ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」

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322 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/05/19(日) 23:52:23.44 ID:9IxaZVAW0
>>321 さぁ、果たしてどうなるやら…

それと、ここ何日か投下出来ずすみませんでした。とりあえずまた明日以降になるでしょうが、続きを書いていく予定ですので……気長にお待ちいただければと思います
323 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/05/23(木) 02:28:18.64 ID:1OkC8OmM0
ローズ「もう一度聞くわね、マーガレット……文書を渡す相手は?」

アンジェ「…知りませ……」

ローズ「…」途端に「ヒュッ…!」と鞭がうなり、アンジェの引き締まったふとももに打ちつけられた…

アンジェ「…っ!」

ローズ「ね、本当の事を教えてちょうだい…貴女の所属している組織はどこなの?」ヒュンッ!

アンジェ「……ですから…うぅっ!」

ローズ「早く答えた方がいいわ。でないと貴女の絹のような肌が傷だらけになってしまうもの……組織のトップはだあれ?」

アンジェ「そんなの…っぐ!」

ローズ「さぁ、ひどいことにならないうちに…ね♪」先ほど見せていた形ばかりの優しい表情はすっかり消え去り、瞳を爛々と輝かせて鞭を振るっている…

アンジェ「知らないことは答えようがありま……あ゛ぁっ!」

ローズ「ふふ……組織を守ろうと言う心意気は立派だけれど、今のうちに答えた方が貴女のためよ? ふとももの皮が裂けてしまわないうちに♪」

アンジェ「でも、知らないのはどうしようも…あぁぁっ!」

ローズ「もう、マーガレットったら頑固なのね♪」

アンジェ「…ぐぅっ!」

ローズ「さぁ、教えて…そうでないとまた痛い事をすることになってしまうのよ?」甘く優しい猫撫で声はねっとりとした妖しいささやきに変わり、アンジェをいたぶりながら悦びに身体を震わせている…

アンジェ「……そんなことを言っても……っ、ぐぅっ!」


…かつてアンジェが受けた訓練でも、こうしたインモラルな趣味の持ち主を相手に動じない(…できれば気に入られる)ようにと色っぽい教官がさまざまな事を「実技で」教えてくれたが、訓練に支障が出ないよう絶妙な手加減を加えてくれていたらしい「一流の」教官に比べると、鞭の振るい方に遠慮がなく、両のふとももが焼けつくように感じる…


アンジェ「…はぁ、はぁ……」

ローズ「ふふ…マーガレットはこんなに我慢できたのね。とっても偉いわ……さ、お飲みなさい♪」そう言ってアゴニーからグラスのワインを受け取ると口に含み、アンジェの唇に重ねると口移しでワインを飲ませた…

アンジェ「…っ!」

ローズ「んむっ……んっ…♪」

アンジェ「……っ、んくっ…んっ///」目を閉じたアンジェの口の端から一筋の線になってワインがこぼれた…

ローズ「ふぅ…お味はいかが?」

アンジェ「///」

ローズ「あらあら、そんなに物欲しそうな表情をして……そんな顔をされたら我慢できなくなってしまいそう♪」…ん、ちゅっ♪

アンジェ「…ぁっ///」

ローズ「ふふ…私、貴女のことが気に入ったわ……アゴニー、アンギッシュ」

二人「「はい」」

ローズ「貴女たちも仲間外れは嫌でしょう…さ、お手伝いをしてちょうだいね♪」

二人「「承知いたしました」」

アンジェ「あ……んっ、んくっ///」

アゴニー「…んむっ、んくっ」

アンギッシュ「…んっ、んっ……こくんっ」

…代わる代わる二人からワインを口移しされたアンジェ……なにも食べていない状態で何杯も飲まされたせいで酔いが回ったのか、痛めつけられた身体が少し楽になった分、身体が火照りを覚えていた…

ローズ「ふふ、これで元気が出たでしょう……それじゃあ続きを始めましょうね、マーガレット♪」バケツの水で鞭についた鮮血を洗い落とすと、火照りで赤みを帯びて、汗で艶めいた色っぽい胸元をシルクで拭った…

アンジェ「…」
324 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/05/25(土) 11:01:02.80 ID:/l0NND9G0
…同じ頃…

ちせ「済まぬ、遅くなった…」

ドロシー「お、来たか…危うくパーティがお開きになっちまうんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたぜ。もっとも、あの「黒蜥蜴」女から話を聞き出すのは石からミルクを絞るより難しいがな……」

ちせ「うむ…それで、アンジェどのの行方がつかめたそうじゃな?」

ドロシー「まぁそんなところさ…ところでだ、一つ言っておかなきゃならないことがある……」

ちせ「なんじゃ?」

ドロシー「…今回の件なんだが……こいつはちょっとした「個人的な事情」による殴り込みで、コントロールの指令でも何でもない。どころか、この件に関われば任務を窓から放り出すのと同じになる……」

ちせ「…ふむ?」

ドロシー「当然、失敗したら……いや成功したとしても山ほど問題を巻き起こすのは間違いないし、もし途中で捕まるとかそれ以外のトラブルに巻き込まれても、お前さんのボス…堀河公もかばってはくれないだろう…」

ちせ「ふむ、それで…?」

ドロシー「もちろんお前がいてくれれば心強い…とはいえ、こいつは言ってみれば「任務の範囲を超えている」のも事実だから、一緒に来るかどうかは自分で決めてくれ。 …何しろこんなバカにつき合うって言うなら、そいつも「史上最大の大マヌケ」ってことだからな……♪」

ちせ「なるほど…」

ドロシー「……で、どうする?」

ちせ「ふぅ…幾度も命を助けてもらった朋友を捨て置くというのはあまりにも薄情というもの……助太刀いたす」…そう言って太刀を取り上げた

ドロシー「よぉし、分かった…どうやらお前さんも私たちくらい大マヌケらしい……さ、車に乗ってくれ♪」

ちせ「うむ」

ドロシー「…みんな、忘れ物はないな?」

ベアトリス「はい」

ドロシー「よし…ベアトリス、最後に一つコントロール宛てに暗号電を送ってやってくれ「緊急…協力者「トガリネズミ」は巣を捨てた模様、至急関係者の脱出、潜伏を提案する…本局もただいまをもって閉鎖」とな」

ベアトリス「……はい、送りました」

ドロシー「結構…ならその通信機を使えなくするんだ」

ベアトリス「はい」…愛着を持って整備していた無線電信の装置を、少しもったないなさそうに破壊した……

ドロシー「よし。暗号書も始末したし……余った武器の類は特徴もないから、そのまま地下に放り込んでおけばいい」

ベアトリス「……それじゃあ…?」

ドロシー「ああ、出発だ…あの冷血女を助けにな♪」…濃緑色のロールス・ロイスに飛び乗ると、最新式の「自動点火型」エンジンを噴かした……

ベアトリス「はいっ…!」
325 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/05/28(火) 10:47:21.46 ID:U+WJNlOr0
…ロンドン市内…

ドロシー「どれどれ……よし、少し薄れてはいるがばっちりだ」


…宝石の鑑定士や時計職人が付けていそうなデザインの「モノクル型分光器」を片目にはめ、コーヒーハウス「ゴールデン・ライオン」の前から車を流した…分光器をはめたドロシーの右目には、夜のとばりが降りたロンドンの道にうすぼんやりと青緑の光の帯が残って見える…


ベアトリス「良かった…それじゃあ、後はそれをたどっていけば……!」

ドロシー「いや、喜ぶのはまだ早い……向こうがネストを突きとめられないようにうんと迂回をしていたり、途中で車を替えたりしたら追えなくなる」

ベアトリス「……でも、もし追えなくなったら…?」

ドロシー「その時はこっちとしてもどうしようもない…もし効き目のあるおまじないだの情報部員の守護聖人だのを知ってるなら、そうならないように祈っておくんだな」

ベアトリス「…」

ドロシー「もっとも、どうやらあちらさんはお急ぎのようだ……まるで尾行を撒く努力をしちゃいない」

ベアトリス「それじゃあ、無事に見つけられるんですね?」

ドロシー「たぶんな。あとは連中が手際よくアンジェを移送したり、人相を触れ回ったりしていない事を願うだけさ…」

………



…再び・どこかの地下…

アンジェ「…ああっ!」

アゴニー「さあ、どうぞお話しください…貴女の「雇用主」との連絡方法は?」ヒュンッ…!

アンジェ「ぐぅっ…!」(…さすがに身体にこたえてきたわ…まるでふとももが焼け付くよう……)

ローズ「…まぁまぁ、よく耐えること……これなら二人もたくさん愉しめるわね♪」アンジェの真っ白なふとももの肌が裂け、鮮血が滴っているのをみてご満悦のワイルドローズ…先ほどから椅子に腰かけ、しばしアゴニーとアンギッシュに任せている……

アゴニー「…さぁ、吐かないとどんどん辛くなるだけですよ……?」

ローズ「その通りね……アゴニー、そろそろアンギッシュと交代してあげて?」

アゴニー「分かりました…」

アンギッシュ「はい…んむ、ちゅっ……」鞭を手渡しつつ、互いに舌を絡めあうアゴニーとアンギッシュ…

ローズ「ご苦労様…さ、お飲みなさい♪」

アゴニー「はい…」座っているローズの前で膝をつき、濃い味わいのワインを口移しで飲ませてもらうアゴニー…

アンギッシュ「……貴女の雇用主は」

アンジェ「…だ、だから知らないわ……あぁ゛ぁ゛ぁっ!」

アンギッシュ「では、次の質問を…連絡役はどんな人物でしたか」

アンジェ「……シルクハットに灰色っぽい服…ステッキはついていたと思うけれど、よくは見なかったわ…」

アンギッシュ「…その連絡役の名前は」

アンジェ「知らないわ……嘘じゃないの…」

アンギッシュ「…どうか事実を…事実のみをお話しください」ヒュッ…!

アンジェ「ああ゛ぁぁ…っ!」

アンギッシュ「…貴女の接触役はどんな人物ですか」

アンジェ「婦人参政権の活動で会うのは……ミス・マーギット…本当にそれだけで、スパイなんて知らないの……お願い…」

…尋問官を信じさせる技法として、直接情報活動とはつながりのない人物を思い浮かべ、立場や名前だけをすり替えて細かい仕草や格好まで詳しく説明するやり方がある…大事な部分ははぐらかし、とにかく細かい部分を詳しく描写してみせると説得力が増す…アンジェも尋問に屈したふりをして、少しづつ口を開いていた…

アンギッシュ「…その方の特徴は」

アンジェ「い、今話すわ……身長は私と同じくらいで、髪は茶…年齢は三十代くらいのオールド・ミスで、たいていは緑のさえないドレス姿……」
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/05/28(火) 18:14:09.22 ID:w78yBFnbO
アンジェさんがんばれ
....双子はもっとがんばれ
お姉様よりは尋問スキル高そうだし道具もまだまだあるぞ!
327 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/05/30(木) 01:03:14.08 ID:MEEqTHOC0
>>326 コメントありがとうございます…ちなみに二人は双子みたいにそっくりではありますが双子ではなく、ミス・ワイルドローズの「教育」によるものという設定です

…また数日以内に投下していきますので、お待ちください……どうやらドロシーたちの助けが来るまで、他にも色々されそうな予感がしますね…
328 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/02(日) 02:11:18.09 ID:geie0UtD0
ローズ「ようやく素直に話してくれたわね、マーガレット……ふふ、嬉しいわ…ぁ♪」綺麗な脚を組んで椅子に腰かけていたが、滑らかに立ち上がるとアンジェのそばに歩み寄ってきた…

ローズ「……でも、実際はスパイ活動をしていたのでしょう?」

アンジェ「ち、違います……そうじゃないんです…!」

ローズ「もう、マーガレットったら…本当の事を言わないとダメよ?」甘い声の底から、どろりとゆがんだ欲望がにじんでいる…

アンジェ「…本当なんです……信じて下さい、ミス・ローズ…」

ローズ「ふふふ…マーガレット、貴女はとっても可愛いけれど……嘘をつくのは良くないわ♪」そう言って卓上に置かれている道具から、外科手術に使いそうな固定具のような道具と、恐ろしく研ぎ澄まされている剃刀を取り上げた……

ローズ「さてと……せっかくお近づきになれたのだから、もっと貴女の事を知りたいわ…♪」アンジェの前で姿勢を落とし、秘部に固定具をあてがって押し広げた……

アンジェ「…っ///」

ローズ「まぁ、なんて綺麗な薄桃色……まるで処女(おとめ)のままみたい…ね♪」舐めまわすようにじっくりと眺めると、剃刀を取り上げた…

アンジェ「…」

ローズ「ふふふ…それにこの柔らかな産毛……♪」そう言って脚の間を軽く撫でると、まだワインで濡れそぼっている秘部の周りに剃刀を滑らせた…

アンジェ「///」

ローズ「くすっ……可愛らしいマーガレットには処女らしくしていてもらわないと…ね♪」しゃり…しゃりっ……

アンジェ「……んっ///」じらすような刃の滑らせかたに、思わず声が出るアンジェ…

ローズ「動いちゃだめよ……♪」

アンジェ「…ん…はぁ……///」…声を出すまいと思いつつも、散々縛りつけられたり痛めつけられたり…かと思えば口移しでたっぷりとワインを飲まされ、今度は豊満な美人に優しくデリケートな部分を剃毛されている……想定を超える異常な状況とこそばゆいような感覚のせいで体が疼き、花芯が濡れてくる……

ローズ「ふふふ……終わったわ…すっかりつるつるで、まるで赤ちゃんのようね♪」

アンジェ「…はぁ…はぁっ……///」

ローズ「…さてと……それで、貴女の雇用主は?」

アンジェ「……知りません…本当にいま話したことしか知ら……ああ゛ぁ゛ぁぁっ!」

ローズ「ふふ…もう、嘘をついちゃダメだって言ったでしょう……♪」爛々と瞳を輝かせ、研ぎ澄まされた剃刀で浅く…しかしたっぷり一インチほどふとももの柔肌を切り裂いた…

アンジェ「……うぅっ」(…あの剃刀が良く砥がれていてよかったわ……刃がぎざぎざになっているような鈍い刃物でやられたらもっとひどいことになっていたはず…)

ローズ「さぁ、答えて♪」まるで何かの当てっこをするような楽しげな口調で問い詰める…

アンジェ「…あ…うぅ……ですから、本当に……」

ローズ「…ふぅ」いつの間に持ち替えたのか、長い鞭で鋭く打ち据えた…

アンジェ「……ぐっ!」

ローズ「ね、本当の事を言うだけよ……もし教えてくれたら、ごほうびをあげる♪」アンジェの胸元にワインを注ぐと、吸いつくようにして舐めはじめた…

アンジェ「…ん///」

ローズ「大丈夫…ん、ちゅぅ……貴女に害が及ぶような事は……じゅるっ、ちゅ……ないわ……私が助けてあげる♪」

アンジェ「んっ、く…///」

ローズ「……それに……ぴちゃ…組織は貴女がいなくなっても変わらないけれど…んむっ、ちゅぅ……質問に答えないと苦しいのは貴女よ、マーガレット…ちゅるっ…助かるには……素直に答えた方がいいわ……んちゅる…っ♪」

アンジェ「…ん、あ……はぁ…っ///」谷間からへそ、秘部…それからまだ血が滴っているふとももを舌で舐めまわされ、吸われていく…

ローズ「んんぅ……美味しい…♪」…ふとももの鮮血と混じりあったブルゴーニュの濃厚な紅を舌で受け止め、ちろちろと舐め続けている……

アンジェ「んぅっ……んっ///」

ローズ「ふふっ、可愛らしい喘ぎ声……二人とも、ロープを持っていらっしゃい♪」

二人「「はい」」

ローズ「……さ、マーガレットの左脚を♪」

アンジェ「…っ///」二人の手で足首に新しくロープをかけられると、片脚だけ横向きに膝を上げるような状態で固定された…

ローズ「ふふ、いい眺め……次はあなたたちも召し上がれ?」またたっぷりとワインを注ぎ、アンジェの引き締まった乳房を舐めあげた…

アゴニー「…ん、ぴちゃ…ちゅぅ♪」

アンギッシュ「……んちゅっ、ちゅる…♪」…こちらもそれぞれ右脚と花芯に吸いつき、無表情ながら陶然とした様子で一心不乱に舌を這わせている…

アンジェ「あ…んっ……///」酔いが回っていて、そのうえ三人に全身を舐めまわされているせいか、時々が目の焦点がかすむ……
329 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/05(水) 02:41:43.96 ID:SG91uO/t0
ローズ「…さて、それじゃあ今度は……♪」口もとから滴った血とワインの混じった雫を舌先で舐めとると、卓上の小道具をあさり始めた……

アンジェ「…」

ローズ「ふふふ……せっかくマーガレットが「初めて」なのだから、わたくしが手ほどきしてあげないといけないわ…ね♪」

アンジェ「…っ」

…机からワイルドローズが取り上げたのは、樫の木でできた芯材に黒染めの柔らかな牛革をぴったりとかぶせて縫い上げた張り型(ディルド)で、それを数本持って近寄ってきた…

ローズ「マーガレット……これが何か分かる?」

アンジェ「…ええ、おおよそは…予想がつきます…///」…レジェンド(偽装経歴)として作り上げた「マーガレット・ホワイト」は、年ごろからいってそう言ったものの名前くらいは聞いたことがあるが、婦人参政権や貧困の救済など「社会改革の理想に共鳴する真面目なお嬢さん」らしく顔を赤らめてみせた……

ローズ「結構……さ、あなたたちもお取りなさい」

二人「「はい…♪」」

ローズ「…ふふ、マーガレットはこういう「お道具」を使ったことはある?」

アンジェ「……い、いいえ///」(実際は幾度かあるけれど……ここは余計なことを言わない方が利口ね…)

ローズ「くすくすっ……ようやく本当の事を言ってくれたわね♪」

アンジェ「…っ///」

ローズ「それにしても良かったわ…マーガレットの「つぼみ」がまだ手つかずで……♪」張り型を持ってにじり寄ってくると、汗ばんだアンジェの脇腹を舐めあげた…

アンジェ「…う、うぅ…っ……」嫌がるように顔をそむけ、身をよじった…

ローズ「ふふふ…大丈夫、すぐに貴女からおねだりするようになるわ……♪」すべりを良くするためか白いラードのようなものを張り型に塗りつけ、つけ過ぎた分を意味深な笑みを浮かべつつ舐めとった…

アンジェ「……お願い……止めて…止めて下さい……っ…///」

ローズ「心配いらないわ、もっと小さな娘にだって入るもの……始めは少し痛いかもしれないけれど、すぐ慣れるわ…♪」

アンジェ「…お願い、おねがいですから…どうか……」

ローズ「ふふふ……そう言って懇願されるとますますしたくなるのよ…ね♪」にちゅ、ずぶっ……♪

アンジェ「あ…あぁぁぁっ……///」

ローズ「まぁまぁ、何とも初々しい反応だこと…♪」

アンジェ「…うっ、ぐうぅ…っ///」必要以上に痛がって、顔をゆがめるアンジェ…

ローズ「……さ、動かすわよ」

アンジェ「あっ、ぐぅ…っ……ああ゛ぁ゛ぁっ…!」ずちゅっ、ぐちゅ…っ…♪

ローズ「ふふふ…その表情(かお)、とってもいいわ……♪」頬を紅潮させ、額やずっしりとした乳房からは汗が玉になって飛び散る…

アンジェ「あぁぁっ…んっ、ひい゛ぃぃ…っ……!」

ローズ「はぁぁ…素晴らしいわね……アゴニー、アンギッシュ」

二人「「はい」」

ローズ「せっかくだから、あなたたちもどうぞ……と、その前に♪」アンジェの目に黒いシルクの布で目隠しをすると、みだらな笑みを浮かべた…

アンジェ「…あっ……」

アゴニー「…そうおっしゃっていただけるのでしたら……」ぐちゅ、ずぶずぶ…っ♪

アンジェ「あ゛っ、あ゛あぁ゛ぁ…っ……///」

アンギッシュ「…なら私はこちらを……」アンジェのきゅっと引き締まったヒップを指し示した…

ローズ「ええ、いいわよ…♪」

アンギッシュ「…ありがとうございます、それでは……」ぐじゅっ、ぢゅぶ…っ♪

アンジェ「えっ…あ……ん゛ひぃ゛ぃっ…!?」張り型を押し込まれると、拘束されたまま身体をびくんとのけ反らせて絶叫した…

ローズ「ふふ…ふふふふっ♪」

アゴニー「…ふふ」

アンギッシュ「…くすくすっ♪」

………

330 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/06/06(木) 02:19:25.31 ID:2fjQzvp40
…一方・エンバンクメント(運河)沿いの裏通り…

ドロシー「…次は右か……ふぅ、アンジェを捕まえた連中が誰であれ、少なくとも「尾行を撒く」ことに関してはアマチュアに毛の生えた程度だって言うのがはっきりしたぜ…」

ベアトリス「どういうことですか?」

ドロシー「ああ……普通だったらうんと迂回をするとか車を乗り換えるとか、何でもいいが追跡者を撒く手立てをとっておくもんだ…こいつらみたいに目的地へ真っ直ぐ車を走らせたりしないでな」

ベアトリス「……でも、もしかしたら私たちをおびき寄せるつもりかもしれませんよ?」

ドロシー「…なかなか悪くない発想だが、それだったらこっちが餌に食いつくようにもっと複雑で「それらしい」経路を選ぶね……ところが連中はイタチの巣を見つけたテリアそこのけに突っ走ってる…もしファームの教官がこんなのを見たら、脳の血管が切れちまうだろうな」

ベアトリス「…それじゃあ」

ドロシー「この道で間違いない…ってことさ。それに目的地はそう遠くない…周囲を見てみな?」

ベアトリス「はい…」ベアトリスが辺りを見回すと、うっすらと夜霧のかかった運河の両脇に黒々とそびえる保税倉庫のシルエットが広がっている…

ドロシー「…見ての通り、辺りは人通りの少ない…それでいて見慣れない人物や車がいても何もおかしくない海外貿易品中心の倉庫街だ…誰かを連れ去って尋問にかけるにはもってこいだろう?」

ベアトリス「なるほど……」

ドロシー「それと…おそらくだが、連中は尋問室を地階(グランド・フロア)に作らないで地下に用意したはずだ……そいつはこっちとしても都合がいい」

ベアトリス「…どうしてですか?」

ドロシー「そいつは後で説明するさ……そろそろ目的地に到着、ってところだからな…」それらしい場所に近づいたのでロールス・ロイスのエンジンを止めて惰性で百数十ヤードばかり走らせ、薄暗い倉庫の間に停めた…

…その頃・地下室…

アンジェ「はひっ、はぁ、はぁっ……はぁぁ…っ…!」

アゴニー「…くすっ♪」じゅぶ…ぐちゅぐちゅっ♪

アンジェ「あっあっ…はひぃ、あぁぁ…んっ♪」

ローズ「まぁまぁ…マーガレットったら初めてなのにこんなに濡らして……♪」じゅぶ、じゅぶっ…ずちゅっ♪

アンジェ「はひぃ…はへぇぇ……///」とろとろっ…♪

アンギッシュ「では、私も……♪」ずぶずぶっ…ぐりっ♪

アンジェ「はぁ、はぁ…らめ……んはぁぁ…っ///」とぽっ、ぷしゃぁぁ…っ♪

アゴニー「…彼女はまた達してしまったようです、レディ・ワイルドローズ」

ローズ「そのようね…なら「お仕置き」が必要だわ」アンギッシュに向かって軽くうなずいた…

アンギッシュ「…はい♪」

アンジェ「ひっ…らめ、もうやめ……んあ゛ぁ゛ぁぁ…っ///」花芯に二本目の張り型をねじ込まれ、どこか甘ったるい悩ましげな声で絶叫するアンジェ…

アゴニー「んちゅぅ…ちゅっ、ちゅる…ぢゅぅぅ…っ♪」

アンギッシュ「ふふ…ぴちゃ、れろっ……んちゅ、ぢゅるぅ……っ…♪」二人は片脚を持ち上げられたアンジェの前にひざまづくと、乳房に吸いつく仔鹿のように、とろとろと垂れている愛液をすすりこむ…

アンジェ「らめ…そんな……あ、あぁっ…♪」目隠しをされたままあちこちを責めたてられ、ろれつも回らなくなった半開きの口もとからとろりと唾液がこぼれる……持ち上げられていない方の脚は垂れた愛蜜がつたって、つま先から床までべとべとに濡れている…

ローズ「…ふふ、最初から協力してくれればこんな事にはならなかったのよ……んちゅぅ…れろっ……♪」

アンジェ「んぅぅ…んっ、んんぅぅ…っ♪」ローズに口づけをされながらアゴニーとアンギッシュの二人に張り型を動かされて、身体をひくひくと震わせながら絶頂するアンジェ…

ローズ「ふふ…言っておくけれど、まだまだ色んな事を体験できるわ……楽しみにしていらっしゃい…ね♪」アンジェの耳たぶを甘噛みしながらささやきかけた…

アンジェ「んっ、んぅぅ…っ///」とぽ…とろとろ……っ♪

………

331 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/08(土) 01:47:59.52 ID:jFTn6DEk0
…倉庫街の一画…

ドロシー「…アンジェが捕まってる倉庫は……あれか」


…使われていない倉庫の影の暗がりからそっと様子をうかがうドロシーたち…その視線の先には、夜霧に霞んでレンガ造りの倉庫が建っている……辺りには青果店の倉庫から出たカブの葉っぱやニンジンのしっぽのような野菜くずが捨てられているゴミ捨て場があり、運河のよどんだ水の臭いや古びたレンガの土ぼこりのような臭いと交じって、いかにも倉庫街らしい雰囲気を漂わせている…


ベアトリス「……ドロシーさん、どうしてあれだって分かるんですか?」

ドロシー「簡単さ…ケイバーライト粉の痕跡はあそこの前で切れてるし、入り口に見張りがいる……こんな人気のない場所でわざわざ見張りなんて立たせておいたら逆に目立つって言うのに……馬鹿な連中だ」

見張り「…」ハンチング帽をかぶり、時々倉庫の前を行き来している…

ドロシー「…見張りは一人で程度は「並」ってところか……だが動きがぎこちない所を見ると、経験が浅いな……」

ちせ「とはいえ見張りは見張り、見つかれば騒がれるじゃろうが…どうする?」

ドロシー「もちろん片づけるさ……とりあえず奴をおびき出す」道端に落ちていた石ころを拾い上げると軽く手の上で転がして重さを確かめ、絶妙な場所に放った…夜霧のせいで音が妙に響き、それでいて少し離れるとすっかり霧に吸い込まれてしまう……

見張り「…ん?」

ドロシー「……ちせ、仕留めそこなったら頼む」スティレットを握って身構えた…

ちせ「うむ」

見張り「…?」不審そうな顔をして歩いてくると、頭を動かしてドロシーたちの隠れ場所の向かいにある暗がりを透かし見ようとする…その後ろからドロシーが音もなく忍び寄り、口をふさぐと同時にスティレットを突きたてた……

見張り「ぐ…ん゛っ……!」

ドロシー「……よし、片付いた…」スティレットの刃を相手の服の裾で拭うと、死体を引きずって隠した…

ベアトリス「それで、ここからどうするんです…?」

ドロシー「ああ、そいつをまだ説明してなかったな……見たところあの倉庫からは灯りや声が漏れてこないから、どうやら連中は尋問室を地下に作っているようだ…さっき裏側も見てきたが、そっちは運河に面したどん詰まりで道はない……つまり出口は一つきりだ」

ベアトリス「…それで?」

ドロシー「簡単さ……アンジェを助け出すと同時に、ここにいる連中を一人残らずきれいさっぱり始末する…私たちが助けに来たことを連中の「お仲間」に話されちゃたまったものじゃないからな」

ベアトリス「あの…それって……」

ドロシー「そういうことだ……アンジェの命、それと私たちの安全のためにな」

ベアトリス「……っ、分かりました…」

ドロシー「結構。それじゃあ私とベアトリスが突入するから、ちせは地下の入り口で待機……私たち以外で出てくる奴がいたら、問答無用で片っぱしから斬れ」…戦闘技術が未熟で足手まといになるリスクがあるベアトリスを連れて行くことで、「厄介事」に巻き込んでしまったちせに少しでも負担をかけないよう気を回したドロシー…

ちせ「うむ、承知した」ちせも言外の含みに気が付き、軽く一礼した…

ドロシー「よし…それじゃあベアトリス、行くぞ……あいにくと招待状はもらえなかったが、一つパーティにお邪魔させてもらおうじゃないか♪」

ベアトリス「はい…っ!」

…倉庫内…

ドロシー「…やっぱりな……あれだ」倉庫の中はガランとしていて、数台のロールス・ロイスやモーリス、マーモン・ヘリントン乗用車が停めてある……その片隅には小ぶりな階段があって、薄暗いシルエットになって地下へ続いている…

ベアトリス「…そうみたいですね」

ドロシー「ああ……まずは連中の車をおしゃかにしておくぞ。こいつを使って逃げられたら厄介だからな」

ベアトリス「はい」音が響かないようそっとボンネットを開けて、点火栓を外したりコードを切ったりした……

ドロシー「よし、こんなもんでいいだろう…ベアトリス、お前の方が小さいから前だ……私がきっちり援護してやるから、心配するな」

ベアトリス「分かりました…お任せします」

ドロシー「おう……それじゃあ行くぞ♪」そう言うと、ニヤリと不敵な笑みを口の端に浮かべた…


332 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/11(火) 02:00:30.47 ID:nV+5WRBk0
…倉庫の地下…

見張り「ふわ…ぁ……くそ、眠いな…」ハンチング帽をかぶったエージェントが目をこすり、あくびをかみ殺しつつ廊下の椅子に腰かけている…

ドロシー「…」廊下の角からちらりと確認すると、右側のウェブリー・スコットを抜いた…

見張り「…うーん……」眠気覚ましに首を回したり腕を動かしてみたりと忙しい……

ベアトリス「…ここからだと一人しか見えませんね」3インチ・ウェブリーを構えて小声で言った…

ドロシー「…よし、だったらちょっとばかり呼び鈴を鳴らしてやるとするか……スリー・トゥ・ワン…行け!」

ベアトリス「…はいっ!」バン、バンッ!

見張り「う、ぐうっ……!?」


…地下の狭い廊下で反響して、まるで装甲艦の8インチ砲のように轟く銃声……見張りが椅子ごともんどりうって数秒もしないうちに、あちこちから騒がしい物音が聞こえてきた…


王国エージェント「何だ…っ!?」

王国エージェントB「馬鹿、銃声だぞ! とっとと持ち場に……あっ!」

ドロシー「……安全確認もしないで飛び出しちゃ駄目だって教わらなかったか?」右手の廊下から駆けつけてくるエージェント二人にウェブリーを撃ち込み、身体をひねると左側のドアから飛び出してきたハンチング帽のエージェントを撃ち抜いた…

ベアトリス「……っ!」奥の方から駆けつけてきた数人に弾を撃ち込むとひとりが倒れ、残りは慌てて角に隠れた…

王国エージェントC「ボビー、ウィル…援護しろ!」コートの裾をひらめかせ、ウェブリーを撃ちながら走り込んでくる…

ドロシー「…おいおい、連中ときたらずいぶんと数が多いな……同窓会でもあったのか?」


…ドロシーは飛び出してきたエージェントの額を撃ち抜くと、目にも止まらない速さで左のウェブリーを引き抜きつつ弾切れになった右手のウェブリーと持ち替え、そのまま援護射撃をしていたエージェントを仕留めた…


ベアトリス「…く、こんなにいるなんて……聞いていませんでした…よ!?」一人を撃ち抜き、もう一人にも手傷を負わせた…

ドロシー「ああ、私もこんなにいるとは思ってなかったさ…!」持ち替えたウェブリーも撃ちきると水平二連の散弾銃を抜き放ち、廊下の角から向こう側に向けて撃ちこんだ…鹿撃ち用の散弾をもろに浴びて廊下の壁に叩きつけられる王国エージェント…

ベアトリス「…っ、弾切れです!」

ドロシー「分かってる、そこを代われ!」


…中折れ式リボルバーのウェブリー・スコットはどうしても再装填に両手を使う必要がある…ドロシーはベアトリスと交代すると、今度は限界まで切り詰めた改造リー・エンフィールド・ライフルを脇のサックから引き抜き、自動火器かと思うほどの速射で廊下の小机を倒して盾にしている二人を撃ちぬいた…


ベアトリス「っ…装填できました、代わります!」

ドロシー「よし、頼む!」代わりあうようにして壁に背中をあずけ、手際よくウェブリーの弾を込め直した…

ベアトリス「…んっ!」バン、バァン…ッ!

王国エージェントJ「…ぐっ!」

ドロシー「……どうやら片付いたようだな?」

ベアトリス「はー、はー、はーっ……ええ、どうやらそうみたいです…」

ドロシー「よし、それじゃあ後は人に手間をかけさせやがった黒蜥蜴女を探すとしよう……連中に「奪還されてなるものか」って片づけられちまわないうちにな」

ベアトリス「はい」

ドロシー「さてと、どうやらここは大文字の「H」字型みたいなつくりらしい…縦棒ごとに面した部屋があって、入り口側の二つは詰所か仮眠室か……まぁそんなような物だったから、残りは二部屋っきりだ…私なら奥の方が尋問室だと見るね」

ベアトリス「ええ、同感です」

ドロシー「まさに「意見の一致」ってやつだな…それじゃ急ごう♪」

ベアトリス「はいっ!」
333 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/06/14(金) 02:06:27.73 ID:0dT4qfmr0
…同じ頃…

ローズ「…んじゅるっ、れろぉ、ぴちゃ……ふふ、早く言った方がいいわ」

アンジェ「…ん、んんぅ…っ///」ワイルドローズはアンジェの耳の穴から爪先までくまなく舐めまわし、アゴニーとアンギッシュは蜜でねっとりと濡れたふとももにしがみつくような体勢で舌を這わせている……

ローズ「……マーガレット、貴女はよく耐えたわ…もう楽になっていいのよ♪」

アンジェ「…んっ、はぁ……はぁっ///」

ローズ「……ね、もう我慢しないで……素直になりましょう?」

アンジェ「…」くり返しくり返し同じことを言われ続けたせいで一種の暗示にかかり始め、判断力が鈍り始めているのを意識しているアンジェ…

ローズ「私が貴女のことは大事に飼ってあげる…んちゅっ、じゅるっ……きっと貴女も気に入るわ…ね?」


…縛り付けられたアンジェを責めたてながらねっとりとした甘い言葉で誘惑するワイルドローズと、まるで酔ったように身体を舐めまわすアゴニーとアンギッシュ……と、不意に重い鉄扉の向こうから聞き間違いようのない銃声が地下室に反響し、長く尾を引いて響いてきた……最初の数発が聞こえてきたかと思うと一気に激しい銃撃戦の音が始まり、数分もしないで静かになった…


アンジェ「…」

アゴニー「…っ!?」

アンギッシュ「……いったい何の音でしょう、レディ・ワイルドローズ…?」二人はアンジェを舐めまわすのを止めると、今までの無表情と気だるさの混じりあったような表情が取り払われ、怯えたように身体をすくめた…

ローズ「…心配いらないわ。 大丈夫よ、私があなたたちを守ってあげる……あなたたちは私の可愛いしもべですものね♪」

…ワイルドローズ本人も何が起こったか分からないせいか一瞬不安そうな表情を浮かべたが、すぐアゴニーとアンギッシュを抱きしめて口づけを交わすと、二人をかばうようにして扉の前に立った…それから木のかんぬきをかけ、ナイフの代わりになりそうな一番大きいメスを取り上げた…

アンジェ「…」(やっぱり素人ね。扉の正面に立つなんて……)

…一方・扉の前…

見張り「…がはっ……!」

ドロシー「さて、ここだな…」ウェブリーのシリンダーを開いて空薬莢を捨てると弾を込め直し、ドアの脇に立った…

ベアトリス「…でも、こんな鉄の扉じゃ開けようもありませんよ……」頑丈そうな鉄扉を前にすっかり落胆しているベアトリス…

ドロシー「おいおいベアトリス、その歳でボケるのはちと早いぜ? …ここに来るときにネストから「ドカンといくやつ」を持って来ただろうが♪」

ベアトリス「いえ、それはそうですが……中にアンジェさんがいるかもしれないんですよ?」

ドロシー「じゃあ他にいい方法があるなら教えてくれ…煙でも焚いていぶり出すか? それとも尋問官に開けてくれるようお願いするか?」

ベアトリス「むぅ…」

ドロシー「それに、よしんばアンジェが巻き込まれたとしてもだ……あの冷血女がけちな爆発一つでくたばるかよ♪」

ベアトリス「…でも」

ドロシー「悩んでる暇はないぜ、このふざけたドアに爆弾を仕掛けるんだ…ただしドアが完全に吹っ飛んでアンジェの奴をひき肉にしたりしないよう、錠や蝶つがいのところを中心にして…だ♪」口もとに笑みを浮かべた…

ベアトリス「あ……はいっ!」それを聞いて手際よく爆弾を仕掛けた…懐中時計そっくりな時限装置をぎりぎりの短さにセットする…

ドロシー「…いいか?」

ベアトリス「はい、仕掛けました……隠れて下さいっ!」

…ふたたび室内…

ローズ「……もう、マーガレットったら…可愛い顔をしてずいぶんな嘘つきさんね。…お仲間がいらっしゃったようじゃない?」

アンジェ「…さぁ」

ローズ「今さら隠し立てしなくてもいいのよ…もっとも、貴女のお仲間はこの分厚い鉄の扉をどうやって開けるつもりなのかしらね♪」

アンジェ「…分からないわ、ただ……」言いかけた瞬間に猛烈な爆音と衝撃が走り、壁や床からレンガの粉やほこりが一気に舞い上がってもうもうとたちこめた…

アンジェ「……かなり派手な方法だろうとは思っているわ…」爆風で耳が聞こえないなか、心の中でつぶやいた…
334 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/14(金) 03:26:09.81 ID:0dT4qfmr0
ドロシー「……よし、行くぞ!」ウェブリー片手に室内へ飛び込んだドロシーとベアトリス…室内には猛烈な煙とほこりの雲がたちこめ、置いてあったはずのランタンは吹き飛んで、すっかり真っ暗になっている……

ドロシー「…ふぅっ…こりゃ大掃除が必要だな……」ベアトリスが持っているランタンを受け取り、室内を照らした…

アンジェ「……それは貴女がやるべきでしょうね」


…少し声に張りがないが、それでもドロシーに向かっていつも通りの口調で言ったアンジェ…十字架形の拘束台に片脚を高く上げた状態で縛りつけられ、ランタンで照らされている裸身は傷だらけになっている…ふとももの皮はあちこちが裂け、そうでないところにも赤く鞭打ちの跡が残り、おまけにほこりをかぶってすっかり白っぽくなっている…


ベアトリス「アンジェさんっ!」あわてて駆け寄ると、ロープをほどこうと焦っている…

ドロシー「……よう、アンジェ」結び目に悪戦苦闘しているベアトリスにナイフを渡すと、いつもの不敵な笑みを浮かべた…

アンジェ「ええ…」

ドロシー「地下室暮らしは飽きただろ? …上に車が用意してあるぞ」

アンジェ「…結構ね……ごほっ、げほっ…!」

ドロシー「おっと、忘れてた……ここはずいぶんほこりっぽいからな、喉が乾いただろ♪」そう言ってブランデーの携帯容器を取り出し、そっと唇に当てた…

アンジェ「…んくっ、こくっ……」

ドロシー「…どうだ?」

アンジェ「ええ、ありがとう……ところで…」

ドロシー「ん?」

アンジェ「…どうして貴女たちがここに来たの」

ドロシー「そりゃお前さんに「歌われ」たら困るからさ…幸い、道しるべを残しておいてくれたこともあったしな♪」

アンジェ「あれはそういう目的でやったわけじゃない……貴女たちが脱出した後、監視チームがここを突きとめて出入りする人間を見張るなり追跡するなり、しかるべき手段を講じさせるためよ…誰が十字軍ごっこをしろと言ったの?」

ベアトリス「そんな、いくら何でもそんな言い方って……!」

ドロシー「…まぁ待て」

ベアトリス「でも…!」

ドロシー「いいから……ま、それじゃあ少し考えてみようぜ。お前さんが「価値を失う」とこっちも巻き添えを食うし、同時にお前さんの思っている「とある女性」も手札としての価値が下がる…違うか?」

アンジェ「いいえ」

ドロシー「私たちの脱出だって上手くいくとは限らないし、監視チームの立ち上げだって時間がかかる……それまでにここがもぬけの殻になるのは目に見えてる」

アンジェ「ええ…」

ドロシー「…だとしたらお前さんの残した産物(プロダクト)には価値がないってことになる。だったら価値のある方を取り戻すのが利益になる…どうだ?」

アンジェ「だとしても…」

ドロシー「その辺の保安措置は大丈夫さ……局を閉鎖するときに「トガリネズミ」の事は連絡したし、問題になりそうな機材は全部始末しておいた」

アンジェ「……でも…」

ドロシー「それにだ……お前さんが鉄格子の向こうだの天国だのに行っちまったら、あのレディを悲しませることになる…だろ?」

アンジェ「……っ、それとこれとは関係ないでしょう///」

ドロシー「大ありさ…もしもそうなったら今まで築いてきたこっちの信頼やカバーは無駄になるし、ひいては協力が得られなくなるかもしれない……分かったらおしゃべりはやめて、さっさとこんなところからはおさらばしようぜ♪」

