ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」

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114 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/04(月) 01:02:12.88 ID:kGuf3bgl0
>>113 まずは読んで下さってありがとうございます…書くのが遅いもので数日ごとに2〜3スレ分しか進みませんが、引き続きがんばります
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/04(月) 03:27:52.16 ID:Ec5rudJMo

アンジェ攻めプリンセス受けが好きだな
116 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/05(火) 01:25:42.62 ID:JFQuf9Xe0
>>115 そう言ったリクエストがあると助かります…アン×プリはまだ書いていないのでそのうちに……
117 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/06(水) 01:44:07.87 ID:14QzkPMt0
…しばらくして…

ドロシー「……なぁアンジェ…この資料って本当に使えるのか?」

アンジェ「どうして?」

ドロシー「だってさぁ、『吸血鬼の撃退にはニンニクや十字架が効果的である……が、根本的な解決法としては吸血鬼の就寝中、胸元へ聖水で清めた杉の杭を打ち込むことが最もよい』って……あたしは吸血鬼の退治法が知りたいわけじゃないんだよ」

アンジェ「分からないわよ…もしかしたら本物の吸血鬼も混じっているかも知れないし、そのうちに任務でトランシルバニアに派遣されるかもしれないでしょう」

ドロシー「そんな馬鹿な?」

アンジェ「…まぁ冗談を抜きにしても、なんの知識が役に立つかなんて分からないわよ」

ドロシー「それはそうだけどさ……なんかなぁ…」

アンジェ「いいから、読み終わったらそれを貸してちょうだい」

ドロシー「はいよ」

ベアトリス「……うーん…どうも今回の「吸血鬼」はフリート街のまわりで活動していることが多いみたいですね……」

プリンセス「フリート街……新聞社や印刷所が多い所ね?」

アンジェ「そうね…アルビオンにおいて、あらゆる情報が最も早く手に入る所……しかも深夜は人通りはほぼない上に、印刷機や何かの音で物音も聞こえにくい…」

ドロシー「印刷所の裏通りともなれば窓一つあるわけじゃないし、物音を聞く住民もいない……誰かを拉致するには理想的だな」

アンジェ「ええ」

ドロシー「それじゃあルートはそのあたりを中心にして……後はどうやって本拠地まで跡をたどるかだよなぁ…」

プリンセス「裏通りでは車も馬車も通れないし、かといって表通りで待っていては目立ちすぎるものね」

ちせ「ならばと徒歩(かち)で行って、あちらが車を用立てていたとしたら目も当てられん……思案のしどころじゃな」

アンジェ「…そこは私に考えがある……地図を見てちょうだい」

ドロシー「どれどれ…ふぅ、それにしてもよくもこうせせこましく建物を建てたもんだよな……」

アンジェ「ええ…それだからこそ使える手段がある」

ちせ「…ほう?」

アンジェ「みんなはもう「Cボール」を知っているわよね……これを使って屋根伝いに追えば、入り組んだ路地を駆け回らずに済むわ」

ドロシー「なぁるほど…さっすがアンジェ、冴えてるな♪」

アンジェ「からかってるの?」

ドロシー「とんでもない……だけど目立たないか?」

アンジェ「そう言うと思って、事前にそのあたりの建築図を調べてみたわ……この辺りは通りが細い上に建物の高さがあるから、もし屋根の上にいる人物を見ようと思ったら、首の骨が大変なことになるでしょうね…」

ドロシー「ああ、資料にも入ってた……で、反対にこっちは屋根の上からのぞきこめばいい…と♪」

アンジェ「ええ…今回の主目的は相手のネスト(巣)までついて行って、何を調べているのかを探り出し…ついでにこの「吸血鬼」どもを片づけること……月の明るい日は誘拐が行われていないから、作戦は天気の悪い時か月のない日の深夜……今日は月の入りを考えて、今夜の十時ごろにフリート街に着くように行動しましょう」

ドロシー「了解だ♪」

ちせ「…うむ」

プリンセス「ええ、分かったわ」

ベアトリス「はい」


………
118 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/08(金) 11:02:25.64 ID:niR4GZkr0
…十数日後の夜・フリート街…

ドロシー「うー…なんだか今夜は霧も濃いし、ことさらに「吸血鬼」が出そうだな……」

アンジェ「結構なことね」

ちせ「うむ…見回りを初めて十数日、ここまで何も起こっておらぬし……そろそろ次の犠牲者が出てもおかしくない頃合いじゃろうな」

アンジェ「ええ。それに「コントロール」としても、消去されたエージェントが何の情報をつかんでいたのか…あるいは逆に、何を「歌った」(白状した)のかが分かれば、あちらに対して情報漏れを防ぐ手立てが取れるようになる……つまり結果を出すのは早い方がいい、ということね」

ドロシー「だな…それにしても「血抜き」の尋問をやるような奴らを相手に「トマトスープ」作戦とはね……悪趣味もいいところだ」

アンジェ「仕方ないでしょう。そういう訳で、向こうがこちらに対してどこまで「食い込み」を図ったか分からない以上、作戦名の流出もあり得る……だとしたら、簡単に連想できるような吸血鬼関係の単語を使った作戦名は使う訳にはいかないわ」

ドロシー「あぁ、そのおかげで私が「ニンニク」、二人が「玉ねぎ」と「ニンジン」なんだもんな」

アンジェ「そういうことよ…さぁ、そろそろ時間ね」そう言いながら、ちせにお守りのようなアンクレット(足飾り)を付けた

ドロシー「了解…「ニンジン」の得物はこっちで預かるよ」

ちせ「うむ、よろしく頼む…しかし寸鉄も帯びていないとどうも落ち着かぬな……」

ドロシー「だろうな……気持ちはよくわかるよ」

アンジェ「ええ…それじゃあ始めましょう」ドロシーの手を握ると「Cボール」を起動し、屋根の上にふわりと着地した…

アンジェ「……思っていたより霧が濃いわね」

ドロシー「あぁ…「もや」っていうよりは「霧」だな……」

アンジェ「こうなると尾ける距離を縮めないといけないわね」

ドロシー「だな……」



ちせ「うぅむ…それにしても倫敦(ロンドン)の下町がこうも汚らしいとはの……これが「世界の中心」とは思えぬほどよ…」

ちせ「……なにやら煙ったいような臭いも立ちこめておるし、古くなった食材のすえた臭いもするようじゃな……見てくれはともかく、倫敦の下町は鼻に悪い都のようじゃ…」小さい歩幅でトコトコと歩いていくちせ…


…柳のバスケット(手提げカゴ)を持って、両脇を建物に挟まれた狭い裏通りをてくてく歩いていくちせ……黄色っぽい霧が地面を覆い、灯りの消えた暗い裏窓が、骸骨の眼窩(がんか)のように通りを冷たく見おろしている……貴族の邸宅では舞踏会や晩餐会でまだまだにぎやかな「宵の口」ではあるが、貧しい裏通りでは疲れ切った労働者が泥のように眠っているか、はたまた貴族のお屋敷で下働きにいそしんでいるために、家々からは明るい光が一つも見えない…


ちせ「…別におっかないとも思わぬが、こうして見ると陰気じゃなぁ……」

ちせ「……おっと、ネズ公の「ホトケ」を踏みそうになってしまった…せめて成仏してくれるといいが、それもこの辺りでは難しそうじゃの……」

ちせ「…む?」ふと視線を上げると、闇の奥にぼんやりとしたシルエットが浮かび上がってきた…

黒マント「…」

ちせ「…何か用かの?」まずまずの英語で声をかけるちせ…

黒マント「…」

ちせ「もし…そこの御仁に問うておるのじゃが……?」

黒マント「…」カツッ、カツッ…と石畳に靴音を響かせて近寄ってくる黒マント

ちせ「…な、なんじゃ……」うろたえたふりをして反対側に向かって駆け出すちせ…

黒マントB「…」

黒マントC「…」

ちせ「あ、あぁぁ……」あくまでも「か弱い小さな小間使い」のふりをして黒マントに取り囲まれるちせ…

黒マント「…」騒がれないよう喉を締め上げて気絶させると、目覚めても声を出せないよう猿ぐつわをかまし、手足を縛りあげた…そのまま肩に担いで運んでいく黒マント…



ドロシー「…よし、食いついた」

アンジェ「ええ……追うわよ」

………
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/09(土) 00:28:09.30 ID:8OKBrK5qO
ちせちゃん尋問シーンかな?
120 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/11(月) 00:38:09.73 ID:8WNUnJLU0


ドロシー「ところであのアンクレットだけどさ…ちゃんと効果あるんだな?」

アンジェ「なければ使わないわ」

…ちせに渡した「お守りのアンクレット」に含まれているケイバーライトが、アンジェの「Cボール」にだけ反応して淡い緑色に光る……屋根の上をそっと尾行しながら、不可視の「道しるべ」を追っていく二人…

ドロシー「まぁな……それにしてもあの連中、どっから現れてどこに行くのやら…」

アンジェ「知らないわ…それを知るのが任務でしょう」

ドロシー「いや、分かってるけどさ…ちせには背中を預けたこともあるし……どうも、こう…冷静なままじゃいられないんだよな」

アンジェ「分かっているならなおの事冷静になりなさい…それこそ「大事な仲間の命」がかかっているのよ」

ドロシー「ああ……ん、奴ら角を右に曲がったな…」

アンジェ「…飛ぶわよ、つかまって」

ドロシー「あいよ」アンジェの腰に手をかける…

アンジェ「連中は…向こうの建物に入ったわね……」

ドロシー「何の建物だろうな…印刷所か?」

アンジェ「…そうみたいね」

ドロシー「それじゃあ急いで知らせて来いよ。私はここで監視にあたる」

アンジェ「頼むわね……数分で戻るわ」

………

…数分後…

アンジェ「戻ったわ」

ドロシー「ああ…「早かったな」って言いたいが……中の様子を見る限り、早すぎて困ることはないらしい」

アンジェ「…みたいね」


…薄暗い建物の中はしっくいの塗ってあるレンガ張りで、二人の位置からようやく中が見える小窓からは殺風景な部屋が見えた……室内には手術台のような拘束具つきの台が置かれていて、周囲には時間が経って赤茶けている血の染みが飛び散り、天井からは鎖付きの手錠もぶら下がっている……吊るされた鎖から届く範囲の壁は犠牲者が痛みのあまり爪を立てたらしく、しっくいが剥げ落ちている…


ドロシー「で、情報は届いたか?」

アンジェ「ええ…後は私たちが片づければいいわ」

ドロシー「分かった…それじゃあちせを救いに行こうぜ?」

アンジェ「待って…見張りは?」

ドロシー「なし。変にうろちょろしてると怪しまれるからだろうな」

アンジェ「…侵入ルートになりそうなのは?」

ドロシー「やっぱり裏口だろうな…鍵はかかっているだろうけど」

アンジェ「了解……それじゃあ行くわよ」Cボールを使ってひらりと飛び降りる二人…

………



121 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/11(月) 01:17:49.35 ID:8WNUnJLU0
…室内…

ちせ「むぅぅ……ん」

黒マント「お目覚めかね、東洋人のお嬢さん?」

ちせ「…」


…ちせは上に来ていた小間使い風の衣服をはだけられ、かぼちゃ袖のついた上下つなぎの下着姿で「手術台」に繋がれている…室内にはかな臭い血の臭いを上回る勢いで、インクや紙の強い臭いが漂ってくる……ちせを見おろして紳士風の話し方をする相手は、シルクハットに口元まで覆った襟の高いマントを着ていて、表情まではよく分からない…


黒マント「ふむ…私も最初は君の事を、ただの下働きや小間使いの東洋人だと思ったが……いろいろ調べさせてもらうとなかなか興味深いことに気が付いた…」

ちせ「…」

黒マント「…まず柳のバスケットはそこまで使い込まれていないし、着ているものも古着らしく擦れてはいるがそこまで汚れていない……それに君も貧相な身体ではあるが、髪もよくとかされていて身体も汚れていない…こんな下町の下女にしてはいい待遇だ…違うかね?」

ちせ「…」(余計なお世話じゃ…にしても、ここは一体どこじゃろう……アンジェたちは無事にここを見つけることができたじゃろうか…?)

黒マント「それに普通なら悲鳴を上げるか失神するか…それなりの反応を見せてくれるはずが、そっと周囲を観察して機をうかがっている……実に肝が据わっているよ」

黒マントB「…あの」

黒マント「まぁ待ちたまえ……それに君の身体のバランスは左右で微妙にずれている…普段は左の腰に何を差しているのか気になるところだ……おっきな大砲かね、それとも東洋人の大好きな刀かな?」

ちせ「…」

黒マント「まぁいい……それもおいおい分かることだ…君」

黒マントB「はっ」

黒マント「準備にとりかかれ」

黒マントB「はい」

黒マント「さて、と…ではそろそろ吸血鬼のタネ明かしと参ろうかな?」シルクハットを脱いでマントの留め紐を解くと、隅にあるコート掛けにきちんとかけた…

ちせ「…」

初老の紳士「私の事をご存じかな?…ここの印刷所を始め、このフリート街にいくつか会社を持っている者だよ」

ちせ「…」ゴーストグレイの髪に笑っているような口もと…が、冷たいブルーグレイの目は冷徹で感情らしいものはかけらもない…感情に左右されない分アクシデントにも機敏に対応できる手ごわいタイプ……と、ちせは見て取った

紳士「さてさて…どうやら君は以前「話を聞いた」連中のお仲間らしいからある程度はご存じだろうが……一応説明しておこう」

ちせ「…」

黒マントB「用意できました」

紳士「結構……今からちょっとばかり首筋がチクリとするよ…注射は嫌いかね?」

ちせ「…」

紳士「まぁ好きなものはいないだろうね……だが安心したまえ、針と言うやつは差すときと抜く時が一番痛いのだが…君はそのうちの片方だけしか感じずに済む」…返り血が点々と残っている革の前掛けに絹の長手袋をすると、針の先端を丁寧にアルコールで拭った…

ちせ「…っ」

………



122 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/11(月) 02:21:26.42 ID:8WNUnJLU0
…数分前・裏口…

ドロシー「私が見張ってる…急げよ?」

アンジェ「開いたわ」キーピックを差しこみ静かにしていたが、数秒もしないうちに裏口を開けた…

ドロシー「よし…それじゃあ行こうぜ」音がしないようにと、ガーターベルトに仕込んだ鞘からスティレット(刺突用の針)を抜いた…

アンジェ「…ええ」アンジェもスティレットを抜き、背の高いドロシーが援護できるよう前に立って歩き出した…



見張り「……まったく、この作戦が始まってからは昼夜逆転でやりきれねぇな」前後反対にした椅子の背に、あごをのせて腰かけている…

見張りB「そう言うな、何しろこちとらはロンドンを騒がす「ウワサの吸血鬼様」なんだからな……」

見張り「そうは言っても女まで「血抜き」にかけるなんて……あの人が近くにいないから言うけど、あんまりいい気分じゃないぜ?」

見張りB「しーっ!……お前は諜報部のくせに思った事をペラペラと…お前のお袋はおしゃべりな庭のアヒルか?それとも口から先にでも生まれたのか?」

見張り「悪かったよ…あ、ちょっと手洗いに行ってくる」

見張りB「…いいけど見つかるなよ……とばっちりで怒られるのは嫌だからな?」

見張り「ああ…まったく、何もあんなに言うことはないだろ……」

ドロシー「だよな…ま、これで静かにできるさ」後ろから羽交い絞めにすると口もとにハンカチを当て、心臓を一突きした…

アンジェ「片付いた?」

ドロシー「…静かになってるよ」

アンジェ「結構…それなら急ぎましょう。さっきの口調だともう尋問が始まっているかもしれない」もう一人を片づけて、相手のネクタイでスティレットを拭うアンジェ…

ドロシー「ああ……尋問は相手を捕まえた直後が一番「落としやすい」からな…」愛用の「ウェブリー&スコット」リボルバーを抜くと足音を立てずに速足で歩き出した……

…廊下…

見張りC「…ぐぅっ……!」

アンジェ「どうやら…ここのようね」

ドロシー「ああ、血の臭いがしやがる……いいか?」

アンジェ「いいわ」…いつもの「ウェブリー・フォスベリー」ピストルを抜いて、かちりと撃鉄を起こすアンジェ……

ドロシー「…それじゃあやってくれ」

アンジェ「ええ」ドアを蹴り開け、室内に転がり込むアンジェ

助手「うわっ!」

紳士「…くっ」一瞬のうちにホルスターに差していたリボルバーを抜き、撃鉄を起こす…

ドロシー「…っ!」バンッ!…狭い室内で爆発のように大きく響く銃声……肩から血が噴きだし、リボルバーがぽろりと床に落ちる

助手「…この!」

アンジェ「…遅い」バン、バンッ!…助手に二発撃ちこんで始末すると、「紳士」の手から落ちたピストルを部屋の隅に蹴り飛ばして、離れた場所から銃を突きつけた…

ドロシー「おい、大丈夫か?」

ちせ「うむ……どうやら「吸血」はされずに済んだ…ずいぶん早かったの?」

ドロシー「当たり前さ、仲間がこんな連中の手にかかってるのに黙ってられますかっての……それと、任務とはいえ悪かったな」手足に付けられたリングを外しつつ謝るドロシー…

ちせ「構わぬ、これも定めじゃからな……」そう言いつつも、西洋ならではの現代的な医学と科学を駆使した尋問にゾッとしているちせ…珍しく顔が青ざめ、かすかに震えている……

ドロシー「無理するなよ…あ、あとこれを」ちせの太刀を差しだすドロシー

アンジェ「こっちも持って行って…私には邪魔だから」ぴたりと銃の狙いを定めたまま、片手で脇差を渡すアンジェ…

ちせ「うむ…これで人心地ついた気分じゃ」

ドロシー「よし…それじゃあこのロクデナシはここに閉じ込めて、残りを片づけようぜ?」

アンジェ「そうね…ありがたいことにこの建物はレンガの壁が厚くて防音になっているようだし……」まずはスティレットで「紳士」の手足の腱を切ると、舌を噛み切って自殺することができないようネクタイで猿ぐつわをし、その上で手術台に大の字に寝かせ、手錠と足輪をかけるアンジェ…

ちせ「うむ、では参ろう…!」ドロシーが服の下に包んできてくれていた着物を身につけると、刀の鯉口を切った…

ドロシー「あぁ、本命は捕えたからな…あとは一人も逃がさないようにすればいいだけだ」

123 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/11(月) 13:43:05.55 ID:czN9O8Iio
124 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2018/06/16(土) 01:25:07.35 ID:xaeY1CgR0
>>123 コメントありがとうございます…遅くなりましたがまた投下していきます
125 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/16(土) 02:17:12.09 ID:xaeY1CgR0
…建物内…

王国エージェント(ベテラン)「くそっ…ジャック、マシュー、トミー、向こうへ!」ワイシャツにぴったりしたグレーのチョッキを着て、肩に「ウェブリー・スコット」リボルバーのホルスターを吊るしている老練なエージェント…銃声が響いた瞬間に仮眠用のベッドから飛び起き、矢継ぎ早に指示を飛ばす…

王国エージェント(若手)「了解!」

中堅「ハリー、モーガン、ナイジェルは尋問室へ急行!」

王国エージェント(中堅)「はっ!」それぞれピストルを持った王国諜報部のエージェントが靴音を響かせて駆け出していく…

ベテラン「マイルスは通信機を立ち上げて本部に警報を入れ、ヘンリー…お前と私は通信が終わるまでここを守る!」

王国エージェント(中堅)「了解」

…廊下…

アンジェ「……来たわね」

ドロシー「ああ、足音からすると……三人だな」4インチ銃身のウェブリー・スコットを抜くと、木箱の陰に身をひそめた…

若手「……マシュー、敵は見えるか?」

若手B「いや…どこにもいないぞ」

若手C「しー…声を出すな……」

ドロシー「あれだけ足音を立てておいて…今さら黙ったって無駄だっての」バンバンッ、バンッ!

若手「がはっ…!」

若手B「ぐぁぁ…っ!」

アンジェ「ふっ…!」バンッ、バンッ!

若手C「ぐあっ!」

ドロシー「よし、片付いたな……まだこいつは息がある」

若手「うっ…うぅぅ……た、頼む…助けてくれ……」

アンジェ「仲間は何人いる?……教えてくれるなら傷を見てあげるわ」

若手「うぐ…っ……この班を入れて十二…人……」

ドロシー「ふぅん…思っていたより多いな」

アンジェ「そうでもないわ…実際に誘拐を行う三人、監視・予備グループが一つでもう三人…控えが三人に、尋問係とその助手…あとは雑用係兼連絡役が一人って所ね」

ドロシー「してみるとこいつの言うことはあながち嘘でもない…か?」

アンジェ「ええ、そうね」

若手「ごほっ……頼む、しゃべったか…ら…」壁にもたれて咳き込んでいる…と、アンジェが額にウェブリー・フォスベリーを向けた…

アンジェ「…スパイは嘘をつく生き物よ」バンッ!

ドロシー「ああ…それに可愛いちせにあんな真似をしてくれたんだ…それ相応の目にあってもらわないとな」手早く残りのエージェントにも「とどめの一発」を撃ちこみ、中折れ式のシリンダーを開いて弾を込め直す…

アンジェ「…ドロシー、任務に私情を挟むと周りが見えなくなるわよ」

ドロシー「あぁ、悪い…どうもちせを見てると小さい頃を思い出すみたいで、穏やかじゃいられないんだよな……」

アンジェ「だったらなおの事よ」

ドロシー「あぁ、そうだな…ちせは「出来る」けど、今はまだ身体がすくんでるはずだ……急ごう」

………
126 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/16(土) 03:33:52.31 ID:xaeY1CgR0
…尋問室からの廊下…

中堅「…」指と手のハンドサインだけで指示を出し、慎重に廊下を進むエージェント…前の二人が廊下の端を歩いてお互いをカバーし、後ろの一人が数歩遅れて援護射撃できるように歩いている……角からはす向かいの場所を撃ちやすいよう、左側を歩くエージェントは右手に、右側を歩くエージェントは左手にピストルを持っている…

中堅B「…」(こっちだ)

中堅「…」(分かった…お前は援護しろ)

中堅C「…」(了解)

中堅B「……あっ!」さっと6インチ銃身の「モーゼル・ピストル」を構えて廊下に飛び出す中堅…

ちせ「…ふんっ!」たたたっ…と駆け込むと、抜き打ちで腰から肩にかけて切り上げる…鮮血がほとばしり、刃の表面を球になって流れる……

中堅B「ぐぅぅ…っ!」

ちせ「…!」そのまま身体を屈めて相手の下を潜り、続く一太刀で援護役を袈裟懸け(けさがけ)に切り倒す…

中堅C「がは…っ!」

中堅「ぐっ…!」バンッ!…素早く身体を回して一発撃ったが、それまでの訓練や任務では見たこともない小柄なちせに照準が狂い、ウェブリーの弾は頭上にそれた…

ちせ「ふん…っ!」真っ向から竹割りで叩き斬るちせ……刀を拭うとまた鞘に納め、走りやすいように収めた太刀を手に持った…

…通信室前…

ベテラン「どうなんだ、マイルス…通信機はまだ温まらないのか?」…通信室は印刷機が並んでいる大部屋の脇にある事務所風の小部屋で、ベテランと中堅のエージェントがドアの陰から様子をうかがっている……大部屋は暗く、印刷機やインクの缶、紙の束や木箱が雑然と並んでいて見通しが悪い…

中堅D「…はい、もう少し……」

ベテラン「…夜じゃ鳥目になるから伝書鳩も飛ばせんしな……ヘンリー、ジャックたちは?」

中堅E「いえ、戻って来ません」

ベテラン「なるほど…共和国の連中、最初からそのつもりであの東洋人娘を送り込んできたな……抜かるなよ」

中堅E「はい」

ちせ「…」

ベテラン「…ヘンリー、援護を頼む!」3インチ銃身のウェブリーを抜き、一発ずつ冷静に撃ちこむ…

ちせ「…っ!」壁沿いに積まれた印刷用インクが入った亜鉛張りの缶に身体を寄せ、再装填のタイミングを待つが、二人が交互に射撃を続けているので好機が得られない…

…反対側の隅…

アンジェ「……ちせが足止めされているわね」

ドロシー「…ああ、なら助けてやろうぜ」…にやりと不敵な笑みを浮かべるドロシー

アンジェ「そうね……出るわ!」バンッ、バンッ!

ベテラン「…っ、左だ!」

中堅E「ぐうっ!」

ベテラン「そこだ…っ!」

アンジェ「…ふ」アンジェが盾にした木箱へ、立て続けに銃弾が撃ちこまれる…と、かすかに微笑したアンジェ

ちせ「…はぁぁっ…っ!」一瞬の隙をついて飛び出し、渾身の一撃を見舞う…

ベテラン「……ごふ…っ!」

中堅D「あっ…!」

ドロシー「…」バン、バンッ!

アンジェ「…どうやら通信は発信されていないようね……」

ドロシー「ああ…ちせ、無事か?」

ちせ「うむ…この男は出来る相手じゃったな」

ドロシー「……私たちほどじゃないけどな」

アンジェ「そうかもしれないわね……あとはこちらの処理班と入れ替わりに撤収すればいいわ」

ドロシー「だな…ま、これで「フリート街の吸血鬼騒動」は一件落着……と」

ちせ「うむ…」

ドロシー「それと…あとで風呂に入れよ、ちせ?インクと返り血でエライことになってるぞ?」

ちせ「…そうじゃろうな」
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/16(土) 12:55:52.32 ID:w+mgGI4+O
貴重なプリプリスレ支援
出来れば劇場版までずっと続けて
128 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/17(日) 00:55:12.34 ID:+LbiLgi70
>>127 ありがとうございます。プリプリの百合ssは少ないので、せっかくなら書いてみようと……引き続き頑張ります(劇場版まで…?)

