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ブルー「俺達は…」ルージュ「2人で1人、だよねっ!」『サガフロ IF】

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702 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/31(月) 18:16:25.09 ID:loQ5f2IL0
おつです
ゲンさん足りなかったかあ
703 :ここでまさかのルージュ側切り替え [saga!red_res]:2021/06/04(金) 07:32:24.11 ID:g62tNk5x0















            …zzz、ZZZZZ……むにゃっ?














 はれ? ここは何処だ?…ええっと確か[ヨークランド]を発って[クーロン]で[金]を買おうとして


 それから購入金が足りなかったからお宝探ししようって![シンロウ]に向かって



 …ってなんで僕、檻の中に入ってるんだ!?



704 :続き、土日のどっちか [saga]:2021/06/04(金) 07:33:48.91 ID:g62tNk5x0
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―――
――
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【双子が旅立って9日目 午前 6時10分】



 紅き魔術師は眠りから覚めて困惑した、まず鼻に突き抜けるのは黴臭さのある湿った匂い
冷たい石畳の上で横になっていたせいか―――いや、それだけじゃない、身体の節々が痛いと感じたが
単に硬い地面の上で寝たからじゃない


 よく見れば体中に痣がある、だんだんと何があったのか思い出してきた











             IRPO女性隊員「…お目覚めのようね、ルージュ君」









   ルージュ「ドールさん!!ここは一体…確か僕たちは遺跡探索してて…それから扉を開けようとしたら変なガスが」





 ドール、そう名前を呼んだのは[シンロウ]に到着して間もなく同行することになった弟を探しているという女性である
最初、この"惑星<リージョン>"に来た時に困った様な顔で辺りを見渡していた人を見つけて、見るに見かねたアセルスお嬢が
初めてルージュに接した時と同じ様に声を掛けて事情を聴いた所、遺跡の探検に出かけた弟さんが帰らないとの事で
丁度遺跡探索に行く自分達と一緒に探しに行きませんか?と話をつけたのであった


 道中で[ガイアトード]や双子の[ヴァルキリー]と戦ったり、精霊銀製の防具や[ツインソード]等のお宝を見つけたり
兼ねてよりの懸念だった懐事情とパーティーの武具問題を微量ながら解決したり、様々な事があった


 そして、とある扉を開けようと手を伸ばした瞬間おかしなガスが噴出してそれを吸った一行は正気を失いパニック状態に
陥ってしまった、更に誰がどこにいるかまともに判断できない最中、全身黄色のタイツスーツを着た集団が天井から現れて




……そして、気付けば自分は檻の中だ




        ドール「ここはブラッククロスの幹部、ベルヴァの秘密基地よ」

       ルージュ「ブラッククロスだって!?それはレッドの――――ハッ!?れ、レッド!?彼は…?」キョロキョロ



 術士は辺りを見渡す自分の他には―――武装を完全に外されたBJ&Kだけ居る、妖魔の二人は居ない



     ドール「彼女達なら他の檻よ、妖魔は貴重だから特殊な怪人にできるって考えてるのでしょうね」

    ルージュ「くっ、改造手術で怪人にするってことか…っ」

 ドール「レッド君はさっき連れていかれたわ、このままでは彼もきっと…武器も取られて助けにも行けないお手上げよ」



 苦々しい顔でドールが呟く、さっきから術を使って檻をぶち破ろうと試みるルージュだが術が発動しない
檻全体に術士用の対策が為されているのだ嫌でも思い知らされる
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/05(土) 07:25:43.20 ID:pIu88LTH0
ルージュくんパート来た!
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/05(土) 16:10:04.34 ID:eK1ETQhJO
ドール昔はそんな興味無かったけどリマスターで解像度上がって背中がめちゃエロい事に気づいて好きになった
707 :>>706 ドールさん良いよね、小説版だとシュライクのグラビア誌に匹敵するスタイル持ちと判明しますし [saga]:2021/06/06(日) 22:22:43.99 ID:UtZ6Y/9O0


  ドール「無駄よ、[ディスペア]でも採用されている凶悪犯罪者用の特殊合金で造られているわ」


 監獄の"惑星<リージョン>"と名高い刑務所はあらゆる囚人が収容される、腕っぷしが強い傑物から高名な魔術師まで
内部から鉄格子をぶち破られては堪ったものではなく、そこで術対策も成された特殊合金が使われているのだ


  ルージュ「…っく、駄目だっていうのか…」ガクッ

  ルージュ(ヤルートの時といい、今回といい……僕ちょっと捕まり過ぎじゃないのか?)


  ルージュ「…。」


  ルージュ「ドールさん、檻の材質がわかったりブラッククロス幹部の事を知っていたり貴女は…?」


 彼女自身も資質こそは持っていないが[陰術]と[妖術]が多少使える身だ、特殊合金の一件は試したと言われたらそれまで
…然し、幹部の名前を知っているのは解せない
 以前[京]で観光記念写真を撮ってもらったりアセルスに剣を一振りくれた親切なメカから悪の組織には四天王と呼ばれる
幹部が居るとは教えてもらったが名前は知らない、ドールは此処が[ベルヴァ]という幹部の基地だと言い当てた



――――ただの行方不明になった探検家の弟を探す一般人のお姉さん、で片づけるには不自然だ




  ドール「そうね、もう隠す必要も無いから明かさせて貰うわね私は[IRPO]の捜査官ドールよ」

 ルージュ「!! パトロールの方だったんですね…」


  ドール「ええ、貴方達の事はヒューズから聞いてるわ」



―――
――
―


  -ヒューズ『あー、もしもしオレオレ、俺だよドール……あっ!詐欺じゃねーから!切らねぇでくれって』-

  -ヒューズ『えっ、冗談?…いやね、アンタが言うと洒落に聞こえねぇんだよアイシィドール』-



  -ヒューズ『おう、そんで話ってのはな例の犯罪組織の事だがな奴らをぶっ潰す上で面白い連中がいるんだ』-

  -ヒューズ『見た目が賑やかな集団だから見たら一発で分かる、そいつ等について行けばクロにたどり着けるぜ』-


  -ヒューズ『サボテンみてーなヘアスタイルした小僧と緑色の髪したコギャル、頭に白い花つけた妖魔の婦人』-

  -ヒューズ『そんで白毛の大型犬っぽいモフモフした毛玉が紅い服着て歩いてる様な奴な』-



―――
――
―



   ルージュ(…大型犬、毛玉…)ズーン



 随分な言われようである、毛玉呼ばわりされた紅き術士は表情に影を落とし、ついでに肩まで落とした
[クーロン]で別れて以来未だ再会はしていないがよく自分とアセルスがレッド少年と旅を共にしていると分ったものだ
その辺腐っても"銀河の海<混沌>"を股に掛けてあらゆる"惑星<リージョン>"に足を運ぶパトロール隊員だ
 警察機関の所属ゆえにその手の情報を掴むのは早いのだろう


  ドール「騙すような形でごめんなさい、でも捜査中に指名手配犯の[ベルヴァ]が潜伏したこの地で身分は…」


 できる事なら正体は明かさずに行動したい、刑事だとバレたら当然[IRPO]本部からの応援要請を警戒して
下手に手出しをしてこない可能性も有り得た……尤も、各隊員は今諸事情で大半が来れないのだが
708 :続き火曜日か水曜日のどっちか [saga]:2021/06/06(日) 22:23:37.03 ID:UtZ6Y/9O0


  ルージュ「あ、いいんです!そういう事情があるなら仕方ありませんからっ」


 そんなことより今はこの窮地を脱する方法を考えないと!術士は女刑事にそう告げながら
とりあえず武装が外されたBJ&Kの電源ボタンを押して起動させる


  ドール「…無線機は取り上げられてるから他の隊員と連絡は取れないわ、取れても皆、現場を離れられないのよ」


 ロスター刑事ことクレイジー・ヒューズは[キャンベル・ビル]の武器密輸を追ってる
妖魔隊員のサイレンスは[ルミナス]で調査中、メカのラビットは[京]で麻薬密造基地を…コットン隊員は何故か行方不明





……そして、ヒューズの後輩だったレン隊員は数日前に死んだ、"らしい"



 応援要請も不可能、武器も取り上げられておまけに術も通用せず…八方塞がりもいい所だ
重い空気が場を支配し始めた時だった…








< キー!!

< [太陽光線]!!ピカァァァ!!
< [飛燕剣]ヒュィィン
< [ディフレクトランス]シュバッ―――ドカァァァ!!


< キー!!!!!



  ルージュ「うん?騒がしい様な」ハテ




ドタドタドタ…!





    白薔薇「居ました、皆さんご無事です!」

   アセルス「良かったドールさんもルージュもそれにBJ&Kも無事だったんだね!」



   アルカイザー「やあ、大丈夫かい?ブラッククロスの基地に潜入したら偶然君達を見つけてね」スッ



   ルージュ/ドール「アルカイザー!」


   アルカイザー「さぁ早く逃げるんだ!さっき戦闘員を倒した時に君達の荷物と牢の鍵を見つけたんだ」ガチャッ


 なんという僥倖だろうかッ!!まさか囚われの身で絶体絶命のピンチの時に偶然にも正義のヒーローが基地に居て
ルージュ達を助けてに来てくれたぞ!!いやぁ凄い偶然があるものだなぁー



  ルージュ「あ、あの!!アルカイザーさん!レッドって少年を見ませんでしたか!?彼も捕まってるんです」

 アルカイザー「安心したまえ彼ならお嬢さん達を助ける前に見つけてね、改造されそうになって居た所を助けたんだよ」


 拘束具で雁字搦めにされて気を失っていた所を救出し、速やかに安全な外へ連れ出した、とアルカイザー兼レッド少年は
嘘をついた、目の前の仲間は正義の使者の正体が話題の少年だとは夢にも思うまい……女刑事だけは眉を顰めていたが

709 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/07(月) 06:02:16.97 ID:q/sI8gnL0
スゴイ偶然ダナー
710 :続き、金曜日か土曜日のどっちか [saga]:2021/06/09(水) 23:12:17.63 ID:jKdIKJZp0

 ルージュはBJ&Kに正義の使者と共に慣れつつある手つきで武装の取り付け作業を行う
これで医療メカは何処の戦場に出しても恥ずかしくない立派な戦闘メカになったな!!…いや医療メカが戦闘ってなんだよ
 紅き術士は内心でそう独り言ちて苦笑した、仲間の無事が確認できたからか心に余裕が戻ってきた証拠である


 精霊銀のピアス『』チャリッ


 遺跡探索の道中で見つけたピアスをつけて赤の魔術師は仲間達の武装を確認する
ピアスと同じ材質の鎧を身に纏い"音撃波<ソニックウェーブ>への対策を兼ねたアセルスが[ツインソード]と[サムライソード]
探索中に見つけた剣と以前親切な和風メカから譲り受けた刀を帯刀している

 ドールはIRPO隊員の支給品一式が帰ってきていて[防弾ベスト]等の防具は勿論
拳銃の[アグニSSP]から重火器の[ハンドブラスター]まで手元にある
白薔薇姫は…倒した[ヴァルキリー]の姉妹が落とした[精霊銀の腕輪]、本来レッドが付けていたものだが当人不在の為
少しでも守りを固めるということで彼女の腕に装着させた


 魔術師も何度か使ってきた[アグニCP1]の弾丸も確認して準備が整った所で脱出開始だ

―――
――
―


   「キー!(脱走だ!捕まえろ!!)」

   「キー!(アルカイザーも居るぞ!!)」



 ルージュ「…相変わらず『キー』しか言わないから何言ってるか分かんないよ」BANNG!BANNG!


 術力温存の為に拳銃で[集中連射]しながら地上を目指して走る、弾雨を受けて向かってくる勢いが衰えた敵に
正義の飛び蹴りが炸裂する、相方がやられた戦闘員が玉砕覚悟で拳を振りかざそうと前進するも
突然支えを失った木偶人形の様に前のめりに倒れだす


  ドール「無力化はさせたわ…、出口はこの階段を上った先みたいだし急ぎましょう」コツコツ…


 靴底のヒール音を響かせてドールが地上行きの階段を目指す、今しがた[パワースナッチ]で生気を吸い取り倒した相手に
目もくれることなく…



 ルージュ「…今のは、[陰術]…」

  ドール「少々心得があるのよ、資質はもっていないのだけれどね」


 癖が強くて扱い難さはあるけど面白い使い方はできるわよ例えば、と付け加えて…


 バンッ!

   ゴブリン「脱走しようとしてもそうは行かんぞォ!貴様らを倒して隠し扉前の見張りから出世してやる―――」


   ブゥン!!



   ゴブリンの背後『 ドール 』ピトッ…


  ゴブリン「!? なっ、だ、誰だァ俺の背後を取る奴は!?まさかまだ仲間が居て救援に―――」クルッ


―――ドゴォッ!!



            2連携 [ ハ イ ド ラ ン ス ]


 番人を任されていた小鬼は脱走の報せを受け、モーニングスターを振り回しながら戸を開けた…が、背後に突然何者かの
気配を感じ振り向いた瞬間、彼の頭は光を纏った跳び蹴りにぶち抜かれた

 ドールが生み出した[ハイドビバインド]による偽りの気配に気取られた一瞬、"敵前で無防備な背を見せる"という醜態を
曝して見事に研ぎ澄まされた[ディフレクトランス]を受けて撃沈したのであった

711 :続き明日 [saga]:2021/06/12(土) 23:00:12.96 ID:Xbu1mo7J0

 一撃を受けて伸びた[ゴブリン]を素通りして地下基地の先が何処に繋がっているのかを見渡す
正義の使者には隠し扉の先にあった一室に見覚えがあった
キグナスの機関士見習いを辞職する決意を固める切っ掛けにも場所、Dr.クラインを追って辿り着いた離宮だ


  アルカイザー「[シンロウ]の王宮、どうやら此処へ繋がっていたらしい」キョロキョロ

  アルカイザー「以前も仮面武闘会が開催されていた時に組織の者を見かけたが、やはりか」


    アセルス「じゃあこのお城に住んでる人達も共犯ってこと?」

  アルカイザー「…いや、わからない脅されていたのかもしれない、とにかく行こう」



―――
――
―


 結論から言えば、探し出した王宮の人々は[ベルヴァ]に脅されていて地下に人体改造の基地を設置されたそうだ
遺跡探索に来た屈強な冒険者を怪人にし、それとは別で定期的に開かれる仮面武闘会も彼奴の娯楽を兼ねた優秀な戦士探し





…そしてブラッククロスの"客人"と接触を図る、お客様窓口の役割でもあるのだと



 キャンベル社長の所有するビルも黒星だが、この王宮自体もアウトだ

 クライン自慢の改造物である[ベルヴァ]や戦闘員の性能実験、客に対しての宣伝効果…元来"巨人種"のモンスターである
ベルヴァは決して"人間<ヒューマン>"の様に閃くことができない、そんな彼が敵の技を見て見切る事ができるのも改造の賜物


 ブラッククロスの技術力の高さを見て、それを評価し高く買うソッチの道に伝手のある資産家や政治家、極悪人が
商談を持ちかけることも多い、特に直近では"ジョーカー"と呼ばれる仮面をつけた男、そしてトリニティ政府の高官

2人の男達がブラッククロスに秘密裏に接触を果たした


 1人は自らの野心の為、資金繰りと兵器を要した為に自分が元々属していた警察機関の情報を売り対価を受け取りに

 1人は復讐心と権力欲に歪んだ理想実現の為、自らが搭乗予定の起動兵器に使う[バスターランチャー]の開発を




    「わ、私達はベルヴァに脅されていたんだ!!」ガタガタ


 ドール「落ち着いてください、事情は分かりましたので貴方達は王宮から避難を」



 酷く震え上がり縮こまっている王族と側近達を見るに自責の念と
結果的に犯罪の片棒を担いでしまったことが[IRPO]の刑事に露見したことなどからすっかりと委縮しているのだと分る
犠牲になった人々の数を考えれば正直思う所もあるが彼らとて好きでやってきたことじゃない酌量の余地はあるだろう

 詳しい取り調べは後でさせて貰うとだけ言って女刑事は民間人をまずは王宮から避難させることを優先とした
地下基地内にもまだ戦闘員が居る上に、王宮の闘技場で日課の鍛錬に励むベルヴァが居るらしいのだ
 自分達が脱走した報せはおそらく伝わっており、幹部本人が直々に出向いてくる可能性
そこで民間人を人質に取られるリスクは避けたい

 王族の方々や宮殿内に取り残された熟れた果実を意中の人に食べさせたがっていた恋人たち、呑気に日焼けをしていた者
多くの人間を出口まで護衛して、最後に武闘会で救護班をしていた医師の手当を受けて技力も術力も万全の状態となった



……民間人を王宮から避難させることを優先したドールさんの采配は神だったなぁ、と後に魔術師ルージュはそう語る





 まさか王宮が木っ端微塵に大爆発するなんて誰に予想できるか

―――
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712 :続き、水曜日か木曜日 [saga]:2021/06/13(日) 22:52:39.90 ID:Fh8QX/pG0

 王宮の闘技場の中央にてその魔人はどっしりと構えていた

 来賓や王族が見守る特別観戦席から様子を伺った一行の気配に気づき「降りてこい!!」と怒声を飛ばす四天王に
正義の鉄槌を下すべく皆が飛び降りていく

 見た目から察せられるように恐らく相手は遠距離武器の類を持たない完全なインファイター、であればあのまま
特別席からの銃や術による狙撃で正直倒せない事も無かったが、距離は詰めておきたい
 可能であれば四天王の生け捕り、他の四天王や基地についての情報を尋問する必要があるのだから
 あんな図体の癖して機敏な動きをすると以前仮面武闘会で逃げられたアルカイザーが口にしていた、ついぞ遺跡内では
遭遇しなかったが仮に最奥に到達してベルヴァと一戦交えても倒しきれず逃げられていたかもしれないと
言い切られるくらいには逃げ足の速い改造戦士だ、逃げ道を塞ぐ為にもなるべく距離は取りたくない


   ベルヴァ「アルカイザー貴様かッ!我が基地をめちゃくちゃにしおって!」ギリィ

 アルカイザー「ベルヴァ貴様の悪事もここまでだ、Dr.クラインはどこだ、ブラッククロスの本拠地いはどこにある」


   ベルヴァ「フッ、素直に洗いざらい白状するとでも思ったか?ブラッククロスの四天王を舐めるなよ」



  ドール「"惑星<リージョン>"指名手配20348号ブラッククロス幹部ベルヴァ…遺跡の宝を利用して冒険者を誘い」スタスタ

  ドール「そして拉致して改造戦士にしてきた罪で逮捕します」チャキッ



 銃を構える女刑事に続き魔術師もメカも攻撃態勢に入り半妖少女と貴婦人も鞘から剣を抜く、それを見て心底不快そうに
悪の四天王は鼻で嗤う



   ベルヴァ「はっ!細腕の女子供に貧相な術士の集まりが気取りおって、そうとも
           この基地で組織の戦士を産み出してきたが、こうなっては基地の役割もお終いだ」



   ベルヴァ「最後にここを貴様らの墓標としてやろう!!」ニヤリッ



 そういって、魔人は懐から小さな"リモコン式のスイッチ"を取り出し、親指でボタンを一押し…すると



                   ドォォォン!!  バッグォォン!!


    アセルス「っ!?この揺れは!?それに今の爆発音って…」


   ベルヴァ「フハハハ!こんなこともあろうと王宮と地下基地全体には爆弾が仕掛けてあるのよ!もう遅いッ」

   ベルヴァ「こうなれば時期に全ての爆弾に誘爆してこの王宮は粉微塵に吹き飛ぶ貴様らの命運も終わったのだ!」


 そんなことをすれば自分だって死んでしまうというのに!!彼奴は自らの死を恐れないとでもいうのか?
あるいは死んでも再び蘇る算段でもあるというのか!?自らの生命を試みない蛮勇にルージュは慄いた



   ベルヴァ「さぁ…来るがイイ、"最期の試合<デスマッチ>"を楽しもうではないかっ!」ニタァ



 アルカイザー「くっ!皆、諦めるなコイツを手早く倒して王宮から急いで脱出するんだ!間に合うかもしれない!」


 実際、王宮全体がどれほどの速さで爆炎に包まれるのかは分からない、こうなった以上は迅速に勝利して
退避せざるを得ない…組織の幹部を逮捕して本拠地の場所等を尋問したかったが、こうなってしまった以上は不可能か…ッ

 正義の使者は先陣切って光輝く拳[ブライトナックル]を突き出す、が…


 ベルヴァ「フッ、何故この俺が仮面武闘会に出てるか分かるか?武術の達人が放つ技を見て日々己を研磨する為よ!!」
 アルカイザー「なっ!?攻撃が躱され―――」


  ベルヴァ「貴様の技は武闘会で見切った!俺には通用せんぞ!」ピコンッ![ベルヴァカウンター]


 残像が幾重にも折り重なって見える動きッッ!!筋骨隆々の図太い腕が脚が、瞬時に繰り出されてヒーローを打ち付ける
独自の動きから繰り出された強烈なカウンターを受けてアルカイザーの身体が宙を舞ったッッ!!
713 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/14(月) 01:55:38.80 ID:DLzJgEhM0
ベルヴァ戦のドールさんの名乗りいいよね
714 :続き 金曜日 [saga]:2021/06/16(水) 14:53:02.51 ID:H41N9cL70

 超重量級の重い一撃はスーツ越しのレッド少年の腹骨に折る、フルフェイスマスク故に傍からは決して分からないが
衝撃を受けた彼は吐血し、嫌でも天井を見上げる形になった
 [シンロウ]の王宮闘技場の明かりにヌッと大きな人型の影が割り込む様をバイザー越しに捉える、先のカウンターから
追撃の[ダイビングプレス]で圧し潰そうとする魔人の姿がそこにあったのだ!




      白薔薇「星光の加護よ、彼の者に安らぎを―――![スターライトヒール]」パァァァァ



 打身のアルカイザーが自由落下から地に叩きつけられ、一直線上の真上に全体重を掛けて降ってくる[ベルヴァ]の構図に
幻想的な輝きが割り込んでくる、室内に瞬いた星光に思わず目が眩み「むっ!?」と声を上げながらも標的に
追撃を仕掛けた彼奴を全快したヒーローが寸での所で身を捻り、転がる様に躱す

 折れていた腹骨が[陽術]による奇跡の光で完治したからこそ取れた回避行動



    ベルヴァ「妖魔の女がこざかしい…―――ツッ!!」ズシュッ、ブシャァァ



 塵埃を舞わせた身の上体を起しながら忌々し気に白薔薇姫を睨む四天王の右腿に[精密射撃]が撃ち込まれる
舞い上がった粉塵で相手の姿が目視し辛くとも機動力を削ごうとする女刑事の銃弾が闘技場の床に血飛沫を付着させた




   BJ&K「レーザー射出します、連携の準備を」ビィ―――ッ!

  アセルス「てぇぁぁぁぁぁ!![生命波動]っ」フワッ!

  ルージュ「了解だ!![エナジーチェーン]」キィィィン







            3連携 [ レ ー ザ ー エ ナ ジ ー 波 動 ]





 医療メカが圧縮されたレーザー光線が大口開けた猟犬の牙の様に広がって展開され、獲物を喰らうが如く魔人へ向かう
右腿に弾を受けた相手は回避不可能と判断、小さく舌打ちして両腕をクロスさせて防御の構えを取る
 幾条もの光の線に身を焦がされ身体の外回りを焼くレーザーとは別で翆玉色の思念の鎖が中央
ど真ん中ストレートに飛んでくる

 左右と上方向の逃げ道をBJ&Kの光線で塞ぎ、真正面からはルージュの術が一直線で来るから前方向に抜け切ろうが
後方へバックステップしようとも結局は焼かれるという逃げ道の無さ、故に四天王が咄嗟に取った防御は正しい判断だろう


  ギュィィィン!!シュルッッ!!



   ベルヴァ「むむっッ!?」ジュウウウゥゥゥ!!



 [魔術]の鎖はそのまま腕をクロスさせた[ベルヴァ]の身を焼き―――そこで終わりではなかった


 身に絡みつき縛り上げる、ジリジリと巻き付かれた箇所を焼かれ更に動きを封じられた所へ…




            アセルス「いっけぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」ブンッ




 生命から迸るエナジーッッッ!!

 心の力を解放し、人間の内に眠る潜在能力で浮遊したアセルスは"気<オーラ>"を収束させる
彼女が持つ生命力が形になり、肉体から可視化された黄金の輝きは一本の槍と化した
 アセルスお嬢はそれを投擲槍として魔力の鎖に拘束された悪人へ向けて放つ…っ!相手を穿つのだとッ!
715 :続き 土曜日か日曜日 [saga]:2021/06/18(金) 14:11:40.36 ID:MoOq1xSE0

 生命力の槍が巨人に突き刺さり爆散するッ!!―――元より使用者のアセルスお嬢はこの中で一番生命力に溢れている
この広い世界でただ1人の"半妖"というイレギュラーな種族だ、並大抵の妖魔どころか頂点に君臨する妖魔の君から
血を注がれた蘇りを果たした程の生体エネルギー


 これほどまでに心術の上位術たる[生命波動]と相性の合う人材がいるだろうかッ!!


     ルージュ「やったか!?」


 3連携から織りなす光撃、特に最後の最大火力を受け組織の四天王もあわや爆散四散、短期決着が着いたかと声に出す

…が、しかし…っ!








      ベルヴァ「…。」プスプス

      ベルヴァ「・・・・・・・・フゥぅぅぅ…」






 腕をクロスさせた魔人は、今なお健在であった




     ベルヴァ「今のは…痛かったぞ」



 "気<オーラ>"の一撃を受けた魔人は防御姿勢を解いた…無傷とまでは流石に言わず自慢の筋骨隆々の腕はボロボロで
正直な所ベルヴァ自身、クロスの構えを解く動作だけでもヒリヒリと焼けた痛みが走り出す程だった




    ベルヴァ「今のは……痛かったぞォォォォォォォ!!!!小娘共がああああああぁぁぁぁぁぁ!!」ドウッ!!



 激昂する魔人は爆弾の起爆で振動する王宮を更に揺るがす怒声を張り上げ、腕を振り上げてアセルスへと向かう
痛覚よりも怒りが勝ったのだ、荒ぶる魔人――――否、魔神と化した腕が灼熱を纏う

 全てを滅する"神の一手"…ッッ



      ベルヴァ「死ねぇぇぃぃ!!ゴォォォォッドハァァァンド!!!」ゴァッ!



――――[ゴッドハンド]ッッ!! ベルヴァの[魔人三段]に並ぶ目の前に立つ者を確実に屠ってきた死出への切符
 当たれば間違いなく無事では済まない腕がアセルスに迫り、彼女をまさに掴もうとした瞬間


       白薔薇「 」バッ!


     ベルヴァ「ッ!邪魔をするかならば貴様からだ妖魔風情ッ」ガシッ
     アセルス「白薔薇何を!やめろぉぉぉぉぉぉ――――」



 貴婦人が護るべき少女の前に突如として現れ彼女を庇ったのだ!魔人に首を掴まれた白薔薇は天高く掲げられ
ベルヴァから漲る闘気の爆炎に呑まれた…っ!



           白薔薇の花飾り『 』シュゥゥゥ… フッ



 焦げ付いた白薔薇の花飾りが無常にもアセルスお嬢の前に落ちて消滅した、妖魔の死―――それは遺体すら残らない消滅
716 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/19(土) 20:24:23.58 ID:TwG9KE/A0
フリーザ様!?
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/06/20(日) 23:00:25.75 ID:m5x041L60





                 「[サンダーボール]!!」ビュンビュンビュンッ!!





 声が闘技場に響き渡り光輝く雷球が魔人の背に焼け跡を残した、彼奴が振り向き驚愕の表情を浮かべる…何故ならば






        ベルヴァ「き、貴様は!?馬鹿な―――今この手で殺した筈だっ!?」








              白薔薇「ですが御覧の通り、私は健在ですわ」

              妖魔の具足『 ドラゴンパピー 』バチバチ…!




 死出の旅へ誘う神の一手は確実に妖魔貴婦人を葬った、腐っても四天王の座を担う実力者だと改造巨人は自負している
だからこそ解せない…っ!間違いなく白薔薇姫の身体をこの手で消滅させた実感があるというのに…っ!

 巨人が冷や汗を流す一方で純白の淑女はやんわりと微笑んで茫然としていたアセルスやルージュにご心配おかけしました
そう頭を下げて[妖魔の具足]に吸収した翼竜の力を再び解放する
 襲い掛かる電撃を鬱陶しそうに防ぎつつ魔人は後ずさる…、何故だ、何故生きているのだ!?と
理解が及ばないトリックに困惑しながら


 どのような手品を使ったのか奥義を打ち破られた事実は[ベルヴァ]の思考回路を真っ白にショートさせるには十分で
動きには迷いや戸惑いが顕著に出始めていた
 如何なるの戦士と言えども自分が持てる全てを尽くした切り札を見切られ、防がれるのは心理戦で大きな意味を持つ
一転攻勢に出て戦局を反そうにも今の事例が出来た事でベルヴァの脳裏には嫌でもある考えが浮かんでしまう




       - 得体の知れない先程のトリックでまた自分の攻撃を無効化されるのではないか? -




 一度疑念を抱けばそれは凝り固まって"疑心暗鬼"となる


 防戦の現状を打破すべく攻めに転じるのであれば当然の如く、火力を惜しむ必要など無いがそれを無にされるのであれば
出方を変える必要もあり威力重視の隙が生じる大振りの技なんかを撃って妖魔貴婦人の力で空振りに終われば代償は高い



     ドール「はっ!!」BANNG!

    アセルス「[烈風剣]」バシュンッ

  アルカイザー「唸れ[アル・ブラスター]!!」パシュンパシュンッ!




   ベルヴァ「ぐぅぅ…えぇいい!こざかしい!」


 王宮『 』ドカァァン!…グラグラ、ゴゴゴゴ…


   ベルヴァ(王宮の崩落も近い…っ とは言えこの流れでは奴らが瓦礫の下敷きになる前に俺が敗北し逃げられる)


   ベルヴァ「おのれぇぇぇ…ッ [雷炎パワーボム]」ダッ!!

718 :続きは 火曜日か水曜日予定でしてよ [saga]:2021/06/20(日) 23:02:45.79 ID:m5x041L60

 このままでは自分はそう遠からずに敗れアルカイザー一味はまんまと王宮から逃げ果せてしまうと悟り
謎が解けぬまま魔人は大技を仕掛けに向かった、最早ブラッククロス幹部としての意地であったッ!

 肉体的に一番脆弱な紅き魔術師を仕留めようと大分傷を負った巨人は駆けだした、ルージュは咄嗟に銃を構えて迎撃を
試みるが間に合わない、相手の腕が伸びる方が速い

 殺人的な投げ技を掛けるべく巨人の魔手が彼を掴もうとしたその瞬間だったッ!!



     白薔薇「 」バッ!
    ベルヴァ(ッッッ――!?この女またしても…いや、どうやってだ、俺とこの小僧の間にいつの間にッ)ガシッ


 二人の間に突如として現れた白薔薇姫、技を掛けるべく動いたベルヴァはもう止まれない…っ!
無駄だと理解しつつも勢いを殺して急制動するなど無理な段階まで来ている
 大地踏みしめ彼女の身体を持ち上げたまま必殺の一撃を喰らわせるべく天高く飛翔し……そして――――



        ベルヴァ「……」

        ベルヴァ「……ア"?」(白薔薇姫を持ち上げ逆さまにした状態)






 ドール「」←銃を構え跳び上がったベルヴァを見上げる

 アセルス「」←術の詠唱を始める

 アルカイザー「」←[レイブレイド]を構える

 ルージュ「」←咄嗟に庇ってくれた白薔薇を捕まえ飛翔したベルヴァを見上げる

 BJ&K「」←傷ついた仲間を治療する



 白薔薇「」←"白薔薇姫"を持ち上げたベルヴァを見上げる





             ベルヴァ「――――――――!!!」




 改造の賜物で限界を遥かに超えた動体視力を得たベルヴァは跳び上がってから大地を見下ろした、そして見てしまった


 "自分が掴んだ女と同じ女が何故か地表に立っていて自分を見上げている"という光景を…ッ!白薔薇は二人居たッ!!


  ズドンッッ!!


