【艦これ】悪鬼が出るか大蛇が出るか【あんこ】

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102 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/02/16(金) 22:42:29.00 ID:WhUJKF2CO

動け、動けよ、動いてよ……!
私の愛が歪んでいるなんてことは生まれ落ちたときから知っているんだ。
自分の感情が所々抜け落ちた欠陥品だなんて知っているんだ。

それでも、それでもこんなときに動けない女に何の価値があるっていうんだろう。
愛した男の生と意志を信じることができずして。
感情を、痛みさえも共有した唯一無二を探し当てることができずして。

「何をッ……! 」

「……あぁん? 」

「あのクズ、割に頑丈だし何とかなってるでしょう」

「出撃させた女の子全員生還からのバッドエンドなんて誰得ってやつだしね〜 」

心底から、同意できるのに、動かない。
奥底から、衝動は湧き上がるのに、一歩が無い。

人間は弱いんだ。
生きている筈がない。
そんなことは考えたくないのに。
こんな自分は嫌いなのに。

ある意味で最大の敵であるあきつ丸。
憎らしいけれど大切な約束をしていた愛宕。
それから、単に甘味で餌付けされただけのようなRoma。

そんなやつらですら。
それなのに、この世で最も尊い契りを交わした自分は、何だろう。

徒らに時を浪費して瓦礫を前に突っ立って。
化け物らしい怪力で鉄筋やコンクリートを持ち上げる同輩を目に写しただけで。

それだけショックだったんだ、なんて。
馬鹿馬鹿しいくらいに乙女な無様に少しだけ安心して。
自分の愛の深さに安心するなんてあっちゃいけないことなのに、私は、私は。
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/02/16(金) 22:49:13.35 ID:oBSXewYLo
お!ハッピーエンドかな?
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/02/16(金) 22:51:37.53 ID:WhUJKF2CO

「…………汚いわね」

「まったくであります」

「まぁまぁ。彼らなりに戦ったこと、忘れちゃいけないのよ? 」



また、違った。
彼では、ない。

イムヤたち“ 艦娘 ”が所属する基地は特殊だ。
人間の戦闘員は共に出撃した陸軍航空隊や、
非合法な任務も厭わない特警くらいしかいない。

それでも、様々な人間たちがいたのだ。
参謀や整備班、軍人ではない食料搬入の為の軍属だって。

その彼ら彼女らの死体が、バラバラなんて生易しい表現ではない肉の塊が一つ、また一つと“ 発掘 ”されていく。

イムヤは隣を往く僚友を喪ったことが、無い。
或いは直前まで笑い合っていた僚友が弾け飛ぶ姿に慣れていれば、
何事も無く動けたのかもしれないけれど。



「ぅ…………ぁ……」



現実は、非常だ。
世界は私に、優しくない。
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/02/16(金) 23:03:28.10 ID:WhUJKF2CO

「…………やぁ」

「あ? 生きてたんだ、あなた」

「そりゃまぁ……一応最高指揮官でしてね? 防空も高い部屋だし核並の火力じゃなきゃ何とかなる」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………何だよ」

急に馬鹿らしくなって興味の失せた顔。Romaだ。
巫山戯た問答がしたいのではない蔑み。愛宕だ。
安心しつつもやり切れない渋面。あきつ丸だ。
それからどんな顔をしているか探したいのだがーーーー

「……よくもまぁ、片腕が潰れて腰から下も怪しいのに口だけは動いたものね」

「本当それ。俺ってこういうとき素になるタイプだったんだな」

「…………はぁ」

「馬ッ鹿馬鹿しいわねぇ。…………担架、いらないでしょ? 」

「待て待て待て。俺はこれでも生きてる上官だぞ。担げとは言わないけどせめてだな」

喧騒の中で四人だけを、認知できる。
あきつ丸に、愛宕に、Romaに、それから自分自身。
最も見たいはずの笑顔が、いやもしかすると空元気のアホ面に憤った乙女の怒気かもしれないが。

兎に角それだけが、無い。

「まぁ、いい。…………イムヤは? 」

「あー…………愛宕」

「んー、振らないでほしいんだけど、Roma? 」

「まったく。…………気絶したわ」

「は? 」




ーーーーーーーーーーーー




心底から心配されて、自分もしていたのだが、しかし。
イムヤは、俺が最もこの世で一つに近付いた存在は。
潰れた俺の腕を見て、泡を吹く間も無く、意識を落としたらしかった。