アンジェ「ええ……どうやらそれが今までで一番まともな判断ね…」

ドロシー「そりゃどうも…それと、ほら」ウェブリー・フォスベリーと着るものを差し出した…

アンジェ「…助かるわ」

ドロシー「ああ…ところでこの連中は?」ドアが吹き飛んだ時の爆風で伸びているワイルドローズたち三人をあごをしゃくった…

アンジェ「連中が尋問官の代わりに準備した怪しい趣味の女性よ……息はあるようだし、睡眠薬を打って連れて行く」

ドロシー「…途中で怪しまれないか?」

アンジェ「そのあたりの手はずは考えてある……任せてちょうだい」

ドロシー「やれやれ、そこらじゅう引っぱたかれて生傷だらけにされてるって言うのにか? まったく、ついていけないぜ…♪」

………

335 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/16(日) 01:26:13.12 ID:Th4KJ3Jx0
アンジェ「逆ね…あれこれ考えを巡らしていれば必要以上に怯えたりしないで済む」

ドロシー「なるほど……なにはともあれ早くここを出よう。いつ連中の仲間が来るか分かったもんじゃないしな」

アンジェ「そうね……うっ…く!」地面に足をついた瞬間、焼け付くような痛みが押し寄せてきた…

ドロシー「…足の裏もやられたのか?」

アンジェ「ええ、革ベルトでね……う゛っ!」

ドロシー「……その足じゃ歩くのは厳しいだろ…ほら、おぶってやるよ♪」

アンジェ「馬鹿言わないで。それじゃあこの三人はどうする気?」

ドロシー「どのみち三人をいっぺんに運ぶのは無理だ…往復すりゃいいさ」

アンジェ「…それだと時間がかかるわ」

ドロシー「そればっかりは仕方ないさ…ベアトリス」

ベアトリス「はい」

ドロシー「戻ってくるまで見張っててくれ。私はその間にこの愛想の悪いやつを運んでくる」

ベアトリス「分かりました」

ドロシー「よし…ほら、行くぞ♪」アンジェを背負って地下室から運び出した…

…地下室への階段…

ドロシー「…よいしょ……」一段一段確かめるように階段を上る…

アンジェ「……上にはちせが?」

ドロシー「ああ」

アンジェ「なるほど、彼女まで巻き込んだというわけね…」

ドロシー「私はちゃんと「一緒に来るならでっかい問題に巻き込まれる」とは伝えたからな…あとは本人の自由意思ってやつさ♪」

アンジェ「なるほど……形は整えたわけね?」

ドロシー「そういうこと……ほら、噂をすれば♪」

ちせ「……おお、ドロシーどの…アンジェどのは無事か?」

ドロシー「ああ、さっきから私の背中にしがみついてぶつくさ皮肉を言ってるよ……とりあえず腕や脚は付いてるし、聞いている限りじゃ毒舌も無事らしい」

アンジェ「別に「ぶつくさ」なんて言ってないわ…正確な判断が出来ていないわね」

ドロシー「この通りさ……ちなみにまだ回収したいものがあるからベアトリスを下に残してある。 とにかくこの皮肉屋を車に運んでくるから、引き続きここを頼む」

ちせ「うむ、承知した……無事で何よりじゃ」

アンジェ「……ありがとう」

ちせ「なに、構わぬよ」

ドロシー「よっこらしょ……とにかく身体を休めて、もし連中のお仲間が来るようだったらちせに向けて合図のランタンを振ってくれ」

アンジェ「ええ…」

ドロシー「それじゃあ私は戻るが…手早く済ませてくる♪」

アンジェ「頼んだわよ」

ドロシー「ああ…♪」
336 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/19(水) 01:51:35.25 ID:ynqAWnBW0
…数分後…

ドロシー「…よし、これで運び終わったな……やれやれ、とんだ大仕事だったぜ♪」自分は一番大柄なワイルドローズを背負い、ベアトリスとちせにはそれぞれアゴニーとアンギッシュを運ばせたドロシー……地面にワイルドローズを下ろすと、額の汗を拭う真似をして冗談めかした…

アンジェ「お疲れさま」

ドロシー「おう…で、どうやってこいつらを怪しまれないで連れて行くつもりだ?」

アンジェ「そのことだけれど……ロープはある?」

ドロシー「もちろん。この世界の必需品だろ」

アンジェ「ならこの二人を互い違いにして縛り上げて」

ドロシー「あいよ」まるでサーディンを缶詰めにするようにアゴニーとアンギッシュを互い違いに寝かせると、ロープできっちりと縛り上げた…

アンジェ「結構…ならその二人は後ろのトランクへ詰めて?」

ドロシー「了解だ……ベアトリス、手伝え」

ベアトリス「はい」車の後部についている四角いトランクを開けると、ローストビーフの肉そこのけにぐるぐる巻きになっている二人を押し込んだ…

ドロシー「よし…で、この女は?」

アンジェ「それも考えてあるわ……ドロシー、さっきの気付けをちょうだい」

ドロシー「……ああ、なるほどな♪」

アンジェ「そういう事よ」睡眠薬ですっかり意識を失っているワイルドローズの顔や胸元にたっぷりとブランデーを振りかけた…たちまち酒屋の店先のように強い匂いがたちこめる……

ベアトリス「えーと……つまり?」

ドロシー「はは、簡単さ…私たちはゴキゲンなパーティ帰りの貴族様で、このレディは少しばかりグラスが多かった……って設定さ♪」睡眠薬ですっかり意識を失っているワイルドローズを後部座席に座らせた…

ベアトリス「あ、あぁ…なるほど!」

アンジェ「そういう事よ……それならもし警官に停められても言い逃れができる」

ベアトリス「でも…この格好だと貴族になんて見えないと思うんですが……」自分の黒マントを広げてみるベアトリス…

ドロシー「なぁに、そこは冴えた頭とよく回る舌、それに王立劇場並みの演技力でどうにかするさ……えらそうな口調で横柄な態度、貴族くらいしか買えない自動車に怪しげな格好……となればどう見たって上流階級の密かなお楽しみ…つまり貴族のご婦人方がこっそり楽しい乱痴気パーティからのお帰り、って設定さ♪」

アンジェ「その通りよ…もちろんスコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)の警官も馬鹿じゃないから、わざわざ貴族の車を停めさせて不興を買ったりするような真似はしないとは思うけれど……」

ドロシー「…説得力のある設定を作っておけば慌てないで済むからな」

ちせ「なるほど…しかし、日本人の私はどう見ても貴族には見えぬが……そこはどうすればよいのじゃ?」

アンジェ「そうね、貴女は私たちが買って「お持ち帰り」の上で愉しませてもらう予定の東洋人を演じてもらう。だから何もしゃべらなくていいし、適度に縮こまっていればいい」

ドロシー「だな…ちなみにベアトリス、お前さんもちせと似たような境遇だ…私やこの女が今夜たっぷりともてあそぶ予定の「可愛い小間使い」って所だ♪」

ベアトリス「わ、わかりました…///」

ドロシー「よし、じゃあ車を出すぞ♪」

アンジェ「ええ…テムズ川沿いのネスト「ツバメの巣」に向かってちょうだい」

ドロシー「あそこか……到着するまでしばらくかかるし、寝たきゃ寝てもいいぜ?」

アンジェ「気持ちはありがたいけれど、戻るまでは起きているわ」

ドロシー「分かった…ブランデーの残りも飲んじまっていいからな?」

アンジェ「大丈夫よ…」

ドロシー「ああ、分かった」

………

337 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/21(金) 01:38:55.37 ID:R6QkteRl0
…ロンドン市内…

ドロシー「それにしても……そこの女にしろあの施設にいた奴らにしろ、今回は妙に素人くさい連中だったな…」

アンジェ「ええ…私も尋問の間出来るだけ耳をそばだてていたけれど、どうやらあのエージェントたちは外務省の情報部みたいね」

ドロシー「外務省情報部? …あいつらは貿易品の相場みたいな情報や外地での諜報活動なら強いが……国内の防諜もやってるのか?」

アンジェ「…だからじゃないかしら」

ドロシー「得点稼ぎに共和国の情報部員をあげて、他の省庁にいいところを見せようとしたっていうのか?」

アンジェ「ええ。そう考えたらあの場当たり的でせわしない様子もつじつまが合う……特に最近の防諜活動は防諜部の一強状態にあるし、エリート官僚が多くて気位(プライド)の高い外務省からしたら新参者に負けているのはしゃくにさわるはず…要は誰かが早急に成果を求めたのでしょうね」

ドロシー「なるほどな……」

…相づちを打ちながら夜霧がかかっているロンドンの道を迷うこともなく走らせていたが、一本の細い通りに入ると不意に車を停めた…

ドロシー「よし……アンジェ、ここで降りろ」

アンジェ「…どういうつもり?」

ドロシー「もしかしたら気づいてないかもしれないが、お前さんは夕方からさっきまで尋問されてたんだ……残りの後片付けは私とちせでやっておくから、ベアトリスを連れて寮に戻れ」…アルビオンらしい皮肉を利かせてはいるが顔をアンジェの方に向け、真剣な口調で言った……

アンジェ「だめよ」

ドロシー「馬鹿言うな。身体中傷だらけでまともに歩けもしないだろ…手伝いにならねえよ」

アンジェ「だとしても…」

ドロシー「あそこについた時、どうやっておけばいいのかは私にも分かってる……今は戻って傷の手当てをしろ」

アンジェ「…でも」

ドロシー「口答えするな。別に「お涙ちょうだい」の三文芝居にあるような安っぽい同情で言っているわけじゃない…お前の能力が落ちているのは「白鳩」の活動にとっても不利になるからだ」

アンジェ「……わかったわ」

ドロシー「よろしい。ベアトリス、お前さんは怪我の手当だとか看病だとか…そういうきめ細かい気遣いが得意だからな、よく診てやってくれ」

ベアトリス「はい、任せて下さい…!」

ドロシー「結構…どっかの誰かさんもこのくらい聞き分けがいいと助かるんだが……」

アンジェ「…余計なお世話よ」

ドロシー「へっ、だったら最初から人の言うことを聞くんだな♪」

アンジェ「そうね、これからはそうする……年寄りにくどくど言われるのは閉口だもの」

ドロシー「ああ…ちせ、悪いがもうちょっと付き合ってくれ」

ちせ「うむ」


…霧の中に走って行ったドロシーのカスタム・カーを見送ると、寮へ戻る道を歩きはじめた二人……いつも通りのポーカーフェイスを崩さないアンジェだが、さすがに脚が痛むらしく一歩づつ慎重に歩いている…


ベアトリス「…大丈夫ですか?」

アンジェ「ええ…」

ベアトリス「必要なら肩を貸しますよ…?」

アンジェ「必要ないわ……第一そんなことをしていたら目立つ」

ベアトリス「でも、誰もいませんし…」

アンジェ「……だからと言って誰も見ていないとは限らないわ。もしかしたら家の窓から外を見ている人間がいるかもしれない」

ベアトリス「それはそうですが……とにかく寮に戻ったら、ゆっくり休んで下さいね?」

アンジェ「ええ…それと、ベアトリス」

ベアトリス「はい、何ですか?」

アンジェ「…今日はドロシーと一緒に突入役を担ったようね…いくらドロシーにあの射撃の腕があっても、一人だけではまかないきれない部分もあるし、貴女の援護なくしては成り立たなかったはずよ……よくやったわ」

ベアトリス「…ありがとうございます///」

アンジェ「お礼は必要ない……貴女の実力を評価しているだけよ」

ベアトリス「…はい♪」
338 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/23(日) 01:50:44.87 ID:uBOwlgYt0
…寄宿舎・裏庭…

アンジェ「…うっ……」

ベアトリス「大丈夫ですか? …ほら、手を貸しますから……」寄宿舎の外周を取り巻くように植えてある鉄柵と生垣…身体の痛みをこらえて隙間を通り抜けようとするアンジェと、それを手伝うベアトリス……

アンジェ「……まさか貴女に手を引いてもらうことになるとは…私もそろそろ引退を考えた方がいいようね」植え込みで光がさえぎられているのでよく見えないが、かすかに笑みのようなものを浮かべているらしい…

ベアトリス「もうっ、可愛くないですね……さ、早く「部室」で手当てをしましょう?」

…部室…

アンジェ「…ふぅ、どうやら五体満足で戻ってこられたようね」ようやく少しだけ警戒を緩めたアンジェ…心なしか肩を落とし、一気に疲れたように見える…

ベアトリス「そうですね…とにかく室内に入って下さい、手当をしなくちゃいけませんから」

アンジェ「それもそうだけれど、今夜中に暗号文の起草をしておかないと…特にこれだけの事があった以上は……」

ベアトリス「ダメです…! 特に今夜は姫様が公的行事として観劇をなさっていて、お帰りが夜の十一時と遅いんですから…私以外にアンジェさんの手当てを出来る人はいないんですよ?」

アンジェ「…分かったわ……」

ベアトリス「ならいいです……って、姫様!?」扉を開けると心配げに座っていたプリンセスが視界に入り、周囲に聞こえないような小声ながらも驚きの声を上げたベアトリス……と、プリンセスは立ち上がって二人に駆け寄った…

プリンセス「…あぁ、二人とも……無事だったのね…!」

アンジェ「……おかげさまで、こうして生きているわ」

ベアトリス「私も傷一つありません……でも、どうして姫様が? 観劇の後は宮殿に戻って…それからお召し替えをなさって……どう頑張ってもここに戻るのは深夜になってしまうはずですが…」

プリンセス「ええ、その通りよ…ほら」

…そう言った矢先に、窓の外から深夜零時を知らせる「ビッグ・ベン」の鐘がかすかに聞こえてきた……

ベアトリス「えっ、もうそんな時間ですか……?」

プリンセス「ええ…なかなか戻ってこないから心配したのよ?」

アンジェ「そのようね……」少しよろめいて椅子に座りこんだ…

プリンセス「アンジェ…!」

アンジェ「大丈夫よ……向こうの連中とちょっとした「見解の相違」があって、いくらか「意見の転換」を求められただけだから」冷めた口調で皮肉なユーモアを披露してみせるアンジェ…

プリンセス「いいから見せて……あぁ、何てこと…あちこち傷だらけじゃない… ベアト、あなたも大変疲れているところで悪いけれど、すぐに私の部屋から金縁の箱に入っているお薬を持ってきて?」

ベアトリス「いえ、私は平気です……それよりすぐに持ってきますね」

プリンセス「ええ…」


…普段は一国の王女らしく鷹揚(おうよう)でおっとりしているように見えるが、実際は何かと手際のいいプリンセス……すでに暖炉の脇ではポットのお湯が沸いていて、テーブルの上にはそこそこの大きさの金だらいとタオル数本、一通りの薬が入っている薬箱と気付けのブランデーが並んでいる…


プリンセス「さ、脱いで…傷を見せなさい?」

アンジェ「……ベアトリスが戻るまで待った方がいいわ」

プリンセス「口答えしないの「シャーロット」……私は血を見たくらいで失神したりしません…っ!」

アンジェ「…分かった、なら好きにするといいわ……」しゅるっ…と黒いマントを床に落とすと、続けてブラックグリーンの上着と揃いのコルセット、それから黒に近いダークブラウンのスカートを脱ぎ捨てた……シルクのペチコート姿で椅子にもたれているアンジェはいつもより蒼白で、床に散らかる血の付いたコルセットやストッキングも痛々しい…

プリンセス「…ひどい」

アンジェ「そうでもないわ……爪も無事なら歯もへし折られなかったし、両目も見える」

プリンセス「そんなこと言ったって、ふとももの皮が裂けて……いま消毒と止血をしてあげるわね」現場でドロシーたちに巻いてもらったありあわせの「包帯」をそっとはがすと、たらいにお湯を注いでタオルを絞った…

アンジェ「ええ…」痛みをこらえながら傷の周りを拭いてもらい、それから消毒薬をそそぎかけてもらった…いつも表情を隠しているアンジェではあるが、薬が沁みるときの強烈な痛みに顔をしかめた……

プリンセス「アンジェ…痛むでしょうけれど、我慢してね」

アンジェ「ふ、今さら傷の一つや二つで泣いたりしないわ……」

ベアトリス「…姫様、持ってきました」

プリンセス「ありがとう…それじゃあベアト、あなたもこれを塗るのを手伝って?」プリンセスが鍵のかかった金縁の小箱を開けると、こぎれいな薬瓶が並んでいる…と、中に入っている広口瓶を取り出して蓋を開け、白い液状でうす甘い匂いのする薬を手に取った……

339 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/06/27(木) 01:56:54.79 ID:ZTtOiJCr0
………



プリンセス「…どう、アンジェ?」

アンジェ「少し沁みるけれど……焼けるような痛みは感じなくなってきたわ」

プリンセス「良かった……このお薬はベーカー街(貴族・富裕層向けの医者が多い通り)でも有名な名医が販売しているお薬なの」

アンジェ「…それは意外ね、あの通りは暇な貴族相手のやぶ医者しかないと思っていたわ」

プリンセス「もう、アンジェったら……って、ベアト?」

ベアトリス「…すぅ…すぅ……んぁっ、姫様?」アンジェのふとももに丁寧に薬を塗っているベアトリス…が、小さな身体で八面六臂の大活躍をしたのですっかり疲れてしまい、指先に軟膏をつけたままうつらうつらしている…

プリンセス「…ベアト」

ベアトリス「は、はいっ」

プリンセス「今日は大変だったでしょう…アンジェの治療は私に任せて、あなたは先にお休みなさいな」

ベアトリス「いえっ、ですが…!」

アンジェ「……いいから休みなさい。このまま寝ぼけた状態で変なところに軟膏を塗られたり、薬の瓶を割られたりされたら困る……それに今日は務めを果たしたのだから、もう充分よ」

ベアトリス「……でも」

プリンセス「…ベアト、命令しなくちゃダメかしら?」

ベアトリス「いえ……分かりました。 それでは済みませんが、先に休ませていただきます…///」

プリンセス「ええ♪」

アンジェ「よく睡眠をとることね…お休み」

プリンセス「……ふふ、けなげなベアト♪」

アンジェ「彼女の美徳の一つね…ただ残念なことにこの世界では「結果」が全てだから、いくら懸命にやっても成果に結びつかない限り評価はしてもらえない……生真面目な彼女からすると、そこが一番つらい所かもしれない」

プリンセス「そうね……ところで痛みはどう?」

アンジェ「おかげ様でずいぶん痛くなくなったわ…」

プリンセス「よかったわ。このお薬は傷跡も消してくれるから、数週間もすれば肌も綺麗に戻るはずよ」あらかたの傷に薬を塗り終えると瓶をしまって箱を閉じた…

アンジェ「助かるわ…なにせこの身体だって「道具」の一つだから、傷だらけでは困る」

プリンセス「ええ……ところでその尋問官の人は男の人だった? それとも女の人?」

アンジェ「あんなのは尋問官でもなんでもない…ただ人をいたぶって悦んでいる背徳的なサディストにすぎないわ」

プリンセス「そうかもしれないわね……それで、どっちだったの?」

アンジェ「女よ…それが?」

プリンセス「…いえ、その女(ひと)がうらやましいと思って……」

アンジェ「……どういう意味?」

プリンセス「だって……私のシャーロットに跡を残すなんて…私でさえそんなのしたことがないのに……」

アンジェ「あなたも私を鞭打ちにしたいの?」

プリンセス「そうじゃないわ。でも…」

アンジェ「でも…?」

プリンセス「そうね、例えば……はむっ、ちゅぅ…っ///」生傷だらけのアンジェをそっと撫でていたわりながら、ふとももの傷のない場所に吸いつくようなキスをした…

アンジェ「…どういうつもり///」

プリンセス「こうやって私の「シャーロット」に跡をつけたくて……ちゅぅぅ…っ♪」

アンジェ「それじゃあ、せめて見えないところにするようにして……ん、ちゅぅ…」
340 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/06/30(日) 02:09:09.36 ID:64Y7Qy730
プリンセス「…あぁ…はぁ……あむっ、かぷ……っ…♪」

アンジェ「んくぅ……甘噛み…は……止め……んぁ…っ……///」

プリンセス「…いや……あむっ…」

アンジェ「はぁ…んっ/// …なにも貴女が嫉妬するような事じゃ…ない……でしょう…んぁぁ///」

プリンセス「だって……妬けちゃうんですもの…」ランプの灯を小さく落とした薄暗い部屋で耳たぶを甘噛みしながら、ささやきかける…

アンジェ「あっあっあっ…そんなこと…で、んぅぅ……そのつど嫉妬していたら……んっ…到底この世界では務まらな……んんっ…///」

プリンセス「……シャーロットのいじわる」そう言うとふとももの間に顔を沈めて、舌を這わせた……

アンジェ「だ、だめ……そこは…んぅっ///」

プリンセス「でも……ぴちゃ…んちゅるっ、ちゅぅ……私がしたいの…♪」

アンジェ「止めて…今日はまだお風呂にも入っていないし…んっ、くうっ…ぁっ///」

プリンセス「大丈夫よ……私は貴女と一緒ならこの手を血に染めたってかまわないし、どこだって舐められるわ…ぴちゃ……ちゅぅっ♪」

アンジェ「……ばか///」

プリンセス「ふふ……あむっ、ちゅ……れろっ、くちゅ…っ♪」

アンジェ「あっ、はぁ…んぅぅ…っ///」ふとももを内股に閉じて頬を紅く染め、恥ずかしげに顔をそむけている…

プリンセス「んむっ、れろっ……シャーロットのここ…まるでピンクパールみたい……かぷっ♪」ふっくらしていてとろりとぬめっている花芯の「核」の部分を優しく甘噛みした…

アンジェ「あっあっ……あぁんっ///」いつもは冷ややかなアンジェの瞳が焦点を失い虚ろになると椅子に腰かけたまま身体をひくつかせ、つま先も床から離れてがくがくと震えた…

プリンセス「んふっ、ちゅぅっ……んちゅる、じゅるぅぅ…っ♪」

アンジェ「んぁぁ…っ、あぁ……はひっ、んぅぅっ…!」とぽ、とろっ……ぷしゃぁ…ぁっ♪

プリンセス「…あんっ、んふっ♪ シャーロットの温かい蜜がかかっちゃったわ……んちゅっ、れろ…ぢゅるぅ…っ♪」

アンジェ「はひっ、あぁ…ん/// ……これで……んんっ…満足……したでしょう?」

プリンセス「ええ、少しは……でも、シャーロットにはもっともっと気持ち良くなって欲しいわ♪」

アンジェ「待って、プリンセ……」

プリンセス「…かぷっ♪」

アンジェ「あっあっ、あぁぁん…っ!」


…誰かに聞こえては困るので、声を漏らすまいと必死に喘ぎ声を抑えるアンジェ……しっかりした作りの椅子がきしむほど「びくんっ…!」と身体が跳ね、しゃがみこんでいるプリンセスの顔や胸元にとろとろと愛蜜をぶちまけてしまう…


プリンセス「きゃあっ…もう、シャーロットったら♪」ちゅくちゅくっ、ちゅぱ…れろっ♪

アンジェ「はあぁっ、んぁぁ……はぁ…///」

プリンセス「……ふふ、私だけのシャーロットに…私のしるし♪」かぷっ…♪

アンジェ「…はひっ、ひぅ……はぁ…んくぅぅ……♪」必死にこらえようとしているが、アンジェの感じやすい部分をを知り尽くしたプリンセスの愛がこもった絶妙な責めに、すっかりトロけた表情になっている……声も甘えたような舌っ足らずな調子で、口の端からよだれをひとすじ垂らしている…

プリンセス「あぁ、もうシャーロットってば……可愛くってどうにかなってしまいそう…んちゅっ、ちゅぅっ…んじゅるっ、じゅぷっ♪」

アンジェ「はひゅっ、ひぅっ…あっ、んはぁ…あぁぁぁっ♪ ん、んんっ…あふっ、んあっ……ひくっ、ひくぅぅ…っ♪」ぷしゃぁ…ぁっ♪

プリンセス「……ん、ちゅっ……じゅぷっ…もう少ししたら……んちゅっ…お部屋まで連れて行ってあげ……じゅるぅ…るわね♪」

アンジェ「はー、はー、はーっ…そうしてもらえると……んくっ…助かるわ……///」ぐったりと椅子に崩れ落ちているアンジェ…きゅっと引き締まった脚にはねっとりした愛液の流れがひとすじ出来ていて、つま先にまで届いている……

プリンセス「ええ…ちゅっ♪」身体を伸ばすと、すっかり荒れてしまっているアンジェの唇にむさぼりつくようなキスをした…

………

341 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/06/30(日) 17:37:07.28 ID:lpdnnLuPO
姫様頑張れ
このまま姫様が尋問に入ってもいいのよ
342 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/04(木) 01:10:22.65 ID:wneiBd9V0
>>341 お待たせしていてすみません。これを見ている皆さんが大雨の被害を受けていなければいいのですが……


とりあえずもう少し情事を続けて、それが済んだら「ワイルドローズ」「アゴニー」「アンギッシュ」を共和国側に運び出します……いつぞやは青果卸の馬車を使ってバラ積みのジャガイモに隠して移送しましたが、今度もなかなか上手い手段を思いつくことが出来たと思っております
343 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/05(金) 01:22:46.30 ID:sekq/QCG0
…数十分後…

アンジェ「はー…はー…はぁ……っ///」

プリンセス「んちゅぅ…ちゅっ、にちゅっ……くちゅ…♪」

アンジェ「あ、あっ……はひっ、んんぅっ…!」

プリンセス「ふふ…可愛い私のシャーロット……♪」一見すると目を細め、愛おしげにアンジェを見つているように見えるプリンセス…が、口もとでは少し意地悪な含み笑いをしていて、瞳もみだらな光を帯びている…

アンジェ「んっ…あ……///」

プリンセス「いいのよ…ここにいるのは私とあなただけなんだもの……ね?」ほっそりした指でくちゅくちゅと秘部をまさぐりながら、アンジェに身体を寄せると耳元へささやきかけた…

アンジェ「…ん、くぅ…んっ///」


…腰から下がまるでぬるま湯に浸っているかのように暖かく、じんわりとしびれるような快感にかすれたような喘ぎ声を上げているアンジェ……とはいえ、ただイかされっぱなしでは数々の「寝技」を体得している情報部員として立つ瀬がないと、必死に声をかみ殺している…


プリンセス「……もう、シャーロットったらどうして我慢しちゃうの…?」耳元に息を吹きかけ、空いている右手でアンジェの胸元をなぞりながらささやいた…

アンジェ「この時間に……ん、あっ…大声を出すわけには…いかないでしょ……う…///」

プリンセス「……そうだとしてもくやしいわ♪」そう言って「こりっ…♪」と乳房の先端を甘噛みするプリンセス…

アンジェ「あんっ…///」

プリンセス「ふふ、ここは硬くなっているわ…やっぱり「身体は正直」っていうのは本当なのね♪」

アンジェ「…刺激を受けると硬くなるのは身体の反応として当然のものよ…別におかしくないわ」

プリンセス「ふふっ、そうやって強がりを言って……こうなったらシャーロットが素直になるまで頑張るから♪」

アンジェ「…あっ……///」

プリンセス「ふふ、こうするとシャーロットが良く見えるわ…♪」柔らかなスリッパを脱いで長椅子の上に乗ると、アンジェにまたがった…ほのかなランプの灯りだけが白い肌を照らし、ぼんやりとした陰影のもたらす身体の線がアンジェをより柔らかく見せる…

プリンセス「…あむぅ…ちゅぅぅっ、んちゅ……♪」

アンジェ「んっ、んっ……あぁ、んんぅっ…///」

プリンセス「はむっ…あむっ、ちゅっ……ちゅるっ…」

アンジェ「はぁ…んむっ、ちゅ……ちゅっ…///」

プリンセス「むちゅ、ちゅるっ……ちゅっ♪」

アンジェ「……あっ」絡まっていた舌が解かれ唇が離れると、思わず小さな声をあげた……

プリンセス「ねぇ、シャーロット…」

アンジェ「……なぁに?」

プリンセス「ふふっ……なんでもない…わ♪」くちゅくちゅっ…ちゅぷっ♪

アンジェ「あっ、あぁ゛ぁぁんっ///」

プリンセス「くすくすっ、シャーロットったらこんな簡単な手に引っかかって……だめじゃない♪」じゅぶ…っ、にちゅっ♪

アンジェ「あっ、あ゛っ……あぁ…っ…」

プリンセス「ふふふっ…♪」ちゅくっ、ぬちゅ…っ♪

アンジェ「はぁ…はぁ……あっ、あぁぁ…んっ///」がくがくっ…ぷしゃぁぁ…っ♪

プリンセス「はぁぁ…んぁ、あぁ……っ♪」そのまま覆いかぶさるようにすると、熱っぽい身体を重ね合った…汗と愛蜜、傷薬の軟膏でねっとりした身体ごしにお互いの鼓動が聞こえてくる……

アンジェ「…プリンセス……私のプリンセス…っ///」ぐちゅっ、にちゅっ…♪

プリンセス「……シャーロット♪」じゅぷっ…ぐちゅっ♪

アンジェ「あっ、あぁぁ……んあぁぁ…っ///」

プリンセス「はぁぁ……あぁぁんっ♪」お互いに相手を抱きしめあいながら悩ましげな声を上げて果てた……

………

344 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/07/08(月) 11:17:25.38 ID:x9o9AgWU0
…翌日…

アンジェ「…おはよう、ドロシー……」

ドロシー「おう、おはよう……大丈夫か?」ティーカップを置くと眉をひそめた…

アンジェ「……何が?」

ドロシー「いや…きのうの今日だから無理もないが、目は充血してるし声はかすれてる……よっぽど尋問がこたえたみたいだな、むしろ昨夜よりくたびれて見えるぜ」

アンジェ「まぁ…そうね……」

ドロシー「あー……そういう事か…」アンジェにしては歯切れの悪い生返事に、勘のいいドロシーはピンときた…

アンジェ「…まだ何も言ってないわ」

ドロシー「なぁに、だいたい見当はついたよ……しかし、あのお姫様も可愛い顔してなかなか「お盛ん」のようで♪」にやにやしながらわざとらしいウィンクを投げた…

アンジェ「…」

ドロシー「……どのみち今夜までは用事もないし、無理しないで寝てたらどうだ?」

アンジェ「…そう言うわけにもいかないわ……」

ドロシー「いいから…その徹夜明けみたいな顔じゃあ人目を引いちまうよ」

アンジェ「……分かったわ、それじゃあ……一時間後に起こしてちょうだい」

ドロシー「ああ」

…その日の夕方…

アンジェ「…それじゃあ段取りの説明に入るわ」

ドロシー「おう…昼間に比べてずいぶんましな顔になったな♪」

アンジェ「そんなことはどうでもいいから、ちゃんと話を聞きなさい…」

ドロシー「やれやれ、元気になるとすぐこれだ……ちっとは人間らしい暖かみを持てよ」

アンジェ「……黒蜥蜴星人だから分からないわ」

ドロシー「これだもんな…♪」そう言って肩をすくめると苦笑いを浮かべた…

アンジェ「…話を続けていいかしら?」

ベアトリス「はい、お願いします」

アンジェ「結構……今夜やるべきことは「ワイルドローズ」たち三人を越境させるための準備よ。これから、昨夜ドロシーとちせがあの三人を運びこんだ倉庫に向かい「梱包」を済ませる」

ベアトリス「……梱包、ですか?」

ドロシー「ああ…今までも色んな手を使って来たが、今度のは私たちがまだ使ったことのないやつだ」

アンジェ「そうね……それと今日は私とドロシー、ベアトリスで行く」

プリンセス「分かったわ」

ちせ「うむ、承知した」

ドロシー「…別に「企業秘密」を見せたくないとか、そういうわけじゃないんだぜ……ただ、やっぱり東洋系は目立つからな」

ちせ「分かっておる」

ドロシー「…ならいいんだ」

プリンセス「ええ。私もよく分かっているわ…♪」アンジェに向かって小さく笑みを浮かべた…

アンジェ「結構……移動開始はたそがれどきの午後五時から十分づつ間を空けて、ドロシー、ベアトリス、私の順番で行う」

ベアトリス「分かりました」

アンジェ「到着したら入り口の扉についているくぐり戸から入るように……以上」

………

345 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/11(木) 02:19:44.03 ID:tdWN6SPo0
…しばらくして・倉庫街…

アンジェ「…全員いるわね」人目を引かずにするりと中に入ってきたアンジェ…

ドロシー「ああ、尾行もなさそうだ」

ベアトリス「まずは一安心ですね……」


…三人が集まっているのは港の一角にある倉庫の一つで、すでに従業員たちは勤めを終えて家路についているのであたりはすっかり静まり返っている…とある貿易会社の持ち物であるこの倉庫の管理人は共和国の中級エージェントだが、普段はいたって真面目に勤めていて、その一方で貿易品の情報を提供したり、物の越境を手助けしている……とはいうものの決して才能があるほうではないので、共和国情報部も難しいことは頼まず、本人も余計な事を聞かずに言われたことをこなす関係をたもっている…


ドロシー「そうだな」

ベアトリス「…ところでドロシーさん、さっき言っていた「梱包」って……」

ドロシー「ああ、もちろん教えるよ……と、その前に簡単な質問に答えてもらおうかな♪」

ベアトリス「…どうぞ?」

ドロシー「よし、じゃあ問題だ…小麦十ポンドと鉄十ポンド、重いのはどっちだ?」ニヤニヤしながら言った…

ベアトリス「え……十ポンドと十ポンドなら重さは同じだと思います…が?」ドロシーが何かの「引っかけ問題」を出しているのではないかと、しばらく顔を眺めてから答えた…

ドロシー「ははーん、引っかからなかったな…その通りさ♪ …これが例えば「一立方フィート」の小麦と鉄だったら重いのは鉄だがな……要は重さがそれらしければ、モノはなんだっていいのさ」

ベアトリス「…どういうことですか?」

アンジェ「つまり、一度同じ重さのものに「梱包」してしまえば中身を確認されずに通関できる可能性が高い……と言うことよ」

ドロシー「そういうこと…税関の連中だって毎日朝から晩まで数百、数千っていう船の積み荷を確認してるんだ。とてもじゃないが全部の荷物を調べられるわけじゃない」

アンジェ「…したがって検査を受けるのは船籍や航路、経歴の怪しい船に限られる」

ドロシー「そういうこと……この会社は知らず知らずのうちに協力してくれているわけだが、ここの会社は王国にベッタリの出入り業者で実績も綺麗…つまり、あちらからしたら「わざわざ調べることもない」ってなもんなのさ♪」

ベアトリス「じゃあ調べられる可能性が低い…っていうことですね?」

アンジェ「そういう事よ。 …さぁ、そろそろ取りかかりましょう」

ベアトリス「はい…それで、具体的にはどうすれば?」

ドロシー「……あれさ♪」指差した先には大きな樽がいくつか並んでいる…

ベアトリス「あれは…樽、ですね……」

ドロシー「ああ」

ベアトリス「あそこにあの三人を詰め込むんですか?」

アンジェ「いいえ…樽には「ワイルドローズ」だけよ。あとの二人は別のものに「梱包」する」…そう言うと床板の継ぎ目を特定のやり方で動かし、地下の小さな隠し部屋を開けた……中には目隠しに耳栓、猿ぐつわをされたうえできっちり縛り上げられたローズたち三人が転がっている…

ドロシー「ま、そういう事さ…ベアトリス、その樽を転がしてきてくれ」

ベアトリス「は、はいっ」

…ベアトリスが(音が響かないようボロ布を敷いた上で)樽を転がしてくる間にドロシーとアンジェはローズを引きずりあげ、腕に注射を打った……と、数分もしないうちに意識を失ってぐにゃぐにゃになる…

ドロシー「…よし、出来たぜ」まぶたをまくり上げて意識がないことを確認すると、ローズを樽に押し込んだ…

アンジェ「結構……それじゃああとは「隙間」を埋めるだけね」そう言うと中蓋のような板をローズの上に乗せ、その上に樽詰めの終わっていないチェダーチーズの固まりを次々と詰め込んだ……よく見ると樽の横腹には「高級チェダー…容量・150ポンド」などと焼印が入っている…

ドロシー「さ、ベアトリスも手伝えよ…♪」

ベアトリス「…チーズですか」感心したようにポカンとしている…

ドロシー「ああ…鼻づまりの税関職員だってチェダーの臭いなら数マイル先からだって嗅ぎ分けられるからな」

アンジェ「小麦や豆、あるいはワインみたいな液体だと息が出来なくなってしまうし、こうやって上げ底にしても揺れ動き方が変わってくるから気付かれる……だから固体の方がいいのよ」

ベアトリス「なるほど…」

ドロシー「そういうこと…よし、いい具合だな♪」最後に底板をはめ込み、布をかぶせた木槌で「とんとん…っ」と打ちこむと三人がかりで転がして、樽の列に並べた…

アンジェ「そうね……ベアトリス、後の二人は私とドロシーで片づけるから、貴女は先に戻りなさい」

ベアトリス「分かりました」

ドロシー「しばらくはチーズ臭いだろうから、ネズミにかじられないようにな…♪」

346 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/07/12(金) 12:34:58.43 ID:Tw+Beh9U0
アンジェ「…さて、後はこの二人ね」

ドロシー「ああ。とっとと片づけちまおう……それにしてもだ」

アンジェ「なに?」

ドロシー「…あの「ワイルドローズ」とやらだけなら情報を絞り出すために運び出すって言うのも分かるが、なにも三人とも連れ出す必要はなかったんじゃないか?」

アンジェ「ああ…そういう事ね」

ドロシー「お前さんが「仲間外れを作っちゃかわいそうだ」なんて思ったはずもないし、何か理由があるんだろうが……三人も越境させるとなるとぐっと見つかる危険性が高まるからな……」

アンジェ「理由ならあるわ…」

ドロシー「ほう?」

アンジェ「……あの三人が寝返ったと思わせる」

ドロシー「あー、なるほど……あちらからすれば「あれだけのエージェントが見張っている施設から内通者の協力もなしに逃げ出せるわけがない」と考えるか」

アンジェ「その通り…あの女はエージェントでもなければ信用されているようでもなかったし、それが「しもべ」の娘たちと揃っていなくなれば……」

ドロシー「裏切ったのは誰かなんて、すぐに見当がつく…か」

アンジェ「ええ」

ドロシー「なるほどな…」

アンジェ「ただ、この目くらましも長くは持たない…特に王国防諜部が事の次第を知ったら真っ先に越境の阻止に動きはじめるでしょうから……明日がぎりぎりのところね」

ドロシー「だな…あとは「濃霧で船が出港できない」なんてことがないのを祈るばかりだぜ」

アンジェ「ええ……さっきの睡眠薬も二日くらいしか効果が続かないものね」

ドロシー「ああ。よし「梱包」は済んだぜ」

アンジェ「結構、なら先に戻ってちょうだい……私が最後に出る」

ドロシー「あいよ、それじゃあ後でな」

………

…翌朝・港…

荷役労働者「……よーし、お次は…ふうっ!」風にのって吹き付けてきたチーズの臭いに顔をしかめた…

労働者B「チェダーチーズだよな…樽ごしでも分かるぜ!」

監督「こら、おしゃべりなんかしてないでとっととロープを引っ張れ!」

労働者「分かりやした…そら!」

労働者B「よいしょっ…こらしょ!」

…船上…

税関吏「機帆船「トワイライト・スター」号、と……船長、ここで積み込む貨物はこれだけですな?」(※機帆船…蒸気機関と帆の両方がある船)

船長「ええ。船荷証券によると「チェダーチーズ」となっております……あとは乗客が十人ほど」

税関吏「結構……ふぅ、それにしてもものすごい匂いだ…」鼻にしわを寄せて樽に近づき、焼印を調べて書類に書き込んだ…

荷運び人「士官さん……お客さんのシー・チェスト(衣服箱)ですが、どこに入れやすか?」

…税関吏が樽や箱の焼印を調べている間に渡し舟から上がってきた数人の荷運び人が、貴族らしい婦人の荷物であるがっちりした作りのシー・チェストを担いで上がってきた…四つばかりあるシー・チェストは荷物がどっさり入っているらしくずっしりと重そうで、小柄な人なら入れそうな大きさがある…

三等航海士「お…甲板長、案内してやってくれ!」

甲板長「へい……おい、こっちのデッキだぜ!」

婦人「ちょっと、大事に扱ってちょうだいましね!」文句の多そうな中年のレディがキイキイ声で言った…

三等航海士「分かっておりますよ、レディ…おい、大事に扱うようにするんだぞ!」

税関吏「……船荷証券にもおかしなところはないようですな。結構です」許可証にサインを入れると船を降りていった…

船長「よし、どうやら引き潮の間に出られそうだな……帆を上げさせたまえ!」

航海長「はい、船長!」

………

347 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/14(日) 02:50:13.66 ID:t13PkXn50
…数日後・お茶の時間…