 殺人プロレス技が炸裂し重力と大地の引力、そして悪鬼の剛腕によって妖魔の貴婦人は石畳の上に頭からめり込む
常人であれば間違いなく首の骨が折れるどころか柘榴の様に頭が割れて脳髄をぶちまける惨事だ
 上級妖魔の彼女はその可憐な花飾りを散らして消滅した―――妖魔の死、それは遺体すら残さず消滅するというもn――



      ベルヴァ「き、貴様ァ!!そういうことだったのかぁッ!!」

       白薔薇「まぁ、バレてしまいましたわね」


 口元に手を当て、あらどうしましょう、目が合ってしまったから気付かれたとは思いましたが…とおっとりマイペースに
困った様な顔で笑う白薔薇にベルヴァは怒りでワナワナと震えた、自分の致死技を回避してきた手品のタネを漸く理解した






  白薔薇「揺蕩うは幻妖の水鏡に写せし我が御身―――[ミラーシェイド]…堪能して頂けましたでしょうか」


719 :続き金曜日か土曜日 [saga]:2021/06/23(水) 22:36:12.85 ID:GLJgREOY0


   アルカイザー「これなら反撃もできまい![カイザーウイング]」ヒュバッ!

     アセルス「もう一度だ![生命波動]っ!」ブンッ



 跳び上がった正義の使者は手にしていた輝く剣を天に掲げ悪を断罪せんと振り下ろす、[飛燕剣]に似た剣気が一直線に
大技直後の硬直で動けない魔人へと飛んで行きそれに追従するように生体エナジーの槍もまた敵を穿たんと放たれた
 続いてレーザー、銃弾、爆裂魔術、幻夢からの来訪者…

 どんな勇者も猛者や英雄であっても例外なく多くの敵の連携には膝をつく


 驚異的なタフさを持つベルヴァと言えどもそれは当て嵌まる、元より3連携が織りなす光のシャワーを浴びて
既に両腕も並みの生物であれば使い物にならない怪我を負っていた
 怪物もいい加減ここが年貢の納め時と言えよう


    ベルヴァ「…ハァ、ハァ…お、俺が、こんな奴らにこうも…っ!!」


   ―――――年貢の納め時、だ







    ベルヴァ「…く、くくくっ、はははは!はーっはっはっ!!」






   ――――――納め時、だからこそ…足掻くのだッ!!とっておきの悪足掻きをッ





    ベルヴァ「ウオオオオォォォォォォーーーー!!」グオォォォ




 女刑事ドールは高笑いを始めた魔人を見て薄ら寒いモノを感じた、仕事柄追われる立場にある犯罪者という物を
嫌になるほど見てきた誰も彼もが捜査官の追跡を免れず逃げ場の無い袋小路にぶち当たり形勢逆転は不可能と悟る
 その時の表情は殆どが共通して焦燥、諦め、あるいは現実を受け入れられないと茫然自失していく顔
手配犯の中にはそこから更に先へ…悪い意味で一歩先の段階へ飛び立つ者もいた

 正しく目の前に居る笑い出した魔人がその部類に入る人物だ、敗北を悟りトチ狂った様に笑ったかと思えば雄々しく叫ぶ
今生の別れ際に自分の存在をこの世界でこれからも生きていく者に認識させようと
 まるで自身の生がここに在った事を主張するかのように大声を上げて腕をを振り上げる姿をドール捜査官は目にした


 自暴自棄、せめて一人でも多く道連れにして死んでやる、せめてお前達の魂も冥土へ引きずり込んでやる


 追い詰められたことで狂人の発想に至る犯罪者の思考そのものと言えよう


 ドールの声が全員に退避命令を出そうとするより先にベルヴァは渾身の力で腕を地面に叩きつけた
言葉通りの意味での[怒りの鉄拳]は王宮全体を揺るがす[地響き]を招き、柱や天井の崩落へと誘発させる
 仕掛けられた爆弾によって唯でさえいつ崩れても可笑しくない状況でこれだ、滅びゆく自身と運命共同体に運ぶ算段ッ



   崩れていく天井『 』バッコォン!ガラガラ…!


  アルカイザー「っ…おのれ[ベルヴァ]め!なんということを」

    アセルス「ああっ!!そんな出口が今の崩落で完全に塞がれてしまった!」


  ベルヴァ「クハハハハ!俺は死ぬ!!だが貴様らも此処で瓦礫の下敷きになって死ぬのだ!もはや脱出不可能よッ!」


 [地響き]を発生させるために打込んだ最期の一撃で言葉通り彼奴の腕は"お釈迦になった"ようだ、あらぬ方向に曲がり
痛みすら感じない…完全に神経が死に腕の腱も断たれた
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/25(金) 15:43:46.51 ID:Esm/b0R60
おつ
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/06/26(土) 22:59:02.19 ID:wc/w8o8Y0

 狂気を宿す眼光のまま魔人は高らかに笑う、命の次に大切にしていた自慢の剛腕は肉の塊に、そして己が生命さえ捨てる

 対価は憎き敵達の人生…四天王ベルヴァは強敵と死闘の末に両者痛み分けに持ち込めたのだ
もう何一つとして思い残すこともあるまい



             ルージュ「まだだ!まだ逃げ道はある…っ!」


 絶体絶命の窮地に立たされて尚そう言葉を発したのは紅き法衣の術士だった
完全に出入口が断たれ、この場に居る全員が最大火力で瓦礫の山を吹き飛ばそうと尽力しようとその頃には粉微塵になる
誰がどう見ても絶望的なその状況下でもまだ希望を捨ててなかった


   ドール「なにか手があるというの!?」

   白薔薇「…!!そうですわルージュさんでしたら"アレ"が使えるのでしたね!」


   アセルス「えっ?どういうこと!」
 アルカイザー「事情は呑み込めないがまだ助かるんだな!?」


 妖魔の君の血を注がれたアセルスもアルカイザーに変身したレッドでさえも流石に今回ばかりはお手上げかと
焦りを感じていた最中で仲間に視線を向ける


 そう…レッドもドールもBJ&Kもまだ実際に見た事も無いとっておきの手段、アセルスは"当時"気絶していたから存在は
知っていたが直ぐには思い当たらなかった"アレ"だ




        ベルヴァ「な、なにをする きさまら――!」ハァ、ハァ



 出血量も酷く息も絶え絶えで、視界も薄れてきた魔人は目を見開き内心で叫ぶのだ
「ありえない!唯一の逃げ道は潰した逃げれる筈がない、この俺様が自分の命を犠牲にしたのだぞ!!!」と
 ここで貴様らは俺と運命を共にすべきなんだ!そう叫びたかったが咽び咳き込む




       ルージュ「みんな!僕にしっかり掴まってて!」

        BJ&K「掴まりました、ですが一体何を」


 仲間達が全員ルージュの身に触れる、そして彼は願わくばあまり使いたくないと思っていた祖国からの支給品を取り出す
緑髪の少女はそれを見て漸く何をする気か解った、[ルミナス]で紫の血を流しながら意識不明になった自分と白薔薇を
大衆の目に触れさせない為に[ドゥヴァン]まで一気に移動した彼だけが使える方法を…!




       ルージュ「異次元への扉よ開け![ゲート]―――[シンロウ]!!」バシュッ!!




 叫ぶと同時にルージュを中心にアルカイザー達は蒼い光に包まれていく、光は深海を思わせる輝きで
水泡の様に膨らんだそれに包まれた一行は瞬く間に何処ぞへと消えていった…っ!




        ベルヴァ「…」ハァハァ…

        ベルヴァ「…。」



   倒壊していくシンロウ王宮『』ゴゴゴゴゴ…!ガラガラ…



    ベルヴァ「…く、くくく、ははは…うぅ、ぐすっ、くははっ、くひひ…はーっははははははは!!!」

    ベルヴァ「あひゃひゃひゃひゃひゃ…っいーひひひひひひっ!!――――――畜生ぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


722 :続き明日 [saga]:2021/06/26(土) 22:59:43.18 ID:wc/w8o8Y0




【双子が旅立って9日目 午前 8時22分 [シンロウ]】



 チチチチチ…



 ――――フッ!



 アルカイザー「とっ、ととと…みんな無事かっ!?」バッ

    ドール「ここは[シンロウ]の遺跡…!?」


 蒼い光に包まれたと思えば彼らは[シンロウ遺跡]に移動していた
魔法王国の人間だけが持てる[ゲート]の術による空間移動だ、祖国から支給された[リージョン移動]を媒体とすることで
使用できるのだが…




     - ルージュ『! この宝石は…』 -

    - 教員c『[リージョン移動]、知っての通りお前たちがそう呼んでいる<ゲート>の術を使う為の媒介だ』 -


  - ルージュ『うっ…!?』 -

  - 教員c『?…どうした』 -


-ルージュ『…質問ですが、僕がこの旅で一度も<ゲート>を…ひいてはこのアイテムを使わないのは構いませんね?』-





 旅立ちのあの日、教員から媒体となる蒼い宝石を受け取った時に言いようの無い不快感を感じ取った
全身総毛立つような嫌な感触…昔から霊感が高い所為か感が鋭い所はあった
 これは単なる思い過ごしかもしれないし、抹殺対象の兄をどうしても連想させるカラーだからそう思うだけかもしれない
理屈は分からないが自分は[ゲート]の術を…[リージョン移動]をあまり使いたくないのだ、なんなら何処か適当な場所に
投げ捨ててもいいとさえ思っている


 言い知れぬ謎の不安、妙な胸騒ぎを覚えるから…流石に[ルミナス]で白薔薇姫に涙ながらに懇願された時や今回の様な
使わなければ全員死ぬというやむを得ない場合は致し方ない





       ――――――ドォォォォォン!!ドンドン! ボッゴォォォォン!




        MAP上の[シンロウ王宮]跡地『 でかいクレーター 』





  アセルス「こ、この振動に音は…」グラッ
   白薔薇「どうやら王宮が爆発したようですわね、見てください彼方の方角を」

  ルージュ「うわっ…なんだあの爆発、あのお城あんなに爆弾仕掛けられてたのかよ…」タラーッ


 今更ながら嫌な汗がどっと噴き出す、[ゲート]を使っていなければあの爆炎に呑まれて自分達もこの世には居なかった


アルカイザー「君達のおかげで助かったよ、ありがとう!…名残惜しいが私は次の任務があるので――さらばだっ!」バッ


   ルージュ「あっ、アルカイザーさん!―――行っちゃった…あの人もお仕事大変なんだなぁ…」

    ドール「…」ジーッ
723 :続き水曜日か木曜日 [saga]:2021/06/27(日) 22:07:05.64 ID:V4FtrY/p0
―――
――
―

【双子が旅立って9日目 午前 9時01分 [シップ発着場]】


    レッド「よっ!ルージュ無事だったんだな」

   ルージュ「あぁ君も無事で本当に良かったよ」

    レッド「俺だけ先にブラッククロスの奴らに改造されそうな時にアルカイザーが助けてくれたからな〜」ハハハッ


   ドール「…。」ジーッ


 [シンロウ]の王宮は跡形もなく消し飛んだが幸いにも人的被害は無かった、事前に避難させたおかげで発着場に
人々は集まっていてスタッフが忙しなく動き回っている姿が目に入る
 王族達は家臣らと今後どうやって王宮の…いやこの"惑星<リージョン>"の財政や信頼を再建していくのか
観光旅行客は我先にと他所へ逃げ出す為に"宇宙船<リージョン・シップ>"の席を取るべく受付に殺到…
いつかの[マンハッタン]で見たような光景だ


  ドール「レッド君、それに貴方達も少し時間を貰えるかしら?」


 女刑事はここでは少しと場所を変える為に一行を連れて受付カウンターの方へと歩き出す
あえて場所を移そうとする辺り公にしたくない会話内容なのだろう、汗水流すシップ発着場のスタッフに
ドールは[IRPO]隊員であることを証明する身分証を提示して秘密裏に停泊させてある[IRPO]専用のシップへと通してもらう

 停泊中のパトロール隊員専用シップは[シュライク]でもよく走っている自動車のパトカーとかいう車に似たフォルムで
シップなだけあってそこそこの広さがあり作戦会議に使われるブリーフィングルームへと通された


 ルージュ「あのぉ…なんでここに連れてこられたんですか?事件に関わったから軽い事情聴取的な奴だったりします?」

  ドール「いえ、今更素性に関しては問いませんヒューズからも色々と伺っていますからね」

  白薔薇「でしたら一体…」



  ドール「貴方達に我々が調査中のブラッククロスに関する資料を渡そうと思っているのよ」



  レッド「!!」

 アセルス「えっ!?待って!それって良いの?…私達一応は一般市民よ、なのに警察が追ってる秘密結社の資料って…」



  ドール「そうね、本来なら一般人である貴方達に見せることは良くないわね」


 アセルス「ならどうして…」


  ドール「…この案件は私達が当初から長年追っていた事件
        それをここ数日前に突然現れて組織の事を調べ始めたヒーローがいる、アルカイザーよ」


  ドール「…認めざるを得ないわ、私達パトロールだけの力ではブラッククロスは倒せない」


  ルージュ「??? あの…それと僕達に何の関係が?確かにアルカイザーさんとは知り合いですけど…」

   レッド「」ダラダラ


   白薔薇「? レッドさんもしや体調が優れないのですか?汗をかいていらっしゃいますが…」

   レッド「えっ、あ、そうかもなー…あはは」ダラダラ


   ドール「早期に事件が解決すればそれだけ多くの人が助かる、市民の犠牲者をこれ以上出さない為にも」

   ドール「事件の調査資料を渡したいのよ、でも彼は正体不明で何処にいるのかさえ不明」チラッ

   レッド「」ビクゥッ


  ドール「……だから私は思うのよ、"何かと彼に縁のありそうな貴方達"に渡した方が彼にも間接的に届くってね」ニコッ
724 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/06/29(火) 17:50:31.25 ID:US/RoTJC0
さすがクールな大人の対応や
725 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/07/01(木) 08:27:32.18 ID:WInuAAGY0

 レッド少年は気が気じゃなかった…ヒーローの掟を破った場合待ち受ける末路を知ってるがゆえに生きた心地がしない
あからさまにバレてる、女刑事の反応は彼にはそうとしか思えなかった

 だが依然として我が身に何も降りかからないところを見るに[サントアリオ]の判定としてはセーフなのだろうか?


 結局ドールはその後もアルカイザーの正体に迫る様な発言はせず書類ファイルを手渡して
ブリーフィングルームを後にしていった
 [ゲート]の術を使えば一度行った事のある土地に瞬間移動が可能だから[シンロウ]をすぐに発つことも可能ではあったが
激戦を終えた後だ束の間の休息は取りたい、幸いにもドールの御厚意で一行を[クーロン]まで連れて行ってくれるらしい
冷暖房までバッチリ完備のパトロール御用達のシップだ
 四天王との戦闘行為で消耗した術力や技力の回復も兼ねて仮眠でも取りながら運んでいただくことにしよう
[金のカード]の為にも今は宿代だってケチりたい時分だ


 遺跡探索の結果は剣が一振りに精霊銀を使った鎧や腕輪、ピアス、それに[結界石]なんかだが


 クレジットがまるで貯まっていない…[金]を買う現金が足りてないのだ


 金稼ぎのつもりで当初[シンロウ]へ来たのだがその本懐が果たせなかった以上は他の場所で金銭を稼ぐ他ない



 ルージュ「遺跡探検じゃ思ってたよりは儲からなかったね…」ペラッ

 アセルス「ゲンさんの話だと古代船の残骸からはメカのパーツや1200クレジットが手に入ったらしいけど…」ペラッ



 曰く、知り合いの剣豪が旅の共をするロボの記憶の手がかりを求めて潜り込んだ"宇宙船<リージョン・シップ>"の残骸
そこで金銀財宝を見つけたり[イクストル]とかいうデカい蝙蝠に危うく殺されかけたり色々あったそうな
やはり他人の成功談の様に一攫千金とは行かないものか



  レッド「とほほ…世の中世知辛いよなぁ」ペラッ



 渡された書類ファイルをペラペラと捲りねがら秘密結社の情報見ていく
特に今後レッドの敵討ちの旅に関わる重要なソレを…



   白薔薇「あら…この"キャンベル"という方のビル…」






    - 『白薔薇(…?あの塔、…いえ、"ビル"というのでしたね、妖魔の気配がしますが…)』 -





   白薔薇「…やはり私が[マンハッタン]で1人逸れてしまった時に感じた妖魔の気配の」

   レッド「…キャンベル社長のビル、か怪しいとは分かってたさ」



    BJ&K「正確な所在は不確かですがこちらの書類には[クーロン]に基地があると推定されていますね」ペラッ

   レッド「あの街かぁ…あそこ迷路みてーに入り組んでるからなぁ、見つけられっかなぁ」ポリポリ


  ルージュ「…[クーロン]…ハッ!?」ピコーン


    - エミリア『何かあったらそこを頼ると良いわ、私が居なくても、その名刺さえ見せれば』 -

    - エミリア『グラディウスの誰かがちゃんと手を貸してくれるから』 -



  ルージュ「確かここに」ゴソゴソ

貰った名刺『お困りごとなら何でも解決!裏組織 グラディウス![クーロン]イタリア料理店、詳しくは店前の女まで!』

726 :続き土日のどっちか [saga]:2021/07/01(木) 08:29:07.42 ID:WInuAAGY0


   ルージュ「エミリアさんから貰ったあの時の名刺…これなら―――」ボソッ


 [マンハッタン]で昼食を取っていた時に渡されたグラディウスの名刺…餅は餅屋に、蛇の道は蛇に
暗黒街に息を潜める犯罪組織の事を知りたいなら地元に居る裏社会の住人に聞くのが早い

 ルージュが仕舞っていたソレを取り出し提案しようとしたその時であった






       レッド「ッッ…!!」グッ



 書類にどこよりもハッキリと書かれていた四天王の所在地を見て、レッド少年は用紙を掴む指先に思わず力を込めた
険しい顔立ちに何事かとアセルスや白薔薇も同じく横から書類を盗み見た――――そして顔に陰を落とす


  ルージュ「えっ!?み、皆どうしたの!?」


     レッド「〜〜っ……あぁ、いや、すまねぇ…なんつーかよ、これはな…」

    アセルス「嘘よ…あの人、あんなに親切だったのに…」

     白薔薇「関係のあるお方だとは思っていましたが現実というのは時に残酷なものです」



 ルージュは名刺を仕舞って白薔薇から書類を見せてもらう、そこにはハッキリと四天王の名前と基地所在が記されていた














          ルージュ「…なっ!?……メタル、ブラックさん…?」









 そこには面識のあるメカの顔があった、忘れもしない美しき[京]の風景、夕日に照らされた[書院]
見ず知らずの旅人であった自分達のカメラ撮影のお願いを聞いてくれて更に[剣のカード]の情報や[[サムライソード]譲渡
 世話になった身でなのだ…



  アセルス「…私が[幻魔]に相応しい腕前を身に着けるまでの間使用する剣ってことで今使ってるこれ」チャキッ

  アセルス「この[サムライソード]はあの人から貰ったものなんだよね…」


   レッド「……。薄々、解っちゃいたんだ、巡礼者が入っていくのがあの時カメラ越しに見えちまったからよ、けど」

   レッド「やっぱ、さ―――認めたく無かった、っていうのかな…これは、な」



  ルージュ(…。)

  ルージュ(裏社会に属するメカだとは感づいてた、でもエミリアさんみたいな良い裏組織の人だったり)

  ルージュ(実はヒューズさん達みたいに正体を隠してるメカのパトロール隊員かもって信じたかった)


  ルージュ(…そっか、…そうか………嫌な予想っていうのは的中しちゃうんだな…)
727 :続き 水曜日か木曜日 [saga]:2021/07/04(日) 23:13:02.20 ID:BcpE90610

 
  ルージュ「…。[京]に行ってみるかい?君が行くのなら僕も付き合うよ」

   レッド「お前…」


 知らん仲じゃない相手と親友が刃を交えるかもしれないのだ、想う所はある
話し合いで穏便に―――済むとも思えないが一抹の希望でもあれば藁を縋る思いになるのが人間の心情というモノ

 宿命を背負った紅き法衣の魔術師もまた何処にでもいる普通の人間だったということだ



  ルージュ「僕の旅そこまで急がなきゃいけない旅じゃないからさ」

  ルージュ「アセルス達は暫く[IRPO]に保護してもら「私達も行くよ!」


 折角[IRPO]隊員のドールとお近づきになれたのだから、二人でメタルブラックの基地へ乗り込んでいる間
彼女らには警察で保護してもらってはどうかと提案しようとしたところバッサリと案は切り捨てられる
 女性陣、特にパーティー中最年少のアセルスを今回の一件に関わらせるのは流石に憚られる
先述の通り話し合いで穏便に済めばいいのだが、それは単なる都合のいい理想論に過ぎず十中八九メタルブラックとは
一戦交えるだろうと想像はできる


 友人としてレッドをこのまま単身で命の危険性がある敵地に行かせたくはない、今日だって四天王の1人[ベルヴァ]と
危うく無理心中しかける激闘をルージュ自身が体験したのだ脅威性は十分に分かっている
 かといって自分がレッド少年に付きっ切りになればその間[ファシナトゥール]からの刺客が来た時
アセルス達を護れる者が単純に減る


 あれから一行に刺客と遭遇しないのは運がいいだけなのか、アセルスの服装を水色パーカーに変えたからか
どちらにしても戦力が分散されればその隙を突かれた時に対処しきれない、故に警察に暫く匿って貰いたいのだが…



  アセルス「私達にとっても、知ってる人だから…無関係じゃないからっ!」


   レッド「姉ちゃん…」
  ルージュ「アセルス…」


  アセルス「説得に失敗したら二人はメタルブラックの事を……その、討たなきゃ、いけないん、でしょ…」

  アセルス「戦いになったら、どちらかが倒れるまで戦いが終わらなくなる」



  アセルス「二人が敵の基地から生還してきたらそれは彼が破壊されてしまった証、逆に帰ってこなかったら
                 それはメタルブラックは助かるけど烈人くんとルージュは死んでしまった証になる」



  アセルス「…きっと後悔すると思うんだ、その場に居合わせなかった事を」

  アセルス「私だって説得時に声を掛けられたかもしれない、私だって二人の命が危ない時に助けられたかもしれない」



  アセルス「"もしも自分がその時その場に居たら何かが出来たかもしれなかったのに"――そう後悔するのは嫌だ」




 心情は、理解できる。




 以前[ヨークランド]でレッドが言ってたその時の自分がベストと思う道を貫くこと、その結果がお世辞にも良い成果と
呼べなくて悔やむ事はあっても"間違った"とは思いたくないという趣旨の話

 ここで一緒に行かなければその時々で取れたかもしれない選択肢の幅も縮まる
未来の選択肢を増やさないという『選択肢』を今ここで選んでいることになる、それは彼女にとってはベストではないと



   レッド「…。」

   レッド「最悪の場合になったら覚悟は決めてもらう、それが条件だ」

  アセルス「…。」コクッ
728 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/05(月) 12:19:30.41 ID:MwvBlh1k0
乙
レッドとアセルスが揃ってると会話の主人公感がすさまじいな
729 :今回此処まで次回日曜日か月曜日 [saga]:2021/07/08(木) 22:02:44.28 ID:g0jfdCYl0


   白薔薇「では次の行き先は決まりですわね」


 彼らのやり取りをそれまで静観していた貴婦人が声を発する、アセルス嬢の付き人として元より何処までも同行するのだ
流れとしては白薔薇姫も来ることになるのだろう
 視線を合わせて「白薔薇、付き合わせちゃうけどお願い」と言葉にせず眼差しで語る少女に対して彼女は優しく笑う


 方針が決まったところで次はどのように潜入するかだ、事情を知らずにドールと共に遺跡探索に向かって罠に引っ掛かり
なし崩し的に[ベルヴァ]の基地を叩いた今回とはワケが違う


 今度は明確にこちら側から攻め込む姿勢になるのだ、半ば偶発的な事故で迷い込むのではなく


 [傷薬]系の道具はもちろん、装備の一新から所在が判明している敵基地の最も警備が手薄になる時間帯
入口の隠し通路を初めとする侵入経路への理解

 準備できることはたくさんある





  レッド「…爆弾」ボソッ


  ルージュ「へ?」



   レッド「いや、今回俺達がブラッククロスの基地に殴り込みに行くだろ?」

   レッド「んで準備する物でちょっとだけ考えたんだ、奴らの秘密基地は残しておいても百害あれど一利なしってな」



 レッドが調査ファイルをペラペラと捲りながら告げる、各地にあるブラッククロスの拠点は各々が何かしらの役割を持つ
例えばここ[シンロウ]の基地なら倒した魔人が言っていたように屈強な冒険者や遺跡探検家を捕らえて人体改造手術を施し
組織に忠実な怪人や戦闘員に変えてしまうと


 謂わば、ここの基地は役割としてなら人員補充―――強者を見つけては組織の人手とする役割だ


 [マンハッタン]にあるキャンベルのビルなら表向きは女性受けするブランドメーカーだがその実態は兵器開発工場だ
生活必需品からファッションに化粧品、重火器まで何でも事業の一環だと
 表社会の流通ルートから足を探らせずに裏社会にある各拠点に武器を回すのが仕事
表向きは法に触れない正規の売買、受け渡しにしか見えない




 唯一[クーロン]にある所在不明の基地は役割が何なのか不明、憶測だが戦闘員の育成、戦術指南、各地での破壊工作など
テロ行為を行う実働部隊が控える兵舎拠点なのではないか?と書かれている




 そして問題の[京]だがあまりにも異常な麻薬の密売人の検挙率とヤクの貿易ルートから察するに
組織の財布の紐を握っているのがこの基地の役割なのだろうなと分かる
 麻薬密造施設があり、そこで造られたブツを売りさばいては金を貪り各拠点へ儲けた資産を送るシステムだろう



 デカい組織であればあるほど、維持や運営には莫大な資金や資源を要する
個人ならともかく、組織という一つの集合体にとって金の流れは血液の流れる生命線そのものと呼べる
 それを切ってしまえばどうなるだろうか?




     レッド「この書類通りなら麻薬の密造釜があるかもしれない、なら時限式の爆弾を仕掛けられねぇかなって」

    ルージュ「…なるほど、[クーロン]ならそういうのも売ってるかもしれないしね」


 あとはこの基地捜査を担当する"ラビット"なる隊員とコンタクトを取れるようにしたい
話し合いは順調に白熱していくのであった

―――
――
―
730 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga!蒼_res]:2021/07/12(月) 23:23:25.13 ID:bHbg1V8V0















            …ん?もう時間か、わかったから急くな














 折角、相手方の本拠地を見つけたからには準備を万全にして潜り込みたい


 わざわざこうして[ゲート]で[クーロン]まで戻ってきてしっかりとした睡眠まで貪ったんだ



 モンドとやらの基地の全容、隅から隅まで調べて優賞を授かるとしよう


731 :今回はここまで 次回土曜日か日曜日予定  リュート編ラスダン突入!!! [saga]:2021/07/12(月) 23:25:09.98 ID:bHbg1V8V0
―――
――
―


【双子が旅立って9日目 午前 11時20分 [ワカツ]】


 転移魔術によって蒼き魔術師と機械団体、地下組織の女構成員2人に地元民の剣豪とスライムそして今回の一件に置いて
おそらく一番因縁があるであろう青年が再びこの地へと舞い戻ってきた

 目指すべくはpzkw�Xが転落事故を起こしたあの裂け目、偶然の賜物で見つけ出したモンド執政官の秘密基地に続く大穴だ


     アニー「…。」


  -  暴走メカにしては地層の脆さから溝に近づいてこない辺り賢いAIだな…と  -


     アニー「今にして思うとあの[メカドック]や[キャンキャン]は番犬だったのかもしれないわね」ボソッ



 道中の敵を切り伏せながらアニーは独り言ちる、荒城を彷徨う"暴走メカ"にしては溝への落下を警戒するなど
随分と優秀なプログラムが搭載されていたなと妙な引っ掛かりを覚えていた
 [ワカツ]大空襲の際にトリニティ政府が地上掃討に放ったメカの残党がこの"惑星<リージョン>"に蔓延るメカ達だ
つまり相当古いブツで尚且つ碌すっぽに整備もされず野晒しになった物


 "人間<ヒューマン>"と違い"メカ"という種族はコアさえ無事ならいつまでも生きられるが
外付けの"肉体<ハードウェア>"でどうとでもなり得る、それこそ[追加メモリーボード]が1つ付いてるか否かで
知能指数が大幅に増減するのだ

 老い衰えて性能が悪くなる有機生命体の脳みそと彼らメカ族の半永久的に存続できる知恵の回路はその辺が違う



 …極稀にT-260の様な"心臓部のコア<ソフトウェア>"の面で問題が応じて知識や記憶の欠落、AIの性能低下というのも有るが





 何れにしてもあの近辺に居たのはモンド氏が持ち込んだ番犬と見ても良いのかもしれない


 木を隠すなら森の中、機を紛れ込ませるなら同じく暴走機の群れに


 渡航禁止とは言え条件さえ満たせば来れる土地だ、何らかの間違いで勘のいい旅人が自分の基地を見つける可能性がある
暴走メカに襲われて落命という事故に見せかけた抹消、あるいはそれとなく基地入口の裂け目に近づけない様に立ち回る
 そんな役割だったのかもしれない



   ナカジマ零式「ふ〜、どーにか此処まで戻ってきましたね〜」スィー

      pzkw�X「あぁ、こっから落ちた時は流石に肝が冷えたな」


     エミリア(肝?メカに肝なんてあるのかしら?)ロープ バサァ


 崩壊した城壁の一部に縄を括りつけたエミリアは機械達の真横に立ち暗黒街で買ってきた登山用のそれを下す
人間<ヒューマン>組、メカ勢の順に降りていき最後はスライムが縄を処理して飛べるナカジマ零式に乗せてもらって降りる
 それで侵入した形跡もちゃんと消せる仕組みとなるだろう



    ゲン「…わりぃが俺が一番乗りさせてもらうぜ」グッ

  リュート「ゲンさんが先に行くのか」


 力強く縄を握り底の見えない大穴へ降りて行こうとするのは亡国の剣豪であった、リュートはそんな彼を見て思わず
声に出していた「先に行くのか」と、何時でも酒を飲むことを忘れない漢が基地を発見してからは[クーロン]一時帰還後も
この道中での戦闘終了後でさえ常に持ち歩いてる一升瓶を飲んでいないのである、―――明らかに様子がいつもと違った


    ゲン「へへっ心配すんなって手を滑らせてそのまま転落なんて情けねぇ真似しねぇよ」


 リュートはそうじゃない、と口を開こうとするも剣豪は彼の言葉を待たずに先に降りてしまった…、彼らしくない逸りだ
732 :続き水曜日か木曜日 [saga]:2021/07/18(日) 22:05:59.49 ID:xbCkABq00

 かくして[モンド基地]への潜入に成功した彼らは周囲に警戒しながら移動を始める
入口から入って一本道に進み、道中見張りと思われるメカや雇われの妖魔やモンスターを蹴散らし巨大な昇降リフトが
設置されている部屋へとたどり着く


    レオナルド「斜行プラットホームリフトかぁ、おそらくそこのパネルで下層へと降りていけるだろうね」


 基地の構造上、地下へと何階層にも渡り降りていくが故の造りだ
地層を掘り進めて搬入した建築資材を注ぎ込み築き上げた地下基地は堅牢な内壁や床からして
簡単に崩壊はさせれない事が手に取るように分かる


  リュート「パネルってのはこれかい?」ピッ
  リュート「どわっ!?」ガションッ、ウィーン…


 ほんのちょっと指先が触れただけでリフトは稼働し出して乗っていた全員を地下へと案内し始める
下層に居る見張りのモンド私兵は当然ながらこの事態に反応してリフト乗り場へと駆け込んでくる
"予定にも無いリフトの稼働"があったのだから当然だ
―――
――
―


  ワンダードギー「どうなっている!?今日はモンド様は会議に出ていて基地にお戻りになられない筈だぞ!?」ドタバタ



 下位妖魔の[ワンダードギー]は愛用の[ワンダーランス]を手に通路を駆け抜ける
人間社会に上手く溶け込めない妖魔の大半は浮浪者として物乞いや強盗紛いな方法でその日を生きる者が多い
 もしくは野垂れ死にかどんなに惨めであっても同種族から一度は[ファシナトゥール]を出た身と蔑まれてでも帰国するか


 そんな下位妖魔の中にはのらりくらりと人間社会でなんとかやっていける存在は居る
起業に成功したり自分の工房を持てたり様々だ

 然して"社会で成功した妖魔"の成功、というものが全て真っ当なモノとは言い難く
中には当然後ろ暗い経歴での成り上がりをした者だっている例を挙げるなら悪の秘密結社の改造手術を自主的に受け
幹部の地位に立った者、仮面をつけた野心家とトリニティ政府の機密に触れようと目論む者



  この[ワンダードギー]も所謂"同じクチ"という奴だった



 敵ランク1というカテゴリーに位置付けられ、半ば逃げるように飛び出た故郷たる妖魔の都でも人間社会でも
同種族、他種族から嗤われ続けたが故にいつの日にか世界を動かす存在になりたいと、成り上がりを夢を見た野心家である


 元来、妖魔という種族は努力を忌み嫌う。

 生まれついての才、能力の高さ…身分を全てと考える一種の選民思想的なモノがある
世の中にはその唾棄すべき努力などという行為を重ねに重ね妖魔の君の位を受けた者――[時の君]と呼ばれた存在も居るが


 何れにせよ例外を除いて、大概の妖魔は日頃より鍛錬や学習に励むことはない



  ワンダードギー「クソ!見張りは何してやがる…監視カメラの映像は、…なんだコイツ等は?」カチカチ、カタカタ…



 さて、そんなド底辺に位置する妖魔の彼が何故[モンド基地]の見張りとして立っているか
先述の通り彼は政府認定の危険度としても最弱の烙印が押された存在だ、…理由は大きく言って2つ

 1つ目は雇い主のモンド氏は最悪の場合いつでも"蜥蜴の尻尾"として扱える駒それこそ金で動く浮浪者を必要としていた
 2つ目は…


  ワンダードギー「基地全体に警報を鳴らす!侵入者あり!繰り返す侵入者あり!場所は―――」カタカタ、ピッピッ!



