぶつかって)転んだ…箱状のそれは先の戦闘で[ゴースト]共の放った
[イルストーム]や[デッドリーパウダー]で吹き飛ばされてうまい具合に瓦礫の山に突っ込んでいて
危うく誰も気づかず帰る所であった…


  ゲン「こいつぁ刀箱じゃねぇか…」


 紫色の紐でしっかりと縛られた漆塗りの刀箱、空襲で城が焼け落ちた時も汚れ一つなく
ましてや戦闘の余波で吹き飛ばされたにも関わらず綺麗な状態で残った箱は…まぁ普通の箱というわけではなく



  ブルー「おい、ゲン…この箱はなんなんだ?
           そもそも俺が下級アンデッド共の呼び声に惹きつけられて気付いた時もこの箱の前だったぞ…」


   ゲン「これは武士の命を収めとく箱だ、しっかしこれだけ綺麗に残ってるとなると普通の[刀]じゃねぇな」


 [ワカツ]というのは剣豪が、侍が技を競い、洗練された刀を作る鍛冶の国家だった
それゆえに[ルーンソード]の様な術を込めた特殊な劔や妖力を秘めたる銘刀も取り扱っている


  ゲン「……」

  ゲン「もしかしたら、あの魑魅魍魎はこの中に入ってる刀を護ってたのか、はたまた未練がましく憑いてたのかもな」





  ゲン「武器ってのは使い手の心を映す鏡だ、人を殺める殺人剣にもなりゃあ人を活かす活人剣にもなるんだ」


  ゲン「良くも悪くも元の持ち主の念が入って、呪われた妖刀だの守護の劔だと謳われるようになっちまう」



 神話や伝承に伝え聞く祝福を受けた聖剣や呪いの武器、というのはありきたりだが何処の国にもその手の物はある
[シュライク]のとある古墳にも嘗て栄えた王が使っていたとされる剣が眠っていると言われるくらいだ
 ともすれば、これもそうなのだろうか…



  ブルー「…すると、何か?あの3匹の敵ランク2とは到底思えん[ゴースト]共はこの宝箱の中身の為だけに居た、と」

   ゲン「可能性は、まぁあるだろうな…」


 なんと傍迷惑な話だ、剣に憑りついて死にきれない魂が寂しさからここをふらりと立ち寄った生者を亡き者にして
お仲間に加えようっていうんだ…堪ったもんじゃない



  アニー「ねぇ、ゲンさん…この中に入ってる剣って店で売ってる[刀]よりは強いんでしょ?」

   ゲン「んあ?そりゃああんなのが憑りつくくらいには強ぇだろうな」


  アニー「そんであたし達が倒したからコレにはもう何も憑りつていない、そういう事だよね?」

   ゲン「うん?あぁ…そうだな」


  アニー「じゃあブルー、アンタ戦利品としてコレ貰ってきなよ」


  ブルー「はっ!?お、俺だとォ!?」

  アニー「そっ、アンタよ!今ゲンさん言ってたじゃんか、変なの憑いて無いから大丈夫って…あっ、あたしはパスね」


  ブルー「お、お前なぁ…」ワナワナ


 ……こうして一波乱あった末に刀箱に入っていた銘刀―――[双龍刀]―――を彼らは手にするのであった

693 :続き明日 [saga]:2021/05/28(金) 23:49:20.22 ID:JAK6wrJy0

【双子が旅立って9日目 午前 1時03分】


 [ゴースト]三人衆との激戦の末に野営地に戻ってきた6人は疲弊状態から脱する為にもう暫くの休息を要した
術力は近辺の安全を確保したのちで[術酒]ないし[神酒]を飲むことでどうとでもなるが、技力はそうもいかない
 おかげで軽い休憩のつもりが長引いてしまったが


  ブルー「…。」

  ブルーの手『 [双龍刀] 』キラッ


 今度は焚火を6人全員で囲って腰を下ろす、流石にこれだけ近くに居て誰かおかしな動きをしでかして野営地を離れたら
一発で分かるだろう、と…レオナルド博士が整備を終わらせたメカ4体も博士と共に野営地に近づく影があるか警戒する
 本格的なメンテナンスの真っ最中で身動きできなかった今と違ってメカ軍団は120%の戦闘パフォーマンスを発揮できる
ぶっちゃけた話、"人間<ヒューマン>"組(+スライム)よりも明らかに強い
 全員最低でも[パワードスーツ]を1つ以上装備の上に強力な武器、頭装備等を持っているのだから
この中で[武道着]の上から買ったばかりの[武神の鎧]を装備したゲンよりも明らかに堅牢である




 なんならさっきの襤褸布お化けもメカが1人、2人居たら秒で片付いたまである





 T-260や博士の[剣闘マスタリー]を駆使した[多段切り]や特殊工作車の[どっきりナイツ]で
黄泉比良坂の向こう側まで吹き飛んでいてもおかしくなかった



  リュート「しっかし、その剣、かっちょいーよなぁ」

   ブルー「ん?…あぁ確かにこの意匠は芸術品としても高いと思う」


 剣豪が崩落した城の中から燃料となりうる木材や布を拝借してきた、それを城の残骸で作った簡易焚き火台に焼べた
ゆらゆらと燃える炎に照らされて二首の龍が絡み合う様な鍔とその先から伸びた持ち手の貌さえ映る水鏡を思わせる刀身
冷たく凍り付くような美しさと何者をも打ち砕かんとする内なる強さが銘刀からは感じられた


  ブルー「振り易さも刃渡りの長さから切れ味の好さまで全てが良い、マンホール下で売られてた[刀]とは段違いだ」

  ブルー「[ワカツ]の鍛冶技術に関しては文献で知識として知っていたがこれ程とは思わなかったよ、他に――」


  ゲン「…。」

  ブルー「ゲン?」


 他にこれ以上の業物が存在するのか?と問おうとしたところで眉間に皺を寄せて難しい顔をしている剣豪の表情を見た


  ゲン「…あ、わりぃ…少し考え事しててよ」

 ブルー「どうした貴様、随分と思いつめた顔をしているようだが…」


 初めはこんな有様の故郷に帰省してきたからだと思っていたが、どうやらそれとは違うらしいことに薄々気付いた
時折、彼はとある蔵がある方角を気にして、今度は術士が得た戦利品を見て同じような顔をしていた事…


  ブルー「……貴様が偶にみている方角、お前が道中に言っていた"剣神の間"とやらか?」

   ゲン「!!……ははっ、わかっちまうか、……まだ若ぇ頃に何度も忍び込んで行ってみたもんさ」


   ゲン「…"剣神の間"、優れた剣士には剣神から剣が授けられるという」


   ゲン「だが、俺は…」グッ!!


 剣豪は利き手で無を虚しく握りつぶす、…いつの日にか自分は手にするんだと胸焦がれたまま、遂には叶わなかった
あの忌まわしき大空襲の日も陰謀によって[ワカツ]を灼き払うトリニティ政府の連中を一網打尽の返り討ちにできうる
劔を授かることもできなかった、自分にもっと力があれば何か変わったのではないか…そう思わなかった日も少なくない


   ブルー「……なるほど、ついぞ取れなかったという未練か、であれば――――行ってみるか?」
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/29(土) 15:41:48.20 ID:gVx/wbFz0
スライムがあまりにもかわいい乙
695 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/29(土) 22:33:39.84 ID:QsEDsMMD0


  ゲン「行くって…"剣神の間"にか!」

 ブルー「今の話の流れでそれ以外の何処だというのだ、こっちは例の基地とやらを探すべくその方角にも向かうのだ」

 ブルー「少しくらいの寄り道はしたって構うまい?」


 天守閣方面、即ち[ワカツ]城の上層にはそれらしいものは無い、他に可能性があるのならば"地下"だ
この城で地下に降りる階段があるとするならば、道すがらゲンが話していた剣神とやらを祀る間へ繋がる蔵の階段しかない


   ゲン「……。」



  リュート「今度はやれるかもしれねぇだろ?諦めなければ人間なんだってできるって俺の母ちゃんも言ってたぜ」

   アニー「なんだってやってみるもんじゃん、あたし達もついていくって」





   ゲン「…へっ!駄目で元々たぁよく言うもんだぜ、俺の青春時代のリベンジって奴だ」

   ゲン「すまねぇがちょいと付き合ってくれや」


  ブルー「決まりだな」


―――
――




  地割れ『 』



   ゲン「この先だ、助走つけて地割れを飛び越えるぞ!」ダダッ、バッ!

 エミリア「ふっ!!―――ととっ!?」バッ、シュタッ――フラッ


  アニー「エミリアっ!」ガシッ



 野営地での十分な休養が取れた事で一行は北上して件の蔵を目指すがその道のりというのがまた酷い物で
階段部分が普通に崩れていて底が見えない程の奈落と化しているのだ
 走り幅跳びの要領で飛び越せるが、『行きは良い良い帰りは怖い』とは謂う物で…帰り道が無い
高所から低所に向かって跳ぶ形だからどうにか大穴を越せるが逆に低所から高所へと戻ろうと思えば厳しいものだ

 いざとなれば[ゲート]の術で別の"惑星<リージョン>"へ脱することで帰還は可能ではあるのだが…



  エミリア「アニー!!…そのまま後ろに仰け反って転落死するかと思ったわぁ!!」ヒシッ!!

  アニー「もう…しっかりしてよねお姉さん」


 若干涙目で腕にひしっ!と抱きつく年上を制しながら黄金色の髪をした女は前を見る、[キャンキャン]や[メカドック]と
暴走したロボットが居るのだが不思議とこちらには近寄ってこない



   メカドック「…」ピピピッ!

  キャンキャン「…。」ガーッ、ピーッ




 アニー「…あいつら何でこっちに襲ってこないのかしら?助かるから良いんだけど」



 その理由を直ぐに知る事になろうとはこの時、彼女らは思いもしなかったのである…
後ろから飛べるナカジマ零式を除いたメカ4機が向こう側からブースターを吹かして溝を飛び越えてくる
696 :続き明日 [saga]:2021/05/29(土) 22:34:14.50 ID:QsEDsMMD0


    T-260「…。」ピョン

 レオナルド「よいしょっと!」ピョン

 特殊工作車「はい」ブゥゥゥン!!ジュゴォォォ

   pzkwX「あらよっと!!」ダンッ!!



 ナカジマ零式「ぶんぶーんw お先にひとっ飛びしますよー」ビューン




  地割れ『 』




 メカ軍団が一斉に跳んだ、そして着地した。




 ミ シィ メキィ ミリミリ…っ



 荒廃した[ワカツ]の階段『 』ミシィィ…!!



  リュート「うおぁ!?」グラグラッ

    ゲン「ぬおぉぉっ!?」ヨロッ



 メカとは言ってみれば鉄の塊だ、当然ながら重量は人間やモンスターのソレとは比較にならない
そんな集団が一斉に跳んでただでさえ脆くなった溝付近に着地すれば当然、負荷が掛かるわけで…


 レオナルド「おっと…っと、あー皆大丈夫かい?」

 レオナルド「ボクとしたことがうっかりしてたよ、今のボク達相当重いんだったね」


  エミリア「き、気を付けてよね!!…はぁ、やっぱり私機械って苦手かも」ボソッ


  アニー(…もしかしてあいつ等が襲ってこないのって溝を警戒してってことだったのかしら?)


  アニー「……うん?」ハテ



 ふと、彼女は思った



          暴走メカにしては地層の脆さから溝に近づいてこない辺り賢いAIだな…と




 メカドック「グルルルルル…」

 キャンキャン「ピピッ! 排除!排除!」



 ブルー「チッ、襲ってこないかと思って少し近づいたらコレだ、全員サッサと片付けて進むぞ!!」

 アニー「え、えぇ!!そうね!」チャキッ


 何か奇妙な違和感があるが、それは一先ず置いておき生きてる者の存在を認識して排除しようと襲ってくるメカに
剣を構えて応戦する、英気を養った事で頗る調子の良い一行は難なく目前の対象を動かない鉄屑に変えて
目的の蔵まで到達したのであった

697 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/30(日) 23:12:04.72 ID:MmAOglQK0


 蔵の裏口から入り込んで直ぐに中央から広がる大穴が見える、がっぽりと開いたソレの所為で正面口からの侵入は不可で
こうして回り込んでくるしか無かったのだ、よく見ると穴の向こう側の――つまり正面入り口側――天井に何かが
へばり付いている、天井隅の影にあるため分かり辛いが微妙に光沢の様な物が外の月明りから分かる辺り
[リキッドメタル]の様な無機物系の魔物だろうと察せられる


 ゲン「そこの階段を下ればいいんだが昼間ならまだしもこんな時間だ、流石に地下まで月明りは来ねぇからな」


 焚き火台を探してきた時についでで持ってきていた手持ち提灯に火を灯す
術士も魔力を指先に集中させて光球を発生させて足元を照らしながら階段を降りていく…


 割れた壺の残骸、箱に入った布包みや厳重な錠前付きの木箱、保管庫の様な所だったのか?と初めて来る者達は
思いながら歩いていく、途中で大きな壺の中から昆虫魔物の[デスポーカー]が出てきて飛びかかっても来たが
それを難なく切り払う




 やがて…異様な一室へと彼らは足を踏み入れた






     ブルー「これは…何と壮観な」

    リュート「ひゃ〜〜っ、たまげたぜ…これが剣神さんって奴なのか?」



 月明りも太陽の光も何一つとして届かない筈の屋内だ、ゲンの先述通り今しがた通ってきた道は月光の届かぬ地下
だというのに、この部屋だけは光が射しこんでくるのだ

 中央には人ならざるものとしか表現できない巨大な武者鎧が大きな武器を片手に佇んでいる

 肩に膝に、あらゆる部位に矢を受けて朱色の槍が何本も突き刺さり貫いていた…それは遠目には紅い紐の様な物で
強大な力を持った何者かを決して動き出さぬ様にと縛り上げて封印でもしている様にも見えただろう

 異質と言わざるを得ない武神の頭上、鉄兜の真上からは件の光が…まるで神々しい光がかの存在の背から放たれて見える
畏怖の念を抱きもする恐ろしい化身の祀られた部屋、だが恐ろしさの中に秘められたある種芸術性があるとも呼べる光景



   ゲン「おうさ、城の地下に祀られた剣神よ…真後ろのに開いた覗穴みてぇに小さいのは何時できたのか知らねぇ」

   ゲン「ただ地下だってのに外のお月さんも真昼間の御天道様の光もここから射すんだ、どういう理屈かよ」


  ブルー「…ふむ、力の流れを感じるな」ジーッ

  アニー「やっぱり術的な力が働いてるってわけ?」


  ブルー「そんなとこだな…実に興味深い」


 早速、自分の興味がありそうな事象を前にして光が射しこむ理屈は何か?

 [陽術]で直接光源を創ったり[陰術]を利用した光の屈折で外の明かりを取り込んでいるのとも違うのか?
何時の時代の何処の"惑星<リージョン>"にあった術式系統なのか等々、前のめりにそれを解析しようとする術士を見て
元スーパーモデルは「あっ、これ長くなる奴だ」と嫌な予感を察知した


 エミリア「そんなことよりゲンさん、剣神から剣を授かるんでしょ?」

  ゲン「あぁ…そうだな」テクテク


 術マニアが変に没頭して無駄に時間をかけては困る、速やかに目的を達成してこの部屋を離れなければいけないと
ブロンド美女は剣豪に目的を遂行するように促す、剣豪はテクテクと祀られた鎧の前に歩いていき…そして目を閉じて


         ゲン「…。」スッ

         ゲン「……。」



         ゲン「…。」
698 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/30(日) 23:13:26.39 ID:MmAOglQK0


  リュート「…」ゴクリッ

  スライム「(;´・ω・)…」ドキドキ




















           ゲン「…剣神よ」

           ゲン「…。」



 ゲンは目を閉じたまま、その場に立つ






























  しかし なにも おこらなかった 。









―――
――




  リュート「ゲンさん、元気出してくれよ、その優れた剣士が貰えるとかいう剣って誰も見た事ないんだろ?」

  リュート「だったらそんなの本当は存在しない嘘っぱちだったかもしれねぇじゃんか…」

    ゲン「ははは、励ましてくれてありがとな、にいちゃん」

699 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/30(日) 23:14:53.35 ID:MmAOglQK0


  ゲン「野営地出る前に言っただろ『駄目で元々』って、…"剣神の間"にゃ未練はあったさ」

  ゲン「だからよ挑戦できた事自体に意味があるんだ
        泣いても笑っても俺の青春時代のリベンジは果たせた、それでいいじゃねぇか」ニィッ



 へへっ、これで心残りが消えてスカッとしたぜ!そう朗らかに笑うゲンを見てリュートもまた笑い返す、強い人だなぁ
そう感じながら彼は剣豪に対して笑い返した



  エミリア「んんっ、それにしてもモンドの基地全然見つからないわよねぇ…本当にあるのかしら?」



 話題を変えてあげようとブロンド美女が主目的の事を口にする、上層になければ地下だろうと結論付けたが
その地下とやらに続く階段の先も"剣神の間"とその手前にあった物置の様な小部屋1つだけで
間違っても政府を転覆させようと企む大物が潜めるような大規模基地の入り口など無かった



 レオナルド「モンド執政官の基地か、確かに彼程の人物が隠し持つ基地の入り口があんな小さな小部屋にってのは無い」

 レオナルド「[シュライク]にある[中島製作所]、そこで開発された画期的なシステムを押収したり…」

 レオナルド「秘匿してる戦力や彼自身の私兵の数、規模を考えればあんな小さな地下には収まり切らないよねぇ」



 全"惑星<リージョン>"を統べるトリニティ政府へのクーデターを画策するのなら最低でも
戦艦クラスの"宇宙船<リージョン・シップ>"を1隻2隻どころか艦隊が組めるくらいにあっても不思議ではないのだ

 そんな大掛かりなドックがあるのだとすれば、もっと広い空間が必要になる


 単純に隠し通路兼秘密の入り口があるとしてもあんなちっぽけな地下部屋には作らないし、戦艦が数隻は搬入可能な
超巨大なスペースもあんな蔵の階段をちょろっと降りた程度の深度にある筈も無い



 ならば一体どこにあるのだ……




 [ワカツ]に秘密基地があるという情報そのものがガセなのでは?信憑性に疑いを持ち始めつつ集団は進んでいく
剣神が祀られた部屋に来る為に高所から低所へ溝を飛び越えてきたのだ、来た道をそのまま戻れば帰れる訳ではない
三叉路になっている地点まで来て蔵から出て左手になる曲道を曲がる、そのまま道なりに進んでいくと再び溝があった



  地割れ『 』


   ゲン「っと、まーたでけぇ溝か…」

 リュート「でもこの先の道は見覚えあるぜ!!ここを跳べば帰り道に無事つけそうだな」



  ブルー(…結局モンドとやらの基地は発見できず、か…)

  ブルー(やれやれ有給は期待できそうにないが、まぁ個人的に興味あった[ワカツ]の写真は幾つか撮れたな)


 ナカジマ零式「へいへーいw 飛べる私は先に行っちゃいますよー」ビューン!


    pzkwX「っしゃ!思いっきし助走つけて行くぜ!」ダダダダダッ――――







         床に落ちてた[鉄下駄]『 pzkwXの足 』ガッ


  pzkwX「…はえっ!?」ヨロッ

700 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/05/30(日) 23:16:32.23 ID:MmAOglQK0



    pzkwX「おどっ!?おどどど…ど、どわぁぁぁぁぁ!?!?!?」バッ!


 この中で一番重火器を身に着けていて、一番重量のあったpzkwXは偶然落ちていた[鉄下駄]を踏み大きくバランスを崩す
すっ転びそうになった彼は子供の片足ケンケンに似た姿勢でそのまま半端に跳んでしまい―――


     ガシッ!!



   ナカジマ零式「へっ?」チラッ

   pzkwXの手『ナカジマ零式を掴む』



   ナカジマ零式「の、のわーーーっ、ちょーっとアナタ何掴んでるんですか!?!?おわぁぁ落ちるぅぅぅぅぅ」



    pzkwX/ナカジマ零式「ああああああああああーーーーーーーーっッッ!!」ヒューッ!!





――――――ゴ ッ ッッッ!!




 鈍い音、中途半端に跳んだ歩く弾薬庫とそんな彼に掴まれつつも彼諸共に向こう岸に届く程の飛距離を稼いだ飛行メカは
2機分の重量を分散させることなく大地に叩きつける


 さっきの4機同時に一斉に跳びこそすれど、着地地点がばらばらで衝撃が分散されるのとは異なった2機分の重量と衝撃が
一箇所に収束されるソレは訳が違う
 一点集中で運動エネルギーを受けた地盤は当然のことながら軋むような音を上げてそして――――!!



    荒廃した[ワカツ]の階段『 』バコンッッッ




    pzkwX/ナカジマ零式「うぎゃあああああああーーーーーーーーっッッ!!」ヒューッ!!




 …そして、当然の如く崩れた、底の見えぬ奈落へと通ずる溝は更に広がったのであった

 2機のメカが地割れに飲まれ母なる大地の底から伸びる引力の手引きと
重力の後押しで落ちていく様を見て一同は困惑した…『えっ…どうしよう…』と


 レオナルド「……、と、とにかく少し待とうか!ほら零式くんは飛べるから、無事なら自力で浮かんでこれるよ、うん」


 などと珍しく慌てた博士の発言に一同は待つしかなかった、じゃあ無事でなければ浮かんでこないのでは?とか
無事だったとしてどうやってpzkwXを引きあげるんだ?とか割と問題解決になってない等ツッコミは誰もしなかった



   レオナルド「……!!ほら飛んできたぞ!いやぁ無事だったかナカジマ零式くn――――」








   ナカジマ零式「たたたた、たいへんでーす!モモモモ、モンドの基地を発見しました〜〜!!」ビュウウウウン




 奈落の底に不慮の事故で落下した2機の内、片方は帰ってきた、猛スピードで…それはもう大慌てで
諦めかけていたモンド氏の秘密基地を奈落の底で発見したというとんでもない手土産を持って…
701 :次、木曜日か金曜日の予定 [saga]:2021/05/30(日) 23:23:43.30 ID:MmAOglQK0
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                      今回は此処まで!

               【解説 ワカツ3点セットとモンド基地その@】



                  鉄  下  駄  ☆



・[鉄下駄]…[ワカツ]のMAP上に落ちているアイテムの内1つ

 防御力8で地味に脚装備の中じゃ店売り最強の[フェザーグリーブ]より上という…丈夫さも+10補正値が入り
 プッシュ耐性と何より固有技で[鉄下駄シュート]という技が使えるようになる戦闘中に1度しか使えない技だが
 FFで言う所のダイスみたいなもので、出目によってダメージが変わる仕様

 [鉄下駄シュート]は下駄が命中して裏が出るとダメージが5倍という浪漫技でもある



 入手場所がやや面倒くさい場所にあって、[ワカツ]をぐるっと一周してこないと取れない、段差を飛び越えて
 剣神の間方面を通ってこないと手に入れられないので困る





※当SSにおいては、pzkwXがその原作通りの場所に落ちてた[鉄下駄]踏んづけて滑って落下したということになってます




・[双龍刀]…攻撃力41で某古墳で拾える[天叢雲剣]より普通に強い刀武器である(そもそも天叢雲剣は刀装備じゃないし)


 こちらは下駄の方と違って比較的入手がしやすい、剣聖の間方面にあるためカードのついでで大体のプレイヤーは取る

拾えるアイテムのシンボル、なんか金銀財宝の中に剣が1本突き刺さってるみたいなアレのグラフィックとは違いコレだけ
宝箱に入っていて、しかもすぐ近くに特別個体の[ゴースト]3体グループと固定エンカウントする忍者敵シンボルが居る


 双龍刀の前の持ち主だったのか刀についた悪霊なのか何のかマジで不明
ここにだけこんな意味深な固有モンスターを配置する辺りスクウェア社は当時ここに特別な何かを実装する気だったのか

なお、別にコイツ等は倒さなくても問題ない、シンボルエンカウント形式だから普通にMAP上で回避して刀だけ盗むの可



・[流星刀]…攻撃力55の刀武器、最強の刀武器はやはり[月下美人]だが
 全体攻撃の[ミリオンダラー]が使えるという良さがある


 剣神の間にてゲンさんの最大WPが70以上無いと剣神が授けてくれない、月下美人は一応どの主人公でも
 頑張れば入手は可能ではある、ただ特定の敵相手にひたすらドロップできることを願って戦闘しなきゃいけない
 道中の宝箱で手にできるのもアセルス編とレッド編(ついでにリマスターのヒューズでアセルス√に行った時)ぐらい

 ゲンさんのWPを70より上げればあっさり取れる強い刀武器という点では便利である

 余談だがこの刀、尤もルージュバグとヒューズバグが活用できる武器でありパーティー離脱する術士と刑事に[流星刀]を
持たせて一旦別れて剣神の間にくれると何本も授けてくれる、剣神様太っ腹すぎやしませんかねぇ?




 モンド基地に関して@

 トリニティの執政官にして実はトリニティの転覆を目論む野心家モンドの秘密基地、リュート主人公時のラスボスが
居を構える最終ダンジョンである、原作で[ワカツ]からは決して侵入できず、また何処にあるのかも確たる明言が無いため
これは完全に独断と偏見ですが…おそらく[モンド基地]は[ワカツ]の地下深くにあると推測
(もしくは舟渡が船を漕ぐ例の城周りの水底に海底基地みたいな感じである)


 まず、モンド艦隊の旗艦"ホエールタイプ"の規模はネルソン艦隊のビクトリアと見比べても明らかにデカい
ビクトリアがキグナス号より小さいシップなのもありますが、鯨の名を冠するだけある戦艦とそれを搬入できるだけの基地
それが表にあれば航路封鎖されてて人が来なかったにしても流石にバレる、空間的な問題にしても
作中のモンド基地の内部構造を考えてみれば地下にあると考えるのが妥当かと…

あのラスダン、リフト型のエレベーターで延々と下に向かって降りてくんだもん…ぜってぇ地下だ

リマスター版で[スクラップ]経由から資材を持ち込んでいた事が判明した為、恐らくは非合法な…カバレロ辺りから
建築用資材を足のつかない方法で手にして秘密裏に基地建設をやっていた説

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702 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/31(月) 18:16:25.09 ID:loQ5f2IL0
おつです
ゲンさん足りなかったかあ
703 :ここでまさかのルージュ側切り替え [saga!red_res]:2021/06/04(金) 07:32:24.11 ID:g62tNk5x0















            …zzz、ZZZZZ……むにゃっ?














 はれ? ここは何処だ?…ええっと確か[ヨークランド]を発って[クーロン]で[金]を買おうとして


 それから購入金が足りなかったからお宝探ししようって![シンロウ]に向かって



 …ってなんで僕、檻の中に入ってるんだ!?



704 :続き、土日のどっちか [saga]:2021/06/04(金) 07:33:48.91 ID:g62tNk5x0
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―――
――



【双子が旅立って9日目 午前 6時10分】



 紅き魔術師は眠りから覚めて困惑した、まず鼻に突き抜けるのは黴臭さのある湿った匂い
冷たい石畳の上で横になっていたせいか―――いや、それだけじゃない、身体の節々が痛いと感じたが
単に硬い地面の上で寝たからじゃない


 よく見れば体中に痣がある、だんだんと何があったのか思い出してきた











             IRPO女性隊員「…お目覚めのようね、ルージュ君」









   ルージュ「ドールさん!!ここは一体…確か僕たちは遺跡探索してて…それから扉を開けようとしたら変なガスが」





 ドール、そう名前を呼んだのは[シンロウ]に到着して間もなく同行することになった弟を探しているという女性である
最初、この"惑星<リージョン>"に来た時に困った様な顔で辺りを見渡していた人を見つけて、見るに見かねたアセルスお嬢が
初めてルージュに接した時と同じ様に声を掛けて事情を聴いた所、遺跡の探検に出かけた弟さんが帰らないとの事で
丁度遺跡探索に行く自分達と一緒に探しに行きませんか?と話をつけたのであった


 道中で[ガイアトード]や双子の[ヴァルキリー]と戦ったり、精霊銀製の防具や[ツインソード]等のお宝を見つけたり
兼ねてよりの懸念だった懐事情とパーティーの武具問題を微量ながら解決したり、様々な事があった


 そして、とある扉を開けようと手を伸ばした瞬間おかしなガスが噴出してそれを吸った一行は正気を失いパニック状態に
陥ってしまった、更に誰がどこにいるかまともに判断できない最中、全身黄色のタイツスーツを着た集団が天井から現れて




……そして、気付けば自分は檻の中だ




        ドール「ここはブラッククロスの幹部、ベルヴァの秘密基地よ」

       ルージュ「ブラッククロスだって!?それはレッドの――――ハッ!?れ、レッド!?彼は…?」キョロキョロ



 術士は辺りを見渡す自分の他には―――武装を完全に外されたBJ&Kだけ居る、妖魔の二人は居ない



     ドール「彼女達なら他の檻よ、妖魔は貴重だから特殊な怪人にできるって考えてるのでしょうね」

    ルージュ「くっ、改造手術で怪人にするってことか…っ」

 ドール「レッド君はさっき連れていかれたわ、このままでは彼もきっと…武器も取られて助けにも行けないお手上げよ」



 苦々しい顔でドールが呟く、さっきから術を使って檻をぶち破ろうと試みるルージュだが術が発動しない
檻全体に術士用の対策が為されているのだ嫌でも思い知らされる
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/05(土) 07:25:43.20 ID:pIu88LTH0
ルージュくんパート来た!
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/05(土) 16:10:04.34 ID:eK1ETQhJO
ドール昔はそんな興味無かったけどリマスターで解像度上がって背中がめちゃエロい事に気づいて好きになった
707 :>>706 ドールさん良いよね、小説版だとシュライクのグラビア誌に匹敵するスタイル持ちと判明しますし [saga]:2021/06/06(日) 22:22:43.99 ID:UtZ6Y/9O0


  ドール「無駄よ、[ディスペア]でも採用されている凶悪犯罪者用の特殊合金で造られているわ」


 監獄の"惑星<リージョン>"と名高い刑務所はあらゆる囚人が収容される、腕っぷしが強い傑物から高名な魔術師まで
内部から鉄格子をぶち破られては堪ったものではなく、そこで術対策も成された特殊合金が使われているのだ


  ルージュ「…っく、駄目だっていうのか…」ガクッ

  ルージュ(ヤルートの時といい、今回といい……僕ちょっと捕まり過ぎじゃないのか?)


  ルージュ「…。」


  ルージュ「ドールさん、檻の材質がわかったりブラッククロス幹部の事を知っていたり貴女は…?」


 彼女自身も資質こそは持っていないが[陰術]と[妖術]が多少使える身だ、特殊合金の一件は試したと言われたらそれまで
…然し、幹部の名前を知っているのは解せない
 以前[京]で観光記念写真を撮ってもらったりアセルスに剣を一振りくれた親切なメカから悪の組織には四天王と呼ばれる
幹部が居るとは教えてもらったが名前は知らない、ドールは此処が[ベルヴァ]という幹部の基地だと言い当てた



――――ただの行方不明になった探検家の弟を探す一般人のお姉さん、で片づけるには不自然だ




  ドール「そうね、もう隠す必要も無いから明かさせて貰うわね私は[IRPO]の捜査官ドールよ」

 ルージュ「!! パトロールの方だったんですね…」


  ドール「ええ、貴方達の事はヒューズから聞いてるわ」



―――
――



  -ヒューズ『あー、もしもしオレオレ、俺だよドール……あっ!詐欺じゃねーから!切らねぇでくれって』-

  -ヒューズ『えっ、冗談?…いやね、アンタが言うと洒落に聞こえねぇんだよアイシィドール』-



  -ヒューズ『おう、そんで話ってのはな例の犯罪組織の事だがな奴らをぶっ潰す上で面白い連中がいるんだ』-

  -ヒューズ『見た目が賑やかな集団だから見たら一発で分かる、そいつ等について行けばクロにたどり着けるぜ』-


  -ヒューズ『サボテンみてーなヘアスタイルした小僧と緑色の髪したコギャル、頭に白い花つけた妖魔の婦人』-

  -ヒューズ『そんで白毛の大型犬っぽいモフモフした毛玉が紅い服着て歩いてる様な奴な』-



―――
――




   ルージュ(…大型犬、毛玉…)ズーン



 随分な言われようである、毛玉呼ばわりされた紅き術士は表情に影を落とし、ついでに肩まで落とした
[クーロン]で別れて以来未だ再会はしていないがよく自分とアセルスがレッド少年と旅を共にしていると分ったものだ
その辺腐っても"銀河の海<混沌>"を股に掛けてあらゆる"惑星<リージョン>"に足を運ぶパトロール隊員だ
 警察機関の所属ゆえにその手の情報を掴むのは早いのだろう


  ドール「騙すような形でごめんなさい、でも捜査中に指名手配犯の[ベルヴァ]が潜伏したこの地で身分は…」


 できる事なら正体は明かさずに行動したい、刑事だとバレたら当然[IRPO]本部からの応援要請を警戒して
下手に手出しをしてこない可能性も有り得た……尤も、各隊員は今諸事情で大半が来れないのだが
708 :続き火曜日か水曜日のどっちか [saga]:2021/06/06(日) 22:23:37.03 ID:UtZ6Y/9O0


  ルージュ「あ、いいんです!そういう事情があるなら仕方ありませんからっ」


 そんなことより今はこの窮地を脱する方法を考えないと!術士は女刑事にそう告げながら
とりあえず武装が外されたBJ&Kの電源ボタンを押して起動させる


  ドール「…無線機は取り上げられてるから他の隊員と連絡は取れないわ、取れても皆、現場を離れられないのよ」


 ロスター刑事ことクレイジー・ヒューズは[キャンベル・ビル]の武器密輸を追ってる
妖魔隊員のサイレンスは[ルミナス]で調査中、メカのラビットは[京]で麻薬密造基地を…コットン隊員は何故か行方不明





……そして、ヒューズの後輩だったレン隊員は数日前に死んだ、"らしい"



 応援要請も不可能、武器も取り上げられておまけに術も通用せず…八方塞がりもいい所だ
重い空気が場を支配し始めた時だった…








< キー!!

< [太陽光線]!!ピカァァァ!!
< [飛燕剣]ヒュィィン
< [ディフレクトランス]シュバッ―――ドカァァァ!!


< キー!!!!!



  ルージュ「うん?騒がしい様な」ハテ




ドタドタドタ…!





    白薔薇「居ました、皆さんご無事です!」

   アセルス「良かったドールさんもルージュもそれにBJ&Kも無事だったんだね!」



   アルカイザー「やあ、大丈夫かい?ブラッククロスの基地に潜入したら偶然君達を見つけてね」スッ



   ルージュ/ドール「アルカイザー!」


   アルカイザー「さぁ早く逃げるんだ!さっき戦闘員を倒した時に君達の荷物と牢の鍵を見つけたんだ」ガチャッ


 なんという僥倖だろうかッ!!まさか囚われの身で絶体絶命のピンチの時に偶然にも正義のヒーローが基地に居て
ルージュ達を助けてに来てくれたぞ!!いやぁ凄い偶然があるものだなぁー



  ルージュ「あ、あの!!アルカイザーさん!レッドって少年を見ませんでしたか!?彼も捕まってるんです」

 アルカイザー「安心したまえ彼ならお嬢さん達を助ける前に見つけてね、改造されそうになって居た所を助けたんだよ」


 拘束具で雁字搦めにされて気を失っていた所を救出し、速やかに安全な外へ連れ出した、とアルカイザー兼レッド少年は
嘘をついた、目の前の仲間は正義の使者の正体が話題の少年だとは夢にも思うまい……女刑事だけは眉を顰めていたが

709 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/07(月) 06:02:16.97 ID:q/sI8gnL0
スゴイ偶然ダナー
710 :続き、金曜日か土曜日のどっちか [saga]:2021/06/09(水) 23:12:17.63 ID:jKdIKJZp0

 ルージュはBJ&Kに正義の使者と共に慣れつつある手つきで武装の取り付け作業を行う
これで医療メカは何処の戦場に出しても恥ずかしくない立派な戦闘メカになったな!!…いや医療メカが戦闘ってなんだよ
 紅き術士は内心でそう独り言ちて苦笑した、仲間の無事が確認できたからか心に余裕が戻ってきた証拠である


 精霊銀のピアス『』チャリッ


 遺跡探索の道中で見つけたピアスをつけて赤の魔術師は仲間達の武装を確認する
ピアスと同じ材質の鎧を身に纏い"音撃波<ソニックウェーブ>への対策を兼ねたアセルスが[ツインソード]と[サムライソード]
探索中に見つけた剣と以前親切な和風メカから譲り受けた刀を帯刀している

 ドールはIRPO隊員の支給品一式が帰ってきていて[防弾ベスト]等の防具は勿論
拳銃の[アグニSSP]から重火器の[ハンドブラスター]まで手元にある
白薔薇姫は…倒した[ヴァルキリー]の姉妹が落とした[精霊銀の腕輪]、本来レッドが付けていたものだが当人不在の為
少しでも守りを固めるということで彼女の腕に装着させた


 魔術師も何度か使ってきた[アグニCP1]の弾丸も確認して準備が整った所で脱出開始だ

―――
――



   「キー!(脱走だ!捕まえろ!!)」

   「キー!(アルカイザーも居るぞ!!)」



 ルージュ「…相変わらず『キー』しか言わないから何言ってるか分かんないよ」BANNG!BANNG!


 術力温存の為に拳銃で[集中連射]しながら地上を目指して走る、弾雨を受けて向かってくる勢いが衰えた敵に
正義の飛び蹴りが炸裂する、相方がやられた戦闘員が玉砕覚悟で拳を振りかざそうと前進するも
突然支えを失った木偶人形の様に前のめりに倒れだす


  ドール「無力化はさせたわ…、出口はこの階段を上った先みたいだし急ぎましょう」コツコツ…


 靴底のヒール音を響かせてドールが地上行きの階段を目指す、今しがた[パワースナッチ]で生気を吸い取り倒した相手に
目もくれることなく…



 ルージュ「…今のは、[陰術]…」

  ドール「少々心得があるのよ、資質はもっていないのだけれどね」


 癖が強くて扱い難さはあるけど面白い使い方はできるわよ例えば、と付け加えて…


 バンッ!

   ゴブリン「脱走しようとしてもそうは行かんぞォ!貴様らを倒して隠し扉前の見張りから出世してやる―――」


   ブゥン!!



   ゴブリンの背後『 ドール 』ピトッ…


  ゴブリン「!? なっ、だ、誰だァ俺の背後を取る奴は!?まさかまだ仲間が居て救援に―――」クルッ


―――ドゴォッ!!



            2連携 [ ハ イ ド ラ ン ス ]


 番人を任されていた小鬼は脱走の報せを受け、モーニングスターを振り回しながら戸を開けた…が、背後に突然何者かの
気配を感じ振り向いた瞬間、彼の頭は光を纏った跳び蹴りにぶち抜かれた

 ドールが生み出した[ハイドビバインド]による偽りの気配に気取られた一瞬、"敵前で無防備な背を見せる"という醜態を
曝して見事に研ぎ澄まされた[ディフレクトランス]を受けて撃沈したのであった

711 :続き明日 [saga]:2021/06/12(土) 23:00:12.96 ID:Xbu1mo7J0

 一撃を受けて伸びた[ゴブリン]を素通りして地下基地の先が何処に繋がっているのかを見渡す
正義の使者には隠し扉の先にあった一室に見覚えがあった
キグナスの機関士見習いを辞職する決意を固める切っ掛けにも場所、Dr.クラインを追って辿り着いた離宮だ


  アルカイザー「[シンロウ]の王宮、どうやら此処へ繋がっていたらしい」キョロキョロ

  アルカイザー「以前も仮面武闘会が開催されていた時に組織の者を見かけたが、やはりか」


    アセルス「じゃあこのお城に住んでる人達も共犯ってこと?」

  アルカイザー「…いや、わからない脅されていたのかもしれない、とにかく行こう」



―――
――



 結論から言えば、探し出した王宮の人々は[ベルヴァ]に脅されていて地下に人体改造の基地を設置されたそうだ
遺跡探索に来た屈強な冒険者を怪人にし、それとは別で定期的に開かれる仮面武闘会も彼奴の娯楽を兼ねた優秀な戦士探し





…そしてブラッククロスの"客人"と接触を図る、お客様窓口の役割でもあるのだと



 キャンベル社長の所有するビルも黒星だが、この王宮自体もアウトだ

 クライン自慢の改造物である[ベルヴァ]や戦闘員の性能実験、客に対しての宣伝効果…元来"巨人種"のモンスターである
ベルヴァは決して"人間<ヒューマン>"の様に閃くことができない、そんな彼が敵の技を見て見切る事ができるのも改造の賜物


 ブラッククロスの技術力の高さを見て、それを評価し高く買うソッチの道に伝手のある資産家や政治家、極悪人が
商談を持ちかけることも多い、特に直近では"ジョーカー"と呼ばれる仮面をつけた男、そしてトリニティ政府の高官

2人の男達がブラッククロスに秘密裏に接触を果たした


 1人は自らの野心の為、資金繰りと兵器を要した為に自分が元々属していた警察機関の情報を売り対価を受け取りに

 1人は復讐心と権力欲に歪んだ理想実現の為、自らが搭乗予定の起動兵器に使う[バスターランチャー]の開発を




    「わ、私達はベルヴァに脅されていたんだ!!」ガタガタ


 ドール「落ち着いてください、事情は分かりましたので貴方達は王宮から避難を」



 酷く震え上がり縮こまっている王族と側近達を見るに自責の念と
結果的に犯罪の片棒を担いでしまったことが[IRPO]の刑事に露見したことなどからすっかりと委縮しているのだと分る
犠牲になった人々の数を考えれば正直思う所もあるが彼らとて好きでやってきたことじゃない酌量の余地はあるだろう

 詳しい取り調べは後でさせて貰うとだけ言って女刑事は民間人をまずは王宮から避難させることを優先とした
地下基地内にもまだ戦闘員が居る上に、王宮の闘技場で日課の鍛錬に励むベルヴァが居るらしいのだ
 自分達が脱走した報せはおそらく伝わっており、幹部本人が直々に出向いてくる可能性
そこで民間人を人質に取られるリスクは避けたい

 王族の方々や宮殿内に取り残された熟れた果実を意中の人に食べさせたがっていた恋人たち、呑気に日焼けをしていた者
多くの人間を出口まで護衛して、最後に武闘会で救護班をしていた医師の手当を受けて技力も術力も万全の状態となった



……民間人を王宮から避難させることを優先したドールさんの采配は神だったなぁ、と後に魔術師ルージュはそう語る





 まさか王宮が木っ端微塵に大爆発するなんて誰に予想できるか

―――
――

712 :続き、水曜日か木曜日 [saga]:2021/06/13(日) 22:52:39.90 ID:Fh8QX/pG0

 王宮の闘技場の中央にてその魔人はどっしりと構えていた

 来賓や王族が見守る特別観戦席から様子を伺った一行の気配に気づき「降りてこい!!」と怒声を飛ばす四天王に
正義の鉄槌を下すべく皆が飛び降りていく

 見た目から察せられるように恐らく相手は遠距離武器の類を持たない完全なインファイター、であればあのまま
特別席からの銃や術による狙撃で正直倒せない事も無かったが、距離は詰めておきたい
 可能であれば四天王の生け捕り、他の四天王や基地についての情報を尋問する必要があるのだから
 あんな図体の癖して機敏な動きをすると以前仮面武闘会で逃げられたアルカイザーが口にしていた、ついぞ遺跡内では
遭遇しなかったが仮に最奥に到達してベルヴァと一戦交えても倒しきれず逃げられていたかもしれないと
言い切られるくらいには逃げ足の速い改造戦士だ、逃げ道を塞ぐ為にもなるべく距離は取りたくない


   ベルヴァ「アルカイザー貴様かッ!我が基地をめちゃくちゃにしおって!」ギリィ

 アルカイザー「ベルヴァ貴様の悪事もここまでだ、Dr.クラインはどこだ、ブラッククロスの本拠地いはどこにある」


   ベルヴァ「フッ、素直に洗いざらい白状するとでも思ったか?ブラッククロスの四天王を舐めるなよ」



  ドール「"惑星<リージョン>"指名手配20348号ブラッククロス幹部ベルヴァ…遺跡の宝を利用して冒険者を誘い」スタスタ

  ドール「そして拉致して改造戦士にしてきた罪で逮捕します」チャキッ



 銃を構える女刑事に続き魔術師もメカも攻撃態勢に入り半妖少女と貴婦人も鞘から剣を抜く、それを見て心底不快そうに
悪の四天王は鼻で嗤う



   ベルヴァ「はっ!細腕の女子供に貧相な術士の集まりが気取りおって、そうとも
           この基地で組織の戦士を産み出してきたが、こうなっては基地の役割もお終いだ」



   ベルヴァ「最後にここを貴様らの墓標としてやろう!!」ニヤリッ



 そういって、魔人は懐から小さな"リモコン式のスイッチ"を取り出し、親指でボタンを一押し…すると



                   ドォォォン!!  バッグォォン!!


    アセルス「っ!?この揺れは!?それに今の爆発音って…」


   ベルヴァ「フハハハ!こんなこともあろうと王宮と地下基地全体には爆弾が仕掛けてあるのよ!もう遅いッ」

   ベルヴァ「こうなれば時期に全ての爆弾に誘爆してこの王宮は粉微塵に吹き飛ぶ貴様らの命運も終わったのだ!」


 そんなことをすれば自分だって死んでしまうというのに!!彼奴は自らの死を恐れないとでもいうのか?
あるいは死んでも再び蘇る算段でもあるというのか!?自らの生命を試みない蛮勇にルージュは慄いた



   ベルヴァ「さぁ…来るがイイ、"最期の試合<デスマッチ>"を楽しもうではないかっ!」ニタァ



 アルカイザー「くっ!皆、諦めるなコイツを手早く倒して王宮から急いで脱出するんだ!間に合うかもしれない!」


 実際、王宮全体がどれほどの速さで爆炎に包まれるのかは分からない、こうなった以上は迅速に勝利して
退避せざるを得ない…組織の幹部を逮捕して本拠地の場所等を尋問したかったが、こうなってしまった以上は不可能か…ッ

 正義の使者は先陣切って光輝く拳[ブライトナックル]を突き出す、が…


 ベルヴァ「フッ、何故この俺が仮面武闘会に出てるか分かるか?武術の達人が放つ技を見て日々己を研磨する為よ!!」
 アルカイザー「なっ!?攻撃が躱され―――」


  ベルヴァ「貴様の技は武闘会で見切った!俺には通用せんぞ!」ピコンッ![ベルヴァカウンター]


 残像が幾重にも折り重なって見える動きッッ!!筋骨隆々の図太い腕が脚が、瞬時に繰り出されてヒーローを打ち付ける
独自の動きから繰り出された強烈なカウンターを受けてアルカイザーの身体が宙を舞ったッッ!!
713 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/14(月) 01:55:38.80 ID:DLzJgEhM0
ベルヴァ戦のドールさんの名乗りいいよね
714 :続き 金曜日 [saga]:2021/06/16(水) 14:53:02.51 ID:H41N9cL70

 超重量級の重い一撃はスーツ越しのレッド少年の腹骨に折る、フルフェイスマスク故に傍からは決して分からないが
衝撃を受けた彼は吐血し、嫌でも天井を見上げる形になった
 [シンロウ]の王宮闘技場の明かりにヌッと大きな人型の影が割り込む様をバイザー越しに捉える、先のカウンターから
追撃の[ダイビングプレス]で圧し潰そうとする魔人の姿がそこにあったのだ!




      白薔薇「星光の加護よ、彼の者に安らぎを―――![スターライトヒール]」パァァァァ



 打身のアルカイザーが自由落下から地に叩きつけられ、一直線上の真上に全体重を掛けて降ってくる[ベルヴァ]の構図に
幻想的な輝きが割り込んでくる、室内に瞬いた星光に思わず目が眩み「むっ!?」と声を上げながらも標的に
追撃を仕掛けた彼奴を全快したヒーローが寸での所で身を捻り、転がる様に躱す

 折れていた腹骨が[陽術]による奇跡の光で完治したからこそ取れた回避行動



    ベルヴァ「妖魔の女がこざかしい…―――ツッ!!」ズシュッ、ブシャァァ



 塵埃を舞わせた身の上体を起しながら忌々し気に白薔薇姫を睨む四天王の右腿に[精密射撃]が撃ち込まれる
舞い上がった粉塵で相手の姿が目視し辛くとも機動力を削ごうとする女刑事の銃弾が闘技場の床に血飛沫を付着させた




   BJ&K「レーザー射出します、連携の準備を」ビィ―――ッ!

  アセルス「てぇぁぁぁぁぁ!![生命波動]っ」フワッ!

  ルージュ「了解だ!![エナジーチェーン]」キィィィン







            3連携 [ レ ー ザ ー エ ナ ジ ー 波 動 ]





 医療メカが圧縮されたレーザー光線が大口開けた猟犬の牙の様に広がって展開され、獲物を喰らうが如く魔人へ向かう
右腿に弾を受けた相手は回避不可能と判断、小さく舌打ちして両腕をクロスさせて防御の構えを取る
 幾条もの光の線に身を焦がされ身体の外回りを焼くレーザーとは別で翆玉色の思念の鎖が中央
ど真ん中ストレートに飛んでくる

 左右と上方向の逃げ道をBJ&Kの光線で塞ぎ、真正面からはルージュの術が一直線で来るから前方向に抜け切ろうが
後方へバックステップしようとも結局は焼かれるという逃げ道の無さ、故に四天王が咄嗟に取った防御は正しい判断だろう


  ギュィィィン!!シュルッッ!!



   ベルヴァ「むむっッ!?」ジュウウウゥゥゥ!!



 [魔術]の鎖はそのまま腕をクロスさせた[ベルヴァ]の身を焼き―――そこで終わりではなかった


 身に絡みつき縛り上げる、ジリジリと巻き付かれた箇所を焼かれ更に動きを封じられた所へ…




            アセルス「いっけぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」ブンッ




 生命から迸るエナジーッッッ!!

 心の力を解放し、人間の内に眠る潜在能力で浮遊したアセルスは"気<オーラ>"を収束させる
彼女が持つ生命力が形になり、肉体から可視化された黄金の輝きは一本の槍と化した
 アセルスお嬢はそれを投擲槍として魔力の鎖に拘束された悪人へ向けて放つ…っ!相手を穿つのだとッ!
715 :続き 土曜日か日曜日 [saga]:2021/06/18(金) 14:11:40.36 ID:MoOq1xSE0

 生命力の槍が巨人に突き刺さり爆散するッ!!―――元より使用者のアセルスお嬢はこの中で一番生命力に溢れている
この広い世界でただ1人の"半妖"というイレギュラーな種族だ、並大抵の妖魔どころか頂点に君臨する妖魔の君から
血を注がれた蘇りを果たした程の生体エネルギー


 これほどまでに心術の上位術たる[生命波動]と相性の合う人材がいるだろうかッ!!


     ルージュ「やったか!?」


 3連携から織りなす光撃、特に最後の最大火力を受け組織の四天王もあわや爆散四散、短期決着が着いたかと声に出す

…が、しかし…っ!








      ベルヴァ「…。」プスプス

      ベルヴァ「・・・・・・・・フゥぅぅぅ…」






 腕をクロスさせた魔人は、今なお健在であった




     ベルヴァ「今のは…痛かったぞ」



 "気<オーラ>"の一撃を受けた魔人は防御姿勢を解いた…無傷とまでは流石に言わず自慢の筋骨隆々の腕はボロボロで
正直な所ベルヴァ自身、クロスの構えを解く動作だけでもヒリヒリと焼けた痛みが走り出す程だった




    ベルヴァ「今のは……痛かったぞォォォォォォォ!!!!小娘共がああああああぁぁぁぁぁぁ!!」ドウッ!!



 激昂する魔人は爆弾の起爆で振動する王宮を更に揺るがす怒声を張り上げ、腕を振り上げてアセルスへと向かう
痛覚よりも怒りが勝ったのだ、荒ぶる魔人――――否、魔神と化した腕が灼熱を纏う

 全てを滅する"神の一手"…ッッ



      ベルヴァ「死ねぇぇぃぃ!!ゴォォォォッドハァァァンド!!!」ゴァッ!



――――[ゴッドハンド]ッッ!! ベルヴァの[魔人三段]に並ぶ目の前に立つ者を確実に屠ってきた死出への切符
 当たれば間違いなく無事では済まない腕がアセルスに迫り、彼女をまさに掴もうとした瞬間


       白薔薇「 」バッ!


     ベルヴァ「ッ!邪魔をするかならば貴様からだ妖魔風情ッ」ガシッ
     アセルス「白薔薇何を!やめろぉぉぉぉぉぉ――――」



 貴婦人が護るべき少女の前に突如として現れ彼女を庇ったのだ!魔人に首を掴まれた白薔薇は天高く掲げられ
ベルヴァから漲る闘気の爆炎に呑まれた…っ!



           白薔薇の花飾り『 』シュゥゥゥ… フッ



 焦げ付いた白薔薇の花飾りが無常にもアセルスお嬢の前に落ちて消滅した、妖魔の死―――それは遺体すら残らない消滅
716 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/19(土) 20:24:23.58 ID:TwG9KE/A0
フリーザ様!?
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/06/20(日) 23:00:25.75 ID:m5x041L60





                 「[サンダーボール]!!」ビュンビュンビュンッ!!





 声が闘技場に響き渡り光輝く雷球が魔人の背に焼け跡を残した、彼奴が振り向き驚愕の表情を浮かべる…何故ならば






        ベルヴァ「き、貴様は!?馬鹿な―――今この手で殺した筈だっ!?」








              白薔薇「ですが御覧の通り、私は健在ですわ」

              妖魔の具足『 ドラゴンパピー 』バチバチ…!




 死出の旅へ誘う神の一手は確実に妖魔貴婦人を葬った、腐っても四天王の座を担う実力者だと改造巨人は自負している
だからこそ解せない…っ!間違いなく白薔薇姫の身体をこの手で消滅させた実感があるというのに…っ!

 巨人が冷や汗を流す一方で純白の淑女はやんわりと微笑んで茫然としていたアセルスやルージュにご心配おかけしました
そう頭を下げて[妖魔の具足]に吸収した翼竜の力を再び解放する
 襲い掛かる電撃を鬱陶しそうに防ぎつつ魔人は後ずさる…、何故だ、何故生きているのだ!?と
理解が及ばないトリックに困惑しながら


 どのような手品を使ったのか奥義を打ち破られた事実は[ベルヴァ]の思考回路を真っ白にショートさせるには十分で
動きには迷いや戸惑いが顕著に出始めていた
 如何なるの戦士と言えども自分が持てる全てを尽くした切り札を見切られ、防がれるのは心理戦で大きな意味を持つ
一転攻勢に出て戦局を反そうにも今の事例が出来た事でベルヴァの脳裏には嫌でもある考えが浮かんでしまう




       - 得体の知れない先程のトリックでまた自分の攻撃を無効化されるのではないか? -




 一度疑念を抱けばそれは凝り固まって"疑心暗鬼"となる


 防戦の現状を打破すべく攻めに転じるのであれば当然の如く、火力を惜しむ必要など無いがそれを無にされるのであれば
出方を変える必要もあり威力重視の隙が生じる大振りの技なんかを撃って妖魔貴婦人の力で空振りに終われば代償は高い



     ドール「はっ!!」BANNG!

    アセルス「[烈風剣]」バシュンッ

  アルカイザー「唸れ[アル・ブラスター]!!」パシュンパシュンッ!




   ベルヴァ「ぐぅぅ…えぇいい!こざかしい!」


 王宮『 』ドカァァン!…グラグラ、ゴゴゴゴ…


   ベルヴァ(王宮の崩落も近い…っ とは言えこの流れでは奴らが瓦礫の下敷きになる前に俺が敗北し逃げられる)


   ベルヴァ「おのれぇぇぇ…ッ [雷炎パワーボム]」ダッ!!

718 :続きは 火曜日か水曜日予定でしてよ [saga]:2021/06/20(日) 23:02:45.79 ID:m5x041L60

 このままでは自分はそう遠からずに敗れアルカイザー一味はまんまと王宮から逃げ果せてしまうと悟り
謎が解けぬまま魔人は大技を仕掛けに向かった、最早ブラッククロス幹部としての意地であったッ!

 肉体的に一番脆弱な紅き魔術師を仕留めようと大分傷を負った巨人は駆けだした、ルージュは咄嗟に銃を構えて迎撃を
試みるが間に合わない、相手の腕が伸びる方が速い

 殺人的な投げ技を掛けるべく巨人の魔手が彼を掴もうとしたその瞬間だったッ!!



     白薔薇「 」バッ!
    ベルヴァ(ッッッ――!?この女またしても…いや、どうやってだ、俺とこの小僧の間にいつの間にッ)ガシッ


 二人の間に突如として現れた白薔薇姫、技を掛けるべく動いたベルヴァはもう止まれない…っ!
無駄だと理解しつつも勢いを殺して急制動するなど無理な段階まで来ている
 大地踏みしめ彼女の身体を持ち上げたまま必殺の一撃を喰らわせるべく天高く飛翔し……そして――――



        ベルヴァ「……」

        ベルヴァ「……ア"?」(白薔薇姫を持ち上げ逆さまにした状態)






 ドール「」←銃を構え跳び上がったベルヴァを見上げる

 アセルス「」←術の詠唱を始める

 アルカイザー「」←[レイブレイド]を構える

 ルージュ「」←咄嗟に庇ってくれた白薔薇を捕まえ飛翔したベルヴァを見上げる

 BJ&K「」←傷ついた仲間を治療する



 白薔薇「」←"白薔薇姫"を持ち上げたベルヴァを見上げる





             ベルヴァ「――――――――!!!」




 改造の賜物で限界を遥かに超えた動体視力を得たベルヴァは跳び上がってから大地を見下ろした、そして見てしまった


 "自分が掴んだ女と同じ女が何故か地表に立っていて自分を見上げている"という光景を…ッ!白薔薇は二人居たッ!!


  ズドンッッ!!


 殺人プロレス技が炸裂し重力と大地の引力、そして悪鬼の剛腕によって妖魔の貴婦人は石畳の上に頭からめり込む
常人であれば間違いなく首の骨が折れるどころか柘榴の様に頭が割れて脳髄をぶちまける惨事だ
 上級妖魔の彼女はその可憐な花飾りを散らして消滅した―――妖魔の死、それは遺体すら残さず消滅するというもn――



      ベルヴァ「き、貴様ァ!!そういうことだったのかぁッ!!」

       白薔薇「まぁ、バレてしまいましたわね」


 口元に手を当て、あらどうしましょう、目が合ってしまったから気付かれたとは思いましたが…とおっとりマイペースに
困った様な顔で笑う白薔薇にベルヴァは怒りでワナワナと震えた、自分の致死技を回避してきた手品のタネを漸く理解した






  白薔薇「揺蕩うは幻妖の水鏡に写せし我が御身―――[ミラーシェイド]…堪能して頂けましたでしょうか」


719 :続き金曜日か土曜日 [saga]:2021/06/23(水) 22:36:12.85 ID:GLJgREOY0


   アルカイザー「これなら反撃もできまい![カイザーウイング]」ヒュバッ!

     アセルス「もう一度だ![生命波動]っ!」ブンッ



 跳び上がった正義の使者は手にしていた輝く剣を天に掲げ悪を断罪せんと振り下ろす、[飛燕剣]に似た剣気が一直線に
大技直後の硬直で動けない魔人へと飛んで行きそれに追従するように生体エナジーの槍もまた敵を穿たんと放たれた
 続いてレーザー、銃弾、爆裂魔術、幻夢からの来訪者…

 どんな勇者も猛者や英雄であっても例外なく多くの敵の連携には膝をつく


 驚異的なタフさを持つベルヴァと言えどもそれは当て嵌まる、元より3連携が織りなす光のシャワーを浴びて
既に両腕も並みの生物であれば使い物にならない怪我を負っていた
 怪物もいい加減ここが年貢の納め時と言えよう


    ベルヴァ「…ハァ、ハァ…お、俺が、こんな奴らにこうも…っ!!」


   ―――――年貢の納め時、だ







    ベルヴァ「…く、くくくっ、はははは!はーっはっはっ!!」






   ――――――納め時、だからこそ…足掻くのだッ!!とっておきの悪足掻きをッ





    ベルヴァ「ウオオオオォォォォォォーーーー!!」グオォォォ




 女刑事ドールは高笑いを始めた魔人を見て薄ら寒いモノを感じた、仕事柄追われる立場にある犯罪者という物を
嫌になるほど見てきた誰も彼もが捜査官の追跡を免れず逃げ場の無い袋小路にぶち当たり形勢逆転は不可能と悟る
 その時の表情は殆どが共通して焦燥、諦め、あるいは現実を受け入れられないと茫然自失していく顔
手配犯の中にはそこから更に先へ…悪い意味で一歩先の段階へ飛び立つ者もいた

 正しく目の前に居る笑い出した魔人がその部類に入る人物だ、敗北を悟りトチ狂った様に笑ったかと思えば雄々しく叫ぶ
今生の別れ際に自分の存在をこの世界でこれからも生きていく者に認識させようと
 まるで自身の生がここに在った事を主張するかのように大声を上げて腕をを振り上げる姿をドール捜査官は目にした


 自暴自棄、せめて一人でも多く道連れにして死んでやる、せめてお前達の魂も冥土へ引きずり込んでやる


 追い詰められたことで狂人の発想に至る犯罪者の思考そのものと言えよう


 ドールの声が全員に退避命令を出そうとするより先にベルヴァは渾身の力で腕を地面に叩きつけた
言葉通りの意味での[怒りの鉄拳]は王宮全体を揺るがす[地響き]を招き、柱や天井の崩落へと誘発させる
 仕掛けられた爆弾によって唯でさえいつ崩れても可笑しくない状況でこれだ、滅びゆく自身と運命共同体に運ぶ算段ッ



   崩れていく天井『 』バッコォン!ガラガラ…!


  アルカイザー「っ…おのれ[ベルヴァ]め!なんということを」

    アセルス「ああっ!!そんな出口が今の崩落で完全に塞がれてしまった!」


  ベルヴァ「クハハハハ!俺は死ぬ!!だが貴様らも此処で瓦礫の下敷きになって死ぬのだ!もはや脱出不可能よッ!」


 [地響き]を発生させるために打込んだ最期の一撃で言葉通り彼奴の腕は"お釈迦になった"ようだ、あらぬ方向に曲がり
痛みすら感じない…完全に神経が死に腕の腱も断たれた
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/25(金) 15:43:46.51 ID:Esm/b0R60
おつ
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/06/26(土) 22:59:02.19 ID:wc/w8o8Y0

 狂気を宿す眼光のまま魔人は高らかに笑う、命の次に大切にしていた自慢の剛腕は肉の塊に、そして己が生命さえ捨てる

 対価は憎き敵達の人生…四天王ベルヴァは強敵と死闘の末に両者痛み分けに持ち込めたのだ
もう何一つとして思い残すこともあるまい



             ルージュ「まだだ!まだ逃げ道はある…っ!」


 絶体絶命の窮地に立たされて尚そう言葉を発したのは紅き法衣の術士だった
完全に出入口が断たれ、この場に居る全員が最大火力で瓦礫の山を吹き飛ばそうと尽力しようとその頃には粉微塵になる
誰がどう見ても絶望的なその状況下でもまだ希望を捨ててなかった


   ドール「なにか手があるというの!?」

   白薔薇「…!!そうですわルージュさんでしたら"アレ"が使えるのでしたね!」


   アセルス「えっ?どういうこと!」
 アルカイザー「事情は呑み込めないがまだ助かるんだな!?」


 妖魔の君の血を注がれたアセルスもアルカイザーに変身したレッドでさえも流石に今回ばかりはお手上げかと
焦りを感じていた最中で仲間に視線を向ける


 そう…レッドもドールもBJ&Kもまだ実際に見た事も無いとっておきの手段、アセルスは"当時"気絶していたから存在は
知っていたが直ぐには思い当たらなかった"アレ"だ




        ベルヴァ「な、なにをする きさまら――!」ハァ、ハァ



 出血量も酷く息も絶え絶えで、視界も薄れてきた魔人は目を見開き内心で叫ぶのだ
「ありえない!唯一の逃げ道は潰した逃げれる筈がない、この俺様が自分の命を犠牲にしたのだぞ!!!」と
 ここで貴様らは俺と運命を共にすべきなんだ!そう叫びたかったが咽び咳き込む




       ルージュ「みんな!僕にしっかり掴まってて!」

        BJ&K「掴まりました、ですが一体何を」


 仲間達が全員ルージュの身に触れる、そして彼は願わくばあまり使いたくないと思っていた祖国からの支給品を取り出す
緑髪の少女はそれを見て漸く何をする気か解った、[ルミナス]で紫の血を流しながら意識不明になった自分と白薔薇を
大衆の目に触れさせない為に[ドゥヴァン]まで一気に移動した彼だけが使える方法を…!




       ルージュ「異次元への扉よ開け![ゲート]―――[シンロウ]!!」バシュッ!!




 叫ぶと同時にルージュを中心にアルカイザー達は蒼い光に包まれていく、光は深海を思わせる輝きで
水泡の様に膨らんだそれに包まれた一行は瞬く間に何処ぞへと消えていった…っ!




        ベルヴァ「…」ハァハァ…

        ベルヴァ「…。」



   倒壊していくシンロウ王宮『』ゴゴゴゴゴ…!ガラガラ…



    ベルヴァ「…く、くくく、ははは…うぅ、ぐすっ、くははっ、くひひ…はーっははははははは!!!」

    ベルヴァ「あひゃひゃひゃひゃひゃ…っいーひひひひひひっ!!――――――畜生ぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


722 :続き明日 [saga]:2021/06/26(土) 22:59:43.18 ID:wc/w8o8Y0




【双子が旅立って9日目 午前 8時22分 [シンロウ]】



 チチチチチ…



 ――――フッ!



 アルカイザー「とっ、ととと…みんな無事かっ!?」バッ

    ドール「ここは[シンロウ]の遺跡…!?」


 蒼い光に包まれたと思えば彼らは[シンロウ遺跡]に移動していた
魔法王国の人間だけが持てる[ゲート]の術による空間移動だ、祖国から支給された[リージョン移動]を媒体とすることで
使用できるのだが…




     - ルージュ『! この宝石は…』 -

    - 教員c『[リージョン移動]、知っての通りお前たちがそう呼んでいる<ゲート>の術を使う為の媒介だ』 -


  - ルージュ『うっ…!?』 -

  - 教員c『?…どうした』 -


-ルージュ『…質問ですが、僕がこの旅で一度も<ゲート>を…ひいてはこのアイテムを使わないのは構いませんね?』-





 旅立ちのあの日、教員から媒体となる蒼い宝石を受け取った時に言いようの無い不快感を感じ取った
全身総毛立つような嫌な感触…昔から霊感が高い所為か感が鋭い所はあった
 これは単なる思い過ごしかもしれないし、抹殺対象の兄をどうしても連想させるカラーだからそう思うだけかもしれない
理屈は分からないが自分は[ゲート]の術を…[リージョン移動]をあまり使いたくないのだ、なんなら何処か適当な場所に
投げ捨ててもいいとさえ思っている


 言い知れぬ謎の不安、妙な胸騒ぎを覚えるから…流石に[ルミナス]で白薔薇姫に涙ながらに懇願された時や今回の様な
使わなければ全員死ぬというやむを得ない場合は致し方ない





       ――――――ドォォォォォン!!ドンドン! ボッゴォォォォン!




        MAP上の[シンロウ王宮]跡地『 でかいクレーター 』





  アセルス「こ、この振動に音は…」グラッ
   白薔薇「どうやら王宮が爆発したようですわね、見てください彼方の方角を」

  ルージュ「うわっ…なんだあの爆発、あのお城あんなに爆弾仕掛けられてたのかよ…」タラーッ


 今更ながら嫌な汗がどっと噴き出す、[ゲート]を使っていなければあの爆炎に呑まれて自分達もこの世には居なかった


アルカイザー「君達のおかげで助かったよ、ありがとう!…名残惜しいが私は次の任務があるので――さらばだっ!」バッ


   ルージュ「あっ、アルカイザーさん!―――行っちゃった…あの人もお仕事大変なんだなぁ…」

    ドール「…」ジーッ
723 :続き水曜日か木曜日 [saga]:2021/06/27(日) 22:07:05.64 ID:V4FtrY/p0
―――
――


【双子が旅立って9日目 午前 9時01分 [シップ発着場]】


    レッド「よっ!ルージュ無事だったんだな」

   ルージュ「あぁ君も無事で本当に良かったよ」

    レッド「俺だけ先にブラッククロスの奴らに改造されそうな時にアルカイザーが助けてくれたからな〜」ハハハッ


   ドール「…。」ジーッ


 [シンロウ]の王宮は跡形もなく消し飛んだが幸いにも人的被害は無かった、事前に避難させたおかげで発着場に
人々は集まっていてスタッフが忙しなく動き回っている姿が目に入る
 王族達は家臣らと今後どうやって王宮の…いやこの"惑星<リージョン>"の財政や信頼を再建していくのか
観光旅行客は我先にと他所へ逃げ出す為に"宇宙船<リージョン・シップ>"の席を取るべく受付に殺到…
いつかの[マンハッタン]で見たような光景だ


  ドール「レッド君、それに貴方達も少し時間を貰えるかしら?」


 女刑事はここでは少しと場所を変える為に一行を連れて受付カウンターの方へと歩き出す
あえて場所を移そうとする辺り公にしたくない会話内容なのだろう、汗水流すシップ発着場のスタッフに
ドールは[IRPO]隊員であることを証明する身分証を提示して秘密裏に停泊させてある[IRPO]専用のシップへと通してもらう

 停泊中のパトロール隊員専用シップは[シュライク]でもよく走っている自動車のパトカーとかいう車に似たフォルムで
シップなだけあってそこそこの広さがあり作戦会議に使われるブリーフィングルームへと通された


 ルージュ「あのぉ…なんでここに連れてこられたんですか?事件に関わったから軽い事情聴取的な奴だったりします?」

  ドール「いえ、今更素性に関しては問いませんヒューズからも色々と伺っていますからね」

  白薔薇「でしたら一体…」



  ドール「貴方達に我々が調査中のブラッククロスに関する資料を渡そうと思っているのよ」



  レッド「!!」

 アセルス「えっ!?待って!それって良いの?…私達一応は一般市民よ、なのに警察が追ってる秘密結社の資料って…」



  ドール「そうね、本来なら一般人である貴方達に見せることは良くないわね」


 アセルス「ならどうして…」


  ドール「…この案件は私達が当初から長年追っていた事件
        それをここ数日前に突然現れて組織の事を調べ始めたヒーローがいる、アルカイザーよ」


  ドール「…認めざるを得ないわ、私達パトロールだけの力ではブラッククロスは倒せない」


  ルージュ「??? あの…それと僕達に何の関係が?確かにアルカイザーさんとは知り合いですけど…」

   レッド「」ダラダラ


   白薔薇「? レッドさんもしや体調が優れないのですか?汗をかいていらっしゃいますが…」

   レッド「えっ、あ、そうかもなー…あはは」ダラダラ


   ドール「早期に事件が解決すればそれだけ多くの人が助かる、市民の犠牲者をこれ以上出さない為にも」

   ドール「事件の調査資料を渡したいのよ、でも彼は正体不明で何処にいるのかさえ不明」チラッ

   レッド「」ビクゥッ


  ドール「……だから私は思うのよ、"何かと彼に縁のありそうな貴方達"に渡した方が彼にも間接的に届くってね」ニコッ
724 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/29(火) 17:50:31.25 ID:US/RoTJC0
さすがクールな大人の対応や
725 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/07/01(木) 08:27:32.18 ID:WInuAAGY0

 レッド少年は気が気じゃなかった…ヒーローの掟を破った場合待ち受ける末路を知ってるがゆえに生きた心地がしない
あからさまにバレてる、女刑事の反応は彼にはそうとしか思えなかった

 だが依然として我が身に何も降りかからないところを見るに[サントアリオ]の判定としてはセーフなのだろうか?


 結局ドールはその後もアルカイザーの正体に迫る様な発言はせず書類ファイルを手渡して
ブリーフィングルームを後にしていった
 [ゲート]の術を使えば一度行った事のある土地に瞬間移動が可能だから[シンロウ]をすぐに発つことも可能ではあったが
激戦を終えた後だ束の間の休息は取りたい、幸いにもドールの御厚意で一行を[クーロン]まで連れて行ってくれるらしい
冷暖房までバッチリ完備のパトロール御用達のシップだ
 四天王との戦闘行為で消耗した術力や技力の回復も兼ねて仮眠でも取りながら運んでいただくことにしよう
[金のカード]の為にも今は宿代だってケチりたい時分だ


 遺跡探索の結果は剣が一振りに精霊銀を使った鎧や腕輪、ピアス、それに[結界石]なんかだが


 クレジットがまるで貯まっていない…[金]を買う現金が足りてないのだ


 金稼ぎのつもりで当初[シンロウ]へ来たのだがその本懐が果たせなかった以上は他の場所で金銭を稼ぐ他ない



 ルージュ「遺跡探検じゃ思ってたよりは儲からなかったね…」ペラッ

 アセルス「ゲンさんの話だと古代船の残骸からはメカのパーツや1200クレジットが手に入ったらしいけど…」ペラッ



 曰く、知り合いの剣豪が旅の共をするロボの記憶の手がかりを求めて潜り込んだ"宇宙船<リージョン・シップ>"の残骸
そこで金銀財宝を見つけたり[イクストル]とかいうデカい蝙蝠に危うく殺されかけたり色々あったそうな
やはり他人の成功談の様に一攫千金とは行かないものか



  レッド「とほほ…世の中世知辛いよなぁ」ペラッ



 渡された書類ファイルをペラペラと捲りねがら秘密結社の情報見ていく
特に今後レッドの敵討ちの旅に関わる重要なソレを…



   白薔薇「あら…この"キャンベル"という方のビル…」






    - 『白薔薇(…?あの塔、…いえ、"ビル"というのでしたね、妖魔の気配がしますが…)』 -





   白薔薇「…やはり私が[マンハッタン]で1人逸れてしまった時に感じた妖魔の気配の」

   レッド「…キャンベル社長のビル、か怪しいとは分かってたさ」



    BJ&K「正確な所在は不確かですがこちらの書類には[クーロン]に基地があると推定されていますね」ペラッ

   レッド「あの街かぁ…あそこ迷路みてーに入り組んでるからなぁ、見つけられっかなぁ」ポリポリ


  ルージュ「…[クーロン]…ハッ!?」ピコーン


    - エミリア『何かあったらそこを頼ると良いわ、私が居なくても、その名刺さえ見せれば』 -

    - エミリア『グラディウスの誰かがちゃんと手を貸してくれるから』 -



  ルージュ「確かここに」ゴソゴソ

貰った名刺『お困りごとなら何でも解決!裏組織 グラディウス![クーロン]イタリア料理店、詳しくは店前の女まで!』

726 :続き土日のどっちか [saga]:2021/07/01(木) 08:29:07.42 ID:WInuAAGY0


   ルージュ「エミリアさんから貰ったあの時の名刺…これなら―――」ボソッ


 [マンハッタン]で昼食を取っていた時に渡されたグラディウスの名刺…餅は餅屋に、蛇の道は蛇に
暗黒街に息を潜める犯罪組織の事を知りたいなら地元に居る裏社会の住人に聞くのが早い

 ルージュが仕舞っていたソレを取り出し提案しようとしたその時であった






       レッド「ッッ…!!」グッ



 書類にどこよりもハッキリと書かれていた四天王の所在地を見て、レッド少年は用紙を掴む指先に思わず力を込めた
険しい顔立ちに何事かとアセルスや白薔薇も同じく横から書類を盗み見た――――そして顔に陰を落とす


  ルージュ「えっ!?み、皆どうしたの!?」


     レッド「〜〜っ……あぁ、いや、すまねぇ…なんつーかよ、これはな…」

    アセルス「嘘よ…あの人、あんなに親切だったのに…」

     白薔薇「関係のあるお方だとは思っていましたが現実というのは時に残酷なものです」



 ルージュは名刺を仕舞って白薔薇から書類を見せてもらう、そこにはハッキリと四天王の名前と基地所在が記されていた














          ルージュ「…なっ!?……メタル、ブラックさん…?」









 そこには面識のあるメカの顔があった、忘れもしない美しき[京]の風景、夕日に照らされた[書院]
見ず知らずの旅人であった自分達のカメラ撮影のお願いを聞いてくれて更に[剣のカード]の情報や[[サムライソード]譲渡
 世話になった身でなのだ…



  アセルス「…私が[幻魔]に相応しい腕前を身に着けるまでの間使用する剣ってことで今使ってるこれ」チャキッ

  アセルス「この[サムライソード]はあの人から貰ったものなんだよね…」


   レッド「……。薄々、解っちゃいたんだ、巡礼者が入っていくのがあの時カメラ越しに見えちまったからよ、けど」

   レッド「やっぱ、さ―――認めたく無かった、っていうのかな…これは、な」



  ルージュ(…。)

  ルージュ(裏社会に属するメカだとは感づいてた、でもエミリアさんみたいな良い裏組織の人だったり)

  ルージュ(実はヒューズさん達みたいに正体を隠してるメカのパトロール隊員かもって信じたかった)


  ルージュ(…そっか、…そうか………嫌な予想っていうのは的中しちゃうんだな…)
727 :続き 水曜日か木曜日 [saga]:2021/07/04(日) 23:13:02.20 ID:BcpE90610

 
  ルージュ「…。[京]に行ってみるかい?君が行くのなら僕も付き合うよ」

   レッド「お前…」


 知らん仲じゃない相手と親友が刃を交えるかもしれないのだ、想う所はある
話し合いで穏便に―――済むとも思えないが一抹の希望でもあれば藁を縋る思いになるのが人間の心情というモノ

 宿命を背負った紅き法衣の魔術師もまた何処にでもいる普通の人間だったということだ



  ルージュ「僕の旅そこまで急がなきゃいけない旅じゃないからさ」

  ルージュ「アセルス達は暫く[IRPO]に保護してもら「私達も行くよ!」


 折角[IRPO]隊員のドールとお近づきになれたのだから、二人でメタルブラックの基地へ乗り込んでいる間
彼女らには警察で保護してもらってはどうかと提案しようとしたところバッサリと案は切り捨てられる
 女性陣、特にパーティー中最年少のアセルスを今回の一件に関わらせるのは流石に憚られる
先述の通り話し合いで穏便に済めばいいのだが、それは単なる都合のいい理想論に過ぎず十中八九メタルブラックとは
一戦交えるだろうと想像はできる


 友人としてレッドをこのまま単身で命の危険性がある敵地に行かせたくはない、今日だって四天王の1人[ベルヴァ]と
危うく無理心中しかける激闘をルージュ自身が体験したのだ脅威性は十分に分かっている
 かといって自分がレッド少年に付きっ切りになればその間[ファシナトゥール]からの刺客が来た時
アセルス達を護れる者が単純に減る


 あれから一行に刺客と遭遇しないのは運がいいだけなのか、アセルスの服装を水色パーカーに変えたからか
どちらにしても戦力が分散されればその隙を突かれた時に対処しきれない、故に警察に暫く匿って貰いたいのだが…



  アセルス「私達にとっても、知ってる人だから…無関係じゃないからっ!」


   レッド「姉ちゃん…」
  ルージュ「アセルス…」


  アセルス「説得に失敗したら二人はメタルブラックの事を……その、討たなきゃ、いけないん、でしょ…」

  アセルス「戦いになったら、どちらかが倒れるまで戦いが終わらなくなる」



  アセルス「二人が敵の基地から生還してきたらそれは彼が破壊されてしまった証、逆に帰ってこなかったら
                 それはメタルブラックは助かるけど烈人くんとルージュは死んでしまった証になる」



  アセルス「…きっと後悔すると思うんだ、その場に居合わせなかった事を」

  アセルス「私だって説得時に声を掛けられたかもしれない、私だって二人の命が危ない時に助けられたかもしれない」



  アセルス「"もしも自分がその時その場に居たら何かが出来たかもしれなかったのに"――そう後悔するのは嫌だ」




 心情は、理解できる。




 以前[ヨークランド]でレッドが言ってたその時の自分がベストと思う道を貫くこと、その結果がお世辞にも良い成果と
呼べなくて悔やむ事はあっても"間違った"とは思いたくないという趣旨の話

 ここで一緒に行かなければその時々で取れたかもしれない選択肢の幅も縮まる
未来の選択肢を増やさないという『選択肢』を今ここで選んでいることになる、それは彼女にとってはベストではないと



   レッド「…。」

   レッド「最悪の場合になったら覚悟は決めてもらう、それが条件だ」

  アセルス「…。」コクッ
728 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/05(月) 12:19:30.41 ID:MwvBlh1k0

レッドとアセルスが揃ってると会話の主人公感がすさまじいな
729 :今回此処まで次回日曜日か月曜日 [saga]:2021/07/08(木) 22:02:44.28 ID:g0jfdCYl0


   白薔薇「では次の行き先は決まりですわね」


 彼らのやり取りをそれまで静観していた貴婦人が声を発する、アセルス嬢の付き人として元より何処までも同行するのだ
流れとしては白薔薇姫も来ることになるのだろう
 視線を合わせて「白薔薇、付き合わせちゃうけどお願い」と言葉にせず眼差しで語る少女に対して彼女は優しく笑う


 方針が決まったところで次はどのように潜入するかだ、事情を知らずにドールと共に遺跡探索に向かって罠に引っ掛かり
なし崩し的に[ベルヴァ]の基地を叩いた今回とはワケが違う


 今度は明確にこちら側から攻め込む姿勢になるのだ、半ば偶発的な事故で迷い込むのではなく


 [傷薬]系の道具はもちろん、装備の一新から所在が判明している敵基地の最も警備が手薄になる時間帯
入口の隠し通路を初めとする侵入経路への理解

 準備できることはたくさんある





  レッド「…爆弾」ボソッ


  ルージュ「へ?」



   レッド「いや、今回俺達がブラッククロスの基地に殴り込みに行くだろ?」

   レッド「んで準備する物でちょっとだけ考えたんだ、奴らの秘密基地は残しておいても百害あれど一利なしってな」



 レッドが調査ファイルをペラペラと捲りながら告げる、各地にあるブラッククロスの拠点は各々が何かしらの役割を持つ
例えばここ[シンロウ]の基地なら倒した魔人が言っていたように屈強な冒険者や遺跡探検家を捕らえて人体改造手術を施し
組織に忠実な怪人や戦闘員に変えてしまうと


 謂わば、ここの基地は役割としてなら人員補充―――強者を見つけては組織の人手とする役割だ


 [マンハッタン]にあるキャンベルのビルなら表向きは女性受けするブランドメーカーだがその実態は兵器開発工場だ
生活必需品からファッションに化粧品、重火器まで何でも事業の一環だと
 表社会の流通ルートから足を探らせずに裏社会にある各拠点に武器を回すのが仕事
表向きは法に触れない正規の売買、受け渡しにしか見えない




 唯一[クーロン]にある所在不明の基地は役割が何なのか不明、憶測だが戦闘員の育成、戦術指南、各地での破壊工作など
テロ行為を行う実働部隊が控える兵舎拠点なのではないか?と書かれている




 そして問題の[京]だがあまりにも異常な麻薬の密売人の検挙率とヤクの貿易ルートから察するに
組織の財布の紐を握っているのがこの基地の役割なのだろうなと分かる
 麻薬密造施設があり、そこで造られたブツを売りさばいては金を貪り各拠点へ儲けた資産を送るシステムだろう



 デカい組織であればあるほど、維持や運営には莫大な資金や資源を要する
個人ならともかく、組織という一つの集合体にとって金の流れは血液の流れる生命線そのものと呼べる
 それを切ってしまえばどうなるだろうか?