…「プリンセス・プリンシパル」は十九世紀末のスチームパンク×スパイ物と言うことで、霧深いロンドンのダークな雰囲気と、独自のガジェットや世界観が秀逸ですよね……時々「参考資料」として怪奇小説の「モルグ街の殺人事件」や「盗まれた手紙」、国際謀略物の小説などで雰囲気を作っています(笑)…


…あとは他にも「アトリエシリーズ」や「P3P」などで百合ssを書きたいところですが…遅筆なのでパンクするのが関の山とまだ自重しています…
129 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/17(日) 02:17:42.25 ID:+LbiLgi70
………

…しばらくして・寮の部室…

ドロシー「…お疲れ、アンジェ」

…ソファーに腰かけて膝にボロ布を広げ、ウェブリー・スコットのシリンダーを外して試験管洗いのようなブラシを突っこんでいるドロシー…いくら新式の無煙火薬を使うモデルとはいえ、シリンダーや銃身には燃焼かすや汚れが溜まっている……シリンダーを壁のランプに向けて透かして見ると、また改めてブラシを突っこみ、掃除を続ける…

アンジェ「あの程度何でもないわ…ドロシーこそ疲れたでしょう」

ドロシー「なぁに、私は平気さ……それよりちせだ」

アンジェ「ええ…さっきは抜き身を持ったまま警戒しているふりをして、私たちには気づかれないようにしていたけれど……あの最後の一人を片づけた後、手がこわばっていたものね…」

ドロシー「ああ…ちせほどの使い手が「初めての時」みたいに、手がこわばって指が開かないなんてな……あの尋問官の奴、可愛い「ちせたん」をどんな目に合わせやがったんだか……コントロールの尋問官にかかって、同じ目に合えばいいんだ」

アンジェ「ドロシー、いい歳して「ちせたん」はやめなさい…かなり痛いわよ?」

ドロシー「うっさい!……とにかくちせはかなり参ってるぞ…」

アンジェ「分かってるわ……それで彼女は?」

ドロシー「ベアトリスがボイラーを動かしてお湯を沸かしてるから、「先に入れ」って言っておいた…あんな目にあったし、そう言う時は身体が冷え切ったような気がするからな……終わったら私もシャワーを浴びようかと思ってるよ」

アンジェ「それがいいわね…それじゃあ様子を見て来るわ」

ドロシー「ああ、それがいい……それに私は火器のメンテをしなきゃならないしな…良ければやっておいてやるけど?」

アンジェ「…そう言うのは自分でやらないと落ち着かないのは、貴女が一番よく知っているでしょう?」

ドロシー「ああ…正直言うと、誰かに触られるのも嫌だ。どんな細工をされるか分かったものじゃないしな」

アンジェ「つまりそういう事よ……でも、気持ちは受け取っておくわ」

ドロシー「いいんだ…私もアンジェに「感謝してる」って気持ちだけ伝えたかったから」

アンジェ「ええ、伝わったわ」

ドロシー「そっか…じゃあ私なんかに構ってないで、ちせの所に行ってやれよ♪」

アンジェ「ええ…お休み」

ドロシー「ああ」

…浴室…

ちせ「……く、何と無様なことよ…「明鏡止水」の精神で臨むべき時に恐怖で手がこわばってしまうなど、剣士として未熟もいい所じゃ…」熱いシャワーの下に立っていながらも背筋には冷たい感覚が残り、まだ手足を拘束され欧州の「洗練された」尋問を受けそうになったおぞましさと恐怖を感じている……じっと手を見ると、まだかすかに震えていて止まらない……

ちせ「…こんな時、父上ならどうしていたのじゃろう……あるいは「白鳩」の皆は…」

ベアトリス「……どうですかぁ、ちゃんとお湯になってますかー?」

ちせ「うむ、快適じゃ……ベアトリスとて暗殺者や尾行の恐怖に耐えて頑張っていると言うのに…私は何とだらしない……」

ベアトリス「それじゃあお休みなさい」

ちせ「うむ…」タオルで髪を拭き、ベアトリスから着替えを受け取ると、口数も少なく部屋に戻る…

…ちせの部屋…

ちせ「…むむ…平常心、平常心じゃ……」ベッドの上で座禅を組み、ぶつぶつと念仏を唱えてみたり剣術の形をおさらいしてみるちせ…が、何度やっても冷たい手術台に乗っていた時間を脳内で再生してしまう……

ちせ「…くっ、一体どうしたと言うのじゃ……座禅を組んでさえ、いつもの澄み切ったような感覚が戻って来ぬとは……誰じゃ?」

アンジェ「私よ、ちせ」

ちせ「アンジェどのか……済まぬが今はちと…」

アンジェ「邪魔して欲しくない?」

ちせ「…うむ」

アンジェ「申し訳ないけれど、私もそのことで来たの」

ちせ「ふぅ……察しの良いアンジェとドロシーじゃから、薄々気付いてはおるじゃろうと思っておった…入ってくれ」

アンジェ「失礼するわね」

ちせ「…アンジェどの、今日はあのような有様で情けない限りじゃ……どうかだらしのない私を笑ってくれぬか…」

アンジェ「ちせ」

ちせ「…なんじゃ」

130 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/18(月) 13:34:21.41 ID:7FqG3QuMo
131 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/19(火) 01:45:53.99 ID:HLj5+czc0
アンジェ「私やドロシーがあなたを笑う訳がないでしょう」…ぎゅっ

ちせ「!?」

アンジェ「仮にもし「恐怖を感じない」なんて言うエージェントがいたら、それは異常者か、さもなければよほどの強がりかのどっちかよ……私だって銃の狙いが定まらないほど震えたこともある…」ベッドに腰掛けて、横に座っているちせを優しく抱きしめるアンジェ…

ちせ「そ、そのような同情は要らぬ……アンジェは私がおびえているのを知って、使い物にならなくなると困るから…そういう慰めを言うのじゃろう?」

アンジェ「いいえ…今の私はお互いに玄人(プロ)の工作員同士として話をしているわ」

ちせ「…まことか」

アンジェ「ええ…黒蜥蜴星人でも怖いものは怖いわ」

ちせ「そ、そうか…じゃが、私はあの時……まるで青二才の剣士のように手がこわばって…う、うぅ……」

アンジェ「ちせ、あなたは十分頑張った…私だって、あの状況におかれたら恐怖で身体がすくんだかも知れない」

ちせ「……ぐすっ…かたじけない…」

アンジェ「構わないわ…ここは安全な場所よ。聞き役が私でよければ、吐きだせる限りの気持ちを吐き出してごらんなさい」

ちせ「…うむ……実を言うと…あの台に拘束されて尋問を受けそうになって、もし二度とアンジェたちと出会えないようなことになったら……そう思ったらむしょうに寂しく思ったのじゃ…」

アンジェ「…ちせ」

ちせ「おかしいじゃろう?…仮にも間諜として訓練をうけた私が、情報を吐くことよりも、再び生きて朋友に会えるかどうかを不安に思うなど……」

アンジェ「…んっ///」

ちせ「んっ、んんっ…!?」

アンジェ「おかしくないわ……むしろスパイだからこそ「仲間」をもっとも大事にするものなのよ……あむっ、ちゅっ……んちゅ…っ…」薄く冷たいアンジェの唇が、まだわなわなと震えこわばっているちせの唇にそっと重なる…

ちせ「ん…ふ……んむぅ…///」

アンジェ「…ちせ」ちせをベッドの上に押し倒すと、両腕をまとめて頭の上に持って行って片手で押さえ、着ていた浴衣をはだけさせる……

ちせ「アンジェ…その、本気なの……か…?」

アンジェ「…私に言わせる気?」

ちせ「い、いや…じゃが……その…」

アンジェ「んむっ、ちゅっ…ちゅぽっ、ちゅるっ……んちゅぅ…っ///」

ちせ「んんっ、んふぅ……んむぅ…///」

アンジェ「はぁ、はぁ、はぁ……んちゅぅぅっ…んちゅるっ、ちゅぽっ…ちゅくっ……ぴちゃ…」

ちせ「…んむっ、ちゅぅ…ちゅっ……んはぁぁ…んちゅぅぅ……はふっ、んはぁ…///」

アンジェ「んっ…んくっ…んぅぅっ……ちゅっ、れろっ…ちゅぱ……んちゅっ///」

ちせ「ふぁぁぁ、口づけとは……こんなに凄いものなのか…甘くて……腰が抜けそうじゃ……んむぅ、ちゅぅぅぅ…♪」

アンジェ「んちゅっ、ちゅるっ……れろっ、ぴちゃ…じゅるっ…ちせ、何も言わなくていい……今はただ私とキスして……怖かったことなど全て忘れて…」

ちせ「う、うむ…んふぅ、んふっ……はむっ、ちゅるっ…あふっ……///」

アンジェ「ん…ふっ……触るわね、ちせ」

ちせ「触る…って、一体どこを……んくぅぅ///」

アンジェ「…引き締まっていて、ちょうど手のひらに収まる大きさね……それに甘い匂いがするわ…」

ちせ「さ、さっき石けんで洗ったからじゃろう……ん、んぅぅっ///」

アンジェ「ん、ちゅぱ…ちゅぅぅ……ここはきれいな桜色ね…」

ちせ「い、いちいち言わずともよい…あっ、あっ、あぁっ///」

アンジェ「……それじゃあ黙ってするわ…んっ///」ちせにまたがりふとももの間を重ね合わせ、相変わらずのポーカーフェイスを少しだけ紅潮させてゆっくりと前後させる…

ちせ「はぁっ、んっ、あっ……んあぁぁっ…///」

アンジェ「んっ、ふ……んくぅ…///」にちゅっ、くちゅ…と湿っぽい水音が、灯りを弱めているちせの部屋に響いた……
132 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/21(木) 01:55:22.96 ID:xnK2Y7oF0
…数十分後…

ちせ「…あっ、あっ…んあぁぁ…っ!」

アンジェ「はぁ、はぁ…んっ、んんっ……!」

ちせ「……はぁ…はひぃ……ふぅ…」

アンジェ「ふぅ…それじゃあ今度は「ここ」を責めさせてもらうわね……ん、じゅるっ……///」足下に這いずっていくと、ちせの脚の間に顔をうずめるアンジェ……

ちせ「一体どこを…?…んっ、あぁぁっ!?」

アンジェ「ぴちゃ…じゅる、じゅるぅっ……静かにしないと寮監に気づかれるわよ?」

ちせ「…んっ、くぅぅっ……アンジェ、おぬし一体何を考えておるのじゃ…!?」

アンジェ「さぁ」

ちせ「ん、んぅぅ…こ、こんなみだらな真似をしておきながら「さぁ」で済むわけが……んぁぁ、んっ、んっ……んっ、くぅぅっ///」

アンジェ「それじゃあ指の方がいいかしら…大丈夫、技術にかけてはドロシーのお墨付きよ」

ちせ「お、おぬしらは一体どんな関係なのじゃ……んふぅぅっ///」シーツの端っこを噛みしめ、必死になって声を抑えるちせ…小さい身体がひくついて海老反りになるたびに、上にまたがったアンジェを持ち上げる……

アンジェ「私がまたがっているのに…見事な筋力ね」

ちせ「か、感心してないではよう止め……んぁぁぁっ///」

アンジェ「さてと…それじゃあ今度は向きを変えて……タロットカードなら逆位置ね」ちせと互い違いになるように寝そべったアンジェ…

ちせ「…な、なんのつもりじゃ///」

アンジェ「聞かなくたって想像はつくでしょう?」

ちせ「う、うむ…確かに今までのアレコレを考えればおおよそ想像はつく……が、実際にするとなると…その……///」

アンジェ「じゃあいいわ。ちせがしてくれるまで私はどかないから」

ちせ「正気か!?」

アンジェ「ええ。別に私だってあなたに「ご奉仕」してあげるために来たわけじゃないわ…スパイの世界で自分に利益のない取引はあり得ない」

ちせ「む、むぅぅ…いきなり押しかけて来て、勝手に始めておきながらこの言いぐさよ……なんという手前勝手な言い分じゃ…んんぅ、んっ…///」

アンジェ「文句があるなら私を満足させなさい…そうしたらさっさと帰ってあげるから」

ちせ「……致し方ない、では……参る!」

アンジェ「それでこそよ……んっ、ん…ぴちゃ、ちゅるっ…」

ちせ「んぅ…ここを舌でまさぐってやればよいのか……間諜の技術はいろいろ教わってはきたが、房中術は入っていなかったからの……ん…っ///」くちゅくちゅっ…ちゅるっ……

アンジェ「それにしては上手よ…んぅぅ、んふ……っ」

ちせ「そうか。ならば…一気にたたみかけてくれよう!」

アンジェ「んっ、んんっ……あっ、あっ、あっ…!」

ちせ「…おぉぉ、この…真珠色をしたアンジェの秘所が……ぬらぬらと濡れて…んむっ、じゅるぅ……んちゅぅぅ///」

アンジェ「んぁぁぁ…あふっ、あんっ……んっ、くぅぅぅっ♪」びくっ、びくんっ…とろ……っ♪

ちせ「……なんじゃ、存外あっけないの…アンジェは「その道」でも達人だと聞いておったが、拍子抜けじゃな…?」

アンジェ「はぁ、ふぅ…あんっ……ちせ…私もう……」

ちせ「……ふぅ、ならばもう出て行ってくれぬか…今夜は芯が疲れる晩であったし、明日も早いのじゃから……」

アンジェ「…「腰が抜けちゃって立てないの」……とでも言うと思ったのかしら」

ちせ「…何?」

アンジェ「ふぅ…今から私が、本気で身体の芯までとろけさせてあげるわ……それこそ声も出ないほどにね」

ちせ「な、何じゃ……この恐ろしい殺気は…」

アンジェ「……ちせは楽にしているといいわ…終わったら勝手に出て行くから」

ちせ「…い、嫌じゃ…近寄るでない!」

アンジェ「逆らっても無駄よ」くちゅり…じゅぷっ……♪

ちせ「あっあっあっ……んっ、あぁぁっ…♪」

………
133 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/21(木) 02:32:20.54 ID:xnK2Y7oF0
………



ちせ「はひぃ…腰が……何と甘美な…んくぅ…///」くちゅ…くちゅっ♪

アンジェ「ふふ…育成所時代の初心だったころのドロシーもそんな具合だったわ」

ちせ「何…あのドロシーがか?」

アンジェ「ええ…甘ったれた顔をして、腰をがくがくさせながらね……耳たぶを甘噛みしながらささやいてあげたら、蜜を垂らして悦んでいたわ…」

…浴室…

ドロシー「…へっくし!」

ベアトリス「大丈夫ですか?…ボイラーの火力を調節しましょうか?」

ドロシー「いや、平気だ……うー、今夜は冷たい屋根の上で腹ばいになってたりしたからなぁ……それとも、誰か噂でもしてやがるのかぁ…?」

ベアトリス「ふふっ、いつも授業をさぼったりしてるからじゃないですか?」

ドロシー「なんだとぉ、このちびっこが♪」

ベアトリス「うわっ…もう、お湯を跳ね散らかさないで下さいよ!……それに静かにしておかないと、寮監に見つかっちゃいますよ?」

ドロシー「はは…寮監に捕まるほどドジじゃないっての♪」

ベアトリス「それはまぁ、そうですけど……私も寝たいですし、そろそろ上がってくれませんか?」

ドロシー「お、悪ぃな…それじゃ上がるから、ボイラーの火を落としてくれ」

ベアトリス「はい。それじゃあお休みなさい」

ドロシー「ああ、お休み……それにしても、アンジェは上手い事ちせを慰められてるかな…って、アンジェの事だから心配はいらないか。軽くブランデーでも引っかけて、とっとと寝よう…っと♪」

………

…ちせの部屋…

ちせ「ふぁぁぁ…あふっ、んぁぁ///」

アンジェ「これがいいみたいね……きゅうっと締め付けて来るわ…」

ちせ「い、いちいち言わずともよい…恥ずかしいじゃろうが…ぁ///」

アンジェ「…こんなので恥ずかしがっているようでは、ドロシーみたいな役回りはおぼつかないわね…もっとも、逆に初心な所がそそるかも知れないけれど……」くちゅっ…♪

ちせ「あっ、ふわぁぁ…///」

アンジェ「すっかりとろとろね…もうそろそろおしまいにしようかしら」

ちせ「……と…」

アンジェ「何か言いたいなら、はっきり言ってちょうだい」

ちせ「…もっと……して欲しいのじゃ…///」

アンジェ「そう…ならもうちょっといてあげるわ……私も人恋しい気分だから…」

ちせ「んむぅ…ちゅぅぅ……♪」

アンジェ「んちゅ…ちゅっ♪」


………

134 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/21(木) 05:21:41.46 ID:Wmqgk04co
135 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/25(月) 01:56:05.45 ID:sYEs481N0
…翌日…

ちせ「うー…昨夜は気の迷いとはいえ……なんということを…///」

ベアトリス「…さっきからちせさんは何をぶつぶつ言っているんでしょうね?」

ドロシー「ま、色々あったんだろ…聞かなかったふりをしてやれよ?」

ベアトリス「私は別に……でも、気になりませんか?」

ドロシー「お、ベアトリスも周りの物事に注意を払うようになってるな……スパイらしい感性が身についてきたじゃないか♪」

ベアトリス「えー、こんなことがですかぁ?」

ドロシー「バカ言え。その「こんな事」って言うような事が、この世界じゃ意外と役立つんだよ」

ベアトリス「そんなものですか?」

ドロシー「ああ。私だって「犬のしつけ方」から「ゆで卵の見分け方」まで何でも頭に入ってるぜ?」

ベアトリス「それがどんな役に立つのかはさておき…ちせさん、ずいぶん顔を紅潮させていますね」

ドロシー「ありゃきっと何か恥ずかしい事を思い出して真っ赤になってるクチだな……それにしてもあのちせがねぇ…やっぱりアンジェはけた違いだな」

アンジェ「ドロシー、私がどうかしたの?……おはよう、みんな」

ドロシー「何でもないさ。おはようさん」

プリンセス「おはよう、アンジェ♪」

ベアトリス「おはようございます、アンジェさん」

ちせ「お、お早う……うぅぅ…///」

アンジェ「みんな、昨夜はご苦労さま……コントロールからもメッセージが届いているわ」アルビオン王国の主要紙「アルビオン・タイムズ」の、小さな広告欄を指差した…

ドロシー「どれどれ…えーと「売家あります…面積一エーカー、造作、庭付き、状態良好。雨漏りなし」か」

アンジェ「ええ…『売家』が対象人物、『造作・庭付き』は対象が役に立つかどうか…『状態良好』は読んで字のごとしね……それに『雨漏りなし』とあるから、こちらへ王国情報部の手は及んでいない……結構な成果ね」

ドロシー「やったな…ま、今回はあちらさんもアラが目立ってたしな」

アンジェ「王国諜報部と、王国防諜部……ノルマンディ公に近い立場の防諜部に対して、王国諜報部が手柄を立てようと焦ったのね」

ドロシー「その辺の縄張り争いみたいなのはどこの国も変わらないさ……それより見てみろよ♪」新聞をテーブルの上に広げてうさんくさいゴシップ記事を突っついた…

ベアトリス「…えー「またも吸血鬼騒動か、フリート街で中堅新聞社のオーナー行方不明」ですって」

アンジェ「こっちのエージェントに「血抜き」をやっていたのはそいつよ…王国情報部から資金とニュースのネタを流してもらっているのだから、上手くいくに決まっているわよね」

プリンセス「ええ…それにしても王国情報部は、いつの間にこんなことにまで手を出すようになったのかしら」

アンジェ「おそらくノルマンディ公の動きの活発さに刺激を受けて、王国情報部も先鋭化しているのでしょうね」

ドロシー「結構なことで…ところでアンジェ、道具のメンテがらみで聞きたいことがあるんだけど…この後、少しいいか?」

アンジェ「ええ……どうしたの?」

ドロシー「…うまくいったか?」

アンジェ「ええ…私が色々としてあげたから、最後はすっかりとろとろの甘々で愉快な気分になっていたわ」

ドロシー「そっか……チームの状態を保つためとはいえ、悪かったな」

アンジェ「気にしないで、ドロシー…おかげで私も舌が軽くなって、色々ドロシーの弱点をしゃべらせてもらったから」

ドロシー「…おい、こら」

アンジェ「冗談よ」

ドロシー「はー…アンジェ、お前はポーカーフェイスが上手いから何でも本気に聞こえるんだよ……心臓に悪いから止めてくれ」

アンジェ「ええ、以後つつしむわ……ふー…♪」無表情のままドロシーに顔を近づけると、耳元に息を吹きかけた…

ドロシー「うひぃ!?…おい、ふざけんな…耳は苦手だって知ってるだろ///」

アンジェ「ええ……一応、再確認させてもらったわ」

ドロシー「…覚えてろよ。いつかぎゃふんと言わせてやるから」

アンジェ「いつでもどうぞ…勝てるならね」

ドロシー「やれやれだな…」肩をすくめて首を振った…
136 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/26(火) 15:37:13.83 ID:cvQxA0Mm0
…caseアンジェ×プリンセス「The princess and I」(姫様と私)…

…とある日・部室…

ドロシー「……うーん、新しい銃の申請はどうしようかなぁ……隠しやすいからってつい2インチとか3インチ銃身のばっかり申請しちゃうんだよなぁ…」ペンを唇の上に乗せ、天井を向いて思案している…

プリンセス「あの…ドロシーさん、少しお時間をよろしいかしら?」

ドロシー「何だい、プリンセス?」

プリンセス「ええ……ここでは少し話しづらいので、よろしければわたくしの部屋まで来ていただけませんか?」

ドロシー「ああ、いいよ…どうせ暇を持て余しているし、構いませんよ……っと♪」ひっくり返っていたソファーから跳ね起きると、プリンセスに続いて部屋を出た…

…プリンセスの部屋…

プリンセス「どうぞ、おかけになって?」

ドロシー「ああ、どうも……それで、話って言うのは?」

プリンセス「ええ…それがわたくしのプライベートにも関わることで、なかなか話せる相手もいなくて…それでドロシーさんに相談しようと……」

ドロシー「ほう…しかし信頼して打ち明けてくれる気持ちは嬉しいけどさ、そういう事だったらぞんざいな私なんかよりも、ベアトリスとかアンジェの方がいいんじゃないかな……特にアンジェはプリンセスの事がよく分かってるみたいだしさ」

プリンセス「実は、それが出来ないのでドロシーさんにお願いするんです……紅茶をどうぞ?」

ドロシー「…なんか悪いな、プリンセスに紅茶を淹れさせるなんて……」(アンジェやベアトリスにも打ち明けられない事でプライベートにかかわる…となると「チェンジリング作戦」絡みか王室関係の問題か……いずれにせよ重大なトラブルと見ていいな…)

プリンセス「いえ、わたくしもこうしたこまごましたことで手を動かすのは好きですから…♪」

ドロシー「それならいいんだけど……お、道理でいい香りがすると思った…フォートナム&メイソンのダージリン、ファースト・フラッシュ(一番茶)だ♪」

プリンセス「ええ、わたくしが自分に許しているちょっとしたぜいたくです…♪」

ドロシー「ははーん、それで分かった…実はお忍びで紅茶を買いに行きたいのに車がないと……よろしいですとも、私の運転でよければ乗せて行ってあげますよ♪」

プリンセス「いえ…そうではなくて…」ティーカップの水面に視線を落とし、浮かぬ声のプリンセス…

ドロシー「ふぅん…どうやら茶化していいような問題じゃないらしい……」いつもの皮肉っぽい不敵な笑みを消すと、椅子の上で姿勢を正した…

プリンセス「ええ…実は……」

ドロシー「…実は?」

プリンセス「……アンジェが本当に私の事を好きなのか、分からなくなってきてしまって」

ドロシー「…は?」

プリンセス「いえ、ですから…///」

ドロシー「いや、私の両耳はちゃんと聞こえているよ…だけどどうやら、脳みその方がまだ理解できてないらしくてね……」

プリンセス「そうですか…それで、ドロシーさんはどう思いますか」

ドロシー「アンジェがプリンセスの事を嫌いなんじゃないか…って?」

プリンセス「ええ」

ドロシー「そんなの天地がひっくら返ったってあり得ないね…もし間違ってたらこのティーカップをばりばり食ったっていい」

プリンセス「でも…」

ドロシー「そもそもアンジェはいつもあんなだし、ことさらに冷徹に感じるならそれもアンジェの愛情表現さ…「自分の愛する女性(ひと)を自分の気のゆるみで失くしたくない」ってね……それと業界が業界だけに「好き好き大好き♪」って触れ回ってて、それを敵方に使われたら困ると思ってるのさ…きっとアンジェの事だから、もし目の前でプリンセスが銃を突きつけられていたとしても、まばたき一つしないで助け出すための策略を練ると思うね」

プリンセス「そうでしょうか…でもあんまりたびたび「嫌い」って言われていると、何だか切ない気持ちになってきてしまって…」

ドロシー「あのポーカーフェイスだからなかなか分からないだろうけど…アンジェのやつ、プリンセスの前じゃかなり甘ったれてるぜ?」

プリンセス「…そうですか?」

ドロシー「ああ。アンジェが私たちに向ける表情と比べたら「桃とイチゴが一緒になって笑ってる」…ってな具合さ」(おいおい…まさかの惚気かよ……)

プリンセス「…お互いに背中を預け合ったドロシーさんの言うことですから本当でしょうけれど…でも、やっぱり寂しいです……」

ドロシー「あー…それならアンジェがベタベタの甘々になる「とっておき」の方法があるから、伝授しておくよ♪」

プリンセス「ええ、お願いします」

ドロシー「はいよ…ただし、私から聞いたってことは秘密にな…♪」

………
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 04:52:14.45 ID:ylsKCAboo
138 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/30(土) 01:55:06.33 ID:Uici38xW0
…翌日…

アンジェ「……前回の作戦で得られたプロダクト(産物)の中から、コントロールが私たちに必要なものをまとめて寄こしたから読み込んでおくこと…それぞれ別の資料だから、読み終わったらお互いに回すようにして」

ベアトリス「はい」

ちせ「うむ…しかし事前に学習したとはいえ、英語を読むのはおっくうじゃな……なになに…『えむばしい』……?」

ドロシー「そりゃ「エンバシー」(大使館)じゃないのか?」

ちせ「おぉ、それじゃ…どうも横文字は読み方と綴りが一致しなくていかん」

ドロシー「ま、私らが「漢字」とやらを覚えるよりは簡単だろうけどな…プリンセス、そっちの資料は読み終わったかい?」

プリンセス「ええ、どうぞ……それじゃあ「アンジェさん」、わたくしにその資料を貸していただける?」

アンジェ「…ええ」

プリンセス「ありがとう、「アンジェさん」」

アンジェ「…」

ドロシー「それで…と、今度の目的は「ケイバーライト鉱石」の取引情報か……」

アンジェ「それが分かれば王国が建造する空中戦艦の隻数が予測できる…軍艦の建造には少なくとも数年かかるから、一度遅れを取ったらその間の劣勢はなかなか取り戻せないわ」

ドロシー「それだけじゃない…ケイバーライトの価格がどう上下するかで、『ザ・シティ』(ロンドンにおける商取引の中心地)、ひいてはアルビオン中の株式市場が動くからな……」

アンジェ「ええ…今やケイバーライト鉱石は石炭や鉄鉱石、それどころか金よりも価値があるわ」

ドロシー「だな……なぁベアトリス、読み終わったか?」

ベアトリス「待ってくださいよぉ…それよりドロシーさんってば、そんなに風にパラパラめくっただけで……ちゃんと覚えられてるんですかぁ?」

ドロシー「当然だろ?…信用してないなら私が回した方の資料から、何でも適当に質問してみな」

ベアトリス「えーと……それじゃあ今月の「王国先物取引」における、鶏肉の取引相場は…?」

ドロシー「ヨークシャー産の赤色プリマスロック種なら、モモ肉一ポンドで3ペンス…胸肉で2ペンス」

ベアトリス「むぅ……それじゃあジャマイカ島産胡椒が…」

ドロシー「よせよ…黒胡椒なら一オンス当たり2ポンドと半シリングさ♪」

ベアトリス「むむむぅ…」

ドロシー「あのなぁ、一体何年こんな事やってると思ってるんだ…いい加減「見たものを記憶する癖」ぐらい身についてるっての♪」

アンジェ「…それじゃあ先週末に通りがかった劇場でやっていた舞台は?」

ドロシー「あー…そりゃシェークスピアの「マクベス」だな……だろ?」

アンジェ「…その「マクベス」のポスター、地の色は何色だった?」

ドロシー「なに?…えーと、ちょいまち……確か緑だったな」

アンジェ「結構…歳の割に記憶は良いみたいね」

ドロシー「だーかーら、まだ二十歳のぴちぴちだって言ってるだろ!?」

アンジェ「怒りやすいのは老人になっている証拠よ」

ドロシー「……こんにゃろー…」

ベアトリス「ふふ、相変わらず仲がいいですね♪」

ちせ「そうじゃな…お互いに知り尽くしているからこそできる冗談じゃな」

プリンセス「ふふふ…っ♪」

ドロシー「まるで嬉しくないけどな……ははっ♪」

139 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/30(土) 02:38:14.62 ID:Uici38xW0
ドロシー「……それじゃあアンジェ、また後でな」

ちせ「続きはお茶の時間と言ったところか……しからばご免」

ベアトリス「それでは私はプリンセスのお召し物を用意してきますので…アンジェさん、また後で」

アンジェ「ええ……ところでプリンセス、ちょっといい?」

プリンセス「何かしら…「アンジェさん」?」

アンジェ「いえ……プリンセス、いつも通りにやってもらわないと周囲からの目線を集めることになるわ」

プリンセス「…「アンジェさん」わたくし、いつもと違いました?」

アンジェ「それは……いえ、何でもないわ…」

プリンセス「なら大丈夫ですね、「アンジェさん」?」(…王室の外交儀礼のように丁寧でよそよそしく……)

アンジェ「ええ…」

………

…ドロシーの部屋…

ドロシー「…で、第一段階はどうだった?」

プリンセス「ええ…やっぱり戸惑っているみたい…」

ドロシー「だろうな。まずはプリンセスに嫌われんじゃないかと思わせて、アンジェに精神的動揺を与える…相手を不安がらせ、疑心暗鬼の状態に陥らせるのはスパイの常道だからな」

プリンセス「でも、アンジェだってそうした「スパイのいろは」は知っているはずですよね?」

ドロシー「それが動揺しているんだから、アンジェの愛はホンモノってことさ。まさかプリンセスがそんなことをするとは思っていない…あるいは頭で分かっていても、感情が追いつかない……ってところかな?」

プリンセス「そうですか…でもどれくらい続ければいいのかしら……アンジェの不安げな顔を見ると、正直わたくしも辛いわ」

ドロシー「あんまり長くは続けないさ…アンジェにおかしくなられちゃ困るしな」

プリンセス「そう…よかった♪」

ドロシー「でもその間だけは完全に冷え切った態度じゃないと…何しろアンジェは表情から相手の気持ちを汲み取るのが上手いし」

プリンセス「そうね……ふっと思っていることを言い当てられたりするのよね」

ドロシー「ああ…プリンセスみたいに外国の腹黒い連中と外交で渡り合うのと、私やアンジェみたいに飲んだくれた親父とか、貧民街の親分に殴られたりしないようにしていたのと……案外似ている所があるのかもな…」

プリンセス「かもしれませんね……それで、次は「第二段階」ですね?」

ドロシー「ああ…この状態を数日続けて、ようやくその雰囲気に慣れてきたところで別な動揺を加える……ハニートラップに引っかかった相手へブラックメイル(脅迫状)を数日ごとに送りつけて、「いつバレるか」とか「証拠をばら撒かれるんじゃないか」…ってビクビクさせるようなもんかな」

プリンセス「…まぁ」

ドロシー「ふぅ…いくら相手が誘惑に弱かったとはいえ、この世界はそう言う後ろ暗い部分も多くてね……だから私たちみたいなスパイの事を「スプーク」(幽霊)って言うんじゃないかな?」

プリンセス「人を怯えさせるから?」

ドロシー「ああ…それに「足跡も残さない」しな♪」

プリンセス「なるほど……それでは「第二段階」の開始は…」

ドロシー「見極めが難しいが…早くて数日後かな」

プリンセス「分かりました……ですけれど、わたくしも早く元のようにアンジェと仲よくしたいです…」

ドロシー「まぁまぁ…オレンジを食べるのに皮ごと食べる奴はいないってわけでね……まずはしっかり下準備をしなくちゃ」

140 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/30(土) 10:48:24.93 ID:Uici38xW0
…数日後・寮の廊下…

アンジェ「…」(ここ数日プリンセスが妙によそよそしいわ…どうして私を避けるの、プリンセス…?)