ドロシー「…というわけで例の「ワイルドローズ」とやらはチーズ樽に詰め込んで、後の二人はシー・チェストで運び出した…ってわけだ。なにせとっておきのドレスが痛まないように樟脳(しょうのう…クスノキから作る防虫剤)が山ほど入れてあるようなシロモノだ。税関吏だろうが何だろうが、もし開けようとしたりしてみろ。小うるさいオールドミスにどれくらいガミガミやられるか分かったものじゃない……奴らだってそんな面倒は起こしたくないさ」

ちせ「シー・チェスト? …聞きなれない単語じゃ」

アンジェ「船旅の時、手荷物とは別に船倉へ入れておく衣装箱のことよ」

ちせ「なるほど…で、上手くいったのじゃろうか」

ドロシー「それについてはアンジェが教えてくれるさ…だろ?」

アンジェ「ええ……実は先ほど「コントロール」からワイルドローズの件で暗号電が届いた」

プリンセス「あら、そうなの?」

アンジェ「…ええ」

ベアトリス「それで、どうだったんですか?」

アンジェ「コントロールいわく「チェダーはシャンパンと合わないが、受け取った花はどれも開いて見頃を迎えた」だそうよ」

ちせ「むむむ…まるで判じ物(なぞなぞ)じゃな?」

ドロシー「なぁに、分かれば簡単さ。 「シャンパン」っていうのは祝杯を上げた……つまり「積荷」は無事届いたってことの言いかえで、開花うんぬんっていうのはあの三人が「歌った」(白状した)ってことだ」

アンジェ「そう言うことよ」

ちせ「なるほど……うちはどうもまだ欧州の風習が分かっていないものゆえ…」

ドロシー「なぁに、そのうち覚えるさ…♪」

プリンセス「わたくしも色々と教えてあげますから…ね?」

ちせ「それはありがたい」

ドロシー「よかったな……さて、と」軽くスカートをはたくと立ち上がった…

ベアトリス「あれ、どうしたんですか?」

ドロシー「なぁに、ちょっとした野暮用でね…少し出かけてくる」

ベアトリス「そうですか…」

ドロシー「ああ…それじゃあまた後でな」

アンジェ「…ええ」

………



…その晩・運河沿い…

紳士「…」コツコツと靴底とステッキの音を響かせながら、霧がかった夜道を歩いている紳士風の男……その男はよく見るとアンジェが罠にかけられた時の、あの「情報提供者」で、相変わらず身なりは悪くないがどこか落ち着かない様子をしている…辺りは夜霧が立ちこめ、服も湿っぽければパイプにもなかなか火が付かない…

紳士「…ふぅ」パイプから紫煙を吐きだしつつ歩いているが、尾行を恐れているのかわびしげな通りを選んで歩き、時折後ろを振り返ったり急に角を曲がったりする……と、女性のシルエットが前から近づいてきた…

女性「……あの、申し訳ありません」大きな帽子をかぶった若い女性は男に近寄ってくると、ぎりぎり聞こえる程度のか細い声で話しかけてきた…

紳士「何か?」

女性「ええ。実は乗合馬車の停留所がどこにあるのか分からなくなってしまって……場所をお教え下さらないでしょうか?」

紳士「ああ、それならそこの角を曲がって通りを二つ行けば…」そう言いかけた瞬間に女性がハンドバッグから何かを取り出し、次の瞬間には「パン、パンッ!」と銃声が鳴った

紳士「…ぐぅっ!」ステッキを取り落とし、胸元をかきむしった…

女性「…」さらに心臓に向けてもう一発撃つと、仰向けに倒れた男の額に銃口を向けてとどめを撃ち込んだ…それからまだ硝煙が立ちのぼっている小型リボルバーを身に着けていたシルクの長手袋にくるんで運河に捨てると、替えの長手袋に指を通しつつゆっくりと歩き始めた…

ドロシー「……前にベアトリスに言ったっけ「…あの裏切り者を見つけたら、ミートパテみたいに切り刻んでやるかグリュイエール・チーズみたいに穴だらけにしてやる」って……どうやらグリュイエール・チーズの方だったな…」皮肉な笑みを口元に浮かべると、何でもないような様子で角を曲がって行った…

………



348 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/15(月) 02:06:58.83 ID:u45qa8Jk0
…後日・アルビオン共和国「文化振興局」の一室…

L「……ふーむ」パイプをくわえ、王国の日刊紙の一つ「ロイヤル・ロンドン・タイムズ」を手早く読み通していく…続けて紙をめくると、社会面に「身元不明の中年男性、ロンドン市内で射殺さる…追いはぎによるものか、それとも怨恨か?」の見出しが躍っている…

7「…失礼します。エージェント「A」から「ライリーおじさま」宛てに手紙が届きました」

L「うむ、続けたまえ」

7「はい…内容ですが「…週末を別邸で過ごしてロンドンのお屋敷に戻ってみると、ネズミが出てとっても怖かったです。危うく失神するかと思いましたが、すぐ『ミスタ・ダーウェント』にお願いして退治してもらいました…おじさまの言う通り、ネズミは暖かくて食べ物のあるところが好きなようですね。またお手紙差し上げます……」必要な部分は以上です」

L「ふむ。こちらがあの「変節者」の情報を送ってから何日も経っていないが……とはいえ、時間が経てば経つほど警戒が厳重になって手が出せなくなるだろうから、手早く片づけようという「プリンシパル」の判断は悪くない。 …それと今回はエージェント「D」が始末をつけたようだな」そう言って「7」に新聞を渡した…

7「……なるほど、そのようですね」社会面の記事を読むと新聞を返した…

L「エージェント「A」が手を下さなかったということは、まだ万全の状態ではないのだろう…一か月ばかりは「活動的な」任務から外した方がいいかもしれんな」

7「分かりました、そのように取り計らいます」

L「うむ…それと例の「バラ」は上手くこちらの庭に移植出来たようだな?」

7「はい。もとよりあちらの土に馴染んでいたわけでもありませんでしたから……担当の報告によりますと、戦略・外交的な情報に関してはほぼゼロですが、貴族や高級官僚の夫人、あるいはその令嬢の「趣味嗜好」に関してはなかなか面白い話を聞き出すことが出来ています」

L「…結構。引き続き上手く手綱を操って情報を吐かせろ」

7「はい」

………

…同じ頃・ロンドン「アルビオン王国外務省」内の一室…

外務省情報部長「……残念だよ、こういう結果になって」しきりにパイプを吹かしつつ、朝刊の「身元不明の男性射殺さる」の記事を広げている…

防諜課長「…」

情報部長「私は君が「大丈夫」だと言うから信用して、うちの諜報課からもエージェントを割いて十分な支援態勢を作った……そして見事に「敵情報部員」らしい人物を確保した…ここまでは良かった」

防諜課長「…はい」

情報部長「……ところがだ、その日のうちに敵方に「一時保管場所」の位置を割られると襲撃を受け、こちらが派遣していたエージェント十数名は全滅。肝心の敵情報部員も奪還されたうえ、その大まかな姿かたちでさえも「移送後に報告する」予定だったので謎のまま……おまけに、せっかくこちらへ転向させたあの男もこうだ…」そう言って新聞をひらひらさせた…

防諜課長「…」

情報部長「その上、こともあろうに敵方と内通していたのは尋問官として起用していた「例の女性」だというじゃないか……どうなのだね?」

防諜課長「確かにそうです……ですが、私としてはこの作戦はもっと入念に準備を行い実行するべきであるものと思っており…」

情報部長「だが、最終的な実行の機会に関しては君に一任したはずだ……それに「お任せを」と言ったのは君だぞ?」

防諜課長「ですが…」

情報部長「……すまんが、これ以上君の弁明を聞くつもりにはなれんのだ…それと、これを」外務省公式の封筒を渡した…

防諜課長「……辞令、ですか」

情報部長「そうだ…今まで尽くしてきた君への、せめてもの手向け(たむけ)だよ」

防諜課長「…」

………

…数日後…

アンジェ「それじゃあ、始めましょうか」

ドロシー「ああ……まずは「異動…農務省綿花担当課長、ジャック・ライスフィールド氏は農務省インド方面課長に異動となった」だと」

アンジェ「…続けて」

…アンジェたちは「情報収集」の一つとして常に多くの新聞や政府公報を読み、官僚や高級軍人の異動や昇進、解任が出るたびに確認していた……一番手軽で安全な情報収集手段ではあるが、王国の戦略や外交方針を見極め、接近すべき(あるいは気を付けるべき)人物を見極めるという点では案外多くのヒントが得られる…

ドロシー「次は「異動…外務省課長、ハーレイ・ウィンフレッド氏は『英領セイシェル』現地担当事務所長に異動となった」…なぁ、アンジェ」

アンジェ「ええ、そうね……」

ドロシー「…外務省課長なのに課の名前が書いてない……ってことは、どうやらこの男が今回「仕掛けて」きた、外務省の防諜担当だったんだな」

アンジェ「そう考えてもいいでしょうね…」

ドロシー「しかし……どこの誰かさんなのかは知らないが、インド洋にある島に飛ばされるとはね…外務省のお偉いさんは、よっぽどノルマンディ公の鼻を明かしたかったようだな」

アンジェ「……世の中、そう上手くはいかないわ」そう言ってちょっとだけ微笑んで見せた…

………

349 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/07/15(月) 02:13:34.32 ID:u45qa8Jk0
…というわけで長々と続きましたが、これで今回のエピソードは完了です。次は以前のリクエストも踏まえつつ「貴族女性たちの秘密クラブ」的な場所を舞台に、百合場面が多そうなのを投下しようと思っています…
350 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/18(木) 00:25:08.46 ID:dg9AnL430
…新しいの投下するのは明日以降となりそうですが、今回のエピソードの「答え合わせ」で説明が足りなかったところがあるので、少し補足を…


……アルビオン王国外務省に転向していた情報提供者が「撒き餌」で済ませることの出来ない価値ある情報を共和国側に売っていた理由ですが、これは外務省が軍部や他省庁の情報を共和国に売り渡すことで、二重スパイである情報提供者の価値を高めると同時に、他の省庁の「失点」を非難したり、情報漏れを「発見」することで外務省情報部の地位を高めようとしたものです…

351 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/07/21(日) 02:26:03.29 ID:6RlMSMY90
…case・ドロシー×アンジェ「The secret and temptation」(秘密と誘惑)…


…とある日の午後…

アンジェ「…紅茶をごちそうさま、美味しかったわ」

ベアトリス「それは良かったです」

ドロシー「やっぱりダージリンっていうのは香りがいいや…おかわりが欲しいところだな」

ベアトリス「よかったら注ぎましょうか?」

ドロシー「いや、いい。 そろそろ出かける支度をしなくちゃならないからな」

ベアトリス「あれ、今週もお出かけですか?」

ドロシー「ああ」

ベアトリス「…と、言うことはアンジェさんも?」

アンジェ「ええ、そうよ」

ベアトリス「そうですか。お二人とも週の半分はお出かけで…大変ですね?」

ドロシー「なに、仕方ないさ…なにせ職業上「それらしい」生活をしておかないといけないからな」

ベアトリス「それはそうですね……ちなみにいつもはどこに出かけているんですか?」

ドロシー「あー…」ちらりとアンジェに視線を向けた…

アンジェ「そうね、もう隠し立てすることもないでしょう……たいていは「ザ・ニンフ・アンド・ペタルス」(妖精と花びら)よ」

ベアトリス「けほっ…!」

プリンセス「……まぁ♪」

ちせ「はて、聞いたことのない店じゃな…」

ベアトリス「えぇと…それは、その……名前だけは聞いたことがあります///」

ドロシー「だろうな。…まぁ平たく言えば貴族か、それに準ずるような高い社交的地位…あるいはそういう人物から推薦された女性だけしか入れない「高級社交クラブ」ってところさ……パリのサロンみたいな気だるい快楽に洗練された悪徳、粋な遊び……おおよそ「世の中のお楽しみ」は全部揃ってる、って場所だ」

ベアトリス「……あの、そんな場所にどうして…///」

アンジェ「簡単よ…そう言った場所で漏れ聞こえてくる貴族夫人や令嬢たちのおしゃべりには多くの有益な情報が含まれているから」

ドロシー「そういうこと……別に経費でシャンパンをがぶ飲みしているわけじゃないさ♪」

ベアトリス「な、なるほど……それにしても…」

ドロシー「なんだ、一緒に行きたいのか?」

ベアトリス「ば、馬鹿言わないで下さいっ…///」

ドロシー「冗談だよ…それに申し訳ないが、お前さんのその立ち居振る舞いじゃあ無理だ。プリンセスのおつきとしては優秀だが、召し使いらしい動きが染み付いちまってる」

ベアトリス「私はそれでいいです…っ!」

ドロシー「ああ、人にはそれぞれ似合う役回りっていうのがあるからな……」

アンジェ「そういうこと……それで言うとドロシーの「カバー」(偽装)は派手で人付き合いがよく、国家機密や外交政策よりも「どこの令嬢がお相手を求めていそうか」を知りたがるようなタイプ……つまり、およそ世間の人が秘密情報部員について持っている「いつも後ろ暗いような影をもっていて、妙に付き合いの悪い人物」のイメージとはほど遠い…」

ドロシー「ま、いわゆる「プレイガール・スパイ」ってやつさ…♪」

ベアトリス「……なるほど」

ドロシー「…反対にアンジェは地味で目立だないから、相手が気にしないでいる内緒話をさりげなく聞いている……ってタイプだ」

ベアトリス「なるほど…」

アンジェ「とにかく、そろそろ出かけるわ……戻りは明日の明け方頃になるから、留守は任せたわ」

ベアトリス「はい」

プリンセス「それじゃあ、気を付けて行ってらっしゃい」

アンジェ「ええ」

………


352 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/25(木) 03:13:21.23 ID:WKftfRly0
ドロシー「……さて、着替えは済んだことだし…行くか」

アンジェ「ええ」


…寄宿舎を歩いて出て、ネストのひとつで着替えた二人……ドロシーはワインレッドの生地に、よく見ないと分からない所が小粋な金糸の百合模様の刺繍と、黒レースの縁取りがある豪華なドレスに金のネックレス、それに黒シルクの長手袋をはめて髪を結いあげ、頭にはドレスと揃えた金とルビーの飾り物をあしらっている……一方のアンジェは地味ながら洗練された、夜明け前の海のようなブルーグレイの地にピュアホワイトのすそ飾りを施したドレスと、視線が隠れるよう斜めにかぶった白い羽根とレース、それに小粒ながら上質な真珠をあしらった大きなつば付きの帽子、白いシルクの長手袋を身に着けている…その上でドロシーは艶やかな黒い長マント、アンジェはクリーム色のコートを羽織っている…


運転手「……お待たせいたしました」

ドロシー「ええ…それでは、参りましょう♪」いつもなら自分で車を運転するドロシーではあるが、さすがに豪奢なドレス姿では難しい…そこで、こうした場合は連絡役を通して以来の手紙を送るなど「安全措置」を講じてから、運転手つきの車を雇うことにしていた……指定した場所にきゃしゃな雰囲気のルノー製乗用車が来ると、アンジェと一緒に乗り込んだ…

ドロシー「ふふ、楽しみですわね♪」

アンジェ「…ええ」

ドロシー「今日のルーシー嬢はどんなお召し物で来るのかしら?」

アンジェ「そうですね…」

ドロシー「……というわけで、レディ・ハートフォードは今日も扇でパタパタする事でしょうね!」ころころと甘い笑い声を上げながら、流行のファッションや貴族のゴシップについてしゃべり続け、いかにも愉快そうにしているドロシー…

アンジェ「ええ、サー・ベケットのお嬢さまもいらっしゃるとか…」

ドロシー「なら、ますます楽しみが増えますわね……後ろの黒いロールス・ロイスは尾行じゃないようだな…」上品に口元をおさえて笑うようなそぶりをしながら、アンジェに耳打ちした…

アンジェ「…そうね……」運転手は前の屋根のないオープンな座席で、後ろの二人は屋根つきのコンパートメント(個室)になっているスタイルの乗用車ではあるが、それでも運転手に見聞きされることを警戒して柔らかな表情を作り、話す時はお互い内緒話をしているかのように口元を覆うか、扇で隠すかしている…

ドロシー「そろそろ到着だな…」


…高級社交クラブ「ザ・ニンフ・アンド・ペタルス」の前…

運転手「…どうぞ」

ドロシー「ええ」さっと運転席から降りると手際よくドアを開けた運転手…ドロシーは貴族らしくさりげない態度で一クラウン銀貨を渡した…

運転手「ありがとうございます…」二人が降りるまで車のドアをおさえておき、チップを受け取ると帽子のつばに手をあてて走り去っていった…

ドロシー「……さ、行きましょう♪」アンジェの細い腰に手を回し、いかにも「貴族のプレイガール」らしく愉快な…そしてちょっとずうずうしく好色な感じの表情を浮かべている……

…店内…

妙齢のご婦人「…あらまぁ、お久しぶりですわね♪」

ドロシー「ええ、まったく。すっかりごぶさたにしてしまったわ……♪」入口で受付嬢に羽織りものを預け、チップをはずむと店内に入った二人…と、すぐに数人のご婦人たちが近寄ってきた…

若い婦人「おひさしゅうございます…マイ・レディ///」

ドロシー「ふふ、久しぶり……ちゃんと「いい子」にしてた?」

若い婦人「はい、それはもう…」

ドロシー「よろしい…なら、後でね♪」

若い婦人「はい…///」

おしゃれな婦人「あらあら、あの娘は少し気になっているのだけれど……今日も貴女に盗られちゃったわね♪」そういいつつ、首筋に手を回してくる…

ドロシー「…よかったら後で回してあげるわ、レディ・メイナー♪」

………



353 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/27(土) 13:06:16.25 ID:1+ZFT9aC0
…また今夜あたりに投下しますが、中部地方の方は台風のほう大丈夫でしょうか…増水した川や強い風で足元を取られたりしないよう気を付けて下さい

それと誤字が…「依頼の手紙」としたかったのですが、「以来」になっていました。ごめんなさい……

354 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/07/28(日) 02:21:08.21 ID:ID6tZvoJ0
ドロシー「それにしてもここは相変わらずのようで…」そういって室内を見渡したドロシー…


…ロンドンの閑静な一等地に静かに建っている「ザ・ニンフ・アンド・ペタルス」は例の「革命騒ぎ」で共和派に共鳴し壁の向こうに行ってしまった、とある貴族の屋敷を空き家として買い取ったもので、ヴィクトリア朝風の立派な邸宅は改装されて、床には毛足の長いえんじ色の絨毯が敷かれ、天井には新しく天井画が施されてシャンデリアが下がり、あちこちに幼児くらいはありそうな大きな花の花瓶や「着替えをしている裸の令嬢にガウンをかけようとしている女官」など、女性同士の意味深な関係を匂わせる絵が飾ってある……広間の中央には緑のラシャを張ったカードテーブルがいくつかあり、ポーカーやブリッジの賭け事に興じるご婦人たちが見える……そして(職業上偽名が必要な)ドロシーたちだけでなく、ここにいるレディたちの多くが普段とは別の人間として(お互いに顔を知っていたとしても)ここだけの「通り名」を使っていた…


ドロシー「…じゃあ、後で」

アンジェ「ええ…」そのまま足音も立てずにそっと離れて行った…と、何か話したい様子の若い女性がドロシーに近づいてきた…

若い令嬢「……お久しぶりですわ、レディ・エインズリー♪」

ドロシー「ごきげんよう、レディ・ローズマリー…美術展はいかがでした?」

令嬢「ええ。ターナーの絵が素晴らしかったわ」

ドロシー「そうですか…それならぜひ行かないと」

令嬢「その方がよろしいわ、目の保養になりますもの」

ドロシー「……目の保養というだけならここでも結構できますけれど…ね♪」そう言うとチャーミングな笑顔を向けるドロシー

令嬢「まぁ♪」シルクの扇で口元をおさえ、くすくす笑った…

ドロシー「それでは、失礼…♪」

…広間の片隅…

妙齢の淑女「…それでね、サー・ウィンフレッドの奥方があのリパブリカン(共和派)たちについて言っていたことなのですけれど……」

ドロシー「……おや、サー・ウィンフレッドの奥方がどうしました?」

淑女「あら、レディ・エインズリー」

ドロシー「会話のお邪魔をしてごめんなさい…レディ・ウィンフレッドと言えば、このあいだ王室主催の晩餐会でお見かけしましたよ?」

淑女「ああ、そうでしょうね……あの方は西インド諸島で砂糖事業を手掛けているご主人のおかげで「ご立派」になられた方ですもの、まだ晩餐会が珍しいのですわ」口調こそ柔らかいが軽蔑したような表情を見れば、金で爵位を買うような「成り上がり貴族」をどう思っているかよく分かる…

ご婦人たち「まぁ…ふふっ♪」会話に加わっていた数人がくすくすと笑い声をあげた

淑女「……それで、せっかく貴族夫人の席に座れたものですからそれを手放したくなくて、だからあの方は共和派に手厳しいのですわ…もっとも、わたくしもあの秩序のない人たちは好きではありませんが…」

ドロシー「それはそうでしょう…連中の巻き起こした混乱のせいで苦労した人は多いんですから」ドロシーは革命騒ぎで家族がバラバラになり、一時は身寄りもなく貧民街をさまよって苦労した……というレジェンド(偽の経歴)を作ってあったので、さも感慨深そうにうなずいた…

淑女「ああ、そうでしたわね……わたくしとしたことが…」

ドロシー「いいえ、お気になさらず…また面白いお話を聞かせて下さいね?」

淑女「ええ、もちろんですわ」

…しばらくして…

ドロシー「……おや、あんな所に手ごろな連中が揃ってるじゃないか…」


…ドロシーの目についたのはぜいたくな…しかしいくらか趣味の悪いドレスをまとった中年のご婦人たち三人で、カードテーブルの方を見てはしきりに近くのレディたちに目線を合わせ、ブリッジに誘おうとしているが、どうも色よい返事はもらえていないらしい……もっとも、そのご婦人方はいずれも毎回持ってきた財布をすっからかんにしているような下手なカードの使い手で、おまけにそれを補うような粋な会話もできない俗物ときているので無理もなかった……が、彼女たちは自分の見聞きしたことをぺらぺらとよくしゃべるので、ドロシーからするとたいへん都合が良かった…


ドロシー「さてと…それじゃあちょっとばかり行ってくるかな……♪」

ふとっちょのご婦人「……こういう時、あと一人というのはなかなか集まらないものですわね?」

白髪交じりのご婦人「全くですわね…」

おしゃべりなご婦人「ええ、本当に……いつだったかしら、コートニー伯のお屋敷でカードをやろうとした時も…」

ドロシー「ちょっと失礼…どなたか私とテーブルを付き合ってくれませんか? …どういうわけか、今日はなかなか集まらなくて」

おしゃべり婦人「まぁ、レディ・エインズリー! わたくしたちも、ちょうどカードをしたかった所なのですよ!」

ドロシー「おや、それはよかった。それじゃあ早速ですが参りましょう…♪」

………
355 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/30(火) 01:21:18.26 ID:uKe941/i0
…投下前に少し訂正を…

…トランプゲームの名前を「ブリッジ」で書いたのですが、十九世紀ですとまだまだブリッジの原型である「ホイスト」のほうがいいみたいです……ホイストの名前はC・S・フォレスターの小説「ホーンブロワー艦長」シリーズで出てくるので知っていましたが、英仏戦争が舞台の話なので十九世紀にはすたれていただろうと思っていたら、ブリテン島では今でも知的なカードゲームとして根強い人気があるようです……なにかと勉強不足でした…


……ちなみにルールは「二人ペアで行い、計算や駆け引きが多く頭を使う」ことくらいしか知らないので、「フィネッス」や「ラバー」といった用語を使っていても描写は適当です(…ごめんなさい)
356 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/07/30(火) 02:39:04.70 ID:uKe941/i0
ドロシー「…さて、それじゃあ私はレディ・ホイットレーとですね」

ふとっちょの婦人「よろしくお願いしますよ、レディ・エインズリー」

おしゃべりの婦人「わたくしたちも負けられませんわね、レディ・アシュクロフト?」

白髪交じりの婦人「ええ、そうですわね」



ドロシー「…」(ったく、いきなり役の札を出すやつがあるかよ…まったく駆け引きもへったくれもありゃしない……)

…案の定そろいもそろって下手なカード使いの三人だが、ホイストのルールは二人で一組なので、どうにか相方の尻拭いをしつつ点数を稼ぐドロシー…かといってあまり勝ち続けると不審に思われたり、機嫌を損ねて情報を引き出せなくなってしまうので、時々わざと(…しかも印象に残りやすいよう点数が大きい時を選んで)勝負に負けてやり、相手の組を勝っているような気分にさせてやる…

ふとっちょ婦人「…スペードの六」

おしゃべり婦人「あら、でしたらスペードの九を…♪」

ドロシー「…」(やれやれ、敵も味方も同じくらいド素人なんだから…頭が痛いぜ)

ふとっちょ婦人「ジャックのペアがあります…この回はわたくしたちの勝ちですわね」

ドロシー「さすがはレディ・ホイットレー…まるでカードの女神さまですね♪」おだてつつ、親番が回って来たのでカードをシャッフルする…


…情報部員として読心術に長け、またさまざまな場面で話を聞き出す必要もあるので「たしなみ」としてカードも上手いドロシーとアンジェだが、沈着冷静、ありとあらゆる要素を計算しつくして勝負に出るアンジェと違って、どちらかと言えば場の空気や天性のカンの冴え(…もちろん一流の情報部員らしく、アンジェもそうした能力は高いが)に従ってカードを切るタイプのドロシー…無論必要ならアンジェに負けないほど確率の判断や計算も素早いが、あくまでも「スタイルの違い」であって、二人とも甲乙つけがたい腕前を持っている……そんなドロシーからすると相手のカードは見えているも同然で、あとは自分の相方が「何をしでかすか」予想できれば、容易に勝つことが出来る…


ふとっちょ婦人「ふふ…これでもわたくし、カードには自信がありますの……しめて十ポンドですわ♪」賭け事としてしかゲームを楽しめない性質らしい三人だけに、勝ったご婦人はほくほく顔で、負けた方は渋々とポンド札を差し出した…

ドロシー「おや、そんなに? ならシャンパンでも頼みましょう…もちろんお二人にも、ね♪」

おしゃべり婦人「……相手はなかなか手ごわいですよ、レディ・アシュクロフト」

白髪交じり婦人「まだまだこれからですわ…そうでしょう、レディ・コールドウェル?」

おしゃべり婦人「ええ、三回勝負のうちまだ二回ありますわ!」

ドロシー「おやおや……どうぞお手柔らかに…」

おしゃべり婦人「無論ですわ…ですがお金が懸かっていると、普段よりさらにやる気になりますわね♪」

ドロシー「…ふふ、同感ですわ♪」(…何しろこっちは、コントロールのよこすケチな活動費でやりくりしなきゃいけないからな……この商売ときたら何かと現金(げんなま)が要ることだし、ほどほどに稼がせてもらおうじゃないか……)


…店のお仕着せである黒一色のドレス姿をした、目も覚めるような美しいレディたち…ドロシーはそうした「レディ」の一人に目線を合わせて軽く合図を送り、人数分のシャンパンを頼んだ……暖かく空気のよどんでいる部屋の中にいるせいで喉が渇いているご婦人方は、飲み口の軽い(…それでいて度数の高い)シャンパンのグラスを次々とあおり、試合の回数を数えるごとに頬が赤らみ、舌もゆるくなってきた…


ふとっちょ婦人「…それで、わたくしの夫が申すには「東インド会社が新事業を立ち上げるから、間違いなく株が値上がりするだろう…お前も買っておいたらどうだね?」と、こう言うんですの♪」

おしゃべり婦人「まぁまぁ……そう言えばわたくしもインド方面艦隊に「ドーセットシャー」とかいう新型艦が派遣されると小耳に挟んだことがありますわ」

白髪交じり婦人「……あら、違いますわよ…派遣されるのは「ドーセットシャー」ではなくて「シュロップシャー」ですわ。シュロップシャーにはうちの人が持っている工場がありますから、その名前はよく覚えておりますの」

おしゃべり婦人「あら、ごめんなさい……ところでレディ・エインズリーは何か耳寄りなお話をお持ちかしら?」

ドロシー「うーん、そうですねぇ…あぁ、そうそう。今度の晩餐会でプリンセスが着るドレスは淡い桃色だとか…」

おしゃべり婦人「まぁ、そうなんですの!」

ドロシー「風の噂ですけれどね……おや、グラスが空ですよ?」さりげなく視線を向けただけで、店のレディが替えのグラスを持ってきてくれる…

おしゃべり婦人「あら、すみませんわね♪」

ドロシー「いいんですよ、楽しいひと時を過ごすには素敵なご婦人といいお酒がないといけませんから…ね?」

ふとっちょ婦人「ふふふっ、お上手ですこと」

ドロシー「いえいえ、ホントのことですよ…♪」チャーミングな笑みを浮かべてウィンクして見せた…

白髪交じり婦人「ふふ、あなたのお話はいつだって好きですけれどねぇ…そろそろおしまいにいたしましょう」

ドロシー「おや、そうですか……もっと続けたいのはやまやまですが、そうおっしゃるなら…」(確かにそろそろ潮時だな…今の状態で清算すれば、それほどでもないように見えてかなり稼いだことになるし、これ以上やると向こうは負けが込んで腹を立てちまう……)

おしゃべり婦人「それにしても楽しかったですわ…またご一緒しましょうね?」

ドロシー「こちらこそ…♪」

………

357 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/08/07(水) 01:21:25.74 ID:dd5kOySh0
ドロシー「……それで、ご存じの通りジョンソン夫人はひどく発音が悪いときているものだから「スープ」(soup)が「ソープ」(soap…石けん)に聞こえて仕方がなくって……で、味の感想を聞くものですからこう言ってあげたんですよ…「ええ、口の中がすっきりしました」ってね♪」

若い婦人「まぁ♪」

金髪の婦人「ふふふっ…♪」

ドロシー「ふふ…それじゃあ失礼」

…シャンパングラスを片手にあちこち回っておしゃべりに加わると、気の利いたユーモアやジョークで相手を笑わせつつ、色々な情報を聞いて頭の中に収めていくドロシー…

若い婦人「……また面白いお話を聞かせて下さいましね?」

ドロシー「もちろんですとも。 …さて、と……そろそろあっちの方にも取りかかるかな…」


…化粧室に入るとおしろいを直し、それからポーチの隠しポケットに入っている、カットグラスの小瓶に入った共和国情報部特製の香水(オー・ド・パルファム)を軽く手首と胸元に吹き付けた……その香りは「フローラル・ブーケ」タイプ(さまざまな花の香りが入っているもの)の有名なフランス香水そっくりに似せてあり、バラやジャスミンに百合、そして咲き誇るアンズの花のような甘い匂いが体温で気化して立ちのぼり、ふわりと鼻孔をくすぐった…


ドロシー「…よし。これで少しはやりやすくもなる、ってもんだ……♪」


…この特製の香水はもちろん香りもいいが、「コントロール」がわざわざ予算を使ってまでただの香水を用意するはずもない……そのさまざまな花のエッセンスの中には以前「王立植物園」から手に入れた貴重な百合の成分が含まれていて、その匂いを吸い込むと、日頃「同性には興味がない」と思っているレディたちでさえ相手の魅力に心がぐらつき、柔らかそうな唇や滑らかな頬をみては今まで感じたことのないどきどきするような気持ちをおぼえ、自分は本当に「その気がない」のか改めて疑うことになる……ましてその相手が女性に惹かれやすいようなら、その立ちのぼる甘い香りだけですっかり魅了され、とろとろの骨抜きになってしまう…


ドロシー「よし…後は例のお嬢さんを見つけるだけだな……」軽く自分の頬をはたき、鏡に向かってウィンクしてみせた…


…サロン…

若い令嬢「…まぁ、レディ・エインズリー」

ドロシー「おや…お久しぶり、レディ・フェアウェル」


…はしたなく見えないぎりぎりの勢いで近寄ってきた若い令嬢の手の甲に、腰をかがめて丁重なキスをするドロシー……すると彼女は頬を赤らめて目線をそらし、ぎこちなく挨拶を返した……令嬢がまとっているクリーム色の地に山吹色の花模様が施された優雅なドレスと、首元を飾る立派なエメラルドの首飾りは豪華で、ふわりと肩にかかるロール髪は、滑らかな卵形をした顔の輪郭を上手く引き立てている…


フェアウェル嬢「ええ、本当にお久しぶりですわ。わたくし…この二週間というもの、ずっと貴女に会いたくてたまりませんでしたのに……///」恥ずかしげにちょっと口ごもり、言ってからまた頬を赤らめた…

ドロシー「それはそれは…どうも悪い事をしてしまいましたね……」

フェアウェル嬢「知りません……どうせ「ホワイトフェザー」や「ザ・シークレット・ウィスパー」にでもいらっしゃっていたのでしょう?」わざと怒ったふりをして、他の有名な「女性向け」社交クラブの名前を言った…

ドロシー「まさか…ここに来れば貴女がいるのに、わざわざ他の社交クラブに行くとでも?」

フェアウェル嬢「もう……貴女ときたらいつもそうやって上手に言い逃れをなさるのですから…意地悪なお方///」

ドロシー「なぁに…私のような浮気な蝶々は綺麗な花を見つけると、ついひらひらと近寄ってみてしまうもんでね……でも、結局は一番好きな花に戻って来るものなのさ♪」そういうと、いかにもプレイガールらしい派手なウィンクをしてみせた…

フェアウェル嬢「あら、そう…でしたらわたくし、今度から虫取り網を用意することにいたしますわ」

ドロシー「ふふっ、貴女に捕まったら金の籠で飼ってもらえそうだ……それともピンで刺されて標本になるのかな?」

フェアウェル嬢「もう…っ///」

ドロシー「まぁまぁ、そう怒らないで……さ、一緒にシャンパンでも飲もう♪」そういうとさりげなく腕を絡めた…

フェアウェル嬢「///」

ドロシー「どうした…シャンパンは嫌いじゃないだろう?」絡めた腕を胸元に近づけると、令嬢の二の腕がふくよかなドロシーの乳房に軽く触れた…

フェアウェル嬢「い、いいえ…///」

ドロシー「なら決まりだ♪」黒ドレスを着た店のレディから金色にきらめくシャンパンを二杯受け取り、片方のグラスを渡した…

フェアウェル嬢「…それでは、少しだけ///」

ドロシー「ええ…それじゃあ、乾杯♪」

フェアウェル嬢「……はい///」
358 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/08/11(日) 02:54:35.97 ID:j2m7g0bC0
…しばらくして…

ドロシー「んっ、こくっ……ぷは♪」

フェアウェル嬢「こくっ…こくんっ……///」

ドロシー「いつもながらここはいい酒を出すね…なにせ「ヴーヴ・クリコ」のヴィンテージだものな」

フェアウェル嬢「そ、そうですね///」

ドロシー「ああ……さ、せっかくだしもう一杯♪」

フェアウェル嬢「あ、いえ…その、わたくし……少し量を過ごしてしまいましたわ///」

ドロシー「おやおや、悪かったね…口当たりがいいもんだからつい……それじゃあ上に行って、少し休もうか?」

フェアウェル嬢「え、ええ…///」

ドロシー「分かった……気にしないで楽にするといい♪」そういうと手際よくシャンパングラスを受け取り、店のレディにちらりと目線を向けた…

店のお姉さま(レディ)「…ご用でいらっしゃいますか」

ドロシー「ああ…済まないけど「上の部屋」を……」

レディ「…承知いたしました」

…二階の部屋…

レディ「……どうぞ、お入りくださいませ」


…店のレディが案内してくれたのは階段を上った「ファースト・フロア」(※一階…英国では地上一階を「グランド・フロア」(地階)と呼び、階段を上らないといけない、いわゆる二階から「一階、二階…」とカウントする)の奥にある個室のひとつで、贅をつくした豪華な装飾がほどこされた立派な部屋だった…室内の中央には背の低いテーブルと肘掛け椅子のセットがあり、テーブルの真ん中には果物を盛った銀製のボウルと、やはり銀で出来たアイスバケットの氷水に浸かって、きりりと冷えたシャンパンがひと瓶鎮座している…他には少し離れたところにある長椅子(ソファー)と、天蓋つきの立派なベッドがそれぞれ一つすえてあり、天井画にはピンク色を基調にした華やかなロココ調で、女神とニンフ(妖精)や少女たちのみだらな行為を甘い筆遣いで描いている…


ドロシー「ああ……さ、ここならうるさ型のオールドミスたちもいないから、長椅子に腰かけてくつろぐといいよ…」

フェアウェル嬢「はい、いつもご親切にありがとうございます……でもわたくしったら、貴女様の前ではいつもこうしてご迷惑ばかり…///」桜色に頬を染め、しなだれかかるような姿勢で長椅子(ソファ)に座った…

ドロシー「なぁに、お気になさらず…私もレディ・フェアウェルと一緒だとついつい心おきなくグラスを重ねてしまうし……おあいこさ♪」そう言って顔を近づけ、茶目っ気たっぷりのウィンクを投げた……と同時に、胸元から立ちのぼる香水の成分をたっぷりと吸い込ませる…

フェアウェル嬢「……もう、からかわないでくださいまし///」

ドロシー「ははは…♪」

フェアウェル嬢「ふふふっ……ですが、それにしましても…」

ドロシー「ん?」

フェアウェル嬢「……わたくし…貴女様をお見かけするたびに、その…///」

ドロシー「…寒気がするとか?」わざと冗談めかしたドロシー…

フェアウェル嬢「もうっ、そんなわけありませんわ…っ///」

ドロシー「それじゃあ何かな…?」

フェアウェル嬢「それは……つまり…ですから……」

ドロシー「……言わなくっていい。私も同じ気持ちだから…♪」フェアウェル嬢の指に自分の指を絡め、そっと唇を重ねた…

フェアウェル嬢「……ぁ///」

ドロシー「…答えはこれであってるかな?」

フェアウェル嬢「はい…っ///」

ドロシー「そうか、なら改めて……♪」ちゅっ、ちゅうっ…♪

フェアウェル嬢「あふっ、んっ…あんっ♪」

ドロシー「……ふふふ、それにしてもそんな風に誘ってくるなんてな…可愛いじゃないか♪」

フェアウェル嬢「…んんっ、あふんっ…おっしゃらないで下さい……だって…わたくし、貴女様を見ているだけで身体が火照って……あんっ///」

ドロシー「……嬉しい事を言ってくれるね……それじゃあご褒美をあげないと」…んちゅっ、ちゅむ…っ♪

フェアウェル嬢「はぁ…あぁんっ♪ あむっ…ちゅぅっ♪」

………

359 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/08/12(月) 12:00:25.50 ID:nLScIvPe0
フェアウェル嬢「…んぁぁ…はぁ、はぁ……はぁ…っ///」

ドロシー「あむっ、ちゅぅ……ちゅるっ、んちゅ…っ…」半開きになったフェアウェル嬢の口内にぬるりと舌を滑り込ませると、絡みつくようなねちっこい動きで丹念に口中をなぞった…

フェアウェル嬢「んぅ…ぷはっ、少し待って下さ……んんっ!?」

ドロシー「ちゅっ、ちゅむっ……ちゅぅっ、ちゅるぅっ…れろっ、ちゅぷ……っ♪」

フェアウェル嬢「んんぅ…ちゅっ、れろっ……はむっ…ちゅぅっ///」

ドロシー「ん、ちゅっ…」

フェアウェル嬢「…ぁ///」ドロシーの舌が口の中から引きぬかれ、お互いの舌先を繋いだ一筋の唾液が名残惜しそうに「つぅ…っ」と糸を引くと、肘を曲げた状態の腕を脇に投げだし、長椅子にあおむけになっているフェアウェル嬢が小さく残念そうな声をあげた…

ドロシー「……ふふ、そんな物欲しげな声をだして…そんなに待ち遠しかったのかな?」

フェアウェル嬢「……だって…わたくし…///」

ドロシー「分かった、それじゃあ今夜は一晩中放してやらないからな…♪ それから朝を告げるヒバリも雄鶏も、みんなナイチンゲール(小夜鳴き鳥)ってことにさせてもらおう♪」そう言ってもう一度覆いかぶさった…

フェアウェル嬢「…あんっ♪」

…十数分後…

ドロシー「あむっ…ちゅぅ……それにしてもこのドレスがうっとうしいな…」

…しゃれたドレスは見た目はいいが、たっぷりと贅沢な生地を使っているためずっしりしていて滑りにくく、胴やバスル(スカート部分のふくらみ)には形を保つ「骨」が入っているせいで身体を動かしにくい……おまけに後ろの編み上げひもやボタンやホックで留めつける作りなので、一人では満足に脱ぎ着することもできない…