 妖魔という種族は機械を努力と同じくらいに忌み嫌い、だからこそ理解が薄く知識の学習と伝播が無い
専門的な技能の教育機関や教導する者が居ないのだから総じて機械音痴という現代社会にあるまじき欠点が生じていた
 厄介極まり無いことに『機械は汚らわしい存在』というその認識が
個人レベルなら兎も角"妖魔"という1つの民族思想レベルで普及してるのだから手に負えない


 だからこそモンドはこの妖魔を雇いたいと思った。ド底辺だからこそ、成り上がろうと努力を惜しまず機械さえ学ぶ彼を
733 :続きは明後日土曜日 [saga]:2021/07/22(木) 23:52:19.69 ID:iUbJmz9U0

―――
――
―

ガシューッ!



    エミリア「止まったわね」キョロキョロ


 基地全体に緊急事態を知らせる音が鳴り響いたのは下層へと降りていた彼らの耳にも届いていた、程なくして乗っていた
リフトは静止して最上層から1つ下の層に停まる
 レオナルド博士がパネルを動かし最下層へ何とか行けない物かと試みるのだが…


   レオナルド「うーん困ったね、電力自体が通ってないみたいなんだ」

   レオナルド「さっき警報が鳴った時にコレの電力供給が断たれたらしくてね」


      T-260「レオナルド様どうにかなりませんか?」



 鋼鉄の瞼を閉じて小考、工学の天才は腕の指先から螺子を取り外す為のドライバーを生やす
SFアニメでサイボーグと化した人間の指先が銃になるなんて展開はありがちだが、工具道具がニョッキリ出てくる展開は
早々お目に掛れるものではないだろう
 直ぐにパネルの分解作業を初めて彼は内部構造に眼を向けてから音声を発した



   レオナルド「結論から言うとどうにかなりそうだね」

    リュート「本当かい!?そのどうにかってのはどうすりゃいいんだ?」


   レオナルド「まず、ここの穴を見てくれ―――六角レンチ用の穴に似たサイズのここさ」

   レオナルド「基地全体の動力部が何らかの諸事情で駄目になった時、こういうのは非常用の予備バッテリーがある」


   レオナルド「ここにケーブルを差し込んで、予備バッテリーになりそうな機材から電力をちょっとだけ頂こう」


   レオナルド「そうすれば更に下層へは降りられる」


 "予備バッテリーになりそうな機材"、大がかりな荷物や大人数を運搬できる程の斜行リフトを稼働させるともすれば
消耗するエネルギー量も当然増えることは間違いない
 電力ケーブルの方は博士の先程の螺子回しと同様で格納された内蔵機器にその役目を果たせる物がある
つまりはバッテリー替わりになりそうな何かを持ってこい、というのが漸くした内容だった


   レオナルド「秘密裡に兵器の開発を行っているようだからね、基地内にもバッテリーになりそうな機材はあるさ」



   リュート「ってーとだ、こっから下に行きたきゃまずはこの階層でなんかの部品をかっぱらって来てそれを使うと」

   リュート「そしてこの下でも同じ様にそこそこエネルギー溜まってる何かの部品を拾ってそれを利用してって…」

   リュート「そんな感じで最下層を目指すんだな?」


   レオナルド「そーゆーコト、さっそく降りて奥の部屋に入ってみようか」



 侵入が知れ渡った上で、武器に手を掛けながらリフトから降りて部屋の中へと入っていく
すっきりとした見渡しの良い入口とは打って変わって遮蔽物と成り得る白い箱状コンテナ
無数のケーブルが大河の如く敷かれた、ごちゃごちゃとした部屋というのが写真を撮っているブルーの第一の感想だった


    ブルー「随分と散らかっているな、それにさっきまで何かを建造していたのだろうか」パシャッ


 巨大な機械の一部と思わしく物体が奥にはあり、彼は敵を屠りつつ恩賞を貰う為に必要な写真を撮り続けていた
明らかに敵対勢力を駆逐する為のロボットにしては規模が大きい
 これ1つで中規模〜大規模戦用の戦闘メカか何かかと一瞬思ったが、にしては可笑しいのだ

 まだ造りかけで内側の細かい部分まで見えてしまうソレには不思議な事にメカの魂ともいうべきコアが存在しない
もっと言えばレオナルド博士はそれ等が構造上、それ等自身でさえパーツの1つに過ぎないと
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/23(金) 01:55:20.69 ID:GuCcyMTG0
乙乙
735 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/07/24(土) 23:57:55.00 ID:dvOrl/i/0


 「侵入者だ!1人残らず殲滅しろ!」


 遮蔽物と成り得る白い箱状コンテナの影から[メカドビー]が3体飛び出してくる
当然ながら警報音を聴き侵入者を亡き者にせんと潜んでいたのだ、当たるも八卦の[ドビーランチャー]を構え出鱈目に
筒砲から飛び出すソレの嵐を駆け抜け重い一撃を剣豪が浴びせる


    「ぐばっ!?」ゴッ

  ゲン「邪魔するんじゃねぇ」


 清流が如く、流れる様な無駄の無い動きでありながら決して振るわれる剣圧はヤワではない
一撃の下に沈黙した仲間を目にした2体目は担いでいた兵装でゲンを殴りつけようと飛び出すも[インプロージョン]で
爆散し最後の1体は特殊工作車に備え付けられた機銃とT-260に取り付けられた重火器による連携を受けて火を噴いて倒れる



   ゲン「…」ブンッ、――チャキッ



 刀に付着した機械油を払うように剣を一振りしてから鞘え納め、フロアの探索に戻ろうとする剣豪








   ブルー「おい貴様、どういうつもりだ」スタスタ



   ブルー「連中の精密さに欠ける乱射ならその辺の機材の影でやり過ごしてからでよかろう、前に出過ぎだ」

   ゲン「あぁ、悪ぃ…けどよ奴さんには侵入バレてんだ、ちんたらしてらんねぇだろ」



 くどい様だが遮蔽物と成り得るコンテナボックスや機材がこの階層フロアには大量に置かれている
ならば無駄に突飛するよりやり過ごしてから切り込むなり、術やメカ達とエミリアの狙撃、あるいは[烈風剣]等を使うなど
適した戦術はあっただろうと蒼き術士は咎めた


 逸っている、どこか気持ちが急いているのだ


 リュートだけではなくブルーもエミリアも今日まで付き添ってきたメカ達でさえもソレには気が付いていた
剣豪当人からすればこの基地は故郷を滅ぼした仇の物で、最奥には己から全てを奪った張本人が鎮座してるやもしれぬのだ

 そんな仇を切り伏せれるかもしれぬ千載一遇の機、何も想う所が無いわけじゃない…人間の感情<ココロ>は理性や理屈で
簡単に片づけられるモノではない事くらい解っているのだ、解ってはいるのだが…





  ブルー「逸るな、死ぬぞ貴様」

   ゲン「…」

  ブルー「勘違いするな、俺達の目的は基地の地形構造、武器、設備の情報をコレに収め帰還することだ」つ『カメラ』

  ブルー「此処で首魁を討つことではない」スタスタ


   ゲン「わぁってらぁ」



 他の仲間達より少し先に進んだ所で行われた男二人のやり取り、それを遠目に見ていたエミリアも会話内容までは
聞こえずとも凡そ何について話しているか察した、正直な所これに関して彼女はどちらかと言えばゲン寄りの感情だ


   エミリア(…大切な人や幸せだった日常を壊した憎い仇への復讐、かぁ)


 人間は"感情<ココロ>"で動く生物だ、ゲンを突き動かす行動原理をブロンドの女は痛い程に理解できる、できてしまう

736 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/07/24(土) 23:59:28.79 ID:dvOrl/i/0

  レオナルド「君はああならない方が良いよ」

   エミリア「え?」


 俯き考えこんでいた時、彼女は背後から声を掛けられる振り返るとそこには機械化した人間が1人
限りなく人間の声帯に似せた機械音で語り掛けてくる彼に疑問符を浮かべると…


  レオナルド「ボクはファッション雑誌やモデルさんに興味は無いけどね、君くらいの有名人なら流石に知ってるよ」

  レオナルド「一緒に行動する上でリュート君達からも少々事情を聴かされたからね」


 一世を風靡したトップモデルの転落人生、全ての元凶である道化師の仮面をつけた男との因縁のこと
どういう経緯で今回潜入することになった基地の主人、モンド氏とエミリアが面識を持ったのかを説明する上で芋づる式に
ジョーカー事件についても語らざるを得なくなったらしい



  レオナルド「憎しみや怒りに囚われると人間、"真実を見る目"を曇らせてしまうからね」


   エミリア「…ふふっ、あなたってば全然メカっぽくないことを言うのね」クスッ


  レオナルド「機械化したことで多少物事を俯瞰的に視ることは多くなったかもしれないけれどね」

  レオナルド「これでも元は人間だから、人としての心理や感情論だってちゃんと解るんだよ」

  レオナルド「だから彼の"人間ならば誰しもが持つ側面"を否定する気も無いかな〜って」


  レオナルド「でも時と場合によってはそれに囚われ過ぎちゃ駄目な時があるのも事実かな、難しい話だけど」

  レオナルド「と言うのも君にとっての仇、ジョーカーって言ったっけ?」


   エミリア「え、ええ…そうだけど」



  レオナルド「丁度一週間前のお昼頃になるのかな
         ボクはT-260君の事を調べる上でトリニティの第七執政絡みのデータを閲覧していてね…」

  レオナルド「その時、"表向きは"爆破テロって事になってる事件に運悪く巻き込まれちゃってさ」


   エミリア「…一週間前の爆破テロ」




         - エミリア『っ!!な、なんなのよ!今の音は!!』-

  -ルージュ『! み、みんな、見てくれ!あのビル!! あの一番大きな建物から煙が出てるぞ!!』-




   エミリア(…あの時の爆発、私達にも見えてたのよね…)


  レオナルド「それでその時にトリニティに接触してたジョーカーという人物に関するデータを流し見程度にだけど見た」

  レオナルド「機械になった今の計算思考、生前の記憶情報と合わせて改めて考えてもどうにも不可解な点が多すぎる」




  レオナルド「なんというか偶に行動に奇妙な間隔がある、一定間隔で指針を変えるような動きというか一貫してない」

  レオナルド「こう…"人格が別々にある"…みたいな?」



…人格が、別々にある?



   エミリア「それって「おーい!レオナルドさーん!これなんてバッテリーに使えそうじゃねーかぁ〜?」


 続きを促そうとした所で階段を上った先からリュートが声を掛けてくる
737 :続きは日曜日 [saga]:2021/07/25(日) 00:00:02.71 ID:xHOyBFoT0


  レオナルド「っと、いけない…つい話し込んでしまったね、興味のある事だと長話になるのが悪い癖だ」

  レオナルド「兎に角、君は仇を前にしても冷静さを欠いてはいけない」

  レオナルド「"確証の持てない考察論"だからボクからは深く言えないけど対面して直ぐに相手を殺さないようにね」


   エミリア「あっ…」



 暗に仮面の男の真相を掴んでいるという発言だった、[ラムダ基地]潜入時のモンド氏といい
自分が未だに知り得ない真実を周囲の人物は得ている
 喉から手が出る程知りたくて堪らない、渇望して止まない憎むべき男の正体を…っ



 だが、目の前の彼は告げるのだ『冷静さを欠くな』『1対1で対面する機会があっても直ぐに撃ち殺すな』…と



 100%の確証が無くとも何らかの答えに辿り着いているのなら教えて欲しいというのが正直な所、彼女の本音だが
彼なりにエミリアを気遣ってくれたつもりなのだろうと彼女は思うことにした
 レオナルドからすれば何の関わりも無く助言する必要性すらない赤の他人である彼女に対して復讐心は真実を見誤らせる
感情に突き動かされて確かめもせずに直ぐ相手を殺す様な真似はするな、と発言する辺りジョーカーを殺す事自体に何か…


 きっと、何か大切な意味があるに違いない…


 手っ取り早いのは彼が口答で教えてくれることなのだが、それをあえて逸らすように話を切ったからには
おいそれと言葉にする訳にはいかないという事だ




     エミリア「ふふっ、レオナルドさんかぁ…機械は苦手だけど少しだけ、好きになれそうかもね」クスッ









  アニー「エ、エミリア…ちょっとアンタそれはマズイって、いくら未亡人だからってメカに手を出すのはちょっと…」

 エミリア「!? ち、違うから!?そういうんじゃないってば!?今のはそういう意味じゃないからね!?」






 ……レオナルドは確かにジョーカーの正体に見当が付いていた、だがエミリアにそれを直接言うのは憚られた




 彼自身が言った様に、ロボットになってしまったとはいえ彼には人間の感情や心理を理解できるから
だからジョーカーの正体を彼女を前にして大っぴらに言うのは気が引けた






―――
――
―



    リュート「どうだい、レオナルドさんコレならあのエレベーター動かせるんじゃねぇかな」つ『バッテリー』

   レオナルド「OKこれで更に下層へ向かう事ができそうだね」



 予備電源と成り得る物を両手に掲げて自慢げな顔をするリュートに大判子を押して一行は来た道を戻りリフトフロアへ
戻ろうとしていた…だが戻った先には
738 :続きは火曜日か水曜日 [saga]:2021/07/25(日) 22:11:08.26 ID:xHOyBFoT0




         ワンダードギー「ディィイヤァァァァァァァァーーーーッ!」ブンッ




 リュート「うおっ!?あぶねっ」サッ!



 戻った先には基地の警報機を作動させた[ワンダードギー]が待ち構えていて侵入者達を始末せんと槍を構え一直線上に
突っ走って槍を大きく振るい出した
 先頭を歩いていた無職の青年はそれを避ける、ランスの先端が特徴的なボサボサ髪を掠めて毛先が舞う
飛び退きつつも抜刀して戦闘態勢に入るリュートと後方の仲間達も直ぐに応戦する形となり…




 結論から言うと、余裕の勝利であった







    エミリア「はぁっ!」BANG!

     アニー「飛んでけぇぇ[飛燕剣]!!」ヒュバッ!

    スライム「(`・ω・´)ぶくぶくぶー!」ゴッ!



 ダンッ! ズバッ ドガッ


 ワンダードギー「ぐぎゃっ」ザジュッ!
  ワンダーランス『』カラン、カラン…


 手から愛用の槍を離し地に転げ落ちる下位妖魔は侵入者を恨めし気に睨みつける
[ファシナトゥール]から出奔して長らく不遇だった自身に日の目を見る機会が来たと、藁にも縋る思いで
モンドの軍門に下ったのだ…っ!リージョン界全体を圧倒的な力で引っ繰り返して理想の世の中を築くと



 …そうしてモンドの下で甘い汁を啜り、叶うならモンドの寝首を掻いて、己が地位と富を―――と野心も抱いていた



 力こそ全て、圧倒的な力を以てして全てを捻じ伏せ自分を誇示する、それは妖魔社会のやり方にも通ずる部分があった
この辺りがモンド氏とこの下級妖魔の最大の違いなのだが…



  ワンダードギー「ちっくしょぉぉぉ…!俺の大望が、こんな所で潰えて堪るかよおぉぉぉ…」



 世の理不尽さを訴えんとばかりに喉から声を絞り出す

 こんな日に限って侵入者が現れるなんて…っ!何故よりにもよって"今日"なのだ
雇い主であるモンドは今日基地に不在で、しかもこのタイミングで最下層で建造中の【アレ】が完成する日だというのにッ 


 野望を胸に秘めた妖魔にとって今日は人生の岐路だった、"完成した【アレ】に搭乗して"そのまま盗み去り
その圧倒的なパワーによって自分を見下してきた全てを蹂躙してやろうと決めていた
 【アレ】さえ盗み出すことに成功すれば自分がリージョン界を支配するという夢物語も夢で終わらなくなるかもしれない
それこそ[ファシナトゥール]の[針の城]で道楽に耽っている魅惑の君さえも叩き潰して妖魔の君として君臨できるかもと
莫迦げた夢想を思い描けてしまう程だ


―ガシッ!

  ワンダードギー「あぐぁっ!?」

    ブルー「貴様は基地の者だな、主の命令に背かないメカでないのは丁度良い我々を案内してもらうおうか」ググッ

  ワンダードギー「わ、わかった…胸倉をつかむな、は、はなせ…ゲホッ」プルプル

739 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/07/26(月) 06:10:50.53 ID:Q6mwjGRr0
レオナルドさんかっこええなあ
740 :続き 金曜日か土曜日 [saga]:2021/07/28(水) 08:45:03.53 ID:9DRm4tWr0

 フロア内で拾ってきた動力源とコンソールを電力ケーブルで繋いだ事で自分達が立っている足場が沈んでいく
底なしの光も届かぬ地下のまた地下、泥沼に突っ込んだ方脚がずぶずぶ引き込まれるのと同じ感覚で斜行する

 深淵へ、更なる下層へと侵入者様御一行と捕虜1名を乗せて沈む



    アニー「暗いわね…、警報前はまだ電灯も点いてたんでしょうけど」ジーッ


 非常事態勢が敷かれたことで電源が落ちたのは何もリフトだけではない、そもそもが予備電源を拾って態々繋げなければ
稼働しない設備なのだから此処を照らす光源が落ちのも自明の理

 天井に申し訳程度にぶら下がった非常灯の薄明かりだけが唯一の光だが、頼りないソレでは少し視線を伸ばした先には
何があるのか到底分かったものではない




  リュート「なぁなぁ、アンタ教えてくれよな〜ここはマジにモンドさんの基地でヤバい秘密兵器があるのかい?」

 ワンダードギー「ええい!なんだテメェは馴れ馴れしいっ!侵入者に漏らす情報なんざねぇよ!」


   ブルー「ちっ、思いの外強情な妖魔だな情報を一切吐かんとは…やはり締め上げて」グッ
  リュート「わーっ!だからお前は物騒なことすんなって!!」ガシッ


 下位妖魔の雇い主にして基地の大将は本当にモンドで間違いないという言質を取ろうとするが主人の名前、基地の弱点
最下層で造られているトンデモなく危険な兵器に関する情報も一切口にしようとしない
 いい加減痺れを切らし始めた蒼き魔術師が暴力に物を言わせ黙秘する事全てを赤裸々にさせようと蛮行に走りかけたり
それに対して青年がヨーク綿の帽子を振り落とさん勢いで術士を羽交い絞めにして止めたり

 後方は随分と賑やかになっているな、とアニーとスライムは暗闇を見つめながら思った




     アニー「こう暗いんじゃ待ち伏せの敵が本当に居るかなん…て…?」ジッ

    スライム「(´・ω・)ぶく?」キョトン



 黄金色の髪をした彼女は暗がりに一瞬だけ光る何かを見た、防衛本能に長けた彼女だからこそ見逃さなかった一瞬
鞘から剣を引き抜き仲間に声を掛けるっ――と同時に飛んでくる[バルカン]の弾雨を咄嗟に装備していた[シェルガード]で
防いで応戦の[飛燕剣]を打ち込む


 ズダダダダダダダッ…!


  エミリア「きゃっ!」サッ

    ゲン「敵が下からこっち目掛けて撃ってきやがったか!」


 ズダダダダダダダッ…!

    ブルー「ムッ!?」

  ワンダードギー「ひっ、ひぃぃぃ…」ドサッ

   リュート「おいアンタ!もうちょっとリフトの後方へ行ってろよな下から上目掛けた銃撃なら端に居りゃあ無事だ」


  ワンダードギー「あわわ…味方の流れ弾で死んでなんぞ堪るか」ノロノロ


 自分の直ぐ傍に[バルカン]砲による弾雨が降り注いだ事ですっかり腰を抜かしてその場に座り込んだ下位妖魔は
弦楽器を背負った男に言われるまま後ろ手で縛られた状態でノロノロと弾が来ない後ろ端へと進みだす




 ガシュッ!

 アニーの花った真空の刃が金属のボディに当たり火花を散らす、一瞬だがその時の火花で中に浮かぶ"何か"が2体と
弾雨を降らせた張本人の姿が浮かび上がった


   アニー「…あれは、[ヘルメス]ね!お供に何かが2機くらいついてるみたいだけど…っ」

741 :続きは日曜日か月曜日 [saga]:2021/07/31(土) 23:24:32.05 ID:X2LXx8+80

 薄闇を照らす非常灯の頼りない光に助力した火花に照らされた鈍い黄緑色と骨組みだけの様な特徴的な脚に腕部の銃器
[ヘルメス]特有のガトリング砲は侵入者達へと向けられていた
 暗黒の中であろうとも彼奴には関係ない、多少の視界不良はものともせずにリフト上という定められた範囲でしか移動が
儘ならない人間やモンスターを相手に一方的な射撃を行えるという訳だ


   ズガガガガガッ!


    リュート「こりゃあマズいぜ!おーいナカジマ零式ー、飛べるんだからなんとかならないか〜?」サッ

  ナカジマ零式「ハーイ、待ってましたよ〜 近づいてからぁのぉ必殺[連装ミサイル]とぉっ!」バシュッ!


 呑気な声で一方的に殴られる現状をどうにかできないかと唯一浮遊できる仲間に語り掛ける青年に対して
戦闘機を模した機体のAIはなんとも間延びした声で仲間の期待に応えようとする

 零式は[ヘルメス]の火線を掻い潜りこの距離ならば回避されまいと射程範囲に入った所で自機搭載の[連装ミサイル]を
撃ち込むのだが


   連装ミサイル『』ヒュルルルルル!!
   連装ミサイル『』ヒュルルルルル!!







    「 ピピッ!ミサイル検知、[ECM]を発動します 」キュィィィン!





  ナカジマ零式「へ?」



   連装ミサイル『』ヒュルルルルル!!―――ピタッ、ヒューン!……コォンッ!コロコロ…



 [ヘルメス]目掛けて飛んで行く筈だったソレは突如として勢いを失くし空中で完全停止する
推力を失った事で落下したミサイルは斜行プラットホームの底へと墜ちてコォン!と金属音を響かせながら何処かへと
そのままコロコロ転がっていく…"爆発もせずに"


 ナカジマ零式「お、おーのー!なぁんてことでしょう![ECM]でーす!"ミサイル攻撃が無効化"されちゃいましたぁ!」

 ナカジマ零式「はわっ、はわわわ…なーんかバランスがうまく取れないこれ以上はマズイですねー!」クルッ ヒューッ


 [ECM]の影響下で後部スラスターに不具合が生じた零式は直ぐにUターンして仲間の下へと帰還する
この時、漸くアニーは暗がりの中見えなかった[ヘルメス]の傍を浮遊していた2体の御供がなんであるか確認できた



   アニー「…!まだ暗闇に浮かぶぼんやりとした物陰でしかないけど、あれって[スカイラブ]じゃないかしら!?」

 レオナルド「…やれやれ、そういうことか我ながら厄介な物を造ったなぁ」ウーム



 [ディスペア]監獄に度々お世話になる機会があったアニーは闇に覆われたシルエットだけでもソレがなんであるか察した
ルーンの石が置かれている一室へ向かう際に嫌でも突破せねばならない赤外線エリアの防衛装置として
時折とんでもない兵器が配備される日がある、監獄所長の道楽で行われる"解放の日"で脱走を企てる者のリストに
死刑囚でもおかしくない様な重罪人が紛れ込んでいる場合がそうである

 機械工学の天才レオナルド博士が"拠点防衛用"の衛兵メカとして開発した物で性能は当然折り紙付き

 拠点防衛装置として監獄に配備されていると言えば聞こえは良いが
その実態は"解放の日"に参加する死刑が妥当な重罪人への処刑マシンなのであったあ


   pzkw�X「せ、先生!どうしますかッ!あいつ等が浮かんでたんじゃこの[ハイペリオン]だって!!」

   ブルー「この狭い足場上で[ヴァーミリオンサンズ]を唱えるのも厳しいな、狭すぎて間違いなく何人か巻き込む」


 広範囲への最大火力を誇る魔術は使えば敵には勝つが味方への被害も甚大…足場と進行中の通路が狭すぎる
pzkw�Xが自前で持ってきた砲も[陽子ロケット弾]が[ECM]の効果で着弾前に虚しく落下するだけである
742 :注) 作中のスカイラブはレーザー回避 を使用できません [saga]:2021/08/02(月) 23:50:30.03 ID:AiQYHdEV0

  レオナルド「問題ないさ要は連中を墜とせばいいだけの話だよ
          [ECM]効果は飛来するミサイルの推力系と起爆に必要な信管を狂わせて不発弾にする電磁波妨害」

  レオナルド「ナカジマくんのバランス調整が不安定になって飛び辛くなったのもそのせいだね」

  レオナルド「あくまで対象を飛びも爆発もしない鉄塊に変えるだけの機能だから普通に
           光線や機銃の類が通るさ、尤も回避プログラム搭載の場合を考えれば――――」



  ズガガガガッ!!  ビュゥゥン!ガガガッ!



   ゲン「レ、レオナルドさんよ!難しい話はあとで聞くから結局俺達は何すりゃいいのかだけ言ってくれぃ!!」ササッ

  レオナルド「おっと、そうだね…じゃあ[飛燕剣]や[烈風剣]を使える人はじゃんじゃんやっちゃってよ」



 2機の浮遊する防衛装置の射程圏内に入ったのかガトリング砲を援護する様に[スプレッドブラスター]が飛んでくる
制作者の長々とした解説を聴くよりも目先の厄介な敵機を破壊する方法をご教授願いたい剣豪は博士に結論を述べてもらう

 エミリアの銃撃やメカ軍団の[破壊光線銃]も普通に通る、何より浮遊という特性上[スカイラブ]は[飛燕剣]や[烈風剣]等
宙に浮かぶ者を切り落とす術に滅法弱いのだ




   特殊工作車「[破壊光線]、照射します!」ビィィィィィッ!
      T-260「優先順位変更、敵の護衛機を殲滅せよ![破壊光線銃]を使用します」ビィィィィィッ!




   スカイラブA『 』サッ!クルクルクルクル!
   スカイラブB『 』サッ!クルクルクルクル!

   スカイラブに避けられ真横を飛んでく破壊光線『』チュドーン!



 裏通りの武器店でpzkw�Xから頂戴した兵器を撃つが防衛機構の2機は優雅に踊る様に…っ!
人間が技を見切った時と同じ動きで華麗に破滅を導く光を避ける
 それを見て博士は「あちゃー…やっぱり[レーザー回避]プログラム付きかぁ、慎重派だからなぁモンドも」と
目元を覆うように金属製の腕を顔へと運ぶ



  レオナルド「残念だけど、ボク達は今回できることは無いみたいだ精々皆が被弾しない様に盾になるくらいだね」バッ


 前衛の"人間<ヒューマン>"達の前に立ち両腕を伸ばして少しでも味方の損害を減らそうと遮蔽物の役割に徹する
それに倣ってT-260も前に出て、特殊工作車は移動しながら実弾を受けつつ内蔵された機銃で応戦を試みる


   アニー「せいぁッ!!」ヒュバッ

    ゲン「墜ちろや!」シュバッ

  リュート「俺からもっッと!」シュバッ、シュバッ



 剣気の刃が、刀身が生み出す烈風が、間髪入れずに飛び交う二重の疾風が、嵐となって下方に居る3機へと降り注ぐ
地に足を点けてどっしりと身構えながら耐える[ヘルメス]は兎も角、宙に浮いていた2機は斬撃の集中豪雨を浴びて
片方が完全に沈黙する、辛うじて浮いていたもう一方は…


        BANNG!


    エミリア「…ふう、[集中射撃]で狙い撃ったわね」 

  ナカジマ零式「わーお!さっきよりかは幾分か気分がよくなりましたねー!」フワッ


 レオナルド「[ECM]の影響はまだ残ってる、ミサイル兵装はまだ使えないさ」



 ナカジマ零式「oh!ノープログレムでーす!これだけ動ければアイツに一撃喰らわせてやれまーす!」ビュォンッ

743 :続き 水曜日か木曜日 [saga]:2021/08/02(月) 23:51:36.71 ID:AiQYHdEV0

 護衛を失い丸裸同然となった彼奴に超スピードで接近する機影、残骸と化した[スカイラブ]の忘れ形見は未だ効力が続き
先程自機を撃破しようとした[連装ミサイル]を射出したとて
不発弾となり虚しくプラットフォームの溝へ落ちる光景の焼き直しになるだけだと[ヘルメス]のAIにもわかっていた
 ただ一切の減速も無く寧ろ更なる加速力を得て此方にやってくる戦闘機の姿に電子頭脳はある可能性を描かせた

 
    ヘルメス『!!』ウィーン、ピロン!ズガガガガッ

 ナカジマ零式「はっはっはぁ!遅い遅ーい!止まって見えま〜す!…ミサイルが駄目でもコレがありますよッ!」ヒュバッ



 陽気な声に笑いながら殺人的な加速力を以て白い機影が必至の抵抗を繰り広げる基地守備隊のメカへと急接近…っ!
あの速度で鉄の塊が突っ込んできたら如何ほどの衝撃エネルギーと成り得るか、自機はどうなってしまうのか?



 考えるまでもない。 例え"旧型<ポンコツ>"の電子頭脳の計算式であっても容易に叩き出せる結果である



  ナカジマ零式「超必殺のぉぉぉ!![神威クラッシュ]ぅぅぅぅ!!!」



   ズ ッッッボゴォ ォ ォ ォ ン!!


―――
――
―


     T-260「プログラム [レーザー回避]を 手に入れた」ピロリン!バンザイ!バンザイ!

  特殊工作車「プログラム [レーザー回避]を 手に入れた」ピロリン!グッグッ!


  レオナルド「おお!やったじゃないか二人とも」


 残骸と化した[スカイラブ]2機とさっきまでは[ヘルメス]だった[がらくた]から何か収集できないものかと
博士は仲間のメカ達を連れてリフトが次の層へ無事(?)到着停止した途端にせっせと倒した敵にコードを繋ぎ始めたのだ



   pzkw�X「先生…すいません、エネルギーを補充しただけで何も取れませんでした」シュンッ

 レオナルド「気に病むことはないよ、機会はいつだって訪れるさ、だって周りを見てごらんよ」スッ


 さて、そんな一幕があった後成果を得られなかったことを悔やむ店主を宥めながら博士が指さしたのはこの層の奥である
メカ達がプログラムの吸収を行っている合間に粗方内部に居た敵は術士やモンスター、剣士組が始末を終えていた
 攻撃の届かない遠距離から一方的に撃たれていた先程とは打って変わって今や地続きの広い空間に敵が要る、となれば
彼らは水を得た魚も同然で広範囲術を唱えるわ、自慢の剣技で細切れにするわの大暴れである


 …話は逸れたが、その戦闘行為が行われているフロアの最奥に見える赤いメタリックボディ

 それは[Tウォーカー]と呼ばれる地上掃討用の自立型メカ兵器である、無骨な二本の脚で二足歩行しつつ
視界に入る兵隊目掛けて[バルカン]の雨嵐をお見舞いするというなんて事無いメカ

 なんならさっき戦った[ヘルメス]よりも弱い自立型兵器だ、……では何故レオナルドはソレを興味深々に眺めているか?