徽章や衣服が認識できるのなら、せめて生死くらい確認して、できれば泣いてほしいな、なんて。

言おうと思った筈の自分も、出血の所為でどうやら三日は起きなかったとか、なんだとか。
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/02/16(金) 23:10:48.09 ID:WhUJKF2CO

168「……………………」





提督「起きねぇな」

愛宕「無駄に頑丈な指揮官様は片腕になっても生きているっていうのに」

Roma「あと少しで不随のところ絶妙な位置で避けて歩けるなんて悪夢ね」

提督「や、お前別に俺のことそこまで嫌ってなかっただろうが」

Roma「この前、嫌いになったわ。馬鹿面見て」

あきつ丸「あぁん? 」

Roma「はぁ。…………あなたも難儀ね。ついた勝負の後にも操立てるなんて」

愛宕「単に未練があるだけでしょう? 」

あきつ丸「…………」

提督「は、はは……はは、は? 」



【もう選択肢なんて、無い】



0.……あな、た?
1.……さっ、いらっしゃい
2.……あなたは、誰?
3.幸福な、ユメ
4.……さっ、いらっしゃい
5.……あな、た?
6.……あなたは、誰?
7.……あな、た?
8.……さっ、いらっしゃい
9.……あなたは、誰?
ゾロ目.数年後そこには
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/02/16(金) 23:17:35.19 ID:SKVbr/ALo
ここでそれか
108 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/02/16(金) 23:18:18.79 ID:SKVbr/ALo
sage忘れ失礼
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/02/16(金) 23:27:48.51 ID:WhUJKF2CO

【……あなたは、誰? 】





一週間の昏睡状態。それから数度の覚醒を経てさらに一週間泥のように沈んだ意識。
それでも不思議と生命活動だけはしっかりとしていた美しい女狐の第一声がそれだった。

目を見開いて固まる馬鹿な、そう本当に何にも気付けなかった幸福な男。
諦めと恐怖を感じ引き下がる負けた女。
知っていた狂気を確認して鼻を鳴らした戦女神。

それからはもうとんとん拍子、なんてものではなかった。
どれだけ感覚を伝え、技術を伝えても儘ならないどころか全く発動しない力。
“ 艦娘 ”としての力を完全に喪ったただの少女が、そこにはいた。

人間としての生を受けたわけではない私たち。
バックボーンが無いというバックボーンが指針である筈の私たち。
そんな存在が唯一無二の歪みさえも失ったのだ。

殊の外平静な本人を除いて。
周囲は大わらわも大わらわだった。

前を向いて記憶を喪った少女を引き取ると宣言した男。
その夢は叶うことなんて無いだろう。

後ろを振り返って陸軍の間諜に逆戻りした女。
その背中の悲しさ、少しだけ分かるわ。

変わらず戦場だけを向いた異国の戦姫。
或いは私もあなたのようでありたかった。

あぁ、私? 私はほら、褒賞として与えられたのに与えられた張本人が退役してしまったものだから、ね。
結局元いたところに戻って、今でもお堅い姉や奔放な妹たちと愚にも付かない戦闘を。

今ではあのときの二人が何処に消えて、何処で何をしているのかなんて皆目不明。
知りたいとも思わないけれど、きっと知れないことこそ心の安寧。

私だってあの上官を認めていた部分もあったのだけれど。それも今ではただの記憶。
精々が危機的状況を自己で脱したときの付属的感慨。



「まぁ、それでも悪くはなかったわ」

「? 」

「んーん、何でもない。…………高雄、ドSのイケメンなんて知らない? 」

「あなたね、何度その感性で男性を壊してきたのよ。実はあなたがサドなんじゃないの? 」

「まっさかー。私は昔から、今でも、いつだって荒々しい海の男に抱かれたい女よぉ」




ただまぁ、もしまたあの少女か例の元上官に会えるのなら一言だけ言ってやりたいことがある。

「…………鈍感演じた私たちに、感謝なさいね」

「は? 」



ーーーーーーーーーーーー
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/02/16(金) 23:37:45.80 ID:WhUJKF2CO