     レッド「この書類通りなら麻薬の密造釜があるかもしれない、なら時限式の爆弾を仕掛けられねぇかなって」

    ルージュ「…なるほど、[クーロン]ならそういうのも売ってるかもしれないしね」


 あとはこの基地捜査を担当する"ラビット"なる隊員とコンタクトを取れるようにしたい
話し合いは順調に白熱していくのであった

―――
――
730 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga!蒼_res]:2021/07/12(月) 23:23:25.13 ID:bHbg1V8V0















            …ん?もう時間か、わかったから急くな














 折角、相手方の本拠地を見つけたからには準備を万全にして潜り込みたい


 わざわざこうして[ゲート]で[クーロン]まで戻ってきてしっかりとした睡眠まで貪ったんだ



 モンドとやらの基地の全容、隅から隅まで調べて優賞を授かるとしよう


731 :今回はここまで 次回土曜日か日曜日予定  リュート編ラスダン突入!!! [saga]:2021/07/12(月) 23:25:09.98 ID:bHbg1V8V0
―――
――



【双子が旅立って9日目 午前 11時20分 [ワカツ]】


 転移魔術によって蒼き魔術師と機械団体、地下組織の女構成員2人に地元民の剣豪とスライムそして今回の一件に置いて
おそらく一番因縁があるであろう青年が再びこの地へと舞い戻ってきた

 目指すべくはpzkwXが転落事故を起こしたあの裂け目、偶然の賜物で見つけ出したモンド執政官の秘密基地に続く大穴だ


     アニー「…。」


  -  暴走メカにしては地層の脆さから溝に近づいてこない辺り賢いAIだな…と  -


     アニー「今にして思うとあの[メカドック]や[キャンキャン]は番犬だったのかもしれないわね」ボソッ



 道中の敵を切り伏せながらアニーは独り言ちる、荒城を彷徨う"暴走メカ"にしては溝への落下を警戒するなど
随分と優秀なプログラムが搭載されていたなと妙な引っ掛かりを覚えていた
 [ワカツ]大空襲の際にトリニティ政府が地上掃討に放ったメカの残党がこの"惑星<リージョン>"に蔓延るメカ達だ
つまり相当古いブツで尚且つ碌すっぽに整備もされず野晒しになった物


 "人間<ヒューマン>"と違い"メカ"という種族はコアさえ無事ならいつまでも生きられるが
外付けの"肉体<ハードウェア>"でどうとでもなり得る、それこそ[追加メモリーボード]が1つ付いてるか否かで
知能指数が大幅に増減するのだ

 老い衰えて性能が悪くなる有機生命体の脳みそと彼らメカ族の半永久的に存続できる知恵の回路はその辺が違う



 …極稀にT-260の様な"心臓部のコア<ソフトウェア>"の面で問題が応じて知識や記憶の欠落、AIの性能低下というのも有るが





 何れにしてもあの近辺に居たのはモンド氏が持ち込んだ番犬と見ても良いのかもしれない


 木を隠すなら森の中、機を紛れ込ませるなら同じく暴走機の群れに


 渡航禁止とは言え条件さえ満たせば来れる土地だ、何らかの間違いで勘のいい旅人が自分の基地を見つける可能性がある
暴走メカに襲われて落命という事故に見せかけた抹消、あるいはそれとなく基地入口の裂け目に近づけない様に立ち回る
 そんな役割だったのかもしれない



   ナカジマ零式「ふ〜、どーにか此処まで戻ってきましたね〜」スィー

      pzkwX「あぁ、こっから落ちた時は流石に肝が冷えたな」


     エミリア(肝?メカに肝なんてあるのかしら?)ロープ バサァ


 崩壊した城壁の一部に縄を括りつけたエミリアは機械達の真横に立ち暗黒街で買ってきた登山用のそれを下す
人間<ヒューマン>組、メカ勢の順に降りていき最後はスライムが縄を処理して飛べるナカジマ零式に乗せてもらって降りる
 それで侵入した形跡もちゃんと消せる仕組みとなるだろう



    ゲン「…わりぃが俺が一番乗りさせてもらうぜ」グッ

  リュート「ゲンさんが先に行くのか」


 力強く縄を握り底の見えない大穴へ降りて行こうとするのは亡国の剣豪であった、リュートはそんな彼を見て思わず
声に出していた「先に行くのか」と、何時でも酒を飲むことを忘れない漢が基地を発見してからは[クーロン]一時帰還後も
この道中での戦闘終了後でさえ常に持ち歩いてる一升瓶を飲んでいないのである、―――明らかに様子がいつもと違った


    ゲン「へへっ心配すんなって手を滑らせてそのまま転落なんて情けねぇ真似しねぇよ」


 リュートはそうじゃない、と口を開こうとするも剣豪は彼の言葉を待たずに先に降りてしまった…、彼らしくない逸りだ
732 :続き水曜日か木曜日 [saga]:2021/07/18(日) 22:05:59.49 ID:xbCkABq00

 かくして[モンド基地]への潜入に成功した彼らは周囲に警戒しながら移動を始める
入口から入って一本道に進み、道中見張りと思われるメカや雇われの妖魔やモンスターを蹴散らし巨大な昇降リフトが
設置されている部屋へとたどり着く


    レオナルド「斜行プラットホームリフトかぁ、おそらくそこのパネルで下層へと降りていけるだろうね」


 基地の構造上、地下へと何階層にも渡り降りていくが故の造りだ
地層を掘り進めて搬入した建築資材を注ぎ込み築き上げた地下基地は堅牢な内壁や床からして
簡単に崩壊はさせれない事が手に取るように分かる


  リュート「パネルってのはこれかい?」ピッ
  リュート「どわっ!?」ガションッ、ウィーン…


 ほんのちょっと指先が触れただけでリフトは稼働し出して乗っていた全員を地下へと案内し始める
下層に居る見張りのモンド私兵は当然ながらこの事態に反応してリフト乗り場へと駆け込んでくる
"予定にも無いリフトの稼働"があったのだから当然だ
―――
――



  ワンダードギー「どうなっている!?今日はモンド様は会議に出ていて基地にお戻りになられない筈だぞ!?」ドタバタ



 下位妖魔の[ワンダードギー]は愛用の[ワンダーランス]を手に通路を駆け抜ける
人間社会に上手く溶け込めない妖魔の大半は浮浪者として物乞いや強盗紛いな方法でその日を生きる者が多い
 もしくは野垂れ死にかどんなに惨めであっても同種族から一度は[ファシナトゥール]を出た身と蔑まれてでも帰国するか


 そんな下位妖魔の中にはのらりくらりと人間社会でなんとかやっていける存在は居る
起業に成功したり自分の工房を持てたり様々だ

 然して"社会で成功した妖魔"の成功、というものが全て真っ当なモノとは言い難く
中には当然後ろ暗い経歴での成り上がりをした者だっている例を挙げるなら悪の秘密結社の改造手術を自主的に受け
幹部の地位に立った者、仮面をつけた野心家とトリニティ政府の機密に触れようと目論む者



  この[ワンダードギー]も所謂"同じクチ"という奴だった



 敵ランク1というカテゴリーに位置付けられ、半ば逃げるように飛び出た故郷たる妖魔の都でも人間社会でも
同種族、他種族から嗤われ続けたが故にいつの日にか世界を動かす存在になりたいと、成り上がりを夢を見た野心家である


 元来、妖魔という種族は努力を忌み嫌う。

 生まれついての才、能力の高さ…身分を全てと考える一種の選民思想的なモノがある
世の中にはその唾棄すべき努力などという行為を重ねに重ね妖魔の君の位を受けた者――[時の君]と呼ばれた存在も居るが


 何れにせよ例外を除いて、大概の妖魔は日頃より鍛錬や学習に励むことはない



  ワンダードギー「クソ!見張りは何してやがる…監視カメラの映像は、…なんだコイツ等は?」カチカチ、カタカタ…



 さて、そんなド底辺に位置する妖魔の彼が何故[モンド基地]の見張りとして立っているか
先述の通り彼は政府認定の危険度としても最弱の烙印が押された存在だ、…理由は大きく言って2つ

 1つ目は雇い主のモンド氏は最悪の場合いつでも"蜥蜴の尻尾"として扱える駒それこそ金で動く浮浪者を必要としていた
 2つ目は…


  ワンダードギー「基地全体に警報を鳴らす!侵入者あり!繰り返す侵入者あり!場所は―――」カタカタ、ピッピッ!



 妖魔という種族は機械を努力と同じくらいに忌み嫌い、だからこそ理解が薄く知識の学習と伝播が無い
専門的な技能の教育機関や教導する者が居ないのだから総じて機械音痴という現代社会にあるまじき欠点が生じていた
 厄介極まり無いことに『機械は汚らわしい存在』というその認識が
個人レベルなら兎も角"妖魔"という1つの民族思想レベルで普及してるのだから手に負えない


 だからこそモンドはこの妖魔を雇いたいと思った。ド底辺だからこそ、成り上がろうと努力を惜しまず機械さえ学ぶ彼を
733 :続きは明後日土曜日 [saga]:2021/07/22(木) 23:52:19.69 ID:iUbJmz9U0

―――
――


ガシューッ!



    エミリア「止まったわね」キョロキョロ


 基地全体に緊急事態を知らせる音が鳴り響いたのは下層へと降りていた彼らの耳にも届いていた、程なくして乗っていた
リフトは静止して最上層から1つ下の層に停まる
 レオナルド博士がパネルを動かし最下層へ何とか行けない物かと試みるのだが…


   レオナルド「うーん困ったね、電力自体が通ってないみたいなんだ」

   レオナルド「さっき警報が鳴った時にコレの電力供給が断たれたらしくてね」


      T-260「レオナルド様どうにかなりませんか?」



 鋼鉄の瞼を閉じて小考、工学の天才は腕の指先から螺子を取り外す為のドライバーを生やす
SFアニメでサイボーグと化した人間の指先が銃になるなんて展開はありがちだが、工具道具がニョッキリ出てくる展開は
早々お目に掛れるものではないだろう
 直ぐにパネルの分解作業を初めて彼は内部構造に眼を向けてから音声を発した



   レオナルド「結論から言うとどうにかなりそうだね」

    リュート「本当かい!?そのどうにかってのはどうすりゃいいんだ?」


   レオナルド「まず、ここの穴を見てくれ―――六角レンチ用の穴に似たサイズのここさ」

   レオナルド「基地全体の動力部が何らかの諸事情で駄目になった時、こういうのは非常用の予備バッテリーがある」


   レオナルド「ここにケーブルを差し込んで、予備バッテリーになりそうな機材から電力をちょっとだけ頂こう」


   レオナルド「そうすれば更に下層へは降りられる」


 "予備バッテリーになりそうな機材"、大がかりな荷物や大人数を運搬できる程の斜行リフトを稼働させるともすれば
消耗するエネルギー量も当然増えることは間違いない
 電力ケーブルの方は博士の先程の螺子回しと同様で格納された内蔵機器にその役目を果たせる物がある
つまりはバッテリー替わりになりそうな何かを持ってこい、というのが漸くした内容だった


   レオナルド「秘密裡に兵器の開発を行っているようだからね、基地内にもバッテリーになりそうな機材はあるさ」



   リュート「ってーとだ、こっから下に行きたきゃまずはこの階層でなんかの部品をかっぱらって来てそれを使うと」

   リュート「そしてこの下でも同じ様にそこそこエネルギー溜まってる何かの部品を拾ってそれを利用してって…」

   リュート「そんな感じで最下層を目指すんだな?」


   レオナルド「そーゆーコト、さっそく降りて奥の部屋に入ってみようか」



 侵入が知れ渡った上で、武器に手を掛けながらリフトから降りて部屋の中へと入っていく
すっきりとした見渡しの良い入口とは打って変わって遮蔽物と成り得る白い箱状コンテナ
無数のケーブルが大河の如く敷かれた、ごちゃごちゃとした部屋というのが写真を撮っているブルーの第一の感想だった


    ブルー「随分と散らかっているな、それにさっきまで何かを建造していたのだろうか」パシャッ


 巨大な機械の一部と思わしく物体が奥にはあり、彼は敵を屠りつつ恩賞を貰う為に必要な写真を撮り続けていた
明らかに敵対勢力を駆逐する為のロボットにしては規模が大きい
 これ1つで中規模〜大規模戦用の戦闘メカか何かかと一瞬思ったが、にしては可笑しいのだ

 まだ造りかけで内側の細かい部分まで見えてしまうソレには不思議な事にメカの魂ともいうべきコアが存在しない
もっと言えばレオナルド博士はそれ等が構造上、それ等自身でさえパーツの1つに過ぎないと
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/23(金) 01:55:20.69 ID:GuCcyMTG0
乙乙
735 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/07/24(土) 23:57:55.00 ID:dvOrl/i/0


 「侵入者だ!1人残らず殲滅しろ!」


 遮蔽物と成り得る白い箱状コンテナの影から[メカドビー]が3体飛び出してくる
当然ながら警報音を聴き侵入者を亡き者にせんと潜んでいたのだ、当たるも八卦の[ドビーランチャー]を構え出鱈目に
筒砲から飛び出すソレの嵐を駆け抜け重い一撃を剣豪が浴びせる


    「ぐばっ!?」ゴッ

  ゲン「邪魔するんじゃねぇ」


 清流が如く、流れる様な無駄の無い動きでありながら決して振るわれる剣圧はヤワではない
一撃の下に沈黙した仲間を目にした2体目は担いでいた兵装でゲンを殴りつけようと飛び出すも[インプロージョン]で
爆散し最後の1体は特殊工作車に備え付けられた機銃とT-260に取り付けられた重火器による連携を受けて火を噴いて倒れる



   ゲン「…」ブンッ、――チャキッ



 刀に付着した機械油を払うように剣を一振りしてから鞘え納め、フロアの探索に戻ろうとする剣豪








   ブルー「おい貴様、どういうつもりだ」スタスタ



   ブルー「連中の精密さに欠ける乱射ならその辺の機材の影でやり過ごしてからでよかろう、前に出過ぎだ」

   ゲン「あぁ、悪ぃ…けどよ奴さんには侵入バレてんだ、ちんたらしてらんねぇだろ」



 くどい様だが遮蔽物と成り得るコンテナボックスや機材がこの階層フロアには大量に置かれている
ならば無駄に突飛するよりやり過ごしてから切り込むなり、術やメカ達とエミリアの狙撃、あるいは[烈風剣]等を使うなど
適した戦術はあっただろうと蒼き術士は咎めた


 逸っている、どこか気持ちが急いているのだ


 リュートだけではなくブルーもエミリアも今日まで付き添ってきたメカ達でさえもソレには気が付いていた
剣豪当人からすればこの基地は故郷を滅ぼした仇の物で、最奥には己から全てを奪った張本人が鎮座してるやもしれぬのだ

 そんな仇を切り伏せれるかもしれぬ千載一遇の機、何も想う所が無いわけじゃない…人間の感情<ココロ>は理性や理屈で
簡単に片づけられるモノではない事くらい解っているのだ、解ってはいるのだが…





  ブルー「逸るな、死ぬぞ貴様」

   ゲン「…」

  ブルー「勘違いするな、俺達の目的は基地の地形構造、武器、設備の情報をコレに収め帰還することだ」つ『カメラ』

  ブルー「此処で首魁を討つことではない」スタスタ


   ゲン「わぁってらぁ」



 他の仲間達より少し先に進んだ所で行われた男二人のやり取り、それを遠目に見ていたエミリアも会話内容までは
聞こえずとも凡そ何について話しているか察した、正直な所これに関して彼女はどちらかと言えばゲン寄りの感情だ


   エミリア(…大切な人や幸せだった日常を壊した憎い仇への復讐、かぁ)


 人間は"感情<ココロ>"で動く生物だ、ゲンを突き動かす行動原理をブロンドの女は痛い程に理解できる、できてしまう

736 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/07/24(土) 23:59:28.79 ID:dvOrl/i/0

  レオナルド「君はああならない方が良いよ」

   エミリア「え?」


 俯き考えこんでいた時、彼女は背後から声を掛けられる振り返るとそこには機械化した人間が1人
限りなく人間の声帯に似せた機械音で語り掛けてくる彼に疑問符を浮かべると…


  レオナルド「ボクはファッション雑誌やモデルさんに興味は無いけどね、君くらいの有名人なら流石に知ってるよ」

  レオナルド「一緒に行動する上でリュート君達からも少々事情を聴かされたからね」


 一世を風靡したトップモデルの転落人生、全ての元凶である道化師の仮面をつけた男との因縁のこと
どういう経緯で今回潜入することになった基地の主人、モンド氏とエミリアが面識を持ったのかを説明する上で芋づる式に
ジョーカー事件についても語らざるを得なくなったらしい



  レオナルド「憎しみや怒りに囚われると人間、"真実を見る目"を曇らせてしまうからね」


   エミリア「…ふふっ、あなたってば全然メカっぽくないことを言うのね」クスッ


  レオナルド「機械化したことで多少物事を俯瞰的に視ることは多くなったかもしれないけれどね」

  レオナルド「これでも元は人間だから、人としての心理や感情論だってちゃんと解るんだよ」

  レオナルド「だから彼の"人間ならば誰しもが持つ側面"を否定する気も無いかな〜って」


  レオナルド「でも時と場合によってはそれに囚われ過ぎちゃ駄目な時があるのも事実かな、難しい話だけど」

  レオナルド「と言うのも君にとっての仇、ジョーカーって言ったっけ?」


   エミリア「え、ええ…そうだけど」



  レオナルド「丁度一週間前のお昼頃になるのかな
         ボクはT-260君の事を調べる上でトリニティの第七執政絡みのデータを閲覧していてね…」

  レオナルド「その時、"表向きは"爆破テロって事になってる事件に運悪く巻き込まれちゃってさ」


   エミリア「…一週間前の爆破テロ」




         - エミリア『っ!!な、なんなのよ!今の音は!!』-

  -ルージュ『! み、みんな、見てくれ!あのビル!! あの一番大きな建物から煙が出てるぞ!!』-




   エミリア(…あの時の爆発、私達にも見えてたのよね…)


  レオナルド「それでその時にトリニティに接触してたジョーカーという人物に関するデータを流し見程度にだけど見た」

  レオナルド「機械になった今の計算思考、生前の記憶情報と合わせて改めて考えてもどうにも不可解な点が多すぎる」




  レオナルド「なんというか偶に行動に奇妙な間隔がある、一定間隔で指針を変えるような動きというか一貫してない」

  レオナルド「こう…"人格が別々にある"…みたいな?」



…人格が、別々にある?



   エミリア「それって「おーい!レオナルドさーん!これなんてバッテリーに使えそうじゃねーかぁ〜?」


 続きを促そうとした所で階段を上った先からリュートが声を掛けてくる
737 :続きは日曜日 [saga]:2021/07/25(日) 00:00:02.71 ID:xHOyBFoT0


  レオナルド「っと、いけない…つい話し込んでしまったね、興味のある事だと長話になるのが悪い癖だ」

  レオナルド「兎に角、君は仇を前にしても冷静さを欠いてはいけない」

  レオナルド「"確証の持てない考察論"だからボクからは深く言えないけど対面して直ぐに相手を殺さないようにね」


   エミリア「あっ…」



 暗に仮面の男の真相を掴んでいるという発言だった、[ラムダ基地]潜入時のモンド氏といい
自分が未だに知り得ない真実を周囲の人物は得ている
 喉から手が出る程知りたくて堪らない、渇望して止まない憎むべき男の正体を…っ



 だが、目の前の彼は告げるのだ『冷静さを欠くな』『1対1で対面する機会があっても直ぐに撃ち殺すな』…と



 100%の確証が無くとも何らかの答えに辿り着いているのなら教えて欲しいというのが正直な所、彼女の本音だが
彼なりにエミリアを気遣ってくれたつもりなのだろうと彼女は思うことにした
 レオナルドからすれば何の関わりも無く助言する必要性すらない赤の他人である彼女に対して復讐心は真実を見誤らせる
感情に突き動かされて確かめもせずに直ぐ相手を殺す様な真似はするな、と発言する辺りジョーカーを殺す事自体に何か…


 きっと、何か大切な意味があるに違いない…


 手っ取り早いのは彼が口答で教えてくれることなのだが、それをあえて逸らすように話を切ったからには
おいそれと言葉にする訳にはいかないという事だ




     エミリア「ふふっ、レオナルドさんかぁ…機械は苦手だけど少しだけ、好きになれそうかもね」クスッ









  アニー「エ、エミリア…ちょっとアンタそれはマズイって、いくら未亡人だからってメカに手を出すのはちょっと…」

 エミリア「!? ち、違うから!?そういうんじゃないってば!?今のはそういう意味じゃないからね!?」






 ……レオナルドは確かにジョーカーの正体に見当が付いていた、だがエミリアにそれを直接言うのは憚られた




 彼自身が言った様に、ロボットになってしまったとはいえ彼には人間の感情や心理を理解できるから
だからジョーカーの正体を彼女を前にして大っぴらに言うのは気が引けた






―――
――




    リュート「どうだい、レオナルドさんコレならあのエレベーター動かせるんじゃねぇかな」つ『バッテリー』

   レオナルド「OKこれで更に下層へ向かう事ができそうだね」



 予備電源と成り得る物を両手に掲げて自慢げな顔をするリュートに大判子を押して一行は来た道を戻りリフトフロアへ
戻ろうとしていた…だが戻った先には
738 :続きは火曜日か水曜日 [saga]:2021/07/25(日) 22:11:08.26 ID:xHOyBFoT0




         ワンダードギー「ディィイヤァァァァァァァァーーーーッ!」ブンッ




 リュート「うおっ!?あぶねっ」サッ!



 戻った先には基地の警報機を作動させた[ワンダードギー]が待ち構えていて侵入者達を始末せんと槍を構え一直線上に
突っ走って槍を大きく振るい出した
 先頭を歩いていた無職の青年はそれを避ける、ランスの先端が特徴的なボサボサ髪を掠めて毛先が舞う
飛び退きつつも抜刀して戦闘態勢に入るリュートと後方の仲間達も直ぐに応戦する形となり…




 結論から言うと、余裕の勝利であった







    エミリア「はぁっ!」BANG!

     アニー「飛んでけぇぇ[飛燕剣]!!」ヒュバッ!

    スライム「(`・ω・´)ぶくぶくぶー!」ゴッ!



 ダンッ! ズバッ ドガッ


 ワンダードギー「ぐぎゃっ」ザジュッ!
  ワンダーランス『』カラン、カラン…


 手から愛用の槍を離し地に転げ落ちる下位妖魔は侵入者を恨めし気に睨みつける
[ファシナトゥール]から出奔して長らく不遇だった自身に日の目を見る機会が来たと、藁にも縋る思いで
モンドの軍門に下ったのだ…っ!リージョン界全体を圧倒的な力で引っ繰り返して理想の世の中を築くと



 …そうしてモンドの下で甘い汁を啜り、叶うならモンドの寝首を掻いて、己が地位と富を―――と野心も抱いていた



 力こそ全て、圧倒的な力を以てして全てを捻じ伏せ自分を誇示する、それは妖魔社会のやり方にも通ずる部分があった
この辺りがモンド氏とこの下級妖魔の最大の違いなのだが…



  ワンダードギー「ちっくしょぉぉぉ…!俺の大望が、こんな所で潰えて堪るかよおぉぉぉ…」



 世の理不尽さを訴えんとばかりに喉から声を絞り出す

 こんな日に限って侵入者が現れるなんて…っ!何故よりにもよって"今日"なのだ
雇い主であるモンドは今日基地に不在で、しかもこのタイミングで最下層で建造中の【アレ】が完成する日だというのにッ 


 野望を胸に秘めた妖魔にとって今日は人生の岐路だった、"完成した【アレ】に搭乗して"そのまま盗み去り
その圧倒的なパワーによって自分を見下してきた全てを蹂躙してやろうと決めていた
 【アレ】さえ盗み出すことに成功すれば自分がリージョン界を支配するという夢物語も夢で終わらなくなるかもしれない
それこそ[ファシナトゥール]の[針の城]で道楽に耽っている魅惑の君さえも叩き潰して妖魔の君として君臨できるかもと
莫迦げた夢想を思い描けてしまう程だ


―ガシッ!

  ワンダードギー「あぐぁっ!?」

    ブルー「貴様は基地の者だな、主の命令に背かないメカでないのは丁度良い我々を案内してもらうおうか」ググッ

  ワンダードギー「わ、わかった…胸倉をつかむな、は、はなせ…ゲホッ」プルプル

739 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/26(月) 06:10:50.53 ID:Q6mwjGRr0
レオナルドさんかっこええなあ
740 :続き 金曜日か土曜日 [saga]:2021/07/28(水) 08:45:03.53 ID:9DRm4tWr0

 フロア内で拾ってきた動力源とコンソールを電力ケーブルで繋いだ事で自分達が立っている足場が沈んでいく
底なしの光も届かぬ地下のまた地下、泥沼に突っ込んだ方脚がずぶずぶ引き込まれるのと同じ感覚で斜行する

 深淵へ、更なる下層へと侵入者様御一行と捕虜1名を乗せて沈む



    アニー「暗いわね…、警報前はまだ電灯も点いてたんでしょうけど」ジーッ


 非常事態勢が敷かれたことで電源が落ちたのは何もリフトだけではない、そもそもが予備電源を拾って態々繋げなければ
稼働しない設備なのだから此処を照らす光源が落ちのも自明の理

 天井に申し訳程度にぶら下がった非常灯の薄明かりだけが唯一の光だが、頼りないソレでは少し視線を伸ばした先には
何があるのか到底分かったものではない




  リュート「なぁなぁ、アンタ教えてくれよな〜ここはマジにモンドさんの基地でヤバい秘密兵器があるのかい?」

 ワンダードギー「ええい!なんだテメェは馴れ馴れしいっ!侵入者に漏らす情報なんざねぇよ!」


   ブルー「ちっ、思いの外強情な妖魔だな情報を一切吐かんとは…やはり締め上げて」グッ
  リュート「わーっ!だからお前は物騒なことすんなって!!」ガシッ


 下位妖魔の雇い主にして基地の大将は本当にモンドで間違いないという言質を取ろうとするが主人の名前、基地の弱点
最下層で造られているトンデモなく危険な兵器に関する情報も一切口にしようとしない
 いい加減痺れを切らし始めた蒼き魔術師が暴力に物を言わせ黙秘する事全てを赤裸々にさせようと蛮行に走りかけたり
それに対して青年がヨーク綿の帽子を振り落とさん勢いで術士を羽交い絞めにして止めたり

 後方は随分と賑やかになっているな、とアニーとスライムは暗闇を見つめながら思った




     アニー「こう暗いんじゃ待ち伏せの敵が本当に居るかなん…て…?」ジッ

    スライム「(´・ω・)ぶく?」キョトン



 黄金色の髪をした彼女は暗がりに一瞬だけ光る何かを見た、防衛本能に長けた彼女だからこそ見逃さなかった一瞬
鞘から剣を引き抜き仲間に声を掛けるっ――と同時に飛んでくる[バルカン]の弾雨を咄嗟に装備していた[シェルガード]で
防いで応戦の[飛燕剣]を打ち込む


 ズダダダダダダダッ…!


  エミリア「きゃっ!」サッ

    ゲン「敵が下からこっち目掛けて撃ってきやがったか!」


 ズダダダダダダダッ…!

    ブルー「ムッ!?」

  ワンダードギー「ひっ、ひぃぃぃ…」ドサッ

   リュート「おいアンタ!もうちょっとリフトの後方へ行ってろよな下から上目掛けた銃撃なら端に居りゃあ無事だ」


  ワンダードギー「あわわ…味方の流れ弾で死んでなんぞ堪るか」ノロノロ


 自分の直ぐ傍に[バルカン]砲による弾雨が降り注いだ事ですっかり腰を抜かしてその場に座り込んだ下位妖魔は
弦楽器を背負った男に言われるまま後ろ手で縛られた状態でノロノロと弾が来ない後ろ端へと進みだす




 ガシュッ!

 アニーの花った真空の刃が金属のボディに当たり火花を散らす、一瞬だがその時の火花で中に浮かぶ"何か"が2体と
弾雨を降らせた張本人の姿が浮かび上がった


   アニー「…あれは、[ヘルメス]ね!お供に何かが2機くらいついてるみたいだけど…っ」

741 :続きは日曜日か月曜日 [saga]:2021/07/31(土) 23:24:32.05 ID:X2LXx8+80

 薄闇を照らす非常灯の頼りない光に助力した火花に照らされた鈍い黄緑色と骨組みだけの様な特徴的な脚に腕部の銃器
[ヘルメス]特有のガトリング砲は侵入者達へと向けられていた
 暗黒の中であろうとも彼奴には関係ない、多少の視界不良はものともせずにリフト上という定められた範囲でしか移動が
儘ならない人間やモンスターを相手に一方的な射撃を行えるという訳だ


   ズガガガガガッ!


    リュート「こりゃあマズいぜ!おーいナカジマ零式ー、飛べるんだからなんとかならないか〜?」サッ

  ナカジマ零式「ハーイ、待ってましたよ〜 近づいてからぁのぉ必殺[連装ミサイル]とぉっ!」バシュッ!


 呑気な声で一方的に殴られる現状をどうにかできないかと唯一浮遊できる仲間に語り掛ける青年に対して
戦闘機を模した機体のAIはなんとも間延びした声で仲間の期待に応えようとする

 零式は[ヘルメス]の火線を掻い潜りこの距離ならば回避されまいと射程範囲に入った所で自機搭載の[連装ミサイル]を
撃ち込むのだが


   連装ミサイル『』ヒュルルルルル!!
   連装ミサイル『』ヒュルルルルル!!







    「 ピピッ!ミサイル検知、[ECM]を発動します 」キュィィィン!





  ナカジマ零式「へ?」



   連装ミサイル『』ヒュルルルルル!!―――ピタッ、ヒューン!……コォンッ!コロコロ…



 [ヘルメス]目掛けて飛んで行く筈だったソレは突如として勢いを失くし空中で完全停止する
推力を失った事で落下したミサイルは斜行プラットホームの底へと墜ちてコォン!と金属音を響かせながら何処かへと
そのままコロコロ転がっていく…"爆発もせずに"


 ナカジマ零式「お、おーのー!なぁんてことでしょう![ECM]でーす!"ミサイル攻撃が無効化"されちゃいましたぁ!」

 ナカジマ零式「はわっ、はわわわ…なーんかバランスがうまく取れないこれ以上はマズイですねー!」クルッ ヒューッ


 [ECM]の影響下で後部スラスターに不具合が生じた零式は直ぐにUターンして仲間の下へと帰還する
この時、漸くアニーは暗がりの中見えなかった[ヘルメス]の傍を浮遊していた2体の御供がなんであるか確認できた



   アニー「…!まだ暗闇に浮かぶぼんやりとした物陰でしかないけど、あれって[スカイラブ]じゃないかしら!?」

 レオナルド「…やれやれ、そういうことか我ながら厄介な物を造ったなぁ」ウーム



 [ディスペア]監獄に度々お世話になる機会があったアニーは闇に覆われたシルエットだけでもソレがなんであるか察した
ルーンの石が置かれている一室へ向かう際に嫌でも突破せねばならない赤外線エリアの防衛装置として
時折とんでもない兵器が配備される日がある、監獄所長の道楽で行われる"解放の日"で脱走を企てる者のリストに
死刑囚でもおかしくない様な重罪人が紛れ込んでいる場合がそうである

 機械工学の天才レオナルド博士が"拠点防衛用"の衛兵メカとして開発した物で性能は当然折り紙付き

 拠点防衛装置として監獄に配備されていると言えば聞こえは良いが
その実態は"解放の日"に参加する死刑が妥当な重罪人への処刑マシンなのであったあ


   pzkwX「せ、先生!どうしますかッ!あいつ等が浮かんでたんじゃこの[ハイペリオン]だって!!」

   ブルー「この狭い足場上で[ヴァーミリオンサンズ]を唱えるのも厳しいな、狭すぎて間違いなく何人か巻き込む」


 広範囲への最大火力を誇る魔術は使えば敵には勝つが味方への被害も甚大…足場と進行中の通路が狭すぎる
pzkwXが自前で持ってきた砲も[陽子ロケット弾]が[ECM]の効果で着弾前に虚しく落下するだけである
742 :注) 作中のスカイラブはレーザー回避 を使用できません [saga]:2021/08/02(月) 23:50:30.03 ID:AiQYHdEV0

  レオナルド「問題ないさ要は連中を墜とせばいいだけの話だよ
          [ECM]効果は飛来するミサイルの推力系と起爆に必要な信管を狂わせて不発弾にする電磁波妨害」

  レオナルド「ナカジマくんのバランス調整が不安定になって飛び辛くなったのもそのせいだね」

  レオナルド「あくまで対象を飛びも爆発もしない鉄塊に変えるだけの機能だから普通に
           光線や機銃の類が通るさ、尤も回避プログラム搭載の場合を考えれば――――」



  ズガガガガッ!!  ビュゥゥン!ガガガッ!



   ゲン「レ、レオナルドさんよ!難しい話はあとで聞くから結局俺達は何すりゃいいのかだけ言ってくれぃ!!」ササッ

  レオナルド「おっと、そうだね…じゃあ[飛燕剣]や[烈風剣]を使える人はじゃんじゃんやっちゃってよ」



 2機の浮遊する防衛装置の射程圏内に入ったのかガトリング砲を援護する様に[スプレッドブラスター]が飛んでくる
制作者の長々とした解説を聴くよりも目先の厄介な敵機を破壊する方法をご教授願いたい剣豪は博士に結論を述べてもらう

 エミリアの銃撃やメカ軍団の[破壊光線銃]も普通に通る、何より浮遊という特性上[スカイラブ]は[飛燕剣]や[烈風剣]等
宙に浮かぶ者を切り落とす術に滅法弱いのだ




   特殊工作車「[破壊光線]、照射します!」ビィィィィィッ!
      T-260「優先順位変更、敵の護衛機を殲滅せよ![破壊光線銃]を使用します」ビィィィィィッ!




   スカイラブA『 』サッ!クルクルクルクル!
   スカイラブB『 』サッ!クルクルクルクル!

   スカイラブに避けられ真横を飛んでく破壊光線『』チュドーン!



 裏通りの武器店でpzkwXから頂戴した兵器を撃つが防衛機構の2機は優雅に踊る様に…っ!
人間が技を見切った時と同じ動きで華麗に破滅を導く光を避ける
 それを見て博士は「あちゃー…やっぱり[レーザー回避]プログラム付きかぁ、慎重派だからなぁモンドも」と
目元を覆うように金属製の腕を顔へと運ぶ



  レオナルド「残念だけど、ボク達は今回できることは無いみたいだ精々皆が被弾しない様に盾になるくらいだね」バッ


 前衛の"人間<ヒューマン>"達の前に立ち両腕を伸ばして少しでも味方の損害を減らそうと遮蔽物の役割に徹する
それに倣ってT-260も前に出て、特殊工作車は移動しながら実弾を受けつつ内蔵された機銃で応戦を試みる


   アニー「せいぁッ!!」ヒュバッ

    ゲン「墜ちろや!」シュバッ

  リュート「俺からもっッと!」シュバッ、シュバッ



 剣気の刃が、刀身が生み出す烈風が、間髪入れずに飛び交う二重の疾風が、嵐となって下方に居る3機へと降り注ぐ
地に足を点けてどっしりと身構えながら耐える[ヘルメス]は兎も角、宙に浮いていた2機は斬撃の集中豪雨を浴びて
片方が完全に沈黙する、辛うじて浮いていたもう一方は…


        BANNG!


    エミリア「…ふう、[集中射撃]で狙い撃ったわね」 

  ナカジマ零式「わーお!さっきよりかは幾分か気分がよくなりましたねー!」フワッ


 レオナルド「[ECM]の影響はまだ残ってる、ミサイル兵装はまだ使えないさ」



 ナカジマ零式「oh!ノープログレムでーす!これだけ動ければアイツに一撃喰らわせてやれまーす!」ビュォンッ

743 :続き 水曜日か木曜日 [saga]:2021/08/02(月) 23:51:36.71 ID:AiQYHdEV0

 護衛を失い丸裸同然となった彼奴に超スピードで接近する機影、残骸と化した[スカイラブ]の忘れ形見は未だ効力が続き
先程自機を撃破しようとした[連装ミサイル]を射出したとて
不発弾となり虚しくプラットフォームの溝へ落ちる光景の焼き直しになるだけだと[ヘルメス]のAIにもわかっていた
 ただ一切の減速も無く寧ろ更なる加速力を得て此方にやってくる戦闘機の姿に電子頭脳はある可能性を描かせた

 
    ヘルメス『!!』ウィーン、ピロン!ズガガガガッ

 ナカジマ零式「はっはっはぁ!遅い遅ーい!止まって見えま〜す!…ミサイルが駄目でもコレがありますよッ!」ヒュバッ



 陽気な声に笑いながら殺人的な加速力を以て白い機影が必至の抵抗を繰り広げる基地守備隊のメカへと急接近…っ!
あの速度で鉄の塊が突っ込んできたら如何ほどの衝撃エネルギーと成り得るか、自機はどうなってしまうのか?



 考えるまでもない。 例え"旧型<ポンコツ>"の電子頭脳の計算式であっても容易に叩き出せる結果である



  ナカジマ零式「超必殺のぉぉぉ!![神威クラッシュ]ぅぅぅぅ!!!」



   ズ ッッッボゴォ ォ ォ ォ ン!!


―――
――



     T-260「プログラム [レーザー回避]を 手に入れた」ピロリン!バンザイ!バンザイ!

  特殊工作車「プログラム [レーザー回避]を 手に入れた」ピロリン!グッグッ!


  レオナルド「おお!やったじゃないか二人とも」


 残骸と化した[スカイラブ]2機とさっきまでは[ヘルメス]だった[がらくた]から何か収集できないものかと
博士は仲間のメカ達を連れてリフトが次の層へ無事(?)到着停止した途端にせっせと倒した敵にコードを繋ぎ始めたのだ



   pzkwX「先生…すいません、エネルギーを補充しただけで何も取れませんでした」シュンッ

 レオナルド「気に病むことはないよ、機会はいつだって訪れるさ、だって周りを見てごらんよ」スッ


 さて、そんな一幕があった後成果を得られなかったことを悔やむ店主を宥めながら博士が指さしたのはこの層の奥である
メカ達がプログラムの吸収を行っている合間に粗方内部に居た敵は術士やモンスター、剣士組が始末を終えていた
 攻撃の届かない遠距離から一方的に撃たれていた先程とは打って変わって今や地続きの広い空間に敵が要る、となれば
彼らは水を得た魚も同然で広範囲術を唱えるわ、自慢の剣技で細切れにするわの大暴れである


 …話は逸れたが、その戦闘行為が行われているフロアの最奥に見える赤いメタリックボディ

 それは[Tウォーカー]と呼ばれる地上掃討用の自立型メカ兵器である、無骨な二本の脚で二足歩行しつつ
視界に入る兵隊目掛けて[バルカン]の雨嵐をお見舞いするというなんて事無いメカ

 なんならさっき戦った[ヘルメス]よりも弱い自立型兵器だ、……では何故レオナルドはソレを興味深々に眺めているか?





   ブルー「…随分なものだな」カシャッ

 レオナルド「お?ブルー君にも分かるのかい?これの凄さが…っ!」キラキラ


 カメラのレンズに大っ嫌いな赤を基調とした機体を入れてシャッターを切りながらブルーは横目で機械化した男を見る
心なしか無垢な少年の様にメタルな瞳が輝いてる気がするが気のせいだろう


   ブルー「正直言ってメカは門外漢だがな、流石にコレは異様だと解る……"デカすぎる"だろ」カシャッ

 レオナルド「うんうん!凄いよね通常サイズより明らかに大きいもん[ガイアトード]に匹敵するかもね」ワクワク


 術士の瞳にさえ奇異に映る通常の自立型メカにあるまじき巨体さ、それこそ"人間が搭乗できそうなサイズ"のソレである
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/08/03(火) 00:29:49.98 ID:LLRfWuqB0
*******************************************************

 モンド基地に関してA

 [モンド基地]は原作中で4つの層に分かれており、リュート主人公時に[ネルソン]の艦長に船で乗せてもらって最初に
脚を踏み入れる入口エリア、MAP上に(おそらく)建造中の[ヘルメス]と思わしき物が置いてある2層目エリア
同じく建造中の巨大[Tウォーカー]が存在する3層目エリア、そして最後にラスボスが控えている部屋へ直通の最新層


 以上、4層に分かれている―――階段の類は無く、いずれも斜陽リフトによる移動で下へ下へと延々に進むだけで
しかも一度降りたら来た道を戻るという行為はできない



 道は一本道であるために迷うこともなく、道中にアイテムも落ちてはいない…リフトを動かす為の電源は拾えるが



2層目、3層目には敵メカとして実際に出現する先述の兵器が超巨大グラフィックでMAP上に存在していて如何にモンドが
トリニティ政府に対して反旗を翻そうと戦力を準備しているのかが窺えるであろう



また各層のリフト乗り場には敵シンボルが1体ずつ存在しており



1層目=メカ系敵シンボル

2層目=妖魔系敵シンボル

3層目=メカ系敵シンボル

最深部=巨人系敵シンボル



となっている。 基地全体の敵も妖魔やモンスターこそ少数居れどヒューマン系は0でもっと言えば圧倒的にメカが多い

これは心の奥底ではモンド執政官が人を信用していないという事の現れなのかもしれない
 エミリア編の[ラムダ基地(2回度目)]も警備がメカシンボルだらけになったが
それは単にトリニティの要所だからで説明が付く…しかしモンド氏個人の秘密基地であるなら私兵としてメカ以外がもっと
居てもおかしくない筈、でも見張りの大半は主人に逆らわないAIな辺り色々考えさせられる







…個人的な見解ですが、MAP上の[ヘルメス]も[Tウォーカー]も通常のソレと違って特別製だと解釈できる要素が存在します

まず、くどいようですが外見があまりにも巨大だ

 通常戦闘で出てくる2機は普通に主人公勢や他の雑魚的とサイズは変わらず小さいがMAP上のソレは
[シンロウ遺跡]の入り口から左に行ってすぐの[ガイアトード]よりデカい


 単にキャラクターグラフィック上、戦闘時の2機は小さく見えるけど実際は[モンド基地]の背景としてある巨大メカと
同じくらい本当はでかい兵器なんですよー、と説明されてしまえばそれまでかもしれない

 でも、それこそ[シンロウ遺跡]の[ガイアトード]や[キャンベルビル]に出るデカくした[スライム]系シンボルやら
そういうのはちゃんと戦闘時にも反映される特大サイズで用意されてて、あれだけサイズが違うのか?という話になります








 モンド氏は、原作に置いてもラストバトルで"アレ"を用意してます




 [シュライク]の[中島製作所]から技術を奪い、それで人間がパイロットととして操作できる超巨大ロボを地下で建造した
だとすれば、あの[ヘルメス]や[Tウォーカー]がとんでもない規格外サイズなのも兵士が乗り込んで戦う兵器の試作型と
そう考えたら辻褄が合うのではないか?というのが見解です


 基地の2層と3層の背景グラフィックにはそんな事情があるのかもしれません…


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745 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/05(木) 04:31:58.45 ID:ucSf01tv0
ナカジマかわいいな
746 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/08/05(木) 23:18:15.04 ID:CetTk8Ey0

 ルーファスから支給されたカメラに[モンド基地]の内部、そして件の超大型メカの姿を収める
帰還後、手当される有給休暇が如何ほどかは知らないが店の雑務から解放されて自分のやりたいことや本格的な術の鍛錬に
励めるくらいの日数は貰えるだろうと術士は考える


 最後にもう一枚と[Tウォーカー]の姿をレンズに入れた所で、ふと赤い機体の真上に人影が見えた気がした



   エミリア「ねぇ、ちょっと!エレベーターを動かすのに必要なのってこれでいいのかしら!?」タッタッタッ

  レオナルド「そうそう、前の階層と同じで階段を上った先にあったんだね…ブルー君どうかしたのかい?」


    ブルー「…いや、今あそこに誰かいた気がしたんだが」スッ



 術士は人影らしきものが見えた箇所を指さす、シャッターを切る前に見えた影の真意を知ろうと目を凝らし凝視するが
やはり気のせいであったのだろうか…何も感じない
 自慢じゃないがそれなりに人の気配を察せられるくらいには修羅場を潜り抜けてきたつもりだったが宙を飛べる
ナカジマ零式が「誰もいませんよー」と天井スレスレの上部から[Tウォーカー]を見下ろしてそう告げた



   ブルー(…俺も修練が足らんということか?)


   ブルー「まぁいい、電源が手に入ったなら次の下層に行くとしよう…おい、いい加減貴様も情報を吐け」グッ!

 ワンダードギー「ウゲッ、…だ、誰がキサマら何かに」ゲホッ











  もしも、まだ敵の生き残りが潜んでいて自分達の潜入を快く思わないのであれば機を窺い、隙を見せた所を攻めてくる


 それこそ悠長に写真なんぞ撮ってる場合ではない、だが敵意も無く、飛べるメカが上部から見ても誰も居ないとなると
やはり見間違いだったのか?

 彼はそう結論付けたが、実は…この時、既に基地にとある人物が居た事を直ぐに知ることとなる







 理想家にして野心家の男(……)

 理想家にして野心家の男([ワカツ]の残党、レオナルド、ミス・エミリア…そしてやはり来たかイアンの息子よ)





 理想家にして野心家の男(ここ数日[ワカツ]へ渡航記録が頻繁にあったことから特に基地周辺の監視をさせていたが)

 理想家にして野心家の男(どうやら正解だったようだな、…私はまだ失脚する訳にはいかないのでね)


 理想家にして野心家の男「」チラッ




 ワンダードギー「――!」

*******************************************************
747 :コピーミス、続きは土曜日か日曜のどちらか [saga]:2021/08/05(木) 23:24:59.58 ID:CetTk8Ey0

 ルーファスから支給されたカメラに[モンド基地]の内部、そして件の超大型メカの姿を収める
帰還後、手当される有給休暇が如何ほどかは知らないが店の雑務から解放されて自分のやりたいことや本格的な術の鍛錬に
励めるくらいの日数は貰えるだろうと術士は考える


 最後にもう一枚と[Tウォーカー]の姿をレンズに入れた所で、ふと赤い機体の真上に人影が見えた気がした



   エミリア「ねぇ、ちょっと!エレベーターを動かすのに必要なのってこれでいいのかしら!?」タッタッタッ

  レオナルド「そうそう、前の階層と同じで階段を上った先にあったんだね…ブルー君どうかしたのかい?」


    ブルー「…いや、今あそこに誰かいた気がしたんだが」スッ



 術士は人影らしきものが見えた箇所を指さす、シャッターを切る前に見えた影の真意を知ろうと目を凝らし凝視するが
やはり気のせいであったのだろうか…何も感じない
 自慢じゃないがそれなりに人の気配を察せられるくらいには修羅場を潜り抜けてきたつもりだったが宙を飛べる
ナカジマ零式が「誰もいませんよー」と天井スレスレの上部から[Tウォーカー]を見下ろしてそう告げた



   ブルー(…俺も修練が足らんということか?)


   ブルー「まぁいい、電源が手に入ったなら次の下層に行くとしよう…おい、いい加減貴様も情報を吐け」グッ!

 ワンダードギー「ウゲッ、…だ、誰がキサマら何かに」ゲホッ











  もしも、まだ敵の生き残りが潜んでいて自分達の潜入を快く思わないのであれば機を窺い、隙を見せた所を攻めてくる


 それこそ悠長に写真なんぞ撮ってる場合ではない、だが敵意も無く、飛べるメカが上部から見ても誰も居ないとなると
やはり見間違いだったのか?

 彼はそう結論付けたが、実は…この時、既に基地にとある人物が居た事を直ぐに知ることとなる







 理想家にして野心家の男(……)

 理想家にして野心家の男([ワカツ]の残党、レオナルド、ミス・エミリア…そしてやはり来たかイアンの息子よ)





 理想家にして野心家の男(ここ数日[ワカツ]へ渡航記録が頻繁にあったことから特に基地周辺の監視をさせていたが)

 理想家にして野心家の男(どうやら正解だったようだな、…私はまだ失脚する訳にはいかないのでね)


 理想家にして野心家の男「」チラッ




 ワンダードギー「――!」


 理想家にして野心家の男(本来であれば今日は私が来訪する予定日では無い、私が来ていることを知る者はいない)

 理想家にして野心家の男(彼には"羊"となってもらうとするか)スッ


 誰一人としてその場に居ることを悟らせず、ほんの小さな大気の乱れ、呼吸、音、気配、全てを断ち
トリニティの執政にまで上り詰めた男――――モンドは飛行メカの視界からすらも難なく逃れたのであった
748 :続きは水曜日か木曜日 [saga]:2021/08/08(日) 23:08:02.77 ID:orQ/uRYR0

  ナカジマ零式「にしても〜…これってやぁ〜っぱりアレですかね?」
   特殊工作車「そうですね、社長達があの日"メカマウス"にデータを入れて[斉王の古墳]に逃がしましたが…」


  レオナルド「うん?」


  ナカジマ零式「いえね、ウチの会社で作ってた技術がこのデッカイのに所々使われてるっぽいんですね〜」

  ナカジマ零式「なんか政府の偉い人が『トリニティの技術を盗用してる〜!』とかなんとか言いがかりつけて」


      T-260「私たちが初めて[シュライク]を訪れた時の話ですね」
      ゲン「ああ、そういやそんなこともあったっけな…」


  レオナルド「…ふぅん、"トリニティの技術"を盗用してるねぇ…」フム

  レオナルド「ボクの管轄外の研究部署だって言われればそれまでだけど
           トリニティにこんな巨大メカに使う物は無かった筈なんだよねぇ…」


 …モンドの手の者が民間企業の開発した画期的なシステムをそのまま横領して秘密基地でせっせっかと開発していたのか
暫し考え込んで博士は一つ案を出した


  レオナルド「多分、[中島製作所]に乗り込んで色々漁りをやっていった記録は抹消されてると思うんだ」

  レオナルド「だからさ、もし追っかけるなら[IRPO]に手を貸してもらうのはどうかな?」


 パトロール隊員の力を借りてはどうだろうか?その話にエミリア達が耳を少しだけ傾けた
トリニティ政府は確かにリージョン界の司法や行政、全国共通の通貨であるクレジットの発行をすることで金融など
幅広く世界に秩序と調和を齎しているかもしれないが、それイコール100%クリーンな組織という訳ではない

 当たり前の様に汚職や買収、それこそエミリアが以前潜入したヤルート執政と同じ輩だってごまんと居る
警察組織[IRPO]への圧力も当然の様に掛け、都合が悪くなれば厄介な捜査官を閑職に追い込む事だって厭わない


  レオナルド「ボクの行きつけのハンバーガー屋さんに常連の刑事が居るんだ」

  レオナルド「彼なら多分、上からの圧力とか無視して色々調べてくれると思うんだよね」


  レオナルド「この基地から帰れたらさ、得た情報でモンドの弱み握っておきたいならその線で調べるっていうのも…」


 その線で調べるっていうのもありかもね、と言おうとした所でリュートに早く下層に行ってみようぜ!と急かされて
やれやれと首を振り博士はリフトの方へと向かった

―――
――


 ガコンッ、ウィーン


 基地最下層へと降っていく一行は奇妙な沈黙に包まれていた、ついさっき[スカイラブ]と[ヘルメス]の編成に
反撃不可能な遠距離から攻め立てられたからだ
 最下層ともすれば唯一の階層移動ができる此処が最終防衛ラインと呼ぶに等しく激しい防衛線が敷かれていても良い筈で
何の抵抗も無くすんなり降りれていることに不気味さを感じる程である


   リュート「なぁ…変だぜ、なんで誰も"お出迎え"しないんだい?」

   リュート「普通はこういうとこに超強ぇ奴とかがどっしり構えてるもんじゃねぇのか」


 当たり前の様に出された疑問は誰しもが胸に秘めていた、そして――――


――――――ゴゴゴゴゴゴゴッ

    ゲン「なんだこの音は!?」

   ブルー(聞こえる方角からして………後ろから何かが俺達の方へ向かってきているだとっ!?)バッ






      巨人「グゴガァァァァァァ」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
749 :続き 明日 金曜日 [saga]:2021/08/12(木) 23:04:24.34 ID:BD83U3zu0

 リフトが最深部の乗り場に着く寸での所で後方から怒声を張り上げながら滑り落ちてくる巨大な人影
弦楽器を背負った青年はその姿に故郷に置いてきた弟分のサンダーを思い出していた
 [オーガ]種のサンダー同様"巨人系"に部類される者で彼らを排除せんとするそれは可愛い舎弟とは似ても似つかぬ大怪物
政府指定の危険度認定は最大値に相当…っ!敵ランク9の[巨人]だッッ!


   リュート「オイオイ、嘘だろ…ヤバいぜありゃあ!?」


 リフト用のレールを滑走するように"落ちて"来る[巨人]は更に勢いをつけて左腕に担いだ大剣を振り下ろす姿勢に入った
がっちりとした筋骨隆々の体格、人間のそれとは明らかに違う青肌に纏った鋼鉄鎧と右腕の棘付きシールド
 肉体そのものの耐久性も然ることながら盾回避による攻撃の無効化…攻守共に最凶のバケモノだ


 そんなバケモノの装着している武者兜に似た頭装備から覗かせる赤い目はギラついていて
パーティーを逃す気など殊更無い事を物語っていた、唸りをあげた巨体はレール上を滑り落ちてくる事を止める
 [魔獣の革]で作った特製の黒ブーツで地を蹴飛ばし一気に急降下を仕掛けたのだ、左手の[ブレード]を振り下ろしながら



     巨人「ぐごああああああああああああっっ!!」ブォンッ

    レオナルド「みんな!!リフトが着いた急いで向こうの通路まで退h―――うわあああああぁっ!?」ブワッ



 エレベーターが停止し乗り場から奥の通路へと逃れられる様になった、博士があの[巨人]の図体ではそう易々と
入り込めないだろう踏んで狭い通路へ逃げ込むように呼び掛けた直後[ブレード]の剣圧で吹き飛ばされた

 金属ボディとなった彼ですら吹き飛ぶのだから当然生身である他の仲間達も次々と吹き飛ばされていく



  拉げたエレベーターの制御盤『 』グシャッ…



   リュート「うひぃ〜、誰か助けてくれぇい!!」バタバタ

    ブルー「ええい!何をしてる掴まらんかっ」ガシッ


   リュート「た、助かったぜ危うくプラットフォームの溝に落っこちちまうかと……あのリフトもう使えねぇな」ヒー


 斜行エレベーターを稼働させるためのディスプレイは見るも無残なスクラップにされているのが目に映る
幸い、今の一撃が直撃した仲間は居らず全員が吹き飛ばされて床に転がっているだけであった……これで退路は断たれた




     巨人「ぐごごごごごごごごッッ…………! シン、ニュウシャ……オデ、コロス」フーッ!フーッ!…シュバッ、ズシーン




   リュート「あら〜…ただでさえ真っ赤なお目々が血走ってらぁ、こりゃ穏便に話し合いとはいかねぇよな」タラーリ

   エミリア「先日の[巨獣]といい、私達でかい怪物に縁でもあるのかしらね…ブルー、いざって時は[ゲート]を…」


 ごくり、喉を鳴らしてエミリアは敵を見据える

 初撃でリフトを破壊して退路を断った大怪物はそのまま片足で飛び跳ねて一気に彼女達の頭上を越え
レオナルドが指定した逃げ込み先の通路の手前に陣取った
 退路に続いて進路さえも塞がれた、これでブルーの術が無ければ本格的に袋小路の鼠もいい所…っ!


     アニー「ん!? あ、あいつ…!?」



 ワンダードギー「ハァ…ハァ…ははっ!!バカめ!この隙に俺は逃げさせてもらうぜ!八つ裂きにされやがれってんだ!」


 [巨人]の大脚の影に隠れて見え辛いが何かが通路に向かって走り去っていく姿をアニーは見逃さなかった
全員が吹き飛ばされてバラバラになった時に捕虜として捕まえたあの[ワンダードギー]も同じくリフトから吹き飛ばされた
 これ幸いと言わんばかりに彼奴は基地の奥へと一目散に逃げていくではないか…っ!


 ワンダードギー(へへっ!天に見放されたと思ったがこりゃあいいぜ、何から何まで俺に運が傾いてきやがったッ)タッタッタッ

 ワンダードギー(この先に組み立て終わった"アレ"がある!モンド様…いやモンドが居ねぇ今が好機、俺が頂戴してやんぜ)
750 :続き 土日のどっちか [saga]:2021/08/13(金) 23:27:24.85 ID:q4Y5kSAF0

 下位妖魔が通路奥へと消えていくの侵入者達は黙って見過ごすより他なかった、捕虜に逃げられたことよりも
剥き出しの敵意そのままに狂剣を振るう大怪物をどうにかせねば退路も進路も無いのだから

 [巨人]は牙を覗かせる大きな口から燃え盛る火炎を吹き、あろうことかそれを自らの得物に吹き付ける
熱せられて赤々とした刃を腕ごと前に突き出す型、突剣の構えで迫りくる


    巨人「うおおおおおおおぉぉぉ ヤケ ロ!」グォォォッ


 弦楽器の青年目掛けて放たれた[ヒートスマッシュ]に青年は目を見開く、今度ばかりは運の良さを自慢する自分でも
年貢の納め時かと――――鼻先まで熱気が迫ってきた所でリュートは何かに吹き飛ばされた


 ドガッ

   リュート「げふんっ!?」ドサァァァァ…


 固い何かに真横から強烈なタックルを喰らって変な声を出しながら地面を転がる彼は自身を弾き飛ばしたのが誰か見た
窮地を救ってくれたのは特殊工作車であった
 硬いボディを持つ彼の装甲に熱を帯びた劔はいともたやすく突き刺さっていて
一撃で戦闘の継続を不可能なまでにしてしまったのである



   特殊工作車「ピガガッ、 すみませんが私はコレいじょうは うごけませ  ん」プシュー

    リュート「こ、工作車!!お前っ」



 彼の人格を形成するコア、メカという種族にとっての魂そのものは破損していない為レオナルドが居れば直せる
だが、恐るべきは相手の圧倒的な破壊力である…特殊工作車を直すにしてもここで全滅すれば直す人も何も生きてはいまい


   ブルー(チィッ、これは正攻法で挑んでも勝ち目が無い…ならば――――)

   ブルー「エミリア、アニー!手を貸せ、スライム貴様もだ!」



  スライム「ぶくくー!(`・ω・´)」ピョン!

  エミリア「何か策があるのね!?」
   アニー「あたし等は何すればいいんだ!?」


   ブルー「…正直アレ相手にどこまで通用するか判らんがやらんよりはマシな策だ、よく聞け――――」


―――
――


     ゲン「セイッッッ!!」ガキィィン [ディフレクト]

     巨人「ウオオオオオオォォォォォ」ブンブンッ

     ゲン「うっ、 ぐ   ぐあああぁぁぁっ」キィン キィン  ズバッ

     ゲン「くそったれが…ハァハァ」ボタッ、ボタッ



 差があり過ぎる体格差と武器の質量、リーチがありながらも捌き続けた剣豪も遂に利き腕に大きな切り傷を負う
パックリと二の腕に横一線に紅い線が走りボタボタと金属製の床に血痕を創っていく
 そんな彼の背をリュートは眺めるしかできないのが歯痒かった、奥歯を噛みしめる度に脇腹に受けた一太刀の痛みが
じわりと広がっていく…折角、特殊工作車が身を挺してくれたというのに次の攻撃を避け切れなかった


 メカの仲間達も接近戦を得意とするT-260はゲンと同じく壁になりつつ敵に[多段切り]を浴びせるがそれでも
[巨人]は倒れずに猛攻を繰り返す、遠距離主体のナカジマ零式達の射撃攻撃さえ背中に直撃してもだ
 ダメージは入っていないわけでないが想像上以上にタフネスな怪物で更に片言な言動の割にそこそこ知恵も回る
爆撃や光線銃、[多段切り]の痛みでも攻撃手を緩めないのは一番火力を持つゲンとT-260の連携を断つ為だ
[多段切り]にゲンのワカツ流剣術が加わればばその威力は数倍に膨れ上がるのだが…




 ゲンが切り込んで相手に一番攻撃が入る位置をがら空きにさせた瞬間にT-260が入り込む、という段取りを
見事に間に割って入り込んで邪魔をする……多少のリスク込みで剣豪の一太刀を大きく浴びてでも
"がら空きの位置"取りをさせない、片腕に着けた棘付きの盾で牽制を兼ねた防御で徹底して連携を邪魔してくるのだ
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/14(土) 03:37:30.90 ID:ObMq5Wyc0
乙!
752 :続きは火曜日か水曜日 [saga]:2021/08/15(日) 23:47:26.59 ID:wcPXXzYq0

 敵は人の背丈を優に超えた得物を大きく振り上げてゲンにトドメを刺そうとする
利き腕を満足に振るえないと成ればワカツの剣豪と言えど防げまい、[巨人]は[ブレード]を眼下の脆弱な人間に降し――




       「 その御身を厄災の眼<まなこ>から逃れさせよ!――[保護のルーン] 」フォンッ!フォンッ!




    巨人「ぐごっ!?」ブン―――ピタッ、クルッ! ヒュバッ

    T-260「敵の攻撃目標が自機に移った事を確認、戦闘プログラムを対応した型に変更します!」キィィン!



 刹那、叩き潰そうとした剣豪の真上に光の線が走った
先端が三叉に枝分かれした古代文字を表した輝きは神秘の光をゲンに浴びせ、その姿を視界から"消させた"
 目標を見失った剣先は一瞬の戸惑いから瞬時に切り替える、振り下ろすよりも止める、止めてT-260への牽制に使うと

 気配を完全に断ち切りそこに居るのに相手に存在を悟らせない[心術]の[隠行]と同じく、敵対勢力の網膜に姿を映さぬ
認識阻害の術…それが[保護のルーン]であるッッ!!


   ゲン「ハァハァ な、にがどうなって、やがんだ…」ポタッ

  ブルー「彼奴の目に俺達が映らなくなっただけだ」


 この時、"手を伸ばせば触れられる程近くに居た"術士に剣豪はギョッとした
強敵を前にして全神経を尖らせていたにも関わらずこんなにも近くに居て気付かなかったのだ


  ブルー「手短に話す、あくまでコレは一時的なステルス効果だ自身が攻勢に出たり空間全域の攻撃で悟られては困る」


 語りながら蒼き魔術師は肩を貸してゲンとこの場を離れようとする
一時的なステルス、つまり銃弾や刀身など攻撃の類が幽霊の如く身体を透過していく無敵状態になったというわけではない
あくまでも敵から"見えなくなった"だけであって此方から攻勢に出れば攻撃の出所から現在位置を逆探知されたり
 又、敵方から[ヴァーミリオンサンズ]の様な広範囲への攻撃手段で偶然巻き込まれた場合も印術が解除されてしまうのだ



 其故に、ブルー曰く『どこまで通用するか判らんがやらんよりはマシな策』なのだ…完璧ではない


  ブルー「[保護のルーン]が掛かった今のお前には俺や優先順位に応じて印術を唱えるエミリアとアニーが視えるな?」


 言われて初めて気が付いた、そうだ…どの辺りから"この3人の居場所や安否を意識しなくなっていた"のか
半ば暴れ回り場をしっちゃかめっちゃかにかき乱すバケモノを相手にした乱戦状態とは言え敵は1人だ…っ!
 剣を持ったT-260を初めとした射撃組との連携も意識していたのだからそれなりに仲間の位置や負傷具合も解っていた


 だが、途中からこの3名だけは完全に意識外の存在になっていた


 ゲン「…はははっ、やっぱ術士ってのはおっかねぇや、やれ祈祷師だ陰陽師だのと"呪い<まじない>"ってのは…イテテ」

 ブルー「あまり喋るな怪我人だろうが、バカめ」


 不愛想で余計な一言は付くが『怪我人だから無理するな』と言う旨な辺りコイツなりの優しさのつもりなのかもしれない
少しだけではあったが、正反対な印象を覚える紅い方の双子にほんの僅かに似通った根の部分をゲンは見た気がした


 ブルー「生憎と俺は[陽術]はまだ使えん、だから貴様にはこれから[活力のルーン]を掛ける、その後は武器強化だ」


 ゲンをある程度[巨人]から離れた位置まで連れて行きそこでルーンの一文字を蒼き魔術師は描き出す
[保護のルーン]は、というより[印術]自体が直接的な戦局を揺るがすダメージソースになりえる術系統ではない
 基本的に味方への援護、支援を主体とするのが目的で相手への攻撃を考えるのなら
初期術の[剣]を初め生命そのものを刈り取る[死神]、最大瞬間火力の[塔]など[秘術]が主となる


 敵がこちらの姿を知覚できないこの瞬間に、仲間の武器を強化する[勝利のルーン]や徐々に怪我を治す[活力のルーン]
豊潤な資金で揃えていた基本術を掛けて態勢を整えるのがベストと言える

 ルーンの小石を集めていたグラディウス組の二人が優先順位に沿って術力の続く限りで仲間の保護と支援を
唯一回復手段を持つスライムが[ユニコーン]に変身、一番深手のリュートを治しつつも俊敏さと耐久を活かし敵を攪乱
 ここまでがブルーの指示した策であった、尤も指揮した当人が危惧する通り全体攻撃が来て印術が解ければ
態勢の立て直しも何も全てが終わり兼ねない薄氷を踏む思いの下策ではある、…現状でやらんよりマシな唯一の策だ
753 :>>1です [saga]:2021/08/18(水) 23:48:29.49 ID:e4SsnFb90
少々書き直し場所が発生した為、次は土曜日更新予定
754 :続き明日 [saga]:2021/08/21(土) 23:12:28.35 ID:0ZWRNPvs0

 術士とグラディウス組がルーンの加護を振り翳している合間[ユニコーン]と化したスライムは攪乱に動いていた
角先から治癒の奇跡を放ちリュートや傷ついたメカ勢の回復に努める
 [マジカルヒール]は生物だけではなくメカの損傷を修復できる力があるのだ、人間と違って[インスタントキット]等を
使わなくては直せない彼らを癒せるのは正しく奇跡と呼ぶほかない

 負傷者の手当と俊敏性を活かして怪物の視線を奪う、振り下ろされる[ブレード]の一撃を堪えつつも自身に
[マジカルヒール]を掛けて耐えきる…っ!伊達に"最速行動<ファスト>"で回復可能な訳じゃない


    巨人「オノレ、ウットウシイ…ッ!」グンッ


 怪物は手にしていた武器を大きく振り被った、ここまでは今までと何一つとして変わらない

 ただ不自然な風が一陣吹きだした、それが違いだ



  スライム「(;´・ω・)!?」ハッ!?


 地下基地の内部で生まれた不自然な気流、それは逞しい肉体を持つ化け物を中心に取り巻く"気<オーラ>"が成していた
仲間であるアニーやリュート、剣豪のゲンが当たり前の様に使ってきた剣気を飛ばす技の前兆だとスライムは察する



  ブルー『いいか、よく聞け俺達は[印術]やリュートの[バックパック]に入れてある物で可能な限り準備を整える』

  ブルー『それまでの時間稼ぎが貴様の役割だ、敵が広範囲攻撃を放つのを何としても阻止しろ』



 敵ランク9に該当される彼奴の代名詞と呼べる技――――[烈風撃]の前兆だッッ


 スライムは阻止すべく両前足を上げ、後方の2本脚だけを地につけたまま角を天高く掲げる
敵の創り出した風を利用する形で聖獣の角に風を纏わせる
 風の精霊、霊魂を使役して飛ばすモンスター特有の技術[シルフィード]を撃ち出し相手の技の発動を阻害せんとする



  巨人「ウゲッ、ジャマ ヲ スルカ…!!」ギロッ


 烈風が視覚化できる程に真空の刃を纏った[ブレード]に衝撃弾をぶち当てて空気を散開させる
目障りな群れを一気に殲滅する所を邪魔されて腹立たしく思った[巨人]のヘイトは当然スライムに向く

 全体攻撃の阻止と攪乱、仲間の準備が完了するまでのタンク役としての仕事

 圧倒的火力を前に瀕死になったとしても"最速<ファスト>"で自身を完治できるのだからこれ程お誂え向きなこともあるまい


―――
――


  リュート「うおぉっ!?ブルーお前何時の間に俺の傍に!?」

   ブルー「デカい声を出すな!…[保護のルーン]で相手が声も姿も認識出来ないとはいえ違和感を感じることはある」


 目の前で戦っていたゲンが突然消えた、何を言っているのか分からないだろうが神隠しにでも遭ったように消えた
超スピードとか催眠術なんてチャチなモンじゃ説明付かない物の鱗片を味わったリュートは直ぐに同じ現象に至った

 剣豪が居なくなりT-260と交戦を始めた[巨人]の元へ一角獣の姿に変身したスライムがすっ飛んできて
奇跡の輝きで腹部の負傷を治してそのまま敵に向かって突っ込んでいき随所をチクチクと[角]で突き刺しては離れていく
一撃離脱を繰り返していくのを見たのまでは覚えている、T-260を叩き潰そうとする絶妙なタイミングで視界を奪う様に
顔面の目ん玉狙いや武器を持つ手首の付け根など彼奴からすれば鬱陶しいことこの上ない戦い方だった

 気が付けばそんな自分の傍にいつの間にか蒼の魔術師が居て、女性陣と目の前で消えた筈のゲン、pzkwXにナカジマ零式
特殊工作車を修理しているレオナルド博士が居る


  アニー「あぁ…もう無理、あたしはそもそも術向きじゃないんだからね?」ゼェゼェ
 エミリア「コレ結構神経すり減るわよね、頭の中で文字を思い浮かべてるだけなのに…」グッタリ

  ブルー「メカ組の確保と能力強化よくやった、あとは貴様らの得意分野だ」

  アニー「ったく…へとへとだってのにまだ働けってのかよアンタは」


 悪態を付きつつ剣の柄を握りしめて不敵な笑みを浮かべる黄金髪と銃を取り『術を使うより楽そうね』と同じく笑う金髪
蜂蜜色の髪を揺らしながらブルーはリュートの[バックパック]を漁り"石"を数個取り出し告げる、今からが反撃の時だと
755 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/22(日) 00:43:06.36 ID:cvXHcYK60
おつースライム有能
かつてこんなにスライムに光が当たったサガフロ二次無いのでは…
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/08/22(日) 23:55:41.71 ID:6ou5FD+Q0

 蒼の魔術師は手にした"石"をそれぞれメカ組に持たせていく、弦楽器を背負った青年はそれを見て首を傾げた
彼は旅路の最中で幾つかその石を拾う機会があったが何に使う物なのか分からなかった
 [マンハッタン]の宝石店やアクセサリーショップで見かける綺麗な鉱石だな、くらいには思ったがそれだけで
そんなものを態々武装を取り外してメカに着けさせる意図が読めなかった


  ゲン「っしゃ、傷も完治したぜ…これならいつでも行けらぁ!」

 ルーンの効力で傷が塞がり更に勝利の加護が付与されて切れ味の増した武器を振るうゲン
特殊工作車の修理を終えたレオナルドも[勝利のルーン]によって今まで以上に早く直せたと上機嫌だ

 装備武器の効果性能を向上させる[勝利のルーン]は[修理装置]にもちゃんと適応される
リュートが保護の力で大怪物の視界に入らなくなる少し前に術士の策とやらは伝わっているらしく
 メカ勢全員が謎の石を鉄のボディへ取り付けていた



  ブルー「リュート、お前に渡してある[バックパック]にはこの"3つ"の予備がまだあるな?」スッ

 リュート「あるぜ、けどこんな時に綺麗な石っころでどうしようってんだい」


  ブルー「貴様今までコレの用途を理解せずに拾ってたのか…」



 レオナルド「軍師兼術士くん、こちらは準備完了だよ」

   ブルー「むっ…リュートいいか、お前は石が無くなった奴に片っ端から予備のそれを装備させ直せそれだけだ!」


 "準備"とやらが出来たメカ達を改めて見る、術士の男が何を考えてその指示を出したのか未だに彼には図り兼ねていた
高火力の重火器や業物の劔、そういった武器の類を一切外し変わりに全身鎧や盾を付けさせる

 …もとより外せない武器はそうだが何故か[火炎放射器]などを明らかに外した武装よりも弱い物を装着させていた


  リュート(???…一体全体何しようってんだ、マジで?)


 多少筋力や銃撃に必要とする集中力を落としてまで防御性と耐久、なにより丈夫さをあげた装備編成は
攻撃重視というよりも守りに特化していた

 ブルーはメカ達にも当然[勝利のルーン]だけでなく[活力のルーン]も掛けていた
ボディ全体の"丈夫さ<Vit>"を上げることや耐久力そのものを増強したことで[活力のルーン]効果を増やすことはできる
 然しながら機械は生物ではない、だから[マジカルヒール]なら兎も角普通の術による治癒効果はそこまで見込めない
微々たる回復量と取り外した武器の威力…天秤に掛ければ後者に傾きがあるのは当然だが…


―――
――


   スライム「(;´・ω・) ぶ…ぶく、ぶ…」ヨロッ…


 T-260の[多段切り]とスライムの攪乱によって[巨人]の屈強な肉体にも至る所に傷が出来ていた
常識外れのタフネスさを持つ怪物はそれでも未だ沈まず…っ!
 傷は癒せたとしてもスライム自身の消耗した体力と気力は戻らない、疲労の色が見え始めたモンスターと
エネルギー切れが近く[多段切り]も後数発撃てるかどうかのメカが1台

 大怪物はほくそ笑み、再び口から火炎を吐き出して手持ちの劔を赤々と熱していく


 巨漢は[ヒートスマッシュ]を一角獣目掛けて振り下ろす、スライムはそれを避けようとするも激戦で散らばった破片に
脚を取られそのまま四つ足を縺れさせてしまう…ッッ!


   スライム「Σ(・ω・ノ)ノ!ぶくっ!?」ガクッ、ドサッ



     巨人「カッタ!!シネィ―――!!」ブンッ



 赤々と照った金属が倒れた一角獣目掛けて落ちていく、T-260では位置からしてスライムと煉獄の刃の間に割って入り
救出することができない、攪乱してヘイトを一身に買う役目のスライムが居たからこそ
死角に潜り込んで切り刻むことができたのだ


 せめてもの抵抗とばかりに青肌の背中に剣を突き立ててそのまま上部へと裂く様に腕を振りあげるも
それでも悪鬼は止まらないッ!タフネスが売りのバケモノが今の今までメカ達の火力を受けて尚、強行してくるだけはある
757 :続きは火曜日か水曜日 [saga]:2021/08/22(日) 23:56:41.21 ID:6ou5FD+Q0







      ブルー「この瞬間を待っていたぞ!全員突撃ィー―――ッッ!!」





  ドウッ! ドウッ! ドウッ!




 術士、策の発令を叫ぶ。


 それに伴ってリュートを除いた全員が護印の庇護から飛び出す
後部のバーニアを、各関節部のスラスターを吹かしての急加速、[ヒートスマッシュ]の一撃で先程沈んだ特殊工作車も
最速を誇っていた機動性を落としてでも頑丈さを取らせたナカジマ零式だって
 重装甲と化したpzkwXもレオナルド博士も皆が一斉に前に飛び出したのだ


 [保護のルーン]によって未だ透明化していたリュートは戦いの被害が及ばない離れた位置から見て思った


  リュート(なるほどメカの皆には火力要員じゃなくて盾役に徹してもらうって訳か…けれども―――)



 これ以上はどう足掻いても防御性を上げきれない、それ程の装甲と雀の涙ほどに微々たるとは言えルーン効果の自動回復
確かに味方が全滅するという確率はこれで各段に下がるかもしれないが…

 根本的な解決にはつながらない

 鉄壁の要塞だろうが究極の盾であろうとも敵に少しでも攻撃が通らなければジリ貧で終わる
攻撃は最大の防御とはよく言ったものだ

 倒せなければ結局は時間をじっくり掛けた上で1人1人確実にこちらが削り切られる、防ぎつつも攻撃ができれば良いが
主要武装の殆どを外して防御面に極振りしている以上は前へ進めない、打開できないとリュートは見た




 メカ集団が4機掛かりで煉獄の刃を受け止めようとする寸での所で彼らは皆一世に片腕を天高く掲げた





    特殊工作車「オペレーション、カウンターシールドを発動します―――[紅炎石]を破壊!!」パキィィン

   ナカジマ零式「あっそーれ!!」パキィィン
      pzkwX「砕けろッ」パキィィン

    レオナルド「やれやれ中々面白いこと考えるね、彼」パキィィン





 弦楽器を背負った青年は確かに見た。

 [マンハッタン]の装飾品店でよく見かけた"綺麗な石"を天高く掲げたと思えば指先で粉々に砕く様を
蒐集癖のあるグラディウス組と何気なくリュートが拾い続けた"3つの石"…ブルーが[バックパック]から取り出した3種


 即ち、[紅炎石]と[銀氷石]そして[雷の結晶]の3つである…ッッ!


 紅々と輝く柘榴石に似た輝きのそれは砕け散り、その破片はやがて吹き荒れる炎と化してメカ達の身体を包み込む
猛火に包まれているにも関わらず涼しい顔をする彼らは敵ランク9のモンスター[朱雀]が使うとされる[ファイアバリア]を
その身に纏ったのだッッ!

 4機の[ファイアバリア]を纏った鉄の要塞と[ヒートスマッシュ]がぶつかり合うッッッッ!!

 一撃の下に戦闘不能に陥った特殊工作車は今度は墜ちなかった、術士達の指示で取り付けた防御性極振りの装備故に
煉獄の刃を耐えきり更には身に纏った不死鳥の炎が[巨人]の劔を伝い、腕を焦がし青肌の巨体さえも業火に包んでいく…!

758 :続きは金曜日か土曜日予定 [saga]:2021/08/25(水) 14:17:46.47 ID:GQdXw0gO0

 手首の先から燃え広がり徐々に腕に肩に胴へ、[ファイアーバリア]による炎は水分の抜け切った枯れ木を燃やすが如く
大怪物を襲う炎熱の洗礼となったのを青の魔術師はその目で確認した
 修士として学院で勉学に励んでいた時分に学院の古書で遠い昔の"惑星<リージョン>"に存在した術に関して学んだ事はある
現代では失われてしまった系統の術だが"朱雀術"というもので[セルフバーニング]などと呼ばれていたらしい



 人間が使う術としては失われても、その術を用いた文化や技術自体がモンスターの能力として組み込まれたり
あるいは古文書…各地の神話や伝承と言った歴史書を頼りに現代の魔道や科学技術の髄を結集して
失われた術を限りなく再現しようとする試みは昔から存在する


 少し前に苦戦した[ゴースト]共の使っていた[邪術]

 今や無き術系統とされている[幻術]だって[陰術]と[妖術]にそれぞれ吸収された形式で形こそ変われど現代に存在する


 例を挙げるならばそれらが該当するのだろう
今回使用した鉱石の内1つは術や技術に心得のある者が少し手を加える事で疑似的に[セルフバーニング]を再現できる
 モンスターの吸収能力として姿形を変えた[ファイアーバリア]という形式名で…



    巨人「う、うがあああああああああああああああっっ」ゴォォォォォ!!


 これは堪らんとばかりに猛火の衣を纏った怪物は両腕で頭を押さえ振り乱す様に全身を揺り動かす
自らを蝕む獄熱のローブを剥がそうと大降りに動きつつも握り拳を開き武器を落とそうとしない辺り大した者だ

 相手の体積も右腕に装着した盾も屈強な肉体を護る鉄鎧も関係ない、ただ"自身に敵対の意思を持ち接触した相手"を
例外なく炎上させるのが[ファイアーバリア]なのだから…

 メカ4機分の推力が織りなす馬力ともなれば大怪物の筋力で振り下ろされた大質量の武器にも拮抗でき
敵の攻撃を防ぎつつも相手に大火傷を負わせる鉄壁の布陣は此処に完成した


 ナカジマ零式「ふぅ〜っ!4人同時で受け止めれば流石に受けるダメージも軽減されまーすねー!」+HP85
    pzkwX「分厚くしたおかげでそこまで痛くない上に自動修復されるとはいえそこまでじゃないけどな」+HP81

  レオナルド「なーに、だからこそボク達が居るのさ[勝利のルーン]で[修理装置]の"性能向上<WEA UP>"もされた」
  特殊工作車「今なら直せないパーツなんてありませんよ、ええ」



 BANNG!! ヒュンッ!ヒュンッ!


 跳び上がり敵の攻撃を受け止めた焔の防壁達が反動で後方へ飛び退くと同時に漸く鎮火し始めた[巨人]の青肌に無慈悲な
銃弾と剣気が襲い掛かるッ!勝利を約束する護印を刻まれた武器の味はさぞや痛かろう
 今まで攻撃を受けても顔色一つ変えずに剣を振り下ろす事を強行してきた大怪物が初めて苦痛に顔を歪め
流れる様だった動作に手を止める時間や勢いの衰えが生じ始めたのだ


     ゲン「帰って来たぜ!長い事待たせちまったなT-260!!」

    T-260「ゲン様の戦線復帰を確認、また自軍の防備並びに兵装の大幅な見直しも確認!連携主体の軸へ変更!」


 闘気を纏った一閃…!光の波が地を奔ったかと思えば怪物の鉄鎧ごと胸筋に一太刀が浴びせられていた
グラディウス組の攻撃の後間髪入れずに[燕返し]を放ったゲンが[ボロ]を旅立った時から付き合い続けた相棒の隣に並ぶ


    巨人「ツギカラ ツギヘト…ッ!!」ギリッ


 いつの間にやら消えたと思えば伏兵として帰ってきた侵入者共に腹を立てて武器を振りまわす、それに反応するように
やはりT-260以外のメカ達が前に出て立ち塞がる……未だ燃え続けたままで
 振るわれる大剣と燃え盛る要塞の激突、先の状況そのままに焼き直しだ
自分の意志で攻撃を仕掛けて自分から触れてはならない機雷に触れて火傷を負う

 鉄壁の防衛線で侵入者達へ決定打は与えられない上に自身は焼けて、更に相手に追撃の機会をみすみすくれてやるのだ
蜘蛛の巣に絡めとられた蝶にでもなった気分を[巨人]は味わった
 足掻けば足掻いただけ糸が絡まり雁字搦めになってどうしようもない、今の一撃で[ファイアーバリア]がやっと消えて
状況が少しは好転したか!?と思えば…



       ブルー「その御身を厄災の眼<まなこ>から逃れさせよ![保護のルーン]」フォンフォン!
      スライム「(。-`ω-)ぶくぶくぶー!」パカラ!パカラッ! 


 一角獣の背に乗って素早く回り込んできた術士が炎の消えた機械戦士を片っ端から[巨人]の意識外へと逃がしてしまうッ
次に出てくる時には裏方に回ったリュートの援護で[フリーズバリア]か[サンダ―バリア]を纏って現れる事間違いなし
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/26(木) 03:12:37.00 ID:zqoBlmjQ0
乙乙
760 :続きは明日 日曜日 [saga]:2021/08/28(土) 23:18:42.95 ID:TT9QJu3Q0

 武器を振り回す[ブレード]に属性を付与した[ヒートスマッシュ]と[アイススマッシュ]体格を活かした[グランドヒット]
目の前の大怪物はその殆どが近接格闘を主体としていて
 間接的な攻撃手段など[烈風撃]や[タイタスウェイヴ]に[地震]などであった

 収束させた気流を放つ烈風の技はともかく他の2つは使用頻度が高いとは言えない、大技であればある程隙が生じるから



 劣勢から拮抗へ、拮抗から優勢へ。


 勝利を約束されし武具の一撃は一発一発が序盤の痛みとは比較にならないもので着実に[巨人]の命を削り続けていた
反撃に転じようと愛用する劔を振るえば虚無から突如として湧いて出てくる雷を纏った鉄兵が受け止め
落雷に撃たれでもしたような痛みが全身を駆け、追い打ちの様に柄を握る手首に焔や冷気までもが突き刺さる

 棘だらけの茨を素手で殴りつけているような嫌な感じ、大幅なダメージ覚悟で隙を見せて広範囲攻撃に転じても
活力が滾る侵入者達は時間の経過と共に傷など無かったと謂わんばかりの状態に戻っているのだ


 最早どうにもなるまい、単純な戦闘能力だけでは覆しようの無い布陣が敷かれたのだ



   エミリア「そこだわッ!」BANNG!!
    アニー「[無拍子]…!」シュバッ


            2連携 [ 跳 弾 拍 子 ]


 2発分の[跳弾]が左右の肩に撃ち込まれ、速さを売りにしたアニーの回避不可能の切り抜けが青肌の脚の脛を切り刻み
遂にその巨体は喉奥から血反吐を吐きながら膝を折った、シールドを装着した右腕は崩れ落ちる身体を支える柱となるべく
床に掌をつけて……そして顔をあげた時に見た


 鉢巻を巻いた男の背に見えるはずの無い"月影<げつえい>"を幻視した――――ッ



        ヒュッッッ  ――― ― ―   ― −‐ ッ



 地の底で、この時分に見える筈の無い満月に人間の影が重なった
月の輪郭を沿ってかあるいは滑り落ちる様な[刀]の峰を見た、刃は幻想の月光の中に溶け込む様で見えなかった…

 美しく心さえ奪う鮮やかな、それでいて総毛立つ程にゾッとする白刃に怪物は見惚れた


 薄布のベール越しに透過して見える月の輝きだとでもいうのか、刀身はきめ細やかなソレのように幻想の美さえ魅せて








 [巨人]のその魂を刈り取った。






       巨/人「う  ケ  ガぁ?」




 顔がおかしい、目の焦点が合わない

 魅入った月が真っ二つに割れる、光の筋が走ったと思えば目線の真ん中に上から下に掛けた斜めの線が後を追い

ドサッ…


      巨「…ぉ」
        人「…ぁ?」


 青肌の悪鬼は顔から先の胴体さえも真っ二つに切り別れた
辞世の言葉が『ぉぁ?』と我が身に何が起きたか分からぬという言葉だけを残して…かくして激闘の"前哨戦"は幕を閉じた
761 :続きは木曜日か金曜日予定 [saga]:2021/08/29(日) 22:10:06.02 ID:4pgvLgm20

 さて読者諸氏よ…ッ!我々は重大な事を一つ忘れていないだろうか!?
我らが愉快な侵入者御一行がモンド執政の秘密基地で最終防衛ラインの巨漢と激戦繰り広げる少し前に逃げ出した奴をッ!