   ブルー「…随分なものだな」カシャッ

 レオナルド「お?ブルー君にも分かるのかい?これの凄さが…っ!」キラキラ


 カメラのレンズに大っ嫌いな赤を基調とした機体を入れてシャッターを切りながらブルーは横目で機械化した男を見る
心なしか無垢な少年の様にメタルな瞳が輝いてる気がするが気のせいだろう


   ブルー「正直言ってメカは門外漢だがな、流石にコレは異様だと解る……"デカすぎる"だろ」カシャッ

 レオナルド「うんうん!凄いよね通常サイズより明らかに大きいもん[ガイアトード]に匹敵するかもね」ワクワク


 術士の瞳にさえ奇異に映る通常の自立型メカにあるまじき巨体さ、それこそ"人間が搭乗できそうなサイズ"のソレである
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/08/03(火) 00:29:49.98 ID:LLRfWuqB0
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 モンド基地に関して�A

 [モンド基地]は原作中で4つの層に分かれており、リュート主人公時に[ネルソン]の艦長に船で乗せてもらって最初に
脚を踏み入れる入口エリア、MAP上に(おそらく)建造中の[ヘルメス]と思わしき物が置いてある2層目エリア
同じく建造中の巨大[Tウォーカー]が存在する3層目エリア、そして最後にラスボスが控えている部屋へ直通の最新層


 以上、4層に分かれている―――階段の類は無く、いずれも斜陽リフトによる移動で下へ下へと延々に進むだけで
しかも一度降りたら来た道を戻るという行為はできない



 道は一本道であるために迷うこともなく、道中にアイテムも落ちてはいない…リフトを動かす為の電源は拾えるが



2層目、3層目には敵メカとして実際に出現する先述の兵器が超巨大グラフィックでMAP上に存在していて如何にモンドが
トリニティ政府に対して反旗を翻そうと戦力を準備しているのかが窺えるであろう



また各層のリフト乗り場には敵シンボルが1体ずつ存在しており



1層目=メカ系敵シンボル

2層目=妖魔系敵シンボル

3層目=メカ系敵シンボル

最深部=巨人系敵シンボル



となっている。 基地全体の敵も妖魔やモンスターこそ少数居れどヒューマン系は0でもっと言えば圧倒的にメカが多い

これは心の奥底ではモンド執政官が人を信用していないという事の現れなのかもしれない
 エミリア編の[ラムダ基地(2回度目)]も警備がメカシンボルだらけになったが
それは単にトリニティの要所だからで説明が付く…しかしモンド氏個人の秘密基地であるなら私兵としてメカ以外がもっと
居てもおかしくない筈、でも見張りの大半は主人に逆らわないAIな辺り色々考えさせられる







…個人的な見解ですが、MAP上の[ヘルメス]も[Tウォーカー]も通常のソレと違って特別製だと解釈できる要素が存在します

まず、くどいようですが外見があまりにも巨大だ

 通常戦闘で出てくる2機は普通に主人公勢や他の雑魚的とサイズは変わらず小さいがMAP上のソレは
[シンロウ遺跡]の入り口から左に行ってすぐの[ガイアトード]よりデカい


 単にキャラクターグラフィック上、戦闘時の2機は小さく見えるけど実際は[モンド基地]の背景としてある巨大メカと
同じくらい本当はでかい兵器なんですよー、と説明されてしまえばそれまでかもしれない

 でも、それこそ[シンロウ遺跡]の[ガイアトード]や[キャンベルビル]に出るデカくした[スライム]系シンボルやら
そういうのはちゃんと戦闘時にも反映される特大サイズで用意されてて、あれだけサイズが違うのか?という話になります








 モンド氏は、原作に置いてもラストバトルで"アレ"を用意してます




 [シュライク]の[中島製作所]から技術を奪い、それで人間がパイロットととして操作できる超巨大ロボを地下で建造した
だとすれば、あの[ヘルメス]や[Tウォーカー]がとんでもない規格外サイズなのも兵士が乗り込んで戦う兵器の試作型と
そう考えたら辻褄が合うのではないか?というのが見解です


 基地の2層と3層の背景グラフィックにはそんな事情があるのかもしれません…


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745 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/05(木) 04:31:58.45 ID:ucSf01tv0
ナカジマかわいいな
746 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/08/05(木) 23:18:15.04 ID:CetTk8Ey0

 ルーファスから支給されたカメラに[モンド基地]の内部、そして件の超大型メカの姿を収める
帰還後、手当される有給休暇が如何ほどかは知らないが店の雑務から解放されて自分のやりたいことや本格的な術の鍛錬に
励めるくらいの日数は貰えるだろうと術士は考える


 最後にもう一枚と[Tウォーカー]の姿をレンズに入れた所で、ふと赤い機体の真上に人影が見えた気がした



   エミリア「ねぇ、ちょっと!エレベーターを動かすのに必要なのってこれでいいのかしら!?」タッタッタッ

  レオナルド「そうそう、前の階層と同じで階段を上った先にあったんだね…ブルー君どうかしたのかい?」


    ブルー「…いや、今あそこに誰かいた気がしたんだが」スッ



 術士は人影らしきものが見えた箇所を指さす、シャッターを切る前に見えた影の真意を知ろうと目を凝らし凝視するが
やはり気のせいであったのだろうか…何も感じない
 自慢じゃないがそれなりに人の気配を察せられるくらいには修羅場を潜り抜けてきたつもりだったが宙を飛べる
ナカジマ零式が「誰もいませんよー」と天井スレスレの上部から[Tウォーカー]を見下ろしてそう告げた



   ブルー(…俺も修練が足らんということか?)


   ブルー「まぁいい、電源が手に入ったなら次の下層に行くとしよう…おい、いい加減貴様も情報を吐け」グッ!

 ワンダードギー「ウゲッ、…だ、誰がキサマら何かに」ゲホッ











  もしも、まだ敵の生き残りが潜んでいて自分達の潜入を快く思わないのであれば機を窺い、隙を見せた所を攻めてくる


 それこそ悠長に写真なんぞ撮ってる場合ではない、だが敵意も無く、飛べるメカが上部から見ても誰も居ないとなると
やはり見間違いだったのか?

 彼はそう結論付けたが、実は…この時、既に基地にとある人物が居た事を直ぐに知ることとなる







 理想家にして野心家の男(……)

 理想家にして野心家の男([ワカツ]の残党、レオナルド、ミス・エミリア…そしてやはり来たかイアンの息子よ)





 理想家にして野心家の男(ここ数日[ワカツ]へ渡航記録が頻繁にあったことから特に基地周辺の監視をさせていたが)

 理想家にして野心家の男(どうやら正解だったようだな、…私はまだ失脚する訳にはいかないのでね)


 理想家にして野心家の男「」チラッ




 ワンダードギー「――!」

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747 :コピーミス、続きは土曜日か日曜のどちらか [saga]:2021/08/05(木) 23:24:59.58 ID:CetTk8Ey0

 ルーファスから支給されたカメラに[モンド基地]の内部、そして件の超大型メカの姿を収める
帰還後、手当される有給休暇が如何ほどかは知らないが店の雑務から解放されて自分のやりたいことや本格的な術の鍛錬に
励めるくらいの日数は貰えるだろうと術士は考える


 最後にもう一枚と[Tウォーカー]の姿をレンズに入れた所で、ふと赤い機体の真上に人影が見えた気がした



   エミリア「ねぇ、ちょっと!エレベーターを動かすのに必要なのってこれでいいのかしら!?」タッタッタッ

  レオナルド「そうそう、前の階層と同じで階段を上った先にあったんだね…ブルー君どうかしたのかい?」


    ブルー「…いや、今あそこに誰かいた気がしたんだが」スッ



 術士は人影らしきものが見えた箇所を指さす、シャッターを切る前に見えた影の真意を知ろうと目を凝らし凝視するが
やはり気のせいであったのだろうか…何も感じない
 自慢じゃないがそれなりに人の気配を察せられるくらいには修羅場を潜り抜けてきたつもりだったが宙を飛べる
ナカジマ零式が「誰もいませんよー」と天井スレスレの上部から[Tウォーカー]を見下ろしてそう告げた



   ブルー(…俺も修練が足らんということか?)


   ブルー「まぁいい、電源が手に入ったなら次の下層に行くとしよう…おい、いい加減貴様も情報を吐け」グッ!

 ワンダードギー「ウゲッ、…だ、誰がキサマら何かに」ゲホッ











  もしも、まだ敵の生き残りが潜んでいて自分達の潜入を快く思わないのであれば機を窺い、隙を見せた所を攻めてくる


 それこそ悠長に写真なんぞ撮ってる場合ではない、だが敵意も無く、飛べるメカが上部から見ても誰も居ないとなると
やはり見間違いだったのか?

 彼はそう結論付けたが、実は…この時、既に基地にとある人物が居た事を直ぐに知ることとなる







 理想家にして野心家の男(……)

 理想家にして野心家の男([ワカツ]の残党、レオナルド、ミス・エミリア…そしてやはり来たかイアンの息子よ)





 理想家にして野心家の男(ここ数日[ワカツ]へ渡航記録が頻繁にあったことから特に基地周辺の監視をさせていたが)

 理想家にして野心家の男(どうやら正解だったようだな、…私はまだ失脚する訳にはいかないのでね)


 理想家にして野心家の男「」チラッ




 ワンダードギー「――!」


 理想家にして野心家の男(本来であれば今日は私が来訪する予定日では無い、私が来ていることを知る者はいない)

 理想家にして野心家の男(彼には"羊"となってもらうとするか)スッ


 誰一人としてその場に居ることを悟らせず、ほんの小さな大気の乱れ、呼吸、音、気配、全てを断ち
トリニティの執政にまで上り詰めた男――――モンドは飛行メカの視界からすらも難なく逃れたのであった
748 :続きは水曜日か木曜日 [saga]:2021/08/08(日) 23:08:02.77 ID:orQ/uRYR0

  ナカジマ零式「にしても〜…これってやぁ〜っぱりアレですかね?」
   特殊工作車「そうですね、社長達があの日"メカマウス"にデータを入れて[斉王の古墳]に逃がしましたが…」


  レオナルド「うん?」


  ナカジマ零式「いえね、ウチの会社で作ってた技術がこのデッカイのに所々使われてるっぽいんですね〜」

  ナカジマ零式「なんか政府の偉い人が『トリニティの技術を盗用してる〜!』とかなんとか言いがかりつけて」


      T-260「私たちが初めて[シュライク]を訪れた時の話ですね」
      ゲン「ああ、そういやそんなこともあったっけな…」


  レオナルド「…ふぅん、"トリニティの技術"を盗用してるねぇ…」フム

  レオナルド「ボクの管轄外の研究部署だって言われればそれまでだけど
           トリニティにこんな巨大メカに使う物は無かった筈なんだよねぇ…」


 …モンドの手の者が民間企業の開発した画期的なシステムをそのまま横領して秘密基地でせっせっかと開発していたのか
暫し考え込んで博士は一つ案を出した


  レオナルド「多分、[中島製作所]に乗り込んで色々漁りをやっていった記録は抹消されてると思うんだ」

  レオナルド「だからさ、もし追っかけるなら[IRPO]に手を貸してもらうのはどうかな?」


 パトロール隊員の力を借りてはどうだろうか?その話にエミリア達が耳を少しだけ傾けた
トリニティ政府は確かにリージョン界の司法や行政、全国共通の通貨であるクレジットの発行をすることで金融など
幅広く世界に秩序と調和を齎しているかもしれないが、それイコール100%クリーンな組織という訳ではない

 当たり前の様に汚職や買収、それこそエミリアが以前潜入したヤルート執政と同じ輩だってごまんと居る
警察組織[IRPO]への圧力も当然の様に掛け、都合が悪くなれば厄介な捜査官を閑職に追い込む事だって厭わない


  レオナルド「ボクの行きつけのハンバーガー屋さんに常連の刑事が居るんだ」

  レオナルド「彼なら多分、上からの圧力とか無視して色々調べてくれると思うんだよね」


  レオナルド「この基地から帰れたらさ、得た情報でモンドの弱み握っておきたいならその線で調べるっていうのも…」


 その線で調べるっていうのもありかもね、と言おうとした所でリュートに早く下層に行ってみようぜ!と急かされて
やれやれと首を振り博士はリフトの方へと向かった

―――
――
―

 ガコンッ、ウィーン


 基地最下層へと降っていく一行は奇妙な沈黙に包まれていた、ついさっき[スカイラブ]と[ヘルメス]の編成に
反撃不可能な遠距離から攻め立てられたからだ
 最下層ともすれば唯一の階層移動ができる此処が最終防衛ラインと呼ぶに等しく激しい防衛線が敷かれていても良い筈で
何の抵抗も無くすんなり降りれていることに不気味さを感じる程である


   リュート「なぁ…変だぜ、なんで誰も"お出迎え"しないんだい?」

   リュート「普通はこういうとこに超強ぇ奴とかがどっしり構えてるもんじゃねぇのか」


 当たり前の様に出された疑問は誰しもが胸に秘めていた、そして――――


――――――ゴゴゴゴゴゴゴッ

    ゲン「なんだこの音は!?」

   ブルー(聞こえる方角からして………後ろから何かが俺達の方へ向かってきているだとっ!?)バッ






      巨人「グゴガァァァァァァ」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
749 :続き 明日 金曜日 [saga]:2021/08/12(木) 23:04:24.34 ID:BD83U3zu0

 リフトが最深部の乗り場に着く寸での所で後方から怒声を張り上げながら滑り落ちてくる巨大な人影
弦楽器を背負った青年はその姿に故郷に置いてきた弟分のサンダーを思い出していた
 [オーガ]種のサンダー同様"巨人系"に部類される者で彼らを排除せんとするそれは可愛い舎弟とは似ても似つかぬ大怪物
政府指定の危険度認定は最大値に相当…っ!敵ランク9の[巨人]だッッ!


   リュート「オイオイ、嘘だろ…ヤバいぜありゃあ!?」


 リフト用のレールを滑走するように"落ちて"来る[巨人]は更に勢いをつけて左腕に担いだ大剣を振り下ろす姿勢に入った
がっちりとした筋骨隆々の体格、人間のそれとは明らかに違う青肌に纏った鋼鉄鎧と右腕の棘付きシールド
 肉体そのものの耐久性も然ることながら盾回避による攻撃の無効化…攻守共に最凶のバケモノだ


 そんなバケモノの装着している武者兜に似た頭装備から覗かせる赤い目はギラついていて
パーティーを逃す気など殊更無い事を物語っていた、唸りをあげた巨体はレール上を滑り落ちてくる事を止める
 [魔獣の革]で作った特製の黒ブーツで地を蹴飛ばし一気に急降下を仕掛けたのだ、左手の[ブレード]を振り下ろしながら



     巨人「ぐごああああああああああああっっ!!」ブォンッ

    レオナルド「みんな!!リフトが着いた急いで向こうの通路まで退h―――うわあああああぁっ!?」ブワッ



 エレベーターが停止し乗り場から奥の通路へと逃れられる様になった、博士があの[巨人]の図体ではそう易々と
入り込めないだろう踏んで狭い通路へ逃げ込むように呼び掛けた直後[ブレード]の剣圧で吹き飛ばされた

 金属ボディとなった彼ですら吹き飛ぶのだから当然生身である他の仲間達も次々と吹き飛ばされていく



  拉げたエレベーターの制御盤『 』グシャッ…



   リュート「うひぃ〜、誰か助けてくれぇい!!」バタバタ

    ブルー「ええい!何をしてる掴まらんかっ」ガシッ


   リュート「た、助かったぜ危うくプラットフォームの溝に落っこちちまうかと……あのリフトもう使えねぇな」ヒー


 斜行エレベーターを稼働させるためのディスプレイは見るも無残なスクラップにされているのが目に映る
幸い、今の一撃が直撃した仲間は居らず全員が吹き飛ばされて床に転がっているだけであった……これで退路は断たれた




     巨人「ぐごごごごごごごごッッ…………! シン、ニュウシャ……オデ、コロス」フーッ!フーッ!…シュバッ、ズシーン




   リュート「あら〜…ただでさえ真っ赤なお目々が血走ってらぁ、こりゃ穏便に話し合いとはいかねぇよな」タラーリ

   エミリア「先日の[巨獣]といい、私達でかい怪物に縁でもあるのかしらね…ブルー、いざって時は[ゲート]を…」


 ごくり、喉を鳴らしてエミリアは敵を見据える

 初撃でリフトを破壊して退路を断った大怪物はそのまま片足で飛び跳ねて一気に彼女達の頭上を越え
レオナルドが指定した逃げ込み先の通路の手前に陣取った
 退路に続いて進路さえも塞がれた、これでブルーの術が無ければ本格的に袋小路の鼠もいい所…っ!


     アニー「ん!? あ、あいつ…!?」



 ワンダードギー「ハァ…ハァ…ははっ!!バカめ!この隙に俺は逃げさせてもらうぜ!八つ裂きにされやがれってんだ!」


 [巨人]の大脚の影に隠れて見え辛いが何かが通路に向かって走り去っていく姿をアニーは見逃さなかった
全員が吹き飛ばされてバラバラになった時に捕虜として捕まえたあの[ワンダードギー]も同じくリフトから吹き飛ばされた
 これ幸いと言わんばかりに彼奴は基地の奥へと一目散に逃げていくではないか…っ!


 ワンダードギー(へへっ!天に見放されたと思ったがこりゃあいいぜ、何から何まで俺に運が傾いてきやがったッ)タッタッタッ

 ワンダードギー(この先に組み立て終わった"アレ"がある!モンド様…いやモンドが居ねぇ今が好機、俺が頂戴してやんぜ)
750 :続き 土日のどっちか [saga]:2021/08/13(金) 23:27:24.85 ID:q4Y5kSAF0

 下位妖魔が通路奥へと消えていくの侵入者達は黙って見過ごすより他なかった、捕虜に逃げられたことよりも
剥き出しの敵意そのままに狂剣を振るう大怪物をどうにかせねば退路も進路も無いのだから

 [巨人]は牙を覗かせる大きな口から燃え盛る火炎を吹き、あろうことかそれを自らの得物に吹き付ける
熱せられて赤々とした刃を腕ごと前に突き出す型、突剣の構えで迫りくる


    巨人「うおおおおおおおぉぉぉ ヤケ ロ!」グォォォッ


 弦楽器の青年目掛けて放たれた[ヒートスマッシュ]に青年は目を見開く、今度ばかりは運の良さを自慢する自分でも
年貢の納め時かと――――鼻先まで熱気が迫ってきた所でリュートは何かに吹き飛ばされた


 ドガッ

   リュート「げふんっ!?」ドサァァァァ…


 固い何かに真横から強烈なタックルを喰らって変な声を出しながら地面を転がる彼は自身を弾き飛ばしたのが誰か見た
窮地を救ってくれたのは特殊工作車であった
 硬いボディを持つ彼の装甲に熱を帯びた劔はいともたやすく突き刺さっていて
一撃で戦闘の継続を不可能なまでにしてしまったのである



   特殊工作車「ピガガッ、 すみませんが私はコレいじょうは うごけませ  ん」プシュー

    リュート「こ、工作車!!お前っ」



 彼の人格を形成するコア、メカという種族にとっての魂そのものは破損していない為レオナルドが居れば直せる
だが、恐るべきは相手の圧倒的な破壊力である…特殊工作車を直すにしてもここで全滅すれば直す人も何も生きてはいまい


   ブルー(チィッ、これは正攻法で挑んでも勝ち目が無い…ならば――――)

   ブルー「エミリア、アニー!手を貸せ、スライム貴様もだ!」



  スライム「ぶくくー!(`・ω・´)」ピョン!

  エミリア「何か策があるのね!?」
   アニー「あたし等は何すればいいんだ!?」


   ブルー「…正直アレ相手にどこまで通用するか判らんがやらんよりはマシな策だ、よく聞け――――」


―――
――
―

     ゲン「セイッッッ!!」ガキィィン [ディフレクト]

     巨人「ウオオオオオオォォォォォ」ブンブンッ

     ゲン「うっ、 ぐ   ぐあああぁぁぁっ」キィン キィン  ズバッ

     ゲン「くそったれが…ハァハァ」ボタッ、ボタッ



 差があり過ぎる体格差と武器の質量、リーチがありながらも捌き続けた剣豪も遂に利き腕に大きな切り傷を負う
パックリと二の腕に横一線に紅い線が走りボタボタと金属製の床に血痕を創っていく
 そんな彼の背をリュートは眺めるしかできないのが歯痒かった、奥歯を噛みしめる度に脇腹に受けた一太刀の痛みが
じわりと広がっていく…折角、特殊工作車が身を挺してくれたというのに次の攻撃を避け切れなかった


 メカの仲間達も接近戦を得意とするT-260はゲンと同じく壁になりつつ敵に[多段切り]を浴びせるがそれでも
[巨人]は倒れずに猛攻を繰り返す、遠距離主体のナカジマ零式達の射撃攻撃さえ背中に直撃してもだ
 ダメージは入っていないわけでないが想像上以上にタフネスな怪物で更に片言な言動の割にそこそこ知恵も回る
爆撃や光線銃、[多段切り]の痛みでも攻撃手を緩めないのは一番火力を持つゲンとT-260の連携を断つ為だ
[多段切り]にゲンのワカツ流剣術が加わればばその威力は数倍に膨れ上がるのだが…




 ゲンが切り込んで相手に一番攻撃が入る位置をがら空きにさせた瞬間にT-260が入り込む、という段取りを
見事に間に割って入り込んで邪魔をする……多少のリスク込みで剣豪の一太刀を大きく浴びてでも
"がら空きの位置"取りをさせない、片腕に着けた棘付きの盾で牽制を兼ねた防御で徹底して連携を邪魔してくるのだ
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/14(土) 03:37:30.90 ID:ObMq5Wyc0
乙!
752 :続きは火曜日か水曜日 [saga]:2021/08/15(日) 23:47:26.59 ID:wcPXXzYq0

 敵は人の背丈を優に超えた得物を大きく振り上げてゲンにトドメを刺そうとする
利き腕を満足に振るえないと成ればワカツの剣豪と言えど防げまい、[巨人]は[ブレード]を眼下の脆弱な人間に降し――




       「 その御身を厄災の眼<まなこ>から逃れさせよ!――[保護のルーン] 」フォンッ!フォンッ!




    巨人「ぐごっ!?」ブン―――ピタッ、クルッ! ヒュバッ

    T-260「敵の攻撃目標が自機に移った事を確認、戦闘プログラムを対応した型に変更します!」キィィン!



 刹那、叩き潰そうとした剣豪の真上に光の線が走った
先端が三叉に枝分かれした古代文字を表した輝きは神秘の光をゲンに浴びせ、その姿を視界から"消させた"
 目標を見失った剣先は一瞬の戸惑いから瞬時に切り替える、振り下ろすよりも止める、止めてT-260への牽制に使うと

 気配を完全に断ち切りそこに居るのに相手に存在を悟らせない[心術]の[隠行]と同じく、敵対勢力の網膜に姿を映さぬ
認識阻害の術…それが[保護のルーン]であるッッ!!


   ゲン「ハァハァ な、にがどうなって、やがんだ…」ポタッ

  ブルー「彼奴の目に俺達が映らなくなっただけだ」


 この時、"手を伸ばせば触れられる程近くに居た"術士に剣豪はギョッとした
強敵を前にして全神経を尖らせていたにも関わらずこんなにも近くに居て気付かなかったのだ


  ブルー「手短に話す、あくまでコレは一時的なステルス効果だ自身が攻勢に出たり空間全域の攻撃で悟られては困る」


 語りながら蒼き魔術師は肩を貸してゲンとこの場を離れようとする
一時的なステルス、つまり銃弾や刀身など攻撃の類が幽霊の如く身体を透過していく無敵状態になったというわけではない
あくまでも敵から"見えなくなった"だけであって此方から攻勢に出れば攻撃の出所から現在位置を逆探知されたり
 又、敵方から[ヴァーミリオンサンズ]の様な広範囲への攻撃手段で偶然巻き込まれた場合も印術が解除されてしまうのだ



 其故に、ブルー曰く『どこまで通用するか判らんがやらんよりはマシな策』なのだ…完璧ではない


  ブルー「[保護のルーン]が掛かった今のお前には俺や優先順位に応じて印術を唱えるエミリアとアニーが視えるな?」


 言われて初めて気が付いた、そうだ…どの辺りから"この3人の居場所や安否を意識しなくなっていた"のか
半ば暴れ回り場をしっちゃかめっちゃかにかき乱すバケモノを相手にした乱戦状態とは言え敵は1人だ…っ!
 剣を持ったT-260を初めとした射撃組との連携も意識していたのだからそれなりに仲間の位置や負傷具合も解っていた


 だが、途中からこの3名だけは完全に意識外の存在になっていた


 ゲン「…はははっ、やっぱ術士ってのはおっかねぇや、やれ祈祷師だ陰陽師だのと"呪い<まじない>"ってのは…イテテ」

 ブルー「あまり喋るな怪我人だろうが、バカめ」


 不愛想で余計な一言は付くが『怪我人だから無理するな』と言う旨な辺りコイツなりの優しさのつもりなのかもしれない
少しだけではあったが、正反対な印象を覚える紅い方の双子にほんの僅かに似通った根の部分をゲンは見た気がした


 ブルー「生憎と俺は[陽術]はまだ使えん、だから貴様にはこれから[活力のルーン]を掛ける、その後は武器強化だ」


 ゲンをある程度[巨人]から離れた位置まで連れて行きそこでルーンの一文字を蒼き魔術師は描き出す
[保護のルーン]は、というより[印術]自体が直接的な戦局を揺るがすダメージソースになりえる術系統ではない
 基本的に味方への援護、支援を主体とするのが目的で相手への攻撃を考えるのなら
初期術の[剣]を初め生命そのものを刈り取る[死神]、最大瞬間火力の[塔]など[秘術]が主となる


 敵がこちらの姿を知覚できないこの瞬間に、仲間の武器を強化する[勝利のルーン]や徐々に怪我を治す[活力のルーン]
豊潤な資金で揃えていた基本術を掛けて態勢を整えるのがベストと言える

 ルーンの小石を集めていたグラディウス組の二人が優先順位に沿って術力の続く限りで仲間の保護と支援を
唯一回復手段を持つスライムが[ユニコーン]に変身、一番深手のリュートを治しつつも俊敏さと耐久を活かし敵を攪乱
 ここまでがブルーの指示した策であった、尤も指揮した当人が危惧する通り全体攻撃が来て印術が解ければ
態勢の立て直しも何も全てが終わり兼ねない薄氷を踏む思いの下策ではある、…現状でやらんよりマシな唯一の策だ
753 :>>1です [saga]:2021/08/18(水) 23:48:29.49 ID:e4SsnFb90
少々書き直し場所が発生した為、次は土曜日更新予定
754 :続き明日 [saga]:2021/08/21(土) 23:12:28.35 ID:0ZWRNPvs0

 術士とグラディウス組がルーンの加護を振り翳している合間[ユニコーン]と化したスライムは攪乱に動いていた
角先から治癒の奇跡を放ちリュートや傷ついたメカ勢の回復に努める
 [マジカルヒール]は生物だけではなくメカの損傷を修復できる力があるのだ、人間と違って[インスタントキット]等を
使わなくては直せない彼らを癒せるのは正しく奇跡と呼ぶほかない

 負傷者の手当と俊敏性を活かして怪物の視線を奪う、振り下ろされる[ブレード]の一撃を堪えつつも自身に
[マジカルヒール]を掛けて耐えきる…っ!伊達に"最速行動<ファスト>"で回復可能な訳じゃない


    巨人「オノレ、ウットウシイ…ッ!」グンッ


 怪物は手にしていた武器を大きく振り被った、ここまでは今までと何一つとして変わらない

 ただ不自然な風が一陣吹きだした、それが違いだ



  スライム「(;´・ω・)!?」ハッ!?


 地下基地の内部で生まれた不自然な気流、それは逞しい肉体を持つ化け物を中心に取り巻く"気<オーラ>"が成していた
仲間であるアニーやリュート、剣豪のゲンが当たり前の様に使ってきた剣気を飛ばす技の前兆だとスライムは察する



  ブルー『いいか、よく聞け俺達は[印術]やリュートの[バックパック]に入れてある物で可能な限り準備を整える』

  ブルー『それまでの時間稼ぎが貴様の役割だ、敵が広範囲攻撃を放つのを何としても阻止しろ』



 敵ランク9に該当される彼奴の代名詞と呼べる技――――[烈風撃]の前兆だッッ


 スライムは阻止すべく両前足を上げ、後方の2本脚だけを地につけたまま角を天高く掲げる
敵の創り出した風を利用する形で聖獣の角に風を纏わせる
 風の精霊、霊魂を使役して飛ばすモンスター特有の技術[シルフィード]を撃ち出し相手の技の発動を阻害せんとする



  巨人「ウゲッ、ジャマ ヲ スルカ…!!」ギロッ


 烈風が視覚化できる程に真空の刃を纏った[ブレード]に衝撃弾をぶち当てて空気を散開させる
目障りな群れを一気に殲滅する所を邪魔されて腹立たしく思った[巨人]のヘイトは当然スライムに向く

 全体攻撃の阻止と攪乱、仲間の準備が完了するまでのタンク役としての仕事

 圧倒的火力を前に瀕死になったとしても"最速<ファスト>"で自身を完治できるのだからこれ程お誂え向きなこともあるまい


―――
――
―

  リュート「うおぉっ!?ブルーお前何時の間に俺の傍に!?」

   ブルー「デカい声を出すな!…[保護のルーン]で相手が声も姿も認識出来ないとはいえ違和感を感じることはある」


 目の前で戦っていたゲンが突然消えた、何を言っているのか分からないだろうが神隠しにでも遭ったように消えた
超スピードとか催眠術なんてチャチなモンじゃ説明付かない物の鱗片を味わったリュートは直ぐに同じ現象に至った

 剣豪が居なくなりT-260と交戦を始めた[巨人]の元へ一角獣の姿に変身したスライムがすっ飛んできて
奇跡の輝きで腹部の負傷を治してそのまま敵に向かって突っ込んでいき随所をチクチクと[角]で突き刺しては離れていく
一撃離脱を繰り返していくのを見たのまでは覚えている、T-260を叩き潰そうとする絶妙なタイミングで視界を奪う様に
顔面の目ん玉狙いや武器を持つ手首の付け根など彼奴からすれば鬱陶しいことこの上ない戦い方だった

 気が付けばそんな自分の傍にいつの間にか蒼の魔術師が居て、女性陣と目の前で消えた筈のゲン、pzkw�Xにナカジマ零式
特殊工作車を修理しているレオナルド博士が居る


  アニー「あぁ…もう無理、あたしはそもそも術向きじゃないんだからね?」ゼェゼェ
 エミリア「コレ結構神経すり減るわよね、頭の中で文字を思い浮かべてるだけなのに…」グッタリ

  ブルー「メカ組の確保と能力強化よくやった、あとは貴様らの得意分野だ」

  アニー「ったく…へとへとだってのにまだ働けってのかよアンタは」


 悪態を付きつつ剣の柄を握りしめて不敵な笑みを浮かべる黄金髪と銃を取り『術を使うより楽そうね』と同じく笑う金髪
蜂蜜色の髪を揺らしながらブルーはリュートの[バックパック]を漁り"石"を数個取り出し告げる、今からが反撃の時だと
755 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/22(日) 00:43:06.36 ID:cvXHcYK60
おつースライム有能
かつてこんなにスライムに光が当たったサガフロ二次無いのでは…
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/08/22(日) 23:55:41.71 ID:6ou5FD+Q0

 蒼の魔術師は手にした"石"をそれぞれメカ組に持たせていく、弦楽器を背負った青年はそれを見て首を傾げた
彼は旅路の最中で幾つかその石を拾う機会があったが何に使う物なのか分からなかった
 [マンハッタン]の宝石店やアクセサリーショップで見かける綺麗な鉱石だな、くらいには思ったがそれだけで
そんなものを態々武装を取り外してメカに着けさせる意図が読めなかった


  ゲン「っしゃ、傷も完治したぜ…これならいつでも行けらぁ!」

 ルーンの効力で傷が塞がり更に勝利の加護が付与されて切れ味の増した武器を振るうゲン
特殊工作車の修理を終えたレオナルドも[勝利のルーン]によって今まで以上に早く直せたと上機嫌だ

 装備武器の効果性能を向上させる[勝利のルーン]は[修理装置]にもちゃんと適応される
リュートが保護の力で大怪物の視界に入らなくなる少し前に術士の策とやらは伝わっているらしく
 メカ勢全員が謎の石を鉄のボディへ取り付けていた



  ブルー「リュート、お前に渡してある[バックパック]にはこの"3つ"の予備がまだあるな?」スッ

 リュート「あるぜ、けどこんな時に綺麗な石っころでどうしようってんだい」


  ブルー「貴様今までコレの用途を理解せずに拾ってたのか…」



 レオナルド「軍師兼術士くん、こちらは準備完了だよ」

   ブルー「むっ…リュートいいか、お前は石が無くなった奴に片っ端から予備のそれを装備させ直せそれだけだ!」


 "準備"とやらが出来たメカ達を改めて見る、術士の男が何を考えてその指示を出したのか未だに彼には図り兼ねていた
高火力の重火器や業物の劔、そういった武器の類を一切外し変わりに全身鎧や盾を付けさせる

 …もとより外せない武器はそうだが何故か[火炎放射器]などを明らかに外した武装よりも弱い物を装着させていた


  リュート(???…一体全体何しようってんだ、マジで?)