アンジェ「…ふぅ」(…いいえ、プリンセスと私の関係はたとえ「白鳩」の中でも知られるわけにはいかないのだから、これでいいのよ……あくまでクールに、距離を保って…利用できる時は利用する…それでいいはずでしょう……?)

アンジェ「……?」(……部室から声…プリンセスとベアトリス……?)

アンジェ「…」一旦はドアノブを回して入ろうとした…が、思い直してしゃがみこむと、鍵穴から中の様子をのぞいた……

…部室…

ベアトリス「…さぁ姫様、紅茶をどうぞ?」

プリンセス「ありがとう、ベアト♪」

ベアトリス「わわっ!?…もう、私だって子供じゃないんですから、頭を撫でられたら恥ずかしいですよぉ///」

プリンセス「ふふふっ、いいじゃない……それにベアトったら、この間資料を読み込んでいた時に私の事を「姫様」じゃなくて「プリンセス」…って♪」

ベアトリス「あぁもう、その話を蒸し返すのは止めて下さい…だってドロシーさんとかみんな姫様の事を「プリンセス」って呼ぶから、つい……///」

プリンセス「これだけ私のお付きをしているのにつられちゃうベアト……可愛い♪」

ベアトリス「ひぁぁぁっ…///」

プリンセス「うふふ、私のベアト…ちょっとからかうとすぐ真っ赤になっちゃって……いじらしくて、本当に可愛い♪」角砂糖をつまみあげると口に入れてアメ玉のようにしゃぶり、それからベアトリスに唇を重ねた…

ベアトリス「ひゃぁぁ…っ……んんぅ///」

プリンセス「ん、ちゅぷっ……ふふ、甘いでしょう?」

ベアトリス「姫様…ぁ……///」

プリンセス「あら、そんなにとろけた顔をされたら私だって我慢できないわ…ん、ちゅぅ♪」

ベアトリス「んちゅ…んむっ、ちゅぅぅ……///」



アンジェ「…ふぅー…すぅー…」(…落ち着くのよ、アンジェ……プリンセスとベアトリスは敵だらけの王宮でお互いに支え合う仲…秘密を打ち明けたり、寂しさを慰め合っている間にこんな関係になっていたとしても、何もおかしくないわ……)

アンジェ「……ふー…失礼するわ」(…どうやら終わったようね)

ベアトリス「!」

プリンセス「…あら、「アンジェさん」…どうかなさったの///」ソファーの上で身体を寄せ合っていたが、慌てて離れる二人……一瞬口の端からつーっと銀色の糸が伸びた……

アンジェ「いいえ」

ベアトリス「…あっ、あの///」

アンジェ「何?」

ベアトリス「よ…よろしかったらお紅茶でもいかがですか?」

アンジェ「そうね、頂くわ……それとベアトリス」

ベアトリス「な、何でしょうか…///」

アンジェ「前回の資料、まだ暗記出来ていないでしょう……プリンセスのお世話も大事でしょうけれど、優先順位を間違えないで」

ベアトリス「は、はいっ!」

アンジェ「分かったなら行動に取りかかりなさい」

ベアトリス「え、えーと…あわわっ」ティーカップを持ったままあたふたするベアトリス…

アンジェ「紅茶は自分で注ぐからいいわ……慌てないで順番に行動しなさい」

ベアトリス「すみません…っ!」

アンジェ「謝罪なんて必要ない…その分の時間を有効活用しなさい」

ベアトリス「ごめんなさ……いえ、分かりました」

アンジェ「結構」気を静めようとウェブリー・フォスベリーの手入れをし始めるアンジェ…が、時折プリンセスがベアトリスに向けて微笑んだり、それとなく親しみを込めた仕草をするたびに気に障った……

アンジェ「もういいわ。紅茶をごちそうさま…ベアトリス、資料は明日までによく読み込んでおくこと」

ベアトリス「分かりました、アンジェさん」

プリンセス「それでは「アンジェさん」…また後でお会いしましょう」

アンジェ「…ええ」
141 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/30(土) 11:13:06.91 ID:Uici38xW0
…さらに数日後…

ドロシー「…どうしたよ、アンジェ」

アンジェ「何が?」

ドロシー「何が…って、らしくないぜ?」

アンジェ「そう…それを説明してくれる気がおありなら、どう「らしくない」のか教えていただけるかしら」

ドロシー「……その態度さ」

アンジェ「別に…いつも通りよ」

ドロシー「やれやれ、そうは見えないぜ?」

アンジェ「なら貴女の目がおかしいのよ…目薬でも差したら」

ドロシー「…それだよ。いつも冷静なお前が工場の煙突みたいにイヤミと皮肉をまき散らして…一体どうしたんだ?」

アンジェ「黒蜥蜴星人だからそう言う時もあるわ」

ドロシー「嘘だね…蜥蜴なら冷血だからそんな感情はないはずだろ」

アンジェ「……しつこいわね。スパイじゃなくて防諜部に転任させてもらったら?」

ドロシー「おあいにく様、私みたいなテキトーな人間は向こうから願い下げだとさ……良かったら話してみろよ」

アンジェ「結構よ…貴女も私に油を売っている暇があるなら、自分の方の仕事をしたらどう」

ドロシー「そうかよ…ま、もし相談事があるなら声をかけろよ?」

アンジェ「はいはい、そうさせていただくわ」(…出来る訳ないでしょう…「私とプリンセスの関係がぎくしゃくしている」なんて……)

ドロシー「……そろそろ頃合いだな」

………

…プリンセスの部屋…

ベアトリス「ん…姫様宛にメッセージカードですよ」

プリンセス「ありがとう、ベアト♪」

ベアトリス「一応ですが、毒針とか仕込まれてないかだけ確認させてもらいますね」

プリンセス「ええ」

ベアトリス「えーと…はい、大丈夫みたいです」

プリンセス「ありがとう、ベアト…ちゅ♪」

ベアトリス「もう、姫様ったら…///」

プリンセス「ふふ……まぁ♪」

ベアトリス「何かいいお知らせですか?」

プリンセス「ええ、そう言った所ね。…ところでベアト、今度私の代わりにお買いものへ行ってきてほしいの……いいかしら?」

ベアトリス「もちろんですよ、私は姫様のお付きなんですから」

プリンセス「ふふ、助かるわ。そうしたらね、ちょっと量が多いけれどお願いするわ……かわりに私がお金を出してあげるから、好きなお買いものをしていいわよ?」

ベアトリス「もう…子供のおつかいじゃないんですから……いつですか?」

プリンセス「そうねぇ…今度の週末がいいかしら」

ベアトリス「分かりました…それじゃあ私に任せて下さい」

プリンセス「ええ…♪」(いよいよ「第三段階」ね…)

142 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/03(火) 03:16:43.27 ID:UhXl/ke10
…週末・部室…

ドロシー「……なぁ、ちせ」

ちせ「なんじゃ?」

ドロシー「悪いけど、ちょっと手伝って欲しいことがあるんだ……本当はベアトリスにでも…と思ったんだけど、プリンセスの頼まれごとで買いものに行っちまってさ……軽く数時間はかかるだろうけど、いいか?」

ちせ「無論じゃ。何せお互い背中を預けた「チーム白鳩」の戦友同士…断るわけがあるまい」

ドロシー「そっか、そいつは助かるよ……実を言うと今度の作戦に備えて、新しいナイフとかスティレットを用意してもらったんだけどな…」

ちせ「…ほう?」

ドロシー「この間試してみたら、どうも切れ味が鈍い感じがするんだ……よかったら研ぐのを手伝ってくれないか?」(あれだけ刀を使いこなしているちせの事だ…刃物と聞いたら時間をかけていじくりまわしてみたいと思うはずさ…)

ちせ「ふむ…やはり鍛え上げた玉鋼(たまはがね)と画一的な工業製品では格が違うのじゃろう……構わぬよ、私も興味が湧いてきた」

ドロシー「おっ、いい返事だな…それじゃあ「ネスト」(巣…拠点・アジト)まで行こうぜ♪」

ちせ「うむ……では失礼する」

ドロシー「ああ…それじゃあプリンセス、美味しいお菓子でも食べて「甘い時間を有意義に」過ごしてくれ♪」(…「第三段階」開始だ)

プリンセス「ええ、ドロシーさんも大事な道具ですし「念入りに」手入れして下さいね?」(ふふ、いよいよね…ドロシーさん、出来るだけちせさんを引きとめて下さいね♪)

ドロシー「ああ、分かってるよ…♪」

アンジェ「……私も行きましょうか、ドロシー?」(…ここ最近の精神状態でプリンセスと二人きりになるのは避けたいわ)

ドロシー「おいおい、そうやってサーカスみたいにぞろぞろ行列でも組んでいくのか?……人目を引きたくないし、私とちせで充分だよ」

アンジェ「…それもそうね……分かったわ」

ドロシー「ああ、それじゃあな…もしやることがないなら銃弾の選別でもしておいてくれ」

アンジェ「ええ」

プリンセス「…」

アンジェ「…」

プリンセス「……ねぇ、アンジェ?」

アンジェ「何?」

プリンセス「アンジェは私の事…嫌いなの?」

アンジェ「嫌いよ」

プリンセス「…ほんとに嫌い?」

アンジェ「ええ。大嫌いよ」

プリンセス「ほんとのホント?」

アンジェ「ええ……嫌い、大嫌い」

プリンセス「……そう……ぐすっ…ひっく……私、今までアンジェ…いえ「シャーロット」の事、勘違いしていたみたい……」

アンジェ「…プリンセス?」

プリンセス「だって…最近のシャーロットはいっつも冷たい態度ばっかりで…カバーストーリーだって大事でしょうけれど、何も私たちが……二人きりの時まで…お芝居をしなくたっていいはずよね……だとしたら…ひっく……」

アンジェ「ぷ、プリンセス…私は貴女に危害が及ばないようにと……」

プリンセス「いいえ、そんなの信じられない…きっとお互いに命を預け合ったドロシーさんの方が好きなんでしょう……!?」

アンジェ「…まさか。そんな訳ないわ」

プリンセス「……だったらどうして優しくしてくれないの、シャーロット…?」

アンジェ「ふぅ…さっき言った通りよ。誰に利用されるか分からない以上、私があなたを大事に思っているなんて露ほどもさとられたくないの……本当なら「白鳩」のメンバーにさえ知られたくないわ」

プリンセス「…でも、せめて私と二人きりの時だけは…優しくして欲しいのに……」

アンジェ「ふぅ……私もつい甘えてしまいたくなるから、本当は教えたくないのだけど……一つだけ…方法があるわ……」

プリンセス「…シャーロット?」

アンジェ「私に向かって「ハニートラップの訓練をしましょう」って言ってくれればいい…そうすれば練習にかこつけて、それ相応に甘い言葉を投げかけることくらい出来るし……///」

プリンセス「…シャーロット♪」

アンジェ「……そのかわり、息が切れるまで付き合ってもらうから///」ちゅっ…♪
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 04:32:16.41 ID:2s/yTJ+uo
144 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/05(木) 01:33:02.14 ID:9raDQw6J0
>>143 ありがとうございます、引き続き投下していきます

145 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/05(木) 02:19:46.16 ID:9raDQw6J0
プリンセス「んんぅ、んむぅ…んちゅ……っ♪」

アンジェ「…ふふ、可愛いプリンセス…二人で遊んだあのころを思い出すわ……♪」

プリンセス「私がシャーロットと同じ服を着てラテン語の授業を受けて、シャーロットがサボったり…ね♪」

アンジェ「ええ…それにあの時もこうやって、ベッドの上に寝転がっていたわよね……♪」

プリンセス「ふふ、そうだったわね…シャーロットったらいっつも私の事や街の様子を根掘り葉掘り聞いて……あの時からスパイの素質があったのね♪」

アンジェ「反対にプリンセスはどんなことでも物覚えがよくって……プリンセスも案外スパイ向きかも知れないわ」

プリンセス「もう、シャーロットったら……♪」

アンジェ「ふふ、ごめんなさい…ちゅっ♪」…必要となればとてもチャーミングな性格になれるアンジェ……口の端に小さいえくぼを浮かべると、いたずらっぽくプリンセスのほっぺたにキスをした…

プリンセス「んぅっ…シャーロット♪」

アンジェ「プリンセス……好き、好きよ……愛してる♪」

プリンセス「まぁ…///」

アンジェ「可愛い笑顔も、さらさらの髪も、綺麗な澄んだ瞳も……全部大好きっ♪」

プリンセス「もう…シャーロットってば…ぁ///」きゅんっ…♪

アンジェ「…ね、昔みたいに「ちゅう」しましょ?」プリンセスの手に指を絡め、熱っぽく瞳をうるませた…

プリンセス「あぁもう、シャーロットったら……相変わらずおませさんなんだから///」

アンジェ「だって、プリンセスが可愛いんだもんっ…♪」…子供っぽい口調でプリンセスに抱き着いて甘えるアンジェ

プリンセス「はぁぁんっ…シャーロットにそんなことを言われたら、私なんでも許しちゃうわ♪」

アンジェ「……それじゃあ早く「ちゅう」しよ…っ?」

プリンセス「うんっ♪」

アンジェ「……ん、ちゅぅ…ちゅっ……♪」

プリンセス「んふ……あむっ、ちゅぅぅ♪」

アンジェ「…ふふ、「ちゅう」って気持ちいいのねっ…♪」

プリンセス「そうね、シャーロット……あふっ、んっ、くぅっ…///」

アンジェ「ふふ…それじゃあ脱がせちゃうわね……わぁ、相変わらず真っ白ですべすべ♪」

プリンセス「シャーロットこそ……えいっ♪」アンジェの胸を優しくこねるプリンセス…

アンジェ「あんっ…やったわね?……はむっ、ちゅぅ…れろっ♪」

プリンセス「ひぁぁぁんっ…シャーロット、先端は舐めないで…っ///」

アンジェ「ふふ、ワガママなプリンセス。それじゃあ仕方ないから…」こりっ…♪

プリンセス「んっ、あぁっ…甘噛みはもっとだめ……ぇ♪」じゅんっ♪

アンジェ「むぅぅ、ならプリンセスはどこがいいの?」

プリンセス「……それは、その…///」

アンジェ「ふふ…早くしないと飽きてやめちゃうかも知れないわよ?」

プリンセス「もう、シャーロットったらせかさないで…♪」

アンジェ「ほぉら、早くはやくっ♪」

プリンセス「あぁ、どこもシャーロットに触って欲しくて決められないの…♪」

アンジェ「もう、よくばりなプリンセス…それじゃあ、「シャーロットの気まぐれメニュー」でいい?」

プリンセス「うんっ…シャーロットにいっぱい触って欲しいの♪」

アンジェ「決まりね……プリンセス、大好き…♪」耳たぶを甘噛みしながらささやくようにつぶやく…

プリンセス「はぁぁんっ、それ……反則ぅっ♪」…とろっ♪

アンジェ「ふふ、これは二人だけのトップ・シークレットよ……私の愛しいプリンセス♪」

プリンセス「あひっ、ひうっ…シャーロットったら、そんなのずるい…っ♪」

アンジェ「ふふ…いつも素直になれなくてごめんなさい……可愛いプリンセス♪」くちゅ…にちゅっ、じゅぷっ♪

プリンセス「あっ、あぁぁぁ…んっ♪」
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/07(土) 09:20:56.78 ID:B6EWHCLYo
いいね👍
147 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2018/07/08(日) 00:58:21.87 ID:RhFidgqo0
…しばらくして…

アンジェ「ふふ、プリンセスの白くて細い指……ちゅぱ…ちゅぷ…っ♪」

プリンセス「んぁぁ…はぁ…んぅ……くっ…んんぅ…///」

アンジェ「それじゃあプリンセス…私の指も……舐めて?」

プリンセス「ええ、シャーロット…んちゅ…ぅっ、ちゅぱ…ぁ……ちゅぷっ…///」

アンジェ「んっ…付け根の所は少しくすぐったいわね……さてと…」プリンセスの口中から指を引き抜くと、とろり…と銀の糸が伸びて、そっと滴り落ちた……

アンジェ「…この濡れた指を……んっ♪」くちっ…にちゅっ♪

プリンセス「んぅぅっ!…んくっ、んぅ…んっ、んっ、んっ…くぅぅ……ぅっ♪」

アンジェ「ふふ…プリンセスのここは暖かくて…とろっと粘っこくて……たまらないわ」ぐちゅぐちゅっ…じゅぶっ♪

プリンセス「はぁぁ…あぁんっ…ん、くぅぅ……シャーロット…ぉ///」くちゅっ、とろとろっ…ぶしゃぁぁ…っ♪

アンジェ「ふふっ…惚けたような表情も可愛いわ……ん、じゅるっ…じゅるるぅ……っ♪」

プリンセス「はぁぁ…あんっ……いいの…っ、シャーロットの…舌…這入ってきて……気持ちいい…っ///」

アンジェ「んむっ、じゅる…っ……じゅぅぅ…っ、れろっ…ぴちゃ…ぴちゃ…っ♪」プリンセスの太ももの間に顔をうずめて、一心不乱に舌で舐めあげ、とろりとこぼれる蜜をすするアンジェ…

プリンセス「はあぁぁ…んくぅ、んっ…あぁ……ん、ふっ…♪」

アンジェ「ん…じゅる…じゅぅっ……れろ…ちゅる……ぷは…ぁ」

プリンセス「んんぅ…シャーロット……私、腰が…抜けちゃった……みたい…♪」

アンジェ「プリンセス……♪」べとべとになった両の手のひらでプリンセスの頬をそっと包み込むと、舌先を突きだして唇の間にねじ込んで歯茎をなぞり、ねっとりと時間をかけて舌を絡めた……

プリンセス「んむ…ぅ……シャーロット…ぉ///」とろけた表情のプリンセスが唇を開くと、アンジェの舌先からねっとりと雫が垂れる…

アンジェ「…舐めて///」今度はプリンセスの着ているフリルブラウスを裾まで開き、頭の側に馬乗りになる…

プリンセス「ええ…んちゅ……ちゅむ…っ♪」

アンジェ「んっ、んっ……ふふ、私も負けないから♪」

プリンセス「ちゅぷ…っ……ふふふ…だったら私もシャーロットの事、うんと気持ち良くしてあげる♪」

アンジェ「なら勝負よ…♪」

プリンセス「うふふ、私だっていろいろ「お勉強」しているんですもの…負けないわ♪」

アンジェ「…それはどうかしら。黒蜥蜴星仕込みのテクニックに耐えられたら大したものよ……んっ、じゅぅぅっ♪」

プリンセス「あんっ、不意打ちだなんて……いいわ、シャーロットがそういう手段を取るなら、私だって…二本入れちゃうから♪」じゅぶっ、ぐちゅっ…にちゅっ♪

アンジェ「んくっ……プリンセスの指が…入ってきて……いいっ…んっ、んぅぅっ♪」

プリンセス「ほぉら、シャーロット…気持ちいい?」

アンジェ「んっ、んんぅ…んっ、くぅぅっ……でもね、プリンセス…私の方が一枚上手のようね…」じゅぶっ、ぐちゅり…っ♪

プリンセス「あっあっあっ……は、あぁっ…んっ、あぁぁっ……!」

アンジェ「ん…ぴちゃ、れろっ……じゅるっ、ちゅく…っ♪」

プリンセス「あっ、あぁぁ…はぁぁぁ……っ…!」

アンジェ「……プリンセス、だーいすき…ちゅっ♪」

プリンセス「…シャーロット、そんなのずる…ぃっ、んぁぁぁっ♪」

………
148 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/09(月) 01:41:14.92 ID:2yBp7old0
…後日…

プリンセス「…ドロシーさん、少しよろしいですか?」

ドロシー「んー?」

プリンセス「いえ……この間はドロシーさんのおかげで、大変に素敵な時間を過ごさせていただきました」

ドロシー「あぁ、あれか…お役にたてて良かったよ♪」

プリンセス「ええ。そのおかげで数日に一度とはいえ、わたくしも心ゆくまでアンジェを堪能できるようになりました///」

ドロシー「……あー、それは…その……まぁ、よかったじゃないか」(あれから一週間経つか経たないかの間で「数日に一度」って……ちょっと多くないか…)

プリンセス「ええ、ふふっ…アンジェとの甘い時間が待っていると思うと、どんなことでも頑張れそうです♪」

ドロシー「ははっ、それは頼もしいな……悪いけど、ちょっと野暮用を思い出したから失礼するよ?」

プリンセス「ええ、それではまた…ごきげんよう♪」

ドロシー「ごきげんよう……はたしてアンジェの奴はどうなってるやら…入るぞ?」

…アンジェ私室…

アンジェ「……おはよう、ドロシー…」

ドロシー「おはようさん……どうした?」いつも通りポーカーフェイスのアンジェ…が、長い付き合いのドロシーにはピンと来た……

アンジェ「…何が」

ドロシー「しらばっくれるのはよせよ…休日とはいえ、こんな時間になってまだベッド、おまけに顔を赤らめて……なにをそんなに恥ずかしがってるんだ?」

アンジェ「それは…あなたには関係ない事よ///」

ドロシー「はぁーあ……いつぞやの時はどこかの誰かさんのために、援護に飛び出してやったのになぁ……」

アンジェ「それは任務の上でしょう……だいたいドロシーに話すような事柄ではないわ」

ドロシー「私に話すような事柄じゃないってどうして分かるんだ?」

アンジェ「…私個人に関わることだからよ」

ドロシー「ふぅーん、そっか…私は家庭の事情までしっかりアンジェに知られてるって言うのに、アンジェは情報のきれっぱしも教えてくれないのか…スパイ同士とはいえアンジェは戦友……対等な関係だと思ってたのになぁ…!」

アンジェ「しつこいわね…」

ドロシー「そりゃスパイだからな…で、何があったんだ?」

アンジェ「ふぅぅ…いいわ、どうしても聞きたいようね……」

…数分後…

ドロシー「……なるほどな」

アンジェ「これで満足したでしょう…///」プリンセスとの関係は抜かして、ベッドの上でのことを簡単に話した…

ドロシー「ああ、満足したぜ……それにしてもアンジェ、お前がそんな甘ったれた言葉を使えるとはな…♪」

アンジェ「…もし誰かに漏らしたりしたら、本当に撃つから」

ドロシー「よせよ…私とアンジェの仲だろ?」

アンジェ「そう言う間柄こそよ」

ドロシー「へいへい……にしても、あのプリンセスがねぇ…♪」

アンジェ「……いくら責めたてても「もっとして♪」の連続で…さすがに疲れたわ…」

ドロシー「やれやれ、王室のプリンセスって言うのは色ボケなのも素質の……」

アンジェ「…プリンセスの悪口は聞きたくないわ」

ドロシー「分かったよ……とりあえずお茶でも淹れておいてやるから、顔でも洗ってから来いよ」

アンジェ「……いの」

ドロシー「なに?」

アンジェ「…それが、腰に力が入らないの///」

ドロシー「……プリンセスか…何かと大変な存在だな、ありゃあ…」

………
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/12(木) 02:55:36.52 ID:VsYf/iSVo
150 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2018/07/13(金) 12:15:59.91 ID:NLI3ntYH0
…case・ドロシー×アンジェ「The other side of the wall」(壁の向こう側)…


…とある日…

アンジェ「それじゃあ、新しい任務の説明をさせてもらうわ」

ベアトリス「またですか…スパイってこんなに忙しいものなんですか?」

ドロシー「いや、本来はじっくり腰を据えてやるものさ……一回の工作に数年かけるなんてざらにあるぞ?」

アンジェ「それだけ王国側の動きが活発だと言うことよ…いいかしら?」

ドロシー「ああ、始めてくれ」

アンジェ「四日前のお茶の時間にも言ったけれど、最近アルビオン王国の市場相場の変動がいちじるしいわ…身近な肉やじゃがいもに始まり、金やケイバーライトみたいな鉱物資源……果ては西インド諸島のシナモンやクローブ、インド産の綿に至るまでね」

プリンセス「ええ、そのようだけれど…それが私たちにどう関係してくるのかしら?」

アンジェ「ええ、実はね……」


…数日前・ロンドン市内の劇場…

アンジェ「はぁ…ロンドンの劇場は、えかくでっけえもんだなァ……おらの村より大きいかもしれねぇだ…」一幕だけ舞台を見て、ホールに出ると丸縁眼鏡で辺りをきょろきょろと見回すアンジェ…制服こそメイフェア校の生徒であることを示しているが、いかにも「おのぼりさん」のような態度は明らかに田舎者丸出しに見える…

老婆「ちょっとよろしいかしら、お嬢さん?」

アンジェ「なんだべな…こほん!……どうかなさいまして///」

老婆「ハンカチーフを落としましたよ…あなたのでしょう?」腰の曲がった親切そうなおばあさんがアンジェのハンカチを持っている…銀髪をひっつめにしていて、十年は遅れている古めかしいデザインの服を着ているが決して身なりは悪くなく、丁寧な口調で品もいい…

アンジェ「ええ、私のです……と言っても『本当は伯父のくれたもの』ですが」

老婆「それはそれは…『ライリー伯父さんも大事にしてくれて嬉しい』でしょうね?」人気の多い場所でランデブーするときには欠かせない合言葉が、およそスパイには見えないおだやかな老婆の口から出てきた…

アンジェ「ええ…それじゃあ『ライリー伯父』によろしく」

老婆「はいはい……失くさないでよかったわねぇ。次は落とし物をしないよう、気を付けて帰るんですよ…お嬢さん」袖の内側ですっとハンカチをすり替えると、それだけ言ってするりと出て行った…

アンジェ「…あんなエキスパートを連絡役に回して来るなんて、コントロールも粋な真似をしてくれるわね……」

………



ベアトリス「えー、あの舞台を見に行ったんですかぁ…私も見たかったのに、アンジェさんが「任務の準備があるから」って……」

ドロシー「おいおい、冗談はよせよ」

ベアトリス「…何がですか?」

ドロシー「ふぅ…ベアトリスがアンジェと鉢合わせしてみろ、きっと愉快に手を振って「アンジェさーん、アンジェさんも舞台を見に来たんですかぁ♪」とか声をかけるに決まってるだろ……あたしらみたいな業界の人間が不特定多数の前で名前を呼ばれるなんて、ちょっとした悪夢だ」

アンジェ「完全に悪夢ね」

ベアトリス「もう…私だってちゃんと「敵監視下にある工作員接触法」を学んでいるんですから、そんなことしませんよぉ!」

ちせ「じゃがベアトリスはまだまだ目線が動いてしまうからの……アンジェどのを見つけたら「見るまい」として余計に挙動不審になるのがオチじゃろう…」

プリンセス「ベアトは素直だものね♪」

ベアトリス「むぅぅ…姫様まで……」

ドロシー「ま、ベアトリスだってベアトリスなりのやり方があるさ…そうへこむなって♪」

アンジェ「……話を戻していいかしら?」



151 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/17(火) 01:14:19.10 ID:pfGmhdHc0
ドロシー「お、悪い…それにしても「L」のやつ、今度は「ライリー伯父」さんか……前回は「従姉妹のマリー」だったよな…」

アンジェ「ええ。それで、受け取ったのがこれよ」

ちせ「普通の花柄が刺しゅうされたハンカチーフじゃな…」

プリンセス「あら、でもこんなところに刺しゅうでメッセージが…「私の大事な家族へ、これを見るたびに私を思い出してほしい…L」とあるわね?」

アンジェ「ええ、これが暗号よ……まずはこれがいるわ」ロンドンの地図を取り出すとハンカチを乗せる…紙のように薄い絹のハンカチだけあって、ロンドンの地図が透けて見える……