フェアウェル嬢「…わたくしも…そう思いましたわ……///」

ドロシー「それじゃあ……お互いに…な?」

フェアウェル嬢「はい///」


…長手袋一つしていないだけで恥ずかしいという社交界に馴染んでいるフェアウェル嬢だけに、ドロシーの着ているドレスの背中のひもをほどくと、すっかり真っ赤になり、それでいてドロシーの白い柔肌を熱っぽい瞳で凝視しているのが分かる…


ドロシー「……そんなにまじまじと見られると照れるね」

フェアウェル嬢「っ…ど、どうしてお分かりになりますの///」

ドロシー「なぁに、手が止まっていたからさ……お嬢様のお気に召すなら、好きなだけ見てくれてかまいませんとも♪」

フェアウェル嬢「///」恥ずかしげに軽くうつむきながらドレスのひもやらリボンやらをほどいた…

ドロシー「……さて、と♪」しゅる…っ、と衣擦れの音をさせながらドレスを振り落とし、それからフェアウェル嬢の後ろに立った…

フェアウェル嬢「その……お願いしますわ…///」

ドロシー「ああ……私に身を任せてくれればいい♪」そう言って背中のホックや編みひもを外し始めたドロシー…指先をすべらせ、流れるような手つきで次々と結び目を解いていく…

フェアウェル嬢「…貴女様は…こう言うことに慣れていらっしゃいますのね……んっ///」背中を愛撫するような動きに「ぴくん…っ」と身震いした…

ドロシー「……ふふ、どうかな…♪」後ろから胸を押し付け、耳元に軽く息を吹きかけた…

フェアウェル嬢「あっ…ん///」

ドロシー「…いい匂いがする……甘くて、それでいて爽やかだ…」そうささやきながらうなじにキスをした…

フェアウェル嬢「…今日は…バラの香水をつけておりますの……あ、あっ///」すっかりとろけたような声をあげ、今にも身体の力を失いそうになっている…

ドロシー「…さ、終わったよ」

フェアウェル嬢「…え、ええ///」

ドロシー「……それじゃあ…と♪」腰に手をかけてベッドに倒れ込んだ…

フェアウェル嬢「きゃあっ♪」

360 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/08/15(木) 02:37:03.42 ID:TiyjaU500
フェアウェル嬢「はぁ…あぁ、ん……ちゅぅっ、あむっ…///」

ドロシー「ちゅっ…ちゅるっ、れろっ……ぬりゅっ、ちゅむ…っ♪」

フェアウェル嬢「はぁ、はぁ…はぁぁ…っ///」

ドロシー「ふふ、そんなに気持ちいいか?」

フェアウェル嬢「……はひっ、とっても……きもひいい…れす…わ……ぁ…///」

ドロシー「みたいだな……そんなにトロけた顔をされたんじゃあ、どんな堅物だって我慢できない…ぞっ♪」

フェアウェル嬢「あぁ…んっ♪」

ドロシー「んちゅっ、ぬちゅ…ちゅるっ、ちゅ……っ♪」

フェアウェル嬢「はぁぁ…ん、あむっ…ちゅぅ……ちゅぱ…っ///」

ドロシー「…んむっ、ちゅぅ…っ♪」


…ドロシーはいったん唇を離すと、室内の灯りに反射して赤ワイン色に輝く瞳でじっとながめた……口元にはプレイガールらしい手慣れたような笑みを浮かべ、髪を解くと髪飾りをナイトテーブルに置いた……それからさっと頭をひと振りすると髪の房が胸元にかかり、色合いのコントラストがずっしりとしたふくよかな乳房をより一層引き立たせた…そのままフェアウェル嬢にまたがったまま、コルセットとペチコートだけのあられもない姿でベッドに仰向けになっている彼女をじっくりと眺めまわした…



フェアウェル嬢「……んはぁ…お願いですわ……もっと…続きを……してくださいまし…///」

ドロシー「ふふ、悪い悪い……あまりにも綺麗なものだから…♪」白いコルセットのひもに手をかけると、「しゅるり…」と結び目をほどいていく……

フェアウェル嬢「///」

ドロシー「そう恥ずかしがることはないさ…今度は君が私の事を脱がす番なんだから…ね♪」

フェアウェル嬢「……はい///」

ドロシー「ふふ、それにとっても綺麗じゃないか……もう、場所もわきまえずにむしゃぶりつきたいくらいだよ…♪」

フェアウェル嬢「だ、ダメです……わたくし、ここにはお忍びで来ているんですから///」

ドロシー「ここにくるレディたちは多かれ少なかれそうさ…大手を振ってここに来るのは私くらいなもんだ♪」

フェアウェル嬢「…わたくしだって、できればそうしたいですわ……そうすれば貴女さまに……もっと情を交わしていただけますもの…///」

ドロシー「ふふ、嬉しい事を言ってくれるね……でも止めておきな?」

フェアウェル嬢「……どうしてでございますの……わたくし、貴女さまとこうして…その……閨(ねや)を共にした事を思い出しては…身体がうずいてしまうのです…わ///」

ドロシー「ふふっ、それだから余計にさ……気持ちは嬉しいが「女同士のまぐわい」ってやつは、一度はまると私みたいに抜け出せなくなるんだ……それに…」

フェアウェル嬢「…それに?」

ドロシー「……私と違って綺麗でいて欲しいんだ」

フェアウェル嬢「まぁ…///」

ドロシー「ふふ…なんてな。本当はひとり占めしたいから他の「お姉さま方」に近づけたくないのさ♪」

フェアウェル嬢「きゃあ…っ///」

ドロシー「ふふふ……この胸も手ごろな大きさだし…」

フェアウェル嬢「あんっ…♪」

ドロシー「肌もすべすべで良い匂いだ……♪」

フェアウェル嬢「はひっ、ひゃあん…っ♪」すっかり香水が効いて、甘い嬌声をあげながらドロシーに愛撫されている…

ドロシー「そーら、今度はここかな…?」優しく乳房の先端をつまんだ…

フェアウェル嬢「あっ、くぅ…ん……あぁんっ///」

361 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/08/17(土) 10:25:30.20 ID:tbG0NctI0
ドロシー「んっ、ちゅむ……ちゅぅ…♪」白いレースで花模様があしらわれているコルセットを脱がすと、小ぶりながら形のいい乳房にしゃぶりついた…

フェアウェル嬢「はぁっ、あん…っ♪」

ドロシー「ちゅっ、ちゅぅぅ…っ……れろっ♪」

フェアウェル嬢「あぁんっ…あひっ♪」

ドロシー「……ふふ、可愛いな……この豊かな髪も…きれいな瞳も……白くて柔らかい肌も…全部♪」

フェアウェル嬢「そ…それでしたらドロシー様の方が……見ているだけでくらくらするような瞳に柔らかい唇…張りのあるお胸に引き締まった身体……それに…甘くていい匂いがします…わ…///」

ドロシー「嬉しいことを言ってくれるね……バーバラ…♪」そう言ってペチコートの下に手を滑り込ませた…

フェアウェル嬢「…ぁ///」

ドロシー「おやおや…もうすっかりとろっとろじゃないか……」

フェアウェル嬢「だ、だって…わたくし……///」

ドロシー「…別にとがめてるわけじゃないさ…むしろ嬉しいよ」

フェアウェル嬢「///」

ドロシー「…さ、それじゃあ行くぞ…っ♪」くちゅっ…♪

フェアウェル嬢「あぁぁんっ♪」

ドロシー「ふっ……いつものおしとやかな姿もいいが、そうやって甘い声をあげて乱れている姿はもっといいな…♪」

フェアウェル嬢「はぁぁんっ、あぁ…んっ……だって、ドロシー様が……あんまりにも…ふあぁぁぁ…っ///」

ドロシー「はははっ…私みたいな悪い女に捕まっちまったのが運の尽きだったなぁ♪」ちゅぷっ、くちゅくちゅっ…♪

フェアウェル嬢「はぁぁ…んっ、あぁぁ……っ♪」

ドロシー「…」(あー…ちくしょうめ、香水だから効果はこっちにもあるんだよな……さっきから身体がうずいて仕方ないぜ…)

フェアウェル嬢「……ドロシー様?」

ドロシー「……ああ、悪い…少し見とれちまってね…♪」

フェアウェル嬢「…っ///」

ドロシー「そう照れるなよ……本当の事なんだから…な♪」ぐちゅっ、じゅぶ…っ♪

フェアウェル嬢「あっ、あぁんっ…そんなの、卑怯で……あぁぁぁっ♪」

ドロシー「おや「恋と戦争は手段を選ばない」ってことわざを聞いたことはないか?」

フェアウェル嬢「そ、それとこれとは話が違い……ふぁぁぁっ、はぁぁ…んぅっ///」

ドロシー「…違わないさ♪」

フェアウェル嬢「ふあぁぁ…っ///」人差し指に加えて中指を滑り込まされると腰を浮かせ、とろりと蜜を噴き出しながら嬌声をあげた…

ドロシー「ふふ……でもこれだけじゃあいつもと変わりないし…色々試してみたいよな?」

フェアウェル嬢「///」顔を真っ赤にしながらも、期待で瞳を輝かせている…

ドロシー「ふふふ、分かった分かった……お、ちょうどいいのがあるじゃないか♪」


…ベッドから起き上がると、テーブルのセンターピースとして置かれている果物の鉢に目を向けた……銀製のボウルには傷一つないリンゴや洋ナシ、それから植民地から飛行船で空輸され、遅い蒸気船しかなかった頃には見ることも出来なかった珍しい南洋の果物…黄色いバナナや南洋の夕日を想像させるオレンジ色のマンゴー…が綺麗に積まれている…


フェアウェル嬢「あの、ドロシー様…?」

ドロシー「うーん、どれにするかな……お、そうだ♪」ベッドの上で力が抜けているフェアウェル嬢を抱き起すと、手早くシルクのハンカチで目隠しをした…

フェアウェル嬢「な、なにをするおつもりですの…?」口ではそう言いながら、期待しているような甘い声をあげている…

ドロシー「なぁに……お嬢様におかれましてはお好きな果物をお選びいただこうと思って…ね♪」後ろから抱きついて腰に手を回し、テーブルの方へ誘導した…

フェアウェル嬢「…そんなことをおっしゃられても、わたくしには見えませんわ///」

ドロシー「……だから面白いんじゃないか…♪」耳元に息を吹きかけつつささやいた…

フェアウェル嬢「…っ///」ぞくぞくっ…♪

362 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/08/23(金) 03:48:35.16 ID:QQVl2gQb0
ドロシー「さーて、どれにしようかな…っと♪」フェアウェル嬢のほっそりした手に自分の手を重ね、テーブルの上の果物鉢に誘導するドロシー…

フェアウェル嬢「…んっ///」耳元でいたずらっぽくささやかれつつ、背中にずっしりと張りのある胸が押し付けられると、すっかり甘えたような吐息をもらしたフェアウェル嬢……貴族令嬢としての慎みもどこへやら、ドロシーにどんなことをされるのか、恥ずかしいながらも興味津々で頬を赤らめている…

ドロシー「……おやおや、バーバラはこれがいいのかな?」

フェアウェル嬢「あっ…いえ、これは……何でしょう///」目隠しをされたままおずおずとフルーツボウルに手を伸ばすと、アンズに指先が触れた…

ドロシー「さぁ、何だろうな……当ててみな?」

フェアウェル嬢「えぇ…と、多分……」

ドロシー「ふふっ…残念でした、時間切れ♪」綺麗な黄色に色づいているアンズを手に取ると、ねっとりと濡れた割れ目に半分ばかり押し込んだ…

フェアウェル嬢「あっ、あぁぁんっ///」ちゅぷ…じゅぷっ♪

ドロシー「はははっ、まるでアンズの蜂蜜漬けだ……せっかくだし、味見させてもらおうかな♪」そう言って足元にしゃがみ込むと、秘部に舌を這わせた…

フェアウェル嬢「あっあっあっ…そんな、いけませんわ……んぁぁ、あひぃっ…はあぁんっ♪」

ドロシー「おや、おかしいなぁ…蜜が減らないぞ? …ん、じゅるっ…じゅるぅぅっ♪」

フェアウェル嬢「はひっ、あふっ……ふあぁぁ、あんっ……///」

ドロシー「んじゅるっ、じゅるっ…おいおいバーバラ、こんなに蜜をこぼして……ふとももまで垂れてるじゃないか♪」

フェアウェル嬢「だって…ドロシー様がこんな……恥ずかしい事をなさるんですもの…ぉ///」

ドロシー「ふふふっ、こんなのまだまだ序の口さ♪」

フェアウェル嬢「…まぁ///」

ドロシー「ふふーん……それじゃあお次は、と……あむっ…ん、ちゅぱ……♪」押し込んでいたアンズをくわえて花芯から引き抜いて口に入れ、飴玉をしゃぶるように舐め回すと、半分だけ口から出してフェアウェル嬢の唇に近づけた

フェアウェル嬢「ん……はむっ、ちゅぅ…///」

ドロシー「んむっ、はむっ……ちゅるっ♪」二人で舌を絡め、しゃぶるようにしながらアンズを食べ進め、種と皮だけになった所でドロシーが机の上に吐き捨てた…

フェアウェル嬢「ドロシーさまぁ……次の果物を…早く……味わわせて下さいませ…///」

ドロシー「はは、次の果物…ね♪」ニヤニヤしながら目隠しを外した…

フェアウェル嬢「あ…あっ///」

ドロシー「…ふふふっ、珍しい東洋の果物だって色々あるんだからな……シナから運ばれて来たライチに、女王陛下もお好きだっていうマレーのマンゴスチン……あとはバナナと…この赤いもじゃもじゃしたやつはランブータンとかいうやつだな…さぁ、どれがいい?」

フェアウェル嬢「……で、では…せっかくですから一通り試してみたいです…わ///」

ドロシー「ふふ、欲張りなお嬢様だ……ま、お任せあれ♪」つぷっ…くちゅっ♪

フェアウェル嬢「あひぃっ、ふぁぁんっ…あぁぁんっ♪」

ドロシー「…やれやれ、貴族の令嬢ともあろうものが鏡の前ではしたなく脚を開いて、すっかりとろとろにして……可愛いな♪」

フェアウェル嬢「あぁぁんっ、その言い方はずるいですわ……ぁ///」

…事後…

フェアウェル嬢「…そういって、サー・バーミンガムは席を立たれたと言うことですわ……あんっ///」

ドロシー「……なるほどねぇ」

…愛液やら汗やらでべとつく身体をくっ付けあい、ベッドの上で絡み合っている二人……ドロシーは胸に舌を這わせ、指で膣内をかき回しながら、フェアウェル嬢の父親が娘に話したことや政財界の重鎮たちの話をうまくしゃべらせている…

フェアウェル嬢「……そうなんですの、ですから今後はより一層…」

ドロシー「そんな事より、もっと楽しい話をしようか……んっ、ちゅぅぅっ♪」(よし…もう必要な部分は聞けたし、あんまり「プレイガール」が政治や外交に興味を持ってるように思われちゃおかしいもんな…後はいちゃいちゃしながら明け方まで過ごせばいいや……)

フェアウェル嬢「あんっ、あっ…♪」

ドロシー「ちゅっ、ちゅむ…っ♪」(……さて、アンジェの方はどうだろうな?)

………

363 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/08/25(日) 01:51:58.61 ID:GIN+lXAE0
…しばらく前・店に着いてからのアンジェ…

ドロシー「じゃあ、後で…」

アンジェ「…ええ」


…ドロシーと分かれると、さりげなく店内を歩き回っておしゃべりの内容に聞き耳を立てる……店内は(会話を盗み聞きされるのを防ぐ意味もあって)室内楽団が控えめに軽い音楽を奏でている…が、同時に幾人もの声を聞き分けられるアンジェは、その中から有用そうな会話に耳をそばだてた…


ロール髪の婦人「……ですから、フェアファックス次官は交代ということになりそうですわね…」

灰色ドレスの婦人「ええ、わたくしもそう聞きましたわ…代わりにサー・アーノルドが任官されるとか……」

アンジェ「…」(…フェアファックス次官は内務省官僚の筆頭……交代するとなると、内務省管轄の防諜組織でも人事の改編があるかもしれないわね)

太った中年婦人「……そういえば共和国のスパイが…」

やせた婦人「ええ、噂で聞きましたよ…」

アンジェ「…」突然耳に入って来た声から気になる単語が飛び出してきた……そしらぬ顔でシャンパンをすすっているが、神経をそちらに集中させる…

太った婦人「…なんでも「ザ・エンジェル・ハート」のレディだった女性だとか…で、お付きの娘二人を連れて「壁越え」をしたんだそうよ……」

やせた婦人「そうらしいわね……これまではお店でご婦人方を悦ばせていたんだけれど、同時にいくつも情報を聞きだしていたんですって」

太った婦人「怖いわよねぇ…」

やせた婦人「ええ、まったく……そういう謀反人はロンドン塔に幽閉するか、絞首刑にしちゃえばいいのよ」

太った婦人「そうよね」

アンジェ「…」表情一つ変えることなく「すぅ…っ」と、その場を離れた…

…カードテーブル…

長い金髪の婦人「…あら♪ こんばんは、レディ・リリーフィールド……よろしければご一緒しませんか?」

アンジェ「え、ええ…///」


…お互いに本名を名乗ることなどしないこうした「社交クラブ」の中ということもあって、まるで安食堂の日替わりメニューのようにころころと呼び名を変えているアンジェとドロシー……アンジェはこの数カ月余りの間「アン・リリーフィールド」という名前を使っていた…


金髪「はい、決まりですわね♪」…濃い赤紫と深いバラ色の豪華なドレスに、目を細めつつ浮かべる優しい笑顔…が、アンジェに声をかけてきたこの女性はロンドン社交界でも名うてのカードの使い手でありプレイガールで、あちこちの令嬢や奥方を「食べ散らかしている」と、悪い噂が絶えない……

茶色の髪をした令嬢「あら、よかったらわたくしも交ぜて下さいな?」

金髪「ええ、どうぞ♪」

派手な格好の婦人「あらあら、わたくしをおいて抜け駆けなんていけませんわね……♪」

金髪「ふふっ…レディ・エッジムア、私が貴女をお邪魔扱いすることなんてありませんよ♪」

派手な婦人「まぁまぁ、そう言っていただけると嬉しいわ」

アンジェ「…わ、私が社交界の華である皆さんとご一緒できるなんて……嬉しいです///」

金髪「あら、アンったらお上手……シャンパンをごちそうしてあげるわね♪」にこにこしながらさりげなくアンジェの手を撫でた…

アンジェ「///」

金髪「ふふふ、そう固くならなくてもいいのよ…お互い楽しく過ごしましょうね♪」

………

364 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/08/31(土) 01:27:19.13 ID:k+8HuvAu0
…しばらくして…

金髪「ふふ……フォーカードです♪」

派手な婦人「むぅ……わたくしの手もなかなか良かったのですが、また負けてしまいました…お強いですわね」

金髪「ふふっ、ほんのまぐれですわ…♪」

茶髪「わたくしもたまには、その「まぐれ」に当たってみたいものですわ……すっかり負け続きですもの」

アンジェ「…ええ、まったく」

派手「本当にねぇ…」

金髪「あら、でも今までで一番大きな勝ちはレディ・エッジムアのストレート・フラッシュですわ」

派手「そういわれるとくすぐったいわね♪」

アンジェ「きれいにそろっていましたものね……」

…まるで玄人の賭博師(ギャンブラー)はだしの腕前でポンド札を巻き上げている相手に、優れた記憶力と素早い計算、そして氷のような冷静さで対抗しているアンジェ…カードを始めた時に比べると、手持ちのポンドはそう増えてはいないが減ってもいない…

金髪「あら、それを言ったら貴女のカードさばきもなかなかよ?」

アンジェ「そ、そんなこと…///」

金髪「いいのよ、照れなくっても……ね♪」そう言いながら、さりげなく手を伸ばした…

アンジェ「…あっ///」

金髪「あ、ごめんなさい…わたくしったら、グラスと取り違えてしまったわ♪」

アンジェ「///」

茶髪「まぁまぁ…ところで、そろそろ何か頼みませんか?」

派手「そうねぇ……レディ・スタンモアの言う通り、ちょっとした軽食でも…?」

金髪「ふふ、それではそろそろカードはお開きにします?」

茶髪「いいえ、わたくしはまだまだ続けたいですわ!」

金髪「…まるでサンドウィッチ伯爵ですわね♪」(※サンドウィッチ伯爵…大のカード好きで軽食を取る時間すら惜しみ、カードをしながら片手で食べられる具を挟んだパンを用意させたことから「サンドウィッチ」というようになったという)

茶髪「べ…別にそういう訳ではありませんが///」

金髪「ふふふっ、こういう遊びはほどほどにしておきませんと…ね、レディ・リリーフィールド♪」

アンジェ「ええ、そうですね…」

茶髪「お二人がそうおっしゃるのなら、わたくしもたってとは申しません……では、清算を」点数表を計算して、ポンド札を取り出した…

金髪「……あらまぁ、やっぱりレディ・エッジムアはお強いですわね…今度手ほどきしてもらいたいですわ」

派手「あら嫌だ、それではなんだかわたくしがカード使いみたいですわ♪」そう言いながらも、まんざらでもないらしい派手な婦人…

アンジェ「…」一見すると地味な勝ち方が多いのでそうとは気づかないが、金髪のレディはさりげなくテーブルの中で一番多く稼いでいる……アンジェも差し引きするとそこそこの勝ちで、札入れのポンドがいくらか増えた…

金髪「それでは、また次回を楽しみにしておりますわ……ところで、レディ・リリーフィールド」

アンジェ「ええ」

金髪「よかったらわたくしとシャンパンを付き合って下さらない?」

アンジェ「…は、はい///」

金髪「あぁ、よかった……それでは参りましょう♪」アンジェの手を取ると店のレディに合図の目線を送り、緋色の絨毯が敷いてある階段を上って個室に招き入れた…

………

365 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/09/02(月) 02:46:16.69 ID:DJFiGFH+0
…個室…

レディ「…どうぞ、こちらにございます……」

金髪「ええ…さぁ、おかけになって?」

アンジェ「は、はい///」

金髪「そう固くならずに……今はわたくしと二人だけなんだもの、ね♪」チャーミングな笑顔を浮かべ、優しく椅子に座らせた…

アンジェ「///」

金髪「そうそう、そうやって楽にして…あ、ちょうどシャンパンが来たわ♪」

レディ「…失礼いたします」店のレディがシャンパンの入った銀のアイスバケットを持ってきて栓を開けた…

金髪「あとは私がやるからいいわ……ご苦労様」すっ…とポンド札を握らせて下がらせた

レディ「…失礼いたします」

金髪「ええ……ふぅ、これでようやく静かになったわね」

アンジェ「そうですね…///」

金髪「ふふ、そんなにかしこまらなくても……さ、召し上がれ♪」手際よく二つのグラスに「クリュッグ」を注ぐとシャンデリアの灯りにかざすようにして、夏の木漏れ日のような透き通った金色にきらめく水色(すいしょく)を楽しみ、それから芝居がかった手つきで片方のグラスを渡した…

アンジェ「ええ…こくっ……///」

金髪「ふふ…っ♪」立ったままで軽く一杯飲み干すと、おかわりを注いだ…

アンジェ「あの…レディ・ウェルキン……」

金髪「もう、そんな堅苦しい呼び方は止して…二人きりなんだもの、アリスでいいわ♪」

アンジェ「それでは……その…アリス///」

アリス「なぁに、アン?」

アンジェ「えぇと…いえ、その……どうしてお掛けにならないのかと思って…///」

アリス「ふふ、どうしてかしら…ね♪」白絹の長手袋をはめた手でアンジェの頬を撫でた…

アンジェ「///」

アリス「でも、せっかくそうおっしゃってくれたのだから…わたくしも座るとしましょう♪」立派なソファーが二脚あるにもかかわらずわざわざアンジェの隣に座ると、そっと身体をもたれかからせた…

アンジェ「ど、どうぞ…///」…白くて柔らかそうな乳房のふくらみは襟ぐりからのぞいているのを見なくとも、そっと腕に押し付けられたドレス越しでも分かる……それに胸の谷間に香水を吹きつけたのか、甘いメロンのような香りが鼻をくすぐる…

アリス「ふふっ、せっかくだから何かおしゃべりでもしましょうか…♪」

アンジェ「え、ええ…///」

アリス「それじゃあ、この間のレディ・マーカスの舞踏会であった話でも……」

アンジェ「…はい///」

アリス「……それでね、ウェストミンスター寺院の大僧正ときたらそんなことを言うのよ…ふふっ♪」

アンジェ「そうだったのですか……とても立派なお方に見えますけれど…」(社交界や政財界の大立者たちが抱える弱点やスキャンダル……このまま「開拓」できれば、なかなか使える情報源になりそうね)

アリス「くすくすっ、アンったら素直な性格なのね。 …それとも、私を喜ばせてくれるために演技をしてくれているのかしら?」

アンジェ「…っ、そげなこと……おらは演技なんて上手じゃねえだで…っ///」

アリス「くすっ…まぁまぁ♪」

アンジェ「……っ、今のは…その…っ///」

アリス「ええ、貴女の「お国言葉」は聞かなかったことにしてあげるわ……その代わりに、もう一杯わたくしの杯を受けてくれること♪」

アンジェ「わ、分かりました…///」

アリス「よろしい…♪」…シャンパンのせいでいくらか上気した肌は赤味を帯びて艶めいている…優しそうだった瞳は今や獲物を目の前にした肉食獣のようにらんらんと輝き、アンジェは視線が合うたびに電撃を受けたように感じていた……その間もアリスはアンジェをくつろがせようと面白おかしくあちこちの舞踏会やパーティの話をしているが、さりげなくアンジェの綺麗な肌をじっくりと眺めている…

アンジェ「……あの、アリス///」(そろそろ頃合いね…)

アリス「どうかした?」

アンジェ「いえ……少し飲み過ぎてしまったみたいで…頭がぼーっとして……///」

アリス「あら、本当に…ちょっと失礼?」アンジェのあごに手を当てて顔を向けさせると、自分の顔を近寄せてじっくりと眺めまわす…長いまつげに色つやのいい頬、それに柔らかそうな唇が今にも触れそうになる……

アンジェ「…ぁ///」
366 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/09/04(水) 01:01:18.84 ID:Agb+OARL0
アリス「……んっ」

アンジェ「……ん、ちゅっ…///」

アリス「くすっ…♪」小さく笑うとアンジェの手を取った…

アンジェ「…ア、アリス……///」

アリス「…はい、何かしら♪」

アンジェ「いえ……あの…」

アリス「…アンは真面目なのね」

アンジェ「///」

アリス「ふふっ…大丈夫、全部わたくしに任せておけばいいわ♪」

アンジェ「…っ///」

アリス「はむっ……ちゅぅっ♪」

アンジェ「ふぁぁ…あぁ、んっ///」

アリス「あら、シャンパンがまだ残っているわね……こくっ、こくんっ……」瓶に残っていたシャンパンをグラスに空けると、一気に口に含んだ…

アンジェ「そ、そんな風に飲んだらお身体に……んんっ!?」

アリス「んむっ、んくっ…んっ♪」

アンジェ「んぅぅ、んぅっ…///」唇を押し付けられたかと思うと舌で口をこじ開けられ、両手で頬を押さえつけられたままシャンパンを口移しされる…

アリス「ふぅ……お味はいかが?」

アンジェ「もう…っ///」とても演技とは思えないほど上手な涙目で上目使いをし、すぐ恥ずかしそうにそっぽを向いた…

アリス「……アン」

アンジェ「…な、なんですか?」

アリス「ごめんなさい、抑えておこうと思っていたのだけれど……ちょっと我慢できそうにないの♪」長手袋をするりと脱ぎ、ソファーに押し倒した…

アンジェ「あぁん…っ!」

アリス「…ふふ、ドレスっていいわね……こうして…一枚づつ……脱がしていく愉しみが…あるもの…ね」

アンジェ「あ、あ……///」

アリス「…それにしても、アンの肌は白くてすべすべで……それにいい匂いよ…まるで花束みたい♪」…アンジェの持っている「香水」は甘くとろけそうなドロシーのものとは違い、アンジェ自身の雰囲気に合わせて爽やかですっきりした香りに仕立ててある……

アンジェ「う、嬉しいです…///」

アリス「あぁ、やっとリボンがほどけたわ……ん、とっても綺麗ね…」

アンジェ「あ、あんまり見ないでください…///」

アリス「ふふ……こんなに美しい物を「見るな」だなんて、なんと残酷なこと♪」そう言いながら流れるような手つきで次々とリボンやボタンを外し、優しく身体を愛撫する……

アンジェ「ふわぁぁ……あっ、あ…///」

アリス「ふふ、そんなあられもない声をあげて……誘っていらっしゃるのかしら?」

アンジェ「そ、そんなつもりでは……」

アリス「ふふふっ…でも、わたくしはそんな気持ちになったわ♪」

アンジェ「きゃあっ…///」

アリス「くすくすっ……さぁ、つかまえた♪」アンジェの左右の手首を重ねて、ドレスのどこかを留めていた黒いリボンで結び合わせた…

アンジェ「あぁ、アリス…なにをなさるのです///」

アリス「貴女がいけないのよ……そうしてわたくしを誘惑するから♪」ヒールを脱ぐと脚を持ち上げ、優しくアンジェの胸元にあてがって押し倒した…

アンジェ「あん…っ♪」

アリス「ふふふっ……今夜は礼儀作法の先生からは教わらない事をいっぱい教えて差し上げるわね♪」

アンジェ「は、はい…///」
367 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/09/08(日) 01:46:19.45 ID:Y4rcIFzt0
………



…数十分後…

アンジェ「…んはぁ…はぁ、はぁ……///」

アリス「ちゅぅっ、ちゅっ、ちゅむ……っ♪」

アンジェ「ぷは…ぁ……はぁ、はぁ、はーっ……///」

アリス「ふふ、初々しくて可愛いわ…私の妹にしたいくらい」

アンジェ「はぁ…はぁ……ん…///」あまりやり過ぎない程度に物欲しげな顔をしてみせる…

アリス「あら、まだ物足りないの?」

アンジェ「……いえ…そういうつもりでは…///」

アリス「ふふふっ、いいのよ……ここはそういう場所なんですもの♪」ソファーの上でアンジェにまたがり、見せつけるようにコルセットを脱ぎ捨てる……形のいい胸が柔らかく弾むと、蝋燭の灯りに火照った肌が艶やかに照り映えた…

アンジェ「…っ///」

アリス「…ねぇ、遠慮しないでご覧になって……?」

アンジェ「……は、はい///」

アリス「ふふ…いい娘ね……♪」アンジェの手に自分の手を重ねると乳房に誘導し、粘土でもこねるかのように揉ませた……

アンジェ「アリス…柔らかいです……///」

アリス「ふふ…っ、そして貴女の指は意外と力強いのね♪」

アンジェ「そ、そんなこと…///」


…そう言われて恥ずかしげに目を伏せてみせたアンジェだったが、内心ではアリスの(プレイガールらしい)鋭い観察力を苦々しく思っていた……日頃「一流情報部員」として物腰や雰囲気をうまく作ることができても、肉体的な面ではどうしてもごまかしきれない部分というものがある……特に細いが力強い指や引き締まった身体は、いくら肌をすべすべにしようと乳液やクリームを塗ってみても「か弱い女学生」らしくない…


アリス「……あら、わたくしとしたことが…ごめんなさいね♪」アンジェを不愉快な気持ちにさせたと思ったか、手際よく謝った…

アンジェ「いいえ…私も自分の身体、やせっぽちで骨ばっているからあんまり好きじゃなくて……」

アリス「まぁまぁ……でも、わたくしはアンのほっそりした身体…好きよ?」

アンジェ「あ…///」鎖骨にキスをされると、アリスの髪の香りが鼻腔をくすぐった…

アリス「……わたくし…ん、ちゅぅ……アンが…ちゅっ……自分のこと…もっと好きに……んちゅっ…なれるように……してあげる…わ♪」

アンジェ「はぁぁ…んっ、あっ……あぁぁん…っ///」鎖骨から小ぶりな乳房、平たく引き締まったお腹、そして柔らかい下腹部へと唇が進んでいく……

アリス「んちゅっ…ちゅぅ……」

アンジェ「はぁぁ…んっ……そこは…んっ、だめ……っ///」

アリス「……だめじゃないわ」ちゅく…っ♪

アンジェ「あっ、あぁぁ……っ///」

アリス「まぁ、ふふ……舌先を入れただけでそんなに喘いで…夜は長いけれど、大丈夫かしら?」くすくす笑いをしながらふとももを押し広げ、ねっとりとした妖しげな視線を向けた…

アンジェ「そ、その……お手柔らか…に…?」

アリス「うふふふっ、面白いお返事だこと……ええ、よく分かりましたわ♪」…そういうとテーブルに置かれている五本がけの燭台を手に取った……立派な銀製の燭台は片手で持つには重く、揺れるたびに火がゆらめいて、陰影がアリスの表情をゆがませた…

アンジェ「……ア、アリス…?」

アリス「んふふっ、大丈夫だから……わたくしに身体を預けて…ね♪」とろ…っ♪

アンジェ「あっ、あぁ゛ぁ……っ///」アリスが燭台を傾けると、胸元に溶けた蝋が垂れる…

アリス「くすくすっ…大丈夫よ、跡になるほど熱くはないもの……熱いのはその瞬間だけ…行きずりの恋と同じね♪」

アンジェ「…アリス///」

アリス「あぁ…そんな表情をされると優しく出来なくなってしまいそう……♪」ぽたぽた…っ♪

アンジェ「あ゛ぁ゛ぁっ…あ……っ///」

アリス「本当はね「よく熱した火かき棒」なんていうのもあるのだけれど…それじゃあ貴女の綺麗な身体に跡が残ってしまうものね♪」

アンジェ「…っ」

アリス「ふふふ…っ♪」
368 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/09/09(月) 00:49:07.76 ID:VTsgeRKU0
アンジェ「…あぁっ、うぅ゛…っ///」

アリス「まぁまぁ、そんなに身体をひくつかせて……もっとしてあげましょう♪」ぽたぽたと溶けた蝋を垂らし、それが固まると爪の先で愛撫しながら剥がしていく…

アンジェ「い゛っ、あぁ゛ぁ゛ぁっ…!」

アリス「あぁぁ…とても可愛らしいわ…♪」ぺろりと指を舐めあげると妖艶な笑みを浮かべ、アンジェの濡れた秘部にゆっくりと指を沈めていった…

アンジェ「あっ、あぁぁ…っ///」ちゅぷ…くちゅ……っ♪

アリス「はぁぁ……アンのあそこ、暖かくて指をきゅうっと締め付けて…おまけにとろりと濡れていて……♪」

アンジェ「…い、言わないで……///」

アリス「…あら、今のはわたくしの正直な感想なのだけれど……言ってはいけないかしら?」

アンジェ「だ、だって……///」

アリス「ふふ、言いたいことやしたい事を抱え込まないのが美の秘訣よ……貴女も悩み事があるようなら吐きだしてみたら?」

アンジェ「…」(この女…向こうの回し者ではないにしろ、同じくらい危険ね……こういう場面でうっかりした事をいうと、あっという間に鉄格子の向こうに入ることになる……用心しないと…)

アリス「いえ、ね…だってアンったら時々、何か「感情を消している」ような目をするものだから……よかったら話を聞くわよ?」

アンジェ「ええ、ありがとう…でも、大丈夫」

アリス「そう?」

アンジェ「はい…でも、そのお気持ち……嬉しいです///」

アリス「ふふっ、わたくしもアンが笑ってくれて良かったわ……でもね」

アンジェ「?」

アリス「わたくしは欲張りだから、可愛い貴女のいろんな表情が見てみたいの……例えば…♪」ふっ…と燭台の蝋燭を一本だけ吹き消すと台から外し、まだ熱を持った灯心の部分を花芯に押し当てた……火傷の跡が残るほどではないにしろ、敏感な部分なので焼け付くような感覚を覚える…

アンジェ「あぁ゛ぁ゛ぁ…っ!」

アリス「あぁぁ…いいわね♪」

アンジェ「はひぃ…ひぐぅ……っ///」

アリス「んー……それじゃあ次は…♪」また一本吹き消すと、今度は胸の谷間に押し当てた…

アンジェ「あぁぁっ…いぃ゛っ///」

アリス「あぁ、なんて可愛らしいのかしら……すれっからした称号ばかりの小娘たちや、ぎらぎらした中年の婦人たちなんてもううんざり…貴女みたいなみずみずしい初心な娘がいいわ♪」

アンジェ「はぁ、はぁ……はぁ…っ」

アリス「さ、お次は…と♪」ぐいっと手首のリボンを引っ張ってアンジェを絨毯の上で四つん這いにさせ、蝋燭を吹き消すと腰の窪みの所に押し当てた…

アンジェ「あぁ゛ぁ゛ぁっ…!」口から唾液をしたたらせ、蜜でふとももをぐちゃぐちゃに濡らしているアンジェ…

アリス「…舐めて♪」全て外して吹き消してしまった燭台をテーブルに戻すと、そのままテーブルに腰を下ろし脚を伸ばした…

アンジェ「ふぁい……ん、ぴちゃ…れろっ…///」

アリス「あぁ、ふふっ…くすぐったいわ……うふふっ♪」

アンジェ「んちゅ…ちゅるっ……///」

アリス「ふふ、上手だったわ……さぁ、ごほうびを上げるから仰向けになって?」

アンジェ「…はい///」

アリス「くすくすっ…素直でよろしい♪」つぷっ…くちゅっ♪

アンジェ「あっ、あぁぁ…ん///」

アリス「ん…んぅぅ♪」小川の岸辺に座っているように脚をぶらぶらさせつつ爪先でアンジェの花芯をかき回し、自分の秘所に指を差し入れた…

アンジェ「あぁ、んぅっ…ふあぁぁ…っ///」ちゅくっ、くちゅ…♪

アリス「んくぅっ、んぅぅ…んんぅぅっ♪」くちゅっ、にちゅっ…とろっ♪

アンジェ「……はぁ、はぁ……っ///」

アリス「ふぅ……さ、それじゃあそろそろベッドに行きましょうね♪」

アンジェ「…はい///」

………

369 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/09/12(木) 16:38:28.40 ID:tXDhR8q50
…予定では今日明日にでも続きを投下する予定ですが、週末からの台風はもの凄かったですね…

…特に千葉県の方はまだ停電や断水が続いているそうですから、一日でも早く復旧することを祈っております……もし被災地の方とかでこのssで見てくださっている(見られる状態にある)方がいらっしゃいましたら、読み物として少しでも気を紛らわすことができたらと思います…
370 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/09/13(金) 11:47:01.63 ID:8lUdJ9g60
………



…数時間後…

アリス「あっ、あぁ…んっ♪」くちゅくちゅっ、にちゅ…っ♪

アンジェ「はぁっ、はぁ……んっ、くぅ…っ///」ちゅぷ、くちゅ…♪

アリス「あっ、あっ、あっ…あぁぁんっ♪」豪華なベッドの上でアンジェを押さえ込むように組み敷いて、指を開くとこぼれた蜜がとろりと糸を引いた…

アンジェ「ふぁぁぁっ、あぁっ…んぁぁぁっ///」

アリス「ふふ、そんな風に甘い喘ぎ声をさせながら身体をのけぞらせて……アンは悪い娘ね♪」

アンジェ「…はぁ……はぁ…んはぁ…っ」演技や冗談ではなく、本当に息切れしかかっているアンジェ…自分が責め手に回れば技量と経験を活かしてすぐ相手をイかせられるが、押し倒されて一方的にやられている状態では小柄な身体が災いして体力が続かない……

アリス「……どう、満足してもらえたかしら?」

アンジェ「…はぁ……はぁ……」

アリス「くすくすっ…その様子なら大丈夫そうね♪」

アンジェ「はぁ……ふぅ…っ」

アリス「それでは後はおしゃべりでもしましょうか…」アンジェの横に身体を寄せると、髪をかき上げて額にキスをした…

アンジェ「…は、はい///」



アリス「……それでね、第一海軍卿(海軍長官)は「空中戦艦をさらに数十隻整備する必要がある…そしてインドや極東にも展開できるように、整備施設を建造する予算が必要だ」って言って大騒ぎ…陸軍のパーシバル元帥とお互いに譲らずで、大変だったみたいね♪」

アンジェ「将軍さんたちも大変なんですね…」

アリス「ええ、おかげでしばらくはふてくされて大変だったって「親しいお方」から聞いたわ…ちょうどこんな風に、ね♪」

アンジェ「なるほど……ふわぁ…」(つまりこの女は第一海軍卿の夫人とも寝ている、と……うまく引き出せれば一級の情報源になりそうね…)