 多少筋力や銃撃に必要とする集中力を落としてまで防御性と耐久、なにより丈夫さをあげた装備編成は
攻撃重視というよりも守りに特化していた

 ブルーはメカ達にも当然[勝利のルーン]だけでなく[活力のルーン]も掛けていた
ボディ全体の"丈夫さ<Vit>"を上げることや耐久力そのものを増強したことで[活力のルーン]効果を増やすことはできる
 然しながら機械は生物ではない、だから[マジカルヒール]なら兎も角普通の術による治癒効果はそこまで見込めない
微々たる回復量と取り外した武器の威力…天秤に掛ければ後者に傾きがあるのは当然だが…


―――
――
―

   スライム「(;´・ω・) ぶ…ぶく、ぶ…」ヨロッ…


 T-260の[多段切り]とスライムの攪乱によって[巨人]の屈強な肉体にも至る所に傷が出来ていた
常識外れのタフネスさを持つ怪物はそれでも未だ沈まず…っ!
 傷は癒せたとしてもスライム自身の消耗した体力と気力は戻らない、疲労の色が見え始めたモンスターと
エネルギー切れが近く[多段切り]も後数発撃てるかどうかのメカが1台

 大怪物はほくそ笑み、再び口から火炎を吐き出して手持ちの劔を赤々と熱していく


 巨漢は[ヒートスマッシュ]を一角獣目掛けて振り下ろす、スライムはそれを避けようとするも激戦で散らばった破片に
脚を取られそのまま四つ足を縺れさせてしまう…ッッ!


   スライム「Σ(・ω・ノ)ノ!ぶくっ!?」ガクッ、ドサッ



     巨人「カッタ!!シネィ―――!!」ブンッ



 赤々と照った金属が倒れた一角獣目掛けて落ちていく、T-260では位置からしてスライムと煉獄の刃の間に割って入り
救出することができない、攪乱してヘイトを一身に買う役目のスライムが居たからこそ
死角に潜り込んで切り刻むことができたのだ


 せめてもの抵抗とばかりに青肌の背中に剣を突き立ててそのまま上部へと裂く様に腕を振りあげるも
それでも悪鬼は止まらないッ!タフネスが売りのバケモノが今の今までメカ達の火力を受けて尚、強行してくるだけはある
757 :続きは火曜日か水曜日 [saga]:2021/08/22(日) 23:56:41.21 ID:6ou5FD+Q0







      ブルー「この瞬間を待っていたぞ!全員突撃ィー―――ッッ!!」





  ドウッ! ドウッ! ドウッ!




 術士、策の発令を叫ぶ。


 それに伴ってリュートを除いた全員が護印の庇護から飛び出す
後部のバーニアを、各関節部のスラスターを吹かしての急加速、[ヒートスマッシュ]の一撃で先程沈んだ特殊工作車も
最速を誇っていた機動性を落としてでも頑丈さを取らせたナカジマ零式だって
 重装甲と化したpzkw�Xもレオナルド博士も皆が一斉に前に飛び出したのだ


 [保護のルーン]によって未だ透明化していたリュートは戦いの被害が及ばない離れた位置から見て思った


  リュート(なるほどメカの皆には火力要員じゃなくて盾役に徹してもらうって訳か…けれども―――)



 これ以上はどう足掻いても防御性を上げきれない、それ程の装甲と雀の涙ほどに微々たるとは言えルーン効果の自動回復
確かに味方が全滅するという確率はこれで各段に下がるかもしれないが…

 根本的な解決にはつながらない

 鉄壁の要塞だろうが究極の盾であろうとも敵に少しでも攻撃が通らなければジリ貧で終わる
攻撃は最大の防御とはよく言ったものだ

 倒せなければ結局は時間をじっくり掛けた上で1人1人確実にこちらが削り切られる、防ぎつつも攻撃ができれば良いが
主要武装の殆どを外して防御面に極振りしている以上は前へ進めない、打開できないとリュートは見た




 メカ集団が4機掛かりで煉獄の刃を受け止めようとする寸での所で彼らは皆一世に片腕を天高く掲げた





    特殊工作車「オペレーション、カウンターシールドを発動します―――[紅炎石]を破壊!!」パキィィン

   ナカジマ零式「あっそーれ!!」パキィィン
      pzkw�X「砕けろッ」パキィィン

    レオナルド「やれやれ中々面白いこと考えるね、彼」パキィィン





 弦楽器を背負った青年は確かに見た。

 [マンハッタン]の装飾品店でよく見かけた"綺麗な石"を天高く掲げたと思えば指先で粉々に砕く様を
蒐集癖のあるグラディウス組と何気なくリュートが拾い続けた"3つの石"…ブルーが[バックパック]から取り出した3種


 即ち、[紅炎石]と[銀氷石]そして[雷の結晶]の3つである…ッッ!


 紅々と輝く柘榴石に似た輝きのそれは砕け散り、その破片はやがて吹き荒れる炎と化してメカ達の身体を包み込む
猛火に包まれているにも関わらず涼しい顔をする彼らは敵ランク9のモンスター[朱雀]が使うとされる[ファイアバリア]を
その身に纏ったのだッッ!

 4機の[ファイアバリア]を纏った鉄の要塞と[ヒートスマッシュ]がぶつかり合うッッッッ!!

 一撃の下に戦闘不能に陥った特殊工作車は今度は墜ちなかった、術士達の指示で取り付けた防御性極振りの装備故に
煉獄の刃を耐えきり更には身に纏った不死鳥の炎が[巨人]の劔を伝い、腕を焦がし青肌の巨体さえも業火に包んでいく…!

758 :続きは金曜日か土曜日予定 [saga]:2021/08/25(水) 14:17:46.47 ID:GQdXw0gO0

 手首の先から燃え広がり徐々に腕に肩に胴へ、[ファイアーバリア]による炎は水分の抜け切った枯れ木を燃やすが如く
大怪物を襲う炎熱の洗礼となったのを青の魔術師はその目で確認した
 修士として学院で勉学に励んでいた時分に学院の古書で遠い昔の"惑星<リージョン>"に存在した術に関して学んだ事はある
現代では失われてしまった系統の術だが"朱雀術"というもので[セルフバーニング]などと呼ばれていたらしい



 人間が使う術としては失われても、その術を用いた文化や技術自体がモンスターの能力として組み込まれたり
あるいは古文書…各地の神話や伝承と言った歴史書を頼りに現代の魔道や科学技術の髄を結集して
失われた術を限りなく再現しようとする試みは昔から存在する


 少し前に苦戦した[ゴースト]共の使っていた[邪術]

 今や無き術系統とされている[幻術]だって[陰術]と[妖術]にそれぞれ吸収された形式で形こそ変われど現代に存在する


 例を挙げるならばそれらが該当するのだろう
今回使用した鉱石の内1つは術や技術に心得のある者が少し手を加える事で疑似的に[セルフバーニング]を再現できる
 モンスターの吸収能力として姿形を変えた[ファイアーバリア]という形式名で…



    巨人「う、うがあああああああああああああああっっ」ゴォォォォォ!!


 これは堪らんとばかりに猛火の衣を纏った怪物は両腕で頭を押さえ振り乱す様に全身を揺り動かす
自らを蝕む獄熱のローブを剥がそうと大降りに動きつつも握り拳を開き武器を落とそうとしない辺り大した者だ

 相手の体積も右腕に装着した盾も屈強な肉体を護る鉄鎧も関係ない、ただ"自身に敵対の意思を持ち接触した相手"を
例外なく炎上させるのが[ファイアーバリア]なのだから…

 メカ4機分の推力が織りなす馬力ともなれば大怪物の筋力で振り下ろされた大質量の武器にも拮抗でき
敵の攻撃を防ぎつつも相手に大火傷を負わせる鉄壁の布陣は此処に完成した


 ナカジマ零式「ふぅ〜っ!4人同時で受け止めれば流石に受けるダメージも軽減されまーすねー!」+HP85
    pzkw�X「分厚くしたおかげでそこまで痛くない上に自動修復されるとはいえそこまでじゃないけどな」+HP81

  レオナルド「なーに、だからこそボク達が居るのさ[勝利のルーン]で[修理装置]の"性能向上<WEA UP>"もされた」
  特殊工作車「今なら直せないパーツなんてありませんよ、ええ」



 BANNG!! ヒュンッ!ヒュンッ!


 跳び上がり敵の攻撃を受け止めた焔の防壁達が反動で後方へ飛び退くと同時に漸く鎮火し始めた[巨人]の青肌に無慈悲な
銃弾と剣気が襲い掛かるッ!勝利を約束する護印を刻まれた武器の味はさぞや痛かろう
 今まで攻撃を受けても顔色一つ変えずに剣を振り下ろす事を強行してきた大怪物が初めて苦痛に顔を歪め
流れる様だった動作に手を止める時間や勢いの衰えが生じ始めたのだ


     ゲン「帰って来たぜ!長い事待たせちまったなT-260!!」

    T-260「ゲン様の戦線復帰を確認、また自軍の防備並びに兵装の大幅な見直しも確認!連携主体の軸へ変更!」


 闘気を纏った一閃…!光の波が地を奔ったかと思えば怪物の鉄鎧ごと胸筋に一太刀が浴びせられていた
グラディウス組の攻撃の後間髪入れずに[燕返し]を放ったゲンが[ボロ]を旅立った時から付き合い続けた相棒の隣に並ぶ


    巨人「ツギカラ ツギヘト…ッ!!」ギリッ


 いつの間にやら消えたと思えば伏兵として帰ってきた侵入者共に腹を立てて武器を振りまわす、それに反応するように
やはりT-260以外のメカ達が前に出て立ち塞がる……未だ燃え続けたままで
 振るわれる大剣と燃え盛る要塞の激突、先の状況そのままに焼き直しだ
自分の意志で攻撃を仕掛けて自分から触れてはならない機雷に触れて火傷を負う

 鉄壁の防衛線で侵入者達へ決定打は与えられない上に自身は焼けて、更に相手に追撃の機会をみすみすくれてやるのだ
蜘蛛の巣に絡めとられた蝶にでもなった気分を[巨人]は味わった
 足掻けば足掻いただけ糸が絡まり雁字搦めになってどうしようもない、今の一撃で[ファイアーバリア]がやっと消えて
状況が少しは好転したか!?と思えば…



       ブルー「その御身を厄災の眼<まなこ>から逃れさせよ![保護のルーン]」フォンフォン!
      スライム「(。-`ω-)ぶくぶくぶー!」パカラ!パカラッ! 


 一角獣の背に乗って素早く回り込んできた術士が炎の消えた機械戦士を片っ端から[巨人]の意識外へと逃がしてしまうッ
次に出てくる時には裏方に回ったリュートの援護で[フリーズバリア]か[サンダ―バリア]を纏って現れる事間違いなし
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/08/26(木) 03:12:37.00 ID:zqoBlmjQ0
乙乙
760 :続きは明日 日曜日 [saga]:2021/08/28(土) 23:18:42.95 ID:TT9QJu3Q0

 武器を振り回す[ブレード]に属性を付与した[ヒートスマッシュ]と[アイススマッシュ]体格を活かした[グランドヒット]
目の前の大怪物はその殆どが近接格闘を主体としていて
 間接的な攻撃手段など[烈風撃]や[タイタスウェイヴ]に[地震]などであった

 収束させた気流を放つ烈風の技はともかく他の2つは使用頻度が高いとは言えない、大技であればある程隙が生じるから



 劣勢から拮抗へ、拮抗から優勢へ。


 勝利を約束されし武具の一撃は一発一発が序盤の痛みとは比較にならないもので着実に[巨人]の命を削り続けていた
反撃に転じようと愛用する劔を振るえば虚無から突如として湧いて出てくる雷を纏った鉄兵が受け止め
落雷に撃たれでもしたような痛みが全身を駆け、追い打ちの様に柄を握る手首に焔や冷気までもが突き刺さる

 棘だらけの茨を素手で殴りつけているような嫌な感じ、大幅なダメージ覚悟で隙を見せて広範囲攻撃に転じても
活力が滾る侵入者達は時間の経過と共に傷など無かったと謂わんばかりの状態に戻っているのだ


 最早どうにもなるまい、単純な戦闘能力だけでは覆しようの無い布陣が敷かれたのだ



   エミリア「そこだわッ!」BANNG!!
    アニー「[無拍子]…!」シュバッ


            2連携 [ 跳 弾 拍 子 ]


 2発分の[跳弾]が左右の肩に撃ち込まれ、速さを売りにしたアニーの回避不可能の切り抜けが青肌の脚の脛を切り刻み
遂にその巨体は喉奥から血反吐を吐きながら膝を折った、シールドを装着した右腕は崩れ落ちる身体を支える柱となるべく
床に掌をつけて……そして顔をあげた時に見た


 鉢巻を巻いた男の背に見えるはずの無い"月影<げつえい>"を幻視した――――ッ



        ヒュッッッ  ――― ― ―   ― −‐ ッ



 地の底で、この時分に見える筈の無い満月に人間の影が重なった
月の輪郭を沿ってかあるいは滑り落ちる様な[刀]の峰を見た、刃は幻想の月光の中に溶け込む様で見えなかった…

 美しく心さえ奪う鮮やかな、それでいて総毛立つ程にゾッとする白刃に怪物は見惚れた


 薄布のベール越しに透過して見える月の輝きだとでもいうのか、刀身はきめ細やかなソレのように幻想の美さえ魅せて








 [巨人]のその魂を刈り取った。






       巨/人「う  ケ  ガぁ?」




 顔がおかしい、目の焦点が合わない

 魅入った月が真っ二つに割れる、光の筋が走ったと思えば目線の真ん中に上から下に掛けた斜めの線が後を追い

ドサッ…


      巨「…ぉ」
        人「…ぁ?」


 青肌の悪鬼は顔から先の胴体さえも真っ二つに切り別れた
辞世の言葉が『ぉぁ?』と我が身に何が起きたか分からぬという言葉だけを残して…かくして激闘の"前哨戦"は幕を閉じた
761 :続きは木曜日か金曜日予定 [saga]:2021/08/29(日) 22:10:06.02 ID:4pgvLgm20

 さて読者諸氏よ…ッ!我々は重大な事を一つ忘れていないだろうか!?
我らが愉快な侵入者御一行がモンド執政の秘密基地で最終防衛ラインの巨漢と激戦繰り広げる少し前に逃げ出した奴をッ!

 時間は少し前に遡る…

―――
――
―

  ワンダードギー「ハッハッハッ…へ、へへっ 見えてきたぜ!!あのドッグだ」タッタッタッ

 どさくさ紛れで逃げ出した下位妖魔は後方から聞こえてくる轟音に脇目も振らずただ一か所を目指していた
最下層周辺警備のメカや慌てふためく雇われのモンスター達の波を掻い潜って文字通りの"秘密兵器"の下へと…


       「しゅ、主任さんよォ!?一体どうなってんだい!?敵が近くまで来てんのか!?」
  ワンダードギー「うるさいっ!そんなことよりアレの起動準備を進めろ!!」

       「は?ア、アレって…それはウチの大将が乗り込む機動兵器だろ、勝手に起動なんて…」




  ワンダードギー「 つ べ こ べ 言 っ て ねぇ で 早 く や り や が れ !! 」

  ワンダードギー「モンド様からの直接命令だぞ!?」




 一世一代のチャンス到来、焦る気持ちからカッとなって怒鳴り散らしたことで幾分か冷静さを取り戻して
一呼吸置いてから堂々と『モンド様からの指示』だと嘘をつく
 自分1人でもできないことは無いが折角人手があるのなら最大限利用してやろうくらいの気持ちだった

 怪訝な顔をしつつも自分より立場の上に居る人物が更に上の者から命令されたのだとすれば…と彼らは奥に鎮座する
機動兵器の枷を外す作業へ取り掛かる



 それが彼らにとっての最大の悲劇の始まりとも知らずに


 その"機動兵器"は格納庫のドッグ内でしっかりと固定されていて、いつでも出撃可能な状態になっていた
下級妖魔は心臓の鼓動が早くなるのを感じる、夢にまで見た『力』を我が手にできるのだと意気揚々とコックピットに乗り
コンソールを弄って稼働準備を進めていく、ディスプレイに灯る光

 それに連動するように眠りから覚める様に赤く光り出すツインアイのカメラ
人間の手と同じ様に滑らかに動く5本指のマニピュレータ、図太い巨大な金属製の大脚



           『 Great Monde. 』


 "Great Monde<グレートモンド>"…その大型機動兵器の名称がモニター画面に表示された
下位妖魔はこの世に生を受けた事を認識して以来、未だかつてない程の喜びを噛みしめた


   ワンダードギー「…くっ、うくく、くはははっ…やった、やったぜ…遂にやったぜ!!!」


 殺しきれない笑いが、喜楽の感情が漏れ出す中[モンド基地]の全防衛システムと電力、火器系統にアクセスして掌握する
そしてメインカメラ越しに蟻にしか見えなくなったモンスター…先程[ワンダードギー]の言葉を鵜呑みにし起動立ち上げを
手伝ったモンスターの姿を認識した、集音器が拾った音声からして問題無いか?と叫んでいるらしい


   ワンダードギー「…ああ、問題ねーよ!」ガチャッ


 最終兵器と呼ぶに相応しい機動兵器は銃口を足元に居る整備士に向けて撃ち出す、一瞬にして起動を手伝った者は
穴だらけのチーズと化してその場に倒れ伏す…この事態に他のモンスターもメカも理解が追い付かなかった
 搭乗者の誤作動?いいや違う、裏切り行為だ意図的に撃ったのだと理解した時には全員が今際を迎えていた


   ワンダードギー「俺を見下してきた全てをぶち壊すんだ、これさえあれば妖魔の君を倒す事だって夢じゃねぇんだ…!」




    ワンダードギー「リージョン界を統べるのは『力』だ! それが解らねぇ野郎共に教えてやる…っ」

    ワンダードギー「力の意義って奴をなァ!まずはあの侵入者共からだ…あいつ等の体に直接、叩き込んでやる!!」

762 :続きは明日、土曜日 [saga]:2021/09/03(金) 23:54:19.71 ID:+IJbBCz00
―――
――
―

 鞄から取り出した酒を喉に流す、体内に消耗した術力が滾るのを彼は感じながら思う
戦闘を終える度に勝利の美酒はこれだからやめられないと謳うゲンの気持ちも分からなくはないと
 命のやり取りをした直後の高揚、喉の乾きを潤すのが甘露水ではなくアルコールというのは好くは無いが
自分が一息つける環境に至れたと実感できる瞬間には違いない

 長距離走を走り切った後の息絶え絶えの所で座り込んで飲み物を一杯、今この瞬間だけはこれ以上頑張らなくていい

 何かの例に喩えるならばそんな言葉だろうな、嫌いじゃない…後ろを見やれば本職のブルーよりは
圧倒的に術力は少ないが多少消耗した女性陣も一口[術酒]を含んでいた、背景ではレオナルド博士やリュート等が忙しなく
メカ達の装備を防御性重視から元のプログラム装着を意識したINT用のメモリーや火器武装の取り付け作業に入っている
 既に切れた[活力のルーン]やスライムの治癒の光で肉体的な怪我も完治したと言っていい
最後はスライムに[巨人]の死体から細胞を取り込んでもらい技力の回復、あわよくば何かしらの戦闘技術を会得させる


    ブルー「どうだ?何か得るものがあったか?」

   スライム「(´・ω・`)…ぶー」シュン

   リュート「気にすんなって、お前さん今回大活躍だったんだぜ誰も責めねぇよ、なぁ?」


 弦楽器を背負った無職に振られて蒼い法衣の術士も肯定する、[ワカツ]到着から現在に至るまでの最大の功労者を
褒めこそすれど咎める理由は無い
 準備が整った所で荷物をまとめて通路の先を見据えた所で奥の様子がおかしいことにリュートが気が付いた


  リュート「んあぁ?なんだ〜奥から変な音聞こえねぇか?」

  エミリア「変な音…ううん、そんなの聞こえないけど気のせいじゃないの」


  リュート「いやいや、聞こえるって俺ミュージシャン目指してんだから耳は悪い方じゃねーんだって」


 蒼き魔術師はいつだったかこの無職に『俺、いつかプロになって[マンハッタン]で公開ライブしてぇんだ!どうだ?』と
音楽にはそこまで詳しくない素人の自分からしても微妙な顔をするしかない歌を聞かされたのを思い出した
 首を横に振り払って変な記憶を掻き消しながらも彼に問う、どんな音なんだ?と


  リュート「なんか、こう…ガガガガガ!って銃声みてーな?にしちゃ普通のマシンガン的な奴じゃねぇなって」


 これまで[バルカン]を撃ち出すメカの敵とも戦ってきたがそれとは音の質が異なるらしい
機銃の音よりも轟く滝の傍で水が止め処なく落ち続けるような轟音だと




 彼らは知らない、それがこの通路の奥で機動兵器に乗り込んだ[ワンダードギー]が基地内のモンスター達を
通常のメカとは明らかに異なる大経口尚且つ尋常ではない数の備え付けられた銃塔でハチの巣を通り越しミンチにした事を


 使い捨てのカメラによる写真撮影も欠かさず、侵入者一行は基地の最奥へと向かう
そして長い通路の半分を過ぎた辺りで仲間の1人がいよいよもって異変に気が付き身構える


  アニー「待って様子がおかしいわ、……リュート、アンタがさっき聞いた音ってのは気のせいじゃないかもね」スッ

 リュート「えっ、この先になんかあんのか?なんでわかるんだ?」



  アニー「……鉄臭い上に焦げ臭い、血の匂いと"焼けてる"嫌な臭いが鼻に突くのよ」


 そう言われてスンスンと鼻をひくつかせるが弦楽器を背負う男にも魔術師やブロンド美女も一向に分からなかった
ただ一人、剣豪だけは見ればアニー同様に武器の柄に手を掛けて眉間に皺を寄せていた


   ゲン「分かってるじゃねぇかネエちゃんよぉ、ひり付いた嫌な臭いがプンプンしてくらぁ…」


 基地の最深部だ、重要な場所であればあるほど護られる機密も大きなもので防衛線もより堅牢、苛烈を極める物となる
ならばこの先に待ち受けるのはなんだ?[巨人]を超える程の恐ろしい物があるのか?

 それが侵入者である自分達を待ち受けている、にしては状況がややおかしい

 リュートが聞いたというおそらく攻撃音、そして血の匂いと生き物の肉が焼ける異臭が奥からする
そこから導き出される答えは基地内部の何物かが同じく基地内部に居る仲間を襲ったとしか思えない
少なくとも自分達より先に侵入していた先客が居たという形跡は無かった、……意を決して彼らは奥へと脚を運んだ
763 :続き明日 日曜日 お昼過ぎくらい [saga]:2021/09/04(土) 23:52:44.60 ID:GXy8DoJa0

 進めば進む程に嫌でも達人達が嗅ぎつけた死の匂いが立ち込めているのが解った
薬莢の匂いとまだ床に残る真新しい血痕、空調が効いてるにも関わらずそこに残る熱、飛び散ったモンスターの身体と
物言わぬ屑鉄と化したメカの残骸…


 大型機材の駆動音、それは奥のドッグから聞こえてきて彼らを今か今かと待ち受ける様に唸りを上げていた



  ブルー「な、なんだというのだこれは!?」

 リュート「……こいつぁヒデェな」



 見渡す限りの朱、紅、赤…、漏れ出したメカのオイルに発火でもしたか炎上している箇所もあり、消火設備がそれを
必死に消そうと動き続けていた

 最早、この[モンド基地]は拠点としてまともに使えないのではないか、とそんな考えさえ過っていた
カメラで撮影してルーファスに写真を叩き付ける所の話ではないと判断して蒼き魔術師は提案する


  ブルー「……一応聞いておこう、幾つか十分な証拠写真は得た」

  ブルー「モンドという男の基地があるという噂を裏付けるには十分すぎるほどの物をな、此処で退却するか?」



   ゲン「…俺ぁ帰らねぇよ、[ワカツ]の真下にこれだけの事やらかす化け物が居るんだろ?」

   ゲン「なら…同胞達の安らかな眠りの為に、魂を鎮める為にも放っておけねぇからよ」


 俺は個人的に残るんだ、お前達は付き合わなくても大丈夫だ、と続けて言ってくれるゲンに対して
T-260を初めとするメカ勢が同行すると口にしリュートもまた…



   リュート「水臭いぜ、ゲンさん…正直に言えばおっかねぇから帰りたいけどよ…皆で無事に帰らねぇとな」ニカッ

    アニー「ここで帰ったらルーファスにグチグチ言われちゃいそうだからね、アタシも付き合ったげるよ」
   エミリア「まっ、そうなるわよね」



  ブルー「…はぁ、やれやれだ全く、貧乏籤を引かされたものだな…」スタスタ




 臆病者で無職の癖して[スクラップ]の酒場に居た頃からクーンを初め知り合った人物を放っておけない人情の厚い男は
カバレロ一味との対決時の様にゲンに付き合うと言い出した、尤も今回の基地潜入自体がモンド氏絡みだしもっと言えば
剣豪に頼み込んで[ワカツ]に連れて行ってくれと言い出したのはリュート本人だ、当然ながら思う事もある


 同じく義理堅い女のアニーも上司の愚痴が嫌だの任務が云々抜かすがそんな建前抜きに共に戦った仲間の為に
協力を申し出てることぐらいは誰にだってわかる、二人が残るなら放っておけないと同僚と友人の為にエミリアも…


 1人でさっさと[ゲート]を開いて帰ってもいいのだが、そうなるとここまで自分が来た理由が無いし上に
唯一[ディスペア]に足を踏み入れる為の鍵であるアニーに万が一があれば自分の資質集めの旅に支障が出ると想定され
 芋づる式にブルーの選択肢も決まった様な物であった

……もちろん、ブルーが残るならスライムも説明不要である



  ブルー(そうだろうよ、…こういう奴らだからな)



  "一応聞いておこう"、魔術師は帰還を提案する際に前置きで言葉をそう発した
知ってた、わかっていたとも…あぁ、解り切っていた、短くない付き合いなのだからどう言葉にするかなんて理解してたさ


 何が写真を撮って帰るだけの簡単な任務だ…とんだ貧乏籤じゃないか、内心で悪態を付きつつも
不思議と魔術師は悪い気はしなかった

 厄介ごとに付き合わされているだけ、客観的に見ればそうなのに。

 最近の自分はどこかおかしいのかもしれない、周囲の喧しい人間達に振り回されているこの環境が嫌いじゃないのだから
肩を竦めてため息を吐きつつもブルーは仲間達の元へと歩き出す、どうせなら未知の脅威とやらをこの目で拝んでやる
どんな化け物が出るやら、自分の魔術がどこまで通じるか試して見るのもまた一興、修行の一環だ、彼はそう結論付けた
764 :続き 夜 [saga]:2021/09/05(日) 15:52:50.41 ID:pLf8J+eI0

 意を決して、最奥のドッグ内へと入り込み彼らは最終兵器の姿を捉えた…っ!
そのフォルムは神話に登場する半人半馬を連想させる屈強な四つ足、尤も手にしているのは弓ではなく
彼のサイズに見合う超大型のサブマシンガンであり、全身も体毛に覆われた生物然とした物とは異なる合金の塊だ
 上層で見かけた超大型の[Tウォーカー]等や[巨人]以上の巨大さに思わず侵入者達は息を飲んだ


   リュート「おいおい、子供向けのヒーロームービーに出てくる合体変形ロボのご登場かよ…」タラーッ

   エミリア「いや、本当デカいのに縁があり過ぎでしょ私達…」ゴクリッ


 鬼が出るか蛇が出るかと覚悟はしたが、正直舐めてたな―――これはいくら何でも規格外だ
見上げる程の機動兵器を見上げて多くの者が同じような感想を抱いた所で向こうは紅く光るツインアイカメラで此方を
認識してか声を発してくる、つい最近聞いた声だ


  『待ってたぜ侵入者共!基地の深部に来るのが目的だったようなんでなァ待ち構えてたんだ!!』



  ブルー「その声は…貴様さっきの捕虜か!?」


  『おうともよ!てめぇ等さっきはよくもこの俺をコケにしてくれたじゃねぇか…』

  『俺は"力"を手に入れたんだ!今まで俺を馬鹿にしてきた連中を全員踏みつぶせる程の"力"をなァ!』

  『リージョン界は全て俺様の物だ、トリニティも妖魔の君も全部俺様にひれ伏すんだよォォ!!』



 ゴオオォォ!スピーカーから操縦席に座る野心家の叫びが木霊する、―――馬鹿に鋏を持たせるなという諺はよく聞くが
気違いに刃物という例は正しくコレだろう、支配欲を持った小物がある日突然巨大な力を得ればこうなるのだと…っ!



  『外に出て色んなモンをぶっ壊す前にてめぇ等だ、覚悟しやがれ…ッッ!!』ドゥッ!


                    ――――ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォォォ


 本来の搭乗者、モンド氏の名前を冠した兵器…[グレートモンド驚天]は轟音をあげて前進してくるッ
同時に[ワンダードギー]は掌握した基地内のシステムを作動させて自身達の居る"足場"を動かした



  アニー「おわっ!?」グラッ

   T-260「足場が上昇移動を開始!不安定な揺れによる回避率の低下が懸念されます!」グラッ


 ここまで降ってきた斜行リフトとはまた違う動き方をする足場、上昇に急速をつけ左右にも揺さぶりを掛けるのが何とも
嫌らしい動きである、喩えるなら荒れ狂う海上にポツンと取り残された丸太筏の上に突っ立ってる様な気分だ
 警告を発したT-260の言う通り不安定極まりない足場上での戦闘は彼らにとって不利なフィールドでしかない

 マニピュレータの指が大型機銃の引鉄を引いて[バルカン]を撃ち出し続けざまに肩のミサイルポッドから
[ミサイル]も撃ち出す、[ミサイル回避][バルカン回避]プログラムを持つメカ勢は兎も角
常に揺れ動く不安定な足場では十分な回避動作も取れず直撃こそせずとも大型機銃の銃弾が
床を削った際に飛び散った破片が身体に突き刺さったり、ミサイルの爆炎で火傷を負う者も出始める


    敵ミサイル『』ヒュルルルッ

   特殊工作車「危ない…っ [ヘッジホグシステム]!!」バシュゥッ!
  迎撃ミサイル『』ヒュルルルルッ、バッグォォォン!