ベアトリス「わ…下が透けて見えます」

アンジェ「ここで刺しゅうの文字の「私」(My)「家族」(family)「見る」(see)から「M」の左上の頂点を寄宿舎の正門に合わせて「f」と「s」をロンドンの地図を合わせると……」

ドロシー「行きつくのは高級菓子屋だな……まだ新しい店だけど、プリンセスが行きつけにしていそうな店だ」

プリンセス「まぁ、ドロシーさんったら…このお店はまだ行ったことがありませんよ♪」

アンジェ「その事はいいわ……そしてこのメモが…」無秩序にアルファベットが並んでいるメモを取り出した…

ドロシー「『一回限り暗号帳』か…コードブックは?」(※一回限り暗号帳…文字変換のやり方を決める特定のパターンと、そのコードブックになる本をセットにして初めて解読できる暗号)

アンジェ「今回は「アルビオン王国・その正統なる歴史」とか言う、王国におもねる連中の本ね……その三ページ目から始めて、三つ目のアルファベットを逆算して戻す…」

ベアトリス「えーと…それだと最初の文字は「r」になりますね?」

ドロシー「おっ、ベアトリスも暗号が分かって来たな♪」

ベアトリス「当然です♪」

アンジェ「結構…さて、解読が終わったわ」

プリンセス「えーと「木曜日、フィナンシェを買いに行け」ですって」

ちせ「…すまぬが「フィナンシェ」とはなんじゃ?」

アンジェ「フランスの焼き菓子よ…英語のファイナンス(財政・融資)と同じで「銀行」や「小さな金塊」のような意味ね」

ちせ「なるほど」

ドロシー「ちなみにこんがり焼き上がった色と形が「小さい金塊」みたいだから名付けられたんだとさ」

アンジェ「そうと分かればもうメモはいいわ」暖炉にメモを放り込み、きっちり灰になるまで火かき棒でかき回した…

ベアトリス「……ねぇ、アンジェさん」

アンジェ「何?」

ベアトリス「お菓子屋さんに「買いに行け」って言うことは、ちゃんとお菓子も手に入るんですよね?」

アンジェ「でしょうね…それが?」

ベアトリス「もしよかったら…お菓子の方はもらってもいいですか?」

アンジェ「別にいいわよ」

ベアトリス「やったぁ…♪」

プリンセス「ふふ…だったらベアト、わたくしと一緒にお茶の時間でいただきましょうね?」

ベアトリス「……さ、最初からそのつもりでした///」

プリンセス「…あら♪」

ドロシー「ひゅぅ…熱いねぇ♪」

アンジェ「ベアトリス、任務完了まで浮かれないで…プリンセスとドロシーもよ」

ドロシー「あいよ……なぁプリンセス、こりゃあアンジェのやつ…プリンセスとベアトリスの仲むつまじいのに妬いてるぜ…?」

プリンセス「ふふっ…アンジェったら、意外とそう言うところは分かりやすいのよね♪」

アンジェ「……何か言った?」

プリンセス「いいえ♪」

ドロシー「ああ、何にも言ってないぜ……うー、おっかない…♪」

ベアトリス「…ふふ、美味しいお菓子とお紅茶でプリンセスとティータイム……なんて///」

ちせ「洋菓子というやつもなかなか美味であるからな…楽しみじゃ」

………
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/19(木) 03:52:16.02 ID:JrnunPB8o
153 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/20(金) 01:15:25.35 ID:uECM4/980
…木曜日…

ドロシー「さてと、菓子を買いに行くにしてもそこそこ敷居の高そうな店だからな……気の利いた格好じゃないと入れないよな…」濃いチェリーレッドのデイドレスに白絹の長手袋をつけ、パラソルを差している……口の端に浮かぶいつもの不敵な笑みは穏やかで優しい大人の女性の微笑みにとって代わり、いかにも優雅な貴族令嬢に見える…

アンジェ「馬子にも衣装ね、よく似合っているわ」…特徴の捉えづらい地味なクリーム色の地にスレートグレイの縁取りがされた渋いドレスを選び、髪の結い方と眼鏡を変えている…それだけでぐっと印象が変わり、よく見ないとアンジェとは気付かない…

ドロシー「おい、「馬子にも衣装」は余計だろ…アンジェこそ、いつもの冷血っぷりが嘘みたいに可愛いぜ?」

アンジェ「え…ドロシーとはそう言う関係になるつもりはないのだけど…」

ドロシー「おいこら、あからさまに引くなよ……せっかく褒めてやったのに」

ベアトリス「もう、二人ともおふざけはいいですから…ちゃんと準備は出来ました?」

ドロシー「あぁ、大丈夫さ。留守番はよろしくな?」

ベアトリス「はい、おみやげを忘れないで下さいよ?」

ドロシー「へいへい、任しておけって♪」

ちせ「気を付けての」

アンジェ「心配はいらないわ……尾行なら撒けるし、間接護衛の方はお願いね」

ちせ「うむ」

…しばらくして・パティスリー「フルール・ドゥ・リス」…

ドロシー「あら、素敵なお店…ライリー伯父さまが教えて下さっただけのことはありますわね♪」

アンジェ「ええ、そうですね」

ドロシー「んー…でもわたくし、フランス語はあまり堪能ではありませんの……「フルール・ドゥ・リス」ってどういう意味かしら?」

アンジェ「あら、それならブルボン王家の紋章にもなっている「百合の花」という意味ですわ」

ドロシー「それで金百合の花が扉に描いてありますのね…♪」

アンジェ「そうだと思いますわ……いいわよ、尾行はないわ」

ドロシー「…あぁ。これ以上三文芝居を続けていたらじんましんが出そうだ……入るぞ」

アンジェ「ええ…」

店員「ボンジューゥ。ようこそ「フルール・ドゥ・リス」へおいでくださいました、お若いマドモアゼルの方々♪」

ドロシー「メルシー♪」

アンジェ「まぁ、綺麗…どれにいたしましょうかしら?」

…金の縁取りがされたガラスケースにはマドレーヌや艶やかなチョコレートケーキ「オペラ」、フランボワーズのタルトやクイニーアマンが並んでいて、壁には花の活けてある大きな花瓶に、店の標語らしい「幸福な砂糖生活(ハッピーシュガーライフ)」と、ミュシャ風の美人画が描かれたポスターが飾ってある…

ドロシー「ええ、本当に……どれも宝石のようで目移りしてしまいますわ♪」

店員「ふふ、メルスィ…何かご希望があればお伺いいたしますよ?」

アンジェ「ええ、実はわたくし「ライリー伯父」からここのフィナンシェが絶品だとうかがって参りましたの…♪」

店員「……さようでございますか、お目が高くていらっしゃいますね。当店一番の自慢の品でございます」

アンジェ「…ではそれをいただきますわ」

店員「さようですか。ちなみに「お召し上がりはいつ頃」に?」

アンジェ「そう…「きっと明日が晴れたなら」お茶の時間にいただきますわ」

店員「承知いたしました…ではフィナンシェを五つと、店の名刺をお付けしておきます。ライリー伯父さまにもよろしくお伝えください」

アンジェ「ええ、ありがとう」

店員「こちらこそ…では今後ともご贔屓に♪」

アンジェ「ぜひともそうさせていただきますわ……さ、帰りましょう」

ドロシー「おう…やれやれ、のっけからフランス語とはね……違う意味で冷や汗をかいた…」

アンジェ「それにしては悪くなかったわよ」

ドロシー「そりゃどうも。後は持って帰るだけだが……袋ごしでもいい匂いがするじゃないか♪」

アンジェ「今は貴族のお嬢さまなんだから、つまみ食いなんてしないでちょうだいね」

ドロシー「誰がするかっての…!」
154 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/23(月) 01:58:03.92 ID:23Rqv0Nj0
ドロシー「…戻ったぞー」

ベアトリス「あ、お帰りなさいっ…それでお菓子は?」

ドロシー「そう焦るなよ…ほーら、いい子にしてたベアトリスにはお菓子をあげよう♪」

プリンセス「ふふっ、ドロシーさんったら」

ベアトリス「わ、美味しそうなフィナンシェですね…さぁ姫様、お茶の準備は整っていますから一緒にいかがですか?」

プリンセス「そうね……二人とも、よろしいかしら?」

アンジェ「構わないわ、私たちに必要なのはお菓子じゃなくて紙袋の方だから…」

ちせ「私は菓子よりも任務の方が重要と分かっておるからの…もし用があるならばここに残るが……」

アンジェ「必要ないわ。これはちせの分よ」

ちせ「そうか…ではさらばじゃ♪」分けてもらったフィナンシェを手早くハンカチに包み、ほくほく顔で出て行った…

アンジェ「ええ、また後で…」

ドロシー「…ねーねー、ドロシーちゃんもお菓子が食べたいよー」

アンジェ「…」

ドロシー「……なんだよ、せっかく空気を和らげてやったのに…で、メッセージは?」

アンジェ「待って…解読できたわ」紙袋ののり付けされた部分を丁寧に剥がすと細長く糊のついていない部分があり、そこに細かく暗号が書きこんである…

ドロシー「相変わらず早いな……えーと「ザ・シティの『アルビオン・マイルストーン商社』より、金の先物取引価格を入手すべし」ねぇ…今回は経済スパイに早変わり、ってわけだ」

アンジェ「ええ。何しろ王国側にある「ザ・シティ」での先物取引価格が共和国に伝わるのはたいてい半日から一日遅れ……王国は検閲や発送に時間をかけることでわざと取引価格の情報を遅らせて、その間に王国系の投資会社を通じて共和国の先物取引市場で商売をし、利益を上げているわ」

ドロシー「…いわゆるインサイダー情報ってやつだな。しかも政府が一枚噛んでやっているんだからタチが悪い」

アンジェ「その通り……しかもこれを主導している「誰か」はかなりの切れ者のようで、いつもこのカードを使う訳じゃない…」

ドロシー「そりゃいっつも未来を予知するような具合にやっていたら、バカでも気がつくってもんだからなぁ」

アンジェ「その通りよ。リストにある商社や投資会社は一見するとそう儲けているようには見えないけれど、よく計算してみるとかなり分のいい利益を得ていることに気づく」

ドロシー「しかしだ…当然その「時差」を使って一山当てようって連中は他にもいくらだっているだろ?」

アンジェ「ええ、もちろん。これまでも冴えた投機家や取引会社の中にはこのカラクリに気づいて、パイにありつこうとした者もいないわけではないわ」

ドロシー「そういう連中はおおかた「不運な事故」でテムズ川にドブン…か?」

アンジェ「いいえ……一部は当人も知りえないうちに手駒として組み込まれて時々おこぼれにあずかり、特に頭の切れる者は内密に王国側の組織へスカウトされているらしいわ」

ドロシー「一見すると前と変わらないのに、実は王国の下請けになっているわけか」

アンジェ「そういうこと。まぁ王国の諜報機関としては楽な副業ね…トップシークレットをはじめとする情報を真っ先に知ることが出来て、自分たちの都合次第で公表するもしないも自由……」

ドロシー「要は山に積まれたカードをめくりながらポーカーをするようなもんだからな…そりゃ笑いが止まらないだろうさ」

アンジェ「だからこそよ。コントロールとしても王国諜報・防諜機関の活動費が潤沢になられては困る」

ドロシー「とにかくこの「商売」は金のかかる商売だもんなぁ…この「素敵なお召し物」にしたって、軽く百ポンドはかかってるだろうし……」

アンジェ「そういう事よ……毎度あなたが請求する車のメンテ部品やパーツ代なんかもね」

ドロシー「そう言うなよ。あの車のおかげで何度任務が成功したことか……」

アンジェ「とにかく、今度の作戦では派手なのはご法度…そして何より頭が冴えていなければいけないわ」

ドロシー「了解、ドンパチは厳禁な」

アンジェ「ええ…という訳で、お待ちかねのお菓子よ。これで糖分を摂取しなさい」

ドロシー「お、ありがとな…うん、美味い♪」

アンジェ「これで頭が回るようになるといいわね…それじゃあ私も……」

………

155 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/25(水) 07:50:48.17 ID:AftFpxlpo
156 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/26(木) 00:54:57.68 ID:1vlYKvQM0
>>155 見て下さってありがとうございます。暑い日が続きますし、体調には気を付けて下さいね
157 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/26(木) 02:06:58.04 ID:1vlYKvQM0
…数週間後「ザ・シティ」の商社…

男「ふむ…君たちが掃除婦になりたいって人だね?」

ベアトリス「はい…張り紙を街で見かけて、それで……」

ドロシー「あたしは牧師から話を聞いてね」

…貧乏な娘の一張羅といった格好で、商社の人事係と向かい合わせで座っているドロシーとベアトリス…年中こうした応対をしている商社の男はさして興味もなさそうに二人を眺めている……そして当然ながらお茶の一杯も出してはくれない…

男「結構。掃除してもらうのはここのフロアと一つ下のフロアだけで、来てもらうのはオフィスの者たちが完全に帰ってから…つまり夜の八時以降になる」

ドロシー「分かってます」

男「ならいい。給与は時間当たり6ペンス…さ、ここにサインして」机ごしにペンと書類を滑らせる男に対し、困った様子のドロシー

男「……どうした?」

ドロシー「いや、あたしは学者じゃないもんで」読み書きができないふりをしているドロシーは、上下逆さまの書類を前に困り果てている…が、すでに逆さまの書類をさっと読み通している……

男「あぁ、書き方を知らないのか。なら名前の所…ここにバツ印を付けてくれればいい。私が代筆してあげよう」

ドロシー「どうも、あいすみませんねぇ…」

男「なに、よくいるんだよ…名前は?」

ドロシー「エマ・ジョーンズ」

男「結構。では「署名…エマ・ジョーンズ、代筆す」と」

ドロシー「どうも、ありがてぇこってす」

男「いいんだ……なぜか知らないが、今まで雇っていた掃除婦が二人ばかり急に辞めちゃってね」

ドロシー「へぇー…?」(そりゃこっちがそうなるよう仕向けたんだからな…)

男「だからちょうどよかったよ…明日から来てくれ。裏口の警備員には君たちの事を話しておく」

ベアトリス「…は、はい」

男「緊張しなくたっていい、単に掃除をするだけだ…ただし机の上の物はいじったり盗ったりしないように……そういうことをすると警察に突きだすから、よく覚えておいてくれ」

ベアトリス「ひっ…!」

男「じゃあこれで……さ、帰ってくれ」

ドロシー「ありがとうござんした」…下町にある薄汚い下宿の裏口へ入ってしばらくすると、薄汚れた「メイク」(灰と土埃に少しの古い油を混ぜたもの)を落として髪型をもとに戻し、制服に着替えた二人が表から出てきた……手には「恵まれない婦人たちへの愛の寄付を」などと書かれたリボンが巻いてある、柳のカゴを持っている…

ベアトリス「…ずいぶんすんなりいっちゃいましたね?」

ドロシー「ああいうインテリ連中は「無学で読み書きも出来ない」って聞くと油断するのさ……そもそも時間当たりの給与には「10ペンス」って書いてあったろ?」

ベアトリス「私も気づきました…言いませんでしたけれど」

ドロシー「ああ、さっきのは利口だったぜ……もっとも言ってみたところで、あちらさんも「手数料」だとかなんとか、上手い言い訳は作ってあるだろうけどな」

ベアトリス「それにしても都合よく二人辞めているなんて…幸運でしたよね」

ドロシー「はは、この業界で「幸運」があることなんて滅多にないさ……今回のもこっちの仕込みだよ」

ベアトリス「…え?」

ドロシー「そうやってベアトリスは表情に出やすいからな…ちょっと言うのを忘れてたよ♪」

ベアトリス「それじゃあ…」

ドロシー「前の掃除係だった二人には、片方が「遠縁の親戚の遺産」が転がり込んだから……もう片方にはコントロールが割のいい働き口を斡旋してやった」

ベアトリス「…」

ドロシー「そう言う顔をするなって…いきなり遺産が転がり込むなんて「リアリティに欠ける」から、強盗に見せかけてバラしちゃう案もあったんだぜ?」

ベアトリス「だ、ダメですよそんなの!」

ドロシー「ああ、死人は必ず「誰かの注意を引く」からな…だからコントロールも百ポンド近い出費にゴーサインを出したのさ」

ベアトリス「……そもそもお金と人の命って、釣りかえの効くものなんでしょうか?」

ドロシー「少なくとも、この業界ならある程度はね……ま、明日からはよろしく頼むな」

ベアトリス「はい」

158 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/28(土) 01:33:55.44 ID:Sr3hIotA0
…寄宿舎…

アンジェ「その様子だと上手く行ったようね?」

ドロシー「そりゃあ「細工は流々」ってところさ……ちなみに明日から来てくれ、だと」

アンジェ「なら授業を終えたらすぐ行かないといけないわね」

ドロシー「ああ。尾けられていないかどうかも確認しなきゃならないし、着替える必要もあるもんな」

アンジェ「そうね」

プリンセス「気を付けて下さいね、ドロシーさん……ベアトもよ?」

ベアトリス「はい、姫様///」


…次の晩…

ドロシー「こんばんはー」裏口の脇にある警備室をノックするドロシー…中では警備員が二人、小銭を賭けたトランプに興じている……

警備員「…あー、あんたらか。話は聞いてるからとっとと行きな」

ベアトリス「よろしくお願いします」

警備員「ああ」

警備員B「…おい、お前の番だぜ?」

警備員「分かってるよ。ハートの4だ」

警備員B「ハートの4だって?…へへっ、それで上がりだ」

警備員「ちっ…じゃあもう一回」

ドロシー「……それじゃあ「メアリー」はそっちをよろしくね」掃除用具入れを漁って、モップとバケツ、ちりとりに箒を取り出す……箒とちりとりをベアトリスに渡し、水を含むと重くなるモップとバケツを受け持ってやるドロシー…

ベアトリス「分かりました」

ドロシー「……言っておくが、少なくとも数週間は掃除だけだぞ…相手が気を緩めるまで待つんだ」

ベアトリス「…分かってます」

ドロシー「ああ……それじゃあここから始めるわよ?」

ベアトリス「はい、分かりました」…プリンセスのお付きだから…という訳でもないが、てきぱきと手際のいいベアトリス……

ドロシー「…本当にそう言うのが好きなんだな」少しからかいながらも、感心した様子のドロシー……モップの柄の先端に両手を乗せて、その上にあごを置いている…

ベアトリス「そうですね……って、少しは手伝ってくれませんか?」

ドロシー「はいはい、分かりましたよ…っと」いかにもおざなりな態度でモップがけを始めるドロシー…

ベアトリス「全くもう。いくら何でももうちょっとやる気を出して下さいよ……」

ドロシー「…言っておくけどな、この掃除の仕方にも結構コツがいるんだぜ?」

ベアトリス「え?」

ドロシー「普通さ、スズメの涙みたいなやっすい賃金で雇われた貧しい娘っこがやる気なんか出す訳ないよな?」

ベアトリス「ええ、まぁ…」

ドロシー「だからさ、あんまり綺麗にしすぎると怪しまれるんだよ…「こんな真面目に働くなんておかしいぞ?この娘っこは窃盗団の下見役じゃないか」とか何とか……要は「裏」があるんじゃないか、って」

ベアトリス「なるほど」

ドロシー「かといって不真面目過ぎてもいけない…クビになっちまったら元も子もない」

ベアトリス「それじゃあ、そこまで考えて…?」

ドロシー「そういうこと……ま、そこそこ手抜きした方が楽でいいって言うのもあるけどな♪」

ベアトリス「やっぱり手抜きなんじゃないですか…」

ドロシー「そう言うなって。あと、紙くず入れは私がやるよ」

ベアトリス「分かりました」

ドロシー「……どんな情報が書いてあるか分からないからな」

………
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/28(土) 15:30:11.53 ID:mLoLCUb4o

1もお気をつけて
160 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/30(月) 00:07:07.75 ID:5ZesipIh0
>>159 ありがとうございます。次回の投下はまた数日後になってしまうかもしれませんが…
161 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/30(月) 01:08:36.98 ID:5ZesipIh0
…一か月後・「アルビオン共和国文化振興局」事務所(コントロール)…

L「…それで、エージェント「D」(ドロシー)は食い込みに成功したのか」

7「はい。レポートによりますと警戒は緩んでいるとのことです」

L「そうか…時間がかかるのは致し方ないが、我々がこうしている間にも向こうは着実に活動資金を増やしているのだ。あまり差をつけられたくはない」

7「はい」

L「…おまけにこちらには何かと首を突っこみたがる「ジェネラル」をはじめとした軍部のこともある……おかしな話かもしれんが、無理解な同国人よりあちらの同業者の方がまだましな気がするな」パイプをくゆらせながら渋い表情の「L」…

7「ええ」

L「基本的に軍人はこうした活動に向かんのだ。この世界は「敵と味方」に分けられるようなものではなく、引き金を引いて銃剣突撃を敢行すればいいものでもない……」

7「分かっております」

L「しかし軍人は常に単純だ…敵・味方ははっきりしているし、より大きい大砲をより多く持っている方が勝つ」

7「ええ」

L「そして「男は勇敢に戦い、女はそんな男のために裁縫と料理をしていればいい」と思っている…」

7「ですから私もクビになりかけました……女はタイプを打つ程度の能力しかないのだから引っ込んでいろ、と」

L「うむ…だが私はそうは思わない。共和国人でも裏切り者はいるし、王国の人間だからとてすなわち敵ではない…物事にレッテルを張ってひとくくりにするのは簡単でいいかもしれない……が、私はそうはせずに全ての物を「疑惑の目」というふるいにかけ、残った真実のかけらを集めて鋳造するのだ…まるで砂金掘りのようにな」

7「なるほど」

L「すまんな…君にもやることがあるだろうに、少ししゃべり過ぎた」

7「いいえ、大丈夫ですわ」

L「うむ…ところで今度の予算の件だが……」

………



…数日後…

アンジェ「……そろそろ行動に移れと言ってきたわね」

ドロシー「ああ」

アンジェ「出来そう?」

ドロシー「そうだな…そろそろいいだろう」

アンジェ「結構……欲しい情報はあちらの「買い」と「売り」の情報よ」

ドロシー「ああ、分かってるさ」

アンジェ「繰り返しになるけど銃も殺しも…はたまた派手な爆発も無しよ」

ドロシー「任せておけ。髪の毛一筋だって残しはしないさ♪」

アンジェ「ええ、そうしてちょうだい」

ドロシー「ふー、これでモップだの雑巾だのからおさらばできる目途がついた…ってわけだな」

アンジェ「何を勘違いしているの。急に辞めたら怪しまれるから、しばらくはそのままよ?」

ドロシー「そのくらい分かってるさ……だけど目安にはなるだろ?」

アンジェ「それはそうでしょうね」

ドロシー「だろ…もっとも、ベアトリスは案外気に入っているみたいだけどな」

アンジェ「そのようね」
162 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/02(木) 00:56:24.83 ID:mVvPTHA8o
163 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/08/02(木) 01:37:22.15 ID:SVT2e+dd0
ベアトリス「失礼します。お二人とも私に「ご用」があるそうですが……いったい何ですか?」

アンジェ「あぁ、来たわね…用と言うのは他でもないわ」

ドロシー「いよいよ今夜から「本業」に取りかかることになったから、その手はずを確認しておこうってわけさ」

ベアトリス「今夜からですか……うー、緊張してきました…」

ドロシー「そう固くならないで、いつも通りにやればいいさ……それでだ」

ベアトリス「?」

ドロシー「ちょーっと頼みがあるんだよなぁ♪」にやにや笑いを浮かべながら詰め寄っていくドロシー…

ベアトリス「な、何ですか…」

ドロシー「アンジェ」

アンジェ「…ええ」さっと後ろに回り込んで、両腕を押さえるアンジェ…

ベアトリス「きゃあっ!?」

ドロシー「すこーし人工声帯をいじらせてもらって…と」

ベアトリス(CV…大塚明夫)「な、何をするんですかぁ!」

ドロシー「うわ、何だか妙に渋い声になったな……って、そんなことはいいんだって…よし、このくらいか?」

ベアトリス「……っ!?」何か叫んだらしく「キィーン…」と甲高い音が響いた

ドロシー「…うっ!」

アンジェ「まるで耳鳴りの音ね…まぁ、このくらいの高さならいいでしょう」

ドロシー「だな」

ベアトリス「?」

ドロシー「あー…よく「歳を取ると高い音が聞き取りにくくなる」って聞いたことないか?」

ベアトリス「…」

アンジェ「その様子だと聞いたことがありそうね」

ドロシー「なら話が早い。要はそいつを活用しようって訳さ…今日から情報をのぞき見するわけだが、私がメモ帳だの何だのを読み漁っている時に誰かが来たんじゃ都合が悪い……そこでベアトリス、お前さんが廊下の掃除をしているふりをして、誰かが来たらこっちに向けて叫んでくれればいい」

ベアトリス「?」

アンジェ「どうして見回りには聞こえない音域だと分かるのか…と言いたいの?」

ベアトリス「♪」

アンジェ「それは簡単よ…」

………

…数時間後・商社の裏口…

ドロシー「こんばんはー」

警備員「おー…今日は冷えるなぁ」

ドロシー「まったくだねぇ……相方にいたってはこのザマさ」

ベアトリス「…」古ぼけてはいるが元は良かったらしいコートにくるまり、ガタガタ震える…真似をしているベアトリス

警備員B「風邪かい?」

ドロシー「みたいなんだ…かといって休んじゃったらお金がもらえないからね」

警備員「頼むから吐いたりしてオフィスを汚さないでくれよ?」

ドロシー「あたしだってそう願いたいよ…な、そうだろ?」(今だ…!)

