【ヤマノススメ】ほのか「花畑と妖精さん」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/07/20(木) 01:52:13.41 ID:tOIXXBPCo
・ヤマノススメ
・百合要素あり
・エロエロかと思ったらガッカリなのです
・アウトドア知識とかありません、間違いだらけはご容赦を
2 : ◆JdP.BncS3o :2017/07/20(木) 02:02:57.00 ID:tOIXXBPCo
§ season 1 - 山の妖精さん / From ほのか
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1合目 LINEミーティング ”富士山リベンジ”
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ひなた「ま、リベンジはあおいだけなんだけどね」

あおい「うっさい!早くはじめなさいよ」

ひなた「富士山の前に1度手近な山でウォーミングアップしようぜ」

あおい「ひなたにしてはいいアイデアじゃない」

ひなた「一言余計だよ!そんでさ、どこかいいところない?」

あおい「丸投げ!」

ここな「ウノタワなんてどうでしょうか。私が行ってみたいだけですけど」

ひなた「あおいと一度行ったよね」

ここな「えっ、もう行ってたんですか」

あおい「うん、でもまた行きたい。ひなたは?」

ひなた「いいよー。ほのかちゃんは?」

ほのか「ここだったら私も行きたい」

ひなた「そんじゃウノタワ、大持山と経由して武川岳までいこう」

あおい「それ結構時間かかるんじゃないかなあ」

ひなた「お、あおい自信ない?」

あおい「違うわよ」

ここな「私達はいいですけどほのかさんは大丈夫でしょうか」

ひなた「そっか。ほのかちゃんのところから日帰りじゃきついかも」

ほのか「大丈夫、5時起きでそっちに向かうから」

ひなた「いやいや、今回は別にそんな無理しなくてもいいから、もっと短いルートに変更しよう」

あおい「ひなたまって!ねえほのかちゃん。もし良かったら前日にうちに泊まりに来ない?そしたら朝ゆっくりできると思う」

ひなた「おおっ、あおいにしては名案」

あおい「一言余計!」

ほのか「うん、それはすごく助かる。でもいいのかな」

ひなた「もちろん!」

あおい「なんでひなたが答えるの!」

ここな「まあまあ」
3 : ◆JdP.BncS3o :2017/07/20(木) 02:04:47.83 ID:tOIXXBPCo
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2合目 あおいちゃんの応援
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金曜日。学校から帰ってすぐにあおいちゃんの家に向かった。
飯能駅に着いたのは午後7時頃。


「いらっしゃーい!」

「お世話になります」


ご両親も揃って出迎えてくれて、とても緊張する。
それからあおいちゃんの後をついていって部屋に入れてもらった。
広い部屋の真ん中に置かれた小さなテーブルの上にティーカップと見覚えのあるクッキーが並べられていた。


「ほのかちゃんがうちに来るって言ったら、店長さんとひかりさんがこの紅茶とクッキーを持たせてくれて」

「ああ、見覚えがあると思った」

「ほのかちゃんモテモテだねえ」

「あ、ええと……」

「……ごめんね、一緒に行けなくなっちゃって」

「それは……残念だけど仕方ない……勉強がんばって」


あおいちゃん、せっかく企画してくれたのに実力テストで散々だったらしく、期末テスト対策のため補習を受けることになり、そのうえひなたちゃんまで付き添うと言い出して、再度話し合った結果私とここなちゃんの2人だけで行くことになった。


「明日は2人でいくんだよね」

「うん。でもここなちゃんはしっかりしてるから特に不安はないかな」

「じゃなくて、告白するの?」


私はまるで漫画のように、あやうく飲みかけの紅茶を吹き出しそうになった。


「んなっ……?」

「ってひなたが言ってたんだけど何を告白するっていうのかな」

「さ、さあ……」

「ひなたってさ、ときどきわけがわからないこというから困るよね」

「あはは……そうだね」

「ただ一つ言えるのは」

「うん」

「どんな告白だろうと、ここなちゃんはほのかちゃんの気持ちを受け止めてくれるはず!ほのかちゃんファイト!」


あおいちゃん……意味、わかってるんだよね?