   エミリア「熱っ!」

 本来、直接攻撃に対するカウンター用のプログラムで敵の[ミサイル]直撃から仲間を護ろうとするが唯でさえ
照準が定まらない、迎撃はできても相殺の際に生じる爆炎はどうしようもできない


   特殊工作車「す、すみません…」
    エミリア「いいわ、気にしないで…そんなことよりあの巨大兵器をなんとかしないと!外で暴れ出したら大変よ」

     ブルー「あぁ同感だ…あの妖魔リージョン界を自分の物にするとか言ってたからな」

     ブルー「ちっ、これはもう[ゲート]の術で一旦退却だどうのと言ってる場合ではないなッ!」

 自分達が暮す"全宇宙<リージョン界>"を蹂躙して自分が支配者になると宣うのだ
銀河の海に浮かぶ全ての"惑星<リージョン>"の危機とあらば当然[マジックキングダム]も例外ではない
 ブルーとしても自分は無関係だから黙って背を向けて去りますね、という訳には行かない
765 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/09/05(日) 23:36:24.04 ID:pLf8J+eI0

BGM:リュート編ラストバトル
[https://www.youtube.com/watch?v=2IHjW-u_cTQ]

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 [グレートモンド驚天]は四つ足を巧みに動かし稼働中の足場を大きくグラつかせる、上昇リフト化した足場全体を支える
鉄骨も当然の様に揺れ悲鳴を上げる、激しい[地響き]の最中で脚部の膝関節部分に取り付けられた
火炎放射器からも[放射火炎]を吐き出し稀に股間部分にも取り付けられた衝撃波発生装置から[超音波]も発せられる


   ブルー「くっ…脚だ!全員彼奴の脚を仕留めろ…っ」グラグラ、ヨロッ…


   T-260「[多段切り]」ザシュザシュザシュ!
 特殊工作車「同じく[多段切り]」ザシュザシュザシュ!
 ナカジマ零式「は〜い!もいっちょ[多段切り]」ザシュザシュザシュ!
   レオナルド「ボクも手伝うよ」ザシュザシュザシュ!



            4連携 [ 多 段 多 段 多 段 多 段 切 り ]


 [地響き]の影響下で"人間<ヒューマン>"とスライムが移動困難な中、安定した動きで巨大兵器のボディを
切り刻んでいく機械戦士達、連携さえ組めれば彼らのマシンパワーが産み出す剣技の強さに立っていられる者は居ない
 あの[巨人]でさえメカ組達の連携を恐れて組ませない様に立ち振る舞っていたのだから…



    pzkw�X「おらぁ!![ハイペリオン]を喰らいなァ!」
  陽子ロケット弾『 』バシュゥゥゥッッッ!ドゴォォォォ!!


 人間では決して繰り出せないであろう機械の剛腕による無数の斬撃、それによって出来た鋼鉄の四つ足の裂け目に
大火力の[陽子ロケット弾]の熱が浸透していく
 将を射んとせば馬を射よ、まずは敵の脚を潰して逃げられない状況にして同時に足場の揺れを産み出す[地響き]も止める
これだけでも大分戦いの流れは変わってくる筈だ

 ロケット弾が命中して黙々と立ち上る黒煙が晴れればそこには読み通りもう使い物にならないと思えるボロボロの脚
他にも肩部に取り付けられていたミサイルポッド等のパーツがバラバラになって転がっていた


   エミリア「足場の揺れが大分マシになったわ…っ!これなら―――」

 敵の武装も今の攻撃で大型機銃が"御釈迦になった"のだから警戒すべきは火炎放射と[超音波]くらいしかない
これなら労せずに無力化も可能か!?―――そんな考えが浮かび、それが甘い考えだと直ぐに思い知らされる



   ウィーン…ガコンッ!


  リュート「おろ!?なんだぁ足場の上昇が止まったみてぇだが此処は何処だ…後ろにでけぇドックがある」



      『くっくっくっ…このマシンがそんなヤワな訳がねぇだろォ!?』



 ウィーン!!

 ドッグ扉が開いて巨大なクレーンアームが伸びてくる…っ!基地内システムを掌握した下位妖魔は考え無しに足場を
移動させていたわけではない、最下層のグレートモンド専用外付けパーツ格納庫まで稼働させていたのだ
 アームに掴まってダメージを受けた機動兵器はドッグの奥へと運ばれ当然逃がす訳にも行かずに追撃を掛けようとするが


                   【 [敵の援護射撃] 】

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ…!


  ゲン「うぐあっ」ズシュッ

 アニー「痛っ――――天井に機銃が取り付いてるッ」バッ!


 全てのシステムを掌握済みなら火器統制の権限も彼奴が握っているのは当然で、この重要ドッグ前の侵入者迎撃用機銃も
操縦席の妖魔の意のままというわけであった
766 :続き明日の昼か明後日のどっちか [saga]:2021/09/05(日) 23:38:04.32 ID:pLf8J+eI0

 ドッグ奥へと消えていった時と同じようにアームの腕に掴まれてグレートモンドは再び戦線へと復帰してきた
ただし、[グレートモンド驚天]から多少装備を変えた[グレートモンド動地]の姿でッッ!!


    グレートモンド動地『 [ブレード]装備 』グオォォォォンッ!ドウッ!!


    ブルー「何!?速いだと!?」


 四本脚は確実にぶっ潰してやった筈だ、手にした[ブレード]が敵機の復帰地点から一番近くに居たレオナルド目掛けて
動き出した所で彼は直ぐにその考えを振り払った

 メカ4機の[多段切り]と大火力の砲撃を受けて脚は使い物にならないほどの致命傷を受けた?
いいや違うね…あの脚は"ガワ"だ
 切りつけられた表面の皮だけを脱げる玉ねぎ、否、マトリョーシカ人形の様な物だ
表層が致命傷を負った所で外側のパーツを任意のタイミングでいつでも"脱ぎ捨て<パージ>"可能という仕組み
汚れた上着を脱ぎ棄てて、その下には傷や汚れの一つ無い身体があるのと同じ事

 しかも厄介な事に、要らんパーツを取り外した事で俊敏性が驚天形態の時とはダンチだ
4本脚自体の動きがより滑らかに尚且つ早く、ミサイルポッド等の重りも外れどうやら背部にスラスター付きと見た
 背部スラスター自体は後付けでなく元からの取り付けで、その上に取り外し自由の防御装甲が付いていたのだろうな


  レオナルド「これは…っ、なるほど重装甲を取り除いた事で重量が減り更にあの背部の輝きは…っ!」
    pzkw�X「先生っ!?うおぉぉぉ先生は私がお守りするっっ!!喰らえぇぇぇ」バッ、ガチャッ


 恩人の為に身を挺して、前に飛び出したpzkw�Xが[ハイペリオン]を構えて引鉄を引く…っ!しかし―――


  陽子ロケット弾『 』バシュゥゥゥッッ――――――ゴトッ…コロコロ!



   pzkw�X「はっ!?弾がそのまま落ちて転がって―――」ハッ!


  ナカジマ零式「い、いけませーん!これは[ECM]でーすッ!」



 上層で[スカイラブ]が戦闘時に発揮した対弾道兵器の妨害プログラムッッ!![ハイペリオン]の最後の1発は
不発弾として虚しく地を転がり、pzkw�Xの眼前には横凪で迫りくる青肌の巨漢のソレを上回る大型[ブレード]があった

   ガキィイィン!


   pzkw�X「がぶふぅっっ!?」ヒュバンッ


 機敏さを増したケンタウロス擬きの横一閃を諸に受けてそのまま吹き飛ばされる重火力メカ、彼の身は宙で回転しながら
再び浮かび出した足場から弾き飛ばされ、落下していく…っ!


  レオナルド「っ!pzkw�Xーー!」


 この高さから落ちてもメカならばコアが砕け死に至るという事は無いが、飛べない彼では戦線復帰は無理だ…
マニピュレータが振るった[ブレード]を仕舞うとそのままスラスターを吹かして[突進]を特殊工作車目掛けて仕掛けてくる
 大質量の巨大兵器の突撃で蹴り飛ばした後、直ぐに両前脚をあげて[ふみつけ]んとする脚と
狙われた特殊工作車の合間にゲンが割って入る


    ゲン「ふんぬぅぅぅっ―――ぅぎぎぎっ!!」[ディフレクト]


   『うおっ!このオヤジなんて馬鹿力だ…コイツの全重量乗せた両足を剣で受け止めやがった…!?』


    ゲン「おぃ、ボサっとしてねぇで、は、はやく 離れろぃ…」ギギギギギッ!


 四輪を全力でバックアクセルでその場から退避し剣豪も仲間が離れたのを見計らって直ぐに飛び退く
玉汗を滲ませながら今までの強敵との連戦が児戯に思える最終兵器の方を振り向けば
背部スラスターから紺碧色の光が飛び出す、夏の青空が如く済んだ青い光が1条、また1条と飛び回るナカジマ零式目掛けて
突き刺さっては爆発を起こす―――それはスライムの[シルフィード]に似た[スプレッドブラスター]の輝きに他ならない


  ナカジマ零式「ぐっばぁあぁッ……こ、これ以上は厳しいですか、ええーいならせめてっっ!!」ギュウウウゥゥン!

 紺碧色が空舞うナカジマ零式の身を突き刺し機体の制空が厳しくなったと判断して墜落交じりで[神威クラッシュ]を
[グレートモンド動地]へとお見舞いする、一矢報いると同時に激しい音を立てて墜ちた彼に直ぐレオナルドと工作車が寄る
767 :続き 木曜日か金曜日のどっちか [saga]:2021/09/07(火) 02:59:52.46 ID:ZcOhC0Iy0

 火花を散らすナカジマ零式の修理が急ピッチで行われる中、[神威クラッシュ]の一撃で入った罅目掛けて
アニーが[刀]で突き剣の技を撃ち込む、刀身の先を罅のど真ん中に定めてからの迅雷が如き突撃…![稲妻突き]が刺さるッ


   アニー「流石に勿体ないとか言ってる場合じゃない、コイツはアンタにくれてやるよ!!」ギュンッッッ!ドスッ!

 グレートモンド動地の装甲に入った罅『 突き刺さったアニーの[刀] 』バチバチ…!


 闘気を纏い稲妻を帯びた彼女の武器を機動兵器の装甲に勢いよく突き立てる
木材に釘を一本軽く立てて槌で一発殴った時に似た浅く、それでいて深く先端が突き刺さり外れない様と言えよう


   ブルー「でかしたぞ!エミリア貴様の腕っぷしでアレを奥まで刺し込めッッ!!」


 武器を失い手ぶらになって後退するアニーとすれ違う様に銃をホルスターに収めたエミリアが
ライザ仕込みの体術フォームを取って突き刺さった武器に拳を叩き込もうと狙いを定める
 左足で一気に踏み込んで跳び上り、右手の指先に闘気を込めた一撃を[刀]の柄に叩き込んだッ!!


  エミリア「もうっ!!女の子に腕っぷしで叩けとかデリカシーゼロなんだからっ!!!」カッ!!


 女心の分からない指揮者に愚痴の一つでも吐き捨てながら窮地を脱する為の策通りエミリアは気を一点集中させた一撃
[短勁]を杭と化した戦友の武器に打ちつける
 刀身は分厚い[グレートモンド動地]の装甲の中へと更に沈んでいき柄から先端へと闘気の熱が伝導して機動兵器の内部に
ダメージが浸透しているのが罅割れの隅々から溢れ出す輝き、パキパキと硬い物が内側から砕ける音で分かった


  『うお"お"ぉぉぉ"ぉ"ぉ!?…うぐぐ、やるじゃねぇか!だがまだ終わりじゃねぇぜ!』


 どうやら[短勁]の熱はガワ全体だけでなく操縦席まで僅かに浸透したらしい、下位妖魔の悲鳴と苦しむ声が
スピーカー越しに聞こえてくる、機体は今の一撃で大きく仰け反り両腕は情けなくバンザイのポーズで静止
 同時に杭打ちの攻撃に耐え切れなかった外側のパーツがまたバラバラと落下していく


  ウィーン!!
        ウィーン!!

                   【 [鉄柱攻撃] 】



  鉄柱『 』ブォンッ!
       鉄柱『 』ブォンッ!


 機動兵器をドッグ奥へと連れ立ったあの巨大アームが足場の上に居る者達を左右から弾き飛ばさんと襲ってくるッ!
数は1つ、2つ所の話ではない間違いなく全員の身体に打身を創る事が確実…っ!


   リュート「うべっ!?」ドゴォ!!
    ブルー「ぐほ"ぉっ!?」ドガァッ!
   スライム「(;゚Д゚) ぶぶーっっ!?」ゲシャッ


 鳩尾に赤いロボットアームの爪部分が入る者、肩を鉄骨部分に当てられ脱臼する者、下顎から蹴り上げられた形の聖獣
左腕がぷらんとだらしなく垂れ下がった術士は右手で左肩を抑えながら被害の程を確認しようと周囲を見渡す
 敵はまだ何か手札を出し切っていないのだ…っ!戦闘不能者は居るのか?まだ戦える者はどれだけ残っている!?

 エミリアと武器を失ったアニーも[鉄柱攻撃]にぶち当たったが痣こそあれど動く事には問題ない、ゲンは額から出血
避けきれずにアーム部分の爪辺りで頭部を負傷したか、メカ組は…っ!?


 ここで青の魔術師は今まさにこの瞬間、鉄柱がメカ勢を襲うのを目撃した
T-260は金属音を響かせながら御手玉よろしくと飛ばされて床に2度ほどバウンドした、直ぐに起き上がった所を見るに
戦闘行為の継続に問題無し、―――――問題ありなのは…ッッ!!


    ナカジマ零式「あわわわわわわっ!不味いです不味いですよーーーーっ!」バチバチ

     特殊工作車「…っ!じ、自分のプログラムは修理中では身動きが取れませんっ」ジジジジッ
     レオナルド「この位置は不味い…!……くっ、後で直すから許してくれよ!」バッ


 同じタイプ6型に該当する機械を修理するメカでも素となっているボディ、武装が違うのと同様彼らの動きにも
多少違いがあった、修理の真っ最中は動けない特殊工作車と中断して動けるレオナルドの差、後者はボディ自体が完全に
レオナルド自身のオリジナルだからこそ迫りくる鉄柱を前にしてできた咄嗟の回避行動である

 回避できなかった2機は鉄柱の一撃でpzkw�Xの時と同じく盤上から放り投げられた…っ!

ガンガンとそこかしこに金属の塊がぶつかり合う音が下方から聞こえてくる、着実に此方陣営の駒は減らされていくッ!
768 :続き 土曜日か日曜日のどちらか [saga]:2021/09/10(金) 23:06:38.58 ID:0iN/7mw+0

 盤上から2機のメカを退場させた代わりに向こうも重装が取り払われた
グラディウス組の攻撃で壊れた装甲毎[鉄柱攻撃]を行ったアームが機動兵器を持ち上げて上方へと運んでいて
 四方八方から襲い来る鉄柱の対処に追われた彼らが一波乱を漸く乗り切った後には次の形態に移行した兵器が上から
足場へと降り立った頃であった

 [グレートモンド威力]…そう称される形態は神話の獣と違い次は4つ足ではなく2足歩行の限りなく人に近いシルエットだ

 ただ両腕の手首よりは松葉杖を持った怪我人よろしくとガトリング機銃が伸びていて肘に当たる部分には
[バックラー]タイプのシールド装甲、背部には展開式の折り畳み[ブレード]を収納

 肩には[ハイパーバズーカ]と威力という名を冠する通りの[レールガン]が装着されていたッ!



  『うははははっ!踊れ踊れぇ!死のダンスだ!!』ズガガガガガガガッ

 ゲン「クソッたれめ、本当に玉ねぎみてーなロボだぜ!剥いても剥いても中身が出てくらぁ」


 [バルカン]を撒き散らす巨大兵器に悪態を吐く、倒したかと思えば次の形態になって戻ってくるこのくどさ…!
両腕から乱射される豆鉄砲はまだどうにかなるとして[レールガン]の威力には手を焼く
 [ディフレクト]で弾こうとするが弾圧が普通に重い、自分の力を以てして確実に仲間を護り切れるかどうか不明瞭ときた


   T-260「敵の銃塔を破壊し行動の制限を図ります」ピピッ
 レオナルド「随分な兵器じゃないか、こんなのトリニティには無かったよ本当…っ!」


 倒せば倒す程に厄介さを増す敵の兵器にT-260とレオナルドが[多段切り]を決めようと接近を試みる
 

            『ぎゃはははっ、わかってんだよ!』

                【 [無伴奏ソナタ] 】

 ポロロロ…♪ ポロロロ…♪


 メカ2機が切りかかるのを読んでいたと謂わんばかりに"最速行動<ファスト>"で奏でられる電子音が辺りに木霊する
酷く耳障りで鼓膜が破けるんじゃないかとさえ思える大音量で発せられる特定コードを織り交ぜ込んだ音色


      T-260「!!! システムに異常あり、シス…ムに異……り!」
   レオナルド「こ、この周波数は、不味い、ぞ」ギギギッ

    『いい加減目障りなんだよッ!こいつで消えちまいな!』ガシャッ!


 メカの機能を麻痺させて"行動をスタン"させる特殊音波によって動かなくなる2機、彼らに目掛けて
肩に担がれた[ハイパーバズーカ]の弾が炸裂する
 機銃や[レールガン]に翻弄されて2機を直ぐには救援に向かえなかったゲン、同じくリュートやエミリア
失った武器の代わりをブルーから受け取るべく後退したアニー、[鉄柱攻撃]で受けた仲間達の回復に努めたスライム
 誰が居ても爆風で場外へ吹き飛ばされるメカ達を救えなかったのは仕方がない事だろう


     『厄介な屑鉄共は居なくなった、次はお前達の番だッ!』

    ブルー(くっ、レオナルド達が落ちたか…!!このまま人員が減るのは不味い何か無いのか!?)キョロキョロ!


 下位妖魔の叫びが聞こえた後[グレートモンド威力]のバズーカ砲は弦楽器の青年と剣豪の方向に向き始めた
それを見て術士は何か無いかと辺りを見渡し――――


 ブルー「…ハッ!アレだッ! スライム、エミリア!誰でもいい奴のバズーカ穴に入れろ![エナジーチェイン]!」バシュッ


  エナジーチェインの鎖『 不発に終わったpzkw�Xの[陽子ロケット弾] 』シュルシュルッ!ギュッ!
 ブルー「うおおおおぉぉぉぉぉ!!」ブゥンッ!


 宙に投げ飛ばされる陽子ロケット弾『 』ヒューン!

  スライム「(。・`ω・) ぶくっッッ!!」ヒュバッ!タッ―――ガツンッ!


 レオナルドを庇って前に飛び出たpzkw�Xが先程撃った[陽子ロケット弾]ッッ!!不発に終わり落ちてコロコロと転がった
その弾を思念の鎖で縛り上げる、魔術の熱でジジジジッと嫌な音を立てながら熔解しつつあるそれを直ぐ様
上方へと投げ飛ばす、一角獣と化したスライムは脚力を活かして一気に飛び出し
 首を大きく振って額の[角]を使い黒煙が立ち上り出した弾をフルスイング!!

 下位妖魔が今まさに剣豪達目掛けて[ハイパーバズーカ]のトリガーを引こうとした瞬間でバズーカの発射穴へと
[陽子ロケット弾]の弾がゴールインを決めた…っ!
769 :続き 火曜日か水曜日 [saga]:2021/09/12(日) 22:45:45.59 ID:lm+HfbVY0

 暴発。 発射口にすっぽりと入り込んだ不発弾と[ハイパーバズーカ]が砲塔内で誘爆を引き起こす
当然の事ながらバズーカ砲は使い物にならない状態となり、機体全体が炎上していく
 既に分かり切っていることだがこの兵器最大の利点は装甲のパージが可能ということだ
勢いよく燃え上がる砲塔、肩から腕まで燃え広がるシールドやガトリング機銃部分を脱ぎ捨てて芯の部分、搭乗者の居る
コックピットを守ろうという行動に移る

 "動地"から"威力"へと変わる際には巨大[Tウォーカー]の格納庫のエリアで一旦止まったが
今回もまた更に一つ上に階層へといつの間にやら昇っていたようだ燃え上がる衣を脱ぎ捨てたメタルボディは
侵入者達と対峙した時と比べて幾分も小さくなった



 第1層、我らが侵入者御一行が[ワカツ]の裂け目から[モンド基地]へと乗り込んできた際の出入り口がある階層まで
舞い戻ってきたのだ…っ!

 身を大きく振り乱しながら燃える鉄塊と化したパーツをばら撒き敵を近づかせないようにしながらもアームに掴まった
機動兵器は正に"人"と表現するに相応しいシンプルなデザインと言えよう
 4本脚でもなければ無骨な重装甲と火器の怪物でも無い、"[巨人]と変わらぬサイズのシンプルな人型兵器と呼べよう"



   ウィーン!


 赤爪のアームがこの階層にでもあったのか布に包まれた"何か"を持ってくる…っ!
何も着飾らない機動兵器はそれを手にして勢いよく布を取り払う



 …それはモンド氏がかの"悪の秘密結社"と秘密裏に取引を行った末に開発した超兵器[バスターランチャー]だッッ!



 神話の半人半馬や重装鎧の怪物と違った平凡な見た目に反して"神"の名を付けた形態…[グレートモンド超神]
神を超えし者という製作者の傲りなのか、それともこの形態に移行することで
初めてマニピュレータが反応できる先述の超兵器を使えるからついた名称なのか…

 身に余る力を手にして天狗と化した下位妖魔は[ECM]の力場を掻き消す[カウンターECM]を作動させる
神超えし者の力を誇示せんが為だけに隠し武器の一斉射出の準備を始めたのだ


      『見るがいいこれぞ超神の姿だぁーっ!!』


 リュート「うげっ!?なんじゃあのミサイルの数はぁ!?!?」


 超神は大の字になるように手足を広げて仰け反らせる、カシュっと音がして人で言う所の腿、胸部、腕肩、背部
あらゆる部分から小型のマイクロミサイルが顔を覗かせていた
 操縦席で下級妖魔は感極まった声を上げながら[全弾発射]を行使した…っ!


―――――ボッッボボボボッ、ボッゴォォォン!


 場に嵐が吹き荒れる、透き通る水の雨粒の代わりに先端が真っ赤な小型兵器が火の尾を引いて彼らを包囲し
それでいて着実に逃げ道を奪うように包囲網を狭めていく様に降り注ぐ

 巻きあがる黒煙、吹き上げる火の粉、メカに比べて脆弱な肉体の人間やモンスターは熱渦に絡めとられ身を焦がす
その様を巨大メカの操縦席という鉄の揺り籠から彼奴は見下ろしていた
 この禍中で自分だけが絶対的な安全を約束されているのだと、ほくそ笑みメインカメラで小虫の舞は如何ほどかと眺める


  リュート「ぐっ、あぁ"、おい、皆無事、か?」ジュゥゥゥ

  エミリア「…生きてはいる、けど、ね」ヨロッ…

 舞い踊る炎と渦巻く爆風に手を引かれて踊りたくもない円舞曲を踊らされた面々は全身ズタボロの満身創痍
回復手段の[マジカルヒール]を使えるスライムも直撃を受け失神していて[バックパック]持ちの自身が起こさねばと
焼け爛れた片足を引き摺ってリュートが仲間の元へと進んでいく


  リュート(他の3人は…)チラッ


 青年は辺りを見渡す、得物を杖代わりに片膝をついているがゲンは未だ辛うじて動けそうだが
倒れ伏したアニーと指先は動いているが身を起こせないらしいブルーの姿が目に入る
 彼らも助け起こしたいが人手が足りない、スライムを一刻も早く起こさなくては…っ!


 『仲間を助け起こそうったってそうはさせねーよォ!!』 


 [全弾発射]後の黒煙を煙幕代わりにスライムまで近づこうとしていた彼を妖魔は決して見逃さなかった…!
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2021/09/15(水) 03:06:06.19 ID:8s8sXWN20
さすがに強いなあ
それにしてもモンドさんはどう思うんだろうこれw
771 :続き 金曜日か土曜日 [saga]:2021/09/15(水) 23:51:06.51 ID:jcX2QZWl0

 超神は[バスターランチャー]を振り回して弦楽器の青年を叩き潰そうと試みる、どうやら鈍器としても優秀らしい
普通なら故障の原因となり得る乱雑な扱いでも問題ないと言いたげにランチャーで相手の脳髄を真夏のスイカ割りかと
思うような全力の振り下ろし―――[ブレインクラッシュ]で潰そうとする


 『はっはっはーっ!ぶっ潰れちまえぇぇぇぇぇぇぇ!!』ブンッ

  リュート「うっ!?」

 さしもの楽天家も今度ばかりは不味いと死を覚悟するのだが…っ!


   ゲン「っうらああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」ダッ!ドガッ
 リュート「うわぁっ!?」ドンッ、ゴロゴロ…!


 片膝をついていたゲンが悲鳴を上げる身体に鞭を打ち、死が降り注がんとする青年をその場から突き飛ばす
剣豪も青年も九死に一生を得るのだが、その行動が下位妖魔には気に障ったようだ


  『 ク ソ 死 に ぞ こ な い の オ ヤ ジ が ぁ ぁぁ !! さ っ さ と 死 ね や!!!』

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!!!


  ブルー「ぐっ……ハッ!なんだ、この熱量は!?あの砲身から…コレはいかん!!」ズズッ
  アニー「ぅく――――な、なに、あたし気を失って?…!? なにあのバカでかい光は!?」パチッ、バッ!?


 痛みから身を起こせない魔術師と飛んでいた意識が戻った女は剣豪に対して向けられた超兵器の輝きを見た
渦を巻く膨大な熱エネルギー、それこそ遠く離れている筈の二人にまで熱が伝わる程の異常数値
 誰がどう見ても一目で理解できた、アレは当たれば確実に死を招くと…!今までの攻撃とは次元が違い過ぎるッ!


 エミリア「――っ、ゲ、ンさん…!!」ヨロッ


 [バカラ]の[巨獣]戦で術士を救出したときの様に[スライディング]で横から掻っ攫って彼を救う事も考えたが
エミリアの脚は動かない、それは偏に負傷した足が思うように動かぬからか
あるいは超神の名に相応しい超破壊的エネルギーに委縮したからなのか…

 突き飛ばされ、そのまま転げたお陰で難を逃れ目標地点までの距離を一気に縮めた青年も当初の目的であるヒーラー
スライムを[最高傷薬]で助け起こし直ぐにゲンの方を見やる

                "もう駄目だ、間に合わない彼は助からない"

 誰しもがこの時同じ考えに至った。



                  【 [ バ ス タ ー ラ ン チ ャ ー ] 】   




 刹那、光が迸った

何もかもを飲み込む破壊衝動を体現した波動が渦を巻いて剣豪の身を包む、光芒に呑まれ…彼の、ゲンの精神は、途切れた



      リュート「っっ! ゲ ン さ ぁ ぁ ぁ ぁぁぁ ぁぁ ぁー―――ん!!!」


  エミリア「…そ、そんな」ガクッ
   アニー「嘘、嘘よ、こんなの…」
   ブルー「っ、ゲン……」グッ


 青年の悲痛な叫び、光が収まった後に黒焦げになった男が1人握りしめていた業物を手放して音もなく倒れる姿
それを見て膝から崩れ落ちる者、信じられないと言わんばかりに首を横に振り震える者
 短い間とは言え情が湧いていた男の最期に奥歯を噛みしめ怒りを覚えた者、…哀しみ、失意、否定、怒り、皆誰しもが
その順に心の奥から湧き上がる感情に困惑した、同時に本能で理解した

 仲間を失った悲しみと理解が追い付かないが故の虚無感、目の前の惨事への否定からソレは
徐々に引き起こした者への怒りに変わっていく、早い話が仇への復讐心だ


   アニー「アイツだけは許せない、絶対ぶちのめしてやる…っ」グッ!
   ブルー「…ああ、よかろうゲンの弔い合戦だ」キッ!

 青年と一角獣の回復を受けて立ち上がった仲間達が次々と闘志を燃やす、当初此処に来た目的なぞ最早どうでもいいッ
あるのは至ってシンプルな思考ッ!神を超えし者を自負する機動兵器に対する復讐心のみッッ!
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/09/16(木) 00:49:20.97 ID:FHuAMtVp0
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                  【解説 グレートモンド に関して】

 サガフロンティア、全7主人公(+リマスター版からヒューズ)の内リュート編に登場するラスボスの1人

 原作に置いてトリニティ政府への謀反を企てているモンド執政官が直接乗り込んで戦う大型機動兵器
 このラスボスは他主人公と違って各形態変化にHPが設定されていて、それを削り切ると次の形態に移行する特徴がある

 次作の卵にもその構造は継承されている、各形態にそれぞれHPがあり行動パターンも大きく変わる点まで

 HPを削り切ると鉄柱のアームがやってきてグレートモンドを回収、次の形態に変形した状態で戦線復帰してくる
 その際は足場の上昇中や実際に攻略してきたMAPの各階層で足場が停止したり地味に背景が細かい
 ちゃんとドックや[Tウォーカー]が映っている


 なお、グレートモンド戦は毎回5ターン経過毎に[敵の援護射撃]、[鉄柱攻撃]が発動するので戦闘不能者がいると
 LPが削られるので地味に鬱陶しい


・ グレートモンド驚天

・ グレートモンド動地

・ グレートモンド威力

・ グレートモンド超神

・ グレートモンド魂



 形態:驚天

 屈強な四つ足の巨大メカで一番最初に戦う形態
 最初の形態だけあって[バルカン]や[放射火炎]、[ミサイル]などそこまで脅威性は高くないのだが
 範囲攻撃の[超音波]また全体攻撃の[地響き]を行ってくるので油断のし過ぎも禁物

 [超音波]に関してはこの形態と"動地"までで以降はしてこないから早期に2形態倒すか精霊銀装備で完封すればいい
 [地響き]の方は驚天形態限定でしかやってこない技だから地耐性まで用意する必要は正直そこまでは要らない

 なお、死に際に[ECM]を使って場全体をミサイル無効状態にしてから動地形態に移行する


※ ……物凄く今更ですが、[ECM]はミサイル攻撃が必ずmissになる様にする効果であって
   陽子ロケット弾やナカジマ零式が飛べなくなるなんて仕様は無いです、当SSだけです


 形態:動地

 基本的には前の形態と変わらないが[ミサイル]や[バルカン]が無くなり、代わりに[ブレード]と[ふみつけ][突進]が追加
 そして[スプレッドブラスター]を撃ってくるため若干火力は上がっている脅威性もまだ高くはない為、十分に対処可能


 形態:威力

 ここから2足歩行の兵器に変化、再び[バルカン]をしてくるようになり
 新たに[レールガン]攻撃と[ハイパーバズーカ]が追加されるのだが正直に言うとこの形態も十分鍛えてれば脅威ではない


 形態:超神

 長い前座が終わって漸く本番に入った超神形態だが、これで特筆すべきは4ターンに一回
 必ず[バスターランチャー]を撃つ行動パターンが組み込まれていることだろう


 ラスボス固有の所謂、超必殺…グレートモンドに該当するのが[バスターランチャー]であり
 恐ろしい事に威力が 脅 威 の 4 桁 ダ メ ー ジ なのである!


 サガフロのシステム上、主人公達はHP999でカンストなので4桁ダメージなんて喰らったら確実に死ぬ

 防御力無視攻撃なのでいくらDEF<防御力>を装備品で高めても意味はない
 戦闘コマンドの防御でダメージを軽減はできるが普通に痛い
 また直線状の敵を巻き込むライン状の範囲攻撃なので対象キャラの近く(真横)、そして前後に居るキャラも
 巻き添えでダメージを受ける、流石に余波を受けるキャラまで4桁ダメージとまでは行かないが

 超神形態は初手で必ず[カウンターECM]を発動させて自身が最初の形態で発動させた[ECM]を掻き消し2ターン目で
 [全弾発射]を行ってくる、その後は[ヒートスマッシュ]、[ブレインクラッシュ]の打撃系を初め
 [突進]と[スプレッドブラスター]…それから[ビット]を飛ばしての攻撃が主となる

 これを撃破したら最期はいよいよ[グレートモンド魂]形態と戦えるのである

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773 :続き、明日か明後日 [saga]:2021/09/18(土) 23:08:51.43 ID:mupUKFgE0

    リュート「ブ、ブルー待ってくれ!」ガシッ

 術士が最大攻撃術の詠唱に入ろうとした時に声を上げて腕裾を掴む男がいた、彼の方を振り向けば彼は鞄の中身を
引っ繰り返した様にぶちまけて倒れたまま目覚めないゲンの身体を止血すべく包帯を巻いて医薬品の注射器を使用していた


   リュート「俺はまだ諦めちゃいねぇ!ゲンさんに[活力のルーン]を…[活力のルーン]を使ってくれよぉ!」

    ブルー「……その[最高傷薬]を注入しても意識が戻らんというのなら、…つまりは"そういうこと"だぞ」


 言外に、もう手遅れだとブルーは告げる

 例え人であれ妖魔であれ、モンスターにもメカのコアにだって生命力<LP>というモノが存在する
生きとし生ける者全てに存在する魂の輝きそのものだ
 魂が尽きた時、その者はこの世を去る…当たり前すぎる自然の摂理といえよう


 目を一向に覚ます気配の無い彼の意識は黄泉に居るのだと…っ!蒼き魔術師は「ゲンは死んだ」という言葉こそ使わない
だが二度と目覚めさせることはできないと、そう口にしたのだ…!!