ベアトリス「…(もう、勝手な事ばかり言わないで下さいっ!!)」

ドロシー「ああ、言われなくったってさ」(よし、聞こえてない…これで少しは楽になるってもんだな♪)

警備員B「ちゃんとやれよ?」

ドロシー「そのくらいあたしにだって分かってるよ」

164 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2018/08/03(金) 12:56:26.55 ID:QUW9kGGa0
ドロシー「…じゃあ見張りは頼んだぜ?」

ベアトリス「…」カクカクとうなずくベアトリス…

ドロシー「よし、ドアには何も挟んでない……まぁそりゃそうだよな」…ドアの隙間に挟んだ細い糸や髪の毛、ノブを動かすとすぐに落ちてしまうようなピン…そういった「痕跡を残すための小細工」がされていない事を確認するドロシー…

ドロシー「さて、書類棚は…と」両手を軽くこすり合わせてから絹の長手袋をはめ、ランタンの灯りが外に漏れないよう雑巾を引っかける…

ドロシー「ふふん…簡単な鍵だな……」がっしりした樫材のキャビネットについている真鍮製の鍵に、キーピックを差しこむ…手首や指のしなやかな十代のうちに養成所でみっちり訓練されただけあって、鍵穴に傷一つ付けないで鍵が開いた……

ドロシー「…」順番に並んでいる書類の列を乱したり、うっかり机の上の物を動かしたりしないよう慎重にファイルや封筒を取り出す……

ドロシー「……これじゃないな。売り買いの予定リストはどこだ…?」

ドロシー「…ふぅ、仕方ない……」部屋を見渡せる位置にある上役のデスクに取りかかる…片膝をついた中腰の姿勢で、指先と音を頼りに鍵を回す……

ドロシー「開いてくれよな……お、いい子だ…♪」


…大きなデスクの引き出しに入っている書類の束を探すドロシー…当然束をまとめているリボンの結び方から書類の順番までを素早く頭に叩き込み、それから取引予定の金額や対象の品物を読み通していく…


ドロシー「…(ケイバーライト鉱石四トン…4250ポンド32シリング……ウェールズ産・良質無煙炭五十トン…556ポンドきっかり……純金百トロイポンド…1072ポンド25シリング…)」

ドロシー「よし……今日はこれで良し、と…」

ベアトリス「…!」中年の警備員には聞き取れない高い周波数で、甲高い口笛のような音が三度響いた…

ドロシー「…っ、ベアトリスの警報だな……」慎重に書類を収めて引き出しを戻し、もう一度鍵をかけ直した……

…一階下の廊下…

警備員「おい、もう一人はどうした?」

ベアトリス「…けほっ、い゛ま゛……上の掃除に゛…」喉の具合が悪い振りをしながら人工声帯を直す…

警備員B「そうか…具合が悪いからって手抜きはするなよ」

ベアトリス「分かっ゛てま゛す……」

警備員B「ならいい……それにしてもあの娘、ひどいガラ声だったな?」階段をランタンで照らしながら、一段ずつ上って行く…

警備員「ああ、こっちまでうつされなきゃいいけどな。で、もう一人はどこだ?」

警備員B「さぁ…向こうじゃないのか?」ランタンをかざしてみながら目を細めて、薄暗い廊下の先を見ようとする…と、廊下の奥から女性のシルエットが近づいてくる…

ドロシー「よいしょ…まったく、やりきれないねぇ……」モップの突っこんであるバケツを両手で提げて、ぼやきながらやって来るドロシー…

警備員「…おい、一体どこを掃除してたんだ?」

ドロシー「言われた通りの場所さね…向こうの廊下を見てごらんよ。処女みたいに綺麗なもんさ♪」

警備員B「…手抜きして勝手に休んでたわけじゃないな?」

ドロシー「へん、そういう事を言うのかい…そんなに言うなら見てごらんよ?」埃っぽい汚れ水が入ったバケツを突きだす…

警備員「うへっ、汚いな…そんなもの見せなくていい」

ドロシー「仕方ないだろ?…こちらのお偉い紳士さまがあたしの仕事ぶりについておっしゃってくれるからさ」

警備員B「ああ、悪かった悪かった……いいからとっととかたづけて来い」

ドロシー「言われなくったってさ、こんなバケツをあと半時間も持たされたら腰が痛くなっちまうよ」

…しばらくして…

ドロシー「お疲れさん…さっきの「警報」ちゃんと聞こえたぜ♪」

ベアトリス「よかったです……やっぱり学校で試すのとは具合が違いますし、上手く行かなかったらどうしようかと…」

ドロシー「なに、だとしても私だって警戒は怠りないからな…いわば予防線さ」

ベアトリス「そうですか…っ///」いきなり「きゅぅ…」とお腹が鳴り、赤面するベアトリス

ドロシー「……せっかくだ、何かつまんで行こうか♪」

ベアトリス「え、でも…」

ドロシー「気にするな、ちょうど立ち売りがいるしおごってやるよ…なぁおっさん、そいつを一つとビールを一パイントくんな」…セブン・ダイアルズやコックニーあたりの訛で「べらんめえ口調」をきかせて声をかけ、油っこいフィッシュ・アンド・チップスを新聞紙に包んでもらい、素焼きの陶器で出来た粗末なジョッキに薄いビールを注いでもらうドロシー…

おっちゃん「へい、毎度……別嬪さんだからおまけしておいてやるよ♪」

ドロシー「へっ、どうもごちそうさま……さ、食おうぜ?」指先でペニー硬貨を弾いて渡すと、テムズ川沿いの護岸に腰を下ろした…
165 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/08/04(土) 01:10:12.48 ID:Jk17iVAx0
…しばらくして「コントロール」作戦室…

L「で、情報は入ったのか」

7「はい、ちゃんと「D」から入っております」解読した暗号をタイプした紙を渡す…

L「む…王国め、金の大量の買い付けで相場を吊り上げる気だぞ……気どられぬようにこちらも二百ポンドばかり「買い」に回る。明日の取引開始時刻に着くよう、各取引会社あてに文書使(アタッシェ)を送るように」

7「はい」

L「あぁ、それとな…」

7「何でしょう?」

L「予算の使途には「金五十ポンド分の買い付け」とだけ記述してくれ…予算計画書の十ポンド以下の位は切り捨てだから、残りは分散して紛れ込ませる」

7「…L、それは……」

L「ふ、鋭いな…そう、当然議会は金をトロイオンス換算で考えて「金五十トロイポンド」分だと思うだろうが、私は「金五十ポンド」を買いこむつもりだ……当然差額はこちらの隠し予算にプールさせる」

(※トロイオンス・トロイポンド…金の計量法。時代にもよるが、「一トロイポンド」は12トロイオンスでおよそ373グラム。「一ポンド」は16オンスで約453グラム)

7「分かっております」

L「これで、軍部の「ジェネラル」連中を一つ出し抜いてやれるな……他はケイバーライトか…」

7「ケイバーライト鉱石は各種の防諜・諜報組織が目を光らせておりますが…」

L「分かっている…ケイバーライト鉱は外し、代わりに採掘会社の「ロイヤルアルビオン・ケイバーライト」社の株を1000だ…買い注文は十社以上の証券会社に分けて、一株で五ポンド以上の含み益が見込めたらすぐに売りにかける……王国市場の動揺を誘ってやれ」

7「ええ」

L「後はウェールズの無煙炭だが…この間の資料は覚えているかね?」

7「…先月二十一日付の新聞にあった「鉱山でのストライキ」ですか?」

L「ああ、それだ……カットアウトを通じて数人のトレーダーにそれとなく「あの鉱山での労働争議が再燃しそうだ」と流してやれ」

7「そうなれば当然…」

L「売りが優勢になるだろうな…底値を打ったところで買いをかける」

7「はい」

L「今回はそれでいい…エージェント「D」はいい情報源を手に入れたな」

7「そのように伝えますか?」

L「言わなくとも向こうで分かっているはずだ……が、君から一言添えておいてくれてもいいぞ」

7「はい、分かりました」

L「うむ」

………
166 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/06(月) 07:41:11.81 ID:aDhj2Rjfo
167 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/08/08(水) 00:56:25.87 ID:/vzUU3Eq0
>>166 更新が遅くなってしまって申し訳ありません…それと、見て下さってありがとうございます


次はアンジェ×ベアトあたりを考えておりますが、他にリクエストがあれば頑張ってみます…
168 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/08/08(水) 02:06:50.63 ID:/vzUU3Eq0
アンジェ「ドロシー、ベアトリス。二人に「コントロール」から新しい情報入手の命令と……追伸でメッセージがあるわ」

ドロシー「ほーん…?」

ベアトリス「一体何でしょう?」

アンジェ「読むわよ「…商品の品質はなはだ良好。取引先も気に入っているので、今後ともよい商品に期待している」だそうよ」

ベアトリス「褒められちゃいましたね、ドロシーさん?」

ドロシー「ああ。しかし、あの「L」にしちゃあ人間味のあるアクセントが入っているな」

アンジェ「おそらくこの文を起草したのは「L」ではない気がするわ…多分「7」じゃないかしら」

ドロシー「…だとしても起草した暗号文を最終的にオーケーするのは「L」のはずだ……意外にいいところがあるな」

アンジェ「そうかもね……それより今度の情報収集をもって、今回の作戦は一応終了ということになるそうよ」

ドロシー「こりゃまたずいぶんと急に…ドジを踏んだ覚えはないんだけどな?」

ベアトリス「も、もしかして私が何か…?」

アンジェ「いいえ、その可能性はないわ。もしそうなら「コントロール」も私たちを急ぎ壁の向こうへ脱出させるか、連絡を絶つか…さもなければ王国防諜部がここに押し寄せてきているはずよ」

ドロシー「同感だな。多分あっちの事情が変わっちまったんだろう」肩をすくめるドロシー…

ベアトリス「そうですか……せっかくお掃除も見張りもこなせるようになって来たのに…」

ドロシー「まぁいいじゃないか、これでゆっくり眠れるってもんだぜ?」

ベアトリス「…それもそうですね」

ドロシー「な?」

アンジェ「そうは言ってもまだ今回の任務が残っているのよ…気を抜かずにやりなさい」

ベアトリス「はい、アンジェさん」

ドロシー「ああ…最後までスマートに、だな♪」

………



…数日後・夜…

ドロシー「ふぃー…これでようやく任務完了だ♪」シャワーを浴びて来たドロシーはまだふんわりと湯気を残し、シルクのナイトガウン姿で髪を下ろしたままの気楽な様子で「よっこらしょ」とソファーに座りこんだ…

アンジェ「ご苦労様。入手した情報はもう送ったわ」

ドロシー「相変わらず手が早いな…ベアトリスもお疲れさん。いてくれたおかげで何かと助かったぜ♪」…ニヤッと笑うと、軽くウィンクをする

ベアトリス「いえ、そんな…///」

アンジェ「…そう言えばプリンセスが貴女を呼んでいたわよ……早く行った方がいいんじゃないかしら」

ベアトリス「姫様が?…すぐ行ってきます♪」

ドロシー「……やれやれ、何とも無邪気なもんだなぁ」

アンジェ「ベアトリスは貴女や私みたいにすれていないものね」

ドロシー「ああ…ところでさ」

アンジェ「なに?」

ドロシー「せっかく無事に終わったんだし…少し付き合わないか?」隠し棚をごそごそやって、小瓶に入った上等のコニャックとグラスを取り出す…

アンジェ「そうね、いつもなら断るところだけど……今夜くらいは付き合ってあげるわ」

ドロシー「それじゃあ…「やっと終わった今回の任務と、このロクでもない金相場に」……乾杯♪」

アンジェ「…乾杯」

ドロシー「んくっ…はぁ、喉に暖かいのが流れて来て……私のすさんだ心まで優しく暖めてくれるじゃないか」

アンジェ「…ドロシー、貴女いつからそんなセンチになったの?」

ドロシー「バカ言え、私はいつだって無垢で純粋なハートの持ち主だぜ…どっかの「ミス・コールドフィッシュ」と違ってな♪」(※cold fish…冷たいやつ。冷淡な人)

アンジェ「……おっしゃってくれるわね」

ドロシー「なに、ちょっとしたユーモアだって…もう少しどうだ?」

アンジェ「そうね、ならもう少しだけ…」
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/09(木) 23:41:32.12 ID:RUjjZomIo

>>167
>>1が許せるなら姫ベアトアンジェで3P
170 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/08/10(金) 02:20:24.37 ID:T81sXhfZ0
>>169 大丈夫ですよ…それでは「プリンセス+ベアト×アンジェ」のアンジェ総ネコで書こうかと思います……もうしばらくお待ちください
171 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/08/11(土) 23:56:18.47 ID:mYhQWhvP0
…しばらくして…

ドロシー「…なぁアンジェ」

アンジェ「なに、ドロシー?」

ドロシー「少し踊ろうか…伴奏も何もないけどさ」空になったグラスを置くと、優雅に立ち上がって手を差しだした…

アンジェ「…ええ」ドロシーが差しだす手に素直につかまり、そっと身体を預ける…

ドロシー「ところで…前に言ったっけか……」ゆっくりとしたワルツのテンポでアンジェをリードするドロシー…触れ合う身体からお互いの吐息や体温が伝わってくる…

アンジェ「何を…?」酔いが回っているのか、白い肌がかすかに桜色を帯びている…いつもの鋭く冷たい視線も少しだけ和らいで、とろりとしている……

ドロシー「私さ、何だかんだでアンジェの事……嫌いじゃないって…」

アンジェ「…そう」

ドロシー「ああ」くい…とあごを持ち上げ、じっと見おろす…

アンジェ「…ドロシー///」

ドロシー「アンジェ…んっ……」

アンジェ「ん、んくっ……ドロシー…」

ドロシー「悪いな…でもさっきアンジェに言われたみたいに、今は不思議と人恋しい気分なんだ……///」

アンジェ「黙って。言い訳は聞きたくないわ……それより、もう一回…///」

ドロシー「ああ…んちゅ…っ、ちゅぅ……ぷは…っ」いささか唐突に唇を離すドロシー…

アンジェ「はぁ、はぁ…っ……ドロシー…?」

ドロシー「…ごめん、私の勝手な気分でこんな真似して……アンジェにはプリンセスがいるのにさ…」

アンジェ「…」

ドロシー「あんな少しだったのに酔ったのかな……もう寝ることにす…」

アンジェ「ドロシー///」

ドロシー「……アンジェ?」

アンジェ「ここにだって……ソファーがあるわ…///」ちゅっ…♪

ドロシー「…それもそうだよな……んっ、ちゅぅっ…れろっ…ちゅぷ……んむぅ♪」

アンジェ「んっんっ、んぅっ……あむっ、ちゅぅ……ちゅぱ…ぴちゅっ…///」

………



ドロシー「はぁ、はぁ……アンジェは肌が真っ白でうらやましいな…」

アンジェ「ドロシーこそ…私にもそんな風に豊満な身体があったら……///」

ドロシー「……はは、お互い「ない物ねだり」ってやつだな♪」

アンジェ「ふふ…そのようね」

ドロシー「じゃあせめて気分だけでも味わわせてやるよ…ほら///」アンジェの手をはだけた胸元に誘導する…

アンジェ「…とっても柔らかいわね……しかもすべすべしていて…///」

ドロシー「……ああ…じゃあ私も……♪」

アンジェ「んっ、んんっ…ん、くぅっ……♪」

ドロシー「おぉ、すっごいな…指に絡みつくみたいで……しかも暖かくて…」

アンジェ「…いちいち言わなくてもいいわ///」

ドロシー「いや…ここは素直に褒めた方がいいかと思ってね……」

アンジェ「ふふふっ…♪」

ドロシー「ははは…♪」

二人「「あははははっ…♪」」

172 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/08/12(日) 00:42:35.82 ID:Ye+ijvbc0
…翌日…

ドロシー「うー…あいたた……」

アンジェ「どうしたの、ドロシー…リウマチにでもなった?」

ドロシー「だから私を年寄り扱いするなって……どうも昨夜のアレが響いたみたいでさ…」

アンジェ「あなたがソファーの上で無理な体勢をとるからよ」

ドロシー「…あんな熱っぽくうるんだ瞳で誘って来たのはどこの誰だよ……いてて…」

ベアトリス「おはようございます、アンジェさん、ドロシーさん……」

アンジェ「おはよう、ベアトリス」

ドロシー「よう…おはようさん」(こりゃ昨夜はプリンセスと「お楽しみ」だったな…目の下にくままで作っておきながら、嬉しげな顔をしてやがる……)

ベアトリス「ええ、おはようございます」(ドロシーさん、昨夜はアンジェさんといちゃついていたみたいですね…身体の動きがぎくしゃくしているのに満足そうですし……)

プリンセス「おはようございます、皆さん♪」

アンジェ「おはよう、プリンセス」

プリンセス「ふふ…おはよう、アンジェ」

アンジェ「ええ」

プリンセス「昨晩はドロシーさんと仲よくできた?」

アンジェ「…何の事かしら」

プリンセス「あら…だって昨夜はベアトが私の所に来ていたから、きっとアンジェとドロシーさんとで打ち合わせや道具の手入れに励んでいたものと……それとも、何か違うことを想像していたのかしら?」

アンジェ「いいえ……それより今日はベアトリスと一緒に来たのね」

プリンセス「あら、ベアトは私のメイドなんだから何もおかしいことはないわ…でしょう?」

アンジェ「ええ、そうね…その割にはずいぶんと視線が揺れたけれど……」

ちせ「…おや、皆の衆はもうお揃いであったか。何とも心地の良い晴天で、空気も清冽として爽やかじゃな……二人ともどうしたのじゃ?」

アンジェ「いえ、何でもないわ」

プリンセス「ふふ、おはよう…ちせさん♪」

ちせ「…お早う、プリンセスどの」

プリンセス「そういえば昨日のお菓子は美味しかったわね……今度取り寄せますから、ちせさんもお茶会の作法の確認を兼ねて、一緒に召し上がりません?」(アンジェに問い詰められそうなタイミングで来てくれたものね…♪)

ちせ「お、おぉ…それはかたじけない♪」

ドロシー「……今朝はプリンセスの勝ちだな?」

アンジェ「…余計なお世話よ」

173 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/13(月) 22:45:33.41 ID:P2bM3Ucoo
174 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2018/08/15(水) 02:15:14.90 ID:9QZLFXQb0
…case・プリンセス・ベアトリス×アンジェ「How to become a good spy?」(すぐれたスパイになるためには?)…

…とある日・「白鳩」のネスト…

ドロシー「ひゅぅ…どうやらコントロールもこの間の「予算ちょろまかし大作戦」でフトコロが豊かになったと見えて、申請した物は全部来ているようだぜ?」

アンジェ「そのようね……ドロシーとちせは木箱の中身を確認しておいてちょうだい」

ドロシー「ああ、任せておけよ…ちせ、ナイフとか刃物は任せた。回転砥石ならそっちの隅っこにあるから好きなようにやってくれ」

ちせ「うむ」

ドロシー「それじゃあ、私はハジキをいじくるとしますかね…♪」

ベアトリス「あのぅ…私は何をすれば……」

アンジェ「あなたにはしばらく復習を兼ねた工作員としての基礎訓練、それにより実践的な応用訓練を受けてもらうわ……分かっているとは思うけれど、あなたはまだスパイとしての訓練が足りていない」

ベアトリス「ええ、それは分かってます…」

アンジェ「よろしい。もっとも、そう言う面ではプリンセスも同じだけれど…彼女はあくまでも大事な「情報源」であって、目立つ立場にあることからいっても情報を引き出すような会話術や読唇術、書類の記憶のような「情報の入手」といった分野以外では、工作員としての技術を使う機会にはあまり恵まれない」

ベアトリス「はい」

アンジェ「…けれどその分、自由に動ける「プリンセス付き」であるあなたが情報の受け渡しや入手の仕方を覚えなければならないわ……もちろん、場合によってはプリンセスをお守りすることもね」

ベアトリス「私が…姫様をお守りする…」

アンジェ「そう、責任は重大よ」

ドロシー「そのために私たちが一緒についてきたのさ……お、新型のウェブリー・スコットか…相変わらずバランスがいいねぇ♪」

…ドロシーは趣味半分で、隠し持つには目立ちすぎてスパイに縁のない6インチ長銃身モデルの「ウェブリー・スコット」リボルバーなど、小火器数丁をダメもとで要求していた…が、作戦成功の「ごほうび」ということなのか、どれもきっちり揃えて箱に収まっていた…

アンジェ「その通りよ…本来なら養成所で数か月の速成訓練を受けてもらうのが一番でしょうけれど、「学生」である私たちの立場ではそうもいかない」

ちせ「左様。よってうちらがおぬしの教官になろうというわけじゃな……ふむ、この短剣は悪くないのぉ」

ドロシー「…ま、最低でも自分の身を守れるくらいにはな」片目を細め、壁に向けてウェブリーを構えるドロシー…

ベアトリス「が、頑張ります…!」

アンジェ「結構。では格闘の基礎から…最初は徒手空拳で、それから武器を使った格闘術を練習してもらう」

ベアトリス「はい」

アンジェ「そもそもいくら頑張っても、小柄な私たちが相手のエージェント…しかもたいていは大の男でしょうけれど…そうした連中との体格差をひっくり返すのは容易ではないわ」

ベアトリス「……ですよね」

アンジェ「けれども……別にボクシングみたいにルールがあるわけではないのだから、いくらでも相手の潰し方はあるわ」

ドロシー「そういう事♪……んー、こいつはちょっと引き金が固いな…後でヤスリがけをしないと…」

ベアトリス「アンジェさん、具体的には?」

アンジェ「…膝蹴りを相手の股ぐらにお見舞いする、目を潰す…足の甲を踏みつけるのもかなり効果があるわ。敏捷な動きを要求される近接戦闘で、相手が片脚をかばって動くようになれば、立ち回りで有利になる……」ベアトリスの胸元をつかみ、いくつか動いて見せるアンジェ…

ベアトリス「うわ…容赦ないですね」

アンジェ「こんな世界で騎士道精神でも発揮するつもり?」

ベアトリス「いえ、そういうわけではないですけれど…」

アンジェ「なら自分と、ほかならぬプリンセスのためにもよく体得しておくことね……後はみぞおちに肘を叩きこむ…特に小柄なあなたなら、真っ直ぐ腕を突きだすだけでいいから打ちこみやすい…私も小柄だから実際の場面ではかなり違うでしょうけれど…少しやってみなさい」

ベアトリス「いいんですか、アンジェさん?」

アンジェ「いいからためらわない…ためらうとあなたは誰かに「始末」されることになる」

ベアトリス「!?」

アンジェ「……分かった?」一瞬でベアトリスをねじ伏せ、胸元数インチの所にナイフの刃を突きつけている…

ベアトリス「わ、分かりました…」

アンジェ「よろしい……みんなの命もかかっているのだから、その博愛精神はどこかにしまっておきなさい」

ベアトリス「…はい」

175 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/08/15(水) 02:56:12.89 ID:9QZLFXQb0
ベアトリス「…はっ!」

アンジェ「ふっ」

ベアトリス「えいっ…!」

アンジェ「まだ甘い……もっと全力で叩き込みなさい」

ベアトリス「…やぁ…っ!!」

アンジェ「…っ、よろしい」ベアトリスの突きを受け止めた手を軽く振ると、今度は倉庫の片隅に放り出してあるがらくたを床一面に放り出した…

アンジェ「次は何かを得物にするやり方ね…ドロシー、いい?」

ドロシー「あいよ」

ベアトリス「よろしくお願いします、ドロシーさん」

ドロシー「はは、丁寧でいいじゃないか……ま、覚えて早々に格闘術なんてエラそうなものが出来るわけないし、むしろ中途半端に格闘術なんかを覚えていても相手は玄人だ…返り討ちにあうのがオチだろうな」

ベアトリス「じゃあどうすればいいんです?」

ドロシー「なに…しっかり格闘術が身につくまでは、私が裏町仕込みのダーティな(汚い)やり方を教えておくから、それで相手をノックアウトしちまえばいいさ♪」

ベアトリス「汚いやり方…ですか」

ドロシー「ああ、何しろ「効果はお墨付き」ってやつだからな……さて、一つ質問だ」

ベアトリス「何でしょうか?」

ドロシー「私たちみたいな人間が相手にして、一番苦手に感じるのはどんな奴だと思う?」

ベアトリス「それは……いつかの「ガゼル」みたいな…」

ドロシー「ははーん…ああいう「プロ中のプロ」みたいな奴か?」

ベアトリス「…ええ」

ドロシー「ちっちっちっ…そうじゃないんだな、これが」

ベアトリス「?」

ドロシー「玄人にはそれなりに「ルール」って言うか「原則」みたいなものがあるんだ…例えば相手と格闘するときは「刺し違え」じゃ困るから、絶対に勝つように動く」

ベアトリス「……あの、それは当たり前なのでは?」

ドロシー「ああ、ところが世の中にはその「当たり前」が通じない連中がいるのさ。困ったことにな……じゃあ「そう言う連中」って言うのは誰だと思う?」

ベアトリス「え、えーと…」

ドロシー「ふふーん、まぁ分からないよな……答えはアマチュアと、頭のどうかしている連中だ」

ベアトリス「…なるほど?」

ドロシー「アマチュアとかそう言う連中はどう動くか予想もつかないからな…私たちみたいなエージェントからすると苦手なんだ」

ベアトリス「……じゃあもしかして」

ドロシー「お、察しがいいな…そう、こういうがらくたで玄人のエージェントが苦手な「アマチュア」風にやってやろうってわけさ♪」床に散らかした割れた瓶や折れた椅子の脚、底の抜けたバケツ、曲がったスプーンのようなシロモノを指差した…

ベアトリス「でもこんなのでどうやっ…きゃぁ!?」

ドロシー「どうやって?……こうやってさ」あっという間に羽交い絞めにして、喉元に割れた瓶を突きつけている…

ベアトリス「あ…あっ……」

ドロシー「どうだ?」

ベアトリス「わ、分かりました……」

ドロシー「それじゃあ好きな得物を拾ってみな、私が一番いい「使い方」を教えてやるから♪」

ベアトリス「はい、やってみます」

ドロシー「ああ…どこからでもいいから、遠慮せずにかかって来るんだぜ?」

ベアトリス「はい…いきます!」折れて短くなったモップをつかんでとびかかった…

ドロシー「…やっ!」滑らかな動作でモップを弾き飛ばすと簡単に投げ飛ばし、一気に押さえこんだ

ベアトリス「ぐ…ぐぅっ……!」

ドロシー「悪くない…あと、その人工声帯は役に立つと思うぞ。何しろ喉を絞めても効かないんだからな」伸ばした片腕と胸元を脚で押さえているドロシー…

ベアトリス「ぐぅ…は、放してくださ……い…!」
176 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/08/15(水) 03:38:07.36 ID:9QZLFXQb0
…数時間後…

ベアトリス「あいたた……きっと明日は身体じゅうアザになってますよ…」

ドロシー「それも訓練の成果さ。それにしても私まで傷をもらっちまうとはね…」ベアトリスが振り回した割れた瓶がかすり、手の甲が少し切れている…

ちせ「ふむ「教えるは学ぶの半ば」と中国の故事にもある…人に教えることで学び直すこともある、ということじゃな」

ドロシー「ほーん…なかなかいい教訓だな……アンジェ、私はもういいか?」

アンジェ「ええ」

ドロシー「さてと…じゃあ今度はちせとアンジェだな」

ちせ「うむ……幸いにしてベアトリスと私は背格好もまあまあ似ておるゆえ、教えやすいはずじゃ」

アンジェ「そういう面もあるでしょうね」近寄った木箱には布が敷いてあり、スティレットやダガーナイフから投げナイフ、はたまた普通の包丁にバターナイフ、ペーパーナイフまで並んでいる…

アンジェ「さてと……」ナイフをひと振り取り上げ、ベアトリスに渡した

ベアトリス「え、えーと」良いマナーのお手本になりそうな持ち方で、ぎこちなくダガーナイフを持っている…

アンジェ「そんな持ち方だとあっという間に弾き飛ばされるわよ」しゅっ…と下からナイフを跳ね上げ、弾き飛ばした

ベアトリス「わわっ…!?」

ちせ「ふむ…日本では「隠密」のような連中は短刀をこう持つそうじゃ」刃を横に寝せて構える…

アンジェ「なるほど…だけどナイフならこの方がいいはずよ」刃を隠すように身体の脇に構え、下から突き上げるような動きをしてみせる

ベアトリス「こうですか?」

アンジェ「ええ……ここに丸めた絨毯があるからやってみなさい」もとは緑色だったらしいが、すっかり色あせているボロ布…とさして大差ない状態の絨毯を壁に立てかけ、支えを置いた

ベアトリス「それじゃあ…行きます!」勢いをつけて下から突き上げるベアトリス

アンジェ「結構」

ちせ「うむ、なかなか良いぞ」

アンジェ「ベアトリス…今度は上から突きたててみなさい」

ベアトリス「はい……やあ…っ!?」

アンジェ「分かったでしょう…その絨毯には木の枝が仕込んであって、上からだと刃が弾かれるように作ってあるの」

ベアトリス「どうしてですか?」

アンジェ「あばら骨は上からの異物は弾きやすいけれど、下から突き上げて来るものには弱い…その人体の構造を模してあるわ」

ちせ「……ふむ、まるで解剖学じゃな」

アンジェ「ええ、そうね」

ベアトリス「なるほど…うー、手がジンジンします……」

アンジェ「実際だったら相手を始末し損ねているでしょうね……絶対に上から刃を突きたてようとはしないこと」

ドロシー「もっとも、ベアトリスは小柄だから相手はかわしにくいし…そう言う面でも有利だよな」

ベアトリス「むぅ…あんまりほめられても嬉しくないですね……」

ドロシー「おいおい、小柄ならナイフを使った格闘で懐に潜りこんで脇の下だとか内腿みたいな急所を突けるし、なによりデカブツよりもちょこまか動けるから有利なんだぞ…どこかの誰かさんみたいにな」

アンジェ「…」

ちせ「…むむ」

ドロシー「おっと、失礼」

アンジェ「こほん…とにかく、狙うのは太い血管のある場所か腱のある場所……非力でも相手に与える影響が大きいわ」

ベアトリス「なるほど…ふぅ……」

アンジェ「今日はこのくらいにして、残りはこの絨毯への攻撃を四十回は行うこと…私たちはその間に他の道具を片づける」

ベアトリス「はい」

………

177 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/08/16(木) 02:02:13.43 ID:XD5ZDF/00
…別の日…

アンジェ「…さてと、今日から銃器の訓練も始めていくわ」

ベアトリス「こんなところで、ですか?」

アンジェ「ええ」


…アンジェたちがいるのはとある中くらいの鉄工所で、表向きは煙と火花を散らしながら王国の蒸気機関車や自動車向けの鉄板を作っている…が、実際には共和国がダミー会社を通して作った鉄工所で、普段は注文を通して王国の情勢や工業界の情報をスパイしつつ資金を洗浄(ロンダリング)し、工員の中に入っているエージェントや資金係へ「きれいな」活動資金を提供する…そしてもし王国との関係が悪くなったら鉄に混ぜ物をしたり作業を遅らせたりして王国の兵器生産を遅らせ、また使い物にならなくさせる……アンジェたちがここへ来たのは小火器訓練のためで、どうやっても他の音には聞こえない銃声を、鉄工所の騒音に隠してしまおうという「コントロール」の考えで作られた射撃場が地下にあり、レンガの乾いた地下室に、ぼんやりと上の騒音が響いている…


ドロシー「ここなら音も気にしないで済むし、出入りに使える道も数本はあるからな…」ベアトリス用の小型リボルバーを台に置いた

ドロシー「さて、ドロシー先生からベアトリス君に質問だ…銃のもつ一番の利点は何だと思う?」

ベアトリス「えーと……遠くから相手を狙えることですか?」

アンジェ「まぁ、それもあるでしょうね。ちせが刀の達人でも、刃の届く距離よりも遠くから撃たれては喧嘩にならない」

ドロシー「ああ…が、もっと大事な点が一つある」

ベアトリス「何でしょう?」

ドロシー「どんなチビでも巨人みたいな相手を倒せる…ってことさ♪」

アンジェ「…ドロシーの言う通り。だから人によっては銃の事を「イクォライザー」と呼ぶくらいよ」(※equalizer…本来は電圧などの「等圧器」のこと。転じて「勝負を平等(イコール)にするもの」の意)

ドロシー「とはいえ銃も万能じゃない……特に私たちみたいな世界の人間からすると欠点も多々ある。何だと思う?」

ベアトリス「そうですね…大きくてかさばることですか?」

ドロシー「悪くないな。他には?」

ベアトリス「音が大きいこととか…?」

ドロシー「ああ、そいつは最悪の欠点と言ってもいい……こんなに科学が発達しているんだし、そのうちに銃の音を消すような装置が出来たっていいもんだけどな」(※サイレンサーの発明は1900年代頃…実用され始めたのは第二次大戦の頃から)

アンジェ「けれど、それもまだ正解とは言いにくい」

ベアトリス「じゃあ…傷から撃たれたことが分かってしまう、とか?」

ドロシー「そいつはナイフの傷だって同じさ…あるいは毒だってちゃんと調べれば、たいてい盛られたことが分かる」

ベアトリス「むぅ…何でしょうか……分かりません」

アンジェ「まぁそうでしょうね」

ドロシー「なに、構わないさ……正解は「銃は銃にしか見えない」ってことなんだ」

ベアトリス「?」

ドロシー「たとえばナイフならペーパーナイフそっくりに作ったり、スティレットを万年筆に仕込んだっていい…だけど銃だとそうはいかない」

アンジェ「しかも用途は相手を撃つためのもの…さらに一般人は持っていない」

ドロシー「……つまり相手に銃を持っているのを見られたら」

アンジェ「素早く始末しなさい」

ドロシー「そのためには…」

アンジェ「一発目を命中させる必要がある」

ドロシー「そういうこと……それに、もしかしたら一発目を撃った瞬間に汽笛が鳴るかも知れないし、自動車事故で音がかき消されるかもしれない」

アンジェ「もしかしたら空耳と思って素通りしてくれるかもしれない」

ドロシー「そういうこと…だから一発目を当てられるように練習するのさ。それに初弾で相手がやれなくても、どこかに当たっていれば「五体満足」とはいかなくなる」

アンジェ「そうして動きが鈍ったら…」

ドロシー「とどめの一発をズドン…ってわけさ」

アンジェ「じゃあ、装填されている分を撃ってみなさい」

ベアトリス「…はいっ」

178 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/08/18(土) 11:58:22.49 ID:FcwFPRrG0
ベアトリス「それでは始めますね?」

ドロシー「あいよ。その間に私もいじくった銃をテストしておくかな♪」

アンジェ「まったく…その奇妙きてれつなアイデアの豊富さには頭が下がるわね」

ドロシー「えー、どこがだよ?」

アンジェ「全部よ…私たちのような世界の人間にそんなのが必要かしら?」ドロシーが構えている6インチ長銃身の「ウェブリー・スコット」リボルバーに取り外しのきく木製ストックを付けたピストル・カービン……のようなカスタム銃を指差し、あきれたように首を振った…

ドロシー「もしかしたらいるかもしれないだろ…中距離の精密射撃とか」

アンジェ「…あきれて物も言えないわ」

ドロシー「ちぇっ、いい考えだって言ってくれると思ったんだけどな……トカゲ女にはこの銃の良さは分からなかったか…」

アンジェ「…」パンッ…!