「じゃなくて、違う……ここなちゃんとはそういうのじゃないから」

「えっ、そうなの?……あっもうこんな時間。早く寝て明日に備えなきゃ」

「うん、おやすみなさい」


ここなちゃんのことは確かに好きだけど、それはあくまでも友達として。
告白するとか……ありえない。
4 : ◆JdP.BncS3o :2017/07/20(木) 02:10:01.49 ID:tOIXXBPCo
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3合目 白岩登山口
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「ほのかさん、あおいさん、おはようございます」


翌朝、制服を来たあおいちゃんに飯能駅まで送ってもらい、ここなちゃん達と合流した。


「おはよー、ここなちゃん、私のぶんも楽しんできてね」

「はい!あとでたっぷり写真送りますね」

「あれ、ひなたも一緒?」

「あおいを迎えにきたのよ。補習さぼって一緒に山に行きたーい!って言いだすんじゃないかと心配で心配で」

「そんなことしないわよ!」


やれやれ、とばかり頃合いを見てここなちゃんが二人に割って入った。
きっとここなちゃんには誰もかなわない。


「それでは行ってきます」

「あ、うん。気をつけて」

……

長く続いてゆく林道を、こうして二人で並んで歩くと、なんだか胸がくすぐったくなるような、妙な気持ちになる。
あおいちゃんが変なこというから……だと思う。


「ほのかさん」

「うん」

「もしかして疲れちゃってます?少し休んでからでも」

「ううん、大丈夫。ちょっと考え事してた」
5 : ◆JdP.BncS3o :2017/07/20(木) 02:14:43.72 ID:tOIXXBPCo
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4合目 道に迷ったら
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「ほのかさん……大変です」

「どうしたの?」

「道を間違えているかもしれません」

「あ……」


言われてみれば、すでに通過しているはずの分岐点が見当たらず、道の先はゆるやかな下りに向かっている。


「どこかで下山道に入っちゃったのかな」

「わかりません。一度引き返しましょう」

「そうだね」


まだ来た道すらわからなくなっているほど深刻な状況にはないと思っていた私達は、特段深く考えず引き返すことにした。


「ごめんなさい、私先導していたのに全然分かれ道に気づかなくて」

「いや……私も見てたつもりだったけど気づかなかった」


そんな苦境に追い打ちをかけるように小雨が降りだす。
間もなく滝のような土砂降りとなり、土道はところどころ泥沼になりかけている。
目の前は水のカーテンに阻まれて5メートル先も見えなくなった。

こんなときは闇雲に動かず視界が戻るまで待つのがセオリー。
とはいえ。今日は本格的な雨対策をしていない。
こんな日に、いつ止むかもわからない雨を耐え忍ぶのはあまりに辛すぎる。
雨に打たれ泥にまみれながらも慎重に歩を進めていると不幸中の幸い、雨除けになりそうな小屋を見つけて飛び込んだ。


「助かりました〜」

「休憩所みたいだけど、なんだかまともに使われてる形跡がない」

「やっぱり、登山道からは外れてるみたいですね」


崩れかけた床の上には木の板と塗料が片隅に並べられていた。
ここで看板でも作っていたのだろうか。
何か所も雨漏りしているし、小さな窓はガラスが入っていないため当然そこからも雨が入り込んでくる。
それでも屋根があるかないかの違いは大きい。


「もう雨は弱まってるけど、少し休んでいこうか」

「そうですね〜」


泥まみれのレインコートを脱ぐと上着まで泥まみれになっていることに気付く。
上着をはたいて泥を落としていると、ここなちゃんはインナーシャツまで脱ぎ始めた。
気持ちはわかるけど、私にはちょっと無理……