 リュート「…ッッ!」グッ
 リュート「…。」


 リュート「…薬が回るのが遅いだけってこともあるさ[傷薬]で気絶したお前ら起こす時だって直ぐに目覚めないんだぜ」

 リュート「個人差だってあるかもしれねぇ………ブルー、頼むよ」


  ブルー「……。」


  ブルー「万物の慈母神の名の元に生命を繋げし印を刻み錫―――[活力のルーン]」フォン!フォン!

 リュート「…!ブルーっ!」


  ブルー「スライム!貴様はコイツ等に付き添ってやれ、お前がコイツ等を守るんだ!」
 スライム「Σ(・ω・ノ)ノ! ぶっ、ぶく!?」


  ブルー「…。」スッ

 蒼き魔術師は途切れ掛けの生命の線と線を繋ぐ守護印を剣豪に掛けて一角獣も護衛につけさせた
それから――――無言でリュートの[バックパック]を拾い担ぎ上げる


   ブルー「貴様は戦うな、ここに居ろ…………今の貴様では足手まといだ」フイッ
  リュート「ぅ…」


 声に感情は乗っていなかった、怒りでも呆れでも哀れみも失望でも何も無い、無機質な声で告げられた戦力外通知
いや…もしかしたら敢えて声に感情を乗せない様にしていたのかもしれない

 床に散らばった幾つかの医薬品をかき集めるでもなくそのままそこに残して大分軽くなった[バックパック]を背負い
蒼の術士はそのまま苦戦を強いられているグラディウス組の元へと走り出す


   ブルー(…チッ、俺もヤキが回ったか!?)タッタッタッ!


 誰がどう見ても助かる見込みなどない、だというのに自分はなんなんだ!?
1分1秒を争うこの重要な局面で無駄に時間と術力を浪費して[活力のルーン]を刻み、あまつさえ貴重な戦力と
戦線維持のヒーラーであるスライムを護衛につけさせるなどと…っ!!全滅すればゲンが身を挺して仲間を救った事も
その仇を討つ者もいなくなり全ては無意味になるというのに…ッ!


 この時、術士はまだ気付いていなかった…。


 自分でさえ非効率的と思ったのに何故か剣豪へのルーン付与やスライムを残した事への戸惑いと
 全滅すれば"仲間の仇を討つ者が居なくなる"という目的自体が祖国を護る事でも自身の生還でもない事実…







 今この瞬間だけは目の前の機動兵器を放っておけば祖国のキングダムにも影響が出る事や生きてルージュと出会って
決闘を果たすという己の使命でさえも忘れて、ただ純粋に"仲間"の事だけを行動原理にして動いている自分自身に…っ!
774 :次 金曜日か土曜日 [saga]:2021/09/20(月) 09:24:17.03 ID:NvYLWv8a0
―――
――
―

 背部からの[スプレッドブラスター]と射出された[ビット]によるビーム攻撃でグラディウス組を追い込んでいく
青空色の輝きが拡散からの収束へ、不規則な機動で死角に回り緑色の光線を撃ち出す子機
 厄介な2色の光条は流れては身を掠め、時には躱しきれずに肌を焦がしていく


  ビット機×4『 』ビュンッ!ビュンッ!
  エミリア肩『』バジュゥゥッ!


  エミリア「あぁっ!?」
   アニー「エミリアっ!――ぐっ!?このっ」サッ、ビュォッ


 左肩を焼かれて苦悶の表情を浮かべた年上の後輩に声を掛けながら黄金髪の女は飛んできた光を躱し様に[飛燕剣]を放つ
ビット機を1基潰したがまだ3基残っている、踊る様にクルクルと獲物を取り囲むハイエナの様にグルグルと宙を舞っている


    ブルー「爆ぜろ![インプロージョン]」


  ビット機×2『』ドゴォォン!


   アニー「来るのが遅い!」
   ブルー「わかっている!!――エミリア、使え!」ブンッ


 一気に2基まとめて[ビット]を破壊した術士はリュートから取り上げた[バックパック]から[最高傷薬]を取り出して
被弾の多いブロンドの女に投げ渡す、それを受け取った相手は直ぐ様患部に使って残りの1基を撃ち落とした
 止血や鎮痛だけでなく気付け薬としても効能があるこのご時世の回復薬だ、痛みで意識が霞みかけていたが集中力を
取り戻してからの射撃はビット機が光線を放つよりも先に核の部分を撃ち抜く


  エミリア「リュートは!?」

   ブルー「奴は来ない、それよりも前に集中しろ来るぞッ!」


 来ない仲間の事を問う女に対してリュートは来ないとだけ返し、目の前の機動兵器に集中しろと叫ぶ
言われて顔を向ければ彼奴の手にはこの宇宙開拓時世に開発された[最高傷薬]でも目覚めぬ程の大怪我を
ゲンに負わせたあの忌々しい[バスターランチャー]が向けられていたッッ

 その威力を目の当たりにしたが故に彼女も当然身構える…!しかし相手はそれで此方を狙い撃つでもなく天井へ向ける


  アニー(撃ってこない…?)


カシュッ!
ブシュー――――ッ!!


 天へとランチャーの砲身を向けた[グレートモンド超神]は排莢式ボルトアクションでもする様に手を動かす
するとどうだろう、夥しい程の熱が砲から抜けていくではないか
 湿度と気温の高い真夏日にアスファルト上で見かける陽炎現象が発生していることから
その熱量がとんでもない物だというのは解る、光の屈折を曲げて景色がゆらゆらと揺れて見える程の超高温の空気


   ブルー(あの兵器…威力が高いがその反動で熱が篭る、だから排熱が必要で連発で撃てないということなのか?)


 1発撃つ度に排熱処理をしなければ砲身自体に熱が溜まり続け暴発<コッキングオフ>を引き起こすのではないか
そう考えれば自ずと相手の隙、反撃のチャンスは見えてくると術士は考える


      『休む暇なんて与えねぇ、コイツを喰らいやがれ!』


 ランチャーの排熱をそのままに燃える様に熱い砲身を機動兵器は振り回す、それは[巨人]が使っていた
[ヒートスマッシュ]と同じ威力と言えよう



       「させませーん!喰らいやがりなさーい[神威クラッシュ]――!!」ビュオォッ!ドッコォォォッ

       『ぐおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!?』グラッ


 超神が[ヒートスマッシュ]を叩き込む為に振り上げた右腕に何かが突っ込んでくる
捨て身の一撃を放ったのは…っ!
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/09/22(水) 06:43:56.64 ID:tpAm7SOO0
神威クラッシュすき
776 :>>1 [saga]:2021/09/25(土) 21:54:52.49 ID:Tq8HJ+On0
すいません、続きは明日に変更で
777 :続き 火曜日か水曜日 [saga]:2021/09/26(日) 23:46:43.72 ID:nv2r/qlS0

 機動兵器に捨て身の一撃を放ったのは古めかしい戦闘機に似たシルエットの仲間、ナカジマ零式だったのだ…っ!
侵入者に対して死の裁きを行う瞬間に待ったを掛けた闖入者の姿に敵も味方も眼を見開く


      ブルー「零式、貴様は墜ちて行った筈―――」

 特殊工作車共々に[鉄柱攻撃]の餌食となり盤上からつまみ出された、確かに彼は飛行能力を有したメカではある
ならば自力で戻ってきたと言われても不思議ではないが、今彼らが戦っている可動式の足場はそれなりの速度で上昇
最下層から一気に入口付近まで浮上して更に右だの左だのとフロア内を忙しなく動いているのだ

 目標地点自体が常に動いているし速度も相当にあると来た
零式が如何に飛べるとは言えこうも忙しなく動く足場の行き先を事前に特定して合流できた説明が付かない

 それと全く同じ考えに至っているのか、超神も戦線復帰を果たした敵の一味に動揺を隠せないでいた


   ナカジマ零式「おーっと!私だけじゃあ〜りませんよ!」

 墜ちた筈だ、そう問いを投げた蒼き魔術師の言葉を遮る様に紡がれる陽気な機械のメッセージは彼らに更なる驚きを齎す


 ヒューン!

 ヒューン!
 ヒューン!
 ヒューン!
 ヒューン!!!!!

    エミリア「っ!?何アレ!?なんか小型の特殊工作車みたいなのが大量に降ってきたんだけど!?」

 真上からいっそ気持ち悪いと感じられる程の集団が…っ!小さな蟻、あるいは子蜘蛛の大群か
わらわらと"特殊工作車瓜二つの小型メカ"が大量に降り注いでくるではないかッ!
 小さな機械軍は超神の身体に激突や武器を持った隠し腕で攻撃をしていく、蜂の巣を落として
蜂に集られた様な状態と化した超神は手やランチャーを動かし振り払おうとするが物量的にそれは不可能で


   小型工作車『 』…ジジジッ!ボッコォン!


  『ぐおおおおおおぉぉっっ!?爆発しただとぉぉぉ…ハッ!わかったぞこれは[どっきりナイツ]か!?!?』


 ―――[どっきりナイツ]、メカのプログラムの一つであり内蔵された超小型メカが大量に飛び出して自爆特攻していく
対空型の戦闘攻撃の手段である、夥しい量の小型メカが一斉に火を噴き始め、さしもの超神も身体からは煙が噴き出す
 そして打ち止めと謂わんばかりに最後にもう1体、隠し腕の剣を振り回しながら降ってくる

 小型メカではない"本物の特殊工作車"が。


 特殊工作車「やられたからにはやり返させてもらいますよ![多段切り]」ズババババババッ!

 ナカジマ零式はまだ飛べるメカだからと言われれば納得も行く、そしていよいよ以て彼の登場で混乱が深まった
飛べもしない工作車がどうやって下の階層から上層のここまで…いや宙を縦横無尽に動く戦場に降りたてたのか
 pzkw�X程ではないにしろ中々に重量のある身だ、零式に跨って飛んできましたなんて話じゃ辻褄が合わない
一応運搬自体はできるがメカ1機分の重し付きじゃ速度が出ない上に短時間飛行しかできない

 普通に考えてここまで来れる筈が無い。


                   「彼だけじゃないさ!」


 真上から2機のメカが同時に落ちてくる、どちらも[剣闘マスタリー]にプログラミングされた
達人の動きを模した剣技を仕掛けながら

 レオナルドが超神の右肩から左脇腹に掛けて、T-260が超神の左肩から右脇腹に掛けて
お互いにクロスしてXの字になるように切り付けていくッ!


  レオナルド「やっほー!驚いたかい?名付けて二人技でエックス切りなんてどうかな!なんてね」

    アニー「レオナルドさんまで一体どうやって!?ってか上から降ってきた!?」

  レオナルド「あー…説明するとちょ〜っと厄介なんだけどね、 "ある人" に助けられたっていうか、ね…」

  レオナルド「ゆっくり説明したいとこだけどまずはアレを倒さないとだね」


 魔術師は彼らが"上から落ちてきた"ことから天井を見上げた、既に足場が通り過ぎた地点だが天井の通気口ダクトが
破壊されて大穴が開いているのを目視した、丁度メカか何かがぶち破って出てきた様なサイズの大穴が

   T-260「ゲン様…は…?」キョロキョロ

778 :続き金曜日か土曜日 [saga]:2021/09/29(水) 23:38:54.53 ID:qMAP0Hrh0

 T-260は幾人かの仲間がいないことに気が付き首を回す
そして丸いレンズ越しに焼けたゲンの姿と彼に対して処置を行うリュートとすぐ傍のスライムの姿を認識した


 T-260「ゲン様」

 アニー「…そこのデカブツにやられちまったのさ」



 T-260「……。」

 T-260「優先任務を変更、優先順位度C級、目の前の搭乗型メカを破壊せよ」クルッ


 結論を出すのに心なしか、ほんの僅かな間があった
そして倒れた仲間に背を向けて丸いレンズは超神を見据え、両腕の得物を構えた

―――
――
―

   リュート「くそっ…!諦めねぇぞ俺は!」ゴソゴソ
   スライム「(;´・ω・) ぶくぶく!」パァァァァ…!キラキラ


 床に散乱した医療道具を剣豪に使い続ける、傍らのスライムもまた奇跡の輝きをゲンに浴びせ続けた
然し、剣豪は目を覚ます気配は一行に無い…


  リュート「ゲンさん…帰ってきてくれよ、この基地から無事に出たら酒盛りをするからさ…」

  リュート「俺も精一杯盛り上げるから、仕事明けの一杯の音頭取るのはアンタみたいな人じゃないと駄目なんだ」

  リュート「だから…頼むよゲンさんッ」

――――――
―――――
―――
――
―



    - ……あ"? ここ何処だ、俺は今何してんだ? -

    - 確かでけぇ機械の攻撃を喰らって…俺は -




   「おお!ゲンの親父じゃねぇか、こんな所で寝そべって悪酔いでもしたかよ!」



   ゲン「……あ"?」パチッ



   「あー、ゲンのおっちゃんがまた床で寝てるよ!おっかぁが言ってただ!地べたで寝てると牛になるって!」


   ゲン「……ぁ」ムクッ、キョロキョロ…



ワイワイ、ガヤガヤ



  「さぁさぁ、寄ってらっしゃい!団子はいかがかねー!何処の"惑星<リージョン>"にも負けない[ワカツ]の団子だよ」

  「ガハハ!今度の剣術大会誰が優勝するか賭けねーか!俺はセキシュウサイだと思うぜ」
  「やめとけ、やめとけ!おめぇいつも賭け外すじゃねっかよ〜」

  「最近は剣聖の間に挑む奴もめっきり減っただなぁ、オラ達の若い頃はもっと居ったにのぅ」


   ゲン「――」


 剣豪はその光景に開いた口が塞がらなくなった、まだぼんやりとする意識の中、彼が見たのは在りし日の――
まだ滅ぶ前の[ワカツ]そのものだったからだ、女も子供も老人も顔見知りのダチも誰も彼もが生きて動いていたのだから
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/02(土) 23:55:55.43 ID:VoT6ejD20

 人間自分が理解できる範疇から脱した状況に陥ると思考は止まるという
何が起きているのか状況を把握しようとして一気に多くのモノを見て聞いて考えて、その結果の情報過多で整理仕切れない
 滅んだ筈の故郷があの頃の儘に残っていて、骸になった知人達をこの目で確かに見た

 だが、確かに彼は目にしているのだ嘗てあった筈の何でもない、けれど幸せないつもの日常風景を


  「おうおう、サナダのゲンよ!おめぇ何昼間っから幽霊でも見たようなツラしてんだぁ?」
  「どうせ昨日も行きつけの店で飲んでたんだろうよ、酒も程々にしとけよな身内にまたどやされっぞ」


   ゲン「あ、あぁ…わりぃ」



 死んだはずの人間だ、きっとこれは本物ではない、まやかしの類だ。―――だから耳を傾ける必要もない


 そう頭の片隅では考えていたのに糞真面目に幻相手に一言詫びてしまった
…それがあまりにも"生前と変わらぬ自然なしぐさだったから"、生きてる人間と何一つ変わらなかったから




 生前の、本当に生きてる人間と、何一つとして、変わらなかった、から…




    「なぁゲン、お前は今度の剣術大会に出るのか?今年は大名も天守閣から降りてきて観戦するんだぜ」
    「今年は中々の強者揃いだからお前が出てくれりゃあ更に見所も増すってもんさ」


  ゲン「……」

  ゲン「俺ぁ夢でも見てんのか…」


    「はぁ?」
    「何言ってんだお前、まだ酔いが残ってんのか?」


  ゲン「っ![ワカツ]はもうねぇんだ!トリニティに滅ぼされて俺は…俺はなぁ!!!」


    「?? あー、お前さん本当大丈夫か?いくらなんでも悪酔いしすぎだって、な?」
    「どんな夢みてたかしらねぇけど、深酒はやめとけよな〜」



 友人二人は変なモノでも見たと眉を顰めて大通りへと歩いて行く、後には剣豪だけが残される



    ゲン「……"夢"?」

    ゲン「……ははっ、これはアレか、そうか…」





    ゲン「人間が仏さんになる前に見る走馬灯って奴か、いや、それともここがあの世ってことかな」



 それは護るべき風土も家族も、忠義を誓っていた主君も全てを失って未来に絶望し酒で世界を暈すしかできなかった男に
どこまでも優しい甘美な世界だった

 甘美すぎて、吐き気すら込み上げてくる甘い美毒だ






    ゲン「……けど、まぁ」

    ゲン「なんだ、その………これも、これで悪くねぇ、か」フゥ


 剣豪は静かに目を閉じて、息を吐き出す
        ―――独り生き延びてこれまで貯め込んだ全ての苦悩を吐き出す様に、美毒の味を肺一杯に取り込む為に
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/02(土) 23:56:51.53 ID:VoT6ejD20


  "これでいいじゃないか"
  "もう此処が自分の終着点でも良いじゃないか"
  "疲れた"




  "自分も同胞、友、家族の元へやっと逝ける"
  "もう縛られる必要も無い"
  "やっと終われるんだ"





 自分はあの一撃で死んだのだ、戦いの果てに殉職を果たしたならば潔く死を受け止めるのもまた剣士としての筋だろう

 自分にこれから先も独りで亡んだ故郷の人間の想いを背負って生きていく必要性があるのか、もう疲れてしまったよ

 自分も同胞達と共に安らかに眠れる、この夢の中で彼らとまた幸せな夢を見続けていく事を誰に咎められようか




 妥協、諦め、願望、望み―――剣豪の中でいくつもの考えが、いくつもの感情が湧いて出ては渦を巻いていく
人間という生き物として誰しもが思う感情、誰しもが一度はそうなる考え方

 茨の道よりも楽な道を通れるのならば、楽な方へ楽な方へと流されていきたいと思う心


 誰だって苦しい思いや辛い経験はしたくない、目の前に恐ろしい試練が待ち構えていたとして避けて通れるなら
逃げ出そうとあらゆる手を尽くすことだろう

 感情の生き物だからこその行為だ、それを咎める権利がこの世の何物にあるというのだろうか?あるとすれば神であろう








   ゲン「…」スゥ

   ゲン「おーい!待てよ!待ってくれよ!お前ら、剣術大会の参加だろ!だったらよぉ――――」タッタッタ…!



 懐かしい故郷の匂い、自分が好きだった土に香り、自分が好きだった木造の建物の匂い、自分が好きだった風の肌触り
自分が好きだった屋台の焼き物の匂い、自分が好きだった街並み、自分がなにより愛してやまなかった同郷の仲間達

 大きく息を吸い込んで、剣豪は……[ワカツ]のゲンは素朴で、人情に溢れていた人々の雑踏の中へ入ろうと駆けだした
























                    "それでいいのか?"




 不意に、問いかけるような自分の声が頭の中に浮かんできた。
781 :続き明日か明後日 [saga]:2021/10/02(土) 23:59:01.30 ID:VoT6ejD20


 幾ら振り返っても、望んでも、何を犠牲にしても戻らない時間の中に、まやかしの希望に駆けだそうとした脚は止まった


  ゲン「―――」ピタッ


   「んあ?なんだサナダの…参加する気になったのかよ」
   「やっと酔いが醒めたのか? 皆こっち来いよ!朗報だぞ!ゲンの野郎が大会に出るってよ!面白くなってきたぜ」

   「本当かいゲンさん、なら精をつけてもらわなくっちゃね!ウチの団子サービスするよ!」

   「ゲンの親父がか!?こりゃあ今年の大会は誰が優勝すっかわかんねぇな!」ダハハ!
   「こいつぁ良い!賭けも熱くなるってもんだ!まっ!勝つのはセキシュウサイだろうがな!」
   「何言ってんだい、ゲンのおっちゃんの方が強いに決まってらぁ」

   「なら坊主はゲンが勝つって思うだな?」

   「うんにゃ、ソウジ兄ちゃんが優勝すると思う」

   「そこはゲンさんが優勝っていうとこだろ〜が!」


 アハハハ! ワイワイ! ガヤガヤ!


 心地の良い声が聞こえてくる、居心地のいい騒がしさが






                   -くそっ…!諦めねぇぞ俺は-

        -ゲンさん…帰ってきてくれよ、この基地から無事に出たら酒盛りをするからさ…-

     -俺も精一杯盛り上げるから、仕事明けの一杯の音頭取るのはアンタみたいな人じゃないと駄目なんだ-





 自分を呼ぶ声が聞こえる、泣きそうで必死で、それでいて…自分を、剣豪に帰ってきてもうらことを諦めない声が



  ゲン「…。」
  ゲン「俺はな、酒が好きなんだ」ボソッ

  ゲン「酒に酔っている時は嫌な事も辛い事も全部忘れられてよ、世界もまともに視ずに済めたからよ…」




    「どうしたんだよ?そんなとこで立ち止まって、早く俺達の所に来いよ」
    「…ゲンのおっちゃん?」キョトン
    「ちょっとゲンさんどうしたいんだい?ウチの店近いからお冷でも持ってくるかい?」




  ゲン「昔はそりゃあ純粋に酔うこと自体が楽しかった、でもな何時しか"逃げる"手段になってたんだなって気づいた」

  ゲン「今、俺が見てるコレも酔ってる時に見てる景色と同じでただ逃げてるだけ、いや…違う!」


  ゲン「目を背け続けただけなんだって、そうやって誤魔化してたからすぐ近くで輝いてた奴らさえ見てなかったのさ」



   - ゲンさん! T-260Gの事をお願い! T-260G!お前もゲンさんと協力するんだぞ隊長命令だぞ! -
 - ゲンさんお酒は飲んじゃ駄目よ!体に悪いんだからね! それとタイムのことを助けてくれてありがとうっ!-




 辺境の土地で顔見知りになった住人達の顔が浮かんでくる、リージョン界を彷徨う様に渡り歩き、そして迷い辿り着いた
辺境の"惑星<リージョン>"にある村の気の良い連中や子供達の顔だ

 よそ者の自分に対しても何ら変わりなく接して、いつしか居心地がよくなった場所、身内も誰も居ない自分を案ずる人達
782 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/10/03(日) 05:44:49.02 ID:pVW22lmy0
在りし日のワカツにLP1っぽい人が
783 :続き明日か明後日 [saga]:2021/10/04(月) 04:11:04.77 ID:dcYj9DGE0

 帰れる家なんて無いし、帰りを待っていてくれる家族も友も何も無い
自分には行く当てだって存在しない、永遠の根無し草になったもんだと彼は思っていた


 知り合いも何も無く自分という人間を知る者もいないのならば、それはしぶとく現世に揺蕩う亡霊と変わらない


 居ても居なくても誰も困らない人間、誰に悟られるでもなく何処ぞの街の路地裏なりで行き倒れて死んでいても
身元不明の死体がそこにあったとされるだけで誰かの生活や人間関係に何ら影響を及ぼしもしない
 ある意味に置いてゲンという人物は生きてなどいなかった
月並みな言葉だが人間明日は明日の風が吹く、だから辛い目に遭っても酷い事件があって前を向いて行きましょうねと
酒好きでどんちゃん騒ぎが好きな酔っ払いだからと表面上しか知らん者からすればもう過去の事を割り切って
彼は前向きに生きているのだろうと勘違いしがちだが実はそうじゃない

 酒好きなのは事実だが、自分を見失う程に酒で溺れるているのは"今"を直視できないから

 何度でも言うが、彼にとっての酒は現実逃避の手段で酔いながらも
「こうやって生き延びていればいつかは復讐の機会が来るかもしれない」そんな牙をずっと忘れちゃいないんだ



 前を向いているようでその実は後ろばかりを見ていた、それがゲンという人物でもあるのだ



 本当は彼が気が付いていなかっただけで、"彼にはもう彼自身を案じてくれる身内や帰れる場所はある"のだ

 何気なく知り合った辺境の子供と一言二言話して、顔を覚え名前を記憶できたならその時点でそれは赤の他人じゃないし
行き着けの店でいつもの奴を飲ませてくれといえば"いつもの"でオーダーが通る
 それだって見かたによっては新しく出来た帰ってこれる場所とも言える、自分という存在を相手が認識して覚えてくれた





 帰れる居場所も友人や身内の様に思える者達との間で築く人間関係も結局の所、時と共に新たに構築されていく物なのだ




 亡びて消え去っても"人"が生きている以上はその人が新たな土地へと旅立ち、名も知らぬ誰かと出会い言葉を交わし
やがては知らない人じゃなくて知っている人へと変わっていく


 知り合いに死んで欲しいなんて思う人間なんざこの世に存在しない、仲の良かった奴なら尚更の事だ




   ゲン「俺も、できる事ならお前達と共に逝きたいさ」

   ゲン「でもよ、"あの世<そっち>"に行かず"この世<こっち>"へ俺に帰ってきて欲しいって奴が居るんだ」

   ゲン「だからよ…すまねぇ、まだ俺はお前達と逝きていくことはできねぇ、俺はまだあいつ等と生きていくさ」



    「………。」
    「………。」
    「………。」


    『それが其方の答えだな』カッ!!


   ゲン「何!?うっ、眩しい!?」


 同郷の仲間達の背から突如として強い光が射す、ゲンはその後光に思わず目を瞑る
目が眩むような強い光と聞いたことの無い声色に警戒心を一層強め、すぐ動ける様に身構えながら光が収まるのを待った


   ゲン「―――!なっ、なん、だ…ここは"剣神の間"だと…っ!?」キョロキョロ


 滅亡する前の[ワカツ]の城下町に居たと思えばボロボロになった空襲後の、つい最近訪れたばかりの剣神の間に
彼は立っていたのだ…!そして、退魔の赤紐で封印を施された"剣神"もまたそこに居た
 矢も槍も突き刺さっていない剣神がジッと剣豪の顔を見つめていた


―――
――
―
784 :続き明日か明後日 [saga]:2021/10/06(水) 14:52:31.85 ID:A1VbM/RG0

  ドガガガガガガッ!ズバァッ――バチバチバチィ


    『ぐおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ…っ!?!?!? ば、バカな…俺は"力"を手に入れたんだぞォ!?』

  『神にさえ手が届く力をッ!超神のパワーを持った!!だのに、何故だ!?こんな虫けらどもにぃー―――ッッ!』


 操縦室で[ワンダードギー]は吼えた、彼の駆る超神は世界を蹂躙して支配できる力があるといっても過言ではなかった
だが、どれほど強い力であっても"個"であってはできることに限りがあるのだ
 如何に優れた英雄であれど多くの兵の連携の前には倒れ伏す可能性がある、いつかの時代の何処かの誰かが残した名言だ
自身を弾道に見立てた特攻アタックとプログラムに合わせた剣の達人特有の動きで切り刻むメカ集団
そこに元モデルの跳弾が出来たばかりの切り傷や特攻での破損部分に的確に撃ち込まれ
 仲間達が詠唱時間を稼いだ事で唱えられた[ヴァーミリオンサンズ]が機体の全身に突き刺さる

 トドメの締めとばかりに武器を手渡されたアニーの[デッドエンド]が超神の頭を叩き切った


 その結果が、今火花を散らして全身が崩れ始めた超神の姿である



 操縦席の計器やモニターも火を噴き出し、スパーク走る操縦席内は嫌でも敗色を搭乗者に知らせる
神にさえも手が届く武力を手に天狗になって居た野心家は認めたく無かった、自分は絶大な力を手中に収めても
何一つ成し得ない、何者にさえも勝利できない屑で終わるのか!?と


 パキッ!硝子に罅が入った様な嫌な音がしてまだ生き残っている液晶画面以外に光源が無い操縦室に光が僅かに射す
外がどれだけ炎上してもどれだけの兵器を撃ち込まれても搭乗者だけは絶対の安全を確約するシェルターとして機能する
コックピットに亀裂が入ったのだ…ッ!


 ここに来て鋼鉄の揺り籠に護られてきた彼は戦慄する


 機動兵器の最大の欠点はそれを動かす搭乗者本人に他ならない、如何に強固な鎧を纏っても鎧の中に居る人物が死ねば
鎧はただの動かぬ鉄塊にしかならない

 殻を破られた後に残るのは弱点剥き出しになった兵器への無慈悲な飽和攻撃だけである



   『あ、あぁぁ…あああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!』


 取り乱しスパーク飛び交う室内で操縦桿を握る、腕が焼けようと構うものかと[バスターランチャー]を構える
先程から撃てども撃てども頑丈さが売りのメカ達が前に立ちはだかり影に隠れる人間組を致死に至らすことができない
極大波動砲のエネルギーで後ろに隠れる人間達を焼くことは確かに出来てはいるがそれでも威力を殺されるのだ
 そして人間と違ってメカは倒れても直ぐに修理されて立ち上がる

 盤上から追い払った厄介極まりない不死身の戦士達が戻ってきた辺りで完全に戦局は変わった



  『クソッ、クソ、クソぉぉぉぉぉぉ………ぉ、ぉ、お?…おっ?』カチカチカチ



 ……[バスターランチャー]が機動しない。


 半狂乱状態でトリガーを引くも、頼みの兵装が稼働しない
否、ランチャーを持った腕が動いていないのだ…ッ!――――それに気が付いたと同時に金属が軋む嫌な音が聞こえて
"腕が完全に落ちた"、言葉通り落ちた、だらしなくブランと腕を下すとかそうじゃくて、肩の部分から壊れて落下した

 次にズシンと機体全身が沈んだ、遊園地の絶叫系のアトラクションで身体少しだけ浮いたと思えば急降下で贓物が上下に
振り回される感覚を下位妖魔は味わった

 脚が完全に外れたのだ。


 肩から先も腰より下の半身も完全なくなり胴を護る装甲さえも壊れて、本当にマシンの骨組みだけ…
不格好な鉄の丸太と化した胴体の上部に辛うじてまだ胸部装甲が残っている操縦室と[デッドエンド]の一撃で
頭部のフェイス装甲が砕け散りツインアイ式のカメラ等が剥き出しになった顔が露わになった姿だけだ

 もう超神でも何でもない、憐れなマッチ棒が一本辛うじてそこにあるだけである


  『〜〜〜〜〜〜っ、俺は…俺様は力を手にいれたんだ…俺は負けないんだ、俺が負ける訳がねぇぇぇんだ!!!』


 ……骨組みだけの胴体に頭でっかち、もう誇れる物も何もない搭乗者そのものを体現したような姿
借り物の力を、いや盗んだ力をさも自身の物の様に振り翳した男のメッキは剥がれ等身大の、"魂"だけの姿となった
785 :続き明日か明後日 [saga]:2021/10/08(金) 14:55:10.05 ID:zZLdT9J10

 直後、これまでで一層激しい[敵の援護射撃]が飛んでくる
常に上方目掛けて移動し続けた足場はブルー等が一度も足を踏み入れたことの無い区画へと来ていた
彼らの潜入経路には無かった[モンド基地]の兵器カタパルトエリアだ

 考えてみればそうなのだが、これほどの巨体を誇る機動兵器は普通に侵入者一行が通ってきたような[ワカツ]の亀裂から
出入りすることなど不可能だ
 どこかに基地内から天井の隔壁を開いて出撃する為の場所はあって然るべきなのだ


そんな要所だからか、此処には他の階層以上に天井に取り付けられた機銃が多くみられる


 恐らくは何らかの理由で敵に基地が発見されて地上と地下基地とを隔てるシャッター隔壁を壊されても侵入を阻む為
その為に集中して火線が敷かれるようになっているのだろう



 これまでに例を見ない激しい[敵の援護射撃]で手を出し切れない合間に壊れた[グレートモンド超神]は鉄柱アームにて
運搬され、そして――――何とも言えない姿で帰ってきた







         一言で形容するならば"不格好な蜻蛉<トンボ>"、それがしっくり来る言葉だった




 細長い棒状の胴体から四本の鉄パイプかと思いたくなるこれまた細長い手足…いや、手足なのかさえ分からない
先端にそれぞれ向かって右下から[ハイパーバズーカ]の砲門、左下に[バルカン]と[レールガン]を切り替えて使える機銃
右上と左上に向かって伸びてる細い腕の先には反重力装置が付いていてそれでバランスを取りながら飛んでいる

 4つ腕をバタバタさせて必死に重心を取り飛ぶ様は蜻蛉の羽を連想させる、見苦しくも何処か必死な姿
その異常なまでの執念深さに憐みよりも恐ろしささえ覚える


 不格好な蜻蛉<トンボ>は胴体に[バスターランチャー]を括りつけて直接エネルギー炉と連結させ超神であった時よりも
早くエネルギーの充填を可能にしてた、脅威の波動砲はこれまで以上に早いスパンで撃ち出してくることだろう



    『はぁはぁ…てめぇら、よくもやってくれたな、俺の、俺の野望を…!!!』


 秘密兵器はものの見事にボロボロ、仮にこの戦闘で下位妖魔が彼らに打ち勝ったとしてこれを元通りに復元するのに
どれだけの資源物資と資金が必要になるのか、超神形態まで残っていたならまだしも完全にただの骨組み状態になった今
復元というよりほとんどゼロからの作り直しに近い

 元々が浮浪者でしかなかった下位妖魔に資金も人材の伝手も無い、彼の野心は泡沫と化したような物だった



 細長い胴体の先端についていた胸部装甲の左右に取り付いている2門の反重力砲から橙色と藍色の光が灯る
二色の光が螺旋状に交差して伸びていく[反重力クラッシャー]が援護射撃から人間組の身を護る様に固まっていたメカ達に
炸裂し彼らを吹き飛ばす

 半ば自棄にでもなっているのか、[レールガン]に[ハイパーバズーカ]を手あたり次第に乱射していく



    エミリア「ぐっ、こんなめちゃくちゃな攻撃…っ!」


 正確さも何もあったもんじゃない無茶苦茶な攻撃、それ自体を避けるのは訳なく反撃も仕掛けられたのだが…


  ガシャッ!!