アリス「あらあら、わたくしとしたことがつまらないお話をしてしまったわね…それに貴女も眠くていらっしゃるでしょうし♪」

アンジェ「そ、そんなことありませんよ…とっても面白いで……ふあ…ぁ///」

アリス「ふふ、いいのよ……夜明けまではまだ少しあるから、軽くお休みなさいな?」

アンジェ「いえ、もっとお話したいで……ふぁ…///」

アリス「くすっ…気持ちは嬉しいけれど、無理はしないでいいのよ……また今度、ご一緒すればよろしいんですもの♪」

アンジェ「えっ…その、私…こんな田舎娘ですけれど……また、会って下さいますか?」

アリス「ええ…わたくし、貴女が好きよ♪」

アンジェ「…っ///」恥ずかしいのを隠すように寝返りを打ち、背中を向けた…

アリス「ふふっ、お休みなさい…♪」ふわりと羽根布団をかけ「ぽんぽん…っ」と優しく叩いた…

アンジェ「…すぅ、すぅ……」

アリス「……それにね、貴女はどこか「わたくしの欲しいとあるお方」に似ているのよ…」

アンジェ「……すぅ…すぅ…」

アリス「……欲しても手に入らない、愛しの君…だからせめて貴女の事を「わたくしだけのプリンセス」にさせてちょうだい…ね♪」

………

371 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/09/16(月) 02:38:29.79 ID:aCAlg2IM0
…夜明け前…

ドロシー「今宵も楽しかったですわ、レディ・バーバラ……また二人で愉しもうな♪」耳元に唇を寄せ、艶めかしい声でささやいた…

フェアウェル嬢「…はい///」

ドロシー「ふふ、いい娘だ…では、ごきげんよう♪」芝居がかった動きで手の甲にキスをした…

フェアウェル嬢「……ふわぁ…ぁ///」

ドロシー「おっと…」へなへなと崩れ落ちたフェアウェル嬢を抱きかかえると、店のレディに目くばせした…

店のレディ「…よろしければ、こちらのご婦人には今しばらくサロンでお休みいただいて……」

ドロシー「ええ……手間をとらせて悪いわね。取っておいて?」チップをはずみつつ、さりげない手つきでレディの腰に手を回す……酔いが回っているような上気した顔と艶やかな胸元に、普段は何を頼まれてもポーカーフェイスな店の「お姉さま」も少し頬を赤らめた…

お姉さま「……ありがとうございます///」

ドロシー「ふふ、いいのよ…それじゃあ、彼女が起きたら渡しておいて♪」さらさらと(いつもと違うペンと意識的に変えた字体で筆跡見本を残さないようにしつつ)ペンを走らせ、情熱的な言葉を並べた手紙を書き上げると、香水をひと吹きして店のレディに託した…

お姉さまB「…お車が参りました」

ドロシー「ああ、ありがとう…♪」待っている車の列から手際よくドロシーたちの乗って来た一台を回してくれたレディにもチップを渡し、アンジェを待った…

アンジェ「…その、それでは……また…///」すっかり腰が抜けたような様子で顔を赤らめ、アリスにもたれかかるようにしてふらふらとやって来た…

アリス「ええ、またね…♪」アンジェの肩に丁寧すぎるほど優しくコートを羽織らせるアリス……前のボタンを留めるようなふりをしながら、さりげなく後ろから抱きしめた…

アンジェ「……はい///」

ドロシー「さ、行きましょうか…」アンジェを先に乗せてやるドロシー…運転手がドアを閉め、霧深いロンドンの夜道を走り出した…

………

…しばらくして・部室…

アンジェ「…それで、どうだった?」聞きだした情報を暗号文に起こしつつ、ドロシーに聞いた…頬はまだ火照っているが、顔はいつもの無表情に戻っている…

ドロシー「相変わらずバーバラはなかなかの情報源さ。政財界のお偉いさんたちが「こう言った」とか「どう考えている」とか、父親が良くしゃべっているみたいだな…そっちは?」

アンジェ「そうね、あのアリスとかいう女はなかなか勘が鋭いから気をつける必要があるけれど、王国上層部の夫人や令嬢たちの不品行についてよく知っているようね…かなり有意義な話が聞けたわ」

ドロシー「まぁ、勘が鋭いっていうのは確かだろう……私もだけど、ああいうプレイガールは「恋人たち」のちょっとした変化に気づけないようじゃダメだからな」

アンジェ「そのようね…」

ドロシー「色事師になるには観察力がないとな…ま、私たちの世界と同じさ♪」

アンジェ「結構なことね…さ、終わったわ」

ドロシー「そりゃ良かっ……あぁ、くそっ…」

アンジェ「…どうかしたの?」

ドロシー「いや、実は…さっきから例の「香水」の影響で身体が火照って仕方ないんだ……色々「悪いこと」を教えているとはいえ、バーバラはまだまだ初心な乙女みたいなもんだから、私を満足させちゃくれないしさ…」

アンジェ「…それで?」

ドロシー「お前さん、車で私にもたれかかってきただろ…あんなとろけたような顔で身体を寄せてきやがるから、襲いかかりそうになったんだ…ぞ」

アンジェ「……冗談のつもり?」

ドロシー「…いや、正直な話…もう……んっ…我慢……できそうに…ない///」どろりとした欲情で瞳をぎらつかせ、じりじりとアンジェを追い詰める

アンジェ「………」

ドロシー「アンジェ…っ♪」

アンジェ「ぐっ…ドロシー、悪ふざけはよしなさ……んぅっ!?」格闘術でドロシーをねじ伏せようとしたが、床に押し倒され唇が重なったかと思うと、一気に舌が滑り込んできた…

ドロシー「むちゅっ、ちゅるっ、ちゅむ……ちゅぷっ、ちゅくぅっ…ちゅるぅぅっ♪」

アンジェ「んぅぅぅっ、んっ、んぅぅ…!」

ドロシー「はむっ、じゅるっ、ぢゅぅぅっ…あぁっ、んっ……じゅるっ、ぬるっ…ちゅぷっ♪」

アンジェ「んんっ、んぅ…ぷはぁっ! ちょっと、いい加減に……んんぅっ///」

ドロシー「んちゅるっ、ちゅるぅっ…♪」

アンジェ「んぅぅぅ…っ♪」頭が焼き切れそうなほど上手で熱っぽいドロシーのキスに身体がとろけて、下腹部がじんわりと甘くうずいてくる…
372 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/09/19(木) 02:46:03.17 ID:fAUgggXz0
ドロシー「はぁ、はぁ…こうなったのも全部アンジェが悪いんだからな……ちゅるっ、んちゅぅっ♪」

アンジェ「馬鹿言わな……んむっ、んんぅぅっ///」

ドロシー「ちゅうぅぅっ、じゅるぅ…っ、んむっ…♪」

アンジェ「ん、んぅぅっ……んふぅっ///」

ドロシー「んちゅっ、ちゅる…ぅ♪」

アンジェ「…ちゅるぅ……んっ♪」そんなつもりはさらさらない…はずが、ドロシーの熱い舌が絡みつくたびに思ってもいないほど甘い声が漏れる…

ドロシー「あぁ…相変わらず真っ白な肌だな……んちゅっ、ちゅぅ♪」

アンジェ「ちょっと、どこにキスして…あんっ///」


…よく情報収集のためにレディたちをたらしこみ、寝室や化粧室でドレスを脱がせている「プレイガール・スパイ」のドロシーだけあって、うまく茹ったゆで卵を剥くようにするりとボディスやペチコートを脱がしていく……白い肌があらわになると、首筋から鎖骨、胸元、脇腹…と、ついばむようなキスをした…

ドロシー「はは、何だかんだ言いながらそんな声を出すあたり…アンジェ、お前もすっかり乗り気なんじゃないか♪」

アンジェ「……冗談は止してちょうだい、見当違いもいいとこ……んぅっ///」

ドロシー「へぇ…「見当違い」にしちゃずいぶん甘い声だぞ?」

アンジェ「あっ、んあぁっ///」

ドロシー「…黒蜥蜴星出身の腕利き情報部員のくせに嘘が下手だな……ちゅうっ♪」

アンジェ「あ、あっ…///」

ドロシー「おいおい…そんな喘ぎ声を聞かせるなよ、ますます我慢ができなくなる……んちゅるっ♪」

アンジェ「…そもそも我慢するつもりなんてないくせによく……ふわぁぁ、あっ、あふっ///」

ドロシー「ちゅぅっ、れろっ、むちゅ……♪」

アンジェ「ちょっと待って、それ以上は本当に……あっ、あぁんっ///」

ドロシー「んじゅるっ、じゅるっ……ぴちゃ♪」

アンジェ「あっあっ、あぁぁぁ…っ♪」

ドロシー「じゅるっ、くちゅ……アンジェはここが弱いんだっけな…♪」…くちゅくちゅっ、じゅるぅ…っ♪

アンジェ「あぁぁ…んっ///」

ドロシー「じゅるっ、じゅぅぅ…♪」

アンジェ「……ドロシー…」

ドロシー「んー?」

アンジェ「弱点を知っているのは私も同じよ……んむっ♪」互い違いに寝転んだ状態で、ドロシーの秘部に舌を滑り込ませた…

ドロシー「あ、ああぁぁ…っ♪」

アンジェ「ちゅるっ、れろっ、ぴちゃ……んっ、ふ…」

ドロシー「はぁぁぁっ、あぁっ…アンジェっ、そこ……んじゅるっ、じゅるっ♪」

アンジェ「あぁっ、んぅっ……ドロシー…///」

ドロシー「アンジェ……んじゅっ、じゅるぅ♪」

アンジェ「ひう゛っ、ひぐぅぅ…っ♪」がくがくと腰をひくつかせ、とろりと蜜を噴きだした…

ドロシー「…あぁぁぁっ、んぅっ…アンジェ、私も…いく……ぅっ♪」

………

373 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/09/22(日) 02:40:11.71 ID:kWk5+x/M0
ドロシー「…今夜は色々と付き合わせて悪かったな……」床に散らかったボディスやペチコート、ストッキングを拾い集めつつ言った……

アンジェ「かまわないわ…そんな風に欲情したまま部屋に戻って、見境なしに同級生を襲われても困る」

ドロシー「誰がそんなことするか…」

アンジェ「そう? …まぁ、それに私も…火照りが……抜けなかった……から…///」

ドロシー「んー、よく聞き取れなかったな?」

アンジェ「……気にしなくていい」

ドロシー「はは♪ ま、冗談はさておき…本当にありがとな」明け方の薄灰色がぼんやりとしたシルエットを作りだす中、ドロシーの手がアンジェの白い頬に触れた……

アンジェ「…だから、気にしなくていいって言っているでしょう……///」

ドロシー「そう言うな……何しろファームを同時に卒業した「同期生」の中でまだ活動しているのは私と…アンジェ、お前だけなんだから……な」ちゅっ…♪

アンジェ「ん、ふ……はぁ…っ///」

ドロシー「…慎重なのからおっちょこちょい、手際のいいやつ悪いやつ……あそこにはいろんなのがいたが、たいていは正体がバレて引退させられるか、鉄格子の向こうか…さもなきゃ天国の階段を登っちまったしな……もっとも、情報部員が天国に行けるのかどうかは知らないが…」

アンジェ「…ええ」

ドロシー「だから、アンジェが側にいてくれる…それだけで私がどんなに心強く思っているか……はむっ、ちゅっ…」

アンジェ「あっ、あふ…っ…」

ドロシー「ちゅ、ちゅぅっ……だからな、もしお前が……んむっ…あのプリンセスのために……もう一組、ハジキを使える腕が必要になるような事があったら…その時は…好きなだけ……私を頼ってくれていいから…な……ちゅるっ…」

アンジェ「……ドロシー///」

ドロシー「んちゅっ……さ、そろそろ戻らないと起床時間になっちまう…」

アンジェ「…そうね…ドロシー、貴女が先に出て」

ドロシー「ああ……何も忘れ物はないか?」

アンジェ「子供扱いしないでちょうだい…ないわ」

ドロシー「よし…それじゃあお先に♪」

アンジェ「ええ…」

アンジェ「……私も同じよ、ドロシー…///」ドロシーが出ていくと、アンジェはキスされた唇を指でなぞった…


………



374 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/09/22(日) 02:46:39.22 ID:kWk5+x/M0
…というわけで、ずいぶん途中が長くなって「ドロシー×アンジェ」の部分が短い竜頭蛇尾な感じになってしまいましたが、無事にこのエピソードを終えることができました……


……次回は途中までちょっとシリアスな展開でストーリーを運んで、その分やらしい部分はアンジェ、ドロシーの二人がかりでベアトリスをめちゃくちゃにする予定です…
375 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/22(日) 04:15:14.90 ID:nott/FasO
今回もお疲れ様でした
外伝的な感じで007的な単独任務みたいなのも見てみたいです
お約束だけどラブシーンやら拷問シーンやら雑多に入った派手なエンタメもいいなと
まあ白鳩は厳しいので委員長とかで...
376 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/09/23(月) 00:29:36.28 ID:upIrgpLO0
…まずは丁寧な感想と意見をありがとうございます…確かに「単独潜入&破壊工作」はスパイ・アクションの定番ですし、どこかでスマートかつクールな感じで書きたいものです……


…とりあえず次のストーリーはある程度考えているので、そのつぎ辺りに「世界で一番有名なスパイ」(情報部員としてそれはどうなのかという点はさておき…)こと「007」や「0011/ナポレオン・ソロ」(近ごろ原題の「コードネーム・U・N・C・L・E」をタイトルにリメイクされましたね)のようなものを目指してストーリーを練ってみます……時間はかかるかもしれませんが、待っていて下さいね


……そして各タイトルを伏せ字にしませんでしたが、大丈夫でしょうか…夜中に玄関ドアをノックされたりとか……スパイ物の見すぎですね(苦笑)

377 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/09/28(土) 11:50:20.37 ID:TUk1vHt20
…case・アンジェ×ドロシー×ベアトリス「The Pigeon and iron」(鳩と鋼)…


…ロンドン・アルビオン共和国大使館の一室…

7「…L、情報収集に当たっていたエージェントからの報告です」

L「うむ…それと、中身には目を通したか?」

7「はい……」

L「どうやら「プリンシパル」を動かす必要がありそうだな…手はずを整えてくれ」

7「分かりました」

…数日後・リージェント公園…

ドロシー「…よっこらしょ、と……定期連絡以外の呼び出しとは珍しいな。何があった?」

L「うむ。急に呼び出したのは他でもない…実は「ちょっとした問題」を解決せねばならなくなってな」

ドロシー「……と、いうと?」

L「…君も噂くらいなら耳にしたことがあるだろうが…この数カ月余りの間に、王国防諜部が他国のエージェントを次々と「静かに」させている、という情報を耳にしたことは?」

ドロシー「ああ…それとなく、だが」

L「結構、ならば話が早い……消されているのは、主にケイバーライト鉱の精錬に関する技術情報を入手しようとしたエージェントたちだ」

ドロシー「そりゃあまた…そいつは王国の連中が血眼になって流出を阻止しようとするシロモノじゃないか……しかし、それだけではあんたが直接「状況説明」に来る理由にはならないね」

L「いかにも」

ドロシー「それじゃあ、一体どういう風の吹き回しで?」

L「…実は、その「始末」のされ方がいくぶん異常なのでな……マクニールを知っているか?」

ドロシー「直接話したことはないが、顔だけなら…アイリッシュ系で背は低いが横幅のある、ごつい炭鉱夫みたいなやつだ」

L「ああ、そうだ」

ドロシー「……やっこさんがどうかしたのか」

L「うむ…およそ一週間前の報告を最後に連絡が途絶え、情報提供者に網を張らせていたところ、数日前モルグで見つかった……首の骨を折られてな」

ドロシー「…なに?」

L「言った通りだ…彼は鉱山労働者という触れ込みで潜入を図っていたので、表向きは鉱山内での「転落事故」と言うことになっているが……へし折られていたそうだ」

ドロシー「……武器は持っていたのか?」

L「ああ…護身用に.320口径の「トランター・リボルバー」を隠し持っていたが……発射された形跡はなかったということだ」

ドロシー「…続けてくれ」

L「他に我が方でやられたのは二人…ジェレミーとエマだ。ジェレミーの方は面識がないだろうが、エマは「ファーム」で同じ時期に入ったから覚えているだろう」

ドロシー「ああ……卒業したのは私たちより後だったらしいな」

L「うむ、何しろ君や「A」ほどではなかったからな…ちなみにジェレミーは研究助手としてケイバーライトの研究施設に潜りこみ、エマは精錬工場に女工として潜入していたのだが……ジェレミーは消息不明で、エマの方は全身に骨折があったが、これも表向きは「機械に巻き込まれた」と言うことになっている」

ドロシー「…」

L「さらに…だ。エージェントを消されたのは我々だけではない」

ドロシー「…さっきそう言っていたな」
378 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/09/29(日) 02:00:18.35 ID:6zB3Eqyp0
L「うむ……もっとも、聞いてみたところで教えてもらえるような事柄ではないから、あくまでこちらの情報収集で知り得た限りだが…情報部員だけでも、少なくとも十数名が始末されている」

ドロシー「……多いな」

L「ああ…まずはフランスの女性エージェントに、ベルギー王国の軍情報部エージェント……ベルギーのエージェントは7.5ミリの「M1878・ナガン」リボルバーを持っていたが、これも発射の形跡はなく、胸骨がたたき折られていた…とのことだ」

ドロシー「……それから?」

L「イタリア王国にドイツ、それからオーストリア・ハンガリー帝国の情報部員…オーストリアのエージェントはガッサー・リボルバーを持っていて、一発だけ発射した形跡があったらしいが……命中弾は与えられなかったようだな」

ドロシー「…」

L「そして最後に、合衆国のエージェントが一人…」

ドロシー「……新大陸のエージェントか…きっとカバーはカウボーイの見世物だな」

L「その男は「掘削機械の商談に来た」事業主ということで、護身用に.32ショートの「スミス&ウェッソン・No.2」リボルバーも持っていたが……発見された時には横に転がっていて、銃身がねじ曲げられていたそうだ」

ドロシー「…何だって?」

L「聞こえなかったか?」

ドロシー「いや…で、私たちは何をすればいい?」

L「うむ……このままエージェントの損失が続くと、我が方の情報活動に影響が出る。君たちにはエージェントを「消して」いる相手に関して情報を集め、可能ならばこれを始末してもらう」

ドロシー「おいおい、冗談だろ…相手は素手で背骨をへし折ったり、ピストルをねじ曲げるようなやつなんだぞ? きっとそいつは筋骨隆々のハーキュリーズ(※ヘラクレス…ギリシャ神話に出てくる英雄)に違いない……まともに相手なんて出来るシロモノじゃないね」

L「ならばヒドラの毒でも盛ることだ…とにかく、どんな犠牲を払っても構わん。活動に必要な資金や機材も全て揃えさせる」

ドロシー「…だったらまずは象撃ち用のライフルかな……とにかく情報を集めてみる」

………



…部室…

ドロシー「…よし、全員揃っているようだな」

アンジェ「ええ…」

プリンセス「ドロシーさんが集合をかけるなんて珍しいですわね?」

ドロシー「ああ、今回はちょいとばかり重い話なんでな……そう思って聞いてくれ」

ちせ「…ほう?」

ドロシー「実はな、新しい任務が入って来た……」そう切り出して、おおよその事情を説明するドロシー

アンジェ「…」

ちせ「…」

プリンセス「…」

ベアトリス「…」

ドロシー「……とまぁ、だいたいはそんなところだ…確かに学生の私らはこれから冬休みに入るし、行動の制約になる条件が減少するのは事実だ」

アンジェ「なるほど…」

ちせ「ふむ…それだけの間諜を手にかけた相手となると、一筋縄では行くまいな…」

プリンセス「……そうね」

ベアトリス「どうして皆さんそんなに落ち着いているんですか…そんな怪物みたいな相手に勝てるわけないじゃないですか!?」

ドロシー「まぁ落ち着けよ、ベアトリス…別に私はLの奴に「必ず始末しろ」と言われたわけじゃない。「可能ならば始末しろ」って言われただけなんだからな」

ベアトリス「そんな事言ったって…!」

ドロシー「いいから聞け……まず、今まで送り込まれた連中はそんな奴がいることすら知らないでいたが、私たちはそういう「フランケンシュタインの化け物」みたいなやつがいることを知っている…だから対策をとることもできる」

ベアトリス「でも……!」

ドロシー「…それに、分かっている限りで始末されたエージェントは全員「ソロ」だ。私たちみたいなチームじゃない」

アンジェ「そうね…それにもし相手が怪力の持ち主なら、その間合いに入らなければいいだけのことよ」

ドロシー「そう言うことさ……ライフルでも持ち出して、そいつが間抜け面をさらしているところを鴨撃ちにしてやればいい」

アンジェ「いずれにせよ、まずは情報収集ね」

ドロシー「そう言うこと…♪」
379 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/29(日) 03:53:29.22 ID:S4j2Kb83O
排除任務とは新しい
今回も期待しております
380 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/09/30(月) 00:37:46.82 ID:mX6Y8wpl0
…まずはコメントありがとうございます…そして、ついに……「劇場版プリンセス・プリンシパル 〜クラウン・ハンドラー〜」の公開が明らかになりましたね。封切りは2020年4月とのことですので、公式等で情報収集に努めましょう…!
381 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/10/02(水) 00:43:37.28 ID:mwjTT0PS0
…せっかくですので、続きを投下する前に小道具の解説を一つ……


ヒドラ(ヒュドラ、ハイドラとも)…ギリシャ神話に出てくる、ヘラクレスに退治された毒蛇の怪物。

その毒はヘラクレスの持つ矢に塗られていたが、ある時川を渡ろうとしたヘラクレスとその家族が困っている時、一頭のケンタウロスが妻の「デアネラ」を乗せて川を渡した…が、ヘラクレスが息子を背負って川を渡っている間にケンタウロスはデアネラを犯そうとしてヘラクレスの毒矢で射殺され、その死に際に「この血は媚薬になるから、彼の愛情が減った時に衣服をこの血に浸して渡すと良い」とデアネラをだました……後に本当に浮気をしたヘラクレスに対し、嫉妬に狂ったデアネラが「愛を取り戻そうと」その服を贈ったところ残っていたヒドラの毒が回り、激痛に耐えかねたヘラクレスは自ら薪の山に身を横たえて火をつけ、デアネラ自身も後悔して自殺した

………

トランター・リボルバー…ウィリアム・トランター社の一連のリボルバー。十九世紀末には護身用のポケット・ピストルから大型のものまで生産していたが、その後ウェブリー・スコットに敗れた

………

ナガン・リボルバー…ベルギー人で兄エミールと弟レオンのナガン兄弟が開発した軍用ピストル。なかなか性能が良く、輸出やライセンス生産の許可もゆるかったことから帝政ロシアやノルウェー、スウェーデン、ギリシャ、ルクセンブルグ、アルゼンチンなど多くの国に採用され、それぞれの軍用弾薬の口径に合わせて大小さまざまなモデルが製造された…特に帝政ロシアは大量に採用して長らく使い続け、アドバイザーとして「モシン・ナガン」として有名になる歩兵用ライフルの開発協力も依頼している

………

ガッサー・リボルバー…レオポルド・ガッサーが開発した当時のオーストリア・ハンガリー帝国軍用リボルバー。1903年には社名をラスト&ガッサーと改名し、その後は「ラスト&ガッサー・リボルバー」と言われる。当初は大口径リボルバーが多かったが、後に将校用として小口径モデルが生産された

………

スミス&ウェッソン・No.2リボルバー…安価で反動が小さく威力もそこそこと、手ごろで扱いやすい「.32ショート・リムファイアー」弾薬を使った中折れ式の護身用ピストル。

これまでの「コルト・シングルアクション・アーミー」(ピースメーカー)のように給弾口から一発づつ排莢、装填しなければならない「ソリッド・フレーム式」のリボルバーと違い再装填が早く、口径違いの「No.1」などと一緒に当時大ヒットして、S&Wを一気に大メーカーへと押し上げた

………


382 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/10/04(金) 01:32:03.37 ID:ve/WS8kd0
…冬休み・初日…

女生徒「…それでは、また休み明けにお会いしましょう」

女生徒B「ええ…この冬はエクセターにあるわたくしの別宅に招待いたしますから……ぜひいらしてね?」

女生徒「まぁ、ありがとう♪」

ドロシー「…まーちに待った冬休みぃ…と……これでやっと活動にとりかかれるってもんだな、アンジェ?」

アンジェ「そうね……ドロシー、貴女にお客様よ…」

ドロシー「ええ?」

サラ「…あの……ドロシー様///」

ドロシー「あぁ、サラか…どうした?」

サラ「あ、いえ……もし、よろしければ…冬休みの間のどこかで…私の家に……おいでいただければと……お手紙を差し上げるつもりでおりますから…その…///」真っ赤になってうつむき、消え入りそうな声でつぶやいた…

ドロシー「ありがとう……サラが招待してくれて嬉しいよ♪」あごに親指をあてがい「くいっ…」と顔を上げさせると、魅力的な笑みを浮かべた…

サラ「///」

ドロシー「はは、そう照れるなって…それじゃあ、いい冬休みを♪」

サラ「ひ、ひゃい…それでは……///」

アンジェ「……相変わらずね」

ドロシー「ああ…それに例の「工場」が吹き飛んだ件で、陸軍省技術顧問のサー・ウィリアム・ティンドル…例のサラの父親の友人だな…が『生産を急ぎ過ぎで安全管理がなっていない』って警告していたのが本当になったっていうんで、サー・ウィリアムの株はうなぎのぼりさ……おかげでよりいい情報をおしゃべりしてくれるようになってな…こちとらからすれば万々歳さ」(※本スレ264…「The Machinegun and spicy spies」参照)

アンジェ「そのようね…引き続き彼女とは良好な関係を構築しておきましょう」

ドロシー「もちろんさ……お、ベアトリス♪」

ベアトリス「ドロシーさん、アンジェさん……しばらくの間ですが、顔を合わせる機会が減ってしまいますね…」

ドロシー「なぁに、そうしょぼくれるなよ…いつでも押しかけてやるさ♪」

ベアトリス「もう…っ」

プリンセス「…あら、ドロシーさん……それに…アンジェ///」

アンジェ「…プリンセス」

ドロシー「やぁ、プリンセス。しばらくは王宮の方で忙しくなるな」

プリンセス「ええ…」

ドロシー「お姫様って言うのも楽じゃないな……ところで、こっちは冬休みを使って「調査」を行う予定だが…プリンセスはあまり動かないようにしてくれ……王族の動向ともなると防諜部やら何やらが目を光らせているからな…」

プリンセス「…分かりました」

ドロシー「あと、ベアトリスを借りることがあるかもしれない……その時はよろしく頼む」

プリンセス「ええ」

ちせ「…おや、すでにお揃いであったか」

ドロシー「おうよ……ちせ、お前さんも冬休みの間にそっちのボスからの命令で動くこともあるだろう…もしこっちでお前さんと腰の人斬り刀が必要な「デート」が入ったら、出来るだけ事前に声をかけるようにするから…よろしくな♪」

ちせ「…かたじけない」

ドロシー「なぁに、そっちも忙しいだろうからな…私の「住所」は覚えているよな?」

ちせ「無論じゃ」

ドロシー「結構……ま、しばらくはアンジェと一緒にロンドン観光…って言うことでぶらぶらしているから、必要があったら手紙をくれ」

ちせ「承知」

ドロシー「…さ、それじゃあ行こうか……ごきげんよう、プリンセス♪」それまではアンジェたちにしか聞こえないようにしゃべっていたが、最後だけわざと人に聞こえるよう挨拶をした…

プリンセス「ええ、ごきげんよう…行きましょう、ベアト♪」

ベアトリス「はい、姫様」

………

383 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/10/04(金) 02:30:23.54 ID:ve/WS8kd0
…数日後…

ドロシー「…よう、ベアトリス♪」

ベアトリス「ドロシーさん……まだ冬休みが始まって数日ですよ?」

ドロシー「おいおい、プリンセスと一緒じゃないからってそうすねるなよ……今日はいい所に連れて行ってやるからさ♪」

ベアトリス「べ、別にすねてなんていませんっ…それにドロシーさんの言う「いい所」なんてロクなところじゃないでしょうし……」

ドロシー「やれやれ、ずいぶんと信用されてないな…」

ベアトリス「当たり前です! どうせまたモルグだったりするんでしょう?」

ドロシー「バカ言うな。今回は正真正銘、折り紙つきで楽しい場所さ……そうだろ、アンジェ?」

アンジェ「ええ」

ドロシー「ほら見ろ、アンジェだってああ言ってるぜ?」

ベアトリス「むぅ…」

ドロシー「ま、行ってみりゃ分かる話だしな…出かけようぜ♪」

………



…とある広場…

ドロシー「……ほぉら、着いたぜ」

ベアトリス「これって…サーカス、ですか?」

ドロシー「ご名答♪」


…ドロシーたちがやって来た広場にはサーカス団が来ていて、大小さまざまなテントが張られ、それぞれの入口に掲げられたけばけばしい色合いの看板には「仰天、世界一の大男に膝丈の小人!」「ここでしか見られない世界唯一の動物!」「軽業師ハンフリー兄弟の華麗なる演技!」などなど、嘘くさいが人の興味を惹きそうな文句が書きたてられている…


ベアトリス「…一体どういう風の吹き回しですか?」

ドロシー「なーに…せっかくの冬休みだし、たまにはいいだろ?」

ベアトリス「何か引っかかりますけど、まぁいいです…ちょっと面白そうですし……///」

ドロシー「はは、それじゃあ早速見て回ろうぜ♪」

受付A「…さぁさぁ、紳士淑女のみなみなさま、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! こちらのテントでお見せするのは世界一の美女「炎のカサンドラ」嬢! エジプトの美女クレオパトラか、はたまたヴィーナス、隣に並べればバラも色を失うという美しさ! 今なら入場料たったの三ペンス!見ないと一生の損だよ!」

受付B「さぁいらっしゃい! このテントの中では世界一の大男「ジョージ・ザ・グレート」に鉄棒をも曲げる怪力男「鉄の骨のモーガン」が見られるよ! たった四ペンスでこいつを見ないのはもったいない、さぁ入った入った!」

受付C「このテントの中では怪奇と恐怖が渦巻き、ミイラに吸血鬼、人食い鬼…世にも恐ろしい怪物の数々が待ち受けています…さぁ、勇気のある方は二ペンスでのぞいて見てください…もっとも、心臓の悪いお方やご婦人方にはおすすめしませんがね……さぁ、いかがです…?」

ドロシー「……はは、面白そうじゃないか…さ、どれから見る?」

ベアトリス「…えぇ…と」

受付B「そこの綺麗なお嬢様方、今なら力自慢の「鉄の骨のモーガン」のすごい技が見られますよ!遠慮は無用! さぁ、入った入った!」

受付A「おっとと、お嬢さん方にはこっちの方がよろしいですよ! 炎のカサンドラの魅力は男女関係なし! …しかも追加で四ペンス払うと、なんと……彼女が水浴する所をのぞけるかもしれないんですよ! 見てみたいでしょう?」

受付C「さぁさぁ、ご婦人方…恐怖渦巻くこのテントでは今だけあの「吸血鬼」が見られるんですよ……途中で怖くなって出てきた方、気を失った方もたくさんいますがね…勇気があるならどうぞ中へ……」

ドロシー「んー…そうだな、ここは力自慢にするか♪」

受付B「はは、お嬢様は見る目があるねぇ! ささ、一人四ペンスですよ!」

ドロシー「そら♪」

受付B「毎度あり、さぁ中へどうぞ!」

384 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/10/05(土) 10:52:55.03 ID:qWD7MWRe0
…テント内…

ドロシー「おー、けっこう大入りじゃないか……はぐれるなよ?」

ベアトリス「はぐれませんよっ…子供じゃないんですから」

ドロシー「悪い悪い、あとで飲み物でも買ってやるからさ♪」

ベアトリス「だから子供扱いしないで下さいってば…!」

ドロシー「はははっ…お、そろそろ始まるな♪」

ベアトリス「むぅぅ、またそうやってはぐらかして……」

司会「さぁて皆さま! 今日お目にかけますのは怪力無双の大男、鉄棒をも曲げる驚異の肉体! その名も……「鉄の骨のモーガン」だ!」

巨漢「ふんっ!」

…上半身は裸で下には派手なタイツをまとった、身長がたっぷり七フィートはありそうな筋骨隆々の大男が舞台袖から舞台に出てきた…出てくるなり盛んに腕を曲げ伸ばしして力こぶを作ってみせたり、腹に力を入れて筋肉を動かしたりと力自慢ぶりを見せつける……

観客「よっ、待ってました!」周囲からは一杯機嫌の客たちが飛ばすヤジや喝采が飛んでいる…

司会「さぁさぁやってまいりました! うなる鼻息は雄牛のごとく、その筋肉は鋼鉄のごとく! ひとたび物を持ち上げさせれば起重機も真っ青! 物を握らせればたちまち微塵に押しつぶしてしまうため、おちおち食事も出来ないと言う男だ!」

観客B「おいおい、それじゃあどうやって飯を食うんだよ!」

司会「ですから普段はフォークもナイフもなし、両手で引きちぎりながら肉を平らげております! さぁご覧あれ、こちらの大樽、大箱にはぎっしり物が詰まっている! 軽く二百ポンドはあろうかというシロモノだ! どなたか重さを試してくれるかな…おっ、そこの強そうなお方!」

観客C「…おれか?」

司会「そう、あなたです! どうぞこの壇上に来て、この大箱でも大樽でも持ち上げてみてください! もし持ち上がったらモーガンの代わりにお客さんを雇うことにしますよ!」調子のいい司会の言い草に、どっと笑い声が上がる…

観客C「おう、任せとけ!」箱の下に手をかけてうなり声を上げ、顔を真っ赤にして持ち上げようとする…

観客D「…がんばれ大将!」

観客E「もっと腰をふんばりな!」

観客C「うぬぬ…ふぅっ、むぅぅんっ! …だめだ、持ち上がらねえ!」

司会「おやおや、それは残念…どうぞお戻りになって…… 見ての通り、常人では一インチも持ち上げることの出来ないシロモノだ! しかしモーガンなら…!」

巨漢「ふんっ!」箱をつかむと軽々と持ち上げてみせた…

ベアトリス「わぁ、すごいですね!」

ドロシー「ああ、大したもんだな…くくっ♪」ベアトリスの感心した様子を見て、笑いだしたいのをこらえているようなドロシー…

ベアトリス「……何がおかしいんです?」

ドロシー「いや…本当にお前さんは素直ないい娘だと思ってね♪」

ベアトリス「どういう意味ですか?」

アンジェ「……あの持ち上げようとした客は仕込み…つまり「やらせ」よ」

ドロシー「…ま、言うだけ野暮だからな……こういうのはだまされたふりをして楽しむもんさ♪」

ベアトリス「な、なるほど……」

司会「ではいよいよ真の力を見せる時だ! 取り出しましたるは紛れもない鉄の棒…なんとモーガンはこの鉄の棒を曲げてしまおうというのです!」

観客「そいつはすげえな!」

司会「さぁ、はたして鉄棒が勝つか、モーガンの腕が勝つか…結果はどうなる!」

巨漢「ぬんっ…ふぬぅぅ……!」さすがに顔を赤くして力んでいるが、次第に鉄の棒が曲がり始めた…

巨漢「……むぉぉぉっ!」とうとう飴細工のようにぐんにゃりと曲がった鉄棒…最後にUの字になった鉄棒をガタンと舞台の上に放り出すと、拍手喝采を浴びながら力こぶを作った…

ドロシー「はははっ、大したもんだな♪」

ベアトリス「……ねぇ、ドロシーさん」何やら考え込んでいるベアトリス…

ドロシー「ん?」

ベアトリス「…もしかして、あれにも何か「仕込み」があるんですか……?」

ドロシー「あー、その事か……あの大男の名誉のために言っておくが、一応あれは鉄棒だぜ」

アンジェ「…ただ、何度も熱せられたり曲げ伸ばしされている鉄棒は強度が落ちる……それだけのことよ」

ベアトリス「そうなんですね…」

ドロシー「そういうことさ…面白いだろ? さて、次は何を見に行くか…♪」
385 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/10/10(木) 02:36:15.31 ID:0r9ADuxF0
…昼時…

ドロシー「さーてと、ちょっと喉を潤そうじゃないか…と♪」

アンジェ「貴女ときたらいつもそれね」

ドロシー「まぁそう言うな、せっかくの機会なんだから楽しめよ……へい、ビールを三つにパイを頼む」

屋台の売り子「はい、お待ちどう」

ドロシー「お、ありがとな…ほら、二人ともつまめよ」錫のジョッキに注がれた水っぽいビールをあおりながら、油っこいひき肉のパイをつまむ…

ベアトリス「ありがとうございます」

アンジェ「そうね、わざわざ自分で頼もうとは思わないけれど……せっかくだからいただくわ」

ドロシー「ああ、お前さんはしみったれだからな…おごってやるよ」

アンジェ「どうもごちそうさま」

ドロシー「いえいえ、こちらこそお嬢様にご馳走できて光栄でございます……なんてな♪」愉快そうにおどけてみせるドロシー…

ベアトリス「…それにしてもずいぶんと人が多いですね?」

ドロシー「ああ、客層も広いしな……ちなみに、あそこにいる鳥打ち帽(ハンチング)の男はスリだから気をつけろよ?」

ベアトリス「えっ?」

アンジェ「…そういう時は視線を向けない」

ベアトリス「あっ……すみません…」

アンジェ「謝れば済むという問題じゃないわ……まだ訓練が身についていないわね」

ドロシー「まぁまぁ、そう怒るなよ…もっとも、練習は追加する必要がありそうだがな」

ベアトリス「……ごめんなさい」

ドロシー「いいさ、反対に「素人」の方が気取られなくていいって場合もある……さ、それじゃあジョッキを返してくる」ベアトリスが飲み切れなかった半分ほどをぐーっと飲み干すと空のジョッキをまとめて持ち、屋台に返しにいった…

………

…午後…

ドロシー「…どうだ、面白いか?」

ベアトリス「ええ…普段は公式行事や姫様のお供が多くて、なかなかこういう場所に足を運ぶ機会がありませんから……もちろん、姫様と一緒にいられるのは嬉しいですが…」

ドロシー「はは、なかなかのろけてくれるじゃないか♪」

ベアトリス「…っ///」

ドロシー「そう照れるなよ…さて、こっちには何が……っと、舞台の裏側に来ちまったようだな」

ベアトリス「みたいですね……戻りましょう」

ドロシー「おう、そうだな……」

…夕方…

ドロシー「…さてと、今日は楽しめたか?」

ベアトリス「ええ」

ドロシー「そいつはよかった…おっ、灯りがともり始めたな」…あちこちに吊るしてあるランタンや電燈が光りを放ち、回転木馬などがにぎやかに回っている…

ドロシー「…たまにはこういう場所もいいもんだ……な、アンジェ?」

アンジェ「そうね…」

ドロシー「ああ。きっと今頃はやっこさんも「向こう」でこんな風に楽しんでいることだろうよ……っと、ちょいと感傷的になっちまったな…」

アンジェ「……たまにはいいわ…」そっと身体を近寄せるアンジェ…

ベアトリス「…」

ドロシー「ありがとな……さ、帰ろうぜ♪」

アンジェ「ええ」

………

386 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/10/13(日) 02:01:01.27 ID:jbSkiOQ70
…その日の夜…


ドロシー「……さてと、アンジェはどう思う?」

アンジェ「今日行ったところは「シロ」ね。 …楽屋ものぞいてみたけれど、特におかしなところはなかったわ」

ドロシー「やれやれ…この「怪力お化け」の出現場所や情報部員たちが消されたおおよその日時からすり合わせて、このサーカス団が一番怪しいと思ったんだがな……ま、一発目からそう上手くはいかないか」

アンジェ「ええ」

ドロシー「それにしても今日はベアトリスがいてくれて助かったぜ……やっこさんがいると、いい目くらましになる」

アンジェ「そうね」

ドロシー「ああ…あんな風に目をキラキラさせてはしゃぎまわってくれると、いかにもそれらしく見えるからカバー(偽装)がやりやすくなっていい…私たちじゃあどうつくろったってああはいかないからな」

アンジェ「同感ね」

ドロシー「…私とお前さんじゃあ、ああいう「愉快な雰囲気」に完璧には溶け込めないものな……そもそもいい年をして私が移動遊園地だのサーカスだのではしゃいでいたら馬鹿みたいだし、お前さんはあんな風に目立つ動きをするタイプじゃない」

アンジェ「ええ…」

ドロシー「……しっかしそうなると「ふりだしに戻る」ってやつだな…まさか休みの間、ずーっとサーカスと遊園地めぐりってこともないだろうし…」そういいながらも机の上に「ロンドン・デイリー・ニュース」紙を広げ、催し物の広告に出ているサーカスや移動遊園地から「クサい」とにらんだものをチェックしている……

アンジェ「…こうなったら地道に足で稼ぐしかないでしょうね」

ドロシー「ふぅ…となると、何かしらの上手いカバーを考えないとな」

アンジェ「そうね」

ドロシー「それとあとで「コントロール」をせっついて、何か掴んでいないか聞いてみることにしよう」

アンジェ「それは任せるわ」

ドロシー「ああ」

………

…同じ頃・官公庁街…

官僚「…ミセス・キャタリッジ、これのタイプを頼むよ……写しが二枚いるんだが、出来上がったらいつものように僕の机の上に置いておいてくれたまえ」

タイピストの老嬢「はい、ミスタ・ハワード」

官僚「すまんね…それが終わったら帰っていいから。それじゃあまた明日」

老嬢「さようなら、ミスタ・ハワード」

官僚「ああ、また明日」

老嬢「…ミスタ・ハワードもお忙しくて大変でいらっしゃいますね…さて、と……」つるに鎖をつけ、鼻の先までずり下がっている眼鏡を押し上げると、手際よくタイプを叩き始めた…と、またずり落ちてきた眼鏡を鼻の上に戻すとタイプしかけた文書を眺め、原本と見比べはじめた……