「ほのかさんは着替えないんですか?」

「いや、私は大丈夫……」


意識しすぎとはわかってるけど、今日に限ってはここなちゃんの下着姿さえもまともに見ることができずにうつむいてしまった。
6 : ◆JdP.BncS3o :2017/07/20(木) 02:17:08.98 ID:tOIXXBPCo
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5合目 フレームを作る
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どうにも目のやり場に困った私は「外はいい景色だなあ」なんてわざとらしくつぶやき指でフレームを作り、小屋の外に向けて撮影ポイントを探す。
幸いにして、本当に窓からの眺望はなかなかのものだった。高原が広がり白い花がずらりと咲き並ぶ畑が見える。
このままここなちゃんが着替え終わるまで鑑賞しよう。


「もう少し待っててくださいね」

「うん」

「下着は替えがあるけどズボンはさすがにないんですよねー。しっかりきれいにしないと」


……?
何か不穏な発言を聞いたような気がしてここなちゃんのほうを見ると、下着まで脱ぎ捨てて着替えようとしていた。


「わあっ?何してるのここなちゃん。はやく服着て」

「大丈夫ですよー」


ここなちゃんは私の心配をよそに、素っ裸のままのんきにズボンの泥なんか落としている。
一体いつ誰が来るかもわからないというのに、大胆不敵すぎてこちらがハラハラする。
だけど、しばらく見とれているうちに好奇心が勝ってきて、フレームを作り直してここなちゃんに合わせる。
ここなちゃんはすぐに反応して持っていたズボンで胸を隠した。


「きゃっ!」

「あ……ごめん」

「いきなりびっくりしたじゃないですか〜。撮るなら言ってくださいね」

「いや、撮るつもりはない……」


いくらなんでも裸のここなちゃんを本当に撮るつもりなんてなかったのだけど……


「え……撮っていいの?」

「ほのかさんならいいですよー」


聞いておいてなんだけど、やっぱり早く服を着てほしい。
そう思いながらも、目の前の誘惑には勝てずにカメラを手にするのだった。
7 : ◆JdP.BncS3o :2017/07/20(木) 02:20:08.54 ID:tOIXXBPCo
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6合目 永久保存版ここなちゃん
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ファインダーが映し出す裸体の少女。
なぜか肉眼で見るよりも生々しく、心を強く揺さぶってくる。
初めて見たのは二人で伊香保温泉に入浴したときだった。
いくら可愛いとはいっても女の子同士だし、そのときは特に思うところもなかったけど、まるで身体を隠そうともしないことには少し驚いたのを覚えている。今からすれば些細なことだけど。


「なんだか、緊張しますね〜」

「私も……」


カメラを持つ手の震えが止まらない。多少ブレるかもしれないが構わずシャッターを切る。
乾いた電子音が小屋に響き渡り、私の心臓は強く跳ねた。

ここまで”撮影する”という動作自体に意識が行き過ぎてつい忘れていたけど、これってここなちゃんの身体をいつでも好きなときに見ることができるということでもあるわけで……途端に身震いがした。


「撮れました?」

「あの……できれば外をバックに撮りたいけど……いい?」

「いいですよー」


ここなちゃんはゆっくりと横に移動して窓を背にした。
私の心臓はピッチを上げ続けている。
早く服を着てくれないと困るとは思ってはいるのだけど、頭の中では何枚撮れるか、という心配でいっぱいになっている。