ドロシー「へぇ…射撃の腕は相変わらず大したもんだ♪」バンッ、バン…ッ!

アンジェ「あなたもね……ベアトリス、もう少し腕を真っ直ぐに伸ばしなさい」

ドロシー「そうそう、銃身と的が一直線になっているのが大事なんだ…あんまり照門をのぞきこむのに一生懸命になっちゃダメだぜ?」

ベアトリス「は、はいっ…!」バンッ!

ドロシー「…なかなか上手いもんじゃないか。その調子でもう一回やってみな?」

ベアトリス「はいっ、分かりました…っ♪」

ドロシー「さて、次に取り出しましたるこちらの銃は…♪」

…麻袋の上に乗せてあるのは「リー・エンフィールド」小銃のストックを切り落として銃身の部分も切り詰めたシロモノで、元は人の背丈ほどもありそうな長さの歩兵用ライフルだったものが、三十センチもないくらいの短さになっている…

アンジェ「相変わらずのむちゃくちゃぶりね」

ドロシー「おいおい、何も言わないうちからそれかよ…」

アンジェ「ならメリットを説明してちょうだい?」

ドロシー「へいへい。アンジェなら覚えているだろうけどさ…いつぞやの作戦の時、車に追いかけられたことがあったろ?」

アンジェ「ええ」

ドロシー「あの時は私だったから一発で運転手にぶち込めたけれど、あんな離れ業はそうそうやれるもんじゃないしな…で、これさ」

アンジェ「…これがなんなの?」

ドロシー「見ての通り、リー・エンフィールド小銃をギリギリまで切り詰めたのさ…さすがに.303ブリティッシュの鉛玉を雨あられと喰らったら、どんな車だってひとたまりもないだろ♪」

アンジェ「……どこからそんな発想が出てくるのかしらね」

ドロシー「こいつは新大陸で西部を開拓してるような連中のアイデアさ…長いライフルをいつも背負ってるより、ホルスターに突っこめるこういうのなら持ち運びが便利だってことらしい」

アンジェ「命中率はひどく悪そうね」

ドロシー「なーに、もとより荒事になった時にしか使わないつもりだし、できるだけ箱か何かの上で据え置きにして使うつもりだからな」

アンジェ「…私たちは兵士ではないのだから、そもそも「荒事」にならないように努力すべきね」

ドロシー「まぁな。ま、ちょいと試してみますか…!」バン、バン、バンッ…!

ベアトリス「わぁっ…!?」

アンジェ「なるほど、その早撃ちは大したものね……それこそウェスタンに行けば良かったんじゃないかしら」ボルトの動きが短く速射向きの「リー・エンフィールド」とはいえ素晴らしい速射をみせるドロシーに、あきれつつも眉をあげるアンジェ…

ドロシー「ふふん…お褒めの言葉をどうも♪」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/19(日) 01:47:04.82 ID:PsF6O+bro
180 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/08/20(月) 01:49:10.93 ID:+zWKBcIR0
>>179 読んで下さってありがとうございます。引き続き(更新は遅いですが)お付き合いいただければ幸いです……ここ数日涼しいですし、少しは投下するペースも上がると思いますので…


…見て下さっている皆さま方も、疲れがどっと出やすい時期ですので、お身体には気を付けてくださいませ…
181 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/08/20(月) 02:37:42.38 ID:+zWKBcIR0
…別の日・部室…


ベアトリス「あの、ドロシーさんにアンジェさん……今日の訓練はあれだけですか?」

ドロシー「ああ…あんまり訓練ばっかりだとお前さんも疲れちまうだろうし、何より目つきが鋭くなっていけないからな」

ベアトリス「でも、私は早く姫様をお守りできるようになりたいんです……」

ドロシー「気持ちは分かるが、メリハリって言うのは大事だからな……なぁに、また明日っからビシビシしごき倒してやるよ♪」

アンジェ「そういう事よ…時間もあるし、カードでもやりましょうか」

ドロシー「お、いいね…♪」

ベアトリス「カードですか…私は姫様がお暇な時によく相手をしているので、あまり弱くはないと思いますよ?」

ドロシー「へぇ、それは楽しみだ♪」

アンジェ「カードは良いけれど、何にする?」

ドロシー「うーん…ホイストは人数が足りないし、かといってヴェンテアンはバカでも出来るしな……ポーカーはどうだ?」

アンジェ「なるほど、悪くないわね」

ドロシー「…ベアトリス?」

ベアトリス「いいですよ」

ドロシー「よし、決まりだ♪」

アンジェ「なら用意をするわね」緑色の紗で出来たテーブルクロスを敷き、カードの一揃いを取り出した…

ドロシー「さてと…誰がシャッフルする?」

アンジェ「私の出したカードだから、不正のないように…ベアトリス、あなたがシャッフルしなさい」

ベアトリス「分かりました……はい、出来ましたよ」手札を配り、山札をテーブルの真ん中に置いた…

ドロシー「なぁ…せっかくだし何か賭けようぜ?」

アンジェ「賭けにするのは嫌いよ。純粋に頭脳で楽しめなくなるもの」

ドロシー「それもそうか…ま、ベアトリスもいるしな」まるでベアトリスが小さい女の子か何かのように、噛んで含めたような言い方をするドロシー…

ベアトリス「む……ドロシーさん、それは一体どういう意味ですか?」

ドロシー「いや、別に他意はないさ。ただ……私はベアトリスの実力を知らないし、賭けるものが何にせよ巻き上げちゃ可哀そうだな…って♪」

ベアトリス「あーっ、またそうやって私をバカにして…私だって人並みにカードくらいできますよっ」

ドロシー「いや、だからそう言う意味じゃないって…な?」

ベアトリス「いいえ、何だって賭けようじゃありませんか……アンジェさん、すみませんが賭けにしましょう?」

アンジェ「ふぅ、分かったわ…それじゃあ勝負は一回につき一ペニーで、誰かの負けが一シリングまで行ったら止めにしましょう」

ドロシー「あいよ…えーと、シリング銀貨の手持ちはあったかなー……と♪」

ベアトリス「…むぅ」

アンジェ「それじゃあ私が最初に引くわ」

………
182 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/08/21(火) 10:55:41.17 ID:SwP1jpUQ0
ベアトリス「…これで勝負です!」

ドロシー「あいよ」

アンジェ「ええ…それで、手札は?」

ベアトリス「私はスリーカードですが、お二人は?」

ドロシー「悪いな…フォーカードだ」

アンジェ「ストレート」

ベアトリス「む……分かりましたよ」

アンジェ「いい加減そのくらいで止めておいたら」

ベアトリス「そうやって勝ち逃げする気ですか。そうはいきませんよ?」

ドロシー「って言ってもなぁ……かなり負けが込んでるぜ?」

ベアトリス「むむむ…!」

ドロシー「分かったわかった、もう少しだけ付き合ってやるから」

ベアトリス「…じゃあ引いて下さい」

ドロシー「あいよ……よし、勝負だ♪」

アンジェ「そう。私は降りる…ベアトリスは?」

ベアトリス「むぅ……待ってくださいね…」余裕の笑みを浮かべるドロシーを穴が開くほどじっと見つめて、どうにか気持ちを読み取ろうとする…

ドロシー「ほら、勝負するのかしないのか…どっちだ?」

ベアトリス「…分かりました、降ります」

ドロシー「そうか、ならいただきだな…♪」指でペニー硬貨をはじき上げ、落ちてきた硬貨をパシッとつかまえるドロシー…

ベアトリス「で、手札はどうだったんです?」

ドロシー「…知りたいか?」

ベアトリス「はい」

ドロシー「ブタさ…何にもなし♪」ぱらりと手札を開いてみせる…

ベアトリス「えっ!?」

ドロシー「ふふーん…これだから「ポーカーフェイス」っていうのさ♪」

アンジェ「ドロシーはまだまだだけれど、ね」

ドロシー「私は感受性が豊かなんだ……どこかの冷血動物とは違ってな」

アンジェ「好きなだけ言っていなさい。じゃあ今度は私が…あら、ベアトリスは今ので一シリングに達したようね」

ベアトリス「え?…あ、本当ですね……」

アンジェ「ならこれで「訓練」はおしまいにしましょう」

ベアトリス「むぅ、途中までは結構勝てたんですが…って、訓練?」

ドロシー「ああ、言わなかったっけ?」

ベアトリス「言わなかった……何をです?」

ドロシー「実は今のも訓練だった、ってこと。カードをやりながら表情や捨て札から相手の心理を見抜き、逆にこっちの意図はさとられないようにする読心術の訓練だったのさ♪」

アンジェ「ええ。相手の心を見抜く練習よ」

ベアトリス「じゃあもしかして…」

ドロシー「最初に私が茶化してあおったのもわざとだったのさ……しかしベアトリスはわっかりやすくていいな♪」

アンジェ「まだまだ訓練しないといけないわ」

ドロシー「ま、そういうアンジェも「とあるプリンセス」の事になると目の色が変わるがね…♪」

アンジェ「…」

183 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 07:32:32.70 ID:A3GcO8l/o
184 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/08/23(木) 00:49:51.98 ID:BrWYIsff0
>>183 見て下さってありがとうございます…そろそろアンジェたちがいちゃいちゃし始める頃ですが、もう少々お待ちください……
185 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/08/29(水) 01:40:29.75 ID:+R8ByZDD0
…その日の夜・部室…

アンジェ「さぁ、入って」

プリンセス「ええ。 …この時間は寮が静かでいいわね♪」

ベアトリス「そうですね…それはいいんですが、こんな時間にも訓練ですか……」

アンジェ「この世界では二十四時間、常に神経を尖らていないといけないのだから当然よ。それにプリンセス…もちろんベアトリスも、格闘や射撃よりは情報の入手や隠蔽の仕方を覚える方が重要よ……だから、ある程度まとまった時間が取れるこの時間に呼び出したわけ」

プリンセス「……情報の入手と隠蔽…ある意味ではプリンセスの役割に似ているわ」

アンジェ「ええ、そうでしょうね」(…お互いに「プリンセス」の大変さは良く知っているものね)

ベアトリス「それで、何を訓練するんでしょうか?」

アンジェ「まずは情報の入手ね…この部屋に「機密書類」として適当な手紙が数枚隠してあるわ……二人には十分あげるから、探し出してみなさい」

ベアトリス「…十分ですか?」

アンジェ「言っておくけれど、十分は思っているより短いわよ……では、始め」

ベアトリス「えーと…姫様、どうしましょうか?」

プリンセス「そうね……では左半分はわたくしが調べますから、右半分はお願いね?」

ベアトリス「はい、分かりました…っ!」

………



アンジェ「…」

ベアトリス「うーん…ない……ここにもない…」

アンジェ「…」ちょこんと椅子に腰かけて、冷ややかな目でベアトリスとプリンセスを見ている…

プリンセス「んー…あ、あったわ♪」

アンジェ「まずは一枚ね…あと二分よ」

ベアトリス「えぇっ、全然終わりませんよっ!?」

アンジェ「ならもっと手早く探すことね……あと一分」

ベアトリス「うぅ…むぐぐ……!」アンジェが「機密書類」を小さくたたんで、机の脚の下に敷いて隠してあるのではないかと、飾り棚を動かそうとする…

アンジェ「…終了」

プリンセス「ふぅ、自分では結構「スパイ稼業」が板についてきたと思っていたのだけれど……アンジェからしたらまだまだヒヨコのようね?」

アンジェ「ええ、そうね。それでも一枚見つけただけ、もう一匹の「ヒヨコ」よりはマシだけれど…ベアトリス」

ベアトリス「は、はい…」

アンジェ「あなたの目は何を見ているの? 眼科に通った方がいいんじゃないかしら?」

ベアトリス「そんなこと言ったって…全然見つからないんですよ」

アンジェ「じゃあこれは何?」テーブルの上に広げてあった教科書とラテン語の書きとり用紙…に重ねて置いてある「機密書類」をひらひらさせた…

ベアトリス「えっ、そんなところに…!?」

アンジェ「ふぅ…ベアトリス、あなたにはあれだけ人の心理について教えたのに……これでは素人もいい所よ」

ベアトリス「…ごめんなさい」

アンジェ「どんな素人だって、まずは鍵のかかった引き出しや隠し戸棚のありそうな場所を真っ先に探そうとするわ……そもそも、手際よく処分する必要がありそうなものを机の下や鍵のかかった引き出しにしまうとでも?」

プリンセス「言われてみると……私が見つけたのも本棚に軽く挟まっていたわね」

アンジェ「機密書類を隠す時はそういう具合に隠すものよ…ベッドの下なんかに隠したりはしないの」

ベアトリス「でも、棚のカシェット(隠しスペース)は?」

アンジェ「あれは「素人に」秘密を探し出されないためのものよ…例えば愛人からの恋文とか、ちょっとした隠し財産…そんなものを隠すにはいいけれど、玄人には通用しない……そもそもカシェットのある家具は年代やスタイルが限られているし、隠し場所もある程度目安があるから、むしろ慣れた人間は探すのに時間がかからない」
186 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/08/31(金) 02:23:38.00 ID:hyGYczk00
アンジェ「…今度は暗号やメッセージを書く時のコツについてよ……二人とも、座って」

プリンセス「アンジェったら、何だか先生みたいね…♪」

アンジェ「からかわないでちょうだい」

プリンセス「分かっているわ……どうぞ続けて?」

アンジェ「なら…プリンセス、適当に予定を「わからないよう」書き起こしてみて」卓上の便箋をプリンセスの手元に滑らせた

プリンセス「ええ♪」流麗な字体でさらさらと書き上げ、アンジェに渡した…

アンジェ「次はベアトリス。あなたの番よ」

ベアトリス「はい」

アンジェ「…さてと、まず「手紙の中身」うんぬんの前に言っておくことがあるわ」

ベアトリス「何でしょうか…?」

アンジェ「書き物をしたときはその下の紙を、少なくとも数枚は捨てなさい…それも丸めて捨てるのではなく、きっちり灰になるまでランプなり暖炉なりで焼き捨ててしまうこと……いい?」下に敷かれていた便箋を軽く鉛筆でこすると、書いた文字が白いシルエットになって浮かび上がった…

ベアトリス「うわ、はっきり読めますね…」

アンジェ「分かった?」

ベアトリス「はい、分かりました」

アンジェ「結構……では中身の採点にとりかかるわ」

プリンセス「…どうかしら?」

アンジェ「なかなか良く書けているわ……「明日は『茶畑』で畝をつくり、昼過ぎには『アシュレー』、『ディック』、『バーク』、『チャールズ』氏とお茶…夕食後は『北』の舞踏会」…及第点ね。ベアトリス」

ベアトリス「はいっ」

アンジェ「今のを解読してみなさい」

ベアトリス「えーと…『茶畑』は分かりませんが、おそらく学校の事ですよね……『アシュレー』や『ディック』は私たちの頭文字を使って男性の名前にしたものかと思います……最後の『北』の舞踏会は…ごめんなさい、見当もつきません」

アンジェ「よろしい。ただしもう少し頭を働かせることね…『茶畑』は学校の事だけれど、これは制服の緑色が並んで、きっちり列になって授業を受けている様子からね」

プリンセス「ええ」

アンジェ「人名はベアトリスの言った通り私たちの名前をもじったもの…『北』の舞踏会はホークスリー卿のことね」

プリンセス「当たりよ、アンジェ♪」

ベアトリス「……なんでホークスリー卿が「北」なんですか?」

アンジェ「大鼻のホークスリー卿を『鼻』(nose)と『北』(north)で掛け言葉にしたのね…どう?」

プリンセス「ええ、正解♪」

ベアトリス「あぁ…なるほど……」

アンジェ「お次はベアトリス、あなたのよ…「午前中は『S』で過ごす…昼下がりには『鹿』と『天使』、『お人形さん』とお茶会を開く……夕方からは『鹿』のお世話をし、夜には『天使』からオリーヴの枝を受け取る……一見するとおとぎ話の好きな子供が書いた可愛い文章に見えるし、なかなか悪くないわ」

ベアトリス「そ、そうでしょうか///」

アンジェ「そういう性格や身の丈に合った文章で暗号が書けると、読まれても違和感がないからいいわ…プリンセス、この暗号は解ける?」

プリンセス「やってみるわね……えーと、『S』は学校(school)……で、アンジェが『天使』(angel)ね…」

アンジェ「少し安直だけれど、始めた段階だからまぁいいでしょう…他は?」

プリンセス「うーん…あ、ドロシーさんが『お人形さん』ね?」

アンジェ「そうね…ドリー(Dolly…ドロシーの愛称)から『お人形さん』(doll)と言いたいのでしょう…どう、ベアトリス?」

ベアトリス「あ、はい……ドロシーさんは『お人形さん』には見えませんし、二重の意味で暗号にいいかな…って」

…ドロシーの私室…

ドロシー「……えっくし!」

………

アンジェ「で、プリンセスが「大事な人」(dear)だけに『鹿』(deer)…なかなか大胆な告白ね、ベアトリス」

ベアトリス「///」

プリンセス「あら…♪」

アンジェ「まぁいいわ…で、「白鳩」の訓練だから『オリーヴの枝』(※聖書「ノアの方舟」から)と……なかなか上手いものよ」
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/09/01(土) 04:19:32.20 ID:7/6OjVoDo
188 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/09/02(日) 02:32:29.93 ID:28KLdtNO0
アンジェ「さて次は…「情報の引き出し方」ね……」

ベアトリス「引き出し方、ですか」

プリンセス「つまり会話術…って言う事かしら?」

アンジェ「それもあるわ。他にも脅迫、懐柔、情に訴える……相手次第でやり方はさまざまね」

ベアトリス「それで、今日はどれを学ぶんですか?」

アンジェ「そうね…そこは一番成果を上げやすい「ピロートーク」(ベッドでの仲睦まじいおしゃべり)かしら」

プリンセス「まぁ…♪」

ベアトリス「///」

アンジェ「ピロートークともなれば、だいたいがベッドで二人きり…しかもその前に「秘密の関係」を持ったともなれば、誰だって舌が滑らかになるものよ……」

ベアトリス「そ、そんなこと言ったって…!」

アンジェ「別に恥ずかしがることはないわ…任務だもの」

ベアトリス「で、でも…///」

アンジェ「もっとも……あなたみたいな純粋な娘はすれっからしの貴族娘なんかには受けがいいわ。大事にしておきなさい、ベアトリス」少しだけ微笑みかけた…

プリンセス「アンジェ、こればかりは私には縁がなさそうね?」

アンジェ「でもないわ…プリンセスが無邪気な様子でベッドに連れ込んで、そばでベアトリスが聞き耳を立てたっていい」

ベアトリス「…っ」

アンジェ「言いたいことは分かるわ、ベアトリス…私も最初の時は、しばらく自分が薄汚れた気分になったもの……」

ベアトリス「いえ、私はいいんですよ…でも姫様に…」

アンジェ「だからこそよ。プリンセスとお付き合いするような連中なら何かしら特別な情報を持っている……いわば「金の卵を産むガチョウ」よ」

プリンセス「でもそんな情報源だと、私から漏れたことが分かってしまうのではないかしら?」

アンジェ「ふふ、鋭いわね……別に情報って言うのは、必ずしも新しい物を仕入れるばかりが能じゃないわ…裏付けだって大事だし、必ずしもすぐに使うわけでもない……「金の卵が孵る」よう、手元で温めてやることもあるわ」

プリンセス「難しいのね」

アンジェ「そうね…だけど私たちの立場でそこまで考える必要はない。せいぜいコントロールが頭を抱えて悩めばいい話よ」

ベアトリス「あの、それで「訓練」…って///」

アンジェ「…私がどこかの貴族令嬢か何かの役をやるから、二人がかりで私を「愉しませて」みなさい……それが済んだらいろいろ話しかけて、何か情報を引き出してみること」

ベアトリス「そ、そんなこと…っ///」

アンジェ「できないとは言わせないわ……だいたい、私だって好きでこんな色情狂みたいな真似がしたいわけじゃない」

ベアトリス「で、ですよね…ごめんなさい」

アンジェ「謝らなくていいわ。それに、私に出来ることが貴女にできないとも思えない」

ベアトリス「……そ、そうですか?」さりげない口調でアンジェにおだてられ、頬を赤くするベアトリス…

プリンセス「でも…ちょっと恥ずかしいわね、アンジェ?」

アンジェ「私もよ、プリンセス……でも練習だから仕方ない。いろいろ試してみてちょうだい」

プリンセス「そう…そうね」(…ふふ、アンジェの弱い所を調べるいい機会になりそうね♪)

アンジェ「じゃあ寝室でベッドに座って、たわいないおしゃべりをするところから……」
189 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2018/10/16(火) 09:29:26.01 ID:G+ViQjL70
復活おめでとうございます…また時々投下していくので、なにとぞお付き合いください
190 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/10/17(水) 01:36:50.80 ID:cpTpn7xV0
プリンセス「…ふふっ、それで?」ベッドの上でたわいないおしゃべりに興じる三人…そしてアンジェはいつもの冷めたような態度ではなく、貴族令嬢らしい気位の高さをかもしだしている…

アンジェ「ええ、わたくしはこう言って差し上げたのです…「貴女に興味はありません」と」

プリンセス「まぁ、おかしい♪ …ですが、貴女もお付き合いしている方などいらっしゃるのでしょう?」

アンジェ「ならよいのですが、わたくしは家の者が厳しくて…少なくとも伯爵令嬢以上でないと門前払いですの」

プリンセス「まぁ…では今までよい縁談はなかったのですか?」

アンジェ「ええ。 …わたくしだっていい年頃ですし、このままオールドミスになるのは嫌ですわ」

プリンセス「…とはいえ家の方がよいご婦人を紹介してくれないのでは、難しいですわね?」

アンジェ「そうなんですの……それに結婚までとは言わずとも、わたくしとて「一人の女」として誰かに愛されてみたいですわ///」

プリンセス「……なら、わたくしで試してみてはいかが?」

ベアトリス「!?」

アンジェ「そんな、おそれ多いことですわ…!」

プリンセス「ふふ、大丈夫…内緒にしておいてあげますから♪」

アンジェ「…本当に?」

プリンセス「ええ。わたくしとて、ときおり身体が火照って仕方ない時がありますもの…ね?」

アンジェ「で、でしたら…お相手をお願いいたしますわ」

プリンセス「ふふっ、これは二人だけの秘密ですよ……ちゅっ///」

アンジェ「んっ、ん…んむっ、ちゅぅ……///」

プリンセス「んっ、ふ…んくっ、ちゅぅぅ……れろっ、ちゅぅ♪」

アンジェ「んふっ、んっ……んぅぅ、ぷは…っ///」

プリンセス「…ふふ、今度はベアトも交ぜてすることに致しましょう♪」

アンジェ「そ、そんなはしたない事…きゃあ!?」

プリンセス「案ずることはありませんよ…護衛は控えの間にいるだけですし、あの分厚い扉なら音も漏れませんわ♪」

アンジェ「そ、そうではなくて……んくっ!?」ちゅるっ、にゅる…ちゅぽ……っ♪

プリンセス「…ぷは♪」

アンジェ「はぁ、はぁ……プリンセスが、わたくひに…こんな……///」

プリンセス「ふふ…では、失礼して……♪」とんっ…とアンジェをベッドに突き倒すと四つん這いの姿勢で近寄っていき、胸元のデコルテに手を差し入ると柔らかな乳房を揉みしだく…

アンジェ「んっ、はぁぁ…っ///」

プリンセス「ベアト、よかったら貴女も♪」

ベアトリス「はい、姫様…ちゅぅ、んちゅ……ちゅぅぅ///」脇から顔を近づけ、そっと唇を沈めていく…

アンジェ「んぅぅ……あむっ、ちゅぅ…ちゅむ……///」

プリンセス「あら、先端が固くなって…気持ちいいのかしら♪」

アンジェ「んむぅ…むぅ///」

プリンセス「あらあら。唇をふさがれているから、何を言っているか分からないわね…♪」

アンジェ「んっ、んっ…んっ、んぅぅ…っ!」

プリンセス「ふふ、「びくんっ」って身体が跳ね上がって…まるでお魚のようね」

アンジェ「ぷはぁ…はぁ、はぁ……♪」

ベアトリス「アンジェ様…お口の中、とっても熱くてよろしかったですよ♪」

プリンセス「ふふ、それじゃあ今度は身体の方を……ね、ベアト♪」そう言いながら小机の上に置いてあった羽根の扇をそっと差し示し、目配せをした…

ベアトリス「…はい♪」

191 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/18(木) 00:10:25.82 ID:yB1MjjeUO
スレ復活後の投下が早くて嬉しい
192 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/10/18(木) 02:00:17.93 ID:fgJLZwrk0
>>191 こちらこそ、早々にコメント下さって嬉しいです…サーバーダウンの間、次の回のあらすじとシチュエーションだけは多少考えておりましので、この回が終わったら少しだけ投下が早くなる……かもしれません
193 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/10/18(木) 02:29:45.63 ID:fgJLZwrk0
プリンセス「それじゃあ脱がせてあげます…ね♪」

アンジェ「ふぁぁ…っ、あぁ…っ///」

プリンセス「ふふ、白くて柔らかくて……まるで陶器のような肌ね♪」

ベアトリス「…姫様」

プリンセス「…準備できた?」

ベアトリス「…はい♪」

アンジェ「何の内緒話をなさっているの…っ、早く、わたくしを……っ///」

プリンセス「ふふ、焦らないで…♪」たたんだままの洋扇で、さわさわと脇を撫で上げる…

アンジェ「んっ、あふっ…何を……っ!?」

プリンセス「ふふ…ベアトも、アンジェさんを撫でてあげて?」

ベアトリス「はいっ♪」足指の間に羽根の飾り物を滑らせてくすぐる…

アンジェ「あっひゃぁぁ!? ひうっ、ひぃぃ…んっ///」

プリンセス「ふふ、弱いのはここかしら…それとも、こっちかしら?」

アンジェ「ひぅぅんっ、あひぃぃっ…はひっ、くすぐった……はひゃぁぁっ///」

プリンセス「んー、やっぱり脇腹が一番みたいね♪」

アンジェ「やめ…ひぃぃっ! これ以上…っ…はひゃあっ……くすぐられたら…ひぃぃ…っ、息が……あひぃぃっ///」

ベアトリス「…」

プリンセス「どうかしたの、ベアト?」

ベアトリス「……アンジェさんの身悶えている様子…癖になりそうです///」

プリンセス「ふふ、ベアトもアンジェの可愛い所が分かったみたいね…そうねぇ、ここがいいかしら?」

アンジェ「いっ、あぁぁっ…ひぐぅぅっ、ひゃあぁっ!」

プリンセス「んふふっ…それじゃあ今度は舌で直接……♪」

アンジェ「あっ、ひぅぅ…っ♪」とろ…っ♪

ベアトリス「…じゃあ私は反対側を……れろっ♪」

アンジェ「ひっ、んあ゛ぁぁ…っ!!」びくっ、びくんっ…!