老嬢「……あら、いけない…!」どうやらつづりを間違えたらしく、タイプ紙を切り取るとくずかごに放り込んだ…それから数分もしないうちにタイプを終えると、灰色と紫色の野暮ったいボンネットと日傘を持ち、とことこと歩きで帰って行った…

…数十分後…

掃除婦「…よいしょ、こらしょ……ふぅ、本当にホワイトホール(官公庁街)っていうのは紙ごみの多い所だわね……」赤ら顔でべらんめえのコックニー訛りもぞんざいな、いかにも無学そうに見える掃除婦のおばさんが袋を担いでやって来た……

掃除婦「やれやれ、これが全部お金だったらあっという間にお金持ちだよ……うんしょ…」書き損じや下書きの紙ごみが一杯につまった袋に、くずかごの中身を空ける…

掃除婦「……はぁ、おかげで腰が痛いったらありゃしない…」ぶつぶつ言いながらタイピストの打ち間違えた文書に一瞬だけ目を走らせると、ズロース(下着)をずり上げるそぶりをしながらぽってりした脚と股の間に丸めて押し込み、何食わぬ顔で袋を担ぎ直した…

掃除婦「…まったく、嫌になっちゃうよねぇ……」

………

387 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/10/13(日) 02:04:48.66 ID:jbSkiOQ70
…とりあえず少し投下しましたが、それより台風は大丈夫だったでしょうか…

……特に前の被害が残っている千葉の方ですとか、あちこちの川があふれたり堤が切れたりしたような所に住んでいる方は気をつけて下さいね…
388 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/10/16(水) 02:57:47.53 ID:8T0I8cAz0
…数時間後・アルビオン共和国大使館…

7「L、エージェント「タイニー・ティム」(小さいティム)から報告が入っております」


…とある王国の役所に勤めているタイピストの老嬢とゴミ捨て係のおばさんは、どちらも「コントロール」の送り込んだひとかどのエージェントで、このタイプの情報部員は無害なオールドミスのタイピストや老齢の秘書嬢として何人も王国の官公庁に浸透している……コードネーム「タイニー・ティム」の二人はお互いに顔を合わせたこともないが、おばさんは老嬢がわざと「タイプミス」をした(…その上で隅を折ったりインクを垂らしたりと特定の「目印」をつけてある)公文書をゴミ捨て場に持って行く過程で抜き取っては暗号文にして送り、なかなかの「成績」を残している……特に掃除婦のおばさんは赤ら顔で俗っぽいコックニー訛りと字も読めないような見た目をしているが、実際にはラテン語も操る教養人で、王国の官僚たちが気にせず捨てている下書き原稿や草案などはあっという間に読み通してしまう…


L「ふむ、あれは相変わらず朝食のベーコンと卵のように相性がいいようだな……プロダクト(産物)としてはどうだ?」

7「そうですね……この情勢を考えると興味をそそられるかと思います…」

L「ほう?」口にくわえていたパイプを放すと、解読された暗号文を手早く黙読した……

7「…」

L「…ふぅむ、なるほど……」

7「あの二人は情報の確度も高いですし、今回の情報も何かの手掛かりになるかもしれません」

L「そうだな…エージェント「D」に宛てて暗号文を送ってやれ」

7「はい…電信にしますか?」

L「だめだ。いつも通りメッセージを紙に書いて「デッド・ドロップ」方式で受け渡せ……多少時間はかかるが、耳寄りな情報が入るたびに電文を打っていては王国防諜部に情報漏れがあったことを教えてやるのと変わらん」

7「分かりました」

L「とにかく「プリンシパル」には励んでもらわねばな…普段からドリーショップ(コントロールの技術担当)には無茶を言ってあれだけの装備を用立てさせているのだ……早く結果を出さんと経理の連中にやいのやいの言われて胃を悪くする」パイプをくわえ直すと、真顔で冗談めかした…

7「ふふ、ご冗談がお上手ですね」

L「ふ……たまにはユーモアのセンスも磨かねばいかんからな。他には?」

7「はい、エージェント「K5」からも同様の情報が…ただ、確度としては良くて「中」と言ったところかと…」

L「…とはいえ複数の情報源から同様の情報が入ってきているのなら、そこには一抹の真実が含まれていると言うことになる……あれが費やしているバカ高いシャンパンやらストッキングやらの分だけでも情報を入手するよう発破をかけろ」

7「そうでないとまた経理部に呼び出しを受けますものね…そうでしょう?」

L「そうだ。そして呼び出されるのは私であって君ではない……私とて何かにつけてあの杓子定規の石頭どもにネチネチ言われるのはごめんだ」

7「はい、分かっております」

………



…翌日・とある邸宅…

ドロシー「アンジェ、ちょっと来てくれ…「コントロール」から新しい情報だ」

アンジェ「どんな?」

ドロシー「それがな……私たちの追っかけている相手のコードネームが分かった」

アンジェ「…それで?」

ドロシー「ああ…今回の騒ぎを起こしている怪力お化けのコードネームは「シルク・モス」(カイコガ)……もちろんアルファベット順につけた、何の意味もない名前かもしれない…とはいえ、私は何となく王国の連中が「意味のある」コードネームをつけているような気がしてならないんだ」

アンジェ「…例の「ガゼル」みたいに?」

ドロシー「ああ。それと、今までにエージェントが消された大まかな場所を調べてみた……新聞の写真っていうのは便利だな。図書館で建築図鑑をめくって通りや建物を調べたらすぐに分かったぜ♪」

アンジェ「そうね、場所については私も調べてみたわ……それとエージェントの「消去」が実行されたのは夕方から深夜で、特定の曜日にはこだわってはいないようね」

ドロシー「む……せっかく私が言おうとしてるのに、先取りするなよ」

アンジェ「悪かったわね」

ドロシー「いいさ…とにかくこうなったらそれらしい鉱山町だの工場街を軒並み当たって、情報収集してみるしかないだろうな……」

アンジェ「そうなりそうね」

ドロシー「……あとは聞きこみ中にその「怪力お化け」の野郎とばったり出くわさないことを祈るだけさ」

アンジェ「同感ね」

………

389 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/10/22(火) 02:15:55.78 ID:Ajz1XrNp0
…ロンドン市街・労働者街…

ドロシー「……さ、それじゃあ取りかかろう」

アンジェ「そうね」

ドロシー「役割分担は分かってるな?」

アンジェ「もちろん」

ドロシー「よし、じゃあ行こうぜ…♪」手元の小さなハンドバッグには護身用の小型ピストルとして.297口径の「トランター・リボルバー」を忍ばせ、チャコールグレイと黒の地味な格好に身を包んでいる…

(※十九世紀はまだまだ追いはぎや野犬も多かったので、買えるだけのお金がある人は護身用に小型ピストルを持っていることも多かった…種類はさまざまで、極めて小さい弾丸をごく少量の火薬で撃ちだす威嚇程度のものから、一応殺傷能力のある.297口径や.32口径などが流行った)

アンジェ「…ええ」アンジェも黒を基調にした服でまとめ、顔はヴェール付きのボンネットで隠している…

………

…夕方・とあるパブ…

パブのおやじ「……らっしゃい、何にしやすかね?」まだ客が入っていない午後の時間帯なので、暇を持て余しているおやじが注文を取りに来た…

ドロシー「エール。パイントで」

おやじ「へい!」小汚い布で申し訳程度にテーブルを拭うと、すぐに金属のふた付きジョッキを持ってきた…

おやじ「どうも、お待ちどうさんです…」

ドロシー「……おやじ、ちょっといいか?」

おやじ「へい、何です?」

ドロシー「ああ…ちょっと人を探しててな」

おやじ「へぇ……人探しで?」

ドロシー「そうだ」

おやじ「…それで、その「探している」っていうのは……どんな奴なんです?」

ドロシー「ああ…本名は分からないが「イカれたマシュー」っていう名前で通っている、やたら馬鹿力のある奴で…髪は茶、六フィートは優にあるような大男で、右腕に「メアリー」と刺青がある……心当たりは?」

…おやじが持っているかもしれない何かの情報をしゃべらせるための誘いとして、適当にでっち上げた人相を教える……が、細かい特徴をつけたしていかにも「それらしい」具合に仕立ててある…

おやじ「さぁて…ね、そんな大男は見たことも聞いたこともありませんや……かといって「馬鹿力」だけとなると、ここの客は多かれ少なかれ鉱山だの工場だのでハンマーなんかをふるっている連中だから、今度は当てはまる奴が多すぎるし…」

ドロシー「そうか」

おやじ「ところで……ご婦人がたはどうしてそんな奴を探してらっしゃるんで?」

ドロシー「…理由を聞きたいのか?」

おやじ「いえ、まぁ……そりゃあ、こんな場末のパブで人探しなんて…ちっと気になりやすからね……」ボロ布のような台拭きをエプロンに引っかけ、いくらか興味ありげな顔をしている…

ドロシー「分かった、いいだろう……」立てた人差し指を前後に動かし「近くに寄れ」と合図をした…

おやじ「へいへい……っ!?」

ドロシー「……これが分かるか?」一瞬の早業で抜く手も見せず、おやじの喉元に短いが鋭そうなナイフの刃をピタリとあてている……紫がかった瞳は冷たくおやじを見据えている…

おやじ「へ、へい…っ!」

ドロシー「…我々は女王陛下のために働くが「身分証は持たず、名を名乗るわけにもいかない人間」だと言うことだ……これでいいな?」

おやじ「も、もちろんで…!」はげ頭にあぶら汗を浮かべ、ガタガタと震えている…

ドロシー「よろしい。本来なら我々が身分を明かすことなどない……が、お前が利口にしてこのことを誰にも言わず、大人しく黙っていればそれでいい…分かったか?」

おやじ「わ、分かりやした…!」

ドロシー「結構だ……」するりとナイフを戻してそっけなく言うと、一パイントのエールには多すぎる額をテーブルに放り出した…

おやじ「あの、その…こんなには……」

ドロシー「いいから取っておけ…王国のために目と耳は動かして、余計な口はつぐんでいろ……いいな?」

おやじ「へ、へい……ありがとうございやす…」

…しばらくして…

ドロシー「…まずはハズレだったな。かといってあんまりあちこちで聞いて回るわけにもいかないが……」

アンジェ「……そう簡単に上手くいくとは思わないわ…また別のカバーストーリーを考えましょう」
390 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/10/25(金) 03:07:04.77 ID:6s3dlTKD0
…数日後・イーストエンドのアルコール中毒者救済施設…

ドロシー「はぁ…あ……まったく、なんであたしがこんな目に…」エプロンとナースキャップを身に着け、病人のようなアル中患者のシーツを替えたり、洗濯かごを運んだりしている……

エプロン姿のおばさん「そう文句を言いなさんな……でも、一体どうしてあんたみたいな育ちの良さそうなお嬢さんが、こんなところの手伝いなんてしてるんだい?」

ドロシー「…それが、ちょいとばかり遊びが過ぎて……うちの父親はお堅い人だから「数日間でいいから奉仕活動をして、世の中の役に立ってきなさい…さもなければ家の敷居は跨がせん!」ってここに押し込まれてさ……まったく、嫌になっちゃう」

おばさん「なるほどねぇ……ま、何事もいい経験だよ♪」

おばさんB「そうそう…それにここはアン王女様が可哀そうな人たちの救済のために作られた施設だから……他の施設よりはずっといい環境だよ?」

ドロシー「そんなもんかねぇ…」眉をひそめてベッドに並んだ患者たちを眺めている…

中毒患者「う゛ぅ…あぁぁ…」

中毒患者B「……サリー……おれのサリー…どこに……行っちまったんだぁ…?」

おばさん「そうさ…あぁ、それとね」

ドロシー「うん?」

おばさん「消毒液の瓶は患者の近くに置きっぱにしちゃダメだよ、いいかい?」

ドロシー「いいけど……どうして?」

おばさんB「そりゃあの人たちと来たら「アルコール」って名前がついている物ならビールだろうがウィスキーだろうが…はたまた消毒用のアルコールだって飲んじまうからさ!」

おばさん「ほんとにねぇ……その執念だけは大したもんだよ」

ドロシー「わかった、気を付けるよ…」(…こういうところには元技師だとか鉱山労働者も多い……何か耳寄りな情報が入ればいいんだがな)

…別の日の夜・貧民街…

目の見えない老人「……誰か、哀れな盲目の老人にお恵みを…夕食のパンを食べるだけの数ペンスで結構でございます……」道ばたに座り込み、前には古ぼけたお椀が置いてある…どうやら以前は鉱山労働者か何かだったらしく、瞳がケイバーライト鉱の汚染で緑色にくもっている……

ドロシー「…あの爺さん……どうだ、行ってみるか?」

アンジェ「ええ…」

老人「…どなたか親切なお方…お恵みを下され……」

ドロシー「……ほら、爺さん……これっぽっちで悪いね」そう言って一シリング硬貨を老人の節こぶだらけの手に握らせた…

老人「どうもありがとうございます、親切な……えっ…こ、こんなにいただけるので…!?」受け取った硬貨の感触でシリング硬貨と気づいた老人が驚いたように見えない目を向けた……

ドロシー「ああ、いいんだよ……少しはこれで腹もふくれるだろう?」

老人「あぁ、ありがたいことでございます…どこのどなたかは存じませんが……見ず知らずの老人にこんな……うぅ…っ」

ドロシー「何も泣くことはないだろう……いや、実は私も昔はこの辺りで細々と暮らしていてね…こんな風に物乞いをやっていたら、慈善活動をやっていたある貴族のお嬢様に気に入られて、今じゃいいご身分なんだ……だから今度は私がおすそ分けを…ってわけさ♪」

老人「…あぁ、ありがたいことでございます……」

ドロシー「なぁに、いいんだよ…しっかししばらく見ない間に、ここもずいぶん変わったねぇ?」

老人「そうでございますね……」

ドロシー「…それに人も替わったよ……あ、爺さんは知ってるかな?」

老人「なんでございましょう…?」

ドロシー「いやぁ、以前はここにいたんだよ……もの凄い力持ちの大男でさ「力こぶのハリー」っていうやつなんだけど…」

老人「さぁ……わしもここには長い方ですが…聞いたことがありませんな……」

ドロシー「ふぅん、そっか……ま、身体を大事にしなよ?」

老人「…ありがとうございます……」

ドロシー「ああ…」

…深夜・高級住宅街のネスト…

ドロシー「…しっかし参ったな……これじゃあ「干し草の山から針」どころか、大西洋から一滴の水だぜ?」…コントロールがさまざまな名義や身分を経由して買い入れたしゃれた邸宅のダイニングルームで、温めたブランデー入りミルクをすすりつつぼやいた……

アンジェ「文句を言っても始まらないでしょう…」

ドロシー「そうは言ってもな…改めてロンドンの大きさにあきれ返っているところさ」

アンジェ「…とにかくこの調子で情報収集を続けるしかないわ」

ドロシー「まぁな……やれやれ、この調子じゃ定期連絡の時にまたせっつかれることになりそうだ…」
391 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/10/29(火) 02:13:28.51 ID:ScI/3K/C0
…ロンドン・アルビオン共和国大使館の一室…

L「…あれから進展は?」

7「いえ。エージェント「A」および「D」の報告によると、まだ具体的なものは出ていない…とのことです」

L「それでは困る。こちらとしてもこう次々とエージェントを消されては活動に支障が出る……最近は革命騒ぎの直後と違って、新しい情報部員を「植え込む」(潜りこませる)のも楽ではないのだからな」

7「……それは「プリンシパル」としても承知しているかと…」

L「分かっている…しかし結果が伴っていないのも事実だ」

7「はい」

L「何か手を打たねばならんな……他には?」

7「はい。エージェント「S9」からの報告によりますと、フランスは再度ケイバーライトの情報入手を試みるべく情報部員を送り込む予定…とのことです」

L「そうだろうな。あちらとしても抱えていたエージェントを消された以上、あとには引けまい……」

7「ええ」

L「…そうなれば、餌を撒けば食いつくかもしれん……相変わらず「S9」は向こうと接触があるのだな?」

7「はい」

L「そうか、よし…少々リスクは伴うが、「S9」を使ってフランス側に偽情報を流せ」

7「しかし、L…」

L「分かっている。こちらとしても「S9」は大事に取っておきたい…が、ことわざにも「卵を割らなければオムレツは作れない」とある」

7「ええ…」

L「……それに、連中が「ケイバーライト」の情報を喉から手が出るほど欲しがっていることは分かっている…もし有力な報告を受けたら、一も二もなく飛びつくはずだ……そしてこちらが目を開けているところで王国防諜部が動けば、何かしらの手掛かりはつかめる」

7「確かにそうでしょうが……」

L「さらに、だ…近頃はフランス情報部の動きも活発になってきているが、そうした状況は好ましくない……しばらく静かになってくれるのならば、それはそれで好都合だ」

7「…分かりました、手はずを整えます」

L「うむ」

………

…数日後…

アンジェ「どうだったの?」

ドロシー「待ってろ、今話してやるから……ふぅ」ティーポットから紅茶を注ぐと、一口飲んだ…

ドロシー「……さてと、何から話すかな…とりあえずそこまでこっぴどくやられはしなかったさ」

アンジェ「それは良かったわね」

ドロシー「まぁな、それはいいんだが…コントロールの連中、なにかタイトロープ(綱渡り)をやらかすつもりでいるらしい……」

アンジェ「…何かあったの?」

ドロシー「ああ…当然ながら細かいところは教えちゃくれなかったが、どうやらよその情報部をだしに使って例の「怪力お化け」を引きずり出すつもりらしい」

アンジェ「なるほど……当てはまる国はいくつもあるけれど、一番可能性があるのはフランスね」

ドロシー「だろうな…なにしろ列強の中でも「カエル」の連中はこっちとの軍事バランスを保つためにも、ケイバーライトと空中戦艦の情報がどうしても必要だし、おまけにエージェントもやられてるからな……」(※カエル…フランス人の蔑称)

アンジェ「そういうことね」

ドロシー「ま、こっちとしては同じ「共和国」とはいえ、お向かいの連中とは植民地だの覇権だのをとりっくらするような仲だ……友好関係どころか共同歩調だって取ったことさえないんだから、連中が「火中の栗を拾いたい」って言うなら、せいぜい薪をくべて火を大きくしてやるさ」

アンジェ「そうね」

ドロシー「おうよ…それよりいよいよ「怪力お化け」の野郎とお目見えだぜ?」

アンジェ「ええ」

ドロシー「…サイ撃ち用のライフルか野牛撃ち用のシャープス・ライフルでも持って行くか?」(※シャープス・バッファロー・ライフル…アメリカ西部開拓時代、バッファロー狩りに使われた大口径ライフル。威力はあったが精度は悪く、数発撃つと銃身が焼けてゆがむので、濡れた布をまかないとならないなど欠点が多かった)

アンジェ「いらないわ……そんなのを撃ったら肩の骨を外すのがオチよ」

ドロシー「ばか言え、シャープスは据え置きで使うライフルだぞ」

アンジェ「だとしても結構…怪力だろうが何だろうが.380口径があれば充分始末できるわ」

ドロシー「ははっ、玄人(プロ)の言うことは違うね♪」にやりと笑うとウィンクを投げた…
392 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/11/01(金) 00:24:05.35 ID:KkJEtLI60
…なかなか進んでいませんが、また明日あたりに投下したいと思っています……と、そう言えばちょうどハロウィーンの時期ですし、どこかでアイルランド系のネタを入れようと思います……ご期待ください
393 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/11/02(土) 03:22:45.24 ID:Jo8ogCgX0
…さらに数日後…

ドロシー「……ちっ、参ったな」

アンジェ「どうしたの?」

ドロシー「実はな…例の「餌」にフランスの連中が食いついた」

アンジェ「それに何か問題が?」

ドロシー「ああ、そこまでは良かったんだが……ここに来てちせが使えなくなった」

アンジェ「それはまた…何かあったのね?」

ドロシー「まぁな…今回の件と言い、ここ最近は王国内できな臭い事件が多かったろ? そんなわけで日本の使節団は堀河公の警護を固めることにしたらしい……だもんで、ちせは数週間ばかり堀河公のそばを離れることができなくなった」

アンジェ「仕方ないわね…もとより彼女はこちらの入手した「産物」を間接的に入手するために送り込まれてきたわけだし、私たちに協力するのは本来の目的ではないのだから」

ドロシー「そうだな……もっとも、ちせ本人はずいぶんこちらに好意的だがね…」

アンジェ「ええ…しかしいくら彼女自身がこちらに肩入れしていても、勝手なことは出来ないもの」

ドロシー「そういうこと。それにこっちも「腕が立つ」からって、うちのエージェントでもないのにちせのことをあてにし過ぎていた……ってのも確かだ」

アンジェ「そうね…」

ドロシー「まぁ、そいつは大いに反省すべきなんだろうが…今ここで動かせる駒が足りない……ってのはどうしようもない事実だしな…」

アンジェ「……コントロールに連絡を取って、情報部員の誰かを回してもらえないかしら」

ドロシー「やってみてもいいが望み薄だな……そもそも「出来る」エージェントはみんな何かしらの任務を持っているし、王国の連中に「芋づる式」でやられないためにも、出来るだけ接点は作りたくないはずだ。それにコントロールとしては私とお前さんがいるんだから必要以上だ…って言うだろうよ」

アンジェ「…その通りね」

ドロシー「それに…だ、そもそも低級の連絡員クラスじゃ役に立たないし、ある程度のエージェントを回してくれたとしても、スタイルや呼吸が飲みこめていないようだとかえって足手まといになる……」

アンジェ「そうね…でも、そうなるとベアトリスを使うことになるわ」

ドロシー「仕方ないだろう……プリンセスは公務があるし、そもそもそんな任務に使えるわけがない」

アンジェ「当然ね」

ドロシー「ああ。その点ベアトリスなら地味で目立たない……それと機械にはめっぽう強いし、例の「七変化の声」もある。まだ未熟だが訓練も積んでいるし、何より結構ツキがある…幸運って言うのは情報部員にとっては最高の贈り物だからな♪」

アンジェ「確かにね」

ドロシー「……とにかく、ベアトリスなら動きも見当がつくし、見ず知らずの誰かと組むよりはずっといい…まぁ連絡くらいならどうにかこなせるはずだ」

アンジェ「分かったわ」

ドロシー「幸いベアトリスも休みをもらってるからな…ここしばらくは身体が空いているはずだ」

………



ドロシー「……というわけでベアトリス、お前さんには私たち二人の支援役をしてもらいたい」

ベアトリス「わ、私が……ですか?」

ドロシー「ああ、そうだ…なに、必要以上に難しく考えることはないさ」

アンジェ「だからと言って安易な気持ちで臨まれても困る……私とドロシー…ひいてはプリンセスの命もかかっているのだから、きっちりこなしてちょうだい」

ベアトリス「は、はい…っ!」

ドロシー「…何しろ相手は怪力の「ハーキュリーズ野郎」だからな……私たちの首がへし折られないように、しっかり見張ってくれよ♪」

ベアトリス「うぅ、責任重大ですね…」

ドロシー「ふぅ、こいつは言っても仕方ないんだが…そう気負うな。不真面目になられるのも困るが、がちがちに緊張していても実力が出せないからな」

ベアトリス「ええ、分かってはいるんですが……どうしたらお二人のように落ち着いていられるでしょうか?」

ドロシー「あー…私はその辺を割り切って考えているから、参考にならないな……アンジェは?」

アンジェ「そうね…私だったら当日までみっちり訓練のおさらいをして「自分は万全の準備を整えた」と思い込ませるわ」

ドロシー「……なるほど、そいつはいいかもな」

アンジェ「賛同していただけて何より……なら今から数時間ばかり、格闘訓練の手合わせをお願いできるかしら?」

ドロシー「うへぇ……」アンジェの本気とも冗談とも取れる言い草に苦笑いをするドロシー…

394 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/11/06(水) 02:22:23.97 ID:NIiDcf4B0
…数日後の夜・精錬工場近くの労働者街…

ドロシー「さて、ベアトリス……お前さんはそのバスケットを持って、誰かに届けるようなふりをしながら歩いてくれりゃあいい。何か見つけても気にするようなそぶりは見せるな…あくまでもいつも通りに振る舞え」

ベアトリス「はい」

ドロシー「私とアンジェはそれぞれ通りの端っこで監視をしているから、お前さんが見えたら場所を変える……何か不測の事態があったら臨機応変で対応してくれ」

ベアトリス「わ、分かりました…」

ドロシー「よし、いい娘だ……それじゃあ始めようか♪」


…適当なパブに入ると程よく奥まった席に入り、ぬるいエールを片手に暇そうにしているドロシー……アルビオン中から様々な種類の出稼ぎ労働者がやって来るロンドンの労働者街はきつい労働で身体を壊したり、ケイバーライト鉱毒で病院送りになったりするせいで人の入れ替わりが激しく「見慣れない顔」だと見とがめられたり視線を集めることもなく、うだつの上がらないタイピスト風の格好をしているドロシーもすんなりと溶け込めている…


ドロシー「…」(それらしい奴はいない……やっぱり必要な時だけ送り込んでくるのか…)

常連「よう、オヤジ! ビールと飯だ!」

パブのオヤジ「…あいよ、今日はもう上がりか?」

常連「ああ……ったくよ、この数日はめっきり冷えるぜ」

オヤジ「そうだな。ほらよ」

常連「おっ、ありがてえ……んぐっ、ぐっ……」

ドロシー「…」

常連「ぷはぁっ…たまらねえなぁ!」

オヤジ「もう一杯やるか?」

常連「おう、頼むぜ!」

常連B「お、マーティじゃねぇか…今日は早ぇな?」

常連「おうよ、一杯つきあわねぇか?」

常連B「そいつはいいな。オヤジ、おれにもビール!」

オヤジ「はいよ!」

ドロシー「…」ベアトリスが通りかかってから少しタイミングをずらして小銭を卓上に置くと、すっと店を出た…



…街の反対側・安食堂…

食堂のお姉さん「はい、お待ちどう」

アンジェ「…ええ」


…労働者街に一軒は必ずあるような安食堂に入り、あちこちにヒビの入った皿を前にしているアンジェ……大皿には焼き過ぎで汁気もなさそうな筋張ったマトンステーキに、剥き損ねた皮が混じっているマッシュドポテト…それに育成所時代を思い起こさせるような肉汁の染みこんだヨークシャープディングがごちゃごちゃと盛りつけられている…


アンジェ「…」目はさりげなく窓の外を監視し、同時に店内のおしゃべりに耳をそばだてながら黙々と食べる……テーブルナイフはティースプーン並みの切れ味しかないなまくらだったが、技量を駆使して肉を切り、ぼそぼそしたヨークシャープディングと一緒に口に運ぶ…

客「……それでよ、やっこさんに言ってやったんだ…」

客B「…うちのやつと来たら金を無駄遣いすることしか考えちゃいねぇ…まったく「女房の不出来は十年の不作」たぁよく言ったもんだ……」

客C「……そういや、この間の事故でくたばったアイリッシュ野郎だがよ…」

客D「ああ、あの幅の広い…やっこさんがどうかしたのか」

客C「……いや、何かおかしいと思わねぇか?」

アンジェ「…」もそもそしたマッシュドポテトをゆっくり食べながら、他の会話から二人の声をより分ける……

客D「どうしてさ…あいつはどっかから落っこちて首を折っちまったんだろう? …ツイてねえことは確かだが、おかしいってことはねえだろう…」

客C「…いや、それがよ……あの日はやっこさん、もう上がってたんだぜ……おれも戻りが一緒だったから知ってるんだ」

客D「…じゃあ何か忘れ物でも取りに行ったんじゃねえのか?」

客C「そうかもしれねえ…でもおかしいんだよな……」

395 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/11/19(火) 23:08:51.12 ID:PFIh8J0J0
…ここしばらくお待たせしていてすみません。使っていたPCがダメになってしまったもので……まだデータの引っ越しやらバックアップやらで調整中ですが、数日以内に投下できるように頑張ります
396 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/11/24(日) 00:48:42.73 ID:9xYPmtsv0
…さらに数日後…

ドロシー「よし、それじゃあ説明を始めようか…」

アンジェ「ええ」

ベアトリス「はい」

ドロシー「前にも言ったが、こっちが撒いた餌にカエル(フランス)が食いついた…で、そのカエル連中の送り込んだ情報部員は明日ないしは明後日の晩に、ケイバーライト鉱の精錬施設へ潜り込むことが予想される」

ベアトリス「…あの、一ついいですか?」

ドロシー「何だ?」

ベアトリス「明日か明後日って、どうしてそんなにはっきりと分かるんです?」

ドロシー「そいつは簡単さ…ケイバーライト鉱石はその「能力」を発揮させたり精錬したりする時にかなりの熱を帯びるし、毒性も強い」

ベアトリス「…はい」

ドロシー「そのせいで、ケイバーライト鉱の精錬に使う高炉や施設は過熱や腐食を防ぐために時々止めて冷ましてやらないといけない…本来、金属を扱う高炉は冷ますと割れやひずみが生じるから、止めることは滅多にしないんだが……こいつばかりは例外ってわけだな」

ベアトリス「なるほど」

ドロシー「当然、この間は精錬施設が休みになる…もちろん、止まっている間は保守点検や修繕が行われるが、高炉が稼働している時のように二十四時間の三交代制で労働者が出入りするわけじゃない。特に夜はがら空きだ」

アンジェ「…要は、人目を引かずに潜り込むには絶好の機会…ということよ」

ドロシー「そういうこと……つまり、連中がこの機会を逃す訳がないってことさ」

アンジェ「…しかし、王国側もそれを十分に承知している」

ドロシー「となれば、例の「シルク・モス」とやらがお出ましになる可能性も高い…ってわけだ」

ベアトリス「なるほど…」

ドロシー「とにかく、こっちとしてはフランスの連中が罠に引っかかったところで出て来るはずの「怪力お化け」を始末するか…少なくともどんな奴なのかを見極めるのが目的だ…もちろん、王国が動かしている精錬施設の見取り図や詳しい仕組みの分かる資料も手に入れば言うことなし、ってところだがね」

ベアトリス「分かりました」

ドロシー「そこでだ……ベアトリス、お前さんは技術に強いから、もしも機会があったら高炉の周囲に潜り込んで、できる限り施設の設計や作りを目に焼き付けてくれ。もちろん、王国の連中に尻尾をつかまれるような真似をしない範囲で…だがな」

ベアトリス「はい!」

ドロシー「で、私とアンジェはその間に「怪力お化け」を片付ける…と。まさに一石二鳥ってわけだ♪」

…翌日の晩…

ドロシー「さ、準備にかかろう……一晩中監視する羽目になるかもしれないから、厚手のマントにしろよ?」

ベアトリス「はい」

ドロシー「…アンジェ、長物はどうする?」編み上げの革長靴、黒地に紫の模様が入ったベストにすっきりしたズボンスタイルでマントを羽織り、襟元にマフラーをたくしこんでハンチング帽をかぶる…

アンジェ「私はいらない…貴女は?」黒と紺の短いフリルスカートと、肌に吸い付くような黒絹のストッキング……いつものウェブリー・フォスベリー・リボルバーをホルスターに吊るし、鋭い両刃のナイフと秘密兵器の「Cボール」を腰に下げた…

ドロシー「そりゃ持って行きたいのは山々だが、取り回しが悪いからな…まぁ.455のウェブリーなら十分だろう。 ベアトリス、お前さんは何を持って行くつもりだ?」4インチ銃身のウェブリー・スコットに弾を込め、鞘に収めたナイフを脇に吊るす…

ベアトリス「そうですね、私はまだあんまり射撃が得意じゃないので……何がいいと思いますか?」

ドロシー「そうだな…本来そいつは自分で決めるのが一番なんだが…」

アンジェ「まぁ、ある程度小型で反動が抑えやすい銃がいいでしょうね」

ドロシー「…となりゃ.380口径の3インチ銃身か、もっと短い「ブルドッグ」タイプかな。 銃身が短いから命中精度には期待できないが、至近距離で相手のどてっ腹にぶち込むなら関係ないし、隠して持つにはうってつけだ…ここにウェブリーとトランターのがそれぞれ二丁づつあるから、好きな方を持って行け」

ベアトリス「分かりました、それじゃあこっちにします」

ドロシー「ああ…弾は選別したのがそこの紙箱に入ってるから、そいつを込めればいい」

ベアトリス「はい」銃を身につけると厚いウールのマントを羽織り、襟元もきっちり留めた…

………

397 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/12/01(日) 03:27:04.08 ID:/fjsF3Yj0
ドロシー「あぁ、それから…ベアトリス、私とアンジェがこまごましたものの支度をしている間に、サンドウィッチでも作っておいてくれよ……監視任務はたいてい長丁場になるし、うかつに離れる事もできないからな」

ベアトリス「分かりました。挟むものは何にします?」

ドロシー「そうだな、ハムときゅうりのピクルスとか……お前は?」

アンジェ「…私は何でもいいけれど、玉ねぎは入れないようにしてちょうだい」

ベアトリス「あれ、アンジェさんって玉ねぎはお嫌いでしたっけ?」

アンジェ「いいえ。ただ、あれは食べると匂いが残る」

ドロシー「アンジェは一度王国の情報部員に忍び寄られたことがあったんだが…その間抜けが食った玉ねぎの匂いに気づいて返り討ちにしたことがあるのさ」

ベアトリス「なるほど…それじゃあ匂いの強いものは入れないようにしますね?」

ドロシー「ああ、そうしてくれ」



ドロシー「さてさて…準備も整ったようだし、出かけるとしようか」

ベアトリス「はい」

ドロシー「今日は私が先行するから、ベアトリスは十五分ばかりしたらここを出ろ……アンジェ、お前は適当に時間を見計らって自分の判断でやってくれりゃあいい」

アンジェ「ええ、そうするわ」

ドロシー「それぞれの監視地点は前に下見を済ませた場所だ…似たような建物が多いから間違うなよ?」

ベアトリス「はい、分かっています」

ドロシー「結構…それと説明の時にも言ったが、明けの五時を過ぎても動きがなかったら撤収すること。こんなカラスみたいな格好で日の出を迎えたりしようもんなら、鴨撃ちの獲物になるのと変わらないからな」

ベアトリス「ですね」

ドロシー「ちょうど朝方なら仕事場に向かう労働者や屋台の軽食売りなんかがいてほどよく混み合う…うまく紛れこんで引き上げろ」

ベアトリス「はい」

アンジェ「…そろそろ時間よ」

ドロシー「よし…それじゃあ現地で」

………

…一時間後・ケイバーライト精錬施設のそば…

ドロシー「…うー、寒い……」


…下宿や労働者たちの家がごちゃごちゃと立ち並ぶ雑然とした一帯の、精錬施設の入り口が見える屋根の上に腹這いになっているドロシー…三角屋根の傾斜を利用して、ちょうど稜線から顔だけ出すような形で監視を続けている……少し離れた煙突の陰にはアンジェが陣取り、ベアトリスは二人の間を中継出来るような位置についているが、いずれにせよ古い屋根瓦が落ちたりずれたりして音を立てることがないように、じっとしてほとんど身動きをしない……厚手のマントにくるまってはいるが、下から冷気がしみこんでくる…


ドロシー「……それにしても妙に静かだな…」声にならない程度につぶやく…


…少し離れた屋根の上…

アンジェ「…」(…静かすぎるわね…気に入らない……)


…崩れかけた煙突の脇に身体を潜り込ませ、ほとんど建物と同化しているアンジェ……目の前に広がっている精錬施設は夜間とはいえ人の出入りもなく、時折中堅レベルのエージェントが巡回するにとどまっている……一見すれば十分な警戒にみえなくもないが、アンジェやドロシーのような腕利き情報部員の目からすると、王国の基盤を支えるケイバーライトの施設にしては警備が甘すぎるのが気にかかる…


アンジェ「…」(やはり罠ね。餌はケイバーライトの精錬方法で、獲物に食いつく「顎」は例の「シルク・モス」とやら……となると、その姿を確かめる機会も得られる…ということね)

アンジェ「…」身を潜めたまま、鋭い目つきで監視を続けた…


………

398 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/12/06(金) 02:57:42.22 ID:Rxj1SE4/0
…しばらくして…

ドロシー「…また見張りが回ってきたな……一周だいたい五分って所か…」

…長いコートを羽織り、鳥打ち帽をかぶった王国のエージェントが精錬施設の入り口に来ると辺りを確認し、またゆっくりと戻り始めた……運用が面倒なためか、はたまた下級のエージェントでは支給してもらえないのか、手には「ケイバーライト・ランタン」ではなく普通のランタンを提げている…

ドロシー「さて、奴が戻ってくるまでしばらくかかるし…その間に腹ごしらえでもしておくかな……」

…ガサゴソと音がする紙包みは使わずに、薄手の布でくるんであるサンドウィッチを取り出したドロシー……アルビオン式の山形食パンの間にはじっくり燻製された厚切りハムときゅうりのピクルスが挟まっていて、気を利かせたベアトリスが「パンが湿気らないように」と、バターとマスタードを丁寧に耳まで塗ってあった…

ドロシー「…そうそう、こういうのでいいんだよ……銃の腕はさておき、こういう細かい所の気づかいは一流だな…♪」…強大な帝国の中心地である「眠らない街」ロンドンの街明かりで薄ぼんやりと照らされた精錬施設を監視しつつ、静かにパンにかぶりつく……

ドロシー「……おっ…?」


…屋根の上で静かにサンドウィッチをぱくついていると、作業小屋や手押しのトロッコ、精錬くずの小山や廃棄部品でごちゃごちゃしている施設の外周に何かが動いた……ドロシーがサンドウィッチの最後のかけらを口の中に押し込みつつ目をこらすと、バラックの陰に潜んでいる男が見えた…男は黒色らしいベレー帽に労働者風の短い上着とズボン姿で、手には細身のナイフを握っている…


ドロシー「…」(カエルの所のエージェントだな……なかなか出来そうだが…どう動くつもりなのか、しばらく観察させてもらおうか……)

アンジェ「…」(…あのフランス人…ナイフの腕は立ちそうだけれど、自信過剰なのか脇が甘い…)

ドロシー「…」

アンジェ「…」

…二人が屋根上から見ている間にも、物陰のフランス情報部員が見回りの王国エージェントに黒豹のように忍びよる……そのままシルエットが重なったかと思うと、王国エージェントの持っているランタンが一瞬激しく揺れ動き、しばらくすると静かに吹き消された……フランスのエージェントは音を立てないように注意しつつ物陰に見張りの身体を引きずり込むと、潜んでいるらしい仲間に小さく手招きしてさっと入り口をくぐり、隠れ場所から出てきたもう一人もするりと施設内に入っていった…


ドロシー「…よし、これでそろっていない役者は「シルク・モス」だけだな……」

アンジェ「ええ、そうね」音も立てず、すでにドロシーの側に来ているアンジェ…

ドロシー「…アンジェ。今のフランスの奴だが…どう思う?」

アンジェ「ナイフの使い方はなかなかだったけれど、警戒を怠っているところがあったわ……隙がある」

ドロシー「…お前もそう思ったか?」

アンジェ「ええ」

ドロシー「そうか……とりあえず中の様子が確認できない以上、果たして「怪力お化け」がいるかどうかも分からん」

アンジェ「そういうことになるわね…」

ドロシー「となると、こちとらも連中に続いて忍び込む羽目になるが……気に入らないな」

アンジェ「それも仕方ないでしょう…警戒を怠らずに動くしかないわ」

ドロシー「…ああ、分かった……アンジェ、私が援護するからお前は先行しろ」

アンジェ「ええ」

ドロシー「頼むぞ……ベアトリス」

ベアトリス「はい」

ドロシー「…もしも「怪力お化け」が出てきたらこっちで始末するから、その間にお前さんは高炉の周囲を探って新技術や新式の機械が使われていないか調べてくれ。 ハチの巣ををつついたのに蜂蜜なし…って言うんじゃ片手落ちだからな……ただし、十分に気をつけろよ?」

ベアトリス「分かりました、任せて下さい…!」

ドロシー「…ああ、任せたぜ……さ、それじゃあひとつ「フランケンシュタインの怪物」のご面相を拝見しに行くとしようか…♪」
399 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/12/12(木) 02:09:23.78 ID:UAMneYsR0
…精錬施設・内部…