 時間は少し前に遡る…

―――
――


  ワンダードギー「ハッハッハッ…へ、へへっ 見えてきたぜ!!あのドッグだ」タッタッタッ

 どさくさ紛れで逃げ出した下位妖魔は後方から聞こえてくる轟音に脇目も振らずただ一か所を目指していた
最下層周辺警備のメカや慌てふためく雇われのモンスター達の波を掻い潜って文字通りの"秘密兵器"の下へと…


       「しゅ、主任さんよォ!?一体どうなってんだい!?敵が近くまで来てんのか!?」
  ワンダードギー「うるさいっ!そんなことよりアレの起動準備を進めろ!!」

       「は?ア、アレって…それはウチの大将が乗り込む機動兵器だろ、勝手に起動なんて…」




  ワンダードギー「 つ べ こ べ 言 っ て ねぇ で 早 く や り や が れ !! 」

  ワンダードギー「モンド様からの直接命令だぞ!?」




 一世一代のチャンス到来、焦る気持ちからカッとなって怒鳴り散らしたことで幾分か冷静さを取り戻して
一呼吸置いてから堂々と『モンド様からの指示』だと嘘をつく
 自分1人でもできないことは無いが折角人手があるのなら最大限利用してやろうくらいの気持ちだった

 怪訝な顔をしつつも自分より立場の上に居る人物が更に上の者から命令されたのだとすれば…と彼らは奥に鎮座する
機動兵器の枷を外す作業へ取り掛かる



 それが彼らにとっての最大の悲劇の始まりとも知らずに


 その"機動兵器"は格納庫のドッグ内でしっかりと固定されていて、いつでも出撃可能な状態になっていた
下級妖魔は心臓の鼓動が早くなるのを感じる、夢にまで見た『力』を我が手にできるのだと意気揚々とコックピットに乗り
コンソールを弄って稼働準備を進めていく、ディスプレイに灯る光

 それに連動するように眠りから覚める様に赤く光り出すツインアイのカメラ
人間の手と同じ様に滑らかに動く5本指のマニピュレータ、図太い巨大な金属製の大脚



           『 Great Monde. 』


 "Great Monde<グレートモンド>"…その大型機動兵器の名称がモニター画面に表示された
下位妖魔はこの世に生を受けた事を認識して以来、未だかつてない程の喜びを噛みしめた


   ワンダードギー「…くっ、うくく、くはははっ…やった、やったぜ…遂にやったぜ!!!」


 殺しきれない笑いが、喜楽の感情が漏れ出す中[モンド基地]の全防衛システムと電力、火器系統にアクセスして掌握する
そしてメインカメラ越しに蟻にしか見えなくなったモンスター…先程[ワンダードギー]の言葉を鵜呑みにし起動立ち上げを
手伝ったモンスターの姿を認識した、集音器が拾った音声からして問題無いか?と叫んでいるらしい


   ワンダードギー「…ああ、問題ねーよ!」ガチャッ


 最終兵器と呼ぶに相応しい機動兵器は銃口を足元に居る整備士に向けて撃ち出す、一瞬にして起動を手伝った者は
穴だらけのチーズと化してその場に倒れ伏す…この事態に他のモンスターもメカも理解が追い付かなかった
 搭乗者の誤作動?いいや違う、裏切り行為だ意図的に撃ったのだと理解した時には全員が今際を迎えていた


   ワンダードギー「俺を見下してきた全てをぶち壊すんだ、これさえあれば妖魔の君を倒す事だって夢じゃねぇんだ…!」




    ワンダードギー「リージョン界を統べるのは『力』だ! それが解らねぇ野郎共に教えてやる…っ」

    ワンダードギー「力の意義って奴をなァ!まずはあの侵入者共からだ…あいつ等の体に直接、叩き込んでやる!!」

762 :続きは明日、土曜日 [saga]:2021/09/03(金) 23:54:19.71 ID:+IJbBCz00
―――
――


 鞄から取り出した酒を喉に流す、体内に消耗した術力が滾るのを彼は感じながら思う
戦闘を終える度に勝利の美酒はこれだからやめられないと謳うゲンの気持ちも分からなくはないと
 命のやり取りをした直後の高揚、喉の乾きを潤すのが甘露水ではなくアルコールというのは好くは無いが
自分が一息つける環境に至れたと実感できる瞬間には違いない

 長距離走を走り切った後の息絶え絶えの所で座り込んで飲み物を一杯、今この瞬間だけはこれ以上頑張らなくていい

 何かの例に喩えるならばそんな言葉だろうな、嫌いじゃない…後ろを見やれば本職のブルーよりは
圧倒的に術力は少ないが多少消耗した女性陣も一口[術酒]を含んでいた、背景ではレオナルド博士やリュート等が忙しなく
メカ達の装備を防御性重視から元のプログラム装着を意識したINT用のメモリーや火器武装の取り付け作業に入っている
 既に切れた[活力のルーン]やスライムの治癒の光で肉体的な怪我も完治したと言っていい
最後はスライムに[巨人]の死体から細胞を取り込んでもらい技力の回復、あわよくば何かしらの戦闘技術を会得させる


    ブルー「どうだ?何か得るものがあったか?」

   スライム「(´・ω・`)…ぶー」シュン

   リュート「気にすんなって、お前さん今回大活躍だったんだぜ誰も責めねぇよ、なぁ?」


 弦楽器を背負った無職に振られて蒼い法衣の術士も肯定する、[ワカツ]到着から現在に至るまでの最大の功労者を
褒めこそすれど咎める理由は無い
 準備が整った所で荷物をまとめて通路の先を見据えた所で奥の様子がおかしいことにリュートが気が付いた


  リュート「んあぁ?なんだ〜奥から変な音聞こえねぇか?」

  エミリア「変な音…ううん、そんなの聞こえないけど気のせいじゃないの」


  リュート「いやいや、聞こえるって俺ミュージシャン目指してんだから耳は悪い方じゃねーんだって」


 蒼き魔術師はいつだったかこの無職に『俺、いつかプロになって[マンハッタン]で公開ライブしてぇんだ!どうだ?』と
音楽にはそこまで詳しくない素人の自分からしても微妙な顔をするしかない歌を聞かされたのを思い出した
 首を横に振り払って変な記憶を掻き消しながらも彼に問う、どんな音なんだ?と


  リュート「なんか、こう…ガガガガガ!って銃声みてーな?にしちゃ普通のマシンガン的な奴じゃねぇなって」


 これまで[バルカン]を撃ち出すメカの敵とも戦ってきたがそれとは音の質が異なるらしい
機銃の音よりも轟く滝の傍で水が止め処なく落ち続けるような轟音だと




 彼らは知らない、それがこの通路の奥で機動兵器に乗り込んだ[ワンダードギー]が基地内のモンスター達を
通常のメカとは明らかに異なる大経口尚且つ尋常ではない数の備え付けられた銃塔でハチの巣を通り越しミンチにした事を


 使い捨てのカメラによる写真撮影も欠かさず、侵入者一行は基地の最奥へと向かう
そして長い通路の半分を過ぎた辺りで仲間の1人がいよいよもって異変に気が付き身構える


  アニー「待って様子がおかしいわ、……リュート、アンタがさっき聞いた音ってのは気のせいじゃないかもね」スッ

 リュート「えっ、この先になんかあんのか?なんでわかるんだ?」



  アニー「……鉄臭い上に焦げ臭い、血の匂いと"焼けてる"嫌な臭いが鼻に突くのよ」


 そう言われてスンスンと鼻をひくつかせるが弦楽器を背負う男にも魔術師やブロンド美女も一向に分からなかった
ただ一人、剣豪だけは見ればアニー同様に武器の柄に手を掛けて眉間に皺を寄せていた


   ゲン「分かってるじゃねぇかネエちゃんよぉ、ひり付いた嫌な臭いがプンプンしてくらぁ…」


 基地の最深部だ、重要な場所であればあるほど護られる機密も大きなもので防衛線もより堅牢、苛烈を極める物となる
ならばこの先に待ち受けるのはなんだ?[巨人]を超える程の恐ろしい物があるのか?

 それが侵入者である自分達を待ち受けている、にしては状況がややおかしい

 リュートが聞いたというおそらく攻撃音、そして血の匂いと生き物の肉が焼ける異臭が奥からする
そこから導き出される答えは基地内部の何物かが同じく基地内部に居る仲間を襲ったとしか思えない
少なくとも自分達より先に侵入していた先客が居たという形跡は無かった、……意を決して彼らは奥へと脚を運んだ
763 :続き明日 日曜日 お昼過ぎくらい [saga]:2021/09/04(土) 23:52:44.60 ID:GXy8DoJa0

 進めば進む程に嫌でも達人達が嗅ぎつけた死の匂いが立ち込めているのが解った
薬莢の匂いとまだ床に残る真新しい血痕、空調が効いてるにも関わらずそこに残る熱、飛び散ったモンスターの身体と
物言わぬ屑鉄と化したメカの残骸…


 大型機材の駆動音、それは奥のドッグから聞こえてきて彼らを今か今かと待ち受ける様に唸りを上げていた



  ブルー「な、なんだというのだこれは!?」

 リュート「……こいつぁヒデェな」



 見渡す限りの朱、紅、赤…、漏れ出したメカのオイルに発火でもしたか炎上している箇所もあり、消火設備がそれを
必死に消そうと動き続けていた

 最早、この[モンド基地]は拠点としてまともに使えないのではないか、とそんな考えさえ過っていた
カメラで撮影してルーファスに写真を叩き付ける所の話ではないと判断して蒼き魔術師は提案する


  ブルー「……一応聞いておこう、幾つか十分な証拠写真は得た」

  ブルー「モンドという男の基地があるという噂を裏付けるには十分すぎるほどの物をな、此処で退却するか?」



   ゲン「…俺ぁ帰らねぇよ、[ワカツ]の真下にこれだけの事やらかす化け物が居るんだろ?」

   ゲン「なら…同胞達の安らかな眠りの為に、魂を鎮める為にも放っておけねぇからよ」


 俺は個人的に残るんだ、お前達は付き合わなくても大丈夫だ、と続けて言ってくれるゲンに対して
T-260を初めとするメカ勢が同行すると口にしリュートもまた…



   リュート「水臭いぜ、ゲンさん…正直に言えばおっかねぇから帰りたいけどよ…皆で無事に帰らねぇとな」ニカッ

    アニー「ここで帰ったらルーファスにグチグチ言われちゃいそうだからね、アタシも付き合ったげるよ」
   エミリア「まっ、そうなるわよね」



  ブルー「…はぁ、やれやれだ全く、貧乏籤を引かされたものだな…」スタスタ




 臆病者で無職の癖して[スクラップ]の酒場に居た頃からクーンを初め知り合った人物を放っておけない人情の厚い男は
カバレロ一味との対決時の様にゲンに付き合うと言い出した、尤も今回の基地潜入自体がモンド氏絡みだしもっと言えば
剣豪に頼み込んで[ワカツ]に連れて行ってくれと言い出したのはリュート本人だ、当然ながら思う事もある


 同じく義理堅い女のアニーも上司の愚痴が嫌だの任務が云々抜かすがそんな建前抜きに共に戦った仲間の為に
協力を申し出てることぐらいは誰にだってわかる、二人が残るなら放っておけないと同僚と友人の為にエミリアも…


 1人でさっさと[ゲート]を開いて帰ってもいいのだが、そうなるとここまで自分が来た理由が無いし上に
唯一[ディスペア]に足を踏み入れる為の鍵であるアニーに万が一があれば自分の資質集めの旅に支障が出ると想定され
 芋づる式にブルーの選択肢も決まった様な物であった

……もちろん、ブルーが残るならスライムも説明不要である



  ブルー(そうだろうよ、…こういう奴らだからな)



  "一応聞いておこう"、魔術師は帰還を提案する際に前置きで言葉をそう発した
知ってた、わかっていたとも…あぁ、解り切っていた、短くない付き合いなのだからどう言葉にするかなんて理解してたさ


 何が写真を撮って帰るだけの簡単な任務だ…とんだ貧乏籤じゃないか、内心で悪態を付きつつも
不思議と魔術師は悪い気はしなかった

 厄介ごとに付き合わされているだけ、客観的に見ればそうなのに。

 最近の自分はどこかおかしいのかもしれない、周囲の喧しい人間達に振り回されているこの環境が嫌いじゃないのだから
肩を竦めてため息を吐きつつもブルーは仲間達の元へと歩き出す、どうせなら未知の脅威とやらをこの目で拝んでやる
どんな化け物が出るやら、自分の魔術がどこまで通じるか試して見るのもまた一興、修行の一環だ、彼はそう結論付けた
764 :続き 夜 [saga]:2021/09/05(日) 15:52:50.41 ID:pLf8J+eI0

 意を決して、最奥のドッグ内へと入り込み彼らは最終兵器の姿を捉えた…っ!
そのフォルムは神話に登場する半人半馬を連想させる屈強な四つ足、尤も手にしているのは弓ではなく
彼のサイズに見合う超大型のサブマシンガンであり、全身も体毛に覆われた生物然とした物とは異なる合金の塊だ
 上層で見かけた超大型の[Tウォーカー]等や[巨人]以上の巨大さに思わず侵入者達は息を飲んだ


   リュート「おいおい、子供向けのヒーロームービーに出てくる合体変形ロボのご登場かよ…」タラーッ

   エミリア「いや、本当デカいのに縁があり過ぎでしょ私達…」ゴクリッ


 鬼が出るか蛇が出るかと覚悟はしたが、正直舐めてたな―――これはいくら何でも規格外だ
見上げる程の機動兵器を見上げて多くの者が同じような感想を抱いた所で向こうは紅く光るツインアイカメラで此方を
認識してか声を発してくる、つい最近聞いた声だ


  『待ってたぜ侵入者共!基地の深部に来るのが目的だったようなんでなァ待ち構えてたんだ!!』



  ブルー「その声は…貴様さっきの捕虜か!?」


  『おうともよ!てめぇ等さっきはよくもこの俺をコケにしてくれたじゃねぇか…』

  『俺は"力"を手に入れたんだ!今まで俺を馬鹿にしてきた連中を全員踏みつぶせる程の"力"をなァ!』

  『リージョン界は全て俺様の物だ、トリニティも妖魔の君も全部俺様にひれ伏すんだよォォ!!』



 ゴオオォォ!スピーカーから操縦席に座る野心家の叫びが木霊する、―――馬鹿に鋏を持たせるなという諺はよく聞くが
気違いに刃物という例は正しくコレだろう、支配欲を持った小物がある日突然巨大な力を得ればこうなるのだと…っ!



  『外に出て色んなモンをぶっ壊す前にてめぇ等だ、覚悟しやがれ…ッッ!!』ドゥッ!


                    ――――ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォォォ


 本来の搭乗者、モンド氏の名前を冠した兵器…[グレートモンド驚天]は轟音をあげて前進してくるッ
同時に[ワンダードギー]は掌握した基地内のシステムを作動させて自身達の居る"足場"を動かした



  アニー「おわっ!?」グラッ

   T-260「足場が上昇移動を開始!不安定な揺れによる回避率の低下が懸念されます!」グラッ


 ここまで降ってきた斜行リフトとはまた違う動き方をする足場、上昇に急速をつけ左右にも揺さぶりを掛けるのが何とも
嫌らしい動きである、喩えるなら荒れ狂う海上にポツンと取り残された丸太筏の上に突っ立ってる様な気分だ
 警告を発したT-260の言う通り不安定極まりない足場上での戦闘は彼らにとって不利なフィールドでしかない

 マニピュレータの指が大型機銃の引鉄を引いて[バルカン]を撃ち出し続けざまに肩のミサイルポッドから
[ミサイル]も撃ち出す、[ミサイル回避][バルカン回避]プログラムを持つメカ勢は兎も角
常に揺れ動く不安定な足場では十分な回避動作も取れず直撃こそせずとも大型機銃の銃弾が
床を削った際に飛び散った破片が身体に突き刺さったり、ミサイルの爆炎で火傷を負う者も出始める


    敵ミサイル『』ヒュルルルッ

   特殊工作車「危ない…っ [ヘッジホグシステム]!!」バシュゥッ!
  迎撃ミサイル『』ヒュルルルルッ、バッグォォォン!

   エミリア「熱っ!」

 本来、直接攻撃に対するカウンター用のプログラムで敵の[ミサイル]直撃から仲間を護ろうとするが唯でさえ
照準が定まらない、迎撃はできても相殺の際に生じる爆炎はどうしようもできない


   特殊工作車「す、すみません…」
    エミリア「いいわ、気にしないで…そんなことよりあの巨大兵器をなんとかしないと!外で暴れ出したら大変よ」

     ブルー「あぁ同感だ…あの妖魔リージョン界を自分の物にするとか言ってたからな」

     ブルー「ちっ、これはもう[ゲート]の術で一旦退却だどうのと言ってる場合ではないなッ!」

 自分達が暮す"全宇宙<リージョン界>"を蹂躙して自分が支配者になると宣うのだ
銀河の海に浮かぶ全ての"惑星<リージョン>"の危機とあらば当然[マジックキングダム]も例外ではない
 ブルーとしても自分は無関係だから黙って背を向けて去りますね、という訳には行かない
765 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/09/05(日) 23:36:24.04 ID:pLf8J+eI0

BGM:リュート編ラストバトル
[https://www.youtube.com/watch?v=2IHjW-u_cTQ]

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―――
――


 [グレートモンド驚天]は四つ足を巧みに動かし稼働中の足場を大きくグラつかせる、上昇リフト化した足場全体を支える
鉄骨も当然の様に揺れ悲鳴を上げる、激しい[地響き]の最中で脚部の膝関節部分に取り付けられた
火炎放射器からも[放射火炎]を吐き出し稀に股間部分にも取り付けられた衝撃波発生装置から[超音波]も発せられる


   ブルー「くっ…脚だ!全員彼奴の脚を仕留めろ…っ」グラグラ、ヨロッ…


   T-260「[多段切り]」ザシュザシュザシュ!
 特殊工作車「同じく[多段切り]」ザシュザシュザシュ!
 ナカジマ零式「は〜い!もいっちょ[多段切り]」ザシュザシュザシュ!
   レオナルド「ボクも手伝うよ」ザシュザシュザシュ!



            4連携 [ 多 段 多 段 多 段 多 段 切 り ]


 [地響き]の影響下で"人間<ヒューマン>"とスライムが移動困難な中、安定した動きで巨大兵器のボディを
切り刻んでいく機械戦士達、連携さえ組めれば彼らのマシンパワーが産み出す剣技の強さに立っていられる者は居ない
 あの[巨人]でさえメカ組達の連携を恐れて組ませない様に立ち振る舞っていたのだから…



    pzkwX「おらぁ!![ハイペリオン]を喰らいなァ!」
  陽子ロケット弾『 』バシュゥゥゥッッッ!ドゴォォォォ!!


 人間では決して繰り出せないであろう機械の剛腕による無数の斬撃、それによって出来た鋼鉄の四つ足の裂け目に
大火力の[陽子ロケット弾]の熱が浸透していく
 将を射んとせば馬を射よ、まずは敵の脚を潰して逃げられない状況にして同時に足場の揺れを産み出す[地響き]も止める
これだけでも大分戦いの流れは変わってくる筈だ

 ロケット弾が命中して黙々と立ち上る黒煙が晴れればそこには読み通りもう使い物にならないと思えるボロボロの脚
他にも肩部に取り付けられていたミサイルポッド等のパーツがバラバラになって転がっていた


   エミリア「足場の揺れが大分マシになったわ…っ!これなら―――」

 敵の武装も今の攻撃で大型機銃が"御釈迦になった"のだから警戒すべきは火炎放射と[超音波]くらいしかない
これなら労せずに無力化も可能か!?―――そんな考えが浮かび、それが甘い考えだと直ぐに思い知らされる



   ウィーン…ガコンッ!


  リュート「おろ!?なんだぁ足場の上昇が止まったみてぇだが此処は何処だ…後ろにでけぇドックがある」



      『くっくっくっ…このマシンがそんなヤワな訳がねぇだろォ!?』



 ウィーン!!

 ドッグ扉が開いて巨大なクレーンアームが伸びてくる…っ!基地内システムを掌握した下位妖魔は考え無しに足場を
移動させていたわけではない、最下層のグレートモンド専用外付けパーツ格納庫まで稼働させていたのだ
 アームに掴まってダメージを受けた機動兵器はドッグの奥へと運ばれ当然逃がす訳にも行かずに追撃を掛けようとするが


                   【 [敵の援護射撃] 】

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ…!


  ゲン「うぐあっ」ズシュッ

 アニー「痛っ――――天井に機銃が取り付いてるッ」バッ!


 全てのシステムを掌握済みなら火器統制の権限も彼奴が握っているのは当然で、この重要ドッグ前の侵入者迎撃用機銃も
操縦席の妖魔の意のままというわけであった
766 :続き明日の昼か明後日のどっちか [saga]:2021/09/05(日) 23:38:04.32 ID:pLf8J+eI0

 ドッグ奥へと消えていった時と同じようにアームの腕に掴まれてグレートモンドは再び戦線へと復帰してきた
ただし、[グレートモンド驚天]から多少装備を変えた[グレートモンド動地]の姿でッッ!!


    グレートモンド動地『 [ブレード]装備 』グオォォォォンッ!ドウッ!!


    ブルー「何!?速いだと!?」


 四本脚は確実にぶっ潰してやった筈だ、手にした[ブレード]が敵機の復帰地点から一番近くに居たレオナルド目掛けて
動き出した所で彼は直ぐにその考えを振り払った

 メカ4機の[多段切り]と大火力の砲撃を受けて脚は使い物にならないほどの致命傷を受けた?
いいや違うね…あの脚は"ガワ"だ
 切りつけられた表面の皮だけを脱げる玉ねぎ、否、マトリョーシカ人形の様な物だ
表層が致命傷を負った所で外側のパーツを任意のタイミングでいつでも"脱ぎ捨て<パージ>"可能という仕組み
汚れた上着を脱ぎ棄てて、その下には傷や汚れの一つ無い身体があるのと同じ事

 しかも厄介な事に、要らんパーツを取り外した事で俊敏性が驚天形態の時とはダンチだ
4本脚自体の動きがより滑らかに尚且つ早く、ミサイルポッド等の重りも外れどうやら背部にスラスター付きと見た
 背部スラスター自体は後付けでなく元からの取り付けで、その上に取り外し自由の防御装甲が付いていたのだろうな


  レオナルド「これは…っ、なるほど重装甲を取り除いた事で重量が減り更にあの背部の輝きは…っ!」
    pzkwX「先生っ!?うおぉぉぉ先生は私がお守りするっっ!!喰らえぇぇぇ」バッ、ガチャッ


 恩人の為に身を挺して、前に飛び出したpzkwXが[ハイペリオン]を構えて引鉄を引く…っ!しかし―――


  陽子ロケット弾『 』バシュゥゥゥッッ――――――ゴトッ…コロコロ!



   pzkwX「はっ!?弾がそのまま落ちて転がって―――」ハッ!


  ナカジマ零式「い、いけませーん!これは[ECM]でーすッ!」



 上層で[スカイラブ]が戦闘時に発揮した対弾道兵器の妨害プログラムッッ!![ハイペリオン]の最後の1発は
不発弾として虚しく地を転がり、pzkwXの眼前には横凪で迫りくる青肌の巨漢のソレを上回る大型[ブレード]があった

   ガキィイィン!


   pzkwX「がぶふぅっっ!?」ヒュバンッ


 機敏さを増したケンタウロス擬きの横一閃を諸に受けてそのまま吹き飛ばされる重火力メカ、彼の身は宙で回転しながら
再び浮かび出した足場から弾き飛ばされ、落下していく…っ!


  レオナルド「っ!pzkwXーー!」


 この高さから落ちてもメカならばコアが砕け死に至るという事は無いが、飛べない彼では戦線復帰は無理だ…
マニピュレータが振るった[ブレード]を仕舞うとそのままスラスターを吹かして[突進]を特殊工作車目掛けて仕掛けてくる
 大質量の巨大兵器の突撃で蹴り飛ばした後、直ぐに両前脚をあげて[ふみつけ]んとする脚と
狙われた特殊工作車の合間にゲンが割って入る


    ゲン「ふんぬぅぅぅっ―――ぅぎぎぎっ!!」[ディフレクト]


   『うおっ!このオヤジなんて馬鹿力だ…コイツの全重量乗せた両足を剣で受け止めやがった…!?』


    ゲン「おぃ、ボサっとしてねぇで、は、はやく 離れろぃ…」ギギギギギッ!


 四輪を全力でバックアクセルでその場から退避し剣豪も仲間が離れたのを見計らって直ぐに飛び退く
玉汗を滲ませながら今までの強敵との連戦が児戯に思える最終兵器の方を振り向けば
背部スラスターから紺碧色の光が飛び出す、夏の青空が如く済んだ青い光が1条、また1条と飛び回るナカジマ零式目掛けて
突き刺さっては爆発を起こす―――それはスライムの[シルフィード]に似た[スプレッドブラスター]の輝きに他ならない


  ナカジマ零式「ぐっばぁあぁッ……こ、これ以上は厳しいですか、ええーいならせめてっっ!!」ギュウウウゥゥン!

 紺碧色が空舞うナカジマ零式の身を突き刺し機体の制空が厳しくなったと判断して墜落交じりで[神威クラッシュ]を
[グレートモンド動地]へとお見舞いする、一矢報いると同時に激しい音を立てて墜ちた彼に直ぐレオナルドと工作車が寄る
767 :続き 木曜日か金曜日のどっちか [saga]:2021/09/07(火) 02:59:52.46 ID:ZcOhC0Iy0

 火花を散らすナカジマ零式の修理が急ピッチで行われる中、[神威クラッシュ]の一撃で入った罅目掛けて
アニーが[刀]で突き剣の技を撃ち込む、刀身の先を罅のど真ん中に定めてからの迅雷が如き突撃…![稲妻突き]が刺さるッ


   アニー「流石に勿体ないとか言ってる場合じゃない、コイツはアンタにくれてやるよ!!」ギュンッッッ!ドスッ!

 グレートモンド動地の装甲に入った罅『 突き刺さったアニーの[刀] 』バチバチ…!


 闘気を纏い稲妻を帯びた彼女の武器を機動兵器の装甲に勢いよく突き立てる
木材に釘を一本軽く立てて槌で一発殴った時に似た浅く、それでいて深く先端が突き刺さり外れない様と言えよう


   ブルー「でかしたぞ!エミリア貴様の腕っぷしでアレを奥まで刺し込めッッ!!」


 武器を失い手ぶらになって後退するアニーとすれ違う様に銃をホルスターに収めたエミリアが
ライザ仕込みの体術フォームを取って突き刺さった武器に拳を叩き込もうと狙いを定める
 左足で一気に踏み込んで跳び上り、右手の指先に闘気を込めた一撃を[刀]の柄に叩き込んだッ!!


  エミリア「もうっ!!女の子に腕っぷしで叩けとかデリカシーゼロなんだからっ!!!」カッ!!


 女心の分からない指揮者に愚痴の一つでも吐き捨てながら窮地を脱する為の策通りエミリアは気を一点集中させた一撃
[短勁]を杭と化した戦友の武器に打ちつける
 刀身は分厚い[グレートモンド動地]の装甲の中へと更に沈んでいき柄から先端へと闘気の熱が伝導して機動兵器の内部に
ダメージが浸透しているのが罅割れの隅々から溢れ出す輝き、パキパキと硬い物が内側から砕ける音で分かった


  『うお"お"ぉぉぉ"ぉ"ぉ!?…うぐぐ、やるじゃねぇか!だがまだ終わりじゃねぇぜ!』


 どうやら[短勁]の熱はガワ全体だけでなく操縦席まで僅かに浸透したらしい、下位妖魔の悲鳴と苦しむ声が
スピーカー越しに聞こえてくる、機体は今の一撃で大きく仰け反り両腕は情けなくバンザイのポーズで静止
 同時に杭打ちの攻撃に耐え切れなかった外側のパーツがまたバラバラと落下していく


  ウィーン!!
        ウィーン!!

                   【 [鉄柱攻撃] 】



  鉄柱『 』ブォンッ!
       鉄柱『 』ブォンッ!


 機動兵器をドッグ奥へと連れ立ったあの巨大アームが足場の上に居る者達を左右から弾き飛ばさんと襲ってくるッ!
数は1つ、2つ所の話ではない間違いなく全員の身体に打身を創る事が確実…っ!


   リュート「うべっ!?」ドゴォ!!
    ブルー「ぐほ"ぉっ!?」ドガァッ!
   スライム「(;゚Д゚) ぶぶーっっ!?」ゲシャッ


 鳩尾に赤いロボットアームの爪部分が入る者、肩を鉄骨部分に当てられ脱臼する者、下顎から蹴り上げられた形の聖獣
左腕がぷらんとだらしなく垂れ下がった術士は右手で左肩を抑えながら被害の程を確認しようと周囲を見渡す
 敵はまだ何か手札を出し切っていないのだ…っ!戦闘不能者は居るのか?まだ戦える者はどれだけ残っている!?

 エミリアと武器を失ったアニーも[鉄柱攻撃]にぶち当たったが痣こそあれど動く事には問題ない、ゲンは額から出血
避けきれずにアーム部分の爪辺りで頭部を負傷したか、メカ組は…っ!?


 ここで青の魔術師は今まさにこの瞬間、鉄柱がメカ勢を襲うのを目撃した
T-260は金属音を響かせながら御手玉よろしくと飛ばされて床に2度ほどバウンドした、直ぐに起き上がった所を見るに
戦闘行為の継続に問題無し、―――――問題ありなのは…ッッ!!


    ナカジマ零式「あわわわわわわっ!不味いです不味いですよーーーーっ!」バチバチ

     特殊工作車「…っ!じ、自分のプログラムは修理中では身動きが取れませんっ」ジジジジッ
     レオナルド「この位置は不味い…!……くっ、後で直すから許してくれよ!」バッ


 同じタイプ6型に該当する機械を修理するメカでも素となっているボディ、武装が違うのと同様彼らの動きにも
多少違いがあった、修理の真っ最中は動けない特殊工作車と中断して動けるレオナルドの差、後者はボディ自体が完全に
レオナルド自身のオリジナルだからこそ迫りくる鉄柱を前にしてできた咄嗟の回避行動である

 回避できなかった2機は鉄柱の一撃でpzkwXの時と同じく盤上から放り投げられた…っ!

ガンガンとそこかしこに金属の塊がぶつかり合う音が下方から聞こえてくる、着実に此方陣営の駒は減らされていくッ!
768 :続き 土曜日か日曜日のどちらか [saga]:2021/09/10(金) 23:06:38.58 ID:0iN/7mw+0

 盤上から2機のメカを退場させた代わりに向こうも重装が取り払われた
グラディウス組の攻撃で壊れた装甲毎[鉄柱攻撃]を行ったアームが機動兵器を持ち上げて上方へと運んでいて
 四方八方から襲い来る鉄柱の対処に追われた彼らが一波乱を漸く乗り切った後には次の形態に移行した兵器が上から
足場へと降り立った頃であった

 [グレートモンド威力]…そう称される形態は神話の獣と違い次は4つ足ではなく2足歩行の限りなく人に近いシルエットだ

 ただ両腕の手首よりは松葉杖を持った怪我人よろしくとガトリング機銃が伸びていて肘に当たる部分には
[バックラー]タイプのシールド装甲、背部には展開式の折り畳み[ブレード]を収納

 肩には[ハイパーバズーカ]と威力という名を冠する通りの[レールガン]が装着されていたッ!



  『うははははっ!踊れ踊れぇ!死のダンスだ!!』ズガガガガガガガッ

 ゲン「クソッたれめ、本当に玉ねぎみてーなロボだぜ!剥いても剥いても中身が出てくらぁ」


 [バルカン]を撒き散らす巨大兵器に悪態を吐く、倒したかと思えば次の形態になって戻ってくるこのくどさ…!
両腕から乱射される豆鉄砲はまだどうにかなるとして[レールガン]の威力には手を焼く
 [ディフレクト]で弾こうとするが弾圧が普通に重い、自分の力を以てして確実に仲間を護り切れるかどうか不明瞭ときた


   T-260「敵の銃塔を破壊し行動の制限を図ります」ピピッ
 レオナルド「随分な兵器じゃないか、こんなのトリニティには無かったよ本当…っ!」


 倒せば倒す程に厄介さを増す敵の兵器にT-260とレオナルドが[多段切り]を決めようと接近を試みる
 

            『ぎゃはははっ、わかってんだよ!』

                【 [無伴奏ソナタ] 】

 ポロロロ…♪ ポロロロ…♪


 メカ2機が切りかかるのを読んでいたと謂わんばかりに"最速行動<ファスト>"で奏でられる電子音が辺りに木霊する
酷く耳障りで鼓膜が破けるんじゃないかとさえ思える大音量で発せられる特定コードを織り交ぜ込んだ音色


      T-260「!!! システムに異常あり、シス…ムに異……り!」
   レオナルド「こ、この周波数は、不味い、ぞ」ギギギッ

    『いい加減目障りなんだよッ!こいつで消えちまいな!』ガシャッ!


 メカの機能を麻痺させて"行動をスタン"させる特殊音波によって動かなくなる2機、彼らに目掛けて
肩に担がれた[ハイパーバズーカ]の弾が炸裂する
 機銃や[レールガン]に翻弄されて2機を直ぐには救援に向かえなかったゲン、同じくリュートやエミリア
失った武器の代わりをブルーから受け取るべく後退したアニー、[鉄柱攻撃]で受けた仲間達の回復に努めたスライム
 誰が居ても爆風で場外へ吹き飛ばされるメカ達を救えなかったのは仕方がない事だろう


     『厄介な屑鉄共は居なくなった、次はお前達の番だッ!』

    ブルー(くっ、レオナルド達が落ちたか…!!このまま人員が減るのは不味い何か無いのか!?)キョロキョロ!


 下位妖魔の叫びが聞こえた後[グレートモンド威力]のバズーカ砲は弦楽器の青年と剣豪の方向に向き始めた
それを見て術士は何か無いかと辺りを見渡し――――


 ブルー「…ハッ!アレだッ! スライム、エミリア!誰でもいい奴のバズーカ穴に入れろ![エナジーチェイン]!」バシュッ


  エナジーチェインの鎖『 不発に終わったpzkwXの[陽子ロケット弾] 』シュルシュルッ!ギュッ!
 ブルー「うおおおおぉぉぉぉぉ!!」ブゥンッ!


 宙に投げ飛ばされる陽子ロケット弾『 』ヒューン!

  スライム「(。・`ω・) ぶくっッッ!!」ヒュバッ!タッ―――ガツンッ!


 レオナルドを庇って前に飛び出たpzkwXが先程撃った[陽子ロケット弾]ッッ!!不発に終わり落ちてコロコロと転がった
その弾を思念の鎖で縛り上げる、魔術の熱でジジジジッと嫌な音を立てながら熔解しつつあるそれを直ぐ様
上方へと投げ飛ばす、一角獣と化したスライムは脚力を活かして一気に飛び出し
 首を大きく振って額の[角]を使い黒煙が立ち上り出した弾をフルスイング!!

 下位妖魔が今まさに剣豪達目掛けて[ハイパーバズーカ]のトリガーを引こうとした瞬間でバズーカの発射穴へと
[陽子ロケット弾]の弾がゴールインを決めた…っ!
769 :続き 火曜日か水曜日 [saga]:2021/09/12(日) 22:45:45.59 ID:lm+HfbVY0

 暴発。 発射口にすっぽりと入り込んだ不発弾と[ハイパーバズーカ]が砲塔内で誘爆を引き起こす
当然の事ながらバズーカ砲は使い物にならない状態となり、機体全体が炎上していく
 既に分かり切っていることだがこの兵器最大の利点は装甲のパージが可能ということだ
勢いよく燃え上がる砲塔、肩から腕まで燃え広がるシールドやガトリング機銃部分を脱ぎ捨てて芯の部分、搭乗者の居る
コックピットを守ろうという行動に移る

 "動地"から"威力"へと変わる際には巨大[Tウォーカー]の格納庫のエリアで一旦止まったが
今回もまた更に一つ上に階層へといつの間にやら昇っていたようだ燃え上がる衣を脱ぎ捨てたメタルボディは
侵入者達と対峙した時と比べて幾分も小さくなった



 第1層、我らが侵入者御一行が[ワカツ]の裂け目から[モンド基地]へと乗り込んできた際の出入り口がある階層まで
舞い戻ってきたのだ…っ!

 身を大きく振り乱しながら燃える鉄塊と化したパーツをばら撒き敵を近づかせないようにしながらもアームに掴まった
機動兵器は正に"人"と表現するに相応しいシンプルなデザインと言えよう
 4本脚でもなければ無骨な重装甲と火器の怪物でも無い、"[巨人]と変わらぬサイズのシンプルな人型兵器と呼べよう"



   ウィーン!


 赤爪のアームがこの階層にでもあったのか布に包まれた"何か"を持ってくる…っ!
何も着飾らない機動兵器はそれを手にして勢いよく布を取り払う



 …それはモンド氏がかの"悪の秘密結社"と秘密裏に取引を行った末に開発した超兵器[バスターランチャー]だッッ!



 神話の半人半馬や重装鎧の怪物と違った平凡な見た目に反して"神"の名を付けた形態…[グレートモンド超神]
神を超えし者という製作者の傲りなのか、それともこの形態に移行することで
初めてマニピュレータが反応できる先述の超兵器を使えるからついた名称なのか…

 身に余る力を手にして天狗と化した下位妖魔は[ECM]の力場を掻き消す[カウンターECM]を作動させる
神超えし者の力を誇示せんが為だけに隠し武器の一斉射出の準備を始めたのだ


      『見るがいいこれぞ超神の姿だぁーっ!!』


 リュート「うげっ!?なんじゃあのミサイルの数はぁ!?!?」


 超神は大の字になるように手足を広げて仰け反らせる、カシュっと音がして人で言う所の腿、胸部、腕肩、背部
あらゆる部分から小型のマイクロミサイルが顔を覗かせていた
 操縦席で下級妖魔は感極まった声を上げながら[全弾発射]を行使した…っ!


―――――ボッッボボボボッ、ボッゴォォォン!


 場に嵐が吹き荒れる、透き通る水の雨粒の代わりに先端が真っ赤な小型兵器が火の尾を引いて彼らを包囲し
それでいて着実に逃げ道を奪うように包囲網を狭めていく様に降り注ぐ

 巻きあがる黒煙、吹き上げる火の粉、メカに比べて脆弱な肉体の人間やモンスターは熱渦に絡めとられ身を焦がす
その様を巨大メカの操縦席という鉄の揺り籠から彼奴は見下ろしていた
 この禍中で自分だけが絶対的な安全を約束されているのだと、ほくそ笑みメインカメラで小虫の舞は如何ほどかと眺める


  リュート「ぐっ、あぁ"、おい、皆無事、か?」ジュゥゥゥ

  エミリア「…生きてはいる、けど、ね」ヨロッ…

 舞い踊る炎と渦巻く爆風に手を引かれて踊りたくもない円舞曲を踊らされた面々は全身ズタボロの満身創痍
回復手段の[マジカルヒール]を使えるスライムも直撃を受け失神していて[バックパック]持ちの自身が起こさねばと
焼け爛れた片足を引き摺ってリュートが仲間の元へと進んでいく


  リュート(他の3人は…)チラッ


 青年は辺りを見渡す、得物を杖代わりに片膝をついているがゲンは未だ辛うじて動けそうだが
倒れ伏したアニーと指先は動いているが身を起こせないらしいブルーの姿が目に入る
 彼らも助け起こしたいが人手が足りない、スライムを一刻も早く起こさなくては…っ!


 『仲間を助け起こそうったってそうはさせねーよォ!!』 


 [全弾発射]後の黒煙を煙幕代わりにスライムまで近づこうとしていた彼を妖魔は決して見逃さなかった…!
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2021/09/15(水) 03:06:06.19 ID:8s8sXWN20
さすがに強いなあ
それにしてもモンドさんはどう思うんだろうこれw
771 :続き 金曜日か土曜日 [saga]:2021/09/15(水) 23:51:06.51 ID:jcX2QZWl0

 超神は[バスターランチャー]を振り回して弦楽器の青年を叩き潰そうと試みる、どうやら鈍器としても優秀らしい
普通なら故障の原因となり得る乱雑な扱いでも問題ないと言いたげにランチャーで相手の脳髄を真夏のスイカ割りかと
思うような全力の振り下ろし―――[ブレインクラッシュ]で潰そうとする


 『はっはっはーっ!ぶっ潰れちまえぇぇぇぇぇぇぇ!!』ブンッ

  リュート「うっ!?」

 さしもの楽天家も今度ばかりは不味いと死を覚悟するのだが…っ!


   ゲン「っうらああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」ダッ!ドガッ
 リュート「うわぁっ!?」ドンッ、ゴロゴロ…!


 片膝をついていたゲンが悲鳴を上げる身体に鞭を打ち、死が降り注がんとする青年をその場から突き飛ばす
剣豪も青年も九死に一生を得るのだが、その行動が下位妖魔には気に障ったようだ


  『 ク ソ 死 に ぞ こ な い の オ ヤ ジ が ぁ ぁぁ !! さ っ さ と 死 ね や!!!』

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!!!


  ブルー「ぐっ……ハッ!なんだ、この熱量は!?あの砲身から…コレはいかん!!」ズズッ
  アニー「ぅく――――な、なに、あたし気を失って?…!? なにあのバカでかい光は!?」パチッ、バッ!?


 痛みから身を起こせない魔術師と飛んでいた意識が戻った女は剣豪に対して向けられた超兵器の輝きを見た
渦を巻く膨大な熱エネルギー、それこそ遠く離れている筈の二人にまで熱が伝わる程の異常数値
 誰がどう見ても一目で理解できた、アレは当たれば確実に死を招くと…!今までの攻撃とは次元が違い過ぎるッ!


 エミリア「――っ、ゲ、ンさん…!!」ヨロッ


 [バカラ]の[巨獣]戦で術士を救出したときの様に[スライディング]で横から掻っ攫って彼を救う事も考えたが
エミリアの脚は動かない、それは偏に負傷した足が思うように動かぬからか
あるいは超神の名に相応しい超破壊的エネルギーに委縮したからなのか…

 突き飛ばされ、そのまま転げたお陰で難を逃れ目標地点までの距離を一気に縮めた青年も当初の目的であるヒーラー
スライムを[最高傷薬]で助け起こし直ぐにゲンの方を見やる

                "もう駄目だ、間に合わない彼は助からない"

 誰しもがこの時同じ考えに至った。



                  【 [ バ ス タ ー ラ ン チ ャ ー ] 】   




 刹那、光が迸った

何もかもを飲み込む破壊衝動を体現した波動が渦を巻いて剣豪の身を包む、光芒に呑まれ…彼の、ゲンの精神は、途切れた



      リュート「っっ! ゲ ン さ ぁ ぁ ぁ ぁぁぁ ぁぁ ぁー―――ん!!!」


  エミリア「…そ、そんな」ガクッ
   アニー「嘘、嘘よ、こんなの…」
   ブルー「っ、ゲン……」グッ


 青年の悲痛な叫び、光が収まった後に黒焦げになった男が1人握りしめていた業物を手放して音もなく倒れる姿
それを見て膝から崩れ落ちる者、信じられないと言わんばかりに首を横に振り震える者
 短い間とは言え情が湧いていた男の最期に奥歯を噛みしめ怒りを覚えた者、…哀しみ、失意、否定、怒り、皆誰しもが
その順に心の奥から湧き上がる感情に困惑した、同時に本能で理解した

 仲間を失った悲しみと理解が追い付かないが故の虚無感、目の前の惨事への否定からソレは
徐々に引き起こした者への怒りに変わっていく、早い話が仇への復讐心だ


   アニー「アイツだけは許せない、絶対ぶちのめしてやる…っ」グッ!
   ブルー「…ああ、よかろうゲンの弔い合戦だ」キッ!

 青年と一角獣の回復を受けて立ち上がった仲間達が次々と闘志を燃やす、当初此処に来た目的なぞ最早どうでもいいッ
あるのは至ってシンプルな思考ッ!神を超えし者を自負する機動兵器に対する復讐心のみッッ!
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/09/16(木) 00:49:20.97 ID:FHuAMtVp0
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                  【解説 グレートモンド に関して】

 サガフロンティア、全7主人公(+リマスター版からヒューズ)の内リュート編に登場するラスボスの1人

 原作に置いてトリニティ政府への謀反を企てているモンド執政官が直接乗り込んで戦う大型機動兵器
 このラスボスは他主人公と違って各形態変化にHPが設定されていて、それを削り切ると次の形態に移行する特徴がある

 次作の卵にもその構造は継承されている、各形態にそれぞれHPがあり行動パターンも大きく変わる点まで

 HPを削り切ると鉄柱のアームがやってきてグレートモンドを回収、次の形態に変形した状態で戦線復帰してくる
 その際は足場の上昇中や実際に攻略してきたMAPの各階層で足場が停止したり地味に背景が細かい
 ちゃんとドックや[Tウォーカー]が映っている


 なお、グレートモンド戦は毎回5ターン経過毎に[敵の援護射撃]、[鉄柱攻撃]が発動するので戦闘不能者がいると
 LPが削られるので地味に鬱陶しい


・ グレートモンド驚天

・ グレートモンド動地

・ グレートモンド威力

・ グレートモンド超神

・ グレートモンド魂



 形態:驚天

 屈強な四つ足の巨大メカで一番最初に戦う形態
 最初の形態だけあって[バルカン]や[放射火炎]、[ミサイル]などそこまで脅威性は高くないのだが
 範囲攻撃の[超音波]また全体攻撃の[地響き]を行ってくるので油断のし過ぎも禁物

 [超音波]に関してはこの形態と"動地"までで以降はしてこないから早期に2形態倒すか精霊銀装備で完封すればいい
 [地響き]の方は驚天形態限定でしかやってこない技だから地耐性まで用意する必要は正直そこまでは要らない

 なお、死に際に[ECM]を使って場全体をミサイル無効状態にしてから動地形態に移行する


※ ……物凄く今更ですが、[ECM]はミサイル攻撃が必ずmissになる様にする効果であって
   陽子ロケット弾やナカジマ零式が飛べなくなるなんて仕様は無いです、当SSだけです


 形態:動地

 基本的には前の形態と変わらないが[ミサイル]や[バルカン]が無くなり、代わりに[ブレード]と[ふみつけ][突進]が追加
 そして[スプレッドブラスター]を撃ってくるため若干火力は上がっている脅威性もまだ高くはない為、十分に対処可能


 形態:威力

 ここから2足歩行の兵器に変化、再び[バルカン]をしてくるようになり
 新たに[レールガン]攻撃と[ハイパーバズーカ]が追加されるのだが正直に言うとこの形態も十分鍛えてれば脅威ではない


 形態:超神

 長い前座が終わって漸く本番に入った超神形態だが、これで特筆すべきは4ターンに一回
 必ず[バスターランチャー]を撃つ行動パターンが組み込まれていることだろう


 ラスボス固有の所謂、超必殺…グレートモンドに該当するのが[バスターランチャー]であり
 恐ろしい事に威力が 脅 威 の 4 桁 ダ メ ー ジ なのである!


 サガフロのシステム上、主人公達はHP999でカンストなので4桁ダメージなんて喰らったら確実に死ぬ

 防御力無視攻撃なのでいくらDEF<防御力>を装備品で高めても意味はない
 戦闘コマンドの防御でダメージを軽減はできるが普通に痛い
 また直線状の敵を巻き込むライン状の範囲攻撃なので対象キャラの近く(真横)、そして前後に居るキャラも
 巻き添えでダメージを受ける、流石に余波を受けるキャラまで4桁ダメージとまでは行かないが

 超神形態は初手で必ず[カウンターECM]を発動させて自身が最初の形態で発動させた[ECM]を掻き消し2ターン目で
 [全弾発射]を行ってくる、その後は[ヒートスマッシュ]、[ブレインクラッシュ]の打撃系を初め
 [突進]と[スプレッドブラスター]…それから[ビット]を飛ばしての攻撃が主となる

 これを撃破したら最期はいよいよ[グレートモンド魂]形態と戦えるのである

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773 :続き、明日か明後日 [saga]:2021/09/18(土) 23:08:51.43 ID:mupUKFgE0

    リュート「ブ、ブルー待ってくれ!」ガシッ

 術士が最大攻撃術の詠唱に入ろうとした時に声を上げて腕裾を掴む男がいた、彼の方を振り向けば彼は鞄の中身を
引っ繰り返した様にぶちまけて倒れたまま目覚めないゲンの身体を止血すべく包帯を巻いて医薬品の注射器を使用していた


   リュート「俺はまだ諦めちゃいねぇ!ゲンさんに[活力のルーン]を…[活力のルーン]を使ってくれよぉ!」

    ブルー「……その[最高傷薬]を注入しても意識が戻らんというのなら、…つまりは"そういうこと"だぞ」


 言外に、もう手遅れだとブルーは告げる

 例え人であれ妖魔であれ、モンスターにもメカのコアにだって生命力<LP>というモノが存在する
生きとし生ける者全てに存在する魂の輝きそのものだ
 魂が尽きた時、その者はこの世を去る…当たり前すぎる自然の摂理といえよう


 目を一向に覚ます気配の無い彼の意識は黄泉に居るのだと…っ!蒼き魔術師は「ゲンは死んだ」という言葉こそ使わない
だが二度と目覚めさせることはできないと、そう口にしたのだ…!!


 リュート「…ッッ!」グッ
 リュート「…。」


 リュート「…薬が回るのが遅いだけってこともあるさ[傷薬]で気絶したお前ら起こす時だって直ぐに目覚めないんだぜ」

 リュート「個人差だってあるかもしれねぇ………ブルー、頼むよ」


  ブルー「……。」


  ブルー「万物の慈母神の名の元に生命を繋げし印を刻み錫―――[活力のルーン]」フォン!フォン!

 リュート「…!ブルーっ!」


  ブルー「スライム!貴様はコイツ等に付き添ってやれ、お前がコイツ等を守るんだ!」
 スライム「Σ(・ω・ノ)ノ! ぶっ、ぶく!?」


  ブルー「…。」スッ

 蒼き魔術師は途切れ掛けの生命の線と線を繋ぐ守護印を剣豪に掛けて一角獣も護衛につけさせた
それから――――無言でリュートの[バックパック]を拾い担ぎ上げる


   ブルー「貴様は戦うな、ここに居ろ…………今の貴様では足手まといだ」フイッ
  リュート「ぅ…」


 声に感情は乗っていなかった、怒りでも呆れでも哀れみも失望でも何も無い、無機質な声で告げられた戦力外通知
いや…もしかしたら敢えて声に感情を乗せない様にしていたのかもしれない

 床に散らばった幾つかの医薬品をかき集めるでもなくそのままそこに残して大分軽くなった[バックパック]を背負い
蒼の術士はそのまま苦戦を強いられているグラディウス組の元へと走り出す


   ブルー(…チッ、俺もヤキが回ったか!?)タッタッタッ!


 誰がどう見ても助かる見込みなどない、だというのに自分はなんなんだ!?
1分1秒を争うこの重要な局面で無駄に時間と術力を浪費して[活力のルーン]を刻み、あまつさえ貴重な戦力と
戦線維持のヒーラーであるスライムを護衛につけさせるなどと…っ!!全滅すればゲンが身を挺して仲間を救った事も
その仇を討つ者もいなくなり全ては無意味になるというのに…ッ!


 この時、術士はまだ気付いていなかった…。


 自分でさえ非効率的と思ったのに何故か剣豪へのルーン付与やスライムを残した事への戸惑いと
 全滅すれば"仲間の仇を討つ者が居なくなる"という目的自体が祖国を護る事でも自身の生還でもない事実…







 今この瞬間だけは目の前の機動兵器を放っておけば祖国のキングダムにも影響が出る事や生きてルージュと出会って
決闘を果たすという己の使命でさえも忘れて、ただ純粋に"仲間"の事だけを行動原理にして動いている自分自身に…っ!
774 :次 金曜日か土曜日 [saga]:2021/09/20(月) 09:24:17.03 ID:NvYLWv8a0
―――
――


 背部からの[スプレッドブラスター]と射出された[ビット]によるビーム攻撃でグラディウス組を追い込んでいく
青空色の輝きが拡散からの収束へ、不規則な機動で死角に回り緑色の光線を撃ち出す子機
 厄介な2色の光条は流れては身を掠め、時には躱しきれずに肌を焦がしていく


  ビット機×4『 』ビュンッ!ビュンッ!
  エミリア肩『』バジュゥゥッ!


  エミリア「あぁっ!?」
   アニー「エミリアっ!――ぐっ!?このっ」サッ、ビュォッ


 左肩を焼かれて苦悶の表情を浮かべた年上の後輩に声を掛けながら黄金髪の女は飛んできた光を躱し様に[飛燕剣]を放つ
ビット機を1基潰したがまだ3基残っている、踊る様にクルクルと獲物を取り囲むハイエナの様にグルグルと宙を舞っている


    ブルー「爆ぜろ![インプロージョン]」


  ビット機×2『』ドゴォォン!


   アニー「来るのが遅い!」
   ブルー「わかっている!!――エミリア、使え!」ブンッ


 一気に2基まとめて[ビット]を破壊した術士はリュートから取り上げた[バックパック]から[最高傷薬]を取り出して
被弾の多いブロンドの女に投げ渡す、それを受け取った相手は直ぐ様患部に使って残りの1基を撃ち落とした
 止血や鎮痛だけでなく気付け薬としても効能があるこのご時世の回復薬だ、痛みで意識が霞みかけていたが集中力を
取り戻してからの射撃はビット機が光線を放つよりも先に核の部分を撃ち抜く


  エミリア「リュートは!?」

   ブルー「奴は来ない、それよりも前に集中しろ来るぞッ!」


 来ない仲間の事を問う女に対してリュートは来ないとだけ返し、目の前の機動兵器に集中しろと叫ぶ
言われて顔を向ければ彼奴の手にはこの宇宙開拓時世に開発された[最高傷薬]でも目覚めぬ程の大怪我を
ゲンに負わせたあの忌々しい[バスターランチャー]が向けられていたッッ

 その威力を目の当たりにしたが故に彼女も当然身構える…!しかし相手はそれで此方を狙い撃つでもなく天井へ向ける


  アニー(撃ってこない…?)


カシュッ!
ブシュー――――ッ!!


 天へとランチャーの砲身を向けた[グレートモンド超神]は排莢式ボルトアクションでもする様に手を動かす
するとどうだろう、夥しい程の熱が砲から抜けていくではないか
 湿度と気温の高い真夏日にアスファルト上で見かける陽炎現象が発生していることから
その熱量がとんでもない物だというのは解る、光の屈折を曲げて景色がゆらゆらと揺れて見える程の超高温の空気


   ブルー(あの兵器…威力が高いがその反動で熱が篭る、だから排熱が必要で連発で撃てないということなのか?)


 1発撃つ度に排熱処理をしなければ砲身自体に熱が溜まり続け暴発<コッキングオフ>を引き起こすのではないか
そう考えれば自ずと相手の隙、反撃のチャンスは見えてくると術士は考える


      『休む暇なんて与えねぇ、コイツを喰らいやがれ!』


 ランチャーの排熱をそのままに燃える様に熱い砲身を機動兵器は振り回す、それは[巨人]が使っていた
[ヒートスマッシュ]と同じ威力と言えよう



       「させませーん!喰らいやがりなさーい[神威クラッシュ]――!!」ビュオォッ!ドッコォォォッ

       『ぐおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!?』グラッ


 超神が[ヒートスマッシュ]を叩き込む為に振り上げた右腕に何かが突っ込んでくる
捨て身の一撃を放ったのは…っ!
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/09/22(水) 06:43:56.64 ID:tpAm7SOO0
神威クラッシュすき
776 :>>1 [saga]:2021/09/25(土) 21:54:52.49 ID:Tq8HJ+On0
すいません、続きは明日に変更で
777 :続き 火曜日か水曜日 [saga]:2021/09/26(日) 23:46:43.72 ID:nv2r/qlS0

 機動兵器に捨て身の一撃を放ったのは古めかしい戦闘機に似たシルエットの仲間、ナカジマ零式だったのだ…っ!
侵入者に対して死の裁きを行う瞬間に待ったを掛けた闖入者の姿に敵も味方も眼を見開く


      ブルー「零式、貴様は墜ちて行った筈―――」

 特殊工作車共々に[鉄柱攻撃]の餌食となり盤上からつまみ出された、確かに彼は飛行能力を有したメカではある
ならば自力で戻ってきたと言われても不思議ではないが、今彼らが戦っている可動式の足場はそれなりの速度で上昇
最下層から一気に入口付近まで浮上して更に右だの左だのとフロア内を忙しなく動いているのだ

 目標地点自体が常に動いているし速度も相当にあると来た
零式が如何に飛べるとは言えこうも忙しなく動く足場の行き先を事前に特定して合流できた説明が付かない

 それと全く同じ考えに至っているのか、超神も戦線復帰を果たした敵の一味に動揺を隠せないでいた


   ナカジマ零式「おーっと!私だけじゃあ〜りませんよ!」

 墜ちた筈だ、そう問いを投げた蒼き魔術師の言葉を遮る様に紡がれる陽気な機械のメッセージは彼らに更なる驚きを齎す


 ヒューン!

 ヒューン!
 ヒューン!
 ヒューン!
 ヒューン!!!!!

    エミリア「っ!?何アレ!?なんか小型の特殊工作車みたいなのが大量に降ってきたんだけど!?」

 真上からいっそ気持ち悪いと感じられる程の集団が…っ!小さな蟻、あるいは子蜘蛛の大群か
わらわらと"特殊工作車瓜二つの小型メカ"が大量に降り注いでくるではないかッ!
 小さな機械軍は超神の身体に激突や武器を持った隠し腕で攻撃をしていく、蜂の巣を落として
蜂に集られた様な状態と化した超神は手やランチャーを動かし振り払おうとするが物量的にそれは不可能で


   小型工作車『 』…ジジジッ!ボッコォン!


  『ぐおおおおおおぉぉっっ!?爆発しただとぉぉぉ…ハッ!わかったぞこれは[どっきりナイツ]か!?!?』


 ―――[どっきりナイツ]、メカのプログラムの一つであり内蔵された超小型メカが大量に飛び出して自爆特攻していく
対空型の戦闘攻撃の手段である、夥しい量の小型メカが一斉に火を噴き始め、さしもの超神も身体からは煙が噴き出す
 そして打ち止めと謂わんばかりに最後にもう1体、隠し腕の剣を振り回しながら降ってくる

 小型メカではない"本物の特殊工作車"が。


 特殊工作車「やられたからにはやり返させてもらいますよ![多段切り]」ズババババババッ!

 ナカジマ零式はまだ飛べるメカだからと言われれば納得も行く、そしていよいよ以て彼の登場で混乱が深まった
飛べもしない工作車がどうやって下の階層から上層のここまで…いや宙を縦横無尽に動く戦場に降りたてたのか
 pzkwX程ではないにしろ中々に重量のある身だ、零式に跨って飛んできましたなんて話じゃ辻褄が合わない
一応運搬自体はできるがメカ1機分の重し付きじゃ速度が出ない上に短時間飛行しかできない

 普通に考えてここまで来れる筈が無い。


                   「彼だけじゃないさ!」


 真上から2機のメカが同時に落ちてくる、どちらも[剣闘マスタリー]にプログラミングされた
達人の動きを模した剣技を仕掛けながら

 レオナルドが超神の右肩から左脇腹に掛けて、T-260が超神の左肩から右脇腹に掛けて
お互いにクロスしてXの字になるように切り付けていくッ!


  レオナルド「やっほー!驚いたかい?名付けて二人技でエックス切りなんてどうかな!なんてね」

    アニー「レオナルドさんまで一体どうやって!?ってか上から降ってきた!?」

  レオナルド「あー…説明するとちょ〜っと厄介なんだけどね、 "ある人" に助けられたっていうか、ね…」

  レオナルド「ゆっくり説明したいとこだけどまずはアレを倒さないとだね」


 魔術師は彼らが"上から落ちてきた"ことから天井を見上げた、既に足場が通り過ぎた地点だが天井の通気口ダクトが
破壊されて大穴が開いているのを目視した、丁度メカか何かがぶち破って出てきた様なサイズの大穴が

   T-260「ゲン様…は…?」キョロキョロ

778 :続き金曜日か土曜日 [saga]:2021/09/29(水) 23:38:54.53 ID:qMAP0Hrh0

 T-260は幾人かの仲間がいないことに気が付き首を回す
そして丸いレンズ越しに焼けたゲンの姿と彼に対して処置を行うリュートとすぐ傍のスライムの姿を認識した


 T-260「ゲン様」

 アニー「…そこのデカブツにやられちまったのさ」



 T-260「……。」

 T-260「優先任務を変更、優先順位度C級、目の前の搭乗型メカを破壊せよ」クルッ


 結論を出すのに心なしか、ほんの僅かな間があった
そして倒れた仲間に背を向けて丸いレンズは超神を見据え、両腕の得物を構えた

―――
――


   リュート「くそっ…!諦めねぇぞ俺は!」ゴソゴソ
   スライム「(;´・ω・) ぶくぶく!」パァァァァ…!キラキラ


 床に散乱した医療道具を剣豪に使い続ける、傍らのスライムもまた奇跡の輝きをゲンに浴びせ続けた
然し、剣豪は目を覚ます気配は一行に無い…


  リュート「ゲンさん…帰ってきてくれよ、この基地から無事に出たら酒盛りをするからさ…」

  リュート「俺も精一杯盛り上げるから、仕事明けの一杯の音頭取るのはアンタみたいな人じゃないと駄目なんだ」

  リュート「だから…頼むよゲンさんッ」

――――――
―――――
―――
――




    - ……あ"? ここ何処だ、俺は今何してんだ? -

    - 確かでけぇ機械の攻撃を喰らって…俺は -




   「おお!ゲンの親父じゃねぇか、こんな所で寝そべって悪酔いでもしたかよ!」



   ゲン「……あ"?」パチッ



   「あー、ゲンのおっちゃんがまた床で寝てるよ!おっかぁが言ってただ!地べたで寝てると牛になるって!」


   ゲン「……ぁ」ムクッ、キョロキョロ…



ワイワイ、ガヤガヤ



  「さぁさぁ、寄ってらっしゃい!団子はいかがかねー!何処の"惑星<リージョン>"にも負けない[ワカツ]の団子だよ」

  「ガハハ!今度の剣術大会誰が優勝するか賭けねーか!俺はセキシュウサイだと思うぜ」
  「やめとけ、やめとけ!おめぇいつも賭け外すじゃねっかよ〜」

  「最近は剣聖の間に挑む奴もめっきり減っただなぁ、オラ達の若い頃はもっと居ったにのぅ」


   ゲン「――」


 剣豪はその光景に開いた口が塞がらなくなった、まだぼんやりとする意識の中、彼が見たのは在りし日の――
まだ滅ぶ前の[ワカツ]そのものだったからだ、女も子供も老人も顔見知りのダチも誰も彼もが生きて動いていたのだから
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/02(土) 23:55:55.43 ID:VoT6ejD20

 人間自分が理解できる範疇から脱した状況に陥ると思考は止まるという
何が起きているのか状況を把握しようとして一気に多くのモノを見て聞いて考えて、その結果の情報過多で整理仕切れない
 滅んだ筈の故郷があの頃の儘に残っていて、骸になった知人達をこの目で確かに見た

 だが、確かに彼は目にしているのだ嘗てあった筈の何でもない、けれど幸せないつもの日常風景を


  「おうおう、サナダのゲンよ!おめぇ何昼間っから幽霊でも見たようなツラしてんだぁ?」
  「どうせ昨日も行きつけの店で飲んでたんだろうよ、酒も程々にしとけよな身内にまたどやされっぞ」


   ゲン「あ、あぁ…わりぃ」



 死んだはずの人間だ、きっとこれは本物ではない、まやかしの類だ。―――だから耳を傾ける必要もない


 そう頭の片隅では考えていたのに糞真面目に幻相手に一言詫びてしまった
…それがあまりにも"生前と変わらぬ自然なしぐさだったから"、生きてる人間と何一つ変わらなかったから




 生前の、本当に生きてる人間と、何一つとして、変わらなかった、から…




    「なぁゲン、お前は今度の剣術大会に出るのか?今年は大名も天守閣から降りてきて観戦するんだぜ」
    「今年は中々の強者揃いだからお前が出てくれりゃあ更に見所も増すってもんさ」


  ゲン「……」

  ゲン「俺ぁ夢でも見てんのか…」


    「はぁ?」
    「何言ってんだお前、まだ酔いが残ってんのか?」


  ゲン「っ![ワカツ]はもうねぇんだ!トリニティに滅ぼされて俺は…俺はなぁ!!!」


    「?? あー、お前さん本当大丈夫か?いくらなんでも悪酔いしすぎだって、な?」
    「どんな夢みてたかしらねぇけど、深酒はやめとけよな〜」



 友人二人は変なモノでも見たと眉を顰めて大通りへと歩いて行く、後には剣豪だけが残される



    ゲン「……"夢"?」

    ゲン「……ははっ、これはアレか、そうか…」





    ゲン「人間が仏さんになる前に見る走馬灯って奴か、いや、それともここがあの世ってことかな」



 それは護るべき風土も家族も、忠義を誓っていた主君も全てを失って未来に絶望し酒で世界を暈すしかできなかった男に
どこまでも優しい甘美な世界だった

 甘美すぎて、吐き気すら込み上げてくる甘い美毒だ






    ゲン「……けど、まぁ」

    ゲン「なんだ、その………これも、これで悪くねぇ、か」フゥ


 剣豪は静かに目を閉じて、息を吐き出す
        ―――独り生き延びてこれまで貯め込んだ全ての苦悩を吐き出す様に、美毒の味を肺一杯に取り込む為に
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/02(土) 23:56:51.53 ID:VoT6ejD20


  "これでいいじゃないか"
  "もう此処が自分の終着点でも良いじゃないか"
  "疲れた"




  "自分も同胞、友、家族の元へやっと逝ける"
  "もう縛られる必要も無い"
  "やっと終われるんだ"





 自分はあの一撃で死んだのだ、戦いの果てに殉職を果たしたならば潔く死を受け止めるのもまた剣士としての筋だろう

 自分にこれから先も独りで亡んだ故郷の人間の想いを背負って生きていく必要性があるのか、もう疲れてしまったよ

 自分も同胞達と共に安らかに眠れる、この夢の中で彼らとまた幸せな夢を見続けていく事を誰に咎められようか




 妥協、諦め、願望、望み―――剣豪の中でいくつもの考えが、いくつもの感情が湧いて出ては渦を巻いていく
人間という生き物として誰しもが思う感情、誰しもが一度はそうなる考え方

 茨の道よりも楽な道を通れるのならば、楽な方へ楽な方へと流されていきたいと思う心


 誰だって苦しい思いや辛い経験はしたくない、目の前に恐ろしい試練が待ち構えていたとして避けて通れるなら
逃げ出そうとあらゆる手を尽くすことだろう

 感情の生き物だからこその行為だ、それを咎める権利がこの世の何物にあるというのだろうか?あるとすれば神であろう








   ゲン「…」スゥ

   ゲン「おーい!待てよ!待ってくれよ!お前ら、剣術大会の参加だろ!だったらよぉ――――」タッタッタ…!



 懐かしい故郷の匂い、自分が好きだった土に香り、自分が好きだった木造の建物の匂い、自分が好きだった風の肌触り
自分が好きだった屋台の焼き物の匂い、自分が好きだった街並み、自分がなにより愛してやまなかった同郷の仲間達

 大きく息を吸い込んで、剣豪は……[ワカツ]のゲンは素朴で、人情に溢れていた人々の雑踏の中へ入ろうと駆けだした
























                    "それでいいのか?"




 不意に、問いかけるような自分の声が頭の中に浮かんできた。
781 :続き明日か明後日 [saga]:2021/10/02(土) 23:59:01.30 ID:VoT6ejD20


 幾ら振り返っても、望んでも、何を犠牲にしても戻らない時間の中に、まやかしの希望に駆けだそうとした脚は止まった


  ゲン「―――」ピタッ


   「んあ?なんだサナダの…参加する気になったのかよ」
   「やっと酔いが醒めたのか? 皆こっち来いよ!朗報だぞ!ゲンの野郎が大会に出るってよ!面白くなってきたぜ」

   「本当かいゲンさん、なら精をつけてもらわなくっちゃね!ウチの団子サービスするよ!」

   「ゲンの親父がか!?こりゃあ今年の大会は誰が優勝すっかわかんねぇな!」ダハハ!
   「こいつぁ良い!賭けも熱くなるってもんだ!まっ!勝つのはセキシュウサイだろうがな!」
   「何言ってんだい、ゲンのおっちゃんの方が強いに決まってらぁ」

   「なら坊主はゲンが勝つって思うだな?」

   「うんにゃ、ソウジ兄ちゃんが優勝すると思う」

   「そこはゲンさんが優勝っていうとこだろ〜が!」


 アハハハ! ワイワイ! ガヤガヤ!


 心地の良い声が聞こえてくる、居心地のいい騒がしさが






                   -くそっ…!諦めねぇぞ俺は-

        -ゲンさん…帰ってきてくれよ、この基地から無事に出たら酒盛りをするからさ…-

     -俺も精一杯盛り上げるから、仕事明けの一杯の音頭取るのはアンタみたいな人じゃないと駄目なんだ-





 自分を呼ぶ声が聞こえる、泣きそうで必死で、それでいて…自分を、剣豪に帰ってきてもうらことを諦めない声が



  ゲン「…。」
  ゲン「俺はな、酒が好きなんだ」ボソッ

  ゲン「酒に酔っている時は嫌な事も辛い事も全部忘れられてよ、世界もまともに視ずに済めたからよ…」




    「どうしたんだよ?そんなとこで立ち止まって、早く俺達の所に来いよ」
    「…ゲンのおっちゃん?」キョトン
    「ちょっとゲンさんどうしたいんだい?ウチの店近いからお冷でも持ってくるかい?」




  ゲン「昔はそりゃあ純粋に酔うこと自体が楽しかった、でもな何時しか"逃げる"手段になってたんだなって気づいた」

  ゲン「今、俺が見てるコレも酔ってる時に見てる景色と同じでただ逃げてるだけ、いや…違う!」


  ゲン「目を背け続けただけなんだって、そうやって誤魔化してたからすぐ近くで輝いてた奴らさえ見てなかったのさ」



   - ゲンさん! T-260Gの事をお願い! T-260G!お前もゲンさんと協力するんだぞ隊長命令だぞ! -
 - ゲンさんお酒は飲んじゃ駄目よ!体に悪いんだからね! それとタイムのことを助けてくれてありがとうっ!-




 辺境の土地で顔見知りになった住人達の顔が浮かんでくる、リージョン界を彷徨う様に渡り歩き、そして迷い辿り着いた
辺境の"惑星<リージョン>"にある村の気の良い連中や子供達の顔だ

 よそ者の自分に対しても何ら変わりなく接して、いつしか居心地がよくなった場所、身内も誰も居ない自分を案ずる人達
782 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/10/03(日) 05:44:49.02 ID:pVW22lmy0
在りし日のワカツにLP1っぽい人が
783 :続き明日か明後日 [saga]:2021/10/04(月) 04:11:04.77 ID:dcYj9DGE0

 帰れる家なんて無いし、帰りを待っていてくれる家族も友も何も無い
自分には行く当てだって存在しない、永遠の根無し草になったもんだと彼は思っていた


 知り合いも何も無く自分という人間を知る者もいないのならば、それはしぶとく現世に揺蕩う亡霊と変わらない


 居ても居なくても誰も困らない人間、誰に悟られるでもなく何処ぞの街の路地裏なりで行き倒れて死んでいても
身元不明の死体がそこにあったとされるだけで誰かの生活や人間関係に何ら影響を及ぼしもしない
 ある意味に置いてゲンという人物は生きてなどいなかった
月並みな言葉だが人間明日は明日の風が吹く、だから辛い目に遭っても酷い事件があって前を向いて行きましょうねと
酒好きでどんちゃん騒ぎが好きな酔っ払いだからと表面上しか知らん者からすればもう過去の事を割り切って
彼は前向きに生きているのだろうと勘違いしがちだが実はそうじゃない

 酒好きなのは事実だが、自分を見失う程に酒で溺れるているのは"今"を直視できないから

 何度でも言うが、彼にとっての酒は現実逃避の手段で酔いながらも
「こうやって生き延びていればいつかは復讐の機会が来るかもしれない」そんな牙をずっと忘れちゃいないんだ



 前を向いているようでその実は後ろばかりを見ていた、それがゲンという人物でもあるのだ



 本当は彼が気が付いていなかっただけで、"彼にはもう彼自身を案じてくれる身内や帰れる場所はある"のだ

 何気なく知り合った辺境の子供と一言二言話して、顔を覚え名前を記憶できたならその時点でそれは赤の他人じゃないし
行き着けの店でいつもの奴を飲ませてくれといえば"いつもの"でオーダーが通る
 それだって見かたによっては新しく出来た帰ってこれる場所とも言える、自分という存在を相手が認識して覚えてくれた





 帰れる居場所も友人や身内の様に思える者達との間で築く人間関係も結局の所、時と共に新たに構築されていく物なのだ




 亡びて消え去っても"人"が生きている以上はその人が新たな土地へと旅立ち、名も知らぬ誰かと出会い言葉を交わし
やがては知らない人じゃなくて知っている人へと変わっていく


 知り合いに死んで欲しいなんて思う人間なんざこの世に存在しない、仲の良かった奴なら尚更の事だ




   ゲン「俺も、できる事ならお前達と共に逝きたいさ」

   ゲン「でもよ、"あの世<そっち>"に行かず"この世<こっち>"へ俺に帰ってきて欲しいって奴が居るんだ」

   ゲン「だからよ…すまねぇ、まだ俺はお前達と逝きていくことはできねぇ、俺はまだあいつ等と生きていくさ」



    「………。」
    「………。」
    「………。」


    『それが其方の答えだな』カッ!!


   ゲン「何!?うっ、眩しい!?」


 同郷の仲間達の背から突如として強い光が射す、ゲンはその後光に思わず目を瞑る
目が眩むような強い光と聞いたことの無い声色に警戒心を一層強め、すぐ動ける様に身構えながら光が収まるのを待った


   ゲン「―――!なっ、なん、だ…ここは"剣神の間"だと…っ!?」キョロキョロ


 滅亡する前の[ワカツ]の城下町に居たと思えばボロボロになった空襲後の、つい最近訪れたばかりの剣神の間に
彼は立っていたのだ…!そして、退魔の赤紐で封印を施された"剣神"もまたそこに居た
 矢も槍も突き刺さっていない剣神がジッと剣豪の顔を見つめていた


―――
――
784 :続き明日か明後日 [saga]:2021/10/06(水) 14:52:31.85 ID:A1VbM/RG0

  ドガガガガガガッ!ズバァッ――バチバチバチィ


    『ぐおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ…っ!?!?!? ば、バカな…俺は"力"を手に入れたんだぞォ!?』

  『神にさえ手が届く力をッ!超神のパワーを持った!!だのに、何故だ!?こんな虫けらどもにぃー―――ッッ!』


 操縦室で[ワンダードギー]は吼えた、彼の駆る超神は世界を蹂躙して支配できる力があるといっても過言ではなかった
だが、どれほど強い力であっても"個"であってはできることに限りがあるのだ
 如何に優れた英雄であれど多くの兵の連携の前には倒れ伏す可能性がある、いつかの時代の何処かの誰かが残した名言だ
自身を弾道に見立てた特攻アタックとプログラムに合わせた剣の達人特有の動きで切り刻むメカ集団
そこに元モデルの跳弾が出来たばかりの切り傷や特攻での破損部分に的確に撃ち込まれ
 仲間達が詠唱時間を稼いだ事で唱えられた[ヴァーミリオンサンズ]が機体の全身に突き刺さる

 トドメの締めとばかりに武器を手渡されたアニーの[デッドエンド]が超神の頭を叩き切った


 その結果が、今火花を散らして全身が崩れ始めた超神の姿である



 操縦席の計器やモニターも火を噴き出し、スパーク走る操縦席内は嫌でも敗色を搭乗者に知らせる
神にさえも手が届く武力を手に天狗になって居た野心家は認めたく無かった、自分は絶大な力を手中に収めても
何一つ成し得ない、何者にさえも勝利できない屑で終わるのか!?と


 パキッ!硝子に罅が入った様な嫌な音がしてまだ生き残っている液晶画面以外に光源が無い操縦室に光が僅かに射す
外がどれだけ炎上してもどれだけの兵器を撃ち込まれても搭乗者だけは絶対の安全を確約するシェルターとして機能する
コックピットに亀裂が入ったのだ…ッ!


 ここに来て鋼鉄の揺り籠に護られてきた彼は戦慄する


 機動兵器の最大の欠点はそれを動かす搭乗者本人に他ならない、如何に強固な鎧を纏っても鎧の中に居る人物が死ねば
鎧はただの動かぬ鉄塊にしかならない

 殻を破られた後に残るのは弱点剥き出しになった兵器への無慈悲な飽和攻撃だけである



   『あ、あぁぁ…あああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!』


 取り乱しスパーク飛び交う室内で操縦桿を握る、腕が焼けようと構うものかと[バスターランチャー]を構える
先程から撃てども撃てども頑丈さが売りのメカ達が前に立ちはだかり影に隠れる人間組を致死に至らすことができない
極大波動砲のエネルギーで後ろに隠れる人間達を焼くことは確かに出来てはいるがそれでも威力を殺されるのだ
 そして人間と違ってメカは倒れても直ぐに修理されて立ち上がる

 盤上から追い払った厄介極まりない不死身の戦士達が戻ってきた辺りで完全に戦局は変わった



  『クソッ、クソ、クソぉぉぉぉぉぉ………ぉ、ぉ、お?…おっ?』カチカチカチ



 ……[バスターランチャー]が機動しない。


 半狂乱状態でトリガーを引くも、頼みの兵装が稼働しない
否、ランチャーを持った腕が動いていないのだ…ッ!――――それに気が付いたと同時に金属が軋む嫌な音が聞こえて
"腕が完全に落ちた"、言葉通り落ちた、だらしなくブランと腕を下すとかそうじゃくて、肩の部分から壊れて落下した

 次にズシンと機体全身が沈んだ、遊園地の絶叫系のアトラクションで身体少しだけ浮いたと思えば急降下で贓物が上下に
振り回される感覚を下位妖魔は味わった

 脚が完全に外れたのだ。


 肩から先も腰より下の半身も完全なくなり胴を護る装甲さえも壊れて、本当にマシンの骨組みだけ…
不格好な鉄の丸太と化した胴体の上部に辛うじてまだ胸部装甲が残っている操縦室と[デッドエンド]の一撃で
頭部のフェイス装甲が砕け散りツインアイ式のカメラ等が剥き出しになった顔が露わになった姿だけだ

 もう超神でも何でもない、憐れなマッチ棒が一本辛うじてそこにあるだけである


  『〜〜〜〜〜〜っ、俺は…俺様は力を手にいれたんだ…俺は負けないんだ、俺が負ける訳がねぇぇぇんだ!!!』


 ……骨組みだけの胴体に頭でっかち、もう誇れる物も何もない搭乗者そのものを体現したような姿
借り物の力を、いや盗んだ力をさも自身の物の様に振り翳した男のメッキは剥がれ等身大の、"魂"だけの姿となった
785 :続き明日か明後日 [saga]:2021/10/08(金) 14:55:10.05 ID:zZLdT9J10

 直後、これまでで一層激しい[敵の援護射撃]が飛んでくる
常に上方目掛けて移動し続けた足場はブルー等が一度も足を踏み入れたことの無い区画へと来ていた
彼らの潜入経路には無かった[モンド基地]の兵器カタパルトエリアだ

 考えてみればそうなのだが、これほどの巨体を誇る機動兵器は普通に侵入者一行が通ってきたような[ワカツ]の亀裂から
出入りすることなど不可能だ
 どこかに基地内から天井の隔壁を開いて出撃する為の場所はあって然るべきなのだ


そんな要所だからか、此処には他の階層以上に天井に取り付けられた機銃が多くみられる


 恐らくは何らかの理由で敵に基地が発見されて地上と地下基地とを隔てるシャッター隔壁を壊されても侵入を阻む為
その為に集中して火線が敷かれるようになっているのだろう



 これまでに例を見ない激しい[敵の援護射撃]で手を出し切れない合間に壊れた[グレートモンド超神]は鉄柱アームにて
運搬され、そして――――何とも言えない姿で帰ってきた







         一言で形容するならば"不格好な蜻蛉<トンボ>"、それがしっくり来る言葉だった




 細長い棒状の胴体から四本の鉄パイプかと思いたくなるこれまた細長い手足…いや、手足なのかさえ分からない
先端にそれぞれ向かって右下から[ハイパーバズーカ]の砲門、左下に[バルカン]と[レールガン]を切り替えて使える機銃
右上と左上に向かって伸びてる細い腕の先には反重力装置が付いていてそれでバランスを取りながら飛んでいる

 4つ腕をバタバタさせて必死に重心を取り飛ぶ様は蜻蛉の羽を連想させる、見苦しくも何処か必死な姿
その異常なまでの執念深さに憐みよりも恐ろしささえ覚える


 不格好な蜻蛉<トンボ>は胴体に[バスターランチャー]を括りつけて直接エネルギー炉と連結させ超神であった時よりも
早くエネルギーの充填を可能にしてた、脅威の波動砲はこれまで以上に早いスパンで撃ち出してくることだろう



    『はぁはぁ…てめぇら、よくもやってくれたな、俺の、俺の野望を…!!!』


 秘密兵器はものの見事にボロボロ、仮にこの戦闘で下位妖魔が彼らに打ち勝ったとしてこれを元通りに復元するのに
どれだけの資源物資と資金が必要になるのか、超神形態まで残っていたならまだしも完全にただの骨組み状態になった今
復元というよりほとんどゼロからの作り直しに近い

 元々が浮浪者でしかなかった下位妖魔に資金も人材の伝手も無い、彼の野心は泡沫と化したような物だった



 細長い胴体の先端についていた胸部装甲の左右に取り付いている2門の反重力砲から橙色と藍色の光が灯る
二色の光が螺旋状に交差して伸びていく[反重力クラッシャー]が援護射撃から人間組の身を護る様に固まっていたメカ達に
炸裂し彼らを吹き飛ばす

 半ば自棄にでもなっているのか、[レールガン]に[ハイパーバズーカ]を手あたり次第に乱射していく



    エミリア「ぐっ、こんなめちゃくちゃな攻撃…っ!」


 正確さも何もあったもんじゃない無茶苦茶な攻撃、それ自体を避けるのは訳なく反撃も仕掛けられたのだが…


  ガシャッ!!



   『燃えカスになりやがれええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!クソッタレがぁあああああ!!!』



 カメラ撮影用の三脚脚立の様な脚が[バスターランチャー]から伸びてしっかりと[グレートモンド魂]が固定される
搭乗者の怨嗟が込められた波動砲の圧倒的熱量が今にも放たれんと…!
 その矛先はメカ達の誰かでもブルーでもアニーやエミリア相手でもなく―――――


     ブルー「いかんっ!!あの射線上は…!! スライム!リュートそこから離れろ!!!」
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/10/09(土) 05:54:25.43 ID:W/o5W1620
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/10(日) 23:46:09.03 ID:pJdnDXLA0

―――
――



 ゲンは困惑していた。


 自分が居る場所が点々と移り変わり、目の前には封印が施されていない剣神が現れた
それだけならまだしも向こうは何も言わずにただジッと剣豪を見つめるだけだった


 額にジワリと脂汗が滲む、お互いに何も言わずただ沈黙だけが流れていて
刻でも止まったのかと思ってしまう程に微動だにしないのだ、自分も相手も


 長い睨み合いの末に静寂を打ち破ったのは人ならざる者の方だった
ゆっくりと片腕を天に掲げて…振り下ろすッ!



        ゲン「っっぐぅぅ!?!?」



 腕を振り下ろすと同時に剣神の間は…否、ゲンの精神世界は強い光に包まれる
フラッシュアウトしていく視界に彼は見えるはずの無い人の顔を見た


     『そうか…おめぇはまだこっちには来れねぇか』
     『サナダの、想ってくれる奴がいるってのぁやっぱいいモンだよなぁ』


       ゲン「! お、お前達…」


 強すぎる光、網膜には白光の白一色しか映らない筈なのに、光を遮る者なぞ其処には誰一人立たぬ筈なのに
それでも[ワカツ]最後の生き残りには確かに人の顔が視えているのだ



     『なら仕方ねぇよな、[ワカツ]男児たるモンは一度決めた事を曲げる訳にゃいかねぇよなァ!』ハッハッハ!
     『一緒に居て欲しいって想うのはオラ達だけじゃねぇべ、向こうにもアンタを待ってる人が居るなら仕方ない』
     『遊んでくれるゲンのおっちゃんのことオイラ好きだったよ!』


 次々と視えていた顔ぶれはゲンに声を掛けて光の中に溶けて視えなくなっていく



     『俺達の分も生きてくれよな!折角生きたんだぜ、なら暗い顔しねぇでお天道様見上げなきゃ損ってもんよ』

     『人間誰だって泣いたり悲しむ為だけに生まれた訳じゃねぇだろ、生まれてきた理由は笑う為だぜ』ガハハッ!

     『酒飲んで美味い飯食って、偶に喧嘩したりどっちが勝つか賭けて負けて泣いて笑って、人生そんなだろォ?』

     『誰かが想ってくれるってんなら、それだけで人生には意味ってのが生まれるんでい!大往生しやがれよっ』



 消えていく顔達はどれもこれも"笑い顔"だった、悔やむでも涙を流すでも無ければ誰かを恨む怨嗟に満ちた物でもない
最後に剣豪の脳裏に強く焼き付いていくような何処までも晴れやかな笑顔

 知らず知らずの内にゲンの眼からは一筋の雫があふれていた、だが彼らにつられるように彼の顔もまた朗らかな物だった
心の底にはドロリとした物も何もない、人生で本当に心底楽しそうに笑っていた頃と変わらぬ心持で

 本当に彼は笑っていたのだ、自身が気付かぬ内に、最高の泣き笑いで、笑って彼らを送ってやることが出来ていたのだ


       『へっ、なんだい折角会いに来たダチ達が還るってのに笑ってやがらぁ』
       『まぁまぁ、その方が俺達らしいじゃないか、ゲンの親父の辛気臭ぇ面なんぞみたくないからな』

       『んだな、お互い別れ際は湿っぽく泣くよりも笑って送り出してやりゃあいいのさ…』


         『達者でな』ニィ

       ゲン「ああ、またな」


―――
――

788 :続きは火曜日か水曜日予定 [saga]:2021/10/10(日) 23:47:14.24 ID:pJdnDXLA0

【双子が旅立って9日目 午後 15時28分 [ワカツ]剣神の間】




   封印されし剣神『…。』




――――カッ!!