プリンセス「ふふふ…こんなに先端を堅くして……あむっ♪」こりっ…♪

アンジェ「ひっ、あはぁぁ…っ!?」ぷしゃぁぁ…っ♪

ベアトリス「わぁ、姫様がまたがっているのに身体が浮き上がりましたよ…そんなに気持ちいいですか、アンジェ・さ・ん?」

アンジェ「はひゃぁぁっ、ひぃぃっ…はひゅっ、はひっ♪」

プリンセス「このままだと窒息してしまうわね…しばらく息を吸わせてあげましょう♪」

ベアトリス「はい」

プリンセス「さぁアンジェ…好きなだけ息をしていいのよ?」

アンジェ「はひっ、ふぅ、はぁ…」

プリンセス「…ただし、私から「間接的に」だけれど♪」あむっ…ちゅぅぅっ♪

アンジェ「んふぅっ!?」

プリンセス「んっ…ふー♪」

アンジェ「ぷはぁ…けほ、こほっ!」

プリンセス「どうかしら…私の吐息は?」

アンジェ「はふぅ、ふぅ……はぁ、はぁ、はぁ…///」

プリンセス「あらあら、返事も出来ないほど?」

ベアトリス「それだけ姫様が良かったんですよ…きっと♪」

プリンセス「あら、ベアトったら嬉しい事を言ってくれるわね♪」

………
194 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/10/19(金) 10:28:50.36 ID:UdYXhy/p0
…廊下…

ドロシー「ふわぁ、道具の手入れもしたし後は寝るだけだ…な?」

ドロシー「…何か喘ぎ声が聞こえるな……」鍵穴からそっと中を覗き込む…

アンジェ「あっ、あんっ…ひぐぅぅっ!」

ベアトリス「あーあ、こんなにぐしょぐしょに濡らしちゃって…アンジェさんも普段冷静な割にはいやらしいんですね♪」

プリンセス「ふふっ。ダメよベアト…あくまでも最初に決めた「貴族令嬢の口をゆるくする」ためのお芝居を続けないと♪」

ベアトリス「はい、姫様♪」

ドロシー「……おいおい、嘘だろ? あのアンジェがいいようにもてあそばれてやがる…こりゃ明日は雨だな…」

ちせ「…ドロシーどの、そんなところで一体どうしたのじゃ?」

ドロシー「ちせか…まぁ見てみろよ。ちょっと「刺激は強め」ってやつだが♪」

ちせ「?」

ドロシー「ほら、代わってやるから…」

ちせ「かたじけない。しかしドロシーどのをそこまで興がらせるような事とは……っ!?」

ドロシー「な?」

ちせ「こ、これは確かに刺激的じゃな…///」

ドロシー「…アンジェのあんなとろけた顔を見られる機会なんて、隕石に当たるより少ないからな……よく見ておけよ?」

ちせ「う、うむ…それにしても……」

ドロシー「おー…可愛い顔してベアトリスも意外とえげつない事をするじゃないか♪」

ちせ「あ、あれは……指が二本は入っておるぞ?」

ドロシー「ああ…もっとも、ベアトリスの指なら細いから三本はいけるだろうが……あのぎこちない感じもたまらないよな♪」

ちせ「///」

ドロシー「……のぞいていたら私までおかしな気分になってきた……ちせ、ちょっと付き合わないか?」

ちせ「…あ、あんなことをするのか?」

ドロシー「なに、あそこまで変態じゃないさ…な、いいだろ?」

ちせ「そ、そうじゃな……たまには二人で寝るのも好いかもしれぬ…///」

ドロシー「それじゃあ行こうぜ……にしてもちせ、お前…もうすっかりとろとろじゃないか♪」くちゅ…っ♪

ちせ「み、みなまで申すな…///」

ドロシー「なぁに、気にするなって……今夜は一晩中、翼なしで空を飛ばせてやるよ♪」

ちせ「…白鳩だけに、か?」

ドロシー「ははっ、そりゃまたずいぶんとただれた白鳩だな…まぁいいか♪」ちせの腰に手を回すドロシー

ちせ「う、うむ…///」もじもじと内腿をこすり合わせ、顔を赤らめる…

ドロシー「ふーん、ふーふーん…これで明日っからアンジェをおちょくるネタが出来たな♪」

プリンセス「……あら、どうしたのアンジェ?」

ベアトリス「あははっ、もう反応も出来なくなっちゃいましたぁ?」

アンジェ「…い、いえ……んっ、くぅぅ///」(…ドロシー、間違いなくのぞいていたわね……私が絶頂しているからって気づかないと思ったら大間違いよ…)

プリンセス「?」

ベアトリス「ほら、姫様もぼーっとしていないで…アンジェさんをもっとよがらせちゃいましょうよ♪」

プリンセス「あ、あぁ…そうね♪」


………
195 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2018/10/21(日) 00:57:45.49 ID:yNAwYn3y0
…case・ドロシー×ベアトリス「The Sweet whisper」(甘いささやき)…

…ある日・部室…

ドロシー「…なぁアンジェ、今回のは上物だぜ?」

アンジェ「そうね…だとしてもあまりくすねるのは止めておきなさい」

ドロシー「なんだよ。ちょうど切らしてたところだし、少しくらいちょろまかしたっていいじゃないか…どうもこいつを切らすと頭の回りが遅くなって仕方ないんだ」

アンジェ「だからと言ってとり過ぎると身体に毒よ」

ドロシー「へいへい、分かってますって…それにしてもこいつは結晶もきれいだし、そこらの物とは純度が違うな」

アンジェ「そうね、最近は精製の悪い物が多く出回っているから…珍しいわ」

ドロシー「だな…どれどれ」指先を軽く湿らせると白く細かい結晶に触れ、舌先にのせる…

ドロシー「ん、んーっ…こりゃ上物だ♪ …アンジェも少し試してみろよ?」

アンジェ「結構よ…貴女みたいに中毒したくないわ」

ドロシー「へっ、中毒とはおっしゃいますね」

アンジェ「機会さえあればそうやっているんだもの…「中毒」っていう言い方が一番ぴったりよ」

ドロシー「相変わらず可愛い顔して容赦ないな」

アンジェ「当然でしょう。別に私たちのものじゃないのよ」

ドロシー「なぁに、どのみちそうなるって…だいたいポーツマスの港で荷揚げしてここまで持ってきておきながら「壁の監視が厳しくなったからモノが動かせなくなって宙に浮いた」なんて、マヌケもいい所じゃないか」

アンジェ「まぁそうね。でも近頃はフランスからコニャックやシャンパン、レース生地だとかを密輸入する業者が多いし、それに相乗りする形でフランスのスパイが次々とロンドンに潜入してきているから…自然と王国の警備も厳しくなってきているのよ」

ドロシー「ああ…にしたってさ」

アンジェ「…どっちにしてもこの一袋はあなたが全部「味見」してしまうでしょうね」

ドロシー「はは、かもな…でもベアトリスやちせだってこいつがお気に入りなんだぜ?」

アンジェ「お願いだから過剰摂取だけはさせないようにね」

ドロシー「なぁに、あの二人の使い方なんて可愛いものさ…ま、何はともあれ今度の「お茶会」の時は遠慮せずに使えるけどな」

アンジェ「ふぅ…私はあんまり好きじゃないわ」

ドロシー「はは、いかにもアンジェらしいな。 …私は貧乏暮らしだったからさ、この「白い方」は滅多にお目にかかれなくてね……いつか上流階級の仲間入りでもしたら、それこそ浴びるように使ってやろうと思ってたのさ」

アンジェ「…で、ご感想は?」

ドロシー「最高だね♪」
196 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/10/21(日) 00:59:49.55 ID:yNAwYn3y0
アンジェ「まったく……白砂糖一つでそんなに愉快になれるのは貴女くらいなものよ?」

ドロシー「だってさ、一ポンドの袋でひとつ、ふたつ、みっつ…二ダースはあるんだぜ、これで笑いが止まらない方がおかしいってもんだ」

アンジェ「全く、あなたと一緒にいると毎日が愉快でいいわ…」

ドロシー「お褒めにあずかりどうも。 …しかしこの砂糖袋の山、一体どこに隠すかねぇ」

アンジェ「砂糖を舐めて頭の回りが良くなったんでしょう…少しは考えてみたら?」

ドロシー「それが思いつかないから困ってるのさ。ここにあったんじゃあ邪魔で仕方ないし」

アンジェ「先に言っておくけれど、ネスト(拠点)に置くのは却下よ」

ドロシー「そりゃそうだろうさ…ネストがネズ公のネスト(巣)になっちゃ困る」

アンジェ「結局はこの辺りに置くしかないわね…とりあえず全員の部屋に数袋ずつ分けておくことにしましょう」

ドロシー「だな。ちなみに隠し棚の…」

アンジェ「却下」

ドロシー「おい、まだ何も言ってないだろ」

アンジェ「隠し棚にそんなスペースはないわ…貴女もよく知っているでしょう」

ドロシー「そりゃそうだが、薬包サイズの小分けにしたらしまえるんじゃないか…って」

アンジェ「紛らわしいから駄目よ。それにそもそも包み紙がないわ」

ドロシー「あー、言われてみれば…」

アンジェ「とにかく、消費することに関しては貴女に任せておけば良さそうね」

ドロシー「ああ、任せておけよ。それじゃあしまう前にもうひと舐め…っと♪」

アンジェ「…」

………

197 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/21(日) 11:39:01.59 ID:ap07g4h/O
白い粉..おくすり..委員長..
リク出来ればファーム時代に女教官から「プロの尋問」に耐える訓練を受けるアンジェ
198 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/10/22(月) 02:02:19.12 ID:updxeWrP0
>>197 …委員長は浮かばれないキャラだったので、そのうちにファーム時代のドロシーとで楽しげなエピソードを入れてあげたいですね。あと、リクエストの方は承りました…みなさんクールなアンジェがとろっとろになるの好きですよね(笑)

…また、そのうちに夢オチみたいな小ネタでドロシー×ガゼルの尋問でもやろうかとは思っています…あとは途中で出てきた目つきの悪いエージェント(名前が出てこない…)を「白鳩」全員でめちゃくちゃにするとか…


…ちなみにリクエストは(あんまり残酷なのとかはNGですが…)時間こそかかりますが、頂いたものは書きますので…お待ちください
199 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/10/22(月) 02:09:30.92 ID:updxeWrP0
…別の日…

アンジェ「さてと…今回の任務は、王国外務省の機密書類を手に入れる事よ」

ドロシー「ふーん?」

アンジェ「中身は王国にとって「疑わしき人物」のリスト…こちらからすれば、あちらの目に止まっているエージェントを知りうる貴重な書類ね」

ドロシー「なるほど…とりあえずはそれを盗み出せばいいんだな?」

アンジェ「その通り。 …とはいえ外務省に忍び込むとなると一筋縄ではいかない」

ちせ「確かにそうじゃな」

アンジェ「それに管理の行き届いている外務省から公文書を盗み出したりしたら、あっという間にこちらの目的が筒抜けになってしまう…それではやぶ蛇よ」

ドロシー「ああ。それこそ『大間抜け』ってやつだ」

アンジェ「そうね…けれど、一つ手がある」

プリンセス「そうなの?」

アンジェ「ええ…王国外務省はロンドンの本省と、リヴァプール、カンタベリー、ドーバー、ポーツマス、ウェイマスといった港町にそれぞれ出先機関を持っているわ…そしてそうした出先機関へは、王国にとって不都合な人間や積荷を水際で押さえるために、本省から数日ごとに更新される「ブラックリスト」の写しが送られている」

ドロシー「そいつをいただくのか?」

アンジェ「そういう事よ…ただし、これも簡単という訳ではないわ」

ドロシー「だろうな」

アンジェ「まず、機密文書の送付はいつなのか。もっとも、これは王国側に潜りこんでいる低レベルのエージェントでも探り出せる…何しろ機密情報を運べるほど信頼されているアタッシェ(伝達吏)は外務省と言えどもそう多くない」

ドロシー「なるほど…ちょいと事務室をのぞきこめば分かるわけだ」

アンジェ「ええ。だけど問題はそれだけじゃない」

ちせ「護衛じゃな?」

アンジェ「その通り…ちなみに護衛につくのは四人乗りのロールス・ロイスかマーモン・ヘリントンの乗用車が一台。たいていは防諜部のエージェントだけれど、時々スコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)の「スペシャル・ブランチ」(特別部)から私服が派遣されることもあるそうよ」

ドロシー「なるほど…こっちが本気でやるなら始末できない相手じゃない。とはいえ騒ぎを起こして奪い取るのはスマートじゃない…ってところか?」

アンジェ「ええ」

ドロシー「じゃあどうする…出先機関に忍び込むか?」

アンジェ「本来なら、それが一番いい手になるでしょうね…」

ドロシー「…何だか気に入らないような口ぶりだな」

アンジェ「ええ…警備の甘い出先機関に忍び込むのは一見すると悪くない案だけれど、問題は王国防諜部も同じことを思いつくだろう…ってところね」

ドロシー「まぁ連中もそれで飯を食ってるんだもんな…そうなると別の手が必要なわけか」

アンジェ「ええ…今日はそれを考えるために集まってもらったの」

ドロシー「なるほど、じゃあ一つみんなで頭をひねろうぜ?」

………



ドロシー「よし、それじゃあまとめるとこうなるな…あっという間に御用になっちまうから、外務省本省に忍び込むのは論外」

ベアトリス「そうですね」

ドロシー「…かといってあちこちにある外務省の事務所を狙うのは見え透いている…防諜部に秘密警察、スペシャル・ブランチ……まぁ何でもいいが、とにかく私たちの天敵みたいな連中が歓迎委員会をこさえて、手ぐすね引いて待っているわけだ」

ちせ「うむ」

ドロシー「となると、残された手段は文書便の車列…ってことになるよな」

アンジェ「そうなるわね。ただしそれも荒っぽい手段ではなくて、離脱するまで相手にさとられることなしに…よ」

ドロシー「さぁ難しくなってきたぞ……護衛車は一台きりとは言え、それをどうやってアタッシェの乗った車と分離させるかだな…」皿の上にあるきゅうりのサンドウィッチを二つ並べて車列に見立てると、あごに手をあてた…

アンジェ「そう、それもできれば工作だと思われないような手段でやりたいわね」

ドロシー「難しいな……だけどできないレベルじゃない」

アンジェ「ええ」

ベアトリス「やっぱり車に細工をする必要があるんでしょうか…」
200 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2018/10/24(水) 02:02:38.31 ID:sSRp1DY20
ドロシー「ああ。だけど細工をするにしてもすぐばれるようじゃ駄目だし、何より外務省を出てすぐに停まってもらっちゃ困る……できれば目的地のすぐそばで、混みあっている街中がいい」

アンジェ「そうね」

ベアトリス「うーん…だとしたらどうすれば……」

ドロシー「事故に見せかけて護衛車を止めるか?」クローテッドクリームのたっぷりついたスコーンを、サンドウィッチの間に割り込ませた…

アンジェ「いいえ、衝突させるのはなしよ……あ、ちょっと待って」

ドロシー「どうした?」

アンジェ「…そのクローテッドクリーム」

ドロシー「クリームがどうした?」

アンジェ「それよ、その手を使いましょう」

ドロシー「おいおい。一人で納得してないで、なんのことだか説明してくれよ」

アンジェ「分かっているわ…ドロシー、外務省の出先機関があるのはどんな所?」

ドロシー「そうだな…ドーバーにカンタベリー、ポーツマス……どこも港町だ」

アンジェ「そう、外務省の出先機関があるのはどこも港町…これはいいわね?」

ドロシー「ああ」

アンジェ「そうした港町に多く住んでいるのは?」

ドロシー「あー、たいていは地元の漁師か市場の競り人、行商の連中…船絡みの日雇い労働者に、魚の切れっぱしでどうにか食いつないでいる貧乏人、あるいはそんなのを相手にしている安っぽいパブ(居酒屋)の連中…近頃じゃあ中国人の苦力なんかもいるよな」

(※苦力(クーリー)…たいてい中国人の「荷運び人」を意味するが現在は差別的用語…が、舞台が十九世紀末なので当時の表現として用いる)

アンジェ「結構。それじゃあいま言った漁師や労働者…共通点は?」

ドロシー「そりゃあ、誰もかれも教会のネズミみたいに貧乏ってことさ…なんだ、金でも撒いて車列を襲わせるか?」

アンジェ「惜しいわね…お金を使うところまでは同じよ」

ドロシー「ほう?」

アンジェ「ドロシー、昨日のイワシ相場は?」

ドロシー「ロンドンで一ポンドあたり三ペンスってところだ、浜値ならもっと安い…なんだ、魚屋に商売替えか?」

アンジェ「そうなるかもしれないわ」

ベアトリス「あの…話が見えてこないんですが」

ドロシー「いや、待てよ…アンジェ、お前まさか」

アンジェ「ええ」

ドロシー「なるほどなぁ……いやはや、そいつは冴えてるぜ♪」

ベアトリス「あ、あの…だからどういう……?」

ドロシー「おいおい、せっかくなんだから頭を使って考えてみろよ…な、アンジェ?」

アンジェ「ええ…思考能力の訓練になるわ」

ドロシー「あと十秒で分からなかったら、スコーンは私がいただくからな♪」

ベアトリス「えー!?」

プリンセス「あ、分かったわ…♪」小声で耳元にささやきかける…

アンジェ「…そう、正解よ」

ちせ「ふむ……ではあるまいか?」

ドロシー「おっ、その通りさ…さて、十秒たったな」

ベアトリス「ち、ちょっと待って下さいよぉ!」

アンジェ「まぁいいわ…とにかく思いついたことを言ってみなさい?」

ベアトリス「え、えーと……私たちの誰かが魚を運んでいる馬車を転覆させて、護衛車を足止めする…でしょうか///」

ドロシー「……ふぅ」

ベアトリス「や、やっぱり違いますよね…」
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/10/24(水) 02:03:10.23 ID:sSRp1DY20
ドロシー「ああ。だけど細工をするにしてもすぐばれるようじゃ駄目だし、何より外務省を出てすぐに停まってもらっちゃ困る……できれば目的地のすぐそばで、混みあっている街中がいい」

アンジェ「そうね」

ベアトリス「うーん…だとしたらどうすれば……」

ドロシー「事故に見せかけて護衛車を止めるか?」クローテッドクリームのたっぷりついたスコーンを、サンドウィッチの間に割り込ませた…

アンジェ「いいえ、衝突させるのはなしよ……あ、ちょっと待って」

ドロシー「どうした?」

アンジェ「…そのクローテッドクリーム」

ドロシー「クリームがどうした?」

アンジェ「それよ、その手を使いましょう」

ドロシー「おいおい。一人で納得してないで、なんのことだか説明してくれよ」

アンジェ「分かっているわ…ドロシー、外務省の出先機関があるのはどんな所?」

ドロシー「そうだな…ドーバーにカンタベリー、ポーツマス……どこも港町だ」

アンジェ「そう、外務省の出先機関があるのはどこも港町…これはいいわね?」

ドロシー「ああ」

アンジェ「そうした港町に多く住んでいるのは?」

ドロシー「あー、たいていは地元の漁師か市場の競り人、行商の連中…船絡みの日雇い労働者に、魚の切れっぱしでどうにか食いつないでいる貧乏人、あるいはそんなのを相手にしている安っぽいパブ(居酒屋)の連中…近頃じゃあ中国人の苦力なんかもいるよな」

(※苦力(クーリー)…たいてい中国人の「荷運び人」を意味するが現在は差別的用語…が、舞台が十九世紀末なので当時の表現として用いる)

アンジェ「結構。それじゃあいま言った漁師や労働者…共通点は?」

ドロシー「そりゃあ、誰もかれも教会のネズミみたいに貧乏ってことさ…なんだ、金でも撒いて車列を襲わせるか?」

アンジェ「惜しいわね…お金を使うところまでは同じよ」

ドロシー「ほう?」

アンジェ「ドロシー、昨日のイワシ相場は?」

ドロシー「ロンドンで一ポンドあたり三ペンスってところだ、浜値ならもっと安い…なんだ、魚屋に商売替えか?」

アンジェ「そうなるかもしれないわ」

ベアトリス「あの…話が見えてこないんですが」

ドロシー「いや、待てよ…アンジェ、お前まさか」

アンジェ「ええ」

ドロシー「なるほどなぁ……いやはや、そいつは冴えてるぜ♪」

ベアトリス「あ、あの…だからどういう……?」

ドロシー「おいおい、せっかくなんだから頭を使って考えてみろよ…な、アンジェ?」

アンジェ「ええ…思考能力の訓練になるわ」

ドロシー「あと十秒で分からなかったら、スコーンは私がいただくからな♪」

ベアトリス「えー!?」

プリンセス「あ、分かったわ…♪」小声で耳元にささやきかける…

アンジェ「…そう、正解よ」

ちせ「ふむ……ではあるまいか?」

ドロシー「おっ、その通りさ…さて、十秒たったな」

ベアトリス「ち、ちょっと待って下さいよぉ!」

アンジェ「まぁいいわ…とにかく思いついたことを言ってみなさい?」

ベアトリス「え、えーと……私たちの誰かが魚を運んでいる馬車を転覆させて、護衛車を足止めする…でしょうか///」

ドロシー「……ふぅ」

ベアトリス「や、やっぱり違いますよね…」
202 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/10/24(水) 02:04:39.61 ID:sSRp1DY20
…なぜか連投になってしまいました……どうぞ片方は無視して下さい
203 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/10/25(木) 02:24:12.74 ID:wAgFnn0U0
ドロシー「…ベアトリスもちゃんと分かってるじゃないか♪」

ベアトリス「え…正解ですか?」

アンジェ「ええ」

ドロシー「よくできました…そぉら、ご褒美だぞ♪」スコーンを押し付け、ついでにクローテッドクリームをたっぷりと付ける…と、クリームが鼻の頭にまでついた…

ベアトリス「うっぷ…何するんですかっ」

ちせ「鼻先に付いておるな」

ドロシー「おっとと、悪い悪い…♪」指でしゃくって舐める…

ベアトリス「も、もう///」

アンジェ「…続きをいいかしら?」

ドロシー「ああ…もっとも「荷馬車を転覆させたらそれで終わり」って訳じゃない♪」

アンジェ「その通り…たちまち貧しい人たちが散らばった魚に群がって、大変な騒ぎになるでしょうね」

ドロシー「そうなったら防諜部のエージェントでも抜け出すのには時間がかかるだろう…って言うのは、火を見るより明らかだよな♪」

プリンセス「でも、護衛車が足止めされても肝心のアタッシェが事務所に滑り込んでしまったら…」

アンジェ「…そこで必要なのがこれよ」砂糖入れのスプーンを取り上げると、まるで砂時計の砂のようにサラサラと砂糖を戻した…

…作戦決行日の朝・外務省…

外務省職員A「グ・モーニン、チャーリー」

外務省職員B「モーニン…調子はどうだい?」

職員A「まぁまぁさ……そっちも朝からお疲れさん」

職員B「どうも…何しろ防諜部から山ほどリストが送られてくるもんでね、休む暇もなしさ」

職員A「大変だな…また密輸業者かい?」

職員B「ああ、フランスからコニャックを密輸している奴らがいるらしい…何でもドーバーの漁師がフランス側の用意したはえ縄にくくりつけてある酒瓶を沖で「漁獲」して、船倉に隠して持ち込むんだそうだ」

職員A「ふぅん…それが例の「瓶釣り」ってやつか」

職員B「ああ。それにしたってこんな分厚いリストを数日ごと作って送って来るんだぞ…防諜部の連中は本当に人間なのかね?」

職員A「もしかしたら連中はみんな人間のふりをした自動機械とか、そういうやつなのかもな…もしよかったら、小腹ふさぎに屋台のミートパイか何か買ってきてやろうか?」

職員B「ありがたいね……あ、それじゃあついでに頼みが」

職員A「ああ、なんだい?」

職員B「買いに行くときに控え室に寄って、パーカーたちに文書便の準備をするように声をかけておいてくれ…朝は港が混雑するから、昼ごろにエンバンクメント(運河)ルートで出す予定だとね」

職員A「分かった、伝えておくよ…それじゃあ」

職員B「ああ……本当に秘書がもう二人は欲しいよ、全く」

………
204 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/10/25(木) 02:38:03.09 ID:wAgFnn0U0
…数分後・外務省そばの公園…

職員A「…ミートパイを四つくれ」

行商人「へい」

職員A「いくらだ?」

行商人「八ペンスでさ」

職員A「そうか。釣りはいいよ、とっておきな……第二のルートだ」

行商人「へい…ありがとうございやす、旦那!」…行商のパイ売りは機嫌よく小銭を二回はじきあげて、ぱしっと手で捕まえた…

ベンチに腰かけている紳士「…」それを見て、朝刊を読みながらパイプをふかしていた紳士が同じページを二回ひらひらさせた…

通行人「…第二のルートだぞ」

ご用聞き「了解」

…ロンドン市内・テムズ川沿いのネスト(拠点)…

ドロシー「連絡が入った…第二のルートだとさ」

アンジェ「結構。それじゃあ分かっているわね?」

ドロシー「ああ、任せておけ」

ちせ「うむ」

ベアトリス「はい、でも本当にうまく行くでしょうか…?」

アンジェ「うまく行くかどうかじゃないわ…うまくやるのよ」

ドロシー「だな…それじゃあ取りかかろうぜ」

…外務省・駐車場…

中堅職員「ようティミー、また運転か?」

運転手「ええ、そうなんですよ」

中堅「お前さんも大変だな…ま、頑張りなよ?」

運転手「はい。それに公用車とはいえ、ロールス・ロイスに乗れる機会なんてそうはありませんからね」

中堅「ああ、うらやましいね。二十五馬力だっけ?」

運転手「だいたいそんなところですね……おかげでよく走ります」

中堅「…なぁティミー、運転席に座ってみてもいいか?」

運転手「ははっ、いいですよ…みんな僕にそう頼むんです」

中堅「そうだろうとも…へぇ、こんな具合なのか」

運転手「ええ、眺めもいいしスピードがあるから痛快ですよ」

中堅「だろうなぁ……なぁ、こいつは何のレバーなんだ?」

運転手「これがギアレバーで、このペダルがアクセルにブレーキ、それとクラッチ…慣れれば馬よりも簡単ですよ」

中堅「そうかい、何しろ古い人間なもんでね」

運転手「…いえいえ、こんなのすぐ覚えられますよ」…そう言って二人が話しこんでいる間に、いかにも外務省に用がありそうな身なりのいい紳士が車に近寄ると、給油口を開けて何かをさっと注ぎ込んだ…