アンジェ「…」

ドロシー「…」

ベアトリス「…」先頭に立つアンジェが出す手信号に従い足音一つさせず歩くドロシーと、ぎこちない動きのベアトリス…


…精錬施設の内部は真鍮でできた奇妙な形の機械や太さも様々な導管が入り組んでいて、その間に通路や階段が迷路のように走っている……これが昼間なら、明かり取りの窓から入る陽光に照らされて真鍮の部品が輝き、精錬作業の喧噪やもくもくと立ちのぼる蒸気など、技術の粋を尽くした「ケイバーライト革命」の生み出した力にある種の誇らしさや力強さを覚えたかもしれなかった…が、人っ子一人いない精錬施設の内部は暗く静まりかえっていて、闇の奥に沈んだ機械の類は、廃墟の幽霊屋敷のようなおどろおどろしさを感じさせる……もっとも、幼い頃に大人たちからむごい仕打ちを受けたアンジェやドロシーにしてみれば、直接危害を加えてくる生身の人間と違って、触ることもできない幽霊だの悪霊だのなどは恐ろしくもなんともない…


アンジェ「…」大きく顔をさらすこともなくちらりと角の向こうをのぞき、足音を忍ばせて慎重に歩を進める……

ドロシー「…」

ベアトリス「…」

アンジェ「…」とある角で先をそっとのぞくと、片手を上げて「待て」と合図を送った……数歩遅れて付いていたドロシーとベアトリスは急に立ち止まってつまづかないよう数歩進んで慎重に止まった…それからドロシーはもう一歩アンジェに近寄った…

アンジェ「…」

ドロシー「……いたか?」

アンジェ「ええ…あのパイプの後ろ、二本が重なっている辺り……」


…アンジェの言う辺りに目をこらすと、暗がりに吸い込まれるようにして遠ざかっていくフランス情報部員の姿が見えた…二人ともあちこちに視線を走らせ、しきりに警戒している様子がうかがえる…


ドロシー「…さすがだな……よし、それじゃあ後はあいつらを見失わないようにすれば…」

アンジェ「……待って」

ドロシー「どうした…?」

アンジェ「…左奥。蒸留器みたいな機械の後ろ」


…ドロシーがアンジェのささやいた場所に視線を向けると、十五ヤードばかり向こうにそびえる大きな蒸留器に似た機械の後ろに、ぼんやりと大柄な影が潜んでいるのが見えた……そのままじっと見つめていると目が闇に慣れてきて、暗い影は次第にがっちりした男のシルエットへと変わっていった……見たところ背はそう高くないが、ヘビー級ボクサーのように太い腕をしているのがうっすらと見て取れる…


ドロシー「…なるほど、あいつが例の「ハーキュリーズ野郎」ってわけか……」

アンジェ「おそらくは…」

ドロシー「……っ、奴が動くぞ」


…がっちりした男はフランスのエージェントが通り過ぎるのをじっと待ち、それからそっと後を追い始めた……がっちりした太い腕と首に短い脚…と、熊のような見かけによらず、滑るように相手を尾行ていく…


アンジェ「…どうする、ドロシー?」

ドロシー「このまま奴を尾けよう……カエルの連中と共倒れになってくれればめっけものだし、もしどっちかが生き残ったらけりをつけてやるだけの事だ」

アンジェ「分かった」

ドロシー「……ベアトリス、あと少しの辛抱だから付いてきてくれ…これがすんだら調べ物に励んでもらうからな」

ベアトリス「はい…」ドロシーでも聞き取れないような小さな声で返事をし、こくりとうなづいた…

………

400 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/12/20(金) 03:34:35.61 ID:1lV+N8230
…同じ頃・アルビオン共和国大使館…

L「…ふむ、今回「J4」が入手したプロダクトは質がいい……毎回一級の情報を取ってこいとは言わんが、この位の情報でなくては送り込む意味がないというものだ……」

…パイプをくわえて紫煙をくゆらせながら、各エージェントから送られてきたレポートを確認している「L」……と、そこへノックの音がして「7」が入ってきた……一見すると普段通りの表情で平静を保っているように見えるが(スパイマスターとして多くの情報部員たちを操ってきたおかげで)表情を読むのが上手なLからすると、ひどく焦っているように感じられた…

7「失礼します…L、至急お知らせしたい事が」手にはタイプしたばかりのレポートを持っている…

L「なんだ、慌てふためいてどうしたのだ?」

7「それが、エージェント「K4」がこれを送ってきました…」

L「そうか……なに、確かか?」さっと目を通すと、眉をひそめた…

7「…どうやら間違いないようです…さきほど届いたばかりで、私もいま解読したところです…」

………

…数時間前・ロンドン市内の公文書館…

館員「ミスタ・ハーベイ…あと三十分ほどで閉館の時間ですよ?」

眼鏡の中年男性(共和国エージェント)「ああ、すまない……でも、もうちょっとなんだ」


…真面目そうな眼鏡の男は、遺産や信託された財産を扱う会計士をカバーにしている共和国エージェントで、他の業務にかこつけて公文書館に出入りしては「コントロール」から指示される戸籍や転籍届、出生証明書、死亡証明書などを調べていた…そして(いかにもアルビオンのお役所らしいが)公文書館の職員は真面目できちんとした言葉遣いの男をすっかり信用しきっていた…


館員「いやはや、会計士というのも大変ですね」

エージェント「まぁそうかもしれないが…どうしてだね?」

館員「だって、ここ数日は毎日のようにこちらに来ていますから…ところで、どんな書類をお探しなんです?」

エージェント「ああ……それがね、数年前にウェストミンスター教区にある貧民街に住んでいた人で、その人に遺産を残した親戚がうちの事務所と信託の契約をしていたんだが……ああいう所に住んでいる人は戸籍もなかったりするし、革命騒ぎで焼けてしまった書類も多いからね…」コントロールがお膳立てした偽装(カバー)として、実際にウェストミンスター教区のとある人物へ遺産を信託されているのでさらりと答えた…が、本当は「シルク・モス」の正体を調べにきていたエージェント…


…情報活動ではありがちなことだが、正体不明の「シルク・モス」につながりそうな手がかりも、始めはなんと言うこともない一枚の書類から始まっていた…一週間ほど前、とあるエージェントが内務省の機密ですらないファイルに収まっていた古い書類に「シルク・モス」のコードネームと、アルファベット数文字で組み合わされた管理官のコードを見つけ報告した……そこでコントロールが王国防諜部の管理官リストをあたるとウェストミンスター教区の担当だったことが分かり、何か引っかからないかと古い戸籍をあたってみる事にした…という次第だった…


館員「ウェストミンスター教区ですか……あ、だったら…少し待っていてもらえますか?」奥に引っ込むと棚を調べはじめ、しばらくするとほこりをかぶった分厚い戸籍台帳を持ち出した…

エージェント「これは?」

館員「置ききれないので普段はしまってある古い戸籍台帳です。これなら何か載っているかもしれませんよ?」

エージェント「それはそれは…とても助かるよ」

館員「どういたしまして。必要なら明日以降も出しておきますよ?」

エージェント「そうだね、そうしておいてもらえると都合がいい」…そう言いながらほこりっぽい変色した紙をめくる……

館員「また何か必要ならおっしゃってください」

エージェント「ありがとう……」細かい文字を指でなぞりつつ確認していく…と、一つのおかしな記録に行き当たった……

エージェント「…きっとこれだ…でも、だとすると……」一瞬けげんな顔をしたが素早く暗記し、怪しまれないようしばらくねばってから公文書館を出た…

………


L「むむ…もしこの情報が事実だとしたら「A」や「D」と言えども不意を突かれるかもしれん……くそっ、なぜこのレポートが今さらになって届いたのだ」

7「それが、連絡役が市場の混雑に巻き込まれて遅れてしまったとかで…」

L「…間抜けめ、何という不手際だ。この時期はクリスマス前の買い出しで市場が混雑する事くらい認識しているはずだろうが……通常の連絡手段では間に合わん、「プリンシパル」にアタッシェ(伝達吏)を……いや、それでも間に合わんな」

7「はい。恐らく「A」および「D」はすでに現地で監視体勢に入っているものかと…また「至急」の暗号電を打てば王国防諜部の注意を引き、逆探知を受ける危険もありますし…この時間では伝書鳩も飛ばせません」

L「…とはいえ何もしないのでは「プリンシパル」を切り捨てたように見える…今からでもかまわん、コンタクト(連絡役)を使ってこの情報を「プリンシパル」のネストに送り届けろ」

7「承知しました」

………

401 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/12/22(日) 02:47:54.88 ID:JW4qaeT60
…精錬施設…

ドロシー「…くそ、連中はどこまで奥に進む気なんだ? …アンジェ、右側を頼む」

アンジェ「ええ…」

ドロシー「……ベアトリス、お前は数歩空けて付いてこい…」

ベアトリス「…はい」


…フランスの情報部員と、それを追っている王国防諜部エージェントの両方を監視・追跡しているドロシーたち……しばらく精錬施設の中を進むうち、背の高い機械を収めるために三階分の天井がぶち抜きになっている区画へと入り込んだ……天窓からは雲に照り返しているロンドン市街の街灯りが差し込んでいるが、それも数ヤード先になるとぼんやりと霞んではっきりとはしなくなる…


アンジェ「…」

ドロシー「…」お互いに少しの目線やちょっとした仕草で意思を伝える二人…

アンジェ「…」

ドロシー「…」(…それにしてもフランスの連中め、こんなに奥まで入り込みやがって…これじゃあ魚釣りの餌にがっぷり食いついちまったようなもんだぞ……)

ベアトリス「…」


…また三十ヤードほど進んだ時、フランス人の片方が何かを見つけてつぶやいた…細身の相方がコクリとうなずいて「分かった」と言うように片手を小さく上げると、片割れは早速機械のかたわらにしゃがみ込んだ……動きのしなやかな男は得意な得物らしい細いナイフを抜き、ごちゃごちゃした施設のあちこちに視線を走らせる……見つからないよう、機械の間に身を潜めるドロシーたち…


アンジェ「…」

ドロシー「…」


…それぞれ壁際を縦横に走っている導管の影の中にシルエットを重ねるドロシーと、横に寝せた円筒状の機械に溶け込んでいるアンジェ、そこから数歩後ろの機械の間にしゃがんでいるベアトリス……ほとんど「隠れんぼ」状態になっているベアトリスはさておき、ドロシーとアンジェの取った位置は絶妙で、立ちのぼる夜霧のせいでぼんやりと霞んでいるとはいえ、室内全体の様子がかなりよく分かる……と、王国防諜部エージェントのずんぐりした影がそれまでの隠れ場所を抜け出し、そっと動き始めた…


アンジェ「…」(いよいよ仕掛ける気ね…)

ドロシー「…」(…あの「怪力お化け」の野郎、確かにでかい割には動きがいい…とはいえ、列強の腕利きエージェントを何人も片付けられるほどには見えないが……何か「奥の手」を持っていやがるのか、あるいはたまたまツいていた…ってだけか?)

アンジェ「…」(……これまでの情報が間違っているのでなければ、あの男の十八番は素手での格闘…となれば、動きを見ることさえできれば、ある程度までは出方を予測できるはず)

ドロシー「…」(いずれにせよ、ここは様子見だな…)


…動きはいいが脇が甘いフランスのエージェントからは死角になっているので気づいていないが、すでに「シルク・モス」とおぼしき男のがっちりしたシルエットは物陰を伝い、じりじりと距離を詰めている…


アンジェ「…」ウェブリー・フォスベリーを抜いて静かにスライドを引いた…

ドロシー「…」ドロシーも音がしないよう、マントでくるむようにして撃鉄を起こす…

アンジェ「…」

ドロシー「…っ!」


…王国のエージェントはフランス情報部員の後ろから数ヤードの距離まで忍び寄って機会をうかがっていたが、フランス情報部員の片方が何かを言って細身の男が機械に顔を近付けた瞬間、物陰から飛びかかった…黒いシルエットが重なり合ってもみ合いになると、うめき声がして細いシルエットが崩れ落ちた……王国エージェントはそのまま地面を蹴り、一気にもう一人へと襲いかかる……と、銃声が響いて交錯する二人の姿をパッと照らし、そのままもつれ合うようにして地面へと倒れ込んだ…


ドロシー「ふぅ……どうやら結果は「相打ち」ってところのようだな…」

アンジェ「…そのようね」

ドロシー「さて、それじゃあ私とお前さんはこっちのことを振り回してくれた「シルク・モス」とやらの面を拝みに行くとしようぜ…ベアトリス」

ベアトリス「はい」

ドロシー「これで「怪力お化け」は片付いたからな…心おきなく調べ物に取りかかってくれ」

ベアトリス「分かりました。それでは高炉の方に行ってみます」

ドロシー「おう、頼んだ」辺りに聞こえないようまだ小声ではあるが、ある程度は普通の調子に戻した…
402 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/12/25(水) 02:12:31.56 ID:35MNC/mS0
ドロシー「…やれやれ、フランス情報部のトップクラスって言ってもこんなものか……」

アンジェ「そうね…」

ドロシー「まぁいいさ……とにかく、連中が何か役に立つ情報でも持っていないか確認しよう」

アンジェ「ええ」


…用心深く左右を確認しながら、折り重なるようにして地面に倒れているフランス情報部エージェントと王国防諜部エージェントの死体に近寄る二人…


ドロシー「私はこいつを確認するから、そっちを頼む」

アンジェ「分かったわ」

………

…一方・高炉のそば…

ベアトリス「…うーん、この設備はどこかで見たことが……」

ベアトリス「……あ、前に飛行船で見た大型の冷却器に似ています……きっと新型ですね…」


…捕まった時の危険を考えると詳細なメモを取るわけにはいかないので、施設のおおよその配置や大きさをメモするだけにとどめ、コントロールが一番知りたがっている機械や設備の見た目やレイアウトは記憶していくベアトリス……アンジェやドロシーに記憶術を叩き込まれたおかげか、近頃は以前より細かなディティールまで覚えられるようになっていて、二人の評価も上がってきているのが内心では誇らしい…


ベアトリス「…蒸気加圧式のケイバーライト・ボイラー…圧力計のメーターは……上限が30気圧…これはこっちのとほとんど同じですね……」

ベアトリス「……そしてこれが高炉…」目の前にそびえ立つ、真鍮と銅で出来た巨大な「バベルの塔」を見上げ、思わず息をのんだ…

ベアトリス「…とてつもなく大きいですね……っと、見物している場合じゃありませんでした……」

………

ドロシー「……さてと、こいつの得物はなんだ…?」手から離れて地面に転がっているリボルバーを取り上げて手際よく確認した…

ドロシー「ふーん「サン・テティエンヌ・M1886」改良型……無煙火薬モデルのM1892か」手に取ってさっと構えてみる…

ドロシー「なるほど、悪くない……ウェブリーとはグリップの角度が違うから落ち着かないが、前後バランスはまぁまぁだな…」

アンジェ「…それ、フランスの「レベル(Lebel)リボルバー」ね?」

ドロシー「ああ…名前こそレベルとかサン・テティエンヌとか色々言われちゃいるが、要は同じ銃だからな」

アンジェ「口径は8ミリ?」

ドロシー「ご名答。フランスの8✕27ミリ弾だ……だいたい.340口径ってところだな」

アンジェ「無煙火薬?」

ドロシー「ああ、間違いない……フランスの軍用弾薬だな」そう言いながら落ちていた元の場所に戻した…

アンジェ「なるほど…それと、こっちのフランス人は調べたわ」

ドロシー「分かった、それじゃあ本命の「シルク・モス」を確認しよう」

アンジェ「ええ…」

ドロシー「……しかし、あっけないもんだよな」

アンジェ「というと?」

ドロシー「いや、ね……あれだけこっちのエージェントを片付けてきた奴がさ、こんな風にあっさりと………ちょっと待てよ」

アンジェ「……どうしたの?」

ドロシー「…おい、おかしいぞ……」急に声を落として、深刻な口調になったドロシー……

アンジェ「何が?」

ドロシー「…考えてみろ。このフランスの連中は胸に刺し傷がある…それにこの防諜部の男もナイフを握ってやがる」

アンジェ「……言われてみればレポートにあった「シルク・モス」のやり方じゃない…まさか」

ドロシー「ああ、その「まさか」だ……!」

アンジェ「…それじゃあ急いでベアトリスと合流しないと……」

ドロシー「ああ、まずい事になる……!」

アンジェ「……ドロシー、私につかまって」腰の「Cボール」に手をかけた…

403 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2019/12/28(土) 02:15:15.65 ID:yOyeWUo80
…精錬施設・高炉の前…

ベアトリス「……うーん、これは真鍮製ですか…」

ベアトリス「…こっちは黄銅……この部品は鉄ですね…なるほど」


…小さな身体でちょこまかと動き回り、高炉の部品を確かめているベアトリス……最初はあたりを警戒して、おっかなびっくりといった様子で周囲をうろついていたが、次第に大胆かつ丁寧に施設を観察し始めた……もとより機械の類に詳しく、しかも勉強熱心と言うこともあって、それぞれの機器がどう動くのかを過去に見たさまざまな機械と比較したり類推したりして、きちんと体系立てていく…


ベアトリス「あぁ、なるほど…これが高圧管から低圧管を中継して…そうでないと圧力で機械が壊れちゃいますものね…」

ベアトリス「…そしてこの低圧管からここのパイプを通して……うーん、さすがによく出来ています……ん?」

ベアトリス「……あれは…」


…視線をうつむけてごそごそと探り回っていたベアトリスだが、ふと目を上げると高炉の「足下」にあたる部分に小さな丸いふたのようなものが見えた…すぐに「とととっ…」と駆け寄ると小さなモノクル(片眼鏡)型の拡大鏡を取り出して目にあてがい、ふたの口から垂れて固まっている金属をじっと眺めた……銅や黄鉄鉱、そのほかよく分からないもろもろの金属が混じり合った金属くずの中に、時々きらりと青緑色の光が反射する…


ベアトリス「……やっぱり、これって熔解したケイバーライト鉱から分離した残滓を流すための弁ですね」

ベアトリス「…しかもケイバーライト鉱のかけらがくっついてます……これを持ち帰れば純度や精錬方法の特徴がつかめるかもしれません……」そうつぶやくと懐からナイフを取り出して、冷めたカラメルのようにがちがちになっている金属をこじりだした…

ベアトリス「…んっ、やっぱりそう簡単には剥がれてくれませんね……うんしょ…」小さなガラス瓶に剥がしたかけらを集めつつ、熱心にナイフを突き立てる……と、視線の隅にかすかな影が動いた……


ベアトリス「…」ナイフと小瓶を置くと目を細め、夜霧に霞む機械の間をすかし見た…

ベアトリス「…アンジェさん?」ごそごそとマントの下を探ると短銃身のウェブリー「ブルドッグ」ピストルを取り出し、それから小声で呼びかけた…

ベアトリス「……気のせいだったんでしょうか。とにかく、これ以上の長居は無用ですね……」急に心細く感じたベアトリスはいそいそと道具をしまい、それから銃をホルスターに収めかけた…

???「…」

ベアトリス「…っ!?」いきなり物陰から飛び出してきた相手に銃を弾き飛ばされ、喉を締めあげられながら高炉に押しつけられた……

ベアトリス「…ぐぅ…っ!」なんとか振りほどこうと脚をじたばたさせるが、がっちりと喉元を締め付ける腕はびくともしない……

ベアトリス「…うっ、く……!」(まさか、この人が本当の「シルク・モス」なんですか…っ!?)

シルク・モス「…」

ベアトリス「……んぐっ……うぅっ!」

…これまでも何人もの情報部員をそうしてきたように、ベアトリスの首もへし折ろうとする「シルク・モス」…しかし幸運なことにベアトリスの首元には金属で出来た喉と声帯が取り付けられている…おまけに「冷え込むから」とドロシーが勧めたので厚手のマントをきっちりまとっており、首元を締めあげる指と喉元の間に少しの余裕があった…

シルク・モス「…」

ベアトリス「……ぐぅっ、ごほ…っ!」ものすごい力に喉の人工声帯がめりめりときしみ始め、さすがに息が苦しくなってくる……叩きつけられた痛みと酸欠で揺らぐ視界の中には片手でベアトリスの喉を締め上げる「シルク・モス」の姿が写っている…

ベアトリス「……っ!?」


…今回の相手は素手でピストルの銃身をねじ曲げたり背骨をへし折るような人物と聞いて、見上げるような筋骨隆々の大男を想像していたベアトリスだった…が、目の前で自分の喉をへし折ろうとしている相手は小柄で、背の高さもベアトリス自身より少し大きい程度しかない…


ベアトリス「……うぐっ、うぅ…っ!」必死になって自分の喉を締め付ける指に手をかけようとするベアトリス…が、もう腕に力が入らない……

シルク・モス「…」とどめとばかりにベアトリスの身体を一段と強く高炉に押しつけ、さらに力を込める……

ドロシー「…」バンッ、バァ…ンッ!

アンジェ「…」ダンッ、ダァン…ッ!

…今にもベアトリスの細い首が折れそうになった瞬間、ふわりと地面に着地したドロシーとアンジェが同時に「シルク・モス」の背中へ銃弾を叩き込んだ…

シルク・モス「……かはっ!」銃弾の威力で吹っ飛び、地面に叩きつけられた…

ベアトリス「げほっ、ごほっ…!」

ドロシー「……おい、大丈夫か?」

ベアトリス「ええ、なんとか……」

ドロシー「そいつはよかった……に、してもだ……こいつは…」地面に横たわっている「シルク・モス」の黒マントをつま先でめくりあげた……と、その左腕は肩口から金属の義肢になっている…

アンジェ「…なるほど」

ドロシー「ああ、これが「怪力お化け」の正体だったわけだ……今までの連中は、こいつが小さい娘だからって油断した所をやられたんだろうな…」

アンジェ「ええ…」

ベアトリス「…」
404 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2019/12/31(火) 00:39:53.03 ID:vio1SP0Y0
…まずはこれで活動的な場面が完了したので、あとは「答え合わせ」や伏線の回収…それからアンジェ・ドロシーでベアトリスを責め立てる場面を書くことになります……三が日は時間があるので、こまめに投下できたらいいな…と思っております


…それでは少し早いですが、皆様よいお年を……
405 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2020/01/02(木) 01:01:05.11 ID:r7eAEn950
遅くなってしまいましたが、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます

…そして劇場版「プリンセス・プリンシパル」も待っていますので、頑張って書いていきたいと思います…
406 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2020/01/05(日) 03:06:51.71 ID:B2vWuoqr0
…数時間後・ネスト…

ドロシー「お、戻ったか…今日はご苦労だったな」

…保安措置の一つとして、人目を引かないようばらばらになってネストに戻る手はずを決めていたドロシーたち……二人よりかなり遅れて、うつむき加減で帰ってきたベアトリスをドロシーがねぎらった…

ベアトリス「はい…」

ドロシー「喉は平気か?」

ベアトリス「ええ、後で調整はするつもりですが…」

ドロシー「そうか……そういえば、さっきクーリエ(急使)がやって来てな」

ベアトリス「…クーリエですか、珍しいですね」

ドロシー「ああ…例の「シルク・モス」の正体を突き止めたって言うことで、警報を送ってきた」

ベアトリス「……でも届いた時間を考えると、送ってきた時点ですでに手遅れだったんじゃないでしょうか…?」

ドロシー「なーに…時間的に間に合わない急報をわざわざクーリエまで使って届けさせたのは、単にコントロールがこっちのことを「捨て駒として見ているわけじゃない」っていうメッセージさ」

アンジェ「そう考えるのが妥当ね」

ドロシー「そうさ。それと今から内容を確認するからな…座ってくれ」

ベアトリス「…はい」

………



ドロシー「ふむ、なるほどな……」

ドロシー「奴さんはニューキャッスル近郊にある炭鉱町の出身で、母親は産後の経過が悪かったらしく間もなく亡くなり、男手一つで育てられた…ところがその父親とも幼い頃に死別、それからというものは炭鉱で働かされる事になった…」

ドロシー「大の男だって音を上げるようなきつい暮らしだし、鉱山会社と来た日には子供相手でも容赦なく搾り取るような連中だ…楽じゃなかったろうな」

ドロシー「……そうして数年を過ごしていたらしいが、あるとき落盤事故に巻き込まれた…どうにか生命だけは取り留めたが、腕は切り落とさなくちゃならなかった」

ドロシー「…五体満足の連中でさえ野良犬みたいに扱う鉱山会社の連中が、まして片腕の子供の面倒なんか見てくれる訳もない…行くあても食べていく手段もなくなった奴さんに目をつけたのが、その鉱山会社の株主でもあった一人の子爵だったってわけさ……そいつは発明家みたいな奴で、特にオートマトン(自動人形)や義体の病的な愛好家だったらしい…」

ベアトリス「…っ」

ドロシー「…とにかく、そいつは身寄りのない子供や捨て子を連れてきては義体の実験台にしていて「シルク・モス」もその中の一人だったわけだ」

アンジェ「なるほど」

ドロシー「子爵は奴さんの腕に義肢をつけて様々な実験に使っていた…が、しばらくすると奴は過酷な実験に耐えられなくなり、とうとうそいつの首をへし折った」

ベアトリス「…」

ドロシー「…もちろん、王国で貴族殺しは処刑台行きだ…が、人の首根っこをへし折るような人間離れした謎の怪力お化けを「使えるかもしれない」っていうんで防諜部が興味を持ったて探し出した……後はいつも通りで「我々に協力して食べ物と寝る場所に困らない生活を送るか、さもなきゃ首にロープを結びつけられるか選べ」と脅しつけ、それ以来エージェントとして使っていた…って事らしい」

アンジェ「担当のエージェントはずいぶん詳しく調べたものね」

ドロシー「なまじ記録を抹消したりするとかえって目を引くっていうんで、王国は元の記録を消さない事があるからな…古い戸籍や何かと突き合わせて調べたんだろう」

アンジェ「それにしても……シルク・モス(カイコガ)は生糸を採るために人間が交配した種類だから、野生では生きられない…まさに彼女の存在と同じだったわけね」

ドロシー「ああ…ところでベアトリス、少しいいか?」

ベアトリス「えぇ、どうぞ…」

ドロシー「……奴の事を考えているのか?」

ベアトリス「はい…」

ドロシー「だろうと思ったよ…だがな、こればっかりは仕方のないことだったんだ……この世界にいる限り、奴さん自身だっていつかはそうなると分かっていたはずさ」

ベアトリス「でも…!」

ドロシー「……気持ちは分からないじゃないが、お前が嘆いたからって奴が生き返ったり魂の安息が…魂なんていうものがあるとしてだが…得られたりするのか?」

ベアトリス「それは、そうですが……」

ドロシー「だろう?」

ベアトリス「そうなんですけど……私、この任務の状況説明を聞いたときに「そんな怪物みたいな相手」って…でも、彼女は私と同じだったんです…」

ドロシー「いや、違うね」

ベアトリス「…え?」
407 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2020/01/10(金) 02:27:53.47 ID:okyqIitl0
ドロシー「奴と違って、お前さんは優しい心を持ってるよ…そうやって悩むのがいい証拠さ」

ベアトリス「…けど、こんな風に悩んでいてはエージェント失格だと思います……以前ドロシーさんは「割り切っている」っておっしゃっていましたけれど、どういう風に考えているんですか?」

ドロシー「そうだなぁ…とりあえず今の暮らしを考えてみることにしてるね」

ベアトリス「…と言うと?」

ドロシー「腹一杯食べられる豪華な食事、しゃれた服、上等な酒、綺麗なご婦人がた……一日中ゴミあさりや掏摸(すり)に明け暮れて、ひからびたパンの皮より拳骨をちょうだいすることの方が多かった貧民街に比べれば楽園みたいなもんさ…違うか?」

ベアトリス「それはそうかもしれませんが……でも、危険な世界ですよ?」

ドロシー「なぁに、人間くたばるのは一度きりだ……それに、恋だって危険が多いほど盛り上がるもんだからな♪」

ベアトリス「またそうやって……」

ドロシー「ははっ……まぁこればっかりは性格だから仕方ないが、あんまり思い詰めると身体に悪いぜ?」

ベアトリス「ええ、分かってはいるんですが……」

ドロシー「そうか。じゃあ寝つきやすくなるように、少しだけ飲もう……付き合うか?」

ベアトリス「……いただきます」

ドロシー「アンジェ、お前は?」(…このままベアトリスが引きずると後々まで悪い影響が出る。こうなったらうんと酔わせた上で浮かれ気分に持って行くとしよう)

アンジェ「…そうね、少しもらうわ」(……分かったわ。せいぜい道化を演じてあげるとしましょう)

…酒瓶の並ぶキャビネットに近寄りながらさりげなく目くばせしたドロシーと、ほんのかすかな動きで了解の合図を返すアンジェ…

ドロシー「……で、何にする?」

アンジェ「そうね、コニャックをもらうわ」

ドロシー「あいよ。ベアトリス、お前さんは?」

ベアトリス「えーと……」

ドロシー「…決まらないようなら私と一緒のにするか?」

ベアトリス「……そうですね、そうしてください」

ドロシー「分かった。私はポートにでもしようかと思ってたんだが……それでいいか?」紅い色合いが美しく口当たりもいいが、実は度数の高いポルトガル産のポート(ポルト)ワインを選んだ…

ベアトリス「…はい」

ドロシー「あいよ、分かった…ほら♪」優しげな表情を浮かべて切り子細工のワイングラスにポートワインを注いだ…

ベアトリス「ありがとうございます…」

アンジェ「それじゃあいただくわ」

ドロシー「ああ」

………

…数十分後…

ベアトリス「…でも、私はあの人と変わらないんです……もちろん姫様は「違う」とおっしゃってくれると思いますが、ですが……」

ドロシー「確かにな……でも、お前さんは立派にプリンセスをお守りしてるじゃないか」話を聞いてやりながら、さりげなくグラスにワインを注ぎ足す…

ベアトリス「……本当にそう思いますか?」

ドロシー「ああ。私がお前さんくらいの歳だった頃には、そんなこと逆立ちしたって出来なかっただろう…ってことを考えるとね。 …ところで、良かったら別のを飲まないか?」

ベアトリス「別の…ですか?」

ドロシー「ああ。なにせポートは甘いから口の中がベタベタしてな……タリスカーなんてどうだ?」

ベアトリス「タリスカー……えーと、スコッチ・ウイスキーでしたっけ…?」

アンジェ「ご名答…あなたもそういった知識が身についてきたわね」珍しく小さな笑みを浮かべた…

ベアトリス「そ、そうでしょうか…?」

ドロシー「アンジェがそう言うのなら間違いないさ……なにせこの冷血女ときたら、生まれてこのかた人を褒めたことなんてないんだからな」

ベアトリス「……て、照れますね///」

ドロシー「はははっ♪ …それはそうと、タリスカーみたいないい酒を水で割るのは失礼ってもんだ。少しだけにしておくから、ストレートでゆっくり味わうといい」

ベアトリス「分かりました、それじゃあ少しだけ……」
408 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2020/01/13(月) 01:52:18.50 ID:4qbBcAxM0
ドロシー「…タリスカーもいいが、グレンフィディックも味見してみろよ♪」

ベアトリス「はい、せっかくですものね…♪」

ドロシー「……どうだ?」

ベアトリス「私には少し辛く感じますが、喉の奥がぽーっと暖かくなって……えへへっ♪」

アンジェ「まったく、ドロシーときたらウィスキーばかりね……私ならコニャックをおすすめするわ」

ベアトリス「アンジェさんのおすすめですかぁ…気になります♪」

アンジェ「そう……なら一口どうぞ」

ベアトリス「んくっ、こくん……ふわぁ、とろっとしてて美味しいれす♪」

アンジェ「気に入ったようで良かったわ」

ドロシー「……ちょっとまて、そいつはキャビネットの奥にしまっておいたマーテルか?」

アンジェ「ええ」

ドロシー「なんてこった、せっかく隠しておいたのに…ベアトリスにだけ飲ませるなんてずるいぞ、私にも注いでくれ」

アンジェ「自分で注ぎなさい」

ドロシー「けちめ…」

ベアトリス「ぷっ…あはははっ♪」

ドロシー「……何がおかしい?」

ベアトリス「だってお二人とも…んふっ……まるで寄席の掛け合いみたいなんですもん…あははっ♪」

アンジェ「ふふふ…言われてみればそうかもね」

ドロシー「ああ、こいつは一本取られたな♪」

………

…またしばらくして…

ドロシー「で、そのときに私はこう言ってやった…「おいおい、お前さんと来たら顔だけじゃなくて頭の中までおめでたいな」って♪」

ベアトリス「あはははっ♪」

ドロシー「それでな、その時にパイがあったんだ……まぁ差し渡しで十五インチはあろうかっていうどでかいアップルパイさ」

ベアトリス「おぉ…?」

ドロシー「そのこましゃくれたご令嬢がパイをご所望になったんでね、わたくしとしましては「さようで」ってな具合でお召し上がりいただいたわけさ…顔面からな♪」

ベアトリス「あはははっ、それ……んふふっ…本当に……ひぃ、あははっ♪」

ドロシー「嘘なもんか……っと、そんなことを言ってたら、何か甘いものが欲しくなったな…」

アンジェ「…確かクリームのパイがあったわね」

ドロシー「じゃあそれにしよう…ちょっと待っててくれ」

アンジェ「…まったく、ドロシーときたら……それにしてもこの部屋は少し暑いわね」服の襟元を緩めると、ほんのりと桜色に色づいた胸元に扇で風を送る…

ベアトリス「そうですねぇ…暖炉が効き過ぎているのかもしれません……ふぅ」

ドロシー「よう、お待たせ……っと!?」片手に銀のパイ皿を持ってやって来たが不意につまずき、アンジェにパイを投げつける形になった…

アンジェ「…」胸元からカスタードをぽたぽたと垂らし、冷たい表情を浮かべている……

ドロシー「おっと、悪い悪い…わざとじゃないんだ♪」

ベアトリス「あ、アンジェさんってばクリームまみれで……ぷっ、んふふっ…あはははっ♪」

アンジェ「…覚えておきなさいよ」

ドロシー「だからわざとじゃないんだってば…それよか、せっかくのパイがもったいないな……あむっ♪」

アンジェ「……ちょっと」

ドロシー「だってさ、布巾で拭っちまったら食べられないだろ……あむっ、ぺちゃ…美味いな、これ…れろっ♪」

アンジェ「ドロシー、貴女ねぇ……ふぅ、どのみちそうするしかないようね…んむ…」胸元にこぼれたクリームを指でしゃくいあげて舐めとった…

ドロシー「ほら、ベアトリスも舐めてみろよ……甘くていい味だぞ♪」

ベアトリス「…そうですね///」
409 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2020/01/19(日) 02:17:21.14 ID:O+sxX9sv0
…しばらくして…

ドロシー「……それでな、事もあろうに尻もちをついたもんだから…」

アンジェ「…そういえば、前に誰かがいたずらで寮監の椅子にハリネズミを置いておいたことがあって……」

ベアトリス「ひー、あはははっ♪」茶目っ気たっぷりでドロシーとアンジェが話す面白おかしい話を聞いて、抱腹絶倒しているベアトリス…

アンジェ「それはそうと、ちょっと寝室に行って着替えを取ってくるわ……まったく、誰かさんのせいでクリームまみれにされたから…」

ドロシー「はて、誰だったかな?」

ベアトリス「あはははっ…もう、ドロシーさんってば♪」

ドロシー「はは、気づかれちまったか……ま、それじゃあアンジェのお着替えに付き合ってやろうぜ」

ベアトリス「そうですね♪」

…寝室…

アンジェ「…だからって私の寝室にまで来ることはないでしょうに」ベッドに腰かけ、クリームまみれになっている肌着の紐を解き始めた…

ドロシー「なぁに、お前さんが一人で着替えられないと困ると思ってね……それにしてもまだずいぶんとクリームが残ってるな♪」

ベアトリス「本当ですねぇ…」

ドロシー「ベアトリス、もったいないから舐め取ってやれよ……そらっ♪」

ベアトリス「わぷ…っ!」後ろから軽く突き飛ばされ、綺麗にアンジェの胸元に飛び込む形になったベアトリス……が、なぜかその体勢のままで反応がない…

アンジェ「……ベアトリス?」

ベアトリス「…ん、ぴちゃ…ちゅぅ……ぷは、アンジェさんのおっぱい、おいひいれす…んちゅっ、ちゅぷ♪」

アンジェ「……まったく」

ドロシー「まるで母猫の乳房に吸い付く仔猫だな」

ベアトリス「えへへぇ、だって美味しいんですもん……あむっ♪」

アンジェ「結構なことね」

ドロシー「ああ、実に結構さ……それじゃあ私もおっぱいにありつくことにしますかね…っと♪」

アンジェ「貴女みたいに性悪な雌猫はお断り」しゃぶりつこうとするドロシーの額を押さえて突き放した…

ドロシー「…おっしゃりやがったね」

ベアトリス「あはははっ、ドロシーさんったらアンジェさんに断られて……ひー、おかしくって笑いが……あははは♪」

ドロシー「……このぉ、人がけんつくを食らったって言うのに笑ったな?」

ベアトリス「ひゃぁぁぁ!? あひっ、くすぐった……あはははっ♪」

ドロシー「どうだ、このあたりがくすぐったいんだろう♪」

ベアトリス「ひぅっ、あふっ、あははは……んふっ、ひぃぃ♪」

…数分後…

ドロシー「ほぉら、どうだ……気持ちいいだろう…♪」

アンジェ「遠慮することはないわ……♪」

ベアトリス「あふっ、んあぁぁ…ふあぁ……んっ、ふわぁぁ…っ///」ベッドの上で二人に撫で回され、さっきまでとは違う嬌声を上げている…

ドロシー「ふふ、ベアトリスはここが好きなんだよな……♪」つぅ…っと脇腹を撫で上げる…

ベアトリス「ひぁぁぁ…っ♪」

アンジェ「ドロシーったら甘いわね、こっちの方が気持ちいいでしょう……ね?」腰のくびれから背筋に沿って指を走らせる…

ベアトリス「あ、あっ…どっちも気持ち……ふわぁぁぁ♪」

ドロシー「ほーん、それじゃあどっちがいいか決めてもらわなくっちゃ……な♪」

アンジェ「優柔不断は良くないものね…ふふっ♪」

ベアトリス「もう、お二人ともそんな悪い顔をして……私をどうする気なんですか…っ///」爛々とぎらついた瞳でにんまり笑みを浮かべているドロシーと、いつものポーカーフェイスとは打って変わって、爛れた悦びをむさぼり尽くそうとしているような表情を浮かべているアンジェ……そして二人の手管にはまってすっかり骨抜きにされているベアトリスは甘ったるいぞくぞくした気分になっていて、とがめるどころか、まるでねだるような口調で尋ねた…

アンジェ「さあ…♪」

ドロシー「ふふ、どうするつもりだろうな…♪」
410 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2020/01/25(土) 11:26:11.03 ID:PKETWW0D0
………

…数十分後…

ベアトリス「ふぁぁぁ…っ、あ、あぁぁ…っ♪」

ドロシー「あむっ……ちゅぅっ♪」

アンジェ「ちゅる…っ、んちゅっ♪」

ベアトリス「あぁぁ…っ、はひぃ…っ♪」

ドロシー「…そんなに甘い声を出されるとやりがいがあるってもんだな……んむっ、ちゅぅ…っ♪」

ベアトリス「ふぁぁ…っ、あぁん……っ♪」

…ドロシーには頭の上で組み合わせた状態の両手首を押さえつけられて小ぶりな乳房に吸い付かれ、アンジェには脇腹を舐め上げられているベアトリス…

ドロシー「ふふ、ここも硬くしてるのか……それにしても綺麗な桃色じゃないか♪」こりっ…♪

ベアトリス「ふわぁぁっ、どこを甘噛みしているんですかぁ…っ♪」

アンジェ「……美味しそうね、私もお相伴にあずからせてもらうわ♪」

ドロシー「いいとも…このお菓子は砂糖漬けのルバーブなんかよりもずっと甘くて気が利いてるよ♪」

ベアトリス「あ、あっ…んあぁぁっ♪」

ドロシー「ふふふ…こんなに悦んでもらえるとは嬉しいね……んむ、ちゅる…♪」舌を滑り込ませ、口中を舐め回すような口づけを交わす…

ベアトリス「んむっ…んんぅ、ちゅむ……ちゅるっ、ちゅぅ……っ///」

ドロシー「ちゅる…っ、んちゅぅ…ちゅぅぅ…っ……ちゅく…っ♪」

ベアトリス「ん、ふ……んんぅ、んぅぅ……っ///」

ドロシー「…ちゅむぅ、ちゅる……じゅるぅ…っ、んちゅ…ちゅぅ…っ♪」

ベアトリス「んちゅ、ちゅむ……ん、んんぅ…んんぅぅ…っ///」

…しばらくすると息が続かなくなってきたのか、じたばたと身をよじって身体を押さえつけているドロシーをどうにか振りほどこうとする……が、それでなくとも大柄なドロシーが格闘術を応用して押さえ込んでいるので、小柄なベアトリスではまるで振りほどくことが出来ない…