 …リュート等侵入者一行がこの"惑星<リージョン>"の地底に築かれた基地内で[グレートモンド魂]と戦い
下位妖魔が今まさに[バスターランチャー]を撃ち出そうとしてした同時刻…っ!

 [ワカツ]の地下に存在する剣神の間に眩い光が満ちた
その輝きは室内から溢れ出し櫓の外へ飛び出て、天へと昇る…やがて一条の、まるで彗星の様に落ちてくる光となって
 [モンド基地]の巨大兵器出撃用の格納口へと落ちていく…ッッ!!

―――
――

【双子が旅立って9日目 午後 同刻15時28分 [モンド基地]】


   『燃えカスになりやがれええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!クソッタレがぁあああああ!!!』

     ブルー「いかんっ!!あの射線上は…!! スライム!リュートそこから離れろ!!!」


 不格好な蜻蛉は何もかもを灼きつくす破滅の光を撃ち出す、収束された膨大な熱量はゲンに付き添い彼を介抱し続ける
弦楽器の青年と治癒の一角獣諸共に飲み込まんと迫る


   リュート「う、うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」ギュッ
   スライム「(/ω\) ぶ、ぶくぶくぶくぶくーーーーーーーっ」


 巨大な光の渦が迫ってくる、仲間の叫びを聞いて顔を向けた時には最早避けようの無い距離まで迫っていた
元より足場の隅の隅で逃げようにも逃げ場など無い、リュートとスライムはこれまでかと目を瞑り死を覚悟する


   ゲンの指『』ピクッ

   リュート「!」ハッ!?
   スライム「(;´・ω・)!?」


――――カッ!!

――――――――ズガアアアアアアアアアァァァン!


 [バスターランチャー]の光芒が彼らを飲み込まんとした時、突如として"何か"が空から降ってきた
地底に築かれた基地そのものの硬い隔壁とその真上にある[ワカツ]の地殻という天然の防壁

 その二重層をぶち破ってソレは彼らと光芒との合間に割って入る様に突き刺さり、更には破滅の光を掻き消した



 『な、なんだ、一体何が起こったんだ―――!!この地下基地の天井がぶち破られている!?!?貴様ら何をした!?』


 目が眩むような眩い光、燃え上がる炎、舞い上がる黒煙と地表からソレと共に落ちてきた土砂との土煙
敵も味方でさえも何が起きたのか眼を白黒させる中、漸く景色が見えるようになって彼らは知った


   リュート「あ、あぁ…」ツーッ

      「…おう、わりぃな世話かけちまった見てぇでよ」

   リュート「へ、へへへ…帰ってきてくれたんだなぁ…」グスッ




      ゲン「ああ、待たせたな」ニィッ

      ゲンの手『 [流星刀] 』チャキッ!



 生存は絶望的だと思われた剣豪は…っ、ゲンは意識を取り戻したのだッッ!!その手に"見慣れぬ刀"を持って!!
789 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/10/11(月) 03:16:05.99 ID:BNK19lr90
おつおつ
ゲンさん復活キタ!
790 :>>1です [saga]:2021/10/13(水) 23:06:17.89 ID:Kc5ocNgU0
予定変更、次回更新 日曜日  リュート編ラスボス[グレートモンド]完全決着
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/17(日) 23:45:56.48 ID:NECc5VEU0

 間近で見えていたリュートとスライムだけが剣豪の手にする武器が何処から来たのかを理解していた
あの瞬間、全てを灼き尽くさんとした光が迫ってきた時に空から別の輝きが降り注いだ

 まばゆい輝き…神々しさを感じ取れる程の光が天井を突き破って自分達を護る盾の様に足場へと突き刺さり
信じられんことにあの[バスターランチャー]のエネルギーを掻き消したのだ…っ!



 ぽっかりと開いた天井の穴からは陽が傾き出した[ワカツ]の大空が見える、まだ夕刻というには早すぎて星の瞬きさえも
見つけられない昼空から彼らを護る様に落ちてきた"流星"

 もしもコレに名前をつけるとするならば[流星刀]という名が相応しかろう


  ゲン「…。」ジッ


 改めて剣豪は自分が"最初から自分の物であったかの様に手に取った"[流星刀]を見つめて空に向かって声を上げる





                ゲン「剣神よ!俺に何をしろというのだ!」



――――その問いに答える者は誰一人として居ない。



   ゲン「…答えは自分で見つけろということだな」チャキッ



 剣豪の問いは大空の彼方、空虚へと吸い込まれては消えていく
だが彼は答える者がいないことなど理解していた、これは自分で答えを見つけねばならないことだと心の奥では理解してた

 …最後に笑って還っていった[ワカツ]の同胞達が自分に掛けてくれた言葉が胸の中で熱く燃えていた
人生は常に意味を探す為の旅路なのだと、人間はいつだって答えを求めて生きるのだと



   ゲン「にいちゃん!スライム!世の為人の為にまずはあのデカブツをとっちめてやろうぜ!」ブンッ

 リュート「おう!やってやろうぜ!!」
 スライム「(`・ω・´)ぶくぶくーっ!」ピョンピョン!



   『っっ〜〜〜!!突然空に向かって叫んだかと思えば舐めやがってぇぇぇぇ!!』



 未だ何が何だか状況の掴めない下位妖魔は[レールガン]を乱射する、切り札のランチャーは撃ち出したばかりで
まだチャージが完了せずトリガーを引くに引けない

 盤上から振り落とされたpzkwX以外のメカ達の復帰とゲンが意識を取り戻した事で確実に流れは彼らに来ていた
術士が[勝利のルーン]を施したブロンド美女の[二丁拳銃]による[跳弾]も黄金髪の女が振るう剣技の切れもこの追い風に
乗る様に不格好な蜻蛉<トンボ>へと叩き込まれていく


   『ぐあ" あぎ""っ!?』ボンッ!ボボボンッ!


 装甲が殆ど剥がれ落ちた機動兵器には一気呵成に打って出た彼らの一撃一撃が重すぎる
計器やモニターが次々に内部で爆発を起し搭乗者にダメージを与えていく


     ゲン「…。」スゥゥ…


 剣豪が[流星刀]を構えて深く呼吸をする、彼自身の身体の奥底から闘気が溢れ出す
誰が最初に言い出した訳でもなくそれを見て皆がゲンをサポートしようと動き出した、大技を使うゲンの為に時間を!



   リュート「コイツでトドメだ!」シュバンッ
    ブルー「爆ぜろ![インプロージョン]!」キュィィン
    アニー「視えた…っ!このタイミング!」ズサーッ!スパン!


            3連携 [ 逆 風 の イ ン プ ロ 清 流 剣 ]
792 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/17(日) 23:46:59.59 ID:NECc5VEU0


  『ぐあああ"あ""ああ あ"ああああああああ あ"ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?』バチバチバチ!!


 焔が吹き荒れ、ショートした電気系統からはスパークが飛び出して狭いコックピット内を踊り狂う
操縦桿を握っていた[ワンダードギー]は出口の無い鉄釜の中で火炙りと感電の責めを同時に味わう阿鼻叫喚を体験した

 皮膚も内にある贓物も何もかもが焦げていく、これが生身の人間であるのならばショック死してもおかしくはない
偏に彼が下級とは言え生命力に溢れた妖魔であるからこそ生きていられると言えよう

 …これが本来の搭乗者モンド氏であったならば、いや、彼なら執念のみでまだ生きながらえて最期の一撃くらいは撃つか


 電子レンジにでも入れられた体感をした下位妖魔はまだ辛うじて動く手で最後の賭けに出ることにした
もうこの機体は長くない……


 泣いても笑ってもこれが最後の大博打だ…。


 [グレートモンド魂]は自身の炉と[バスターランチャー]を直接繋ぐことで超神形態の時よりも
早いスパンでの連射を可能とした、その炉を意図的に暴走状態にすることでより早く、尚且つ過負荷を掛ける事になるが
通常のエネルギーゲインを超える高出力での射出を実現できるのだ



 これは所謂メカ達が使うプログラムの[マグニファイ]と同じだ。

 装備している武装のリミッターを解除して使用後に壊れて使い物にならなくなるというデメリットを呑んで使う手段


 どこもかしこも火を噴き出しているこの蜻蛉<トンボ>でそれをやれば間違いなく墜ちる、然し彼に手など無い
行くも地獄、退くも地獄…であれば行くより他になかろう…ッ!!



 『…ふ、ふへ、ふへへへ…お、お俺様は神を超える力をえ、え、得ぇたんだぁぁ…ははっ、ハハハハ…』カチカチ、ピッピッ


 操縦桿を握る手の感覚が殆どない、犬の様な瞳は熱で焼けて視力を失いつつある、見え辛い視界の中で辛うじて
自身が安全装置を切っているのだけは解る、自分が殺した同僚や部下達と一から組み立てて整備し続けた機動兵器だから
意識は半分無くても慣れた手つきで出来た

―――
――


   エミリア「ちょ、ちょっと―――明らかになんかヤバいわよアレ!?」

     T-260「敵機の炉が暴走中!異常なエネルギー反応が検知されています!」
    アニー「はぁ!?暴走って自爆でもすんの!?」



  レオナルド「不味いね…っ!自爆はしないだろうけど…ある意味自爆の方がマシかもしれないッ」
    ブルー(くっ…![リージョン移動]で脱出を―――いや、駄目だこうも全員が俺から離れすぎていては…ッ)


 この瞬間に[ゲート]を使っても自分とすぐ傍にいるレオナルドくらいしか退避できない…っ!
今になってブルーは出鱈目に乱射された結果、チームが分断され陣形が崩れた原因の[レールガン]を恨めしく思う

 蜻蛉<トンボ>は最期の力を振り絞って三脚のような細い脚でしっかりと自身を足場に固定させる
自壊覚悟の自他共に破滅せんとする滅亡の光が[バスターランチャー]へと注がれていく
 その砲門を侵入者一行に向けながら狂気に駆られつつあった下位妖魔はトリガーを引かんとする…っ!



  『はーっはっはっはっは!俺様がリージョン界の王になるんだぁぁぁぁぁああああはははははははははっ!!!』














             ゲン「…剣神よ、見るがいい―――星を落とす術を」スゥ…!
793 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/17(日) 23:47:41.95 ID:NECc5VEU0


















       『喰ら え ぇぇぇ ぇぇ ぇ[バ ス タ ー ラ ン チ ャ ー ]ぁ ぁ ぁ ぁ ぁぁ』






              ゲン「 [ ミ リ オ ン ダ ラ ー ] 」ブンッ











794 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/17(日) 23:48:35.35 ID:NECc5VEU0


 闘気を纏った剣豪が"神"より授かりし[流星刀]を振るった


 ゲンは空を切り裂いた。


 比喩ではない、言葉通りにである





 何も無い空間に空色の美しい刀身が振るわれて、空間が切り裂かれた、本や書類を積み重ねた紙の束に短刀を突き立てて
そのまま腕を引いて出来た裂け目の様に宙に亀裂が入ったのだ

 裂け目はそのまま広がりながら昇り、そこから"混沌の間<宇宙空間>"に似て非なる何処かが溢れているのが見える
星の煌めき、生まれては爆発してガス状になって、それが周囲の小さな惑星を取り込んでまた命が芽吹く星々を産み出して
そこには命の輪廻があった、星雲が漂う闇の空間であり同時に光に満ちていた不思議な空間が亀裂の先には存在した



 切り開かれた裂け目の奥で紅く光る星がある、大きく燃える火
1つ、2つではない…猛々しく燃え盛る紅星が…無数の流星が空間から飛び出して来る…ッ!


  流星『 』ボウッ
  流星『 』ドウッ



  ド ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガガ ガガガ ガガガガガ ガ ガガ   ガ アァァァー—―z______ン!




 気高い闘気に呼び寄せられた星は、限りある命の輝きに惹かれ、飛び出しては不格好な蜻蛉<トンボ>へと降り注ぐ
燃え盛る巨石が次々と衝突して武装が次々と破壊されていく
 [レールガン]も[ハイパーバズーカ]も腕ごと捥げて、反重力装置もへし折られ自力で飛ぶことは困難となった
四枚羽を失い、胴体にも隕石がぶつかってきた[グレートモンド魂]は当然の如く態勢を大きく崩した

 羽が千切れて、頼りなく自身を支えていた三脚のような足も所々折れていて
侵入者一行に向いていた筈の砲はどこか拉げて、上に…天へと向けられた


 よく見ると胸部のコックピットブロックも砕けていて中から黒煙や火が噴き出しているのが見える
割れた部分から外気が入り込み、内部の空気は逆に外に漏れだすようになった







 機動兵器は…ただの砲台と化した[グレートモンド魂]はその名に恥じぬ最期の一撃を天へと穿つ


 機体を支える脚が折れて、砲自体も拉げ狙いが定まらなくなった破滅の輝きは身を伏せた侵入者一行の頭上を更に越えて
ぽっかりと開いた天井の大穴に吸い込まれていく

 [ワカツ]の大空へ光は昇り、天守閣よりも高く雲の上へと昇っていく


 まるで空襲にあった多くの[ワカツ]の民を弔う弔砲が如く、穿たれた光と共に"魂"は天に還るのであった



 ガシャン…!



 無音、最後にその音がしたと思い全員が顔を上げればそこには事切れた"魂"の姿があった
[マグニファイ]の仕様を応用した一撃に遂に耐え切れなかったのだ
 機体全身が赤茶色になるまで熱したフライパンの様になっていてまだ火花が吹いている
完全に燃え尽きたといった様相で地に墜ちていた…



 ふとコックピットがあった部位を見やる、……先程、外気が入り込み、内部の空気が出て行くのが確認できたことから
気密性はもう駄目になっていたソレはリミッターを解除した[バスターランチャー]の熱も入り込むということだ
 元々重装甲で操縦室自体が絶対的な堅牢さを誇っていたのだって
何も搭乗者を外敵から守る鉄の揺り籠だからというだけではない…余波でさえ大人数を灼く膨大な熱量を手元から撃ち出す
ならば自身の身を護る為に必要以上に頑丈にするのは当然と言えよう、自分の兵器で自分がやられちゃ話にならん
795 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/17(日) 23:49:28.12 ID:NECc5VEU0

 静寂、死の可能性が何度もあったこれまでで一番の難所を無事に生きて乗り越えた
まだ実感が持てないのか弦楽器を背負った青年が今日で何度目になるか袖で顔についた血を拭って呟いた



   リュート「終わった、のか?…終わったんだよな?」ヘナヘナ…


 言い切ってから身体全身の力が抜けてその場にへたり込んでしまう、だが無理からぬことであった皆が同じ気持ちだ
恐ろしい強敵を打ち破った疲弊と達成感、自分が生きている事の喜びと安堵、死んだと思った仲間が生きてた驚きと嬉しさ
 色んな感情が綯交ぜで気持ちの整理が追い付かない……今はただ、座ったり倒れたり、息を吸いたい、吐き出したい
身体中全身が悲鳴を上げているんだ



  レオナルド「みんな、お疲れ様」

  特殊工作車「大変でしたね、皆さんはメカではありませんから私では直して差し上げられませんが…お疲れ様でした」

 ナカジマ零式「ひゅ〜、一世一代の大活劇だったんじゃないでーすかー?」



   エミリア「ええ、全くよ……ルーファスの指令でちょっと偵察に来ただけなのに、とんだ大暴れよ」


 元モデルとしての恥も何も無く大の字になって倒れたエミリアが疲れ知らずのメカ勢に答えた
彼女の隣で地べたに膝をついて武器を杖代わりにしているアニーは歩いて来る剣豪に目線を向けて言った


   アニー「ゲンさん、生きててくれたのね…よかった」グスッ
  エミリア「ええ、本当に良かったわ…」


 仲間の生存に思わず涙ぐむグラディウス組にゲンはニッと笑って「まだ現世の酒が飲み足りねぇからな!」と肩を竦める
その様子に思わずリュートとアニーが噴き出して、蒼き法衣の魔術師も口角を釣り上げた


   ゲン「おっ、術士のにいちゃんも良い顔で笑うじゃねぇか」

  ブルー「…ああ、今は気分が良いのさ」

 リュート「へへっ、最近はお前が笑うのも"珍しい事"じゃなくなってきたなっ!
               …帰ったら[クーロン]のラーメン屋の屋台で打上げ会開こうぜ!」


 弦楽器の青年は武器を仕舞い、さっきまでの疲れはどこへやら背負った楽器を奏でて陽気に笑う
剣豪に小さく目配せしながら酒でパーッと盛り上げようと笑った







   ゲン「…ははっ、そうだな、精一杯盛り上げてくれる宴会にしてくれよ、俺が乾杯の音頭を取るからよ」

 リュート「おうとも!任せてくれよな!今、生きているこの時間を生涯忘れないくらい楽しくするぜ!」




 笑い合う仲間達を見ながら蒼き術士はふと、何気なく言われた言葉を思い返す


  ブルー(最近は俺が笑うのも珍しくない、か…)

  ブルー(…。そう、なのかもしれんな)フッ


<ワイワイ アハハッ!


   T-260「………。」

   T-260「皆様、少々よろしいでしょうか」


   エミリア「あら、どうかしたの…?」



   T-260「……あそこをご覧ください」スッ
796 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/17(日) 23:50:13.59 ID:NECc5VEU0

 ただの灼けた鉄屑と化した[グレートモンド魂]の残骸をT-260は指差して音声を発した
なけなしの気力を奮い立たせて気怠そうに起き上がったエミリアはそちらを見やり首を傾げた


  エミリア「…? あれがどうかしたの」

   T-260「コックピットブロックなのですが」











   T-260「"搭乗者の遺体がありません"」




  ゲン「ッ!?」バッ

 アニー「えぇっ!」

 ブルー「なっ、なんだとっ!?」ダッ


 慌てて身を起し、動ける者達は蜻蛉<トンボ>の死骸を見始めた
ある者は武器を鞘から引き抜き、ある者は周囲への警戒を始め、ある者は術を唱える準備をしながら


   操縦席跡『   』



 焼失遺体が確かに無い、これが"人間<ヒューマン>"なら100%間違いなく死んでる状況だが腐っても妖魔
嘘か真か[ファシナトゥール]の煉獄の焼却炉に飛び込んでも妖魔なら生きて外の"惑星<リージョン>"まで脱出できると言うが
まさかあの下級妖魔まだ生きていて逃げ延びたというのかっ!?


  ブルー「おのれ…っ、まだ何か兵器を持ち出して来る気じゃないだろうな!?傷が酷い奴は此処で待機しろ
                          まだ戦う気力が残っている奴は武器を持って今すぐ―――――」



   レオナルド「あー、そのことなんだけどさ」ポリポリ


 今にも飛び出しそうな術士を制して、機械工学の権威が調子の無いで待ったを掛ける
魔術師は当然「なんだ!?何故止める!と抗議したがそこをすかさずリュートが宥めて続きを言う事を促した


   レオナルド「んんっ、まずだけど彼、あの[ワンダードギー]ね…アレ、もう決着ついてるんだよ」

   レオナルド「この基地にこの巨大ロボに匹敵する兵器はもう無い、道中で巨大な[Tウォーカー]とかはあったけど」

   レオナルド「あれは"もう動かせなくなった"だから心配しなくていい、それに―――」




      レオナルド「ボク達がもう手を下す必要が無いんだよ」



 一瞬、何を言ってるのか意図が分からなかった、何故他の階層の巨大メカが動かないと分る?いつ調べたんだ
そもそも"手を下す必要が無い"とは…?
 ふとそこまで考えた所で、横からアニーの声が沈黙を破った



   アニー「……レオナルドさん、そういえばさっきある人に助けられた、って言ってたよね?」



 - レオナルド『あー…説明するとちょ〜っと厄介なんだけどね、 "ある人" に助けられたっていうか、ね…』-


   アニー「それにさっきからずっと気になってたんだけど…pzkwXは何処に居るのさ」

797 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/17(日) 23:51:49.69 ID:NECc5VEU0

 言われてみればそうだ、特殊工作車もT-260もナカジマ零式も居るのにpzkwXだけがこの場に居ないではないか


   レオナルド「うん…その辺も含めて話すよ、彼はその助けてくれた人の護衛兼人質みたいな感じなんだよね今」

   リュート「人質って…そいつぁ穏やかじゃねーんじゃないのかい?」


   レオナルド「ん〜、君達を助ける為、というかボク達があのどん底から上昇する足場に駆けつける為や」

   レオナルド「今までボクが生前ちょこ〜っとやらかしちゃった事だったり、今後のT-260君の事に関してとかさ」

   レオナルド「色々と交渉というか取引があってね…まぁ、状況的にやむを得なかったというか、うん…」





 …嫌に歯切れが悪い、ばつの悪そうな物言いに術士含めて幾人か眉を顰める
レオナルド博士の内容からしてどうにもその人物との取引のお陰で自分達侵入者一行は窮地を脱し今を生きているようだが
彼の反応を見るにあまり喜ばしい取引ではなさそうだが…


   ゲン「おいおい、レオナルドさんよ勿体つけねぇで教えてくれ
              一体その人物ってーのは誰でアイツは追っかけなくていいのかよ?」


 剣豪が至極尤もなことを言う
工学者は内心「君がいるからこそ非常に厄介な内容なんだけどなぁ」とゲンを見つめ、それに対して彼は疑問符を浮かべる


   レオナルド「まぁね、…なんであの妖魔を追っかけなくて良いかっていうのは
             今頃、その助けてくれた人とその護衛でついて行ったpzkwXが始末するからだよ」

 その人物に関しては自分の口で言うより実際に会ってみた方が早い、どうせ用を終えたら向こうから来るよ、と告げた


―――
――


  ワンダードギー「ハァハァハァハァ……ヒューッ、 ヒューッ」ズリズリ…


 全身煤だらけで、遠目に見たら黒ずんだ何かが動いているようにしか見えない物がある
身に着けていた帽子も衣服も炭化してボロボロで、それは肉体にも同じ事が言えた

 醜くても泥水を啜ってでも良いから"まだ生きたい"、生きていたい…そんな生への執念だけが彼を生き永らえさせた
世界さえも手中に収めようとした強欲で高慢で、それでいて底辺から成り上がろうと夢見た野心家の執着だから成せた


  ワンダードギー(声が、もう出ない…身体の感覚も無い、いやだ しにたくない おれは いきてやるんだ)ヒューッ、ヒューッ

  ワンダードギー(おれを ばかにした すべてを みかえして ふみにじり かえしてや――)コヒューッ




   銃口『 』カチャッ、バンッ!

  ワンダードギー片手『 風穴 』ドシュッ!


 突如として這っていた下位妖魔の片手に穴が開いた、まだ聴覚の残る耳は銃声を聞き取り音の出どころを見て絶句する
トリニティ政府の高官が袖を通せる制服に身を包み、サングラスから覗かせる剃刀の様な鋭い眼差し…

 冷徹でまるで人を殺すことをなんとも思っていなさそうな壮年の男性がそこに居た


  ワンダードギー「…っ! っ!!」パクッ、パクッ!


 声にならない。



  モンド「やぁ、"トリニティに反乱を企てるテロリストの首魁"くん、こっぴどくやられたようだな」チャキッ

  モンド「スパイとして潜り込ませた私の私兵も君の所為で随分と死んだようだ……実に悲しいことだよ」



 ……この男は一体、何を言っているのだ?テロリストの首魁?『誰が』?理解が追い付かない、頭が理解したがらない
798 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/17(日) 23:52:51.42 ID:NECc5VEU0


 遠巻きに侵入者達の仲間だったpzkwXが佇んでいる、仮にアレに助けを求めて叫んだとしても
あの距離では聞き取れないかもしれない
 冷徹な執政官は銃口をゆっくりと下位妖魔の蟀谷に近づける





   モンド「私が独自の諜報部隊を使い調べ上げさせた反政府組織が滅んだ[ワカツ]の地下に基地を造っていた」

   モンド「そこで私は忍ばせた私兵と執政たる私自らがテロリストの制圧に向かう」

   モンド「するとどうだろうか? 偶然にも生身を失いメカの身体となったレオナルド博士と仲間達に出会った」


   モンド「私は彼らに任務の"協力"を願い出て、彼らにもそれ相応の報酬を出すと約束をした…」


   モンド「現地で偶然協力者に出会うと言うのは日頃の行いの良さだとは思わんかね?首魁くん」





   ワンダードギー「――――――」




 今更ながら思い出した、モンドという人物の人間性を…


 彼は基本的に他者を信用しない男であり、彼が雇う私兵の大半も自分の様な人間社会で職にあぶれ
日々の暮らしも儘ならない元浮浪者や命令違反を決してしないメカが大半であったことを

 メカは頭脳自体がプログラムされた機械で主人の命令に反することは無く

 浮浪者だったモンスターや妖魔、時には人間は………そう、本当に元はホームレスなど身元が判明しない者ばかりで
仮に死んでいようが路地裏で冷たくなっていても誰も気にしないし身寄りがないから素性の証明ができない輩だった事を





   蜥蜴の尻尾切り…。


 いざとなれば使い捨ての駒、不要と判断されたらその場で闇に葬られる雑兵でしかないということを…っ!!



   モンド「あぁ…そうだ君が使っていた巨大機動兵器だが…
          あれは以前トリニティが某企業から政府の技術を盗用した疑いがあると接収したものだね」


   モンド「どうやって政府の機密を知ったのかは私が個人で調べておこう
         ついでに君の運用データを参考にしてアレよりも強力な兵器を組み立てる計画にもしておくとしよう」



 いつ君を打ち破った様な強い戦士達と同じ者が攻めてくるか分からないからね、全てはトリニティの為だよ
…と、実に"白々しい事"を目の前の男は言ってのける





             ワンダードギー「――――!!―!――っ!!」    

                 モンドの銃『』パンッ!





    ワンダードギー「」ドサッ

    ワンダードギーの額『 風穴 』ドクドクドク…



…こうして、全リージョン界を圧倒的な力で支配しようと考えた野心家は、その凶弾によって倒れたのであった
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/17(日) 23:55:15.33 ID:NECc5VEU0
*************************************************


                  今回はここまで!

   リュート編ラスボス[グレートモンド]撃破!! 残り主人公ルートのラスボス6体


    次回は多分、一週間後かもしれない

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800 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/10/19(火) 07:23:00.47 ID:AE98TUj60
乙!
とうとうラスボス一体撃破かあ感慨深い
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2021/10/20(水) 01:06:26.93 ID:vZxMK9ih0
おつおつ
802 :次回は 火曜日か水曜日予定 [saga]:2021/10/24(日) 22:44:19.25 ID:FCswWosx0
―――
――



【双子が旅立って9日目 午後 同刻18時45分】

【クーロン:屋台広場】



 ズルズルズルズル、豪快に麺を啜る音に加えて飲めや歌えや騒げやのどんちゃん騒ぎが繰り広げられる中で
蒼き魔術師は青い塗装が塗られたベンチに座ってぼんやりと空を見上げていた

 [モンド基地]での死闘に幕が下りて程なくして人質とされていた密売店主を引き連れてモンド執政官が彼らの前に現れた
言うまでも無くゲンはその姿を見るや否や警戒心を剥き出しにしていつでも抜刀できる構えに入ったが
そこを慌ててレオナルド博士が止めに掛かった


 止めた人物曰く、『彼が"取引相手"だよ、まずは彼から直接話を聞いてくれないか?』との事で
剃刀の様に鋭い目つきの執政官が発した言葉を要約すると、君達の命を助けたのだから私を見逃せ、といった趣旨だ


 …本当に要約するならそんな内容で、彼はあくまで"自分は偶々、私兵を引き連れてテロ組織を摘発しようと此処に来た"
自分はトリニティ政府の転覆など企んでいない、[ワカツ]を滅ぼし基地を造ったのがモンドだというのも
反政府勢力がトリニティ内の不信や対立を募らせて内部分裂を起こそうとしたデマだった、と



 そうシラを切る算段だ。…なんとも幼稚で見苦しい言い訳だなと思った


 [ワンダードギー]がどのような手段を用いたか知らないが、政府が民間企業の[中島製作所]から押収した技術で作った
あの巨大機動兵器も政府の機密兵器だったのだがその技術、現品を奪取してさらには地下に大規模基地も作った…

 元は浮浪者の下位妖魔が、だ


 こんなバカげたシナリオを本気で信じる奴が普通居るか?
当然一行は思った事を口々にしたが、それをレオナルドが宥め、T-260が聞き入れようと頷く

 店主を人質にされたのもあるが、実際問題[グレートモンド]との戦闘で全員に死に目があったのを救うだけの貸しを受け
同時に双方にとっても厄介者でしかない世界征服を狙う野心家の妖魔が乗った兵器を葬れて、尚且つやたらと
庇護しようとするT-260とレオナルドの態度から恐らく今後彼らが乗り込む予定の[タルタロス]に何らかの便宜を図る
そんな取り決めもあったのだろうな


 メカというのは目標、任務の達成に全てを注ぐ存在でありそれだけに約束や条約、契約と言った類にも中々に煩いもの
最優先のS級任務に近づけるとあらばT-260は黙ってモンドの言葉に首を縦に振り
人間としての感情もあったレオナルド博士は仲間達の命を救う為、ブルー達と別れて自分達の冒険をするにあたって
今後有利に事を進める為に……ついでにpzkwXが今までトリニティ政府の兵器を違法に売りさばいてた罪で逮捕されない為


 自分達とモンドは偶然、潜入先の基地で遭遇して同じような目的だったから協力関係になった、という体で物事を進めた


 話は平行線の言い合いになったが結局はこちらが折れて、モンドに手を出すことはしなかった
グラディウス組にとっては厄介な相手ではあっても警察部門のトップから政治屋になったから
直接的な敵対は"今はまだ"していない、あくまで今日は基地の調査に来ただけでジョーカーとの一件もあるこの時期に
無駄に全面戦争みたいな下手は打ちたくない

 ブルーに至ってはただのバイト、祖国が関わらないのなら正直どうでもよくて、祖国に被害出しそうな妖魔は既に他界

 スライムは基本的にブルーに従うし、メカ勢は取引してるから当然何も言わない
唯一の懸念が剣豪だったが、意外にも彼は苦虫を噛み潰した顔で「俺はてめぇに会わなかった事にしといてやる」と…

 リュートは剣豪と執政官が出会った時、ゲンはモンドを切り殺してその後"ハラキリ"でも
するのではないかと心配すらしていたが何故か[流星刀]を見て、自身を律していたゲンに
想定していた最悪は起きないと安堵の息を吐いた




 何があったのか知らないが、ゲンの眼には怒りこそあれどチラついていた復讐心の炎が消えているように思えたのだ
慙悔も失意も狂気も破滅願望も何もない、未来に向かって生きてみよう…っ!酒で暈かしてきた世界を直視しよう…っ!
 そんな何処か晴々とした…死者の声に囚われていない男の眼になったように感じたのだ






 ……長々と語ったが、まぁこういった各々の理由でモンドには色々言い放ちはしたが
こちら側が折れてその取引を呑む結果になったというのもある意味当然と言えば当然の結果に収まったのかもしれない
803 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/10/25(月) 18:12:22.75 ID:ujrZbn8V0
この段階でグレートモンドだけ失って立ち位置は健在なままなモンドって今後どう動くんか気になるな
804 :次回は金曜日か土曜日の予定 [saga]:2021/10/27(水) 23:53:08.29 ID:TELfdryz0


   レオナルド「やぁ、隣いいかな?」スッ


 ほぼスープだけになっていたラーメンの容器を持った魔術師の傍に工学者がやってくる
肉体がメカとなった彼は飲食ができない、表情の窺えない機械人形の博士は宴会の中で何処となく寂しさがある様に思えた


    ブルー「別に断る理由は無いが」

  レオナルド「本当かい、助かるよ!それじゃあ隣に失礼して」ストッ


 メタリックボディはそう告げるとベンチに腰掛ける、重量ゆえに僅かに椅子が軋みをあげたが敢えて無視する
このメカは中々に気さくな…社交的な性格だ、生前のレオナルド自身がファーストフード店で上京してきたリュートや
名前も顔も知らない偶々相席になった初見利用の客に「これおいしいんだよ。」とおススメしてくれたり
T-260との初邂逅時も茶目っ気を出す人柄


  レオナルド「やっぱりボクが居るとみんな気を使っちゃって食べ辛いかもしれないからね〜」

    ブルー「俺は良いのか、俺は」


 将来的に味覚機能と飲食物を消化して動力に変換するシステムを自身に組み込むと言ったレオナルドは少しだけ
仲間達の輪とは距離を取っていた、偏に自身の身体問題で気まずい空気を創り出してしまうのではないかと考慮したから


  レオナルド「君は別にそんなの気にするタイプの人間じゃないだろう?短い間だけど一緒に居てわかるよ」

    ブルー「ハッキリと物を言う、気に入った」

  レオナルド「そりゃどーも」


 器の中のスープを啜りながら、妖魔医師のヌサカーンといいスライムといい、それにこのメカ
妙に人外に寄られるものだな、と心の中で彼は思った


    ブルー「それで用件はなんだ、人肌恋しいから来ましただなんて言うまい」

  レオナルド「話が早いね、うん…まぁコレを、ね」スッ


    ブルー「? なんだこれは…ディスク」スッ



 工学者が取り出したのは一枚の円盤、データディスクであり受け取ったブルーはそれの説明を求めた
機械化した彼の脳内メモリを映像化した物がその一枚には納められているらしく
 ルーファスからの依頼で散々カメラに写真記録を収めたブルーとはまた別に独自で彼は基地内の出来事を収めていた


  レオナルド「契約があるからね、ボク達のT-260君の記憶を取り戻す為の旅路やpzkwXの罪状の帳消し…」

  レオナルド「そういった物の為に"ボクは"モンドを裁くことはできない」


  レオナルド「だからモンドとの会話内容はばっさりカットされた物ではあるけれど」


    ブルー「……ふむ、つまりこういうことか?コレを出すところに出せば、そいつ等が検挙してくれると」


 機械というのはつくづく律儀な物だな、と思う
基地から脱出した今もまだモンド相手に契約を守るのか…、あくまで自分達とは関係の無い第三者の手によって裁かせると


  レオナルド「あー、でもさ警察は駄目だよ?彼、元々警察機関のトップだったし」

    ブルー「ならば何処へだ?」


  レオナルド「その辺は抜かりなしさ一人あてに出来そうな人物に心当たりがある、生前行き着けの店で知り合った」



  レオナルド「[IRPO]所属のロスター捜査官、通称クレイジー・ヒューズ…彼に渡して欲しい」

  レオナルド「トリニティ政府の警察組織とはまた独立した組織ではあるけど、それでもモンドからの圧力は掛かる」

  レオナルド「でも、彼は人一倍"悪"というものを許さない人だから、上からの圧力で今すぐは無理でも恐らく…」

805 :続きは明日か明後日 [saga]:2021/10/30(土) 23:34:40.80 ID:53kzs8mb0


    ブルー「ロスター捜査官か、引き受けてやってもいいだろう」

    ブルー「ただし気が向いた時にだぞ、俺はあくまで私用を優先とさせてもらう」


 いい加減アニーに依頼した[ディスペア]行きの件も準備ができる頃合いだろう、資質を取る為の旅が優先だ
魔術師は工学者にそう言い放ち、それでもいいのなら受けようと改めて問い直す


  レオナルド「なるほど、確かにキミにもキミの都合があるだろうからね、それで構わない」


 話は纏まり魔術師は受け取ったディスクを仕舞う、それとほぼ同じタイミングでいつも異常にテンションが
上がっている無職男性が絡んできた


  リュート「いよぉーっ!ブルー!レオナルドさん!!楽しんでるかーい!?」ダキッ

   ブルー「ぐえぇっ!?」

 レオナルド「うん!楽しんでるよ、それとあんまり彼の首絞めない方が良いよ」


 首に腕を回して締め上げてくるというウザ絡みをしてきた酔っ払いを見事な一本背負いで投げ飛ばす
背中を強打して「痛ってぇぇぇぇ!?!?」と叫ぶリュートを見て術士は我ながら筋力が付いたなと思った


   ブルー「ぜぇぜぇ…貴様ァ!!いきなり人の首を絞める奴があるかァ!?」

  リュート「いつつ、わ、悪かったってばよぉ」タハハ…

  リュート「二人ともこんな離れた所に居るから寂しくないのかと思っちゃってさ
        なぁ!もう少しみんなの所行こうぜ!ゲンさんが剣術大会の事とか語ってくれるんだ」

   ブルー「在りし日の[ワカツ]の剣術大会か………まぁ興味がないわけではない、な」

 レオナルド「T-260君から少し聞き及んでるけど
         [鉄パイプ]でロープを切ったりとか科学的にありえない事を起こせるんだよね面白そう」


  リュート「だろだろ!?だからさ二人もこっち来て話そうぜ!」


 すっかり空になってしまったラーメンのお椀を持って青の魔術師は歩き出す不意に空を見上げれば
そこには月が浮かんでいた、ネオン輝く"惑星<リージョン>"では珍しく今日は月がくっきりと見える日だった


  エミリア「あっ、二人ともこっちこっち!今最高に盛り上がる内容――ブルーどうしたの空なんか見て」



   ブルー「…いや、今日は月がよく見えているなと」


   アニー「あぁ、今日ってそういえばニュースでやってた日だったわね」


 エミリアの隣に座っていたアニーも術士の目線の先を追いテレビのニュースでやっていた内容を思い出す
今になって気が付いたが陽が沈み夜が到来したばかりの[クーロン]にしては明かりが少ないな、と彼は考える
 もうこの街に滞在して短くはない、些細な違いに気が付けるくらにはなってきた



  エミリア「今日って数年に一度の皆既月食とかいうのが視れる日なんでしょ?」

  エミリア「名前は知らないけど天文学者の人がニュースで言ってたわ」


   アニー「それを観測しようってことで街中で医療機関とか大事な場所は除いて計画停電があるのよね」


 それで今日は月がくっきりと見えているのか。


  ブルー「この"惑星<リージョン>"だけか?」

  アニー「そうよ、[クーロン]の月だけが皆既月食みたいで他所の星から見える月は普通みたいね」


 月食で月が徐々に欠けていき、完全に無くなるとその瞬間…月は紅くなる
血に濡れたかのように真っ赤な月、ブラッドムーンと呼ばれ
季節によってはストロベリーやローズ等とも呼称される…そんな紅い月、神秘と畏怖を覚える紅の色が
806 :続きは火曜日か水曜日 [saga]:2021/11/01(月) 14:26:38.42 ID:LBBGN4s+0


 エミリア「でも月食って神秘的でもあるけど、どこか怖くもあるわよね…いつもそこにあった物が欠けていって」

 エミリア「次第には完全に無くなって、真っ赤なお月様になるんですもの」


 祖国の学院で常に机上の参考書と睨めっこしながら白紙の上にペンを走らせた身として術士の彼はその言葉は
イマイチ理解できかねた
 齢22となっても月なぞ見る機会はもしかしたら指で数える程しかないかもしれない
皮肉にも修行の旅に出て空をぼんやり眺められる時間が出来たかもしれぬのだ



    ゲン「暁月<ぎょうげつ>だな…」



  リュート「ギョーゲツ?」

    ゲン「俺んトコじゃあ真っ赤なお月さんの事をそう呼んでたのさ」


    ゲン「[ワカツ]に古い話があってな、まぁ悪ガキ共をビビらせる為の与太話なんだが…」

   アニー「おっ?何々また面白い話聞かせてくれるの?」ワクワク

  リュート「あぁっ、待ってくれよ屋台のおっちゃんに注文した焼き餃子取ってくっから!」ダッ


 語り部となって古い言い伝えや失われた[ワカツ]の日常風景、伝統など貴重な話を聞かせてくれるゲンの傍に
工学者と術士も座り込む、無職男性もいつになく機敏な動きで取りに行った大皿を運びながら座り込んだ
 [モンド基地]から生還した彼らの宴会会場となった屋台広場のテーブルにはアルコールの注がれたジョッキや
食欲を擽る素晴らしい馳走が並べられていて、さっそく追加された一品を小皿に分けて
一口食べ出すグラディウス組とスライム、「あっ、ずりぃ」とリュートも食べ始めて魔術師もそれに倣う

 …パリパリとした皮の食感と火が通った具材、そこに少量のピリ辛風味のたれが美味いと感じた


  ゲン「話していいか?…俺の爺さんのそのまた爺さんの爺さんの…ってとんでもなく気が遠くなるくらいの」

  ゲン「まぁ年号がいつだかわからねぇくらい大昔の話が元とかいう奴でな、嘘かどうかなんて誰も証明できないんだ」




  ゲン「数百年に一度、月食が起きて…生き物がみんな死んじまうって怪談話さ」


  T-260「」ピクッ


  ブルー「なんだそれは?」

   ゲン「知らねぇよ大昔のご先祖様にでも聞けって話さ、…なんでも月が無くなると"双子"が出てきて」


   ゲン「良い子にしてたら双子のお姉ちゃんの方が善良な子供や大人を助けてくれる」

   ゲン「だが双子の弟の方は恐ろしい4体のバケモノを引き連れて全ての生き物を喰いに来るんだとさ」


   ゲン「なんてこたぁねぇ迷信だろう、人間胸張って善い事して生きろって話で、悪い事したら閻魔様に舌抜かれる」

   ゲン「それと同じような与太話だよガキの頃に俺も爺ちゃんから耳にタコできる程聞かされた」

  ブルー「道徳と人間性、罪と罰に対する戒めみたいな作り話か……問題はその話がどのような過程で生まれたかだな」


 例えば、世界に残る心霊現象や神話も紐解けば何かしらの見間違いや歴史の口伝が何処かでねじ曲がって伝わったり…
白いお化けを見たと言えば実は木の枝に引っ掛かったビニール袋がそう見えただけだったり
人魂を見たと言えばそれは田舎で夜中に沼地から発生したガスが引火して結果的に宙に炎が浮いてる様に見えただけ等

 何かしらの"元ネタ"というのはあるのだ…人の罪と罰や正しさ、倫理的道徳に基づいた話を後世に残すなら
昔に恐ろしい事件でも本当にあったのだろうか?


   ゲン「過程なぁ…ってもそんなの聞いたこともねぇし皆ただの作り話だろって、いつ作られたかもわかんねぇんだ」

   ゲン「案外どっかの"惑星<リージョン>"で本当にあった話でそれが[ワカツ]に流れてきただけとかかもな」ガッハッハ!

 リュート「はははっ、ちげぇねぇや!…ん?T-260どうかしたのか?」ゴクゴク

 笑いながら豪快にジョッキの中身を流し込みながら妙に黙りこくった古代文明の遺産…"T"シリーズの機械に話しかける
807 :続き 金曜日か土曜日 [saga]:2021/11/03(水) 14:18:56.27 ID:Pd11aneE0

 剣豪と旅を共にしてきたメカは基本的には無口だがそれにしたって今の迷信話をし始めてから何かを考えこむ様な
そんな沈黙を通しているような気がしてリュートは問いかけた


   T-260「いえ、ただノイズの様な物が走りました、不調でしょうか」

 レオナルド「うん?キミの修理が甘かったかな?後でもう一度ボクが見ておくよ」


 "T"シリーズ…古代に作られた通称"T<タチアナ>"の名を冠したメカは工学者の提案に黙って頷いた


  T-260「ゲン様、その話に関して諸説はあるのですか?」

   ゲン「おっ、どうした珍しいじゃねぇかお前がこんなのに興味持つなんて…
               そうさなぁ、生き物が死んじまう月食が起きると生まれてくる双子」

   ゲン「片方は地獄の底から従えた怪物と一緒に人を襲って、片方は人を護るっていうから」

   ゲン「じゃあ片方は悪党なのかってーと、そうじゃねぇ悪さする奴の戒めだし本当に世の中の奴らが皆いい奴なら」

   ゲン「そん時は姉ちゃんと弟が力合わせて、双子の力で地獄の門を閉じてくれるなんて伝わってる地域もあったな」


 信じられないだろうが地獄の門を閉じた事で"混沌の海<宇宙>"が出来て新しい"惑星<リージョン>"も誕生したとか
…まっ、こんなもんか?とゲンは語った。


   ブルー(双子が協力して地獄の門を塞ぐ、か)


 数百年に一度、死の月食が起こりその時に生まれた双子が力を合わせて"地獄に通ずる門"を封ずる
太古の昔より伝わる現実味の無い御伽話に耳を傾けながらコップに注いだ発泡酒を口に含んだ
 対極の存在にある双子が時としては手を取り世の為に戦う―――いや、元々は形さえ違えど世の為なのか
双子同士での殺し合いを宿命づけられている自分とは違うものだな、と彼は思った…


   ブルー「中々興味を惹かれる話だったな、他に面白い話は無いのか?」

    ゲン「あー、それならこういうのはどうだ―――――」


 月食は始まり、[クーロン]から見える月はもう半分が無くなり始めていた…暁月<ぎょうげつ>の刻は近い

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―――
――


【双子が旅立って9日目 午後 19時06分 [京]】


 気候としては熱帯雨林に類する[シンロウ]の空気と異なり、気温や湿度も低くまた[京]の季節も少し肌寒いくらいで
過ごしやすいものだった、一度は[マンハッタン]に寄ってこれから乗り込むであろう基地に仕掛ける時限式の爆発物を購入
 少し遅めの時間にはなったものの紅の法衣を来た術士は以前ゲン達が泊まっていた旅館でチェックインを済ませていた


  ルージュ(…遂に来ちゃったな、メタルブラックさんの所)


 [クーロン]へ向かいブラッククロスの件でエミリアが所属するグラディウスに行くより先に彼らは[京]を訪れた
案内された客室にとりあえず荷物を置いて、財布と携帯電話だけを持って外に出かける
 この街の[庭園]にて"ラビット"なる隊員を見つけ出し協力を要請を行う手筈のレッド達と合流予定だからだ


 ルージュ「…綺麗な"惑星<リージョン>"だよなぁ此処、こうして夜の[京]を歩くのももう一回観光目的でしたかったなぁ」


 落ち葉舞う美しい街並み、灯篭の寂しげな明かりを支える様に夜空の星光が煌めいて
風に揺れる柳の並木を抜けて紅き魔術師は観光スポットの[庭園]へと向かう…


 ルージュ「んっ」ヒュオオォォ…!


 突然、吹いてきた強風に煽られて目元を抑える、そしてふと夜空を見上げるとそこには美しい月が浮かんでいた



 ルージュ「…わぁ、綺麗だなぁ」


 今宵の満月はとても澄んだ"蒼"の輝きを放っていた、この世のどんな宝石よりも美しいと思える蒼月<そうげつ>が…
808 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/03(水) 19:32:39.76 ID:qmUOt1PuO
ロマサガ3の死食かな?
809 :続き明日 [saga]:2021/11/06(土) 23:10:21.03 ID:Y31XkU2P0

 橋を渡って[庭園]にたどり着けば仲間達は既に目当ての隊員と合流を果たしていた
ふよふよと宙に浮かぶ機械、タイプ2型と呼称されるメカがレッド等と話しているのが目視できる



  IRPOメカ隊員「[メタルブラック基地]を調査中です」フヨフヨ…


   アセルス「キミがラビットだね、ドールさんからお話は聞いてるよコレ書いてもらった紹介状」スッ

    レッド「メタルブラックの基地を調査中、か…そう、だよな」


   ラビット「……。」ジッ

   ラビット「IRPOの印ならび書かれている文字の筆跡がドール本人の物と完全一致、偽造でないことを確認しました」


   ラビット「書状の内容通り、アナタ方との共同任務に就きます」

    レッド「ああ、よろしくな!―――っとルージュ、宿をとってきてくれたのか?」


   ルージュ「うん、チェックインは済ませてきたよ」チラッ


 紅き魔術師は辺りを見渡す、今日はこの場所に多くの人が訪れていた
この"惑星<リージョン>"特有の着物姿の人間が飲み物や手作りのお弁当を持参して敷物を広げて皆が一様に空を見上げていた
 [京]は他所と比べても肌寒さのある土地でまた一年の中で最も秋の期間が長いとされている
今宵は蒼く輝く月が夜空を彩る、この時期だからこそ人々は地元の風習の"お月見"とやらを楽しむのだそうな



   ルージュ「人が多いね、道中で道行く人が話してた『おつきみ』って奴なのかい?」

    レッド「だな、俺達が来た方の道なんて縁日でもねぇのに屋台が出てたぜ、焼き鳥の美味そうな匂いだ」
   アセルス「うん、わたあめ屋さんとお団子屋さんまであったね」


 なるほど商魂逞しいというヤツなのか、と術士は思った
予定では今日でラビットと合流して彼の調査報告を訊き、監視や警備の手が薄い時間帯を狙って基地に潜入
悪の秘密結社の活動資金源と成り得る麻薬密造施設の爆破を目論んでいた

 作戦開始はどの道明日だ、であれば…





       ルージュ「僕達もお月見しようよ、今日はこんなにも月が綺麗なのだから」



 紅き魔術師は空に輝く『蒼』を見て美しい、純粋にそう感じた
心が不思議とザワザワする居ても立ってもいられない、胸の奥で何か言葉にし難い物が込み上げてくる感覚
 明日、知り合いを自らの手で斃すかもしれない、斃してしまうことになるのかもしれない……
そう考えると頭が重い、澄んだ水面に石を投げ入れて浮かんできた泥を更に綯交ぜにして濁り水を作られた気分になる
パーッと遊んで、騒いで笑って、今だけはそれを忘れたいだけなのかもしれない
 英気を養うという意味でも、振り返った時に笑える思い出話を作るためにも…やってみたい、彼はそう考えた



    レッド「景気づけか、それも悪くないかもな」

   アセルス「そうだね、こんなに綺麗なんだから見なくちゃ損だよね」



 なら何か飲み食いできるもの買いに行こうぜ!とレッド少年が声を上げて屋台に向かうとした時
姿が見えないなと思っていた白薔薇姫とBJ&Kが向いの橋から何やら袋を引っ提げてやってくるではないか


    白薔薇「必要な物はこちらですか?」ニッコリ
     BJ&K「屋台の方々がサービスしてくれました」ドッサリ


 旅の消耗品、食料の買い出しで別行動をしていた白薔薇姫とBJ&Kがリストに無い品を大量に持っていた
まるで最初からこの3人が今宵は此処でお月見しようぜ!っていうのを予知していたかの様に
彼女(ほとんどBJ&Kだが)はお団子やお総菜、飲み物の類を持っていた

 曰く、屋台前を通りかかった白薔薇に屋台の店主達が「べっぴんさんだね!これサービスするよ!」と渡して来たとか…
重さで腕がプルプルしてる様な気がするBJ&Kとにこやかに笑う白薔薇を見て3人は暫く呆気に取られた後、盛大に笑った
 準備に抜かりは無しとは恐れ入った、これは白薔薇には頭が上がらないな、と
810 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/11/07(日) 23:56:00.27 ID:DcTYNOu70
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 古来、人は空に輝く物を信仰した

 太陽には神が住まうと信じ人間に齎す光の恩恵や作物の豊穣を乞い願った、風土と風習は違えど何かを信仰する文化は
必ず人の根付く大地にはあった、太陽信仰とは違うが夜空に輝く月に祈りを捧げる古めかしい文化も当然ある
 大空で輝く物に対して畏れ敬う…形式こそ違えど本質は変わらない


 人がそれに人智を超えた神秘を感じたならそれに対して畏敬を以て信奉し得られる恩恵へ感謝する、そこに差は無かった





    ブルー「…紅い月だな」



  エミリア「綺麗だけど、血の色みたいで少し気味が悪いわね…」

   ブルー「ふん、気色が悪い言いつつ貴様もジッと見続けているではないか」

  エミリア「そりゃそうだけど…」


    ゲン「はははっ、さっきの話の後だから不吉に見えちまったってのもあるか?」


 酒を呷った剣豪が豪快に笑う、元モデルの彼女は少しだけムッとして「別にそーじゃありませんよー!」と拗ねた様に
果物酒の入ったグラスに唇をつける、酒に弱い事を知っている同僚のアニー、酒屋で同席したことのあるリュートは
そんなに一気に飲んで大丈夫かと?心配そうに見つめた


 レオナルド「まぁ赤い月は不吉の象徴っていうのはあながち間違ってはいないからね」

 レオナルド「統計データ上、何かしらの災害が起きる直前には紅い月が出ると言うから」


 空に光る紅に対してネガティブな意見が出る中、蒼の魔術師は口を開いた





   ブルー「俺は、別に紅い月を不吉の象徴だとは思わんがな…」



  リュート「おろ?珍しい、いつも赤いモンを目のカタキにしててトマトでさえガツガツ噛み砕くのに?」

   ブルー「貴様の中での俺はどういう人物像なんだ…」


   ブルー「赤い月が見えるのは学説上、噴火や山火事で発生した塵や水蒸気が原因でそう見えるというのが多い」


   ブルー「今レオナルドが言った様にそれが見えてからは地震だとか災害が出るケースがある」

   ブルー「…不吉の象徴というよりは、警告や注意だな」




   ブルー「学術理論で解き明かせる自然現象を以てして、人々に"事が起こるから備えておけ"と説いている」


   ブルー「…俺はそう解釈してるがな」



 学徒として本の虫だった頃に文献で見た意味合い、そこから自分が感じた毀損の無い意見を彼は述べた
古代の人間が太陽や月を信仰したのはそういった一種のサインを知れたからというのもある
 暦<こよみ>を知る術<すべ>であり、方角や時間、季節の概念を賜り、世に起こる恵みや厄災の"予報"にもなった


 …【紅】はあまり好きな色じゃないけど、アレ自体は別に悪くはない、ただの自然現象、論理的に解明できる仕組みだ

 人々を救おうとそんな声なき声を上げ、警戒心を抱かせる―――あまり好きになれない色だが認めるべきは認めてやる

811 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/11/07(日) 23:58:27.76 ID:DcTYNOu70


 何か信じられない様な物でも見た顔で各々が蒼き魔術師の顔を見る、表情が判別できないスライムですら
呆けている様にブルーは見えてバツの悪い顔になる


   ブルー「……なんだ貴様ら、そんなに変な事を言ったか?」イラッ



   アニー「いや別に変な事は言ってはいないんだけどなんかね」

  リュート「お、おう…なんか今日は珍しく赤い物に対して優しいなって、こりゃ明日は月でも消し飛ぶんじゃ…」



 あっ、いや、月は無くなってたかと茶化してジョッキの中身を喉に流し込む無職男性に益々眉間の皺を寄せるのであった
言いたいことは解ってる自分らしく無い発言だったとも、そんなことは分かっているんだ

 生死を賭けた激戦から誰一人欠けずに生還したからなのか、今日に限って妙なセンチメンタルになっている自分が
存在していることには気付いている
 …認めたく無いが、自分はコイツ等に多少なりとも愛着が湧いてるのかもしれない、蒼き魔術師はそう思う


 そんな彼らと今宵見ている【紅】は不思議と嫌な気持ちがしない、それどころか美しいとすら感じた
胸の奥がざわついて、だのに…何処かひどく冷静な自分が居て今まで考えた事も無い言葉が浮かんでくる
誰にも漏らした事の無い自分の心情を何かの弾みでポロリと零してしまいそうな自分が居る
 今まで凍り付いていた物が一気に解氷して流れ出してしまいそうな、…落ち着いて打明けたくなる不思議な気持ち



 ――――……心細い?不安や寂しい? どんなちっぽけな事でも良いから誰かに打明けたい?


 脳裏にこの歳まで考えた事も無かったワードが飛び交って消えていく、今まで考えた事も無い"言葉<感情>"の数々が





…きっと紅い月の所為だな、皆既月食は星々との間での引力で人を情緒不安定にさせるらしいからな。

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 紅き魔術師は[京]の[庭園]にて気の置ける仲間達と共に語らい合い、夜風を浴びて空に浮かんだ蒼月を眺めていた
滅多に見れるものじゃない統計上かなりのレアケースの月

 ありえないこと、相当珍しい物、もしも見れるのならばそれは即ち幸運であり神に愛された者であるとそれ故に
蒼月はこう称されることもある

――――青い月は奇跡の象徴である、と



  アセルス「―――ってことがあったんだよ、だから二人でイルドゥンの寝室に捕まえた虫を…って聞いてる?」

  ルージュ「えっ、あっ!?ごめん…空を見上げてたからつい」


   レッド「今日は確かにお月様が綺麗だからなぁ…スーパーブルームーンとか言ってたっけ?」

   白薔薇「ええ、今宵は綺麗な月ですよね……美しい程の青は奇跡や幸福を与えると言いますわ」

   白薔薇「童話でも"幸せの青い鳥"という物があるように昔からそう言った意味はあるのです」

  ルージュ「読んだことがありますよ、幸福を呼ぶ青い鳥は本当は近くに居るのそれに気づかず求めて旅する話ですね」


 その身に青い血液を宿す妖魔の貴婦人は静かに語る。


   白薔薇「…ふと国ごとに解釈の違う青い鳥の書籍を読み考えた事があるのです、青い鳥を見つけ出せた者は幸福と」

   白薔薇「であれば、"青い鳥自身"は一体どうやって幸せになるのでしょうか…"月自身"は一体何を見上げるのか」


 自身が人に幸福や奇跡を授ける存在であるならば、その当人は誰から幸福や奇跡を授かるのだろうか?
そう考えると見上げる人々を幸せにする蒼い月はなんと孤独な存在なのだろうとふと思ってしまう


812 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/11/08(月) 00:16:50.30 ID:6x6tlwg90


   レッド「なんつーか哲学的な話だなぁ…確かにそういわれるとあの夜空に浮かぶお月さんも可哀そうかもな」

   レッド「だって、月自身は月なんてみれねぇだろ?俺達は普通にこうやって飲み食いしながらお月見してる訳だし」

   レッド「月は一体何を見て綺麗だなぁとか思うんだろうなぁ」


  ルージュ「ん〜…可哀そう、なのかな?」


   白薔薇「ルージュさん?」




  ルージュ「僕は、蒼い月が可哀そうな子だとは思わないよ、だって蒼い月は僕達が住んでる星を見てるんだもん!」



 その発言に全員が目をきょとんと丸くした、なるほど…地上に居る人間がお月見してるなら
向こうさんはもっと蒼く輝く水の星を見てるのか…

 月視点なら幸せの"青い水の星"がいつだって間近にあるという事なのだろうか



   白薔薇「なるほど…そういう解釈ですか、そういう物もあるのですね…その発想はありませんでしたわ」

  ルージュ「僕は皆が皆、誰しもが幸せになれる権利があると思うよ、きっと例外なんて無いんだ」

  ルージュ「人は青い鳥を探したり捕まえることができる、でも青い鳥自身は青い鳥を捕まえられない」


  ルージュ「きっとそんなことはないんだよ」


  ルージュ「青い鳥にとっての別の青い鳥が居るんだよ、もしかしたら僕達には気付けないだけで彼らには」

  ルージュ「彼らだけが口にできる幻の青い果物とか青い木の実とか、もしかしたら青い花があるのかもしれないし」


  ルージュ「月には月で僕達からの場所から観測できないけど、あの宇宙区域地点から見える別の月があるかもよ?」




  ルージュ「ただ自分だけが誰かに奇跡や幸福を与えるだけで、自分は誰からも奇跡や幸せを貰えない」



  ルージュ「僕はそうは思いたくない、そんなの悲しすぎるから……―――だからそうであって欲しいなって」


 それは違うし、そうであってはならないんだ。

 紅き魔術師はそう口語する、きっと自分達には分からないだけで相手にも大切な何かや誰かが居てくれる筈なのだと


   白薔薇「ふふっ、そうですわね、そうであった方がいいですよね」クスッ


 妖魔の貴婦人は月を見上げて慈しむ様に微笑む、空から無償の輝きを振りまいて夜道に疲れ果てた人々の心に感動を与え
もう一度辛く険しい道のりを歩き続けようという心持にさせてくれる蒼月

 そんな蒼月にもきっと自身にとっての幸せや頑張ろうとするための何かがあるのだ
案外、自分の"応援<エール>"で立ち上がり日々頑張ろうとする人々の姿が彼にとっての生きがいなのかもしれない

 そう考えたら、それはそれで相互に助け合っているということになるのでは?



   ルージュ(…誰かが空に浮かぶ綺麗な月に祝福されて、頑張ってねって応援される)


   ルージュ(もしも、もしも月が誰からも祝福されないのなら、祈ってもらえないのなら…そうだなぁ)




   ルージュ(なら、せめて僕くらいは祈ってあげたい、かな…)


813 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/11/08(月) 00:35:00.43 ID:6x6tlwg90
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  二人の魔術師が居た。



  奇しくも、同じ時間、同じ刻の中で二人は蒼と紅の月をそれぞれ見上げていた






 蒼は暁月を見て、これからの旅路は困難が伴う茨の道かもしれないと感じた


 蒼は誓った。




 自分は決して挫けない、生きてみせると









 紅は蒼月を見て、光を齎す存在と自身の旅路に幸があって欲しいと思った


 紅は祈った。




 自分のこれからに幸を、生きてみたいと




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814 :少し忙しくなるのでもしかしたら再来週かもしれない、できれば一週間以内に続き [saga]:2021/11/08(月) 00:38:04.33 ID:6x6tlwg90
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            今回は此処まで!



           ※ - 第6章 - ※



        〜 蒼月に祈りを、暁月に誓いを 〜


                              〜 完 〜

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815 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/08(月) 07:35:51.48 ID:kUQRjw8B0
おつー
ルージュくんいい子でかわいい
816 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/11/21(日) 23:35:22.51 ID:tk2iaXF30






           ※ - 第7章 - ※



        〜 それでも明日はやって来る 〜



817 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga!red_res]:2021/11/21(日) 23:37:00.15 ID:tk2iaXF30


 その日は、一際暑い一日だった


 ジッとただ立ち尽くすだけで汗が滲む様な暑さの中を涼風が一陣吹きぬけていく
ふと首を上向けてみれば少し前にも見上げた蒼穹は色褪せていて、徐々に違う色が混ざりつつあった
 齢7歳の二人は勝手にそれぞれの学院を抜け出して来たことを思い出し互いに表情を変えた
こっぴどく叱られてしまうだろうなと眉を八の字にして笑い、もう一人はバツの悪そうな顔で後ろ頭を掻いた



 かと言って今更戻る気なんて無かった、どうせ怒られるのが確定しているなら慌てて帰っても意味は無い
一時間遅れようが三時間遅れようが遅れたという事実は変わらないと開き直った



 暑い中、二人のよく似た少年…整った顔立ちと長く伸びた髪から少女にも見えたかもしれない





 ほんの少しだけ暑さが薄れていく街の中央広場で二人は此処まで来たなら夕日も見てみようと

 蒼を纏った金髪の子と紅を纏った銀髪の子、どちらが先にでもなく息を合わせてそう言った





  『刻が経つのは早い物だな、もう陽が傾き出した』

  【ね、本当に不思議だと思うよ】


  『楽しい時ほど早く過ぎる、月並みな言葉だが…その意味を実感出来た気がする』

  【時間は皆に等しく平等だー!っていうけれど本当はそんなことないのかもね】


  『ああ、苦痛に感じる者や喜楽を噛みしめられる者、人によって流れ方は違う』

  【根っこの部分は同じモノの筈なのに人がそれをどう捉えるかが大事ってお話だよね】



  『ああ、そうだな』

  【ふふ、そうだよね!】





 邂逅を果たした広場の噴水の縁をベンチ代わり腰かけてお互い何も言わずにただ街を眺めていた
修道士が手に学院の教えを綴った聖書を持ち聖堂で祈りを捧げる為に忙しくなく移動し
ある者は特殊な呼吸をしようと木陰で息を整えて、観光客は西日になりつつある斜陽から
目を保護すべくサングラスの位置を正していく


 一際暑い夏の日がほんの少しだけ去っていく瞬間、晩夏もやがては立ち消え、鈴虫が舞台準備に急く


 吹き抜けた涼風は遠からぬ未来を暗示していた
時が訪れれば自然と現れる摂理の予兆、街に根付く息遣いも少しずつそれ等を感じ取って変わっていく
 小さな変化、だけども大きな変化―――それを二人の少年は何を言うでもなく見つめていた



  『人を視る、というのも存外つまらないものではないな』

  【"生きている"それを実感できるからね】


 街が生きている、人が活きている。

 多くの命がそこにあって、それぞれが互いの相互関係で成り立っている
誰かが誰かの為に存在していて、同時に誰かが誰かから渡された物で今日を生きて
そして誰かは誰かの犠牲の上で成り立ち明日を迎える、普段気が付かないだけで世界はきっとそうして回っている


―――
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818 :続き火曜日か水曜日予定 [saga]:2021/11/21(日) 23:38:33.99 ID:tk2iaXF30

【双子が旅立って10日目 午後 16時00分 [京]】


 紅葉の色が最も映える夕暮れ時、時刻はジャスト16時ぴったり、ヒトロクマルマルである


 眠気覚ましの湯浴み後に重くなった銀髪の水分をふき取り旅館備え付けのドライヤーで髪をよく乾かして彼は着慣れた
紅の法衣を身に纏う、[シンロウ]で調達した精霊銀の装備やドール隊員から選別として頂いた幾つかの支給品も身に着け
彼は揺り椅子の上で時計の長針が天辺に上り詰めるのを待っていた

 昨晩、[IRPO]のメカ隊員ラビットと接触して協力を取り付ける事に成功した彼らは潜入先の基地について
分かっている情報を提供してもらった

 曰く、物資の搬入や人員の入れ替え、また基地内の警備担当者による定時見回りスケジュール等々




 結論から言うと、この時間帯が[メタルブラック基地]を攻略する上で一番の攻め時だそうだ



[書院]の地下にブラッククロスの資金源となる麻薬の密造施設がある、彼らにとっての金鉱脈を潰し
"可能であるならば"メタルブラックに警察への自首あるいは組織を潰す為の協力…つまりは司法取引だが
恐らく彼は主君を裏切る様な者ではない

 前日から思ってはいたが、どれだけ希望は薄くとも藁にも縋りたくなるのが人間のサガだ


 限りなく可能性が0%に近かったとしても"可能であるならば"穏便に済ませたい




 肝心の入り口に関してだが「ぬけみち」とやたら達筆で書かれた掛け軸の裏が出入口になっているらしく
[書院]に出入りする修行僧に扮した麻薬売人もそこから入っているらしく本来であれば掛け軸前に
誰かしらの見張りが居る、なんならメタルブラック本人が掛け軸前に堂々と立っていて来訪者が基地内に入り込まない様に
監視していることだってあるのだそうだ

 今日のこの時間帯なら掛け軸の前に見張りは居らず、しかもご丁寧にブラッククロスの手の者が基地に入る為にロックを
敢えて解除してあるとのこと


 それ故にルージュ一行は昨日[京]に到着したにも関わらず、行動を起こさず黄昏時まで旅館で息を潜めていたのである
時計の針が16時をぴったり指し示したタイミングで戸を叩く音がする




      BJ&K「ルージュさん、時間です」ピピッ

    ルージュ「ん、今行くよBJ&K」


 医療メカが予定通り作戦決行の時間に迎えに来た、彼は必要な荷物を持って旅館を出る
チェックアウトはしていない、事が終わればまた戻って来る予定だからだ
 入口には既に白薔薇姫とアセルスお嬢、レッド少年も居る……ラビットは先に件の掛け軸前に居るとの事だ



    レッド「それじゃあ、行くか」


 術士の姿を見るなり少年がそう言葉を発した、何も知らない観光客や旅館の従業員からすれば知り合いが来たから
引き続き観光の為に街を回ろうという意味にしか聞こえないことだろう
 何気ないこの一言に、どれだけの決意と緊張が入り混じっていたかは知る由も無い



 友好的だった知人を―――メタルブラックをこれから切り捨てるやもしれぬ、それは皆が思っている事で口には出さない


 彼らは橋を渡り、落ち葉舞う道を歩み、幾度か訪れた店の前を素通りして、長い坂道を登っていく
前に訪れた時と同じで紅く燃え上がる様な美しい輝きが[京]の都を包んでいた
 夕焼けの朱に照らされた街並みを進み、彼らは遂に[書院]へとたどり着いてしまった…

 事前報告の通り、院内には職員は誰一人として居なかった…否、道中見えてしまったのだ
[クーロン]でも見かけた巡礼者と同じ格好をした人物が建物の中に入っていくのを
 そして、誰も居ない……入った筈の修行僧の姿が影も形も無い、隠れられる場所など何処にも無いと言うのに


 例の掛け軸がある部屋にも巡礼者の姿は無く、代わりに天井からラビットがふよふよと降りてくる
曰く、麻薬の密売人がやってきて自分に気づかずに基地内へ入っていった、と
819 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/22(月) 03:07:57.08 ID:CfwkyEjn0
乙です
メタルブラック楽しみ
820 :続き 金曜日か土曜日 [saga]:2021/11/24(水) 23:24:46.52 ID:r3avWaxy0


   ラビット「この裏に空間があります」

 降りてきたメカ隊員は「ぬけみち」と書かれた掛け軸を示す、その言葉を受けてレッド少年がゆっくりと手を伸ばすと…


          レッド「おあっ!?」シュインッ!!


  アセルス「烈人君!?」

  ルージュ「き、消えたっ!?」


 手を触れた途端、彼の身体は薄くなりそのまま回転しながら浮かび上がったかと思えば
掛け軸に吸い込まれる様にして姿が消えた
 白薔薇がそれを見て口元に手を当て、「…なるほど一種の転移術のようですね」と興味深そうに眺める

 [ファシナトゥール]の城にも転移術を利用した移動装置はある
台の上に乗れば舞う花弁に包まれて違う棟へと運ばれる物だが彼女は主人の城にある物と違い
妖力を感じないことに疑問を抱く


   ラビット「術と科学機器の2種混合装置のようです、術に長けた人物が近づいても察知できないようです」


 メカ隊員の解説を聴いて成程と白薔薇は納得し、同時に機械の力は妖魔の霊感でさえもこう欺くのですかと感心する
同じく術士である紅き魔術師も術的な力を全く感知できなかったことに驚いた
 薄っぺらい壁掛けの一枚、それが捲れても後ろには壁しかなくどうみてもちっぽけな掛け軸一枚の裏に
人間一人が通れる様な大穴も扉もあるとは思えない

 触れればこの軸の裏側、厳密に言えば壁を物理的に貫通して内部にある秘密基地に入れるという仕組みか


  ヒュンッ!!

   レッド「び、吃驚したぁ……」


 少年がまるで瞬間移動でもしてきたように現れた、どうやら向こう側から帰ってきたようだ
仲間の顔と景色を一瞥してどうにか地上に戻って来ることができたのだとホッと息をつく


   レッド「入ってみたが、この中凄いぜ…[京]の建物とは思えないくらいの無骨な創りだった」

   レッド「瞬間移動してすぐ後ろに緑色の光がある、暗闇の中で蛍光塗料ペンで縦長の長方形描いたみたいな感じの」

   レッド「どうやらそれに触れれば地上に戻れるみてぇーだ」



  アセルス「じゃあ、予定通り基地に時限式の爆弾を仕掛けたら…」


   レッド「ああ、退路は確認できたからな、そこまで戻ってくれば無事に脱出成功ってワケだ」


 一同その言葉に頷いて、掛け軸に触れていく
紅き法衣の青年も仲間達と同じように手を当てれば、浮遊感に襲われる
 自身の身が宙を舞い、視界が文字通り360度回転―――したかと思えば何処かの物置か何かと思わしき場所に立っていた



  ルージュ「ハッ……ここは…」キョロキョロ


 [京]の自然豊かな香りとは違う、鉄と油の匂い…いや、それだけじゃない
長い間放置された雨水をろ過しようと熱した時に立ち上る様な何とも言えない臭さ
 銀髪の青年は自然と裾で鼻を覆いながら眉を顰めていた


   BJ&K「大気中に人体にとって有害な成分はありませんね」ピピッ


 医療メカがそう判断して一先ずは安心する、一歩足を踏み出すと金属の上を歩く音が響く
トタン製の鉄板床から年季の入った所々塗装が剥げて錆が目立つトタン階段を降りていく

……もう大昔からこの麻薬工場が稼働していたというのがよくわかる


 階段を降りきって部屋の隅々を見渡すと部屋の端っこに無造作に[300クレジット]が置かれているのが目に映る
察するに此処で外部から来た"商売人"が品を受け取り代金を置いていくのか
あるいは組織本部へ輸送予定の献金を近々、それこそ本日中にでも輸送予定だから仮置きしているのか…
821 :続き明日か明後日 [saga]:2021/11/27(土) 23:48:49.93 ID:MkOxy8fh0

 徐に金袋に近づいて手に取ったレッドが術士の方に投げて彼は慌ててそれを受け止める
ずっしりとしたクレジットの重みが両の掌にのしかかる、魔術師は険しい表情をした少年の顔を見つめる


   レッド「ブラッククロスの金なんざ百害あっても一利無い、この麻薬基地もどうせ用意した爆弾で吹っ飛ばすんだ」

   レッド「コソ泥みたいな真似だけど旅に役立つモンは貰うだけ貰うさ、[秘術]の為にも先立つ物が要るんだろう?」


 一理ある、無法都市で[金]を買おうとしたがあまりの値段に中々手が出せず結局[シンロウ]に行ったのは記憶に新しい
遺跡探索で一山当てて購入するという金策も[ベルヴァ]の一件で有耶無耶になり成果は……まぁ強い武具の新調はできたが
 何れにせよ犯罪組織のテロ活動や非人道的な科学実験の助けになり得る資金や物資を放置しておくのは忍びない
ドール隊員からも押収品についてはお墨付きをもらっている、[IRPO]の権限様々といった所だ


  ルージュ「そう言う事なら…」スッ


―――
――


 金袋を[バックパック]に仕舞いこむ、少しだけ重量の増した荷物を背負い直してから潜入者一行は
入口から一歩先の通路へと歩みを進める
 曲がり角の所を覗き込むと全身緑色のタイツスーツの人間が3人だけ見回っているのが見える
本来ならばもっと厳重な警備態勢だったのかもしれない


   アセルス「イチ、ニのサンで飛び出してそれぞれ各個撃破しよう」


 [緑戦闘員]は全部で3体、この通路部屋も別エリアへと3つに枝分かれしている…入ってきた入口からすぐに北側南側への
枝分かれ、南側に更に階段があって下階層へと繋がっている
 未だ自分達の侵入は気付かれていない、ここで討ち逃して増援を呼ばれたり最奥の警備を固められるのは好ましくない


 幸いにもラビット隊員を数に入れて自分達は6名だ、であれば[1軍]、[2軍]、[3軍]と2名ずつパーティチームを編成して
それぞれを強襲すればまだ警報も鳴らず平穏という名の微温湯に浸って油断しきっている敵基地内を堂々と歩けるワケだ


  ルージュ「よし!僕とレッド、アセルスは白薔薇さんと一緒で、BJ&Kはラビット隊員と組む、これでどう?」

  アセルス「OK、白薔薇と南側の戦闘員の方をやっつけるよ」


   レッド「ああ、姉ちゃんはそっちを頼む俺達は北側の奴だな」


    BJ&K「では我々は階段の戦闘員ですか」
  ラビット「了解です」


 それぞれが分担して各個撃破に務む、いつかのキグナス号での戦いを思い出す様な状況だ
各員が武器を手に取り、ルージュも術の印を直ぐ様切ることができる様にしておく


   レッド「行くぞ…イチ」
  アセルス「ニの…」


  ルージュ「サンっっ!!」ダッ!



   緑戦闘員A「キー!(!? な、なにやつ!?)」
   緑戦闘員B「キー!(曲者じゃ!ええい!指揮官殿が外の見回りに出ておるこの様な時分にっ!)」
   緑戦闘員C「キー!(おのれ!ネズミ共め……その首討ち取ってくれようぞ!!)」


 戦闘員達が一斉に飛び出した彼らの姿を認識するや否やそれぞれの反応を見せる、あからさまに動揺を隠せない者
数の上で分が悪いと速やかに判断してせめて基地内の警報装置を作動、可能ならば増援を率いて戻ろうとするもの
体術の構えを取り勇猛果敢に攻めんとする者


  ルージュ「相変わらず何言ってるか分からないけれど…っ!![エナジーチェーン]!!」キュィィン!!


 紅の魔術師は指先から思念の鎖を発現させて、動揺から我に返り基地内の異常を知らせようと
背を向けた戦闘員の脚を絡めとる、同時に背後から[妖術]と[心術]が発動する時の魔力の流れを感じ取り
階下からは重火器による攻撃を受けた戦闘員の悲鳴と思わしき甲高い『キー!』という声が響く

 脚を取りすっ転ばせた戦闘員の顔面にレッド少年の壁を蹴ってそのままの勢いを活かして急降下していく[三角蹴り]が
綺麗に決まった、心なしか動きがアルカイザーの[ディフレクトランス]に似てる気がする、きっと彼もファンなのだろう
822 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/11/29(月) 03:09:51.76 ID:uaPMP7L30
おつー
ブラッククロス戦闘員好き
823 :>>1です [saga]:2021/11/29(月) 12:27:35.18 ID:uZ+szydD0
予定変更で続き土曜日予定
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/12/04(土) 23:39:12.15 ID:K9MQ64G60

 戦闘員を沈黙させた二人は後方を振り返る、[生命波動]と呼び出された[ジャッカル]によって倒れた戦闘員を背にして
こちらは完了したと女性陣が手を振っていた程なくして階下から浮上してきたラビット隊員も目標を沈黙させたとの事
 一行は合流して慎重に歩み始める入口から三方に分岐していることから分かる様に基地内は入り組んでいた


  アセルス「あれ、こっちって通った道だっけ…」

  ルージュ「上を見てごらんよ、ほらあの金網上の足場、あそこに繋がってたんだよ」


 基地を歩き回り道中でまた[300クレジット]を拾ったり、彼らの支給武器と思われる[サムライソード]の置き場を発見し
今しがた自分達が歩いている場所はその武器置き場の真下だと術士は言った

 多少迷いもしたがまだ踏み歩いていない場所に出たのだなと彼らは安堵する、あまり時間をかけすぎては厄介な事になる
幸いにもまだ基地内に潜入された事実は広く伝わっていないのだから



 スッ…


   レッド「ん?なんだ…なんか匂うな」クンクン


 敵がいないか警戒しながら通路を覗き見る少年はふと、妙な香りに気が付く
甘ったるい奇妙な匂いに鼻をひくつかせながら彼は視線の先に[緑戦闘員]が二人何かを話し合っているのが目に映る
彼らのすぐ傍には鉄扉が一枚、そしてレッドから見て左側にはガラス張りの部屋があって天井に電灯でもついてるのか
薄暗い基地内の通路側にまで強い光が漏れ出して来るのが解った


  レッド(…なんだこの角度からじゃよく見えねぇけど左側のガラス部屋、何かあんのか?)

  白薔薇(あら、この香りは…)スンスン



 ふと花飾りの妖魔貴婦人が空気中に舞う香りに気が付く、これは"花"の匂いであることに気が付く…それも普通ではない
左側から溢れる強い光は太陽光に性質が非常に似ていて
室内栽培などに使われる最新式のLEDライトのソレだとメカ勢は察する

 妖魔の姫とメカ2機はそこから左の部屋がなんであるか大まかに理解した……



   緑戦闘員D「キー(新薬の配合はどうでござるか?)」
   緑戦闘員E「キー(依存性に難がありで調整が必要であろうな、被検体が来ることを切に願いたい)」



 ルージュ(3人とも…準備はいいかい?)
  レッド(応ともよ)
 アセルス(こっちもOK)


  ルージュ「それじゃあ…[隠行]」スゥゥ…!
   レッド「…[隠行]」スゥゥゥゥ…!
  アセルス「…[隠行]」フッ…!



 刹那、3人の姿が霞みが如く消えた…っ!否、そこに存在してはいるのだ!!
彼らは以前[京]に来た時に[心術]の資質を得た、その甲斐あって自らの姿を他人に知覚させなくなる[隠行]を習得していた
人間が自身の内にある潜在能力や力を引き出す術…ッ!極限までに気配を断ち、そこに居るはずなのに居ないと錯覚させる
 周囲の空気と同化した彼ら3人が先行して近づき
未だ接近に気づかぬ敵の喉元に拳を鳩尾に鞘による鋭い突きを至近距離からの[魔術]で意識を刈り取り―――

 こうして彼らは未だここまで潜入に気づかれずに数々の難所を切り抜けてきたのであるッッ!!


その様はまるで忍ぶ者、即ちニンジャめいたアクションであった…!


    ド ス ッ !!!


    緑戦闘員D「ギッ!?(ぐえっ!?)」ドサッ

    緑戦闘員E「キー!(ど、どうしたでござるか同胞よ!)」


  ゴスッ!

    緑戦闘員E「」ドサッ
825 :続き明日か明後日予定 [saga]:2021/12/04(土) 23:40:53.12 ID:K9MQ64G60

 しめやかに気絶した戦闘員の傍らで彼らは余人の眼が無い事を確認してから[隠行]を解く、ふぅ…と大きく息を吸い込む
この術を使うと如何せん水中に潜る感覚で息を殺さねばならぬのだから息苦しくて困る
 呼吸が碌にできない状態では派手な大技や術を使うこともできない、必然的に一時的な隠れ蓑としてしか機能しない


  レッド「何言ってたかわからねぇけどこんな所での立ち話だ碌でもねぇ内容だったんだろうな」チラッ




    ガラス越しに見える部屋『 一面のお花畑  』



  アセルス「この花ってそういうことだよね?…刑事物のテレビドラマとかの中だけの存在だと思ってたけどさ」

  ルージュ「ケシの花ってヤツ?…やたら甘い感じの変な匂いがするとは思ったけど」


 色鮮やかな花が無数にある花壇には咲き乱れていた、可憐に咲く…とても人を破滅に導くとは思えんような花々が
硝子越しにその姿を見てルージュは何とも言えない心持になった


  ルージュ(…こんなに美しい花なのに)グッ…!