「ちょっとドキドキしちゃいますねー……どうですか?」

「待って、もう少し……」


問題は構図の難しさだ。
こうしてみると花畑が占める面積はかなり小さく、ここなちゃんを主にするとまったく背景が目立たない。
ファインダーを見ながら調整を繰り返す。

「あの花畑のそばで撮れたらいいんだけど」

「くぇっ!?」


思わずつぶやいた一言に、ここなちゃんが珍しく変な声をあげた。


「あんなところで裸になるのはさすがにちょっと……ははぁ、さてはほのかさんって撮影にかこつけて露出プレイしようと目論んでたんですね〜」

「いや、そうじゃなくて構図として良いと思っただけ……って、そういうことする人いるんだ……」

「恋人を裸にして外に連れ出したりするそうですね。そうですかほのかさんも……」

「連れ出すって……いや、ちょっと待って。ここなちゃんにそんなことさせる気はないから」

「でもほのかさんとは恋人じゃないからできないです。残念ですけど」

「恋人にはなりたい」
8 : ◆JdP.BncS3o :2017/07/20(木) 19:03:13.58 ID:tOIXXBPCo
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7合目 秘密
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ふとついて出た自分の言葉に、一瞬遅れて全身から冷や汗が流れ落ちる。
さすがにここなちゃんも服を胸の前で握りしめてゆっくりと後ずさりしている。


「わぁ…そこまでして連れ出したいなんて……どうしよう、ほのかさんがこんな人だったとは思いませんでした」


だから連れ出したいわけじゃないのだけど、どうやって説明したらいいのか……


「違う。誤解。撮影とか関係なく、ここなちゃんのことが好き……」

「ええ……本当に?」


私はただ頷いた。


「わかりました……それじゃ、キスしてください。本当に私のこと好きならできますよね」

「うん……」


手を握ると、彼女は少し体を竦めて私を見つめていた。

キス……はじめてだけど、ちゃんとできるかな……
そんな不安もあったものの、気づけば自然と唇を重ねていた。
本当に、これでわかってくれるのか、不安だらけだけど、もうここまできたらなるようにしかならないと気づいた。

そっと唇を離す。
現実感のない感触だったような、案外なんでもないような、そんななんともいえない感情と感覚が入り混じる。

キスのあと彼女は軽く頭を下げた。


「ごめんなさい。実はほのかさんの気持ちにはもう気づいてました。ついからかっちゃいました」

「ひどい……って……今キスしたのも……?」

「うふふ。私だって、好きでもない人にあんなこといいませんよ」

「……え?」

「私もほのかさんのこと好きですよ。本当におつきあいしてくれますか?」

「うん……ここなちゃん、あらためてよろしく」

「それじゃおわびに、ほのかさんの大好きな露出プレイしましょうか」

「別に大好きなわけじゃ……まあいいか」


本来ならこんな危険な行為は止めるべきなのだろうけど、存外に私の理性はもろいものだった。
ここなちゃんの手をつないで、急かされるようにしながら外に出る。

私はまるでいたずらをする子供のように、心の片隅に不安を抱えおびえていた。
一方で、こんなに開けた場所で何ひとつ身体を隠せるものもないここなちゃんといえば、不安なんて微塵にも感じさせない笑顔で両手を天にかかげ伸びをしている。
なんであんなに堂々としていられるんだろう。


「それじゃ……撮るけど、いい?」

「はい!」


ここなちゃんには花畑の前に立ってもらい、少し離れて片膝を立てて座りカメラを構えた。
それはまるで咲き乱れる白い花にはしゃぐ妖精のよう。
私は段々と周囲を気にすることもなくなり夢中になってシャッターを切り続けた。


「さっそく二人だけの秘密できちゃいました」

「うん……」

ここなちゃんとの秘密。それだけでなんだかワクワクしてきた。
9 : ◆JdP.BncS3o :2017/07/20(木) 19:09:24.91 ID:tOIXXBPCo
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8合目 ウノタワ
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「こっちが登山道だったんですね」

「どこで間違えたんだろう」


視界さえ効けばこちらのもの。小屋を出てすぐに本来の登山道に復帰して、最初の目的地・ウノタワにたどり着いた。
すっかり体力と時間を消耗した私たちは、ここでしばらく休憩して横倉林道から下山することにした。


「ここがウノタワ……」

「やっぱり写真で見るのとは大違いですね〜」


この一帯は元々は沼だったところで、ここで山の神様の化身の鵜を猟師が誤って撃ち殺した為に沼ごと消滅してしまった……という伝説がある。
現在、ここだけぽっかりと木が生えておらず代わりに苔に覆われている。