ドロシー「んむっ、じゅるぅぅ…っ…じゅるっ、ちゅぷ……ちゅるっ♪」

ベアトリス「んー、んんぅぅ……っ///」

ドロシー「……れろっ、ちゅるぅ………ちゅぅっ…ぷはぁ♪」唇が離れるととろりと銀色の糸が垂れ、ベアトリスの鎖骨に滴った…

ベアトリス「はー、はー…はぁぁ……っ/// も、もう……窒息…するかと思った……じゃないですか…ぁ///」

ドロシー「そういう割にはまんざらでもない顔をしているぞ…♪」

ベアトリス「…っ///」

ドロシー「ふふ、そういうところがたまらないんだよ…な♪」くちゅ…っ♪

ベアトリス「ふわぁぁぁ…っ♪」

アンジェ「その気持ちは分かるわ……見ているだけで滅茶苦茶にしたくなってくるのよ…ね♪」ちゅぷっ…♪

ベアトリス「…あっ、あぁぁぁん…っ♪」

ドロシー「おまけにあどけない顔をしておきながら、ここはこんなにとろっとろにして……ふふ、悪い娘だなぁ♪」くちゅ…っ♪

ベアトリス「ひゃぁぁんっ、あふっ…んあぁっ///」

アンジェ「そうね、そんな悪い娘にはお仕置きをしてあげないといけないわ…ね♪」くちゅっ、つぷ…っ♪

ベアトリス「えっ…ちょっとまってくだ……ふぁぁぁんっ♪」

ドロシー「ひくひく跳ねて、まるで釣り上げた魚みたいだな……私も混ぜてもらうぞ♪」ぬちゅっ、くちゅり…♪

ベアトリス「ひぁぁん…ふわぁ///」とろ…っ♪

アンジェ「ふふ…ドロシーの言う通りね。きゅうっと締め付けてきて、とろとろで……こんなふうにされたかったのね♪」くちゅくちゅ…っ♪

ベアトリス「ふわぁぁぁ…っ♪」
411 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2020/02/03(月) 03:14:38.54 ID:VPUPDOvq0
ドロシー「あ、そうだ……なぁアンジェ」

アンジェ「なに?」

ドロシー「せっかくなんだから、私とお前さんのどっちがベアトリスをイかせられるか勝負しようぜ? で、負けたら勝った方の言うことを聞く…っていうのはどうだ?」

アンジェ「なるほど、面白そうね……まぁ、貴女に勝ち目はないでしょうけれど」

ドロシー「おいおい、そんなことはないだろ…」くちゅくちゅっ…ぬちゅっ♪

ベアトリス「…はぁ…はぁっ……ふぁ…ぁ///」

ドロシー「それでだ…ベアトリス、お前さんも是非やりたいよな……よーし、そうだよな♪」

ベアトリス「はぁ…ふぅ……ふぇ…っ?」手触りの良いシルクのリボンで目隠しをされ、同じくリボンでひとくくりにされた手首をベッドの柱に繋がれた…

ドロシー「とはいえ…勝負も何も、もうすっかりびしょびしょだけどな♪」くちゅ、くちゅくちゅぅ…っ♪

ベアトリス「ふぁぁ…っ、あっ、あぁぁ……っ♪」

ドロシー「……ふふ、でもこれだけじゃあ物足りないよ……な♪」いたずらっぽく人差し指を唇に当てて「黙っていろ」とアンジェに向けて合図をし、それから笑みを浮かべてウィンクした…

アンジェ「ええ、そのようね」

ドロシー「それじゃあ……せーのっ♪」じゅぷっ、ぐちゅぐちゅぅ…っ♪

ベアトリス「えっ、何をす…あぁ゛ぁぁっ♪」

ドロシー「…ほぉら、どうだ……すっかり濡れそぼってるから二本でもたやすく入るじゃないか♪」

ベアトリス「い、言わないでくだ……ふわぁぁ、あぁっ♪」とぽっ、とろっ……ぷしゃぁぁ…っ♪

ドロシー「ふふふ、そういう初々しいところがたまらないんだよ…な♪」つぷっ…くちゅり♪

アンジェ「ええ」

ベアトリス「ふあぁぁぁ…っ♪」まるで走り終えた犬のように舌をだらりと垂らし、髪を乱して荒い息をしている……白い肌はすっかり紅潮して、冬場だというのに汗ばんでしっとりしている…

…しばらくして…

ドロシー「よし、それじゃあ交替だ…♪」ぱちんと指を鳴らし、アンジェに場所を空けた…

アンジェ「そう……分かったわ」

ベアトリス「ふぁぁ……ぜぇ、はぁ…///」下半身をべとべとにして、息も絶え絶えのベアトリス…

アンジェ「ふふ…♪」急に髪をほどくとベアトリスの耳元に顔を寄せ、脚を絡めた…

ベアトリス「はぁ…ふぅ……んっ、んんぅっ///」くちゅっ、ちゅぷ…っ♪

アンジェ「…あむっ、ちゅぅ…っ♪」ベアトリスの小ぶりな胸に舌を這わせ、硬くなった桜色の先端を甘噛みする……

ベアトリス「んぁぁ、あふっ♪」

アンジェ「んむっ、ちゅ……ベアト…♪」耳元でプリンセスの声色を使ってささやき、耳を舐めた…

ベアトリス「ひ、姫様ぁ……んあぁぁぁっ♪」

アンジェ「…ベアト……こんなに乱れて…いけない娘ね……でも、とても可愛いわ♪」ぢゅぷ…っ♪

ベアトリス「ふあぁぁぁっ…そんなこと言われたらぁ……っ♪」がくがくっ…♪

アンジェ「……いいのよ、わたくしにベアトのいやらしい所…見せてちょうだい?」

ベアトリス「はひぃぃっ、ひめさまぁ……ひく゛ぅっ、イきますぅ…っ♪」ぷしゃぁ…あぁぁっ♪

アンジェ「…ね、ベアト……もっと♪」ぐちゅぐちゅ…ちゅぷ…っ♪

ベアトリス「ふわぁぁぁ…っ♪」

アンジェ「もっと…好きよ、ベアト♪」

ベアトリス「はひぃ、ひぐぅぅぅ…っ♪」粘っこい蜜をとろりと垂らしのけぞるようにして果てると、疲れたのかそのまま失神したように寝入ってしまった…

アンジェ「……どうやら私の勝ちみたいね」

ドロシー「こいつ、反則技でもって来やがったな…」

アンジェ「ルールに決めておかない貴女が悪いのよ……ふふ♪」小さく笑うと、そっとベアトリスの頭を撫でた…

………

412 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2020/02/05(水) 02:30:08.88 ID:Ni9LhQop0
…数日後・ハイドパーク…

L「よく来たな…まぁ掛けろ」

ドロシー「……それにしても、あんたが直々にお出ましとはね」

L「うむ」

ドロシー「…それで?」

L「報告書と例の削りくずが入った「小瓶」は受け取った……ご苦労だった」

ドロシー「ああ」

L「今回の件では首尾良く片付けることが出来たようだな…おかげで「海峡の向こう側」にいる連中の勢いも削ぐことが出来た」

ドロシー「そいつは良かったな……ところで」

L「なんだ?」

ドロシー「…一体どういうつもりなんだ?」

L「……と、言うと?」

ドロシー「私の時もそうだったが、まるで示し合わせたように以前の家族だの似たような境遇の人間だのをかち合わせるって言うのはどういうわけだ…って言ってるんだ」

L「そのことか」

ドロシー「あぁ、そうだ……特に私なんかと違って「ミス・B(ベアトリス)」は繊細で感じやすいタイプなんだ。もう少し「配慮」ってものがあっても良いんじゃないのか」

L「……そういったことで動揺するような人間ではいざというときに使い物にならんな」

ドロシー「奴はこっちと違って玄人じゃない。それでいて「チェンジリング」には欠かせない役者の一人だ、手心を加えて上手く御する必要があるのは分かっているだろうが……奴さんを「治療」するのも楽じゃないんだぞ」

L「分かっている…ただ、今回の件ではこちらもギリギリまで例の「蛾」の正体が掴めていなかったのだ。決して意図して行ったわけではない」

ドロシー「…」

L「……確かに君の言うとおり「ミス・B」にとってはいささか後味の悪い結末だったかもしれん。しかし「黒雲はいつも銀の裏地を持っている」という言葉もある」(※Every cloud has a silver lining…「必ずしも不幸ばかりではない」の意)

ドロシー「なるほど。誰かにとっては不幸でも、必ずしも悪い面ばかりではない…か?」

L「いかにも……特に今回の件でこちらが王国や他国の「同業者」に対して一枚上手であることを示すことが出来たのは大きい」

ドロシー「そうかよ」

L「…君が不愉快に思う気持ちは分かる。しかし誰かがやらねばならんことなのだ」

ドロシー「つまり貧乏くじを引いちまったってわけか…やれやれだな」

L「お互いに立場がよく理解できたようだな……それとだ」

ドロシー「うん?」

L「今回の事があってロンドンは波立っている…影響を被ることがないよう、しばらく君たちは動かさずにおく予定だ。その間に休養でも取るといい」

ドロシー「そりゃどうも」

L「なに、遅ればせながらのクリスマス・プレゼントだよ……楽しむといい」

ドロシー「ああ、そうさせてもらうよ」そう言ってベンチから立ち上がりかけた…

L「…そういえばもう一つ」

ドロシー「なんだ?」

L「ミス・Bをどうやって「治療」したのだ?」

ドロシー「…ベッドでこってりと甘い時間を過ごさせてやった」

L「なるほど……詳しいところは今度「7」に聞かせてやるといい、きっと喜ぶだろう」

ドロシー「ああ、そうするよ」

………



413 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2020/02/05(水) 02:36:55.41 ID:Ni9LhQop0
…と言うわけで、ようやく終わらせる事が出来ました……途中で長く間隔を空けてしまったせいで、どう書くつもりだったのか忘れてしまったりしましたが、どうにかまとめることができました…


また、次のエピソードでは以前リクエストでいただいた「007」的なアクション性の高いものを書こうと思っています
414 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2020/02/14(金) 02:48:46.28 ID:Te4x2yJR0
…case・プリンセス×アンジェ「The her majesty agent」(女王陛下の情報部員)…

…とある日…

ベアトリス「今日はいいお天気ですね」

ドロシー「ああ…しかしこう暖かいと眠くなってくるな」

アンジェ「たるんでいるわね」

ドロシー「そう言うな……美味い昼食にブランデーを垂らした紅茶、おまけにこの陽気と来りゃあな」

プリンセス「分かります。このところ寒い日が続いていましたからなおの事」

ドロシー「ほら見ろ…だいたい蜥蜴のくせに寒さが平気って言うのはおかしいだろ」

アンジェ「そういう種類よ」

ドロシー「そうかよ…しかしまぁ、ここでうかつに昼寝なんてした日にはどこぞの冷血女に何をされるか分からないからな……というわけで、何かいい案はあるか?」

ベアトリス「…え、私ですか?」

ドロシー「他に誰がいるんだ? ほら、頭の体操だと思ってさっと気の利いた考えを出してみろ」

ベアトリス「えーと……それじゃあ、何かお話をするのはいかがでしょう?」

ドロシー「なるほど、お話ねぇ…なんだかお前さんがいうと「おとぎ話を聞かせてくれ」ってせがむ子供みたいだな♪」

ベアトリス「むぅ、いくら何でもそこまで子供じゃありませんよ」

ドロシー「冗談だよ……そうだな、それじゃあこの世界向けのおとぎ話でもしてやるか。こいつはとある王国エージェントの話なんだが…」

プリンセス「王国の、ですか?」

ドロシー「ああ…もちろん今じゃこっちの資料にまで載っているくらいの有名人になっちまったから工作に使われる事もなくなったようだが、その当時は「英国情報部の紅はこべ」だの「王国一有名な情報部員」とか何とか言われて、ずいぶん話題になった奴なのさ」


(※紅はこべ(The scarlet pimpernel)…ハンガリー出身の英国女流作家、バロネス・オルツィがフランス革命直後のイギリスとフランスを舞台に書いたスパイ活劇の名作。血なまぐさく暴力的な革命政府によってギロチンにかけられる運命にあるフランス貴族たちを鮮やかな手段で救い出す謎の秘密組織「紅はこべ」と、民衆には同情しているものの革命政府の過激なやり方には賛同できないでいる穏健な共和主義者で、フランスに残っていた最愛の兄アルマンを革命政府の人質に取られ「紅はこべ」の正体を探るよう迫られる賢く美しい元女優のフランス人マルグリート、その夫で流行にしか興味がないぼんやりしたイギリス貴族のパーシー・ブレイクニー卿、裏でマルグリートを脅迫しイギリスでの諜報活動を行っているフランス大使ショーヴランの駆け引きや冒険を描いた傑作……実際には二十世紀に入った1905年に発表されている)


ベアトリス「へえ…面白そうなお話ですね」

ドロシー「まぁな……」

………



…十数年前・ロンドン…

中年の紳士「おはよう」

若い女性「おはようございます、部長……一つお聞きしたいのですが、二週間の休暇を二日で切り上げて来なければならないような一大事なんでしょうね?」

…そう言うと若い女性は人なつっこい笑みを浮かべた……着ているデイドレスは身体に合っていてセンスも良く、携えている小物も一流のものばかりで非の打ち所がない……おどけた調子で大きな婦人帽を「ぽんっ」と放ると、綺麗な放物線を描いてコート掛けに引っかかった…

情報部長「そうだな、君が対応に誤ればそうなるかもしれん…と言ったところかな」

女性「そうですか」

部長「ま、とにかく詳細を説明しよう…かけたまえ」

女性「どうも」

部長「紅茶は?」

女性「いただきましょう」

部長「ミルクと砂糖はいらなかったね」

女性「ええ……あら、セイロンのファースト・フラッシュですか。今年は出来がいいですね」

部長「相変わらずだな…だがね、私は別に紅茶の味見をして欲しくて呼んだわけではないのだよ」

女性「でしょうね……どこかの公爵夫人が飼っているペルシャ猫でも迷子になりましたか?」

部長「いいや…ペルシャ猫より少しばかり大事なシロモノだ」

女性「そうですか?」

部長「ああ、実はな……」

………

415 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2020/02/15(土) 03:14:46.01 ID:srooMoxs0
…数日前…

目立たない男(情報部エージェント)「ああ、君…すまないが馬車を呼んでくれないか」

ホテルのボーイ「はい、分かりました」

エージェント「頼んだよ」

ボーイ「…お客様、馬車が着きましてございます」

エージェント「ありがとう」そう言って馬車に乗り込んだ…

………



部長「…足取りがつかめているのはここまでで、それ以降は行方不明だ」

女性「なるほど…それで、その職員は何を運んでいたのです?」

部長「うむ。彼は高純度のケイバーライトに関する研究資料と試作品のサンプルを運ぶ役割を担っていてな、オックスフォードからロンドンに届ける予定だったのだ……そして、だ」

女性「そして?」

部長「…つい六時間ばかり前になるが、こんなものが届けられた……ちなみに、宛名は適切な組織の適切な相手になっていたことも付け加えておこう」

女性「つまり、こちらの事情に詳しい人間……と言うことですね?」

部長「いかにも」

女性「なるほど、では拝見させてもらいます「…一週間後の夕方五時までに純金で百万ポンドを支払えば入手した資料はお返しするが、そうでない場合はこの情報を国際市場で売りに出すつもりなのでご一考下さい……ファントム(幽霊)より」ですか」

部長「うむ……近頃の革命騒ぎと東西の分断でもアルビオンの覇権が揺らがないでいるのは、まさにケイバーライト技術の独占によるものに他ならん…もしこれが他国に流出するようなことがあれば、我が国はたちまち列強の餌食になってしまうだろう」

女性「それを見越した上での強請り(ゆすり)と言うわけですね」

部長「さよう。もちろんこちらとしても様々な角度から犯人の要求を検証してみた……が、この「幽霊」の言うとおりに百万ポンドを払ったところで、目的のものが無事に帰って来るという保証はない」

女性「百万をせしめた上で他国に技術を売り払うつもり…ですか」

部長「いかにも…百万ポンドと言えばちょっとした国の国家予算にも匹敵するが、ケイバーライト技術の価値……ひいては世界の覇権を握ることを考えると見積もりが安すぎる」

女性「つまり同じ商品で何度も儲ける腹づもりだ、と…どうやらこの「幽霊」はなかなかのしたたか者のようですね」

部長「そういうことだ……さて、君に与える任務は二つ。一つは行方不明になった部員を捜索し、奪われた研究資料を奪回すること…」

女性「ええ」

部長「…そして第二に、この「ファントム」の正体を突き止め、ケイバーライトについておしゃべり出来ないよう「静か」にさせること……この任務の遂行に必要なら、いかなる犠牲を払っても構わん」

女性「なるほど…予算も人材も使い放題、と言うわけですね?」

部長「そうだ。必要なら内務大臣の乏しい髪の毛をむしり取ろうが、女王陛下の王冠から宝石をほじくり出そうが構わない…ただし、指定された刻限までには必ず完了させろ」

女性「分かりました」

部長「…当然ながら、噂を聞きつけた各国の「同業者」たちもこれを狙っているはずだ……共和国の連中とカエル(フランス人)どもは当然として、プロイセン、ロシア、イタリア……新大陸の連中が参加してくる事もありうる」

女性「にぎやかになりそうですね」

部長「うむ……それから、当座の役に立ちそうなものをこちらでいくつか準備しておいた。持って行きたまえ」

女性「ご親切痛み入ります…まずは現金二百ポンドに一千フラン、それと……」仰々しい紙に書いてある文面をさっと読み通した…

部長「見ての通り、女王陛下の署名入り委任状だ…「この書状を持つ者は女王の命の下にその責務を遂行する者であり、その身分はアルビオン王室が保証する。また、この書状を持つ者に最大限の協力をするよう要請する」とな」

女性「なるほど…」

部長「武器に関してはバーナードのところで選んでいきたまえ……幸運を祈るぞ」

女性「どうやらそれが一番必要になりそうですものね…♪」

416 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2020/02/18(火) 02:59:46.09 ID:IvTdmkWf0
…地下室…

女性「……モーニン、教授(プロフェッサー)」


…女性がやって来た場所はレンガ造りの広い地下室で、室内のあちこちでは様々な道具や機材が組み立て中であったり、部品ごとに分解されていたりする……彼女が「教授」と呼びかけた相手は初老の紳士で、豊かな白髪をきちんと撫でつけ、いまにも鼻の頭からずり落ちそうな小さなレンズの丸眼鏡をかけている…


教授「うむ、おはよう……君は休暇じゃなかったのかね?」

女性「それが、おかげさまで取り消しになりまして…休めたのは一日だけですわ」

教授「おやおや」

女性「…ところで、部長からここで道具を受け取るよう言われてきたのですが」

教授「ああ、聞いておるとも「ナンバー017」…なにしろ君は上得意だからね」教授はわざわざ数字を「ゼロ・ワン・セブン」と区切って呼んだ…

017「ふふ…ジョアンナで結構ですわ、教授」

教授「承知したよ、ジョアンナ君…さて、それでは……」途端に後ろで鉄工所のような轟音が始まった……よく見ると隅っこにあるスクラップの山は半壊したモーリス乗用車のなれの果てで、風刺漫画に「最先端の発明品」などと題をつけて描かれているポンコツか、食べ終わったイワシの缶詰のようにへしゃげている…

017「……あれは?」

教授「前の任務でジェレミー君とハモンド君が使った車だよ…まったく、あの二人ときたら孫の代になってもあんな風に車を壊すに違いない」

017「そうかもしれませんね…」

教授「まあいい、本題に入ろう……何しろ君のために色々と用意したのだからね」…音が静かになるのを待ってから、様々なものが並べてあるテーブルにジョアンナを案内した

017「ええ」

教授「さて…どれから始めるかね?」

017「そう……ではこの日傘(パラソル)からお願いします」

教授「ほほう、相変わらず目が高いね…この日傘はなかなかの優れものだよ?」

017「ええ、何しろ色合いがいいですから……この時期に着るドレスとも合わせやすそうです」

教授「重要なのはそこではないよ、ジョアンナ君…まずは持ってみたまえ」

017「はい……意外と重いですね?」

教授「うむ、何しろ柄には良質なハーヴェイ鋼を使っているからな…ナイフ程度なら充分受け止めることが出来るだろう」

017「なるほど」

教授「それから握りを左にひねると、傘の石突き(先端)から刃が出てくる……毒が塗ってあるから触らんように」

017「…うっかり足の甲に突き立てないよう気をつけます」

教授「ぜひそうしたまえ……今度は右に九十度ひねって手前に引き、動かなくなったら今度は左に回していく…すると握りが取れて柄の中にある空洞が出てくる。機密書類などを隠すのに使えるはずだ」

017「どこかの夫人からいただいた恋文でもいいかもしれませんね♪」

教授「こほん…君の火遊びのために作ったわけではないのだぞ?」

017「これは失礼」

教授「…火遊びついでに言っておくと、この日傘の布地には特殊な難燃性の液体を染みこませてある……多少の火なら、かざして盾にすることで火傷をせずにすむだろう」

017「その機能を試す機会がないことを祈ります」

教授「私もそう思うよ……傘の「骨」には細い金属の線が仕込んであるが、しなやかで折れにくいからキーピックとしても使える」

017「まぁまぁ…今度レディの寝室にお邪魔するときにでも有効活用させてもらいます♪」

教授「……お次はこれだ」

017「万年筆、ですか?」

教授「一見するとそうだろうな。しかし真ん中からひねると……どうだね?」軸の部分を中心に半分になり、細いスティレットが出てきた…

017「まぁ…「ペンは剣よりも強し」とはいうものの、まさか両立させるとは思いませんでした」

教授「うむ……これこそまさに「ペンナイフ」と言うわけでな」そう言うと小さくウィンクをした…

017「ふふ…♪」

教授「しかもこの「ペンナイフ」は優れものでな……」

017「…ふむふむ?」
417 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2020/02/24(月) 01:58:27.48 ID:gyHnrrGl0
教授「なんと、ペンとしてもちゃんと使うことが出来るのだ」

017「あー……もう一度お願いできますか?」

教授「聞こえが遠くなる年齢を迎えるには早すぎやせんかね……この「ペンナイフ」はちゃんと万年筆としても使えるのだ」

017「そうですか…てっきり最初から両立出来ているものと思っておりましたが」

教授「とんでもない。この大きさに万年筆とナイフの機能を組み込むのがどれだけ大変だったことか…半年はかかったのだぞ」

017「ナイフで敵を、恋文でご婦人のハートを一突き……というわけですね♪」

教授「そういう考えもあるかもしれんな……これはコンパクト(手鏡)だが、こうやってひねると…」

017「あら、外れた」

教授「さよう。見ての通り二枚貝のように口を開くようになっていて、間には薄いメモや書類を隠すことが出来る……また、鏡自体を特定の角度に開いた状態で、ここにあるハンカチの刺繍と手鏡の印を合わせてをセットすると……見たまえ」

017「ロンドンの地図…ですか」

教授「いかにも……味方のセーフハウス(隠れ家)や連絡員のいる施設が分かるようになっておる」

017「なるほど…」

教授「それと化粧品のいくつかには特殊な効果をつけておいた……例えばこの白粉と琥珀色の小瓶に入った香水と混ぜ合わせ、相手に摂取させると自白剤になる…間違えて一緒に使わんように」

017「そうします」

教授「それから、この緑色の小瓶に入った香水は睡眠効果がある……吹き付ければ数分で眠気が回るぞ」

017「まぁ…ふふ♪」

教授「何か悪いことを企んでいるんじゃあるまいな、ジョアンナ君?」

017「いえいえ、そんな滅相もない」

教授「そうかね……この小さな桃色の香水瓶には惚れ薬が入っておる…君には必要ないだろうがね」

017「お褒めにあずかり恐縮です♪」

教授「…化粧品の入った小箱には二重底がしつらえてあるが、この部分に彫り込まれているバラ模様を軽く押してから引っ張らないと開かない仕掛けになっておる……ここに入っている白い粉薬は遅効性の猛毒なので、必要なときは相手の飲み物や食べ物に混ぜ、あとは知らん顔をしておればよい」

017「銀は黒ずみませんか?」

教授「もちろんそんなことはありはせんよ……味もしないから安心したまえ」

017「……味見をしたのですか?」

教授「もちろん解毒剤を飲んでから、だがね……解毒剤はこっちの薄黄色をした粉薬だ。意識を無くすまでに飲めば助かる」

017「それを聞いて安心しました」

教授「よろしい…さてさて、お次は葉巻入れが一つ」綺麗な黒檀で出来たしゃれたケースを指し示した…

017「…私は葉巻をたしなみませんが?」

教授「知っておるよ……この葉巻はちょっとした睡眠薬を染ませておって、だいたい一本が燃え尽きる頃には室内の人間が眠りについてしまうはずだ…むろん、口元でスパスパやっておればより早く回るわけだが」

017「でしょうね」

教授「葉巻入れの箱そのものは上げ底にしてあって、隙間にはちょっとした量の爆薬を詰めてある…内張りの生地は導火線になっておるから、ほつれを引っ張るようにしてほどいていき、好みの長さになったら火をつければよい……十秒の目安ごとに赤のより糸が縫い込んである」

017「…うっかり灰でも落とそうものなら大変な事になりますね……」

教授「そうならんようにな……さて、次は君の好きそうなものだ…」

017「きれいなご婦人ですか?」

教授「それは君の方が上手に調達できるだろう……宝石とドレスだよ」

017「なるほど…上等なシャンパンと同じくらい好きですわ♪」

教授「結構。まずは見ての通りダイヤモンドの指輪だ……ガラスやなにかに切り込みを入れるのに役立つはずだ」

017「ええ」

教授「お次は金の指輪が二つ…非常時の工作資金にも使えるし、見ての通り内側には暗号で刻印が入れてある……しかるべき人間が見れば、君に便宜を図ってくれるだろう」

017「大きさもちょうどです」

教授「それはよかった。もっとも、サイズごとに用意してあるから指に合わなければ交換するがね……この真珠のネックレスは鎖に弱い部分を作ってあり、パーティや何かでちょっとした騒ぎを起こしたい時に引っ張るとちぎれて真珠が飛び散る…目くらましにしては高価な日本産の真珠だから、使いどころはわきまえてくれたまえ」

017「もちろんですわ」
418 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2020/02/28(金) 02:26:51.60 ID:kIhT6LXs0
教授「…では、着る物の説明に移ろうか……コルセットの「骨」も日傘と同じく細い金属線で出来ておるが、中の一本…この部分の骨だが…は、表面を梨地(なしじ)に仕上げてある……ロープや何かを切りたいとき、ヤスリ代わりに使えるだろう」

017「なるほど」

教授「ドレスはフランスから生地を取り寄せて仕立てたものだ…どうだね?」マネキンに着せてあるドレスをさっとひと撫でして、抱き上げるように生地を持ち上げてみせた

017「実にいいですわね」


…クリーム色の生地に淡いモスグリーンと山吹色、薄い桃色でボタニカル(植物)柄を散らし、襟元や裾にアクセントとしてアルビオンはホニトンで産する高級レースをあしらった洒落たドレス……スカート部分はたっぷりと生地が使われているが動きやすいように作ってあり、胸元を見せる襟ぐりはデザインが優れているため、なかなか大胆ながらも上品に見える…


部長「……そう言ってくれて何よりだ、017」

017「あら、部長」

教授「長官、ようこそいらっしゃいました……ジョアンナ君、きみは相変わらず長官の事を「部長」呼ばわりしているのかね?」

017「ええ。何しろ私がナンバーをもらってからこのかた、部長は「部長」でしたから…♪」

部長「聞いての通りだ…ところで装備品の説明はすんだのかね、教授?」

教授「もう少しかかります……胸元や袖口、腰回りの裏地にはちょっとした「かくし」(ポケット)をしつらえてある…敵方から何かスリ取ったりした場合に、手早くしまうことが出来るだろう」

017「なるほど」

教授「一番大きくて丈夫なかくしは、生地がドレープ(ひだ)になっている腰の部分に設けてある……3インチ銃身のリボルバーなら隠せるサイズに作っておいた」

017「私好みの位置ですわ」

教授「そう言ってくれると思っておった……靴の生地には絹を使っておるが、甲には薄い鉄板が仕込んである…踏みつけられたり蹴り上げたりするときには重宝するだろう」

017「これなら舞踏会でダンスの下手な相手にあたっても大丈夫ですわね」

教授「かもしれん……ヒールは少しでも動きやすいよう、デザインでごまかして1インチの高さに抑えてある」

017「助かります」

教授「さてさて…いよいよ武器の方に入ろうか」紅いビロードの生地を敷き詰めた陳列ケースに近寄ると、蓋を開ける…

017「楽しみに待っておりましたわ…♪」にっこりと微笑を浮かべると頬に指をあて、まるで宝石を品定めするレディのようにケースを眺めた…と、部長が声をあげた……

部長「……教授、今回は少なくとも.297口径以上のピストルを持たせてやってくれ。今までのように.230口径のトランター・リボルバーだの、それよりももっと小さい玩具のようなリボルバーを選ばれては困る」

教授「はい、分かりました」

017「部長、お言葉ですが私は…!」

部長「手が小さいし反動の大きな銃は嫌いだ、と言いたいのだろう…だが、今回の任務は「パーティを抜けだして書斎からちょっと書類を拝借する」ような任務ではない……ちゃんと威力のあるピストルを持って行け」

017「しかし、女の私が大型ピストルなんて持っていたらその方がおかしいですわ」

部長「なにも私は象狩りに使う大砲のような銃を持って行けと言っているわけではない…女性の護身用としておかしくない程度のピストルを持って行け…と言っておるのだ……教授、何かいいのはあるか?」

教授「もちろんですとも…例えば.297トランター・リボルバーや.320口径の「ブル・ドッグ」タイプのリボルバー……いつも通りウェブリーにしておくかね?」(※ブル・ドッグ…特定のメーカーやモデルではなく、短銃身のピストルを総称していう。アメリカでは「スナブノーズ」)

017「ええ、こうなったら仕方ないですわ……」

教授「よければ「ウェブリー・フォスベリー」オートマティック・リボルバーのような変わり種もあるが、どうだね?」

017「ご冗談でしょう…あんな珍品を使いこなすようなエージェントがいるとしたらよっぽどの変人か、さもなければ月世界からやって来た人間くらいですわ」

教授「おやおや、ずいぶんと手厳しいね……それじゃあこれでどうかな?」

017「ウェブリーの小型リボルバー…口径は.297ですか」

教授「いかにも……これなら自衛用としてレディが持っていてもおかしくないし、きれいな装飾も施してあるからそれらしく見えるはずだ」

017「そうですね、金象眼に象牙の握り……私の好みから言うと少々飾り気がありすぎますけれど、これなら我慢出来ますわ」

教授「それは何より…それと弾薬はこれを持って行きたまえ」

017「…これは?」

教授「見ためは変わらんが新式の弾薬だよ……同じ黒色火薬でも燃焼のムラが少なく、銃身に燃えかすが残りにくいものでな」

部長「国内ではまだ流通しておらん、ぜひ役立ててくれたまえ」

017「…ありがとうございます」

419 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2020/03/05(木) 04:20:41.82 ID:1c1u9xVg0
教授「それから様々な書類を用意しておいた……例えば「ホワイトフェザー」を始めとする婦人専用の「高級社交クラブ」の会員証に、数人の貴族夫人から受け取ったポーカーやティーパーティのお誘いが書かれた手紙……スコットランドや西インド諸島で過ごしていた事を示す旅券なども用意しておいた…」

017「そういったこまごました手紙や書類があると「カバー」(偽装)に信憑性が増しますから……とても役に立ちますわ」

教授「そう言ってくれると思っておったよ……さらにこれらはいずれも実際の用紙に実物と同じ道具で記載した「本物」の偽造書類だから、誰かに見せたとしても疑われることはないだろう…まぁ、ないものと言えば「君の本当の肩書き」を示す身分証くらいなものかな」

017「ふふふ…♪」

教授「…さて、これで一通りの装備が整ったわけだ」

017「それにしても至れり尽くせりですわね……いつもながら教授を始めとするびっくりどっきり…いえ、「装備品開発課」の奔放な想像力には頭が下がります」

教授「お褒めいただき光栄だよ、ジョアンナ君」

部長「…それだけ今回の件は重要視されていると言うことだ。忘れるなよ、017」

017「ええ」

部長「……それとだ、教授に頼んで送りつけられてきた「例の手紙」について調べてもらった…説明を頼む」

教授「はい……えー、まずこの「ブラックメール・レター」(脅迫状)を書いた人物は、かなりの高等教育を受けた人物であると思われます。筆跡も丁寧ですし単語のスペルにもミスは見られず、それなりの身分がある人物でしょう…」

017「それだけでは対象となる人物が多すぎますわ」

教授「まぁ待ちたまえ……この手紙に使われている紙を書類担当に調べてもらったところ、面白い事実が判明したのだ」

017「面白い事実?」

教授「いかにも。この手紙の送り主はホテルに備え付けの便せんでこの手紙を送ってきたようなのだが、上部に型押しされているホテルの紋章部分は切り取られていた……」

017「それでは何にもなりませんわ」

教授「ところがそれが違うのだよ、ジョアンナ君」

017「そうですか?」

教授「うむ……この紙をこちらにあるサンプルと比較してみたところ、ロンドン中心部にあるホテル「キング・エドワード」の物と判明したのだ」

部長「…さらに言えば、行方不明になった部員は「キング・エドワード」からほど近い場所で消息を絶っている」

017「では「キング・エドワード」を調べれば…」

部長「……何らかの手がかりがつかめるはずだ」

017「分かりました」

教授「こほん…まだ話は終わっておらんよ、ジョアンナ君」

017「これは失礼…♪」

教授「さらに気になることが一つ……この手紙が入っていた封筒の裏に、少しだけ封蝋の跡が付いていた…おそらく別な封筒を下に置いた状態でペンを走らせたのだろうね…」

017「それで、その封蝋はどこのものです?」

教授「それが面白いのだ……封蝋の跡を調べたところ、押されていたのは「クック旅行社」のものだと判明した」

017「…せしめた百万ポンドで世界旅行にでも行くつもりなのかしら?」

部長「それよりも、この「ファントム」が高飛びに使うつもりで資料を取り寄せた可能性が高いと見ている……いずれにせよ、これもなんらかの手がかりになるかもしれん」

017「そうですね…とにかく私は「ホテル・エドワード」に宿泊して、情報収集にあたります」

部長「頼んだぞ……こちらからも連絡員を一人派遣して、君の手伝いをさせる予定だ」

017「感謝します。では、他になければこれで……」

部長「…いや、あと一つある」

017「何でしょう?」

部長「味方とのコンタクトの際に用いる今回の作戦名だが……」

017「あぁ、そういえば伺っておりませんでしたわ」

部長「うむ…作戦名は「サンダーストラック」だ」(※Thunder struck…「びっくり仰天」の意)

017「分かりました、それでは…♪」

………




420 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2020/03/10(火) 03:12:42.09 ID:OEzfadPX0
017「さて、と…」


…任務説明を終えた「017」が迷路のようなレンガ敷きの地下通路を通って階段を上がり、まるで壁に擬態しているような隠し扉を開けると、不意に落ち着いた印象の室内に出た……さらにその小さな部屋を抜けた先は流行のドレスや手袋が飾られた婦人服店になっていて、いま出てきたドアには「試着室」と小さな金のプレートが取り付けてある…


店員(情報部職員)「……ドレスの方はいかがでございました?」

017「ええ、とても良かったわ…辻馬車を呼んでいただけるかしら?」

店員「承知いたしました」店員は手際よく店のそばで客待ちをしていた二輪馬車を呼んだ……

御者「……ご婦人、行き先はどうします?」

017「ホテル「キング・エドワード」までお願い」

御者「分かりました…やっ!」御者が軽く鞭をあてがうと、馬車がごろごろと走り始めた…

017「…」道を行き交う人々を観察しつつ、馬車に揺られている……軽快な二輪馬車は大きくて小回りの利かない四輪馬車やまだまだ珍しい自動車で混み合った道をすり抜けるようにしてロンドンの通りを走っている…

017「……確かに部長の言うとおりだったかもしれないわね」

………


…任務説明の後…

017「……ところで部長」

部長「何だね?」

017「自動車は貸していただけないのですか?」

部長「当然だ…いくら君が派手なタイプの情報部員だとはいえ、あんな最新流行の物に乗っていては目を引いて仕方がない」

017「それはそうかもしれませんが……」

部長「好奇心が旺盛なのは結構だがな、そもそも燃料式の自動車は燃料切れになれば役に立たんし、何かというと故障ばかりだ……かといってケイバーライト動力の車はロンドンでもまだそう多くない…そんな物に乗っていたのでは目立ちすぎる」

017「…分かりました」少し残念そうに言った…

部長「まったく……わかった、この件が上手くいったら一回くらいは使わせてやる」

017「まぁ…♪」

部長「そうなったときは頼むから壊すなよ…教授にぶつくさ言われたくはないのでな」

017「はい」

………



御者「……ご婦人、そろそろ着きますよ?」

017「ええ、そうね……ついでだから軽く辺りを走らせてもらえる?」

御者「分かりました」

…馬車に揺られつつ、周囲をそれとなく観察する……御者に軽く一ブロック(街区)を流してもらって再びホテルの前に着くと、踏み板を出してもらって馬車を降りた…

017「どうもね」御者の手に少し多めの硬貨をのせた…

御者「ありがとうございやした」帽子のひさしに手を当てて敬意を示すと、かけ声をかけて馬車を走らせていった…

ホテルのボーイ「…失礼いたします、荷物をお運びいたします」

017「ええ」

…ホテル「キング・エドワード」のロビー…

017「……失礼。予約をしておいた「レディ・バーラム」だけれど」

受付「はい、ご予約の方は承っております…ようこそおいで下さいました、お部屋のご用意は出来ております」

017「ええ、ありがとう」

受付「荷物の方はお部屋に運ばせますので」

017「お願いね」
421 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2020/03/14(土) 02:45:03.20 ID:uHQkxVlq0
…スイートルーム…

メイド「…お荷物はここに置いてよろしいでしょうか?」

017「ええ、それで結構よ…」三つばかりあるトランクを置かせると、まだ十四、五歳に見えるメイドの小さな手に一ポンドの金貨を握らせた…

メイド「…こ、こんなに……ありがとうございます///」

017「いいのよ、それとシャンパンをお願い…クリュッグのノン・ヴィンテージをね♪」

メイド「はい、すぐにお持ちいたします」

017「…さてと」(今日はとにかく気前のいいところを見せないと…そうでもしないとボーイやメイドの口を開かせるのは難しいもの……)

ホテルマンの声「……失礼いたします、ルームサービスですが…入ってもよろしゅうございますか?」

017「どうぞ」

ホテルマン「失礼いたします、シャンパンをお持ちいたしました」

017「そうね……では、そこの卓上に置いてくださる?」

ホテルマン「かしこまりました……シャンパンは今お召し上がりになられますか?」

017「そうね、そうするわ……」

ホテルマン「承知いたしました。では…」さっと純白のナプキンで瓶の口元を押さえるとそっと押さえつつ栓を抜く…控え目な「ポン!」というコルクの音がすると、小ぶりな丸いシャンパングラスに透き通った金色の液体を注いだ…

017「どうもありがとう、後は自分でやるから結構…♪」そう言うとまたしても多すぎるほどのチップを握らせた…

ホテルマン「……恐縮でございます」

017「よろしくてよ……それと、夕食は食堂でいただきます」

ホテルマン「承知いたしました、それでは失礼いたします…」

017「……ふぅ」ホテルマンが出て行くと椅子に腰かけ、グラスを手に取って一口飲んだ……ムースのように滑らかな泡に、ひんやりと喉を流れ下る爽やかな葡萄の香り……涼やかな味わいのおかげで、口の中にまとわりついたロンドンのほこりっぽさが洗い落とされる気分だった…

………

…しばらくして…

017「さて…そろそろ準備に取りかからないと……」クィーンサイズのベッドが鎮座している豪華なベッドルームにトランクを広げ、どのドレスを着るか思案顔の017……少し悩んだが教授の用意してくれたドレスはここ一番の場面で着ることにし、淡い桃色が華やかなドレスを選んだ…

017「…」一人で手際よくドレスをまとうと化粧台の前に座って軽く白粉をはたいて唇に紅をさし、髪を整えると真珠の首飾りをかけた…

017「ん…なかなかいい感じ」

017「……それじゃあ行くとしましょうか♪」最後に手持ちの小さなポーチにウェブリーを入れると、鏡に向かってウィンクを投げた…

…食堂…

給仕長「…どうぞ、こちらのお席にございます」

017「ええ」

給仕長「それではごゆっくりお楽しみ下さいませ」

017「…是非そうしたいところね……」


…手紙の差出人「ファントム」の正体が分からない以上、早い時間から晩餐の席に着いてそれらしい人物を探すつもりの017……もちろん相手が室内にこもってルームサービスを受けていることも考えられたが、部屋にこもりっぱなしの客というのは目立つ上、手紙につづられている気取った文面から「ファントム」は自分をひけらかすような所があると感じていた……何はともあれ017としては調べが付くところからあたってみるつもりだった…


給仕長「それでは、お料理の方をお持ちいたします」

017「お願いするわ」

給仕「……失礼いたします。仔牛のパイ皮包みでございます」

017「…あら、おいしい♪」一時間近く経ち、前菜から始まったフルコースも中ほどまで来た……017はコクのあるボルドーワインと一緒に仔牛肉を味わいつつ、同時に周囲の様子も観察している…

………


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