 欲望と禁忌の花園が此処にあるのならば目的の麻薬製造釜も恐らく近い事だろう、レッド少年とアセルスお嬢が
気絶させた戦闘員をとりあえず人目に見つからぬ所に隠せないものかと戦闘員を発見した際に見た鉄扉へと目を見やる
 少年は奥に何か居ないか警戒しながら扉を開けるが…



    レッド「うっ…こいつぁ…」ギリッ


 紅い鉄扉は刑務所の囚人用のソレと同じように顔を覗かせる格子がついていた、部屋の中は簡素な物で狭い一部屋に
パイプ椅子が二脚、そして机が一つ…
 それこそ先程アセルスが口にした刑事ドラマとやらに出てきそうな尋問室じみたシンプルな部屋だが問題は
地べたに置かれた料理の乗ったトレイと横倒しになったパイプ椅子である

 パン一切れによく分からないスープの入った器のシンプルなメニュー…爪で引っ掻いた様な後がある机と
暴れた拍子で倒れたとしか思えない椅子、極めつけに鉄扉は外側から施錠できるタイプで
中に入った者を逃さない仕組みと来た…扉の内側には何かが衝突したようなボコボコの跡が真新しい



   白薔薇「…酷い物ですわね」


 その部屋の"用途"がなんであるかを察してレッドは歯を食いしばる、彼は純粋な少年だった
だからこそ年若い彼の正義感がこの行いを一層許せなかったのだ


 背後から覗き見て部屋の内情を知ったアセルスも声を失いただ両手で口元を覆うだけで
そんな彼女の肩を抱き寄せて下がらせたのが率直な感想を述べた白薔薇姫である

 紅き魔術師もただ黙って俯き目を閉じた




 ―――…組織の人間の休憩所にしてはお粗末過ぎる、百歩譲ってそうだとしても食事を地べたに置く理由や
              机の引っ掻き痕、倒れたままの椅子や内側から何度も扉を殴打した跡の説明がつかない



 ここが麻薬の密造施設であるという事を考えれば容易に見当もつく


   レッド「ルージュ、わりぃけどコイツ等を縛ってそこの部屋にぶち込むの手伝ってくれ」
  ルージュ「うん…」


 少年はそう言いながら震えるアセルスの肩を抱きしめる白薔薇姫に目配せをする
それを受け取って白薔薇は「アセルス様、私達はBJさん達と敵が来ないかそちらを見張りましょう」と部屋から離れさせる

 戦闘員二人を[バックパック]から取り出した紐で縛って部屋に放り込み重々しい鉄扉を閉じる
重量のある扉が完全に閉じた後、彼らは中に居る二人が目覚めても出てこれないように鍵で施錠しておいた


   ラビット「証拠写真の撮影を求めます、違法植物培養設備の方へ進路を取れますか?」フヨフヨ…

    レッド「そっちか…」チラッ
826 :続きは木曜日か金曜日予定 [saga]:2021/12/06(月) 22:38:15.77 ID:sB9mSSjh0


   アセルス「…行こう!これは大事なこと、記録に残しておかなくちゃいけない大事なことなんだ」グッ


 同じく非道に対する怒りとも取れる震えを抑えぬまま固く拳を握ったアセルスお嬢が静かに口にした
証拠写真として、誰かの目に触れることのできる資料として後世に遺さねばならない

 時が立てばいつかは人々の記憶から忘れ去られ、風化する事件や出来事はある
しかしながら人間には断じて許してはいけないタブーがあるのだ、越えてはならない一線というものがあるのだよ
 それは容易に風化させてはならぬ事柄だ、然るべき機関や書庫に記録され二度とあってはならない事と記されるべきだ


 どんな大きな組織であっても、どれ程の規模や尽力を尽くしても必ず罪は暴かれる


 警察機関の資料室で埃被った解決済みの調査ファイルがそう主張するように、これも未来の悪党への抑制となればいい


―――
――



 艶やかな赤紫の花がちらほら咲き乱れる花壇をラビット隊員が内蔵カメラで撮影していく、先程[緑戦闘員]を放り込んだ
例の部屋は当然既に撮影済みだ、……至る所に[術酒]や[最高傷薬]が落ちてるのが目に映る
 BJ&Kに成分を精査してもらったところ、彼曰く"アレな成分"は入っていないとの事で使う分には問題はないらしいが



 ルージュ「正直、気が引けるよね…こんな所に落ちてた薬とか使うの、いや一応は貰っていくけどさ」

  BJ&K「先程も申しましたがトリニティの法令に反する薬物反応は検知されていません依存性も無く人体に無害です」


 ルージュ「うっ、それは分かったけどさぁ…そのぉ、気持ちの問題というか、その、ね?」


 術の力を満たす特注の酒と[最高傷薬]が培養の為の原料の一部らしいから落ちていたという見識だが
"おクスリの花壇"の傍らに落ちてる回復薬とか色んな意味で何か嫌だなぁ、とルージュは独り言ちた

 シュルリ…


 術士の耳が何かを這う様な音を拾ったのは彼が脚を何かに取られて態勢を崩しかけるのとほぼ同時であった


  ルージュ「うわぁぁぁっ!?」

   白薔薇「ルージュさんっ!!―――ハッ!あれは!!」


 一本の蔓の様な物が紅き魔術師の脚に絡みついていた――――花壇の花々に埋もれる様に隠れていたソイツを妖魔の姫は
直ぐに見抜いた…ウツボカズラの様な食虫植物にありがちな捕虫袋を持つ植物モンスター[トラップバイン]だ…っ!
 一般的な食虫植物との最大の違いは捕虫袋の形が蕾状態のチューリップのような形状とその大きさが人間の頭部に匹敵
そして獲物を喰らう時はその蕾がガッポリと開いて一気に人間一人を[丸のみ]にできる程にまで膨れ上がるということだ

 虫だけでなく哺乳類をも喰らう肉食性の植物であるが動き自体が遅く不用意に近づかなければ問題無いとされ
トリニティ政府からは"敵ランク4"相当とそこまで危険視はされていない存在なのだが…


   レッド「こいつっ…!花壇の中にモグラみてぇに潜伏してやがったのか!?」チャキッ


 全長の半分近くを地中に埋めて、残りは花々に埋もれるように隠れる―――本来ここまで知性溢れるモンスターではない
これもブラッククロスの品種改良によって生み出された生物兵器ということなのか…っ!!!


 [触手]による[足払い]を受けて姿勢を崩したルージュの片足を掴みそのまま吊るし上げて[丸のみ]せんと大口を開く
術士の眼には毒々しい蕾の中でちゃぷちゃぷと揺れる[強酸]が映るッッ!


   アセルス「はぁっっ!!」スパッ!

   ルージュ「あでっ!?」ドサッ


 間一髪飲み込まれる所でアセルスの[逆風の太刀]が[触手]を切り飛ばす、地面に落下したルージュは
先に剣を抜いていた筈のレッドの方を見た、すると―――


      レッド「ぐおっ、こんの…角付き虫がぁ…っ!」キィン!キンッ!ガキィン!

   アームウォーカー×3「ピギーーー!!!」
827 :続き土曜日か日曜日予定 [saga]:2021/12/10(金) 23:02:44.76 ID:yUnP5nEZ0

 少年のすぐ傍に盛り上がった土があった、地中から何かが出てきたような穴…冬眠から覚めた虫が春一番の餌を求め
地中から飛び出してきたようなソレを確認できた


 ボコッ、ボコボコッ


 地に落ちて身を起そうとする魔術師が自分のすぐ目と鼻の先からそんな音が聞こえたのも気のせいじゃないと悟る
音の正体が幻聴でもなんでもなく更に言えば何が起ころうとしているのかを察して
慌ててその場から跳ねる様に起き上がり後退した



   アームウォーカー「パミーッ!」ボッコォォン!


 [角]を高々と突き上げる様にして丁度ルージュの顔面がさっきまであった空間を[アームウォーカー]が出てきた




      ルージュ「っっ、む、むむ―――」








      ルージュ「  ム シ だ ー !  」





 \ ムシだー! /





 まるで何処ぞの村で蟻のモンスターでも出たような叫びをあげる紅き術士、音はまだ聞こえてくる…ッ!


 ボコッ!ボコッ! ボコボコボコボコ……!!!



   BJ&K「ピピッ!危険危険、地中から複数の生体反応あり!」

   レッド「んなモンっ―――見りゃ分かるっつーの!!」ガキィンッ [飛燕剣]ヒュィィイン!


 敵の攻撃を捌きつつ、一番後ろに居た1匹に[飛燕剣]を飛ばす、体液を撒き散らしながら巨虫の怪物が横倒しになり
無数にある手足をジタバタとさせている―――レッドは確信を得た


 かつてアルカイザーとして[バカラ]で最初のブラッククロスとの衝突があった際
指揮を執っていたシュウザー配下の戦闘員と一匹の[アームウォーカー]を相手取った事があるが

 …その時と比べて明らかにコイツ等は強い


 単純に今の自分が生身の"人間<ヒューマン>"状態だからと言われればそれまでだが修羅場を乗り越えて
多少は強くなったと自負している、更に言えばさっきから捌いてる攻撃の一発一発の重さ
怪人達の戦闘力が3倍になる"トワイライトゾーン"でもないのに鋭さが増しているッ!


  パシュッ!パシュッ! シュィィン―――!


  ビット『 ビーム攻撃 』ビュンッ!
  アームウォーカー「ギッ!?」バジュッ!


  ラビット「プログラム[ビット]を射出しました、この場を切り抜ける為に少々時間を稼いでください」フヨフヨ…


 次々と強化改造が施された増援が来る中でラビットはそう言った、彼の身体から放たれたビット機が宙を舞う蜂の様に
敵を光線によって焼いていくが、致命傷には至らない…[ビット]の真骨頂はまだこれからであった

 ラビットは静かに、内部プログラム[サテライトリンカー]へのアクセスを試みていた…!
828 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/12/11(土) 03:42:31.54 ID:R6ZHrwvf0
女王がエロい成虫になりそうなアームウォーカーだな…
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/12/11(土) 19:14:48.30 ID:RAULAz8rO
乙です
830 :続き火曜日か水曜日予定 [saga]:2021/12/12(日) 23:51:28.22 ID:TypUjCXn0

 [IRPO]隊員のラビットといえばコレ、一種の代名詞と言えよう

 プログラム[サテライトリンカー]は異次元に存在する衛星と射出した[ビット]を連動させ、それによって
如何なる場所であろうと高出力のレーザーによって敵を焼き払うという兵装だ
 優れたモノではあるが難点があるとすれば発動までにやや時間が掛かる事が挙げられる
子機の射出で一手、衛星との接続で二手、刹那の判断が要される戦場に無防備で立ち尽くすのはあまり好ましくない


  ルージュ「時間を…分かった!皆ラビット隊員の為に時間を稼ごう!」BANNG!


 [精密射撃]が巨虫の角をへし折る、それでも勢いを殺すことなく折れた先端で突き刺そうと迫り来るソレ相手に
アセルスの[生命波動]が突き刺さり要約動きを止める

 1匹倒しても更にもう1匹、潰せど潰せど湧いて来る様は正しく"虫"そのものである
それに出てくるのは虫だけではない…っ!



  シュルシュル…!ウジュルウジュル…!


 先程ルージュを[丸のみ]にしようとしたあの食虫植物に似た怪物まで出てきたのだ…ッ!


  レッド「畜生め…[トラップバイン]まであんなに…っ!白薔薇さんが囲まれた―――クソ、どけよ!お前等」バキィッ!


  アームウォーカー「パミーッ」[インセクトジュース]ブジャアアア!!


 すぐ真後ろに迫ってきた1匹をレッド少年は変身時に[スパークリングロール]を打つ要領で[裏拳]を放ち
後方へと吹き飛ばすが負けじと相手も飛びながらも[インセクトジュース]を口部からぶちまけていく

 粘度の高い酸性の液体が彼目掛けて飛び、彼もまたそれを躱してなんなら前方に居た1匹を鷲掴み
液体の落下地点に投げ飛ばす――――ジュワァァァっと嫌な音がして虫の奇声が上る

 粘度の高い液体であるが故に中々振り払えず、じわじわと皮膚を焼く…そんな嫌な性能の水溜まりが辺りに散らばる
白薔薇や術士達の救援に行きたくてもこれでは思うように進めそうにない

 
  BJ&K「レーザー射出します!」ビィィィィ!


 アームウォーカー「アバーッ!」チュドーン
 トラップバイン「チビィィ」ボォォォォ!メラメラ!


  BJ&K「…ラビット隊員まだ掛かりそうですか?そろそろ私の"WP<ウェポン・ポイント>"も尽きますが」

  ラビット「あと少しです」

  BJ&K「さいですか…」ビィィィ!




  ルージュ「アセルス!白薔薇さんが…!」
  アセルス「白薔薇なら大丈夫だ!私達はこっちを!」




    白薔薇「…あらあら、困りましたわね」キョトン


  トラップバイン「ネエチャン、イイオンナダナァ…」ジリジリ
  トラップバイン「グヘヘ…!」[触手]ウネウネ
  アームウォーカー「ウスイ=ホン テンカイ ヤッター!」
  アームウォーカー「イタダキマース!」


    白薔薇「――大いなる白光は渦を巻き、熱を伴う波紋となりて焼き払わん[フラッシュファイア]」ゴォォォォ!!


  トラップバイン「グワーッ」バジュッ―――!
  トラップバイン「イヤーッ」バジュッ――――!
  アームウォーカー「アバーッ」バジュッ――――!
  アームウォーカー「イ、イヤダ!ドクシン ノ ママ シニタクナイーーッ ナムサン!」バジュッ―――!


  ルージュ「」ポカーン
  アセルス「ね、言ったでしょ」
831 :続き土曜日か日曜日予定 [saga]:2021/12/15(水) 14:58:36.56 ID:0iSPIPyn0

 終わりの見えない増援に次ぐ増援、流石にこれ以上の長居と騒ぎ続ければ爆弾設置作戦は厳しいかと思われ所で
ラビット隊員が反応を示した!!




   ラビット「次元連結システム作動![サテライトリンカー]の起動オールグリーン、[次元衛星砲]発射!」ピピッ









        【  [ 次 元 衛 星 砲 ]  】





 刹那、空間がねじ曲がり"裂け目"が生じた。

 術士は別の"惑星<リージョン>"から遠く離れた別の"惑星<リージョン>"まで転移する[ゲート]に微妙に似た力場を感じた
あのワームホールは[京]とはまったく違う別の場所に繋がっていると実感できる
 裂け目の先からビーコンの光が伸びて標的となった敵の足元にライフルのスコープ越しに覗いた様な照準模様が描かれた


 次の瞬間には雷が落ちた


 天井がある室内で突然の落雷…否、それは遠い星々が漂う海に浮かぶ衛星兵器からのレーザーであった
極太の光柱が立ち上ったと思えばそこに居た筈の[アームウォーカー]が焼け焦げた焼殺遺体と化していて
足一本だってピクリとも動きやしない

 神話における神の怒りとも裁きの雷<イカズチ>とも呼べるそれに灼かれて絶命したようだ
だが神罰はただの1発では終わらなかった…


  アームウォーカー「ギギッ!?」


 空間の亀裂から無慈悲な衛星兵器の攻撃で死んだ仲間を見て狼狽える巨虫、兵器をどうにかしようとしても既に手遅れだ
仮にラビット隊員を破壊したとしても、一度座標を撃ち込まれた衛星兵器は起動させた主が死しても問題なく
その場に居る全ての敵対勢力を殲滅させるまで稼働し続ける
 衛星そのものを破壊しようと試みても裂け目の先の遥か彼方銀河の海にある



     バジュウウウウウウウウウウウウウウウー―――ッッ!!!


 そうこうしている内に再び神罰が改造を施された生物兵器に降り注ぐ、[ビット]同様に戦闘の真っ只中で
お構いなしに毎秒撃ち続けるのだから潜入者御一行が仮に何もせず、ただ[防御]してるだけでも勝手に敵は灼かれて死ぬ

 破れかぶれで少年達に攻撃を仕掛けようとアルマジロの様に身を丸くして転がり
硬い皮膚でそのまま轢き潰そうと試みた巨虫が届く前に神の雷によって絶命した――見ろォ!まるで虫がゴミのようだァ!



    ラビット「これで増援は問題ありません、皆さんあちらをご覧ください」フヨフヨ…


 浮遊するメカ隊員は違法植物園の出口を指さす、潜入者一行が入ってきた入口から突き抜けて北側一直線にある出口だ
出口前にも当然巨虫や肉食植物の怪物が陣取っているが、それを薙ぎ倒して突き抜ければここから脱することも可能


    レッド「そうか!衛星砲が発動してる今なら地面から無限に湧いて出てくる増援に歩みを止められる事も無い」


 この設備室からの脱出はおろか、ルージュ1人救援しようとすることさえも
大量に湧いて来る増援に阻まれて不可能だったが、その増援が増えても焼き払う…どころか向こうの救援ペースを
上回る速度で殲滅し続ける兵器が作動しているのだ、今ならばどうにか撤退することもできる


   ルージュ「よし!そうと決まればあそこを目指そう!」バッ!


 乱戦状態で完全に孤立していたレッドも、ラビット隊員に付きっ切りだったBJ&Kやさっきまで囲まれていた白薔薇も
全員が同じ目標地点に向かって走り出す、道中で草花の影から飛び出る[トラップバイン]も
地面から出る[アームウォーカー]も天からのレーザーに焼かれ、討ち漏らしも複数を相手取らず1対1なら問題なく突破でき
かくして一行は窮地を脱したのであった……そして、出口を抜けた先で彼らは目標の麻薬製造釜を発見する…っ!
832 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/12/16(木) 04:39:26.17 ID:FQNMRoNq0
乙!
メカのWPはウェポンポイントなのか
833 :>>1です [saga]:2021/12/19(日) 23:45:30.85 ID:XVIdPMA20
予定変更、続きは水曜日か木曜日予定
834 :続き土曜日か日曜日予定 [saga]:2021/12/23(木) 23:36:04.35 ID:d12hd9w70

 辺りには妖しい陽気が立ち込めていた、中央の鉄釜に向かって伸びるいくつものコード
赤錆が所々に目立つタラップ階段…そしてこのエリアだけ他と比較しても多い見張りの人員

 見張りの戦闘員やメカ達はルージュ等の姿を見るや否や直ぐに攻勢へと転じ始める

 流石に[サテライトリンカー]の攻撃音やら何やらで花園からそう遠くない彼らには異常を察知されたか
侵入者の存在に薄々勘づいていた彼らは潜入者の排除を試みようと駆けだすが…!



   ルージュ「レッド!そのまま走れ[生命波動]」コォォォ!!

    レッド「応ともよ!援護は任せたぜ!」


 光の波動が形作る槍がレッド少年のすぐ真上を2条飛びぬけていく、人間のエナジーと妖魔のエナジーが並走するように
飛んで[ガンファイター]2機を串刺しにする、アセルスお嬢とルージュの術攻撃が機械兵を物言わぬ鉄塊に変えて
一気に距離を詰めて[緑戦闘員]に攻撃を仕掛けようと拳を繰り出す
 戦闘員は少年の一撃を寸での所で躱して改造された肉体から繰り出す[突き]を放つ



 戦闘員は自身の力で少年の拳を避けたと"勘違い"したようだが、そんなことはない
これまで幾度となく戦ってきた彼らの戦闘経験は改造戦士が想像するよりも遥かに上であえて躱される様な拳を
彼は打ち出したのである、コレはある種の[フェイント]と言えよう



   パリィィン!!


           【 [ ブ ロ ー ク ン グ ラ ス ] 】



 陶器を地面に叩きつけて割ったような音が響いた

 そう戦闘員が認識した時には既に自身を取り囲むように硝子の刃が迫ってきていて
改造手術によって得た屈強な肉体を裂いていた、ゆっくりと崩れ落ちる様に倒れる戦闘員が最後に見たのは
術の詠唱をしていた花飾りをつけた妖魔の姿であった



 どさり、戦闘員が倒れて残りの敵もラビットとBJ&Kが沈黙させたのを確認して彼らは一息をつく
レッドが正面から向って取っ組み合いを始めようとする、かの様に見せかけて…実は前に突飛していく前衛の彼は罠
 本当は彼に殴らせる気なんぞ無くて、白薔薇姫の[硝子の盾]を利用したカウンター戦法というやり口で
相手を鎮める算段であった―――仮に砕け散った魔法盾の破片が敵を襲う[ブロークングラス]で仕留めきれずとも
その分は今度こそレッドが手負いの相手に一撃を喰らわせてチェックメイトだ

 後衛はそのままに、前衛の少年を前に出しながらも反撃効果付きの防御術で無傷のまま懐まで接近させられる
自分達のチームワークも中々様になってきたのではないだろうか?



       レッド「…終わったか?」


 他に潜んでいる敵の姿は見受けられない、ついぞ基地内にてメタルブラックと遭遇することは無かった
彼は情報が間違っていないのならば未だ外周りをしている筈、鬼の居ぬ間になんとやら…
 少年は時限式の爆弾を仕掛けるなら今しかないと判断した



       レッド「麻薬製造釜だな、ここを爆破しよう!」


 彼のその言葉に応じる様に紅き魔術師は[バックパック]から時限式の爆発物を取り出し各員に手渡す
手にしたブツをそれぞれ分散して各地に仕掛ける

 スッ…!

    サッ!サッ――ポチッ、ピッピッ!カチリッ




       レッド「よし!準備完了だ!」




 タイマーが作動した…っ!後は爆発に巻き込まれまいと全速力で基地からの脱出を試みるだけだ…
道中の敵は多少のダメージは覚悟の上で無視…っ!相手をせずに突っ切るのみッッ!!
835 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/12/26(日) 23:57:48.24 ID:BZfH3o9N0

 爆発物のタイマーが動き出した後の潜入者達はひたすらに出口を目指した
未だ停止せず増援の巨虫や食虫植物と騒ぎに勘づいてやってきた戦闘員を駆逐する[次元衛星砲]の花畑を素通りして
気絶させた戦闘員を押し込んだ鉄扉の部屋前も抜けて、一番最初の枝分かれの間を駆けて錆が目立つトタン階段も昇り
滑り込む様に例のワープ地点へと入り込んだ…!




       ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!!!!

                                  ―――――――カッ!!!




 術士達が基地を脱出して一拍子置いた後に全体を揺るがす振動が起きる、間一髪だった
もしもタイマーの時間をもう少し早めの設定にしていたら?道中の敵にもっと絡まれていた…ゾッとする話である
 かくして悪の組織ブラッククロスの資金源であり無辜の人々の生涯を狂わせる禁断の園は閃光に包まれて大火に消えた


   ゴォォォォォォ!!!メラメラメラ…!



  「ウワー![書院]が火事だぁ!!」
  「消防に通報しなくちゃ!ええっと電話番号は…」ポチポチ
  「あそこは街の離れだから他の民家や林に燃え移ることは無いだろうが…このままにしておけん!バケツリレーだ!」


  メサルティム「ひーっ!?突然建物が炎上しましたよ!?!?」
   ヌサカーン「ふむ…先程地下から振動を感じた辺り人為的なモノだろうな」

   ヌサカーン「クーンと別行動中でも面白い物は見れるな、私の自宅近辺に出没する改造人間等の家が燃えるとは」



   ヌサカーン「…ん?」ピクッ

  メサルティム「どうかなされましたか?」


   ヌサカーン「」ジッ




             高台『 』ヒョォォォォ…



   ヌサカーン「……いや、なんでもない"彼女"は我々には関係の無い者だ、さて一波乱起きる前に此処を発つか」クルッ

   ヌサカーン「メサルティム、君の療養が主目的だったのに"診断書<カルテ>"の作成に同行させてすまないな」

  メサルティム「!! め、滅相もございません!私のような下賤な者でも高貴なるお方のお役に立てれば…」フルフル

   ヌサカーン「……君がそんな調子ではこれから合わせる知り合いとどうなることか…」ハァ…


   ヌサカーン「まぁいい、予定通りまずはサイレンスと話しその後は[シュライク]と[マジックキングダム]だ」スタスタ

  メサルティム「あぁっ!待ってください〜!」










高台の上『』 金獅子姫「…随分と長い遠回りになったが遂に見つけましたよ我が妹姫、そして主の血を与えられし者よ」


       金獅子姫「直ぐにでも向かいたい所ではありますが、既に先客が居る…であらば待つのが礼儀でしょう」



 高台の上から見下ろす誰よりも誇り高き武人の姫はかつて矛を交えた黒鉄の"強敵<とも>"が
[庭園]に向かって行くのをその眼で捉えていた…!!

 後にルージュが自身の旅日記に書き記す中で最も長い[京]の三日間の幕開けであった
836 :リマスター版のレッドとメタルブラックの追加掛け合い良いよね [saga]:2021/12/26(日) 23:58:58.18 ID:BZfH3o9N0

 例の「ぬけみち」掛け軸から飛び出て来て尚彼らは止まらなかった、ブラッククロスの職員しか居ない[書院]を抜けて
坂道を下り橋を渡って美しい[庭園]まで一切の休息無しの疾走、目的地にたどり着いた彼らは漸く一息つけると
鞄から取り出した水筒の中身を口に含み、呼吸を整える……だが、小休止も言葉通り長く続くことは無かった

   ザッザッザッ…!


   ルージュ「貴方はっ!!」

   アセルス「…メタルブラック」


 まるで一行がそこに来る事など最初から分かっていたかの様に、何食わぬ顔で鋼鉄のサムライはゆったりとした足取りで
彼らの前に現れた前回の出会いと違う点があるとするならば明確な威圧感が…敵対者に対するプレッシャーが滲み出てる事
 紅き術士は目を大きく開き戸惑いとも焦りとも付かぬ色を見せていて、アセルスお嬢は悲しげに目を伏せ
レッド少年の眼は義憤の炎が揺らめいていた…彼は道徳に外れた行いをしたから許してはならないのだ、と

…そうでもしなければ、きっと少年は目の前にいる彼を直視できなかったから、きっと目を逸らしてしまっただろうから

 対して機械仕掛けの武士は彼らの姿と炎上する[書院]を見比べる様に首を動かした後、次の様に言葉を発した


   メタルブラック「 我 が 基 地 を 破 壊 す る と は 、 見 事 な 腕 前 」

   メタルブラック「 一 手 御 手 合 せ 願 お う 」スチャッ


 静かな声でありながらも一字一句が耳に入って来る、遠くで燃える[書院]の音や人々の声さえも感じなくなるほどに
解ってはいた、事前に資料で知ってはいた…だが当人と顔を合わせて当人の口から"我が基地"と改めて言われて
 込み上げてくるものは…たくさんあった


     レッド「くっ…メタルブラック!!」ザッザッ…!


 少年は一歩前に出て声を荒げる



   レッド「人を蝕む麻薬を売りさばく罪深さ、メカのお前には理解できないのか…メタルブラックッ!!」


 何故こんなことをするんだ!何故これが分からない!お前はそれでいいのか!?と彼は訴える
黒鉄の意思は少年の熱意に対して無機質な返答を返した



      メタルブラック「与えられた指令を実行したのみ」


 "指令を実行したのみ"…メカという種族にとっての存在意義、創造主から生まれ持った使命を授かり
ただその為だけに生を真っ当する、それこそが彼らにとっての全て…


   レッド「っ…」ギリッ
  ルージュ「メタルブラックさ―――」







       メタルブラック「だが、―――」



   レッド「…?」
  アセルス「えっ」



       メタルブラック「―――だが、我が基地を失ったにも拘わらず、どこか晴れやかだ」


   レッド(…メタルブラック…お前)
  ルージュ「メタルブラックさん…」


 黒鉄の意思は少年達に対して青空の様に澄み切った音声で返答の続きを紡いだ

 任務の失敗、指令を真っ当できないメカ―――それはメカとしては無能の烙印を押される出来事なのだろうな
だが黒鉄のサムライは…石にもあるべき心が存在しないメカであることを嘆いていた彼は、晴れやかさを感じていた
837 :次回は火曜日か水曜日予定 [saga]:2021/12/26(日) 23:59:44.20 ID:BZfH3o9N0

 首をほんの少しだけ上方に向けて、遠くを見つめる様な仕草で語ったメカに少年は声を掛けた




   レッド「…それが―――それが解るのなら、もうこんなことはやめろよ…」



 声は…少し震えていたかもしれない、義憤に駆られ肩を震わせながら発していた声とはまた違った震え方だった気がする
紅き魔術師は目先に居る年下の友人の声をそう感じていた、背を向けている彼が
今どんな"表情<カオ>"をしているのかは対面するメカにしか分からない


  アセルス「…そうだよ、メタルブラック…別に私達はあなたを討ちたいワケじゃない」

  アセルス「これはやっちゃいけないことなんだって、悪いことだって本当は解ってるんでしょ――だったら!」ザッ!


 半妖の少女も一歩前に出る、鋼鉄の戦士は手を前に翳しそこから先は言わないでくれと制する






      メタルブラック「我が創造主Dr.クラインを―――…父たる者を裏切ることはできん」




 [庭園]に沈黙が流れた、遠くで木造建築の[書院]が焼けていく虚しい音だけが場を支配していく…

 誰も、何も言えなくなってしまった。


 一歩引いた場所から終始黙って静観していた白薔薇がアセルスの隣に歩み寄りそっと肩に手を乗せる
彼女はそんな貴婦人の顔を見た、誰よりも心優しい寵姫と呼ばれた白薔薇姫は目を瞑り静かに首を横に振った

 もう、誰も何も言えないのだ…此方には此方側の正義や貫くべき道がある様に、相手にも相手の信念がある


 [シンロウ]で話し合った時点である程度予想はついたことだった、既定路線では確かにあったが…


   白薔薇「メタルブラックさん、私はアセルス様達を御守りするのが使命です
                    …何人たりとも危害を加えられる者であれば…容赦はできません」スッ


 寵姫の姫が彼らの前に出て武器を取り出した…口火を切る役目を、"知人を討つ為の切っ掛け"を少年少女達にさせまいと
次いで年長者のルージュも…同じく彼女の横に並び立った、気が付いたらもう足を進めていた


  ルージュ「―――貴方の事は忘れません…」ギュッ


 自首や司法取引、Dr.クラインだけでも罪を軽くするからこちら側に寝返れだとか
そんな言葉は彼には何の意味も為さない、さっきの一言で解ったから、理解してしまったから…覚悟を決めるしかない…っ




   レッド「…っくそったれ、なんでだよ…なんでなんだよッッ!!!」ギリッ!!

  アセルス「…お父さんを裏切れない、か…そうか、そう、なんだね」スッ



 拳を痛い程に握りしめて前を向いた少年、静かにそう呟いて目先の相手から譲り受けた[サムライソード]を抜刀する少女


     メタルブラック「……暫し、長く語らい過ぎてしまったな」


 名残惜しむ様に、目先の"敵"もまた討たねばならない敵対者達への構えを取るッッッ!!





  メタルブラック「ブラッククロス四天王が1人―― メ タ ル ブ ラ ッ ク 推 し て 参 る ! ! 」

  メタルブラック「 い ざ 尋 常 に 勝 負 ッ ッッ!! ! ! 」
838 :続き明日かも [saga]:2021/12/30(木) 23:59:56.93 ID:I4/bXPE30

 茜色の空、燃え上がる紅葉の色、ちらちらと遠方で舞う煤と火粉を背景に鋼鉄の武人は自身の得物を構える
形状は彼のボディカラーに合わせた黒鉄の槍―――否、薙刀であった

 突けば槍に、払えば鉈に、振り下ろせば剣として

 武器を構えたメタルブラックは身を屈める様にどっしりとした姿勢で相手の出方を窺う…
先に攻勢を仕掛けたのはルージュ一行からだ、相手は先日戦った[ベルヴァ]と同じブラッククロス四天王の座に就く者
であれば一斉に攻撃を仕掛けて"連携"を狙うのが吉と判断した

 少なくとも仮面をつけた魔人は連携無しで単騎特攻を仕掛けようものなら強烈なカウンターを繰り出す猛者だった
銀髪の魔術師は相手の脚を絡めとるべく[エナジーチェーン]を、そこに続く様に少年が浮遊するラビットを踏み台に
[三角蹴り]を仕掛ける、これで2連携の"[三チェーン]"が出来る筈だった




   メタルブラック「甘い…っ!」ブンッ!




  レッド「なっ、にぃ!?」
 ルージュ「はぁッ!?」


 紅き術士の魔術は間違いなく発動した、思念の鎖が[メタルブラック]を絡めとり脚の関節部を術による熱で
ショートさせつつ動きを止めた相手の急所へと少年の急降下蹴りが炸裂からの続くアセルスお嬢達の連携も入る予定だった




  しかし…っ!メタルブラックはここで彼らの予想を上回る動きを取ったッッ






  メタルブラックの薙刀『 』ギュルギュルギュル…ッッ!!
    エナジーチェーン『』バチィッ!!


 メカの動体視力とAIによる瞬間判断能力の高さを見誤った、初動で彼らが何をする予定だったのか見切った黒鉄の武人は
"手にしていた薙刀を投げたのだ"…っっ!! 戦場において己の武器を放り投げる、それに術士と少年が目を見開いた
 空を裂く音を響かせながらブーメランのように回転する鉈は投擲者と術士の丁度中間の所で[エナジーチェーン]と衝突
本来であれば敵を拘束する筈だった思念の鎖は投げられた武器に絡まる、そして武器を失った黒鉄の侍は
背部のスラスター吹かして地表からホバリングをしながら全力で猛進する…っ!

 くどい様だが[メタルブラック]はメカでありその重量は並みの人間の比ではない、そんな彼の全力の[体当たり]に対して
迎え撃つのは19歳の少年の[三角蹴り]である



 極めて単純な話である、交通事故が起きたとして軽自動車1台と2tトラックが正面衝突をしたとする
であればどちらがより大きな被害を受けるのか…衝撃を受けて吹き飛ぶ方は果たしてどちらなのか?

 同じ速度で同じ大きさの物体が衝突したとしても重量のある方が勝つに決まっている



   レッド「ぐばぁっ!?」ドガァァ!!

  アセルス「えっ!?キャアアアア!!」ドゴッ



   メタルブラック「ふっっ!!討たせてもらうッッ!」ジュゴォォォォォ!!パシッ!ヒュッ!


 [体当たり]で寸分狙いを乱さず落下してきたレッドを逆に弾き飛ばし後方から剣を構えて走ってきたアセルスにぶつける
これで続く連携を乱しホバリングしながら自身の得物が丁度、思念の鎖が消えて解放される瞬間にキャッチしそのまま
驚愕するルージュへと一気に肉迫して[突き]を繰り出す


       ――――ズザァンッッ!!



     BJ&K「――――!!損syo−甚大 ガガガッ」

     ルージュ「B、BJ&K!!!」

 間に割り込む様に医療メカが入り、その一突きをまともに受ける、生身の人間である彼より自分がと判断したからだ
839 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/01/09(日) 12:47:01.94 ID:NyXN6Tv80
メタルブラック戦の曲が脳内再生される…
京の戦闘背景も最高よね
840 :すまぬ…明日とか言いつつ、大分開いてしもうた [saga]:2022/02/21(月) 02:03:26.75 ID:QqQsPltQ0

 純粋な力よりも速さを主軸とした高機動戦が[メタルブラック]の領分と言えた、彼の背部スラスターが輝きを放つ度に
地平を流星が走り、過ぎ去った後には多くの兵が倒れ伏す―――彼を象徴する名詞ともいうべき技[ムーンスクレイパー]が
まさしくコンセプト通りの速度戦用の攻撃と言えよう


 初手でルージュの術に武器を投げつけながらの肉迫で少年を跳ね飛ばしそのまま回収した武器で一気に攻めてくる
戦闘開始からものの数秒の出来事である



  ラビット「[ビット]射出」シュバッ!シュバッ!


  ビット『 』ヒューン!
  ビット『 』ヒューン!



  メタルブラック「はぁぁっ!!」ズボッ!ガスンッッ



 黒鉄の武士は片足を医療メカの胴に宛がいそのまま深々と刺さった得物を引き抜き、更にBJ&Kの身体を踏み台として
蹴り飛ばす様にその場を離れる、こうすることで大穴の開いた医療メカの重量ボディで
そのまま背後に居たルージュを吹き飛ばし同時に[ビット]の攻撃から逃れるという一手になるからだ


 飛び退け様に鋼鉄の侍は両腕をクロスさせ、稲妻を発生させる…機械である自身の身にある内蔵回路を
意図的にショートさせて放電を起こすという荒業
 [メタルブラック]は交差させた腕から収束させた電流を[落雷]の如く撃ち出す



 ―――ズシャアアアアアアァァァン!!



  ラビット「ギビビビッ!?――ピー…回路がショート…反重力装置が、うまく、起動し、せ、ん、ガガッ」フラッ、ドサッ!



 感電してラビットが地に落ちる、移動能力を潰されたラビットは最早ただの固定砲台としての役目しか果たせない
牽制目的で[圧縮レーザー砲]を撃ちつつ、片手間で次元衛星へのアクセスを試みる
 速さを売りとした鋼鉄の侍は降り注ぐ幾条もの光を回避しながら[サテライトリンカー]を使わせまいとラビットへ迫る



    「鏡よ、鏡…この世で憐れなる自傷者は誰なるぞ[硝子の盾]!」キィィン!




  メタルブラック「ムッ!?」



 身動きが取れなくなった兎を狩ろうとする彼の前に突如として不可視の壁が現れた…っ!

 彼は勢いを殺せず透明な壁―――白薔薇姫の唱えた[妖術]の盾へと突っ込んだ




パリィィィン…!




                【 [ ブ ロ ー ク ン グ ラ ス ] 】



 妖力を帯びた硝子片が黒鉄の武士に吸い込まれる様に刺さっていく…っ!

 元来、鋼鉄の肉体にガラスの刃など突き刺さる訳もないが、これは生憎と普通のガラスではない妖力で構成された硝子だ


 術力の続く限り[硝子の盾]を唱え続けて[メタルブラック]を取り囲むように、あるいは進路を阻むように
不可視の迷路を造り続ける白薔薇、固定砲台として活動を続けるラビット、そして起き上がったレッドとアセルスも向かう


  白薔薇「ルージュさん、今の内にBJさん達を!」

841 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/02/21(月) 02:04:43.03 ID:QqQsPltQ0

 自分含めて5人掛かりでも拮抗どころか何なら劣勢を強いられる強敵だ
人手は多い方が良いに越したことは無く、自分の仕事は背負ってる[バックパック]からすぐに[インスタントキット]を取り
それでBJ&Kを再び動けるようにすることだ……紅き術士はそう判断した


  ルージュ「くっ…待っててくれボクが君を直すから!!」ゴソゴソ


 相手に蹴り飛ばされて自身に覆いかぶさる様に動かなくなった医療メカの身体から抜け出して直ぐに修理道具を手にする
身を挺して自身を救ってくれた"異種族<メカ>"の友人を慣れた手つきで治し始める
 最初は右も左も分からずよく分からない機械コードに絡まってばかりだったが長い付き合いだからこそもう治し方も解る

 横目で状況を見るが好材料は見当たらない

 未だ決め手に欠けるこちら側の攻撃、なんとかして攻めに転じれる様に布陣を完璧にしたいが[サテライトリンカー]に
接続しきれないラビット目掛けてジリジリと迫り続ける鋼鉄の侍、白薔薇の[硝子の盾]で迂回させるなり時間を稼げるが
彼女の術力とて無尽蔵ではないのだ…いつか底を尽きる




 何より恐ろしいのは―――果たして頼みの綱にしてる[次元衛星砲]がどこまで通じるか、である



 基地内においては指定した座標上の敵に対して正確無比な極大レーザー射撃を行うという強さを見せつけたが
現在進行形で即席モノの硝子の迷宮内を降り注ぐ[圧縮レーザー砲]のシャワーを避けながら近接の2人を相手取り徐々に
ラビット目掛けて近づくという頭を抱えたくなるような高機動戦をやってのける四天王なのだ…


 古人は言った、当たらなければどうということは無い。



 こんな無茶苦茶な相手に果たして当たるのだろうか、頼みの綱は通用してくれるのであろうか?

 一抹の不安を抱かずに居られるものかっ!



 ルージュ「よしっ!できたぞ…!!どうだい、戦えるかい?」

  BJ&K「はい、いつでも戦線復帰可能です」ピピッ



 ルージュ「なら早速で悪いけど君はラビットの救援に向かってくれ!」


 [インスタントキット]を持たせて医療メカを飛べなくなった兎の元へ向かわせる
修理と同時に[圧縮レーザー砲]で弾幕を張る役目を担ってもらう、その間に一刻も早くラビットに[次元衛星砲]の準備を!

―――
――




   レッド「ッラァ!!」ブンッ!!
  アセルス「ていっ!!」ヒュッ!!



  メタルブラック「踏み込みが甘いぞっ!」ガッ、ブンッ!キィンッ


 少年の首の付け根部を狙った回し蹴りと少女のフェンシングに似た構えからの一突きを防ぐ黒鉄の戦士
右腕は飛んできた脚を掴み投げ飛ばし、左腕に持った薙刀の先端で[サムライソード]の切っ先を跳ね除ける

 空から降ってくる光の雨さえも避けて器用に[落雷]で[硝子の盾]の排除もこなしていく



  メタルブラック「―――!!背面を取ったつもりかっ!?殺気ですぐに悟ることができるぞ!」シュバッ

 メタルブラックがさっきまでいた地面『 』ボジュンッッッ!!


 激戦の中で少なからず成長した気ではいたが[インプロージョン]を難なく躱されてしまった、自分の中では間違いなく
最速で、ほぼノーモーションの[魔術]発動だったのだが、とルージュは舌を打った
 爆ぜたのは鋼鉄の武士がさっきまで立っていた地面だけで彼は上空に跳びながら左手の武器をアセルス目掛けて投擲
武器を投げつけた当人は背部のスラスターを吹かして徐々に高度を下げながらも優先攻撃対象へ向かって行く…っ!
空を自在に飛べるワケではないがこうすることで滑空状態に近いことができる
842 :原作だとメタルブラックさんはこの段階だとグライダースパイクはまだ使えません [saga]:2022/02/21(月) 02:06:12.91 ID:QqQsPltQ0


  ルージュ「しまった…!してやられたッ!!」


 まさか翼も持たない鉄の塊が[グライダースパイク]擬きをやるなど完全に想定外だった、あくまでも"擬き"であり
鳥系モンスターが使う様な本家の[グライダースパイク]とは違って飛距離も高度も足りず殺傷能力も皆無と言っていい唯の
パラグライダー染みた芸当だが、それでも[硝子の盾]で作った壁を乗り越え標的に攻撃を仕掛けるには十分過ぎた…ッッ!


 [インプロージョン]ではあの速度で滑空している武士には直撃不可能、ならば何処までも伸びて鞭の様にある程度自由に
振り翳せる[エナジーチェーン]を…とも考えたが――――!!



    レッド「くそったれ!!あの野郎"こっちの術を完全に利用してやがる"ッ!!」







   ―――――――味方が仕掛けた[硝子の盾]が邪魔で迎撃ができないッッッ!!!!



 [エナジーチェーン]を振り回そうものなら間違いなく[メタルブラック]を絡めとる前に自分達で仕掛けた硝子に当たる
上級妖魔の中でも相当修練を積み[妖術]に長けた者は自身が味方と認識した者の攻撃だけを透過させる高等技術が可能だが
生まれ持った才こそが全てで鍛錬を積むことは美徳ではないとされる妖魔社会の世論、そもそも白薔薇姫自体が好き好んで
戦闘技術を磨きたい武人気質の人ではないということが相まってそこまでの練度に至れていない


 レッドは言わずもがな、アセルスにもどうすることもできないのだ


 いや、"気<オーラ>"の力で宙に舞いそこから収束させた気を放つ[生命波動]が使えるアセルスお嬢ならばあるいはできた



 だからこそ…、だからこそソレを警戒して彼奴はアセルス目掛けて武器を投げつけたのだッッ!!!
一瞬でも怯ませることができたならばそれで十分だ背部スラスターを吹かして[生命波動]が届かない位置まで逃げ切る
 今からアセルスが[心術]で攻撃を試みたとしても既に[メタルブラック]と自分の距離
相手の高度と[硝子の盾]の絶妙な位置加減でどう足掻いても墜とせない



   ラビット「敵、こちらに向かってきます!」バシュッ!バシュッ!
     BJ&K「[圧縮レーザー砲]当たりません!」バシュッ!バシュッ!

    ビット『』ビュンッ!ビュンッ!
    ビット『』ビュンッ!ビュンッ!



 全く以て悪夢でも見てる様な光景だ。

 出来の悪いシューティングゲームか何かかね?…指をくわえて見てるしかない"人間<ヒューマン>"組は実質6人掛かりで
囲んで袋叩きにしようとしてもまるで攻撃をあしらわれ何なら手痛い反撃すら貰う化け物マシーンが悠々と弾幕を避けて
ゴール地点へと到達しそうな場面を見せられている気分だ
 見えているのに止められない、攻撃できるのに撃てない、解っているのにどうすることもできない


 [硝子の盾]が完全に裏目に出た、滑空しながら腕をクロスさせて[落雷]を発生させて飛んでる[ビット]を数基破壊
更に後々の戦闘で自分が動きやすい様に地上の邪魔な硝子壁も同時に掃除するという荒業をしながら彼奴は目的地へ…!



  [サテライトリンカー]を作動させようとしているラビットの元へ―――――――

                                         ――――――ではなく……!







   メタルブラック「将を射んとすらば馬を射よとな…!貴婦人殿、貴女が私にとっての機動性を殺す射手、お覚悟!」


                     白薔薇「っっ!!」


843 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/02/21(月) 02:06:53.37 ID:QqQsPltQ0

 紅き魔術師は駆けだしていた、彼だけではない
少年も少女も誰もが硝子の迷宮を最短ルートで抜けて、間に合うまいと頭の片隅が冷酷な事実を呟いていても
 それでも彼らは白薔薇を救おうと走っていた…っっ!!

 [メタルブラック]はアセルスに武器を投げつけた、今の彼奴は丸腰状態


 だからといって脅威ではない理由にはならない否これまでの相手の出方を見ていれば分かる
出で立ちこそは武士であるが何も武器に頼った戦い方が全てじゃない…[落雷]も初手でレッドを跳ね飛ばした[体当たり]も
武器なんて必要としない技なんだからッ!



     白薔薇「―――っ…私とて近接格闘はできます―――!!!!!」ポォォォ!!

 メタルブラック「…!なんと、これは驚いた」




  レッド「あ、あれは!?」


 妖魔の貴婦人は目を見開き拳を構える、刹那、彼女から闘気が立ち上る…!
この場に居る機械達は誰しもが花飾りの妖魔の生体反応が急上昇していくのをデータとして観測できて
生身の人である2人も白薔薇から肉眼で確認できるほどの、ゆらめく炎のような闘気を認識できた


 半妖のアセルスだけは…他の面々とはまた違った"者"が見えた



  アセルス「あ、あれって…"あの時の"!」


  ルージュ「えっ?」
   レッド「あの時の…って?」


 どうやらアセルスにだけはくっきりと"形<ヴィジョン>"が視えたようだ、アセルスの発言が何を意味するのか
白薔薇の元に向かいながらも注意深く彼女を観察して、先に『ソレ』に気が付いたのはルージュの方だった


  ルージュ「あっ!?あれは…[ヨークランド]の!!そういうこと!?」
   レッド「お、おい…俺にも分かるように説明を―――」


 そこまで言葉を出した所で漸くレッドにも二人が何を言っているのか理解できた、炎の様に揺らめいて見えた闘気は
よく観察すると"とある生物"の姿形に酷似していたのだ
 一見すれば立ち上る炎の揺らめきに見えるそれは見方を変えれば[触手]の様にも見えた…嫌な事を思い出すシルエット







            [妖魔の小手]【憑依: ク ラ ー ケ ン 】






 政府危険度認定…ッ!!敵ランク9の大海獣[クラーケン]ッッッッッ!!
4つのカードを集める試練で[杯のカード]を得るために[ヨークランド]に赴いたあの日
全員が死んでいてもおかしくなかった悪夢の様な試練での収穫…っ!


 白薔薇姫の両腕に現出した[妖魔の小手]が輝き、そこに封じられたモンスターの魂が彼女を歴戦の武術家へと変えたのだ
大木をへし折り、大岩さえも一撫でで削る剛腕の怪物、その生体エネルギーを解放することによって
白薔薇姫の筋力<STR>と丈夫さ<VIT>は飛躍的に高まった、機械戦士達が一様に彼女の生体反応値の上昇を感知したのは
それが主な理由であり、そして……[クラーケン]という怪物を[妖魔の小手]に、"拳"に宿したならば使える技は…ッ!




  - 白薔薇『私も[タイガーランページ]を修得できましたから、気にしてはいませんよ』ニッコリ -


 白薔薇の両腕が黄金の輝きを纏った…っ!!
あらゆる敵を粉砕すると言わしめた、神の如し拳―――[タイガーランページ]が今炸裂するッッ!!

844 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/02/21(月) 02:07:25.03 ID:QqQsPltQ0

 闘気を纏った黄金の拳による乱打が放たれる、強烈な右ストレートからの左スイング、そこから右、左と交互に
黒鉄のボディへと撃ち込まれていく白薔薇の現状使えるであろう最も火力の高い技
 さしもの[メタルブラック]もこれは涼しい顔で流すことはできないようで身を殴打される度に彼の呻きと鉄が砕ける音が
響いたのが彼らにも分かった

 そしてこのタイミングで―――――!!



  ラビット「[サテライトリンカー]アクセス完了!座標を転送しました、間もなく衛星砲が飛んできます」

    BJ&K「攻撃の布陣は整いました、反撃開始です!」



  アセルス「白薔薇…!私達もすぐに辿り着くそれまで待ってて!」タッタッタッ


 初めて何をしても効かなかった強敵に決定的なダメージを与えられた…その事実が彼らにとって大きな希望となった
このまま押し切れば勝てるんじゃないか?準備が万全の今ならブラッククロス四天王の彼奴を倒せるのではないか!?













  そう誰しもが思った矢先であった。





 ガキィィン!!



  白薔薇「〜〜〜っっ!!」



 手の甲に鈍い痛みが走った…

 白薔薇の光輝く右手に何かがぶつかった、それは[メタルブラック]の拳だった…
それだけならなんてことは無かった、むしろ[タイガーランページ]の闘気が上乗せされて彼奴の腕に殴り勝っていた




    メタルブラック「―――――プログラム発動、太古の昔より受け継がれてきた歴史の記録<データ>」ブンッ


 黒鉄の武人が左腕の鉄拳を振るう、ど真ん中を狙ってきた妖魔貴婦人の左腕を寸分違わぬ正確さで相打ちになる様に打つ


    メタルブラック「その武術、流派に語られ勢いは百獣の王…虎の如しッッッッ!!」ブンッ!!


 黒鉄の武人が右腕の鉄拳を振るった、妖魔貴婦人の繰り出す右腕を"自分なら此処を狙うと知っていた様に"狙い、相殺!





    メタルブラック「システム完了…![猛虎プログラム]ッッッッ!!!」コォォォォォォォォ!!!

        白薔薇「こ、これは…そんなまさかっ!?」



 黒鉄の戦士の両腕は……――――黄金の輝きを放ったッッッ!!




    メタルブラック「 [ タ イ ガ ー ラ ン ペ ー ジ] 発 動 !!!! 」

845 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/02/21(月) 02:08:07.66 ID:QqQsPltQ0

 ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッッッッッ!!

   ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッッッッッ!!




      メタルブラック「破ァぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」ガガガガガガッ
          白薔薇「うっ!ぐぅぅぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜〜っ!!」ドガガガガガッ





  ドガガガガガガガガガッ!ドギャ―――――――――――――――z_____________________________________ン!




 突きの速さ比べッッ!!

 "音"と"音"のぶつかり合い…っ!


 1秒間に幾多もの黄金の輝きがぶつかり合い、火花を散らし、神拳と凶拳が邂逅を果たす度に衝撃波が生まれる
目には目を、歯には歯を、よもや[タイガーランページ]という殴打系の技術で最上格に位置する技同士がぶつかり合う等
一体誰に予想できようか?


 音の濁流と衝撃の余波で思わず"人間<ヒューマン>"組は歩みを止める、前に進みたくとも進めないのだ
超弩級の大型台風の日に暴風の向かい風を前にして肩で風切って歩こうとしてるような気分だ、物理的に前に進めないッ!


   白薔薇(くぅぅ…ま、まさかメタルブラックさんも[タイガーランページ]を使えるなんて…っ――――ハッ!?)ミシッ



 同じ技術を用いた拳闘技の応酬戦真っ只中で白薔薇は嫌な音と手応えを感じた、ミシッっと何かが罅割れる音
自身の両手に現出した[妖魔の小手]の片割れに小さな亀裂が入っていた
 元より筋力<STR>が高い方では無かった、その上対戦相手も悪すぎた
お互い一行に手を休めることはなく、無慈悲に降り注ぐ梅雨時期の集中豪雨差乍らの拳…マシンガンの様なジャブ合戦


 先に悲鳴を上げたのは妖魔貴婦人の方であった



  白薔薇の片腕に装着された[妖魔の小手]『』パリーン!


      白薔薇「ああっ!」ズキッ

  メタルブラック「隙を見せましたな…!!」ヒュッ



   ゴッッッ!!


 小手が砕け散り、手の甲がそのまま手首の骨ごと粉砕されそうな痛みを感じて思わず腕を引っ込めた
痛覚が無い機械と痛覚を有する生命体の差であった、本能的に腕を引いた彼女の隙を機械は見逃すことなど無く鳩尾に
[タイガーランページ]を解いた通常の拳を素早く叩き込む


    白薔薇「ッッ〜〜〜」ヨロッ、グッ


 苦悶の表情を浮かべてよろけ、地に膝をつける白薔薇を見てメタルブラックは言葉を発した


   メタルブラック「どのような返答をするか予測はつく、だが敢えて言おう」

   メタルブラック「……投降なされよ、貴殿らの戦闘能力は実に素晴らしいこのまま殺すには惜しい」



  白薔薇「……ふ、ふふっ、メタルブラックさん…貴方の想像通りの返答を致しますわね…まっぴら御免ですわ」ニッコリ

   メタルブラック「……フッ、でありましょうな、そうであって欲しかった、そうでなくては困る所だった」


 返答など分かり切っていた、[メタルブラック]自身が自分の父を裏切れないから、だから彼女等の呼びかけに応じて
自首しなかったのと同じように少年少女達にも自分の護るべき正義や信念がある
846 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/02/21(月) 02:10:04.74 ID:QqQsPltQ0

 黒鉄の侍が言葉を区切るとほぼ同じタイミングで空間の裂け目が頭上に現れ高出力の光線が落ちてくる
[次元衛星砲]による射撃が始まったのだ、悪の組織の幹部はその場を飛び退き事なきを得る

 裂け目からは止めどなく神罰が降り注ぎ必要に鋼の武士を狙うが命中率はそれほどよろしくは無い
衛星砲の精度が決して悪い訳ではない、ただそれ以上に標的が"速い"のだ


  ルージュ(くっ…やっぱりメタルブラックさんには当たらない…いや、所々被弾はしているけど、それでも――!)


 将を射るならば馬を射よ、相手にとっての射手は白薔薇と言っていたが正しくその通りだ
縦横無尽の移動も全ては機動性特化型という彼自身の持ち味、その持ち味を活かすのが
この広い[庭園]という"戦場<バトルフィールド>"でもある


 時空の裂け目からの狙撃、紅き魔術師の術もメカ達の遠距離射撃だって、少年少女の[飛燕剣]も何も全て回避され
唯一決定的にダメージを与えていたのが[タイガーランページ]か[硝子の盾]に突っ込んだ時に発動する
カウンターの[ブロークングラス]ぐらいのモノであった


 …そう、機動性を活かした攪乱と電撃戦を得意とするならば自由自在に走り回れない様にするというのが上策

 そういう意味でも[硝子の盾]効果は大きかった



 紅き魔術師は術による攻撃をしながら視線で白薔薇姫を見やる、…[メタルブラック]は命まで奪ってはいないが
重い一撃を受けていて術の詠唱は厳しいと見受ける
 術士の欠点は偏に耐久性の無さと言えよう、後方から術による援護や補助を主体として前線で攻撃を受ければ
敢え無く崩れ落ちる……というのも魔術師であるルージュ自身が一番理解していることだ



  ルージュ「全てはあの機動性…あの速さなんだ…っ、アレさえ…アレさえ封じることができれば…ッ!!」


 弾幕を張り続けてどれほど"術力<JP>"を消耗あしたことだろうか…医療メカが白薔薇の治癒に向かい
攻め手が手薄になった隙に彼奴は放電で次々と[硝子の盾]を排して行き


 気が付けばもうアイツを止める障害物など無くなっていた


 壁さえ無ければ黒鉄の疾風と化した彼奴にまともな攻撃が当たる訳も無い、いつの間にやら
回収されていた薙刀の[突き]がレッドの脇腹を貫いていた…!アセルスは鉄塊による超重量級の[体当たり]で大樹の幹に
叩きつけられるように吹き飛ばされて吐血…っ


   白薔薇「アセルス様!――揺蕩うは幻妖の水鏡に写せし我が御身[ミラーシェイド]!!」

 シュイン!シュイン!シュイン!

  メタルブラック(むっ…なるほど、分身の術とは面妖な[妖術]もあるものだ――――だがっ!!)チャキッ


 BJ&Kによる手当もまだ完全でない状態で少女の危機に白薔薇が駆け出し幻影を出現させる術を発動させる
メカの内蔵センサーすらも本当に生きている生命であるかの様に欺く妖<あやかし>の技
 質量を持った分身をいざとなれば身代わりとして使うこともできる―――然しそんなものは無意味だと言わぬばかりに…





          メタルブラック「 [ ム ー ン ス ク レ イ パ ー ] !! 」





 ――――地上に月影が描かれた。


 そう錯覚したときには全員が斬られていて、地に伏していた…


  ルージュ「がっ、ぼ、ぁっ…―――!!!」ドサッ

  ルージュ(一体…いつ、切られたんだ、まるで動きが、視えなかった……つよ、すぎ、る)ゼェゼェ…



 赤の魔術師は一瞬で消えた白薔薇の幻影達や自分と同じく地に伏している少年少女達がまだ息をしていることを確認する
彼らは与り知らぬ事だが、この技を見切れた者はかの武勇の姫"金獅子姫"だけであり…そんな彼女も[かすみ青眼]で彼奴と
真っ向からぶつかって相打ちになるほどであった…ッッ!
847 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/02/21(月) 02:12:31.29 ID:QqQsPltQ0
*******************************************************


                      今回はここまで!!


                次回メタルブラック戦、完結予定…ッッッ!!!


*******************************************************
848 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/02/21(月) 07:11:58.62 ID:TKSSFowqo
SS速報避難所
https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196/
849 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/02/21(月) 21:46:54.57 ID:cSviMkfS0
久々&一気に更新乙です
タイガーランページのぶつかり合い熱い…白薔薇かっこよかった
それにしてもメタルブラックつええ
850 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/02/22(火) 02:29:54.23 ID:b2xeBnFlO
来てた!おつおつ
851 :メタルブラック編完結 [saga]:2022/03/31(木) 05:00:04.03 ID:BfNAH4mk0

 傷は深い、朦朧とする意識が紅き魔術師にソレをより一層実感させる


 おそらくパーティ内に置いて一番護りが弱いのは自分だ、[シンロウ遺跡]で幾つか有益な装備品を調達したが
その中で[精霊銀のピアス]しか新調していないのだから
 逆に一番防備を固めていたのは[精霊銀の鎧]まで着込んでいたアセルスだったが…蓄積したダメージもあってか
もう動けそうにないと見た

 白薔薇姫もルージュもアセルスも生きてこそいれども立ち上がる事も出来そうにない、術士が薄れゆく意識の中で
見えたのは彼らの仲間内で最も体力があった少年が辛うじて起き上がる姿であった…




    ルージュ(レッド……すまない、これ以上は――もう、無理だ…)ゼェゼェ


    ルージュ(こんな所でボクの旅は終わるのか…案外あっけないモノだな…)




 どうすれば黒鉄のサムライに勝てたのだろうか、今の自分達で勝機など有り得たのだろうか
目の前が闇に覆われ始めた彼は何度も自問していく、まだ意識を手放すわけにはいかない親友がまだ立っているのだ…!
ならば何か無いのか!?と、気力だけでどうにか沈んでいきそうな意識を繋ぎとめていた



    ルージュ(すべては…あの はやさ なん、だ  あれを おさえ、れば…でも どうやって…)




 背部スラスターから噴き出す光、熱、焔、人間では到底追従することは許されない機械だけが産み出せる機動性、馬力…


 





    ルージュ(   ……あ? )



 ふと、そこまで考えてある事に思い至る。

 彼奴の速さは全て背部スラスターから生み出されるのだ、人間じゃない、メカである彼の肉体だからこそ可能な事…




 思考が水底の泥の様に深く落ちる寸での所で、彼は"気が付いた"のだ
…そうだ、そうだ!!なんでこんな簡単な事に気づかなかったのだ!?自分はなんて愚かだったのだ!!

 伝えなくては、レッド少年に、自分が導き出した『最適解』を…ッ!





   ルージュ「―――!」パク、パク…!


 残った気力を絞り出す様に身体を動かす、全身が痛い、神経筋が細胞の一つ一つにこれ以上酷使させるなと訴えかける
唇を開いたつもりだが、声が出せない…もう彼に"声<メッセージ>"も届けられない…っ!


―――
――




     レッド「ハァ…ハァ、げふ、ぐっ…」ヨロッ

 メタルブラック「少年よ、まだ立つか」スッ


     レッド「当たり…前だ…俺は、お前達を―――ブラッククロスをぜってぇ赦しちゃいけねぇ、んだよ…」フラッ


852 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/03/31(木) 05:00:52.72 ID:BfNAH4mk0

 小此木烈人の闘志は未だ燃え尽きてはいなかった、彼にとって家族の仇たる一味の者というのは確かにあった
父と母、妹の仇討ちで始めた旅ではあったのだ……然しそれ以上に彼を突き動かすモノが、今の彼には在るのだから



   メタルブラック「……仲間は全員傷つき倒れ、この身に有効打を与える術も持たぬ絶望的状況で諦めぬと申すか」

       レッド「うるせぇ…、勝てる勝てねぇの話じゃねぇんだよ、俺はなぁ――――」




   メタルブラック「家族の仇だからか、少年よ」



 [書院]が焼け崩れていく音と人々の叫びが[庭園]にまで聞こえてくる、その最中で黒鉄の戦士の声だけは澄んで聞こえる
少年の内情を知る彼の問いにレッドは応える


       レッド「それだけじゃねぇよ」


 少しでも呼吸を整えるべく、また仲間が誰か一人でも気絶から立ち直れるまでの時間稼ぎも兼ねて会話に付き合う
少年の言葉に興味を抱いたのか黒鉄の武士は「ほう?」と聞き入る事にした




  レッド「最初こそな…俺は、復讐だけを考えてずっと生きてきたさ」

  レッド「力を手に入れて、強くなって…けれど復讐は良くない、そんなことをすれば報いを受けるって警告もされた」



 アルカール男爵から言われた事を思い出す、正義以外に力を行使すればヒーローに正しくないと判断され抹消されると
それでも構わない、どうせ死んでいた身なのだからあいつ等を道連れにしてやれればそれで良いなんてさえ思っていた


  レッド「そん時の俺は…正義なんざ知ったこっちゃないって考えてたさ、でもな色んな人と出会って」

  レッド「[シンロウ]や此処で行われていた所業を知って…っ!漸くわかった気がするんだよッ!」



 何も知らない探検家達が人知れず犠牲になり、人体改造を施されて犯罪に加担させられる事そして何より
メタルブラックの基地にあったあの身の毛もよだつ部屋





  - レッド『うっ…こいつぁ…』ギリッ -



 紅い鉄扉に倒れたパイプ椅子、そこら中に何かが暴れ回った痕跡のある無機質な部屋…
一体、どれ程の人間達が組織の欲望を満たす為だけに苦しみ死んでいったというのだろうかッ!
 こんなことが許されていいはずがないのだ
今も世界の何処かで"名前も顔も知らない誰か"が自分と同等かそれ以上の苦しみを受けている
 一度そう考えてしまったら彼は止まれない、止まれなかったのだ
相手が自分よりも圧倒的な強者だとか、個人の力でどうすることもできない組織だとしても
臆してはならない、自分が此処で恐れをなして背を向けたのなら、一体誰がその行いを止めてくれるというのだ!?

 口を塞ぎ、目を閉じて、これから先も未来永劫続いていく非道の数々を見て見ぬ振りで生きていて




――――――…果たして、笑って明日を迎えられるのか



   レッド「俺はお前達の所業を許せねぇ、…ここで諦めちまったり逃げちまったらよォ」


 レッド「俺はきっとそれ以上に俺自身を赦せなくなっちまうんだよ!!
           前を向いて明日が迎えられない、いや!明日なんて一生こねぇんだよおおおおおおおお!!!!」




                カッ!!!
853 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/03/31(木) 05:01:53.58 ID:BfNAH4mk0


     メタルブラック「な、なんだこの光は!?この生命エネルギー反応は…」


 小此木烈人が咆えたと同時に彼の身体が眩い輝きを放った、彼の魂の叫びに呼応するかの様に…っ!



   光の粒子『』キラキラ…
   光の粒子『』キラキラ…


 少年から解き放たれて霧雨の様に降り注ぐ光…それは"意志の力"
彼の熱い想い、決して挫けぬ心、誇り高き精神が――正義の使者としての証が仲間を奮い立たせるエナジーの雨となり
降り注ぐアルカイザー特有の技[ファイナルクルセイド]として昇華したのだ…ッッ!!



  「…うっ、わたくしは意識をどれほど失っていたのですか…」ムクッ



 メタルブラック「!」ハッ!

     レッド「白薔薇さん!」



 降り注ぐ光を浴びて目を覚ます白薔薇姫、否、彼女だけではない!
[ムーンスクレイパー]を受けて所々ショートしていてピクリとも動かなかったラビットとBJ&Kも再起動し出したのだっ!
 アセルスもルージュも、迸るエナジーを受けて再び起き上がったではないか…ッッ!!



   メタルブラック(今のは――そうか、あの生体エネルギー反応は"そういう技"なのだな…敵ながら天晴だ)


 有機生命体はおろか機械である筈のラビット達ですら受けた損傷個所が治っている
機械である彼らに治癒の術は本来効かない筈…それこそ[マジカルヒール]の様な言葉通り"奇跡"の力でもない限りだ
 満身創痍のレッド少年以外は生命に満ち溢れ、逆に少年は…むしろ内なる魂がすり減っている様に感じられる


―――[ファイナルクルセイド]…その技は確かに仲間達を完全復活させるが、代価として文字通り命を燃やす技だ


 少年の消耗具合を見て鋼鉄の戦士は「敵ながら天晴だ」と称賛した




 ラビット「再起動を確認、復帰理由は不明ですが今は任務を遂行します![サテライトリンカー]スリープモード解除!」
  白薔薇「鏡よ、鏡…この世で憐れなる自傷者は誰なるぞ[硝子の盾]!」 


 妖魔とメカが状況先程の焼き直しと謂わんばかりに相手の動きを封ずる手段に打って出る、彼奴もまた何度でも躱し
切り伏せてみせようと言わぬばかりに駆け抜け始めた…ッッ!



    アセルス「烈人くん!!大丈夫!?」
    ルージュ「レッド待ってて、今[バックパック]から[最高傷薬]を…!」ゴソゴソ


 硝子の迷路内を[メタルブラック]が神罰とBJ&Kの[圧縮レーザー砲]を避けに専念しながら動き回る最中
紅き魔術師は回復薬で少年を介抱する、一体いつの間に彼はそんな全体回復なんて大技を習得していたんだと疑問はあった
だが、この際そんなことはどうでもいい一刻も早く伝えなくてはならないことがあるのだから…



    レッド「すまねぇ助かったぜ…!なんとか持ち直せたがこのままじゃジリ貧だ、どうしたもんか…」


 傷は治った、とは言え"JP<術力>"やメカ達の"WP<ウェポン・ポイント>"までもが満たされたワケではない
遅かれ早かれ[メタルブラック]の足止めをするのがやっとの戦法も続きはしまい…







     ルージュ「そのことなんだが…ボクに一つ案があるんだ、危険な賭けになりそうだけど」

854 :※ファイナルクルセイドはヒーロー技なので原作において変身してないと使えません [saga]:2022/03/31(木) 05:02:41.50 ID:BfNAH4mk0
―――
――


  メタルブラック「――――砕け散れ!」バチィィィ!!


 [落雷]で硝子の壁を排除して肉迫していく、ここまでは先と何ら変わらぬ作業
半ばルーチンと化しているこの状況で優位なのは自分だと鋼鉄のサムライは考える
自身には[マクスウェルシステム]が搭載されている為、電撃や技を如何に放とうと"WP<ウェポン・ポイント>"が底を尽きる事は
早々無く更に言えば元より彼の内蔵燃料槽もクライン博士の手によって作られた特別製だ、元からの蓄積量からして違う


 一方で向こう側のメカは正規の規格品、根競べをすればどちらが先にガス欠になるかなど目に見えている
白薔薇姫にしたってそうだ、如何に妖魔といえども"JP<術力>"は無尽蔵に非ず

…いよいよ以て彼女等の顔に疲弊が浮かんできた。


 仮に再びレッドが[ファイナルクルセイド]を使い戦線を持ち直したとしても同じパフォーマンスでの戦闘続行は不可能
勝敗を決するのもそう遠からぬ未来だろうと彼は読んでいた


 だからある意味では想定通りであり、ある意味に置いてはイレギュラーな行動に少年達が出た事も不思議ではなかった




  メタルブラック「…む?」



ザッ!!




    ルージュ「…」キッ!

     レッド/アセルス「…」グッ




 術や技を使い遠距離から[メタルブラック]を牽制しつつ妖魔とメカの元へと彼らが集結した
前後から包囲するように攻撃を撃ち続けた方が高機動の武人には命中するだろうにあえて一方向に集結した
 そして何を思ったのか、援護射撃に徹していた術士や剣気を飛ばしていた少年少女が手を止めて一斉に前に出始めたのだ
いや、彼らだけじゃない、前に出た者達の背にメカ2台と妖魔1人も…





  メタルブラック「血迷ったか?…いや、違うか」



 既視感がある。


 数日前、奇しくもこの[庭園]で似たような光景を繰り広げたことがある
黒鉄の侍と黄金の獅子がお互いの全力で一騎打ちを果たした時と同じ…




 決着をつける為の"最後の一撃"を仕掛けんとする者と対峙したあの瞬間を想起させる。




   ルージュ「…かなり無茶ぶりさせるけど、皆ごめん」

    レッド「へっ、気にすんな!どのみちコレを決めらんなきゃ俺達は仲良くあの世行きだ」
   アセルス「危険でもこれしか選択が無いのなら、やってみる価値あるよ」



 ある意味では想定通りであり、ある意味に置いてはイレギュラーな行動――ジリ貧の現状を打開すべく大博打に出る事ッ



 人間というものは追い詰められると起死回生を狙って被害を被るのは覚悟の上でとんでもない捨て身の攻勢に出るものだ
紅き魔術師は背後に控えさせた妖魔貴婦人とメカ2機にも準備はいいかと確認を取る、帰ってきたのは最高の返答だった
855 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/03/31(木) 05:03:40.92 ID:BfNAH4mk0



  「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…!!!!!!





 総員突撃。



 言葉にすればそれだけの至ってシンプルなソレ、もはや作戦も糞も無いような見事な突撃っぷり
術士が後方から術を撃つことも機械達が光線を射出することさえも無く、妖魔が壁を作る仕事もしない潔いまでの"特攻"

 第三者が見れば血迷った末の玉砕覚悟としか見受けられない行為だが…



   メタルブラック「ほう、そう来るか…面白いっ!!」



 …[体当たり][突き][落雷][ムーンスクレイパー][タイガーランページ]、彼の技は
どれもこれも範囲を吹き飛ばす程の爆発力が無いッ!
 [ムーンスクレイパー]だけは全体攻撃と呼べるが、それは彼の機動力と個々の敵兵の立ち位置が並んで初めて意味を為す
一つの塊となって一丸で迫って来る集団相手では本来の性能を発揮できない


 言ってみればルージュ達の取った行動は肉壁作戦だ

 ルージュ、レッド、アセルスの3人が前方と両脇を固める様に走り、重要戦力の白薔薇たちを護る様に移動する…ッッ!






――――古来、とある"惑星<リージョン>"に存在した『陣形』という概念における[インペリアルクロス]の構え




 おそらくは唯一[メタルブラック]に決定的なダメージが入っていた白薔薇の[タイガーランページ]をぶち当てる為
しかし、それだけでは彼は倒せないし先程の様に黄金の拳同士の突き合いになるだけ――――









      ルージュ「 [ マ グ ニ フ ァ イ ] の 準 備 だ !!」



    ラビット「了解!![マグニファイ]スタンバイ…!」




 [マグニファイ]とはッッ!!その兵装のリミッターを外す事で能力を限界値を超えた威力を引き出すプログラムであり
これを使用すれば使った兵器は完全に壊れてしまうという効果がある

 長期戦を想定するならば初手で気軽に撃っていいモノではない、本当に最後の最期で使う様なブツだ




 白薔薇の[タイガーランページ]単騎だけでは正面からぶつかり合いになっても競り負ける


 しかし…殴り合いの真っ最中でどう頑張っても"回避不可能なゼロ距離から[マグニファイ]で横っ腹を撃たれたら"?


 遠距離武装である[圧縮レーザー砲]を離れた位置から撃ち出すというセオリーを無視してゼロ距離射撃で使う
そうなってくれば彼奴とて無傷では済まされない、それで倒せる倒せないは別としてもダメージを与えるのは間違いない
 そして――真の"本命"はコレではない、策の重要課題は如何に真意に気づかせずメタルブラックを欺き通せるかだ
856 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/03/31(木) 05:04:19.23 ID:BfNAH4mk0

―――
――



 どちらの大技が先に炸裂するか、黒鉄の武士<もののふ>はこの行動の要はそこにあると考えた




 メカの[マグニファイ]と白薔薇の[タイガーランページ]の二大火力をぶつけて一撃で鋼の侍を粉砕するか
 肉壁と化した"人間<ヒューマン>"組の3人を玉葱の皮を剥ぐが如く速やかに倒して芯の部分、切り札の淑女達を倒せるか




 言葉通り一回限りの大勝負だ、白薔薇の"WP<技力>"も残り僅かで[マグニファイ]も起動すれば、使った武器が破損
自身が出せる最高速度で彼らを捻じ伏せ不発に終わらせられれば勝利確定と言っても過言ではない


 内容に違いはあれどその行動自体は月夜の晩にメタルブラックが金獅子姫の[かすみ青眼]に対し[ムーンスクレイパー]で
打って出た一騎打ちと同じで、彼の性格上これに応えないのは武人として恥ずべきだと考えた


 後方へ逃げに徹しながらチマチマと[落雷]で1人ずつ落とすなんて野暮な真似を彼らを前にしたくはなかった
組織の者に小馬鹿にされようが罵られようが、彼は自身の理念を貫く事に誇りを感じており
 産みの親たるクライン博士からも"相手の弱みに付け込めないのが最大の弱点"と評されたが同時にその心を失くしては
真の最強になれないとのお言葉も頂いた…だからこそ[メタルブラック]は逃げには回らない


 真向から一つの塊になって向ってくるルージュ一行に対して真正面から札を切らせる前に全員を切り伏せる事を選択する





     メタルブラック「フッ、まこと面白き傑物達よ…よかろう受けて立つッ!」コォォォォォォォ…!!!



 黒鉄の戦士の背部スラスターから光が噴き出る、次の瞬間メタルブラックは夕闇を切り裂く閃光と化した
赤焼けの色に照らされたメタルボディが凄まじい推力を伴ってすっ飛んでくる
 初撃は最も彼奴と位置関係が近いセンターラインのレッドだ、お互いに直進すれば最初に激突するのは当然の事
視界に鋼鉄が飛び込んでくるのを見据えて少年はアセルスから借りた剣で[ディフレクト]しようと構えるが
防ぐよりも先に恐ろしく速い峰内が飛んでくる




   ゴッッッ


   レッド「がふっ――――!?」


 センターを走る少年が峰で殴打されて姿勢を崩し大地に転がされていく様がスローモーションの様に映る
ライトとレフト、それぞれを担当していた少女と魔術師は少年が倒されるのを見て直ぐに迎撃へと移行する
なにも倒そうなんて思ってはいない、後方で拳を輝かせた白薔薇姫とメカ達が絶対的に攻撃を外さない状況を作るのが目的


 アセルスは予めいつでも放てる様にしていた[稲妻突き]の構えを取りルージュも術の詠唱に入る







―――同じ事の繰り返しを…芸が無いぞ若人よッッ!!


 声に出さず胸の内でメタルブラックが彼らにそう叫ぶ、声なき叫びを体現するかのように数万馬力の剛腕が少年を地に
下した薙刀を振るい、術の詠唱が終わるよりも先に2秒差で飛んでくるだろう少女の刺突を掻き消さんとする

 半妖の少女が持っていた[サムライソード]の先端が敵の薙ぎでへし折られ、返す刃で利き腕の肩を潰されて苦悶の表情を
浮かべながら大地へと沈んでいき、それとほぼ同時に花飾りの淑女が片腕の[妖魔の小手]を輝かせながら地を蹴り
黒鉄のサムライ目掛けて跳躍した……この間、僅か2秒ッッッッッ


 アセルスを叩き墜とした彼奴は直ぐに真逆の方向に居るルージュへと攻撃を仕掛けんとする!
人の身体の構造上、目の前の相手を攻撃してすぐさま背後の相手を切り伏せたいと思ったなら当然振り返るなり
上体を捻るなりする必要性が出てくる、その場から移動するのではなく"ただの向きの修正"…
如何に距離を詰められる敏速性に優れたブースターを持っていたとしてもその動作を行う上で大きな意味を持たない
857 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/03/31(木) 05:04:50.32 ID:BfNAH4mk0

 黒鉄の戦士が紅き魔術師をカメラアイに捉えた瞬間には指先に高熱反応が出ていて[魔術]を唱えられる準備が出来ていた
[タイガーランページ]の拳を叩き込める射程圏内まで数pの位置まで接近している白薔薇の姿も横目に見えている














              メタルブラック(勝負あったな―――!!!)





 彼は自身の勝利をこの瞬間確信した。



 機械であるが故に優秀なAIソフトが直ぐに計算結果を叩き出した、彼らの切り札である白薔薇の拳が届くまで"数p"
その瞬き程の僅かな時間差は紅き魔術師を倒して白薔薇の対応に回るには十分過ぎる時間であると


 [猛虎プログラム]を発動させて白薔薇の拳を相殺するはおろかこれ程の秒差があるならば白薔薇を捻じ伏せる事さえ可能


 彼女が[妖魔の小手]に大技を仕込んでいたという意表を突いた攻撃をしてくると分かっていたならば警戒もできよう
初見殺しは1度でも見てしまえばその瞬間から"初見殺し"ではなくなる、どんな攻撃が来るか予め予測できているならば
冷静に貴婦人の挙動を見てどの位置に攻撃を叩き込めば良いのかも判るというものだ…

 彼女の背後でラビットの[圧縮レーザー砲]が膨大な熱量を産み出しているのもカメラアイで確認できたが
彼が[マグニファイ]を撃ち出すよりも先に白薔薇を沈めたとあれば回避もさして苦労せんだろう




              メタルブラック「―――切り捨て御免」


 ザシュッ!



           ルージュ「―――っっっっっ」ブジュッッ






 紅き魔術師の法衣が鮮血に染まる。

 薙刀の先端がルージュの腹部を掠める様に横一文字に切り裂く
詠唱が終わり術名を叫ぼうとした彼の喉からは声の代わりに血が噴き出た 



 ゆっくりと…世界の動きがスローになっていく、ルージュもまた母なる大地へと倒れ込む様に彼の身も墜ちていく…













                   ルージュ「―」ニィ


         メタルブラック「――――――――――!!」ゾワッ

858 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/03/31(木) 05:05:32.24 ID:BfNAH4mk0

 彼…メタルブラックは武人としてではなく私人として倒れゆくルージュの最期の顔を拝もうと見た、見てしまった。


 魔術師は笑っていた、まるで"悪だくみが成功した悪戯小僧の様な笑み"を浮かべていたのだ…!





 機械である筈のメタルブラックは確かに人工知能の片隅で警鐘が鳴ったのを感じた、自分は何かを見落とした?何をだ?








 彼らが[メタルブラック]を倒せる唯一の方法はなんだ?

 メタルブラックが誇る高機動能力を以てしても絶対的に回避不可能な超至近距離で最大火力をぶつけることだ



 ではその最大火力とはなんぞや?

 白薔薇姫の[タイガーランページ]とメカ勢の[マグニファイ]だ




 …一応[次元衛星砲]や他の面子が使う[剣技]や[生命波動]等でもダメージはあるがどれも回避可能で致死には至らな――










 黒鉄のサムライは、メカである。

 だからこそ頭の回転が速かった、優秀なAIを積んだ機械なだけはある…彼は悟った




















     レッド「 う お お お お  おお お おおおォーーーーーーーっ!!!!」









    メタルブラック「!?!?クッ、うお、うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!?!?」





 小此木烈人少年がアセルスの装備していた[ツインソード]を構えて[稲妻突き]で[メタルブラック]目掛けて猛進するッッ

859 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/03/31(木) 05:06:08.47 ID:BfNAH4mk0


――――[生命波動]…そう、"[心術]を彼らは使えるのだ"…ならば当然アレも使える


 "JP<術力>"が絶望的に低くて術士としての適性すらも碌に育ててこなかったレッド少年でさえ使える
自身を完全回復する術…[克己]をッッ!!








   - 『ルージュ(すべては…あの はやさ なん、だ  あれを おさえ、れば…でも どうやって…)』 -
   - 『ルージュ(   ……あ?)』  -


- 『…そうだ、そうだ!!なんでこんな簡単な事に気づかなかったのだ!?自分はなんて愚かだったのだ!!』 -
- 『伝えなくては、レッド少年に、自分が導き出した『最適解』を…ッ!』 -







 あの時、紅き魔術師は活路を見出した。
どれだけの攻撃を撃っても文字通り人外の速度で回避されるのであっては意味など為さない
 完全に意識外からの攻撃だったらどうだろうか、不意をついた一撃だ…それでいて致命的な一撃

 [稲妻突き]は脚に力を溜め狙いを定めた上でそこからの瞬発力で一気に距離を詰め相手を突き刺す技だ
一度発動すれば止める術など無く、だからこそ彼奴は技が出る前にアセルスの剣先を折り彼女自身も叩き墜とした
 然してこの剣技の威力では[マグニファイ]や[タイガーランページ]の火力には並び立たない


 鋼鉄の肉体を持つ[メタルブラック]を致死に追い込む事など不可能
何事も無かったかのようにそのままレッド少年の剣技をその身で受けながら白薔薇達を排除することさえ可能だ

 ならば、何故彼奴はこんなにも狼狽えているのか…―――――それは…ッッ!!













  レッド「テメェの背中についてるスラスターがガラ空きになるこの瞬間を待ってたんだぁぁぁーーーっ」











-『彼奴の速さは全て背部スラスターから生み出されるのだ、人間じゃない、メカである彼の肉体だからこそ可能な事…』-

 - 『――真の"本命"はコレではない、策の重要課題は如何に真意に気づかせずメタルブラックを欺き通せるかだ』 -








"白 薔 薇 と メ カ の 高 火 力 攻 撃 は 実 は 囮 で 本 命 は ブ ー ス タ ー 破 壊"





 将を射んとすらば馬を射よ…っ![タイガーランページ]と[マグニファイ]で一気に勝敗をつけようとするが如く見せ掛け
その実は剥き出しの背部スラスターを使い物にならん様にするのが目的の陽動作戦
860 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/03/31(木) 05:06:40.34 ID:BfNAH4mk0

 頑丈さを誇る鉄のボディも[次元衛星砲]で所々焼けていた、自慢の機動性で直撃を免れたからこそダメージも少なかった
掠める程度には被弾しつつあった彼奴でも背中だけは頑なに攻撃を受けない様に注意を払っていた

 単に不要な損耗を避けていたからではない、彼自身の構造上の弱点がそこにあったからなのだ
白薔薇とラビット達の2大火力が[メタルブラック]に当たるか防がれるかはこの際そこまで重要視していない

 最悪の場合[次元衛星砲]だけでも勝てないこともない。



 スラスターを破壊されれば単純に回避性能が大幅に落ちるだけではない[体当たり]や[突き]の軌道も眼で追えて読み易く
こちら側に攻撃が命中する確率も減る



…そして何よりも[ムーンスクレイパー]という速さを活かした彼の代名詞が完全に死ぬ





 焦り過ぎたな、[インペリアルクロス]の陣形で突っ込んでくる術士等を見て前衛3人を如何に早く倒して
中核の貴婦人達へ対応していくべきなのか…モタモタしていたら相手に切り札を切られかねない、と
 そんな節燥感に駆られて手早く少年少女と術士を倒したからこそ傷が浅かった



威力よりも速度を重視した峰内、剣先を折り返す刃で利き腕を潰すだけに留める早業、心臓を貫く事も無く先端で切り付け


 1人1人ご丁重に[克己]を唱えることすら不可能な重体にでもしてれば話は大分変っただろうが
それをやれば今頃2大火力の直撃によってメタルブラックの腰から上は綺麗さっぱり消し飛んでいたに違いない




 後門の小此木少年、前門から白薔薇の光輝く拳…っ!!




 今から振り返り少年を居合切ろうとすれば上半身が拳と光線で持って行かれる
無視して白薔薇を打ち負かせば馬を射られた将になり降り注ぐ神罰やら今まで楽に躱せてきた攻撃の集中砲火で敗ける




 ルージュ一行はあの劣勢から見事に逆転の一手を指したのだ…。



















            メタルブラック「 喝ッ ッ ッ  ッッッッッ! ! !! 」ブォンッ!




           白薔薇「きゃっ―――!!」     レッド「な、にィ!?」







 この時、メタルブラックが咄嗟に取った行動…それは意外ッ!"バク宙"である…ッ
数pどころじゃない距離まで白薔薇の[タイガーランページ]が迫った所でバク宙…否、正規のやり方と違って
鉄棒競技の逆上がりの様な片脚を大きく上げたバク宙擬き―――サマーソルトキックであった
861 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/03/31(木) 05:07:21.68 ID:BfNAH4mk0

 身体を宙に浮かしながら姿勢を横軸に180度向きを変える
こうすることでレッド少年の本来の目標であった『背部スラスター』への攻撃は大きくズレて
メタルブラックの腰付近に当たることとなった…一方で白薔薇姫は苦し紛れのサマーソルトを脇腹に受け
小さな悲鳴を上げながらも拳を叩き込んだ

―――当然ながら最初の予定通り上半身を粉々に吹き飛ばすという狙いは大いに逸れたが





    白薔薇「っっ――[タイガーランページ]!!!!!」ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ



 背面のブースター破壊は失敗に終わり、鋼鉄の肉体にほんのちょっとの傷を[ツインソード]で負わせるに至り

 白薔薇の攻撃は――上半身を消す致死の攻撃にはなり得なかったが、自身に蹴りを浴びせた片脚を完全に持って行った





  ベキメキ、メキャッッ




――――――バキィ




        膝下から完全に捥がれたメタルブラックの右脚『 』ベシャァァ!!




     メタルブラック「―――っっ、[猛虎プログラム]発動!!!!!!!!!」キュィィィン!!