「ここなちゃん、あっちのほうで撮らせてもらっていいかな」

「いいですよー」


何枚か撮り続けたあとここなちゃんが駆け寄ってきた。


「やっぱりほのかさんの趣味からして裸になったほうがいいですかねー」

「だから、そうじゃないって……」


と言ったものの、内心はだんだん否定できなくなっている。
もちろん本当に撮る気はないけど、脳裏ではすでに緑の絨毯の上で微睡む裸のここなちゃんの絵ができあがっている。
そんな邪心も彼女にはお見通しなのだろうか。


「あれ?違うんですか」

「そういう趣味はないし、だいたいここは普通に登山客が来るから無理」

「ほのかさん的に見られるのはだめなんですね。よかった。本当にここで脱げって言われたらどうしようかとおもっちゃいました」


だったらなんで焚き付けてくるんだろう?


「もちろんそんなこと言わない。ここなちゃんの裸は誰にも見せたくない」


それを聞いた彼女は私の背中をぽこぽこと叩く。


「うふふ。だからほのかさん大好きです」
10 : ◆JdP.BncS3o :2017/07/20(木) 19:19:25.76 ID:tOIXXBPCo
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9合目 横倉林道・名郷・飯能駅前
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「しかし……ここなちゃんがこんなに脱ぎたがりとは知らなかった」


下山しながらのんびり雑談。かなり人通りが少ないから少々きわどい話でも平然とできてしまう。
私も思わず饒舌になる。少なくとも、普段よりは。


「前々から、山頂とか見晴らしのいいところで裸になったら気持ちよさそうって思ってたんです」

「うん……まあ、それはわかるかも」

「だけど、私恥ずかしがりやさんじゃないですかー。一人ではこんなこととてもできませんから、ほのかさんみたいに理解してくれる人と一緒に楽しめてよかったです」


……え?
何か気になる発言がいくつかあったような。


「そうだ、こんどはほのかさんも一緒に脱ぎましょう。気持ちいいですよ」

「無理……見られたら恥ずかしすぎる……」

「それがいいのに……」

「えっ」

「何でもないです〜」


麓近くまで下りてきたところで、そっとここなちゃんを抱き寄せた。
もうすぐ二人きりの時間が終わると思うと急に心細くなって、泣き出してしまった。
年上なのにみっともない、そう自分に言い聞かせたけど、あふれだす感情を止めることができない。


「ほのかさん?」

「ごめん、少しだけこうしていたい」

「意外と甘えん坊さんですね〜」

「うん……自分でもびっくりした」

「こんなに想ってもらえて幸せです。また、いつだって会いに来てください。そうだ、私も遊びに行っていいですか?」

「もちろん……ありがとう。もう大丈夫」


それから私達は何度もキスをした。
最後はバス停に並ぶ人の列の後ろで人目を盗んで。


「見られそうって思うと、なんだかドキドキしますね」


その言葉で、やっと少しここなちゃんを知ることができたような気がした。
11 : ◆JdP.BncS3o :2017/07/20(木) 20:39:40.20 ID:tOIXXBPCo
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10合目 回想
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飯能駅に着いたのは午後3時過ぎ。
あおいちゃん達に連絡するとちょうど駅の近くにいるということだったので、商店街のカフェで待ち合わせて合流した。


「やっほー、7時間ぶり!」

「なによそれ……ところでほのかちゃん、その様子だと……」

「おーさっそく恋人つなぎなんかしちゃって」

「う……」


恥ずかしいから人前で手をつなぐのは遠慮したかったけど、


「おめでとう、かな?」

「うん……ありがとう」

「ほのかさんったら、とっても情熱的だったんですよ」

「ほうほう」

「裸になった私の身体を見つめながら好きって言ってくれて」

「待って。それ秘密にするって……」

「あっ、ごめんなさい。今の話はなしで」


ここなちゃんがあわてて取り消そうとするけどもう遅い。
ガタッと音がして振り向くと、あおいちゃんとひなたちゃんが立ち上がっていた。


「待ってなになにどういうこと?今すごいこと聞いちゃったんだけど」

「さあさあお姉さん達にどーんと話してみなさい」


あおいちゃん達、目を輝かせてすごい勢いで食いついてきた。
なんだか人格も口調も変わってない?