老紳士「ちょっと、君」

中堅「はい」

老紳士「外務省の東インド課というのはどこにあるのかね?」

中堅「あ、では私がご案内いたしましょう…それじゃあまたな、ティミー」

運転手「ええ」

中堅「東インド課はこちらの三階ですね……工作は上手く行ったか?」

老紳士「そうかね、ありがとう……もちろんだとも」

中堅「…そうかい……では、こちらです」

老紳士「ああ、済まなかったね」
205 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/10/26(金) 12:06:03.82 ID:HS9g81Gh0
…午前中・港近くの部屋…

ドロシー「よーし、いい具合に化けたな…ロンドンのロイヤル・アクターズ・スクール(舞台学校)のメイク係だってこう上手くは出来ないね♪」


…港に近いネストには、表向きは慈善団体の主催している「貧しい人たちを救済する慈善事業」…実際はこうした場面で使えるように、コントロールが職員の着なくなった古着を貧民街の人達に寄付しては手に入れている、さまざまな大きさや汚れ具合をしたボロがため込んである……事前に選んでおいた汚れたショールとスカートをベアトリスに着せて、煙突の煤と土ぼこりを混ぜた「化粧」を施し、姿勢や態度を確認しているドロシー…一方のベアトリスは疑わしげに薄汚いスカートをつまんでいる…


ベアトリス「…本当にこんなのでうまく行くんですか?」

ドロシー「おいおい、私のメイク術なら年寄りだろうが子供だろうが思いのままだぞ…それにお前にはその声色があるじゃないか♪」

ベアトリス「それはそうですが…ちせさん、どうでしょう?」婆さんらしく背中を丸め、ちょこまかした歩き方をしてみせる…

ちせ「ふむ…背はちっこいし、見てくれは完全に年寄りじゃな…」

ドロシー「このボロいショールが決め手なのさ……あぁ、それと」…布に付けた何かをベアトリスの顔にこすりつけた……途端にひどく生臭い臭いが立ちこめる…

ベアトリス「うわ、何ですかこれ…!?」

ドロシー「魚油だよ…魚臭くない行商のバアさんなんていやしないからな」

ベアトリス「うぇぇ…」

ドロシー「なに、しばらくすれば取れるさ……手はずはいいな?」

ベアトリス「はい…護衛車が来たら馬車を横転させるんですね?」

ドロシー「そうだ…下敷きになる前にちゃんと左側へ飛び降りろよ?」

ベアトリス「はい」

ドロシー「それだけやったら、後はすたこら逃げ出せばいい…ただし、絶対に走るな」

ベアトリス「分かってます」

ドロシー「よし…ちせ、お前は何かあった時に備えて待機しておいてくれ」

ちせ「うむ、承知した」

ドロシー「私はモノをいただき、アンジェはそれを受け取って離脱…集合場所は事前に説明した通り」

ベアトリス「はい」

ドロシー「それじゃあバラバラに出て行くぞ…最初はベアトリスで、少なくとも五分は間隔を空ける」

ベアトリス「分かりました」

ドロシー「それじゃあ、三文オペラの始まりだ…防諜部の連中をきりきり舞いさせてやろうぜ♪」

ちせ「うむ」

ベアトリス「はい、頑張ります」

………

206 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2018/10/28(日) 01:05:38.47 ID:Lzi1S3z20
…港近くの道…

防諜部エージェント(中堅)「…そこを右だ」

防諜部エージェント(ハンチング帽の運転手)「ああ」

中堅「次は直進」

ハンチング帽「分かってるさ」

中堅「そうは思うがな……ウィル、怪しい奴は?」

防諜部エージェント(ロングコート)「いや、今のところは見えないね」

中堅「ならいいが…外務省のRR(ロールス・ロイス)はちゃんとついてきているか?」

ロングコート「もちろん。あの若い奴、なかなか腕がいい」

中堅「ほぅ? …それじゃあそのうちに引き抜きがあるかもな」

ロングコート「ああ」

中堅「市場に近くなってきたぞ…道が狭くなってくるから気を付けろ」

ハンチング帽「そうだな…って、おいおい」

中堅「何かあったか?」

ハンチング帽「あの婆さん……荷馬車にあんなに魚を積み込んで、今にも崩れそうだぞ」

中堅「あれか…そうならないように荷馬車の神様にでも祈っておけ」

ハンチング帽「ふぅぅ、どうやら無事に通り過ぎたようだ……っ!?」運転役のエージェントが荷馬車の脇をギリギリですり抜けて息をついた瞬間、何かの拍子で荷馬車が傾き、横転しながら新鮮なイワシをぶちまけた…

ロングコート「くそ…横転しやがったぞ!」

中堅「悪い予感は当たるものだな、早く車を止めろ…ウィル、ジョン」

ツイード「ああ」

中堅「急いであの魚の山を乗り越えて、外務省の車に乗りこんで護衛に付け…私たちは先回りするから、一区画先で合流するぞ」

ツイード「了解!」

…一方・伝達吏(アタッシェ)の乗ったロールス・ロイス…

運転手「……うわっ!」

外務省アタッシェ「何てこった…バックしろ、急いで他のルートへ!」

運転手「わ、分かりました…っ!」

…忙しいなかでは運搬計画について話し合う機会も少なく、しかもお互いのこだわりや玄人意識が邪魔をして、再合流についての綿密なすり合わせが出来ていなかった防諜部と外務省のエージェント…防諜部はまず機密情報を守ろうとし、一方の外務省アタッシェは早く安全な事務所に書類を届けてしまおうと焦り、別な道に車を走らせた…

アタッシェ「落ち着け、ティミー…防諜部の車とは次の角で落ち合えるはずだ、心配はいらない」

運転手「ええ、そうですね……ああ、くそっ!」…事前に燃料タンクに放り込まれた砂糖がエンジンの中で焼き付き、急にエンジンが咳き込んだかと思うと、道の真ん中でガクンと停まった…

アタッシェ「何だ?」

運転手「ちくしょう、エンジンが焼き付いたらしいです…RRでこんなことあるはずがないのに」

アタッシェ「これ以上走れないのか?」

運転手「今やってみますが……ダメです、ウンともスンともいいません」

アタッシェ「なら歩きだ、次の角まではたいした距離もない…ピストルはあるな?」

運転手「はい、持ってます」上着の下を軽く叩いた…

アタッシェ「よし…それじゃあ行こう」
207 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/10/28(日) 01:22:13.92 ID:Lzi1S3z20
………

運転手「車に乗っていると気が付きませんが…この辺りはずいぶん嫌な臭いがしますね」

アタッシェ「そうかもな……」

…港町特有の魚臭さに蒸気船の煙の臭い、それと古くなった料理油のむかつくような臭いが混じり合った薄汚い通り…石畳がすり減っている道には魚の頭や骨が無造作に捨ててあり、昼間だと言うのにネズミがちょろちょろしている…

運転手「…やれやれ、汚いなぁ」

アタッシェ「文句言うなよ…足元に気をつけんと、腐った魚を踏みつけるぞ?」

運転手「うわ…本当ですね」

アタッシェ「とにかく、あと数区画の辛抱さ」

ドロシー「……来たな」いかにも貧民街の住人らしく見えるぼろを着て、裏路地から家の窓に映るアタッシェの姿を確認する…

運転手「…それにしても、防諜部の車はどこなんでしょう」

アタッシェ「心配するな、もうそこがさっきの表通りだ…」そう言った矢先に角の路地から一人の女が飛び出してきて、アタッシェを地面に突きとばすと鞄をひったくった…

アタッシェ「う…くそっ!」

運転手「大丈夫ですか!」…地面に突き倒されたアタッシェを助け起こそうとする運転手

アタッシェ「う、ぐぅ…こっちはいい、早く女を追えっ!」

運転手「は、はいっ!」ぎこちなく3インチ銃身のウェブリーを構えると駆けだした…

…裏通りの角…

アンジェ「モノは?」

ドロシー「ああ、ばっちりだ…さ、開けちまおう」

アンジェ「ええ」…ただのひったくりらしくみせるために鞄をナイフで切り裂くと、手際よく中の書類をあらためる…

ドロシー「あった、こいつだ…まったく手間をかけさせやがって」

アンジェ「じゃあこれは私が」入手したリストを小さく折りたたんで、コルセットの内側に挟みこむ…

ドロシー「任せた…後は偽装だな」

…作戦を立案したコントロールは「スパイならどんな情報でも欲しがるもの」という考えを逆手に取った偽装工作を練り上げていて、王国側が鞄をひったくったのが「エージェントではなくただの物盗りだった」と思い込むよう、必要な数枚以外の書類は地面に散らかして捨て置くように指示していた……ドロシーはさっと目を通して内容を暗記すると、指示通り道に書類をぶちまけた…

ドロシー「…これでよし、と」石畳の道を走る靴音を聞きつけると、さっと裏通りの陰に消えた…

運転手「ぜぇ、はぁ……あっ!」

アタッシェ「はっ、はっ、はぁ…くそ、鞄が!」

運転手「はぁ、はぁ…でも中身こそぶちまけられていますが、ほとんど無事のようですよ?」

アタッシェ「ひったくられたこと自体が大失態だ……とにかく散らばったのを集めよう」

運転手「はい」

………
208 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/10/30(火) 01:40:36.44 ID:DK+ET3AH0
…寄宿舎…

アンジェ「さてと…みんな、今回も良くやってくれたわ」

ドロシー「ああ。特にベアトリス」

ベアトリス「は、はい」

ドロシー「ちゃんとタイミングよく荷馬車を横転させられたみたいだな…感心だ」

ベアトリス「いえ、そんな…///」

アンジェ「おかげで重要書類はこちらの手に入った…今ごろはコントロールの手元に届いているはずよ」

ちせ「ふむ、一件落着じゃな」

プリンセス「そうね…ご苦労様、ベアト」

ベアトリス「ありがとうございます、姫様///」

アンジェ「それじゃあみんなは解散していいわ…私は事後報告を書き上げないといけないし、ドロシーは道具の手入れがあるから」

ドロシー「おいおい、まさかあの魚臭いのがついたのまで私がやるのかよ?」

アンジェ「当然でしょう…それが嫌なら報告書と交代してあげてもいいけれど?」

ドロシー「うへぇ…ちっ、わかったよ」

アンジェ「飲み込みが早くて助かるわ……それじゃあね」

ドロシー「…ちっくしょう、あの冷血トカゲ女め……」

ベアトリス「あの、ドロシーさん…」

ドロシー「ん、どうした?」

ベアトリス「…よかったら手伝いますよ?」

ドロシー「何だよ、気にするなって…私なんかよりプリンセスの所に行ってやりな?」

ベアトリス「それはもちろんですけれど、普段からお洗濯とかは慣れていますし……私もチームの一員ですし、手伝わせてもらえませんか?」

ドロシー「そりゃまぁ、手伝ってくれるって言うならありがたいけどさ…いいのか?」

ベアトリス「はい」

ドロシー「そっか…気を使わせちゃって悪いな。今度何かおごってやるよ」

ベアトリス「もう、そんなのいいですから……早く終わらせちゃいましょうよ」

ドロシー「…そうだな」

…洗濯場…

ドロシー「ベアトリス、石けん取ってくれ」

ベアトリス「はい」

ドロシー「ありがとな……はぁ、今さら洗濯女の真似事かよ。嫌になるなぁ」

ベアトリス「まぁまぁ、そう言わずに…作戦はうまく行ったんですから」

ドロシー「これで上手くいってなかったら燃やしちまってるよ、ばかばかしい」

ベアトリス「もう…ドロシーさんったら、相変わらず愚痴が多いんですから」

ドロシー「ま、性分だからな……それにしても、ベアトリスもなかなか言うようになったな」

ベアトリス「いったい誰のおかげでしょうね?」

ドロシー「ほぅ? そういう生意気を言うとな……こうだっ♪」…バシャッ!

ベアトリス「きゃあっ…もう、せっかく手伝ってあげているのになんてことをするんですかっ!」

ドロシー「うっぷ…へぇ、やってくれるじゃないか」

ベアトリス「わぷっ……そっちこそ!」
209 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/10/30(火) 11:15:24.66 ID:DK+ET3AH0
…しばらくして…

ベアトリス「…あぁもう、結局びしょびしょになっちゃったじゃないですかっ!」

ドロシー「そりゃベアトリスが生意気なせいだな」

ベアトリス「むぅぅ……ひっ、くしゅっ!」

ドロシー「おいおい、こんなくだらない事で風邪なんか引かれちゃ困るぜ…とっととその濡れたのを脱いで、熱いシャワーでも浴びてきな?」

ベアトリス「は、はい…」

…浴室…

ドロシー「……ちゃんとお湯になってるか?」

ベアトリス「えぇ、はい…」

ドロシー「さて、それじゃあ私も…と♪」

ベアトリス「うぇっ!?」

ドロシー「なんだよ…私だって濡れたんだし、入っちゃ悪いのかよ」

ベアトリス「だからって、なにも一緒に入らなくても…///」

ドロシー「おいおい、今さら恥ずかしがるような関係かよ……よいしょ」

ベアトリス「///」棒石けんを身体にこすりつけながら、ちらちらと視線を送るベアトリス…シャワーの下で湯気に包まれているドロシーは、普段のクリーム色をした肌が桜色を帯びていて、どきっとするほど色っぽい…

ドロシー「……見たいならじっくり見ればいいじゃないか」ふとベアトリスが気付くと、ドロシーが向き直ってニヤニヤしている

ベアトリス「なっ…そういうことじゃありませんっ///」

ドロシー「別に構わないさ。どのみち、今さら裸を見たくらいでおたおたするような関係じゃない…だろ?」

ベアトリス「///」

ドロシー「…よかったら触ってもいいんだぜ?」

ベアトリス「!?」

ドロシー「何だよ、別に減るものじゃなし…ほーれ♪」それでなくてもたわわな胸を寄せて、ぐっと身を寄せる…

ベアトリス「……そ、それじゃあ///」むにっ…♪

ドロシー「んっ…どうだ?」

ベアトリス「ふわぁぁ……すっごいです///」

ドロシー「ふむ、スパイの割にはボキャブラリー(語彙力)が貧弱だな…一体どう「すっごい」んだ?」

ベアトリス「え、えーと…弾力があって肌に吸いつくようで、それでいながら柔らかいっていうか……って///」

ドロシー「ほうほう…それじゃあ私も説明力を高める訓練でもしますかね♪」さわ…っ♪

ベアトリス「ひゃあぁっ…!」

ドロシー「うわっ、そんなに暴れるな……っ!?」

…ベアトリスが落とした棒石けんで脚をすべらせ、床にひっくり返る二人…が、よく訓練されているドロシーだけあって反射的に受け身を取り、ベアトリスを上にした形で倒れ込んだ…

ドロシー「おい、大丈夫か?」

ベアトリス「ふぁい…ふぁいひょうふふぇす(大丈夫です)」

ドロシー「そうか。あと、頼むから胸の谷間でしゃべるのは止めてくれ…息がかかってくすぐったいんだ///」

ベアトリス「ふぉうれふか(そうですか)…ふぅぅ♪」

ドロシー「こんにゃろー…わざとやってるな?」

ベアトリス「…ぷは///」

ドロシー「満足したか?」

ベアトリス「はい。でも……もうちょっとだけお願いします///」

ドロシー「仕方ないな…んむっ、ちゅ♪」

ベアトリス「あむっ、ちゅぅ…///」
210 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/11/01(木) 02:17:17.12 ID:JIT2HWae0
ドロシー「ほら、せっかく上にまたがっているんだ……好きなように動いてみろよ」ゆっくりと脚を開くと両手でベアトリスの腰を押さえてやり、自分の秘所にベアトリスの割れ目をあてがった…

ベアトリス「そ、それじゃあ…んっ///」

ドロシー「ん、あっ…ふぅぅ……」にちゅ……♪

ベアトリス「んあっ…はぁっ、はあっ……んんぅ///」くちゅくちゅっ…ずちゅっ……♪

ドロシー「あぁ…んっ、んはぁぁ……♪」

ベアトリス「ふぅ、ふぅ……ドロシーさんは…大柄なので……はふぅ…上で動くのにも……力が…いりますね……んぅぅ///」

ドロシー「私は下だから楽できるけどな……ベアトリスとやるのは構わないけど、風呂場の床が固くて冷たいのは計算外だったな…ん、んっ♪」

ベアトリス「もう…んっ、くぅ…そんなムードのないことを……はひぃ…言わないで下さいよ……あっあっ、あっ…♪」

ドロシー「悪いな……でも浴室の床って言うあたりでムードもへったくれもないもんだろ……おっ、おぉぉ…っ♪」ぐちゅっ、ずりゅっ…♪

ベアトリス「ふぅ、ふぅぅ……こんなに動かないといけないなんて…腰に来ちゃいそうです…ひぁぁ…っ///」

ドロシー「んんぅ…! っはぁ……ふぅ、ふぅぅ…♪」

………



ベアトリス「…どうでした?」

ドロシー「んっ、はぁ……ふとももが温かくてとろっとして、腰には甘ったるい感覚が広がって……いい気分さ♪」

ベアトリス「そ、そうじゃありません……その、上手に出来たでしょうか…って///」

ドロシー「……プリンセスか?」

ベアトリス「は、はい…私も機会がある時は、気持ち良くなって頂きたいと思って頑張っているんですが……///」

ドロシー「正直なところ「心優しいプリンセスの事だから演技してくれている」んじゃないか…って?」

ベアトリス「は、はい…///」

ドロシー「ははっ、馬鹿だなぁ……自分を好いてくれている娘が一生懸命になってくれているんだぜ? もうそれだけで、プリンセスも腰が抜けるほどキュンとなるってもんさ♪」

ベアトリス「そ、そうでしょうか…」

ドロシー「ああ。それに女は身体じゃなく心で感じるもんだ……だから「コトに及ぶ」前の雰囲気づくりが重要なのさ♪」ウィンクしてみせるドロシー

ベアトリス「なるほど、さすがはドロシーさんです…モテる人は言うことが違いますね」

ドロシー「まぁそういうのも「ファーム」(養成所)でさんざん仕込まれたからな……役に立ったろ?」

ベアトリス「ええ…でもドロシーさん」

ドロシー「んー?」

ベアトリス「だとしたら今の私たちっておかしくないですか…?」

ドロシー「…ちょっとシャワー室ですっ転んで抱き合っただけなのに、そんな気分になるわけない……って?」

ベアトリス「はい」

ドロシー「そりゃさっき言ったことはあくまでも「原則」だからな…例外はある」

ベアトリス「それじゃあ…さっきのドロシーさんはどんな「例外」だったんです?」

ドロシー「あー…実はな、私はベアトリスみたいな小さい娘が大好物で……」

ベアトリス「え゛っ!?」

ドロシー「冗談だよ。…実を言うと任務の後は身体が火照ってさ、時々むしょうにやらしい気分になったりするんだ……付き合わせて悪かったな」

ベアトリス「いえ、大丈夫ですよ…それに私も任務の後で熱っぽく感じるような時がありますし、ドロシーさんの気持ちもちょっと分かります」

ドロシー「そっか…さ、せっかくシャワーで温まったんだ。身体が冷えないうちに出ようぜ?」

ベアトリス「そうですね」

ドロシー「…で、ベアトリスはプリンセスの火照りをおさめに行きな?」

ベアトリス「も、もうっ…///」

211 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2018/11/02(金) 01:57:05.44 ID:DW0zgL7I0
…申し訳ありません。本当は今日から投下したかったのですが、明日以降にします…


…ちなみに予定ではリクエストにお応えして、ドロシーとアンジェ、「委員長」のファーム(養成所・訓練所)時代を書いていくつもりです……また「こんなモブキャラが見てみたい」というのが(髪色や簡単な性格などなど…)あれば出来るだけ書いてみようと思いますので、そちらもよかったらリクエストしてみてください…
212 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/11/03(土) 01:56:54.16 ID:1AKPHBq20
…case・アンジェ×ドロシー「The dawn of white pigeon」(白鳩の始まり)…

…とある日・ネスト…

アンジェ「それじゃあ今日も訓練に励んでちょうだい…準備体操を済ませたら、素手での格闘よ」…絨毯を丸めた訓練相手「チャーリー」を台に立てかけて木箱に座ると、じっとベアトリスの動きを観察している…

ベアトリス「はいっ…!」

ドロシー「…それにしても」

アンジェ「なに?」

ドロシー「お前さんを見ていると教官だって言われても信じそうだ♪」…アンジェに話しかけながらウェブリー・スコット・リボルバーの撃鉄や引金を空撃ちして試し、時々ヤスリをかけたり、油を差したりしている…

アンジェ「どういう意味?」

ドロシー「いや…だっていつも汗一つかかないで格闘術を教え込んでるからさ」

アンジェ「だって黒蜥蜴星人だもの」

ドロシー「そういうはぐらかし方までそれらしいよ…まったく」

アンジェ「ベアトリス、終わったら続けてナイフ格闘の練習を……ドロシー、あなたがいくらオールドミスだからって、そんな歳で思い出話にふけるつもり?」

ドロシー「あ、いや…」

アンジェ「はぁ……別に構わないわ。訓練の邪魔にならないよう、小声で話しかけてくれるならね」

ドロシー「おいおい、私だって大声で昔の事をふれ回ったりしやしないさ…ただ、ああやってベアトリスを見ているとな……」

アンジェ「…ファームの頃が懐かしい?」

ドロシー「懐かしい…とはちょっと違うけど、あのころはまだまだ無邪気で、昼も夜も訓練に打ちこんでいたっけ……なんてことを思い出しちまって」

アンジェ「…そうね。あなたの適当さによく振り回されていたものよ」

ドロシー「はは、あの時は悪かった…でも口でこそそういいながら、アンジェはよく尻拭いしてくれてたよな?」

アンジェ「ええ…何しろあなたがいなくなったら、その分の面倒を押し付けられそうだったから……」

ドロシー「かもな。それにしてもあそこにはいろんな教官がいたよな…覚えてるか?」

アンジェ「ええ…あなたはよく格闘術の教官についてこぼしていたわよね」

ドロシー「ああ……」


…数年前・ファーム…


ドロシー訓練生「次は格闘術か……貧民街じゃちょくちょくお世話になったシロモノだよなぁ……」


…エージェントや諜報部の職員を育成する「ファーム」だけに機密保持は徹底していて、あちこちでスカウトに見出された訓練生候補たちは気づかないうちに身元を調べられ、合格となったら初めてカットアウト(使い捨て可能な連絡員)から接触を受ける…ここで「資格あり」と判断されると目隠しをされ、待ち合わせ場所から連れ出される……その上で候補生の方向感覚がなくなるほどあちこち回り道をして、性格も年齢も暮らしぶりもバラバラな訓練生が、一人づつ個別に「ファーム」へ連れてこられていた…大きな館のような施設は周囲を森に囲まれ、山や川の地形から場所を判断することもできない…訓練生にはとりあえず三食とベッド、唯一のお揃いである灰色のつなぎが与えられ、これも成績に応じてバラバラな「卒業」も、前日になってようやく教えられる…


細身の紳士「では、最初に自己紹介をしておこう。諸君に格闘術を教えるホワイトだ…ミスタ・ホワイトかホワイト先生と呼んでくれたまえ」


…折り目正しい茶色のスーツとチョッキ、金鎖の懐中時計にループタイ…見た目も口調も丁寧な紳士が訓練生たちの前に立った……当然ながらファームの教官たちは本名を名乗らず、色や動植物の名前をコードネームに使っていた……一見そう強いようには感じられないホワイト教官ではあるが、よく観察するとスーツの袖が張っているように見える…


ホワイト「さて…この中にはそういった事について経験豊かな諸君もいるだろうが……」中には貧民街やケイバーライト鉱、炭鉱や港で食べ物を盗られないために力を振るっていたであろう訓練生たち…そんな訓練生たちにホワイト教官がちょっとしたユーモアを披露すると、軽いくすくす笑いが起こった…

ホワイト「結構。…これから、経験のある諸君はより効率のよい戦い方を…経験のない諸君はこの機会に実戦的な戦い方を習得してもらうことになる……しばらくは仮のパートナーとして隣の娘と組んでもらうが、そのうち実力に合わせてパートナーを交代していくことになるだろう…まずはお互いに握手でもしてはどうかな?」

訓練生たち「…よろしく」「初めまして」

ホワイト「よろしい…質問は話が終わったら受け付けるので、もし分からないことがあったら積極的に聞きたまえ。それでは軽く準備運動から始めようか…」部屋の片隅にあるコート掛けに丁寧に上衣をかけ、懐中時計も外した……上手に仕立てられたスーツからは分かりにくかったが、シャツの袖からはよく引き締まった筋肉が浮き出ている…

ドロシー「…へぇ」

213 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/11/05(月) 01:22:16.22 ID:w/mVUJ0s0
…二時間後…

訓練生A「ぜぇ、はぁ……こほっ、げほっ…」

訓練生B「ふぅ、ふぅ、はぁ……ふぅぅ…」

ホワイト「おや…ミス・エマ、君は休憩したい気分なのかね? …しかしな、その床では寝るにしても固くて背中が痛いだろう……さ、立ってもう一回だ♪」

訓練生C「うっ、ぐすっ……はぁ、ひぃ…っ」

ホワイト「ふむ…ミス・グレン、痛いのは分かるよ。 …しかし王国のエージェントは、君が泣いているからと言って攻撃の手を休めてはくれないだろうからね。さ、もう一本だ…頑張りたまえ」

…ホワイトはいかにもアルビオンの鬼教官らしく、決して怒鳴ったりののしったりはしない…が、その代わりに優しい顔をして地獄のような訓練を続けさせる……広い室内運動場のあちこちにはへたばった訓練生たちが倒れ込んでいて、どうにか立っているのは数人しかいない…

ドロシー「ぜぇ、はぁ…ふぅ…」

ホワイト「ふむ…ミス・ドロシー、君は粗削りだが一撃が重くてよろしい。私も手が痛むくらいだよ……今度は空振りを減らせるように、もっと攻撃する相手をしっかり見て、動きに追随できるようにしていこう」骨も砕けよと叩き込んだ、ドロシーのノックアウト・パンチを受けた手を軽く振って微笑した…

ドロシー「はぁ…ふぅぅ…それはどうも…」

ホワイト「それから、ミス・アンジェ…君の動きは俊敏で大変によろしい。まるでこういった訓練をした経験があるようだね」

アンジェ「…ありがとうございます」

ホワイト「うん、実にすばらしいよ…では、それぞれもう一本ずつ私とやってみようか」

ドロシー「…うぇぇ」

アンジェ「はい」

ホワイト「それと、ミス・「委員長」…君は少し休みたまえ。私は君たち訓練生を死なせるために訓練しているのではないからね」

委員長「いいえ…ごほっ、げほっ……まだ…やれます…」

ホワイト「ふむ…君は頑張り屋さんだな。ではもう一本だけやってみようか?」

委員長「はい…ごほっ、けほっ……」

ホワイト「しかしその前に、君たちはまず息を整えたまえ…二回吸って一回吐く。ゆっくりとだよ?」

ドロシー「ふぅぅ…」

ホワイト「そうそう、その調子。…さて、諸君。なぜ君たちがこんな苦しい思いをしなければならないのか、少し考えてみよう…別に私は諸君をいたぶろうというつもりはないんだ。 …しかし実際にエージェントとして活動するときは「もう動けない」と思ったところから、さらにほんの少しだけ動ける事が大事になってくる……つまりこの訓練で「自分の限界点を伸ばす」と言うことだね…理解できるかな?」

アンジェ「…はい」

ホワイト「よろしい。いい返事だ、ミス・アンジェ…ミス・ドロシー、君は分かったかな?」

ドロシー「わ、分かりました…ふぅぅ…」

ホワイト「結構…それじゃあ始めようか。で、終わったらこの運動場を駆け足で一周回っておしまいにしよう」

ドロシー「うへ…ぇ」

ホワイト「…君は二周の方がいいかね、ミス・ドロシー?」

ドロシー「いえ、一周で結構ですよ…」

ホワイト「そうかね? 運動すると健康になるし、美容にもいいよ?」

ドロシー「……それにしたって多すぎますっての…」

ホワイト「何か言ったかね、ミス・ドロシー?」

ドロシー「いいえ……たくさん運動したので、きっとお昼が美味しいだろうと…」

ホワイト「ははは…そうだね、私も昼食が楽しみだよ。 …では、まずは正面から突きを入れてくれるかな?」

ドロシー「はい…ふぅっ!」

ホワイト「…エクセレント(素晴らしい)、その調子でもう一回♪」

………
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