 片脚を失い歩行は不可能になった。


 更に黄金の鉄拳による殴打の雨嵐がサムライの残った脚も奪わんと叩き込まれてズタボロの鉄塊と化す
白薔薇から見て上後方へと飛び退かれて距離を開けられた事で小手がほんの少し空虚を舞う
 脚を失いつつもバク宙をした黒鉄の戦士の上体は今完全に[稲妻突き]を放ったレッドの背後――死角を取る位置にあった
レッドが首を動かして自分の頭上を通り越した相手の姿を捉えて対処しようとした時には…[猛虎プログラム]が


 敵の[タイガーランページ]が既にレッド少年の鳩尾を的確に打ち抜いていた


 腹部に筆舌しがたい激痛が走るッッ、最強格の殴打技をその身に受けた齢19歳は
上方に跳んだ敵と違い地を滑る様に吹き飛ばされていく、頭の中が真っ白になる一生分の胃液を吐き出したかもしれない


 口中が酸っぱい、喉が熱い、自分の口からは水分が驚くほど出て行くのにそんな現状と裏腹に
脳の何処かにひどく冷静な自分が居て「よく今の喰らって俺生きてるな」なんて場違いな事すら考えていた
[克己]は唱えられそうにない、白薔薇さんはどうなった?頭の中に居る冷静な自分がふと目を向けると…



            レッド(……)


            レッド(オイオイ…)

            レッド(んなアホな、そんなんアリかよ…)





 丁度少年の視界に飛び込んできたのは歩行不可能になったというのに一体どんな手品を使ったのか白薔薇の真上に飛び
上から拳の雨を降らせ、それを貴婦人が拳の傘で防ぐという構図であった
862 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/03/31(木) 05:07:48.70 ID:BfNAH4mk0

 レッドが吹き飛ばされた瞬間に何があったのか、潰された利き腕を治そうと
少年に少し遅れて[克己]を唱えていたアセルスお嬢はその様を目撃した…

 傷は完治したが、彼女より先に完治して背部スラスターの破壊に少年が向った為、彼女はルージュの介抱に当たった
赤い魔術師を治療する傍らで彼女が見たモノ…それは目を疑う光景だった

 少年が吹き飛ばされた後、両脚がまともに使えなくなった[メタルブラック]はこのまま落下していくだけだろう…
背部のブースターこそ壊せなかったが機動性を潰すというお役目は確かに果たされた

 あとは地を這う芋虫よろしくとなったメタルブラックを囲んで叩くだけの手筈…だというのに








    メタルブラック「まだだ!まだ終わらん!!たかが片脚を失くした程度だ!腕が残っているっ!」シュバッ!ダンッ





―――両脚で大地に立てぬならば、両腕を地につけ逆立ちでもする要領で着地すればよいッッ



 [猛虎プログラム]を発動させた光り輝く両腕で大地に立つ!
まるで軽業師が舞台公演する曲芸じみた動きだ…アクロバティックな動作で宙を舞い
剥き出しになった急所へ致命の一撃を繰り出す少年を避け、前方の貴婦人に片脚を拳で千切られる程の衝撃を受けても
空中で繊細な姿勢制御を成してレッドを殴り飛ばして着地する、これだけでも十二分に常識を疑いたくなる挙動であり
 更にプログラム発動で[タイガーランページ]を可能とする人外の"筋力<STR>"を活用して
腕力と指先の力だけで大ジャンプを熟し未だ健在だった背部スラスターを吹かしてまた宙を滑空するように高速移動
白薔薇の頭上から拳の雨あられを降りかけるという行動に出たのだッ!!


 脚が在ろうが無かろうが関係なかった。
 ルージュの結論通り、全てはあの背部スラスターが産み出す機動性なのである



 アレを破壊できなかった時点で勝敗はもう決まったようなモノ…その事実を認めレッドとアセルスは苦渋を浮かべた





 そう、――――「自分達は一世一大の大博打に敗けたのだ…。」っと、少年少女はそう悟った







 [次元衛星砲]は白薔薇を巻き込むと判断した為、自動発射はせず
ラビットは白薔薇を巻き込まない完璧な位置取りで[マグニファイ]を撃とうと試みたが…時すでに遅し



     白薔薇「きゃあああああぁぁぁぁっ!!!」パキィィン!!
    ラビット「[マグニファイ]セット[圧縮レーザー砲]!!!!!」ギュィィィン


   メタルブラック「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」



        ジュウウウ ウウウウウウ ウ  ウウウウウウウ ウウウゥゥ ウゥゥ――!!


 彼女の[妖魔の小手]が完全に破壊されて吸収された[クラーケン]の力が解放されて消えていくのが見える
それとほぼ同時にラビットが切り札を撃ち出した、通常の何倍もの威力を持った破壊の輝き、圧倒的な熱量

 白薔薇との呼吸の合わせ方も決して悪くは無かった、競り合っている間に撃つという目的も果たせはした
ただ見積が甘かった、想像以上に相手が白薔薇を退けるまでの所要時間が短く、更に脚を失った事で完璧な回避行動は
不可能と判断したのか背中のジェットを使い無理矢理前進するというゴリ押しの力技で移動を始めた
無理に避けようとして余計な被弾をするのならいっそ"避けずに吶喊<とっかん>する"という思い切りに出た

 可及可能な限りの最大戦速、それを以てして自身のパーツが壊れようが焼かれようが必要な損害と割り切り
最短で[マグニファイ]の中を突っ切りメカ勢を叩き潰す、そんな意気込みをコレでもかと言う程に感じられる吶喊だった
 黒鉄の戦士が膨張したレーザーの波を突き抜けた時には既に上半身の左肩から先が完全に熔解して無くなっていた
863 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/03/31(木) 05:08:16.38 ID:BfNAH4mk0


 メカという種族は総じて任務という物に忠実である、どこまでも残酷なまでに



 何かを破壊する為に産み出された戦闘メカが喩え任務を忘れてしまったとしても是が非でも思い出し必ず遂行する様に
メタルブラックも"武士<もののふ>"の心を持ちながらも同時に何が何でも任務を果たさんとする性質を持っている


 己の全存在を掛けてでも必ず命じられた事を成し遂げようとする"性<サガ>"…どこか歪でありながらも純粋なソレ



 ラビットの[マグニファイ]の後すぐにBJ&Kの[マグニファイ]が黒鉄のサムライ目掛けて放たれたが
彼奴の肉体を灼けたのは前者の攻撃のみで後者の砲撃は全速力で突っ切る相手を捉えきれず



 片脚と片腕、持っていた薙刀を失いながらも彼奴はラビットを残った片腕で叩き潰し
残りの脅威と成り得る相手へと肉迫していく、[妖魔の小手]も破壊し終えてラビットもご覧の有様、最後は当然―――





     メタルブラック「ここまでだな」ギュンッッッ


         BJ&K「…うっ…」タジ…



 戦闘メカではない彼が、ほんの僅かにたじろいだ



 策で最も重要だった機動性を潰すという目的が潰えた以上、もうアセルスにもルージュにもレッドにだって打つ手は無く
直線的な動きしかできなくなったがそれでも[次元衛星砲]の直撃を避けながら残った脅威にトドメを刺すなど容易い

 身体のパーツの大半が無くなった武士は惜しむ様にBJ&Kを眺めていた








 戦士として戦っている実感を味わえる死闘だった

 最後の方は金獅子殿と剣を交えた時に匹敵するほどに"心"が震えた


 良き巡り合いだった、束の間と言えど邂逅を持てたことを誇らしく思う…、こうして終えてしまうのが哀しく思える





      メタルブラック(……二転三転する戦いだった、若人たちよ私は決して君達との闘争を忘れはしない)



 背部スラスターの推力だけで強引にホバリングする悪の組織の四天王は片腕だけの拳を勢いよく相手の胴へと打ち込んだ





       ガシャァアアアアアアァァァァァァン




     BJ&K「!?!?!?!?!?」バチバチ


 胴体に風穴を開けられて手足をばたつかせながら火花を上げる医療メカは自身を破壊せんとする輝く剛腕を両手でつかむ
その有様を見てメタルブラックは心の内で呟く…掴んだ所でもうどうしようもないであるまい、と

 彼奴にも彼奴の立場があるのだ創造主たる父の意向に逆らえない事も含めて
投降しないのであれば見逃す訳にもいかない、医療メカを破壊して完全に脅威を取り除いた状態で
"人間<ヒューマン>"組を抹殺してそれで"組織に攻め込んできた侵入者の排除という任務"は達成と、名残惜しくはあるが…
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/03/31(木) 05:08:43.23 ID:BfNAH4mk0

 拳を医療メカの胴にめり込ませたままメタルブラックは後ろを見やる

 地に墜ちたラビットの残骸、術士と少女に助けられたのか下唇を噛んだまま此方を睨みつける小此木少年
 術士と半妖の看護によって息を吹き返す妖魔貴婦人





  メタルブラック(……。)



 万感の想いがある、私人として邂逅があっただけに、束の間だとしても平時に偶然知り合えた気の良い観光客達と…

 それでもブラッククロス四天王としての責務は果たさねばならない
私人としても武人としての情ももう抱くべきではない…――――――――――――――――彼らは此処で殺す


 彼が腕を胴から引き抜こうとした時、違和感に初めて気が付いた




  メタルブラック(……?なんだ腕に力が入らない、左腕や脚だけでなく内部ジェネレーターまでやられたのか…?)



 出力が出ない、メカにあるまじき捨て身行動の数々で蓄積されたダメージが原因で内部に異常をきたしたのか
赤焼けに照らされてながら欠損した肉体の至る所から剥き出しのコードや火花を散らしながら彼は少考する
 彼の知性、人格を司るコアと頭部の知能AIは健在だ、故に考える


 赤焼けが綺麗だ。

 心を持たない機械の自分でもこの眺めは何故かカメラアイにずっと納めておきたかった。

 [京]の[書院]はどうやら鎮火したようだ住民たちがやってくれたのだな、怪我人はいなさそうで何よりだ。

 父は私を褒めてくれるだろうか、私はまた最強に近づけたのだろうか…それともこれは間違った強さなのだろうか。

















      メタルブラック(…っ!? なんだ、なにか おかしい、なにかが なにかが なにかが おかおかおあか)







 自分は何を考えてた?どうしてこの医療メカの胴体から腕が抜けないのか、だった筈だ
肉体あるいは内部の動力系に問題が出たのかと考えていた、なのに風景がどうだの私人としての考えだの地元民の事や父…

 さっきから考えが纏まらない、支離滅裂すぎる、どうしがんだなんで出力が胴を抜くくらいの理由を判明に至らない
支利滅劣すぎる、どうしんだんがんなでんジェネターレに異音が発性してるのではないかの?!?

 一休わたしの体身に伺が越きてりろ@だ!$










          「……本当に巧くいく保証なんて無い賭けだった、ボク達の勝ちだ」
865 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/03/31(木) 05:09:14.31 ID:BfNAH4mk0


  メタルブラック「―――!?」ガガガッ、ピーッ



 声の主に意識を集中させる、上手く聞き取れない集音機でも声の主が銀髪の青年のモノだと分かった



 アセルス「えっ、どういうこと!?」オロオロ
  レッド「お、おいルージュどうなってんだ…一体何が」オロオロ



 頭の中にノイズが響く、"両の眼<ツインアイ・カメラ>"は急速に色を失い古いブラウン管TVの砂嵐の様な景色ばかりを見せる
身体の随所から異常が検知されるメタルブラックにも術士の澄んだ声は聞こえた、困惑する少年少女の声も




  ルージュ「2人とも本当にごめんね、君達には作戦の真の狙いを敢えて言わなかったんだ」







 - 『――真の"本命"はコレではない、策の重要課題は如何に真意に気づかせずメタルブラックを欺き通せるかだ』 -







  ルージュ「この作戦は"如何にメタルブラックに気づかせずに欺き通せるか"…敵を欺くにはまず味方から」

  ルージュ「最後の最後でアレを警戒されるのをどうしても防ぎたくて、だからこそスラスター狙いと思わせたかった」








-『彼奴の速さは全て背部スラスターから生み出されるのだ、人間じゃない、メカである彼の肉体だからこそ可能な事…』-









    "メカである彼の肉体だからこそ可能な事…"


    "メカ"である彼……―――――――『メカ』……





  メタルブラック(―――…そう、いう、ことか……ははっ、試合に勝って勝負に敗けるとは、こういう、こと、か)







  ルージュ「メタルブラック、貴方ならきっと脅威の度合いから判断して白薔薇さん、ラビット、BJ&Kの順に倒し」

  ルージュ「最後に完全な武力破壊を行ってからトドメを刺すだろうと睨んだ――だからこそBJ&Kに秘密裏に頼んだ」




    ルージュ「―――"[論理爆弾]"、メカである貴方になら絶対に効くだろうって閃いたんだよ」

866 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/03/31(木) 05:09:48.15 ID:BfNAH4mk0

 黒鉄のサムライはその場から動けなかった。


 否、動かそうと思えば動かせるが指一本でさえ錆び付いた様にぎこちなく思い通りに動かせなかったのだ…!



 人間でも妖魔でもモンスターでも無い、メカという種族が持つ唯一最大の欠点
[磁気嵐]を始めとした特定の技で内部システムを狂わされるという問題点だ


 機械という身であるが故に[毒]や[暗闇]に[眠り]、[石化]や[魅了]と言った状態異常が何一つ効かない
しかし先述の技や[グレムリン効果]…[論理爆弾]等の技やプログラムを使われれば途端に何もできなくなる

 電気系統のエラーから[麻痺]やAIの故障による[混乱]が例に挙げられるがメタルブラックの頭部から
蒸気が上がっているところを察するにおそらく[バーサーカー]の状態異常が出ていると見ていいだろう



 散漫とした思考回路、脊髄神経に電気信号が行き渡ってないのかと思いたくなる動きの悪さ、異様に熱くなる頭部


 一度に難しい事を考えすぎて知恵熱を出した子供、…なんてモノとは比較にもならない程の熱量が鋼鉄の武士の頭部から
発せられていて冷えた外気の風が熱に充てられて視覚出来る程の蒸気と化す






 …もはや今のメタルブラックには[猛虎プログラム]を発動させる事はおろか、背部のスラスターを吹かす事さえ困難





 当然ながら下弦月を描く剣閃も体内電圧を利用した稲妻も速さに物を言わせた突撃だって今の彼には不可能
単純な武力と武力のぶつかり合いなら間違いなくルージュ一行に勝算は無かった、抗った所でジリジリと疲弊して最終的に
今現在の壊滅状態に陥り命を刈り取られたに違いあるまい


 だから彼は賭けた。


 白薔薇の拳と[マグニファイ]からの[圧縮レーザー砲]2発、これに命運を委ねた―――と、思わせて真の狙いは
レッド少年やアセルスお嬢が繰り出す瞬間加速値の最高の刺突技による背部スラスターの破壊!…と、いうのも実は陽動で
正真正銘真の目論見は少年等を避け、主力組の白薔薇とラビットを倒し最後の一人BJ&Kを倒すという間際で放たれる罠だ


 まさかの"二重陽動作戦"…ッッ!!!



 敵は背後から弱点を狙ってくる少年に気づきコレが狙いだと考える、そしてそれをやり過ごし目の前にいる
無視はできない超火力持ちの主力組を潰すことに注力する
 敵の策を見破り奇襲のソレを捌きつつ近接タイプの白薔薇も打ちのめす、そして回数1発限定の[マグニファイ]も
避けきればその時点で出来る事など高が知れている


 2発の極大レーザー砲をやり過ごした、この時点でメタルブラックは半ば勝利を確信した




 偉人の言葉を借りるなら、"勝利を確信した時、既にソイツは敗北している"


 術士達にはもう戦局を覆す一手は無い、最後の切り札は今ので終わりだ―――そう思い込んだ彼奴がラビットを墜とし
虎の子の[圧縮レーザー砲]も使い物にならなくした医療メカの前に堂々と立つ
 [マグニファイ]後であるならばやれる事なぞ精々[パンチ]が関の山だと…



 ここまでの流れ全てが[論理爆弾]を警戒させない布石



 戦闘開始早々でルージュを庇ったBJ&Kにした時と全く同じ様に腹を貫通する一撃を見舞う
そして手足をばたつかせながら自身を破壊せんとした"メタルブラックの輝く剛腕を医療メカは両手で掴んだ"
 [論理爆弾]という技は相手に接近して対象に触れ、そこから敵の脳に影響を与える電磁波を流し込む様に送信する
つまり接触が出来なければ"miss<かわされた>"という事になってしまうのだ

 仮にBJ&Kが白薔薇と同じ前衛で殴りに行けば不審に思われ勘付かれたまである、敵の機動力なら当然回避されてた
867 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/03/31(木) 05:10:20.33 ID:BfNAH4mk0

 [次元衛星砲]のリンクは未だ切れていない、いつでも羽の捥がれた蝶と化したメタルブラックを灼く準備はできてる
少年少女、術士と妖魔貴婦人は既に彼奴を取り囲む様ににじり寄っている



   メタルブラック「見事なものだった……この勝負、私の敗けだ」



 声調機の調子も良くはなかった、濁りを感じさせる発声だがそれでも黒鉄の武士<もののふ>は
己を打ち負かした者達へ称賛の言葉を贈った
 肉を切らせて骨を断つ、一歩でも匙加減を間違えば終わっていた作戦
誰か一人でも欠けていたら成立しなかった総動員の大博打に彼らは勝ったのだ、[論理爆弾]が直撃しても最悪の場合
軽い[スタン]程度の状態異常で終わったかもしれない


 ザッザッ…


      レッド「メタルブラック…」


  メタルブラック「戦う前にも告げた通り、父を裏切る事はできない…降伏するつもりは無い」


      レッド「…」


  メタルブラック「若人達よ、もしも私に情けを掛けるというのであれば私が望む事はただ一つだ」





  メタルブラック「介錯仕ってもらいたい、この首を撥ねて幕を下ろしてくれぬか?」

     アセルス「そんな…」



 父親、Dr.クラインの唯一の味方はこの世で最早自分しかいない、そんな自分に何故父を裏切れようか?
このまま逮捕されて自身の内部情報から警察機関に組織の手がかりが流される事も幹部としての矜持が許さない
 敗者が勝者に乞うなどと烏滸がましいのかもしれない、そう黒鉄の武人は考える…それでも彼は願わずにいられない
自身をここで切り捨てて欲しいのだと




      レッド「……解った」チャキッ




     アセルス「…ぁ」

     ルージュ「…ボク達も最初から覚悟はしてきた筈だ、――メタルブラックさんもソレを望んだんだ」



 紅法衣の術士は首を振るいながら少女にそう言った、…自分に言い聞かせているようにも思えるその言葉を




                メタルブラック「…少年よ、感謝いたす」ニィ

         レッド「メタルブラック、俺はおまえの事を忘れない!絶対に…っ」グッ












                  ザシュッ、ゴト…

―――
――
868 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/03/31(木) 05:11:12.90 ID:BfNAH4mk0


 静寂。



 何とも言えない長い沈黙が、不気味な程の静けさがそこには漂っていた







 黒鉄の武士は身一つ満足に動かせない状態にあった中、おそらく全神経を集中させたであろう
首の付け根の部分、鎧を着こんだ胴体と頭部のつなぎ目に当たる部位を意図的に曝け出し打ち首にされることを待った
 常時あの爆発的な高機動では背部スラスター以上に狙う事は不可能だった急所を装甲を僅かにパージさせた上で…


 焼け跡だらけになった[庭園]の土にごとりと音を立てて重たい金属の塊が落ちた


 もう何も言わない鉄塊、ツインアイは死んだ魚の目玉が如く光を失っていて


 無機質なメカである筈の彼の口元はどこか微笑みを携えていた様に思える、最期に願いを聞き届けられたからだろうか


 切断面からよくわからないコードが数本飛び出ていて機械油や火花を飛ばしながら動き、やがてそれさえ動かなくなった









 初対面の自分達に快く接してくれた人、旅先で出会った数少ない知人…そんな彼の"死<きのうていし>"


 自らの手で知り合いを討った……



 その事実をどう受け止めて良いのか分からなかった、いや何も実感できなかった、何も感じられなかった。
胸にぽっかりと穴でも開いたようで内に入って来るものがその穴から外へと抜けていくようだった
 人間、感情が一定量を振り切れると笑う事も怒ることも、泣くことさえもできなくなるのだと知った

 得物を握った手を力なく下したまま空を見上げつづける少年、白薔薇姫に寄り添い胸を借りる少女

 そして動かなくなった鉄塊を見つめたまま思考を止めていた術士の青年





 皆、誰しもが感情の整理に時間を要した。



 然して刻を止めた少年達を置き去りに陽は沈んでいく、月は昇り始める…世界は無情にも廻っていく

 何時、何処で、誰が、何を想うと何を考えようとそんな事は知った事ではないと言わぬばかりに、時は去っていく


 世界は止まらないのだ、どんなに辛い事や厳しい事があっても、それでも明日へと向かって行く











 そう、だから……



                 「探しましたよ、アセルス殿」

869 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/03/31(木) 05:11:48.70 ID:BfNAH4mk0



      白薔薇(っ!? この気配は…っ)ゾワリッ

      アセルス「誰だ!」バッ



 不意に、力強さを秘めた声が静寂の空間に響き渡る
声の高さからして女性と思われる声に一同がハッと辺りを見渡す…


 夜の帷が下り始めた世界にその存在は眩しすぎた、だからこそ直ぐに気が付いた




 黄金の輝き、一目見て抱いた印象がソレだ


 引き締まった肉体美、健康的な日に焼けた肌と魅惑的な線を持つ女性の身体、そこから溢れんばかりの生命力
何物にも恐れを抱かない情熱的な瞳―――何もかもが眩かった、気高い獅子を思わせる黄金の輝きがそこに居たのだッ!







         白薔薇「金獅子姫様ですね、私、白薔薇と申します…姉姫様の御噂は耳にしておりました」



                      金獅子「……。」





……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ




    アセルス(!? 金獅子姫…この人が[針の城]で白薔薇とイルドゥンが話してくれた…あの)



    白薔薇「最も勇敢な寵姫であったと」

    金獅子「白薔薇姫…あなたは最も優しい姫であったと評判ですよ」











―――世界は止まらないのだ、どんなに辛い事や厳しい事があっても、それでも明日へと向かって行く




 そう、だから……





         金獅子「その優しさで、私の剣が止められますかしら?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ…








 ――――――だから……彼らの前には更なる試練が姿を見せるのであった
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/03/31(木) 05:14:42.94 ID:BfNAH4mk0
************************************


            今回はここまで!


  ルージュ編 ボ ス ラ ッ シ ュ 継 続 で あ る !!


************************************
871 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/03/31(木) 11:44:15.40 ID:ov/oXdPp0
乙です
メタルブラック強かった…と思ったら金獅子キター
872 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/03/31(木) 20:20:41.20 ID:A8LpjGxnO
なぜか金獅子姫戦はやっぱり京でってイメージがある
873 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/04/06(水) 21:01:39.01 ID:IL9sGhqeO

このボスラッシュはヤバすぎる……
874 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/04/07(木) 00:33:11.88 ID:c3TbhMypO
耐性の無さを利用した搦め手勝利はサガ感あるな
875 :今回の投下分で一旦、ルージュ側ストップ [saga]:2022/04/09(土) 21:59:01.45 ID:dburQpGm0


 どっと汗が噴き出した、紅き魔術師は目の前に立つ黄金の闘気にあてられて蛇に睨まれた蛙の気分に至る
隣で今の自分と同じような表情をしているレッド少年もそうであろう



 ――――途方も無く強い。



 対峙するだけで解った、解ってしまった

 今さっきまで死闘を繰り広げていたメタルブラックに決して劣らぬであろう"威圧感<プレッシャー>"を感じる程の強者
断言しよう、戦えば間違いなく…負けるッ!



   レッド(ぐっ…冗談じゃねぇぞ…俺達、満身創痍だってのに!)

  ルージュ(メタルブラックさんですら種族としての特性を逆手に取った辛勝だったのに…勝ち筋が見えるのか!?)


 精も根も尽きたと言っていい、"WP<技力>"も"JP<術力>"もほぼ使い果たし武器の破損さえある現状での連戦
ルージュは[ゲート]の術を使って仲間全員と他所の"惑星<リージョン>"へ逃走することも視野に入れたが…
相手は上級妖魔、星間移動ができぬワケが無く逃げた所で追い付かれる場合も十分あり得る


  ザッ…



 気高き獅子は一歩、妹姫へと歩みを進める
それを見て、我に返ったアセルスが白薔薇を庇う様に前に立ち塞がる、白薔薇を…!
いつも自身を励まし寄り添ってくれた大切な人を護らなくては!その想いだけで彼女は獅子の前に立った…っ!






                アセルス「戦うのは私だ!」バッ!


                 レッド「アセルス姉ちゃん!」
                 白薔薇「アセルス様!!」



                 金獅子「……。」ジッ



         アセルスの利き手『 折れた[サムライソード] 』



 刃先が使い物にならなくなった剣を精一杯握りしめて、それで尚護る為に立ち上がった少女を見つめ――視線を変える





             金獅子「…。」チラッ


        首を切り落とされたメタルブラックの残骸『 』





     金獅子「ふっ、…この剣に屈しなかったのはオルロワージュ様ただ一人…。」スッ



 獅子は常に帯刀している二刀の内、"唯一無二の自分の剣"では無い方―――[黒曜石の剣]を抜刀していた
抜き身の刀身はアセルスへと向けられていて彼女はなんとその剣先を…っ!


 ―――――スチャッ


静かに鞘へ収めた。
876 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/04/09(土) 22:00:02.25 ID:dburQpGm0


    白薔薇「金獅子姉さま?」

   アセルス「…どうして剣を?あの人に言われて白薔薇を連れ戻しに来たんでしょ」




     金獅子「…いざ参る、と言いたいですが手負いのあなた方を斬り伏せたとあっては恥という物」

     金獅子「その折れた劔で立合うとなれば尚更に」




 折れたアセルスの得物を一瞥しながら彼女は更に次の様に言葉を続けた…




     金獅子「あのお方の御命令は絶対です、それに叛するつもりなど絶対にあり得ませんが」

     金獅子「今この場では剣を振るいたい気分にはなれません」



 最後にメタルブラックの亡骸に視線を向けて、この場で争う気になれない、彼女はそう告げた…
ほんの僅かな時間とは言え武人として最高の邂逅を果たした相手、感傷的だと思われるかもしれないが
今はただ武勇の死を慮りたかった、…嘗て人間だった頃一人の戦士として敵味方関係なく戦死した勇者に哀悼の意を表した
 剣を交え彼という存在を知ったからこそ尚更に亡骸が野晒しになっているこの地で争う気にはなれなかった





   金獅子「ですから3日後、今から丸3日過ぎた後の夜半過ぎに再びこの[庭園]で1対1での決闘を望みます」



  ルージュ「い、1対1で!?」



   金獅子「ええ、こちらから指名する相手は無論あなたですアセルス殿」



 魔術師は目を見開いた、正直に言えば今この場で戦いを回避できるのであればこの提案は是が非でも乗りたい
現状のパーティーメンバーのコンディションと武装の破損具合を見れば全滅するのは火を見るより明らか

 が…、三日後に『"1対1で最低でもメタルブラックと同等の相手と戦う"』というあまりにも大きすぎる代償を払わねば…




   レッド「姉ちゃん1人で戦わせるワケには「いいわ」


   レッド「っ!アセルス姉ちゃん!」

  アセルス「今から丸3日過ぎた後の夜半過ぎ…夜中の2時に私があなたと戦う、それでいい」



 疲弊しきった今の自分達が一斉に飛びかかったとしても勝てる相手じゃないことは判っている
苦肉の策だろうが不利な提案だろうと四の五の言える立場じゃないのは重々承知している、だからこそ受け入れる他ない



  アセルス「ただし約束して欲しい、あくまで戦うのは私なんだ!…彼らは、本来関係ない人達なんだ」




  アセルス「もしも私があなたに敗北したとしてもルージュや烈人くんには指一本触れないと誓ってくれ」

   金獅子「…いいでしょう、あのお方の名の元に誓います気高き人よ」




 金獅子姫の姿は揺らめき、次の瞬間には影となって消えていた…、居場所が割れて同じ[京]に居る以上は
別の"惑星<リージョン>"への逃走はまず不可能だ、三日後、"一人の女性<白薔薇姫>"を賭けた女の戦いが始まるッ…!
877 :今回はここまで 次回早ければ来週の土曜日予定 [saga]:2022/04/09(土) 22:01:07.80 ID:dburQpGm0
【双子が旅立って10日目 午後 19時32分 [京]】



   ルージュ「…とんでもないことになったぞ、これは」

    レッド「姉ちゃん…あの人に勝てる保証はあるのか?」



   アセルス「……。保証なんて無いよ、でも勝たなくちゃいけないんだ」ギュッ



 折れた[サムライソード]の柄を強く握りしめてアセルスは決意する…。




   アセルス「自分で言うのもなんだけど私は、ここまで強敵と戦い続けて強くなってきた…だから今ならっ」







   アセルス「今なら…っ![幻魔]を本当の意味で使いこなせるかもしれないッ」





 まだ技量が未熟で血の様な赤い劔に振り回されていた頃を思い出す、敵の攻撃を受けて気を失い
意識が無い状態で妖剣に操られて[幻魔相破]を撃ち出していた時分


 自身の魂を代価にして得た深紅の劔は当時の身には持て余す代物で、キグナス号で出会ったルーファス等の助言から
これまで封印していつの日か剣の方に肉体を乗っ取られない程度には腕と技を磨き、扱えるようになってみせると考えた

 現に彼女は今日だって[メタルブラック]という強者を前にして[幻魔]の力に頼らずに食らいついてきた
これから挑むはそんな彼奴と同等かそれ以上の強さを持つ黄金の獅子なのだ…!






  [ 幻 魔 ] の 封 印 を 解 か ざ る を 得 な い ッッッッッッ!!!





 妖刀を解禁するという方向性に定まり、また金獅子がこの場を引いてくれたことからか緊張の糸が切れたと同時に
忘れかけていた痛みと疲労が押し寄せてくる、脳内で分泌されていたアドレナリンが切れると一気に来ると言うが…
 一行はとりあえず身を休ませる為に旅館へ向かおうとこの場を離れる事にした

 明日からアセルスの[幻魔]を使いこなす稽古に皆が付き合うという話をしながら

―――
――



 術士達が[庭園]を去った頃、小高い丘の上で金獅子姫は1人香草を焚いていた。

 それは彼女がまだ人間であった頃、故郷の風習であった勇士を讃え、弔う儀式であった…




  金獅子(メタルブラック殿…貴殿にも私と同じく護るべき御人が居られた)

  金獅子(その御仁へ最期まで忠義を尽くし潔く死を選んだ…誉れ高い散り方でありました)



  金獅子(そんな貴殿を打ち負かした相手を貴殿の亡骸傍らに討ち取る気にはなれません…今宵は剣を振りませぬぞ)



 枝木は風に揺れ、銀杏や紅葉も波打ち数枚の木の葉が風に浚われて二度と枝には戻れぬ永劫の旅路に向かい
焚いた香草の煙もまた想夜に馳せる様に立ち昇る、願わくば勇士の魂を星まで届ける標となることを直向きに祈る…
878 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 00:42:44.13 ID:fK5zw1V+O
879 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/04/14(木) 06:34:55.50 ID:ljo+5hbm0

屈しなかったのはただ一人…のニュアンスにメタルブラックが死んだ事も掛かってる?の粋でいいな
880 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga!蒼_res]:2022/04/21(木) 22:00:30.44 ID:UqNaO6N30




 祖国を発ち、幾つかの"宇宙船<リージョン・シップ>" に乗船してきたがやはりガベージ型の揺れが一番激しいな。

名は体を表すというが…ガベージの言葉通り屑鉄の有り合わせで創った様なこの襤褸船の揺れで若干の酔いを覚える




…ふん、今にして思えばキグナス号の乗り心地は正しく上等なモノであったな





事故率が高いスクイード型とは別の意味で安心して眠れん、まぁ[タンザー]に再び呑まれんだけ良いがな





今日は早朝からアニーとの稽古に何を思ったのかルーファスやライザまで参戦してきてどっと疲れた
エミリアの奴はそんな様子を見てカフェラテ片手に「いいぞ!もっとやれ」だの囃し立ててくるし…

 途中からリュートとスライムまで呑気に観戦を始めおってからに…!!






 ……相も変わらず、朝から喧しい日々が続いている。前まで煩わしいと感じていた日々が









 今は…その、なんだ…。不思議とそこまで嫌悪はしていない自分が居る、ような気がする…気のせいと思いたいがな












 …チッ、くだらん!こんなワケの分らん事を唐突に考えるのは乗り心地最低の船の所為で気が滅入っているからだ!!!

 アニーの奴め![ディスペア]潜入までの準備を散々待たせやがって、これから赴く[スクラップ]のジャンク屋で
ブツを受け取ってさっさと[解放のルーン]を取りに行くぞッ!


 着陸態勢に入った屑鉄船は名前通り似合いの"惑星<リージョン>"[スクラップ]へと降り立った。

881 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/04/21(木) 22:01:06.15 ID:UqNaO6N30
【双子が旅立って11日目 午後 16時04分 [スクラップ:シップ発着場]】


 蒼い法衣が一陣の熱風に煽られる、随分と年季の入ったタラップ階段は一段踏みしめる度に悲鳴を上げていた。

 年中湿度のある犯罪都市とは別の意味で無法が横行する街だとは事前に同行している拝金主義の女から聞いていた
自然光が殆ど届かず、全体降水量が銀河を見通してもトップクラスでその癖そんな街でありながら活気に溢れていた土地と
比例すると此処は対極的な場所だな、という印象を蒼き魔術師は抱いた


 四つ足で大地に根を下ろす――宛ら昆虫の様な見た目の――ガベージシップを背に夕陽の恵みが寂れた町を照らしていた
魔術師の法衣や露出した素肌に吹き抜けていく風は熱く、水分を全くと言っていい程に含まない


 陽は沈みだした時間帯だというのに、じわじわと焼いていくような熱に来て早々ブルーは喉の乾きを覚え始めた。




  ブルー「なるほど、無職が前に言っていた様にこの街なら唯一の酒場が儲かるのも頷けるというワケか」

 リュート「だろぉ〜?クソあちぃ日に屋根のあるトコで飲むキンキンに冷えたビールが超うめぇんだ」



  ブルー「…もう何で無関係の貴様が一々俺達に同行してるかは突っ込まんぞ」

 リュート「えぇーっ、今日もブルー冷たくね!?名前だけに! 俺とお前の仲だろぉ〜?面白そうだからついてくぜ!」
 スライム「(;´・ω・)ぶくぶくー」



 聞いてもいないのに勝手に「面白そうだから着いて来た」と口を開く弦楽器を背負った無職と暑さで表面から汗(?)が
滲み出て参っているモンスター等にツッコむ気力も無くなってきた術士は眼界に広がる街へと歩みを進めたかった
 彼らと違って比較的に温室育ちが故に口の中がパサつく感じが好かぬ彼はグラス一杯の水を求めているのであった

 軋むタラップ階段を降り切り、火成岩に似た硬質な大地に靴底が触れて砂利を踏み鳴らす
降り切る前のまだ高い位置に居た頃はそこまで気にならなかったが低所に来るとより突風に砂塵が混じっている事に気づく


 シップ乗りの女「ようこそ、砂と鉄と金そして酒の楽園へ、帰りたくなったら言いなよ」

 シップ乗りの女「[クーロン]までのシップドライブを始めたんだ、誰でも100クレジットさ」


    ブルー「来るのは無料でこの土地から出て行くのには代金を取るだと?寝言は寝て言え」


 シップ乗りの女「この町のルールさ、クレジット持ってる奴は正義で貧乏人は干からびて朽ちるだけだ」


 100クレジットすら持っていないってんならお情けで有り金全部で特別に乗せてやるよ、とケラケラ嗤う女を見て
蒼き魔術師はこの町の評価をもう一段階下げる事にした、評価1つ星からマイナス1つ星にクラスチェンジである

 [金塊]を用いたビジネスで資産には困っていないがこんな奴にはビタ一文払ってやりたくない、帰りは自身の術を使って
雨が降りしきる暗黒街まで帰ってやろうと心に決めた所で彼は先導する黄金色の髪に向かって声を掛けた


  ブルー「アニー、クーン達との合流地点は何処だ…あまりこの日差しの中で外をうろつきたく無いんだが」

  アニー「だらしないわねぇ〜、あんたも男でしょ?心配しなくても[酒場]で先に待ってるわよ」


 そう言いつつ彼女も汗を滲ませているのを術士は見逃さなかった
西日で過ごしやすい時間帯とは言え[スクラップ]の日差しは外部から来た人間には堪える
 日中だと地元民ですら熱中症で倒れる事がある熱砂の街だ、それゆえかこの土地は"人間<ヒューマン>"よりも
比較的に暑さに強いモンスターやメカが住んでいて、観光客相手に宿や飲食店を営み日々の生活の糧を得ている


 こんな辺鄙な土地にやってきた理由は一つ、いよいよ以て[ディスペア]潜入の為の最後の準備道具を受け取りに来たのだ
厳重な監視と最先端セキュリティの装置だらけの刑務所だからこそ清掃員の道具もそれ相応の特殊な物を使う
 変装して潜り込むにも入念な下準備と本格的な偽装が必要になるのである

 そして何の因果か、ルーンの石を求めていたブルーと"指輪"を求めていたクーン一行の目的地が一致した為、彼らの分も
受注して此処で合流した彼らと共にそれを受け取る手筈となった


  リュート「皆で一緒に行けりゃあ良かったんだけどなぁ〜」

   アニー「仕方ないわよ、定期便の席が空いてなかったんだし向こうには先に行ってもらうしかなかったのよ」


 こっちは誰かさんに剣術を指南しなきゃいけないからどうあっても後発の船に乗るしかなかったものねぇ、と
黄金色の髪の女が蜂蜜色の髪に視線を向けながら言ってくる、術士はしかめっ面で酒場に向かって歩いた
882 :次回は日曜日か月曜日 [saga]:2022/04/21(木) 22:01:52.24 ID:UqNaO6N30

 見慣れた犯罪都市の下品なネオン電飾とは違った、点滅の仕方をするネオンが見えてくる
経年劣化が激しいのか、所々不規則にぷつぷつと明かりが消えては点きを繰り返す様が見て取れる
 シップ発着場から歩き続けて、まさしく"西部劇"と謂わんばかりの街の入り口を通り砂の積もった塗炭屋根や
穴の開いた木板の建築物、壊れた樽や木箱の傍に落ちた屑鉄の山が目立つ通りへと出る

 "枯草塊<タンブルウィード>"がコロコロと強風で種子を撒き散らしながら転がっていく様は
ガンマンの一騎打ちでも始まりそうなワンシーンの様だと思えた


 宿の前の馬『 ヒヒーン 』


 リュート「馬かぁ…ウチの地元にも馬飼ってる家があるんだよなぁ…サンダーの奴どうしてるかなぁ」テクテク

 リュート「偶には[ヨークランド]に帰って会ってやるかな〜、あっ、でも母ちゃんに遭ったらまだ無職かって殴られる」

 リュート「どうすっかなぁ、困っちまったぜぇ〜ブルーどう思うよ?」



  ブルー「 知 る か !! なんで俺に訊く!?お前の都合だろうが…!…くそ要らん事にツッコんだ所為で喉が」



 真後ろで止まること知らずと言った顔であれこれ言葉を発するニートにツッコまないと決めていたのに遂に声を上げ
余計に喉が渇いた彼はまず一杯冷たい飲み物を頼もうと[酒場]の扉を開くのであった


 ギィ…!



 涼風が外気と入れ替わる様に出入りして、一瞬だけ暖と涼の間に挟まれる、…空調の効いた内部は中々に洒落ていた
外の寂れた様子とは一変して中央のライブステージで妖魔や比較的に人型に近いモンスター、メカ等の亜人種が
軽快な心弾む曲を演奏していて室内の明かりもまた外の看板とは違ってしっかりフロア内を照らしている
 騒がしい場所をあまり好まないブルーでも店内の雰囲気はどちらかといえば好感触であった

 外でかいた汗が一気に冷めて、少しの肌寒さを感じなくも無いがこの贅沢な寒さを味わえるのは文明の恩恵あってのこと
急激な熱の変化を快く受け入れながら彼は店内を見渡す
 部屋の隅にあるジュークボックスの近くに2人程座れそうな空席がある、座るなら空いてるあそこだろうか?
その席よりは中央よりの場所には何処か疲れた顔をした壮年の男が酒をちびちびと飲んでいた、草臥れた作業着を着ていて
何処かの町工場で働く男という印象を受けた

 そんな彼から更に奥の席はやたらと賑やかだ…緑色のもふもふとした獣っ子と
酔っているのか何か怒鳴りながら暴れているチャイナドレスの残念な美女、そんな彼女に残り少ない髪の毛を引っ張られて
泣き叫んでる辮髪の男…



  ブルー(よし、他人のフリするか)スタスタ…



 賢いブルーは何も見なかった事にした。関わってはいけない。



 ほとぼりが冷めるまでは部屋の隅っこで喉の乾きを潤して待とう
そう決めた彼がジュークボックスの近くを陣取ったのは早かった、いつの間にか追い越していたアニーが入店してきて
術士の前に座る、ちょっと先に行き過ぎでしょ!と座って早々に文句を言ってくるが彼はそれを右から左へと聞き流す
 それからほんの僅かな間が空いてからアニーが「…ねぇ、あそこで髪がーっって泣いてるのフェイオンよね?」と尋ねて
「目を合わせるな、飛び火するぞ」とだけ忠告をした



 賢いアニーちゃんは黙って酒場のメニュー表を開きました。

 もっと言ったら自分の顔が向こうの席で騒いでる一行に見えない様、隠す様にメニューを開きます




 気が付けば何時の間にか入店していたリュートもクーンと愉快な仲間達から遥か遠く離れたいつもの定位置な席に座って
弦楽器を弾いていた「[スクラップ]の[酒場]で変わった奴に会った〜♪」などと次作ソングを歌っている
 彼奴もまったく以て店内で繰り広げられている惨事に関わろうとする気概が窺えない、無職の傍にいるスライムも同じく


 今この瞬間、間違いなく三人と一匹の心は繋がっていた、今なら4人連携だって余裕で出せそうである。


―――
――

883 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/04/24(日) 22:21:06.02 ID:lKGqTXjr0
【双子が旅立って11日目 午後 16時47分 [スクラップ:酒場]】



 メイレン「もう!来てたなら一言でも言ってくれたいいじゃないの」


 頬からすっかり赤味が消えて、穏やかな笑みを浮かべるチャイナ美人の横で毛根がまた一段と薄くなった辮髪の男が
目尻に涙を浮かべながら頷く、そんな男女に「いやぁ取り込み中みたいだったんで空気読みましたー」と笑って返すニート
 凡そ30分近い荒れっぷりを見ながらちびちびと麦酒を飲んでいた3人と1匹は嵐が過ぎ去ったタイミングで彼らの前に立つ


 クーン「そうだよ!メイレンもフェイオンも"ぷろれすごっこ"が凄かったんだよ!!迫力あって面白かったなー」


 ブルー達も近くで見ればよかったのに〜、と能天気な感想を漏らす緑の獣っ子に無邪気とは時として恐ろしい物だなと
引き攣った笑みを浮かべていた、紆余曲折はあったがコレで荷物の受け取りができそうだ


―――
――


 砂埃の舞う[スクラップ]の街を集団が歩いて行く、道中リュートがクーンにメサルティムはまだ居ないのか?と尋ねる
蒼き術士は特にすることも無いから脚を進めながら耳を傾けてなんとなく会話を聴いていた
 話の内容を簡単に訳すと、その水妖は例の"先生"とやらとまだ療養らしく手紙が届いたがパーティーに合流するのに
もうしばらく掛かるとの事らしい
 妖魔で医者と聞くと掴みどころの無いどこぞの藪医者を思い出して気が滅入るからその"先生"とやらが居ないのは
ブルーとしては都合が良かった、そんな事を考えていると目当てのジャンク屋にたどり着いたようだ







       『ジャンク屋!いい品あります カバレロファクトリー(株)経営』




  メイレン「あら、ここカバレロ一味が経営してた店だったのね…」

 フェイオン「ムッ、カバレロというと私と出会う前にキミ達が一悶着あったという連中か?」


 チャイナドレスの美女が経営グループの名前を見て、顔を顰める
雰囲気からしてあまり良い関係では無かったと察せられるが…



 ブルー「カバレロ一味?なんだそれは」


 アニー「あぁ、この[スクラップ]を牛耳ってるヤクザ者よ」

 アニー「確か何処かの"惑星<リージョン>"で恐喝紛いな手を使って金属を安く買いたたいていたとか」


 リュート「おっ!それ知ってるぜ[ボロ]の事だろ!ゲンさんとT-260が居た場所で子供を誘拐する碌でもねぇ連中さ」

 リュート「あの二人が此処に来たのも[ボロ]から手を引かせる為の"話し合い"だったって聞いたぜ」


 それを聞いてまたあの二人か奇妙な縁もあるものだな、と術士は思った
あまり西日に焼かれたくはないので足早に小汚い店の入り口へと入ってみると中はこれでもかと言う程[がらくた]が
散乱していて脚の踏み場もないと言った状態であった、これでも店か?と術士の青年は眉を顰めた



  水棲系モンスター(緑)「おっ、お客さんじゃん!」
  水棲系モンスター(青)「へい!いらっしゃい!」


   アニー「"イタリアンレストランからのご注文だよ、頼んでた調理器具を頂きたいんだけどね"」ジャラッ

  水棲系モンスター(青)「!!! はいはい、例の調理器具ですね、お代金を確かに頂きました」チャリンッ



 金の入った麻袋をカウンター台に乗せる裏社会の女、それを見て、その言葉を聞いてトサカのある青蜥蜴が
差し出したのはどう見ても調理器具には見えない工具箱が複数…
 それを受け取ったアニーは中身を確認すると「確かに頼んでたブツだね、ありがとさん」とだけ告げて店を出ようとした

884 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/04/24(日) 22:21:31.31 ID:lKGqTXjr0

 これで目的は達成されて、晴れてこの砂と暑さが酷い"惑星<リージョン>"からおさらばできると術士が思った時であった








  悲劇が起きてしまったのは…ッッ!!!











  クーン「わぁ〜!こっちの広いお部屋はなぁに?」トテトテ…!

  水棲系モンスター(青)「勝手に入っちゃダメダメ!」



 好奇心旺盛な緑の獣っ子クーンがとてとてと歩いて店の奥へと行こうとしたのである、当然ながら店を任されている
水棲系モンスターはそれを咎めるが、彼が怒った理由は勝手に店の奥に入り込もうとしたことではなかった



   水棲系モンスター(青)「3個で1000クレジット、料金は先払いだよ」


  リュート「んん〜?料金、3個で1000クレジットって何のことだい?」



  水棲系モンスター(青)「なんだい知らないのかい、ウチのジャンク屋では金を払ったお客に宝探しをさせるのさ」

  水棲系モンスター(青)「料金を払ったらゆっくり品を選んでもらう、どんなクズでも掘り出し物でも1個は1個だよ」


  メイレン「あら、面白そうね!福袋みたいな物でしょ!折角だしやっていきましょうよ」

 フェイオン「おいメイレン…1000クレジットはそこそこ結構な額だぞ」


 確かに[マンハッタン]にある宝石店で[策士の指輪]を買うために資金を集めていた彼らだからこそ分かる、しかし…


  メイレン「何言ってるのよ!"掘り出し物"って言ってたじゃない、つまりは運が良ければ1000以上の価値があるのよ」

  フェイオン「う、うぅむ、しかしだなぁ…」


  メイレン「買うは!」ジャラッ


 水棲系モンスター(青)「毎度あり!じっくり選んでくれ」



  メイレン「ほら、あなた達も手伝って頂戴!」

   ブルー「はっ!?俺達もか!?」


  メイレン「そうよ!クーンやフェイオンの目利きじゃ正直不安しかないのだから」

  リュート「ひゅ〜!いいねいいね!面白そうじゃん!クーン俺も混ぜてくれぇーっ」ダダダダッ


   ブルー「あっ、オイ!?」


 これが後に彼らを―――この店を襲う悲劇の始まりになろうとはブルー等は知る由も無かったのである

―――
――

885 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/04/24(日) 22:22:05.47 ID:lKGqTXjr0

 金網フェンスの先は用途の分からない物から見慣れた物までなんでも置かれているジャンク品の楽園であった
この場につい数日前に別れたレオナルド博士や遠い[ボロ]の地に居る腕が4本以上ありそうな技術屋おじさんが居れば
歓喜の声を上げたくなりそうな掘り出し物も確かに置いてあった

 だが、それはあくまで分かる人が見ればわかるというもので素人目では一見すればタダの鉄屑にしか見えない
例えばひん曲がった鉄パイプにしか一見見えない様な物が仕込み刀になっていて中身が[サムライソード]だったとか
 中世時代に出てくるようなブリキの鎧かと思った物が中身は魔改造されていてハイテクな[サイバースーツ]だったり…

 赤いドラム缶の群れ、段ボール箱に入ったよく分からない棍棒の様な物、縁日屋台で見かけるコルク弾の玩具のピストル
一行はそれぞれ手に取って何が良いのか考え込むが結果はハッキリ言って芳しくない



 【あと3個】

 メイレン「防具のジャンクかしら?これにするわ!」






 チャリン!


 実は[がらくた]だった。



 メイレン「…が、[がらくら]…」






 【あと2個】

 フェイオン「武器のジャンクかな?これにする!」


 チャリン!


 実は[壊れたバンパー]だった。



 フェイオン「こ、[壊れたバンパー]…自家用車など持っていないぞ、しかも壊れているって」





 【あと1個】

 クーン「銃のジャンクだ、これにしよーっと!」

 チャリン!



 実は[インスタントキット]だった。



 クーン「わぁ!"いんすたんときっと"だー!これってメカの怪我を治せるんでしょ!今度T-260にあげれるね!!」


 メカの修理道具であるそれはメカの工房などに行けば30クレジットであっさりと買える代物である


 物の価値があまり分かっていないクーンを除いて全員が暗い顔で帰って来る、それを見て
心なしか愉快そうな顔をしているように見える青蜥蜴の店主がこう言ってきたのだ


 水棲系モンスター(青)「うちの店は買いだけじゃなくて売りもできる、お客さんの手にした要らない物引き取れるよ」

  メイレン「…そ、そうね…正直[がらくた]やバンパー、メカの修理アイテムを私達が持ってても仕方ないし路銀に…」


 少しでも路銀にしましょう、か細い声で彼女が言った途端に「うちじゃこれしか買い取らないよ」と
蜥蜴が紙切れを見せてきたのであった…
886 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/04/24(日) 22:22:37.19 ID:lKGqTXjr0


\ デンッ!! /


・[インスタントキット] 価格20

・[強化装甲] 価格2000

・[ベヒーモス] 価格3000

・[デュエルガン] 価格3500

・[ストーカー] 価格5500

・[重粒子砲] 価格6000

・[ブリューナク] 価格8500

・[ハイペリオン] 価格10000








  メイレン「……。」


  メイレン「 は? 」ピキッ



 見せられた買取メニューを見て、チャイナドレスの美人は額に青筋を浮かべた…




  メイレン「…あのー、気の所為かしらぁ?このお店で買った[がらくた]や[壊れたバンパー]の名前が無いけど」ワナワナ

 水棲系モンスター(青)「うちじゃこれしか買い取らないよ」ニッコリ



 青蜥蜴はすごく良い笑顔で言い切りました、メイレンお姉さんのお顔もつられてニッコリです!目は笑ってない。


 リュート「メイレン落ち着けって!さっきのは選ぶの手伝った俺達にも落ち度があるからさ!?」アセアセ
  ブルー「あ、あぁ…もう一度やろう、心配するな代金は俺が払おう、罪滅ぼしだ、だから落ち着け、な?」


 長い付き合いではないが、この紫髪の女性の気質を理解した術士と弦楽器を背負った男が慌てて宥めに入る
スライムはドラム缶の裏で怯えてるし、アニーは背筋に冷や汗をかきながら壁に立てかけられた短刀を眺める、我関せず。
 このままでは[酒場]の凶事の二の舞が起こり兼ねん…ッッ!!なんとしても掘り出し物を当てねば!


 水棲系モンスター(青)「? お客さん何をコソコソ話してるんだ?」

      リュート「なんでもないって!それよりもっかいやるから!ブルー金払ってくれ!!」
       ブルー「う、うむ…店主、もう一度だ」




<防具のジャンクだ!
チャリン!

実は[アーマーグラブ]だった。



<武器のジャンクだ!
チャリン!

実は[クックリ刀]だった。



<銃のジャンクだ!
チャリン

実は[ペンドラゴン]だった。
887 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/04/24(日) 22:23:13.50 ID:lKGqTXjr0

 かなり健闘した、正直むちゃくちゃ頑張った方だと自負できる…しかしッ
明らかに戦利品が1000クレジットに釣り合う様な物ではなかったのである…っ!![クックリ刀]なんかは
[シュライク]で買い取ってくれる店があるとは言うが、売値は二束三文の投げ売りみたいな価格だ

 この青蜥蜴の提示してきた買取表の中にも売れる物の名前は入っていないし、この場で現金に換えることさえできない



 水棲系モンスター(青)「いや〜、惜しかったなぁwww、運が良ければ1000クレジットの以上の成果があるんだがなぁ」



 わ、笑ってやがる…っ!

 この店主…っ!客の不運をあざ笑っていやがる…っ! 人の不幸を蜜として悦ぶ外道ッ 悪魔的発想…っ!




――――ダンッッッッッ…!






 カウンター机の上『 1000クレジット入った麻袋 』


 メイレン「……もう一回よ」ビキビキ



 フェイオン「め、メイレン…よさないかっ!」

 メイレン「黙って、これは退けない戦いよ」スタスタ…



チャリン!

実は[ハンドバズーカ]だった。

チャリン!

実は[がらくた]だった。

チャリン!

実は[インスタントry



 
 リュート「なぁ、ブルー…いくらなんでもよぉ、おかしくねぇか?」

  アニー「あたしも同感だわ、いくら運が絡むとは言えしょうもない品ばっかり」


 さっきの武具もそうだし今しがた出た[ハンドバズーカ]もお世辞にも強い装備品とは言えない
なんなら1000クレジットでもっと有用な重火器を購入できるのは[クーロン]でpzkwXが営む武器屋を知っているからか



 兎にも角にも3人ともほぼ確信を持って言えた、間違いなくこの店"ぼったくり"だ、と




  メイレン「…。」

  メイレン「……」クルッ、スタスタ…



 水棲系モンスター(青)「あちゃ〜、こりゃあまた駄目だったみたいだね、でも[インスタントキット]なら買い取るよ」

 水棲系モンスター(青)「なぁに、20クレジットでも金にはなるさ、さっきのも合わせて40で買ってあげるさ、どうだ」


 メイレンは黙って叩きつける様に硬貨の入った袋をカウンターに叩きつけ、ジャンク漁りに戻っていく…
ゆらぁ、と幽鬼か何かかと見間違えるような足取りで

888 :次回は土曜か日曜 [saga]:2022/04/24(日) 22:23:45.23 ID:lKGqTXjr0

 【あと3個】


 メイレン「…。」


 赤いドラム缶の前に立ち、彼女は防具のジャンクを漁った。



チャリン!


実は[インスタントキット]だった。



 【あと2個】

ガサゴソ…


実は[インスタントキット]だった。



 【あと1個】


 メイレン「…。」


 メイレン「」クルッ、スタスタ…







  メイレンが… メ イ レ ン が 漁 る の を 途 中 で や め て 店 主 に 近 づ く !!




 フェイオン「ハッ!?い、いかん…長い付き合いだからこそ分かる、今のメイレンはいかんッッ!?」



  水棲系モンスター(青)「おやぁ?お客さんどうしたんだい?まだ後1回残ってるけど、あっ遂に諦めちゃったかww





  ―――――――――パァン!!!





 店内に乾いた音が鳴り響く。



 店の奥の壁『 銃痕 』


 水棲系モンスター(青)「―――へっ?」



 メイレン「 」ニッコリ



 メイレンは、それはもう誰しもが見とれる見返り美人としか言えない妖艶な笑みを浮かべていた
右手に[ベヒーモス]なんていう物騒な拳銃を構えてなければ絵画になるほどの美しさであった

 青蜥蜴と緑蜥蜴、ついでに術士一行も乾いた音の正体がなんであるか気付くのに一拍子遅れた、発砲音である


 メイレン「ねぇ、これ、いい銃だと思わない?あなたこの[ベヒーモス]を買い取るのよね?」ニコッ
889 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/04/26(火) 09:10:14.86 ID:a7zj1Ii10
無限ジャンク漁りか
890 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/04/28(木) 22:21:10.60 ID:8HLJfGEP0
メイレン正直好き
リマスターで脚が非常にエロかったし
891 :>>890 マスターリング倒した直後の倒れグラフィックとか脚がいいっすよね!!!! [saga]:2022/05/01(日) 22:26:26.47 ID:EsDFpuzx0

 微笑みかけながら首を傾ける、ボリュームある紫色の髪が揺れる
店主と手伝いの蜥蜴達が息を飲みその様を見ながらメイレンはゆっくりと弾倉に弾を補充した
 銃口は壁から横にややズレて蜥蜴店主の脳天を丁度ぶち抜ける位置となる



  クーン「あーっ、この間倒した[巨獣]から出てきた銃だー」ピョン!ピョン!


 緑の獣っ子はこの状況を理解しているのかしていないのか、飛び跳ねながら仲間の女が持つ銃を指さす
[ベヒーモス]…巨大な獣の名を冠するその銃は相当な貴重品であり、その辺の店で売ってるような代物では無かった


 ブルーとリュートは先程クーンが口にした言葉を聞いて、記憶を辿る



  ブルー「[巨獣]だと…?それは確か[バカラ]で倒した奴のことだな」
 リュート「俺達が指輪泥棒のネズ公を追っかけた時だな」


  クーン「うん!あの後ね、倒した[巨獣]の中から銃が出てきてソレをメイレンが拾ったんだよ〜」


 たまたま迷い込んだ冒険者を大怪獣が喰った時に一緒に胃袋行きになったのか、その時に出てきた[ベヒーモス]を
彼女は目敏く"拾って自分の物に<アイテムドロップ>"していたのである


    メイレン「運が良ければ1000クレジット以上の価値があるなんて、そんな都合のいいことあるわけないわ」ニコッ

    メイレン「この店は欲望を吸い寄せるぼったくりの店に過ぎないの、存在を赦しちゃいけないわ」チャキッ



  水棲系モンスター(青)「ひぃーっ」
  水棲系モンスター(緑)「お、おたすけー!」



   フェイオン「メイレン!気でも触れたか!?」



 メイレン「でももう限界よ、このぼったくり商法に付き合ってらんないわ!!!!!」クワッ!!

 メイレン「この銃の力こそが真の正義!!時として暴力はお金以上に解決するのよ、この力があれば何でもできるわ!」


 メイレン「店主さん達、今まで楽しい時間を過ごさせてくれてありがとうね、皆さんの事は忘れないわ」



   フェイオン「メイレン!?バカな事は止せ!!!!」



  メイレン「 さ っ き か ら う っ さ い わ よ ! ! こ の ハ ゲ !! 」


<[裏拳]バキィ
<ぎにゃああああああぁぁぁぁ


 後ろで騒ぐ辮髪の男を殴り倒して、メイレンは[ベヒーモス]の引鉄を弾いたァ!!――――パァン!




 店の壁『 銃痕 』パラパラ…



  メイレン「……。」

  メイレン「なーんちゃって♪やだもうっ!本当に脳天を撃つと思ったのトカゲさん、冗談よジョーダン」


  メイレン「ほんの小粋な冗句じゃないの、おほほほほっ」




  メイレン「さっ、冗談も済ませたことだし【2個目】を取りに行かないとね」クルッ
892 :今回ここまで 次回もしかしたら次の土日、場合によっては早まる [saga]:2022/05/01(日) 22:27:27.26 ID:EsDFpuzx0

 店の壁に2射目で更に大きな穴をあけた後、朗らかに笑いながら彼女は言った"【2個目】のアイテムを取りに行く"と
それに蜥蜴の店主は目を丸くした、先程まで本当に脳天をぶち抜かれて殺害されるのでは?と恐怖に震えていた彼はまだ
声が若干震えているがそれでも言葉を発さずにいられなかったのだ




  水棲系モンスター(青)「へっ、ふ、ふたつめぇ?」

  水棲系モンスター(緑)「――――(白目剥いて泡吐きながら失神中)」ブクブク



      メイレン「ええ、そうよ♪邪魔しちゃってごめんなさいね〜」



  水棲系モンスター(青)「い、いやアンタ【2個目】はもう取っただろ!?[インスタントキット]だったって――





           ―――――パァン!!



 乾いた音がした、店主のすぐ真後ろの目覚まし時計が音を立てて無残な姿に変わる
弾けとんだ鉄片と螺子やバネ、時計の針がパラパラと降ってくる…





    メイレン「あら、やだ、私の持ってた銃が何故か突然暴発しちゃったわ、驚かせてごめんなさいね」

    メイレン「じゃあ私は 【 2 個 目 】 を取ってきますから」ニコッ


 そう言って弾を装填するメイレンは静かに部屋の奥に去っていった、その様子を店主は「…はい」とだけ
尚、術士一行は既に部屋の隅に退避していた




チャリン!

実は[インスタンry


―――
――






  メイレン「ねぇねぇ店主さん私ってば運がいいみたいよ、ほら![リーサルドラグーン]!」チャカッ



 もはや"何度目か分からぬ【2個目】の取得"で手に入れた店売り最上級の銃を自慢するチャイナドレスの美女
尚、手に持っているのは[ベヒーモス]である




  モンスター(青)「もう勘弁してください」
  モンスター(緑)「お金ならいくらでも払いますから、ウチが倒産します」



 涙ぐみながら許してくれぇ!と懇願する爬虫類2匹の光景に既視感を覚える辮髪の男
…フェイオンは既視感の正体を察した、「あっ、[ヨークランド]の豪富さんだコレ」と

 何時ぞやの豪富から何度も診療代をせびって最終的に夜逃げに追い込んだ時と全く同じ構図なのである

 遠い目をしながら彼は目の前で行われる恐喝もとい略奪行為を止める事ができず茫然としていた
クーンは山積みになった戦利品の数々に「メイレンすごーいっ」とだけ、術士と無職の男は引き攣った笑みを張り付け
守銭奴の女も流石にこれは…と引いていた、スライムはドラム缶の影から全くに出てこない…

 この店の品が全て奪い尽くされるのもそう遠くない未来の事であろう…経営破綻待ったなしッ!
893 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/05/03(火) 19:28:10.75 ID:/XEpqnqU0
乙ー
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/05/04(水) 20:40:59.29 ID:c63McYgbO
まああのジャンク屋はアコギだししゃーないかな……って
895 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/05/06(金) 18:24:00.22 ID:ihDcxAkHO
SS避難所
https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196/
896 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/05/06(金) 22:32:33.20 ID:/GT1H3rN0


     「オイ!珍しく視察に来てみればこりゃあ一体何の騒ぎだ!?」タッタッタッ!


 一目見ただけでお高いと判る質感の背広、情熱的な赤ネクタイを紳士帽子を被った髭面の男が怒鳴り込んできた
地元の人間特有の日に焼けた健康的な肌と対照的な白い歯、これで気前の良さと親しみ易さでもあれば露店に居る
タコス売りのおじさんとでも称せるような顔立ちだが、生憎と彼はそんないい人間じゃあない


 [スクラップ]を牛耳るギャングスタ―、"首領<ドン>"・カバレロその人なのである



  水棲系モンスター(青)「カ、カバレロさん…!!」
  水棲系モンスター(緑)「助けてくだせぇ!コイツ等がウチの店のモンを全部かっぱらっていくんです!!」



  カバレロ「なぁにぃ〜!?ウチのシマでそんな狼藉を働くなんて一体何処のふてぇ野…郎…だ、あ?」


 ギャングは助けを求める部下を見た後、自分の組が経営している店で絶賛大暴れ中の略奪者の顔を見た、そして凍り付く
何故なら数日前に自慢の[カバレロファクトリー]で殴り合いをして結果悲惨な目に合わされた相手がそこに居たのだから



         メイレン「あら?」

         カバレロ「うげっ―――――あ、アンタはあの時の…」ダラダラダラダラ…



 水棲系モンスター(青)「カバレロさんっ!アイツですよ、あの女です!!!」
 水棲系モンスター(緑)「ガツンと言ってやってくだせぇ!」


     クーン「あっ、指輪を安く売ってくれたカバレロさんだ!久しぶり〜!」ピョンピョン

     メイレン「ええ、その節は100クレジットで売ってくれてありがとうっ」ニッコリ
     クーン「T-260にもシップのパスを用意してくれた優しいおじさんだよね〜」キャッキャッ!


        カバレロ「ひ、久しぶりだなセニョリータ…その、ウチの店で暴れてるってのはアンタか?」


 水棲系モンスター(青)「か、カバレロさん?」
 水棲系モンスター(緑)「どうしたんスか!?いつもみたいに怒鳴りつけてやってくださいよ!!」


        カバレロ「うっ、うるせぇ!!!コイツ等にはもう関わりたくねぇんだよぉ!!」タッタッタッ!


  タッタッタッタッタッタッタッタッ…!!!


 水棲系モンスター(緑)「カ、カバレロさん…」
 水棲系モンスター(青)「に、逃げた?」



 全力で十字路を北に行ったところにある工場へと駆けていくギャングスターの背を眺めて目をぱちくりさせる蜥蜴2匹
彼らは顔を見合わせる、泣く子も黙る極悪非道のドン・カバレロが斯様に尻尾を巻いて逃走するだろうか、否ッ!

 ギャングの末端の彼らはボスの非道さを知るからこそ――あと数日前の惨事を知らないが故に――"壮絶な勘違い"をした



   水棲系モンスター(青)「うおおおおおおおっ!!」ダダダダダッ!パシッ!

  アニー「えっ!?きゃああああっ!?」ドンッ


 水棲系モンスター(青)「てめぇらに売ってやった道具は返してもらうぜ!!こんだけウチの店を荒らされたんだッ」
 水棲系モンスター(緑)「取り返したければ[カバレロファクトリー]まで来いってんだ!!」


 カバレロファミリー傘下の店を潰された事への憤り、堪え切れなくなったフラストレーションを発散するが如く
蜥蜴達はアニーから自分達が売った[ディスペア]潜入用の道具を引っ手繰り工場の方へと逃げ出したァ!!!
 去り際に「ボスの事だ、逃げたと見せかけて工場で潰す策に違いない」とか「なるほど!流石カバレロさんだぜ!」等々
勘違いに拍車を駆けた妄言を叫んでいた

……このジャンク屋店員達、比較的に新参者で金払いの良い観光客相手に"シノギ"を稼ぐ仕事しか任されていない

 だからこそクーン等がカバレロ一家にカチコミを仕掛けた当日も店に居て、カバレロのトラウマ相手だと知らぬのだ…
897 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/05/06(金) 22:33:06.50 ID:/GT1H3rN0


 ブルー「大馬鹿者!アレを盗られたら[ディスペア]に入れんではないかッ!?アニー貴様何をぼんやりしていた!」


 蒼の魔術師は意外にも俊敏だった下っ端蜥蜴共の奪取に対応できなかった仲間に向かって叫ぶ、今日はアレの為だけに
こんな砂と鉄屑と干からびるような暑さの所に来たというのに、これでは無駄足ではないかッ!?


 アニー「うっさい!!怒鳴んないでよ!―――痛〜っ!あのクソ蜥蜴…こっちとらカネは払ってやったってのに」

 アニー「客に売った物を盗むですってぇ?ビジネスの世界で一番やっちゃあならないことをやったわ…許すまじ」




 アニー「その辺のチンピラ同然のヤクザもん風情があたし等に喧嘩売ったんだ…無法には無法で返してやろうじゃない」



 "裏社会組織<グラディウス>"の構成員アニーの眼が光る、無法には無法を持って裁く。それが流儀の彼女がぎらついた眼を
覗かせていた、確かに数分前までは憐みを感じていたがそれとこれとは話が別だ

 百歩譲ってアレだけの暴挙をされたなら逆上するのも仕方ないにしてもやる相手が違うだろ、と…メイレン達だろうが


 なんで全く無関係な自分が商売道具を盗まれきゃいかんのだ!?ふざけるな!!切り刻むぞ爬虫類共ッ!アニーはキレた


―――
――


【双子が旅立って11日目 午後 17時51分 [スクラップ:カバレロファクトリー]】




 カバレロ「…ゼェ、ハァ…ゼェハァ…くそぉ、なんだってあいつ等がまたこの町に居るんだよ…」

 カバレロ「工場までこうして逃げ帰ってきたが…全く、寿命が縮まるかと思ったわい」


 ゴソゴソ…スッ、ジュッ!


 カバレロ「…スーッ、ぷはぁ…あ〜、全力で走った後の煙草は美味いぜ、俺の疲れた肺を癒してくれる」


 ギャングスターは工場に拵えた自分専用の部屋で値の張る椅子に凭れ掛かる様に腰を下ろす
街中で悪鬼とエンカウントした気分を味わった彼はここまで全力疾走してきたからか汗まみれであり
金糸刺繍入りのハンカチで顔を拭いてから胸ポケットの葉巻に火を点ける、一服することで漸く彼の心に平穏が訪れた


…かに思えたのも束の間で。


<カバレロさーん
<やってやりましたぜ〜



 カバレロ「…あん?」チラッ


 騒々しい足音を立てながらファミリーの末端が部屋へと雪崩れ込んでくる、その様子に不快感を表し咎めようとしたが
そんな事に使ってやる体力も惜しいと感じた彼は内心でため息を吐きながら無礼な末端共が何用で来たのか伺う事にした


 水棲系モンスター(青)「カバレロさーん!見てくださいよ!ほらこれ」バッ
 水棲系モンスター(緑)「へへへっ、俺達お手柄でしょう?」



 カバレロ「? なんだその汚い工具箱は…っていうかお前等店はどうした?」ぷはぁ…


  水棲系モンスター(青)「店?店の仇ならこれから取るんじゃないですか!!そのために連中からコレ盗んだんです」
  水棲系モンスター(緑)「奴らにとって大事な物っスからね!これでトラップだらけの此処へ攻め込みますぜ」


 カバレロ「!?!?!?!? ちょ、ちょっとまてぃ!?テメェ等何やってくれてんだ!?」

 ポロっと…口から葉巻が落ちて格式高い机やビンテージ物の椅子、自身の服が吸い殻で汚れるがそれどころではない
898 :次回は早ければ明日か明後日、あるいは来週の土日 [saga]:2022/05/06(金) 22:34:49.08 ID:/GT1H3rN0



   水棲系モンスター(青)「えっ、だって…そういう作戦…なんです、よね?」
   水棲系モンスター(緑)「この町一番のワルのカバレロさんが尻尾巻いて逃げる訳なんて無いし策がある、とか?」




 カバレロ「 そ ん な わ け な い だ ろ う が ど う し て く れ ん だ 馬 鹿 野 郎 !」




 ギャングスターの膝蹴りが数日前、緑の獣っ子御一行にボコボコにされたという惨事を知らない新参者の蜥蜴達の腹に
綺麗にめり込む、蛙を潰した様な悲鳴が工場内に響くがそんなことはどうだっていい!

 連中が攻め込んでくるのはそう遠くない未来の話だろう…工場解体待ったなしッ!



 カバレロ「あぁ…もう駄目だぁお終いだぁ、鉄材を御大臣様に足が付かない様に裏で買ってもらう事で
        右肩下がりだった景気が良くなったと思ったのに、あの店はおろか再度この工場が襲撃されるなんて…」




 『"御大臣様"に鉄材を売っていた』……利益に伸び悩んでいた彼の元にある日、転機が訪れた。



 小さな"惑星<リージョン>"の街を牛耳る、警察組織は日々"ブラッククロス"等の大規模犯罪組織を追うのに手いっぱいで
言ってしまえば些事にかまけていられる程の暇はない、小規模なヤクザ屋を取り締まってくれるパトロール隊員が居るなら
相当な物好きか、余程自由奔放な隊員くらいだろう…


 元・警察部門トップだったモンドはそこに着目した、この手の組織の中には小規模と侮れない隠蔽に長けた物が存在する


 小規模犯罪組織だからこそ如何に警察の眼を掻い潜り"ギリギリお咎め無しのグレーを維持できるか"…
1匹居たら30は居る小虫程の生命力と狡猾さを兼ね備えているものだ、そうでなければ裏稼業で食ってなどいけない


 中でもこの"カバレロファクトリー(株)"というのはその手合いに関してはかなりのやり手で

 [ワカツ]に建設していた[モンド基地]や[グレートモンド]開発の為に必要な資材を買い付けるには都合が良かったのだ




 説明するまでも無いことだがカバレロが"御大臣様"としか言っていないのは、モンド執政官の用心深さ故である

 

 話は逸れたが、彼はこうして利潤を得て[カバレロ事務所]にビリヤード台を置いたり、新しい事業を始めようと考えてた
その矢先に問題が起きた…!




 モンドに彼は資源を売っていたが、その資源は何処から入手したものか?答えは[ボロ]である。



 T-260が目覚めた土地であるそこで住民を脅して資源をタダ同然で買い叩いていたが部下が一悶着を起こした所為で
記憶を失くした戦闘メカと酔っ払いの剣豪に喧嘩を売った形となったのである、更に間の悪い事にそこに指輪を求めていた
クーンとメイレン、自分が鉄材を売りつけていたモンド執政官と縁があるリュートなど…

 数奇な命運の下にある者達が[スクラップ]の[酒場]に集ったのである


 御大臣様と大手ビジネスをしたいが為に[ボロ]での採掘量を上げさせたが為に厄介な戦士二人を相手にし
更にその売買の結果[モンド基地]の建築が良い感じに進んでたからちょっと心にゆとりができて里帰りしてたモンドが
偶然リュートと出会って彼を船に乗せてしまったから巡り巡ってこの土地に来たり、因果は巡るというのは本当なのだなと


 せめて、クーンとメイレンの2名しか敵が居なければまだ勝ち目もあっただろうに…

 [商人の指輪]を手に入れて大手取引ができたと思っていたら実はそれがケチのつけ始めだったという皮肉である



 カバレロ「くぅ〜…畜生!もうどうにでもなりやがれってんだッ!おい糞蜥蜴共伸びてんじゃねぇぞ!」

 カバレロ「テメェ等の責任でもあるんだ!急いで工場内の奴らを全員俺の前に集めて来いやッ!」
899 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/05/07(土) 02:43:05.32 ID:hdOI7oi00
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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900 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/05/08(日) 10:42:32.01 ID:pKcyMZGv0
おつ
901 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/05/15(日) 23:16:55.84 ID:PcGRRSLC0
――――
――



 リュート「いやぁ〜なんか大事になっちまったなぁ」

  ブルー「…全くだ、さっさと帰れば良かったものを」


 陽は発着場から下船した時よりも遥かに西へ傾いていて、見れば既に反対側の空には檸檬が浮かんでいた
今宵は綺麗な三日月か、と呑気な事を宣う無職の男の背を蒼き魔術師は不満げな顔で追っていた
 必要な道具を持って行った蜥蜴は以前、このニートとお騒がせ3人組の内2人がカチコミに行ったことがあるらしい
即ちこの面子の中で最も内部構造に詳しいと言えよう、先導役であるがゆえに追い抜くことはできないのだ、今すぐにでも
ブルー自身が追いかけて手早く潜入道具を取り戻したいのだが、もどかしい話である

 暫し歩くこと数分、漸く目的の[カバレロファクトリー]が見えてきた…。


 
彼らが脚を踏み入れると同時に――――




 カバレロの手下A「来たぞ撃ち殺せ!!」ダダダダダダダッ
 カバレロの手下B「ぶひっ ぶひっ ぶひっ!」ダダダダダダダッ



              【 [ 敵 の 援 護 射 撃 ] 】



 待ち構えていた[ゴースト]や[スパルトイ]の大群が一気に押し寄せてくる…ッ!戦闘能力自体は決して高くなく
陶然の様に死線を何度も乗り越えてきた一行の手によって一層されるのだが


  カバレロの手下C「オラオラオラァ!」ダダダダダダダッ


  ブルー「チィ…鬱陶しいなあいつ等!!」


 夏夜の蚊が如く、[援護射撃]が煩わしい、万が一にも後れを取ることはないと思うが潰せない物か…
そう試案する術士に獣っ子が提案を持ちかける


 クーン「ねぇねぇ、あの上の奴らが邪魔なんだよね?前はボク達やらなかったけどクレーンを利用しない?」

 ブルー「クレーンだと?どういうことだ?」


 こっちだよ!ついてきて!と走り出す少年とその後を追う術士等、道中メイレンに説明を求むと
この工場は入力操作で稼働させられる機械があって、それを巧く使えば高台から発砲する小蝿を無力化できるそうだ



  クーン「まずはここ!この赤いボタンを押して」

  ブルー「入口付近のコレだな」ポチッ



 クレーン『 』ウィーン!ガシッ


 カバレロの手下A「のわああああぁぁぁぁぁぁぁっ!?なんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」ジタバタ


 本当に入口からすぐの所にある赤いボタン、それを押す事で巨大アームが動き援護射撃を行っていた柄の悪い男を
猫摘まみの状態で持ち上げ――――そして何かのガラクタと思われる巨大な鉄釜の真上で…


 クレーン『 』パッ

 カバレロの手下A「うわああああっ!?!?!?ぺぷしッ!?」ゴスッッ!!


 ホールインワン!憐れ真っ逆さまに落下した手下の一人はその石頭を硬い金属釜の底にぶち当てて眼を回した…。
これで厄介な者は1名排除できた…残りは3名である

 クーン「今後はこっちだよ!!!このボタンのある場所から右側のこの階段を一気に登るの!」トテトテ

902 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/05/15(日) 23:17:54.90 ID:PcGRRSLC0

 クーンの先走った案内に導かれて彼らは階段を昇る、すると工場全体を一望できる上層へと躍り出る


 グラサンハゲ「て、てめぇら!?下層でウチの組のモンに揉まれてるんじゃあなかったのかよっ!?」カチャッ

 待ち構えていた"人間<ヒューマン>"の敵対者が居たが何かをしでかす前にフェイオンが階段手摺を踏み台に跳び上り
そのまま勢いをつけて工場内のコンクリート壁を蹴りつけた[三角蹴り]を披露する、ぱきりっ!顔面に靴底がめり込んで
罅割れたサングラスと一緒に倒れ込む敵に一礼するフェイオンと「何カッコつけてるのよ!」と突っ込むメイレンを尻目に
クーンが紅いレバーを弄る、すると…


 クレーン『 』ギュィィィィン!!

―――――――ードッコォォォォォォォオオオオオオォォォ!!


 カバレロの手下B「ぜろぉぉぉっ!?」ヒューン!ドガシャッ!



 左に向かって急発進(?)し出した黄色と黒のストライプが映える巨大な鉄塊が豚マスクの身体を撥ね飛ばす
まるでちょっとした交通事故の現場に居合わせたようだった…、横腹から大質量に追突された小太りの男は派手な音を立て
工場の壁にズドンッ!…上半身が壁に埋まった状態でケツと足がヒクヒクと動いている
 そんなギャグ漫画じみた光景を見て惨事を引き起こした張本人は楽しそうに笑うのであった…


 クーン「あははっ!凄いよね!人ってあんなに飛ぶんだもん!この調子で次も行ってみよーっ!」

 ブルー「お、おう…そうだな」ヒキッ


 メイレン「ちょっと待ちなさい後々の手順を考えたらまた此処に戻らなくちゃいけないじゃない、二手に分かれない?」
  クーン「あっ、そっか」


 急ぎ足で昇って来たのとは別口の階段から下層へと降りようとしていた緑色の少年をメイレンが止める
まだ内部構造に詳しくない面々のアニーとフェイオンが二人だけで納得せずに話してほしいと訴える


   アニー「ちょっと、ちょっと!アンタ達二人だけで勝手に納得しないでよね!」
 フェイオン「う、うむ…私達はまだこの施設の事は詳しくないのだ、手順というのはなんなんだ?」

 メイレン「あー、そういえばアンタが合流したのは[タンザー]からだったわね…いいわ、教えてあげる」


 紫髪の美人はビシッと指さす方向には今彼らが立っている通路から真っすぐ進んだ先にあるボタンと昇降機と思わしき物
彼女曰く、下層から昇降機を上昇させることでこの工場で造られた物がぎっしりと詰まった木箱がこの階層に運ばれて
それを上層のクレーンで掴んで鬱陶しいもう一人の豚マスク着用の子分の頭上に叩き落としてやるのだそうな…。
 行って戻って来るのが面倒くさいから人数も多いし誰か此処で待機しようという話だそうな


 アニー「ふぅん、そういう話ならあたしはパス…こちとら買った物を盗られたんだ、落とし前は着けに行きたいんでね」

 ブルー「同じく、くだらん事に時間を割かれたんだ…この手で潰さねば気が収まらん…ッ!」


 スライム「ぶ、ぶくぶくぶー(;´・ω・)」ピョン、ピョン!


 通訳のニートによると、自分が残りますとゲル状生物は主張しているらしい、ちなみに通訳のニートは此処に詳しいから
自分も行くと…、話し合いの結果最終的に下層に向かうのが術士と守銭奴、無職…そしてクーンの4名で
メイレンとスライム、フェイオンが上層に残ってくれる事となった


  リュート「うっし!そいじゃ行ってみっか!」
   クーン「わーい!れっつごー!」


 ボタン一つで右へ左へ飛んでく巨大な鉄の塊、吹き飛ぶ人と落下する男達…

 まるでテーマパークに来たみたいだぜ!!!テンション上がるなァ!とはしゃぐお気楽な二人と対照的に
殺気立った2人の4人パーティーが[カバレロファクトリー]の下層を吹き抜ける嵐と化していた…


 二刀流から織りなされる無職の[二刀烈風剣]が前方に立つ敵を切り刻み、[マリーチ]と化した獣っ子の高火力な急降下が
何時ぞやの[巨獣]を斃した時と変わらぬ威力で繰り出され、怒り心頭のアニーが[濁流剣]で周りの敵を文字通り巻き込む
濁流の動きで粉砕、トドメにキレ気味の術士が明らかにオーバーキルの[ヴァーミリオンサンズ]を唱え出すのであった…ッ

 なまじ工場の天井が高く、広い室内であるために広範囲高火力の[魔術]が使えてしまうのがなんとも…
幾つかの鉄材すらも巻き込んだ緋色の宝玉の破片が舞う暴風が工場内をズタボロに荒らしていく


………どう足掻いてもこの工場、閉鎖待ったなしである。罷り間違って彼らに勝てても経営不可能レベルで荒らされている
903 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/05/15(日) 23:19:07.21 ID:PcGRRSLC0
―――
――



 カバレロ「あっ、あっ、あぁぁ…お、俺の…俺の"城<こうじょう>"が…っ
                 俺が駆け出しの若い頃から借金してまで作った工場がぁぁ〜」


 工場の奥で青春の1ページとも呼べる自分の城が破壊される音を耳にしてギャングスターは今にも泡を吹き倒れそうで
そんな彼を側近達が「カバレロさん!?お気を確かに」と支えている…。

 肩をぶるぶると震わせたドン・カバレロは不意に笑った、突然笑い出したのである


 カバレロ「ふ、ふはははっ、ふはははははははははーっはははははっ!!!!」



          側近「か、カバレロさん!?遂にイっちまったんですかい!?」

 水棲系モンスター(青)「し、しっかりしてくださいよォ!!」



 カバレロ「…うるせぇ…畜生…畜生ぉぉ…もう自棄だ!!オイてめぇら"アレ"持ってこいや!アレ!」



   側近「へ?アレ…えっ!?まさか"アレ"に乗り込むってんですかい!?」

 カバレロ「どうせ俺は終わりなんだっ!なら最期くらい俺自らが戦いを挑んでやらぁ!!!」


―――
――



 フェイオン「このボタンを押せば良いのか?」

  メイレン「ええ、そうよ…ほら見なさいな、下層でスイッチ前にある邪魔な木箱を持ち上げたでしょ」


 真上から下層の様子を伺う男女とゲル状生物は術士達の進行方向にある金網フェンスで区切られた一間の変化を目で追う
自分達の操作したボタンの結果、クレーンは彼らが動かす手筈のスイッチの前にある障害物を持ち上げた
 丁度いいタイミングで彼らもそこに到達して術士と金銭にがめつい女がアンデット系のモンスターを八つ裂きにする最中
クーンと弦楽器を背負った男が"クレーンゲーム"に興じていた


 娯楽施設の遊びの名を例に出したが言い得て妙である。


 お気楽二人組が指で押したボタンは正しくその通りにクレーンが左右を行ったり来たりしていて、彼らが二度目の指圧を
ボタンに加えればぴたりと止まってヌイグルミを捕まえる様に機械の手が下りてくる…
 これをクレーンゲームと称さずしてなんと呼べようモノか


<オラァ、盗んだヤツ何処だゴルァ
<ひぃぃ…何の事だよ!?
<吐け!さもなくば首から上を[インプロージョン]で爆殺する
<おたすけぇぇぇぇ!!



 リュート「あっ、クーンずりぃぞ!!俺こういうの得意なんだって!」
  クーン「えぇーっ、ボクにやらせてよ!」


 リュート「駄目だ、お前は上で散々ボタン押したろ〜、次は俺の番!」ポチッ
  クーン「あぁぁぁーっ!」


 クレーン『 』ウィーン、ガシッ


 カバレロの手下C「か"ろりっ!?」ビクッ


 木箱の上で援護射撃を試みようとしていた部下が1人、首根っこを掴まれて奇声を上げる…そのまま宙ぶらりんで
降りる事ができずジタバタと無駄な足掻きをする彼を捨て置き進行組はカバレロがすぐ近くに陣取る区画まで駆けてきた


 クーン「むぅっ、次はボクに押させてよね!あそこだよ、あのボタンを押せば昇降機が動くから」
904 :次回たぶん土日 [saga]:2022/05/15(日) 23:20:12.64 ID:PcGRRSLC0


 昇降機『 [荷物入りの木箱] 』ウィーン、カシュッ!