「それじゃ仕方ないですねえ。全部話しちゃいます」


それからここなちゃんの回想が始まり……


「ほのかさん、着替えてる私を撮影しようとしたんです。私恥ずかしくて思わず体を隠しちゃいました」

「いや待って……撮るつもりはなかった」


こんな調子でウソではないけど聞き手を誤解させるような説明が続き、私はそのたびに釈明するはめになった。
12 : ◆JdP.BncS3o :2017/07/20(木) 20:41:07.10 ID:tOIXXBPCo
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11合目 限定公開
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「ここなちゃんって大胆……」


あおいちゃん、私も同感。


「あおいも少しは見習いなよ」

「遠慮します……っていうか正直信じられないけど」

「ほのかさん、あの写真あおいさんたちに見せてあげてください」

「え……あれ見せていいの?」

「あおいさん達なら、よく一緒にお風呂に入ってますから裸見られても平気です」


それはちょっと、いやかなり違うような気がするのだけど、ここなちゃんがそういうなら、とカメラをテーブルに置いて画像を見せた。
……本音を言えば見せつけたい気持ちがあったのかもしれない。


「わぁー」

「ここなちゃん可愛い!妖精みたい!」

「うふふ、あんまり見られたら恥ずかしいですよ〜」


仮にも野外でのヌード撮影(しかも、なんというか……見えてるものもある)だというのに意外と普通に好評だった。


「いやーそれにしてもこの写真を撮ろうとしたほのかちゃんって」

「ある意味、ほのかちゃんのほうが大胆かも……」

「うん。本当に連れ出しちゃうなんてすごい」

「いや……あの……」


確かに撮りたいと言ったのも実際に連れ出したのも私だけど……なんだろうこの納得できない気持ち。


「私もあおいを裸にして連れまわしたら面白そうって思っちゃったけど、とてもそんなこと言えないなー」

「ちょっ、なんてこと想像してるの?やめてよ!」

「どんな反応するか楽しみじゃん?」

「あ、それわかります」

「もうここなちゃんまで」

「それなら、ひなたさんも、あおいさんと恋人になっちゃえばいいんじゃないですか?」

「おお、その手があったか。ね〜あおい〜」

「まずひなたと恋人にならないし、なってもそんなことしない……」

「ちぇー」


ひなたちゃん、いつもこんな感じなのか……
13 : ◆JdP.BncS3o :2017/07/20(木) 20:49:39.75 ID:tOIXXBPCo
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12合目 再会を祈って
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― こんな楽しい時間がいつまでも続いてほしい。
いくらそう願っても時計の針は休むことはなくただ過ぎてゆく。

東飯能駅2番ホーム。
ここなちゃん達に別れをつげる時がきた。

「……わざわざ見送りに来てくれてありがとう」

「こちらこそ来てくれてありがとう」

「ほのかちゃん、またね」

「次は富士山で」

「みんな揃って登頂しましょう」

「うん……ここなちゃん、帰ったら電話していいかな……」

「はい!いつでも待ってます。毎日でもお話したいです」

「見せつけてくれちゃって」

「あおいは私に電話してね」

「なんでよ……」


私はそっとあおいちゃんに耳打ちをする。


「あおいちゃんも、がんばって……」

「え?どういう意味?」


私は何も言わなかった。
あおいちゃんの赤みがかった頬を見て、もうそれ以上の言葉はいらないと思ったから。


〜 つづく 〜
14 : ◆JdP.BncS3o :2017/07/20(木) 20:57:51.32 ID:tOIXXBPCo
ひとまずここまで

山の中で裸になって無邪気にはしゃぐここなちゃんを妄想したかった。
全然無邪気なんかじゃなかった。
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