「これが、私たちの、家? こんなにいいところにいて、いいの? 」

「あぁ、イムヤが何も思い出さなくたって、それでも今日が最初になるならって思ったんだ」

軍は抜けた。故郷も、親兄弟さえも、捨てた。
今、俺にはイムヤしか、いない。
彼女さえいれば、他は何も要らない。

幸いにしてイムヤたちの功績で俺には多額の金がある。
元より遊び暮らしていたわけでもない。
貯金を多少切り崩して購入した物件は、海の見える小高い丘の一軒家だ。

「…………ごめんなさい。あなたのこと、大切だとは思うんだけど」

「ッ……いいさ、それでも。寧ろよかったのか? 自分より幾つも歳上の男に着いてきて」

「うん。あなたのことは分からないけど、女の勘は絶対的に正しいの」

「ふぅん? 」

確信めいた言葉を乗せたイムヤの舌先に、ふと見入る。
あの舌で、あの舌が舐めた犬歯で、抉られたい。肉を裂かれ内臓に突き立てられたって構うものか。

それでもそんなことはおくびにも出さず鍵を取り出し、回す。
思えば色々なことがあったものだ。

曲がりなりにもエリート軍人と呼ばれ、持て囃されつつも対立と嫉妬に巻き込まれた日々。
それを終わらせた狂気染みた少女との共有。
共有が過ぎて精神的に傾いた、俺。

その俺が立ち直れたのは、正直イムヤがイムヤではなくなってくれたからかもしれない。
今でもあの狂気には強く惹かれつつも、どこかで安心している自分がいるのも、確かだ。

魅力的な毒、それを体現していたのがイムヤだったのだと思う。
それが今では、ただの不安げな少女でしかない。

変えられたのならば、今度は俺がゆっくりとでも守ってやる。
喪ったものを喪ったもので埋めて、また喪うことの無いように。

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/02/16(金) 23:49:50.03 ID:oBSXewYLo
悲しいなあ…
112 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/02/16(金) 23:50:39.79 ID:WhUJKF2CO

「イムヤ。お前の部屋はそっ……イムヤ? 」

開けたドアの先にはまだ新築の匂い漂う真新しい玄関とリビング。
一足の靴も置かれていない玄関で靴を脱ごうとして、脱げない。

何故なら少しだけ屈んだ俺の腰に細い腕が巻き付いているから。

「…………あのね」

「? 」

「私はあなたが誰だか分からないし、もしかするといつまでも分からないかもしれない」

「……」

構わない。それすら俺のお前への愛だと信じているから。

「人間になった、って言われても私は元々人間だったとしか思えない」

「……」

それでいい。あれ以上はお前を喪う恐怖に耐えられない。

「そんな私に私が人間じゃないって思わせてくれるのはこの染めたとしか思えない色の、地毛だけ」

「……」

いいんだ。不安定なお前を守ることだってできると、俺に存在理由を与えてくれ。

「あなたの言葉も、優しい瞳も、おっかなびっくりな掌も、
それに時々見せる怯えたような顔も、“ 今の私 ”の現実でしかないの」

「……」

「それでも、私を離さないでくれるのよね? 」

「あぁ、別に責任とか憐憫でお前を引き取ったわけじゃない」

「ふふ……分かった。知ってたけど」

笑みから漏れた吐息が背中に当たった。
その息は不思議とイムヤのイムヤらしさ、とも言える何かを呼び覚ます。
言葉や手付きならばいざ知らず、そんなものでは個人など分かる筈もないのに。

「? まぁ、それはおいおい飯でも食べなが

「それに」

「ん、んん? 」

吐息で湿る背中。声は震えていないけれど、涙、だろうか。
できうることなら拭ってあげたいのだけれど、思いの外彼女が回した腕の拘束は、強い。
ただの少女になって記憶すら喪失した筈なのに。これが意志の力というやつだろうか。

せめて、顔くらいは、いや瞳くらいは見たいのだが。

「いつ、“ 元の私 ”になっても、絶対離さないからね? 」

「あ、あぁ、そんなの当たり前の

113 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/02/16(金) 23:54:10.18 ID:WhUJKF2CO





ーーーーーーーーーーーー







二度目なんて絶対に赦さないって、言ったでしょう……?



ふふ…………あなた?




【“ 二度目の生 ”】
114 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/02/16(金) 23:56:29.17 ID:WhUJKF2CO

おわり



今回でいい加減分かりました。
生き死に、よくない。次は誰も死なない不幸にならない設定でいきます。
色々と不完全燃焼なので早めに何かやります。

急転で申し訳なかったです。
ありがとうございました
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/02/17(土) 01:10:18.02 ID:wil5cikqO
1割でトンデモ判定混ぜてたらそらね
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/02/17(土) 07:19:34.86 ID:nSZ+MLOpo
乙
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/02/17(土) 16:44:28.56 ID:+/LCL54Eo
おつ
書く方が辛いなら無理強いは出来ないけど、貴方のあんこの雰囲気はとても好きでした
作風が変わっても付いていきますので、よろしくお願いします
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