 メイレン「来たわね…」


 下層での一連を眺めていた彼女はそろそろ来るだろうと昇降機前に待機していた
木箱にはこの工場で造られたのであろう[鋼のお守り]が大量に梱包されていた、前にチラッと見た時にはコレの他にも
[強力傷薬]などが木箱に詰められていた為、製鉄工場としてだけでなく医療品の製造か、はたまた[クーロン]か何処ぞへの
密輸で資金稼ぎでもしようとしていたのではないかと考えられる


 正方形の木箱にぎっしりと詰め込まれた[鋼のお守り]はさぞ重かろう…これが頭上に落ちてくる豚マスクに同情する


 手を振って合図を送るチャイナドレスの美人の姿を目視したスライムがフェイオンに押してもいいと伝令を送り
そうして動き出したクレーンは見事に何tもあろう重量の木箱を持ち上げて覆面の男の真上でそれを手放す


 ズッシャァァァン!!


  カバレロの手下D「ごぉらぁっ!?」


 鋼鉄製品が大量に梱包されたソレの重みに耐えきれず膝から崩れ落ちて下敷きになる豚マスク
カバレロファミリーの手下はこれでほぼ壊滅状態と言える結果になってしまった…

 残るは逃げ場を失ったドンだけである


 メイレン「さて、私達も行きましょうか…もっとも、この位置からじゃ走っても最奥に着く頃には終わってるかもね」


―――
――




 アニー「蜥蜴共!あたしのブツに手ぇ出したんだ!三枚におろしてやるから出てきな!!」

 ブルー「道具を持って今すぐ投降すれば尻尾を切除する程度で許してやるさぁ来い!!!」つ[双龍刀]


 リュート「…あー、カバレロさんよぉ、何処に隠れてるか知らんけどコイツ等やる時はマジだから出た方いいって」

 クーン「おーい!カバレロやーい!」



    ブロロロロロロ…!



 リュート「ん?なんの音だ?」


  ブロロロロロロロロ…!



 それは工場の奥から聞こえてきた…、轟音を鳴らしながらやって来た空色のカラーリング
頼りなさげな工場の電飾に映えることから金属の物体であると判る、更に距離が近づいて来る事でその全容は分かった

 工事建設で使う重機のショベルカーと搬入作業で使うフォークリフトを掛け合わせたような乗り物であった



  カバレロ「おうおうおうおう!!テメェラよくも俺様の城を壊してくれやがったなコンチクショー!!」

  カバレロ「もうタダじゃすまさねぇぞ…ぐすっ、俺の工場ぉぉぉぉ…!!」


 半泣きのカバレロと愉快な仲間達は頭に黄色いヘルメットを被り、御自慢の改造重機…通称[鋼の傭兵団]に乗り込み
彼らの前に立ち塞がったァァァッッ!!


  カバレロ「もう形振りなんぞ構ってられねぇ…俺の虎の子のコイツも投入したんだ…一矢報いてやるッ」


 アニー「なっ!!奴らの後ろから来るあのデカブツはまさか…ッ!」
905 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/05/18(水) 17:04:21.23 ID:YDSUvPPD0
相変わらずスライムくんかわいい
906 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/05/22(日) 23:10:08.40 ID:l25jkljg0

 その姿を見てアニーは思わず声をあげた、なんでこんな所にこんなヤツが居るんだ!と

 カーキー色の機影が地鳴りを上げながら此方に走行してくる、戦車の履帯に似た特徴的な脚部に
中央からは腕付きの電柱が生えたような独特なフォルム…トリニティ政府でも重要な機密施設を徘徊する殲滅兵器
通称[モービルマニューバ]が出てきたのだから度肝を抜かされる


 ふと、アニーの脳裏にジャンク屋の買い取りリストのメニューが浮かぶ…。





   "[ハイペリオン]"     "[ベヒーモス]"





  アニー(ちっ、連中め…そういうことか)


 メイレンが持っていた大怪獣の名を冠した銃は稀に目の前の駆動殺戮兵器が"落とす<ドロップ>"ことがある
それとは別口で重火器の中で最も破壊力を秘めた[ハイペリオン]も撃破後に落とす個体が存在する…

 政府がリージョン界からかき集めた税金を使って作り上げた、お高い量産機ゆえである
潤沢な資金があって、そこに最上級の武器、防具をベースに作り上げた駆動兵器だからこそ
撃破後に彼らの身体を構築していた部品が落ちるのだと裏社会の人間達の間で考察が飛び交っていた

 屑鉄売りなんてセコイ商売やってる連中だ、どうやってかは知らないが政府の腐れ連中から廃棄処分同然の中古品を
買い取り独自に修理しようと試みていた、といった所なのだろうよ…



 カバレロ「虎の子の[モービルマニューバ]だぁーっ!コイツで辺境の"惑星<リージョン>"相手に強請ろうと思ったが…!」

 カバレロ「もうそんなこたぁどうだっていい!テメェ等覚悟しやがれってんだ!!」



 ギャングスターは乗り込んだ作業車のアクセルを踏みしめて憎むべき相手を撥ね飛ばそうと試みる
それに続く様に部下達も急発進と同時にアームを振り上げ生身の人間相手にジョベルを突き立てようと振り下ろした


 鋼の傭兵団『 』ブゥン!


 リュート「おわっっと!?あぶねっ!」サッ

  アニー「このトラクターモドキ共はどうだっていい!!後ろのデカブツにだけ注意しな!」サッ、ザシュ!


 [体当たり]をぶちかましてくるカバレロ機を軽快な動きで避けるリュートは仲間の姿を見やる
自分と同じく回避行動を取ると同時に器用に作業アームを切り飛ばす黄金色の髪と[スウェイバック]よろしくな動きで
紙一重に躱したと思えばカウンターでその場から剥き出しの搭乗席に飛びかかる様に[パンチ]を練り出し乗組員を一人
打ちのめす蜂蜜色の髪をした術士の姿が目に入った

 相手を殴り飛ばした後はそのまま[双龍刀]を構えて他の機体に飛び移るブルー、そんな彼を背景に風の精霊たちが流れて
[打撃]を繰り出そうとしていた他の機体が破壊される…[マリーチ]に変身したクーンの[シルフィード]が炸裂したのである



 モービルマニューバ『 』グッ!ジュゴオオオオォォォォー―――っ!



 リュート「うおっ!?でっけぇのがロケットみたいにケツから火を噴いて飛んだぞ!?」


 駆動殲滅兵器は底板に当たる部位に[ハイパーバズーカ]が取り付けられている、姿勢を変えて中央部の胴を仰け反らせ
"相手に尻を向けた状態"にすることで目の前の対象を撃つ事も可能である…

 何故こんなワケの解らないツッコミどころ満載な位置にそんな兵装がついているのかという問いに真面目に返答するなら
特定のモンスターやメカの技である[ミニオンストライク]や[びっくりソルジャー]対策だからだ

 小型の兵器や特殊な攻撃技が真下から攻めてきた時に一掃する為だと言われいる、[パワードスーツ]をベースにした
メカニカルボディなら至近距離で[ハイパーバズーカ]の爆発を受けても大丈夫だとされているし、それにもう一つ…
 その位置に発射口があるという特徴を利用して簡易ロケットノズルの取り付けも施されているのだ

 バズーカの弾ではなく開いた発射口から火を噴き、上昇が可能…そして上空からその重量差を利用して―――!!


  アニー「!! [地響き]が来るから注意しなさいっ!」
907 :今回はここまで 次回 再来週予定 [saga]:2022/05/22(日) 23:10:46.23 ID:l25jkljg0




   ズ ド オ オオ オオ オ オ オオオオオォォォォー――――z____________ン!!




 超重量級の兵器が工場全体を揺るがした。

 解体工事現場で作業用車が鉄球を振るった時の衝撃、あるいは脆い地盤にボーリング掘削の過程で巨大杭でも打った揺れ


 [カバレロファクトリー]全体が[地響き]と共に揺れていく…っ!古い工場の天版や丸太の様に太い配管が外れて落下する
巨大な鉄の塊や瓦礫の雨が容赦なく敵味方に関係なく降り注いでいくッ!!




 水棲系モンスター(青)「ひょぇぇぇぇっ!?俺達まで巻き添え喰らうじゃないっすかぎゃあやややあやぁ!?」ゴッ
 水棲系モンスター(緑)「おたすけぇぇぇーーーっ べぎゃっ!」グチャッ


    リュート「く"ぁっ!?」ザシュッ

    リュート(ゆ、揺れの所為でまっすぐ歩けねぇのに…落ちてきた硝子が脚に刺さりやがった…!!)


 弦楽器を背負った男は激しい揺れで割れた天窓の枠を見つめて顔を歪める、冷静に[バックパック]から回復薬を取り出し
硝子片を引き抜いてから処置を行おうと試みる―――しかし…!


  カバレロ「うおおおおおおおおおおおおおおおおっっ、一人でも多く道連れだああああああああああぁぁぁぁぁ!!」
  リュート「!? ばっ、こっち来んじゃね―――」


 火事場の底力、自暴自棄になった男の荒い運転がリュートを撥ね飛ばした!
先の揺れで落ちてきた瓦礫に操縦系統がやられたのか蛇行しながらギャングスターの運転する作業車が渾身の[体当たり]を
偶々目に留まった青年に向けてぶち当てた、自身の工場が閉鎖せざるを得ない程のダメージを負わされていたから
だからもう形振り構わない、この戦いで自分の生命も工場そのものの倒壊も知ったこっちゃないと言わんばかりの暴れ方


 [モービルマニューバ]を投入してきた時点で既に死なば諸共の精神で来てると警戒すべきだった。


 リュートを撥ね飛ばした車体はそのままカバレロを乗せて木箱の山に激突してピクリとも動かなくなった
撥ねられた彼は壁に叩きつけられ…運の悪い事に[バックパック]と取り出していた[高級傷薬]を落としてしまった…。

―――
――


  ブルー(ハッ!? 来る…!分かるぞ、彼奴が落ちるタイミングとその後の二次災害が―――)ピコンッ


 駆動兵器の推進力が途切れ、自由落下を始めた刹那―――彼の脳裏に豆電球灯るッ!!


 [巨獣]…[グレートモンド]…そして[モービルマニューバ]と地を揺るがす攻撃を仕掛ける敵と蒼き術士は幾度も相対した



 その経験が今、実を結んだ。 瞬間的に彼の視界がスローに映る、敵の落下までの予想時間と落下後に起きる天井や大地
地形から来るダメージを瞬時に計算できたのだ…っ!



 それはまるで"見切り"…そう、天地を揺るがすような災害さえも見切れるようなったのだ…っ! [地響き見切り]だッ!



 駆動兵器が大地に降り立ち衝撃の波紋を広げる刹那、ジャストタイミングで地を蹴り跳び上がったブルーは揺れを回避
降ってくる瓦礫や鉄製の配管も落下の予測計算通り当たらずにノーダメージでやり過ごす

 これならば勝てる。そう確信した彼は仲間との連携攻撃で一気にカタを着けようと近くに居る攻撃可能な仲間を確認する
肩を強打したのか抑えているアニー、天使の翼で飛んでいて事なきを得たクーン、そして…


  ブルー(!! リュート…あいつッ、なんであんなところに転がっているんだ!![バックパック]はどうした!?)

  ブルー「〜〜っ! クソったれめ!世話の焼ける奴だ…!!」ダッ!


 攻撃チャンスをふいにしてしまうことに悪態を吐きたくなるが、彼は直ぐに荷物を拾って悪友の元へと向かおうとする
908 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/05/24(火) 00:37:39.18 ID:vwzvD3Ya0
おつ
地響き見切り大事
909 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/06/12(日) 12:42:30.09 ID:CgjG6vk70

 蒼き術士は手早く床に落ちた医療品と鞄を拾い上げてリュートの元へと急行、[最高傷薬]を彼に投与して頬を2、3発叩き
意識を覚醒させる、「はにゃ?俺どうなったんだ?」と何とも間の抜けた目覚めの一声を呟く彼に呆れつつ
術士は戦闘中だしゃんとしろ!と喝を入れた


  ブルー「あまり奴に時間を掛けてはいられん!長期戦に持ち込まれては不利になるからな!!」


 助け起こした弦楽器の男と共に[モービルマニューバ]へと向かうと[チェーンヒート]を
寸での所で回避したアニーが声を上げる


 アニー「やっと来たわね、遅いわよ!コイツ二人で相手するにはキツイんだから!」

 リュート「すまねぇ!今んトコどうだ!?」


 アニー「…さっきからクーンと二人掛かりで攻めてるけどタフ過ぎるわ、決めてになるデカい一撃でも無けりゃキツイ」


 苦々しい顔で黄金色の髪の女は[反重力クラッシャー]を撃ち出して来る敵機を睨み告げた、相反する2重螺旋の輝きが
天使の片翼を傷つけクーンの飛行姿勢が崩れる、やや高度が下がり始めた辺りで殲滅兵器が警告音を鳴らす
 耳障りな異音に「なんだ!?」と警戒すると奴の周りに"水が集まっていく"ではないかッ…!

 先の[地響き]で割れた排水管や工業機械からの産業排水やオイルの混じった科学液の波、それらが彼奴を中心に密集する





  リュート「!! やっっべぇぞ、あの技は――――!」






―――――[龍神プログラム]作動。



 そんな機械音声が聞こえてきた気がした。







            【 [ メ イ ル シ ュ ト ロ ー ム ] 】



 [猛虎プログラム]から繰り出される[タイガーランページ]と対を成す敵全体への"水"による攻撃手段…っっ!
危険度ランク9の水棲系モンスターが使う恐るべき技だと直ぐにリュートが気付けたのは
地元の酒神が祀られた祠がある沼地に住まう危険生物の代名詞と呼ぶべき技だったからか…

 陸地であわや大海嘯に見舞われるという事態を察したリュートは直ぐにクーンにアニーを掴んで可能な限り天井近くまで
飛翔しろと指示を飛ばしブルーの腕を掴み階段を目指し始めた


  クーン「アニー!飛ぶよ」ガシッ
  アニー「えっ、ちょ―――うわああああああぁぁぁぁぁっ!?!?!?」

 リュート「ブルー!

*******************************************************
910 :途中送信されてしまった [saga]:2022/06/12(日) 12:51:28.41 ID:CgjG6vk70

 蒼き術士は手早く床に落ちた医療品と鞄を拾い上げてリュートの元へと急行、[最高傷薬]を彼に投与して頬を2、3発叩き
意識を覚醒させる、「はにゃ?俺どうなったんだ?」と何とも間の抜けた目覚めの一声を呟く彼に呆れつつ
術士は戦闘中だしゃんとしろ!と喝を入れた


  ブルー「あまり奴に時間を掛けてはいられん!長期戦に持ち込まれては不利になるからな!!」


 助け起こした弦楽器の男と共に[モービルマニューバ]へと向かうと[チェーンヒート]を
寸での所で回避したアニーが声を上げる


 アニー「やっと来たわね、遅いわよ!コイツ二人で相手するにはキツイんだから!」

 リュート「すまねぇ!今んトコどうだ!?」


 アニー「…さっきからクーンと二人掛かりで攻めてるけどタフ過ぎるわ、決めてになるデカい一撃でも無けりゃキツイ」


 苦々しい顔で黄金色の髪の女は[反重力クラッシャー]を撃ち出して来る敵機を睨み告げた、相反する2重螺旋の輝きが
天使の片翼を傷つけクーンの飛行姿勢が崩れる、やや高度が下がり始めた辺りで殲滅兵器が警告音を鳴らす
 耳障りな異音に「なんだ!?」と警戒すると奴の周りに"水が集まっていく"ではないかッ…!

 先の[地響き]で割れた排水管や工業機械からの産業排水やオイルの混じった科学液の波、それらが彼奴を中心に密集する





  リュート「!! やっっべぇぞ、あの技は――――!」






―――――[龍神プログラム]作動。



 そんな機械音声が聞こえてきた気がした。







            【 [ メ イ ル シ ュ ト ロ ー ム ] 】



 [猛虎プログラム]から繰り出される[タイガーランページ]と対を成す敵全体への"水"による攻撃手段…っっ!
危険度ランク9の水棲系モンスターが使う恐るべき技だと直ぐにリュートが気付けたのは
地元の酒神が祀られた祠がある沼地に住まう危険生物の代名詞と呼ぶべき技だったからか…

 陸地であわや大海嘯に見舞われるという事態を察したリュートは直ぐにクーンにアニーを掴んで可能な限り天井近くまで
飛翔しろと指示を飛ばしブルーの腕を掴み階段を目指し始めた


  クーン「アニー!飛ぶよ」ガシッ
  アニー「えっ、ちょ―――うわああああああぁぁぁぁぁっ!?!?!?」

 リュート「ブルー! 流石にクーンに俺達まで担いで飛んでもらうことはできねぇ!波が来ない所まで昇るしかねぇ!」
   ブルー「くそっ!間に合うのか…!?」


 大津波が彼らの背後で機材や柱を飲み込み、水圧で潰しながら迫ってきているのが音で解る
逃げ切りたいが…っ![メイルシュトローム]の発動を見てから階段まで走るのでは到底間に合わない、[地響き]と違って
起死回生の策を閃いて見切りが成功するというのも望めない―――万事休すか!?


 濁流の音がすぐ背後まで迫り、ここまでかと二人が走りながら目と閉じ覚悟を決めた時であった…。







      スライム「ぶくぶくーーーーーーーーーっ (*‘ω‘ *)」ヒューン

911 :予定より遅れて申し訳ない、今回はここまで次回は来週の土日予定 [saga]:2022/06/12(日) 13:19:39.95 ID:CgjG6vk70

 聞き覚えのある声と共に、「べちゃ」という音が彼ら二人の背後からした。

 スライムである、[ユニコーン]形態に変身せず、上層から下層の二人を見兼ねて飛び降りてきたようだ


 迫り来る大海嘯を前にして二人を護る様に仁王立ち(?)をするゲル状生物に思わず「ば、馬鹿者!なぜ降りてきた」と
蒼き術士は声を荒げる、上層に居れば助かっただろうに…!お前1人来たところで津波をどうにかできる訳ないだろうと


 リュート「ハッ!?いや待てよ!そういうことか!?助かったぜ!!」

  ブルー「な、なに?どういうことだ…!!」


 モンスターの特性に詳しいリュートは全てを察した、安堵と困惑それぞれの表情を浮かべる男性二人を尻目にスライムは
突然膨張を始めたのである、これはモンスターが吸収した相手の細胞から遺伝子情報を読み取り変身する際の現象だ
 クーンの[マリーチ]形態やスライムの[ユニコーン]形態もこの過程を通してから成り代わるのだが…しかし



  スライム「ぶくぶくぶくぶ く ぶ く ぶ く ぶ く ぶ く ぶ くーっ! (`・ω・´)」ズモモモモモモモ


 
 姿形が変わらない、スライムのままで何処までも膨張し続けたのである…これではスライムというより[スライム大]だ
[タンザー]のスライムプールに居た巨大な個体を連想させる姿だが…

 あっと言う間に巨大化しかスライムが二人を護る様に大津波の前に立ち憚る、鋼鉄の柱を拉げ、機材を圧壊させた
恐るべき水圧の波が…!水の暴力が容赦なくスライムを飲み込んだァーーーーッ!!



――――――ズッッッッゴオオオオオォォォォォォォォ!!!




 べきべき、みしみし、あらゆる物を飲み込み圧し潰す音が辺りに響く…絶大な暴力の波に飲み込まれて尚
術士と無職の男は生きていた…いや、彼らは水圧に襲われることは無かった


  ブルー「こ、これは一体…」

 リュート「はははっ!サンダーのヤツも昔言ってたな[スライム]は…"水耐性"があるんだってな」


  ブルー「水耐性だと…?」



 幼い頃[ヨークランド]の沼で[クラーケン]に出くわした時、友達に居たモンスター種が
[メイルシュトローム]から身を挺して助けてくれたのをリュートは思い出した
 モンスターの変身能力の次第では凝視系の攻撃や水攻撃、果ては音波や精神異常に対しても耐性を持つ者がいるのだと


 スライム「(。-`ω-) ぶくっ!」キリッ


 波が過ぎ去った辺りでスライムは身を縮めて、元のサイズに戻ってから改めて一角獣へと変貌する、上空に避難して難を
逃れたクーン達も降りてきた、遅れて階段の方からフェイオン達が降って来るのも見える


 リュート「へへっ、ありがとな〜助かったぜ! こっからが俺達の反撃チャンスだ」

  ブルー「ああ、だが…奴を仕留めきれる程の一撃となると[ヴァーミリオンサンズ]でもやりきれるか」


 リュート「そのことだがよ、ブルー…お前さんに相談がある耳を貸せ」


  ブルー「何?」

 リュート「――――で、――――だから、――――できるか?」
  ブルー「―――――!!貴様馬鹿か!?可能だが…」


 リュート「できるんだな!?ならその作戦で行こうぜ!」

  ブルー「…はぁ、どうなっても知らんぞ」


 突拍子もない作戦を聞かされて彼は天井を見つめた、この戦闘で酷く傷ついたオンボロ工場の崩落しそうな天井を
術士は脆く壊れやすい箇所に目星をつけながら集まって来た仲間達に誘導を頼むのであった
912 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/06/13(月) 10:54:51.64 ID:EzoCl7Xeo
スライム有能
913 :次回、少々仕事探しで忙しくなるので2週間か3週間開きます [saga]:2022/06/19(日) 23:33:09.83 ID:dM9Fqlim0

 水が退いた後先に殲滅対象が集まっていること目視した兵器は姿勢を変えて底板の発射口を集まりに向け
[ハイパーバズーカ]を放つ、砲弾が着弾する間際で何かの"印"を切った術士が散開を命じ、その場に居た者達は四方へと
蜘蛛の子が散る様に飛び退いていく…!爆発に呑まれる姿はなく、火と煙のカーテンを利用して機械の眼を欺く


 [モービルマニューバ]が一行を見失って数秒後に真後ろから風霊が背後の装甲に傷を残し、更に霊力を纏った音波が
内部システムを焼いて行く、俊敏性に特化した天使と一角獣が死角に回り込んでいたのだとAIは断定する
 角の先端から[シルフィード]の風を解き放ったスライムと[聖歌]を歌い終えたクーンの姿がそこにはあった

 一角獣はともかく天使を相手に[地響き]は効果が無い、かといって水害を再現してもスライム形態に戻られてクーンを
庇い無傷でやり過ごす事も眼に見える、後々を考えるなら此処でこの2体を潰すのが最適解だろうと
[反重力クラッシャー]の銃口を2体のモンスターに向ける




   フェイオン「ハイィィィヤァーーーーーッッッ!!」シュバッ!ズシャァァ!!!




 赤と青の重力エネルギーが解き放たれる間際に闖入者が現るッッ!!"まるで瞬間移動でもしたかのように"突然現れた
辮髪の男が[あびせ蹴り]を放ち、狙い定めていた兵器の先端の射線はずれ込む
 螺旋描くエネルギーの波はあらぬ方向へと飛んで行き、工場の柱を削った…!


 ブルーの[保護のルーン]だ。


 バズーカ砲の着弾間際で散開した時に切っていた何かの"印"は[モンド基地]での死闘に貢献した認識阻害の術式…!
敵の十八番にして最大火力を誇る[地響き]と[メイルシュトローム]を無効化それも近くに居る術士一行の誰かも防衛できる
ともすれば厄介な相手として真っ先に落とそうと動き出すのはある程度予測可能だ
 だから機敏性があり、どの部位が動き出しても敵の命中率を落とせそうなフェイオンにルーンの加護を与えたのだ

 リュートでは若干の力不足があり、術メインと銃メインのブルーとメイレンでは動きを妨害しきれない
アニーでは助走をつけて勢いよく[稲妻突き]などの力強さを持つ衝撃で敵の姿勢を崩し攻撃を逸らせるはするが…
 底板にも正面にも側面にも高い位置にあるロボットアームや胴体、どこにでも武器を内蔵した相手の全武装に
対応できるかと問われれば少し厳しいものがある

 その点、辮髪の男は高い位置でも[三角蹴り]や[あびせ蹴り]で高い位置の武装まで届くし背部にも真正面にも回り込める
底面も[鬼走り]による地を這う衝撃波で姿勢を変えだす前から発射口を潰すこともできる


 まるで電柱の様な円柱状の背が高い胴体の天辺、其処から左右に伸びた[反重力クラッシャー]を撃ち出す為に
必要なジェネレーターを一基、[あびせ蹴り]で下方から上方へと打ち抜く様に蹴り上げた事で左右のバランスは崩された
これでもうまともに撃つ事はできまい…無理して撃てても赤、青の両方が重ね合わさることの無い半端な威力の
エネルギー砲が関の山と言った所か



  ブルー「その御身を厄災の眼<まなこ>から逃れさせよ!――[保護のルーン]」フォンッ!フォンッ!


 工場内に声が響き渡る、大地揺るがす攻撃と全てを圧壊させた水圧の二重災害で酷い有様と化した工場内だ
良くも悪くも残骸が溢れかえり身を隠すための遮蔽物が多くできた形となった
 何処からか隠れながら印を切ったブルーの魔力が辮髪の男を再び不可視の存在へと変えた

 こうして2体のモンスターを護りつつ、フェイオン――面倒な位置にある武装の破壊もできたならば――そしてアニーも
交えて動きを封殺しながら"時間を稼ぐ"のだ…目的を成就させるために


―――そう、その目的とは…!!!








  メイレン「はい!これで最後の1人っと!」ポイー

  カバレロ「ぐべっ!?」ドサッ


  リュート「ひぃ、ふぅ、みぃ……おーい、お前さんの仲間これで全部か?そろそろ工場潰すけど逃げ遅れ居ないな?」

  カバレロの手下A「は、はいぃぃ…!もう居ません、仲間は皆さんが全部入口まで放り出してくれましたぁぁ!!」


  リュート「うっし!!盗まれた荷物もこうして確保した」

  リュート「あとはブルーに柱壊してもらって天井を落としてアイツをペチャンコにして終わりだなっ!」
914 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2022/06/20(月) 02:03:54.10 ID:CvuJLgqS0
乙乙
915 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/06/21(火) 20:39:40.67 ID:u8g6z5lHO
なにか策があるのか……ってなんかトンでもないこと言ってんなリュート!?
カバレロさん首吊らなきゃいいけど……
916 :長らくお待たせしてすまない2レスだけですが投下です [saga]:2022/07/11(月) 23:17:44.95 ID:l0HT8Otl0

 殴打、剣閃、鍛え抜かれた肉体から放たれる技術は殲滅兵器の動きを封じていた
破壊の為に造られた戦闘機が応酬として繰り出す[チェーンヒート]、[ハイパーバズーカ]の砲撃に対して射線や間合いを
強制的に逸らす衝撃の数々、それが横殴りの暴風の如く[モービルマニューバ]を襲っていく


 アニー「そこッ![デッドエンド]ォォォ!!」


―――ズドンッ!!


 辮髪の男と蒼き術士の姿が直線上に並んだ所で姿勢を変えて弾道砲を撃ち込もうとした所で金髪の女が降下してくる
両手でしっかりと剣柄を握りしめて相手を確実に斃すという意志を込めた一撃…!
 底板を男達に向ける様に…所謂、仰向け状態にしていた胴に刀身がめり込む、彼奴が鋼鉄の身でなくタンパク質の塊なら
間違いなく今の剣技は致命の一撃となっていたことだろう

 天高く跳び上がった彼女の重力を掛け合わせた技が電柱柱と見間違う様な胴体、ど真ん中にぶち当たる
梃子の原理よろしく身がひん曲がった殲滅兵器の弾道の発射口も当然それに合わせて標準がズレる

 狙いが外れた砲撃はフェイオン達の頭上を通り過ぎ工作機械の残骸を吹き飛ばした



 フェイオン「今のはヒヤリとしたな…っ!」

   アニー「当たらなかったんだから結果オーライでしょ」


  スライム「(。-`ω-)ぶくぶくぶー!」



 認識阻害の印術で直ぐに姿を隠されるフェイオン、ヘイトが自身に向き攻撃を躱し、時に[ディフレクト]で捌くアニー
離れた位置から敵の周りを駆けまわる様に走りながら風精を飛ばすスライム

 見えている面々が攻撃を続けて、ステルス状態になった仲間が絶妙なタイミングで攻撃の邪魔やダメージを蓄積させる
……一見すればそう見える戦術を続け、その合間で空を自由に舞えるクーンに工場を支える支柱の数々に
小さな罅を入れてもらう、最後に特大の広範囲攻撃魔術で一気に全てが連鎖的に崩れていく様にすべく…!



  ブルー(そろそろ頃合いだろうよ…っ!)

  ブルー「総員!退避ィーーッ!」バッ!



  「ギギギッ…!?」



 弦楽器の男と紫髪の女がカバレロ一味を全員外に連れ出しただろう頃合い、クーンの破壊工作もいい塩梅となった今なら
そう判断した術士は合図を送る、何時ぞやの指輪泥棒騒動の時に[バカラ]で見せた光源を発生させる術[ライトボール]だ
 信号弾の様に光球を高くに放つ…それを見て天使はアニーを掴み、[地響き]を回避させた時の様に出口目掛けて一直線に
[ユニコーン]形態をとっているスライムは一角獣特有の筋力と俊敏性を活かし、フェイオンを背に乗せて走り出す



   フェイオン「掴まれェ!」バッ

     ブルー「っ!!」ガシッ


 戦闘音で万が一にでも撤退命令が聞こえなかった場合、そして鉄屑の物陰に隠れながら印を切り続けたブルーの位置を
スライムに知らせる、そういう意味も含めた信号弾を放った彼は辮髪の男を乗せた小柄な一角獣の背に乗る

 本来の個体と比べて一回り小さな子馬の身には少々負担が大きいが此処は踏ん張って貰うしかない…!


  スライム「Σ(;-`ω-) ぶ、ぶぶぶぶ、ぶくぶーーーーーっ!!」


 成人男性二人分の重みを背にダメ押しの一声としてモンスター固有の技の一つ[突進]を使い加速するッ!
一直線上のラインを脇目も振らず文字通り猛突していく技だ、攻撃手段であるそれを移動手段として利用するのだ…ッ!

 一角獣の毛並みが逆立ち、身に"闘気<オーラ>"を纏う!蹄が土煙を巻き上げながら鉄屑を蹴散らし一気に出口へと奔るッッ


 既に陽は没した[スクラップ]の星光といやらしいネオンの輝きが見えてきた術士は殲滅兵器を眺める、当然逃がすまいと
呆れた執念で追ってこようとするのが目に映る…だが、もう手遅れだ

 どれだけの速力を以てしても間に合うまい、何のために工場の中央部に引き寄せさせたと思っている…!
彼奴がもし壁際にでも居れば強引に壁を破壊してそのまま外に逃げるなりできただろうな、そう思いながら術士は術を放つ
917 :次土日予定 [saga]:2022/07/11(月) 23:18:22.69 ID:l0HT8Otl0



      ブルー「 [ ヴ ァ ー ミ リ オ ン サ ン ズ ] ! 」



 大地が割れた。

 地割れの底より出流はヴァーミリオンの名を冠するに相応しい、彼が忌み嫌う暖色の宝石だった
術者の思念によって具現化された何カラットあるのか分からない巨大なソレ、一軒家サイズの規模を持つそれが浮かび上り
円舞曲でも踊る様に近づき、離れ、また近づいては離れを繰り返し……最後に接触した


 鏡合わせの双子の如く、大きさも形も同じ巨大な紅石がぶつかり弾けて、その破片は燃え盛る太陽の様な熱を帯びて散る

 金網フェンスの殆どが薙ぎ倒され工作機器やドラム缶の山、箱詰めされた製造物が粉々になった工場内部は
それは広々とした空間であった、だからこそ飛び散った大なり小なりの宝石の欠片は乱反射しやすい


 [跳弾]が如く、ピンボールゲームの球の様に重量と熱を持ったそれは内部で暴れ、吹き荒むのだ。


 必然、その渦中に居る[モービルマニューバ]も無事では済まされない
逃れようと安全な外へ逃げたくとも紅石の礫に脚を取られ、ただでさえ中央部に居て外が遠い彼奴は逃げきれない



 蒼き術士はその様子を見てあのニートに対する評価に星を一つ付け加える事にした。

 自身の最大火力を誇る魔術を100%以上の性能に引き上げる策、最初話を聞かされた時馬鹿げた事を言い出したと思った
然し、やってみればどうだ?効果覿面であった…!


 元の[ヴァーミリオンサンズ]に加えて[サイキックプリズン]で閉じ込めて乱反射でもさせた様な破壊力…
咄嗟に工場内部そのものを火力を底上げする舞台装置にするとはやるじゃないか、しかもご丁寧に"トドメの一撃まである"


 クーンに罅を入れさせた支柱の数々に中で乱反射を繰り返す紅玉がぶち当たる、ただでさえ脆くしてあるそこに衝撃が
加われば最早言うまでもあるまい


   ズゴゴゴゴゴゴゴ…!!  ドォォォォォォン!!


 あらゆる災禍が殲滅兵器を襲った―――鉄筋コンクリートの落盤、折れて先端がささくれた金属製の太い配管の槍が降り
天井裏を通っていた高圧電流の配線が鎌首を擡げる蛇の頭部が如く牙を突き立てに降りてくる


 陽はとうに没した[スクラップ]の夜、星光と月明かり、いやらしいネオン電飾が栄える中、街を牛耳るギャングの根城は
音を立てて崩落した…ッ!!

―――
――


 カバレロ「お、俺の…俺の"城<ファクトリー>"が…」



 リュート「なぁカバレロさんよぉ〜…工場ぶっ潰した一味の俺が言うのもなんだが、悪銭身に付かずっていうだろ?」

 リュート「コレを機に心を入れ替えて真面目に働けよな、俺も仕事探してんだ…ちったぁ手伝ってやるからさ…。」



 リュート「あの[モービルマニューバ]で何する気だったよ?アンタ自分で言ってただろ?」




-カバレロ『虎の子の[モービルマニューバ]だぁーっ!コイツで辺境の"惑星<リージョン>"相手に強請ろうと思ったが…!』-



 カバレロ「…うぐっ。」


 [モービルマニューバ]はトリニティ政府の機密情報眠る[タルタロス]を警護する戦闘メカだ、正規の手段じゃ入手不可だ
公にできない手で廃品パーツから組み立て、ソレで善良な市民から略奪する気はあったし、元から軽犯罪の類は勿論
違法と知りながら裏ルートでモンドに資材を売りつけて結果的に[グレートモンド]や[ワカツ]の基地建設の片棒担いだ


 リュート「世の中ってのは不思議な事に悪い事すると必ず失敗するようできてんだよ…稼いだ悪銭の資産も全部パーさ」
918 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/07/12(火) 02:56:08.76 ID:6AnDoZSg0
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919 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/07/13(水) 03:00:47.65 ID:njtu5HLN0
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920 :続き土日、もしかしたら早いかもしれない [saga]:2022/07/17(日) 06:43:48.44 ID:XJ4v8BTp0

 ギャングスターは一言も発しなかった。握りこぶしを作ってただ打ち震えていた。…それから暫くの沈黙が続き、やがて



 カバレロ「……足を洗えだと?また一からやり直せだと?…よくもまぁ簡単に言ってくれる」ハァ


 項垂れて大きく息を吐いた。ネオン輝く無法土地の支配者は降参だと言わんばかりに手を上げる。
"城<ファクトリー>"も潰れて、[ボロ]での資源横領、政治屋相手の裏取引ももうできまい…年貢の納め時だろうな

 成り上がったギャングは天を仰いだ、[スクラップ]の夜天光はいっそ忌々しい程に瞬いてた





【双子が旅立って11日目 午後 20時17分 [スクラップ]】

―――
――



 発着場の自動ドアが開かれて湿気を含んだ何処か黴臭さのある風が鼻腔を掠めた、まだ1日も経過していないのに
この空気と雑踏、喧騒…それに[スクラップ]とは違ったいやらしさのあるネオンの光が妙に懐かしく思えたのは
砂埃と暑さに苛まれる土地に居た所為か

 術士一行は[クーロン]に帰ってきた。ただ一名を除いて





   エミリア「えーっ!?じゃあリュートってば[ヨークランド]に帰っちゃったの!?」

    ブルー「まぁな、帰ったと言ってもアイツは俺達が[ディスペア]に潜入する前には帰ると言ったがな」
    アニー「しっかし、カバレロもなんだかんだで人望あったのね、部下がこぞって付き合うなんてさ〜」


 術士は発着場での出来事を思い起こす…。弦楽器を背負ったニートが[クーロン]までカバレロ一味を全員連れてきて
それから次の様に発言したのであった…。




 -リュート『つーわけで、俺ちょっくらカバレロ達を連れて[ヨークランド]に里帰りするわ』-

  -ブルー『放って置けばよかろうに、そんなならず者集団など…』-

 -リュート『冷てぇこと言うなってカバレロ一味もちゃんと心を入れ替えて真面目に働くってきっと!』-

 -メイレン『貴方も変な所で真面目よね、仕事探しを手伝うってアレ本当にやるんだから』-


 -リュート『へへっ、あれから機内でも一人一人になにやりてぇんだ?とか趣味や特技を聞いたんだ』-

 -リュート『したら「あれ?コイツ等農業とか得意なんじゃね?」って思ったからよ、地元の知り合いの伝手を使うさ』-



 このニートは不思議な事に"気づけば身の上話やらなんやらを語ってしまう奇妙な魅力があった"、故にギャング一味から
話を聞いて、暑い風土の[スクラップ]生まれ特有のど根性や、なんやかんやで荒事ができるくらいに力仕事にも自信があり
[鋼の傭兵団]に乗って操縦できて工場機材の稼働に精通することからトラクター等の農作機械も教えれば割とできそうで

 もっと言えばカバレロファミリーの構成員の大半が"メカ"と例のジャンク屋の蜥蜴含めた"モンスター"種で色んな意味で
[ヨークランド]という土地は人種問わずで農業のノウハウを学ばせるのには適した土地なのだ…
 人種、経歴に対して偏見的な物の見かたは無いだろうし色々考えた結果が地元の顔が利く農家に
彼らを紹介してみようという話に纏まったのである

 [沼地]などの水源も近く、田畑が多い所為で勘違いされがちだが時期によっては相当に暑い土地だ、乾燥した風が吹く
そこより暑い土地柄で育った彼らにとっては涼風と呼べる程度で、根性もあるとくればやり切れる筈だ

 ある程度仕事を覚えたら[スクラップ]の土壌でも育つ作物の種、…例えば開拓時代の某国を代表するジャガイモなんかだ
そういった物で一からやり直させるのも悪くはない、心をちゃんと入れ替えているのなら最悪そのまま[ヨークランド]で
受け入れて貰える可能性もあるかもしれん…



   エミリア「…ふぅん、すぐ戻って来るとはいえ賑やか担当がいなくなるとちょっと寂しいわね」

    ブルー「なに直ぐに戻って来る、彼奴は母親に遭ったら殴られると言っていたからな遭遇する前に来るさ」

    アニー「まっ、そうだよねぇ…リュートだもん」
921 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/07/17(日) 18:21:07.05 ID:cX2aZAnO0
おつー
やるなあリュート
922 :予定より数日遅れてすみません、2レスですがどうぞ [saga]:2022/07/26(火) 11:00:47.90 ID:PgghdCB30
*******************************************************
―――
――



        レッド([天地二段]…!)


 飛翔した少年の剣技が緑髪の少女目掛けて振り下ろされる、それを彼女が[ディフレクト]する
紅き妖刀を盾代わりに、手に重い衝撃が伝わった事で感じる痺れに思わず貌を歪める少女アセルス…そんな彼女に少年は
面打ちからの胴斬りへと移行するように剣を横凪に振るう


     アセルス「…天地……二段が、来るのはわかっているッ!」キィィンッ!


 少年の二連撃を防ぎ、更には防いだ妖刀をそのままスイングさせて彼を弾き飛ばす
数々の死闘を潜り抜けた事で彼女自身の戦闘能力も培われてきたが、鮮血を連想させる紅い劔の柄を握った今の彼女は…!
[幻魔]の力を解禁した今のアセルスは以前とは比較にならない強さを手にしたのである…ッ!



「[生命波動]!!」

「[幻夢の一撃]―――――[ジャッカル]よ!」


 雑木林の中、レッドを樹木の幹に叩きつけた後そのまま追撃に向かおうとした緑髪の少女目掛けて二方向から術が飛ぶ
彼女から見れば右斜め後ろの方角から翆玉色の光で出来た鎖が伸び、左斜め後ろからは異界の門より現れし魔獣が牙を向け
 彼女は瞬時に脚で落ち葉の絨毯を蹴り飛ばし[京]の空へ…天へと跳び発ち劔を振るったッ!
地表から上へと向かって突き上げる様に剣を上方へ…ボクサーが利き腕の拳で渾身のアッパーでも振るうかの如く…ッッ!



  アセルス(後方二方向から飛んでくるルージュと白薔薇の術はフェイント…本命は…っ!)

  アセルス「[ライジングノヴァ]!!!」


 緑髪の少女が下から上へと突き上げる様に振るった剣閃、その動きは剣技の中でも最上位技に数えられる技…!


……とは言え、まだ彼女の練度は完璧とは言い難い。

 技名を口に出し実際に放ってみたものの…本来の[ライジングノヴァ]に匹敵する威力には満たない上に
"闘気<オーラ>"による小規模爆発も発生しない、未完成技であった…


 ズパァン!!   ―――…チュドーン!


 術士と妖魔による囮の術攻撃、本命は真上…二人と違って術の詠唱も必要無く、ノータイムで且つ無音で攻撃が可能な
ラビットの[ミサイルポッド]だ…!アセルスが後ろを振り返り、思念の鎖と異界の魔獣を切り捨てる事に思考を
持って行かれていれば間違いなく弾頭が少女にぶち当たり爆発アフロヘアーの出来上がりで本日の戦闘訓練は終了だった

 なんちゃって[ライジングノヴァ]もどきで音も無く放たれた頭上のミサイルを切り裂き、2分割された実弾兵器は彼女の
後方から迫っていたルージュの魔術と白薔薇の召喚した魔獣目掛けてヒュルヒュルと落ちていき衝突、火球を作って消えた




 BJ&K「データ解析…、昨日に比べて動きが随分と良くなりました、戦場全体を見通す視野も広がり陽動にも掛からず」

 BJ&K「敵の実弾兵器を切り裂き、切ったその破片で後方の相手2人の攻撃を相殺して対処もできる」


 BJ&K「一旦小休止としましょう。怪我を治療します」ウィーン!



 アセルス「ふぅ…大丈夫?烈人くん」チャキッ

  レッド「イテテ…ちょっぴり背中がヒリヒリするけど平気だ、姉ちゃん強くなったなぁ…」



 ラビット「発射音、ミサイルの飛来音、共にステルス性の高い方式を採用したつもりでしたが気付くとはお見事です」

 アセルス「ありがとう、でも…今回の戦闘は反省点が沢山あるんだよ」


 武器を納刀した彼女は口元に手を当てて考え込む、咄嗟にレッドの攻撃を[ディフレクト]で防いだが護るよりも攻めに
徹するべきだったかもしれない、対峙した時の金獅子から感じた並みならぬ闘気…アレを倒そうと思うのならば
[幻魔双破]や[かすみ青眼]の様なカウンターも狙っていく必要性があるのかもしれない、と…
923 :続きは土日のどちらか予定 [saga]:2022/07/26(火) 11:01:55.51 ID:PgghdCB30

 それに彼女との果し合いに備えて新技開発にも勤しんだがさっき使った[ライジングノヴァ]も正直言って稚拙な出来だ
形だけはそれっぽくした"なんちゃってもどき"でしかない、本来の威力と精度でなければ効くどころか当たるのかも怪しい



  アセルス「…もっと、強くなりたい…っ!」




 白薔薇を護りたい。


 親友のルージュや旧知の仲である烈人、この旅で知り合った仲間達だってそうだ――せめて己の手が届く範囲の人を…!





 ピトッ


  アセルス「ひゃああぁぁっ!?!?」ビックゥ

   白薔薇「アセルス様、根を詰め過ぎるのはよろしくありませんわ」つ『冷えたラムネ』


 不意に頬にひんやりとした感触が宛がわれる、思考の淀みに沈みかけていた彼女の意識が現実に引き戻され何事か!?と
顔を向ければ[京]の出店では然して珍しくも無い、どこか懐かしさのある炭酸飲料の入った瓶が視界に入った


  ルージュ「適度にリフレッシュしないとね、こういうのってパフォーマンスに影響するからさ」


 紅き魔術師とサボテン頭の少年が露店で購入していた飲料を何時の間にか手に持って笑っていた
「こういう時、BJ&Kが簡易冷蔵庫みたいな役割で助かるぜ」と少年が笑い、「本来は医薬品を冷やす為ですが」と
心なしか不満げな感情を伴っている様に聞こえる機械音声の声が聞こえてくる

 目をぱちくりと瞬かせて、遅れてアセルスも笑い出した
妖魔の国で12年の時を経て目覚めてからは何かと肩の力を抜くことを忘れがちになっていたものだ…

 ひとしきり笑ってから緑髪の少女は天を仰ぐ、鍛錬中に何度も見上げてた筈の空の色なんてすっかり気にも留めなかった
気付けばどうだ?暗色に染まり、遥か彼方で輝く"惑星<リージョン>"の星あ光が見えるではないか


 ラムネ瓶の栓を軽く叩いて、ポンと飲み口を塞ぐビー玉を落とし込む
炭酸の気泡に包まれた硝子玉と瓶から溢れ出す飲料を眺めて、懐かしい甘さを口に含んだ


  アセルス「…美味しい」

   白薔薇「ふふっ、そうですね!私も初めて飲みましたが良いものですね」




  ボォン! ボン!ボン!


 ルージュ「んんっ?何の音?」キョロキョロ
  レッド「おっ!見ろよアレ!花火だぜ…っ!そういや花火大会があるっつってたがこっからでも見えるもんだなぁ」


 雑木林の中、木々の間から覗かせる漆黒の帷に複数の光が打ち上がり大輪を花咲かせた
近くにあった大岩の上に腰掛けて一行は暫し合間、ラムネの瓶を片手に花火に見とれていた、少年曰く詳細は知らないが
この"惑星<リージョン>"で今日は何かの記念日だったらしくそれで[庭園]の方で花火が上がっているそうな


  アセルス「…なんだか夏祭りみたいだね」

   レッド「ああ、ガキの頃を思い出すぜ…」
  ルージュ「お祭りかぁ…僕はこんなお祭り参加できる機会がそうそう無かったからなぁ…」


  ラビット「でしたら今から行ってみませんか?鍛錬も本日予定していたスケジュールをクリアしたので気分転換で」

   レッド「おっ!イイコト言うじゃねぇかラビット!もしかしたら今行けば食い物の出店もあるかもしれねぇしな!」


 空っぽになった瓶を手に彼らは雑木林を抜けて街道へと躍り出る、着物姿の地元民から他所からの観光客まで皆が一様に
一か所を目指し、ある者は川辺や花火の見やすい茶店の席へと腰を下ろす、群衆に紛れて紅き術士一行も束の間の休息を
楽しむのであった… 来るべき金獅子との約束の刻限まで残り2日と5時間近く……

【双子が旅立って11日目 午後 21時15分 [京]】
924 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2022/07/26(火) 11:17:08.63 ID:jNG8MUzp0
読んでるよ、支援
925 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/07/28(木) 04:38:00.58 ID:eV4+hLm30

アセルス姉ちゃんと烈斗くんで訓練とかたまらんシチュだなあ
926 :引換券 [saga]:2022/07/31(日) 23:16:33.58 ID:69/vRtt50
*******************************************************
―――
――
























               【双子が旅立って12日目 午後 18時05分 "[ディスペア]" 】
















  ディスペア看守A「いや…なんというか作業員さん、アンタでっかいねぇ…こう逞しいというか体格に恵まれてるな」




     サンダー「えっ?そ、そうかなぁ…///」テレッ//


     リュート「なははっ!コイツが便利なんスよ〜!力仕事で大活躍するもんでして」

      ブルー「…。」




 リージョン界における凶悪犯罪者が収容される刑務所の"惑星<リージョン>"…[ディスペア]、此処にはブルーが兼ねてより
"印術の試練"を達成するために必要な[解放のルーン]が刻まれた巨石がある為ずっと来たがっていた場所であった

 此処に潜入したい、ただそれだけの為にアニー相手に(ブルー基準では)遜った態度で接しご機嫌を取り続けてきたのだ
色々あって"刑期100万年の男"に会いたいらしいクーン一行も交えて今この場に彼は立っているが…


  ディスペア看守A「そんだけゴツいなら檻越しに凶悪犯を見ても大丈夫そうだな!逆に向こうがビビるか!はははっ!」



     サンダー「ひえっ!凶悪犯!?!?こ、こわいよぉぉぉぉぉ!!アニキ〜〜〜!!」ガクブルガクブル

     リュート「…たはは!コイツ、ナリはこんなんだけど怖がりなんスよ…あはは」



      ブルー(…本当に連れてきてよかったのか、選択ミスったんじゃないのか俺よ)ハァ…


 蒼き魔術師一行に新たなメンバーが1人追加されていた…名前はサンダー、[オーガ]種のモンスターで
見た目通りの怪力、最初から習得している技も優秀なラインナップで並み大抵の雑兵なら蹴散らせる猛者である


 何故かちゃらんぽらんな無職の男をアニキと呼び慕うこの強面がどうしてこの場に居るのか?遡る事数時間前…―――
927 :次回は次の土日か早ければ水曜日 [saga]:2022/07/31(日) 23:17:13.45 ID:69/vRtt50

【双子が旅立って12日目 午後14時27分 [クーロン]】


   ブルー「…これがその指輪か?」

   クーン「そうだよ、えへへ〜!ブルー前から指輪の兄弟たちを見てみたいって言ってたけど、どう?どう?」

   ブルー「ふむ、確かに一つ一つには奇妙な魔力が宿っているがコレで願いが叶うとは思えんな…」



 祖国に伝わる古い御伽話、魔法の指輪を集めた賢王が[マジックキングダム]の国民を更により良い暮らしと豊かな富を
享受できるように"天国"への門を開き、多くの人々が楽園で夢の様な生活をできるようになった…という主旨の伝承がある

 御伽話と謳われる程の昔話は史実の中で本当にあった出来事を子供向けに簡略化した話として次世代へ伝え聞かせたり
あるいは長い歴史の中で伝言ゲームの要領で途中から間違った伝播のされ方をした語りだったり…
何れにせよ元となったネタが何かしらある筈なのだ


 自分が生まれ育った故郷、自分を育ててくれた祖国、御国の為に命を投げ捨てる覚悟の術士だ


 愛国心から"そういう事柄"には興味関心はある。


 緑の獣っ子から集めた指輪を観させてもらったが…正直なトコロやはり単なる作り話だったか、と彼は落胆した
確かに奇妙な魔力は宿っている、天に掲げれば認識阻害の効果や大人数を溢れんばかりの生命力で治癒することもできる
 それは認めるが…それだけのマジックアイテムに過ぎない


 とてもじゃないが何でも望みが叶うなんて出来過ぎた代物とまでは行かない、と彼は判断したのであった…




 ………ブルーの評価は間違っていない。


 個々の指輪は単なる"核<コア>"となる部位の力を増幅させるオプションに過ぎないのだから、一番の大本命つまり…
"核<コア>"となる大事な指輪を一目でも鑑定できる機会があればブルーの評価は180度裏返った事だろう






 指輪の兄弟の中で最も重要な指輪にして、最大の厄介者…メイレンが隠し持っている"黒の指輪"の存在さえ知っていれば




 カラン、カラン…!



 臨時休業中の札を掛けてある筈のイタ飯屋の扉が開かれた、カバレロ一味を地元の知り合いに預けてきた無職の男が
戻って来たのだろうと踏んで術士は入口の方を振り向く


 ブルー「―――やっと帰ってきたかリュー…トぉ!?」ビクッ


 手にしていた指輪をテーブルの上に置き、彼は振り返った…するとどうだ、そこには想像していた顔とは違った人物が
…否、それ以前に見た目が違った

 座ったままの姿勢と言えども振り向いた彼の視界に入ったのは立派な胸筋と腹筋、肌の色は真っ赤
少し首を下に向ければ靴も履かない剥き出しのゴツイ脚と鋭い爪を覗かせる爪先、上に向ければ厳つい顔した鬼の顔がある


  サンダー「えっ、ええっと…ど、どうも、オレ、サンダーって言うんだ。」オドオド


 図体とは裏腹にやけにオドオドした感じの[オーガ]種のモンスターが口を開いた、そんな巨漢の背後からひょっこりと
弦楽器を背負った無職が「よう!ブルー今帰ったぜ!!」と陽気な声で言いながら出てきた


   ブルー「お、おいリュート!!なんだコイツは!?」

  リュート「ああ、そうだった…なぁブルー、どうだろう?俺の弟分でサンダーっていうんだ」

  リュート「一緒に連れてってもらえないか?」


 帰ってきて早々にこの男はそんなことを言い出したのである。
928 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/08/01(月) 17:44:06.17 ID:Vk4ncGAa0
おつー
そういやマジックキングダムも指輪と関連深いんだな
929 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/08/03(水) 23:04:49.87 ID:k6E2CZHl0

 蒼き魔術師は品定めでもする様に紹介された弟分とやらを眺めた、容姿からも分かる通り腕っぷしは頼って良いと見た
戦力はあって困るものでもない…それに――――


  ブルー(…"モンスター"という種族も存外侮れんからな)チラッ

  スライム「(´・ω・)? ぶく?」ノソノソ


 術こそ全て、そんな魔術至上主義の民だったがリージョン界は彼が思う以上に広かった。

 少なくともこの旅の合間で何度このゲル状生物に助けられたことか…、一角獣の形態に代わり治癒や戦闘を繰り広げた事
地下で[巨獣]との闘いの時に[マリーチ]の姿になり最終的なトドメを刺したクーン

 戦闘形態でなくとも素の[スライム]の状態で[メイルシュトローム]の脅威から救われたのだって記憶に新しいだろうに


   ブルー「貴様の弟分か…。」ジッ

  サンダー「あ、あぅ…だ、ダメ?」ビクッ


   ブルー「よかろう、同行を認める…ただし!俺達は然る目的の為に[ディスペア]の監獄に潜入する」

   ブルー「しくじれば獄中生活を余儀なくされる事になるッ!…これを聞いて尚も覚悟は変えんか?」


  サンダー「う、うん!オレはアニキが行くなら何処へだって着いて行くよ!!」グッ!

   ブルー「…そうか、ならば何も言うまい。」


  リュート「おぉ!!良かったなぁ!サンダー!」

  サンダー「やったー!やったー!」ピョンピョン!


 大柄で無骨な鬼が無邪気な子供が如くぴょんぴょん飛び跳ねる、イタ飯屋の内部に振動が走る
扉奥からライザがやって来て「下の階までドスドス響いて来るからあまり暴れないで頂戴」とお小言を受ける程である
 そんなやり取りがされる中で魔術師はアニーに顔を向けて監獄潜入にこの新参者を連れてく上での確認を取る


 ブルー「確か…アニー、お前が用意してた潜入用の偽装IDや小道具には予備があったよな?」

 アニー「ああ、それね…なんかの手違いで潜入前にダメにしちまった時の為にって1人分多くは作らせてたわね〜」


 グラディウスなんて裏社会の仕事柄、何時どこで恨みを買ってる連中からの鉄砲玉が飛んでくるか判らない
不測の事態に巻き込まれて破損や紛失が有ってもいい様に最低でも1名分は余分に偽装IDは作らせていたが…。


 アニー「作業服に関しては…んー最悪モンスターの作業員ってコトでどうにかなるかなぁ」


 そう呟いてマグカップの中に注がれたモカを口にした、クーンはじめスライムも作業服は必要としない。
[ディスペア]潜入に置いてIDがあれば"モンスター"はどうにかなる、業者の服が必要なのはあくまで"人間<ヒューマン>"だ



  リュート「へへっ!ブルー、サンダーの奴を一緒に連れてくのを許してくれてありがとな!」ガシッ!

   ブルー「…フン、礼を言われるような事をしたつもりはない。」

   ブルー「そんなことよりも連れていくからにはコキ使うからそのつもりでいろ…戦闘面は頼りになるんだろう?」


 腕を伸ばして術士と肩を組む無職の男が朗らかな笑みを浮かべながら感謝を述べる、そんな男の馴れ馴れしさに
ため息を吐きつつも術士は腕を払い除けはしなかった。いい加減一々相手をするのも面倒になったからである
 同行を許したからにはお前の弟分と言えども戦力として使わせて貰うからな?とブルーが男に言う
すると彼はニィっと笑って次のような返事を口にした。




      リュート「サンダーは見た目は恐いが、本当に恐い奴だよ。」



…だから心配しなさんな。っと


―――
――
930 :次回は土日か月曜日予定 [saga]:2022/08/03(水) 23:05:25.83 ID:k6E2CZHl0


―――――そして現在




  ディスペア看守A「…あー、なんというか意外と怖がりさんか?」ポリポリ


    サンダー「だ、だって凶悪犯だなんてぇ…」ガクガク

     リュート「…あははは、ま、まぁ…コイツやる時はやる奴なんスよ」



   ブルー(…頭痛くなってきた)ハァ…




  ディスペア看守A「しかし今日は賑やかなもんだ、こんな美人さんまで居ると来た」

     メイレン「いやだもうっ!お世辞を言ってもなにもあげませんよ//」テレッ//



 褒められて気を良くしたのか破顔した顔で看守に手を振るメイレン、そんな作業服姿の彼女に笑いながら
お世辞じゃありませんよと肩を竦め看守は業者のIDコードのチェックに入る、サンダーの時と言い中々に口が巧いのだろう


  ディスペア看守A「許可書確認と。はい、どうぞ―――」




   「待て」




 看守がIDコードを機械で読み取り術士一行を通そうとしたところ、野太い声で止められる。声の主に視線を
送ればそこに居たのは立派なスーツに身を包み白い帽子を深々と目元近くまで被った男が立っていた。
 看守はその男の姿を見るや否や顔を強張らせて姿勢を正した。


 ディスペア看守A「しょ、所長ッ!」ビシッ


      所長「…いつもと違う作業員だな?」ジッ

 ディスペア看守A「許可書は本物です」


 部下からそれを聞くと監獄の最高責任者はふむ…っと顎に手を当てて暫し考え込む素振りを見せて彼に次の様に言った


    所長「ふむ、この業者は次の入札から外せ。孫請けに仕事を丸投げしおって…」


 やれやれ、最近の企業はコレだからいかんなと首を振った、それから一呼吸置いて所長はジッとクーンとスライムを見る


    所長「そこの犬達も作業するのか?」



      クーン「犬じゃないやい!」ムーッ
     スライム「(; ・`д・´)ぶ、ぶくぶくぶーーーっ!」ピョンピョン!


  メイレン「鼻が利くんです、何かと便利なんですよ」
   ブルー「本日はパイプ修理も承っております、聞けば野生の[ゼノ]や[スライム]が勝手に住み着いているとの事で」


 咄嗟にそれっぽい理由をつけてモンスター従業員も居るんですよとアピールしておく、パイプ管内部のゲル状生物共を
どうにかする為に鼻の利く奴や同種の生物を探せそうな奴も居るのだと。


   所長「…。」ジッ

   所長「よかろう、作業は迅速、かつ、確実にな」クルッ、…コツッ、コツッ、コツッ


 それだけ言って[ディスペア]の所長は踵を翻してその場を立ち去って行った…。ヒヤッとしたが第一関門は突破できた
931 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/08/05(金) 04:01:24.48 ID:/ymg/ilM0
クーンかわゆい
932 :次回は土日予定、早まる場合もあり [saga]:2022/08/08(月) 22:49:43.76 ID:a0fbJpcP0
―――
――



    アニー「ふぅ…さっきのは焦ったわ、よ、っと!」ヌギヌギ


 監獄内部に入り込んだ一行は作業着を脱ぎ、動きやすい普段着へと直ぐに着替える

 この刑務所の"常連客"だったアニーは所長が現れた時、心臓が飛び出すかと思った…冤罪で囚われたエミリアを
グラサン上司からの命令でライザと共に救出しに来たのはまだ半年も経っちゃいない割と最近の出来事であった
 [解放のルーン]が刻まれた巨石に触れて晴れて放免となった瞬間もあの道楽所長に顔を見られていた筈だ…
だから反射的に背を向けて顔を見られない様にもしたが、人数の多さとサンダーの巨体の影に居たのが功を成したのか?


怪しまれない程度には適当に電装関連の修理と配管の整備の方をしておいた、"ガワ"だけはそれっぽく見える雑な整備だが
わざわざ裏の流通ルートからアニーが時間を掛けて仕入れてきただけの事はある
 修理工の知識なんぞ空っきしの素人集団でもある程度は誤魔化しが利く位には修繕できる万能キットだったな


    メイレン「ええ、ヒヤッとしたわね…じゃあ道中の案内お願いするわよ」

     アニー「OK。そっちは"刑期100万年の男"に用があるんだったわね…」

     アニー「あたしもどんな奴か知らないけど場所に心当たりならあるわ」


 刑期100万年の男、どんな罪状で捕まったのかは知らないがその囚人は顔も年齢も何もかもが不明で、ただ一つだけ
[ディスペア]の最奥にある独房が彼の"塒<ねぐら>"であるとされている、あくまでも噂の域だが
 エミリア救出作戦時にルーファスから叩き込まれた地図の間取りやその他事前情報から照らし合わせると
やはりその謎に包まれた区画しか候補が残らなくなるので間違いないだろう


    ブルー「…おい、その囚人とやらも良いが俺の方の依頼は忘れてないだろうな?」ジトーッ

    アニー「ああっ、もうっ!わかってるわよ!忘れてないから!巨石の方でしょ!!…近い方から先に行くのよ」


 同じ刑務所で方やとある囚人に、方や刑務所内にある特別な巨石に、目的別の依頼人がそれぞれに居るのだ
ガイドしてやるのは構わないが生憎と黄金髪の女は分身の術なんて器用なモンは使えない
どの道[ディスペア]内部を歩き回るのだからまずは道中でクーン一行を目的の場所まで連れて行ってその後、ブルーを
ルーンの刻まれた石へと案内する手順だ

 ここまで[解放のルーン]の為だけに何日もお預けを喰らった蒼き魔術師からすれば逸る気持ちもあるがグッと飲み込む
リージョン界の凶悪犯罪者が繋がれる施設だ、下手に単独で動くよりは勝手知ったる者達と共に歩むが吉、と理性で抑える


 階段を下り、長い梯子を下りてきた所でアニーが先頭に立ち「こっちよ。」と先導を始める、彼女に倣い太いパイプ管に
繋がっている梯子を昇り始める一行…しかし…


  リュート「ととっ…!?やべっ、着替えに手間取ってたら皆先に行っちまってらぁ!?」タタタッ

  リュート「……あり?あいつ等どっちに言ったんだ?」キョロキョロ


  サンダー「アニキーーーっ!置いてかないでくれぇ〜!」ドタバタ



―――――ドンッ!!


  リュート「おわっ!?サンダーばっかお前押すな!?」ワタワタ


 後ろから走って来た赤い巨体に押されて体勢を崩したリュートはそのままサンダーと縺れる様に転がりその先は―――




  ダストシュート『 「燃えるゴミは火・水」 』ドォーン!



 廃棄ゴミを捨てるためのダストシュートだァァッッ!!!転がる二人はそのままダストシュートから下層のゴミ捨て場に
あわや真っ逆さまに落ちていくゥ!!!


  リュート&サンダー「うわああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」


 実に間抜けな話だが、こんなそんなで早速一行から逸れメンバーが出てしまったのであった…人数の多さ故か
パイプ管から入って行った魔術師一行もクーン一行もこれに気が付いていないという…
933 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/08/08(月) 22:53:46.64 ID:ghhlLhHXo
孫請けに仕事丸投げはいけないよね(戒め
934 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/08/09(火) 04:51:38.55 ID:5QpmsiA60
おつー
935 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/08/11(木) 03:11:54.82 ID:pc0lMB0V0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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936 :1日遅れて申し訳ない 続きは土日予定 [saga]:2022/08/15(月) 16:34:56.91 ID:rBkd7eZT0

 田舎出身組の二人がゴミ捨て場に落下する中、先行した面々は太いパイプ管の道を通っていた
エミリア曰く「まるで学食だわ」と評した囚人達の食堂の真上を通り、規則性のある動きで出現と消失を繰り返す
ゲル状生物の住処と化した湿り気のある配管の中を潜り抜け、その先の梯子を昇り…


  アニー「こっちよ、いつもなら此処を降りてくルートだけど今回はそっち、向こう側に飛び乗るわ」シュバッ!


 そう言って道中放し飼いにされていたモンスターを切り裂いた剣を鞘に納めた彼女が向こう側へと跳ぶ、それに倣うよう
他の潜入者達も跳んで行く、長い降り階段の先に厳重警備がされた扉が一つ


   メイレン「此処に刑期100万年の男がいるのね…」

  フェイオン「私が開けよう」スッ


 人の生涯が何人分費やされれば償えるかもわからなくなる途方もない罪科を背負った人物が待ち受ける部屋だ
慕っている女の身に大事があっては困ると辮髪の男が前に出て無骨な腕でドアの取っ手を掴む
 彼が戸を開けるとそこに居たのは……!!





       所長「ご苦労だったね、やはりここの囚人に用があったのかね。」




  アニー「なっ!?道楽所長…ッ!」


 独房の中に囚人など居なかった。いたのは[ディスペア]の最高権力者…この監獄の所長その人だったのだ…ッ!
全員が身構える、このままでは憐れ一行は刑務所の愉快な仲間入りを果たしてお揃いの囚人服で臭い飯を食うハメになると

 しかし…所長は身構えた一行を一瞥してからフッと笑い、手を振る「拘束する気はない、落ち着き給え」との言葉付きで


 メイレン「どうして、バレたの…」ゴクリッ


 入口の所で最初に出会った時からだろうか?こちらにはアニーが居た…やはり顔を見られていたのか?当然の疑問を
紫髪の女性が投げかける…すると所長は右手の甲を見せる様に軽く手を挙げた、その薬指に嵌められた装飾品を見せる様に


  所長「君らが来た時、これが光ってね。そう…私は"ここの所長でもあり、同時に囚人でもある"」


 彼は事も無げにさらりと言ってのけた、自分は監獄の最高責任者だが、同時に囚人なのだと…この事実を知る物は
世界に数える程しかいない、自由の身でありながらも囚われの身―――なんと矛盾した立場であろうか…。


  所長「この[ディスペア]全てが私のための監獄と言ってもいいだろう…」


 どこか遠くを見つめる様にそう呟いた所長の表情は…深々と被った帽子の所為で目元は見えにくいが
口元は何処か皮肉めいた自嘲とも取れる笑みを零していた。
 長い年月を同じ場所で、同じ様なルーチンワークばかりしていた、そんな疲れ切った男の顔に見えたのだ…

 「今日を解放の日とする。」などと宣い、腕に自信のある囚人が自由を掴むために監獄内を奔走する様を眺める娯楽を
愉しむという道楽に耽る理由も全てそこにありそうな気がした


  メイレン「…一体、何したの?」


 純粋な疑問を投げかけた、目の前の男は間違いなく風変りな変人だが…極悪人には見えなかったからだ
それに対して、痛い横腹を突かれたと言った具合の苦笑を浮かべながら彼は言う


  所長「フッ、指輪が欲しいのではないのか?」

 …触れて欲しくない内容なのだろうな、露骨に話題を逸らした所長と、そんな彼の前にトコトコ歩いて行くマイペースな
緑の獣っ子が「うんっ!」と元気に声を上げる


   所長「何故だ?」

  クーン「んっとね…――――――」

―――
――
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/08/18(木) 01:28:47.68 ID:dMToGOzu0

所長妙に印象的よね
938 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2022/08/18(木) 04:20:06.98 ID:1Z0kFobQ0
スパイクタンパク単体で心臓やその他臓器に悪影響を及ぼすことがわかっています

何故一旦停止しないのですか

何故CDCが接種による若い人の心筋炎を認めているのに情報発信がないのですか
20代はたった1ヶ月で接種後死亡がコロナ死と同等になってます
因果関係の調査は?
939 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/08/19(金) 02:57:33.52 ID:e+DWnUH90
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940 :続き次の土日かもしれない [saga]:2022/08/21(日) 23:25:49.27 ID:3wW5IvOu0

 理由を問われたクーンはめちゃくちゃな説明をした。額に手を当て溜息を吐くメイレンや苦笑するフェイオン
それを眺める術士組達…なんとも混沌とした場だが、所長は顎に手を当て「そうか…まぁ、よかろう」と薬指に嵌めていた
[隠者の指輪]を取り外し差し出した


   所長「こんな所まで私に面会に来る者はそうはいない、持って行け。」


  クーン「良いの!?わーい!やったーっ!」ピョンピョン

  アニー「随分と気前が良いじゃないの」


   所長「さっきも言ったが君達が来た時にその指輪が光ったのだ、共鳴し合っていたから引き合わせただけだ」

   所長「退屈なのだよ、私は…。だからこそソレを君達に渡したらどうなるのか興味がある。」




   所長「クーンと言ったな?指輪を全て集め終えて君が目的を果たした暁には旅の話を聞かせてくれないか?」

  クーン「旅のお話?」

   所長「あぁ…とびっきりの冒険譚さ、どんな結末が待ち構えていたのかを語って欲しいんだ、私の退屈凌ぎになる」


 指輪をタダでくれてやる代わりに道楽所長は故郷の星を救いたがっている少年の物語を御所望のようで…
こうして変わり者の最高責任者と二言、三言ほど言葉を交わした後に一行は独房を後にした
 目的の一つ刑期100万年の男から指輪を得る事ができたのだ…であればもう一方の目的、[解放のルーン]が刻まれた石に
触れる為に監獄の最奥へと足を運ぶ必要がある

 それを聞いた所長は「ほう、また面白いショーを見せてくれるのかね?前の時同様に期待しているぞ」とアニーに言い
彼女は彼女で「げっ…やっぱりアンタ覚えてたのか…」と嫌そうな顔をしたそうな

―――
――



   ブルー「さて…長い遠回りだったが漸く、[解放のルーン]をこの[小石]に刻めるんだな」スッ


 蒼き魔術師は[バックパック]から取り出した石を眺めて感慨深く言葉を零した。4つあった石も残り2つ
その内の1つも今日この場でルーンが刻まれ、"資質"を得るのもそう遠くない未来になった訳だ…

 祖国から賜った使命…弟であるルージュと殺し合いをするという運命の日はまた近づくのだ


 クーン等一行は別に[印術]を極めたいワケではないので所長の計らいにより一足先に[ディスペア]の出口まで護送された
ボク達は一緒に行けないけど頑張ってね!と激励の言葉を受け彼らは来た道を戻り
アニーがいつも"客"を案内する本来の道順まで戻って来た


 スライム「(; ・`ω・´)ぶくぶくぶー」ノソノソ


  ブルー「ああ…一気に人手が少なくなったからな、警備ロボや放し飼いのモンスター共を相手取るのも疲れる」

  ブルー「1体1体は決して強くないが徒党を組まれて囲まれたとあってはな…改めて、戦いは数が物を言うと学んださ」


  アニー「へぇ〜、前までスライムが何言ってるのか全然分かってなかったのにまるでリュートみたいじゃん!」

  ブルー「あのボンクラと俺を同列にするのは止めろ!…別に理解してる訳じゃない、ただ大体言いたい事がわか――」



  ブルー「…。」



  ブルー「そういえばリュートで思い出したが、奴は何処だ?」キョロキョロ

  アニー「え」



 クーン達がパーティーから抜けた事で人員が減り戦力が大幅に落ちた、だから妙に手数が足りていないと思っていた
現状この面子3人しか居ない…っ!大所帯から一気に数が減った事で初めてリュートとサンダーが逸れた事に気が付いた

  ブルー「あ、あ、あんの大馬鹿野郎!!!何処に行ったんだァ!?」

 所内に術士の怒声が木霊した…。最近ちょっと見直したと思ったらコレである。
941 :色々立てこんだり不調だったりで遅くなりすまない、4レスだけですが投下 [saga]:2022/10/02(日) 23:46:48.30 ID:nkkEfNMT0

 蒼き魔術師は怒鳴り散らした後、冷静になろうと努めた…

 これまで通って来た道を思い出せ、ゲル状生物も沸く配管の中は多少複雑な部分はあったが構造からして結局の所は
一本道と言ってもいい道筋だ…これと言って枝分かれした道と呼べる物も無い
 強いて言うのであれば刑期100万年の男の独房と巨石へ通ずるルートとの分岐点だけである


 もしもリュートがパーティーから逸れてしまったと推測するのであれば何をどう間違ったか知らないが自分達に
置いて行かれて独房行きの道順へ続く足場へ跳ばずそのまま道なりに巨石ルートへ進んだであろうと考えた





 ……実際の所は、ブルー等が考えるよりももっとずっと前の段階からダストシュートから落っこちて行ったという話だが



  ブルー「…チィ、世話の焼ける奴らだ…ルーンの刻まれた巨石の部屋に行くついでに連中を見つけて回収せねばな」

 スライム「(;´・ω・) ぶくぶー…」


 分岐点まで戻って来た一行は下層へと飛び降り、直地地点からすぐの入り口へと入る…
元は山積みにされていたコンテナだったと思われるものが崩れていてそれを足場に降りていく、コンテナの中身だったのか
途中無造作に転がっていた[シェルガード]が目に付く、憶測だが[ディスペア]職員の備品なのではないだろうか?
 アニー曰く、この監獄の従業員用ロッカーに何故か[ハンドバズーカ]が入ってるらしいのでそれを踏まえると
脱獄犯を取り押さえるための装備なのだろうと思われる


 廊下に繋がる部屋の出口へと歩いて行く最中に蒼き魔術師が声を掛ける


  ブルー「アレには乗らんのか?」

  アニー「あぁ、あの作業用エレベーターね…あれ乗っちゃうと面倒臭い事に入口までほぼ強制で戻る道のりになるの」

  アニー「真っすぐ目指すなら廊下を出て、廃材置き場のマンホールから下水を通るのがベストよ」


  ブルー「ふぅん…そういう物なのか」


 ガチャッ





「キェェェェェェェェェー――ッッッ!!」



 扉を開くと同時に[ピックバード]が鋭い[クチバシ]を突き出しながら飛来してきた!番犬ならぬ番鳥ッ!
初めから侵入者が出てくることを知っていたかのような動きで突飛してくる鳥を視認すると同時に急ぎ戸を閉める

 廊下に出ようとした手前から直ぐ様にエレベーターの部屋に戻り鉄製の分厚い扉を引くと、ドッ!と強い衝撃と激突音が
伝わる…どうやら先程の鳥がそのまま扉に激突したようだ
 もう一度ゆっくりと戸を開き、隙間から何も居ないか覗き込む様に廊下を見れば…


 「ガーッ!ピーッ!侵入者の反応あり 侵入者の反応あり」
 「[ディスペア]内部に侵入者だ!今日は所長も視察に来ている日だぞ!!なんとしても捕らえるんだ!!」



  リュート「ひえ〜!勘弁してくれぇ〜!」ドタバタ
  サンダー「お助け〜!!!」ドタバタ



 向こう側から大量の警備兵と雇われモンスター等、そして警備ロボを引き付けてきたリュート等の姿が…っ!



      ブルー「 何 し て く れ て ん だ 貴 様 ァ !! 」



   リュート「あぁっ!!ブルー良い所!!助けてくれぇぃ!!」

    アニー「…いやぁ、あの数は雑魚とは言え骨が折れるわ、うん」

942 :実際 解放のルーンはアニーの道案内ガン無視した方が早い [saga]:2022/10/02(日) 23:48:17.11 ID:nkkEfNMT0

 勝てない敵ではない、これまでの戦いで術力にも余裕が出てきたブルーの[ヴァーミリオンサンズ]で楽に一掃はできる
しかし、一発二発で掃討完了とはいくまい…修理業者の人間として変装して入って来たから持ち込めた荷物も戦いに適した
いつもの服装と武具、最低限の回復薬のみであり[術酒]の類は生憎と今回は置いてきている

 やれなくはないが念には念を入れるのであれば温存と行きたいところだ


 三十六計逃げるに如かず―――こうなればリュート等の後続から迫って来る[ディスペア]職員達の集団とエンカウントを
してしまう前にひたすら先へ先へと駆けて目的の地点まで逃げ込むなりするのが吉であろう


   ブル−「ええい!こっちだ着いて来い!」バッ!

  リュート「えっ!?術で全員ぶっ飛ばすんじゃねーの!?」

   ブルー「そうしたいのは山々だがな!」




   アニー「こっちよ!」ガチャッ!


 監獄内を走り続け術士達はある一室を目指す、道中でふと見覚えのある道を走っている事に気が付いたリュートが叫ぶ


  リュート「オイオイ!その部屋はゴミ捨て場だぞ!」
  サンダー「ダストシュートから直通で落ちてきた場所だ〜!」

   アニー「こっちで合ってるの!良いから早くアンタ達も入りなさい!内側から鍵かけるからっ!」


 全員がゴミ捨て場に入ると同時にアニーが手早く鉄扉を閉じて鍵を閉める、当然職員達はマスターキーを持参している為
ほんの僅かな時間稼ぎにしかならない、そこで彼女は―――


  アニー「ゴミ捨て場なら板切れでも[鉄パイプ]でもなんでも手頃な物があるでしょう!心張り棒の代わりにするのよ」


 外側から簡単に開けない様にすべく廃材の山へと走り出す、ゴミ捨て場というだけあって何処から湧いたのか
虫系統のモンスターが二匹沸いてダンゴムシの様に転がりながら接近してくるが「邪魔よ!」の一言と共に切り捨てられる
 幸いにも塵置き場の格子扉は鍵が掛かっておらず簡単に開けることはできた、程よいサイズの鉄棒や木板、針金を手にし
戻ってきて手早くドアノブと扉上部のドアクローザーに細工を仕掛ける、これで簡単には鉄扉を突破できまい


  アニー「ふぅ、どうにかなったわね」

  ブルー「貴様、手慣れてるな…」

  アニー「そりゃあ仕事柄ね、で目的の場所だけどそこのマンホール下を通っていくわ」


 黄金髪の女が指差すはゴミ置き場から向って左の隅にある蓋の外れたマンホールであった
それを見て弦楽器を背負った男が「なんだ、わざわざ廊下に出なくてもそこの下に潜れば良かったのか」と嘆いていた


  リュート「サンダーと一緒に上のダストシュートから落っこちてそこのゴミ袋の上に着いたんだけどさ」

  リュート「そのまんま下水の方に行ってれば早かったのね…がっくし」ハァ…



  ブルー「もしや……貴様がいつも使う道案内ルートよりもコイツ等の来た道の方が最短ルートだったのではないか?」

  アニー「うっ!……こ、今回はクーン達をあの所長のトコに連れてく為にあのルートを通ったのよ!」


 ふとブルーは思った事をそのまま口に出してみた、いつもアニーは巨石に用がある顧客を
配管の上を伝うあの道順で案内してルーンへと連れて行く様だが、会敵の危険性と到達時間を顧みてもコレが最適解ではと

 断じていつも自分が"客"を案内する道順が遠回りなのではない!本来なら安全かつ最短で自分もダストシュートを使う!
…等とアニーが主張しているが本当かどうか怪しいものであった


 スライム「(;´・ω・) ぶくぶー、ぶくぶー、ぶくぶく!」ピョンピョン

 リュート「うん?幾ら扉に細工したって警備員が時間掛ければぶち破って来るから早く行こうってか?それもそうか…」


  ブルー「…今度は逸れるなよ」ジトーッ

 リュート「わ、分かったってば睨むなよ…」
943 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/10/02(日) 23:48:55.04 ID:nkkEfNMT0
―――
――


 ぴちょん…ぴちょん…。


 梯子を下りて黴臭さと古い油の様な匂いが入り混じった下水道を通っていく、時折"解放の日"に
チャレンジした者の遺体と思われる物か、随分と年季の入った囚人服と皮膚が腐れた遺体が下水の水に浮いていた…

 アニーが知り得る限り、ルーファス含む自分達以外に[ディスペア]の脱獄を試みた者はほぼ居ない、今の道楽所長の代に
変わってから成功させたのは初めてがあのグラサン上司なのだから…ここに浮かんでいるのはそれよりも
前のチャレンジャー達の末路と言った所だろうな


 金網状の床の上を歩き道中で遺骨を舐めていた[フェイトード]を蹴り飛ばし、梯子を上って出た先ではサーチライトの
強い光が床を照らしていた、"解放の日"を除いた厳戒態勢時はあの明かりが忙しなく動き回り
監獄内を忍び歩く者を探す役目を果たすのだが、幸いにもまだアレは稼働していないようであった

 そのまま道なりに進んでいくと路が途切れた場へと躍り出る、道は無く、ただ飛び降りる事で眼下に広がる通路に
一方通行でのみ向かう事ができる、ガラガラと音を立てて動く年季の入ったコンベアは鉄屑を何処かへと運んでいく



 目当てのブツは大階段を下った先の地下にある、であれば跳ばぬ理由など無いと言わんばかりに術士一行は飛び降り
コンベアの真横も通り抜けて長い長い降り階段へと…




 コツッ…コツッ…!



  アニー「さてとコレをアンタ達に渡しとくわね」スッ

  ブルー「? なんだこの不細工なヘルメットみたいな物は?」


 唐突に守銭奴の女から渡された奇妙な物体を手に蒼き術士はマジマジと眺める、自動二輪車を駆る者が着用する
バイザー付きのヘルメットの様にも見えなくはないソレを見て彼は言った…。


  ブルー「…いや、待てもしやコレは[赤外線スコープ]とやらか」


 多少部品を弄られた、ジャンク品の形跡はあるが確かにそれは赤外線を視認することができるようになる機器であった
術士に渡した物と同じ物を着用した女が口を開く、曰く「この先、入る度に変わる赤外線の迷路がある」とのことだ

 赤外線に触れれば即座にアラートが鳴り、どこからともなく警護のメカがすっ飛んでくるという寸法だ
リージョン界の名立たる悪党が投獄される監獄だけあって配備された戦闘機の能力はトリニティのお墨付き、モンド基地に
居た私兵団と同等か下手をすればそれ以上の場合もある


  アニー「避けれる戦闘は避けた方が良いでしょ」

  ブルー「…確かに」


 階段を降り切り、件のフロアへと扉を開き脚を進めると…


 リュート「おっ!!こりゃあすげぇや…マジに赤い線の壁が見えるぜ」

 サンダー「えぇ…そんなに凄いのかいアニキ?」
 スライム「('ω')ぶく?」


 "装飾品<アクセサリー>"しか装備できないモンスター種族達が"人間<ヒューマン>"に尋ねる、頭部装備ができる彼らにしか
視えざる壁の迷路の道を知る事はできないのであった…
 サンダー等からすればただ広っい空間に奇妙な円筒が一定間隔で大量に突き出てるだけの奇妙な間取りにしか見えない


  リュート「すげぇのなんのって、あえて遠回りするような道順だったり結構複雑に張り巡らされてんだよ」

  リュート「スパイ映画の主人公目線になったみたいだぜ…」テクテク


 ヒューっと口笛を吹いてすっかり上機嫌なリュートとその背にぴったりとついて来るモンスター種達、見えないからこそ
密着するように歩いて行くしかない
 落ち着いて赤外線の迷宮を通り抜り抜けて、[ヘッジホグ]が二体戯れている小部屋に辿り着く
赤外線のフロアが防衛ラインとして大本命だったのか抜けた先の守衛は強い物では無かった、容易くそれらを倒し
向って左側の梯子をよじ登り[ディスペア]のエアダクトへと一行は進んで行った
944 :今回ここまで 次回 土日予定 [saga]:2022/10/02(日) 23:50:14.34 ID:nkkEfNMT0

 ごうん…ごうん…!と人間どころか大型の貨物トラックさえ入りそうな巨大エアダクト内の突き当りでは換気扇が音を
立てながら回り続け、施設内に工業地帯の様な匂いと妙な湿り気を帯びた外気が空気を送り込んでいた

 向かい風の形で吹き付けてくる空気に逆らい、最奥まで進み壁伝いにちょっとした鉄格子があることを確認する
曰く、此処が目当ての巨石がある部屋へと通ずる抜け穴らしい
 工具箱から取り外し様の道具を漁り鉄格子を外す作業に掛かり出すアニー、彼女は術士達に向かって言う


  アニー「チョット後ろを見張ってて」

  ブルー「後ろだと?」

  アニー「ええ、"変なもの"が来るかもしれないから」


 以前エミリアを連れて此処を脱獄した時に背後から気色の悪い怪物がやってきたらしく
どうにもルーンを目指す者を襲う様にこの付近を塒<ねぐら>にしているらしい、雇われたモノなのか偶然ここの環境を
気に入り住み着いたのかは不明だが道楽所長はソレを大層気に入っていた


  サンダー「うぅ…なんか嫌な感じがする」


 後ろを見張る様に命じられた2人と2匹は自分達が入って来た入口の方に目線を向ける
換気扇の風切り音に混じってカタカタと妙な音が聞こえ始めたのは来た道を見つめて間もない事であった
 小心者の鬼人の言葉に応えるかの様に"ソレ"はやってきた

 生き物の死骸が長らく放置された腐臭と土の匂いを混ぜた異臭を漂わせ、ムカデを思わせる節足と蝙蝠の翼
先端からぶら下がったギョロ目付きの人間の頭蓋骨――――[ニドヘッグ]と呼ばれるモンスターが歯をガチガチ鳴らして
笑いながら此方へとやってきた…ッ!