   『燃えカスになりやがれええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!クソッタレがぁあああああ!!!』



 カメラ撮影用の三脚脚立の様な脚が[バスターランチャー]から伸びてしっかりと[グレートモンド魂]が固定される
搭乗者の怨嗟が込められた波動砲の圧倒的熱量が今にも放たれんと…!
 その矛先はメカ達の誰かでもブルーでもアニーやエミリア相手でもなく―――――


     ブルー「いかんっ!!あの射線上は…!! スライム!リュートそこから離れろ!!!」
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/10/09(土) 05:54:25.43 ID:W/o5W1620
乙
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/10(日) 23:46:09.03 ID:pJdnDXLA0

―――
――
―


 ゲンは困惑していた。


 自分が居る場所が点々と移り変わり、目の前には封印が施されていない剣神が現れた
それだけならまだしも向こうは何も言わずにただジッと剣豪を見つめるだけだった


 額にジワリと脂汗が滲む、お互いに何も言わずただ沈黙だけが流れていて
刻でも止まったのかと思ってしまう程に微動だにしないのだ、自分も相手も


 長い睨み合いの末に静寂を打ち破ったのは人ならざる者の方だった
ゆっくりと片腕を天に掲げて…振り下ろすッ!



        ゲン「っっぐぅぅ!?!?」



 腕を振り下ろすと同時に剣神の間は…否、ゲンの精神世界は強い光に包まれる
フラッシュアウトしていく視界に彼は見えるはずの無い人の顔を見た


     『そうか…おめぇはまだこっちには来れねぇか』
     『サナダの、想ってくれる奴がいるってのぁやっぱいいモンだよなぁ』


       ゲン「! お、お前達…」


 強すぎる光、網膜には白光の白一色しか映らない筈なのに、光を遮る者なぞ其処には誰一人立たぬ筈なのに
それでも[ワカツ]最後の生き残りには確かに人の顔が視えているのだ



     『なら仕方ねぇよな、[ワカツ]男児たるモンは一度決めた事を曲げる訳にゃいかねぇよなァ!』ハッハッハ!
     『一緒に居て欲しいって想うのはオラ達だけじゃねぇべ、向こうにもアンタを待ってる人が居るなら仕方ない』
     『遊んでくれるゲンのおっちゃんのことオイラ好きだったよ!』


 次々と視えていた顔ぶれはゲンに声を掛けて光の中に溶けて視えなくなっていく



     『俺達の分も生きてくれよな!折角生きたんだぜ、なら暗い顔しねぇでお天道様見上げなきゃ損ってもんよ』

     『人間誰だって泣いたり悲しむ為だけに生まれた訳じゃねぇだろ、生まれてきた理由は笑う為だぜ』ガハハッ!

     『酒飲んで美味い飯食って、偶に喧嘩したりどっちが勝つか賭けて負けて泣いて笑って、人生そんなだろォ?』

     『誰かが想ってくれるってんなら、それだけで人生には意味ってのが生まれるんでい!大往生しやがれよっ』



 消えていく顔達はどれもこれも"笑い顔"だった、悔やむでも涙を流すでも無ければ誰かを恨む怨嗟に満ちた物でもない
最後に剣豪の脳裏に強く焼き付いていくような何処までも晴れやかな笑顔

 知らず知らずの内にゲンの眼からは一筋の雫があふれていた、だが彼らにつられるように彼の顔もまた朗らかな物だった
心の底にはドロリとした物も何もない、人生で本当に心底楽しそうに笑っていた頃と変わらぬ心持で

 本当に彼は笑っていたのだ、自身が気付かぬ内に、最高の泣き笑いで、笑って彼らを送ってやることが出来ていたのだ


       『へっ、なんだい折角会いに来たダチ達が還るってのに笑ってやがらぁ』
       『まぁまぁ、その方が俺達らしいじゃないか、ゲンの親父の辛気臭ぇ面なんぞみたくないからな』

       『んだな、お互い別れ際は湿っぽく泣くよりも笑って送り出してやりゃあいいのさ…』


         『達者でな』ニィ

       ゲン「ああ、またな」


―――
――
―
788 :続きは火曜日か水曜日予定 [saga]:2021/10/10(日) 23:47:14.24 ID:pJdnDXLA0

【双子が旅立って9日目 午後 15時28分 [ワカツ]剣神の間】




   封印されし剣神『…。』




――――カッ!!


 …リュート等侵入者一行がこの"惑星<リージョン>"の地底に築かれた基地内で[グレートモンド魂]と戦い
下位妖魔が今まさに[バスターランチャー]を撃ち出そうとしてした同時刻…っ!

 [ワカツ]の地下に存在する剣神の間に眩い光が満ちた
その輝きは室内から溢れ出し櫓の外へ飛び出て、天へと昇る…やがて一条の、まるで彗星の様に落ちてくる光となって
 [モンド基地]の巨大兵器出撃用の格納口へと落ちていく…ッッ!!

―――
――
―
【双子が旅立って9日目 午後 同刻15時28分 [モンド基地]】


   『燃えカスになりやがれええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!クソッタレがぁあああああ!!!』

     ブルー「いかんっ!!あの射線上は…!! スライム!リュートそこから離れろ!!!」


 不格好な蜻蛉は何もかもを灼きつくす破滅の光を撃ち出す、収束された膨大な熱量はゲンに付き添い彼を介抱し続ける
弦楽器の青年と治癒の一角獣諸共に飲み込まんと迫る


   リュート「う、うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」ギュッ
   スライム「(/ω\) ぶ、ぶくぶくぶくぶくーーーーーーーっ」


 巨大な光の渦が迫ってくる、仲間の叫びを聞いて顔を向けた時には最早避けようの無い距離まで迫っていた
元より足場の隅の隅で逃げようにも逃げ場など無い、リュートとスライムはこれまでかと目を瞑り死を覚悟する


   ゲンの指『』ピクッ

   リュート「!」ハッ!?
   スライム「(;´・ω・)!?」


――――カッ!!

――――――――ズガアアアアアアアアアァァァン!


 [バスターランチャー]の光芒が彼らを飲み込まんとした時、突如として"何か"が空から降ってきた
地底に築かれた基地そのものの硬い隔壁とその真上にある[ワカツ]の地殻という天然の防壁

 その二重層をぶち破ってソレは彼らと光芒との合間に割って入る様に突き刺さり、更には破滅の光を掻き消した



 『な、なんだ、一体何が起こったんだ―――!!この地下基地の天井がぶち破られている!?!?貴様ら何をした!?』


 目が眩むような眩い光、燃え上がる炎、舞い上がる黒煙と地表からソレと共に落ちてきた土砂との土煙
敵も味方でさえも何が起きたのか眼を白黒させる中、漸く景色が見えるようになって彼らは知った


   リュート「あ、あぁ…」ツーッ

      「…おう、わりぃな世話かけちまった見てぇでよ」

   リュート「へ、へへへ…帰ってきてくれたんだなぁ…」グスッ




      ゲン「ああ、待たせたな」ニィッ

      ゲンの手『 [流星刀] 』チャキッ!



 生存は絶望的だと思われた剣豪は…っ、ゲンは意識を取り戻したのだッッ!!その手に"見慣れぬ刀"を持って!!
789 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/10/11(月) 03:16:05.99 ID:BNK19lr90
おつおつ
ゲンさん復活キタ!
790 :>>1です [saga]:2021/10/13(水) 23:06:17.89 ID:Kc5ocNgU0
予定変更、次回更新 日曜日  リュート編ラスボス[グレートモンド]完全決着
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/17(日) 23:45:56.48 ID:NECc5VEU0

 間近で見えていたリュートとスライムだけが剣豪の手にする武器が何処から来たのかを理解していた
あの瞬間、全てを灼き尽くさんとした光が迫ってきた時に空から別の輝きが降り注いだ

 まばゆい輝き…神々しさを感じ取れる程の光が天井を突き破って自分達を護る盾の様に足場へと突き刺さり
信じられんことにあの[バスターランチャー]のエネルギーを掻き消したのだ…っ!



 ぽっかりと開いた天井の穴からは陽が傾き出した[ワカツ]の大空が見える、まだ夕刻というには早すぎて星の瞬きさえも
見つけられない昼空から彼らを護る様に落ちてきた"流星"

 もしもコレに名前をつけるとするならば[流星刀]という名が相応しかろう


  ゲン「…。」ジッ


 改めて剣豪は自分が"最初から自分の物であったかの様に手に取った"[流星刀]を見つめて空に向かって声を上げる





                ゲン「剣神よ!俺に何をしろというのだ!」



――――その問いに答える者は誰一人として居ない。



   ゲン「…答えは自分で見つけろということだな」チャキッ



 剣豪の問いは大空の彼方、空虚へと吸い込まれては消えていく
だが彼は答える者がいないことなど理解していた、これは自分で答えを見つけねばならないことだと心の奥では理解してた

 …最後に笑って還っていった[ワカツ]の同胞達が自分に掛けてくれた言葉が胸の中で熱く燃えていた
人生は常に意味を探す為の旅路なのだと、人間はいつだって答えを求めて生きるのだと



   ゲン「にいちゃん!スライム!世の為人の為にまずはあのデカブツをとっちめてやろうぜ!」ブンッ

 リュート「おう!やってやろうぜ!!」
 スライム「(`・ω・´)ぶくぶくーっ!」ピョンピョン!



   『っっ〜〜〜!!突然空に向かって叫んだかと思えば舐めやがってぇぇぇぇ!!』



 未だ何が何だか状況の掴めない下位妖魔は[レールガン]を乱射する、切り札のランチャーは撃ち出したばかりで
まだチャージが完了せずトリガーを引くに引けない

 盤上から振り落とされたpzkw�X以外のメカ達の復帰とゲンが意識を取り戻した事で確実に流れは彼らに来ていた
術士が[勝利のルーン]を施したブロンド美女の[二丁拳銃]による[跳弾]も黄金髪の女が振るう剣技の切れもこの追い風に
乗る様に不格好な蜻蛉<トンボ>へと叩き込まれていく


   『ぐあ" あぎ""っ!?』ボンッ!ボボボンッ!


 装甲が殆ど剥がれ落ちた機動兵器には一気呵成に打って出た彼らの一撃一撃が重すぎる
計器やモニターが次々に内部で爆発を起し搭乗者にダメージを与えていく


     ゲン「…。」スゥゥ…


 剣豪が[流星刀]を構えて深く呼吸をする、彼自身の身体の奥底から闘気が溢れ出す
誰が最初に言い出した訳でもなくそれを見て皆がゲンをサポートしようと動き出した、大技を使うゲンの為に時間を!



   リュート「コイツでトドメだ!」シュバンッ
    ブルー「爆ぜろ![インプロージョン]!」キュィィン
    アニー「視えた…っ!このタイミング!」ズサーッ!スパン!


            3連携 [ 逆 風 の イ ン プ ロ 清 流 剣 ]
792 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/17(日) 23:46:59.59 ID:NECc5VEU0


  『ぐあああ"あ""ああ あ"ああああああああ あ"ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?』バチバチバチ!!


 焔が吹き荒れ、ショートした電気系統からはスパークが飛び出して狭いコックピット内を踊り狂う
操縦桿を握っていた[ワンダードギー]は出口の無い鉄釜の中で火炙りと感電の責めを同時に味わう阿鼻叫喚を体験した

 皮膚も内にある贓物も何もかもが焦げていく、これが生身の人間であるのならばショック死してもおかしくはない
偏に彼が下級とは言え生命力に溢れた妖魔であるからこそ生きていられると言えよう

 …これが本来の搭乗者モンド氏であったならば、いや、彼なら執念のみでまだ生きながらえて最期の一撃くらいは撃つか


 電子レンジにでも入れられた体感をした下位妖魔はまだ辛うじて動く手で最後の賭けに出ることにした
もうこの機体は長くない……


 泣いても笑ってもこれが最後の大博打だ…。


 [グレートモンド魂]は自身の炉と[バスターランチャー]を直接繋ぐことで超神形態の時よりも
早いスパンでの連射を可能とした、その炉を意図的に暴走状態にすることでより早く、尚且つ過負荷を掛ける事になるが
通常のエネルギーゲインを超える高出力での射出を実現できるのだ



 これは所謂メカ達が使うプログラムの[マグニファイ]と同じだ。

 装備している武装のリミッターを解除して使用後に壊れて使い物にならなくなるというデメリットを呑んで使う手段


 どこもかしこも火を噴き出しているこの蜻蛉<トンボ>でそれをやれば間違いなく墜ちる、然し彼に手など無い
行くも地獄、退くも地獄…であれば行くより他になかろう…ッ!!



 『…ふ、ふへ、ふへへへ…お、お俺様は神を超える力をえ、え、得ぇたんだぁぁ…ははっ、ハハハハ…』カチカチ、ピッピッ


 操縦桿を握る手の感覚が殆どない、犬の様な瞳は熱で焼けて視力を失いつつある、見え辛い視界の中で辛うじて
自身が安全装置を切っているのだけは解る、自分が殺した同僚や部下達と一から組み立てて整備し続けた機動兵器だから
意識は半分無くても慣れた手つきで出来た

―――
――
―

   エミリア「ちょ、ちょっと―――明らかになんかヤバいわよアレ!?」

     T-260「敵機の炉が暴走中!異常なエネルギー反応が検知されています!」
    アニー「はぁ!?暴走って自爆でもすんの!?」



  レオナルド「不味いね…っ!自爆はしないだろうけど…ある意味自爆の方がマシかもしれないッ」
    ブルー(くっ…![リージョン移動]で脱出を―――いや、駄目だこうも全員が俺から離れすぎていては…ッ)


 この瞬間に[ゲート]を使っても自分とすぐ傍にいるレオナルドくらいしか退避できない…っ!
今になってブルーは出鱈目に乱射された結果、チームが分断され陣形が崩れた原因の[レールガン]を恨めしく思う

 蜻蛉<トンボ>は最期の力を振り絞って三脚のような細い脚でしっかりと自身を足場に固定させる
自壊覚悟の自他共に破滅せんとする滅亡の光が[バスターランチャー]へと注がれていく
 その砲門を侵入者一行に向けながら狂気に駆られつつあった下位妖魔はトリガーを引かんとする…っ!



  『はーっはっはっはっは!俺様がリージョン界の王になるんだぁぁぁぁぁああああはははははははははっ!!!』














             ゲン「…剣神よ、見るがいい―――星を落とす術を」スゥ…!
793 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/17(日) 23:47:41.95 ID:NECc5VEU0


















       『喰ら え ぇぇぇ ぇぇ ぇ[バ ス タ ー ラ ン チ ャ ー ]ぁ ぁ ぁ ぁ ぁぁ』






              ゲン「 [ ミ リ オ ン ダ ラ ー ] 」ブンッ











794 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/17(日) 23:48:35.35 ID:NECc5VEU0


 闘気を纏った剣豪が"神"より授かりし[流星刀]を振るった


 ゲンは空を切り裂いた。


 比喩ではない、言葉通りにである





 何も無い空間に空色の美しい刀身が振るわれて、空間が切り裂かれた、本や書類を積み重ねた紙の束に短刀を突き立てて
そのまま腕を引いて出来た裂け目の様に宙に亀裂が入ったのだ

 裂け目はそのまま広がりながら昇り、そこから"混沌の間<宇宙空間>"に似て非なる何処かが溢れているのが見える
星の煌めき、生まれては爆発してガス状になって、それが周囲の小さな惑星を取り込んでまた命が芽吹く星々を産み出して
そこには命の輪廻があった、星雲が漂う闇の空間であり同時に光に満ちていた不思議な空間が亀裂の先には存在した



 切り開かれた裂け目の奥で紅く光る星がある、大きく燃える火
1つ、2つではない…猛々しく燃え盛る紅星が…無数の流星が空間から飛び出して来る…ッ!


  流星『 』ボウッ
  流星『 』ドウッ



  ド ガ ガ ガ ガ ガ ガ ガガ ガガガ ガガガガガ ガ ガガ   ガ アァァァー—―z______ン!




 気高い闘気に呼び寄せられた星は、限りある命の輝きに惹かれ、飛び出しては不格好な蜻蛉<トンボ>へと降り注ぐ
燃え盛る巨石が次々と衝突して武装が次々と破壊されていく
 [レールガン]も[ハイパーバズーカ]も腕ごと捥げて、反重力装置もへし折られ自力で飛ぶことは困難となった
四枚羽を失い、胴体にも隕石がぶつかってきた[グレートモンド魂]は当然の如く態勢を大きく崩した

 羽が千切れて、頼りなく自身を支えていた三脚のような足も所々折れていて
侵入者一行に向いていた筈の砲はどこか拉げて、上に…天へと向けられた


 よく見ると胸部のコックピットブロックも砕けていて中から黒煙や火が噴き出しているのが見える
割れた部分から外気が入り込み、内部の空気は逆に外に漏れだすようになった







 機動兵器は…ただの砲台と化した[グレートモンド魂]はその名に恥じぬ最期の一撃を天へと穿つ


 機体を支える脚が折れて、砲自体も拉げ狙いが定まらなくなった破滅の輝きは身を伏せた侵入者一行の頭上を更に越えて
ぽっかりと開いた天井の大穴に吸い込まれていく

 [ワカツ]の大空へ光は昇り、天守閣よりも高く雲の上へと昇っていく


 まるで空襲にあった多くの[ワカツ]の民を弔う弔砲が如く、穿たれた光と共に"魂"は天に還るのであった



 ガシャン…!



 無音、最後にその音がしたと思い全員が顔を上げればそこには事切れた"魂"の姿があった
[マグニファイ]の仕様を応用した一撃に遂に耐え切れなかったのだ
 機体全身が赤茶色になるまで熱したフライパンの様になっていてまだ火花が吹いている
完全に燃え尽きたといった様相で地に墜ちていた…



 ふとコックピットがあった部位を見やる、……先程、外気が入り込み、内部の空気が出て行くのが確認できたことから
気密性はもう駄目になっていたソレはリミッターを解除した[バスターランチャー]の熱も入り込むということだ
 元々重装甲で操縦室自体が絶対的な堅牢さを誇っていたのだって
何も搭乗者を外敵から守る鉄の揺り籠だからというだけではない…余波でさえ大人数を灼く膨大な熱量を手元から撃ち出す
ならば自身の身を護る為に必要以上に頑丈にするのは当然と言えよう、自分の兵器で自分がやられちゃ話にならん
795 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/17(日) 23:49:28.12 ID:NECc5VEU0

 静寂、死の可能性が何度もあったこれまでで一番の難所を無事に生きて乗り越えた
まだ実感が持てないのか弦楽器を背負った青年が今日で何度目になるか袖で顔についた血を拭って呟いた



   リュート「終わった、のか?…終わったんだよな?」ヘナヘナ…


 言い切ってから身体全身の力が抜けてその場にへたり込んでしまう、だが無理からぬことであった皆が同じ気持ちだ
恐ろしい強敵を打ち破った疲弊と達成感、自分が生きている事の喜びと安堵、死んだと思った仲間が生きてた驚きと嬉しさ
 色んな感情が綯交ぜで気持ちの整理が追い付かない……今はただ、座ったり倒れたり、息を吸いたい、吐き出したい
身体中全身が悲鳴を上げているんだ



  レオナルド「みんな、お疲れ様」

  特殊工作車「大変でしたね、皆さんはメカではありませんから私では直して差し上げられませんが…お疲れ様でした」

 ナカジマ零式「ひゅ〜、一世一代の大活劇だったんじゃないでーすかー?」



   エミリア「ええ、全くよ……ルーファスの指令でちょっと偵察に来ただけなのに、とんだ大暴れよ」


 元モデルとしての恥も何も無く大の字になって倒れたエミリアが疲れ知らずのメカ勢に答えた
彼女の隣で地べたに膝をついて武器を杖代わりにしているアニーは歩いて来る剣豪に目線を向けて言った


   アニー「ゲンさん、生きててくれたのね…よかった」グスッ
  エミリア「ええ、本当に良かったわ…」


 仲間の生存に思わず涙ぐむグラディウス組にゲンはニッと笑って「まだ現世の酒が飲み足りねぇからな!」と肩を竦める
その様子に思わずリュートとアニーが噴き出して、蒼き法衣の魔術師も口角を釣り上げた


   ゲン「おっ、術士のにいちゃんも良い顔で笑うじゃねぇか」

  ブルー「…ああ、今は気分が良いのさ」

 リュート「へへっ、最近はお前が笑うのも"珍しい事"じゃなくなってきたなっ!
               …帰ったら[クーロン]のラーメン屋の屋台で打上げ会開こうぜ!」


 弦楽器の青年は武器を仕舞い、さっきまでの疲れはどこへやら背負った楽器を奏でて陽気に笑う
剣豪に小さく目配せしながら酒でパーッと盛り上げようと笑った







   ゲン「…ははっ、そうだな、精一杯盛り上げてくれる宴会にしてくれよ、俺が乾杯の音頭を取るからよ」

 リュート「おうとも!任せてくれよな!今、生きているこの時間を生涯忘れないくらい楽しくするぜ!」




 笑い合う仲間達を見ながら蒼き術士はふと、何気なく言われた言葉を思い返す


  ブルー(最近は俺が笑うのも珍しくない、か…)

  ブルー(…。そう、なのかもしれんな)フッ


<ワイワイ アハハッ!


   T-260「………。」

   T-260「皆様、少々よろしいでしょうか」


   エミリア「あら、どうかしたの…?」



   T-260「……あそこをご覧ください」スッ
796 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/17(日) 23:50:13.59 ID:NECc5VEU0

 ただの灼けた鉄屑と化した[グレートモンド魂]の残骸をT-260は指差して音声を発した
なけなしの気力を奮い立たせて気怠そうに起き上がったエミリアはそちらを見やり首を傾げた


  エミリア「…? あれがどうかしたの」

   T-260「コックピットブロックなのですが」











   T-260「"搭乗者の遺体がありません"」




  ゲン「ッ!?」バッ

 アニー「えぇっ!」

 ブルー「なっ、なんだとっ!?」ダッ


 慌てて身を起し、動ける者達は蜻蛉<トンボ>の死骸を見始めた
ある者は武器を鞘から引き抜き、ある者は周囲への警戒を始め、ある者は術を唱える準備をしながら


   操縦席跡『   』



 焼失遺体が確かに無い、これが"人間<ヒューマン>"なら100%間違いなく死んでる状況だが腐っても妖魔
嘘か真か[ファシナトゥール]の煉獄の焼却炉に飛び込んでも妖魔なら生きて外の"惑星<リージョン>"まで脱出できると言うが
まさかあの下級妖魔まだ生きていて逃げ延びたというのかっ!?


  ブルー「おのれ…っ、まだ何か兵器を持ち出して来る気じゃないだろうな!?傷が酷い奴は此処で待機しろ
                          まだ戦う気力が残っている奴は武器を持って今すぐ―――――」



   レオナルド「あー、そのことなんだけどさ」ポリポリ


 今にも飛び出しそうな術士を制して、機械工学の権威が調子の無いで待ったを掛ける
魔術師は当然「なんだ!?何故止める!と抗議したがそこをすかさずリュートが宥めて続きを言う事を促した


   レオナルド「んんっ、まずだけど彼、あの[ワンダードギー]ね…アレ、もう決着ついてるんだよ」

   レオナルド「この基地にこの巨大ロボに匹敵する兵器はもう無い、道中で巨大な[Tウォーカー]とかはあったけど」

   レオナルド「あれは"もう動かせなくなった"だから心配しなくていい、それに―――」




      レオナルド「ボク達がもう手を下す必要が無いんだよ」



 一瞬、何を言ってるのか意図が分からなかった、何故他の階層の巨大メカが動かないと分る?いつ調べたんだ
そもそも"手を下す必要が無い"とは…?
 ふとそこまで考えた所で、横からアニーの声が沈黙を破った



   アニー「……レオナルドさん、そういえばさっきある人に助けられた、って言ってたよね?」



 - レオナルド『あー…説明するとちょ〜っと厄介なんだけどね、 "ある人" に助けられたっていうか、ね…』-


   アニー「それにさっきからずっと気になってたんだけど…pzkw�Xは何処に居るのさ」

797 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/17(日) 23:51:49.69 ID:NECc5VEU0

 言われてみればそうだ、特殊工作車もT-260もナカジマ零式も居るのにpzkw�Xだけがこの場に居ないではないか


   レオナルド「うん…その辺も含めて話すよ、彼はその助けてくれた人の護衛兼人質みたいな感じなんだよね今」

   リュート「人質って…そいつぁ穏やかじゃねーんじゃないのかい?」


   レオナルド「ん〜、君達を助ける為、というかボク達があのどん底から上昇する足場に駆けつける為や」

   レオナルド「今までボクが生前ちょこ〜っとやらかしちゃった事だったり、今後のT-260君の事に関してとかさ」

   レオナルド「色々と交渉というか取引があってね…まぁ、状況的にやむを得なかったというか、うん…」





 …嫌に歯切れが悪い、ばつの悪そうな物言いに術士含めて幾人か眉を顰める
レオナルド博士の内容からしてどうにもその人物との取引のお陰で自分達侵入者一行は窮地を脱し今を生きているようだが
彼の反応を見るにあまり喜ばしい取引ではなさそうだが…


   ゲン「おいおい、レオナルドさんよ勿体つけねぇで教えてくれ
              一体その人物ってーのは誰でアイツは追っかけなくていいのかよ?」


 剣豪が至極尤もなことを言う
工学者は内心「君がいるからこそ非常に厄介な内容なんだけどなぁ」とゲンを見つめ、それに対して彼は疑問符を浮かべる


   レオナルド「まぁね、…なんであの妖魔を追っかけなくて良いかっていうのは
             今頃、その助けてくれた人とその護衛でついて行ったpzkw�Xが始末するからだよ」

 その人物に関しては自分の口で言うより実際に会ってみた方が早い、どうせ用を終えたら向こうから来るよ、と告げた


―――
――
―

  ワンダードギー「ハァハァハァハァ……ヒューッ、 ヒューッ」ズリズリ…


 全身煤だらけで、遠目に見たら黒ずんだ何かが動いているようにしか見えない物がある
身に着けていた帽子も衣服も炭化してボロボロで、それは肉体にも同じ事が言えた

 醜くても泥水を啜ってでも良いから"まだ生きたい"、生きていたい…そんな生への執念だけが彼を生き永らえさせた
世界さえも手中に収めようとした強欲で高慢で、それでいて底辺から成り上がろうと夢見た野心家の執着だから成せた


  ワンダードギー(声が、もう出ない…身体の感覚も無い、いやだ しにたくない おれは いきてやるんだ)ヒューッ、ヒューッ

  ワンダードギー(おれを ばかにした すべてを みかえして ふみにじり かえしてや――)コヒューッ




   銃口『 』カチャッ、バンッ!

  ワンダードギー片手『 風穴 』ドシュッ!


 突如として這っていた下位妖魔の片手に穴が開いた、まだ聴覚の残る耳は銃声を聞き取り音の出どころを見て絶句する
トリニティ政府の高官が袖を通せる制服に身を包み、サングラスから覗かせる剃刀の様な鋭い眼差し…

 冷徹でまるで人を殺すことをなんとも思っていなさそうな壮年の男性がそこに居た


  ワンダードギー「…っ! っ!!」パクッ、パクッ!


 声にならない。



  モンド「やぁ、"トリニティに反乱を企てるテロリストの首魁"くん、こっぴどくやられたようだな」チャキッ

  モンド「スパイとして潜り込ませた私の私兵も君の所為で随分と死んだようだ……実に悲しいことだよ」



 ……この男は一体、何を言っているのだ?テロリストの首魁?『誰が』?理解が追い付かない、頭が理解したがらない
798 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/17(日) 23:52:51.42 ID:NECc5VEU0


 遠巻きに侵入者達の仲間だったpzkw�Xが佇んでいる、仮にアレに助けを求めて叫んだとしても
あの距離では聞き取れないかもしれない
 冷徹な執政官は銃口をゆっくりと下位妖魔の蟀谷に近づける





   モンド「私が独自の諜報部隊を使い調べ上げさせた反政府組織が滅んだ[ワカツ]の地下に基地を造っていた」

   モンド「そこで私は忍ばせた私兵と執政たる私自らがテロリストの制圧に向かう」

   モンド「するとどうだろうか? 偶然にも生身を失いメカの身体となったレオナルド博士と仲間達に出会った」


   モンド「私は彼らに任務の"協力"を願い出て、彼らにもそれ相応の報酬を出すと約束をした…」


   モンド「現地で偶然協力者に出会うと言うのは日頃の行いの良さだとは思わんかね?首魁くん」





   ワンダードギー「――――――」




 今更ながら思い出した、モンドという人物の人間性を…


 彼は基本的に他者を信用しない男であり、彼が雇う私兵の大半も自分の様な人間社会で職にあぶれ
日々の暮らしも儘ならない元浮浪者や命令違反を決してしないメカが大半であったことを

 メカは頭脳自体がプログラムされた機械で主人の命令に反することは無く

 浮浪者だったモンスターや妖魔、時には人間は………そう、本当に元はホームレスなど身元が判明しない者ばかりで
仮に死んでいようが路地裏で冷たくなっていても誰も気にしないし身寄りがないから素性の証明ができない輩だった事を





   蜥蜴の尻尾切り…。


 いざとなれば使い捨ての駒、不要と判断されたらその場で闇に葬られる雑兵でしかないということを…っ!!



   モンド「あぁ…そうだ君が使っていた巨大機動兵器だが…
          あれは以前トリニティが某企業から政府の技術を盗用した疑いがあると接収したものだね」


   モンド「どうやって政府の機密を知ったのかは私が個人で調べておこう
         ついでに君の運用データを参考にしてアレよりも強力な兵器を組み立てる計画にもしておくとしよう」



 いつ君を打ち破った様な強い戦士達と同じ者が攻めてくるか分からないからね、全てはトリニティの為だよ
…と、実に"白々しい事"を目の前の男は言ってのける





             ワンダードギー「――――!!―!――っ!!」    

                 モンドの銃『』パンッ!





    ワンダードギー「」ドサッ

    ワンダードギーの額『 風穴 』ドクドクドク…



…こうして、全リージョン界を圧倒的な力で支配しようと考えた野心家は、その凶弾によって倒れたのであった
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2021/10/17(日) 23:55:15.33 ID:NECc5VEU0
*************************************************


                  今回はここまで!

   リュート編ラスボス[グレートモンド]撃破!! 残り主人公ルートのラスボス6体


    次回は多分、一週間後かもしれない

*************************************************
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/10/19(火) 07:23:00.47 ID:AE98TUj60
乙!
とうとうラスボス一体撃破かあ感慨深い
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2021/10/20(水) 01:06:26.93 ID:vZxMK9ih0
おつおつ
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