  ニドヘッグ「ゲヘゲヘゲヘ… にお い" す"る…ケヒェヒェ…」ズルズル…!


 4本の赤い腕の様な触手から伸びた鋭い爪は宛ら騎兵隊のランスか何かか、死体喰いの百足は低い声で唸りながら
獲物達の姿を捉え…


    ズダダダダダダダダダダダダダダダダダ…!!!


 槍の様な四本腕を前に突き出す姿勢で猛進撃を繰り出して来た…ッッッ!!4本槍と無数の針の様な脚で
獲物を踏み刺して行かんとする一直線上に放たれる技、[百足蹂躙]であるッ!


   ブルー「各員、左右に散開しろ!!」バッ

  リュート「うひ〜っ!でっけぇムカデだぁ〜!気持ちワリィぜ!!」スチャッ!


 術士とゲル状生物が、[ヨークランド]組がそれぞれ左右に分かれる様に飛び退き各々の武器を手にする
[鬼走り]の射線同様、分かりやすい技であるが為に避けやすくだがそんなことは想定済みだと言わんばかりにすれ違い様に
4本腕を器用に動かし左右に分断させた4名目掛けて[突き]を繰り出す

 瞬時に[ユニコーン]に変化したスライムに運ばれて刺突から免れた術士組に対して田舎出身組は
方や手にした武器で見事に[ディフレクト]し、もう片方は憶病な性格は何処へやら、ガッシリと大樹の様な太い両腕で
死体喰いの腕を受け止めたではないか…ッ!!



   ニドヘッグ「!!!」ググググ…ッ

    サンダー「ひぃ〜…危うく眉間に穴開いちまうトコだったぁ〜!!」


 情けない声とは裏腹に掴んだ相手の腕はピクリとも動かない、見た目通りの剛腕は確かに脱獄を試みた人物を何人も
葬って来た怪物の刺突を受けきっていたのである


    ブルー(…ほう?リュートと共に監獄内を逃げ回っていたが…なるほど、見掛け倒しではないということか)
   スライム「(;´・ω・)ぶくー?」パカラッ!パカラッ!

    ブルー「…なんでもない、少し考え事をしてただけだ、それよりも俺を乗せてるんだ前見て走ってくれ」


 回避の術士組と防御の田舎組、避ける事と受け止める事とで違いはあるがどちらもダメージを完全に無効化している事に
違いはなかった…。[ニドヘッグ]は下手に全員を狙うよりも各個撃破を優先すべきと考え、回避よりもガードに専念する
[ヨークランド]組を狙う事に決めたようだ
 赤い四本腕の根元…つまりは肩に当たる部位が開き、そこから目玉が現れる…!両肩の眼球と宙ぶらりんの頭蓋骨から
覗かせる一つ目が怪しく輝いた
 黄光を纏った魔眼をリュートに向けて"凝視"する…ッッッッ!!
945 :今回はここまで 次回は火曜日か水曜日予定 [saga]:2022/10/09(日) 22:53:06.48 ID:Mza6y9UQ0

 死体喰いの百足が魅せたのは[マヒ凝視]だ、先端からぶら下がった人骨の一つ目が彼奴の主眼であるのあらば両肩から
浮き出る眼球は副眼と言えよう、単純に視覚範囲を広げる為だけに非ず…自身の生態系に詳しくない敵が死角を攻めようと
主眼では見えない懐に飛び込んだ者あるいは肩背部目掛けて強襲を仕掛けようと動き出した者に対してのカウンターだ
 初見で肩に[マヒ凝視]を発生させる魔眼が隠されていると知らずに接近した敵対者を絡めとり
身動きが取れなくなった所を逆に討ち取るというのが彼奴の手口なのである


  リュート「ぐぉっ」ガクンッ


 浮かび上がる瞳を直視した為、急速に力が抜け落ち手足が痺れ出す。
思う様に身体が動かなくなった所へ[ニドヘッグ]は身体を撓らせて器用に無数の脚をリュートの方へと向ける

 向けられると同時に百足の細く鋭い脚が胴から飛びぬけた…ッ!

 無数の[針]が機銃の弾丸の如く青年目掛けて放たれた、それを見た弟分が「アニキ!」と叫びながら
腕から発生させた電流を百足と青年の中間点目掛けて撃ちだす



   ドッグォォォォン…!!



  サンダー「アニキ!大丈夫かい!?」

  リュート「お、おう…たひゅかったぜ、しゃんらー」


 麻痺の影響で呂律が回らないながらも礼を述べるリュート、サンダーが習得していた[電撃]が上手いこと相手の[針]に
当たり小規模な爆発を起こして相殺したのであった。


   ニドヘッグ「お…おの…れ ぐぐぐ…クヒャ――――ッ!」ビリビリビリビリ…!!



   ブルー「っ!?こ、これは…」クラッ

   アニー「うるさっ!?」
  スライム「Σ(・ω・;) ぶくっ!?」


 耳を劈く様な音、大気さえも震わす振動が辺りに響き渡る、[ユニコーン]形態のスライムが思わず竦み脚を止め掛け
騎乗中のブルーも眩暈を覚える"音"による攻撃、ここがダクト内部という筒状の空間だからこそ
反響音が増すという点もあるのだろう前線から離れてるアニーでさえ耳を抑えたくなる"悪環境に恵まれた[スクリーム]"が
容赦なく[ヨークランド]組の二人を襲った…!


  リュート「ぐぅぅぅぁ―――――!!」ビリリリリッ!
  サンダー「うわあああああああぁぁぁっ!!」ビリリリッ!


 "音撃波<ソニックウェーブ>"が相手とあっては[ディフレクト]で防ぐことはできない、直撃を受けて尚もまだ立っていられる
タフさ売りのサンダーと流石に膝をついたリュートを見て死を喰らう百足は笑い出す



    ニドヘッグ「 よ わ い ナ ぁ 」ゲヘゲヘゲヘ!

    ニドヘッグ「みな…ごろ…し… うケェーッケッケッ…」



 百足から垂れ下がる頭蓋骨は下卑た笑みを浮かべ、腸の様に長くグロテスクな触手を喉奥から伸ばす
管の様なソレの先端には注射器の針に似た骨が付いており相手の生体エキスを奪い取るモンスターの技能、[生気吸引]に
使われるソレであることが分かった、まだ麻痺で動けぬリュートに狙いを定めてソレを伸ばし…!



  ブルー「汝、現世においてあらゆる束縛から解き放たれん!――[解放のルーン]よ!」フォンッ!フォンッ!



  リュート(おぉっ!身体の痺れが消えた―――動くぞ!恩に着るぜ!)スチャッ、ズジャッ!!!

  ニドヘッグ「ぐぎゃあああああああああ"ああ"あ""あぁ"ぁぁ…!!」ビチャァァ!


 自由を授ける文字の加護を得たリュートは即座に剣を振るい自分目掛けて飛んできた触手を切り飛ばす
赤黒い飛沫を上げて暴れ狂うソレ、切断された先端部位は骨針を何度も床に叩きつけながらビチビチと暴れ…次第に
強い日差しに照られた蚯蚓の様にゆっくりと動かなくなった

946 :次回は火曜日か水曜日予定 [saga]:2022/10/12(水) 18:01:02.52 ID:GiLQJumW0

 切り飛ばされた器官を一瞥して死を喰らう百足は怒りを体現せんと長い胴体を振り回す
地下空洞に住まう[巨獣]や基地の護り手を担っていた[巨人]…野心家が産み出した"力"の結晶[グレートモンド]…etc
蒼き術士一行はこれまでも強者と死闘を繰り広げてきた身だ、その彼らをして見れば目の前の蟲は決して強いとは言えない

 監獄内で追って来る職員と警護ロボ、モンスターの群れといった数の暴力とも違って相手は単一


 激戦に次ぐ激戦を抜けてきた事で最早、[ニドヘッグ]程度なら主戦力のアニーが居なくとも
そこそこに渡り合えるレベルには成長していた…

 この戦闘で注意すべき点は"空間"の問題だろう。

 筒状のダクト内だからこそ[スクリーム]の音響が響き威力も底上げされ、巨大百足と言った風貌の[ニドヘッグ]にとって
程よく自分は動けることが可能でありながらその巨体ゆえに相手の移動を妨げる事ができるという点だ


    ニッドッグ「 ぐ が あ あ あ あ ! …よ、よ"くも、やった"ナぁぁぁ!!」


   ニドヘッグの腕『 』ブォン!
   ニドヘッグの胴・脚『 』ヒュッ!


――――パシィィィン…!

 両肩の眼玉もフル活用して視野を広げ、4腕のランスで逃げる得物を串刺しにしようと[突き]を繰り返し
胴を鞭の様に振り回してダクト内部で幾度と無く叩きつけていく
 時折[百足蹂躙]を織り交ぜて突撃と移動を繰り返し、果てはこの場が筒状である事を利用し壁を、天井をと移動していく


  リュート「うへぇぇぇ…天井をカサカサ言いながら這ってやがるぜ…やっぱデケェ百足ってのは気色悪いなぁ」


 見上げれば赤と黒の長い胴がジグザグに動いて先端の頭蓋骨が自分達を―――地上を見下ろす形で垂れ下がっている
そして骨は口を開き音波攻撃を垂れ流して来る
 器用に天井に張り付いたまま、地表目掛けての[スクリーム]を放出しながら動き回る


   スライム「(;´・ω・)ぶく…!」
   ブルー「チィ!厄介な…爆ぜろ[インプロージョン]!」キュィィィン


 8の字を描く様に首を振り回す逆さ吊りの百足、それに応じる様に"音撃波<ソニックウェーブ>"が照射された床が砕け罅割れる
無茶苦茶な軌道で飛んでくるそれを避ける一角獣の背から振り下ろされない様にしがみ付きながらもブルーは術を唱え
 長い胴体の内の幾つかを消し飛ばす…!弾ける蟲肉片、上がる悲鳴、致命傷を与えられなかった事に彼は舌を打つ


    ブルー「ええぃ!まどろっこしい…あんなにも動き回られては狙いが定まらんかッ!」


   リュート「ブルー狙いさえ定まればなんとかなりそうなのか!?」

    ブルー「…ああ、あのクソ忌々しい一つ目付きを粉微塵に爆破してやれるさ!」

   リュート「OK!サンダー俺をぶん投げろ、その後はお前のアレでワンツーフィニッシュ決めるぜ!」


 術士にそれだけを確認すると糸目の青年は弟分にそう笑いかける、それを見て彼の隣を走っていた気弱な豪鬼は青年を
掴み取柄の剛腕で天井を走る百足目掛けてリュートを投擲するッ!


   サンダー「うおおおおおぉぉぉ!アニキーッ!行ってくれぇぇぇぇぇッ!!」ブンッ


 豪鬼の筋力で天井目掛けて打ち上げられた青年は[刀]を手に[諸手突き]の構えで死を喰らう百足の先端――頭蓋骨が
ぶら下がった胸部へと一直線に飛んで行く


   ニドヘッグ「…く…くルな…!!」


 風を切り飛ぶ男目掛けて両肩の魔眼を開き幾度も瞬く、だが…!解放の加護を受けた彼に[マヒ凝視]は意味を為さない
四つ腕の[突き]を放つもリュートの刺突は突き出された腕ごとへし折りながら胸部へと突き立てられ
 百足は悲鳴をあげて地に落ちる…、背にジリジリと伝わる落下の衝撃、そして一つ目を見開けば天には大きな人影が…!


     サンダー「[グランドヒット]だぁぁぁぁ!!」ゴォォォッ!!


 筋骨隆々の巨体がその身を活かした急降下を仕掛け[ニドヘッグ]に重い一撃を与える、百足は降って来た重量に
呼応するかのように上体を仰け反らせ、掛けられた圧で頭蓋骨から目玉が飛び出しそうになった
 飛び出しそうな一つ目が"最期に"網膜に焼き付けた物は…地にサンダーと言う名の杭で止められた自身に向けて
魔術を唱える蒼い衣を纏った術士の姿であった…っ!
947 :続き来週の火水のどっちか予定 [saga]:2022/10/18(火) 22:31:10.98 ID:OAoGcI+90

 …ジュゥゥゥゥ…!


 宙ぶらりんだった頭部は黒ずみ、焼け崩れては消えていく…それに合わせて長い百足の胴体も蜃気楼の如く消えて行った
かくして監獄内で蠢いていた一匹の蟲は生涯に幕を下ろしたのであった


    ブルー「終わったな」


 一角獣形態から元のゲル状に戻ったスライムが言葉も無く頷いた、…モンスターは倒したモンスターを破片でもいいから
取り込むことで相手の生命情報を取り込み"技"を得とくできるが…どうやらこのゲル状生物も兄貴分を担ぎ上げてる豪鬼も
[ニドヘッグ]というゲテモノを取り込まなかったようだ


 …まぁあの百足を取り込んだ所で大した物は得られんだろう、彼奴が使ってきた[百足蹂躙]と
悪趣味な生涯の記憶くらいしか手に入りそうにないだろうし



               「やーっと!開いたわ!!」ガコンッ


 ブルーが振り返ると螺子回しとスパナを手に汗を拭うアニーの姿がそこにはあった、「やっと開いたか」とだけ呟いて
我先にと彼は目当てのブツが保管されているであろう部屋へと進んでいく


     アニー「あぁっ!ちょっと待ちなさいよっ!もうっ!」タッタッタッ!

    リュート「俺達も行くぞ!サンダーあの穴の中に突っ込め!」
    サンダー「おう!任せてくれよ」ドドドドッ!



―――
――

【双子が旅立って12日目 午後 19時48分 "[ディスペア]" 】


 シュタッ!


 監獄の最奥にその巨石はあった、美術館の展示品か何か様に囲われたソレにはアルファベットのPに似た文字が刻まれ
誰を待つでも無く佇んでいた…天井から巨石を照らす様に射す一筋の光が照明の物か、はたまた天窓か何かの月明かりか…
神秘性を含んだルーンの巨石を目の当たりにしたブルーにとってはどちらでも良い事だった


  ブルー「おぉ…!遂に…やっと、やっと3つ目のルーンを…っ!」フラフラ…



 万感の思いだった。

 祖国を旅立ちまだ2週間と経たぬ間だが、この3つ目のルーンを得る為だけにどれだけ遠い回り道をしてきたことか…っ!



 此処に忍び込む為だけに守銭奴の女に媚び諂い、金策に走ったり、知り合った連中の騒動に巻き込まれたり
胸に色んな感情や悩みを抱えた奴らと出会い、自分の知らぬ文化や世界を知ったり…

 …気づけば、喧しい馬鹿共と騒ぐ時間を悪くないと思い始めてしまったり…。


 そこまで考えて彼は首を横に振った、鞄からルーンの小石を取り出しふらふらと蛍光灯に釣られる羽虫の様に階段を昇り
巨石に手を伸ばし―――――


                フォン…!

  i'⌒  \    
  |  | \ \  
  |  |  / /    フォン…!
  |  レ゙ /     .
  |  /      .
  |  |        
  |  |        
  弋,丿       

  フォン…!


           『解放のルーン』を手に入れた!
948 :続き来週の火曜日か水曜日予定 [saga]:2022/10/25(火) 23:56:42.09 ID:GxthtBYw0

 手にした小石に刻み込まれたルーンを眺める、そこには求めて止まなかったやまなかった解放の象徴があった…。
これで残す巨石巡りもあと一カ所、しかも場所の特定も出来ている―――今、ブルーが成り行き上で下宿しているイタ飯屋
あそこの店主がやたらと[シュライク]の古墳へ「男のロマン」がどうこう言いながら語って来るのだ


 最後の巨石はその古墳に在り。


 遺跡の一種というだけあって中に挑み行方不明者となった者は数知れず、如何なる罠や魔物が潜むか分からぬ以上
最善を考えるのであれば場所の特定はできていても単騎で突っ込むのは得策ではない

 …グラサン店主が行きたいと豪語しているのだ、折角だからもう少しグラディウスの連中を利用させて貰おうではないか




  アニー「ちょっとアンタねぇ…!一人だけ抜け駆けってのはズルいでしょーが!!」タッタッタ…!グイッッ!

  ブルー「く"え"っっ!?」ギューッ



 そこまで考えていた術士を思考の底から引き摺り上げたのは守銭奴の女であった、…仲間を置いて一人で勝手に先行して
巨石に触った事にお怒りの様で術士の法衣についてる霊獣の毛皮を使ったショールを引っ掴みそのまま首を絞められる術士


  リュート「とうちゃ〜く!…おろ?なんだなんだ、ブルーの奴まぁたアニーにシメられてらぁ…おっかねぇ」シュタッ

  サンダー「うひ〜…ブルーさん顔がトマトみたいに赤くなったと思ったら青くなってる…助けた方がいいんじゃ?」


 危うい顔色をし始めた所でギブギブ!と叩いて来る術士を黄金色の髪をした女は解放した、息を切らせながら術士は
首を絞めてきた彼女を睨みつけ「先走ったのは悪かったが少しは加減しろ!」と怒りを表した







  「はっはっはっ!愉快愉快、準備の抜かりなさといい、先程の戦いぶりといい、それにコメディまで見せるとはね」




 パチパチと手拍子と共に称賛の声が上部から浴びせられる、首を天へ向ければ強化硝子の窓越しに道楽所長が此方を
見下ろしているのがわかる、キャスター付きの椅子が二つに監視用なのか古いタイプのパソコンが2台置かれた小部屋から
彼は術士一行のこれまでの動きを見ていたようだ



    クーン「ブルー!おめでとー!」ピョンピョン

  フェイオン「我々もこの部屋から君達の活躍を見て居たぞ、やったな!」



     所長「良い退屈凌ぎになったよ、そこの扉を開けてあげるから出給え」カチッ


 ルーンの小石集めには参加していないクーン等とすっかり御眼鏡に叶ったのか上機嫌な道楽所長に今のやり取りを見られ
ムスッとした顔で退室する術士とそれに続く面々、かくして[ディスペア]潜入は幕を閉じたのであった。

―――
――


 文字の刻まれた小石を3つ、大事そうに眺めながら彼は[クーロン]の繁華街を歩いていく
監獄から帰ってきた一行は発着場で各々に解散、ブルーはアニーと共にイタ飯屋への帰路に着いていた


 アニー「ず〜っと石なんかを眺めちゃって気持ち悪いわねぇ…」

 ブルー「フン、なんとでも言え、俺にとってはルージュと対峙する際の力に近づけた証なのだ」

 アニー「はいはい、前エミリアが話してた決着つけたい弟さんね…子供の喧嘩みたいなことに態々資質集めなんて」ヤレヤレ



 カランカラン…!

 未だ双子で殺し合いをするという真実を知らぬアニーは店の扉を開けて「ただいまー」と一声掛ける
休業中の店内にはまだ奥に置き場所が無いのか大量の武器が置かれていた…ジョーカーとの決戦に向けての物資だ
これだけのブツをアジトに持ち込んで来たということはいよいよ以て大規模作戦も間近といった所なのだろう
949 :続き来週の火曜日か水曜日予定 [saga]:2022/11/02(水) 02:08:46.97 ID:WxhF7TZs0

 搬送されていく物資を眺めながら「随分と物々しいな」と術士の青年は独り言ちる、そこへ通り掛った赤紫色の髪をした
女性が「今追っている巨大な敵との決戦だからね」と声を掛けた


  ライザ「これまでも色んな奴を相手取って来たけど…ジョーカーはそんな連中とは一線を画するわ」


  ライザ「仮面の下の素顔は勿論の事、正体に関連する尻尾を掴ませずそれでいて
         様々な犯罪組織や政界の大物と接触を図れるコネクションや情報量…用意の周到さ」


  ライザ「他のグラディウス支部は当然として雇えるのなら外部の手を借りてでも戦力を集めて総力戦で行きたいわ」


 と、告げて蒼の術士をジッと見てくるライザの視線からそそくさと逃げる様にブルーは割り当てられた自室へと向かう
修練には丁度良いのかもしれんが監獄帰りで疲れてる今そういう話はパスだ
 さっさとシャワーを浴びて布団の上に倒れ込んでしまいたいという気持ちが大きかった


 …残りの巨石巡りもあと1カ所…、ルーファス等を戦力として組み込んだパーティー編成で最後の一つに挑みたい所だが
御覧の通りジョーカー戦に向けた準備に加え(決着がつくまでは午後4時から10時までの短期経営だが)店の経営もある

 グラディウス組を同伴しての[シュライク]までの遠征は少し時間を要する…暫し暇になるだろうな




 …なに?グラディウス組が駄目ならリュートとサンダーを連れて行けばいいじゃない、だって?



 今日の[ディスペア]での教訓である、戦力として頼れはするが変な罠踏んだり余計な仕事も増やすからリカバリーが要る
指輪集め御一行はもう次の指輪を求めて何処かに旅立った事だろうし…
 術士は歩きながらそう言えば次にクーン達が何処に行くか訊いていなかったな…と考えもしたが
尤も旅の目的も違うし俺とはもう会う事もあるまいと、そこで思考を止めた


 ガチャッ


 自室に戻った術士は背負っていた荷物を降ろして衣服棚からバスタオルとこっちでの生活に合わせた寝間着に手を伸ばす
初めの頃は魔法王国の一般的な服と違う意匠に戸惑いもあったが随分とラフな服装にも慣れたものだと思える

 ふと、手を伸ばした彼の眼には棚の中に大事そうにあ保管していた一枚のディスクが留まった
3日前にレオナルドから渡されたデータの入った円盤だ


  ブルー「…そういえば、これも暇があれば[IRPO]に渡してくれと頼まれていたな」


 勝利を冠する印を取得できるのはグラディウスの最終準備段階が終わった頃だ…
ともすれば近々届けてやるのも吝かではない

 衣服とタオルを手にした彼はぼんやりとそう考えながら棚を閉じ、ゆっくりと蒼の法衣を脱いだ

―――
――


     [ディスペア]からの帰還からそのまま就寝して…さらに1日、アニーからいつも通りの稽古を受け

  裏通りにあったpzkwXの店から譲り受けた大量の重火器と各地から仕入れてきたトラップの類を運ぶ手伝いをし

   ……偶にウザ絡みしてきたリュートをモップで撃退なんかもして丸一日を過ごし



そして祖国を発ってから14日目の正午…

【双子が旅立って14日目 午後12時00分 [IRPO] 】



  ブルー「なんでお前等までついて来ることになったんだか…」

 リュート「いやぁ〜お前が警察に行くなんて何事かと思ったし〜?聞けばレオナルドさんの頼みらしいじゃん?」
 サンダー「アニキが世話になったって人の頼み事ならオレも手伝いたいよ!」

  アニー「ルーファスの奴が何かこれからアンタと会う刑事は顔が利くからモンド潰しの土台を今から築けってさ」
 スライム「(`・ω・´)ぶくっ!」フンス


 機械博士の頼みでモンドが関わっているからと田舎出身の二人が駆けつけ、金髪の女は上司が"ジョーカーを倒した後で"
遠からぬ未来でグラディウスが標的にするであろうとモンドへの一手として布石を巻く為に派遣した、スライムは説明不要
950 :今回2レス 次回来週の火曜日か水曜日予定 [saga]:2022/11/09(水) 10:46:30.62 ID:UAPF01160

 理由はともあれ各々がブルーの用事に付き合うらしい、彼はそんな仲間達と共に[IRPO]の受付へと向かい
桃色髪に白い帽子をちょこんと乗せた受付嬢に声を掛ける


  [IRPO]受付嬢「一般の方はご遠慮下さい。」

     ブルー「ヒューズ捜査官、…ロスター捜査官に取り次いでもらいたい。」


 良くも悪くも組織内で有名な不良警官のコードネームではない、本名を告げられて受付嬢は少し考える。
捜査官は基本的に自身の名を明かさない物で、それを知っているとなれば信頼ある人物、もしくは信頼に足る者から紹介…


  [IRPO]受付嬢「失礼ですが、ご用件をお伺いしてもよろしいでしょう?」

     ブルー「とある人物から彼にこのディスクを渡して欲しいと頼まれたのだ。」


  [IRPO]受付嬢「…。わかりました、では応接室の方へどうぞ。」

―――
――


 通された部屋は一面に赤糸で紡いだ絨毯が敷かれた会議室の様な間取りで中央に大机が置いてあり、それを取り囲む様に
茶色い革ソファーが八脚程置かれていた、通された一行は件の刑事が来るまでの間、椅子に腰かけ談笑に花を咲かせたり
キョロキョロと応接室の内装を落ち着かなさそうに眺めたり、出された茶を啜り頬杖を突いたり…三者三様に待ちぼうけた

 どれ程、待ったことだろうか?ブルーが空っぽになった湯飲みの底をぼんやりと眺めていた時、陽気な声と共に彼は来た



  ヒューズ「いやー、待たせたね。なんかウチにヤバい案件のタレコミに来たんだって?………んっ?」ピタッ



 ロスター捜査官は術士の顔を見て、歩みを止めた。時を同じくしてブルーも彼の顔を見て固まった。




       - ブルー『自己紹介がまだだったな、ブルーだ』 -

    - ヒューズ『俺はヒューズ、見ての通り[IRPO]所属の刑事だ、そっちの小僧はレッドってんだ』 -





  ヒューズ「あっ、アンタはあの時キグナスに乗ってた術士じゃないか!」

   ブルー「そういうお前は…あの気に喰わん名前の奴と一緒に居た…!!
               そうかヒューズという名、何処かで聞いた様な名だと思ったが…お前の事だったのか」


  リュート「えっ!?なんだブルー、お前さんこの人と知り合いだったのか?上京したての頃に俺もバーガー屋で…」



   アニー「……なんていうか、世間ってかなり狭いわね。会う人が大体誰かと誰かの知り合いじゃないの…」ハァ…



   アニー「あー、知り合いなら話は早いわね、ブルーが受付の子に用件を伝えた後であたしも付け加えたけどさ」

   アニー「あたしは"ルーファス"のお使いで派遣されたアニーよ、よろしく」



  ヒューズ「ほぉ〜?ルーファスん所の…」ジーッ


   アニー「?」

  アニーの胸『 』ボインッ!



  ヒューズ「…なるほどなぁ、ルーファスの奴め良い部下持ってるじゃねぇか〜!」デヘヘ


―――
――
951 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/11/09(水) 10:47:20.52 ID:UAPF01160



 ヒューズ「……えー、つまりアンタ等はモンドの野郎が裏でコソコソやってる悪事の証拠データを持ってきたと」ヒリヒリ



 頬っぺたに出来た真っ赤な紅葉をまだ抑えながら、ヒューズは受けた説明を確認するように問う。
先程まで鼻の下を伸ばしながらアニーの胸を凝視していたのとは打って代わり真面目な顔で彼は言葉を続ける…
平手打ちの乾いた音が反響するくらいには程良い間取りの会議室でジロリと一行を一瞥しながら。


 ヒューズ「事情は分かった。だがね、ハイそうですかじゃあウチの方で見ますねと直ぐにはならんのだよ。」

  アニー「は?なんでよ…」


 ヒューズ「仕事柄でね、色んな所から恨みを買っちまうんだよウチは。」

 ヒューズ「分かるかい?レオナルド博士からの紹介っつーことで一定の信頼はあるけどな
          お巡りさんトコのPCをハッキングされたりウイルスを送られたりとかそーいうのあんだわ」


 ヒューズ「お役所特有のクソめんどくせぇ手続きだの申請だのと色々必要なんだよ…。」ポリポリ


 ヒューズ「持ち込まれた"ネタ"もネタで特級にやべぇ奴だし、これ開示するにあたってアンタ等の素性も問題になる」



 ヒューズ「何よりパトロールの活動に協力してもらわにゃならんのよ、規則なんでね」


 "規則だから"彼は術士にそう言い切った。


 [IRPO]では"盾のカード"を欲する旅人が後を絶たず、資質の為にカードを集める者と同行して任務をこなし
その人物の人間性、器量、力を得た後でそれをどのように使いこなすか…悪事に転用しようとする傾向があるのか等を
見定めるという一環がある。



 ……生憎と"ヒューズはブルーという人物の人柄を直接その目で見ていない"



 キグナス号で確かに双子の弟のルージュとは出会い、直接言葉を交わし…彼が温厚で正義感溢れる人物であると理解した
だが対して僅かな時間とはいえ邂逅のあったブルーは紅き術士とは正反対に、「自分が気に入らないから名前だから」と
そんな理由で手を組む事を否定し、更に船が動かなければ自分が困ると…

 要するに言ってしまえば自己中心的な性格と、あの時に見受けられた。


 自分さえ良ければ周りがどうなろうと構わない、そういうタイプの人間は自分の利益の為に殺人や盗みなど犯罪にも走る


 …無論、それは極一部の例であって皆が皆そうではないのだ。だが彼が絶対的にそうでないと言い切れる保証も無く
紹介があったから流石に無いと思いたいがブルーが実はモンドか[IRPO]に敵対的な誰某に金で雇われたスパイの様な存在で
レオナルドからのディスクと称して[IRPO]にとって不都合なスパイウェアにすり替えて此処に来たという線もゼロではない


 刑事なんて職業やってれば人を疑うのは間違っちゃいない。故に"盾のカード"譲渡を含む重要案件が転がり込んだ場合は
馬鹿馬鹿しい話だと思うが、パトロールの任務活動に協力するという規則が付いて回るのであった



       ブルー「わかった。何をすればいい?」

      ヒューズ「物分かりがいいな。」






      ヒューズ「[ムスペルニブル]に行くぞ。」ニィ



 パトロールの活動を協力してもらう、その一環として彼は兼ねてより組織が抱えている"人材不足"という案件の解決と
ついでに上司に頼まれていた山頂に咲く黄色い花の採取をしようと考えたのであった。


  ヒューズ(…にしても、本当にそっくりだぜ…流石は双子ってトコか?ルージュの奴とは性格も雰囲気も違うが)
952 :次回来週か早ければ今週中にもう一回更新 [saga]:2022/11/16(水) 19:20:45.41 ID:39lyyz6t0
―――
――


【双子が旅立って14日目 午後16時26分 [ムスペルニブル] 】


―――――ヒュォォォォォ…


 氷炎の地と称される"惑星<リージョン>"…大地は永久凍土に覆われ吹き荒ぶ風が何者をも凍てつかせる風を呼び
広がる空は煉獄という単語を思い起こさせるほどに燃え盛る、険しい環境の土地であった

 間違っても観光旅行で来たくない場所No.1に輝く地獄みたいな"惑星<リージョン>"がここ[ムスペルニブル]なのだ

 そんな辺鄙な場所なので当然の様に定期船は全くと言っていい程無い。あの[クーロン]からでさえ日に一便どころか
1週間で一度出航するかどうか怪しい土地なのである

 しかも、険しい土地ゆえに此処にまともなシップ発着場を建設・運営するというのはほぼ不可能で
地獄に居を構える【とある御方の宮殿】に直接寄港するという形式を取っている…その宮殿の主というのが妖魔の君という
相当地位の高い御人なのだが、…人間社会と交友を持つ妖魔の例に漏れず相当な変わり者で(比較的に)他種族に対しても
友好的に接してくれる器量を持った愉快な花火職人でもある


 常に娯楽に飢えてるから自宅の一部を改築して星の海を越えて船が寄港できる乗り場を玄関にわざわざ用意して"指輪"を
求める冒険家、あるいは"術に関する探究の旅"をする旅人、…模範的な解答と真逆を行く"おもしれー奴"と呼べる風来坊等
 そんな連中が何時の日か自分を尋ねにやってきてくれるだろうことを心待ちにして宮殿の主は発着場を政府に提供した




 さて、長々と語ったがつまり何が言いたいかというとだな…  山 中 に 向 か う 船 が 無 ぇ っ!!




 一般的な公的機関の"宇宙船<リージョン・シップ>"は先も述べた通り【ヴァジュイール宮殿】直通ルートしか存在せず
間違っても途中下船は出来ない、指輪の君と畏れられるヴァジュイール様の御力で炎上する空に亀裂を作り
機体が凍結したり熔解しない様ちゃんと結界が張られた進路を進むのが普通であって恐ろしいモンスターが生息する山中に
間違っても直接降りるというのは普通に有り得ない

 特殊任務の為に耐久性と渡航能力に秀でた[IRPO]専用のパトカーに酷似した船でも業火の空の小さな綻びを潜り
唯一降りれそうな地点に降り立ってから徒歩で山頂まで目指すしかないのだ…間違ってもシップで直接山頂まで乗りつけて
目当ての黄色い花を持ち帰るだとかいう反則技はできない



   アニー「へっぷしぃっ!!」

   アニー「うううぅぅぅ…さ、さぶぅっ!!!」ブルブル…


   ブルー「…当たり前だろう、そんな薄着同然の恰好で来ればそうなる馬鹿か貴様は」


   アニー「あ、あ、あ、あアンタはいいわよっ!そんな首元に温かそうな毛皮巻いちゃってさぁぁぁ!」ガタガタ


   サンダー「まぁまぁ…!アニーさん落ち着いて、ほら?パトカーで上空に居た時は蒸し風呂みたいに暑かったよ」

   リュート「そうそう、周りの空気が燃えてて車内も冷房効かせてんのに暑くて、厚着のブルー馬鹿にしてただろ〜」


   アニー「ずずっ…うぅっ、そ、そうだけどさ…確かにアンタ見てて暑苦しいわねぇって汗だくなの笑ったけどさぁ」


   ブルー「…はぁ、仕方ない羽織っている上着を貸してやるか、リュートが」


   リュート「えっ、オレェ?」


    アニー「りゅ、リュート…そのヨーク綿の服貸しなさいよ〜」ガシッ、グググッ!
   リュート「あっ、ちょ!まずいって!!こんなトコで脱がさないで〜!…ぎゃああ寒いぃぃぃ!!雪が!雪がぁ!」


 極寒の大地に脚を降ろした術士一行は来て早々に騒いでいた、青年の上着をはぎ取ろうとする女と、それを必死に
引っぺがそうする青年、そんな二人を見てオロオロとする豪鬼とゲル状生物…一人だけ蒼の法衣とマフラー代わりにした
霊獣の毛皮ショールでぬくぬくと暖を取り目の前の諍いから目を背ける術士


   ヒューズ「…あー、本当におたくらと一緒で大丈夫かね、こりゃ…」


 この纏まりの無いパーティーに一抹の不安と危機感を覚えるパトロール隊員がその場に立ち尽くすのであった
953 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/11/17(木) 02:43:18.45 ID:VnLHUDWi0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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954 :次来週の火、水予定 [saga]:2022/11/23(水) 23:40:39.01 ID:Hx58Wf5U0

 凍土の山を昇りながら術士は捜査官に尋ねる、この山の山頂に咲く黄色い花を採取する任務の手助けをするというのは
説明されて分かったが、もう一方の[IRPO]の人材難を解決する手立てにも手を貸す、というのはどういうことなのか


 ヒューズ「よく聞いてくれたな、昔ちょいとばかりに小耳に挟んだ話さ。」

 ヒューズ「この山の何処かに[氷漬けにされた朱雀]がいるんだよ」


 険しい環境の山である為、ここには最上位モンスターの[朱雀]が生息しているわけなのだが…どういうワケだか
一体だけ山の中腹に氷漬けにされた[朱雀]が居るのだ

 指輪の君が居を構える山だ、そこそこに妖魔が出没するらしく…女性型の妖魔が顔馴染の相棒と共に
悪戯で凍らせて封印しただとか噂されているそうな
 とどのつまり、この捜査官は件の神鳥を助けて恩を売り、[IRPO]の隊員として迎え入れようという魂胆なのだ



  ヒューズ「――――つーわけで、優しくてナイスガイな俺が[朱雀]を助けて勧誘しようって事よ」

   ブルー「…そう上手くいくものなのか?助けた瞬間に襲われる可能性もあるのではないのか?」


  ヒューズ「なぁに、その心配はないさ。[朱雀]ってのは高位のモンスターなだけあって受けた恩義は忘れねぇんだ」

  ヒューズ「基本的に話の分かる種だから、自分から相手の縄張りに土足で踏み入るとか無礼が無ければ襲って来ない」



 とりあえずは神鳥を悪戯感覚で氷漬けにした雌型妖魔を見つけて適当にしばき倒して、救援に来る相方の[霜の巨人]も
ボコボコにして氷の呪いを解呪するように交渉を持ちかけるという主旨を彼は語った
 そう上手く話が行くだろうかと疑問に思いながらもブルーは彼の隣を歩いて山中を進んでいく…そして道中にて



  リュート「へっっぶしぃぃ!!!」ブルッ

  リュート「うぅぅぅ…ささささ、さみぃ!!アニーの上着取られちまったぜぃぃ…!」ガタガタ


  サンダー「アニキ…しっかり!…何処か暖を取れそうな所は…」キョロキョロ

  サンダー「んん?」ピタッ




 山道にある謎の洞穴『 』




  サンダー「あ、あれだ!丁度良い所に洞穴がある!あそこで焚き火でも起こせば温まれるぞ、オイラ見てくる!」ダッ


   ブルー「!? お、おい!勝手に先行するな馬鹿!」

  サンダー「大丈夫だよー!ちょっと様子見てくるだけだからー!それにアニキだけじゃなくて皆も冷えてるからー!」

   ブルー「違うッ!そういう問題ではな―――」


 険しい雪と寒さに覆われたし土地ならばビバークするには最適な洞穴で暖を取るというのは選択としては間違ってない
ただしその際には注意点があるのだ…冬山の登山客が遭難した際に緊急避難先として洞穴に逃げ込むのはよくあるがそこに
冬眠中のクマが居て、春先までの保存食第一号になってしまうというケースもあり得るのだ


 こんな険しい環境下の"惑星<リージョン>"ならば洞穴に潜んでいるのは熊どころの騒ぎではない…!!



        サンダー「  ウ  ワ  ア  ァ  ー ! ! 」



  リュート「サンダー!?」ダッ!!
   アニー「あっ、リュート待ちなさいよ!」

   ブルー「ええぃッ…遅かったか!」


 舌を打ちながら術士と隣にいたパトロール隊員がサンダーの身を案じて次々と芋づる式に仲間が入って行く洞穴へと足を
踏み入れた、そこで見た物は洞穴の奥で輝きを放つ金銀財宝の山とそれを護る番人か何かの様に咆哮をあげる2頭…!
 燃え盛る火を連想させる[赤竜]とそれよりも一回り大きく、黒々とした鱗を持つ[黒竜]であった…ッッ!!
955 :色々忙しくて更新できず すまなかった 書き溜め4レス投下 [saga]:2023/02/02(木) 00:19:16.21 ID:RogDpt0n0

 鬼が出るか蛇が出るか。


 答えは竜が出た。


 洞穴の中に潜む2頭のドラゴン…剥き出しの牙を覗かせながら炎の吐息を漏らす[赤竜]と、その竜が蜥蜴の赤ちゃんに
思えてくるくらいには凶悪な[黒竜]が塒に飛び込んで来た保存食を睨みつける

 赤いのは兎も角、黒い方は大問題だ…


 希少種のドラゴンでありあらゆる攻撃を防ぎきる頑丈な鱗と皮膚、防御面も然ることながら攻撃性も相当に高い
[タイタスウェイブ]を始めとして一撃で命を刈り取る[デスグリップ]や[石化ガス]のブレスを吐き出し敵対者を石に変える


  リュート「さ、サンダー…!!」


 弦楽器を背負った青年が洞窟に踏み入れ見た物は二頭の竜…の眼前にて恐怖の表情のまま文字通り石化した弟分の姿…!
恐らく[黒竜]の吐き出したブレスによって変えられてしまったのだろう




  ブルー(くっ、これは不味いぞ…)




 自分達は[グレートモンド]を倒した。

 あの時とは人数も戦力も大分違うがそれでも実力には確かな自信がある
ドラゴンを相手取ったとしても連携を組んで攻め続ければ勝ち筋は十分に見えはするのだ…。然しながら問題がある


 "このパーティーは【状態異常:石化】を治せない"という点だ。


 スライムが一角獣の姿に成ることで使える[マジカルヒール]を以てしても石化だけは治せないッ!
術の力で治す事ができるがその術がよりにもよって[印術]の反術である[秘術]なのだ
 印術を選考したブルーには[杯]を唱える事はできない、従って石化を解くには竜を倒すことで解除するか
デカい石像と化したサンダーを引き摺って一時退却して医療機関にでも連れてくかの二択


 …長期戦は不味い、―――1人、また1人と石化すればそれだけ戦力は減る、石化解除が不可能ならばそのまま全滅もある


  ブルー「汝、現世においてあらゆる束縛から解き放たれん!――[解放のルーン]よ!」フォンッ!フォンッ!


 そこまで考えて咄嗟に彼は印を切った、この戦闘で懸念すべきは人数の欠員が出る事、欠員を出す一番の要素は石化だ
ならばルーンの加護を付与して予防線を張るべきだ、勿論最優先は我が身である
 自分が真っ先に落ちれば[解放のルーン]を使える術者が居なくなるのだから。


         「グオオオオォォォォン!!」


 竜共が吼える、赤は雄々しく叫びをあげた後に息を吸い込み体内から熱を放出する準備を、黒は呪われし吐息を溜め込み
吐き出された[火炎]と[石化ガス]の二種が交差するように吹き出される


   ヒューズ「やべぇっ!!おい!リュート恨むんじゃねぇぞ!!」ゲシッ!


 危機を察知した不良刑事はすぐさま前に飛び出し"サンダーの石像に蹴りを放った"…ッ![キック]を見舞われた豪鬼像は
ずしんっ!と音を立てて倒れる…。戦闘面においては無数の修羅場を潜り抜けてきたヒューズだからこその判断
 彼は石化中のサンダーを盾にするという機転を利かせたのである

 [黒竜]程の強きドラゴンの力で石化させられたのだ、目の前の二頭と自分達の猛攻がぶち当たったとしても砕けない
背丈も横幅も人の倍はあるサンダーであれば遮蔽物の無いこの洞窟内に置いて丁度いい土嚢代わりになる

 真っ赤な猛火と黒々としたガスが噴き出され、倒したサンダー像の懐に滑り込んで来た捜査官やリュート、スライムが
息を止めてガスを吸わぬ様に耐え忍ぶ…


  リュート「あちちっ…!!背中に当たってるサンダーが焼けてるせいで…このままじゃ石焼芋になっちまうぜっ!」

  ヒューズ「直火焼きか彫像になるよかマシだろ!!――それよりブルーとアニーはどうなった!?アイツらいねぇぞ」


 ブレス攻撃が止まり、彼らが武器を手にサンダー像の影から様子を伺う…如何にサンダーが大柄でも全員が
隠れられる体格ではなく更に言えば距離も離れていた、比較的に像から近かった3名は間に合ったがあの位置では…!
956 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2023/02/02(木) 00:21:06.23 ID:RogDpt0n0


 「ッ〜…ッッ!」



  リュート「ハッ!その声は…ブルー!大丈夫だったのか!?」バッ



 声の方を振り向けば法衣が所々焼け焦げ、火傷に歯を食いしばる術士の姿がそこにあった
肩で息を切らせながらも剣を手に眼前の竜を睨みつけるブルーにリュートが駆け寄る


  リュート「アニーはどうしたんだ!?」

   ブルー「…」フイッ


 答えず、ただ視線を向こうへと向ける…その眼差しの先を追えば、そこには…


 リュート「うっ…!」ゴクリッ




  石化したアニー『 』




 利き手に[刀]を握りしめながらもう片方の手で口元を覆い、咽返している彼女がそのままの姿で石になり果てていた
間違いなくこのパーティー内で1、2を争う最高の物理アタッカーがこの戦線から脱落したことを意味する…ッ!

 高い"STR<筋力>"から繰り出される多様な技を使うサンダー、同じく高火力の剣技を放てるアニー


 直実にこちらの人員は削られている…っ!もう4人しかいない、5人連携技も望めぬ状態になってしまった…ッ!



  リュート「…こいつぁ、ひょっとしなくても不味い展開ってヤツか?」タラーッ

   ブルー「見りゃ分かるだろうが阿呆め…ああなりたく無ければそこでジッとしてろ今[解放のルーン]を掛ける」



  ヒューズ「待ってくれ、先に俺に掛けてくれや……そうすりゃ全員分の時間くらい稼いでやるぜ」



 弦楽器の青年に加護を付与しようと印を切る直前でロスター捜査官が声を掛けた、「やれる保証はあるんだろうな?」と
尋ねる術士に対して「ったりめーだろ」と彼は返す…。蒼き術士はジャケットの男へと印を切り出したのであった…

―――
――



「グルルルル…」
「グゴォッ」


 二頭の竜は自分達の吐き出したブレスで燃え上がる炎の中をジッと見つめていた。赤々とした熱のカーテンの向こう側で
蠢く人影が数体…最初に縄張りに飛び込んで来た[オーガ]の石像を巧い事利用して餌達が難を逃れたのは彼らも理解した
 燃える幕の向こう側に後何匹無事な者が居るのかまでは生憎と分からない

 だが間もなく吐き出した炎は完全に消える、そこからは的確に1匹ずつ仕留めて行けばいいだけの話と考えた…


 弱肉強食の世界に置いて上位に立つ彼らは焦らず疲弊しきった餌達の姿を見てから次の一手を掛ければいいのだと。
所詮は群れねば何も成せぬ弱者の集まりであろうと


―――――だからこそ一人の男が炎の壁を突き破って突撃してきた事に驚いた



 ヒューズ「――るァ!!喰らいやがれクソ蜥蜴が!」


 ピーカブースタイルのガード姿勢で炎を突っ切って来た黒ジャケットの男はそのまま拳を振るい、[赤竜]の下顎を殴り
アッパーをかましたと思えばそのまま相手を掴んで何発も何発もひたすら殴打する[どつきまわす]行為に出た…ッ!
957 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2023/02/02(木) 00:22:32.38 ID:RogDpt0n0

 紅き竜は角を掴まれそのままひたすらに殴られる、[黒竜]は同胞に襲い掛かる矮小な生物を硬化させてやりたかったが
今[石化ガス]を打ち込めば[赤竜]をも巻き添えにしてしまうと改めて鋭い爪で人間のみを弾こうと試みた


 ヒューズ「ぐあっッ」ザシュッ、ドサッ!

「グ、グゴオオオオオオオオオオオオオォォォォ!!」


 ワナワナと肩を震わせた[赤竜]が怒声を上げてヒューズを尾で岩壁に叩きつけ、先程の再現の様に黒の竜と
呼吸を合わせた2種のブレスを浴びせる、[解放のルーン]のお陰で彼はその身が石になってしまうことは無いが
人体に有害なガスと燃え盛る[火炎]を同時に受ける


 二頭がブレスを吐き終えた頃には、焼け爛れた男が石壁から力なくボタリと地に落ちていく…


"これでまた1匹数を減らしてやった"


 竜達はそう内心で嗤い、次なる標的を求めてヒューズから視線を逸らそうとした…その矢先―――



  ――――BANNG! カンカンカンッ!




「グギャオッ!?」ブシャッ


 [赤竜]の眼球が弾けとんだ、銃声と共に岩窟内を跳ねまわった[跳弾]が竜の急所を…眼球という鍛え様の無い一点を
正確無比にぶち抜いたのであるッ!彼らは直ぐに銃声のなった方を見る…





  ヒューズ「スゥーッ、ハァーッ スゥーッ、ハァーッ…ったく、今のでこの俺様を殺れたとでも思ったか?大間違いだバーカ!」




 先程、"致命傷を負わせたと確信した相手が何事も無かったかのように起き上がり"、銃を此方に向けていた…ッ!



  ヒューズ「昔取った杵柄って奴さ…持ってて良かった[克己]ってなァ!不死身のヒューズ様を甘く見んじゃねーぞ!」


 その昔、ルーファスと共に[京]で[心術]の資質を得る修行をした彼だからこそ使える[克己]…ッ!どれだけ死に掛け様と
精神を一点集中させて体内の気で完全回復を可能とする術…っ!
 仕事柄、[IRPO]隊員にとって命の危機なんてものは日常のようなモノだ、特に鉄砲玉の様な性格の彼は尚の事
致命傷を負っても直ぐに復帰できる自己回復能力と彼はこれ以上ない程に相性が良かった


  リュート「ぬおおおおりゃあああああぁぁぁぁ―――ッ!」
  スライム「(`・ω・´)ぶくぶくぶー」パカラッ!パカラッ!


「!?」



            4連携 [ 諸 手 跳 弾 エ ナ ジ ー 角 ]



 リュートが一角獣形態をとったスライムに騎乗して丁度掻き消える寸前の炎の中から現れた、一角獣は身をブンと振るい
乗っていたリュートを射出、放り出された勢いの儘…柄を両手でしっかりと握りしめた[諸手突き]の姿勢のリュートが
[赤竜]の腹部にダーツの矢が如く突き刺さり、それに少し遅れてもう片方の眼球にヒューズが放った[跳弾]がぶち当たる

 腹部と眼球の痛みに竜は身体を大きく仰け反らせ泣き叫ぶ様に天井へ首を向けて哭く


 紅き竜が悲鳴をあげた刹那、サンダー像の影から飛んできた魔術師の思念の鎖が[赤竜]の首に絡みつく
その様は西部劇に登場するカウボーイが牛の首に投げ縄でも引っ掛けたようだった…、術力で構築された念の鎖は
天井を見上げる様にあげられていた竜の首をそのまま念力で下方に向かって勢いよく引っ張る

 身体を大きく仰け反らせていた[赤竜]の首は大地に向かって引っ張られるのだから当然、前のめりに倒れ込む…そして
倒れ込むその先には、リュートを投げ飛ばした後すぐに滑り込んで来た一角獣の立派な[角]が…ッ!!

958 :今回ここまで 次回早ければ土日 遅くとも火水 [saga]:2023/02/02(木) 00:25:26.35 ID:RogDpt0n0

―――ブヂャッッッ!!


「グギャッ!! ギャッ …ッッ ッ"―――!!」


 前のめりに崩れ落ちた[赤竜]の顎下から脳天まで、そこには[ユニコーン]の[角]が深々と刺さっていた。
さしもの竜と言えど脳髄まで貫通されては生きてはいない

 一連の流れの下、彼らは竜を一体討ち倒したのであった


「ッッ!! グ、グオオオオオオオオォォォォッッ!!」


 残された[黒竜]は同胞を斃した者を石に変えようと[石化ガス]を吐き出す、だが…もう遅い!




 ブルー「無駄だ…貴様らはヒューズに時間を掛け過ぎたな、もう全員に[解放のルーン]を掛け終えている…」コツッ、コツッ

 ブルー「[デスグリップ]や[タイタスウェイブ]と脅威はあるが…最大の危険因子を排した今、貴様は恐るに足りん」



―――[バカラ]の地下で[巨獣]との激戦、[ワカツ]における強敵達との死闘、カバレロ一味の秘蔵の殲滅兵器…etc


 この面々は決して弱くはないのだ、何なら国家転覆を企む野心家を倒してリージョン界を一回分くらい救ってるレベルだ
ただ【石化】という状態異常にどうしようもなく手も足も出せなくて危うく全滅仕掛けたというだけの話


 この山に住む[黒竜]と[赤竜]は一般的な個体よりも間違いなく強い、険しい自然環境がそうさせたと言えよう
そんな彼らの想定外は彼らよりも戦闘能力が上の者達がやって来たという事だ
 これが1対1のタイマンなら単純な個としての戦闘能力とお得意の石化なんて搦め手で完勝だっただろうが
搦め手が通用しなくなって連携を取られたとあってはこうなるのも道理だったと


「グッ、グゴッ…!」


 ジリッ…ジリジリッ…!

 先程まで餌だと認識していた連中がにじり寄って来る、自然界のヒエラルキーに置いて絶対に位置していた竜は今
初めて喰われる立場という物を思い知るのであった……ッッ!!

―――
――




  アニー「……んっ」パチッ

  サンダー「ああっ、アニーさん!!良かった目を覚ましたんだね!」


  ヒューズ「った〜く、ちったぁ反省しろよサンダー」

  サンダー「うぅ、ごめんよぅ…オレ、アニキや皆の役に立つと思って…」シュン


 黄金色の髪を持つ女は焚き火の音で目を覚ました、自分はどうなったのだろうか?
確か黒い竜の吐き出したガスを吸ってしまってそこから意識が無い…。


   アニー「……あー、まだ頭がボーっとする…けど、こうして無事って事は勝ったってことよね」

   ブルー「まぁな、ほらよ」スッ


 身体中がまだ硬くてぼんやりとしたまま額に手を当てて独り言ちるアニーの声に答えたのは湯気立ち昇るカップを持った
蒼い法衣の魔術師であった…手渡された陶器の中の泥の様な黒さとカフェインの香りは少しだけ彼女の意識を覚醒させた


   アニー「あたし等の持ってきた豆じゃないね、コレ…香りが全然違うし」ズズズッ…

   ブルー「…奥の先人達の私物だ、ギリギリ消費期限切れじゃないから安心しろ」ズズズッ


 女の問いに対してコーヒーを啜りながら答えた男の表情が苦々しいモノだったのはブラックだからというだけじゃない
宇宙旅行中の事故で遭難した者、[ムスペルニブル]にやってきた密猟者…宝探しに来た盗賊、先人達も寒さから逃れる為に
この洞穴に逃げて来て…そして喰われたのだろうというのが"奥の様子"を見てきたヒューズの見解だ
959 :4レス投下 次回火曜水曜 どちらか予定 [saga]:2023/02/04(土) 22:56:50.57 ID:A+l32mxj0


 アニー「うへぇ…目覚め早々でにっっがい話ねぇ〜…」ズズズッ


 お砂糖もミルクも無いブラックコーヒーを啜りながら"奥に居るであろう変わり果てた先人達"の姿を想像してしまう
尚、彼らの持ち物と思われる[オクトパスボード]や[ロードスター]、[ゴールデンフリース]などの希少品と金品もあるとか
所有者は死後相当な時間が経過しており身元の断定も難しいパスポートも大半が焼けてる、この場合は[IRPO]隊員の指示に
従って拾い物をどうするか…という話だが、どうやら彼の特権で奥のモノは術士一行に譲渡するらしい。

 任務に付き合わせたお駄賃半分、もう半分は今後も険しい山道になるのだからコレで装備を整えろ、という事らしい。

 おっかない蜥蜴を2匹ぶちのめしたお陰で身元不明の遺体も船に乗せ帰って検死に回せるし供養もできる
バチは当たらんだろうさ、と不良刑事は手をひらひらさせながら言った


  ブルー「もうしばらくは、此処で暖を取るぞ…身体が十分に温まったら出発だ」

  アニー「はいはい」ズズズッ


―――
――




【双子が旅立って14日目 午後19時51分 [ムスペルニブル] 】


 洞穴を出立して山道を歩き始める、空を見上げ瞳に映るのは宵闇を覆う程の真っ赤な炎のベールだ
こんな環境の"惑星<リージョン>"故に夜が近づいていても辺りは暗がりに包まれはしない

 竜達に襲われた被害者の遺品を有難く頂いた彼らは使える防具は装着、道具はいつでも取り出せる場所に携帯し
目当ての妖魔を探す…最初は吹雪の中だから視界も悪く何度か洞穴に戻っては暖を取る出戻りも多かったが
歩いて少し戻った地点で飛び回っていたのをサンダーが発見した

 声を掛ければ泉の精を思わせる相手が嘲る様な笑みを浮かべて襲い掛かってきたので返り討ちにする


 オンディーヌ『シクシク…ヨクモ、ヨクモ! アナタタチ、ユルサナイワ…!』


 ヒューズ「確かにレディに手を上げるのは紳士な俺様らしくないがね、先に手を出してきたのはアンタが先だぜ?」

 オンディーヌ『トモダチ ノ シモノキョジン ニ コロサレチャエ!!』ダッ!


 ヒューズ「あっ!オイ待て…あ〜あ行っちまったよ…悪戯感覚で他人を氷漬けにすんじゃねーぞって説教してねぇのに」


 目当ての神鳥を氷漬けにした[霜の巨人]は何処に居るのか、それを聞く前に妖魔は飛び立ち山の中腹へと向かっていく
あそこに相手が居るのか、何にしても後を追わねばと術士一行は[ムスペルニブル]の山道を進んでいく

 道沿いに歩いて行き山中洞窟の中に足を踏み入れると岩肌を背に横たわる人骨と辺りに散らばった荷物が落ちている
襤褸の布切れや柄部分がボロボロの手斧…これも先の洞穴で見た遭難者のなれの果てかと?警戒しながら歩いて行く


 すると…


カタッ! カタタタッ!


   リュート「何の音―――うげっ!?死んだ人が動き出したァ!?ナンマンダムナンマンダム〜!」

    ブルー「なに馬鹿な事を言ってるよく見ろ!あれは[スパルトイ]や[マッドアクス]だろうがッ!」


 冒険者や密猟者を襲うべく遭難者の成れの果てに擬態していたのだろう動く人骨や意思を持つ手斧…襤褸布は[ワカツ]で
戦った[ゴースト]へと姿を変えて一行へと迫って来る…一々相手取るのも面倒だと一気に洞窟内を駆け抜けようと決め
天井から落ちてくる[ゼノ]や更に奥で待ち伏せていた別個体の人骨達を撒いて彼らは洞窟の行き止まりに辿り着く


   リュート「なぁなぁヒューズさん、もしかして俺達道を間違えちゃったりしたかな?」

   ヒューズ「かもしれねぇな…さっきの分かれ道で右側に思わず走っちまったが、左が出口だったか…」ポリポリ


 冷凍庫の中にでも迷い込んだかと錯覚するほどに寒い…このフロア全体が奇妙な凍気に満ちていた
4人と2体は目前にある異彩を放つ氷のオブジェを眺めながら道を間違えたなと一同に思った…。


 "氷漬けの燃え盛る鳥"が飾られたその部屋に立ち尽くしながら…。
960 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2023/02/04(土) 22:57:34.90 ID:A+l32mxj0

 それは神話に登場する火の鳥であった……氷漬けで尚その姿は美しく現代アートだと言われればそのまま頷きそうな程に


  アニー「コレが氷漬けの[朱雀]ってヤツね」ジーッ

 リュート「ひゃ〜…すっげぇな、燃えてるのに凍ってるぜ、シュールだなー」


  ブルー「コレの封印を解けばいいんだよな?」クルッ


 ヒューズ「そうさ、さっきボコした妖魔の相方をしばき倒せば氷が溶ける…
       恩を売りつけてウチの職場でバリバリ働いてもらいたいがね…打算抜きでも万年氷漬けってのは可哀想だ」


 早いトコ探しに行こうぜ、踵を翻してその場を後にする捜査官に他の面々も続いて出ていくのであった…

―――
――



 氷漬けの神鳥を後に来た道を戻り次は分岐路を左側へと進む……外の光が少しだけ漏れてきている、どうやらこの道で
合っているらしい―――山の中腹に出て彼らが目にしたのは一面氷の湖だ、完全に底まで凍り付いていて表面を歩いても
砕けて落ちて溺死…なんて事にはならなさそうで安心する

 獣系統のモンスターが3体スケートリンクで遊ぶ子供よろしくとツルツル滑ってその辺の"雪だるま"に
突っ込んで遊んでる姿しか見受けられない…話に聞く神鳥を凍らせる程の魔人は姿かたちも見えない


  ヒューズ「…っかしいな、確かに[オンディーヌ]はこの辺に向かって飛んでったはずなんだがな…」

  ヒューズ「奴が逃げた先に相方は居る…そうアタリを付けてたんだが、外しちまったかな」キョロキョロ


   アニー「どう見ても[バーゲスト]3匹と"雪だるま"ぐらいしかないわよね…あっ、また1匹その辺の奴に激突した」




  スライム「Σ(・□・;) !?」バッ!

  スライム「(;´・ω・)ぶくっ!ぶくっ!」ピョンピョン!!!



  リュート「あん?どしたんだ?あの雪だるまが気になるのか?」


 何を想ったのか突然、雪だるまを眺めていたスライムが愕きの感情と共に跳ねあがった
遅れて豪鬼が同じ雪だるまを眺めて身震いしながら「ア、アニキ…あの雪だるまやべぇよ…」と消え入りそうな声で囁く
 モンスター種の彼らが一様に感じ取ったナニカが何なのか…それは周りを観察していた仲間も気が付いた



  アニー「…さっきからあの3匹、アレとあの辺の雪だるまにだけは衝突しない――ううん、それどころか避けてる。」

 ヒューズ「何?」ジッ


 言われてみれば不自然に避けてる雪だるまがある、まるで"触らぬ神に祟りなし"とでも言いたげに
武器を手に術士達は"それ"に近づき――――突如として雪塊は膨張を始めたッ!


  ブルー「―――ッ!全員陣形を組め!奴がターゲットの魔人だ!」バッ!


 ただの二頭身サイズの雪玉が風船のように膨れ上がりあっという間に[巨獣]の様な体積へと変わる
アラビアンナイトに描かれるランプの魔人じみた逞しいマッシブボディの雪塊が緑眼を輝かせながら黄色い牙を覗かせる
 雪だるまに擬態していた巨人が正体を現したのに呼応するように離れた位置にある雪だるまが二つ、本来の姿に戻る


  雪の精A『ヒョォォォ…』
  雪の精B『ヒュゥゥゥ…』


 ブルー「チィ…挟み撃ちか、リュート!貴様は[傷薬]でサンダーとヒューズの援護に回って後ろから来る奴らをやれ!」

 ブルー「スライムは俺とアニーの回復を任せる!可能な限りの連携で一気に押し切るぞ!」



   霜の巨人『 グ モ ォ オ オ オ オオオオオオオ オォォォ!!!!』
961 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2023/02/04(土) 22:58:31.17 ID:A+l32mxj0

 雄々しく雄たけびを上げた巨人は雪で出来ているとは思えない硬さを秘めた拳で叩きつける様な[アイススマッシュ]を
蒼の術士目掛けて撃ち込む、詠唱を始めた術士と剛腕の間に電光石火で割り込む女剣士がすかさず一撃を[ディフレクト]し
巨大な腕を跳ね除けた…っ!


     ブルー「爆ぜろ![インプロージョン]」―――カッ!


 ボジュッ!!!


 術が発動し、光で構築された変形二十二面体の檻が巨人の肘から先を圧縮しては爆破する…雪の塊が蒸発する音に遅れて
魔人の呻きが聞こえ…辺りには蒸気が舞う。



  ブルー「今のは助かった!礼を言うぞ――……アニー、貴様その手は…」

  アニー「っ……気ぃ付けな、[フリーズバリア]って奴だよありゃ…ちょっと弾いただけなのに手がこうさ」


 愚鈍そうな見た目に反して機敏な動きで拳を振るった魔人の初撃を防いだ女の得物は刃先が真っ白に凍り付き
それの柄を握りしめていた彼女の手も凍傷を僅かながら負っていた、痛みはするが武器を振るう分には支障は無いが…


  アニー「ほんの一瞬、弾く際に接触しただけでこれだ…アイツに直接攻撃は悪手だわ、面倒な事にね」


 モンド基地で散々利用したバリア系だ…敵に回られるとこの上なく厄介な能力であることはお互い重々承知済み
ブルーとスライムの術や技主体の攻撃か、剣気を飛ばす手法で切り飛ばす…あるいは突破力のある強い連携で
バリアの発動が間に合わない程に一気に畳みかけて消滅させてやるかだ


  霜の巨人『オデの腕…溶かしたなァ!!!グオオオオオォォォ!!!』


 肘から先が圧縮爆破された[霜の巨人]が雫の滴る断面を術士一行に向けて咆える…するとどうだ!?彼奴の肘先から
放水砲の様に大量の水を高圧で噴出されるではないかッ!!溶けた相手の肉体の一部が意思を持つ水となりて一行を襲う

 弾数にして裕に4発分もの[水撃]が撃ち出されたッッ!


 スライム「(;´・ω・) ぶっ、ぶく!!」バッ!ササッ!


 それを見て直ぐに一角獣から元のゲル状生物の形態へと戻り二人の盾となる様に前に出るスライム、カバレロ一味の
秘蔵兵器が使った[メイルシュトローム]を無効化したように2発までは水の砲弾を取り込み吸収できたが盾となるのが遅い
 残りの[水撃]は防ぐ前に術士と女剣士に当たり、彼らを後方へ吹き飛ばす

―――
――



  ブルー「…ぐっ、クソッタレめ…っ![朱雀]を凍結させるだけの力はあるか…っ!」ゼェ…ゼェ…!

  アニー「水鉄砲ごときでこの威力ってのは厳しいわね…っ」ヨロッ


  ブルー(これはマズイかもしれん、状況を打開できる策を講じねば…っ 何か…何か無いのか!!)キョロキョロ


 遠目に[雪の精]と戦うヒューズ達の姿が見える、あっちはあっちで雪精の放つ[強風]を受けてボロボロの姿が目に付く
リュートの回復支援が入ってどうにか拮抗している状態だ、援軍は……期待できそうにない


  ブルー(うん?一匹[雪の精]が居ない……?どこに―――! あんなところに亡骸が…あいつ等一匹は倒せたんだな)


  ブルー「…。…!待てよ…もしかしたら…アニー耳を貸せ!」バッ!

  アニー「わっ!?な、なによ!?……えっ、…できるけど、少し時間がかかるわよ」

  ブルー「構わん、できるならそれでいい」


 作戦を伝え終えた所で[水撃]のプッシュ効果で後方に飛ばされた"人間<ヒューマン>"組の元へスライムが吹き飛んできた
ゲル状生物の状態で所々氷結しかけている辺り、水鉄砲から間髪入れずの[冷気]を吹きつけられたのだろう…


  ブルー「スライム、貴様まだ動けるか…?」

 術士の問いに、小さくだが「ぶく!」と肯定で返すスライムの言葉を聞き蒼の魔術師は次の様に言った「あれを喰え」と
横たわる[雪の精]を指差して…。
962 :今回はここまで [saga]:2023/02/04(土) 22:59:16.33 ID:A+l32mxj0

 モンスター種は倒したモンスターを一部でも吸収することで能力を得ることができる、細胞を取り込み
その個体へと成長することが可能だ…

 ヒューズ達が激戦の中でどうにか1体だけ倒せた個体、コレをスライムに吸収させ…目当ての技を引当てられれば…!

 [雪の精]をスライムが取り込む最中、飛んでくる物理攻撃を黄金髪の女剣士に[ディフレクト]してもらい
中距離から術士が発動の早い[エナジーチェーン]で牽制を行う
 攻撃を一見か細い人間の女に防がれ、絶妙なタイミングで瞳などの急所を狙ってヘイトを買って出る術士の連携に
苛立ち始めた[霜の巨人]は多少隙を作ってしまうのを覚悟の上で怒りに任せて息を大きく吸い込み[強風]を吐く準備に入る


  アニー「…はぁ…はぁ…くっ、こんだけやれば流石に手がしんどい…っ!悪いけどあたしはここまでだ!」


 [ディフレクト]要因の剣士が縦横無尽の歩みを止め、その場で立ち止まり得物を持ったまま…静かに目を瞑る
手は何度も氷結界に接触した為、ひどい有様でどんなに頑張ってもあと一振りしか剣も振るえまいと言った所
 そんなアニーを見てようやく観念したかと空気を取り込み更に膨れ上がった巨人は見下ろす

 今から全体範囲に向けて吹き付ける[強風]を受けて、彼らがそれでも立っていたと仮定しよう
盾となる剣士が機能しないのであればもう攻撃は防ぎようが無い、それこそ純粋な拳ひとつで勝てる…


 [霜の巨人]が大きな口を開き、暴風を吐き出さんとしたその瞬間…!






       ブルー「このタイミングだ!!やれェ――ッ!!」バッ!


     スライム「(。-`ω-)ぶくぶくぶーーーーーーーーーっ!!!」ビュオオオオオオオオオオ!!




   霜の巨人『!? ウゴオオオオ!?』グラッ!


 吸収を終えたスライムが飛び出しそして――――"[強風]"を使ってきたのであるッッ!!


 [雪の精]から低確率で取得できる技…それは[シルフィード]と言った風精を撃ち出す技を使ってきたスライムにとっては
容易く使える物で地表から斜め上に目掛けた、魔力を帯びた超局地的な暴風はものの見事に魔人の姿勢を崩す事に成功した

 本来であれば眼下にいるブルー等に対して吐き出すつもりだった相手の[強風]は大きく前のめりに姿勢を逸らすことで
真下に――凍てついた氷の床へと叩きつけられ、そして[霜の巨人]は上方へと昇っていく…!
 宛らシャトルロケットがノズルから火を噴き天へと上がっていくようだ


  ブルー(大気を取り込む際の隙と姿勢を崩したまま空に舞うだけの時間があれば此方も放てるというもの―――)

  ブルー「 [ ヴ ァ ー ミ リ オ ン サ ン ズ ] !! 」


 蒼が放つは紅き大紅玉の嵐、熱を帯びた宝石の破片槍が次々とスライムの[強風]による追い風に乗って雪塊に突き刺さる
[インプロージョン]で肘から先が溶けた時からそう…見た目通り、熱に対する攻撃に耐性が無い彼奴はドロドロと溶け出す


  霜の巨人『グ、ググ…オノレ…!!』


 ドロドロと身体の6割近くが溶けたがそれでも術士の大技を耐えきった魔人は
残り4割の肉体で[ダイビングプレス]を仕掛け憎き魔術師とモンスター種を滅ぼさんと急降下し始める…っ!

 溶け落ちた部分の滴りも既に魔人の力で霜と化し、最早…胴体から下は氷柱の剣山となり果てていた

 今から[ヴァーミリオンサンズ]の2発目を唱えるには少しばかり時間が足らない、詠唱を終えるより先にブルーが
降って来る巨人の身体に潰され圧死する方が早い…もう誰にも止められまいッッ!

  そう[霜の巨人]は思っていた…。



  ブルー「ここまでお膳立てしたんだ!さっきの打ち合わせ通り決めてやれアニー!!!」




  - 手は何度も氷結界に接触した為、ひどい有様でどんなに頑張ってもあと一振りしか剣も振るえまいと言った所 -


 そう…"あと一振りは剣を振るえる"んだ……ッッッッ!!
963 :次は来週予定 [saga]:2023/02/08(水) 22:08:37.02 ID:4PgZO7k10



         霜の巨人『 ナ、ナン ダト ォ ォ ォォ ォ!?!?』ゴオオオォォォ!!





- [ディフレクト]要因の剣士が縦横無尽の歩みを止め、その場で立ち止まり得物を持ったまま…静かに目を瞑る -



 歩みを止めたのは諦観したワケではない。

 静かに目を瞑ったのは最期を悟ったからではない。



 半溶の巨人は辛うじて残っている緑眼で見た、歩みを止めた場から一歩も動かず練り上げた闘気を纏った女剣士の姿を






 - アニー『わっ!?な、なによ!?……えっ、…できるけど、少し時間がかかるわよ』 -

 - ブルー『構わん、できるならそれでいい』 -


 時間の掛かる大技は1発だけじゃあない…2発あったッ!

 揺らめく闘気、極寒の大地に居るのに大火を前にしているような熱量を感じる気迫…ッ!
黄金髪の女剣士は口角を釣り上げ振って来る氷塊を見上げた
 対照的に彼女を見下ろす魔人は本能的に死を悟り表情が凍り付いた…っ!


――――ダンッ!!!


 しなやかなに[柳枝の剣]でも放つような流れる動きと共にアニーは天へと高く跳ぶ
ゆらめく炎…否、太陽の光を思わせる"闘気<オーラ>"を纏った彼女の剣閃が魔人の身体を下から上へと一気に切り裂いた

 無論、言うまでもないが最後のあがきで[フリーズバリア]は展開していた…だがバリアが
対象にダメージを与えるよりも早く術者が消滅しては効力を発揮しない、そういうものなのだ





            アニー「 [ ラ イ ジ ン グ ノ ヴ ァ ] !! 」




 生命の輝きによって生み出された極小の太陽は小規模な爆発を引き起こす
その熱量は神鳥に対し永久凍結の呪いをかけた魔人を[フリーズバリア]諸共溶かすには十分過ぎた…。

―――
――




   雪の精B『ヒョ、オォ、…オ』ドサッ


  ヒューズ「ふぃーっ、こんなもんか…」ボロッ

  サンダー「うぅ…死ぬかと思った…アニキー…[傷薬]欲しいよぉ…」

  リュート「おう、お疲れさんっと…ほらよっ!」ゴソゴソ、スッ…!


  リュート「こっちはどうにか終わったなブルー達の方はどうなって……んおっ!?なんだぁ今の爆発!?」


  ヒューズ「……ほー、あの姉ちゃんやるなぁ、デカブツ結構弱ってたがトドメ持って行っちまったぞ」


  リュート「へへっ、どうやら心配いらなかったみてぇだな!」

  ヒューズ「んじゃま、こっちも合流しに行こうぜ…こんで朱雀の呪いも解けるだろうよ」
964 :続き早ければ土日、もしくは火水 [saga]:2023/02/15(水) 20:56:12.26 ID:+5X5accz0

 "闘気<オーラ>"を纏った斬撃で魔人を打倒した一行は一度来た道を戻っていた…なにゆえ戻るのか、その疑問を提案者に
ぶつけた者は当然いた、「さっさっと用件を済ませてこんな悪環境から帰還した方がよかろうに」と不良刑事に言うが
それに対して彼は呪いが解けた朱雀に会い、仲間になってもらう為だと口にした

 ここから先は山頂に登り頼まれていた黄色い花を採取してくるだけ…とはいえ道中何があるか分からない
増強できる戦力は大いに越したことはないということだったのだ


 渋々ながら一行は納得してきた道を逆そうした訳なのだが…








   ブルー「で?これについてどう説明してくれるんだ、ん?」


  ヒューズ「あっれぇ…おっかしぃなぁ〜」メソラシ





  氷漬けの朱雀『 』カチーン





 [霜の巨人]を倒せば呪いは解ける、それで神鳥を仲間にして[IRPO]の人員も増やせてウッハウハ!!という目論見を
完全否定するかのように目前の凍れる芸術はそこに依然として存在した…。

 聞いてた話と違う。――そう叫びたいのはヒューズも同じであった、然し実際に解呪されていないのだから仕方ない


 ヒューズ「ぐぬぬ…これじゃあ俺様の負担を減らす計画が…」


 頭を掻きむしりながらこれから先も減らない仕事量の事を考え苦渋に満ちた顔をする刑事を尻目に術士は考える
呪いを掛けた妖魔は滅した、にも関わらず解呪できなかったのは何故なのか…
 学院に居た頃に読み漁った多くの本に記された記述を記憶の底から洗い出してみる



  ブルー「……もしや、あまりにも長い年月が経ち過ぎて定着したのか?」

 ヒューズ「なに?」


  ブルー「呪いの中に稀に存在する事象だ、例えば石化…これが千年や万年単位で解かれず続いたとしよう」

  ブルー「保存状態が良ければ何ら問題が無いが、野晒しで酸性雨や暴風に長く晒され罅割れたり欠けた場合
         状態異常を治す為の医薬品や魔術による施術を行使しても元に戻せないというパターンがある…」

  ブルー「昨今の技術力の進展と石化した者への早期発見と応急処置が普及した現代じゃほぼあり得ないことだがな」


  アニー「じゃあ、この[朱雀]は…」

  ブルー「その線が有り得るということだ、この山中洞窟でどれだけの間凍ってたかは知らんが」


 サンダー「…あのぉ、ブルーさん、無理は承知でもコイツなんとかしてやれませんか?見てて可哀想なんだけど」


  ブルー「今しがた説明した通りだ、術者も倒してこの有様ときたもんだ
          呪氷が相手じゃ単純に炎に放り込んでハイおしまいという訳にもいかんさ…」


 ましてや妖魔絡みの呪いだ、妖魔の使う術は"科学的超能力<サイオニック>"の学問でも未解明な点がまだある、と付け加えた
それを聞いて何かを閃いたようにヒューズがハッと顔をあげて叫んだ


  ヒューズ「そうだ!妖魔だ!!…餅の事は餅屋に聞けばいい、なぁんで直ぐに気付かなかったんだ!」

   ブルー「どうした突然?」


 叫びをあげた不良刑事に怪訝な視線をくれてやる蒼き術士、そんな彼に対してニカっと歯を見せて笑いヒューズは言う
「"普通の炎に放り込む"じゃ駄目なんだろう?強い力を持った妖魔の特別な炎ならどうだ?」と
965 :続き来週予定 [saga]:2023/02/23(木) 00:00:59.87 ID:rapeIGqr0

 ヒューズ「ちょっと心当たりがあんのさ!妖魔絡みで強い炎って奴によ」

 ヒューズ「コレが終わったらコイツを[ファシナトゥール]まで運ぼうぜ!」


  アニー「いやアンタ運ぼうぜ…って、簡単に言うわね」


 まずは山頂の花とやらを取って来なければならない、それが終わったらこのデカい氷塊を妖魔の御国に運びましょうと?
とんだ重労働である、道中の竜が居た所にあった遺骨の一件といい何回山を往復することになるんだ…
 パトカー型の船をこの山に乗り捨てる前提で[ゲート]を使えば早いだろうが、そういう訳にもいかんだろう


  アニー「…はぁ、頭が痛くなりそうね」

 リュート「サンダー、お前の頑張りどころかもしれねぇぞ、地元でも祭りの神輿担ぐの得意だっただろ?」

 サンダー「うえっ!?オ、オレ…?そうだけど…」チラッ



  氷漬けの朱雀『 』ズーン…



 サンダー「流石にデカさの規模が違い過ぎるよぉ…」ガックシ






 …この後、術士一行は山頂まで行って、黄色い花を採取しようとした所を別個体の[朱雀]に"縄張りに侵入してきた"と
勘違いされて襲われたり、下山の際も全員でわっせ!ほいさ!と"氷漬けの朱雀"を背負いながら帰路に着く途中で
サンダーがうっかり足を滑らせたりアクシデントに見舞われながらもシップに戻るのだが…それは割愛するとしよう…。


―――――
――――
―――
――



*******************************************************
―――
――




ヒュォォォォォ…



 一陣の風に木枯らしが吹かれていく…





【双子が旅立って15日目 深夜0時00分 [京] 】




  ルージュ「……時間、か。」スッ


 旅館の一室で椅子の背凭れに身を預けていた紅き魔術師がそう呟く
日付はもう、変わった。


 目配せでもする様に湯飲みに口を付けていたレッド少年の方を見やれば彼もまた顔つきが険しい物になっていた
[メタルブラック]との死闘に身を投じた日、戦闘終了後に現れた獅子の如き姫との約束―――その刻限も2時間に迫る


 レッド「俺達はできる限りの事をやったさ、後は姉ちゃんがベストコンディションになるように休養を取らせて」

 レッド「そんで今は[心術]の道場んトコに無理言って奥の座禅部屋も借りてる…精神統一ってヤツをしてるさ」スクッ


 白薔薇姫と体調確認の為にBJ&K、更に何かあった時の為にラビットも護衛としてつけさせている
アセルスと合流して約束の果し合いの地に赴こうと立会人の男二人も立ち上がるのであった…。
966 :続き次の火水予定 [saga]:2023/03/01(水) 22:10:29.39 ID:uq9Mbitq0

 宿泊先から出て橋を渡り[京]の北西に位置する修行場へと赴く、受付の者は彼らを見て静かに来たか、とだけ呟き
奥の部屋に目線を向ける…。
 場所を提供してもらったことに一礼し二人が瞑想の間へと踏み込むと――――



  レッド(! …姉ちゃん見違えたな)

 ルージュ(あ、あぁ…、見た目は何一つ変わっていないのに…これは)ゴクリ




  アセルス「……ん? 二人とも迎えに来てくれたんだね、ってことはもうそんな時間かー」パチッ


 座禅を組む様な姿勢でずっと目を閉じていたアセルスお嬢が目を開き仲間二人の姿を認識した
これから…どう見積もってもあの[メタルブラック]と同等かそれ以上の強敵と1対1で対峙することになるというのに
どこまでも落ち着いた…何事も無いかの様な澄んだ雰囲気を漂わせて彼女は思ったより早かったなぁ〜っと言ってみせた


 この数日、彼女との鍛錬に付き合ってきたからこそ分かる

 彼女は以前と比べて明らかに強くなった、[幻魔]を握りしめたとてその力に振り回されることも無い
自らの意志で妖刀を御せるだろうとも

 心は極めて澄んでいる、波風も波紋の一つすらもない澄んだ水面…明鏡止水に至れていると言ってもいい


 ゆっくりと立ち上がり、ん〜!と背伸びして歩き出す、そんな彼女に付き添う様に白薔薇姫が
その後ろからBJ&Kとラビットが続いて行く


  アセルス「さぁ!行こうか!」


―――
――



【双子が旅立って15日目 深夜1時58分 [京] 】



 [庭園]へ続く橋を渡り、一行はその場で待つことにした…

 三日前、黒鉄の武人を討ち取ったこの地にて…――――炎上していた[書院]の火は近隣住民の手によって鎮火し
なんとか形は残っていて、また[メタルブラック]の残骸も撤去済みでこうしていると
あの日は何も起きていなかったんじゃないかとすら思ってしまう

 腕を組み目を閉じたまま柳の木に身を預けたままのレッド少年、その傍らに物言わず立つBJ&Kの上に着地したラビット
[庭園]の中央に立るアセルスをじっと見つめたまま微動だにしない白薔薇…

 そんな仲間達の様子を見渡していた紅き術士は天を仰ぐ様に夜空を見上げる…星明りと月明かりが嫌にハッキリとしてて
雲の流れも全くと言っていい程に無い


 天すらも此度行われる決闘を観戦する気でいるのだろうか…


 ルージュは随分前に購入した携帯電話の液晶画面を覗き込む時間は深夜の1時59分……――――




   ルージュ「ぁ…」




 ―――から、たった今、2時00分に変わった。





 コツッ…コツッ…コツッ…



 靴底の音と共に橋の向こうから幽鬼が如く姿を現した黄金の騎士が視認できたのは彼が声をあげるのとほぼ同時刻だった
金獅子姫が…[黒曜石の剣]を携えてやってきたのだ。
967 :続き来週、もしかしたら再来週になるかもしれない [saga]:2023/03/08(水) 22:41:44.46 ID:G3ja2Li40


 アセルス「獅子姫…。」


 月明りの下、現れた寵姫を見て彼女は名を口にした
[庭園]の中央に立ち対峙する騎士は少女とその仲間達を一瞥する


  金獅子「刻限通りに来られたようですね、アセルス殿…まず約束通り1対1での決闘に応じて頂き感謝します」


 中央に戦士が二人、そこから離れて窺うギャラリーとして術士達一行が立っている…二人の戦いに水を差さない様に
一騎打ちの決闘を見守る為に…!
 たとえアセルスがどれだけの重症を負おうと首と胴体が泣き別れすることになったとしても手出しはしない
それが事前の決め事だ、その代わり彼女が敗けたとしても他の仲間達に危害は加えない


  幻魔『 』スッ


  金獅子「…ほう?見事な業物ですね、ゴサルスが打った物とお見受けします」


 紅く染まった妖刀を鞘から引き抜く彼女を見て金獅子は目を見開いた、生半可な者では[幻魔]を扱い切れない所か
その力に振り回されるだけに過ぎない、しかしそれを手にするアセルスにそういった物は見受けられない


 アセルス「始めましょう」

  金獅子「フッ、そうですね…いざ尋常に参るッ!」



 その一声を口火に両者は動き出した、百獣の王が如く俊足で駆け出し[スマッシュ]を叩き込む動作…っ!
重い[黒曜石の剣]の一撃を[ディフレクト]で防ぎ[切り返し]ていくも獅子姫は右腕に装着した盾でそれを防ぐ
 お互いにノーダメージの初撃…続けて獅子姫は飛び退き距離を開け[冷気]を吐き出す


  アセルス「ぐっ…!」ピシッ、ピキッ…


   白薔薇「アセルス様!!」


 [京]の季節にそぐわない極寒の風、ほんの少し浴びているだけなのに前髪の先から凍り付いて手も悴んで動きが
ぎこちない物になりそうだった、致命的なダメージこそ負わないがこのままでは鈍った所を狩られる…ッ!



  アセルス「[燕返し]!!」シュバッ!
   獅子姫「むぅっ!?」ブシャァッ!


 凍える暴風の中を突っ切り発生源へ飛来する剣技の一撃を受けて獅子姫がよろめく
その隙に素早く呼吸を整えて[克己]を発動させて自身の傷を癒す


   獅子姫「フフッ!そうこなくては面白くない…![払車剣]」ビュオッ!


 額から血を垂らしながらも笑いながら彼女は身を捩じらせ大きく振り被った一振りを放つ
瞬間、"鎌鼬<かまいたち>"が幾つも重なって発生しアセルス目掛けて襲い掛かる―――!



  レッド「あぁっ!姉ちゃん…!!」
 ルージュ「アセルス!!!」


 見届け人である彼らには何も出来ない、ただアセルスの勝利を信じて待つしかない。

 この数日で間違いなくアセルスは強くなった、だが相手もまた強者であった…剣気の嵐に晒され身を切り刻まれた少女は
これは堪らないとばかりに地を蹴り空へと逃れようとするが…!


  獅子姫「甘いっ!」カッ!


 練られた妖気により生じた[落雷]が天高くに居たアセルスの身に落ちる―――ッッ!


  アセルス「きゃあ"ああ"ああ"あ"あ"あ"―――ッ」バチバチィ…!…ドサッ!

968 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [age]:2024/11/02(土) 11:12:02.65 ID:x2Ua38GJo
『15時までロマサガ3、その後ポケポケ
※レアドロアイテムチャレンジあり』
▽Steam/Windows/PS4+VITA/XBOX/Switch/スマホ
ロマンシング・サガ3/HDリマスター Vol.3
(8:45〜)

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